菜花黄名子「ワルプルギスの夜はうちが倒す」 (75)


黄名子「いてて……ここはどこやんね……?
何か薄暗いけど……」

黄名子「確か、フェイやトーブと帰る途中に時空の狭間に落ちて……
どこかの世界に来てしまったやんね……?」

コロコロ

黄名子「これはみんなが寄せ書きしてくれたボール……
大丈夫、きっとフェイ達がうちを見つけてくれるやんね!それまで何とかこの世界で生き残らないと……」

「助けて……」

黄名子「声……?」

「助けて……!」

黄名子「あっちから……?とにかく行かないと!」

……

キュウべえ「助けて……」

黄名子「ぬいぐるみ……?ボロボロやんね……」

まどか「あなたは……?」

黄名子「うちは助けてって声が聞こえて……」

まどか「私も、その子から声が聞こえたの……」

ほむら「そいつから離れなさい
……!?」

まどか「ほむらちゃん!」

ほむら「(どういうこと……今まで何度も時間を越えてきたけど、彼女を見かけたことは一度もない……
彼女は一体……)」

ブシュウウウウ

さやか「まどか!こっち!」

まどか「さやかちゃん!行こう?」

黄名子「うん!」

……

さやか「あいつ、コスプレまでするの!?」

まどか「ありがとうさやかちゃん」

さやか「それと、君は?サッカーボールを持ってるけど……」

黄名子「えっと、うちは……」

まどか「!?」

さやか「な、なにこれ……!?」

黄名子「何だか周りが変な空間になってるやんね……!」

ドーン

?「危ないところだったわね
でも、私が来たからにはもう大丈夫よ」

さやか「あなたは……?」

?「その前に、仕事を終わらせましょうか」

……

キュウべえ「助かったよ、マミ」

マミ「お礼は彼女達に言って
私はたまたま通りかかっただけだから」

キュウべえ「鹿目まどかに美樹さやか、それと……」

さやか「なんで私達の名前を?
そうだ、それに君は一体……」

黄名子「(正直に話したら変に思われるかもやんね……)
うちは菜花黄名子
最近ここに引っ越してきたの
そしたら助けて……って声が聞こえてきたからここに来たやんね」

キュウべえ「(あれはまどかに向けたはずなんだけど……それに黄名子には不思議な力を感じる……
ついでにエネルギーを貰っていこう)」

さやか「そうだったんだ
私は美樹さやか、見滝原中学に通う二年生!」

まどか「私は鹿目まどか、さやかちゃんのクラスメートだよ」

マミ「自己紹介が遅れたわね
私は巴マミ、彼女達と同じ見滝原中学に通う3年生よ」

キュウべえ「ところで、まどかとさやかと黄名子、僕と契約して魔法少女になってほしいんだ!」

まどか「魔法……少女……?」

マミ「詳しい話は私の家でしましょう?」

さやか「あ、はい!」

……

マミ「というわけなの」

さやか「願い事……」

黄名子「(もしも元の世界に帰りたいって願えばきっと……
でも、魔法少女になったまま元の世界に帰ったらどうなるんだろ……
それに本当に帰れる保証もないやんね……)」

マミ「もう遅いし、そろそろお開きにしましょう?」

まどか「そうですね……
私もそろそろ家に帰らなきゃ……」

黄名子「(あっ、うちは帰る家がないやんね!)」

さやか「黄名子も帰ろ?」

黄名子「えーっと、マミ先輩の家にお泊まりしてもいいやんね?」

マミ「え?ええ、構わないけど……親御さんは……」

黄名子「それなら大丈夫やんね!」

さやか「そっか、じゃあまた明日な!」

まどか「ばいばい!」

黄名子「ばいばいやんね!」

ガチャ バタン

マミ「どうしたの?急に泊まりたいだなんて」

黄名子「(このままじゃ、今日は良くても明日から住む場所がないやんね……
マミ先輩に事情を話せば……
多分、マミ先輩ならうちの事情も理解してくれるやんね……!)」

黄名子「実は……」

マミ「ん?」

黄名子「うちは、別の世界から来たやんね!」

マミ「別の世界?」

黄名子「うちが住む別の世界で、サッカーを守る為に時空を飛び越えてみんなで旅をしてたやんね
何とかサッカーを守ることが出来て、過去で知り合った友達の寄せ書きが書かれたこのサッカーボールを貰って、未来に帰ろうとしてたやんね
それなのに未来に帰る途中でうちが時空の狭間に落ちてしまって、気づいたらここに……」

