俺「母さんがドロドロな料理しか作ってくれない」 (285)

チュンチュン…

母「俺くんおきてー!」

俺「んう…」

母「俺くんー!ご飯できたよ!早く食べよー?」

俺「むにゃむにゃ…」

母「俺くん!早く起きないと学校遅れちゃうよ!」

俺「…ん…はーい…いまいくー…」

俺「ふわーぁ…ん…?くんくん…」

俺「またか…はぁ…」テクテク…

母「おはよ!早く食べて~」

俺「母さん…朝からカレーはちょっと重い…あと連続はきついって…」

母「え~だめかなぁ?今日のは一段とおいしくできたと思うんだけどな…」

俺「いや、母さん…何も美味しくないって言ってるわけじゃないんだ…」

母「野菜と果物の甘みがすごくよく出てるの!」

俺「母さん聞いて…」

母「我ながらおいしくできたなぁ!えへ///」ほっこり

俺「…」

妹「ふぁ~あ…おはよ、…また朝からカレー?」

母「妹ちゃんまでそんなこというの?」うるっ…

妹「さすがにもうつらいんだよ…わかってお母さん…」

母「うぅっ…しくしく…」

父「お、カレーか?いい香りだなぁ!」

母「あなたっ…!」

父「お前たち、母さんは早起きして作ってくれてるんだぞ」

俺&妹「…」

父「もりもり食べて元気に行こう!」

母「あなた///」

俺&妹「もうやだ…」

~学校~

キーンコーンカーンコーン…

俺「はぁ~やっと授業終わったぁ…」

俺「お腹すいたなっお昼ご飯食べよ」ガサゴソ…カパッ

俺「うっ…やっぱりか…」

友「おう俺!またカレーか?一口くれよ!」

俺「ああ…まただよ…」

友「いいじゃん!お前んちのカレーマジうまいし!」

俺「お前には毎日毎食カレーが出る苦しみは分からないだろうな…」

友「いいなぁお前んちは…毎日こんなうまいもんが食えて。しかもお前のお母さん若くて美人だし…」

俺「俺は毎日あの使い古しの焦げ付いた鍋を見るたびに戦慄するよ…」

俺「料理さえちゃんとしてくれれば言うことないんだけどなぁ…」

友「パクパク…やっぱ最高だよ!コクが違うね!」

俺「…妹の奴が心底羨ましいよ。。中学は給食だからな。。」

友「お前だって購買でパン買ったりすればいいじゃんパクパク」

俺「一回コンビニで買ったパンの袋を制服のポケットに入れてたことがあったんだが」

友「…パクパク」

俺「母さんがそれ見つけてその日はそれからずっと泣いてたんだ…」

友「ゴックン…すごいな…」

俺「母さんに嘘は付きたくないしな…我慢してるわけだよ…」

友「お前も大変だな」

俺「はぁ…」

―夜―

俺「部活終わったー…つかれたな。帰ろう。」


俺「ただいまー!……くんくん…はぁ…」

母「おかえりなさい俺くん!」

俺「ただいま母さん…今日の晩飯は…?」

母「ふふっ!俺くんの好きなシチューだよ!」

俺「…好きだけど…好きだけどさ…」

母「カレーが嫌だって言うから作ってみましたっ☆」

俺「たしかにカレーじゃないけど…」

母「今日のは一味違うの!鶏と野菜から出るエキスがコクを引き出してるの!」

俺「はいはい…」

母「ちょっと俺くんちゃんと聞いてよぉ!」

俺「(カレーじゃないだけいいか…)」

~食卓~

父「いただきまーす!もぐもぐ…これは…」

母「ど、どーおあなた?」ドキドキ…

父「うまいっ!うますぎるっ!!」ガタッ!

母「よかったぁあ!」パァッ

父「母さん!」ガシッ

母「あ、あなた…///」

父「これからもずっとこんな美味しい料理をつくってほしい!」

母「あ、あなたったらもう///…子供達が見てるのに///」

妹「そのやり取り何回目…?」

俺「よく飽きないよな…いろいろと…」

母「俺くんと妹ちゃんはどう…かな?」

妹「ぱくっ…もぐもぐ…ん、たしかにすごくおいしいけど…」

俺「(あっ妹のバカ!)」

母「ほ、ほんと!?たくさんあるからいっぱい食べてね!」

妹「いや、もうお腹いっぱいで…」

母「遠慮しなくていいから!はい!」ドロドロ…

妹「あ…あぁあ…」

母「俺くんは大好きだもんね!言うまでもないよね!」ドロドロ…

俺「…」

父「はっはっは!お前たち!たくさん食べろよー!」

俺&妹「(なんなのこの夫婦…)」

妹「あたしもう我慢できない…」

俺「い、妹?」

妹「お母さん!もうカレーとシチューばっかり作るのはやめて!!」

母「い…妹ちゃん…?」

妹「…カレーカレーシチューシチューカレーシチューカレーシチュー…」

妹「こんな生活もう耐えられない!!」

母「妹ちゃん…」うるっ…

父「妹!よさんか!こんなにおいしいのn…」

妹「お父さんもおかしいよ!なんで飽きないの!?」

父「妹…」

兄「(いいぞ妹…これはいい流れだ!)

