あずさ「結婚」(332)


P「誰と結婚するんですか?」

あずさ「もちろんプロデューサーさんとです」

P「ははは、それは光栄ですね」

あずさ「本気にしてませんね?」

P「アイドルとプロデューサーですからね」

P「それじゃあ営業にいってきます」ガチャ

あずさ「あっ、プロデューサーさん……もう」

小鳥「プロデューサーさん、手強いですね」

あずさ「美希ちゃんに習って積極的になってるつもりなんですが、中々上手くいきませんねぇ」

小鳥「プロデューサーさん、あずささんの気持ちに気づいてるのかしら」

あずさ「あの感じだと冗談に扱われているようで少し辛いです」

美希「ハニーは鈍感なの。こんなにスキスキビーム出してるのに全然届かないの」

あずさ「お互い大変よねぇ」

貴音「本当に鈍感……そうなのでしょうか?」

あずさ「どういうこと貴音ちゃん?」

貴音「先ほどあの方は去り際にアイドルとプロデューサーと言っておりました」

美希「それが、ハニーが鈍感じゃないのとどう繋がるの」

貴音「私達はあの方に好意を持っております。隠しているつもりでも、それは自然と態度に出てしまいます」

小鳥「伊織ちゃんなんてその典型よね。本人あれで隠しているつもりなんだろうけど」

あずさ「千早ちゃんもそうよねぇ。隠しているようで、実際はプロデューサーさんのこと好きよねぇ」

美希「響もごまかしてるけど、間違いなくハニーのこと好きなの」

貴音「そうです。隠していても私達にはあの方への思いが滲み出てしまいます」

あずさ「プロデューサーさんはそれを察知して、鈍感なふりをしているということかしら」

貴音「恐らくは」

美希「でも、ハニーがそんなに敏感とは思えないの」

貴音「鈍感に振る舞っているからこそ、そう思われるのだと思います。でなければ、アイドルとプロデューサーなどと釘を刺したりしません」

貴音「もし、私達が冗談で言うのならあの方も乗ってきて冗談で返すでしょう。しかし、私達のあの方を思う気持ちが冗談ですか?」

あずさ「いいえ、違うわ。プロデューサーさんは私の運命の人だから」

美希「ハニーはミキだけのハニーなの」

小鳥「冗談なんかじゃありません」

貴音「私達のあの方への気持ちは確かなもの。だからこそ、あの方は私達の本気を受け止めた上で流しているのだと思います」

兵糧に塩はかかせまい


酒のツマミに塩を用意して支援だっ!!

美希「じゃあ、どうしたらハニーを振り向かせられるの?」

あずさ「確かに鈍いフリをしているのなら、どうやったて意味がないわねぇ」

貴音「そうだとしても私達はあの方への思いを伝えることしかできません。今はコツコツとふらぐを立てるしかありません」

あずさ「ふらぐ…旗ってなんのことかしらぁ?」

貴音「亜美と真美が言うには、あの方をを物にする上では必要不可欠なものらしいです」

アイドルじゃないのが1匹混ざってるぞ

美希「つまりそのふらぐがあればハニーと美希は」

貴音「恐らくはそういうことなのでしょう」

美希「大変なの。ミキ急いで探してくるの」ダッ

あずさ「あらあら美希ちゃんは流石ねぇ」

貴音「あの行動力には見習うべきです」

あずさ「とりあえず私達もふらぐを探してみようかしら」

貴音「それが真よき選択でしょう」

小鳥「私もできる範囲でお手伝いしますね」

こうして彼女達はPを手に入れるための伝説のアイテム、ふらぐを探す日々が始まった。

P「ありがとうございます」ペコ

P「今日の営業はこれで終わりかな」

P「しかし、今日は驚いた。まさかあずささんまで美希みたいなことをしてくるとは……」

P「色々とはぐらかしてきたからなぁ」

P「飲みに行った時に送ってくれって言われた時はタクシー呼んだり、迷子になったときに俺に迎えを頼んだ時も律子に行かせたし」

P「向こうからして見れば鈍い男って思われてるんだろうな」

P「美希にしたって誰にしろ765プロのみんなは少なからず俺に好意を抱いている。それ自体は良いことだ、プロデューサーとして信頼されているという意味もある」

P「でも、恋愛感情は不味い。確かに恋をすることでみんなの魅力が引き出されるのは良いことでもある」

P「問題は俺が誰かの気持ちに答えてしまった場合だ。みんなはいい子だからきっと祝福してくれるだろう」

P「でも、選ばれなかった娘はどうなる。間違いなく心に大きな傷ができるだろう。それが彼女達の活動に影響がでないなんて誰が保証してくれるんだ?」

 テレビで笑顔を振りまくアイドル達が、
 裏では1人の男を狙って入り乱れての大乱闘スマッスュシスターズ。
 闘わなければ生き残れない。

 Pという聖杯を手に入れるためには……。


支援…支援だっ…!

