やすな「ソーニャちゃんがグラフィグになっちゃった……」(130)

やすな「おっはよー!」

やすな「ってソーニャちゃんまだ来てないのか、つまんなーい」

やすな「……お? ソーニャちゃんの机の上になんかある」

ttp://ga.sbcr.jp/mreport/019442/images/05.jpg

やすな「わー! なにこれソーニャちゃん!? かわいー!!」

やすな「あはははは、ソーニャちゃんペラペラー! 不機嫌そうな顔似てるー!」キャッキャ

やすな「それにしてもコレ誰が作ったんだろ?」

やすな「ソーニャちゃんがこういうの作るわけないしなあ」


???「知りたいですかぁ~?」


やすな「その声はあぎりさん!」

あぎり「どうも~」

やすな「このハコソーニャちゃん、あぎりさんのですか?」

あぎり「いいえ、ちがいますよ~。あと、それは、グラフィグっていいます~」

やすな「へー。最近はペーパークラフトも色々進化してるんですねー」ワサワサ

あぎり「あまり乱暴にしない方がいいかも~。紙なので~」

やすな「あっすいません、動物番長みたいでかわいくてつい……」

あぎり「もう10年前のゲームですね~」

やすな「でも、あぎりさんのじゃないとなると、このグラフィグソーニャちゃんは誰が……?」

あぎり「……それは、誰が作ったものでもありません」

やすな「え?」

あぎり「……」

やすな「えっと、つまりどういう……?」

あぎり「そのグラフィグソーニャは、ソーニャです」

やすな「あ、はい、確かにソーニャちゃんがモデルのグラフィグですよね」

あぎり「いいえ……そのグラフィグソーニャは、ソーニャなんです。まさしく、ソーニャそのものなんです」

やすな「ソーニャちゃん……そのもの……?」

あぎり「はい」

やすな「えっと、つまり……こ、このグラフィグソーニャちゃんは、本物のソーニャちゃんってことですか……?」

あぎり「そうです」

やすな「ほ、ほんとに……? ねえ、ソーニャちゃん! ソーニャちゃんなの!?」

ソーニャ「……」

あぎり「無駄ですよ。その姿ではもう、喋ることも、動くこともできませんから」

やすな「そんな……どうして……」

あぎり「彼女に恨みを持つ刺客の罠に嵌って……。殺し屋なんてやっていれば、こういうことは珍しくありません。
   彼女のようにグラフィグに姿を変えられ、そのまま朽ちていく仲間を、私は何人も見てきました」

やすな「ソーニャちゃんを元に戻す方法はないんですか!?」

あぎり「……ごめんなさい」

やすな「う、うそ……」

ソーニャ「……」

あぎり「こんな姿になっても、このグラフィグには確かにソーニャの魂が宿っています」

あぎり「……大事にしてあげてください」


やすな「ソーニャちゃん……」

ソーニャ「……」

やすな「……」

ソーニャ「……」

やすな「ねえ、ほんとにソーニャちゃんなの……?」

やすな「そうだよ 文句でもあんのか!?」

やすな「……って、ソーニャちゃんなら言うよね」

ソーニャ「……」

やすな「……」

ソーニャ「……」

やすな「……」ツンツン

ソーニャ「……」

 キーンコーンカーンコーン

やすな「あ、授業」

やすな(ソーニャちゃん、結局学校来なかった……やっぱり、これが本物の……)

ソーニャ「……」

やすな「ソーニャ……ちゃん……」

先生「ソーニャは休みかー」

ソーニャ「……」

やすな(ソーニャちゃん……ちゃんといるのに……)

