春香「プロデューサーさん、正統派ですよ、正統派!」(304)

いち

ちょっと待ってね

社長「―――ふむ、君のその事務所のみんなへの考え、私の目から見ても一理あると言えるだろう」

P「では社長……」

社長「うむ。……私も若い頃は『アイドルの可能性』について色々と考えたものだ。竜宮小町も軌道に乗って来たし、事務所にも余裕はある。ひとまず君のやりたいようになってみなさい」

P「……!はいっ、ありがとうございます!」

社長「ははは。あまり無理はするなよ」

P「大丈夫、わかってますって」





P「―――と言うわけで、これからは竜宮小町以外のみんなの活動を本格的に始めることが出来そうだ。社長からも許可を貰ったぞ」

真「本当ですか!?へへっやーりぃ!」

響「自分、レッスンも好きだけどやっぱりオーディションやったりテレビに出るほうが楽しいさー」

春香「プロデューサーさん、まずは何をすればいいんですか?」

千早「プロデューサー、私は……あんまり派手な格好をしたり派手な曲を歌ったりはしたくないのですが……」

真美「兄ちゃんがもたもたしてるから亜美にだいぶ差ぁーつけられちゃったじゃーん!早く曲だそうよ、曲ぅ~!」

P「まあまあまあ、みんな落ち着け。ちゃんとそれぞれの活動については考えてある。一人ずつ話していこうか、まずは……千早から」

千早「はい」

貴音「ところで……あなた様、全員この場に残っていても良いのですか?もし聞かれて不都合な点があるようでしたら、わたくしたちは席を外しますが」

P「ん?そうだなあ……聞きたい奴は別に聞いててもいいぞ。ただ、この後レッスンがある奴は先に行ってもらった方が良いな」

P「その子たちは終わってから活動方針を決めよう」

P「あと雪歩とやよいは今レッスン中か。美希は……いつものように寝坊だよ、まったく。この三人も来てからだな」

響「わかったぞー。じゃあ自分は先にダンススタジオに行ってるから、後で方針聞かせてくれよなプロデューサー!」

真「ああ響待って、ボクも一緒に行くよ。……プロデューサー、楽しみにしてますからね」

P「あいよー」

ガチャ(真と響が外へ)

P「―――で、千早。まずはお前の希望を聞こうじゃないか。どういう活動をしていきたい?」

千早「はい、そうですね。……私はやはり、歌を歌いたいです」

千早「先ほども言いましたが、あまり派手な格好をしたくはありませんし、激しいダンスなどもちょっと……。あくまで歌を歌うことで自分を表現していきたいと思っています」

千早「もちろん必要とあらばどんな曲でも歌う覚悟はありますし、激しいダンスが出来るようにレッスンも欠かしません」

千早「私自身の希望としてはそんな所です。……生意気言ってすみません」

P「いや、お前の考えは十分に伝わった。……活動方針も考えていたもので問題なさそうだな」

千早「どういったものですか?」

P「なーに、簡単だ。……千早はこれから『歌手』として売り出していく。激しいダンスも派手な衣装も必要ない。歌一本だ」

千早「!!」

春香「ちょ、え?プロデューサーさん!?こっ、ここはアイドル事務所ですよっ、アイドル事務所!」

春香「アイドルとしてじゃなく、歌手として活動しちゃっていいんですか!?」アセアセッ

P「……じゃあ春香に聞くけど、『アイドル』って何だ?」

春香「へあ!?アイドルって……」

のヮの「そ、そりゃあ、みんなの憧れ、みんなに夢を与えるような人たちのことを、言うんですよぉ」ドンッ☆!

P「成程。じゃあ歌手は、みんなの憧れにはなれないし夢も与えられないのか」

春香「…………え?」

春香「えぇ!?いやいや、そんなことは……。うぅ~、プロデューサーさんこの流れでそれは卑怯ですよ~」シュン

P「あはは、ゴメンゴメン。別にいじめるつもりじゃなかったんだ」

真美「その割には兄ちゃん、『してやったり』って顔してるよ~~?」ニヤニヤ

P「ゴホン……俺が言いたいのは、何も『歌って踊れる』だけがアイドルって訳じゃない」

P「千早には歌手として活動する中で成長してもらって、『アイドルのような存在』になって欲しいってことなんだ」

真美「…………んん~?兄ちゃーん、もちょっとわかりやすく言ってくんない?まだよくわかんないよ~」

P「ん、じゃあ……言い方を変えてみようか。千早の目指すべきものが『アイドル』じゃなく『歌姫』だとどうだ?」

真美「うたひめ?」

春香「歌姫……」

千早「……私自身の考えと多少の違いはありますが、アイドルよりは目標には近いかもしれません」

P「歌が上手い歌手はたくさんいるが、歌で人々の心に強く訴えかける、絶大な支持を集める歌手は中々いない」

P「そしてそれを可能にした女性アーティストは、人々から『歌姫』と呼ばれるようになる。みんなが彼女に憧れを抱き、夢を与えてもらえる」

真美「ふ~ん、何となくわかった……かな」

P「これを例として挙げていいのかは賛否あるだろうが、歌姫と呼ばれるアーティストは最近だと『JUJU』や『西野カナ』なんかだな。二人とも若い女性層からの支持は絶大だ」

P「昔で言えば『浜崎あゆみ』『宇多田ヒカル』『MISIA』あたりかな。『昭和の歌姫』と呼ばれる『美空ひばり』だって、当時を考えれば絶対的な人気だったな」

P「一部例外はあるが、彼女たちは純粋なアイドル的人気とはまた違う。でも歌を主とした様々な要素が集まり、彼女たちもまたアイドルのような『崇拝』の対象になっている」

P「……あ、だからって千早に西野カナみたいな歌を歌わせるとか、そういうことじゃないぞ」

P「例に挙げた人たちをどう思ってるかは知らないけど、あれも一つの『アイドル』の形だ、と言いたかったんだ」

春香「うーん、千早ちゃんが浜崎さんや宇多田さんのように、ですか~……?」

P「……んまあ、『歌姫』って呼び方自体に商業的な部分があるのは事実だし、違和感があるのもしょうがない。ポンポン『歌姫』が出るレコード会社もあるし、ただの二流アイドルに歌姫って言わせてるとこも……な」

