咲「ガラスの肘…か」 (81)

咲「…………」ゼェゼェ

「さぁ残すは後一局!卓上には一年の宮永咲!」

「全国の頂を目の前にして、彼女は今何を思うのか」

咲「カン」カシャッ

「ここでカンが来た!このツモで決着してしまうのか!!」

咲(お姉ちゃんが教えてくれたこの嶺上で、私は――)スッ

        ピシィッ!!!

咲「えっ………うあああああああああああああっ!!!」


     ドサッ!

  ピピピピッ ピピピピッ

咲「……夢か」

  
 パチパチ…  ボオオオオオッ

咲「…………」

咲父「咲?なんでこんな時期に焚き火なんか…って何か燃やしてんのか」

咲父「何を燃やしてるんだ?」

咲「…私の青春かな」

咲父「そんなもんより俺はお前のベッドの下にある百合本(姉妹もの)を燃やして欲しいんだが…」

咲「あれは……」


          「私の命だから」

  

淡「それでゼンブ燃やしちゃったんだ。そーいうあっさりした所サキらしいね」

咲「プラスチック製だからあんまり燃えなかったけどね」

咲「炎見てたら楽しくなって来て、自動卓の方も燃やそうとしたらお父さんに止められちゃったけど」

穏乃「そりゃそうでしょ…」

淡「しっかし改めてホントに残念だよねー。高校でも三人で一緒に伝説を作れると思ってたのにな」ブー

穏乃「淡、それは言わない約束じゃ…」

咲「あはは。まぁお医者さんに止められちゃったら仕方ないよね」

咲「『このまま麻雀を続けたら三ヶ月も持たずに肘が壊れて、日常生活にすら支障が出る』」

咲「壊れる前に気付けたのは僥倖だったよ」

淡「…………」

穏乃「…名門校のスカウトの人達も皆がっかりしてたよね」

穏乃「高校どころかプロのスカウトだって咲に注目してた位だったし…麻雀の神様もホント残酷な事するよ」

淡「そんな他人事みたいに。シズノだってサキ程じゃないにしても色々熱視線を向けられてたじゃん」

穏乃「わっ私は全然そんな事無いって!」

咲「いやいや。私達が優勝出来たのだって穏乃ちゃんの功績に寄る所が大きいんだし、謙遜する事無いって」

淡「まさか山で遊んでて腰をやっちゃうなんてね。最初聞いた時は笑っちゃったよ」

穏乃「たはは面目無い…。ちょっと無理をし過ぎちゃったみたいで」


淡「…ねぇ、ホントに二人とも辞めちゃうの?麻雀」

淡「今は無理でも、怪我が治ったらまた一緒に……」

咲「…ごめんね。淡ちゃんの気持ちは嬉しいし、私もそうできたらどんなに良いかって思うけど……」

淡「………うん。分かってる」

淡「ごめんね、我が儘言っちゃって。未練を残さない為に二人はわざわざ麻雀部が無いトコに決めたんだもんね」

淡「キヨスミだったっけ?」

穏乃「うん。まぁ、それだけが理由じゃないけどね。山から近いし」

淡「ふふっ怪我しても山好きなのは変わらないんだ」

咲「大丈夫だよ、淡いちゃん。そんなに心配しなくても、学校が違った位で私達の友情は無くならないって」ニコッ

淡「なっ…///わ、私はベツに寂しいとかそんな事思ってるワケじゃ…!」ワタワタッ

咲「道は違える事になっちゃったけど、私達は私達でまた熱中出来るものを見つけるから」

咲「淡ちゃんは白糸台で、今迄通り頂点を目指してよ」

咲「…私達の分まで、さ」

淡「…………っ!」

淡「うん!ソッコーでレギュラーになって高校三連覇!」

淡「いや!100連覇してみせるからねっ!!」

穏乃「100って。子供じゃないんだから」アハハッ

咲「ふふっ淡ちゃんなら何かやっちゃいそうだけどね」クスクス

         ガチャッ

照「賑やかな声がすると思ったら、やっぱり淡と穏乃か」

淡「テルー!」

穏乃「お邪魔してます」ペコッ

咲「お姉ちゃん。動いて大丈夫なの?まだ寝てないと」

照「大丈夫大丈夫。軽い風邪だって言ってるのに…」

淡「サキはホント心配症だよねー」ニヤニヤ

