結衣「京子をダンボールに入れて送り付けたらどうなるか」 (151)

結衣「京子、ほんとにいいの?」

京子「おう!やっちゃって!」

結衣「はぁ……しょうがないなあ、京子は」ペタペタ

京子「ちゃんとクール宅急便で送ってねえ?」

結衣「はいはい、期日指定で送ってやるよ」

結衣(まったく、あかりの誕生日に自分を送って驚かせようなんて)

結衣(ほんと、色んな事考えつくなあ、京子は)

結衣(けど……)


ダンボール「~♪」


結衣「これ、大丈夫なのかなほんとに」

ダンボール「え、なにが?」

結衣「いや、このまま送っても大丈夫なのかなって」

ダンボール「大丈夫っしょ?」

結衣「そうなの?」

ダンボール「だって、私の家に届く宅急便って全部綺麗に届くよ?」

結衣「それはそうだけど……」

ダンボール「ちゃんと飲み物とか食べ物も持ち込んでるしさ、行けるって!」

結衣「そう?」

ダンボール「そう!」

結衣「京子がそう言うのならいいけどさ……」

結衣「取りあえず、部屋の前に廊下に置いて……と」

結衣「じゃ、今から荷物取りに来てくれるよう、管理人さんに言いに行くから」

結衣「誰か来ても黙ってじっとしてるんだぞ?」

ダンボール「ほーい!」


タッタッタッ

ゴミ業者A「おーい、今日回収するはずだったゴミが入ったダンボールってどこ?」

ゴミ業者B「そこの部屋の前に置いてあるでしょ」

ゴミ業者A「無いけど」

ゴミ業者B「あ、ほんとだ、さっき電話で置いておくって言ってたんだけどなあ」

ゴミ業者A「だよね……何処に……あ」


ダンボール「……」


ゴミ業者A「ここにあったわ」

ゴミ業者B「ああ、良かった……、じゃあ運び出すか」

ゴミ業者A「ほい」


ダンボール「……」zzzz


エッサッホイサッ

結衣「管理人さんと放し込んでて戻るの遅れちゃったな」

結衣「おーい、京子、待たせてごめん……って、あれ?」

結衣「京子のダンボール無いや……」

結衣「え、宅急便の人、もう取りに来たのか」

結衣「随分早いなあ……」

結衣「よし、じゃあ、私の方もあかりの誕生日に備えて、準備でもするかっ」

~あかりの誕生日~


結衣「ハッピーバースデー!」

ちなつ「あかりちゃん!誕生日おめでとう!」

あかり「うわあ!みんなありがとう!」

結衣「私は、ケーキを作ってきたよ」

ちなつ「私はお人形さん作ってきたね!」

あかり「結衣ちゃん!ありがとう!」

あかり「ち、ちなつちゃんも、ありがとう……ね……」ガクガク

ちなつ「ん?どったの?」

あかり「い、いや、ちなつちゃんのお人形、とっても個性的だからちょっと驚いちゃって」ガクガク

ちなつ「えへへ、ありがとね、あかりちゃん」

結衣「よし、じゃあ早速ケーキを……」

あかり「あ、あの……」

ちなつ「どうしたの?あかりちゃん」

あかり「えっと……」

結衣「ん?何かあった?」

あかり「あ、いや、何でも無いよっ」

あかり(京子ちゃん、お誕生日会に来てくれてないんだ……)

あかり(毎年来てくれてたのに……)

あかり(あかり、何か京子ちゃんを怒らせちゃったかなあ……)

結衣(あかり、不審がってるなあ)

結衣(けど、ネタバレする訳にもいかないし……ごめんね、あかり)

ピンポーン


あかり「!!」

結衣「あれ、お客さんかな?」

あかり「あ、あかり!ちょっと行って来るね!」

結衣「うん、行っといで」


タタタタタッ


ちなつ「京子先輩が届いたんですかね?」

結衣「うん、時間ぴったりだ、流石、宅急便屋さんだなあ」

あかり「は、はーいっ!」


「こんにちは~、宅急便で~す」


あかり「あ……宅急便屋さんでしたか……」

あかり(京子ちゃんが、来てくれたんだと思ったのにな)

