響「なんだこれ?」(674)

代行

響「なんだこれ?」

 ぴよ子の手伝いで事務所の大掃除をしていたら棚の奥から盤面に自分の名前が書かれたディスクが出てきた。

響「なー、ぴよ子ー」

小鳥「なぁに、響ちゃん」

響「これ、なんだと思う?」

小鳥「あら、懐かしい」

 自分の差し出したディスクをぴよ子が笑顔で受け取る。

小鳥「これ、うちの事務所に送られてきた響ちゃんの宣材用の映像よ」

響「宣材用の? そんなもの撮ったっけ」

小鳥「響ちゃんがアクターズスクールに通っていた頃のものよ」

 あぁ、そういえば芸能プロダクションに売り込むためにそんなものを撮ったような気もするぞ。

小鳥「これを見た社長がティンときたって言って、うちにスカウトしたんだっけ。懐かしいなぁ」

亜美「え、なになに→?」

真美「なにが懐かしいの→、ピヨちゃん」

小鳥「昔の響ちゃんが映っているDVDが出てきたのよ」

亜美「え→! 見たい見た→い!」

小鳥「ですって、響ちゃん」

真美「いいでしょ、ひびきん」

響「別に構わないぞ」

亜美「わ→い、見よ→見よ→!」

律子「こぉら、なに騒いでんのよ」

真美「りっちゃんも見ようよ。ひびきんの昔の映像だってさ」

律子「昔の映像?」

小鳥「宣材用のね」

律子「へぇー、それはちょっと興味深いわね」

貴音「えぇ」

響「あ、貴音ー」

 気が付けば事務所にいたみんながテレビの前に集まっていた。
 掃除をしていただけなのになんか大事になってきたぞ。

亜美「ではひびきんの昔のVTR……」

真美「スタ→ト!」

『はいさーい! 自分、我那覇響だぞ』

 再生のスイッチが押されると同時にテレビに昔の自分の姿が映される。
 なんかこうして改めて昔の自分を見ると照れくさいぞ。

響「あっはは、昔っていっても一年ぐらい前の話だし、そんなに変わらないな」

「「「「「…………………」」」」」

響「あ、あれ?」

 なんでみんな、食い入るように見てるんだ?

小鳥「なんていうか、その……」

律子「やけにグラマラスというか……」

貴音「非常に女性的な身体付きですね」

亜美「ひびきん、おっぱいでかすぎだYO!」

真美「中学生のおっぱいじゃないYO!」

響「え、うえぇ!?」

 急に何を言い出すんだ、みんな!?

 画面の中の自分の胸にみんなの視線が集中する。
 昔の自分が特技などを話しながら一生懸命、画面の外側に向けてアピールしていた。

『趣味は編み物とか卓球で、特技はダンスさー!』

 そういうと昔の自分はカメラの前で踊り始めた。

亜美「うあうあー、揺れてる! ひびきんのおっぱいが揺れてるよ→!」

真美「たゆんたゆんだよ! このおっぱいの揺れは震度7クラスの大惨事だよ→!」

響「お、おっぱいおっぱい連呼するなー!」

律子「これは……すごいわね」

響「う、うぅ……」

 そんな風にしみじみ言われると恥ずかしくて逃げ出したくなるさー……。

小鳥「一緒に送られてきたプロフィールではバストが86センチだったっけ。確かEカップ……むぐぐ」

響「ぴ、ぴよ子、それ以上言ったらだめー!」

亜美真美「E……だと……」

 慌ててぴよ子の口を押さえるが遅かった。
 亜美と真美が信じられないものを見るような目つきで自分の胸を凝視してくる。

貴音「しかし今の響の胸囲はそこまであるように見えませんが、これはいったいどういうことなのでしょう?」

響「あぁ、これは沖縄にいた時の映像だからな。東京に引越して環境が変わってから少し痩せたんだ」

小鳥「まぁ……」

貴音「苦労されたのですね、響……」

響「わ、わわ! 貴音!?」

 抱き寄せられて頭を撫でられた。
 痩せたとはいっても実はカップ数自体は落ちていないのだから、なんだか少し申し訳ない気分さー。

亜美「しかしこれは千早お姉ちゃんには見せられないね」

律子「あんたも似たようなものでしょうが」

真美「真美達はいいんだよ→。成長期だから」

亜美「それにしてもほんとに大きいね→」

律子「ウエストそのままでバストをこの頃まで戻せばあずささんに匹敵するんじゃないの?」
 
響「ううぅ……」

 みんな、好き勝手言い過ぎさー。雪歩じゃないけど穴があったら入りたいぞ……。

P「ただいま戻りましたー……って何してるんだ、みんな?」

響「うわわ、プロデューサー!?」

 あわわ、急いでデッキのスイッチ切らなくちゃ!

P「どうした、響? そんなに慌てて」

響「あ、あはは、なんでもないさー」

 み、見られてないよな?

亜美「兄ちゃ→ん、実は今、昔のひびきんの──」

響「わーっ、わーっ!」

真美「すっごいたゆんたゆんで──」

響「なんでもない! なんでもないから!」

P「そ、そうか」

 なに、さらっとばらそうとしてるさー、亜美真美!

響「そんなことよりプロデューサー! 自分と貴音、これからラジオの収録だから一緒についてきてほしいさー!」

P「え? いや、営業がひと段落したからこれから書類仕事を片付けなければいけないんだけど」

小鳥「あ、それなら私がやっておきますからプロデューサーさんは二人についていってあげてください」

 ぴよ子、グッジョブさー!

響「さぁ、さっさと行くさー、プロデューサー!」

P「お、おいおい、引っ張るなって」

貴音「ふふ……では行って参ります」

 ふぅ……どうにかごまかせたさ。
 あんな昔の映像、恥ずかしくてプロデューサーには見せられないぞ。

───────────

P「お疲れさん」

響「あ、プロデューサー。お疲れ様だぞ!」

貴音「お疲れ様でした、プロデューサー」

 ラジオの収録が終わり、ブースから出るとプロデューサーが笑顔で出迎えてくれた。 

P「今日はこれで仕事は終わりだな、二人とも」

響「うん! 早く帰っていぬ美たちにご飯作ってあげなきゃ」

貴音「ふふ、ではこのまま帰宅することとしましょうか」

P「あ、俺はまだ仕事が残っているから事務所に戻らなくちゃいけないんだ」

響「え、そうだったのか……」

 それは悪いことをしちゃったぞ……。
 いくら慌ててたとはいえ、無理矢理プロデューサーを引っ張ってきたのは少しやり過ぎだったさー。
 
響「ごめん、プロデューサー。自分のわがままに付き合わせちゃって……」

P「ははは、別に我が侭だなんて思っちゃいないさ。お前達が気持ちよく活動出来るようにするのが俺の仕事だからな」

 なんでもないことのように笑い飛ばしながら自分の頭を撫でてくれるプロデューサー。

 プロデューサーの気遣いは嬉しいけど子ども扱いしないでほしいさー。

P「じゃあ暗くならないうちに帰るんだぞ」

響「うん! じゃあね、プロデューサー」

貴音「ではプロデューサー、また明日」

P「おう」

───────────

響「ふぅ……今日も一日大変だったぞ」

 今日一日の出来事を思い出しながら家路を歩く。

 それにしてもあんな昔の映像が残ってただなんて夢にも思わなかったぞ。
 撮影をした時は別になんとも思わなかったけど、いざ見返してみると恥ずかしくて布団に包まりたくなっちゃったさー。

響「おっぱい……か」

 プロデューサーも大きい方が好きなのかな。

響「はっ!? べ、別にプロデューサーの好みなんてどうでもいいけどね!」

 ……なんで自分、一人で伊織みたいなこと言ってるさー。
 今日はなんかずっと調子が狂いっぱなしだぞ。

響「ま、もう済んだことだし、さっさと忘れるさー」

 ……うん? 忘れる?
 そういえばなんか忘れてるような……。

響「………………あぁッ!?」

 DVD!
 デッキに入れたまま回収するのを忘れてた!