咲「む…。いやでも完治したとはいえいつ再発するか分からないんだから用心するに越した事は…」ゴニョゴニョ

照「高校を決める時だって、家族の中で最後まで抵抗してたんだよ?一人で登下校させるなんて有り得ないって」フゥ

穏乃「アハハ。まぁそれだけ照さんのコトを大事に思ってるって事ですよ」

咲「そっそんなのじゃないから!ただ下校中に誘拐でもされて身代金を要求されたら困るってだけで!」

咲「ほら、お姉ちゃんお菓子出されたらホイホイ付いて行きそうだし!」

照「咲は私を何だと思ってるの…」

淡「まーまーこれからはこの大星淡が、ちゃんとテルの面倒を見るからご心配なさらずに」

咲「余計心配なんだけど…」

穏乃「そっか。照さんも白糸台に行くんでしたね」

照「うん。ちゃんと一般入試でね」

淡「むっ!まるで私が麻雀推薦でなければ合格出来なかったかの様な言い草!」

咲「事実でしょ」

穏乃「30くらい偏差値足りてなかったよね」

淡「ぐぬぬ……」

照「大丈夫、これから入学までに私が面倒見てあげるから、15足りない位にはなるよ」ぽむっ

淡「立場逆転してる!?」

照「さ、そうと決まったら私の部屋に行くよ」ぐいっ

淡「やだやだ勉強やーーだーーー!」ジタバタ ズルズル…

穏乃「淡~頑張ってねー」ヒラヒラ

咲「淡ちゃんが買って来たお菓子は食べておいてあげるからー」ヒラヒラ

淡「はくじょーものー!!も~テルー!」
  

    「折角恋人が二人きりなんだからもっと楽しいことしようよー!」


咲「……………」

穏乃「今で大体二年半位だっけ。二人が付き合い始めて」

咲「ん…それぐらいだったかな。中一の秋口とかだったから…」


咲(お姉ちゃんと淡ちゃんが付き合い始めたのは、20××年の9月16日午後4時13分)

咲(二人が初めて会ったのはその三ヶ月前)

咲(お姉ちゃんが小学校卒業に8年を要した原因の病が、漸く体から消えてすぐの頃だった)

咲(一目惚れだと騒ぐ淡ちゃんにせがまれ、お姉ちゃんに淡ちゃんを紹介して)

咲(その後も二人が会う機会のセッティングをしたり、時にはそれに付いて行かされたりもして)

咲(色々と骨を折らされたものだった)

咲(最初のデートの時なんて、あの基本騒がしい淡ちゃんが緊張で一言も喋れなくなる事態に陥り)

咲(帰り道に至るまで、ずっと私が間に入って通訳をやらされたりしたからなぁ…)アハハ…


咲「―――尤も、今じゃまったく骨を折る機会も無くなったけどね」ボソッ

穏乃「ん、何か言った?」

咲「何でも無いよ。さて、高校でどの部活に入るか考えよっか」

 
―――四月。清澄高校―――

咲「ん~。大分高校生活にも慣れて来たね」

穏乃「そうだね。学食の美味しいメニューも大分把握出来て来たよ」

咲「穏乃ちゃんはどの部活に入るか決めた?」

穏乃「登山部!…って言いたい所だけど腰がアレだから、ここはお医者さんの勧めを聞いて水泳部かな」

咲「へー水泳部。穏乃ちゃん泳ぐの速かったもんね」

穏乃「ま、人並くらいにはね。咲もどう?」

咲「私は産まれつき水とは相性が悪いから…」

咲「運動は苦手だし、将棋部にしようかなって考えてるんだ」

穏乃「将棋かぁ。全国大会どこでやるんだろう…ん?」コツン

咲「どうしたの?」

穏乃「いや、何か今足に当たって……麻雀牌?」ヒョイッ

咲「!何で…この学校には麻雀部は無いハズじゃ」

穏乃「何でだろ。あ、誰かこっちに来るよ」


和「すみません、この辺りで麻雀の牌を見かけませんでしたか?」

  

咲(うわっ。すっごいキレーな子…。そして凄い胸)

穏乃「もしかして、これの事ですか?」スッ

和「そうです!この一筒!」

和「良かった…。見つけて下さって本当にありがとうございました」ぺこっ

穏乃「いえいえそんな。私達一年生ですから、敬語使わなくても大丈夫ですよ」

和「あ、そうなんですか。では同級生ですね」

穏乃「同級生!?」

咲(その胸で!?)