妹「こんな生活続くんだったら…私家出するから!」

母「!!」ガーン

父「馬鹿なことを言うな妹!」

母「妹ちゃん…お母さん他の料理も作るから…」うるうるっ

妹「…」

母「家出はしちゃだめだよぉ~…」ぐすっ

妹「(…もうひと押し!)」

妹「…私お母さんの料理大好きだよ?でもね、カレーやシチュー以外の料理も食べてみたい」

母「妹ちゃん…」

妹「お母さんのことだからきっと美味しいんだろうなっ他の料理もっ!」

俺「(うまいぞ妹!すかさず加勢だ!)」

俺「俺もそう思う!母さん料理得意だもんなぁ~食べてみたいな!いろんな料理!」

母「俺くん…」

母「あなた…」ちらっ…

父「…まあ俺は今でも満足してるが…」

母「…」

母「…うん!わかりました!お母さんがんばる!」

俺「妹…!」

妹「お兄ちゃん…!」

俺&妹「ピシガシグッグッ」

父「まあ無理はするなよ母さん!」

母「まかせなさいっ☆」ピッ☆

~俺部屋~

俺「ふぅ~」ぼふっ

俺「長かった…」

俺「カレーとシチューのエンドレスループも今日で終わったんだ…」

俺「思えば物心ついた頃からずっとカレーとシチューだった…」

俺「でも明日からは…!ハンバーグ、エビフライ、オムライスに…パスタ!」

俺「あぁ~考えるだけで幸せ…」

俺「明日の朝食を予想しながら寝よう!んーパン派の俺としては朝はやっぱりパンかなぁ!」

俺「バターをたっぷり塗ったトーストにミルク、サラダとハムエッグ!」

俺「フルーツもあれば最高だな!…あとは…」

…………

……

―翌朝―

母「俺くーん!起きて~!朝だよー!」

俺「むにゃ…はぁあい…」ムクっ

俺「んん~よく寝た!…ん…?」クンクン…

俺「なんかすごく嫌な予感がする…」

俺「…」パタパタパタ…

~食卓~

俺「母さんおはよう」

母「あ、俺くんおはよぉ!」

俺「うん…ン!?」

俺「母さん…この料理は一体…」

母「あれ?俺くん知らない?」

母「ハッシュドビーフでーす☆」

俺「…」

母「俺くん?どしたの?」

俺「おいしそうだね…」

母「そうでしょ~!!頑張って作ったからね!愛がこもってるよ!」

俺「ははは…」

妹「おはよ!…う…」

母「妹ちゃんおはよ!」

妹「…」くらっ…

母「い、妹ちゃん!?」

妹「だいじょぶ…ふらついただけ…」

父「おはよう!おぉ~これは!美味しそうだな!」

母「おはようございますあなた!たくさん食べてね!」

母「ささ!みんなで食べよ!」

俺「(たしかにカレーでもない…シチューでもない…)」パク…

妹「もぐもぐ…」

俺「(おいしいけどさ…カレーともシチューとも違うから多少新鮮だけどさ…)」

父「うまい!うますぎるっ!!こんな料理の上手い嫁がいて俺は幸せだ!」

俺「(なんでドロドロしてない料理って言っておかなかった俺のバカ…)」

母「も~あなたったら~///」

俺&妹「…」

妹「お兄ちゃん…」ヒソッ…

俺「ん…?」

妹「食べ終わったら私の部屋に来て。話が…」

俺「ん…わかった。」

妹「ごちそうさまでした…」カチャカチャ

母「あれ?妹ちゃんもういいの?」

妹「うん…おいしかったよ」

母「そう…」

俺「俺ももうお腹いっぱいだ。ごちそうさま~」ガタッ

母「俺くんも?」

俺「うん。」

母「そっかぁ…」

父「…」

妹「じゃあ私学校行く準備してくるから!」パタパタ

俺「俺も!」ペタペタ

母「は~い!お粗末さまでした!」

………

母「あなた…」

父「ああ…もう流石に限界かもしれん…」

母「…」

父「…子供たちに話そう…すべてを」

母「そうですね…私もそうしようと思っていました…」

………

~妹部屋~

コンコン

俺「妹ー?入るぞ?」

妹「どうぞ」

ガチャッ

俺「話ってなんだ?」

妹「お母さんのことだけど…」

俺「ああ…」

妹「お母さん何かに憑かれてるんじゃ…」

俺「たしかにそういう域に達してるな…」

妹「私考えたんだけどさ…」

俺「うん」

妹「シチューやカレーって工夫すれば多少別の料理っぽくできるんじゃないかと思うの」

俺「ほうほう」

妹「例えばシチューならドリアとかパスタとかにできたりしそうじゃない?」

俺「たしかに」

妹「お母さんが意地でもドロドロしか作らないって思っているんなら…」

妹「まずはそのふざけた幻想をぶち殺す!」

俺「おおお…」

妹「…それでも無理そうなら私が時々料理するよ」

俺「そうだな…俺も手伝えることがあれば手伝う」

妹「今日帰ったら一緒にお母さんに話してみよう!」

俺「おう!」

………

俺&妹「いってきまーす!」

母「…俺くん、妹ちゃん」

俺&妹「?」

母「今日二人が帰ってきたら大事なお話があるの」

母「だからあんまり遅くならない内に帰ってきてね?」

俺「?分かったよ~」

妹「りょうかーい」

母「お願いね!じゃあいってらっしゃい!」

………

~学校~

キーンコーンカーンコーン

俺「ふう~終わったぁ!お昼だ~」

俺「お昼ご飯はもちろん…?」カパッ

俺「ハッシュドビーフです…」ドロッ…

友「お!俺さんの今日のお昼はハッシュドビーフですか!いいですな!」

俺「ここで問題です。俺の今日の朝ごはんは何だったでしょう…」

友「ハッシュドビーフ!」

俺「ご名答…」

友「らーくしょぉーぅ!正解したんだからちょっともらうぞ!」パクッ!