先生「おーい、折部ー」

やすな「は、はい?」

先生「そのー、何だ、ソーニャの机の上のおもちゃ、しまっとけー」

やすな「あ、これは……」

ソーニャ「……」

やすな「あの、これ、ソーニャちゃんです」

先生「え? ああうん、良く出来てるな。でも授業中だからな」

ソーニャ「……」

やすな「……はい」

やすな(ごめんね、授業の間だけカバンの中で待っててね)ゴソゴソ

ソーニャ「……」

  休み時間

やすな「授業終わったー」

やすな「さて」ゴソゴソ

ソーニャ「……」

やすな「ふふふ……ここから出して欲しくば人間の姿に戻るんだねソーニャちゃん」

ソーニャ「……」

やすな「んん? どうしたのかな? 早く戻らないとずっと鞄の中だよー、苦しいよー」

ソーニャ「……」

やすな「ほらほら、無理だったら、ちょっと喋ったり動いたりするだけでいいから! やってみなよ、楽しいよー、捗るよー」

ソーニャ「……」

やすな「……なんてね」

ソーニャ「……」

やすな「いま出してあげるねー」

ソーニャ「……」

やすな「プハァ! てめえ下らねえことやってないでさっさと出せ! こっちは自力で動けないんだぞ!」

やすな「ああん! やめてぇ! 指のギザギザで、ああっ、つっつかないでえ!」

ソーニャ「……」

やすな「えへへ、こんな感じ?」

ソーニャ「……」

やすな「もー、似てるからってそんなに褒めないでよー!」

ソーニャ「……」

やすな「あ、いま“褒めてねーよ!”て思ったでしょ」

ソーニャ「……」

やすな「ソーニャちゃんのことなら何でも分かっちゃうもんねー」

ソーニャ「……」

やすな「……喋ってくれなくても、ちゃんと分かってるもん」

やすな「次の授業体育だよ。今日はサッカーだっけ」

やすな「ソーニャちゃんどうする? 見学する?」

ソーニャ「……」

やすな「そうだよね、ボール飛んできたら危ないし、教室で待っててもらうね」

ソーニャ「……」

やすな「ほら、窓際にいればグラウンドの様子見えるでしょ? これなら寂しくない! 私ってば気がきくー!」

ソーニャ「……」

やすな「だーいじょーぶ! ソーニャちゃんいなくてもバッチリ活躍するから見ててよ! それじゃ行ってくるねー!」

ソーニャ「……」

やすな「……」

ソーニャ「……」

やすな「……休み時間まだあるから、もすこしここにいるね」

ソーニャ「……」

  昼

やすな「おなかすいたー」

やすな「ねー、グラフィグっておなかすくの?」

ソーニャ「……」

やすな「すいてても食べれないよね、ごめんね、えへへ……」

ソーニャ「……」

やすな「ソーニャちゃんには悪いけどお弁当は私が一人占めだぁ!」

ソーニャ「……」

やすな「いやー、運動の後の食事はまた格別だよねー! おいしー!」モグモグ

やすな「あっ! アスパラベーコン入ってる! 私これ大好きなんだよねー♪」

やすな「んん~、このシャキシャキ感とお肉のうまみが絶妙なハーモニー♪」

やすな「ソーニャちゃんも一口食べ……」

ソーニャ「……」

やすな「あ……」

ソーニャ「……」

やすな「え、えへへへ……なんちゃって~、ソーニャちゃんにはあっげなーいもーんねー」

ソーニャ「……」

やすな「……」モグモグ

ソーニャ「……」

やすな(おいしくない……)