あかり(やっぱり、今年は来てくれないのかな……)


「はんこ、お願いしま~す」


あかり「あ、は、はいっ!」


ペタンコ

あかり「誰からだろ……」

あかり「あ!」

あかり「きょ、京子ちゃんからだ!」

あかり(そ、そっか、きっと京子ちゃんは何か用事があって、それで宅急便でプレゼント送ってくれたんだっ!)

あかり(あかり、京子ちゃんに嫌われたわけじゃなかったんだっ!)

あかり(よ、よかったぁっ!)

あかり「よ、よおしっ!さっそく、ダンボール開けちゃおうっ!」ビリビリッ

あかり「え、えいっ!」パカッ




あかり「……」

結衣「あかり~、お客さん誰だった?」トコトコ

ちなつ「あかりちゃん、お客さんもう帰ったの?」トコトコ

あかり「……」

結衣(あ、ここからじゃ良く見えないけど、ダンボール届いてるっぽいな)

結衣(あかり、驚いて声も出ない状態なのか)

結衣(まあ、そりゃそうだよね、届いたダンボール開けたら幼馴染が出てきたなんて、驚きで絶句しちゃうよね)

結衣「おーい、あかり?」

あかり「……」

ちなつ「あかりちゃん?」

あかり「……」

あかり「結衣ちゃん」

結衣「ん、なに?」

あかり「これ、京子ちゃんからの、プレゼントだったよ」

結衣「お、それは良かったね、あかり」

あかり「結衣ちゃんは……知ってたの?」

結衣「んー、ごめんね、実は最初から知ってた」

あかり「そう……」

結衣「けど、悪気はないんだよ、ちょっと驚かせようとしただけで」

あかり「……」

ちなつ「あかりちゃん、それでご感想は?」

あかり「……うん」

 





あかり「すっごく嬉しいよぉ!」




 

あかり「ほら!赤いお洋服!前に京子ちゃんが着てたヤツの色違いだよっ!」

結衣「え」

あかり「あかり、実はずっと欲しかったんだ!」

ちなつ「あれ?」

あかり「京子ちゃん、流石だよっ!あかりの欲しいもの、何でもお見通しなのっ!」

結衣「あの……あかり?」

あかり「え?なあに結衣ちゃん」

結衣「えっと……ダンボールに、他に何か入って無かった?」

あかり「え?他にもあるの?」

結衣「あるのって言うか……」

あかり「けど、もう空っぽだよ?」

結衣「……ほんとだ」

あかり「じゃああかり、早速着替えてくるね!」

結衣「う、うん……」

ちなつ「結衣先輩?京子先輩が送られてくる手筈のはずじゃ……」

結衣「そのはずなんだけどね……おかしいなあ」

ちなつ「んー、ひょっとして、宅配業者の人にバレちゃったんじゃないですか?」

結衣「あ、そうかも……それで、失敗したのが格好悪いから別のプレゼントを贈ったとか有り得そう」

ちなつ「ですよね」

結衣「はあ……まったく京子は仕方ないなあ」

結衣「せっかく、1年に1度の誕生日なんだし、恰好悪いとか考えずにあかりを祝ってあげればいいのに」

ちなつ「ですよねえ……」

結衣「よし、ちょっと携帯に電話して来るように言おう」


ピッピッ


トゥルルルー


結衣(……あれ、何か近くで着信音が?)


