P「学生生活でもするか!」(1000)

代行

有り難う御座います。

良く言えば即興、悪く言えばながらの身では在りますが、
出来得る限りの全力を尽くしたく存じます。

設定貼ったほうがいいかな

【4月】

P「うぅん…」

 朝。
 カーテンの隙間から射し込む陽の光が俺を目覚めさせる。

 だけどもう少し眠りたい。
 瞼を閉じたまま、手探りではだけた掛け布団を探す。

 ……見つけた。

 けどおかしい。
 布団は“なにかを包んでいる”。その熱源は確かに生き物のもので、つまりそれは、俺以外の人間が俺と同じベッドに入っているということになる。

P「(……どうせ響だろう)」

 勝手に俺の部屋に入ってきて、あまつさえ掛け布団を奪うとは、いくら可愛い義妹とはいえ許し難い。

 お仕置きが必要だな。

 半身を起こし、未だ薄暗い部屋で布団にくるまっている存在を視界に捉える。
 片手を布団に添え、いつでも剥げる準備をする。

 …3、…2、…1!

P「こーら響ぃ! 勝手に部屋に入るなといつ…も…」

 フサフサ。

 布団を剥ぎ取ると同時に抱きついて、『くすぐり地獄の刑』を執行しようとしたのだが。

 わふわふ。

 俺が抱きしめた相手は、到底可愛い義妹とは似ても似つかぬ毛の色(茶金)で、
 義妹よりも異常なほど毛深くて(ていうか毛むくじゃら)、
 全力で照れる義妹と違い、むしろ嬉しそうに息を荒げる。

 そんな相手だった。

 つまり。
 その。
 “彼女”は──

P「いぬ美いぃぃぃぃ!?」

いぬ美「ワンワン!」

 ぎゃあ! のしかかられた!
 滅茶苦茶しっぽ振ってる。 いまの抱きつきで「遊んでくれるの?」と勘違いしたっぽい。

 ……重い!!

P「ちょっ…、ギブギブ、いぬ美おりておりてばぶぶぶ」

 顔面がペロペロと舐められておる。
 いやこれはベロベロといったほうがいいのか?
 俺はこんなモーニングサービス頼んでないよ?

P「ばびぶぼばびばびぶぶぼ!!」

 まずい息が出来ない。

 やだよ!
 高校二年になって最初の日に「犬になめられ酸欠で死亡」なんてアホみたいな死に方は!

 ヘルプ! だれか助けてくれ…!!

曲がり角でぶつかった転校生:春香
別クラスの合唱部の生徒:千早
困っている所を助けた後輩:雪歩
親友の妹の友達:やよい
親友の妹:伊織
腐れ縁の友達:真
委員長:律子
近所のお姉さん:あずさ
田舎に住んでる従妹:亜美
田舎に住んでる従妹:真美
幼馴染み:美希
義理の妹:響
許嫁:貴音
担任の先生:小鳥
校長:高木

響「にぃにー? 朝からドタバタうるさいぞー?」

 そう言いながら登場したのは、二つほど歳の離れた義理の妹、響。

 響はいぬ美に押し倒されて絶賛呼吸困難中の俺を見て、笑い出した。

響「あはははは、ほんっとにいぬ美はにぃにが大好きなんだなー」

P「笑ってないで助けんがぶぶ」

響「あ、ごめんごめん。…ほらいぬ美、ごはんあるから食べといで」

いぬ美「わふッ!?」

 ごはんと聞くや、いぬ美はその巨躯を翻して一目散に部屋から退場してしまった。

 残されたのは顔面がヨダレまみれになった俺と、もう制服に着替え終えて身支度の済んだ響だけ。

響「…とりあえず顔あらってくるといいさー」

P「どうせだから朝風呂するわ」

 もそもそと、着替えを取り出して廊下へ向かう。
 響が居ないことに気が付いて、呼びに戻ると俺の部屋の片付けなんかはじめてやがった。

響「にぃに、ちゃんと掃除しないと汚いぞー」

P「ほっとけ!」

 部屋から引きずり出して、2人揃ってリビングへ向かう。

許婚マダー?(・∀・)ノシ凵⌒★チンチン

P「ふぅ…バッチリだな」

 朝風呂を済ませ、制服も纏い、朝食を終えたら、あとは学校に行くだけだ。

 玄関にある姿見の前でポーズを決めながら、響が来るのを待つ。

響「にぃになんか変態みたいさー」

 もう来てた。

P「毎日鏡で自分を見て、“俺って格好良い!”と思うことで自己暗示をかけてるんだよ。そうしてると、脳が勘違いして具合の良いホルモンを分泌しやすくなるから、いつしか本当にイケメンになってるという寸法だ」

響「にぃに、イケメンになってモテたいのか?」

P「まぁ、男として生を受けた以上はなぁ」

響「………」

P「響?」

響「にぃには今のままでいいよ」

P「なんだと!?」

響「にぃには充分、イケメンさー」

P「…さて、と」

 玄関から出て、家の外に向かい、敷地の外へ出たところで一息つく。
 春休みが終わって、今日からまた毎朝の日課をしなければいけない。

 それは隣り合う家の、寝坊助さんを起こしてあげること。

 寝るのが大好きなのはわかるけど、起こしにいかないと学校も行かずにずっと寝てるから、毎朝起こしに行くのが日課になった。
 まぁ、お隣さんだし。

 ちなみに親御さんは「あの子ってばPくんが来るとすぐに起きてくるのよねぇ」となんか諦め気味。
 信頼されているのだろうか。

P「じゃあ今日も美希を──」

美希「おはよハニ─!!」

P「グホァッ…!」

 側面からの強襲だと!?
 相手はだれだ!
 金色の毛むくじゃらです!
 また毛むくじゃらか! 朝から連続だぜ!
 今日なら毛有毛現に逢えるかもな!

P「ゴホッ…ゲホッ…!」

響「にぃに大丈夫か?」

美希「ご、ごめんねハニー……痛かった?」

P「い…いや……ちょっと、当たりどころが悪かっただけだから…」

 家の前で2分ほど悶絶していたら、次第に回復した。

P「…美希、今日は自力で起きれたんだな」

美希「うん! 美希がんばったの!」

 「褒めて褒めて」と頭を差し出してくるので、反射的に撫でてしまう。

 すると何故か響も張り合って頭を差し出してくるので、首の下を軽くくすぐってやった。ポニテヘッドって撫でにくいんだよ。

 2人とも気持ちよさそうに目を細めている。

 通学路 両手に花もち 立ち尽くす。

 なんだこの光景。

P「じゃあ、明日からも独りで起きられるなっ」

美希「それはヤなの」

 なぜぇぇぇ…?
 “無理”じゃなくて“嫌”と言った理由はなぜぇぇぇ…?

美希「今日は特別だから、がんばって起きただけなの。毎日がんばってたらミキ死んじゃう」

P「死なれたくはないな」

美希「でしょ!? だからハニー、明日からも起こしにきてねっ!」

 満面の笑顔。
 俺のことを、信じて疑わない笑顔。

 …この期待とお願いを裏切れるほど、俺は人間やめていない。

P「…少しは善処しろよ?」

美希「善処しますなのっ!」

 ビシッと、挙手注目の敬礼動作をやってみせる美希をみて、ついまた頭を撫でてしまう。

 幼馴染みとはいえ、甘やかしすぎだろうか。

P「で?」

美希「うん?」

P「今日が特別な日って言ったろ」

美希「言ったよ」

P「なんでだ?」

美希「今日から新学期なの」

P「正確には新学年というかなんというか」

美希「春休みあんなにいっしょだったのに、またミキとハニーは離れ離れになっちゃうの!」

P「学校違うからなぁ」

 お隣に暮らしている、幼馴染みの美希。
 家が近い、しかも部屋まで窓を挟んだ隣同志という条件が合って、昔からよく遊んだりして、気が付いたら懐かれてた。

 美希は俺のことを『ハニー』と呼ぶ。
 ……親愛の表れなんだろうけど、正直こっぱずかしいのが本音。

 それでこの美希さん、非常に「ヤル気」がないことで俺に有名。

 才能が有るし、やればどんなことでも標準以上を出せるはずなのに、面倒くさがってやろうとしない。
 美希としては、楽しく日々を暮らせればそれで良いみたいだ。
 なんという無欲。
 仏かこいつ。

 …つまるところ、勉学にしても同じ態度なわけで。

 美希は頑張ればできるのに、頑張らなかったから受験に落ちた。

 本当は俺と同じ学校に行きたかったらしいんだけど、俺が受けたのは進学校。
 油断して事前対策もなにもしていなかった美希は、そのまま親に勧められた私立へ。

 あの時の美希の
 「ハニーがミキを裏切ったぁ~!!」という叫びは、いまも耳の奥にのこってる。

 …知らなかったんだよ…お前が俺と一緒の学校行きたかったなんて。

 知ってたら、勉強教えてやれたのに…。

 美希の入った『私立961女学院』は、知る人ぞ知るお嬢様学校。ハッキリ言って、学校のレベルでなら俺の学校よりも上だ。

 美希みたいに外部生も受験などで入れるが、そこは基本幼等部からのエスカレーター式だとかなんとか。
 院長がかなりのやり手らしく、著名人の血縁者などにも率先して薦めてくるため、生徒にとってこの女学院の名はかなりの“箔”になる。

 そんなところに入学して凄いじゃないか、と言いたいのだが、美希自信はノリ気じゃなかったのでなんか可哀想だ。
 ちなみに、義妹の響もここの中等部に通っている。
 響は義母の連れ子で、俺が逢う前から女学院にいた様だから、多分エスカレーターに乗っているんだろう。


 …っと、美希や響と雑談しながら歩いていたら時間がちょいとヤバい。朝風呂なんて入ったからか?

P「響、美希、俺先いくから!」

 分岐路近くに差し掛かって、俺は駆け出しながら2人に告げる。

響「にぃに気をつけろよー!」
美希「浮気したら許さないのー!」

 美希はなにを言ってるんだ。

 ともあれ、駆け出したまま俺は後ろ手に返事を返すと、全力疾走へ移行する。

 961のとこは、専用の循環バスが走っているので遅刻にはなりにくい。
 だが俺の方はそうもいかなくて、こんな風に遅刻ギリギリになると韋駄天走りを披露せざるを得ない。

 フハハハハ、見よこの華麗なフォーム!
 まるで足がナルトのように渦を巻いておるわ!
 背景もまるで線が流れているだけのようだ!

 ……いける、いけるぞ!!

 このペースのままなら確実に始業式には──

P「──うぉあ!!?」

春香「きゃあっ!!?」

ほっぺもナルトのPはいやだな

P「…うぅ…」

春香「あたたたた……」

 「どんがらがっしゃーん」という音とともに、俺の意識はブラックアウト。

 一瞬だけ正体不明に陥るも、持ち前の体力ですぐさま回復に入る。

 …どうやら俺の不注意で女の子にぶつかってしまったみたいだ…。

P「だ、大丈夫?」

 まだ視界がグラつくが、女の子の安否が気にかかる。
 無理やり立ち上がって、よろめきながらも女の子に近付く。

春香「は、はい……すみませんぶつかって…」

P「いや、俺の方が走っててぶつかったから……ほら」

 平衡感覚が回復したので、女の子に手を差し出した。
 一瞬、スカートの中が見えた気がしたが、即座に視線を背ける事でそれを放棄。

 女の子は恐る恐るといった感じで手を取って、俺はそれを一気に引き上げた。

せめて全員出るまでは落とすわけにはいかん

ごめんなさい気が付いたら落ちてました書きます!!!!

P「本当にごめん。遅刻すると思って注意が散漫になってた」

 立ち上がった女の子に改めて怪我が無いことを確認してから、小さく溜め息を吐く。
 調子にノっていた分、自己嫌悪が激しい。

 女の子は俺と同じ学校の制服を着ているし、当然登校中だろう。
 ひとつ下か、同い年くらいか。
 サイドの髪に留めたリボンが印象的で、なんかこう、「女の子」って感じがする。
 同級生だとしたらみない顔だけど…。

春香「いえ、私のほうこそ前を見てなかったので…」

 見れば、女の子は手に手書きの地図のようなものを持っている。
 おや?

