妹「かまいたちのなく夜」兄「えっ?」(328)

妹「犯人は、かまいたちだけが知っています」

兄「かまいたちって、どんな声で鳴くの?」

妹「推測にすぎませんが、みゃーみゃーとかじゃないでしょうか」

兄「あ、そうなんだ」

妹「兄さん兄さん、私のパンツが無くなったんです」

兄「あ、そうなんだ。ミステリーだねぇ」

妹「兄さん、ファミコンは一時中止です」ブチ

兄「オートセーブとかある訳ないのは無論知ってるよな?」

妹「承知の上です」




妹「兄さん、私の下着がですね」

兄「……」ポリポリ

妹「話聞いてくれてますか?」

兄「聞いてるよ」

妹「その割には態度が随分です」

兄「どーせ犯人は俺だっていうんだろ」

妹「私の灰色の脳細胞が兄さんが犯人だと告げています」

兄「そーなんだ」

妹「む、むむむ。何ですかっ!」

兄「いや、だってさぁ……」

妹「兄さんは今現在、重要参考人といったポジションに居ます。対応は注意したほうがいいですよ?」

兄「一度でも俺が犯人だったことがあったか?」

妹「今までなかったからといってこれからもないとは限りません」

兄「お、今日はジャンプの発売日だったかぁ」

妹「兄さんっ!」

妹「こ、今回は確たる証拠を握っているんですよ?」

兄「ふーん、一応聞こうか」

妹「ふふ、ようやく聞く気になったみたいですね」

兄「あ、その前に」

妹「なんですか?」

兄「なくなった下着ってこの白のパンツでいいんだよな」ヒラヒラ

妹「あぅっ……」

兄「苦虫を噛み潰したような顔をしてどうした」

妹「自首すれば刑が軽くなるのを見越して自供ですか……見苦しいですよ」

兄「お前が言うなよ……」

妹「こ、今回は私がお風呂で脱いだのを盗まれたようです……」

兄「それがなんでか知らないけど俺のベッドの下においてあったと」

妹「……それは兄さんが盗んだからですよね。家の中で暇をもてあました兄さんの凶行です」

兄「お前が仕込んだんだろ」

妹「何を根拠に」

兄「しかしこれ、雑巾かと思ってあやうく捨てるところだったじゃないか」

妹「そ、そんなに汚れてないですっ!買ったばかりでまだはいてないんですからっ!」

兄「語るに落ちたな」

妹「あ……」

兄「なぁ、自作自演してまで犯罪を作り出すなよ」

妹「……だって、最近退屈なんです。兄さんほどじゃないですけど」

兄「そんなそんな事件がいっつも転がってるわけないだろ」

妹「兄さんは毎日部屋を転がってるのに、事件は転がってないなんてっ」

兄「さっきからサラッと傷つくことを連呼しやがって」

妹「ごっこでもいいから推理しないと死んでしまいます」

兄「それは困ったなぁ」

妹「それかもしくは、兄さんがどこかに遊びに連れてってくれるとか」チラ

兄「駄目だ、金がない」

妹「はぁ……ミステリーもない、お金も無い、兄さんに仕事も甲斐性も無いなんて」

兄「だんだん腹が立ってきたぞ、おい」

妹「……もういいです。下着を返してください」

兄「はいはい。もうすんなよな」

妹「ところでこれ、可愛いと思いませんか?」

兄「え……うんまぁなぁ」

妹「履いてるところが見たいと思いませんか?」

兄「いや、いいよ」

妹「なんか反応が冷たいですよ、兄さん」

兄「職探しで疲れてるんだ」

妹「それはいけませんね。一緒にお風呂にでも入って疲れをいやしてあげましょうか?」

兄「余計疲れそうだし、いいや」

妹「むぅううううううっ!!つまらないですっ!!兄さんのバカッ!!」バァン

兄「あ、ちょっと……」

兄「……」

兄「ちょっとつれなかったかなぁ……ちっ」

~翌日~

妹友「うっすうっすー」

妹「あ、妹友ちゃん……おはようございます」

妹友「なによー、元気ないじゃん」

妹「ちょっと面白くないことがあったんです」

妹友「ふむふむ」

妹「同時に面白いことが何もないんですっ」

妹友「どうせお兄さんがらみでしょー、フヒヒ」

妹「そ、そうなんですけど」

妹友「相変わらずラブラブだねぇ」

妹「ラブがあるのは私だけですよ」

妹友「お兄さん、相変わらずニートなの?」

妹「ですよ」

妹友「あ、でもこの間はお世話になったね。ありがとー」

妹「いえ、大してお役にも立てず」

妹友「あんときのお兄さん、格好良かったよねー」

妹「それに引き換え、今の兄さんは……はぁ」

妹友「一般的に見れば今もあの時も大差ないとおもうけどー」

妹「そ、そんなことないですっ!今はあの時よりダルンダルンに弛んでますから」

妹友「ふーん、私には良くわかんないけど」

妹「私は日々、兄さんの観察をしてますから」

妹友「あ、それよりさー。今度の連休は暇?」

妹「特に予定は無いですけど」

妹友「私の叔父さんが山でペンションを経営してるんだけどー」

妹「ふーん、おしゃれですね」

妹友「観光シーズン終わって暇だから、友達連れて遊びに来たらって」

妹「え?いいんですか?」

妹友「うん、一緒にいかない?お金は電車賃以外かかんないよー」

妹「そ、それはちょっと楽しそうですね」

妹友「ふふーん、探偵ごっこもいいけど、たまにはこういうのもいいっしょ」

妹「はいっ!さっそく兄さんにも連絡を」ピポパ

妹友「ストップ」

妹「え?」

妹友「お兄さんは今回、ナシ」

妹「ええー!ど、どうしてですかっ」

妹友「えーとね、申し訳ないんだけどあと二人までって言われてるからさー」

妹「あ……そうなんですか」

妹友「そそ、だから申し訳ないんだけど」

妹「そういうことなら私は今回辞退させていただきま」

妹友「まさか、お兄さんと二日三日会えないからって断らないよねー?」

妹「うっ……で、でも」

妹友「たまには少し距離を置いてみるのもありかもよー?」

妹「距離……ですか」

妹友「そ、妹ちゃんの大事さが身に染みてわかるかもよ」

妹「むむむ」

妹友「あのお兄さん、妹ちゃんがいなくなっちゃったらどうなっちゃうんだろうなー」

妹「むむむ」

妹友「寂しくなって、沢山メールくれるかもしれないよ?」

妹「む、むむむ……それはすごく嬉しいですけど」

妹友「もしかしたら耐え切れなくて会いにきたりとか」

妹「そ、そこまでしてくれるでしょうか……えへへ」

