杏子「そいつを、寄越せ!!」恭介「うわっ!?」(625)


とある教会の前の道

恭介「ふう。すっかり遅くなっちゃったな」

恭介「けど、やっと怪我が完治して、こうしてバイオリンのレッスンにも通えるようになったんだ」

恭介「頑張って練習して、少しでも早くブランクを取り戻さなきゃ…」

恭介「…小腹が好いたな。何か無かったっけか」ゴソゴソ

恭介「小袋に入ったクッキーか…まぁいいや。これを食べ…」

―――そいつを寄越せ―――


恭介「ん?」クルッ

シーン

恭介「誰も居ない…気のせいかな?」

―――寄越しやがれ―――

恭介「ま、まただ!なんだこの声は!?」キョロキョロ

―――食い物を―――

恭介「一体どこから…」

杏子「その食い物を寄越しやがれーーーー!!!」ガルルル

恭介「うわーーーー!?」

翌日
学校

さやか「おっはよー!!」ガラッ

まどか「あ、さやかちゃん。おはよー」

仁美「おはようございます、さやかさん」

さやか「お!二人共、もう来てたんだ?おっす!いやー悪いねー」

ほむら「あら、珍しいわね?貴女だけ遅く登校してくるなんて」

さやか「あはは。ちょっと寝坊しちゃって…」

まどか「今朝さやかちゃんから、焦った声で『先行っててー!』って電話着たときは、何事かと思ったよ」

ほむら「そうなの。まあ、普段からガサツな美樹さやかが、そうそう襲われる事とは無いと思うけど…」

さやか「ムッ。ちょっと、どういう意味よ!…ん?襲われ…?」

まどか「…」

仁美「…っ」

さやか「…なんかあったの?」

ほむら「最近巷で流行の都市伝説って奴よ。貴女も気をつけなさい?」

まどか「都市伝説?」

仁美「都市伝説と言えば、口裂け女とか人面犬とか、衝撃!見滝原の山奥に幻の部族グンマー民を見た!とかの…」

まどか「最後のはどうかなぁ?」

さやか「そういえば、最近は変なのを見た!って噂話、結構聞くね。で、その都市伝説がどうしたの?」

ほむら「…被害者本人に聞いてきなさいな。親しいんでしょう?」クイッ

さやか「ん?あれは…恭介?…!!」

恭介「」ボロッ

さやか「きょ、恭介!?どうしたのその傷!?」

恭介「いやー…昨日の夜、バイオリンのレッスン帰りに変な子に襲われて…」

さやか「だ、大丈夫!?左手の怪我には影響なかった!?どんな奴にやられたの!?」

さやか(まさか、魔女とか、使い魔とか!?)

恭介「傷は大した事ないよ。腕の怪我にも影響ない。心配してくれてありがとう」

さやか「ほっ」

恭介「けど、相手がどんな顔だったかは、暗かったからよくわからないなぁ」

さやか「そうなんだ…でも、雰囲気とかだけでもわからない?」

さやか(魔女とかじゃなさそうかな…?)

恭介「ああ、結構小柄で、声からしても女の子みたいだったんだけど…」

さやか「ええ!?」

恭介「情けないよね…女の子にこんなにやられちゃって」

さやか「そ、そんな事無いよ…」

さやか(ま、まさかの魔法少女!?)

恭介「ありがとう。けど、さやかも気を付けたほうがいいよ?特に夜道は歩かないほうがいい」

さやか「う、うん。そんな奴がいるなんて危なっかしくて怖いもんね…
    恭介もまた襲われるかもしれないんだし、練習だからってあんまり遅くまで外で歩くんじゃないぞ?」

恭介「あはは。参ったね、どうも…」

さやか「けど、何で恭介が…」

恭介「ああ、それは多分…」

さやか「心当たりあるの?」

恭介「これのせいじゃないかな?」

さやか「何これ?…クッキーの空袋?」

恭介「うん。これ、僕が襲われる直前に食べようと思ってポケットから出した物なんだけどね」

さやか(ちょっと、これ結構高級なブランドのじゃなかったっけ?いいなぁ。ああ、甘いもの食べたい…)

恭介「その後気絶してしまって。で、気付いたら後にはこの空袋だけが落ちてたんだ。それに彼女(?)、『食べ物を寄越せー!』って言ってたから…」

さやか「ブフォ」

恭介「うわ!何するんだよさやか!」

さやか「ご、ごめん…」

さやか(まさか…犯人はアイツかーーーー!!?)

ガラッ

中沢「おーっすお前等!」

恭介「ああ、おはよう」

さやか「なんだ中沢か」

中沢「何だその反応は!」

さやか「はいはい」

中沢「って、上条、お前、どうしたんだその怪我は!?」

恭介「ああ、実は…」


中沢「な、何だって!そんな事が!!」

さやか「アンタも気を付けた方がいいんじゃない?」

中沢「何言ってるんだ!お前ら、この話知らないのか!?」

さやか恭介「え?」

見滝原市七不思議その1
恐怖!夜中に道を歩いていると食べ物を寄越せと迫る、飢えた少女の亡霊

中沢「これは、何年も前の話なんだけどな。ある教会に貧乏な家族がいたんだ」

さやか恭介「「はぁ…」」

中沢「その家は貧乏ながらも両親と幼い姉妹で細々と楽しく生活をしていたんだが、ある日そこの親父が変になっちまったらしくて」

さやか「…」

中沢「…で、そのせいで唯でさえ収入の少なかった家はさらに貧乏になり、最後には幼い姉妹諸共、家族全員一家心中しちまったってよ」

上条「悲しい話だね…」

中沢「だよな。けど、その話には続きがあってさ」

さやか恭介「「続き?」」

中沢「その心中した姉妹の、姉の方なんだけどよ?生きてればちょうど俺達くらいの年齢らしいんだが、家族が全員死んでから少しして、目撃情報があるんだ」

さやか恭介「「!!」」

中沢「近所で付き合いのあった家のおばちゃんが、住民がいなくなってボロボロになった教会で祈るその姉の姿を見たんだってよ」

恭介「ええ!?」

中沢「噂じゃ、自分だけが死んだ事に気づかず、家族の冥福の為に祈り続けてるって話だ。自分は家族とはぐれちまったってのにな…」

さやか「な…!」

恭介「それはまた…」

中沢「切ない話だよな?…それからしばらくしてからだ。その教会の近くを通ると、飢えた少女の幽霊が夜道を歩いている人に『食い物を寄越せ』って迫ってくるって噂が生まれたのは…」

恭介「そんな…じゃあ、僕を襲ったのは…!」

中沢「すげぇな、上条!お前幽霊に襲われた人間だぞ!最高の経験じゃないか!中2的に!」

恭介「人事だと思って…」

中沢「黙れリア充!そのまま取り殺されろ!いや、その幽霊少女が可愛かったら尚更ムカつくから、やっぱり肥溜めに落ちて死ね!!」

恭介「なんだよそれ!!」

さやか「まさかアイツが魔法少女になったのって…」ボソッ

中沢「…ああ、それとこの話にはまだ続きがあってな?」

さやか「…!聞かせて」

中沢「その幽霊なんだけど、他にもATMをぶっ壊して金を奪ってる姿とか、駅前のホテルのスイートで寛いでる姿とか、準備中の銭湯で鼻歌歌ってる姿とかも目撃されてるらしいんだよなー…」

さやか「」

恭介「あれ?なんか、随分人(?)生を謳歌してるような…」

さやか(あ、アイツは何をしておるんじゃ~~~~~~!!!)

放課後
マミさんち

さやか「…と、いう訳なのです」

マミ「それは、何て言うか…その…」

ほむら「いきなり私達を呼び出したと思ったら、そんな話をするためだったの?美樹さやか…」フゥ

マミ「しかも、当然の様に私の家…」

さやか「そんな話ってなんだ!私は、杏子が魔法少女の力を悪用しているんじゃないかって…!」

マミ「どうどう。落ち着いて、美樹さん」

さやか「けど…!」

まどか「がたがた」

さやか「…まどか?」

ほむら「まどかなら、幽霊のくだりが出た直後から、こうやって部屋の隅で耳を塞ぎ、がたがた震えながらお祈りをしているわ。当然その後の、それって杏子じゃね?って所も、聞いていないわよ」

さやか「しまった!まどかのこういう話への耐性の無さをすっかり忘れていた!」

ほむら「なにそれ詳しく」

さやか「ああ、まどかったら、小学生の頃、遊園地のお化け屋敷で…」

ほむら「ふんふん」メモメモ

マミ「鹿目さん?大丈夫よ。さっきの話は、幽霊の話じゃなくて、佐倉さんの話だから…」アデナデ

まどか「え?杏子ちゃんって、お化けだったんですか…?」ブルブル

マミ「いや、そうじゃなくて…」

さやか「駄目だこりゃ」

ほむら(小動物みたい…)

まどか「なーんだ、そういう事だったんですかー!そりゃあそうですよね!この世にお化けなんて居る訳無いですもんね!」

さやか「急に強気になりおったコイツ」

マミ「あらあら」

ほむら「あの妖怪白毛玉と魔法少女の存在はあっさり信じたのに、幽霊は否定するのね…」

まどか「えっ!?キュウべえって、妖怪だったの!?」ビクッ

マミ「いやいや」

まどか「いやだよう~><!『妖怪』って単語だけで、鬼太郎のEDの蟹坊主を思い出しちゃったよう~~><!ほむらちゃんのばかぁ~~~~!!」ゲシッ

ほむら「ホムァ!?」メキッ

マミ「確かにあれは昔怖かったけど、今は魔女すら平気でやっつけてるのに…」

さやか「あの、まどかさん、そろそろ話進めてよろしいでしょうか…」

マミ「…で、結局、美樹さんは佐倉さんが噂どおりに魔法少女の力を悪用しているのかを確認したいって訳なのね?」

さやか「はい。それに、恭介…私の知り合いが杏子らしき人物に襲われているんです。もしアイツが犯人だったとしたら、もうこんな事、止めさせなきゃ」

まどか「でも、杏子ちゃんが犯人だとは、限らないんだよね?」

ほむら「そうね。本当に幽霊の仕業かも」

まどか「がたがた><」

さやか「こら、そこ!」

ほむら(可愛い…)ゾクゾク

マミ「けど、例え一つの事件の犯人が佐倉さんだったとして、他が全て彼女の起こした事件とは限らないわよ?」

さやか「う、それは…」

まどか「その事件っていうのも、どこまでが本当にあった事件かわからないし」

さやか「あぅ…」

ほむら「それに、ATM破壊はともかく、他の悪事は大した事の無いものだわ」

さやか「けど…」

マミ「まあ、一般人を怪我させるのは言語道断として…
   美樹さんの知り合いの子を襲ったっていう件も、食べ物を盗むのが目的なら、更正は簡単ね。
   私達がご飯を食べさせてあげるって言えば、大人しくなるでしょう?
   根は悪い子じゃ無いんだし、大切な魔法少女仲間なんだし、言って聞かせて収まるのなら事を荒らげたく無いわ」

さやか「…それもそうですね。ごめんなさい、恭介が怪我させられて、頭にちょっと血が昇ってました…」シュン

マミ「うふふ。青春ね。その上条くんっていうのは、美樹さんの想い人かしら?」

さやか「はうっ!?ど、どうしてそれを!!」

まどか「バレバレだよ…」

マミ「うふふ。さあ!話もまとまったことだしあとはおやつでも食べながら、みんなで仲良くできる方法を考えましょう? 

まどか「やったー!さすがマミさん!!」

ほむら「ご馳走になるわ」

さやか「はぁ…やっぱこの人には敵わんわ…」

マミ「うふふふ。みんな、楽しみにしててね?今日は凄いのよー?なんと、東京の名店の限定ケーキよ!!」

さやか「な、なんだってーー!?」

まどか「えええ!!ど、どうやって買ったんですかそれ!?」

マミ「うふふふ♪キュウべえって、どこにでも簡単自由に移動できるでしょ?だから、ちょっとお使いに行って来てもらったの」ニコニコ

ほむら「その発想は無かったわ…」

まどか「でも、キュウべえって、普通の人には見えないのにどうやって…」

ほむら「そういえば」

マミ「ああ、キュウべえには現地でダンボールを被ってもらってね。
   日光を浴びられない上に極度の人見知りの子って設定で並んでもらったのよ。
   帰りはケーキを持ち運べないって言うから、ダンボールのまま貨物列車に紛れて帰ってきて貰ったわ」

さやか「が、頑張ったなキュウべえ…」

まどか「キュウべえ…」ホロリ

ほむら(やるわね、巴マミ)

見滝原市七不思議その2
怪奇!ひとりでに動く段ボール箱

ある暑い夏の日、ある少女が駅を歩いていると、前方からダンボール箱が迫ってきた。ずりずりと音を立てて動くその箱に驚き
身を硬くしていると、そのダンボール箱は少女とすれ違い、そのまま通り過ぎて行った。
立ち止まりあれは何だったのかと考えていると、今度は後ろから声をかけられた。思わず振り返るとさっきの段ボール箱。
驚き思わず悲鳴をあげた彼女に、そのダンボール箱はもう一度こう言った。

『あの、すみません。西口はどっちでしょう…』

さやか「あれ?そういえば当のキュウべえは?」

まどか「あ、そういえば」

マミ「それが、ダンボールが気に入っちゃったみたいでね。ずっと中に詰まって、出てこないのよ…」

キュウべえの声「呼んだかい?」

まどか「あ、キュウべ…!」

さやか「…アンタそれ」

キュウべえ(愛媛のみかん)「やあ、まどか、さやか、ほむら。いらっしゃい。ゆっくりしていくといい」

ほむら「何の冗談よそれ…」

キュウべえ「冗談?心外だね、暁美ほむら。君にはこの箱の良さが分からないのかい?」

ほむら「分からないわよ…」

さやか「そんなホームレスみたいな…」

キュウべえ(愛媛のみかん)「なら君達にも分かりやすいよう説明してあげよう。ダンボールは、隙間に空気を保つことによって外界からの気温を…」

ほむら「…ふんっ!」グシャ

キュウべえ「ああ!僕の家が!!」

マミ「うふふ。じゃあ、ケーキを切ってくるわ。紅茶も入れなおすからちょっと待っててね?」

まどか「ケーキッ♪ケーキッ♪」

さやか「たっのしっみだ~♪」

まどか「東京の~♪」

さやか「名店の~♪」

まどか「げ・ん・て・い・っ♪」

まどさや「「ケーキ!」」ハイタッチパーン

キュウべえ(青森りんご)「君達は仲がいいねぇ」

ほむら(おのれ美樹さやか…!)ギリッ

マミの声「きゃぁぁあああああああああ!!」

まどか「!!」

さやか「マミさんの声だ!!」

ほむら「キッチンね。行くわよ」

マミ「あ…ああ…そんな…」ペタン

まどか「マミさん!」

さやか「何かあったんですか!?」

マミ「それが…」スッ

ほむら「あれは…」

まどか「指差したほうに…空のケーキの箱?」

ほむら「食べられた後みたいね」

さやか「何かついてるよ。…紙?」

『トーキョーの名てんげん定ケーキ、足しかにいただきました。めちゃくちゃうまかったぜ!! きょーこ』

さやか「うわ…きったない字」

まどか「『きょーこ』って…杏子ちゃんの事だよね?」

ほむら「なんで杏子がケーキの事知ってるのよ…」

キュウべえ(青森りんご)「ああ、そういえばさっき、東京からの帰り道に杏子にあったよ?何してるのか尋ねられたから素直に答えたけれど…」

さやか「それだ!」

まどか「…えいっ!」グシャ

キュウべえ「ああ!何をするんだ、まどか!!」

ほむら「…」スンスン

ほむら「…ねえ、仄かにコーヒーの匂いがしない?」

まどか「ホントだ。マミさんは紅茶党だから、家にコーヒーは無い筈なのに…」

さやか「あ、あったよ。インスタントドリッパーの袋とゴミと…使われた形跡のあるマミさんのお気に入りのカップ……」

まどか「洗わずに置きっ放しにしたら、染みになっちゃうよ…」

ほむら「っていうか、すでになっているわ。犯行は結構前ね。もう近くには居ないでしょう」

マミ「…」

マミ「くすっ」

マミ「くすくす…」

さやか「ま、まみ、さん…?」

マミ「くすくすくすくすくすくすくすくす」

まどか「ひいいいいい!?」

さやか「怖っ!?」

ほむら「お、おおおお、おつちつきなさい二人とも…!!」ガタガタ

マミ「くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす
   くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす
   くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす
   くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす殺すくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす
   くすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくすくす」

みんな「」ガタガタ


見滝原市七不思議その3
戦慄!氷の微笑を持つ魔女

ある少女の回想
「 そこに とても こわい ひと が いたの」

マミ「あはははは!うふふふふふ!!うふ。うふふふ!!もうっ!あははは!!仕方が無い子ねぇあはは佐倉さんったらあははははは!!!!」

さやか「マミさーーーん!!」

ほむら「ちょっと、巴マミ!瞳孔が開ききってるわよ!」

マミ「ぁあ!?」ギロッ

ほむら「すみません」ペコリ

さやか「弱っ!!」

まどか「マミさん、ど、どうか落ち着いて下さい…!」ガタガタ

マミ「あら鹿目さん、私は落ち着いているわよ?」

まどか「よ、よかっ…」

マミ「…けど、勝手に人の家に忍び込んで人様のケーキを勝手に食べるような子には、地べたに這い蹲って泣きながら砂利を舐めてるのが御似合いだと思わない?」ニコッ

まどか「笑顔で何言ってるのマミさん!?」

さやか「マミさん!仲良く!みんな、仲良くしましょう!さっきマミさんが言ってたとおり!!」

マミ「そうよ、みんな仲良くしましょうね?けど仲良くする気のない奴は殺してイイわよね?…さあ、佐倉さんとも、な・か・よ・く・お話ししに行きましょう?」ニコニコ

ほむら「がたがた」

マミ「うふ。うふふふふ。うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ
   そういえば、美樹さんの知り合いの子は、怪我させられたんですってね?安心して?美樹さん。その子の仇は私が取ってあげるから…」

さやか「やめてーーー!恭介を修羅の因果に引き込まないでーーー!!」

マミ「きっとATM破壊も真実よ。あと、ホテルや銭湯の無断使用も真実だろうし、今朝靴紐が切れたのも彼女の悪戯に違いないわ。
   ポストが赤いのも最近テレビがつまらないのも洗濯機の調子が悪いのも私の体重が1kg増えたのも…」

さやか「もう八つ当たりだ!」

まどか「しずまりたまえー!しずまりたまえー!!」

ほむら「がたがたがたがた」

キュウべえ(ピザポテト)「マミ!マミ!!実は僕、フランス語も出来るんだ! だから今度は貨物に紛れてパリからケーキを買ってきてあげるよ!!」ピョンピョン

キュウべえ(ピザポテト)「…落ち着いたかい?みんな。っていうか、マミ」

ほむら「ええ…」

まどか「なんとか…」

さやか「もう大丈夫だよ…」

マミ「ごめんね、みんな…あまりの事態にちょっと取り乱しちゃって…」

ほむら(ちょっ…と…?)

キュウべえ(ピザポテト)「…まあいいさ。取り敢えず、何で僕がこんな格好でこうして説教染みた事をしているのかだけは考えてみて欲しいけど」

まどか「ごめんね、キュウべえ…」

マミ「私達が至らないばっかりに…」

さやか「申し訳ない…」

ほむら(ピザポテトに説教を食らうこの屈辱…!)