P「もしかして…転校してきたの?」

春香「なんでわかったんですか!?」

 なんとなく思いついたことを言っただけだが、正解だったのか女の子は驚いていた。

P「…もし道がわからないのなら、このまま一緒に行こうか?」

 もう遅刻ギリギリの時間帯なので、他に登校している生徒の姿はない。
 これは下心無しの親切心で、女の子も頷いてくれた。

P「はい、ここが正門でアッチが式場の体育館。多分誰かしら先生が居るだろうから、話しを訊いてみたらいい」

春香「はいっ、わざわざ有り難う御座いました!」

 元気よくお礼を述べてくれた。いい子だなこの子。

 キーンコーンカーンコーン

 …やべぇ!?
 もうみんな体育館移動し始めてるじゃん!!

P「じ、じゃあ俺はこれで。さっきは本当にごめんね、じゃまたっ!!」

春香「あっ…お名前…!!」

 去り際の女の子の言葉も聞く余裕もなく、俺は昇降口に突撃し靴を履き替え廊下をクレイジータクシーもかくやという勢いで駆け抜ける。

 二年生のクラスは隣の棟だから若干遠いんだよ!!

春香「………」

春香「また逢える、かな」

P「ぜぇ…ぜぇ…」

 なんとか教室にたどり着いた時には、クラスメイトは教室移動を行う為に廊下に並んでいる最中だった。

 今年から新しく担任になった音無小鳥先生に叱られつつも、列の適当な位置に入れてもらう。すぐさま、教室移動がはじまった。

 歩きながらも肩で息をしていると、後ろから聞き慣れた声がしてきた。

真「やー、よく間に合ったね」

P「俺も今日はダメかと思ってた……」

 振り返るまでもなく、声の主は友人の真だとわかる。

 中学校入ってからの腐れ縁で、今年もこうやって同じクラスだから、通算5年連続になる。
 数少ない俺の“女友達”で、気心の知れている大変有り難い存在だ。
 何度かうちに遊びに来たりしたこともあって、響と仲が良かったりもする。

真「へへっ、花の高校生活2年生初日から遅刻するなんておいしいなぁと思ってたのに」

P「マジで遅刻しなくてよかった…」

 『花の』と聞くと、それは確かに恐ろしい。
 俺だって男さ。
 女の子相手には格好つけたいし、もっと女の子と仲良くしたい。
 高校2年だもんよ。
 ギャルゲー美少女ゲーの主人公が一番多い学年だもんよ。

 そこに自分からマイナス要素をつくるなど……愚か! まさに愚の骨頂!

 そして恙無く始業式は終了し再び教室へ。

 ……さっきのリボンの子は2年生に居なかったな。やっぱり年下だったのだろうか。

 でも入学式は明後日なんだけどな?

小鳥「はーい、HR始めるのでちゃんと席についてくださいねー」

 することも無くダラダラと過ごしていたら音無小鳥先生……通称小鳥さんが入ってきてみんなが自分の席に戻っていく。

小鳥「はい、ではHRの前に、このクラスに新しいお友達が来ることになりましたので紹介をしたいと思います。…どうぞー」

 転校生?

 まさかと思っていたら、ガラガラと扉を開けて入って来たのは今朝ぶつかった…道案内をした女の子だった。

春香「…あ、天海春香です! 親の都合で転校してきました! 趣味はお菓子作り、特技は料理全般です! 1日1回転びます!」

 緊張しているのだろうか。最後のはなんだ。

小鳥「はい、ありがとうございます。とりあえず今日は後ろの席についてください。後日席替えをしましょう」

春香「は、はい!」

 小鳥さんに促されて、最後尾へと向かう。
 と、俺の席とすれ違うことになり、声はかけないまでも手を上げて挨拶してみる。

春香「? …あっ」

 気づかせたのが間違いだったのだろうか。

 俺に意識を向けてしまった女の子──春香は、そのせいで“自分の足に躓く”といい行為を行ってしまい…。

春香「え? あっ、きゃ、わあぁ!!」

P「うおぉぉ!!?」

 しかも倒れ際に俺の腕を掴んで、道連れになる形で2人して倒れこむ。

 どんがらがっしゃーん。

 ……教室内は沈黙。

 それはそうだろう。
 新学年初日から、転校生の女の子を、悪い意味で名の知れてる俺が押し倒しているんだから。

P「いてて……ん?」

 勿論、俺に悪気は無い。
 でも俺に組み伏されるように倒れている女の子は、とても気まずそうな表情をしているのが横顔から確認できた。

 いまの構図を簡単に言うと、
 ・春香がうつ伏せ、顔面からいったのか、お尻を上に突き上げている。or2みたいに。
 ・その上から俺が覆い被さってる。ご丁寧に、手をついたのは春香の腕の上で、腰がちょうど春香のお尻の部分に来てるという素敵仕様。


 どう見ても強姦魔です。

P「すみませんでしたごめんなさいもうしません」

 新学年初日から、クラス全員の前で転校生に土下座する俺。
 なんだこの状況。

春香「だっ、大丈夫ですから! 悪いのは私ですし…!」

小鳥「いいんですよ春香ちゃん。女の子にあんなことした子にはこのまま正座して反省してもらいましょう」

 あんた鬼か!?
 制服のズボンが汚れちまうやろ!!

 でも有無を言わさず教壇脇で正座の刑を執行。
 クラスのみんなは俺の奇行にはなれているのか、なんだか生温かい視線を向けられているだけにおさまっている。

 これも日頃の行いがなせることか、なんか泣ける。

小鳥「はい、じゃあ今日中に委員会や係員を決めてしまいますよー」

 うちの学校はクラス替えが無い代わりに、担任替えが行われることがある。
 小鳥さんは去年までは副担任しかやって居なかったが、今年は初担任と言うことも有ってか気合いが入っているようだ。

 ……あれ?
 ここって小鳥さんをやや上目遣いに拝みたい放題なんだけどなにこのベストプレイス。

 目の高さに小鳥さんの絶対領域があってふとももが凄いいやらしい。
 素晴らしい。

 やがてHRも終わり、今日はもうやることも無いのでみんな帰り仕度を済ませて下校しはじめている。

 小鳥さんからは「ダメだぞっ」のデコピン一発で許してもらえた。

 やばい。小鳥さんに惚れそう。

真「おーいプロデューサー? 帰らないの?」

 一緒に帰ろうというお誘いだろうか。だとしたら勿論付き合うのだが、その前に1つ。

P「えっと、春香さん?」

春香「あ、春香でいいですよ」

 呼び捨てでいいのか。なんか有り難い。

P「さっきはごめんな。あそこで抱き留めてあげられたら格好良かったんだけど」

春香「そんな、こっちこそごめんなさい。怪我…してませんよね?」

P「まったくもって」

真「プロデューサーは体力バカなのが唯一のセールスポイントだからね。あ、僕菊地真、宜しくね」

 さり気なく会話に入って、互いに挨拶をする。コミュ力たけぇ。

春香「あの…“プロデューサー”って…」

 お。
 スルーしてもらえるかと思ったらそんなことはなかったぜ!

真「この人のあだ名だよ。よかったら春香もプロデューサーって呼んであげるといいよ。悦ぶから」

 悦ぶって字が違う。
 変態か俺は。変態でした。

春香「かわったあだ名ですね」

真「やー、それがさぁ…」

 そうして真が語り出した、俺のヒストリー。

 高校1年生。
 入学したての俺は、入ってすぐから生徒会なるグループからの自由な学生生活の妨害を受け、これに反旗を翻した。

 多くの人員・有志を募り、規模を拡大し、教員方とも裏でコネクションを作り、
 「本当の学校生活とはなんぞや」、「真の青春とはいかなるものか」と民衆を煽動し、
 ついに『打倒生徒会』を果たしたのだ。

 ……正確には、長年の体制からちょっと横柄になっていた生徒会に痛いめみてもらおうとしたら、
 叩いたら意外とホコリが出てきて、信頼を無くした生徒会役員はそのままリコールとなってしまった。

 その動き、反生徒会運動を勝利に導いたのが俺の功績とされて、在校生から賞賛と嘲笑を込めて『プロデューサー』と呼ばれているわけだ。

 遺憾すぎる。

春香「はあぁ……」

 真の誇張気味な話しを聞きながら、俺の顔と真の顔を交互に見比べている春香。

 初日からセクハラしてきた男がそんな大層なことをした奴だとは思えないのかな。

 まぁ実際、アレは俺1人でやった事じゃないし、他の生徒たちが力を貸してくれたからできた偉業なのであって、
 誉められるべきは俺じゃないんだけどな。

真「そんなこんなで、いまこの学校でこの人のことを知らない人はいないってわけさ。この学校だけじゃなくて周辺の色々な学校にも噂は行ってるみたいで、多分新入生も半分くらいはこの話しを知ってるんじゃないかな」

P「マジで?」

真「ほんとほんと」

 ……しまった。

 ここは「まことか!?」って訊く場面だった……。

春香「じゃあ……プロデューサーさんっ!」

P「は、はい?」

春香「天海春香です、これからよろしくお願いします!」

P「──ああ、こちらこそ」

 改めて、互いに挨拶。
 出逢いは突然で、再開は最悪だったけれど。

 なんだか、いい友達になれそうだ。

律子「プロデューサー殿?」

P「うぉっ!?」

 びっくりした! びっくりした! ……危うくパルスライフル誤射するところだったぜ。

律子「…そんなに驚かれると心外なんですけど」

P「だ、だれもいないと思ってたからつい…」

 いま現れた彼女の名前は秋月律子。
 今日のHRでクラス委員長に自ら立候補し、そしてその座についたデキる女だ。
 実は去年生徒会に1年生でありながら会計職についていて、それを俺が辞めさせてしまったので、個人的には申し訳なくて話していると複雑な気持ちになる。

 態度や接し方は変わっていないので、その事を根にもっているのかいないのか判別つきづらいのも苦手意識に拍車をかけている。

 単に美人だから物怖じしてるだけかもしんない。

Toheartか

>>121
関西弁の律子か…ありだな

律子「もう下校時間ですよ」

P「あ、ああ、悪い。すぐ帰る」

律子「あまり校舎に残っていると、先生方に「また何かしている」と思われるでしょうから、ほどほどにしてくださいね」

P「うん。ありがとう」

律子「──私は、忘れ物を取りにきただけですので。では」

 ……行ってしまった。

春香「…えっと」

真「ああ、いまのはうちのクラスの委員長になった…」

P「ほれほれ、帰りながらでも話せるだろ。せっかく忠告してくれたんだから帰ろうぜ」

 また語り出そうとする真を制して、3人ならんで昇降口まで向かうことにする。

 やはり真の話しはどこか脚色されている気がする。

P「…ん?」

 昇降口を出てすぐ、校門のまえで女の子に囲まれてるイケメンを見掛けた。

 イケメンは俺を見つけると手を振って駆け寄ってきて、
 抱きついた。

P「うぎゃあ!!」

 このイケメンは水瀬。
 日本では聴かぬことのない水瀬財閥の次男坊で、一応俺の親友。
 名前? 知らん。

春香「うえぇぇ!?」

真「あーあ、水瀬はプロデューサーラブだねぇ」

P「嬉しくねぇ!!」

いることはいるから問題無いんじゃないか

 一通りの包容を終えて満足したのか、俺から離れると、一緒に帰ろうと言ってきた。
 勿論断る理由はない。

P「どうせだからちょっと寄り道して帰るか」

真「あ、いいね」

 水瀬…も賛成か。どうでも良いが近い。あと後ろによるな。ここが校門なせいもあってか尻が怖い。

P「春香は?」

春香「あぁ~……」

 返答に困っている。
 きっとなにか用事が有るんだろう。

P「ん、じゃあまた今度、機会があったら遊びいくか」

春香「あ…うん! ありがとう!」

 そうしてそのまま、校門前で別れる。

 さて、どこに繰り出そうかな。

 とりあえずカラオケとかの密室は怖いからやだな。

P「はー、遊んだ遊んだー」

真「くやしぃなぁ、パーフェクトまであとちょっとだったのに…」

 ファミレスで昼飯を食った後、ボーリング場に籠もった俺たちは時間も忘れて汗をかいていた。
 いまもう日が暮れる夕方だ。

P「でも真は本当に運動神経いいよなぁ」

真「体動かすの得意だからね」

 俺の倍近いスコアを出しといて得意で済ますのか。俺が下手なのもあるけどさ。

P「…あれ? 真ん家そろそろだっけ?」

真「ああ、うん。そこの角でお別れかな」

P「家まで送ってくぞ?」

真「いいよ、子供じゃないんだし」

P「子供じゃなくても女の子だろ」

真「───」

 …おや?