妹友「でも、そこで妹ちゃんは会ってあげないの」

妹「ど、どうしてですかぁっ!なんで私がそんなことをっ!」ユサユサ

妹友「ちょ、ちょっと落ち着いて……ギバーップ!ギバーップ!!」

妹「あ、ご、ごめんなさい」

妹友「想像してみなよー、お兄さんが来て」

妹「は、はい……」

妹友「妹ちゃんがとりあわないでスゴスゴ帰って行くお兄さんの後ろ姿」

妹「……(妄想中)」

妹友「寂しそうな後姿にキュンとしない?」

妹「はぅっ……」キュン

妹友「したね」

妹「は、はい……しましたっ!すごくしましたっ!」キュンキュン

妹友「ウヒヒ……こうして人は皆Sに目覚めていくんだわ……」

妹「何かいいました?」

妹友「何もー」

妹「私、行きますっ!兄さんを置いていきますから!」

妹友「ラジャー」

~自宅~

妹「ただいまー……」

妹「あれ、兄さんの靴がないです」

妹「ニートのくせに、どこをほっつき歩いてるんでしょうか……まぁいいです」

妹「……」

妹「お泊りの準備でもしますか」

妹「二日くらいであれば、そんなに荷物はいらないと思いますが」

~妹・部屋~

妹「えーと、荷物はこれとこれと……」ゴソゴソ

妹「兄さんの写真と、兄さんのパンツを旅のお守りに……」ゴソゴソ

妹「あとは……いらないと思いますが一応探偵7つ道具を」ゴソゴソ

妹「もし何か事件が起きたら、頼れるのは兄さんではなく、この7つ道具だけということですね……ふぅ」

妹「だいたいこんなものでしょうか」

兄「おーい」コンコン

妹「に、兄さん?何ですか?」

兄「ちょっといいかな?」

妹「なんですか?私に何か用でも?」ツンツン

兄「やけにつんけんしてるじゃないか。機嫌悪いの?」

妹「別に、そんなことないですから」

兄「さては昨日冷たくあしらったのを根にもってるな?」

妹「そ、そんなことないですからっ」

兄「そうか、それならいいんだけどさ」

妹「で、用も無いのに乙女の部屋に入ってきたんですか?」

兄「お前は好き勝手に俺の部屋に入ってくるくせに……」

妹「女子の部屋は秘密がいっぱいなんですよ」

兄「ふーん。あ、それよりこれ買ってきたからやるよ」コト

妹「プリン……?」

兄「お前、この銘柄のプリン大好きだったろ」

妹「ど、どうして知ってるんですか?」

兄「いや、前になくなったとか騒いで俺に二つ買わせたじゃないか」

妹「懐かしいですね」

兄「食べるだろ?」

妹「い、いらないです」

兄「本当に?」

妹「本当に本当ですっ!兄さんの施しはうけません」

兄「あれま……」

妹「……食べないですけど、そこに置いておいてください。鑑賞用プリンにしますから」

兄「いくらこの季節でも腐るぞ」

兄「ところで、なんなんだその荷物」

妹「よくぞ聞いてくれました、兄さん」ドヤッ

兄「なんだなんだ一体……」

妹「私はですね、次の連休に泊りがけでおでかけしますから」

兄「ふーん、楽しそうでいいなぁ」

妹「それだけですか?」

兄「何がだよ……」

妹「い、妹友ちゃんと二人で行ってきますからっ!兄さんは連れて行けないですよっ!」

兄「そうか、うらやましいな……気をつけて行って来いよ」

妹「むむむ」

妹「……」ジト

兄「な、何だよその視線は」

妹「本当は私と一緒に行きたいんですよね?」

兄「いや、だって無理だろ?二人でいくとか行ってたじゃないか」

妹「ただで泊まれるのは私と妹友ちゃんだけみたいですけどね」

兄「ほらみろ」

妹「兄さんが行きたいというのであれば、宿代くらいなら貸してあげますよ?」

兄「えっ。お前金持ちだな」

妹「ちゃんとお小遣いもお年玉も貯金してますから」

兄「うーん……」

妹「さぁさぁ兄さん、決断するなら今ですよっ」

兄「悪いがやっぱり無理だなぁ」

妹「ええー!」

兄「だって、次の連休だろ?」

妹「毎日連休の兄さんには意味を成さない言葉ですけど」

兄「フッフフ、とうとう仕事を見つけてきたんだぞ」

妹「自宅警備員は仕事じゃありません」

兄「ちげーよ!駅前のな……」

妹「今すぐ辞職してきてください」

兄「なんてこと言うんだ」

妹「兄さんが仕事だなんて生意気ですっ!兄さんはずっと家にいればいいんですー!」

兄「あのな、俺の肩身の狭さも知らずに……ごはんのおかわりもしにくいんだぞ」

兄「とにかく、ようやく見つけた仕事なんだ。今回はついていけないぞ」

妹「……」

兄「まぁ、二人で楽しんできちゃいなYO」

妹「……」

兄「おみやげ頼んだぞーっておい、何か喋ってくれ」

妹「に、兄さんのバカ……じゃなくて兄さんの連続レイプ魔ーーッ!」

兄「物騒すぎるだろ!」

母「何ですって?あんたついにやったの!」ガチャ

祖母「おやおやー、それはいけないよー」ガチャ

父「どうだったんだ!やはり罪悪感がパないか?」ガチャ

兄「お前ら暇だな!何してんだよッ」

妹「みんな出てってくださーいっ!」

~列車~

ガタタン ゴトトン

妹「……ふぅ」

妹友「なんで窓の外見てためいきついてるのー」

妹「何でもないですよ」

妹友「お兄さんとケンカでもしたんでしょー」

妹「べ、別にケンカというほどでは無いですけど」

妹友「うそばっかり。元気ないよー」

妹「私は元気ですよっ!この通りです」

妹友「お兄さんはなんか言ってた?」

妹「別に何も言ってなかったです。気をつけて行って来いよって」

妹友「行かないでとか、つれてけとか行ってほしかったんでしょ」

妹「うっ……まぁそうですけど……」

妹友「なんかごめんね、こっちの都合でさ」

妹「いいですよ。こうなったら思う存分堪能しますから」

妹友「うんうん、その意気その意気」

妹「まだつかないんですか?」

妹友「えっとね、次の駅で降りるから」

妹「わかりました……わぁ、外の景色が綺麗ですね」

~山道~

妹「け、結構歩くんですね……」

妹友「や、山奥のペンションだからね……はぁはぁ」

妹「車道もないようなんですけど」

妹友「なんか叔父さんの趣味でね……秘境みたいな扱いなんだ」

妹「こ、これでお客さん来るんですか?」

妹友「料理が結構人気あってね、登山中の人が食事のために来ることも多いみたい」

