久「須賀君、悩みとかない?」 京太郎「はい?」 (1000)

・部長と京太郎がぐだぐだしたり
・きっとギャグ
・メタ、パロ多目
・独自解釈、独自設定、キャラ崩壊あり
・安価あり
・不定期更新

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 ある晴れた土曜の午後。

 PCのマウスをクリックする音と、本の頁を捲る音がやたら響いて聞こえる

 そんな二人きりの部室で ――

 咲と染谷先輩は家の用事で休み。

 和と優希は茶葉が切れたとかで買出しに出ている。

 ―― 我が清澄麻雀部の部長は、唐突にそう仰られた。


 どれくらい唐突かと言えば、設定の多くを置き去りにして最終回となった漫画の如し。

 どこだってそこがエデンだから。

 先生の次回作にご期待ください。


 ……いや、あれは残り3話という前兆はあった。

 こちらはそんな前振りなどなかったわけで。

 いきなりすぎて発言の意図が読めない。

京太郎「……いきなりどうしたんですか?」

久「青少年なら悩みの一つや二つはあるんじゃない?」

京太郎「一般論ではそうかもしれませんね」

久「というわけで……」

久「ヒサ姉に相談してみなさい!」


 読んでいた本を閉じ、悪戯っぽく微笑む部長。

 ヒサ姉って何だ、確かに部長は年上であるが。

 才色兼備で犬の苦手な幼馴染のお姉さんでは断じてないはずだ。

 でもちょっと可愛いのが悔しい。


京太郎「……で、その心は?」

久「IHも終って落ち着いたことだし」

久「そういう部員のケアも部長の役割の一つだと思わない?」

久「おかしくはないでしょ?」


 これは雑用雑用アンド雑用だった俺に気を使ってくれているのだろうか?

 いや待て、私見ではあるが、人をからかう事が大好物な部長のことだ。

 何か裏があるのかもしれない。

 軽率にノってはいけない、注意を払うべきだ。

 悪戯好きの魔の手は、思った以上に身近にあって

 いつでも陥れようと手ぐすね引いて待っているのだから。


 ……かといって無視するのは気が引けるが。

京太郎「それはそうでしょうけど……」

京太郎「いきなり過ぎる気がするんですが、それは」


 部長が先ほど読んでいた本の背表紙に書かれたタイトルがちらりと目に入る。

 『悩み相談、ときどき、謎解き』

 ……なるほど、本に影響されたのか。


久「正直に言うと、暇なのよ」

京太郎「色々と台無しですね」

久「いいから相談しなさい」


 何故かエヘンという擬音が聞こえんばかりに胸を張る部長。

 胸部を強調するなら、もう少しおもちをお持ちな人にして欲しい。

 和とか和とか和とか。


京太郎「ネト麻も一区切り付いたんで、暇潰しに付き合うのはいいすけど」

京太郎「いきなり悩みを相談しろと言われても……」

久「須賀君」

久「こういう時は合わせてあげないと、女の子にモテないわよ?」

京太郎「すっごい理不尽な事を言われてる気がします」


久「もう……仕方ないわね」

久「質問形式でいきましょう」

久「そうね……」


久「授業に付いていけないとかはない?」

久「留年とかしたら目も当てられないわよ、部としての体裁もあるし」

京太郎「部長の中で俺はそういうキャラなんすか!?」

久「高校生で髪を金色に染めるとか、現実なら不良の証だし……」

京太郎「これは地毛です!」

京太郎「現実とか言い出したら和とかどうなるんすか!?」

久「これはこれ、それはそれよ」

京太郎「横暴だ!」
 

京太郎「……真面目に答えますけど」

京太郎「勉強で特に困ってるとかはないすね」

京太郎「苦手な教科はありますけど、赤点を取ったりするほどじゃないです」

久「なるほどーなるほどー」

久「面白みの欠片もないわね」

京太郎「真面目に答えたのにこの扱い、何なの」

久「まあ、どうしても解らない所があればヒサ姉さんが教えてあげてもいいのよ?」

京太郎「そのネタまた引っ張るんだー」

久「お礼はしてもらうけどね」

京太郎「高くつきそうなので謹んでお断りします」

久「あら、精々美味しい喫茶店でご馳走してもらうとかその程度よ?」

久「美人なお姉さんとデートできるんだからむしろ役得! やったね京ちゃん!」

京太郎「キャラ崩し過ぎぃ!」

京太郎「そしてそれ自分で言うのはどうなんですかね」


久「じゃあ次」

久「人間関係で困ってるとかない?」

京太郎「強いて言うなら、今俺の目の前にいる人をどうにかしたいです」


久「えっ……」

久「須賀君、私の事そういう目で見てたの……」

久「このケダモノっ! ヒトデナシっ!」


京太郎「ウェイ、ウェイ、ウェイ」

京太郎「そういう意味じゃないですから!」

久「……でも乱暴するんでしょ?」

京太郎「同人みたいにロッカーでしませんからぁ!」

京太郎「っていうかしたら犯罪ですよね!?」

久「男は狼なのよ~ 気をつけなさい♪」

京太郎「……それ理解してくれる人いるんすかね」

久「歌は気にしちゃ駄目よ」


久「もう!」

久「須賀君が茶化すから悩み相談にならないじゃない」

京太郎「えっ俺のせい!?」

久「……?」

京太郎「……その『何当たり前の事言ってるのこの子?』っていう目はやめて下さい」

京太郎「なんかもう、ぐだぐだですね」

久「須賀君サイドに責任があるわ」


京太郎「……あー、そういえばありました、悩み」

久「やっぱりあるんじゃない」

久「で、どんな悩みなのかしら?」

京太郎「それはですね――」


【安価】京太郎の悩み
↓2

※エロ、グロ、著しく道徳に反する等
 流石これは洒落にならないと判断したものは最安価
(ex:実は女性の手首を切り落として持ち運びたい等々)

ついでに煙草休憩


京太郎「タコス造りのッ! 腕前がッ! 向上しないんですッッ!」

久「あー、うん」

久「そうなんだ」

京太郎「なんだか投げ槍ひどい」

久「とりあえず、何もそんな気合を入れて言わなくても良いとい思うのだけれど」

京太郎「気合も入りますよ!」

京太郎「俺の中では重要な課題です!」

京太郎「至高か究極を目指してこその料理人!」

久「いや、あなた料理人じゃないからね」

久「……それって、やっぱり優希の為なのかしら」

京太郎「あー、それもありますね」

京太郎「やっぱり、美味しそうに食べてくれると、作り甲斐がありますから」

久「それ『も』?」


京太郎「……実はタコスの作り方とかハギヨシさんにメールでアドバイスをもらってて」

京太郎「折角そこまでしてもらってるのに進歩がないなんて恥ずかしいというか」

久「龍門渕の執事さん――か、そういえば仲が良いみたいね」

京太郎「仲が良いというか、憧れの人というか……」

京太郎「だって……ハギヨシさん……最高だから」

久「もっと大きな声でとか言わないからね?」

久「そして、その言い回しは色々と誤解を招きそうだからいけないわ、須賀君」


京太郎「とにかく!」

京太郎「ハギヨシさんの弟子として師匠の面子を潰すわけにはいかないんです!」

久「うわー、こんなに熱い須賀君初めて見る」


京太郎「どうしたらいいと思います?」

久「……解決を図るには、やっぱり自分より腕が上の人に教えを請うしかないんじゃないかしら」

久「ハギヨシさんは須賀君より美味しく作れるのよね?」

久「メールで、と言っていたけれど試食して直接助言をしてもらったりとかは――」

京太郎「ないですね。ハギヨシさんの仕事もありますし」

久「なら話は簡単ね、休日にでも約束して直接会ってアドバイスを仰ぎなさい」

久「少なくともメールでのやり取りよりは的確に教えてくれるはずよ?」


京太郎「……」

久「……どうしたの?」


京太郎「直接会うとか恥ずかしいですし……」

久「乙女か!」

久「どんだけ好きなの!? やっぱりそっちの趣味なの!?」

+++



ドア「ガラッ」


和「……二人とも、部室で何をしてるんですか?」

和「須賀君の叫び声が聞こえてましたよ」

京太郎「あ、和、おかえり」

久「おかえり和」

和「はい、ただいまです」

和「それで一体何があったんですか?」

久「そうね、須賀君の魂の叫びを聞いてたというか……」

和「……意味が分かりません」

久「私も言ってて良くわからなくなったわ」


京太郎「まあ、なんというか部長に悩みを聞いてもらってたんだ」

和「悩み、ですか?」

久「そうそう、ヒサ姉のお悩み相談」

京太郎「部長、気に入ったんですかそのネタ?」

久「和も悩んでる事があったりしない?」

和「うーん、そうですね――」


と、まあこんな感じでグダグダとお悩み相談していくスレ
メインは部長と京太郎、地文は疲れたのでたまにしかしないはず
予防線を張ってるけれどもなるだけ安価部分は取り込む予定
本日分は終わりー


【安価】和の悩み
↓3

※エロ、グロ、著しく道徳に反する等
流石にこれは洒落にならないと判断したものは最安価

胸がまた大きくなった

>>24
和の悩み:胸がまた大きくなった


和「……」

久「……」

京太郎「……」

和「ええっと…そのですね…」

久「どうしたの?」

和「……その……話しづらいというか」


 チラチラとこちらに視線を送り、頬を赤らめもじもじとする和。


 かわいい、お持ち帰りしたい、おもちだけに。

 嗚呼、そうか――

 かわいいという概念が電子の世界へ顕現した存在、それがのどっちなんだな。

 そんな世界の真理に辿り着く。

 片腕と片足を持っていかれても悔いはない。

 
 そう言えば、和は小学生の頃からすばらなおもちの持ち主だったらしいと咲から聞いた。

 小五ロリ、しかも巨乳、まさに悟り。


 ……しかし、そんなに恥ずかしい悩みなのだろうか。

 清楚を絵に描いたような和であるが。

 もしかして、あれな感じの悩みだったりするんだろうか。

 ……うへへへへ。


久「……須賀君、なんだか顔がだらしないことになってるわよ」


 その時、圧倒的閃き。

 ――京太郎に電流走る。

 それほどの閃光、光が、京太郎の脳を刺す――


 年頃の女の子の悩み相談と言えば恋愛事(京太郎偏見)
 
 そして、こちらを見る和のどこか潤んだ視線(京太郎主観)

 想い人に言いたくても言い出せない乙女心(京太郎妄想)

 
 これらが意味するところは……








 和は俺に惚れている(確信)

 一体いつフラグがっ……!?

 もしかして、あの時かっ……!?

 脳内でざわ……ざわ…という擬音が響く。


 と、いうことは以前、家でネト麻をしながら咲に『和って俺に対して脈があると思う?』と聞いたところ

 『……京ちゃんが今打ってる局で、地和を和了る可能性位にはあるんじゃないかな』

 ――その時、配牌で聴牌はしていない――との、つっけんどんな答えが返ってきたが

 あれは間違いだったらしい。


久「……須賀君、今度はなんだか鼻と顎が尖って見えるんだけど大丈夫?」


京太郎「……すまん、和、すぐ気付かなくて」

久「二度も無視された!?」

京太郎「俺が席を外せばいいんだよな?」


 須賀京太郎はクールに去るぜ。

 女の子に恥をかかせるのは紳士じゃないからな。


和「あっはい、ありがとうございます」

久「なんだか色々と勘違いしてる気がするのは、私の気のせいかしら……」


 何を言ってるんです部長、既に条件はクリアされたわけで。

 あとはこのルートをただひたすら突っ走るのみです。


京太郎「部長、ちょっと時間を潰してきます」

久「……そうしてちょうだい」















 ちなみに、後日こっそり部長に教えてもらおうとして。

 胸がまた大きくなったという悩みであったのと

 ――正直興奮した


 『須賀君の胸への視線をどうにかできないでしょうか?』

 と、割りと切実に相談された事を伝えられ――

 『本人に直接、注意した方が早いじゃない? だから言うけど……』

 『女の子はそういう視線に敏感なんだから気をつけたほうがいいわ、あんまり酷いと嫌われるわよ?』

 とは部長の言――


 かなり本気で死にたくなったのは別の話である。


■□■

久「それで悩みというのは?」

和「深刻な悩みというわけじゃないのですけど……」

久「ふむふむ」

和「あの……なんていうか……その……」

和「恥ずかしい話ですけど……胸、また大きくなっちゃいまして……」

久「……」


和「……何でそこで沈黙するんでしょうか?」

久「……いえね、ちょっと絶句しちゃって」

久「もしかして咲と優希が成長する余地を吸って育ってるんじゃ――」

和「そんなオカルトありえません!」

久「そのまま育つと牌を胸で倒してチョンボしちゃったりするんじゃないかしら?」

久「パイだけに」

和「上手くないうえにセクハラです! 訴えますよ」


久「根本的に解決を図るには……外科手術?」

和「流石にそこまでするつもりはないです……」

久「なら打つ手はないわね」

和「他人事ですね」

久「他人事だもの、しかも人によっては羨ましがる類の悩みだわ」

和「…… 揺れると痛いですし、肩凝りも酷いので良い事はないです……」

和「それに……その……男性の視線が……」

久「あー、それは、ねえ」

和「見られると恥ずかしいですし、辛いです……」


久「……須賀君とかどうなの?」

和「……不躾には見てこない分、不快と言うほどではないですが」

和「たまに視線を感じますね……できればやめて欲しいです……」

久「ふむ、その点だけなら改善できるわね」

和「?」


久「それは私に任せなさい」

和「良く分かりませんが、ありがとうございます」

+++


地の文はたまにと言ったのが早速嘘になった

そして久がボケ、京太郎ツッコミの予定だったのにおかしい、何故


即興は難しい(確信)
そうだ、書き溜め、しよう。ということで

【安価】お悩み相談をする人

※長野在住、原作キャラ、宮永咲以外
※無効の場合1個ズレ

↓1

↓2

↓3

優希

カツ丼

>>37 衣
>>39 優季
>>40 カツ丼さん

個別で悩み安価なんですが、↓1でいいすか?

変換がアホだった訴訟

>>37 衣
>>39 優希
>>40 カツ丼さん

取り敢えず安価

【安価】天江衣の悩み
↓1

※エロ、グロ、著しく道徳に反する等
流石にこれは洒落にならないと判断したものは再安価

連続okなら辛いものが好きだが凄く苦手なのがつらい

>>43 天江衣の悩み:連続okなら辛いものが好きだが凄く苦手なのがつらい

【安価】片岡優希の悩み
↓1

※エロ、グロ、著しく道徳に反する等
流石にこれは洒落にならないと判断したものは再安価

優希なら恋愛相談
>>43無効ならみんなが子ども扱いしてくる

>>45 片岡優希の悩み:恋愛相談

【安価】カツ丼さんの悩み
↓1

※エロ、グロ、著しく道徳に反する等
流石にこれは洒落にならないと判断したものは再安価

カツ丼に飽きてきた

>>47 カツ丼さんの悩み:カツ丼に飽きてきた

……カツ丼さんのレゾンデートルが消失する可能性が微レ存?

まとめ
天江衣の悩み:連続okなら辛いものが好きだが凄く苦手なのがつらい
片岡優希の悩み:恋愛相談
カツ丼さんの悩み:カツ丼に飽きてきた

唐突だけどコンマ判定

片岡優希の恋愛観
01~50 友達に噂とかされると恥ずかしいし…
51~98 そら押せ押せよ
ゾロ目 まさかの……

失礼↓1

任せな

>>52
片岡優希の恋愛観:【20】友達に噂とかされると恥ずかしいし…

書き溜めま
思ったよりカオスなのが来ないのはバファリンの半分なんだろうか?


■□■

優希「おっ、京太郎、出迎えご苦労!」

京太郎「……」


京太郎(……まさか、和がいつのまにか俺に惚れてるとは)

京太郎(正直、読めなかった……この俺の目を持ってしても)

京太郎(危うく一生の不覚になるところだったぜ)


優希「そのご主人様に対する心がけは良しだじぇ、褒めてつかわす」

京太郎(嫌われてるわけじゃないのは分かってたが……)

京太郎(なんとなく良いとこ友達止まりかなー、とか)

京太郎(どっかの総長兼生徒会長とズドン巫女みたいにフラグが立ってるわけないよなー、とか)

京太郎(そんな風に思ってた自分を、諦めたらそこで試合終了だぜ? って叱ってやりたい)


優希「……京太郎?」

京太郎(つーことはあれか……)

京太郎(このまま順当にいけば二人は男女交際、つまり彼氏彼女の事情に!?)


優希「……」

京太郎(……そういう関係になれば、当然だが大切にするつもりではある)

京太郎(勿論遊びだけの関係なんてもっての外だ)

京太郎(しかし、燃え上がるパッション、理屈では止められない二人……)

京太郎(そうなれば清純異性交友が……)

京太郎(不純異性交遊になんてことも、なきにしもあらずなわけで)

京太郎(……)

京太郎(……)

京太郎(……アカン、鼻血出そう)

京太郎(……)

京太郎(……)

京太郎(……きっと幸せにするからな)


優希「おい京太郎! 私を無視するな!」

京太郎「…はっ!?」

京太郎「優希いつの間に」

優希「ちょっと前からいたじぇ」


優希「なんか一人で百面相してたじぇ、京太郎」

優希「最後の方は涙ぐんでたし……」

優希「ぶっちゃけかなりキモかったじょ」

京太郎「キ、キモいって……まあ、ちょっと考え事をしててな」

優希「考え事? 何についてだ?」

京太郎「そうだな――」

京太郎「人生……かな……」


優希「……京太郎が壊れたじぇ、麻雀のしすぎか?」

京太郎「いや壊れてないから! そして叩くな! テレビじゃないから!」


優希「だいたい、ご主人様を無視するなんて犬として失格だじょ?」

京太郎「犬って言うな……ったくこのチビスケめ」

優希「うるしゃい、うるしゃい!」

優希「って、そんなに乱暴に頭を撫でるな! セットが崩れるだろ!」



ドア「ガラッ」


久「もう、部室の外で何やってるのよ」

和「ゆーきの大きな声が丸聞こえでしたよ……」


優希「のどちゃーん助けて、京太郎がいじめる!」

和「きゃっ!」

和「もう……いきなり抱きつかないで下さい、ゆーき」


京太郎(……あれだな)

京太郎(女の子同士だと、あーいうスキンシップも許されるから羨ましいぜ)

京太郎(――いや、きっと俺もあんなことやそんなことが許される立場に……!)


和「なんだか寒気が」

優希「のどちゃん風邪か?」

久「10月とはいえ、気をつけないといけないわよ?」


京太郎「部長、そういえば相談の方は」

久「ええ、終わったわ」

久「無事お悩み解決! ぶい!」

和「……解決してないです」


優希「悩み?」

和「部長に悩みを聞いてもらってたんです」

久「久さんのお悩み相談室、ときどき、謎解きよ」

京太郎「謎解きもするつもりなんですか、プロットにないんですが」

久「プロットは投げ捨てるものよ、須賀君」


優希「のどちゃんの悩み……」

優希「!」

優希「きっと、おっぱいのことだじぇ!」

和「ふぇっ」

京太郎「えっ」

和「ゆ、ゆーき……女の子がそんな大きな声で……」

優希「あれ、違った? のどちゃんセンサーが鈍ったか?」

和「そ、その、なんというか……」

和「部長! 意味ありげに笑ってないで助けてください!」

久「仕方ないわね……この話題はここまで、はい! やめやめ」


久「そうね……優希は悩みとかない?」

久「今なら出血大サービス格安で相談を承るわ!」

京太郎「いつから相談料を取る流れに」


優希「悩み……」

和「……あるんですね」

京太郎「元気印のお前にしては意外だな」


優希「えっと……その……でも……」

久「……ああ」

久「須賀君、時間を潰してきて頂戴」

京太郎「えっ」

久「二度は言わないわよ? いい?」

京太郎「アッハイ」

久「ちなみに部室に入ってきたり、盗み聞きとかしたら容赦なく潰すから」

京太郎「それ部長の芸風じゃないですよね!」

■□■

思ったより優希が動かしにくい、かわいいのに何故、一旦QK


久「邪魔者は追い払ったし、一安心ね」


 からかうように言い、ウィンク一つする部長。

 こちらの意図をすぐに汲んでくれたのが素直にありがたいと思う。


久「……そうだ、和、喉が渇いたし、悪いけど何か飲み物を三人分入れてくれない?」

和「はい……セイロンのアイスを作り置きしてましたね」

和「お茶うけはどうしましょうか?」

久「任せるわ」


久「さて……」

久(優希、言いにくければ無理に言わなくていいわよ)

 
 ――そう耳打ちされる。

 ああ……この人はお見通しなんだ。

 
 そういえば、一体いつだっただろうか。

 はっきりと自覚したのは……

 多分、始まりは何でもないような、どこにでも有るようなありふれた事で。

 いつの間にか、側にいていつも笑わせてて欲しいって。

 欲を言えばきりがなくて。
 
 望みは言わない――いや違うか……言えない臆病な私だけれど。

 きっと今の私には、あいつ以上はいないんだろう。


和「……ゆーき、悩みというのは……」


 のどちゃんが紅茶を手渡してくれながら、どこか困った表情で問いかけてくる。

 ……心配かけちゃったかな。


優希「その……私って……ほら……女の子らしくないから……」

和「そんな事はありません、ゆーきは可愛くて女の子らしいです、そう決まっています」


  ……一刀両断された。

  即答すぎてちょっと怖いじょ、のどちゃん。


和「……まさか……誰かがそんな事を?」

優希「えっと、そういうわけじゃなくて私ってお子様体型だし……」

和「そんな事でゆーきの魅力が損なうわけじゃありません」

久「まあまあ……『例えばだけど』将来、好きな人が出来たとして」

久「その人の好みじゃなかったらどうしよう? みたいな漠然とした不安って事よね?」


 部長が助け舟をだしてくれる。

 でも本当はそれだけじゃない。

 あいつ自身は気付いてないかもしれないけど。

 きっとあいつには急に恋しくなったり、焼き餅を妬いたり。

 特別をたくさんくれて、大切にしてあげたい人がいるだろうから。

 ……でも、そうだからこそ輝いて見えたのかもしれない。


久「……うん、これあくまで一般論だけど」

久「そういう基準だけで選ぶ人ばかりではないわね」

久「……あと、なんとなくだけど貴女が好きになる人はそういう人じゃない気がするわ」

久「普通なら分が悪く、根拠なんてない事だけど……」

久「それでいつも勝っちゃう私を信じてみなさい?」


 この声が枯れるくらい好きといえばいいのだろうか。

 小さい光のような恋心に気づいて欲しい。

 ……でも「ゆうき」とは名ばかりで臆病なままの私では

 口に出すこともなく、伝わることもなく。

 きっと叶うこともなくて、終わることもないんだろう。


久「あと…もし、そんな理由で貴女と振るやつがいたら――」

久「また相談しなさい、私が殴ってあげるから」

和「そうですよ、その殴るというのはどうかと思いますが……」

和「困ったらいつでも相談して下さい」

和「ゆーきは、私の大切な友達なんですから……」

優希「……」

久「……」

和「……」


優希「……てい」

和「きゃっ! だからいきなり抱き着くのは……」

優希「良いではないか良いではないか」

和「ちょっと、ゆ、ゆーき、そ、そんなところ……」

優希「のどちゃんパワー充電だじぇ」

優希「分けてもらえば、私もばいんばいんになれるかもしれないしな!」


久「……ま、いつも通りって事ね」

久「仲良き事は素晴らしきかな、平和で結構!」

和「私の今の状況は素晴らしくも平和でもないです!」


 そんな感じできゃっきゃ、うふふとか。

 紅茶とお茶菓子を片手にガールズトークめいたアトモスフィアで

 小一時間経ったりがあったりなかったりとか。

■□■


京太郎(……いつまで時間を潰せばいいんだろうか)

京太郎(忘れられてないよな……)

京太郎(俺、部室に戻れないんだし、まさかな……)


 ついでに、そんな感じで一人時間を潰す京太郎がいたとかいなかったとか。 




                        【清澄高校麻雀部のある日の午後編】 ――カンッ

乙女だと超難産だった訴訟
なんか和が優希好きすぎな気がするが、高校を選ぶ基準が多分優希だったって事で一つ
本日分終

とりあえずプロットという名の思いつきの都合上安価

【安価】染谷まこの悩み
↓1

※エロ、グロ、著しく道徳に反する等
流石にこれは洒落にならないと判断したものは再安価

お調子者の3年と1年のコンビに手を焼いてる

>>70
染谷まこの悩み:お調子者の3年と1年のコンビに手を焼いてる

今更ながらギャグ部分でネタ入れ過ぎな感が……寝ますー

ちょっと迷ったのでコンマ判定

京太郎と麻雀についてのあれこれ
1~20 清澄の看板に泥を塗ってしまった……
21~80 京太郎「麻雀って楽しいよな!」マホ「ですよね!」
81~99 意地があんだよ!男の子にはなあ!!
00 其れは――悪鬼の物語、英雄を志す者は無用である

↓1

意地が

>>75
京太郎と麻雀についてのあれこれ:【79】京太郎「麻雀って楽しいよな!」マホ「ですよね!」
麻雀大好き!っと

京太郎「出来る出来ないが問題じゃない……やるんだよ!!」や

咲「邪悪!断つべし!」 京太郎「正義――断つべし!」なんてなかった

すいません再優先事項が出来たので多分夜から

優先事項 もしかして:パニキ

>>86
DIO様に対するエンヤ婆と同じ位に敬愛してます(肉の芽済み)


 今、俺こと須賀京太郎は染谷先輩の実家でもある、雀荘『roof-top』で麻雀を打っている。

 IHが終わったのを機に、偶に染谷先輩に頼んで麻雀の練習がてらにバイトをさせてもらっているのである。


 卓に牌を置く音が淡々と響く。

 同卓している面子は――

 『まくりの女王』『Reversal Queen』、藤田靖子プロ。

 そして全国区でも屈指の魔物級、龍門渕高校エース、『牌に愛された子』、天江衣。


 ……どうしてこうなったんだっけ。

 『roof-top』に着いていつも通りバイト用の執事服に着替えて――

 何故か、メイド服着用の部長もroof-topにいて――

 何故か、藤田プロと天江さんが一緒に来店して――

 『須賀君、こういうのも経験だし……半荘いっとくぅ?』なんて軽いノリの部長の発言もあって――

 『いいっすね~、いっちょ御指南よろしくお願いします』なんてほいほい答えちゃったわけで――

 ああ、俺のせいか……


 現在の状況はオーラス、トップ目は天江さん。

 次いで離された位置で2位の部長、僅差の3位の藤田プロ。

 ――俺は遠く離されたラス目。


 それぞれの一位条件は……

 部長――トップ目跳満直撃、倍満自摸以上。

 藤田プロ――トップ目満貫直撃、跳満自摸、ラス親に付き連荘を狙う可能性もある。

 そして俺――トップ目へ役満直……


 うん! 無理! というか焼き鳥である。ノーホーラである。

 むしろ一度も聴牌すら出来きていない。なにこれ、ひどい。


 ちなみに起親の天江さんから開幕早々にダマで跳満の直撃を食らった。

 ……トリプル役満でミンチじゃなかった事を喜ぶべきなのだろうか。


 化物を倒すのはいつだって人間だ、という言葉はあるものの……

 それを成せるのは、きっと……

 原石から専用の器具を使うことなく宝石を削りだし研磨するかの如き

 気の遠くなるような研鑽の上で結実した技術と

 戦況を整え、在るかどかも分からない機をただ只管待ち

 それを見逃さない狂気にも似た精神力も持つような人間であり。

 そこから更に、そう更に、運という要素が噛み合って初めて起こりえる事なのだろう。


 ――もしくは人間ではあるものの、ある意味化物と同種の、無頼の異端か。

 そのどちらにも当て嵌らない俺には関係ない話ではある。


 まあ、きっと焼き鳥に関しては俺の打ち回しが悪かったのだろう。

 事実、藤田プロと部長は場況を読み、鳴きを駆使し数回細かい和了を拾っている。

 ……後で部長に場況判断とか質問しとこう。


 そんなオーラス、藤田プロの親での最終局面、煮詰まった終盤戦。
 
 そこで立直――と天江さんの声が上がった。

 なんかハマーン様ばりのプレッシャーというか……

 物理的な圧力すら伴うと錯覚するかのような威圧感というか……

 色々と怖いんですが、それは。

 咲は良く勝てたな。


 とりあえず天江さんの唯一の現物で、壁でもある二筒対子を一枚切って凌ぐ。

 山も残り僅かで、すわ、このままでは海底コースかと思ったのも束の間。

 槓――と晒される藤田プロの手中の東4枚。


 海底潰しか……

 あ、槓ドラもろ乗りした。

 藤田プロもその悪役っぽい笑顔が凄い怖いのでやめて下さい。

 嶺上開花は……無し。


 藤田プロ、部長共に自摸切り。

 ここで俺が取るべき選択肢は……ベタ降り。
 


 もう一枚の二筒に手を掛け――打つ。


 その結果。

 ロン――と藤田プロの和了宣言で終局となった。

     ・
     ・
     ・


京太郎「いやー、やっぱりプロは凄いっすね。天江さんもですけど」

久「良い経験になったでしょ」

靖子「天江との以前の対局の名誉挽回にはなったかな?」

衣「ころもは今回、本調子ではなかったからな、満月の時はもっと凄いぞ!」

靖子「ふむ……機会があればまた打つか、まあ負ける気はないが」

衣「大言壮語……返り討ちにしてくれる……って撫でるな! 子供扱いするな!」


京太郎「一つ教えて欲しいのが最後の和了なんですが」

靖子「ああ、あれか」

京太郎「飛び無しルールで一度見逃す意味があったのかなと」

靖子「ふむ……須賀君、目線や仕草にまで完全に気を配れとは言わないが……」

靖子「理牌位は気を使ったほうがいい」

京太郎「あー、もしかして癖があります?」

靖子「ああ、まず現物を切り出す時に対子から落として回る局面が多いんだが」

靖子「更にそれを理牌で端に置く癖があるぞ」

京太郎「うっす、注意します」

久「靖子、凄いじゃないプロみたい」

靖子「いやプロだからな私」

靖子「こういった麻雀での悩みなんかは良く聞かれるからな」

靖子「後進の指導位は出来てこそ――プロだろう?」

ごめミスに気付いた

×槓――と晒される藤田プロの手中の東4枚。
○槓――と晒される自摸牌の東と藤田プロの手中の東3枚。

アカン説明した気になってしてないのがもう1個

×ロン――と藤田プロの和了宣言で終局となった。
○ロン――と藤田プロの和了宣言と24000の申告で終局となった。
 


久「ああ、そういえば悩みといえば……」

京太郎「……部長、まさかここでもするんですか?」

久「当然よスレの趣旨だもの、ということで久さんのお悩み相談室!」

京太郎「力技で強引に持って行きましたね」

久「須賀君、ギャグでの細かい事は気にしちゃ駄目よ」


久「というわけで、靖子何かない?」

靖子「悩みか……いきなりだな」

靖子「そうだな……ああ……最近なんだかカツ丼に飽きてきてな」

衣「えっ」

久「えっ」

京太郎「えっ」

靖子「何この反応」


久「そんな……靖子がカツ丼に飽きるなんて……」

久「これは由々しき事態ね……靖子の存在自体が消滅しかねないわ」

衣「驚天動地、奇々怪々……天変地異の前触れか?」

京太郎「藤田プロ……味覚が変わるような衝撃的な事でもあったんですか?」

京太郎「例えば小鍛治プロに麻雀を楽しまされたとか?」

靖子「お前達にとって、私がカツ丼に飽きるのはそこまでのことなのか……」


京太郎「話はわかりました、一週間待って下さい……」

京太郎「俺が本当のカツ丼をお見せしますよ!」

靖子「私、来週長野にはいないんだが」

靖子「というか一週間って一体何を作るつもりなんだ?」

靖子「究極のメニュー的なサムシングなのか?」


久「須賀君」

久「それでは根本的な解決にならないわ」

久「例え、その場しのぎで究極のカツ丼を作ったとしても……」

久「普段から食べられるわけじゃないのよ」

久「靖子の主食である、ありふれたオーソドックスなカツ丼に飽きてるなら解決にならない……」

靖子「待て、別に毎日カツ丼を食べているわけじゃないからな」

久「えっ」

衣「えっ」

京太郎「えっ」

靖子「お前達が私をどういう目で見てるか良く分かった、特に久と天江、後で覚えてろよ」


久「とにかく……飽きるっていうことはその味に慣れてしまっているという事……」

久「それを解決する手段の一つは様々な味のバリエーション……」

京太郎「……確かに一理あります、ただそれはどちらかといえば……」

久「ええ、邪道ではあるけど……この際、背に腹は変えられないわ」

久「つまり――トッピングっていうのはどうかしら!」

京太郎「部長……!」


京太郎「真面目に悩み相談を受ける気があったんですね」

京太郎「まずそこに驚愕しましたよ、俺」

久「貴方は私の事をどういう目で見てるのかしら? 虎口拳決めるわよ?」

京太郎「虎口拳は流石に洒落にならないので勘弁して下さい」


久「まったく……話の腰が折れちゃったじゃない」

久「とにかくトッピングを考えた時、こういう場合にチョイスすべきは……」

久「一般的に広く愛され飽きが来ないもの!」



久「……まこ、用意してくれてる?」

まこ「ハァ……いきなりメールを寄越したと思ったら……」

まこ「ちなみに出前時間はキンクリしたけえ、気にするな」

京太郎「染谷先輩ってすごい」



久「たったひとつの冴えたやり方……これで、どう!?」


 それは――

 カツ丼というには余りにも見た目からしてかけ離れていた。

 うず高く、重厚に盛られ、そして大雑把な『ソレ』。

 それは、もはやマヨネーズ丼だった。


京太郎「」

衣「」 

靖子「……何これ?」



久「遠慮せずに食べていいわよ?」

靖子「いやいや、そうじゃなくて……」


靖子「久……お前、マヨネーズか私に恨みでもあるのか?」

久「カツ丼竹井スペシャルよ」

靖子「聞いてないから、そしてこんなスペシャルは必要としてないから」

京太郎「凄いですね部長、カツ丼をカツ丼以外の何かに昇華するなんて」

久「美味しいのに……」


 注:カツ丼竹井スペシャルは収録中、スタッフ(久)がおいしくいただきました。

一旦QK


久「さて無事、靖子の悩みも解決したことだし」

靖子「解決したのか?」

京太郎「ツッコんだら負けです、藤田プロ」


久「天江さんは悩みとかない?」

京太郎「無理に相手をしなくていいですからね、天江さん」

衣「そうなのか?」

久「……須賀君ってもしかしてロリコン?」

京太郎「……は?」


京太郎「いや、なんで?」

京太郎「意味が分からない」


久「キャラが崩れてるわよ……そういえばマホちゃんにも凄く優しかったような」

京太郎「ウェイ、ウェイ、ウェイ」

京太郎「誤解です!」

衣「ろりこんってなんだ? 須賀がそうなのか?」

靖子「天江は知らなくて良い事だ」

衣「後でハギヨシに聞いてみよう……」

京太郎「それだけはらめぇ!」


久「で、どう? 悩みはある?」

衣「悩みはだな……ある」

衣「実は辛いものが好きなのだが……」

衣「あのヒリヒリするのが苦手でつらいのだ」

京太郎「あー、ちょっとわかります」

久「辛いってのと痛みは密接な関係にあるから難しいわね」

京太郎「……そうですね、例えば唐辛子なら辛味成分のカプサイシンってのあって」

京太郎「カプサイシンは受容体活性化チャネルのひとつであるTRPV1を――」

久「長くなるならやめてね須賀君」

京太郎「あっはい」


久「そうね、解決策の一つとしては……」

久「舌を油膜で包むことで適度に辛さを緩和するっていうのがあるわ」


久「つまり、これよ……マヨネーズ!」

京太郎「ちょっとマヨネーズ推し杉内」

久「実は私、マヨラー星のお姫様なのよ」

京太郎「そんな設定原作にはないです」


衣「マヨネーズをかければいいのか?」

久「そうよ、マヨネーズは万能調味料なんだから」

久「お悩み解決! ぶい!」

京太郎「洗脳しようとしないで下さい! なんでもかけたら良いってものじゃないですからね!」







久「あ、一応マヨネーズで辛さを緩和するっていうのは嘘じゃないからね」

久「本当はもっと詳しく他の方面でも調べて真面目に織り交ぜようとようとしたんだけど……」

久「ギャグに出来そうになかった>>1の技量不足のせいだから御免なさいね」

久「>>1個人的にはわさびやからしの辛さが苦手って人と唐辛子の辛さが苦手って人で別れると思うのと」

久「後者なら辛さ=痛さに近いから出来るだけ調整するしかないかなーとか思ってるみたいよ」

京太郎「今まで一番メタいです部長」

+++


おまけ:roof-topのバイト終了後


まこ「ついでじゃけえ、わしの悩みも聞いてくれるか?」

久「あら……まこも悩みがあるの?」

まこ「お調子者の三年と一年のコンビに手を焼いてるんじゃ」

久「まぁ……一体誰? まこを悩まさせるなんて」

京太郎「染谷先輩を困らせるなんて相当ですね」


まこ「われらじゃ」

京太郎「はい?」

久「『われ』さんと『ら』さん?」


まこ「だから、久と京太郎じゃ」

久「……」

京太郎「……」

まこ「……」

久「……」

京太郎「……」


久「須賀君……まこの悩みなんてなかった、いいわね?」

京太郎「アッハイ」

まこ「おい!」



 その後、まこさんに懇々と説教される二人がいたとかいなかったとか。
 
 二人がそれで普段の行動やら何やらを改めるかどうかは

 大星様だけが知ってたり、知らなかったり。

 

                         【久さんのお悩み相談室 in roof-top編】――カンッ

よし清澄メンバー全員終!

ここに2つのルートがあるじゃろ?
【安価】※順番が変わるだけ
1 キャップ、池田編
2 龍門渕編

↓1

1

>>113の選択:【1】 キャップ、池田編
把握
次悩み安価

【安価】池田華菜の悩み
↓1

【安価】福路美穂子の悩み
↓2

※エロ、グロ、著しく道徳に反する等
流石にこれは洒落にならないと判断したものは再安価

マタタビで酔う……実は猫科のグリードか何か?
いやカザリは酔うかどうか分からないけど

そして男性が苦手、男性が苦手(意味深)どっちだろ

困ったときのコンマ判定
キャプテンについて
1~49 ちょっと百合ームコロッケな感じかなって
50~98 みっぽは天使だろ、いい加減にしろ(憤慨)
ゾロ目 キャプテン!はやく病院に帰るし!

↓1

>>118キャプテンについて:【03】ちょっと百合ームコロッケな感じかなって
把握

仕事なので寝ますー

ちょい実験


 書店で本を購入した帰り道。

 ――念の為に言うと麻雀の教本である、決してあれな本ではない。

 偶には、いつもと違う道を通ってみるかと思い立ち

 ちょっとした探検気分で歩いていると、知らない喫茶店が目に入った。

 扉の傍に置かれた鉢に、あまり見慣れない小さい花が咲いているのが印象的だ。

 
 からんからんとドアベルが小気味良い音を立てる。

 まず目に入ったのは壁際に置かれた大きな振り子の時計。

 次いで棚に並んだ様々な珈琲カップ。


 ――咲はこういう落ち着いた雰囲気の洒落た店が好きそうだ。

 ミルクと砂糖を多めに入れた珈琲か、紅茶を片手に黙々と持ってきた本を読む気がする。

 機会があれば誘うか――


 と、どうでもいいことを考えつつ、カウンター席に着こうとした矢先

 店内の奥の二人がけテーブルに、一人座っている先客と目が合った。


「あら?須賀君」

「あ、部長」


 互いを確認するような声が重なる。

 ……どういう偶然だろうか。

 流石に無視をして、そのままカウンターに座る選択肢は無い。

 マスターへ珈琲を一つ注文し、部長の向かいの席へ。

 テーブルに置かれた珈琲の入ったカップと切り分けられた食べかけの焼き林檎。


「須賀君もこういう店に来るんだ」


 確かに似合わない事をしている自覚はある。

 逆に部長ならこういう小洒落た喫茶店にいても不思議はないのだが。


「偶々ですよ、入り口の花に惹かれまして」

「その言い回しはちょっと気障すぎよ似合わない、減点1」


 照れ隠しに格好を付けてみるも切り捨てられた。

 自分でも言ってはみたものの、正直これは無い。

 ……何から1点引かれたのかは聞かないでおこう。


「部長はこの店には良く来るんですか?」

「前に須賀君に美味しい喫茶店でご馳走してもらうって言ったでしょ、それがここ」 

「俺が奢るって確定してるんですか? 勉強を教えてもらってないんですが」

「あら、ちゃんと憶えてるのね」


 残念だわとの呟きが聞こえた。

 忘れてたら本気で奢らせるつもりだったのか。

 こういう事をしようとするから、染谷先輩に説教されるのだ。

 俺にまで、とばっちりが来て良い迷惑である。


「あら、それ何?」

「ああ……麻雀の教本です」


 俺の注文した珈琲が届く頃、部長が俺の足元に置いた本の入った紙袋に気付いた。

 特段隠す理由も無いので封を開け中身を見せる。


「プロ監修の現代麻雀技術論、か」

「咲に偶に教えてはもらってるんですけど、やっぱりちゃんとした教本も必要かなと」

「部室ではそういう光景は見かけなかったけど……」

「うちに遊びに来た時とかなので」


 なるほどね、と呟いた後押し黙る部長。

 普段ならそれをネタにからかってきそうなものであるのだが。
 
 なんだろう、この微妙に気まずい雰囲気は……

 居た堪れなくなり珈琲を一口啜り――あ、美味いなここの珈琲。

 と、そう思った矢先、唐突に焼き林檎を刺したフォークをこちらへ向けられた。


「ほら、あーん」

「……いきなりなんですか」

「美人な先輩からの勉強熱心な後輩へのご褒美」

「……食べなきゃ駄目ですか?」


 とういうか明らかに間接キスなんですが、それは。
 

「拒否したら泣いちゃうわよ?」

「脅しですか」

 
 正直かなり恥ずかしいので勘弁して頂きたい。

 どうしたら逃げれるかを真面目に考える。

 ……良い案が思い浮かばない。


「私と間接キスは嫌なんだ……須賀君酷い」

「泣き真似しても無駄ですからね」


 そんな押し問答が数度続き。

 なんだかんだ言って部長に勝てるわけもなく。

 こちらが折れることになったわけだが……


 結果、口に含む事となった焼き林檎の味は―― 想像以上に甘く、酸っぱかった

+++

書いては消し、書いては消しになった
初SSでこの書き方は無理ってのが良く分かりました

ギャグパートまで行けなかったけど眠気が限界なので寝ます

霞「咲の魅力はキャラクターの多さなの」

霞「様々な人が、色々なキャラクターを好きになっているわ」

霞「それを欲望のために汚すような行為は、当然反感を買うことになるのよ」

小蒔「じゃあ、こんなしょうもないSSのために永水女子を使ってファンの感情を汚していいんですか!?」


霞「そう。ちょうど今これを見ている永水女子が好きなお方は、相当な不快感を感じているでしょうね」

霞「それと同じ感情を京太郎スレで感じる方が多くいるということを知って欲しいのよ」

初美「ふんふむ」

改めてみると昨日、睡魔に負けて色々と投げ出してしまった部分が
実験にしてもあまりに酷すぎたので
>>133は没

差し替えします


「それは何かしら?」

「ああ……麻雀の教本です」


 注文した深煎りの珈琲が届く頃、部長が俺の足元に置いた本の入った紙袋に気付いた。

 特段隠す理由も無いので、封を開け中身を見せる。


「プロ監修の現代麻雀技術論、か」

「偶に咲に教えてもらったりしてるんですけど、やっぱりちゃんとした教本も必要かなと」


 以前、和に基礎を学ぶならどんな教本が良いかと尋ねた時、薦められたものだ。

 牌理、先制聴牌判断、副露判断等々、一通りの定石が纏められているとのこと。
 

「部室ではそういう光景は見かけなかったけど……」

「うちに遊びに来た時とかなので」


 なるほどね、と言った後、急に押し黙る部長。

 普段通りならば、それをネタにからかってきそうなものであるのだが。
 
 なんだろうか、この反応……微妙に気まずい雰囲気に居心地が悪く、落ち着かない。

 意味もなく珈琲を掻き混ぜ、香ばしい薫りのするそれを一口啜る。

 苦すぎず美味い。部長が褒めるだけはある。

 そう思った時、唐突にフォークに刺さった焼き林檎がこちらへ突き出された。


「ほら、あーん」

「……いきなりなんですか」

「美人な先輩からの勉強熱心な後輩へご褒美」

「……食べなきゃ駄目ですか?」


 自分で美人って言うのはどうなんだろう。

 とういうか、何この状況。食べれば明らかに間接キスである。
 
 正直かなり恥ずかしい、勘弁して下さい。

 どうしたら逃げられるかを真面目に考える……良い案が思い浮かばない。


「拒否したら泣いちゃうわよ?」

「脅しですか」

「私からのご褒美は受け取ってくれないんだ……須賀君酷い」

「泣き真似しても無駄ですからね」

「間接キスよ、嬉しくない?」

「ノーコメントで」


 そんな押し問答が数度に渡り続き。

 なんだかんだ言っても、部長に口で勝てるわけもなく

 こちらが折れることになったわけだが……


 結果、口に含む事となった焼き林檎の味は ―― 想像以上に、甘く、酸っぱかった

■□■


ドアベル「からんからん」


久「あら」

美穂子「あ……上埜さん」

京太郎(すばらなおもちだ)

華菜「げっ」



美穂子「上埜さんはこのお店に良く来るんですか?」

久「良く、という程でもないわね……美穂子は?」

美穂子「つい最近コーチに教えてもらって初めて来たんです」

久「あら、そうなの何かの縁だし四人掛のテーブルに移ろうかしら」

美穂子「はい、是非」

華菜「折角キャプテンと二人でお出かけだったのに……」

美穂子「こら、華菜そんな事言わないの……」

美穂子「注文は紅茶と……何にしようかしら」

久「ここの焼き林檎は美味しいわよ?」

美穂子「では、それで」

華菜「華菜ちゃんは紅茶とパンケーキにしてみるし」

京太郎「俺は珈琲のお代わりを」



※合間の普通の雑談シーンやら食事シーンはキンクリされました。



久「そういえばなやみそうだんをうけつけてるのだけどなにかない?」

華菜「なんでそんなに棒読みなんだし」

久「切り出し方を考えるのが面倒だったのよ」

京太郎「ぶっちゃけましたね」

華菜「悩み……実はマタタビに酔う体質で……」

華菜「それをなんとか出来たらありがたいし」


久「……池田さんって、実は万能な文化のアンドロイドか何か?」

京太郎「俺は水をかけると、猫になる女の子が何故か思い浮かびました」

華菜「二人が何を言ってるのか、良く分からないし」

京太郎「どっちも結構、昔のですからね」

久「そういえば、猫は一部のシャンプーでもマタタビと同じ反応をするらしいわ」

京太郎「それと掛けてたんですかね?」

久「まあ、そんなどうでもいい雑学は置いておきましょう」

京太郎「ですね、只でさえ色々と置いてけぼりにしてる気がしますし」

美穂子「解っているなら控えた方が……」



久「でもマタタビで酔うって本当?」

久「あれって猫が酔う場合、性的興奮の喚起つまり媚薬なんだけど……」

久「池田さんはマタタビで悔しい……でもビクンビクン、になっちゃうわけね」

京太郎「なん…だと……」

華菜「にゃっ!?」

美穂子「あらあら、まあまあ」


久「……今マタタビ持ってない?」

久「慣れれば耐性が付くかもしれないし……」

久「それにどんな感じになるかお姉さん見たいかなあって……可愛がってあげるわよ?」

華菜「華菜ちゃんにそんな趣味はないっ!」

美穂子「華菜、羨ましい……」

華菜「キャプテン!?」

京太郎「というか、ここでの部長はそういうキャラ設定じゃないですよね!?」


久「マリア様が」

京太郎「見てないです」

久「実は私どっちでもいけるの、ケースバイケース」

京太郎「今回のシリアスパートでの俺の胸のときめきを返せよ、こんちくしょう」

久「冗談よ、冗談」

久「……多分」

京太郎「今、小さい声で多分って言った!」

久「須賀君の気のせい、最近のラノベの主人公を見習って聴き流しておきなさい」

美穂子「お二人は仲が良いんですね」

久「そうね……トムとジェリー位には仲が良いわね」

京太郎「それの例えだと俺が一方的に損害を被る立場になる気がするんですが、それは」


華菜「これ以上続けると、華菜ちゃんの貞操が危ない気がする……」

華菜「悩み相談はもういいし!」

久「あら、そう残念……」

京太郎「部長、悩み解決しない確率高いですね、お悩み相談する意味あるんですか」

久「須賀君、それ以上はいけない」

久「きっと、悩みは打ち明けるだけで心が軽くなるっていうあれよ」


久「美穂子は悩みがあったりする?」

美穂子「……そうですね」

美穂子「強いて言うなら男性が苦手なのが……」

久「ふむ……」

久「生理的嫌悪があるわけじゃないのよね?」

美穂子「そこまででは……ただ何となく程度です」

久「こういう悩みこそ、それこそ慣れるしかないわ」

久「適当に相手を見繕って、一緒に出掛けてみるとかどうかしら」

美穂子「その相手に心当たりがないです……」


京太郎「きたか……!!」

久「急に立ち上がるのはやめなさい、須賀君」

京太郎「適当な相手がいないなら……ここはこの須賀京太郎におまかせあれ!」

久「そのポーズは貴方がしても可愛くないわ」

久「こういう時にすぐ頭が悪くなるのが須賀君の悪いところね」

京太郎「福路さん……この紳士須賀がエスコート役を努めさせて頂きます」

久「こいつ無視しやがった」


美穂子「……」

京太郎「……」

美穂子「……」

京太郎「……」

美穂子「……」

京太郎「……」



美穂子「ごめんなさい」


京太郎「」


華菜「当然だし」

久「あ、須賀君が座り込んで燃え尽た、真っ白な灰なのかしら」

美穂子「悪いことしてしまったかしら……」

久「須賀君は和相手にしょっちゅう灰になってるから、いつもの事よ」


美穂子「あ、その……た、例えばなんですけど……」

美穂子「慣れるというだけなら……その……上埜さんが男装とか……」

久「あら、美穂子は私とデートしたいの?」

京太郎「部長、嬉しい事言ってくれるじゃないの、って顔をしないで下さい」

久「とことん悦ばせてあげようかしら……」

久「じゃなくって、復活するのが段々早くなってきてるわね須賀君」

京太郎「心の声が漏れましたよ! やっぱり百合なんですか!?」


美穂子「い、いえ、そういう意味ではなくて……」

美穂子「えっと、その、男装は口実で、上埜さんと、もっと普通に仲良く、なりたいなーと……」

久「もじもじしてる美穂子、かわいい!」

美穂子「う、上埜さんに抱きしめられた……」



華菜「何、この置いてけぼり感」

京太郎「同感です」




 その後、お出掛けを約束する3年生二人がいたりいなかったりとか。


 ちなみに、どうでもいい話ではあるのだが

 後日、須賀京太郎は件のお出掛け中である二人と偶然鉢合わせ

 何故かエスコート紛いの事をする羽目になる――

 両手に花と言うなかれ、片方は棘付きでしかも自から刺してくる花である。

 財布と精神に結構ダメージを受けた、とだけ記して終わりにしたいと思う。



                             【猫と百合と焼き林檎編】 ――カンッ

シチュで失敗してぐだぐだになって、しかもオチてない気がする
……なんだいつも通りか

【安価】次のお悩み相談相手 ↓1

1 東横桃子
2 南浦数江
3 宮永照

2

龍門渕編、アイツはもう消した

>>150
【安価】次のお悩み相談相手:南浦数江

【安価】南浦数江の悩み
↓1

※極端なエロ、グロ。著しく道徳に反する悩み
要するに流石にこれは洒落にならないと判断したものは再安価

魔法少女になりたい

推敲せずに書き込むと名前を間違う、あると思います

>>154
南浦数絵の悩み:魔法少女になりたい

っていうか魔法……少女……?

コンマ判定:どのタイプの魔法少女なんですかね
1~33 SG的な何か
34~66 魔砲的な何か
67~00 プリキュア的な何か

↓1

ほい

>>157
【74】プリキュア的な何か
……あれ……キュアスッガ爆誕?

社畜の宿命的な何かのせいで2,3日空く可能性濃厚
龍門渕は後回しになりました
寝ますー


 「ほっ、ほっ、ほっ、ほっ」

 そろそろ日の出となるような時刻、断続的な呼気を吐く音が響く。


 須賀京太郎の朝は早い、日課としているトレーニングをこなす為だ。

 腕立て伏せ100回、上体起こし100回、スクワット100回。

 そして――今まさに行っている――ランニングを10km。

 これらを毎日……やる。

 クールダウンのストレッチも忘れずに。

 もちろん一日三食はきちんと摂る。朝食はバナナとアミノ酸飲料でも良い。


 発端は、以前部活動で皆の荷物――結構な量であった――を持った際に

 平静を装ってみたものの、内心で体力不足を痛感した為である。

 ……実際は足が生まれたての小鹿のように震えていたので、誤魔化せていなかったかもしれない。


 同じような事があれば、格好が付かない。

 自分で変われるというのが、人間の強さだ。

 意地があるんだよ、男の子にはな!

