キュアムーンライト「誰だってみんな嘘をついている」 (1000)

  _,ノ . : :/ : : : : :/   /: :〃: : : : : : : : ://: : :/: : : : : : : : : : :l: :
 `> : :: : :/: : : : : ;'   /: ://: : : : : : : / /: : :/l: : : : :|: : : : : : :ヽ: :
´ . . : : : : :/: :/{: : : !   | :/ l : : : : : /   ': : :/ !: : : : |《: :| : : : : \_
: : : : : : /:/八: : :| \l/  !: : : /    |: /:l  〈 : : : | ヽ:'、   : : : : :
: : : : /´: : : : : :\气メ、>、|: 〃  ,_    V: :|  ヽ : : |  \、_
: : : : : : : : : : : : : : :弌爪_,心Y{     ̄ ̄ ヽ寸冖¬く:┼   \ ̄ ̄ ̄
: : : : : : : : : : : : : : : :ハ ゞミン}       ーァ斧汽辷__≧ァx/ :  ̄: : : :
: : : : : : : : : : : : : : : : ∧゚ `゜ l     o ゚ ー'ゞミー匕圷ソ.:'´`. : : : : : : : :

: : : : : : : : : : : : : : : : : ∧  o l         ゚ `¨¨´/: : イ: : : : : : : : :
: : :/. : : : : : : : : : : : : : :ヘ  /       ° ´ ´ /:/ /: : : : : : : : :/
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: : : : : : : : ::/´    `丶----‐\  ̄``//   /: : : : : : : :/〈 V: :
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キュアハッピー「みんな仲良しウルトラハッピー!」
キュアハッピー「みんな仲良しウルトラハッピー!」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1358363526/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1365601118


1スレ目:キュアミューズ「青色のプリキュアじゃなくてよかった」

2スレ目:キュアミューズ「青色のプリキュアが大嫌い」

3スレ目:キュアミューズ「青色のプリキュアなんて……」

4スレ目:キュアミューズ「……ビート、ごめんね」

5スレ目:キュアミューズ「大好きよビート」

6スレ目:キュアピース「なんで私の先輩は子供なんだろう……」

7スレ目:キュアエコー「友達ができない……」

8スレ目:キュアイーグレット「先輩と後輩がおかしすぎてついていけない」

9スレ目:キュアベリー「赤色のプリキュアじゃなくてよかった」

・・・・・撮影所

マリン「あー疲れた、もう身体中バキバキであちこち痛いんだけど」

ブロッサム「はぁ……」

マリン「早く寮に帰りたいよねー。今日ね、うちアクア先輩がめちゃくちゃ高級なお寿司食べさせてくれるんだよ!」

マリン「とりあえず大トロを一度でもいいからお腹いっぱい食べたいなぁ~……ぬふふっ」

ブロッサム「うう……」

マリン「なに、どうしたの? ブロッサムは大トロ嫌い? 中トロ派?」

ブロッサム「……帰りたくないです」

マリン「はぁ?」

ブロッサム「寮には帰りたくないんです!!」

マリン「な、なんで」

ブロッサム「だって……」

ブロッサム「帰ったらまずキツいトレーニンやらされるし、その後は大量のご飯も食べさせられるし……」

ブロッサム「全部終わってやっと一息つけると思ったら先輩たちはどんちゃん騒ぎ……わたし、もうついていけません」

マリン「でも楽しそうじゃん、桃寮ってさ。それにピーチ先輩だっているし」

ブロッサム「それがピーチ先輩……入院しちゃったんです」

マリン「ええっ!? なんで! いつ!!」

ブロッサム「オールスターズが公開された後すぐに。日頃のオーバーワークが身体に響いたみたいで、映画の撮影中の時はすでに全身ボロボロだったそうです」

ブロッサム「それでも無理してプリキュアの撮影を続けてたせいで……最低でも半年以上の入院を余儀なくされてしまいました」

マリン「ひぇ~……そんなことになってたなんて。今度お見舞いに行こうかな」

ブロッサム「こ、このままじゃ…わたしまでピーチ先輩と同じ目にあってしまいます…」

ブロッサム「お願いマリン! 助けて!」

マリン「助けてって言われてもねー……ドンマイ」

ブロッサム「ええっ!?」

マリン「あっ、ムーンライトさんだ」

ブロッサム「うう……もう帰りたくない……」

ムーンライト「……」




マリン「おーい、ムーンライト!」

マリン「……あれ、聞こえないのかな。気づいてないみたい」

ブロッサム「どうしてここにムーンライトが……? 今日は撮影がないはずですけど」

マリン「撮影所のトレーニング室にいたんじゃない? あの人仕事が休みの日でもちゃんとトレーニングしてるらしいよ」

ブロッサム「へぇー……」

マリン「演技は上手いし、身体能力もすごいし、おまけに顔も美人でスタイルもモデル体型。ずるくない? まさに完璧超人じゃん」

ブロッサム「ああいう人こそまさしく天才っていうんでしょうか」

マリン「お姉さんもすごい人らしいよ。いいなー……なにもかもが羨ましい」

ブロッサム「……かっこいい」

マリン「まぁ確かにかっこいいいけど」

ブロッサム「わたしも、ああいうかっこいいプリキュアになってみたいです。憧れちゃいます!」

マリン「ブロッサムが? うーむ……」

ブロッサム「な、なんですか」

マリン「ま、がんばってたくさん食べてたくさん鍛えないとね」

ブロッサム「うう……凡人はそうやって頑張るしかないんですか……」

マリン「なに言ってんの、自信持ちなってば。ピンクに選ばれたってことはそれなりの理由があるはずなんだから」

ブロッサム「ほ、本当ですか!? 実はわたしも天才だったりとか……!!」

マリン「それは分かんないけど」

ダーク「おい」

ブロッサム「!?」

マリン「あっ、ダーク。こんちゃーっす」

ダーク「ムーンライトは見なかったか?」

マリン「ムーンライト? さっきあっちに行っちゃったけど」

ダーク「なに!? もう行ってしまったのか……」タタタッ

マリン「あっ、行っちゃった」

ブロッサム「……」

マリン「あの二人って仲いいのかな? ムーンライトってももかさんと一緒にいるのはよく見るけど、ダークと一緒ってのはあんまり見かけないよね」

ブロッサム「ダークって……怖くないですか?」

マリン「えっ、そう?」

ブロッサム「わたしちょっと苦手です……」

マリン「見かけほど悪い人じゃないと思うけど」

ダーク「……」キョロキョロ

ダーク(見失ったか……せっかく一緒に帰るのを誘おうとしたのに……)

ダーク(まったく、せわしないやつだ)

trrrr trrrr

ダーク「!!」ピッ

ダーク「もしもし! ……って、なんだママか」

ダーク「え? うん……頑張ってるよ。うん、うん……大丈夫、みんなとも仲良くやってるから」

ダーク「えっ、いいよそんなの送らなくても。大丈夫だって…もう」

ダーク「私だって一人でも頑張れるんだからね。……はいはい、分かりました。じゃあ切るね」ピッ

ダーク「……とりあえずムーンライトを探そう」

・・・・・・

ムーンライト「……」

ムーンライト(エレベーター……遅いわね)

幼女「ねえねえ」

ムーンライト「……」

幼女「ムーンライトだよね? プリキュアの」

ムーンライト「……」

幼女「プリキュアだよね?」

ムーンライト「……そういうあなたは? ここは幼稚園じゃないのよ、なんでこんなところにいるの」

幼女「わたし、エキストラだもん」

ムーンライト「そう」

幼女「あくしゅして!」

ムーンライト「……」

幼女「あくしゅ!」

ムーンライト「……はぁ。悪いけどさっきトイレに入ったあと手を洗ってないの。残念ね、また今度」

幼女「じゃあブロッサムはどこにいるの?」

ムーンライト「知らないわ」

幼女「ブロッサムのサインがほしい」

ムーンライト「……子供がサインなんてもらってどうするの」

幼女「ともだちにじまんするの」

ムーンライト「そんなことしないでサインなんてものはオークションに売り飛ばしなさい、その方がもっと幸せになれるわよ」

幼女「?」

ムーンライト「どのみち今は仕事中なんだからサインなんてもらえないわ」

幼女「ムーンライトはしごとじゃないの?」

ムーンライト「もう帰るの」

幼女「わたしはね、きょうはおねえちゃんといっしょにきたんだよ」

ムーンライト「そう」

幼女「いまおねえちゃんをまってるの。エレベーターのまえでまっててっていわれたから」

ムーンライト「すごいわね、がんばって」

幼女「おねえちゃんもね、プリキュアになりたいんだって。なれるかな?」

ムーンライト「プリキュアより銀行員にでもなった方がいいってお姉さんに伝えておきなさい」

幼女「ムーンライトはおねえちゃんいる?」

ムーンライト「……頭の悪い子供特有の話し方ね。まるで話の焦点が定まらないわ」

幼女「いないの?」

ムーンライト「いるわよ」

幼女「おねえちゃんもプリキュア?」

ムーンライト「いいえ、プリキュアより貧弱な戦士よ」

幼女「?」

ムーンライト「……世代が違うから分からないでしょうけど」

幼女「プリキュアよりすごいの?」

ムーンライト「いずれプリキュアの方が凄くなるわ」

幼女「ふーん……」

ムーンライト「……」

幼女「おねえちゃんはすき?」

ムーンライト「嫌いよ」

幼女「きらいなの?」

ムーンライト「もし人を三人まで殺していいって法律があったら、必ず殺してる対象ね」

幼女「わたしはすき! なんできらいなの?」

ムーンライト「はぁ……いつまでこの会話を続ければいいのかしら? もうエレベーターも来るからこれでおしまいよ、分かった?」

幼女「ほんとうにきらいの?」

ムーンライト「大嫌いよ」

幼女「そっか、だからかなしそうなかおしてるんだね」

ムーンライト「……」

チーン

幼女「エレベーターきたよ」

ムーンライト「……楽しかったわ、もう二度と会うことはないでしょうけど。さようなら」

幼女「いつもおうえんしてるよ」

ムーンライト「それは心強いわ」

ここまで

・・・・・アパート

ダークドリーム「……」

ダークレモネード「なんで最近外にも出ないのよ」

ダークドリーム「うん……」

ダークレモネード「仕事は?」

ダークドリーム「うん……」

ダークレモネード「この前仕事のオーディション紹介してあげたじゃない。なんで行かなかったの」

ダークドリーム「うん……」

ダークレモネード「『うん』じゃないでしょ! なにボケっとしてんのよ!」

ダークドリーム「うん……」

ダークレモネード「はぁ……ダメねこれ。完全に魂抜けちゃってるんじゃない?」

イース「プリキュアになれなかったことがよっぽどショックだったみたいね。今回は自信があったみたいだから……余計に」

ダークレモネード「だからってずっとこんな調子じゃダメでしょ」

ダークドリーム「……」

イース「気晴らしにどこか遊びにでも行かない? なんなら奢るわよ」

ダークドリーム「うん……」

イース「……」

ダークレモネード「あ~あ。また来年チャレンジすればいいじゃない。いつまで落ち込んでんのよ」

ダークドリーム「……」

ガチャッ

ムーンライト「……」

イース「あっ、おかえりムーンライト」

ムーンライト「……」

イース「ダークは? 一緒に帰ってきたんじゃないの?」

ムーンライト「彼女なら殺して海に捨てたわ」

ダークレモネード「はぁ? なにそれ…」

ダークドリーム「……」

ムーンライト「こっちも死んでいるの?」

イース「生きてるわよ。まだ立ち直れてないだけ」

ムーンライト「立ち直れたところでどうせまた落ちるわよ。むしろずっとこのままの方が楽なんじゃない?」

ダークレモネード「ちょっと……なんなのよその言い方。あんたほんと生意気ね」

ムーンライト「事実よ。才能のない人間は何度オーディション受けても無理ってこと」

ダークドリーム「……」

ダークレモネード「ッ……いい加減にしなさいよ!」

イース「ちょ、ちょっと落ち着いて」

ムーンライト「逆にプリキュアになれたっていうのにわざわざプリキュアの名前を捨ててこんなところに住み着いてる人間もいるっていうのが、皮肉な話ね」

ムーンライト「そんな人間が落ちた人間を励ましていて滑稽だわ」

イース「……こんなところに住んでるのはあなたも同じでしょ」

ムーンライト「私はプリキュアとしての自分を捨ててなんかいない。あなたみたいに逃げ込んでここに来たわけじゃないの」

イース「……」

満「ダークドリーム、ここにいたのね。あなたに手紙が来てたわよ」

ダークドリーム「……手紙?」

満「あなたの妹からよ。定期的に来てるじゃない」

ダークドリーム「……」

ムーンライト「妹? 妹なんていたの」

ダークドリーム「……部屋に戻る」

ダークレモネード「あっ、ちょっと…」

ムーンライト「あれじゃあ死んでいるのと変わらないわね」

ダークレモネード「……」

イース「ムーンライト…ちょっと」

ムーンライト「悪いけど話し込んでる時間はないわ。私も部屋に戻りたいの」

イース「ちょっとだけでいいから、話に付き合って」

ムーンライト「……いいわよ。ちょっとだけね」

イース「あのねムーンライト、みんなあなたとは仲良くなりたいと思ってるの。だからあなたにももう少し…」

ムーンライト「時間切れよ。これで話はおしまい。続きはまた今度」

イース「……」

ダークレモネード「なんなのよあれ……どんな教育受けたらあんな人間になるわけ」

イース「はぁ……誰とも仲良くする気はないみたいね」

ダークレモネード「あんなやつこのアパートから追い出しちゃいなさいよ。あいつがいるだけで空気が悪くなるんだけど」

満「ちゃんと家賃は払ってくれてるわ」

ダークレモネード「あいつほんとムカつく…一回しばこうかな」

イース「やめておきなさいよ。返り討ちにされるわ」

満「ムーンライトはともかく、ダークドリームには早く元気になってもらいたいわね」

イース「まったくだわ。あんなに落ち込んでる姿を見るのなんてはじめて」

ダークレモネード「……」

ここまで

……ダークドリームの部屋

『拝啓、お姉様へ。
 初夏の風に肌も汗ばむ頃、いかがお過ごしですか。
 こちらも暑さにめげず元気に頑張っております。
 夏期休暇にはお姉様の来訪する予定でおりますが、ご都合はいかがでしょうか。
 ぜひ一度お会いして、ご一緒に食事をしながら語り合いたいと思っております。
 夏風邪には十分お気をつけて、ご壮健にてこの夏を乗り切られますようお願い申し上げます。』


ダークドリーム「……」

ダークレモネード「へー、しっかりした手紙ね」

ダークドリーム「!?」

ダークレモネード「本当にこれあんたの妹が書いたの?」

ダークドリーム「か、勝手に読まないで!」

ダークレモネード「なによ、話せる元気はあるみたいじゃない」

ダークドリーム「……」

ダークレモネード「あんたの妹、今度遊びに来るみたいじゃない。よかったね」

ダークドリーム「……なにが」

ダークレモネード「なにがって、家族なんでしょ? 会えるのが楽しみじゃないの?」

ダークドリーム「家族って言っても、腹違いの妹だし……」

ダークドリーム「それにどんな顔して会えって言うのよ」

ダークレモネード「どんな顔って」

ダークドリーム「こんな毎年プリキュアになり損なうダメダメな姉……絶対尊敬されるわけないじゃない」

ダークドリーム「ただでさえ今まで手紙に色々と偉そうなこと書いちゃったのに……」

ダークレモネード「会いたくないの?」

ダークドリーム「会いたいわよ。会いたいけど……こんな状態では会いたくない」

ダークレモネード「……」

ダークドリーム「はぁ……わたし、これからどうなるんだろ」

ダークドリーム「なんか、なんにもやる気が起きないのよね……」

・・・・・

シタターレ「いらっしゃい」

ウエスター「おう、まぁ入れ入れ。今日は俺がおごってやる」

クモジャキー「はい、ありがとうございます」

ウエスター「そうかしこまるなって。ていうか土佐弁はどうした」

クモジャキー「いえ、あれはキャラ作りでして……僕は本当は北関東出身なんです。群馬生まれです」

ウエスター「マジかよ!?」






ムーンライト「……」

ももか「うーん……ここの料理って美味しいけどあんまり食べると太っちゃうしね。気を付けないと」

ももか「ていうか、意外と食べるのねムーンライトって」

ムーンライト「消費カロリーの方が多いのよ。食べなきゃ身体が持たないわ。本業がモデルの人には分からないでしょうけど」

ももか「分かるわよ、食事管理の厳しさなら。目の前でそんなに食べられると…ちょっと羨ましいけどね」

ムーンライト「プリキュアになればたくさん食べられるわよ。その分身体は動かしてもらうけど」

ももか「私には無理無理」

ムーンライト「やってみないと分からないわ」

ももか「無理よ、あんな激しく動いたりするのは私に無理。どうやったらそんな細い身体であんな力が出せるの?」

ムーンライト「力の使い方さえ身体が覚えればあとは簡単よ。基礎トレーニングさえしっかりやれば応用が効くわ」

ももか「その基礎トレーニングの時点で私は死んじゃいそう」

翔子「お待たせしました……冷製パスタです」

ムーンライト「そこへ置いておいてちょうだい」

翔子「……」

ムーンライト「……もう注文はないわよ。早く行って」

翔子「ねえあなた……前から思ってたんだけど、もしかしてマーキュリーさんの妹?」

ムーンライト「……」

翔子「やっぱり…そうよね? 姉さんの写真かなにかで見たことあるわ」

翔子「ああ、嬉しい。同じセーラー戦士の妹に会えるなんて」

ムーンライト「マーキュリー? 誰のことかしら、知らないわ」

翔子「とぼけなくてもいいじゃない…。あなたとは一度話してみたかったのよ……姉が偉大だと妹は苦労するわよね」

ももか「なんの話?」

ムーンライト「知らないわ、この子の頭がおかしいのよ」

翔子「お、おかしくなんかないわ……」

ムーンライト「早く下がりなさい。それともこのお店では客と私語をするサービスでもあるっていうのかしら」

シタターレ「翔子、何やってるの。次のお客さんが待ってるわよ」

翔子「は、はい……」

ムーンライト「……」

ももか「ねえねえ、なんの話だったの? セーラー戦士ってまさか……セーラームーン?」

ムーンライト「その話はもういいでしょ。私には関係のない話だわ」

ももか「本当にセーラームーンの妹なの? だったらすごいじゃない! 姉がセーラームーンで、その妹がプリキュアなんて」

ムーンライト「……」

ももか「あれ……なんか地雷踏んじゃった?」

ムーンライト「ええ、思いっきりね」

ももか「じゃあこの話題は忘れるわよ」

ムーンライト「……」

ももか「……」

ムーンライト「……あの女は、姉は最低な人間よ」

ももか「え?」

ムーンライト「あれと血が繋がっているってだけで、吐き気がするわ」

ももか「喧嘩でもしてるの?」

ムーンライト「……」

ももか「……」

ももか「そういえば、新しく住むところは決まったの? まだ格安のアパートに住んでるんでしょ?」

ムーンライト「当分はアパートのままでしょうね……早く出て行きたいけど」

ももか「プリキュアに寮があるんじゃないの? マリンから聞いたわよ、そこに住めばいいじゃない」

ムーンライト「ダメよ。寮に住めばあの女の監視の目が届いてしまうわ」

ももか「またお姉さんが出てくるのね…」

ムーンライト「あの女の目の届かない所は私にとっては安住の地ね。楽園よ」

ももか「じゃあそのアパートは楽園ってこと?」

ムーンライト「……そうでもないわね。あそこには負け犬しかいないわ」

ムーンライト「あそこに住んでいる人間は誰も彼もが妥協した人生を歩んでる。生ぬるい空気で馴れ合ってるだけよ。あんなところにいたら成長なんてできない、家畜小屋の方がマシだったかもね」

ももか「わぉ……きつい言い方」

ムーンライト「事実よ…事実なのよ。それなのに誰もその事実に目を向けようとしない。現実逃避って言葉があのアパートを象徴するのにふさわしい言葉だわ」

ムーンライト「実際、私が事実を指摘したところで非難されるのは私だしね。私は間違っていないのに、それを認めようとしない……自分たちが間違っているってことを認めたがらないのよ」

ももか「はいはい、ストイックねムーンライトは。でもそんなことばかり言ってたら友達なくすわよ」

ムーンライト「……」

ももか「せっかく一緒に暮らしてるんだし仲良くしたら?」

ムーンライト「無理ね。生まれ変わったとしても無理だわ」

ももか「そっか。まぁ私には関係ないことだけど」

ムーンライト「……一人でいる方が楽よ。人は孤独であるべきなのよ」

ももか「今こうやって二人で食事してるけど?」

ムーンライト「……」

ももか「都合が悪くなると黙るんだから」

ムーンライト「今日はここの料金をパッションのツケで払わせましょう。二人分のツケの金額を見た彼女の驚く顔が楽しみだわ」

ももか「そんなことしていいの?」

ムーンライト「彼女はお人好しが過ぎるほどのマゾヒストなのよ。こういうことされて逆に喜ぶの」

ここまで

・・・・・翌日

ブロッサム「たあー!!」

サンシャイン「遅い!」

バシッ!

ブロッサム「きゃあっ!?」

マリン「ありゃりゃ、大丈夫ブロッサム?」

ブロッサム「いたた……だ、大丈夫です」

サンシャイン「相手の動きを目で追うばかりじゃなくて予測しないと。体がついていけてないよ」

ブロッサム「ごめんなさい…せっかく稽古をつけてもらっているのに覚えが悪くて…」

サンシャイン「気にしないで。次がんばろう」

ブロッサム「は、はい!」



ムーンライト「……」

マリン「ねー、ムーンライト」

ムーンライト「……」

マリン「せっかく合同で練習してるんだからさ、ムーンライトも一緒にやろうよ」

ムーンライト「……私が一人で練習している時にあなた達が勝手に割って入ってきたんでしょ」

マリン「いいじゃんいいじゃん、気にしない気にしない。それよりブロッサムになにかアドバイスとかしてあげてよ。アクションで言ったらムーンライトがあたし達の中で一番上手いんだからさ」

ムーンライト「彼女……プリキュアになってもう半年近くは経ってるわよね。それなのについ最近加入したサンシャインに指導されているってどういうことなのかしら」

マリン「それは……うーん。サンシャインはもとからそっち方面でも才能あるし」

ムーンライト「……」

マリン「あっ、ムーンライトどこ行くの」

ムーンライト「稽古をつけてあげるわよ。ブロッサムにね」

ブロッサム「はぁ…はぁ…」

サンシャイン「ちょっと休もうか」

ブロッサム「そ…そうですね」

ムーンライト「いいえ、まだ休んじゃダメよ」

ブロッサム「!!」

サンシャイン「ムーンライト」

ムーンライト「交代よサンシャイン。立ちなさいブロッサム」

ブロッサム「え……」

ムーンライト「どうしたの? やる気がないのかしら」

ブロッサム「や、やります……すみません」

ムーンライト「いいわよ、その調子ね。来なさい」

ブロッサム「いきます! たあー!!」

ムーンライト「はっ!!」

ドゴォッ!!

ブロッサム「かっ……!?」ドサッ

マリン「ブロッサム!?」

ブロッサム「あ……がっ……」

ムーンライト「一応身体は鍛えてあるみたいね。そうじゃなかったら今頃内臓も負傷して、吐血していてもおかしくなかったわ。寮の先輩に感謝することね」

ブロッサム「……」

ムーンライト「……?」

マリン「ブロッサム! ブロッサム!!」

サンシャイン「しっかりして!」

ムーンライト「気絶してるみたいね……はぁ」

マリン「ここまでやる必要ないでしょ!?」

ムーンライト「身体で覚えさせるには本気でやった方が手っ取り早いわ」

サンシャイン「だからってこれはやりすぎです!」

ムーンライト「……水でもかけなさい。そうすれば起きるわ」

バシャア!!

ブロッサム「……う……うう」

マリン「ブロッサム、起きろー!」

ブロッサム「マ、マリン……私……。痛っ!」

サンシャイン「大丈夫?」

ブロッサム「か、身体中が痛いです……」

サンシャイン「少し休んでたほうがいいね。無理しないで」

ブロッサム「は、はい……」

マリン「むっ……かーーー!! もう怒った!!」

サンシャイン「ど、どうしたのマリン?」

マリン「ブロッサムがここまでやられてあたしはもう黙ってられない! ムーンライト、あたしと勝負よ!」

ムーンライト「あなたと……?」

マリン「ブロッサムのリベンジ、あたしがやってやる!」

ブロッサム「リ、リベンジって……」

ムーンライト「……フ。いいわよ、来なさい」

マリン「うおりゃあああああ!!」

ムーンライト「遅いわね」ヒョイッ

マリン「わわっ!? だったらこれで!」ブンッ

サンシャイン「……マリンじゃ歯が立たないね」

ブロッサム「え?」

サンシャイン「動きが全部見切られている。あれじゃマリンの攻撃は当たらないよ」

マリン「たああああ!!」

ムーンライト「……話にならないわね。サンシャイン、あなたも一緒に」

サンシャイン「え……」

ムーンライト「二対一なら、ひょっとしたら互角かもしれないでしょ?」

サンシャイン「っ……いいですよ」

マリン「舐めてると後悔するよ!」

ムーンライト「さて、どうかしら」

・・・・・

マリン「う……うう……負けたぁ」

サンシャイン「つ、強い……」

ムーンライト「がっかりね……体術のレベルがこの程度なんて。今すぐプリキュアを辞めて、普通のアイドルにでもなったらどうかしら」

ブロッサム「だ、大丈夫ですか二人とも……」

マリン「だ、大丈夫大丈夫……」

ムーンライトはぁ…心配してるふりにされてるふり? そんなをことしてる暇があるのなら、少しでも自分の反省点を整理したらどうなの」

ムーンライト「特にブロッサム、あなたがこの中で一番最低よ」

ブロッサム「っ……」

マリン「……」

ムーンライト「もうこんな時間ね、私は帰るわ。後片付けはあなた達がやりなさい」

マリン「むっきー! 悔しい! ここまでやられるなんて」

サンシャイン「残念だけど、完敗だよ……」

ブロッサム「……」

マリン「決めたよ、あたしはもっと強くなる! そしてアクションも演技も歌も身長もムーンライトを超えてギャフンと言わせるんだから!」

マリン「帰ったらアクア先輩とベリー姉に頼んで特訓よ!」

サンシャイン「私も……気持ちを改めて、自分自信を見直さないと」

ブロッサム「私は……」

ブロッサム(もうやだ……こんなの)

マリン「よーし、鍛えるついでに走って寮まで帰る!」

サンシャイン「待ってマリン! 片付け残ってる!」

マリン「あっ、いけないいけない。てへへ」

ブロッサム「はぁ……」

……アパート

イース「ム、ムーンライト!」

ムーンライト「……」

イース「なんで私のツケでご飯を食べるようなことしたのよ!」

ムーンライト「払ったの?」

イース「払ったけど……」

ムーンライト「ならいいでしょ」

イース「なにがいいのよ!」

ムーンライト「……はぁ」

イース「ムーンライト、私は一応あなたの先輩なの。だからもう少し……その……敬意っていうものを」

ムーンライト「おかしいわね、私はプリキュアになったはずなんだけど。いつから敵側の後輩に?」

イース「わ、私もプリキュアよ!」

ムーンライト「あら、あなたもプリキュアだったのね。驚いたわ、知らなかった」

イース「……」

ムーンライト「だったら今度からは名札でもつけなさい。そうじゃないと分かりづらいわ」

イース「待ちなさいムーンライト!」

trrrr trrrr

イース「!!」

イース(電話…? ルージュ先輩から!?)

ピッ

イース「も、もしもし」

ルージュ『あ、もしもし。久しぶり。元気?』

イース「お、お久しぶりです」

ルージュ『今どこにいるの? 電話大丈夫?』

イース「大丈夫です……えっと、寮にいます」

ルージュ『よかった。あのさ、いきなりなんだけどブロッサムのことで相談があって……』

イース「え……?」

ムーンライト「……」

ダークドリーム「あ…ムーンライト」

ムーンライト「……」

ダークドリーム「無視しないでよ」

ムーンライト「こんにちは、元気そうね。じゃあね」

ダークドリーム「プリキュアって楽しい?」

ムーンライト「ここにいるよりは楽しいわ」

ダークドリーム「でしょうね。なんだか楽しそうだもん」

ムーンライト「……」

ダークドリーム「いいな……ほんと」

ムーンライト「同情されたいのなら他の人と話しなさい。パッションならあなたの話を涙を流しながら聞いてくれるわ」

ダークドリーム「あんたがちょっと楽しそうにしてるから、話しかけただけじゃない。なによもう」

ムーンライト「……」

ダークドリーム「いいわよ、ならイースのところにでも行ってくる」

イース「はい、はい……でも」

ダークドリーム「ねえイース」

イース「しっ。ちょっと待って。……ああいえ、なんでもないです」

ダークドリーム「……」

ダークドリーム(電話中……はぁ)

ダークドリーム(食事にでも誘おうと思ったのに……お腹すいた)

ダークドリーム(ダークレモネードたちも仕事でいないし。ていうかお金ないし、冷蔵庫の中にも食べ物ないし……このままじゃ飢え死にしちゃうわ)

ダークドリーム(なんとかしないと……)

……ムーンライトの部屋

ムーンライト「……」

【新着のメールが一件あります】

ムーンライト「……」ピッ

【削除しました】

ムーンライト(またあの女から……)

ムーンライト「……」

ムーンライト(しばらくして落ち着いたら、どこか適当なマンションの部屋でも借りないと)

ムーンライト(ここにも長くいるわけにはいかないわ……)

・・・・・

ダークドリーム「あ~……う~……」

ダークドリーム(とりあえず気分転換に外に出てみたけど……なにかあるわけじゃないわよね)

ダークドリーム(ホームレスじゃないんだからゴミ箱漁るわけにもいかないし……はぁ、お腹すいた)

ダークドリーム(どこかにお金落ちてないかなぁ)

ダークドリーム(もし100万円拾って交番に届けたらいくらもらえるんだっけ。10万円だっけ)

ダークドリーム(でもそのままパクっちゃった方が儲けもんよね……)

ダークドリーム「……はぁ、くだらない。帰ろ」

ミント「あら、あなたは……」

ダークドリーム「!!」

ミント「久しぶりね……ダークドリームさん」

ダークドリーム「あ…ど、どうも」

ここまで

……レストラン

ダークドリーム「はー、食べた食べた」

ミント「お腹はいっぱいになったかしら?」

ダークドリーム「もう満腹よ。こんなに食べたのって久しぶり」

ミント「満足してもらえてよかったわ」

ダークドリーム「……でもいいの? こんなに食べたのに全部おごりだなんて」

ミント「ええ」

ダークドリーム(なんでこんなに気前いいんだろう……わたしたち別にそんな仲がいいわけでもないのに)

ミント「…楽しかったわ」

ダークドリーム「は?」

ミント「あなたと食事して。誰かとこんなに楽しく話せたのは久しぶり。だからその感謝の気持ちとして、今日は私に払わさせて」

ダークドリーム「は、はあ……?」

ミント「それにしても驚いたわ、ローズがあなた達と一緒に暮らしているなんて。向こうではローズはどうしているの?」

ダークドリーム「どうって……一時期は入院とかしてたけど、今は普通に元気よ。たまに口うるさくて鬱陶しいけど」

ダークドリーム「前だってさ一緒にホットケーキ作ろうってことになったんだけど、人が作ってる時に横からグチグチ言ってきたり。おかげで全然うまく作れなかった」

ダークドリーム「わたしのやることにいちいち文句言ってくるのよ? あの子」

ミント「ふふっ……仲良くやってそうね」

ダークドリーム「まさか、仲良くなんてないわ。あんたは最近ローズと会ったりしないの? 同じチームなんでしょ」

ミント「仕事の時以外はね。プライベートでは全く会わないわ。私は彼女に拒絶されてるから」

ダークドリーム「拒絶って……どういうこと?」

ミント「文字通りよ。ふふっ」

ダークドリーム「……」

ダークドリーム(なんか違和感を感じるのよね……この子。なにか企んでそうっていうか)

ダークドリーム(話してる時も目の焦点が合わないときがあるし。大丈夫なのかしら。前はこんな子だったっけ)

ミント「この後は暇?」

ダークドリーム「へ?」

ミント「もしよかったらうちに来ない? もっとあなたと話がしたいわ」

ダークドリーム「……悪いけど、今日はもう帰るわ。眠いし」

ミント「そう…分かったわ。また今度一緒に食事しましょうね。またご馳走してあげる」

ダークドリーム「わ、悪いわよ」

ミント「いいのよ、気にしないで。あなたも苦労しているんでしょ?」

ダークドリーム「それは……だけど」

ミント「さっきも言ったとおり、話に付き合ってくれるだけでも嬉しいのよ。あなたと一緒におしゃべりができるのなら、いくらでもお金を払うわ」

ダークドリーム「な、なによその大げさな言い方……」

ミント「ふふっ。それぐらい楽しいってこと。そうだ、よかったら連絡先を交換しない? お腹がすいたら、いつでも呼んでいいわよ」

ダークドリーム「……」

……スポーツジム

ムーンライト「はぁ…はぁ…」

ムーンライト(とりあえず、今日のノルマはこれでおしまいね……。これで今日一日がようやく終わった気がする)

ムーンライト(毎日特訓特訓……早くプリキュアとしての私の出番が来て欲しいわ。あの子達だけじゃ任せていられない)

ムーンライト(特にブロッサム。今日をきっかけに何かが変わればいいけど……それができないのなら今すぐプリキュアをやめてほしいものだわ)

ムーンライト(……プリキュアに選ばれたということは、それなりの素質はあるはずなんでしょうけど)

翔子「あのぅ……」

ムーンライト「……」

翔子「偶然ね……こんなところで合うなんて。あなたも体力作り?」

ムーンライト「……」

翔子「む、無視しないで……」

ムーンライト……」

翔子「無視しないで!!」

ムーンライト「……無視してるわけじゃなくて避けてるのよ。あら、同じ意味だったわね。あなたみたいな人間には近寄りたくないの、察しなさい」

翔子「ひ、ひどい……」

ムーンライト「空気の読めない人は嫌われるわよ」

翔子「なら、お互い気が合いそうね……」

ムーンライト「……」

翔子「私もね、最近体力が落ちてきたからここに通ってるの……体重も増えちゃったし」

ムーンライト「もっと太ったほうがいいわよ。男の人は細身より少しふっくらした方が好きらしいからね」

翔子「本当に……?」

ムーンライト「ええ。もうここに来る必要もないわ。激しい運動をして体重を減らす必要はない。明日から家でゴロゴロしながらテレビでも見てた方がよっぽどお勧めよ」

翔子「だったらあなたも少し太ったほうがいいんじゃない? 細すぎるわ」

ムーンライト「私はこれでいいのよ」

翔子「男の人に好かれたくないの?」

ムーンライト「男に興味はないわ」

翔子「えっ、じゃあまさか……」

ムーンライト「違う。なにを勘違いしているの」

翔子「……」

ムーンライト「今は仕事が大事なの。そんなことに興味を持ってる暇はないわ」

翔子「真面目なのね……あなたのお姉さんそっくりで。お姉さんも真面目な人だったって聞いたわ」

ムーンライト「……どうしてもそいつと関連付けた話がしたいみたいね」

翔子「そいつって、お姉さんのこと……? だって、私とあなたの共通点じゃない。姉が同じセーラー…」

ムーンライト「その言葉はもう口に出さないで。吐き気がするわ」

翔子「え、でも……」

ムーンライト「しつこいわよ」

翔子「……」

ムーンライト「……嫌いなのよ、あの女は。あなたは自分の姉に誇りを持ってるの?」

翔子「それは……一応。劣等感はあるけど、すごい人だとは思うし……」

ムーンライト「そう。なら私とは気が合いそうにはないわね」

翔子「自分に自信がないのね……私も同じよ」

ムーンライト「どうしてそうなるの、あなたと一緒にしないで。私はプリキュアなのよ。あなたとも、あの女とも、違う!」

翔子「私はどうせ……プリキュアじゃないわ」

ムーンライト「……」

……ダークドリームの部屋

ダークドリーム「……」

ガチャッ

ダークレモネード「ダークドリーム、いるの?」

ダークドリーム「どうしたの」

ダークレモネード「別に……ご飯ちょっと作りすぎて余ったから、おすそ分けしてあげようと思って」

ダークドリーム「え?」

ダークレモネード「ど、どうせ何も食べてないんでしょ。いいから食べなさいよ」

ダークドリーム「あっ、もう食べちゃった」

ダークレモネード「はぁ!? なんで!!」

ダークドリーム「なんでって……レストランで食べてきたのよ」

ダークレモネード「レストラン……お金あったの? ないって言ってたくせに」

ダークドリーム「おごってもらったの。ミントね」

ダークレモネード「ミント? ……ダークミント?」

ダークドリーム「違うわよ。プリキュア5の方の」

ダークレモネード「なんでそんなやつに……」

ダークドリーム「たまたま会ってご馳走してくれたの。いい子よ、あの子」

ダークレモネード「……」

ダークドリーム「あっ、でもくれるって言うのならもらうけど。なに作ったの?」

ダークレモネード「……あげない」

ダークドリーム「え?」

ダークレモネード「もう食べたのならいいでしょ! だれがあんたなんかにあげるもんか! ふんっ」

バタンッ

ダークドリーム「な、なによあいつ。意味わかんない」

・・・・・

ダークレモネード「……」

ローズ「なにやってんの? ……なにこれ、シチュー?」

ダークレモネード「カレーよ」

ローズ「カレー? これ作ったの?」

ダークレモネード「作ったけど捨てるの。どうせ食べないし」

ローズ「へぇ、失敗したんだ」

ダークレモネード「……」

ローズ「どうせならダークドリームにでも食べさせなさいよ。あいつだったらどんな料理も喜んで食べるわよ」

ダークレモネード「……うるさい」

ローズ「なに?」

ダークレモネード「っ……」

ローズ「?」

ダークレモネード「……ねえ、聞きたいことがあるんだけど。ミントってどんなやつ」

ローズ「……!? なんで、急にそんなこと」

ダークレモネード「別に……気になっただけ」

ローズ「どんな子って言われても……知らないわよ。……あんまり喋ったことないし」

ダークレモネード「ふーん」

ローズ「……ミントのことでなにかあったの?」

ダークレモネード「なにも」

ローズ「だったらいいけど…」

ローズ「……」

ここまで

・・・・・

翔子「スポーツジムっていいわよね……こうやってシャワーをタダで浴びれられるんだもの」

ムーンライト「……そうね。今いるアパートのお風呂場に比べたら、ここは天国だわ」

翔子「どうして?」

ムーンライト「あそこは共同な上に、人が入ってる時に他の人間が勝手に入ってくるのよ。ダークドリームとかね」

翔子「なんか……大変そうね」

ムーンライト「早く出ていきたいわ。あんなところに長居したくない」

翔子「……」

ムーンライト「なに? なにをジロジロ見ているの」

翔子「いえ……胸って、どうやったら大きくなるのかしらね」

ムーンライト「……」

翔子「人に揉まれると大きくなるって聞いたけど……」

ムーンライト「ありえないわ」

翔子「大きくしたいと思わない?」

ムーンライト「あったところで何に使うの? 女性らしさの象徴が胸の大きさというのならそれは間違っているわ」

翔子「なら……なにが象徴なの」

ムーンライト「……人それぞれよ」

翔子「答えになってないわ……」

ムーンライト「胸の大きさを気にするなんてちっぽけな人間の証拠だわ。些細なことよ、そんなこと。人にはもっと大切なことがある」

翔子「それって…?」

ムーンライト「信念を持つことよ」

翔子「?」

ムーンライト「信念を持てばそれは行動につながる。その行動は自分にとってはきっと正しい選択になる。……世間では間違っているとしてもね」

ムーンライト「とにかく信念を持って行動した時、人は初めて自分自身というものを得られるのよ。それが自立であり、人のあるべき姿だわ」

翔子「よく分からない…」

ムーンライト「自立できてないあなたには理解できなくて当然ね」

翔子「……あなたは信念を持ってるの?」

ムーンライト「ええ、もちろん」

翔子「どんな信念?」

ムーンライト「それは言わないに決まっているでしょ」

翔子「……信念を持ったから、プリキュアになったわけ?」

ムーンライト「……」

翔子「そういえば、どうしてプリキュアになったの? 子供が好きなの?」

ムーンライト「子供は嫌いよ……無知で愚かだからね」

翔子「珍しいわね……プリキュアを目指す人やなった人はみんな子供好きなのに。ダークドリームやイースだってそうよ、子供は天使だって言ってる」

ムーンライト「子供が天使? 冗談でしょ。カエルを捕まえて爆竹で爆発させたり、エアガンで犬や猫を狙ったりするのよ。アリの巣だって壊してる。命を大切にしてないわ」

翔子「そんな極端な……」

ムーンライト「子供は残酷な生き物よ……何が正しいのか間違っているのかも分かっていないから。だから天使なんて呼ぶのはおかしいの」

翔子「イースだったら、正しいことを教えるのがプリキュアの役割だって言うでしょうね……」

ムーンライト「馬鹿な子ね。プリキュアでやっている綺麗事なんて嘘っぱちでしかないのに。ただの偽善よ。あの番組は偽善者しか産まないわ」

翔子「私が気になるのはそこなんだけれど……。散々そんなことを言うのに、だからなんでプリキュアなんかに……」

ムーンライト「……この調子だと何回も聞かれそうね。いいわ、二度と聞かれないよにハッキリと答えるわ」

ムーンライト「自分の人生を獲得するためよ」

翔子「なにそれ…」

ムーンライト「……姉のことも気になっていたわよね、ついでに答えてあげる」

ムーンライト「あなたも知っての通り、私の姉は優秀な人間よ。その名前を知らない人なんてほとんどいないでしょう」

ムーンライト「そんな姉の下で生まれた私は……惨めな暮らしを強要させられた」

ムーンライト「両親は私を姉のような人間にさせようとしたわ。けど私は……それに応えることができなかった。その度に失望され、私はずっと惨めな思いをすることになった」

ムーンライト「けど一番惨めだったのは、姉に同情された時よ。私に向かって優しく『大丈夫』『がんばって』なんて言う時がとても腹立たしかったわ」

翔子「なんでそれが腹立たしいのよ……いいことじゃない。うちと全然違う」

ムーンライト「あの女に同情される限り、私は自分の人生を歩んでいるということにはならない。あの女の手の中で生かされているような気分だったわ」

ムーンライト「……私が子供の頃、一度ダンスコンテストで優勝したことがあるの。あの時はとても嬉しかったわ。ずっと一人で練習していたから……初めて自分の力だけで何かを成し遂げたと思えた」

ムーンライト「だけどあの女が裏で手を回して私を優勝させるように仕向けたと知ったのは、後よ」

翔子「……」

ムーンライト「あの女は……色々な業界にも名前が広まっているから、コネで私を優勝させるなんて簡単なことだったのよ。結局私は、あの女の手の中から逃れらることなんてできなかったの」

ムーンライト「それがとても惨めだった。あの女は優しさのつもりかどうかは知らないけど……その行為は私の存在というものを否定したのよ。許されることじゃない」

翔子「……」

ムーンライト「……けど今は違う。私は内緒でプリキュアのオーディションを受け、それに合格した」

ムーンライト「プリキュアを選んだのは、セーラームーンを超えられる可能性があるからよ。いえ……もう超えているわ」

ムーンライト「私はもうあの女の手の中にいない。自分の人生というものを得た。私にとってプリキュアなんてものは、人生を確立させるための道具にしかすぎないの」

ムーンライト「それが他人にとっては間違って見えることだとしても、そんなことは関係ない。私にとっては、正しいことなの」

ムーンライト「今はとても幸せよ」

翔子「そ、そう……」

ムーンライト「……喋りすぎたわね。こんなに喋るはずじゃなかったわ」

翔子「……」

ムーンライト「……今聞いたことは誰にも口にしないことね。こうやってあなたとも長話することは二度とないでしょうけど」

翔子「え……私たちって、もう友達じゃないの……?」

ムーンライト「今日はたまたま口数が多くなってしまっただけよ。長く話していたからって、あなたと友達になったつもりはないわ」

翔子「……」

ムーンライト「友達を作る前に、まずは…自立することね」

……アパート

ローズ「本当に行くの?」

イース「ええ。先輩の頼みだし……ね」

ローズ「まぁ、その方があんたにもいいと思うわ。いつまでもこっちにいるわけにもいかないでしょ」

イース「……」

ガチャッ

ムーンライト「……」

イース「あ…ムーンライト、おかえりなさい。ちょうどよかったわ、話すことがあるの」

イース「実は私、明日から寮に戻ることにしようと思ってて…」

ムーンライト「そう、それは悲しいわね。早くその悲しい気分に浸かりたいわ」

イース「……」

ローズ「……あんたね」

ムーンライト「話はそれだけ? もうないのなら…」

イース「あなたも私と一緒に来ない?」

ローズ「なっ!?」

ムーンライト「……なんですって?」

イース「ここに住むの前から嫌だって言ってたでしょ? 寮にも住んでないんだから、うちにくればいいじゃない」

イース「ブロッサムも赤寮に来ることになってるの。同じハートキャッチの仲間なんだし、ちょうどいいでしょ」

ムーンライト「あなたの目がおかしいようだから言っておくけど、私もブロッサムも赤色のプリキュアじゃないわ。もし赤色だったとしても、そんなところに行くわけがない」

イース「ならここでずっと悪態をつくつもり?」

ムーンライト「そういうあなたはどうして急に寮なんかに?」

イース「先輩に頼まれたからよ。ここに不満があるのなら、私のところに来ればいいじゃない」

ムーンライト「私のところ? あなたの居場所ってここじゃなかったの」

イース「……」

ムーンライト「こんなところが大切な居場所だなんて、たかが知れてるでしょうけどね」

イース「……あなたのことが心配なの。このままずっと、そんな調子のままでいられると思っているの?」

ムーンライト「11万5千飛んで4円」

イース「な、なによそれ……」

ムーンライト「あなたが今まで私に対しておごった金額よ」

イース「!?」

ムーンライト「そう、今までちゃんと数えてたの。なぜだか分かる? あなたのお人好し度を数字で表すとどれぐらいになるか試していたのよ」

ムーンライト「もう少し記録を伸ばせたかもしれないけど、ここら辺でいったんやめにしておきましょう」

イース「……お金持ってたの?」

ムーンライト「当然でしょ? 私は現役のプリキュアよ」

イース「だって、募金や慈善活動に使うからってお金節約してたんじゃ……!」

ムーンライト「嘘に決まってるでしょ。あなたも自分の身を削って節約なんてくだらないことしてる人間に対してどうしておごったりできるのよ」

イース「……」

ローズ「ちょっと、なんなのよそれ。最低じゃない!」

イース「信じられない……」

ムーンライト「……悪かったわ。今度からちゃんと募金にお金を使う。今までの分も含めてね」

イース「本当に……?」

ムーンライト「ええ、もちろん」

イース「だったら……」

ムーンライト「はぁ……だからどうしてそうやって信じようとするの。疑っているのなら、そう言いなさい。不満があるのなら、戦うべきよ」

ローズ「あんたさっきから何が言いたいのよ!」

ムーンライト「パッション、あなたはどうしても人に嫌われたくないみたいね」

イース「ッ……」

ムーンライト「人に嫌われたくないから、そうやって優しくするんでしょ? 金額の大きさを信頼感の大きさに変換してるつもりなのよ」

ムーンライト「滑稽ね。そういうことを偽善って言うんだわ」

ローズ「!!」

バチンッ

ムーンライト「っ……!?」

ローズ「いい加減にしなさいよ……さっきから好き勝手言って。自分の行為を正当化しようとしてるんじゃないわよ!!」

ムーンライト「……いい平手打ちね。思い切りがいいから避けられなかったわ。けど、このアパートじゃ住居人に暴挙を振るうサービスでもあるの? とんだアパートね」

ローズ「ふざけないで!!」

ムーンライト「それにしてもどうしてあなたは彼女のことを庇うの? あかの他人でしょ?」

ローズ「他人じゃないわよ! パッションは…」

ムーンライト「後輩だとでも? よく言うわね、今の彼女はプリキュアじゃないのよ」

ローズ「そんなこと関係ないでしょ!」

ムーンライト「あるわ。そんな中途半端な人間はプリキュアの一員でもなんでもない」

イース「……」

ムーンライト「そもそもローズ、あなたはプリキュアの一員だと思うのならなぜこんなところにいるの? あなたこそ、パッションと一緒に暮らせばいいじゃない」

ローズ「っ……」

ムーンライト「威勢良く言い返したり説教はしないの? できないわよね、事情があるのなら」

ムーンライト「それがどんな事情かは知らないけど、それを正当化しようとするためにここにいるんでしょ? 違う? あなたみたいな人間はそういうことをするはずよ」

ムーンライト「いわゆる、逃げているだけ。パッションは確か、プリキュアである自分から逃れるためにここに来たのよね。ローズ、あなたも同じ?」

ムーンライト「それとも、もっと別の理由でもあるのかしら」

ローズ「ふざけ…ないでよ!! いい加減にしなさい!!」

ムーンライト「落ち着いたら出て行くわ。こんなところ、住んでいてもしょうがない」

イース「……」

ムーンライト「……」

ローズ「あんた何なの……? 最初のうちは私だって黙っていたけど、そんなに人を侮辱して楽しい!?」

ムーンライト「……優しい人間には三通りあるわ」

ムーンライト「優しくすることによって、自己満足を得る人間。相手に対して見返りを求める人間。それと、罪悪感に縛られてる人間よ」

ムーンライト「罪の意識を感じていたら、それを軽くしようとするために自然と他人に対して優しくなる。贖罪よ」

ローズ「な、なによ急に……話そらさないでよ! 回りくどいことばっかり言って!!」

ムーンライト「どれもこれも、ただの偽善だわ。そこには正しさも、高潔さも、誇りもなにもない」

ムーンライト「そんなあなた達がプリキュアを名乗るというのなら、プリキュアなんてものはただの嘘つき集団ね」

ムーンライト「でも分かってるわよ、嘘つきなのはあなた達だけだって。半端者なんだから当然よね」

ムーンライト「そんなあなた達が私に何かを指図したり、偉そうにする権利なんてないの。黙って、惨めに生きてなさい」

ローズ「っ……」

ムーンライト「……お金を返して欲しいのならパッション、いいわよ。後で返してあげる。ちゃんと取立てに来なさい」

イース「ムーンライト……」

ムーンライト「私はもう部屋に戻るわ。なるべく早くしたほうがいいわよ、どうせ明日にはいなくなるんでしょう?」

イース「……」

ここまで

……ローズの部屋

ローズ(なによ……なによなによなによ!! あいつ!!)