響「い、いやいや、大丈夫大丈夫。なんくる……な……」

 プロデューサー、事務所に戻るって言ってたよね?
 もし亜美や真美がまだ事務所にいたら……。

響「うぎゃあぁ~! なんくるあるさー!」

────────────

響「はっ……はっ……」

 事務所へと引き返し、息を整えながら入り口の前で佇む。
 灯りが漏れているからまだ誰かいるようだ。

響「うぅ……神様仏様アマンチュ様~。どうかプロデューサーがDVDに気付いていませんように……」

 ごくりと唾を呑みながらドアを開ける。

『──────!』

 音を立てないようにそろそろと事務所に入り、忍び足で進む。

『──────!』

 なんか、聞き覚えのある声が、聞こえて……。

『なんくるないさー!』

響「うぎゃあぁ~!?」

P「うわッ!?」

響「あ、あぁ……」

P「なんだ、響か。驚かすなよ」

響「プロデューサー……そ、それぇ……」

P「ん? あぁ、前に収録した番組のチェックをしようとしたら、なんか入っててさ。気になったから見てたんだ」

 あぁああぁ……遅かった。
 よりにもよってプロデューサーに見られるなんて。

P「それにしても……」

響「え……?」

P「この頃に比べて結構痩せたなぁ、響」

響「……っ!」

 プロデューサーが画面に視線を戻しながら、そんなことを呟いた。
 画面の中の自分は健康的な身体つきで元気いっぱいな笑顔で踊っている。

 やっぱりプロデューサーもあずさや貴音みたいな胸の大きな女の子の方がいいんだ……。
 なんでだろう、なんか胸のあたりがもやもやするぞ……。

プロデューサーの漏らした言葉が悲しくて、なんで悲しいのか分からなくて、それがまた胸のあたりをもやもやとさせ

る。
 
響「う……うわあぁ~んっ!!」

P「え、おい、響!?」  

 プロデューサーを見るのが悲しくて、今の自分を見られるのが恥ずかしくて気付けば事務所から逃げ出していた。 

──────────

響「うぅ~……事務所行きたくないぞ」

 昨日、逃げるように家に帰り、プロデューサーからの電話やメールを無視して布団に包まっていたら、いつの間にか夜が明けていた。
 
響「でも休むわけにもいかないしなぁ」

 気まずくてプロデューサーと顔を合わせたくないさー……。

 重い足取りで事務所に向かい、入り口の前で佇む。
 中からはみんなの笑い声が聞こえてくる。

 プロデューサー、まだ来てないといいんだけど。

響「は、はいさーい」

律子「あら、お早う、響」

小鳥「おはよう、響ちゃん」

やよい「うっうー! 響さん、おはようございますー!」

貴音「お早うございます、響」

 恐る恐る事務所に入っていくとみんなが笑顔で出迎えてくれた。

 
 プロデューサーは……うん、いないな。 

春香「おはよう、響ちゃん。……元気がないようだけど何かあった?」

響「い、いや、別に何もないぞ。自分、今日もカンペキさー!」

 春香が心配そうに自分の顔を覗き込んでくる。
 
 いけないいけない。暗い顔をしていたらみんなに心配をかけちゃう。
 幸いにもプロデューサーもいないようだし、見つかる前にさっさと現場に行くさ。

「あ」

響「え?」

 背後から聞こえた間の抜けた声に反応し、思わず振り返ってしまう。

P「お早う、響」

響「あ……ぷ、プロ……」

P「昨日はどうしたんだよ、急に叫びながら帰っちゃって。心配したんだぞ」

響「うあぅ……」

P「電話にも出ないし、メールの返信もないし……」

響「えっと……自分、その」

P「ま、元気そうでよかったよ」

響「あ……!?」

すいません、少し仮眠を取ってきます。
後ほど書き溜め分を投下させていただきます。

一つ質問なのですが、エロっていりますかね?

お早うございます。保守してくださった方々、ありがとうございました。

ではエロはいちゃいちゃするぐらいにしておきたいと思います。

 わたわたとしていたらプロデューサーが自分の頭をぽんぽんと優しく撫でた。
 それが気恥ずかしいやら決まりが悪いやらで顔が赤くなってしまう。

 ううぅ……なんでプロデューサーはこんな平然としてるんだ。
 自分一人だけ取り乱してるのが馬鹿みたいじゃないかぁ……。   

P「……響? どうしたー?」

響「べ、別になんでもない!」

P「なんでもないって……おっと」 

 プロデューサーの優しい気遣いが今は痛い。
 そう思った瞬間、居た堪れなくなり、ついプロデューサーの手を乱暴に跳ね除けてしまった。

響「あ、ごめ……うぅ」

P「本当にどうしたんだ、響。具合が悪いなら──」

響「ほんとになんでもないから! 自分、お仕事にいってくるね!」

P「あ、おい、響!?」

 プロデューサーの声を振り切って逃げるように事務所から飛び出す。 
 
 ううぅ~~、自分のばかばかばかーっ! なんであんな態度取っちゃうんだー!?

───────────

P「え~っと……」

律子「……いったい響に何をしたんですか、プロデューサー殿」 

P「いや、何をしたって言われても俺にもさっぱり……」

春香「でも明らかに様子がおかしかったですよ、響ちゃん」

P「だよなぁ。う~ん……」

小鳥「何か心当たりはないんですか?」

P「心当たりですか……。昨夜、事務所でばったり会ってからなんかおかしかったんだよなぁ」

律子「何かあったんですか?」

P「デッキに入っていた響の昔のDVDを見ていたら本人がやってきて」

小鳥「え……あれ、見ちゃったんですか?」 

P「はい、偶然。それでお前、痩せたなぁって声を掛けたらなぜか逃げ出しちゃって」

律子小鳥「「それだ……」」

P「え?」

律子「一応聞きますけど、それってどういう意味で言ったんですか?」

P「いや、昔と比べて細くなっていたからちゃんと飯を食ってるのか心配になって」

小鳥「そんなところだろうと思いました。プロデューサーさんらしいというかなんというか……」

春香「昨日、何かあったんですか?」

小鳥「あぁ、うん……プロデューサーさん、ちょっと向こうへ行っててもらえますか?」

P「えっ、なぜです?」

律子「いいから早く。女の子には男の人に聞かれたくないこととかあるんですよ」

P「……っとと。おいおい、押すなって」

小鳥「実は昨日、響ちゃんの昔の映像が入ったDVDが出てきてね。それをみんなで見たんだけど」

貴音「響の胸の大きさに皆、一様に驚いておりましたね」

春香「胸の大きさ? たしかに響ちゃんの胸、大きいですけど今よりも大きかったんですか?」

律子「あずささんや貴音さんに勝るとも劣らない大きさだったわ」

春香「それは……」

やよい「響さん、すごいですー!」

律子「それでちょうどそこにプロデューサー殿が帰ってきたんだけど、響、彼に見られるのを嫌がってね」

春香「あぁ、それはたしかにちょっと恥ずかしいかも」

律子「隠していたものを見られたうえに痩せたって言われたのがショックだったんだと思う」

やよい「え? なんでショックなんですか? 太ったって言われるよりかは痩せたって言われたほうが嬉しいかなーって」

小鳥「たぶん勘違いしたんじゃないかしら」

やよい「勘違い?」

小鳥「胸のことを気にしているところに痩せたって言われて、胸が小さくなったって言われたと思い込んじゃったのね」

春香「あぁ……それはすごいショックですね」

律子「まあプロデューサー殿も気遣って言ったんだろうけど……」

貴音「少々言葉が足りなかったようですね。日本語とは真に難しきものです」

律子「なんにせよこのまま放っておくわけにもいかないわね……。プロデューサー、もうこっち来てもいいですよー!」

P「おっ、内緒話は終わったか」

律子「結論が出ました」

P「結論?」

律子「プロデューサー殿が悪い」

P「え?」

小鳥「プロデューサーさんが悪いですね」

P「え」

春香「プロデューサーさんが悪いと思います」

P「えっ?」

貴音「貴方様はいけずです」

P「えぇっ!?」

やよい「プロデューサーが悪いかなーって」

P「やよいまで!?」

律子「というわけで今すぐ響のところに行って、これ以上こじれる前に仲直りしてきてください」

P「仲直りって……」

小鳥「あ、とりあえず謝るっていうのは無しですよ。何が悪かったのか、よく考えてから仲直りしてくださいね」

P「えぇー……俺、何かしたかなぁ」

春香「プロデューサーさんは一回、自分の鈍さを自覚した方がいいと思いますよ?」

P「ええぇー……」

貴音「貴方様一人だけでは先程のように響も話しづらいでしょうし、私もついていきましょう」

P「すまないな、貴音」

やよい「うっうー! プロデューサー、頑張ってくださいー!」

P「あはは、ありがとうな、やよい。じゃあちょっと行ってきます」

律子「しっかりお願いしますねー」

春香「大丈夫かなぁ」

小鳥「……あ」

やよい「どうしたんですか、小鳥さん?」

小鳥「今日の響ちゃんのお仕事……グラビア撮影だわ。しかも水着の……」

「「「「………………」」」」

「「「「大丈夫かなぁ……」」」」

───────────

「はい、目線、こっちお願いねー」

響「はーい!」

 際どい水着を身にまとい、カメラに溌剌とした笑顔を向ける。

「お、いいねー、響ちゃん。その表情頂きだよー」

響「えっへへー、自分、カンペキだからなー!」 

 カメラマンやスタッフに見守られながら撮影をこなす。
 スタッフは女性が多かったが、カメラマンは男性だった。

「いいよいいよー、これは男性読者の視線釘付けだよー」

 男性読者。
 そうだ。これは青年誌のグラビアで、自分の水着姿が多くの男の人に見られるんだ。
 だけどそれを恥ずかしいとは別に思わないし、別にカメラマンに水着姿を見られるのも平気だ。

 う~ん、なんで自分、プロデューサーに見られるのがあんなに恥ずかしかったんだろう?

 自分のDVDを見ていたプロデューサーのことを思い浮かべる。

響「あ、あわわ……っ」

「ん? どうしたの、響ちゃん」

響「な、なんでもないぞ」

 そうだ、今は仕事に集中しよう。
 そうすれば昨夜のことなんてすぐに忘れられるはずさー。
 気にしすぎるからいけないんだぞ。

P「失礼します」

 気にしすぎるからプロデューサーの幻まで見て────って。
 うぎゃあぁ~!? なんでプロデューサーがここに!?