P「でも歌を歌って活動したい千早にとっては、これ以上ない選択肢だと俺は思ってる」

P「既存の『歌姫』のポジションが千早にとって無理があるんだとしたら、その概念を壊してしまうほどの活躍をすればいいだけのことさ」

P「最初に千早自身が『歌で自分を表現したい』って言ったよな?」

P「俺は、千早には表現するその先、歌で人々に感動を与えるような活動が出来ると感じている。……それが出来るのが、『孤高のアイドル』たる『歌姫』だ」

千早「…………プロデューサー。曲はどんなものを?」

P「会社に送られてきたデモテープの中で、この方針に合いそうな曲をいくつかピックアップしてみた。ちょっと流してみるか」


~みんなで試聴中~


貴音「『蒼い鳥』『目が逢う瞬間』『眠り姫』、あと『arcadia』……成程、如月千早にはあくまでもクールな曲を、ということなのですね」

真美「兄ちゃ~ん、『スタ→トスタ→』は、『うたひめ』とか関係なく千早お姉ちゃんには合わないんじゃないの~、コレ?」

P「ブッ!あ、あれ、間違って入ってたな。それは忘れてくれ、うははは。……何なら真美が歌うか?」

真美「え、いいの!?」ワクワク

千早(どれも良い曲だけど……「蒼い鳥」は、歌い甲斐がありそうね)

P「『歌姫』のイメージを付けるにはどうしても『孤高の存在』というファクターが必要だ。『カリスマ性』と言い換えてもいい」

P「千早にはそういう意味でもクールな曲が一番似合うだろう。これについては俺が保障する」

P「ただ孤高の存在と言っても、プライベートでも常に一人で居ろ、とかいうことじゃないぞ。神秘的な面・多少の近寄りがたさが出せればそれでいい」

P「千早の場合、それを歌だけでも表現することが可能だと信じている。お前の歌なら、聴いた人たちにお前への『カリスマ性』を抱かせるのは難しくないはずだ」

P「最初はあくまでクールに孤高で、それで世間にイメージが伝わってきたら、改めてポップスに挑戦してみるのもいいだろうな」

P「こう言っては何だが……一度ファンを掴めば、ほんの少しの脱線くらいは許してくれる」

P「最初の方は露出少な目で、ただ宣伝はバッチリやるぞ?それから段々と普段の『如月千早』をみんなにお披露目していこうと思ってる」

P「一見冷たそうでも、優しさや可愛らしさに溢れている。……事務所で見てきたそんな所も、お前の魅力の一つだからな」

P「俺の方針としては、こんなところだ……どうだ、千早?」

千早「そう……ですね」

千早「正直に言うと、あまりにも自分の希望が通っているので驚いています。自分からアイドル事務所に入っておいてなんですが」

千早「自分の好みの曲を歌わせてもらえ、やりたくないことをやらなくてもいい。こんなに恵まれてしまっていいのだろうか、と」

P「……いや、それは少し違うぞ千早。この道はむしろハードモードだ」

千早「?」

春香「?」キョトン

P「『アイドル』として本格的に活動する場合、どんな曲を歌っても世間から受け入れられやすい」

P「アイドルの基本はポップスだろうが、たまに壮大なバラードを歌えば『違う一面』として大きく評価されやすい」

P「だが千早に提案したこの道だと、大きくはっちゃけたような曲は歌えない」

P「『歌姫』のイメージが崩れるからだ。それこそ『スタ→トスタ→』なんかだな」

P「バラードが千早が歌いたい曲であるなら幸いだが、その流れを続けると逆に選択肢が狭まりかねないわけだ」

P「しかも実力派シンガーとしての活動を中心にすると、それ以外の道の可能性も狭まってしまうことが多い」

春香「それ以外って……バラエティとかのテレビのお仕事のことですか?」

P「そうだな、例えばそういったものだ」

P「千早はそもそもバラエティには向いてないかもしれないが、それが逆にヒットする場合もある」

P「ただ、親しみやすさが前面に出すぎると、『孤高の存在』たる『歌姫』からは遠ざかってしまう。冷たそうに見えて実は……の段階に入れば別だがな」

P「テレビは音楽番組が中心になるだろう。そうなると、千早の歌声がみんなに十分に届かない時、仕事がなくなる危険性がある」

P「もちろん俺がそんなことはさせないつもりだが、『歌姫』として売り出す以上、安売りはできない」

P「千早の意思は尊重する。仕事もたくさん取ってこよう。いい曲も用意するし、最高の環境で歌わせてやる」

P「だとしても、色んな不安要素が考えられる。千早の歌声が届かなければ、この方針は瓦解する。中途半端なシンガーになるだけだ」

千早「…………」

P「いざというときにはバラエティにも出て、純粋な『アイドル路線』に切り替える、という手もあるにはある。『歌姫』は辛く厳しい道だしな……」

P「千早が俺の方針が嫌だと言うなら、今言ったような保険も含めて、別のプランを用意する。…………今すぐでなくてもいいが、近いうちに答えを

千早「やります」

春香「!!ち、千早ちゃん……!」

千早「厳しい道のり、人々の心を動かせなければそれまで、結構じゃないですか。私には歌しかありませんから、むしろ実現できないのなら765プロにいる意味すらありません」

貴音「千早……」

真美「千早お姉ちゃん……」

千早「その道が、本当に自分の目標となりえるのか確証が持てません。ですが……プロデューサーの話を聞いて、恥ずかしながら目指してみたいと思いました」

千早「人々の心を動かす歌を歌い、それにより『アイドル』のような人気を得る―――そんな『歌姫』に」

P「千早……!本当にいいのか?途中で投げだりたりは出来ないかもしれないぞ」

千早「プロデューサー、大丈夫です。私は歌からは決して逃げません。……良い曲、最高の環境、絶対ですからね?」ニコッ

P「フッ……ああ任せとけ!未来の『歌姫』!」

千早「……方針は決まりましたねっ!……じゃあ早速、未来の歌姫になるためのボイストレーニングに行ってこようと思います(スクッ)

千早「他に何か、お話はありましたか?」

P「いや、無いぞ。喉は酷使するなよ?」

千早「ええ、わかりました」ニコッ



P(―――千早がボイススタジオに出かけ、今いるのは春香、貴音、真美の3人になったか)

P「次に方針を決めるのは……春香にしよう。春香、こっち来てくれ」

春香「は、はい!お願いしますっ」ドキドキ

P「そう固くなるなよ~。気楽に気楽にぃ」

春香「ち、千早ちゃんとプロデューサーさんの話聞いてたら、もう気楽になんて聞けませんよぉ~」

春香「わた、私は、どんな、な、アイドルを目指せばいいい、いいんですか……?」

真美「はるるん噛み噛みじゃん……」

貴音「春香、なにとぞ落ち着いて」

春香「…………」スーッ、ハーッ

P「春香は……」

P「そのものズバリ、『正統派』だ!」

春香「!!!」セイトウハ?