ソーニャ「……」

  放課後

やすな「それじゃソーニャちゃん、一緒にかえろっか!」

ソーニャ「……」

やすな「心配しなくても私がソーニャちゃんの家まで連れてったげるよぅ♪」

ソーニャ「……」

やすな「え? “お前、私の家知らないだろ”って?」

ソーニャ「……」

やすな「そ、そうだったー!」ガーン

ソーニャ「……」

やすな「んじゃあ道案内してくれる? おじょうさん、どちらまで?」

やすな「“仕方ないな、まずは学校を出て右だ”」

やすな「なるほど、了解です!」

ソーニャ「……」

やすな「あはは、うそうそ」

やすな「でもほんとにどうする? 学校に置き去りにはできないし」

ソーニャ「……」

やすな「よかったら、私んち、来る?」

ソーニャ「……」

やすな「……うん、それじゃ、いこっか」

ソーニャ「……」

やすな「そのまま持ってくのとカバンの中入れてくのと、どっちがいいかな」

やすな「カバンには教科書とかいろいろ入ってるしなあ」

やすな「このまま持っていくしかないか」

ソーニャ「……」

やすな「転んだりしないように気を付けないと。へへへ……こいつあスリリングなミッションだぜ」

やすな「けどオレは生きて帰らねえといけねーんだ……お前と一緒にな、相棒……!」

ソーニャ「……」

やすな「さあ出発だぁ!」

  やすなの家

やすな「転んだ拍子にソーニャちゃんを放り投げて危うくトラックに轢かれかけたけど何とか家まで辿り着いた!」

ソーニャ「……」

やすな「いやあ、あのときは死ぬかと思いましたよ。ソーニャちゃんが」

ソーニャ「……」

やすな「ううっ、ソーニャちゃんから怒りのオーラを感じる……!」

ソーニャ「……」

やすな「つ、次はしっかりやるから許して~」

ソーニャ「……」

やすな「えっ、許してくれるって!? やったあー!」ワーイ

ソーニャ「……」

やすな「それじゃ私の部屋へごあんなーい」

ソーニャ「……」

やすな「いらっしゃーい」

ソーニャ「……」

やすな「まま、どうぞ遠慮なさらずお座りになって」

ソーニャ「……」

やすな「お菓子などいかが?」

ソーニャ「……」

やすな「ソーニャちゃんは食べれないので私が代わりに頂きます」ムシャムシャ

ソーニャ「……」

やすな「あらおいしい!」

ソーニャ「……」

やすな「とまあ、そんな感じで」

ソーニャ「……」

やすな「さてさてここに取りだしましたるは~」

ソーニャ「……」

やすな「は・さ・み」

ソーニャ「……」

やすな「ちょきちょきちょきちょきちょきちょきちょき」

ソーニャ「……」

やすな「て・え・ぷ」

ソーニャ「……」

やすな「ぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺた」

ソーニャ「……」

やすな「ねえねえ何作ってほしい? 服? 帽子? 新しい顔とか?」

ソーニャ「……」

やすな「ずっと思ってたんだけど、ソーニャちゃんの顔四角いから頭の上にいろいろ乗っけられそうだよね」

ソーニャ「……」

やすな「とりあえずツノを作ろう」チョキチョキ

やすな「できたー!」つツノパーツ

ソーニャ「……」

やすな「円錐を乗っけるだけの簡単なお仕事。ほい」

ソーニャ(E:ツノ)「……」

やすな「あははー! ソーニャちゃんツノ似合ってるよー」

やすな「じゃあ次はエナジーボンボンね」