P「ファンだって根強い人達だけではない。一過性の人だっている。そんなファンが傷を負って魅力の失った彼女達をいつまでも応援してくれるのか?」

P「そうでなくったって目の肥えたファンは彼女達の異変に気づいてしまう。ファンだって彼女達を本気で好きなわけだし」

P「ファンの数はアイドルの価値を表す数字による絶対的なものだ。彼女達のモチベーションにも影響がでる」

P「彼女達のモチベーションが下がれば、彼女達に更に悪い影響が出て更にファンが減る。負の連鎖だ」

P「あぁ~なんでこんなことになったんだろうな」

P「本当にアイドルとプロデューサーじゃなきゃ…」




P「渋滞か…少し帰りが遅くなりそうだな」

???「ふらぐ~ふらぐ~どこにあるのかしらぁ」

P「あれは……あずささん。何やってるんだ、こんな事務所からかなり遠い所で」

あずさ「あらあらぁ、どこかしらぁ」

P「迷子だな、あれは。すいません、降ります」

タクシー運転手「1200円です。ありがとうございます」








P「あずささん、あずささん」

あずさ「あっ、プロデューサーさん。こんばんわ」

P「こんばんわ…って違いますよ。どうしたんですか、こんな夜に」

あずさ「それが実は探し物がありましてぇ。プロデューサーさん、ふらぐってご存知ですか?」

P「ふらぐ…旗か何かですか?」

あずさ「それが、どうも違うようなんですよ」

P「それでそのふらぐを探してたらこんなとこまで来てしまったんですね」

あずさ「はい、そのようですぅ」

P「それって何か大事なものなんですか?」

あずさ「えぇ、とっても。私にとって必要不可欠なものらしいです」

P「らしいって曖昧な……」

あずさ「お願いです、プロデューサーさん。手伝ってくれませんか」

P「まぁ、今日の仕事は終わりですから。別にいいですけど」

あずさ「本当ですかぁ」

P「えぇ、もちろんですよ。(放っておいてまた迷子になられても困るし)」

P「それじゃあ、事務所に連絡をとりますから」

Prrr

P「あっ、小鳥さんですか?俺です、Pです。実はカクカクシカジカで……はい、すいません。俺はそのまま帰るんで事務所の鍵お願いします。えっ、あずささんですか…はい」

あずさ「どうしたんですか、プロデューサーさん?」

P「小鳥さんがあずささんに替わって欲しいだそうです」

あずさ「もしもし、三浦です」

小鳥「あずささん、ふらぐ見つかりましたか?」

あずさ「いいえ、それが全然見つからないんです」

小鳥「そうですか。あの後調べてみたんですが、どうやらふらぐとは小さなものらしいです」

あずさ「小さなものですか?」

小鳥「はい、小さなふらぐをコツコツと貯めることが重要みたいです」

あずさ「そうなんですか。わかりました、ありがとうございます」

小鳥「気にしないでください。みんなプロデューサーさんのことが好きですから、その為には協力しませんと」

あずさ「そうですね。私の方でも何かわかったことがあったら教えますね」

小鳥「わかりました。それじゃあふらぐ探し頑張ってください」

あずさ「はい、それでは」

小鳥「あっ、待ってください。あずささん」

あずさ「はい、なんですか?」

小鳥「私、負けませんよ」

あずさ「ふふっ、私もです」Pi

P「小鳥さん、どうかしたんですか」

あずさ「はい、小鳥さんにもふらぐを探すの手伝ってもらってたんですよ」

P「へぇ、そうなんですか」

あずさ「それで、ふらぐとはどうやら小さなものらしいようです」

P「小さなものですか。そうなると今日はもう暗いし、見つけるのは難しいんじゃないですか?」

あずさ「えっ……でも、その」

P「どうしたんですか?」

あずさ「小さなものだからといって見つかりにくいとは思えないんですよ」

P「まぁ、小さなものでも目立つものは目立ちますしね」

あずさ「そう、そうなんですよ。だから、探してみましょう」

P「そこまで言うならわかりました」

あずさ「はい」

あずさ「このショーウインドウに飾ってある服は、ふらぐとは関係なさそうですね」

P「そうですね。比較的小さなものだし、ふらぐ…旗だから布か何かが関係してるかと思ったんですが」

あずさ「プロデューサーさんは、こういった服は好きですか」

P「そうですね……普段はみんなの派手な衣装に見慣れてしまってる分こういう服はなんだが新鮮味があって好きですね」

あずさ「そうですかぁ(……値段いくらかしら)」

P「小さくて目立つもの……というわけで」

あずさ「宝石……ですか?」

P「安直かもしれませんが、服よりは信憑性がある気がして」

あずさ「そうですね。じっくりと探しましょう」

P「指輪とか目立ちますよね」