和「そ、そんなに驚くような事でしょうか…?」

穏乃「い、いやゴメン。なんでもない」ずーん

和「では改めて自己紹介を」

和「私は1年A組の原村和です。中学校は高遠原でした」

穏乃「1年B組の高鴨穏乃。青南中出身だよ」

咲「同じく、1年B組で青南中出身の宮永咲です。よろしくね」

和「よろしくお願いします。お二人は同じ中学校のご出身なんですね」

穏乃「うん。結構ここからは遠いから、ウチから来てるのは私と咲だけだけどね」

和「奇遇ですね、私も同じ様な境遇なんですよ。同じ中学から来てるのは私の他に一人だけです」

和「…というかその子に引っ張られてここに進学した様な形なのですが」アハハ…

穏乃「へー。じゃあ知り合いが少ない者同士、これからよろしくね。和っ」スッ

咲「いきなり呼び捨てなんだ」

穏乃「その方が早く仲良くなれそうでしょ?私の事も穏乃で良いからさっ」

和「初対面の方にというのは少し抵抗がありますが…。よろしくお願いします、穏乃」ギュッ

咲「私の事は徐々に仲良くなってからで良いからね。原村さん」スッ

和「ハイ、宮永さん」ギュッ

穏乃「相変わらず咲は最初壁を作りたがるなぁ…」

咲「うるさいよ。それで原村さん、ずっと気になってたんだけど」

咲「どうして麻雀牌を探してたの?」

和「部活で使ってるものがボロボロだったので、今日家から私物を持って来ていたんです」

和「けれど、移動している時に何かの拍子で零れてしまったみたいで…」

咲「部活で使ってる?だってこの学校には…」

和「ハイ。麻雀部はないんですけど、この学校麻雀愛好会ならあるんですよ」

咲「愛好会…」

和「私も知ったのは入学してからですけどね。あっもうこんな時間」

和「すみません、練習がありますので先に失礼します」ぺこりっ

穏乃「あ、うん。またね~」

  テクテクテクテク

穏乃「…麻雀部、あったんだね。ここ」

咲「…………」

――咲の部屋――

淡「それで、どうなの?高校生活は」

穏乃「ぼちぼちかな。学食は美味しいよ、変わったメニュー多いし」

咲「タコスとかあったよね。どういう需要なんだろ…」

淡「そーじゃなくて。部活だよ部活。どこか入ったんでしょ?」

穏乃「うん。私は水泳部。最近はバタフライばっかりやってるなー。お医者さんの勧めでね」

照「腰を痛めてるのにバタフライ…?」

穏乃「そのお陰で最近はすこぶる快調だよ!山へ復帰する日もそう遠くないかもっ」

照「なら良いけど…無理だけはしないようにね」

咲「お姉ちゃんがそれを言うかぁ…」ジト

照「だからもう大丈夫なんだって。流石に麻雀部は体の負担が大きいから入れなかったけど、私も運動部に入ったんだからね?」

淡「弓道部だけどね」アハハッ

照「弓道部は立派な運動部です」

穏乃「弓道着似合いそうですね、照さん」

照「ありがとう」

淡「あははっ。まぁおっぱいがあったら難しそうだもんね。弓道着っていづぁっ!?」べしっ! べしっ! べしっ!

淡「な、何で三方向攻撃?」ナミダメ

咲「何か腹立った」

穏乃「同じく」

照「…………」

淡「サキは将棋部かぁ。考えなきゃいけないから疲れない?あれって」

穏乃「麻雀部にあるまじき発言だねそれ…」

咲「最初は手こずったけど、場を支配する時の応用だって気付いたらコツが掴めたよ」

咲「とりあえず今は同級生の池田っていう経験者の子を凹ますのが目標かな」

咲「ホント……五月蠅くて」ズズズ…

穏乃「黒オーラが出てる出てる」ナデナデ

淡「イケダ…?なんかどっかで聞いた様な…気の所為だねっ」

穏乃「結論はやっ」

咲「淡ちゃんはどうなの?名門白糸台の練習はやっぱり厳しい?」

淡「フツーの子はなかなか牌に触らせても貰えないみたいだね。なんか色々虎やら龍やら亀やらあって」

穏乃「なんだそれ」

淡「でもこのプラチナゴールデンシルバーブロンズステンレスルーキーの私は当然の様に特別待遇!」

淡「入部した日にレギュラー当確の舞妓はんを貰ったよ!」ドヤッ

咲「…お姉ちゃん、ホントにちゃんと面倒みれてるの?」

照「面目無い…」ウツムキ

淡「何がっ!?」

 
――五月。清澄高校――

穏乃「この4人でご飯食べるのも定番って感じになって来たね」モグモグ

優希「仲良きことは美しきことだじぇ。タコスがとりもった仲ということだな!」

和「いえゆーきに二人を紹介したのは私ですけど…」

優希「どーせなら4人で同じ部活に入ればもっと仲が深まるのになー」チラッチラッ

咲「だからそれは無理なんだって。遊びで軽く打つくらいは出来るかもしれないけど、そんな事したい訳じゃないし」

穏乃「ていうか始めちゃったら咲は歯止め効かなくなるだろうからね。打ってる時は性格が余計に悪くなるよ」

咲「失礼な……」

和「最初にゆーきからお二人が全国区の選手だと聞いた時は、本当に驚きましたよ」

優希「麻雀部なら普通知ってるじぇ。青南中の『魔物トリオ』と言えばその名を聞いただけで震え上がり雷が轟くという」

穏乃「私までそんな風に言われてたんだ…」ずーん

咲「その唐揚げ貰うね」ヒョイパクッ

穏乃「あぁっ!?楽しみに残しておいたのに!返せよぉ~!」ユサユサッ

和「子供ですか…」

咲「へー今度練習試合があるんだ」

和「公式の試合には出られませんから、練習試合と言えど私達にとっては本番の様なものですけどね」

優希「試合が出来るってだけでテンション上げ上げだじぇ!」

優希「最近は練習場所を確保することすらロクに出来てなかったからなー」

咲「あー…何かウチ(将棋部)との場所争いみたいなのがあるんだっけ。何かごめんね」

和「宮永さんは何も悪くないですよ」

和「私達は何の実績も無い愛好会ですから、立場が弱いのは当たり前のことです」

優希「だからこそ次の試合は絶対に勝って、部費と部室を理事長からふんだくってやるじょ!!」ボオオオオッ

穏乃「…まぁ、目標が高いのは良い事だよね」

咲「私達も練習が終わったら応援しに行くから頑張ってね」

和「ありがとうございます。良い所を見せられる様に頑張りますね。ねっゆーき」

優希「ガッテンだじぇ!のどちゃんも早く体力付けて試合に出られる様に精進するんだじょ。まずは走り込みだ!」

和「う…。が、頑張ります」

 
  ――そして練習試合当日――

咲「王手。これで詰み…ですね?」

門松「ぐ…最速と呼ばれたこの私がこんなに速く…!?」


田中「…宮永の奴はマジでメキメキと力を付けていくな。こないだまで初心者だったとは思えん」アセ

上柿「凄い奴は何やらせても凄いってことっすかねー」

池田「フンっあんなのちょっとマグレが続いてるだけだし!」


咲(さて、もうそろそろ試合始まってるかな?)テクテク

池田(ん。宮永の奴、どこへ行くんだ?)

