梓「765プロ…ですか?」(339)

こんにちは、中野梓と申します、18歳です。
高校を卒業後、憧れの先輩の後を追って芸能界に入った私ですが、
鳴かず飛ばずというか…来るのは地下アイドルみたいな仕事ばかり…
はぁ…唯先輩…

亜美「ねぇねぇ社長ー、亜美達の給料あげてよ→」テクテク

真美「真美達の給料じゃ欲しいゲームが買えないんだよ→」テクテク

社長「はっはっはっ、そうだなぁ…、ん?あれは…」

亜美「なにかやってるね、行ってみよ、真美!」タタタ

真美「あっ、待ってよ亜美!」タタタ

梓「みんなー、今日は集まってくれてありがとうにゃーん!
梓、一生懸命歌ったにゃん!」

おまえら(4~5人)「梓ちゃーーん!!」

亜美「あー、もうおわっちゃったかー」

真美「でもあのお姉ちゃんかわいいね!にゃーんだって」

社長「ふむ…ティンときた!」

――――数日後

P「今日は珍しく皆が事務所に揃ってるから紹介するが、
これからうちの事務所で一緒に活動してくれる事になった、
中野梓さんだ」

梓「な、中野梓です、よろしくお願いします」

亜美「あー!この前のお姉ちゃんだ!!」

真美「ほんとにうちに来る事になったんだ…」

亜美「んっふっふっ~、社長必死に口説いてたもんね→」

春香「亜美真美、もう会った事あるの?」

真美「うん!この前秋葉でね…」

春香「へぇ~、それでうちの事務所に…
これからよろしくね、梓ちゃん!」

梓「よ、よろしく」

亜美「ねぇねぇお姉ちゃん、あれやってよ、この前やってたあれ!」

梓「?」

真美「あ!真美も見たい!にゃーんってやつ!」

梓「え、あ、あれは…」

亜美真美「お願いだよぉ→」

梓「う…にゃ、にゃぁん…」ネコノテ

亜美真美「おぉーーー」

千早(か、かわいい…)

亜美「でも梓お姉ちゃんだと
あずさお姉ちゃんとかぶっちゃって紛らわしいね」

P「それは確かに…」

あずさ「あらあら、なんだか面白いわね~」

真美「見た目は全然違うけどね!」

あずさ「あらあら」ドタプーン

梓「う……」ツルペターン

亜美「そうだ、亜美達がお姉ちゃんの呼び方を考えてあげよ→」

真美「真美も思った!うーん、やっぱり猫ちゃんのイメージで…」

亜美「名前が梓だから…」

亜美真美「あずにゃん!!」

梓「!!」

梓「…………」ポロポロ

春香「あ、あれ?」

亜美「そんなにいやだった…?ごめんね…」

真美「ごめんね、お姉ちゃん…」

梓「ぐすっ、…ううん…ちょっと頭を冷やしてきます」タタタ

亜美真美「お姉ちゃん…」

―――――――――――
―――――――――
―――――――


唯「あずにゃ~ん」

唯「あずにゃん、これおいし~よ~」

唯「あっずにゃ~ん!」ダキッ


―――――――
―――――――――
―――――――――――


梓「唯先輩……」グスグス

ガチャッ

千早「屋上にいたのね、中野さん」

梓「あなたは…如月千早さん…」ゴシゴシ

梓「ごっ、ごめんね、いきなり出ていったりして…私…」グシグシ

千早「……私からは何も聞かないわ、皆色々あるもの」

梓「如月さん…」

千早「千早でいいわ。それより中野さん、
ギターが上手なんですってね、今度私の歌と合わせて貰えないかしら」

梓「そんな、全然上手なんかじゃ…でもわかった、
明日ギター持ってくるね」

千早「お願いするわ」

ごめんお昼過ぎまでしばらく書けそうにない

ごめんまだかかりそう
落ちたらまた立てるから

真美「あっ、いた…」

亜美「兄ちゃーん、こっちこっち!」

P「はあはあ…ここにいたのか、梓」

梓「すいません!初日からご迷惑をかけて…」

P「その様子じゃ大丈夫みたいだな、
まだ残ってるやつらもいるから事務所に戻って顔合わせの続きをやろう」

梓「は、はい!」

千早「私はこのまま現場に向かいます、中野さん、またね」

P(千早が何か言ってくれたのかな…
珍しいな、千早から積極的に他人に係わっていくとは
…なにか感じる物があったんだろうか)