P「(あ、お~い、響~)」

 なんでそんな満面の笑顔で手なんか振ってるんだよー!?

「響ちゃーん、目線こっちお願いー」

響「は、ひゃい!」

 そうだ、今は撮影中なんだ。
 集中しなきゃ、集中……集中……。

響「う、えうぅ……」

 って出来ないぞ! なんでなんだー!?

「どうしたの、響ちゃん? 表情が固いよー」

P「どうしました?」

「あぁ、どうも、プロデューサーさん。いえ、急に響ちゃんの調子が悪くなったようでして」

P「えっ、大丈夫か、響」

響「あ、え~と……」

 うわ、うわうわぁ……! プロデューサーが自分を見てるぅ!
 こっち来ちゃだめだぞ、プロデューサー!

P「昨日から様子がおかしかったけど、どこか悪いのか?」

 自分を心配してくれているプロデューサーの視線が肌に突き刺さる。
 まるで視線で身体中をまさぐられているようで、独りでに体温が上がるのが分かった。

響「う、うぅ……うぎゃあぁ~~~っ!」

P「響!?」

 恥ずかしい、恥ずかしい恥ずかしい、恥ずかしい……!

 訳も分からずただ恥ずかしいという感情だけが身体中で渦巻く。
 プロデューサーの視線に耐え切れず、撮影中だというのにも関わらず逃げ出してしまった。

───────────

P「響……」

「え~と、どうしちゃったんでしょうね、響ちゃん」

P「すいません、すぐに私が様子を見てきますので」

「えぇ、お願いします。とりあえず休憩にしますね」

P「ありがとうございます」

貴音「プロデューサー」

P「貴音、響の様子を見にいくから一緒に来てくれないか?」

貴音「いえ、プロデューサーはここでお待ちになっていてください。私が参ります」

P「しかし……」

貴音「今、プロデューサーが響の下に顔を出すのは逆効果かと。ここは私にお任せ下さい」

P「……分かった。頼んだぞ、貴音」

貴音「はい」

────────────

響「プロデューサー……驚いた顔してたな」

 楽屋に閉じこもり、部屋の片隅で自分の身体を隠すようにうずくまる。

響「うぅ~……なにをやってるさー、自分。このままじゃスタッフさん達にも迷惑かけちゃうぞ……」

 早くスタジオに戻らなきゃ……でも……。

貴音「入りますよ、響」

 ドアのノックとともに貴音が楽屋に入ってきた。

響「どうして貴音がここに?」

貴音「昨夜から響の態度がおかしいとのことでしたのでプロデューサーと様子を見にきたのです」

響「そうだったのか。ごめん、心配かけちゃって……」

貴音「よいのですよ。それよりも響。何故撮影中に逃げ出したのです?」

響「それは……」

 自分、なんで急に逃げ出しちゃったんだろう。
 プロデューサーが来る前は普通に撮影出来てたのに……。

響「なんかよく分からないけど、急に恥ずかしくなっちゃったんだ……」

貴音「殿方に水着姿を見られるのが嫌なのですか?」

響「それはないさー。グラビア撮影もアイドルとしてのお仕事だし、一度引き受けた以上ちゃんとやらなきゃって分かっ

てる」

貴音「では何故?」

響「それは、その……急にプロデューサーがやってくるから……」

貴音「響はプロデューサーが嫌いなのですか?」

響「そ、そんなわけないぞ!」

貴音「しかしプロデューサーに水着姿を見られるのが嫌なのでしょう?」

響「嫌ってわけじゃ……ただ恥ずかしいっていうか」

貴音「恥ずかしい? プロデューサーが撮影現場に付き添うことなど今までにもあったではありませんか」

響「そうだけど……うぅ~、自分、もうなにがなんだか分からないぞ……」

 なんでこんなにもプロデューサーの視線が気になるのか、自分でも分からなかった。
 少し前の自分ならこんなことで悩むことなんてなかったのに。

貴音「嫌じゃないけど恥ずかしい……。その気持ちがなんなのか響は本当に分からないのですか?」

響「……うん」

貴音「プロデューサーが鈍いことは知っていましたが、響も相当なものですね……」

響「どういうことなんだ?」

貴音「直截に言ってしまえば、響のその気持ちの原因はプロデューサーが気になっているからなのではないのですか?」

響「気になるって……えぇっ!?」

 じじじ自分がプロデューサーを気にしてるって……どうしてそうなるんだよー!?

貴音「好いている殿方の前で肌を晒すのはとても勇気がいることですから」

響「そ、そんなんじゃない! 絶対にそんなんじゃないんだからな!」

貴音「では他にどのように説明出来るというのです?」

響「そ、それは……その~……」

 自分がプロデューサーを好き……?
 そんなこと考えたこともなかったぞ。

P「響ー?」

響「ひゃ、ひゃい!?」

 混乱して頭を抱えていたらドアの向こうからプロデューサーの声が聞こえてきた。

P「調子はどうだ? この後、撮影いけそうか?」

響「え、え~と……」

P「……調子が悪いんなら、今日はもう中止にしてもらうように俺から言うけど」

響「そ、それはだめだぞ!」

 自分のわがままで勝手に撮影を中止になんてしたら、スタッフさん達に申し訳ないさ。
 それにせっかくプロデューサーが取ってきてくれた仕事なんだ。
 途中で投げ出すなんて絶対に嫌だぞ。

響「大丈夫だから! 今行くからプロデューサーはスタジオで待ってて!」

P「分かった。……無理だけはするなよ?」

 ドアの前から人の気配が遠ざかる。

 あぁ~、まだ胸がばくばくいってる。
 プロデューサーの声を聞いただけだっていうのに……。
 貴音が言ったとおり、自分、プロデューサーのこと……?
 いやいやいや、それはないぞ!

響「大丈夫、大丈夫……なんくるないさー!」

 よし、気合充分だぞ!
 プロデューサーがいても関係ないさ! 見事に撮影をこなしてみせるぞ!

貴音「響、いいことを教えてあげましょう」

 鼻息を荒くしながらスタジオに向かおうとした自分に貴音が耳元で囁く。

響「いいこと?」

貴音「女の子は殿方に見られて綺麗になる。それが意中の相手なら特に……」

 唇に指を当てながら悪戯っぽい笑みを浮かべる貴音。

 貴音……それ全然いいことじゃないぞ。今の自分には逆効果さー……。

すいません、ご飯食べにいってきます。

響「勝手にスタジオを飛び出しちゃってすいませんでした!」

「お、もう大丈夫なのかい、響ちゃん?」

響「はい! みんなに迷惑掛けちゃった分、頑張るからよろしくさー!」

「じゃあ早速、撮影の続きといこうか」

 煌々と照らされる照明の下で挑発的なポーズを取る。
 フラッシュが焚かれ、シャッターを切る音がスタジオに鳴り響いた。

 プロデューサーは……うあぁ、すごいこっち見てるぞおぉ……。
 なんであんな真剣な眼差しで自分の裸なんか見るんだよぉ。

「いいね~。じゃあ次は壁に手をついて上半身を反らして。そう、腰を突き出して色っぽく流し目で」

 こ、こんな恥ずかしいポーズ、プロデューサーに見せられないぞ!?

「いいよいいよー。次はベッドに横たわって上半身起こして頭だけで後ろを向いてー。手は太ももに置くかんじで」

P「ふむ……」

 うあぁ、プ、プロデューサーの視線が、自分の、お尻にぃ……!

「ベッドの上で女の子座りして、自分を掻き抱くように! 腕で胸を寄せて!」

P「むぅ……!」

 こんな胸を強調するようなポーズしたら、自分、自分……!

響「いいね! 今日の響ちゃん、いつもよりすっごく色っぽいよー!」

 は、恥ずかしい……。 
 プロデューサーに見られてるところが、なんか、むずがゆいよぉ……!

 身体が火照る。
 身体の奥が甘痒い。
 胸の高鳴りが抑えられない。
 心臓の音がプロデューサーに聞こえちゃうんじゃないかと心配になり、胸を押さえてうずくまりたくなる。

>>184

× 響「いいね! 今日の響ちゃん、いつもよりすっごく色っぽいよー!」

○  「いいね! 今日の響ちゃん、いつもよりすっごく色っぽいよー!」

 カメラマンのセリフということでお願いします……。

 恥ずかしい。
 逃げ出したい。 
 だけど──────

響「(プロ、デューサー……)」

 声にならない言葉を零しながら、そっとプロデューサーを見る。 
 恥ずかしくて今すぐにでも逃げ出したいけど──だけど嫌じゃない。

『女の子は殿方に見られて綺麗になる。それが意中の相手なら特に……』

 頭の中で貴音の言葉が甦る。

 今、プロデューサーはどんな気持ちで自分を見てるのかな?
 どんな風に見えてるのかな?
 変じゃないかな?
 綺麗に見えてるかな?
 もっと胸が大きい方が好みなのかな?