ローズ(こっちの話も聞かないで、一方的に自分の価値観押し付けて。あれじゃどうやっても話し合いになんてならないわ)

ローズ(まったく……ほんと鬱陶しいわねあいつ)

ローズ(私に罪悪感があるとでも言いたいの? 意味わかんない、見当はずれも甚だしいわ。誰に対して罪悪感があるっていうのよ)

ローズ(誰に……)

ローズ「……」

ローズ(私は別に……ミントやアクアに対しては何も……)

ローズ(あれは……確かに私が悪かったけど)

ローズ「……」

・・・・・翌日

マリン「ブロッサムー!」ギュッ

ブロッサム「きゃっ!? い、いきなり驚かさないでくださいよマリン」

マリン「今日は調子どう? 元気?」

ブロッサム「元気……じゃないですけど」

マリン「昨日も先輩たちにしごかれちゃったの?」

ブロッサム「……実はわたし、寮を引っ越すことにしたんです」

マリン「ええ!? どこに!」

ブロッサム「赤寮っていう……パッション先輩がいるところです」

マリン「赤寮……? そんなとこあったんだ。そういえばパッション先輩ってどこに住んでるか知らなかったけど」

ブロッサム「今の寮はわたしには無理です……。先輩たちには全然追いついていけないし、あの場所にわたしの居場所なんてないし……」

マリン「ねえブロッサム」

ブロッサム「え?」

マリン「なにしょんぼりしてるのよ。ほら、口角上げて笑って」ググッ

ブロッサム「いたた! む、無理やり上げないでください」

マリン「あたしはブロッサムがいつも頑張ってること知ってるよ。一生懸命、プリキュアやってるって。ていうかそもそも頑張ってなきゃ、悩んだりしないもんね」

マリン「だから、頑張っているんだからもっと自分に自信を持っていいんだよ? 自信を持って輝かないと、プリキュア失格だよ」

ブロッサム「マリン……」

マリン「言っておくけどあたしは、キュアブロッサムのファンなんだかんね。ブロッサムにはもっと元気出してもらわないと、ファンとしては悲しいなー」

ブロッサム「……ふふ、初めて聞きましたよ。マリンがわたしのファンだなんて」

マリン「にしし。あたしはほんとはね、ピンクのプリキュアになりたかったんだ」

ブロッサム「え?」

マリン「だってさ、かわいいし、主役だし、みんなの人気者じゃん。プリキュア目指す子は基本的にみんなブロッサムのポジション狙ってると思うよ?」

ブロッサム「そうだったんですか…」

マリン「あたしはなれなかったけどね。でも……ブロッサムがピンクで良かったと思うよ、あたし」

マリン「そりゃなれなかったのは悔しかったけどさ、それだけブロッサムがあたしよりも凄いってことなんだし。そんな子があたし達のリーダーをやってくれるなんて、あたしすっごく嬉しい」

ブロッサム「わたしが……すごい?」

マリン「そうだよ、ブロッサムは凄いんだよ。凄いから、あたしファンになっちゃった」

ブロッサム「て、照れちゃいます……」

マリン「えへへ。ほれほれ~、照れちゃってかわいいの~」

ブロッサム「もう、やめてくださいマリンってば」

マリン「あははっ」

ガチャッ

ムーンライト「……」

マリン「あっ、ムーンライト。どうしたの」

ムーンライト「ブロッサム、ちょっと来なさい」

ブロッサム「え……、わ、わたしですか?」

ムーンライト「早く来なさい」

ブロッサム「来なさいって……」

ムーンライト「……いちいち私の言うことをオウム返ししていたら話が進まないと思わない?」

ブロッサム「す…すみません」

マリン「なになに? 二人で何やるの?」

ムーンライト「あなたには関係ないわ。ついてこないで」

マリン「なによそれ。何をするのかぐらい言ってもいいじゃん」

ムーンライト「あなたには関係のない話をするのよ。ブロッサムと二人でね」

ブロッサム「え……」

マリン「……ブロッサムのこといじめないでよね」

ムーンライト「……」

ここまで

・・・・・・

ブロッサム「あ、あのぅ……話って一体」

ムーンライト「23回」

ブロッサム「え?」

ムーンライト「今日あなたが撮影でミスをした回数よ」

ブロッサム「う……か、数えてたんですか?」

ムーンライト「ええ。あなたのミスを一つ一つ丁寧に言ってあげてもいいけど、そんな時間はないから割愛しておくわ」

ブロッサム「……」

ムーンライト「はっきり言って、この回数は最悪ね。異常だわ」

ブロッサム「す……すみません……これからは気をつけます」

ブロッサム「最低限のミスはしないように……」

ムーンライト「最低限? 最低限がいいことだと思ってるの?」

ブロッサム「……?」

ムーンライト「最低限っていうのは‘最低’なのよ。最低だっていうことが良いことだと言うの?」

ムーンライト「最低はただの‘最低’。最低限のことをやっていると言うことは、自分は無能だと言っているのと同じことなの」

ブロッサム「……す、すみません」

ムーンライト「……」

ブロッサム「……」

ムーンライト「……あなたは何のためにプリキュアになったの?」

ブロッサム「え……」

ムーンライト「プリキュアになった動機よ。聞かせてちょうだい」

ブロッサム「えっと……」

ムーンライト「……」

ブロッサム「……子供たちに、夢と希望を与えられるような人間になりたくて」

ムーンライト「嘘ね」

ブロッサム「っ……」

ムーンライト「そんな志を持ってプリキュアを目指してる人間なんてひと握りしかいないわ。そのひと握りの中で合格できるのはさらにひと握り」

ムーンライト「あいにく、あなたにはそんな高尚な志を持っているようには見えないけどね」

ブロッサム「……」

ムーンライト「本当のことを言いなさい」

ブロッサム「ほ……本当です。子供たちのために……」

ムーンライト「どうしてそんな模範解答しか言えないのかしら」

ムーンライト「どうせオーディションの時も同じようなことを審査員に向かって言ったんでしょう? 気持ちは分かるわ、私も同じだったからね」

ムーンライト「けど今は審査員なんていない」

ブロッサム「……」

ムーンライト「……はぁ」

ムーンライト「ブロッサム、あなたはいい子よ。大人しくて真面目で謙虚で、気性も穏やか」

ムーンライト「そんな人間は自分の殻を破れない。自分の限界も超えることはできない。成長できないのよ。だから23回もミスなんてするの」

ムーンライト「今のあなたはプリキュア失格よ。正直言って、一緒に仕事はしたくないわ。リーダーもマリンに任せたほうがまだマシね」

ブロッサム「うう……」

ムーンライト「ブロッサム……自分を変えるのなら今のうちよ。できないのならもうプリキュアはやめなさい。向いてないわ」

ブロッサム「……ど、どうすれば」

ムーンライト「私のやり方でいいの? 簡単よ、他人なんてゴミだと思えばいいの」

ブロッサム「えっ…」

ムーンライト「人の目を気にしていれば本来の自分の力は出せないわ。あなたにもし才能があるっていうのなら、他人なんて気にせず自分の道を進めばいい」

ブロッサム「……」

ムーンライト「もっとも、自分自身を確立していなきゃ自分の道なんて進めないでしょうけどね」

ブロッサム「……才能って、なんなんでしょうか」

ムーンライト「結果を出すことよ。自分に才能あると思うのなら、証明してみなさい」

ブロッサム「……」

ムーンライト「もう戻っていいわよ。話はこれで終わ……そうだった、そういえば」

ブロッサム「?」

ムーンライト「パッションの寮に引っ越すそうね」

ブロッサム「な、なんで知ってるんですか?」

ムーンライト「そんなことはどうでもいいわ。引越しはやめなさい、今の寮にいた方がいい」

ブロッサム「そんなこと急に言われても……だから、どうしてムーンライトがパッション先輩のことを」

ムーンライト「パッションは、ずる賢くて卑しくて性格も最低最悪な女よ。おまけに、胸のサイズも3カップぐらい盛ってる」

ブロッサム「パッション先輩のことを知っているんですか……?」

ムーンライト「……噂で聞いたの。そんな女のところに住みたい? いいからとにかく、引っ越すのはやめなさい。分かったわね?」

ブロッサム「……」

・・・・・

マリン「なーにやってんのかなー」

サンシャイン「どうしたの?」

マリン「ムーンライトがさ、ブロッサムのこと連れ出したの。いじめてなきゃいいんだけど」

サンシャイン「それは……ないとも言えないかもね」

マリン「はぁ、ムーンライトのことどう思う?」

サンシャイン「うーん……もうちょっと協調性が欲しいかな」

マリン「あの人、みんなのことが嫌いなのかな。だからみんなにも好かれてないんだろうけど」

マリン「ムーンライトってそれでいいと思ってるのかなぁ。だとしたらおかしいと思わない?」

サンシャイン「向こうも関わって欲しくないのなら、こっちからもあまり関わらない方がいいじゃない?」

マリン「そうだけどさー、一応一緒に仕事するプリキュアでしょ」

ガチャッ

ブロッサム「……」

マリン「あっ、ブロッサムおかえり。なに話してたの?」

ブロッサム「い、いえ……仕事のことでちょっと打ち合わせをしてただけで」

マリン「ふーん」

サンシャイン「何もされなかった?」

ブロッサム「なにって……?」

サンシャイン「ううん、何もないんだったらいいんだ」

マリン「せっかく戻ってきたんだしブロッサムにも聞きたいんだけどさ、ムーンライトのことどう思う?」

ブロッサム「……」

マリン「正直に言っていいよ。今さっきも散々イヤミとか言われてたんでしょ?」

ブロッサム「ムーンライトは……かっこいいんですけど」

ブロッサム「こわいです……」

ここまで
4月中には鳩編を終わらせたいです。
というのもこのSS自体もう長く続けられそうにないので。

……アパート

ダークドリーム「本当に行っちゃうの?」

パッション「ええ。しょうがないわ」

ダークドリーム「たまには帰ってきてよ。イースいないとつまんないし」

パッション「そうするつもりよ」

ムーンライト「行っても意味ないわよ」

パッション「!!」

ダークドリーム「うわ、びっくりした。いきなり何…」

ムーンライト「ブロッサムはあなたのこと嫌っているもの」

パッション「……どういうこと?」

ムーンライト「言葉の通りよ。ブロッサムはあなたのことを避けて、寮には行かないでしょうね」

パッション「意味がわからないわ、何なのよそれ。ブロッサムがそう言ってたの?」

ムーンライト「言ってはないけど、態度でわかるわ。きっとあなたの悪い噂でも聞いたんでしょうね」

ムーンライト「あなたのことは信用してないわ。だから寮に行っても無駄よ」

パッション「……おかしいわね」

ムーンライト「おかしいことなんて何もないわ」

パッション「あなたの態度がおかしいのよ、ムーンライト。急にどうしたの、私を引きとめようとするつもり?」

ムーンライト「どうしてそうなるのかしら」

パッション「わざわざ私に『行っても無駄』なんて言うからよ。普段のあなたならこんなことに関心も持たないはずなのに」

パッション「つい昨日だって、私なんて早くいなくなってしまえばいいみたいなこと言ってたでしょ?」

ムーンライト「……」

ダークドリーム「まぁまぁ、なんだかんだ言ってムーンライトも寂しいのよね? ほら、ツンデレってやつよ。まったくシャイなんだから」

パッション「分かってるわよ…あなたが素直じゃないってことぐらい。この世の中には、本当に悪い人間なんていないと思ってる。もちろんあなたもそうよ、ムーンライト」

ムーンライト「パッション……寂しくなるわ」

パッション「ムーンライト……」

ムーンライト「あなたを虐められなくなると思うと、とても寂しい」

パッション「……」

ムーンライト「残念ね。仕方ないから今日からダークドリームを虐めることにするわ」

ダークドリーム「は!?」

~♪

パッション「ブロッサムからのメール……今日私の寮に来るって書いてあるわ。あなたの言ってたことは嘘みたいね」

パッション「……もう行くわ。またね、ダークドリーム。ほかの人たちにもよろしく言っておいて」

ムーンライト「……」

ダークドリーム「まったく……どうして最後までそんな態度でいられるわけ」

ムーンライト「……いなくなってせいせいするわ」

ダークドリーム「そんなことばかり言ってると、いつか本当にあんたの周りには誰も人がいなくなるわよ」

ムーンライト「まさに楽園ね。余計なお世話よ」

ダークドリーム「ムーンライトってさ……友達いないでしょ」

ムーンライト「……」

ダークドリーム「それなのによくそんな図太くいられるわよね」

ムーンライト「正しい人間っていうのはいつも嫌われ者なのよ。正しいことを言っても、正しい行いをしても、周りは認めたがらない。誰だって自分の間違いは認めたくないものね。だからのけ者にする」

ダークドリーム「なんか惨めすぎて負け惜しみにしか聞こえないんだけど」

ムーンライト「……あなたも一人になってみれば分かるわ。孤独と惨めさが人を強くする」

ダークドリーム「残念だけど、わたしはこれから友達と食事なの。じゃあね」

ムーンライト「珍しいわね、食事に行けるお金なんてあったの」

ダークドリーム「え? ま、まぁね」

ムーンライト「……」

……赤寮

ブロッサム「……」

ブロッサム(ここ……でいいんですよね)

ピポーン

ブロッサム「……」

ブロッサム(大丈夫かな……ムーンライトが言うには怖い人らしいけど……)

ガチャッ

ブロッサム「!!」

パッション「いらっしゃい、ブロッサム」

ブロッサム「あ……こ、こんばんは! 今日からお世話になるブロッサムです!」

ブロッサム「よ、よろしくお願いします!」

パッション「よろしく。上がって、どうぞ」

ブロッサム「は、はいっ!」

ブロッサム(よかった……優しそうな人。ムーンライトの話と全然違うじゃないですか)

パッション「オールスター以来ね」

ブロッサム「は、はいっ」

パッション「そんなかしこまらないで、楽にしていいのよ。ご飯は食べた?」

ブロッサム「まだです…」

パッション「じゃあ今から何か作るわ」

ブロッサム「えっ、あ、す、すみません! 手伝います!」

パッション「え? 大丈夫よ」

ブロッサム「いえ、向こうじゃいつも雑用を手伝っていたので……」

パッション「……お互い苦労してるみたいね」

ブロッサム「え?」

パッション「いえ……じゃあ、お願いするわ」

ブロッサム「は、はい!」

・・・・・・

「いらっしゃいませー」

ローズ「……」

ローズ(綺麗なバラ……買って部屋に飾ろうかしら)

ローズ(あ……この花、アクアに似合いそう)

ローズ「……」

ローズ(そんなこと考えても、意味ないか……)

ミント「あら」

ローズ「え……!?」

ミント「こんなところで会うなんて……久しぶりね、ローズ」

ローズ「ミ……ミント……」

ミント「あなたもお花を探しに? 私も、部屋に飾るお花を買いに来たの」

ローズ「っ……」

ミント「どうしたの? 驚いた顔して。元気だった? オールスターズの時はまともに話せていなかったから、なんだかこうやって会うのは久しぶりに感じるわ」

ローズ「……」

ミント「そういえば、この前ダークドリームに会ったわ。あなた今彼女と一緒に暮らしてるんだって?」

ローズ「え……」

ミント「びっくりしちゃった。私はてっきりアクアと一緒に暮らしているかと思ってたから」

ミント「だってあなたとアクアは……とっても仲良しですもんね」

ローズ「っ……!!」

ミント「ええ、ほんとお似合いよあなた達。羨ましいわ……とても」

ローズ「う……うう……」

ミント「あっ、そういえば聞いた? 今度プリキュアのみんなで一緒に…」

ローズ「くっ……!!」タタタッ

ミント「ローズ?……どうしたのかしら、行っちゃったわ」

ミント「ほんと、相変わらずね……私の話は聞いてくれない」

ローズ「はぁ……はぁ……」

ローズ(なんで、なんで逃げちゃったんだろう……)

ローズ(なにも逃げることなんて……)

ローズ「……うう」

ローズ(怖い……ミントに会うのが)

ローズ(彼女の顔を見るたびに、あの時のことを思い出してしまう)

ローズ(私……なんて情けないの。これじゃあ本当にムーンライトの言ってた通りじゃない)

ローズ(惨めすぎる……こんなの)

ローズ「……」

ローズ(私……どうすれば……)

……緑寮

ミント「どうぞ、中に入って」

ダークドリーム「あ……ど、どうも」

ミント「ふふ、遠慮しないで。楽にしてていいわよ」

ダークドリーム「びっくりしちゃった……。食事に誘われたのはともかく、まさか寮に入れてくれるなんて」

ミント「ここは私一人で住んでるから……寮って言えるかどうかは分からないけどね」

ダークドリーム「一人? 他の子とは一緒に暮らさないの?」

ミント「ええ。……一人の方が楽なのよ」

ダークドリーム「ふーん、ムーンライトと似たようなこと言うのね」

ミント「え?」

ダークドリーム「ムーンライトもうちにいるんだけど、あの子も人は孤独であるべきだとか何だとか言ってるのよ」

ダークドリーム「本当に一人で楽しいの?」

ミント「……最初は一人の方が楽だと思ってたわ。誰にも関わることがなければ傷つくことはない、誰も傷つけなくてすむ」

ミント「でもそれは違ってたわ。孤独は人の心を貧しくする。私に必要だったのは、孤独じゃなくて……」

ダークドリーム「孤独じゃなくて?」

ミント「……ううん、なんでもないわ。ふふっ」

ダークドリーム「なんか…色々あるみたいね。あっ、これ綺麗な花ね」

ミント「気に入ったから買ってきたの。ちょっと待っててね、今ご飯作るわ」

ダークドリーム「あ、うん。ありがとう…」

ダークドリーム(ミントって、わけありなのかしら。まぁ、こんなところで一人暮らしてるぐらいだし……)

ダークドリーム「……?」

ダークドリーム(あれ、なんだろうこれ。薬?)

ダークドリーム(病気持ちなのかな)

・・・・・

ダークドリーム「あー、おいしかった。ごちそうさま」

ミント「気に入ってもらえてよかったわ」

ダークドリーム「本当においしかった。うちじゃこんなに美味しい料理作れる子いないし」

ミント「ふふっ。ありがとう」

ダークドリーム「そうだ、いっそのことミントもうちに来ちゃえば?」

ミント「え?」

ダークドリーム「ここに一人でいても寂しいでしょ? うちのアパートはちょっとボロだけど、人はいっぱいいるわよ」

ミント「……ありがとう、気を使ってくれてるのね」

ダークドリーム「いやぁ、まぁそういうわけでも…」

ミント「ダークドリームって、優しいのね。あなたに出会えて思い出したわ、人と接する楽しさを。こんなに楽しいなんて」

ダークドリーム「あはは、なによそれ」

ミント「もう少し早く、あなたみたいな人と出会いたかったわ」

ダークドリーム「ミ、ミント……?」

ミント「……」

ダークドリーム「どうしたの……顔、近いけど」

ミント「どうしてあなたみたいな可愛くていい子が、プリキュアになれないのかしらね……残念だわ」

ダークドリーム「な、なに…なんなの急に?」

ミント「私ね……本当は女の子しか愛せないの」

ダークドリーム「え……?」

ミント「だから、他の子とは一緒に暮らせないと思ってた。みんなを傷つけちゃうから……」

ミント「でも、あなたと出会えてちょっと考え方が変わったわ。こんな私でも……受け入れてくれる?」

ダークドリーム「な、何を言ってんのよ……おかしいって」

ダークドリーム「こんな……!?」

ダークドリーム(あ、あれ……なんだろう、身体がアツイ……)

ミント「ダークドリーム……」

ダークドリーム(なんか……ミントのことがすごく綺麗に見える。や、やだ……口が……近づいちゃう)

ミント「んっ……――――」

・・・・・・

ダークドリーム「はぁ……はぁ……」

ミント「ふふ……とってもかわいい」

ダークドリーム「や、やだ……こんなの……」

ミント「大丈夫よ、怖がらないで。気持ちいいでしょう?」

ダークドリーム「あっ、あっ、ああっ……!?」

ミント「すごい……こういうのは初めて?」

ダークドリーム「いっ、いいっ……んっ……ああ!!」

ミント「温かい。人ってこんなに温かいのね……」

ミント「ああ……人の温もりがこんなにも幸せなものなんて」

ミント「幸せよ。私たち、今愛し合ってるわよね? 今、とても幸せよね……?」

ダークドリーム「はっ……ひぃっ……んんっ……!!」

ミント「うふふ、もっと声を上げて自分を曝け出していいのよ?」

ダークドリーム「はぁ……はぁ……すき……みんと……」

ミント「ああ……あたたかい……」

……アパート

ダークレモネード「ねえ、ダークドリーム知らない?」

満「知らないわ。部屋にいないの?」

ダークレモネード「いないわよ。まだ帰ってきてないのかしら。お腹空かせてると思ったから、食べ物買ってきてあげたのに」

満「あなた、ダークドリームに対しては優しいのね」

ダークレモネード「べ、別にそういうわけじゃ……。ちょっと様子がおかしいから、気を使ってあげてるだけよ」

ダークレモネード「まったく迷惑よねほんと、いつまでも落ち込んじゃって。こっちも気を使うのに疲れちゃう」

ムーンライト「迷惑だと思うのなら、関わらなければいいだけでしょ」

ダークレモネード「!!」

満「ムーンライト」

ムーンライト「満、パッションの部屋はまだ空き部屋っていうわけじゃないのよね? 彼女との契約は続いてるんでしょう?」

満「そうよ。あの部屋はまだパッションの部屋よ」

ムーンライト「今日から私が使うわ。物置部屋としてね」

満「えっ? でも…」

ムーンライト「許可ならちゃんとパッションに取ったわよ。私が部屋を使うのを彼女は快く承諾してくれたわ」

満「……本当に?」

ムーンライト「本当よ。優しい先輩ね」

ダークレモネード「……」

ムーンライト「それと、ダークドリームだけど。友達と食事に行くって言ってたわよ」

ダークレモネード「え……?」

ムーンライト「てっきりあなたのことだと思ってたけど、違ったのね」

ダークレモネード(だ、誰と食事ですって……?)

ローズ「ただいま……」

満「あら、おかえりなさい」

ローズ「どうしたの?」

満「いえ、なにも。ダークドリームの帰りがちょっと遅いって話をしてたの」

ローズ「ふーん。どうせどっかで遊んでるんでしょ」

ダークレモネード「……」

ダークレモネード(まぁ……ちゃんとご飯食べてるんだったらいいけど)

ここまで

・・・・・翌日

ダークドリーム「……」

ダークドリーム(あれ……わたし何してるんだろう)

ダークドリーム(確か昨日は、ミントに食事に誘われて、それで緑寮に来て、それで……)

ミント「おはよう、ダークドリーム」

ダークドリーム「!!」

ミント「よく眠れた? 待っててね、今朝ごはんできるから」

ダークドリーム「あ……」

ダークドリーム(そ、そうだ。わたし……ミントと……!!)

ミント「どうしたの?」

ダークドリーム「ひっ、ひぃっ!?」

ミント「……」

ダークドリーム「ふ、服! わたしの服どこ!?」

ダークドリーム「う……あ、頭が痛い……!!」

ダークドリーム(なにこれ……)

ミント「……ごめんなさいね。服はこっちにあるわよ」

ダークドリーム「か、返してよ…」

ミント「頭痛がひどいの? 他になにか異常はない?」

ダークドリーム「返しなさいよ!!」

ミント「ダークドリーム……」

ダークドリーム「はぁ……はぁ……」

ダークドリーム(わたし……なんてことしたの)

ダークドリーム(まさかミントと……しちゃうなんて)

ミント「……」

ダークドリーム「……か、帰る」

ミント「え? でも、朝ごはんが……」

ダークドリーム「食べるわけないでしょ!?」

ミント「……そう。ごめんなさい」

ダークドリーム(なによ……なんなのよこれ。意味分かんない……)

ダークドリーム(どうしてわたしがミントと……)

ダークドリーム「ッ……」

ミント「待って、ダークドリーム」

ダークドリーム「!!」

ミント「これ……お金。今は手元に7万円しかないけど、全部持って行って」

ダークドリーム「え……」

ミント「お金に困ってるんでしょう? あなたにあげるわ」

ダークドリーム「い、いらないわよこんなの! なんで…」

ミント「昨日私はあなたのおかげで救われたから。そのお礼がしたいの」

ダークドリーム「ふざけないで! 何が救われたよ!? あんなことをして……」

ミント「とても幸せだった」

ダークドリーム「!!」

ミント「あんな幸せな気持ちを味わったのは、久しぶりよ。とても嬉しいの。だからこれを……感謝と謝罪の気持ちとして受け取って」

ダークドリーム「……」

ミント「じゃあねダークドリーム。本当にありがとう」

ダークドリーム「っ……」

バタンッ

ミント「……」

ミント「この薬は……ダメみたいね。効果がすぐに切れる」

ミント「後でホワイト先輩に報告しておかないと……」

ミント「……」

……撮影所

マリン「やっほー、ブロッサム」

ブロッサム「あっ、おはようございますマリン」

マリン「ねえねえ、ブロッサムってパソコン得意?」

ブロッサム「え?」

マリン「実はさ、昨日ベリー姉のパソコン間違って壊しちゃったんだよね。動かないの」

マリン「本人はまだ気づいてないんだけどさー、気がつく前に直さないとあたし怒られちゃうよ」

ブロッサム「すみません……パソコンのことはよく分からなくて」

マリン「だよねー。んー、じゃあやっぱり何とかしてあたしがやってないって誤魔化すしかないか」

ブロッサム「パッション先輩は詳しいかな……」

マリン「あっ、そういえばどう? 赤寮。住み心地良い?」

ブロッサム「はいっ。思っていたよりも広くて快適ですし、なによりパッション先輩も優しかったです」

マリン「いいなー。……あっ、そうだ。いっそのことあたしと寮交換するってのはどう?」

マリン「あたしが赤寮行くから、ブロッサムは青寮来て。そうすればあたし怒られなくてすむし」

ブロッサム「ダメですよ、マリン」

マリン「ちぇっ」

ガチャッ

サンシャイン「やあ、二人とも」

マリン「あっ、サンシャイン。おっはよー」

ブロッサム「おはようございます」

サンシャイン「あれ、どうしたのブロッサム」

ブロッサム「え?」

サンシャイン「今日はなんだかいつもより明る気がするよ」

ブロッサム「そ、そうですか……?」

マリン「それはね、新しい寮に引っ越したからウキウキなんだよね?」

ブロッサム「ウ、ウキウキってほどでも」

サンシャイン「そっか。環境を変えたことがいい方向に働くといいね」

マリン「そういえば黄寮ってどんな感じなの?」

サンシャイン「え?」

マリン「あたし一度もそっちの寮の話聞いたことないんだよね。どんな雰囲気?」

サンシャイン「どんな雰囲気って……楽しいよ? 先輩たちも優しいし」

ブロッサム「へー」

マリン「いいなぁ、確かにパイン先輩も優しいそうだもん。それに比べてうちの先輩ときたら、口うるさいし厳しいし。二人の先輩のどっちかと交換して欲しいよー」

サンシャイン「厳しくしてるのは、マリンに期待してる証拠だよ」

マリン「えー、そうかな?」

ブロッサム「ふふっ、そうですよ」

……赤寮

パッション「ふぅ……」

パッション(なんとか、ここでやっていけそうね。ブロッサムも案外しっかりしてるみたいだし、いい子で良かったわ。あれなら安心ね)

パッション「……」

パッション(そういえば、ここ暮らすのなんて久しぶりかも。ずっとあのアパートにいたし)

パッション(なんだかここが自分の寮だとは思えないわ。落ち着かない……)

パッション(……今度いつアパートに戻ろうかしら)

prrrr prrrrr

パッション「?」

パッション(ダークドリームから……電話?)

ピッ

パッション「もしもし、どうしたの?」

ダークドリーム『あ……イース』

パッション「元気ないわね、寝起き? 何か用?」

ダークドリーム『……』

パッション「?」

ダークドリーム『……ごめん、なんでもない。切るね』

パッション「えっ、ちょっと」

プツッ

パッション「なんなのかしら……一体」

・・・・・・

ダークドリーム(どうしよう……)

ダークドリーム(ダークミントやダークアクアにも電話したけど、こんなこと相談しようがないわよ……)

ダークドリーム(昨日ミントの寮に行ったらそのままヤられちゃいました、なんて言えるわけないし)

ダークドリーム(はぁ……もう最悪。なんでこんなことに)

ダークドリーム「……」

ダークドリーム(うう……こんな時だっていうのにお腹がすく。何か食べたい)

ダークドリーム(あっ、あのお店美味しそう……)

ダークドリーム「……」

ダークドリーム(お金はあるのよね……けどこんなお金使っていいのかしら)

ダークドリーム(これじゃあまるで身体を売ってお金を稼いだようなものじゃない。風俗嬢と変わらないわ)

ダークドリーム(でも相手は女だし、そう考えるとまだマシ……いや、全然マシじゃないって)

ぐ~

ダークドリーム「……」

ダークドリーム(うう……空腹には勝てない。情けないなぁ、わたし……)

ここまで

・・・・・

翔子「えっ、昨日?」

ムーンライト「ダークドリームと食事したの?」

翔子「昨日は一日中働いていたわ……いつものお店で」

ムーンライト「ならそのお店にダークドリームは来た?」

翔子「いいえ……どうしてそんなこと聞くの?」

ムーンライト「知らないのならいいわ」

翔子「あ、ちょっと……。今日は仕事ないの?」

ムーンライト「今日はオフよ」

翔子「いいわね……お休み。私は今日もアルバイト……」

ムーンライト「お似合いよ。天職じゃない?」

翔子「……あら?」

ムーンライト「?」

翔子「あれ……ダークドリームじゃない?」

ダークドリーム「ああ……お腹いっぱい)

ダークドリーム(結局お金使っちゃった……いいのかしら、これで)

ダークドリーム(いや、でも……あれだけのことしたんだからお金もらうのは当然だし。むしろ普通っていうか、もっともらってもおかしくないっていうか……)

ダークドリーム(いやいや、やっぱりダメよこんなの。……でもお金使うのって気持ちいい)

ムーンライト「朝帰りなんて、いいご身分ね」

ダークドリーム「!!」

ムーンライト「こんなところで何をしているのかしら」

ダークドリーム「ム、ムーンライト。それに翔子まで」

ムーンライト「昨日はどうしてたの? アパートに帰らなかったみたいだけど。ダークレモネードが騒いでたわよ」

ダークドリーム「別に……ちょっと遊んでただけだって」

ムーンライト「あらそう。仕事がない人間は羨ましいわ、一日中遊べて。私もプリキュア辞めようかしら」

ダークドリーム「むっ……なによその言い方!」

ムーンライト「遊ぶお金があるのなら家賃でも払ったら? もう何ヶ月か滞納してるんでしょ」

ダークドリーム「払うわよ! 余計なお世話!」

ムーンライト「……払えるの?」

ダークドリーム「なに?」

ムーンライト「いえ……別に。今までお金がないって言ってた人間が、いつの間にそんなお金を手に入れたのか気になったのよ」

ダークドリーム「……あんたには関係ないでしょ」

ムーンライト「ええ。ただの興味本位よ」

ダークドリーム「……」

翔子「ダークドリーム……髪の毛ボサボサね」

ダークドリーム「えっ、あ……シャワー浴びてなかったら……」

ダークドリーム「わたし帰る!」

翔子「あ……」

ムーンライト「……」

翔子「……あの様子、怪しくないかしら? 誰か男の人の家にでも泊まってたのかも……」

ムーンライト「どうして男? 彼氏だとしたらおかしいわ」

翔子「え?」

ムーンライト「普通はそこでシャワーも浴びてくるはずでしょ? 恋人だったらシャワーぐらい貸すわ、でもそうじゃない。彼女の言うとおり、お友達とただ遊んでただけなのかもしれないわね」

翔子「……」

ムーンライト「けど……そんな様子でもなかった。確かに怪しいわ。なにか隠している」

……アパート

ダークドリーム「ただいま~……」

ダークレモネード「あっ!!」

ダークドリーム「!?」

ダークレモネード「何やってたのよ今まで! なんで帰ってこなかったの、なんでメール返信してくれなかったの!」

ダークドリーム「な、なによ。そんな怒んなくてもいいじゃない」

ダークレモネード「昨日なにやってたのよ!」

ダークドリーム「……遊んでただけよ」

ダークレモネード「誰と」

ダークドリーム「そんなのダークレモネードには関係ないでしょ。あんたわたしのお母さんかなにか?」

ダークレモネード「一晩中遊んでたの? ……へ~、お金無いって言ってたくせに」

ダークドリーム「なに? いけないの?」

ダークレモネード「べつに」

ダークドリーム「……」

ダークレモネード「……」

ダークドリーム「……もういいでしょ。わたしシャワー浴びてくるから」

ダークレモネード「……」

ダークレモネード(なによ……ダークドリームの態度。こっちの気も知らないで)

ダークレモネード(だいたい一番ムカつくのは、わたしのメールは返さないくせにダークミントたちには電話してたってことよ)

ダークレモネード(なんであたしのことは無視して……)

満「あら、お帰りなさいダークドリーム」

ダークドリーム「あっ、満……そうだ」

満「なに?」

ダークドリーム「家賃。とりあえず二ヶ月分渡しておくわ」

ダークレモネード「……?」

満「あら、どうしたの急に」

ダークドリーム「いいでしょ。ほら、受け取って」

ダークレモネード「……」

ダークレモネード(あのお金……どうしたのかしら)

ここまで

・・・・・・

ももか「え? ムーンライト?」

マリン「あの人ってどういう人なんですか? ももかさん仲いいから知ってるでしょ」

ももか「うーん……仲いいのかしら、よく分かんないけど。悪い子じゃないんじゃない?」

マリン「本当に? ……適当なこと言ってない?」

ももか「基本的に真面目なのよ、仕事に対しては。いつも完璧を求めて、ミスは認めない」

マリン「それは知ってるけどさぁ……ちょっといきすぎてるところがありますよね」

ももか「まあね。誇りを持ってるのよ、仕事が大好きなの」

マリン「あたしたちよりも?」

ももか「たぶんね」

マリン「でももうちょっと協調性持ってほしいなー、あの人にも」

ももか「まあ、ああいう子と一緒に仕事するのって大変そうよねー。傍から見るには面白いんだけど」

マリン「他人事だから気楽でいいですね」

ももか「けど、きっとあの子なりにあなた達のことは気にかけていると思うわよ」

マリン「気にかけてるって? いじめられてることぐらいしか思い出せない」

ももか「厳しくしてるのは期待や愛情の裏返し、って言うでしょ?」

マリン「うわ、またそれ」

ももか「また?」

マリン「うちの先輩は厳しいって話をサンシャインにしたら同じこと言われました」

ももか「あら、分かってるんじゃない」

マリン「少なくともムーンライトにはちっとも愛情を感じないなー。あの人は鬼だよ、鬼」

ムーンライト「鬼で悪かったわね」

マリン「!!」

ももか「あれ、どうしたのムーンライト。今日オフじゃないの?」

ムーンライト「ここのトレーニングルームを使いに来たのよ。ジムは人が多すぎてね」

ももか「休みなんだから、休めばいいのに」

ムーンライト「何もしない日を休みとは言わないわ」

ももか「要するに何もすることがないのね」

マリン「お疲れ様ですムーンライトさんっ! 今日も精が出ますね!」

ムーンライト「おだてても無駄よ」

マリン「あははは……」

ムーンライト「こんなところでサボってる暇がるのなら、あなたも一緒に身体を動かす? 楽しいわよ、鬼にしごかれるのも」

マリン「も、もう休憩終わりだから! じゃあね!」タタタッ

ももか「ばいばーい」

ムーンライト「……あの子と何を話してたの」

ももか「気になる?」

ムーンライト「大体は想像がつくわ」

ももか「嫌われてるって自覚あるのなら、もうちょっと仲良くしてあげれば? そうすればあの子達も、喜ぶわよ」

ムーンライト「喜ばせる必要はないわ。馴れ合いも必要ない。ごっこ遊びじゃないんだから」

ももか「うわー、こわいこわい」

ムーンライト「それよりも厳しくしてとことん追い詰める必要があるわ。どこまで這い上がってこれるか見てみたいものね」

ムーンライト「それをするのが寮の役割だと思うけど……なにをやってるのかしら」

ももか「ムーンライトは三人をどうしたいのよ」

ムーンライト「強くなる必要がある。身体も心も……今のままじゃ物足りない。特にブロッサムは、リーダーを名乗るぐらいならもう少ししっかりして欲しいわ」

ももか「やっぱり」

ムーンライト「なにが?」

ももか「ムーンライトなりに期待してるのね。愛情の裏返し」

ムーンライト「私は……責任と自覚を持って仕事して欲しいだけよ。期待も愛もないわ」

ももか「ふふ、あっそ」

ムーンライト「……」

ももか「私もそろそろ戻ろっと。じゃあ、頑張ってね」

ムーンライト「……はぁ、喋りすぎね」

ここまで
時間なくてほとんど書き進められていませんが勘弁

・・・・・

「ではインタビューありがとうございました。お疲れ様です」

ドリーム「お疲れ様でーすwwww」

ローズ「はい、お疲れ様です。失礼します」

ガチャッ
バタン

ローズ「……」

ドリーム「やっと終わったねwwww疲れたwwwww」

ローズ「あんた今日一人なの? ルージュは?」

ドリーム「今日は一人で来たよwwwww」

ローズ「ふーん……」

ドリーム「ねえねえローズ知ってる?wwww」

ローズ「なによ」

ドリーム「今度プリキュアのみんなでお出かけするらしいよwwwww」

ローズ「はぁ……?」

ドリーム「みんなでお泊まりするのwwwwローズも行くでしょ?wwww」

ローズ「なにそれ。……行かないわよ」

ドリーム「えーwwwなんでwwww」

ローズ「それみんな行くって言ってるの?」

ドリーム「たぶん行くんじゃないかなwwwww」

ローズ「……ならいい」

ローズ(ミントやアクアも来るとしたら……私が行けるわけないじゃない)

ドリーム「久しぶりに5のみんなで遊びたいから行こうよwwww」

ローズ「みんなで遊んだ記憶なんてほとんどないんだけど。現役の頃はずっと仕事だったんだし」

ドリーム「じゃあ初めてみんなで遊べるねwwww」

ローズ「……あんた私や他のみんなのことどう思ってるわけ?」

ドリーム「なにが?wwww」

ローズ「覚えてるでしょ、あんなことがあったのよ! ……口には出したくないけど、あんた達がミントと一緒に……」

ドリーム「みんなでエッチしちゃったねwwwww」

ローズ「っ……不潔よ。最低だわ」

ドリーム「wwwwww」

ローズ「……」

ローズ(ほんとに何考えてるのよこいつ……)

ドリーム「ローズはみんなのこと嫌い?wwww」

ローズ「ええ、あんたもね」

ドリーム「そっかwwwww」

ローズ「……はぁ、もう帰るわ」

ドリーム「でもあたし達はこれからもずっとプリキュア5だよwwww」

ローズ「は?」

ドリーム「ずっとずっとww友達だよwwww」

ローズ「……友達じゃないわよ」

ドリーム「wwwwww」

ローズ「……」

……アパート

ローズ「ただいま……」

ローズ(なんて、誰に言うわけでもないけど……)

ダークドリーム「あっ」

ローズ「!!」

ダークドリーム「帰ってきたんだ。おかえり」

ローズ「……」

ダークドリーム「うわ、シカト。感じ悪っ」

ローズ「……この前ミントに会ったんだって?」

ダークドリーム「な、なんであんたが知ってんの!?」

ローズ「悪いこと言わないから、あいつと関わるのはやめておきなさい。ろくな目に遭わないわよ」

ダークドリーム「……わたしとミントの事情も知ってるの?」

ローズ「は?」

ダークドリーム「……なんでもない」

ローズ「とにかく、二度とあいつには近づかないこと。分かった?」

ダークドリーム「言われなくても……」

ローズ「……それよりあんた、いつになったらプリキュアになるわけ? ずっと部屋でゴロゴロしてて、情けないと思わないの」

ダークドリーム「なっ…なによいきなり。あんたには関係ないでしょ!」

ローズ「働かないでずっと遊んでばっかじゃない。あんただけよそんなことしてるの。みっともない…」

ダークドリーム「うるさいわね…! あたしだってなんとかしようと頑張ってんのよ!!」

ローズ「あんた見てるとムカつくのよ! いつまでも夢見て馬鹿じゃないの!!」

ローズ「どうせやる気もないくせに、プリキュアなんて諦めれば!?」

ダークドリーム「っ…勝手なことばっか言ってんじゃないわよ!! 何様なのよ!?」

ローズ「少しは現実見なさいって言ってんの!!」

ダークドリーム「チッ……うざっ。はいはい、わたしがこのアパートにいなきゃいいんですね。分かりましたよ、どっか行ってるわよ。ふざけんじゃないわよ偉そうに」

ローズ「……」

ローズ(……ここまで言うつもりはなかったけど)

・・・・・

ダークドリーム(なによあいつ、本当にウザいんだから。なんであんなのがあのアパートにいるのよ、プリキュアの寮にでも行けばいいでしょ)

ダークドリーム(わたしだって本気でやってたんだから。何も知らないくせして……)

ダークドリーム(あームカつく。久々にこんなムカついた。どっかでストレス発散させないと)

ダークドリーム(て言っても、何すればいいのかしら。お金は一応残ってるけど)

ダークドリーム「……」

ダークドリーム(はぁ、結局このお金使い込んじゃった。最初は返そうと思ったのに……)

ダークドリーム(……そういえば、ダークミントが言ってたっけ。むしゃくしゃしている時はお酒を浴びるほど飲めばスッキリするって)

ダークドリーム(飲んでみようかな……一回。どうせ他にやることもないんだし)

ダークドリーム(それにわたしなんてもう……汚れちゃったし。何事も経験よ。一回ぐらいがぶ飲みしたってバチは当たらないわ)

ダークドリーム「……」

ダークドリーム(それに……もうどうせ、プリキュアにはなれないだろうし……)

・・・・・・

ブロッサム「お疲れ様でした」

マリン「おっつかれー」

ブロッサム「はぁ……やっぱりプリキュアってハードですね。夏場は特に、体力が持ちません」

マリン「だね、一番キツいね。寮に帰ったらお風呂入って、アイス食べながらソファの上でくつろぎながらテレビでも見たいなー」

ブロッサム「いいですねそれ! 今まで帰ったらすぐトレーニングの桃寮ではそんなことは許されませんでした」

ブロッサム「しかし、今はもう違います! 赤寮に帰ったら身体をゆっくり休めることができます! ああ……夢みたい」

ムーンライト「夢を見るにはまだ早すぎる時間ね」

ブロッサム「!!」

ムーンライト「あなたは残りなさいブロッサム。この前の稽古の続きをしましょう」

ブロッサム「ど、どうしてムーンライトが……今日は休みなんじゃ」

ムーンライト「いいから、来なさい」

ブロッサム「うう……そんなぁ」

マリン「……ちょっと待ったー!」

ブロッサム「え?」

ムーンライト「却下よ」

マリン「まだ何も言ってないじゃん! あたしも残るよ」

マリン「ブロッサム一人だけにキツい思いはさせられないって。ついでにサンシャインも呼んでくる」

マリン「みんなで一緒に練習しようよ。あたし達は四人で一つのチームだしね」

ブロッサム「マリン……!」

ムーンライト「……好きにしなさい」

マリン「じゃあちょっとサンシャイン連れてくるね!」タタタッ

ブロッサム「うう……ありがとうございますマリン」

ムーンライト「少しは彼女の行動力を見習ったらどうなの。あなたはリーダーだっていうのに、主体性というものがまるでないわね」

ブロッサム「うっ…」

ムーンライト「イースはあなたに何か指導したりしないの?」

ブロッサム「えっ、イース?」

ムーンライト「知らないの? パッションの本名よ。こう呼ぶとパッションは喜ぶの」

ブロッサム「……えっと、ムーンライトはパッション先輩とお知り合いなんですか?」

ムーンライト「いいえ、全く知らないわ。話をしたこともない」

ブロッサム「……?」

・・・・・

ドガッ ボコッ

マリン「ぎゃふん!!」

ムーンライト「はぁ……次」

マリン「か、格闘家でもないのにこんな激しいスパーリングするなんて……」

サンシャイン「たあああっ!!」

ムーンライト「はっ!!」

ブンッ

サンシャイン「きゃあっ!?」

ムーンライト「何か勘違いしているようね、あなた達は私を倒すことを目的にしているように見えるけど」

ムーンライト「これは喧嘩じゃないのよ。ちゃんとした格闘を体に身につけるためにやっているの」

ムーンライト「一つ一つの動作を意識して私に挑みなさい。撮影中と同じ気持ちになるの」

マリン「だ、だったらこんな本気になって反撃しなくても……」

ムーンライト「本気でやらなければ、意味はない。安心しなさい顔は傷つけないから。ブロッサム次はあなたの番よ」

ブロッサム「う……うう」

ムーンライト「何をしているの。この二人はボロボロになっても立ち上がるわよ」

ムーンライト「あなたは? リーダーなんでしょ? それともそこで何もしないまま高みの見物でもしているつもりかしら」

ブロッサム「うう……」

ブロッサム(か……覚悟を決めないと……)

ブロッサム「て、てりゃああああ!!」

ボゴッ

ブロッサム「ブッ!?」

ムーンライト「動きが遅いわよ」

ドゴッ

ブロッサム「うぐっ!!」

ムーンライト「なぜ同じミスをするの。もう一回」

ドガッ

ブロッサム「ぐふっ!?」

ムーンライト「目線だけで動きを追おうとしない。どうしてすぐに逃げ腰になるの。もっと始動を早くしなさい」

ブロッサム「はぁ……はぁ……」

ムーンライト「どうしたの、早く立ちなさい!」

ブロッサム「ぐずっ……もう……無理です……ひっぐ」

ムーンライト「……正直ね。けどこれじゃあ無能だわ」

マリン「ちょっとちょっと! 言い過ぎ!」

ムーンライト「そうね、役立たずって言ったほうがいいのかしら」

ブロッサム「……」

サンシャイン「も、もうちょっと優しくしてくれても…」

ムーンライト「ブロッサム、あなたの力はこんなものなの?」

ムーンライト「だとしたらあなたをプリキュアに選んだ人間はそうとう人を見る目がないのね」

ブロッサム「ム、ムーンライトの前だと緊張して体が動かなくて……」

ムーンライト「ならカメラや大勢の人間の前でやれば本気が出せるって言うの!?」

ブロッサム「うう…ぐずっ…うええええん」

ムーンライト「……はぁ」

マリン「な、泣かない泣かないブロッサム。ほーらよしよし」

ムーンライト「……」

・・・・・

ブロッサム「はぁ……どうして私ってこうもダメダメなんでしょう……」

マリン「元気出しなって! そんなに悪くなかったよ。ムーンライトが厳しすぎるだけなんだって」

サンシャイン「でも……私たちが実力不足なのは確かかも……」

ブロッサム「……」

マリン「そう? あたし達だって頑張ってんじゃん」

サンシャイン「向上心を持つことが大事なんだよ、きっと」

サンシャイン「プリキュアになれたことで満足しちゃってる。だから気持ちの面で疎かになってる部分があると思うんだ」

サンシャイン「これじゃあ力も出しきれないし、成長もできないよ……」

サンシャイン「ひょっとしてムーンライトは、そのことを私たちに教えようとしているのかもしれない」

マリン「えー……そうかな?考えすぎじゃない?」

サンシャイン「ブロッサムはどう思う?」

ブロッサム「わ、わたしは……」

ムーンライト「ブロッサム」

ブロッサム「!?」

マリン「あっ、出たな鬼コーチ!」

ブロッサム「な、なんですか……?」

ブロッサム(またお説教でしょうか……)

ムーンライト「これから赤寮へ帰るのよね?」

ブロッサム「そ、そうですけど…」

ムーンライト「私も行くわ」

ブロッサム「え?」

ムーンライト「遊びに行くのよ、あなたの寮にね。いいでしょ?」

ブロッサム「え…ええええええ!?」

ここまで

……赤寮

パッション(ブロッサム、頑張っているかしら。怪我とかしてなければいいけど)

パッション(それにしても……私がアパートにいたこともイースのことも、ブロッサムに打ち明けようかしら)

パッション(もし打ち明けて幻滅されたりしたらどうしよう……)

パッション「……」

パッション(まぁ、そんなことはないわよね。ないとは思うけど)

パッション(思うけど……やっぱり黙っていよう。あまり言うことでもないわ)

ガチャッ

パッション「!!」

ブロッサム「た、ただいま…」

パッション「ブロッサム! おかえりなさ……い!?」

ムーンライト「ただいま、パッション先輩」

パッション「ム、ムーンライト!? どうしてここに!!」

ムーンライト「遊びに来たのよ。パッション先輩」

パッション「あ、遊びって……」

ブロッサム「すみません、ムーンライトがどうしても来たいって言って…」

ムーンライト「いいところですね、広くてきれいだわ。うちと大違い」

パッション「……」

ムーンライト「どうしたの? ここはお客にお茶も出さないの?」

ブロッサム「あ…わ、わたし持ってきます」

パッション「いいわよ、私が用意するから。ブロッサムは疲れているでしょ? 休んでて」

ムーンライト「パッション先輩って優しい人なのね、ブロッサム」

パッション「はぁ……」

・・・・・

ブロッサム「……」

ムーンライト「……」

パッション「……」

ブロッサム(な、なんだか変な空気……。なんでムーンライトはうちに来たんだろう。早く帰ってほしい……)

ムーンライト「イース…」

パッション「!!」

ムーンライト「あらごめんなさい、パッション先輩だったわね。パッション先輩はここでの暮らしは長いのかしら」

パッション(ム、ムーンライト……あなた一体)

ムーンライト「ブロッサムが来る前まではずっと一人暮らしだったんでしょう? こんな広いところで一人なんて、さぞかし寂しかったでしょうね」

パッション「え、ええ……まぁ」

パッション(この様子だと……私がブロッサムにアパートのことを秘密にしているのを分かってるわね。しかも分かってる上で、私の困った様子を見て楽しんでる)

パッション(もしかしてそのうち、私の秘密をブロッサムにバラすんじゃ……)

ムーンライト「仕事のない日は普段何をなされているんですか?」

パッション「悪いけどムーンライト……あなたも明日仕事でしょ? 早く帰って休んだほうがいいんじゃないかしら」

ムーンライト「私の心配をしてくれるんですか? 優しいんですね」

パッション「ブロッサムもこの後身体を休めなきゃいけないの」

ムーンライト「少しぐらいのお話はいいでしょう? ねえ、ブロッサム」

ブロッサム「え、えっと……」

パッション「もう帰ったほうがいいんじゃないかしら」

ムーンライト「どこへ?」

パッション「……あなたの、住んでいるところよ」

ブロッサム「あれ? そういえば……ムーンライトってどこに住んでいるんですか? 青寮や黄寮でもないですよね」

ムーンライト「いい質問ね」

パッション「……」

ムーンライト「マンションよ。部屋を借りてそこで暮らしているの」

ブロッサム「へぇー……どうして寮じゃないんですか?」

ムーンライト「プライベートの時間までプリキュアでいたくないからよ。寮で暮らせば一日中プリキュアであることを意識させられる。あなたもそう思うでしょ、パッション先輩?」

