真奥「もし恵美が最初からデレデレだったら」(74)

・「はたらく魔王さま!」のSSで真奥×恵美です。

・以前VIPの方で書いたものを一部加筆・修正したものです(基本のストーリーは同じです)。

・若干のキャラ崩壊注意。

・ちーちゃんが好きな人はあまり読まない方が良いかもしれません。

深夜・交差点にて……

恵美「ずっと向かいのお店からあなたを観察していたの」

真奥「お、俺を?」

恵美「正直最初は分からなかったわ。でもそのうち気づいたの」

恵美「いくら姿形は変わっても……そのフェロモンは隠せないのよ!」

真奥「まさか……勇者エミリアか!?」

恵美「やっと見つけたわ! ダーr、魔王!!」

恵美「あなたを放置すれば世界はまた闇に閉ざされる! そうなる前に私はあなたを倒す!」ドン

真奥「うわっ、倒すって物理的にかよ! まて、エミリア! 話せば分かる!」

恵美「私は対話よりもっと雄弁な方法を取るわ! 魔王覚悟!」チュー

真奥「うわっ、唇を近づかせるな!」

恵美「避けるな! おとなしくヤられなさい!!」ハァハァ

真奥「だからやめろって! ちょ、ベルトに手をかけ……ぎゃー!?(汗」

…………

警官「で、君が真奥貞夫さんで、あなたが遊佐恵美さん? 何で道端であんな事を……」

恵美「この人を身も心も倒す為です」

警官「あのね、彼氏といちゃつきたいのはわかるけど、服まで脱いじゃだめだよ。せめて家まで我慢するとかさ」

恵美「か、彼氏だなんて……勘違いしないでよね! 別に私はこんな奴の事、なんとも思ってないんだから!」///

真奥「…………」←キスマークだらけ

警官から解放後……

恵美「今日はこのくらいで勘弁してあげるわ」

真奥「助かる……で、貸してやった傘は?」

恵美(用が済んだら捨ててよかったんでしょ? 綺麗に分解して捨ててやったわ)

恵美「げへへ、魔王の指紋つき傘とか返すもんですか。それに私の下半身すでに大雨、この傘は必要不可欠なのよ」

真奥「おい、心の中と言葉が逆だぞ」

恵美「とにかく今日この時は無駄じゃなかったわ。何せあなたの住所と匂いは暗記したんだからね。
あ、これは私の住所とメアドね」

真奥「いや、いらないんだけど……」

恵美「何時でも挑んで来なさい。明日から夜道には気をつける事ね!」ノシ

真奥(めんどくせぇ……)ノシ

翌朝……

恵美「久しぶりね、アルシエル!」

芦屋「ひぎゃああああぁぁぁぁ! 勇者エミリアァァァ!?」

ドアバン!!

恵美「ちょっと、いきなり悲鳴をあげてドア閉めることないでしょ?」ガチャガチャ

芦屋「ま、ま、ま、ま、魔王さま……ゆ、勇者が、悪魔が……」ガクブル

真奥「悪魔はお前だろ。くそ、やっぱり来やがったか」

恵美「ねえ、魔王も居るんでしょ? 開けなさいよ」ガチャガチャ

芦屋「ま、魔王さま?」

真奥「とりあえず様子をみよう。下手に追い返すと厄介だし、さりとて中には入れられないからな」

恵美「ねえ、開けてよ。何もしないからさ~」ガチャガチャ

ガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガチャガガチャガチャガチャ

真奥&芦屋「…………」

ガチャガチャガチャガチャガチャ……

真奥「……止まったか?」

芦屋「みたいですね……諦めて帰ったのでしょうか?」

真奥「分からん。ちょっと鍵穴から外を覗いてみる」

芦屋「気を付けて下さいね、魔王さま」

真奥「…………」ソー



恵美「…………」←向こうの鍵穴から覗いてる



真奥「」

恵美「……開けて♪」

恵美「ひっどい部屋」クンカクンカ

芦屋「魔王さま、なぜ入れたんですか?」ヒソヒソ

真奥「仕方ないだろ、開けないと聖剣ぶっぱするって言うんだから」ヒソヒソ

恵美「こんな所で二人で住んでるなんて……朝食も寂しいわね」

恵美「やはり男だけじゃ駄目ね。家事ができる女の子が一人でも居れば変わるんでしょうけど」チラチラ

芦屋「魔王さま……」ガクブル

真奥「目を合わせるな、芦屋」ガクブル

真奥(とにかく話題を変えよう)