マミ「そんなことが……」

黄名子「きっと皆うちを見つけてくれるやんね!
だからそれまで……マミ先輩の家にお泊まりさせてほしいやんね!」

マミ「ええ、良いわよ」

黄名子「本当やんね!?」

マミ「もちろん!」

黄名子「ありがとう、マミ先輩!」

マミ「私も、一人ぼっちは寂しいから……」

黄名子「ん?」

マミ「何でもないわ
夕御飯の材料、買ってくるわね」

黄名子「うちも付いていくやんね!」

……

マミ「それじゃ魔法少女体験ツアー第一弾、始めましょうか?」

さやか「無いよりはあった方がいいと思ってこれを持ってきました!」

マミ「バット……まあ、ないよりはマシかもね」

黄名子「うちもサッカーボールを!」

マミ「鹿目さんは?」

まどか「あ、私は……このノートを……
私が魔法少女になれたら、こんな服だったらいいなって……」

さやか「あっはははは!」

まどか「ひ、酷いよさやかちゃん!」

さやか「ごめんごめん、だってさ……」

……

マミ「ティロ・フィナーレ!」

魔女「ぎゃああああ」

まどか「すごい……マミさん」

さやか「かっこいい」

マミ「これが魔法少女の仕事よ」

黄名子「(この後、鹿目や美樹の同級生の魔法少女と一悶着あって、数日が過ぎたやんね)」

まどか「上条くんに会えなかったの?」

さやか「うん……」

さやか「わざわざ見舞いに来たっていうのに酷いよね!」

黄名子「しょうがないやんね」

まどか「!!……これ……」

さやか「グリーフシード……!」

黄名子「ど、どうしようやんね……!」

さやか「マミさんの番号知ってる?」

まどか「うんうん……」

さやか「まずったな……
私が見張ってるからまどかと黄名子はマミさんを呼んできて!」

まどか「え、でも!」

さやか「結界を張られると場所が分からなくなるんでしょ?
だったら誰かが見張らないと!」

黄名子「それならうちも見張るやんね!
呼びに行く人より見張る人が多い方がいいやんね!(いざとなったら……このみんなが寄せ書きしてくれたサッカーボールで……)」

さやか「でも……」

黄名子「お願いやんね!」

さやか「……うん、分かった」

キュウべえ「それなら僕も着くよ
ここまで来ればテレパシーでマミに居場所を教えられるからね」

まどか「それじゃ、マミさんを呼んでくるね!」

さやか「任せた!」

……

マミ「みんな、大丈夫だった?」

さやか「マミさん!」

キュウべえ「今孵化したんだ
間に合ってよかったよ」

マミ「それじゃとっとと片付けないとね!」

まどか「マミさん!」

マミ「(不思議……体が軽い……)」

マミ「(菜花さんに鹿目さん……私は一人じゃない)」

マミ「(もう何も怖くない!)」

マミ「ティロ・フィナーレ!」

マミ「ふう……」

シャルロッテ「……!」

マミ「え……」

黄名子「危ないやんね!」

黄名子「ミキシトランス、マスタードラゴン!」

黄名子「焼きもちスクリュー!!」

ズドーン

シャルロッテ「……!?」

マミ「菜花さん……その格好は……
とにかくありがとう!ティロ・フィナーレ!」

シャルロッテ「!!……」

まどか「危なかった……」

マミ「もう一度お礼を言わせてもらうわ、ありがとう、菜花さん」

さやか「それより黄名子、その格好は……」

黄名子「(こうなったら説明するしか……ないやんね)
実は……かくかくしかじかで……
今のはミキシマックスっていう人から人へオーラを送ってそのオーラを使えるというもので、うちが住んでる世界のサッカー選手では当たり前のものやんね
一旦ミキシマックスした相手のオーラをもう一度呼び起こすとき、ミキシトランスになるやんね」