真「あ、あはははは! じゃあ僕もう帰るからバイバーイ!!」

P「ちょっ…おい!?」

 突然の猛ダッシュ。あっという間に見えなくなってしまった。

 …顔真っ赤だったけど、大丈夫かあいつ。
 ちなみにいま走り去っていく時、はためいたスカートの中が見えた。スパッツでした。

P「ぃよっし!!」

 なんかテンション上がってきたー。

P「……ああ水瀬、2人っきりだな」

 わかってるから、一々聴いてこなくてもわかってるから。そんな腕を組んでくんな気色悪い。

 なんかテンション下がってきたー。

伊織「お兄様!」

 夕暮れ時、帰路につく俺たちを呼ぶ声。
 振り向くと視線の先には、夕陽を背にした少女が2人。

P「おお、伊織じゃないか久しぶり」

伊織「黙ればか」

 いきなりの暴言!?

伊織「お兄様っ、今日は早く帰ってくると思ってずっと待ってましたのに」

 あはは、と困ったようにわらう水瀬。

 この少女、水瀬伊織は水瀬の妹で、歳はうちの響と近かったはずだ。

伊織「…どうせまたアンタが連れまわしたんでしょう?」

 冷たい流し目が俺を射抜く。
 うぅ、ご褒美ですぅ。

P「いや、確かに今日は俺から誘ったけど…」

 普段は水瀬が誘うほうが多いんだぞ?

伊織「さぁお兄様、一緒に帰りましょう。今日はやよいが遊びに来てくれたから、私たち2人で晩ご飯のお手伝いをしたのよ」

 聴いちゃいねぇ。

 溜め息を吐いていると、
 伊織の隣にいた少女…やよいと目が有った。

やよい「あっ…」

 あからさまに伊織が俺を敵視しているから近寄り難いのだろうか、一瞬駆け寄りかけて、止めてしまった。さみしい。

 …お、そうだ。

P「やよいやよい」

 小声で手招きをして、やよいを呼ぶ。
 やよいは一瞬伊織の方を見てから、パタパタと駆け寄ってきた。

やよい「うっうー! お兄さんお久しぶりですー!」

P「おお久しぶり。突然だがやよい、これをあげよう」

やよい「う?」

 やよいに手渡したのは、血に濡れた爪と口をもったクマのぬいぐるみだ。
 ボーリングの待ち時間でクレーンゲームやったらなんか取れた。

やよい「いいんですか?」

P「ああ。うちにあっても響は本物の動物と戯れてる方が好きだし、迷惑じゃなければもらってくれないか?」

やよい「ありがとうございますー!」

 ガルウィングしながらお辞儀をするやよい。超可愛い。
 堪えきれず、つい頭を撫でてしまう。

やよい「あ……えへへ…」

伊織「ちょっとアンタ、なにやよいに変なことしてるのよ」

 俺にかかれば撫でこもセクハラか……恐い世の中だぜ。

伊織「……ふーん?」

 伊織が、俺がやよいにあげたクマに気付いたようだ。
 視線がクマから俺に移ってくる。

 この視線はあれだ、
 「甲斐性のないアンタは私の分までは用意してないんでしょうね」とでも言いたいんだろう。

 だが甘い!!

P「ほれ」

伊織「へ?」

 カバンから、やよいのクマとは色違いのクマを取り出してプレゼントしてやる。

 ふっふっふ、水瀬を連れて行っている時点で、伊織とやよいへのプレゼントを用意するのは決定していたんだよぉ…!!

伊織「あ、あ…ありがとう」

P「どういたしまして」

 やよいと同じように頭を撫でてやると、顔を真っ赤にするものの特に抵抗はしなかった。

 うん水瀬よ。
 どんだけブリっ子してもお前を撫でる手は持ち合わせておりません。

P「……じゃ、俺はこっちだから」

 4人で少し歩いてから、俺は角を曲がってみんなに別れを告げる。

やよい「うっうー! お兄さんまた遊んでくださいー!」

伊織「風邪ひくんじゃないわよー」

 手を振って、再び帰路につく。

 伊織は前述の通り、親友である水瀬の妹。

 水瀬の家(豪邸)にも遊びに行ったことはなんどかあって、伊織とは初めて遊びにいったときに出逢った。

 最初は営業(?)スマイル全開の、子供にしてはしっかりし過ぎだろと思ったほど社交性抜群の女の子だったのだけど、
 ちょくちょくと遊びにいく度に態度が低温化。最終的にはいまみたいに『敵対心』にまでなってしまった。

 理由はどうやら、“大好きな兄を奪ったから”らしい。

 …奪ったつもりはないんだけどな…。

 学校で俺と一緒(高校はクラスが違うけど)。学校から帰っては俺の話し。休日も俺と遊ぶ。
 ……正直どうしてこうも好かれるのかわからないけれど、兎に角伊織にはそれが気にくわないらしい。

 まぁ、「嫌い」とは言われた事がないから、そんなに気にしてはいないけど。

すみませんちょっと牛乳あたったみたいでトイレいってきます



たすけて

なんとか開腹……書きます

 やよいは、そんな伊織のクラスメイト。
 ひどくウマが合うらしくて、いつも一緒にいるらしい。

 いいよな、親友って。

 実はやよいは家が近い(らしい)ので、買い物や散歩に出ると結構出くわす。

 水瀬の家で伊織と遊んでるところを逢ったのが初めかな。

 最初は怖がられてた気もするけど、何度も会ううちに段々と懐いてくれた。

 伊織も含め2人ともいい子だから、相手をしてると楽しいものだ。

P「ただいまー」

響「うぇ!? にぃに!?」

 うん、俺だよ。
 それとも響にはぼくが子供を食べちゃう緑色の恐竜に見えるのかい?

P「響ー? リビングかー?」

響「ちょっ、ダメだぞ! にぃに来ちゃだめ!」

P「そう言われたら行きたくなるんだ」

 はいガチャリ。

響「あ……」

 ……そこには赤身にバスタオルを巻いただけの響の姿が!!

 あとビチョビチョでフローリングの床を濡らしまくってる泡だらけのいぬ美の姿も!!

P「………」

響「あ…あ…あ…」

 さしずめ、いぬ美と一緒に風呂入ってたらいぬ美が逃げ出しちゃったのかな?

 最低限バスタオルを巻いて出てきた響は誉めてあげなければ。
 もしバスタオルも無かったら大変なことに…

P「あ」

 はいハラリ。

 そしてはいガチャリ。

 見てない見てない見てないYo→?

響「うわぁぁぁ───ん!!」

 泣くな響よ。

 おにいちゃんは響を泣かせたいわけじゃないんだよ。

俺は啼かせてみたいな

この大事な時間帯に明らかに集中力が途切れてきてる……
重ね重ね遅くなりますが宜しくお願いいたします…


赤身(せきしん)=裸

                       ヘ(^o^)ヘ  あ、どっこいしょー!!どっこいしょ!!
                         |∧  
                     /  /

                 (^o^)/ あ、ソーランソーラン!
                /(  )    (ソーランソーラン!)
       (^o^) 三  / / >

 \     (\\ 三
 (/o^)  < \ 三 
 ( /

 / く  ひやぁ~~~(ハイッハイッ!)~~~(ハイッハイッ!)ひっ(ハイッハイッ!)
       あぁあどっこいしょ!!あ、どっこいしょー!!どっこいしょ!!

ハァァ!!どっこいしょーwwwwどっこいしょwww

P「ソーラン節練習でもするか!」

アーwwwドッコイショーwwwドッコイショーwww

                       ヘ(^o^)ヘ  あ、どっこいしょー!!どっこいしょ!!
                         |∧  
                     /  /

                 (^o^)/ あ、ソーランソーラン!
                /(  )    (ソーランソーラン!)
       (^o^) 三  / / >

 \     (\\ 三
 (/o^)  < \ 三 
 ( /

 / く  ひやぁ~~~(ハイッハイッ!)~~~(ハイッハイッ!)ひっ(ハイッハイッ!)
       あぁあどっこいしょ!!あ、どっこいしょー!!どっこいしょ!!


ソーランwwwソーランwww

アーwwwドッコイショwwwードッコイショーwww

俺「っぁ・・・そぉ・・・らn・・・そ・・・ぉら・・・////」

【4月】

P「ソイヤ!…」

 朝。
 漁船の隙間から射し込む陽の音楽が俺を目覚めさせる。

 だけどもう少し踊りたい。
 瞼を閉じたまま、手探りではだけたはっぴを探す。

 ……見つけた。

 けどおかしい。
 布団は“なにかを包んでいる”。その熱源は確かに魚のもので、つまりそれは、俺以外のソーラン隊が俺と同じベッドに入っているということになる。

俺「っど・・っこいsy(ry///」(ふぇぇ・・・私にはできないよぉ・・・)

幼女「そぉーらん!そぉーらん!どっこいしょー!どっこいしょ!俺くんも元気だして一緒にやろ?」
俺「・・・うん!ソーランwwwソーランwww」

ksk

P「うぉい」

美希「むにゃむにゃ…Zzz…」

 泣いている響をなぐさめるわけにもいかず(裸だから)、
 仕方なしに部屋に戻ってきたら美希が寝ていた。
 ご丁寧にパジャマ姿で。

 ……窓の鍵かけ忘れたか。

P「なんでここで寝てるんだ」

美希「Zzz…」

P「美希の部屋はあっちだろ。いい加減、思春期の男の部屋に無防備に入ってくるのをやめなさい」

美希「Zzz…」

P「……美希」

美希「Zzy……なの…」

P「いますぐ起きないと弁当のときもうおにぎり作ってやらないからな」

美希「それはミキに死ねっていうの?」

 一瞬で起きた。
 いままで嘘寝だったんじゃないだろうな。

P「俺に迷惑かけるやつにつくる飯などない!」

美希「心外なの! ミキはハニーのためにお布団を温めてただけなの!」

P「パジャマ姿で?」

美希「なにもない方がよかった?」

P「パジャマっていいね!」

美希「待っててね、うん…しょ」

P「No!!」

美希「嘘なの。そんなことしたらハニーもっと困っちゃうもんね」

P「う?」

 パジャマにかけていた手を放し、照れくさそうに笑う。

美希「ハニーから『脱げ』って言われるまで、ミキは脱がないよ」

 ……そ、そんなこと言われて俺にどうしろと…。

美希「だからおやすみなさZzz」

P「寝たんかい」

 …まさか寝ぼけてた?
 いや、あの美希は確かに起きてた……くそぅ、言うだけ言って寝るとか狡いぞこいつ…。

美希「Zzz…ハニー…Zzz…」

P「……はぁ」

 あとで起こしてあげようか。

【4月の2】

P「おはよう」

春香「あ、プライベートさんおはようございます!」

P「…なぁ、その呼び方変えない?」

春香「え? ダメかな?」

P「ダメっていうか…恥ずかしい」

真「何を今更」

P「他の奴らはいいんだよ、俺が巻き込んだ張本人なんだから。でも転校してきたばかりの春香にまでそう呼ばれるのはなぁ…」

春香「……いや、かな」

P「そんなことは…」

真「じゃあいいじゃない」

P「ぐぬぬ」

 ガラガラ。

小鳥「はーい、HRの時間でーす。…ほらプロデューサーくん、早く席についてねー」

 ……ぐぬぬ。

>>242
 ボーっとしてて予測変換ミスった……

 プライベートさんで誰じゃボケェ

P「音無先生」

小鳥「ふっふ~♪」

P「小鳥先生」

小鳥「カーテンをひらいて~♪」

P「小鳥ちゃん」

小鳥「すべてのことを~♪」

P「ひよこ」

小鳥「ピヨッ!?」

P「やっと気づいた」

小鳥「こ…こらプロデューサーくん! ダメですよ年上の女性をからかったりしたら!!」

P「え? なにが?」

小鳥「だ、だからその…私を……ひょ…こ…って……あー恥ずかしいぃ!」

P「なにが琴線に触れたのかわからない」

小鳥「それで、どうしたんですか?」

P「スリーサイズ教えてください」

小鳥「怒りますよ?」

P「すみません…」

小鳥「で?」

P「生徒会っていまどうなってるんですか?」

小鳥「あぁ…たしか、校長先生が代理の生徒会長を立てて、再建まではその人が頑張ってくれる手筈だったと思いますけど…」

P「代理? 下手なヤツ呼んだら再建の時にゴネりそうですじゃないですか」

小鳥「校長先生の見立てだから、きっと大丈夫じゃないかしら」

P「ちなみに訊いても?」

小鳥「水瀬くんよ?」

P「Oh...」

小鳥「それじゃあ、ハイ」

P「? このプリントの山は?」

小鳥「情報料代わりに、一緒にクラスまで運んでくれませんか?」

P「なんてこった…」

小鳥「うふふ、それじゃあ一緒に行きましょう」

P「どうせなら俺全部持ちますよ」

小鳥「さすがに悪いから」

P「小鳥さんの腰が悪くなったら大へグハァア!!」

小鳥「あら、うっかり踵がプロデューサーくんのスネにキスしちゃったっ」

P「ぐおぉぉ…!!」

P「あ、委員長」

律子「はい?」

P「これ、帰りのHRの時に配ってほしいって小鳥さんから」

律子「ああ…じゃあ、このロッカーの中にしまっておいて下さい」

P「了解」

律子「……プロデューサー殿」

P「うん?」

律子「わた、私は、名前で呼んでくれないんですか?」

P「委員長を?」

律子「1年のときは呼んでくれてたじゃないですか」

P「まぁ、な」

 ちなみに俺は人を名前で呼ぶ癖がある。
 馴れ馴れしく感じるかも知れないけど、個人的にはそうして親密度を上げていくのがコミュニケーションの基本かと思ってる節がある。

P「でも、せっかく役職についたんだから、役職で呼ばれたほうが格好良くない?」

律子「別に…」

 うわぉ全否定。

律子「役職と言う記号で呼ばれるよりは…名前で呼ばれたほうが嬉しいですね」

P「…そっか、わかった」

 他ならぬ本人が望んでるんだったらいいか。

P「じゃあコレからもよろしくな…律子」

律子「───」

P「……律子?」

律子「は、はい、よろしくお願いします」

 帰り道。
 今日は真も水瀬も用事で居ない。
 さて、このまま帰っても暇だから、どこか寄り道でもしていこうかな。

 と、やってきた商店街。
 何を買うわけじゃないけれど……そうだ、CD物色しにいこう。

雪歩「うぅん…うぅーん…」

 何を隠そう俺は新幹少女の…ん?