咲「失礼します」ガララッ

和「宮永さん、来てくれたんですね」

咲「うん、ちょっと抜けだして来た。…あれ?まだ相手の人は来てないの?」

和「それが、今さっき急に都合が悪くなったという連絡が来まして…」

すばら「非常に残念ですが、練習試合はお流れという事になってしまいそうですね」すばら…

咲「そうなんですか…」

優希「まっ気落ちしててもしょうがないじぇ」

和「そうですね。自動卓で打てるだけでも幸せな事ですし、今日は練習を「良い提案があるし」

和「?」クルッ

咲(池田…?)

池田「要は試合の相手が居れば良いんだろ?それ、私達将棋部が請け負ってやってもいいし」

すばら「ほ、本当ですか?それは本当にすばらなご提案ですっ」すばらっ

池田「ただし、条件があるし」ニヤリ

咲(自分で言い出しといて条件とか…)

室橋「負けたらこの部屋の使用権を全て将棋部に譲渡…」

和「そんなっ!ただでさえ殆ど使わせて貰えてないのに…」

池田「勝てば問題無いだろ?」

池田「それにこっちはお前達の土俵で戦ってやるって言ってるんだぞ?」

池田「将棋部に麻雀で負ける麻雀部なんて存在しない方が学校の為だし。あっ部じゃなくて愛好会だったか?」にゃはははっ

優希「そこまで煽られたら黙ってられないじょ!勝負だ池田!ほえづらかかせてやるじぇ!」

池田「どこまでその威勢が持つか楽しみだし。じゃ、ちょっと待ってろよー」スタスタ


咲「…どういうつもり?池田」

池田「どういうつもりも何も言った通りだし。対戦相手が居なくて困ってるみたいだったから、相手に名乗り出てやった。優しいだろ?」

咲「それじゃなくて、負けたら使用権がどうとか…」

池田「なーに。ただの勝負を面白くする為のスパイスだよ。奴らが勝てば問題無いさ」

池田「まっ偶然にも、ウチの将棋部には元麻雀部や麻雀経験者がわんさか居るから」

池田「意外と良い勝負になってしまうかもしれないけどなー。まぁ対等な勝負なんだからその時は恨みっこなしだし」にゃははは

咲「…………」

池田「宮永。お前も将棋部なんだから、ちゃんと将棋部の勝利の為に貢献するんだぞ?」

池田「オトモダチを敵に回そうと、そんな事は関係無いからな」ニヤリ

咲「!」

池田「少なくとも私の足は引っ張らない様に頼むぜー」

    スタスタ

咲「…………」

咲(…また、麻雀をする時が来るなんてね)

和「皆さんならきっと勝てます!焦らずに落ち着いて戦いましょう」ぐっ

すばら「そ、そうですね。思いがけず負けられない戦いとなってしまいましたが」

すばら「愛好会の私達が、この様な緊張感を持った試合が出来る事はある意味ラッキーとも言えます」

すばら「麻雀を楽しんで、使用権と勝利を掴み取りましょう!」

優希「流石花田先輩!良い事言うじぇっ」

室橋「う、うん。私達だって毎日遊んでた訳じゃないんだから」

マホ「チョンボだけ気を付ければ大丈夫ですよね!先ヅモ少牌多牌フリテン山崩し…」ブツブツ


田中「ったく。勝手にそんな約束取り付けやがって」

池田「でも美味しい話でしょう?目ざわりなハエを潰して予備の練習場所まで確保できる」

田中「まぁ勝てばな。だが勝つ保証なんてあるのか?」

田中「そりゃあ私は高校入る時に麻雀か将棋か散々悩んだクチだが、ブランクもあるし…」

池田「問題無いですよ、私が居るだけで後はかかしでもお釣りが来ます」

田中「へぇ。随分自信があるみてーだな」

池田「まぁ見といて下さいって。頭脳スポーツの王様は何かってのを分かり易く教えてあげますから」

穏乃「ふー。ちょっと遅れちゃったかな」

   ジャラジャラッ   タンッ タンッ

穏乃(懐かしい牌の音っ!やっぱりもう始まってたんだ)

穏乃「失礼しまーす」ガララッ

穏乃「…へ?」


A卓 将棋部『池田・宮永』vs『片岡・花田』麻雀愛好会


穏乃「咲が卓に付いてる…?」

和「あっ穏乃!」

穏乃「和、状況説明してくれる?」

和「はい。えぇとですね…」カクカクシカジカ

穏乃「なるほど。麻雀愛好会vs将棋部…」

穏乃「ごめんね、咲が敵に回る様なことになっちゃって」

和「いえ、宮永さんはあの池田という人に無理矢理座らされていたので…」

和「私達に気を遣っているのか、ここまで殆ど和了って居ませんし…。むしろ心労を掛けてしまって申し訳無いです」

穏乃「ふーん…」


池田「ツモッ!!リーチ一発ツモ三色ドラ3!」

池田「親倍で8000オールだしっ!!」


和「っ!またあんな高い手…」

穏乃(へぇ、やるなぁ池田。あれは素人の打ち筋じゃ無い)