友「もぐもぐ…かぁーっうめえ!!さいっこー!」

俺「お前俺んちの息子になれば…?」

友「ほんと…そうできるならそうしたい!」ぱくもぐ!

俺「ははは…」

友「あ、そうだ」

俺「ん?」

友「今度遊びに行くからお母さんの手料理食わせてくんない?」

俺「あ~いいんじゃないかな。母さんは喜んで作ると思うよ」

友「まじか!約束だぞ!」

俺「母さんに聞いとくわ」

友「(若くて美人のお母さんに会いたいしなっ)」

~夕方~

俺「部活終わったー!」

俺「今日は早めに終わってよかった」

俺「母さんが話あるっていってたもんな」

俺「さっさと帰ろ~」

………

俺「ただいま~」

母「お帰りなさ~い!もう妹ちゃんもお父さんもいるから着替えが終わったらきてね!」

俺「はいはい」

―――

俺「お待たせー。で、大事な話って?」

妹「何?」

母「…」チラッ

父「…」コクリ…

母「俺くんも妹ちゃんも…」

母「お母さんが作る料理は全部ドロドロ系の料理だなって思ってるでしょ?」

俺「…うん」

妹「そうだね…」

母「ごめんなさい…実はお母さん」

母「ドロドロ系の料理しか作れないの…」

俺「作れない…?作らないんじゃなくて?」

母「…」コクン…

妹「どうしてそんな…」

母「実はね…お母さん昔こんなことがあったの…」

~~~~~

私のお母さんとお父さんは、とっても仲が良かった

二人は見てるとこっちが恥ずかしくなるくらい愛し合っているという感じだった

お母さんとお父さんと私。三人暮らしで決して裕福ではなかったけれどとても幸せだった

私もお父さんも、お母さんがことあるごとに作ってくれた得意料理のシチューが大好きだった

お父さんとお母さんと一緒に、笑顔でお話しながら食べるシチューが大好きだった

ある年の私の誕生日

凍てつくような猛吹雪の日

そんな幸せだった日々を終わらせる出来事が起きた

お母さんが交通事故で死んだ

その日、私はどうしてもお母さんの作ったシチューが食べたいとわがままを言った

お母さんは笑顔で『わかったよ』といってくれた

そしてお母さんは猛吹雪の中シチューの材料を買いに出かけた

お母さんはその途中で交通事故にあって亡くなってしまった

愛していたお母さんが亡くなってお父さんは昼間からお酒を飲むようになった

あんなに優しかったお父さんはお酒に溺れて人が変わってしまった

私は、昼間は学校に行き、夜は働くという生活をはじめた


そんな中、以前はあんなに優しかったお父さんが私に暴力を振るうようになった

――――――――

中学母「ただいま…」

母の父「うぃいっく…あー帰ったのか…さっさと飯作れよおら…」

中学母「待ってて…」

………

中学母「はい…」コト…

母の父「ヒック…おせえんだよったく…」クッチャクッチャ…

母の父「…おい…なめてんのか?」

中学母「ビクッ」

母の父「なめてんのかって…聞いてんだよォッ!!」ドゴッ!

中学母「うぐぅっ…」

母の父「こんなクソまずいもん作りやがって…」

中学母「ごめんなさい…」

母の父「謝る暇があったらよぉ…」ガシッ!

中学母「あぅぅっ!お父さんや、やめて…」

母の父「まともな料理のひとつも作ってみろやオラァ!!」ゲシィッ!

中学母「うぐぁッ…がはッゴホッ…」

母の父「母さん…なんで…なんで死んじまったんだ…なんで…うぅうっ…」

中学母「…」

母の父「お前が死ねばよかったのに…」ギロッ

中学母「そうだね…」

母の父「っるせえ!だったら死ねや!!」

中学母「…」

―――――

私は自殺しようと思った。

私がお父さんとお母さんの幸せを滅茶苦茶に壊してしまったから。

もう生きるがつらかった。

でも…

でもある日お酒に酔いつぶれたお父さんが虚ろな目をして泣きながらこういった

『あいつの作ったシチューが食べたい』

それから私は、お母さんの亡くなってから見聞きするのも嫌だったシチューを作ってみることにした

そうしなきゃいけない気がした

お父さんにお母さんの作ったシチューを食べさせてあげることがせめてもの償いになる…そんな気がした

お母さんはレシピなんてもっていなかった

だから味を思い出しながら手探りで何度もシチューを作った

やっと少しお母さんが作るシチューの味に近づき始めたころ

お父さんが自殺した

私は…なんだかもうどうでもよくなった

死のうとすら考えないほどに

でも不思議とシチューをつくることは続けた

というよりも体が勝手にそうさせた

その頃はそれだけが自分の存在意義だと感じていたからかもしれない

私は学校には行かなくなった

仕事とシチュー作りの日々を送っていた

そんな時…