妹「しかしこれは……なかなかきついです」

妹友「もう少しだからがんばれー!」

妹「ふふ、兄さんだったらきっと途中でダウンしてますね……はぁはぁ」

妹友「熊がいるかもしれないから気をつけてね」

妹「どう気をつければいいんですかっ!」

妹友「あはは、こころの準備ー」

~ペンション~

妹友「着いたよー!」

妹「や、やっとですね」

妹友「ここが叔父さんの経営してるペンションなんだけど」

妹「すっごく素敵ですね。景色も綺麗だし……」

妹友「ま、歩きじゃないと来にくいってのが難点だよね」

妹「どうやって建てたんですかね……」

妹友「こーいうのは資材をヘリとかで運ぶらしいよ」

妹「あ、なるほど」

叔父「フヒヒ、いらっしゃい……」

妹「こ、こんにちわ。お世話になります」

妹友「これ、私の友達だよー!久しぶりだね叔父さん」

叔父「フヒヒ、そうだねぇ、食べちゃいたいくらいカワイイねぇ」

妹「な、なんか変わった人ですね……」ヒソヒソ

妹友「変わりもんじゃなきゃこんなとこで商売なんかしないって……悪い人じゃないから」

叔父「フヒヒ」

妹「その笑い方だけは妹友ちゃんに似てますね」

妹友「フヒヒ、そうかなぁ」

叔父「山道を歩いてきて疲れただろうから、入って休みなさい」

妹「はい」

妹友「お部屋はいつもの部屋でいいの?」

叔父「あぁ、鍵はフロントにあるから勝手に持ってっていいぞ」

妹「な、なんかいい感じにユルいですね」

妹友「言ったでしょ、悪い人じゃないって」

叔父「フヒヒ、二人のことを中で待ってる人がいるよ」

妹「えっ……」

妹友「あ、もう来てたんだー」

妹「だ、誰ですかっ!?」

妹友「それは中に入ってからのお楽しみー」

妹「ま、まさか…………兄さんっ!」ダッ

妹友「あ、待ってよー!」

妹「兄さんっ」バァン

妹友「待ってー」

妹「それは兄さんの決め台詞ですよっ」

妹友「てへぺろ」

妹「どこですかー……兄さーんっ」

妹友「あ、あのさぁ……」

妹「にーいーさーんーっ」

妹友「ちょっと、声がおおきいよー」

?「よー、先に来てたぞ」

妹友「早かったねー」

彼氏「どうもどうも」

妹「えっ……」

妹友「あ、私の彼氏ね。知ってるでしょ、野球部の」

妹「え、えーと……メガネッシュじゃなくて、あの……」

妹友「何それ」

彼氏「眼鏡はかけてないけど……」

妹友「私の彼氏も一緒だけど、別にいいよね」

妹「はぁあああああ……そうですかぁ……」

彼氏「何か嫌がられてるような」

妹「そ、そういうわけじゃないですけど」

妹友「お兄さんじゃなくてがっかりした?」

妹「いえ……はい……いえ……」

妹友「あ、あともう一人いるんだけど」

妹「ま、まさか……!?兄さ……」

ウザ「テュースwww」

妹「え……はい?」

彼氏「俺の友達も一緒に連れてきたんだ」

妹友「これで4人だね」

妹「ちょ……ちょっと妹友ちゃんっ!!」

妹友「何さ」

妹「二人だって話じゃなかったんですか!?」

妹友「二人っきりだなんていってないでしょ。私は『あと二人』いけるっていったんだから」

妹「そ、そんな……」

妹友「まぁまぁ、変なことはさせないから大丈夫だってば。見た目はまぁまぁでしょ?」

ウザ「やっべwwここ田舎w超田舎wwwマジウケルww」

妹「……無理っ!生理的に無理ですっ!」

妹「という訳で私は帰りますから」

妹友「ちょっと待ってよー!」

妹「話が全然違いますから。これは詐称です。詐欺です」

妹友「だってぇー……私と彼氏だけじゃ泊まりで旅行なんて絶対無理なんだもーん」

妹「それで私がどうしてでてくるんですか?」

妹友「妹ちゃんも行くって言えば、親も納得してくれるし」

妹「……」

妹友「ねっねっお願いー!妹友ちゃん一生のお願ーい」パチ

妹「……」

妹友「だめ?」

妹「はぁ……わかりました」

妹友「やったー!」

彼氏「なんか揉めてるみたいだけど大丈夫?」

妹友「あ、なんでもないよー解決したから」

妹「彼氏さんが人格者なのがせめてもの救いですね……さすがメガネッシュさんです」

妹友「眼鏡はかけてないよ?」

妹「……しかし……」チラ

ウザ「やべぇ可愛いwねねね、あとでケータイ教えてくんない?」

妹「持ってませんそんなもの」

妹友「まぁまぁ、はやく部屋に行こうよ」

~ペンション・部屋~

妹「部屋の中も素敵ですね」

妹友「でしょでしょー」

妹「まったくもう、どうして最初から言ってくれなかったんですか」

妹友「だって、最初から話してたら来てくれなかった気がするしー」

妹「私が来たことにしてごまかせば良かったじゃないですか」

妹友「無理だよ、親戚なんだからきっと確認の電話がくるもん」

妹「あ、なるほど」

妹友「きっと楽しいからさ、帰っちゃだめだよー」

妹「わかりました。お付き合いします」

彼氏「妹友、いる?」コンコン

妹友「うん?いるよー」

彼氏「良かったら、一緒にあたりを散歩してみないか?景色も綺麗だし」

妹友「いきたーいっ!……あ、でもぉ……」チラ

妹「……私のことは気にしないで、二人で楽しんできて下さい」

妹友「ありがとー!今行くねっ」ガチャ

妹「……」

妹「……ふぅ……」パカ

妹「ケータイは……着信、ナシですね……」

妹「……兄さんのバカ」

妹「……しかたないから、推理小説でも読むことにしますか」

妹「……」ペラリ

妹「……」ペラリ

妹「……」ペラリ

妹「……うぅう」

妹「つまんないですっ!!これじゃ家にいるのと変わらないですー!」

妹「いや、兄さんが居ないから家以下ですね、この状況は……」

妹「まったく……何してるんでしょう、私は」

ウザ「テュースwww妹ちゃんいるー?」コンコン

妹「いません」

ウザ「wwwwww」

ウザ「ねーねー一緒に山見に行かない?ここ超山だしwww」

妹「超山ってなんですか。山ならこの部屋からでも見えます」

ウザ「あ、じゃあ俺も一緒に見ていい?ww」

妹「言ってきますけどこの部屋に一歩でも入ったら刺殺しますよ」

ウザ「やっべぇww鉄壁すぎwどっから攻めたらいいのw」

妹「お、落ち着いて読書もできないです……」