カチャッ


結衣「あ、京子?」

「はい、京子だけど」


結衣「お前、今どこにいるの?」


「近くにいるよ」


結衣「近くにいるんならちゃんとあかりの家にきなよ」


「もういるよ」


結衣「え?いるの?隠れてるの?」


「いるよ」


結衣「あー、はいはい……別のサプライズしようって魂胆な訳ね」


「……」

結衣「あまり手の込んだ事、しなくていいからな?」


「……」


結衣「早く出てきて、あかりを喜ばせてあげなよ?」


「うん、あかり、喜んでたよ」


結衣「ああ、その様子は見たわけね……何処に隠れてんだよ」


「隠れてないよ」


結衣「はいはい……」


カチャッ

ちなつ「京子先輩、何て言ってました?」

結衣「この家に隠れてるってさ」

ちなつ「え、来てるんですかん京子先輩」

結衣「そうみたい」

ちなつ「はあ……頑張るなあ、あの人」

結衣「だよねえ、あの根性はちょっと見習いたいかな」

ちなつ「……それにしても、あかりちゃん遅いですね」

結衣「ん、そうだね、着るのにそんなに時間がかかるような服じゃなかったと思うんだけど……」


あかり「みんな、お待たせぇ!」

結衣「あ、来た」

あかり「えへへ、似合うかなあ?」

結衣「うん、とっても似合ってるよ」

あかり「ですね、赤い服はちょっと派手かなと思ったけど、あかりちゃんにとっても良く似合ってます」

あかり「えへへ、そんなに言われると照れちゃうよ京子ちゃん///」

結衣「ん……?」

あかり「じゃ、じゃあさっそく結衣ちゃんが作ってきてくれたケーキ、切ろう?」

ちなつ「そうですね!」

結衣「う、うん」

結衣(んー、ケーキどうしようかなあ、あとで京子が合流するなら4等分に切らないとまずいし)

結衣(けど、1つ余ったらあかりに不振がられるかも)

あかり「結衣ちゃん、切らないの?」

結衣「え」

あかり「じゃあ、あかりが切ってあげるね!」

結衣「あ……」

あかり「よいしょっ、よいしょっ……」

あかり「やったよお、綺麗に切れたよぉっ!」

結衣「……うん」

結衣(4等分だ……)