キュウべえ(ピザポテト)「…なるほどね。杏子が魔法少女の力を悪用しているんじゃないかと…」

さやか「そうなんだよ…」

まどか「キュウべえは、何か知らない?」

キュウべえ(ピザポテト)「すまないが、わからないな」

マミ「そう。キュウべえでもわからないのね…」

キュウべえ(ピザポテト)「…まあ、食べ物の件に関しては、目撃例が1つに実証例が1つ。全てが彼女の犯行だとしなくても、うち大半が彼女のものである可能性はかなり高いだろうね」

ほむら「何をやってるのよ彼女は…」

さやか「都市伝説化するほどやってるのか…」

まどか「ねえキュウべえ…杏子ちゃんの居場所は、わからないかな?」

キュウべえ(ピザポテト)「やれやれ、探ってみよう………うん。どうやら○○教会の近くだね。具体的には…」

さやか「!そこって、昨日恭介が襲われた場所だ!」

まどか「そういえば、上条君、今日も練習があるって…」

ほむら「…まずいんじゃないの?」

マミ「行きましょう!!」

ちょうどマミさんがキレてた頃
とある教会前の道

恭介「ふう。また遅くなってしまった」トボトボ

恭介(あ!この道は、昨日僕が襲われた…!けど、この道を通らないと、相当遠回りになるし…)

恭介「ま、まさか2日連続って事は、無いよな」ハハハ

恭介(幽霊だなんて、そんなまさか……)

ヒタヒタ

恭介(で、出た!?)ビクッ

杏子(へっへっへー。来た来た。今日も鴨が来たぞー♪)

杏子(昨日襲った奴から奪ったクッキーはすっげー旨かったからな。今日は、どんな奴が何を持ってるか…)

杏子「…ん?」

杏子(あれー?コイツ、昨日も襲った奴じゃん…普通襲われた道は、避けるよねぇ?馬鹿じゃねぇの?)

杏子(ま、いっか。今日もなんか持ってねぇかな?)

杏子「…よお、アンタ、食い物持ってない?痛い目見たくなきゃ、寄越せよ」

「…よお、アンタ、食い物持ってない?また痛い目見たくなきゃ、寄越せよ」

恭介(僕のことを覚えているっていうのか!)

中沢『これは何年も前の話なんだけどな?ある教会に貧乏な家族がいたんだ』

恭介「…!」

中沢『その家は貧乏ながらも両親と幼い姉妹で細々と楽しく生活をしていたんだが、ある日そこの親父が変になっちまったらしくてさ』

中沢『…で、そのせいで唯でさえ収入の少なかった家はさらに貧乏になり、最後には幼い姉妹諸共、家族全員一家心中しちまったってよ』

恭介(…考えてみれば、この子はとても可哀想な幽霊なんだよな)

「…おい、ちゃんと聞いてるか?」

恭介「聞いてるよ…」

恭介(これくらいで君の悲しみが少しでも癒えるなら…)

「ならさぁ…」

恭介「いいよ。今鞄から出すから、ちょっと待っててくれないかな」ゴソゴソ

「…へえ。殊勝だねぇ。ま、昨日あんな目に合ったばかりじゃ、それも当然か…」

恭介「…チョコレートとシリアルバー。それに昨日のクッキー…これで全部だ」

「おお!すげぇ一杯あるじゃねえか!」

恭介(一応ね。…君に、供えてあげようかと、少し、思っていたから…)

恭介(…前は顔も見れず仕舞だったけど…今度は顔くらいみれないかな?)

恭介「…はい、君にあげよう」クルッ

杏子「へへ、サンキュ」スッ

恭介「…どういたしまして」

恭介(あれ?意外とすんなり…こういう場合、普通は顔見られるのを嫌がったりするもんじゃないのか?)

恭介「…」ジー

恭介(…あれ?)

杏子「いやー、最近ついてるなー。さっきのマミんとこのケーキもすげー旨かったし…ん?」

恭介「…」ジー

中沢『その心中した姉妹の、姉の方なんだけどよ?生きてればちょうど俺達くらいの年齢らしいんだが…』

杏子「な、なんだよ、そんなまじまじ見んなよ…」タジ…

恭介(生きていれば、ちょうど同い年ぐらい…)ジー

杏子「お、おいテメェ聞いてんのか…」

恭介「…」ジー

杏子「や、やめろよ…」モジモジ

恭介「…」ジー

杏子「…ば、ばかやろう///」

恭介「…君、生きてるよね?」

杏子「…はぁ?」

恭介「…いや、実は……」

恭介「…っていう噂があってだね…」

杏子「はぁああ?なんだそりゃ。ご覧のとおり、アタシはちゃんと生きてるっての!」ガツガツ

恭介「だよね。そんな健啖家の幽霊なんて聞いたこと無いし」

杏子「おう!全部うめぇしな。特にこのクッキー!!名のあるブランドの物に違いないね!」ガツガツ

恭介「偶々家にあったんだよ。僕には良くわからないな」

杏子「あんだ?お前、いいとこのお坊ちゃんか?」

恭介「その言い方はひっかかるなぁ…」

杏子「気にすんじゃねー。禿げるぞ?」ケラケラ

恭介「君ねぇ…」ハァ

恭介「けど、幽霊じゃなくて本当に安心したよ…」

杏子「なんだ?お前、男の癖に幽霊なんて怖いのかよ」

恭介「いや、そういう事じゃなくてね…」

杏子「あん?」

恭介「例の噂が本当の事じゃ無いっていうのなら、心中の話もでたらめなんだろう?」

杏子「…」

恭介「良かった…あんな悲しい話は、物語の中だけで十分だよ」

杏子「…そうだな」

恭介「ああ…本当に良かった」

杏子「…」

恭介「…どうしたの、君?」

杏子「…てい」ゴスッ

恭介「いてっ」

杏子「あははは!間抜け面しやがって、ぼーーっとしてんじゃねぇぞ?」

恭介「いたた。な、何するんだよ!人の顔をいきなりグーで殴るなんて」

杏子「べーっつにー」

恭介「なんだよそれ…」サスサス

杏子「あはははははははは!ごめんごめん!殴りやすそうな顔してるから、ついなんとなく!」

恭介「初対面の女の子に、なんとなくでいきなり殴られたのは初めてだ…いや、他にあってたまるか」ジトー

杏子「くっくっく」

恭介「…」

杏子「…」

恭介「…はぁ」

杏子「ププッ」

杏子「さて…そろそろアタシは帰るかな」

恭介「ああ、もうこんな時間か…そういえば君、どこに住んでいるんだい?」

杏子「ん? …あー……ああ。この近所のアパートさ。学校が実家から遠くてね。…一人暮らししてんだ」

恭介「ああ、もしかして昨日僕を襲ったのは、仕送りが尽きたからとか…?」

杏子「ん。まあそんなとこ…」

恭介「あははは!やっぱり!!」

杏子「わ、笑うなよ!……」

恭介「ごめんごめん。けど、もうこういう事は止めた方がいいよ。もし君に何かあってもご両親が悲しむしね」

杏子「…けどよ。飯が…」

恭介「じゃあ、僕が協力しようか?」

杏子「は?」

恭介「いつもって訳にはいかないけどさ。たまにおやつとか持ってきてあげるよ」

杏子「…いいのか?」

恭介「勿論」

杏子「でも、ワリーし…」

恭介「いいんだよ、僕はいいとこのお坊ちゃんらしいしね」

杏子「う…」

恭介「君には一度目なんて襲われて怪我までしているんだ。今更遠慮なんてされてもねぇ」クスクス

杏子「うぅー…」チジコマリ

恭介「それに君みたいな凶暴な子、放っておいてまた被害者が出ても寝覚めが悪いし…なんだか放っておけないんだ」

杏子「うるせえ!…フン。もう好きにしろよ」プイ

恭介「ああ。好きにさせてもらおうか」

杏子「…サンキュ」ボソ

恭介「ん?」

杏子「…ふん!」プイ

恭介「いつもって訳にはいかないけどさ。たまにおやつとか持ってきてあげるよ」

杏子「…いいのか?」

恭介「勿論」

杏子「でも、ワリーし…」

恭介「いいんだよ、僕はいいとこのお坊ちゃんらしいしね」

杏子「う…」

恭介「君には一度目なんて襲われて怪我までしているんだ。今更遠慮なんてされてもねぇ」クスクス

杏子「うぅー…」チジコマリ

恭介「それに君みたいな凶暴な子、放っておいてまた被害者が出ても寝覚めが悪いし…なんだか放っておけないんだ」

杏子「うるせえ!…フン。もう好きにしろよ」プイ

恭介「ああ。好きにさせてもらおうか」

杏子「…サンキュ」ボソ

恭介「ん?」

杏子「…ふん!」プイ

さやか「あ!居た!杏子だ!!」

まどか「上条君も居るよ!」

ほむら「まさか、また怪我させるつもりじゃ…!」

マミ「何か話しているみたいだけど、ここからじゃ遠くてなんて喋っているか分からないわ」

さやか「杏子!いくらアンタでも、今度恭介に手出したら、ただじゃおかないよ!」

まどか「急ごう!!」

ほむら「…待って。今、時を止めて盗聴器を仕掛けてきたわ。会話を確認してからでも遅くない」

さやか「なんでンなもん普通に持ってんのよアンタ…」

まどか(ほむらちゃん怖い…)

マミ「…確かに、佐倉さんが何をやってるかとか、その意図とか、掴めるかもね。せっかくだし少し聴いてみましょうか」

恭介「それじゃあ、今度来る時は連絡するよ。携帯の番号と、メールアドレスを教えてくれないかな?あ、自己紹介が遅れたね。僕は、上条恭介っていうんだけど…」

杏子「…携帯持ってねぇ」

恭介「あらら」

杏子「…」

恭介「…まあ、まだ中学生だしね。けど、離れて暮らしているならご両親との連絡にも必要だろうに…」

杏子「…いいじゃねぇかよ、別に。勝手に人様の家庭の事情、詮索すんな」

恭介「そうだね。ごめん…」

杏子「…」

恭介「あ、じゃあさ。待ち合わせにするのはどうだろう?集合時間を決めてさ」

杏子「…好きにしろよ」

恭介「僕は土日以外、バイオリンの教室に通っていてね。放課後は学校から直接行くんだけど、帰りはこの道を必ず通るんだ。教室のある日は、このぐらいの時間になら会えるはずだ」

杏子「…アタシは、適当だ」

恭介「それじゃあ待ち合わせにならないよ。じゃあ、別れる時は必ず次にあ会う日を決めておくって言うのはどうだい?」

杏子「…わかった」

恭介「なら、明日、この時間に会えるかな?」

杏子「いいぜ」

恭介「じゃあ、今日はこれで」

杏子「…送ってってやろうか?」

恭介「何を言っているんだい。ボクはこう見えても男だよ?」

杏子「けど、アタシよりよわっちいしなぁ。昨日も一発で気絶してたし」ニヤニヤ

恭介「う…って、全然反省してないな!?君!!」

杏子「あはははは!うりうり」グリグリ

恭介「うわ!ほっぺグリグリしないでよ!もうっ!」

さやか「」ブツブツブツ

まどか「さやかちゃん!?おーい!さやかちゃーん!!」ヒラヒラ

マミ「…気付かれる前にすみやかに撤退」

ほむら「了解。…正直申し訳なかったと思ってるわ」

まどか「マミさん大変!さやかちゃんが息してないの!」

ほむら「口から何か出てるわ」

さやか「…」<オクタビア「コニチワ」

ほむら「…」グイグイ

さやか「…」<オクタビア「ナ、ナニヲスルテンコウセイ!アー」

さやか「…」キュポン

ほむら「…ふう」

マミ「…ありのまま、今起こったことを話すわ。佐倉さんが美樹さんの想い人に手を出す(物理)のを防ぎに行ったら、逆に佐倉さんが手を出されていた(ラブコメ)」

まどか「しかも杏子ちゃんもまんざらでもなさそうだし…」

ほむら「上条恭介自身にその自覚があるのかどうかが最大の問題ね…」

さやか「…」ブツブツブツ

ほむら「…」サクッ

さやか(頭にグリーフシード)「…」ブツブツブツ

まどか「さやかちゃん、血出てるよ…」

ほむら「…2秒でグリーフシードが真っ黒だわ」

マミ「とにかく、一旦家に帰りましょう…」

まどか「行・く・よ!さやかちゃん!」ズルズル

さやか「…」ブツブツブツ

見滝原市七不思議その4
驚愕!少女霊のトーテムポール

とあるサラリーマン(49)の証言
「ええ。私、見たんです。仕事帰りにね?こう、夜道を歩いていたんです。そしたら、中学生くらいの女の子と男の子が仲良さそうお喋りしてて…

 『微笑ましいな』なんて思って遠めに見てたんですわ。いや、我ながら怪しかったとは思いますが(笑)

 …で、若かりし頃を思い出しちゃったりなんかしてね?なんかこっちまで青春時代に戻ったような気にさせてもらって、『よし気分良く帰ろう』

 なんて思って帰り道のほうを向いた時にね…気づいちゃうんですよ。向こう側の壁に4人の女の子の生首が、まるでトーテムポールみたいに並んでるのを。
 
 上から順に、彼等のほうを恨みがましそう~な目で見てる女の子、生暖か~い目で見てる女の子、その下の子は一番上の子を心配そうに見ていて、

 一番下の子はどうでも良さそうな顔をしてましたね…。おそらく、彼女等は想い半ばにして亡くなってしまった少女霊の集合体なんでしょう。

 下級の悪霊ってのは、同じ境遇の霊を集めて融合し、その力を増すなんて事もあるらしいですから。

 きっと、あの時は一番上の子の想い人が、あの男の子に似ているとか、そういった事だったんでしょうな。怨念が凄かった。…いや、良くは知りませんけど(笑)

 え?その後?さあ。私は彼等に気づいてから一目散に会社に逃げ帰りましたからね。お陰で見て下さい。スーツもこの通りよれよれで…」

マミさんち

さやか「これは由々しき事態である!!」バン!!

キュウべえ(ピザポテト)「どうしたんだい、帰ってきたと思ったら急に…」

マミ「それがね…」ヒソヒソ

キュウべえ(ピザポテト)「うわぁ…」

さやか「そこ!私語は慎む!!」ビシッ

まどか「…」

ほむら「…で、どうするつもりなのよ、これ。どう収拾つければいいのよ」

さやか「そ、それは…」

まどか「それは?」

さやか「あの、皆さん、何か良いアイディアはございませんでしょうか…」オタオタ

まどか(さやかちゃん、弱ッ!)

マミ(この子は…)ハァ

ほむら(そりゃ、志筑仁美やら杏子にも負けるわ)ハァ

さやか「うわーーーーん!恭介が杏子に取られちゃうよーーー!まどかーー!マミさーーーん!!」ガバッ

マミ「おー。よしよし」ナデナデ

さやか「うわーーーーーーーん!!」モミモミ

マミ「きゃっ!?」

さやか「うわーーーーーーーーーーん!!」モミモミサスサス

マミ「ちょ、ちょっと美樹さ!やめ……ぁん……」

まどか「あー!さやかちゃんいいないいなー!」モミモミ

マミ「ちょ、鹿目さんまでそんなとこ……いやぁ…」

さやか「うわーーーーーん。まどかーーーーー!!」ナデナデ

まどか「ぁん。さやかちゃんってば…」

さやか「…まどか、またちょっと大きくなった?」

まどか「…ちょっと///」

ほむら「…ふんっ!!」グシャ

キュウべえ「ああ!また!!」

ほむら(何故私の名前は呼ばなかったのかしら?美樹さやか…!)ゴゴゴゴ

キュウべえ(宮崎産マンゴー)「…で、今度はどうしたいんだい…」

さやか「…恭介と付き合いたい。杏子に負けたくない」

キュウべえ(宮崎産マンゴー)「それが今の君の願いか。まあ、もう契約済みだから、願いを叶えてはあげられないけどね」

さやか「いいもん。実力で勝負してやるもん。女の子として、杏子にだけは負けたくないんだもん。告白くらいしてみせるもん…」

まどか「!」

まどか(あのさやかちゃんが、素直に自分の気持ちを言った!?)

ほむら「…まどか?」

まどか「馬鹿で意地っ張りでガサツで能天気でその癖臆病でいっつも空回りばかりしてて
    素直に上条君の事を好きって言えないへそ曲がりのさやかちゃんが、上条君への思いを素直に口にした!!?しかも、告白!!!?」

マミ「うわぉ辛辣…」

ほむら「相当ストレス溜まってたのね…」

まどか「やったねさやかちゃん!私、さやかちゃんは幼馴染っていう特権を有効に使えないどころかその席に満足したままあぐらをかいてる間に
    あっさり他の子に掻っ攫われるものだとばかり思ってたけど、さやかちゃんがその気になったならペットボトルのキャップ一杯の水分くらいの
    可能性は出てくるはずだよ!私、応援するよ!頑張れさやかちゃん!きっとなんとかなるよ!!
    仮に駄目だったとしても、一晩中自棄ジュース付き合ってあげるから大丈夫!勿論私の奢りだよ!
    あ、でも告白は来月以降にしてね?その間にパパとママに残念会の時の、私の家の使用許可貰って、おこずかい溜めておくから!」

さやか「…」

まどか「頑張れ頑張れさやかちゃん!負けるな負けるなさやかちゃん!…あ、ごめん。負けるな、はちょっと難しいかも」

ほむら「まどかが止まらないわ。っていうか、玉砕前提で語ってない?」

マミ「よっぽど思うところがあったみたいだわ」

まどか「えっと、こういう場合は、何て言えばいいのかな?…あ!そうだ!大丈夫。振られたって、そこから得られるものはきっといっぱいあるはず…」

さやか「…」ポカッ

まどか(たんこぶ)「ごめん」

さやか「…」ポカッ

まどか(たんこぶ×2)「ごめん」

さやか「…」ポカッ

まどか(たんこぶ×3)「ごめん」

さやか「…」ググッ(さやかは 力を ためている)

ほむら「お、落ち着きなさい!さやか!」ガシッ

さやか「離せ!ほむら!こいつ…こいつだけは!!」ジタバタ

マミ「大丈夫?鹿目さん」ナデナデ

まどか「いたい」サスサス

さやか「むっきー!!」ジタバタ

ほむら「い、いい加減に許してあげて…」オロオロ

マミ「…鹿目さん殴られて、怒らないの?」

ほむら「い、いや、流石に今のは……」

まどか「さやかちゃん、痛いよ!何するのさ!!」

ほむら「そこで貴女が怒るの!?まどか!!」ガビーン!

さやか「まさかアンタにそんな風に思われてたなんてね…。どうやら、杏子の前に、アンタとの決着をつけなくちゃいけないみたいだ」ユラァー

まどか「…!受けて立つよ…!」ギュッ

ほむら「ええぇぇえ…」

マミ「ふ、二人とも、穏便に…ね?」

さやか「止めないで下さい、マミさん!」

まどか「これは、私達には必要な対決なんです!」

マミ「訳が分からないわ…」

ほむら「ちょっと。何とかしなさいよ、無駄に高級品。味の割りに高すぎるのよ」

キュウべえ(宮崎産マンゴー)「それは些か暴言が過ぎるんじゃないのかい?」

さやか「まどかぁぁぁぁぁぁ!!!!」ヘンシン!