ウザ「じゃあさ、ラウンジでお話しようよw読書なんてどこでもできるしww」

妹「あーもう……今いきますっ!」

ウザ「キターwww」

妹「う、ウザいですこの人……」

~ラウンジ~

妹「……」

ウザ「ねーねー、何か飲む?売店で飲み物買ってくるよww」

妹「水でいいです」

ウザ「www」

妹「売店なんてものもあるんですね、思ったより中も広いし」

ウザ「ね、本読んでたって、何読んでたの?」

妹「推理小説です」

ウザ「あ、俺も結構好きだよそういうのwww」

妹「あ、そうなんですか」

ウザ「うんw結構詳しいと思うww」

妹「意外です……誰が好きですか?ポーとかは読みましたか?」

ウザ「コナンかなwwwあれマジウケルしwww」

妹「……」

ウザ「あれwwなんか下がったww」

妹「別にコナンが悪いとはいいませんが……はぁ」

ウザ「あとはひぐらしのアニメは全部見たww」

妹「話はすごく面白いですけど、あれは推理しようがないですから」

ウザ「妹ちゃんは何読んでたの?www」

妹「ドイルの『緋色の研究』です」

ウザ「なにそれwww哲学書?www」

妹「あーもう無理ですーっ!!さよならっ!」

ウザ「戦いはまだこれからだw」

~売店~

妹「うぅう……すっごく疲れました……」

妹「普段男の人とあんまり喋らないというのもありますが」

妹「やっぱりあそこまで色々とかみ合わないと無理ですね……」

妹「……」

妹「兄さん……むしょうに会いたいです」

妹「何か飲み物でも買って、部屋で読書をしますか……」

妹「すみませーん」

兄「はーい、いらっしゃーい」

妹「ズコー!」

兄「あれ、なにしてんだお前」

妹「に、兄さんっ!!こんなところで何してるんですかっ!」

兄「何って、仕事だけど」

妹「仕事って、駅前がどうとか言ってたじゃないですかっ」

兄「うむ、駅前の売店で働く予定だったんだが」

妹「それがどうしてこんなところにいるんですか?」

兄「人員整理の都合で、短期でこっちの系列に回されたんだよ」

妹「な、なんて素敵な……」

兄「なんか久しぶりな感じだなぁ」

妹「……うぅ」

兄「飲み物でも買う?何がいいかな……」

妹「……兄さんっ!!!!!」ダキッ

兄「うぉっ!」

妹「えーん……兄さーん……」ギュ

兄「なんだよ、たった半日会わなかっただけで」

妹「私の中では砂漠にオアシスを見つけた感じなんです」

兄「砂漠ねぇ、せっかくこんな素敵なペンションに来たってのに」

妹「兄さんが居ないと意味ないです」

兄「どうでもいいけど、離れないか?今は他に客もいないけど……」

妹「もう少しだけ、くっついててもいいですか?」

兄「……」

妹「駄目ですか?兄さん……」

兄「ん……いいよ」ギュ

妹「へへへ……嬉しいです……」ギュ

ウザ「こ、これはwwww何ww」

兄「あ、いらっしゃいませー……」

妹「いいところで……」

ウザ「ちょwwいきなり知らない男に抱きつくとか超ビッチwww」

兄「いや、俺たちは……」

妹「なんとでも言って下さい、ウザさんには関係ない話です」ギュー

ウザ「wwwwww」

兄「というか知り合い?」

妹「えーと、実はかくかくしかじかで」

兄「なるほど」

ウザ「攻略できねーじゃんこれwww帰るわもうwwww」

兄「あ、ちょっと。もう暗くなってきたから危ないかと」

ウザ「来た意味ねーしwww何これマジウケルwwバイビーwww」

兄「なんだこいつ、会話が成り立たない」

妹「そうなんですよ……」

兄「……帰ったぞ、マジで」

妹「……まぁ、仕方ないんじゃないでしょうか」

兄「で、飲み物買ってくんだろ?」

妹「あ……そうですね。お茶をひとつお願いします」

兄「まいどー」チリン

妹「ちょっと割高なんですね、こういうところはやっぱり」

兄「まぁ、輸送コストがかかるからなぁ」

妹「ヘリとかで運ぶんですよね」

兄「まさか。ヘリなんて使ってたらこの値段じゃだせないぞ」

妹「え……じゃ、じゃあどうやって運ぶんです?」

兄「歩いて運ぶんだよ」

妹「もしかして、兄さんもやってます?」

兄「いや、俺がやったら途中で死ぬかも」

妹「うふふ、でしょうね」

兄「歩荷っていう人がいて、こういうのを運んでくれるんだよ」

妹「ぼっか、ですか」

兄「さっき受け取りのときに会ったけど、熊みたいなオッサンだったぞ」

妹「力仕事ですからね」

兄「だなぁ。人間がやらないといけないってのは大変だよ」

妹「ふふふ、機械がやってくれればいいですよね?」

兄「この感じ……でるぞ!」

妹「その場合、さしずめ歩荷(ぼっか)ロイドといったところですね」

兄「山の夜は冷えるな……暖房を強めに」ピピピ

妹「ど、どうしてうけないんですか……」

兄「そんじゃ、俺他にも仕事あるから」

妹「あ、はい……頑張ってくださいね」

兄「いいなぁ、お前ら夜は美味い飯がくえるぞ」

妹「楽しみです」

兄「荷物から察するに、今晩は魚料理とみた」

妹「兄さん、夜は一緒に遊びましょうね」

兄「おう、終わったら……えーと」

妹「私たちの部屋は2階の奥ですから、終わったら来てくださいっ!」

兄「了解」

妹友「あれー?お兄さんじゃーん。何でここにいるのー?」

兄「やっほ」

妹「えへへ」

ごめん5話前編終わったとこですが少し休ませて下さい……

前スレは

妹「Q・E・D!Q・E・D!」兄「えっ?」
妹「犯人は……あなたです!」兄「えっ?」  ですた

残ってたら書いてくれるんだろうな

>>97
はい

~夕食~

妹「いただきまーす!」

妹友「いっただっきまーすっ!」

彼「これは、美味しそうだね」

妹「前菜から始まるんですね、美味しいですっ」

妹友「なんか、すっかり元気になっちゃったね」

彼氏「お兄さんが居たのがよっぽど嬉しかったのかな?」

妹「♪」モグモグ

妹友「ところで今お兄さんは?」

妹「よくわかりませんが、何か売店の仕事をしてるんじゃないでしょうか」

彼氏「僕たちのほかお客さんはいないみたいだけどね」

妹友「ところでウザ君はどうしたのかな?」

彼氏「さっきメールしたら、無事に山を降りたそうだ」