雪歩「よいしょ、よいしょ…あ、ごめんな──さいぃぃぃ!!」

 ……なんか不思議な光景がある。

 中学…高校1年生くらいかな?
 女の子が大きな木を鉢ごと持って道をフラフラと歩いている。
 ガーデニング用か観賞用に買ったのかはわからないけど、女の子が持つ大きさじゃないだろあれ。

 周りを通る人はもの珍しそうに眺めるだけで、実際に手を貸そうとはしていない。

 女の子は──男が苦手なんだろうか。
 男性とぶつかっては、避けるように遠くへ逃げていく。
 逃げ道が無いと来た道を戻ってまでだ。

P「君、大丈夫かい?」

 自然と体が動く俺。
 輝いてる? ねぇ俺輝いてるっ!?

雪歩「あ、大丈夫で──ひいぃぃぃ!!」

P「あの…逃げないで」

 がっしりと、鉢を掴んで逃れられなくする。
 ……なんだこの木、滅茶苦茶重いんですけど!?

雪歩「離してくださいぃ! 許してくださいぃ!」

 女の子が叫んでいる。
 いかん、このままでは変質者と思われてしまう。

P「何もしないから! 本当に! 君の荷物が重そうだから心配になっただけの通りすがりなんだ!」

 しばしの問答。

 根気が要ったが、なんとか変質者ではないとわかって貰えた様子。

雪歩「あ…あの…本当に大丈夫ですから…」

P「いや、大丈夫じゃないって。これ男の俺でも重いよ?」

 そして親切を買って出た結果、俺は女の子の荷物を肩代わりしてあげている。

P「手痛くない?」

雪歩「あ……はぃ……」

 思った以上に内気な子らしい。
 すごい線の細い、深窓の令嬢といった容姿でかなりの美少女だけど、これじゃあナンパなんかされたら何も言えずに連れ込まれてしまうんじゃなかろうか。

 …いやな想像したら胸がムカムカしてきた。

P「えっと……俺は──プロデューサーってあだ名が有るから、プロデューサーって呼んでくれていいよ」

雪歩「ああ、あのっ、あの私…萩原……雪歩といいます…」

 はぎわらゆきほ。

P「雪歩ちゃんか」

雪歩「はいぃぃ…」

 雪歩ちゃんの荷物はこの木だけにとどまらず、雪歩ちゃんの背負うリュックは他のガーデニング用品でいっぱいになってた。

 …趣味なのだろうか。
 それにしても量が半端じゃないから怖すぎる。
 工事用のスコップなんてなんに使うんだ?

 ……着いた。

雪歩「あ、あのぉ…」

P「あっ、ごめん」

 高く聳える木製の門に呆気にとられてしまっていた。
 なんだこの家…和風ではあるけど豪邸じゃないか!

 まさか本当に深窓の令嬢だったとは…。

P「じゃあ…はい。これここに置いとくから」

雪歩「あ…ありがとうございました……」

P「どういたしまして」

雪歩「………」

P「……?」

 なんか超見られてる。
 なんだ? 俺はただ、この子がちゃんと門に入るまで見届けようと思ってただけんだけど…。

雪歩「……お、お茶の一杯でも、お淹れしましょうか…?」

P「え? あ、大丈夫大丈夫。お礼が欲しくて助けたわけじゃないからさ」

雪歩「そう…ですか」

 少し残念そう。俺も残念だけど、男が苦手な女の子の傍に居続けるのはよくないだろう。

P「…それじゃあ、また機会があれば」

雪歩「はっ、はい」

 互いに会釈をして、別れる。
 うーん。CDは見れなかったけど、なかなか有意義な放課後だった気がするな。

 さて、家帰って響たちと遊ぶとしようかな。

雪歩「………」

雪歩「『都立765大附属高等学校』の制服……」

雪歩「…また明日、お礼が言いたい…な」

すみません…体力がアラートを発していまして……
ここで一旦お休みさせていただきたく存じます…

ただでさえキャラ崩壊ものなのに、思考が鈍っているせいか度々とおかしくなる始末……申し訳ありません

大変お見苦しいものをお見せいたしました。
3時には仕事のために寝なければいけなくて、起きてからですと今のペースで書くのはまず不可能になってしまいますが、合間を見てチマチマとなら可能では有ります。

残っていましたら、書きます。
落ちていましたら、またいつか。
真に身勝手ながら判断は皆様にお任せいたします。

本当に済みませんでした。
本当にありがとうございました。

保守隊の働きに期待

【4月の3】

 今日は入学式だ。
 学業行事に於ける会場などの設営は、毎年2年生がやることに決まっている。

 だから俺は、いつもよりも家を早く出なければいけない。

 早く出なければいけない。

美希「むにゃむにゃ…」

 ……おわかりいただけただろうか。

P「ほれ、美希起きろ、起きなさい美希」

美希「うぅ~ん……ハニー…?」

 おう俺だ。
 お願いだから起きてください。
 寝るのが好きな美希を俺の都合で早起きさせるのは悪い気がするんだけど、
 だからといって起こさないまま学校にいったらこいつは1日寝て過ごす。
 しかもそれを「ハニーが起こしてくれなかったからなの」と俺のせいにしてくださる。

 美希の性格は理解しているし、そもそも「起こしてやる」と約束したのは俺だ。非難されてもそれに対し文句は無い。

 だからこう、起こしにきているわけです。

P「美希、起きてくれないと俺困るんだよ」

美希「うぅん……まだ6時なのぉ~…」

 こ…こいつ、時計も見ずに時間を当てやがった…!
 正確には6時30分だけど!

P「俺入学式の準備が有って早いんだよ。昨日メールしたろ?」

美希「ハニーからのメールは『愛してる』と『好き』しか読めないの…」

 器用過ぎる。

 ……まずい、このままでは……あ、そうだ。

P「美希、今日入学式終わって帰ってきたら、一緒に買い物にいかないか?」

美希「なのっ!?」

 布団が跳ねるほどのリアクションありがとうございます。

美希「それってデートのお誘い!?」

P「新学年なわけだし、色々買いに見てまわりたいなと思っててさ。でも1人だとつまらないだろ?」

美希「賛成なの! ハニーの意見に超同意するの!」

P「じゃあ美希、今日学校終わったら駅前の黒い銅像の前で待ち合わせな」

美希「はいなの! ミキ、メイっぱいおめかししていくねハニー!」

P「ただし」

美希「の?」

P「ちゃんと今日学校に行くこと、いいな?」

美希「そんなことっ、」

 起き上がった美希が、まるでベッドをお立ち台のようにしてポージング。

美希「ハニーとのデートの約束があれば半日は闘えるの!」

 何とだ。睡魔か? あと短っ。

P「よしよし」

美希「えへへ…」

P「──じゃあ、俺いくからな」

美希「いってらっしゃいのキスはいる?」

P「それじゃー」

 さぁさぁ急いで学校だぁ!!

律子「それはそっち、ああそれは先生に訊いて下さい」

 各クラスの委員長指揮のもと、俺たちは兵隊アリのように働き続ける。

律子「プロデューサー殿」

P「あい?」

律子「お疲れですか?」

P「いや、それほどでも」

 単なる力仕事なら得意分野ですし。

律子「申し訳ないのですけど、職員室から舞台装置小屋の鍵を借りてきてもらえません?」

P「いいけど、俺の他には?」

律子「みんなへばってますから、今は休ませてあげようと思いまして」

 あ、他の委員長が呼んでる。
 律子は律子で忙しいのか。

P「ん、わかった。行ってくるよ」

律子「すみません」

 よくあることさ、気にすんねい。

春香「プロデューサーさん?」

P「ん?」

春香「どこか行くんですか?」

P「律子…委員長に頼まれて、職員室に鍵借りに」

春香「そうなんですか」

P「………」

春香「………」

P「春香?」

春香「はい?」

P「なんでついてくるんだ」

春香「女子も休憩時間で、暇になっちゃいまして」

 男子はイスや舞台設定やらの肉体労働で、女子は会場の飾りつけや、案内看板の点検などをやっている。

 正直昨日のうちに終わらせておくべきことな気もする。

 当日にバタバタしすぎだ。

P「なら休んでたほうがいいんじゃないか?」

春香「大丈夫ですよ、体力には自信がありますからっ」

 そういえば汗をかいてる様子がないな。
 指揮をしてる律子ですらうかべていたのに、春香は涼しそうだ。

P「俺と同じか」

春香「はい?」

P「俺も体力が取り柄だから」

春香「そうなんですか? …そういえば、出逢ったときもすごい勢いで走ってましたもんね」

 それで人にぶつかってたら世話がないけど。

春香「あ、着きました」

 気が付くともう職員室の前だ。

 じゃあ、鍵を取って戻るとするか。

P「ちょっと待っててくれ」

春香「はいっ」

P「ほい」

春香「わっ、ありがとうございます」

 帰りがてら、自販機に寄って飲み物を調達。

P「真と律子の分も買っていってやろう」

 他の奴ら? 知らぬ。

春香「いただきます」

 2人でペットボトルを開けて傾ける。

 青春って甘酸っぺぇー。

 そして体育館到着。

 律子を探して、鍵を渡す。

 ……しまった、両手が塞がってる。

春香「私持ってますよ」

P「悪い」

 俺のペットボトルを渡して、律子と真の分は片手で持つ。

 さすればほら、片手がフリーダムだ。

律子「お遣いなんか頼んでしまってすみません」

P「いいよ、気分転換になったから。あと…ほい」

律子「…?」

P「のど、渇くだろ」

律子「あっ…ありがとうございます」

 よし、喜んでくれたかな?

真「あっ、プロデューサーと春香がジュースのんでる」

 休憩してたのか、真が近寄ってきた。
 ふふ、そう言うだろうとおもってちゃんとお前の分も…

真「春香、一口ちょうだい」

春香「え?」

 言うがはやいか。

 真は春香のもっていた“俺のペットボトルを”奪うと、ゴクゴクと飲み始めた。

 一口じゃねぇ。
 ……そういう問題じゃ無いな。
 真、ストップストップ。

春香「真っ、それプロデューサーさんの飲みかけっ!」

 ゴクゴク…ピタッ。

真「……え?」

 言われてから、真は春香の持っているペットボトルと俺の持っているペットボトルを見比べる。

真「あ──」

 何故春香が開封済みを2つも持ってて、俺が未開封を1つ持っているのか、その理由に気が付いたらしい。

 真の顔が見る間に沸騰していく。

真「ばっ、だだだだって春香かかかか」

 壊れ出した。

P「…これ、真にあげるつもりだったやつな」

 今更遅いが、手に持っていたペットボトルを渡してやる。
 真は素直に受け取るが、オーバーヒート状態で硬直してままだ。

P「じゃあそっちを返してくれ──」

春香「だっ、ダメです!」
真「だっ、ダメだよ!!」

 ハモった。
 お前ら俺から水分を奪うつもりか…!?