P「うおぉ……!」

 プロデューサーの熱っぽい視線が自分の身体を舐めるように走るのが感じられた。
 恥ずかしいという気持ちともっと自分を見てほしいという気持ちが胸の中でぶつかる。

 嬉しい。
 恥ずかしいけど嬉しい。
 プロデューサーが自分を見てくれるのが嬉しい。
 
 あぁ、自分、やっぱりプロデューサーのことが好き……なのかなぁ?

───────────

「はい、OK!」

響「はぁ……!」

P「お疲れ、響」

響「あ、プロデューサー……」

 無事に撮影を終えた響に労いの言葉を掛ける。

P「すごいじゃないか。今日の響、なんかいつもよりも──」

 色っぽかったと言おうとして口を噤んだ。

 そういえば昨日は身体のことについて言ったら、響の様子がおかしくなったんだっけ。
 律子や音無さんにもよく考えてから物を言えみたいなことを言われたし、あまり軽々しく色っぽいとか言わない方がい

いかもしれない。

響「いつもより、なに?」

P「え~と、いつもより……うん、すごかった」

響「そ、そうかぁ……えへへ」

 何やら身体をもじもじさせながら元気のない笑みを浮かべる響。

 うーむ、やはり体調が悪かったのか?
 顔を赤いし、うっすらと汗もかいているし。

P「本当に大丈夫か、響?もしかして熱でもあるんじゃ……」

響「はう……!」

 おでこに手を当てて熱を測ろうとしたら、かちこちに固まってしまった。

P「熱は……ないようだな」

響「あ、あのプロデューサー……」

P「そうだ。はい、これ。汗かいたんだし、ちゃんと水分摂っておけよ」

響「あ、ありがと」

 持っていたスポーツドリンクを手渡すと、響はこくこくと咽喉を鳴らしながら飲み始めた。
 余程咽喉が渇いていたのだろう、慌てて飲んだせいで口の端からスポーツドリンクが零れてしまっている。

P「む……」

 零れた滴が咽喉を伝い、響の胸を濡らした。
 健康的な小麦色の肌が水滴を弾き、照明を受けてきらきらと眩しく輝く。

 しかし痩せたとはいえ充分に大きいな、響の胸。
 確かにあのDVDに映っていた響はかなりスタイルが良かったけど、今の響だって充分に魅力的だ。

響「あの、プロデューサー? そんなにまじまじと見られる、恥ずかしいぞ……」

P「あ、いや、すまない。綺麗だなぁと思って、つい」

響「き、綺麗!? いいいいきなり何を言い出すさ、プロデューサーのエッチ!」

P「エッチ!? そんなやましい意味で言ったつもりは……」

 ない、とは言い切れない。見惚れていたのは事実なのだし。

響「……やっぱり男の人ってむ、胸が大きい方が好き、なのか?」

P「どうだろう。一概にそうだとは言えないんじゃないか」

響「でもプロデューサーは大きい方が好きなんでしょ?」

P「はぁ? どうして?」

響「だってプロデューサーってば昨日、昔の自分の映像と見比べながら痩せたなーとか言ってたじゃないか」

P「あぁ、まあ言ったけど」

響「それって自分の胸がちっちゃくなっちゃってがっかりしたからなんだろ」

P「どうしてそうなるんだよ……。だいたい響の胸は今でも充分大きいじゃないか」

響「うえぇ!? 急になにを言い出すんだ、プロデューサーのエッチ!」

P「すまん、ついポロッと」

響「まったくプロデューサーは……」

P「……もしかして昨日からそれを気にしてたのか?」

響「…………うん」

P「……ぷっ、あっははは」

響「な、なんで笑うんだよー! 自分、ショックだったんだぞ!?」

P「いや、ごめんごめん」

響「もー……」

P「響は充分に魅力的だよ。ずっとお前を見てきた俺が言うんだ。間違いない」

響「は!? あ、あの、その~……うぅ~、プロデューサー、卑怯だぞ、ここでそんなセリフ……」

P「とにかくよくやったな、響。えらいぞ」

響「ふあぁ……えへへ」

 頭を撫でてやると響は嬉しそうに目を細めた。
 色っぽい身体つきからかけ離れたそのあどけない笑みに思わず胸が高鳴ってしまう。
 
P「えーっと……」

響「あ……」

 気恥ずかしくなって撫でる手を引っ込めると響は名残惜しそうにこちらを見つめてきた。

貴音「貴方様」

P「うわぁ!?」

貴音「私はこの後、仕事がありますのでこのまま現場に向かいます」

P「あ、あぁ、付き合ってくれてありがとうな、貴音」

貴音「礼には及びません。それでは私はこれにて」

響「貴音ー、ありがとなー!」

P「じゃあ俺達も事務所に帰るか」

響「うん!」

────────────  

──数日後──

律子「プロデューサー殿、当日のセットリストなんですけど」

P「あぁ、それなら──」

響「はいさーい、みんなー!」

春香「おはよー、響ちゃん」

やよい「うっうー! おはようございますー、響さん」

貴音「お早うございます、響」

小鳥「今日も元気ね、響ちゃん」

響「うん! 自分、今日もカンペキさー!」

律子「おはよう、響」

響「おはようだぞ、律子……と、プロデューサー……」

P「お、おう、お早う、響」

響ちゃんかわいいよぉちゅっちゅっ

響「………………」

P「………………」

律子「(……この二人、一応仲直りはしたみたいなんだけど)」

小鳥「(なーんかこの間から様子がおかしいんですよね)」

春香「(響ちゃんがぎこちないのは分かるんですけど、プロデューサーさんはどうしてなんですかねぇ)」

貴音「ふふ……」

やよい「……プロデューサーと響さん、まだ喧嘩してるんですかー……?」 

響「え!?」

P「そ、そんなことないぞ、やよい! ほら、仲良し仲良し!」

響「あ……」

P「あ……す、すまん」

響「い、いや、大丈夫さー」

春香「(二人とも顔が真っ赤ですね)」

律子「(手を握っただけであの反応……)」

小鳥「(もしかしてプロデューサーさんも?)」

貴音「ある日突然、恋の花咲くこともある……人の心というのは真、不思議なものですね」

P「こ、恋ぃ!?」

響「ちが……! そんなんじゃないぞ! 急になにを言い出すさー、貴音!」

貴音「おや、違うのですか?」

響「そうだぞ、違うぞ!」

貴音「プロデューサーの目を見ながらでも、そう言えますか?」

響「そんなの簡単……」

P「………………」

響「……こ、恋じゃな……その、ちが……う、うぅ~……」

P「ひ、響?」

響「うぅ……うわあぁ~~んっ!」

先輩どーも
スイヤセンデシタ!!

   / ̄ ̄ ̄\
  /     \
 / LLLLLLLLLヽ ヽ

`/ /⌒\ッ/⌒ヽ |
| |(●ヽ=/●) | |

| |  (_)  | |
ノレソノ  ノ_ヽ  ハ从
 |  ( ̄ ̄)  |

 ヽ ヽ__ノ ノ
 /\____/\
/\__>―<__/\
   `ー只ー′
    ( ノ)

P「あぁ、響!?」

春香「あらら、逃げちゃいましたねぇ」

小鳥「ほら、プロデューサーさん、何してるんですか」

P「え?」

貴音「泣いている女の子を放っておくのですか?」

P「いや、泣かしたのは貴音じゃないか……」

律子「あーもう、いいから早く追いかけてください! 残りの仕事は私の方でなんとかしておきますから」

P「……すまん、みんな!」

やよい「うっうー! がんばってください、プロデューサー!」

P「あぁ!」

───────────

 うわあぁ~~ん! ばれたぁ! 絶対にばれちゃったぞーっ!

響「プロデューサーもなんかよそよそしかったし……」

 きっと迷惑だったんだ。そうだよね、プロデューサーとアイドルだし……。
 プロデューサーからしたら自分なんてまだ子供だし……。
 うぎゃあぁ~~っ! 明日からどんな顔して会えばいいんだーっ!?

           なんで真美ちゃんに渡しちゃったの~
            あれ私のなのに~
   , く\/>ノ          _

   f ,'´ ⌒´ヽ        '´   `ヽ
  ノ ( ノノVヽ〉       l i(ノハヽ  i
 ´'' ノ ヽソ´┴`ノ       i、;o; l)ノ

     ∪ィ杏}J        l∩∩j
     〔. ィ }        <i亢ハ>
      |_,_l_|          しし'
            気をつけろよ!
            衣装が濡れちゃったじゃないか!

   , く\/>ノ           )ノ
   f ,'´ ⌒´ヽ.         , ^⌒`ヽ,.
  ノ ( ノノVヽ〉       〈リ'〈ルリ, ゝ

 ´'' ノ ヽソ´┴`ノ.         i、ロ ゚#リ)、ゞ
     ∪ィ杏}J        ⊂イ}‐{ソ^つ
     〔. ィ }...   __     |ioi,`|

      |_,_l_|   ..(__()、;.o:。/_∧_| 
                ゚*・:.。
       :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
     ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
    ::::::::::::::::::::::::::::::::::       ::::::::::::::::::
   ::::::::::::::::::::::::::::::::  , く\/>ノ  ::::::::::::::::::::::
   :::::::::::::::::::::::::::::::  f ,'´ ⌒´ヽ  ::::::::::::::::::::::::
  :::::::::::::::::::::::::::::   ノ ( ノノVヽ〉  :::::::::::::::::::::::
   ::::::::::::::::::::::::  ´'' ノ ヽソ´┴`ノ  :::::::::::::::::::::
    :::::::::::::::::::::::     ∪ィ杏}J  :::::::::::::::::::::
     :::::::::::::::::::::::    〔. ィ }  :::::::::::::::::::
      ::::::::::::::::::::     |_,_l_|  :::::::::::::::::::

P「響ーっ!」

響「え……プロデューサー!? な、なんで追っかけてくるさー!?」

 に、逃げなくちゃ! 
 今、プロデューサーに何か言われたら泣いちゃうさー!