P「ただいまー」ガチャ

春香「あっ、戻ってきた」

梓「ごめんなさい、急に飛び出したりして…」

春香「あはは、こちらこそごめんなさい、
亜美と真美はみんなにあだ名をつけてるの」

亜美「ごめんね、変なあだ名つけちゃって…」

梓「う、ううん、あだ名が嫌だった訳じゃないの、
ただ大好きな人がつけてくれた呼び方と同じだったから、
色々思い出しちゃって…むしろ変なあだ名なんていわないで欲しいな」

真美「じゃあ…あずにゃんて、呼んでいいの?」

梓「…うん、ちょっと恥ずかしいけど…」

雪歩「よかったぁ、仲良くなれたみたいで…」

真「へへー、僕は菊地真!こっちは萩原雪歩!よろしく!」

雪歩「よ、よろしくお願いしますぅ」

梓「こちらこそよろしく、男の子のアイドルもいるんですね」

P「い、いや、真は…な」

真「……いいんです、馴れてますから」

梓「えっ、ええ?」

P「他の皆は現場やレッスンに向かったからまた改めて紹介するとして、
今日の所はこれで帰っていいぞ、また明日同じ時間に来てくれ」

梓「わっ、わかりました、これからよろしくお願いします!」

亜美真美「ばいばいあずにゃん!」

梓「う、うん、ばいばい、それじゃあ失礼します」バタン

春香「ふぅ、さっきはびっくりしちゃったけど、かわいい子だよね、梓ちゃん」

P「おいおい、梓はあれでも春香より年上だぞ」

春香「えっ、ええ、それは聞きましたけど…
中野さんとか梓さんって感じじゃないんですよね」

真「ああ、わかるわかる、でもほんとかわいいよなぁ梓、
女の子って感じで…僕もあんな風になれたらなぁ」

雪歩「………」

亜美「んっふっふっ~、ないものねだりはダメだよまこちん」

真「なにをー!」

P「ほらほら、いつまでもくっちゃべってないで、仕事に行った行った」

一同「はーい」



P(ほんと、一時はどうなるかと思ったけど、
取り敢えずうまくやってけそうだな)

梓(はあ…いきなりやっちゃったな…)