妹友「ならいーけど」

妹「メインディッシュはなんでしょうか」

兄「お待たせしました、川魚のテリーヌでございます」カチャ

妹友「うはっ!お兄さん売店の売り子がなにしてんのっ」

妹「に、兄さんっ」



兄「いや、あまりにも開店休業状態だったのでここのオーナーに頼んで」

妹友「ふーん、似合ってるね」

妹「昔レストランでバイトしたことがありますもんね」

兄「そういうこと。はい、メガネッシュ君もどうぞ」

彼氏「どうして貴方たち二人はボクをメガネッシュと呼ぶんですか?」

妹「あんま気にしないでください」

妹友「この程度のこと気にしてたら、禿げるよ」

兄「別にディスってる訳じゃないから大丈夫」

彼氏「はぁ……」

兄「それじゃ、ごゆっくりー」

妹「ふー、おなかいっぱいです……」

妹友「美味しかったでしょー」

妹「はい、とっても」

叔父「フヒヒ、満足してくれたかい?」

妹「あ、こんばんわー」

妹友「料理は叔父さんが作ってるんだよー」

妹「そうなんですか。とっても美味しかったです」

叔父「そうかそうか。明日も楽しみにしてくれ、フヒヒ」

妹友「美味しかったけど、なんっていうか獣肉成分が足りなーい」

妹「獣?」

妹友「うん、夜とかってガッツリ肉が食べたくなるじゃん」

妹「はぁ……」

叔父「フヒヒ、明日は考えておくよ」

妹友「フヒヒ、やったー」

妹友「あ、ねぇねぇ叔父さん」

叔父「何かな?」

妹友「さっきの男の人、この子のお兄さんなんだけど」

叔父「ほぉ、そうなのか」

妹「お世話になっております」ペコ

叔父「いや、こちらの仕事も手伝ってくれてだいぶ助かってるよ。ここは私と妻しかいないからね」

妹「そうなんですか」

妹友「そーいう訳で仕事終わったら借りてもいいよね?一緒に遊びたいから」

叔父「無論だ」

妹「皆でトランプでもしましょう」

叔父「フヒヒ、私は神経衰弱がいいな」

妹友「あ、叔父さんは入ってないからね」

叔父「がーん」

妹「あ、あははは……」

兄「お待たせしました。食後のコーヒーになります……?」

~夜・部屋~

妹友「よっしゃ、調子いいよー」

彼氏「ボクもあがりが近いな」

妹「むむむ」

兄「お前がここで止めてるんだろ、はやく出せよ」

妹「この8を出したら兄さんがあがっちゃうじゃないですか」

兄「俺に勝つことにこだわりすぎ」

妹友「仲良しだねー」

妹「こっちを出します」ピシ

彼氏「よし、これであがりだ」

妹友「あ、私もこれであがりー」

妹「くうぅっ!パスです」

兄「持ってるなら出せっての!俺も出せないだろうが」

妹「嫌です」

妹友「はいはい時間切れ。お兄さんがビリ、妹ちゃんがビリ2ね」

妹「ええー!」

兄「まぁ、そうなるだろうな」

妹「兄さんには勝ったのでよしとします」

兄「なんて奴だ」

彼氏「もう一回やる?」

妹友「ねーねーなんか賭けようよー」

兄「なんでまた」

妹友「なんかスリルが足りなーい」

妹「お、お金は駄目ですよ!」

彼氏「お金以外に賭けるものってあるかな?」

妹友「脱衣トランプとかどう?」

兄「ほう……」

彼氏「それはちょっとまずいんじゃないかな」

妹「そうですよーっ」

兄「ちっ」

妹「舌打ちは聞こえなかったことにしてあげます」ギュム

兄「あいたた」

妹友「えー、でもー」

彼氏「スリルが欲しいなら、怪談とかはどう?」

妹友「あ、いいね」

妹「なかなかの名案です」

兄「さってと、そろそろ仕事に戻るか……」

妹「兄さん兄さん、逃げないでください。今日の仕事は全部終わったはずですよ」

兄「くっ……」

妹友「お兄さんもしかして、怖い話とか苦手系?」

兄「苦手系ってわけじゃない。とてつもなく嫌なだけだ」

妹「ホラー系は全然駄目なんですよ」

妹友「プププ、そうなんだー」

彼氏「こういう場では定番ですよ。皆で話せば盛り上がりますから」

兄「やだー」

妹「兄さん、輪を乱すような発言は控えて下さい」

兄「こうして全体主義に染まっていくんだな、閉じた島国気質に俺たちの精神が支配されてる事に気がつかないのか」

妹友「難しいこと言ってるけど、ただ嫌なだけなんだよね?」

妹「です。なんだかんだ理屈をつけて嫌なことを回避するのは兄さんの悪い癖なんですよ」

彼氏「そんなに怖い話はしませんから大丈夫ですよ……それじゃボクから」

兄「アッーー!!せめて電気は明るいままでッ!」

妹「駄目です、雰囲気がでません」パチ

兄「アッー!」

妹友「まだ何も始まってないのに……すごい怖がり」

彼氏「これはボクの友達が田舎に行ったときの事なんだけど……」

妹「ドキドキ」

兄「はぅう……」

妹友「きゃー!怖いーん助けてーん」ヒシ

彼氏「ま、まだ何も話は始まってないけど……そこでは八尺様と呼ばれるものが祀られて……」

兄「あぅうう……」

~中略~

彼氏「『お前は八尺様に魅入られてしまったようじゃ……この札を部屋に貼りなさい』」

兄「あうぅ……!」ガクブル

妹「ドキドキ」

彼氏「『ぼ……ぼぼ……ぼ……ぼ』という声が外から」

兄「アーーーーッ!!!もう駄目だー!!アッーー!」

妹友「お兄さんうるさーい!」

妹「ご、ごめんなさい……」

彼氏「と、こういうお話でした」

妹「す、すごく怖いお話ですね……話し方も上手です」

兄「ひぃいいい」ガクガクブルブル

妹友「お兄さん、もう終わったからね」

兄「終わっても尾を引くから嫌なんだよ……うぅ」

妹「兄さん、幽霊なんているわけ無いじゃないですか。これは作り話ですよ」

兄「作り話でも怖いのが性質悪いんだよ、怪談ってのは」

妹友「フヒヒ……これはやりがいありそう」

妹「妹友ちゃん、次お願いします」

妹友「ククク」

兄「もうやめようよぉ」

妹友「やだねー」

妹友「これは、こういう山の中で住んでたお父さんとその娘のお話なんだけど……」

兄「はぅう……」

妹友「仲良く暮らしてた親子のところに、ある日一人の旅の男がやってくるの」

妹「ドキドキ」

妹友「優しい親子は一晩の寝床と食事をその旅の男に与え……その深夜」

彼氏「ふむふむ」

妹友「旅の男はお父さんを殺し、娘を犯し、金目のものを全て盗んで逃げていった……まぁ、今で言う強盗だったのね」

