ほむら「色々ズレてる時間軸」(39)

先生「今日は皆さんに、転校生を紹介します」

ほむら(これでいったい何度目のループなのか……)

ほむら(もう数えるのも億劫で、ただただ機械的にこの一月を繰り返している)

ほむら(だけどそれは全てまどかの運命を変えるため。まどかのためなのよ……)

ほむら(だから、止まらない。止まれない。止まっているわけにはいかない)

先生「暁美さん、入ってきてちょうだい」

ほむら「ええ、今行きます……」ファサッ

ほむら(この時間軸での戦いが始まるわ――)

先生「それじゃあ暁美さん。自己紹介を」

ほむら「暁美ほむらです」

ほむら(何度繰り返したかもわからない自己紹介。毎度のルーティン)

ほむら(ここに立った私がすることと言えば、転校生の私を見つめるまどかの姿を探すくらい)

ほむら(まどかはいつもの席に…………)



ほむら(…………あれ?)

ほむら(いない。まどかがいない!?)

ほむら(そんな馬鹿な……! まどかがいない時間軸なんて何の価値も……)

まどか「……」

ほむら(あ、いた。よかった……本当に良かった……!)

ほむら(……でもあの席、いつもなら美樹さやかが座っているはずよね……)

ほむら(……私が転入する前に席替えでもあったのかしら)

ほむら(いや。というか教室に何か足りない。……具体的に言うと、青色が)

ほむら(そしていつもない色が増えている……。具体的に言うと、黄色)


マミ「……」ジーッ


ほむら(――――なんで巴マミがこの教室にいるのよ!)

《休み時間》

クラスメイト「暁美さんの髪の毛きれい」

クラスメイト「こっちに来る前はどこに通ってたの?」

クラスメイト「踏んでくれないかなあ」

ほむら「ごめんなさい。少し気分が優れないから、保健室へ行きたいのだけれど」

クラスメイト「あ、だったら」

ほむら「いえ、保健委員の人に頼むわ」スッ


ほむら「鹿目まどかさん。保健室へ連れて行って貰えるかしら」

まどか「……私? 私、保健委員じゃないけど」

ほむら「えっ!?」

まどか「保健委員は巴さんだよ」

マミ「……!」ガタッ

ほむら「え、あ、そ、そう……。ごめんなさい」

まどか「気にしないで。それより私、自己紹介したっけ?」

ほむら「あ、いえ、先生に聞いていたから。それじゃあ、巴さんに頼むわね。ありがとう」



マミ「呼んだかしら、暁美さん!」

ほむら「え、ええ……」

ほむら(なんでそんなガツガツ来るのかしら……怖いのだけれど)

《廊下》

マミ「ふふっ、保健室への案内なら保健委員の私にお任せよ」

マミ「といっても勝手に保健委員になってたわけだからこれが初めての仕事なんだけどね」

マミ「それにしても暁美さんの名前はカッコ良いわね。燃え上がれって感じで魂が揺さぶられるようだわ!」

ほむら「あ、はい、そうですね」

ほむら(なんなの。なんなのなの)

ほむら(……状況を整理するのよ暁美ほむら)

ほむら(まどかはクラスにいたけれど、何故か美樹さやかと入れ替わるように巴マミが在籍していた)

ほむら(……二人が入れ替わっている? けれど何故……)

ほむら(というかこの巴マミ……魔法少女なのかしら……)

ほむら(今までだったら当然だったことすら怪しく思えてくるわ……)

ほむら(とりあえず……)

マミ「暁美さんはどこに住んでるの? もしよかったら放課後とかウチでお茶しない?」

ほむら「…………」ピタッ

マミ「暁美さん……?」

ほむら「巴マミ。……これはなんだか、わかるわよね?」スッ

ほむら(ソウルジェム……)



マミ「……これは……。そう……あなたも、そうだったのね」

ほむら(……安心した。立場は違っても、本質に変化は――)