真奥「そういえばお前、仲間はいないのか?」

恵美「うるさいわね。本当は大神官と一緒にくるはずだったのよ。けど……」

…………

恵美「オルバ、早く! 早く行くわよ!」ムフー

オルバ「ま、待て……もう少し、もう少しスピードを落としてくれ……」ハァハァ

恵美(とろいわね、このハゲ……私は早く魔王に追いつきたいのに)

恵美(いや、そもそもこいつ必要なのかしら? 私一人で行った方が都合よくない? その方が魔王一人じめできるし)

恵美(それにこいつ何時も何時もうるさいし、魔王との戦い邪魔するし、ハゲだし……よし、エメ達も見てないし)チャキ

オルバ「ん、エミリア? なぜ剣を……ぎゃー!?」

…………

恵美「……ちょっと色々あってね」

真奥「……さいですか」

恵美「なんか疲れたから今日のところは一先ず帰るわね」

恵美「でも勘違いしないでよ。私はあなたを何時でも倒せるけど、それをやって力を使うと帰れなくなる。
今手を出さないのはそれだけなんだから」

真奥「さっきドア壊すためだけに聖剣使おうとしてなかったか? つかなんでその事をそれを俺に?」

恵美「わ、私だけあなたの事情を知るのはフェアじゃないじゃない。まあ、もう少し詳しく聞きたいなら話すけど?」///

真奥「いや、いいよ。後、照れる必要もないから」

恵美「それとこの世界の私の名前は遊佐恵美だから……あんたは真奥貞夫か」ガチャ

恵美「……ふふっ、素敵な名前ね」バン

芦屋「……魔王さまぁぁ!!(涙」

真奥「泣くな、芦屋! 俺だって泣きたい!!」

マグロナルドにて……

真奥「いらっしゃいませー、店内でお召しあがりですか?」

恵美「うーん、室内でもいいけど外の方が好きかな」

真奥「テイクアウトですね。ご注文どうぞ」

恵美「真奥貞夫で」

真奥「……そういうのは」

恵美「単品で」

真奥「……一応確認するが話があるって意味でいいんだよな?」

恵美「さあ、どうかしら。脇にずれて待ってるわね」☆-(´>ω・`)b

真奥「…………」

真奥(昨日の場所まで来いか……嫌な予感しかしない)

千穂「真奥さん」

真奥「なに、ちーちゃん?」

千穂「今の女の人、誰です?」

真奥「え?」

千穂「お知り合いですか?」

真奥「ま、まあ腐れ縁みたいなもんかな」

千穂「…………」

千穂「美人さんでしたね♪」

真奥「え、あ、うん」

千穂「…………」

真奥「…………」

千穂「そういえば真奥さん、昨日の地震平気でしたか?」

真奥「別に何も。ああ、でもルームメイトは大きい地震だったって言ってたな」

千穂「…………」

千穂「ルームメイト?」

真奥「ああ、昔からの部下……いや、友達で」

千穂「…………」

千穂「彼女さん、ですか?」

真奥「いや、男だけど」

千穂「そうですか……良かった」

真奥「良かったって?」

千穂「いえ、なんでも」

千穂(男で良かった)



千穂(「道具」を使う必要がなくなったもの)

バイト終了後……

真奥「で、話って何?」

恵美「あなた、エンテ・イスラを諦めて所帯を持つというのはどうかしら」

真奥「ごめん、意味が分からない」

恵美「このまま明るく楽しくここで生きていれば手はださないわ。その為にはまず所帯を持つのがいいと思うの」

恵美「相手がいないならその、相談に乗ってあげてもいいわよ」///

真奥「帰っていいかな?」

バキューン! バキューン!

恵美「なに、私と魔王の語らいを邪魔するこの銃撃は!?」

真奥「のん気な事言ってないで伏せろ、恵美!」

恵美「きゃ!」

恵美(まままままま、魔王に押し倒された!?)///

恵美(そう……あなたもここで決着をつける気なのね。むしろこういう場所で決着をつけたいのね?)ハァハァ

恵美(勇者エミリアは逃げも隠れもしない! さあ、上からでも下からでも好きな所から掛かって来なさい!)