~~~~~~~


男子「あぁ~腹減った…さっさとこれ届けて帰って飯食いたい…」テクテク…

男子「しっかし…こんな寄せ書きなんて書いたって…」チラッ

男子「もう学校には来ない気がするけどな。随分としんどいことがあったみたいだし…」

男子「第一あいつ学校だとほとんどひとりぼっちだったしな…」

男子「っと、ここだここ。到着~。」

中学母「…」グツグツ…

男子「…くんくん…なんかいい匂いが…」

男子「シチューかな?あいつが作ってんのか?」

ピンポーン 

中学母「…」スタスタ…

中学母「…誰?」

男子「あ、俺だよ俺!分かる?お前と同じクラスの!」

中学母「覚えてない…何の用?」

男子「おま…ひどいなぁ~覚えててくれよぉ!」

中学母「…」

男子「お前にクラス連中の寄せ書きと、あといろいろ配布物。溜まってたから届けに来た!」

中学母「(どうだっていいそんなもの…)」テクテク… グツグツ…

男子「…?おーい!開けてくれよー!」

中学母「…」グツグツ…

男子「おーい!」ピンポーン

中学母「…」グツグツ…

男子「おいおいおいおーい!」ピンポンピンポンピンポンピンポーン

中学母「……」グツグツ…

男子「おいいおいおいいおいいおいおいおー!」ピピピピポピポピポピピポピポピポピポ

中学母「あああああもおおおおおおお!」スタスタ

ガチャッ

男子「お!よお久しぶり!ぉ…くんくん…」ふらり…

中学母「わざわざありがとう。それじゃ…ってちょっと!」

男子「お邪魔しマース」ふらふら…

中学母「勝手に入らないでよ!」

男子「ああやっぱ…シチューだろこの香り!」

中学母「…そうだけど」

男子「なあ俺めちゃくちゃ腹減ってんだよ…頼む!ちょっとだけでいいから!味見させて!な!頼む!」

中学母「はぁ…帰って」

男子「頼む!この通り!持ってきてあげたじゃんこれ!」バサバサ

中学母「…」

男子「お願いします!お願いします!後生ですから!」

中学母「…上がれば?」スタスタ…

男子「いいのか!?ぃよっしゃ!流石話が分かるね~!お邪魔します!」てくてく…

………

中学母「…ちょっとそこで待ってて」

男子「はいよ~!」

男子「しっかし…」

男子「(だいぶ散らかってんなあ…キッチン周りだけえらく綺麗だが…ん?)」カタッ

男子「家族で撮った写真…か…」

中学母「持ってきた… !!返して!」バッ!

男子「あ、ああすまん…ぉおおおお!!」クンクン

男子「…はぁ~いい匂い…めっちゃくちゃうまそう!!」

中学生母「食べたら帰って…」

男子「はいはいわかってますって!じゃ早速いただきます!」ぱくっ

男子「こ、これは…」

中学母「…」

男子「う、う、うまああああああああああああああああい!!!!」ガタッ!

中学母「ビクッ!!」

男子「な、なんだこのシチュー…」

男子「うますぎる…」

中学母「…お世辞はいいから」

男子「いやいやいやほんとに!今まで食った料理の中で一番うめぇ…!」

男子「ほろほろになるまでじっくりと煮込まれた野菜たち…」

男子「口の中でほどける柔らかいお肉…」

男子「クリーミーなルウの中にほどよく主張する彼らの織り成すハーモニー…」

男子「コクがあってかつまろやかで…心も体も温まる…」

男子「ガツガツガツガツ…」

男子「うんまあああああああい!!」ほわわぁ…

中学母「…まだまだ…」

男子「ガッツガッツガッツガッツ!!」

中学母「まだまだお母さんの味には遠い…」

男子「ぐわっつぐわっつぐわっつ!!!」

中学母「こんなんじゃ…全然ダメだ…」

男子「…おかわり!」

中学母「え?」

男子「おかわりだ!早く持ってきてくれ!…鍋ごとだ!」

中学母「いや帰っt…」

男子「いいから早く!!」

中学母「う、うん…」スタスタ…

………

中学母「…はい」トン…

男子「ガツガツガツガツ!!」

中学母「(どれだけ食べるんだろ…)」

男子「ガツガツ!…ピタッ…」

中学母「ど、どうしたの?」

男子「うっ…うううぅ…ぱく…ぱく…」ポロポロ

中学母「!?」

男子「あれ…なんでだろう…涙が…ぱくぱく…」ボロボロ…

男子「飯食って泣いたのなんて初めてだ…」

中学母「…」

―――

男子「うまかった…」

中学母「(結局全部平らげちゃった…)」

男子「…なあ」

中学母「?」

男子「俺と結婚してくれ」

中学母「…え?」

男子「俺と結婚してくれ」

中学母「え、ええええええええええ!?///」

男子「嫌か?」

中学母「な、なななな何言ってんのいきなり!?///」

男子「…」がしっ

中学母「ちょちょちょちょちょっと!///」

男子「俺のために毎日シチュー作ってくれ」

中学母「あ、え、えっとその…///」

男子「…」じっ…

中学母「ちょっ…み、見すぎ///」

男子「…」じぃっ…

男子「お前ってさ…」

中学生母「…?」

男子「よく見たらかわいいのな!」にかぁっ!

中学母「!!///」ドキぃィッ!