まどか「さやかちゃぁぁぁん!!!!」ヘンシン!

まどさや「「いざ、尋常に!」」

マミ「ちょっと、本当に!?」

ほむら「洒落にならないわよ!」

まどさや「「マリカーで勝負!!」」

ほむら「…あ、私も混ぜて」

マミ「…もうとことんやんなさいな」ハァ

夜明け前

カチャカチャ

まどか「…」ボー

さやか「…」ボー

ほむら「…」ウツラウツラ

マミ「…貴女達、そう言えば親御さんには連絡したの?」

まどか「あ…!」ビクッ

さやか「ふふふ。かかったなまどか…これぞ美樹流必殺マリカー地獄。ママにこってり絞られるが良いわ…」

まどか(青)「さやかちゃん、何て恐ろしい事を!」サー

さやか「ふはは。どうした、まどか。顔色が私の髪より青くなったぞ?その点私は今日は最初から泊めて貰うつもりで両親にも連絡済みだしー?」

マミ「初耳なんだけど…」

ほむら「まあ、ここまで来たらもう同じ様なものね…」

キュウべえ(宮崎産マンゴー)「ねえみんな、見てよ。もう日が昇るよ?」


ほむら「…うるさいわね。日が昇ったからなんだってのよ」

キュウべえ(宮崎産マンゴー)「知らないのかい?ほむら」

ほむら「?」

キュウべえ(宮崎産マンゴー)「夜が明ける」キリッ

ほむら「…」グシャ

キュウべえ「ああ!酷いよほむら!!」

マミ「…今日はもう解散にしましょう。みんな、次は学校でね?」


まどか達の教室

さやか「おはよう」

まどか「おはよう…」

ほむら「おはよう」

さやか「まどか、帰った後どうだった?」

まどか「思い出させないで…」ブルブル

さやか「すまん…」

ほむら「それより貴女、昨日言った事、忘れてないわよね?」

まどか「告白…」

さやか「もちろん!…ねぇ、悪いんだけど、協力してくれない…かな?」

まどか「当たり前でしょ!杏子ちゃんには悪いけど、さやかちゃんがその気になったなら、私はさやかちゃんの味方だよ!」

ほむら「まあ、まどかが貴女の味方をするのなら…」

さやか「ありがとう二人とも。…昼休み、作戦会議だ!」

昼休み
マミの机の前

マミ「…で、今に至ると。…なんでみんな、自然に私の机の前に来るかなぁ」

ほむら(嬉しい癖に)

さやか「…マミさん、私どうすればいいのかな?」

マミ「そうねー。私も恋愛経験なんて無いに等しいけれど…まずは、自分の強み…つまり、その上条君って子へのアピールポイントになるところを挙げてみない?」

さやか「私の強み…」

ほむら「太ももがえろいとか。目の前で無駄にスカートめくってみればいいと思うわ」

マミ「そういうのはいいから…」ハァ

さやか「お前協力する気あんまないだろ」

まどか「…やっぱり、幼馴染って所かな?」

さやか「うん…」

マミ「美樹さんは、彼の好みとか知らないの?」

さやか「うーん…実は、最近はあんまりそういう話しないし、昔から一貫して音楽馬鹿って事くらいしか…」

ほむら「駄目な子ねぇ」

さやか「うるさいやい」

まどか「そういえば、さやかちゃんも相当クラシックの知識はあるよね?」

マミ「そうなの?」

さやか「…ん。まあ、聞く専門だけどね」

まどか「でも、かっこいいよね。クラシックの良さがわかる女の子!」

さやか「えへへ…」

ほむら「意外だわ…心底意外」オエッ

さやか「アンタさっきから随分と…」

マミ「まあまあ」

まどか「やっぱり、趣味の合う女ってとこから攻めていくのは、有りだと思うんだ」

ほむら「そうね。話しが合わないよりは合った方が、一緒に居て心地も良いでしょうし」

マミ「つまり、クラシックの話題で盛り上がったところでアピール!…とか?」

さやか「それだといつも通りにしかならないような…」

まどか「じゃあ、ムードを演出して…」

ほむら「なら、クラシックをかけた中での告白とか…」

さやか「あ、それちょっといいかも」

まどか「確か、音楽室にクラシックのCDいっぱいあったよね!?」

ほむら「なら、それを放送室でかけるわ。放課後にクラシック曲が1曲流れるくらい、誰も気にしないでしょう?」ファサァ

まどか「放課後、喧騒に溢れた校舎に静かに流れるクラシック。誰も気に留める事がないその優しい旋律は、実はある一つの長年の恋の結実を告げるBGMだった!」

マミ「青春って感じねぇ…確かに、偶に放課後に音楽をかける放送委員もいるし、誰かの気まぐれ程度にしか感じないかもね」

まどか「タイミングは私達で合わせればいいよね。念話で連絡をとれば声を出す必要もないし!」

ほむら「曲はどうする?」

まどか「さやかちゃんが決めてよ」

ほむら「幼馴染なんでしょ?思い出の一曲とか、そういったのは無い?」

さやか「あ、それなら…」

さやか「…アヴェ・マリア。…恭介が腕治った時、私の目の前で演奏してくれた曲……」

まどか「どんな曲?」

さやか「綺麗な曲だよ…そんなに長い曲じゃないけど、凄く純粋な祈りが込められた、優しい曲」

マミ「誰の曲?」

ほむら「ああ、確かベートーベンの…」

まどか「へー」

さやか「バッハ・グノー版のだよ。一応言っておくけど、アヴェ・マリアはいっぱいあるから。
    それにベートーベンは作ってないし、3大アヴェ・マリアはこれとシューベルトと、カッチーニね」

ほむら「…」

まどか「ほむらちゃん、なんで知ったかぶったの…」

さやか「いや、クラシックったらなんでもベートーベンとかバッハじゃ、通じんぞ?流石に」

ほむら「……格好付けたかったのよ。まどかの前で」ファサァ

まどか「祈りって?」

ほむら(スルー!?)

さやか「ああ、それは…」

マミ「受胎告知。つまりマリアがイエスを身ごもった時、大天使ガブリエルがマリアを訪ね、祝福を与えた際に告げた一節が『Ave Maria』…
   直訳すれば『おめでとう、マリア』あるいは『こんにちは、マリア』だけれど、
   ここでは聖母に主の加護を与え、これからの貴女の人生が幸に満ちたものであるようにという祈りが込められている言葉よ。
   さしずめ『マリアに幸あれ』ってところかしら。その歌詞は天使祝詞とも言われ、世界中で愛される美しい曲だわ。素敵ね…」

ほむら(…急に饒舌になったわ)

さやか(今まで特にクラシックに詳しいそぶりも見せた事なかったのに、何がマミさんの琴線に触れたんだろう)

まどか(マミさんはやっぱり物知りだなぁ…)ソンケー

マミ「ふふ…」ドヤッ!!

ほむら「話をまとめるわ。1.放課後に音楽室に呼び出す 2.適当に話をして雰囲気を作る 3.途中でアヴェ・マリアを放送するから、
    その中で告白 4.成功したらエンダーを流してあげる」

る」マミ「最後、余計な事しない!」

さやか「ちょ、2番!適当にって、何を話せばいいのさ!?」

ほむら「話題くらい貴女が全部考えなさい。今後彼と付き合えたとして、その時も今みたいに私達に何を話題にするか聞くつもり?」

さやか「う…」タジ

まどか「早速放課後に告白だー!」

さやか「えええ!けど、まだ早いっていうか、もっとその、あの…心の準備が…」アセアセ

ほむら「例え杏子がいなくても、そうやってずっと逃げてるうちに本当に誰かに取られるわよ?」

さやか「…」

マミ「…美樹さん、どうする?」

さやか「…わかった。や

>>105最後、コピペが上手くいかなかっただけです
×さやか「…わかった。や → ○さやか「…わかった。やる」

放課後
二人しか居ない音楽室

恭介「どうしたの?さやか。こんなところに呼び出したりして…」

さやか「…あ、うん。ちょっとね…」

恭介「…?まあいいけど、すまないが、今日もバイオリンのレッスンなんだけど…」

さやか「分かってる。時間は取らせないから…」

恭介「そう?」

さやか「うん…」

恭介「…?」

さやか「…!あ、あのさ!」ギュッ

恭介「…!」

室内放送「~~♪」

恭介「…この曲は…!」

さやか「…あのさ、恭介。覚えてる?この曲…」

恭介「アヴェ・マリア…」

さやか「アンタの腕が治って、初めてアタシにって、弾いてくれた曲…」ジッ

恭介「さや、か?」

さやか「ねぇ…覚えてる……?答えて…」(上目遣い)

恭介「……勿論、覚えてるよ。他ならぬ親友の君の為に弾いた曲なんだ。忘れるはずが無い」

さやか「…恭介、あのさ」

恭介「…?」

さやか「本当に、それだけ?」

恭介「…」

さやか「本当に、私達って、親友って、だけかな…?」

恭介「さやか…?」

さやか「ねえ、私達って、親友にしか、なれない?」

さやか「…恭介は私の事、一人の女の子として、見てはくれないの……?」

恭介「…さや、か……?」

さやか「私もさ。アンタの事、親友だと思ってた…」

さやか「けど、いつの日か、それだけじゃ我慢出来なくなっちゃったんだ」

さやか「私、恭介の事が好き…」

恭介「さやか…。ありがとう。僕も、君の事が…」



さやか「こ、こんな感じで…」テレテレ

マミ「あら、なかなか」

ほむら「悪くは無いかもね。…最後のはどうかと思うけど」

まどか(あれ?何か嫌な予感が…?)ブルッ

放課後
音楽室(現実)

まどか『結局不安から先回りして潜伏してしまった…』

マミ『美樹さんには申し訳ないけど…心配だしね』

まどか『まあ、こうして同じ部屋に隠れていれば、音楽をかけるタイミングは完璧ですよね』

マミ『そうね。今回の任務、決して失敗は許されないわ』

まどか『さやかちゃん、大丈夫ですかね?』

マミ『大丈夫。ここまで来たら美樹さんを信じましょう?』

まどか『でも、不安ですよぅ…』

マミ『もう!貴女がそんな事でどうするの!』

まどか『…それもそうですね。よし!ほむらちゃん、そっちはどう?』

ほむら『スタンバイ完了よ。放送室には誰も居ない。件のCDは、今私の手の中よ』

まどか『よーし、じゃあ、あとはさやかちゃんが上条君を連れてきたら…』

マミ『鹿目さんが、暁美さんに今みたいに念話で合図を送る…と』

ほむら『完璧な作戦だわ』

ガラッ

まどマミ『来た!』

恭介「どうしたの?さやか。こんなところに呼び出したりして…」

さやか「…あ、うん。ちょっとね…」

恭介「…?まあいいや。すまないが、今日もバイオリンのレッスンなんだけど…」

さやか「分かってる。時間は取らせないから…」

恭介「そう?」

さやか「うん…」

恭介「…?」

さやか「…」モジモジ

恭介「…」

さやか「…えっと……」モジモジ

恭介「さやか?」

さやか「あー…うー…」ウダウダ

まどか(頑張れ、さやかちゃん!!)ギュッ

マミ(青春だわぁ…)ワクワク

さやか「…そういえば、恭介と二人っきりになるの、久しぶりだね」

恭介「! あ、ああ。そういえば、退院してからはこうして二人で話すのは初めてかもしれないね」

さやか「…ねえ、お見舞い、うっとおしかったかな?」

恭介「とんでもない!…確かにさやかに辛く当たった事もあったけど。
   あれは、僕の精神状態が悪かっただけで!本当はどれだけ君の元気に救われていた事か…。その、あの時は、ごめん。反省してる…」

さやか「…ありがと」

恭介「…僕の方こそ。こうして今僕が元気にヴァイオリンを弾いていられるのも、もしかしたら君が励まし続けてくれていたたからこそかもしれない」

さやか「…左手、治って良かったね…」

恭介「ああ。本当に良かった。医者にも絶望的と言われていたから、もう諦めかけていたのに、急に回復するなんて…」

さやか「だから言ったでしょ?奇跡も魔法もあるって。諦めなければ、絶対に良い事はあるんだよ」

恭介「そうだね。本当に、さやかの言うとおりだったよ」

さやか「…ふふっ」

恭介「?」

まどマミ(ほっ)

恭介「…で、用事って?」

さやか「…えっと……」モジモジ

恭介「さやか?」

さやか「あー…」

さやか「そのぉーーーー…」モジモジ

さやか(ええい!覚悟を決めろ、美樹さやか!!女は度胸!当たって砕けろだ!!)

さやか「すーーーーー…」

さやか「はーーーーーーーー…」

さやか「…」キッ

さやか「…!あ、あのさ!」ギュッ

恭介「…!」ドキン

マミ(美樹さんが行った!)

まどか(さやかちゃんが左手を掴んだ!いい感じ!!よし…!!)

まどか『今だよ、ほむらちゃん!』

ほむら『了解』

室内放送「カチッ」

さやか(来た!室内放送に繋がった音!)

さやか(行くぞさやか!!曲が3小節流れたら…言うぞ!!)

~~♪

恭介「…ん?この曲は…!」

さやか「…?」

恭介「ま、まさか…!」

放送室

ほむら「はい、再生完了」カチ

ほむら「…楽な仕事だったわ」

ほむら「…あら、聞こえない?…ああ、放送室自体の音楽は切ってあるのね。放送中に打ち合わせとかするためかしら?」

ほむら「…まあ、再生はされているようだし、いいわ。後は貴女次第よ?美樹さやか。私はここで少しゆっくりしていくから」コトッ

アヴェ・マリアのCD『』


恭介「この曲は、スタン・ハンセンのテーマ!!」

さやか「…えー……」

ttp://www.youtube.com/watch?v=7bkpW17k--Q&feature=related

デケデーデケデーー♪デーデッデデー♪

恭介「…えっと、さやか?これは、どういった状況なのかな…?」

さやか(し、知るかーーー!むしろ私が教えて欲しいわーーー!!)

さやか「え…えーーっと…その…」キョロキョロ

まどか(さやかちゃん!ここは一旦状況を立て直そう!撤退!撤退!!)クイックイッ

さやか「!」

さやか(まどか!?いつのまに…!)

まどか(作戦は失敗!繰り返す!作戦はしっぱいー!)パクパク

さやか(…まどかが。親友のまどかが、行けって言ってる!)

さやか(…そうだよね。ちょっと予定は狂ったけれど、皆が折角お膳立てしてくれたんだ!!頑張るしかない!!)

さやか「あの…!恭介!!」

恭介「なんだい?」

まどか(なんでそこで無駄に勇気を振り絞るのさーーーーーー!!)ジタバタ

さやか「私、実は、アンタの事が…!」

恭介「うん」

さやか「その…」

さやか「すき…」

さやか「…」

恭介「…さやか?」

さやか「…ふ」

恭介「ふ?」

さやか「ふははははーーーー!!!!隙だらけだぞ、恭介ーーーー!!」グイッ

恭介「いたたた」

さやか「どうだーさやかちゃん必殺アームロックは痛かろーー!!」

まどか(ここに来てやっぱり逃げたーーーーーーー!!!)

恭介「何がしたいんださやか…」

さやか「ふはははは」ギュッギュッ

恭介「ギブギブ」パシパシ

さやか「ふはははは!ふははははは!!さやかちゃん大勝利なのだーーー!!」ギューーーーッ

さやか(何がしたいかなんて、そんなの私が聞きたいです…)

恭介(何か柔らかいものが当たって…。…さやかってやっぱり女の子なんだ。…っていうか、意外と胸あるんだな…)ドキドキ

さやか(な、なんなのよ、この血沸き肉踊る音楽は~!くそっ!誰だ演出家!)グイグイ

恭介(う、うう…押し付けないでよ、さやか。…や、やばい。こんな状況で、ドキドキが止まらない…)

ほむら「」シュンッ

まどか『…おかえり、ほむらちゃん』

ほむら『危ない危ない、危うく美樹さやかの告白シーンを見逃すところだったわ。まどか、状況はどう…って、この音楽…』

ほむら(しまったーー!間違えたーーーーーー!!)

ほむら『…じゃ、じゃあ、私はこれで…』コソコソ

さやか(お前かーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!)

さやか「わははははーーーー!!」ギュウギュウ

さやか(ちくしょーーーー!ほむらに心の中でツッコミ入れてたせいで、技の解き時も失ったーーーー!)

恭介「ちょ、さやか、そろそろ離して…」ドッキンドッキン

さやか(こうなったら…)

さやか『マミさん!マミさん!!助けて!!』

マミ『うえっ!?わ、ワタシ!?』ビクッ!!

さやか『もう頼れるのはマミさんしかいないんです!この状況から、せめて恭介の印象をプラマイゼロで終わらせるための知恵を授けてください!』

マミ『…ごめんなさい、私の手には余るわ。どうすれば丸く収まるのか、全く思いつかないの…』

さやか『そこを何とか!!(涙声)』

マミ『うう…』

さやか「ははははははーーーー(乾いた笑い)」ギュー

恭介「さやか、その…む、胸が…当たってる…から…」ゴニョゴニョ

さやか「ふぅーははははははっはあ!!!!」(聞いてない)

まどか『さやかちゃん…』ホロリ

マミ「…」

マミ『鹿目さん、後は頼むわ』

まどか『え、マミさん…?』

マミ『…ねえ、鹿目さん…』

まどか『はい?』

マミ『もし…もし、例えばよ?…私がテキサスの暴れ馬でも、友達で居てくれる?』

まどか『…!』

まどか『…もちろんです!例えテキサスの暴れ馬だろうと!ブレーキの壊れたダンプカーだろうと…!』

マミ「…」

マミ「ありがとう…」

マミ(待ってて美樹さん。今、助けるわ…!)キッ

マミ「テキサーーーーーース!!!!!!」ガラッ!!

まどさやほむ恭介「「「「!!!?」」」」

マミ「…」ズンズン

さやか「え、えっと・・・マミさ…ん?」

恭介(この人、3年の巴先輩…?)

マミ「…」グルグル

さやか「え…」

恭介「腕を回してる…いけない!さやか、その体勢は…!」

マミ「ティロォォォォッ!!!!」ドゴォ

さやか「オバシ!!?」

恭介「さやか!?」

マミ「…」

さやか「」ガクリ

恭介「…えーっと…」

マミ「…」クルリ

恭介(こっちに来る…!)