P「色々と迷ったんだが、俺の中では、春香が目指すべきは『正統派』だろうという結論に達した」

春香「……正統派……」

貴音「あなた様、もちろん先ほどのように、きちんと説明してくれるのでしょう?」

P「ああもちろん。…………アイドルの世界は深い。一口に『正統派』と言っても色々とあるわけだが……」

P「春香の『正統派』スタイルの究極形は『松田聖子』をイメージしている」

春香「ま、」

真美「松田聖子……」

貴音「面妖な……」

春香(その「面妖な」は使いどころ合ってるの?)

P「昔のアイドル特集なんかでも見たことあるだろ?大体は『伝説のアイドル』って言われてな」

P「『伝説のアイドル』という意味では『山口百恵』や『日高舞』あたりもその内の一人だと思うが、やはり影響力も含めて、『松田聖子』を超えるアイドルは今のところ存在しないと言っていい」

真美「そんなスゴイ人だったの……?」

P「ああ、スゴイなんてもんじゃないぞ。彼女がデビューしてからしばらくは、新人アイドルの髪型は、ほとんどが彼女のを真似たものだったりした」

P「アイドルだけじゃなく、一般の女の子たちもそうしてた。『聖子ちゃんカット』って呼ばれていたんだ」

P「が、その後、彼女がショートヘアーにしたんだ。……そしたら他のアイドルも一般人も、今度はショートへアーにするようになった」

貴音「なんと……!」

真美「ほえ~……」

P「時代が違う、と言ってしまえばそれまでかもしれないが、社会にまで影響を及ぼすなんて誰にでも出来ることじゃない」

P「ましてや『女性アイドル』は本来、男性からの支持によって成り立っているはずなのに、な」

P「P「もちろん歌は上手かったが、女性層からの支持も、そういった単純な『歌姫』的な人気ではなかった」

P「彼女が持つ天性の『アイドル』の素質が、世の女性たちをも虜にしたのだと俺は思っている」

P「一部からは『わざと可愛く見せようとしている』と言われ、彼女をきっかけに『ぶりっ子』という言葉まで生まれたのに、だ」

P「彼女の生き方に感化されて人生観が変わった女性も多いと聞くな……」

春香「そ、そ、そんな人に……なれって、い、言うんですかぁ……」汗ダラダラ

真美「あちゃ~。……はるるん完全におびえちゃってるよ」ドウシヨウ

貴音「…………あなた様、初めて山を登る人間にいきなり雲の上を指してしまっては、委縮してしまうのも無理はありません」

貴音「無理難題……とまでは言いませんが、要求する物事の段階が、今はまだ高すぎるのではありませんか?」

P「うんむ……みんなの意見ももっともだ」

P「あくまで俺が考える、春香の目指すスタイルの『究極形』だと思ってもらえればそれでいいんだ」

P「それで…………春香、お前の一番のアピールポイントは『女の子らしさ』だと思うんだ」

春香「……?はい?」ドウイウコト?

P「事務所にいる誰よりも、いや、ひょっとしたら俺が今まで出会ってきた女性たちの中で、お前が一番『可愛い女の子』なのかもしれない」

春香「え……!ど、どういうことですか///」カァァ

P「お前がさっき言ったな?『アイドルはみんなの憧れであり、夢を与える人だ』って」

P「憧れや夢……それってつまり、世の中の女性たちに向けて『理想の生き方』を提示することに変わりないんじゃないか?」

P「……松田聖子だってそうだ。不倫や離婚、様々なスキャンダルがあった。実際、今でも彼女の行動に対して批判はある」

P「それでも彼女は強く生き続けていた。そしてそれが、世の中の女性たちに勇気を与えていた」

P「電撃結婚を発表したときは、彼女のような燃えるような恋がしたいと、女性たちは思った。出産を経験した彼女を見て、自分も赤ちゃんが欲しい、と女性たちは思った」

P「彼女の行動の是非は今回は関係ない。大事なのは、彼女や彼女の生き方を見て、世の女性がどう思ったのか、ということだよ」

春香「……松田聖子さんから、勇気を貰ったって言ってましたね」

P「そうだ。……そして春香は誰にも負けない歌やアイドルへの情熱と、女性らしさ……言い換えるなら『溢れんばかりの母性』を持っている」

P「一緒にいて安心する、一緒にいたいと感じさせることができる」

P「……実際、俺も春香と一緒にいると安心するし、『こういう女の子って可愛いなあ』、と思う」

春香「ぷ、プロデューサーさん…………///」

P「そういったお前やお前の生き方を見て、世の女性たちの心を動かす……『こんな人になりたい』って思わせる」

P「俺が考える『正統派』ってのは、こういうアイドルのことだと思ってる」

P「男性の目からは、『理想の女性』として。結婚したい、彼女にしたいとかな。そして女性の目からも同様に『理想の女性』として、な」

P「『この人のような、可愛らしい女性になりたい』『この人のようにリボンの似合う女性になってみたい』ってな感じでな」

P「どうだ春香……そう言われてみたいと、思わないか?」

真美「まあ、はるるんは男の人からしたら理想のお嫁さんだよね~。…………お嫁さんに欲しいよね、兄ちゃん?」

P「そこで俺に振るのかよ!欲しいよ!」

ヤイノヤイノ

春香(『正統派アイドル』…………。こんな人になりたい、って思わせることができる……?平凡な人生しか送ってこなかった……私に)

春香(私なんて、特徴のない、普通の女の子だと思ってた。もちろん歌は好きだけど、何の取り柄もないって……そう思ってた)

春香(でもプロデューサーは、「女の子らしさ」が特徴だって言ってくれた。でも……自分じゃあ、よくわかんないや)フゥ

貴音「……春香」トントン

春香「ふゃい!なんでしょう貴音さん!」

貴音「…………わたくしの個人的な経験、いや、春香への思いを申し上げてもよろしいでしょうか?」

春香「へ?」

貴音「……千早やプロデューサー、事務所の皆に対し、いつでも純粋に己の愛情を表現できるあなたを見て、羨ましく思ったことが何度かあります」

貴音「わたくしも春香のように、日頃からの感謝の気持ち、『好いている』という感情を全身から、そのまま皆に表現してみたい……と」

春香「た、貴音さん……///」

貴音「わたくしが申し上げたかったことは、以上です」ペコリ

春香「……貴音……さん………………」

春香「………………、…………………………(グッ!)」

春香「ぷ、プロデューサーさん!」ガタッ!