穏乃(経験者…どころか、相当しっかり麻雀をやってないとあの雰囲気は出ないハズだけど…)フム

田「にゃっはっは。この局も気付けば7万も点棒を集めてしまったし」

池田「チョロ過ぎて逆に悲しくなってくる。お前達今迄何を練習してたんだ?」

優希「ぐぅっ………」ワナワナ

花田「っ…………」スバラ……

咲「…三味線が過ぎるよ。池田」

池田「けっ弱い奴ほどマナーにうるさいってか?お前もいつまでも空気やってないで少しは和了ってみろし」ハハハ

池田(さて。フツーに打つのも飽きてきたし、ちょっと喜ばせてやるか)

     タンッ

咲「!」

優希「!ロ、ロンだじぇ!リーチ一発ドラドラで7700!」

池田「うわ~一発で振るとかビギナーズラックって恐ろしいしー」フフフ

咲「…………」イライラ

すばら(な、なんだか分かりませんが急に甘い牌を切って来る様になりました!チャンスですっ)すばらっ

すばら「チーッ!ポンッ!チーッ!」

すばら手牌
①①②④  鳴④⑤⑥ ⑦⑦⑦ ⑥⑦⑧ ドラ⑦


すばら(…池田さんがキー牌を都合よく出してくれたので張れましたが)

すばら(流石にこんな見え見えの清一に振る訳が…)

池田「通るかなー?」タンッ(③)

すばら「ロ、ロンっ!!清一ドラ4で16000です!」すばらっ

池田「しまったー。清一は逆に無いと思ったのに裏をかかれたしー」

  ―次局―

池田「悪いなそれだし!ローン!」

すばら「すばら…。ってあれ?池田さん、それはフリテンでは…」

池田「え?あーしまったー!大量リードで油断してたしーー!ハイ、罰符」チャラッ

すばら「は、はぁ……」


咲「……………」ゴゴゴゴゴ

池田(ククク。遊ばれてるのが分かったか、良い顔してるし)タンッ

咲「ロン。3900」パラッ

池田「あん?何リードしてる味方から和了ってんだよ宮永。素人かお前」ヤレヤレ

咲「遊びなんでしょ?」

池田「お前が和了っても面白くないんだっての。空気読めよなー」

咲「…………」ピキッ


穏乃(…命要らないのかな、アイツ)アセ

和「み、宮永さんの表情が氷の様になってます…」


池田「ツモだし~♪!!6000オーーール!」

池田「ロンロンローン!12600~!」

池田「あーあ。折角待ちを教えてやったのに振るんだから救えないし。ほら、5200よこしな」クイクイッ

池田「ぶぇっくしょい!!あ、悪い悪い。山崩しちゃったからチョンボだな。一万ずつやろうか?」ハハハ

和「い、いくらなんでも酷過ぎます!!」

穏乃「悔しい?」

和「当然です!!――でも、負けてる事がじゃないですよ」

和「麻雀愛好会の皆は、麻雀が大好きで、麻雀に真剣に取り組んでるのに…こんなの…!」プルプル

穏乃「あぁ――麻雀じゃないよ。こんなの」


池田「全く。麻雀っていうのは変なゲームだよなぁ宮永」

池田「攻撃手段のリーチを掛けたら、攻撃の最中だってのに思考停止で後は運に身を任せるだけ」

池田「時間制限も無いから雑魚相手だと無駄に試合時間も長くなるし、ホント出来の悪い遊びだよ」

池田「こんなモンに人生懸ける奴の気が知れないし。アホだなアホ」タンッ


          「カン」

 

池田「な…っ!?」ゾワッ!!

咲「もいっこカン」スッ

咲「もいっこカン。――――ツモ」パラッ


優希「こっこれって……!」

和「宮永さん…!?」


咲「清一…対々三暗刻三槓子赤1」

咲「嶺上開花」

咲「池田、32000」ゴッ!!!!!!

池田「か、数え役満だと………?」ガタガタ

池田「い、いやそんなの関係無いし!宮永お前何責任払いなんざブチ当ててくれてんだ!!」

池田「私は味方で――   

    カタッ   スタスタ

池田「お、おい…?」


田中「…なんだ?宮永」

咲「田中部長。宮永咲、只今を持って将棋部を退部致します」

池田「なっ!?」

    クルッ   スタスタ

和「宮永さん…?」

咲「原村さん。入部届けって必要かな?」

和「~~~~っ!」ぱああっ

和「届けは明日で大丈夫です。入会、歓迎します。宮永さん」ニコッ

咲「…という事で、何か問題あるかな?」

池田「っ…。上等だし!だが宮永ぁ今の数え役満は将棋部のお前の和了だ」

池田「愛好会に移った以上点棒はこっちn

咲「いくらでもどーぞ」テクテク

池田「あ…?」

咲「優希ちゃん。ごめん、ちょっとだけ代わって貰える?」

優希「…咲ちゃん。咲ちゃんなら…勝てるのか?」

優希「私達のこの悔しさ…晴らしてくれる?」グスッ

咲「うん、任せて」

咲「私が――本当の麻雀の楽しさを、骨の髄まで池田に叩き込んでやるから」ニコッ

池田「」ゾッ!!!