マミ「暁美さん……、あなたも」



マミ「あなたも綺麗な石に目がないクチなのね!?」



ほむら「!?」

マミ「ええ、ええ、わかるわ! 宝石って高いものね?」

マミ「たまに河原に落ちてる石とか拾って加工しちゃうわよね! よくわかるの!」

マミ「それくらいしか暇を潰す手段がないから!」

ほむら「あ、いえ、その……見覚え……」

マミ「こんな素敵なデザインのアクセサリーを自作してしまうなんて素敵だわ!」

マミ「よかったら私に作り方を教えて貰えないかしら? 出来れば休日とかどう?」

マミ「ふふっ、安心して。私休日はいっつも暇なの。フリーなの。予定なんてないから」

マミ「……って、そんなにがっついたら引かれちゃうわよね、ごめんなさい暁美さん」

ほむら「い、いえ……見覚えがないならいいのだけれど」

ほむら(それにもう既に若干引いてる)

ほむら(……魔法少女ではなく、一学年下のクラスに混じる巴マミ……なにがなんなの)

ほむら「……巴さん。あなたは、本当は一つ上の学年では?」

マミ「!」ギクッ

ほむら「……なにか隠しているのね」

マミ「べ、べべべ別にそんなことはないわよ……?」

ほむら「出来れば答えて欲しいのだけれど」ジッ

マミ「あぅ……」

ほむら「何か不都合が?」

マミ「…………き、聞いても、引かないでいてくれる?」ウルウル

ほむら「は、ぁ……ま、まあ、善処するわ」

マミ「…………その、…………ったの」プルプル

ほむら「え?」

マミ「…………だ、ダブったの」プルプル

ほむら「――――」

マミ「…………義務、教育で……留年したの……」プルプル

ほむら(なにがどうなってるの!)

マミ「義務教育で留年なんて前例がないし……普通あり得ないしで……クラスには溶け込めない……」プルプル

マミ「一つしか歳は違わないけど、でもみんなから距離は感じるし……」

マミ「…………うぅっ……」グスグス

ほむら(とんでもないところに……来てしまったわね……)ゲンナリ

マミ「お願い……私とお友達になって……」

マミ「もう休み時間寝たふりをする学生生活なんて嫌……」

マミ「昼休み屋上でぼっち飯も嫌……」

マミ「ひとりぼっちは寂しいの……」グスグス

ほむら「わ、わかったわ。友達になります、なるから」

ほむら「だからその、前を向きなさい」

ほむら「あなたは、えっと、そう。本当は強い人だから」

マミ「……うん、うんっ……ありがとう、暁美さん……!」

ほむら(……ハァ……)

《放課後》

ほむら(結局まどかと接触を図ることが出来ずに放課後を迎えてしまったわ……)

ほむら(何故か留年している巴マミとは放課後遊ぶ予定を入れられているし……)

ほむら(……バックレたら泣くわよね。しかもものすごく面倒そう……)

ほむら(今日は諦めて巴マミに付き合うしかない、か……)

ほむら(まだこの時間軸のこともわかっていないし……)

ほむら(今までの時間軸と何が違うのか……)

マミ「放課後に誰かと一緒に帰れるなんて初めて!」キラキラ

ほむら「……誰かに話しかけたりはしなかったの?」

マミ「もちろんしたわ。……でも、やっぱり距離があるの。それが辛くて」

マミ「だからね、暁美さんが転入してきてくれて本当に嬉しい!」

ほむら「……そう……」

マミ「よかったらウチに寄ってね? ケーキと紅茶の用意は出来ているから」

ほむら「気が向いたらね……」

マミ「~~♪」

ほむら「…………」

ほむら(友達はいないけれど、魔法少女としての使命を負うことなく)

ほむら(歳相応に女子中学生としての生活が送れている……)

ほむら(留年しているという点を除けば、巴マミにとっては幸せな世界かも知れないわね)

ほむら(…………留年している点を除けば)

ほむら(そういえば、巴マミにインキュベーターはまだ接触していないのかしら)

ほむら(一応、警告はしておくべきね)

ほむら「……巴マミ。たとえばの話なのだけど」

マミ「なにかしら」

ほむら「どんな願いも叶えてくれる、なんて美味しい話は、どこにも転がっちゃいないわよ」

ほむら「美味い話には裏があるの。代償無しに何かを得る事は不可能。よく覚えておきなさい」

マミ「……」

ほむら「……」

マミ「……あの、暁美さん。友達料がいるってことかしら。月2000円でいい……?」

ほむら「違うし、いらないわよ!」

ほむら(……何だかんだでいつもの如くCDショップに来た……)

まどか「…………」

ほむら「……!」

ほむら(まどかもいる……。キュゥべえに目をつけられる可能性は高いわね……)

マミ「暁美さん暁美さん、このクラシック、良いと思わない?」

ほむら(……先手を打って、まどかとの接触を断つ)

ほむら「ごめんなさい、お花を摘みに行ってくるわ」

マミ「あ、はい」

ほむら「…………」スタスタ

ほむら(ヘンテコな時間軸……だけど、まどかは守ってみせる!)