黄名子「それでうちはマスタードラゴンっていうドラゴンとミキシマックスしてたから、ミキシトランスできたっていうわけ、やんね!」

まどか「え、ええと……サッカーの話じゃなくなってるような……」

さやか「人と人って言っておきながらドラゴンとミキシマックスしちゃってるし……」

まどか「マミさんは黄名子ちゃんが時間を飛び越えてたってこと知ってたんですか?」

マミ「ええ、住む家がないからって」

黄名子「うん!」

マミ「でも、心強いわ
菜花さんがいなかったらきっと私……
菜花さん、これからも力を貸してもらってもいいかしら?」

黄名子「マミさんの家に泊めてもらってるんだし、当然やんね!」

キュウべえ「(時空を飛び越えた旅人がやってくるなんてね……それでもワルプルギスの夜は止められそうにないからまどかとは契約出来そうかな
)」

……

マミ「待たせたわね
縛って悪かったわ」

ほむら「……」

マミ「今後このようなことが無いように気をつけるから、あなたもそうしてちょうだい」

ほむら「分かったわ(あの魔女をマミが倒した……?)」

マミ「(菜花さんがいなければ私は死んでいた……
あの子が必死に私を止めたのは私を救うため……?
まさか……ね)」

……

まどか「そうだ、マミさん
連絡先交換しませんか?」

さやか「そうだね、今日みたいに私達が見つけることもあるし」

マミ「そうね、その方がいいわ
交換しましょう」

数日後

まどか「お店回ってたらすっかり遅くなっちゃった
あ、仁美ちゃーん!」

仁美「あら、まどかさん」

まどか「(!!)」

まどか「(これって……魔女の口づけ……!?)」

仁美「まどかさんも一緒に行きませんか?これから素晴らしい世界に行くんですのよ」

まどか「マミさんに電話しないと……!」
マミ『どうしたの?鹿目さん』

まどか「魔女が……!」

マミ『場所はどこ?』

まどか「○○です!」

マミ『分かった、すぐ行くわ!』

黄名子「どうしたやんね?」

マミ「魔女が現れたそうよ
一緒に行きましょう!」

黄名子「分かったやんね!」

……

マミ「ここね」

マミ「!!」

さやか「あ、マミさん、こっちは済ませちゃいましたよ」

マミ「美樹さん……契約したのね」

さやか「まあね!」

マミ「前言ってた誰かのために?」

さやか「……はい」

マミ「なっちゃったものはしょうがないわね」

さやか「一緒に頑張りましょう!」

黄名子「美樹も契約をしちゃったやんね……」

さやか「美樹はちょっと……さやかでいいよ」

黄名子「分かったやんね、さやか!」

さやか「そうそう」

まどか「(この前マミさんは黄名子ちゃんのおかげで無事だったけどさやかちゃんが怪我しないとは限らない……不安だな……)」

ほむら「……」

さやか「!……転校生!」

ほむら「あなたは……!」

さやか「あんたと話すことはない
帰ろう?」

マミ「そうね」

まどか「う、うん……」

ほむら「……(今までと比べてさやかに心の余裕がある……?)」

……

マミ「それじゃあ、パトロールに行きましょう?」