律子「プロデューサー殿」

 後ろから、やりとりをみていたらしい律子が声をかけてくる。

律子「女子が口をつけたものを欲しいと言うのは、少し破廉恥だと思いますよ」

P「うん?」

 これはもとから俺のものだぞ? それを返してもらって何が──

P「あ」

律子「……気が付きましたね」

P「…真?」

 恐る恐ると表情を窺う。
 真は顔を真っ赤にして、ペットボトルの所在に困っていた。

真「あぅあぅ…」

 俺の飲みかけと聞いた以上、残り少ないとはいえ飲むのは気持ち悪くて抵抗が有るんだろう。
 かといって捨てるのも勿体無いのかな?

P「いいぞ真、それ捨てちゃって」

真「えっ?」

P「さすがにもう飲めないだろ。俺は新しく買ってくるから、気にせず捨てちゃってくれ」

真「あ…う、うん、わかった、あとで捨てとくね」

 よしよし、これで和解だ。

 正直俺自身も、女の子に飲みかけを飲まれたという事実はこっ恥ずかしい。日頃から鍛えてるポーカーフェイスが役にたったな。

真「ごめん、プロデューサー」

P「気にするなって」

 つい響たちへの癖で、髪をワシャワシャと撫でてしまう。

 が、不思議と真は嫌そうにはしなかった。

P「──さぁーて、じゃあ新しいのでも買って…」

律子「プロデューサー殿」

P「うん?」

律子「休憩は終わりです」

P「…なん……だと…?」

律子「教室に戻ります。クラスごとに列んでください」


 青春って甘酸っぺぇー。

スーパースロータイムが訪れました。
要は仕事の始まりになります。

隙をみては書かせていただきたく思いますが、如何せん、本当に遅くなります。

重ね重ね、度々になりますが、どうかお許し下さい。

小鳥『──これより、都立765大学附属高等学校、入学式を開始いたします──』

 小鳥さんのアナウンスにより、座していた教員、在校生、新入生が起立する。

小鳥『校歌斉唱、「蒼い鳥」』

 そして教員と在校生で合唱。

小鳥『御着席下さい』

 その後は、校長先生や来賓の挨拶。会ったこともない教育委員会やらの役職者からの祝辞などが続いて、退屈な時間を過ごす。

小鳥『──続きまして、在校生からの祝辞。在校生代表、前へ』

 小鳥さんに呼ばれて、1人の生徒が立ち上がる。

 水瀬だ。

 水瀬が壇上に立つだけで、新入生や保護者の方からざわめきがたつ。
 くそぅ、イケメンめぇ。

 そして長くなく、飽きさせない程度の文を読み終えた後、御辞儀をして壇上から去っていく。

 人の前に立つことに慣れているのだろうか、その佇まいは凛として、とても画になるものだった。

小鳥『ありがとうございました。続きまして、新入生の挨拶。新入生代表、前へ』

 次は新入生か。
 普通は入試で一番成績のいい生徒がやるんだっけ。
 でもこの学校は中々“普通”とは違うから、どうなるのか楽しみだ。

 と、新入生代表が壇上に上がってきた。
 女の子だ。
 遠目で見ても可愛いのがわかり、今度は在校生も新入生もざわめきたっている。

 …ふむ? どこかで見掛けたことがあるような…。

雪歩『…し、新入生代表、萩原雪歩』

P「ぶほぉっ!?」

律子「………」

 驚きのあまり奇声を上げたら律子に凄い睨まれた。

 すみません…。

 新入生代表…雪歩ちゃんが壇上を去る際には、何故か会場全体から拍手喝采だった。

 おずおずとしながらも必死に文面を読み上げる姿を見て、皆様方“も”心うたれるものがあったろしい。

 俺?
 もちろん万雷の如くでしたよ?

真「やー、新入生の子可愛かったね」

 いまは入学式も終えて、帰りのHRのために教室で駄弁っているところ。
 担任の小鳥さんがまだ来ないので、暇を持て余している。

春香「なんかこう、抱きしめたら壊れちゃう感じがしたよね」

真「そうそう! ああ言う子みたいな、『お姫さま』って感じが羨ましいんなぁ」

 なんか意気投合してる。
 いつの間に仲良くなったんだろうか。

P「春香や真だって負けないくらい可愛いだろ」

 そもそも「女の子」に甲乙をつけるのが間違っている気がするけど、それにしてもこの2人は可愛い。

 俺がアイドル事務所にいたらスカウトしちゃうね。
 絶対ティンとくる。

真「あ……」

春香「う……」

 黙りこくる2人。

 ……あれ? 俺はマタなにカ変なコトヲ口ばしっタカナ?

律子「………」

 視界の端で律子が超睨んでる。
 怖い。
 「何か用か?」と訊くことすら出来ないくらい怖いですよ律子さん。

 リッチャンモカワイイデスヨ?


 ……律子は『可愛い』より『綺麗』の方が合うな。

小鳥「──以上で、明日からの授業に関するお話は終わりです。何か質問のある人ー」

 誰も、答えない。

小鳥「……じゃあ委員長さん」

律子「起立」

 ガタガタッ!

律子「礼」

 バタバタバタ!

 教室中、いや学年中が、本日の授業が終了したと同時に慌ただしく色めき立つ。

小鳥「こ、こらー! 廊下は走っちゃダメですよー!」

 小鳥が必死に声をかけるが、聞く耳をもっているのは極少数。
 みんな、春休み明けて最後の午後休みを満喫するために必死なんだろう。
 遊びにいく予定を話し合っている声がチラホラと聴こえてきているし。

律子「まったくもー…」

 慌ただしいクラスメイトを見送って、静かになった教室に残った律子が溜め息を吐いた。

春香「みんなヌーの群れみたいだったね」

P「怪我人とか出てないだろうな」

 静寂を取り戻した廊下に出ながら、何となく血痕なぞ探してしまう。

小鳥「どうしてみんなあんな盛大に校則を破るのかしら…」

律子「うちの学校に“廊下を走るな”という校則は無いですよ」

小鳥「ピヨッ!?」

P「本当か!?」

律子「校則は学生手帳に書いてありますけど…読んでないんですか?」

 あー手帳、手帳か。
 確かケツのポケットに……ほらっ!

 ジャラジャラ。

律子「……小銭入れですね」

P「小銭入れだな」

 あれー? 確かに普段はここに入れてるんだけどなぁ…。

小鳥「普通生徒手帳は左胸のポッケに入れるでしょう?」

P「俺、常識に捕らわれない男ですから」

律子「無くすくらいなら捕らわれ続けていて下さい」

 すみません…。

春香「でも本当にどこで落としたんだろ」

P「朝着替えた時は確かに有った。小銭入れ突っ込んだときに触ったから」

律子「じゃあ小銭入れを使おうと取り出したときじゃないんですか?」

 小銭入れを使ったとき…使ったとき……。

P「ジュース買ったときか」

春香「あっ、確かにポケットから取り出してましたよね」

P「拙いな、すぐに探しにいかないと」

律子「生徒手帳を紛失した場合には、反省文を用紙20枚分提出になりますよ」

P「いますぐ探してきます!!」

春香「わ、私も手伝います!」

 職員室に戻るという小鳥さんと、委員会に出席したら帰るという律子に別れを告げて、俺は春香と教室を出た。

P「わざわざ付き合ってくれなくてもいいから、春香も帰っていいんだぞ?」

春香「きっと2人のほうがすぐ見つかりますよ」

 そう言って微笑み返してくる春香。
 かわいいなチクショウ。

「うっ…うっ……うぅ…」

 どこからかすすり泣くような声が聴こえる。
 静かな廊下、俺と春香が立ち止まれば足音ひとつしないのに。

P「…なんだ…?」

 ウィッチか?

春香「プロデューサーさん、あっちの非常階段からですよ」

 春香が指さしたのは、廊下の突き当たりにあるドア。
 それは外に通じていて、非常階段が続いているのだが…。

 なるほど、確かにドアが少し開いていて、そこから風にのって声が聴こえているようだ。

P「誰か居ますかー…」

 ドアを開ける。
 とすぐに女の子の姿が見えた。

雪歩「ひっ…!?」

 雪歩ちゃんだ。
 可哀想に、さっきの大行進に遭遇してしまったのか、新品であろう制服は皺くちゃにになり、髪も乱れ放題になっている。

春香「あれ? 新入生代表の子ですか?」

P「そうだよ。…雪歩ちゃん、俺、昨日会ったやつだけど、覚えてるかな?」

 何もかもに怯えきった様子だった雪歩ちゃん。
 でも、俺と春香を見据えて幾らか落ち着きを取り戻したようだ。

雪歩「は、はい…覚えてます…」

 もたれ掛かっていた手すりから離れ、立ち上がって制服の埃を払ったり髪をなおしたりする。

春香「知り合いだったんですか!?」

P「昨日知り合った子が、偶然同じ学校に入学してきたんだ。俺も朝見て驚いたよ」

雪歩「す、すみません…」

 何が申し訳ないのか、恐縮してしまう雪歩ちゃん。

 なにも悪くないのだから、謝ることなんてないのに。

ほしゅ

春香「私、天海春香。2年生だけど、一昨日に転校してきたばかりだからほとんど新入生と一緒なんだ!」

雪歩「あ……萩原雪歩と申します、よろしくお願いいたします」

 礼儀正しく御辞儀をされて、慌て春香も御辞儀を返した。

春香「よかったら仲良くしてねっ!」

雪歩「は、はい、こちらこそ」

 朗らかに笑う雪歩ちゃんは、やはり儚い感じがして可愛い。
 なんというかこう、守ってあげたくなる。

P「…それで、雪歩ちゃんはなんでここに? 1年生は入学式が終われば今日は殆ど終わりのはずだし、校舎が別棟のはずなんだけど…」

雪歩「あ──あああのっ、これを…!!」

 あたふたとポケットから取り出し、渡されたのは……手帳?

春香「あっ、これ、プロデューサーさんの生徒手帳じゃないですか?」

 手帳を開く。
 …うん、確かに俺の手帳だ。写真に入学年、所属クラスが書いてある。これなら、持ち主の特定は容易いか。

P「……これを届けてくれるために、わざわざ?」

 男性が苦手なはずなのに。大行進に揉みくちゃにされて泣き出すくらい怖かったはずなのに。
 多分、俺のことを覚えていてくれて、それで昨日のお礼かなにかで届けてくれたんだ。
 恐怖を、抑えこんでくれてまで。

雪歩「あ、あの…ご迷惑……でしたよね…?」

 そんなことあるもんか。
 そんなはずがあるもんか。

 こんなにいじらしい後輩が頑張ってくれた事が迷惑だなんて、有るはずがない。

P「──ありがとう。怖かったはずなのに、わざわざ届けにきてくれて」

雪歩「ふぁっ…!?」

 なにか、感謝の気持ちを表現したくて、何時もの癖で頭を撫でてしまう。
 男性恐怖症の子にさすがに無神経だったかとやってから気づいたけど、
 雪歩ちゃんは顔を真っ赤にして、口元に握った片手を持ってきてモジモジしてるだけで、特別嫌がったり怖がったりしてる様子はない。
 よかった…。

少し仮眠しとけ

朝9時まで仕事か
やよい「お茶です、プロデューサー」P「すいません、やよいさん」
を思い出した

頭を撫でるだけで俺達でもモテる可能性が微レ存・・・?

春香「………」

 ……な、なんだ?

春香「それ、プロデューサーさんの癖ですか?」

 それ?
 …この“撫でこ撫でこ”のことかな?

P「ああっと、昔から義妹(いもうと)とかにやってたから…つい」

 凝視されているのが恥ずかしくなって、雪歩ちゃんから手を放す。

 雪歩ちゃんも顔を染めたまま硬直してしまっている。

春香「じゃあ、昔っから女たらしなんですね」

P「なんでそうなる!?」

春香「髪を触るのって、女の子にとってはすごい愛情表現なんですよ?」

P「…そ、そうなの?」

 つい雪歩ちゃんに尋ねる。
 雪歩ちゃんは顔をさらに紅潮させて俯いてしまった。

 …これはイエスでいいのかな?

>>445
ただしイケメンに限る

春香「──ではプロデューサーさん、どうぞ!」

 ずいっと、頭を差し出してくる春香。

 …え? 何? どうしろと?

雪歩「……たぶん、春香さんもしてほしいんだとおもいます…」

 雪歩ちゃんが耳打ちしてくれる。
 そうか、撫でればいいのか。

 ……なんだと?