ソーニャ(E:エナボ)「……」

やすな「あはははははは!! ソーニャちゃんだっさー!! オプーナだっさー!!」

やすな「……はっ!?」ピコーン

やすな「ねえソーニャちゃん、私いますごいこと思いついたんだけど……」

やすな「ネコミミとか……興味無い……?」

ソーニャ(E:エナボ)「……」

やすな「作らざるを得ないッ!」チョキチョキ

ソーニャ(E:ネコミミ)「……」

やすな「……」

ソーニャ(E:ネコミミ)「……」

やすな「いい……」

ソーニャ(E:ネコミミ)「……」

やすな「ほっぺにヒゲも描いちゃおうかなー」

ソーニャ(E:ネコミミ)「……」

やすな「大丈夫だよ、鉛筆で描くからさあ……ちょっとだけ……ちょっとだけだから……」カキカキ

ソーニャ(E:ネコミミヒゲ)「……」

やすな「ふおおおおおおおお」

ソーニャ(E:ネコミミヒゲ)「……」

やすな「ま、待ってていま尻尾も作るから」チョキチョキ

ソーニャ(ネコ)「……」

やすな「」グッ

ソーニャ(ネコ)「……」

やすな「思わずガッツポーズしちゃったよソーニャちゃん……いや、ソーニャンちゃん」

ソーニャ(ネコ)「……」

やすな「元に戻すのもったいないニャー」

ソーニャ(ネコ)「……」

やすな「ニャーニャー」

ソーニャ(ネコ)「……」

やすな「ニャニャー? ニャンニャンニャニャニャー?」

ソーニャ(ネコ)「……」

やすな「フシャー!」

ソーニャ(ネコ)「……」

  リビング


母「やすなちゃーん、ごはんよー」


  「ニャー!」


母「えっ」

  夜

やすな「ソーニャちゃんとお泊りだねー」

ソーニャ「……」

やすな「一緒に寝る?」

ソーニャ「……」

やすな「なーんて、ソーニャちゃん潰れちゃうよね」

ソーニャ「……」

やすな「机の上にいてね」

ソーニャ「……」

やすな「はい、ソーニャちゃん用の布団。布の端切れだけど」

ソーニャ「……」

やすな「…………」

ソーニャ「……」

やすな「ソーニャちゃん」

ソーニャ「……」

やすな「ソーニャちゃんなんだよね?」

ソーニャ「……」

やすな「私の声、聞こえてる? 私の顔、見えてる?」

ソーニャ「……」

やすな「…………」

ソーニャ「……」

やすな「おやすみ、ソーニャちゃん」

ソーニャ「……」

  次の日

やすな「おはよーソーニャちゃん」

ソーニャ「……」

やすな「学校、行く?」

ソーニャ「……」

やすな「私は……一緒に行きたいな」

ソーニャ「……」

やすな「ソーニャちゃんがいないとつまんないもん」

ソーニャ「……」

  学校

やすな「…………」

ソーニャ「……」

やすな「…………」

ソーニャ「……」

  ガラッ

やすな「!」

生徒A「おはよー」

やすな「……」プイ

  ガラッ

やすな「!」

生徒B「うーす」

やすな「……」プイ

やすな(やっぱり……来ない……)

ソーニャ「……」

  授業

やすな(膝の上なら、机の影になって先生にばれないもんね)

ソーニャ「……」

やすな(カバンに押し込むよりは、こっちの方がいいよ)

やすな(ね、ソーニャちゃん)ツンツン

ソーニャ「……」


先生「じゃあ黒板消すぞー」


やすな「あっ……」

やすな(ソーニャちゃんいじっててノート取ってなかった)

ソーニャ「……」

やすな(……いいや)