あずさ「そうですね。結婚指輪とかあるわけですし」

P「世の中にはそれに数億をかける人がいますよね」

あずさ「私はあまり気にしないですよ」

P「そうなんですか。運命の人を見つけるためにこの業界に入ったわけですから結婚、結婚指輪についてはこだわりがあると思ってたんですが」

あずさ「高価なものは確かに素晴らしいと思います。それだけその人を思っているからこそ、それだけの値段をかけられるわけですし」

P「そうですね」

あずさ「でも、高価すぎるからこそ怖いんです」

P「怖い?」

あずさ「まるでこれだけのものを出したから、あなたは私をこれだけ愛さなければならないといった感じでしょうか」

P「束縛されるのが嫌いなんですか?」

あずさ「そうじゃありません。ただ結婚という2人の間に交わされる永遠の約束が何か事務的に感じてしまうんです」

P「そう言われると味気なく聞こえます」

あずさ「はい、だから私は決して高くなくてもいい。その人が心から思いを込めたものならそれでいいと思います」

P「男としては高価なものを与えるのは一つの見栄ですよ。もちろんそれだけじゃありませんけど」

あずさ「っと言いますと?」

P「男としては相手に綺麗でいてほしいですからね。だからこそ、高価なものにするわけですよ」

あずさ「そうですか」

P「まぁ、そういう相手のいない俺が言っても説得力も何もないんですけどね」

あずさ「……そうですか」

P (不満……なんだろうなぁ)

P「結局見つかりませんでしたね」

あずさ「すみません。付き合わせただけじゃなくて送ってもらってしまって」

P「いいですよ。元からそのつもりでしたし」

あずさ (……本当に鈍いフリをしてるのかしら?)

P「どうしたんですか、あずささん」

あずさ「い、いえなんでもありません。あのプロデューサーさん」

P「はい、なんでしょう」

あずさ「明日、またふらぐ探しを手伝ってくれませんか?」

P (……さて、どうするか)



俺の中のP像って18の高卒で社長にティンとこられて現在19歳なんだけど

P (付き合うにしろ断るにしろ、簡単だ。一言いえばいいのだから。でも付き合ってしまえば、彼女に深い入りしてしまいそうだ。それはプロデューサーとして不味い。だが、男として彼女の誘いを断るのは酷い話だ……)

あずさ「あの、プロデューサーさん?」

P「あぁ、すみません。まぁ、お互いに機会があったらというわけで(こういう曖昧でヘタレな返ししか出来ないわけで)」

あずさ「そうですか……」

P「それじゃあまた明日」

あずさ「はい、おやすみなさい。プロデューサーさん」

P (寂しそうな背中……追いかけて抱きしめたい。でも、それは出来ない、プロデューサーだから。そのくせ、カッコつけようとしている)

P「フフフ…ハハハ…好かれちゃいけないのに、好かれようとしてる。最低のクズだな、俺は」

翌朝

あずさ「おはようございます」

貴音「おはようございます、あずさ」

あずさ「貴音さん、昨日はどうでした。そのふらぐ探し……」

貴音「いえ、昨晩探してみましたが……どうにも」

美希「ミキも昨日頑張って探したけど全然見つからなかったの」

響「ずっと付き合わされた自分の身にもなって欲しいさー


美希「いいでしょ、ふらぐを手に入れればハニーのお嫁さんになれるんだから」

響「おおおお嫁さん。自分プロデューサーのお嫁さんになるのか」

美希「いや、お嫁さんになるのは美希だけど」

響「なっ…それじゃあ美希の1人勝ちで意味ないさ」

貴音「響、ところが事はそう簡単ではないのです」

響「簡単じゃないってどういうことさ」

貴音「実は……」

あずさ「結婚」

P「・・・え・・・!?」

あずさ「結婚」

P「・・・う、うわあ・・・ああ・・・ああああああああああ(イスから転げ落ちる)」

あずさ「どうかしましたか?」

P「ああ、あふゥッ・・・ひいいい・・ガクガク(足が震える)」

あずさ「やだなあ、そんなにびびらないで下さいよ。ちょっと言ってみただけなんですから^^」

P「ああ・・あ・うんっ・ああ・・・ビクンビクン(小水を漏らす)」

あずさ「結婚してください^^」

P「あんっ!ああん・・らめ・・・もうらめえ!ビクンビクン(射精する)」

響「要するに今までのプロデューサーは鈍感なフリをしてたってことか?」

伊織「あの馬鹿がそんな器用な奴だなんて意外よね」

亜美「うーん亜美達、見事に騙されてたんだね」

真美「にーちゃん策士だね」

美希「って、なんでデコちゃんに亜美真美がいるの」

伊織「こんな狭い事務所で話してればまる聞こえよ」

昔「結婚」てゲームあったよな……。

あずさ「認知してください」
P「全く身に覚えがないんですが」
小鳥(想像妊娠乙)