梓(でも急に『あずにゃん』って呼ばれるなんて…唯先輩…)ウル

梓「駄目だ駄目だ!気分転換に純にでも電話しよっと」prrrr

純「もしもーし、梓?」

梓「もしもし、純学校終わった?」

純「んー?今日は自主休講」

梓「もう、ちゃんと行きなよ…」

純「別にいいじゃんかー、それより梓今日から
新しい事務所に行ったんでしょ、どうだった?」

梓「うん、まだちょっとしか話してないけど、皆いい子そうだったよ」

純「でもさー、わたしはよく知らないんだけど、
765プロって女の子だけのアイドル事務所なんでしょ?
ああいう世界って凄いんじゃないの?足の引っ張りあいとか…」

梓「そんな事…ないと思うけど…」

純「とにかくさ、つらい事あったらいつでもこっちに帰っておいでよ、
もうゆ…んっ、んん、いつも憂とも話してるんだから」

梓「…うん、ありがとう、純」

純「じゃ、またいつでも電話してきなよね」

梓「うん、じゃあね」

純「はーい、ばいばい」



純も気を使ってくれたんだろうが、
憂の顔を見ると思い出してしまって辛いとは、とても言い出せなかった。

――――翌日

P「お、梓来てるな、ちょっとこっちに来てくれるか?」

梓「は…」
あずさ「は~い、何ですか~プロデューサーさん」

P「……あずささん、わざとやってるでしょう…」

あずさ「うふふ、ごめんなさいね、梓ちゃん、ちょっと羨ましくって」

梓「? い、いえ」

P「んん、それじゃこっちに」

梓「はい」

P「それで話ってのは、梓のこれからの売り出し方についてなんだが…」

梓「は、はあ」

P「聞いた所だとこれまで梓は路上ライブやエキストラ
なんかの仕事がメインだったそうだな」

梓「そうですね、あとはデパートのイベントとか…」

P「ふむ…梓はそれらの仕事にやりがいを感じていたか?」

梓「…は、はい!貰った仕事は一生懸命やってきました!」

P「そうか…それは素晴らしい姿勢だ。
ただな、社長がこう言っていたんだ、
梓は素晴らしい光を持っているのに、輝かせて貰っていない、
うちの事務所で本来の輝きを発揮させてあげたいって」

P「梓の本当にやりたい事って別にあるんじゃないのか?」

梓(こんなに私の事考えてくれるんだ…
前の事務所ではたまに入った仕事を事務的に伝えられるだけだったのに…)ジーン

梓「わ、私高校時代バンドをやってたんです!大好きな先輩達と…」

P「ほう」

梓「ずっとその仲間でバンドをやって、
お喋りしたり演奏したりしていきたい、
していけると思っていました」

P「……」

梓「でも、先輩達にも事情や…どうにもならない事があって…」

梓「それでも私、音楽が好きで…音楽に関わる仕事がしていきたいです…」

P「…わかった、俺は皆をプロデュースするにあたって
なるべく本人の意向を尊重していきたいと思ってる。
もちろんすべて希望通りとはいかないが」

梓「は、はい!よろしくお願いします!」



とっさに唯先輩の事は伏せてしまった。
言わない方がいいと思った訳ではなく、
なぜか言い出せなかった。

――――PM9:00

P「……」カタカタ

律子「……」カタカタ

P「…ふぅ、もうこんな時間か、一息いれないか?」

律子「そうですね、お茶でもいれます」

P「悪い」



律子「どうぞ」カチャ

P「サンキュー」

律子「…それで、どうですか、新しく入った中野さんは?」

P「うん…ビジュアルもいいし、やる気もあるんだが、
もうひとつ心を開いてくれないというか…」

律子「ひっかかる物があると?」

P「うーん、はっきりそうだと言い切れる訳じゃないんだが…」

律子「……プロデューサー、平沢唯って知ってます?」

P「ああ、確かデビュー曲がそこそこヒットして、その後…」

律子「急性の白血病で亡くなった、
悲運のアーティストとして亡くなってからの方が大きく扱われましたね、
よくある話ですけど」

P「その平沢唯がどうかしたのか?」

律子「中野さん、平沢唯の高校の後輩だったらしいです。
一緒にバンドを組んでいて、かなり親しかったみたいですね」

P「そうだったのか…どうして律子はそれを?」

律子「平沢唯は今でも一部に熱狂的なファンがいますからね、
そのファン達の間で平沢唯の後輩がアイドルをやっているって噂
になってたんですよ、私はネットで知ったんですけど」

P「ふーむ…」

律子「これは私の想像ですけど、プロデューサーが
中野さんに対してひっかかる部分って、
平沢唯の死が影響を及ぼしているんじゃないかと」

P「…そうかも知れないな…ありがとう、律子」

P(身近な人間の死…音楽へのこだわり…
梓は千早と少し似た所があるのかもしれないな)