兄「いやあああああああっ」ガクガクブルブル

妹友「ま、まだ全然話の途中なんだけど……」

妹「兄さん、静かにしてくれないと怒りますよっ」

妹友「んで、数年後にまたその強盗は同じ家に来たの。前に自分がしたことを忘れて」

彼氏「ふむ」

妹友「優しい娘は、同じように食事を与え、寝床を提供したの……」

妹「以前辛い目にあったのに、優しいんですね」

~中略~

妹友「『私のお父さんを殺したのは……』」

妹「……」

妹友「『……私を犯し、全財産を盗んでいったのは……』」

彼氏「……」





妹友「『……お前だぁああああああああああああああっ!!!!!!』」

兄「ぎゃあああああああーーーーーーーーーっ!!!」

兄「ひぃいい……」ガクブル

妹友「ウヒヒヒ、こんなに簡単に引っかかってくれるとは」

彼氏「分かってても怖いよね、最後にびっくりさせる話は」

妹「でも、尾を引かないから兄さんにはいいかも知れません」

兄「強盗も娘も怖いよー……」

妹友「もう聞くもの目に映るもの全てが怖いようね」

妹「ふふふ、さぁ兄さん、今度は私の番ですよー!」

兄「もうやめてー」

妹友「〆だからね、とびっきりのを頼むよー」

妹「こほん。任せてください」

彼氏「これは期待せざるを得ない」

兄「意識が朦朧としてきた」

妹「この話が終わったら寝てもいいですから」

兄「これイジメじゃないのか?」

妹「それでは、『赤い洗面器を持った男の話』を」

妹友「どきどき」

彼氏「ふむふむ」

妹「……とある人の家の前の通りで、赤い洗面器を頭に乗せた男が歩いていました」

妹「そこで家の主人は尋ねます『お前さん、どうしてそんなものを頭に載せているんだね?』と」

彼氏「ふむ、なんだか怖そうな話だ」

妹「男は答えます。『それは……』」

妹「……以上、『赤い洗面器の男の話』でした」

彼氏「えーと……」

妹友「……結局、赤い洗面器はなんだったの?」

妹「そ、それをのらりくらりとかわして教えないのがこの話の怖いところで」

妹友「怪談じゃないじゃーん!」

彼氏「面白いけど、怪談ではないな」

兄「お前な、これ落語じゃないか。怪談のひとつもまともにできないのか?」キリッ

妹「に、兄さんまでなんですかっ!」

妹友「あーあー最後にしらけちゃったー」

彼氏「ちょっと最後の話はいただけなかったな」

兄「我が妹ながら情けない」

妹「なんで復活してるんですか!生意気ですっ」

兄「ったく、怪談終わったなら電気つけるぞ……」パチ

叔父「ウヒヒ、楽しんでるかね」ニュッ

兄「アッーーー!」ビクゥ

妹友「あ、叔父さんいつからいたの?」

叔父「お前の話の最後のところでな」

彼氏「こっそり入ってきてたのに気がつきましたよ」

妹「彼氏さんも人が悪いですね」

彼氏「はは、ごめん」

兄「はらひれほれ……」キュウ

妹「ププ、いい気味です」

兄「うーん……」

妹「あ、気がつきましたね」

叔父「ウヒヒ、びっくりさせて悪かったね」

兄「勘弁して下さいよ、ノミの心臓なんすから」

叔父「まぁまぁ、お茶でも飲みなさい」

兄「はぁ……」

妹友「叔父さんも怖い話なんか知ってるー?知ってるなら話してよー」

兄「せっかく終わったのにやめろー!」

叔父「私はあまり知らないなぁ……」

妹友「ちぇー」

兄「ほっ……」

叔父「ただ、さっきお前が話したドッキリ話があるだろ」

妹友「叔父さんが昔教えてくれたやつだけどね」

叔父「あれはな、その昔この辺りで起きた実話らしいぞ」

妹「へぇ、そうなんですか」

彼氏「それはそれで怖いですね」

妹友「実話ってことは、続きもあるんだよね?」

叔父「フヒヒ、聞きたいのか?大して面白い話じゃないぞ?」

兄「いや、いいです」

妹「兄さん!過去の犯罪の話を聞くのは現在でも有用なことなんですよ」

兄「またびっくりさせられたら今度こそ死んでしまう」

叔父「そういう話ではないよ。ただ」

妹「はい」

叔父「その娘は、強盗を殺した後にその肉を食べたとか」

妹友「ど、どうしてー!?」

叔父「さぁ、一種の復讐だったのか、それとももともとそういう風習がこのあたりにあったのか……」

兄「食人の習慣がこの地方にあったということですか?」

叔父「無かったとも言えないし、今となってはな」

妹「無かったからこそ、異端だったその親子はこんな山奥で生活せざるを得なかったということも考えられます」

兄「お、お前冴えてるな」

叔父「ま、人を殺して食う昔話はどこにでもあるよ、ウヒヒ」

彼氏「ふむ」

叔父「その娘はな、強盗の子供を宿していたという話もある」

兄「えっ」

妹「う、産んだんですか?その子供……」

叔父「さぁ、それは分からないけども……昔は堕胎技術も進んでなかっただろう」

兄「……」

叔父「産んだとしたら、何のためだろうね?」

妹友「何のためって……どういうこと?」

叔父「もし、その娘が食人鬼なら……その子をどうするかな」

妹「……育てるためじゃないんですか?」

兄「あるいは、食うためにかもな……」

妹友「ええーっ!」

叔父「私の話はこんなところだ、それじゃあまた来週」ガチャ、バタン

妹「あ、後味悪いですねー……」

兄「だなぁ……」

悩んだ末にラーメンが食べたくなったので行って来ます

~翌日~

妹「兄さん兄さん」

兄「いらっしゃーいって、お前か」

妹「今暇ですか?暇ですよね」

兄「あのなぁ、仕事中の人間に向かってなんて言い草だ」

妹「仕事中に雑誌を読めるなんていい身分ですね」

兄「仕方ないだろ、客が来ないんだから」

妹「良かったら、一緒に外を散歩しませんか?」

兄「だから、仕事中だってば……」

妹「叔父さんの許可はとったんですよ、どうせ売れないから売店は閉めてもいいって」

兄「とはいえ俺はこのペンションに雇われてるわけじゃないんだが……うーん」

妹「行きましょうー、妹友ちゃんも彼氏と遊びに出かけちゃって退屈なんです」

兄「じゃ、もうすぐ今日の食材が配達されるからその後なら」

妹「はーい!」

?「あの……」

兄「言ってるそばから来たみたいだ」

妹「兄さん早く早くっ」