P「うお!どうした春香?」

春香「私やります!」

P「!!」

真美「!!」

春香「正統派アイドルを、ま、松田聖子さんを…………め、目指してみせます!」

P「お、おいおい春香。俺も追い込みすぎた、悪かったよ。でもそんなに無理しなくても

春香「してません。違うんですっ!……ありのままの私で、いいんですよね?」

P「お、おう……。俺は『天海春香』そのものをプロデュースしたいと思ってる。混じりっ気無しのお前をな。そうでなきゃ意味がない」

春香「……それを聞いて安心しました。まだ絶対的な自信は持てませんけどね」

春香「私なんかが、本当にみんなの憧れになれるのかわかりません」

春香「……だけどっ、『天海春香』がどこまで通用するのか、私自身も知りたくなってきたんです」

春香「自分で自分のことを平凡だと思ってる。……そんな女の子が、みんなの憧れのアイドルになれるのか……挑戦してみたいんです!」

P「春香…………(俺が言うのもなんだが、なんか圧倒されてしまう)」

春香「プロデューサーさん、私は本気ですよぉ、本気!」メラメラッ

真美「はるるんの目が燃えてるよぉ」

P「…………フゥ……デビュー曲は、春香のイメージに合った明るめの曲で行こうと思う」

P「デモを聴いて一発で、春香に似合うと確信した……『太陽のジェラシー』って曲名だ」

春香「太陽のジェラシー、ですね」


P「メディアへの露出も多めで行くぞ、泣き言言うなよ?」

P「デビュー曲を引っ提げてのライブも大きく宣伝しよう。音楽番組のオファーも、千早同様、頼んでおくぞ」

P「そして歌手活動以外での分野だが、男性ファン獲得のためのグラビアの仕事と、女性ファン獲得のための料理企画の二つを考えている」

P「最初としては、それでいいかな?春香」

春香「はいっ!もう何でも来い、って感じですよぉ!」

貴音「……ふふ、忙しくなりそうですね」

春香「プロデューサーさん…………私の夢は、今この場で、プロデューサーさんが生み出しちゃったんです」

春香「最後まで責任とってプロデュースして下さいね。プロデューサーさん、『正統派』ですよ、『正統派』!」




おわり

書き溜めてたぶんはこれで終わりです

アイマスキャラを実際のアイドルに当てはめたらどうかな、という考えからSSを書いてみましたよ。

ちゃんと竜宮小町の子ら以外はプランを考えてるので、続きは書けます


即興は苦手なんで、また書き溜めてからの投下になると思いますが

ていうか、投下したら勢いがついちゃったんで、また書き始めましたw

このスレが残ってれば投下しますし、無くても近いうちにまた建てm@s



忍法帖とか、準備はちゃんとしないといけないよね……

予定したペースよりも書きこめないことが多くて焦ったよ

流石に今日の夜までには完成させます。

それまで待ってて下さい、何でもしますから、オナシャス!

P(さて、次は―――)

P「貴音、次はお前のプロデュース方針を決めて行こう」

貴音「……(来ましたか……!)はい、かしこまりました」

貴音(先ほどまでの千早、春香の方針についての話を聞いて、わかったことがあります)

貴音(この方は、わたくしたちが今は見えない所、遥か先の方を見据えているということ…………)

貴音(日常的な考えのその先。『理想』を追い求めているということ)

貴音(……果たして、わたくしには彼の理想を実現できるだけの力が、あるというのでしょうか)

P「貴音……話してもいいか?」

貴音「……はい、どうぞ」

真美「えっとー、千早お姉ちゃんが『歌姫』で、はるるんが『正統派』だっけ」

春香「貴音さんは……何ですか?」

P「貴音はだな、『女優』だ」

貴音「………………」ジョユウ……

真美「…………」フムフム

春香「プロデューサーさん。一応確認なんですけど『アイドルのような女優さん』ってことですよね」

P「……実はな、女優以外の選択肢もいくつかある」

P「それこそ歌唱力に磨きをかけて『歌姫』を目指してもいいし『グラビアアイドル』も考えられる」

P「スタイルの良さというのも、立派な武器の一つだぞ」

春香(……千早ちゃんには聞かせられないな……)

P「貴音にはあらゆる可能性が眠っているんだが、俺がプロデュースしたいのは『女優・四条貴音』だ」

貴音「それは……何故でしょうか」

P「俺はな、初めてお前を見た時に『きれいな人だなあ』って思った」

貴音「…………たいへん嬉しく思います」ペコリ

P「それでな、同時に『不思議な人だなあ』とも思った。そして今でもそう思ってる」

真美(わからなくもないかな~)

春香(確かに……)

貴音「それはまた……どうして、その様に思われたのですか?」

P「まずな、貴音には他の人以上の『オーラ』があるんだよ」

貴音「…………おーら……?」

P「……わかりにくいなら日本語で言い換えるか?…………『絶対的な存在感』だな」

P「……一人でいる時の貴音には、凛とした張りつめた空気が流れている、と俺は思った」

P「だけど時折、とても暖かくて心地の良い表情を見せるお前がいた」

P「そして……それは事務所のみんなと一緒にいる時も同じだった」

P「貴音が厳しい声を発すると、みんなの心が引きしまる。優しく語りかけると、みんな穏やかな気持ちになる」


貴音(そう、だったのでしょうか……。……自分では、全く気が付いておりませんでした…………)