――――翌日

梓「おはようございます…あ、千早」

千早「おはよう中野さん、あ、ギター持ってきてくれたのね」

梓「うん、昨日は会えなかったから」

真美「なになにー、あずにゃんギター弾けるの?弾いてみてよ!」

梓「え、いいけど…何を弾こう…」

真美「何でもいいから得意なの弾いてみてよー」

梓「うーん、じゃあ…」

♪ ♪ ♪ ♪ジャジャーン

真美「わー!凄い凄い!あずにゃん上手ー!
でもこの曲なんだっけ?何か聞いた事あるような…」

千早「平沢唯のデビュー曲ね、私も好きな曲よ」

梓「唯せんぱ……平沢唯を知ってるの?」

千早「え、ええ、不幸にして活動期間は短かったけれど、
とても才能溢れるアーティストとして尊敬しているわ」



唯先輩、こんな所でも唯先輩は愛されているんですね、やっぱり敵わないなぁ…

千早「それにしても、本当にギター上手なのね、
今まで一緒にお仕事したスタジオミュージシャンと比べても遜色ないわ」

梓「そ、そんな、私なんて全然…」

千早「スタジオの方で一緒に歌わせて貰ってもいいかしら、
コードを渡すから次はこの曲を…」ペラペラ

真美「こんなに短期間で千早お姉ちゃんを手なずけるとは…
あずにゃん恐るべし」

千早「ふう、今日はとてもいい練習になったわ、ありがとう中野さん」

梓「私こそ…久しぶりにスタジオで思いきり演奏できたし」

伊織「おつかれー」ガチャ

千早「あら伊織、お疲れ様」

梓「お疲れ様…」

伊織「あら、中野さん…だったかしら」

梓「う、うん、水瀬さん」

伊織「私の事は伊織ちゃんでいいわよ、
スーパーアイドルの伊織ちゃんは寛大なの、にひひっ」

梓(うわ、今まで回りにいなかったタイプ…)

亜美「おつかれちゃ~ん、お、あずにゃん早速いおりんにからまれてるの?」

伊織「失礼ね!絡んでなんかいないわよ!」

亜美「んっふっふ~、あずにゃん、
いおりんはこんなだけど本当のお嬢様なんだよ、
別荘なんか一杯持ってんの!」

梓「へえ、紬先輩みたい…」

伊織「…ちょっと聞き捨てならないわね、
あなたの知り合いに私みたいなスーパーレディがいるっていうの?」

梓「いや、タイプは全然違うけど、
高校の先輩で琴吹紬さんってお嬢様が…」

伊織「ななな何ですって!あああなた紬お姉様の後輩だっていうの?」

梓「紬お姉様って…まあそうだけど、紬先輩の事知ってるの?偶然だね」

伊織「何て事なの!?こんな所でこの私が
唯一憧れる紬お姉様の後輩に出会えるなんて!」

亜美「いおりんの口からお姉様とは…」

千早「何だか新鮮ね」

伊織「それで紬お姉様はお元気にしてらっしゃるの?
高校に御入学されてから社交界にほとんどお出でにならなくなったし、
私もアイドルを始めたからずっとお会い出来てないの」

亜美「いおりんのキャラがちがう…」

梓「あの…私も高校卒業以来あまり連絡をとってなくて…
噂では留学してるらしいけど」

伊織「そうなの、残念だわ…ああ、久しぶりにお会いしたいわぁ」



私もずっと会ってないなぁ…紬先輩、澪先輩、律先輩…

伊織「ああ、お姉様」ブツブツ

亜美「…」

千早「…」

梓「…」

P「お疲れー、あれ?伊織はどうしたんだ?」

亜美「何かにひたってるみたいだから、ほっといてあげて…」

P「ふーん…お、梓、早速千早の歌のレッスン
付き合ってくれてたのか、助かるよ」

梓「そんな、レッスンだなんて…」

千早「中野さん本当にギターがうまくて、勉強になりました」

P(千早と梓のデュオ…あるかも知れんな…)

――――翌日

梓「おはようございまーす」

小鳥「おはよう梓ちゃん、今日はいいお天気ねぇ」

梓「そうですね
(小鳥さんって事務員って話だけど綺麗な人だよなぁ…アイドル……
女優でも通りそう)」

響「はいさーい!」ガチャッ

小鳥「おはよう響ちゃん」

響「お、にゃん子!来てたのか!」

梓「にゃん子…?」

響「ん?自分なにかおかしな事言った?
それにしてもにゃん子はかわいいなー」ナデナデ

梓「にゃっ!」イヤイヤ

貴音「響、まだあまり親しくない方に不躾な接し方をする物ではありませんよ」

響「おー、貴音ー!嫌なんかじゃないよなー、にゃん子!」

小鳥「私も響ちゃんにはぴよ子なんて
呼ばれちゃってるのよ、ひとまわ……結構年上なのに…」

貴音「申し訳ありません梓殿、悪い子ではないのですが」

梓「う、ううん、大丈夫…です
(四条さんも綺麗だなぁ…ちょっと変わってるけど、
やっぱり今まで回りにいなかったタイプ…
響はモジャモジャ頭の憎いやつを思い出すけど)」