真奥「おい、なに目を閉じて唇突き出してんだ! あー、俺のデュラハン号がー!?」

真奥「何とか逃げ切れたな。さて」

恵美「ちょっと、一人で何処いくのよ! この私の猛り具合をどうする気よ!」

真奥「何が言いたいのかよく分からんがお前は自分ち帰れよ。今度はもっと穏やかな時間と場所選べよ」ノシ

恵美「ちょっ……」

恵美「…………」

恵美「…………」ガサゴソ

財布「」

恵美「…………」ポイッ



恵美「と、泊めて貰えないかしら……財布、落としちゃって」///

真奥「…………」

魔王城……

芦屋「ひぃぃぃ、勇者エミリア!?」ビクッ

真奥「気持ちは分かるがそんなに何度も怯えるなよ」

芦屋「ま、魔王さま? 何で勇者がまたここに……?」

真奥「実はかくかくしかじかでな、今日こいつここに泊めてやって欲しいんだ」

恵美「まったく、魔王に借りを作るなんて屈辱だわ」wktk

芦屋「くっ、魔王さまの命令とならば仕方ない……今回は特別だからな!」

真奥(冷蔵庫の後ろに隠れながら言ってもなー)

芦屋「魔王さま、今日は近くで寝てもいいですか?(涙」

真奥「はいはい。ほら、恵美。とりあえず電車代とこれ」

恵美「これは……まさか!?」

真奥「ただのバスタオルだけど? あ、枕が欲しければその辺の雑誌でも使ってくれ」

恵美「……これって魔王の?」

真奥「そうだが?」

恵美「…………」ジュルリ

真奥「…………」

恵美「あ、私が寝てるからって変なことしないでよね!」

真奥「しないから安心しろ」

恵美「…………」シュン

真奥(何であからさまに残念そうな顔するんだよ)

芦屋「むしろされる危険の方が高い……魔王さま、やはり勇者と一晩を共にするのは危険です」ヒソヒソ

真奥「分かってる。だが泊まらせなかったら泊まらせなかったでその方が危険そうだし……」ヒソヒソ

芦屋「そうですが……見て下さい、あれを。毛布に包まりながらチラチラとこちらを見る目……まさに獲物を狙う野獣の目です」ヒソヒソ

真奥「……交代で見張ろう」

恵美(ああ、真奥に包まれてるみたい……毛布でこれなら本物はどれくらいなものか……やばい、濡れて来た)ハァハァ

真奥(それにしても随分離れた位置に寝たな。てっきりすぐ隣に寝るとかいうと思ったが……)

芦屋「では最初は私が見張っておきます」ヒソヒソ

真奥「頼んだぞ。1時間したら交代しよう」ヒソヒソ

…………

真奥「Zzz……」

芦屋(魔王さまは私が守る……ん?)

ムクッ……テクテクテク……ゴスッ……ザーザー……ポイッ……

恵美「…………」

真奥「Zzz……」

恵美「…………」

恵美「…………」ニヤッ



チュンチュン

真奥「……む、朝か?」

真奥(なんか体が妙にだるいなぁ……)

真奥(あれ、芦屋も恵美も居ない)キョロキョロ

真奥「恵美は帰ったとして……芦屋は何処に?」

真奥「あ、メール来てる」

佐々木千穂・286件

真奥「Oh」

警察署……

真奥「おい、芦屋。大丈夫か?」

芦屋「はい、何とか。なぜか後ろ頭にコブが出来ていますが問題ありません」ズキズキ

真奥「廊下に出たら洗濯機の中に頭突っ込んで気絶していたから何事かと思ったぞ」

芦屋「それがまったく記憶がなくて……しかし今はそれより」

真奥「ああ、身元引き受けを誰に頼むかだな。まさか放置したデュラハン号のせいでこんな所に呼ばれる羽目になるとは」

芦屋「どうします? マグロナルドの店長さんにでも頼みますか?」

真奥「正直あまり迷惑かけたくないんだよな~。そうなると他に頼めそうなのは……」

真奥&芦屋「…………」

真奥「いや、やはり店長だな」

芦屋「ですね」

芦屋「そういえばこれから佐々木さんと会うんでしたっけ?」

真奥「ああ、なんか相談があるらしい。メールの回数からして結構重要な話みたいだ」

芦屋「何処であって何時に帰るんですか?」

真奥「お前は俺の母親か。5時に新宿駅だよ」

芦屋「ならまだ時間がありますね。買い物と床屋に行きましょう」

数時間後・地下街にて……

恵美(昨晩は充実した夜だったわ~♪)