マミ「……」

マミ「私、先走りすぎなのかなあ……」

マミ「でも……友達、欲しかったし……」

まどか「あれ、巴さん」

マミ「ふぇっ!? あ、あ、ど、どうも鹿目さん……」ビクビク

まどか「震えてるけど、体調悪いの? 大丈夫?」

マミ「あ、大丈夫……です」

まどか「そう? それなら良いんだけど……ていうか、何で敬語なの?」

マミ「えっ、あ、癖って言うか? ふふ……」

まどか「まあ……色々あるとは思うけど、同じ学年なんだからもっとフランクに行こうよ」

まどか「その方がお互いに楽しいと思うんだ。ね?」

マミ「あ……はい」

まどか「あはは、変わってないよ」

マミ「ごめんなさい……、ではなくて、ごめん……かしら」

まどか「うん、そんな感じそんな感じ」

マミ「ふふ……」

『助けて……』

マミ「……!?」

まどか「…………?」

『助けて……!』

マミ「だ、誰かが呼んでる……!?」

まどか「……あっちの方だね」

マミ「い、行かなくちゃ!」ダッ

まどか「巴さん!」ダッ

ほむら「チッ、相も変わらずちょこまかと」

QB『いったい君は誰だい? 君と契約した記憶はないよ』タタタタタ

ほむら「あなたと話す舌は持たないわ」バンバンバンバン

QB『ひどい話だ』タタタタタ

ほむら「…………」バンバンバン

ほむら(まどかと……ついでにマミとブッキングしなければいいのだけれど……)

ほむら「これで決める――」スッ



マミ「え?」

まどか「あ」

QB『しめた!』



ほむら(チィッ、やっぱりか――!)

ほむら(とりあえず身を隠して……)コソッ

QB『う、うぅッ……!』

マミ「わ、わ……この子……血だらけじゃない……!」スッ

まどか「ストップ! 巴さん!」

マミ「え」ビクッ

まどか「……何も考えず野生動物に触れるのは御法度だよ」

ほむら(やだ……このまどか理性的……)

マミ「でも、この子を放っておいたら死んでしまうわ!」

まどか「そうだね。でも人里に迷い込んだ野生動物が命を落とすのは、別段珍しくないことだよ」

まどか「車に轢かれて死んでるの、見たことない? それと変わらないよ」

まどか「ま、それにしても……この傷はちょっとおかしいと思うけどね」

まどか「多分、人間に痛めつけられたんじゃないかな」

マミ「だったら……」

まどか「私たちに出来るのはこんなことをする異常者がいるって、警察に通報するくらいだよ」

マミ「……じゃあ、この子は……」

まどか「可哀想だけど、放っておくしかないね」

ほむら「……ええ、そうね。それがいいと思う」スッ

マミ「暁美さん!?」

まどか「こんにちは、暁美さん。随分とタイミングがいいんだね?」

ほむら「……そうかしら」

まどか「…………」

ほむら「……そいつから離れて、全てを忘れることをお薦めするわ」

マミ「暁美さん、この子のことを知っているの!?」

QB『……ぼ、僕は……彼女に痛めつけられて……』

ほむら「……余計な事を」

まどか「……巴さん、逃げるよ」

マミ「えっ、えっ」

まどか「いつこっちが標的にされるかわかったものじゃない」

マミ「あ、待って、ちょ……引張らないで……。この子は……」

まどか「置いていく。さぁ早く!」ズッ

マミ「ひやぁぁぁぁぁぁ」

ほむら「……完璧に、まどかには警戒されたわね」

ほむら「まあ……それでも良いのよ……」

ほむら「……彼女を魔法少女にさせないのが……私の使命なのだから……」


使い魔「  」グニョォン


ほむら「ッ、使い魔……! あの腐れインキュベーター……!」

ほむら(とはいえ、まどかたちは巴マミが助けるでしょうし……)

ほむら(…………)

ほむら(巴マミはアレだった――! くそっ!)バッ

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