パッション「っ……いいえ、思わないわ」

ムーンライト「残念ね。意見が合うと思ってたのに」

パッション「……」

ムーンライト「……」

ブロッサム「あ、あの、二人とも……?」

ムーンライト「もう帰るわ、お邪魔してごめんなさいね」

パッション「途中まで送っていくわ」

ムーンライト「いいわよ、一人で帰れる」

パッション「遠慮しないで。ブロッサム、私はちょっとムーンライトを送っていくわ」

ブロッサム「は、はい」

・・・・・

パッション「一体どういうつもりなの!? どうしてうちに来たの!!」

ムーンライト「言ったでしょ、遊びに来たって。ブロッサムとは仲がいいのよ」

パッション「嘘つかないで!」

ムーンライト「嘘をついてるのはそっちの方でしょ? ブロッサムにね」

パッション「あなたにとやかく言われることじゃない。なんなの? わざわざこんなところにまで来て私に嫌がらせするのがそんなに楽しい!?」

ムーンライト「ええ。まるで一日の疲れが癒えるようだわ」

パッション「最低ね!! 人間のクズよ!!」

ムーンライト「……ずっと嘘をつき続けられると思ってるの?」

パッション「うるさい!!」

ムーンライト「嘘を付けば、ブロッサムに対して罪悪感を抱くことになる」

パッション「……」

ムーンライト「あなたはいずれ、その罪悪感に耐えられなくなって……きっと逃げるでしょうね。あとは想像するのも簡単だわ」

ムーンライト「今までどおり変わらず、あなたは現実と向き合わないで、正しいことからも逃げて惨めな生活を送るのよ」

パッション「ふ……ふふふ」

ムーンライト「……?」

パッション「何をしに来たかと思えば……それを言いたくて私に会いに?」

ムーンライト「笑うほど嬉しいっていうの?」

パッション「呆れてるのよ。あなたはいつもそう……」

ムーンライト「今度はあなたが説教する番?」

パッション「私が惨めだとしても、あなたが惨めじゃないってことは言えるの? 違うでしょ、あなたも惨めよ。自分が惨めだと認めたくないから他人に攻撃的になってるんじゃないの」

ムーンライト「私はあなたみたいに、自分を偽ってまでもあのアパートで暮らしたいとは思ってない」

パッション「偽ってなんかないわ、私は私よ」

ムーンライト「ならどうしてブロッサムに嘘を?」

パッション「……」

ムーンライト「体裁を保つためなんでしょうけど、みっともないわね」

パッション「……あなたはどうしてあのアパートに?」

ムーンライト「もう出て行くわよ」

パッション「そんなこと言っても、きっと出て行かないでしょうね。口では孤独がいいって言いながら、結局は迷っている」

パッション「一人になるのが怖いのよ。あのアパートでまともに話してたのは私だけだしね」

ムーンライト「……妄想もそこまで言えると立派なものね」

パッション「さっきの質問を変えるわ。あなたはどうして寮に行かなかったの?」

ムーンライト「……」

パッション「私は……少しでもプリキュアとしての自分から距離を取るために寮から出て行った。それは認めるわ」

パッション「ならあなたは?」

ムーンライト「なんの意味もない問答だわ」

パッション「私は正直に話したのに……あなたは、なにも答えてくれないのね」

ムーンライト「……」

パッション「……心を開いて欲しいのよ。どうして私のことを信用してくれないの?」

ムーンライト「自分自身から逃げているような人間は信用できない」

パッション「……」

ムーンライト「……ブロッサムと一緒に暮らすというのなら、せめて彼女の面倒はちゃんと見てあげなさい」

ムーンライト「先輩のあなたがしっかりしなければ、ブロッサムもしっかりしないわ」

パッション「……余計なお世話よ」

ムーンライト「……安心しなさい。ブロッサムにはアパートのことは黙っておくから」

パッション「っ……」

・・・・・・

ブロッサム「……」

ブロッサム(パッション先輩、遅い……)

ガチャッ

ブロッサム「あっ」

パッション「おまたせ、ブロッサム」

ブロッサム「パッション先輩…」

パッション「どうしたの?」

ブロッサム「このまま戻ってこないんじゃないかと思って……不安になって」

パッション「戻ってこないわけないでしょ? ここが私の居場所なんだから」

ブロッサム「そ、そうですよね。変なこと言ってすみません」

ブロッサム「それより、パッション先輩って本当にムーンライトと知り合いじゃないんですか?」

パッション「え?」

ブロッサム「なんか、初めて会ったようには見えなかったですし…」

パッション「……いいえ、全く知らないわ。今日初めて会った」

・・・・・

ムーンライト「……」

ムーンライト(馬鹿ね……本当に。どうして私はこんなところまで来たのかしら)

ムーンライト(こんな意味のない行動、馬鹿げている。早く戻らないと)

ムーンライト(明日にでも、新しく住むところを探さないと……)

ホワイト「あら?」

ムーンライト「……!!」

ホワイト「あなたは……ムーンライトよね?」

ムーンライト「……」

ホワイト「やっぱり、ムーンライトだわ。こんなところで会えるなんて思ってなかった。私のことは知っているかしら?」

ムーンライト「キュア……ホワイト」

ホワイト「ふふっ、こうして会うのは初めてね」

ホワイト「今帰りのなの? そういえばどこで暮らしているの?」

ムーンライト「……」

ホワイト「以前あなたのお姉さんにも頼まれて、うちの寮へも招待したのにどうして…」

ムーンライト「行く必要がないと思ったからよ。悪いかしら」

ホワイト「いいえ。けど一人だと大変じゃない?」

ムーンライト「余計なお世話ね。あなたの心配するようなことじゃないわ」

ホワイト「……ふふ」

ムーンライト「?」

ホワイト「本当に、お姉さんの言ってた通りの人ね」

ムーンライト「……」

ホワイト「嘘が下手。嘘をつくときはいつも一瞬右斜め下に視線をそらすって聞いたけど、その通りね」

ムーンライト「!!」

ホワイト「本当は、寂しがり屋だとも言ってたわ」

ムーンライト「人をおちょくって自分の意のままに操るのが好きみたいね。残念だけど私には通用しないわよ」

ホワイト「そんなに怒らないで。喧嘩しようってわけじゃないんだから」

ムーンライト「……」

ホワイト「もしよかったら、今からでもうちの寮で暮らしてもいいのよ? 私もイーグレットも歓迎するわ」

ムーンライト「……もうこれ以上私に構わないでちょうだい」

ホワイト「かわいそうな子ね、自分から欲しくもいない孤独を求めてる。矛盾しているわ。そうなるのは何かコンプクレックスの現れ? それともただの虚勢かしら」

ムーンライト「それもあの女が言ってたの?」

ホワイト「いいえ。私の感想よ」

ムーンライト「初対面の人間に対してよくそこまで言えるわね。ろくな性格じゃないわ」

ホワイト「そうかもね」

ムーンライト「……」

・・・・・数日後

監督「本当に最高だったわ。今日は調子よさそうね」

ブロッサム「あ、ありがとうございます」

監督「明日もがんばってね」

ブロッサム「は、はいっ」



マリン「なんか今日のブロッサムすごいよね」

サンシャイン「きっとムーンライトが指導しているおかげじゃないかな?」

マリン「へ?」

サンシャイン「ここ最近ずっとムーンライトと特訓しているんだよ。ムーンライトが無理やりやらせてるみたいなんだけどね」

サンシャイン「アクションのことだけじゃなくて演技や何から何まで教えてるんだって」

マリン「へぇ~……どうしたんだろうね急に。ムーンライトってそんなに面倒見のいい人だったっけ?」

サンシャイン「さぁ。でもいいことだと思わない?」

マリン「……そだね。もしかしたら、これをきっかけに仲良くなれたりして」

・・・・・

ブロッサム「あっ、ムーンライト」

ムーンライト「……」

ブロッサム「き、昨日はありがとうございました。ムーンライトの言ったとおりにしたら、上手くできました」

ムーンライト「……当然よ。あれだけ教えてできなければプリキュア失格だわ」

ブロッサム「う……は、はい」

ムーンライト「けど、まだまだ物足りないわ。及第点といったところね。これで満足しないでもっと上を目指しなさい」

ブロッサム「はい……」

ムーンライト「……今日はもう帰っていいわよ。トレーニングはなし」

ブロッサム「お、お疲れ様でした」

ムーンライト「……」

ムーンライト(彼女……やっぱり才能はあるみたいね。大人しい性格のせいかイマイチ力を出しきれていないけど)

ムーンライト(あの才能を腐らせるのはもったいないわ。もし上手く成長できれば……その時は私と対等な存在になれるかもしれない)

ムーンライト(どの分野にしても才能を持っている人間はごくわずかだけ。その才能にもピンからキリまである)

ムーンライト(現状では私のほうが上だけどもし彼女たちが追いついてくれたら、私の理解者が増えるってことになるのかしら)

ムーンライト「……」

ムーンライト(ふ……バカバカしい。私はただ、一緒に仕事をする上では他の人間にも完璧であってほしいだけ)

ムーンライト(私の足を引っ張らないようにしてもらわないと……私が困るわ)

・・・・・

マリン「ブロッサム、ムーンライトと何話してたの?」

ブロッサム「大した話は……今日の報告をしただけです」

マリン「ふーん……なんかすっかり馴染んでるね、二人とも」

ブロッサム「そ、そうですか?」

マリン「そうだよ。この前まではムーンライトとのこと怖いって言ってたくせに」

ブロッサム「確かに……今でも怖いです。でもムーンライトの言うことは、正しいですし」

マリン「なんかずるいなー」

ブロッサム「え?」

マリン「最近のブロッサムあたしのことほったらかしにしてるんだもん。ムーンライトばっかと一緒で」

ブロッサム「そ、そんなことは」

マリン「にひひ、冗談だって。でも今日は一緒に帰ろ!」

ブロッサム「はいっ」

??「あの~、すみません……あっ!!」

ブロッサム「え?」

??「も、もしかしてキュアブロッサムさんですか!?」

ブロッサム「そ、そうですけど……」

??「うわーすごい!! まさか本当に会えるなんて!!

??「いつも応援してます!!」

ブロッサム「ど、どうもありがとうございます」

マリン「出待ちの人? ファン? よっしゃ、いっちょあたしがサインでも書いてあげるよ!」

??「ブロッサムさんサインください!!」

ブロッサム「あっ、はい」

マリン「あの、あたしのは……?」

ブロッサム「えっと、何に書けばいいんでしょう? 色紙とかあれば…」

??「あたし持ってない。こんなことなら用意しておけばよかった~」

??「うーん……あっ、じゃあこれでいいです。これに書いてください、お願いします!」

ブロッサム「はい。……って、えっ?」

マリン「どうしたの?」

ブロッサム「こ、これ……履歴書じゃないんですか?」

??「はい! あたしプリキュア目指してて、一次審査に出す履歴書を持ってきたんです」

ブロッサム「だっ、ダメですよそんなものにサインなんて!!」

??「いいですよいいですよ。サインもらった後に履歴書はコピーして、コピーの方を提出しますから」

マリン「すごい。そんな発想あたしにもない」

ブロッサム「ダメです! 履歴書をなんだと思ってるんですか!」

??「え?」

ブロッサム「一次審査っていうものはとても大切なものなんです。まず一次に受からなかったら二次にも三次にも受からないんですよ?」

ブロッサム「コピーなんて出したら落とされるどころか受付もされません。大事にしてください」

??「は、はい」

マリン「ていうかなんで履歴書なんて持ってるの?」

??「え? だって、履歴書って直接プリキュアの監督の人に渡せばいいのかなって思って。スタジオにいるんですよね?」

ブロッサム「……」

マリン「……」

??「あれ、違うんですか?」

ブロッサム「全然違います……履歴書は事務所にに郵便で送ってください」

マリン「なんで直接渡そうと思ったのよ」

??「だって直接手渡したほうが手っ取り早いし、顔も覚えてもらえるかもしれないじゃないですか」

マリン「あー……なるほどね。言いたいことはなんとなく分かるけど、普通は直接渡したりなんかしないって。しかも監督とか全然見当違いだし」

??「そうなんだ。じゃあ郵便で送ろっと」

マリン「適当なメモ用紙あったから、サインこれに書いてあげなよ」

ブロッサム「あ、はい」

??「わぁ、ありがとうございます!」

ブロッサム「オーディション、頑張ってくださいね」

??「!!」

ブロッサム「ど、どうしたんですか?」

??「あたし、感激しちゃいます! ブロッサムさんに頑張れって言われるなんて!」

ブロッサム「あはは…」

マリン「よかったらここであたし達が審査してあげるよ」

??「え?」

マリン「プリキュアになれる素質があるかどうか、見てあげる」

??「本当に!?」

ブロッサム「マ、マリン、なに言ってるんですか」ヒソヒソ

マリン「いいじゃない、おもしろそうだし。こういう真っ直ぐな子あたし好きだし」ヒソヒソ

??「何をやればいいですか!」

マリン「そうだねー…じゃあプリキュアにとって大切な要素の一つ、身体能力を見てあげようかな。とりあえず垂直跳びやってみて」

??「はい!」

マリン「ちなみにあたしの垂直跳びは、去年のこの時期にだいたい10メートルぐらいかな。まぁその後も鍛えて記録伸ばしたけど。ブロッサムは?」

ブロッサム「8メートルぐらいです」

??「よしっ……じゃあ跳びます! せーの!!」

ブオンッ

マリン「!?」

ブロッサム「!!」

??「やった、この前より跳べたかも!」

マリン「な、なにあれ! 30メートルは超えてるよ!?」

ブロッサム「す……すごい」

??「よっと。着地成功」

ブロッサム「……」

マリン「……」

??「どうでしたか?」

マリン「あー……う、うん。すごい」

??「いやー、先輩たちほどでもないですよ」

マリン「たぶんプリキュアになれると思うよ……跳躍すごいし、顔もかわいいし」

??「本当ですか!?」

ブロッサム「は、はい……これだけあったら、後は演技さえできれば十分です」

??「やった! あたしがんばります!」

??「がんばって絶対にブロッサム先輩の後輩になります!」

ブロッサム「あはは…」

??「じゃあ失礼します。サインありがとうございましたー」

ブロッサム「……」

マリン「すごいね……あの子絶対プリキュアになるよ。なんていうか、存在感があるよね」

ブロッサム「凄すぎて、二の句が継げません」

マリン「本当にブロッサムの後輩になるかもねー。楽しみじゃん」

ブロッサム「……はぁ」

マリン「どしたの」

ブロッサム「あんなすごい子がいるなんて……それに比べてわたしは」

マリン「落ち込まないの。ジャンプ力は確かにすごかったけど、ブロッサムだって負けてないところはあるでしょ」

ブロッサム「それは?」

マリン「それは知らないけど」

ブロッサム「あう……」

マリン「まぁあんなすごい子がいるって知ったらさ、あたし達ももっと頑張ろうって思えてくるじゃん」

マリン「よーし、燃えてきたー!! 気合入れていくぞー!!」

ブロッサム(私も……もっと頑張らなきゃいけないのかな)

ブロッサム(今思うと、桃寮で行ってた過酷なトレーニングは正しかったのかも……)

ブロッサム(でもわたしにはあんなの続かないし……)

マリン「ブロッサム」

ブロッサム「!!」

マリン「一人で悩まないの。一緒に強くなろうよ」

ブロッサム「マリン……」

マリン「あたし達は最高のパートナーなんだから! ……なんて言ったら、サンシャインに怒られちゃうかな」

ブロッサム「……ふふっ、マリンったら」

……アパート

ダークレモネード「ダークドリーム、いるの? 入るわよ」

ガチャッ

ダークレモネード(う……なにこれ)

ダークドリーム「あwwwおーっすダークレモネードwwwww」

ダークレモネード「くっ、臭っ! 酒臭い!! なんでこんな散らかってるの!?」

ダークドリーム「だってwwwww片付けるのが面倒なんだもーんwwwww」

ダークレモネード「……」

ダークドリーム「ダークレモネードも飲む?wwwww」

ダークレモネード「……こんな大量のお酒、どうして買えるのよ」

ダークドリーム「一口飲むと止まらないからwwwついつい買っちゃうのよねwwww」

ダークレモネード「そうじゃなくて、お酒買った時のお金はどうしたのって聞いてるの!」

ダークドリーム「wwwww」

ダークレモネード「あんたなにか仕事はじめたっけ?」

ダークドリーム「はじめてませーんwwwニートでぇーすwwwww」

ダークレモネード「じゃあ、どうやって……」

ダークドリーム「おしえましぇーんwwwwwww」

ダークレモネード「……」

ダークドリーム「wwwwwwww」

ダークレモネード「っ……いい加減にしなさいよ!! なんなの今のあんた、まったく輝いてない!!」

ダークレモネード「ただの酔っ払いじゃない!! そんなんでプリキュアになれると思ってるの!?」

ダークドリーム「もうプリキュアなんて諦めたしwwwww」

ダークレモネード「なっ……!?」

ダークドリーム「はじめっから向いてなかったのよあたしにはwwwwどうせ才能もないんだしwwwww」

ダークドリーム「もうやめやめwwwwプリキュアなんて馬鹿らしいwwwww」

ダークレモネード「……冗談でしょ? わたしの知ってるダークドリームはこんなこと言わないわよ」

ダークドリーム「はーい冗談デースwwwwなんちゃって嘘でぇーすwwwww」

ダークレモネード「……」

ダークドリーム「wwwwww」

ダークレモネード「やめてよ……わたしにそんな落ちぶれたところ見せないでよ……」

ダークレモネード「いつも頑張ってたダークドリームはどうしちゃったの!? なんでそんな風になっちゃったのよ!!」

ダークドリーム「なーんでだろーwwww分かんなーいwwwwww」

ダークレモネード「ふざけないで!!」

ダークドリーム「wwwww……」

ダークレモネード「なにか悩みでもあるんだったら相談してくれてもいいじゃない。なんで、何も言わないでそんな風に…」

ダークドリーム「……ダークレモネードには関係ないでしょ」

ダークレモネード「!!」

ダークドリーム「話したってどうせ分からないわよ……ダークレモネードなんかには。もうほっといてよ……」

ダークレモネード「……馬鹿ッ」

ガチャッ
バタンッ

ダークドリーム「……」

ダークドリーム(相談なんてできるわけないわよ、今更……。わたしだってどうにかしたいけどもう無理なのよ)

ダークドリーム(今まで諦めなければなんとかなると思ってたけど……私がバカだった。才能もないくせに夢なんて見ちゃって)

ダークドリーム(もう疲れた……悩みたくないし、考えたくもない。こうやってお酒でも飲んで何もかも忘れていたほうが、ずっと楽……)

ここまで
結局終わりませんでしたが話はもう終わりに向かってます、たぶん

・・・・・

ローズ「ダークドリーム?」

ダークレモネード「すっかり腑抜けちゃてるのよ……ほんと信じられない」

ローズ「ほっとけばいいでしょ、あんなやつ」

ダークレモネード「……できるところならそうしたいけど。でもなんかほっとけないところがあるの」

ダークレモネード「これでも一応長い間同じアパートで暮らしてる仲だし……」

ローズ「……ねえ、どうしたあんたはここに住んでるの?」

ダークレモネード「え?」

ローズ「あんただったら別に他のところでもいいでしょ。なんでわざわざこんな所に」

ダークレモネード「分かんない……いつの間にかズルズルとここで暮らしてた」

ローズ「……」

ダークレモネード「ダークドリームがいるからなのかな……それにみんなもいるし、だから楽しいし」

ダークレモネード「けど今はなんか違う。ダークドリームも。……全然楽しくない」

ローズ「よくそんな理由で一緒にいたがるわね。私にはそういうの無理」

ダークレモネード「あんた他のプリキュアに友達いないの?」

ローズ「……」

ダークレモネード「いないからこんなところにいると思ってた」

ローズ「普通に考えて友達と同じところで暮らしたいとまでは思わないでしょ。ルームメイトとかっていうのもあるけど、そういうのってあんまり上手くいってないらしいし」

ダークレモネード「まぁそーだね」

ローズ「他人のことよりも、まずは自分のことでしょ。自分の生活もままならないような子を気にかけてどうすんのよ。ダークドリームなんてほっとけばいいの」

ローズ「ムーンライトの台詞じゃないけど、あんなやつに関わってたら自分まで惨めになっちゃうわよ」

ダークレモネード「……それ言いすぎでしょ」

ローズ「は?」

ダークレモネード「あいつだって別になりたくてああなってるわけじゃないし。ちょっと落ち込んでるだけで……この先どうするか迷ってるだけよ」

ローズ「現実逃避するためにお酒飲んでるんでしょ。情けないやつ、馬鹿みたい」

ダークレモネード「……」

ローズ「……悪かったわよ。ちょっと言いすぎたわよ」

ダークレネモネード「……あいつに元気出してほしいの」

ローズ「え?」

ダークレモネード「前みたいに元気に笑って欲しいの。それだけでいいのに……」

ローズ「……」

・・・・・数日後

ダークレモネード「ねえ、気晴らしにどこか行かない?」

ダークレドリーム「はぁ……?」

ダークレモネード「わたし今日オフなの。暇だし……あんたも暇でしょ? どこか遊びに行きましょうよ」

ダークドリーム「な、なに急に……」

ダークレモネード「いいじゃない。ノリ悪いわね、付き合いなさいよ」

ダークドリーム「……どこ行くの?」

ダークレモネード「遊園地!」

ダークドリーム「遊園地って……あのさ、わたしあまりお金残ってなくて」

ダークレモネード「そんな心配いらないわよ。無料チケットがここにあるんだから」

ダークドリーム「あ…」

ダークレモネード「ほら、行こ」

……遊園地

ダークレモネード「なんか遊園地とか超久しぶり。あっ、ジェットコースター! あれ乗ろ、あれ!」

ダークドリーム「……」

ダークレモネード「反応薄いわね……ひょっとして怖いとか?」

ダークドリーム「え? ああ……うん」

ダークレモネード「……とにかく乗る! まずジェットコースター!」

ダークドリーム「……」

ダークレモネード「きゃー! 高ーい! 速ーい! 怖ーい!」

ダークドリーム「……」

ダークレモネード「……なんか反応しなしさいよ。一人ではしゃいでてバカみたいじゃない」

・・・・・

ダークレモネード「あっ、コーヒーカップ! 次はあれ!」

ダークドリーム「ああ……」

ダークレモネード「お化け屋敷! やっぱり夏の定番よね」

ダークドリーム「うん……」

ダークレモネード「あっちではボートに乗れるんだって! 乗ろ!」

ダークドリーム「そうね……」

ダークレモネード「……」

ダークレモネード(な、なんなのよコイツ……。いつもだったらバカみたいに騒いでるはずなのに)

ダークレモネード(こういうにぎやかな所に来れば少しは元気出ると思ったのに、全然変わらないじゃない。ていうか遊園地に来てこんな空気重くなる経験なんて初めてなんだけど……)

ダークドリーム「……あっ」

ダークレモネード「なに?」

ダークドリーム「観覧車……」

ダークレモネード「乗りたいの?」

ダークドリーム「別に乗りたいわけじゃないけど……」

ダークレモネード「……じゃあわたし乗りたい! 乗る!」

ダークドリーム「あっ、ちょっと待ってよ」

……観覧車

ダークドリーム「……」

ダークレモネード「わー……高っ」

ダークドリーム「……」

ダークレモネード「……」

ダークドリーム「なんか……ごめん」

ダークレモネード「え?」

ダークドリーム「せっかく連れてきてもらったのに……気遣わせちゃって」

ダークレモネード「な、なにが? 別にあんたなんかに気遣ってないけど」

ダークドリーム「……」

ダークレモネード「……」

ダークドリーム「遊園地ってさ……わたし、今日含めて二回しか遊びに来たことないの」

ダークレモネード「えっ、そうなの?」

ダークドリーム「小さいころに来た以来。その時はこんな大きな遊園地じゃなかったけどね。ここはなんか色々乗り物あるからびっくりしちゃった」

ダークレモネード「珍しいのね、今時」

ダークドリーム「まぁ……小さい頃は何に乗ったかなんてほとんど覚えてないけど。でも唯一、観覧車だけは乗ってた記憶がハッキリある」

ダークレモネード「なんで? 観覧車好きなの?」

ダークドリーム「妹とふたりで乗ったのよ。あの日……観覧車の中でわたし達は初めてふたりっきりになった。だから覚えてるんだわ」

ダークレモネード「妹って……例の手紙の?」

ダークドリーム「母親違いのね。あの日は、なんでかは分からないけど妹と会うことになってたのよ。それで遊園地に来たんだけど……」

ダークドリーム「観覧車のことは特に覚えてるなぁ。それまでは妹は大人しくてわたしもどうやって接したらいいのか分からなかったんだけど、観覧車に乗って高いところまで来たらすごく大喜びしてて」

ダークドリーム「あの笑顔、すごく可愛かった。喜んでいるところ見たらわたしも嬉しくなっちゃってさ」

ダークレモネード(あ、ダークドリーム……ようやくちょっと笑った)

ダークレモネード「そういえば、今度遊びに来るんじゃないの? 手紙に書いてあったじゃない」

ダークドリーム「どうかしら……本当に来るのかな。もし来ても……困るけど」

ダークレモネード「なんでよ、好きなんでしょ?」

ダークドリーム「だってさ、今までわたしがプリキュアになることを応援し続けてくれたのに……今のわたしがこんなんじゃ失望されちゃう」

ダークレモネード「失望なんてしてたら会いたがるわけないじゃない」

ダークドリーム「……それ以外に、嘘もついちゃったし」

ダークレモネード「嘘って?」

ダークドリーム「プリキュアにはなれなかったけど、別の仕事で当てて……今は豪邸に住んでる、とか」

ダークレモネード「ぶっ!?」

ダークドリーム「……」

ダークレモネード「な、なによそのくだらない嘘は。なんでそんな嘘つくわけ!?」

ダークドリーム「わたしだって最初はこんな嘘つくつもりなかったけど……初めは小さな嘘で、でもそれを書くと妹も嬉しそうに手紙に返事してくれるからだんだん調子に乗っちゃって……」

ダークレモネード「呆れた……」

ダークドリーム「はぁ……やり直せるならやり直したい。いっそのことプリキュア目指す前のわたしに戻れたら、今みたいにならなくてもすむかもね」

ダークレモネード「……ねえ、だったらプリキュアなんて辞めてわたしと同じ声優やらない?」

ダークドリーム「え……」

ダークレモネード「プリキュアみたいに派手な仕事じゃないけど、楽しいわよ。人気が出ればライブやテレビ出演なんて普通にあるし」

ダークドリーム「……無理よ」

ダークレモネード「なんでよ、やってみなきゃ分からないじゃない」

ダークドリーム「向いてないって分かるもん。わたし……そういう才能ないから。凡人なのよ」

ダークドリーム「凡人が夢見たって無駄なだけ。いい加減自分のやってることが馬鹿らしくなってきたわ」

ダークドリーム「もう夢なんて見なくてもいいや……疲れちゃった」

ダークレモネード「……」

ダークドリーム「……」

ダークレモネード「……もうすぐ下に着くけど、もう一回乗る?」

ダークドリーム「いい……乗らない」

ダークレモネード「あっそ……」

・・・・・・

ダークドリーム「……」

ダークレモネード「……」

ダークレモネード(帰り道まで空気重いし……外に連れ出しも意味ないなら、どうすればいいのよ)

ダークレモネード(……わたしにしてあげらること、他にないのかな)

ダークドリーム「……」

ダークレモネード「……なんかこの道、カップルがやけに多くない? デートコースなの?」

ダークドリーム「さぁ」

ダークレモネード「恋人か……わたしもできたら欲しいな。ねえ、好きな人とかいないの?」

ダークドリーム「え? 今は……いないけど」

ダークレモネード「こうやって女二人で周りがカップルだらけだと虚しくなってくるわよね。……うわ、見てよあれ路上チューなんてしてる」

ダークドリーム「……」

ダークレモネード「よく人前であんなことできるわよね。ムカつく」

ダークドリーム(キス……わたしあの日にミントと……)

ミント「あら? ダークドリームじゃない」

ダークドリーム「!!」

ダークレモネード「え…」

ミント「この前以来ね。そっちは…ダークレモネード? 二人で買い物にでも来ているの?」

ダークドリーム「……」

ダークレモネード(こいつ……確かダークドリームと仲良いんだっけ)

ミント「これから帰り?」

ダークドリーム「そ、そうだけど……」

ダークレモネード「……早く帰りましょ、ダークドリーム。お腹すいちゃったわ」

ダークレモネード(なんか、ダークドリームの様子がおかしいし……)

ミント「あっ、待って。ご飯ならごちそうするわよ?」

ダークドリーム「……!!」

ミント「どう?」

ダークレモネード「お気遣いどうも、でも結構よ。行こ、ダークドリーム」

ダークドリーム「……う、うん」

ミント「そう……じゃあまた今度ね」

ダークドリーム「……」

ダークレモネード(なによあいつ……いきなりわたし達を食事に誘うなんて)

ダークレモネード「ねー、せっかくだし今日はどこかで食べよっか。美味しいお店知ってるんだけど」

ダークドリーム「え……わたしそんなお金持ってないし」

ダークレモネード「はぁ、しょうがない。じゃあ今日はわたしがおごってあげるわよ。今日はわたしが誘ったんだしね」

ダークドリーム「……悪いわよ」

ダークレモネード「なに遠慮してるのよ。あんたらしくない」

ダークドリーム「……」

~♪

ダークドリーム(っ……メール)

ピッ

ミント『お金、そろそろなくなってきたんじゃない? うちに来てくれたら準備はできてるわよ』

ダークドリーム「……」

ダークレモネード「どうしたの?」

ダークドリーム「……」

ダークレモネード「ダークドリーム?」

ダークドリーム「ごめん……わたし用事思い出した」

ダークレモネード「は?」

ダークドリーム「先帰ってて…」

ダークレモネード「ご飯は?」

ダークドリーム「……ごめん」

ダークレモネード「あっ、ちょっと! ねえってば!! ……なんなのよ急に」

ダークレモネード「なんで行っちゃうのよ……馬鹿」

……緑寮

ダークドリーム「……」

ミント「よかった来てくれたのね。ダークレモネードは一緒じゃないの?」

ダークドリーム「あの子は……関係ないから」

ミント「ふふ、そうよね。一応ご飯は多めに作っておいたんだけど」

ダークドリーム「……」

ミント「大丈夫よ。お金ならちゃんと用意してあるから。でも驚いたわ、すぐにメールの返信がくるなんて」

ミント「よっぽどお金に困ってたの?」

ダークドリーム「……お酒」

ミント「え?」

ダークドリーム「お酒が飲みたいの……飲めば辛いこと忘れられるから。楽しくなれるから」

ダークドリーム「だから……お金が欲しい」

ミント「……ふふ。まるでサラリーマンみたいなこと言うのね」

ミント「お酒を飲めば辛いことが忘れられるなんて……」

ダークドリーム「……」

ミント「けど……あなたがどういう理由でここに来ようが私は気にしないわ。来てくれるだけで嬉しい」

ミント「それに、お酒じゃなくて最高のおもてなしであなたを楽しませてあげる」

ミント「辛いことも苦しいことも、わたしが全部忘れさせてあげる……」

ダークドリーム「……」

ミント「ふふっ、さあ上がって」

ダークドリーム(本当はこんなこと間違っているんだろうけど……)

ダークドリーム(でもわたしは、もうどうすればいいのか分からないんだもん……)

ダークドリーム(お金やお酒があれば……少しは楽になれるかもしれない)

ここまで

……翌日
赤寮

パッション「ん……んん……」

パッション(もう朝……目覚ましならなかったのかしら。今何時……?)

パッション「……!!」

パッション(うそっ、時間過ぎてる!! 私が朝ごはん作らなきゃいけないのに!!)

パッション「お、起きな……きゃっ!?」

ドサッ

パッション「いたた……」

パッション(まったく……なにやってるのかしら私ってば。情けない)

タタタッ

パッション「おはよう、ブロッサム!」

ブロッサム「あ、おはようございますパッション先輩」

パッション「ごめんなさい、寝坊しちゃったわ。今すぐ朝ごはん作るから」

ブロッサム「えっ、もう食べちゃいましたよ?」

パッション「え?」

ブロッサム「パッション先輩を起こすのも悪いと思って、先に食べてしまいました」

パッション「そ、そうなの……?」

ブロッサム「はい。じゃあそろそろ時間なので、いってきますね」

パッション「ええ……いってらっしゃい。気をつけてね」

バタンッ

パッション「……はぁ」

パッション(しっかりしている子で助かったわ。私はもっとしっかりしなくちゃいけないのに)

パッション「……」

パッション(私、ブロッサムのいい先輩でいられているのかしら。不安だわ……)

・・・・・

マリン「昨日のイベント、盛り上がったよねー」

ブロッサム「子どもたちも楽しんでくれてたみたいですしね」

サンシャイン「……」

ブロッサム「サンシャイン、どうかしたんですか?」

サンシャイン「わたし……感動しちゃった」

マリン「え?」

サンシャイン「あんなたくさんの人に応援してもらえるなんて……プリキュアになってよかった!」

マリン「そういえばサンシャインはこういうの初めてだっけ。そりゃ感動するよね」

ブロッサム「その気持ち分かります! 応援してくれる人たちのためにも頑張ろう!って気が引き締まる思いです」

サンシャイン「うん! この後の撮影も気合を入れていこうね!」

ブロッサム「はい!」

マリン「あっ、そうだ。ムーンライトって今日来てるのかな?」

ブロッサム「たぶん、いると思いますけど。今日も特訓がありますし」

マリン「じゃあちょっとムーンライトのところに行ってくるね。渡さなきゃいけないものあるし」

ブロッサム「?」

・・・・・・

ムーンライト「……」

TV『射手座のあなた、今日の運勢は最悪。知りたくなかった事実を告げられてショックを受けるかも。どんなことがあってもくよくよせず前向きに考えましょう。ラッキーアイテムは…』

ムーンライト「……」

マリン「意外、テレビの占いとか見るんだ」

ムーンライト「……」ピッ

マリン「あっ、消さなくてもいいのに。魚座が何位か分かんないじゃん」

ムーンライト「なにか用かしら」

マリン「なんの用だと思う? 知りたい? んん~?」

ムーンライト「……」

マリン「じょ、冗談だってば……そんな睨まないでよ」

マリン「実はムーンライトに渡すものがあるの。昨日のイベントで子供たちから貰ったんだけど……はいコレ」

ムーンライト「これは…」

マリン「子どもたちからの応援の手紙だよ」

ムーンライト「……」

マリン「どう? 感動した?」

ムーンライト「ベタね、今さら手紙なんて」

マリン「あれっ!? なんでそんな素っ気ないの。手紙だよ? 子どもたちが一生懸命書いたんだよ?」

ムーンライト「これを渡すためにわざわざ来たの?」

マリン「うん。子どもたちに渡してって言われたから。ムーンライトがプリキュアに出てくるのみんな待ち望んでるんだよ。期待されてるね~」

ムーンライト「……」

マリン「じゃあ、そういうことだから。ちゃんと渡したからね。読んであげなよ?」

ムーンライト「……早く行きなさい、もう時間でしょ」

マリン「はいはーい」

ムーンライト「……」

ムーンライト(よく書くわね、こんなに……)

・・・・・

マリン「ふんふーんふーん♪」

ダーク「おい」

マリン「え?」

ダーク「……」

マリン「あれ、ダークどうしたの?」

ダーク「ちょっといいか?」

マリン「?」

ダーク「お前……ムーンライトと仲いいのか?」

マリン「へ?」

ダーク「さっき親しく話していただろ。仲がいいのか?」

マリン「別に仲いいってほどじゃないけど……」

ダーク「ならさっき渡していたものはなんだ」

マリン「え? ああ、手紙だけど」

ダーク「……なんの手紙だ」

マリン「ファンレターだよ、子どもからの。なんでそんなこと聞くの?」

ダーク「ファン……なんだ、そんなものか。よかった。いや、なんでもない。それならいいんだ」

マリン「?」

ダーク(私はてっきりラブレターか何かを渡したのかと思ったぞ。びっくりした)

マリン「変なダーク」

ダーク「お前に変なんて言われたくない」

マリン「なんだそりゃ!」

ダーク「それはともかく……ムーンライトとは最近よく話すのか?」

マリン「え? うーん……そうかな。最近は前よりはちょっと話す回数が多いかも」

マリン「って、もう時間だし! 遅れちゃうからじゃあね!」

ダーク「……むぅ」

……アパート

ダークレモネード「……」

ダークレモネード(あいつ……結局朝まで帰ってこなかったし。どこで何してるんだろう)

ダークレモネード(……そろそろ仕事の時間だから出かけなきゃ)

ガチャッ

ダークレモネード「!!」

ダークドリーム「あ……ダークレモネード。おはよ」

ダークレモネード「ダ、ダークドリーム……」

ダークドリーム「ふわぁ~……」

ダークレモネード「……ずいぶんとお早いご帰宅ね」

ダークドリーム「なによそれ。これから仕事? わたしちょっと寝るから。おやすみ」

ガチャッ
バタン

ダークレモネード「……」

ダークレモネード(別になにをしようが自由だけど……少しぐらい何があったのか話してくれてもいいじゃない)

ダークドリーム「……はァ~~~」

ダークドリーム「しんどい、疲れた……なにやってるんだろ、わたし」

ダークドリーム「……」

ダークドリーム(まだ慣れないなぁ、ああいうの。昨日の夜もそのままずっと眠れなかったし……)

ダークドリーム(……でも、お金がなくなったらまたやろうかな。なんだかんだでお金がなきゃ生きていけないんだし)

ダークドリーム「……」

ダークドリーム(どうしてこんなことになったんだっけ、わたし)

ダークドリーム(なんか……何もかもが上手くいってない気がする)

ダークドリーム(けど今さらどうすればいいか分かんないし……)

ダークドリーム「……」

・・・・・

翔子「……はぁ」

翔子(今日もアルバイト。めんどくさい……働きたくない)

翔子(楽したい、お金は欲しい、一生静かに暮らしたい……)

翔子「……?」


??「……」キョロキョロ


翔子(あの人……迷子にでもなったのかしら。地図持ちながら周りを見回しているけど)

翔子(目を合わさないようにしよう……。道を聞かれても困るし、めんどうだし、知らない場所だったら私地図読めないし……)

??「あ、すみません。少しお聞きしたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」

翔子「!!」

翔子(なんでこっちに来るのよぉ~……避けようとしたのに……)

翔子「な、なんでしょうか……」

??「実は道に迷ってしまいまして。この街に来るのは初めてなんです。右も左も分からなくて……道案内をお願いしていただけないでしょうか?」

翔子「え、ええ……でも、わたしも最近ここに引っ越してきたばかりでよく分からなくて……」

??「まぁ、そうだったんですか」

翔子「はい……」

翔子(嘘だけど)

??「なら、しょうがないですね。……あ、でも一応。この住所はご存知でいらっしゃいますか?」

翔子「……」

翔子(あれ……この住所って確か満たちのアパートの住所じゃない。なんでこの子が?)

??「?」

翔子「……」

翔子(住所は知ってるけど、道案内は苦手だし……私が連れて行くのも面倒だし、知らないふりでもしよう)

翔子「ごめんなさい……分からないわ」

??「そうですか……ありがとうございました」

翔子「いいえ……」

翔子(私以外の人に聞けばちゃんと案内してもらえるわよね……そっちの方がいいだろうし)

翔子「……」

翔子(それにしても、何なのかしらあの子。あの声……誰かに似ているような気もするけど)

・・・・・

マリン「ブロッサムこの後特訓?」

ブロッサム「はい。ムーンライトといつものやつです」

マリン「よくやるねぇ……あたしも行っていい?」

ブロッサム「もちろんです! むしろマリンが来てくれたら助かります!」

ブロッサム「ムーンライトとふたりっきりっていうのが、いまだに慣れなくて」

マリン「よーし、じゃあ行っちゃおうっと。サンシャインも誘おうかなー」

ダーク「マリン」

ブロッサム「!!」

マリン「あれ、どうしたの? なに?」

ダーク「ちょっと来い。話がある」

マリン「え?」

ダーク「いいから、来い」

ここまで

・・・・・食堂

ダーク「まぁ、座れ」

マリン「はあ」

マリン(こんなところ連れてきてどうするつもりなんだろ)

ダーク「チョコパフェ、一人で食べるのは恥ずかしいからお前も注文してくれ」

マリン(あれ、かわいい)

マリン「でもあたし今お金持ってなくてー」

ダーク「私が払う」

マリン(ラッキー。タダで食べられる)

ダーク「ところでだ、話は変わるんだが」

マリン「はい、なんすか」

ダーク「ムーンライトのことについて色々聞きたい」

マリン「ムーンライト? なんでまた」

ダーク「いいから、あいつについて知ってることは全部話せ。趣味とか、好きな食べ物とか」

マリン「そんなのあたし知らないって。そういうのはももかさんの方が知ってると思うから、ももかさんに聞いてみてばいいじゃん」

ダーク「一度も話したこともない相手にそんなこと聞けるか…」

マリン「うーん、ムーンライトの趣味ねえ……そういえば、よく読書してるところ見かけるかな」

ダーク「どんな本だ?」

マリン「わかんない。すごく難しそうな本。あとはね……占いとか」

ダーク「占い?」

マリン「テレビの星座占い見てたよ、意外だよね。ひょっとしたら占いとか好きだったりして」

ダーク「なるほど…」

マリン「ていうかさ、こんなことムーンライトに直接聞いた方が手っ取り早くない?」

ダーク「直接聞いてちゃんと答えると思うのか?」

マリン「ふたりって仲良くないの?」

ダーク「……あんまり話はしない」

マリン「話しかければいいのに」

ダーク(話しかけても無視されるんだ)

マリン「ダークってさ、かっこいいからムーンライトと並んでるとなんか様になるよね」

ダーク「えっ……そ、そう?」

マリン「けどもったいないよねー、悪役のプリキュアだなんて。同じプリキュアなのに」

ダーク「そうなんだ……普通のプリキュアだったらテレビに出るたびに人気になるが、私の場合はテレビに出るたびに子供たちに嫌われていくんだ」

ダーク「子どもは本当は好きなのに。分かるか!? サインしてあげようと思ったら子どもに逃げられた私の気持ちが!」

マリン「お、落ち着いて落ち着いて」

ダーク「お前案外話ができるやつだな」

ダーク(羨ましいな……誰とでも仲良くなれそうで)

マリン「ところでさー」

ダーク「ん?」

マリン「チョコパフェ以外でも何か頼んでいい? お腹減っちゃった」

ダーク「ああ、別にいいぞ」

マリン「サンキュー。いやぁー、こんなにおごってもらえるなんてありがたいなぁ」

ダーク「……えっ?」

・・・・・

ブロッサム「はぁ……はぁ……」

ムーンライト「……少し休憩しましょうか」

ブロッサム「は、はい」

ムーンライト(慣れてきたのか……少しは体力が持つようになったわね)

ブロッサム「あ、あの……」

ムーンライト「なに?」

ブロッサム「わたし……少しは上手にできるようになったでしょうか」

ムーンライト「ええ」

ブロッサム「本当ですか!」

ムーンライト「けど結果が出せなければ意味がないわ。現状で満足しないことね」

ブロッサム「は、はい!」

ムーンライト「……」

ブロッサム「わたし、何だかだんだん実感できてるんです。私の中で何かが変わろうとしているのが……」

ブロッサム「本当はわたし、プリキュアになれたらそれがゴールだと思ってました」

ブロッサム「プリキュアになればみんなの人気者になれて、仕事もいっぱい入って、なんの不自由もなく生活できるって考えてたんです」

ブロッサム「けど、実際は違うんですね。プリキュアになってからが本番なんだって気づいたんです」

ブロッサム「最初はなんでこんなに身体を鍛えたり辛い仕事もしなくちゃいけないんだろうって思ってましたが、全部必要なことだったんですね」

ブロッサム「わたしプリキュアとしても人としても、もっともっと成長したいです。それで一人でも多くの子どもたちを笑顔にすることができたら……きっとわたしのやっていることに大きな意味が生まれるはずですよね」

ムーンライト「……」

ブロッサム「ムーンライトは、わたしにそのことを教えようとしてくれたんですか?」

ムーンライト「……何か勘違いしているようだけど、違うわ。そんな大それた目的を持ってあなたに付き合ってるわけじゃない」

ムーンライト「それに私は子どもが嫌いなの」

ブロッサム「え……」

ムーンライト「私は……あなた自身に誇りを持ってくれたらそれでいいのよ」

ムーンライト「絶対的な自信と誇り、そして強い意志が必要。それらを持っている人間は、本当の意味で強い人間だわ」

ムーンライト「私はそういう人間になりたくて、プリキュアになったのよ」

ムーンライト「いい? 私達プリキュアは何千何万の中から選ばれた人間なのよ?」

ムーンライト「そんな膨大な人数の中から選ばれたということは、特別だと言っても過言ではないわ」

ムーンライト「誰もが簡単になれるわけじゃないプリキュア……それになることができた。その事実は決して揺るがないもの」

ムーンライト「私は、今の自分に誇りを持っている。私という人間を世の中に認めさせることができた、特別な人間になれたのよ」

ムーンライト「だからこそ自分の立場や責任を果たすためにやるべきことをやり抜く、ただそれだけのこと。この特訓もその一つよ」

ブロッサム「……」

ムーンライト「ブロッサム、今のあなたの原動力が子どもの笑顔なんてものだって言うのならそれでもいいわ」

ムーンライト「けど誰かのためとかじゃなく、自分自身の力を信じられるようにしなさい。結局のところ、最後まで味方でいてくれるのは自分だけなんだから」

ムーンライト「心の拠り所は自分の中にしかないのよ」

ブロッサム「は……はい」

ムーンライト「……何か間違ってるとでも言いたそうね」

ブロッサム「い、いえ」

ムーンライト「いいのよ。大多数の人間は間違ってると思うでしょうから」

ムーンライト「けど私はそうやって生きてきた。そして成功している。つまり正しいってことよ」

ブロッサム「……」

ムーンライト「それに……」

ブロッサム「それに?」

ムーンライト「……いえ、なんでもないわ」

ムーンライト(子どもは新しいプリキュアが出てきたら私たちのことは忘れてしまう。……なんてことを言ってこの子のやる気を落としてもしょうがないわね)

ここまで

・・・・・

??「まぁ、これは……完璧に迷ってしまったわ。ここはどこかしら」

??(困ったわ、もうそろそろ夕方になろうというのに。驚かせようと思ってお姉様には黙ってこの街へ来たものの、これでは会うことすら叶わなくなってしまう)

??(どうしたものかしら……交番で聞こうにも建物が多くてそもそも交番が見つからないし。こうなるのだったら事前にお姉様へ連絡しておくべきだったわ……不覚)

??(……とりあえず、もう一度地図を見てみよう)

??「ええと……今いる所が……」

ホワイト「すみません、ちょっといいですか?」

??「え?」

ホワイト「ハンカチ、今落としましたよ」

??「あ……ご、ごめんなさい。わざわざ拾っていただいて」

ホワイト「いいえ。はい、どうぞ」

??「ありがとうございます」

??(あら……? このお方は確か……)

ホワイト「その地図……」

??「え?」

ホワイト「珍しいわね、今時そんな大きな地図を持ちながら道を歩いているなんて。携帯のアプリとかに入れてないの?」

??「携帯や機械のことはよく分からなくて……恥ずかしながら持ってないんです。ですから連絡しようと公衆電話を探してみても、全然見つからなくて」

ホワイト「ふふっ、おもしろい子。道に迷っているのなら、よかったら案内してあげましょうか?」

??「まぁ、本当ですか?」

ホワイト「ええ。この辺の地理ならある程度詳しいし」

??「助かります。ところで……」

ホワイト「?」

??「失礼ですが、ひょっとして……プリキュアのキュアホワイトさんでしょうか?」

ホワイト「ええ、そうよ」

??「まさか……本当に。すごいです! こんなところで会えるなんて」

ホワイト「この近辺に住んでいるの。それで今は買い物の帰り」

??「そうだったんですか。ホワイトさんの姿はテレビで何度も拝見いたしました。大スターに会えるなんて、私感動しています」

ホワイト「ありがとう。そう言ってもらえるなんて私も嬉しいわ」

??(この慎ましいながらも理知的で輝くような佇まい。これが本物のプリキュア……)

??(なんて美しいのでしょう。お姉様が憧れる理由も分かる)

ホワイト「それで、目的地はどこかしら」

??「はい、この住所なんですけど…」

ホワイト「ここなら割と近くね。案内してあげる」

??「あっ、いえ、そんな……わざわざお手数を」

ホワイト「いいのよ、気にしないで。歩きながらお話でもしましょう。私、あなたに少し興味があるの」

??「?」

ホワイト「この街には遊び来たの? ちょうど今の時期は夏休みだから?」

??「はい、お姉様に会いに」

ホワイト「あら、お姉さんがいるのね」

??「ダークドリームという人をご存知でしょうか?」

ホワイト「え?」

??「その人が、私の姉なんです。以前プリキュアの映画に出演していたんですが」

ホワイト「ダークドリーム……ああ、知っているわ。会ったことはないけど」

??「お姉様は今、プリキュアになることを目指してこの街に住んでいるんです。けど、何度もオーディションに落ちたらしくて……」

??「ですから、お姉様を励ましてあげようと思い会いに行こうと決めたんです。私にもお姉様に何かしてあげられないかと思って」

ホワイト「お姉さん思いなのね」

??「はい」

??(……まがりなりにも、私達は姉妹ですから)

??「私、お姉様のことが大好きなんです。今までずっと離れて暮らしていて、ほとんどの交流が手紙のやり取りだけでしたが……」

??「お姉様の前向きな言葉と姿勢、そして行動力にはいつも勇気をもらっていました。私が迷った時に正しい道へ導いいてくれるのは、いつもお姉様です。お姉さまは私にとって人生の支えです」

??「ですから、お姉様が映画に出演した時はとても嬉しかったですし私も誇りに思っています。そのお姉様がプリキュアを目指すというのなら、私は粉骨砕身して応援します」

ホワイト「……素敵ね。姉妹の絆がそんなに強いなんて」

??「お姉様は強く優しく凛々しく美しいお方です……とても尊敬しています」

ホワイト「私はね、ダークドリームに会ったことはないからどういう子かは分からないけど……あなたの方がプリキュアとしての適正があるんじゃないかと思っているわ」

??「……え?」

ホワイト「一目見てそう思ったのよ。才能っていうものは身体の内から溢れ出るもの……見える人には分かるわ」

ホワイト「私には分かる。この業界に長くいるんだもの」

??「わ、私がプリキュア……? そんな、いくらなんでも恐れ多いです」

??「何をおっしゃって…」

ホワイト「そうかしら、私はあなたがプリキュアになれると思うわ。確信に近い感覚でね」

??「私なんて……お姉様の足元にも及ばないですし」

ホワイト「誰もかれもがプリキュアになれるわけじゃないわ。選ばれるのはひと握りの中のひと握り」

ホワイト「つまり、才能のある人間しかプリキュアになれないのよ。……例外もあるこにはあるけど」

ホワイト「けどあなたはその才能を持っている。直感で言っていることだけどね」

ホワイト「あなたもお姉さんみたいに前向きに考えてみない?」

??「……」

ホワイト「オーディションを受けるだけなら損はないわ。試しに受けてみたらどうかしら。よかったら手続きの方は私のところでしてあげられるけど」

??「ど、どうしてそんなことを……」

ホワイト「単純に嬉しいのよ。才能のある子とこういう形で出会えるなんて。なにか運命的なものを感じない?」

??「……私には才能なんてあるとは思えません。それに、お姉様を差し置いてプリキュアになるなんてできないですし」

??「ご好意はありがたいのですが……」

ホワイト「分かったわ、無理には勧めない。けど、よかったらまたこのことについてじっくり考えてみて」

ホワイト「あなたの人生にとってきっとプラスになることだと思うから」

??「……」

ホワイト「……あら、着いたみたいよ。ここがその住所じゃない?」

??「ここが……?」

ホワイト「このアパートがそうみたいね。……確かにこの住所だわ。ここにダークドリームが住んでいるんでしょう?」

??「は、はい」

ホワイト「よかったわね、これでお姉さんに会えるわよ。じゃあ私は失礼するわ」

??「ありがとうございます。ここまで道案内していただいて」

ホワイト「気にしないで。プリキュアのこと、考えてみね。バイバイ」

??「……」

??(ここに……お姉様が? この、古そうなアパートに……何かの間違いかしら)

??(手紙に書いていた内容とは違うような気がするけど……)

??(……いいえ、そんなことは関係ない。とにかくこれでお姉様に会える。とても……嬉しい)

??(一刻も早くお姉様に会いたい、お姉さまとお話をしてみたい。お姉様……今そこへ行きます)

ここまで

ピンポーン

??「……」

薫「……はい、どちらさまですか」

??「突然すみません。ダークドリームお姉様は今そちらにいらっしゃいますか?」

薫「ダークドリーム……お姉様?」

??「私、ダークドリームお姉様の妹なんです。実は今日お姉様に会いに…」

薫「ぷっ……ぷぷ……」

??「……?」

薫「ご、ごめんなさい……お姉様ってちょっとおかしくて……」

薫「ダークドリームが……ぷぷ」

??「えっと……」

薫「あっ、ダークドリームだったわね。今は出かけてるからいないわよ」

??「そうなんですか……」

薫「……よかったら上がってく? 帰ってくるまで待っててもいいけど」

??「よろしいんですか?」

薫「ええ、どうぞ……ぷぷ」

??「……」

・・・・・

??(ここがお姉様の住んでいるという……古き良き時代を感じるというか、手紙に書いてあったような場所とまるで違うというか)

薫「ここが、ダークドリームの部屋よ」

??「この部屋が…」

薫「この部屋に入って待っててね」

??「はい。失礼します」

ガチャッ

??「!?」

??(なっ……!! この散らかり様は一体!?)