純「くしゅん」

響「じゃあ自分と貴音はこれから撮影だから行ってくるぞ!またな、にゃん子」

梓「うんまたね、響、四条さん」

梓(ふう、私にはまだ仕事こないなぁ、仕方ないけど…)

prrrr

小鳥「お電話有難うございます、765プロでございます。
あっプロデューサーさん、はい、ええいますよ、はい、
ええ、伝えておきますそれでは」ガチャ

小鳥「梓ちゃん、プロデューサーさんからなんだけど、
今収録の仕事で急に欠員が出たから今から来られるかって」

梓「はっ、はい!行きます!」

小鳥「それから出来たらギターを持ってくる様にって」

梓「(? ギターなら持って来てるけど…)わかりました、行ってきます」

――――某スタジオ

梓「おはようございます」

P「おお梓、来てくれたか!今日は千早の出る歌番組の収録なんだが、
頼んでたギタリストが事故で急にこられなくなってな、
千早が今日の曲ならこの前梓が弾きこなしたっていうから急遽来てもらったんだ」

千早「お願い出来るかしら、梓?」

梓「う、うん、わかった(ギタリストとして呼ばれたのか…
むしろ嬉しい事のはずなのに、何だろうこの気持ち…)」

千早「ボエーー♪」

梓「♪♪♪♪」ジャーン

梓(ふぅ、なんとかミスらずに弾けた)



――――収録後

P「今日は有難う御座いました、すいませんでしたご迷惑をおかけして」

ディレクター「いやいや~、それより765さん、
また凄い子を隠し持ってますね~」

P「中野の事ですか?」

ディレクター「中野さんって言うの?
あのルックスであのギターテクはやばいでしょ~、
千早ちゃんとデュオでも組ませたらこれ跳ねちゃうんじゃないの~」

P「有難うございます、それは今暖めてる企画ではあるんですよ」

ディレクター「その時は是非ウチの番組で使わせて貰うからさ、
またお願いしますよ765さん!」

P「はい!どうも有難う御座いました!」

P(千早と梓のデュオ、本格始動、だな)



千早「やっぱり梓のギターは凄いわ、
収録でこんなに気持ちよく歌えたの初めてかもしれない」

梓「そんな事…」

P「おーい、二人とも着替えすんだか?帰るぞー」

二人「はーい」

――――帰りの車中

P「二人にはまだ話してなかったけど、
これから梓と千早のデュオで売り出して行こうと思ってるんだが、どうだ?」

梓・千早「!」

千早「私は凄くいいと思います!
梓のギターに引っ張って貰うと、
一段階壁を越えられる様に感じるんです!」

P「そうか、梓はどうだ?」

梓「私は…正直よくわかりません…それが私のやりたかった事なのか…」

千早「…梓…」

P「そうか…まあ焦る事はないから少し考えてみてくれ、
俺の中ではこれが動きだせば竜宮小町を超えるプロジェクトになると思ってる」

千早「……」

梓「…はい、考えてみます…」



唯先輩、私、何がしたかったんでしたっけ?
わからなくなっちゃいました…

――――翌日、梓のアパート

梓「……今日はおやすみなのに早く目が覚めちゃった…」

梓「……千早とデュオ…かぁ…」

梓「昨日…演奏のプロに混じってギターを弾かせて貰って、
それはもう、気持ちよく弾けたんだけど…」

梓「あの頃の様には…HTTで演奏してた頃みたいに、ドキドキはしなかった…」

梓「千早の歌も、凄く上手だとは思うんだけど、
唯先輩の歌の様には響いて来なかった…」



唯先輩、どうしていつも私をおいて先に行っちゃうんですか?
ずっと一緒だって言ったのに…

梓「…そうだ、久しぶりに唯先輩のお墓に行ってみようかな…」

梓「ずっと行ってなかったし、今からなら日帰り出来るもんね」

梓「よし、そうと決まれば着替えて出かけよう!」

――――平沢家墓所

梓(お久しぶりです、唯先輩、そちらはお変わりないですか?)