中学母「そ、そんなことないしっ…!///」ドキドキっ…!

中学母「…そそれよりあ、あああっあのっ!///」

男子「ん?」

中学母「あの…と、とりあえずシチューは毎日作ってるからっ…///」

中学母「た、食べにきてもいい…よ…?///」

男子「本当か!?ありがとうっ!!」だきぃっ

中学母「なっななななっ…///」

男子「じゃあ俺、そろそろ飯の時間だから帰るわ!」

中学母「え、あ、ああうんああありがとうございました!///(?)」

男子「おう!じゃあまたなっ!」タッタッタ…バタン…

中学母「行っちゃった…」

中学母「(っていうかまだ食べるんだ…)」

中学母「ふうぅ…」

中学母「…」ほけーっ…

中学母「け、けっこんしてくれって…///」

中学母「どうしよ~いきなりすぎるよぉ…///」

中学母「(かっこよかったかも…///)」

中学母「よしっ!頑張ってシチューつくるぞっ!」

~~~~~~~

それからしばらくして私はまた学校に行くようになった

学校に通いながら仕事して、シチューを作る生活

大変だったけど、私はまた生きる希望を見つけた。

彼は本当に毎日シチューを食べに来た。

私は彼が家に来るのが一番の楽しみだった

彼の笑顔を見ると幸せな気持ちになった

最初はお母さんの味に執着していたけど

彼がおいしいおいしいといってくれるのを聞いて

私はいつしか彼の喜ぶ顔が見たい一心でシチューを作るようになっていた

私は毎日シチューを作り続けた

そんな生活を続けるうち時は流れて…

~~~~~

高校母「彼も私自身も毎日シチューを食べるのが普通になってるけど…これってあんまり普通じゃないよね…」

高校母「私いつの間にか別にシチュー意外食べたいとも思わなくなってる…」

高校母「でも彼は他の料理食べてみたいんじゃないかなぁ…」

高校母「よしっ!」

高校母「もっといろんな料理作って食べさせてあげたい!」

高校母「じゃあ早速作ろう!」

高校母「何にしようかなぁ…」

高校母「んーピラフにしよう!」

~キッチン~

高校母「さてと…野菜を切ろうかな」

フルフルフル…

高校母「…え?」カタカタ…

高校母「あ…あれ?手が震えて…」ガタガタ…

高校母「な、なんで…?」ガタガタガタ…

~キッチン~

高校母「さてと…野菜を切ろうかな」

『こんなクソまずいもん作りやがって…』


高校生母「ビクッ!!」

『まともな料理のひとつも作ってみろやオラァ!!』

高校母「っ…!」

サクッ…

高校母「痛…!」タラー…

高校母「はぁっ…はぁっ…」ふらっ

バタッ!!

………

男子「…い…」

高校母「ん…」

男子「お…い!」

高校母「ん、んん…」

男子「おい!大丈夫か!?しっかりしろ!おい!」

高校母「ん…あれ…私…」

男子「ああ!気がついたか!」

高校母「?…男子君…?」

ぎゅうっ…

高校母「ちょちょちょちょっと男子君!?///」

男子「良かった…ほんとに…」

高校生母「だ、大丈夫だよ!ちょっと気を失ってたみたい…」

男子「一体何があったんだ?」

高校生母「…」

男子「何か訳がありそうだな…とりあえず傷の手当をしよう。」

高校母「うん…」

………

男子「なるほど…そんなことがあったのか…大変だったな…」

高校生母「私…シチュー以外作れなくなっちゃったかもしれない…」

男子「…」

高校母「なんでかな…もう大丈夫だって思ってたのに…」

男子「なあ…」

高校母「なに…?」

男子「頼むから無理に料理を作ろうとしないでくれ…」

男子「お前に何かあったら…俺は…」

高校母「男子君…」

男子「聞いて欲しいことがあるんだ。」

高校母「ん…なに?」

男子「俺は毎日シチューでいい。一生お前のシチューだけで生きていける。」

高校母「男子…君…」

男子「俺さ…高校卒業したら家の農家を継ぐことにしたんだ。」

男子「お前の作るシチューに俺の作った野菜達を入れてやって欲しい」

男子「俺と…結婚してくれ」

高校母「…」

男子「嫌か…?」

高校母「…ほんとに…?私でいいの…?」

男子「お前じゃなきゃだめなんだ」

高校母「うれしい…」グスッ…

男子「お、おいおい泣くことないだろ~!」

高校母「ごめんね…うれしくって…」

男子「うれしい時は笑わないと!ほら見ろこの顔!」ぐにゃぁ

高校母「…ぷっ…ははww変な顔しないでよぉww」

男子「はははwwやっぱお前は笑ったほうが可愛いぞ!」

高校母「えへへ…///ありがとう男子君!」

男子「おうっ!これからもよろしくな!」

高校母「こちらこそっ!」

高校母「えへへ~!2回もプロポーズされちゃった!男子君覚えてる?」

男子「どうだったかな!」

高校母「も~!!男子君!」

男子「はははwww」

高校母「…あ!男子君!ちょっとあれ見て!!」

男子「な、なんだ!?」キョロキョロ

高校母「だいすき!」ちゅっ

男子「なっ…///」

高校母「しししシチュー食べるでしょ!///持ってくる!!///」タッタッタ…

~~~~~

こうして私たちは高校を卒業すると同時に結婚した

彼は相変わらず美味しい美味しいと言って私のシチューを食べてくれた

その頃にはほとんどお母さんの味に執着はなかったが

不思議なもので私のシチューはいつしか自然と

記憶の中のお母さんの味に近いものになっていた

そのころからはお母さんとお父さんの遺影の前に

私のシチューをお供えするようになった

いつしか私と彼の間には子供たちが生まれた

子供たちが生まれると私は他の料理を作りたいという気持ちが強くなった

彼が見守る中、幾度も他の料理を作ることに挑戦した

努力の甲斐あってかそのうちやっとシチューに似た料理ならある程度作れるようになった

でもそれ以外の料理を作ろうとすると相変わらずあの頃の記憶が蘇り、

それ以上料理を続けることはできなかった

そして時は流れて…