男「こ……れ……今日の……」

兄「まいどどーもー」

妹「例の、歩荷さんというやつですね」

兄「だなぁ、えーとこっちが売店ので……あとは野菜……果物……調味料……発注票通りだな」

妹「今日の夕食になるんでしょうか」

兄「おそらくそうだろうな。ちょっと叔父さんのところにおいてくるから」

男「じゃあ……俺……行く……」

妹「な、なんだか無口というか……変わった人ですね」ヒソヒソ

兄「ま、喋らなくていい仕事っぽいし、無口でも支障ないんだろうけど……」

男「……」

兄「お待たせ」

妹「もういいんですか?」

兄「あぁ、叔父さんいなかったから置いてきた」

妹「ふふ、どこに行きます」

兄「あんまり離れると戻ってこれなくなりそうだし、近場を散策してみようか」

妹「兄さん、ちゃんと装備を整えて下さい」

兄「何で!?」

妹「万一遭難してもいいようにです。山を舐めてたら痛い目にあいますよ」

兄「だからそうならないようにしようって言ってるだろ!」

~ペンション・近場~

ビュオオオオオオオ

兄「な、なんて悪天候なんだ……もう帰ろうよ」

妹「ヤッホー!」

兄「ヤッホーじゃねぇよ、馬鹿じゃねえのお前!」

妹「むっ!失礼なっ」

兄「寒いし、風は強いし最悪だ……」

妹「大丈夫ですよ、まだ明るいですし」

兄「ま、このあたりなら道もわかるし平気そうだけど……」

妹「兄さんとハイキングできるなんて思いませんでした」ギュ

兄「こら、ただでさえ歩きにくい山道なのに」

妹「もう少し向こうのほうまでいきましょう、兄さん」

兄「まぁ楽しそうだし……いいか」

~山道~

妹「兄さん兄さん、この辺の木が折れてますね」

兄「あー……こりゃ熊だな。縄張りってことだろ」

妹「く、熊ですかっ!早く逃げましょうっ」

兄「落ち着けって、今は冬眠中だ」

妹「あ……そうなんですか」

兄「だいたい3月の終わりくらいまでは寝てるはずだ」

妹「へー、詳しいですね」

兄「フッフフ」

妹「じゃあ、別に今は気にする必要はないんですね」

兄「あ、でもな」

妹「天気も良くなってきたし、先に進みましょう」ガサガサ

兄「いや、熊ってわりとすぐ目が覚めるらしいから」

妹「え?」

兄「他の動物より冬眠の体温が高くて、うるさくするとすぐ目を覚ますらしい」

妹「……」

兄「腹減ってるだろうし、きっと起こされたら怒るだろうなー」

妹「何してるんですか兄さんっ!早く安全なところまで戻りますよっ」

兄「待ってー」

妹「はぁはぁ……」

兄「逃げ足速いなお前……ふぅはぁ」

妹「もうっ!あーゆうことは早く言って下さいっ」

兄「お前が最後まで聞かないで行こうとするからだろっ」

妹「あーもう、怖かったです」

兄「幽霊は平気なのに熊は怖いのか?」

妹「ゆ、幽霊も怖いですけど熊のほうが怖いですよ」

~ペンション・近場~

兄「結局、この辺まで戻ってきちゃったな……」

妹「しかたないです、熊に襲われるよりいいですから」

兄「だなぁ、万が一ということもあるし」

妹「でも、さすが兄さんです」

兄「何が?」

妹「博識です。色んな事を知ってますから」

兄「暇でテレビばっかり見てたから、ついいろんなことを覚えてしまうんだ」

妹「でも、やっぱり兄さんと話してると楽しいですよ」

兄「そうか、それは良かった」

妹「兄さんとお話してると、何か私の中で満たされていくものがあります」

兄「ふ、ふ-ん……そっか」

妹「兄さん……」

兄「……」

妹「ん……」スッ

兄「目を瞑ってなんだよ……」

妹「せっかくこんなところまで来たんだから、キスくらいして欲しいです」

兄「えーっ」

妹「逃がしませんよ」ガシ

兄「目を瞑ってるのになんという正確さ」

妹「兄さんなら目を瞑っていても補足できます」

妹「んっ……」チュ

兄「んむむむっ」

妹「ふふ……プリンが無くなったとき以来ですね」

兄「……そうだっけ」

妹「そうでふ……ちゅっ……れろっ」

兄「こら、舌入れるな」

妹「ちゃんと、舌を使わないと調べられませんから」クチュクチュ

兄「なぁ、何か物音がしたような気がするんだけど」

妹「また、そんなこと言って逃げようとしてますね……兄さん」ギュ

兄「ち、違うって……」

妹「兄さん、兄さんもハグしてください」

兄「……」ギュ

妹「ふふ、ついでにお尻を触ってもいいんですよ」

兄「触らないよっ!」

妹「兄さん、私兄さんになら……」

妹友「ちょっと、押さないでって言ってるでしょ……っ!」ヒソヒソ

彼氏「いや押してないって……ていうかやっぱり覗きは良くないよ……」ヒソヒソ

兄「ありゃ」

妹「うがっ……!」

妹友「やべ、見つかった」

妹「ガミガミガミガミ」

妹友「しょぼーん」

彼氏「悪かった、よく言って聞かせるから」

妹「まったく、せっかくいい雰囲気だったのに台無しですっ」

妹友「お兄さん仕事に戻っちゃったねー」

妹「あぅう……千載一遇のチャンスが」

妹友「きっと照れてるんだよ、夜にはまたチャンスがあるって」

妹「そ、そうでしょうか?」

妹友「夜には邪魔しないからさー、ほんとごめんー」

妹「頼みますよ」

~ペンション・厨房~

兄「ちーす」ガチャ

兄「あれ、まだ居ないのか……」

兄「ま、いいか。調味料とかはこの辺に置かせてもらおう」

兄「えーと、野菜は冷蔵庫でいいのかな」ガチャ

兄「おお、見事に何も入っていないが……どこに何を入れればいいんだろう」

叔父「……フヒヒ、何をしてるのかな……」

兄「うおおうっ!びっくりしたっ」

叔父「それはこっちのセリフだよ」

兄「あのー。配達されてきた野菜とかをしまおうかなって」

叔父「それは私がやるからいい。その辺に置いておいてくれないか」

兄「はい」

叔父「そろそろ夕食の支度をしないとな。兄君も今日は皆といっしょに食事を取るといいよ」

兄「えっいいんですか」

叔父「フヒヒ、もちろんだ」

兄「今日は野菜メインですか?」

叔父「いや、肉料理の予定だが」

兄「どこにも肉が見当たりませんが……」

叔父「フヒヒヒ」

兄「なんですか、その笑いは」

男「……あ…の……俺……は……」ヌッ

兄「うわっ!歩荷さん」