恭介「あの、巴せんぱ…」タジ

マミ「イチバーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!」ドゴォ

恭介「リキッ!!?」

恭介「」ドサリ

マミ「…」

マミ「…」ヒョイ

さやか「」グッタリ

マミ「…撤退」イソイソ

見滝原市七不思議その5

なんかもう色々とあれなJC
その昔、見滝原中学校には、色んな意味であれでそれでこれな女子生徒がいました。長い月日が経つ中でその女子生徒はやがて伝説と化し、
今では、学校には放課後に放送室でスタン・ハンセンのテーマを流して音楽室に行くと、1/2の確率で巨乳の金髪女子にラリアットで気絶させられ、お持ち帰りされるという学校の怪談(?)扱いです。
知らぬは本人ばかりなり。…ちなみに今現在、放課後にスタン・ハンセンは、すっかりこの学校の定番です。

恭介「」シーーーン

まどほむ「…」

ほむら「…それじゃあ、私たちも帰り「ほむらちゃん?」」

ほむら「…」

1時間後
マミさんち

ほむら「…」(正座)

まどか「…」

ほむら「…」

まどか「…」

さやか「ぐしぐしぐし」

マミ「…」ナデナデナデ

ほむら「あの…」

まどか「黙れ」

ほむら「…」

さやか「ぐしぐしぐし」

マミ「……」ナデナデナデ

まどか「ねえ、ほむらちゃんさぁ…」

ほむら「…」

まどか「…黙ってないで何とか言ったらどうなの?」

ほむら「え…」

まどか「返事」

ほむら「さ、sir!!」

まどか「何それ…気持ち悪い」ハッ

ほむら「…」チジコマリ

ほむら(泣きたい)

まどか「ほんと、ほむらちゃんって使えないよね…」

ほむら「面目ありません…」

まどか「まさか、友人の告白シーンにスタン・ハンセンって…大仁田や猪木でも考え付かないよ、そんなの」ハッ

ほむら「返す言葉もございません…」

まどか「まあ、別に誰もほむらちゃんにチンパンジーやオウムみたく高度な事は期待なんてしてないけど?あれくらいちゃんとこなして欲しかったなぁ。
    私はむしろ、あの場面で安易にウィー!!!ってラリアットにいかなかったかったさやかちゃんとマミさんを褒めてあげたいね」

ほむら「…申し訳ございません」

まどか「ねぇ…ほむらちゃん?そうやって謝ってばかりいるけど、相手が違うんじゃない?私に謝っても、私は何を謝られてるのかわかんないよ?」

ほむら「おっしゃるとおりです…」

まどか「ほむらちゃんはさ、昔から想いを寄せていた幼馴染への、一世一代の告白のBGMに爆勝宣言かけられたら、どう思う?
    パワーホールかけられたら、どう思う?猪木のテーマかけられて、ボンバイエー出来る?」

ほむら「ううう…」

まどか「もういいよ。ほむらちゃんなんて、将来愛する存在が出来て、お互いにいい雰囲気になったら
    どこからともなく藤波が歌うマッチョドラゴンが聞こえてくる呪いにかかっちゃえ」

ほむら「そんな…!それだけは…!!」

まどか「何?それとも滑舌を長州力にする?」

ほむら「…」

まどか「はい決定。ねぇキュウべえ。私の願い事って、魔法少女になる時に保留してもらってたよね?これにするから」

キュウべえ(北見タマネギ)「はいはい。了解」

マミ「そんな事出来たの!?」

キュウべえ(北見タマネギ)「まどかくらいの大口物件になるとね。多少の融通は本社の方も許可してくれるのさ」

マミ「そうなんだ…」

マミ(本社?)

ほむら「まどか!後生だから止め…!」

まどか「知らない」プイッ

見滝原市都市伝説その6
黒き翼の魔法少女

此処とは違う次元、遠い未来
力無き人々が世界の悪意の結晶たる魔獣に命奪われんとする時
柔らかな風を纏い現れ、立ち込める暗雲の如き絶望を切り裂く少女の伝説があった
禍々しき悪魔の如き黒き翼を空に広げ、地に慈愛を齎すこの名も知れぬ天使の様な少女を、いつしか人は知り、魔法少女と呼び、愛し始める

うら若き乙女の儚さと全てを包む聖母の如き優しさを得た少女は、誰よりも優しく在り、この世界を愛す。草も、木も、動物も、人も…
この世界が残酷で救いの無いものであると知りながら、それでも世界のありとあらゆる存在を愛した大切な友が守り、望んだこの世界を…救うために

遠き日の友との想いを胸に、人ならざる少女は生き続ける
この世界が終わる、その瞬間まで…

そしてその周囲には、まるで清らかな乙女の傍らで羽根を休め、さえずる小鳥達の歌声のように
マッチョドラゴンを高らかに謳う炎の飛龍の声(滑舌悪し)がリピートで響き渡っていたという

ttp://www.youtube.com/watch?v=bGT3EdTuBco&feature=related

リボほむ「しかもPV付き!?」ガーン!!

閑話休題

さやか「…そろそろ恭介のレッスンが終わる時間だ…」

マミ「美樹さん…もう、大丈夫?」

さやか「…はい。ありがとうございます。…まどかも、そろそろ許してあげて」

まどか「さやかちゃんがそう言うなら…100年間の期間限定にしてあげる」

マミ「それって、一生ものよね!?」

ほむら「さやかぁ…!」ウルウル

マミ「感謝してるし…」

さやか「それより、杏子だよ…」

まどか「…今日も会うって言ってたよね」

ほむら「どうするの?」

さやか「決まってる。敵情視察だ!…ただし、これは極秘任務である。決して見つかることの無いよう…」

マミ「要は覗き見ね」

ほむら「絶対後悔すると思うけど…」

まどか「いいのかなー」

杏子「…」ブラブラ

恭介「やあ」

杏子「…よう」

恭介「良かった。ちゃんと来てくれたんだね」

杏子「てめーが来いっつったんじゃねーかよ」

恭介「ああ、そうだったね…」ニコッ

杏子「…ちぇ、調子狂うなあ…」ボソッ

恭介「ん?」

杏子「けっ」プイッ

恭介「あはは…」

恭介「はい。カップ麺数点に、ジュースに、箱入りお菓子。それと暑いから、そこのコンビニでアイス買って来たよ」

杏子「おお!スッゲーじゃん!特に菓子!こんなにどうしたんだ?」

恭介「ああ。ちょっと前まで僕、入院してたんだ。で、知人がお見舞いの時にしょっちゅうお土産を持ってきてくれてたから。その余りものさ」

杏子「…」

恭介「ん?ああ、気にしないで。もう完治してるから」ニコッ

杏子「…ふーーーん。何で入院してたんだ?」

恭介「…左腕を、ね。怪我しちゃって。重症だったんだ。医者には、奇跡か魔法でも無い限り完治は難しいだろうって…」

杏子「…。そうなんだ?とてもそんな風には見えないけどさ…」

恭介「そうだよね…それが実は、治ったのは本当に突然だったんだ。急に手が動くようになって、それからすぐに回復していって…
   あれよあれよという間に復学出来てしまった。諦めかけていたヴァイオリンもまた弾けるようになったんだ」

杏子「…ん?」

杏子(どっかで聞いたような話な気が…)

恭介「どうしたの?」

杏子「いや…」

杏子(なんだったっけかな…まあいいや。思い出せないってことは、別にどーでも良い事なんだろ。…多分)

恭介「はい。カップ麺数点に、ジュースに、箱入りお菓子。それと暑いから、そこのコンビニでアイス買って来たよ」

杏子「おお!スッゲーじゃん!特に菓子!こんなにどうしたんだ?」

恭介「ああ。ちょっと前まで僕、入院してたんだ。で、知人がお見舞いの時にしょっちゅうお土産を持ってきてくれてたから。その余りものさ」

杏子「…」

恭介「ん?ああ、気にしないで。もう完治してるから」ニコッ

杏子「…ふーーーん。何で入院してたんだ?」

恭介「…左腕を、ね。怪我しちゃって。重症だったんだ。医者には、奇跡か魔法でも無い限り完治は難しいだろうって…」

杏子「…。そうなんだ?とてもそんな風には見えないけどさ…」

恭介「そうだよね…それが実は、治ったのは本当に突然だったんだ。急に手が動くようになって、それからすぐに回復していって…
   あれよあれよという間に復学出来てしまった。諦めかけていたヴァイオリンもまた弾けるようになったんだ」

杏子「…ん?」

杏子(どっかで聞いたような話な気が…)

恭介「どうしたの?」

杏子「いや…」

杏子(なんだったっけかな…まあいいや。思い出せないってことは、別にどーでも良い事なんだろ。…多分)

恭介「アイス溶けちゃうから、食べちゃわない?」

杏子「うん。そうだね…って、なんだ、お前、自分の分も買ったのか」

恭介「いいだろ?ご一緒させて貰うよ」

杏子「ま、かまわねーけど」パクッ

杏子「モグモグ…ゴクン」

杏子「おかわり」

恭介「…はい。もうちょっと味わって食べて欲しいんだけど」ポン

杏子「わーかったよ。…さんきゅ」ヒョイ

恭介「パク」

杏子「パク」

恭介「…」モグモグ

杏子「…」モグモグ

杏子(ほんと、調子狂うっての…)

恭介「今日も暑かったから、アイスが美味しいね」

杏子「…ん。そーだね」モグモグ

恭介「って、もう半分以上食べたのか!早いな」

杏子「そうか?普通だって」

恭介「駄目だよ、そんなに急いで食べたらおなか壊すよ?」

杏子「うるせーよお節介焼きめ」

恭介「そりゃ、君みたいな子にはお節介も焼きたくなるよ…」

杏子「ガキ扱いすんなっての…」

恭介「ごめんごめん。けど、手のかかる妹が出来たみたいで…」

杏子「なんだと~?」ガシッ

恭介「いたたたた。ごめんごめん」パシパシ

杏子「へっへっへーそう簡単に許してやんねーよ!」グリグリ

恭介「イタッ!ちょっと、ヘッドロックだけならまだしも、グリグリは本当に痛いから止めてよ!」

杏子「うるせー。調子こいた罰だ!」グリグリ

恭介「うわーーーー!」

杏子「あっはっはっはっは」グリグリ


恭介「…ふう、酷い目に合った」

杏子「へっ!これでどっちが上か思い知ったか!」

恭介「まったく、今日は随分プロレス技に縁のある日だなぁ…」ブツブツ

杏子「あん?」

恭介「ああ、実は今日の放課後…」

杏子「はぁ!?お前、それじゃあ、その幼馴染の女に音楽室に呼び出されたと思ったら、いきなりプロレス技掛けられたってのかよ!」

恭介「そうなんだ。しかも、途中でその子とよくつるんでる先輩が出てきて、ラリアートで二人とも沈められてしまって…」

杏子「あははは!!わけわかんねぇ!!」

恭介「放課後に雰囲気のある音楽室に呼び出されて、二人きりになったと思ったらだよ?いきなりスタン・ハンセンって…アームロックって…」ブツブツ

杏子「告白でもされると思ってのこのこ出向いたら、シメられたってか!?馬鹿じゃねぇ!?馬鹿じゃねぇ!?」ケラケラ

恭介「そりゃ、良く考えたら確かに、長い付き合いだし、彼女には申し訳ない事も結構してるし…そもそも彼女に男として見られているとも思えないけどさ。
   少なくとも入院中お見舞いにしょっちゅう来て貰えるくらいには、仲が良いと自負していたのに…」ブツブツ

杏子「…」

恭介「…まあ、でも、アームロックは痛かったけど、胸が当たっちゃって、彼女も女性として成長していたんだなってのは衝撃だったというか…ゲフンゲフン」

杏子「…」ムッスー

恭介「…急に静かになったけど、どうかした?」

杏子「べぇぇっつにーー!」プイッ

恭介「…本当、女の子って良くわかんないよ…」ハァ

杏子(ったく、よくわかんねーけど、なーんかムカツクな、恭介め。話聞いててムカムカするっていうか、気に入らねーってーか…そうだ、一泡吹かせてやろう)ニヤ

杏子「…なーなー。キョースケー?」

恭介「ん?どうしたの?」

杏子「ちょっと、目、瞑ってくんない?」

恭介「え?」

杏子「ほら、早く!」ズイッ

恭介「う、うん…」ドキッ

恭介(近っ!?)

杏子(ったく、よくわかんねーけど、なーんかムカツクな、恭介め。話聞いててムカムカするっていうか、気に入らねーってーか…そうだ、ちょっとからかってやろう)ニヤ

杏子「…なーなー。キョースケー?」

恭介「ん?どうしたの?」

杏子「ちょっと、目、瞑ってくんない?」

恭介「え?」

杏子「ほら、早く!」ズイッ

恭介「う、うん…」ドキッ

恭介(近っ!?)

杏子「動くなよー?」

恭介「わ、わかった…」

杏子「…」

恭介「…」ドキドキ

杏子「…」

恭介「…」ドキドキドキ

杏子「…」

恭介「…」ドキドキドキドキ

ベチョ

恭介「…冷たっ!?」

杏子「あははははは!ダッセー!!」

恭介「何するんだよ!びっくりした…鼻にアイスをくっつけられたのか…」

杏子「あはははは!キスでもされると思ったー?お前案外むっつりだな!このすけべ!!」

恭介「な!君ねえ!この間から思ってたけど、ちょっと勝手が過ぎないかい?この前だって…「杏子」」

恭介「…え?」

杏子「そういえば、さ。名前言ってなかったよね?私の名前。…佐倉杏子だ」

恭介「…佐倉、杏子?」

杏子「そ、あたしの名前!よろしく、ね?恭介!」スッ

恭介「…アイス?」

杏子「食うかい?」

恭介「…って、それ、僕の分じゃないか!いつの間に!!」

杏子「あははは。ばれたか」パクリ

恭介「ああ!食べたな!?杏子!」

杏子「モグモグ…」

恭介「まだ半分も食べてなかったのに…」

杏子「ゴクン…っ!!?」キーーーン!!

杏子「~~~~っ!!」ジタバタ

恭介「…ざまーみろ」

杏子「…く…ふふ……」プルプル

恭介「…ふふっ」

杏子恭介「「ぷっ…あはははははは!!」」

まどか「…」

マミ「…」

ほむら「…」チラッ

さやか「ランランララランランラン ララララランランラー♪ナウシカーコッチヘキナーサーイ(低音)キチャダメー(高音)」ショリショリ

まどか「うわ…」

ほむら「何が怖いって…ショリショリって、普通、刃物砥いでると思うでしょう?…ニンニクおろしてるのよ」

さやか「あははは。待ってろよ二人ともー。
    今、青森県田子町産大玉ニンニクの汁をたーっぷり染み込ませたマント着て、近場を超高速で駆けずり回ってやるからなー」ヘラヘラ

ほむら「それはもはやテロよ」

マミ「…」ピッ

さやか(簀巻き)「モガモガ」

マミ「帰るわよ…」

マミさんち

さやか「マスター。謎の白い液体おかわり…」カラン

マミ「また…?」

まどか「飲みすぎだよ、さやかちゃん…」

ほむら「そうね。もう5杯目よ?」

さやか「うるへ~これが呑まずにやってられっかっつーの」ヒック

まどか「牛乳で酔ったみたくなってるし」

ほむら「謎でもなんでも無いわね」

マミ「…はい。もうこれで終わりよ?」

さやか「ごくごくごく」

まどか「一気!?」

ほむら「あ、馬鹿…」

さやか「…ぶふぉあ!!」

まどか「さやかちゃん大リバース!」

ほむら「なんかもう満身創痍ね」

マミ「早くも矢尽き弓折れた感じは否めないわ」

さやか「げほげほ…」

まどか「…」サスサス

さやか「…いや、しかしまだだ。まだ諦めるには早い。終わってない。さやかちゃんまだ終わってないぞ…」

ほむら「ポジティブシンキング、パないわ」

まどか「さやかちゃぁあん…」フキフキ

ほむら「…で、このあとは、どうするつもり?」

さやか「…すこしようすをみます」

まどか「またー?」ハァ

マミ「知らないわよ…?」ハァ

数日後
いつもの道


恭介「…おーい、杏子ー」

杏子「お、来たな!恭介!!」ワクワク


杏子「んぐんぐ」モグモグモシャモシャ

恭介「…杏子。食べ方にしても、もう少しこう、女の子らしくというか、上品に…」

杏子「ふるへー」モッチャモッチャ

恭介「せめて、食べるか喋るかどっちかにしてくれよ…」

杏子「ごくん」

杏子「ったく、わかったよ口うるせー坊やだな」

恭介「坊やって…同い年くらいの癖に…」ブツブツ

杏子「…ふあーぁ」ネムネム

恭介「ん?どうしたんだい?」

杏子「いやー。腹いっぱいになったら眠くなってきちまった…くあーぁ…」ゴシゴシ

恭介「本当、子どもみたい」クスクス

杏子「…」ゴツン

恭介「痛いっ!」

杏子「ったく…」

恭介「本当、なんて子だ、君って奴は…」サスサス

杏子「…そういえば恭介。アンタ、ヴァイオリンの練習帰りだったっけか?」

恭介「本当に乱暴なんだから…」ブツブツ

杏子「…」スッ

恭介「わかったわかった!そうだよ!ヴァイオリン帰りだ!」

杏子「ふむ…」ニヤリ

恭介「…なんだい?その何か悪い事を思いついたような顔は…」

杏子(今夜はリラックスBGMで、良く眠れそうだ)ニヤニヤ

杏子「どんくらい弾けるのさ?」

恭介「え?」

杏子「だーから!どんくらいヴァイオリン上手なのって聞いてんの!」

恭介「…ええと」

杏子「おう」

恭介「…まあ、そこそこ自信はあるよ」

杏子「本当にー?」

恭介「…どういう意味?」

杏子「いやー、べっつにー?」ニヤニヤ

恭介「…何が言いたいんだい?」ムッ

杏子(ククク。苛立ってる苛立ってる!)

杏子「いやさー、恭介本人は自信あるっつってもー?他人から見てどうかってのは別だろ」

恭介「…はあ」

杏子「だからね。私が聞いて、お前がどんくらいの腕か判断してやろうかなーって」

恭介「…」ジトー…

杏子「あ、ほら!素人からの意見ってのも重要だろ?」

恭介「…まあ、別にいいけど」

杏子(よっしゃ!かかったな単純馬鹿め!)

恭介「言っておくけど、子守唄は弾いてあげないから」

杏子「」ガーン

恭介(…さやか以上のわかり易さだこの子)

杏子「い、いや、えーっとなあ。けど、あのー、そのー…」アセアセ

恭介「ははは。君の考え方が少しずつ分かってきたぞ。そう簡単に乗せられてはあげられないな」

杏子「うーーーー…」

恭介「…で、どうする?」

杏子「…なるべく穏やかな曲を頼む」

恭介(意地でも眠るつもりか!)