こんなあずささんがみたい

貴音「とにかくあの方を手に入れるためにはふらぐが必要なのです」

あずさ「どこにあるのかしら」

美希「デコちゃん知らない?」

伊織「デコちゃん言うな。だいたいそれなら亜美と真美に聞きなさいよ」

響「亜美、真美。ふらぐってどこにあるんだ?」

あずさ「小鳥さんが言うには小さなものらしいですけど」

亜美「ヌフフ、ふらぐっていうのはねえ」

真美「身近にあるもんなんだよ」

貴音「身近……ですか」

あずさ「事務所にでもあるのかしら?」

美希「ミキ昨日は自分の家も探したけど全然見つからなかったの」

亜美「チチチ、違うんだなぁ。ミキミキ」

真美「ふらぐは見つけようとして見つかるものじゃないんだよ」

響「それならどうすればいいさ」

亜美「亜美たちに言えるのはふらぐを見つけるには兄ちゃんと仲良くすればいーんだよ」

美希「おかしいの!」

伊織「うわっ、いきなり大声出さないでよ」

響「どうしたんだ美希」

美希「おかしいの。ふらぐを手に入れる条件がハニーと仲良くなることならミキはとっくにふらぐを持ってるの」

貴音「確かに美希はあの方と普段から親密な様子」

亜美「ミキミキのあれはどうなんだろうね」

真美「あれは……ねぇ」

伊織「何にせよ、あの馬鹿が鈍感なフリをしてるというならやることは1つよ」

貴音「1つと申しますと」

伊織「こうなったらあの馬鹿をいままで以上に意識させるのよ」

あずさ「でも、いままではぐらかされてきたのに大丈夫かしら」

伊織「大丈夫よ。あいつだって男よ。どんなに受け流そうとはぐらかしたって私達を意識しないはずがじゃない。きょ……されてるわけじゃないんだから」

 つまるところPを「ドキン☆」とさせればいいのか
 小鳥さんの眼力で、ぷっすまみたいにドキドキゲージが表示されるわけだな

律子「プロデューサー……揉んでくれませんか?」
P「え?」+10

律子「肩を」
P「あ……あ~、肩ね、肩」-10

 みたいな

あずさ「でも、今まで以上に意識させるって具体的に何をするのかしら」

伊織「決まってるじゃない。自分の持ち味を活かすのよ」

貴音「持ち味……ですか?」

春香「持ち味?何それおいしいーの?」

伊織「あんた達アイドルなんだから自分のセールスポイントくらい把握してるでしょ」

貴音「キャッチコピーみたいなやつですか」

あずさ「私は確か……笑顔と体に癒される、やすらぎお姉さんアイドルでした」

美希「ミキは、肉食系小悪魔アイドルなの」

響「自分は明るく無邪気系だぞ」

亜美「亜美はカワイイ系!」

真美「真美は癒やし系!」

伊織「あんた達二人は自称だけどね」

雪歩は穴を掘ってPと一緒に入って密着トークか

真は逆に男らしく振る舞ってPをデートに誘いエスコートしてあげるのか

美希「デコちゃんはなんだっけ?」

伊織「ワガママ系よ」

亜美「ツンデレ系の間違いじゃないの?」

伊織「違うわよ!」

真美「えぇ~でもね~」

伊織「とにかくこれ以上、あの馬鹿のはぐらかしにモヤモヤイライラするのはごめんよ」

貴音「そうですね。皆にも教えた方がいいかと」

亜美「人数は多い方がいいだろーしね」

真美「さんせーさんせー」

美希「ハニーが他の娘に誘惑されるのは嫌だけど、ふらぐのためなの」

響「なんくるないさー」

あずさ (プロデューサーさんは私達をはぐらかしてる……同じ舞台に立っていない。立とうとしていない。それなら舞台に引きずりだしちゃいます)

あずさ「覚悟してくださいね、プロデューサーさん」

落ちやすい

その日以来、Pを意識させるべく765プロの女の子達(内1名は女の子というかは不明だが)による行動が始まった。
彼女達の目的はただ1つ……ふらぐを手に入れてPをものにすることだ。