P「お前が居ることで、そして発言することで空気が変わるんだ。つまり、貴音がその場を支配していると言っても過言ではない」

P「何を考えているのかわからないのに、こちらの心は見透かされているような気もする、と感じた」

P「『四条貴音』という人物が、決定的な面では決して掴めない。……だから、不思議だ、と思ったんだ」

真美(大げさ……でもない、かなあ…………)

P「そしてお前の持ち味の一つでもあるが……人からどう思われているか、ということに頓着が無い」

P「自分を客観視することも確かに重要なんだが……そこがまた、お前の不思議な世界観を作っているのだと思う」

P「歌手活動もしてもらおうとは考えているが、そんな魅力を持った貴音には、そこで終わって欲しくない」

P「貴音が最も映える場所、それが…………『女優の世界』だと思った」

春香(………………)ゴクリ

P「どうだ……貴音?」

貴音「………………」

貴音「あなた様は……先程、『まずは』と仰いました」

貴音「わたくしを女優の道へ進ませたい理由は、他にもあるのでしょう?」

貴音「それを聞いてから判断するのも、遅くはないと思います」

P「…………そう、だな」

P「貴音の持っているもの。神秘的な雰囲気、安定した演技の表現力とか」

P「……そういった所も、女優の資質としては十分なんだ。これだけでも根拠にはなる」

P「だけど、ここは敢えて言わせて欲しい。貴音の一番の武器は『美貌』だ」

真美(うぇ!?)

春香(んな!?)

貴音「……美貌、ですか……?」キッ

P「…………睨まないでくれ。ちゃんと理由も言うから」

P「そりゃあな、『あなたは綺麗なのが取り柄です』なんて言われたら、真面目に取り組んでる方は怒りたくもなるよ」

P「でもな、実は……そこが一番重要なところなんだ」

貴音「というと……」

P「……『吉永小百合』って、知ってるか?」

貴音「……はい。演技力の訓練の一環として、映画の鑑賞をしていました時に、何本か出演作を」

P「吉永小百合ってのはな、そりゃあとんでもない女優なんだ」

真美(……どうとんでもないんだろう?)

P「50代以上の男性、それこそうちの社長もだ。その人たちにとって『好きな女優』を聞けば、『吉永小百合』と答えるだろう」

貴音「それはそれは…………しかし、それがどう関係あるのでしょうか」

P「これは彼女の人気が、彼女が活躍した当時の世代の人たちから、変わらずに高いということだな」

P「これには、当時の吉永小百合の人気についても話す必要がある」

春香(……そう言えば、お父さんが昔ファンだったって言ってたなあ……)

P「俺自身も、もちろん当時のことはわからない。生まれてないし。だからここからは、社長から聞いたことだ」



……

社長「彼女は、とにかく美しかった」

社長「そして上品で、健気だった。……彼女の演技力には、他の女優にはない目を見張るものがあったよ」

社長「……しかし、思い焦がれながらも、彼女と結婚したい……とは、実は思うことが出来なかったんだよ」

社長「なんだかねえ、『そのままであって欲しい』と思ってしまうんだ」

社長「自分なんかが彼女の世界に入って、彼女を汚してしまいたくなかったんだ。恥ずかしい話だがね」

社長「…………そうだな、『アイドル』とは少し違うのかもしれないな」

社長「『マドンナ』……格好をつけて言ってしまえるのなら、『女神』……少なくとも私には、そんな存在だったよ」

社長「この間の映画も素晴らしかった。あれだけの年月が経ても変わらずに綺麗でいて……当時を思い出して浸ってしまったよ」

……

P「と、社長から聞いた」

P「社長の話からわかったこと……それは、吉永小百合は『清純派』だったということ」

春香「正統派、とは違うんですか?」

P「違う……だろうな。……社長の話にもあったように、憧れの対象ではあるんだが『理想の存在』とはまた違う」

P「『誰のものでもない』『穢れていない』という不可侵性……か」

P「正統派が『こうなりたい』と思う『理想』であるのに対して、清純派は『彼女が変わらず、いつまでも思い続けていたい』と思わせる一種の『不変性』がある」

P「そして清純派アイドルこそ今でも存在するが、吉永小百合が今でもなお人気が衰えない理由が、ここにある」

真美「それって社長が言ってた……」

貴音「『変わらずに綺麗でいて』……そういうことですね、あなた様」

P「……そうだ。吉永小百合は、今でもなおその美貌を保ち続けている。そして『変わらずに』という言葉には現在と過去の両方が含まれる」

P「一線を退くまで大きなスキャンダルも無く、『憧れのマドンナ』であり続けた過去」

P「そして年齢を重ねても美しさが変わらない現在」

『今でも変わらずにいる彼女を、自分も変わらずに好きで居続けたい』

P「……そう思う人たちがいるからこそ、今でも人気が衰えない」

貴音「………………」

P「ちょっと脱線しかかったな。俺は貴音を清純派として売り出したいわけじゃないし、それだけの長い期間活動しろ、と言いたいわけでもない」

P「俺が言いたかったのは

貴音「もう、結構です。あなた様」

春香(……貴音、さん……?)

P「…………言ってくれ」

貴音「わたくしに求めるもの。それは容姿端麗な女優、というだけではないのですね」

貴音「きっとあなた様はこう仰るはずだったのでしょう……『貴音にも同様に、変わらないと思わせる不変性があるのだ』と」

貴音「……わたくし自身、これから先どうなって行くかなど、知る由もありません。もちろん自分にそんなものがあるのかどうかも」

貴音「しかし、それでも『わたくし自信』は決して変わらずにありたい、と。確かにそう思っていました」

貴音「……わたくし自身が、決して流されずにありのままの『四条貴音』で居続ける」

貴音「あなた様のお言葉を借りるなら……そんな『不思議な人』であることが、吉永殿のような不変性に繋がるのでしょう」

真美(お姫ちん……)

P「……続けて」

貴音「あなた様が仰っていた『美貌』。初めはどういう事かと憤慨しそうになりましたが、ようやく理解できました」

貴音「綺麗である、それ自体は天賦の才。しかしそれを維持することは、その者の努力が無ければ達成し得ないこと」

貴音「美貌を維持することもまた才能の一種であり、変わらずに人気が続くことの難しさを表している」

貴音「そしてわたくしにはそれが可能である…………と、あなた様は思っている」

貴音「この『変わらないであろう美貌』と『絶対的な存在感』を最大限に活かす場所が、『女優』である」

貴音「そういうことを言いたいのだと、わたくしは思いました。…………わたくしの話は、これで以上です」

春香「…………プロデューサーさん、貴音さんの話、どうなんですか?」

P「いや…………驚いたな。ほとんど俺の考えていたことと同じ。ほぼ正解」

真美(お、お姫ちんSUGEEEE!)