 なんていう事を思ったりして……

 結果、そうだ、筋トレ、しよう。となり、自分へ一般的な筋力鍛錬のメニューを課した次第である。
 

 そういえば、この事が咲にバレた際に

 『一撃必殺するヒーローでも目指してるの?』

 『もし京ちゃんがハゲても、私は見捨てないから安心して』

 『……でも服装はちゃんと考えてね、ダサいのは嫌だよ』 

 との言葉を頂いた。

 一体どういう意味だろう……

 というか、ハゲる予定など両親の遺伝的には無いはずだ。失敬な。

 たまに思うが、あいつは俺のことをどういう目で見ているのか。

 一度、本気で話し合う必要がある気がする。


 一通りのメニューをこなし、家の玄関を開けるとカピーが出迎えてくれた。

 ちょっと眠たげ瞳の大きな齧歯類、共に暮らしてきた、もはや友人であり家族と言える存在。

 カピバラカワイイヤッター。


京太郎「カピーただいま」

カピー「朝から暑苦しいぞ、主人」


 声をかけると嬉しいのか、キュルキュルと応えてくれる。ういやつめ。

 カピーの頭を一撫でし、ぬるめのシャワーで汗を流そうと風呂場へ。

 上着を脱いだ時、ふと鏡に写った自分の上半身が目に入る。

 ……うん、これは良い感じに引き締まってきてるのではないだろうか。

 もし誰かに見られても恥ずかしくないな……特に見せる予定はないけど。


 ――いや、和とそういう関係になれば、そうとも言えない。

 ゴッドモザイク無しの状況で、あれこれしちゃったりして――


 ……まあ、不毛な妄想はやめよう。

 この前の胸に視線事件もあったことだし、なんか虚しくなってきた。

 ・
 ・
 ・

 そうこうした後、朝食を済ませ一息ついた時、携帯の着信音が鳴った。

 表示された名前は部長。

 居留守でも使うか?と一瞬思ったが、素直にとる。


久『須賀君、やっはろー!』

京太郎「……おはようございます、部長」


 無駄にハイテンション、何か良い事でもあったんだろうか。

 先日、こちらの財布が被った損害は記憶に新しい。

 それを思い出すと自然とこちらはローテンションになるというのに。

 ……役得と言えば役得だったけれども。


久『なんだかそっけないわね……』

久『美人の先輩のモーニングコールよ、嬉しくならない?』

京太郎「残念ながら、随分前に起きてました」


京太郎「……急にどうしたんですか? こんな朝から、今日は部活も休みですし」

久『今日から連休じゃない? 須賀君は暇してるかなーと』

京太郎「今日は特に用事がないので、暇と言えば暇ですね」

京太郎「家でごろごろしてようかな、なんて思ってましたけど……」

久『今日『は』って事は別の日はあるのかしら……』


 確かに明日はあるにはある。

 この前の喫茶店に行く約束を咲としたのだ。

 そうだ、ついでにご機嫌取りをした後だし、家で麻雀でも教えてもらおう。


久『まあ、それより……駄目よ、須賀君。休みに、家で一人ごろごろしようなんて』

久『死んで腐った魚のような濁った目をするようになって、ボッチ街道へまっしぐらよ?』

久『もしくは金髪と目付きが仇になって、友達が出来なくなったり』


 なんだろう、その無駄に誰かの心を抉りそうな例え方。

 俺の青春は間違っているとは思っていないし、特に友達は少なくはない。

 どうでもいいけど、ガハマさんはなんだか不憫可愛いと思う。


京太郎「で、その心は」

久『私と出掛けましょう』

京太郎「いきなりですね……まさかまた、俺を財布にするつもりなんじゃ」

久『もう、そこまで鬼じゃないわ……良ければ長野にまで足を伸ばさない?』

京太郎「はあ……分かりました、付き合います」

久『さっすが、須賀君、話がわかるー、9時に駅前で待ち合わせでいい?』

京太郎「了解しました」

 
 というわけで、出掛けることになったのである、まる。

■□■


久「色々キンクリして着いたわ、長野駅」

京太郎「一体その間に何があったんですかね……?」

久「それは……電車の中で仲睦まじく恋人繋ぎで肩を寄せ合う二人とか」

京太郎「いや、そんなの無かったですよね」

久「私がポッキーを咥えて、須賀君に食べさせようとしてみたり」

京太郎「それはポッキーの日が近かったので、部長の誕生日で使おうとした没ネタです」

久「触れ合いそうな二人の口唇……そして高鳴る二人の鼓動」

久「須賀君は衝動を抑えられなくなり発作的に私を……」


久「……どう? 想像したら萌えた? ちょっと、やってみたくなった?」

京太郎「ノーコメントで」

京太郎「あとこのスレ的にはそういうのはありえない」


久「とりあえず、どうしましょうか」

京太郎「特に考えてなかったんですね」

京太郎「うーん……映画でも見ます?」

久「暗がりで襲うの?」

京太郎「今日のキャラ付けはその路線なんですか?」


京太郎「いや、まあ見たい映画があるんですよ」

久「あら、どんな映画?」

京太郎「恥ずかしながら、あるアニメの劇場版です」

京太郎「部長も見てましたよね、青い子のストラップ付けてましたし」

久「ああ、あれね」

京太郎「ちなみに俺は断然黄色い子派です」

久「これは胸部的な意味でのチョイスね、間違いないわ……」


京太郎「まあ、内容が完全新作なので是非見たいというか……」

久「よし、じゃあそうしましょう」

久「……その前にお昼前だし食事しない?」

京太郎「ですね、モスにでも行きましょうか」



京太郎・久・数絵「あ」


モス◯ーガー店内


久「こんなところで会うなんて奇遇ね」

数絵「本当ですね」

数絵「……お二人はもしかして……デート?」

久「そうなの、実は私達付き合ってて――」

京太郎「だから、なんでそういう嘘を言うんですかね……」

京太郎「南浦さん、信じちゃ駄目ですよ」


久「あら、おかえりなさい」

京太郎「さば味噌とオニポテ、アイスウーロンは南浦さんでしたよね」

数絵「ええ、わざわざありがとう」

京太郎「まあ、一緒に映画を見ようかなと」

久「そうそう、あの魔法少女もののやつ」

数絵「あ、私も実はそれを見に来たんですよ」

数絵「本当、奇遇ですね」

京太郎「食べたら一緒に行きます?」

数絵「……お邪魔では?」

久「女心のわからない須賀君に言っても無駄よ」

数絵「あ、そうなんですか?」

京太郎「なんだか酷い言われよう」




久「ああ、そうだ食べながらで良いんだけど……はいこれ」

京太郎「なんですか、そのチラシみたいなのは……いきなり取り出して」

数絵「なになに……『お悩み相談承ります』?」

久「久さんのお悩み相談室のチラシよ」

京太郎「なにその無駄に洗練された、無駄の無い、無駄な行為」

数絵「芸が細かいですね」


久「無駄とか言っちゃ駄目、宣伝は必要だわ」

京太郎「何で必要なのか意味がわからないです」

京太郎「商売にでもするつもりなんですか……」

数絵「あ、清澄高校奉仕部と書いてある」

京太郎「ちょっと待った、そんな部は無いはずなんですが、それは」

久「私が申請しておいたわよ」

久「部長は私で副部長は須賀君、ちなみに部員随時募集中!」

京太郎「えっ、俺含まれてる?」

久「当たり前じゃない、私と貴方の仲でしょ?」

数絵「須賀君も大変ね……」


久「前振りが長くなちゃったけど……」

久「南浦さん、悩みはない?」

京太郎「無いなら無いとはっきり言ってやって下さい、相手にすると調子に乗るので」

久「須賀君が冷たい……」

久「キスやらなんやら済ませた仲なのに……」

久「釣った魚には餌をあげないタイプなのね、酷い……」

数絵「ええっ!」

京太郎「だから嘘を言わないで下さい! 人聞きの悪い!」

久「間接的には嘘ではないわ」


数絵「……実は……その」

久「その反応はあるのね」


数絵「……笑いません?」

久「笑わないわよ」

久「あ、須賀君が邪魔なら席を外させるけれど」

数絵「大丈夫です……」


数「えっと…………になりたいんです」

京太郎「え? なんだって」

久「前にラノベ主人公を見習ってと言ったけど、ここで難聴を発揮しなくていいのよ?」



数絵「魔法少女になりたいんです!」



久「……」

京太郎「……」

数絵「……」



久「……ある意味、今までで一番飛び抜けた悩みね、びっくりしちゃった」

京太郎「かわいい悩みだと思います」

数絵「うう……言わなきゃ良かったわ……」

京太郎「でも、ちょっと分かりますよ、俺も小さい頃は戦隊物に憧れたりしましたし」


久「どうしようかしら……」

久「須賀君、貴方の方がこういうのに得意なんじゃない?」

数絵「そうなの?」

京太郎「……一応聞きますけど、どういう意味ですか?」


久「だって……」

久「魔法少女っていえば女の子とはいえ、いわゆるヒーロー物の枠でしょ?」

京太郎「あっ、すっごい嫌な予感」


久「……貴方の場合、変身してみたり、破ァッ! とかしてみたり、面白いし大人気!」

京太郎「超えちゃいけないラインを考えろよ」

久「中の人的に言えば、南浦さんは既に魔法少女なんだけどね」

久「大いなる希望の力! とか、夢見る乙女の底力、受けてみなさい! とか」

数絵「……言ってる事の意味が良く分からないです」


久「そういえば、変身といえばライダーよね」

久「魔法少女の一部ジャンルで考えれば、悲しみを背負うって意味では似たような物だし」

京太郎「ちょっと、ちょっと、ちょっと、この話続けるんですか!?」

久「あ、そういえば私は5― 京太郎「言わせねーよ」

久「須賀君はデ― 京太郎「だから言わせないって、しかも確定してない!」


京太郎「うーん、でもこの悩みなかなか難しいですね……」

数絵「現実離れしてるのは分かってるわ……」

京太郎「まあ、前に部長が言ってた通り、打ち明けるだけでも心が軽くなるかもしれないですし……」

久「須賀君、甘い」

久「こういうのは解決策を示してこそ一流よ」

京太郎「前は解決策を示さなかったような……」

京太郎「って、スマホをいじって何してるんですか?」

数絵「?」

久「ずばり解決策はこれよ!」


京太郎「これは……」

久「名付けて、魔法少女になりたいならコスプレすればいいじゃない作戦!」

数絵「コ、コスプレ……」

京太郎「その発想はなかった」

久「変身願望は、ある意味間違いなく満たせれるわ」


久「恥ずかしがっちゃ駄目よ、南浦さん」

久「この画像の人だって、ふりふりの服を着て、弓っぽい何かを持って決めポーズなんかしてるけど」

久「すっごい良い笑顔でしょ? きっと楽しいわ」

数絵「キュアバイオレットって書いてますね」

京太郎「……」


京太郎「……部長」

久「ん?」


京太郎「目線は入ってますけど……」

京太郎「この画像の人どこかで見たことあるような気がするのは、気のせいですかね?」

京太郎「どこだったかな……最近見たような」

久「あー、確かに……」


京太郎「……」

久「……」

数絵「……これ、もしかして白糸台の人じゃ……」


京太郎・久「あ」


ちなみに、あまり意味がある話ではないが――

後日、悩み相談を機にコスプレする事にはまってしまった南浦数絵と

弘世す……じゃなかった、キュアバイオレットが友人になったりならなかったり。

その結果、色々とあってキュアスッガが爆誕したりするらしいけれども、それはきっと語られることのない物語。


                                    【Yes!お悩み相談5!編】 ――カンッ

深夜テンションって怖い、いいんですかねこれ

安価【お悩み相談相手】

1 龍門渕編
2 東横桃子
3 宮永照

↓1

>>188
1 龍門渕編

【安価】お悩み相談をする人

※龍門渕関係者
※無効の場合↓に1個ズレ

↓1

↓2

ハギヨシ

>>191 ハギヨシさん
>>192 純ニキ

【安価】透華の悩み
↓1

【安価】ハギヨシの悩み
↓2

【安価】純ニキの悩み
↓3

※極端なエロ、グロ。著しく道徳に反する悩み
要するに流石にこれは洒落にならないと判断したものは再安価

透華の悩み:最近衣がぼんやりしてることが多い
ハギヨシの悩み:婚期を逃しそう
純ニキの悩み:男とよく間違えられ、ジャニ○ズにスカウトされた

ハギヨシさんが婚期……だ……と

【安価】ころたんのぼんやりしてる理由

↓1

自分の今の体で実際の出産が可能かどうか思いを馳せてた

>>199
ころたんのぼんやりしてる理由:自分の今の体で実際の出産が可能かどうか思いを馳せてた

思いの外シリアスな内容……

お付き合いありがとうございました、寝ますー


【幕間】


咲「前からちょっと思ってたんだけど……」

咲「スポーツ漫画って冷静に考えるとシュールだよね」


 俺のベッドでうつ伏せで寝そべって漫画を読んでいた咲が、唐突にそんな事を言った。

 いきなりなんなのだろう……

 そんな全国のスポーツ漫画好きの方々に喧嘩を売るような危険な発言は。

 シェアで言えば、多分麻雀漫画よりも広いジャンルのはずだ。


咲「だってね、これとか最初の頃は普通に試合してたんだけど……」

咲「途中から選手が球威で吹き飛ばされたりとかが、日常茶飯事になってるし」

咲「明らかに中学生、高校生じゃない見た目の人が出てくるようになったり……」


 確かに、避けらんねぇやら、滅びよ……やらは、見た目からしてアレではあるけれども。

 ただ、ある意味もうギャグ方向へ付き進んでる漫画に対して、その意見はどうなの?と思ったり。


 それに種目の違いはあるものの試合での滅茶苦茶加減で言えば、お前だって……

 と言いかけてぐっと堪える。

 咲が微妙に傷付きそうな気がしたのだ。

 特に貶める気持ちは無いとはいえ、その場のノリで安易に突っ込むのはやめておこう。

 気遣いが出来る男、そして紳士である事を目指してるからには、言動にも気を付けないといけない。


京太郎「いや、まあ……そういうのは言っちゃいけないお約束ってやつじゃないか?」

咲「そうなのかなあ……」


 画力があるから余計シュールに感じるのかな、なんて呟きが聞こえたが無視。

 これ以上、この方向で喋られるとやばい気がする。脳内で黄色の信号が点滅中である。

 ただでさえ普段から色々とやりすぎてないか内心冷や汗ものなのだ。

 出てくるパロネタについては、全て元作品を応援しています。


京太郎「そんな事より……」

京太郎「ネト麻で一区切りついたから、牌譜を見ながら教えてもらっていいか?」


 危険な話題を逸らすついでに、そう提案する。

 自分達以外の誰かが聞いているわけでもないが、これ以上はやめておこう。


咲「もう、仕方がないなあ……」


 咲はそう言うと、漫画をぱたんと閉じ、上体を起こしてどこか猫を思わせる仕草で背伸びをした。

 その拍子にスカートと上着の間に隙間ができ、ちらりと肌とへそが見える。どきりとした。


 ……こいつ、ちょっと無防備すぎるのではないだろうか。

 一言、言っておくべきか……なんて一瞬考えたれけれども。

 ここでその事に言及しようものなら、スケベだのデリカシーがないだの罵られるのは目に見えている。


 うん、見なかった事にしよう。そうしよう。

 触らぬ神には祟り無しとも言うことだし。


咲「どこか迷ったところでもあった?」

京太郎「ああ、ここなんだけどな――」

 
 危険な話題から麻雀の話題へ移行し、牌譜を元に検討する。

 ここで迷ったんだけど正着は何だったんだろうか、とか。

 この局面で先制された場合、降りるべきだったんだろうか等々。


京太郎「あれ……髪、切ったのか?」

咲「あ、うん……毛先を、整えてもらっただけ、だけど……」


 ふと、咲に問い掛けると、気付かれたのが恥ずかしかったのだろうか

 なんだかもごもごと歯切れの悪い答えが返ってきた。


咲「……髪型変えたほうが良いと思う?」

京太郎「いきなりだな……似合ってるし、そのままで良いんじゃないか」

咲「そっか」


 合間に、そんななんでもない事や、今日二人で行った喫茶店の事

 最近、学校であった事についての雑談が交じるのはご愛嬌。

 そんな風にして隣り合って二人でPCを覗きこみながら小一時間程経った頃。

 咲の携帯に着信音が鳴った。


咲「あ、衣ちゃんからメールだ」


 咲が手慣れた手付きで携帯を操作し内容を確認している。

 ……以前はまともに使いこなせなかったのに成長したな。

 この調子で迷子に関しても成長して改善されないだろうか。 


 そんな風に思っていると、こちらの携帯にもメールの着信があった。

 操作し、確認してみると差出人は透華さん。

 どちらかと言えばメールではなく電話をするタイプなはずだが……


 内容は――天江さんが清澄の皆と麻雀を打ちたがったているとのこと。

 ひいては、こちらの皆が都合が合う時に龍門渕へ来ないかとのメールだ。

 同時送信で部長にも送られている。なるほど。


咲「衣ちゃん、麻雀を打たないかだって」

京太郎「こっちも透華さんから同じようなメールだな」


 皆に確認はしないといけないが、近いうちに実現するだろう。

 うちの部の面子と龍門渕の人達の仲はそう悪くない。むしろ良い。

 咲も天江さんと打つのは久しぶりであるからだろう、なんとなく嬉しそうに見える。

 ……もしかしてあれか、宿敵と書いて友と読む的な感覚なのだろうか。

 それとも麻雀の強者同士はスタンド使いのように引かれ合いでもするのだろうか。 


 しかし奇遇というか何というか……俺が咲を麻雀部に誘って――

 皆で部長の目標であったIHを目指す事になって――

 その過程で龍門渕の皆や色々な人と出会って仲良くなって――

 ……俺は主に雑用くらいでしか役にたってなかったりするが。

 改めて思い返すとなんだか感慨深い。


 IHで見た彼女らに追いつけるとは思ってはいないけど……

 せめて今できる事はしておきたい、追いつこうとする努力だけは続けよう。


 そんな事を思いながら、透華さんに皆の都合を確認する旨のメールを返信する。

 その際に携帯の時計が目に入った。もう1時間もせずに日の入りに差し掛かる時間。


京太郎「そろそろ暗くなる時間だし、送るぞ?」

咲「あ、もうそんな時間なんだ」


 あまり遅くなると咲の親父さんが心配するかもしれない。

 気遣いが出来る男はこういうことに敏感でなければ。一緒に部屋を出て階段を降りる。


咲「……そういえば、今日はおじさんとおばさんが居ないみたいだけど」


 玄関に向かう際に咲にそんな事を言われた。息子を放っておいてデートである事を話す。

 良い年こいて仲の良い両親だ。あまり突っ込んで聞かれると自分の事ではないのに気恥ずかしい。


京太郎「夕飯は作るか、買いに行くかで自分で何とかしろって言ってたな……」

京太郎「スーパーで弁当でも買うさ」


咲「……私が作ろうか?」

+++

すいません咲ちゃんだと全力不可避なのもあって軽く煮詰まりました。
中途半端ですごい申し訳ないけど本日分終。平日に更新できると良いなあ……

乙!

や京咲N1!

やっぱり京咲がナンバーワン!

>>231
特に問題ないので気にしないで下さいー

酒が抜けきってないけど、ちょっと書きます


 どこかおずおずといった様子で、言葉を続ける咲。


咲「……京ちゃんが、良ければ、だけど……」


 一体どういう風の吹きまわしだろう。

 確かに、ありがたい申し出ではあるが、そこまで甘えるのも……

 しかし、厚意を無碍にするのもなにか違う気が。

 咲が照れの混じった表情で言う。


咲「今日の喫茶店のお礼もかねて……どうかな?」

京太郎「いいのか?」


 質問に対して質問で返してしまった。

 世が世なら阿呆呼ばわりされるところだ。

 そして、咲から提案してきたことであるから、良いも悪いもないことに今更気付く。

 無意識で遠慮してしまったのだろうか。


咲「うん、遠慮しなくていいよ」


 ……お見通しか。

 長い付き合いとはいえ、こうあからさまに見透かされると少しバツが悪い。
 
 誤魔化すために、からかうように言葉を投げかける。


京太郎「咲の手料理……本当に大丈夫か?」

咲「……ふーん、そういうこと言うんだ」


 どこか据わった目で言う咲。

 これは機嫌を損なったか、なんて思いはするものの。

 一方で、やっぱりこうでなくちゃ落ち着かない、なんて感じている。


咲「……普段から家事はしてるんだよ」

京太郎「……それじゃあ、お願いするかな」

咲「優しい幼馴染に感謝してよね」

  
 腰に手をあて、どことなく上から目線。

 ……そうくるか、なら。


京太郎「恐悦至極に存じます、お姫様」

咲「もう……そうやって、すぐからかうんだから」


 そんなやり取りを経て、夕食を任せることになった。

あー、すいません訂正

×世が世なら阿呆呼ばわりされるところだ。
◯世が世なら、会話の成り立たない阿呆呼ばわりされるところだ。


 咲が携帯で親父さんへ遅くなる旨と、夕食は自分でなんとかするように、と無慈悲にも伝えている。

 心の中で合掌。彼は犠牲になったのだ、俺の晩飯、その犠牲にな。


咲「これでよし、っと。あ、ちょっと見せてもらうね」


 言いながら、キッチンへ向かう咲。

 何もしないのも手持ち無沙汰なので物色に参加しようとついて行く。

 食材の把握は基本。なければ買いに行く必要があるし。


咲「えっと……主菜はこれにして……」

咲「副菜は2人分作りやすいものがいいよね……」

咲「あとは――お味噌汁かな」


 流石に手際が良い。

 エプロンを付け、てきぱきと献立を組み立つつ、使う野菜を水にさらし準備をしてている。


京太郎「……何か手伝おうか?」

咲「えっと……じゃあ、ご飯を炊いてないみたいだから、とりあえずそっちをお願いしようかな」
 

 なるほど。一番時間が掛かるだろう飯に最初に取り掛かるのは自明の理だ。

 ……3合でいいか。余りは小腹がすいたらお握りにして夜食にでもしよう。


 米を計量し、まずさっと洗い、その後研ぐ。

 その横では咲が水の張った鍋を火にかけつつ鼻歌交じりに、野菜を切っている。

 小気味良いリズムの音をまな板と包丁が刻む。


 ここで、まな板がまな板を使っているとか、ギャグをとばすとどうなるだろう、とふと考える。

 …………うん、機嫌良く料理しているところを邪魔するのも悪い。やめておこう。

 包丁を持っているから洒落にならないかもしれないし。


 研ぎ終わり、炊飯器に米と水を入れボタンを――

 「あ、ちょっと待って」――ようとしたところで止められた。


咲「料理酒をちょっと入れて炊くと、美味しくなるんだよ」


 そうなのか、と返すと。

 そうなの、との言葉が少し得意げな笑顔と一緒に返ってきた。

■□■


 咲が出来上がった料理の盛られた食器を食卓の上に並べていく。

 小松菜のごま和え、金平牛蒡、油揚げとしめじの味噌汁、ハツと砂肝とししとうの炒めもの、炊き上がった白米。


京太郎「おお、言うだけあって、美味そうだな」

咲「……えへへ」


 ――いただきます。

 二人向かい合って座り、手を合わせた。

 大した手伝いはしてないものの、何やかんやで喉が渇いていたので、まず麦茶を。


 喉を潤した後に、味噌汁に手を伸ばす。

 味噌の塩気とかすかなネギの匂い。そして口の中に広がる出汁の風味。

 具の量を少なめにしているのも好みだ。


 白米を一口かき込み、次は炒めもの。

 ……これは味のベースは醤油で最後にレモン汁を使ってるのか。

 刻まれたにんにくの風味とししとうの苦味、レモンの酸味が食欲を誘う。

 内蔵特有の臭みもきちん処理された、ハツと砂肝のコリコリとした食感が楽しい。

 
咲「えっと……どうかな……」

京太郎「……」

咲「……」

京太郎「旨い!」


 もう一度、旨いと言って。白米をかき込み、他のおかずにも手を伸ばす。

 和風のどこか懐かしい味付けに箸がすすむ。


咲「もう……褒めてもなにもでないよ」

京太郎「いや、お世辞じゃないからな。なんつーの、こう家庭の味?」

咲「そりゃ、普段から作ってますから」


 ちょっと得意げだ。


京太郎「これ、炒めものは醤油と……何だろ」

咲「鶏ガラ出汁だね、あとは炒める時に紹興酒を使って臭みを消すのがワンポイント」

京太郎「ああ、だからか。ご飯に良くあうな」


 そんな風にこの味はどうだのと話ながら平らげていく。

 おかずがなくなる頃にはご飯を一度おかわりしていた。

 ・
 ・
 ・

京太郎「ご馳走様でした」

咲「ふふっ、お粗末さまでした」


 食べ終え、そんなやり取りを交わす。


咲「よし、じゃあ片付けて洗い物するね」

京太郎「あ、手伝うぞ」

咲「大丈夫だよ、京ちゃんはテレビでも見てて待ってて」


 そう言いながら咲が食器を運んでいく。

 ここは折角だからその言葉に甘えておこう。
 

 テレビから流れる歌と、かちゃかちゃと食器が鳴る音、そして咲の機嫌が良さげな鼻歌が混じる。

 ……なんだろうか、この感じ。妙にくすぐったい。

 うん、あれだ珍しい状況だからだ、そうに違いない。

 テレビを見ながら咲に声を掛ける。


京太郎「あー、終わったら送ってくからな」

咲「うん、わかったー」


京太郎「……晩飯、ありがとな」

咲「どういたしましてっ」

■□■


 昼間していたような、なんでもない話をしながら咲の家を目指す。

 ここの道を曲がるとすぐそこだ。曲がる。家の明かりが見えた。

 こちらを見ずにぽつり、と咲が言葉を漏らす。


咲「そういえばさ……最近、部長と仲がいいよね」

京太郎「そうか?」

咲「うん、そう見える」

京太郎「前と変わらないと思うんだけどな」

咲「一緒に悩みの相談を受けてるって、和ちゃんから聞いたけど」

京太郎「ああ、あれはいつもの思いつきだろ、すぐ飽きるさ」


 そこで会話が途切れた。

 お互いに無言のまま家の前まで進む。 


咲「送ってくれて、ありがと」

京太郎「いつものことだろ」

咲「……京ちゃんは……」



咲「……ん、いいや。なんでもない」

京太郎「なんだよ、それ」


 気にしないで、と言葉を返す咲。

 意味がわからん。


 じゃあ、またと別れの挨拶を交わし、玄関の扉が閉まる。


 一日を振り返ってみると、咲と駄弁ってただけだったな……

 まあ、たまにはこんな風に過ごすのも悪くないか。

 そんな事をなんとなく考え、踵を返し、帰路についた。



                                                    ――了

オチなしほのぼのを目指したつもりだったけどなんか、こう……大分はしょったけどテンポが
元々は3レス位でささっと龍門渕フラグ立てて、ぱぱっと終わらせるつもりだったのにどうしてこうなった

関係ないですけどマホが盾子様ばりの大活躍と見て衝撃……そうか、そういうのもあるのか

個人的にシリアスな話でラスボス配置をするとしたら、直球で行くならマホか咲で
前者が孤高の創世/Dead END 、後者なら絶望plantation/奈落の花、なイメージ
仕事に出ますー


 穏やかな昼下がり。

 天江衣の提案を発端に、清澄高校麻雀部の部員が集まった龍門渕邸。

 その客間で四人の男女がテーブルにつき、椅子に腰掛けている。

 須賀京太郎、竹井久、龍門渕透華、井上純という面子だ。


 その他の清澄と龍門渕の面子は、今は天江衣の部屋である。

 午前から始まった麻雀が一区切りついたこともあり、

 なんでも昼食後の休憩も兼ねてガールズトークをするらしい。

 ……まあ、それはさておき。


京太郎「ハギヨシさんの入れる紅茶は別格ですね……美味しいです」


 一口紅茶を飲み、思わずといった風に、京太郎が感嘆の声を漏らした。

 主の背後に控える黒服の執事、ハギヨシがそれに応じ、優雅とでも言うべき動作で一礼する。
 

ハギヨシ「お褒めに預かり光栄です」

透華「ハギヨシだから当然ですわ」


 その主である透華が得意げに言葉を続け、彼女自身も茶に口をつけた。

 頭部のアンテナの動きで機嫌の良さが伺える。


 ……そういえば、あの髪の毛の動きは一体どうなっているだろう。

 咲の角ぽい何かも、萎れたりする事があるし、実に不思議だ。別種の生き物か何かだろうか。

 ミギーみたいな存在だと楽しそうではある……そうだ、今度調査させてもらおう、そうしよう。


京太郎「俺もこれ位できるようになれたらなあ……」
 
透華「……龍門渕で執事修行でもなさいます? そうなればハギヨシが師匠ですわね」


 冗談めいた口調で頬に手を当てながら言う透華。 

 ……まさか本気ではないだろう。

 ハギヨシさんに教わるというのは魅力的ではある。

 しかし、学業や部活があるので現実的には困難だ。

 
 そんな様子を、興味深げに見ていた久が、


久「そういえば、須賀君と龍門渕さんって仲がいいのね」


 ふと疑問を口にした。


久「名前呼びだし……何時の間に」

純「あ、オレもそれはちょっと気になってたな」

透華「ああ、それは……」


 問いを受け、答えようとする透華。
 
 ……あまり人に広めて欲しい話ではないのだが。


透華「以前、京太郎君が屋敷の前をうろうろしてまして……」

京太郎「透華さん、ぼかしてもらえると有難いんですが」


 京太郎は隣の席にいる透華に小声でそんなことを呟く。

 ……まさか、ハギヨシさんに会うのが恥ずかしくなってしまい、

 不審人物のようにうろついていた、という事実は言って欲しくないわけで。

 部長に知られようものなら、いいように玩具にされそうだ。

 三順先の未来は見えはしないが、そんな未来は簡単に想像がついた。


久「詳細を教えて欲しいのだけれど?」


 しっかり聞こえていたらしく、つっこみが入る。

 必死に透華へ目配せする京太郎。


透華「――まあ、その時に色々ありまして……意気投合し、今に至るというわけですわ」

純「へえ、透華的には、須賀を結構気に入ってるわけだ」

久「……須賀君良かったわね。上手くやれば逆玉の輿ゲットじゃない?」

透華「そうですわね……」


 透華が冗談めいた口調で言葉を続ける。


透華「全世界に世界征服を宣言しつつ、告白してくれたら考えてあげても宜しくてよ?」


 ……原作が違うんですが、それは。

 彼女は幼馴染であったり、自動人形の設定があったりはしないはずだし、

 自分は哀しみを得たら死んでしまう、全裸ではないはずだ。

 いや、待て、その設定を追加すれば、必然的に和とも……


久「須賀君、なんだか頬が緩んでるんだけど……」


  紅茶をくるくると銀の匙でかき混ぜながら、言葉を投げかける久。

  ……これ以上、この話題を続けると、自分をからかう方向で進みそうな気がする。

 その因果の理をここに断つ――と考え、別の話題を振る為に、京太郎は口を開いた。


京太郎「そうだ……悩み相談を受けてるんですけど、透華さんは何かあります?」

久「須賀君から切り出すなんて、珍しいわね……」

久「奉仕部副部長の自覚が出てきたのかしら」

京太郎「そういえば、そんな設定も追加しましたね」

京太郎「まあ、単なるワンパターン回避です」

久「あら残念」


透華「悩みですの?」

久「そうそう、何かないかしら?」

透華「……そういえば最近、衣がぼんやりしてることが多くて……それが心配ですわね」

透華「聞いてみても、何でもないと言うばかりで……」

久「目立ちたいって悩みじゃないのね、意外」

透華「……それは悩みではなく私の信条ですわ」

純「目立ってなんぼだもんな」

透華「ええ! 特に原村和より目立ちたいですわ!」


久「キャラの立ち方でいえば、貴女はかなりのものなんだけどね」

京太郎「確かに、かなり濃いですよね」

透華「……もっと褒めていいのですわよ?」

純「これ褒めてるのか?」

久「そう受け取ってくれると、ありがたいわ」

透華「って、話がずれてますわ!」


京太郎「……天江さんですか」

久「前に悩みを聞いた時は、そんな風ではなかったわね」

京太郎「……マヨネーズでの解決方法が、駄目だったんじゃないですか?」

久「マヨネーズを馬鹿にしてる? マヨ一本一気飲みさせるわよ?」

京太郎「馬鹿にしてません。そして、嫌な想像させないで下さい。胸焼けしそうです」

透華「マヨネーズ?」

京太郎「多分関係ないので、気にしないで大丈夫です」

久「美味しいのに……」


透華「ハギヨシは何か知っていまして?」

ハギヨシ「申し訳ありません透華お嬢様」

ハギヨシ「何事か思い悩まれていた事は知っておりましたが、内容までは……」

京太郎「ハギヨシさんが駄目となると、直接聞くしか……」


純「……あー、それな」

透華「あら、純は知っていまして?」

純「可愛い悩みといえば、それで終わる話なんだが……」

久「勿体ぶるわね」

純「そういうわけじゃないんだけどな。なんていうか……衣ってちっこいだろ?」

透華「そうですわね」

京太郎「そこは否定できない事実ですね」

純「それでさ……簡単に言えば、自分の体で赤ん坊が生めるかどうかが心配なんだと」

純「この前一緒に部屋の掃除をしてた時に、衣と両親の写真が出ててきてな」

純「それを見て、そんな事を言ってた」

久「あー、それはなんていうか……」

透華「衣に赤ちゃん……相手は誰ですの!?」

京太郎「透華さん、突っ込みどころ違いません? 今、すごく飛躍しましたよね?」


透華「……はっ!」

透華「そういえば、前に衣が京太郎君はロリコンやらなんだとか……」

久「あら、結局言っちゃったんだ」

ハギヨシ「須賀君、まさか……」

純「須賀、そうなのか?」

京太郎「ちょっとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

久「須賀君、最低……」

京太郎「部長もノらないで!」


京太郎「誤解です。あれは部長の嘘です。そんなオカルトありえません!」

京太郎「俺 は お も ち が 大 好 き で す !」

久「背景にドンッって文字を出して、大声で言う事でもないと思うけど……」

久「必死すぎてちょっと引いたわ」

京太郎「発端は誰のせいだと!?」


久「でも、須賀君って色々見ると、全般的におもちがない娘に縁があるし」

京太郎「どの世界線の話ですか!? 風評被害です!」

久「そうなのかしら……」

久「このスレからして、一番縁のありそうな娘がないあたり、そうとも言えないと思うけど」

京太郎「……言ってる意味がよく分からないです、誰の事ですか?」

久「鈍感系主人公って設定しちゃうと、こういうところがあれよね」


久「とにかく、どうしようかしらこの悩み……」

透華「衣にはまだ早いですわ!」

純「まあ、あんまりそう言ってやるな。あいつもそういう年頃なんだろ」

透華「衣もそれならそうと言ってくれれば……」

久「あー、理由は分かったみたいだし、天江さんに関してはそっちに丸投げさせてもらうわね」

京太郎「帝王切開になるだろうから云々とか、言っても仕方ないですしね……」

久「成長の余地があるかもしれないし、母体が健康なら、なんとかなるとは思うわ」


久「井上さんは何かあったりする?」

純「オレか?」

純「そうだな……ああ、男とよく間違えられるのが困るな」

純「この前なんてジャニ○ズにスカウトされかけたし」

久「女性らしい服を着なさい、以上」

透華「正論ですわね」

京太郎「ばっさり切り捨て過ぎなような」

純「扱い酷くないか?」


純「女らしい服ねえ……」

純「とりあえず、スカートでもはいてりゃ問題ないか」

透華「もしくは、仕事着とかどうですの?」

純「……普段からメイド服はないだろ」

透華「あら、似合ってますのに」

久「国広さんくらいの私服だと、間違われようがないんじゃない?」

京太郎「流石にあれは……」

久「もしくは、中の人の別キャラで吉原の着物とか」

京太郎「それもどうかと思います」

純「というか、中の人って何だよ?」


純「まあ、あんまりヒラヒラしたのは持ってねーんだよな。似合わないし」

透華「……そうですわ! 今度、服を買いに行きましょう」

透華「皆で見繕って差し上げてましてよ」

純「透華はともかく、国広君はすごい服を薦めてくるからなあ……」

京太郎「もしかしてあんな感じの服を他人に薦めるんですか……」

久「何にせよ、それがいいかもね。気分転換にもなるし、いいんじゃない?」


久「ハギヨシさんは悩みとかないのかしら?」

ハギヨシ「私……ですか?」

京太郎「部長、失礼ですよ。ハギヨシさんに悩みなんて――」

ハギヨシ「そうですね……恥ずかしながら……」

ハギヨシ「現状が仕事が恋人故か、このままだと婚期を逃しそうだなと、この前考えましたね」



京太郎・透華「「――は?」」



京太郎「……」

透華「……」


京太郎「耳がおかしくなったんですかね……今、ありえない言葉が聞こえたような」

透華「京太郎君もですか? 偶然ですわね、私もですわ」

京太郎「こんき……根気……今期……」

京太郎「……ああ、仕事が忙しくて、今期のアニメを見逃しそうってことですね?」

透華「なるほど、それですわ!」

透華「ハギヨシもアニメを見たりするのですわね……意外ですの」

久「ちょっと力技すぎない?」

ハギヨシ「透華お嬢様、そういう意味ではなくいわゆる結婚適齢期でございます」


ハギヨシ「今すぐ結婚したいというわけではないのですが……」

ハギヨシ「この年で現状、恋人がいないのは如何なものかなと、ふと思いまして」

純「ヨッシーに恋人ねえ」

久「ハギヨシさんの場合、釣りあう人を探すのも一苦労しそうね」

京太郎・透華「「……恋人」」


京太郎「……」

透華「……」


純「黙り込んでる二人が不気味なんだが」

久「何なのかしらね」

京太郎「……そうか、謎は全て解けました」

透華「――なんですって? それは本当ですの!?」

久「謎なんてあったかしら……」

久「こんなところで、前言った謎解きフラグを消化しなくていいのよ?」


京太郎「執事の世界では、戦う事を宿命付けられた男女を恋人と言うんですね」

京太郎「執事(バトラー)だけに」

京太郎「それなら辻褄があう……!」

透華「京太郎君、冴えてますわね! きっとそうですわ!」

久「冴えてもないし、辻褄もあってないわ。現実逃避し始めたわね」

久「須賀君は胸のこと以外でも、頭が悪くなることがあるのね……」

純「キャラ崩壊がちょっと激しすぎやしねーか?」

ハギヨシ「ごく普通に、言葉の通りの意味でございます」


久「しかし、ハギヨシさんがそういうことを気にするなんて、意外ね」

純「引く手数多な気がするんだけどな。ほら、うちメイド多いし」

ハギヨシ「女性が多い職場ですが、公私は区別するものだと考えていますので……」

ハギヨシ「まあ職場外でも、そういう浮いた話は今はないのですが」


京太郎・透華「「今は!?」」


久「この二人は放っておくとして」

純「一々ショック受けすぎだろ、二人とも……」


久「ハギヨシさんって、学生時代からの恋人とかいてもおかしくないイメージよね……」

久「ほら、やんごとなき身分の金髪巨乳で、血塗れな字名の人とラブロマンスとか」

純「ああ、垂直な壁に直立できそうだし、忍者技能も持ってそうだもんなヨッシー」

京太郎・透華「「そんなオカルトありえません!」わ!」

ハギヨシ「はは、まさかそんなことはなかったですよ」


ハギヨシ「学生時代ですか……懐かしいですね」

ハギヨシ「片思いをしていて、結局言い出せずに終わったことがありましたね」

京太郎「バン……ザド……」

久「須賀君、ここではリントの言葉でOKよ」

透華「……興信所に調べさせないといけませんわ……」

純「透華も落ち着け。小声で言っても、しっかり聞こえてるから」


純「でも、ちょっとオレも興味があるな」

久「ハギヨシさんの片思い相手……どんな人だったの?」

ハギヨシ「……優しい人でしたよ。妹さんが二人いたんですが」

ハギヨシ「妹さんへの面倒見もよく、気立ての良い方でした」

久「へー、ハギヨシさんって性格重視なんだ」

ハギヨシ「そこはご想像にお任せします」

ハギヨシ「彼女に渡そうと、弁当を作って渡せなかったとかもありましたね……」

ハギヨシ「今思い返せば、青春の一ページというやつですか」


久「仕事にかかりきりで、出会いがないということなら、休日に出掛けてみるとかどうかしら?」

純「偶然の素敵な出会いってやつか。まあ、ヨッシーは働きすぎだからな」

ハギヨシ「確かに、久しぶりに出掛けてみるのもいいかもしれませんね」





京太郎・透華「「……」」



尚、何でもよい話ではあるが――

後日、ある執事は休日に外出したのだが……それを尾行する人物達がいたり、いなかったり。

結果、その執事に説教される、お嬢様と男子学生がいたとかいなかったとか。


                                         【境界線上の龍門渕編】 ――カンッ

点蔵→あの野郎許せねえ
保坂→きもちわるい
ハギヨシさん→許せるし、きもちわるくない
何故なのか

安価【お悩み相談相手】

1 鶴賀の面子
2 宮永照
3 夢乃マホ

↓1

3

>>283
3 夢乃マホ

【安価】夢乃マホの悩み
↓1

※極端なエロ、グロ。著しく道徳に反する悩み
要するに流石にこれは洒落にならないと判断したものは再安価

オリジナルな技ってかスキルが欲しい

>>287
夢乃マホの悩み:オリジナルな技ってかスキルが欲しい

スキル、スキル、スキル……
麻雀だと個人的にややシリアスなシチュしかぱっと思い浮かばなかったんすけど

コンマ判定:なんのスキルなんですかね
1~33 麻雀的な何か
34~66 異常(アブノーマル)的な何か
67~00 ヒーロー的な何か

↓1

へろー

>>291
なんのスキルなんですかね:【85】ヒーロー的な何か
把握

続けていけるかなと思ってたんですが、風邪で頭が回りきってないので寝ます
申し訳ない

そもそもここ京太郎スレじゃないと思うが。

>>308

: : : : : : : : : . \ -─- 、      __
_ノ\_ : : : : . . : : : : : : : .`. ̄. . : : : : :〉

        ( : : : : : : : : : : : : : : : : : : : / //
  マ    / : :/〈: :/ ノ: :ノ|: ト: : : : :/ 〃
      /\/  V / '´ |:ノ∧: : 〈
  ジ  /\/ \    J     '; : : ヽ
    〈 : :/ ,===ヽ       / '; : : .ヽ
  で  〉/ / ,イし∧ \   ,イヘヽl: : : : .ヽ
    l  | l .:.::::ノl      l.:.:::ノ〉|: : :,ハ: .',
  っ ',   ヽニノ    , ヽニノ/l: : :l ∨
 !? 、 ⊂⊃  _, -、_   ⊂l: : :l    ┌─z
_  _, へ、J  (   ノ   ノ: : :l |l   |  >
  `´∨  |  、  ` ´   , イ : : :ノ |l  ノ_,ゝ
      _|   `ヽ┬  ´  ノ イ
≦ ̄´   \─ 、├ヘ、

 ̄\       \  ` ̄厂 ̄\


 清澄高校麻雀部部室。

 今、須賀京太郎は、ぺしぺしと手のひらで、


久「ねえ須賀君、暇なんだけど」


 背後から頭を叩かれながら、本――『現代麻雀技術論』――を読んでいた。


 ……人が真面目に勉強している時に、なんなのだろうかこの人は。

 ただでさえ最近、早朝ランニングを咲に目撃された際に、

 『まだ続けてるんだ。本当にハゲるよ』と、呪いを掛けられたばかりである。

 ――何故、トレーニングを続けた場合、ハゲる事が確定するかのように語るのかは不明である――

 精神的な攻撃と物理的な攻撃による毛根への挟撃で、本当にハゲたらどうしてくれるのだろう。


 麻雀を打っている夢乃マホの後にいる、染谷まこ――後で気付いた事を指導する腹積もりらしい――に

 「助けて下さい」との意味を込め、視線を送る。

 すると視線に気付いた彼女は眼鏡をくいっと一度あげ、肩をすくめた。


 ……自分でなんとかしろという事か、これは。

 最近、染谷先輩が冷たい……前に説教されたのもそうだが、きっと部長のせいだ、と思いつつ、


京太郎「なんで叩くんですか……とりあえずやめて下さい」


 牽制してみる。


久「んー……なんとなく?」


 続けて、須賀君座ってるから丁度良い位置にあったし、と曰う。

 つまり特に理由はないらしい。

 ため息が一つこぼれた。


京太郎「染谷先輩みたいに対局を見てその後指導とかしないんですか……」


久「マホちゃんはまこが見てるし……咲達はもう自分のフォームを持ってるから、言うことがないのよね」


 改善すべき点はIH前に伝えちゃったし、と続ける。


久「まあ、後は成長に任せるしかないわね」


 ……確かに、自分以外の皆は、基礎雀力と確立されたフォームを持っている。

 そして、その言葉に何となくではあるが、彼女達への信頼を感じた。

 何故か置いてけぼりにされたようで悔しい、と思う。

 格好悪いから口には出さないけれど。


 もう一度、ため息が一つ。

 そういえば、ため息は幸せが逃げるって言うな、とか考えつつ、

 再び本へ目線を落とす。


久「もう、だから暇だって言ってるのに」


 ……無視だ。無視。構うから調子に乗るタイプにはこれしかない。

 と腹を決め、読書に耽けようとする。


 不意に感じる、頭頂部への重さと、後頭部への柔らかな感触。

 そして、どこか甘い匂い。


京太郎「……あの、何をされていらっしゃるんでしょうか?」

久「暇だからのしかかってみたの」


 こちらからは、見えはしないが感触的に両腕を組んで頭に乗せられ体重をかけられたらしい。

 という事は、必然に感じるこの後頭部への感触は。

 ――おもちソムリエとしての直感は理屈で考える前に答えを出していたりする。


 須賀京太郎が、もう一度口を開く前に、


久「いわゆる変則的な『当ててんのよ』ね」


 とかいう言葉が告げられた。


 それに一瞬遅れて須賀京太郎を襲う、名状しがたいバールのような――ではなく、

 這いよる混沌的な空気な何かというか。そんな威圧感。


 ……あ、これはまずい。

 マホ、咲、優希、和の四人が卓を囲んでいる辺り、

 具体的には咲の背中から良くないオーラが発せられている、間違いない。

 色で言えば、黒い何か。

 理由を考える前に直感し、体が動いていた。


 ねえ、嬉しくない?などと戯言を言う部長を引き剥がす。

 ……ちょっと嬉しかったです、はい。

 口に出すと、更に危険となると感じたので出しはしない。


 部長にからかうのはやめてくださいと、紳士的に釘を刺し、椅子を持って咲の背後へ。

 対局の傍ならば、からかってきて、煩くしないだろうとの判断。


 椅子に座った際に、咲にこちらを一瞥された。

 養豚場のブタでも見るかのように冷たい目だった。

 具体的には『可哀想だけど、明日の朝にはお肉屋さんの店先にならぶ運命なのね』って感じの。


 ……これは俺の責任なのだろうか。またまた一つため息がこぼれた。

 まあ、それはともかく、咲のお手並み拝見というこう。


 各自5万点持ちで始まった東南戦。飛びあり他、細かいところはIHルール。
 
 現在のトップ目は東場で奔ったのか片岡優希、二位に原村和。

 ラス目は夢乃マホ、持ち点が半分をやや割った状態となっている。


 南一局、親は宮永咲、九順目。ドラは六索。


 須賀京太郎が背後から宮永咲の手牌を視界に収めた。


 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐    
 │⑤│⑥│⑥│⑥│⑦│.1 │.1 │.1 │.2 │  │  │  │  │ 
 │筒│筒│筒│筒│筒│索│索│索│索│南│南│南│南│   
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘    


 ――一向聴。

 六筒、一二三索引きで聴牌であるものの、受けの枚数は少ない。

 普通ならば南暗槓で槓ドラが絡むか、そこから回し立直で裏期待をする牌姿。

 なんて事を思いつつ、須賀京太郎は思考の海に沈む。


 ……ああ、でもこいつ、槓ドラはあんまり絡まないんだっけ。

 手が遅くなるのを覚悟し、刻子手での和了を目指す選択もあるか。

 役満は伝説だし、拘ってもいいかもしれない。ノーマーク爆牌党の八崎さんもそんな感じの事を言っていた。


 関係ないが八崎さんと言えば……『リードは守るものではない、広げるものだ』

 いつかはそんな科白を決めてみたい。


 次順、宮永咲、


 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐    ┌─┐
 │⑤│⑥│⑥│⑥│⑦│.1 │.1 │.1 │.2 │  │  │  │  │    │⑥│
 │筒│筒│筒│筒│筒│索│索│索│索│南│南│南│南│    │筒│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘    └─┘


 自摸、六筒。

 打南、もしくは南を暗槓にて二、三索聴牌。高めで三暗刻が付く。

 
 ……ここで最後の六筒引くのか。

 自分ならば、この場合どうするだろう。

 配牌は知らぬものの、ここまで槓材が集まる手牌にならない可能性が高い、というのは置いておくとして。


 河の把握、場況判断、等々、宮永咲に教えてもらった、

 もしくは教本で見た、それらを須賀京太郎は思い浮かべる。


 河を見る限り、副露している者もいないこともあり、

 他家の手の進み具合は遅いのか、危急の判断を必要とする場況ではないように思える。

 手出しか自摸切りかを把握できていないので、曖昧ではあるけれども。


 そして、二索は河に二枚、三索は見えず。ドラ傍周りは出ていなく、総じて索子は場に高い。

 二索が薄いのが痛い、現状の高めが残り一枚だ。

 また、早い段階で八九筒と筒子の下がまばらに切られ、手中に六筒が四枚ある事から、

 筒子は場にやや安い。


 ……まあ、何はともあれ、南を暗槓して嶺上牌次第か。


 立直と行くのはどうだろう……

 待ちの形は良いとは言えず、安めの場合、打点は槓ドラ次第。


 おそらく先制聴牌が入った状態であるけれど、黙聴で様子を見てもいいかもしれない。

 もう少し順目が早いならば、暗槓から即リーといきたいのだが。

 黙聴の場合、順調に筒子を自摸れば、場に安い筒子に照準を合わせつつ、回せ、

 四暗刻まで伸びるかもしれない。


 ――そして、宮永咲の選択は、


                                 ┌─┐                 
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┤.2 ├─┬─┬─┬─┬─┐
 │⑤│⑥│⑥│⑥│⑦│.1 │.1 │.1 │索│  │  │  │  │⑥│
 │筒│筒│筒│筒│筒│索│索│索├─┤南│南│南│南│筒│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘  └─┴─┴─┴─┴─┘      


 聴牌取らず、一聴向戻しであった。

 普段、須賀京太郎へ教えていた麻雀の打ち筋とは明らかに異なる、其れ。

 河に三枚目となる二索が静かに置かれる。


 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐
 │⑤│⑥│⑥│⑥│⑥│⑦│.1 │.1 │.1 │  │  │  │  │
 │筒│筒│筒│筒│筒│筒│索│索│索│南│南│南│南│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘


 この選択の意図は計りかねた。
 
 聴牌維持をしない理由は特にないはずだ、と考える。

 見切って二、三索待ちを変えるにしても、まず暗槓しない理由にはならない。

 何故。



 同順、夢乃マホが自摸の後、


マホ「えっと」


 呟き、一瞬の逡巡を挟み、摘み上げた牌は――一索。


 その捨牌が契機となり、河に置かれた牌から指が離れる僅かな間、

 須賀京太郎は、先ほどの聴牌取らずの理由を推測する、更に脳裏にある想像が浮かんだ。



 ――河には三枚の二索と、手中の一索三枚。場に高い索子。

 最後の一索が誰かの手中にあるとするなら……索子の下の入り目が薄くなれば、

 カンチャン整理、または索子自摸による他の待ちへ切り替えで、

 最後の一索が場に出る可能性は自然と高くなるだろう。


 また、南暗槓に関しては、行った場合、中盤に差し掛かった現状で、

 親が風牌を抱えている事を晒すこことなり、手が遅い他家の警戒を招く事を考慮し、一旦見送ったのだろう。


 まあ、もしかしたら、そんな理屈を超えたところで、あの選択をする理由があったのかもしれない。

 なんていっても、咲だし。あ、考えるの早すぎだろというツッコミは無しで。


 元より主軸に置いている戦略/戦術が違うのだ。

 見えている景色だってきっと異なるのだろう。

 そして、咲にとっては、現在の役や聴牌の後先よりも――


 彼が識る彼女ならば、河に放たれた、この牌、一索は


咲「槓」


 果たして、須賀京太郎の想像は過たずに、宮永咲の現実と合致した。

 静から動へ。三暗刻が消える事など頓着せず。

 彼女の狙いは、大空に舞う鳳すら墜とさんとする狙撃、大明槓。

 かつて、見えないはずの他家の打点を大凡知覚していた天江衣を破った奇襲。


 河の一索が細い指によって拾い上げられ、手中の一索とともに晒される。


 ――退かぬ、

                                                                       
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐    ┌─┬─┬─┐      
 │⑤│⑥│⑥│⑥│⑥│⑦│  │  │  │  │ │⑦│    │.1 │.1 │.1 ├──┐
 │筒│筒│筒│筒│筒│筒│南│南│南│南│ │筒│    │索│索│索│.1 索│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘    └─┴─┴─┴──┘


 放たれた一索と手中の一索暗刻は明槓に溶け、


 当たり前のように引き寄せられる有効牌。


 嶺上自摸、七筒。



咲「槓ッ」


 ――媚びぬ、

                                                                              
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐    ┌─┬─┬─┬─┐ ┌─┬─┬─┐      
 │⑤│⑥│⑥│⑥│⑥│⑦│⑦│ │⑦│    │  │  │  │  │ │.1 │.1 │.1 ├──┐
 │筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│ │筒│    │  │南│南│  │ │索│索│索│.1 索│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘    └─┴─┴─┴─┘ └─┴─┴─┴──┘


 南での暗槓を重ね、嶺上牌にてもう一度、七筒を引き当てる。


 流れるような連続した槓による曲芸染みた和了となる形だ。


 ……マジか。やっぱり引きが強いな、おい――


 ――でも、これで終わりじゃないよな。


 その考えを肯定するかのように、『自摸』との声は上がらず、


咲「もいっこ槓ッ」


 更に六筒暗槓。


 ――省みぬ。

                                                                              
 ┌─┬─┬─┬─┐    ┌─┬─┬─┬─┐ ┌─┬─┬─┬─┐ ┌─┬─┬─┐      
 │⑤│⑦│⑦│⑦│    │  │⑥│⑥│  │ │  │  │  │  │ │.1 │.1 │.1 ├──┐
 │筒│筒│筒│筒│    │  │筒│筒│  │ │  │南│南│  │ │索│索│索│.1 索│
 └─┴─┴─┴─┘    └─┴─┴─┴─┘ └─┴─┴─┴─┘ └─┴─┴─┴──┘


 他家の目から見ても明らかな、瞬く間に沸騰した場況。

 堰が決壊し押し止められていた水が流れ出すように、暴れ、跳ねる打点。

 かつてのIH県予選決勝、その決め手となった流れを否応にも想起させる。


 ――マジで、これを狙ってたのか。


 ……というか、その槓の時のプレッシャーは如何なものかと。

 先ほどからマホが指を離した状態のまま硬直している。

 まあ、自分は慣れてるせいか、咲のは特に怖くはないが。切羽詰まった時も似たような感じであるし。

 むしろ、こういう時にこそ弄ってやりたくなる。

 場を和ます為に、後ろから角でも掴んでやるべきか――


 そんな、いまいち真面目になりきれない須賀京太郎の胸中を知らず、

 宮永咲は王牌へ、悠然と、その手を伸ばし――


                    イ:  ̄ ̄ ̄ ̄: : : 、
                 /: ::/: : : : : : : : : : : : : :\

                /: : : /   /_ /! l: : : : : : :\
.               /: : : /: / ̄   \: :j:  : | :ト: :ヽ
              /⌒ <´        /\_: j:,' l`ト、\',
             /     ヽ   、  {  , -Yト、::j ::|ヽ
         r─ 'ヽ       __\ .ィ\ `  ノナ/!:ト、 : ハ ',
        /    \ __ヽ  {   ヾ  ∠' ̄ィ≧</イ/: /: : : ::|
       /       ヽ \ `ー ' ノ :::::::  r':::j::}ヽイ: / :!、: : :'
     /  \ \     レ' `- イ  _   ' 弋::ソ /彡': ::| ヽ: !!
   イ´/    ヽ ヽ     ',    ヽ{:::::::丶 '''''' / ト: : : ,'  リ
 / ,イ!        ', 人 {  ).}     ヾー '    /ノ !: /
./ /!::! ≧、    ∨ \-' ノ       >-、 <     }/
{  l |:::!    ヽ {  j i   , ̄   __      > 、
l  ヾヽ::、   丶二.ノ イ.t──<⌒:ト、        }
ヽ  ヽ\ト _ イ:/ノ:/ l.\:::::::\ミ::! リ丶 __/

      \ヽ`::ー':: ̄イ /  \:::ヽ:ト} ん、:::::::::≧!
  \    ̄ ̄_  彡'.    \:\V⌒ミ三彡イ、
     ̄ ̄ \l \         { ⌒ト-- ' レ' l
          ∨       /   /!⌒Y     }\ト、
          |        /   / |::::::::ヾ    ;:    丶
          |    ::::::/   ::// l::::::::::::',:\ {     \


 其処に在る、赤五筒を掴み取った。

                                                                                     
 ┌─┬─┬─┬─┐ ┌─┐    ┌─┬─┬─┬─┐ ┌─┬─┬─┬─┐ ┌─┬─┬─┐      
 │⑤│⑦│⑦│⑦│ │⑤│    │  │⑥│⑥│  │ │  │  │  │  │ │.1 │.1 │.1 ├──┐
 │筒│筒│筒│筒│ │筒│    │  │筒│筒│  │ │  │南│南│  │ │索│索│索│.1 索│
 └─┴─┴─┴─┘ └─┘    └─┴─┴─┴─┘ └─┴─┴─┴─┘ └─┴─┴─┴──┘


 王牌を統べる者であればこそ、確信すら伴って引いたであろう、其の牌。

 彼女にとっては、雨が空から地へ降るような、当然の帰結。

 未来予知の領域にまで迫る、嶺上牌に対する直感。

 卓上へ常人とは異なる法則を持ち込む者。

 其れは紛うことなき強者の理。


 そして、手牌が倒され、


 ――苧環

 須賀京太郎はその時、確かに、卓上に咲く、紫と赤の花を視た――


 静かな声で、


咲「自摸」


 告げられる和了宣言、次いで二万四千、との点数申告。


 嶺上開花、三暗刻、三槓子、対々和、南、ドラ一。

 親での倍満和了。


 夢乃マホを大明槓からの嶺上開花、責任払いで箱割れさせ、

 同時に片岡優希を抜き去り、宮永咲はトップとなり、終局となった。


※先ほどの和了シーンはあまりにあれだった為 ↓ に差し替えられました。



─────  / /: :/: : ;: : : : : : : : : : : ,: i

  バチコーン!!! / i  ,!  i'  i 、 i  ,  l i                                 _ _
二二二二二/ ,: : !: :lヽ、i'、;!;/!ヽ;!;: :il: :,!: :リ   i___|___i    l      ┌‐┐┌‐┐  十─十   | / | /
三三三三三'"i/|: :\i O    Oレ'/ /゙)/  /\‐┬‐   ├─    |二_l |二,|    ノ |    | / | /
二二二二二二 !/( "゙     ゙゙∠ノ‐';/     二, |三l     |      | __  |  /| ├一  |/  |/
──────  レ丶 ,__ Д  _, 〆W       l┘ 兀 ‐─┴──  | 十十  |    |  |__ O O
──────   と二 /i´ス´斤 `゙、



 ……マジだった。メタ視点でデフォルメ化して、和ませようとしてみたものの、

 想像通りのFATAL K.O……いや即死技ではないから、それは違うか。


 世が世なら、和了と同時に責任払いとなった相手が電撃で打たれる場面である。

 麻雀で人が死ぬという風潮、何なんだろうね、あれ。


 どうでもいいが、そんな事を考えていると『落鳳破(カイザー・フェニックス)』という、

 謎の単語が須賀京太郎の頭の片隅によぎる。

 三国志は多分関係ない。

 絶好調なら更に七筒を重ね、暗槓から五筒自摸となるのだろう。

 幻の役満、伝説だ。

 つまり『真・落鳳破(リアル・カイザー・フェニックス)』、ネーミングに特に意味はない。


 ……帝王の星か何か?