P「……よし、よし」

 撫でこ撫でこ撫でこ撫でこ。

春香「ふおぉ…!?」

 なんか驚嘆してる。

 ああ、無意識にやるなら兎も角、「やって」と言われてやると滅茶苦茶恥ずかしい。

P「……もういいかい?」

春香「ん……んん、そうですね…今日のところはこれくらいで勘弁してあげましょう」

 いつの間にか俺が許しを乞う立場に立たされている…!!

一応

新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内

新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内

 キーンコーンカーンコーン。

 人気のない校舎に、正午の鐘が鳴り響く。

P「あ、拙い」

春香「どうかしたんですか?」

P「今日、これから友達と買い物の約束しててさ。急いで駅に向かわないと」

 あんなに楽しみにしてくれた美希を、俺が遅刻したせいで待たせるのは、イヤだ。

春香「そうだったんですか。それじゃあ、はやく行ってあげてくださいっ」

雪歩「…あっ、あの…また…お願いします…先、輩…」

 うん。
 雪歩ちゃんの言ってることがよくわからなかったけど、俺は力強く頷いて2人に別れを告げた。

 去り際に後ろから「それじゃあ一緒に帰ろっか」と話しているのが聴こえたので、あの2人も仲良く出来そうでなによりだ。

 『…先、輩…』

P「うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」

 なんかテンション上がってきたー!!!

小鳥「ピヨッ!? こらプロデューサーくん廊下走らないー!!」

P「ハァ…ハァ…」

 昼時とあって、人でごった返している駅前。

 待ち合わせ場所で汗を拭いながら美希を探すが、見当たらない。

P「そのまま来てるなら961女学院の制服着てるよな…」

 女学院のモノクロで統一された制服は、一部でとても人気があるらしいと真から聞いたことがある。
 個性よりも全体の調和を第一とする961女学院の象徴と言っていい存在だ。

 はて、美希はどこかいなーっと…。

美希「だーれだっ!」

 ふにょん。

 後ろから目隠しをされて声をかけられる。
 言わずもがな、美希だとわかる。

 背が足りないからか、背伸びをして抱きつくみたいに密着してきているので、
 “とある物体”が背中に滅茶苦茶当たっている。

 これはやばい。

P「美希、離れなさい、美希離れなさい」

美希「あはっ、やっぱりハニーは美希だってわかってくれたの!」

 嬉しそうに、飛び跳ねながら一歩距離をとる。
 振り返ると、カジュアルな服に身を包んだ美希の姿が見えた。

P「お待たせ」

美希「ミキもいまきたところなの!」

 お約束と言える会話を交わして、互いに笑い合う。

P「美希、わざわざ着替えてきたのか」

美希「うちの学校、制服で出歩くの禁止されてるの」

 そうだったのか…。

 まぁ、確かにお嬢様学校の制服着て歩いてたら目立つし、恰好のナンパのターゲットにされるだろうから納得だ。

美希「ハニーは制服なんだね」

P「うちの校則はそんなに厳しくないから」

 『公共の施設に赴くときは、制服を着用し節度ある行動をとること』なんて一文があったりするくらいだ。

P「……制服じゃ、やっぱり格好悪いかな」

 ただでさえ、美希は『美少女』に分類される存在であるのに、

 その隣に立ってるのが制服姿の冴えない奴じゃ美希に悪い気がしてくる。

美希「そんなことないよ」

 でも美希は、真剣な眼差しで。

美希「ハニーはどんな格好をしてても、ミキには王子様なの」

 まっすぐ俺の眼を見て、微笑んでくれた。

P「っ……」

 息をのんでしまう。

 まずい…これ以上直視していたらどうにかなってしまう…。

 「魅了(チャーム)」の魔法でも使えるんじゃなかろうかこの子は。

P「さて、先ずはどこに行こうか」

美希「お買い物じゃないの?」

P「買い物はあとでも行けるし、先ずは美希の行きたいところに行こう」

 俺の買い物に付き合ってくれると言うのだから、それくらいはしたい。

美希「ハニーと一緒ならどこでもいいの」

 うーん。
 美希ならそう言う気はしてたけど…どうしようかな。

P「じゃあ、適当にブラブラと見て回ろう。それでなにか気になるのがあったら入ってみることにしよう」

美希「了解なの!」

 歩き出すと美希は俺の腕に自分の腕を絡めてきて、ニコニコしながらすり寄ってくる。

 むぅ……柔らかい……。

明けた! 明けました!!

書きます!!

P「けっこう買い込んだな」

美希「ハニーが似合うっていってくれるから、嬉しくってちょっと買いすぎちゃった」

 黄昏時。
 一通りのショッピングを終えた俺たちは、2人ならんで夕焼け色の住宅路を歩く。

 俺の手には、美希が買っ洋服などの紙袋が幾つか握られている。

P「あんまり無駄づかいしてると大事な時に使えなくなるぞ」

美希「むっ」

 美希が口をへの字に曲げた。

美希「ムダじゃないの、ミキが綺麗になるために買ったものだから、これはムダづかいなんかじゃないの」

 お前は充分綺麗じゃないか。

P「あー、いまのは言葉の綾でさ、もう少し計画性をもってつかいましょうと」

美希「計画性ならもちろんあるよ!」

 ほほう?

美希「ミキが綺麗になればハニーがミキにメロメロになる。ハニーがミキにメロメロになれば、ミキはハニーのお嫁さんなの!」

 それは計画といえない。

あずさ「あらあら? 美希ちゃんにプロデューサーちゃん?」

 不意に声をかけられて、2人で声のした方を見る。

 どたぷーん。

 夕陽の光を纏うように立っていたのは、まだ年若い女性。

 その魅力的な体つきや落ち着きはらった仕草があまりにも堂に入っていて、図らずとも年齢以上の色香が醸し出されている。

P「あずささん」

 この人はあずささんと言って、うちの近所に住んでる2、3才ほど歳の離れたお姉さんだ。

 この近所では名物のような存在で、どこからともなく現れては困っている人を助け、
 帰り道がわからなくなっているのを逆に助ける……という光景が、度々見かけられる。

 1日に3回あずささんに会えると寿命が1年延びるらしい。
 もはや生きる都市伝説状態。

あずさ「今日は2人でデートかしら~?」

美希「そうなの!」

P「ちょっと駅前まで」

あずさ「あらあら~、若いっていいわねぇ」

P「若…あずささんまだ二十歳でしょう? 全然若いじゃないですか」

あずさ「でもあなた達よりはおばさんよぉ?」

P「五歳十歳の差なら許容範囲です。それにあずささんはおばさんじゃありません」

 キリッ!

あずさ「……あらあら~?」

 こんないい人が自分のことを卑下しているのが許せなくて、真摯な態度で答えてみる。

 そうしたら、あずささんは頬を染めて黙ってしまった。

 ……よし、自分の言ったことが馬鹿らしいと気付いてくれたようだ。

美希「………」

 ギュウウウゥ!

P「いたい痛い痛いいたいイタイ痛いいたい」

 脇腹が変形しそうなほど捻りげられてる!
 買い物袋があるから抵抗ができませんぜお嬢さん!

美希「…ハニーのばか」

 バカじゃないよ!?
 有名な進学校に通う健全な男子高校生だよ!?

 結局、あずささんとは互いに道すがらだったのでそれ以上は何事もなく別れることにした。

 ただ去り際、有耶無耶なうちに今度あずささんの家に遊びにいく約束がなされてしまった。
 ……いや、それ自体は構わないんだけど。

美希「………」

 …隣を歩く美希が超ぶんむくれてる。
 理由は……まぁ、わかる。

P「明日から普通授業だな」

美希「…なの」

P「そう言えば、美希はなんか部活とかやらないのか?」

美希「帰宅部おいしいの」

P「…み、美希だったらなにをやっても上手くやれるだろうに」

美希「そんなことしてるくらいなら、ハニーと過ごす時間がほしいの」

 思った以上に怒っていらっしゃる…。

P「美希」

美希「なぁに」

P「今日は楽しかったよ」

美希「なの?」

P「付き合ってくれて、ありがとな」

美希「……ミキも楽しかったの」

P「よかった」

美希「あずさが出てきてハニーが鼻の下のばすまでは」

P「の、のばしてない」

美希「ハニーはむっつりスケベだから顔に出にくいけど、ミキならわかるのよ」

 うぅむ…。

 天才的な感性を持っている美希が言うのだから、あながち嘘とも言い切れない。

 自覚がないだけで、もしかしてすごい顔してたのか?

美希「…くやしいの」

P「…は?」

美希「ハニーの隣にはミキがいたのに、ハニーはあずさにメロメロだったの! それはすっごくくやしいの!」

 そんな、俺は、美希を蔑ろにしたわけじゃ…。

美希「だから、ミキにはまだあずさみたいな『大人の魅力』が足りないのがわかったの!」

 ...Why?

美希「これからは、ハニーが余所見なんかできないくらいに『大人の魅力』に磨きをかけることにするの!」

P「はい……はい?」

 ちょっと待ってください。
 色々と言いたいことはあるけれど、取り敢えず一言。

 ……それ以上になられると本当にマズいので勘弁してください……。


美希「まっててねハニー! ミキ、キラキラしてみせるからっ!!」

すみませんまた仕事明けで落ちてました……書きます。

【4月の4】

 入学式が終わり、通常授業が始まったら、次にあるのは『部活勧誘』だ。

 どの部も新入生を獲得するために、10日間の制約を以て躍起になって勧誘をする。

 たまに強引な勧誘、恐喝めいた誘導などを行うバカな部が在ったりするらしいので、
 そういう不正を無くすために、生徒会役員は10日間、様々な部活を覗いて見回りをしなければいけない。らしい。

 ……さて、ご承知のとおりいま我が校には『生徒会』なる団体は存在していない。
 俺のせいですが。

 現行生徒会長代理を務める水瀬はあくまでも代理で、新役員の決定は9月の選挙まで無い。
 代理の水瀬も涼しい顔をして仕事をこなしているが、さすがに「部活動見回り」を出来るほど暇じゃない。

 それで、何が言いたいかと言うと。

P「……俺が代わりに、ですか?」

小鳥「ピヨ」

 そういうことらしい。

小鳥「先生方で話し合ってね。『生徒会討伐を煽動した彼なら、有名だしどの部も理解をしめしてくれるだろう』…ということになったの」

 確かに、在校生で俺を知らない生徒はいないだろう。
 生徒会がいなくなった張本人なんだから、その仕事を肩代わりするのもそんな不自然ではない…が。

P「だれの推薦です?」

小鳥「水瀬くんよ?」

 あのやろう。

小鳥「…引き受けてもらえるかしら?」

P「事情が事情ですから、わかりました。引き受けます。」

小鳥「ありがとう」

P「……小鳥さん」

小鳥「はい?」

P「後ろに持ってるロープはなんですか?」

小鳥「ヒトを縛るためのものよ?」

P「俺がもし断っていたらどうなってたんですか?」

小鳥「実は選択肢がないことを身をもって理解させるように言われてるけど?」

 …がっでぃむ…。

春香「じゃあ、プロデューサーさんはこれから部活を見に行くんですか?」

P「小鳥さんに頼まれたら断れないしなぁ」

真「部活動を荒らしにまくりにいくんだね」

P「ただの迷惑行為じゃないか」

春香「でも、プロデューサーさんなら運動神経良さそうだし、大抵の運動部は困らないんじゃないですか?」

P「ルールのもとに動くのって面倒くさい」

春香「ひねくれてる…」

P「──取り敢えず、部の体験までする必要は無いんだ。兎に角片っ端から視察していけばいい」

 小鳥さんから渡された、確認されている限りの部・同好会のリストを眺める。

 なかなか量があって、すべてをキチンと確認していったら10日で足りるかわからない。

 膳は急げだ、動きだそう。

P「…よし、まずは運動部からだな」

春香「けっこう数がありますね」

真「ほとんどの運動部は男子と女子で分かれてるから、単純に2倍化されてるもんね」

P「おい」

春香&真「?」

 何故ついてくる。

春香「わ、私まだ転校してきたばかりだから、一緒に部活をみてまわったら丁度いいかと思いまして…」

真「僕はたんに暇つぶしだよ」

P「真って部活入ってなかったか?」

真「入ってたけど、1年の終わりでやめちゃった」

P「それはまた何故」

真「僕、料理部に入ってたんだけどさ。そこでちょっとでも女の子らしいことを学ぼうと思って入ったんだけど…」

 また「女の子」か……真はどうもコンプレックスみたいのを持ってるようだ。
 こんなにかわいいのに。

真「……みんな、僕に試食ばっかりさせてくるんだ…」

 ししょく?
 死食レストラン?