P「ちょっ、なんで逃げるんだよ、響!」

響「プロデューサーが追っかけてくるからだぞ!」

P「いいから止まれって! 取り敢えず落ち着け!」

響「いやさー!」

 走る。走る。走る。
 坂を下り、人ごみをすり抜け、スクランブル交差点を渡り、高架下を潜り抜け、大通りをひた走る。

P「ま……はぁ、待て……はっ、ひ、響……はぁ」

響「はっ、はっ、しつこいぞ、はっ、はっ、プロデューサー」

 十分、二十分、三十分。
 ペースを崩さずにリズミカルに走る自分に、プロデューサーが食い下がるように追いかけてくる。
 
P「コヒュー……ひ……ゼヒュー……響……」

響「ふっ、ふっ、ふっ」

 四十分。五十分。六十分。
 当てもなくまっしぐらに東を目掛けて走る。

P「………………」

響「ふっ、ふっ、ふっ」   

 一時間以上は走っただろうか。
 気付けば港まで来てしまっていた。
 
響「はぁ……はぁ……」

 立ち止まり、大きく深呼吸をする。
 潮の匂いがたちまち肺を満たす。
 一息ついて振り返ってみると、遥か後方からプロデューサーがこちらを目掛けて走っていた。

P「コヒュー……カヒー……」

響「少し見直したぞ、って、うわわ! 大丈夫か、プロデューサー!?」

P「も……だめ……」

 肩を上下させながら大きく呼吸をしていたプロデューサーがアスファルトに大の字に寝転んだ。

響「あ~ぁ、スーツがだいなしだぞ」

 プロデューサーの頭を持ち上げて、女の子座りで地面に座る。
 持ち上げた頭を太ももに優しく置いて、プロデューサーが落ち着くまで静かに待った。

響「まったく、プロデューサーは無茶しすぎだぞ」

 プロデューサーは聞いているのかいないのか、目を瞑って呼吸を整えている。

響「ごめんね、プロデューサー。そして……ありがとう」

 こんなに一生懸命に自分を追いかけてきてくれた。もうそれだけで充分だ。
 
響「プロデューサー……かなさんどー」

 愛しい気持ちと切ない涙が溢れて止まらない。
 ぽろぽろと流れ落ちる涙がプロデューサーの頬を濡らす。
 
響「自分、プロデューサーを好きになってよかったさー」

すいません、夜まで席を外します。  

残りあと五分の二ぐらいなので戻り次第、投下します。 

でーじなとん

やるじゃん
立ててよかった

>>320
きたか
頼むぜ旦那

>>323
それ代行やで

新・保守時間目安表 (休日用)
00:00-02:00 10分以内
02:00-04:00 20分以内
04:00-09:00 40分以内
09:00-16:00 15分以内
16:00-19:00 10分以内
19:00-00:00 5分以内

新・保守時間の目安 (平日用)
00:00-02:00 15分以内
02:00-04:00 25分以内
04:00-09:00 45分以内
09:00-16:00 25分以内
16:00-19:00 15分以内
19:00-00:00 5分以内

保守、ありがとうございました。

では残りを投下します。

 いつかどこかで聞いた初恋は実らないという言葉を思い出す。
 それはとても悲しいことだけど、でもそれはきっと悲しいだけじゃない。
 恥ずかしかったり、悲しかったり、嬉しかったり。
 知らなかった。

 誰かを好きになるということが、歌やダンス以上にこんなにも心を動かすものだったなんて。 
 
響「だから、自分……振られても、悲しくなんか────」

P「こら」

響「あぅ」

 寝っ転がっていたプロデューサーがだるそうに両腕を持ち上げて自分の頬をむにっと挟んだ。

P「響、いつも言っているだろう。一人で勝手に暴走するのはお前の悪い癖だって」

響「え……?」

P「なんで勝手に振られたとか言ってんだ?」

響「だ、だってプロデューサー、いつも子供扱いするし」

P「そうか? 最近はそうでもなかったと思うんだが」

響「自分の気持ちを聞いた時、困った顔してたし」

P「そりゃみんなの前であんな風に暴露されたら戸惑うしかないだろ」

響「それに、それに……プロデューサーはみんなに優しいから……自分を追いかけてきたのもプロデューサーとしてなんでしょ……?」

P「何かある度に身体を張ってたら身が持たないよ」

響「じゃあ、なんで、こんな……」

P「それを俺の口から言わすか……」

響「………………」

P「というか、そうだな。ごめん、響。俺から言わないと駄目だったな」

響「なにを……?」

P「俺は響を……好き、なんだと、思う。っていうか好きじゃなきゃこんなことしないよ」 

響「……っ!!」

P「ずっと子供だと思っていたけど最近の響を見てて、もう大人なんだなって意識したら、その……」

響「そ、そんなの……」

P「信じられないか?」

響「だって、だってぇ……!」

P「はぁ……一度しか言わないからよく聞けよ?」

響「え?」

P「響……かなさんどー」

響「………………」

P「だったっけ? ……あぁ、とにかく大好きだってことだ!」

響「うあ……」

P「ん?」

響「うああぁ~~~ん……!」

P「いぃ!? な、なんで泣くんだ!?」

響「ひぃ~~ん……ぅっく、えぇ~~ん!」

P「ちょっ、泣くなよ……泣かないでくれよ、響」

 身体を起こしたプロデューサーがそっと優しく自分の身体を包むように抱きしめる。
 火照ったプロデューサーの温もりがゆっくりと心に染み渡り、それがまた涙を流させた。

P「はは、大人っぽくなったと思ったら子供っぽかったり。響は可愛いなぁ」

響「うぅ~」

 子供をあやすように抱きしめてくれるプロデューサーにしがみつくように抱きつき返す。
 プロデューサーは泣きじゃくる自分が落ち着くまでずっと抱きしめてくれていた。

────────────

P「寒くないか?」

響「うん、大丈夫だぞ」

 プロデューサーと二人、手を繋ぎながらきらきらとオレンジに染まる海を眺める。
 海から吹きつける風が火照った身体から熱をさらい、心地よい。

P「さてと、日が暮れる前に事務所に帰らなくちゃな」

響「そうだった……うぅ、みんなから何を言われるか……」

P「まあ当分は茶化されるかもな。どうも皆にはばれていたようだし」

響「うぎゃあぁ~~~!」

P「ははは、まあそれぐらいの方が腹が決まるってもんだ」

響「……でもプロデューサーはよかったのか?」

P「よかったって何が?」

響「アイドルとプロデューサーが付き合うってなると社長に怒られちゃうんじゃ……」

P「そうなったら頭を下げてでも許してもらうさ。スキャンダルにならないように今まで以上に気をつけるし」

響「プロデューサー……」

P「大丈夫だよ。まぁあんまり頼りにならないかもしれないけど」

響「そんなことないさー! 自分がこうやってアイドルをやってられるのもプロデューサーのおかげなんだし!」

P「はは、ありがとう、響」

響「うん! もう離さないからな、プロデューサー!」

P「それは俺のセリフなんだが……」

響「プロデューサー、大好きさー!」

この後なのですが後日談でソフトエロを書こうとしたところ、エロとは別の何かが出来上がってしまいまして……。

そっと閉じるを推奨ということでお願いします。

─────────── 

 プロデューサーに告白してから数週間が経った。
 あの後、事務所に帰って怒られるのを覚悟で社長に付き合うようになったことを報告したんだけど、反応は思いもよら

ないものだったさ。
 
社長「はっはっはっ、そうかいそうかい。それは実にめでたい」

 怒られるどころか、なんか祝福されちゃったぞ。
 プロデューサーは節度あるお付き合いをするようにって注意されてたけど。

 事務所のみんなも祝福してくれたさ。
 美希はちょっと拗ねてたけど、プロデューサーが幸せならって認めてくれたんだ。
 そういうわけで自分とプロデューサー、付き合うことになったんだけど……。

響「はぁ……」

貴音「どうかしたのですか、響? 溜息など吐いたりして」

響「あ、貴音……いや、なんでもないさー」

貴音「なんでもないようには見えませんが。もしやあまり人様には言えないような悩みなのですか?」

響「言えないような、そうでもないような……」

貴音「響」

響「なぁに、貴音?」

貴音「私は響のことを親友だと思っております」

響「な、なんだよぅ。改まってそう言われると照れるさー」

貴音「友の悩みは私の悩み。響の思い悩む姿を見ているとこの胸が痛むのです」

響「た、貴音ぇ……ごめんよぅ、自分が馬鹿だったさー!」

貴音「では話してくれますね?」

響「……笑わない?」

貴音「はい、約束します」

響「自分、プロデューサーと付き合うようになったでしょ?」

貴音「えぇ、おめでとうございます」

響「ありがとさー。それで一応恋人同士になれたわけだけど」

貴音「響、一応ではありません。れっきとした恋人同士です。そこは自信を持って言い切らなければなりません」

響「う、うん。恋人同士になれたわけなんだけど、そのー、なかなか二人っきりになれなくて」

貴音「お忙しい方ですからね、プロデューサーは」

響「それでそのー、たまに二人っきりになってもなんかあまり恋人っぽくないというか」

貴音「それが寂しい、と」

響「いや、プロデューサーが忙しいのも分かるし、自分に気を遣ってくれているのも分かるんだけど、そのー……」

貴音「もっと恋人らしく仲睦まじくしたい、と」

響「……うん」

 うぅ、呆れられたかな?