 王牌は聖帝十字陵の暗喩なのだろうか――ああ、王ってそういう……


 こういう闘牌をするからIH以後、web上にある某掲示板の清澄麻雀部を語るスレッドのタイトルに

 『宮永~その血の運命~』だとか『BLOODY STREAM』等の、

 やたら意味不明な煽りが付くのではないだろうか、とふと思う。


 ――余談であるが、幼馴染の事を好き勝手書かれているのが、容易く想像できるため、

 精神衛生上の理由で、掲示板の内容を閲覧するのはやめたらしい――


 ちょっと気になって好奇心から白糸台のスレッドのタイトルを調べたら、

 2年前あたりからそれらと似たような感じだったので、姉のせいもあるかもしれない。

すいません、睡魔が限界なので一旦セーブで

序盤位イチャつかせたら京太郎スレと認められるだろうか
そういえばマホちゃんメイン回だったはずなのに何故
思いつきの都合上の安価を置いて寝ますー

【安価】宮永照の悩み
↓1

※極端なエロ、グロ。著しく道徳に反する悩み
要するに流石にこれは洒落にならないと判断したものは再安価

美味しいお菓子を作りたいけど、なかなか上手く行かない

気付いた、咲ちゃん出すと地の文使いたい病が発症して長くなるぽい

>>328
宮永照の悩み:美味しいお菓子を作りたいけど、なかなか上手く行かない

コンマ判定:宮永照についてのあれこれ
1~49 お菓子大好き
50~98 お菓子って美味しいよね、一緒に食べようよ
ゾロ目 >>1も初めて知ったけど照も京太郎の幼馴染
     ここは京太郎スレ。きっと、たぶん、おそらく、メイビー、故に

↓1

>>341【87】:お菓子って美味しいよね、一緒に食べようよ

照「将来の夢はパティシエです!」(超笑顔)
これは麻雀界の損失ですわ

そしてゾロ目だと色々プロット破壊されるので危なかった

関係ないですけど……
誰か、京:『アゲハ蝶』/咲:『パピヨン~papillon~』、な感じの京咲下さい
なんでもしますから

ぼちぼちでいきます


 閑話休題(それはさておき)。

 卓上に下りている沈黙の帳。それを破ったのは、


優希「相変わらず咲ちゃんずっこいじぇー。ラスウーピン、嶺上牌でツモるんだもんなー」


 との言葉だった。手中の五筒二枚を見せながら、


優希「のどちゃんはやっぱりおっぱいでイカサマしてるし」


 とぶつくさ続ける。

 間髪入れずに上がる、してません、との原村和の声。


咲「あはははは……」


 と苦笑い。

 ……優希のあれは場を和まそうとしたのか、それとも素なのか。

 多分前者だろう、あいつ意外とそういうことに気を使えるヤツだし。

 と須賀京太郎は考えつつ、夢乃マホの硬直がまだ解けてないことに気が付いた。


 優希を見習うか……

 立ち上がり先程の案を実行。つまり、


咲「ひゃあっ!」


 角ぽい何かを鷲掴み。背後からの奇襲に驚いたのか、上がる奇声。

 感触からして寄生獣の線は薄いか……いや、まだ断定はできん。

 どうでもいいことを思いながら、追撃で少し荒く彼女の頭を撫で回す。


京太郎「あんまり将来の後輩をいじめるなよ?」

咲「い、いじめてなんかないもん!」

京太郎「あれだけビビらせといて?」


 彼女が撫でる手を引き剥がそうと身を捩る。

 彼は彼女が本気で嫌がる前にその手を撤退。

 染谷まこと原村和の、『またいつもの漫才か』、と言わんばかりの、

 呆れの混じった視線は見なかったことにした。

  
咲「もう、髪のセットが……」


 手櫛で整えながら彼女が呟く。


京太郎「わりー、わりー」

咲「もう……全く申し訳無さそうじゃないし」


 そんなやり取りの最中、
 

マホ「はっ!」


 こちら側に無事戻ってくる夢乃マホ。

 ……臨死体験でもしてたのだろうか。やはり、麻雀(物理)なのだろうか。


久「なんだか止まってたけど大丈夫?」

マホ「はい、大丈夫です……あっ、マホ、夢の中で麻雀牌に宿る精に出会いました!」

優希「麻雀牌の精?」

マホ「はい! なんだか良く分からないおじさんでした」

まこ「本当に大丈夫かのう」


 ……というか精霊オッサンなのかよ。

 どこぞの婦警の持つ銃に宿る精霊じゃあるまいし。


 喜劇じみたやり取りを見ながら、そんな事を思っていると、


咲「……京ちゃんは私の扱いがぞんざいすぎる気がする」


 不満気に須賀京太郎を睨めあげながら、ぽつりと言葉を漏らす。

 ……あー、加減を間違えてやりすぎたか。

 それとも、世界で一番なんとかかんとか。そういう扱い心得てよね、ってか。

すいませんちょい中断


京太郎「はい、はい……申し訳ありませんでした、お姫様」

咲「京ちゃん、私の話ちゃんと聞いてる? そうやってすぐ茶化すんだから」

京太郎「……まあ、胸がもっと育ったら考えてやらんこともない」


 言ってから気付く。紳士目指す者にはあるまじき失言だ。

 いつもおもちを前にしたら、頭の螺子が緩んでるだろ、との指摘は無しにして頂きたい。

 キャラ付けって大事だよね。

 須賀京太郎は女性陣からの視線を感じた。


咲「むっ」

 目が据わった。

 ……やばい明らかにやりすぎた。


和「須賀君……さいてーですね」

 やたら冷たく、ぽつりと。


優希「それは流石にちょっと……どうかと思う」

 いつもの語尾も使わず、まじツコッミ。


久「すがくんさいてー」

 便乗して、棒読みで。にまにまと楽しそうだ。


まこ「はあ……」

 やれやれといった風情で溜息が一つ。

 
マホ「えっと、えっと……大丈夫です! マホはそんな須賀先輩でも応援します!」

 謎の励まし。天使だ。

 本当に、全く、関係無いけれど滝壺も天使だと思う。


 ……我が軍の味方はマホだけだ。

 発端は自業自得ではあるが、須賀京太郎は戦況の不利を悟る。故に。


京太郎「あー……ちょっとジュース買ってきます」

 三十六計逃げるに如かず。

 彼はそう告げると部室を抜けだそうする。


マホ「あっ、マホも買いに行きます」

 そんな夢乃マホの言葉を背に受けながら。

■□■


京太郎「♪~貴方が望むのなら、この身など、いつでも差し出していい。降り注ぐ、火の粉の盾になろう」

京太郎「ただそこに一握り、残った僕の想いを、すくい上げて、心の隅において~♪」


 ラ、ラ、ラ、と続けて歌を口ずさみながら自販機に硬貨を投入し、

 迷わずドクペのボタンを押し込んだ。


 ……そういやこれを部の皆の前で初めて飲んだ時、奇異の目で見られたな。

 直接的に言えば、頭おかしいなんじゃないの君、って感じで。

 部長なんて直球で、『本当に飲む人いるんだ……都市伝説だと思ってたわ』、とか言ってきた。


 ドクペは今も販売されている炭酸飲料で、最も歴史が古い知的飲料であるというのに……

 飲む人がいないなら世に流通している訳がない、はい論破。

 そして、マヨラーにドクペを馬鹿にする資格は無いはず。


マホ「……昔の歌ですか? マホは知らないです」

京太郎「ん、ああ、結構昔のだな。ちょっと物悲しい曲だけど……好きなんだ、これ」


 まあ、歌詞の解釈次第だけどなと、言葉を続け、ドクペを掴む。

 ……あー、ペットボトルの方も置いてくれないかな。

 と、大多数の人にとって愚にもつかぬこと思う。


マホ「えっと……何にしようかな」


 財布から小銭を取り出し、自販機に入れようとする彼女を、片手で塞ぐ形で制止する。

 そして、もう一方の手に握っていた五百円硬貨を自販機に投入し、


京太郎「これ位は先輩風吹かせても、罰は当たらないからな」

 と言ってみる。

 ……ちょっと格好付けすぎかと思わないでもない。

 彼女はちょっと小首を傾げ、良いんですか、と返した。


京太郎「ま、さっき庇ってくれたお礼だとでも思って……ドクペとか美味いぞ?」

マホ「あはは、それはちょっと……マホはこれにします」

京太郎「……なんで皆これの美味さが理解できないんだ」

訂正
× 直接的に言えば、頭おかしいなんじゃないの君、って感じで。
◯ 直接的に言えば、頭おかしいんじゃないの君、って感じで。

消し忘れ……

訂正
× 彼女はちょっと小首を傾げ、良いんですか、と返した。
◯ 彼女は小首を傾げ、良いんですか、と返した。

ちょ、ちょいセーブで
明日には、終わらせる予定で……
申し訳ない

霞「彼らはね、咲のSSが好きなのではないのよ」

霞「自分の姿を須賀くんに重ね、咲キャラたちと絡みたいだけなの」

初美「そうなんですかー?」

霞「そうよ。須賀くんはかわいそうだわ。京豚の、自己投影の犠牲になってしまったせいでいろいろな人に嫌われてし亦野だから・・・」

霞「京太郎SSの『京太郎』を、『俺』に置き換えて御覧なさい」

霞「ほとんどのSSで、違和感なく話が進むはずよ」

初美「うわー・・・ほんとうなのですよー」

霞「こういったスレにはね、ただちにふんふむを召還しなくてはならないの」

霞「『悪』をのさばらせてはいけないのよ」


 購入した缶を持って歩く。

 そろそろ肌寒くなってきたなと、頭の片隅によぎった。

 冬の足音が聞こえてくる季節である。

 
 ……十月もあと一週間も経たず終わりか。

 明日は咲の誕生日だなあ。一年経つのも早いもんだ。

 去年を思い出しながら、今年のそれに思いを馳せる。

 今年は部の皆もいるし賑やかになりそうだ、皆はどんな贈り物をするつもりだろうか、とか。


 ふと、夢乃マホがあったか~い炭酸飲料――これ本当に美味しいのだろうか――の缶を、

 自身の左右の頬に、かわるがわる押し当てたりしている事に気付く。

 須賀京太郎は、彼女のどこか愛嬌のある仕草に、少女らしい可憐な印象を覚えた。


 彼女は、そんな彼の視線に気付き、まじまじと見られていた事が面映かったのだろう、

 誤魔化すように、えへへ、と顔を綻ばす。

 旧校舎に入り、階段の前へ差し掛かった頃、夢乃マホが口を開いた。 


マホ「そういえば、マホ、今日はまだチョンボしてないんですよー」

京太郎「おお、それは偉いな」


 言葉を返し、宮永咲や片岡優希にするように、

 彼女の頭にぽんと手を置き、
 

マホ「あぅ……」


 撫でる。

 ……しまった。無自覚に手が伸びた。

 気の置けない仲とは言い難い相手にする事ではない。

 どうもマホ相手だと、咲や優希にする様に接してしまう。


京太郎「あっ、と、すまん。無遠慮だった」

マホ「い、いえ……問題ないです……」


  彼女の、頬を少し紅に染めた、微笑みが一つ。


マホ「……マホは兄弟がいないから、間違ってるかもしれませんけど……須賀先輩はお兄ちゃんみたいですね」


 ――お兄ちゃん。

 なんたる破壊力……例えるならば、どこぞの悪石の巫女の四喜和並の火力。

 その手の嗜好を持っていたら危なかった。一発で撃沈されるところだ。


京太郎「ははっ、じゃあ、マホは妹だな」


 平静を装い、そう言って、階段に足を踏み出し、進む。

 互いに意図したわけではないだろうが、二人の間に降りる無言の幕。

 階段を昇る二人分の足音が淡々と響く。


 連れ立って部室に戻る途中、旧校舎の最上階への階段を踏み出す前、

 くい、と制服の袖を引かれた。

 振り向くと、視線を床に落とした夢乃マホ。


マホ「マホ……須賀先輩に聞いて欲しい事があるんです」

京太郎「うん? いきなりどうした?」

マホ「悩みの相談を受けてるって、竹井先輩から聞きました」

京太郎「あー、あれか。まあ……なし崩しでやってるな」

マホ「部室だと言い出しにくくって……」


 なるほど、と一つ頷き。それならばと、階段を昇ろうとするのとやめ、

 奉仕部――竹井久が申請し奪取した部室。議会長権限の乱用と言ってはいけない――へ向かった。


 夕日に染まる室内で相対する。


マホ「須賀先輩、恥ずかしいけど……聞いてくれますか?」


 夢乃マホから、上目使いで、そんな言葉が告げられた。

 そして、須賀京太郎の片手を彼女は両手で包むように握る。

 お互いの体温が混じり合う。それは彼女の決意の現れに思えた。


 その時、須賀京太郎に舞い降りる天啓――


 ――年頃の女の子の悩み相談と言えば恋愛事(京太郎偏見)

 ――夕日の色に染まる、マホの潤んだ上目使い(京太郎主観)

 ――先輩を前で言葉に詰まる、繊細な乙女心(京太郎妄想)

 
 ――この勝負、運否天賦じゃない……じゃなくって。

 ……動揺のあまり二度ネタを使っている。


 これは、あれか、中二でも恋がしたい、とかそういう……

 男子学生の憧れである、夕暮れの教室で美少女からの告白、とかいうシチュエーションなのだろうか。


 ……確かにマホは可愛い。天使と言っても良いかもしれない。

 染谷先輩曰く、彼女が『roof-top』でバイトをした際、大人気だったというのも頷ける。

 故に、もしそうだとしたら、男冥利に尽きる――

 ――だが、中学生だ。色々とまずい気が。


 どうでもいいが、天使を語ってはならない、天使を描いてはならない、

 天使を書いてはならない、云々のフレーズが頭の片隅に浮かび、

 そういや、これDODの天使の教会であったなあ、と全く関係ない事を思う。


マホ「先輩……マホ……」


 ……いや、待て、これは何かの勘違いだ。

 クールになれ須賀京太郎、以前、和の一件で学んだはず。


マホ「すき――」


 ――えっ、マジ? SHOW TIME なの?

 それとも、真剣で私に恋しなさい、なの?

 どうすれば良い……受け入れた場合、『生命礼賛信仰(ロリコン)』、との謗りを被る事は免れない。

 いや、だが、しかし――


 夢乃マホの赤い口唇から毀れる言葉を聴きながら、千々に乱れる、無駄に高速思考の中、

 何故か、突然……『めっ』、と言いながら、人差し指を立てている幼馴染の姿が脳裏によぎった。


マホ「――るが欲しいんです!」


 夢乃マホの言葉が室内に鳴り渡る。


京太郎「――」

マホ「……」


京太郎「――アルェ?」

マホ「?」


 二人で首を傾げあう間の抜けた絵面で、頭の中で状況を整理する。

 ……いや、整理する程でもないけど。言葉の通りだろう。

 っていうかスキルって何だ……うん、とりあえずそれは置いておこう。


 須賀京太郎はある疑問を、


京太郎「……マホさん、何故、そんなに思わせぶりなんでしょうか?」


 素直に口にした。何故か敬語で。


マホ「えっと……竹井先輩がこんな感じで言えば、須賀先輩は無碍にしないって」

京太郎「」


 ……燃えたよ、燃え尽きた……真っ白にな――

 ――な感じで、灰になりかける。


マホ「?」


 崩れ落ちそうになるのを四肢に力を入れ耐えた。

 次の瞬間、須賀京太郎の脳内で再生される、ちっちっちと、指を振りながら、

 『須賀君、まだまだ功夫が足りてないわねー』、との竹井久の声。


 ……あ、あ、あ、あの女、絶対、いつか、ギャフンと言わせてやる!


 せめてロッカーでして、とか鳴かせてやろうか、などと些か不穏な衝動すら込み上げてきたり。

 いつかって今さと、ならないのが悲しいところである。


 ――まあ、須賀京太郎が仕返しを考えるのは自由ではある。

 しかし、実行に移せれるかどうかは、また別だ。

 過去に竹井久が述べた『トムとジェリー』との例えは、ある意味で的を得た事実で……

 竹井久の悪戯にさほど尾を引かず、須賀京太郎はこんな関係も悪くはないと、

 内心偶に思ってたりするので、これはこれで凸凹コンビなのだろう。

 実は彼はマゾなのかもしれない。SとMは惹かれ合うのだ。磁石もそうであるし――


 謎印(ハテナマーク)を浮かべたままの夢乃マホと、

 片手で片目を覆い、口角を上げ、昏い笑みを浮かべる須賀京太郎。

 今にもフハハハ、とか高笑いを始めそうな勢いだ。

 ぶっちゃけ、ギアスも持ってないのにそのポーズは似合っていない。


 そんな、混沌とした空間は――


扉「優しく開けてね」

菫「話は聞かせてもらった!」


 ――扉を豪快に開け放って現れた、長髪のクールな美人さんに破られた。

 ……あれは――キュア・バイオレット! じゃなかった、白糸台の部長さん。


照「……」


 弘世菫の隣で、ポッキーをぽりぽりと齧りながら。

 ……咲のお姉さんじゃないか。というか、何故二人は清澄に。


久「やっはろー、須賀君」


 二人の背後からひょこっと、手を振りながら。

 ……復讐対象発見。いつか絶対泣かす。


菫「そういう事なら『SSS』の異名を持つ、私に任せてくれ」

久「あと、悩み相談は私がいないと始まらないわ……はい、皆、着席ー」


 あー、やたら長い前振りだったなあ……そして、説明無くキャラ展開して大丈夫なんだろうか。

 とか須賀京太郎は思いつつ、とりあえず手近な竹井久の隣の椅子に腰を下ろした。

一旦風呂QK


京太郎「……何故お二人がここに?」

菫「うん? ああ、照が週末に一人帰郷すると言い出してな」

菫「帰ってこれなくなると困ると思って、私がついて来たわけだ」

照「菫は過保護だと思う」

菫「目的地と真逆に向かう方向音痴には妥当な処置だな」

菫「大体……駅について清澄に向かうのすら、私が口を挟まなければ迷ってただろう?」

照「……地球の回転が私には合わないだけ」

菫「意味がわからん……まあ、私も長野に用事があったから気にするな」

京太郎「つまり『御都合主義(デウス・エクス・マキナ)』と」

久「須賀君、それを言ったらお終いよ」


久「まあ、というわけで、今回はゲストを迎えて送る――」

久「竹井久と」

菫「弘世菫の」

久・菫「お悩み相談室ー!」

京太郎「二人ともテンション高いですね……というか俺、帰っていいですか?」

久「随分いきなりね」

マホ「はわわ」

照「……」


久「須賀君、もしかして拗ねてる?」

京太郎「いえ、別に。マホに余計な事を吹き込んでとか、欠片も思ってません」

久「拗ねてるじゃない。埋め合わせするから、ね?」

京太郎「もう騙されませんから」

久「意固地になっちゃって……えいっ」

京太郎「い、いきなり何を!」

久「序盤にしたじゃない? 当ててんのよ」

京太郎「そ、そういうので誤魔化そうとするのはどうかと……」

久「嬉しいくせに」

マホ「マホ、知ってます! こういうの色仕掛けって言うんですよね」

京太郎「ほら、悪影響を与えるので人前はやめて下さい」

久「ふーん、人前じゃなければいいんだ」


菫「こほん」

菫「イチャつくのは構わないが……悩み相談をするんだろう?」

久「ん……ええ、そうね。とりあえず須賀君は放っておきましょう」

菫「それで……あー」

マホ「あっ、夢乃マホといいます。はじめましてっ」

菫「ああ、私は弘世菫だ。よろしく頼む……」

菫「ちなみに、そこでお菓子を食べてるのが宮永照」

照「……よろしく」

マホ「はいっ、宮永先輩のお姉さんですね。マホ知ってます! よろしくお願いします」


京太郎「あの……あー……宮永さん」

照「?」

京太郎「弘世さんは見た目に反して、いつもあんなノリなんでしょうか?」

照「……菫は時々頭が悪くなる、我慢して欲しい」

菫「おい」

久「須賀君も時々頭が悪くなるから、人の事は言えないと思うけど」

京太郎「部長に言われたくないです」

照「それと……咲から君の事は聞いてる。照でいい」

京太郎「あっ、はい。IHでちらっと会った気はしますけど……」

京太郎「よろしくお願いします、照さん」

照「うん……よろしく、京ちゃん」

京太郎「えっ」

照「?」

京太郎「えっと……まあ……いいです」

照「……ポッキー食べる?」

京太郎「あ、頂きます」


菫「さて、夢乃さんはスキルが欲しいと言っていたが……」

久「どういうスキルなのかが問題よね」

久「マホちゃん……麻雀での技みたいなやつかしら?」

マホ「えっと、そういうのじゃなくてですね」

京太郎「えっ違うの!?」

マホ「はいっ。マホ、ヒーローが使う必殺技みたいなのが欲しいです」


京太郎「えっ」

菫「なるほど」

久「ああ、ファイナルディメンションキックとか?」

京太郎「二人の反応はおかしいと思うんですが、何故納得するのか……」

京太郎「照さんもそう思いますよね?」

照「……ごめん、聞いてなかった」

京太郎「あっはい。お菓子食べるの邪魔してすいません」


久「さて、どうしようかしら……岩でも割って特訓する?」

菫「ふむ、そうだな……麻雀の技を応用するのはどうだろう?」

京太郎「この人達は何を言っているのだろう」

菫「……知らないのか?」

菫「麻雀でスキルを使える者は須らくその技を物理的に応用できる場合が多い」

菫「その逆もまた然りだ」

京太郎「ちょっと待って下さい。頭が痛くなってきた」

ああ……消し忘れとか訂正

×菫「麻雀でスキルを使える者は須らくその技を物理的に応用できる場合が多い」
×菫「その逆もまた然りだ」

◯菫「麻雀でスキルを使える者はその技を物理的に応用できる場合が多い」
◯菫「ちなみに、その逆もまた然りだ」


菫「例えば、私なら物理的に超精密射撃を行う事が可能であるし……」

京太郎「え、いや本気で?」

菫「本気だ」

京太郎「やっぱり麻雀(物理)なんですか」


菫「そこの照ならば……」

菫「伊達英二ばりのハートブレイクショットを打つ事が可能だ」

京太郎「などと意味不明な供述をしており」


照「……菫」

菫「ん、なんだ?」

照「私はそんなこと出来ない」

菫「えっ」

照「自分の非常識さを私に当て嵌めないで欲しい」

菫「」


菫「い、いやだってな、臨海の辻垣内も出来てたからお前も出来るとばかり」

久「以前に腕に竜巻を纏って見えたのは幻覚だったのかしら……」


菫「と、とにかく……応用できる者もいるということだ」

久「マホちゃんはコピー能力だから応用できたら色々できそうよね」

マホ「ふぇ、そうなんですかっ」

菫「そうだな、魔法少女的な技とかどうだろう?」

菫「夢乃さんは……名前からしてキュア・ドリームだなっ。その線でいこう」

京太郎「南浦さんとある意味被るんですが、それは」


菫「……彼女を知っているのか?」

京太郎「ええ、まあ」

菫「いや、私の長野の用事は彼女に会うことでな……」

菫「知っているなら話が早い、人数的に足りてないし……君もどうだろう、魔法少女?」

京太郎「えっ」

菫「大丈夫、最近は男の娘の魔法少女もいることだし」

京太郎「それ、すっごいレアケースですよね」

菫「細かいことは気にするな」


久「こうして魔法少女(コスプレ)は増えていくのね」

京太郎「しみじみと言ってないで止めて下さい!」


久「今回も無事悩み解決ね」

京太郎「いや解決したんですか、これ」

菫「大丈夫、彼女はきっと立派な魔法少女になる」

京太郎「貴方は趣味仲間増やしたいだけですよね」

マホ「須賀先輩……マホ、魔法少女になってみせます!」

京太郎「マホはマホで何か感化されてるし……」

照「……」


照「私も悩みがある」

菫「そうなのか?」

照「そう……美味しいお菓子を作りたいけど、なかなか上手く行かない」

菫「ああ、なるほど自給自足とかそういう」

照「菫は私に偏見を持ち過ぎだと思う」


照「私の将来の夢はパティシエ」

菫「初耳なんだが、そして麻雀はいいのか」

照「麻雀は趣味でいい……あとお嫁さん」

菫「少女か」

照「コスプレが趣味の菫に言われたくない」


久「そういう悩みなら須賀君がいいわね」

久「お菓子作りとかハギヨシさんに教えてもらってたような」

京太郎「また、いい加減に俺に振る」


照「……そうなの?」

京太郎「あー、まあ、多少は」

照「……」

照「……不束者ですが、よろしくお願いします」

京太郎「ああ、そんなに深々と頭を下げられても……しかもなんか微妙に違うし、それ」


 ちなみに、本編とは関係ないが――

 今回の宮永照の帰郷は、妹の誕生日を祝う為だったりする。

 バースデーケーキを作りたいと言い出す彼女をサポートする為に、須賀京太郎は、

 急遽ハギヨシさんの手を借りたりする事になるのだが、それはもしかしたら別の機会に。

 また、ついでに何やかんやあって大惨事宮永家麻雀大戦が起き、

 クウガvsアナザーアギト(超強化)ばりの闘牌に須賀京太郎は巻き込まれることになるが、

 そっちは確実に描写されることのない物語。


                         【ぎゅわんぶらあ麻雀(物理)派編】―― カンッ

睡魔っょぃ、投げ出しそうになった

安価【お悩み相談相手】

1 鶴賀の面子
2 ともきー&一ちゃん
3 弘世菫

↓1

3

>>398
3 弘世菫

かなり限界に近いので安価置いて寝ます

【安価】弘世菫の悩み
↓1

※極端なエロ、グロ。著しく道徳に反する悩み
要するに流石にこれは洒落にならないと判断したものは再安価

男の人とデートがしてみたい

普段から誤字脱字等で死にたくなってるのに
今回も眠気で頭がおかしくなってた鬱だ

訂正
×菫「少女か」
○菫「少女趣味な乙女か」

>>402
【安価】弘世菫の悩み:男の人とデートがしてみたい

えっと、これってイチャイチャ風味か、菫さんマジ芸人のどっちなんだろう


【幕間・拉麺慕情】


 「「いただきます」」


 須賀京太郎と弘世菫の声が夕飯時の某ラーメンチェーン店の中で重なった。

 相席で対面に座す二人は合掌し、食材に感謝の意を捧げる。


 何故こういう状況になっているのかを説明すると長くなるが――


 先日の夢乃マホの悩み相談が発端。

 弘世菫の悩みは『男の人とデートがしてみたい』。

 部室での咲の誕生日祝いも幕を閉じ、須賀京太郎は弘瀬菫を宿泊先まで送ることに。

 その際、竹井久の送って行くならデートの真似事でもしてみたら、との戯言。

 そうだ、夕飯、食べよう。一緒に。というわけである。


 ――五行で済んでしまった……木・火・土・金・水は関係ない。
 

 シチュエーション設定が適当過ぎるだろ、との指摘は勘弁して頂けると有り難い。

 時系列整理してたら、そもそもデートもどきをねじ込む時間がなさそうだった、とか。

 よくよく考えたらイチャイチャ風味は苦手だし、芸風と違う気が……申し訳ありません、とか。

 とりあえず、のどっちピン芸人は保留して好きなように書くか、とか。

 そういう大人の事情はあったりはしない。きっと、たぶん、おそらく、メイビー。

 大人になるって悲しい事なの、である。


 どうでもいいけれども、数多の子供達に特殊性癖の種子を植え付けた、

 もしくは、ある種の心的外傷を刻み込んだ、某S社のドラゴン飼育ゲーはある意味で許しがたい。

 サラマンダーよりずっと速い! ゲームとしては結構好きではあるが。


 ちなみに前者である為、歳月を経てその種は見事に芽吹いてしまったわけで。

 人生に影響出てるんですが。どう落とし前をつけてくれるんですかね。戯言だけど。

 幼少の頃の体験って結構大事だよね、というだけの話である。


 まさか、スクウェアゲーでそんな体験をするとは当時は思ってもなかったけれども。

 一部キャラの名前をプレーヤーが変えられる辺り、悪意がある気がしないでもない。


 他し事はさておきつ。


 須賀京太郎は、まずレンゲでどろりとした粘着感のあるスープを掬い、一口含んだ。

 口の中に広がる、濃厚でずしりとした存在感のある旨味。

 黄金比を謳う11種類の野菜と鶏が織り成す見事なコラボレーション。


京太郎(……見た目に反して意外と脂っこくないんだよな)

京太郎(店舗によって多少の違いはあるけど……)

京太郎(例えるなら――味の螺旋階段ってとこか)


 言葉にすれば、黒歴史待ったなしの意味不明な批評を脳内で行いながら、

 次いで麺の征服に取り掛かる。

 箸で麺がスープ絡むように軽く掻き混ぜ、熱さを無視し、勢い良く、食す。


 スープのこってりとした食感――食感があるのだ、いや本気で――と、

 茹で上げられた加水率高めの麺による、もちもちとした食感の合わせ技。

 Body & Soulによる味の化学反応。

 つまり、W‐Boiled Extreme だ。茹でてるだけに。


京太郎(……スープが麺に絡みやすいのも良い)

京太郎(チャーシュー、シナチク、九条ネギにも合ってるし)

京太郎(特に、この九条ネギの甘みがアクセントになってて癖になる)

京太郎(人によって好みが分かれる味っていうのは重々理解しているけど――)

京太郎(――このラーメンのレシピを作った創業者には惜しみない賛辞を捧げたい)


 合間に具材で味の緩急をつける事も忘れず、敬意を持って勢いを保ったまま、

 しかし味わう事は疎かにせず、麺を攻略し終えた。

 そして、最後に残ったスープを数回に分けて平らげる。

 ラーメンの鉢が机に着地する音がことりと響く――


 ご馳走様でした。


 ――九十八秒。それがラーメン一杯の完食までのタイムだった。


 お冷で喉を潤しながら、須賀京太郎は同席者に目を向ける。

 弘世菫は、艶やかな長い髪をかき上げながら、ちまちまと極力音を立てず上品に麺を啜っていた。

 彼に見られている事に気付いたのか、彼女は落としていた視線を上げ、向かいの空の鉢を見て口を開く。


菫「ちょっと速く食べすぎだろう……フードファイターか?」

京太郎「ラーメンは熱々をそのまま頂くのが流儀なもので……」

京太郎「ちなみに箸二刀流ならもっと速くいけますよ」

菫「いや、そんな事聞いてないからな」


菫「……まあ、やはりこのチェーン店はこってりに限るな」

京太郎「それには同感です」


 互いにうんうんと頷き合う。奇妙な連帯感が生まれた。

 食べ物の好みが合うと、嬉しいのって何なのだろう。


京太郎(食べ終わるのを待つだけ、てのも手持ち無沙汰だな……)


 通りがかった店員に声を掛ける。

 胃袋もまだ余裕があることだし……もう一杯いくか、と考えた為だ。


京太郎「あ、すいません。こってり……と餃子、追加で」


 ・
 ・
 ・
 

菫「しかし……いいのか?」

京太郎「何がです?」

菫「食事するだけではデートと言えるかどうか微妙だが……」

菫「君は彼女がいるだろう?」

京太郎「えっ」


菫「うん? なんだ違うのか……」

菫「てっきり竹井さんと付き合ってるとばかり」

京太郎「いや、誤解です!」

菫「ああ、そうなのか……あの距離感を見たら、な?」


菫「まあ、自分で言うのも何だが……」

菫「私は男女の機微に聡い、とは言えないからな。勘違いなら忘れてくれ」

京太郎「……」


京太郎(……距離感か)

京太郎(端からだと、そう見える事もあるのか……)

京太郎(咲にもちょっと前に仲が良いって言われたよな)

京太郎(普段が普段だから特に考えたことすら無かった)


京太郎(部長と、ねえ……)

京太郎(あれでいて、結構可愛いところがあるのは知ってるし)

京太郎(なんだかんだで頼りになる人だな、とは思う……)

京太郎(悪戯好きなのと、たまに突拍子もない事をするのが欠点だけど……)

京太郎(いや、まあ、それが即短所ってわけでもないような)

京太郎(ありっちゃ、ありなのか?)

京太郎(……だが、しかし、そもそも相手サイドが)

京太郎(……)

京太郎(……)

京太郎(……やめよう。なんかドツボに嵌ってる気がする)


 そういえば和とならどうだろう、とふと思う。

 軽く脳内でシミュレートしてみる。

 下世話な妄想ではなく、現実的な仮定として。


 ……例えば和に告白し、交際を願いでたとする――
 
 ――うん、まず断られるだろう。

 その絵図が容易く想像がついた。ぺっこりんって感じで終わりそう。

 だよな。友達止まりだよな、きっと。

 まあ、改めて考えるまでもないか。


 そして、彼は予想に対し――さほど衝撃が追随しない事に気が付いた。

 その予想をすんなりと受け入れている自分をはっきりと自覚する。


 ……いや、ちょっと待て。

 自身の内面を整理しようと思索。


 ……これは、諦観、なのか、それとも。


菫「……箸が止まっているようだが」

京太郎「あ、ちょっと考え事してまして」

菫「ふむ、悩みでもあるのか?」

菫「竹井さんの真似事をするわけでもないが――」

菫「良ければ話して見たらどうだ」


京太郎「……」

菫「……」


京太郎「弘世さんは憧れと慕情の違いって何だと思います?」

菫「……いきなり哲学的だな」


 彼女は水を一口飲み、視線を机に落とし黙考。

 考えが纏まったのか顔をあげ、口を開いた。


京太郎(……)


菫「なんだか苦虫を噛み潰したような顔をしてるが……」

菫「まあ、早々と結論づけることもないさ」

京太郎「……そうですかね」

菫「人の感情なんて論理的にはいかないものだ」


京太郎「弘世さんはそういった……ままならない事はありましたか?」

菫「……あるな」

菫「この三年間、友人の隣で感じていたさ」


 宮永照、と彼女は呟いた。

 正確に推し量る事はできないが、複雑な感情を伺わせる、その声音。 


菫「私にとって雀士としての彼女は――理解し難く……そして、その強さに憧れた存在だ」

菫「つまり、私の雀士としてのある種の理想だ」


 山を見通し、他家の手牌を見透かし、正しい手順をもって、確信を伴って和了る。

 偶然によらず、常人の論理を超越し、圧倒的な強さで踏み砕く。

 ――勝つべくして勝つ、其れを体現する存在。


 本質で確率に左右されない、只人では追随できぬ異能。

 その化外の業は……鬼か仏か、将又別の何かか。

 ――唯一つ確かな事、宮永照は突き抜けている。


 弘世菫にとっての厳然たる事実だった。


菫「正直な話……劣等感じみた感情を得た事もある」

菫「だが、その一方で……彼女は方向音痴で、お菓子狂いで、抜けているとこもある」

菫「そういう彼女の欠点も、私は友人としては世話を焼いてやらないと、と思ったり……」

菫「好ましいとの感情を得たりする事もあるわけだ」


 恥ずかしいから照には言うなよと続ける。

 実際に彼女の頬には微かに朱が差していた。

 この人にも色々あるんだろうなあ、なんて感慨を須賀京太郎は覚える。


菫「まあ、だから、と言うわけでもないが……」

菫「そう悄気ずに胸を張れ、男の子だろう?」

京太郎「……なんだか頼りになるお姉さんみたいですね」

菫「実際、君より年上なんだが」

京太郎「コスプレ魔法少女が趣味な人とはイメージが違いすぎます」

菫「それを今言うか……」


 彼女は拗ねた様子で自身の髪をいじりながら、目を逸らし呟いた。

 ついでに、大体あのオチは本来尭深が担当するはずだったのに、とか良く分からない事を言う。

 外見に反し、可愛らしい反応だな、と彼は思う。


 須賀京太郎は、くよくよ悩んでも仕方ない、と結論付けた。

 今思い悩んだところで解決しないと割り切った為である。

 冷めてしまった残っている餃子を平らげ、水を飲んで一息を入れる。


菫「ああ、そうだ。照も世話になったようだし……」

菫「良ければメールアドレスを交換しないか?」

京太郎「あ、良いっすよ」


 互いにスマホを取り出し、赤外線で交換し合う。

 それから、弘世菫が思い出したように顔を上げ、言葉を告げる。


菫「そういえば……魔法少女の件は考えてくれたか?」

京太郎「諦めてなかったんですか、あれ……」


 当然だろう、との言葉が、弘世菫にしては珍しい茶目っ気のある笑みと共に返ってくる。

 女装は勘弁して欲しいので流されないようにしようと、須賀京太郎は胸中で誓い直した。

 結果から言えば無駄な努力ではあるが。


 まあ、とりあえず――

 この日須賀京太郎に残念なのか、それとも頼り甲斐があるのか、

 どちらか判断がつきかねる、そんな年上のメル友ができた、きっとそれだけの話。



                                                   ――了

しんみり風にしたつもりだけど、くっそ疲れるこれ
そういや阿知賀勢もやった方がいいのかな、こっちは確実にギャグにできるはず
距離的整合性は投げ出すことになるけど

安価【お悩み相談相手】

1 鶴賀の面子
2 ともきー&一ちゃん

↓1

2

>>430
2 ともきー&一ちゃん

【安価】一ちゃんの悩み
↓1

【安価】ともきーの悩み

↓2

※極端なエロ、グロ。著しく道徳に反する悩み
要するに流石にこれは洒落にならないと判断したものは再安価

服装について

最近のPCパーツ事情

ちょと待って書き上げたヤツ1個投下できてないし何故

>>426>>427の間


菫「そうだな、個人的な意見だが……」

菫「どちらも強く惹かれるという事には変わりないと思う」


菫「違いは……知りたいと思うかそうでないかではないか?」

菫「見ているだけで満足せず、良い所も悪いところも含めて、知りたい、理解したい」

菫「本質的には解り合えなくても、結局表層で触れ合うだけしかできなくても……」

菫「そう願うかどうか、そして相手の特別になりたいかどうかの差ではないかな」


菫「まあ、憧れは理解から最も遠い感情、と言うしな」

京太郎「それ漫画の科白ですよね」

菫「ん、そうだが……一握りの真実ではあると思う」


 互いに苦笑し合う。


 ……和を知りたいと強く想った事はあっただろうか。

 彼女だって人間だ。選り好みだってあるだろう。

 どうしても反りが合わない部分は存在するはずだ。

 それを含めて理解したい、今までよりも自分から踏み込みたいと願った事は。

 思い返し、熟考し、結論する――無かったのではないだろうか……


 ――だとしたら。

 彼女に一目会った時に感じたこの想いは。

 自分の理想を彼女に重ねあわせただけの。

 綺麗なものだけ見ていたい、都合の良い部分しか見ようともしない。

 ある意味では偶像崇拝と何ら変わらない――


 渦巻く思考の中

 『高嶺の花』

 そんな単語がふと頭によぎる。


 それは、すとん、と須賀京太郎の胸に落ちた。

 否定したい気持ちが無いわけではないが……

 彼にとっての原村和は正にそうである事に得心してしまう。

ぐだぐだですいません、吊りたい

>>433 一ちゃんの悩み:服装について

>>434 ともきーの悩み:最近のPCパーツ事情

結構難しい気がちょいシチュと内容考えます
迷ったらどっかでコンマ判定入れるということで……
明日に備えて寝ますー

関係無いですけど、週末の楽しみの一つである某スレまとめ読みしたら
コメディからの~ガチバトルで驚愕……実に素晴らしい
京咲にガチ剣劇で殺し愛させたくなる、文句無しに純愛だよね殺し愛、純愛最高
資料揃えるのが面倒なのでやりませんが


コンマ判定:一ちゃんの服装についてのあれこれ
01~25 更なる高みへ――
26~75 時代がボクに追いついていない!
76~98 偶には普通の服の方がいいのかな?
ゾロ目  そ、の……実は、だけ、ど……ボクも恥ずかしいんだよ?

↓1

そいや

>>446【61】:時代がボクに追いついていない!

一「ボクは悪くない」
把握
家訓で痴女服を半強制されてる乙女な一ちゃんはいなかった

多分夜から



【幕間・胡蝶の記憶】


 少年――須賀京太郎――は図書館に足を運んだ。

 小学校の夏休みの読書感想文に使う本を借りるためである。

 普段本というものに然程縁のない少年ではあるが、全く知らない場所というわけでもない。

 といっても、数回しか訪れたことはないのだが。


 ……どんな本にしようか、当たり前だけど難しいのは駄目だ。


 と思案しながら案内板を観覧。

 とりあえず児童書のコーナーに向かうことを決め、歩を進める。


 図書館独特のインクの匂いと静けさに包まれながら、


 ……なんだか別世界みたいだな。


 なんてことを考えつつ、目当ての場所にたどり着く。


 見渡す限りの――

 本
 本
 本

 なににしようかな、と頭の中の一文字づつ区切ってリズムをつけ再生し、本棚を眺める。

 適当に目についた本を一冊抜く。


 『青い鳥』


 ……とりあえず、これを読んでみるか。


 特段本の選択に拘りがあるわけではない。

 少年は席に腰を下し、本の頁を捲り始めた。


 ・
 ・
 ・


 青い鳥はここにいたんだ――

 最後はそう締めくくられた物語を読み終える。


 ……よくわからん、なんで家で飼ってた鳥が青い鳥になるんだろう。


 まあ、別なのも読んでみるか、と考え『青い鳥』を置いたまま席を立った。


 先程の本棚に行着く途中。

 視界に、本を持った少女が、入った。

 短めの髪を後ろで二本結わえた女の子だ。

 小さな体に数冊の重そうな本を抱え、ふらふらとこちらの方向へ歩いている。


 ……なんか危なっかしいやつだな。


 少女との距離が縮まり、少年はあることに気付く。


 ……あれは、同じクラスの――

 たしか、宮永、咲だっけ。


 うん、そうだ、と一人得心する。

 特に交流があるわけではないが、同級、同教室の生徒を思い出せないほど少年は薄情ではなかった。


 ……そういやあいつ、休み時間にいつも一人で本を読んでたな。

 図書館にいても不思議じゃないイメージだ。


 そんなことを思いながら少年は歩く。

 少女もふらふらと歩く。


 二人の距離があと僅かとなった時。

 二人が交差する手前。


「あっ」


 と、少女が声を上げた。躓いた。本が宙を舞う。

 そしてバランスを失った少女が前のめりに――


 ――倒れる前に、少女の体を少年は腕で受け止めた。

 反射的な動作だった。

 そして少女の勢いと重さに抗うために更に腕に力を込め、結果抱き寄せるような形になる。


 意識は後で追い付いてきた。

 少年は状況を把握し、驚きを得ると共に安堵の息を吐く。


「ったく。何もないとこで転ぶか……」

「あれ? え?」


 胸に収まっている少女が疑問符の付いた言葉を漏らした。


 ……このままでは恥ずかしすぎる。


 と思い、少年は抱きとめている腕の拘束を解く。

 誤魔化すように、少女を離し床に散らばった本を拾ってやる。

 まだ何が起こったのか理解できてないのか少女は混乱したままだった。


「本。持って行くんだろ?」

「あ、う……」


 ようやく状況を把握したのか、頬を朱に染めてまごついている。

 少年も赤面していたのだが、その少女の様子で逆に落ち着きを取り戻す。

 少年は本を手渡すのを諦め、少女では重かったのであろう数冊を腕に抱えた。


「ほら、席に行くんじゃないのか?」


 手が塞がっているため目線で指し示し、少女を促し、背を向け歩き出す。

 内心で格好付けすぎだろ、何やってんだ俺、と思ったりはしていた。


 少女は未だ狼狽えたままだったが、微かな声でうん、と首肯する。

 追い縋るように早足で少年に付いて行った。


「……ありがとう」

「気にすんな」


 小さな感謝の言葉にそう返し、連れ立って進む。

 会話が途切れ、微妙に気まずい沈黙が横たわる。


 長机に着いた。少年はとりあえず本を重ねて置く。

 無言に耐え切れなくなり、少女との会話を試みる。


「宮永はよく図書館に来るのか?」

「……うん」

「……」

「……」


 そこで、また会話途切れる。


 ……投げ返すとかないのか、ちょっとは会話のキャッチボールをしろよ。

 
 少年は嘆息した。

 席に座り本を読み出す少女の隣に、少年は腰を下ろす。


「そっちの本読んでいいか?」

「……うん」


 ……こいつ、うん、しか言わねーのかよ。

 いやさっき、ありがとう、とは言ったか……


 そんな事を胸中で呟きながら少年も本を開いた。

 二人分の本の捲る音がぱらぱらと響く。

 静かに時間が流れる。


 ・
 ・
 ・


 本を読み終えた頃。

 閉館が近いことを知らせる『蛍の光』が流れだす。

 本をぱたんと閉じ、少年が口を開いた。


「もう閉館か」

「……」

「本、借りるのか?」

「……うん」


 相変わらず言葉少ない少女である。

 思わず少年の頬が引き攣る。

 隣りあって本を読んでる最中も少年が一方的に喋っていただけだ。

 というか、途中から半ば意地になって会話しようとしていた。


 ……友達ちゃんといるのか、こいつ。

 よくよく思い返せばそういった光景は見たことがなかった気が。


 少年は結局、『青い鳥』を借り、少女と二人で図書館の外に出る。


「そういや、宮永の家ってどっちだ?」

「……あっち」


 少女が指し示した方角は少年の家とは反対であった。


 ……遠回りになるけど、送ってやったほうがいいのかな。


 なんて少年は一瞬思考したが、なんだか気恥ずかしい気がして、その考えをやめる。


「じゃあ、またな。宮永」


「そ、の……えっと……あ、の」


 別れの挨拶を投げかけられた少女は、視線を足元に落とし歯切れ悪く言葉を漏らす。

 少年はその様子に疑問符を浮かべる。

 少女は何事かを言い淀み、躊躇しているようだ。

 意思が固まったのか、少女は顔を上げて口を開く。


「また、ね……きょう、ちゃん」


 いきなりの渾名呼びに面食らった。

 内向的な少女が、なけなしの勇気を振り絞り言ったであろう、その言葉。

 図書館での出来事で縁ができた、やたら話し掛けてくる少年と友達になろうとしたのか。

 それとも別な考えがあったのか。

 その胸中を正しく知る術は本人以外にはない。


「あ、う……その……ごめん、なさい」


 少年の驚きが表情に出たのか、少女が悄然と謝りの言葉を紡いだ。

 怯えの混じった様子で視線を再び落としている。

 臆病な小動物みたいだ、との感想を少年は得た。

 少女は、須賀くんの友達がそう呼んでたから、と小さな声で切れ切れに続ける。


「……うん、そうだよな。同じクラスだし友達みたいなもんだよな」


 ここで会ったのも何かの縁だし、と少年は一人胸中で納得する。

 その言葉に少女が顔を上げる。

 少年は不安げな表情の少女を見ながら、


「また、な。咲」


 と返した。

 少女はその言葉に、はにかみ、顔をほころばせた。

 紫丁香花のような笑顔であった――

■□■


 ――PiPiPiPiPiPi

 そこで目が覚めた。

 機械的な電子音が起床の合図を告げている。

 気怠げに手を伸ばし、目覚まし時計を停止。


 ……起きよう。


 未だ霞がかかった意識のまま、身を起こす。

 背伸びと共に欠伸が零れた。


 彼/彼女は、時間と場所は違えども、布団から抜け出し各々の朝の準備を始める。


 ……なんだか懐かしい昔の夢を見た気がする。


 そんな事を曖昧に思いながら。


 今はもう、幾春秋と共に色褪せてしまった胡蝶の記憶。

 しかし確かにあったはずの――始まりの二人の物語。



                                                 ――了

仮眠のつもりが寝過ごす……あると思います
仕事に出ますー


 某日午前、清澄麻雀部の六人はとある百貨店内携帯ショップにいた。


 女性陣はストラップ等を陳列している場所で、あれが可愛い、

 これが可愛いなどと、きゃっきゃうふふ(注:イメージです)と歓談しながら物色中だ。

 須賀京太郎は、機種変更も考えていたこともあり、各社の端末製品コーナーに。


 どうしてこういう状況にあるかといえば――

 ――そう、あれは……須賀京太郎が部室で麻雀雑誌を読んでいた時を発端とする。

 というわけで手抜き回想開始。


■□■


京太郎『……部長、麻雀牌を買おうと思うんですけど、どれが良いとかあるんですか?』

久『随分といきなりね』

京太郎『家でも牌を触って練習しようかなと、自動卓はないですけど』

久『手積みなんて古風……どういう風の吹き回しかしら』

京太郎『あー、ちょっと思うところがありまして』


久『そうね……この全面黒塗りの牌は?』

京太郎『指紋がべたべた付きそうなんですが……ガン牌の練習するならともかく、それは……』

久『じゃあ、この透明なガラス牌とか』

京太郎『血液を賭けて麻雀勝負するつもりはないのでノーセンキューで』

久『もう、我侭ね須賀君』

京太郎『敢えて奇抜なのを提示する部長にも問題はあると思います』


久『どうせ麻雀漫画に影響を受けただけなんだろうから、何でも良いと思うんだけど……』

久『ツバメ返しとか格好良いと思っちゃったのかしら……』

久『実際は使えないんだし、その思考は厨二病っぽいわよ』

京太郎『ど、ど、どうして部長がそれを!? ピンポイントに心を読まないで下さい!』

久『強いていえば、議会長だから?』

京太郎『意味わかんない上に関係ねえ!』


久『まあ実物を見て決めた方が間違いないわね……休みにでも一緒に見に行く?』

咲『!?』

京太郎『どうせまた騙す気なんじゃ……』

久『この前からちょっと疑り深くない? 雛見沢症候群でも発症してる?』

京太郎『そういえば照さんの時そのネタを消化するの忘れてましたね』


久『それはともかく、純粋な善意よ』

京太郎『そういうことなら……』


咲『……やっぱり仲がやたら良い気がする……』

優希『咲ちゃんの目からハイライトが消えてるじぇ』

和『咲さん、それ微妙に怖いです』


和『確かに最近部長と須賀君仲良いですよね……何かあったんですか?』

京太郎『いやいや、そんなんじゃないぞ』

久『そうよ、そんなもんじゃないわよ』

咲『そんなもんじゃない!?』

京太郎『部長、''も''は要りませんよね!』

まこ『……久、おんしわざとやってるじゃろ』

久『単なる言い間違いよ、他意はないわ』

和『してやったぜ、みたいな顔で言ってる時点で説得力皆無です』


咲『……』

優希『……そうだじぇ! 皆で見に行くとかどう?』

咲『ゆ、優希ちゃんナイスアイディア! すばらだよ!』


久『んー、そういうことなら週末皆で出掛けましょうか』

まこ『わし一応家の手伝いがあるんじゃが』

久『偶には休んでも罰は当たらないと思うわよ?』

和『そういえばエトペングッズの新しいのがでるんでしたっけ……』

優希『のどちゃんは本当にエトペン好きだなー』

咲『……新刊そろそろ入荷されてるかな』

まこ『ハァ……皆乗り気じゃし、こういう機会でもないと全員で出掛けるのはあんまりないしのう』


京太郎『なんだか最初の趣旨からずれてきてる気が』


■□■


 ――回想終わり。


 というわけで百貨店内の小物屋、本屋etc etc……

 適当に巡って、買い物と食事を終えたらラウンドワンに行く予定となっているのだ。


 ちなみに今回の件に関しては、例え荷物持ちになっても、そう悪い気はしない、

 と須賀京太郎は考えていた。いわば両手に溢れんばかりの花。

 彼の主観では、全員花と呼んで差支えのない容姿だと思っているからである。


 敢えて、もう一度、言おう、全員、だ。


 誰それは花と言うほどじゃ……とか。可愛くないんじゃ……

 とか思った人は該当キャラを述べること。


 ちなみに述べた人には世が世なら、理由がある暴力、つまり腹パンが襲うと思って頂きたい。

 清澄麻雀部は全員可愛い。但し男は除く。

 再度、断言しておく、全員、可愛い。

 異論がある場合は……


  よ ろ し い
 Gut, Kameraden.