ちなつ「よし、じゃあ改めて、お祝しましょうか!」

結衣「う、うん、そうだね」

あかり「えへへ、あかり、嬉しいなあ///」


ちなつ「誕生日おめでとう!あかりちゃん!」

結衣「おめでとう、あかり」

「あかりおめでと~」

あかり「わあい!ありがとう!みんな!」

結衣「……」

結衣「……」

ちなつ「じゃ、いただきますね結衣先輩っ!」

あかり「美味しそう~♪」

結衣「……あ、あの、あかり?」

あかり「ん?どうかしたの、結衣ちゃん」

結衣「いま……」

あかり「え?」




結衣「いま、京子の声出さなかった?」

あかり「え?京子ちゃんの……声?」

ちなつ「結衣先輩?」

結衣「は、はは……そんなはずないよね、うん、気のせいか……」

あかり「もう、変な結衣ちゃんだなあっ」クスクス

結衣「……」

あかり「あ、ちなつちゃん、そっちのお菓子とって~?」

ちなつ「あ、はいはい」

結衣「……」

こうして、あかりの誕生会は過ぎて行き

結局、京子が合流する事はなかった

~翌日~


結衣「んー……」

ちなつ「結衣先輩、どうしたんですか?」

結衣「あ、ちなつちゃん……実は、京子が学校に来てないんだよ」

ちなつ「え、風邪とかですか?」

結衣「いや、家に電話したんだけど……数日前に私の家に泊るって言って出たっきり戻って無いらしい」

ちなつ「……それって宅急便で送ってから戻って無いって事ですか?」

結衣「うん……」

ちなつ「んー、昨日はあかりちゃんの家に隠れてたって話ですし、そのままお泊りしたんですかね」

結衣「そう……なのかなあ」


あかり「みんなー!」タッタッタッ

結衣「あかり、こんにちは」

ちなつ「あ、そうです結衣先輩ちょっと聞いてくださいよっ!」

結衣「え、なに?」

ちなつ「あかりちゃんったらね!」

あかり「も、もう!ちなつちゃんやめてよぉっ///」

結衣「え、どうしたの?」

ちなつ「京子先輩から贈られたお洋服、学校にもってきてるんです!」

あかり「う、うう///」

結衣「ん?着てきてるって事?」

ちなつ「いや、ダンボールに入れて持ってきてるんですよ」

結衣「は?」

あかり「ううう、恥ずかしいよお///」

結衣「……何でそんな事を?」

あかり「だ、だって、凄く嬉しかったし///」

ちなつ「もー、あかりちゃんずっとそればっかり!」

あかり「えへへ///」

結衣「そ、そっか……」

あかり「もう、ずっと着てたいけど、流石に学校で着ると怒られちゃうしね///」

結衣「……そういえばさ、あかり」

あかり「え?」

結衣「昨日は京子、あかりん家に泊ったの?」

あかり「うん、お泊りしたよ?」

ちなつ「あー、やっぱりそうだったの」

あかり「昨日は京子ちゃんといっぱいお喋り出来て楽しかった!」

結衣「……それで、今日は京子寝坊して学校来れなかった……とか?」

あかり「え?」

あかり「京子ちゃんも一緒に学校に来たよ?」

結衣「え……」

ちなつ「けど、結衣先輩のクラスには来なかったって……」

あかり「あ、それは……その……」

結衣「あかり?」

あかり「ず、ずっとあかりの傍にいてくれたから///」

ちなつ「は?」

結衣「え?」

ちなつ「けど、1年のクラスにも京子先輩着てなかったよ?」

あかり「ずっと、あかりのロッカーの中にいてくれてたの」

結衣「え」

ちなつ「なにそれこわい」

あかり「えへへ、京子ちゃん、優しいよねぇ///」

ちなつ「優しいってレベルじゃないよそれ……」

結衣「……」

あかり「あ、京子ちゃん、呼んで来ようっか?」

ちなつ「そのまま放置してたの?あかりちゃん何気に酷いね」

結衣「……そうだね、もう部活だし、京子呼んで来てよ、あかり」

あかり「うん!」

結衣「……」

ちなつ「結衣先輩、ふ、2人っきりですね///」

結衣「ちなつちゃん」

ちなつ「は、はいっ!」

結衣「ちょっとここで待ってて」

ちなつ「へ?あ、結衣先輩!?何処へ!?」

結衣(あかりの様子は、昨日からちょっとおかしい)

結衣(時々、居ないはずの京子と話してるような言葉を使ってる時がある)

結衣(京子もあれっきり姿を見せないし……)

結衣(何が起こってるんだろう)

結衣(きっと、あかりは知ってるはずなんだろうけど……正面から聞いても、キリが無いみたいだし)

結衣(だったら、このまま尾行して……)

結衣「あかりのクラスはここだよね……」

結衣(中にいるのは……あかりだけかな)

結衣(いや、誰かと話してる?)

結衣(誰と……)

あかり「京子ちゃん、お洋服、本当にありがとう」

あかり「あかり、凄く嬉しかったよ」

あかり「ずっと着てたいの、あのお洋服」

あかり「だって、なんだか京子ちゃんの事が身近に感じるんだもん」

あかり「京子ちゃんとお揃いだよね、赤いお洋服」

あかり「あのね、あかり、もっと京子ちゃんとお話したいの」

あかり「もっともっと京子ちゃんとお話したいの」

あかり「え、だったらもっと近づいてって?」

あかり「うん、そうだよね、もっと京子ちゃんに近づきたい」

あかり「近づきたいよ」

あかり「ふふふ」

私は見た


机の上に置かれたダンボールに


身を乗り出し


頭を突っ込んで


何かとお話しているあかりを

結衣「……あ、かり?」

あかり「あ、結衣ちゃんだ、結衣ちゃんが来たよ京子ちゃん」

あかり「ほら、そろそろ出ないと結衣ちゃんに怒られちゃうよ」

あかり「うん、うん」

あかり「えへへ、そんなに言うんなら、仕方ないかなあ」

あかり「うん、あかりね、頑張って京子ちゃんを隠してあげるね」

あかり「大丈夫、あかりに任せて」

結衣「……あかり、ダンボールに向かってなに喋ってるの」

あかり「……」

結衣「あ、あかり?」

あかり「……」

結衣(……あかりは、今どんな顔をしてるのだろう)