1番手、美希

美希「ハニー!」ダキッ

P「美希……いつも言ってるが抱きつくなよ」

美希「ハニー以外の男の子にはやってないから大丈夫なの」

P「そういう問題じゃなくてな」

美希「それに今やっとかないとお仕事の途中でハニー分が切れちゃうの」

P「なんだよハニー分って?」

美希「ミキはハニーに抱きつくことでハニー分を充電してるの」ギュ

P「お前は電池か?」

美希「ハニー。ミキはね、ハニー分があるからキラキラ輝けるの。お仕事で苦しい時にねハニーを抱きしめた時のこと思い出すと乗り越えちゃうの」

P「そいつは光栄だな」

美希「ミキ知ってるよ。ハニーがいつもミキのこと心配してくれてるの」

P「あぁ……」

美希「ハニーに抱きついているとね。そういうハニーの優しい気持ちがミキに流れ込んでくるの。そうするとね、ミキも優しくなれる気がするの。あったかい気持ちになれるの」

P「俺はお前が思ってるほどいい男じゃない」

美希「うん、いつもミキの気持ちからスルリと逃げてきたもんね」

P「……気づいてたか」

美希「うん。でも、気づいたの自体は最近だけど」

P「わかってるなら、どうして抱きつくんだ?」

美希「そんなの決まってるの」

P「えっ……」

美希「ミキがハニーのこと大好きだからなの!」

美希「ミキね、難しいことはわからないの。考えたくないし」

美希「ミキに出来るのはハニーを好きって気持ちを伝えることだけなの」

P「はた迷惑な奴だな……」

美希「そうでも構わないの。ミキのこの気持ちを止めるなんてこと誰にも出来ないの」

P「美希……」

美希「う~ん、充電完了なの。それじゃあお仕事行ってくるの」

P「あぁ、頑張ってこいよ」

美希「ねぇ、ハニー。ミキの恋は押しの一手なの……だから」

P「だから?」

美希「いつかハニーのこと食べちゃうの!」ガチャ

P「……」

P「……」

P「肉食系小悪魔アイドルかぁ」

俺は長谷川明子さんに食べられたいです

二番手、春香

春香「おはようございます、プロデューサーさん……っとと、うわわわ!」

P「……」ガシッ

春香「あ、ありがとうございます。プロデューサーさん」

P「なぁ、春香いつも思うんだが聞いていいか?」

春香「はい、なんですか?」

P「その、いつも何も無いところで転ぶのはわざとなのか?」

春香「そんなわけないじゃないですか。ひどいです、プロデューサーさん」

P「でも、こう毎日だとな。わざとじゃないなら、もうこれは一種の才能だよな」

春香「もう私の話はいいじゃないですか。それよりプロデューサーさんお腹すいてませんか」

P「あぁ、昼を食って結構たったからな。小腹が空いてきたな」

春香「それなら私、昨日つくったお菓子持ってきたので食べませんか?」

P「随分と用意がいいな(最初からそのつもりだったんだろうな)」

P「相変わらず上手いな、春香の作るお菓子」

春香「ほ、本当ですか!」

P「あぁ、このガトーショコラ。店で売ってるのと変わらないんじゃないか」

春香「本当ですか。嘘じゃないですよね?」

P「こんなことで一々嘘をつかないよ」

春香「ヘヘヘ、喜んでもらえて嬉しいです」

春香「ねぇ、プロデューサーさん」

P「なんだ?」ヒョイ、パクパク

春香「お菓子作りで一番大事なものって何だか知ってますか?」

P「さぁ、お菓子なんか作ったことないからな。焼き加減とか材料の分量の対比とか隠し味か?」

春香「もちろんそういうのも大事ですが、それ以上に大事なものあるんですよ」

P「何だよ、それは?」

春香「それはですね……」

春香「食べてもらう人への気持ちです」

春香「料理は愛情って言いますよね。私、あれ結構信じてるんです」

春香「食べてもらう人のことを思って、気持ちを込めて作ればきっと伝わると思うんです」

P (そういえば、学校で母さんの作った弁当とか食べた時とか冷めてたのにうまかったな)

春香「それはお菓子作りも同じだと思うんですよ。気持ちを込めれば、きっと相手に届くって」

P「春香は……いつもどんな気持ちでお菓子を作ってたんだ?」

春香「それはもちろん。プロデューサーさんに誉めて貰えるかなとか、喜んでくれるかなとかですよ。好きって気持ちをいつも込めてました」

P「俺か?765プロのみんなじゃなくて」

春香「みんなのことは好きですよ、でもプロデューサーさんが1番です」

P「そうだな……でも、俺はお前のお菓子に込められた思いに報いてやってないぞ」

P「こうして、ただ呑気に食ってるだけだ」

春香「報いてないはずがないですよ」

春香「だって、プロデューサーさんは私のお菓子を美味しいって言ってくれますから。それだけでも、私は嬉しいんです」

春香「プロデューサーさん。もし、プロデューサーさんが誰かと結ばれたとしても……私、お菓子を作って持ってくると思うんです。その時は、また美味しいって言ってくれますか?」

P「……春香が俺への思いを込めて作ってくれるお菓子だ。美味しくないわけないだろ?」

春香「ありがとうございます。あぁ、もちろんプロデューサーさんをあきらめたわけじゃないですよ?」

春香「それじゃあ、お菓子も渡せたし今日はこの辺で失礼します」ガチャ

春香「うわっ、うわわわ!」ガッシャーン!