さやか「よかった……まだ初心者だから、マミさんがいて」

マミ「私も……
いえ、魔法少女が増えたことを喜ぶべきではないわね……」

さやか「?」

マミ「行きましょう」

……

マミ「ここね」

キュウべえ「使い魔だね」

マミ「行くわよ」

さやか「はい!」

黄名子「頑張ってやんね!」

ドガン

さやか「!?」

杏子「お前がこの前魔法少女になったトーシロか」

マミ「佐倉さん……!」

まどか「知り合い……なんですか?」

マミ「ええ……」

杏子「久しぶりだな、マミ」

マミ「どうしてここに?」

杏子「新入りを見に来たのさ
それにしても、相変わらずあんたは甘いな
使い魔なんて倒してもグリーフシードは手に入らない」

さやか「使い魔でも倒さなきゃ人が死んじゃうんだよ!?」

杏子「だから、人を喰わせて……それから私達が喰うんだよ」

さやか「そんな……許せない!」

マミ「ここは私に任せてくれるかしら?」

さやか「マミさん……」

マミ「かつての弟子だもの、私が一番彼女を相手に出来るから」

杏子「あの時、あんたは負けた
もう私の敵じゃない」

まどか「そんな……どうして魔法少女同士で戦うの……!?」

黄名子「そうやんね……こうしてる間にも魔女や使い魔が……!」

キュウべえ「彼女達の戦いを止める方法ならあるよ
魔法少女同士の戦いを止める資格があるのは魔法少女だけ
君達が魔法少女になればその資格がある」

まどか「私が……魔法少女に……」

ほむら「その必要はないわ」

杏子「あんたがこの町にいるもう一人の魔法少女か……」

マミ「どきなさい
私は体で弟子に教えてあげなきゃならない」

ほむら「落ち着きなさい、マミ
今ここで争う意味はない」

マミ「それは……」

ほむら「ここは私がやるわ
あなた達は帰りなさい」

さやか「誰が転校生の言うことなんか……!」

マミ「私は大丈夫よ
ここからは私達で話し合うから」

さやか「マミさん……」

まどか「分かりました……さやかちゃん、黄名子ちゃん、帰ろう?」

黄名子「分かったやんね……」

さやか「うん……」

……

ほむら「二週間後、この町にワルプルギスの夜がやってくる」

マミ「どうしてそのことを知ってるのかしら?」

ほむら「それは秘密」

ほむら「ワルプルギスの夜を倒すために、あなた達に協力してもらいたい」

杏子「ワルプルギスの夜か……4人がかりなら倒せるかもな
それよりさ……あんた何者?
どうしてそこまで詳しいのさ」

ほむら「……」

マミ「ワルプルギスの夜が来たらこの見滝原は確実にボロボロになる……
あなたがそう言うなら、私はあなたに協力するわ」

杏子「私はパス」

ほむら「ワルプルギスの夜を倒せたら、グリーフシードはあなたにあげるわ」

杏子「!……本当か!?」

マミ「私は見滝原が救えれば構わないからそれでいいけど……」

ほむら「その代わり、ワルプルギスの夜を倒すまで鹿目まどかや美樹さやか、菜花黄名子には手を出さないでちょうだい
手を出したら、ワルプルギスの夜を倒したあとに私と巴マミでグリーフシードを奪うわ」