~~~~~

俺「母さん…そんなことが…」

俺「それなのに俺…今までごめん…」

妹「うぅっ…お母さん…ひっく…ごめんなさいぃ…!」

母「俺くん…妹ちゃん…」

妹「私…ひっく…そんなことがあったなんて…ひっく知らなくてぇえ…!」

母「妹ちゃん、大丈夫…。謝らないで…」

母「今までちゃんと話さなくてごめんね…」

父「すまなかったなお前たち…」

俺「実は今朝そのことで妹と話してたんだ」

父「そうなのか?」

俺「おう!俺と妹が料理手伝うよ!」

妹「こくんっ」ゴシゴシ…

母「俺くん…妹ちゃん…」うるっ…

俺「でもドロドロ系は母さんが担当!」

妹「お母さんの得意料理だもんね!」

母「うぅぅ…うわぁあああん…!」

父「ありがとうな…母さんも…お前たちも」

母「ぐすっ…でもお母さんね…やっぱりみんなに他の料理食べさせてあげたい…」

母「だから俺くん、妹ちゃん、二人が料理するとき私にも手伝わせて?」

妹「お母さん…」

母「お願い!」

俺「無理は絶対にしないっていう条件付きならいいんじゃないかな?」

妹「私もそう思う!」

母「ありがとう!」

………

妹「あ、そういえばお父さんって結構大胆なんだねぇ~」ニヤニヤ

父「(やっぱり来ると思った…)」

父「…その話はいいだろう!」

母「ふふ!お父さんねーかっこよかったんだよ!」

母「ちょっと強引なとこにやられちゃった!」

父「…わかった この話はやめよう ハイ!! やめやめ」

母「えーいいじゃない?あ な た ?」

父「ぐっ…///」

母「ふふっ!」

俺&妹「(ほんとに仲いいよなぁ…)」

………

俺「あぁ思い出した」

母「?」

俺「友達が母さんの料理食べたいって言ってた。今度遊びに来たときに」

母「ほんとに!今はシチューかカレーかハッシュドビーフしかできないけど…」

俺「それで問題ないと思う。あいつ毎日俺の弁当つまみ食いするし」

母「そっか!じゃあ頑張るね!」

妹「私も友達よんでいい?お母さんの作る料理評判いいんだよー!」

母「もちろん!まっかせなさい☆」えっへん!

………

~学校~

俺「おーい友ー」

友「おっす俺!どした?」

俺「母さんいいってさー。今度の休み遊びに来いよ」

友「まじか!ぜひ行かせていただきます!」

俺「おうよ~」

………

―休日―

ピンポーン

母「はあーい!」

友「あ、こ、こんにちは///」

母「友くんね!俺くんがよく君のこと話してるよ!」ずいっ

友「(うっ…近い///む、胸元が…それに…)」スンスン…

友「(いい匂い…)」ほへぇ…

母「?友くん?」

友「にへら…」ほけーっ

母「?おおーい」パタパタ

友「あ!す、すみません!いやぁまじっすかぁ照れるなあ!///」

俺「おっす友」

友「おう俺!」

母「お昼だけどお腹すいてる?」

友「そりゃもちろん!楽しみにしてきましたから!」

母「ふふっ!たくさん食べていってね!」

友「は、はい!///(ほんとにかわいい…)」

俺「まぁ上がれよ」

友「おう!お邪魔しまーす!」

………

母「さてとっエプロンつけてっ」キュッ

ピンポーン

母「ん、はあーい!」

………

妹友「こんにちは!」

母「ああ今度は妹ちゃんの友達ね!こんにちは!」

妹友「(きれいなお母さんだ…)」ほえー…

母「妹ちゃーん!妹友ちゃんがきてくれたよー!」

妹「はーい!いまいくー!」

母「ささ上がって!ゆっくりしていってね!」

妹「はい!」

………

母「さてと…」

ピンポーン

母「今日はお客さんが多い日ね!はあーい!」

母「いらっしゃ…ってえぇっ!?」

ざわざわ…

俺友2「こんにちはっ!」

俺友3「ちわっす!」

俺友4「おじゃましまっす!」

妹友2「こんにちはあ!」

妹友3「お世話になります!」

妹友4「お腹すいたぁ~!」

父友「食べに来たぜー!」

父友2「わくわく」

父友3「ちぃーっす!」

父友4「人多杉」

母「みんな私の料理食べに来てくれたの?」

ALL友「はい!」

母「うれしいっ!みんな上がって!」

ALL友「おじゃまします!」

………

俺「!!ちょっとお前らなんでいるんだ!?」

俺友2「友に」

俺友3「俺んちに集合って」

俺友4「言われた!」

俺「はぁ…あいつは全く…」

………

妹「ごめんねお母さん!みんな来たいって聞かなくって!」

母「大丈夫よ!お母さんにまかせなさいっ!」トン!