  な  ら  ば      戦   争   だ   
 Wenn das so ist, dann sollt ihr euren Krieg haben!


 長いので以下略。


 人には触れちゃならない心の聖域ってものがある。

 そこに触れたら……後はもう命のやり取りしか残っちゃいないのだ。


 清澄面子での仲良しほのぼのは最高だと思います。百合でも可。

 だからもっと増えろ。お願いします。

 戯言なので閑話休題。


京太郎(……色々出てるけど、いざ考えるとどれが良いんだ)

京太郎(……Androidよりiphoneの方がいいのか?)

京太郎(……でもデータ移行とかどうなんだろう、わからん)


 考えながら須賀京太郎はカタログを捲る。色とりどりの様々な端末が目に入った。

 無駄に真剣な眼差しだ。例えるなら鷹の目。

 虎と飛蝗は関係ない。無論、串田さんの歌も流れない。

 普段もこれ位真面目なら、三枚目扱いされないのではないかという面持であった。


京太郎(まあ今日変えるわけでもないし、今度調べとくか……)


 そう結論付けた。

 実際、端末一個変えるだけでも結構面倒なものだ。

 機種によってはキャリアを変えたほうが得になることもしばしばである。


 須賀京太郎がカタログを閉じ、顔を上げたところで背後から肩を叩かれた。

 振り向こうとすると、頬に当たる誰かの伸ばされた指。


京太郎「……部長その悪戯は子供っぽいですよ」 

久「てへっ」

京太郎「可愛く言っても駄目です」


久「そんなにしかめっ面して何してるの?」

京太郎「いや、近々機種変更するつもりなんで見てたんですけど……迷っちゃって」

久「今変えるより年末商戦に入ってからの方がいいんじゃないかしら」

久「クリスマス前とか新製品が出るのがいつもの事だし」

京太郎「あー、確かに」


 クリスマス――

 嫉妬団やらサンタ狩り隊やら死ね死ね団が暗躍しだす時期。

 冗談である――もう2ヶ月も経たずそういう時期であった。


久「クリスマスといえば……須賀君は予定があったりする?」

京太郎「あるように見えます?」

久「見えないわね」

京太郎「事実とはいえ、そう切って捨てられると悲しいものが……」

久「拗ねても須賀君は可愛くないわよ」


久「じゃあ……美人の先輩とクリスマスを過ごす?」

京太郎「久々に聞きましたけど……再度言いますが自分で美人っていうのはどうかと」

久「二人きりの夜の部室……寒さを暖め合う二人」

京太郎「鍵はどうするんですか? 閉まってますよね」

久「そこは鍵を須賀君か私が失敬するか合鍵でも」

京太郎「犯罪じゃ……」

久「……もう、須賀君は浪漫が足りないわ。ノッてくれてもいいのに……」

京太郎「いい加減からかわれるのにも慣れました」


 ぶつぶつと文句を続ける竹井久を置いておいて、須賀京太郎は他の面子に目を向けた。

 片岡優希、染谷まこは相変わらず小物を物色している。

 原村和もエトペンのストラップを見比べている。

 どれが良いかまだ決められてないようだ。


 ――そこで彼は気付いた。

 宮永咲がいない――


京太郎「あれ、そういえば咲は……」

久「ん? そういえばいないわね」

京太郎「携帯ショップに着いた時はいましたよね……」


 微妙に嫌な予感。

 店内でマナー違反ではあるが、スマホを取り出し宮永咲へかける。

 『現在電波の届かない位置か――』と無機質な音声ガイダンス。


京太郎(電源切るなよな……)

京太郎(しかし、これは――もしかしなくてもいつものあれか)


京太郎「……ちょっと捜しに行ってきます。移動する場合俺のスマホにでも」

久「あー、いつものあれかしら」


 竹井久も想像が付いたらしい。

 その言葉に多分、と須賀京太郎は頷き、思考。

 まさか店の外に出るほどの迷走はしていまい。

 考えられるパターンは――と脳内で幼馴染の行動を列挙する。

 とりあえず可能性が高そうな順から潰すかと決め、須賀京太郎は足を踏み出した。


 結論から言えば宮永咲は先程までいた階の一階下にいた。

 須賀京太郎の予想通りト――じゃなかった、花を摘みに行って迷ったらしい。

 そこまでは良いとして何故そのまま戻らず、近くのエスカレーターで降りるのか不思議ではある。

 彼女はどこに向かおうとしたのだろうか。その行動の意味がわからない。

 恐るべきは方向音痴。


 まあ、行動を大凡読んで、これは下に降りたな、と予想するあたり彼も手慣れたものだ。

 ちなみにIHで似たようなことが何度かあったりする。

 どうでもいいが迷った挙句、切羽詰まり某京都の女生徒達をその威圧感でビビらせたりしていた。

 ……宮永咲!! (※本人はただ迷子になっていただけ)

 実に締まらない事実だ。


 とりあえず宮永咲は無事、須賀京太郎に確保されたわけである。
 

京太郎「……その方向音痴は何とかならないのか?」

咲「地球の自転が……プレートテクトニクスが私の計算を裏切ったせいで」

京太郎「なんで姉妹揃って地球のせいにしようとするんだ」


咲「……いつも、真っ直ぐに歩いて行く、けして後を振り返らない――」

咲「――そうすれば例え迷子になっても、迷子になった気はしないから」

京太郎「ちょっと格好良さ気な科白で誤魔化そうとするな」

咲「だって――」

京太郎「とりあえず落ち着け」


京太郎(全く……こういうとこはガキの頃から変わらないな)

京太郎(他にも大して変わってないとこはあるけど……どことは言わないが)

京太郎(迷子に関してはいつもの事だから別にいいけど)


 須賀京太郎は、未だ意味不明な言い訳を続ける宮永咲を眺め、やれやれと嘆息。

 きっと地球は悪くない。そして迷子になった気はしなくても迷子は迷子である。


 いい加減幼馴染の口上を聞くのも飽きたので、曲げた中指を親指に引っ掛け、

 それなりに威力が溜まったところで、しかし跡が残ったりしない程度の力で、

 彼女の眉間に中指を鋭く打ち放った。


 要するにデコピンである。 

 わりと凄い勢いで人が飛ぶアレとは違うと明言しておく。

 アレはバトル漫画だから許される。


咲「痛っ!? なんでっ!? なんでいきなりデコピン!?」

京太郎「お前を正気に戻すためだ、気にすんな」

京太郎「まあ迷子に関しては目的地と逆の方向を向いて、真っ直ぐ進めばいいんじゃないか?」

咲「……それだと行きたいとこに着かないよ?」

京太郎「あー、騙されたと思って今度試してみろ、きっと着くから」

咲「そうかなあ……」

京太郎「……とりあえず、ほら」


 須賀京太郎は、我ながら結構いいアイディアだよなこれ、

 と心の中で自画自賛しつつ、宮永咲に左手を差し出した。

 彼女は逡巡。自分の右手を彼の左手を交互に見る。


京太郎「またはぐれると困るだろ?」

咲「えっと……」

京太郎「今更遠慮すんなよ」

咲「……うん」


 か細い声音の頷きの後、差し出された手が控えめに握られた。

 細い指の感触と幼馴染の体温。

 小さな手をしっかりと握り返し、須賀京太郎は部の皆の元へ向かおうと、歩き出した。

あ、駄目だこれ、いつものパターンでこのままだと長くなる
ちょいセーブで……持ち越しますプロット変えないと

そういやあんまり意味がないといえばないですけど
そろそろ決めとかないといけないのでコンマ判定

コンマ判定:部長についてのあれこれ
01~50 分が悪いってのはわかってるんだけどね……
51~00 卒業する前にお節介でも焼いておこうかしら……

↓1

はい

>>480
【49】部長についてのあれこれ:分が悪いってのはわかってるんだけどね……
把握
寝ますー

ぶっちゃけその時の自分を開頭したいほどのミスですが八桝高校もビビらせてたということで一つ
魔王度アップやったね咲さん!
読み始めた戯言シリーズに引っ張られた死にたい……多分夜から


 上の階へ上がろうかとした矢先。既視感を覚える金色のアホ毛と、

 兎の耳を彷彿とさせるリボンを付けた少女が、須賀京太郎の目に入る。

 黒子のように二人の後ろに付き従うのは黒服の執事。

 黒子と表現したが凄い目立っている。きっとお嬢様も大満足だろう。


京太郎「ん?」

透華「あら?」

衣「む、咲と須賀ではないか」

咲「あ、衣ちゃん」


 偶然の遭遇というやつである。

 邂逅に気付いたのか、龍門渕の他の面子――井上純、国広一、沢村智紀、

 ――も集まってきた。
 

純「お、須賀と宮永……もしかしてデートか?」

一「しっかり手なんか繋いじゃって」

智紀「リア充……」

ハギヨシ「微笑ましいですね」

衣「情意投合、朝雲暮雨……そうか、そういう仲だったのか」

透華「まあ、そうなんですの」

咲「あ、あぅ――なんでやねんっ!」

京太郎「動揺して中の人の関西弁が出てるぞ」

一「はやてちゃん、落ち着いて」

京太郎「国広さん、遠回しなネタ解説有難うございます」


京太郎「いや、迷子になった咲を保護してまして。清澄の皆と来てるんですよ」

透華「あら、そうなんですの。私達と一緒ですわね」

衣「ころも達はこれから食事だ」

京太郎「あー、確かにいい時間ですね。一緒に食べます?」

衣「ののか達と一緒かっ」

透華「ふむ……そうしましょうか」


 そういう事ならばと須賀京太郎はスマートフォンを取り出し操作した。

 発信先の相手は竹井久。偶々透華さん達と会って……と状況を説明――


 ――というわけで、昼食を清澄、龍門渕の面子で取ることになったのである。


 しかし、何といっても十二人の大所帯。

 ファミレスで合流したは良いが、席割りをどうしようか、となった。


 そこで龍門渕透華の、同じ学校同士で固まるのも面白くない……

 各校二人づつの計四人で、三席に分けようとの鶴の一声。


 ちなみに方法はクジである。

 尚、ハギヨシさんが瞬間的に用意してくれました。執事って凄い。

 赤・青・白で三組を分けようとする次第だ。

 各自、順に引いていく。


咲「ん……青だ」

まこ「わしは赤じゃな」

衣「ころもも赤だ」

智紀「……白」

一「ボクも白だね」

和「青……咲さんと一緒ですね」

優希「のどちゃん、その科白なんだか怖いじょ?――赤」

純「オレは……赤、つーことはタコスチビと同席か宜しくな」

優希「む……チビってゆーなノッポ。ついでに撫でるな! がるるっ!」

純「おー、こわいこわい」


久「ふむ、私は……白ね」

透華「青、ですわね……ということは……」

京太郎「あれ……これはもしかしなくても……」

京太郎「ハギヨシさんと同席が不可能になったんじゃ――白」

透華「ナイスですわ! 京太郎君!」

ハギヨシ「必然的に、私は、青ですね」


 振り分けに作為を感じるとか言ってはいけない。御都合主義である。

 ちなみに進行上の組合せ以外はガチでダイスを振った、とだけ。

 特に意味はないが何となく。


 クジの結果に膝をつく須賀京太郎。

 絶望の表情だ。学級裁判でクロと突きつけられた真犯人の如し。

 希望は前に進むのだから、諦めては駄目である。

 もしくは、希望の踏み台になることに喜びを感じるべきかもしれない。


 まあ、お仕置きが待っているわけでもないのに、ショックを受け過ぎだろう。

 そっちの趣味でもないのに、ちょっと慕い過ぎだ。


 一部を除いた皆が結構引いている事に気付かなかったのが、唯一の救いかもしれない。


 どうでもいい事は置いておいて――

 エビフライ、エビフライ、と音程を付けて機嫌良く歌う、天江衣を先頭にファミレスに入った。

 混雑している時間帯ではあるが、禁煙コーナー内並びの三つのテーブルが丁度空席。

 店の主任がフロアに出て来て、龍門渕透華に挨拶をしている。龍門渕財閥の傘下らしい。


 流石お嬢様……そしてサラリーマンは大変だな、なんて感慨を須賀京太郎は抱きつつ、

 レディファーストに則り竹井久、沢村智紀、国広一が着席するのを待ち、その後席に腰を下ろした。


 少年少女食事中――


 ――食事終わり。


智紀「そういえば……」

久「この感じ――」

京太郎「まさか――」

一「い、いきなり二人して何?」


久「沢村さん皆まで言わなくてもいいわ……悩みがあるのね?」

京太郎「……よし! 部長サクサク行きましょう」

久「あら、今日は乗り気ね」

京太郎「逃れられぬ業なので」

智紀(……盛り上がってるから、特に関係ない話題を振ろうとしたとは言わないでおこう)


久「――で今回の悩みは何かしら?」

久「……胸の事で龍門渕麻雀部でいじめられてるとか?」

一「竹井さんはうちの部をどういう目で見ているの?」

京太郎「その理屈でいくと、うちの部も格差的にアレなんですが」


智紀「胸……確かに漫画とアニメで安定してない」

京太郎「ちょっ、胸を強調するのはやめて下さい! 目に毒なので!」

一「ともきー、それはボクへの当て付け?」

久「ちなみにここだと漫画設定ね」

智紀「そして中の人的には貧従士、ティーガーⅠの操縦士と安定してない」

久「あー、そういえば関係ないけど眼鏡属性多いわよね……宿命なのかしら」

京太郎「目高箱のやつでもそうでしたっけ」

一「使えるネタ全投入するのはどうかと思うよ?」

久「基本的に広く浅くがモットーなの」

京太郎「ただでさえ置いてけぼりなのに、掘り下げると更にやばくなりそうですからね」


智紀「……悩みだけど」

京太郎「ああ、激しくそれてましたね」

久「さて今回は何かしら……」

智紀「最近のPCパーツ事情について」


久「……」

智紀「……」

久「……須賀君パス」

京太郎「まじっすか」

久「詳しくないから仕方ないじゃない」

京太郎「一応頭脳労働の部長、肉体労働の俺とわけてる筈なのに」


京太郎「……まあ、PCパーツって言っても色々ありますよね」

京太郎「沢村さん具体的には?」

智紀「AMDよりIntelの方が優れているという風潮」

京太郎「――っ!」


京太郎「……CPUと言えば」

智紀「AMD」

京太郎「グラボと言えば」

智紀「ATI」


京太郎「――沢村さん!」

智紀「――須賀君」

一「なんでいきなり固く握手してるの?」

久「何か心通じるものがあったんじゃない?」


京太郎「ただ、この悩みは理解できますが難しいですね……」

京太郎「自作で常にAMDとATIで固めてる俺としても世論は動かしにくいというか」

久「さらっと変な設定が増えたわね。後で生かせれたら良いのだけど」

一「全くついていけないんだけど……というか、世論って普通の一高校生が動かせれるわけないよね」


智紀「確かにコスパで劣るのは否定できない」

京太郎「ええ……しかしAMDには浪漫がある」

京太郎「Core2が出てIntelに寝返ったやつらとは違いますから」

智紀「――須賀君」

京太郎「――沢村さん」


久「終わりそうにないから二人は放っておくとして」

一「それでいいの?」

久「話が進まないんだもの……国広さんは何かある」

一「んー……服について……かな」

京太郎「あー、気になってたんですけど、その服凄いですよね」

久「いきなり割り込んだわね……PC談義はいいの?」

京太郎「後でできるので」

智紀「メル友になった」

京太郎「と、いうわけです」


久「まあ、話を戻しましょうか」

京太郎「ですね……で、国広さん、その服はあれですか、わざとですか?」

一「そんな……人を露出狂みたいに……ボクを信じて」

京太郎「俺はそういう『自分が可愛い系キャラだと知ってる人』の涙は信用しません。部長で学びました」

一「じゃあ、死ね」

京太郎「本性出すの早すぎ! いきなり攻撃的すぎる!」

久「でも、死ね」

京太郎「部長も追撃しないで!」


京太郎「前に龍門渕に行った時からもしやと思ってましたけど……国広さん俺にかなり冷たいですよね!?」

久「須賀君、貴方何かしたの?」

京太郎「正直、身に覚えが」

久「犯罪者は皆そう言うわ」

京太郎「濡れ衣です! いきなり犯罪者扱いですか!」


智紀「……一は透華と須賀君が仲が良いのが気に入らないらしい」

一「ちょ、ちょっと!? ともきー!」

京太郎「あー、そういう理由ですか」

一「……ふーんだ」

久「須賀君も大変ね」


京太郎「……沢村さん、どうにかなりません?」

智紀「ムリダナ」

京太郎「そんな棒読みで指で『×(ばってん)』作られても……可愛くはありますが」

智紀「……褒められた」

久「沢村さんって結構お茶目なのね」


一「……そういう事さらっと言う辺り、須賀君って結構チャラいよね――そういうとこも嫌い」

京太郎「チャ、チャラいって……」

久「お調子者設定だから仕方ない部分もあるわね」

智紀「須賀君は面白い人だと思う」

京太郎「フォロー有難うございます。喜んで良いのか微妙ですけど」


京太郎「……」


京太郎「国広さん――俺はハギヨシさん一筋です」


久「何故そこで無意味に歯を光らせるの?」

久「そして、どう考えたらその言葉を吐こうとする心理に至るの?」

京太郎「い、いやチャラいと言われたので誠実なところをと……」

一「うわっ……」

京太郎「その『まじキモっ』みたいな反応は、結構本気で傷付きます」

智紀「いい……須賀君、続けて」

一「ともきー!?」

久「二番煎じの腐女子設定はどうかと思うわ」

智紀「私は真実を知りたいだけ」

久「キリって感じで言われてもねえ」


久「取り敢えず横道にそれ過ぎだから戻すわ。悩みなんだけど……」

一「うん、何て言うか……皆の理解が得られないと言うか」

京太郎「理解を得る人は一握りだけだと思います」


久「そうね、とりあえず猥褻物陳列罪を適用して――」

一「適用されないからっ!」

京太郎「一概にそう言えない服装ですよね……」

智紀「ぐう正論」

一「……須賀君には聞いてないから」

京太郎「アッハイ」


一「大体皆の感性が……」

久「自分がズレてると考えはしないのかしら」

智紀「この前純の服を買いに行った時もそれで揉めてた」

京太郎「さ、流石に人に薦めるのはどうかと……」


一「……時代がボクに追いついてないだけ! ボクは悪くない」

一「あと……須賀君の一々ツッコミ入れるとこも嫌い!」


久「嫌われてるわねー」

智紀「どんどん嫌いなとこが増えていきそうな勢い」

京太郎「結構本気でショックなんですけど」

久「親交を深める意味で各校二人づつにしたのにねえ」

京太郎「ハァ……」

一「がるるっ」

智紀「どうどう」

 まあ、そんなこんながあってお開きとなったわけだが――

 後日、須賀京太郎が龍門渕邸を訪れた際に、国広一にとってある転機が訪れたりするとかしないとか。

 何にせよ……コメディっぽい雰囲気で彼が苦労する事件があった、とだけ記して終わりにしたいと思う。


                                    【GIRLS und PC編】 ――カンッ

やばいともきー書くの楽しい
そして一ちゃんと仲良くなる話も凄い書きたくなった

安価【お悩み相談相手】

1 鶴賀の面子
2 阿知賀の面子

↓1

2

>>503 2 阿知賀の面子
安価置いて寝ますー

【安価】高鴨穏乃  【安価】新子憧
↓1          ↓2

【安価】松実玄   【安価】松実宥
↓3          ↓4

【安価】鷺森灼   【安価】赤土晴絵
↓5          ↓6


※極端なエロ、グロ。著しく道徳に反する悩み
要するに流石にこれは洒落にならないと判断したものは1個づつズレ

皆がジャージの下を履けとうるさい

結構な間隔が開いてるので生存報告
年末進行のせいで色々テンパってるという……申し訳ありません
多分明日には

関係ないですけど、部長は自分で書けばいいじゃない精神でいくべきだと悟りました

【悩みまとめ】>>506-511
高鴨穏乃:皆がジャージの下を履けとうるさい
新子憧 :回りから遊んでると見られてて辛い
松実玄:おもちのすばらしさを皆が分かってくれない
松実宥:妖精に攻撃が効かない
鷺森灼:服の趣味を誰も理解してくれない
赤土晴絵:まだプロの世界に未練が残ってる

誰か、京:『ルパン・ザ・ファイヤー/ルパン三世のテーマ』/久:『Butter-Fly(桃井Ver)』
な感じの京久コンビ物下さい
京太郎は『LOVE LOVE SHOW』でもいいです

ぼちぼちいきます



【幕間】


 某日、清澄麻雀部。

 時節柄気温が下がったので、暖房を入れだしたそんな部室。

 須賀京太郎はある事を決意し、口を開いた。


京太郎「部長……打てますか?」


 余談ではあるが、台詞は以前に打った、宮永家家族麻雀で影響されたらしい。

 簡単に言うと、軽度の厨二病発症だ。

 影響元は宮永父こと宮永界――若き頃は人鬼だったのかもしれない――である。


 ちなみに、同卓した宮永家長姉はどこぞのシャイニングフォームを凌駕した強さで、

 妹はアルティメットフォーム的な何かだったらしい。

 比喩表現なので深く追求してはいけない……宮永家って怖い。


久「珍しいわね……」

久「IH終わった頃から卓に誘っても打たずに、ずっとネト麻してたのに」

京太郎「ちょっと思うところがありまして」

久「ふーん……なるほどねー」


 竹井久の年下の弟見るような、微妙に生暖かい微笑みが一つ。

 照れ隠しで頭を掻きつつ、須賀京太郎は、見透かされてる気がするな、との感慨を抱いた。


 尚、打たなかった理由は簡単だ。

 単純に皆と同卓するには、基礎とかそういう諸々がお話になっていない、そう感じたから。


 だからこそ、教本やネト麻で勉強をしていたのである。

 当たり前だが、その事は宮永咲には伝えてあったりする。


 そして、今になって打とうとする理由も簡単で。

 教えてもらっていた幼馴染より、『もう初心者は完璧に脱してるよ』と、お墨付きを頂いたからだ。


 そうなれば麻雀を打つ者として、部の仲間へある種の憧れを抱いている彼のこと。

 皆と打ちたい、と思うのは当然の因果なわけで。


 まあ、実際はもっと早く初心者の領域は脱し、現状の中級者以上となっていたのだが……

 その幼馴染がすんなりと告げなかった理由は、察して頂きたい。


 おそらく大義名分は大事、ってことだ。

 須賀京太郎がその辺りの機微を、欠片も汲み取ってないのは哀しい事実だったりする。


久「じゃあ――誰か須賀君と打ちたい人?」


 その言葉に、はーい、と須賀京太郎以外の全員――竹井久も含み――が挙手した。

 といっても、原村和は挙手の際、声を出してはいないが。

 ジャンケンで決めましょうか、と竹井久の鶴の一声があり、集まる女性陣一同。


 ……で、どうなったかといえば。 


優希「負けちゃったじぇ……仕方ない、観戦するかー」

咲「……京ちゃん、後ろで牌譜取ってあげるね」

和「なんだか罪悪感が」

まこ「こればっかりは運じゃしのう」

久「私とまこと和ね……」


久「……これって、私達が新生須賀君の初めての女の子ってわけね」

久「しかも4P、男冥利に尽きる! やったね、須賀君!」

京太郎「……部長、男って女の人の下ネタは結構引くんですけど」

久「いつも男同士ではしてるのに?」

京太郎「うっ、がっ、それは……ノ、ノーコメントで」

久「その答え方は『してます』って、言ってるようなものよ」


 そんな漫才のようなやり取りがあり。

 洗牌され、背を向けて置かれた四種の風牌を順番に掴んだ。


和「……南、ですね」

まこ「北じゃな」

京太郎「西、っと」

久「当たり前だけど――東ね」


 掴み取りにて、仮親となった竹井久が席に座り、各々も腰を下ろした。

 宮永咲、片岡優希は椅子を須賀京太郎の後方に置き、それに座る。

 竹井久の腕が伸ばされ、卓中央に向かう彼女の細くしなやかな指。


 起親という、最初の運命を決める為に、踊る賽の目。


久「……四・一(じご)――四・五(じく)、っと」


久「起親なのはいいけど……地獄って語呂なのは縁起が悪いかもね」

久「四(死)が二つも入ってるし……なんちゃって!」


 おどけた調子だ。

 ブラックユーモア過ぎるのではないだろうか。

 竹井久に突き刺さる、他の部員の呆れが混じった視線。


久「場を和まそうと思って、少しボケてみただけなのに」

久「皆そんな目で見なくていいじゃない……」


 泣き真似しても無駄だったりする。

 他の三人の嘆息が零れた。


久「まあ……始めましょうか」


 眼差と声音に真剣な色が帯びた。

 締めるとこは締めるんだよな、この人……そして、いつもはユーモアを。

 と、須賀京太郎は誰かの格言――全くその通りであると思う――を思い出す。

 そして、原村和、染谷まこと同時に、肯定を示す為に頷き――


 ――対局が始まった。


■□■

 一~九:萬子
 ①~⑨:筒子
 1s~9s:索子

 ルール:半荘戦
 持ち点:3万点持ち

 赤ドラ:あり(萬子に一つ、筒子に二つ、索子一つ)
 槓ドラ:全て即乗り

 喰い断:あり 後付け:あり  喰い替え:なし 二飜縛り:なし
 飛び:あり 役満の責任払い:あり 大明槓の責任払い:あり

 多家和:なし、全て頭跳ね 流し満貫:なし
 オーラス:親の和了止めあり、聴牌止めあり、途中流局は連荘

 九種九牌、四風連打、四家立直:途中流局

 二人以上槓している状態の時、四開槓流局:あり(槓時点で途中流局)
 槓した者が一人しかいないなら四開槓流局しない。但し五回目の槓は出来ない

 国士無双は暗槓でも槍槓可能。ただしフリテン十三面待ちの場合は自摸和了のみ


 東家:竹井久    30000
 南家:原村和    30000
 西家:須賀京太郎 30000
 北家:染谷まこ   30000


 須賀京太郎は己の胸の鼓動が、やたら早く鳴っている事を自覚する。

 自身の唾を飲む音がやたら大きく聞こえた。


 卓の下で、右手を一度固く握りしめる。

 そして、開く。


 ……これは緊張だろうか。

 ――否、違う。


 ……それとも焦燥だろうか。

 ――否、違う。


 ……これは、きっと。

 きっと、挑戦への高揚だ。


 手牌に視線を落とし、黙考。

 心は熱いまま。

 思考は冷静に。


 東一局0本場 ドラ:南


 配牌:須賀京太郎                                                    
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐
 │二│二│四│②│③│④│⑦│⑧│.1 │.4 │.5 │  │  │
 │萬│萬│萬│筒│筒│筒│筒│筒│索│索│索│発│中│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘


京太郎(……ドラ無しだけど、そう悪くない。自摸によっちゃ早いタンヤオ聴牌が見込める)

京太郎(全員格上なのは解りきってるけど――さて、どこまでやれるか)


 起親の竹井久が牌を自摸り、手出しの①筒を切る。

 そうして東一局0本場は開始された。


 自摸り、捨てる。

 自摸り、捨てる。

 その繰り返しで生まれる、卓と牌の奏でる音が響く。


 二巡目。

 須賀京太郎が河に置いた東に反応する者もなく、手出しと自摸切りで淡々と進む。

 静かな滑り出しであった。


 動きがあったのは九巡目。機先を制したのは――


 ――須賀京太郎。


 手牌:須賀京太郎
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │二│二│四│②│②│③│④│④│⑥│⑦│⑧│.4 │.5 │ │③│
 │萬│萬│萬│筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│索│索│ │筒│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘


 ③筒自摸。


 配牌から筒子が順調に伸び、急所である嵌張を引き入れ、3s6s待ちにて聴牌。

 常に確認はしていたが、須賀京太郎は改めて河を鋭く見た。


 河:竹井久
 ①一発1s一八
 ⑧③九


 河:原村和
 九⑨東北発南
 南南1s


 河:須賀京太郎
 1s東西9s七発
 ①九


 河:染谷まこ
 ⑨西②8s西8s
 5s一


京太郎(……嵌③筒を自摸るとは幸先がいいぜ)

京太郎(部長は直近の③九と自摸切り、染谷先輩は5s一と手出し)

京太郎(和はドラの南から全て自摸切り……広い一向聴か聴牌ってとこか?)

京太郎(いや、和なら普通の手の場合、東一先行聴牌ならまず立直が入る)

京太郎(つーことは、聴牌はまだだと思っても良い……)

京太郎(何にせよ、ここが埋まればダマでいく場面じゃないな……)


京太郎「立直(リーチ)!」


 気合が篭った立直宣言が為された。

 河に放たれ、曲げられる四萬。


まこ「――吃(チー)」


 立直宣言牌が間髪入れず、副露された。

 晒された牌は五六萬。

 そして、染谷まこ打⑤筒。


京太郎(鳴いて、押してきた……ってことは、まず聴牌)

京太郎(5s一萬手出し、打⑤筒……河を見ればタンヤオ本命、次点で役牌絡み)

京太郎(……役を考慮して、危険エリアを素直に読むなら5s周辺、萬子の下、⑤筒周辺)

京太郎(ま、立直してるから自摸ってきても切るしかないけど)


 須賀京太郎のその予想は――


 手牌:染谷まこ
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐       ┌─┬─┐
 │三│三│六│七│八│⑤│⑥│.4 │.5 │.6 │ ┌──┤五│六│
 │萬│萬│萬│萬│萬│筒│筒│索│索│索│ │四萬│萬│萬│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └──┴─┴─┘
                       赤          赤

 ――的中していた。

 タンヤオドラ2、④⑦筒待ち、高め三色。


まこ(その牌はいわゆる『鉄鳴き』ってやつじゃな)

まこ(甘い打ち方はせん……後輩の思いは汲んでやらんとのう)


久(あら、二人共元気……)

久(先輩として、無様な打ち筋は晒せないとこだけど――)


 手牌:竹井久

 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │二│四│六│⑦│⑦│.2 │.2 │.2 │.3 │.3 │.3 │.6 │.8 │ │  │
 │萬│萬│萬│筒│筒│索│索│索│索│索│索│索│索│ │東│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘


久(無駄自摸……っと)

久(さて、二人に追いつけるかしら)


 自摸切り、東。


和(……二家が先行、この場況と自分の牌姿)

和(――当然、オリ)


 ノータイム手出し、①筒。


 揺るぎの無い冷静な判断だ。

 原村和、彼女の真骨頂は――凍牌と云うべき、澄んだ氷の如き判断力による、その打ち筋。

 それを存分に発揮し、彼女はこの局、ベタオリを選択した。


 ……そういえば、彼女の父親――原村恵――は学生時代に『氷のK』とか呼ばれていたのだろうか。

 もしそうであれば、前述した宮永父とあわせて考えると……

 麻雀の強さは遺伝しちゃったりするのだろうか。

 そこんとこどうなんですかね、この世界。


 まあ、それはさておき。


 当たり牌である、須賀京太郎の3s6sも、染谷まこの④⑦筒も。

 場に顔を出す事がなく進んでいく。


京太郎(五萬……際どい所を――通せっ)

まこ(……)

久(ん……五萬、入り目の後先ってやつかしら)


 手牌:竹井久

 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │二│四│六│⑦│⑦│.2 │.2 │.2 │.3 │.3 │.3 │.6 │.8 │ │五│
 │萬│萬│萬│筒│筒│索│索│索│索│索│索│索│索│ │萬│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘


 聴牌となる五萬自摸。


久(タンヤオのみだし……)

久(ダマで暗刻手に変化、危険牌自摸で回すのも視野に入れて良いけど――)

久(――ここは、こう!)


久「立直っ!」


 二萬が鋭く曲げられた。

 嵌7s待ちだ。


久(効率? リスク管理? 後追いの愚形だから自重?)

久(親だし、それだけ考えるのなんて面白くないわ――)


京太郎(追いつかれた……流石部長)

京太郎(悪そうな顔で楽しそうに追っかけ立直なんてしちゃって……)

京太郎(堪らないなあ……そういう部長の熱いとこ、好きっすよ――)



京太郎・久((――捲り合い、上等!))



和(なんだか二人が燃えている気がしますね……安牌っと)

京太郎(……げ、三萬。何で危なそうなとこばっかり――行けっ!)

まこ(シャボで受けてたら、とか考えても仕方ないしのう……ん、安牌)

久(きたぜ、ぬるりと、ってね――白。生牌だけど……通せっ)


 誰も当たり牌を掴まぬまま進んでいく。

 まるで、この局の勝者を決めかねているように。


 が、数巡後。

 最初に当たり牌を掴んだ者がいた。


 それは染谷まこであった。


 手牌:染谷まこ                                              
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐       ┌─┬─┐
 │三│三│六│七│八│⑤│⑥│.4 │.5 │.6 │ │.6 │ ┌──┤五│六│

 │萬│萬│萬│萬│萬│筒│筒│索│索│索│ │索│ │四萬│萬│萬│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘ └──┴─┴─┘


 自摸、6s。


まこ(――っ!)


 危険牌自摸で僅かに思索。

 彼女は眼鏡をずらし、裸眼で場を慎重に眺める。


まこ(……押す? いや、それはない……多分これは刺さる――)

まこ(――なら、一旦回す!)


 一向聴戻し、打三萬。


 この選択により局面は。

 以前、染谷まこがお調子者コンビと称した。

 須賀京太郎、竹井久――二人の一騎打ちの様相を呈した。


久(まこは手出し安牌……オリか回ったってとこね……ん、また白)

和(私空気ですね……現物)

京太郎(……赤⑤筒かよ! さっきから危険そうな所を引き過ぎぃ!)


 中盤、須賀京太郎の先制立直により始まったこの状況。

 残すは、もはや後二巡……そして、その結末は。




 ――うつしみは 欠けゆくばかり 月光の

       藍なる影を 曳きて歩まむ――
 

 二十六夜月を彷彿とさせる彼女の笑み。


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ヽ::::::::::::::::|::||:ト     `、 `ヽ、                           /::::::

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二,,,、、_z      `、                           ,,,/:::::ク::::://
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:::人::ハ::::::`、        ヽ                ,,,,,,,, ∠ニニ=== _ク/
::::::::Y::::\:::`、        `ヽ、,,,,,,,,         ,,,,,,/:::::::/::::ハ::::::::/
                    ゙゙゙゙゙゙゙'''''''''''゙゙゙゙゙゙゙






    須賀君、それは通らないなあ――




 毀れされた言葉。

 続いて。


久「――栄和(ロン)」


 和了形:竹井久
                                                     ┌─┐
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┤.7 │
 │四│五│六│⑦│⑦│.2 │.2 │.2 │.3 │.3 │.3 │.6 │.8 │索│
 │萬│萬│萬│筒│筒│索│索│索│索│索│索│索│索├─┘
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘   


久「……裏は乗らず、3900」


 須賀京太郎の7s放銃で決着となった。


 東一局0本場:結果

 東家:竹井久    30000→34900
 南家:原村和    30000
 西家:須賀京太郎  30000→25100
 北家:染谷まこ   30000


京太郎(……)

京太郎(……和了れなかったのは仕方ない、どっちが先に当たり牌を引いてもおかしくなかった)

京太郎(切り替えろ……次局の理想は失点を埋めつつ、連荘させない事)

京太郎(部長を調子付かせるとマズいしな……って配牌悪っ!)


 東一局1本場

 手牌:須賀京太郎
                                                           
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │二│四│五│九│⑤│⑦│⑧│.2 │.6 │  │  │  │  │ │②│
 │萬│萬│萬│萬│筒│筒│筒│索│索│南│西│発│中│ │筒│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
           赤


 一巡目、須賀京太郎、②筒自摸。


京太郎(……)

京太郎(……マジかー、切り替えてもこれじゃなー)

京太郎(……)

京太郎(……こういう時は)


 打九萬。

 続いて染谷まこ、打東。


和「ポン」


 刹那で上がる原村和の声。

 場風東一鳴き、だ。

 続いて河に放った牌は南。


 手牌:原村和

 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐    ┌─┐
 │七│八│①│①│③│⑤│⑦│⑦│⑧│.4 │ │  ├──┤  │
 │萬│萬│筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│索│ │東│  東│東│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┴──┴─┘


和(この形で配牌東対子なら速攻……自摸によっては混一が見えます)


 彼女の打ち筋では、余程のことがない限り、二鳴きはありえないだろう。

 ――三巡目、原村和は竹井久の打①筒を再度ポンにて副露。

 更に六巡目、須賀京太郎から零れた発を竹井久がポンと鳴き、

 0本場とは異なり、速攻戦の様相となった。


 副露はそれ以上はなく、手出しと自摸切りがめまぐるしく交差する。

 激しく動く各々の手牌。

 須賀京太郎と染谷まこは面前を保ったままだ。


 そうして……この局の、岐路となったであろう、巡目が、訪れる。


 東一局1本場、十一巡目。


 手牌:須賀京太郎

 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │四│五│六│④│④│⑤│⑥│⑦│⑧│.6 │.6 │  │  │ │  │
 │萬│萬│萬│筒│筒│筒│筒│筒│筒│索│索│西│西│ │西│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
       赤


 自摸牌は自風である西。


京太郎(……あの配牌から、良くここまで育ってくれたもんだ)

京太郎(――打④⑤⑧筒、どれかで聴牌)

京太郎(だけど――)


 河:竹井久
 北白⑨二2s九
 4s2s8s7s


 河:原村和
 9s南4s七八三
 ⑦白北三八⑨


 河:須賀京太郎
 九南②二①2s
 3s東中三

 河:染谷まこ
 白8s1s一⑨九
 1s九8s


 須賀京太郎は長考する。

 深く。重く。探るように思考の海へ。


京太郎(和が典型的な混一色気配……⑦筒が手出しで溢れた時点で聴牌してると思って良い)

京太郎(部長は鳴いてるものの、手出しで索子が続いてるから回ってるはず)

京太郎(染谷先輩も⑨自摸切り以降は全て手出し……部長と同様だろう)

京太郎(何にせよ、筒子は現物以外は和に刺さってもおかしくない)


京太郎(……)

京太郎(……)

京太郎(皆なら、こういう時どうするかな……)

京太郎(咲なら、上手く回すか、当たり牌をビタ読みして西槓からの嶺上開花しそうだ)

京太郎(優希なら、『直感で、がーっと立直して、ずばーっと一発自摸るんだじぇ!』とか思ってそう)

京太郎(和なら、予め場況と点数状況を思索して、ノータイムだろう)

京太郎(染谷先輩なら、場を慎重に見て経験から判断を下す)

京太郎(部長なら……敢えてシャボ受けして、当たり牌をすり抜けて一発自摸りそう)

京太郎(……ま、俺は皆と違うから、そうは出来ないだろう)


 だから。

 そう、だからこそ。

 この選択、この一打は――


 学んだ事を思い出す。

 幼馴染と共に。


 牌理は行け、と命じている。

 己の直感も、ここは日和るな、行くべきだ、と告げている。

 ならば。


京太郎「――通らば立直!」


 打④筒。

 栄和、との声は上がらず。

 千点棒が供託された。


 ――平凡かもしれないが、誰かの模倣ではなく。

 須賀京太郎の、意思が、確かに、込められた、一打であった。



 手牌:原村和
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐       ┌─┬─┐ ┌─┐    ┌─┐
 │③│③│④│⑤│⑦│⑧│⑨│ ┌──┤①│①│ │  ├──┤  │
 │筒│筒│筒│筒│筒│筒│筒│ │①筒│筒│筒│ │東│  東│東│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └──┴─┴─┘ └─┴──┴─┘


和(――④筒切り立直。強い牌を通してきますね、須賀君)

まこ(店仕舞い……現物)

久(連荘は諦めるとして……とりあえず南っと)


 厳しい牌を通した須賀京太郎。混一色聴牌の原村和。

 この二人の一騎打ちとなった。

 奇しくも神の視点であれば⑨筒が純空の為、両者とも待ちは同聴となる③⑥筒。


 そして――十六巡目。

 この局の終止符となる、和了宣言が為された。





    ――自摸



 倒される手牌。

 和了牌を引き入れ、東一局1本場を制したのは――




















 ――須賀京太郎であった。


 和了形:須賀京太郎 表ドラ:5s 裏ドラ:⑨筒
                                                     ┌─┐
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┤⑥│
 │四│五│六│④│⑤│⑥│⑦│⑧│.6 │.6 │  │  │  │筒│
 │萬│萬│萬│筒│筒│筒│筒│筒│索│索│西│西│西├─┘
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘   


 立直、門前清自摸和、自風、赤一。

 30符4飜。


京太郎「2000、3900の一本場、2100、4000」


 東一局1本場:結果

 東家:竹井久    34900→30900
 南家:原村和    30000→27900
 西家:須賀京太郎 25100→33300
 北家:染谷まこ   30000→27900

誰得?と聞かれたら自分得としか言えない内容なような

そして、おかしい……結構端折ってるはずなのに局が進まない
闘牌って尺やばくないっすかね、セーブでー

自分で闘牌を書く上での打ち筋的な意味で
和→わかる
まこさん→わかる
部長→まあわかる
優希→入れると東場と南場の扱いが難しい取り敢えず却下
咲さん→は? 場面切取りならともかく、通してだとファンタジーすぎて牌譜ねーよ即却下

咲さん描写の場合どうすれば良いんだろう……負けさせれるの?
まあ咲ちゃんは幼馴染路線だから対局させなくても問題ないよね

ぼちぼち


京太郎(和了れた……)


 和了牌を自摸った感触が、未だ手にある。

 東一局1本場の接戦を制した熱も、未だ残っている。


 だが、しかし。


京太郎(……浮かれるな。未だ東一局が終わったばかり)

京太郎(始まったばかりで、点数状況は平たいままだ)


 表情に出さず、余韻を噛み締めつつも自戒。

 手中より、不要である牌を河に置いた。


 ――全員手が重いのか、副露も立直もなく、巡目のみが重なっていく。

 そして――


京太郎(……張ったけど、愚形、終盤、ノミ手)

京太郎(立直は無意味、ダマ)


まこ(ふむ……久が高そうじゃな、安牌)


久(ダマで満貫だけど聴牌が遅かったのよねー……)

久(待ち牌殆ど無さそうだし、流れるかな)


和(無理に行く牌姿じゃありません……)

和(回しつつ出来れば聴牌だけでも)


 各々の思惑が交差し。

 海底牌が切られ、流局となった。


 聴牌:竹井久 須賀京太郎
 不聴:原村和 染谷まこ

 東二局0本場:結果

 東家:竹井久    30900→32400
 南家:原村和    27900→26400
 西家:須賀京太郎 33300→34800
 北家:染谷まこ   27900→26400


 東三局親流れ1本場。

 一巡目。


 手牌:須賀京太郎 表ドラ:⑤筒
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │二│四│五│⑤│⑦│⑧│⑧│⑨│.1 │.4 │.6 │.6 │  │ │⑤│
 │萬│萬│萬│筒│筒│筒│筒│筒│索│索│索│索│中│ │筒│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
                                                          赤

京太郎(これは――)


 自摸、赤⑤筒。

 ゆっくりと切り出した牌は中。

 ドラ3以上がほぼ約束された、和了れば点数で頭一つ抜けるだろう牌姿だ。

 否応なく跳ねる鼓動。


まこ(配牌順子無し、これは厳しいのう……安全に)

久(この手は遅く、安い……ま、ゆっくり行きましょうか)

和(配牌二向聴、ネック牌は孤立している赤⑤筒……)

和(他が先に埋まればですが、赤⑤筒くっつきを狙って回すのは無いですね……)

和(……面前速攻重視)


 各々方針を決め、巡目が進んでいく。

 この局、先行したのは――須賀京太郎だった。


 東三局0本場八巡目

 手牌:須賀京太郎
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │二│三│四│五│⑤│⑤│⑦│⑧│⑨│.4 │.6 │.6 │.6 │ │七│
 │萬│萬│萬│萬│筒│筒│筒│筒│筒│索│索│索│索│ │萬│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
                       赤

 七萬自摸。

 嵌六萬待ちにて聴牌。


京太郎(愚形聴牌。行きたい所だけど――)

京太郎(――萬子は高い、聴牌維持しつつ、良形への手変わりを待つ)


 そう判断を下し、打四索とする。

 目立った動きも無く、繰り返される自摸と打牌。


 そのまま数巡が過ぎ――

 ――場況が変化したのは原村和の自摸牌によるものだった。


 東三局0本場十一巡目

 手牌:原村和
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │二│三│七│八│⑤│.2 │.2 │.3 │.4 │.5 │.5 │.6 │.7 │ │九│
 │萬│萬│萬│萬│筒│索│索│索│索│索│索│索│索│ │萬│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
                   赤

 九萬自摸。


 原村和に引き入れられた、聴牌となる九萬。

 それを受け、そのまま滞る事無く――


和「立直」

和(この状況で一向聴戻しはナンセンス……)


 ――為される立直宣言。

 東一局より変わらず、僅かな揺らぎも無い、流れるような一連の動作。


 打赤⑤筒。

 ドラ2を約束する牌を切る事に、一切の躊躇も無く。

 しかし、確かに、彼女の意思が乗った打牌だった。


 次巡。

 手牌:須賀京太郎
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │二│三│四│五│七│⑤│⑤│⑦│⑧│⑨│.6 │.6 │.6 │ │⑤│
 │萬│萬│萬│萬│萬│筒│筒│筒│筒│筒│索│索│索│ │筒│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
                           赤

 ドラである⑤筒を自摸り――ドラ4確定。

 立直を掛ける事により、自摸にて跳満確定である。


京太郎(――!)

京太郎「立直!」


 打七萬。


まこ(……ベタオリじゃな)

久(後は若い二人に任せましょうか……なんてね。オリ)

和(……追いつかれましたか)


 奇遇にも東一局1本場と同じく、追う者、追われる者が一致した、彼の選択。

 結果、この立直が明暗を分けた。


 次巡、須賀京太郎、④筒自摸。


京太郎(――しくじっ――た!)


京太郎(これは……自分の方針で愚形を嫌う、手変わりを見る、と決めたなら――)

京太郎(――押すにしてもダマで待つべきだった)

京太郎(目先の先行立直に焦ったのか)


京太郎(萬子が高いこの場だと、二五萬の頭待ちは良い待ちとは言えない……)

京太郎(握り潰されている可能性が高い)

京太郎(和了れなけりゃ、手中の跳満自摸なんて意味が無い)


京太郎(何より、和の赤⑤筒切り立直と手中の⑤筒暗刻……)

京太郎(筒子中央の繋がりを断ち切ってる要素を考慮してなかった)

京太郎(必然的に、⑤筒周辺は和にほぼ通り、河から山に眠っている可能性も高い)

京太郎(つまり、自分が思い描ける最良は――)

京太郎(筒子待ち多面張、次点で索子待ち、立直と行くかどうかはそこからだ)

京太郎(④筒引いてきて、初めて気付くなんて……馬鹿か俺は)


京太郎(そういや……部長が以前、場況判断について質問した時に言ってたっけ)

京太郎(自分で想定できる状況を全て思索して、下した判断なら……)

京太郎(それは結果が伴わなくても、正しい、と)


京太郎(だけど……何かを見落として……)

京太郎(仮に、見落としていた何かに気付いていた場合、下さなかっただろう判断を選択していたら……)

京太郎(それは結果が伴っても、正しくはない、と)


京太郎(『だから須賀君、正しく判断して――そして、その結果、間違いなさい』とか)

京太郎(『現実を深く見れる方が分厚いの』とか)

京太郎(『見えている側は選べるのよ』とか)

京太郎(『あと打ち方とかフォームの問題なの、憶えておいてね』なんて嘯いてたけど――)



京太郎(――嗚呼、部長の言う通りだ)


京太郎(解ってて切るなら良い、解ってて押すなら良い)

京太郎(解ってて立直して――和了牌の後先に……)

京太郎(神のみぞ知る賽の出目、その結果を運に委ねるのは良い)


京太郎(だけど……これは)

京太郎(結果的に牌理がどうとか、そんな問題じゃなく……)


 ――尚、打牌自体はミスではない。

 実戦でも解った上で、打七萬を曲げる事は多々ある。

 萬子が高い場なら尚更であるし、速度重視とはそういうものだ。

 立直とは最強の役の一つである。


 が、しかし、彼が問題にしている点はそんな事ではない。

 麻雀を嗜む者であれば、何度も経験する壁。

 『見えているか、それとも見えていないか』

 つまり、そういう事であった――


 そして次巡、原村和、自摸切り③筒。

 偶然にも、手変わりで③④⑥筒待ち移行ならば、討ち取っていた牌。


京太郎(――)


 須賀京太郎、一萬自摸。


 河に放たれたその牌は原村和に刺さり――


 王牌が捲られ、裏ドラは九萬。


 ――3900は4200、と点数が告げられた。


 和了形:原村和 裏ドラ:九萬
                                                     ┌─┐
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┤一│
 │二│三│七│八│九│.2 │.2 │.3 │.4 │.5 │.5 │.6 │.7 │萬│
 │萬│萬│萬│萬│萬│索│索│索│索│索│索│索│索├─┘
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘   


 東三局親流れ1本場:結果

 東家:竹井久    32400
 南家:原村和    26400→31600
 西家:須賀京太郎 34800→29600
 北家:染谷まこ   26400

訂正
×和了形:原村和 裏ドラ:九萬
◯和了形:原村和 表ドラ:⑤筒 裏ドラ:九萬


 東四局0本場。


京太郎(……さっきのを悔やみ続けても仕方ない)

京太郎(次に活かすべきだ。手痛い教訓になった)

京太郎(……やっぱり、実際に強い人と何度も打たないと駄目だよなあ)


 痛くなければ覚えませぬ……というわけでもないが、真実である。

 元来、麻雀は点数計算等や牌理はともかくとして、それ以外で打って覚える側面を有する。


 対人の機微、細かい場況の良し悪し、冷静さと集中を持続させる事の大切さ、その術……

 それらは実戦でこそ最も学習でき、磨かれるのだろう。

 プロや強者も鬼打ち――長い時間、あるいは高頻度で麻雀を打ち続けること――は欠かさない。

 間隔が開けば、すぐ鈍っていくのである。


 実際、個人的にも多分一番強かったと思う時期は、勉学より麻雀に比重を置いていた、雀キチだった時分だ。

 大学で麻雀にハマるとこうなる、という悪い例ではあるが、そういった覚えがある人もいるのではないだろうか。


 閑話休題。


京太郎(ま……何はともあれ、切り替えろ)

まこ(……東一0本場以後から、空気化しとる気がするんじゃけどのう)

久(和の手出し中張牌整理が早い、これは――)


和「――立直」


京太郎(早い――けど、こっちも一向聴)

京太郎(未だ十分追いつける牌姿)

まこ(またベタオリ……)

久(和に流れが行っちゃったかしら……言葉にしたら、和はSOAとか言うけど)

和(……)

京太郎(一発は無しか……良しっ、引いた――)

京太郎(――打一索で高め一通平和聴牌、子同士なら……ここは、押す!)


京太郎「――通らば立直」


 十分な考慮をもって行った選択。

 捨て鉢になったわけではない。

 押すべき所は危険だろうとも押す。

 其れは神ならぬ身である、麻雀打ちの真理の一つ。






    今度は通りません――




 しかし、その全てが結果が伴う事は有り得ない。

 それもまた――真理の一つであった。


和「栄和」


 千点棒が供託される事なく、倒される手牌。

 裏ドラが捲られ、彼女の手中に一枚のドラが増えた。


 和了形:原村和 表ドラ:2s 裏ドラ:④筒
                                                     ┌─┐
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┤.1 │
 │三│四│五│③│③│④│⑤│⑥│.2 │.3 │.4 │.5 │.6 │索│
 │萬│萬│萬│筒│筒│筒│筒│筒│索│索│索│索│索├─┘

 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘   
           赤              赤


和「12000」


 立直、平和、赤二、ドラ二。

 跳満。

 裏一により満貫から跳満となる、その打点をもって。

 他の面子より頭一つ抜ける事になり。

 原村和はトップに踊りでた。


京太郎(……結果振ったのは別に良い……ただ今度は些か高い)

京太郎(これ以上離されるのは厳しすぎる――)


久(――なーんて思ってそうよね、須賀君は)

久(といっても、私もこれ以上は離されたくない所だけど)


まこ(なんか、わし扱い酷くないかのう……)

まこ(置物扱いされてる気が……)


 気のせいである。

 見せ場を作るのを忘れていたとか、そういう事は決してない。


 東四局0本場:結果

 東家:竹井久    32400
 南家:原村和    31600→43600
 西家:須賀京太郎 29600→17600
 北家:染谷まこ   26400

訂正
×しかし、その全てが結果が伴う事は有り得ない。
◯しかし、その全てが結果を伴う事は有り得ない。


 続く南一局0本場、再び先行したのは、原村和。

 生来の引きの強さ――本人はそんな要素は考慮にも入れないだろうが――と、

 怜悧な打牌選択による加速。

 判断に迷わず。
 圧倒的に速く。
 美しく靭やか。

 そんな打ち筋を遺憾なく発揮する。

 彼女の牌譜を、一定以上の技量がある者が見れば、惚れ惚れとするだろう。

 仮想現実の世界で猛威を奮い、畏怖、崇拝される彼女の本領。

 勢いが乗った、その速度はまるで――


和「立直」


京太郎(また、早い――)

京太郎(この局は追い付けない……オリ)


まこ(ハァ……いける牌姿にならん――)

まこ(――回す!)