梓(唯先輩の事だから、いつもゴロゴロして、ぎー太を弾いて、またゴロゴロして…)

梓(もうアイスもいくら食べても憂に怒られないからって、いっぱい食べてるんでしょうね)

梓(そうそう、この前さわ子先生に聞いたんですけどトンちゃんは今も元気だそうですよ)

梓(もうさわ子先生の顔位の大きさだそうです、びっくりですよね)

梓(今も音楽準備室で、元気に泳いでいるそうです)

梓(あの、私達の軽音部室で…)



梓「唯先輩ぃぃぃ…」ボロボロボロ

梓(はあ…すいません、また泣いちゃいました…)

梓(唯先輩にはあの先輩達の卒業式以来、泣き顔を見られてばかりです…)

梓(それより今日会いに来たのは、唯先輩に相談したい事があって…)

梓(そうだ、私事務所を移籍したんですけど、そこがいい人達ばかりで…)

梓(でも、そこでの仕事の事で今悩んでいて…)



?「……梓ちゃん?」

梓「う、憂……」

憂「久しぶり!元気そうだね!」

梓「うん、憂も…」



嘘だ、すっかり痩せこけてしまって、見る影もない…
ここに来れば憂に会うだろう事は予期していた、多分憂は毎日来ているから…
憂のこの姿を見るのは、やっぱり堪える…

憂「お姉ちゃん、梓ちゃんとお話してたんだねー、
ん?梓ちゃんケーキを持ってきてくれたの?
よかったねお姉ちゃん!
だーめ、ごはんの前はひとつだけ!」

梓(前言撤回…今も憂に怒られてるんですね、唯先輩…)

こんな姿を見ると勘違いしてしまいそうだが、
憂は心を病んでしまった訳ではない。
ただ、毎日ここに来て、かつての様に唯先輩とお話する事が、
誰よりも大切な人を喪ってしまった憂の精神の保ち方なのだろう…
とても…とても危ういバランスだけど…



憂「ふぅ…梓ちゃん、ゆっくりしていけるの?」

梓「…ううん、明日は仕事だし、今日中には帰らないと」

憂「そっかぁ、残念、久しぶりにお喋りしたかったんだけど…」

梓「…でも少しなら時間あるから、駅前の喫茶店行こうか」

憂「うん!」



憂の事を避けてはいたけれど、
一度顔を合わせてしまうとやはり離れ難い…
憂も私にとって大切な…大切な友人なのだから…

ちょっと考えさせて

憂「電話したら純ちゃんも来るって!」

梓「そっか、先に行ってる?」

憂「うん!」



純「おっす梓、てかこっちに来るなら電話位しろよな!」

梓「どうして純に電話しないといけないの?」

純「こいつ…それが久しぶりに会った親友に対して言うセリフか!」

憂「あはは、こうしてると高校の時に戻ったみたいだね」

梓「そう…だね」



憂は強いなぁ…私なんか…
いや、そうじゃないか、憂だって…

――――その頃、765プロ事務所

P「それで千早、話っていうのはデュオの件についてか?」

千早「ええ…昨日も言った通り私は
この件是非にでもやらせて欲しいと思っています。
ただ、梓があまり乗り気じゃないのが…
梓も私と同じように感じてくれていると思っていたんですが…」

P「そうだな、お互いの気持ちが離れたまま強行しても、
決して成功はしないだろうからな…」

P「千早には梓の事話しておいた方がいいかもな、
これは本人から聞いた話ではないんだが…」

P「…という事なんだ、さっきも言ったがこれは本人から
聞いた訳でも確証のある話でもない、
俺達の推測も混じっているんだが…」

千早「……そうですか…そんな事が…
でも、少し梓の気持ちがわかった気がします」

P「…そうか」

千早「少し梓と二人で話をさせて貰えませんか?」

P「うん、気のすむまで話し合ってみてくれ、
お前達がどんな結論を出しても、俺はそれを尊重するよ」

梓「それじゃあね、憂、純」

憂「うん、気をつけてね、梓ちゃん」

純「梓、電話してよ~」

梓「わかった、またね」



久しぶりに親友達と話をして、気分が晴れた。だけど答えは未だ見つからず…

♪アルファルファ~

梓「あ、メール…千早からだ…」

千早《あした出勤前に二人で話をしましょう。プロデューサーの許可はとってあります》

梓(千早らしい簡潔なメールだ)