恭介「だいたい、こんなところで子守唄を聞いたとして、君は路上で眠るつもりかい?」

杏子「ん?ああ。それ言われてみればそうだね。…それなら、さ…」

杏子「…教会の中、入ろうか」

教会の中
聖壇前

恭介「…良かったのかい?勝手に入って」

杏子「…どうせ唯の廃教会だ。誰も気にしないさ」

恭介「けど…」

杏子「いいんだよ」

恭介「それにここで眠るって、家には帰らないつもり?」

杏子「入ってくる奴なんか他に居ないから、寝るだけならここで十分さ。何も無いし、こんなとこ泥棒だってそっぽ向く」

恭介「…大きなステンドグラスだ。この教会、概観はボロボロだけど、こんなに立派だっただなんて」

杏子「…。さ!頼んだよ、恭介!」

恭介「…わかったよ。全く。眠る気満々の相手に弾くなんて、流石に初めてだ」

杏子「いいだろー!最近なんだか寝苦しくてさー。いくら寝ても全然寝た気がしねーんだよ」

恭介「…仕方ないなぁ。今日だけだよ?」

杏子「感謝感謝♪」

恭介「やれやれ…」

恭介(さて、何を弾こうかな…)

杏子「楽しみだな~♪」ウキウキ

恭介「…よし」スッ

恭介(…フォーレの子守唄…)

ttp://www.youtube.com/watch?v=JUha5FgP9kA&feature=related

杏子「…へぇ」

恭介<~♪>


杏子「おおー!」パチパチパチ

恭介「…寝るんじゃなかったの?」

杏子「スゲーな、恭介!まさかここまでやるとは思わなかったぞ!」

恭介「…悪い気はしないけどね」

杏子「じゃあさ、じゃあさ!もう一曲!もう一曲何か弾いてよ!」

恭介「いいけど…なんて曲がいい?」

杏子「よくわかんねー!」

恭介「えー…」

杏子「」コロコロ

恭介「ちょっと。何舐めてるの。…もしかしてさっき僕があげたお菓子の、飴玉?」

杏子「もうこれしか残って無い」コロコロ

恭介「君って奴は、もう~…」ガックリ

杏子「情けない声出すなよー。なら逆に、恭介は最近何練習してんのさ?」

恭介「最近?」

杏子「そ!アンタが最近一番練習してる曲が聞きたいな」

恭介「…わかったよ。じゃあ、いくね?」

杏子「あ!その前に!」

恭介「?」

杏子「…なんて曲?」

恭介「…シューベルト作曲。…歌曲集『湖上の美人』エレンの歌 第3番」

恭介「…通称『シューベルトのアヴェ・マリア』」

ttp://www.youtube.com/watch?v=OY0-VNKgLaU

恭介<~♪>

少年が演奏を始めると、瞬間、優しい音楽が礼拝堂を満たした。美しい旋律に聴き入り、目を閉じてじっと耳を傾ける少女
陽はいよいよ地平線へ向かい、周囲が徐々に陰を増すこの時間。丁度ステンドグラスの上を横切る太陽が、本日最後の光を聖壇に届けてくれていた
逆光が二人をシルエットで覆い、世界が光に包まれる

目を閉じても優しいオレンジ色の陽光は瞼の裏をゆらゆらと踊る
バイオリンの旋律に同調するように降り注ぐ光はどこか寂しげで、けれど、そこには確かに全て包み込む暖かさが存在した

今日は風が強いのか、それとも寂しそうに佇む教会への贈り物のつもりなのか。控えめに、少し離れたところにある住宅街からだろう夕餉の匂いを運んでくる。暖かな匂い。優しい匂い。…人の匂い
コロン、と。口の中で小さな音を立てて、杏子の口の中の飴玉が転がった。…それで、最後。まるでこの至福の瞬間にもすぐに終わりが訪れるのだという暗示の様に、儚く溶けて消えた。砂糖と香料の淡い残り香を残して

杏子(…ああ。この曲は…)

瞬間、佐倉杏子は思い出す。この曲は、昔父親が良く演奏していた曲だ

ボロッちい教会の、これまたボロッちいオルガンによる演奏で、この演奏に比べれば随分と下手くそな演奏だったが…それでも、幼い自分と妹には、天上からの福音に聞えたものだ
こんなにも美しい旋律を奏でる父親はきっと凄い人物に違いないと、誇り高い気分になってたのをくすぐったい気持ちで…思い出す。そして…

そして、杏子が過去を振り返っているわずかな間、同時に、上条恭介も過去を振り返っていた。それもついさっき、扉を開け、本堂に入った瞬間の事を

とても廃墟とは思えない神聖な雰囲気に息を呑んだ。人気の無い静謐な本堂を二人の歩くコツコツという硬質な音を、埃塗れの床が和げているのが、足の裏の感触でわかる
歩いても埃が舞い上がらないのは、この厳かな空気が埃を押し潰しているからなのかもしれないなどとくだらない事を考え、苦笑が浮かんだ
不思議そうに振り返り訳を尋ねる杏子に謝罪しながら、結局理由は教えなかった。…言えば、また馬鹿にされるに決まってる

迷う事無く、まっすぐ聖壇の前まで歩いてゆく杏子
跪き、十字架に祈りを奉げるその姿は実に堂に入っており…

恭介(…まるで、修道女みたいだった)

既に傾きかけてきていた夕日の光は、祈る少女の赤毛を一層紅く染め、一種の神聖さと…血の色を連想させた。

恭介(…まるでキリストの流す血のように…なんて言ったらやっぱり馬鹿にされるんだろうなぁ)

演奏の最中にここまで余計な事を考えるのも珍しい。しかし、悪くない感じだ。雑念が雑念で無い感じとでもいうのだろうか、すこぶる調子は良い

そして、頭を疑問…というか、ある種の確信が過ぎる
…こっちは、あまり気分の良いものでは無かった

恭介(…杏子。君の家族は、やっぱり…)

杏子「…」コツ…

恭介「?」

しかし徐に一歩前に踏み出した杏子にその疑問は蔭を顰める事になる。

恭介(どうしたんだ?杏子…)

杏子「すぅー…」

杏子「♪Ave Maria Jungfrau mild  (アヴェマリア、慈悲深き乙女よ)」
   
恭介「!?」

驚きのあまり思わず演奏の手を止めた恭介を、抗議の目で睨む杏子

杏子「…止めんなよ」

恭介「あ、ああ。すまない」

杏子「…さっきの続きからな」

恭介「わ、わかった…」

恭介「…」

恭介<~♪>

杏子「♪Erhore einer Jungfrau Flehen   (おお 聞き給え 乙女の祈り)」

杏子「♪Aus diesem Felsen starr und wild  (荒んだ者にも汝は耳を傾け)」

杏子(懐かしいな…)

杏子(あの頃は貧乏だったけど、楽しかった…)

杏子(親父が居て、お袋が居て、モモが居て、さ…)

杏子(あたしも魔法少女になったばっかりで、困ってる人を助けたいとかなんとか、甘っちょろい事本気で考えてて、さ…)

杏子「…」

杏子(本当に、馬鹿で間抜けな餓鬼だったよ…)

杏子(…何であんな事を願っちまったかなぁ)

杏子(あーーーーあ…)クスッ

恭介(…杏子?)

杏子「♪Soll mein Gebet zu dir hinwehen.     (絶望の底からも救い給う) 」

シューベルト作曲
歌曲集『湖上の美人』エレンの歌 第3番
通称『シューベルトの子守唄』

三大アヴェ・マリアに数えられるこの名曲は、ウォルター・スコットの名高い叙事詩『湖上の麗人』のドイツ語訳に曲付けされたものであり、
したがってシューベルトの《歌曲集『湖上の美人』》の一部を成しているに過ぎない
そのため、一般に世間に知られる『シューベルトが《アヴェ・マリア》という宗教曲を作曲したのだ』という考えは実は誤解であり、
作曲者の死後から2世紀近い現在、いくつもの解釈を受けた果てに起こった誤解の一つともされている
それは万人に愛され、長く歌われてきた名曲の宿命でもあるのだろう。だが、それが何だというのか。この曲は…

杏子(この歌は…私の歌だ)

杏子「Wir schlafen sicher bis zum Morgen    (汝の慈悲の下で安らかに眠らん)」

歌詞の意味など、解らない。考えた事も無い。そもそも何語なのかすら、知らない。歌えるのは、何度も聴いているうちに音で覚えただけだ

杏子「Ob Menschen noch so grausam sind.   (世間から見捨てられ罵られようとも)」

しかし、杏子は知っている。この歌の持つ意味を。想いを。否。自分で独自の解釈をしただけだ。自分の都合の良いように。勝手に
それでいい。この歌詞どんな意味が込められているのか?例え本来の意味は知らずとも、少なくとも杏子の中で、彼女の歌う『歌』の意味は、そういう意味を込められて歌われるものなのだから


即ち

誰かの為に、祈る事

与える事

与えられる事

この曲を初めて聴いた時から、きっとこの曲はその為に創られたのだと、確信していた。深い理由など無いが

杏子「O Jungfrau, sieh der Jungfrau Sorgen   (おお 聞き給え 乙女の祈り)」

…それはかつて捨てたはずの想いでもあるが

その想いを、暖かい気持ちと…若干の鈍い痛みを伴って…思い出す

美しい旋律と、若干調子はずれの、しかしそれでもそれを補って余りある程に心地良い楽しげな歌声は、すっかり帳を下ろした、夜の優しい闇の中に溶け込んでいった
尚も不思議な演奏会は、続く

恭介<~♪>

杏子「O Mutter, hor ein bittend Kind Ave Maria… (おお 母よ聞き給え 懇願する子らを…)」

恭介「…終わり」スッ

杏子「…ふぅ」

恭介「…驚いたよ。心底驚いた」

杏子「へへ。大したもんだろ?」

恭介「ああ。…でも、どうして?」

杏子「…ま、そんなのはどうでもいいじゃん!それより次!次!」

恭介「…わかった。次は何を弾こうか?」

杏子「んー…!じゃあさ!じゃあさ!次は聞いてて楽しくなるような、アゲアゲな奴頼むよ!で、その次は格好いい奴!」

恭介「アゲアゲって…クラシックだよ?」

杏子「そこをなんとか!」

恭介「うーーん。ヴァイオリンだけでって…難しいなぁ。じゃあ、エルガーの…」

杏子「わくわく!」

1時間後

杏子「くー…かー…」

恭介「そして結局寝た、か…」クスッ

杏子「ウヘヘヘ…じゅるり」

恭介「どんな夢を見てるんだか…」

杏子「ふみゅ…」ゴロン

恭介「…それにしても、僕も一応男なんだけどなぁ…」

杏子「うーん…」ボリボリ

恭介「無防備が過ぎるって言うか、男として見られていないって言うか…」

杏子「くうくう…」

恭介「…探す素振りも見せずにあっさり毛布持ってきたし。…やっぱり、そういう事なんだよね」

杏子「すう…」

恭介「…黙ってれば、可愛いもんなんだけどね」ハァ

杏子「ぅうん…」

恭介「…ほっぺた」ツン

杏子「…んがーーーー!!」ガバッ

杏子「…ン。ムニャムニャ」

杏子「…すやすや」

恭介「…」クス

杏子「…パパ……ママ……」

恭介「…ま、いいか」

恭介「…けど、これだけは、確認しておかなきゃ、ね」

翌日、朝

杏子「…ん?」

恭介「おはよう」

杏子「あ、あれ?私…」ゴシゴシ

恭介「随分ぐっすりだったね。お陰で初めて学校をサボってしまったよ」クスクス

杏子「!って、今何時だ!?」ガバッ

恭介「…もう朝の7時さ。本当に疲れていたんだね」

杏子「やっべーな…ま、いっか。アタシもサボろ」コテン

恭介(やっぱり…)

恭介「…ねえ杏子?」

杏子「あん?」

恭介「君、学校行って無いだろ」

杏子「はあ!?な、何を根拠に…」

恭介「今日は連休の中日だよ。それに、7時ならまだまだ登校時間には余裕がある」

杏子「…」

恭介「学生が慌てるには、少し早いんじゃないかな」

杏子「そ、そんな変な事でもねーだろ?これは、えーっと、あれだあれ!その…」

恭介「そう。その通り。例え連休でも、朝早くても。用事がある人間は、あるんだ。部活とかね。
   けど、言葉に詰まったね?いや、酷く狼狽しているといっても良い。
   とっさに言い訳が出ないんだ。つまり、君は嘘を吐いている」

杏子「…」

恭介「そしてその沈黙が、最後の証拠」

杏子「…けっ」

恭介「…ねえ杏子。良ければ教えて欲しいんだ…君は一体、何者なんだ?」

杏子「それは…」

恭介「…」

杏子「…」

恭介「…」

杏子「あー…」ポリポリ

恭介「…なんてね」フッ

杏子「…恭介?」

恭介「そこまで込み入った話を尋ねる資格は、僕には無いさ」

杏子「あ…」

恭介「けどれ、もしいつか君が話してもいいと思ってくれたなら…」

恭介「…こんな僕にでも、何か君の力になれる事があるかもしれないって、思ったからさ…」

杏子「…余計なお世話だっつうの」

恭介「おや、知らなかったのかい?僕は意外とお節介焼きなんだよ」

杏子「けっ!よく言うよ。んな事わかってるっての。貢クンめ」

恭介「貢クンって…全く。調子が狂うなぁ…」

杏子「そりゃお互い様だっ」デコピン

恭介「いてっ」

杏子「あっはー!ザマァ見ろ貧弱坊や。このアタシに生意気な口利いた報いだ」

恭介「いたた…本当に君って奴は…」チラッ

杏子「…ん?」

杏子(あれ…?これ…は…)

杏子「……な!!」ガバッ

恭介「杏子?どうしたの?」

杏子「お、おい…!!その首筋…ちっとよく見せろ!!」ガバッ

杏子(嘘だろ!?まさか…!)モゾモゾ

恭介「うわ!?ちょ、ちょっと杏子!?」

杏子「クソッ!まどろっこしい!!」ブチブチッ

恭介「あっ。ワイシャツのボタン…」

杏子「…」ガバッ

恭介「い、いきなりどうしたんだよ?血相変えて人のシャツ捲くったと思ったら、首筋なんか見つめて…」

杏子「黙ってろ。殺すぞ」

恭介「えー…」

杏子(…間違いない!)

杏子「こりゃあ…」

杏子(魔女の口付け…!)ギリッ

ゾワッ!!

杏子「!!」

恭介「?」

杏子(まさか!『今』!出現するってのか!!?)

所変わって教会の前

さやか「やっと見つけた…!」ゴゴゴゴ

ほむら「…まさか、一晩を共にしてるとはね」プスッ

まどか「教会の中かー。盲点だったなー…」

マミ「あ、みんな!あれを見て!」

まどか「うわわわわ!杏子ちゃん大たーん!シャツを無理やり肌蹴させてる!!」マジマジ

さやか「…ブッコロ」

ほむら「落ち着きなさい。なんかそんな感じじゃないわ」プスッ

さやか「?」

マミ「…ねえ、様子が変じゃない?」

さやか「…!!あれって、まさか…!」

ゾワッ!!

さやか「…魔女の、結界……!!」

ほむら「…」プスッ

まどか「…ところでほむらちゃん、さっきから何してるの?」

ほむら「…さやかの頭にグリーフシード刺して、浄化してるの」プスッ

教会の中

恭介「な…」

恭介「なんだよ…?」

恭介「なんなんだこいつらは!!」

使い魔「「「「「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」」」」」

杏子「使い魔…!」

恭介「つか…い…?」

杏子「敵さ」

使い魔「ヒャハハハ!」ブンッ

恭介「うわっ!」

杏子「下がってろ!!」ドンッ

恭介「うわ!?」ステン

杏子「…」ジッ…

恭介「…杏子?」

杏子「…ごめん」ボソッ

恭介「え…」

杏子「…舐めんじゃねーぞ!雑魚共が!!」チャキッ

恭介「槍…?どこから…」

ザン!!!

使い魔「ギャアアアアアアアアアアア!!!!」

恭介(それに服が…変わった)

杏子「…この教会に出るなんざ、いい度胸だ。お前ら…!!」

恭介「一匹倒した!?」

杏子「…」

使い魔「グチャグチャ」

使い魔「キーキー!!」

使い魔「…」ゾワゾワ

恭介「…おぇ」

杏子「弱った仲間を囲んで、貪り食い始めやがった…!」

使い魔「グチャグチャグチャ」

使い魔「キ…キキッ…!」

ゴキッ!!ボリッ!!