妹「さすがお母さん頼もしい!」

………

父「俺も友達呼んじったww」

母「そうだったんですね!」

父友「奥さん…綺麗ですね…」

父友2「父!奥さんとうちの嫁交換しないか?」

父友3「おい!お前ら、抜けがけはずるいぞ!」

父友4「奥さん今度お食事でもどうです?」

父「貴様らうちの嫁に手ぇ出したら…殺す」

ALL父友「(こいつ顔がマジだ…)」

母「は、はは…wどうぞ上がってください!」

………

母「よしっ!」

母「ホントはもう作ってあるのを温めるだけだったけどある分じゃ足りなさそう…」

母「また新たに作らなきゃ!」

俺「母さん俺も手伝うよ」

妹「私も!」

母「ありがと!」

父「とれたての野菜もってきたぞ!!」

母「あなたもありがとうございます!」

………

母さんの作ったシチューは大好評だった

シチューは全然足りなくてたくさん作らなきゃならなかったから

母さんはもちろん俺も妹もてんてこ舞いだった

みんながおかわりするものだから最後の方は取り合いになってしまった

母さんもこれには苦笑いしてたけど…

でもみんな喜んでくれたみたいで母さんも喜んでた。

………

それから友人たちのクチコミがクチコミを呼び

家にシチューやカレーやハッシュドビーフを食べに来る人が増えた

いつしか母さんのドロドロ系料理を食べるための行列ができるほどになった

………

母さんのほかの料理ができないという症状は

俺と妹が料理をつくるときに一緒に少しずつ慣らしていった

ときどきつらそうな表情を浮かべていたけれど、

時間の経過とともに症状も薄れ、ほとんど普通に料理が出来るまでになった。

でもやっぱり母さんのドロドロ料理はほかの料理とレベルが違ったから

週に何回かはドロドロ料理が食卓に並んだ。

時は流れ…

プルルルル…プルルルル…

母「もしもし!俺くん?」

俺「もしもし?母さん久しぶり!元気だった?今度の休みにそっちに帰るよ」

母「俺くん!おひさしぶりです!元気だったよ!俺くんは?」

俺「元気元気!妹や父さんはどう?元気にしてる?」

母「妹ちゃんは恋も仕事も充実してるって言ってたよ!」

俺「ふーんあいつ順調みたいだな」

母「そうみたい!でね?お父さんがね?『俺と妹は帰ってこないのかー』ってうるさいんだよ?」

母「私だって寂しいの我慢してるのにっ!」

俺「ははww相変わらず仲良さそうで安心したよ」

母「えへへwwじゃあ今度の休み、お父さんと待ってるから!妹ちゃんも帰ってくるって!」

俺「そっか!わかった!お土産もって帰るよ。それじゃ!」

母「またねー!」

プツッ… 

………

―週末―

俺「久しぶりの実家だな」

俺「久しぶりに母さんのドロドロ料理食べたかったんだよね~」

俺「よしそろそろつくぞー…ん?」

俺「な、なんかうちの近所がやけに混んでるぞ…まさか…」

俺「この行列の先は…」ざわざわ…

俺「やっぱり…」ざわわ…

俺「ちょっちょっと通して…」ぎゅうぎゅう…

俺「これは正直なんとかしてほしいよ~!うちはレストランじゃないんだぞ~!?」

俺「ううううっはあっはあぁっ…」

俺「た、ただいま…ってなにこれ!」

ワイワイガヤガヤ…

母「お、俺く~ん!おかえりなさーい!帰ってきたばかりで申し訳ないけど手伝ってー!」

父「ひぃぃっもう勘弁してくれええ!」

妹「人が多すぎだよおお!」

俺「と、とりあえず今日はもう帰ってもらおう!もうさばききれないよ!」

母「そ、そうだね!」

父「よし…おおおいみなさん!聞いてください!今日はこのへんで…!」

ワイワイガヤガヤ…

父「み、みなさあああああああん!」

ワイワイガヤガヤ…

父「く、くっそおおお!」スゥー…

父「みなs…!」

母「みなさーん!」

ワイワイガy…シーン…

母「楽しみに来てくださったのに申し訳ないんですが!」

母「今日はもう材料が足りないんですー!」

母「だから、本当にごめんなさい!」

シーン… ぞろぞろ…

俺「み、みんな出て行くぞ…」

妹「お母さんすごい…」

父「こ、こいつらー…」ぶちぶち

………

母「みんなごめんね…私が調子乗りすぎたせいで…」

俺「今日のは流石にまずいよ…道ふさいじゃって近隣の人も迷惑してたし…」

妹「私もさすがに今日のはコリゴリだよ…疲れた…」

父「あいつら絶対に許さん…」ゴゴゴゴ…

母「でもどうしたら…」

ピンポーン!

