ペトラ「ラベンダーの香り」(27)

──第57回壁外調査より二日前


ペトラ(今日は紅茶にしようかコーヒーにしようか……)ウーン

ペトラ(あ、そういえば! この前町で買ったアレ、まだ飲んだことなかったっけ)

ペトラ(確かこの戸棚に……)ゴソゴソ

ペトラ(あったあった! ハーブティー)

ペトラ(壁外調査に行く前に飲もうと思ってたんだよね。えーと、ティーポットを出して、と……)カチャ

エレン「あの、ペトラさん」ヒョコ

ペトラ「え? ああ、エレン。どうしたの?」

エレン「今からお茶を淹れるんですよね? 手伝えることはないかと思って」

ペトラ「ありがとう。うーん、でも特にこれといって……あ、じゃあ今後のために淹れ方を覚えてもらおうかな。こっちおいで」

エレン「はい!」トコトコ

ペトラ「今日はハーブティーにしようと思ってるの」

エレン「ハーブティー?」

ペトラ「うん。飲んだことある?」

エレン「ない、と思います」

ペトラ「そっか、じゃあ初めてなんだね。気に入ってくれるといいんだけど」

エレン「はい!」

ペトラ「じゃあ、まず茶葉をティーポットに淹れるね。……うん、これくらいかな」サラサラ

ペトラ「それから熱いお湯を注いで」コポポポ

ペトラ「すぐに蓋をして、五分くらい蒸らす」

エレン「すぐ飲まないんですか?」

ペトラ「紅茶と同じだよ。蒸らした方が、味や香りがよくなるの」

エレン「なるほど!」

ペトラ「さて、待ってる間にちょっと話そうか」

エレン「はい」

ペトラ「もうすぐ壁外調査だけど、どう? 緊張してる?」

エレン「そ、そりゃあそうですよ! ずっと憧れてた調査兵団で初めての壁外調査だし、しかもリヴァイ班としてだなんて……!」

ペトラ「うんうん、気持ちはよく分かるよ。……私もそうだもの」

エレン「ペトラさんも?」

ペトラ「うん。壁外調査の前はいつも緊張してる」

エレン「そうなんですね……何度も行っているから、余裕だとばっかり思ってました」

ペトラ「あはは、そうなれたらいいんだけどね」

ペトラ「……でも、少なくともリヴァイ班には余裕を持ってる人なんていないと思うよ」

エレン「え?」

ペトラ「壁外調査に行けば行くほど、どれだけ恐ろしくて危険なのか思い知らされるの」

ペトラ「少しの判断ミスや迷いが命取りになることもある」

ペトラ「実際、それで命を落とした仲間もたくさんいる」

ペトラ「……次は私かもしれないって、何度思ったことか……」

エレン「……」

ペトラ「」ハッ

ペトラ「ご、ごめんね! 何か湿っぽい話になっちゃって!」

エレン「あ、いえ! 聞けて良かったです!」

ペトラ「そう?」

エレン「はい! オレも、もっと気を引き締めます!」

ペトラ「……うん、いい心がけだね! けど、あんまりガチガチに緊張するのもよくないよ」

エレン「分かってます!」ガチガチ

ペトラ「言ってるそばから凄く緊張してるように見えるけど……」

エレン「う……」

ペトラ「あ、そうだ。ちょっと待っててね!」

ペトラ「確かこっちの引き出しに入れておいたはず……」ゴソゴソ

エレン「?」

ペトラ「あった! エレン、手を出して」

エレン「は、はい」スッ

ペトラ「これどうぞ」

エレン「え、これ……!」

ペトラ「クッキーだよ。ハーブティーと一緒に買ったの。それ食べてリラックスしてね」

エレン「そんな、お菓子なんて高級品じゃないですか! 頂けません!」

ペトラ「気にしなくていいのに」

エレン「お返しします!」

ペトラ「返品は受け付けていませーん」

エレン「けど!」

ペトラ「うーん……じゃあ、こうしよう。出世払い」

エレン「出世払い?」

ペトラ「うん。エレンが今より偉くなったら、私に飽きるほどお菓子を食べさせてよ」

エレン「!」

ペトラ「返事は?」

エレン「は、はい! 約束します!」

ペトラ「うん! 男に二言はないからね? 楽しみにしてる」

エレン「はい!」

ペトラ「あ、そろそろハーブティーの方もいいかな。エレン、カップ出してきてくれる?」

エレン「はい!」トコトコ

エレン「持ってきました!」

ペトラ「ありがとう。じゃあ、淹れていくね」

ペトラ「ティーポットを回しながら、色が均一になるように注ぐ」コポポ

エレン「あ、何かいい匂いがします」

ペトラ「でしょ? 今回は茶葉をラベンダーにしたの」

エレン「ラベンダー?」

ペトラ「うん。緊張をほぐして、リラックスさせてくれるの」

エレン「……今のオレにぴったりですね」

ペトラ「エレンだけじゃなくて、皆にもね。ちなみに、さっきのクッキーにもラベンダーが入ってるんだよ」

エレン「へぇ! 色々使えるんですね」

ペトラ「そうなの。……さて、皆のところに運びますか」

エレン「あ、オレがやります!」

ペトラ「ありがとう。じゃあ、お願い」




──────


ペトラ「そうなのエレン?」


ペトラ「私達のことがそんなに」


ペトラ「信じられないの?」


──────

──────


オルオ「ペトラ!! 早く体勢を直せ!!」


オルオ「ペトラ!!」


オルオ「早くしろ──」


──────




エレン「……兵長。お茶、淹れました」コト

リヴァイ「ああ……」

エレン「ハーブティーにしてみたんですが……」

リヴァイ「……。ペトラが淹れていたものと同じか」

エレン「はい。……淹れ方を、教えてくれて」

リヴァイ「そうか」ズズ

リヴァイ「……薄い」

エレン「え」ズズ

エレン「本当だ……すみません、淹れ直します」

リヴァイ「必要ない」

エレン「え?」

リヴァイ「茶葉が勿体ねぇだろうが……」

エレン「そう、ですよね」

エレン「……オレ、淹れ方を教えてもらったとき、クッキーを頂いたんです」

リヴァイ「……」ズズ

エレン「高級品だから、頂けないって言ったんですけど……」

エレン「そしたら、ペトラさん、出世払いって……言って……」

エレン「……約束……して」

エレン「どうやって返せばいいんでしょうか?」

エレン「だって、ペトラさんはもう……!」

エレン「オレが、オレのせいで……!」

リヴァイ「……」ズズ

リヴァイ「エレンよ」

エレン「は、はい」

リヴァイ「飲み終わった。片付けは任せる」ガタッ

エレン「あ……分かりました……」

リヴァイ「それから、次はもっと濃く淹れろ」スタスタ

エレン「……、はい」

エレン「……」ズズ

エレン「本当に薄い」

エレン「けど、何か」ズズ

エレン「しょっぱい」


エレン「ペトラさんの嘘つき」


エレン「リラックスなんて、出来ないじゃないですか」

短いけど終わり

お付きあいありがとうございました

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年03月12日 (水) 21:54:06   ID: NG9jzhys

(;_;)

2 :  なぎ   2014年08月22日 (金) 12:58:02   ID: 5Op25FSZ

うああ(´;ω;`)

3 :  SS好きの774さん   2015年04月08日 (水) 00:27:20   ID: 3fRs90vH

(;_;)

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