貴音「なるほど、それは至極最もな悩みです。プロデューサーが響を大切に思うのは良いことですが、それで寂しい思いをさせるなど本末転倒」

響「べ、別に寂しくなんてないぞ!」

貴音「ここは一つ私がプロデューサーに女心というものを膝詰めで説いてみせましょう」

響「いや、そこまでしてくれなくても大丈夫さー!」

貴音「そうですか」

 貴音に頼んだら本当に朝までプロデューサーを説教しそうで怖いさー。

貴音「しかしそうなるとどうしたものでしょう」 
 
響「う~ん……」


 貴音と二人で頭を突き合わせて悩む。
 経験がないからこういう時どうすればいいのか、分からないぞ。 

?「「ふっふっふっ、お困りのようですなぁ」」

響「だ、誰だ!?」

亜美「亜美だYO!」

真美「真美だYO!」

響「亜美に真美! どうしてここに!?」

貴音「どうしても何もここは事務所の応接間ですよ、響」

亜美「そーだよ→、こんなところで惚気話なんてしてたらピヨちゃん泣いちゃうよ?」

小鳥「くっ……!」

真美「ピヨちゃん、それは千早お姉ちゃんのネタだよ?」

響「ど、どこから聞いてた?」

亜美「私達結婚しましたってところから」

真美「もっとラブラブちゅっちゅしたいんだYO! ってところまで」

響「そ、そんなこと言ってない! 言ってないぞ!」 

貴音「それならば話は早い。双海亜美に双海真美、何か良い知恵はないものでしょうか?」

亜美「んっふっふ~、任せてよ、お姫ちん!」

真美「そんなお困りのひびきんにこれをプレゼントしちゃおう!」

響「ファッション雑誌? これがどうかしたのか?」

亜美「ここ、ここ。ここ見てみ?」

 亜美がにんまりとしながら表紙の一角を指差す。
 するとそこには────

響「お固い彼氏を振り向かせる10の方法。目指せ、彼とのいちゃいちゃライフ……って、なんだこれぇ!?」

真美「マニュアルだよ→。経験がなければ知識でカバー! 基本っしょ」

貴音「なるほど、一理あります。しかし昨今のふぁっしょん雑誌はこのような特集まで組んでおられるのですね……面妖な」

 面妖な、じゃないぞ、貴音ぇ~。

響「べ、別に自分はいちゃいちゃしたいわけじゃ……」

亜美「したくないの?」

真美「したいっしょ?」

貴音「したいのでしょう?」

響「う、うぅ……したい、です」

亜美「うんうん、素直でよろしい!」

真美「じゃあLet's steadyだYO!」

貴音「そこはすたでぃなのでは?」

響「あはは……」

 なんかまたおかしなことになりそうだぞ……。

───────────

響「うぅううぅ……」

真美「あぅあぅあぅ……」

亜美「あ→、ちょっと刺激が強すぎたかな→」

貴音「貴方は平気なのですか?」

亜美「亜美は大人だから平気なんだYO!」

 それは違うぞ。
 亜美は子供だからよく理解してないってだけで。
 ん? ということは自分と同じように倒れてる真美って……。

貴音「しかし二人とも、頭から湯気が出そうなほど真っ赤になって……。純なのですね」

響「貴音だって真っ赤じゃないかぁ」

貴音「はて、なんのことやら」

響「っていうか刺激が強すぎるぞ、これ。ファッション雑誌でこんな過激な記事書いていいのか?」

亜美「最近は小学生向けの雑誌にもこーゆー特集あるよ?」

響「信じられないさー……」

 世も末だぞ……。

亜美「さぁ、これで予習はばっちりだね! あとはそのdtpnなおっぱいで兄ちゃんをめろめろにしちゃうだけだYO、ひびきん!」

響「どたぷ~んなおっぱいってなに!?」

P「ただいま戻りましたー」

響「うわあぁああぁッ!?」

P「うおっ、どうした、響?」

響「な、ななな、なん、なんでもないさー!」

P「そんな慌てぶりでなんでもないとか言われても」

響「本当になんでもないから! 自分、お仕事行ってくる!」

P「あ、お~い、響ー……行っちゃった」

小鳥「うふふ、若いっていいわね~」

───────────

──数日後──

P「いらっしゃ……ってなんで汗だくなんだ、響」

響「マスコミに尾行されないように都内を一時間、ぐるぐる走り回ってきたさー」

P「そ、そうか。恐ろしいほどの念の入れようだな」

響「えっと……今日はお招き、ありがとうございます」 

P「はは、そんなに畏まらなくてもいいって。恋人同士なんだし」

響「あぅ……」

 久々の休日。
 珍しく休みが重なったので一緒にどこかへ出掛けようと思っていたんだけど、気付けばなぜかプロデューサーの部屋で過ごすことになってしまった。

 うぅ……緊張をほぐすために走りこみをしてきたのに、身体ががちがちのままだぞ。

P「ま、風邪ひく前に上がってくれ。タオルなりシャワーなり使ってくれていいからさ」

響「しゃ、シャワー!?」

P「? 汗かいたままだと気持ち悪いだろ?」

響「あ、うん、ソウダネ」

 ううぅ、自分のばかばかばか! 意識しすぎだぞ!
 予習はばっちりしてきたんだ。あとはさりげなくプロデューサーと、い、いちゃいちゃするだけさー!

響「ってシャワー? ……し、しまったあぁ~!」

P「うおっ、どうした、響?」

響「う、うぅん、なんでもない! シャワー……うん、シャワー借りるね」

P「おう、風呂はそこだから」

響「うん」

 ふぅ、あぶなかったぞ。もう少しでプロデューサーに汗のにおいを嗅がれちゃうところだったさー。
 汗くさい女の子なんて男の人も嫌だよね?
 替えの下着とか持ってきておいて正解だったぞ。

響「……あ、あくまで念のためなんだからな!」

P「大きな独り言だな」

響「ひゃあぁ!? プロデューサーのエッチ!」

P「タオル、ここに置いておくぞー」

響「う~……ありがと」

 ふ、不覚さー。危うくもう少しで裸を見られるところだったぞ。
 
響「……って、尻込みしてちゃだめさー、自分」

 衣服を全て脱ぎ去り、浴槽に足を踏み入れ、シャワーカーテンを閉める。

響「なんたって今日はいちゃいちゃするために来たんだから……!」
 
 カランを捻ると冷たい水がシャワーから降り注ぎ、熱くなっていた頭を冷やしてくれた。
 視線を下へとやり、水滴が伝う自分の身体をまじまじと観察する。
 
 うん、おかしいところはない……ないよね?
 自分、カンペキ……だよね?

──────────

響「ふぅ~、シャワーありがとさー」

P「どういたしまして……って髪、濡れたまんまじゃないか。乾かしてきなさい」

響「別に自然乾燥で充分さー」

P「駄目です。女の子なんだからもっと髪の手入れとかに気を遣いなさい」

響「えー」

P「えーじゃない。まったく、ちょっと待ってろ」

響「?」

 きょとんとする自分をよそにプロデューサーが洗面所からドライヤーとクシを手に戻ってきた。

P「ほら、乾かしてやるからこっちこい」

響「いいよ、別にぃ」

P「いいから」

響「うー」

 渋々、ベッドに陣取るプロデューサーに背を向けて座る。
 二人分の重みを乗せたベッドがぎしりと軋んだ。

P「熱かったり痛かったりしたら言えよー」

響「うん」

 プロデューサーの手が自分の髪を一房すくい、ドライヤーで乾かしていく。
 
 そういえばこのベッドでいつもプロデューサーが寝起きしてるんだよね。
 なんか落ち着かないぞ……。

P「こら、猫かお前は。じっとしてなさい」

響「うー」

 乾かし終えた髪をプロデューサーが丁寧にブラッシングしてくれる。

 あ、これはちょっと気持ちいいかも。

P「はい、おわり」

響「ありがとさー」

P「さてと。じゃあこれから何しようか?」

響「え? なにも考えてないの?」

P「あぁ、とにかく響と二人っきりで落ち着いて過ごしたかったから俺の部屋に呼んだんだけど、何をするかまでは考えてなかったなぁ」

響「ふ、二人っきり……」

P「ぼ~っとするのもあれだし、ゲームでもするか」

響「おっ、いいね。負けないぞ、プロデューサー!」

P「ははは、お手柔らかに頼むよ」

────────────

響「うぎゃあぁ~、また負けたぁ!」

P「これで俺の十二連勝だな」

響「もう一回! もう一回勝負だぞ!」

P「ははは、響は負けず嫌いだなぁ」

響「次は絶対に勝ってみせるさー!」

P「ふっふっふっ、かかってきなさい」

 むぅ~、その余裕も今のうちだぞ……っと、その前に。

響「プロデューサー、咽喉渇いたからお茶もらってもいい?」

P「あ、すまん、気付かなかった。淹れてくるよ」

響「自分でやるから大丈夫さー」

P「冷蔵庫にさんぴん茶があるから」

響「え、ほんと!? うわぁ、やったー!」

 さんぴん茶があれば元気百倍だぞ。
 これさえあれば次の勝負は自分の勝ちで間違いないさー!

