赤沢「やっぱりメインヒロインの攻略は最後よね?」(148)


~赤沢の家~


赤沢『……』

恒一『……』

赤沢の部屋に通され、淹れてもらったコーヒーに口をつけている。
が…

赤沢『……』

恒一『……』

会話がない。
用があるはずでは…?






赤沢『……ふぅ』

飲み終わったらしい。
カップをトレイに載せ、赤沢がこちらに近づいてくる。

……?

赤沢『…ん』

唇が重なった。


恒一『……』

恒一『ハッ――』

頭がついていかない。

赤沢『どうしたの?』クスッ

恒一『え、い、今……何したの?』

赤沢『キスした』

恒一『キ…!? あ、あ、赤沢さん、まだ熱あるんじゃ――』

赤沢『ふふっ…』

首に腕を回され、互いの額がコツリとぶつかる。


赤沢『――どう? 熱、ある?』

恒一(……わからないよ)

恒一『赤沢さ――』

赤沢『好き』

恒一『えっ?』

赤沢『私は、恒一くんが好き』

体を離し、まっすぐにこちらを見てくる。


赤沢『転校して来たときからずっと気になってた』

赤沢『あなたと話すとき、いつもドキドキしてた』

赤沢『休みの日だって、いつの間にか…あなたのことを、考えてた』

赤沢『背負って家まで送ってくれて……すごく…すごく嬉しかった』

恒一『……』

赤沢『あなたが…好き――』

いつのまにか、赤沢から余裕がなくなっていた。

赤沢『だから……あなたの…か、カノジョに……してくださぃ…』

履いているスカートを握り締めながら、祈るように赤沢が云った。


恒一『……』

赤沢『あ、あの…』

恒一『……』

赤沢『なんか……言ってよ…っ』

恒一『ごめん』

赤沢『ぇ…』

瞬時に赤沢の表情に絶望が広がっていく。

恒一『ああ! 違うんだ。その――びっくりして、固まっちゃって…』

赤沢『お……おどかさないでよ!』グスッ

恒一『あはは…』


赤沢をやさしく抱きしめた。

赤沢『っ!』

恒一『赤沢さんにそんな風に思われていたなんて、ちょっと感動しちゃった』

意外にもすっぽりと収まってしまった。

赤沢『かんどう……?』

恒一『うん。――ぼくからも、お願いするね』

恒一『赤沢さん。ぼくの、カノジョになってください』


赤沢『…………うっ』 

恒一『?』

赤沢『うぅっ…ひぐっ』

恒一『あ、赤沢さん?』

赤沢『ぅ…うぇぇええええん!!』ギュー

恒一『どど、どうしたの!?』

赤沢『あ、あり……がとう……。ありがとうっ。ひっく…』

恒一『……』

ナデナデ

赤沢が落ち着くまでそばにいた。






―夏休み某日―


赤沢『恒一くん、これは?』

恒一『ん? ああ。そこはこの次の文に……』

ぼくと同じ高校へ行きたいという彼女のため、夏休みだというのに、ぼくの部屋で二人そろって勉強中だ。
まあ、これが正しい受験生の姿なのだろうが……。





赤沢『……どう?』

恒一『うん、できてるよ』

赤沢『やった。じゃあ…ん』

恒一『ん……』

1問正解する度にキスを要求されるのは、どうなんだろう…。


赤沢『じゃあ次!』

でも、彼女が張り切っているし、ぼくも嬉しいから、これはこれで……。

恒一『うん、正解』

赤沢『ふふ。はい、恒一くん♪』

彼女に追いつかれないように、ぼくも頑張らないと。



―赤沢END―


――――――


赤沢「ふふ…ふふふふふ」ニヤニヤ

恒一「赤沢さん、もういいよね?」

赤沢「もう一回」

恒一「もう一回って――今ので5回目だよ?」

赤沢「……そうだっけ」

恒一「そうだよ」


恒一(呼ばれてきてみれば……)

――赤沢「招集かけたんだけど、恒一くん以外みんな急用が出来たらしいの」

恒一(なんでみんな今日に限って……。というか、本当なのかな?)

赤沢「じゃあ名残惜しいけど、この辺にしておきましょうか」モゾモゾ

恒一(やたら近いし、この状態で本人を攻略って……)

赤沢「電源ってこれだっけ?」

恒一「……」ジー

赤沢「恒一くん?」


恒一(こんな薄着で……)ゴクッ

赤沢「恒一くん!」

恒一「えっ。……ああ、ごめん。なに?」

赤沢「……」ジッ

恒一「っ…。ど、どうしたの」

赤沢「クスッ。恒一くんこそ、どうしたの?」

恒一「ぼく……?」

赤沢「顔、赤いけど」

恒一「え?」サッ


ズイッ

赤沢「興奮しちゃったの?」

恒一「っ! (耳元で――)」

赤沢「じゃあ……ゲームと同じこと、してみよっか?」

恒一(そんなこと言われたら…)

赤沢「今の私の好感度は10です」

赤沢「今日はどう過ごそうか?」

恒一「ゴクリ…」


赤沢「1、赤沢と過ごす。2、赤沢と過ごす。3、赤沢と過ごす」

赤沢「――これ以外はありません」

恒一「ぼ、ぼくは……」

はむっ

恒一「うわぁああ!」ビクゥ!

