モバP「11月11日の、以心伝心の温もり」 (10)



 ――事務所、夜

 ガチャ

P「ふぅ、ただいま」

泉「あ、P。遅かったね」チラ

P「うん? ああ、泉か。お疲れ様」

泉「お疲れ様。はい」コト

P「おお、外は寒かったからな。温かいお茶は身にしみるよ」ゴク

泉「ふふ、Pったらおじいさんみたい」クス

P「大人と言え、大人と。…それと今は泉一人だけか?」

泉「さっきまで亜子とさくらと居たんだけど、先に帰ったよ。明日も仕事だからって」

P「はは、ちゃんとやってくれてるようで何よりだ」

泉「もう…みんなPのアイドルなんだから、当然でしょ?」

P「その言葉が聞けるなら俺も幸せもんだな、と……泉は帰らないのか?」

泉「うん、少しPと話がしたくて」

P「俺と? 泉も仕事終わりで疲れてるだろうに、明日でもいいんじゃ?」

泉「ううん、今日がいいの。駄目かな」

P「…まあ本人が良いなら大丈夫だろ。ただし少しだけだぞ。明日も仕事なんだから」

泉「ありがと。あ、お腹すいてない?」ポン

P「う…よくわかったな。夜食は本当は良くないんだけどなあ…」

泉「あっさりしたの、作ってあげる。それでどう?」

P「はは、そう言われちゃ文句は言えないな。俺も手伝うよ」

泉「だめだよ、P。給湯室狭いし。ほら、休んでていいから」

P「あー…悪いな。じゃあ頼むぞ」

泉「ふふ。美味しいの、作るから待っててね」ニコ

 スタスタ…

P(……あんな顔の泉は、滅多に見られないな)




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P「その間に、うちのアイドルのニュースでも見てるか」カチカチ

P(『双葉杏、一ヶ月一万円生活をぶっちぎりで優勝』…共演者に申し訳なかったな、あれは)カチ

P(『複数の男女の愛憎を描くドラマに佐久間まゆが出演! 彼女の素顔に迫る』…素晴らしい演技だったな、一話の撮影。俺もドキドキした)

P(『ワインの消費量増加へ柊志乃がキャンペーンガールに』…普段から飲んでるからな、あの人は…一体どこにあれだけのワインを飲み込む胃があるのか)

 トタトタ…

泉「お待たせ、P。出来たよ……って、仕事?」

P「いや、ニュース見てだだけだ。…いい匂いだな」

泉「冷蔵庫にあったものだからバリエーションはないけど、どうぞ」

P「ありがとう――んぐ、やっぱり美味いな」

泉「その顔を見れば美味しいのはわかるよ」クス

P「はあ、仕事終わりにこれは最高だ。毎日食べていたいぐらいだよ」モグ

泉「ふふ、子供みたい。量はないから、ゆっくり食べてね」

P「まさか泉の料理がまた食べられるとは思ってなかったな……と、そうだ。話ってなんだ?」

泉「あ、あー……特にこれと言ってあるわけじゃなくて…ごめんね」

P「…はは、そういうのもアリだな。まあそういう時もあるから、適当に話そうか」

泉「……うん、そうだね。隣、座るね?」




P「今日の仕事はどうだった?」モグモグ

泉「いつもどおりかな。ニューウェーブでの仕事が多いからテレビでも役割ができてきてるし、前ほどあたふたはしなくなったよ」

P「最初の頃は緊張していたのがまるわかりだったしな」

泉「言わないでよ、もう…」プイ

P「はは、あれから一緒にやってきて、今じゃ先輩風吹かせるぐらいに上手くなってる。流れを見てきた俺にとって、これほど嬉しい事はないぞ」

泉「……やっぱり、嬉しい?」

P「勿論!」

泉(迷いなく…)

P「お前にとっちゃ俺はただの仕事の上司なんだろうが、俺にとっちゃ泉は娘みたいなもんだ。成長を見れて悲しいわけがないだろ」

泉「アイドルじゃないんだ?」

P「泉はそう見られたいか?」

泉「…ごめん、意地悪だったね。ふふ、私も嬉しいかな」

P「だからまあ、こうして何気なく話すのも悪くないもんだぞ。昔を知っているから、今の泉がよく見える」

泉「それは私もだよ。最初はちょっと無愛想かな、って思ってたけど、初めての仕事を終えたら喜んでくれたり、一緒になってレッスンしてくれたり……ほんと、優しいんだなって思う」

P「優しいって…そうか?」アセ

泉「そういう所。打算的じゃないっていうのかな、この世界って狡猾でいなきゃいけないのに、そうならなくても生きていけるのは、Pのおかげだね。みんなもそう思ってるよ、絶対」

P「…泉がそう言うなら、そうなんだろうな」ナデ

泉「無意識にアイドルを撫でるのも、優しさ?」

P「泉はどう思う?」

泉「最高の優しさだと思う。…ふふ」




 ――十数分後

泉「片付け終わったよ。…お粗末さま、結局全部食べたね」

P「せっかく作ってくれたんだから…と思ったんだけど、いつのまにか全部なくなってたよ」ハハ

泉「プロデューサーは言葉が上手いね」クス

P「おいおい、嘘じゃないぞ?」

泉「知ってるよ。Pの事だから」

P「以心伝心、ってやつか?」

泉「だといいね。……じゃあ、私の考えていることはわかる?」

P「泉の考えている事? あー、そうだな……なら、少し目を瞑ってくれないか?」

泉「え? め、目を?」ビクッ

P「ああ。駄目か?」

泉「だ、駄目じゃないけど――うん、わかった。……はい、瞑ったよ」

P「じゃあ、少し待ってろよ――」

 ガサガサ……


 シュル

泉「っ!?」ピクッ

P「――もういいぞ、泉」

泉「……マフラー?」モフ

P「今年の冬は寒いらしいから、俺なりに調べて買ってみたんだ。……大義名分もあるしな」

泉「それって…」

P「誕生日おめでとう、泉。…今までよく頑張ったこれたな。これからも、11月11日を二人で祝えるように、俺も頑張るよ」

泉「……P」

P「なんて、柄じゃないか。まあ、泉だけじゃない、ニューウェーブ全員、まだまだ大きくなれるから、覚悟しとけよ」ナデ

泉「……ふふ、Pこそ、忙しくて音を上げないようにね」

P「はは、望むところだ」




泉「……ありがとね、P。マフラー、大事にするから」

P「そう言ってくれると買ったかいがあったもんだ――と、もうこんな時間か」チラッ

泉「楽しい時間が早く過ぎちゃうなんて、神様も意地悪だね」スクッ

P「だからこそ楽しいと思えるんだよ。短いとわかっているから、こんなに楽しんでいられる」スク

泉「Pの誕生日でもないのに楽しいだなんて、変な話だね」クス

P「泉は楽しくなかったか?」

泉「そんなことないよ、そんなことない。すごく嬉しかった」フル

P「なら変でも何でもないじゃないか。――以心伝心、そういうことだろ?」

泉「……今夜はずっと寒いね」ギュ

P「そりゃあ大変だ。風邪を引かないように家まで送るよ」スッ

泉「……ふふっ」カツカツ

P「……はは」スタスタ


 ガチャ


 [おわり]

短いけど泉誕生日おめでとう。ジューンブライド泉いいよね

さすが良妻


泉ちゃんおめでとう!

乙おめ!
良い誕生日SSだ

おめでとう

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