優希「この借りはいつか絶対返すじぇ。けど今は…頼んだじょ」スッ


           パンッ!

 

咲「それじゃ、再開しよっか」ザッ

池田「…お前、本気でこの状況から勝つつもりなのか?」

池田「この半荘だけで見ても、残すはオーラスただ一局」

池田「点棒はお前の代走で入った門松が48700。私が43300」

池田「片や、愛好会の会長が7300で、片岡の代走のお前はリーチも掛けられない僅か700だぞ?」

池田「親は門松だから、役満ツモでも直撃でも逆転不可能!お前に勝機なんて毛ほども無いんだよ!!」

咲「………ハー。池田」

池田「な、なんだよ?」

咲「とりあえず二つ。良い事教えてあげるよ」

咲「麻雀は口でするものじゃない事。そして――」


         「―――タイムアウトのない試合のおもしろさを、ね」

   

和(か、かっこいい…///)

優希「流石は青南中のエース。桁違いのオーラを発してるじぇ」ゴクリ

和「そうですね、普段の大人しい姿とはまるで別人の様…」

和「けれど、先程池田さんが言っていた様に状況は絶望的。ここから逆転なんて…」

穏乃「和。愛好会の名簿の所、もう一人分追加してもらっても良い?」ザッ

和「穏乃。はいっ勿論です!」

優希「おぉっシズちゃんの打ってる所まで見られるのか!」

穏乃「友達のピンチだからね。咲ばかりに良い所を持っていかせらんないって」グルグルッ

和(なるほど。花田先輩と代わって、二人の連携でこのピンチを逆転するんですね)

    スタスタスタ  

穏乃「やり過ぎ無いようにね」ボソッ スッ

咲「そっちもね」

和(えっ?擦れ違って…奥の卓へ?)

穏乃「マホ先輩」

マホ「何も言う必要はありません!好き放題暴れちゃって下さいっ!」

穏乃「ありがとうございます」スチャッ

田中「…向こうの手助けをしなくて良いのか?ジャージ女」

穏乃「生憎、手助けを受けてくれる様な素直な性格してないんですよ。私の幼馴染は」

穏乃「それに…流石の咲でも別の卓に居る人までは楽しませる事が出来ませんから。多分」

穏乃「見劣りするかもしれませんが、ここは私で妥協しといて下さい」ペコッ

田中「フン。宮永もバカな奴だよな」

田中「一年も我慢すればウチの将棋部でもアイツなら相当良い所まで行けたろうに。もったいねえ」

田中「こんな結果の決まった試合なんぞの為に…」

穏乃「決まらないんですよ麻雀ってヤツは」

穏乃「どんな点差でも、最後の局が終わらない限りは…ね」

田中「けっいくら圧倒的な実力差があろうと、無理なもんは――


        「ロン」パラッ


池田「に”ゃ!?!?!?」

  ざわああああああっ!!!   どよおおおおおおおおっ!!!

咲「64000。単騎がダブルになるなら、96000です」


田中「は……?」タラリ

穏乃「ほらね」

穏乃「それじゃこっちも、オーラス始めちゃいましょうか」チャッ 

田中「」ダラダラダラダラ

咲「これで愛好会も一勝。次の半荘で勝てば、総得点の勝負でしたよね」

咲「そうなると設定は…」ブツブツ

門松「ば、化け物にも程度ってモンがあるだろ…。こうなったら私が点数度外視の最大スピードで…」

池田「無駄だし」

門松「あ?」

池田「朝から晩まで麻雀牌握ってる様な馬鹿でもないと、コイツの和了は止められない」

門松「じゃ、じゃあどうすりゃいいんだよ」

池田「言っておくが……私もまだ、自分の全力を出してた訳じゃないし」キッ!

咲(…少しはマシな顔になったね)

穏乃「5本場突入~!」

  池田「ツモだし!2000・4000!」

穏乃(!咲から和了った?咲の予想を上回るなんて、そこらの麻雀部員に出来る事じゃないのに)

穏乃(ホントに何者なんだろ。池田って)フム


――その頃――

照「へー淡ってリトルリーグ時代はショートカットだったんだね」

淡「伸ばしたかったんだけど、すぐ泥だらけになって汚しちゃうからお母さんに切られちゃってたんだよねー」

照「ふふっその頃からおてんばだったんだ。…あれ?集合写真なのにこの子はどうして隅っこでぶすっとしてるの?」

淡「あー居たねこんなの。たしか私が入るまで白山エンジェルスのエースでポイントゲッターだった奴のハズ」

淡「私がその座を奪ったら、すぐ辞めちゃったからよくは知らないけどね。名前は…ミケダとかマケダとかそんなのだった気がする」

照「エースでポイントゲッターなんて凄いね。まだ麻雀続けてるのかな」

淡「んー中学の時は名前聞かなかったね。火力はまぁまぁ頑張ってたし、センスはあったから」

淡「続けてるならそれなりになってるハズだけど…」

淡「あーなんか話してたら思い出して来た。ミケダはとにかく…」

         「うるさい奴だったよ」


池田「リーチせずには居られないなっ!!!」タァンッ!!!