貴音「……しかしあなた様、あなた様は少々わたくしを買い被り過ぎています」

貴音「わたくしは変わらぬ美貌など持っているとは思えませんし、絶対的な存在感を出しているとも思っていません」

貴音「もちろん中途半端な所で芸能界を去るつもりはありませんが、そのような存在になれるかどうかは……」

P「なんだ、随分弱気だな」

P「ていうか……気づいてなかったのか?」

貴音「……?何がでしょうか」

P「俺と貴音がしゃべっているとき、今もそうだ。春香と真美……二人とも、息を呑んで貴音の発言を待っている」

貴音「え…………?」

春香(え……あ……)

真美(あ、そう言えば……)

P「二人ともよくしゃべる方なのに、自分の意見のほとんどを心に押しとどめて、貴音が何を言うかに注目していた」

P「これが場を支配していないんなら、何だって言うんだ」

貴音「なんと……」

P「……気づいてないだけで、お前には眠っている才能がまだまだある」

P「でもお前自身も言っていたように、『それを維持する』のは生まれつきの才能だけでは賄えない」

P「それには普段の貴音のように、『変わらないでいる』ことの大事さをわかっていないとな」

貴音「……ふ、ふふ………」

真美「お姫ちん?」

貴音「あなた様。おーら、もそうですが……永遠の美貌など、やはりわたくしには保証できませんよ?」

貴音「それでも構わないと言うのなら……せめて『永遠の美貌を追い求める女優』くらいならば、目指せるかもしれません」

春香「貴音さん、じゃあ……!」

P「貴音の方針は女優活動…………で、いいんだな?」

貴音「ええ、……望むところです!」シジョッ

真美「おーおー、お姫ちんが急に元気になった~!!」ヤッター

P「ふふ……何事も、小さなことからコツコツと……だ。焦ってはいけない」

P「最初は貴音の表現力に負担の掛からない役柄を想定して、オーディションを受けた方がいいな」

P「ミステリアスな孤高の女性。たとえば女王様的な……それこそ悪役の仕事でも、積極的に取って行こう」

P「一度でも貴音の演技力とスタイルを見たら、すぐに色んな所から主演のオファーが来るだろうしな」

貴音「わかりました、あなた様。……大きな目標が出来た今、多少の回り道は覚悟の上です」

P「任せとけ。ラーメンを死ぬほど食えるような、お金持ちの大女優にしてやるよ」

春香(……流石にラーメンを死ぬほど食べるような女優は美しくないんじゃないかなあ……)フアンダワ




貴音編 おわり

なるほど…
アイドルに「キャラクター」を与えて、個性や人間性を殺してでも、
「キャラクター」に沿った方針を当てがうことで売り込むのか。
たしかに昭和、アイドル創生期の頃だと『正統派』な考えを持ってきてるPだな。
「アイドルはトイレにいきません」みたいな。

他にも961プロとかってそんな売り込み方じゃなかったけか

流石に夜通し書いてたから疲れたよ……今日はひとまず寝るよ
起きたらさっさと続き書いて、早く新作投下するように頑張るよ
残ってたらここに載せるし、なけりゃ作るしね。
他人の書いた作品も参考になるから、乗っ取りも好きにやってもらって結構だよ

……あと、貴音の口調って難しいね。

>>141
コンセプトが>>81なんで、理屈っぽくなっちゃうのは否定できません
その分説得力を持てるように、頑張ります
各キャラにとって無理のない活動を考えてるつもりです……

鋭意製作中……

もうちょっとで一人分書き終わりそう

貴音「―――ところで」

貴音「……いるのでしょう?そろそろ姿を見せてはどうですか」

貴音「…………萩原雪歩」

P「えっ!?」

真美「うそっ!」

春香「ど、どこですか!?」

雪歩「ひ、ひいぃん!ここ、こ、ここですぅ!」ガタガタッ

P「なん……え?いや、雪歩にも聞きたいことはあるけど……貴音、なんで気づいたの?」

貴音「そう、ですね……」

貴音「……雪歩殿の醸し出す『おーら』の所為やもしれませんね」

貴音「わたくしは雪歩殿が静かに入ってきたときから、気づいておりました」

P(色んな意味で流石だ……)

P「え、っと……雪歩、やよいは一緒じゃなかったのか?」

雪歩「はうぅ、や、やよいちゃんは、帰りがけのスーパーで特売をやっていたので、買い物をしてから来るそうです」

P「……じゃあ何で隠れてたの?」

雪歩「そ、それは……、事務所の中から、凄く真面目な話が聞こえてきて……」

雪歩「私なんかが入っていって邪魔したくなかったし……」

雪歩「でも、四条さんが話してるのを聞いて、ちょっと興味が出てきちゃって……」

P(てことは吉永小百合の話の後ぐらいからか)

雪歩「うぅ……盗み聞きするようなこんなダメダメな私で、ごめんなさい……」グスッ

雪歩「穴掘って埋まってますぅ……」

P「いや、別に謝らなくてもいいよ。他のアイドルの方針の話を聞くのも悪いことじゃない」

P(ていうか純粋に、穴は掘らないで欲しい)

P(さて、順番で言えば次は真美なんだが……タイミング的には……)

P「真美……本当なら次はお前と話そうと思っていたんだが、先に雪歩の方針について相談していきたいんだ。……悪いけど、我慢できるか?」

真美「ん…………いーよー」

真美(ゆきぴょんも変な感じで落ち込んじゃってるしね~、しょうがないかな……)

