P「でも小鳥さんって別に俺のことが好きなわけじゃないですよね」 (59)

小鳥「はぁ…」

P「どうしたんですか小鳥さん、ため息なんてついて」

小鳥「次の日曜に友達の結婚式があるんです」

P「へえ。めでたいことじゃないですか」

小鳥「…そりゃ当人にはおめでたいことでしょうけど…これでまた独身仲間が減るかと思うと…」

P「あー…そういうこと」

小鳥「私もなあ…早くいい人見つけないと…まぁ…近くに気になる人がいないじゃないですけどね…」チラッ

P「…前々から思ってたんですけど…小鳥さんってちょいちょい俺にアプローチしてくるじゃないですか」

小鳥「えっ!?そ、そうだったかしらぁ…?あはは…」

P「でも小鳥さんって別に俺のことが好きなわけじゃないですよね」

小鳥「え…」

P「さっさと結婚して独身じゃなくなりたいから手近なところに声かけてるだけですよね」

小鳥「べ、別に私は…そ、そういうつもりでプロデューサーさんにアピールしてるわけじゃ…」

P「この際だからハッキリ言いますけど、そういうの迷惑です。というか不愉快です。やめてもらえますか」

小鳥「そんな…そ、そんなこと…うぅ」

P「もしほんとに本気なら、そりゃ俺だってちゃんと考えますけど、
  結局小鳥さんいつもはぐらかすじゃないですか。
  つかず離れずを楽しんでるつもりなんでしょうが、
  学生じゃないんですから、そう言うの卒業しないと結婚なんて無理ですよ」

小鳥「そ…そこまで言わなくても…」

P「簡単に言うと、誠意がないんですよね。
  誠意がない人とは一緒に暮らすなんて無理なわけですよ。
  その点、例えば美希の方がよっぽど現実に実直ですから。
  あれで結構お金とか仕事のことも考えて、
  自分のしたいことと相手の負担を天秤に掛けて、
  それであれこれ計画したり、話したりしてくれてる分、
  妙な思わせぶりよりずっと説得力があるし、
  中学生だからってバカにしようとも思いません」

小鳥「…」

P「春香もそうですよ。
  自分なりに恋愛と家庭ってのを、どちらも意識してます。
  こないだの女性誌の春香の対談、読んだでしょう?
  『恋愛は夢で、家庭は現実。夢を現実にするには、当然努力が必要』って。
  これを言われたら、男の方もじゃあがんばろうってなりますよね。
  誠意がありますから。
  それを小鳥さんは、結婚はともかく家庭のことまで夢か何かだと勘違いしてませんか?」

小鳥「うぅ…」

P「とにかく、『こうしていればそのうち』みたいな浅はかな思わせぶりはやめてください。
  相手に失礼ですよ。
  もっと言うなら、相手にだけリスクを負わせようとするのは卑怯です。
  俺は同僚としては小鳥さんをすごく尊敬してますし、
  丁寧な仕事にもいつも感謝しています。
  けど、俺は公私ははっきり分けるので、そこのところはよろしくお願いします」

小鳥「は…は…ぃ…」

P「俺は漫画とかゲームのキャラクターじゃないんです。
  もちろん小鳥さんも。
  夢を見るなとは言いませんが、足元の現実もちゃんと見てください。
  そしたら、小鳥さんなら良い相手がすぐに見つかりますよ。
  そこは保証します」