真「料理部はその日の活動で1つ、お題の料理を作らなくちゃいけないんだけど、出来上がった料理を何故かみんな僕に食べさせてくるんだよ」

P「うらやましいな」

真「そりゃ、みんな上手い子ばかりだから美味しいよ? 食べて、褒めてあげるとみんな泣き出すくらい喜んでくれたよ? ……僕が男っぽいからね……」

 あー。

P「イケメン扱いされてたのか」

真「ちゃんと“女だ”とは伝わってたはずなんだけどね。……そうして、あまり料理もさせてもらえず試食するばかりの部活動は、ついに限界を迎えたんだ」

春香「やだ、聞きたくない…!」

真「…ったんだ…」

 ん?

P「なんだって?」

真「…とったんだ…!」

 とった? とったどー?

真「──太っちゃったんだよぉ! 毎日毎日バクバク食べ過ぎちゃってたらぁ!!」

春香「ひいぃぃぃ…!!」

真「うぅ……僕はもう料理部にいけない…」

 真は細いほうだから、端からみていたら別に気にはならないと思うのだけど。

 女子には女子の悩みがあるのか。

P「…じゃあ、運動部を見て回ろうか」

春香「そう、ですね」

真「いい部があったら入って痩せてやるぅ…」

 一日目、校庭系の運動部の半分を消化。

 二日目、校庭系の運動部のもう半分を消化。

 三日目、室内系の運動部の半分を消化。

 四日目、室内系の運動部のもう半分を消化。

 五日目、文系部を消化。

P「お?」

 文系部を消化してる最中、廊下から外の景色を眺めていたら、中庭にある花壇を手入れしている一団が見えた。

 まだ回ってない『園芸部』たちかな。

 何の気なしにに見ていたら、1人明らかに場に似つかわしくない、ゴツいスコップを持ち歩いている女の子を発見。
 雪歩ちゃんだ。

 雪歩ちゃんは他のメンバーが小さなシャベルで土を掘り起こすなか、上級生らしい女の子に指示されては何もない地面をそのスコップっであっという間に掘り返してしまった。

 なんだこの光景。

 六日目、家庭系部の大半を消化。

 七日目、家庭系部の残りを消化。

P「雪歩ちゃん」

雪歩「ひゃい!?」

 急に後ろから声をかけたのが悪かったのか。
 男の声に反応して怯えてしまった雪歩ちゃんは、自ら掘り返していた穴のなかに落ちようとしてしまう。

 ──させるか!

P「真っ!」

真「うん!」

 雪歩ちゃんの手を掴んで、そのままハンマー投げの要領で重心移動して、雪歩ちゃんを後方に投げる。

 乱暴なやり方だったが、真がフォローに入ってくれて雪歩ちゃんを見事に抱き止めてくれた。

春香「──プロデューサーさん!!」

 いい。
 わかってるさ春香。
 ハンマー投げの反動は、俺に返ってくるってことぐらい。

 これで、俺が雪歩ちゃんの代わりに穴に入るのは確定だ。
 でも雪歩ちゃんが土だらけになりながらこの暗い穴に落ちていくよりは、よっぽどいい。

真「プロデューサァァァァァッ!!」

 真の声を聴きながら、俺は。

 落ちる。

 落ちる。

 落ちる。

 ………。

P「すごい深い!!?」

家族の乱入で集中が途切れてしまったので読み返していたらプライベートさんで死にたくなりました

少しまってくださいごめんなさい

小鳥「もう、いったいなにをしていたらこうなるんですか?」

 なんとか小鳥さんのロープで引き上げてもらうことが出来た。

 …怖かった…。

雪歩「あっ、あの…ごめんなさい…!!」

 申し訳なさそうに、涙目になって頭を下げてくる雪歩ちゃん。

P「いいんだよ、急に声をかけた俺が悪いんだから」

 幸い怪我も無いし、イケルイケル!

小鳥「この穴はちゃんと埋めておいてくださいねー」

 忙しいんだろうか、早々に立ち去る小鳥さんに改めてお礼をいって別れてから、俺たちは顔を見合わせる。

P「……今日はもうかえるか」

真「そうだね」

春香「じゃあ、カバンとってくるね」

雪歩「ごめんなさいぃ…」

P「雪歩ちゃんも、よかったら一緒に帰る?」

春香「それじゃあ、私はここで」

P「応、また明日」

真「あ、今日は僕お店寄らなくちゃいけないからここで」

P「そうなのか? それじゃ、またな」

雪歩「………」

P「………」

 あっという間に2人きりになってしまった。
 なんか気まずい。

雪歩「…春香、さんたちとは、仲がいいんですか…?」

P「ん? あぁ…そう言えば最近はいつも一緒にいるな」

 だからといって、何か色っぽい話しがあるわけでもないけれど。
 ちょっとだけ、他の友達より仲が良いくらいなものだろう。

雪歩「……なんか、うらやましいです」

P「うらやましい?」

雪歩「…わたし、家のこととかこの臆病なこととか、そういうもののせいであまり友達ができなくて…」

 性格に関しては、そうだな。たしかに少しなおした方がいいかも知れない。無理をさせるんじゃなくて、少しずつでもいいから。
 家のことってなんだ?

P「でもさ、俺と雪歩ちゃんはもう友達じゃないか」

雪歩「え?」

P「苦手な男の俺とも、春香とも友達になれてるし、さっき会った真だって、きっと友達になれる」

 園芸部の人たちだって、いい人だったようだし。

P「無理に変わろうとすることなんてないから、雪歩ちゃんは雪歩ちゃんらしいままで、少しずつ馴れていけばいいんだと思うよ」

 なんか言ってることが抽象的すぎるけど、口が上手いほうではないから御了承ください。

雪歩「はいっ…ありがとうございます…!」

 夕暮れの中、儚げに笑う彼女はかわいい。

雪歩「……あ、あの…」

P「はい?」

雪歩「わ、わたしのこと……その…」

P「雪歩ちゃんのことを?」

雪歩「…わ、わたしも春香さんみたいに、名前で呼んでくれませんか…!?」

P「雪歩ちゃん…じゃなくて?」

雪歩「は、春香さんたちは…その、呼びすてにしてましたから……」

 ああ、名前って“呼びすて”って意味か。
 …でも……うーん…。

P「男から名前を呼びすてにされるのって、怖く感じないか?」

雪歩「だっ、大丈夫です! ……プライベートさんなら…」

 うむぅ……こうまで言われちゃうと…。

P「わかったよ。えーと……雪、歩?」

雪歩「はっ、はい…!」

P「雪歩」

雪歩「…はい!」

P「雪歩っ」

雪歩「はいっ!」

P「かわいい」

雪歩「は…えぇ!?」

 かわいい。

P「よしよし」

雪歩「ううぅ…」

さっき打っちゃったからこのざまだよネタじゃないんですすみません……

でも書きますありがとうございます

上から引っ張ってきた
任せた

新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内

新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内

眠い…頭痛い…何度も何度も書く書く詐欺すみません……

ごめんなさい……
酉はこれでいいですか…?

書きたい気持ちは変わらないのですが、どうにも頭が回りません。情けないです、申し訳ないです、
本当にすみません。

SS速報では、いぜんに梓「モンスターハンター?」というスレを落としてしまって以来、負い目、引け目のようなものをもってしまっていて、移ることが怖くも感じています。

ですが、身勝手に保守ばかりさせて自分は書きたいことを書きたいときに書くだけの現状を続けることへの罪悪感も、余りあるほどに感じております。


糞みたいな奴の書いたSS一つの問題ではありますが、どうすればいいのかわかりません。
何が正解に近いのでしょうか……。

書きためたらまた立てればいいだけじゃないか

>>753
 書き溜めに関しては、>>444も有りましてうまくいく可能性が低いです。



わかりました。ごめんなさい。
当座このまま、このスレが落ちるまでは、お力をお借りしながら書いていきたいと思います。

身勝手な振る舞い、本当に申し訳有りません。

今日のところは一度お休みをいただきまして
朝方、頭が整理できましたら再開したく存じます。

お手数をお掛け致しますが、皆々様も無理なさいませんよう、宜しくお願い申し上げます。

 次の日。
 八日目、同好会を消化。

 学校から部費は出ていないのだから、少人数による趣味的なものばかりだろうと、侮っていた。
 油断していた。

P「滅茶苦茶数が多い……」

 一覧表を確認する限り、ざっと100を超えている。そんなバナナ。

春香「『部』は最低でも5人、『同好会』は最低で3人はいないといけないんですよね…?」

真「いままで見てきた部だけでも相当な人数が居たのに、この上300人の生徒なんて全校人数を超えてるよ」

 幾つかは、兼任している生徒も居るのかも知れない。
 けれど、この数は異常だ。

P「遊び半分で創るだけ創って、もしかしたらメンバーはもう卒業してたりするかも知れないな」

春香「えぇ!? で、でもそう言うのはちゃんと学校が確認してるはずじゃ…」

P「生徒の管理をしてる生徒会があの様だし、部費が出てないから学校側もそう五月蝿くないのかも知れない」

真「ねぇ、もしかしてさ…」

 わかる。
 真の言いたいことがわかるぞ! やっぱり俺たちは相思相愛だったんだ!

P「活動“してる”“してない”の洗い出しも仕事の内なんだろうなぁ」

 ちくしょう、あのピヨピヨちゃんめ。

 明日会ったら耳元で「ひよこ」って囁きつづけてやる…!

 なんか効果抜群だったし…!

P「じゃあ、申請されてる『活動場所』を見て回って、そこを使っている様子が無ければ“活動なし”としてしまおう」

春香「いいんですか?」

P「必要があればまた申請していただきましょう。小鳥さんにもそう伝えとくから問題ないよ」

 多分。

真「よーし! じゃあサクサク進めていっちゃおう!」

P&春香「おー!」

 次の日。
 誓い通りに小鳥さんの耳元で囁き続けたら涙目になってしまい、クラス中から非難囂々だったのでまた正座の刑に。
 …クソッ、こんな素晴らしい太ももを泣かせてしまうだなんてなんてクズなんだ俺は!!