恭介「食べるのに夢中で、僕等の事を忘れてるのか?」

杏子「…今のうちに逃げるぞ」

恭介「え、に、逃げるって、どこに…」

杏子「取りあえず一旦…」

恭介「!!」ズキン

杏子「お、おい、恭介!?」

恭介「う、腕が…!?左腕が、凄く痛い…!!」

杏子「何!?左腕って…」

恭介「うわああああ!!い、痛い…!なんでこんなに痛いんだ!?まるで事故に合った時みたいな…!」

恭介「そんな、けど、何で今になって…」

杏子「お、おい!なんで!?なんでだ!?くそっ、一体何が…」

「それはね?杏子」

「神様が彼に天罰を与えたからなんだよ」

恭介「…あ、貴方達は…?」

杏子「!そんな。アンタらは…」


杏子父「久しぶりだね。杏子」

杏子母「大きくなったわね」


杏子「…親父…お袋…」

杏子「う、嘘だろ?」ヒクッ

杏子父「嘘なものか」

杏子母「ええ。嘘なものですか。それとも私達の顔なんて忘れちゃったかしら?」

杏子父「そんな薄情な子に育てた覚えは、無いんだがなぁ」

杏子母「クスクスクス」

杏子「この感じ…実体が無いのか?…まさか魔女め、テメーが幻覚を見せてやがるのか…!」ギリッ

恭介「うああああ…!!」

杏子「!!おい、恭介!」

恭介「痛い…痛い…!」

杏子「しっかりしやがれ!その痛みも、アタシの家族も!!みんなふざけた魔女野郎が生み出した幻だぞ!」

恭介「まぼ…ろし…?」

杏子「そうだ!どんな原理かはしらねーが、相手のトラウマを呼び出してどっかでコソコソ観察してるってのが、この魔女のやり方みたいなのさ!」

恭介「そんな、トラウマって!!じゃあ、やっぱり君の家族は…!」

杏子「…けっ。だいたいアンタの想像どーりさ。…クソッたれ」

恭介「…ごめん」

杏子「そんな事より、さっさと魔女をぶちのめして…!」

杏子父「正解だよ、杏子。やはり君は賢い子だ」

杏子母「本当ね。愛しい杏子。貴女をちゃんとした学校に行かせてあげたかったわ」

杏子「黙れ!!その姿でアタシに話しかけんじゃねぇ!!ぶっ殺すぞ!!!」

杏子父「全くだね母さん。私が狂ったりしなければ…」

杏子「黙れよ!!」

杏子母「そうね。誰も貴方の話に耳を貸さないままならば…」

杏子「黙れつってるだろ!!」

杏子父母「「偽りの奇跡さえ起こらなければ、例え貧しくとも家族は幸せだったのに」」

杏子「黙れよぉおおおおおおおおおおお!!ぶっ殺すぞぉおおおおおおおおおお!!!」

クスクスクス

杏子父「出来るのかい?君に」

杏子母「そう。私達は幻。魔女が生み出し、貴女が勝手に見ている白昼夢」

杏子父「けど、私達の言葉は、何も出鱈目に現出したという訳ではないんだよ?」

杏子母「だって私達が話す言葉は、貴女の心が叫んでいる言葉、否。悲鳴そのものなのだから」

杏子「な、なに言ってんだよ…!」

「だって、お姉ちゃん、後悔しているんでしょう?」

杏子「…!!」

杏子「モ、モモ…お前まで…」

モモ「お久しぶり♪あのあと、マミさんとは仲直りできた?」クスクス

杏子「やめろ…」ズサ…

モモ「それとも…口うるさいお節介な女なんて忘れちゃって、自分に優しくしてくれる都合のいい男の子しか目に入らない?」クスクスクスクス

杏子「ち、違う!恭介はそんなんじゃ…!」


モモ「違うの?お菓子を貰った時、あんなに嬉んでたのに。…本当はお菓子の味の善し悪しなんてわかってないくせに」

杏子「それは…!!」

モモ「ストレスで自棄食いしてるだけなんでしょう?本当は、食べ物なんて、どうでもいいんでしょう?何かを食べていれば、自分を誤魔化せるから…」

杏子「ひ…」

モモ「家族がああなった事も、自分が悪い奴だから起こった事だって?」

杏子「や、やめ…」

モモ「何をしても仕方が無い?悪い事をしても、どんな事があっても心が痛まない?そうやって自分に言い聞かせて?」

杏子「お願い…」

モモ「そうやって自分を貶めて、悪人ぶらなきゃ、自分で自分が許せなくなるから?」

モモ「悪い人間になれば、いつか誰かが、自分を裁いてくれると思った?」

モモ「…地獄に落ちれば、自殺したパパや、私達に会えると思った?」

杏子「そ、そんな、事…」

モモ「…そう。そうだよね。今、お姉ちゃんが否定した通り。…違うよね?」クスクス

杏子「え…?」

モモ「そんな考えすら、全部建前。自分で自分を騙すための都合の良い言い訳」

杏子「…!」ガタガタ

モモ「ああ。なんて卑しいお姉ちゃんだろう。穢れる事すら受け入れた様に見せて、格好付けて、自分が悲劇のヒロインみたいな顔をして」

杏子「あぅっ!」

モモ「本当の本当は、ただ八つ当たりがしたいだけなのでした。自分ばかり不幸な目に合うのが許せなくて、他人に八つ当たり」

モモ「盗み、壊し、傷付け…殺し以外はなんでもやったよね?中には、結構シャレにならないくらいの損失を受けた人もいるはず」

モモ「殺しをやらなかったのは、最後の良心かな?ううん。違うよね。きっと、怖かったんだよ。人として完全に堕ちるのが」

モモ「…最後の最後で自分に逃げ道を作って、それで自分はまだ綺麗なつもり?ふざけるのも大概にしなよ。卑怯者」ズイッ

杏子「ひっ!」

モモ「それに、本当は気付いてるんでしょ?上条君の入院のくだりで…腕の奇跡で…思い出しちゃったんでしょ!!?」

杏子「い、いや…!聞きたくない!!」

モモ「この人がさやかちゃんの想い人だって!気付いちゃったんでしょ!!けど、自分も惹かれてるのを知ってるから!!気付かないふりしてるんでしょ!!!」

杏子「いやぁあああああああああああああああ!!!」

恭介「きょ…杏、子…?」ズキズキ

モモ「けーど、残念。そんなロクデナシで屑な、救い様の無いお姉ちゃんのところには、なんでか素晴らしい人たちが集まってくるのでした♪」クルクル

杏子「…」

モモ「最初は、マミさん。誰よりも強い、憧れの先輩。斯く在りたいと、思う人♪」

杏子「もうやめて…私が悪かったから…」

モモ「私が今生きているのは、マミさんのおかげ。不幸になる前から、助けて貰ってばかり。魔女退治でも、実生活でも。正直、人間としての格が違う」

杏子「やだ…」

モモ「家族を失いやさぐれた私を、同じ境遇であったにも関わらず真っ直ぐに生きてきた強いマミさんは、優しく包み込もうとしてくれた。本当に感謝してる…」

杏子「やだやだやだ!!」グスッ

モモ「…けど裏切っちゃったんだよね♪」ニコッ

杏子「うわあああああん!!あああああああああああん!!」

モモ「泣いても、誰も許してくれないよ?お姉ちゃん」クスクス

杏子「うわああああああああああん!!うわあああああああああん!!」

モモ「差し伸べられた手を振り払って。手をあげて、さ。マミさんが自分に本気で攻撃できる訳無いって知ってたから」

モモ「戸惑うマミさんが慌ててる間に不意打ちで槍を付きつけて、さ。それで勝った気で口上述べてるんだもん。お笑い種だよね」

モモ「感謝しなよ?マミさんがその気だったら、お姉ちゃん、あの時死んでたよ」

モモ「調子に乗ってマミさんの庇護から離れて、何度後悔した事か。何度無駄に死に掛けた事か。つまんない意地張って馬鹿だねぇ。一言ごめんなさいって言えれば、その後の惨めな生活もなかったろうに」

杏子「やだあああああああ!!もうやだあああああああああ!!!」

モモ「お次は、ほむらちゃん!クールでミステリアス!」

杏子「お、お願い、モモ…!もう…もう、私…!!」

モモ「美人で格好いい♪しかもつるんでみたら意外とおっちょこちょいだったり天然だったりで、性格もかわいいー♪」

モモ「髪をかきあげた時、シャンプーの香りがふわっと拡がって良いにおーい。男の子にモテそう!」

モモ「…身も心も醜い自分とは大違い」

杏子「やだぁ。やめて、もう、聴きたくない…」ペタン

モモ「羨ましいよねー?あんなに美人だし、学校にも通ってるし。きっと学校でも格好良い男の子にラブレターとかいっぱい貰ってるんだよ」

モモ「対して、お姉ちゃんはどうかなー?♪」

杏子「やだぁ!!やだやだ!!もうやめてよぉおお!!」

モモ「夜中に薄汚い親父共相手にベッドの上でお金せびってさ。1万円札一枚の為に脱ぎたてのパンツ渡した事もあったよね?汚らしい」

杏子「ひぐっ!!!」

モモ「こんな薄汚い女、上条君に吊り合う訳無いじゃん。身の程を知りなよ」

杏子「ひっ!ひぐっ!くひっ!!!」

モモ「あらら、過呼吸になっちゃった。…次は、まどかちゃんにしよっかな!可愛いよねー。しかも、優しい!」

杏子「ひぐっ!ひっ!こひゅっ!」

モモ「なんであんなに優しいんだろう?見ず知らずの誰かの為に命を賭けられるなんて、信じられない!」

モモ「本当にそうかなー?昔の自分、思い出せない?」

モモ「普段は散々からかってるけどさ。昔はお姉ちゃんもそうだったよね?けど、消えちゃったんだ。穢いものばっか見てきたから。…それも言い訳だけどね」

モモ「私、知ってるよ。まどかちゃんへのおチャラけたからかいの言葉の中に、本気の嫉妬と憎しみが混じってるの♪」

モモ「家族として言わせてもらうんだけどさ。純粋無垢なまどかちゃんに、お姉ちゃんみたいに臭くて穢い人間の言葉、吐き付けないでくれるかな?」

モモ「おうちに招待された時もそう!はしゃいでるようにも見せてたけどさ。立派なおうちに嫉妬して、美味しいご飯に嫉妬して、優しい家族に嫉妬して!!」

モモ「あああああ!汚い!穢い!!きたない!!!」

モモ「全てを失い、それでもマミさんみたく手を差し伸べてくれる人は居たのに、わざわざ自分でつっぱねて!」

モモ「それでもまだ誰かに救って欲しいと思ってたんだよね!?あの時、マミさんが追いかけてきてくれるのを、ちょっと期待してたんだよね!?」

モモ「…そして自分の足で立とうともせず、座して誰かの救いを待っていた怠惰なお姉ちゃんは容易に堕落したのでした」

モモ「憤怒に任せ周りに当たり散らして、深い考えも無く、生きる為と嘯いて、全てを傷付け、容易に奪い」

モモ「食べ物を粗末にするなと口では言いながらも、自分は食べ物に対する感謝なんて無く。ううん。どころか、全てが憎いからこそ暴食なんてして」

モモ「どんなに素敵な仲間達にだって、嫉妬に狂ってる」

モモ「そんな惨めでどうしようもない自分を、それでも友だちと言ってくれるさやかちゃんの、想い人を奪おうとまで考えてる色惰狂いのお姉ちゃん」

モモ「それでもまだ自分に綺麗なところが在ると信じるられるの?ああ。どこまで卑しくて傲慢なお姉ちゃんなんだろう」

モモ「その本質は…強欲かな?それでもまだ、心のどこかで幸せになりたいんだよね。自分を、受け入れて欲しいんだよね?」

モモ「凄いやお姉ちゃん!教会生まれの娘なのに、七つの大罪コンプリートじゃん!」

ごめん、朝から何も食べてないからお腹減った
ちょっと買出し行ってきます

モモ「…ところで、なんで最近になって、わざわざまた悪い事始めたの?」

杏子「…」

モモ「…知ってるよ。怖かったんでしょ。みんなの事が」

モモ「強くて、綺麗で、優しくて…悪ぶってたゴミクズお姉ちゃんに、それでも精一杯良くしてくれる、みんな」

モモ「みんなといる時間は、本当に楽しい。心の底から笑えるし、穢い自分が浄化されていくようで」

モモ「…けど、本当のお姉ちゃんを知ったら、みんなはどう思うかなぁ?」

モモ「優しいみんななら、反省してるって言えば受け入れてくれるかもしれない」

モモ「…けど、受け入れて貰えないかもしれない」

モモ「そう。受け入れてもらえるか、不安で不安で、しょうがないんだ。みんなの事が、まだ信じ切れてない証拠だよね」クスクス

モモ「…もし、受け入れてもらえなかったら、多分お姉ちゃん、死んじゃうもんね」

モモ「そこでお姉ちゃんは、無い知恵絞って考えた」

モモ「…だったら、受け入れて貰わないでいいや。悪い事をまた始めよう。悪い事いっぱいして、みんなにも被害を及ぼして…そしたらきっとみんな見限ってくれる」

モモ「そうすれば、もしかしたら今までの私は、受け入れて貰えたのかもしれないという幻想は抱いたままで居られる。なーんて…」

モモ「キャハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!最初っから、受け入れてもらえるなんて思ってないからそんな事思い付くんだよーだ!」

モモ「…死んじゃばいいのに」

杏子父「そうだな。あの時、君も一緒に死んでいれば良かったんだ」

杏子母「そうね。後を追ってきてくれれば良かったのよ」

モモ「ううん。今からでも遅くないよ」

杏子「ひ…ひ…」ガタガタ

モモ「お姉ちゃん。…死んじゃえ♪」

杏子「あ…」

まどか「あーあ…杏子ちゃんがそんな人だとは思わなかったな…」フワッ

杏子「ま、まどか!?」ビクッ

まどか「…死んじゃえばいいのに」ボソッ

杏子「ひっ!」ズサッ

ほむら「…全くね。…死ねばいいのに」フワッ

杏子「ほむらまで…」チクン

マミ「あらあら。こんなに震えちゃって、可哀想に」クスクス

杏子「マ、マミさん!?」

マミ「…何?裏切り者」

杏子「え…」ズキッ

マミ「ああ…痛い…痛い…あの日佐倉さんに付けられた傷が、痛い…心の傷が…」

杏子「やだよ…嘘でしょ?マミさんまで、そんな事…」

マミ「…死になさい」

杏子「…」

ピシッ

杏子父「死ね」

ピシッ

杏子母「死んで頂戴」

ピシッ

モモ「…死ね」

ピシッ

「死ね」
                    「死ね」
      「死ね」
                                      「死ね」
「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」
「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」
「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」
「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」
「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」
「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」
「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」
「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」
「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」「死ね」

杏子「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

モモ「どうしたの?お姉ちゃん」ズイ

杏子「く、来るな…!」ズサ…

モモ「どうして?」ズイ

杏子「消えてくれよ…!」ズサ…

モモ「やだよ。…あーあ。ほら、そんな事言うからさ?お姉ちゃん」スッ

杏子「…?」チラッ

杏子父母「「」」ブラーン

モモ「パパとママ、ショックで首吊っちゃったじゃない」クスクスクス

杏子「あああああああああああああああああ!!!!!?」ペタン

ピシ…ピキッ!!

恭介「…杏子!」

杏子「……ごめんなさい。ごめんなさい…ごめんなさい…」ポロポロ

恭介「杏子!!気をしっかり持って!!」

杏子「許して…!許して…!許して…!」ガタガタ

モモ「さっきから必死に呼びかけてるけどさぁ…無駄だよ?お兄ちゃん」クスクス

恭介「君…!!」

モモ「今、お姉ちゃんの心は、現実を見る事が出来ていない。自らの醜さに囚われ、全ての現実から目を背けているから」

モモ「世を呪い、友を呪い、自分を呪い…全てを呪ったお姉ちゃんは、今度は自らの呪いに喰われようとしてるの」

モモ「今までに死ねって思った数だけ死ねって言われて、死ねって願った数だけ願われて…」

モモ「こういうのを、人を呪わば穴二つっていうんだよね?♪」

モモ「…お姉ちゃんに声を届けたいなら、魂に直接働きかけでもしなきゃ、どうしようもないんじゃないかなぁ」

モモ「…ま、お兄ちゃんには無理だね。唯の、何の力も無い中学生のお兄ちゃんが、そんな事は出来るはずもん!」

恭介「僕の言葉は…届かない…?」

使い魔「ケタケタケタケタケタケタケタ」

モモ「…けーどー?ほら、駄目元でも、何かしてみた方がいいんじゃない?あいつらがこの茶番に飽きれば、二人とももう終わり。仲良くお腹の中」

恭介「…!」

モモ「…じゃ、せいぜい頑張ってみるといいよ」

恭介「…魂に…魂に声を…彼女の心に、直接響かせる、何か…」ブツブツ

恭介「…僕に…出来る、事」チラッ

恭介「…ヴァイオリン!!」ズキン

杏子「…」ポロポロポロ

恭介「くっ!」ズキン

恭介「幻なんだろ…!?」ズキン!

恭介「こんな痛み、なんだってんだ…!!」ズキン!!

恭介「こんな痛み、たった今杏子が受けている、そして受け続けてきた、胸の痛みに比べたら!!」

恭介「『音楽だけが世界語であり、翻訳される必要がない。そこにおいては魂が魂に働きかける』
   大バッハの言葉だったか。…もし貴方の言う言葉が真実だとするのなら…!!」

恭介「この未熟な僕に、貴方の力を貸して下さい!!」

ズキン!!!

恭介「杏子っ!!!」

杏子「…」ブツブツブツ

恭介「杏子…!!そのままで良い。聞いてくれ!!」

杏子「…」ブツブツブツ

恭介「わかってる。僕には、君を守って戦う力は無い。…なんて無力なんだろう」

恭介「悔しいよ。君みたいな子に戦わせて、僕は、何にも手を貸す事が出来ない。見てることしか出来ない!」

恭介「けどせめて、せめて一緒に、戦わせてくれよ…!!君は、君は強い子だ。僕みたいな弱虫より、ずっと、ずっと…!」

恭介「だから!!そんな顔、しないでくれよ!!笑ってくれよ!!…生きてくれよ!!!」

恭介「僕はトラウマを乗り越えてみせるぞ!だから君も、立ち向かえ!!絶望に!!」

恭介「…この曲を君に奉ぐ」

恭介「ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲、カンタータ『心と口と行いと生活で』第6曲、コラール合唱『イエスこそ我が喜び』…!!」

恭介「通称『主よ、人の望みの喜びよ』!!」

ttp://www.youtube.com/watch?v=iPeVIuRjUi4

ごはんつくる

モモ「クスクスクス」

恭介<~♪>

杏子「J○▲、■☆○のm▲e□◎d☆…」


モモ「あーあ。ついに魔女語話し始めちゃった♪」クスクス

恭介(くっ!)

モモ「やっぱり無駄だったねー。お姉ちゃんも必死に抵抗してるみたいだけど?もってあと5秒ってトコかな。カウントダウン開始♪」

恭介(杏子!)

モモ「ご~お~♪」

杏子「○☆e▲H心z□sT生tuのfみ…」

モモ「よ~ん~っ♪」

恭介(杏子!!)

モモ「さ~ん~♪」

恭介(頼むよ…!駄目なのか…!?)

モモ「にーい~?」

恭介「奇跡でも、魔法でも…!!なんでもいいから、起こってくれよ!!!」

モモ「い~ち…」ニタリ

恭介(畜生…!畜生!畜生!畜生!!!)

モモ「ぜ~~~r…」

杏子「e□▲○×禍×□○☆×…!!」プスッ

杏子「…」シーン

恭介モモ「…ぷすっ?」

ほむら「…ふう」ファサァ

杏子「…いってぇええええええ~~~~~~~~~!!?」ピューッ

ほむら「…やっぱり、それが普通の反応よね。なんでさやかは反応しないのかしら?…ああ。痛覚通ってないから」

マミ「人の事ナメクジかなんかみたいに…」

まどか「ほむらちゃん、すっかり調子戻ったね。…反省って言葉、知ってる?」

ほむら「勿論。振り向かない事よ」ファサァ

まどか「それは若さだよぅ!」

マミ「まさかの真逆の回答ね」

ほむら「へ?何それ。ギャグ?引くわ…」ハァ

マミ「」ピシッ

ほむら「…」プスッ

まどか「やだ…この先輩、メンタル弱過ぎ…」

恭介モモ「「…」」ポカーーン

まどか「ところで、杏子ちゃん(とマミさん)のソウルジェム、皹入っちゃってるけど、どうしようか、これ」

ほむら「セロテープがあるから、これで応急処置しておきましょ」ペタペタ

まどか「あ、ニャンコ柄だ。可愛い~。どこに売ってたの?」

ほむら「ああ。学校の購買で…」

まどか「うそうそー!あさって絶対見に行く~!!」

モモ「…何この人たち。新手の芸人…?」

恭介「あ、巴先輩だ…」ビクビク

まどか「ほらぁ!折角格好良く決まるシーンだったのに、なんかすっごい色々ぶち壊しちゃったっぽいよ!?私達!!」

ほむら「そんな事言ったって、仕方が無いじゃない」

マミ「」ブツブツ

ほむら「…」プスッ

まどか「マミさん!こんなのでグリーフシード2個も使わないでください!!」

杏子「おい。お前等」ダラダラ

まどか「あ!杏子ちゃん!良かったぁ。無事だったんだね!…頭から血出てるけど」

杏子「…なんで此処にいやがる?」

まどか「上条君のバイオリンの音を聴き取ったの。すっごい気迫の篭った音だったから、戦ってて結構うるさくしてた私達の所まで届いたんだ」

杏子「そういう意味じゃねぇ!なんでこんな、都合いいタイミングで出て来れたのか聞いてんだ!!」

ほむら「見てたもの。貴女が魔女の口付けを口実に上条君を脱がせようとしてたところから」

まどか「ほむらちゃん!」

杏子「はああああああ!?」

ほむら「やーい。変態。変態。変態」

杏子「くっそー!ある意味さっきの死ね死ねコールよりムカつく!お前が言うな!!ド変態!!」

マミ「暁美さん、なによそのテンション…」

ほむら「生死の狭間を潜り抜けたばかりだからね。…それに、希望も見えたし」

マミ「希望?」

杏子「ってかさぁ!なんでそんな最初っから見てたんなら、もっと早く助けてくんなかったのさ!お蔭で一回絶望死にしたぞ私!!」

ほむら「ノンノン。違うわ杏子。人を殺すのは、絶望ではなく諦め。人を救うのは希望では無く意思よ」キリッ

マミ「あら、素敵な言葉。メモしときましょ」カキカキ

杏子「マジで誰だお前…実は幻覚パート2とかじゃねーだろうな。…マミは、マミだな」

マミ「」ピシッ

ほむら「それはもういいから…」オウスッ

まどか「…?今、なんか変な効果音が…」

ほむら「…当たりね。スーパーグリーフシードよ」

まどか「すーぱー…?」

杏子「…で、なんで遅れたんだよ」

マミ「あ、あはは…いやぁ、みんなで加勢しようとは思ったんだけどね?暁美さんが生み出したトラウマが化け物魔女のワルプルギスの夜で、みんな苦戦しちゃって…」

まどか「あ!みんな無事だよ?…ぼろぼろだけど」

杏子「ほむらお前…」

ほむら「ふ、ふ~ひゅひゅひゅ~♪」

杏子「…口笛、吹けてないよ」

ほむら「…ちなみにマミさんのトラウマはダンプカーだったけど、魔法少女になったマミさんの、怒りのティロ張り手で消し飛んだわ」

マミ「暁美さんのいぢめっ子!!横から急に来たから、とっさに手が出ただけじゃない!!言わないって約束したのに!!」

ほむら「トラウマ克服おめでとう」

マミ「嬉しくない…」

まどか「で、スーパーグリーフシードって…」

ほむら「…引っ張るわね、まどか。スーパーグリーフシードって言うのは…」

モモ「そろそろ話し進めてもいいかなぁ!?お姉ちゃん達!!!」

まどマミあんほむ「…」

モモ「な、なにさ…」タジッ

ほむら「え…何あの子、ちょっと怖い」ヒソヒソ

杏子「ああ。あれ、私の妹…」ヒソヒソ

ほむら「ああ。通りで…」

杏子「どういう意味だそれ!!」

マミ「あら。誰かと思ったらモモちゃん?懐かしいわねぇ。昔おやつとかあげたわぁ…」

まどか「スーパーグリーフシード…」

モモ「…お兄ちゃん、私と会話で軌道修正して…」グスン

恭介「え。あ、ああ、うん…」

恭介「…えーっと…で、どうしようか」

モモ「…」

モモ「行けぇ!!使い魔達!!」

恭介(思い付かなかったんだ。会話で軌道修正…)