小鳥「…」

律子「…それで、こんなになってると」

あずさ「えぇ…困りましたねぇ」

小鳥「うぅ…ううぅ…だって…だってぇ…
   恋愛の仕方なんてわかんないわよぉ…そんなのしたこともないのにぃ…」エグエグ

律子「まぁ、プロデューサー殿の言い方がきつすぎるのはともかく…」

あずさ「…プロデューサーさんの気持ちも、ねぇ」

小鳥「…え?」

律子「最初は結構、プロデューサー殿も乗り気だったし…」

あずさ「音無さんが終電なくなって、家まで送ってもらったのに、
    急に玄関でプロデューサーさんを追い返したのがやっぱり…」

小鳥「あ、あれは、あの時は部屋が散らかりまくってて…え?
   それがどうして…え?」

律子「どうして、ってそりゃ」

あずさ「プロデューサーさんも、その気だった、ってことですよねぇ」

小鳥「えええっ!?」ビクッ

律子「あの時はプロデューサー殿の方が凹んでましたよ」

あずさ「ちょうど、美希ちゃんと春香ちゃんが二人とも調子が悪くて、
    色々悩んでた時期でしたし…」

律子「たぶん、頼りたかったというか、甘えたかったというか」

あずさ「音無さんも、どんと来てください!って言ってましたしねぇ」

律子「それを、あんな風に、いろんな意味で無碍にされたら…」

あずさ「うーん…」

小鳥「そ、そんな…」

律子「まぁ、過ぎたことを言っても仕方ないですけど、
   小鳥さんはほんとにプロデューサー殿のこと好きなんですか?」

小鳥「えっ」

律子「いや、そこがわからないとどうしようもないですよ」

あずさ「男性として、プロデューサーさんがどうか、ってことですよねぇ」

小鳥「そ、それはその、あの、たぶん…すき、だと…」

律子「美希よりも?」

あずさ「春香ちゃんよりも?」

小鳥「…」

律子「…まずは、そこですね」

あずさ「ですねぇ」

春香「好き、ですか?」

小鳥「う、うん。
   春香ちゃんの言う『好き』って、どんな気持ちなのかなぁと」

春香「そうですねー…色々言い方はあると思いますけど、
   例えば『この人じゃなきゃダメ』とか…ちょっと違うかなぁ。
   うーん、『自分より、この人が大事』とかかなぁ」

小鳥「自分より…?」

春香「自分が苦しかったり、恥をかいたりしても、
   もしその人に嫌われても、それでもその人が良い、大事、みたいな、ですかね。
   でも、やっぱり嫌われたくない!とか。そんなのが混ざったやつと言いますか」

小鳥「…」

春香「その人のために、一番良いことをしたいと思うのが、
   好きってことじゃないですか?」

美希「ハニーのこと? もちろん大好きなの!」

小鳥「その、美希ちゃんの好きって、どんな気持ちなのかなぁって…」

美希「んー? どんな、って?」

小鳥「こう、具体的に、というか…」

美希「へんなこと聞くんだね、小鳥。小鳥はショートケーキ好きでしょ?」

小鳥「え、えぇ、まぁ」

美希「夜中にお腹が空いて、それでこっそり食べるショートケーキは?」

小鳥「うっ…も、もっと好き、です…」

美希「そーゆーことなの。その『もっと好き』のなかの、『一番好き』が大好きなの。
   理由とか、意味?って、どーでもよくって。
   ショートケーキが好きなのは『甘いから』って言われても、ミキはなんかへんだと思うな。
   甘いだけなら、蜂蜜とか練乳とかでいいでしょ?」

小鳥「えっと…?」

美希「ショートケーキが好きなのは、ショートケーキが好きな風に生まれてきたからなの。
   ミキがハニーを大好きなのも、ミキががハニーを大好きになるために生まれてきたからなんだよ、あはっ!」

小鳥「な、なるほど…」

春香『だから、私はアイドルとしてトップを目指してるんですよ。
   そうするのが、一番プロデューサーさんを喜ばせてあげられるから…
   後のことは、また後で考えますよ、えへへ』

美希『だから、ミキはトップアイドルになるの。
   ハニーの一番になるなら、まず皆の一番にならないとダメなの。
   だって、ハニーはプロデューサーのお仕事が大好きで、
   ミキを皆の一番にするのが、ハニーのお仕事なんだから。
   あ、もちろん春香には負けないの!』