恵美「ん、あれは?」

芦屋「…………」コソコソ

恵美「こんな所で何コソコソしてんのよ、芦屋?」

芦屋「ひぃぃぃ!? エミリア!!」ビクッ

恵美「遊佐恵美よ。どうしたの? なんかあからさまに怪しいんだけど?」

芦屋(まずい。今魔王さまは佐々木さんと仲良くお茶の途中……もしこんな所を見られたら……)ゴクリ

芦屋「失せろ、勇者エミリア! 貴様はお呼びでは無い!!」キッ

恵美「はあ?」ギロリ

芦屋「スイマセンごめんなさい調子に乗りました」

恵美「まったく、一体何を見ているのよ?」

芦屋「やめろ、エミリア! その先を見てはいけない!!」アセアセ

恵美「だからこっちでは遊佐恵美って……ん?」


真奥「~~~」

千穂「~~~」///


恵美「」

真奥「とにかく地震の件はあまり深く考えなくても大丈夫だと思うよ」

千穂「本当にありがとうございました。少し胸のつかえが取れました」

真奥「それは良かった」

千穂「……こうやって真奥さんと二人でお茶が出来たから、変な事があって良かったかも」ボソッ

真奥「ん?」

千穂「あの、真奥さん、その……私、真奥さんの事……」///

<ケンゲンセヨワガチカラー

<ハヤマルナエミリアー

真奥(ん、何か外が妙に騒が……)




ドゴオオオオオオオオオオオン!!!

ルシフェル「…………」

オルバ「…………」

ルシフェル「ねえ、地下街が崩壊したけどお前何かした?」

オルバ「いや、私は何も……」

ルシフェル「……まあ良いけどさ」

…………

千穂「う、う~ん……」

千穂「あれ……ここは?」キョロキョロ

恵美「……起きたわね」チッ

千穂「……今舌打ちしましたか?」

恵美「気のせいよ。とりあえず無事で良かったわ」

千穂「全然嬉しそうに見えないんですけど?」

恵美「私達、完全に閉じ込められてるわ」

千穂「地震、でしょうか?」

恵美「……そうね」

千穂(なんで目を逸らすんだろう?)

千穂「あの、お姉さんは……?」

恵美「遊佐恵美よ、佐々木千穂さん」

千穂「なんで私の名前を?」

恵美「そりゃ知ってるわよ……魔王の知り合いの事くらいわね」

千穂「…………」

千穂「思い出しました。遊佐さんってこの前、マグロナルドで真奥さんと話していた人ですよね?」

恵美「覚えていてくれて光栄だわ」

千穂「遊佐さん、真奥さんの何なんですか?」

恵美「そうね……運命の糸で結ばれた者の同士、とでも言っておこうかしら」

千穂「運命の糸、ですか。また随分古臭い表現するんですね」

千穂「今時流行りませんよ、そういうの」

恵美「でも事実よ」

千穂「…………」ゴゴゴ

恵美「…………」ドドド



真奥(空気が重すぎて助けに入りにくい)

救出後……

真奥「まあ、何にせよ無事で良かったな!」

恵美「…………」

千穂「…………」

真奥(くそ、なんでこんなに空気重いんだよ……)

警官「あれ、もしかして佐々木警部補のお嬢さんですか?」

千穂「え、あ、はい。原宿署の佐々木千一の事なら私の父ですけど……」

警官「やはりそうでしたか。佐々木警部補も近くに来てます。今知らせてきますね」

千穂「はい……あの、真奥さん」

真奥「ああ、分かってる。俺は先に帰って……」

千穂「いえ、待って下さい。父に紹介しますから」

真奥「え?」

恵美「!」

千穂「何時もお世話になってますからいい機会だと」

真奥「だけどデートの途中で事故とかやましいことがなくても……」

千穂「別に私は嫌じゃありませんよ?」

恵美「だ、駄目よ、そんな事!!」

千穂「遊佐さんには聞いてませんよ?」

恵美「真奥だって困ってるでしょ?」

千穂「そうなんですか、真奥さん?」

真奥「いや、その……」

千穂「ほら、違うって言ってるじゃないですか」

恵美「今の『いや』はそういう意味じゃないでしょ!?」

真奥(この険悪なムード……もしかして俺が悪いのか? 違うと言ってよ、バーニィ?)

