幼馴染「寄るな、触れるな、話し掛けるな」(36)

男「わかったよ」

幼馴染「……」

幼馴染「10秒なら良いよ」

男「と言われても」

幼馴染「近況とか」

男「聞いてもないのにベラベラ喋るから特にないしなぁ」

幼馴染「……」

男「あ、友達できた?」

幼馴染「はい終了」

男「そっか」

男「……」

幼馴染「……出来てない」

男「ん?」

幼馴染「何返事してるの? 独り言だから」

男「……」

コン
母「入るわよ~」
コン

男「せめてノックは最後までしようよ」

母「あら、幼馴染ちゃん来てたの?」

幼馴染「ども……」

母「玄関から入れば良いのに~」

幼馴染「……はい」

母「それはそうと、あんたに手紙届いてるよ」

男「誰から?」

母「前にホームステイに来てた金髪ちゃんから」

幼馴染「……!」

幼馴染「ホームステイなんて聞いてないよ? 何で教えてくれなかったの?」

男「てことはエアメールかぁ、初めてだ」

母「ちょっと、幼馴染ちゃん聞いてるわよ?」

男「話し掛けるなって言われてるし、返事もダメみたいだから」

母「あらそういうゲーム? 若いって良いわね~」

男「持ってくる」

母「じゃあ私は退散するわね、ドロン!」

幼馴染「男……ねぇ……男……」

幼馴染「今だけ返事していいから」

男「うん、何?」

幼馴染「ホームステイって?」

男「3ヶ月くらいまえに来てたんだよ」

男「14歳だったかな、可愛い子だよ」

幼馴染「……何で教えてくれなかったの?」

男「何で教えないといけないの?」

幼馴染「……死ね!」タッタッタ

男「?」

男「……へぇ」

男「今年の冬にまた来るんだ」

男「また街を案内してほしい……そうだなぁ、あの時バタバタしてたし」

男「今回はしっかり案内しよう」

幼馴染「何で追いかけてきてくれないの!」

男「アニメ好きって言ってたな、アニメイトでも連れてくか」

幼馴染「返事してよ!」

男「何?」

幼馴染「もう触れるても寄っても話し掛けてもいいから!」

男「いやいいよ、話すことないし」

幼馴染「……死ね!」

男「何でこんなに死ね死ね言われにゃならんのだ」

男「別に話さなくたって側にいてくれればいいのに」

男「まぁいいか」

友「邪魔するぜ」

男「我が家どうなってんの」

友「おばさんが上げてくれたんだよ、ちょっと用があって」

男「どうかしたの? みにくい顔してるよ」

友「……そろそろ秋だろ?」

男「うん」

友「てことは文化祭ってことよ」

男「うん」

高校付近

幼馴染「……」

女「やっほー」

幼馴染「ウィエッ!?」

幼馴染「あ……ども……」

女「何してるの?」

幼馴染「あ……いや、その……へへ」

女「もし暇なら文化祭兼ハロウィンの仮装手伝ってほしいんだけど……」

幼馴染「あ、うん……はい……」

女「よし、じゃあ男どもを悩殺するような衣装探しにいくぞ~!」

幼馴染「……」

ショッピング

女「そう言えば幼馴染さんと話したことなかったね」

幼馴染「……う、うん……」

女「幼馴染ちゃんってよんでいい?」

幼馴染「うん……うん?」

女「よかった~、スゴイ近寄りがたかったから断られたらどうしようと思っちゃった」

女「あ、この服屋良さげだね、行こ?」

幼馴染「はい……」

女「敬語よしなよー、ね? 別に利用しようとか虐めようとかしたいんじゃないんだから」

幼馴染「……」

女「……ごめん傷を抉るつもりじゃなかった」

自宅

友「コスプレだよコスプレ」

男「何かメリットあるの?」

友「メリットで動くようになったら終わりですよあなた」

友「……ん?」

友「女の子の香りがする、誰かいたか?」

男「母さん」

友「違うもっとこう……ねぇ?」

男「幼馴染かな」

友「それか、何? イチャコラしてたの? あ?」

友「イカの臭いはしないんだよなぁ」

男「コスプレするんでしょ? なら材料買いにいこう」

友「お、乗り気だねぇ」

男「面倒だから早く終わらせたいだけ」

ごめんなさい
再開します

服屋

幼馴染(何で私がこんな腐れビッチと……)

女「ね、こんなのどう?」

幼馴染「フルェッ!? あ、うん……そ、その……」

女「んーでも和風美人って感じだからなぁ」

幼馴染(よくわかってるじゃないの)

幼馴染(でもなんで一人でこんなペラペラ喋るの? 呪いなの?)