久(……)

久(……ちょっと本格的にまずそうね)


和「――自摸」


 ――風を斬り、天に舞う、飛燕。


 和了形:原村和 表ドラ:④筒 裏ドラ:9s

 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │四│五│六│七│八│④│⑤│⑥│  │  │  │  │  │ │六│
 │萬│萬│萬│萬│萬│筒│筒│筒│白│白│南│南│南│ │萬│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
 

 立直、自摸、場風。

 40符3飜。


和「1300、2600」


京太郎(……残すは三局、三万点差以上)

京太郎(親は残ってるものの、さて、どうするか――最優先は和の親を蹴る)


まこ(……裏ドラが乗らんかったのが唯一の救いじゃ)

まこ(次の局は和の親を蹴りつつ、点差を埋めるのが理想)


久(……何にせよ次が分水嶺)

久(親で連荘されたら、トップへは届かなくなると思って良いわ)


 南一局0本場:結果

 東家:竹井久    32400→29800
 南家:原村和    43600→48800
 西家:須賀京太郎 17600→16300
 北家:染谷まこ   26400→25100

麻雀漫画風に描写するとパない文字数になることを確信したので端折り方を加速
アカギとか長くなるわけだ……多分次には阿知賀フラグ立てて終わらせれるはず……

すいません、セーブで

>>574差し替え)

 続く南一局0本場、再び機先を制したのは原村和だった。

 生来の引きの強さ――本人は運の強弱など一顧だにしないだろうが――と、怜悧な判断による加速。

 その思惟に迷い無く。
 圧倒的なまでに疾く。
 流麗で靭やかな打牌。

 彼女の牌譜を一定以上の技量を持つ者が観れば、見惚れることになるだろう。

 仮想現実の電子世界で猛威を奮い、畏怖、そして崇拝され、天の使いに例えられる彼女の本領。


和「立直――」


 人の目には視えざる流れすら統べると、他者に錯覚させる其の疾さは――


京太郎(早過ぎる、立ち向かえる牌姿になってない)

京太郎(回して進むけど……置き去りにされた)


まこ(ハァ……手牌が纏まらん――)

まこ(――が、諦めん、回す!)


久(手が入らない……本格的にマズそうね)

久(迂回するけど、勢いに乗った和を止められるかしら)


 ――恰も、風を斬り裂き、白天を翔抜ける、最速の称号を冠した黒き燕。


和「――自摸」


 和了形:原村和 表ドラ:④筒 裏ドラ:九萬
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │四│五│六│七│八│④│⑤│⑥│  │  │  │  │  │ │六│
 │萬│萬│萬│萬│萬│筒│筒│筒│白│白│白│北│北│ │萬│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
 

 立直、自摸、白。

 40符3飜。


和「1300、2600」


京太郎(……残すは三局、和と三万点差以上)

京太郎(親番は残ってるものの、さて、どうするか――最優先は和の親を蹴る)


まこ(……裏ドラの方を引かれんかったのが唯一の救いじゃ)

まこ(次の局は和の親を蹴りつつ、点差を埋めるのが理想)


久(和の三連続和了……何にせよ、次が分水嶺)

久(親で連荘されたら、トップへは届かなくなると思って良いわ……まこと須賀君も解ってるはず)


 南一局0本場:結果

 東家:竹井久    32400→29800
 南家:原村和    43600→48800
 西家:須賀京太郎 17600→16300
 北家:染谷まこ   26400→25100

>>574>>581に全部差し替え
致命的ミスに気付いたので訂正ついでにちょっと改稿
帰って来れたなら夜から


 トップを奔らせまいと。

 原村和以外の思惑が一致した、そんな南二局0本場。


 表ドラ発、一巡目。


 手牌:須賀京太郎
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │一│四│五│.1 │.1 │.2 │.4 │.5 │.7 │.9 │.9 │⑤│  │ │  │
 │萬│萬│萬│索│索│索│索│索│索│索│索│筒│南│ │南│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
                                               赤


京太郎(……勝負手、最良は面前)

京太郎(だけど――)

京太郎(……あと、この手は染め気配を消せる牌姿じゃないな)


 ならば、先に危険牌から処理すべし。

 捨て牌で異常に気付かれるだろうが構いはしない。

 どの道染め手の場合――相手が押す場面でなければ、直撃は見込めない。


 そう決断し、須賀京太郎は前に進む為に、五萬を河に放った。


 そして三巡目、竹井久。


 手牌:竹井久
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │一│二│四│.1 │.4 │.6 │.6 │.7 │⑥│  │  │  │  │ │⑧│
 │萬│萬│萬│索│索│索│索│索│筒│南│発│発│中│ │筒│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘


 八筒自摸。

 現状の牌姿はドラ対子は有るものの纏まっていない。

 向聴数的には些か厳しい形。


久(……出来るなら『出場最(でばさい)』を取りたい)


久(ただ、ここまで和が先行しちゃうと……)

久(余程速攻聴牌、多面張役無しでもなければ、立直しない可能性が高い)


久(一度受けに回った和から、普通に打って直撃を取るのは至難なのよね)

久(和からは甘い牌は基本的に出て来ない)

久(そして和の事だから放っとくと、この局も早そう)


久(……須賀君は手中から早々と五萬、四萬、赤⑤筒落とし)

久(考えられる手は――染め、チャンタ、国士等)

久(だけど役満をは考慮するのは現状無意味、だから除外)


久(配牌オリを決め込んでない限り――)


久(……須賀君、貴方は諦めるなんて柄じゃないわよね?)


久(――比較的手作りしやすく高い手の可能性、つまり染め手が本命)

久(なら、此処は)


 竹井久、打南。


京太郎「ポン!」


京太郎(ここを鳴けたのは有難い)

京太郎(それに、この河で役牌を叩けば和は……)


 場風の南が場に晒される。

 須賀京太郎、役牌一鳴き。


久(ん、良い子ね)


 原村和に真っ直ぐ進まれただろう場合、速度で間に合わないのなら――


久(和の自摸も飛ぶし……出来れば、もう一度)


 竹井久、打中。

 須賀京太郎の声は上がらず。


 再度巡る、竹井久の手番。

 打一索。


京太郎「ポンッ!」


 河に放たれた鳳の牌が、再び副露される。


 ――彼女が迂回するように仕掛ければ良い。


 須賀京太郎が竹井久の捨て牌にて、副露出来たのは偶然ではあるが。

 『原村和の手を遅らせる』

 その判断の元行われた、彼と彼女の打牌だった。


和(須賀君が露骨な染め手気配)

和(もう索子は打てませんね)


 場に染め手の者がいる場合、自身が切る牌に最も注意を払う者は――

 ――必然的に、副露される可能性が高い上家である。

 二回副露を重ねられれば尚更だ。


久(細工は流々仕掛けは上々――)

久(後は……)
 

 しかし、鳴きで自摸を飛ばされ。

 索子を切りにくい場にされても、尚。


 最初に聴牌に辿り着いたのは。

 またもや原村和だった。


 手牌:原村和
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │一│二│三│四│.3 │.3 │.3 │.5 │.6 │②│③│④│  │ │.7 │
 │萬│萬│萬│萬│索│索│索│索│索│筒│筒│筒│南│ │索│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
                               赤

 七索自摸。


和(――須賀君は索子染め一直線、最悪を想定して聴牌と見て良し)

和(染谷先輩は索子を絞り、聴牌気配はまだ無い)

和(自分の手牌は受けが広い一手代わりタンヤオ、そして三色も見えます)

和(点数状況と場況から立直は無意味、受け重視)


 安全牌として抱えていた南を切り出し、ダマを選択。

 二位と約2万点差あるトップとしては当然だろう。

 そして、合理的な判断だ。


 安全圏とはまだ言えないが――

 ――親の連荘や高打点の紛れが起きない限り、原村和優勢な状況であった。


 染め手の須賀京太郎がいる為、慎重な動きで巡目が重なっていく。


和(……)

和(須賀君と染谷先輩の状況は然程変わらず)


久(何とか間に合った……ってところかしら)

久(そして、ここで――通れっ)


京太郎(後一つで聴牌――引いた)

京太郎(……部長に8sを聴牌前に処理されたけど5s-8s)

京太郎(直撃は期待しない、自摸にかける)


 そして。


 手牌:原村和
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │一│二│三│四│.3 │.3 │.3 │.5 │.6 │.7 │②│③│④│ │.4 │
 │萬│萬│萬│萬│索│索│索│索│索│索│筒│筒│筒│ │索│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
                               赤

 原村和、四索自摸。

 打一萬でタンヤオ、ドラ一、高め三色、五面張への振り替えだ。


和(部長は前巡手出し8sを押していますね。聴牌でしょうか)

和(何にせよ、一萬は須賀君の現物かつ、染谷先輩の三巡目手出し二萬の外側)

和(そして部長は須賀君に南、一索と鳴かれた後、四二萬と手出しで嵌張を落としている)

和(河から見て、一旦索子を絞ったと思って良し)

和(また公九牌捨ての早さと手出しの動きから七対子、チャンタも薄い)

和(つまり、この一萬が当たるのはレアケース)


 刹那で纏められた牌理に適った思考の元。

 牌を曲げる事なく、放たれる一萬。

 ダマにて2s5s8s-4s7s待ちを選択。

 現実でもデジタル的思考の元、この一萬を手中に残す意味は無い。


 しかし。

 原村和が捨てた、その牌。

 その一萬は――


久「出刃冴え――」


和(――っ!)


久「――なんてね、栄和」


 和了形:竹井久 表ドラ:発
                                                     ┌─┐
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┤一│
 │一│.4 │.5 │.5 │.6 │.6 │.7 │⑥│⑦│⑧│  │  │  │萬│
 │萬│索│索│索│索│索│索│筒│筒│筒│発│発│発├─┘
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘   


 ――己の危険すら顧みぬ、牌理の外側、悪の一文字を冠する、鋭利な不合理の刃に突き刺さった。


 一萬単騎待ち。

 発、ドラ三。

 40符4飜、満貫。


久「8000」


 ――竹井久、彼女が悪待ちを使う理由。

 それは、二つ、有る。


 一つは云うまでも無く、彼女の特性、何となく上手く事が運ぶ為。

 験担ぎにも似た、常人の枠からはみ出た其れ。

 
 また、もう一つの理由――其れは『対人戦術』。


 理に沿って進むと云う事は、時として、その理が己自身に絡みつく網となる事も有り得る。

 牌理に沿って進む打ち手を、その対局者を、良く識る者にとっては理自体が罠を張る絶好の機会。


 『理を頼り、読みに長ける者を討つには――愚形で刺し殺せ』


 河に迷彩を施した場合、単騎及びシャボはその性質上、牌理で読むことは不可能に近い。

 勿論、罠を張る者は理に沿わず進む分、打点や速度等で決して小さくは無いリスクを背負う事になる。


 しかし、牌理の外から狙い打たれた者は、常の打ち方を崩す事すら時として有り。

 平時ならば切れる牌が切れなくなる事すら有り得るだろう。

 其れはブラフや心理戦と呼ばれる、幻想の闘牌。


 視る者が視れば勘付くだろう、もう一つの悪待ちの意味。

 彼女にとって、悪待ちを使うにあたり、重きを置く、もう一つの理由であった。


 原村和が改めて、河と竹井久の和了形を視る。

 竹井久が仕掛けた罠を悟る。


和「ハァ……部長、その待ちは非合理過ぎますし、リスクが高過ぎると思います」

久「でも直撃を取るには良い待ちでしょ?」

和「……それは否定しませんが」

久「それに、今の和ならここで討ち取らないと多分――」


 竹井久が次巡の己と原村和が自摸るはずである牌を捲る。

 露わになる、二索二枚。


久「――ほら」

和「……それは結果論です」

久「ん、まあ……終った事なんだし良いじゃない」

和「相変わらず納得は出来ませんが……わかりました」


 須賀京太郎も河と竹井久の手牌から、この局の彼女の意図を察知した。

 続いて、顔を上げ真っ直ぐに彼女を見て、徐に口を開く。


京太郎「……部長、前から不思議には思ってたんですけど、一つ聞いても良いですか?」

久「ん、何? 須賀君」


京太郎「それは、その悪待ちは……」

京太郎「いや、その打ち方は――」

京太郎「――自分を信じてるんですか? それとも捨ててるんですか?」


 須賀京太郎から投げ掛けられた問い。

 それに、ふむ、と顎に手を当て暫し思考する竹井久。


久「須賀君、同じ事なの」

久「自分の読みに、本心に沿って、余計な執着、恐れや迷いを整理して……」

久「すべき事を決断すれば――何時の間にか自分信じ、同時に捨てているの」

久「分ける事は出来ないわ」


 そして――

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          !  |::/:::| .!_ソ     ー==-、 | /:::::/::::::/
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                  |::/:::::::::ー─、   ∨:|:::::::::|\::::::ヾヽ、
                r/:::::::::::::/lノ∧   ∨::::::::::|  \::::|:リ
              / |:::::::::/  .ト、 ,__/:::::/|/   ∨\
                /  \/    |-──|.:::/        /∠\
            /   |\\. .|.  /∨       / /  \|
             /     ハ. \\|. /      / /      |
           /   \{ \ \|/──── "_/\       |


 ――これも憶えておいてね。

 忘れちゃ駄目よ、と。


 以前の時のように。

 教師が教え子に、優しく、言い含めるように。

 後輩の胸中に、忘れてはならない事を、優しく、刻み込むように。


 彼に、柔らかく、告げられた。


 その言葉と。

 片目を瞑り向けられた。

 彼女の、竹井久の、瀟洒な香水木にも似た、その笑みに――

 一瞬、須賀京太郎は、頷く事も、応える事も、忘れ。

 ――僅かに、鼓動が、跳ねた。



 南二局0本場:結果

 東家:竹井久    29800→37800
 南家:原村和    48800→40800
 西家:須賀京太郎 16300
 北家:染谷まこ   25100

関係無いですけど、再び絶望した

そして自分の部長像が半端じゃなく影響を受けてる事に今更気付く
凡そ一年以上前にリアルタイム遭遇した純愛3威力7の衝撃によって咲SSを読みだしたきっかけだから仕方無いよね

寝ますー

>>581
×和了形:原村和 表ドラ:④筒 裏ドラ:九萬
○和了形:原村和 表ドラ:③筒 裏ドラ:九萬


 前局、トップ者への満貫直撃はあったものの――

 須賀京太郎と原村和との差は未だ二万点以上。


 彼が捲りを視野に入れるならば、オーラス迄に満貫自摸以内の点差が理想だ。

 跳満自摸捲り以上と満貫自摸で捲り以下では難易度の差が雲泥である。

 つまり必要条件は親維持。

 打点が伴えば更に良い。


京太郎(……)

京太郎(……)

京太郎(すべき事を決断、か――)


 南三局0本場、表ドラ北。

 一巡目。

 手牌:須賀京太郎
                                                           
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │二│四│①│⑥│⑨│⑨│.6 │.8 │.9 │.9 │  │  │  │ │一│
 │萬│萬│筒│筒│筒│筒│索│索│索│索│東│南│西│ │萬│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘


 艶がない配牌。

 通常ならば受けを考えて、慎重にオリすら考えても可笑しくない牌姿。


京太郎(……)

京太郎(……これは厳しいな)

京太郎(……ま、そういう事もあるさ)

京太郎(でもな――)


 しかし――須賀京太郎に落胆は、諦観は見えなかった。


 かつて、あの熱い夏に見た、仲間達の勇姿が。

 諦めず夢に向かっていた数多の少女達の姿が。

 先程の竹井久の言葉が。

 
 須賀京太郎に思断つ事を放棄させる。

 真っ直ぐに進む事を決意させる。

 勝負を投げるなんて許せる筈がない。


 不遇の内敗れる事もあるだろう。

 叶わず涙を呑む事もあるだろう。

 その事は否定しない。

 夢散って涙を流す少女達も見た。


 だが――

 ――それを理解した上で、矢張り諦めないのだ。

 あの夏に、憧憬と共に、彼に聢と刻まれたその想い。

 
 尽くす、定めを全て。今為すべき事を。

 現実も不遇も抱え込み、ただ前へ。



 廻る。

 廻る。

 自摸が、手番が、廻る。

 オーラス向かって、終りに向かって、進んで行く。



 手牌:染谷まこ
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │二│三│七│八│①│②│③│④│.1 │.2 │.3 │  │  │ │⑧│
 │萬│萬│萬│萬│筒│筒│筒│筒│索│索│索│白│中│ │筒│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘

 自摸⑧筒。

 自摸切り。


 手牌:竹井久
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │四│五│六│①│②│②│③│.1 │.6 │  │  │  │  │ │.2 │
 │萬│萬│萬│筒│筒│筒│筒│索│索│南│南│北│北│ │索│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘

 自摸二索。

 打六索。


 手牌:原村和
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │四│五│七│七│八│九│①│④│⑤│⑥│.4 │.5 │.9 │ │①│
 │萬│萬│萬│萬│萬│萬│筒│筒│筒│筒│索│索│索│ │筒│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
       赤

 自摸①筒。

 打九索。

またミスッたし

× 手牌:原村和
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │四│五│七│七│八│九│①│④│⑤│⑥│.4 │.5 │.9 │ │①│
 │萬│萬│萬│萬│萬│萬│筒│筒│筒│筒│索│索│索│ │筒│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
       赤

 自摸①筒。

 打九索。


◯ 手牌:原村和

 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │一│四│五│七│七│八│九│④│⑤│⑥│.4 │.5 │.9 │ │一│
 │萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│筒│筒│筒│索│索│索│ │萬│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘

 自摸一萬。

 打九索。


 徐々に。

 徐々に煮詰まっていく場況の最中。

 最初に聴牌が入ったのは原村和だった。


 手牌:原村和
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │一│一│四│五│七│七│八│九│④│⑤│⑥│.4 │.5 │ │六│
 │萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│筒│筒│筒│索│索│ │萬│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
               赤

 六萬自摸。

 そして、曲げられる七萬、彼女は立直を選択し。

 彼女の立直宣言と共に、場に置かれる千点棒。

 3s6s待ち高め三色。



 ――続いて染谷まこに。


 手牌:染谷まこ
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │一│二│三│七│八│①│②│③│.1 │.2 │.3 │  │  │ │  │
 │萬│萬│萬│萬│萬│筒│筒│筒│索│索│索│白│中│ │白│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘


 白自摸。

 六九萬待ち、高めチャンタ聴牌。


まこ(……そろそろ混ぜろよ、というわけじゃないがのう)

まこ(ここでダマ――なんて選択はありはせん)


まこ「――立直!」


 打中。



 手牌:竹井久
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │四│五│六│①│②│③│.1 │.1 │.2 │  │  │  │  │ │  │
 │萬│萬│萬│筒│筒│筒│索│索│索│南│南│北│北│ │中│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘


 中自摸、自摸切り。


久(二軒立直……)

久(北も南も見えてない、持ち持ちの可能性が高い)

久(回すのも視野に入れないといけない……か)


 熱の篭った自摸と捨て牌が繰り返されていく。

 際どい牌が河に放たれるが、和了の声が上がらず進む。

 そして。


 手牌:須賀京太郎
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │三│四│五│⑥│.2 │.3 │.6 │.7 │.8 │.9 │.9 │  │  │ │⑤│
 │萬│萬│萬│筒│索│索│索│索│索│索│索│南│北│ │筒│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
                                                          赤

 赤⑤筒自摸。

 一向聴となる形。


京太郎(ああ……ようやく、か)

京太郎(あの配牌から、ドラと南の生牌を抑えて、良くここまで来てくれた)


 深く思索。

 ここが岐路だ。

 そう感じたのだ。


 染谷まこと原村和の二軒立直。

 これを掻い潜り和了らなければ、須賀京太郎のトップ取りの可能性は限りなく薄い。


 進むか、退くか――そんなものは既に決まりきっている。

 この一打を選択する上で、問題となるのは。


京太郎(――南を切るか、北を切るか)


京太郎(どちらも生牌、しかも片方はドラ)

京太郎(どうする? 思いだせ、考えろ)

京太郎(この状況で、一向聴維持で打牌の後先で考慮すべきは――)


京太郎(手がこれ以上進む事のない二軒立直じゃなく――オリ気配が未だ無い部長)


京太郎(部長はダマか、それとも張ってないのか)

京太郎(……立直かダマに刺さるなら仕方ない)

京太郎(どの道、どちらも切らなきゃ進めない牌)


京太郎(なら――)


 ならば。

 ここで、彼が、諦めず、進む事を選択する、なら。

 自分の読みに沿い、可能性を信じ、不用な迷いを振り払い。


京太郎(――鳴かれて役が確定する方を後に残す、切るならドラからだ)

京太郎(部長が張ってない状態で南対子で役無し、っていう仮定だけどな)

京太郎(北も、さいっこうに、危ないのは解ってる)

京太郎(でも……死ぬなら――強く打って、死ね!)


 瞳に力を宿し。

 諦めず、退かず。


 生牌のドラである北を、強く。

 そう、強く、切り捨てた。

 場が一瞬凍ったような錯覚を覚えた。


和(――生牌のドラ、強い牌、ですね)


まこ(……あの様子なら漫然と切り出したわけじゃなかろう)


久(この巡目、この場況、この点数状況……)

久(……後付けだと待ち牌が厳しくなり過ぎる)

久(場に見えていない1sから引いたら目も当てられない)

久(ドラから叩くのは、無い、わね)


久(それにしても――男の子の顔してるわね、須賀君)

久(……ちょっと格好良いわよ)

久(何時もそうなら良いんだけど)


 余計なことも考えつつ、竹井久はそう判断を下した。



 和了の声が上がらず一巡し。

 選択の結果、須賀京太郎が手に入れることになった、後先の一巡。

 その牌は――


 手牌:須賀京太郎
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │三│四│五│⑤│⑥│.2 │.3 │.6 │.7 │.8 │.9 │.9 │  │ │.1 │
 │萬│萬│萬│筒│筒│索│索│索│索│索│索│索│南│ │索│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
               赤


 一索自摸。


 結果的にではあるが、竹井久の判断は正しく、そして、ある意味間違っていた。

 麻雀に、たられば、は無い。


 しかし。

 しかし、仮にだ。


 竹井久が鳴いていれば、須賀京太郎は一索自摸にて聴牌に辿り着けなかった。

 しかしその場合、竹井久にとっては一索自摸にて役無しフリテンとなっただろう。


 また、須賀京太郎が南から切り出していれば、結果、竹井久が副露し。

 北を切ることが無くとも、自摸にて竹井久の和了となっていた、その一索。


 彼にとって望外の聴牌となる、鳳凰が描かれた牌を手中に収め。


京太郎「――立直!」


 打南。

 当然の如く曲げられる牌。

 ここで日和るなら、そもそもドラを手放していない。


久「ポンッ!」


 副露を告げる竹井久の声。

 彼女の鳴きにより、この半荘初となる四人同時聴牌となり――熾烈な捲り合いとなった。


 手牌:竹井久
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐    ┌─┐
 │四│五│六│①│②│③│.1 │.1 │.2 │  │  │ │  ├──┤  │
 │萬│萬│萬│筒│筒│筒│索│索│索│北│北│ │南│  南│南│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┴──┴─┘


 一索二索、共に危険な牌だ。

 しかし、竹井久は躊躇する事なく、二索を河に放つ。


久(北を一度見送ったなら、オリた方が良いっていうのは解ってるんだけど……)

久(やばっ、楽しい――)


 彼女の瞳に宿るものは高揚。


京太郎(……部長も前に出た)

京太郎(後は、神のみぞ知る賽の出目ってやつだ)


 原村和が自摸切りし、再度廻る須賀京太郎の自摸。


 諦めなければ道が拓ける事もある。

 ――どんな夜にも必ず終わりは来る。

 偶然の積み重なりが必然となり。

 ――闇が解け、朝が世界に満ちるもの。

 彼が手を伸ばし、掴んだその牌は。

 ――人、それを黎明と云う。


 手牌:須賀京太郎
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │三│四│五│⑤│⑥│.1 │.2 │.3 │.6 │.7 │.8 │.9 │.9 │ │⑦│
 │萬│萬│萬│筒│筒│索│索│索│索│索│索│索│索│ │筒│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
               赤

 ⑦筒自摸。


京太郎「――自摸!」


 王牌を捲り――裏ドラは⑦筒。


 立直、門前清自摸和、平和、赤一、裏一。


京太郎「4000オール」


 須賀京太郎にとって起死回生となる満貫自摸であった。


 南三局0本場:結果

 東家:竹井久    37800→33800
 南家:原村和    40800→35800
 西家:須賀京太郎 16300→30300
 北家:染谷まこ   25100→20100

寝ますー

あれ、この場合4000,2000じゃない?

>>607
なんか違和感を感じてたけど東南西北が動いてない!
東家~とかを変えずにコピペ→点数だけ触ってたのがおかしいっす、むしろ親表示して消しとくべきだった
申し訳ない、南三京太郎親なので点数は合ってます



 南三局0本場(親:須賀京太郎):結果

 竹井久    37800→33800
 原村和    40800→35800
 須賀京太郎 16300→30300
 染谷まこ   25100→20100

Q 前々回で終わるはずじゃ? なんでこんなに長いの?
A なんもかんも近麻が悪い

初詣も終わったのでぼちぼち


 南三局1本場。


京太郎(……なんとか、繋がった)

京太郎(トップまで一気に射程圏内。配牌も良い、このまま連荘出来れば……)


 そんな思いを牌が汲んだわけでないだろうが――

 順調な自摸に恵まれ、須賀京太郎は聴牌を果たす。

 これは流れが来たか、などと些かオカルト染みた考えがふと過った。


 何せよ、親で先行したなら……と、思考し。


京太郎「立直」


 無論、点数状況や手にもよるが、先行立直に関しては強ち間違いではない。

 立直の利点、それは幾つかある。

 その内一つは先制時、他家が降りる可能性が高まるという点。

 つまり、立直後の放銃率が低くなるのだ。

 逆に、押し引きが未熟で追っかけ立直が多ければ放銃率は上がっていく。

 立直の使い方と押し引き、これが主に初級者と中級者を分ける境界線と言っても良い。


 しかし。

 『一発自摸るぜー、超自摸るぜー』

 などと須賀京太郎が思っていたかどうかは定かではないが。
  

和「自摸」


 彼の自摸は回ってくる事はなく、声が上がり手牌が晒された。


京太郎「えっ」

和「仮聴ですいませんが」


 和了形:原村和 表ドラ:④筒
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │四│五│六│⑤│⑥│⑦│.1 │.2 │.3 │.4 │.5 │.5 │.6 │ │.5 │
 │萬│萬│萬│筒│筒│筒│索│索│索│索│索│索│索│ │索│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
                                                          

 門前清自摸和のみ。

 30符一翻。


和「300、500の一本場は400、600」


 先制したとはいえ、自分一人が聴牌しているとは限らなかったり。


 南三局1本場(親:須賀京太郎):結果

 竹井久    33800→33400
 原村和    35800→38200
 須賀京太郎 30300→28700
 染谷まこ   20100→19700


京太郎(……)

京太郎(……)

京太郎(うん……そういう事もあるよな)


京太郎(まあ……親を蹴られたけどトップに満貫自摸で届くのはでかい)

京太郎(赤入りなら、面前で考えればそこまで難易度は高くないし)


京太郎(ここで――来い)


 そんな思いを受けつつ、自動卓より迫り上がる配牌。

 その中にドラである⑧筒が二枚、彼の目にとまる。


京太郎(よしっ――ドラ2)

京太郎(……でも、これは)


 満貫の助けとなるドラ2に内心喜びつつ、手早く理牌。


配牌:須賀京太郎 表ドラ:⑧筒
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐
 │一│二│②│③│⑥│⑧│⑧│.1 │.2 │  │  │  │  │
 │萬│萬│筒│筒│筒│筒│筒│索│索│発│中│東│東│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘


京太郎(打点は立直、自摸、ドラ2で十分だけど――重い)

京太郎(……面前で間に合うのか?)


 南四局0本場、親染谷まこ。

 二巡目。


 手牌:須賀京太郎

 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │一│二│②│③│⑥│⑧│⑧│.1 │.2 │  │  │  │  │ │  │
 │萬│萬│筒│筒│筒│筒│筒│索│索│発│中│東│東│ │西│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘

 西自摸。


京太郎(……また無駄自摸か)

京太郎(せめて役牌が重なってくれれば)


 自摸切り。そのオタ風である西を、


まこ「――ポンッ」


 染谷まこが副露した。切り出された牌は⑦筒。


 ――更に。


久「吃(チー)」


 その⑦筒に食い付く竹井久。

 場に晒される⑥⑧筒、ドラ面子の嵌張。


京太郎(まずい――部長と染谷先輩が早い)

京太郎(染谷先輩はオタ風から仕掛けたって事はかなり手が纏まってる)

京太郎(高い場合染め手、安くても軽く連荘を狙える手牌なのが濃厚)


京太郎(部長も食い仕掛けで3900以上は手堅い牌姿のはず)

京太郎(ゆっくり自分の手を面前で仕上げる時間は――)


 瞬く間に二家の仕掛けが入り、速攻戦の様相を呈した。

 そして竹井久、打⑧筒。



京太郎(――ここで最後のドラか!?)

京太郎(――――――ッ!!)


京太郎「ポンッ!」


 手牌:須賀京太郎
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐    ┌─┐
 │一│二│②│③│⑥│.1 │.2 │  │  │  │  │ │⑧├──┤⑧│
 │萬│萬│筒│筒│筒│索│索│発│中│東│東│ │筒│⑧筒│筒│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┴──┴─┘


 面前では間に合わぬと判断を下し副露。

 打⑥筒。


京太郎(攻めに参加しないと――きっと追い着けない)

京太郎(……ドラ3はこれで確定、手役は後でいい)

京太郎(役牌を重ねるか、目指すは鳴き三色)


 その思考の直後。

 染谷まこ、手出し発。

 続いて竹井久、手出し中。


京太郎(部長も染谷先輩も切るのはええええええ!)


 一枚づつ切られた手中の役牌に内心で苦悶の声を上げた。

 悠長に役牌が重なる時間すら惜しいと焦燥が喉奥より昇る。


 原村和、手出し三萬。


京太郎「――吃ィッ!」

京太郎(三色決定!)


 手牌:須賀京太郎
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐       ┌─┬─┐ ┌─┐    ┌─┐
 │②│③│.1 │.2 │  │  │  │  │ ┌──┤一│二│ │⑧├──┤⑧│
 │筒│筒│索│索│発│中│東│東│ │三萬│萬│萬│ │筒│⑧筒│筒│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └──┴─┴─┘ └─┴──┴─┘


 場に一枚切れとなった発を見切って切り飛ばす。

 打発。


まこ(三人仕掛け……早い展開になりそうじゃのう)


久(また面白くなってきたじゃない)


和(ふむ……)


 打たれる牌の音が卓上でテンポ良く鳴る。

 河と手出し自摸切りに注がれる各々の視線。

 誰の目にも弛緩の色は無く、張り詰めた空気と各々の集中力が感じられる場だった。


 そして8巡目――

 ――原村和が捨てた①筒を須賀京太郎が吃と鳴き、


 手牌:須賀京太郎
 ┌─┬─┬─┬─┐       ┌─┬─┐       ┌─┬─┐ ┌─┐    ┌─┐
 │.1 │.2 │  │  │ ┌──┤②│③│ ┌──┤一│二│ │⑧├──┤⑧│
 │索│索│東│東│ │①筒│筒│筒│ │三萬│萬│萬│ │筒│⑧筒│筒│
 └─┴─┴─┴─┘ └──┴─┴─┘ └──┴─┴─┘ └─┴──┴─┘


 三色確定、辺3s待ちとなった次巡。



手牌:原村和
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │一│二│三│④│⑤│⑤│⑥│.2 │.2 │.2 │.7 │.7 │.7 │ │.1 │
 │萬│萬│萬│筒│筒│筒│筒│索│索│索│索│索│索│ │索│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘
                       赤

  原村和、一索自摸。


和(須賀君が鳴き三色ですが、二索は私の手中に暗刻で三枚)

和(そして待ちが1sもしくは3sなら出和了りは全て頭跳ね)

和(1s2s3s確定面子での単騎待ちは読めないので考慮に値しない)

和(――この待ちなら立直しても良し)


和「立直」


 相変わらずの速度を以って。

 面前聴牌を果たしていた原村和から立直宣言が為された。

 曲げられ河に置かれる⑤筒。


京太郎(やっぱり和って引きいいよな……一人面前で仕上がるのか)

京太郎(見え見えの三色仕掛けに立直って事は――っと、安牌)

まこ(後一枚なんじゃが――東)


 染谷まこ、打東。

 次いで竹井久、南自摸切り。


まこ「ポンッ!」


 染谷まこが南を副露し、打赤⑤筒。


手牌:染谷まこ
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐       ┌─┬─┐ ┌─┬─┐      
 │二│四│四│四│五│五│五│ ┌──┤  │  │ │  │  ├──┐
 │萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│ │  西│西│西│ │南│南│  南│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └──┴─┴─┘ └─┴─┴──┘


まこ(良し! 聴牌)

まこ(もし赤五萬を自摸れば跳満まで見れる)

まこ(が、連荘優先、当たり前じゃがどこから出ても倒す)


久(まこは露骨な染め手の河……萬子は溢れてないけど聴牌と思っていい)

久(和の立直は手中役無しで和了易い形ってところかしら)

久(須賀君はドラポン仕掛けからの鳴き三色濃厚)

久(でも――)


手牌:竹井久
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐       ┌─┬─┐
 │六│七│八│.3 │.3 │.3 │.5 │.5 │.6 │.8 │ ┌──┤⑥│⑧│
 │萬│萬│萬│索│索│索│索│索│索│索│ │⑦筒│筒│筒│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └──┴─┴─┘
                               赤

久(――3s待ちなら私が三枚握り潰してるのよね)


 そして竹井久、3s自摸。

 手中で四枚目となる牌。


久(という事は……須賀君が三色なら辺3s待ち確定)

久(和にも切れない牌――なら)


久「槓」


 手牌:竹井久
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┬─┬─┬─┐       ┌─┬─┐
 │六│七│八│.5 │.5 │.6 │.8 │ │  │.3 │.3 │  │ ┌──┤⑥│⑧│
 │萬│萬│萬│索│索│索│索│ │  │索│索│  │ │⑦筒│筒│筒│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┴─┴─┴─┘ └──┴─┴─┘
                   赤


京太郎(――――待ちがっ!)


 その暗槓に注がれる視線。

 王牌が捲られ、槓ドラは5s。

 竹井久が嶺上牌の⑨筒を自摸切った。


和(……3s待ちが消えましたが問題無し)

和(全員の手役を考慮すると1sは押すなら出る牌)

和(特に須賀君は……)


京太郎(……どうする、手中の役が消えた)

京太郎(1s2sの面子を崩すしかない――だけど)


 手牌:須賀京太郎
 ┌─┬─┬─┬─┐ ┌─┐       ┌─┬─┐       ┌─┬─┐ ┌─┐    ┌─┐
 │.1 │.2 │  │  │ │九│ ┌──┤②│③│ ┌──┤一│二│ │⑧├──┤⑧│
 │索│索│東│東│ │萬│ │①筒│筒│筒│ │三萬│萬│萬│ │筒│⑧筒│筒│
 └─┴─┴─┴─┘ └─┘ └──┴─┴─┘ └──┴─┴─┘ └─┴──┴─┘


 九萬自摸。

 染谷まこに危険な牌だ。

 そこで須賀京太郎の手が止まった。

 長考。

 何かを深く思案する。


 ――打2s。


和(……1sが発射台に乗りましたね)


 ――だが、原村和のその予測は外れる事となった。

 次巡須賀京太郎、打東。

 場に二枚切れだった安牌を放出する形だ。


 更に次巡、彼は打東と重ねる。

 そこから一巡、二巡と続く自摸切り安牌。

 その間、際どい牌が場に出るものの、和了を告げる宣言は聞こえない。


 手牌:竹井久
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐ ┌─┬─┬─┬─┐       ┌─┬─┐
 │六│七│八│.5 │.5 │.6 │.8 │ │.5 │ │  │.3 │.3 │  │ ┌──┤⑥│⑧│
 │萬│萬│萬│索│索│索│索│ │索│ │  │索│索│  │ │⑦筒│筒│筒│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘ └─┴─┴─┴─┘ └──┴─┴─┘
                   赤

 竹井久、5s自摸。

 打8s。

 嵌張から三面張4-7s、6sへの張替え。


 次巡、染谷まこ。


 手牌:染谷まこ
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐       ┌─┬─┐ ┌─┬─┐      
 │二│四│四│四│五│五│五│ │.6 │ ┌──┤  │  │ │  │  ├──┐
 │萬│萬│萬│萬│萬│萬│萬│ │索│ │  西│西│西│ │南│南│  南│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘ └──┴─┴─┘ └─┴─┴──┘


 6s自摸。

 偶然にも東一局と全く同じ当たり牌を最初に掴む。

 危険牌自摸に頬を引き攣らせつつも思索。


まこ(――久が前巡手出し8s)

まこ(空切りでなければ待ちの変化と思っていいじゃろう……索子待ち本線)

まこ(……ええい! こんな牌切れるか!)


 ――染谷まこ、打二萬。

 竹井久、自摸切り二萬。


 その竹井久の牌に再度染谷まこが頬を引き攣らせる。

 原村和、須賀京太郎も自摸切りと続き。

 染谷まこ――自摸1s。

 3s暗槓の為、通りそうに見える牌。


まこ(……)

まこ(……)


 ゆっくりと眼鏡を外す。

 目を細め、つぶさに、入念に、場を見ると共に思索。


まこ(……一見通りそうじゃが)


 懸念するは原村和の立直。

 役があれば彼女は立直などしないのは折込済みだ。


まこ(染め仕掛けのわしにタンヤオ仕掛けの久)

まこ(そして鳴き三色仕掛けの京太郎)

まこ(和ならそれらから打ち取れる牌で待ってるじゃろう)

まこ(2sは通っておるが、索子の下が殆ど出てない……)


 長考。

 押すか、聴牌を崩すか、その二択。

 また不聴にて親流れも終局を意味する。

 染谷まこの選択は。


まこ(――残り少ないが索子で面子を作りつつ張り直せばいいんじゃろ!)


 方針を決め直し、打四萬。


まこ(遠いが……当たると読んだ牌は死んでも切れん)

久(萬子の下二連……まこがオリた――というかオーラスだし回ったって事ね)

和(染谷先輩が回ってくれるなら不聴で流れても私の勝ち)

和(手役が無いであろう須賀君が見えてない白で張り直したとしても――1sで打ち取り)


 須賀京太郎の鳴き三色が成就しない事が確定し、染谷まこが回った事により、

 実質、竹井久と原村和の一騎打ちとなったと思われた状況。


 しかし――須賀京太郎は諦めてはいなかった。

 次巡染谷まこ、九萬自摸切り。


京太郎「ポンッ!」


 須賀京太郎、九萬副露。


 手牌:須賀京太郎
 ┌─┬─┐ ┌─┬─┐             ┌─┬─┐       ┌─┬─┐ ┌─┐    ┌─┐
 │.1 │  │ │九│九├──┐ ┌──┤②│③│ ┌──┤一│二│ │⑧├──┤⑧│
 │索│南│ │萬│萬│九萬│ │①筒│筒│筒│ │三萬│萬│萬│ │筒│⑧筒│筒│
 └─┴─┘ └─┴─┴──┘ └──┴─┴─┘ └──┴─┴─┘ └─┴──┴─┘


 打南。

 1s単騎、役無し聴牌。


和(九萬!?)

和(……手中に1sがある以上、役無し聴牌濃厚)

和(何の意味が)


久(――って普通の人なら思いそうだけど……)

久(これは……)


京太郎(……なんとかここまで来れた)

京太郎(和の事だから俺の三色に振り込むような待ちは選択せず、かつ和了易い形)

京太郎(更にタンヤオ濃厚の部長と染谷先輩からも出る可能性が高い牌)


京太郎(部長の暗槓の時……和が三索を見ている時間がいつもの副露確認より長かった)

京太郎(……で3sを注視したって事はそこに絡む待ちである事が濃厚)


京太郎(これらから読めば――拙い推理だけど索子の下で多面)

京太郎(3sは四枚見えてる……考えられる形は1s3sの変則二面)


京太郎(この1sに和了の照準を合わすしかない――)


 ――己には皆のような華は無いと須賀京太郎は考える。


 宮永咲の変幻自在、柔剛織り交ぜた靭さも。

 竹井久の華麗に打ち回し悪形すらも和了きる博徒の如き勁さも。

 原村和の鋭さと美しさを併せ持つ日本刀にも似た強さも。

 片岡優希の東場における狩猟に特化した獣のような毅さも。

 染谷まこの経験に裏打ちされた断ち切れぬ分厚さも。


 自分には無い物だ。

 理解している。

 そう、理解しているのだ。


 ――それでも。


 そんな仲間へ胸を張れるような。

 臆する事無く相対できるような。

 最後まで諦めない、そんな打ち方でいたい、と――


 それは例えるなら。

 吹雪の中でも折れず上を向き立ち続ける一本の針葉樹。


 だから、ここで、須賀京太郎が引けと願う牌はただ一つ。


 その想いは――


 次巡、須賀京太郎、自摸、九萬。


 ――果たされた。


京太郎「――槓ッ!!」


 手牌:須賀京太郎
 ┌─┐ ┌─┬─┬─┐             ┌─┬─┐       ┌─┬─┐ ┌─┐    ┌─┐
 │.1 │ │九│九│九├──┐ ┌──┤②│③│ ┌──┤一│二│ │⑧├──┤⑧│
 │索│ │萬│萬│萬│九萬│ │①筒│筒│筒│ │三萬│萬│萬│ │筒│⑧筒│筒│
 └─┘ └─┴─┴─┴──┘ └──┴─┴─┘ └──┴─┴─┘ └─┴──┴─┘


 須賀京太郎、彼の狙いは。

 彼が良く識る彼女の、幼馴染の、最も得意とする。


久(――嶺上開花狙い)

まこ(――まあ、役無しじゃと和了るなら限られるしのう)

和(――でも、それは余りにも薄すぎます)


 須賀京太郎が王牌へ、ゆっくりと、手を伸ばす。


 確信なんてあるわけが無い。

 直感で和了牌の在処など知れるわけが無い。

 其れは当たり前の常人の理。


京太郎(ここで――引けっ!)


 だから、そう願い、嶺上牌を掴み、手中へ――


 手牌:須賀京太郎

 ┌─┐ ┌─┐    ┌─┬─┬─┐             ┌─┬─┐       ┌─┬─┐ ┌─┐    ┌─┐
 │.1 │ │⑨│    │九│九│九├──┐ ┌──┤②│③│ ┌──┤一│二│ │⑧├──┤⑧│
 │索│ │筒│    │萬│萬│萬│九萬│ │①筒│筒│筒│ │三萬│萬│萬│ │筒│⑧筒│筒│
 └─┘ └─┘    └─┴─┴─┴──┘ └──┴─┴─┘ └──┴─┴─┘ └─┴──┴─┘


 ――自摸、⑨筒。


京太郎(――いない、か)

京太郎「……熱かったなぁ」


 呟き、⑨筒を切る。

 だが――


京太郎(だけど――これで海底は)


 ――九萬槓により生まれた和了の機会はもう一度ある。

 副露でずれ槓二回により、海底となる牌は須賀京太郎の自摸であった。


和(……そう上手く嶺上開花は出ないですよね)

和(海底はありますが……まだ遠い、和了とすれば部長と私のどちらか)


久(……須賀君は海底も考えてたのかしら)

久(そうだとしたら――後でご褒美をあげないとね)


 次巡。

 手牌:染谷まこ
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐       ┌─┬─┐ ┌─┬─┐      
 │四│五│五│五│.1 │.4 │.6 │ │五│ ┌──┤  │  │ │  │  ├──┐
 │萬│萬│萬│萬│索│索│索│ │萬│ │  西│西│西│ │南│南│  南│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘ └──┴─┴─┘ └─┴─┴──┘
                                  赤

 染谷まこ、赤五萬自摸。


まこ(これは――)


 指で赤五萬の腹を撫でながら告げる。


まこ「槓」

まこ(――京太郎の槓で繋がったかもしれんのう)


 晒される五萬四枚。

 嶺上牌は8s、打四萬。

 そして竹井久が七萬を自摸切り――


 手牌:原村和
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │一│二│三│④│⑤│⑥│.1 │.2 │.2 │.2 │.7 │.7 │.7 │ │.7 │
 │萬│萬│萬│筒│筒│筒│索│索│索│索│索│索│索│ │索│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘


 ――7s自摸。


和(部長に切れない牌……仕方ありません――)

和「――槓」


 そして晒された7sとその宣言を以って、四開槓流局が成立した。


京太郎(いや……海底潰された時はどうしようと思った)

久(私か和が和了ると思ったんだけどね)

和(ここまで煮詰まって、この状況で流れますか)


 ――それぞれが思う。


 優勢が覆る事もある。

 儘ならない事もある。

 最後までどうなるか解らない。


 不運に見舞われる事もあるだろう。

 たった数巡の後先に泣く事もあるだろう。

 全てが読みや牌理通りに、なんてなる訳がない。


 だが、しかし――否、だからこそ。


京太郎(――麻雀って楽しいよな)

久(――麻雀って楽しいのよねぇ)

和(――麻雀って楽しいですよね)


 図らずしも、三人の胸中が一致した。


 南四局0本場(親:染谷まこ):結果 途中流局 千点棒供託

 竹井久    33400
 原村和    37200
 須賀京太郎 28700
 染谷まこ   19700


 ちなみに、誰かがハブられてるとか言ってはいけない。

 まあ、それはともかく――続くオーラス一本場、三巡目。


まこ「ふっ……立直」


 眼鏡をきらりと光らせ、僅かに上がる口角。

 そんな染谷まこの親リーにより場況は急変した。


久(まこ、ちょっと早すぎ――うん! 無理! 字牌合わせ打ちっと)

和(こういう事もありますよね……跳満自摸以上で捲られますが、とりあえず合わせ打ちですね)

京太郎(早い! 早いっすよ染谷先輩! しかも現物がない! どうしろと……端牌で当たりませんように)


 須賀京太郎の捨てた牌が無事通り、染谷まこが自摸る。

 牌の腹を親指でこすり、零れる彼女の不敵な笑み。

 竹井久、原村和、須賀京太郎に嫌な予感が走った。


まこ「一発――」

 御無礼、と続けられた言葉。

まこ「自摸、8100オール」

久・和・京太郎「「「えっ」」」


 和了形:染谷まこ 表ドラ:白 裏ドラ:八萬
 ┌─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┬─┐ ┌─┐
 │.2 │.2 │.2 │.3 │.4 │.5 │.6 │.7 │.8 │.9 │  │  │  │ │.1 │
 │索│索│索│索│索│索│索│索│索│索│中│中│中│ │索│
 └─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┴─┘ └─┘


 緑と赤に美しく染められた手牌が顕わになる。

 変則六面張1s4s7s-3s6s9s、高め1s一発自摸、倍満。

 安め自摸でも問題ない。跳満でお釣りが来る。


 ここまで焼き鳥かつ前の心情シーンでハブられた者による一撃だ。

 ちゃんと地の文でフラグは置いた。あとオーラス捲りって王道だよね。

 つまり、染谷まこ怒りの立直一発自摸面前混一色中一通(リーチイッパツツモメンホンチュンイッツー)。

 繋げて書くとやたら長い。そしてランボーは関係ない。


 眼鏡をくいっと持ち上げる染谷まこ。ついでに再び無意味にきらりと眼鏡が光ったりしていた。 


まこ「トップ捲り、じゃな」

久(……まこに全部持っていかれた!)

和(……これまでのフリは何だったんでしょうか)

京太郎(……あれ? これ流れ的に格好良く俺が決める場面じゃないの?)