恵美「とにかくこの男にもう関わらないで! これはあなたの為でもあるのよ!!」

千穂「あなたの為? 私には遊佐さんが自分の為に言ってるとしか聞こえないんですが?」

真奥「ふ、二人ともここは落ち着こう? な?」オロオロ

千穂「そんなに私が真奥さんを父に紹介するのが嫌なんですか? 羨ましいんですか?」

千穂「それなら遊佐さんも同じように自分のお父さんに紹介すればいいだけの話じゃないですか」

恵美「!」

パチーン

恵美「はぁ、はぁ……」

千穂「……何で叩かれたか意味が分からないんですけど?」ヒリヒリ

真奥「おい、エミリア! お前いきなり何してんだよ!?」

恵美「……帰る」

真奥「待てよ、まずはちーちゃんに……」

恵美「帰るって言ってるでしょ! 触らないで!」バシィ

真奥「あ、おい……本当に帰っちまいやがった」

千穂「…………」

翌日……

真奥「何だよ、朝っぱらから」

恵美「この前借りた千円返しに来たのよ」

真奥「……なんで封筒がピンクでハートのシールで止められてんだ?」

恵美「それしかなかったのよ……上がっていい?」

真奥「……ああ」

恵美「アルシエルは?」

真奥「別に大きな怪我はねえよ。今は買い物に出てる」

真奥「ちなみに俺みたいに悪魔の姿には戻ってなかったみたいだぜ」

恵美「そう……」

真奥「反応薄いな。てっきりその事を聞きに来たと思ったんだが?」

恵美「……ねえ、佐々木さんのお父さんには会ったの?」

真奥「会ってねえよ」

恵美「なんで?」

真奥「お前、ちーちゃん叩いただろ? それで顔腫れて……ちーちゃんが『真奥さんがやったと誤解されたくないからやっぱり帰って』って」

恵美「……そう」

真奥「何であんな事したんだよ? いや、理由は分からなくもないんだが……」

恵美「…………」

恵美「あんたさ」

恵美「佐々木さんの事、どう思ってんの?」

真奥「どう思ってるって、ちーちゃんはバイトの後輩で……」

恵美「そういう事、聞いてるんじゃないの」

真奥「じゃあどういう事を聞いてるんだよ?」

恵美「……好きなんじゃないの?」

真奥「待て。なんでそんな話になる?」

恵美「だって喫茶店でとっても楽しそうに話していたじゃない。少なくとも私はあんな風にあなたと喋った事は無いわ」

恵美「でも当然よね。私は勇者であなたは魔王」

恵美「勇者と魔王が仲良くなんて、普通はありえないんだから」

真奥「…………」

恵美「…………」

真奥「…………」ナデナデ

恵美「……何で撫でるの?」

真奥「……いや、お前が泣いてるから」ナデナデ

恵美「優しくしないでよ、魔王のくせに……」グスッ

真奥「すまん……」ナデナデ

恵美「魔王のくせに……魔王のくせに……」ブルブル

真奥「恵美? うわっ!?」ドサッ

恵美「何で! どうしてこんなに胸が苦しいのよ! 胸が痛いのよ!」

恵美「あんたは魔王! 邪悪の権化! 世界の敵! そしてお父さんの敵!」

恵美「なのに……それなのに……」

恵美「何で私は……あんたの事……あんたなんかの事……」ポロポロ

真奥「恵美……」

ガチャ

芦屋「ただいま戻りました。つい先ほどそこで佐々木さんと……え?」

佐々木「あ」

恵美「…………」

真奥「…………」

千穂「……こんな昼間から何をしているんですか?」

真奥「二人とも、これは違うんだ! これは、えっと、その……」アセアセ

千穂「大丈夫ですよ、真奥さん。分かってますから」

千穂「これはどう見たって遊佐さんが無理やり真奥さんを押し倒したとしか思えません」

真奥「ち、ちーちゃん?」

千穂「だから今の質問も遊佐さんにしたんです」

千穂「こんな昼間から何を猿みたいな事をしているんですか、遊佐さん?
早くその貧相な身体を真奥さんから退けて下さい。真奥さん困ってますよ?」ニコッ

恵美「…………」

芦屋(帰りたい。自分の家なのに帰りたい……)

恵美「…………」

千穂「黙ってないで何か言ったらどうなんです? それともその口にあるのはただの飾りですか?」

恵美「……飾りじゃないわよ」

恵美「だからちゃんとこういう風にも使える」スッ

真奥「え?」

千穂「なっ!?」

チュ

真奥「むぅ……うぅ~~~」

恵美「んっ……ちゅ……ちゅば、んっ……」

真奥(な、なんだ? こいつには何度か襲われてキスされたが……こんなに深いのは初めて……)

千穂「……汚すな」プルプル

真奥(ちーちゃん?)