マミ「そうね……鹿目さんや美樹さんや菜花さんに手を出してほしくはないし……」

杏子「……分かった
アイツの後に二人を相手には出来ないし、一時休戦にしてやるよ」

マミ「ありがとう、佐倉さん」

杏子「グリーフシードが欲しいからしょうがなく休戦にしただけだ!」

ほむら「(巴マミは死なず、美樹さやかも今までより冷静になっている……
菜花黄名子、あなたが運命を変えたというの……?)」

……

黄名子「おかえりなさいやんね!」

マミ「ただいま、菜花さん」

黄名子「どうだった……やんね?」

マミ「一時休戦ってことになったわ」

黄名子「それはよかったやんね!」

マミ「さ、ご飯にしましょうか?」

黄名子「うん!」

……

さやか「で、なに?話って」

仁美「私……上条恭介くんのことお慕いしておりますの」

さやか「……!」

仁美「あなたはどう思っているのですか?さやかさん」

さやか「私は……」

仁美「私はもう自分の気持ちに嘘をつきたくありません
だからさやかさんも……
明日の放課後までに決めてください
1日だけお待ちしますわ」

さやか「……」

……

マミ「それじゃパトロール、行きましょうか」

さやか「ちょっと待って、何であんたがいるの!?」

杏子「手を組んだんだ」

さやか「はぁ?」

杏子「まあ利害の一致っていうか
一人じゃ倒せない奴と戦うためにつるんでるだけさ
あと何日かしたら、この街にワルプルギスの夜が来る
超弩級の大物魔女だ」

杏子「アタシもアイツもアンタも、たぶん一人じゃ倒せない
だから共同戦線っていうか、まあ要するにそういう仲なのさ」

さやか「だからってパトロールにまで……」

杏子「パトロールに参加するつもりはない
さやか、あんたに話がある」

さやか「話?」

マミ「それじゃ私達はパトロールに行きましょうか」

まどか「えっ……でも、さやかちゃんが……」

マミ「今の彼女は美樹さんに手を出さないって約束してるから大丈夫よ」

まどか「さやかちゃん、また後で」

さやか「うん!」

……

さやか「お待たせ」

まどか「さやかちゃん!」

黄名子「何を話してきたやんね?」

さやか「うん、ちょっとね」

さやか「(誰かの為にやったら尚更迷惑がかかるから自分の事だけ考える……か……
あんたの言うことには従いたくない……
でも……
私がこのまま気持ちを隠したままなら……仁美にも失礼だよね……!)」

さやか「それじゃ、パトロール行きまっしょい!」

まどか「何か、元気出たねさやかちゃん」

黄名子「あの赤い魔法少女のおかげやんね?」

まどか「(普段魔女を倒すマミさん、さやかちゃん、ほむらちゃん、マミさんを救ってくれた黄名子ちゃん……
私だけ何の役にも立ってない……
やっぱりお荷物なのかな……)」

翌日 朝

さやか「仁美」

仁美「さやかさん」

さやか「私も、恭介のことが好き」

仁美「……!
そう……ですか……」

仁美「それなら、お譲りしないといけませんね」

さやか「ごめん仁美
でも、あんたが正直に話してくれたのに私が話さないなんて失礼だって思うから」

仁美「いえ……
私もさやかさんの恋を応援させていただきますわ
ただ、諦めたわけじゃありませんからね?」

さやか「仁美……」

……

さやか「恭介……私、あんたのことが好き」

恭介「え……!」

さやか「ダメかな……」

恭介「今まで……さやかのことをただの幼なじみだと思っていたよ」

さやか「……!!」

恭介「せっかく腕も治ったんだし、彼女より音楽に精を出していきたいんだ
ごめん」

さやか「そっか……そうだよね……ごめん」ダッ

恭介「あっ、さやか!」

さやか「(何で逃げてるんだろ……私……
私と違って天才なんだし音楽を頑張るに決まってるのに……
私……独りよがりだ……)」

……

まどか「もしもし?」

さやか母『もしもし?さやか知らないかしら?』

まどか「さやかちゃん?家にいないんですか?」

さやか母『ええ……まだ帰ってきてないの』

まどか「(何があったんだろ……)探しに行きます!」

……

マミ「どこ行ったのかしら……」

まどか「あ!さやかちゃん!」

さやか「まどか達……」

まどか「良かった……探したんだよ?」

マミ「本当無事で良かったわ」

黄名子「さ、帰ろうやんね!」

さやか「……」

まどか「さやかちゃん……?何があったの?」

さやか「今日……恭介に告白したの」

まどか「え……」

さやか「それでフラレちゃった、私より音楽に精を出したいって」

マミ「美樹さん……」

さやか「フラレるって分かってたはずなのにショック受けて、逃げ出して……こうしてみんなに迷惑かけて……
私って、ホントバカ……」

黄名子「そんなことない!」

さやか「黄名子……」

黄名子「乗り越えるべきやんね!」

さやか「黄名子に何が分かるの!?」

黄名子「分かるやんね!
ややこしくなるから言わなかったけど、うちが時空を越えて旅をしてたのにはもう一つワケがあるやんね」

さやか「ワケ?」

黄名子「うちが時空を越えたのは、時空を旅してサッカーを救おうとするうちの息子を見守る為でもあったやんね」

さやか「息……子?」

まどか「き、黄名子ちゃん息子がいたの?」

黄名子「息子って言っても未来のうちの息子やんね
うちが息子を生んで死んだあと、うちの息子が成長した未来でサッカーを滅ぼそうとする人達がいて、それを阻止する為にうちの息子は時空を越えたやんね
それを知ったうちの夫が、うちの息子とその仲間を見張るために、過去に戻って今のうちの所に来て、息子を見守ってほしいって言いに来たやんね
それでうちが潜り込んで一緒に旅に出たの
初めは他人のような気がしてたやんね
でも、何だか放っておけない……そんな気持ちがうちの中にあった
そんな時、うちはマスタードラゴンと会ったやんね」