P「―――と、いうわけだ。これからは雪歩の活動も本格的に始めることができるようになった」

P「初めて会った時にも聞いたけど、もう一度確認しておきたい。……雪歩は、どうしてアイドルになりたいんだ?」

雪歩「…………私、は……」

雪歩「やっぱり自分を、変えたいんです……。いつも弱気で、物事をすぐ悪い方に考えちゃって……」

雪歩「男の人も犬も苦手だし…………こんな、ダメダメでちんちくりんな私が嫌で、もっと積極的になりたくて……」

雪歩「アイドルになれれば、そんな自分が変われるんじゃないかって…………だから、ですぅ……」

P「わかった。よく話してくれた」

雪歩「……プロデューサー、何をすればいいんでしょうか……」

P「…………雪歩は、アイドルになって何がしたい?」

P「歌を歌いたい?ドラマに出たい?それとも、写真を撮って欲しい?」

雪歩「……え、えっと……その……」

P「明確なものがまだはっきりと決まっていないなら、それでもいい。今のお前の本音を教えて欲しい」

雪歩「その、あの…………決まって、ないですぅ……うぅ」グスッ

春香「雪歩、落ち着いて……ね?」サスサス

雪歩「ん……ありがとう、春香ちゃん」

P「そうだそうだ、泣くようなことは一つもない。俺がしっかり導いてやるから安心しろ」

P「雪歩、お前にはアイドルとして『歌手活動』、『役者活動』、『グラビア活動』」

P「さっき俺が言ったことを、とりあえず全てやってもらう」

P「最終的にどこに主軸を置くかは、雪歩自身に決めてほしい。大事なのは、この『3本柱』だ」

雪歩「3本柱…………ですか?」

貴音「あなた様、『役者活動』は、『女優活動』と同じではないのですか?」

P「女優とは……同じだが、ちょっとだけ違う」

P「んまあ、女性が役者をやっていれば、自然と『女優』って呼ばれるようになるけどな」

P「ただ、俺が感じるニュアンスがちょっと違うと思っただけだ」

真美「どーゆーこと?」

P「雪歩はな……今言った3本柱、もちろんどれにおいても素質もあるとは思うが」

P「……どれをやっても、似合うんだ」

のヮの「?」

雪歩「に……あう……?」

P「さっきまで話していた3人、千早には歌姫が似合う、春香には正統派アイドル、貴音には女優が似合う」

P「そういう意味で、雪歩にはアイドルも、役者も、モデルも、全部似合うと思う」

P「レッスンを見ても表現力は中々のものだ。ルックスも良いから、画面に映るだけで華がある」

P「どの活動を主軸にしても、上手く行くビジョンが見える。そういうこと」

雪歩「……そんなこと、ないですよぉ」

雪歩「一つのことをやるだけでも精一杯……そんな私が、何をやっても上手く行くだなんて……」

雪歩「そんな都合の良い話、あるわけありません…………」

P「…………」

P「雪歩、アイドルって、どうやって生まれると思う」

雪歩「え?」

P「何がきっかけでテレビに出られるようになるか、仕事が貰えるのか」

雪歩「え、と……わかりません」

P「……一つは、ぶっちゃけ『会社の力』だ。961プロの宣伝力を見てもわかる」

P「……もちろんこれもこれで大事だけどね」

P「でも、それはアイドル本人の力ではないよな。もちろん売り込みたくなるくらいの魅力は必要だけど」

P「で、二つ目が……『オーディション』」

雪歩「……はい……」

P「各事務所の様々な思惑も入り乱れるが、結果はガチンコだ。実力で仕事を勝ち取ることが出来る」

P「……961プロの『Jupiter』は、あの会社の力に加えて、ガチンコでも勝ち残る実力を持っている、のが厄介なんだ」

春香(律子さんも、よく衝突して厄介だって言ってたなあ)

P「だが、雪歩には『映画のヒロイン役を決める』『歌番組の出演を賭ける』そういうオーディションに限らない」

P「というか、雪歩に合わせるとしたら、そういうオーディションとは違うと思う」

雪歩「違う……って?」

P「……他社の話で悪いんだが、例で言うなら『全日本国民的美少女コンテスト』だ」

雪歩「………え…………?」

雪歩「…………ぜ、全日本の、国民的、美少女…………!!」クラクラ

春香「ちょ、雪歩、しっかり!」

貴音(春香の時と同じような反応ですね)

真美(ゆきぴょんは失神しちゃうタイプかぁ……)