 現実は時に非情である――そうして終局となった。


 南四局1本場(親:染谷まこ):結果

 竹井久    33400→25300(3位)
 原村和    37200→29100(2位)
 須賀京太郎 28700→20600(4位)
 染谷まこ   19700→45000(1位)

遅くなりましたけど、あけましておめでとうございます

どうでもいいですけど〆でまこさんの裸足のゲンAAを改変して使おうかと思ったんですが
あまりに酷い気がしたのでやめました
あと闘牌は……書き溜めにした方がいいねっすね慎重な推敲不可避だし良く分かりました
多分このスレでは二度とすることはないと思います何のスレかわかんなくなるし

後はエピだけちょこっとなんですけど眠気が限界なので寝ますー

自分で読み直すと聴いてた作業用BGMにくっそ影響されてるのが良く分かるという

ぼちぼち


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 染谷まこがオーラスにトップを捲った対局が終わり。

 一息つこうと原村和が皆の分を含め紅茶を入れる準備を始めた時。

 竹井久が須賀京太郎へ問い掛けた。


久「須賀君、さっきの南四で九萬槓をした時なんだけど――海底も考えてたの?」

京太郎「ん……ええ。嶺上開花で引けるのが一番いいんですけど、引けなかった時はまだ機会はあるな、と」

久「ふーん、やっぱりそうなんだ」


久「――ご褒美、いる?」

京太郎「ご褒美って……犬の躾じゃないんですから」

久「躾なんて人聞きが悪いわね。後輩の成長を祝う意味よ。そうねぇ……」


 勿体ぶって顎に手を当て考える仕草。

 続いて、良い事思い付いたとばかりに無駄に爽やかな笑みを浮かべる。


 あ、これはアカンパターンや。

 須賀京太郎は経験からこれは碌な事を考えてないと察知。

 嫌な汗が背筋に流れた。


久「ほっぺにチューとか、どう? これなら須賀君も嬉しいわよね?」


 ――やっぱり碌な事じゃなかった。

 いきなり何を言っているのだろうかこの人は。

 どんな反応を期待してるのか。

 そもそも普段の行動を考えれば罠にしか思えない。

 トラップカード発動は勘弁して欲しい。


 ……さて、どう返したものか。

 こういう時は冷静に、慎重に、麻雀と同じだ。

 部長のペースに巻き込まれては駄目だ――

 打開策を考え言葉を選びながら、須賀京太郎は頭を掻く。


咲「!?」

咲「だ、駄目です! 部長!」


 しかし、須賀京太郎が口を開く前に宮永咲が反応してしまった。


 茶化し甲斐のある応答は宜しくない。

 スルーしとけばいいものを……。

 そんな彼の内心の予想通りに、竹井久のターゲットが宮永咲に移る。


久「ふむ……どうして?」

咲「ど、どうしてって……」

久「別にいいじゃない、減るものでもないし」

咲「そうは言っても……」

久「するのは私だし、咲は関係ないわよね?」


 からかうように、軽快に、投げ掛けられたその言葉に、


咲「……部長」


 宮永咲の目が据わった。

 そして滲み出る全部ゴッ倒すオーラ。原作お馴染みのアレである。


 ――あー、これこの前の照さんと同卓する前の流れと良く似てるなぁ。

 あの時も唐突に不機嫌になったし。


 親父さんも何故かノリノリで全身黒尽くめにわざわざ着替えて。

 『成る程、須賀君……そういう事なら俺を倒してみろ』とか言い出す始末。

 何がそういう事なのか。訳がわからない。しかもやたら強かった。


 幼い頃からあんな面子で家族麻雀を打っていたら強くなるわけだ。

 もしかしておばさんも麻雀強かったりするんだろうか――とは須賀京太郎の心中。


久「あ、もしかして……」

久「咲も須賀君にご褒美あげたかった? ほっぺにチューしたい?」

訂正
×からかうように、軽快に、投げ掛けられたその言葉に、
◯からかうように、軽快に、挑発的に、投げ掛けられたその言葉に、


咲「ふぇっ!?」


 竹井久に投げ掛けられた言葉にやたら黒い雰囲気が吹き飛ぶ。

 奇声を発し、びくりと身を仰け反らせる宮永咲。


久「そうならそうと言えばいいのに……」


 狼狽している様相の彼女にお構い無しで、竹井久は勝手に話を進めていく。


咲「ち、ちが、違います!」

久「じゃあ――半荘か東風戦で勝った方がするっていうのはどう?」


 否定の言葉をおそらく意図的に無視。

 にまにまと緩んでいる口元から推測するに、大変楽しそうだ。


久「これなら公平よね」

咲「あ、あぅ……」


京太郎「……するの確定なんですか?」

京太郎「――というか、別にご褒美いらないんですが、それは」


 見かねて助け舟を出す。が、ガン無視された。

 ステルスでもないのに酷い。


 投下された爆弾の如き提案をどう除去すべきか――と須賀京太郎は改めて思考。

 ……残念ながら、相手にしないという結論しか出てこない。


咲「い、いえ、ちゅーしたい、とか、そ、そういうのじゃ、なくて!」


 震えるように首を振り、視線を足元に落とす宮永咲。

 動揺しているのが挙動から丸わかりだ。


咲「――いや……確かに……るけど……じゃなくて……でも少しは……とか考えなくも……なんて」

咲「……けど……こういうのは……な方がいいし……じゃなくってもっと――」


 聞き取れない程小さな声で何事かを早口で紡いでいる。

 高速詠唱か何かだろうか。

 そういうのは無言詠唱……じゃなかった、胸中で済ませた方が得策な筈だ。

 傍から見たら不審人物である。


咲「――何て言うか、あれな風にー!」


 突如として上がる叫声。

 錯乱したのか部室の外に逃亡する彼女。


 ……あれな風にってどんなだよ。

 いい加減、まともに取り合ってはいけないと学習したらいいのになぁ。

 須賀京太郎は頭を抱えた。


優希「さ、咲ちゃーん!?」


 片岡優希が宮永咲を追いかけ、部室の外を見遣る。


優希「あ、躓いてコケそうになった」


 相変わらずの運動神経だ。

 須賀京太郎は呆れつつ、釘を刺しておくかと竹井久に一言。


京太郎「部長……あんまり咲をからかわないで下さい。どうせ本気じゃないんですし」

久「あら、それはどうかしら?」


 韜晦しながら陽射しの下の猫のように目を細めている。

 どうやらご満悦のようだ。

 彼はその反応に嘆息。

 普段通りと言えば普段通りではある。


優希「どっかに走り去って行っちゃったじぇ……」


 まさか校内で迷子にはならないだろうが、このままだと暫く彷徨ってそうだ。

 仕方無い……と思い、須賀京太郎は席を立つ。


京太郎「ハァ……ちょっと探しに行ってきます」

久「須賀君、頑張ってねー。いってらしゃーい」


 手を振りながら告げられる。

 発端は誰のせいだと……やっぱり何時かギャフンと言わす。と声に出さず悪態をつく。


 部室を後にし、片岡優希が見ていた方向からして、宮永咲は階段を下りたと推測。

 まあ、そう遠くは行ってはいないだろう、あいつの足ならすぐ追い着く。

 鍛えてますから。と楽観し、須賀京太郎は駆け出した。


■□■


 旧校舎、自販機前。


京太郎「――落ち着いたか?」

咲「う、うん。なんとか……」


 旧校舎外で捕まえた宮永咲を宥め、自販機に硬貨を投入。
 
 そうして取り出したコーンポタージュの缶を宮永咲に手渡す。


京太郎「ほら」

咲「……ありがと」


 硬貨を自販機にもう一度入れ、ドクペのボタンを押し込む。

 折角外に出たのだから買わないといけない気分になったのだ。


咲「何時も思うけど……良くそれ飲めるよね」

京太郎「だからドクペは美味いっての……その毒物を見るような目はやめい」


 備え付けのベンチに隣り合って座る。

 プルタブを開け、冷えたドクペを一口含んだ。

 口中に広がる杏仁豆腐のような芳醇な味と独特の薫り。

 麻雀という頭脳労働をした為、脳が糖分を欲していた事もあり非常に美味だ。

 やはり部室に自分用を常備して置くべきか――と、どうでもいい事を検討。


 そして、対局の最中に思っていた事。

 須賀京太郎にとって懸念していた事を反芻。


咲「……京ちゃんどうしたの?」

咲「……なんだかぼーっとして……ラスでショックだったとか?」


 疑問をぶつけられた。

 彼が何事かを苦慮しているような様子を見て取ったのか、気遣わしげな声音だ。


京太郎「……んなこと気にしてねーよ」


 そう返し、ドクペを呷る。

 そして彼女になら話して良いかと惟い、心中を吐露した。


京太郎「――咲、お前から見て俺はちゃんと打ててたか?」

京太郎「清澄麻雀部の一員として。お前が教えてくれた分、恥ずかしくないように」


 宮永咲は何だそんな事かと言わんばかりに溜息を一つ。

 次いで隣の彼を見上げ、口を開いた。


咲「もう……何急にしんみりしてるの?」


 眼差しと声に僅かに混じる呆れたような色。

 窘めるように、励ますように、続ける。


咲「今日が最後ってわけじゃあるまいし」

咲「これからだって、明日だって打てるのに」

京太郎「……そうか、そうりゃそうだよな。うん」


 彼は自身の発言を振り返り、やたら物々しかった事を悟る。

 ……何時もの調子で軽くいかないとな。

 どうこう悩み続ける柄でもないし。と、考え苦笑。


咲「そうだよ。それに……京ちゃんはしっかりと打ててたよ」

咲「……うん……びっくりする位」


 彼は、その言葉に、


京太郎「ああ――それなら良かった」


 安堵の息を吐いた。


 右手を夕日に一度翳し、眺める。

 開いた指の間から零れる黄昏色。

 翳していた右手を下し、掌を凝視。

 この手で、自分は、確かに打てたんだ――と、ようやく実感が湧いた。


 心ここにあらずといった風情で右の掌を見つめる須賀京太郎。

 その最中、隣に座っている幼馴染が何事か呟き続けている。


咲「オーラス……嶺上開花……私の……かな、とか――」

咲「……私も…………ために……勉強し……あったかなー、とか――」


 俯きながら、頬を羞恥の色に染めて早口で。

 ぼそぼそと小さく、隣であっても聞き取れるかどうか微妙な声量。


咲「なんて!」


 言い終えて満足したのか顔を上げ、横目でちらりと須賀京太郎を見上げた。

 宮永咲は彼が上の空のままである事を悟る。


咲「京ちゃん……聞いてる?」


 その言葉に須賀京太郎は我に返った。

 慌てて応えようとする。


京太郎「――っと、すまん。何だっけ?」

咲「もう! そっちから話を振ってきたのに……」


咲「いいですよーっ! 何でもありません!」


 頬を不満げに膨らまし、身を捩りそっぽを向かれた。

 私、怒ってますと言外に滲ませた彼女の後ろ姿。


京太郎「何でもなくないだろ……いきなり怒りだして」

咲「……聞いてない京ちゃんが悪い」


 背を向けられたまま、ざっくりと切って捨てられた。

 正論であるので、どうしたものかと、彼は思考。


咲「京ちゃんの唐変木、でれ助 、無神経、鈍感、ニブチン、助平、不埒者、色情魔、たらし、女の敵――」


 更に早口で罵られ始めた。

 無駄に豊富な語彙で機関銃の如く掃射し続けている。

 文学少女の面目躍如だ。


咲「……大体、胸の大きい人見るとすぐデレデレしちゃって」

咲「……本棚にあったカバーを偽装してる本もそんなのばっかりだったし――」


 ――確かに一部は否定出来ない。

 しかし意味が被りまくってるのはどうなの。

 というかお前、アレな本を発見してたのかよ。

 問題集とかに偽装して隠してたのに漁るなよ。

 かなりショックなんだけど。いやマジで。いっそ殺せ。

 ベッドの下に隠していた本を母親に発見され、机の上に置かれてた時より衝撃的なんだけど。

 そういや、お袋は何であの時机の上に置いて見つけたアピールしたんだよ。いっそ捨てろよ。

 それはともかく、衝撃、撃滅、抹殺と連続でHITした位にダメージ喰らったんだけど。

 親バレ以来、慎重を期していたというのに。

 ……嗚呼、高所から I Can Fly したい――


 そんな須賀京太郎の内心での嘆きのまっただ中も、隣で吐かれ続けている呪詛。

 と、言っても可愛いものであるが。

 止めないと延々と続きそうだと判断し、口を開く。


京太郎「……なあ」

咲「何? 誤魔化そうとしても――」


 宮永咲が言い募りながら振り返り、須賀京太郎の方を向く。

 彼は彼女の言葉を遮るように右手をひらひらと振る。


京太郎「いや、そうじゃなくてな……さっきの話の続きで、対局中も思ったんだけど」


 そこで一度区切られる言葉。

 彼の真摯な面差しと声色に毒気を抜かれたのか、仔犬のように小首を傾げ疑問符を浮かべる宮永咲。


 ドクペの残りを一気に飲み干した。

 そうして、須賀京太郎は頭一つ分以上小さな幼馴染を、その瞳を、確と視界に収め。


 噛みしめるように、胸中に刻むように。

 想いが溢れないよう分かち合うように。
 
 緩やかに、穏やかに、言葉を、紡いだ。

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「咲――麻雀って楽しいよな」        、  v   ァ    / 从/
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                 |: /イⅥ:{ 比::(_,   、{ ィ斧ミ:/:|:|: ヽ: /: : /
                 |'  |:/|、|弋zソ     ん::::(_ ∨:}: : :/: : /
                  |Ⅵ :.:.:.:  ,  弋こソ l/|: :イ: : ,

「うん――楽しいよね」       人   、     :.:.:. /: j' ,ノ/:/
                      、    ´    ム:イ-' /:イ
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                _>〉:||::::::___∧、   :.       |      }
            ,  ´  {::::{{ ̄::::::::::、 \  l         |    ノ


 確かに、交わし合い。

 どちらともなく、くすりと笑い合う二人。


 ベンチから立ち上がり、空き缶を自販機横のゴミ箱に投下。


京太郎「――じゃあ、皆待ってるだろうし、部室に戻るか」

咲「うん……まだ時間もあるから次は一緒に打とっか?」

京太郎「おう……この前みたいにいかないから覚悟しとけよ?」

咲「ふふっ、楽しみにしてるね」


 軽口を交わし合いながら、隣り合い共に歩き出した。


 ある晴れた日の何の変哲もない、明日も変わらず続いていくだろう清澄麻雀部での一幕。

 ただそれだけの物語。



                                       【幕間 Gamble Rumble】 ――了

寝ますー

リアル都合でめっちゃ間があいて申し訳です

関係ないですけどヤンデレは男が浮気しなければ丸くおさまるって渡瀬先生が書いてた
輪環を見るに一理あると思う

ぼちぼち


久「と、いうわけで吉野にいるわけだけども」

京太郎「部長……色々すっ飛ばし過ぎじゃないっすかね?」

久「――須賀君」


 振り向き、腕を組み、考え込むように瞼を落とす彼女。

 一拍置いて神妙な様子で言葉を続ける。


久「前回フラグを入れなかったから仕方ないの、諦めて」

京太郎「諦めて、と言われても……」


 尚、すっ飛ばした件については――ギャグだから多少は許される、とか。

 当初描写する予定だった移動等で一悶着のプロットを、際限がなさそうだった為破棄した、とか。

 前回気が付いた時には、誰かさんメインで場面進行させ過ぎてて、フラグを差し込む暇がなかった、とか。

 勢いだけでやっちゃうとこうなるという悪例である。

 そういや、変なテンションで書いたものに、後から悶えるのってなんとかならないのだろうか。


 それはともかくとして。


 とある三連休。彼らは奈良県にいた。

 紅葉が色鮮やかに照る季節であった。吉野といえば桜であるが紅葉もすごい。

 どうでもいいかもしれないが、桜紅葉を見たいなら十月中旬から下旬程度に足を伸ばすべきである。

 現在は十一月中旬を過ぎた頃の為、楓紅葉が見頃だ。


 ちなみに、時期的に三年生の竹井久は部活を半引退状態――と、いっても頻繁に顔を出しているが――であり、

 議会長もこの月に、後進である某眼鏡(♂)に変わった、という設定であると付け加えておこうと思う。

 いや、ここらに触れる機会が、もう存在しなさそうだったので何となく。

 実質部長は染谷まこである。呼称変更するのもあれなのでそのままなだけだったり。

 IH明けあたりに設定しといた方がリアルだった気はする。


久「まあ、そんな事はどうでもいいじゃない――」

京太郎「どうでも良くはない気はしますけど」

久「――折角の二人での旅行なんだし」


 嘘である。

 大嘘憑きは所持していないので、二人きりの旅行とやらが現実になることは多分ない。

 清澄麻雀部全員揃っている。ちなみに宿泊先は松実館。

 IH決勝でぶつかった、阿知賀女子の一員である松実姉妹の実家だ。


 原村和が連休に奈良に遊びに行く予定があり。

 ――そこから練習試合云々の話が派生し、色々あって部員全員が奈良にいる次第だ。

 まあ、こんな感じのフラグだったわけで。

 投げ捨てたけど。こまけえこたあいいんだよ(AA略)精神。


 ちなみに、夕食を清澄、阿知賀の面子で一緒にとる予定となっており。

 それまでの時間を潰す為に二人で散策に出掛け、調度良い時間となったので旅館に戻る途中であった。


京太郎「何でそんな意味不明な嘘言うかな、この人は」


 そう呟き、頭痛を堪えるように目頭を押さえ溜め息を吐いた。

 やれやれだぜ、といった風情だ。


久「卒業を控えた先輩と別れを惜しむ後輩……」

京太郎「無視されたし――それ、まだ先の話ですよね」

久「思い出を作るために二人きりで卒業旅行に……」

京太郎「俺と部長はそういう関係じゃないですし」

久「旅先で日常の楔から解き放たれた二人……」

京太郎「なんかポエムっぽくて背筋がぞわっとしました」

久「見つめ合い、そして互いを貪り合うように――」

京太郎「申し訳ないですけどR18表現はこのスレだとNG」

久「もうっ! やっぱり須賀君には浪漫が足りないと思うわ」


 そっぽを向かれ、不満気に告げられた。

 そんなこと言われてもどうしろと。ノリに合わせて口説きだせとでも。

 下手に口答えをして機嫌を損なわれても困るので、須賀京太郎は脳内で独り言ちた。


久「それに意味不明って言うけど――貴方もたまに奇行に走ってるじゃない」

京太郎「き、奇行って……人を変人みたいに……」

久「キャラ崩壊してる時があるし……」

久「この前なんか、部室で凄い勢いで腕立て伏せしてたわよね? 何なのあれ?」


 痛いところを突かれた。

 思わず狼狽してしまう。


京太郎「うっ――それは」

久「目が覚めて起きたら、後輩が部室で腕立て伏せしてるとか……」


 確かに奇行と受け取られても仕方がない。

 昼寝――といってに夕方だが――から目覚める。

 → 運動部でもないのに部室でやたら高速で腕立て伏せしている男がいる。しかも汗だく。

 このコンボである。軽くホラーだ。

 何が彼をそこまで筋トレに駆り立てるのか。


 仮にだが。

 女性の一人暮らしの部屋で、このような奇行を行った場合――変態と疑われてもおかしくないだろう。

 亜門さんに対するアキラさんの反応は、残念だが至極当然だといえる。

 あと小学生並みの感想だが、正座で罵られてるのが可愛かった。


久「須賀君がとうとう壊れたのかと思ったわ」

京太郎「い、いえ、あれには理由が……」

久「どんな理由があったら部室で腕立て伏せするのかしら?」

京太郎「……それは訊かないで下さい」

久「……」

京太郎「……」

久「まあ、いいけど」


 須賀京太郎は胸を撫で下ろした。

 追求されると危険なのだ。


久「そういえば起きた時、誰かが私に毛布を掛けてくれてたけど……」


 ――まだ続けるのかよ、この話。

 須賀京太郎の頬が引きつり、思わず渇いた笑いが零れた。


久「あれって、他の皆はいなかったし貴方が?」

京太郎「あー、えっと、俺ですね」

久「やっぱりそうだったんだ――」

久「ありがとう、須賀君」


 彼女の上目使いでの微笑み。

 彼はなんとなく気恥ずかしくなり――目を逸した。


京太郎「……いつもと違ってなんか素直っすね」

久「まるで普段が捻くれてるかのような言い草ね……」

京太郎「胸に手を当てて普段の行動を振り返ってみて下さい」

久「んー……」


久「うん、いつもこんな感じね、素直なものよ」

京太郎「記憶を改竄したりしてるんですか?」

久「突っかかるわね……」

久「まあ、例え須賀くんが女の子の寝顔を視姦する趣味をもっていたとしても、お礼くらいは言っておこうかなと」


 さっきの胸のときめきを返せよ。いや、マジで。

 あー、前もこーいうのあったよなー――などと投げやりに思う。


京太郎「……いや、そんな趣味ないです」

久「隠さなくていいのに……それと思い返したら服が寝る前より乱れてたような」

京太郎「――っ」


 まずい方向に話が転がり続けている。

 話題を逸そうと思索を巡らすが、それに先んじて竹井久の追撃がきた。
 

久「まさか寝てるの好機とみて私の体を……」

京太郎「ちょっ! そんなことするわけないじゃないっすか!」

久「男は狼って言うじゃない。きっと貴方だって例外じゃない筈よ」

京太郎「待った、異議あり!」

訂正
×久「まさか寝てるの好機とみて私の体を……」
◯久「まさか寝てるのを好機とみて私の体を……」


京太郎「狼とか言う前に寝てる女性を――とか、そこまで下衆じゃないです」

久「弁解が必死過ぎてあやしいわ。きっとやましいことがあるのね」

京太郎「それは違います! 決めつけは酷いっす。あと推定無罪って言いますよね!?」


 いつもの冗談で終わるよう誘導できれば。

 そんな須賀京太郎の脳内での計算と共に、マシンガントークの如く交わされ続けるコントじみたやり取り。


久「裁判じゃないんだし……そうだ。判事役で和でも連れてくる?」

京太郎「なんかそれ、俺が凄い不利になりそうなんですけど」

久「須賀君、法廷で会おう――ってね」

京太郎「俺の側に弁護してくれる人を要求します。凄腕の弁護士とか超高校級の探偵とか」

久「あ、服が乱れてたのも証拠よね――もしかして上着を脱がそうとした?」

京太郎「脱がそうとしてない! 寝相でスカートが盛大にめくれ上がってただけです!」

久「――えっ」

京太郎「あっ」


 己の迂闊な失言を悟り――須賀京太郎は、思わず目を覆った。

 二人の間に横たわる無言の帳。


久「……」

京太郎「……」


 このまま二人で、硬直し続けるわけにもいくまい。

 場を読んで何か気の利いたジョークでも飛ばし、この雰囲気を打開しなければ。

 そう判断し、目を覆っていた手を下げ、竹井久の様子を観察する。


 ――二人の視線が交差した。


 彼の発した言葉の意味を正確に理解しているのだろう。

 竹井久の頬は羞恥の色に染まっていた。

 固まったまま上目使いの彼女の眸。心なしか若干涙目になってるように見える。

 彼女にしては珍しく、そして可愛らしい反応だ――というか、誰だお前状態。


 須賀京太郎はどうしたらいいのか迷っていた。

 何と言えばいいのだろうか。このパターンは経験がない。

 ほう、経験が生きたな――とならないと駄目なのだ。

 弾幕のSTGと一緒だ。

 見たことがないパターンだと、如何ともし難いのだろう。

 どうでもいいが、式神の城等を無駄にやりこんでいた。

 そういや、アルファシステムの七つの世界は、設定的にどうなったのだろうか。

 Aの魔法陣位までは把握しているのだが。


 閑話休題。
 

 ――沈黙の視殺戦の末。

 先に口を開いたのは竹井久だった。

 やっと絞り出したかのような掠れた声。


久「す、すが、くん……」

京太郎「ハ、ハイ」

久「……み、みたの?」


 いつもとキャラが違う彼女に、須賀京太郎の混乱の度合いが深まる。

 正直に言うべきなのか。

 誤魔化すべきなのか。

 それとも……思考がぐるぐると回り始め。

 段々と悩むのが面倒になってきた。


 ――そうして、須賀京太郎は、考えるのを、やめた。


 不意に、須賀京太郎の脳内ではっきりと描かれる――ストッキングに包まれた魅惑的な曲線。

 黒の下に透けて見える桃色の下着。

 意図的ではなかったが、それらを眺める事となり。

 ――これが桃源郷か。桃色だけに。流石部長、黒の下に桃色とは良く解ってる。パンツハンターもきっと大満足。

 などと、頭の沸いた感慨を抱いた事も憶えていた。


 ええ、見ましたとも。その結果、腕立て伏せを始めてしまったわけで。最高でした。

 流石に言葉にするほど無謀ではないので、胸中でそう呟いた。


 竹井久に肯定を示す為にゆっくりと頷き、心の赴くまま無言で右手の親指を立てて応える。

 グッジョブだったとの意味である。

 竹井久がびくりと震え、己の肩を抱いた。

 その後の彼女の反応を見るのが怖かった為、須賀京太郎は両の瞼を落とした。


 最悪、平手打ちなりで頬に紅葉をつけられる程度は仕方ない――と覚悟を決めた。

 視界を閉ざしたまま竹井久の動きを待つ。


 ……。

 …………。

 ………………。

 ……………………。


 それなりに時間が経過した筈なのだが、反応が返ってこない。

 罵りの一つ頂戴しても、おかしくない状況なのに何故。

 不審に思い目を開き――視界に入る、背を向けられた竹井久の後ろ姿。


京太郎「えっと……」

久「……」

京太郎「部長?」

久「……」

京太郎「……」

久「ちょ……」 

京太郎「……ちょ?」

久「ちょっと待って! あと五分!」


 予想外の反応だった。

 寝起きで布団から出たくない子供でもあるまいし、五分ってなんだ。


久「あと――さっきの話は二度としないこと! いい!?」

京太郎「アッハイ」


 モーゼズ=サン的なパワー・ワード。

 有無を言わせない勢いで言いつけられ、即座に肯定した。

 改めて彼女を良く見れば――うなじと耳が真っ赤に染まっている。


久「まったく…………いきなり…………準備…………言われ…………じゃない――――」


 己の髪をいじりながら、何事かぶつぶつと呟いていた。

 声が小さすぎて聞き取れない。


久「――よしっ」


 己に言い聞かすような声。

 そうして、彼女は彼の方へ、くるりと振り向いた。


久「もういいわ、行きましょう」


 いつも通りに見える彼女。まだ頬が若干赤いけれども。

 わざわざ藪をつつくつもりもなかった為、須賀京太郎はその事にはツッコミを入れない。

 彼は歩調を彼女に合わせ――旅館への帰路を共に歩き出した。


 ――そんなこんなで。

 須賀京太郎の竹井久をギャフンと言わすという誓いは、ある意味果たされたわけである。

 実は攻められると弱いタイプらしい。
 
 彼自身は全く、欠片も、気付いてはいなかったが。


■□■

 
 店内のお座敷席に、清澄と阿知賀の面子が座している某焼肉屋。

 席の隅に腰を下ろした須賀京太郎は、微妙に気不味い思いだった。

 その理由は席順にある。


 隣、とその隣――竹井久、染谷まこ。


京太郎(まあ、これは別に問題ない)

京太郎(部長は食事中にちょっかいをかけてきそうだけど……それは想定内)

京太郎(染谷先輩に関しては、そんな心配は基本的に不要)

京太郎(問題は……)


 必然的に会話の射程圏内となる己の正面周辺に座す方々。

 ――赤土晴絵、鷺森灼、松実宥。


 別に彼女らに何か思う所がある、という訳ではない。

 単に初対面に近いので、どういう会話をしたら良いか、と考えてしまう為だ。

 まさか黙々と肉を焼いて食うだけ、というのはなしだろう。


 例えば、須賀京太郎が座った席の対称に位置する一年生組に混じっていた場合。

 ――彼女らは同年代で何より原村和の友人だ。

 共通の友人である原村和中心に、会話の花が咲く事は目に見えている。

 それに適当に合わせる事は、彼のコミュ力をもってすれば容易いだろう。

 時にボケ、時にツッコミ、ややコミュ障気味の宮永咲を会話に参加させる潤滑剤となる自負は持っていた。

 その程度のフォローは昔から慣れたものであるし、必要と感じれば誰に言われずともやってきた事だ。


 まあ、今回に関しては――片岡優希と原村和がいる為、特にフォローは必要ない筈だ。

 彼女らが親交を深める上で、自身は混じらない方が良い、との判断で、離れた位置に陣取った次第である。

 阿知賀は女子校であることだし。

 男である彼が、会話に参加すると居心地が悪いかもしれない。


 赤土晴絵等と共に店員へ注文しつつ、考えを纏めようとする。


京太郎(しかし……どうしたもんかね)


 今回のミッション対象は、面識の薄い年上年上アンド年上。

 しかも一人アラサー手前だ。

 正確にいうとアラウンド・サーティー手前。

 別な表現をすれば、すこやる(動詞)手前。

 悪意があるわけではない。むしろ三十前半までは余裕だろう。すこやんかわいい。


 それはさておき、共通の話題など麻雀位しかないわけで。

 食事の席でいきなり麻雀について語り出す訳にもいくまい。

 己などより長く触れているだろう面子相手に、したり顔で振るような話題でもないことだし。

 では教えを請う方向で……というのも、食事の席でする話題ではないので却下。


 そして、特に対応に困る相手が松実宥。

 須賀ウター(厚着をしようとも真贋を見抜くおもち戦闘力測定)で高レベルを叩き出した小柄なお姉さん。


 ぶっちゃけていってしまえば、須賀京太郎の好みであった。

 嫋やかさと可憐さが同居する容姿。あと胸とか胸とか胸とか。彼のどストライクゾーンだ。

 また、彼女の年上にも関わらず庇護欲を駆り立てる所作も、好みである要因の一つだった。


 幼い頃から刻まれた性なのだろうか。

 保護対象であることを思わせる相手に特別惹かれる性質。

 ――須賀京太郎には自覚は余り無いが、そのような側面があった。

 いわゆる放っておけない、というやつだ。

 ロリコンというわけではない。

 相手が家庭的であれば更にディ・モールトベネ。


 ――もしも、仮に。

 松実宥がミーツ系ヒロインとして設定された場合、ある意味で最上級であろう。

 しかも姉キャラ。姉より優れた妹などいないということだし。但し一部は例外。

 ラブコメ時空ならば、須賀京太郎は一目惚れして求婚していたかもしれない。


 まあ、この世界線では有り得ない事ではある。

 既に最強属――話が逸れてきたので戻そう。


 だからといって、須賀京太郎は『これを機会に……』などと、下世話な事を考えている訳では無かった。

 出来れば嫌われるような真似は避けたい、失言をしないよう気をつけるか程度の気持ちだ。

 一緒に食事をするなら笑顔で楽しくいきたい、と考えるのは至って自然だろう。

 初見で好感を抱いた相手なら尚更である。


京太郎(いっその事、ハイテンションギャグでも飛ばしてみるべきか? 部長ならちゃんとツッコんでくれるだろうし……)

京太郎(何となくだけど阿知賀の監督さんもノってくれそうだ)


京太郎(いや、しかし――滑ったら目も当てられない)

京太郎(鷺森さんは見るからにクール系だし、松実さんは寒いギャグには厳しそう※偏見)

京太郎(もし空気を凍らせて、あったかくない……とか呟かれると、その後に影響が出る上に個人的にも辛い)

京太郎(どの程度まで許されるか判らないのが難しい……)


京太郎(ご趣味は――とか切り出すのは……)

京太郎(って見合いじゃあるまいし、却下)


 頭を捻ってみるも、良い案が浮かばない。

 そんな感じで表情に出さずどうでもいいことを思い悩む内に、注文した飲み物、サラダ、肉などが到着した。


京太郎(仕方ない、激流に身を任せ同化するか)


 そう結論を下す。

 トドのつまりは行き当たりばったり。

 流れの赴くままに、というわけだ。


晴絵「はい、じゃあ、かんぱーい!」


 飲み物が行き渡り、一番年長である赤土晴絵が乾杯の音頭をとった。

 グラス同士がぶつかり合い、小気味良い音が響く。


京太郎(焼肉って偉いよな、誰と食っても美味いし。今回は男同士じゃないのが更にいい)

京太郎(……よし! 焼くか! 焼肉は順序とペースが大事だ)

京太郎(周りが食べる勢いを推測、把握しつつ、最適なタイミングで――焼いて取り分ける)

京太郎(自分の肉だけ焼く、つーのは駄目だ)

京太郎(黒子に回りつつも肉への制空権を確保……これこそ焼肉の真骨頂!)


 まずはオーソドックスな順序に則り、上タン塩を――と、思索を巡らす。

 加熱された網の上に肉を配置する為、皿を片手に箸をとる。

 同時に、鷺森灼も別な皿のタン塩を、箸で摘み上げようとしていた。


 ――そこで二人の目が合った。

 焼肉への深慮と信念が灯る両者の眸。

 アイコンタクトによる意思疎通が刹那で交わされた。

 無言で重く頷き合い、自動的に互いの領土が定められる。

 この席における、本日の焼肉奉行二人が決定された瞬間であった。

限界、セーブでー

出張中の暇つぶしに持ちだした本に迷宮神郡の如く影響を与えられてる気が……まあ、いいか
寝ますー

どうでもいいけれども三上さんとあざのんも作家買いっすね


 ※焼肉で飯テロは犯罪的な事に気付いた為、細かいとこはフルカット、要するに以降台本形式。


京太郎「あ、染谷先輩――そこらがもう焼けてるっすよ」

まこ「おお、すまんの。焼くの任せきりで」

京太郎「いえいえ、好きでやってるので」

久「なるほど……ほんほう、やけへるはね」

京太郎「――あっ」


久「……」

京太郎「……」


京太郎「あの、部長、それ、俺の肉なんですけど……何してんすか?」

久「ん? ふはひふい?」

京太郎「いや、飲みこんでから喋りましょうよ」


久「ふう……摘み食い?」

京太郎「堂々と俺の皿にある肉を狙わないで下さい!」

久「隙を見せた貴方が悪いわ」

京太郎「目の前に焼けてる肉があるのに人から奪う悪行。何なのこの人」


久「須賀君――世の中弱肉強食よ。焼肉もそう、早い者勝ち」

京太郎「しかも全く悪びれないし――というか、網の上にあるのを食べて下さい」

久「“肉をとられたら、もう一枚肉を差し出しなさい”って格言もあるわよね? 確か聖書だったかしら」

京太郎「いや、ないですから。怪しい格言を捏造するのはどうかと」

久「……てへっ」


京太郎「ハァ……もうやめて下さいよ?」

久「仕方ないわね……」


久「そこまで言うなら私が焼けてるのとり分けてあげるから、ほら」

京太郎「別に部長にとって欲しいわけじゃ……」

久「結果同じだからいいじゃない。先輩からの厚意は無碍にしちゃ駄目よ」

京太郎「あー言えば、こー言う」


久「そうだ! 良いこと思い付いた」

京太郎「部長が言う良いことで、本当に良かったことあんまりないんですけど……」

久「前みたいに『あーん』してあげよっか?」

京太郎「断固としてノーセンキューで」

久「即答とか酷くないかしら……」


久「あ、わかった――須賀君、照れてるのね。遠慮しなくてもいいわよ?」

京太郎「いえ、照れてないっす。マジで結構です」

久「結構ってことは――あーんして欲しいってことね」

京太郎「文脈を無視っすか」

久「ほら――あーん」

京太郎「いや、ほんと勘弁して下さい――って、無理矢理押し付けようとしないで! タレが落ちそうでやばいし!」


晴絵「……」

灼「……」

宥「……」


宥「灼ちゃん、灼ちゃん」

灼「ん……?」

宥「共学って進んでるね……」

灼「進んでるというか……いきなり人前で漫才しながらいちゃつきだすのは、どうかと思……」

晴絵「……これはあれか? 彼氏いない私への当て付け? 遠回しなキャラディス?」

宥「そ、それは流石に被害妄想のような」

晴絵「あー、怒りのあまりデビルマンに変身しそう……」

宥「えぇっ、変身できるんですか!?」

灼「ハルちゃん落ち着いて――気持ちはわからないでもないけど」

晴絵「……飲まないとやってられないからビール頼もっと」


京太郎「ちょっ……! なんか誤解された上に空気が悪くなってるし!」

京太郎「向こうの咲達が和気藹々としてる雰囲気とはエラい違い……やっぱり俺もあっちに行くんだった……」

久「むっ――私の隣だと不服?」

京太郎「そういう意味ではなくてですね……」

久「じゃあ、どういう意味?」

京太郎「いや、あの、なんて言うか、その――」


灼「今度は痴話喧嘩しだした……」

宥「え、えっと……仲良しさんであったかくていいと思うよ?」

灼「無理にフォローしなくていいと思……」

晴絵「あー、リア充爆発しないかなー。地球上から絶滅しないかなー。ドラゴンボールがあれば集めて願うのになー」

京太郎「ああ……赤土さんがビール一気飲みしながらどんどんやさぐれてるし……」


晴絵「もう少しでアラサーなだけだから! アラフォー違うから!」

灼「……ハルちゃん、いきなりどうしたの?」

晴絵「いや、なんかすこやる呪いをかけられた気がして……」


京太郎「……部長まずいっすよ。赤土さんが錯乱してます。折角の焼肉なのに場の雰囲気が最悪なんですけど」

久「流石焼肉なのに?」

京太郎「焼肉は流石です。しかも女の子と一緒とか最大(マックス)に美味い」

久「次回――焼け、肉」

京太郎「もう焼いています……あっ、そこもう十分に火が通ってますよ――っていうのはどうでもよくてですね」

京太郎「何か話題ないっすか? ほら、こう、明るいやつとか、この雰囲気が変わるならなんでもいいですけど」

久「もう、他人任せねえ――じゃあ……悩み相談でもする?」

京太郎「……」

久「……」

京太郎「……ここでもするんですか?」

久「しないと進まないじゃない。スレの基本方針だし」

京太郎「全く関係ない闘牌とかしてたような……」

久「それは言っちゃ駄目よ――まあ悩み相談が本編なの」


晴絵「ん――悩み相談?」


京太郎「なんか食いつかれましたね」

久「丁度いいじゃない――赤土さん、私達学校の福祉活動の一環で悩み相談を受けているんです」

晴絵「へー、ボランティアってやつ?」

京太郎「いつからそんな設定が……」


久「というわけで……何かありません?」

晴絵「んー……悩み、悩み、悩みかぁ……」

宥「そ、そんなペースで飲まないほうが……」


晴絵「――あ、店員さんビール一つ」


晴絵「私ってさ……前に実業団いたんだよね……」

晴絵「まあ、そこで色々あって阿知賀に戻っきたんだけど……」


晴絵「でさ……IHの時、東京でプロ行きを誘われたわけよ……」

京太郎「また、一気飲みしてるしこの人」


晴絵「ま、断ったんだけどね……」

京太郎「なんか湿っぽい雰囲気……」

久「酔うと愚痴っぽくなる人っているわよね。黙って聴いてあげるのが対処法よ」


晴絵「でも正直――まだプロの世界に未練が残ってる」


灼「」

久「……」

京太郎「Oh……」


久「ちょっとタイム……須賀君」

京太郎「ええ、わかってます部長――作戦会議ですね」


久(――で、どうしようかしら、この悩み? 鷺森さんはなんだか絶句して固まってるし)

京太郎(正直、困りますよね……予想外に重いっていうか……)

久(一介の学生が扱える相談じゃないわよね)

京太郎(しかも、そう面識があるわけじゃない、ときてるわけで)

久(さっきのこと根にもって困らせようとしてるのよ)

京太郎(決めつけるのはよくないかと……)

久(きっとそう――年甲斐もなく僻むのはどうかと思うわ)


晴絵「――あ?」

京太郎「げっ……」


晴絵「今――年って――言った?」

京太郎「ひぇっ――言ってません!」

AKD「若さって何だ?」

京太郎「振り向かないことです!」

レジェンド「学生メインの原作なのに年増はすっこんでろってこと?」

京太郎「赤土さんは若いと思います! レジェンド最高! ひゃっほうっ!」


まこ「……ん、リアクション芸はほどほどにの。引かれとるぞ、ほら」

京太郎「えっ」


灼「……」

宥「……」

京太郎「ああっ! 二人の俺を見る目が冷たい!」


京太郎「……なんで俺が割を食うパターンが多いんだろう」

久「例えるなら新八ポジションだから仕方ないわ」

京太郎「……俺そういう役割だったんすか?」

久「ツッコミ、ボケ、キャラ崩壊、オチ担当――そのうち存在自体がギャグになる筈よ」

京太郎「最初の方のコンマで逸般人フラグが折れたからありえないです」

久「麻雀方面はともかく、別方面のフラグはまだあるけどね……ハゲとか」


京太郎「……染谷先輩」

まこ「うん? いきなり、なんじゃ?」

京太郎「部長がイジメるんですけど、助けて下さい」


まこ「……」

京太郎「……」


まこ「京太郎」

京太郎「はい」

まこ「漫才にわしを巻き込むな」

京太郎「酷いっす」

久「まあ……とりあえず作戦会議再開しましょう」

京太郎「……そうっすね」


久(それにしても、さっきのはちょっとびっくりしたわ……地獄耳、まさにデビルイヤーね)

京太郎(デビルイヤーって……)

久(そのうちアラサーの名を受けて婚期を捨てて戦う筈よ。あれは誰だー、誰だ、誰だって感じで)

京太郎(そういや関係ないですけど、チョップはどうしてパンチ力なんでしょうね……というか、ちょっとディスりすぎなような)


京太郎(今日の部長、畜生成分多めじゃないっすか? いつもはもっと控え目にしてるのに)

久(大丈夫――二番の歌詞で、はじめて知った人の愛によって優しさに目覚めるからディスではないの)

京太郎(その屁理屈通用するんですかね……)

久(ちなみに……チョップがパンチ力なのは、作詞家の人が渡された設定資料をそのまま流用したかららしいわ)

京太郎(なるほど、豆知識披露ありがとうございます)

久(カッターなのに何故岩が砕けるのかは尋ねちゃ駄目よ)

京太郎(キックが破壊力なのも統一性がないっすよね――って何かデビルマン談義になってるし)

久(酔ってるだけだろうし、このまま流して終わらせたいってことなの。察してちょうだい)

京太郎(いや、それもどうかと……)

久々に阿知賀読み返したら気付いた照って麻雀の時殺し屋の目をしてるかわいい

風呂入ったら寒いし眠気が限界なのでセーブで中途半端なとこで申し訳ない


京太郎(……)

久(……)


京太郎(……マジどうしましょう、これ?)

久(そうねぇ……須賀君がそげぶする勢いで説教して有耶無耶にするとかどう?)

京太郎(えぇー……俺そういうキャラじゃないんですけど……それに男女平等パンチするのはちょっと……)

久(いや、別にそこまでしろとは言ってないからね?)

京太郎(基本的にワンセットかなと……まあ、そんなのはどうでもいいですけど、他の案とかは?)

久(ふむ……仕方ないわね……)


久(プランΦで行きましょう)

京太郎(プランとか初耳なんですが)

久(今回は私がいくわ。ちなみに須賀君主導ならプラン⊿ね)

京太郎(……何故ギリシア文字なんですか?)

久(当然、ライ―― 京太郎(言わせないって。前に似たやり取りしましたよね、それ)

久(……)

京太郎(……)

久(ま……、とにかくここは任せなさい)

京太郎(うっす。そういうことなら、お願いします)


 ――作戦会議終了。

 竹井久はこほんと一つ咳払いをした。

 そして、レバ刺しをつまみにちびちびとビールを啜っている赤土晴絵――一気飲みはやめたらしい――と目を合わせた。


久「赤土さん」

晴絵「ん?」

久「そんなことがあったんですね――」


 ――悩み等を相談を受ける場合。

 手法の一つとして現在の悩みを過去の悩みに置き換えるというものがある。


 過去形でのオウム返しを行うことで、今の悩みが過去の事であると相手に自発的に気付かせる会話術。

 この過去形での話し方は相手の気持ちを切り替える効果があるのだ。

 特に過去の選択での如何等は、どう転ぼうとも後悔を得ることは多々あることだし――。

 要するに、酔っぱらいの愚痴は否定せず、共感を与えつつ上手く聞き側に回れ、ということである。


 ぽつぽつと言葉を漏らす赤土晴絵。

 それに対して時に相槌を打ち同意し、時に意見を述べ会話を誘導していく竹井久。


京太郎(あれだな……やっぱり部長、口が上手いよな)


 須賀京太郎は二人の会話を眺めながら、ふとそんな事を思った。

 こういう面があるから生徒議会長をやれていたのだろう。


 まあ、ここは彼女に任せて肉を焼こう――そう考え、骨付きカルビを網に配置していく。

 骨の際が美味いのだこれが。


 ちなみに頼んだものは――、

 上タン塩カルビハラミ特上骨付きカルビレバ刺しセンマイ刺し特上ハツビビンバクッパわかめサラダ激辛キムチサンチュでサンキューや!

 ――だった。一息で注文するのがコツだ。どうでもいいだろうけど。


 黙々と肉を焼き、取り分け、己の分を食す。

 須賀京太郎がそんな動作を何度か繰り返すうち――。

 竹井久との会話によって自己解決したのか納得している赤土晴絵。

 例えるならUBW編ラストの弓兵の如し。やたらさっぱりとした様子だ。


晴絵「答えは得た。大丈夫、灼。私はこれから頑張っていくから――」

灼「――ハルちゃん」


 そんなやり取りもしていた。

 さいですか。本人が納得したならいいけど……酔っぱらいって面倒くさい。

 そう考え、須賀京太郎は溜め息を零した。


久「みっしょんこんぷりーと……」


 そう呟き、お冷を一口飲み、須賀京太郎にVサインを向ける彼女。

 得意満面の顔、つまりドヤ顔だ。


京太郎「お疲れ様です……流石っすね部長」

久「でしょ? もっと褒めてくれてもいいのよ?」

京太郎「すぐ調子にのるんですから……」

京太郎「久さんは最高です! とでも言えばいいんですか?」

久「――、――」


 竹井久はその言葉にきょとんとした顔を向けた。

 いきなりなんなのだろう――彼女の様子を不審に思い、首を傾げる須賀京太郎。


京太郎「……どうかしたんですか?」

久「ん、いえね……確かに言われてみれば、もう引退してるみたいなものだしね……」

久「そういうのもありかな……」


 うんうんと一人頷いていた。


京太郎「あの、話が読めないんですけど」

久「んー……」

久「うん、決めた」


久「――須賀君」

久「私のこと以後部長呼び禁止ね。もう、まこに譲ってるみたいなものだし」

京太郎「――はい?」


京太郎「……」

久「……」


京太郎「いや……いつものことですけど唐突っすね」

久「さっき部長呼びじゃなかったじゃない? それでいいわよ?」

京太郎「それでいいと言われても――」

久「もう決定したからね?」

京太郎「えっ? マジで? 冗談とかじゃなくて?」

久「マジよ。そういうわけで、部長呼びしたら反応しないから――」

久「はい、これでこの話題は終了!」

京太郎「いや、いや、いや、ちょっと待ってください。俺の意思は」

久「そこ文句言わない……じゃ、次の悩みにいきましょうか」

京太郎「いや、あのですね……あれ? マジ決定なの? なんかおかしくない?」


久「鷺森さんはどう? 悩みはない?」

灼「ん?」

灼「……、私?」


 僅かに思案げな表情を浮かべる彼女。

 尚、肉を焼く手が止まることはなかった。流石焼肉奉行である。

 赤土晴絵の皿の肉が減るタイミングに合わせ、甲斐甲斐しく新たな肉運んでいる。灼だけに。


灼「ふむ……」

灼「……、敢えて言うなら、服の趣味を部内で誰も理解してくれないとか……」


京太郎「あれっすね……服装の悩み多いような気が……」

久「原作でどうなのこれ?ってのが多いから仕方ないわ。多分」

京太郎「あー、でも、こういうのって回りに理解を求めるのは難しいですよね」

久「個人の趣味ってのがあるしね」

灼「まあ、回りからどう思われてもいいけど……」


 鷺森灼は本当にどうでもよさげに、ぼそりと呟いた。

 話を合わせてくれただけで、悩みというほどの事ではないようだ。

 須賀京太郎はその事に気付き、わざわざ合わせてくれるとは良い人だな……。

 素っ気ない見かけによらず、部内で苦労人ポジションなのかもしれない――との感慨を抱いた。


久「鷺森さんって結構ゴーイングマイウェイなのね」

灼「ん」


 肉を焼く手を止め、ぴっと人差し指を立てる鷺森灼。

 そして、ゆっくりと言葉を紡いだ。


灼「世界は自分を中心に回っている――そう思った方がきっと楽し……」

久「まあ、一理あるわね」

京太郎「限度ってものもあるとは思いますけどね」

灼「ん、一人よがりにはならないよう、気をつければいいと思……」


 あ、やっぱり良い人だ。

 須賀京太郎は改めて得心した。

 鷺森灼はこれでこの話は終わりとばかりに、焦げがついた網を交換し、再び肉を焼く作業に取り掛かっている。

 十分に網が熱されたのを確認し、ハラミとハツをバランス良く配置していた。

アカンこれはギャグのテンションじゃない……セーブで
あとレバ刺し単にパロネタの為だけです、ある意味不謹慎ネタで申し訳ない


久「あら、これで終わりでいいの?」

京太郎「あー、どうなんでしょうね」


 須賀京太郎は、ちらりと鷺森灼に視線を送ってみた。

 視線に気付いた彼女が、こくりと小さく頷く。

 別に構わない、そのような意図だろう。

 それならいいのだが……まあ、一段落ついたのなら、先程の宣言(部長呼び禁止)を本気かどうか確認しよう――。

 そう考え、彼は竹井久に小声で呼びかけた。


京太郎「部長、さっきの話なんですけど……」

久「……」


 見事に黙殺された。

 視線すら合わせてくれない。


京太郎「……えーっと、部長?」

久「……」


 再度呼びかけてみたが、やはり同じだ。

 どうやら先程の宣言を、本気で有言実行しているようだ。

 ――それならば。


京太郎「あー……竹井先輩」

久「……つーん」


 今度は冷たく告げられ、あらぬ方向へ顔を背けられた。

 部長呼びをやめたにもかかわらず、これでも駄目らしい。

 先刻のやり取りから推測するに、名前呼びをしろということなのだろう。


 つーん、って子供か。めんどくさい人だ――。

 須賀京太郎はそう思いつつ、竹井久の意向に従うことにした。

 彼女がこうと決めたのなら、経験上覆すことは難しいと知っている為だ。

 難題を突きつけられた訳でもないことだし。


京太郎「……久さん」

久「ん、何、須賀君?」


 澄ました様子で返事がきた。

 須賀京太郎は苦笑を零し、頬を掻いた。


京太郎「あー、いや、確認できたのでもう大丈夫っす」

久「呼んでみただけ、ってやつかしら?」

京太郎「本当はわかってるくせに、この人は……まあ、それでいいです」


 竹井久はくすりと、悪戯っぽく微笑んだ。

 眼差しには、からかうような色が浮かんでいる。


久「あら、そう――じゃあ、悩み相談に戻りましょうか」

京太郎「ですね」


 首肯し、松実宥に視線を向けた。

 小鉢に移した湯気のたっているクッパを、レンゲでちまちまと口に運んでいる彼女。

 あったか~いと、幸せそうな様子で、ぽわぽわした雰囲気を纏っている。

 ――大変かわいらしい。


久「どう? 貴女は悩みがあったりする?」


 向けられた問いに、松実宥の手が止まった。

 そして小首を傾げ、焦ったように言葉を漏らした。


宥「あわわ……えっと、その、私?」

久「そうそう――何かあったりしない?」

宥「え、えっとぉ……」


 呟き、考え込むように瞼を落とし、ぷるぷると震えている彼女。


 その様子に須賀京太郎の頭の螺子が緩んだ。

 可憐だ。胸も大きいし。天使なんじゃないだろうか。

 そんな頭の沸いた感想を覚えたりしていた。


京太郎「――松実さん」

宥「え、あ、はい?」


 松実宥へ真剣な眼差しを向ける。

 ついでにきらりと、無意味に歯を光らせていた。

 また病気が始まったようだ。

 須賀京太郎のその動作に、隣の竹井久が嘆息し、目頭を押さえた。


京太郎「俺――」


 会話の途中で、横腹へ唐突に肘が突き刺さった。


 跡が残ったり、悶絶はしないよう加減はされたのだろう、さほど強くはないが鋭い衝撃に貫かれ、言葉に詰まる。

 須賀京太郎は、はっと我に返った。正常な思考を取り戻したようだ。

 そうして肘打ちの主――竹井久に目を向けると、じとっと、半目で睨まれた。

 松実宥は、訳がわからないといった様子で、疑問符を浮かべている。


宥「え、えっとぉ、何かなぁ?」

京太郎「アッ、イエ、ナンデモナイデス。スイマセン」


 思わず挙動不審な片言になってしまう。

 まさか、いきなり口説き文句を告げようとしていた、などと言う訳にはいくまい。


久「……すぐ頭が悪くなるんだから。話の腰が折れちゃったし」

京太郎「返す言葉もないっす……」


 降参とばかりに両手を上げた。


久「とにかく――話を戻すけど、松実さん、どう?」

すいませんちょい中断


宥「悩み、悩み……んー……あっ」
 

 思い付いたとばかりに、ぽんと両手を合わす松実宥。

 一々仕草が可愛らしい。


宥「あのね……妖精さんに攻撃が効かないのことが困るなぁ、って」


 いきなり出現した「ようせい」とかいう不思議ワード。

 ……ぱーどぅん?