千穂「真奥さんを汚すなぁ!!」

ドン!!

真奥「うお!?」

恵美「…………」

千穂「はぁ、はぁ……」

恵美「……言っとくけど、これが初めてじゃないわよ」

千穂「!?」

恵美「羨ましい? ならあなたもしてみればいいじゃない」ニコッ

千穂「…………」キッ

ダッ!!

真奥「ちーちゃん!」

恵美「……待って」ガシッ

真奥「ちょ、なんで止めるんだよ!?」

恵美「追わないで……お願いだから」

真奥「そうもいくか! いいから離せよ!」

恵美「……やっぱり佐々木さんが好きなのね」

真奥「だからまた何でそういう話に……」

芦屋(早く買い物したものを冷蔵庫に入れたい……)

千穂「…………」トボトボ

千穂(なんでこんな事になったんだろう)

千穂(少し前までは毎日がとても楽しかったのに……)

千穂「……あの女のせいだ」

千穂「あの女が来たから……真奥さんは……」ギリギリ



ルシフェル「--素晴らしい恨みと絶望だ」

…………

真奥「まったく、轟音聞きつけてみんなで来てみれば……随分懐かしい顔だな、おい」

ルシフェル「久しぶりだね、魔王」

オルバ「エミリア、お前もな」

芦屋「ルシフェル、生きていたのか!?」

恵美「オルバ……なぜあなたが?」

オルバ「最初は裏切るつもりなどなかったのだがな……この前のお礼はさせて貰うぞ、エミリア!!」ゲキオコ

真奥「……お前、あのハゲに何かしたのか?」

恵美「いえ、まったく身に覚えがないわ」キッパリ

ルシフェル「魔王サタンと勇者エミリア。お前達は随分とこの女に恨みを買っているみたいだね」

千穂「…………」

真奥「ちーちゃん!? ルシフェル、お前ちーちゃんに何を……!」

ルシフェル「おかげで僕の力は今……魔王さえ凌駕している」バキューン

芦屋「ぐわぁ!?」

真奥「芦屋!!」

芦屋「くっ、何だか私の扱いが……酷い」バタン

ルシフェル「さあ、次はお前達の番だ。仲良く踊って貰うよ……死のダンスを」

恵美「そんな、こんなに強くなっているなんて……」

真奥「くっ、一旦逃げるぞ、恵美!」

シュン!

恵美「こんな人通りの多いところに転移してどうするつもりよ!?」

真奥「安心しろ。ちゃんと考えはある……!」

ルシフェル「ふぅん、転移するくらいの魔力はあったんだね。だけど鬼ごっこする気はないよ」

真奥「なっ、1レスでもう追いつい……!」

バキューン!

真奥「ぐはっ!」

恵美「……え?」

ルシフェル「はい、お仕舞い♪」

恵美「…………」

真奥「」

恵美「魔王?」

恵美「ねえ……嘘でしょ? ねえ?」

恵美「ははっ、こんな時に何寝てのよ。目を開けなさいよ。ねえってば」ユサユサ

恵美「返事しなさいよ、魔王……魔王!!」

ルシフェル「無駄だよ。心臓を打ち抜いたんだ」

ルシフェル「魔王サタンは死んだ」

恵美「…………」

ルシフェル「しかし無様だな。これがかつて僕の上に君臨し、エンテ・イスラを手中に収めんとした魔王の最期とは」

ルシフェル「さあ、勇者エミリア。次はお前の……」

恵美「……してやる」ブツブツ

ルシフェル「ん?」

恵美「……やる……ろして……こ……してやる……」ブツブツ

ルシフェル「おい、何をブツブツ言って……!?」

ゴオオオオオオオオオオオオオ!!!!

恵美「殺してやるぅぅぅぅぅ!!!」

ルシフェル(何だ、この威圧感は! こいつ、まだこんな力を!?)