結衣(ダンボールの中で、どんな表情をしてるんだろう……)

結衣「あ、あかり?」

あかり「……」

結衣「……」


あかりは、ゆっくりとダンボールから頭を出した


私からは死角になって、その表情は見えない


何となく、見たくないと、私は思った

あかり「……結衣ちゃん」

結衣「な、なに?」

あかり「どうしてあかりのクラスに来たの?」

結衣「えっと……ほ、ほら、京子を呼びに行くって言ったろ?」

あかり「うん」

結衣「また京子が変な事言ってあかりを困らせると行けないと思って……それで着いてきたんだ」

あかり「そっかあ……」

結衣「うん……」

あかり「そんな心配、いらないよお」

結衣「……」

あかり「あかりね、京子ちゃんの事、いっぱい判ったの」

あかり「いっぱいいっぱい、判ったの」

あかり「多分、結衣ちゃんよりも良く判ってるよ」

あかり「ふふふ……」

あかり「だから、だからね、もう京子ちゃんに困らされることなんて、ないんだよ」

結衣「あ、あかり……」

あかり「……えへへ」


そう言って振り返ったあかりの表情は……

今まで見た事もないような純粋な笑顔だった


何も不安が無い胎児のような笑顔だった


結衣「あ、あかり……」

あかり「ごめんね、結衣ちゃん、京子ちゃんがね、もうお家に帰りたいって」

結衣「え……」

あかり「だから、あかり、お家に帰るね」

結衣「お、おい、ちょっと……」

あかりは、次の日も、次の日も、学校にダンボールと洋服を持ってきた


最初は珍しがっていたクラスの子達も、次第にあかりの奇行を気味悪がるようになってきた


それはそうだろう


私も、あれから何度か部室で見かけたが


あかりは、あのダンボールに頭を入れて


ずっと独り言を呟くのだから


まるで京子がそこにいるかのように

あかり「うん、うんうん、あかり、判るよ、京子ちゃんの気持ち判る」

あかり「京子ちゃんの事なら何だって判るよ」

あかり「狭くない?思ったより過ごし易い?」

あかり「そっかあ、良かった、良かったよぉ」

あかり「あかりもね、京子ちゃんと一緒にいたいよ」

あかり「2人でお揃いのお洋服着て、お出かけしたいなあ」

あかり「ねえ、京子ちゃん、何時か一緒に行こうね」

あかり「約束だよ」

あかり「やくそくだよ」

あかり「ふふふ……」

~数日後~

~結衣宅~


結衣「はぁ……あかりはおかしくなっちゃうし」

結衣「あれっきり京子の姿は見かけないし……」

結衣「携帯は繋がるから、警察沙汰にはなってないけど」

結衣「そろそろ京子のご両親も心配し始めてるし……」

結衣「何とかしないとなあ……」


ピンポーン


結衣「あれ、誰だろ」

結衣「はーい」


「すみません、宅急便で~す」


結衣「あ、はいはい……」カチャッ


結衣「どうも、何時もありがとうございます」

宅配業者「いえいえ……こちら荷物になりまーす」

結衣「わっ、ダンボール……誰からだろ」

宅配業者「あ、そういえばここ、船見さんでいいんですよね?」

結衣「え?はいそうですけど」

宅配業者「先日、荷物を取りに伺ったのですけど……荷物、置いてなかったんですよね」

結衣「へ?」

宅配業者「もしまだ送って無いんでしたら、今受け取りましょうか?」

結衣「い、いや……業者さん、取りに来られましたよね?」

宅配業者「いや、来たんですけど荷物ありませんでした」