使い魔「キイイイイイ!!」

まどか「!!来た!使い魔!!」

ほむら「くっ!もう体力があまり残って無いのに!」

マミ「貴女のせいでね」ボソッ

杏子「…おい、お前等。実際問題、あとどんくらいやれるよ?」

ほむら「は?どういう意味…」

マミ「…これくらいなら、私達だけでやってみせるわ」

杏子「へっ!流石マミさん。私の事わかってる♪」

まどか「え?」

マミ「…大物は、任せたわ」

杏子「…ああ」

ほむら「…なるほどね。魔女、か。確かに、姿を見せないわね」

マミ「そういう訳よ。二人とも、もう一踏ん張り出来る?」

まどか「うう…不安だけど頑張る!」

ほむら「やってやるわよ…!折角得た希望、ここで絶やす訳にはいかないもの!」

杏子「頼む!!」

マミ「…あ、ちょっとタンマ!佐倉さん!!」

杏子「へ?」ピタッ

マミ「…乱戦だと守りきるのが難しいわ。あの子の護衛、お願いね?」ビシッ

恭介「…へ?」

杏子「…りょーかい!」ニヤッ

恭介「杏子?何を…」

杏子「よっ…と」ヒョイ

恭介「ちょ…!」

まどか「わお。お姫様だっこ」

杏子「んじゃ、行くよ?」ニィ

恭介「きょ…!待って…!」

杏子「おりゃああああああああ!!」ダダダダ

恭介「走るのぉおおおおおおおおお!!!?」

まどか「…行っちゃった」

マミ「お願いね。佐倉さん…」

ほむら「なら後は、雑魚退治ね」

マミ「…それじゃあ、やるわよ!!」

まどほむ「「了解!!」」

マミ「必殺技名は、ちゃんと叫ぶ事!!」

まどほむ「「…」」

マミ「返事!!!!!!!!!!!」クワッ!!

まどほむ「「りょ、了解!!!!」」ビクッ

タッタッタッタ…

恭介「ちょ、ちょっと待って杏子!!」

杏子「…んー?」

恭介「君、さっき凄い勢いで走り出したけど!…その、魔女…?が、どこに居るか知ってるの?」

杏子「知るか。適当だ、適当」

恭介「うそぉ…」

杏子「…さ、て、と…」

杏子「けど、まあ。そろそろじゃない?」

恭介「…へ?」

杏子「…さ、降りた降りた」スッ

恭介「や、やっと開放された…」

杏子「…な?そこにいるんだろ?さ・や・か?」ニヤッ

恭介「…え?」

「…あっちゃー。ばれてたかー。流石杏子!私が一目置いてるだけあるね」

杏子「抜かしなよ。さっきの部屋から、ずっと居ただろ。…誰の目にも止まらず、さ」

恭介「さ、さや…か?」

さやか「…はーい、恭介、昨日ぶり。元気にしてた?大丈夫?この阿婆擦れになんかされて無い?」クスクス

杏子「はは。ひっでー言われ様…」

恭介「な、なんで…?」

さやか「んー。見たとこ大丈夫そうかな。…良かった。薄汚い泥棒猫に、私の恭介が穢されないで」クスクスクス

杏子「…だってさ。恭介。さやかってこんな怖えー奴なのか?」

恭介「…偽者」

さやか「くくくく…」

さやか(偽者)「あははは!!あははははははは!!!ほらー!やっぱりすぐばれちゃったじゃんー!!」ケタケタケタ

モモ「ありゃりゃ。ざんねーん。さやかちゃんの言うとおりだったねー。まだまだ私も甘いなー」クスクス

杏子「…モモ。やっぱりお前も来たか」

さやか(偽者)「そりゃあねぇ。だって、私の大好きな幼馴染と、親友だよ?こんなのすぐ見破るに決まってるじゃん」ケタケタケタ

モモ「すっごーい!絆の力って奴ー?」クスクスクス

恭介「…っ!」ギリッ

杏子「…へっ。なんか言ってやれ。恭介」

さやか(偽者)「…んあ?」

恭介「…」

恭介「その姿を…。さやかの姿を、騙るな、偽者め…!!」

さやか(偽者)「おー…怖い怖い…」ニタニタ

モモ「あーあ。ホント残念!二人とも、するど過ぎ!!せっかく偽さやかちゃんと杏子ちゃん、二人を天秤にかさけさせて、お兄ちゃんがどっちを取るか実験してみようと思ったのに」

恭介「はぁ!?」

杏子「…そっか。それは未然に防げてマジで良かったよ」

モモ「えー?どーして?」

杏子「…私じゃ、さやかに勝ち目、ないもん…」

さやか(偽者)「ええー!あの勝気な杏子から、まさかの敗北宣言!これはさやかちゃんもびっくりだー!」

杏子「…お前は黙ってろ!!」

さやか(偽者)「…ちぇー」

モモ「…本当にそうかなぁ?確かにさやかちゃんは恋のライバルにしたらチョー強力かもだけどさー。
   お姉ちゃんくらいドラマチックな出会いと共有体験してたら、流石に意識も変わるんじゃない?」

恭介「え、恋の…え…?」

モモ「ぷふっ!お兄ちゃんはお兄ちゃんで、今頃気付いてるし!」

杏子「…ったく。勘弁しろよな。どいつもこいつも…」ハァ

モモ「そんじゃ、もう面白い事も出来ないし、そろそろ死のうか。お二人さん」

杏子「…やっぱりそうか。思ったとおり、幻覚に見せかけてお前が魔女だったんだな。モモ」

モモ「ひっひひー♪」

杏子「…こんだけ知能の高い魔女、初めて見るぜ」

モモ「そうだねー。けど、そんなもんじゃない?私は、刑罰の魔女!その性質は贖罪。罪の意識を抱える罪人を責め、罪の意識の無い罪人には更なる罪を犯させる!…なんちって」

モモ「裁判官がおバカさんじゃ、被告人も可哀想でしょ?」

杏子「…これだけ性格悪い裁判官ってのも、それはそれで否だけどな」

モモ「それじゃ、死ねぇ♪」ブンッ

杏子「はっ!なんだこのトロい攻撃…っ!?」サッ

ブンッ

さやか(偽者)「…ちぇー。外したか」

杏子「な!?こ、こいつ、幻覚じゃ…」

さやか(偽者)「…私をただの幻覚だと思った?残念!実態も伴ってるのでしたー!」

モモ「おねえちゃーん。わかってる?つまり、私達は罪の意識の結晶体なんだよ。そして、その目的は、増殖。更なる私達(罪の意識)の増大」

モモ「…だって、魔女の目的が、それなんだもん。理不尽な社会に翻弄されて、裏切られて、食い物にされて、擦り切れた、哀れな女の末路…」

モモ「その果てに絶望した女が、最後に望んだたった一つの希望(絶望)が、全ての罪が適正に裁かれるという壮大な願い!!」

さやか(偽者)「…ま、才能が足りなくてさ。願いに押し潰された馬鹿は、そのまま世界を呪っちゃいましたーって、話」

モモ「だから、ね。裁く罪は、多ければ多いほど良いの!その分私の存在意義が増えるって訳でもあるんだし!」ニコッ

杏子「…何ごちゃごちゃと訳のわかんねぇ話を…!」

モモ「あっはっはー!お姉ちゃんの脳みそじゃ、理解出来なかったかなー?」

モモ「いひひひ♪これで、二対一♪どうする?どうする?君なら、どうする~?♪」ジリジリ

さやか(偽者)「きひひひひ。恭介に加勢でもして貰える?なら私は恭介狙っちゃおうっかなー。偽者の自分に恭介を殺されたって知ったら、本物のさやかちゃんはどうなるだろう♪」ジリジリ

杏子「…」

恭介「杏子っ!」

杏子「…ねえ恭介」

恭介「…何!?」

杏子「…リクエスト」

恭介「…は?」

杏子「…さっき、私に呼びかけてくれてた曲。アンコール」

恭介「…って、まさか…」

杏子「…意識は、在ったんだ」

恭介「…」

杏子「また、聴きたいな」

恭介「…わかった」スッ

もう一回
ttp://www.youtube.com/watch?v=iPeVIuRjUi4

モモ「あはは!戦闘BGMって奴!?」ヒュッ

さやか(偽者)「いいねいいね!盛り上がるかも!?」

杏子「…Jesus bleibet meine Freude♪ (主よ、人の望みの喜びよ)」ヒョイッ

モモ「かわされた…!?」

杏子「Meines Herzens Trost und Saft~♪ (我が心を慰め潤す生命の君)」シュッ

モモ「くっ!」チッ

さやか(偽者)「このっ!」

杏子「Jesus wehret allem Leide~♪   (主は諸々の禍いを防ぎ)」ジャラ…

モモ「つっ!マズイ!」

さやか(偽者)「はっ!?多節棍…!?」

杏子「…Er ist meines Lebens Kraft…!!♪    (我が命の力…!!)」ブンッ

モモ「くわっ!」

杏子「く。くくく…」

モモ「…くっ!忌々しい…!!」

さやか(偽者)「あ、が、が、が…!」ドサッ

杏子「はははは、はは、ははははは!!」

「うーん…なんか変な感じー。自分をやっつけるっての…あ!大丈夫?二人とも!」

杏子「あははははは!!」

「…んもう。笑ってばっかないで、返事しなさいよ。杏子」

モモ「なんで!?なんで此処まで来れたの!?コイツだけは、絶対に来させたくなかったのに!!」

杏子「…よお、随分美味しいご登場じゃん」ニヤニヤ

「あーっと、痛いトコ付くなぁ。いやー!ごめんごめん!道に迷っちゃって!」

杏子「ったく。ならどうしてこんなタイミング良く助太刀に来れたんだよ」ニヤニヤ

さやか「だって!恭介の演奏が聴こえたんだもん!」

杏子「だよね」ニッ

杏子「…ったく。どこいてもご主人様のトコに帰る犬かお前は」

さやか「え…?ご主人様…?犬…?」ドキッ

杏子「ものの喩えだよ!!」

さやか「杏子、やらしい…」ドキドキ

杏子「お前だ!」

さやか「あはは、冗談冗談!」

杏子「ああもうっ!」

恭介「さやか…君、杏子と知り合いだったの…?」

杏子「あー…さやか、えっと、これは、その…」

さやか「…ま、いいよ。そういうメンドクサイ話は後でしよっ。今は、アイツをやっつけんのが先」

杏子「…そうだね」

さやか「さて…と、ねえお二人さん。コンサートは、乱入おっけー?」

恭介「さやか?」

杏子「好きにしなよ。どうせ観客なんかいないんだ」

さやか「なら…さ」

さやか「Meiner Augen Lust und Sonne♪ (我が目の喜びたる太陽)」

さやか「…なんちゃって」ペロ

恭介「うそ…」

杏子「…やっぱ歌えんのね」

さやか「いつか恭介の伴奏で歌うのが夢だったからねー。杏子に先越されちゃったけど」

恭介「それだけ上手いんなら、言ってくれればいつでもしてあげたのに…」

さやか「あーっと、えっと、その…」

杏子「その勇気が無いから、いつか自然な流れで歌えそうになった時になんでも歌えるよう、それっぽい歌全部練習してたんだろ?このへたれめ」ヒソヒソ

さやか「ちょ!なんでそれを!」ヒソヒソ

杏子「何でお前は、そういうアホみたいな努力は、天才的なんだ…」

恭介「?」

杏子「Meiner Seele Schatz und Wonne♪    (我が魂の宝また嬉しき宿りとなり給う)」

杏子「へへーんっ」チラッ

さやか「むっ」

さやか「Darum laβ ich Jesum nicht♪     (故に我は主を離さじ)」

さやか「ふふん♪」チラッ

杏子「ちっ」

杏子さやか「「Aus dem Herzen und Gesicht♪ (この心と眼を注ぎまつりて)」」

杏子「…私の方が上手だな」

さやか「はああ?私の方が上手だし!アンタのは音痴だし!」

杏子「なんだとぉ!?」

さやか「何よ!」

恭介「喧嘩始めちゃったよ…」

モモ「むっきぃいいいい!なんで!?なんで私を無視しちゃってるわけ!?どうしてそんな余裕なのよ!!」

杏子「だって、お前、単体じゃ雑魚じゃん」

さやか「んー。そうだね。それに、私、他のみんなと違って体力満タンだし」

モモ「くっ!やっぱり!」

杏子「へ?どうしてだよ。みんなでワルプルと戦ってたんじゃねーの?」

さやか「それがねー。なんでかみんなの言うワルプルギス?ってのに、会えなかったんだよね」

杏子「はぁ?どういう事だ?」

モモ「…その理由、教えたげようか」

杏子さやか「?」

さやかに魔女から助けてもらった後のまどポの恭介ってこんなんらしいな↓






ゴミ条「お前はさやかじゃない!!何者だ!?」

仁美「あんだけ傷付いて平気って人間じゃありませんわ!!」

ゴミ条「そうだよ!お前はさやかを騙った化物だ!!」

ゴミ条仁美「「さやかを返せ!!」」

さやか「うわあああああああああああああ!!」ピキピキ

モモ「そこのお馬鹿そうな子はね。…人生史上最大のトラウマを、自分の力でやっつけちゃってるんだよ」

杏子「はぁ!?」

さやか「うぇ!?」

杏子「…なんでお前が驚くんだよ」

さやか「だって。心当たりないし…」

モモ「…美樹さやか最大のトラウマは、上条恭介の事故による、腕の怪我。そしてそれに伴い、永遠に演奏が出来なくなるという事件…」

さやか「…あー」

杏子「お前なぁ…」

モモ「…そう。貴女は、奇跡によって上条恭介の腕を治したんだ…自らにとって最大の悲劇を、力技で強引に解決した」

モモ「…最も、その対価の大きさには、まだ気付いてないみたいだけど」ボソッ

さやか「…それが、なんだってのよ」

モモ「…そうだね。実は、それ自体は大した事じゃない。」

モモ「大事なのは、その時の決意の固さ。…ううん。違うかな。その時の決断を、貴女は、例え後悔したとしても、絶対に悪だったと思う事は無いの」

モモ「…なんて言えばいいのかな。青臭すぎて明確な自分ルールががっちり確立しちゃってるから、それに則った行為に根拠無しの正しさを感じちゃってて…」

さやか「…よくわからん」

モモ「あー…一言で言うなら、正義馬鹿?」

さやか「…せっかくいっぱい難しい言葉使ってたのだから、そこはもうちょっと格好良い言葉でお願いします」

モモ「…まあ、兎に角。貴女のその時の決断は、貴女の大好きな上条恭介君の、これまた一番大好きな部分を、救ったという事に等しいのだから。
   …貴女にとってこれ以上正しい行いは無かった訳だ」

さやか「…」

モモ「…世の中って、さ。理不尽だよね。どんなに正しいと思える行為をしても、どんなに誰かの為を思って行動しても…それが相手の為になるとは限らない」

杏子「…」

モモ「例えその行為によって誰かを救う事が出来たとしても、それで自分が救われるかっていうと、またそうとは限らない」

さやか「…」

モモ「…もしかしたら、自分の正しいと思った行為で、自分の知らない誰かが傷ついてる、なんて事もあるのかも」

モモ「みんな、小さい頃は、さ。そんな世界を許せなくて、何とかしたくて、救いが有ると信じたくて…空想の正義の味方みたいが、本当にいると信じたくてさ」

モモ「そんな訳無いのに、ぶっさいくだよねぇ。甘っちょろくて、青臭くて、よわっちくって、まっすぐで…」

モモ「…こーんなつまんない受刑者、こっちはお断り!退治されそうで、トラウマの方からも関わりたく無いってさ!!」

杏子「…」

モモ「…もういいや。どうせ勝ち目無いし。さっさと殺しちゃってよ。グリーフシードもあげる!」ニコッ

杏子「…モモ」

モモ「…ねえ、お兄ちゃん。せっかくだから、私からもリクエスト!」

恭介「…え?」

モモ「どんな曲だって良いんだ。もっとお兄ちゃんのヴァイオリン、聞かせてよ!お兄ちゃんの演奏聴いてる内に、ファンになっちゃった!

モモ「だから最後に聴かせてよ!私が迷わないように、さ♪」

恭介「…」

モモ「あ、でもレクイエムとか、そういう宗教曲は嫌だなー。なんか、全然そういう意図の無いやつがいい!」

恭介「…」

モモ「んー。でも、私という存在を肯定する為には、やっぱ辛気臭い曲を頼んだほうがいいのかな?でもなー。…うん!音楽はよく知らないし、あとはお兄ちゃんのセンスで!」

恭介「…ふふ。無茶振りのセンスは、姉譲りだね」

恭介「…ヨハン・パッヘルベル作曲。シャコンヌ へ短調。なんてどうかな」

ttp://www.youtube.com/watch?v=Na5VT9Dmsg8

モモ「♪」

杏子「モモ…」

モモ「あー!良い曲だねー!辛気臭くて!ね?お姉ちゃん!!」ニコッ

杏子「…ああ。…いい曲だ穏やかで、優しくて…私には、曲の意味とか、由来とか、よくわかんねーんだけど、さ」

モモ「…感じ方はそれぞれだねぇ」

杏子「そうだね。…ねえ。モモ。きっと、音楽ってのはさ。曲を作った人にも、演奏した人にも、その時の気持ちってのが有って、けど、それを聞いた人たちの感じ方は人それぞれで…」

杏子「作曲者の意図を正確に伝えられる演奏ってのが、最良って言う奴もいるだろ?けど、私はちょっと違うんだ」

杏子「もしかしたら、作曲者の意図とは全然違う想いを受け取った人もいたのかもしれない。伝えたかった事が、伝わってないかもしれない」

杏子「…けど、そんなもんだろう?普通に生きてたって、気持ちはすれ違う。けど、それでも私らはなんとか上手くやってこれてるんだ」

杏子「結局、大事なのは、今ここで、生きているってことなんだ。聞いている私達と、弾いてる恭介の気持ち。ううん。本当に大事なのは、それをこれからどう育てていくか」

杏子「…なあ、モモ。此処だけの話な。私、これが終わったらさやかに宣戦布告しようと思うんだ」ボソッ

モモ「…なんで私に言うのさ」ボソッ

杏子「いいだろー?今は、お前は私の妹だ。…私の応援しろよ?」ヒソヒソ

モモ「…さやかちゃんと喧嘩になるかも」ヒソヒソ

杏子「月並みだけどさ。時にすれ違って…なんてのも、なんか、いいかもね」

モモ「…ぬるいなぁ」

杏子「…くくっ!ま、お前にゃわかんねーか」

モモ「…でも、ま」

モモ「わかるよ。なんとなく。いいよ。応援したげる」

杏子「さんきゅ」

モモ「…じゃあ、私もそろそろ斬ってくれる?もう飽きちゃったし」

杏子「…あいよ」

モモ「…」

杏子「…なあ、もう一回、最後にお姉ちゃんって、言ってくれない?」

杏子「…」

モモ「…」

モモ「…お姉ちゃん」ボソ

杏子「…っ!!」

杏子「…ありがとよ」

モモ「どういたしまして」

杏子「…」

モモ「…」ニコッ

杏子「…」

ザシュッ!!