P「……」ヒョイ、パクッ

P「……」モグモグ

P「……美味しいな」

P「お菓子好きの前のめりなアイドルか」

三番手、伊織

伊織「ねぇ……」

P「伊織か、何の用だ?」

伊織「ちょっと付き合いなさいよ」

P「あぁ、すまん。まだ書類が少し残って」

伊織「書類!? そんなの後にしなさいよ」

P「そういうわけにはいかないんだよ。今の内に仕上げておきたいし」

伊織「なによぉ、この伊織ちゃんよりそんな紙切れの方が大事だっていうのぉ」ウルッ

P「わかった……わかったよ(泣く子には勝てないって本当だな)」

伊織「ふ、ふん。この伊織ちゃんの誘いなんだから当然よね。最初からそう言えばいいのよ」

P (現金な奴だな……)

P「それでなんの用だ?」

伊織「少しあんたと話がしたいのよ」

P「話、それくらいなら書類やりながらでも」

伊織「大事な話なのよ!」

P「……わかったよ。どっか行くか?」

伊織「いいわよ、そこのボロソファーで」

P「ひどい言い方だな」

P「よっと……」

伊織「……」

P「なんだ座らないのか?」

伊織「……」ストン

P「なんで俺の膝に座る?」

伊織「別にいいじゃない。座りたいところに座ってるだけよ」

P「俺は椅子じゃない。だいたい大事な話っていうのにこの格好はどうなんだ?」

伊織「私は気にしないわよ」

P「言うだけ無駄だな、このお嬢様は」

伊織「二ヒヒ!」

P「でっ、話ってなんだよ?」

伊織「ねぇ、あんた……鈍感なふりをしてたって本当?」

P「誰に……聞いたんだ?(美希も似たようなこと言ってたな)」

伊織「言えるわけないじゃない」

P「そうか……」

伊織「……」

P「なぁ、伊織おりてくれないか?」

伊織「なんでよ……」

P「大事な話なんだろ? だったら、ちゃんとお互いの目を見て話そう。これじゃあ、伊織の顔もろくに見えない」

伊織「だったら……こうすればいいでしょ」ズズッ

P「なるほどな、確かにこれならお互いの顔を見れる (対面座位……自分がどんな恥ずかしい格好してるかわかってるのか)」

伊織「ねぇ、どうして鈍感なふりなんていう面倒なことしてたの」

P「それが正しいと思ったからさ」

伊織「じゃあ、みんなの気持ちを知った上でそれを弄んだの!」

P「そういうつもりは……いや、あったな。俺自身の中で俺のことを好きでいてくれる伊織たちをどこか利用していた部分はあったよ」

伊織「……」

P「恋をすることでお前たちアイドルのとしての、女としての魅力がより引き出せる。お前たちをより高いステージへ連れていける。そして同時にそれは俺のプロデューサーとしての実績に繋がる」

P「そう打算的に考えてしまう自分が確かにいたよ」

伊織「……」

P「伊織、ここはぶつなり殴るなりするシーンだぞ?」

伊織「……ない」

P「伊織?」

伊織「そんなこと出来るわけないじゃない……」

伊織「私だって、そういう気持ちがあるもの」

P「伊織にもか?」

伊織「だってあたしが竜宮小町に入ったのってあたし自身が売れてなかったからよ」

伊織「売れていなかった私は、竜宮小町として活動すれば売れるって考えた。あずさと亜美を使うことで自分の知名度を上げようとしたのよ」

P「でも、お前には親を見返すためにこの業界に足を踏み入れたんだろ? なら、竜宮小町の水瀬伊織として活動は当然のことじゃないか。事実、竜宮小町の人気は凄いんだから」

伊織「そうよ、必要なことだったのよ。律子にこの話を持ちかけられた時、チャンスだと思ったわ。律子も結果を出したかったわけだし、利害は一致してた」

伊織「そうやって打算的に考えてしまった自分に嫌になるのよ」

P「竜宮に入ったこと後悔しているのか」

伊織「ううん、それ自体は別にいいの。ただね、時折……あぁ、私一人の力じゃ何も出来ないんだな。あずさと亜美、そして律子を利用しなきゃ今の舞台にいないんだなって思っちゃうのよ」