梓(話って、やっぱりデュオの事だろうな…ちょっと気が重い…)

梓(今日は疲れたな、早く帰って寝ようっと)

――――翌日

千早「あっ、梓、こっちよ」

梓「おはよう千早」

千早「ええ、おはよう梓、そこのお店に入りましょうか」

梓「うん、いいよ」



千早「……」

梓「……」

千早「…正直、何から話したらいいのか迷うわね…」

梓「…デュオの事でしょ?」

千早「ええ、そうね…でもその前に、私に弟がいた事は話したかしら?」

梓「(いた?)ううん、初耳…かな」

千早「私にとってとても大切な弟だった…事故で亡くなってしまったんだけど」

梓「っ…」

千早「私が歌を歌い始めたのも、歌い続けているのも…弟がいたからだったの…」

梓「……」

千早「少し前の事なんだけどね、
ある雑誌に弟の事を歪曲して報道されて…
私はそれを見てから歌が歌えなくなってしまったの」

梓「え、でも…」

千早「ええ、今はまた歌える様になったわ、それは前よりも…」

梓(これって今の私と同じ?ううん千早の方がもっと…)

梓「どうして…どうして千早はまた歌える様になったの?」

千早「……そうね、それを話す前に、
梓が今何に悩んでいるのか、聞かせてくれないかしら」

梓「……わかった、話すね…」

梓「前に平沢唯の話を少ししたよね」

千早「ええ、覚えているわ」

梓「平沢唯…唯先輩はね、私の高校の先輩なの」

千早「…そうだったの…」

梓「私は唯先輩に憧れて軽音部に入って、
お茶をしたり練習をしたり、旅行に行ったり…
沢山の時間を一緒に過ごした…」



『唯先輩練習して下さい!』

『え~あずにゃんも一緒に遊ぼうよ~』

『あずにゃん、このコードはどうやって弾くの?』

『ああ、これはですね…』

『はい、あずにゃんお土産!』

『なんですかこれ?ぶ?』

『卒業…しないでよぅ』

『離れても、一緒だよ』

『永遠に、一緒だよ』

梓「ずっと一緒だと思ったけど、先輩達が卒業して、
バンドもいつしか解散になって…」

梓「その頃唯先輩のデビューの話が決まって、
私はそれを聞いた時すぐに自分も芸能界に入る事を決めたの、
少しでも唯先輩の近くにいきたかったから」

梓「高校を卒業して、芸能事務所に入れる事にもなって、
これでまたあの頃の楽しかった毎日が来るんだって思ってた」

梓「私が事務所に入って初めての仕事の時に聞いたの、
唯先輩が病気だって、もう…助からないって…」

梓「すぐに病院に会いに行ったけど、もう面会も許して貰えなかった」

梓「うっ…そして…ゆ…い、先輩…はぁ…」ボロボロ

千早「梓…」ナデナデ



梓「ごめ、んね」ヒックヒック

千早「いいの…辛い事をよく話してくれたわ…」

梓「まだ…全然…話せてない」

千早「ううん、もういいの…」

梓「…でも…後少しだけ話すね…」

梓「先輩が亡くなった後、遺品の中に私宛ての手紙があったって、いただいたの」

梓「そこには震える字で、こう書いてあった…
『あずにゃん、デビューおめでとう、あずにゃんが
私と同じ世界に来てくれて、とっても嬉しいよ!でもね、
せっかく来てくれたのに、ちょっと近くにはいられな
くなっちゃうかもしれないんだ。
でも、離れててもずっと一緒だよ』って」