ソーニャ「……」

  昼

やすな「今日はお弁当じゃないんだよー」ゴソゴソ

ソーニャ「……」

やすな「じゃーん、やきそばパン。ソーニャちゃん好きでしょー?」

ソーニャ「……」

やすな「半分あげるね。はいっ」

ソーニャ「……」

やすな「いただきまーす」モグモグ

ソーニャ「……」

やすな「おいしいね、ソーニャちゃん」

ソーニャ「……」

やすな「あれ、ソーニャちゃん食べないなら貰っちゃうよ?」

ソーニャ「……」

やすな「……じゃあ、ソーニャちゃんの分も私が食べるね」

ソーニャ「……」

  休み時間

やすな「……」ボーッ

ソーニャ「……」

やすな「……」ボーッ

ソーニャ「……」

やすな「……」キンノノベボーッ

ソーニャ「……」

やすな「……」ボーッ

ソーニャ「……」

やすな「……」ボーッ

ソーニャ「……」

やすな「……」ノッペラボーッ

ソーニャ「……」

やすな「……」ボーッ

ソーニャ「……」

  放課後

やすな「帰ろっか」

ソーニャ「……」

  帰り道

やすな「雪、すっかりとけちゃったねー」テクテク

ソーニャ「……」

やすな「もうすぐ春だなぁ」

ソーニャ「……」

やすな「春になったら、また土手のところでお花見しよっか」

ソーニャ「……」

やすな「お菓子とかジュースとかいっぱい持って、おもちゃとかも持ってきて、朝から晩までずーっと二人で遊んで、桜まみれになって……」

ソーニャ「……」

やすな「それで……」

ソーニャ「……」

やすな「……」

ソーニャ「……」

やすな「……あははやだな、目にゴミ入っちゃったよ」ゴシゴシ

ソーニャ「……」

  家

やすな「あ……!」

やすな「そ、ソーニャちゃん、腕のところ、ちょっと破けてる……!」

ソーニャ「……」

やすな「ど、どこかで引っかけちゃったのかな……ごめんね、すぐ手当てしてあげるからね」

やすな「えっと、テープでいいのかな……」ペタ

ソーニャ「……」

やすな「他にキズとかは……」

ソーニャ「……」

やすな「よかった、大丈夫みたい」ホッ

ソーニャ「……」

やすな「持ち運びしてると傷ついちゃうよね……紙だし……」

ソーニャ「……」

やすな「明日からは学校行かないで、ここでお留守番してる?」

ソーニャ「……」

やすな「その方がいいよね、寂しいけど」

ソーニャ「……」

やすな「ソーニャちゃんも、私がいないと寂しい?」

ソーニャ「……」

やすな「……そっか」

ソーニャ「……」

  次の日

先生「ソーニャは欠席と……」


  その次の日

先生「ソーニャ、欠席……」


  そのまた次の日も

先生「欠席……」




 そのうち、ソーニャちゃんがひょっこり登校してきてくれるんじゃないかな、なんてことを思ったりしていました

 通学路で、ツインテールを揺らして歩くソーニャちゃんの後ろ姿に、出会うような気がしていました

 だけどやっぱり、ソーニャちゃんが学校に来ることは、ありませんでした




 ソーニャちゃんのいない日々が、始まりました

 学校ではソーニャちゃんのことを考えて過ごしました

 授業中はソーニャちゃんの机を眺めていました

 ソーニャちゃんの横顔を思い出しました

 ソーニャちゃんがいないので休み時間は退屈でした

 お弁当じゃなくてやきそばパンを食べました

 それでまたソーニャちゃんを思い出しました

 いつのまにか放課後になっていました

 なんとなくソーニャちゃんの席に座りました

 ソーニャちゃんに抱かれてる感じがしました

 一緒に帰ろうと誘ったら、ソーニャちゃんはいませんでした