薫「あら、相変わらずゴミだらけねこの部屋。布団も出しっぱなしだし」

薫「それに……くさい」

??「こっ、この部屋に本当にお姉様が!?」

薫「そうよ。ゴミ捨て場みたいだけど」

??「……」

薫「けどこれじゃあ座るところもないわね。私の部屋で待つ?」

??「……これはきっと何かの間違いです」

薫「え?」

??「きっとお姉様は、仕事が多忙で部屋の片付けをする暇もないんです。だからこんなに部屋が散らかって……」

薫「それはないわよ。だってあの子仕事が全然ない…」

??「ここは私が!! 忙しいお姉様に代わりこの部屋の掃除をさせていただきます!!」

薫「話聞いてる?」

??「はい! 私に任せてください!」

薫「……じゃあ任せるわ」

薫(なんかめんどくさそうな子)

??「掃除とは! 環境を綺麗にするだけではなく自分の内面、すなわち心をも綺麗にするということ!!」

??「私の中でお姉様に対する微かな不信感が芽生えていますが、しかしそんなものはあってはなりません! なぜなら!! 私達は血の繋がっている姉妹だからです!!」

薫「……」

??「疑いを持つということはつまり私の心にゴミが溜まっているという証拠!! なら今私がやるべきことは一つ!!」

??「この部屋のゴミと私の心のゴミそれらをすべて綺麗にすること!! これは私に対する試練、そういうことですねお姉様!!」

薫「そうね、きっとそうよ」

??「では私、がんばらさせていただきます!」

薫「ええ、がんばってちょうだい」

薫(あまり関わらないようにしよう)

・・・・・

ダークルージュ「あー今日も疲れた……ん? なんかダークドリームの部屋騒がしくない?」

ダークアクア「帰ってきたんじゃない?」

ダークルージュ「まったく、平日だっていうのに遊びまわって……楽しそうで羨ましいわ」

ダークアクア「あの子なりに頑張ってるのよ。……たぶん」

ガシャーン!!

ダークルージュ「な、なに今の音!?」

ダークアクア「……騒がしすぎるわね」

ダークルージュ「何やってんのよダークドリームったら……ちょっと様子見に行きましょ」

ダークアクア「そうね」

??「あら……まぁ大変。こんなにゴミが積んであったなんて。全部崩れてしまったわ」

ダークルージュ「ちょっとダークドリーム! なにやって……」

??「あら?」

ダークルージュ「……誰!?」

??「初めまして。私、ダークドリームお姉様の……」

ダークアクア「……ひょっとして、妹さんかしら」

??「ご存知なんですか?」

ダークルージュ「なんで知ってんの」

ダークアクア「ダークレモネードからそんな話聞いてたのよ。ここで何をしてるの?」

??「お姉様の部屋の掃除をしているんです。お姉様が帰ってくるまで綺麗にしておこうと思って」

ダークルージュ「そりゃあ……ずいぶんと偉いわね。あんた本当にダークドリームの妹?」

??「はい、そうです」

ダークルージュ「あはは、こんな頭良さそうなのに……妹にいいところ全部持って行かれちゃったのね」

??「?」

ダークアクア「一人じゃ大変でしょう? 手伝ってあげるわ」

ダークルージュ「えっ」

??「まぁ、本当ですか?」

ダークアクア「一人でこの部屋の掃除をするなんて、一日じゃ終わらないわ」

ダークルージュ「マジで言ってるの? こんな汚い部屋……きゃっゴキブリ!?」

??「そこっ!!」

パシーン!

??「安心してください。今この新聞紙で成敗しました」

ダークルージュ「……」

??「ご好意は有難いのですがダークアクアさん、この部屋の掃除は私の試練なので私一人で成し遂げさせてください」

ダークアクア「どうして私のことを?」

??「お姉様の出演した映画は見ました。それにお姉様の手紙に書かれてあった雰囲気どおりの人ですし。そちらはダークルージュさんですよね」

ダークルージュ「え、ええ」

??「いつもお姉様がお世話になっております」

ダークルージュ「ああいえ、どうも……」

ダークルージュ(なんか、本当にダークドリームとは正反対ね。人間ができてるっていうか……)

??「ダークルージュさんのこともお姉様の手紙によく書かれています。多少粗暴ですが根は優しいとか」

ダークルージュ「粗暴……ですって?」

??「そうだ、よかったらお姉様のここでの暮らしを少し聞かせてくれませんか? お姉さまは普段ここでどんな風に生活を?」

ダークルージュ「……どんな風もなにも、仕事はしないわ遊んでばかりだわでろくなもんじゃないわよ」

??「……え?」

ダークルージュ「この部屋の惨状を見て分かるでしょ。片付けもできないダメ人間ってこと」

??「……」

ダークアクア「ちょっと、実の妹の前でなんてこと言ってるの」ヒソヒソ

ダークルージュ「あ……」

ダークルージュ「ま、まあいいところも一応あるにはあるけど……」

??「……そんなことはありません」

ダークルージュ「え?」

??「お姉様の手紙にはそんなことは書かれていませんでした! 毎日仕事で忙しいと、遊ぶ暇もないと書かれていました!!」

??「私はそれを信じます!!この部屋が散らかっているのもきっと何かワケがあるはずです!!」

ダークルージュ「ちょ、ちょっと……?」

??「私の知っているお姉様は! 優しくて心の美しい女神のような人です! この思いは幼い頃から変わっていません!!」

ダークアクア「分かったから、少し落ち着いてちょうだい」

??「はっ……申し訳ございません。私、つい熱くなりがちな性格で……お姉様のご友人になんて失礼なことを」

ダークアクア「いいのよ、気にしないで。……お掃除がんばってね」

??「はいっ」

ダークルージュ「……なんかダークドリームについて勘違いしてるわよね、この子」ヒソヒソ

ダークアクア「私達が触れることじゃないわ。そっとしておきましょう」ヒソヒソ

??「……」

ここまで

・・・・・

ブロッサム「も、もうダメです……」

ムーンライト「これで4回目の『もうダメです』ね。立ちなさい」

マリン「ぐあーもう疲れたー!!」

ブロッサム「今日のところはこのへんで……」

ムーンライト「……」

ブロッサム「あぅ……」

サンシャイン「みんなお待たせ!」

マリン「あっ、サンシャイン」

サンシャイン「ごめんね、遅れちゃって。別件の仕事があって。でもみんながトレーニングしてるって聞いたから来たよ」

マリン「いや、もうお開きにしようかと……」

ムーンライト「あら、せっかくのサンシャインの好意を無駄にするつもりなの?」

マリン「う……」

サンシャイン「?」

ムーンライト「いいタイミングねサンシャイン。ちょうどトレーニングも盛り上がってきたところよ」

サンシャイン「それはよかった」

マリン「どこが盛り上がってんのよ……」ブツブツ

ブロッサム「あっ、そうだ。せっかく四人揃っているんですからダンスの練習をしませんか? ムーンライト」

ムーンライト「ダンス?」

ブロッサム「はい、エンディングで踊るやつです。もう放送分の撮影は終わりましたけど、もっともっとダンスの技術は磨いていくべきだと思います!」

ブロッサム「これからダンスを踊っていく機会は増えていくと思いますし」

マリン「おお、ナイスブロッサム! ダンスの練習だったらムーンライトのしごきよりもまだ楽しいもんねっ!」

ムーンライト「……」

マリン「あっ、いえ……別にムーンライトの特訓が嫌とかそういうわけじゃ……あはは」

ムーンライト「……はぁ、いいわよ。ダンスの練習でも」

マリン「本当にっ!? やったね!」

ムーンライト「ええ、楽しい練習にしましょう」

マリン(あ……もしかして地雷踏んだかも)

・・・・・

『さぁ!咲かそう! こころの花~♪』

ムーンライト「ストップ!!」

ブロッサム「!!」ビクッ

ムーンライト「マリン、またタイミングがワンテンポずれているわよ。これで何度目なの」

マリン「は、はい……」

ムーンライト「ブロッサムはリズムに合わせるのに必死で動きにまるでキレがないわ」

ブロッサム「すみません……」

ムーンライト「はぁ……ダンスの方は進歩がないわね。こっちの練習にシフトして正解だったわ」

マリン(失敗だ……もうどれだけの時間踊ってるんだろう)

ブロッサム(くたくたです……)

サンシャイン「よかったら、ムーンライトが一度お手本を見せてあげたらいいんじゃないですか?」

ムーンライト「……私に一人で踊ってみろって?」

サンシャイン「あっ、嫌だったら別に……」

ムーンライト「別に構わないわよ。そこで見ていなさい」

『さぁ!咲かそう! こころの花~♪』

ブロッサム「うわぁ~……!」

サンシャイン「完璧だね。勉強になるなぁ」

マリン「……」

ムーンライト「今のでいいかしら」

ブロッサム「は、はいっ」

ムーンライト「なら次はあなた達の番よ。踊ってみなさい」

マリン「あっ、ちょっといい?」

ブロッサム「どうしたんですか?」

マリン「ムーンライトってさ、踊っているときはすごい良い笑顔なのにどうして普段は無愛想な感じなわけ?」

ムーンライト「……」

マリン「あっ、ほら今そんな感じな顔!」

ムーンライト「なにを質問するかと思ったら……じゃあ聞くけどあなたはダンスを踊る時に笑顔を作らないの?」

マリン「作るけど……」

ムーンライト「なら答えはもう分かったわね。ダンスに必要な要素だから笑顔を作ってるだけよ」

マリン「作り笑顔であんな自然に笑えるの!?」

ムーンライト「そういうことができるのがプロよ」

サンシャイン「私は、楽しいから笑顔になっちゃうかな」

ムーンライト「……」

サンシャイン「ダンスを踊ってる時って大変だけど、楽しいって思える時もない?」

ブロッサム「確かに……そういう時もありますね」

サンシャイン「私はいつもダンスを楽しもうって心がけているの。そうすると体の動きも良くなるし、笑顔も自然と出てくるしね」

サンシャイン「それにそうすれば見ている人もきっと楽しめると思う」

マリン「へぇ~。あたしなんていつも振り付け覚えるだけで手一杯だよ。楽しむ余裕なんて全然」

サンシャイン「大事なのは心がけだよ。マリンはどうしてプリキュアになろうと思ったの?」

マリン「え? うーん……そうだねぇ」

マリン「最初はテレビで活躍している先輩たちの姿を見て、すっごく輝いて見えてあたしもああなりたいって思ったからかな。やっぱり憧れちゃうんだよねー、大スターとか」

サンシャイン「じゃあマリンが見た先輩たちはどうして輝いて見えたと思う?」

マリン「え? ……ううーん」

サンシャイン「それはきっと先輩たちが一番楽しんでいたからだよ。自分たちが楽しめなきゃ人をワクワクさせたり感動させたりできないもん」

マリン「なるほど、確かにそうかも」

サンシャイン「だからマリンはいつものマリンのまま、何事も自由に楽しめばいいんだよ」

サンシャイン「ブロッサムはどうしてプリキュアになろうと思ったの?」

ブロッサム「私は……私も正直、最初はマリンと同じようにただ漠然と憧れを抱いていただけです」

ブロッサム「けど、プリキュアになってすぐに気づきました。わたしたちプリキュアを応援してくれる家族や親友、子どもたち……その人たちの声援や笑顔がわたしにとても大きな力を与えてくれていたことを」

ブロッサム「なんというか、こんなわたしなんかでも励ましてくれる人がいると思うと嬉しくて。だから頑張ろうって……思えるんです」

ブロッサム「……あっ」

マリン「どうしたの?」

ブロッサム「私、そのことをずっと忘れてたのかもしれません。忙しい日々の中で、一番大切なことをいつの間にか忘れていたのかも……」

ブロッサム「だから……楽しむ余裕なんてなかった」

マリン「?」

サンシャイン「けど、もう違うでしょ?」

ブロッサム「はい、初心を思い出しました。わたし……今よりもっともっと頑張れる気がします!」

マリン「おっ、なんかよく分かんないけどよかったねブロッサム!」

ブロッサム「はい!」

サンシャイン「あははっ」

ムーンライト「……」

マリン「あっ、そうだ。ねえねえ、せっかくだしムーンライトも教えてよ。どうしてプリキュアやってるの?」

ムーンライト「応援してくれる人たちがいたからよ」

ブロッサム「ムーンライトも……!」

ムーンライト「けどそれは全て自分に見返りとして戻ってくる。声援は優越感に、グッズの売り上げは現金に、達成感は自己満足のために」

ムーンライト「だから結局のところ、全部自分のためにやっていることよ。誰かのためなんかじゃない」

ブロッサム「……」

マリン「もー、どうしてそういうこと言うかなー」

ムーンライト「あなた達が浮世離れした話しかしないからよ。現実はそんな夢や希望が輝いている世界じゃない」

サンシャイン「志を持つことは悪いことじゃないはずです」

ムーンライト「そうね、だったらその志のために一日中働いていなさい。一秒でも休んだら子どもががっかりするわよ」

サンシャイン「……ムーンライトと仲良くしたいだけです。仲間として、私はみんなと同じ志を持ちたいだけなんです」

ムーンライト「それは立派なことね。私は賛同できないけれど」

ブロッサム「わたしは!!」

マリン「うわっ、なに急に」

ブロッサム「ムーンライトのことを天才だと思ってます!」

ムーンライト「……」

ブロッサム「あ……い、いきなり変なことを言ってすみません」

ブロッサム「けど、ムーンライトはわたしにできないこと全部できますし、完璧ですし……やっぱり天才だと思うんです」

ムーンライト「本当に……何を言ってるの。急に」

ブロッサム「で、ですからつまり! わたしもムーンライトと仲良くなりたいと思ってます! ムーンライトに少しでも近づきたいと思ってます!」

ムーンライト「……」

マリン「確かに、性格に難はあるかもしれないけど尊敬してるところもあるよ? あたしも、一応」

ムーンライト「……休憩時間にしましょう。少し頭を冷やしてなさい」

ブロッサム「あっ、ムーンライトどこに」

ムーンライト「あなた達のいないところよ」

マリン「……やれやれ。あの人は難しいねー」

サンシャイン「けど、ムーンライトって前と比べてちょっと変わったよね。少し打ち解けてる気がする」

サンシャイン「何だかんだで、こうやってずっと一緒に特訓したりしてるし」

マリン「そうかもねー。ムーンライトとこうやって一緒の時間を過ごしたりするのもあんまりなかったし」

サンシャイン「きっと仲良くなれるよ、私たち」

ブロッサム「そう……ですよね。きっとそうですよね」

・・・・・

ムーンライト「……」

ムーンライト(私がプリキュアをやっている理由……それはあの女を見返すため。ただそれだけのためのこと)

ムーンライト(憧れだったりとか、子どものためだったりとかそんな理由じゃ決してない。あの子達と私じゃスタートラインが違う)

ムーンライト(だからきっと、分かり合えることもできない)

ムーンライト「……」

ムーンライト(……一生のうちに同じ志を持てる人間にどれだけ出会えるのかしら。たぶん、そんなに多くはないはず)

ムーンライト(その中であの三人は出会った。なら私は? どうして彼女たちと一緒に同じ仕事をしているの?)

ムーンライト(志は全く違う。彼女たちは他人のために。私は自分のために)

ムーンライト(私は天才? いいえ違う。悔しいけど天才というのはあの女のこと。私は違う)

ムーンライト(私は天才じゃないから……死ぬ思いで努力をしてきた。何度挫けそうになっても諦めずに頑張り続けた)

ムーンライト(だから今の私がある。だから今ここにいる)

ムーンライト「……」

ムーンライト(……それは彼女たちも同じことなのかしら)

ムーンライト(だとしたら私は……)

ダーク「何をしているんだ?」

ここまで

ムーンライト「……それはこっちのセリフよ。どうしてまだいるの」

ダーク「私は……仕事が残っていたんだ」

ムーンライト「……」

ダーク「ほ、本当だぞ」

ムーンライト「どうでもいいわ。仕事が終わったのなら早く帰ったら、あのアパートに」

ダーク「お前はまだ帰らないのか」

ムーンライト「ええ」

ダーク「……最近あいつらと仲がいいようだな」

ムーンライト「あなたでも冗談が言えるなんて驚いたわね。仲なんてよくないわ」

ムーンライト「あの子達が勝手に擦り寄ってきてるだけ」

ダーク「……」

ムーンライト「……まぁ、最近は見所もあるってことは気づいたわ。伊達にプリキュアを名乗ってるだけじゃないわね」

ムーンライト「まだまだだけど……伸びしろはある。私が教えればすぐに成長するわ」

ダーク「……」

ムーンライト「その顔はなに?」

ダーク「いや……やっぱり仲いいじゃないか。指導する気があるなんて」

ムーンライト「……ただの気まぐれよ。暇つぶしよ。……深い理由はないわ」

ムーンライト「ひとつ聞いていい?」

ダーク「え?」

ムーンライト「あなたはどうしてプリキュアになろうと思ったの? いえ、正確に言えばプリキュアになれてないけど。目指した理由は?」

ダーク「別にプリキュアを目指してたつもりはなかった。たまたまこの仕事のオファーが来ただけだ」

ムーンライト「……そう。夢や希望を抱いてやるよりかはマシね」

ダーク「まぁ、今となっては引き受けてよかったと思っているがな」

ダーク(ムーンライトに出会えたし)

ムーンライト「それはそうと、私近いうちに引っ越すことにしたから」

ダーク「えっ」

ムーンライト「もう不動産屋とは話をしたの。今よりも高いマンションに引っ越すわ」

ダーク「な、なぜ」

ムーンライト「なぜ? それはこっちが聞きたいわ。なんであんな劣悪な環境で生活をしようと思うの」

ダーク「私は……」

ダーク(ムーンライトがいるからあのアパートに……)

ムーンライト「あんなところで暮らしていたら人間としてダメになっていくだけよ。あなたも早く引っ越したほうがいいわ」

ムーンライト「落ちこぼれの人間と一緒にいるだけで……自分まで落ちぶれてしまう」

ダーク「……」

ムーンライト「どうでもいい話をしすぎたわね。私はもう行くわ」

ダーク「私は……そこそこ楽しんでいるぞ、今の暮らし」

ムーンライト「……」

ダーク「住み慣れたら悪くはないし……それにそれは落ちぶれてるわけじゃない」

ダーク「私には小さいが夢や希望を持ってる。目標を持つことが大事なんだ。そうすれば……今の私は自分が落ちぶれているなんて到底思えない」

ムーンライト「……」

ダーク「……」

・・・・・

ムーンライト(夢……希望……目標……)

ムーンライト(まだ私が小さい頃、そんなものは全部あの女に奪われた。だから私は自分の力で成し遂げられるものを探していた)

ムーンライト(そして見つけた道がプリキュア……私の目標はプリキュアになること。それは達成できた)

ムーンライト(ならもう、私には目標がないということ? 目標もない私は落ちぶれている……?)

ムーンライト(違うわ、私は……)

ムーンライト「……」

ムーンライト(……新しい目標を見つければいい。私はもう自由の身、あの女に人生を邪魔されることなんて一生ない)

ムーンライト(そうよ、新しい人生が始まっているんだから。悩む必要なんてない)

ムーンライト(次の目標は……今のプリキュアを成功させること。私の手で)

ムーンライト(……いいえ、プリキュアは私だけじゃなかったわね。あの子達もいる)

ムーンライト(あの子達と一緒に、私が……あの子達と……)

ムーンライト(……私は、少し変わったほうがいいのかしら。もし私があの子達に歩み寄ったら、その時はどうなる?)

ムーンライト(想像はできないわ。だけど、もし変われるのなら……)


「だからさー、マジなんだって」

ムーンライト「……?」


「なんだよそれ、本当なのかよ」
「マジだって言ってるだろ。確かな筋の情報なんだから」


ムーンライト(向こうで話しているのは……スッタフの誰かかしら。こんな時間まで残ってるなんて……今日は残業確定みたいね)


「いやー、まぁありえるかもしれんけど」
「本当だって。キュアムーンライトは姉のセーラーマーキュリーがプロデューサーに進言したおかげでプリキュアになれたんだよ」


ムーンライト「……!?」


「つまりそれは身内のコネでプリキュアになれたってことだろ? ありえるかもしれんがわざわざそんなことするか?」
「その姉っていうのがすごい妹思いらしいんだよ。確実にプリキュアになるためにはそうするしかなかったんだとさ。じゃなきゃ、年齢制限でキュアムーンライトも落ちてたかもしれないだろ?」
「確かに、そう言われたらそうかも」
「だろ? ぎゃはははは」

ムーンライト「……」

ムーンライト(何を……彼らは言っているの……)

ムーンライト(私があの女のコネでプリキュアになれた……?)

ムーンライト(知らない、そんな話は聞いていない。そもそもあのオーディションだってあの女には黙って受けたのに)

ムーンライト(そんなことありえない。そんなこと……)

ムーンライト(そんな……)

ムーンライト「……」

ムーンライト(ありえない……ありえないありえないありえないありえない!!)

ムーンライト「はぁ……はぁっ……うぅ……」

ムーンライト「……」

ムーンライト(い、嫌だ……そんなこと……)

ムーンライト(もし本当だったら……)

・・・・・

マリン「まだムーンライト戻ってこないの?」

ブロッサム「遅いですね……もうとっくに時間は過ぎているのに。どうしたんでしょう」

マリン「まさか先に帰っちゃったとか?」

サンシャイン「それはないよ。ちゃんと責任感はある人なんだから」

マリン「でもいつまで経っても来ないじゃーん」

ブロッサム「電話してみませんか?」

マリン「そだね。ブロッサムお願い」

ブロッサム「えっ……私、ムーンライトのアドレス知らないんですけど。マリンは知ってるんじゃないんですか?」

マリン「あたしが知るわけないじゃん。サンシャインは知ってる?」

サンシャイン「ううん」

ブロッサム「……」

マリン「……」

サンシャイン「……」

ブロッサム「どうしましょう……」

ここまで

……アパート

??「……」

ガチャッ

ダークアクア「あら、すごいわね。もうこんなに綺麗になってる」

??「ダークアクアさん……」

ダークアクア「お疲れ様。差し入れ持ってきたわよ」

??「ありがとうございます」

ダークアクア「……ダークドリームはまだ帰ってこないわね。こんなに遅くなるのは珍しいんだけど」

??「……」

ダークアクア「どうしたの?」

??「いえ……これからお姉様に会った時、どんな話をすればいいのかと思いまして……」

ダークアクア「楽しみにしていたんでしょう? 今日会うの」

??「そうですけど……いざこんな状況になって、どういう顔をして会えば」

??「私、お姉さまには絶対的信頼を置いていました。お姉さまは完璧な人だと思っていたんです」

??「それが……」

ダークアクア「……たぶん、ダークドリームはあなたの思っているような子じゃないわ」

ダークアクア「けど、決して悪い人間じゃない。優しい子よ」

??「……信じ切れるんでしょうか、私は。本当はお姉様のことを信じたいんですが……」

ダークアクア「……」

??「あっ、私残りのゴミを外へ出しておきます」

ダークアクア「一緒に持って行くわ」

??「……すみません」

・・・・・

ダークルージュ「……」

ガラッ

ダークルージュ「!!」

ダークレモネード「ただいまー……って、どうしたの。玄関前で待ち伏せして」

ダークルージュ「なんだあんたか……」

ダークレモネード「はぁ? なんだってなによ」

ダークルージュ「今さ……ダークドリームの妹がこのアパートに来てるのよ」

ダークレモネード「……えっ!! うそっ!?」

ダークルージュ「マジで、ダークドリームの部屋にいる。今日会いに来たんだってさ」

ダークレモネード「それでダークドリームは!?」

ダークルージュ「まだ帰ってきてない。だからここで待ち伏せしてんのよ」

ダークルージュ「あの妹ちゃんと今のダークドリームを会わせるのってなんか、まずい気がして」

ダークルージュ「ダークドリームには電話かけたけど全然つながらないし」ブツブツ

ダークレモネード「……?」

ダークルージュ「説明すると長くなるけど、あの妹ちゃんダークドリームのことを勘違いしてるみたいで……」

ガラッ

ダークドリーム「たっだいまーwwwwwww」

ダークルージュ「!!」

ダークレモネード「あっ……!!」

ダークドリーム「あれーwwwなにやってんのこんなところでwwwww」

ダークルージュ「なっ、なにやってんのはこっちのセリフよ!! 酒飲んだの!?」

ダークドリーム「ピンポーンwwwwせいかーいwwwww」

ダークドリーム「飲んじゃいましたーwwwwww」

ダークミント「もー待ちなさいダークドリーム!」

ダークレモネード「ダ、ダークミント……これ一体どうしたの」

ダークミント「分かんないわよ。帰る途中に会ったんだけどその時にはもうこんな状態で」

ダークドリーム「wwwwwww」

ダークミント「こらダークドリーム、いい加減にしなきゃめっ!よ。 お酒飲んじゃダメって前も言ったでしょ?」

ダークドリーム「はーいwww反省しまーすwwww」

ダークルージュ「反省しますじゃないでしょうが!!」

ダークミント「ど、どうしたのそんな怒っちゃって」

ダークルージュ「ダークドリーム! そんな状態でここに上がってこないで!!」

ダークドリーム「なんでよwww早く部屋で休みたいのにwwwww」

ダークルージュ「いいから今すぐどっかで酒抜いてこい!!」

ダークドリーム「意味わかんないんだけどwwwwwwそこどきなさいよwwwww」

ダークルージュ「これはあんたのために言ってんの!!」

ダークミント「どうしたの……?」

ダークレモネード「実は今……」

ダークドリーム「はぁ!? いい加減うっざいんだけど!!」

ダークルージュ「っ~~~……あのね、よく聞きなさいよ。今あんたの部屋にあんたの妹が来てるの」

ダークドリーム「え……」

ダークルージュ「あんた、妹にどんな嘘ついたか知らないけどそんな状態で会えると思ってるの? せめてどこかで頭冷やしてからにしなさいよ」

ダークルージュ「そうじゃなきゃ、妹の期待を裏切るようなことになっちゃうでしょ。もうほとんどなってるけど」

ダークドリーム「……」

ダークルージュ「分かったらほら、公園行って顔でも洗ってきな。そんな酒臭かったら嫌われるわよ」

ダークミント「私が連れて行くわ。ほら、行きましょうダークドリーム」

ダークドリーム「……」

ダークミント「ダークドリーム?」

ダークレモネード「ちょっと、どうしたの」

ダークドリーム「……wwwwwww」

ダークドリーム「妹が来てる?wwwwまたそんな冗談いっちゃってwwwww」

ダークレモネード「!?」

ダークルージュ「冗談じゃないっての!!」

ダークドリーム「だったら今すぐ呼べばいいじゃないwwwおーいwwwwこっちおいで妹ちゃーんwwwww」

シーン・・・

ダークドリーム「何よ来ないじゃないwwwwwwどうせいないんでしょ?wwwww」

ダークドリーム「ほらほらwww来なさいよwwwwwww」

ダークルージュ「いるって言ってんでしょうが!!」

ダークドリーム「いたとしてもこんな姿見られたらもう終わりよwwwwww終わりwwwwwww」

ダークルージュ「だからどこかで頭冷やしてこいって言ってんじゃない!!」

ダークドリーム「もうねwwわたしは疲れましたwwwwなにもかもwwwwww」

ダークドリーム「妹には嘘ばっかつくしwww仕事は全くないしwwwお金もないし遊んでばっかだしwwwww」

ダークドリーム「もうダークドリームちゃんはつかれちゃったのれす!!wwwwwwwwwいまここですべてをさらけだしちゃいまーすwwwww」

ダークドリーム「わたくしダークドリームはwwwwさいていさいあくのにんげんでぇーすwwwwww」

ダークドリーム「もうプリキュアにはなれないしwwwwいっそこのままおちぶれるところまでおちちゃおっかなぁーwwwwww」

ダークドリーム「じんせいたのしんだものがちでしょーwwwwww」

ダークミント(あっ、これは……完全に酔いが回ってる)

ダークドリーム「おんなのこどうしセックスもしちゃいましたぁwwwww」

ダークレモネード「はぁ!?」

ダークドリーム「もうミもココロもすっかりよごれっきっちゃってまーすwwwwwwいまさらいもうとがきたところでなんだっていうのよwwwwww」

ダークドリーム「だれかわたしにおかねくだしゃーいwwwww」

ダークドリーム「アイアムジャパニーズwwwwwwイェーイwwwwww」

ダークルージュ「……」

ダークドリーム「あーwwwなんかあつくなってきwwwwぜんぶぬいじゃおwwwww」

ダークレモネード「ちょ、ちょっとやめなさいって」

ダークミント「いい加減にしなさい!!」

ダークドリーム「うっ……」

ダークレモネード「えっ」

ダークドリーム「うぼろろろろろろろろろろろろろ」

ダークレモネード「!?」

ダークルージュ「もう……最悪。吐きやがった……」

ダークドリーム「うぇへへへ……すっきり~……むにゃむにゃ」

ダークドリーム「……ぐぅ……ぐぅ」

ダークレモネード「起きなさいよ! 寝るんじゃない!!」

ダークミント「これはもう起きないわね」

ダークレモネード「ど、どうすんの、妹来てるんでしょ? とりあえずどこかにダークドリーム隠さないと」

ダークルージュ「一つだけ言えることはさ……今こんなに騒いだんだから上にいる妹が気づかないわけないでしょ」

ダークレモネード「あっ……!!」



??「……」

ダークミント「あの子が……ダークドリームの?」

ダークルージュ「……そうよ」

??「……」

ダークレモネード「い、いつから……」

??「ちょうど……この人が帰ってきた声がしてからです」

ダークアクア「……」

ダークドリーム「すぅ……すぅ……」

??「……」

ダークレモネード「こ、これにはちょっと深い事情があって……」

ダークルージュ「そんなこと言っても無駄でしょ」ボソッ

??「……どうやら私はお邪魔みたいですね。失礼します」

ダークレモネード「どこ行くの! こんな時間に帰るの!?」

??「どこか泊まれるところを探します。そして明日……帰るつもりです」

??「ダークアクアさん、今日はありがとうごさいました」

ダークアクア「……」

??「……それでは、失礼します」

ダークミント「……行っちゃったわね」

ダークルージュ「そりゃそうでしょ……こんな幻滅するような姿見ちゃったら」

ダークドリーム「……ムニャムニャ」

ダークルージュ「正直あたしも呆れたわよ。もう救いようがない」

ダークルージュ「なんで酒なんて飲んでるのよこの馬鹿は……」

ダークアクア「とりあえず、ダークドリームは部屋で休ませてくるわ」

ダークミント「私は……吐いたもの掃除しておくわね」

ダークレモネード「……わたしはあの子のを追いかける」

ダークルージュ「はぁ? どうして」

ダークレモネード「事情を話せば分かってくれるかも…」

ダークルージュ「事情って? 何よ。この状態を説明する必要あるの?」

ダークレモネード「っ……」タタッ

ダークルージュ「……勝手にしなさいよまったく」

・・・・・

??「……」

ダークレモネード「ちょ、ちょっと待って!!」

??「……なんでしょうか」

ダークレモネード「あ、その……ダークドリームの事なんだけど」

??「……」

ダークレモネード「今日はたまたま最悪な日だったみたいで、ダークドリームのやけになってついお酒飲んじゃっただけなのよ……」

ダークレモネード「ほら、若気の至りとかそういう感じで……なんていかその……ついやっちゃったーみたいな、あはは」

??「……」

ダークレモネード「……悪いやつじゃないの。本当はすごいいいやつなの」

ダークレモネード「わたしもそういうあいつのこと好きだし。それに……!! 本当はダークドリームだってあなたに会うの楽しみにしてたんだから!」

ダークレモネード「妹に会うのが楽しみだって言ってた!! ……本当よ?」

??「……あなたは優しい人なんですね。そんなに友達思いで」

ダークレモネード「え……」

??「けど、もうこれ以上このことについては口出しをしないでください。私の問題です」

??「私が勝手に期待して勝手に裏切られた……ただそれだけのことですから」

ダークレモネード「……」

??「さようなら……あの人には今日私がここに来たことは言わないでください」

ダークレモネード「あっ、ま、待って」

ダークレモネード「……」

・・・・・・


??「う……うう……」

??「こんなことになるのなら……来なければよかった……」

??「ひっぐ……ぐず……」

??「ごめんなさいお姉様……こんな身勝手なことをしておきながら」

??「私はもう……あなたのことを好きにはなれない……」

??「さようなら……」

ドンッ

??「あ……ご、ごめんなさい。よそ見をしてて……」

ムーンライト「……いいわよ……気にしてないわ」

??「え……?」

??(こ、この人は……確か今のプリキュアの)

ムーンライト「……」

??「……」

??(アパートの方向へ向かってる……まさかあの人のあのアパートの住人?)

??(……そんなことはどうでもいいわよね。もうあのアパートにもあの人にも、関わることはないのだから……)

??(明日になったら……早く帰ろう)

??「……」

ここまで

・・・・・翌日

マリン「結局昨日はあのままムーンライト戻ってこなかったし、どうしちゃったのよ? ムーンライト今日来てるの?」

ブロッサム「さぁ……今日はいないみたいですけど」

マリン「まったくさぁ、帰るなら帰るで一言なにか言って帰ればいいのに」

ブロッサム「どうしたんでしょうね」

マリン「次会ったときは文句言わないと。ムーンライトはちょっと自分勝手すぎるところがあるんだよ」

サンシャイン「二人とも、入時間だしそろそろ行こう」

マリン「あっ、うん」

ブロッサム(ムーンライト……何があったんだろう。急に体調でも悪くなったとか?)

ブロッサム(連絡先は分からないし……あっ、そうだ。もしかしたらパッション先輩なら知ってるかも。後で聞いてみようかな)

……アパート

ムーンライト「……」

ピッ ピッ
trrrrr trrrrr

『もしもし?』

ムーンライト「……」

『ムーンライト、どうしたの? あなたから電話してくれるなんて珍しいわね。……けど嬉しいわ』

『元気にやってる? 風邪とかはひいてない? それより今どこに住んでいるの? せっかくプリキュアの寮もあるのに……』

ムーンライト「……私がプリキュアのオーディションを受けることをいつ知ったの?」

『え?』

ムーンライト「私はオーディションのことを誰にも言わなかった。家族のあなたにもよ。それなのに……あなたはいつの間にかそのことを知っていた」

『あなたがオーディションを受けたことなんて知らなかったわ。合格してから初めて知ったのよ。それからあなたの力になろうと色々としてあげようと思ったのに……』

ムーンライト「嘘ね」

『……』

ムーンライト「本当は……こんなことは信じたくなかった。けど昔似たようなことがあったから、疑いは捨てきれなかったわ……」

ムーンライト「私がプリキュアになれたのは、あなたのコネのおかげだっていうのは本当?」

『……』

ムーンライト「……」

『……何を言っているのかしら。言っている意味がわからないわ』

ムーンライト「とぼけないで。嘘をついても無駄よ」

『私はあなたが落ちると思って進言したんじゃなくて』

ムーンライト「やっぱりそうだったのね!!」

『……誰から聞いたの? ホワイト?』

ムーンライト「よくもやってくれたわね……結局何もかもあなたの思い通りになったってわけね。おめでとう」

『私はあなたに十分な才能があると思ってあなたのことを紹介したの。オーディションなんて受けなくてもプリキュアになれると思った』

『決して不正な意味でやったんじゃない、オーディションという手間を省いただけよ。あなたのためにやったの』

ムーンライト「あなたに私の心は……一生理解できなわ」

『ムーンライト……あなたの悪いところは自分がどれだけ恵まれているのか分かっていないところに』

ピッ
ツーッ ツーッ

ムーンライト「……」

trrrrr trrrrr

ムーンライト「……」

trrrrr trrrrr

ムーンライト「……」

バキッ

ムーンライト「……」

ムーンライト「……う……うう……」

ムーンライト「ううう……ひっぐ……」

……ダークドリームの部屋

ダークドリーム「う……うう~ん……」

ダークドリーム「ふわあ~……今何時だろ……」

ダークドリーム「うげっ、もうお昼過ぎてるし……ん?」

ダークドリーム「あれ……なんでこんなに部屋綺麗になってるの」

ダークドリーム「???」

ガチャッ

ダークレモネード「……起きてたのね」

ダークドリーム「あっ、ダークレモネード。おはよ」

ダークレモネード「……」

ダークドリーム「なぁに、どうしたの」

ここまで
間が空きまくってすみません

ダークレモネード「……ううん、なにも」

ダークドリーム「そういえばこの部屋なんなの? なんでこんな綺麗になってるの? わたし掃除した覚えないんだけど……ひょっとしてここわたしの部屋じゃない?」

ダークレモネード「……」

ダークドリーム「なーんてことはないか。わたしの部屋だよね、ここ」

ダークドリーム「ふああー……そういえば聞いてよ、なんか変な夢見ちゃってさぁ。あんまよく覚えてないんだけど、なぜか理由もよく分からないでダークルージュに怒られる夢」

ダークドリーム「もうほんと意味わかんない。夢の中でもギャーギャーうるさくてさぁ」

ダークレモネード「……」

ダークドリーム「なんでさっきから黙ってんの」

ダークレモネード「何でもない……元気そうならよかった」

ダークドリーム「?」

ダークレモネード「……わたし仕事行くから、じゃあね」

ダークドリーム「あ、うん。いってらっしゃい」

・・・・・

ダークドリーム「おはよー」

満「もうお昼過ぎてるわよ」

ダークドリーム「何かない? お腹すいちゃった。共同の冷蔵庫に何か入ってないかなー……」ガサゴソ

ダークドリーム「あっ! アイスクリームじゃない、こんなところにあるなんて珍しい。誰の? ダークルージュの?」

ダークドリーム「じゃあ食べちゃお。朝怒られた仕返し……んふふ」

満「怒られたって?」

ダークドリーム「夢の中で怒られたの。朝からほんとゲンナリするわよ。頭も痛いし」

満「……昨日はお酒飲んでたそうね」

ダークドリーム「!!」

ダークドリーム「あはは……まぁちょっとよ、ちょっとだけ。別にいいでしょ? わたしぐらいの年頃は三人に一人ぐらいは飲んでるって」

満「昨日の記憶とかはないの?」

ダークドリーム「うーん……飲んだ後は覚えてないかなぁ」

満「そう……」

ダークドリーム「あっ……そ、そんな大量に飲んだわけじゃないからね!」

満「……ダークドリーム、ちょっといいかしら。話があるの」

ダークドリーム「なに? 家賃なら今月も来月もちゃんと払うわよ」

満「そうじゃないわ。もっと大事な話よ……あなたにとって」

ダークドリーム「なによそれ、真剣な顔しちゃって。わたし何か悪いことでもした?」

満「……私は現場にいなかったから実際はどんな状況だったか見てないんだけど、あなた昨日は泥酔した状態で帰ってきたそうね」

ダークドリーム「そ、そうなの? 全然覚えてないなぁ~」

満「大切なのはここからよ、ダークドリーム。昨日偶然……このアパートにあなたの妹さんが来ていたそうなの」

ダークドリーム「……え?」

満「部屋が片付けられていたでしょう? あれをやったのはあなたの妹さんよ。あなたが帰ってくるまでに綺麗にしていたらしいの」

ダークドリーム「……嘘でしょ? なんの冗談よそれ……」

満「薫たちから聞いた話をあなたに伝えているだけだけど……嘘じゃないわ」

ダークドリーム「妹が来ていたって……え? え?? わたし……なにも覚えてないんだけど……」

満「……」

ダークドリーム「本当に……来てたの? 本当に!? だって、事前に連絡とか何もなかったし……!!」

ダークドリーム「ど、どういことよ!! なんで!?」

満「……ダークドリーム、ちょっといいかしら。話があるの」

ダークドリーム「なに? 家賃なら今月も来月もちゃんと払うわよ」

満「そうじゃないわ。もっと大事な話よ……あなたにとって」

ダークドリーム「なによそれ、真剣な顔しちゃって。わたし何か悪いことでもした?」

満「……私は現場にいなかったから実際はどんな状況だったか見てないんだけど、あなた昨日は泥酔した状態で帰ってきたそうね」

ダークドリーム「そ、そうなの? 全然覚えてないなぁ~」

満「大切なのはここからよ、ダークドリーム。昨日偶然……このアパートにあなたの妹さんが来ていたそうなの」

ダークドリーム「……え?」

満「部屋が片付けられていたでしょう? あれをやったのはあなたの妹さんよ。あなたが帰ってくるまでに綺麗にしていたらしいの」

ダークドリーム「……嘘でしょ? なんの冗談よそれ……」

満「薫たちから聞いた話をあなたに伝えているだけだけど……嘘じゃないわ」

ダークドリーム「妹が来ていたって……え? え?? わたし……なにも覚えてないんだけど……」

満「……」

ダークドリーム「本当に……来てたの? 本当に!? だって、事前に連絡とか何もなかったし……!!」

ダークドリーム「ど、どういことよ!! なんで!?」

満「落ち着いて」

ダークドリーム「どういうことなのよ一体!! じゃ、じゃあ妹は今どこに!?」

満「帰ったわ……昨日あなたが帰ってきたと同時に」

ダークドリーム「え……」

満「それ以上のことは知らないわ。薫も、あの現場にいた子たちも」

満「ただ……飲みすぎていたみたいね、ダークドリーム。そうとう暴れていたみたいよ」

ダークドリーム「っ……」

満「妹さんも、その姿は見ていたみたい」

ダークドリーム「……」

満「……お酒なんてもう飲まないほうがいいわよ」

ダークドリーム「……わたし……なにしたの……?」

満「え?」

ダークドリーム「妹の前でわたし何やっちゃったの……」

満「……」




ムーンライト「……」

・・・・・・

……赤寮

パッション「えっ、ムーンライト?」

ブロッサム「はい、連絡先を知りませんか?」

パッション「ええっと……」

ブロッサム「ムーンライト、昨日の居残り練習の時に急にいなくなっちゃったんです。今日もスタジオにも来なかったし……何かあったのか気になって」

ブロッサム「風邪でもひいたんでしょうか」

パッション「風邪? あの子がまさか」

ブロッサム「え?」

パッション「ああいえ……知らないわ、ムーンライトの連絡先なんて。前も言ったけどあの子とはあんまり話したこともないし」

ブロッサム「そうですか……前はなんか知り合いのようにも見えたんですけど」

パッション「ま、まさかー。全然知らないわよあんな子。ほんとに何も……。力になれなくてごめんね」

ブロッサム「あ、いえ。いいんです。ムーンライトの撮影ももうすぐ始まりますし、その時には来ると思いますから」

パッション「……」

・・・・・

パッション(はぁ……さっきは嘘つきたくなかったけど、あのアパートの連絡先教えたら私が住んでいたこともバレちゃうかもしれないしね)

パッション(そういばムーンライトの携帯番号とかは知らないわね……まぁ一応私の方からアパートに連絡してみようかしら。ブロッサムも心配しているようだし)

パッション(まさか風邪をひいたとかは……ないと思うけど)

trrrrr trrrrr

ローズ『はい、もしもし』

パッション「あれ、ローズ?」

ローズ『……? パッション? どうしたのよ、こっちに電話かけてくるなんて』

パッション「ちょっとね。満や薫は?」

ローズ『二人は今いないわよ、だから私が代わりに電話に出てるの。二人に用があるの?』

パッション「あ……ううん、ムーンライトはいる? 彼女に用があるの」

ローズ『ムーンライト? 部屋にいるんじゃない? 呼んでも出てこないと思うけど』

パッション「その……ムーンライトは元気?」

ローズ『は? なにそれ…』

パッション「か、風邪ひいたんじゃないかって聞いたのよ」

ローズ『そのためにわざわざ電話してきたの? あんたもお人よしね、あんなやつの心配するなんて』

パッション「私じゃなくてブロッサムが……」

ローズ『けど分かんないわよ、あいつの様子なんて。部屋から出たところ見てないし。もしかしたら本当に風邪でもひいて寝込んでいるのかもね』

パッション「そ、そう」

ローズ『そっちの生活はどう?』

パッション「え? 一応……順調だけど」

ローズ『だったらいいわ。もうこっちのことなんて忘れて、新しい生活を楽しみなさい』

パッション「……」

ここまで
間違えて同じレス二回投下してしまいました

・・・・・

ダークドリーム(嘘……妹がここに来てた……?)