P「……」

伊織「ねぇ、ここは抱きしめるなりキスするなりして慰めるシーンよ?」

P「正直……俺はお前に何を言っていいかわからない」

P「俺はどうやったって伊織になれない。だから、お前の気持ちを汲み取ることは出来ない」

P「でも、お前の言う通り……」ギュ

伊織「あっ……」

P「慰めてやることは出来そうだ」

伊織「うぅ……ば…かぁ……ウっ、ウっ、ヒック…ヒック…ほん…とに…あんたは人の心…弄んで……ヒック……」

伊織「ねぇ、さっきのことは……」

P「わかってる。あの伊織ちゃんが事務所で泣いたなんて話がバレたら……怖い怖い」

伊織「~~! あんたに伊織ちゃんなんて言われたくないわよ!」

P「ハイハイ、帰るんだろ? 俺は書類が残ってるけど」

伊織「わかってるわよ……ねぇ」

P「なんだよ、まだ泣き足りないか?」

伊織「違うわよ!そのあれよ、つまり」

P「つまり?」

伊織「私はワガママなの。欲しいものは絶対に手に入れなきゃすまないの」

伊織「だから……首洗って待ってなさいよ!」ガチャ

P「ワガママ系アイドルか……」

P「女の涙は男の勲章……なんてな」

P「……鼻水はどうなんだろ?」

P「Yシャツ、洗わないとなぁ」


四番手、響

ー帰宅中ー
P「今日は色々とあったな。美希、春香、伊織」

P「好意に気づいてはいたが、ああいう風に真っ正面からぶつけられるとはな」

P「鈍感なふりをしてることが、あいつらの思いを蔑ろにしてきたこともバレてる」

P「恐らくこれから他の娘たちも行動を起こすんだろうな」

響「プロデューサー、何やってるさ?」

P「……」

響「?……プロデューサーどうしたんだ、固まって」

P「響か……いや、悪い予感?って随分と的中するもんなんだなってな」

P「お前はこんな夜に何してるんだ」

響「見てわからないか?」ガサッ

P「夕飯の買い出しか」

響「プロデューサーは夕飯どうするんだ?」

P「作るの面倒だからコンビニで」

響「駄目だぞ!プロデューサー、そんなのじゃなくてもっとしっかりしたもの食べなきゃ」

P「コンビニの弁当もしっかりとした飯だよ」

響「む~。そうだ、プロデューサー」

P「なんだよ」

響「どうせお金を払ってコンビニのご飯を食べるくらいなら、タダでご飯が食べられる場所があるぞ!」

P「へぇ、それは魅力的な提案だ」

響「そうだろ。それじゃあ一緒にいくさ」

P「わかったよ…… (行き先は多分……あそこなんだろうなぁ。まぁ、ちょうどいい機会なのかもしれないな)」



響「プロデューサー、入っていいぞ」

P「あぁ」

響「汚い所かもしれないけど上がってくれさ」

P「それがアパートにつくなり、掃除するからと言って俺を外に待たせた奴の言うことか?」

響「ははは、なんくるないさー」

P「俺はなんくるなくない」

響「適当にかけてて欲しいぞ。イヌ美たちの分のついでに夕飯作っちゃうから」

P「わかったよ」

響「~♪」

P「……まるで夫婦か何かだな」

響「!……ぷぷぷプロデューサー、何いってるんだ」

P「夫婦みたいだなって言ったんだよ」

響「だから、そうじゃなくて。もぅ、変なこと言い出すんじゃないぞ」

P「悪かったよ」

響「全く本当にプロデューサーは」

響「~♪~♪」

P (機嫌よくなってるよ……そんなに夫婦って乙女心を刺激するのか)

響「ほい、自分の得意料理。ゴーヤチャンプル」

P「さすが沖縄県民」

響「ははは、誉めろ誉めろ!」

P「うん、確かに美味しいな」

響「そうだろ、そうだろ」

P「なぁ、響」

響「なんだプロデューサー?」

P「どうして俺を自分の部屋に連れてきたんだ」

響「……」

P「別に責めてるわけじゃない。ただ、若い女が男を家に連れ込むのはどうかと思っただけだ」

P「ましてやお前はアイドルだ。そういうのには特に敏感にならなきゃいけないと思う」

響「……」

P「まぁ、誘いに乗ったのは俺が、お前に意見するのもおかしな話だけどな」

響「……プロデューサーのせいだぞ」

P「俺のせい?」

響「プロデューサーが鈍感なふりなんてするから」

P「そんなに嫌だったか?」

響「例えふりだったとしても、気づいてもらえないのは辛いんだぞ」

P「ふりをする側も辛いんだぞ」

響「そうなのか?」

P「それはそうだろ。自分のことを思ってくれてる相手の気持ちを裏切るようなもんだろ。お前、上の方針とかじゃなくて自分の意志で、自分のファンを裏切ったりすること出来るか?」