赤沢「……」

恒一「い、いいい今っ! みみっ!」

赤沢「……」プルプル

恒一「……赤沢さん?」

赤沢「……ぷっ」

赤沢「あははははは! 『うわぁああ!』って」


恒一「な――!?」

赤沢「こっちの恒一くんも耳よわいんだ?」

恒一「ぼ……ぼくをからかったの?」

赤沢「私を最後に攻略した罰だと思いなさい」

恒一「うう…ぼくの罪はそんなに重いのか」

赤沢「重いわよ」クスッ

恒一「はぁ…。少し期待したのに…」ボソッ

赤沢「ん?」

恒一「なんでもないよ」


赤沢「ふふ。じゃあ片付けましょうか」

恒一「はいはい」

ゴソゴソ…

恒一「コレ、勅使河原にあげるんだっけ」

赤沢「そ。いくら勅使河原のとはいえ、壊しちゃったのは私だし。安いものでもないでしょ?」

恒一「でも、ここまで取りに来させるんだよね?」

赤沢「とうぜん」

恒一「かわいそうに…」

赤沢「どこが?」






赤沢「そういえば――恒一くんって、実際にはどんな人が好みなの?」

恒一「え?」

赤沢「ほら、ゲームの中では多々良さんに訊かれてたじゃない?」

恒一「そういえば……そうだったね」

赤沢「で、どんな人なの?」

恒一「うーん…。どんな、か」

赤沢「…」ジー


恒一(……さっきの仕返ししてやろうかな)

恒一「そうだね」コホンッ

赤沢「……」

恒一「性格はちょっとキツイ――じゃなくて、強気な子がいいかな」

赤沢「ふーん」

恒一「責任感が強いっていうのも魅力的だよなぁ」

赤沢「なるほど…」

恒一「それで、やっぱり胸は大きいほうがうれしいね」

赤沢「そ、そう?」グイッ

恒一「髪は長いといいな。ツインテールっていうのかな、ああいう髪型が似合ったりするといいかも」

赤沢「へ、へえ…」ファサッ


恒一「あとは……コーヒーが好きだったり、ね?」

赤沢「……」

恒一「赤沢さん、どうしたの? 顔赤いけど」

赤沢「あ、あの……恒一くん…」

恒一「うん?」

赤沢「それって……わ、私だったりするの?」モジモジ

恒一「……」ジー

赤沢「こ、恒一くん…」


恒一「……くっ」

赤沢「?」

恒一「くくっ……」

赤沢「……ハッ。ま、まさか!」

恒一「あははははは! 赤沢さん顔真っ赤だよ?」

赤沢「~~~っ!」

恒一「『私だったりするの?』」

赤沢「!?」

恒一「ははははっ!」

赤沢「このっ!」


ワァアア! ゴメンアカザワサン!

オトナシクシナサイ!

オ、オチツイテ!

ウルサイ!