ダークドリーム(だとしたら、わたしはなんてことを……)

ガタッ

ダークドリーム「!!」

ムーンライト「……」

ダークドリーム「ム、ムーンライト……なに、何してんの。あんた今日ずっとここにいたいの? 仕事は?」

ムーンライト「……」

ダークドリーム「な、なによ。用がないなら向こう行ってよ」

ムーンライト「……あなたの妹が来ていたらしいわね」

ダークドリーム「っ……!!」

ムーンライト「私は会ってないけど。……だけど、あなたの妹のことだからきっと低脳な女の子なんでしょうね」

ダークドリーム「なっ……!?」

ムーンライト「あなたの血が混ざってるんでしょ? なら当然じゃない。きっと妹さんもろくでもない人間なんでしょう?」

ダークドリーム「黙りなさいよ!! それ以上妹のこと馬鹿にしたらテレビに出れないような顔にしてやるわよ!?」

ムーンライト「意外ね、ほとんど会ったことないような妹をそんな風に庇うなんて。大切に思ってるの?」

ムーンライト「それとも姉を演じる自分への自己満足かしら? もしくは自分が馬鹿にされるのが嫌なだけ? その理由の方が妥当ね。妹のことなんて本当はどうでもいいんでしょう?」

ダークドリーム「いきなり何なの……!? いい加減にしなさいよ、マジでムカつくんだけどあんた!! 関係ないやつは首突っ込んでくるな!!」

ムーンライト「今まであなたのことは正直なんとも思ってなかったけど、さすがに今回のことは不快だわ……個人的にね」

ダークドリーム「はあ!?」

ムーンライト「あなた、妹に対して嘘をついてたんでしょう? それもずっと長い間」

ムーンライト「友人でもなく、恋人でもなく、他人でもない、血の繋がった家族である妹を騙し続けていた」

ダークドリーム「っ……」

ムーンライト「とても、罪深いことね。家族を裏切るなんて……まともな人間ならそんなことはしないわ」

ムーンライト「あなたって本当にゴミクズね。今さら罪悪感を覚えるぐらいならいっそのこと死んだらどうなの? そうすれば妹さんも喜ぶかもしれないわね」

ダークドリーム「……」

ムーンライト「……あなたが私の姉だったらそうして欲しいわ。‘私の’だったらの話だけれどね。まぁ、今の話は別に気にしなくてもいいわよ」

ムーンライト「ただ私は、あなたがゴミみたいな人間でムカつくってことを伝えたかっただけだから」

ダークドリーム「……気が済んだなら向こう行きなさいよ。もう十分でしょ? それともまだ言い足りないの?」

ムーンライト「いえ…………おやすみなさい、ダークドリーム」

ダークドリーム「……」

ダークドリーム「う……うう……」

ダークドリーム「うぇぇぇ……」



ムーンライト「……」

……ムーンライトの部屋

ムーンライト(何をしているのかしら……私ってば)

ムーンライト(くだらない……こんなことでスッキリするわけでもないのに)

コンコンッ

ムーンライト「……」

ローズ「私よ。いるんでしょ? 開けるわよ」

ガチャッ

ローズ「いるんだったら返事しなさいよ。死んでるのかと思ったわ」

ムーンライト「……」

ローズ「風邪とかひいてるわけじゃないみたいね」

ムーンライト「けど気分は悪いわ。あなたがここに来たせいでね」

ローズ「……そんな減らず口がたたけるなら元気って証拠ね。いつまでも部屋に閉じこもってないでそろそろ仕事の準備でもしたらどうなの」

ムーンライト「プリキュアならもう辞めるわ」

ローズ「あっそ……は?」

ムーンライト「……」

ローズ「……それなんの冗談よ」

ムーンライト「冗談じゃないの。本当のことよ」

ローズ「あたしを馬鹿にするのもいい加減にしなさいよ!?」

ムーンライト「そう思うのならそれでいいわ。どのみちあなたには関係のない話だもの」

ローズ「ちょ、ちょっと……本気で言ってんの? なんで辞めんのよ今さら!」

ムーンライト「続ける理由がないからよ。この部屋に入ってこないで、鬱陶しいわ」

ローズ「ムーンライト!!」

ムーンライト「このアパートからも、出て行くわ。あなたもそれで満足でしょう? 嫌いな私の顔をもう見なくてすむんだから」

ローズ「ちゃんと話を…」

ドンッ

ローズ「きゃっ!?」

ムーンライト「部屋に入ってこないでって言ってるでしょ。話すことなんて何もないの」

ローズ「……」ギリッ

ムーンライト「……」

バタンッ

ローズ「……」

・・・・・翌日

パッション『ええっ!? や、辞めるって……冗談でしょ?』

ローズ「本気っぽいの。もう意味わかんない……なにも言わないし。ほんと何考えてんだか」

パッション『それで……どうするつもりなの?』

ローズ「考え直させるに決まってんでしょ。もうムーンライトの出演は確定してるのに今辞められたらハートキャッチ自体めちゃくちゃになっちゃうじゃない」

パッション『そ、そうよね。けど……説得できるの? 相手はあのムーンライトだけど』

ローズ「説得なんてしないわよ。叱るの。あの聞き分けのないやつにはお仕置きでも何でもしてやるわ」

パッション(そっちの方が難しいと思うけど……)

ローズ「言っても分からないやつにはね、力づくでもなんでもやるしかないのよ」

パッション『ちょ、ちょっと待って、落ち着いて。……私もそっちに行くわ』

ローズ「え?」

パッション『ムーンライトと話してみる。彼女の事情をまず聞かないと』

ローズ「そんな簡単に話してくれないから今こうなってんじゃない。今日だって全然話に応じなかったし……」

パッション『それでも聞いてみないと。ムーンライトはあんな性格だけど、彼女は彼女なりにプライドを持ってプリキュアをやっていたわ』

パッション『それがそんな簡単に辞めるって言い出すなんて……絶対におかしい。何かあるはずよ』

ローズ「どうだかね……」

パッション『と、とにかく今からアパートに行くわ。ムーンライトはいるんでしょ?』

ローズ「たぶんいると思うけど」

パッション『すぐ行くから。待ってて』ピッ

ローズ「はぁ……まったくどうしてこんなことに」

ローズ「ムーンライト! ムーンライトいるんでしょ? 返事しなさいよー!!」

薫「あら、ムーンライトなら出かけたわよ」

ローズ「……はぁ!?」

薫「さっき出かけるところ見たもの」

ローズ「ど、どこに?」

薫「さぁ、そこまでは知らないわ」

ローズ「……」

・・・・・

「では、条件の揃った物件を見つけ次第こちらからまた後日ご連絡致します。本日はありがとうございました」

ムーンライト「……ええ、よろしくお願いします」

ムーンライト(もうあのアパートにはいられない……どこにもいられない)

ムーンライト(このままどこかへ消え去りたい気分だわ……)

ムーンライト「……」

「あ、あの。ムーンライト……ですか?」

ムーンライト「え……?」

ブロッサム「やっぱり、そうですね」

ムーンライト「!!」

ブロッサム「心配してました、最近撮影所にも来ないから。体調でも崩したんじゃないかと思って」

ムーンライト「ブ、ブロッサム……なんでこんな所に」

ブロッサム「仕事は今終わったばかりで、帰りの途中なんです。今日は撮影もスムーズに終わったし、明日は早いから帰ってすぐに寝ちゃおうと思いまして」

ここまで
今日からまたちょくちょく書いていきます
まぁ鳩編はすぐに終わるんですが

ムーンライト「……」

ブロッサム「ムーンライトはここで何をしているんですか?」

ムーンライト「……何も。ちょっと散歩していただけよ」

ブロッサム「あのぅ……ムーンライト、最近体調でも悪くしたんですか? 撮影所にも来ないですし……」

ムーンライト「……」

ブロッサム「あっ、ちょっと待ってください」

ムーンライト「来ないでちょうだい」

ブロッサム「ムーンライト、わたしムーンライトに言われたこと少しずつでもできるように頑張っています。マリンやサンシャインも」

ブロッサム「みんなムーンライトみたいになりたくて毎日一生懸命努力しているんです」

ブロッサム「だけど、ムーンライトは最近全く来なくなったから……わたし何か怒らせちゃったのかなって、もしかしてわたしが全然成長しないからムーンライトに見限られたんじゃないかなって思って……」

ムーンライト「……」

ブロッサム「そ、その……でもわたし、今までよりももっと頑張ります! 最近は前よりもちょっとは成長できたと思えるし……」

ブロッサム「だから、またご指導をお願いしますムーンライト!」

ムーンライト「……」

ブロッサム「……」

ムーンライト「……なにか、勘違いしているようね」

ブロッサム「……?」

ムーンライト「私が見限ったのはあなたではなく、私自身よ。……もう付きまとわないでちょうだい」

ブロッサム「あ、あの……それってどういう……」

ムーンライト「……一年、頑張って成長したところであなたの得られるものは何なのかしらね」

ブロッサム「え……?」

ムーンライト「お金のためにプリキュアをやっているとしたら、まぁそれはありだわ。それが仕事だもの」

ブロッサム「そ、そんなことはありません! わたしはお金のためじゃなく、子どもたちの笑顔のためにプリキュアをやっているんです」

ムーンライト「フ……フフ……」

ブロッサム「ムーンライト?」

ムーンライト「子どもたちのため、ね……素敵よ。志を持って仕事をするのは素晴らしいわ」

ムーンライト「でもあなたのことなんて、子どもたちは一年もしたら忘れるでしょうけどね。どうせすぐに新しいプリキュアに走るわ」

ムーンライト「そうしたらあなたはもうお払い箱よ、ブロッサム。誰からも必要とされなくなる。子供たちからも、誰からも……」

ムーンライト「変な大人たちには相手してもらえるかもしれないけどね」

ブロッサム「そんなことありません! ど、どうしてそういうことを言うんですか」

ブロッサム「わたし達のやってることは何の意味もないって……そう言いたいんですか!?」

ムーンライト「そうよ」

ブロッサム「ひどい……なんでそんなこと……」

ブロッサム「意味ないことなんてありません! 頑張ればきっと何かを生み出せるはずなんです!」

ムーンライト「……」

ブロッサム「どうしたんですかムーンライト……わたしの知ってるムーンライトはそんなこと言わないはずなのに……」

ムーンライト「わたしの知ってるムーンライト? あなた、私の何を知ってるの」

ブロッサム「それは……」

ムーンライト「勝手なこと言わないでちょうだい」

ブロッサム「……」

ムーンライト「……」

ブロッサム「あ……ム、ムーンライト」

ムーンライト「来ないでって言ってるでしょ」

ブロッサム「あぅ……」

ムーンライト「……」

ブロッサム「……」

・・・・・・

ブロッサム「はぁ……ムーンライト、どうしたんでしょう」

ブロッサム「あんなひどいこと言うなんて……」

ブロッサム(わたし達のやっていること……きっと意味はあるはずです。そうだ、パッション先輩に今日のこと相談してみよう)

ブロッサム(パッション先輩ならきっといいアドバイスをしてくれるはず)

ガチャッ

ブロッサム「パッション先輩、ただいま。……パッション先輩?」

ブロッサム「……あれ、いない。でかけているのかな」

ブロッサム「しょうがない、帰ってくるまで待とう……あっ、そうだ!」

ブロッサム「今日は早く帰ってきたんだし、夕飯はわたしが作ろうかな。いつもお世話になってるし、そうすればパッション先輩も喜ぶはず」

……アパート

パッション「ちょ、ちょっとどういうこと!? なんで私の部屋……こんな物置みたいに」

ローズ「ムーンライトがあんたの部屋使ってたのよ」

パッション「なんでそんな……はぁ。どうするのこれ」

ローズ「別にいいでしょ? あんたもうここ使わないんだから」

パッション「そ、そうだけど……でも」

ローズ「あっ」

パッション「え?」



ムーンライト「……」

パッション「ムーンライト……」

ムーンライト「……見かけない顔ね。誰かしら、邪魔だからそこをどいてちょうだい」

パッション「ちょっと待ちなさいムーンライト!」

ムーンライト「……」

パッション「聞いたわよ……プリキュア辞めるって」

ムーンライト「そう」

ローズ「ムーンライト! こっち向きなさいよ!」

ローズ「あんた自分のしようとしてること分かってんの!?」

ムーンライト「……」

パッション「ローズ、私が二人っきりで話すからしばらく離れてて」

ローズ「なっ、なんで私はのけ者にするの!?」

パッション「そんな頭に血が上っていたらまとも話し合いなんてできないでしょ。少し向こうに行ってて」

ローズ「……」

……ムーンライトの部屋

パッション「……とにかく、どうしてそんな結論になったのか事情を話してもらえる?」

ムーンライト「……」

パッション「大丈夫よ、私の部屋のことなら今はとやかく言わないから」

ムーンライト「……」

パッション「ムーンライト……お願いだから聞かせてちょうだい。一体なにがあったの?」

ムーンライト「……」

パッション「……」

ムーンライト「……何も」

パッション「え?」

ムーンライト「何もなかったわ……何も」

パッション「何もないならどうして急にプリキュアを辞めるなんて言ったのよ」

ムーンライト「……」

パッション「話を聞いて欲しいから私をこの部屋に入れてくれたんでしょう?」

ムーンライト「何でもないわ……本当よ。それよりもごめんなさい」

パッション「なにが?」

ムーンライト「今まであなたのことを馬鹿にしすぎたわ……失礼なこともたくさん言った。ごめんなさい」

パッション「ちょ、ちょっとどうしたの……あなたが謝るなんて変だわ。何を考えてるわけ?」

ムーンライト「本心から言ってるだけよ、ごめんなさい」

ムーンライト「今まで私は……調子に乗っていただけだったわ。プリキュアになれたってことだけで、有頂天になっていた。誰よりも優れていると思っていた……」

ムーンライト「私の人生はここからようやく始まるんだと思っていた。私の存在意義がプリキュアの中ならあると思っていた」

パッション「な、なんの話……?」

ムーンライト「でももう無理なの……ごめんなさい……本当に無理なの……」

ムーンライト「もうプリキュアなんてできない……」

パッション「……」

ムーンライト「……」

パッション「……どんな事情があっても、今ある責任を放り出すことなんて許されないわ」

パッション「私も去年は辛い時期があったけど……」

ムーンライト「もうやめてちょうだい、そういう話は……聞きたくもないわ」

ムーンライト「あなたと私が……同じ気持ちであるはずがない……!!」

パッション「……分かったわ、何も話さない」

ムーンライト「……」

パッション「今日はここに泊まることにするわ。けど私の部屋はあなたのせいで物置状態になってるから、ここで寝させてもらうけどね」

ムーンライト「……」

パッション「今まで色々あったけど……ムーンライトに対しては確かにいい気分を持たなかった時の方が多いわ」

パッション「だけど今のムーンライトを一人にさせることなんてできない。できればあなたにも、私のことを頼って欲しい」

パッション「私は……あなたの味方よ」

ムーンライト「……」

ここまで

・・・・・翌日

マリン「ムーンライト、今日は来るかな。ていうか何してんのかなー」

ブロッサム「……」

マリン「ブロッサム?」

ブロッサム「あ…は、はい。なんでしょうか」

マリン「聞いてないんだったら別にいいんだけどさ。……なんかボケっとしてるけど大丈夫?」

ブロッサム「は、はい。すみません……」

マリン「ほら、元気出していこ! 今日もしんどい仕事がはじまるぞー!」

ブロッサム「……」

ブロッサム(パッション先輩……どうしたんだろう。あれから全然戻ってこない)

ブロッサム(一応用事があるって連絡はあったけど……)

……アパート


パッション「もう……完全に私の部屋が占領されてる。後で片付けなきゃ」

パッション「ムーンライトってば、私がいないのをいいことに好き勝手やって……」

パッション「……それにしても、色々あるのね。これは子どもたちのファンレター? へぇ、ちゃんと残してあるんだ」

パッション「これは……ムーンライトの人形? 手作りかしら……これも子どもたちからのプレゼント?」

パッション「人気あるのね、ムーンライト。けど本人があれじゃあ……」

ガタッ

パッション「!!」

ダークドリーム「あ……」

パッション「ダークドリーム、久しぶりね!」

ダークドリーム「イース……」

パッション「ムーンライトのことが心配でちょっと戻ってきちゃったの。そしたら私の部屋がこの有様。まったく、困ったものだわ」

ダークドリーム「……」

パッション「ダークドリーム?」

ダークドリーム「……元気そうでよかった。新しいところでも上手くやってるんだ」

パッション「え、ええ」

ダークドリーム「そっか……よかった」

パッション「そっちは、なんか元気なさそうね」

ダークドリーム「そんなことないよ。……ムーンライトはどうしてる?」

パッション「部屋にいるわ。特になにもしないまま」

ダークドリーム「そう……」

パッション「どうしたの?」

ダークドリーム「なんでもないの……ほんと。ただちょっと、イースの顔を見たら安心できた」

パッション「え?」

ダークドリーム「じゃあね、わたし出かけてくる」

パッション「……?」

・・・・・

パッション「ええっと……こんなものでいいかしら」

ローズ「おはよー……って、わっ!? なにこれ!!」

パッション「ああ、おはようローズ」

ローズ「この料理……パッションが作ったの? 一体どうしたのよ」

パッション「ムーンライトに食べてもらおうと思って。美味しいものを食べれば少しは元気出るでしょ?」

ローズ「ムーンライトのために、ねえ……よくやるわねあんなやつのために」

ローズ「あんただって散々あいつに侮辱されたでしょ。それなのになんでここまでするのよ、そんなんだからムーンライトにお人好しだって馬鹿にされるんでしょ」

パッション「馬鹿にされるぐらいなら別にいいわ、もう慣れてる。でも今のムーンライトはそうじゃないの」

パッション「彼女をほっとくわけにはいかない」

ローズ「……」

パッション「それに私は、ムーンライトの先輩だしね。彼女が立ち直るまでそばにいてあげるつもりよ」

ローズ「……ブロッサムはどうするの?」

パッション「ブロッサムはしっかりものだから、私がいなくても大丈夫よ。一人でもきっと平気だわ」

ローズ「ならいいけど……」

……ムーンライトの部屋

パッション「ムーンライト、ご飯作ったわよ。よかったら食べて」

ムーンライト「……」

パッション「ほら、何か食べておかないと」

ムーンライト「っ……!!」

ガシャーン!!

パッション「!!」

ムーンライト「私に構わないで……出て行きなさい。目障りだわ」

パッション「……昨日とはまるで別人ね」

ムーンライト「……」

パッション「……作り直してくるわ」

ムーンライト「食べないわ、そんなもの」

パッション「……それでも作り直してくる」

ムーンライト「……」

ムーンライト(もうヤダ……死にたい……)

ムーンライト(こんな惨めな思いをするぐらいなら……いっそのこと……)

ムーンライト「……」

ローズ「死にたそうな顔ね」

ムーンライト「!!」

ローズ「なんか音がしたから来てみれば……」

ローズ「何があったか知らないけど、勝手に自分の殻に閉じこもって黙り続けてる挙句他人に八つ当たりするんじゃ世話ないわね」

ムーンライト「次から次へと……暇な人間は羨ましいわね」

ローズ「あんたは? プリキュア辞めて暇なニートにでもなる?」

ムーンライト「……」

ローズ「少しは根性見せたらどうなのよ! 今逃げたらどうせこの先ずっと逃げ続ける人生になっちゃうわよ!?」

ムーンライト「ありがたいお言葉ね、先輩としての助言かしら。余計なお世話なのよ」

ローズ「……ずっとそんなこと言ってれば? どうやら本当にただのクズみたいね、あんた」

ローズ「人として軽蔑するわ」

ムーンライト「……」

ローズ「なんでこんなやつがプリキュアになれたの……意味わかんない」

ローズ「ひょっとしてお金でも積んで事務所の人を買収でもしたのかしら」

ムーンライト「ッ……!!」

ローズ「なによ、こっち睨んで。言いたいことあるんだったらはっきり言いなさいよ、ほら」

ローズ「どうせつまらない皮肉でも言うんでしょ、言ってみなさいよ」

ローズ「あんたみたいなやつ本当にムカつくのよ! 人のこと舐めて、見下して! 自分は何様だと思ってんの!?」

ローズ「何もできない人間のくせに! あんたなんて結局口だけじゃない!!」

ムーンライト「……」

ローズ「……」

ムーンライト「……気が済んだ? なら……もういいでしょ」

ローズ「ッ……!!」

バチンッ!!

ムーンライト「う……」

ローズ「少しぐらい本気で他人と向き合ったらどうなのよ……どうしてそうやってすぐ逃げようとするの」

ムーンライト「……あなたって、すぐに手が出るタイプの人間なのね。自分の感情を抑えることができない」

ムーンライト「そういう人間は、昔だったら情熱的だとかいって評価されてたんでしょうけど……今の時代こんなのはただの暴力にしかならないわ。なんの意味もない」

ローズ「……好きに思えばいいわよ、私のことなんて。どうせ私だって、立派な人間じゃないんだから」

ローズ「だけど私はあんたみたいな寂しい人間じゃない」

ムーンライト「……」

ローズ「あんたのおかげで分かったわよ、向き合いたくないものから逃げてる人間がどれだけ惨めなのか。かわいそうだわ……ほんと」

ムーンライト「……説教臭い話ももうウンザリよ」

ローズ「……私はあんたみたいにはならないようにするわ」

ムーンライト「……」

・・・・・

ムーンライト(……私は姉と、私を姉と比べで見下げる人間たちを見返すためにプリキュアになった)

ムーンライト(たったそれだけのこと……けど本気だった)

ムーンライト(本気で惨めな自分の人生を変えようと思ってた。そして自分のこの手で確かに変えられると思ってた)

ムーンライト(なのに結局、私は何一つ前へ進んではいなかった……)

ムーンライト(これ以上私にどうしろっていうの……もう怖くてなにもできない)

ムーンライト(もうこんな辛い思いなんてしたくない……)

ムーンライト「……」

ムーンライト(なぜ私がこんなにも怯えなくちゃいけないの……私はこの先もずっとこのままなの?)

ムーンライト(この先も、こんな惨めな思いを抱えたまま……生きて……)

ムーンライト「……」

ムーンライト(……それだけは、絶対に嫌)

パッション「おまたせ、ムーンライト」

パッション「少し時間がかかちゃったけど、作り直してきたわよ。さぁ、今度こそ食べてちょうだい」

ムーンライト「……」

パッション「嫌とは言わせないわよ?」

ムーンライト「……」

パッション「ムーンライト、無理やりにでも食べさせるからね。あーん」

ムーンライト「あなたは……どうして私のことを捨てないの?」

パッション「え?」

ムーンライト「これだけあなたのことを拒絶してるのに……」

パッション「……捨てることなんてできないわよ。ムーンライトが今こんな状況なのに」

ムーンライト「本当に……優しいのね。でもねパッション、私はあなたみたいにはなれない」

パッション「?」

ムーンライト「パッション……ライターは持ってる? マッチでもいいわ」

パッション「え、どうしたの急に」

ムーンライト「持ってるの? 持ってないの?」

パッション「持ってないけど……」

ムーンライト「ならいいわ。誰かから借りてくる」

パッション「あっ、ちょっとムーンライト待って! 食べないの!? せめて食べてから……ああもう!」

・・・・・・

ムーンライト「……」

パッション「ムーンライト、今度は一体なにを考えてるの。私の部屋にあったあなたの荷物……なんで庭に全部放り出して」

ムーンライト「片付けてほしかったんでしょ?」

パッション「そうだけど、なんで急に」

ムーンライト「……これは子どもたちからもらったプレゼント。手紙や手作りのプレゼント……」

パッション「……」

ムーンライト「それだけじゃないわ。これは私は小さい頃に大切にしていたぬいぐるみ」

パッション「え……」

ムーンライト「これは初めて自分のお金で買ったアクセサリー。こっちは小さい頃、名前は忘れたけど同級生の男の子からもらった誕生日プレゼントのリボン」

ムーンライト「全部……大切にしてきたもの」

パッション「……素敵なものだと思うわ、とても。あなたでもそういうのはとっておくのね」

パッション「けどいいことだと思う」

ムーンライト「ええ……だから、全部燃やして灰にするわ」

パッション「!?」

ムーンライト「こんな風にね」

ボウッ

パッション「ちょ、ちょっと何してるの!? 大切なものなんでしょ!!」

ムーンライト「そうよ、私にとっては掛け替えのない大切なもの」

パッション「あ、早く消さないと! 消化器早く!!」

ムーンライト「大切なものだから、全部捨てるのよ」

パッション「何を言って……」

ムーンライト「こんなものにこだわっているから、私は変わることができなかった」

ムーンライト「新しい道を進むには、まず古いものを全て捨てなきゃいけない」

パッション「ム、ムーンライト……言っている意味がわからないわ」

ムーンライト「人が変わるには、何かきっかけが必要なのよ……ただそれだけのこと」

ムーンライト「それに……案外スッキリするわよ。こうやって思い切った行動を取ると……」

ムーンライト「少しだけ肩の荷が下りた……」

パッション「……」

ムーンライト「……」

ここまで
次回の投下でハト編はまとめて終わらせようと思います
そしたらすぐスマイルに入ります


関係ないけどつい衝動的にマナりつのほのぼの百合SSを書いてしまいました
興味ある人は読んでみてください(ステマ)
マナ「六花はあたしの奥さんだよね……?」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1375085627/)

……緑寮

ミント「はい、今日の分のお金」

ダークドリーム「……」

ミント「どうしたの? 今日はやけに積極的だったわね……ふふ」

ダークドリーム「……今日はもう終わりでいいの?」

ミント「?」

ダークドリーム「したくないの? もっとさ……」

ミント「本当にどうしちゃったの。お金に困ってる?」

ダークドリーム「……」

ミント「まぁ……私としてはそんなことどうでもいいんだけどね。あなたが望むならしてあげる」

ダークドリーム「嘘よ」

ミント「え……?」

ダークドリーム「ばぁーか、信じちゃった? するわけないじゃん……もう帰る、疲れたわ」

ミント「……待って」

ダークドリーム「?」

ミント「はい、これ。少ないけど今日の分上乗せしておくわ」

ダークドリーム「……」

ミント「次もよろしくね」

ダークドリーム「……あんたってさぁ、プライドとかないの?」

ミント「プライド?」

ダークドリーム「こんなの普通、おっさんが女子高生相手にするようなことよ?」

ダークドリーム「なのにあんたはわたしほぼ同い年で、しかも同性なのにこんなことして……頭大丈夫?」

ミント「……」

ダークドリーム「あんたにとってわたしって何なの」

ミント「好きよ」

ダークドリーム「は……!?」

ミント「愛してるわ。よかったら私達、付き合わない?」

ダークドリーム「な、何言って……」

ミント「ふふ、それもいいじゃない。どうせお互い失うものはなにもなさそうだし……それにあなた、どこか寂しそうね」

ミント「誰かに優しくされたがってる顔してる。私だったらあなたのことを癒してあげられるわ」

ダークドリーム「っ……気持ち悪いこと言わないで!」

ミント「……」

ダークドリーム「もういいわ、あんたとの関係もこれでおしまい。もうここには来ないから」

ミント「そう……でも私は待ってるわよ。あなたがいつ来てもいいように」

ダークドリーム「……」

ミント「ばいばいダークドリーム。またね」

ダークドリーム「っ……」

バタンッ

ミント「……」

ミント(彼女はどうせまたここに来る。間違ったことをしてると分かっていても、それを直すことができない……そういう人間だもの)

ミント(そして私も……フフッ、振られちゃったわね。まぁ、告白ができただけでもよしとしましょうか)

ミント(あーあ、私これからどうなっちゃうんだろう。もう後戻りなんてできないわよね……)

ミント(……ほんと、ダークドリームの言うとおりだわ。何してるんだろう私……頭大丈夫かしら)

・・・・・

「ねえねえ、おおきくなったらなにになりたい?」
「プリキュア!」
「わたしも!」



ダークドリーム「……」

ダークドリーム(わたしはどうしよっかなー、来年のオーディション)

ダークドリーム(……わたしなんかが受ける資格ないか。どうせ受けても落ちるだけだろうし)

ダークドリーム(この先妹に合わせる顔もないし。……マジでもう、人生終わってる)

ダークドリーム(そもそもわたしなんかがプリキュアを目指そうとしたのが間違いなのよ。才能もないのに馬鹿な夢見ちゃってさ)

ダークドリーム(ひょっとしたらなれるんじゃないかって……なんの根拠もなくダラダラ過ごしてこのザマよ)

ダークドリーム(じゃあこれからどうしろっていうの。今さらわたしなんかに、何ができるっていうの……)

ダークドリーム(もう……なにも考えたくない)

……アパート

パッション「……」

ローズ「ムーンライトは?」

パッション「部屋にいるわ。一応は……落ち着いたみたい。明日から仕事へ行くって」

ローズ「どうしてまた急に考え直すことができたのよ」

パッション「さぁね……ただ、根本的なものは何も解決してないと思うわ。結局私がここに来ても何も役に立ってないと思う」

ローズ「……私さ、あいつに言ったのよ。他人と本気で向き合ったらどうなの、って」

ローズ「本当は私が言えるようなことじゃないんだけどね。向き合いたくない人がいるからここにいるわけだし」

パッション「……」

ローズ「似た者同士なのよね……私もムーンライトも。ここに住んでる時点で、同じ穴の狢ってやつ」

ローズ「だから余計ムカつくの。自分の嫌な部分見てるようで」

パッション「……」

ローズ「その点、あんたは私達と違って偉いけどね。しっかりやってるわ」

パッション「そんなことないわ」

ローズ「……やっぱり今のままじゃよくないのかな、私」

ローズ「私、変わりたい。できることなら……やり直したい」

ローズ「でもどうしたらいいのか分からない。何をしても間違えてしまうような気がして……」

パッション「……ローズ」




ダークドリーム「たっだいまーwwwwwww」

ローズ「!!」

パッション「ダ、ダークドリーム……!?」

ダークドリーム「二人でコソコソなにしてんの? わたしも仲間に入れてよーwwwww」

ローズ「う……くさっ。なにこいつ!? こっち来ないでよ!」

ダークドリーム「ちょっとひどすぎwwwwそんなこと言わないでよぉwwwww」

パッション「お酒……飲んでるの、あなた?」

ダークドリーム「はーいwww飲んでまーすwwwwww」

ローズ「……」

ダークドリーム「wwwwwww」

ローズ「っ……いいわよね、悩みのない人間は。毎日のうのうと暮らしてて」

ローズ「羨ましいわほんと。フンッ……私もあんたみたいな人生を生きてたらどれほど楽か」

ダークドリーム「wwwwwww」

ローズ「……部屋もどる。こんなやつと一緒の空気吸いたくないわ」

パッション「あっ、ちょっとローズ」

ダークドリーム「ばいばーいwwwwwww」

パッション「……はぁ」

……赤寮

ブロッサム「ただいまー……」

ブロッサム「……」

ブロッサム(パッション先輩……戻ってきてない。明日は帰ってくるかな)

ブロッサム(今日はたくさんお話したいこともあったのに……)

ブロッサム(……とりあえず夕飯の準備しよう)

ブロッサム「……」

trrrr trrrrr

ブロッサム「!!」

ブロッサム「も、もしもし!」ピッ

パッション『ああ、ブロッサム?』

ブロッサム「パッション先輩……! よかった、今どこにいるんですか?」

パッション『ちょっと……知り合いのところでね。今大切な用事があって……ここから離れることができないのよ』

ブロッサム「え……それって、しばらく帰って来られないってことですか?」

パッション『ええ、ごめんなさいね……一人で大丈夫?』

ブロッサム「っ……は、はい。こっちは一人でも大丈夫です。大切な用があるんでしたらそちらを優先してください」

パッション『ありがとう。やっぱりブロッサムはしっかりしてるわね、こっちも安心だわ。じゃあ、なるべく早く戻れるようにするから』ピッ

ブロッサム「……」

ブロッサム(……夕飯、食べなきゃ。……疲れたなぁ)

ブロッサム(この遼って一人でいると……こんなに広いんだ)

・・・・・翌日

マリン「ははーん……それはきっと男のところだね」

ブロッサム「えっ!?」

マリン「だってそれ以外考えられないじゃん。あのパッション先輩がどこかにお泊りするってことは、つまりぃー……」

マリン「彼氏のところしかないよね! きっと、付き合ってる人が風邪ひいちゃったりしてその看病でもしちゃったりしちゃってんじゃないのー!」

ブロッサム「そ、そうなんでしょうか……」

マリン「相手誰かな、ウエスターさん? サウラーさん? どっちにしろパッション先輩も隅に置けないね~」

マリン「うちのベリー姉なんて男の気配全くないっていうのに。ああ見えてパッション先輩、意外と遊んでたりするのかな」

ブロッサム「む…そういうのはやめてください!」

マリン「あはは、冗談冗談」

ガチャッ

ムーンライト「……」

ブロッサム「!!」

マリン「あっ……!」

ムーンライト「……」

マリン「ムーンライト!!」

ムーンライト「……」

ブロッサム「よかった……今日は来てくれたんですね」

ムーンライト「……」

マリン「ちょっと、挨拶もなし? 久しぶりに来たっていうのに無視するのはないんじゃないの」

ムーンライト「どきなさい、邪魔よ」

マリン「なっ!?」

ブロッサム「ム、ムーンライト……」

ムーンライト「……」

マリン「ちょっと!! なんで無視すんの!」

ムーンライト「……」

マリン「こっち向きなってば!」

ムーンライト「……」ギッ

マリン「っ……な、なにそんな睨んでんの。言いたいことあるんならちゃんと言いなよ! ていうか何怒ってんの、意味わかんない」

ムーンライト「……言わなくても普通の人間なら察することができるわ。あなたが、空気の読めない人間じゃなければね」

マリン「はぁ……!?」

ムーンライト「もうあなた達なんかとは関わりたくないのよ。仕事以外のことは話しかけないでちょうだい」

マリン「ちょっ……なにそれ」

ブロッサム「ムーンライト、それはどういう……」

ムーンライト「……」

ブロッサム「あの……」

ムーンライト「……」

・・・・・

マリン「なにあれどういうこと! 久しぶりに来たと思ったらなにあの態度!!」

ブロッサム「……」

サンシャイン「なんか……大変そうだね」

マリン「そうなのよ! はっきり言ってかなりムカってきた!」

ブロッサム「まるで別人のようでした……今までは冷たい態度をとっていても、どこか優しいところがあったのに」

ブロッサム「今日は本当に冷徹な感じがして、睨まれただけで怖かったです……」

サンシャイン「マリン、何か失礼なことでもしたんじゃない?」

マリン「なんであたし!?」

ブロッサム「……」

ブロッサム(どうしちゃったんだろう、ムーンライト……)

マリン「結局さ、見下されてるのかなあたし達。才能のある人間は偉そうにできていいよね、まったく」

サンシャイン「だとしたら……残念だね。せっかく仲良くなれると思ってたのに」

ブロッサム「……」

・・・・・
……アパート

ガチャッ

イース「あ、おかえり」

ムーンライト「……いつまでいる気なの」

イース「あなたが笑顔でただいまって言ってくれるのなら、帰ってあげるわ」

ムーンライト「馬鹿な女ね。目障りだから私の視界に入らないところに行ってちょうだい」

イース「……元気になってなによりだわ」

ムーンライト「元気? ……ええそうね、この前まではあなたに泣きついてしまいそうなぐらい気が迷って落ち込んでいたけど、今日はいつものようにあなたのことを救いようのない落ちこぼれた人間だと思えるわ」

ムーンライト「それぐらい元気よ、ありがとう」

イース「ああそう……それはよかったわ。もうプリキュア辞めるなんて言わないでしょうね?」

ムーンライト「……辞めたところで私には今さら何もないわ。何も残らない」

イース「……」

ムーンライト「ただし私には、プリキュアへの責任感や使命感なんてものはないけどね。ここで逃げたり立ち止まったりすれば、それこそダークドリームやローズみたいな落ちぶれた惨めな人間になってしまう」

ムーンライト「それが嫌なだけよ。これ以上惨めになってあんな人間になるなんてごめんだわ」

イース「……」

ムーンライト「あなたも相当おかしいけどね。同じ寮に住んでるブロッサムより、私のことを心配するなんて」

イース「ブロッサムはあなたなんかと違ってしっかりしてる子よ」

ムーンライト「フッ……やっぱりあなたって、とんだお人好しのマヌケね」

ガチャッ
バタンッ

イース「はぁ……ん?」

イース「そこで何してるの、ダーク」




ダーク「!!」

イース「どうしたの。なんでそんなところに隠れてるの」

ダーク「いや別に……隠れてなんかないが?」

イース「?」

ダーク「それより、ムーンライトは……」

イース「彼女ならもう部屋に入ったわよ。とりあえずは、またいつもの調子に戻ったみたいだけど」

ダーク「そ、そうか。よかった……」

イース「……ねえ、あなたってムーンライトと仲いいの?」

ダーク「いや、全然」

イース「その割には、よく彼女のことを気にかけてるみたいね」

ダーク「そんなことは……ないぞ」

イース「隠さなくてもいいじゃない」

ダーク「ライバルがあいつが調子を落としたら張り合いがなくて私が困るから、ちょっと様子を見に来ただけだ」

ダーク「大丈夫そうなら私はもう戻る」

イース「ライバル……ねえ。まぁいいか」

……ムーンライトの部屋

ムーンライト「……」

trrrr trrrr

ムーンライト「……もしもし」

『あっ、もしもし。遅くにすみません、○○不動産です。実はこの前ムーンライト様がお探ししていた物件で、いい条件のところが…』

ムーンライト「……悪いけど、その話はもうなしにしてちょうだい」

『えっ? あの…』

ムーンライト「引越しはしないわ。住むところはもう決まってる」

ピッ

ムーンライト「この電話も……電話番号変えなくちゃね」

ムーンライト「……」

ムーンライト「どうせなら、私なんかより才能のある子がプリキュアになればよかったのにね……」

・・・・・数ヵ月後

ホワイト「そうそう、もうすぐ私たちの寮に新しい後輩が来るのよ」

イーグレット「え、本当ですか?」

ホワイト「ええ、キュアリズムっていうの。この前会ったけど、いい子だったわ。あなたが面倒見てあげてね」

イーグレット「は、はい」

イーグレット(後輩……そういえば、私に直接の後輩ができるのなんて初めてね)

イーグレット(けどそんなことよりいまだにブルームのことが心配だわ。私がいなくても向こうでうまくやってるのかしら……)

ホワイト「イーグレット、聞いてる?」

イーグレット「あ…はい」

ホワイト「……イーグレット、あなたも一皮むけてもう少し成長しないとね。後輩ができるっていうのは、いい機会よ」

イーグレット「は、はあ」

ホワイト(それにしても、あの子は結局オーディションを受けなかったのね。……まぁ、来年に期待だわ)

ホワイト(後はそうね……ミントのことが気になる。何かおかしなことをしなきゃいいけど)

ホワイト(……私もそろそろ、イーグレット以外に信頼関係を結べる子を作らないとね。後輩が増えると、それと同じくらい好き勝手する子も増えるんだし)

ホワイト(全体を監視できるような体系を作らないと……)

・・・・・・

マリン「はー疲れた疲れた。今日もようやく終わったねー」

ブロッサム「けど残りの撮影日数もそろそろ少なくなってきましたね。なんだか名残惜しいです」

マリン「んー、そうだねー」

ムーンライト「……」

マリン「あっ、ムーンライト。もう帰んの?」

ムーンライト「……」

マリン「うわ……相変わらずの無視」

ブロッサム「やめましょう。もう関わらない方がいいですよ……こわいですし」

マリン「あれで仕事はちゃんとしてるからって言っても、なんだかねー」

マリン「まぁいいや、あたし達も行こっか」

ブロッサム「はい」

マリン「でさーこの前ベリー姉の化粧品こっそり使ったんだけど、やっぱり質が全然違うのよ」

マリン「高いやつはいいんだよねー、やっぱ。でも高すぎるから、買うのはやめてたまにベリー姉から拝借しようと思ってるんだけど」

ブロッサム「へぇー」

「ブロッサムせんぱーい!!」

ブロッサム「?」

「ようやく見つけた!」ガバッ

ブロッサム「わっ!?」

「お久しぶりです、ブロッサム先輩!」

ブロッサム「え、あの……」

「やだなー、あたしのこと忘れちゃったんですか?」

マリン「あっ! ひょとしてこの前会った垂直跳びの」

「はい!」

ブロッサム「ああ! あの時の! ……でも、どうしてここに」

マリン「ここは関係者以外立ち入り禁止だよ?」

ブロッサム「あれ……そういえば今わたしのことブロッサム‘先輩’って……」

「ふっふっふー、実はあたしはもう関係者の仲間入りなんですよ」

マリン「へ?」

メロディ「あたし、プリキュアオーディションに合格しました! 来季主役のキュアメロディです、よろしく!」

マリン「ええええええええ!! マジ!?」

メロディ「はい! ちなみに、ブロッサム先輩と同じくピンクのプリキュアですからね」

ブロッサム「ていうことは……あたしの直接の後輩に?」

メロディ「はい! よろしくお願いします!」

マリン「はぇー、本当になっちゃったんだ。まぁ確かに才能ありそうだもんね」

メロディ「いやー、照れますって」

ブロッサム「おめでとうございます、えっと…メロディ」

メロディ「!!」

ブロッサム「ど、どうしたんですか?」

メロディ「憧れのブロッサム先輩にあたしの名前を言ってもられるなんて……あたし感激!! 精一杯がんばります!!」

ブロッサム「は、はい」

メロディ「今日はオーディションに受かった報告と、挨拶をしに来ました。改めてよろしくお願いします、ブロッサム先輩」

ブロッサム「こ、こちらこそ」

マリン「律儀だね~わざわざ」

メロディ「あっ、そうそう。確かブロッサム先輩って赤寮ってところで暮らしてるんでしたっけ」

ブロッサム「はい、そうですけど」

メロディ「あたしもそっち行きますね」

ブロッサム「え…けどメロディだったら…」

メロディ「?」

ブロッサム「桃寮の方がいいんじゃないでしょうか。あっちにはブラック先輩とか頼れる人もいますし……」

メロディ「あたしはブロッサム先輩と一緒がいいんです! あたしブロッサム先輩のこと好きですから!」

ブロッサム「ええ!?」

マリン「おぉ~大胆」

メロディ「最初はブラック先輩やピーチ先輩にも憧れてたけど、初めて会ったあの日からあたしの中でブロッサム先輩がナンバーワンなんです!」

メロディ「だってサインもらったのあれが初めてですし!」

ブロッサム「あ、あはは…」

メロディ「だから、よろしくおねがいしまーす!」

マリン「よかったじゃん、こんな元気な後輩ができて」

ブロッサム「……そうですね、もしうちに来てくれるのなら歓迎します。メロディ」

メロディ「うわーっ! また名前呼んでくれた!!」

ブロッサム「そ、そんな興奮しなくても」

メロディ「だって本当に嬉しいんですもん! ……あっ、じゃあそろそろ失礼します! また近いうちに!」

マリン「……元気だねー。ブロッサムはあの子の面倒みきれるかなー?」

ブロッサム「ど、どうなんでしょう」

マリン「はー、後輩かぁ。とうとうあたし達が先輩になるのかー……時間の流れは早いなー」

マリン「ついこの前プリキュアになったばかりに感じるのに」

ブロッサム「そうですね」

マリン「あたしの後輩はどんな子かなぁ。不良じゃなかったらいいんだけどね、にひひ」

ブロッサム「きっといい子ですね。だって、青キュアの人はみんないい人じゃないですか」

マリン「だね、やっぱり。ねえブロッサム」

ブロッサム「はい?」

マリン「あたし達さ、お互い後輩に尊敬されるような立派な先輩になろうね」

ブロッサム「なれるんでしょうか……わたし」

マリン「大丈夫だって! なれるなれる、ブロッサムなら」

マリン「一緒にがんばろ!」

ブロッサム「マリン……はい!」

ブロッサム(そうだ……頑張らなくちゃ。わたしは先輩になるんだし……今よりもしっかりしなくちゃ)

・・・・・

ムーンライト「……」

ムーンライト(いよいよ……ようやく終わるのね、地獄のような日々が)

ムーンライト(長かったわ……こんなに長く感じるなんて)

ムーンライト「……」

ムーンライト(プリキュアが終わったら……私という人間の価値はどうなるのかしら)

ムーンライト(……考えたくもないわね)

ムーンライト「……」

ムーンライト(エレベーター、遅いわね……)

幼女「ねえねえ」

ムーンライト「……」

幼女「ムーンライト、なにしてるの」

ムーンライト「……」

幼女「ねえねえ、あたしのこと覚えてる?」

ムーンライト「……」

幼女「前もここで会ったよね」

ムーンライト「……」

幼女「あの時は握手してくれなかったけど、今日はしてくれる?」

ムーンライト「……」

幼女「……」

ムーンライト「……」

幼女「なんで無視するの?」

ムーンライト「……」

幼女「日本語忘れた?」

ムーンライト「……」

幼女「どうしたの? なんでいつもみたいに言葉で誤魔化さないの?」

ムーンライト「あなたは……?」

幼女「あなたはいつもそうよね。自分の中の現実しか認めようとしない」

幼女「そのためには相手の善意も、自分の感情でさえも無視。そんなものは意味のないものだと思ってる」

ムーンライト「……」

幼女「知りたくないのよ、自分の中以外の現実を。受け入れたくないから無視する」

幼女「でも無視したところで、それは存在するんだよ?」

幼女「だからあなたは何をしても、結局惨めなまま。不幸な人」

ムーンライト「……」

幼女「たとえ自分でいいことをしたとしても、結局あなたは自分自身を否定する。あなたにとって、人生の目的は?」

幼女「なにもないんでしょ? からっぽね……無意味な人生だわ」

ムーンライト「……」

幼女「エレベーター着いたけど、乗らないの?」

ムーンライト「あなたみたいな子どもには……会ったことがないわ。あなたは誰?」

ムーンライト「いえ……もうどうでもいい。このエレベーターに乗って、下に降りるわ。そして帰るの」

幼女「どこに?」

ムーンライト「……」

幼女「あなたなんかがどこに帰るっていうの? 孤独な人間に帰る場所なんてないわよ」

ムーンライト「あなたは一体……」

幼女「まだ気づかない?」

ムーンライト「……?」

幼女「私はあなたよ」

……ムーンライトの部屋

ムーンライト「!?」ガバッ

ムーンライト「ハッ……はぁ……はぁ……」

ムーンライト(ゆ、夢……?)

ムーンライト「っ……」

ムーンライト(バカバカしい夢……)

ムーンライト「……」ギュッ

ムーンライト(……寂しい)

ムーンライト「……」

ムーンライト「……う……うう……うううっ……」

・・・・・・翌日

ミント「おはよう、ダークドリーム」

ダークドリーム「……」

ミント「ご飯食べていく?」

ダークドリーム「いい……それよりシャワー貸して。すぐ帰るから」

ミント「いいわよ。お金、ここに置いておくからね。私はもう少し寝るわね」

ダークドリーム「……」

ダークドリーム(わたし……なにやってんだろう)

ダークドリーム(こんなこと続けて……馬鹿みたい)

ダークドリーム「……」

……アパート

イース「おはよう」

ローズ「おはよ」

イース「ムーンライトは? もう出て行ったのかしら」

ローズ「さあ、知らないわ」

イース「プリキュアが終わるまで、何事もなければいいけど」

ローズ「……あんたってさぁ、もう完全にここに住み着いてるわよね」

イース「え……そ、そんなことないわよ。たまに帰ってるし……」

ローズ「ムーンライトのこともいいけど、ブロッサムをほったらかしてどうすんのよ」

イース「ブロッサムは一人でも大丈夫なの。もういいでしょその話は」

ローズ「やれやれね……」

・・・・・・

ムーンライト「……」

幼女「こんにちは!」

ムーンライト「!!」

幼女「テレビでいつもみてる。いつもおうえんしてる」

ムーンライト「そ、そう……」

幼女「がんばってね。ばいばーい」

ムーンライト「……」




「ムーンライトにはなしかけちゃった」
「すごーい」
「サインもらわないの?」
「いらない。だってもうすぐハートキャッチおわるし」
「スイートたのしみだよねー」
「ねー」

ムーンライト「……」

ムーンライト(フ……まるで消耗品ね)

ムーンライト「……」

ムーンライト(行きましょうか、今日もプリキュアの仕事に……)

ムーンライト(たとえ私が惨めだとしても……今の私はプリキュア)

ムーンライト(それは確かな事実。それだけは受け入れるわ)

ムーンライト(……今だけはね)

ムーンライト「……」

『からっぽね……無意味な人生だわ』

ムーンライト「……」

『孤独な人間に帰る場所なんてないわよ』

ムーンライト「……」

ムーンライト(……私が間違ってたわ)

ムーンライト(…………ごめんなさい)

ムーンライト「……」



おわり

次回のスマイルでようやく最終章です
ドキドキ編はありません

大阪から上京してまず衝撃的だったことは、飯の値段が高いこと。
飲食店をざっと見渡しても平均的に大阪の二、三倍はする。

サニー「あーあー……なんでどこもこんな値段が高いねん。まともに飯食えんわ」

サニー「駅で迷うし人は多すぎやし、もう最悪やほんま」

そして次に驚いたことは、今日この東京で初めて出会った人間。

ハッピー「すみませーん」

サニー「……ん? ウチ?」

サニー(なんやこの子)

ハッピー「この辺にィ、おいしいスイーツ屋さんがあるらしいんですけどよかったら一緒に行きませんか?」

サニー「はぁ……!?」

サニー(な、なんやこいつ。怪しい勧誘とか……?)

ハッピー「ええっと……ところでどちら様ですか?」

サニー「いやお前がどちら様やねん!!」

ハッピー「わたし、東京に来るのって二度目で。一度目はお母さんと一緒に来たんですけど、一人で来るのは今日が初めてで」

サニー「ああ……そうなんスか」

ハッピー「そしたら、わたしと同い年ぐらいの子が一人でいるのを見つけちゃって。そしたらわたしすっごく嬉しくなっちゃって、声かけちゃいました! もうまさにウルトラハッピー☆」

サニー「……」

ハッピー「ところでスイーツ屋ってどこなんでしょう。わたしお腹ペコペコだし、なんでもいいから一緒に何か食べに行きませんか」

サニー(いきなりなんや……悪そうなやつではないみたいやけど。ていうかこわっ)

ハッピー「あれ、そういえばわたしどこ行こうとしてたんだっけ」

サニー(けど確実に分かることは……こいつ真性のアホや。見た目だけで分かる)

ハッピー「あっ!!」

サニー「ど、どうしたん?」

ハッピー「ちょっとトイレ行ってきまーす」

サニー「ええ……なんやそれ」

・・・・・

ハッピー「はぁ、スッキリ。危なかったぁ、トイレどこにあるか分からなかったんだもん。案内してくれてありがとう」

サニー「標識見ればどこにあるか分かるやろ……まぁ確かにこう道がゴチャゴチャしてたら迷うのもしょうがないかもしれんけど。駅なのにまるで迷路みたいや」

ハッピー「迷路かぁー……確かにそうかも。あっ、ウォーリーを探せって知ってる?」

サニー「ん? ああ、あれやろ……赤と白のボーダー来たメガネの男探すやつ」

ハッピー「なんかここって、それに似てるよね。人もたくさんいるし」

サニー「……?」

ハッピー「あれ?」

サニー「いや、『あれ?』ちゃうやろ。なんやねんいきなり」

ハッピー「似てない? あそこらへんとか、あそこらへんとか」

ハッピー「あっ! あそこになんか凄いかわいいお店ある! 行ってみたいな~」

サニー「……あんた、頭の中のネジそうとう緩んでそうやな」

ハッピー「?」

サニー「もうウチは行くで。何の用があるかは知らんけど、あんたみたいなアホと一緒に行動するのはしんどそうやし一人でがんばりや」

サニー(こいつなんか危なそうやし)

ハッピー「あっ、待って」

サニー「ああ?」

ハッピー「名前なんていうの? 教えて。せっかく出会ったんだし」

サニー「せっかく……ねえ。まぁええわ、せっかくなら」

サニー「キュアサニーや、覚えとき。ウチ、こう見えても新しいプリキュアやねん」

ハッピー「プリキュア……?」

サニー「そう。知っとるやろ? あの有名なプリキュア。そのメンバーの一員に、今度ウチはなるねん」

ハッピー「うっそー!! きゃー!!」

サニー「!?」

ハッピー「すっごーい!! こんなところで同じプリキュアに出会えるなんて、ウルトラハッピー!」

サニー「そんな興奮せんでも……ん? 同じ?」

ハッピー「わたしキュアハッピー! あなたと同じ、新しいプリキュアだよ」

サニー「あ……え……マジ!?」

ハッピー「マジ!」

サニー(こ、こいつがウチと同じスマイルプリキュアのメンバー……!?)

サニー(このアホな子が!?)