俺「誰だろ?」

母「出てくるね」

……

母「はあーい!」

営業マン「お初にお目にかかります、私G社営業部の営業マンと申します」スッ…

母「は、はい…あの、何か?」

営業マン「実はですね、奥様の作るシチューが巷で話題になっておりまして」

母「は、はあ…(いつの間にか全国規模になっていたのね…道理で…)」

営業マン「全国からあのシチューのルウを再現して欲しいという要望が当社に多数届きまして」

母「ええっ!?」

営業マン「当社では奥様の作るシチューを参考に、市販のルウを作成しようと計画中です」

母「そ、そうなんですか…」

営業マン「どうかお考えいただけないでしょうか?」

母「少し…考えさせてください。家族とも相談してみます」

営業マン「そうですか。ありがとうございます。また後日連絡差し上げます。それでは失礼いたします」

母「はい!どうもありがとうございます」

………

母「…という話だったの…どうしよう?」

父「うーむ…まさかそんなことになっていたとはな…」

妹「G社って有名なあのG社でしょ?」

俺「そのG社の営業マンが直々に営業かけてくるなんて…」

俺「話がぶっ飛びすぎててちょっと実感がわかないな…」

母「みんなどう思う?私は、全国の皆さんが食べたいっていうなら…」

母「是非うちの味をみんなに届けたい!」

父「俺は母さんの思うようにしたらいいと思う。」

父「あのシチューを作りあげたのは母さんだからな」

俺「俺もそう思う。それにルウが市販されれば自分で作れるようになるから

  うちの行列も多少は緩和できるんじゃないかな?」

妹「そうだね。私も賛成!」

母「みんな同じ意見だね。じゃあG社さんにお願いしよう!」

父「売れるといいな!」

俺「なんか夢みたいな話だなぁ~」

妹「なんだかすごいね!ワクワクしてきた!」

―翌日―

営業マン「もしもし、私G社営業部の営業マンと申しますが」

母「もしもし、お疲れ様ですー。母です」

営業マン「先日のルウの件お考え頂けましたか?」

母「はい。是非私のシチューの味を全国のご家庭にお届けして頂ければと思います」

営業マン「本当ですか!ありがとうございます!」

営業マン「つきましては後日担当のものがそちらへ伺う予定ですので!」

母「分かりました。どうぞよろしくお願いいたします!」

営業マン「こちらこそよろしくお願いいたします!」

………

こうして母さんの作ったシチューを参考に市販の固形ルウが発売された

人気は上々のようでTV等でも大々的に宣伝された

こうして母さんのシチューの味は全国の家庭に届けられることとなった

さらに母さんのカレーや、ハッシュドビーフや、母さんのシチューをベースに

アレンジした物も同じように商品化された

いやらしい話だがおかげで家にもなかなかのお金が入ってきた

しかし母さんも父さんもそのお金を雀の涙ばかり貯金し、あとは他の人のために使った

例えば未だに家に食べに来てくれる人のための、ドロドロ系料理の材料費や光熱費、

お客を多く呼べるようにするための改築費用とキッチン改装費用、料理器具の購入費用など

あとは募金などに使われた。

俺は正直…もうちょっと自分たちのために使ってもいいんじゃないかな…なんて思ったけど

でも母さんも父さんも妹も俺も幸せだからいいかなと思っている

G社には喜びの声が全国からたくさん届き、母さんもそれをG社を通して見せてもらい、とても喜んでいる

俺は仕事の都合で家にはなかなか帰れないため、詳しくは知らないのだが、

以前よりは人数は減ったものの、相変わらず家には全国からファンが訪れ、多少混み合っているらしい

~~~~~

「ねえねえあのシチュー食べたことある?あのルウの元になったシチュー」

『あぁ~よく食べてたぞ。今でもたまにお呼ばれするしな!』

「そうなの!?お店じゃなくて普通の家でシチューを振舞ってるって聞いたけど?」

『そうなんだよー!まあ俺の友達がその家の息子なんだがな』

『そのシチューを振舞ってる人がまた綺麗でかわいい人なんだよな』

『だからシチューのファンだけじゃなくてその人のファンも結構くるらしい』

『(まあ俺もファンなんだけどな。こいつヤキモチ焼きだから伏せとこ)』

「ふむふむ」

『今では結構いい年なんだが全く老けないから吸血鬼だって噂もあるくらいだ』

「へえ~」

『ああほら、あのルウって商品名に名前入ってるだろ?』

「うんうん」

『その人の本名なんだよなーそれ。だからCMを見る度に恥ずかしいって言ってたなww』

『しかも年寄り扱いされて怒ってたって話聞いて笑ったよww』

「あははww」

『商品名に関しては最後まで反対してたらしいんだけど押し切られたんだってさww』

「へえ~wwなんか可愛い人だねww」

『可愛いものも好きみたいでルウの形もとってもプリティーなんだよなぁ』

『その人がどうしてもその形がいいっていって決定したらしい』

「へええ!気になる!」

『んでそのシチュー最近じゃあ人気が出すぎて数量限定になったんだとさ。』

「いいなあ~!じゃあ今度お呼ばれするとき私も一緒に連れてってよ!」

『いいぜ~あいつに連絡とっとくわ!』

「やったね!それでえーっと…なんて名前だっけ?」

『お前覚えてないのかよww』

「えへへwwごめんごめん!教えて?」

『まったくww一回しか言わねえからちゃんと覚えとけよー?』

「うん!」

『その人の名は』






















『クレアっていうんだ!』


おしまい

お疲れ様でした

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年04月28日 (木) 20:40:42   ID: 12elRQ1V

それがクレアおばさんのシチューの誕生の秘密

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