式神女「居ますか、居るんでしょう、居ますね」若殿「居ないよ」(20)

式女「居るじゃないですか」

若殿「居ないって」

式女「では此処に寝ている殿と思わしき人影は」

若殿「夢、もしくは別人」

式女「………」ギュリィッ

若殿「おあ痛てえぇぇぇぇ!?」ビクゥンッ

式女「夢ではない…となると殿を騙る曲者か」チャキッ

若殿「待て、話せば分かる」

式女「曲者と話す口は持っていない」ザッ

若殿「俺が悪かった、俺が悪かったから」

式女「取り敢えず曲者は斬るに限るとの家訓が」ザッ

若殿「考え直せ、お前は私の家臣…」

式女「問答無用!」ズバシュ

若殿「おんぎゃぁぁぁぁ……」

リリリ…  リリリリ…

―――――

若殿「なあ」

式女「はい」

若殿「俺はお前の事をそれなりに評価してるよ」

式女「ありがたいお言葉」

若殿「なあ」

式女「はい」

若殿「それでも殿をいきなりバッサリしちまう馬鹿は別だぞ?」

式女「申し訳ありません、反省は多分しています」

若殿「怒ってるんだからな?察すること出来るよな?」

式女「察しているからですよ」ニコッ

若殿「そのいい笑顔やめろ」

式女「これが地顔なもので」ニコッ

若殿「平然と嘘をつくな嘘を」

若殿「いやね、結構寛容だぞこれでも?」

式女「はい」

若殿「意外と厳しい殿って評価あるんだぞ?」

式女「そうですね、耳にしております」

若殿「それでも普通に許してるわけだけど」

式女「はい」

若殿「分かってる?」

式女「無論ですよ」

若殿「そんな風には見えんがな」

式女「…これでも私は大人しい女で通ってるんですよ?」

若殿「……お前が?」

式女「ええ」

式女「殿の最も身近にいる存在が粗暴極まりないだなんてほら、洒落になりませんし」

若殿「…お前が偶に何を考えているかさっぱり分からなくなる」

式女「何も考えていないとしたら?」

若殿「それはそれで、あるんじゃないかな」

式女「まあ無常…と、そろそろですね」

若殿「ああ、また仕事漬けか」

式女「殿なんですから大人しくして下さい」

若殿「へーへー、わーりましたわーりました…」

――――――

今は昔

群雄割拠、各々の国が睨みあい侵略し合う時代

幾数多の戦いがあり、その度に国が分裂し、融合する

『式神国』では行方不明になった当主の代わりに新当主が頭領となった

それが丁度一年前の話である

―――――

若殿「ったく…親父殿がもうちょい生きてくれりゃ楽になったもんだが」

式女「殿」

若殿「…冗談だ」

式女「多忙を極めるのは分かりますが…言って良い事と悪い事が」

若殿「分かっている…が、だ」

式女「はい?」

若殿「…いや、まだいい」

式女「ふむ」

式女「他国に比べ城内は統治こそされていますが」

若殿「知っている、それに気づかぬ様ならとっくのとうに川底に沈んでいるわ」

式女「…未だ乗っ取りを計画しているとの噂もちらほらとありますが…」

若殿「警戒はしている」

式女「しかし、ただの噂ですが」

若殿「火の無い所に油は立たぬ、噂があるからには何らかの理由があるだろう」

式女「万全は尽くしますがしかし、警戒を怠りませんよう」

若殿「こちとら死にたくはないからな」

式女「殿は」

若殿「うん?」

式女「時折、死にたがっているように見えます」

若殿「……」

式女「無礼とは思いますが、私とて殿が心配なのです」

若殿「お前に嘘はつけんな」

式女「…殿」

若殿「死にたいと思ったことは無いが、正確には『何も出来ぬまま死にたくはない』だな」

式女「何かを成せれば死んでもいいと?」

若殿「……着くぞ」

式女「……」

―――――

ガラァンッ

「頭領のご帰還である!」

「お帰りなさいませ、殿」

「若!」

若殿「爺、爺はおるか」

爺「ここに」シャカ

若殿「塩の国に送った使者は」

爺「ただいま帰りましてに御座います、報告は」

若殿「後で直接聞く、寄越せ」

爺「はっ」

式女(城に返った途端この調子だから、この人は分からない)

式女(簡単に自己紹介させて戴こう、いつかの為の練習だ)

式女(私は、”人ではない”…性格には式神、と呼ばれる存在だ)

式女(代々この国の当主家を護ってきた故に式神国と呼ばれる所以となった)

式女(そして一人に憑き一人…いや一体存在する我らだが、正直その出自は皆目わかっていない)

式女(恥ずかしい事だが私とて私がなぜ生まれ、なぜこの人を護っているのかさっぱり分からない)

式女(ただ”それが定め”だと受け入れるのも式神と言うものなのかもしれないが…)

式女(やはり、自らがどういう由来か分からぬと言うのは気になる)

式女(考えようにもどうにもならないのだが…)ハァ

若殿「おい、さっさと行くぞ」

式女「あ、ええ」タッタッ

若殿「ったくよー…塩の国のジジイは面倒なんだよ…」

式女(私の主、式神国第19代目頭首は分からない人だ)

「若!お元気そうで何より!」

若殿「お前も油断するなよ、病魔は気からと言うからな」

「はっ!」

式女(やる気ない人かと思えばきゅうにきりっとしたり、頭がキレていたり鈍だったり)

若殿「あー…お前やってくれね?」

式女「いやです」

若殿「だよなー…」

式女(本当に分からない)

パソコン壊れてどうしようもならなくなりました
スマホでしばらく投稿しますがペース劇落ちになります
大変申し訳ぬぇ

若殿「さて」

式女「はて」

バタン

若殿「仕事か」

式女「仕事をして下さい」

若殿「とはいえなあ、お前がやった方が早い」

式女「ええっ」

若殿「だってお前は俺より有能だし」

式女「確かにまあ、式は人間の出来ない事が出来ますが…」

若殿「まあ俺の出来ない事をやるために式が居るってのは親父殿に聞いたが」

式女「大層な記憶力、感服しました」

若殿「馬鹿にするのはやめーや」

式女「確かに私達は人の身を外れた身体能力、及び知能を持っております」

若殿「万が一人知の及ばない事態が在った時にそれから守るため、だな」

式女「ええ、ですがそれはあくまでも人知の及ばない事態が…」

若殿「会った時で、平常時には使うべきではない」

式女「ええそうです」

若殿「馬鹿か」

式女「何です藪から棒に」

若殿「お前は頭は良いのにこういう時は馬鹿だ」

式女「捻りますよ?」

若殿「物騒を言うな」

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