梓「正直唯先輩が亡くなってから、もう芸能界の事はどうでもよくなってた…」

梓「だけどこの手紙を読んだら、唯先輩が喜んでくれた、
唯先輩がいた世界に私もいなきゃって思う様になって…」

くそ、終わらせるつもりだったけど、あとちょっと書ききれない
今にも寝落ちしそう
てかみんなもう寝ちゃえ

梓「それからは、業界にいる事が自体が目的みたいになってて…」

梓「弾き出されないように…もらった仕事をこなして…」

梓「でも、765プロに誘って貰って、みんなと出会ってから、
そしてこの前千早と仕事をさせて貰ってから…」

梓「多分自分でも気づいちゃったんだ、こんなのおかしいって」

梓「それを楽しかった高校の頃と比べて…
勝手に今が悪いみたいに思いこんで…」

梓「演奏してドキドキしないのは…歌が響いてこないのは…
全部…自分のせいだったんだね…」



千早「梓…ありがとう…」

梓「はあ…千早、顔ぼろぼろだよ」

千早「梓の方こそ、ひどい顔してるわ、お互い様ね」

梓「ふふ」

千早「ふふふ」

梓「あーあ、全部話したらすっきりしちゃったかも…」

千早「そう…最後にこれだけ言っておくわ」

千早「さっき話した様に、歌えなくなった私は、
もう自暴自棄になって、すべてがどうでもよくなってた」

千早「歌が…歌だけが私のすべてだと思ってたから…」

千早「でも…そうじゃなかった」

千早「私には仲間が…春香や、みんながいてくれたから、
また歌えるようになったの」

千早「間違いに気づいてからは、前よりも強く…」

梓「…私も…私もそんな風になれるかな…」

千早「…ええ、必ず…だってあなたには私がいるもの、もちろん他のみんなも」

梓「千早…ありがとう」

千早「いいえ…少しトイレで顔を洗ってきましょうか、私も恥ずかしいわ…」

梓「そ、そうだね…」



梓「わっ…本当にひどい顔だ…まぶたが3倍位になっちゃってる…」

千早「私もだわ…」

梓「これ…もう事務所行けないね」

千早「そうね…さぼっちゃいましょうか」

梓「…そうしよっか」



千早からさぼろうって言い出すとは少し意外だった。
私もそのつもりだったけど…
でもやっぱり一応とプロデューサーに電話すると、
一言「わかった」と言ってくれた。
それから二人でたくさんたくさんおしゃべりをした。
音楽の事、友達の事、高校の頃の事、
そしてこれからの事…

――――翌日

梓「おはようございます…」ガチャ

P「お、来たか」

梓「あの…プロデューサー、千早とのデュオの件ですけど…」

P「…うん」

梓「私…やりたいです…やらせて下さい!」

P「そうか、わかった、一緒に頑張って行こう」

響「あっ!にゃん子!心配したんだぞ!元気だったかー?」グリグリ

亜美「あー!ひびきんずるい!亜美も!」グリグリ

千早「……」ウズウズ

梓「ちょ、どこさわって…やっ…やめて!」モガモガ

亜美「あずにゃん、やめてほしいにゃんって言ってみてよ→」

梓「言うかー!!」ウガーー

唯先輩…高校の頃、あの頃は楽しかったですよね。
毎日お茶をして、おしゃべりして…
私、練習しない唯先輩を怒ってばかりだったけど、
そんな時間もたまらなく愛しかった…

でも私、今も楽しいです!
唯先輩はいつも先に行っちゃうけど、
唯先輩はどうせサボってばかりだから、
きっとすぐに私追いついちゃいます!
その時は、また…あの頃みたいに……何でもないです!
とにかく私、これからも頑張ります!

――――いつか…どこかにて…

唯「あっずにゃーーん」ダキッ

梓「唯先輩!抱きつかないで……もうちょっとだけ…」

唯「あずにゃん、頑張ったんだねぇ」ナデナデ

梓「唯先輩…」

千早「梓、よかったわね…」

梓「唯先輩、この子が千早で…ちょっ、キスはやめて!」

唯「あずにゃーん」ムチュチュー

梓「ぎゃーー」バチン



おわり

もっと色々構想はあったんだけど、だらだら続けるのもきついんで終わらせた
物足りないと思う部分は脳内保管でよろ→

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom