由比ヶ浜「ゆきのんはあたしヒッキーの事好きだって知ってたよね?」 (277)

雪乃「……ええ」

由比ヶ浜「……じゃあ、どうしてヒッキーと付き合ったの?」

雪乃「……」

由比ヶ浜「先に、好きになったのはあたしなのに……」

雪乃「でも、選んだのは彼よ」

由比ヶ浜「……そんなの、それはゆきのが告白して、強引に迫ったからでしょ!?」

雪乃「そうでもしないと、あの男は揺るがない。あなたなら分かってるはずよ」

由比ヶ浜「でもっ! そんなのって……」

由比ヶ浜「あたし、ゆきのんの事、信じてたのに……親友だと思ってたのに!!」

雪乃「……私は、今でもあなたを友と思っているわ。とても大切な」

由比ヶ浜「なら、なんでヒッキーを盗ったの!?」

雪乃「彼はあなたのモノじゃないわ。そして私のモノでもない。言ったでしょ? 選んだのは彼よ」

由比ヶ浜「そんなの、そんなの! うぅ……」グス

雪乃「……悪いとは思ってるわ」

雪乃「でも、仕方がないじゃない……私には、彼しかいないのだから」

由比ヶ浜「あたしだって、あたしだってヒッキーしかいないもん!」

雪乃「……それは違うわ、由比ヶ浜さん」

由比ヶ浜「どうして!? どうしてゆきのんがそんなこと言い切れるの!?」

雪乃「あなたが彼に惚れたのは、あの事故があったからよ」

雪乃「あの事故がなければ、あなたは彼を知ることなく、きっと他の人を好きになっていたでしょうね」

由比ヶ浜「そんな事!」

雪乃「でも、私は違う」

雪乃「私にとって、彼はとても新鮮だった」

雪乃「今まで私の周りに居た、愚かな有象無象とは違う。腐ってて捻じ曲がっていて……なのに、私をきちんと見てくれる人」

雪乃「付き合い始めて、彼から聞いた話なのだけど」

由比ヶ浜「……なに?」

雪乃「彼は、私に憧れを抱いていたそうよ」

由比ヶ浜「えっ?」

雪乃「驚くのも無理ないわ。だって、あの彼が他者に憧れを抱くなんて、想像できないわね」

雪乃「言われた私ですら、からかわれるのかと思ったわ」

雪乃「でも、彼は嘘じゃないと言った。この私に、確かに憧れていた、と言った」

雪乃「私のようになりたいと、私のようにありたいと……」

雪乃「偶然にも、それは私が彼に抱く思いにも似ていた」

雪乃「分かるかしら、由比ヶ浜さん。私たちは共に望みあった存在で、共存した関係でもあるの」

雪乃「あなたの、ただの一つのきっかけ惚れただけの想いとは訳が違う」

由比ヶ浜「そんなの……だいたい、たった一つのきっかけで好きになっちゃダメなの……?」

由比ヶ浜「私が、そのたった一つのきっかけでヒッキーを好きになっちゃダメなの!?」

雪乃「別にダメなんて言ってないわ。あなたが彼をどれだけ好きなのかも知っている。ただ……」

雪乃「そのたった一つのきっかけなら、他の人でも問題ない、とういう事よね?」

由比ヶ浜「!?」

雪乃「話はこれくらいでいいかしら? そろそろ彼との約束の時間なのだけど」

由比ヶ浜「……」

雪乃「じゃあ、由比ヶ浜さん。また明日」

翌日

奉仕部

八幡「うーっす……あれ、今日は由比ヶ浜が先か。珍しいな」

由比ヶ浜「う、うん……ゆきのんは掃除で遅れてるんじゃないかな」

八幡「なるほど……んじゃ、あいつが来るまで適当に時間を潰して……」

由比ヶ浜「あ、あのさ、ヒッキー」

八幡「なんだ?」

由比ヶ浜「えっと、その……ね」

八幡「んだよ、はっきりしねーな……って、おい、なんで近づいてんの? 別に話すだけならそこからでもよくね? なあ、おい。ちょっと、ち、ちかすぎ……」

由比ヶ浜「……ごめん」

チュ

八幡「!?」

由比ヶ浜「んっ……ぷはっ」

八幡「えっ……あ、えっ?」

八幡「ゆ、由比ヶ浜……? お、お、お前、何して……」

由比ヶ浜「ねぇ、ヒッキー。ゆきのんてはもうキスはしたの?」

八幡「そ、そんな事どうでもいいだろ!それよりお前、な、な、なんで……」

由比ヶ浜「どうでもよくなんかない!」

八幡「なっ……」

由比ヶ浜「ねぇ、したの?してないの?」

八幡「……んなの、言えるか」

由比ヶ浜「……ふーん、してたんだ」

八幡「……」

由比ヶ浜「やっぱり付き合ってるとキスくらいするんだね」

八幡「……お前には関係ないだろ」

由比ヶ浜「うん、関係ないよね。ヒッキーの彼女になれなかったあたしには……関係ないよね」

八幡「っ……きょ、今日からお前、少し変だぞ。さっきの事は忘れるから安心して家に帰って休め」

由比ヶ浜「ヒッキーはさ、気づいていたよね」

八幡「……なにが」

由比ヶ浜「あたしが、ヒッキーの事、好きだって」

八幡「……」

由比ヶ浜「どうして、ゆきのんなの? あたしじゃダメだったの?」

八幡「別に、お前の事は嫌いじゃない。むしろ……」

由比ヶ浜「じゃあ、なんで!? あんだけヒッキーにアピールしてたのに! 気付いて欲しかったのに!」

八幡「それでも、確証を持てなかった。誰かに好かれてるなんて、そんな事ある筈がないって、な」

八幡「雪ノ下はそんな俺に、強引に好意を伝えてきた。言い訳しようのない、あいつらしい方法で」

八幡「だから俺は雪ノ下の想いに答えたんだ」

由比ヶ浜「……」

八幡「その、由比ヶ浜には悪いと思っている……」

八幡「こんな事を言えば、最低だと思われるだろうが……」

八幡「もし、先にお前が強引に告白をしていたら、俺は多分……お前を選んでいた」

由比ヶ浜「……そっか」

八幡「最低だろ? 先か後かの違いでお前を……」

八幡「だからさ、由比ヶ浜。こんな最低な野郎は早く忘れて、お前は……」

由比ヶ浜「そっか、先か後かの違いだけなんだね。なら、問題ないよね?」

ギュッ

八幡「えっ?」

由比ヶ浜「ヒッキー……」

八幡「離せ由比ヶ浜」

由比ヶ浜「どうして? あたし、ヒッキーの事が……」

八幡「俺には雪ノ下がいるからだ」

由比ヶ浜「……」

八幡「確かに、お前と付き合っていた可能性もある。だが、所詮それはifの話だ」

八幡「実際には俺は雪ノ下と付き合ってる。だからわかってくれ、由比ヶ浜」

由比ヶ浜「……」

由比ヶ浜「……うぅ」グス

八幡「っ……」

由比ヶ浜「ごめんね、ヒッキー……少し、頭冷やしてくる」タッタタ

八幡「あっ、おい!由比ヶ浜!」

八幡「……」

八幡「はあ……」

八幡「……やはり、間違っていたのか?」

雪乃「私と付き合った事が?」

八幡「!?」

八幡「お前、いつの間に……」

雪乃「あなたがいつも以上に目を腐らせてぬぼーっとしていたから気付かなかったのかしら?」

八幡「……」

雪乃「由比ヶ浜さんの事、気になる?」

八幡「そりゃそうだろ……」

雪乃「……今はそっとしてあげなさい」

八幡「だが……」

雪乃「ところで、そのブレザーの胸元に付いている色の着いた長い髪の毛は何かしら」

八幡「なっ!?」

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