叔父「すまんが、獲物が大きすぎて手が必要だ」

男「わかっ……た……」

兄「な、何の話ですか……」

叔父「知りたいかい、フヒヒヒ」

男「これ……」ドサァ

兄「ひ、ひぃいいっ……っ!!」

叔父「兄君は、こういうのは苦手そうだね、フヒヒヒ」

~夕食~

叔父「という訳で、今晩のディナーはこれだ。フヒヒ」

妹友「鍋?」

彼氏「いい匂いだね」

妹「あのー、兄さんは……」

叔父「気分が悪いようで、スタッフルームで休んでもらってるよ」

妹「えっ」

叔父「じきに目を覚ますだろうよ、フヒヒ」

妹「そ、それは心配です、様子を見に」

妹友「食べてからでもいいんじゃなーい?」ジュル

彼氏「そうだね、せっかくの料理が冷めてしまうし」

妹「はぁ……」

妹「そ、それじゃあ……」

叔父「蓋を取って召し上がれ、もうよく煮えているはずだ」

妹友「わぁ、いい匂ーい」

彼氏「これは何の肉ですかね」

妹「見たことのない肉ですね、匂いも……」クンクン

叔父「フヒヒ、人肉鍋」

妹「えっ……」

妹友「げろげろ」

彼氏「おろろろろろ」

叔父「フヒヒおやおや、吐くなんて」

妹友「ちょ、ちょっと叔父さん冗談でしょ?」

叔父「さて、どうだろうね……」

妹「……っ!」

彼氏「い、一体どういうことですかっ」

叔父「いわゆるご当地料理ってやつかな、フヒヒヒ……昨日の話は覚えているかな?」

妹「……兄さんはどこですか?」

叔父「休んでいると言ったじゃないか」

妹「ま、まさか……っ!兄さんを出してくださいっ!」

叔父「フヒヒヒ……彼には次の……」

妹「つ、次の何ですかっ」

兄「待てっ!!その鍋手を付けるなっ」

妹「兄さんっ!」

叔父「おやおや……奴はどうしたのかな。見張りに立たせて置いたというのに」

男「あぅ…ごめんな……さい……」

兄「ええい離せっての!」

叔父「全く肝心なときに役に立たない男だ、フヒヒ」

妹「に、兄さん……無事だったんですね!」

兄「あぁ、心配かけたな」

叔父「フヒヒ、あんなものを見たというのに回復が早いね」

兄「スプラッターは苦手だが、ホラーほどじゃあない」

妹「ほ、本当にこれ……この鍋はまさか」

兄「…………その鍋、俺も食うっ!!」

妹「えっ」

妹友「えっ」

彼氏「おろろろろろ」

妹「に、兄さん、これは……」

兄「熊鍋なんて食う機会滅多にないんだ。絶対に食う!」

叔父「休んでなきゃ駄目だと言ったじゃないか。君には次の機会に」

兄「せっかく精肉も手伝ったんだから、食わせてくださいよっ」

叔父「フヒヒ、せっかく面白くなってきたというのに……」

妹友「何よ何よ一体どういうこと」

彼氏「おろろろ……」

妹友「あんたはいつまで吐いてんのっ!」

妹「え、本当にこれは普通の肉なんですか……?」

兄「うむ」

叔父「もう少しびびらせたかったのに、フヒヒ」

妹「な、なんでもったいぶるんですか!」

叔父「いや、昨日の話しからちょっと閃いてしまってねぇ」

妹友「なんて人騒がせな……」

叔父「それに、どの道あまりおおっぴらにはできないんだよ」

彼氏「そうなんですか?」

叔父「冬眠中の熊を撃つのは最近、問題になってるからね……」

妹「な、なるほど」

兄「海外じゃあ禁止になってるところもあるんだ、この前テレビで見た」

叔父「残酷だ、という話でね……山に住む私たちにはやりにくい時代になってきたよ」

男「……う……ん……」

兄「という訳で、作るのにも携わったこの俺が一番に食べさせてもらうぞ。いただきまーす!」

妹「兄さんっ!何て紛らわしい真似をっ」

兄「うまいっ!ちょっと癖があるけど美味いぞーっ」ハフハフ

叔父「沢山食べてね。お代わりもあるよ」

~帰り道・列車~

ガタタン ゴトトン

妹「なんだかんだいって、楽しい旅行でした」

妹友「珍しい物も食べられたしねー」

兄「メガネッシュくんは大丈夫?」

彼氏「お恥ずかしいところをお見せして……でもボク眼鏡はかけてませんが」

妹「兄さん、仕事はもういいんですか?」

兄「なんか、お客が入らないから次のシーズンまで閉めるらしくてな」

妹「なるほど」

兄「またニートに逆戻りな予感がするな……」

妹「ふふ、それでも私はいっこうに構いませんけど」

兄「他人事だと思って……」

ガタタン ゴトトン

妹友「すやすや……」

彼氏「ぐーぐー」

兄「……」

妹「兄さん、ぼんやりしてどうしたんですか?」

兄「いや、ちょっと考え事を」

妹「熊鍋、美味しかったですね」

兄「ああ、また食べに行こうな」

妹「今度こそ、人肉鍋が出たらどうしましょう」

兄「……なあ、お前はあの話、本当だと思う?」

妹「八尺様の話は、どうなんでしょうね」

兄「そっちじゃないって」

妹「あの話はともかく、人を食べるということは現実にあったと思いますよ」

兄「だよなぁ、生きるために食わなきゃいけなかったこともあるだろうし」

妹「そういう人が昔は鬼とか、狢とか呼ばれてたんじゃないでしょうか」

兄「ふーん……今でもいるのかな、そういう人」

妹「あの歩荷さんとか、そういえばすごく怪しい感じでしたよね、ふふ」

兄「すげぇ体してたよなぁ……」

妹「きっと私たちとは食べてるものが違うんですよ」

兄「はは、そうだろうな」

妹「……」

兄「……」

妹「……」

兄「……まさかなぁ」

~歩荷・家~

グツグツグツグツ

歩荷「……煮え……た……」

歩荷「……ムシャ……」

歩荷「固……い……やっぱり、肉は……メスが……一番……」ムシャ

叔父「贅沢も言ってられないさ。丁度いい獲物がこれしかいなかったんだから」

歩荷「惜し……かった……」

叔父「キスしてた時の兄妹は隙だらけだったんだけどねぇ、惜しかったねぇ……フヒヒ」

♪ピリリリ

叔父「なんだ、携帯電話なんか持ってたのか」

歩荷「この……男……の」

叔父「私が処分しておくから貸しなさい。このウザい服も全部処理しなくては」

歩荷「任せ……る……」

第5話おしまい

飛び飛びになってしまって申し訳なかったです

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