マミ「菜花さんがミキシマックスしたっていう……」

黄名子「そのマスタードラゴンに言われて、うちは自覚したやんね
うちはこの人の母親だ、って
その時分かったの、遠くから愛を持って見守るのは辛いことだって
だからうちはさやかの気持ちが分かる
遠くから愛する人を見守らなきゃならない気持ちが
それでも、見守り続けることが大事やんね
さやか、うちはこれを乗り越えて恭介のことを見守ってあげることが大事だと思うやんね!」

さやか「黄名子……」

さやか「そっか……そうだね」

さやか「黄名子は私なんかよりずっと大変なことをしてきたんだね
だから……私も見守ろうって思えるよ」

黄名子「さやか……!」

さやか「ありがとう、黄名子
それにまどかとマミさんも」

マミ「解決ね」

まどか「良かった……さやかちゃんが元気になって」

さやか「さ、早速帰ろう!もう夜も遅いしさ!」

まどか「うん!」

マミ「そうね、帰りましょうか、菜花さん」

黄名子「そうするやんね!」

……

「時間遡行者・暁美ほむら
過去の可能性を切り替えることで、幾多の並行世界を横断し、君が望む結末を求めて、この一ヶ月間を繰り返してきたんだね
君の存在が、一つの疑問に答えを出してくれた
何故鹿目まどかが、魔法少女としてあれほど破格の素質を備えていたのか
今なら納得いく仮説が立てられる
魔法少女としての潜在力はね、背負い込んだ因果の量で決まってくる
一国の女王や救世主なら兎も角、ごく平凡な人生だけを与えられてきたまどかに、どうしてあれほど膨大な因果の糸が集中してしまったのか不可解だった
だが、ねえ、ほむら
ひょっとしてまどかは、君が同じ時間を繰り返す毎に、強力な魔法少女になっていったんじゃないのかい
原因は君にあったんだ
正しくは、君の魔法の副作用、と言うべきかな
君が時間を巻き戻してきた理由はただ一つ――鹿目まどかの安否だ
同じ理由と目的で、何度も時間を遡るうちに、君は幾つもの並行世界を、螺旋状に束ねてしまったんだろう――鹿目まどかの存在を中心軸にしてね
その結果、決して絡まるはずのなかった平行世界の因果線が、全て今の時間軸のまどかに連結されてしまったとしたら、彼女の、あの途方もない魔力係数にも納得がいく
君が繰り返してきた時間――その中で循環した因果の全てが、巡り巡って、鹿目まどかに繋がってしまったんだ
あらゆる出来事の元凶としてね
お手柄だよ、ほむら
君がまどかを最強の魔女に育ててくれたんだ」

……

杏子「いよいよだな」

マミ「そうね」

さやか「やりますか!」

ほむら「(今までの時間軸と違って、今回は他の魔法少女を死なせずにここまで来た
キュウべえ、あなたにまどかと契約なんてさせない
必ずワルプルギスの夜を倒す)」

避難所

黄名子「(『菜花さん、私はあなたの力を信用している……でも、異世界から来たあなたをボロボロの状態で帰すわけにはいかないわ
だから、避難所でじっとしていて』か……
それでも、うちはマミがいなかったらこの世界で生きていけなかったかもしれない
うちも恩を返すやんね!)」

まどか「黄名子ちゃん」

黄名子「まどか」

まどか「やっぱり、さやかちゃん達が戦ってるのに私だけじっとしてるなんて出来ないよ……」

黄名子「うちは今からワルプルギスの夜の所へ向かうやんね
まどかも来る?」

まどか「黄名子ちゃん……
私は何も出来ない自分が嫌だった……
魔法少女として戦ってるマミさん達、マミさんを助けてくれた黄名子ちゃんに比べて私は人に任せてばかりで……
さやかちゃんも説得してくれたし、黄名子ちゃんは強いね」

黄名子「それは違うやんね」

まどか「え?」

黄名子「うちも、みんなの助けがあってここまで来れたやんね
それに、まどかはみんなの為になろうって自分からワルプルギスの夜の所へ行くって決めたやんね
それだけで十分まどかも強いやんね!」