 グラスを二つ取り出してさんぴん茶を注ぎ、ベッドまで戻る。

響「はい、プロデューサー」

P「サンキュー」

 グラスを手渡し、背を向けてプロデューサーに身体を預けるようにして座った。
 背中越しにプロデューサーの体温を感じながら、グラスを傾ける。 

響「ふぅー、やっぱさんぴん茶は最高だぞ」

P「香りがいいよな」

響「これ、プロデューサーが淹れたの?」

P「いや、残念ながら市販のだ」

響「そうなんだ。じゃあ今度、自分がもっとおいしいのを淹れてあげるね」

P「それは楽しみだ。ははは」

響「あはは……ってなんでこんなに密着してるんだー!?」

P「えっ、何をいまさら。髪を乾かしてる時からずっとこうだったろ」

 よくよく思い返してみたらゲームをしてる時、もっとくっついていたような!
 プロデューサーが自分を抱きかかえるようにしてコントローラー持ってたし!

響「だ、だめだぞ! こういうのはまだ自分達には早すぎさー!」

P「えー、そうか? 恋人同士なのに?」

響「こ、恋……!? ううぅ……」

 そ、そうだ。つい慌ててあんなこと言っちゃったけど、自分達は恋人同士なんだ。
 今日はいちゃいちゃしにきたのに、こんなことで驚いてちゃだめさ!

P「ま、いいや。お腹も空いてきたし、そろそろ昼ご飯にしようか」

響「あ……それだったら自分が作るぞ」
 
P「お、いいのか?」

響「ふふーん、本場の沖縄料理を食べさしてあげるさー」

P「やった、彼女の手料理か~。楽しみだなぁ」

響「彼女……えへへ」

────────────

P「ふぅ……ごちそうさま」

響「おそまつさまさー……」 

P「いやぁ、おいしかった。特にあのフーチャンプルーってやつ。今度また作ってくれよ」

響「あはは、お安い御用だぞ……」

 くうぅ、大失敗だぞ。いや、別に料理は上手に作れたけど。
 せっかく裸エプロンってやつをしてプロデューサーを喜ばすチャンスだったのに……。
 裸はまだハードルが高すぎるから水着を着てだけど。
 他にもプロデューサーにあーんってしてあげるつもりだったのに、それすら出来ないなんて……。
 特訓に付き合ってくれた貴音に顔向けできないぞ。

響「じゃ、じゃあ食器洗っちゃうね」

P「いいよいいよ、俺がやるから」

響「いいからプロデューサーは座ってて。今日はプロデューサーにゆっくりしてもらうために来たんだから」

P「響……ありがとな」

響「あはは、なんくるないさー」

 すいません、眠気と体力が限界なのでちょっと寝てきます。

 起きたら残りを投下させていただきます。申し訳ない……。

おいついた!

しえ・・・保守

保守

マダー?

>>498
一時間じゃおきないだろww
鬼畜かwww

保守

暇だし保守するついでに響のいいところをあげて行こうぜ
まず、なんといっても元気なところだな。うん

ぼっち

>>506
765プロのみんなは親切にしてくれるさー

全て

>>512
そんなこと百も承知なうえで話してるんだから、
まとめちまうなYo

つまり保守は任せろってことですね限界寝る

>>514
おれに任せて行くがいいさ

学生の特権「春休み」を行使して全力で任せられた
保守

今まで涙そうそうで惚れて、島唄とかを中心に聞いてきたが、
うれし・あやかし道中記とかもいいよな

響まじ天使

保守

保守

ひなだお

>>544
なんか違う感がすげぇ

>>545
ひならお!

だっけ?

>>548
いや、文字の表記は多分「ひなだお」であってるけど、
みんないうほど響とひなが似てるとどうしても思いえないってだけ

保守

保守

保守だお

ほすほす

明後日何時からだっけ・・・

保守

保守

からの保守

来たか!!きたんだな!!!!!!!!!

あれ・・・?

とりあえず、保守

>>571
別人だよ…

>>572
泣きたい

>>573
おいたんらいじょうぶ?

 お早うございます。保守、ありがとうございました!

 では投下を再開します。

>>574
お前そのネタ好きだなwwww
ここまで来ると好感が湧いてくるわwwww

─────────────

響「………………」

P「………………」

 結局途中でゲームにも飽きてしまい、二人して本を読んでいるんだけど……。
 お、落ち着かないぞ。
 自分、あまり本を読む方じゃないし、プロデューサーの傍にいるとそわそわしちゃうし。

きたあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

響「プ、プロデューサー」

P「うん?」

響「その本、おもしろい?」

P「あぁ、面白いぞ」

響「………………」

P「………………」

 ……間が持たないぞ。

響「プ、プロデューサー」

P「うん?」

響「咽喉渇いてない?」

P「いや、大丈夫だよ」

響「………………」

P「………………」

 うぅ……プロデューサーにはゆっくりしてほしいけどちょっとだけ、もうちょっとだけ自分にかまってほしいさー。

響「ぐりぐり」

 ベッドを背もたれにして隣に座るプロデューサーの肩を頭でぐりぐりしてやる。
 なんか自分、猫みたいだな。

P「んー、どうしたー?」

響「………………」

超可愛いwwwwwwwwwめっちゃ可愛いやんけwwwww

 無言でぐりぐりし続ける。

P「んー」

響「………………」

 ぐりぐりぐりぐり。
 
P「あっはは、参った参った。あーもう、響は可愛いなぁ!」

響「わう!?」

 ぷぷ、プロデューサー、急に抱きしめるのは反則さ! 
 そんな風に力いっぱい抱きしめられたら自分……!

・響は可愛いなぁ!
・響は可愛いなぁ!!
●響は可愛いなぁ!!!

P「本当に可愛いな、響は……」

 あ、あれ? プロデューサー? なんか雰囲気が……。

P「響……」

響「あ……」

 プロデューサーの顔がゆっくりと近付いてきた……!?
 ここ、これってもしかして、キ、キス……!?

響「んぅ……!」

 瞼をぎゅっと閉じてじっとその時を待つ。
 プロデューサーの気配を目を瞑っていても分かるぐらいすぐ近くに感じた。

響「………………?」
 
 あれ、こない……? なんでだ?

響「ふみゃ!? ふ、ふろにゅーにゃー!?」

 予想していたものと違った事態に慌てて目を開ける。
 てっきりキスされるものだと思っていたのに、なぜか鼻をつままれていた。

P「あっははは、猫みたいだぞ、響」

響「な、なにするんだよー、プロデューサー! 自分、せっかく勇気を振り絞ったのに!」

猫みたいな響も可愛いなぁ!!!

P「無理しなくていいんだよ」

響「無理なんてしてないぞ!」

P「震えてたけど?」

響「む、武者震いってやつさー」

P「嘘だな。それに知っているんだぞ?」

響「知ってるって、なにを?」

P「ここ最近の響の愛読書」

響「え?」

P「お固い彼氏を振り向かせる10の方法。目指せ、彼とのいちゃいちゃライフ……だっけ?」

響「えぇええぇっ!? なんでプロデューサーがそれを知ってるんだ!?」

P「普段あまり本を読まない響が事務所で熱心に雑誌を読んでたら、そりゃ気にもなるさ」

響「ううぅうぅぅ……」

 自分の計画は全部筒抜けだったのか。恥ずかしいいぃぃ……。

恥ずかしがる響もかわいいなぁ!!

P「それで」

響「うん?」

P「響はしたいの? そういうこと」

響「う……」

 プロデューサーといっしょにいたい。
 プロデューサーの喜ぶことはなんでもしてあげたい。
 だけど────

P「無理なんてしなくていいんだよ。そりゃ俺だって響といちゃいちゃしたいけど、お前を怖がらせてまでしたいとは思わない」

響「でも、自分はプロデューサーに喜んでほしくて……」

P「それは俺も同じだよ。俺も響に喜んでほしい。……焦る必要なんてないさ。恋人同士なんだからさ」

響「……うん、ごめんね、プロデューサー?」

 プロデューサーの服の袖をちょこんと掴みながら申し訳ない気持ちを口にする。
 目だけでそっと見上げるとプロデューサーは優しく微笑んでいた。

P「響は可愛いなぁ」

響「あんまり可愛いとか言わないでほしいさ。は、恥ずかしいぞ……」

P「事実なんだから仕方が無い。……ところで響?」

響「なに?」

P「もしそういうことをすることになったとして……響はどこまで許してくれるのかな?」

響「そ、そんなこと言えるわけないだろー!?」

P「キスはオーケー? 軽いやつじゃなくて大人なかんじの」

響「し、知らない!」 

P「息が出来なくなるぐらい何度も何度もするよ? 舌と舌を絡めて響を味わうように」

響「プロデューサー、その言い方、なんか気持ち悪いぞ!?」

P「気持ち悪くて結構!」

響「えぇーっ!?」

くそ、近くに壁がない!!千早しかいない!!