恵美「うわああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

ルシフェル「くっ!?」

バシィ! ガキィン! ドーン!!

ルシフェル(何だよ、何だよ、これ……前に戦った時と段違いじゃないか!?)

ルシフェル(この状態の僕が、押されているなんて……)

ルシフェル「オルバ、何をぼーっとしている! お前も手伝え!!」

オルバ「」チーン

ルシフェル(勇者の気迫だけで気絶してる? 何の為に出たんだ、あのハゲは!?)

恵美「よくも、よくも、よくも!!!」

ガキィン! ガキィン! ガキィン!

恵美「よくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもぉ!!!」

ルシフェル(障壁が……)

ガキィン! ガキィン! ガキィン! ピシッ!

恵美「うわああああああああああああああ!!!」

ルシフェル(もたない……!)

バキィィィ!!

ルシフェル「あ、ああ……」

恵美「死ねぇぇぇ!!!」

ルシフェル「うっ、うわああああ!?」

シュン……

恵美「……え?」

ルシフェル「なっ?」

恵美(聖剣が……消えた?)

ルシフェル「くっ……ふん!!」バシィ

恵美「きゅあああ!?」

ドーン!!

恵美「う……うぅ……」

ルシフェル「はぁ、はぁ……力を一気に使い過ぎたみたいだね」

ルシフェル「残念だがガス欠だよ。惜しかったね」

ルシフェル(しかし今のはやばかったなぁ。まじ殺されるかと……ん?)

恵美「はぁ、はぁ……」ヨロヨロ

ルシフェル「まだ立つのか。だけどそんなボロボロの体で一体全体どうする気だい?」

恵美「殺してやる……殺して……やる……」

ルシフェル「最早あるのは復讐心だけか……哀れだね。すぐに楽にしてあげよう」

ルシフェル「とりあえず、こいつはもう必要ないね」ポイッ

千穂「」

恵美「!」ダッ

ガシィ……バキィ!!

恵美「あああああああ!?!?」

恵美「くっ、もっと……ダイエット、しときなさいよ……」

ルシフェル「へー助けるんだ。意外だな、君とそいつって仲は最悪だったみたいだけど?」

恵美「……当たり前でしょ。私は勇者よ」

恵美「確かにこの娘は大嫌いだけど、それとこれとは話は別よ」

恵美「それにこの娘はあいつが……魔王が大切に思ってた女の子なのよ」

恵美「怪我なんか……させられないじゃない」

ルシフェル「ふぅん、よく分かんないや」

ルシフェル「でもま、もうどうでも良いけどね。2人ともすぐに魔王とアルシエルの所に行くのは変わらないんだし」

恵美「…………」

恵美(片足も折れて、力も使い果たした……どう考えても逃げられない)

恵美(せめて佐々木さんだけでも助けたいけど……)

恵美(ごめんなさい……魔王)ポロポロ

ルシフェル「さあ、闇に沈め……勇者エミリア!!」





サタン「--お前が沈め」

ドスン!!

ルシフェル「か……かはぁ……」ビクビクッ

サタン「う~ん、久々だから魔力が鈍ってるな~。一撃で終わらすつもりだったんだけどな」

ルシフェル「な、なんで元の姿に……まさかこの辺りの人間の恐怖をお前一人で……」

サタン「まあそういうこった。とりあえず」

サタン「お前も悪魔大元師なら……潔く覚悟きめろや」ニヤリ

ルシフェル「や、やめ……」ガクブル

ドォン!!

ルシフェル「」チーン

サタン「ふぅ、片付いた♪ 片付いた♪」スッキリ

恵美「…………」

サタン「おい、何ボーっとしてんだよ。俺だぞ、お前の宿敵の魔王だぞ?」

恵美「…………」

サタン「心配したか? 大丈夫、今はもうピンピンしてるから」

恵美「…………」

サタン「ちーちゃん守ってくれてありがとうよ。足の方は大丈夫か?」

恵美「…………」

サタン「おい、そろそろ何か喋れ……!」

恵美「…………」ギュ

恵美(暖かい……)

恵美(心臓が動いてる……)ジワ……

恵美(生きてる……)ポロポロ

恵美「うっ……うええええええん! ひぐっ! ひくっ! ううう~」

サタン「…………」

サタン「……フッ」ナデナデ

アルバート「おい、こりゃ一体どういう事なんだ?」

アルバート「吐き気我慢しながらようやく来たと思ったらエミリアの奴が号泣していて」

アルバート「しかも魔王にしがみついて頭を撫でられているという」

エメラダ「そうですね~」チラッ

エメラダ「とりあえず入り難いですし~しばらく様子をみましょうか~」ニコッ

アルバート「……だな」




芦屋(……魔王さま、そろそろ傷治してくれないかなー)