律子「…それで、ますますわからなくなったと」

あずさ「あらあら」

小鳥「私って…なんにも考えずに生きてきたんですね…」ズーン

律子「まぁ、あの子達はちょっと特殊だから…」

あずさ「でも、春香ちゃんも美希ちゃんも、
    ほんとにプロデューサーさんのことが大好きなのねぇ」

小鳥「…律子さんとあずささんは、どうなんですか?」

律子「…」

あずさ「…」

小鳥「…?」

律子「私達は、その、アレですよ」

あずさ「すでに、ダメでしたと言うか…」

小鳥「?! えぇっ!」

律子「まぁ、それこそ小鳥さんのことを何回も相談されるぐらいですし?」

あずさ「相手にされてなかった、ですねぇ」

小鳥「なっ、え、えええ?!」

律子「あーあ…」

あずさ「はぁ…」

律子「まぁ…今はチャンスかもしれませんけどね?」

あずさ「そうですねぇ、プロデューサーさん的には失恋中ですし…」

小鳥「なっなななっ、なにがチャンス、し、失恋?!」

律子「凹んでるときに優しくされたら、ってやつですよ」

あずさ「春香ちゃんや美希ちゃんは、
    その辺を何となく察してアイドル活動を頑張ってるみたいですし」

小鳥「…あれ? ひょっとして私、…やらかしちゃいました…?」

律子「今更ですが、そうですね、はい」

あずさ「うまく行かないものなんですねぇ、誰も彼も」

小鳥「わ、…わたしはどうしたら…」

律子「そんなの、自分で考えてくださいよ。
   好きなら好き、嫌いなら嫌いで」

あずさ「はっきりしておいた方が、後々後悔はしないと思いますし」

小鳥「…」



小鳥「…」





小鳥「…」

ガチャッ、



P「ただいま戻りました。
  あ、小鳥さんだけですか?」

小鳥「はい、お疲れさまです、プロデューサーさん。
   どうでした? 2人のオーディションは」

P「いやぁ…どうにも俺の力不足でして。
  役は貰えましたが、ヒロイン、とまでは…」

小鳥「そうですか…
   …でも、プロデューサーさんの力不足なんてことはありませんよ。
   春香ちゃんも美希ちゃんも、全力を出し切れたって言ってましたし」

P「…だと、良いんですが」

小鳥「運の要素もあるでしょう?
   先方の好みの話ですよ。
   もし違う人なら、絶対2人で主役でしたよ」

P「ははは、そう言っていただけるとありがたいんですけどね。
  しかし、なんとも、…はぁ。
  会心の出来だったんですけどねぇ…」

小鳥「プロデューサーさん…」

P「…あぁ、なんか、辛気くさくなってすみませんね。
  もう、切り替えて次のことを考えないと…」

小鳥「…プロデューサーさん」

P「次は…違うタイプの企画で…あの会社とは、もう営業実績があるから…そうすれば」

小鳥「プロデューサーさん!」

P「うわっ! は、はい、どうしました?」

小鳥「今日はもう遅いんで、帰って休んでください」

P「い、いや、しかし」

小鳥「プロデューサーさんが頑張ってるのは皆知ってます。
   だから、皆プロデューサーさんのことを心配してるんですよ。
   体壊したらどうするんですか」

P「…そう、ですね」

小鳥「今ならまだ終電に間に合うでしょう?
   後片付けは私がやっておきますから」

P「…ありがとうございます」

小鳥「お疲れさまです、プロデューサーさん」ニコッ

P「…」

小鳥「…ん? どうかしましたか?」

P「あの…この間は、ひどいことを言ってしまって、本当にすみませんでした…」

小鳥「え? あ、あぁ! い、いえいえ、私もその、色々無神経で…ごめんなさい」

P「小鳥さんが謝ることじゃありませんよ、偉そうに言って、
  俺の方が子供だっただけですから…」

小鳥「…」

P「…」

小鳥「…だったら、…」

P「?」

小鳥「…子供だったら、甘えても良いですよ。
   疲れてるときも、あるでしょう?」

P「甘えても、って、…」

小鳥「私、考えたんです。
   プロデューサーさんのことを、私自身どう思ってるのか」

P「…」

小鳥「でも、それよりも、私がプロデューサーさんに、何をしてあげられるかを、
   それを考えた方が良いって…春香ちゃんや美希ちゃんや、
   律子さんやあずささんに教えて貰いました。

   …私は、皆みたいに、表に出て頑張ることはできません。
   だから、プロデューサーさんのことを、
   後ろから、ちょっとお手伝い出来たら、って思ったんです。
   プロデューサーさんに、頼りにして貰えるように、私なりに頑張ろうって」

P「小鳥さん…」

小鳥「だから、もし…その、プロデューサーさんが、…疲れてるなら…
   ひ、ひざまくら!…ぐらい、します、よ…?」

P「ぶっ…な、なんで膝枕なんですか…」

小鳥「だ、だって、前にプロデューサーさん、言ってたじゃないですか、
   私に膝枕してほしいって!」

P「いや、あれは酔ってて…と言うか、小鳥さん、嫌がってたじゃないですか」

小鳥「そりゃ、あの…余計な、お肉が…その…と、とにかく!
   もし、もしですよ? プロデューサーさんが、構わないなら、こんなのでよければ、…」

P「…小鳥さん、そんなこと言ったら、…今から頼みますよ?」

小鳥「い、いまからですか?
   で、でも、終電が…」

P「…」

小鳥「…?」

P「あー、もう、なんでこんな…」

小鳥「ぷ、プロデューサーさん…?」

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