>>606
いじめ、かっこわるいさー

P「響の裸も全部見ちゃうよ? その大きな胸から大事なところまで全部」

響「へ、変態! プロデューサーはちびらーさん変態さー!」

P「おっぱいを心行くまで揉みしだいたり、俺のを挟んだり」

響「は、挟む!?」

P「響の大事なところをまさぐったり、舐めたり、つまんだり」

響「あうぅ……」

P「響の初めてを奪って、響がイっても構わずに何度も何度も突いて」

響「んぅ……」

P「どこに出してほしい? おっぱい? お尻? それとも……」

響「ぅ……」

 想像してしまう。
 何度も何度もプロデューサーに求められる自分を。
 プロデューサーの色に染められていく小麦色の自分の肌を。

 
 想像するだけで震えてしまう。 
 知らないことへの恐怖と好奇心で。

 
P「と、まあこんなことをしたいとか考えてるわけだからさ、あまり可愛いところを見せないでくれよ? 我慢出来なくなるから」

響「え……?」

P・・・そういうのは口に出した時点でアウトだろ

P「あはは、顔真っ赤じゃないか」

響「ぷ、プロデューサーがエッチなことばっか言うからだぞ」

P「想像しちゃった?」 

響「……ばか!」

 にこにこと腹立たしい笑顔を浮かべるプロデューサーの胸をぽかぽかと叩いてやる。
 
 ほんとにちょっと怖かったんだからな!

 ……うん、でも嬉しかった。
 プロデューサーは待っていてくれる。自分がほんとにプロデューサーを受け入れることが出来るまで。
 
 ちょっとだけ。
 ちょっとだけでもプロデューサーの気持ちに応えられないかな。
 全部を受け入れるのはまだ怖いけど。
 それでもプロデューサーの優しさに応えたいさ。 

響「き……」

P「き?」

響「キスまで、なら……いい、よ?」

P「響、お前……可愛いところを見せるなって言ったばかりなのに……」

 プロデューサーの指が自分の顎を優しく持ち上げ、唇を上に向けさせる。

P「上目遣いでそんなことを言われたら……我慢出来なくなるだろ」

響「ふ……ぅん、っちゅ、んむ……」

 ついばむように何度も自分の唇を求めてくるプロデューサー。
 息吐く間もなく求めてくるものだから、呼吸をするタイミングが分からない。 

エロはいらないと思うのー

響「はぁ……はぁ……プロデューサー、ちょっと苦しいさ」

P「あはは、鼻で息をすればいいじゃないか」

響「しかたないじゃないか。自分、慣れてないんだから……」

P「じゃあいっぱいキスして慣れなくちゃな」

響「あ、待……んん、っふ……ちゅ、む……んぅ!?」

 あ、舌が、入ってえぇ……! 

響「んふ、うぅ……! んぅ~~……っちゅ」 

 かき回しちゃ、だめ、だぞぉ……。 

 プロデューサーの温もりを唇いっぱいに感じる。
 まるで唇に火が着いたみたいに熱い。
 一つに溶けちゃうんじゃないかとさえ思える。
 
 ぼ~っとする頭で唇だけに集中していると、プロデューサーの手が自分の両耳を塞いだ。

響「うんん!? ちゅっ……ふ、く……んむうぅ!」

 くちゅくちゅと口の中をかき回される音が頭の中で鳴り響く。
 いやらしい水音とプロデューサーの手から聞こえる地鳴りのような音が混ぜ合わさり、頭の中までかき回される。

 もう何も考えられない。 
 
 プロデューサー……プロデューサー、プロデューサー……!


 涙が一滴、頬を伝う。
 一瞬、プロデューサーが躊躇う気配が伝わってきたが、自分から唇を求めたらまた応えてくれた。

 自分、ここのところ泣いてばっかりさー。
 嬉し涙だから別にいいけどね。
 きっとこれからもこうやってプロデューサーに泣かされるんだろうなぁ。

響「はぁ……はぁ……プロデューサー……」

P「響……」

響「かなさんどー」

fin

なげやりじゃねww
まぁ乙
次回作も期待してるぜ

言葉責めで響きをいぢめようとしたらご覧の有様に。どうしてこうなった……。

スレ立てを代行してくださった方、保守と支援をしてくださった方々、本当にありがとうございました。

おまけ

─おっぱい談義─

響「ふふふーふ~んふんふふふんふ~ん♪」

春香「おはよー、響ちゃん」

千早「おはよう、我那覇さん」

響「はいさーい、春香、千早」

春香「なに読んでるの?」

響「ファッション雑誌! 美希が読んでたのを借りたんだ」

春香「春物のチェック?」

響「ううん、新しいブラを買おうと思ってさー」

千早「…………………」

春香「気に入ったものとかあったの?」

響「う~ん、自分、こういうのよく分かんないんだー。今までほとんどスポーツブラだったし」

春香「あぁ、響ちゃん、ダンス好きだしスポーツブラの方が楽だよねぇ」

響「うん。だから普通のやつを買おうと思ったんだけど……」

春香「……あー、そうか。響ちゃんってEカップだったっけ?」

響「う、うん」

千早「………………」

春香「サイズが大きくなると可愛いデザインのものが少ないんだよねぇ」

響「そうなんだ。可愛いやつはほとんどインポートもので高いし……うあぁ~、悩むぞ」

千早「ね、ねぇ、我那覇さん」

響「うん? なんだー、千早ー」

千早「我那覇さんはどうしてそんなに、その……胸が大きくなったの?」

響「どうしてって言われても自分でもよく分かんないさー」

春香「気候とか食べ物の違いなのかな?」

響「比べたことないからなぁ。あ、でも……」

千早「でも?」

響「自分、ご飯はいっぱい食べてたなぁ、いっぱい食べてお肉つけて、痩せたいところを運動して絞る! これがバストアップの秘訣さー!

千早「そんな簡単な問題じゃないわ……!」

響「うわわっ!?」

春香「ど、どうしたの千早ちゃん?」

千早「ご、ごめんなさい、つい」

響「でも自分はそんなかんじだったさ。ベリーダンスとかでお腹を鍛えたり」

春香「あのダンスって腰の動きがセクシーだよね」

響「こんな風に」

春香「おぉー」

千早「確かにこれはお腹回りが痩せそうね。でも……」

春香「響ちゃん、パンツ見えちゃってるよ」

響「わわっ」

響「そもそもなんで急にそんなこと訊くさー?」

千早「ち、違うのよ? 胸が大きいのが羨ましいとかじゃなくてね。ただ……そう、歌のためなのよ」

春香「歌のため?」

千早「えぇ、オペラ歌手とか大柄な人が多いじゃない?
   スピーカーのキャビネットが大きい方が低音が豊かに聞こえるのと同じで身体が大きい方が有利なの。
   でも私達はアイドルだから太るのはご法度。だからせめて胸だけでも大きくしようというシンガーとしての────」

 
─十分経過─

 
千早「……というわけなのよ」

春香「そうだね、おっぱいだね」

千早「春香!?」

響「あれ? 身体が大きいと発声が良くなるって迷信じゃなかったっけ? 自分、テレビか何かで見たぞ」

千早「くっ……!」

春香「あとは巨乳の人の胸を揉んでご利益にあやかるなんて噂もあるよね」

千早「巨乳の人の胸を……」

春香「揉む……」

響「ふ、二人とも? なんでそんな目で自分の胸を見てるんだ?」

千早「我那覇さん」

春香「ちょっとだけ! ちょっとだけだから!」

響「えぇえぇぇっ!?」

春香「千早ちゃん!」

千早「了解よ、春香!」

響「あっ!? 千早、な、なんで羽交い絞めにするさー!」

春香「ごめんね響ちゃんごめんね」

響「あ、ちょっ、やめ……ぁん!」

春香「うわゎ、ふかふかだよ、千早ちゃん」

千早「ふかふか……くっ!」

響「だめ、そこ、はぁ……ふあぁ、ん……!」

P「……なーにやってるんだ、お前達」

春香千早響「えっ」

P「えっ」

千早「……プロデューサー、いつからそこに?」

P「千早が胸について力説しているあたりから」

千早「くっ……!」

P「それで、なにしてるんだ?」

春香「え~っと……プロデューサーさんっ、ふかふかですよ! ふかふか!」

P「うん、知ってる」

春香千早「えっ」

P「えっ」

春香千早「………………」

P「………………」

響「う、うわあぁ~んっ!」

P「あ、響! どこに行くんだ、響ー!?」

小鳥「765プロは今日も平和ねー」


終われ

今度こそ本当に終わりです。長時間、お付き合いいただき、ありがとうございました!

次はエロ抜きで書くよ!

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