まどか「黄名子ちゃん……ありがとう」

黄名子「行こう!」

まどか「うん!」

……

杏子「4人がかりだってのに歯が立たない……!」

マミ「魔力には限界がある、このままだとじり貧だわ」

さやか「どうすればいいの!」

ほむら「(……いきなり現れた彼女のおかげでここまでこれた
それなのに歯がたたないなんて……!)」

キュウべえ「無駄だよ」

ほむら「キュウべえ……!」

キュウべえ「ワルプルギスの夜はまどかじゃなければ倒せない、それほど強いんだよ」

ほむら「嘘よ!!」

キュウべえ「暁美ほむら、君も実力差を感じているんじゃないのかい?」

ほむら「くっ……」

黄名子「諦めちゃダメやんね!」

マミ「菜花さん!鹿目さんもどうしてここに……」

まどか「私達だけじっと待ってるだけなんて出来ないんです!」

さやか「まどか……」

黄名子「うちのチームのキャプテンがよく『何とかなるさ!』って言ってたやんね
だから諦めちゃダメやんね!」

キュウべえ「無駄だよ
ワルプルギスの夜はまどか、君にしか倒せない
みんなを傷つけたくなかったら、僕と契約して魔法少女になってよ」ニコッ

まどか「本当なの……?」

さやか「……うん
私達じゃ歯がたたない」

キュウべえ「まどか、どうするんだい?」

マミ「しょうがないわ……ここは鹿目さんに頼るしか」

ほむら「ダメよ!」

まどか「ほむらちゃん……」

マミ「どうしてそこまで鹿目さんに魔法少女になってほしくないのかしら?」

ほむら「……分かったわ……全部……話す……」

まどか「(ほむらちゃんは私を守る為に何度も時間を遡っていること、そしてそのせいで私の力が増幅してることを話してくれた)」

マミ「驚いたわ……まさか時空超克者がもう一人いたなんて」

ほむら「何度も何度も遡って、黄名子のおかげで初めてこんな大人数で挑んだのに、それでも歯がたたないなんて……私は……」

まどか「……」

まどか「ほむらちゃん、ごめんね
私……魔法少女になる
みんなの苦しんでる姿、見たくないから」

ほむら「!!」

マミ「そんな……」

さやか「まどか……」

???「黄名子!!」

黄名子「その必要は、ないみたいやんね」

まどか「え……?」

フェイ「黄名子が落ちてから大分後でごめん!このパラレルワールドに侵入出来そうなのがここしかなかったんだ」

ワンダバ「無事で良かったぞ黄名子!」

アルノ「本当間に合って良かったの」

黄名子「フェイ!ワンダバ!」

杏子「だ、誰だ?」

黄名子「こっちが息子のフェイ」

フェイ「よろしく」

黄名子「こっちがアンドロイドの……」

ワンダバ「クラーク・ワンダバット様だ!」

黄名子「そして……」

アルノ「クロスワード・アルノ博士じゃ」

杏子「む、息子!?」

さやか「後で後で」

杏子「そうだ、それよりワルプルギスの夜を!」

黄名子「そうだったやんね!」

フェイ「ワルプルギスの夜?」

黄名子「かくかくしかじかで……」

フェイ「この世界も大変みたいだね」

アルノ「その理論は違うのぉ、キュウべえとやら」

キュウべえ「どういうことだい?」

アルノ「ワシの研究によれば、パラレルワールドは一時的な物でしかなく結果は収束する
つまり、ほむらが過去に戻ることでインタラプトというパラレルワールドの発生原が何個も作られてしまったことで弦を弾いたときのようにいくつもの道筋が発生してしまった
この時にまどかの力が増幅したとすれば、これはワシの理論で言うところの共鳴じゃろう
ほむらが何度も過去に戻ることでパラレルワールドが何個も作られそのパラレルワールド各々のまどかがかかわり合っていると見るべきじゃな」

キュウべえ「君の言う通りなら、僕たち魔法少女の世界と君たちサッカーの世界というパラレルワールドが存在するのはどういうことだい?」

アルノ「結局は宇宙の始まりから宇宙の終わりへと収束し、その中でいくつものパラレルワールドが収束しつつあるということじゃろう
事実ワシらは物語の世界のパラレルワールドを生成することに成功しているしの」