杏子「…」

GS「」コロン

杏子「…ばいばい。モモ」


恭介「…終わった…か」

杏子「…」ペタン

さやか「ちょ!杏子!!?」

恭介「杏子!大丈夫かい?杏子!!」

杏子「うるせ。ちょっと休ませろ…」

恭介「あ、ごめん…」

さやか「大丈夫?意識はあるみたいだけど…」

杏子「ったく…オイ。恭介。アタシは疲れたから、寝るぞ。お前、アタシの事どっか適当な宿まで運んでけ。柔らかーいベッドの有るとこな」

恭介「ええ!?」

さやか「はぁああああああああああああああ!!!?」

杏子「プッ…!」

さやか「お!おおおお!おまえー!杏子ー!!ちょ、ちょちょちょ調子に乗るなー!?

杏子「あははは!」

恭介「な、何言ってるんだよ杏子…!」

さやか「むっきー!なんか凄くムカつく!そこに直れ!さやかちゃん必殺アームロックをお見舞してくれる!!」

恭介「何いつの間に持ち技にしてるのそれ!?」

杏子「あはは!なーーんてね。冗談じょうだ…「ま、いいや。わかった」お、おい!!」

さやか「なにいいいいいいいいいいい!!?」

恭介「よいしょ」ヒョイ

杏子「な、お、お姫様だっこだー?」

恭介「やっぱり女の子だね。軽いや」

杏子「ふ、ふざけんな!降ろせって!」

恭介「やだね。さっきのお返しだよ」クスクス

杏子「あーう…」

さやか「むっきいいいいいいいいいいいい!!!」

杏子「ああ。でも…いいね、これ。なんか、すっごく心地良いや…」

恭介「…ま、今回は特別、ね。あ、さやか。悪いんだけど、携帯でどこかビジネスホテルを予約してくれないかな?…ホテル代は僕のお小遣いでなんとかするよ」

さやか「…」

恭介「さやか?」

杏子「…さやか!?」

さやか「…!」キッ

杏子(あ…!やっべ~~~~~~~!!!!!調子乗り過ぎたか?…なんかフォローしねーと)

杏子「…あ、あのさ、さやか…」

さやか「…恭介」

恭介「ん?」

さやか「!」ガバッ

恭介「!」

杏子「あーーーーー!!」

チュッ

さやか「…杏子!!私、負けないからね!!」

杏子「…っ!!じょ、上等だこの野郎!吠え面かかせてやる!!」

恭介「」パクパク

杏子「こ、こっちだって今更譲る気はねぇからな!勝負ださやか!!」

さやか「恭介ーーーーー!!私アンタの事、好きだからーーー!!」

杏子「何言ってんだ!私だって!私だって!好きだからーーー!!!私の方が好きだからー!」

恭介「」パクパク

さやか「うおおおおお!?ふざけんよこの野郎!長年のこの想い、そう易々越えさせはせんぞー!」

杏子「こっちだって!ラノベみたいなボーイミーツガールしてんだ!幼馴染ポジションはこの場合負け犬確定ー!はい残念でしたーーー!!」

さやか「なめんなよコラぁああああ!!あんまフザケタ事言ってるとぶっ飛ばすわよぉおおおお!」

杏子「おんもしれえ!喧嘩ならいつでも買ってやるぞうらあああああああああ!」

恭介「」パクパク

さやか「うおおおおおおおおお!!!!」ゲシゲシゲシ

杏子「おおおおおおおおおおお!!!!」ゲシゲシゲシ

恭介「ちょ!痛い!二人とも、痛っ!?不思議な力使うなら僕を巻き込まないでよ!死ぬって!!」


まどか「…使い魔を全部やっつけて、合流しようと思ったら…」ヒョイッ

マミ「…なにやってるのよあの子達は…」ヒョイッ

ほむら「アホよ。アホが居るわ。それも二人も」ヒョイッ


杏子さやか「「ううるぅうううううううううあああああああああああ!!!!」」ボコスカボコスカ

恭介「…ちょ、やめ、死ぬ、ほんと…」フラフラ

杏子さやか「「どりゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」」


まどか「…駄目だこりゃ」


終わり!

…ただしオマケがあると書きたかった

後日
マミさんち

ほむら「…ところで」

まどか「ん?」

ほむら「…疑問が一個あるのよ」

マミ「…はあ」

ほむら「さやかは馬鹿だから別口だとして」

さやか「なんだとう!?」

ほむら「私はワルプルギスの夜、マミさんはダンプカー。…杏子は、家族。上条くんは、腕の痛みだったっけ?」

杏子「…ああ」

ほむら「…まどかのは?」

マミ「…あら?そういえば見て無いわ」

杏子「…どういう事だ?」

さやか「…さあ」

ほむら「…?…?どういう事なのかしら?」

さやか「うーん…」

マミ「まあ、いいんじゃない?こうして魔女は倒してしまった訳だし、今更幻覚のことなんて…」コクッ

ほむら「…それもそうね。…ちょっとまどかのトラウマに興味有ったのだけど」クスッ

まどか「怖いよほむらちゃん…」

さやか「ちなみにまどかのトラウマって何だったの?」

マミ「こら!美樹さん!!」

杏子「あんま人のトラウマほじくるもんじゃねーぞ?」

さやか「うーん…それもそっか。ごめんまどか」

まどか「別に私は言っても構わないけど…」

プルルル

杏子「ん?さやか、電話鳴ってるぞ」

さやか「ん。…仁美からだ。はいははーい?さやかちゃんですよー」カチャ

仁美「さやかさーーーーーーーん!!?大変ですわぁああああああああああああああああ!!!!」

さやか「ぶふうううううっ!?」

仁美「大変なんです!兎に角大変なんですわーーーー!!!」

さやか「ひ、仁美、ちょっと落ち着いて…どしたの?何かあった!?」

仁美「そうなんですの!大変なんですの!!一大事なんですの!!!兎に角!詳細は今テレビでやってますから!!ご覧になってくださいですのーーーーーー!!!」

杏子「テレビ?」

マミ「…取りあえず、付けてみましょうか」

ザワザワザワ

ほむら「ん?ニュースかしら?これ」

杏子「なんかものものしい雰囲気だなぁ」

マミ「何か事件かしら?」

さやか「…なにがあったのかな?」

まどか「あ…!」

さやか「…まどか?」

マミ「…どうしたの?鹿目さん」

まどか「…い、いぇ。なんでもないです…」ダラダラ

ほむら「まどか?なんでもないって事は無いでしょう。凄い脂汗よ」

まどか「う…」

杏子「お!テロップ出てきたぞ!」

さやか「おー!どれどれー?」ジッ


『衝撃!見滝原の山奥に幻の部族グンマー民を見た!』


さやほむあんマミ「「「「…」」」」

さやか「ま、まどか…まさか、あんた…」

まどか「…うん。ごめんなさい。あの日仁美ちゃんから聞いたグンマー民って言う単語が忘れられなくて、その日の晩に妄想してたら怖くなってきちゃって…」

さやか「こおおおおの多感なお年頃め!!」

マミ「っていうか、魔女倒しても効果持続するのね。あの幻術…」

ほむら「ちょっと。今一瞬写ったわよ。件のグンマー民」

杏子「ハンパ無い速度だった…私やさやかより速えぇ…」

さやか「うそん」

マミ「そんな、スカイフィッシュみたいな…」

ほむら「あっ!」

マミ「何!?今度は何なの!?」

ほむら「…今、テレビリポーターの傍に魔女の結界が発生したんだけど…」

マミ「ええ!?大変じゃない!助けにいかなきゃ!」

ほむら「…またちょっと写ったグンマー民が一睨みしたら…消滅…っていうか、蒸発した」

マミ「…」

さやか「…」

ほむら「…」

まどか「…」

みんな「…ぞぉおおおおおっ…」



おしまい

追記
見滝原市七不思議その7
伝説の戦闘民族グンマー

そいつらに触れる事は、死を意味するッッ!!

以上

みなさん、長い時間お付き合いいただきありがとうございました
へへ…3ヶ月ぶりの土日連休をこんなssに費やしちまったぜ…

で、批判もあるでしょうが、この後の二人の勝負の行方は、皆さんのご想像にお任せします

仁美ちゃんに二人とも敗北するも良し
その後負け犬同士傷を舐めあううちにレズに走るも良し
あんこちゃんが金玉に目覚めるも良し

自由とはそういうものだ

モモ魔女の件は、なんつーか、うん。

あれ辛くないやついんの
むりだったんだけど

まだ残ってた…
意外と読んでくれてた人多かったのね。重ね重ねありがとうございます

>>537
書いてて超楽しかった。いくらでも書ける気がしてた
ただ、読んでるみんなにうんざりされるのだけが怖かった

あと、コピペにした子。怒らないから出てきなさい

貴方がスレ立てるたびに聞いてる気がする
金玉の人だよねキュベレイの人じゃないよね

>>545
いや、あーいうのはくるものがあって面白かった
思わず自分がSSで書く時コピペして使ってしまいたいぐらいに

この魔女はあの方向で全キャラ攻撃しておけば、5人とも撃破できたんじゃないかなぁ

>>546ちがうよ!金玉の人じゃないよ!キュベレイの人はわかんない、ごめん
…けど、君が望むなら、今からアフターストーリーで金玉(もどき)やっちゃうよ
このスレ限定で、落ちたらそれまでだけど

>>548
ありがとう、最高の賛辞だわ。君のss読みたい
一応、口付けた恭介君が魔女のメインターゲットで、あんこちゃんが傍に居たので執拗に虐めたという、どうでもいい裏設定があります
…あと、まどっちのグンマーが危険過ぎたので、魔女もそれを恐れておりました

ごめん。やめる

…どうも。いや、風呂入ってただけなんだけどね…
そして、すみません。ハイになって調子乗ってました。以後自重します

…けど、今日だけは、折角保守してくれてた人居るので、ちょっとだけやります
あと、金玉『もどき』なんで、そこんとこ宜しく

教会前
お菓子を持ってきた恭介

恭介「…」キョロキョロ

恭介「…あれ?」

恭介「…」キョロキョロ

恭介「…?」

恭介(約束の時間なのに、いない…?)

恭介「うーん…?」

教会の門の裏

杏子「…」チラッ


恭介「…?」キョロキョロ


杏子「…うぷぷっ!」


恭介「…?おーい。杏子ー?」キョロキョロ


杏子(いひひひ!探してる探してる!)ササッ

恭介「うーん…困ったなぁ…」


杏子(いひひひ!こっそーり近づいてびっくりさせてやーろうっと!)コソコソ…


恭介「…」


杏子「…」ソロソロ


恭介「…」


杏子「…」ウキウキ


恭介「…」


杏子「…イヒヒ」コソコソ


恭介「…しかたないなー!かえるかなー!!」


杏子「!?」ビクン!!

ガサッ


恭介「…」

恭介「折角美味しいお菓子を持ってきたのになー!しかも今日は駅前で焼きたてのアップルパイまで買ってきたのになー!」


杏子(ええ!?アップルパイ!?)


ガサッガサガサッ!


恭介(動揺しすぎだろう…)


杏子(ど、どうしよう!アップルパイ!?食べたい食べたい食べたい!)


恭介(…でも、まあ)

恭介(…どうせこっそり忍び寄ってきて僕をびっくりさせようって魂胆だったんだろうしね。少しお灸を据えてやらなきゃ)

恭介「…もしかしたら、杏子はもうどこかに行ってしまったのかもしれないなー!」


杏子(は、はあああああ!?)

ガサッ!!ガサガサガサッ!!

恭介「…」

恭介「彼女は気まぐれだしね!うん。きっとそうに違いない!それじゃあ、もう僕が此処に来る意味は無くなってしまったなー!」


杏子(え、ええええええ!?ど、どういうことだおい!!!)


恭介「今日も、残念だけどこのアップルパイは持って帰って一人で食べてしまおうー」


杏子「だ…!」ガバッ

恭介(ふふ…僕だって、やられっぱなしじゃ無いんだぞ?たまにはこういう仕返しだって、悪くない)クスッ

恭介(あれから結構酷かったしなー。遊びに行ったらちょっと目を離した瞬間にそこらのヤンキーと喧嘩してるし、電車で出かけたら改札の上をジャンプで通って無賃乗車しようとするし)

恭介(極めつけはあれだね。一緒に外食に行ったら、僕がトイレに言ってる間に来てたメニューを全部平らげてて、しかも追加注文までしてたやつ)

恭介(…怒ったらキョトンとしてたし)ハァ

恭介(…これはもう、僕がモラルを教えるしか無いのかもしれない…!!)


杏子「きょ、恭介!!」ダッ

恭介「…はいはい」

杏子「わ、私はここにいるぞ!」

恭介「…うん。見ればわかるね」

杏子「そ、それに勝手にどこかに行ったりするような薄情者でも無い!」

恭介「本当?でも、この間ゲームセンターで、UFOキャッチャーやってる僕を置いて勝手にDDRやってたろ」

杏子「うぐっ!だ、だって、恭介が全然トレ無いくせに、あんまりにも粘るもんだから退屈で…」

恭介「それだけじゃないよ?帰りのバス待ってる時も、僕がジュース買いに言ってる間にふらっとどっか行ってたし。…お陰で二人で野宿だ」

杏子「あ、あれは、焼き芋屋台が通りがかってだな…」

恭介「お好み焼きの大食いチャレンジでは、先に早々に食べ終わって、苦しんでる僕の目の前でジャンボパフェの追加注文」

杏子「う、うまそうだったんだからしょうがないじゃん…」

恭介「誰のお金だ!」

杏子「い、いいじゃん!大食いの賞金は渡しただろ!」

恭介「ああ貰ったさ!翌日ピザに化けたけど!」

杏子「なんだよ!恭介のケチ!!」

恭介「ケチで結構!なんだか、今日の君は腹が立つな!」

杏子「なにをおお!?」

恭介「いいかい!?杏子!今の君は、与えられる事ばかり考えて、全然人の為に何かしてあげようと考えて無いじゃないか!」

杏子「…あ」

恭介「…僕だってあんまりお節介な事を言えるだけの人格者じゃないけどさ。君、妹さんに誓ったんだろう?少しずつでもまともな人間になって、社会復帰するって」

杏子「…」

恭介「うん。決めた!今日は、君が僕に何か与えてみてよ!じゃないとお菓子もアップルパイもお預け!」

杏子「えええええ!!?」

杏子「あ、与えるって…何を…?」ドキドキ

恭介「…何をって、それも自分で考えて欲しいなぁ」

杏子「あ、与え…」ドッキドッキ

恭介「…あー。そういえば喉渇いたなー…」ボソッ

杏子「なんて事言ってるんだよお前…」モジモジ

恭介「…肩凝ったなー…」

杏子「こ、この…変態野郎…」ボソボソ

恭介「…そういえば、そろそろ桜の季節だよなー。お花見に行きたいなー…」

杏子「さ、佐倉の季節!?」ビクッ

杏子「…なんだ。そういうことか」

恭介「?なにが?」

杏子「…なんでもねー」プイッ

恭介「?」

杏子「…しかし、与える…ねぇ。うーん…いざ何かしてやるって言っても…うーん。思い浮かばないもんだね」

恭介「…じゃあ、ヒントをあげようか。普段してもらって、嬉しい事を相手に返せばいいんだよ」

杏子「普段して貰って嬉しい事…?」

恭介「うん」

杏子「…食べ物をくれる事、遊びに連れて行ってくれる事、ヴァイオリンを聴かせてくれる事、面白い話を聴かせてくれる事…」ブツブツブツ

恭介「はは。そんなに気張らなくてもいいけどね」

杏子(…傍に、居てくれる事…)ジッ

恭介「ん?」

杏子(…なんて、ね。最後のは、私の嬉しい事だっての)ハァ

杏子「…そうだなー…」

杏子「…よし!」

杏子「じゃあ、今日は私が恭介にごちそうしてやる!」

恭介「え…」タジ

杏子「…おい。なんだその反応。人が折角…」ムカッ

恭介「あ、ご、ごめん…」

杏子「…まあ、いいけどさ」

恭介「…けど、今日は僕、現金は全然持ってきて無いよ?食材が買えないと…」

杏子「おいおい。これだからいいとこのお坊ちゃんは困る」ハハン

恭介「…どういう意味だよ」ムッ

杏子「大地の恵みはプライスレス」

恭介「…またそんなネタになりそうな発言を…」

杏子「くくくく。まあ、アンタは教会で待ってりゃいい。すぐに極上のご馳走を用意してやる」ニヤニヤ

恭介(…不安だ)

1時間後


杏子「ほれ。食え」ゴトン

恭介「…あれ?」

杏子「…どうした?」

恭介「…いや」

杏子「?」

恭介(…サラダに、おひたし、炒め物…野菜ばっかだけど、普通だ。…山菜でも採ってきたのか?)

杏子「…?まあいいや。じゃあ、さっさと食えよ」

恭介「あ、ああ…」モグモグ

杏子「えへへー。どうだ?」

恭介「…」モグモグ

恭介「…うん。普通に美味しい」

杏子「うむ!」ニコッ

恭介「…ごちそう様でした」

杏子「おう!お粗末様!ちゃんと全部食べたな?」

恭介「もちろん。…さっきはごめん。杏子の腕、疑ってた」

杏子「あー。いいっていいって!誤解が溶けたならそれで勘弁してやるよ」

恭介「…ところで、さっきの野菜、なんだったの?結構種類あったし、彩りも鮮やかで、見た目も楽しめたし…物知りなんだね。杏子」

杏子「んー?ああ。ま、サバイバル生活してたた頃もあるしね。食べられる野草に関しては、結構詳しいんだ」

恭介「参考までに、なんて野草を使ったか、名前を聞いてもいい?」

杏子「いいよ。まず、ツクシにタンポポ、セリ、ミツバ…」

恭介「定番だね」


杏子「ユキノシタ、シロツメクサ」

恭介「まさかクローバーが食べられるとは」

杏子「フキノトウ」

恭介「山菜って癖があるけど、いいよね」

杏子「…あと、彩りを添えんのに、その辺に生えてたオオイヌノフグリを適当に…」

恭介「…え?」

杏子「…オオイヌノフグリ」

恭介「…」

杏子「…オオイヌノフグ「もういいから」」

終わり

注:フグリ→陰嚢

ごめんね。あと、本物が来ててびっくりした
おやすみなさい

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