恒一「……なんでぼく、こっちでも押し倒されるんだろ?」

赤沢「恒一くんが弱いからじゃない?」

恒一「ははは…。そうだね」


赤沢「……」

恒一「……」

恒一「赤沢さん。そろそろ降りてくれないかな?」

赤沢「……」ジー

恒一「赤沢さん?」

赤沢「私、好きな人がいるの」

恒一「えっ…そ、そうなんだ?」


赤沢「その人は都会から引っ越してきた人でね、いきなり理不尽な<現象>に巻き込まれちゃったの」

赤沢「そして、いきなり理不尽な扱いを受けた。――私の指示で」

恒一「っ…」

赤沢「だけど、その人は私を責めなかった。仕方ないことだって言ってくれた」

赤沢「全てを知っても逃げ出さないで、一緒になって<現象>を止めようと動いてくれて」

恒一「……」

赤沢「――誰だと思う?」

恒一「は…はは。赤沢さん芸がないね、ぼくと同じ事したって――」

チュッ

赤沢「あなたよ」


恒一「……いっ……いま」

赤沢「ふふ、また真っ赤になってる」

恒一「……今度はお互い様だよ」ドキドキ

赤沢「そう?」

ギュウゥ

恒一「あっ(やわらかい…)」


赤沢「返事はまだいい。まだダメなのは、なんとなくわかってるから」

赤沢「でも、知っておいて? 私はあなたが好きなの。あなたと一緒にいるためなら何でもする」

恒一「何でも?」

赤沢「うん。――なんでも」

恒一「なんでも……」

赤沢「まっ、そういうことわけで、これからゆっくり堕としてあげから――」

赤沢「覚悟しときなさい♪」

恒一「……」

恒一(すでにちょっと、マズイかも…)ドキドキ


―数日後―


~第二図書室~


恒一「千曳さん!」ガラッ

千曳「ん、榊原くんか…。ゲームの感想かな?」

恒一「え? ああ、いえ、感想はあとで云います。先に聞いてもらいたいことが…」

千曳「何かあったのかい?」

恒一「はい。その、千曳さんからもらったゲームをやってみたんですけど、どうも変なんです」

千曳「プレイしたのかい?」

恒一「見崎と赤沢さんに見られながら、ですけど…」

千曳「それは……大変だっただろう」

恒一「大変でした…」


千曳「無事で何よりだ」

恒一「ありがとうございます…」

千曳「それで、変――とは?」

恒一「ああ、はい。あのゲームに出てきたみんなが変なんです」

千曳「みんなが……。具体的には?」

恒一「まず、多々良さんに監禁されかけました」

千曳「……」


恒一「小椋さんは会う度に手を握ってきたり、とにかく密着してきます」

千曳「ほう…」

恒一「赤沢さんなんて、ぼくと一緒にいるために同じ高校へいくって言って、
   毎日勉強を教わりに家まで来るんです」

千曳「ふむ。――しかし、理由はどうあれ、学生が勉学に励むのは良いことだと思うのだが」

恒一「男子高なんですよ…」

千曳「……彼女はどうすると?」

恒一「男装して入るんだ――と(確かになんでもするって言ってたけど…)」

千曳「なるほど。……そういうのもあるのか」

恒一「はい?」

千曳「いや、こちらの話だ。――それで、まだあるのかい?」


恒一「ああ…いえ。とにかく、そんな感じなんです」

千曳「そうか。……たしかに、変だね」

恒一「はい。それで、我ながら馬鹿げた考えだとは思うんですけど――」

恒一「ぼくがあのゲームをやったのが原因で、こんなことになっているんじゃないかなっ、て……」

千曳「と、いうと?」

恒一「ゲームの中の出来事が、現実のみんなに影響を与えたのかも――と」


千曳「……おそらくそうだろう」

恒一「はい……って、ええぇ!?」

千曳「実在するクラス――実在する人物を使ってしまったことで、
   三年三組という枠組みにおいて、ゲームと現実の世界が曖昧になってしまったのだろう」

恒一「そ、そんな無茶苦茶なことって…」

千曳「しかたないさ、これはそういう<現象>なんだよ。――すまない。私のせいだ」

恒一「何回やらかせば気が済むんですか!」


千曳「――というのは冗談だ」

恒一「え?」

千曳「実は、あのゲームのヒロインの子達にも、きみと同じものを配った」

恒一「ゲームをですか?」

千曳「そうだ。無断で出演してもらうのは少し心苦しかったからね。
   見崎くんと赤沢くんにも渡そうと思っていたのだが、つかまらなかった。
   結局、あの二人には渡せずにいたんだが――」

恒一「そ、それで…」

千曳「おそらく、彼女たちもプレイしたのだろう。自分たちのルートを」

恒一「……まさか」


千曳「少しゲームに影響されてしまったのかもしれない。
    赤沢くんは、きみがゲームをプレイしているのを見ていたんだね?」

恒一「はい…」

千曳「となると、やはりそういうことだろう。じつはきみの考えも、あながち間違いではなかったんだ」

恒一(少しってレベルじゃないような…)

千曳「しかし実際には、きみの考えるような不思議な現象は起こっていないだろう。
    といっても、この世には不思議なことなど何もないのだよ、関口君」

恒一「榊原です」


千曳「とにかく、そっちの問題は榊原くんの方で頑張ってくれ」

恒一「そ、そんな――」

恒一(……ん? でもこれって、やっぱり千曳さんのせいなんじゃ)

千曳「ところで――現在、あれの続編を作成中なのだが」

恒一「なに嵌ってるんですか!」

千曳「続編では桜木くんや水野くんのお姉さんも攻略対称に追加する予定だ」

恒一「ちょっと切ないですね!」

千曳「さらに隠しキャラとして禁断の三神先生を予定している」

恒一「隠しキャラ言っちゃうんですか…」


千曳「そして、舞台は夏休みだ。海や合宿や夏祭りなど、イベントを大量に投入する」

恒一「――そうですか」

千曳「期待していてくれ」

恒一「はい…」

千曳「フッ。――と、まあ、そいういうわけだから……」ゴソゴソ

千曳「遅くなったが、見崎くんも受け取ってくれ」スッ

鳴「ありがとうございます」

恒一「……」

恒一「え!?」


鳴「?」

恒一「い……いつからいたの?」

鳴「今朝から」

恒一「……ここに?」

鳴「ううん。榊原くんの後ろに」

恒一「……」

ガシィ!

恒一「!!」

鳴「浮気……してるよね?」

恒一「……」ダラダラ


鳴「私の家、いこ?」

恒一(見崎、きみもなのか?)

パシッ

恒一「?」

鳴「?」

赤沢「させると思う?」

恒一「あ、赤沢さん(もいつの間に…)」

鳴「ムッ…」

赤沢「フフンッ」

千曳「なるほど、こういう修羅場もあったか……。いそがしくなるな」

恒一「張り切らないでください…」


千曳「ところで…」

千曳「こっちの――現実の榊原くんは、誰ENDを目指すのかな?」

恒一「……」チラッ

鳴「!」

赤沢「!」

恒一「……おしえません」



―Another END―

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