響「それは……」

P「おまけに自分がその人達に悪い感情を持ってるわけじゃないから尚更だ」

響「プロデューサー」ギュ

P「響……顔に胸当たってるんだが」

響「なんくるないさ……」

響「プロデューサー、辛かったんだな。自分達がプロデューサー一人のことで辛かったのに。プロデューサーは
自分達、全員分苦しんでたんだな」

P「数の問題じゃない……」

P「響は暖かいな。沖縄育ちだからかな」

響「よくわからないぞ」

P「多分さ、響の暖かい心が体を通して出てるんだよ」

響「なんだそれ?」

P「さぁな……」

響「プロデューサー、辛かったんだろ? 顔見えないから泣いていいぞ」

P「年下のお前の前で泣けるかよ。でも……今はもう少しこうさせててくれ」

しぇーーん

千早「プロデューサー」ギュ

P「ごめん肋骨があたってイタイ」

千早「くっ」

P(よし、千早の胸をももう)

千早「私の肩甲骨がどうかしたんですか?プロデューサー」

P「くっ」

P「それじゃあ、そろそろお暇させてもらうか。また、ゴーヤチャンプル作ってくれ」

響「プロデューサー。自分、沖縄料理以外も普通に作れるぞ」

P「そうなのか」

響「当たり前さ、自分完璧だからな」

P「だったら今度は肉じゃがでも作ってくれ」

響「任せるさ」

P「じゃあな」ガチャ


P「後は帰って、風呂と寝るだけか」

響「プロデューサー!」

P (ん……響か。ベランダからなんだよ)

響「……」スゥ

響「かなさんどー!」

P「……」スッ

響「!」

P「……」ヒラヒラ

響「///」

P「……なんくるないさ」

五番手、千早

P「千早、新曲の収録お疲れさま」

千早「お疲れさまです、プロデューサー」

P「俺は見てるだけだけどな」

千早「いえ、プロデューサーが見ている。それだけでも力が入ります」

P「緊張するのか?」

千早「確かに緊張はするんですけど。その……悪い意味では無いんです。その……」

P「高揚感……」

千早「はい、それに近いと思います」

P「そんなに存在感あるか、俺」

千早「他の人のことはわかりません。でも、少なくとも私にとってプロデューサーは大きな存在ですよ」

千早「私のワガママでしかないのに、今日だってこうして歌の仕事を優先してとってきてくれます」

P「適材適所ってやつだ。歌がずば抜けて上手いお前を活かすために歌の仕事を持ってくるのは当然だろ?」

千早「私が自分の歌に納得の行かない時はいつまでも付き合ってくれます」

P「お前の歌を最高の仕上がりにしたいのは何もお前だけじゃない、俺も……ってだけだ」

千早「歌が歌えなくなった時、私を支えてくれたのはプロデューサーでした」

P「俺は何もしていないさ。立ち上がったのは千早自身だ」

千早「私はプロデューサーの支えがあったから立ち上がれました。そんなプロデューサーに私は……」

P「でも、それは……」

千早「わかっています。自分の抱いた気持ちが許されるものではないことくらい」

P「だったら後はそれを押し殺してしまえばいい」

P「俺はお前たちに対する気持ちが出てきてしまう度にそうしてきたから (同時にそんな自分に反吐が出たけど)」

千早「そんなに……そんなにいけないことなんですか。この気持ちは」

P「……」

千早「初めてこの人に認められたいって思った。初めてこの人に誉められたいって思った。初めてこの人のそばにいたいって思った。初めて…初めて、一緒に歩いていきたいって思った」

千早「そんな気持ちを押し殺すなんて……できません」

P「俺は色々な千早の初めてをもらってたんだな」

千早「そうですよ。初恋だってプロデューサーです」

P「ありがとうな。こんな俺を好きでいてくれてさ」

千早「プロデューサー。私は例えプロデューサーに選ばれなくてもそれでいいんです。それはプロデューサーが必死になって考えたことだから、私がそれを口だしはできません」

千早「それに初恋は叶わないって言いようですし」

P「千早……」

千早「でも、プロデューサー。もし、そうなったとしても私のプロデューサーを降りないでくれますか」

P「自分を振った男が近くに付きまとうんだぞ」


あずさ「結婚結婚結婚結婚」

P「ひえええええええ!!!」

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