ハッピー「よろしく~」

サニー「……」

ハッピー「あっ、ていうことはあなたもプリキュア寮に行くんでしょ?」

サニー「!!」

ハッピー「だよね! 今日から新しく暮らすところだもんね」

サニー「ほんまに……あんたプリキュアなんか?」

ハッピー「うんっ!」

サニー「……驚いたわ、こんなところで偶然出会えるなんて」

ハッピー「だよね~」

サニー「正直最初はあんたのことちょっと頭に障害持った危ない子やと思ったけど」

ハッピー「ええっ! ひど~いィ~」

サニー「……でもまぁ、本当にプリキュアならここで出会えたのもきっと何かの縁やな。よろしく、ハッピー」

ハッピー「サニー…!」

サニー「いやほんま、ここで出会えたのはよかったわ。ほんま助かった。ウチ一人じゃどうしようかと思ってたわ」

ハッピー「わたしもわたしも!」

サニー「ハッピーがいてくれてよかった。プリキュア寮まではどうやって行ったらええんや? ウチ道分かんないねん」

ハッピー「うん、わたしも分かんない。どうやって行けばいいの?」

サニー「……」

ハッピー「あれ?」

ここまで
大阪弁はよく分からないので猛虎弁になってしまうかもしれません

・・・・・

サニー「そもそもアホなんやし道聞いても分かるわけないわな。聞いたウチもアホやったわ」

ハッピー「わたしたちアホアホだね。気が合うのかな」

サニー「せやな。ま、仲良くやろうや」

サニー「ところでこれからどうするかなー……まぁ地図見ればええんやけど。地図見るの得意?」

ハッピー「ううん」

サニー「うちもやねん、さっぱり分からん。この辺は土地勘ないしなぁ」

ハッピー「どうやって寮まで行くつもりだったの? ちゃんと考えて行動しないとダメだよ」

サニー「お前に言われたくないわ」

サニー「まぁたぶん、こっち方面のバスに乗ればええんかな。バス来るまで待つか」

ハッピー「お腹すいたなぁ、スイーツ食べたかった」

サニー「我慢しとき。寮に着けばタダで食べさせてもらえるんやから、その方が得やろ?」

ハッピー「おおー。あったまいい」

サニー「せやねん。ウチ頭ええねん」

ハッピー「はぁ~でもやっぱりおなかすいた」

サニー「そろそろバスも来るしもう少し我慢しとき」

ハッピー「ハップップー」

サニー「なんやねんそれ」

ハッピー「口癖。いいことがあったら『ウルトラハッピー』、悪いことがあったら『ハップップー』って言うの。これプロデューサーさんが気に入ったからプリキュアでも使うんだって」

サニー「うわ……さぶっ」

ハッピー「さぶ?」

サニー「そういえばハッピーってさ、なんでプリキュアになろうと思ったん? 暇つぶしに聞かせて」

ハッピー「わたしはね、最初はプリキュアになろうと思わなかったんだ」

サニー「それで?」

ハッピー「本当はね、プリティーリズムっていう番組に出たかったんだけど一次審査の書類をプリリズじゃなくて間違えてプリキュアの方に送っちゃったの」

サニー「ほうほう」

ハッピー「それで二次審査が終わるまでそのこと気づかなくて、そのままオーディション受け続けてたら合格しちゃった。まぁプリキュアも好きだしいいかなって思って」

サニー「ほぉー……そんなんで主役ゲットできるんか。すごいな、こんなアホなのに」

ハッピー「わたしこう見えても学校のテストの点とかいい方なんだよ」

サニー「ほーん。そうかそうか」

ハッピー「サニーはどうしてプリキュアになろうと思ったの?」

サニー「ウチ? そりゃもちろん、プリキュアになればみんなにチヤホヤされるしお金もがっぽり稼げるからや」

ハッピー「へー」

サニー「そういや、ウチら以外やとあと三人おるんやったっけ」

ハッピー「どんな子達だろうね~」

サニー「せやなぁ……変なやつやなかったらなんでもええわ」

サニー「それにしてもバス遅いなぁ。いつまでかかんねん」

ハッピー「はぁ、わたしお腹すいてもうがまんできない~」

サニー「ええっと、バス降りたらどうすればええんやろ……」

サニー「今この辺だから、この辺に行って……」

サニー「たぶん、この辺かな。なぁ、ハッピー」

サニー「お、ようやくバス来たで。ハッピー、はよ乗ろ」

サニー「ハッピー?……ハッピー?」

シーン・・・・

サニー「なんでおらんねん!!」

・・・・・・

マーチ「やばい……道迷ったかも。ここからどう行けばいいんだろう」

マーチ「はぁ、どうしよう。慣れてないんだよなぁ、こういう所」

マーチ「とりあえず外に出たほうがいいかな。駅の中全然分かんないし」

マーチ「……ん? なんだろうこれ。財布……かな」

マーチ「こんなところに落ちてるなんて。落とした人困ってるだろうし、届けなきゃ」

マーチ「って言っても、こんな人がたくさんいるとなぁ。誰が落としたのか分かんないし……」

マーチ「駅の中に交番とかあるのかなぁ……どうしよう」

・・・・・・

ピース「よしっ、到着。あとは駅の外に出てタクシーに乗っていけば寮まで行けるね」

ピース「時間も予定通りだし、ばっちり」

ピース「はぁ……でも緊張するなぁ。いよいよわたしがプリキュアになるのかぁ」

ピース「今日からわたしが……あのプリキュアに……」

ピース「うう……凄い! 興奮してくる!!」

通行人「……」

ピース「あ、す…すみません」

ピース(恥ずかしい……)

ピース「と、とにかく頑張らないと。よしっ、出発」

ピース「……そういえば、わたし以外のスマイルの子達はもう寮に着いてるのかな」

ピース「どんな子達だろう。初顔合わせが現地集合でだなんてなぁ……緊張しちゃう」

ピース「怖い人たちだったらどうしよう……優しい人がいいなぁ」

ピース「寮の先輩とかも、優しかったらいいけど……」

ピース「けどわたしだってプリキュア以前にほかの仕事での実績があるわけだし、馬鹿にされたりはしないよね……たぶん」

ピース「ええっと、次は左に曲がって……」


ハッピー「すみませーん、ちょっといいですか?」

ピース「!!」

ピース「は、はい?」

ハッピー「あの、ちょっと道を聞きたいんですが」

ピース「あ……あ、はい」

ピース(びっくりした、いきなり声かけられたから。わたしと同い年ぐらいかな……けっこうかわいい)

ハッピー「わたし、道に迷っちゃって。ここってすごい広いですよね、どこがどこだか分かんなくなっちゃう」

ピース「あはは…そうですよね。分かります」

ハッピー「それで、お腹すいちゃったんですけど何か食べ物売ってるところってありませんか?」

ピース「食べ物……えっと、それだったら駅ナカとか行けばいいと思います」

ハッピー「駅ナカ……?」

ピース「ええっと、あっちを右に行って下に降りて……」

ハッピー「そうだ!」

ピース「え?」

ハッピー「よかったら一緒に行きませんか? 一緒に美味しいもの食べましょう!」

ピース「え、いやわたしは……」

ハッピー「わたし、ハッピーって言います。今度プリキュアに出るの。知ってる? プリキュア」

ピース「あ、はい……ええっ!?」

ハッピー「?」

ピース「プ、プリキュア!? プリキュアってまさか……ひょっとして今度スマイルに出る」

ハッピー「そうそう! 知ってるの? 嬉しいー、ウルトラハッピー!」

ピース「し、知ってるもなにも、だって……」

ハッピー「よし、じゃあ行こっか。よかったら後でサインもあげるね」

ピース「えっ、あの」

ハッピー「あっ、もう一人待ってる子がいるんだけどね、その子もプリキュアなんだよ。後でその子のサインももらってきてあげる」

ピース「あの、ちょっと……ええええ!?」

ハッピー「えーっと、こっちを下に降りて」

ピース「あの、その……」

ハッピー「それでえっと……」

ピース「わ、わた、わたしも……」

ハッピー「この後どうすればいいんだっけ?」

ピース「そ、そのまま真っ直ぐです」

ハッピー「そっか」

ピース(まさかこの子もわたしと同じプリキュアだなんて……キュアハッピーだっけ)

ピース(わたしも自己紹介したいけど、この子の勢いに押されてできないし……)

ハッピー「でもよかった。同い年ぐらいだよね? わたし一人でこの街来るの初めてだから、わたしみたいに一人でいる同世代の子を見ると安心しちゃう」

ハッピー「特にここは道に迷いやすいし、一人じゃ不安だもんね。がんばって一緒にここから脱出しようね!」

ピース「は、はあ……」

ピース(わたしは別に不安じゃないけど……)

ハッピー「その前にまず何か食べなきゃ」

ピース「あの~」

ハッピー「あっ! あのお店とかいいかも!!」

ハッピー「うわ~! ロールケーキだって、おいしそうだよね!」

ピース「そ、そうですね」

ハッピー「これにしよっかなぁ……決めた、これにしちゃおう!」

ピース(決めるのはやっ)

ハッピー「すみませーん、これくださーい」

店員「はい、ただいま」

ピース(とりあえず、この子が落ち着いてから話しかけようかな。でもまさか、いきなり同じスマイルのメンバーに会えるなんて)

ピース(ちょっと強引だけど、悪い子じゃなさそうだし……この子とならうまくやっていけるかなぁ)

ハッピー「ああーーー!?」

ピース「ど、どうしたの?」

ハッピー「ない……ない!」

ハッピー「財布がない!!」

ピース「ええっ!?」

ハッピー「おっかしいなぁ、なんでないんだろう」

ピース「どこかに落としちゃったとか?」

ハッピー「そうかも……」

ピース「たぶん今から探しても見つからないだろうし……とりあえず、係員の人に聞いてみないと」

ハッピー「あっ!!」

ピース「な、なに?」

ハッピー「そうだ、財布バッグに入れたままだったんだ。バッグはサニーのところに置きっぱなしにしてたから……よかった、落としてない!」

ピース「財布……大丈夫なの?」

ハッピー「うんっ!」

ピース「そっか、よく分からないけどよかったね」

ハッピー「あ……でもお金無いとロールケーキ買えない」

ピース「え?」

ハッピー「うう……」

ピース「……」

ハッピー「……」

ピース「……わ、わたしが代わりに買ってあげよっか?」

ハッピー「本当!?」

ピース「う、うん」

ハッピー「ありがとう! お金は後で必ず返すからね!」

ピース「あはは……」

ピース(さすがにこのまま見捨てたりはできないしね……)

ピース「……あれ?」

ハッピー「?」

ピース「あれ……あれ!?」

ハッピー「どうしたの?」

ピース「さ、財布が……ない」

ハッピー「うそっ!?」

ピース「ちゃ、ちゃんとここに入れたはずなのに……ど、どうしよう」

ハッピー「ええと……探そう!」

ピース「無理だよ。どこに落としたかも見当つかないし……」

ハッピー「じゃあ……聞こう!」

ピース「え?」

ハッピー「どんな財布落としたの?」

ピース「えっと、黄色くて、猫の絵柄があるやつ……」

ハッピー「よしっ!」

ピース「?」

ハッピー「すみませーん!! 黄色くて猫の絵柄が描かれた財布を落としちゃったんですけど誰か知りませんかー!!」

ピース「!?」

ハッピー「財布でーす!! 黄色い財布でーす!!」

ピース「な、なにやってるの!」

ハッピー「こうやって大声で呼びかければ、もしかたら誰か拾ってて届けてくれるかもしれないでしょ?」

ピース「そ、そんなことあるわけ」

ハッピー「すみませーん!! 誰か黄色い猫の絵柄の財布知りませんかー!!」

ピース「い、いいよ案内所の人に聞くから。恥ずかしいよ……」

ピース(うう……やっぱりこの子ちょっとおかしい)



マーチ「はーい! はいはーい!」

ハッピー「!!」

マーチ「さっき財布拾ったんだけどさ、ひょっとしてこれのこと?」

ピース「あ……!」

ハッピー「これ?」

ピース「う、うん。うそ……本当に見つかるなんて」

マーチ「よかった、はいどうぞ」

ピース「あ、ありがとうございます」

ハッピー「ありがとうございます!」

マーチ「いいっていいって、あたしもたまたま見つけただけだしさ」

ハッピー「このお礼はぜひさせてください!」

マーチ「本当にいいって。それより、ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」

ハッピー「?」

マーチ「外に出るには……どうすればいいのかな?」

ここまで
登場人物の年齢はあまり気にしないでください

・・・・・

サニー「ったく……どこ行ったんや。なんで急にいなくなんねん」

サニー「探しに行こうにもウチまで迷うそうやし……迷子センターにでも行った方がええんかな」

サニー(はぁ~……あんなのがウチらのリーダーになるんか。先が思いやられるわ)

サニー(ま……なっちゃったモンはなっちゃったモンやし、しゃーないか)

サニー(かなり頭悪そうやけど、プリキュアに選ばれるってことは実力もあるんやろ)

サニー「ん?」




ハッピー「そうそう、ここ!」

ハッピー「あっ、サニーおまたせ!」

サニー「どこ行ってたんや、なんで急にいなくなんねん!!……って、おわっ!? なんか増えてる!」

ピース「こ、こんにちは……」

ハッピー「あのね、お腹すいたから何か買いに行こうと思って、そしたら道に迷っちゃったんだけど偶然ピースとマーチに出会ってピースに案内されてここまで戻って来れたんだよ」

ハッピー「あっ、はいこれ。ロールケーキ」

サニー「は……? ちょっ、なに言ってんの」

マーチ「来る途中でハッピーから聞いたよ。あなたもプリキュアなんだって?」

サニー「あなたもって、ことは……」

マーチ「あたしはキュアマーチ、同じスマイルのメンバーだよ。よろしく」

ピース「キュ、キュアピースです……」

サニー「ふたりともプリキュアなんか!?」

ハッピー「そうだよ。偶然会っちゃった」

サニー「偶然って……なんやそら」

ハッピー「すごいよね、偶然だなんて! なんかまるで運命の出会いみたい!」

マーチ「あははっ。確かにこんな偶然が重なるなんてすごいよ」

マーチ「けどあたし達がみんな出会えたのもハッピーがきっかけだし、ハッピーには人を引き寄せる力があるのかもね」

ハッピー「えへへ」

ピース「あ、あの……さっきはお財布、ありがとうございました」

マーチ「ん? ああ、だから別にいいって。それより持ち主が見つかってあたしも嬉しかったよ。ハッピーに感謝だね」

ピース「で、でも……本当にありがとうございます!」

マーチ「あはは。じゃあ、どういたしまして」

マーチ(うわぁ……なんかこの子かわいいなぁ)

サニー「……まぁ、なんでもええわ。それよりバス来たから乗ろうや。話はその中でもできるやろ」

ピース(あれ……? このバス……)

マーチ「いやー、でも助かったよ。あたし一人じゃ寮にたどり着けるか不安でさ」

ハッピー「みんなで行けば大丈夫だよね」

サニー「ほんまや。よろしくな、ふたりとも」

マーチ「うん」

ピース「あ、あの……」

ハッピー「ピース、早く乗ろ」

ピース「……う、うん」

・・・・・

ハッピー「んー! これちょー美味しい!」

サニー「それちょっとちょーだい」

マーチ「ふたりとも……こんなところで食べなくても」

サニー「ええやん、腹減ってるんやから」

マーチ「いや、マナーってものが……」

ピース「……」

ハッピー「それにしても、こうなったら残りの一人にも会ってみたいよね~。どんな子なんだろ」

サニー「確か名前は……」

マーチ「キュアビューティでしょ? あたし友達だよ」

ハッピー「ほんと!?」

マーチ「うん。オーディションの時仲良くなってね。その時アドレス交換したんだ」

マーチ「その後、合格したことをお互いメールで報告しあってね。今日もふたりで一緒に寮に行こうと思ったんだけど、時間が合わなくてバラバラに行くことにしたんだ」

マーチ「けどビューティは一人でも大丈夫かな……やっぱり今から連絡とってみようかな」

ハッピー「ねえねえ、そのビューティってどんな子だった?」

マーチ「すごく上品で、優しい子だよ。みんなも会えばきっと仲良くできると思う」

ハッピー「へェ~、上品な子なんだ」

サニー「アホ丸出しのハッピーとは全然ちゃいそうやな」

ハッピー「じゃあサニーとも違うね」

サニー「アホ、ウチかてかなりの上品な女の子やで」

マーチ「ロールケーキ丸かじりしてる子が上品……ね」

マーチ「ところでさ、このバスどこで降りればいいの?」

サニー「ん? 次の次ぐらいやない?」

マーチ「次の次って……なにその適当な答え。このバス寮に向かってるの?」

サニー「向かってるやろ。なあ?」

ハッピー「分かんない」

サニー「向かってるって。地図見れば……ほら、今この辺やからたぶんこの辺に着くやろ」

マーチ「たぶんって、本当にこのバスでいいの?」

サニー「うっさいわ自分」

マーチ「あたしは間違ってないのか確認したいだけ」

サニー「じゃあ間違ってたらなんやねん、自分も道分からんくせに」

マーチ「むっ……なら間違ってたらどう責任取るつもりなのさ」

サニー「はぁ? んなもん引き返せばええだけやろ。何が責任やねん、アホらし」

マーチ「あたし達はあんたについて行ってこのバスに乗ったんだよ!?」

サニー「だからなんやねん!」

ハッピー「なんか甘いもの食べたらしょっぱいもの食べたくなってきたなぁ……ピース何かしょっぱいもの持ってない?」

ピース「……」

ハッピー「ピース?」

ピース「あのぅ……ずっと言おうと思ってたんだけど」

ピース「このバス……寮とは反対方向行きなんだけど……」

サニー「……えっ、マジ?」

ピース「う、うん」

マーチ「……」

サニー「アホか!! 知ってたらなんで言わんのやボケ!!」

ピース「だ、だって言うタイミングなくて……」

マーチ「ピースを責めるのはお門違いだよ。間違ったのはサニーの方でしょ」

サニー「知ってて言わんかったやつの方がタチ悪いわ!!」

ピース「うう……ごめんなさい……」

マーチ「ああっ、ほらピース泣かないで。声が大きいってサニー」

マーチ「今回はサニーが悪いんだから逆ギレすることないでしょ」

サニー「チッ……はいはい、ウチがわるうござんした」

マーチ「……あのさ、その態度なんなの」

サニー「うっさいわ、いちいち突っかかってくんなボケ」

マーチ「そうやって人のことをアホとかボケとか言うな!」

サニー「ああ!?」

ハッピー「ねえねえ、とりあえず降りないの?」

サニー「……」

マーチ「……」

・・・・・

ハッピー「ここからどうしよっか。歩いて駅まで戻る?」

サニー「……チッ」

マーチ「はぁ……」

ピース「タ、タクシーで……」

ハッピー「ああ!!」

サニー「なんやいきなり」

ハッピー「あたし今、ちょーお腹へった」

マーチ「……ロールケーキ食べてたじゃない、今」

ハッピー「甘いものじゃお腹いっぱいにならないもん。なんか食べよ、しょっぱいもの」

ハッピー「まだ時間はあるでしょ?」

サニー「……ま、甘いもんだけじゃ腹いっぱいにはならんわな。さっき無駄なカロリー使ってもうたし、うちもなんか食べよっと」

マーチ「無駄なカロリーって……」

ハッピー「どんなの食べよっか? なんかお店いっぱいあるけど」

サニー「まったく知らん土地やから、なんか観光気分で楽しくなってきたわ」

マーチ「ピースはこの街に来たことある?」

ピース「う、うん。何回か……」

サニー「おっ、ほんまに? なら観光案内してや」

ピース「ええっ!? でもわたしそんな詳しくない……」

サニー「詳しくないって言ってもウチらより詳しいやろ?」

ピース「そんなこと言われても……」

マーチ「あれ? ハッピーは?」

サニー「あ? またいなくなったんかあいつ」




ハッピー「みんなー、こっちこっち!」

サニー「あっ、こらハッピー! なんでそうやって一人で勝手にどっか行くねん!」

ハッピー「このお店にしよ!」

サニー「あ? ……なんやこの店。えらい洒落てるな」

ピース「なんか大人が入るっぽいお店……」

ハッピー「あたし、一度でいいからこういう都会っぽいお店に入ってみたかったんだ」

マーチ「あっ、待ってハッピー。……入っても大丈夫なのかな」

サニー「大丈夫に決まってるやろ。なんで客が遠慮せなあかんねん」

マーチ「いや、なんか大人っぽい雰囲気のお店だし……子供だけで入るのは……」

ハッピー「こんにちはー」

ガチャッ

シタターレ「いらっしゃい」

・・・・・

ビューティ「……もう二度と、ここには来たくないと思っていたのにどうして来てしまったんでしょう」

ビューティ「彼女に会いたいわけでも……ないのに」

ビューティ「……」

ビューティ(……やっぱり、マーチと一緒にそのまま寮へ行くべきだった。こんな所、来る必要なんてなかった)

ダーク「誰だ。そこで何をしてる」

ビューティ「!!」

ダーク「ん? 見ない顔だな。このアパートになにか用か?」

ビューティ「い、いえ……なにも。失礼します」

ダーク「?」

ダーク(なんだあいつは……)

ガラッ

ダーク「おい、戻ったぞ」

ダークドリーム「おかえり~」

ダーク「なんか今、変な奴がうちの前にいた」

ダークドリーム「は?」

ダーク「いや……なんでもない。知らない顔だったしな」

ここまで

・・・・・

ピース「す…すごい! このお店、キュアドリームのサインが飾ってある!!」

ピース「ああっ!! こっちにも有名な人のサインが!!」

サニー「ふーん」

マーチ「ピース……なんかすごいテンション上がってるなぁ」

サニー「ウチ、プリキュア5見とらんから知らんわ。おばちゃん、これおかわり!」

サニー「マーチそのお肉ちょーだい」

マーチ「あっ、ちょっと」

サニー「ええやん少しぐらい、おねがーい。それともさっきのこと怒ってるん? ほな謝るからちょーだい。ね?ね?」

マーチ(こいつ……調子のいいやつ)

マーチ「はぁ……ほらあげるよ。代わりにその野菜ちょうだい」

サニー「えー……」

マーチ(うわっ、ケチ!)

ピース「すっごーい……こんな穴場があったなんて!」

ハッピー「楽しそうだね、ピース」

ピース「だってわたし、プリキュア大好きだもん! こんなお店に来られるなんて幸せ!」

ピース「しかも店長さんがあのスプラッシュスターに出ていた…」

満「おまたせしました。オムライスにハンバーグ、パスタとグラタンと山盛りサラダです」

ピース「きゃー!! 霧生満さんだー!!」

マーチ「こ、この量をまだ食べるの……!?」

ハッピー「うんっ!」

サニー「たくさん食べんと強くなれんで」

マーチ「……胃がもたれそう。あたしあんまり食べれないからさ」

ピース「すみません! 握手してください!」

満「え、ええ……どうも」

ピース「きゃー! きゃー!」

満「ずいぶんとプリキュアが好きなのね、私たちのことまで知ってるなんて」

ピース「はいっ! もう大大大好きですっ!」

ハッピー「ていうか、わたしたち今度新しいプリキュアやるんです!」

満「え……」

ハッピー「この四人とあともう一人いるんですけど、五人でスマイルプリキュアっていうんです」

ハッピー「よろしくお願いします!」

満「……本当に?」

ハッピー「はいっ! この後みんなで寮に行くんだよねー」

ピース「そうなんです! わたしプリキュアになっちゃうんです!」

満「そう……大変かもしれないけど、頑張ってね」

ハッピー「はいっ!」

サニー「おいピース、騒いでないでせっかく食べ物来たんやから食べとき」

ピース「あ、うん」

マーチ「うぷ……あたしもういいや」

満「……みんないい子そうね」

サニー「え? そう思います? いやー照れますなぁ」

マーチ「どこがいい子なんだか……」

満「あなたがリーダー?」

ハッピー「わたし? はい!」

満「あなたがたぶんこの中で一番大変だと思うけど……何があっても諦めちゃダメよ」

満「リーダーのあなたがしっかりしてね。それでみんなで協力し合って、仲良く頑張ってね」

ハッピー「はーい!」

サニー「こんな能天気がリーダーじゃウチらが大変やで、ほんま」

満「……」

ピース「あの、握手してください!」

シタターレ「ええっ……私とも?」

・・・・・

シタターレ「それにしても、よく食べたわねあの子達」

満「サインはもらわなくてもよかったんですか?」

シタターレ「本当にプリキュアかどうかも分かんないしねえ……なんか田舎臭い子たちだったし」

満「私は本当だと思うけど」

満(……できたら彼女たちは、一年間なんの問題もなくやり遂げて欲しいわね)

満(まだどういう子達なのかはよく分からないけど……彼女たちがずっと笑顔でいられますように)

満(……ローズやムーンライトがしっかりやってくれればいいんだけど)

・・・・・・

サニー「はー食った食ったあー。結局散財してもうた」

マーチ「そろそろ寮に行かないとヤバくない? 行き先もわからないのに……時間が」

サニー「せやなぁ……」

ピース「寮に電話して迎えに来てもらうっていうのは……?」

サニー「おっ、ええやんそれ」

マーチ「なんか悪いけど、しょうがないかな。さっそく電話しよう」

サニー「ハッピー、ハッピーが電話出てや。リーダなんやし」

マーチ「ハッピー、お願い」

ピース「……ハッピー?」

サニー「ハッピー……って、またおらんやん!」

・・・・・・

ハッピー「うえーん、クレープ買ってたらみんなとはぐれちゃったぁ」

ハッピー「みんなどうして勝手にどっか行っちゃうんだろう……しょうがないなぁ。あっそうだ、電話すればいいんだ」

ハッピー「ええっと、サニーに電話……って、バッテリー切れちゃってる!?」

ハッピー「ああ~……これはかなりハップップーかも……」

ハッピー「一人でどうしよう。……あっ、そうだ!地図を見よう!」

ガサガサッ

ハッピー「えーっと……わたし地図読めない~」

ビューティ「あの、すみません」

ハッピー「はい?」

ビューティ「ハンカチ、今落としましたよ」

ハッピー「あ…地図出した時に。ありがとうございます!」

ビューティ「いえ。……それより、もしかして道に迷っているんですか?」

ハッピー「えっ、なんで分かるんですか!? すごい、そのとおり!」

ビューティ「こんなところでそのように地図を広げているのも珍しいですし」

ハッピー「えへへ~、携帯の電池切れて友達とも連絡とれなくなっちゃって」

ハッピー「しょうがないから地図を出してみたんですけど、全然分かんない」

ビューティ「……ふふ」

ハッピー「?」

ビューティ「いえ、私にも似たような経験があってそれを思い出して。以前この街に来たことがあるんですけど、その時あなたみたいに道に迷ってしまったんです」

ハッピー「へぇ~」

ビューティ「どこまで行かれるのですか? 私もそれほど道に詳しくはありませんが、よければ案内できることろまで案内しますよ」

ハッピー「本当!? えっとですね、プリキュア寮です!」

・・・・・

サニー「ああ~もー! どこやねんほんまー!」

サニー「ハッピー! いたら返事せんかー!!」

ピース「見つかんないね……電話も出ないし、どうしよう」

サニー「あのアホ、自由すぎるやろ」

マーチ「困ったねぇ……ん?」

trrrr trrrr

マーチ「電話だ……」

サニー「ハッピーからか!?」

マーチ「いや、ビューティから。もしもし」

マーチ「うん、久しぶり。うん、うん……えっ!?」

マーチ「……う、うん分かった。じゃあまた後で」ピッ

サニー「なんや、どないしたねん」

マーチ「それが……見つかったみたい、ハッピー」

ここまで
明日に合わせてエコー登場までやりたかったけど間に合いませんでした

・・・・・

ビューティ「今マーチに連絡を取りました。待ち合わせ場所へ向かいましょう」

ハッピー「はーい!」

ビューティ「それにしても……偶然というのは重なるものなんですね。まさかこんなところであなたに出会えるなんて」

ビューティ「キュアビューティです。改めてよろしくお願いいたします」

ハッピー「うん、よろしく! でもよかった、こんなところで最後のメンバーに会えるなんて」

ハッピー「ここで何してたの?」

ビューティ「いえ……以前この街には来たことがあって、懐かしくて少し周辺を散歩をしていただけです」

ハッピー「ふーん」

ビューティ「一年と半年ぐらい経ったでしょうか。そんな短い間に、この街の風景も変わってしまいました」

ハッピー「へー。好きな場所や思い出の場所が変わってたりするとなんだか寂しくなっちゃうよねー」

ビューティ「寂しい……ですか。確かにそうかもしれませんね」

ビューティ「ここは特に愛着のある土地というわけではありませんが……変わっていったり、変わってしまった姿を見るのは寂しいですね」

ハッピー「……」

ビューティ「さて、ではそろそろ行きましょうか」

ハッピー「あっ、待って。お金見つけちゃった」

ビューティ「え?」

ハッピー「ほら、一万円!」

ビューティ「……」

ハッピー「誰か落としちゃったみたいだね。一万円も落としちゃうなんて、おっちょこちょいだなぁ」

ビューティ「まぁ、本当に……。その一万円札、どうするんですか?」

ハッピー「もちろん、交番に届けなきゃ」

ビューティ「ですが落とした人は気づいてませんよ。そのまま自分のものにしてもバレません」

ビューティ「もちろんハッピーが望むのなら私も見なかったことにしますけど。一万円も拾うなんて、幸運なことじゃないですか」

ハッピー「だめだめ、そんなの悪い人がすることだよ。たとえ一円でも人のお金を盗んだりなんてできない」

ビューティ「……ふふ、よかった」

ハッピー「え?」

ビューティ「いえ……私もハッピーと同意見です。失礼ながら、その一万円札をハッピーがどうするのか様子を見たくて先ほどあんな質問をしました」

ビューティ「無礼をお許し下さい」

ハッピー「なんかよく分かんないけど、ぜんぜん気にしてないよ!」

ビューティ「ハッピーが私の望むべき人格の持ち主でよかったです。やはりプリキュアに選ばれる人間は、正しい心を持った人なんですね」

ハッピー「なにそれ?」

ビューティ「プリキュアになれる資格ですよ。プリキュアの資格としてまず必要なのが正しい心とそれを実行できる行動力……私はある人にそう教わりました」

ビューティ「私たちは未来ある子供たちの手本となる存在ですからね。たとえ仕事以外の時でも清き心を忘れないのがプリキュアというものです」

ハッピー「へー、初めて聞いた」

ビューティ「その点、ハッピーは合格ですね。さすがリーダーに選ばれるだけのことはあります」

ビューティ「あなたのような人がリーダーで頼もしい」

ハッピー「えへへ、照れちゃうなぁ。あっ、じゃあビューティもプリキュアに選ばれたってことは正しい心を持った人なんだね!」

ビューティ「ええ……自称するようなことではないでしょうが、私は正しい人間だと自負しています」

ビューティ「そもそも人は正しくあるべきなんです。正しい道を進むことこそ、人生」

ビューティ「それなのに世の中にはその道から外れたゴミクズのような外道たちが堂々と闊歩していて誠に遺憾です」

ビューティ「誰のために何もしない自分の欲望のままだけに生きてるような人間は、この社会から排除されるべきなのに……」

ハッピー「えっと……?」

ビューティ「……すみません、無駄話でしたね。忘れてください」

ビューティ「その一万円札を交番に届けたら待ち合わせ場所へ行きましょうか」

ハッピー「なんていうか……ビューティってすごく正義感が強いんだね」

ビューティ「!!」

ビューティ「私のことをそのように評してくれるなんて……初めてです。本当に、あなたに出会えてよかった」

ビューティ「ハッピーと一緒なら、なんだかとても心強いです」

ハッピー「そっか、よかった」

・・・・・・

マーチ「おーい! こっちこっち!」

ハッピー「あっ、みんな! よかった~、みんなが迷子になるんじゃないかって心配しちゃった」

サニー「そらこっちのセリフや! なんで勝手にどっか行くねん!」

ビューティ「まぁいいじゃないですか。こうして再会することができたんですし」

サニー「ん?あんたは……」

マーチ「そうそう、この子がキュアビューティだよ」

ビューティ「はじめまして。こうしてみなさんと合流できたことをとても嬉しく思います」

サニー「おっ、よろしく~。うちはサニー、こっちのおどおどしとるのがピースや」

ピース「よ、よろしくおねがいします」

マーチ「でもビューティ、時間が合わないって言ってなかったっけ?」

ビューティ「ええ……ですが急遽予定が変更しまして。今さらマーチに連絡して合わせてもらうのも、迷惑だと思いまして」

マーチ「そんなこと全然ないのに」

サニー「ま、結果的に全員揃ってしもうたな。これって凄いことやない?」

ピース「う、うん」

サニー「さてリーダー、これからどないするん? 全員揃ったはええけど、寮にたどり着けなきゃ意味ないで」

ハッピー「えー、でもわたし道分かんない」

ビューティ「みなさん自力で行くおつもりだったんですか?」

ハッピー「え?」

サニー「自力やなかったらどない行くねん」

ビューティ「私は、アクア先輩がこの場所に迎えに来てくれると言われたので」

マーチ「ええっ!?」

サニー「なんやねんそれ! なんでそんなコネあんねん!」

ビューティ「いえ、実はアクア先輩とホワイト先輩の両名とは面識がありまして」

ピース「ふわ~……すごい」

ハッピー「じゃあビューティと一緒なら私たちも寮に行けるってこと!?」

ビューティ「ええ」

ハッピー「やったー! ビューティのおかげで迷子にならないですむね!」

サニー「ほんまや、ビューティ様様やな。それに比べてリーダーはまるで役に立たんなぁ」

ハッピー「えーひっどーい」

ビューティ「いえ、そんなことはありませんよ。ハッピーがいたから私は今こうやって皆さんと出会えましたし、皆さんを引き寄せたのもハッピーのおかげと言っても過言はありません」

ビューティ「ハッピーがいなければ、みなさんはどうなっていたか分かりませんよ」

マーチ「確かに、あたし一人だったら絶対迷子になってたなぁ」

ピース(わたしは自力で行けるけど……)

サニー「じゃ、つまりハッピーは幸運を引き寄せる招き猫みたいなもんってことやな」

ハッピー「えへへ」

サニー「なに照れてんねん」

ビューティ「あ……そろそろ時間ですね」

マーチ「アクア先輩かぁ、どんな人だろう」

サニー「確か一番老けてるんやっけ」

マーチ「……あのさ、なんでそういうこと言えるわけ」

サニー「えっ、だってそれぐらいしか情報知らんし。別に悪意あって言ってるわけやないで。いちいちうるさいなぁ」

マーチ「はぁ……あんたといると疲れるよ」

ビューティ「迎えの車が来ましたよ」

ピース「え……?」

サニー「うわっ、なんやあのでかい車!?」

ハッピー「あれわたし知ってる!映画で見たことある! なんだっけ?」

マーチ「えっと……ベ……ベン」

ビューティ「あれはリムジンですね」






アクア「お待たせ、ビューティ」

ビューティ「お迎えいただきわざわざありあがとうございます」

アクア「いいのよ。この辺は道も複雑だし……あら?」

マーチ「ど、どどどうもはじままして!」

ハッピー「こんにちわー!」

アクア「あなた達は……」

ビューティ「メンバー全員、ここに来る途中に偶然出会ったんです」

アクア「まぁ……そうなの? それはすごい偶然ね」

ハッピー「えへへ」

アクア「……でもちょうどいいわ。みんなも車に乗って、寮まで送るわ」

ハッピー「はーい!」

サニー「うちリムジンなんて初めて乗るわ!」

ピース「わ、わたしも」

・・・・・

アクア「楽にしていいわよ」

マーチ「は、はい。どうも……」

サニー「うわっ! イスふかふかやんこれ!」

ハッピー「なんかすごい高級っぽい匂いがする!」

サニー「この空気吸っただけで金持ちになった気分になれるな!」

ハッピー「こんなの初めて!」

マーチ「ちょ、ちょっと二人とも……騒ぎすぎ」

サニー「あっ、すんません」

アクア「いいのよ、喜んでもらえて何よりだわ」

アクア「ところで……せっかくだし軽く自己紹介をお願いしてもいいかしら」

マーチ「は、はい!」

ハッピー「キュアハッピーです!元気なのが取り柄です、よろしくお願いします!」

サニー「サニーです、大阪出身です。運動が得意で力持ち、明るく元気にプリキュアがんばるんでよろしくおねがいしまーす」

ピース「ピ、ピースです……プリキュア大好きです。アクアさんのことも知ってます……よ、よろしくおねがいします」

マーチ「マーチです!! え、えっと……が、がんばります!!」

アクア「なるほどね……ありがとう。キュアアクアよ、こちらこそよろしく」

アクア「さて、今日からあなた達は正式にプリキュアになるわけだけど……まずは寮について軽く説明しておくわね」

アクア「部屋は好きな部屋を使ってもいいわよ。数は十分にあるからね。もちろん相部屋も可能よ。そこらへんは好きにしてちょうだい」

アクア「オフの日の門限は夜の八時。それと男性を寮に連れ込むのは禁止よ。なぜか分かる?」

ハッピー「なんでですか?」

アクア「スキャンダルを防ぐためよ。だから夜中に出歩いて遊んだり異性と恋愛をしたりなんかは禁止。プリキュアである以上、仕事に集中してもらうわ。分かったわね?」

サニー「そんな心配せんでもハッピーに彼氏なんてできそうもないもんな」

アクア「それとあなた達の生活指導を担当する先輩だけど、ハッピーはメロディね」

ハッピー「はーい!」

アクア「サニーもメロディ。マーチはリズム、ピースはミューズ。それとビューティはビートよ」

ビューティ「ビート……先輩」

アクア「ビートはもう寮にいるわ。着いたら挨拶をしてね」

ビューティ「はい」

アクア「なにか質問はある?」

ハッピー「あの、仕事っていつからですか?」

アクア「今週中にはもうはじまるわよ。一話の撮影と、映画の撮影も平行して行われるわ」

サニー「うへ~……いきなりきつそう」

アクア「そうそう、映画に出演するプリキュアがもう一人いたんだけど……まぁその子の紹介は後ででいいわね」

アクア「もうダンスは覚えた?」

マーチ「は、はい。なんとか」

アクア「そう、よかったわ。厳しいスケジュールになると思うけど、何かあったらいつでも寮にいる他のプリキュアに相談しなさい」

アクア「スイートの先輩だけじゃなくても、プリキュアはたくさんいるわ。遠慮しないで色んな人に話しかけてみてね」

ハッピー「楽しみだねー!」

ピース「緊張しちゃうなぁ……」

アクア「さてと……もうそろそろ着く頃かしら」

・・・・・プリキュア寮

ベリー「そろそろかしら?」

マリン「たぶん、アクアさんが迎えに行ってるし」

ビート「……」

マリン「どうしたの? まだ緊張してる?」

ビート「い、いえ」

マリン「ほら、笑顔で迎えないと後輩たちが困っちゃうよ」

ビート「すみません、もう大丈夫です」

ビート(本当はマリン先輩とブロッサム先輩のことがまだ心配なんだけど……今心配しても仕方ないわね)

ビート(今は新しいプリキュアを明るく迎え入れなきゃ)

マリン「あっ! アクアさん来たよ!」

アクア「みんなお待たせ。新しいプリキュアが到着したわよ」

ハッピー「こんにちわー!」

ビート「あ…」

ハッピー「あっ、ビート先輩お久しぶりでーす!」

ベリー「なに、会ったことあるの?」

ビート「は、はい。一度だけ」

ビューティ「はじめまして、キュアビューティです。今日はわざわざお出迎えしていただきありがとうございます」

ビート「い、いえ全然! 気にしないで!」

ビート(この子が新しい青いプリキュア)

ビート(礼儀正しいし、私よりしっかりしてそう…)

ハッピー「キュアハッピーでーす! よろしくお願いします!」

サニー「サニーです。よろしくお願いします」

マーチ(失礼のないように……噛まずにちゃんと挨拶しなきゃ)

マーチ「キュアマーチです!! 一日でも早く先輩たちのようなプリキュアになれるよう精進します!!」

マーチ「よろしくお願いします!!」

サニー(声でかっ)

サニー「なんや自分、いきなり先輩におべっか使って」

マーチ「お、おべっかって、別にそういうのじゃなって!」

ピース「……」

サニー「何やってんねんピース、はよ挨拶しいや」

ピース「は、はい!」

ピース「ええと…キュアピースです、よろしくおねがいします…」

ビューティ「以上わたくし達五名が、スマイルプリキュアです」

マリン「よろしくー!」

アクア「とりあえず一通り挨拶も済んだし、一端に部屋に荷物を置きに行きましょうか」

アクア「詳しいことはまた後で話すわ」

ビューティ「はい、分かりました」

ベリー「いい子そうね。実際はどうか分からないけど」

マリン「えー、いい子じゃん。ちゃんと挨拶できて」

ベリー「さあ、どうかしら」

ビート「ビューティは頭もよさそうだし、何より優しそうでしたね」

マリン「あっ、分かる分かる。なんか大和撫子って感じだよね」

アクア「ビート、たぶんビートが一番ビューティと接する機会が多くなると思うから彼女のことよろしくね」

ベリー「なめられちゃダメよ。先輩としての威厳を見せ付けなさい」

ビート「は、はい!」

ビート(よし…頑張らなきゃ!)

ここまで

・・・・・

サニー「ほぁ~……ひっろいなぁ、この寮。迷子になったらあかんで、ハッピー」

ハッピー「サニーも気をつけてね」

サニー「はは……それよりなぁなぁ、見た見た? キュアマリン」

サニー「マジでちっこいんやな」

ピース「うん、ほんとにちっちゃかったねー」

サニー「あんなんが先輩て」

マーチ「あんまりそういうこと言わないの」

サニー「こんな時でもええ子ちゃんか。別に今は先輩たちもおらんしええやろ」

サニー「そういえば青色の人たちしかいなかったなぁ」

ビューティ「他の先輩たちは後日来るそうですよ」

サニー「ふーん…まぁええわ」

マーチ「そういえばNSの子は?」

ビューティ「それも後日だそうです」

マーチ「早く他の人たちにも会いたいね」

ハッピー「そうだねー、ドリーム先輩に会いたいなー」

サニー「あっ、でもミント先輩には気をつけたほうがええで」

マーチ「え?」

サニー「噂で聞いたんやけどな、なんか危ない人らしいで。関わらないほうがええで、絶対」

マーチ「ふーん……? 噂でしょ、どうせ」

ビューティ「まぁ、どんな人かは会ってみないと分かりませんしね」

サニー「ビューティはええなぁ、ビート先輩とかマリンとか扱いやすそうやん」

マーチ「またそういうこと言って……」

ビューティ「……ふふっ、そんなことないですよ」

ピース「私の先輩は確か…」

サニー「ミューズやろ、小学生の。あれ絶対マリンよりちっこいで」

サニー「小学生に先輩ヅラされるなんて、ピースも大変やなぁ」

ピース「えー…それはなんかやだなぁ…」

ピース(プリキュアファンとしてなら好きなんだけど……)

サニー「ほんまやで。なんで小学生にヘーこらせなあかんねん、なぁ?」

ハッピー「私普通に話したよ」

サニー「ほんまに? ほなウチもタメ口使おうかなぁ」

ビューティ「年下とはいえ、一応先輩としての面子もありますよ」

マーチ「そうだよ、あんまり失礼なことしちゃダメだって」

サニー「なんやねん自分、ほんま真面目やなぁ」

ピース「……」

ピース(はぁ…キュアミューズってどんな子だろう)

サニー「そんで、部屋どうする?」

マーチ「どうしよっか、好きな部屋使っていいんだっけ? でもこんなに広くて部屋の数も多いとなぁ……どれを使えばいいのやら」

サニー「とりあえずハッピー、一緒の部屋使お」

ハッピー「うん、いいよ」

サニー「ハッピー一人じゃまともに生活できそうにないしな、うちが一緒にいたるわ」

ハッピー「サニー優しい~」

マーチ「じゃあ……あたし達も一緒の部屋使う?」

ビューティ「まぁ、よろしいんですか? ぜひお願いします」

ピース(……あれ?)

サニー「ほなうちらは最上階の部屋使うわ。せっかくこんな豪華なところなんやし、景色のええ部屋使わんとな」

マーチ「そういうとこは先輩たちが使うかもしれないんだから遠慮した方がいいんじゃないの」

サニー「知らんそんなん。好きな部屋使ってええって言われたんやからそれでええやろ。早い者勝ちや」

マーチ「はぁ……まったく。あたし達も行こっか」

ビューティ「はい」

ピース「……」

ピース(……まぁ……別に一人でもいいけど……)

・・・・・・

サニー「おわっ!? なんやこれ、扉に張り紙貼ってある!」

ハッピー「キュアブラック……この部屋予約中、だって」

サニー「なんやねん、好きに使ってええって言っておきながら」

ハッピー「この部屋はダメみたいだね」

サニー「こっちは……ブルーム予約。こっちはピーチ予約」

ハッピー「あっ、この部屋入れるよ!」

サニー「おっ! 空いてたか!」

ガチャッ

ハッピー「うわぁ~……!!」

サニー「おおおおおお!! 広っ!! すごっ!!」

ハッピー「ベッドおっきい~! フカフカ~」

サニー「ほんますごいなぁ……こんなとこで暮らせるなんて夢みたいや。こりゃもう生活水準下げることできんわ」

ハッピー「みて! テレビおっきい! しかも薄いし!」

サニー「薄いのは今時当たり前やろ。確かにでかいけど」

ハッピー「すっごいね~、こんな豪華なんて。うちの家なんてお風呂もなかったのに」

サニー「え……なにそれ」

ハッピー「こんな部屋で暮らせるなんて幸せだね~、わたしたち」

サニー「ま、せやな。とりあえず荷物の整理しとくか」

ここまで

・・・・・
……ビートの部屋

ビート「……」

ビート(それにしても……すごい寮ね。すごすぎてなんだか逆に落ち着かないわ)

ビート(本当はマリン先輩と同じ部屋がよかったんだけど……マリン先輩は一人がいいって言うし)

ビート(広すぎる寮だと、先輩との距離まで広がっちゃう気がして不安になる……)

コンコンッ

ビート「!!」

ビューティ「ビューティです。開けてもらってもよろしいですか?」

ビート「あ……ええ。待ってて」

ガチャッ

ビート「ビューティ、どうしたの?」

ビューティ「夜分遅くに失礼します。ビート先輩に挨拶をしたく参りました」

ビート「わざわざ? そんなの別にいいのに」

ビューティ「いえ、そういうわけにもいきません。ビート先輩はこれからお世話になるお方ですし」

ビューティ「こちらをどうぞ」

ビート「え?」

ビューティ「私の地元のお土産です。つまらないものですが、よろしかったら食べてください」

ビート「あ、ありがとう。……よかったら中に入って。ここで立ち話もなんだし」

ビューティ「よろしいんですか? では失礼します」

ビート「まだ荷物の整理ができなてなくて散らかってるけど……空いてるところに座ってちょうだい」

ビューティ「はい」

ビート「今お茶入れるわね」

ビューティ「いえ、そんな。お気遣い無く」

ビート「いいのよ。せっかく来てくれたんだし、私も嬉しいわ」

ビューティ「……この部屋、お一人で使われるんですか?」

ビート「ええ」

ビューティ「一人で使うにはこの寮の部屋は、広すぎますね」

ビート「ふふ、私もそう思ってたわ」

ビューティ「それになんだか、初めから二人部屋を前提に造られたようにも思えます」

ビート「どうなのかしらね。アクア先輩の金銭感覚から、単純に広くなっただけにも思えるけど」

ビューティ「アクア先輩、ですか……あまりにも住む世界が違いすぎて、正直私には少し理解しきれないところもあります」

ビート「あはは……いい人よ。悪い人じゃないわ」

ビューティ「その点、ビート先輩には親近感を持っています。お話に聞いたとおり、真面目で優しいお方ですしね」

ビート「え、そ、そう?」

ビューティ「はい、人となりは表に出てくるものですから。ビート先輩の仕草や表情でどういう方かはひと目で分かります」

ビート「て、照れるわ……私はそんなに評価される人間でもないし」

ビューティ「私、ビート先輩のようなお方の後輩になれてとても感激です。不束者ですが、よろしくお願いします」

ビート「いえ、こ、こちらこそよろしくお願いします」

ビューティ「ふふっ」

ビート「……そうだ、話に聞いたんだけど。ビューティってダークドリーム先輩の妹なのよね?」

ビューティ「!!」

ビート「驚いたわ、まさかあのダークドリーム先輩の妹さんだななんて」

ビューティ「……」

ビート「実は私、ダークドリーム先輩にはお世話になったこともあって。とても感謝してるの」

ビート「優しい人よね。あんなお姉さんがいて羨ましいわ」

ビューティ「……」

ビート「ダークドリーム先輩もビューティがプリキュアになったことはすごく喜んでいたわよ」

ビューティ「……」

ビート「ビューティ?」

ビューティ「あ……いえ。そうだったんですか」

ビート「?」

ビューティ「……そろそろ戻ります。部屋の整理もまだ済んでいなくて」

ビート「ああ、そう。お土産ありがとう」

ビューティ「いえ……では失礼します」

ビート「お互い、これから頑張りましょうね」

ビューティ「はい……」

ここまで

翌日

ハッピー「おっはよー!」

マーチ「おはよ。ハッピー、サニー」

サニー「ふああ~……」

マーチ「だらしないなぁ、朝っぱらから」

サニー「まだ寝てたいわ……」

マーチ「せっかくなんだしみんなで朝ごはん食べようよ。下の食堂使えるんでしょ?」

サニー「せやかて自分たちで作らなアカンのやろ? めんど」

ビューティ「ふふ、いいじゃあないですか。共同作業をすることで、私たちの仲も深まると思いますし」

マーチ「そうそう。ほら、行くよ」

サニー「ハッピー料理作れる?」

ハッピー「うん、バッチリ!」

サニー「はぇ~……以外やな」

マーチ(……ん、あれ? 何か忘れてるような)

・・・・・

ビューティ「ハッピー、そっちの野菜の下ごしらえをお願いできますか?」

ハッピー「はーい!」

サニー「うわ……ほんま手際ええなハッピー。冗談かと思ってたのに」

マーチ「すごいね二人とも、あんなテキパキできるなんて」

サニー「それに比べてなんやねん自分、卵割るぐらいしかできんのか」

マーチ「サニーだってまともに料理できないくせに。はぁ……でも参ったなぁ。あたし家事万能な設定なんだよね」

マーチ「実際作れないのはちょっと情けないかなぁ」

サニー「うちもお好み焼き作り得意って設定やけど……別にあんなもん混ぜて焼くだけやからなぁ」

マーチ「やっぱさぁ、ちゃんと料理作れた方がいいのかな? 役作りとして」

サニー「別にええやろ。放送の時は実際作るわけでもないんやから」

ビューティ「卵は混ざり終わりましたか?」

マーチ「あ、うん。はい」

ビューティ「ありがとうございます」

サニー「もう二人に任せたほうがええんちゃう?」

マーチ「食器並べたりするぐらいはしないと」

サニー「ほな茶碗四つ……どこにあんねん」

マーチ「そっちだよそっち」

ビューティ「サニー、納豆は食べられますか?」

サニー「は? 食べられるけど……ははーん、関西人は納豆苦手とか偏見持ってるんやな?」

ビューティ「え……そうではないのですか?」

サニー「普通に食えるわ。へーきへーき」

マーチ「……」

ハッピー「あれ、どうしたのマーチ?」

マーチ「え? いや……納豆食べるんだと思って」

ハッピー「美味しいよね~、安いし。梅干と混ぜるともっと美味しくなるんだよ」

ビューティ「我が家では砂糖を混ぜて食べてましたよ」

サニー「うえっ……なんやそれ。絶対アカンやつやろ」

ビューティ「美味しいですよ? みなさんの分にも入れようと思いまして」

サニー「いらんいらん、普通でええから! なぁマーチ?」

マーチ「え? ああ……うん」

マーチ(納豆苦手なんだよなぁ……)

ハッピー「できたー!」

ビューティ「さて、食べましょうか」

サニー「なかなかええ感じやん。はよ食べよ」

ビューティ「それでは、スマイルのメンバー全員そろっての初めての朝食」

ハッピー「いただきまーす!」

マーチ「うーん……」

サニー「どないしたん?」

マーチ「いや、なんか忘れてるような気がしてて……」

サニー「なんやそれ」

マーチ「うーん……なんだっけかなぁ」







ピース「……」

ハッピー「あ!!」

サニー「なんや」

ハッピー「朝の占い見るの忘れてた!」

サニー「そんなことか……あんな当たらんもんええやろ別に」

ハッピー「でもさ、その日自分の星座が一位だったらウルトラハッピーじゃない?」

サニー「最下位だったら?」

ハッピー「なるべくその日をいい日にしようって頑張ろうと思えるよ」

サニー「ポジティブやなぁ……」

ビューティ「ですがそういう気の持ちようは素敵だと思います。何事も前向きに考えられるのはすばらしいです」

マーチ「それぐらいの気持ちじゃないと、この先やっていけないかもしれないしね。ね、ピースもそう思うでしょ?」

サニー「ん……?」

マーチ「……あっ」

ビューティ「あら」

ハッピー「あれ? ピースどこ行っちゃったの?」

マーチ「……どこ行っちゃったっていうか」

サニー「完全に忘れとったわ」

ここまで

ピース「……」

ピース(どうしよう……今さら平然を装ってみんなの前には出れないし)

ピース(ていうかなんでみんなもう食べ始めてるの……わたし何も言われてないのに……)




ハッピー「どうしよっか」

マーチ「どうしよっかって……呼ばなきゃかわいそうだよ」

サニー「なんでおらんねんあいつ。アホか」

マーチ「朝誰も連絡してないの?」

ハッピー「した?」

サニー「さぁ」

ビューティ「私、呼んできましょうか?」

マーチ「いや、ビューティはピースの分の料理作っておいて。あたしが呼んでくるよ」

ピース「!!」

ピース(ど、どうしようこっち来る。今ここで会ったらすごい気まずくなっちゃうかもしれないし……)

ピース(先回りして部屋に戻ってようかな……寝坊したってことにして)

ピース(……どっちみち、気まずいのは変わらなさそうだけど)

ベリー「なにしてるの」

ピース「!!」

ベリー「あなた……ピース? どうしたの」

ピース「えっ、いや、あの……」

ベリー「……? あら、あの子達もう食堂使ってるの?」

ピース「……」

ベリー「それでなんでピースはこんなところにいるわけ」

ピース「えぇ……ええっと……」

ピース(逃げたい……今すぐこの場から)

マーチ「ピース!」

ピース「!?」

マーチ「来てたんだ」

ピース「え……う、うん……」

ベリー「?」

マーチ「あっ、ベリー先輩おはようございます」

ベリー「おはよ」

ピース「……」

マーチ「ごめんねピース、別に忘れてたわけじゃなくて朝バタバタしてて連絡が行き届いてなかったっていうか……」

ピース「えっ、あの別にわたし……」

ベリー「……」

ベリー「なに? ピースだけ仲間はずれにしてたの?」

ピース「!!」

マーチ「えっ!? あ、いえ……そんなことはないです! ただちょっと、本当に連絡し忘れたっていうか……うっかりで」

ベリー「だそうよピース。ま、誰にだって忘れることはあるししょうがないわよね。ただでさえここに来て間もなくて忙しいんだし」

ピース「……」

ベリー「ほら、さっさと朝ごはん食べてきなさい。みんな待ってるんでしょ?」

マーチ「は、はい。いこっか、ピース」

ピース「う、うん」

ベリー(フォローになったかどうかは分からないけど……大丈夫かしらあの子達)

・・・・・マリンの部屋

マリン「……」

コンコンッ

ビート「マリン先輩」

マリン「!!」

ビート「起きてますか?」

マリン「……はーい、起きてるよ」

ガチャッ

ビート「あっ、今日は珍しく早起きですね」

マリン「ちょっと、珍しくってなに? まるであたしがいつも寝坊してるみたいじゃん」

ビート「あれ? そうじゃなかったんですか?」

マリン「まっ! ビートったら生意気に」

ビート「あははっ」

ビート「それよりビート先輩、起きたなら一緒にご飯食べませんか?」

マリン「ん、いいよ」

ビート「じゃあ、私が作りますね」

マリン「あれ、ビートって料理できたっけ」

ビート「なに言ってるんですか、青寮にいた時は私だって少しは料理してたじゃないですか」

マリン「あははっ、そうだっけ」

ビート「ふふっ、やっぱり誰かと一緒だと楽しいですね」

ビート「昨日の夜はあの広い部屋に私一人で、寂しくてあんまり眠れませんでした。マリン先輩はどうですか? 新しい部屋の住み心地」

マリン「そうだねー……あたしはあんまり気にならなかったけど。広い部屋だったら踊ったりできるしね~」

ビート「マリン先輩らしい」

マリン(……誰かと一緒だと楽しい、か)

マリン(ブロッサム……いつこっちに来るんだろう)

マリン(どんな顔して会えばいいのかな……)

ここまで

・・・・・

サニー「危なかったなぁ、ピース。もうちょいで朝飯抜きになってたところやで。それともダイエットでもしてたんか?」

ピース「あはは……」

サニー「ハッピー、今日ハッピーだけ仕事やったっけ」

ハッピー「うん、そうだよ。プロモーション撮影だとかなんだとかで」

マーチ「がんばってね」

サニー「流石にリーダーは放送前から引っ張りだこやな。帰りになんかお土産よろしくな」

ハッピー「うんっ。じゃあ、いってきまーす」

サニー「さてと、うちは部屋に戻ってもう一眠りしてよっかなぁ」

ビューティ「私達も部屋に戻りましょうか」

マーチ「うん。……あっ、ピース」

ピース「え……な、なに?」

マーチ「今日はごめんね、本当に悪気はなかったの」

ピース「い、いいのいいの。わたしも気にしてないから……」

マーチ「あたしさ、ピースとはこれからも仲良くやっていきたいと思ってる。だから、改めてよろしくね」

ピース「う、うん。……ありがと、マーチ」

マーチ「!!」

ピース「じゃあ、あたし……部屋に戻るね」

マーチ「……」

ビューティ「マーチ、どうしたんですか?」

マーチ(はぁ~……今の上目遣いかわいかったなぁ)

マーチ(本当にかわいいなぁ、ピース。なんであんなにかわいいんだろう)

ビューティ「マーチ?」

マーチ(あの可愛さは反則すぎるでしょ。ああ~一回抱きしめてみたい)

ビューティ「……マーチ」

マーチ「あ……な、なにかな?」

ビューティ「さっきから呼んでいるのに、どうして返事をしてくれないのですか」

マーチ「ああ、ごめんごめん。考え事してて」

ビューティ「……なにか顔が、にやけていたような気もしますけど?」

マーチ「はぇ!?」

ビューティ「さ、部屋に戻りましょう。仕事はなくても台本の読み合せや、やることはたくさんありますしね」

マーチ「……そ、そうだね」

・・・・・

ハッピー(えーっと確か、寮の前で待ってたら迎の車が来てくれるんだっけ)

ブオーン

ハッピー「……あっ! 来た来た!」

ブンビー「お待たせしました」

ハッピー「ああっ! なんか見たことある!」

ブンビー「あはは……プリキュア寮専属ドライバーのブンビーです」

ハッピー「ブンビー……あっ、ひょっとしてプリキュア5の!?」

ブンビー「はい、プリキュア5のブンビーです」

ハッピー「こんなところでなにしてるんですか?」

ブンビー「この寮の専属ドライバーを務めさせてもらってます」

ハッピー「へぇ~、こんなところで会えるなんて思わなかったです」

ブンビー「ええ、まぁ副業でいろいろやってまして。この仕事もその一環です」

ハッピー「この車ってブンビーさんのですか?」

ブンビー「いえ、この車は寮から貸し出されたものです」

ハッピー「えっ、ブンビーさんのじゃないの? じゃあなんでこの車乗ってるんですか?」

ブンビー「だから専属ドライバーですって」

ブンビー「まぁとりあえず、どうぞお乗りください」

ハッピー「はーい」

ブンビー「このまま仕事場までお送りします」

ハッピー「こんなことまでしてもらえるなんて、プリキュアってすごいんですねぇ。送ってもらうのにお金とか払わなくても大丈夫ですか?」

ブンビー「ええ、専属ドライバーですからね。みなさんを送るのが私の仕事なんですよ」

ハッピー「へぇ~」

ブンビー「もちろん帰りも送りますよ」

ハッピー「ブンビーさんって有名な人なのに、こういうこともしてるんですね~」

ブンビー「ええまぁ、最近は不景気ですからね。色々と小遣い稼ぎをしておかないと……」

ブンビー「今日は初めての仕事らしいですけど、緊張してますか?」

ハッピー「う~ん……なんだかいまいち実感がわかなくて。あたしがプリキュアだなんて、まだ信じられない」

ブンビー「ははは。まぁ、そうでしょうね。実感がわくのはこれからですよ、これから」

ハッピー「あっ、そうだ。ブンビーさんラジオつけてもらえますか?」

ブンビー「テレビもありますが、どうします?」

ハッピー「テレビ!? 車に!?」

ブンビー「ええ、小さいやつが。ほらそこに」

ハッピー「ほんとだ、すごーい! なんだか未来の車みたい!」

ブンビー「あはは、大げさな」

ハッピー「じゃあテレビつけてください」

ブンビー「なにか見たい番組でもあるんですか?」

ハッピー「占い! どこかニュース番組とかでやってないですか?」

ブンビー「ええっと……あっ、ありましたね」

TV『今日の星座占い!』

ハッピー「おお! ついた!」

ブンビー「何座なんですか?」

ハッピー「山羊座です! ブンビーさんは?」

ブンビー「獅子座です」

TV『今日の一位は……獅子座のあなた!』

ハッピー「おお~! ブンビーさん一位ですよ! 一位!」

ブンビー「あはは、そりゃよかった」

TV『最下位は……残念、山羊座のあなた』

ブンビー「ありゃ……」

ハッピー「ああ~……」

ブンビー「……残念ですね」

ハッピー「えへへ、最下位ですね~」

……ハッピー・サニーの部屋

サニー「ぐがぁ~……ぐ~……」

ドンドンッ

サニー「ふがっ!? ……ああ……?」

ドンドンドンッ

サニー「なんや……誰やねんドア叩いてんの。うっさいわ」

サニー「ハッピーもう帰ってきたんか? ……まだ昼過ぎたばかりやのに」

ドンドンドンッ

サニー「ちっ……今開けるっての」

ガチャッ

サニー「やかましいわ!! 少しは静かにせんかボケ!!」

ブラック「……」

サニー「ああ……!? ……れ?」

ブラック「寝てた?」

サニー(あれ……この人確か)

ブラック「まぁ寝起きならしょうがないわよね。あたしもあんまり寝起きよくないし」

サニー「……」

ブラック「キュアブラックよ、今この寮についたばかりなの。あんたサニーでしょ?」

サニー「はぁ……はい」

ブラック「よろしく」

サニー「ど、どうも」

ブラック「とりあえず顔でも洗ってくれば?」

サニー「あ、はい」

バタンッ

サニー「……」

サニー「いきなり来るのはアカンやろ……」

ここまで

・・・・・

ブラック「ということであたしがプリキュアのリーダーだから、みんなよろしくね」

マーチ「は、はい!」

ピース(うわ~……本物はやっぱりかっこいいなぁ)

サニー「はぁ……」

ビューティ「どうしたのですか」

サニー「いや……さっきちょっとな」

ビューティ「?」

ブラック「そういや、ハッピーはいないんだっけ」

ビューティ「はい。今日はハッピー一人だけで単独の仕事が入ってまして」

ブラック「そっか。じゃあ挨拶は帰ってからでいいかな」

マーチ「それにしても、直接目の当たりにすると威圧感がすごいよね」

サニー「あの人には流石にうちも逆らうことできそうにないわ……」

ブラック「なにこそこそ喋ってんの」

サニー「いえ、なんでもありませぇん」

ブラック「さてと、じゃあ自己紹介も終わったことだし……さっそく特訓でもしよっか」

サニー「はい?」

ビューティ「特訓……ですか?」

ブラック「そう、プリキュアには強靭な肉体が必要だからね。鍛えなきゃ一年間の撮影なんてとても持たないの」

ブラック「だからスマイルのみんなには撮影が始まる前に体をキチッと作ってもらいます。もっとも撮影まで時間はないから、集中して取り組むように」

マーチ「は、はい!」

サニー(めんどくさそうやなぁ……)

ブラック「それじゃあまず軽くランニングコースを100周走ってきて」

マーチ「……え?」

サニー「今何回ですって……?」

ブラック「100。ほら早く行きなさい、ゴーゴー!」

マーチ「……」

・・・・・

サニー「はぁはぁ……まだここに来て一日経ったばかりなのに、いきなりこんなことやらすんか!?」

ビューティ「仕方ありません。これもプリキュアに必要な鍛錬ですから」

マーチ「ぜぇ……ぜぇ……」

サニー「おいマーチ遅いで! 周回遅れしとるやん」

マーチ「そ、そんなこと言ってもあたし……体力あんまりないし……」

サニー「運動できそうな見た目のくせしてなに言ってんねん」

マーチ「う、運動苦手で……役柄はサッカーやってる設定なんだけどさ」

マーチ「本当はリフティングとか……二回ぐらいしか……できない」

サニー「……そんなんでよくプリキュアになれたな」

ピース「はっ、はっ」

ビューティ「ピースは大丈夫ですか?」

ピース「うん。今のところは平気だよ」

サニー「おいおいマーチ、ピースに負けとるで」

マーチ「ぜぇぜぇ……そ、そんなこと言われても……」

サニー「まぁええわ。うちら先行っとるから、マーチもはよ来るんやで」

マーチ「あっ、ちょっ……ぜぇぜぇ」

ビューティ「……」

マーチ「ビュ、ビューティ……?」

ビューティ「大丈夫ですよ、私はマーチと一緒に走りますから」

マーチ「ご、ごめん……」

ビューティ「気にしないでください。さぁ、頑張りましょう」

マーチ「うん……」

・・・・・・

「じゃあお疲れ様でしたー」

ハッピー「お、お疲れさまでーす……」

ハッピー「……はぁ」

ハッピー(朝に10時に出発して終わったのが深夜の一時過ぎ……)

ハッピー(ね、眠い……でも帰らなきゃ)

ハッピー(うう~……疲れて一歩も動けない)

???「お疲れ様、ハッピー」

ハッピー「はぇ?」

メロディ「久しぶりだね」

ハッピー「あっ……! メロディ先輩!!」

ハッピー「ど、どうしてここに!?」

メロディ「あたしも今日仕事があって、で近くでハッピーが撮影してるって聞いたから会いに来たの」

メロディ「もう寮には移ったんでしょ? あたしも今日から住み始めるからさ、一緒に帰ろうよ」

ハッピー「ほ、本当ですか……?」

メロディ「うんっ。そのために来たんだし」

ハッピー「うう……」

メロディ「……ハッピー?」

ハッピー「やったー!! メロディ先輩と一緒に帰れるなんて、ウルトラハッピー!!」

メロディ「あ、相変わらずテンション高いね」

ハッピー「だってすっごく嬉しいんですもん! 今日の疲れも吹き飛んじゃいました!」

メロディ「あはは、よかった」

ハッピー「今すぐ帰りの支度してきます!」

メロディ「大丈夫……? フラフラだけど」

ハッピー「へ、平気です!」

メロディ「心配だなぁ……一緒についてってあげるよ」

ハッピー「あ……ありがとうございます」

メロディ「ふふっ、素直でかわいいねハッピーは」

ハッピー「えへへ」

メロディ「今日は大変だったみたいだね」

ハッピー「はい。八時に終わる予定だったんですけど、時間が伸びちゃて」

メロディ「あーよくあるよくある。撮影時間って基本的に、予定通りには終わらないから」

ハッピー「ええっ、そうなんですか?」

メロディ「ま、これからも起こることだろうから覚悟しておいた方がいいよ」

ハッピー「へぇ~……プリキュアって大変なんですねぇ」

メロディ「そうだよ。でもそれはみんなやってきたことだから、ハッピーも同じプリキュアなら頑張ってね」

ハッピー「はい!」

メロディ「ところで……やっぱり足元ふらついてるけど本当に大丈夫?」

ハッピー「大丈夫です! 今着替えちゃいますからね」フラフラ

ハッピー「よいっ……しょ!?」ドテン

ハッピー「いてて……」

メロディ「……着替え手伝ってあげるよ」

ハッピー「ご、ごめんなさい」

メロディ「いいっていいて、相当疲れてるみたいだし」

ハッピー「えへへ……なんか着替えさせてもらうのって恥ずかしいですね」

メロディ「うん? あはは……ほんとだね、変な感じ。ブロッサム先輩にはやってもらったことあるらしいけど」

ハッピー「メロディ先輩ってまるで、お姉ちゃんみたい!」

メロディ「え?」

ハッピー「かっこよくて優しくて、あこがれちゃうなぁ」

メロディ「そ、そうかな」

ハッピー「はい、そうです!」

メロディ「そうはっきり言われちゃうとなぁ……と、とりあえず着替えよ」

ハッピー「はい!」

メロディ(なんかよく分からないけどこの子……すごくかわいいなぁ)

・・・・・プリキュア寮

メロディ「じゃあ、あたしもう部屋戻るね。ハッピーも早く寝るんだよ?」

ハッピー「はーい!」

メロディ「じゃ、おやすみハッピー」

ハッピー「おやすみなさい、メロディ先輩」

ハッピー「さてと……あたしの部屋、どこだったっけ」

シーン・・・・

ハッピー「あーん広すぎて分かんなくなっちゃった~」

ハッピー「確か、えっと……最上階の……」

ハッピー「うーん……部屋の数多すぎて分かんない。メロディ先輩の部屋に泊めてもらうかな」

ハッピー「って、メロディ先輩の姿ももう見えないし!」

ハッピー「ハップップー……はぁ。手当たり次第入ってみようかな」

ハッピー「そういえば、サニーは寝ちゃったかな。もう深夜だもんね」

ハッピー「電話で起こして迎えに来てもらおうかなぁ」

ハッピー「……あれ?」

ハッピー(中庭に誰かいる……)

ハッピー(あれって……ひょっとして!?)







ドリーム「……」

ここまで

・・・・・

ドリーム「……」

ハッピー「……あ、あのぅ」

ドリーム「……?」

ハッピー「は……初めまして! キュアハッピーです!」

ハッピー「今年から新しいプリキュアになりました! よろしくお願いします!」

ドリーム「……」

ハッピー(……あ、あれ?)

ドリーム「よろしく、ハッピー」

ハッピー「あ、はい!」

ドリーム「こんな時間まで仕事してたの?」

ハッピー「は、はい!」

ドリーム「そっか、お疲れさま」

ハッピー「……」

ドリーム「そんなかしこまらなくてもいいよ。横座る?」

ハッピー「じゃ、じゃあ失礼します」

ドリーム「あなたが新しいプリキュアかぁ……」

ハッピー「わ、わたし! ドリーム先輩はすごく凄い人だって聞いてました!」

ハッピー「それで、プリキュア5も見たことあるんですけど、やっぱりすごい人だと思いました!」

ハッピー「だから、えっと……会えて嬉しいです!」

ドリーム「ふふっ」

ハッピー「あぅ……えっと」

ドリーム「……」

ハッピー「……」

ドリーム「ねえハッピー」

ハッピー「は、はい!」

ドリーム「あなたもわたしと同じプリキュアだよ。先輩後輩はあるかもしれないけど、それ以前にわたし達は仲間なの」

ドリーム「それにわたしはハッピーが思ってるほどすごい人間じゃない……もっと気軽に話してもいいんだよ」

ハッピー「……! はい!」

ドリーム「ふふっ」

ハッピー「え、えへへ。ドリーム先輩は、こんな時間までなにしてるんですか?」

ドリーム「目が覚めちゃったから、ちょっと外の空気を吸ってたの」

ハッピー「うーん……確かに夜の空気って気持ちいいですね。静かだし」

ハッピー「そういえばこんな時間まで起きてるのって久しぶりだなぁ」

ドリーム「……」

ハッピー「ドリーム先輩?」

ドリーム「……こうやってね、静かな空間にいるととても落ち着くの」

ドリーム「一人でじっと空を眺めてるだけでも、心が安らぐんだ……」

ハッピー「一人が好きなんですか?」

ドリーム「うーん……好きだけど、寂しくなるのは嫌かな」

ドリーム「だからハッピーが今横にいてくれて、すごくうれしいよ」

ハッピー「そ、そうですか? えへへ」

ドリーム「ねえそういえば聞きたいんだけど、ハッピーはどうしてプリキュアになろうと思ったの?」

ハッピー「え? ええっと……わたし、元々プリキュアになろうとは思ってなくて。別の番組のオーディション受けようと思ったんですけど……」

ハッピー「けど間違ってプリキュアのオーディションに書類送っちゃって。それでオーディション受けたら受かっちゃって」

ドリーム「へぇ~……」

ハッピー「でも……わたし、初めから心の奥じゃプリキュアになれるなんて思ってなかったんだと思います。だから別の番組のオーディションを受けようとしたのかな」

ハッピー「プリキュアってすごい人たちばかりだし、わたしなんかじゃ到底無理だと思ってて……」

ハッピー「って、けどなんで私が受かったのかいまだに分かんないんですけどね。えへへ」

ドリーム「……ハッピーはすごいんだね」

ハッピー「ええっ!? わ、わたしがすごい……?」

ドリーム「わたしがハッピーの頃の時は、すごく必死だったから……きっとハッピーは初めからプリキュアになれる運命だったんだね」

ハッピー「そ、そんな! ドリーム先輩に比べたら全然……」

ドリーム「ねえハッピー……これからハッピーが挑戦しようとしてるものはね、あのお星様みたいに綺麗に輝いているけど手を伸ばしても届かないような存在なんだよ」

ハッピー「え……」

ドリーム「そんな存在に、ハッピーはならなきゃいけないの」

ハッピー「っ……」

ドリーム「自分にプリキュアは無理だと思ってたら、この先プリキュアを続けていくことなんてできない。だから心がけてほしいな、絶対に無理だとか思ったり諦めたりしないって」

ハッピー「……」

ドリーム「……テレビの中みたいな優しい世界なんてものはないんだよ。この先、ハッピーには辛いことや厳しいことがたくさん待ってると思う」

ドリーム「だから中途半端な気持ちのままプリキュアをやらないで。もうハッピーはわたし達の仲間なんだから」

ドリーム「プリキュアになった以上、プロとして自覚を持たなきゃダメだよ」

ハッピー「は……はい」

ハッピー(びっくりしちゃった……なんだか急に人が変わったみたいで)

ドリーム「……」

ハッピー「……ドリーム先輩?」

ドリーム「あれ……わたし何か言った?w」

ハッピー「え?」

ドリーム「まぁいいや、寝ぼけてたのかなw。……ふわぁ」

ドリーム「眠くなってきたねぇ~……そろそろ部屋に戻ろっかww」

ハッピー「は、はい!」

ハッピー(あれれ……? なんかまた雰囲気変わった気がするけど……まぁいっか)

ドリーム「それじゃ、おやすみ~ww」

ハッピー「はーい、おやすみなさーい!」

ハッピー「……」

ハッピー(あっ、そういえばわたしの部屋どこだっけ……)

ここまで

・・・・・数日後

サニー「ぐがー……ぐごー……」

サニー「う……うう~ん」

サニー「重い……」

ハッピー「すぴー……すぴー……」

サニー「うぐっ……うあああ。なんでうちの体の上で寝てんねん! どけっ!」ドガッ

ハッピー「ふがっ!?」ドサッ

ハッピー「……ふわあ~……おはよーサニー……」

サニー「ああ……おはよ」

ハッピー「ううう……もう朝?」

サニー「せやで……」

ハッピー「……もちょっと寝てよっか」

サニー「……せやな」

ドンドンドンッ!!

ハッピー「!!」

マーチ「二人とも起きてる? 早く着替えて下に来な。今日は午前中から撮影もあるんだから」

サニー「うああ……いちいち来んでもええのに。鬱陶しい」

ハッピー「はぁ……」

サニー「毎日仕事に特訓に……休む暇がないわ」

ハッピー「ああ~……」

サニー「なぁ……せめてベッドだけ別々のもん頼もうか。大きいベッド二人で使うのは不便やわ」

サニー「ハッピー寝相悪いねんもん」

ハッピー「うあ~……」

サニー「おーいハッピー、起きとるかー?」

ハッピー「……うあ」

サニー「……はぁ、しんどい」

・・・・・・

ハッピー「……」ウトウト

マーチ「ハッピー、大丈夫?」

ビューティ「お疲れになるのも無理はありませんね。ここ最近ハッピーは私たちの倍の量の仕事をこなしているんですし」

サニー「もうすぐ本番やで、しゃきっとせい」

ハッピー「あい……」

ビューティ「こんなこともあろうかと、これを持ってきました」

マーチ「なにそれ?」

ビューティ「ホワイト先輩に頼んで作ってもらった栄養ドリンクです。滋養強壮、飲めま一瞬で疲れが吹き飛ぶ優れもの……らしいです」

マーチ「らしいですって……大丈夫なのそれ? なんかすごい毒々しい色してるけど……」

サニー「飲んで死んだりせえへんよな?」

ビューティ「ホワイト先輩を信じましょう。さぁハッピー、これを飲んでみてください」

ハッピー「……」ゴクッ

サニー「どや?」

ハッピー「……おお!!」

マーチ「!?」

ハッピー「なんかこう……身体の中から力が溢れ出てくる感じ!!」

サニー「ほんまか……?」

ビューティ「どうやら効き目は抜群のようですね」

ハッピー「よーし、今日も張り切っていくぞー!!」

スタッフ「ハッピーさん、スタンバイお願いしまーす」

ハッピー「はーい!!」

サニー「……」

ビューティ「サニーも飲んでみますか」

サニー「いらんわ。ビューティは飲んだんか?」

ビューティ「飲んでませんよ」

マーチ「さて、元気になったハッピーの出番だね」

ビューティ「始まりますよ」

スタッフ「本番5秒前! 4、3……」



ハッピー「……」

ハッピー「……」

ハッピー「……」



ピース「……あれ?」

サニー「はぁ……またか」

監督「カット! どうしたの一体、本番始まってるよ!」

ハッピー「ご、ごめんなさい……台詞全部吹き飛んじゃいました」

サニー「あーあ……やっぱり」

監督「台本覚えてきてないの?」

ハッピー「ちゃんと読んだんですけど、カメラの前だと緊張して台詞全部忘れちゃって……」

サニー「おいハッピー、もう撮影始まって三日目やで! 初日やないんやからええ加減慣れえや」

ハッピー「はーい……」

マーチ「ハッピーも意外と繊細だね」

ビューティ「仕方ありませんよ、誰にでも苦手なものはありますから」

監督「それじゃあ……次サニーいってみようか」

サニー「はいはーい、わっかりましたー」

監督「本番、よーい!」







マーチ「……」

ピース「……」

ビューティ「……」

マーチ「……なんていかサニーってさ」

ビューティ「ええ、そうですね」

ピース(演技下手くそ……)

監督「はいカット。もう一度」

サニー「あれー? 今のかなりよかったと思うんやけどなぁ」

・・・・・

スタッフ「それじゃあお疲れ様でしたー」

ハッピー「はーい!」

サニー「はぁ……しんど。なんで何回も撮り直さあかんねん」

マーチ「原因に気づかないの?」

サニー「なんやねん、偉そうに。何が原因かマーチに分かるんか」

マーチ(そりゃサニーの演技力でしょ……)

サニー「それよりそっちこそ、リフティングできるようになったんか? 次の撮影でやらなあかんのやろ?」

マーチ「う、うるさいな。今練習中だよ」

ビューティ「この後は帰ったら、特訓が待っていますね」

マーチ「ああ……思い出したら憂鬱に」

ハッピー「どうしたらカメラ慣れするのかな?」

ピース「え? えっと……」







エコー「……」

ここまで

・・・・・プリキュア寮

ブラック「はいみんな、今日もトレーニングだよ! 筋トレ開始」

ブラック「まず腹筋三千回ね」

サニー「うげ~……帰ってきたと思ったらこれやで」

ピース「いち、に……」

ハッピー「うぐぐっ……!」

マーチ「ハ、ハッピー……大丈夫?」

ハッピー「無理かも……」

マーチ「あ、あたしも……」

ブラック「そこの二人、ペース遅いよ!」

マーチ「は、はい!」

ビューティ「……」

……

ブラック「はいお疲れ。この後ダンスレッスンだっけ、がんばってね」

ハッピー「あ~……う~……」

サニー「地獄や……」

ブラック「ほら、シャキッと歩く。早くいってきなさい」

サニー「は~い……」

ブラック「さてと、あたしは部屋に戻って仕事しないと……」

ビューティ「ブラック先輩」

ブラック「ん? なに?」

ビューティ「提案があるのですが、少々お時間をよろしいでしょうか?」

ブラック「は?」

ビューティ「ブラック先輩の指導はとても的確で素晴らしいものですが、全員に同じメニューをやらせるのはあまり効率的とは言えません」

ビューティ「さっき見ての通り、同じプリキュアでも体力差はあります。一度練習メニューを見直してみてはいかがでしょうか」

ブラック「ああ、そう」

ビューティ「一人一人に合わせたメニューを作るんです。全員の能力を考慮した効率的な練習を」

ブラック「へー」

ビューティ「個々の弱点を少しずつ克服していくことで、長期的に見れば最短で能力も上がるはずです。一応私が考えたメニューをこの紙にまとめてみました。ぜひ読んでみてください」

ブラック「その紙貸して」

ビューティ「どうぞ」

ブラック「ふぁ……ふぁああああっくしょん!! ズズッ……ズビーッ!」クシャクシャ

ブラック「これ捨てといてね。よろしく」

ビューティ「……」

ビューティ「ッ……」ギリッ

サニー「ビューティ」

ビューティ「!!」

サニー「ああいう人にはそういうの通用せんから、諦めた方がええで」

ビューティ「え、ええ……」

マーチ「だからって何もこんなことしなくても」

ビューティ「……いえ、私が悪いんです。新参者の分際で差し出がましい真似をしすぎました」

ビューティ「少しでもマーチの負担を減らしたかったんですが……」

マーチ「ん? あたしは別に負担なんて思ってないよ」

ビューティ「え?」

マーチ「そもそも体力がないのは、今までのあたしの努力が足りないせいだし。ブラック先輩が望む基準に達してないあたしが悪いんだよ」

マーチ「だから、あたしはもっと頑張るよ。立派なプリキュアになるためにさ」

ビューティ「マーチ……」

マーチ「でも、あたしのこと心配してくれてありがとうね」

ビューティ「い、いえ、そんな……」モジモジ

マーチ「?」

ハッピー「あたしはもう無理かも……疲れて頑張れない」

サニー「ハッピー、プリキュア辞めんなら今のうちやで。ハッピーが辞めたら、順番的に次の主役はうちやしな」

ハッピー「ええ~そんな~」

・・・・・

ピーチ「はーいみんなお疲れ様! ダンス楽しかったね!」

マーチ「はぁ……はぁ……」

サニー「なんとか今日一日の特訓終わったな……」

ハッピー「わたしもうダメ……」

サニー「ていうかピーチ先輩の指導なに言ってるのかわけ分からん……」

ピーチ「ん? なに?」

サニー「いえ……なーんにも」

リズム「お疲れ様」

マーチ「リズム先輩……!」

リズム「みんなすごい頑張ってるわね、偉い偉い。差し入れに飲み物持ってきたわよ」

ハッピー「わーい!」

ビューティ「ありがとうございます」

リズム「後輩が一生懸命やってるんだもの、先輩としてこれぐらいしないとね」

ピーチ「リズム、あたしにもちょーだい」

リズム「あ、はい。どうぞ」

サニー「ええなぁ……マーチの先輩は綺麗やし、優しいし」

ハッピー「あんなお姉ちゃんがいたらいいよねぇ」

マーチ「二人ともなに言ってんのさ……」

リズム「そういえば、みんなエコーには会った?」

ハッピー「?」

ビューティ「エコー……?」

リズム「あれ、会ってないの? 確か今日同じ撮影現場って聞いたけど……」

リズム「オールスターズに出演するプリキュアよ」

マーチ「ああ、映画限定の……」

サニー「質問なんですけど、その子ってそのうちスマイルのメンバーになるんですかー?」

リズム「え? それは聞いてないけど」

サニー「なんや、てことは映画だけか」

リズム「あっ、でもこの寮には来るからね」

サニー「ええっ!?」

ハッピー「へー」

リズム「みんなも仲良くしてあげてね」

サニー「映画しか出えへんのにこの寮に住むんやって。どうよ?」

マーチ「どうよって、別にいいじゃない」

サニー「でも映画終わったらそれっきりになるんやろ? よう引き受けたなぁ、もうそれで最後のプリキュア出演かもしれへんのに」

マーチ「うーん……」

ビューティ「いいじゃないですか、私達が気にするこじゃありません。そのエコーという人自身が決めたことですし」

ハッピー「サニー……ご飯食べて部屋戻ろう。もうくたくた」

サニー「お、そやな」

マーチ「あたし達も行こうか」

ビューティ「ええ」

マーチ「ピースも」

ピース「う、うん!」

・・・・・

ミント「……」

ホワイト「こんな所でなにをしてるの?」

ミント「……ああ、ホワイト先輩」

ホワイト「また何か企んでるの?」

ミント「企む? 今さらなにを?」

ホワイト「……ふふっ」

ミント「うふふ」

ホワイト「そういえば、同色の後輩ができたわね」

ミント「マーチですか?」

ホワイト「彼女とはもう話したの?」

ミント「ええ、向こうから挨拶しに来ましたよ。いい子ですね」

ホワイト「そう」

ミント「……」

ホワイト「はっきり言うわ、やましいことはしないようにね」

ミント「誰にですか? マーチに?」

ホワイト「誰にでもよ。規律を乱すようなことをすれば、私が許さないわ」

ミント「ふふ、ホワイト先輩がそんなことを言うなんて。どうしたんですか、急に。人が変わったみたい」

ミント「もしかして本当に変わっちゃったりとか。男の人とでも付き合い始めました?」

ホワイト「あなたが今のあなたになったのには、私にも責任があるわ。自分でまいた種は自分で始末しないとね」

ミント「……」

ホワイト「始末って言っても、手荒なことなんてしないわよ。ふふっ、ものの例えだから気にしないで……ふふふっ」

ホワイト「もっとも、あなたがおかしな真似をしなきゃ私も何もせずに済むんだけれどね」

ミント「……びっくりしたぁ、驚かさないでくださいよもう。ふふっ」

ホワイト「うふふ。じゃあ、おやすみなさいミント」

ミント「はい、おやすみなさいホワイト先輩」

ミント「……」

ミント「……ふふ」

マリン「……」

ミント「来たのねマリン。待ってたわよ」

ここまで

・・・・・翌日

ピピピピピピピピピッ

サニー「ふがっ……おいハッピー……目覚まし鳴っとるで」

ハッピー「うう~ん……」

サニー「今日朝一で仕事あるんやろ……はよ起きいや」

ハッピー「……は~い」

サニー「大変やな。この時期こんな忙しいなんて」

ハッピー「今日はニュース番組に出て宣伝と……あと撮影のあとイベントと……」

ハッピー「うあああん……ねむい」

サニー「稼ぎ時こそ踏ん張らなあかんで……はよ行ってき」

ハッピー「は~い……」

サニー(はぁ……うちはむしろハッピーが羨ましいわ)

・・・・・

サニー「ぐごっ……ぐが~……」

マーチ「サニー、起きな」

サニー「うがっ! ……なんでマーチがおんねん!?」

マーチ「ドア開いてたから、あんたを起こしに来たの」

サニー「ハッピーのやつ……鍵かけんかったのか」

マーチ「なんでいつも鍵なんてかけてるのさ。勝手に入ってきて困ることなんてあるの?」

サニー「普通かけるやろ。朝からマーチに起こされんですむしな」

マーチ「はいはい……そうだ、今日新しい子来るらしいよ」

サニー「新しい子?」

マーチ「ほら、昨日言ってた」

サニー「ああ……エコーやったっけ」

マーチ「そうそう。午前中には来るってさ」

サニー「ふーん……」

マーチ「とりあえずその子が来る前にさっさと起きて顔洗いな」

サニー「はぁ……まだこんな時間なのに。マーチ早起きやな」

マーチ「これからリズム先輩とビート先輩、あとビューティ達と一緒に走ってくるんだ。サニーもくる?」

サニー「行かん行かん。ようやるわほんま」

マーチ「あたしはプリキュアとしてまだまだだからさ……少しでも努力しておかないと」

サニー「……はっ、真面目ちゃんやな。偉い偉い」

マーチ「むっ……いいから早く起きなよ。あたしはもう行くから」

サニー「はいはい」

サニー(努力、ねえ……プリキュアになった後でもそんなことするとは思わんかったわ)

・・・・・

リズム「マーチ、頑張って!」

マーチ「はぁ……はぃい……」

ビューティ「マーチ、姿勢が崩れていますよ。もっと顎を引き背筋を伸ばして脇を締め…」

マーチ「はぁ……はぁ……」

リズム「……マーチ、これから先大丈夫かしら」

ビート「……」

リズム「ビート?」

ビート「あ……なに?」

リズム「マーチのことよ」

ビート「ああ……」

リズム「まぁ私もプリキュアになりたての頃は体力無かったし、マーチもこれからよねぇ」

ビート「そうね」

リズム「……ミューズは、来なかったみたいね」

ビート「う、うん。誘ったんだけど……」

リズム「疲れてるだけよ、メロディもそうだし」

ビート「そうよね……うん」

リズム「せっかくこんな気持ちのいい朝だっていうのに、もったいないわね」

ビート「……あれ?」

リズム「どうしたの?」

ビート「いつの間にかビューティとマーチの姿が見えないんだけど……」

リズム「あれ!?」








ビューティ「ビート先輩大変です! マーチが倒れてしまいました!」

・・・・・

サニー「なんやマーチランニング途中に倒れたらしいな」

ピース「そ、そうみたい」

サニー「アホかっちゅうの。ま、笑い話にはなるか。今度テレビ番組かなんかで暴露したろうっと」

ピース「……」

サニー「そういやアカオーニに会った? でっかいでぇ、あれ。ごっつい顔しとるけど」

ピース「へぇ~……」

サニー「正直見た目バケモンやけどな。あれで以外と気弱いからおもろいねん」

サニー「しかもトートバッグにかわいいアクセサリつけててな。女かお前は! って。あははっ」

ピース「あはは……」

サニー「……」

ピース「……」

サニー「……なんかもっとリアクションせえや!」

ピース「えっ、あ……」

サニー「うちと話したくないんか?」

ピース「そ、そんなことはないけど……」

サニー「はぁ、つまらんなぁ」

ピース「……」

サニー「マーチはあいつ今日撮影できるんか。これで怪我して休んだりしたらしゃれにならんで……ん?」

ピース「え?」





エコー「……」ウロウロ

ここまで

サニー「外見てみ、外」

ピース「あれ……?」

サニー(なんやあいつ……いかにも地味な女やな)

ピース「誰だろう……ファンの人かな」

サニー「おい!!」

エコー「!!」

サニー「誰やお前、こんなとこでなにしてんねん。どうやって寮に入ったから知らんが部外者は立ち入り禁止やで」

エコー「えっ……あの……」

サニー「警察呼ぶぞコラァ!!」

ポカッ

サニー「あでっ!?」

ルージュ「なに騒いでんの」

サニー「あ……ルージュ先輩。あれ見てくださいよあれ!」

ルージュ「あれ? ……あれはエコーじゃない」

サニー「は?」

ピース「エコーって、じゃあもしかしてあの子が……」




アクア「エコー、こっちよ」

エコー「あっ!」

アクア「ごめんなさいね、出迎えが遅れたわ」

エコー「い、いえ! よろしくお願いします!」

サニー「……」

ピース「へー……あの子が」

ルージュ「仲良くやるのよ。一応同期なんだから」

サニー「同期? でもあの子映画しか出ないんじゃないんですか」

ルージュ「それでも、あたし達と同じプリキュアだし仲間なの。違う?」

サニー「いいえー、その通りですねー」

ルージュ「……サニー」グイッ

サニー「いだだだっ」

ルージュ「あんたねぇ、普段の態度が悪いわよ」

サニー「はいはいすんません、いたたたっ」

ルージュ「……個人的にあんたが一番心配だわ」

サニー「なに言ってんですかこんないい子ちゃん捕まえておいて」

ルージュ「はぁ……調子に乗るのもほどほどにしなさいよね、まったく」

サニー「耳つねらんでもええやろが……」ボソッ

ルージュ「なに?」

サニー「なんでもありませーん」

ルージュ「ほら、エコーも来たんだしみんなで挨拶に行きな」

サニー「はぁ? うちらが行くんすか? 普通向こうから来るもんやろ」

ルージュ「新人のくせに偉そうにするんじゃないの!」

サニー「はーい……行くで、ピース」

ピース「う、うん」

ルージュ(まったく……頭が痛くなるわ。今年は五人全員まともな子が来るよう願っていたのに)

ルージュ(ハッピーはリーダーシップに欠けるしサニーは問題児だしピースはよく分かんないし……)

ルージュ(あーあ、一度でいいから手のかからない後輩が出てきて欲しいわ……)

・・・・・

マーチ「よろしくね、エコー」

エコー「よ、よろしく」

サニー「おう、よろしくなー」

ビューティ「短い期間になりますが、一緒にがんばりましょう」

エコー「うん」

サニー(……なんつーか、華がないなこいつ)

サニー「エコーはなんでプリキュアになったん?」

エコー「えっと……」

サニー「ああ? なに? 聞こえんわ?」

エコー「え、え……」

マーチ「ほら怯えてるでしょ、やめなって」

サニー「ちょっと聞いてるだけやん」

マーチ「ごめんね、こいつうるさくてさ。まだ時間あるし、寮を案内するよ」

エコー「は、はい」

サニー(活気のないやつやなぁ……)

ここまで

・・・・・

ハッピー『キラキラ輝く未来の光! キュアハッピー!』

ハッピー『みんなこんにちはー! 新しいプリキュアのキュアハッピーでーす!』

パチパチパチ!!

司会『いよいよ来月からスマイルプリキュアが始まりますね』

ハッピー『はい! 今年のプリキュアは見ている人たちに笑顔と元気を分け与えられたらいいなって思ってます!』

ハッピー『被災地のみなさんにもぜひ見てもらって、元気になってもらってほしいです!』

司会『ありがとうございます。今日はわざわざ東北まで来てもらってイベント開催していますが、この後もしばらく残るそうで?』

ハッピー『はい!子どもたちと一緒に新しい歌とダンスをみんなで歌って踊ります!』

司会『これは子どもたちも大喜びですね。以上、中継を……』

プツンッ

ローズ「……」

アクア「頑張ってるわね、ハッピー」

ローズ「ええ、よくやってくれてるわ。これからあちこち回るらしいし」

アクア「少し無茶させすぎてるかしら。まだ新人なのに」

アクア「壊れなきゃいいけど……」

ローズ「彼女たちのサポートをするために私たちがいるんでしょ? フォローはするわ」

アクア「ええ……そうね。ここにはプリキュア全員がいる。困ったときはいつでも助け合うことができるわ」

アクア「何か問題が起きる前に対処することもね」

ローズ「……ミントは」

アクア「え?」

ローズ「彼女はどうするの……このままほったらかしにするの?」

アクア「……しばらくは様子を見ないと。今のところ何もおかしなことはしていないんだし」

アクア「それにこの寮にいる間は私たちはみんな仲間よ。疑ったりするのはあまりよくないことだわ」

ローズ「……」

アクア「大丈夫よローズ、私とローズの仲はこれからも何の問題もない。ずっと一緒よ。ミントのことなんて今は忘れましょ」

ローズ「え、ええ……そうね」

アクア(……そう、この寮はローズと一緒に暮らすために用意した寮。仲間だとかプリキュア同士での助け合いだとかは全部建前)

アクア(あなたが傍にいてくれるだけでいいし……あなたの為にだったら私は何でもするわ。ローズ)

アクア(だからこそ……あなたが不穏に思う種は、全て摘み取らなければいけないのだけれどね)

・・・・・

ハッピー「ただいま東北から飛行機に乗って帰ってきました!」

ブンビー「あっ、お疲れ様です。じゃあ今すぐスタジオに向かいますね」

ハッピー「はーい。あっ、これお土産です」

ブンビー「私にですか? いやーすみませんわざわざ。それにしても大変ですね、これからまだ撮影が残ってるなんて」

ハッピー「今月は映画の撮影もありますから。スケジュールがキツキツで」

ブンビー「いやぁ、よく頑張ってますよ。ほんと」

ハッピー「えへへ。けどわたしまだまだですよ。いまだにカメラの前で緊張しちゃうし、台詞も忘れちゃうし」

ブンビー「なぁに、そんなのは慣れですよ。この業界はね、技術よりもやる気と体力さえあればなんとかなるんですよ!」

ハッピー「本当ですか? わたしいけますか?」

ブンビー「いけますって。ハッピーさんほどのバイタリティがあればスター街道一直線ですよ!」

ハッピー「いやースターなんて照れますよー! あはははは!」

ブンビー「わはは! わはははは!」

・・・・・
……ハッピー・サニーの部屋

ハッピー「というわけで……ようやく今日一日終わったけど……もう力尽きました……」

ハッピー「無理です……もう……おやすみなさい……」

サニー「おーいハッピー、エコーには会わんでええのか?」

ハッピー「エコー……? エコーは……ええ子ー……」

サニー「……」

ハッピー「……ぐぅ……ぐぅ……」

サニー(あかん、しょうもなさすぎで突っ込むのも忘れた)

サニー「はぁ……まあええわ。今日はさすがに忙しかったみたいやしな」

サニー(うちはどうしよっかな……まだ眠くないし。ちょっと外の空気でも吸いに行こか)

サニー「……」

サニー(プリキュアになったのはええけど……イマイチ実感がわかんなぁ。こんなもんか?)

サニー(もっと派手で楽しいもんやと思ったんやけど……)

サニー「……」

サニー(今日会ったエコーってやつ……ありゃダメやな。メンタル弱そうやし。この先やっていけへんやろ)

サニー(ピースもそうやけどなんであないオドオドしとんねん。プリキュアになったんやからもっと堂々としたらええのに)

サニー(ああいうのは、見てるだけでムカついてくるわ。いっぺんど突いて根性入れた方がええんか?)

サニー「……ん?」

サニー(トレーニングルームから声が聞こえる……)

ルージュ「298……299……300」

ルージュ「ふぅ……おわりっと」

ブラック「1199……1200っ! ふぅ」

ルージュ「……よくやりますねそんなに」

ブラック「これぐらいやんないと鈍っちゃうのよ」

ルージュ「まったく、ついていけないですよほんと。……あれ?」

ブラック「なに?」

サニー「あっ…」

ブラック「おっ、サニーじゃん。どうしたのこんな時間に」

サニー「いやー……ちょっと眠れなくて」

ルージュ「なに? 体力持て余してんの? 一緒にやる?」

サニー「勘弁してくださいよ。うちだって今日はヘトヘトなんですから」

ルージュ「まぁいいや……ちょっと来な」

サニー「え?」

ルージュ「ほら早く」

サニー「は、はあ」

サニー(なんか言われるんか?)

ルージュ「どう? プリキュアになって。慣れた?」

サニー「え? まぁ……ぼちぼち」

ブラック「なによ、歯切れ悪いじゃない。聞いたわよ、あんた素行悪いんだって?」

サニー「誰がそんなアホなこと言ってるんすか。そんなこと全然ないですよ」

ルージュ「あたしが言ったの」

サニー「あ……そうっすか」

ブラック「ま、やんちゃなのはいいけどさ。仕事はしっかりやりなよ?」

サニー(あぶなっ……怒られるかと思った)

ブラック「サニーの場合は、もうちょっと演技力磨いたほうがいいけどねー」

サニー「うぐっ」

ブラック「デモテープ見たよ、ありゃひどいって。ブルームとピーチも笑ってたからね」

サニー「そ、そこまでひどいですか!?」

ルージュ「サニーの場合は、専属で演技を教える子をつけた方がいいかもね」

サニー「ええー……勘弁してくださいって」

ブラック「演技が上手いといえば……ムーンライトとか?」

ルージュ「あー」

サニー「いやそれはほんま勘弁してください。あの人は無理ですって」

ルージュ「ま……確かにムーンライトに指導は無理かもね。パッションやブロッサムあたりにでも教えてもらいなさい。いい?」

サニー「はいはい……」

ルージュ「『はい』は一回でいいの」

サニー「はい!」

ブラック「ま、頑張りなよ。あたし達はもうちょっとここでトレーニングしてるから、おやすみ」

サニー「はい、おやすみなさい」

サニー(……はぁ)

サニー「……」

サニー(うちそんなに演技下手か……?)