幼馴染「あ、あ、あの……あの……」

女「ん?」

幼馴染「えと……あ……な、なんでも……ナイデス……」

女「?」

女「ハロウィンも兼ねてるしねぇ……雪女とか妖狐とか……」

幼馴染「み……み……」

女「み? あ、巫女?」

幼馴染「……」

女「いいね、神のコスと悪魔のコス、それに仕える巫女コス、いける!」

幼馴染「……」

幼馴染(勇気だした甲斐があった……!)

幼馴染「!!」

女「あとは……これとー……」


友「なぁなぁ何にする? 何にする?」

男「何でもいい」

友「俺サターンやりたい」

男「ガスは屁でいいとしても浮いてる石はどうするの?」

友「違う土星じゃない悪魔やりたいんだ」

ワイワイ


幼馴染「……」

女「次、生地屋ね、巫女服なんてないからさ」

男「これとかいいかな」

友「テーマ決めろよ、そんな簡単に決めんな」

男「何でもいいよ」

友「仕方ねぇな、知り合いに神社の奴がいるからもう坊さんでいけ」

男「なぜハロウィンと無関係な坊さんが出てくるんだ」

友「それか叔父が西洋かぶれでコレクションしてるから、そこの衣装借りてもいいし」

友「確か吸血鬼もあったはずよ」

男「へぇ」

………
……

女「巫女服の生地なかったね」

女「どうしようか……」

幼馴染「た、た、確か……ぉとこ……が……持ってた……」

女「え? おとこ待ってたの? あ、ごめんね、気付かなくて……」

幼馴染「あ、いや、ち、ちが……」

女「ホントゴメン! 今からじゃもうダメかな、一応連絡いれといた方がいいよ、ホントゴメンね」

女「もしそれで亀裂が入ったなら何とか弁解するからさ、ごめん!」

幼馴染「あ、いや……」

女「とりあえずこれ私の連絡先、何か問題起きたらずんずん私に言って? 復縁させるから」

女「じゃ、またね!」

タッタッタ

幼馴染「違うって言ってるのに……」

幼馴染「……でも……増えた」

服屋

友「じゃあ明日11時巌流島で」

男「それは遅刻しろと言ってるのか?」

友「迎えに行くわ、待っとけ」

男「わかった」

友「じゃ、また」


男「幼馴染どこ行ったんだろ、親父さんまだ単身赴任で帰ってないだろうから……」

男「お袋さん? いやでもどこにいるかわからないって言ってたな」

男「普通に考えて戻ってるか」

翌日 9:00

幼馴染「……」

男「ねぇ」

幼馴染「話し掛けるな」

男「……」

幼馴染「十秒なら良いよ」

男「昨日どこいってたの?」

幼馴染「……か、買い物」

男「友達できたんだ、良かったね」

幼馴染「私友達いますから、万単位でいますから」

男「でも何でこっち来なかったの? お腹すかない?」

幼馴染「うるさい死ね!」

男「なんか作って来るよ、待ってな」

幼馴染「…………もう十秒経ちました」

男「そっか、まぁベッドに座って待ってな」

ガチャン

幼馴染「……」

幼馴染「はぁぁぁぁぁ男のベッドぉぉ!」

幼馴染「モフッモフ! なにこれ柔軟剤!? アリエール? でもそんなの有り得る?」

幼馴染「いい匂いだよぉ……」クンカクンカ

幼馴染「……何やってんだろ」


幼馴染「昔からこうだもんなぁ……もうイヤになっちゃう……ん?」

母「壁|ω・)ジー」

幼馴染「……」

ガッチャンバタバタゴロゴロ

男「うるさいな」

男「母さーん、塩コショウどこー?」

シーン

男「……」

男「醤油でいいか」

男「そもそも肉じゃがに塩コショウ使わないか」


男「よし」

男「肉じゃが出来たよ」

私が木製の扉を開けると、そこに映っていた者は一人の悪魔
そして一人のか弱い少女

少女の服は引っ張られたのか首もとが垂れ下がり、柔らかそうな肌が朝日を浴びていた

うっすらと汗を滲ませ、整わない息を無理に抑え、非情に笑う悪魔を見据える

少女がゆっくりと小さく可愛い口を開く

幼馴染「いや助けてよ!」

男「ちょちょ何やってんの母さん」

母「あらやだ、誤解よー」

母「実はね」

幼馴染「やめてください!」

母「若いって良いわね~」

男「話がわからない……」

幼馴染「男、聞いたらブチ殺すからね!」

母「うふふふ、じゃあ失礼~」

男「……?」

幼馴染「はぁ……まずいことになった」

男「それより服、小さい胸が見えてるよ」

幼馴染「うっさい!」

男「しょうがない、もう少しで友が来るからその服脱いでこれ来ときな」

幼馴染「……これなに?」

男「前に金髪ちゃんが来たときの服、またいつか来たときのために置いててって言われてさ」

幼馴染「……金髪ちゃんね……」

男「終わったらこれ食いな、じゃ」

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