黄名子「あの二人は放っておいて……それにしてもよく見つけられたやんね、アーティファクトもないのに」

フェイ「最初は僕たちの世界の各パラレルワールドを探したんだけど見つからなかった
そこでアルノ博士が共振が起きるような大きく振動しているパラレルワールドなら遠く離れていたとしてもこちらにまで及んで黄名子が落ちた可能性があると考え、探したんだ
そこでこの世界のパラレルワールドのどこかにいることが分かって、何とかこの時間の黄名子を発見できたんだよ」

フェイ「この世界のパラレルワールドはどれも同じ結果に収束してるみたいだね」

ほむら「収束……?」

フェイ「黄名子の説明によれば、ほむらは何度もパラレルワールドの収束を見てきたってことさ
まどかが魔女になるっていう結果のね」

ほむら「そんな……まどかが助かる世界はないの……?」

フェイ「いや、インタラプトを作って大きく変えれば別の結果のパラレルワールドに収束させることが出来るんだ
僕達の世界からサッカーを消そうとしたようにね」

ほむら「私が何度繰り返しても出来なかった……まどかが助かる世界が……?」

黄名子「大丈夫やんね!」

ほむら「……?」

黄名子「まどか、力を貸してほしいやんね」

まどか「え……?あ!」

ワンダバ「私の出番のようだな」ジャキッ

黄名子「まどかとミキシマックスして、うちがワルプルギスの夜を倒す」

フェイ「黄名子、器に収まらなきゃまどかとはミキシマックス出来ないけど大丈夫なの?」

黄名子「たった1ヶ月だけど……仲良くなったし大丈夫やんね!」

さやか「それに、まどかと黄名子は何だか声が似てるしね」

黄名子「まどか、いいやんね?」

まどか「うん、これでみんなが助かるなら」

ワンダバ「では行くぞ!ミキシマーックス!」

さやか「な、何が起きてるの……」

フェイ「あれはミキシマックスガン
連結された二つの銃で二人を打ってオーラを人から人へ渡すことが出来るんだ」

ワンダバ「ミキシマックス、コンプリート!」

黄名子「ミキシマックス!鹿目まどか!!」

まどか「すごい……」

さやか「何だか黄名子がまどかっぽい……」

マミ「一石二鳥ね」

杏子「どういう意味だよそれ」

黄名子「(体が重い……まどかの力がそれだけ強いってことやんね
でも……チームのみんながくれたこの寄せ書きボールで、絶対ワルプルギスの夜を倒すやんね!)」ダッ

マミ「跳んだわ!」

黄名子「食らうやんね、ワルプルギスの夜!」

黄名子「フィニトラ・フレティア!!!」

ほむら「あの技は……!」

さやか「ボールを弓のようにして放った!?」

マミ「すごいわ……闇に差し込む光明のようね」

ドガーン

そして……

マミ「さて、魔女退治行くわよ!」

ほむら「ええ!」

さやか「はい!」

杏子「おう!」

さやか「ってあんた、いつまでこの町にいるのよ」

杏子「しょうがないだろ、マミの作る料理が美味いんだからよ」

まどか「喧嘩はダメだよ!」

ほむら「相変わらず優しいわね、まどか」

まどか「そう?
それより黄名子ちゃん、今頃何してるんだろ……」

ほむら「パラレルワールドはいずれ全てが同じ世界に収束する、だからきっと、いつか会えるわ」

まどか「そうだね!」

ほむら「(黄名子……あなたが来てくれなければ、私はいずれ諦めていたかもしれない……
もしそうなったら……)」

まどか「ほむらちゃん!早く!」

ほむら「え、ええ!今行くわ!」

……

ガラッ

フェイ「……」

黄名子(大人)「久しぶりね」

フェイ「お母さん……今も大事に取ってるんだね、そのボール」

黄名子(大人)「もちろん、チームのみんなと、まどかの寄せ書きが書かれているものだから」

フェイ「そっか……」

黄名子(大人)「(全てのパラレルワールドは収束する
だから、フェイを生んで先に天国で待ってるやんね、みんな)」

終わり

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