…………

千穂「……真奥さんから聞きました」

恵美「…………」

千穂「色々助けて貰ったって」

千穂「ありがとうございました」ペコリ

千穂「だけど真奥さんの事は別ですから」

千穂「私、負けませんから……絶対に、負けませんから」

恵美「…………」

恵美「私もよ、千穂ちゃん」

…………

再び深夜・交差点にて……

恵美「魔王」

真奥「なっ、恵美!?」ビクッ

恵美「そんなビクビクしないでよ。今日は何もしないから」

真奥「『今日は』って言葉が凄い怖いんだが?」

恵美「でもあなたがどうしてもと言うなら、その、考えてあげても良いけど……」///

真奥「何を考えるのかは分からないがとりあえず考えないでくれ、頼む」

真奥「それでこんな夜中に待ち伏せまでして何の用だよ?」

恵美「私は勇者よ? 常に魔王を監視するのは勇者の義務でしょ?」

真奥「この前町を直したので魔力はスッカラカンなんだ。心配しなくても何もできねえよ」

恵美「まあ監視は正直ついでで……理由は他にもあるんだけど……」ゴニョゴニョ

真奥「お前にしては珍しく歯切れが悪いな。何だよ、言いたい事があるならハッキリ言えよ」

恵美「……はい、これ」

真奥「ん、傘?」

恵美「この前借りたの、返してなかったから」

真奥「……俺が貸した奴と全然違うんだが?」

恵美「別に良いでしょ、そっちの方が高級何だし! それより受け取るの、受け取らないの!?」

真奥「わ、分かった! 受け取る、ありがたく受け取るよ!!」

恵美「ふん、最初から素直にそう言えばいいのよ♪」

真奥「本当に高級そうだな……しかしお前の事だから何処かに盗聴器とか仕掛けてるんじゃないだろうな?」

恵美「…………」

真奥「おい、今その手があったかって顔しなかったか?」

恵美「き、気のせいよ! それより用も済んだし、そろそろ帰っても良いかしら? 終電も出ちゃうし」アセアセ

真奥「いや、別に俺は引き留めては……ん?」

ポタッ……ポタッ……

恵美「雨……?」

真奥「だな。いきなりこいつが役に立つ時が来たぜ」バッ

真奥「おい、何ぼぉーとしてんだよ。駅まで送ってやるからお前も入れよ」

恵美「え、あ、うん」コクリ

真奥「…………」

恵美「…………」モジモジ

真奥(おい、何で今日のこいつはこんなに静か何だ? 何時もの威勢はどうした?
とても往来で人を押し倒してキスして来た奴と同一人物とは思えないぞ?)

真奥(しかも変にもじもししている。まさかこいつ……)

真奥(『自分から何かする』分には平気でも、『こっちから何かされる』のは苦手なのか?)

真奥(くそ、何か話題を振るか。駅までこの空気は耐えられん)

真奥「あ、そういえばお前って仲間とも合流出来たし、聖法気を回復する手段を探す必要もなくなったんだろ?
エンテ・イスラに帰らなくて良いのか?」

恵美「はあ?」ギロリ

真奥(凄い顔で睨まれた……)

恵美「帰られる訳無いでしょ。さっきも言った通り、私にはあなたを監視する義務があるのよ。
魔王がこっちに残る以上、勇者である私もここに居なきゃいけないのよ」

真奥「そんな義務、何時でも捨ててくれて構わないんだけどな……」

恵美「駄目よ。私は勇者であなたは魔王……勇者と魔王は運命の糸で強く結ばれてるの」

恵美「あなたを倒すその日まで、私はずっとあなたについて行くんだから」

真奥「……もう好きにしろよ」

恵美「ええ、好きにするわ。だから……」

恵美「これからもどんどん攻めてあげるんだから。覚悟してなさいよね、魔王♪」

<おわり>

とりあえずちょうど原作の1巻の終わり辺りまで来たのでここで終わりたいと思います。
うどんさん好きなので2巻の話もその内書きたいです。

ではまた何処かで。

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