 そんな感じで、頭の中が疑問符で埋め尽くされた。


久「よう――」

京太郎「――せい?」

宥「そう、妖精だよ」


 全くもって訳がわからない。

 しかも攻撃って何だ。ダイレクトアタックでもするのだろうか。
 
 脳が理解できず混乱してしまう。


久「ちょっと待って、松実さん」

宥「うん?」

久「ようせいって……何かの比喩表現?」

宥「えっと、妖精は妖精だけど……」


久「……」

京太郎「……」

宥「……」


京太郎「ああ……北斗の拳のキャラとかですか?」

久「あー、もしくはユダ使いの人のことかしら? 空飛ぶ妖星さん?」

宥「ううん、違うよ」


京太郎「じゃあ……何かのゲームとかですか? 女神転生系とか……」

久「そういえば、ポケモンに妖精タイプが追加されたような……それかしら?」

宥「ポケモンは持ってるけど……」


 重ねられた二人の問い掛け。

 それをふるふると首を横に振り、否定する松実宥。


 ちなみに彼女が主に使っているポケモンは、ドラゴンタイプで埋め尽くされていた。

 全て自身の愛妹と同じ名を与えていたりしている。


 ゲームじゃないのか、一体何なんだ――。

 須賀京太郎の混乱が深まった。


宥「英語言うとフェアリー。妖精さんのことだよ」

京太郎・久「「えっ?」」

宥「?」

京太郎「あー、えっとマジで妖精?」


 敬語を使うのも忘れ、素で喋ってしまった。


宥「うん……妖精さん」


 優しく微笑まれ、頷かれた。

 ――可愛い。お近づきになりたい。

 じゃなくって、妖精存在してるのかよ、この世界。

 世界不思議発見すぎるだろ。アンビリーバボーか。

 いや、オカルトとかいう不思議パワーがあるから、いてもおかしくはないのかもしれないが。

 それともこの女(ひと)、不思議ちゃんなのだろうか――。

 そんな混沌とした思考共に、須賀京太郎は驚愕した。


 隣に目を向けると――竹井久も絶句している。

 どうでもいいけど、空飛ぶ妖星さんも通称フェアリーさんだ。


久「松実さん」

宥「うん?」

久「貴女疲れてるのよ」

宥「ええっ!?」

京太郎「もしくは精神的疾患の一種かもしれません……」

京太郎「治す方法は俺たちがきっと捜しますから――任せて下さい!」

宥「危ない人認定された!?」


宥「うう……本当にいるのに……」

京太郎「いや、流石にそれは……ちなみにどんな妖精なんですか?」

宥「白いマフラーをした冬の間だけいる妖精さんなの――」


 彼女は妖精の特徴やらなんやらを説明しだした。

 冬季限定で、松実館の近くに出没するらしい。

 寒いから大変困る、できれば追い払いたいとのこと。

 というか、いきなりクロスさせていいのだろうか。


 わりと必死に語っている松実宥を眺めながら。

 不思議ちゃんでも可愛いければ許せれるよな。可愛いは正義って言葉もあるし――。

 そんな事を考え、須賀京太郎は残っている肉を焼くのであった。

 尚、この悩みは流石に解決することはなかった――とだけ。


 ――また、どうでもいい話だが。

 後日、須賀京太郎は、松実宥の言うものとは違う妖精を、発見してしまったり、しなかったり。
 
 危うく凍らされそうになったが、なんとか逃亡には成功したらしい。

 天才を自称する馬鹿っぽい青い何かだったとかなんとか。


                                             ――後編に続く

あー、何て言うか色々スイマセン……とりあえず、長過ぎてる気がするので次はすっきり纏めようと思いました
宥姉なら凍死しかねない寒さなので寝ますー

特に意味はないですけどpreserved rosesな京咲ってアリなんじゃないでしょうか
あ、別にロボットものとかではなくて



【幕間 空色デイズ-before】


 中学三年、一月終わり頃の某日。とある日曜日の午後。

 受験する予定である清澄高校の前期試験が、目前まで迫ってきた時期。

 須賀京太郎は自分の部屋で、某スタイリッシュ対戦格闘ゲーム(Ver1.03)をプレイしていた。

 対戦相手は宮永咲だ。

 午前から彼女と一緒に受験勉強をしていたのだが――昼食のあと、休憩として対戦プレイを提案したのである。


 彼女が使用しているのは、やると言ったらやる『スゴ味』があるッ!キャラだ。

 須賀京太郎の隣でアケコン(※アーケードコントローラーの略)で、流れるように操作していた。


 ちなみに、二人の間には接待プレイという概念はない。

 格ゲーするなら常にガチである。

 犬を使われようとも慈悲はない。

 舐めプなんてなかった。


 須賀京太郎は対戦を始めてから、七連続で宮永咲に敗北していた。

 普段あまり使わないキャラを、対戦練習のために選択していたことが一因だろう。

 気配りと大胆な行動力で対処しても、勝てないものは勝てないのだ。

 心の平穏は守れない。

 ついでにキャラ性能も不利だし。

 彼に『凄み』があればなんとか出来たのかもしれない。


 ――そういえば。

 全く関係無いが、原作の『ゴッ』とかは『凄み』なのだろうか。

 改めて色々考えると、IH個人女子の上位三名とかは、ある種の『凄み』をもってそうだ。


 例えば王者――宮永照。

 麻雀の時、殺し屋の目をしている。かわいいは明らか。

 お菓子大好き。絶対殺すマン(麻雀)に進化しそう。闘牌から凄みを感じる。


 次いで荒川憩。

 ナース服は趣味なのだろうか。かわいい。

 細かい描写はないが魔物と称されている。愛嬌のある関西弁とは裏腹に、得体のしれない凄みを感じる。


 更には辻垣内智葉。

 実家が893かもしれない。なにそれこわい。

 ぅゎ姐御っょぃ。でもかわいい。女子高生なのに仁侠映画の主役のような凄みを感じる。


 そして、蛇足かもしれないが――弘世菫。

 目付きが悪い。麻雀/物理で高精度の遠距離攻撃をぶっ放す。

 フィジカル的に強い。接近戦でもロン(物理)。頼りになる我らがSSS。もはや凄みしか感じられない。凄い。

 驚愕の事実だ。

 兄貴系キャラ的な何かも熟せそう。

 確かにヒラコー世界でもやっていけそうである。

 実は那須与一の末裔だとか言われても納得できる。

 世が世なら、蜻蛉切(とんぼきり)持ってる人とかといい勝負が出来るかもしれない。弓っていうのが武士っ娘ぽいし。

 あ、ついでに、何故か残念かわいい場合が多いような。個人的には、白糸台なら菫さんがNo1だと思う。いや本気で。


 これらの例から導かれる答えは――。

 この世界のオカルトといわれる異能は、『凄み』の一種なのではないだろうか。

 凄みで当たり牌回避や和了牌察知。凄みでシャープシュート(物理含む)。

 果ては相手を一向聴地獄に叩き込んだり、配牌五向聴にしたり毎回ダブリーしたり等々。


 きっと凄みは、物理ステとか麻雀ステにそれぞれ振り分けられるのだろう。高いほど凄い。

 ジョジョ立ちをマスターすれば、麻雀が強くなるのかもしれない。

 何もおかしくない気がするのはどうしてだろう。


 ――以上より。

 “この世界の麻雀での異能⊆凄み”である。Q.E.D.証明終了。


 戯言でしかないので閑話休題。


 現在の対戦状況は、須賀京太郎の劣勢だった。

 今まさに、宮永咲が1セット先取したところだ。

 しかも彼女は次セット三ゲージスタート。


 “痛みがゆっくりやってくるッ!”が刺されば、“終わりのないのが『終わり』”も確るので非常にマズイ。

 せめて一矢報いたい。こうなったら――と、須賀京太郎は思い立ち、アケコンを操作しつつ宮永咲へ話し掛けた。


京太郎「そういや……お前高校は部活入ったりすんの?」

咲「……いきなりだね、まだ試験も受けてないのに」


 雑談で集中力を削ぐ作戦。
 
 物理的に妨害しないだけまだマシかもしれないが、ぶっちゃけ卑怯だ。

 お前それでいいのか――と、言われても仕方ない。

 関係ないが、対戦ゲームで物理的妨害は、友情に罅が入る可能性が高いのでやめよう。


京太郎「咲は成績的に余裕だろ。高校入ってどうするとか、考えてんのかなって」

咲「京ちゃんはそんなこと考える前に、受験勉強した方がいいと思う」

咲「一緒にゲームしながら言うことじゃないかもしれないけど」

京太郎「……」

咲「……」


 一瞬の沈黙。

 二人のアケコンの操作音と、ゲームのBGMとSEが部屋に響く。


京太郎「い、いや、別にそこまでギリギリじゃないからな俺!?」

咲「それは知ってるけど――余裕ってほどじゃないよね」


 確かに事実ではあるが。

 彼をのことを心配しているのかもしれないが、ちょっと辛辣だ。


京太郎「まあ、なんとかなるって」

咲「もう……いい加減なんだから」

京太郎「大丈夫、大丈夫――で、どうなんだ?」

咲「えっと、部活かぁ……」

咲「んー……」


咲「うん、帰宅部かな」

京太郎「運動部はともかくとして、文化部とか入らないのか? ほら、文芸部とか」

咲「そこまでしたいこともないし、家の事とかあるしねー。京ちゃんはまたサッカー部?」

京太郎「あー、どうかな。高校は違うことしたいっていうか……文化部でもいいかもな」

咲「うわっ、似合わない……」


咲「何にせよ、入学してからだよね――えいっ」

京太郎「あっ――」


 作戦の甲斐もなく、起き攻めの択を見事に読まれ、コンボを差し込まれた。

 当然HIT確認から、レクイエム化される。詰みというやつだ。

 宮永咲がアケコンのレバーを滑らかに動かし、軽快にボタンを叩く。


咲「えいっ、えいっ」

京太郎「あっ、あっ」

咲「えいっ、えいっ、えいっ」

京太郎「あっ、あっ、あっ――」


 彼女の使うキャラが攻撃するたびに起こる、間の抜けた応酬。

 須賀京太郎の使うキャラが、じりじりと押し込まれていく。

 スタンドパワーが違いすぎる。


咲「――これで終わり、っと」


 告げられるK.O.宣言。

 ――八度目の再起不能(リタイヤ)、八連荘だった。


京太郎「俺の吉良がぁぁぁあぁぁぁぁああっ!!」


 吠えながらアケコンを手放し、諸手を上げて後方のクッションに倒れこんだ。

 やたらとオーバーリアクションである。


京太郎「あんまりだー……」

咲「大袈裟なんだから」


 腹を見せ、服従の意を示す大型犬のような彼の姿に、宮永咲の苦笑が零れた。

 須賀京太郎は仰向けのまま、万歳のポーズで瞑目。

 暫くして、徐ろにぼそっと提案した。


京太郎「……次、ヴァニラ使ってもいい?」


 意訳すると、お前これから強キャラでボコるわ――という事である。

 正直、かなり悔しかったのだ。


咲「えぇー、ヴァニラはちょっと――京ちゃんって結構負けず嫌いだよね」

京太郎「……そう言うなよ。一回だけでいいから、な?」

咲「えー……」

京太郎「ちょこっとだけ。ほら、ちょこっとだけだから」

咲「……じゃあ――私はホルホースを使うよ」

京太郎「えっ、何、それは」


 須賀京太郎は思った――そのキャラは駄目だろう。

 どうして駄目なのかといえば、ある意味で別ゲーだからだ。

 ヴァニラも大概だが。何故あんなに優遇されてるのか。
  
 ホルホース同士のミラーマッチよりマシとはいえ、その組合せも不毛だろう。


京太郎「あー、わかった、OK、了解。ホルホースはやめてくれ……」

咲「そんなに嫌なんだ」

京太郎「俺はボスを使うからそっちはジョルノのままな」

咲「別にいいけど……」


 流石に八連敗のままで終わる気はなかった。

 須賀京太郎は最も使い慣れているキャラを選択。

 五部対決だ。

 キャラ性能は然程離れていない。

 須賀京太郎と宮永咲――二人の過去におけるこのキャラマッチの戦績も五分だ。


 そうして、宮永咲がキャラを選択し、対戦が始まり――。

 二人はアケコンを操作しながら、合間に時々なんでもないような話をしていた。

 受験が終わったらカラオケでも行くか、とか。

 今週の週刊漫画であれが面白かった、とか。

 学校のクラスメイトが謎の奇行に行っていた、とか。

 コマンドーを久々に見たらやっぱり面白かった、等々。

 本当にとりとめのないどうでもいい話だ。


京太郎「だあああああああ!」


 ――不意に。


京太郎「駄目だ! 今日は調子が悪い! ってかコントローラーが悪い!」


 使い古された言い訳をして、クッションへ倒れこむ須賀京太郎。

 モニターには宮永咲が使うキャラの勝利が映し出されている。

 キャラを変えても四連敗したのである。

 というか、コントローラーのせいにするのはやめよう。

 オンラインなら、ラグってもないのに回線のせいにするのも格好悪い。


咲「……京ちゃん起き攻めの択が単調になってるよ。パターン化してる」


 ――む。

 どうやら人読みの部分で不利になっていたらしい。


咲「もうちょっと投げを混ぜた方がいいかも……」

咲「あとゲージコントロールもちょっと甘い気がする。バーストあるんだからもうちょっと繊細に」


 ――むむ。

 拗ねた様子を不憫に思ったのか、アドバイスしてくれているようだ。


咲「それにコンボ失敗してる時があるし……」

咲「練習して精度を上げたほうがいいんじゃないかな?」


 ――むむむ。

 咲の癖に生意気だ。

 須賀京太郎はそう思い、身を起こした。

 そうして、右手をすっと伸ばし、したり顔をしている彼女の頬に右手を添える。


咲「――えっ!?」

京太郎「……」

咲「……な、何っ!? そんなっ! いきなり――」


 唐突に焦りだした宮永咲を無視し、頬を摘み軽く引っ張ってみる。

 どうでもいいが、彼女の頬は温かく柔らかかった。


咲「……」

京太郎「……」

咲「……ひょっと、きょうひゃん」


 上手く発音出来ていない彼女の文句を黙殺し、摘んだ頬を動かす。

 勿論、跡が残ったり、やたら痛くはないよう加減はしておく。

 たてたてよこよこまるかいてまるかいてもひとつおまけにまるかいてちょん、っと、摘んでいた頬を放した。

 ――ストレス解消完了。


咲「むー」


 半目で睨め上げられながら、唸られる。

 須賀京太郎はそんな彼女を横目に、ゲーム機とモニターの電源を切り寝転がった。

 次いで、クッションに顔を埋め、無意味にごろごろしてみる。

 対戦する気分ではなくなったのだ。


咲「……ゲームしないなら勉強しないの?」

京太郎「咲は真面目だなー」

咲「もうっ、京ちゃんが不真面目すぎるだけですっ。落ちても知らないからね」

京太郎「だから大丈夫だって。清澄位、よゆーよゆー」

咲「何、その無意味な自信……そういうのは成績的に余裕な人が言わないと意味無いの!」

京太郎「……高校、か」


 小言を無視し、呟きながら本棚へ匍匐前進。

 そうして、透明なカバーに包まれた本を一冊引き抜き、元の位置に戻った。


京太郎「……お前、高校ではちゃんと友達作れよ」

咲「……いきなりどういう意味?」

京太郎「だって、三年になって俺とクラス別れてから、お前が同じクラスのやつと一緒に遊んだりしてるの見たことないし」

咲「む……まるで私がクラスで浮いてるみたいに言うのはやめてよ。全然そんなんじゃないんだからね」

京太郎「まあ、清澄に入って俺が同じクラスになるとは限らないし、咲がボッチにならないか心配なのよ」

咲「ちょっと! 何それ!」


 テーブルをぺしぺしと叩きながら、全く迫力なく怒っている。

 休み時間に一人黙々と本を読むタイプなので、あながち間違いではないのだが、彼の言い草が気に障ったようだ。


咲「京ちゃんは私のことどういう目で見てるのっ!? 人をそんなコミュ障みたいに!」


 ――慣れればわりと普通なんだけどな。

 そこまでのハードルがわりと高いからなー、こいつ――と、須賀京太郎は胸中で呟いた。

 過去の経験から、幼馴染のそういった傾向は理解しているのだ。


 不満気に頬を膨らませたままの宮永咲を放っておいて、須賀京太郎は栞の挟まった頁を開いた。

 本のタイトルは『パラサイトムーン<6>』。ラノベである。

 以前、彼女の家へ遊びに行った際にやたらと勧められたので、既刊分の1巻から6巻迄まとめて借りた本だ。


京太郎「ま、もうちょっとだけ休憩な。勉強する気分じゃない」

咲「もうっ、あと少しだけだからね」

京太郎「へいへい」

 
 気のない返事をしつつ、読書に耽る。

 宮永咲は小さく溜め息を吐き、自身の鞄から文庫サイズの本を取り出していた。


 ぱらり。

 ぱらり、と。

 本の頁を捲る静かな音だけが、暫くの間部屋に満ちた。

 互いに無言であるが、特に気不味いというわけではない。

 昔から、二人一緒に図書館へ行った時などは大抵こんな感じだった。


 そうして。

 読んでいる本が物語の終盤に差し掛かった頃。

 ふと、須賀京太郎は視線を感じた。

 この部屋には彼を除けばあと一人しかいないのだから、宮永咲の視線だろう。


 本から顔を上げ――目と目が合う。

 二人の視線の絡み合った。


京太郎「……何だ?」

咲「な、なんでもない」


 少し慌てた様子で暫し視線を彷徨わせ、手元の本へ目を落とす彼女。

 意味がわからない。

 再び、ぱらぱらと本の頁を捲る音だけが響いていた。


 ――ややあってから。


京太郎「――終わりっと」


 本を読み終え、そう呟き、ぱたんと本を閉じた。

 宮永咲を見れば先に読み終えていたのか、彼女の手元には文庫本はなかった。

 須賀京太郎が開いていた頁の位置から、もうすぐ読み終わるだろうことを察知して、待っていたのだろう。


咲「……えっと、京ちゃん、どうだった?」


 さて、勉強に戻るか――。

 と、考えた矢先、彼女に問い掛けられた。


京太郎「ん……ああ、借りた本の事か、面白かったぜ。設定とか練りこまれてたし……」

京太郎「あと異能ものって熱いよな、王道なのがいい」

咲「……えへへ、そっか」


 安心したように息を吐き、なんだかもじもじしている。

 貸した手前、つまらなかったら申し訳ないとでも思っていたのだろうか。


咲「……あれが面白いなら大丈夫だよね」


 ぼそぼそと呟く彼女。

 鞄から何かを取り出そうとしていた。


咲「えっと、その――ちょっと早いけどこれ……」

京太郎「おっ、もしかして誕生日プレゼントか」

咲「うん……えっと本だけど……私の誕生日に貰ったお返しみたいなもの、かな」


 そういえば、今年の彼女の誕生日に栞のセットと、彼女が買おうとしていたハードカバーの本をプレゼントしていた。

 テーブルの上に置かれる、贈答用に包装された書籍。

 大きさから何冊か入っているようだ。

 可愛らしい形の赤色のリボンが角に添えられていた。

 須賀京太郎は恭しく受け取り、戯けて大仰に感謝を述べた。


京太郎「有り難く頂戴致します」

咲「読んで感想とか聞かせてくれると嬉しいかなって――」


 彼女はそう言い、柔和な笑みを溢した――。


 ■□■


 ――ぱちり、と。

 須賀京太郎は目を覚ました。

 窓の辺り、外を見遣ると、まだ日は昇っていない。

 早朝の筋トレ――最近回数を倍にした――が習慣になっている為、早い時間に起きてしまったようだ。


 去年の夢か――ぼんやり思いながら身を起こし、頭を掻き背伸びを一つ。

 夢の内容は、珍しくはっきりと憶えていた。


京太郎「昨日寝る前に、これ読んだからかな……」


 ちらりと枕元を見て、そう独り言ちた。

 視線の先には、去年の誕生日に、宮永咲から贈られた本があった。

 タイトルは『シャドウテイカー』だ。奈良への旅行での暇潰しにと、全五巻を持ち出していた。


 ――余談であるが、去年の誕生日以降。

 宮永咲に定期的にラノベを借り、読んだりしていた。

 彼女が彼に勧め、貸した本は、『西の善き魔女』、『アリソン』、『陰陽ノ京』

 『輪環の魔導師』、『Dクラッカーズ』、『東京レイブン』等々――。


 須賀京太郎は枕元に置いてあった本を片付け。

 折角起きたのだから筋トレするか――と、考え、着替えを始めた。


 ちなみに、ランニングの際。

 須賀京太郎は高鴨穏乃と遭遇するのだが、それはまた別の話。



                                                 ――了

くすぐりは視野に入れはしたんですが、飲料摂取した設定の女の子にさせた場合、京太郎に特殊性癖付与することになりそうなのでやめました
寝ますー

めっちゃ誤字脱字とか見返すと意味不明に間違ってるとこがある死にたい
どうしても我慢できないとこを訂正
>>764
×『東京レイブン』
○『東京レイヴンズ』

そーいや明らかに苦手分野なんだけど、どうするべきか

人任せの安価置き
【安価】バレンタインSSとかそーいうの
1 四の五のぬかさず書けや
2 書かなくてもええんやで

↓1

書かなくてもいいけど、京咲か京久が読みたい所存

>>779
ダチョウ倶楽部……?
把握、帰宅出来たらっすけど

【安価】
1 咲
2 久

↓1

関係ないですけど色々と触発されました、ポイーは流石にリアルだと数える程しか見たことないですけど
あ、ついでに殺し愛も純愛だと思います……というわけで久はちょい後回し



【幕間 過去に於ける男子中学生の日常、或いはバレンタインアンダーグラウンド】


 少年達は激怒した。

 必ず、かの邪智暴虐のリア充どもを除かなければならぬと決意した。

 非モテ勢には本命チョコが手に入らぬ。

 むしろ義理チョコすら怪しい。母親や親類はノーカンだ。

 彼らは、とある中学校の生徒である。

 男友達と遊び、部活や勉学をして過ごして来た。

 けれども邪悪(※彼ら主観)の匂いに対しては人一倍に敏感であった。


 ――リア充爆発しろ。リア充爆発しろ。リア充爆発しろ。リア充爆発しろ。玲音くんも爆発しろ。鉄さんは許す。

 ――チョコを贈ってはならない、チョコを受け取ってはならない、チョコを食べてはならない。

 そんな意気込みと共に、きょう放課後彼らは学校を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此この商店街にやって来た。
 

 バレンタインデーは地球環境を破壊します。人々を不幸にします。

 だからこそ今、バレンタインデーは中止が求められているのです!

 さあバレンタインデーを撲滅しましょう! チョコレートを贈る習慣を廃止にしましょう!!

 こんな感じの、生産性が欠片もない、負の感情に満ち溢れたプラカードを持参しながら。


 鳴り響け、僕のメロス!

 邪悪(※しつこいが彼ら主観)断つべし。

 悪・即・斬。


 それらこそ彼らの共有した真の正義だったのだ。



 ――そう、これは。

 リア充撲滅、バレンタイン廃止を誓った中学生の少年達、“革命的非モテ同盟”、略して“革非同”の物語――

 (バレンタイン廃止キャンペーンソング:『死ね!バレンタイン・デー』)

 (ついでにキャッチフレーズ:『たとえ明日世界が滅ぼうとも、今日僕らはリア充と闘う』)


 ――というわけではない。

 全く意味がないので忘れてもらって結構。


 ちなみに。

 余談であるが、同中学二年生である須賀京太郎も、その頭の悪い秘密結社に入団していた。

 一年の時、サッカー部の先輩によって勧誘されたからだ。

 というか、最初は興味がなかったので、やんわりと拒否しようとしたのだが――

 「あ”? お前裏切り者か? 裏切り者は首置いてけ、なあ! リア充だろう!? なあリア充だろお前!!」

 ――こんな感じの飛躍した理論で威嚇され、強制的に加入させられていた。

 踏み絵みたいなものなのだろうか。

 『彼女もいないしリア充でない筈なのに決め付けは酷い』とか思っていたが、敢えて言葉にすることはなかった。

 先輩の目が血走り、飢えた野犬の様で大層恐ろしかったのだ。

 どーでもいいだろうが、“革非同”はクリスマスにも似たような活動をしていた。アホなのだろう。


 それはともかく、バレンタイン・デー前夜。

 宮永咲は自宅でバレンタイン用のチョコを作ろうとしていた。


「まずは……出来るだけ細かく、大きさを揃えて、っと」


 下準備を終えた折に、そう独り言ちた。

 そして、まな板(胸部的な意味ではない)の上に、市販のクーベルチュールチョコレートを配置してカットする。

 細かく刻むのは、熱が通るまでに時間が掛かり、風味が飛んでしまうのを防ぐ為。

 また、大きさを揃えるのは、湯煎の時ダマにならないようとの配慮だ。


(……これ位でいいよね)


 刻んだチョコレートをボウルに移し、予め用意しておいたお湯で湯煎。

 温度管理はしっかりと行う。

 何故なら、温度管理が雑だと、ここでも風味を損なってしまうからだ。

 勿論、湯気や水蒸気が入らないよう注意は怠らずに。


(これでよしっ――)


 次にテンパリングを開始する。

 温度を計りながら、空気を含ませないよう丁寧に混ぜ合わせていく。


「♪――」


 機嫌良く歌を口ずさみながら。

 ちなみに、曲は『ヒメムラサキ』だった。

 特に意味は無いが、ヒメムラサキはワスレナグサの別名だ。


「♪――、♪――」


 歌いつつテンパリングを終え、チョコレートを型へ慎重に流し込む。

 余ったチョコレートも味見用件自分用として別な型へ。


(あとは冷蔵庫で固めて……)

(ホワイトチョコでデコレーションしてラッピングすれば――)


 ――完成だ。
 
 箱と包装用紙、飾りの白い薔薇を模したリボンは既に用意していた。


「さて、と……」


 そう呟き、固まる迄の時間を潰す為、バレンタイン特集が掲載されたティーンズ雑誌を手に取った。


(……)

(参考にだけどね……)

(うん、単に、あくまで、参考までに、読んでおかないと――)


 椅子に腰掛け、ぱらぱらと頁を捲り、目当ての特集を探す宮永咲。

 参考までと考えていた割には、真剣な眼差しだった。


(ん……あった、あった)

(男性がグッとくるチョコの渡し方ランキング――)


 《1位、恥ずかしそうにもじもじしながら》

 《2位、顔を赤らめながら「義理チョコじゃないからっ」と言われながら》

 《3位、顔を赤らめながら上目使いで》

 《4位、――――――――――――


 ――総じて、羞恥心を顕すのが重要らしい。

 振る舞いが大事なのだろう。

 関係ないが、ツンデレぽいのはランクインしてなかった。

 やっぱりツンデレは駄目だ。特に他意はない。


(……)

(……)

(……なるほどー、なるほどー)


 感心しながら、テーブルの上の湯呑みに手を伸ばした。

 お茶で喉を潤し、頁を捲る。


(次は――《ホワイトデーのお返しについて》)


 目を通すと、雑誌には――。

 《ホワイトデーのお返しいらない。代わりにデートしてほしい》と、お願いするとか書いてあった。

 意中の彼をゲットするのが目的だったら、これ位した方が良いとの事。

 《彼ものんびり考えるよりドキドキ度が増すのでは?》とかも書かれている。


(でーと)

(……)

(いや、いや、いや、いや)

(……)

(でも……)

(……)

(いや……やっぱりこれはないかなぁ……そーいう目的じゃないしね……)

(……)

(大体、意中の彼とかそーいうのじゃないし、うん)


 混乱しかけた思考を仕切りなおす為に、首を左右に振った。

 更にぺらぺらと読み進めていき――

 ――ふと目につく、《チョコには気持ちを込めるもの》との文字。


(気持ち、かぁ)

(……気持ち)

(…………気持ち)


(……、……、……、……)


(そうだ――)

(チョコに自分の血を混ぜ――――)

(――――――るわけがないよっ! そもそも作り直しになるし!)


 内心で一人ノリツッコミを入れ、血液混入とかいう案を打ち消した。

 頭が沸いているのだろうか。

 というか、血って何だ。かなり怖い。

 それは呪術や黒魔術、魔女の儀式染みた類のものの筈だ。

 例えば反動で不幸になったり、人を呪わば穴二つ的な摂取した相手を操る系のサムシング。


 ――――――

 ――――

 ――


 そうして、雑誌を読み進め、それなりに時間が経った頃。


(あっ、そろそろかな)


 冷却していたチョコを冷蔵庫から取り出した。

 確認をしてみれば十分に固まっているようだ。


(さて、仕上げに、っと……)


 柔らかめのホワイトチョコが入ったコルネを絞り、文字を書いていく。

 “Dear”――

 ――と、そこまで書いて手が止まった。

 文字を食い入る様に見つめる彼女。


(……)

(Dear……)

(ディアー……)

(でぃあー……)

(いみは、あい――)


 ふと、そんな思考が脳裏に過ぎった。

 冷静さを取り戻したつもりだったが、先程の微妙に茹だった思考が残っていたらしい。

 次第に血が顔に昇っていくのを自覚し、頬が熱を帯びる。

 彼女の脳内劇場は色々と酷いことになっていた。

 文字に起こすのは個人情報の視点から却下。


(――ち、ちがうの。そういうのじゃなくて)

(ほら、なんていうか、もっと、べつの――)


 妄想を打ち消す為に、震えるように首を横に振った。

 更に、誰にともなく内心で言い訳を漏らす。
 

(……ほら、あれ)

(……何ていうか、その)

(……何か他にある筈)

(……そう……たとえば義理、とか)


(――それがあった!)


(ナイス私……それ以外の意味なんてきっとない)

(毎年のことだし……ないったらない)


 一応、チョコを渡す事自体は、小学生高学年以来からの恒例行事ではあった。


(それに、なんだかんだとお世話になってるし)

(……)

(あ、でも勉強を見てあげてたりするから、こっちからも世話をしているのかもしれない)

(……)

(じゃなくって――)

(お世話になっている人にチョコをあげるのは、何も可笑しくはない筈)

(その証拠にお父さんと、京ちゃんのおじさんの分も用意してある。ちゃんと市販の別のやつを)


 精神集中するかの様に目を閉じ、むむむっと眉根を寄せ、自分にそう言い聞かせる。

 頭を冷やし――ホワイトチョコで“Dear”の後に、幼馴染の名前を書いた。

 僅かに手が震えた気がしたが、錯覚だろう。


(これでよしっ、我ながら上手く書けた――)


 綺麗に書き上げた手際を自画自賛。

 ほっと小さく息を吐いた。


(後はラッピングだけど……)


 《チョコには気持ちを込めるもの》

 そのフレーズが頭の片隅に引っかかっていた。
 
 静かに両の瞼を落とし、思索を巡らす。


(……)

(……、……)

(……、……、……)
 

 不意に。

 ぴこんと宮永咲の角っぽい何かが上を向いた。

 何か良い案が思い浮かんだようだ。


 チョコレートを見つめ、深呼吸を一つ。

 次に、彼女は唇を指で確かめるように一度撫で――理論武装を開始した。


 ――雑誌に書いてあるなら仕方ない。

 それが作法というものなのだ。

 しない方が常識的でないのだ。

 常識外のことをするのはいけないのだ。

 礼儀作法はちゃんと守りましょうって、しょうがくせいのときどうとくでならったのだ。

 だからしかたない。

 これはしないといけないことなのだ。きっと。

 なにもまちがってなんかない。かんぺきだ――


 当方に迎撃の用意あり。覚悟完了。


 意を決し。

 心を定め。


 宮永咲は、甘いチョコレートへ、やや上気した顔を、そっと寄せ――――


 ■□■


 そんなこんなで後日。

 バレンタイン・デー当日の放課後、一緒に下校している際。


「……京ちゃん……こ、これ……バレンタインチョコ――――義理だけどっ」

「お、マジか。今年もくれるのな」

「ん……優しい幼馴染に感謝するよーに! あと、こっちはおじさんに渡してあげてね」

「さっすが、咲様仏様……謹んで受け取らせていただきます」


 そんな雑誌の特集を、全く活かせれていない会話があり。

 ある意味で、いつも通りの二人がいたとかいなかったとか。


 尚、更に後日。

 チョコを受け取った事がどこからか“革非同”に漏洩し、須賀京太郎は裏切り者として粛清されかけた。

 必死に義理だと釈明したが、当然聞き入れてもらえず、追い掛け回されるハメになった。

 もし次があれば、人目のある所で貰うのはやめよう――と、誓ったとか誓わなかったとか。


                                                 ――了

うまるの海老名ちゃんがかわいかったのが悪い
本日分終わり

色々あったけど生きてます、当初の予定通り1スレ内で終わらす予定は崩さないつもりっす
というかどうやって書いてたっけ……なわけで思いつきのリハビリ


 『俺、もっと麻雀強くなれるかな』


 かつて彼――須賀京太郎はそう零した。

 最早残すところ最後の一年となった高校生活、偶々二人きりだった清澄麻雀部の部室で。


 『京ちゃんは、きっと強くなれるよ』


 と、私――宮永咲は彼の言葉に応えた。


 あまりに安易に。

 酷く自分勝手に。

 どうしようもなく浅はかに。

 ――そう口にしたのだ。


 その時の、少し困ったような、そしてどこか儚げな彼の笑顔を今でも憶えている。


 私は、分かって、いなかった。

 近さ故に彼を理解しているつもりになって、その時、真実彼を理解できていなかった。


 彼があの時、笑顔の裏で。

 どれ程強さに惹かれ。

 どれ程強さに憧れて。

 どれ程強さに飢えて。

 それを狂おしいまでに渇望していたのかを。


 強さを望む彼の――否、強さを望む男の人の想いは、ある種狂気すら孕んでいる。

 私の――否、きっと女の身では、畢竟理解出来やしない領域で、彼らはただ強くあることを、己のあらん限りの全てをもって希求している。

 弱い自分を殺したいとまで思い、呪っている、憎悪していると言っていいだろう。


 どうしようもない。

 本当にどうしようもない、強さへの衝動、渇望。

 それは彼と私、男と女、雄性と雌性の間に横たわる決して埋められぬ断崖。


 なんで私は言ってしまったのだろうか。

 あの時、あの場所、清澄麻雀部で。

 きっと誰より強くありたい、皆に追いつきたいと願っていた彼に、「強くなれる」だなんて。

 どこか寂しげな彼を励ましたい、ただ慰めてあげたいだけだったのに。


 あまりに浅慮だった。

 どうしようもなく愚かだった。

 彼にしてみれば、「弱い」とはっきりと、真正面から無慈悲に断罪されたようなものだ。


 だから、もっと強くならなければならない。

 だから、追いつけるよう足掻かなければならい。

 全身全霊をもって、手を伸ばさなければならない。

 例えそれが、森林限界を超えた人の手に届かぬ山の頂に咲く花であっても。

 そうでなければ――清澄の看板に泥を塗ることになる。

 内に激しさを秘めた彼は、きっとそう思っていたのだろう。


 強さ。

 強さ。強さ。

 強くあるということ。

 きっと、強く、なれる。


 彼にとって楔に、縛鎖にもなったであろうその言葉。


 言葉、言の葉、“言霊”。

 良き言の葉は良きものを招き、悪き言の葉は災いを招く、という。

 あの時の私の言葉が、愚かな悪き言の葉が、決定的に彼を縛る呪いとなってしまったのだ。


 最後のIHが終わり、高校卒業後、大学進学から彼は徐々に変わっていった。

 足繁く雀荘に通い、強くなっていった。

 長期休暇の度に、県外に旅打ちへ赴くようになった。

 時に高レートと分類される怪しげな賭場にすら通っていたようだ。


 勿論、止めようとした。

 何度も口喧嘩をした。

 その時、彼の口から強くありたい理由をはっきり聞いたのだ。


 結局――彼は止まらなかった。

 進む事をやめようとはしなかった。

 同じ地元の大学へ進学した私は、それを見ていることしか出来なかった。


 そして。

 強さと引き換えに。

 まるで等価交換のように。

 かつての柔らかな彼が消えていった。

 それはぶっきらぼうだけど、確かにあった優しさだったり。

 春の陽だまりのような暖かさだったり、かつて笑い合い、交わし合った、穏やかで幸せな彼の色。


 自分自身を削るように。

 細い針の端緒へ留まるように。

 己のあらゆるものを犠牲にして、彼は望みに手を伸ばした。


 私はどうすれば良かったのだろうか。

 彼が、彼自身の望む通りに強くなったと、単純に手を取り合って喜べば良かったのだろうか。


 ――そんなことは到底無理だ。

 できるわけがない。決して。


 泣いて縋れば良かったのだろうか。

 哀しかった。

 只々痛ましかった。

 止まって欲しかった。

 昔のように笑って欲しかった。


 罪悪感に苛まされた。

 ――だって彼にそうさせたのは、他ならぬ自分の言葉だったのだから。


 矛盾だ。

 手酷い不義だ。

 「強くなれる」なんて無責任に言っておいて、いざ彼が強くなろうとすれば哀しむなんて。

 彼にしてみれば、理屈の合わない裏切りでしかない。


 これは、きっと、どうしようもない二律背反だったのだろう。

 私は女――彼は男。

 同じ人間であっても、大元で相反する異性。


 彼を灼く、狂おしいまでに飢餓の炎を、その渇望を。

 私はどのようにしても等しく理解は出来ない。


 だから。

 あんなにも安易に、あんなにも自分勝手に、あんなにも浅はかに。

 『きっと強くなれる』なんて言ってはいけなかったのだ。きっと。


 そう今でも絶えず後悔している。

 出来るなら自身を切り裂きたい程に。死にたい程に。

 もしも、そうもしも、やり直す事が出来るならば、この命を賭けていいと想う程に。

 きっと彼には、どのようにしても等しく理解できない程、狂おしく飢え、焦がれ想っている。


 そして今。

 尽きぬ悔恨を、哀しみを、抱いたまま。

 私は――彼、須賀京太郎と再会した。


 『裏』と呼ばれる――金と暴力が支配する賭博(ギャンブル)。

 私が現在なった『表』と呼ばれるプロと対極に位置する世界。

 時には人の生き死すら左右する、そんな麻雀に生きる住人――玄人と呼ばれる裏プロとなった彼に。

ヘルカイザールートかと思ったが、そっちだったか

あと1スレ内で終わらせる予定だとしたら、ワシらは書き込まんほうがええんかいのう


■□■


 ――そこまで読んで、須賀京太郎はノートをゆっくり閉じた。

 これ以上はやばい、根拠はないがそう勘が働いたからだ。


 某日、宮永家、宮永咲の部屋。

 ノートを閉じたままで固まっている須賀京太郎の顔色は、心なしか悪い。


京太郎(……咲が席を外したのを好機とみて、エロ本漁り事件の報復に本棚を漁ってたらやばい物を発見してしまった)

京太郎(……)

京太郎(……)

京太郎(……もしかしなくても、これは黒歴史ノートってやつか? Vol3ってことは三冊目?)

京太郎(……)

京太郎(……)

京太郎(……本名そのままで創作するのはどうななんだろう――ボカせよ。そして何で玄人なんだ)

京太郎(……)

京太郎(……)

京太郎(……ってか、これはもしかして、見てはいけないものを見てしまったんじゃないだろうか?)


 ――その通りである。

 須賀京太郎が読了した事。

 それを宮永咲が知った場合、彼女は悶絶するだろう。

 例えば、ベッドの上で枕に顔を埋め、足をばたばたさせながら。


 まあ、それですめばよいのだが……。

 暫く口を聞いてもらえないかもしれない。


 落ち着けと念じ、目を瞑り眉間を親指でほぐしてみる。


京太郎(……とりあえず、元にあった位置に戻して見なかったことにするか)


 ――そう決断した矢先。

 がちゃり、と、ドアの開く音がした。

 須賀京太郎が思わず振り向くと、あっけにとられた宮永咲がいた。

 彼女の視線の先は、件のノートをしっかり補足している。


京太郎「――げっ」

咲「――えっ」

京太郎「……」

咲「……」

京太郎「……」

咲「あ――」

京太郎「……あ?」

咲「ああああああああああああああああああああああああああ!!」


 およそ女の子が発してはならないだろう叫声が部屋に響いた。

 そして、彼女の普段のトロさからは考えられないような俊敏さをもって、瞬く間に手元ノートを奪取される。

 それはもう凄い勢いで。


咲「きょ、きょうちゃん、み、み、み、み、み、みた?」

京太郎「……あー、えっと、うん、まあ……見たな」


 シドロモドロに彼女に詰め寄られ、現場を押さえられたならば誤魔化すのも悪手かと判断し、白状した。

 その瞬間――宮永咲の顔色が羞恥の色に染まった。


咲「きゃ――」

京太郎「……きゃ?」

咲「きゃああああああああああああああああああああああああああ!!」


 叫声第二弾。

 同時に彼女は再び謎の俊敏さを発揮し、自分のベッドにダイブした。

 そうして、素早く布団の中に潜り込む。穴があったらなんとやらだろうか。


咲「みられたみられたみられたみられたみられたみられたみられたみられたみられたみられたみられたみられた――」


 布団から壊れたテープのように呻き声が発せられていた。

 ベッドに近づき、努めて明るく膨れた布団に声を掛けてみる。


京太郎「咲――俺のエロ本の件とこれで相殺な」

咲「ううううううううううううううううううううううううううぅ、きょうちゃんのばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばか――――」


 ばか――とリピートする状態にシフトチェンジ。
 
 微妙に幼児退行している気がする。


京太郎(ああ――これは機嫌を直してもらうのに苦労しそうだ)

 
 そう思い、溜め息を零した。

 彼女にしてみれば、ノートの内容ではないが、正に『出来るなら自身を切り裂きたい程に。死にたい程に』なのかもしれない。


 ――尚、実際、須賀京太郎の予想通り、宮永咲を宥めるまでに数時間を要した。
 
 精神的ダメージ大であろう黒歴史ノートを漁ってしまったのが、運の尽きだったのだろう。



                                                 ――了

>>822
気にしなくてOKっす調整するか次立てたら立てたで別なの書いたりすると思うので

寝ますー


 松実館、遊戯室。


京太郎「――――ッ」


 須賀京太郎は対面の高鴨穏乃を視界に収め、気圧されたように息を呑んだ。


 陽炎の如き気迫を幻視させる矮躯。

 油断なく真一文字に引き締められた口元。

 不撓不屈の闘志と熱情を確と燈す、凛々しい眸。


 ――――強敵だ。


 かつてのIHで見た事から既知ではあったが、改めてそう認識した。

 須賀京太郎が良く識る強者――宮永咲とは、ベクトルが異なるだろう強さ。

 そんな強さを、高鴨穏乃は須賀京太郎に確かに予感させた。


 一度深く息を吸う――酸素を脳に。

 次いで歯を食い縛る――力を四肢に。

 そして、『臆すな、死ぬぞ』と、やや大袈裟に己へ言い聞かせる――猛き戦意は胸に。


 高鴨穏乃。

 敵手はその姓(かばね)を体現するかのように、遥か高みを飛ぶ存在。

 一方、己――須賀京太郎は地を這う存在だ。

 その差は歴然としている。

 彼女の能力の一端は、今日だって見た。

 きっと今は届かぬ相手だろう――そう思う。


 ――――しかし。

 そんな事は立ち上がらぬ理由にはならない事を、須賀京太郎は知っていた。

 負けることが恥ではない、戦わぬことが恥なのだという事を判っている。

 進む者が頭を垂れることは、その時点で敗北を意味し――だからこそ、誇り高く顔を上げ闘わねばならぬ事を理解している。


 ――ヒーロー見参。ヒーロー見参。ヒーロー見参。

 心の中で三回唱え、コンセントレーション。

 闘いに臨む為、思考を切り替えた。

 四角の卓――この狭き戦場に、真実必要なそれに。


 自然と、須賀京太郎の口の端が釣り上がった。

 笑みが零れる。

 獰猛かつ純粋な笑顔だ。

 一説では、笑うという行為は獣が牙を剥く、そんな攻撃的な行為を原点にするという。

 それを正に証明するかのような笑顔。


 ちなみに――“咲”という字は“笑”の古字である。

 須賀京太郎の知るその文字を名に持つ少女は、そんな凶悪な笑顔をしない設定なので注意だ。

 むしろ、時折彼女が見せる花が咲いたような、その名を示すかのような笑みを、須賀京太郎は嫌いではなかった。


 ――それはともかく。

 今日、高鴨穏乃――彼女の背を借り、いつかその背を超え、己も高く飛ぶ。

 須賀京太郎はそう決意し、掴んだ白を宙空に投げ――――。


 ペンホルダーといわれる卓球用のラケットで、その白――ピンポン球を強かに、そして回転をかけながら打ち放った。


 そう、旅館といえば、卓球である。

本気で死にたい……中断


■□■


憧「というか、二人とも何でこんなに卓球上手いのよ……」


 接戦の後、固く握手を交わしている須賀京太郎と高鴨穏乃を眺めながら、新子憧はそう呟いた。

 もっともなツッコミだ。しかし、そのツッコミは無粋というものだろう。

 二人とも文化部に所属しているものの、わりと体育会系な人種だからだ。

 言い方を変えれば脳筋枠。無駄に運動神経良さそうだし。


 レベルを上げて物理で殴れ。

 これは最も効率的かつ効果的な戦法の一つである。

 まあ、高鴨穏乃の場合、特性無効化して物理で攻める、という方が正しいかもしれない。麻雀的に。


 ――尚、試合中。


穏乃『山の頂上に立って知るのは、更なる山の深さなり!』

京太郎『雑草などという草はないッ!』


 とか。


穏乃『真剣勝負を制するものは、技術でも体格でもない!』

京太郎『何だかしらんが、とにかくよし!』


 とか。

 そんな感じの、噛み合ってるのかどうかよくわからない謎テンションで、二人ともノリノリだった。


 ついでに、どうでもいいかもしれないが、試合は高鴨穏乃の勝利で終わった。

 勝負を分けたのは、彼女の機動性。山育ちの本領発揮だ。

 須賀京太郎では、速さが決定的に足りなかったのだ。

 気品優雅さ勤勉さはともかくとして、情熱思想理念くらいは有していたのだが、この世の理は即ち速さなのだから仕方ないだろう。

 どこぞの世界の兄貴も、そう言っていた。速いってことは偉いのである。


京太郎「俺は毎日走ったり、筋トレしたりしてるしなぁ」

穏乃「私も毎日走ったり、山で遊んだりしてるからなー」


 新子憧のツッコミに「ねー」と、顔を見合わせ、暢気げに頷き合う二人。

 山と筋トレって凄い。

 物理面が鍛えられる上に、多分麻雀も強くなる。

 この理論からすれば、この世界の登山家や格闘家は、潜在的な雀豪だったりするのかもしれない。

 麻雀プロに無駄に鍛えあげられた身体を持つ人間がいても、何も可笑しくはないのではないだろうか。

 南浦プロとか大沼プロとか強そうだし。武道とかやってそうである。

 何かの間違いで変身とかすることになれば、怪人と闘えそうだ。

 むしろ彼らが怪人枠かもしれないが。


憧「何その卓球やってる人とか、他方面に喧嘩を売るような台詞……」


 気のせいである。

 パロ元は全て応援しております。いや本当に。


憧「大体いつの間に、そんなに仲良くなってるの? 男は狼だから気をつけないといけないのに……」


 監視のつもりだったのだろう。

 そういう理由で卓球を観戦していたらしい。


穏乃「憧、京太郎は良いやつだよ? 今日の朝とか一緒に山で走ったし」

京太郎「俺、危うく遭難しかけたけどな――穏乃は身軽すぎ。走るっていうか、木の上飛んでたぞ」

穏乃「鍛えてますから! シュッ!」


憧「え……? もしかして、それだけで?」

穏乃「そうだよ?」

憧「しずは簡単に信用しすぎ!」

穏乃「えぇー、一緒に遊んだら――ほらっ、友達!」


 ノリを合わせ、イェイとハイタッチする高鴨穏乃と須賀京太郎。


憧「小学生かっ!?」

京太郎「つーか……あー、えっと……新子さんは何でそんなに警戒してるんだ?」

憧「ひぇっ――――い、いきなり私に話し掛けないでよっ! そしてそれ以上近付かないで!」


 急に話し掛けられ驚いたのか、高鴨穏乃の背に隠れつつ、須賀京太郎を睨む新子憧。

 あたかも毛を逆立てた猫のようだった。

 今にも「ふしゃー!」とか威嚇してきそう。


 そんな新子憧の反応に、須賀京太郎は微妙に傷つきつつ、何となく既視感を覚えた。

 そう、これは確か……と、記憶を探り――既視感の原因を思い出す。

 中学校に入学したばかりの頃、宮永咲が発していた雰囲気に、良く似ている事を。

 縄張りに踏み込むな、パーソナルスペースを潰すな、と言わんばかりの雰囲気。


京太郎(そういや、あん時は『須賀くん』だなんて急に苗字呼びになったりしてたなぁ……何時の間にか戻ってたけど)


 あれは何だったのだろう――と考えながら、須賀京太郎は何気なく室内を見回した。


京太郎「あれ? そういや……」

穏乃「ん? 京太郎、どうしたの?」

京太郎「ぶちょ――じゃなかった、久さんは?」

穏乃「あれ、最初はいたよね……憧?」

憧「……二人が試合に熱中してる時に、遊戯室を出ていったわよ? 準備してくるわ、とか言って」

穏乃「準備?」

京太郎「あー、何となく読めてきた……」


扉「すぱーん」


 と、良い音がして、タイミングよく扉が開け放たれた。


久「お待たせっ! 真打ち登場!」

玄「松実玄! ただいま参りましたっ! Gカップ美女がいると聞いて!」


 シュタッ、びっ!

 ――と、例のポーズを決める松実玄。

 やたらハイテンション。

 そして、見ていると何故か残念な気持ちになる、そんな少女だ。

 某高校の黒髪クールな美人さんとはベクトルが異なるが、“残念度数(ライトニング=サン)”の絶対値は、同等と考えてもいいだろう。

 見た目は黒髪ロングの正統派美少女であるのに、大変勿体ない。

 何故おもち好きという属性を、原作で付加されたのか。

 それだけで一気に色物キャラになるというのに。


玄「……あれ? ……あれ?」

久「さて役者は揃ったわね」

京太郎「久さん、段々強引さに磨きが掛かってきてますよね?」

久「今更ね。端折るとこは端折る。そういうものよ」

京太郎「というか――久さん呼びに凄い違和感あるんでやめていいっすか? 何だか発音しにくいですし」

久「須賀君、一度決めた事を覆すのは男らしくない。駄目よ、許可しない」

京太郎「あっ、やっぱり駄目なんすね……ぶっちゃけ間違えそうになるんですよね」


玄「あの……Gカップ美女は何処に……?」

久「……松実さん」

玄「はい――あっ、玄でいいですよ? 苗字だとおねーちゃんと紛らわしいですし」

久「あら、そう? じゃあ、改めて玄さん」

玄「はい」

久「Gカップ美女がいると言ったけど――あれは嘘よ」

玄「…………えっ?」


穏乃「あ、『うあああああああ!』って返すんじゃないんだ」

憧「……何が始まるの?」

京太郎「……第三次大戦でない事は確かだなぁ」


玄「……えっ? ……えっ?」


京太郎「何か可哀想なくらい狼狽してるんですけど。涙目だし」

久「玄さん、残念ながら、あれは嘘なの」

憧「大事な事なので二回言いました?」


玄「あふぅ――――――」


穏乃「あ、玄さんが膝から崩れ落ちた」

憧「IH準決勝の時みたいな目をしてブツブツ言ってるわね……大丈夫なの? これ」

京太郎「いや、ちょっとメンタル弱すぎ!」

久「ふむ、燃え尽きた時の須賀君と似た反応ね。貴方もあんな感じなのよ?」

京太郎「えっ、マジっすか――というか、冷静に観察してないで、何とかして下さい。こっちまで罪悪感が」

久「もう……仕方ないわねぇ」


久「玄さん、最悪な時にもラッキーな事は起こるって事知ってる?」

玄「じーかっぷびじょじーかっぷびじょじーかっぷびじょじーかっぷびじょ――――――」

久「これ上げるから元気だして、ねっ?」


玄「――――はっ! こ、これは……!!」


穏乃「あっ、復活した」

憧「捨てたドラが返って来た時みたいね」


玄「ふぉぉぉぉぉぉぉ――――ッッ!」


京太郎「ブルース・リーばりに震えてるんですけど、何あげたんすか?」

久「和のバストアップ写真よ。浴衣とか水着とかメイド服とか厳選した諸々」

京太郎「何でそんなのを久さんが……」

久「企業秘密、ちなみに貴方には絶対あげないわ」

京太郎「うわっ、何それ、汚い、流石汚い、鬼、悪魔、ロッカー!」

久「あー、それ以上五月蝿いと――クリムゾンスマッシュでシメるから」

京太郎「《EXCEED CHARGE》はマズいっす。灰化します。そして、お願いですから、そんな不吉な事言わんで下さい」


久「さて、玄さんも復活したことだし――お悩み聞かせてもらおうかしらっ!」

京太郎「あっ、やっぱ、やるんすね」

穏乃「悩み?」

憧「禄な事にならなそうだから私帰っていい?」

久「却下」

玄「ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ――――――ッッ!」

京太郎「テンションの差が激しいっすね……」

久「玄さん、燃えよドラゴンごっこはもういいわ」

玄「あ、はい」

京太郎「そういや、あのテーマ曲が流れると、テンション上がるのは何なんですかね」

久「ちなみに、私は死亡遊戯の方が好きよ」


久「とりあえず最初は玄さん――悩みはない?」

玄「モチコース、おもちの事です!」

穏乃「即答!?」

憧「玄の病気がまた始まった……」

京太郎「かつてない親近感をこの人に覚えるのは何故だろう」


久「はい、玄さんにはお薬と荒川病院の紹介状出しときますねー、次」

玄「まだ悩みを具体的に言ってないのに!?」

久「精神的疾患は、病院の方が適切な処置をしてくれるんじゃないかなーと思うのよ、私」

玄「悩みはなんと――おもちの素晴らしさを皆が分かってくれないのですっ!」

久「無視したわね、この娘」

玄「何とかできません? 死活問題なので……」

憧「そこまで悩む事なんだ……」


久「……あー、須賀君、同じ趣味でしょ? 相手してあげて」

京太郎「やっぱぶん投げるんっすね。そんな気はしてましたけど」


玄「……須賀君はおもちの素晴らしさを分かってくれる?」

京太郎「あー、まあ、おもちが素晴らしいのは当然ですけど……」

玄「だよね! だよね! おもち is GOD だよね! 蛇神も目じゃないよね! 皆がおかしいんだよね! 大きければ大きいほど良いよね!」

京太郎「ハイテンション過ぎてちょっと怖い」

久「再度言うけど、須賀君もたまにあんな感じだから」


穏乃「私は別になくてもいいと思うけどなぁ、大きいと動き辛そうだし……」

憧「というか、これセクハラじゃない? さいてー……」


京太郎「何か凄いとばっちりを受けてる気が……それはともかく、最近太腿もいいかなぁとか思いますけど」

玄「えぇっ太腿!? 邪道だよ!?」

久「……須賀君、頭でも打った?」

京太郎「いや、打ったというか、なんか衝撃的な夢を見たような……思い出そうとすると頭が……」

玄「おもちの方がすばらだよ!? 例えばこれとか――――」

卓球は映画のピンポン結構面白かったのでつい
ちょい限界、本日ここまで

ピンポンアニメもいいっすよね原作知らない人もマジオススメ
そういや咲→笑からスマイルでこじつけて青春卓球ものもありなんじゃないっすかね

最優先事項があるので、ながらですけどボチボチ書きます


久「さて、須賀君が再教育されている間に、次いきましょうか」

穏乃「京太郎、凄い困ってる感じですよ?」

久「こういう時の為にいるんだから、へーきへーき」

憧「それでいいんだ……」


久「じゃあ次は――高鴨さん、貴方に決めた!」

穏乃「へ? 私?」

久「そ、何か困ってるとかあるわよね?」

穏乃「えっ、と――」


穏乃「んー……」

穏乃「んー…………」

穏乃「………………うん」


穏乃「無い、ですっ!」

久「いや、そんなにずばーんと元気に言われても」

憧「……しずは細かい事うだうだ悩まないからねぇ」


久「うーん……ほんと些細な事でもいいんだけど?」

穏乃「そうは言われましても……」

久「ほら、例えばカップリングで困ってるとか、そういうのとか」

穏乃「カップリング?」

久「そう、カップリング。所謂BLの」

憧「ふぁっ!?」

穏乃「……びーえる? 憧、びーえるって何?」

憧「わ、私に訊かないでっ!」

久「ふむ、BLっていうのはね――」


京太郎「そこっ! ちょっと待ったぁ!」

久「あら……須賀君、玄さんはもういいの?」

京太郎「あっ、メル友になりました。おもちの素晴らしさは、また後でゆっくりと、って感じです」

玄「えへへ……おもち友達が出来た……」


久「順調にメル友増やしてるわね……何かのフラグ?」

京太郎「特に他意がある訳では……それより、何教えようとしてんですか? その道は冥府魔道っすよ」

久「でも素質はありそうでしょ? ソウルジェムも濁らないし、セーフセーフ」

京太郎「いやいやいやいや、ソウルジェム関係なくアウトですから!」

久「淫夢の魔女。その性質は腐心――な感じに成長する筈よ」

京太郎「結局魔女化してるじゃん!」


久「貴方やっぱり、小さい娘の場合庇うわね……まぁ、中の人が某弁当アニメでノリノリで演じてたじゃない?」

京太郎「最初から腐ってて、更に、クリーチャー方向へメガ進化していった別作品のキャラと、一緒にしてはいけない」

久「ちなみに未視聴未読なら見る順番は、アニメ→原作の順番がオススメね」

京太郎「逆だと東レほどではないけど、もにょりますもんね――って、ステマですか? そしてこのネタ分かる人少ないですよ、間違いなく」


久「……」

京太郎「……」


久「で、話を戻すけど――高鴨さん、何かないかしら?」

京太郎「収集がつかなくなったから、投げっぱなしジャーマンしやがった」

憧「あ、続けるんだ」

穏乃「えー、えっ、と――」

玄「穏乃ちゃん、がんば!」

京太郎「いや、別に頑張らなくても……」


穏乃「あっ!」

久「何か閃いた?」

穏乃「強いて言うならば――皆がジャージの下を履けって五月蝿いのが困りますね」

玄「だって――ねぇ、憧ちゃん?」

憧「当たり前でしょうに」

久「正論ではあるはね」

京太郎「確かに寒そうだもんなぁ……まあ、上はジャージ、下はパンツのみの組合せは無しだろ」


穏乃「――えっ?」

京太郎「ん?」


穏乃「……ぱんつ?」

京太郎「……うん?」

穏乃「?」

憧「ハァ……まったく、しずは……」

玄「あはは……」

久「あー、そっち方面なのね……」


久「はい、須賀君はちょっと隅の方へ行きましょうねー。しっし」

京太郎「えっ?」

玄「なるほどー、なるほどー……」


玄「須賀君、一緒におもち談義しに行こう?」

京太郎「えっ、ちょ、いきなり……あれ? またフェードアウトなの俺?」

玄「ほら、こっちこっち」


久「さて、須賀君は追っ払ったし……高鴨さん」

穏乃「?」

久「もしかして貴女――パンツ履いてない?」

穏乃「はい、履いてないですよ?」

久「いや、可愛く小首を傾げて当たり前ですみたいな目をしても、それはなしだから」


久「ハァ……高鴨さん、せめてパンツは履きなさい。可能ならスパッツかジャージの下も。ノーパン駄目、絶対」

穏乃「えぇー、でも、ずっとこうでしたし……」

憧「しず……そんなに無防備だと色々と危ないんだから」

穏乃「……憧、何が危ないんだ?」

憧「え゛っ!?」


憧「そ、それ、は、そ、の……しずは可愛いし、男の人は狼だって言うし……雑誌でも……ごにょごにょ」

穏乃「男の人が狼?」


久「ちょっと待って高鴨さん……つかぬことを聞くけど――赤ちゃんってどうやって出来るか知ってる?」

穏乃「む……馬鹿にしないで下さい。もちろん――――コウノトリが運んで来てくれます!」

久「Oh……。何、この子、天使か何か?」

憧「保健の授業とか寝てたような気はしてたけど……本当に知らなかったんだ……」


久「あー、うん、わかったわ。仕方ないわね……」

穏乃「……スマートフォンいじって何してるんですか?」

久「いえ、ちょっと資料とかを検索、っと。漫画でいいわよね……というわけで、竹井先生の性教育よ!」

穏乃「えぇっ!?」

久「あ、新子さんも手伝ってね」

憧「ふきゅっ!?」


 竹井先生講義中――――


「――ほら、ここがこういう感じで」

「えっ?」

「うわーうわーうわーうわーうわー」

「で、こうなって、こう――」

「えっ? えっ?」

「あうあうあうあうあうあうあうあうあう」


 ――――なんやかんやあって講義終わり! 尚、新子先生は役に立ちませんでした。


久「ふぅ……キャベツ畑やコウノトリを無垢に信じている可愛い女の子に、無修正のポルノをつきつけるような快感があったわ」

穏乃「///」

憧「///」

久「あ、これ癖になりそ――玄さん須賀君、もういいわよー」


京太郎「あっ、終わったんすね」

玄「おぉー、穏乃ちゃんが、ちゃんと下を履いてるの初めて見たよ!」

憧「……急遽、宥姉のジャージ借りてきたのよ」

穏乃「うぅ……///」

京太郎「しかも何か羞恥心が芽生えてるぽいし、一体何が」

久「はい、そこ男子、詮索しない――まぁ、これで五月蝿く言われる事はないわね」

京太郎「あー、確かに……久々に解決しましたね。玄さんのは解決したか微妙ですし」

久「久だけに?」

京太郎「あっ、そういうのはいいです。照さんの持ちネタと被るので」

久「えぇー、須賀君のいけずー」

京太郎「かわいく言っても駄目っす」


久「……」

京太郎「……」


穏乃「何で睨み合ってるんだろう……」

玄「仲良しさんだね!」

穏乃「そうなのかなぁ」


憧「あー、漫才をしてるとこ悪いんだけど……」

久「あら、新子さん、何かしら?」

憧「解決したみたいだし、これで解散よね?」

久「ん?」

憧「午後から阿知賀と清澄混合で麻雀だし……その前にお昼食べないといけないし……」

久「んんっ?」

憧「……うん、しず、外にちょっと食べに行かない?」

久「はい、ちょっと待った」

憧「さて、そうと決まったら……しず、お昼何にする?」

久「そこ、露骨に無視しない」


憧「……」

久「……」


京太郎「なんか二人の間に火花が散って、しかもネコ科の動物ぽい背景が見えるんですけど」

玄「きっと須賀君の気のせいだよ?」


憧「竹井さん――私は悩みが特に無いので、解散という事でいいですよね?」

久「またまたー、新子さん、そんな事言っちゃって――実は何かあるんじゃないかしら?」

憧「いえ、無い、です」

玄「えっ、でも憧ちゃん前に――」

憧「――ちょっ! 玄!?」

久「ほら、やっぱり何かあるんじゃない」

京太郎「まあ、誤魔化したい気持ちはわかりますけどね」

久「……どういう意味?」

京太郎「黙秘権行使で」


久「それはともかく――あるなら早く白状した方がいいわよ? ほら、新子さん、ハリーハリーハリー!」

憧「ううううううぅぅ――――」


憧「あー! もうっ!」

京太郎「観念したぽいですね」

久「人間素直が一番よ」

京太郎「それ、天邪鬼な久さんが言っても説得力皆無ですから」


憧「………………………………辛いの」

久「もっと大きな声で!」

憧「――掲示板とかで! 遊んでるとか! そ、の……とか! 好き勝手言われてて! 辛いの!」


久・京太郎「……あー」

憧「……何、その『わかる、わかる』みたいな反応。凄いむかつくんだけど」


久「……新子さん」

憧「……何?」

久「きっと宿命よ、諦めて」

憧「そんな宿命嫌過ぎっ!」

久「あー、あれよ。ガハマさんと同系統だし、ほら、ゆるふわ清純ビッチ系という事で」

憧「ビッ――って、わ、わ、わたし、しょ、しょじょだもん! びっちじゃないもん!」

京太郎「ファッ!?」

憧「あっ――――あっ、ああああああああああ、あんた、なに聴いてんのよっ! わすれなさい! いまの、ほら、いますぐに!」

穏乃「あ、憧が壊れた」

玄「須賀君が凄い勢いで揺さぶられてるね」

久「首がとれそうな勢いなんだけど大丈夫なのかしら」


憧「だっ、だいたい、私だって、好きで、遊んでるとか、ありゃ相当売ってるとか、ハードオナニストとか、言われてるわけじゃ――ぐすっ」

久「はい、新子さん、そこまで。須賀君が目を回してるわ」

穏乃「憧――よしよし」

憧「ううっ……しずぅ」

玄「キマシタワー?」

久「建設しないわよ?」

京太郎「あー、酷い目にあった……」


京太郎「で、久さん、この悩みどうするんですか? あと新子さんが涙目で、めっちゃ俺を睨んでるんですけど……」

久「ふむ……須賀君が睨まれてるのはともかく、ここは――これね!」

京太郎「……眼鏡?」

久「ちなみに伊達眼鏡よ。名付けて――見た目で損をするなら、見た目を変えればいいじゃない作戦!」

京太郎「まんまですね……というか、効果あるんすか?」

久「ふっふーん、見てなさいって――新子さん、ちょっといい?」

憧「うぅー!」

京太郎「凄い威嚇してるなぁ……」


 ・
 ・
 ・


久「――ほら、こんな感じっ!」

憧「ちょっ、押さないでっ!」

京太郎「おぉ……眼鏡を掛けるだけで知的っぽい」

玄「ツーサイドを解いて、ポニーテールにしてるのは何か意味が?」

久「私の趣味よ」

穏乃「憧、私とお揃いだね!」

憧「……しずとお揃い……いいかも……眼鏡も確かに悪くないし……」

久「ほら、これでちょっと遊んでる感じが消えた」

京太郎「あー、まあ、確かに――久さん、ちょっと」

久「ん? 何、須賀君」


京太郎「(……でも、これ、既存の風潮に対しては何の意味もないですよね)」

久「(……本人が気に入ったみたいだから、これでOKなの)」


久「――というわけで、お悩み解決、ぶいっ!」

京太郎「これでいいんですかね……あと決めポーズしてカメラ目線はやめましょう」

久「須賀君もしない? ほら、綺羅星とか」

京太郎「しませんっ」


 ――ちなみに。

 これを機に阿知賀麻雀部で、伊達眼鏡が流行るのだが、まあ、それはどうでもいい話だろう。


 また、ついでであるが、この話の後、麻雀時。

 須賀京太郎は松実宥の眼鏡姿を見る事となり、「……眼鏡もありだな」という言葉を零した。

 そして、その言葉を宮永咲が耳聡く聞きつけ――

 ――――後日、須賀京太郎を誘い、伊達眼鏡を買いに出掛けたりするのだが、それはまた別の話である。


                                           【わたしの、最高の友達(阿知賀麻雀部)編】―― カンッ

エンドタイトルで30分以上悩むとかいう低脳っぷり
本日ここまでー

話の流れ等とは関係ないですが弁明すると、当初から特別扱いする気満々というか、例えるなら愛する者よ死に候え的な何かというか
前も書いたけど一条さんと湊斗さんの様に殺し愛させたいというか……あれ、この理論で進めると……咲ちゃんの胸部は将来有望?
あ、火柱キックの影響で満足して即興で思い留まったとかもないです
交通事故により短期で記憶喪失を繰り返す50回目のファーストキスな京咲なんてなかった

まあ、冗談は置いておいて、ボチボチ書きます


 とある祝日。清澄高校麻雀部。いつもの部室。

 そして部室内に鎮座する、以前迄は存在しなかった日本が誇る文明の利器。

 つまり――炬燵。


京太郎「ふぅ……」


 布団を引き寄せ、炬燵の温もりの中にすっぽりと包まれながら、須賀京太郎は思わずといった風情で息を吐いた。


 ちなみに、何故炬燵が部室にあるかといえば――竹井久が、商店街の福引きで当てたからだ。

 福引き券一枚で一発自摸るあたり、流石“悪待ち”といったところである。

 まあ、当てたところで、六人用の炬燵は、竹井久にとって不要であったのだが。

 家に元々炬燵はあることだし。


 ――となれば。

 当たった炬燵は部室にでも置こうか、となるのは自然な流れであろう。

 そういう訳で、須賀京太郎は竹井久から平日に事前に相談を受け、炬燵を部室へ設置する為、休日の午前から学校に赴いた次第である。


 まあ、雑用雑用アンド雑用とかいうことなかれ。

 須賀京太郎本人から、設置を手伝おうかと言い出したわけで。

 聞いた以上、放っておく程薄情ではなかっただけの話だ。


 また、更に補足しておくと、炬燵の学校までへの運搬は業者に頼んでいた。当然である。

 常識の範疇である手荷物の類ならともかく、かなりの重量がある荷物を長距離運ばせるとかいう行為は、この世界線ではあり得ないのだ。


 ……全自動卓?