咲(五月蠅い…)ハァ トンッ

すばら「すばら!ロン、1000点です」すばらっ パラッ 

池田「また…!!汚いぞ宮永ぁっ!!」ギャーギャー

咲「勝手でしょ別に…」

淡「全く。サキもシズノも何やってるのか。携帯は携帯しないと意味ないっての!」プンスカ

照「咲は持ってすらないもんね。まぁ一度二人が通ってる学校に来てみたかったから、ある意味丁度良かったけど」

淡「ま、ごくフツーの学校だよね。えぇと、将棋部の練習してる部屋はここを曲がって…ん?」

   ジャラジャラ  チャッ  タンッ!

淡「この部屋から麻雀やってる音がする」

照「?清澄って麻雀部は無いはずだよね」

淡「ちょっと覗いてみちゃおっか!たのもー!」ガララッ

照「勝手に開けちゃ…遅かったか」ハァ

和「!ど、どちらさまですか?」

優希「白糸台の制服だじょ!って、ていうかこの人…!」

淡「いや~麻雀の音色に誘われてついつい。ね、ちょっと聞きたい事あるんだけど「あ」

淡「テル?」

照「知ってる背中が二つ見える」

淡「?」クルッ

淡「あ。…何してんの?あの将棋部と水泳部」

和「………という流れになってるんです」

淡「なるほどなるほど。説明ごくろー!」

照「ありがとうございます、でしょ」コツン

淡「あたっ。それで、今って何局目なの?」

優希「どっちも今から最終戦のオーラスに入る所だじょ」

淡「へー。なら丁度サキのイケてる所を見られそうだね」わくわく

照「イケてる所?」

淡「中学の時さ、平均打点も平均和了率も私の方がサキより良かったけど」

淡「最終局での和了数。特に、逆転する状況での和了数は圧倒的にサキの方が多かったんだよね」

照「逆転和了…」

淡「オーラスのサキは、一番頼りになるんだ」フフッ

和「へぇ…」ムゥ

和(っ!どうして今私、少しモヤっとした気分になったんでしょう…?)

      咲「カン。もいっこカン」

淡「必殺技キター!」

照(咲、楽しそう…)

照「…やっぱり」

淡「テル?」

照「やっぱり咲は、麻雀をしてる時が一番輝いてるよね」

淡「…当たり前だよ。そんなの」

池田「ちくしょう…ちくしょおおおおおお!!!」

    咲「嶺上開花!」パラッ

 ワアアアアアアッ!!  パチパチパチパチッ!!