ここまで

・・・・・数日後

ピース「……」

ミューズ「……」

ピース「……コホン」

ミューズ「……」

ピース「……」

ミューズ「……」

ピース(なんでこんなことに……)

ピース(今日はオールスターの撮影なのに……みんな他のスイートの先輩たちと休憩時間過ごしてるからわたし達だけが残っちゃった)

ピース(この子、寮に入ってから一度も会話してくれないどころか目も合わせてくれないし……テレビの中じゃかわいかったのに)

ピース(まさかわたしのこと馬鹿にしてる……!? いくらわたしが新人だからって、こんな小さな子に馬鹿にされるなんて……むかつく)

ピース(プリキュアになるぐらいだから素直でいい子だと思ってたのに。せめて愛想ぐらい少し良くたって……)

ミューズ「……」チラッ

ピース「っ……」

ミューズ「……チッ」

ピース「!!」ビクッ

ミューズ「……」

ピース(あ……どこか行っちゃった)

ピース「……」

ピース(うわー……舌打ちされた。こっち見て舌打ちされた……年下に舌打ち……)

ピース(……別に? あんなのでビビったりなんかはしないけど……むしろわたしだってイラっときたし)

ピース(今度ミューズがあんな態度とったらさすがのわたしも怒っちゃおう。『ふざけないで! 舐めるのもいいかげんにしろ!』とか言っちゃおう)

ピース(それでも聞かないなら力づくで聞かせるしかないよね。平手打ちでバシーン!、と力の違いを思い知らせないと)

ピース(おりゃっおりゃっ、いい加減にしろミューズ。おりゃっおりゃっ)

ピース(ついでにサニーもおりゃっおりゃっおりゃっ)

ピース「……えへへ」

・・・・・

サニー「うおー! ここが横浜かー!!」

ハッピー「サニー! 写真写真!」

サニー「おっ、よっしゃ! 撮るか!」

メロディ「ふたりとも観光客じゃないんだからさ……」

エコー「……」

メロディ「そういえばエコーって横浜出身なんだっけ」

エコー「え? い、一応そうですけど」

メロディ「じゃあさ、中華街とか案内してよ。お腹すいたし」

エコー「ええ? えっと……」

サニー「なんやねん、案内するのかせんのかどっちなんや」

エコー「し、しますけど……そんなに詳しいわけでもないし」

サニー「はぁ!? 横浜生まれなのに?」

エコー「それは違……」

メロディ「まぁまぁ、とりあえず知ってるお店とかでいいからさ」

ハッピー「やったー! ご飯ご飯!」

・・・・・

サニー「……」

エコー「……」

サニー「……なあ、まだ着かんの?」

エコー「あ……このお店とか」

サニー「……満員やん」

エコー「えっ、じゃああのお店……」

ハッピー「あっちも満員だね」

エコー「……」

サニー「ちっ、なんやねん使えんな」

エコー「う……」

メロディ「ほらほらそういうこと言わないの、満員なんだし仕方ないじゃん」

メロディ「じゃああたしが、パパッと適当にカンで決めちゃおう……うーん……あのお店!」

サニー「大丈夫っすか?……客ほとんどおらんですけど」

メロディ「大丈夫大丈夫。中華街なら大抵のお店はおいしいでしょ」

メロディ「さ、なんでも頼みな。今日はあたしがおごるからさ」

サニー「さっすが先輩! なに食おっかな~」

エコー「あ……小龍包とかおいしいかも」

ハッピー「しょうろんぽーってなに?」

エコー「あのね、見た目は肉まんみたいなんだけど……」

メロディ「うーん……全部頼んじゃおうか」

エコー「えっ」

メロディ「すみませーん!このメニューにあるやつ全部持ってきてください!」

エコー(全部って……)

メロディ「プリキュアなんだしこれぐらい食べられるでしょ?」

ハッピー「がんばります!」

エコー「……」

メロディ「まぁとりあえず、気取るわけじゃないけど乾杯でもしよっか。未来のスターに」

メロディ「それとあたしは、これからの新しい人生に」

サニー「新しい人生って、まだまだ若いやないですかー」

メロディ「はは、そだね」

エコー「……」

メロディ「三人はさ、これからの目標とかあるの?」

ハッピー「目標? うーん……」

サニー「そらもちろん、スマイルを日本でナンバーワンの番組にすることですよ。グッズもCDの売上もナンバーワン。全部ナンバーワン!」

メロディ「あはは……まぁいいか」

メロディ「エコーはなにかある?」

エコー「わ、私ですか……? 私はとりあえず、今度の映画を一生懸命頑張ることで精一杯で」

サニー「ま、映画が終わったらエコーちゃんもお役御免になりそうやしな」

エコー「っ……」

メロディ「そんなことないって、チャンスはまだまだあるよ。もしかしたらこれをキッカケにテレビや来年の映画にも出れるかもしれないしね」

エコー「は、はい」

ハッピー「目標かぁ……」

店員「お待たせしました」

メロディ「あっ、来た来た! とりあえず食べよっか」

ハッピー「わーい! いっただきまーす!」

サニー「よっしゃ、食お食お……」モグモグ

サニー(……ん? これ……うまいか……?)

メロディ「うまっ! これうまっ!」

ハッピー「わたしこんな美味しいの初めて食べました~!」

メロディ「あっ、それ食べちゃうけどいい?」

ハッピー「それわたしもちょうだい!」

エコー「ど、どうぞ……」

サニー「……」

サニー(このふたり……うまいもん食ったことあるんか……?)


・・・・・

ビート「見て見てビューティ! このお土産とかどうかしら」

ビューティ「ええ、いいと思います」

ビート「あっ、でもこっちもいいかな……」

ビューティ「ビート先輩、お土産は最終日にでも買えばいいじゃないですか」

ビート「あ……そ、そうかしら。ついはしゃいじゃって」

ビューティ「ふふ」

ビート「でも今のうちに何買うかざっと見ておくだけでもいいじゃない。ビューティは何か買わないの?」

ビューティ「私……ですか?」

ビート「ええ。家族にあげたりとか」

ビューティ「いえ……家族は……」

ビート「あっ、そうそう! ダークドリーム先輩にも何かお土産渡しましょ」

ビューティ「っ……」

ビート「何がいいかしら。やっぱり食べ物系? ビューティは何がいいと思う?」

ビューティ「……」

ビート「ビューティ?」

ビューティ「いえ……どれでも喜ぶと思いますよ」

ビート「そう? うーん……どれにしましょうか」

ビューティ「……」

マーチ「あっ、おーい!」

ビューティ「マーチ……!」

リズム「あら、ビート。こんなところにいたんだ」

ビート「ええ。ちょっとお土産を何買おうか見ててね」

マーチ「あたしたちもちょっと観光がてら散歩してたんだ」

ビューティ「そうだったのですか」

リズム「ふふ、マーチったら意外とかわいい一面があるのよ。横浜に来たらはしゃいじゃって。水族館に行きたーい、とか」

マーチ「そ、そんなこと言ってませんよ!」

リズム「はいはい、今度私が連れてってあげますからねー」

マーチ「ああもう、やめてくださいってばぁ」

ビューティ「……」

ビート「水族館……私も行ってみたい!」

マーチ「ですよね!」

リズム「やっぱり行きたいんじゃない」

マーチ「あぅ……ま、まぁ……」

ビューティ「……ふふ、マーチはかわいいですね」

マーチ「ちょっ! ビュ、ビューティまでなに言ってんの!」

ビューティ「うふふ」

リズム「……ねえねえ、ビート」

ビート「え?」

リズム「あのふたりって、なんかいい感じよね」

ビート「いい感じ?」

リズム「ほら、あのふたりを見てみなさいよ」

ビート「……」

リズム「なんか、特別な関係に見えない?」

ビート「そ、そう……?」

ビート(よく分からないわ……)

リズム「なんか私、ふたりのこと応援したくなっちゃうなー」

ビート「……」

ここまで

・・・・・

サニー「ふんふんふーん」

ハッピー「サニー、なにやってんの?」

サニー「んー? なんでも」ニヤニヤ

スタッフ「もうすぐリハーサルはじまりまーす」

サニー「はーい。よっしゃ、行くかハッピー」

ハッピー「あっ、待ってサニー……あれ?」

マーチ「ああっ!? なにこれ!」

ハッピー「撮影で使う両方の靴の紐……結ばれちゃってる」

マーチ「ああもうこんな滅茶苦茶に結んで……解きづらい! これじゃ履けないって!!」

ハッピー「あっははは」

マーチ「笑ってる場合じゃないでしょハッピー……誰こんなことしたの!?」

サニー「……ぷぷっ」

マーチ「サニー!!」

サニー「あっははは! はよ解かんとリハ間に合わんで~!」

マーチ「このっ…よくも~!」

ピース「……」

ピース(わたしのもやられてる……)

ビューティ「はぁ……まったく」

エコー「うう……解けない……」

サニー「エコー何やってんねん。お前主役なんやからはよ来いや」

エコー「そ、そんなぁ……」



メロディ「スマイルは仲良くやってるね~」

ビート「いいのかしら……あれ」

メロディ「あんなイタズラ、かわいいもんじゃん……ってあたしの靴もやられてる!?」

ビート(あ……私のも……)

・・・・・

マーチ「はぁ……今日の撮影終わった」

サニー「お疲れさーん。今日もNG連発したマーチさん」

マーチ「……ったく、自分だって連発してたでしょうが」

サニー「これからみんなでどこか遊びに行かへん?」

マーチ「あのね、もう遅いんだから遊びに行く時間なんかないでしょ」

サニー「ちょっとぐらいええやん。今日は予定より早く終わったんやし」

マーチ「ダメだっての、寮に帰るんだから。明日だって忙しいのに」

サニー「ちぇっ……真面目やな。ならハッピーでも誘おっと」

マーチ「こら待って」

サニー「なんや」

マーチ「ダメだって言ってんでしょ。ハッピーなんて誘ったらほいほいついて行く子じゃない」

サニー「だから誘うんやん」

マーチ「仕事が終わったらすぐ帰る! 寮の決まりでしょ、ルールは守りな」

サニー「ルールルールって……うっさいわ」

マーチ「ピースやエコーも誘っちゃダメだよ。あの子達気が弱いんだから、あんたが強引に誘ったら断れないの」

サニー「ピースやエコーだけ誘ってもなぁ……あいつらつまらんし。ろくに会話しようとせえへんやん」

マーチ「あんたのこと怖がってるんだよ」

サニー「ほーん? ほなマーチはピースやエコーとふたりっきりで楽しくおしゃべりしたことあるんか?」

マーチ「それは……」

サニー「あっははは! お前も嫌われとるんやなぁ!」

マーチ「き、嫌われてなんか……ない……と思うけど」

サニー「ああいうおもろくもないしょうもない奴らはな、こっちがイジってやらなあかんねん」

サニー「せやないと向こうからろくにコミュニケーション取ろうとせえへんやろ?」

マーチ「……ほどほどにしなよ」

サニー「はいはい」

・・・・・
……プリキュア寮

サニー「ハッピー、明日何時からやっけ」

ハッピー「んーと、確か朝早かった気がする」

サニー「それじゃ分からんやろ……」

ハッピー「でもいつもマーチが起こしに来てくれるし、その時に起きればいいんじゃない?」

サニー「せやなぁ……おっ」

ハッピー「どうしたの?」

サニー「ここって確か……パッション先輩の部屋やったっけ」

ハッピー「んー分かんない」

サニー「ほな確かめてみよか」ニヤニヤ

ハッピー「?」

ピンポーン

ピンポーンピンポーンピンポーン
ピンポピンポピンポピンポーン

サニー「よっしゃ、逃げるでハッピー」

ハッピー「あっ、待って!」

ガチャッ

パッション「はいはい誰ですか……あら? 誰もいない……?」






サニー「ぷぷっ……」

ハッピー「あはははっ」

サニー「こら、あんま笑い声出すな。バレるやろ」

サニー「でもおもろいし次行ってみよか」

ピンポピンポピンポピンポピンポピンポピンポーン
ガチャッ

ブロッサム「ど、どなたですか……あれ?」


ピンポピンポピンポピンポピンポピンポピンポーン
ガチャッ

ビート「……???」キョロキョロ


ピンポピンポピンポピンポピンポピンポピンポーン
ガチャッ

ブルーム「うるさいですよブラック先輩……ってあれ? 誰もいないし」

イーグレット「どうしたの?」

ブルーム「さ、さあ……?」





サニー「ぷっくくくくく」

ハッピー「くふふふっ」

サニー「あははは! いやーおもろいおもろい。次は~……おっ、あの部屋いこか」

ハッピー「ここは?」

サニー「ここは確かアクア先輩とローズ先輩の部屋やで」

ハッピー「うわ~……バレたらすごい怒られそう」

サニー「そのスリルがええやん。いくで」

ピンポピンポピンポピンポピンポピンポピンピンポピンポピンポピンポピンポピンポピンポーン

サニー「逃げるで!」

ハッピー「うんっ!」ドサッ

ハッピー「ふぎゃっ!?」

サニー「!!」

サニー(なに転んでんねんアホ!!)

ガチャッ…

サニー(やばっ……うちだけでも先に逃げよ)

ハッピー「サニー待っ……あ」

ローズ「……」

ハッピー「……」

ローズ「……」

ハッピー「……」

ローズ「……」

ハッピー「え……えへへ……」

ローズ「さっき……部屋のチャイムが誰かに連打されたって報告が来てたけど」

ハッピー「う……」

ローズ「ちょっとこっちに来て詳しい話を聞かせてもらおうかしら」

ハッピー「ひ……ひぃぃいいい」

・・・・・

サニー「すまんハッピー、うちのために犠牲になってもうて。頑張れよ」

サニー「さてと、ウチは部屋に戻ってようかな~……おっ」

サニー(ここは確かエコーの部屋やったっけ……ぬふふ)

ピンポーンピンポーンピンポーン
ピンポピンポピンポピンポーン

ガチャッ

エコー「は、はい……」

サニー「よお」

エコー「!!」

サニー「なにしてんの?」

エコー「え……これから寝ようと思って」

サニー「ほぉ~、早いなぁ」

エコー「明日の朝早いし……」

サニー「そっか。ほな邪魔したな、おやすみ~」

エコー「お、おやすみなさい」

バタンッ

サニー「……」

ピンポピンポピンポピンポーン
ガチャッ

エコー「……な、なに?」

サニー「歯磨いたか?」

エコー「磨いたけど……」

サニー「虫歯にならんよう気ぃ付けんとな。おやすみ」

エコー「……おやすみなさい」

バタンッ

ピンポピンポピンポピンピンポピンポピンポピンポーン
ドンドンドンドンッ!! ガンガンガンガンッ!!

ガチャッ

エコー「な、なんなのさっきから……」

サニー「はよ寝ろや!!」

エコー「ええ……」

サニー「アカンな~、はよ寝らんと。明日早いんやから。こんなことで起きたらアカンで」

エコー「こ、こんなことって……」

サニー「言い訳すんな、プロだったら寝るときも集中せえや」

エコー「……は、はい」

サニー「よしっ、じゃあ寝てこい。ほらはよ行けや」

エコー「……」

バタンッ

サニー「……ぷぷっ」

ピンポピンポピンポピンピンポピンポピンポピンポーン





エコー「うう……」

エコー(どうして私にこんなことするんだろう……)

・・・・・

サニー「あっははは! おもろかった~。エコーの困った顔ってほんまおもろいわ~」

サニー「もう十分楽しんだし、部屋戻ってうちも寝るか」

サニー「そういやハッピーどうしたかなぁ、今頃怒られてんのかな」

ガチャッ

ローズ「遅かったわね」

サニー「!?」

ハッピー「サ、サニ~……」

ローズ「……」

サニー「あ、あれ~……ローズ先輩部屋間違ってません? ここウチらの部屋ですけど……」

ローズ「ええ、そうね」

サニー「ええっと……」

ローズ「とりあえず、そこに正座しなさい」

ハッピー「……」

サニー「……はい」

ここまで

・・・・・翌日

マーチ「それで、ゲンコツ食らった挙句二時間も説教?」

ハッピー「えへへ」

サニー「ほんま最悪や。こっちはもうクタクタやで」

ビューティ「当然のことですね」

ピース「ハッピーかわいそう……」

マーチ「サニー、ハッピーに変なこと吹き込むんじゃないよ」

サニー「なっ、ウチだけが悪いんか!? ちょっとイタズラしただけやろ」

ビューティ「……サニー、少しお話が」

サニー「ん?」

ビューティ「あなたの言動には、正直目の余るところがあります。あなたにはプリキュアとしての自覚があるのですか?」

サニー「なんや急に」

ビューティ「いいですか、プリキュアというのは子供たちのお手本になるような……」



ブルーム「こらーサニー!」

サニー「げっ、やばっ」

ブルーム「昨日はよくもやってくれたね! 聞いたよ!」

サニー「あはは、すんませーん」

ブルーム「こんのっ、こうしちゃる!」

サニー「あーちょっ! くすぐったいからやめてくださいってブルーノ先輩」

ブルーム「ブルームだっての!」

ブラック「ハッピー、サニー。まったく昨日はみんなに迷惑かけて」

ハッピー「えへへ、ごめんなさい」

サニー「すんません」

ブラック「迷惑かけるんだったら、ブルームだけにしなさい」

ブルーム「あたしだけ!?」

ピーチ「桃寮にいた時も寝てるブルーム先輩によくイタズラしましたよね」

ブラック「あはは、あれ面白かったー」

ビューティ「……」

マーチ「ま、ああいうのは先輩に好かれるタイプなんだろうね」

ビューティ「……納得はいきませんけど」ボソッ

マーチ「え?」

ビューティ「いえ、なんでもありません」

メロディ「みんな! 時間だからもう行くよ」

ハッピー「あっ、はーい!」

サニー「じゃお先に行ってきまーす」

ブラック「やれやれ、プリキュアの方はしっかりやってほしいけど」

エコー「お、おはようございます……」

ピーチ「あれ? えっと……」

ブラック「エコー、なにやってんの」

ピーチ「そうそう! エコーエコー!」

エコー「ごめんなさい……昨日あんまり寝れなくて、それで少し起きるのが遅くなって……」

ブラック「もうみんな車乗って行っちゃったわよ、あんたも早く行きなさいって」

エコー「え……ええ!?」

・・・・・

サニー「遅いわ、何やってんねん。寝坊か」

エコー「う……ご、ごめんなさい」

ビューティ「遅刻とはあまり感心できないことですね。時間厳守は当然のルールです。あなたもプロなのですから自覚してください」

エコー「はい……」

マーチ「まぁまぁ、ビューティ」

マーチ(なんだか今日のビューティ、イライラしてるなー……なんでだろ)

ハッピー「ごめんね、部屋まで迎えに行けばよかったね。来るまで気づかなかった」

エコー「……」

ブンビー「出発するので、お好きなところにお座りください」

エコー「あ……はい」

エコー(オールスター用の送迎バス……広いのはいいけど、スマイルの席はみんな集まっててなんだか入りづらい……)

エコー(リズム先輩の横はメロディ先輩だし、ミューズ……先輩は無理そう。ビート先輩の横は)

ハミィ「にゃー」

エコー「……」

エコー(……一人で座ろう)

ビート「横、いいわよ」

エコー「え?」

ビート「ハミィなら膝の上に乗せるから」

ハミィ「にゃー」

エコー「す、すみません」

ビート「いいのよ、おいでハミィ。どうぞ」

エコー「は、はい」

エコー(ビート先輩……優しいしかっこいい。素敵だなぁ……)

ハミィ「にゃー」

エコー「ハミィって……スイートの妖精役ですよね。どうしてこのバス」

ビート「昨日から私が預かってるの。すっかり懐いちゃってね。ねー?」

ハミィ「にゃー」

エコー「へー……」

エコー(いいなぁ……かわいいなぁ)

マーチ「……かわいいなぁ」

ハッピー「ハミィが?」

マーチ「えっ……わっ!? な、なに?」

ハッピー「今ハミィ見てかわいいって言ってたよ?」

マーチ「え? ああ……その……あたしかわいいもの好きでさ。ネコとかいいなぁって思って」

サニー「本人は可愛げないのにな」

マーチ「う、うるさいなぁ……」

ビューティ「っ……そんなことはありません!」

サニー「!?」

マーチ「ビュ、ビューティ……?」

ビューティ「あ……い、いえすみません急に」

サニー「ほー、よかったなぁマーチちゃん。ビューティは可愛いと思ってくれてるらしいで」

マーチ「な、なに言ってんのサニー」

ビューティ「わ、私は別にそういうことでは……」

サニー「なんや二人して顔赤らめて。キモイで」

マーチ「うるさいなもう!」

ビューティ(まったくサニーは……余計なことばかり……)

マーチ「……はぁ」

マーチ(だいたい可愛いっていうのはあたしなんかよりも……)

ピース「……」

マーチ(相変わらずかわいいなぁピース、もっとお喋りしたいけどなかなか近づけない……ん?)

ミューズ「……」

マーチ(向こうにいるミューズ先輩もちっちゃくて可愛いよねー……)

サニー「なにニヤけてんねん。ほんまキモいな」

マーチ「!!」

ビューティ「……」

ここまで

・・・・・

スタッフ「危ないので下がってくださーい!」



ハッピー「うわー……人がたくさんいるね」

マーチ「昨日もぼちぼち来てたけど、ここで撮影してるって噂が広まったせいか今日はかなりの見学者がいるね」

ビューティ「みなさん、こういう時こそ常日頃の振る舞いが試される時ですよ」

ハッピー「え?」

ビューティ「例え大量の見学者が押し寄せたとしても決して慌てず取り乱さず、プリキュアとしてしたたかに振る舞うのです」

ハッピー「つまり……えーっと」

ビューティ「ふふ、簡単なことですよ。ファンの皆様に笑顔で返事をすればいいのです」

ハッピー「おお、なるほど!」





「頑張ってくださーい!」

ハッピー「はーい! ありがとうございまーす!」

マーチ「いや、本当に返事しなくても……」

ビューティ「ふふっ」

マーチ「まぁ、確かに最近は写真撮られたりしたらすぐツイッターにアップされるしね」

マーチ「気が抜けたところとか撮られたらたまったもんじゃないし……常に笑顔を作っておかないと」

ビューティ「つい…ったー?」

マーチ「ん? ツイッターだよツイッター」

ビューティ「そのついったーというものはなんですか?」

マーチ「えっ、知らないの?」

ビューティ「はい」

マーチ「ええっと……だからね、なんていうか小さいブログみたいなもので」

ビューティ「ぶろぐ?」

ハッピー「応援ありがとうございまーす! がんばりまーす!」

「ねえねえ、あれがキュアピースじゃない?」
「うわ、本当だ。かわいいな~」


ピース「……」

ピース(え……えへへ。わたしが可愛いだなんて)


「おっ、キュアサニーだ!」
「写真撮っておこうぜ」


サニー「チッ……ごらァ! 何勝手に撮って」

メロディ「サニー、そんなことで怒らないの」

サニー「せやかてあいつら勝手に人のことパシャパシャと……」

メロディ「あたし達プリキュアは、人の前ではどんな時も笑顔でいなきゃいけないの」

メロディ「他の四人を見てみな」

サニー「……」

メロディ「みんなちゃんと対応してるでしょ? サニーもがんばりな」

サニー「……うっす」

メロディ「よし、じゃあリハの準備しよっか。大丈夫、撮影の時はスタッフが周りの人を退けてくれるから安心して」

・・・・・

サニー「はぁー……ったく」

ハッピー「どうしたの?」

サニー「笑顔作んのしんどいわー……愛想良くすんのめんどい」

ハッピー「サニーいつも笑ってるじゃん」

サニー「別にいつもの状態だったらええねん。例えば道歩いててたまたまファンの人に会うたらその時はウチだって笑顔で握手してサインまで書いてやるで」

サニー「けどなぁ、撮影しとる時にファンが視界に入ると集中できんし……仕事の時は外部の人間なんて目障りやわ」

ハッピー「ふーん」

サニー「ハッピーは気にならんの?」

ハッピー「わたしは全然」

サニー「ええなー、能天気で。その笑顔も自然に出てるもんか?」

ハッピー「?」

サニー「まぁええけどな。ハッピーぐらいの天然でええやつなんて日本全国探してもほとんどおらんやろうし」

サニー「ウチはハッピーのそういうとこ好きやで」

ハッピー「でへへ、どうもです」

サニー「あーあ、今日はもう帰りたいわ、気分が乗らん」

スタッフ「ハッピーさん、ちょといいですか?」

ハッピー「あっ、はーい。じゃあわたし行ってくるね」

サニー「ほいほい」

サニー(今日も演技でダメだし食らうし……はぁ、おもろないなぁ)

サニー(アクションシーンやったらウチかてバリバリやるのに……)

サニー「……ん?」








幼女「ハッピー! ハッピー!」

ここまで

今週ちょっと忙しいんで休みます
来週から本気出します
一応スマイルは5人全員にスポットを当てるつもりなので先は少し長くなりそうです

サニー(おいおいおいおい、スタッフなにやってんねん。普通に子供入ってきてるやん)

幼女「ハッピー!」

サニー「こら」

幼女「!!」

サニー「アカンやろ勝手に入ってきちゃ。お母さんどこや、はよ戻り」

幼女「……おかあさんどこ?」

サニー「いや、ウチに聞かれても知らんし」

幼女「……」

サニー「おい、なに黙ってんねん」

幼女「……ひっぐ……うええええええん」

サニー「おわっ!? なんで泣くねん!」

幼女「びええええええ!!」

サニー(勘弁してくれや……)

幼女「うええええええん! うえええええん!!」

サニー「な、泣くなって……ああもう! どないしたらええねん!」


ミューズ「ちょっと、何やってるの!」

サニー「あ……ミューズ」

幼女「うええええええん」

ミューズ「なに子ども泣かしてんのよ!?」

サニー「いや、ウチが泣かしたわけじゃ……」

幼女「ひっぐ……ふえええええん」

ミューズ「よしよし、どうしたの? あの怖い顔のお姉さんにに苛められた?」

サニー「なっ……!?」

幼女「ひっぐ……おかあさんがいない……」

ミューズ「そっか、はぐれちゃったのね。迷子かな」

幼女「ひっぐ……ぐずっ……」

ミューズ「大丈夫だよ、スタッフの人に頼んでお母さん呼んであげるから」

幼女「ほんと……?」

ミューズ「うん。お母さんが来るまではわたしがついていてあげる。だから泣かないで」

幼女「……うん」

サニー「……」

ミューズ「プリキュアのくせに子ども泣かせるなんて、バカじゃないの。プリキュア失格よ」

サニー「!!」

ミューズ「ほら、向こう行きましょ」

幼女「うん……」

サニー「っ……」

サニー(うちが……プリキュア失格やと……?)

サニー(あんのガキ、勝手なこと言って……!!)

ピース「あ……サ、サニー」

サニー「……」

ピース「監督が呼んで……」

サニー「うっさい黙ってろ!!」

ピース「ひっ……!?」

サニー(くっそ……なんやねん腹立つ)

・・・・・プリキュア寮

ローズ「……」

ムーンライト「ローズ」

ローズ「!!」

ムーンライト「楽しそうね、何かいいことでもあったの」

ローズ「何よ……いきなり」

ムーンライト「ああ、アクアと一緒の部屋だからね」

ローズ「……」

ムーンライト「よかったじゃない、好きな人と一緒になれて」

ローズ「……そういうあんたは? ビートとうまくいってるの?」

ムーンライト「もちろんよ。先輩後輩としていい関係が築けてるわ」

ローズ「そう、ならよかったわ」

ムーンライト「ただひとつ聞きたいんだけど」

ローズ「?」

ムーンライト「この寮、ペットは禁止じゃないの?」

ローズ「はぁ?」

ムーンライト「ビートが連れてきてるのよ」

ローズ「……ああ、ハミィのことね」

ムーンライト「猫は禁止にしないの? うるさいし散らかすし、おまけに懐かないくせに図太くご飯だけは要求してくる」

ローズ「ははーん、さてはハミィにビート取られたのね」

ムーンライト「……」

ローズ「残念だけど、ペットはよほどのものじゃない限り禁止じゃないわよ。あんたもハミィと仲良くやりなさい」

ムーンライト「……取られた? 言ってる意味が分からないわ。私は人が住むところに動物が住むのはおかしいって言ってるのよ」

ローズ「ひとつ忠告しておくけど、ここで暮らす以上あんたのその自分勝手な性格は直しなさい」

ローズ「ここではみんなが協力し合って生活するの。それなのに誰か一人が勝手なことを言ってたら規律が乱れるわ」

ムーンライト「猫を禁止にしろっていう主張が自分勝手だって言いたいわけ?」

ローズ「そうよ。分かったのなら拒絶するよりも仲良くする努力をしなさい」

ムーンライト「……」

ローズ「はぁ……あのね、あんたさぁぶっちゃけビートぐらいしか話し相手いないんでしょ? そのビートが猫を飼いたいっていうなら、それぐらい寛容になったらどうなのよ」

ムーンライト「ビートだけじゃない、パッションとも仲いいわ。この前も一緒に食事に行ったしね」

ムーンライト「……まぁ、ピーチもついて来たけど」

ローズ「……」

ムーンライト「とにかく猫は嫌なの、何とかしてちょうだい」

ローズ「私は何とかする気なんてないし、猫との共同生活の相談に乗って欲しいって言うのなら後にしてちょうだい。忙しいの」

ムーンライト「話ぐらい聞いてもいいじゃない」

ローズ「だったらパッションにしなさいよ。仲いいんでしょ」

ムーンライト「あなたはレズだから、女性には優しく相談に乗ってくれると思って。それともベッドで一晩一緒に寝ないと優しくしてくれないのかしら?」

ローズ「……最低。二度と話しかけてこないで」

ムーンライト「そういうあなただって、ここでのまともな話し相手なんているの? アクアとパッションぐらいでしょ?」

ローズ「ビートが猫を飼いたがる理由がよく分かったわ」

ムーンライト「?」

ローズ「あんたの同じ部屋でふたりっきりなんて地獄みたいなものだものね。猫でも救いを求めたくなるわ」

ローズ「今はよくても、その調子じゃいつか必ずビートにすら見限られるわよ。その時になったら、きっとあんたには誰も手を差し出さない」

ローズ「それでもよければ、どうぞご自由に。好き勝手やってれば?」

ムーンライト「……」

ローズ「まったく、付き合ってらんないわ」

ムーンライト(……よく言うわね、アクアの方が好き勝手やっていると思うけど。こんな寮作って)

・・・・・・

監督「はいカット! おつかれー」



ハッピー「はぁ……今日の撮影ようやく終わった~」

サニー「……」

ビューティ「サニー、今日はさすがに演技面でのミスが多すぎです。それも同じミスばかり。明日はこんなことのないようにしてください」

サニー「……あ?」

ビューティ「反省してくださいと言ってるのです。同じミスを繰り返すのは集中してない証拠です」

サニー「なんやねん偉そうに……!!」

マーチ(まずい……!?)

マーチ「ビューティ!!」

ビューティ「はい?」

マーチ「帰りまで少し時間あるからさ、それまで横浜の街回っていかない? 二人で」

ビューティ「え? ええ、いいですけど」

マーチ「よし、じゃあ今すぐ行こう!」

ビューティ「あ…マーチそんな強引に」

サニー「おいこらビューティ待……」

マーチ「そういうことだからあたし達ちょっと行ってくるね!」

ハッピー「はーい!」

ピース「……」

サニー「……ちッ」

ハッピー「サニー?」

サニー「……はぁ、アカン。ちょっと頭に血登りすぎとる」

サニー「先にバス戻ってるわ」

ハッピー「あっ、じゃあわたしも」

サニー「一人にさせてくれ」

ハッピー「え? うん……分かった」

サニー「……」

ハッピー「……」

ハッピー「サニー、どうしたんだろうね。なんだか元気ない」

ピース「さぁ……? きっとNG出しすぎたからじゃない?」

ハッピー「ああ、そっか。だから落ち込んでるんだ。でもNGの数だったらわたしも負けてないんだけどな~」

ピース「……けどさ、ちょっとサニーはひどすぎるよね」

ハッピー「え?」

ピース「正直あんな演技じゃプロだなんて呼べないし、よくあれでプリキュアになれたよね」

ハッピー「ええ……? そう?」

ピース「そうだよ。サニーなんて最低レベル。身体能力は高いけど、それだけだし……もっとふさわしい子がいたんじゃないかな」

ピース「それにサニーがいると空気も悪くなるし。ハッピーもそう思わない?」

ハッピー「うん……?」

ピース「なんであんな子がプリキュアになれたんだろう。枕でもしたのかな」

ハッピー「枕って?」

ピース「え? 分かんない?」

ハッピー「???」

ピース「あはは、ごめんなんでもない。あっ、今の話は全部サニーには内緒ね。わたし達だけの秘密、お願い」

ハッピー「よく分かんないけど……分かった!」

・・・・・

ビューティ「急にどうしたのですか、マーチ?」

マーチ「え? ああ……まぁいいじゃない。こうやってふたりで散歩するのも」

ビューティ「マーチ……」

マーチ(あの時割って入らなきゃ、サニーが絶対怒ってただろうからなぁ……)

マーチ(それにしてもまったく、サニーもサニーだよ。なんであんな不機嫌になってるんだか)

ビューティ「……しいです」

マーチ「え?」

ビューティ「あ、いえ……なんでもないですよ。ふふっ」

マーチ「?」

ビューティ(マーチとふたりきりで夜道を歩けるなんて嬉しい……なんてわざわざ言うことでもありませんね)

ビューティ「それにしても、サニーはもう少しなんとかなりませんでしょうか」

マーチ「うーん……そうだねぇ」

ビューティ「彼女にはもう少ししっかりしてほしいです。あのようではこの先不安しかありません」

ビューティ「マーチはサニーのことをどう思いますか?」

マーチ「ま、まぁサニーもなんとかするよ。たぶん」

マーチ(ビューティ、サニーのこと嫌いなのかな。結構ギスギスしてる)

マーチ(そりゃあ、あたしも不満に思うことはあるけど……悪いやつじゃあないんだよね、一応)

マーチ(……たぶん)

ビューティ「……」

マーチ「ビューティ?」

ビューティ「なぜ彼女なんかが……プリキュアに」

ビューティ「他にももっと高い志を持ってプリキュアを目指した人はいたはずなのに……なぜ」

マーチ「……」

・・・・・プリキュア寮

ビューティ「……」

コンコンッ
ガチャッ

ホワイト「あら、どうしたのビューティ」

ビューティ「夜分遅くに申し訳ありません。ホワイト先輩に相談したいことがあって……」

ホワイト「ふふっ、いいわよ。中に入ってちょうだい」

ビューティ「はい、失礼します」

ホワイト「お茶、何か入れましょうか」

ビューティ「あっ、いえそこまでしなくても……」

ホワイト「遠慮しないで。さ、適当なところに座って」

ビューティ「は、はい」

ホワイト「……」

ビューティ「……綺麗なお部屋ですね。整理されてて、とても美しい」

ホワイト「ふふっ、ありがとう。ところで相談っていうのは?」

ビューティ「実は……サニーのことで」

ホワイト「サニー? 彼女がどうかしたの?」

ビューティ「彼女と……うまくやっていける気がしないのです」

ホワイト「あら、まだ一ヶ月も経ってないでしょ」

ビューティ「ええ、ですが彼女に言動には正直目の余るところがあります。こんな言い方をするのはあまり好きではないですが、彼女は思慮が浅くて下品で幼稚です」

ビューティ「まるでプリキュアにふさわしいとは思えません」

ホワイト「……」

ビューティ「プリキュアというのは、子どもたちが健やかに育つようにそのお手本となる存在でなければいけないはずですよね?」

ホワイト「そうね。それが理想的だわ」

ビューティ「それなのにサニーときたら……内面というのは表に出てくるものです、テレビの中でさえ演技をしていれば本性がバレなくてもいいなんてことはありません」

ビューティ「プリキュアは身も心も美しくなる必要があるんです。その点において彼女は失格です」

ホワイト「……」

ビューティ「なぜ彼女なんかがプリキュアに……私には理解できません」

ホワイト「……あなたの言っていることは、正しいわ」

ビューティ「ホワイト先輩……」

ホワイト「サニーのことは私の方でも考えておくわ。でもね、ビューティ」

ビューティ「?」

ホワイト「人間には色々いるの。優しい人だったりやんちゃな人だったり。大人しい人だったり、過激な人だったり。プライドの高い人や目的のためなら何でもできる人。もちろんあなたみたいに正しい人も」

ビューティ「……」

ホワイト「みんながみんな、あなたみたいにはなれないわ。けど確かなことは、私達は全員同じプリキュアの仲間たちってことよ」

ビューティ「つまり……我慢して仲良くしろと?」

ホワイト「あなたはサニーの言動に憤りを感じているのよね?」

ビューティ「は、はい」

ホワイト「ふふっ。ビューティ、レベルの低い人間に自分まで落とす必要はないわ」

ホワイト「そんな小さなことはそもそも気にする必要なんてないの。あなたはあなたのままであり続ければいいのよ」

ホワイト「大切なのは、心を強く持つことよ。それでも目に余るようなら私に相談するんじゃなくてまずハッピーに話になさい」

ビューティ「ハッピーに……?」

ホワイト「そうよ。彼女はあなた達のリーダーでしょ?」

ビューティ「そ、そうですが……」

ホワイト「なら彼女を頼るべきよ。同じスマイルのメンバーとしてね」

ビューティ「……」

ホワイト「どうかしたの?」

ビューティ「いえ……そうですね。ホワイト先輩の言うとおりです」

ホワイト「……ビューティ、もう一度言うけどあなたのプリキュアに対する姿勢は正しいわ。あなたのような後輩を持って、私はとっても誇りに思う」

ビューティ「ホワイト先輩……」

ホワイト「頑張って、あなたならきっと立派なプリキュアになれる」

ビューティ「……!」

ビューティ「ありがとうございます…ホワイト先輩」

ホワイト「さぁ、もう遅いし明日のためにも早く寝ておきなさい」

ビューティ「はい、失礼します。……本当にありがとうございました」

ガチャッ
バタンッ

ホワイト「……」

ホワイト「ふふっ……正しい人間、ね。本当はそんなものにあなたは全く当てはまらないんだけどね、ビューティ」

・・・・・

ブロッサム「……」

ブロッサム(……よしっ、決めた。マリンに今までのことを全部謝ろう)

ブロッサム(私はもう決心しました。今すぐにでも謝りに……)

ブロッサム「……」

ブロッサム(今はもう遅いし……やぱり明日にしようかな)

ブロッサム(なんて考えてても結局明日も行かなさそうだし……)

ブラック「ブロッサム」

ブロッサム「はひゃっ!?」

ブラック「よかった、ちょうどいいところにいた」

ブロッサム「ブ、ブラック先輩……?」

ブラック「やー、パッションがいたらパッションに頼もうと思ったんだけどまぁいいや。あのさ、今度からブロッサムがサニーに演技指導してあげてね」

ブロッサム「……へ?」

ブラック「じゃあそういうことだから、よろしくー」

ブロッサム「ちょっ……ええ!?」

ここまで

……翌日
・・・・・トレーニングルーム

バシーンッ! バシーンッ!

サニー「はぁ……はぁ……」

ルージュ「あれ、サニーこんな時間まで特訓?」

サニー「ああ……はい」

ルージュ「今日撮影遅かったんでしょ、ほどほどにして早く寝なさいよ。寝れる時に寝ておかないとあとが大変なんだからね」

サニー「寝れないからこんなことやってんです」

バシーンッ!

サニー「はぁ……」

ルージュ「……なにイラついてんの?」

サニー「イラついてませんよ、別に」

バシーンッ!

ルージュ「あっそ。サンドバッグの打ち方メチャクチャよ、前教えたでしょ」

サニー「こんなのっ……ただストレス発散するもんでしょ」

バシーンッ!

ルージュ「……」

サニー「別にイラついてませんけど、スッキリしたいんですよ。体動かしてれば、難しいことも考えないですむし」

ルージュ「そこらへんはあたしたちと似てるわね、あんた。貸してみ」

サニー「え?」

バシーーーンッ!!!

サニー「!?」

サニー(な、なんや今のパンチ……!!)

ルージュ「こんなことも、ちゃんとできなきゃいけないの。テレビの中の演出だけじゃ誤魔化せないからね」

ルージュ「だからみんな鍛えてる。ちなみにブラック先輩はもっとすごいわよ」

サニー「……」ポカーン

ルージュ「みんな本気でやってんの。あんたはやってる? 本気で」

サニー「や、やってますよ」

ルージュ「だったらいいけど」

バシーーーンッ!!!

サニー「……」

ルージュ「そういえばブロッサムから話は聞いた?」

サニー「話?」

ルージュ「なに? まだ言ってなかったのあの子。今度からあんたに演技指導するって話よ」

サニー「は!?」

ルージュ「は!?、じゃないの。あんたスマイルで演技一番下手なんだからさ、練習しなきゃいけないでしょ」

サニー「そんなキッパリ言わんでも……だいたいそんなんやってれば何とかなるんじゃないっすか?」

ルージュ「その考えが甘いって言ってんの!」

バシーーーンッ!!!

ルージュ「ちゃんとブロッサムの言うこと聞いて、真面目に指導を受けるのよ。分かった?」

サニー「……」

ルージュ「返事」

サニー「はーい、分かりましたってもう」

・・・・・ハッピー、サニーの部屋

サニー「あーあ、めんど。なんでこんなことに」

サニー「なんでプリキュアになってまでいちいち演技の練習せなアカンねん。ハッピーもそう思わへん?」

ハッピー「ぐぅ……ぐぅ……」

サニー「まぁ、そら寝てるわな。こんな時間やし」

ハッピー「むにゃむにゃ……」

サニー「……ウチが悪いんかなぁ。ウチかてプリキュアになる前は頑張ってたんやけど」

サニー「演技だってウチなりに色々考えとるし、プリキュアにふさわしいよう身体も鍛えてきたし……」

サニー「それでもまだアカンのか……ウチ? プリキュアになって分かったけど、住む世界が全然ちゃうわ……」

サニー「まだ放送始まってもないのに……」

ハッピー「……」

サニー「……」

ハッピー「すぅ……すぅ……」

サニー「……はは、なに一人で語ってんねん。寒いわ」

ハッピー「ぐぅ~……」

サニー「ハッピ~、ウチのこと慰めて~?」

ハッピー「う~ん……」

サニー「おっ、かわいい顔で寝とんなぁ」

ハッピー「……」

サニー「無防備にしちゃって、こりゃウチが男やったらほっとかんで」

ハッピー「ぐぅ……ぐぅ……」

サニー「パンツ下ろしとこ」スルスル

ハッピー「むにゃむにゃ……」

サニー「よしっ。んじゃ、おやすみ」

ハッピー「すぴー……」

・・・・・翌朝

ドンドンッ!

マーチ「ほら、そろそろ起きな」

ガチャッ

ハッピー「うう~ん……」

マーチ「ようやく起きた? ……ってうわっ!?」

ハッピー「うあ……?」

マーチ「ハ、ハッピー!ななな、なんでそんな丸出しで……!?」

ハッピー「うう~……」

マーチ「ハッピーそこで寝ないで! な、なんか履かないと……」

ハッピー「……ぐう~」

マーチ「ちょっとー! なんなのこれー!!」

・・・・・

マーチ「はぁ……まったく。しっかりしてよ」

ハッピー「えへへ、なんでパンツ履いてなかったんだろうねわたし」

マーチ「そりゃこっちが聞きたいって」

サニー「アカンよマーチ、いくらハッピーがかわいいからってパンツまで脱がすのは」

ハッピー「えっ、マーチが脱がしたの?」

マーチ「あ、あたしがそんなことするわけないでしょ!」

サニー「あはははっ、まぁそういうことにしとくわ」

マーチ「ちょっと!!」

ブロッサム「あの……」

サニー「!!」

マーチ「あ、ブロッサム先輩」

ハッピー「おはようございまーす!」

ブロッサム「おはようございます、みなさん」

ハッピー「どうしたんですか。あっ、わたしたちと一緒に朝ごはん食べに行きます?」

マーチ「今日はそんな時間ないよ。バスの中で食べんの」

ハッピー「ええ~」

ブロッサム「実は……」

サニー「ウチに話があるんでしょ?」

ブロッサム「あ……は、はい」

ハッピー「?」

ブロッサム「えっと……知ってるんですか? ということはもう話は」

サニー「聞いてますよ。けど忙しいんでまたあとにしてください」

ブロッサム「あ……」

サニー「ほら、行くで」

ハッピー「あっ、待ってサニー」

ブロッサム「……」

ここまで

マーチ「ねえ、あんな言い方ないんじゃないの?」

サニー「は?」

マーチ「先輩に対して素っ気無さすぎでしょ」

サニー「お前には関係ないやろ」

マーチ「むっ」

サニー「だいたいウチ、ブロッサム先輩嫌いなタイプやわ。なんかつまんなそうな人やし」

ハッピー「ところで話ってなんだったの?」

サニー「そんなんハッピーは知らんでもええの」

ハッピー「えー、知りた~い」

サニー「ええからはよバス乗るで」

ビューティ「三人とも、遅いですよ」

マーチ「ごめんごめん」

サニー「マーチがハッピーのパンツ脱がしてお尻触ったりするから遅れたんやで」

ビューティ「なっ……!?」

マーチ「ちょっ!?」

・・・・・

エコー(今日はみんな、テレビの方の撮影に行ってるんだっけ……)

エコー(思っていたよりも、全員一緒で撮影する日ってあんまりないなんて以外。私だけの撮影も多いし)

エコー「……」

エコー(プリキュアでいきなり映画の主役やれるなんて、改めてすごいなぁ)

エコー(もしこれで成功しちゃったら私……大スターになっちゃったりして)

エコー(テレビとかでも引っ張りだこになって、スマイルの六人目とかになったり……)

エコー(もしそうなるんだったら……頑張らないと)

エコー(スマイルのオーディションは落ちちゃって、なんとか劇場版のプリキュアとして拾ってもらえた)

エコー(ここで頑張れば、きっとみんなみたいにテレビや続編の映画にも出れて立派なプリキュアとして認めてもらえる……!)

エコー(これはチャンスよ。頑張れ私!)

スタッフ「エコーさーん、おねがいしまーす!」

エコー「はーい」

・・・・・

監督「はいカット」


サニー「はぁ……もう一度か」

ハッピー「ごめん、今のはわたしも間違えちゃた」

ピース「……」

ビューティ「……」

マーチ「つ、次次! 次がんばろ!」

サニー「……」

サニー(アカン、しょうもない雰囲気になってきた……みんなノリ悪っ)

サニー(まぁ、ウチがミスしたからなんやけど)

ハッピー「サニ~……」

サニー(うおっ!? ウチに救いの手を求めんなって……)

サニー(こんな状況で盛り上げんのは無理や……)

サニー「……せやせや、次切り替えていこ。なぁマーチ、頑張れよ」

マーチ「頑張るのはあんたの方でしょ」

サニー「分かってるって、次はミスせんから。頑張ります!」

サニー「もしミスったら、お詫びにハッピーのパンツあげるから」

マーチ「なっ、なに言ってんの!」

ハッピー「わたしのパンツ? いいよ。マーチパンツ持ってないの?」

マーチ「持ってるけど……ていうかそんな簡単にあげちゃダメでしょ!」

サニー「ん? 欲しいんか? ハッピーの脱ぎたてが欲しいんか?」

マーチ「だから別にパンツなんて興味ないって!」

ビューティ「……」

マーチ「あ……ビューティ」

マーチ「ほんとあたし、パンツなんて全然……」

ビューティ「……次に切り替えていきましょう。NGが出たのは仕方のないことです」

サニー「せやな。次次」

マーチ「サニー、いい加減変な噂広めるのやめてよ」

サニー「適当な噂なんてウチが広めるわけないやろ」

マーチ「広めてんでしょ!」

サニー「あはははっ」

ビューティ「……」

ピース「……ねえ、本当にマーチにパンツ脱がされたの?」ヒソヒソ

ハッピー「え? どうだろ……目が覚めたら目の前にはマーチがいてパンツ穿いてなかったから」

ピース「へぇ~……本当に脱がしてたらドン引きだね」

・・・・・プリキュア寮

サニー「あ~……終わった終わった。ようやっと終わった」

ハッピー「疲れたね~……」

サニー(ったく……毎日しんどいわ)

チャーチャーチャチャー♪チャチャチャーチャチャ♪

ピーチ「イェーイ! ふたりとも元気?」

サニー「……」

ハッピー「元気ないです……」

サニー「なに踊ってんすか……」

ピーチ「今日サンバのDVD見たらあたしも踊りたくなっちゃって! ふたりも踊ろうよ、盛り上がるよ!」

サニー「なんやそれ……」

ハッピー「い、いえ~い」

サニー「踊んのかい」

ピーチ「そうそう、その調子その調子!」

ハッピー「あはは……なんか本当に楽しくなってきたかも」

サニー「目が死んどるで」

ピーチ「ふたりとももっと元気出さないと! ふたりが元気出さないと、他のスマイルの三人も元気出ないよ」

ハッピー「え?」

ピーチ「ハッピーはリーダーなんだし、サニーは普段から明るいんだし、ふたりがみんなを引っ張って雰囲気よくしていかないと!」

ピーチ「疲れた顔なんてしてたら、逆に雰囲気悪くなっちゃうよ。プリキュアは常に元気に元気に!」

サニー(そんなんピーチ先輩やから言えるんやろ……)

ハッピー「い……いえーい!!」

ピーチ「いいねいいね、その調子だよ! よし踊ろう!」

ハッピー「はーい! 踊りまーす!」

チャーチャーチャチャー♪チャチャチャーチャチャ♪

ピーチ「イエーイ!」

ハッピー「いえーい!」

サニー「……」

サニー(なんやこれ……)

ベリー「ちょ、ちょっとこんなとこで何騒いでんの!?」

・・・・・ハッピー、サニーの部屋

ハッピー「あう~……」

サニー「無理して踊るからや。アホか」

ハッピー「だって……そうすれば元気出ると思って」

サニー「出るわけないやろ。疲れるだけや」

ハッピー「でも……」

サニー「?」

ハッピー「ほらあたしって、いつも撮影の時ダメダメじゃん? 体術も上手くできるわけじゃないし……リーダーなのに」

ハッピー「だから、せめてわたしでも何かできることはないかなって思って……もしわたしが元気でいて、それでみんなも元気になれるなら」

ハッピー「それはすっごくいいことじゃないかな。ピーチ先輩みたいにいつも元気で……」

サニー「……あんな、人間には身の丈ってもんがあんやで」

ハッピー「?」

サニー「自分の丈に合わんことなんて、はなからできないことなんや。ピーチ先輩がいつもアホみたいに元気なのは、ピーチ先輩が特別やから」

サニー「せやから普通の人間にできることやないんや」

ハッピー「たけ……竹? どういうこと?」

サニー「はぁ……アホの中のアホ」

サニー「つまり無理しても身体ぶっ壊すだけやってつってんの! 分かったらさっさと休めアホ!」

ハッピー「けど……」

サニー「なんや」

ハッピー「前にさ、メロディ先輩に目標はなんだって聞かれたでしょ? あの時わたし、答えられなくて……」

ハッピー「というか、目標がなんなのかも分かんなくて。プリキュアになったのはいいけど、どうすればいいんだろうって」

サニー「……」

ハッピー「だから、なんでもいいから目標が欲しいの。いつも元気でいることがプリキュアとして大切で、それが目標になるんだったら……それでいいのかも」

ハッピー「少なくとも、今のわたしには」

サニー「……だったら勝手にしろや」

ハッピー「サニー……」

サニー「そこまで無理してどないすんねん。ウチにはそういうノリが無理やわ」

ハッピー「……」

サニー「プリキュアになったってことは、もうそれで十分なことやろ。今さら頑張ったって……」

ハッピー「……ぐぅ~」

サニー「おい、いきなり寝んな。……はぁ」

サニー(アホのくせにそのやる気はどこから出てくんねん……)

・・・・・

ルージュ「……?」

ルージュ(トレーニングルームから音がする……またサニーがいるのかしら)

ルージュ(休めって言ってんのに。……ま、それでも頑張るって言うならあたしも応援するけどね)

ペチーン……ペチーン……

ルージュ「……」

ルージュ(なにこの音……サンドバッグ叩いてんの? 気合入ってないわね……)

ルージュ(まったく……)

ガチャッ

ルージュ「サニー!! なにそのだらしない打ち方は……」

エコー「きゃっ!?」

ルージュ「って……あれ?」

ここまで
スレ消費に半年以上かかってしまったので次回はなるべくペース上げるつもりです

中途半端に残ってるのでドキプリの映画のネタバレを書こうと思います

ネタバレ:まこぴーがかわいい

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