 どこにも  いませんでした

 こわくなって急いで家に帰りました

 ソーニャちゃんがいて安心しました

 今日のことをソーニャちゃんに話しました

 ソーニャちゃんは黙って私の話を聞いていました

 話すことが無くなったのでソーニャちゃんをなでたりつついたりして過ごしました

 ご飯を食べてお風呂に入ってソーニャちゃんにおやすみを言って眠りました

 朝になりました

 学校に行きました

 ソーニャちゃんはいませんでした

 ソーニャちゃんがいないので退屈でした

 ソーニャちゃんと出会う前は学校でどうしていたのか思い出せませんでした

 今日もやきそばパンを食べました

 学校が終わって家に帰りました

 ソーニャちゃんと過ごしました

 次の日学校に行くとソーニャちゃんがいなくて家に帰るとソーニャちゃんがいました

 その次の日学校に行くとソーニャちゃんがいなくて家に帰るとソーニャちゃんがいました

 さらに次の日学校に行ってもソーニャちゃんはきっといないので行きたくなかったけど学校に行くとやっぱりソーニャちゃんはいませんでした

 なので今日は家にいることにしました

 学校には行きたくありません

やすな「ねえ、ソーニャちゃん」

やすな「私、生まれて初めてズル休みしちゃったよ」

やすな「えへへ」

やすな「でもソーニャちゃんもずっと休んでるんだからいいよね」

やすな「今日は一日中いっしょにいられるからね」

やすな「何して遊ぼっか」

やすな「ねー、ソーニャちゃん……」

ソーニャ「……」

やすな「私ね、最近思うんだけど」

ソーニャ「……」

やすな「ソーニャちゃんをこんなにした人をさ」

ソーニャ「……」

やすな「殺したら、ソーニャちゃん元に戻るんじゃないかな」

ソーニャ「……」

やすな「ねえ、どうかな?」

ソーニャ「……」

やすな「そっかぁ、そうだよね。あぎりさんなら、安く依頼請け負ってくれるかなぁ」

ソーニャ「……」

やすな「お金? だいじょぶだよ~。ほら、このブタさん貯金箱、けっこう貯まってるんだ~」ジャラジャラ

ソーニャ「……」

やすな「どれくらい入ってるかな?」

やすな「ッ!!」ブン


  ガシャーン!!!

やすな「あっ! 見て見て、500円玉が4つも入ってる!」

ソーニャ「……」

やすな「これなら大丈夫だよね」

ソーニャ「……」

やすな「ね?」

ソーニャ「……」

やすな「ねー」

ソーニャ「……」

やすな「ソーニャちゃん」

ソーニャ「……」

やすな「ねえってば」

ソーニャ「……」

やすな「ねえ」

ソーニャ「……」

やすな「喋ってよ」

ソーニャ「……」

やすな「返事してよ」

ソーニャ「……」

やすな「何か言ってよ」

ソーニャ「……」

やすな「ねえソーニャちゃん」

ソーニャ「……」

やすな「ソーニャちゃん、ソーニャちゃんってば、ねえ! ソーニャちゃん! ソーニャちゃん!」

やすな「何か言ってよ! 喋ってよ! 話してよ! お願いだから返事してよ! 無視しないでよ! ソーニャちゃん!! ソーニャちゃん!! ソーニャちゃ……げほっ、げほ」

やすな「はあっ、はあっ、はあっ……!」

やすな「携帯……ソーニャちゃんの携帯……ソーニャちゃんソーニャちゃん……」カチカチ


  prrrrr..... prrrrrr.....


やすな「ソーニャちゃん早く……早く早く早く早く……」


  ≪お掛けになった電話は、現在電波の届かないところに……≫


やすな「ああああああああああああああああああっ!!!」ブンッ


 ガン!!