 未来仕様で超軽量化されているのだろう。全自動卓回しが捗る。

 そういう設定という事に今した。

 2050年頃ならおかしくはない筈。科学の力ってすげー、という事で一つ。


 ――二人きりの部室。


久「冬といえばやっぱりこれねー……」


 右隣に陣取った竹井久が、卓上に顎を乗せ、だらけきりながら言ってくる。

 全くもって同感であった。


京太郎「ですねー……」

久「須賀君……私、炬燵は日本文化の宝だと思うのよ」

京太郎「いきなり大袈裟っすね」

久「何というか、別種の暖房器具にはない『趣(おもむき)』というものが、あると思わない?」

京太郎「あー、まー、確かに……」


 相槌を打ちつつ、炬燵の上に手を伸ばす。

 卓上の籠に入った蜜柑をとるためだ。

 ちなみに、超高校級の保健委員は関係ない。

 ついでに、中の人はベン・トーの梅様と同じ人だ。MもSもいけるハイブリット仕様なのだろうか。


 それはともかく、炬燵と蜜柑。

 これは冬場に於ける最強タッグの一つである。

 例えるなら、どこぞの舞姫コンビや、東南――青竜朱雀コンビの如し。


京太郎「……ところで、それをノムリッシュ的に言うと?」


 戯言に付き合うか――と思い、どうでもいい事を訊いてみる。


久「アナザーアーティファクトにはない『ウォモス・ムスキ』というものが、他を圧倒すると幻想(おも)わない?」

京太郎「即答っすか。翻訳はえーすね」

久「ふっふーん。翻訳Lv1くらい簡単よ」


 豆知識といい、こういう謎スキルは何なのだろう。

 そしてドヤ顔で誇る事ではないのではないか。

 須賀京太郎は、そんな事を考えながらティッシュを敷き、蜜柑の皮を剥いて一房口にした。


 蜜柑は程良く甘かった。


京太郎「……」

久「……」


 じっと、注視されている。

 何かマズイ事をしてしまったのだろうか。


久「須賀君」

京太郎「何ですか?」

久「あーん――」


 そう告げ、親鳥に餌をねだる雛のように口を開けてくる彼女。


 ……なるほど。


京太郎「……無精しないで自分で剥いて下さい」

久「質問に答えたんだから、それ相応のお礼があって然るべきじゃないかしら?」

京太郎「えー……」

久「ほら、早く、早く――」

久「フライトアテンダントがファーストクラスの客に酒とキャビアをサービスする感じで」

京太郎「時でも止めるんですか?」


 ツッコミを忘れずに入れ、溜息を一つ。

 とりあえず蜜柑を一房――。


久「あ、薄皮も剥いてね」


 ……注文多いな、おい。

 内心で文句を零しながらも大人しく従い、一房彼女の口元へ持っていく。


久「――――♪」


 ぱくり――と。

 ついで、もきゅもきゅと食べながらご満悦な様子だ。


久「あ、どんどん剥いてね」


 ……一房じゃねーのかよ。まあ、抵抗してもきっと無駄だろう。

 経験則からそう予測して、剥く運ぶ剥く運ぶの作業を繰り返す。

 勿論、合間に自分の分も食べはしているが。


 そうこうしていると出し抜けに、ポケットに入れていたスマートフォンがぶるぶると震えた。

 素早く取り出し、画面をタップ――メールだ。


 From:MSSSS

 件名:ReReReRe眼鏡

 本文:昨日の件だが、今部内の後輩に借りて掛けてみたので送る。

 添付ファイル:012i.jpg


 簡潔な本文と、添付ファイル。


京太郎(これはあれか。昨日麻雀の事で質問した後――)

京太郎(眼鏡の話題振った時に、眼鏡似合いそうですよね見たいなーって、冗談でどうでもいい事俺が送ったから返してくれたのか)


 律儀な人だ――と思いつつ、添付ファイルを開く。

 画面に表示される黒髪ロングの美人さん@眼鏡装備。

 切れ長の眼は玲瓏。そして怜悧な眼差し。

 知的な感じが大層強調されている。委員長属性とかありそう。

 あと少しばかり照れた様子。


京太郎(……ふっつーに似合ってるなぁ)


 To:MSSSS

 件名:ReReReReRe眼鏡

 本文:凄く似合ってます。保存しました。


 ――送信。

 暫し後、再度スマートフォンが震える――受信。


 From:MSSSS

 件名:ReReReReReRe眼鏡

 本文:消せ馬鹿者。あと後輩が自分も送れと激しく五月蝿いので添付する。率直な感想でも送ってくれ。辛辣でもいい。むしろ辛辣にしろ。

 添付ファイル:044i.jpg


 ――快活そうな金髪の少女@眼鏡装備。何故か決めポーズ付き。

 IHで見たことがある。白糸台の大将だった彼女だ。


京太郎(あれだな……)

京太郎(似合ってないわけじゃないんだけど……つか、辛辣にしろって)

京太郎(…………)


 To:MSSSS

 件名:ReReReReReRe眼鏡

 本文:眼鏡で打ち消せれていないアホっぽい雰囲気。無理に眼鏡掛けなくていいんじゃないですか? ――なんちゃって。


 弘世菫の期待に応えるため、辛辣な感じで、送信。

 正直、ちょっと気が引けていたりしていた。


京太郎(……文面の最後で、冗談として受け取ってくれるよな?)


 ――受信。


 From:MSSSS

 件名:ReReReReReReRe眼鏡

 本文:もし直接会うことがあったら100回泣かす! 絶対許さない! 絶対に! だそうだ。まあ気にするな。


京太郎(あー…………

京太郎(やっべ――気にするなと言われても、なんか地雷踏んだ気がするんですが、それは)


 残念ながら、きっと気のせいではないだろう。

 直接会わない事を祈るしかない――そして時間を置かず、再度受信。


 From:宮永照

 件名:

 本文:どう?

 添付ファイル:001i.jpg


京太郎(なんで照さんからも)

京太郎(…………)

京太郎(こう改めて見るとやっぱ姉妹だよなぁ……)

京太郎(雰囲気とかはちょっと違うんだけど、全体的に良く似てる)


 余談だが殺し屋の目はしていなかった。

 むしろ営業スマイル全開だ。

 そういえば、スマイルと言えば、公式であった、あの凶悪な笑顔は何なのだろう。

 悪鬼の笑みなのだろうか。小さい子が見たら泣くレベルな気がするのだが。


京太郎(…………)


 To:宮永照

 件名:Re

 本文:似合ってます。まるで文学少女みたいです。


 無難そうな文面を選び――送信。

すいません普通に詰まったオチじゃなくて途中で、これはO星Aさん出したせい間違いない
あわあわの呪い恐るべし、絶対許さない

本日ここまで


京太郎(……今度は地雷踏まないよな?)

京太郎(…………)

京太郎(うん、別に貶めてるわけでもないし、問題ないはず)

京太郎(さっき地雷踏んだのは弘世さんのせいだしな)

京太郎(結構お茶目なとこもあるんだよな……弘世さん。仕方ない)


京太郎(まあ、そもそも発端は――面識ない相手にわざわざ感想を聞こうっていうのが、間違ってるんじゃないのか?)

京太郎(確か大星さんだっけか……)


京太郎(…………)

京太郎(返信から察するに、絶対褒められるとでも思ってたのか?)

京太郎(もし本気だとしたら、どんだけ自分の容姿に自信があるんだよ? って話だよな)


京太郎(…………)

京太郎(そりゃ俺にも辛辣に書いた責任はあるだろうけど、ある程度は事実な上に、空気読んで冗談って受け取れよ)

京太郎(だいたい、100回泣かすとか小学生か。そして何で俺が100回も泣かされなきゃいかんのか。そこまで重罪か?)


京太郎(…………)

京太郎(考えてたら段々腹が立ってきた)


 ――断りを入れるとすれば。

 須賀京太郎は普段なら、その程度で本気で腹を立てる程狭量ではなかった。

 ただ何と言うか――『絶対許さない! 絶対に!』、このフレーズが、やたらと引っ掛かっていた。

 具体的に言うと『それお前関連のネタじゃねーだろ。いいからお前はドーナツでも喰っとけ』みたいな感覚。

 更に何故か、友人である原村和が、びっみょーに馬鹿にされた気もした。

 つまり、狙ったわけではないだろうが、見事に京太郎の神経を逆撫でしていたのだ。


 まあ当然――それが八つ当たり染みた理不尽な感慨である事を、京太郎自身は理解していた。

 件の大星なんとかさんが、実際に怒っているかどうかも定かでない事。

 あれが彼女なりの冗談かもしれない事も判っている。


 それでも、何となく腹が立ったのである。

 ロジックではないだけに、難しい問題だった。


 微妙にサンライトイエロー、もといヒートアップしそうになる感情を宥める為、深呼吸をして息を吐く。

 続いて、件の金髪の少女@眼鏡装備画像が添付されていたメールを、精神衛生上の理由から削除。

 ゴミ箱にポイーだ。


京太郎(落ち着け、女の子相手に大人げない)

京太郎(だいたい直接関わる事なんでまずない。忘れろ忘れろ)


 そうこう考えていると――メールを受信した。しかも三通。

 一通は登録してないメールアドレスだった。受信順にまずは――。


 From:宮永照

 件名:ReRe

 本文:褒めてくれるのは嬉しいけど、他の女の子と比較されると微妙に傷つく。例えそれが私の妹であっても。いや却って妹だからこそ。


京太郎(…………)

京太郎(やっべ、また地雷踏んだぽい)

京太郎(まあ……それは傷ついても仕方ない。俺がわる――――って!?)


 脳内が疑問符で埋め尽くされた。

 次いで、きさま! 見ているなッ! (脳内を)――と、驚愕し、思わずきょろきょろと部室内を見渡してしまう。

 当然、部室内には現在二人しかいなかった。そりゃそうである。


京太郎(…………)

京太郎(照さんってエスパー?)

京太郎(ま、冗談は置いといて、咲も妙に勘が鋭いけど――姉妹だからやっぱそういうとこも似てるのか?)


 性懲りもなく、そんな事を考えながら――。


 To:宮永照

 件名:ReReRe

 本文:申し訳ありません……あと、なんで分かるんですか?


 ――謝罪と疑問をそのまま素直にメールへ乗せて、送信。

 続いて、受信していた別のメールを閲覧。


 From:supernova_hapalochlaenafasciata@(以下略

 件名:ほめろ!

 本文:あわいちゃんお宝画像第二弾を喰らえ!

 添付:044i2.jpg


京太郎(…………)


 ――理解不能理解不能理解不能理解不能。

 理解できるのは、このメールの送り主がきっとアホなのだろう、という事だけだった。

 取り敢えず画像は放置。次。


 From:MSSSS

 件名:迷惑かけるすまん

 本文:淡に須賀のメールアドレスと電話番号がバレた。というか照が教えた。武運を祈る。ああ、淡というのは、さっきの100回泣かす!の奴だ。


 ――あ、なるほど、理解『可』能。

 と、納得しつつ、別に教えるのは構わないが、お知り合いになるなら出来ればあの眼鏡でおもちな人の方がいいなぁ、などと思う。


京太郎(確か、渋谷さん、だっけ?)

京太郎(中々に、すばらなおもちをお持ちの方だった。あと――)


 IHで観た時の印象が、強く残っていたのだ。

 ちなみに珍しい事に、おもちの事だけではなかった。

 何となく曖昧に心惹かれるものがあったのだ――以前松実宥に感じたものと、同種の印象である。


 それはともかく――首を横に振り意識を引っ張り戻し、なんちゃら淡さんとやらのメールを改めて確認。

 添付画像を開くと再びなんちゃらなんとかさん@眼鏡装備。

 今度は決めポーズを変えてきやがっていた。何が彼女をそこまで駆り立てるのか。


京太郎(なんで今度は変身ヒーローぽいポーズなんだ? CV:大塚芳忠さんな相方でもいるのか?)

京太郎(…………)

京太郎(もしそうだとしたら、羨ましいぞ)


 ちなみにさっきのは、そのうち悪魔化しそうな魔法少女ぽいポーズだった。

 あとCVに関しては、串田さんボイスで我慢すべきであろう。どっちも素晴らしいのだから。


京太郎(やっぱり、こいつなんかアホっぽい……)


 改めてそう認識しながら、大星淡のドヤ顔カオス画像を見ていると、不意に電流が走った様に直感した。

 ――自分とこいつはきっと相反すると。


 そう、例えるなら――。

 龍と虎、ジョーカーとエターナル、絶望サイドと希望サイド、ベイ中尉とシュライバー、湊斗景明と足利茶々丸、二階堂連と佐藤洋等々。

 まあ、そんな感じ。ツッコミ所は気にしない。

 単に京太郎の直感を、適当に変換して羅列しただけであるので、特に意味はない上に、実際相反するかどうかも定かではない。


 またついでに、須賀京太郎と宮永咲で敢えて例えるなら。

 雨と花、伊庭いつきと穂波・高瀬・アンブラー、黄金と水銀、凶月刑士郎と凶月咲耶、湊斗景明と綾弥一条、佐藤洋と白粉花等々。

 京太郎主観とも原作ともキャラ付け云々とも、全く関係ない戯言である。気にしてはいけない。


京太郎(…………)

京太郎(本文と件名もむかつく――)


 躊躇なく操作して、大星淡のメールアドレスを迷惑メールリストに叩き込み、メールも返信せず削除。

 須賀京太郎にしては、大層厳しい対応方法だった。

 ファーストコンタクトの印象は重要、という事だ。

 直接会ってたりすれば、また違うのだろうが。


京太郎(さて、もし直接電話してきた場合はどうするか――)

京太郎(…………)

京太郎(ま、流石に面識のない相手に、いきなり電話してくる馬鹿はいないだろ)


 そう楽観し、加えて、もしもが起きれば、その時はその時で考えたら良いだろう――と結論付ける。

 尚、流石にブツ切り着拒とかいう、太古の最恐を彷彿とさせる凍てつくコンボは、発想すらしていなかった為、まだまだ温い方であった。

アルコール入ってるとセーブできてない垂れ流し状態はまずい本日ここまで


+++


 ここで少しばかり時間を遡る。


 竹井久は炬燵入ったまま卓上に片頬を付け、何をするでもなく蜜柑の供給を待っていた。

 頬から伝わる暖かさが心地良く、瞼が重く感じる。

 現に、うとうとと微睡みそうだった。


 後輩――須賀京太郎には、だらしない所をあまり見せたくない気はしていたが、今更であろう。

 端なくも手ずから蜜柑を剥かせて、食べさせてもらっている状況なのだから。

 それ位は久自身判っていたし、事実若干の羞恥を覚えている。

 顔や所作には極力出していないつもりであったが、見抜かれるのも癪だったので、窓の外の景色を見遣っていたりもしていた。


 であれば。

 最初に手ずから食べさせるという要求を、しなければ良かっただけの話であったのだが、『そうして欲しかった』のだから致し方ない。

 あの流れなら京太郎が拒絶しない事は、これまでの経験から予想出来た。

 渡りに船というやつだ。要求しない手はないというものだろう。

 女であり、かつ年上なのだから、掌の上で相手を転がす位の器量は持つべきだという、妙な信念があったりした。

 さながら相手の胸中に毒を打ち込む――程でもないが、心理戦とは斯くあるべし、とも考えていた。


 とはいえ。

 あまり無防備な姿を晒し過ぎるのは如何なものかと、思ってしまったわけで。

 思うだけで居住まいを正したりは、特にしなかったが。

 
久(そういえば、適度な距離感は大事みたいな事を、何かの本で書いてたような……)

久(スープの冷めない距離だったかしら……これはちょっと違うか)


 炬燵の温もりがもたらす睡魔に抗い、もぞもぞと座り直して景色を見遣りながら、ぼんやりと思索を巡らした。

 ――例えば、別な後輩、宮永咲が自分と同じ状況に置かれたとして、どうするのだろう。

 端なさを恥じて居住まいを正すのだろうか、はたまた遠慮なく思う存分甘えてみせるのだろうか、と。

 そもそも自分と前提が異なり、『望んだ展開』に誘導するなどと、小賢しくも予防線を張りながら立ち回らないかもしれない、とも浮かんでくる。


 彼女とは半年以上先輩後輩、部活の仲間として接してきたが、それだけではどうにも判断が付かない事柄だった。

 あの娘ならば、それ位はやってみせそうな気がするし、やらないような気もした。


久(意外にそういう事に関して計算高そうな気もするし、普段通りかもしれない気もする)

久(…………)

久(以前からの付き合いもあるだろうし……そこは純粋にうらや――――)


 そこまで推し量り。

 一体何について考え及んでいたかを悟って、思わず息を呑んだ。

 炬燵の温もりによるものでない熱が、徐々に頬へ集まる事を自覚する。

 どうしようなく身悶えしそうになるのを、必死で耐えた。


久(らしくない……)


 落ち着くために、ゆっくりと深呼吸。

 全くもって自分のキャラじゃない、と思う。

 もっとあれだ……飄々としていないと駄目だ、先輩キャラとはそういうものなのだ、とも思う。

 単なる見栄であったのだが、性分なのだから仕方ないだろう。


久(大体、自分がどうしたい、どうなりたいか定まってないのよね)


 僅かばかり眉根を寄せ、暫くの間、自己の内面を探るように思索。

 過去何度か行った自問を改めて試みた。


久(……、……)


 そうして――返って来た答えは、やはり以前と変わらなかった。

 気の置けない先輩後輩の関係で、満足出来る気がする。

 卒業すれば接点が今より減るとはいえ、自分は地元の大学へ進学予定だ。

 少なくとも京太郎の卒業迄は、会う機会をいくらでも作れるだろう。

 清澄高校の麻雀部へOGとして顔を出しても良いし、電話等で連絡をとっても良い。

 この考えが、自分の臆病さに起因するものだとしても……ぬるま湯のような状況を続ける選択は、然程悪くない。

 冷静にそう分析する自分がいる。


 一方で――踏み込んでみたい、まだ見ぬ世界を知りたいと願う自分もいる。

 たとえ、関係が崩れるというリスクが伴うとしても。


 曖昧だ。

 何とも煮え切らない。

 理性と感情の間でぐらついている。

 自身と彼に対する境界線を、はっきりと定められていないのだろう。

 今胸にある好意がどういう類のものか、正確に判断がつかない。


 客観的に自己を省みれば、この原因は想いの突端が、はっきりしていない点にある筈だと思う。

 一目惚れや、劇的な出来事があった訳ではない。

 いつの間にか、ただ何となく、良いな――と、思うようになっていた。

 実際、京太郎と駄弁ったり馬鹿をしたりするのは、快く楽しい。


久(そう――楽しいの大事だわ)


 久自身にとって、そこは非常に重要な点だろう。

 快楽主義者とまではいかないものの、久のモットーであった。

 時に巻き込まれた側の迷惑になるかもしれないと理解しつつも、改められそうにもない気質だ。


久(あと、我慢する事にも慣れてるしね)


 強がりという訳ではなく、これも単なる自己分析の結果だ。

 もしかしたらこれは、久自身の家庭環境に起因するものなのかもしれない。

 何にせよ、理想と現実が合致していない状況は、決して嫌いではなかった。

 それすら、未来への期待に変えていける自信が今はある。

 可能性が拓けた時の喜びが、増すというものだろう。


 事実、麻雀――IH出場においてはそうだった。

 勿論、これは自分一人で成し得た事ではない。

 切欠となった後輩達がいる。

 偶然かそれとも必然か、そんな事は判らないけれど、皆との出会いは自分にとって、間違いなく転機であった。

 それもすこぶる良い意味での――そう理解している。


久(我慢するのに慣れてるとは言っても……独りぼっちは、寂しいものね)


 改めて考えずとも、須賀京太郎、宮永咲、片岡優希、原村和に対して、感謝の念を抱かざるを得ない。

 当然部の中で、もっとも長い付き合いである染谷まこにも、だ。


久(まあ、どちらにしても)


 と、柄にもなくしんみりとした方向へ逸れかけた思考を、元の道筋に引っ張り戻す。

 そして……踏み込む踏み込まぬ、どちらを選択するとしても、今はやるべき事はいつもと取り立てて変わらないだろうと、心中で結論付けた。


 踏み込む場合、セオリーからすれば、卒業迄に思い切って掻っ攫う方向へ進んだ方が良いのではないかと、考えなくもないのだが。

 むしろその方が、普段の久本人のやり方としては、ズレていない筈だ。


 それでも。

 そう、それでも尚。

 そうしない方が良いと、結論付けたのである。


 理由の内半分は、後輩への遠慮があった。

 肝心要のあのニブチンは意識してない、気付いていないようであったが。


 そして残り半分は、単なる直感だった。

 定石だろうとも性急に事を運ぶのはよろしくないと、頭の片隅で警鐘が鳴っていた。


久(これも“悪待ち”の一種なのかしら)


 胸中で嘯いてみる。

 或いは単に、天邪鬼なだけかもしれないが。


 いずれにせよ……その内答えは出るだろう。

 この選択が正しいか、それとも間違っているか、結果は出る迄分からない。

 麻雀と同じだ。

 そうであるからこそ、先を考えた時に胸が踊るのだろう。

 加えて、負ける事を今は考えない。

 否、たとえ負けたとしても、明るく笑って――――泣けばいい。

 いざその事態に直面した時、今のように楽観出来るかどうかはさておき、そう確かに思う。


久(悩んでも仕方ないものね……)


 悩む側ではなく、悩み相談を受ける立場である事だし。

 と、思考を打ち切った。


久(というか、蜜柑がいつの間にか、来なくなってるんだけど!)


 ここでやっと――供給されていた蜜柑が止まっている事に、久は気付いた。

 思索に耽っていたせいだろう。


 どうした事かと京太郎をちらりと見やると、手に持ったスマホの画面を凝視している。

 蜜柑の事は脇に置いておくとして――あまり腹が膨れても計画に支障をきたす――珍しい事もあるものだ。

 スマホを凝視している事ではなく、彼の表情についてである。
 

 しかめられた眉間には、深く刻まれた皺が。

 締められた口は、への字に寄っている。

 何より――普段は明るさと脳天気さを感じさせる眼差しに、隠しようのない険が見て取れる。


 つまり簡潔に言えば、物凄く不機嫌そうだった。

 ここまで明らかに不機嫌そうな京太郎を、久は見た事がなかった。

 真面目な表情や、呆れたような僅かに不貞腐れた感じなら知っているのだが。

 後者に関しては、からかうと良くしている表情だ。

 それはともかく――故に、久にとっては珍しい事だった。

 京太郎の内心を正確に知る術はないが、ざっくばらんに状況から推測すると、何か気に障る事でもあったのだろう。


 あまり見ていて愉快なものではないが、これはこれでプラン的には悪くはない。

 切り出す切欠としては十分だ。

 そうこう考え、瞬時にこれからの流れを頭の中で組み立て、しかめっ面の京太郎を正面に居住まいを正した。


 そうして――――――。


+++


久「えいっ」


 と、突然。

 京太郎は眉間に何かを、押し付けられた。

 状況を正確に把握出来ていなかったが、押し付けられたのは久の人差し指だった。

 続いて、ぐりぐりと指一本で眉間を揉みほぐされる。


京太郎「……」


 ここで漸く状況を把握して――訝しげな目を彼女に向けてみるものの、揉みほぐすのをやめてくれない。

 仕方なく素直に疑問を口にする。


京太郎「……いきなり何すか?」

久「須賀君が怖い顔してたから、笑顔になる魔法――――これで良しっ」


 あっけらかんと告げられ、眉間から離れる人差し指。

 そんなに怖い顔をしていたのだろうかと、京太郎はつるりと自分の頬を一度撫でた。


久「で、しかめっ面してたけど、何かあったのかしら?」


 卓上に頬杖を付き、手の甲に顎を乗せた彼女に問い掛けられた。

 しかも心なしか流し目付き。


 それを見て、京太郎は背筋に凍りつくような感覚を覚えた。

 所謂虫の知らせ、嫌な予感というやつだ。

 これは恐らく弄る気満々な筈。

 間違いない。

 特に理由もなく、そう確信する。


京太郎「えっと、何と言うか……」

久「何? また青少年的な悩み? ヒサ姉に相談する?」

京太郎「いや、そういう訳ではなく……単にイラついてただけっす。ハイ」


 ヒサ姉悲惨ねえ――じゃなくて、相手の軽口を流しつつ、無難にボカして答えた。

 うん、嘘は言っていない。

 まさか直球で『メールで、しかも女の子相手に腹を立ててしまい、めっちゃイラついてました』とは、言い辛い訳で。

 格好悪すぎるだろう。

 わりと理不尽だと、京太郎本人に自覚があるのだから尚更だ。


久「……何か隠してる気がするわね。何だかバツが悪そうだし」


 大層鋭い洞察力であった。

 京太郎が分かり易いだけかもしれなかったけれど。


京太郎「あー、原因は自分にあるというか……虫の居所が悪かったというか」

久「ふむ……まあ、何があったかは訊かないけど、反省すべき点があるなら、ちゃんと鑑みておきなさい」

京太郎「うっす」


 すこぶる真面目な感じ、かつ正論であったので、素直に頷いた。

 嫌な予感は外れたようだと、密かに安堵する。

 加えて、メールの件に関しては後で解除しておこうと、考え直しておく。


久「あとは――――」


 急にごそごそと、炬燵の近くに置いてた大きめの鞄を漁っている彼女。


 ――えっ、今回も何か小道具付きなの? 用意周到すぎない?

 そんな感じで困惑しつつ戦々恐々としていると、ドンっと炬燵の上に風呂敷に包まれた四角い物体が置かれた。

 続いて、はらりと広げられる風呂敷。


京太郎「……重箱?」

久「お腹が減るとイライラするって言うじゃない? ちょっと早いけどそろそろお昼時だし……お弁当、というわけ」


 中身は漆塗りの重箱二段だった。

 大きさから察するに、二人前以上は軽く入っているだろう。


京太郎「ってか、わざわざ用意して来たんですか?」

久「あっ、その…………」

久「須賀君に今日手伝ってもらう事はわかってたし……」


 急にしどろもどろになる彼女。


久「えっと……そ、の……お、お礼、みたいな?」


 魔法瓶を鞄から取り出して、小首を傾げつつ、そう言われた。

 何で疑問形と、京太郎も首を傾げ――瞬間、電撃に打たれたような衝撃が走る。

 ある重大な事実に、思い至ったからだ。

 何にかと言えば、目の前の先輩が――マヨネーズ教の狂信者である事に、である。


 脳内の危険信号が激しく明滅中だ。 

 まさか……マヨネーズ弁当とかいうとち狂った物体は出て来ないだろうと、胸の内で否定してみるも、彼女の前科がそれ邪魔をしてくる。

 そのまさかがあり得るから怖いのだ。


 それに、マヨ狂信者弁当竹井スペシャルでないにしても……以前のタコス食品サンプル事件(※ドラマCD参照)もある。

 決して料理が得意ではなかった筈。

 少なくとも、京太郎が知りうる限りではそうだった。

 嫌な予感はこれかと、戦慄してしまう。

 ついでに何故か『ACE COMBAT ZERO』のオープニングムービーが、頭の中で流れたりもしていた。


 ――これはあれか、もしかして罰ゲームか何かだったりするのだろうか。

 ある意味でのフードファイトなのだろうか。

 出来ればまともな食べ物と戦いたい。

 まあ、マヨネーズかメシマズか、どちらにせよ、残すという不義理はしない前提を崩さないとして……きっと厳しい戦いになる。

 さあ、ショータイムだ、とはいかないだろう。多分。

 さながら帯刀(タテワキ)の儀を交わし、戦場に赴く武者の如き意思を固めなければならない。

 獅子には肉を、狗には骨を、龍には無垢なる魂を、今宵の虎徹は血に飢えている、って感じで――。


 動揺を面に出さないように気を使いながら、そう腹を括った。

 件のタコス食品サンプル事件の時、ゲテ物を優希に食べさせた京太郎も、人の事を言えた義理ではないのだが。


久「須賀君……今私に対して、すっごい、失礼な事考えてない?」

京太郎「え゛っ!?」

久「…………」

京太郎「え、いや……まさか……ははっ、楽しみだなー! 久さんの弁当!」


 剣呑な目で睨め上げられ、努めて明るく誤魔化す。

 ああ悲しきかな上下関係。条件反射してしまう辺り、体育会系の性だった。


久「そう? ……なら、いいけど」


 蓋を開けられようとする重箱。

 南無三――と京太郎は祈った。


京太郎「…………あれ?」

久「……何?」

京太郎「いや……普通っすね」

久「何が出てくると思ってたのかしら? やっぱり失礼な事考えてない?」


 敷き詰められた俵むすび。

 もう一段のおかずは、タレが薄くかかった牛肉の牛蒡巻き……アスパラ巻きもある。

 更に細葱を巻いたタイプも。

 玉子焼きも……特に問題なさそうだ。

 焦げているとかもない。

 その他――エトセトラエトセトラ。

 見たところ、いわゆる一般的なお弁当だろう。奇を衒った感じもない。


久「はい、お箸とお茶」

京太郎「あっ、はい。ありがとうございます」


 差し出された箸と茶を受け取り、色とりどりの料理が詰まった弁当を前に正座。

 狐につままれたような気分は抜けぬまま、先に合掌した彼女につられて手を合わす。


「「いただきます」」


 同時に二人分の声が響いた――――。


 ――と、まあ、そんな感じで。

 須賀京太郎は部室で竹井久お手製の弁当を食べる事になった。

 ある休日、大して意味もないだろう、部室での一幕だ。

 尚、弁当は味に関しても全く問題なかった、とだけ。


 また蛇足であるが、大星淡さんに関しては、その日の夜、京太郎へ電話が掛かってきた。

 直接話してみると、アホっぽいが意外に良いやつで、意気投合したりしたとか。

 脳天気同士、波長があったのだろう。

 で、結局、メールしたり、たまに電話がかかってきたりな友人関係になるのだが――それについては、もし機会があればまた。


                                                     【How do you do -after】 ――了

超久々にちょっと安価置いときます
【安価】お悩み相談をする人二名
鶴賀学園
無効の場合↓に1個ズレ

↓1 ↓2

やったむっきーじゃん、一度書いてみたかった
安価置いて本日ここまで

【安価】津山睦月の悩み
↓1

【安価】妹尾香織の悩み
↓2

※極端なエロ、グロ。著しく道徳に反する悩み
要するに流石にこれは洒落にならないと判断したものは再安価


 
 とある土曜日の正午過ぎ。

 授業が終わった放課後。

 須賀京太郎は旧校舎の階段を一段飛ばしで駆け上がっていた。


京太郎「よっと」


 最後に大きく三段飛ばしで着地して、最上階に到着。

 そのまま部室へ向かう。


京太郎「ちわー」


 三河屋でーすってな感じで続きそうな挨拶をしつつ、部室の扉を開けると誰もいない。

 本日一番乗りのようだ。

 それもその筈、染谷まこからは本日実家の手伝いで部活を休む旨を先日聞いているし、竹井久に関しては三年生の為午後からも二限ほど授業がある。

 更に一年生ズ――宮永咲、原村和、片岡優希については、昼食をとってから部室へ向かうと聞いている。

 その際の昼食同伴の誘いを断ってまで即部室へ向かったのだから、一番乗りとなるのは当たり前であった。


京太郎「さて、と」


 独り言ちながら炬燵の上に手荷物を置き、昼食の誘いを断った原因――つまり、目当ての物を探す。

 確かここら辺りに……と、本棚を物色。


京太郎「お、あったあった」


 発見して本棚から抜き取った物は、誰の私物か分からない『仮面ライダー1971-1973』著:和智正喜だった。

 往年からのライダーファンならばおそらく知っているだろう名作で、ストーリー描写面共に定評がある小説だ。

 その内容を端的に説明すると、原作IFの元、“仮面ライダー本郷猛”と“秘密結社ショッカー”の戦いを描いた物語である。

 物語上で原作IFというのがキモなのだ。

 一方描写においては私見になるが、変身の瞬間が特に素晴らしい。

 勿論、その他も十二分に見どころがあるのだが。

 また著者曰く、「誰にも知られず、誰の応援も得られない」という事を、この小説版における仮面ライダーの定義とし、石ノ森氏の作品世界を基盤に――

 ――――私情が入り混じって明らかに長くなるので割愛。話を戻そう。


 何故京太郎が『仮面ライダー1971-1973』を探していたかといえば、それは前日既刊分読破した本に理由があった。

 具体的には『エスケヱプ・スピヰド』というラノベである。

 いわゆるバトル物で、ベクトルは違うものの同じくバトル物である『軋む楽園の葬花少女』共に、宮永咲より勧められ最近借りた本だ。

 まあ、簡潔にいえば熱血バトル物を読み終えて、それに触発され、熱さをもった名作を再び読みたくなったというだけの話であった。

 購買で買ったパンを食べながら部活が始まる迄、部室で一人静かに読もうと思った次第だ。

和智正喜なら「カラーズ」好きだったな。

 
 そういえば特に関係ない余談だが。

 変身物やロボ(兵器含む)物を視聴したり読んだりすると、何故か連鎖して、ついつい他も読み返したりしたくなるのってなんなのだろうか。

 また、オススメで挙げられていた本を書店で手に取ってまとめ買いしてしまったり。

 特に変身物に関しては、連鎖が著しいような。

 無限ループしかねない勢いだ。気付けば、そのループで時間が潰されているのは良くある事。

 やはり変身や搭乗というのが、心の中の何かをこれでもかって位に刺激してくるのだろう。

 戦隊物や仮面を被るのも良いし、三位一体になるのも良い。

 無論、「虚淵より危険」「大丈夫?奈良原だよ?」「鬱&グロ注意ついでにゲロも」とか言われようが、心鋼一致するのもありだし、パンツを被るのすらありかも。

 最後に関しては変身するというか、むしろ名前の通り変態すると表現した方が良いかもしれない。

 つまり人為変態だ。

 人が変態に為るって意味で――まあ、それはさておき。


京太郎「変身……か」


 白糸台の某黒髪ロングな方や某金髪さんがしていたポーズを思い返しながら、『仮面ライダー1971-1973』をぱらぱらと捲る。

 そうして炬燵の上に本を置き――暫くは部室で一人だろうし、ちょっとやってみるかと思い立ち、精神集中するかのように瞑目した。

 周りの雑音すら耳に入らない程内面に埋没して記憶を探り、映像を思い浮かべる。

 ややあって開かれる眸。

 窓の外を見遣り――いや、むしろ睨む。

 至って真剣な眼差しだった。


 ちなみにこの時、部室の扉が静かに開けられたりしていたのだが、京太郎はその事実には一切気付かなかった。

 見る方向さえ違えば、異なる結果になっただろうに。


京太郎「――――」


 だらりと降ろされていた京太郎の左腕が、徐ろに流れた。

 隠すように、さながら仮面を被るように、左掌で顔を覆う。

 そのまま無言で数秒程佇み、構えた左腕を伸ばし翳す。

 間髪入れず、左手がまるで何かを掴み取るかのように宙を掻き毟り、握り締められる拳。


 何というか……某装甲ノ構の動作だった。

 鬼に逢うては鬼を斬る、仏に逢うては仏を斬る、ツルギの理ここに在り、というやつだ。

 本来は動作と共に誓句を宣誓するのだが、今回は胸中で呟くに留めていた。


咲・和・優希「「「…………」」」

京太郎「もうちょっと陰鬱な感じな方がいいな……」


 記憶と照合して改善点を探りながら、さて次はと思索を巡らす。

 そうして僅かな逡巡の末、オーソドックスにライダーでいこうと決めた。

 しかもスカイライダー。

 先輩ライダー達と修行して(ボコられて)、99の必殺技を会得した仮面のヒーローである。

 それにしても、99はちょっと多過ぎな気がする。


咲・和・優希「「「…………」」」

 
 まずは腰のベルトを明確にイメージ――これが重要だ――しつつ、両腕を腰溜めに構える。

 そこから素早く空気を斬る右正拳。

 次いで、左手を掌底の如く鋭く突き出しながら、右腕を引く。

 スカイ――――と、伸ばした左腕をゆらりと空へ流して、悠々と左掌で時計周りの孤を描き静止。

 その瞬間、右手で自身の眼前をびしっと斬り上げ、同時に左腕を腰溜めへ。


咲・和・優希「「「…………」」」

京太郎「変――身」
 

 もうちょっとダイナミックに動いた方がいいかもとか思いつつ、決め切った。

 やはりライダーは変身と声に出してこそだろう、とも思う。


京太郎「やっぱ動きのキレが重要だよな」

咲「えっと、京ちゃん……」


 ――突然。

 背後から遠慮がちな宮永咲の声が聞こえた気がした。


京太郎「…………」


 ……うん、聞かなかった事にしよう。……いや、むしろ幻聴だろう、そうに違いない。……ま、一応確認するか。

 そんな事を考えて、振り向いた。


咲・和・優希「「「…………」」」


 あたかも残念なものを発見したかのような視線を向ける三人がいた。

 京太郎の主観からすれば、いる筈のない三人だ。

 というか、いて欲しくなかった。

 何時ぞやのようにいっそ殺せとすら、過ぎったりしている。

 京太郎的には咲だけならマシだったのだが、その他二人に見られたらしい事が大層厳しかった。

 咲だけの場合と比較すると、精神的ダメージが三乗――いや、それ以上になるのだ。


 取り敢えず三人を見なかった事にして、咲達に背を向け再度屋外の景色を見遣る。

 何をするでもなく遠い目をしたまま、きっと幻覚に違いない、昨日遅くまでラノベを読んで眠たいせいだ――と、自分を無理矢理納得させた。


咲「幻覚じゃないから」和「幻覚じゃありません」優希 「幻覚じゃないじょ」


 全く同時に、三者からのツッコミが入った。

 考えていた事がそのまま口に出でてしまっていたらしい。


京太郎「なるほど……」


 三人に背を向けたまま呟き、腰に手を当て天を仰いだ。

 ここでは天井しか見えなかった。室内なのだから当然だろう。


京太郎「……ちなみにどの辺りから?」

咲「えっと、装甲ノ構から……かな」

京太郎「クラスメートに変身ポーズを見られたんですが」
久「須賀君、私にも解決できない悩みよそれは」

 
 あー最初からかーと思いつつ、自分の頬をつねってみれば痛みを感じる。京太郎としては認めたくはなかったが、夢とかではないようだ。

 つまり紛れも無い――現実。しっかりと、そう認識した。


京太郎「……この世界線はなかった事にしよう……うん、そうしよう、それがいい、間違いない」

和「なかった事にはなりませんから……」


 再びツッコミが入った。

 そっかー、そりゃそうだよなーと、落胆して長い嘆息を一つ。続いて、それならばと、屋外に続く窓の方へと歩を進める。


優希「……何してるんだ?」

京太郎「何って、いざ空へってやつだ」


 振り向き、そんな単純明快な答えを笑顔で告げた。目は全く笑っていなかったけれど。

 天に還る時が来たのだ(京太郎が)って感じだ。


優希「お、おう……」


 気圧されたように後退る優希を尻目に、衝動に従って窓を開け放ち――。


咲「ちょっ……! 京ちゃん待って!」


 そこで京太郎の異常を悟ったのか、駆け寄った咲がひしっと腰に抱き着いてきた。

 体重をかけられ、窓からベランダへ向かおうとする動きが止められてしまう。


京太郎「咲――止めるな。俺は飛ばなくちゃならないんだ」

咲「なんでっ!?」

京太郎「だって……俺はもうライダーだから――スカイライダーみたいに飛ばなくちゃならない!」

咲「意味が分からない上にライダーじゃないから! それに重力低減装置がないから飛べないよ!」

京太郎「はーなーせー!」

咲「あっ……駄目! 抑え切れない――皆手伝って! これ本気だよぉ!」


 良く判っていらっしゃる。実際、京太郎はわりと本気で錯乱していた。現実逃避ともいう。

 喜劇染みたやり取りをぽかんと眺めていた原村和と片岡優希が、慌てたように駆け寄り――京太郎は二人に腕を掴まれた。

 男女の体格差があるとはいえども、流石に三人がかりで引き止められては、ずりずりと窓から後退してしまう。


和「す、須賀君! 早まっては駄目です! えっと、その……今日見た事は忘れます!」

優「そ、そうだじょ! それにノリノリな仮面ライダーごっこを見られた位で大袈裟だじぇ! 私なんてほらマントとか付けてたし!」

咲「男の子ならきっと良くある事だから! 恥ずかしくないよ! 多分!」


 フォローのつもりなのかもしれないが、しかし京太郎にぐさぐさと言葉の刃が突き刺さり、精神的な何かを削ってくる。

 ああ、ばっちり見られたんだよなと改めて認識。現実はなんて理不尽なのだろう、とも思う。


京太郎「 ……べよ」

咲「な、何? 京ちゃん」

京太郎「跳べよぉぉぉぉぉぉおおおおお!!」


 そんな感じで悲痛な叫びが木霊した。

  
■□■

すいません眠気限界
セーブしますー


 麻雀部部室内。

 そこには炬燵に入った四人の男女がいた。

 三人――宮永咲、原村和、片岡優希は炬燵の卓上に各々の昼食を広げ、食事をしながら雑談中。

 そして残る一人――須賀京太郎は炬燵に入り、食事もとらず、うつ伏せの姿勢でクッションに顔を埋めていた。

 正気に戻ったとはいえ、先程の精神的負傷がまだ癒えていないからだった。

 まあ、竹井久がいなかったのが不幸中の幸いだろう。いた場合、確実に弄ってくる。そこら辺容赦がないのだ。


京太郎「ああ……海の底で物言わぬ貝になりたい」

咲「誰にも邪魔をされずに海に帰りたいの?」


 右隣から律儀にツッコミが返って来た。

 それを受けて、あなたをひっそりと思い出させて――ではなく、ボケたつもりはなかったんだけどなと思いつつ、京太郎はもそもそと起き上がった。

 同情の色が混じった目線が集まるのを感じながら、卓上の『仮面ライダー1971-1973』を手に取り、再び寝っ転がって読書開始。

 暫くの間、仮面ライダー本によって自分を慰めた。別に卑猥な意味ではない。

 この傷を癒やすには、名作の力が必要だと感じただけの話だ。熱血系の曲を聴いたり歌ったりするのもありなのだが。


咲「……京ちゃん、お昼食べないの?」


 拗ねた様子を見兼ねたのか、咲が尋ねてきた。

 反応しないでいると、続けてぽつりと小さく漏らす。


咲「折角一緒に食べようと思って部室に来たのに……」


 そう、そこが今回の計算違いだったのだと思う。

 炬燵に入る前に、何故部室にいたのかと疑問を覚え訊いてみたところ、京太郎が部室へ向かうのを目撃したとの事。

 それならば、部室で昼食を……といった運びになったらしい。

 天気も良いし、三人はいつもの中庭辺りで食べるのだろうと、勝手に決め付けていたのがマズかった。

 おかげで酷く恥ずかしいところを目撃されてしまった訳で。

 また改めて考えると……O星Aさんのせいでもあるかもしれない。

 変身ポーズを決めてみようとする切欠となったのだから。

 あわあわの呪い恐るべし。

 いや待て、もしかしたら……乾巧って奴の仕業かも――。


 ――それはともかく。

 咲の言葉で、いくら気心が知れた面子とはいえ、このまま不貞腐れているのも格好悪すぎるだろうと思い至り、身を起こす。

 わざわざ一緒に食事をとろうと言ってくれているのだし、空気を悪くするのは本意でない。


咲「あ、復活した」

優希「今日はこのままなのかと思ったじぇ」

和「須賀君、さっきの事は忘れますから、ね?」


 三人の視線が京太郎に集まった。

 持参していた弁当を食べながら――片岡優希は弁当ではなくタコスであるが――三者三様の反応だ。

 
京太郎「優しくされたらされたで、この場合なんか辛いものがあるな……」


 仕方ないなぁ京ちゃんは……と言わんばかりの、生暖かい目を向けてきている咲を横目に、購買で買ったカレーパンの封を勢い良く切った。

 そのままろくに味わいもせずがつがつと齧る。羞恥心を誤魔化す意味を多分に含んだ行為だった。


優希「京太郎」


 半分程になっていた最後のタコスをぺろりと平らげた優希が、正面から真剣な眼を向けてきた。


京太郎「……何だ?」

優希「逆に考えるんだ、見られちゃってもいいさって」

京太郎「まあ確かに、元々そういうつもりなら、ボケと一緒であんまり恥ずかしくないけどなぁ」


 だけれども、今回は笑いをとりにいった訳でもないし、不測の事態だ。

 逆転の発想も何も、出来れば見られたくはなかったと、胸の内で愚痴りつつ、カレーパンを平らげた。

 続けざまに焼きそばパンの包装を解きながら、皆を見遣る。もうすぐ食べ終わりそうになっている。

 優希に関しては完食済みであるし、和も京太郎からすれば小さく可愛らしい俵むすびを一個残すのみ。

 一番食べるのが遅い咲ですら、主菜含めて残すところあと僅かで――。
 

京太郎「――お、咲、そのミートボール美味そう。一個もらっていいか?」

咲「うん、いいよ」


 はい――と、上下逆にした箸で差し出されたミートボールを、ぱくりと頂く。

 トマトベースのソースがどこか懐かしい味わいだ。


京太郎「ふむ、冷凍食品じゃないな」

咲「昨日の晩御飯の残り物だけどね」

京太郎「晩飯つーと、味的には……スパゲッティってとこか」

咲「当たり、良く分かるね」

京太郎「そりゃ、それ位はな」


 他愛のない会話をしつつ焼きそばパンの攻略に移ったと同時に、右斜め前の和が行儀良く手を合わせた。

 どうやら完食したようだ。


和「ご馳走様でした」

優希「あ、のどちゃん蜜柑とってー。――半分こしよ?」

和「ん、いいですよ」


 優希に請われ、蜜柑を取ろうと手を伸ばしている。

 やや遠い位置にあったため身を乗り出す形となり、衣服に包まれた二つのメロン――念の為だがこれは暗喩である――が卓上でたぷんと歪んだ。


京太郎「――――ッ!」

咲「…………」


 その『天・下・御・免!』と、何処からか音が聞こえてきそうな光景を、京太郎は勿論見逃さなかった。

 以前の胸に視線事件の事もあるため、和の注意が逸れている瞬間を感覚で狙い、たわわな果実を脳内キャメラで記録してから、さり気なく目を逸らす。

 視線が不快なら、気付かれないようにすればいいじゃない理論の集大成――正に匠の技。何か努力の方向を間違っている気がしなくもない。

 
京太郎(それにしても……)


 パンを食べながら沈思。当然脳裏に浮かんでいるのは――胸についてであった。

 大きく見えるかどうかは体格等にもよるが、Gカップ辺りから凄いと認識している。

 いや、別にそれ未満が駄目という訳ではなく、E~Fあたりでも充分に大きいとは思うし、大きさが全てだとは考えてはいない。

 だが、何といっても『G』は“影技(シャドウスキル)”的に古代ラテナイ語7番目の文字であり、『最強』の意を表す文字。

 一線を画すという意味で、『G』の二つ名は伊達ではないだろう。


咲「……京ちゃん」


 しかし一方で、和は出会った当初から、そのGすら超越してJカップ。

 世界には彼女以上の存在がいるとはいえ、重力に逆らい自己主張しているあの二つのメロンは、『最強』の称号すら生温い。

 誠にけしからん……いいぞもっとやれ。

 それに須賀ウターに狂いがなければ、彼の果実は現在Kカップ。

 つまりJからKへ――云わばジャックフォームからキングフォームへの進化。

 成長というものが如何に偉大か思い知らされる。ウェイ!とか聞こえなくなった位に感動モノだ。


咲「京ちゃんってば」


 もしかして父親が恵(けい)だけに恵まれる運命にあるのだろうか。胸部的な意味で。

 まさか凍牌的な意味以外でもこじつけれるとは、夢にも思っていなかった。


京太郎(そういや――)


 ――と、以前松実玄から、Hカップ以上で凄いという旨の長文メールを受信していた事がふと過る。

 良くある意見の対立というやつだろう。

 彼女のその凄いかどうかに関しては、彼女自身を基準にしている――京太郎の見るところ松実玄はGカップだった――のかもしれない。

 彼女も十分に凄い範疇だと思うのだが。


咲「…………」

京太郎「っ!?」


 あれこれと考えていると突然、右太腿に鈍い痛みが走った。

 痛みの発生源の方向――右隣を見れば、ツンドラの如き凍てついた咲の視線とぶつかる。

 どうやら炬燵の中で太腿を抓られているようだ。何故と、アイコンタクトしてみる。


咲「……口元が緩んでるから」


 ……なるほど。

 視線の冷たさから察するに、チラ見がバレてるぽい。そのせいでどこか刺々しい感じなのだろうと納得した。

 しかし、もっとこう寛容な心で接して欲しかった。

 咲の場合和と比べれば起伏無しに等しい板だからといって、胸関連で対応が辛辣になるのは如何なものか、とも思う。


咲「…………」


 アイコンタクトでやめてくれと送っているにも関わらず、一層ぎゅっと抓られる。

 ついでに咲の視線が極寒から絶対零度へと変化していた。解せぬ。

限界寝ます

放置しててすいません
まとまった時間がとれそうな時進めます

私的に立て込んでいまして、一旦HTML依頼します申し訳ありません

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