 九日目、確認終了(?)。

P「………」

春香「プロデューサーさん、どうかしたんですか?」

P「いや、『部』なのに同好会より下に表記されてる部があってさ」

真「どれどれ?」

 ──合唱部。

 部員、1名。

春香「……1名?」

P「多分他の部員は卒業しちゃったんだろうな。…この期間中に部員が集められなかったら廃部…ってことだろう」

 でも、小鳥さんが作った資料にわざわざ『同好会』より下に書かれてるってことは……多分、存続の見込みは薄いんだろう。

真「合唱部かぁ、たしか校長室の前にコンクールの盾とかが飾ってあったよね」

P「そうなのか?」

真「僕たちが入学するより前の人たちだけど」

 そうなのか……。

 あとまた「まことかっ!?」って訊くの忘れてた。

春香「でも、いまでも1人はいるんだよね?」

P「去年の時点で、先輩方が卒業したら部員が自分1人になるのはきっとわかってただろ」

 となると、残りの1人はまだ諦めていない可能性がある。
 廃部寸前の今日まで、自ら廃部届けを提出してはいないんだから。

真「…でも、音楽室は吹奏楽部が使ってたよね?」

春香「音楽準備室も、軽音楽部が使ってたよ」

 そう。俺たちは三日目に、音楽関係の部は回り終えてるつもりだった。
 でも資料には、合唱部の活動場所は「音楽室」と書かれている。

P「……部室を追い出されたのか…?」

P「ええ、『合唱部』についてなにか知らないかと思いまして…」

 手掛かりである吹奏楽部の部長に話しを訊きにいった。

P「…明け渡した?」

 どうやら、最後の1人であるその子は、今年度になって「歌うのに場所は関係ない」と、音楽室の使用権をすべて吹奏楽部へ譲ってしまったらしい。

 吹奏楽部としては有り難いことだったが、部長さんは申し訳なくも感じているようだった。

 そして、いまはどこで活動しているのかもわからないらしい。

P「…困ったな…」

 合唱部の先代の部長がズボラだったのか、最後の1人に関する資料が無く、学年もクラスも、名前すらも特定が出来ていない。

 いまある手掛かりは、吹奏楽部の部長さんから聞いた「女の子」、「長い髪」、「静かな子」、「あまり表情を変えない」、「すとーん」という特徴だけ。すとーんてなんだ。

 あと歌唱力が「べらぼうに高い」らしく、吹奏楽部の中にはその子の歌声のファンもいるとのこと。部長さん含め。

スーパースロータイムです…。

春香「困りましたね…」

 春香、真と一緒に、食堂のテーブルについて頭を抱える。
 色んな部に訊いて回ってみたが、手掛かりが一切ない。

 「まだ合唱部ってあったんだ」と言われたときは心が折れるかとおもった。

真「やっぱり、もう活動してないのかなぁ」

 俺も、段々とそんな気がしてきた。
 もう諦めて、「存続の見込み無し」の報告してしまおうかと思った。

 ──でも、“そうでなかった”なかった場合。
 その最後の子は、絶対に悲しむ。

 『歌』が好きなのか、『合唱部』が好きなのかはわからないけれど。

 いまも1人で戦っている子がいるかも知れないと考えると、なんでか心の奥がモヤモヤとしてきて、行動せずにはいられない。

P「……春香も真も、今日はもう帰った方がいいよ」

 冬に比べて陽がのびたとはいえ、夕暮れはまだ肌寒い。
 女の子なんだから、これ以上寒くなるまえに帰った方がいいだろう。

春香「プロデューサーさんは…?」

P「とりあえず、今日の分までを小鳥さんに提出してから帰る。合唱部は……明日見つけるさっ」

真「プロデューサー……」

 努めて明るく言ったつもりだったけれど、ここ最近ずっと一緒にいた2人には空元気がお見通しのようだ。

 明日見つける根拠なんてない。
 これはただ明日にすがりたいだけだ。

 そして明日になっても見つからなかったら、「仕方無い」で諦める。
 我ながら、なんて見え透いたくだらない未来像だろう。

春香「じゃあ、私も…」

真「春香。…今日は帰ろう」

 有り難う真。お礼に今度男物のヌード写真集をプレゼントしてやろう。

真「いらないよ!?」

 おっと、心の声が漏れてた。

P「はぁ~……」

 2人を見送ってからもテーブルから離れられず、机に突っ伏して盛大な溜め息を吐いた。

 もう諦めたほうがいいのかな。
 ……うぅ、心がモヤモヤさまぁ~ず。

律子「プロデューサー殿?」

P「……律子?」

 がま口を持って自販機に向かう途中の姿の律子が、溜め息を吐いた俺に気付き声をかけてくれたようだ。

律子「どうしたんですか、こんなところで。…部活動調査はもう終わったんですか?」

 俺の傍に春香と真の姿が確認出来ないのが不思議なのか、疑問顔で小首を傾げる。
 やばい、いまの仕草すごい可愛かった。

P「いや、それが……」

 愚痴、と言うわけじゃないけれど。
 なんだか話しを聞いてもらいたくて。
 律子も、自然と聴く体勢に入ってくれたので。

 俺は合唱部のことを、ポツリポツリと話していった。

律子「ちょっと待ってください」

P「?」

律子「合唱部の女の子って、もしかして如月千早のことですか?」

 きさらぎちはや…?

P「いや、名前まではわからなくて…」

律子「なら多分そうでしょう。去年の1年生唯一の合唱部員でしたから」

 …!?

P「なんで、律子がそんなこと」

律子「私、去年生徒会員でしたから」

 あ……そういえば、そうだった。

律子「私の担当は会計でしたけど……ある理由から、他の役員方が見るような書類にも目を通してましたので」

 何の気なしに見たものを覚えてたのか?
 記憶力半端じゃないな律子。

律子「…それに、好きだったんですよ、私。彼女の歌が」

 なるほど…ファンだったから、というのもあるのか。
 何にせよ、これは大きな進歩だぞ!!

P「──ありがとう律子!」

律子「ひゃあ!?」

P「教員たちに訊いてもよくわからなかったから、正直かなり参ってたんだ! でもお陰で光明が見えたよ!」

律子「あ…は、はい、お役にたててよかったです…」

P「“如月千早”だな!? よく考えたらその名前なら知ってるぞ、去年の『騒ぎ』のときに参加せず傍観に徹してた女の子だ!!」

 「女の子」、「長い髪」、「静かな子」、「あまり表情を変えない」、「すとーん」!
 確かに全て合致する!!

律子「プロデューサー殿の記憶力も大概ですね…」

P「ああもう、どうやって感謝の気持ちを表したらいいんだ! …律子!」

律子「は、はい!?」

P「キスしていい!?」

律子「したら口の中にハサミ突っ込んで舌切りますから」

 深呼吸して荒ぶりまくった精神を統一。

P「とりあえず、名前がわかればクラスも簡単に割り出せるな。あとは活動場所さえわかれば…」

律子「…あの、プロデューサー殿?」

P「ん?」

 どうした?
 キスはまだ諦めてませんよ?

律子「手を…放してもらいたいんですが……」

 おや? 気付かない間に律子の手を両手で包むようにして握っている。
 多分「ありがとう律子」のときだろう。

P「あ、ああ、ごめんな」

 やばい恥ずかしい。
 バカなこと口走ったけど、アレは冷たくイなされることが大前提で、
 実際に律子の手、生肌に触れていたという事実は俺の心拍、脈拍数をハネ上げてしまう。
 顔熱っ。

律子「………」

P「…そ、それじゃあ俺、もう行くよ。情報、本当にありがとう。今度なんか奢らせてくれな」

 ぎこちなく手を振って、別れ。

律子「……もー…」

小鳥「そうですか……如月千早ちゃん、だったんですね」

P「小鳥さんも知ってたんですか?」

小鳥「あ、いえ。合唱部だと言うことは知りませんでした。…ただ、彼女は普段から目立つ子だったので…」

P「目立つ?」

小鳥「あの子は、何故か他人と距離をとる癖のようなものがあって、あまりクラスに馴染めていないようなんですよね…」

 クラスに…って、1年以上も!?

小鳥「自分のことは自分でする。でも他の人には迷惑を掛けたくないから、敢えて輪の中に入ろうとしない。…そんな、印象です」

 うぅむ……そうなると部員集めはかなり難航しているのでは無かろうか……。

小鳥「──とりあえず、お疲れ様でした。同好会の調査までしてくれて助かっちゃいました」

 調査せずにはいられないな。

小鳥「千早ちゃんについては、後日私の方から話しをしようと思いますから──」

P「待ってください」

 異議アィリ!

P「明日…明日まで、俺にこのままやらせてもらえませんか?」

小鳥「え…? 部活動の調査を、ですか?」

P「なんかこう、ここまできたら直接その千早って子と話さないと気持ちが悪くって……」

 何が出来るわけじゃない。何がしたいわけでもない。
 ただ俺は、このまま小鳥さんに任せてこの仕事から解放されることを、素直に受け入れられない。

 まだ1日ある。たった1日しかない。
 でも、千早って子と話すには充分な時間だ。

 彼女が何を思っていま“そこ”にいるのか、
 彼女が何を考えていま“そこ”にいるのか。
 その問いをぶつけたい。その答えをききたい。

P「……ダメですか?」

小鳥「…そうですね、他の部活動については全て調べてもらっていますし、それなら明日いっぱいまで、という条件つきで許可しましょう」

P「──ありがとう、ございます!」

 やっぱり小鳥さんいい女だ!

 いいかげん遅くなってきたので、そろそろ下校しよう。

 そういえば、響が「帰りにお菓子買ってきて」とメールしてきてたな。
 いつもなら「自分で買いにいけ」というところだが、今日は機嫌が良いので買って帰ってあげよう。ジョロギア。

P「ふぅ……」

 昇降口で口を履き替えて外に出ると、校庭で部活の後片付けをさせられている1年生の姿が見える。
 運動部って大変だな。

P「~♪」

 あまりにゴキゲンな気分なので鼻歌なんか唄っちゃう。
 下手でも観客なんかいないから気にしない。

P「~♪ ……?」

 ん? なんだ?

 …微かにだけど、どこからか心地いい旋律が……。

P「こっち、か?」

 この道は体育館…その裏に続いている。
 最初は蚊の羽音程度にしか聴こえなかった音色が、近付くにつれて大きくなるように感じられる。

 不思議な力に引き寄せられるかのように、俺の足は前へ進む。

今日の勤務は本当に余裕がない……
千早撃墜前に1000いってしまったら申し訳ありません。

いましばしご猶予を…。

P「……あ、」

 体育館の裏。滅多に使われることのない非常階段の傍に、彼女はいた。

 それはちょうど陽の傾き具合が味方して、その狭く薄暗いはずの空間にスポットライトのように射し込んでいる。

 多分彼女は何の気なしに、ライトの下立っているのだろう。
 ずっと同じところに立っていて、たまたまいまこのタイミングに光が入ってきただけかも知れない。

 瞼を閉じ、祈るように旋律を紡いでいるその姿は、
 夕陽に照らされていて、言葉では言い表し切れないほどの神秘性を体現していた。

 彼女が如月千早だと、訊かずともわかる。
 彼女は『歌』が好きなんだと、尋ねずともわかる。

 そう理解した瞬間に、俺は自然と心の中で決めたことがあった。

 ──如月千早から、歌を奪うようなことは、あってはいけないんだと。

……精神的余裕を加味致しまして、許されるのでしたらSS速報の方が楽にはなるのですが……

続きもののスレを建てるの個人的には常軌を逸している諸行ですので、そのような方向性でいこうかと考えまして御座います…。

 一歩、また一歩、恐る恐ると近付く。
 猛獣霊獣の類なわけでもないだろうに。

 けど、いま目の前に在る光景があまりに現実味を欠いているせいで、自然と行動が慎重になってしまう。

 …ああ、なんか興奮しすぎて目眩してきた…。

 いまちょっとでも刺激を与えてしまったら、彼女の「ステージ」が終わってしまう。

 ──ドサッ。

P「しまっ…!」

 朦朧としていたせいで、油断してカバンを落としてしまった!

 ……沈黙。静寂。

 顔を上げることができない。

 彼女はいまどんな表情をしているのだろう。
 驚いているのか、怒っているのか、怯えているのか。

 歌はもう聴こえない。
 あれだけ明るかった夕陽も、もう落ちてしまっている。

 出逢うには、嫌なシチュエーションだった。

千早「……覗きですか?」

 多分、初めて彼女から俺に向けられた声。
 驚くほどに澄んでいて、氷のような冷たさも感じられる。

P「いや、その、帰ろうとしたら歌が聴こえたから気になって……」

 ようやっと顔を上げると、彼女──如月千早の瞳が、俺を刺すように向けられていた。

千早「よく、聴こえましたね。ここは体育館を挟んで対角線に在るはずなんですが」

 それは自分でも関心している。我ながら身体能力に恵まれ過ぎていて怖い。
 これも小さい頃から1日に何回美希が「あふぅ」と言うかを数え続けていたお陰だろうか。

P「邪魔…したよな、悪い」

千早「いいえ。もう帰るところでしたから」

 そう言い、千早は横に置いていた自分のカバンを持つと足早に俺の隣を通り過ぎてしまう。

P「…! 待ってくれ、如月千早!」

 ついフルネームで呼んでしまった。恥ずかしい。

千早「…なにか?」

P「千は…キミ、合唱部なんだよな?」

千早「はい、とりあえず今のところは。…もしかして、入部希望ですか?」

 え?
 どうしよう、その切り返しは想定していなかった。

P「いや、俺は…」

千早「知っています。『プロデューサー』ですよね?」

 ……そうだった。
 俺は殆どの生徒に対して自己紹介をする必要がないんだった。

千早「…合唱部の廃部通知に来たんですか? 見てわかると思いますが、部員は私1人です。集まる見込みもありません」

 淡々と、事実のみを告げる千早。
 陽が落ちてさらに暗くなった体育館裏に、冷たい風が吹いていく。

個人的勝手な予定では、このまま【4月】から【5月】【6月】~【3月】までを書く“つもり”ではあるのですが……

遅いくせに構想だけ無駄に長くて申し訳ありません…。


残りが50を切ってしましたが、もうスレッドを立てて移行した方がよいのでしょうか?

たてて参りました。
これよりは、此方の方で書かせていただきたく存じます。

 このスレッドを見て下さいました皆々様。

 このような駄文に長々と御付き合いして下さいまして、本当に有り難う御座いました。

 感謝の気持ちで人が殺せるのなら、今頃自分はシリアルキラーの仲間入りしていると思われます。
【殺害遺品(キリンググッズ)】は携帯電話でしょうか。


 改めまして、皆々様方に最上級の感謝と謝罪を。

 そしてこれよりも、上記住所にて宜しく御願い致します。

 by Private.




 ……いきなりで申し訳無いのですが、次の書き込みまで少々お時間を下さい…すみません…。

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