やすな「はあっ、はあっ……」

やすな「何で……何で……ソーニャちゃん……何で……」

 震えが止まりませんでした

 布団をかぶってソーニャちゃんのことをいっぱい考えました

 想像の中のソーニャちゃんは私にやさしくしてくれました

 それで少し落ち着きました

 ソーニャちゃんのことを考えながら、ベッドの中で××××をしました

 ソーニャちゃんの見ている前で、××××をしました

 ソーニャちゃんの名前を何度も呼びました

 今の今まで言えなかったことをいっぱいソーニャちゃんに言いました

 したいことをして、言いたいことを言っても、気持ちは晴れませんでした

 たくさん泣きました

 ちょっとだけすっきりしました

  次の日

やすな「……」

ソーニャ「……」

やすな「今日も学校休んじゃったね」

ソーニャ「……」

やすな「うん……明日は……頑張るから……」

ソーニャ「……」


  prrrr prrrr


やすな「電話……うるさい……」


  <CALLING : あぎりさん>


やすな「って、あぎりさん!?」

やすな「は、はい、もしもし」

あぎり『どうも~あぎりです~』

やすな「えっと、何かご用でしょうか」

あぎり『ちょっと部室まで来てほしいんです~。ソーニャも一緒に~』

やすな「え……ソーニャちゃんも……?」

ソーニャ「……」

あぎり『はい~。大事な話があるので、できれば今すぐにでも~』

やすな「……」

あぎり『ダメですか~?』

やすな「いえ、分かりました、行きます」

あぎり『では、部室で待ってますので~』



やすな「あぎりさんが、私たちに学校に来てほしいって」

ソーニャ「……」

やすな「大事な話って……なんだろ」


  部室


あぎり「待ってました~」

やすな「それで、話って……?」

ソーニャ「……」

あぎり「……実は、ソーニャを元に戻す方法が分かりました」

やすな「……」

ソーニャ「……」

やすな「………………え?」

あぎり「ですから、ソーニャを元に戻す方法が、分かったんです」

やすな「えええええええええっ!? ほほほほほんとですか!?」

あぎり「はい」

やすな「ど、どうすれば戻るんですか!? わ、私何でもします!! お金も払います!! ソーニャちゃんのためなら何でもします!!」

あぎり「落ち着いてください。お金はいりません。ですが、ソーニャを元に戻すために、やってほしいことがあります」

やすな「や、やります!! 早く教えてください!!」

あぎり「やってほしいこと、それは……」

やすな「それは……?」

あぎり「ソーニャに、キスをして欲しいんです」

やすな「へ……? き、きす!?」

あぎり「そうです。グラフィグの呪いは、真なる愛によって解かれるのです」

やすな「きすなら……もうしましたけど……」

あぎり「えっ」

やすな「昨日の夜に……」

ソーニャ「……」

あぎり「……」

やすな「……」

あぎり「あ、忘れてました~。二分の一の確率で、元に戻るんです~」

やすな「そうなんですか!?」

あぎり「はい~。もう一度、やすなさんの気持ちを伝えれば、きっとソーニャは元に戻りますよ~」

やすな「ソーニャちゃん……」

ソーニャ「……」

やすな「大丈夫、絶対元に戻るよ」

ソーニャ「……」

やすな「だってこんなに、ソーニャちゃんのこと、大好きなんだもん」

やすな「私よりソーニャちゃんのこと好きな人なんて、誰もいないもん」

やすな「ソーニャちゃん」

ソーニャ「……」

やすな「大好き」



  ちゅっ


  ガラッ


ソーニャ「あぎり、用事って何だ?」

あぎり「きましたわ~」

ソーニャ「ん?」



ソーニャ「……」
やすな「」チュー



ソーニャ「」ブッ

ソーニャ「なっ、何してんだ貴様アアアアアアアアアアアアアア!!!」ドーン

やすな「あぎゃーーーーー!!!」

ソーニャ「おい、なんだこの四角いのは!? どうみても私じゃねーか!!」

ソーニャ「……」

やすな「そ、そーにゃ……ちゃん……?」

ソーニャ「あぎり、お前も見てないで止めろよ! こ、こいつ私の人形に、キキキキスなんかしやがって!」

あぎり「まあまあ~」

やすな「そ……ソーニャ……ちゃん……」

ソーニャ「な、何だ」

やすな「………………ソーニャちゃああああああああああああああああああん!!!!」

ソーニャ「うおわっ!?」

やすな「ソーニャちゃん、ソーニャちゃん、ソーニャちゃん……!!」

ソーニャ「ちょ……!? は、離れっ……!」

やすな「うわあああああああん! よがっだぁ、もどっでよがったよぉ! そーにゃぢゃあん……!」