P「オスカーが主催してるから、あくまで素人参加オーディションだ。雪歩が出るわけじゃないぞ」

P「それにグランプリよりも、審査員特別賞とかの娘の方が注目されることが多い。あくまで名前だけだから」

雪歩「…………フゥ。も、もう大丈夫ですぅ……話を、お願いします」

P「……このコンテストは、言ってみりゃオスカーが『可愛い・綺麗なタレントの原石を見つける場所』だ」

P「応募する子たちも同じ。自分を変えたい、これをきっかけに芸能界で仕事をしたい、と思って応募する」

P「……オスカーの偉いところは、受賞者の子たちを決して安売りしないことだな」

P「賞をとってもすぐには仕事を回さない。長い下積みとレッスンを欠かさずにやらせる」

P「そしてタレントやアイドルとして、長い間芸能活動を続けることが出来る……」

P「……ここで大事なのは、応募した彼女たちと雪歩は、同じだということ」

雪歩「?」

P「コンテストではあるけど、例えばこれで賞を貰ったからと言って特定の映画や番組に必ず出させてもらえるわけじゃない」

P「応募する子たちは、漠然と『芸能界』や『タレント』、『アイドル』という要素に憧れを抱き、コンテストに出るんだ」

P「まだやりたいことが見つからない、でも自分を変えたい、と思っている雪歩と同じ」

P「合格すれば出演番組が決まる、そういうオーディションとは全く違う」

真美「なるほどね~」ナットク

P「そして、それはデビューした後もそうなんだ」

P「彼女たちはレッスンを重ね、最初はアイドルとして、だけど次第に歌手・女優・タレント、様々な方向性を模索する」

P「それで芸能活動を続けて立場やポジションが固まる人もいれば、縛られずに今なお多角的な活動を続けられる人もいる」

貴音「……あなた様、ひょっとして『役者』と『女優』の違いというのは……」

P「……鋭いな、流石。……そう、俺が個人的に考えているのは、明確にそうなろうとするのが『女優』だ」

P「そして、芸能活動の一環として取り組むものが『役者』」

P「役者、を揶揄してるわけじゃない。あくまでも俺が感じたニュアンスの違いだ」

雪歩「何となく、わかりました……」

P「……俺が、『雪歩には何でも似合う』って言った意図はわかるか?」

雪歩「え、と……『全部を完璧にこなせ』、じゃなくて、『どんな道でも輝ける』っていう…………」

雪歩「あ、あれ?自分で言ってて……な、何か恥ずかしいぃ…………///」カアァ

P「ふふ……大体はそんな感じだな」

P「『上戸彩』いるだろ?彼女もそのコンテストの受賞者だ」

P「みんなは多分『女優』か『タレント』だと思って見てるだろうが、彼女はアイドルグループとして最初デビューした」

P「そしてその後、女優として才能が花開き、テレビによく出るようになった」

P「でも、彼女はグループを解散しても歌手活動は続けていた」

P「そして何より、CMだ。短い時間で、自分の魅力を解き放つことができる力があった」

P「だからこそ、彼女は『CMクイーン』の座に輝いた。タレントとしての地位はもはや盤石だ」

春香(上戸さん綺麗だもんな~)

貴音(わたくしが見た『金八先生』での演技には、目を見張るものがありました……)

雪歩(う、上戸さん、あんな可愛い人みたいに……?)

P「あとは……変わったところで、『小池栄子』とかな」

P「彼女も、いまや『女優』『タレント』として日本を代表する芸能人の一人だ」

P「が、彼女は最初『グラビアアイドル』としてブレイクし、それに乗ってコント番組のレギュラーをやっていた」

P「実はな……彼女は最初から、女優を目指していたんだ」

P「太り気味の体系を隠せる、という理由で、やりたくもなかったグラビアをやらされてたんだよ」

P「でも彼女はコンプレックスだった大きな胸を『アピールポイント』だと解釈して、積極的に取り組むようになった」

P「タレント性の開花、そしてコントでの演技力が評価されて、女優へと見事に飛躍した」

雪歩「……プロデューサーは、私にどっちのようになって欲しいんですか?」

P「……いや、どっちかのようになって欲しいわけじゃない」

P「『萩原雪歩』という新しい存在になって欲しい」

雪歩「え……?」

貴音「………………」

P「オスカーに限らない。芸能事務所が発掘した『美少女アイドル』は、その時点で行先は決まってない」

P「如何様にも羽ばたくことが出来るし、その人の努力次第でどんな舞台でも輝ける」

P「雪歩は誰の目から見ても『美少女』だ。守ってあげたくなるような雰囲気を持っている」

雪歩「…………///」カアァ

P「そして……今は確かにダメダメかもしれない」

雪歩(はうぅ……)

P「……だけど、人一倍努力家なのを知ってる」

P「男の人や犬は苦手でも、俺や社長とは気軽に話が出来るようになったし、イヌ美とだったら触れ合える」

P「ダンスが苦手だからって、夜遅くまでスタジオ練習しているのも見てきた。雪歩には、『根性』がある」

雪歩「……こ、根性ですかぁ……///」

P「そんな頑張り屋さんのお前だ。3本柱、なんて言ったら全部を完璧にこなそうと考えてしまうのもわかる」

P「でも、そうじゃない。完璧でなくてもいい。お前が本当にやりたいことを見つけた時…………」

P「その時に、その分野こそが完璧に出来るようになるには……普段から色々な活動をしていく必要があるんだ」

雪歩「…………!」ハッ

P「夢や目標が簡単に決まらないのは誰だって同じだ。大事なのは、見つかった時に諦めずに挑戦できること」

P「『自分を変えたい』という願いが達成できたなら、それだけでも十分だ。俺の言った『新しい存在』になんてならなくても構わない」

P「ただ覚えておいて欲しいのは……『萩原雪歩』という未知の存在への可能性」

雪歩「未知の……存在……」

P「数多いるタレントの中でも『上戸彩』『小池栄子』が唯一無二の存在であるように、な」

P「雪歩には『美少女』というアドバンテージと、『根性』という誇れるものがある」

P「そんな雪歩が、歌手として、役者として、モデルとして、活動する」

P「俺はひょっとしたら、その先に、新しい雪歩の姿があるんじゃないかと思ってるんだ」

P「俺はもちろん、雪歩自身にもわからなかった姿が」

P「……『自分を変える』って、そういうことでもあると思う」

雪歩「自分を…………」

P「…………どうだ?」

雪歩「………………」

雪歩「………………私は、変われますか?」拳グッ

P「変われる。……あの二人のような位置にまでいけるかは、お前の努力次第だがな」

雪歩「こんな……ダメダメな私が……変わる……」

雪歩「………………」

真美「ゆきぴょ~ん?」オーイ

貴音「……今は静かに見守る方がよろしいかと」

P「…………」

雪歩「…………考えながら」

春香「?」

雪歩「考えながら……進んでみたいと思います」

雪歩「私、ダメダメだけど……でも、そう、変わりたいんです」

雪歩「…………プロデューサー、私を変えてくれるお手伝い、してもらえますか?」

P「……当たり前だろ」

P「……最初は、何がしたい?」

雪歩「えっと、その……まずはお芝居をしてみたいかな~、なんて///」エヘヘ

P「ああ、わかった。雪歩に似合いそうな役のオーディション、探してきてやるよ」

雪歩「プロデューサー、あと私、歌も……歌ってみたいです」

P「……任せとけ。雪歩みたいな可愛い曲調の、発注してやる」

P「いや……意外とクールなのも似合うかもな。確かデモにそんなのがあった気がする……調べてみよう」

P「……で、モデルは?」

雪歩「え、えっと……その……」

雪歩「撮影をするのって……」

P「……多分ほとんど男だ」

雪歩「ひ、ひーん!」アワワワ

P「自分を変えるんだろ、おい」

雪歩「ががが、頑張りますう…………」

貴音「……先は長そうですね」

真美「大丈夫かなあ」

春香「前途多難だね……」




雪歩編 おわり

流石にこれ以上自転車操業で書き続けてられないので、

このスレではこれで最後にします。長々とお付き合いいただきありがとうございました。

保守や支援をしてくださったみなさま、感謝致します。

他の子らのエピソード書き終わったら、また後日投下するんで

よければその時は、また応援していただければ幸いです。

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