優希「やってくれたじぇ咲ちゃん!」

和「凄いです宮永さんっ。あの状況から総得点をひっくり返すなんて!」

咲「あはは、力になれて良かったよ」

穏乃「B卓も逆転出来たから、これで愛好会の完全勝利だね」

優希「おぉシズちゃんもいつの間に」

咲「流石穏乃ちゃん。相変わらず静かにいつの間にか勝ちを収めるよね」クスクス

穏乃「咲の勝ち方が派手なだけだっての」ブー

淡「二人共おつかれ~」アワッ

咲「?何で二人が此処に居るの?」

  わいわい がやがや


池田「…………」ウナダレ

田中「おら、帰んぞ。さっさと歩け」どんっ

池田「はいだし…」トボトボ…

淡「ん?あっ!」

淡「ミケダだ!そこの人、ミケダでしょ!」

池田「池田だし!!」

池田「…何か用か?大星淡……」

 
――翌日――

穏乃「自分か淡か。どっちを取るかチームメイトに聞いた結果、満場一致で淡が選ばれてチームを退団」

穏乃「まさか淡と池田にそんな因縁があったとはね」

咲「因縁っていう程の事でも無いと思うけどね。唯の一方的な嫉妬だよ」

穏乃「それが原因でグレてひねくれたんだとすれば、同情の余地はあると思うけどね」

咲「性格は元々のもの大きいと思うけど…。そんな事より、腰の方は大丈夫なの?」

穏乃「全く問題無し。寝る前はちょっと心配してたけど、快調なもんだったよ。咲は?」

咲「私も今の所は何ともない…かな」

穏乃「そりゃ良かった。和、昨日帰る時すっごい心配してたもんね」

咲「…悪い事しちゃったよね。あんな啖呵切って入会したのに」

咲「『悪いけど今日一日だけの入会って事にしといて』なんてさ」

咲「…どうせ将棋部を辞めて行く所も無いし、和ちゃんみたいにマネージャーとしてって道もあるのかなぁ」

穏乃「咲にはそんなの無理だって。毎日牌を見て、自分で打つの我慢出来る訳無いじゃん」

咲「だよね。…そうえば、お姉ちゃん言ってたな。私が麻雀辞めるか続けるか悩んでる時…」


   照『麻雀を辞める?何言ってるの。咲から麻雀を取ったら何も残らないじゃない』

   照『壊れる事なんて恐れるな。雀士なら倒れる時は前のめり、卓上で死ねたら本望、でしょ?』

   照『肘の痛みなんて根性で治して、今迄通り麻雀を楽しんでれば良いんだよ』


咲「――って。全く、酷い姉だよ」ムゥ

穏乃「逆に思いっきり心配して、お願いだから麻雀なんか辞めて治療に専念しろって言われたら、咲は辞めた?」

咲「…………」

穏乃「辞めないよ。そう言われてたら意地になって、壊れるまで打ち続けたはず」

穏乃「本当に咲のコトを心配してたから、その時はそう焚きつけたんだ」

穏乃「咲の性格なんて全部お見通しだよ、照さんはさ」フフッ

咲「………ちぇっ」

穏乃「これからどうする?」

咲「ゆっくり考えるよ。高校生活は長いんだからさ」ンーッ

穏乃「じゃ、今日の所は一緒に病院で診てもらおっか。小走医院にゴーッ!」タタタッ

咲「きゅ、急に走りださないでよっ」タタタッ

 
――白糸台――

「ぐわああああああああっ!!!」

淡「ん?」

淡「なになに?どーしたんですか?」ヒョコッ

亦野「龍姫の○○先輩がツモった後、急に肩を押さえて…」

尭深「…そうえば先輩って、前に何か違和感があるって言って病院に行ってたよね」

尭深「その時はちょっと疲労が溜まってるだけって言われたらしいけど…」

淡「じゃあその医者がヤブだったんですね。怖いな~」

亦野「それってどこの病院だったっけ?」

尭深「えぇと……」ウーン

淡「病院なら私良い所知ってますよ!私の親友も通ってる、こばし――

     「たしか、小走医院って名前だったはずだよ」

淡「――――っ!?」

 
――小走医院前――

穏乃「あれ?なんか病院の前に人だかりが出来てる」

咲「テレビの人まで来てるみたいだね。何があったんだろ」

穏乃「あっ、淡から電話だ。もしもしー」ピッ

淡『シズノ!!今どこに居る!?』

穏乃「な、なに?そんな大声で…。今は咲と一緒に小走医院の前に居るけど…」

淡『ちょーど良かった!10分後に行くからそこで待ってて!!』ピッ

穏乃「え?…切れた」

咲「何だったの?」

穏乃「さぁ…」

淡「サキーーー!!シズノーーーー!!」ダダダダッ!! ゼェハァ

咲「あ、来た来た」

穏乃「どうしたの?そんな血相変えて」

淡「とっとりあえずこれ見てコレっ!」ゼーゼー スッ

咲「今日の夕刊?淡ちゃんが新聞読むなんて珍しい………えぇっ!?」

穏乃「なになに?小鍛治プロが結婚でもしたの?」ヒョコッ

咲「こ、これ……」

穏乃「えぇと……えええええええええええっ!?」


  『ニワカ医師逮捕。小走医院院長、小走やえは無免許医師だった!』


淡「二人共病院行くよ!今すぐっ!!」 

 
――荒川クリニック――

  ガーッ(自動ドア)

淡「出て来たっ!」

淡「どうだった!?診断結果は…!」

咲「……ガラスの肘だってさ」

淡「えっ………」シュン

照「そう……」

咲「―――ただ」

     「ガラスはガラスでも、拳銃で撃っても割れない防弾ガラスだけどね」

淡「えっ!!」

照「という事は…」

咲「………す~~~~~っ」シンコキュウ

穏乃「せーのっ」

咲・穏「「あのニワカ医者ああああ~~~~~っ!!!」」

 
――翌日。清澄高校――

穏乃「まさかこんな事になるとはね。人生何が起こるか分からないモンだよ」

咲「何が起こるかっていうか、何も起こって無かったんだけどね。実際はさ」

穏乃「それで、どうする?昨日淡も言ってたけど…」

  淡『白糸台に来なよ。また三人で、黄金の伝説を作っちゃおう!』

穏乃「本気で麻雀をするなら、淡の言う通り転校はアリだと思うよ」

咲「今更、カッコ悪いと思わない?」

穏乃「……少し」

咲「穏乃ちゃんは、この学校嫌い?」

穏乃「――ううん」

咲「だったら、カッコ良く行こうよ」

咲「また麻雀が出来るんだよ?私が居て穏乃ちゃんが居て、和ちゃん達が居て…他に何か必要?」

穏乃「いや、十分過ぎる位だね。これからが楽しみでわくわくしてくるよ」ニッ

穏乃「でもこれで淡を敵に回すことになっちゃうのかー。それだけは気が重いね」

咲「仕方ないよ。きっと神様が見たかったんだと思う」

咲「私と淡ちゃんの対決をね」フフッ

穏乃「…それ、自分で言ってて恥ずかしくないの?」

咲「う、うるさいなぁっ///!」


――愛好会練習場所――

咲「――という訳で、勝手を言って申し訳ありませんが」

穏乃「私達二人を正式に麻雀愛好会に入会させて下さいっ!」ぺこっ

和「ハイ、歓迎します。本当に良かったですね」ニコッ

咲「うん、ありがとう。改めてこれからよろしくね」

和「こちらこそ。宮永さんと穏乃が居ればインターハイだって夢じゃないですね!」

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