結衣「そん……な……」

宅配業者「じゃあ、失礼しました~!」


パタンッ


結衣「……」

結衣「……」

結衣「京子が、配達されてないって……」

結衣「宅配業者さんにバレたって様子もなかった……」

結衣「じゃあ、じゃあ、京子は何処に……」

結衣「……」

結衣「……」

結衣「……届いた荷物、あかりからだ」

結衣「な、なんだろう、随分重いけど……」

結衣「いったい、何が入ってるんだろう……」

結衣「……」

結衣「……」

結衣「……」

結衣「……開けて、みよう」

結衣「……」ペリペリペリ

結衣「……」ビリビリビリ

結衣「……」

結衣「……」

結衣「……あ、あけるよ」



パカッ


結衣「……!」

「あかりもね、京子ちゃんと一緒にいたいよ」

「2人でお揃いのお洋服着て、お出かけしたいなあ」

「どうすれば一緒にお出かけできるかなあ」

「そうだ、あかりも、京子ちゃんみたいにすればいいかな」

「なかにはいればいいのかな」

「そうすれば、一緒になれるよね」

「いっしょになれるよね」

「うん、だったら、あかりも」

「あかりも、はいるね」

「京子ちゃんと一緒に、はいるね」

「ふふふ、ちょっとせまいね、京子ちゃん」

「けど、京子ちゃんと一緒なら……一緒なら……」

~翌朝~


ちなつ「あ、結衣先輩!」

結衣「ちなつちゃん、おはよう」

ちなつ「ふふふ、朝から結衣先輩と二人きりなんてついてますっ♪」

「もう、あかりを無視しないでよちなつちゃんっ」

ちなつ「え……」

結衣「……」

ちなつ「あかり……ちゃん?」

結衣「どうしたの?ちなつちゃん」

ちなつ「い、いえ……今、あかりちゃんの声が聞こえた気がして……」

結衣「ふふふ、変な事言うなあ、ちなつちゃんは」

ちなつ「そ、そうですよね、すみません……」

ちなつ「そういえば、結衣先輩、そのダンボールなんです?」

結衣「ああ、これ?実はあかりのうちから野菜が届いてさ……一人じゃ食べきれないから、皆にも配ろうと思って」

ちなつ「野菜ですか……あ、トマトだ」

結衣「うん」

ちなつ「美味しそうですね……一ついいですか?」

結衣「どうぞどうぞ」

ちなつ「いただきま~す!」ムシャッ

結衣「……お味は、いかが?」

ちなつ「うん、美味しいですね」モグモグ

結衣「そっか、良かったね、あかり」


「えへへ、いっぱい食べてね、ちなつちゃん」


ちなつ「うん」クチャクチャ

ちなつ「それにしても、一時は心配しましたよ、あかりちゃんの事」

結衣「あかりのこと?」

ちなつ「はい、クラスでもちょっと問題になってましたし」クチャクチャ

結衣「そっか」

ちなつ「けど、これで解決ですよね」

結衣「うん、そうだね」

「心配掛けてごめんね、ちなつちゃん」

ちなつ「いいよ、友達じゃん」

「さっすが私のちなちゅ!」

ちなつ「ちなちゅ言うな」

結衣「ふふふ、まだまだ沢山あるからさ、みんなにいっぱい配ろうね」

結衣「あかりからのプレゼント」

結衣「いっぱい、いっぱい、配ろうね」

結衣「そうすれば」

結衣「また、みんなで一緒にいられるから」

結衣「みんなでお喋り出来るから」

結衣「それで、一緒に入ろうね」

結衣「一緒に箱の中に入ろうね」

結衣「ふふ、ふふふふ……」

おわり

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