ソーニャ「お、おい、何で泣くんだよ!?」

やすな「うぇ……そ、そーにゃ、ぢゃんだ……ひぐ……ほんもの、だぁ……!」

ソーニャ「あ、あぎり、どうなってんだ、説明しろ!」

あぎり「すみません~、ちょっとやりすぎました~」

ソーニャ「何がやり過ぎなんだ、分からん!」

やすな「そーにゃちゃん……そーにゃちゃあん……」ギュウウ

あぎり「しばらく泣きやまないと思うんで~。受け止めてあげてください~」

ソーニャ「おい!?」

あぎり「では~」ドロン

ソーニャ「うおーーーーーーーーーい!!!」

やすな「ううー、うううー」

ソーニャ「そろそろ離れろ」

やすな「うううー」

ソーニャ「唸るな……」

やすな「んうー」

ソーニャ「というか、何でこんな状況になってるのか教えてほしいんだが」

やすな「え……ソーニャちゃん、覚えてないの?」

ソーニャ「は? 何を?」

やすな「グラフィグになっちゃったこと」

ソーニャ「ぐらひぐ?」

やすな「そっか、グラフィグになってる間のことは覚えてないんだね」

ソーニャ「そのグラフィグって何だ」

やすな「あぎりさんが教えてくれたの。ソーニャちゃんは悪い人に捕まって、グラフィグっていう紙人形にされちゃったんだって」

ソーニャ「……は?」

やすな「それで、ずっと喋ることも動くこともできなくて……私も、ソーニャちゃんがいなくて……寂しくて……」ジワ

ソーニャ「よく分からんが、私は仕事で海外に行ってただけだぞ」

やすな「えっ」

ソーニャ「何だ、あぎりに適当吹き込まれて、しかも信じたのか? はっ、バカだな」

やすな「……」

ソーニャ「そもそも、何? グラフィグ? 魔法でもないし人間がそんなもんに変えられるわけ……」

やすな「……」

ソーニャ「どうした」

やすな「………………ソーニャちゃんの……」


やすな「ソーニャちゃんの、バカーーーーーーーーーーーーッ!!!!」ベチーン

ソーニャ「へぶうっ!?」

やすな「私本気で心配したのにっ!! ソーニャちゃんいなくて寂しくていっぱい泣いたのに!!」

ソーニャ「あ、いや……その……」

やすな「いなくなるって何で一言いってくれないの!! 海外なら電話も通じないし、ソーニャちゃんもう帰ってこないって思っちゃうじゃん!!」

ソーニャ「う……」

やすな「ソーニャちゃんのばか! ばかぁ……!」ポロポロ

ソーニャ「え、ええと……すまん……」

やすな「そーにゃちゃんなんて……ひぐっ……だいきらいだもん……」

ソーニャ「わ、悪かったよ」

やすな「っ……」ゴシゴシ

ソーニャ「勝手に、いなくなったりして……ひとりにして……すまなかった……」

やすな「……」

ソーニャ「だ、だからもう泣くな……」

やすな「……帰る」

ソーニャ「え?」

やすな「もう帰る」

ソーニャ「あ、ああ」

やすな「……ほらっ」

ソーニャ「?」

やすな「ソーニャちゃんも、一緒に帰ろ」


 ソーニャちゃんの手をとって、二人で一緒に帰りました

 二人で帰るのは久しぶりで、手をつないで帰るのは初めてでした

 懐かしいような、新鮮なような気持ちで歩く、二人きりの帰り道は――

 やっぱり、いつもと変わりませんでした。







やすな「あ、私今日ソーニャちゃんち泊まるから」

ソーニャ「えっ」

  おわり

ソーニャ「というか、そもそもの原因はお前じゃないか!!」

あぎり「すみません~。だけどソーニャも、黙っていなくなるのはどうかと~」

ソーニャ「ぐっ……確かに今回は私にも非がある……」

あぎり「それに、ちゅ~もできたじゃないですか~」

ソーニャ「!?/// そ、それは私じゃなくて紙人形がだろ!? というか、ち、ちゅ~なんて全然嬉しくない!!」

やすな「えー? 昨日いっぱいしてくれたのにー?」

ソーニャ「うわっ!? どっから出てきた!!」

あぎり「ちょっと昨日の部分詳しく」

やすな「あ、実はソーニャちゃんの家にお泊りしたんですけど」

ソーニャ「だああああああああああああ!!!! お前は黙ってろ!!!!」ゴス

やすな「ギョエー!!」

ソーニャ「と、とにかく! もうやすなに変なこと吹き込むんじゃないぞ! また泣かせるようなことしたら、いくらお前でもただじゃ置かないからな」

やすな「ソーニャちゃん、カッコいい……!」キラキラ

ソーニャ「う、うるさいドーーーーーーーーーーーーーン!!!」

ソーニャ(さみしい)
              おわれ

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom