一方通行「……社会復帰、ねェ」 (345)


☆とある魔術の禁書目録のSSです。

・一方通行が社会復帰するスレ

・設定は全部終わって平和になった学園都市。

・いろんなキャラの一人称視点で進みます。

・ちょいちょい独自設定交じるかも。でも基本は原作を遵守、

・ほのぼの。一方通行が学校行ったり、遊んだりする。


書き溜め、構想はあるけど更新不定期。
週に一回は最低でも来ます。

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▽一方通行




暖かい布団が引き剥がされたと思ったら土手っ腹に鈍い痛みを感じた。


『クソガキがハシャいでやがる。ああ、もう朝かよ。』そんなことが真っ先に脳裏をよぎる俺は、やはりヌルくなったのだろうか。



「朝だよ!ってミサカはミサカはアナタのぬくもりに顔をうずめて至高の時を味わってみたり〜っ!って、いたい!……うー……なんでチョップするの〜?」


はっ、独りよがりな満足してンじゃねェよ。起こすならもう少し丁寧にやれってンだ。


「ミサカの愛情表現を独りよがりと抜かす口はこの口かぁ〜!!オラオラオラっ!ってミサカはミサカは血の粛清をっ——ご、ごめんさーいっ!」


………たくよォ。


頬を膨らませながらも、軽い足取りでリビングへと走り去るクソガキを見送りながら、俺は洗面所に向かった。


冷水がお湯に変わるのを待つのがもどかしく、仕方なく冷水を頭からかぶる。


鏡に映るのは赤い瞳に白い髪。特に変わったことはない。


手元の時計の針は七時半を指していた。


………っ、まだまだ眠れる時間じゃねェか。


口からは文句が溢れたが、素直にリビングに向かうことにする。


今食っとかねぇと、昼まで食うもンが無ェからな。












時は三月初旬だった。


面倒なコトは全部済ませて、必要なもンは全部取り返して、降りかかる火の粉は払って、火の元も鎮火した。


俺に、やることはもう残ってなかった。終わってみるとまったくもって味気が無い。クソッタレのハッピーエンドってやつだ。実に笑える。


服屋の店員やファッション誌のモデルたちはもうウールのコートを脱いでやがるが、まだまだ冬の名残が強い。


寒さは布団を恋しくする。惰眠を貪るのが俺の日課となっていた。


芳川は大学の臨時講師とやらの職を(ようやく)見つけた。労働の喜びを発散するがごとく、眠りに身を任せている。


臨時講師の枠は超えないようで、週に多くて四回、少なくて二回ほどらしいが、大学に通うための小遣い稼ぎらしい。目的は果たせているようだ。


番外個体は一足先に食卓に上がっていた。たいそう似つかわしくないお上品な様子で箸を器用に動かしている。


クソガキは言うまでもない。


「お早い目覚めだねっ☆第一位!」


うるせェよ。ものを口に入れたまま喋ってンじゃねェ。


「おはよう、一方通行」


一体全体何事ですかァ?確か今日は日曜日だろォが。


日曜は各々好き勝手済ましている上、朝食に登らず惰眠を貪り続けられる滅多にない機会であった。文句を垂れたくて仕方がない。


「おや?まだ曜日の感覚があったじゃんよ?」


言ってろ。


で?一体何だ。痴呆症にはあと三十年ほど早ェンじゃねェの?


「しっ、失礼じゃん!?私はまだにじゅう———」


どォでもいい。




「ぐ、ぬぬう…………こほん。まあいいじゃん。改めて黄泉川せんせーからアドヴァイスがあったから早起きしてもらったじゃんよ」



………


長々と面倒な口上が続く。


こいつらのお説教がうっとおしいわけでも、右から左な訳でも無かった。


ただ、いちいち説明するには面倒だって言うだけ。


「んあーっ!まどろっこしいじゃん!」


最初から一言で言えってンだよ。もともとそンなお利口でも無ェンだからな。


「うるさいじゃん!!………簡単なことじゃん、つまり———」












「社会復帰、するじゃんよ」











…………はァ?






▽打ち止め




そんなたくさん食べないあの人が珍しく食卓に長居してた。


それだけは何となくわかってたけど、それどころじゃない。日曜朝七時半には、ミサカ的ウィークリー・ビッゲスト・イベントのひとつであるカナミンが放送するのだ!見逃す手はなぁーいっ!!


………でも、ちょっと勿体無かったかも?


カナミンの次回予告にハラハラしてたミサカを現実に呼び戻したのはミサカ達の末っ子のおっきな笑い声で、あの子の笑いの種なんてあの人しかいない訳で……


どうしたのっ!?ってミサカはただならぬ様子に野次馬根性を燃え上がらせてみたり!


「げひゃひゃひゃひゃひゃっ!!なぁーんだよ!その面っ!?あっりえねえええええええええ!!」


えっ!なになに!?


ミサカが振り向いた時にはもう遅かったが、あの人が滅多に見えない顔をしていたらしい。


番外個体曰く「間抜けヅラ」。


むむぅー。この子は口が悪いなぁ。


この子も、あの人の顔がすっごい可愛いの知ってるくせに素直じゃない。


ミサカはロシアの雪原で、あの人の本当の笑顔を見たことがある。


とっても綺麗で、やさしくて、可愛らしい笑顔。ミサカしか見たことのないあの笑顔は、ミサカの一生の宝物だ。


だけど、少しだけ寂しい気もする。


あの人はこんなに優しくて、強くて、格好良い。それなのに、わかってくれる人はほとんどいない。


もし、あの人の周りが優しい世界になったら。


あの人が、眉間にしわを寄せなくてもいいような世界になったら。


あの人が、自分の名前を堂々と名乗れるような世界になったら。


そんなことを考えずにはいられない。


あの人の笑顔を独占するのも悪くない。でも、それはちょっとだけ欲張りというものだ。あの人とミサカの間以外にも世界は広がっていて、ミサカは0歳で、あの人は十六だ。


そう、まだ十六なのだ。




「……っち」


あの人と目が合う。きゃーっ!!


「……あァ?何だよクソガキ。おとなしくアニメでも見てろってンだ」


へっへーん。もう終わったよ?ってミサカは冷静になりきれないアナタを冷ややかな視線で見つめてみたり。


「あーあー、冷てェ冷てェ」


軽く流された!?


………っは!!


危ない危ない……本来の目的を忘れるところだった。まったく、一方通行は最高だぜっ!!


ねえねえ!?結局何の話だったの!ってミサカはミサカ食いついてみるぅーーーーーーー!!


「………何でもねェよ」


ばつの悪そうな顔をする一方通行。


この人は、優しい言葉をかけられるといつだってこうだ。叱られてしまったかのような顔をする。


どうしていいかわからないのかもしれないけど、もっと素直になってもいいのにね。


教えてよー!ねえねえ黄泉川!!


「ちょうどいいじゃん。打ち止めからも言ってやってくれ。実は————」









どうやら、ヨミカワも同じようなことを考えていたらしい。






▽一方通行




自室の天井を見上げる。


殺風景な部屋だ。流石に以前の学生寮もここまでではなかった気がする。


あのクソガキに出会う前は、暇潰し程度には娯楽に関心があった。


小説や音楽。暇潰しの領域を出はしねェが、それくらいには関心があった。当たり前のことだ。それくらい退屈だったンだからな。


くっだらねェ。


最近はそんな余裕がなかったからか、それともまた別の理由があるのか、何に対しても興味が起きなかった。


十六年と数ヶ月。俺の生きてきた時間なんてちっぽけなものだ。言われなくても分かってる。


ぶち殺し、痛めつけ、騙し、ぶち殺し、力で黙らせる。そんなことしか覚えてねえのはどうしてだろォな。自分でも分からねェ。


このまま横になったら人生は終わるか?少なく見積もってもあと四十年か。


遊んで暮らしたとしてもその何十倍暮らせるだけの金はある。問題ねェだろう。



……………


…………


………


……なンてな。



自分でもわかってる。このままじゃいけねェ。


化物だの、怪物だの。


悪党だのヒーローだのに拘るのは止めたンだろォが一方通行。


目的だの、守るものだの、そンな物が無けりゃあ生きていけねェのか?


俺がこのままじゃあいけねェ。


クソガキだって、「妹達」だって生きてゆく。


それは本当の意味で生きていかなきゃ意味が無ェ。


「社会復帰」、とは上手くいったもンだ。ああ、確かに俺の生きてきた世界は「社会」ってのとは違うよなァ。




…………クソッタレが。




▽黄泉川愛穂




思ったよりすんなり行って安心じゃん。


もっと手こずるとも思ってたんだけど、あいつも何となく思い入るところがあったってところじゃん?





あいつの戦いは、私のような一介の教師、一介の警備委員が測り知れるところにまで及んでいったじゃん。


十月のあの事件のような、血生臭く物騒な事件を、あの子は一人で何度もくぐってきたじゃん。


それは十六の子供がやることでも無ければ、大人であってもやるべきことではないじゃんよ。


十六の子供なら、子供らしくやることがある。


私はそう考えるし、それは間違ったことでは無いはずじゃん。


「経験しとけばよかったと後で後悔する」


そこまで言い切るほど私は傲慢でもないけれど、それでもあの子には必要なことだと思う。


褒められるのが苦手なあの子。


優しいのに、優しくするのが苦手なあの子。


とても素直なのに、素直にするのが苦手なあの子。


なんと言われようともあの子は真っ当じゃんよ。


陽の当たるところで、陽のあたる生活を送ってもらわないと割に合わない。そう思うのはおかしいことじゃん?



統括理事会に知り合いも居るみたいだし、そこから攻めてみることにするじゃん。


随分と賢しいあの子だけど、まずは人との付き合い方を学んでもらうじゃん。





滅茶苦茶ごねるだろうけど、そんなこと知ったこともないじゃんっ♪


ふふんっ。







▽芳川桔梗





遅めの朝食を取ろうとリビングに顔を出してみると、非常に楽しい光景が広がっていた。


さながらプチ家族会議。ちょっと愛穂。どうして私を起こさなかったのかしら?


「そんな大したことじゃないじゃん」


「大したことだもん!ってミサカはミサカは理解のない黄泉川に異議を唱えてみるっ!……うーんと、あとはー……」


………一体何事なの?


「………知るかよ」


見たところプチ家族会議の中心にいるらしい彼に話を降るも、そっぽを向かれてしまった。


隣で番外個体が含み笑いをしている。こっちはいつものことだ。


「芳川も考えてよーーっ!ってミサカはミサカは頼み込んでみたり!」


考えるって、一体何を取り決めている最中なのかしら?


打ち止めの必死に覗き込んでいるコピー用紙には、「学校」だの、「料理」だの、箇条書きで様々なできごとが羅列してあった。


左上にやたらと大きな「ルール!!絶対守ること!!」との文字が書き連ねられている。


一体これは何の遊びなのだろうか?


「いひひっ!なーに芳川?やっぱ気になるよねー?」


気になるか気にならないかと言われれば、勿論、気になると答えるわ。


私の返答に学園都市最強は溜息を突いたが、そんなの後回しよ。


「げひゃひゃひゃっ☆………それはねぇ———」


……………


………ふぅん。



いい傾向じゃないかしら。非常に面白いわ。


こんな私も、やりたいことに向かって歩きだした。


この子がこの状態というのも宜しくないだろう。



「第一位が学校ってwwww似合わねええええええええええええwww何っ!?学ラン着ちゃうの!?トイレ掃除とかしちゃうのっ!?」


「………よォし、そのよく動くお口を塞いでやる」


「こらっ!!一方通行!!『ルール』を忘れたのっ!?ミサカはミサカは許さないよっ!『挑発的な態度は禁止』!!」


「…………っち」


「『舌打ちは禁止』!!」


「あァあああああああああああああっ!!うっるせェなあァああああああああああああ!!!!」


「『怒りに任せた大声は禁止!!』」


「………おいクソガキ、お仕置きが必要みてェだっ、っ!?ljdfidjiksa;ojfkaおいldkjmaodsklっ!?」


「ふっふぅ〜ん!言うこと聞かない悪い子は演算機能を剥奪しちゃうんだもんっ!ミサカはミサカはあなたのイニシアチブを握っていることに優越感を感じてみたり〜」


………相変わらず、騒がしいわね。


うん。把握したわ。


どうやらさっきの「ルール」とやらは彼の社会復帰のための項目みたいね。


確かに彼には、社会復帰には相応しくない言動が多いわね。


性格そのものは個性だとしても、この子が溶け込む気がないんじゃ問題は違ってくる。


言動と、挨拶の基本くらいは改めてもらってもバチは当たらないんじゃないかしら?


頑張ってね?一方通行。


「オマエも乗り気なンかよ………」


あら?意外だった?


私もその「ルール」って言うの、守ってみても良いと思うわよ?


「あひゃひゃひゃひゃひゃっ!!腹痛ぁぁあああああああああああいっ♪」


「あ、そうそう。番外個体に打ち止め、あんたたちも学校通うじゃんよ」


「………は、はぁぁあああああああああああああああああああああっ!?な、なんでミサカが!?」


「やったぁあああああああああああっ!!ミサカはミサカは大歓喜!!イェーイっ♪ってあなたにだいぶ!!」


「痛ェっ!ちったァ落ち着けないのか!」


「当たり前じゃん?打ち止めは小学五年生、一方通行と番外個体は高校二年生でいいじゃん?四月から入学すること!これは確定事項じゃん〜」


「ちょ、ちょっと!ミサカそんなの聞いてないよ!!」


………ま、良くも悪くも平常運行ってとこかしら?







〜打ち止めのメモ〜


『ルール』!!


あいさつは人間かんけいの基本!!

怒りに任せた大声は禁止!!

舌打ちはだめ!!

コミュニケーションはていねいに!!

みんなに優しくすること!!

挑発的な態度はだめ!

能力使ってあばれない!


(しゃかいふっき)

学校

料理

美容院(かみのけのびすぎ)

カラオケ

ボーリング

コンサート

TVゲーム

うんどうかい

映画

お弁当

きっさてん

おようふく

旅行



今日はここまでです。序章、みたいな感じ。

メモにあったことは一方さんがやる予定のこと。

なにかいいアイデアあって、「イケるんじゃね?」とか思ったらやってもらうかも。

キャラはいろいろ増えていく。感想あるとモチベ上がりまくりまクリスティ。

レスすっげえついてる……感激。

あんま多くないけど投下します。
エンディングのプロットまであるから安心して頂いて結構です。
見たいキャラとか、何してるのが見たいとかあったら極力答えていくつもり。





社会復帰その1〜ファッション〜



▽一方通行




はァ……面倒くせえ。


ちょっと前の俺だったら「オモチャにすンな」と一蹴してたところだが、今回は許してやる。


薄々俺も感づいてたのかもしれねェ。このままじゃいけねェってな。


社会復帰だなンだをやらされることになり、俺を議題にした愉快な家族会議が開かれた。


さてどうする?どう蓋を開ける?


具体的な行動を思案する中、最初にスポットライトが当たったのは俺の服装だった。


「その格好。似合ってないこともないけど、周囲に圧迫感を与えるじゃん」


…………


……





……まァ、そうだがよ。




俺が好き好んでこのブランドを着る理由は三つほどある。


一つ、デザインが好みだから。


二つ、存在感を示せるから。


三つ、楽だから。


一番大きな理由は二つ目だったりする。俺はこの通り見てくれが目立って仕方ねェからな。


独特な空気を演出することで、勘違いしたアホ共を近寄らせねえように出来るンじゃねェかと踏ンだンだが……


「白いコートと、黒いTシャツはまだしも、あのロンTはどうかと思うじゃんよー?人のセンスにあれこれ言うのもあれだけど」


……この分じゃ、思った成果は出てねェらしい。


「モノトーン以外のアナタも見てみたいかもーっ!!お買いものに行こう!ミサカはミサカ準備してくるね!」


おい。そう言ってさり気なく俺に服を買わせる気だろ。分かってンだぞ。


おいクソガキ!!………聞いてねェし。


「だってさ親御さん?どうすんの?」


……ちっ、着いてこい。ついでにオマエのも買ってやる。ろくに持ってねェンだろ?


「ゴチになりまぁーっす☆あれ?でも女の子の服なんか選べんの?特撮ブランドは御免だよ?」


買ってやンねェぞ?


「ミサカ準備してくるねー」


……………


………


……クソっ!!俺のセンスが疑われていやがる!!つゥか疑われてるどころじゃねェ!


言われっぱなしも俺の勘に触る。イイじゃねェか。あァ……楽しくなってきた。


ヤツらの希望も取り入れつつ、キャラクターとスタイルにあった、最高のコーディネートを演出してやる……!!









▽番外個体




第一位のクドいファッションセンスを馬鹿にするいい機会かと思って、ミサカはおちびの買い物にひょいひょい着いていった。


お買い物スポットとして第一位が選んだのはセブンスミスト。


学園都市の外で言うISET○Nやマ○イみたいな感じのとこだね。上に行くほどハイブランドが多かったりする。


ちょっとだけテンションのおかしい第一位を見てから嫌な予感はしてたけど………結論。付いてこなければよかった。


「もう春だからな……ツイードやコーデュロイはねェよな。こっちのジャケットとカットソー、あとこっちのチャッカブーツはアリだな」


多分、さっき自らのセンスをボコボコにされたのがプライドを大いに傷つけたのだろう。躍起になって買い物かごに放り込んでいる。


「あとひと月はまだ寒いからな……どォせだしこっちも買っちまうか……おい、何呆けてやがる」


ば、馬鹿にしないでくれるかな!?ミサカ呆けてなんかないから!


「……ったく……オマエらの分は十分買ってやっただろォが。少しくらい大人しく待ってろ」


………人の気も知らないで。


ミサカも服をたくさん買ってもらった。そこは良しとしよう。


でも、思ってたのと違った。


ミサカ的には、「えぇーーwww何それセンスねえええwww流石第一位だよwwwセンスのなさも第一位ってかぁぁああwww」的に、さんざんセンスの無さをdisってやろうと思ってたのだ。


でも、蓋を開ければどうよ?ええ?


目の前の白いのは、ファッション誌からくり抜いたかのようなコーディネイトをぽんぽん量産してみせた。……なにこれこわい。


ファッションに詳しいとか聞いてないんだけど……ていうか女物、しかも子供服にまで詳しいとか流石に引くからね?


「パステルカラーは似合わねェから着ねェぞ。あとガキくせえ格好」


そんなことを言いつつ、最終信号のリクエストにはちゃっかり答えてやってたりもする。


「ガキ臭いのは着ない」とか言いつつ、うさぎの耳が着いたニットパーカーとか買ってやがった。


あのロリコン。「お揃いが着たいっ!」ていうおちびのリクエストにバッチリ答えてやんの。


やーいロリコーン、となじったらチョップされた。畜生。


つーか服に詳しいのにどうしてあんなの来てたのか小一時間ほど問い詰めたいんだけど……


「おい番外個体。オマエ、靴二、三足しか買ってねェだろ」


そうだけど、何?


「後で買ってやるからクソガキ見てろ」


い、いらないって!ミサカ十分買い物したし———


「……『お洒落は足元から』って言うでしょォが。良いから待ってろ。他のショップ見てくるからよ。服は後で郵送するから安心しろ」


……駄目だ。完全にスイッチ入ってやがる。


さっきなんておちびに、ゼロの数がどう考えてもおかしいネックレスを二つ返事で買ってあげてたし……いつもなら親馬鹿が発動するはずなんだけどねー。


ここは素直に言うこと聞いとくしかないかねぇ……


さっきから周囲の視線が異常に集まってるみたいだけど、ミサカ悪目立ちは大好きだからねっ☆むしろイイ気分っ!


どさくさまぎれにミサカもなんかおねだりしてみよっと。今の第一位ならチョロいもんだろうしね♪








〜打ち止めのメモ〜


『ルール』!!


あいさつは人間かんけいの基本!!

怒りに任せた大声は禁止!!

舌打ちはだめ!!

コミュニケーションはていねいに!!

みんなに優しくすること!!

挑発的な態度はだめ!

能力使ってあばれない!



(しゃかいふっき)

学校

料理

美容院

カラオケ

ボーリング

コンサート

TVゲーム

読書

映画

お弁当

きっさてん

おようふく⇒クリア!

旅行





とりあえずここまで。

もうちょい今日書き進んだらも一回来るかも。

一方さんって、女物のアパレルにも詳しいのに、どうしてあの服選んだんだろうね?

次は学校編。あの人とかあの人が出ます。

また投下に来ました。

学校編。




〜学校・その1〜





▽上条当麻



四月がやってきた。


人を浮き足立たせる春風を頬に感じる。実に気持ちが良い。


この私上条当麻は、程よい倦怠感の中、始業までの時間を気の置けない友人と潰していた。


春風というのは不思議なもので、準備が万全ではないのに一大イベントが控えてるような気分にさせる。何かしないとマズイんじゃね?っていうアレだ。日々の怠慢のせいだろうか?不思議。


「春やねぇ……上やん……」


あぁ、春だなぁ……


「気のない返事なんだぜぃ。なんか面倒でもあったのかにゃー?」


ん?ちげーよ、むしろ逆。何にもないからだって。


ここ最近は、例の決まり文句も口をつかない程度には満足した生活を送っていた。


今までがいろいろあり過ぎたといっても過言ではないが、上条さんの周りは概ね平穏だ。


魔術師と殴り合うことも無ければ、能力者とガチバトルする機会もない。


レベル5の電撃娘とは結構な確率でエンカウントするが、以前に比べればかわいいもんだ。


入院することもないので食にもさほど困ってない。例の居候の存在も踏まえると、それでも裕福とは言えないけどな。


閑話休題。


そう、四月だ。



入学シーズンに必ずと言っていいほど満開時を迎える桜は期待を裏切らなかった。学園都市のウルテクで開花時期をどうにかしてるのだろうか。


高校二年生になった俺だけど、クラスのメンツもなぜか全く変わることもなく、良くも悪くも去年と似たような生活になるように思えた。


補習地獄の結果だとしても、二年に進級できたのは奇跡といっても良かった。四月になってようやく肩の荷が下りたのだ。気も抜きたくなる。


俺の出席状況と成績は笑えないほど悲惨だったけど、情状酌量の余地ありと判断されたのかもしれない。見えない力に、感謝。



「そういえばお二人さん。今日は転校生が来るみたいやで?しかも二人」


この時期に?まだ始業式から三日だぞ?


変わった学生もいるもんだ。しかも二人ときた。


「それは小萌先生情報かにゃー?」


「勿論や!補習で愛を育んでいる最中に、あの小さなお口がうっかり口をこぼしはったんやで!くぅーっ!愛くるしかったわぁ!」


えぇーい!その動きやめろ!目に毒だ!


それにしても転入生、か。どんな奴らだろうな。


以前ならば嫌な予感を伴っていたかもしれない。しかし、今の学園都市でそれはありえないだろう。


そう、全て終わったのだ。俺を煩わせるものなど、日々の勉強不足からくる補習くらいなものなのだ。うん。







「番外個体でぇーっす!よろしくお願いしまぁーすっ♪」


「一方通行……です。好きなものはコーヒー。特技は……勉強?………です」




返せ!!五分前の上条さんの期待を返せ!!


ていうかまったくもって突然だよ!?聞いてねーよ!?一言よこせよこらっ!!


………


……と、叫びだしたくてたまらなかったが、人間というものは真に驚いたとき言葉を失うらしい。


「はいはい皆さぁん!!ご覧のとおり美男美女なのですよーー!楽しみですねーー!!仲良くしましょうねーーーっ!!」


「「はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!」」


「うっひょおおお!!上やん上やん!!あの子来とるでええええええええ!!僕の息子も来とるでぇええええええええええ!!!!」


見てくれだけは最高の二人にクラス中が沸いている。


あんぐりと口を開けているのは俺と土御門だけのようだ。


サングラス越しに土御門と目が合う。口元が引きつっていた。……そりゃあ……なぁ?



「アクセラちゃんは吹寄ちゃんの隣!ワーストちゃんは上条ちゃんの隣の席についてください!」


小萌せんせええええええええええええええええええええええええええ!?


よりによってそっちぃいいいいいっ!?逆じゃないのかよっ!!


「おい……また上条かよ」


「お前どんな魔法つかってんだ?」


おいコラ君たち!!好き勝手言ってんじゃねえ!!ていうか上条さんは———


「やっほー☆ヒーローさんっ!お久しぶり!」


ふおうっ!………み、番外個体さん?あの……そ、その……お胸があたっていらっしゃいますのことよ?


お顔はビリビリ娘と同じなのにこの威力……ッ!本当にクローンなのかっ!?


細胞というものの神秘に頭を悩ませる暇もなく、教室内の静寂が俺に警報を鳴らす。


……あぁっ!身に憶えのない暴力の予感っ!



「「……………………っ!」」



ほらぁ。クラスメイトの視線が蛆虫を見るそれになってるよ。


うん、なんとなくそんな気がしてたよ。はははっ……


…………っ!


ちくしょおおおおおおおお!!一方通行!ど、どうにかしてくれ!!


最強の友人に助けを求めるしかない!迅速にヘルプ!超法規的措置をっ!




「……一方通行だ。ヨロシク」


「あ、え、ええ……ふ、吹寄制理、です……」



あ、握手を求めていらっしゃるぅうううううう!?違うでしょ一方通行!お前そんなキャラじゃないでしょ!?


吹寄さんも満更じゃない顔をしてらっしゃるしーーーーーーーーっ!?



「よろしくねっ!ヒーローさん?ぎゃはっ☆」


集まる視線の負の感情がその強さを増してゆく。だが、腕に絡みつく彼女の視線は、それ以上の怪しい光を帯びていた。


……こんな時くらい、叫んだっていいよね?


………


……


…さん、はい。


ふ、不幸だぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!






▽吹寄制理



あまりにも不自然な時期の転入。学園都市ではよくあることなのかしら?


転入生は、これまた怖いくらいに整った外見の男女ひと組だった。


顔つきよりは視線にまず注意を引かれるタイプの二人だ。主にその剣呑な視線に。



「番外個体でぇーっす!よろしくお願いしまぁーすっ♪」


「一方通行……です。好きなものはコーヒー。特技は……勉強?………です」



少女の自己紹介は期待を裏切らなかった。頬に貼り付いた笑みとその佇まいから想像したとおりと言えるだろう。


でも隣の白い彼……っ!!その雰囲気で特技が勉強って!?


……と、誰もが思ったことであろう。


足が悪いのかしら?右手の杖で体を支えている。


細身で、非常に中性的な体つきだった。透き通るように白くきめ細かい肌は、とても男性のものとは思えない。


このクラスの女子何人かは、自らの自信をこっぴどく粉砕されただろう。………ええ私もその一人ですとも。


女性的な魅力さえ感じるような高い鼻梁と薄い唇。そして、それを一層引き立てる赤い瞳は血のように赤かった。


ただし、眉間を中心に放たれる刺々しい雰囲気はそれらの印象を覆い隠し、その上で刃のような異質な何かに変えていた。


普通に眺めたら貧弱そうにも映る体型なのに、そう映らないのが不思議だ。


うちのクラスは学年の奇人変人、変わり者が集ったとも言えるクラスだろう。主にあの三馬鹿とか。


それでも、彼ほど特殊な雰囲気の人間はどこを探してもいないと思う。


正直言って、クラスメイト、そしてクラス委員として、彼ら……特に白い彼と接するのに不安を感じた。


………ちょっとだけ、怖いかも、って。そう、ちょっとだけ、だけれども。





「はいはい皆さぁん!!ご覧のとおり美男美女なのですよーー!楽しみですねーー!!仲良くしましょうねーーーっ!!」


「「はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!」」


「うっひょおおお!!上やん上やん!!あの子来とるでええええええええ!!僕の息子も来とるでぇええええええええええ!!!!」



えっ!?な、なんでそんな食いつくのよ!?


面倒なことを考えてるのは私だけなの!?


た、確かに白い彼はちょっと、うん……あれかもしれない、けど……そ、それよりあの物騒な雰囲気には誰も反応しないの?




「アクセラちゃんは吹寄ちゃんの隣!ワーストちゃんは上条ちゃんの隣の席についてください!」


っ!?ふ、普通同性どうしで隣にしますよね小萌先生!


声には出さなかったが滅茶苦茶動揺した。女の子ならやりやすかったのにッ!


……でも、正直、そんなことになるかもと言う気はしてた。


だって上条の隣が空いているのだ。こうなったのは自明とも言えるかもしれない。


くっ……!奮い立て吹寄制理っ!クラス委員として先生は私に期待してくれてるのよ!


彼らがクラスに馴染むも馴染めないも私次第っ!!どうせあのアホ(青ピ)は頼りになんないんだから!


ざわざわ、と上条を中心に騒がしくなっている様子だけど、そんなこと気にしてる暇はない。


どう声をかけよう?男子といっても、あそこまで尖った不良っぽい人は相手にしたことないし……


思考にふけろうにも時間はない。カツ、カツ、と、杖をつく音と共にゆったりとした様子で白い彼は近づいてくる。


ふ、普通で大丈夫、よね……?ん……?普通に声かけるってどんなが良いのよ!?


あぁあ!もう!どうすればいいのかしら!?


無意識に頭を掻きむしっていた私は、杖の音が聞こえなくなっているのに気づく。


………………。


「…………」


顔を上げてみると、赤い瞳にぶつかった。


言葉が出てこない。近くで見ると、怜悧な表情が一層引き立って見えた。



「……一方通行だ。ヨロシク」


白い手が差し出される。細長い指に視線が引かれる。


息のかかった声だった。杖をわざわざ丁寧に折り畳み、右手で握手を求めてくる。


あ、え、ええ……ふ、吹寄制理、です……


白く華奢な手はひんやりとしていた。


ぎゅっと握り返す。


……………


………え?本当に男の手なの?


ていうか肌白っ!?無駄毛一本もないし、すべすべだし……


「………………オイ」


っ!す、すまなかったわ!


慌てて手を離す。不覚っ!あの感触に溺れていた…!!……恐るべき転入生ね……!


きっと情緒不安定に映っただろう。そんな不安を裂くがごとく、何事もなかったかのように白い彼は落ち着いた様子で言葉を紡いだ。


「クラス委員、なンだろ?……普通の学校ってやつに慣れてねェンだ。世話になるかもしれねェ」


……………


………



「……聞いてンのか?」


あ、お、おー!何でも頼ってくれて構わないわよっ!


「そォかい。………ありがとよ」


挨拶もそこそこに、彼、一方通行は私の左の席に着いた。


特に緊張があるわけでもなさそうに、ゆったりと、くつろぎ過ぎとも言える様子で教壇を見つめている。


…………思ったより、普通の男子なのね。制服も着崩してないし。どことなく大人っぽいように見えるし。


握り返した時の手の感触を思い出す。柔らかく、冷たい手。


うん。これなら世話を焼いても問題ないわね。「世話してくれ」って言ってたし。


思ったより普通の人で安心だ。


別に他意はないわ。頼まれたんだし、クラス委員だし……あ、握手されたし……「世話してくれ」って言われたし……


「それではHRを始めますねーーっ!」


上条がまたなんか騒ぎ立ててたみたいだけれども、いつものことだと思うことにした。





▽一方通行




思ったより数倍やり易かった。正直、拍子抜け、ってところだな。


俺みてェなやつに世話を焼いてくる女もいやがるし、クラスの連中は呆れかえるほどのお人好し連中ぞろい。


性悪クローンの言動が「愛嬌」として受け入れられてンだから笑うしかねェ。


吹寄とかいう女に校内を案内された。こうやって人だらけの学校を歩くのなンて何年ぶりだろォな。


思ったより愉快な時間だった。世辞じゃねェ。マジで、だ。


俺たちが通うことになったのは月並みの学校だ。


施設も月並み、学習内容も月並み、生徒の質も月並み、ってな。


授業の内容は簡単すぎる節があったが、きっとこれが普通なンだろう。石器時代に遡った気分だった。


ノートをとってなかったら吹寄にどつかれた。………ってェな。


「挑発的な態度はだめ!」、だったな確か。


ルール破ると番外個体がクソガキに密告しやがるからな。ちっ……何であンなもン了承しちまったンだか……


「ノートは取らなくていいの?後で困るわよ?」


「勉強は得意」なンでな。分からねェところは教えてやるから多めに見ろよ。


「余裕じゃないの……来週の学力審査テストで吠え面かかせてやるわ!」


大きく出たな……面白ェ。


学生が大勢集うところってのは、複雑な生活臭がするもンなンだな。どこかで嗅いだ気がするが忘れちまった。


ネガティブな気分にならなかっただけでも上々、ってヤツだ。あの性悪クローンもうまくやっていやがるしな。







昼食の時間。


こういう時は誰かと一緒に食べるのが社会生活の決まりらしい。


さァてどうするか、と立ち上がった途端、上条の野郎に拉致された。


暑苦しいが暴れるわけにも行かない。クソガキと約束したからな。


「一方通行ぁ!一体全体どういうことなんだよ!」


どォもこォもねェよ。ご覧の有様ってな。


「……く、くそう……番外個体のせいで上条さんはまた生傷だらけに……ちくせう……」


そいつは随分と世紀末なクラスだなァ。


説明も何も、特にワケなンざねェよ。あえて言うなら「社会復帰」だな。


「社会復帰?」


俺の面倒そうな説明口調に、表情を緩ませる上条。なにこいつ気持ち悪ィ……


「ちょっ!?気持ち悪いってな!?これは上条さんなりの親心で——」


アリガトーゴザイマス。オトーサン。………いずれにせよ、世話になる。


「おうよ!どーんとまかせなさい!」


「いい話だにゃー」


……さっきから気にはなっていたが、テメエ土御門。何だその理解しがたい口調は。ワケわかンねェ。


「コミュニケーションの円滑化を図るための手段だにゃー。なんならお前のも考えてやろーか?一方通行」


これ以上俺に似合わねェことをさせるンじゃねェ。


「なぁなぁ、アーくんって女だったりせぇへんの?」


しねェよ。……つゥか何だよ「アーくん」ってのは。


「アーくん」


「アーくんだにゃー」


………オーケー、神様に祈る準備は出来たかよ?


流石にこいつらは「ルール」適用外だろ。運良くクラスメイトも教室にはほとンど残ってねェしな。





▽番外個体




学校って思ったより愉快かもねーっ。ぎゃはっ☆


ミサカの遺伝子に直接訴え掛ける何かを持ってんじゃないか。そう噂されるヒーローさんを誘惑してみた。


思ったよりウブでびっくり。個人的にはヒーローさんにそーゆーのは全くないけど、結構女の目線が釣れた。


姫神秋沙など釣れた女の典例で、世話焼きの吹寄制理とともにすぐに仲良くなった。


あのツンツン頭の彼、ミサカが狙っちゃおっかなぁ〜♪


「………やめておいたほうがいい。彼は、どうしようもない」


あひゃひゃひゃっ!わっかりやす!


ミサカは悪意にいい意味で敏感だからねぇー。そーゆーのもわかるんだよん。


え?本気で言ってるのかって?ぶっひゃひゃひゃひゃひゃ!!


嘘嘘ぉっ☆じょーだんだにゃ〜ん。……いひひ、びっくりした?


やるならとことんやった方がいいよ?中途半端じゃその他一万以上の彼を慕う女性には勝てないからねぇー。きひひ。


「っ……!!そ、そこまでの事態に進行していたとは……」


何この子面白いっ♪


表情に出てないのに、滅茶苦茶必死そうなのがわかるってところが特に!


「一緒に住んでるって聞いたけど……その、一方通行とはどういう関係なの?」


あ。あと、せーりんがやたら第一位のことについて聞いてきた。


まさか、とは思うけど、違うよね?


「ちっ、違う!違うわ!べ、別にあいつのことがどうこうとかではなくてっ!!」


………oh。


これは面白くなってきたぁぁあああああああああああ!!


よっしゃあ!第一位の無様で面白い姿も見たいしっ!


例のメモにもあったしっ!


秋沙とせーりん面白いし!!


こいつぁ最高にハイってヤツだぜぇええええええええ!!





〜打ち止めのメモ〜


『ルール』!!


あいさつは人間かんけいの基本!!

怒りに任せた大声は禁止!!

舌打ちはだめ!!

コミュニケーションはていねいに!!

みんなに優しくすること!!

挑発的な態度はだめ!

能力使ってあばれない!



(しゃかいふっき)

学校⇒くりあ!

料理

美容院

カラオケ

ボーリング

コンサート

TVゲーム

読書

映画

お弁当

きっさてん

おようふく⇒クリア!

旅行


今日はここまで。

次は一週間以内に来ます。

次はカラオケ編。

正確にはカミやん だっけ?
自信ないけど

大反響じゃねえかよおい……嬉しいです。

念のため言っておきますが、カップリングをメインにしたお話ではありません。
エンディングは恋愛とは離れた感じで持っていこうと考えてますんで、そこんとこはご了承ください。一方さんは色んな女の子にフラグ立てるかもしんないけどね?あ、上条さんのフラグは取らないよ?
個別エンドはオマケで書けたら書こうかな、って感じ。

>>63あと、「カミやん」ですね?訂正アリガトウ!

カラオケ編投下します。短いかも?




〜カラオケ〜




▽土御門元春




あいつがいきなり転入した時には度肝を抜かれたが、思ったより馴染む気はあるみたいで安心した。


いろいろ経験して丸くなったか、こいつの愛する電撃ロリに丸め込まれたのかはわからんが、良い傾向だ。


自己紹介で丁寧語遣って話し始めた時には恐怖しか感じなかったが、これはこれで一安心だ。俺のストレスが貯まることも無いだろう。


あいつとは、カタギの世界で仲良しこよしにするのは無理だと思っていた。


俺らしくもなく接し方に苦慮しちまったが、カミやんと青ピの野郎がそんな空気をブッ壊してくれやがった。


にゃははははははははははははははは!!!!!!!


何面倒くさいこと何考えてんだ、ってな。


少なくとも、あいつは俺たちと利害なしで仲良くやろうっていう気でここに来たわけだしな。ちょっと前のあいつとは違うみたいだし。


いい意味で一皮むけた、ってところかにゃー?


俺たちの関係だって、良いに越したことはないだろう。これからは殺しの話はしないで済むだろうしな。



……で、だ。


今俺たちは揃うようで揃わなかった面子とともにカラオケボックスに向かっている。


野郎が俺と上やん、青ピ、そして例の白いあいつ。


女が姫神、吹寄、それから例の第三位のクローンだ。


「面倒なヤツだ。悪意に敏感のくせに、それを嫌わねェから始末に置けねェ」


ため息混じりで一方通行がこぼしていたのも頷ける。


うん、なるほどにゃー。


彼女は、この一日でカミやんの一年間以上にクラスの人間関係を把握したようだ。主にカミやん関係で。


「ゲーセンかカラオケでも行くか!一方通行の転入祝いだ!」


そう意気込んだカミやんに取り付き、あれやこれやと女子のメンツも混じることになった。非常に自然な流れだ。


……カミやん。少しはこの子を見習うべきだにゃー……


「ん?何を?」


殴りつけたくなる衝動を必死で堪えつつ、みんなで仲良くカラオケボックスに向かうことにする。


やけに素直な一方通行。流石にこれは怪訝に思っても仕方がないだろう。こいつとカラオケってちぐはぐさが半端ないにゃー。


「カラオケなら行ったことあるからな」


誰とだにゃー?


「………俺が誰かと仲良しこよしでカラオケ行くやつに見えンのか」


…………ぐすん。


……よぉし!今日は盛り上がるぜぃ一方通行!!


ホストのお前には恥ずかしい曲も歌ってもらうからな!覚悟しとくんだにゃー♪


「何でもかンでも歌ってやるとは言ってねェだろォが!!」


学生服をきちんと着こなしたこいつを見ると、いつもの怪物っぷりが嘘みたいに思えてくる。


からかいがいもあるし、なんだかんだ言って上手くやっていけそうだにゃー。


「……もォどうにでもなりやがれ」


素直じゃないのは、全くもって変わっていない。


車の通らない赤信号を素直に待っているこいつを見ていると、普通の学生に見えなくもなかった。









▽番外個体



秋沙とせーりんが面白かったから、ヒーローさん含む野郎をカラオケに誘ってみた。


やけにノリの良いグラサンアロハと青髪ピアスは想定内だったが、第一位が素直すぎたのはなんかムカついた。


「構わねェ」


ていうか本格的に秋沙が面白い、てゆーかなんか可愛い。


これは本格的に応援してやっても良いかもしれない。そんなことまで考えちゃう。


閑話休題。


どうせカラオケなんて行ったことねーだろう第一位をdisるのが本宴会の目的である。


学校から一番近いカラオケボックスには歩いて十分足らずで着いた。


ていうか学園都市のカラオケってマジで高い。学生の足元見てんなこれ。


意外に手馴れた様子で受付を済ませた第一位を見たときにイヤな予感はよぎる。


セブンスミストでの失態を繰り返すのではないか?その恐れは現実となった。


「ほらよ、次オマエだぞ番外個体」


…………んん〜?


………なにこれ、納得いかない。





能力使ってないよね……?


「あァ?ンなくっだらねェことで使ってたまるかよ。三十分しか持たねェンだぞ?」


そう言って渡されたマイク。


……ミサカ、歌には結構自信あったんだけどな……


これのあとじゃやりずれえ……えぇー、なにこれ。思ってたのとなんか違う。


つーか久保田利伸って何だよ!?キャラじゃねえだろ!


「うるせェ!!好きな歌歌って何が悪い!?」


悪いんだよおおおおおお!!一発目からそんなじゃ次の人歌いづらいんだよおおぉ!!


ほら見ろ!?皆さんドン引きしてらっしゃるだろぉが!ほらっ!約一名の乙女を除いて!


つーか第一位のキャラじゃねーし!もっと反社会的な歌詞をがなり立てる感じのヤツ歌えよぉお!


厨二っぽいのを求めてたんだよおおおおおおおおおおお!!!何こぶしを交えて歌い上げてんのぉっ!?ミサカ的にアウトぉおおおおおおおおお!!


「………そォいうもンなのか?」


あぁぁああああああああああああ!!もういい!!ミサカが空気を一新してやる!


あたしの歌をっ!聴けええええええええええええええええええええええ!!






感覚共有して、第一位の「声にできない」をみさつべにうpしたところ、一方派の妹が急増した。


………つまりは、そういうことなのだ。ちきしょう。


ていうかミサカ、噛ませ化してない?







▽青髪ピアス



アーくんといい、ワーストちゃんといい、随分と濃いメンツが転入してきたもんやなー。


ボクの影が薄うなりそな雰囲気……!!はっ!キャラ転換のきっかけかっ!?


………と、冗談はさておいて、カラオケ大会。ひっじょーに盛り上がったわ。


クールキャラかと思っとったがアーくん、結構ノリが良い。


ていうかその面で歌上手いってどんだけや!!嫉妬するわー!!


こっから先はアニソン縛りや!っていうボクらの無茶ぶりにもしっかりと答えてくれた。


セレクトも非常に渋かった。十年間くらいそーゆーの見てなかったんだろなぁー。


特撮好きなんも意外っちゃ意外。期待通りといえば期待通りってとこやね。


「期待通りってどォ言う意味だコラ」


いやぁ、大きな意味はあらへんよ。ところでアーくんアニメ見ぃひんの?


「長いこと見てねェな。クソガキが日曜七時半に見てるヤツくらいだな……まァ、観てるってレベルじゃねェけどな」


じゃあ歌えるんやな!よっしゃ姫神さんも!三人で歌うで!!


「オイ固羅クソ野郎。歌えるとは一言も——」


「任せて。私の前世は、魔法少女」


「どこの世界に生きてンだよ………って、おいコラ!勝手に入れてンじゃねェ!!」




そんな風に文句言いながらも振り付けまでして歌っちゃってくれました。


最後の方はもうヤケになってたね。


つっちーが爆笑しながら写メってたのにも気づいてないみたいだったし。


「ぎゃははははははははっ!ちょっ!!第一位!!ひぃいいいいいひゃひゃひゃ!!」


ワーストちゃんなんて呼吸も苦しそうや。


………と、こんな風にボクらは上手くやっていけそうな訳です。


アーくんとワーストちゃんはワケアリらしく、こーゆーの初めてみたいやね。でも、そんなの関係あらへんよな。


ふたり共粗暴そうな顔しといてかわいいところあるしなぁ。とくにアーくん。


そんなこと、本人には絶対言えへんけどな。


「………カラオケって、こうも疲れるもンなのかよ」


そんなことないで?今日は特別や。なんせ、キミらの転入祝いやからね。






〜打ち止めのメモ〜


『ルール』!!


あいさつは人間かんけいの基本!!

怒りに任せた大声は禁止!!

舌打ちはだめ!!

コミュニケーションはていねいに!!

みんなに優しくすること!!

挑発的な態度はだめ!

能力使ってあばれない!



(しゃかいふっき)

学校⇒くりあ!

料理

美容院

カラオケ⇒くりあ!

ボーリング

コンサート

TVゲーム

読書

映画

お弁当

きっさてん

おようふく⇒くりあ!

旅行



なんかふやすかも↓




投下終了。

番外個体ちゃんとは兄妹みたいな関係が一番好きな>>1
次回は世紀末帝王が出ます。彼は学校通わないけど。

次回は十日くらいになるかも。有難うございました。

姫神さんは読点が全部句点になる

>>90
サンクス!気をつけます。

投下に来ました!
今回は地味目。




〜お買い物〜




▽打ち止め



「五月病の季節じゃん……」


ヨミカワが家でそんなことを言ってた。ソファで寝そべるヨシカワを見下ろしながら。


ミサカにも知識はあるけど、五月病がどんな症状を引き起こすのかはよく分からなかった。


「どうして人は……働くのかしらね……」


RPGの主人公みたいなこと言ってるヨシカワ見てたら、疑問は一瞬で払拭されちゃった。


これじゃあヨミカワ以上に嫁の貰い手が来ないだろうなぁ、とかなんとか考えちゃったり。


閑話休題。


ふっふっふ……そんな余談はっ、今はどうでもいいのだぁっ!今日はあの人とお買い物なのだから!


あの人が普通にバスとか乗るのを見るのも新鮮だったり!車ジャックしてどこーん!とか、能力使ってびゅーん!そんなイメージが強いからかも。


ミサカはポータブルのゲームソフトと据え置きのパーティーゲームを!あの人は調理器具を買ってた!えらい!


ヨミカワが何でもかんでも炊飯器で解決するせいで、普通の調理器具が不足してたのだ。


これではミサカのリクエストに応えられないからと、わざわざお買いものに行くことにしたらしい。


「オマエのリクエストなンざ知らねェよ。ただなンとなく料理がしたくなっただけだ」


とか言ってたけどね〜♪ふっふ〜ん♪


ミサカはミサカはお見通しなんだから!素直じゃないよね?あの人って!


長く使うからと、値段を見ないで商品を選ぶあの人はやっぱりずれてるけど、それもあの人らしさかも。


量が思ったより多かったから調理器具は郵送。手元にはゲームソフトだけが残っているのだよ!


この前買ってもらったお洋服を着て、ちょっぴり背伸びしたネックレスを付けてのお買い物。


モノトーン以外もびっくりするほど似合うあの人とミサカは、街中の視線を独り占めっ!思わず足取りが軽くなる!


「おっ、打ち止めだ。にゃあ」


「うぉおっ!?………一方通行?」


帰り道の公園でフレメアと保護者さんに会った。


あの人曰く「クソ面」さんは、あの人のことを認識できてなかったみたい。わからないこともないけどねー♪


「はまづら!遊びたい!大体、いいでしょ?」


「え?構わねえけど……どうするよ?一方通行」


ミサカも大歓迎!ねえねえ!そこの公園で遊んできていい?ミサカはミサカはにこやかスマイルであなたを懐柔してみるっ!


「……あと一時間で五時だ。それまで俺はここにいる。あンまり遠くに行くンじゃねェぞ。あと上着は脱いでけ。洗濯出来ねェからな」


そう言ってゲームソフトを与てくれるあの人。浜面さんもいるから退屈はしないよね?


よっしゃああああっ!!行こうフレメア!ミサカと競争だぁああああああああっ!!


「にゃあ!大体、負けない!」


一時間って言うのは思ったよりあっという間に過ぎ去ってしまうのだよ!何故ならミサカは若いからっ!





▽浜面仕上





平日でも休日でも、学園都市の人通りはほとんど変わらない。


廃ビルや路地裏を活動拠点としてた俺だが、慣れというのは恐ろしいものである。


人通りの多さにも、ぬるま湯のような生活にも、すっかり落ち着くようになってしまった。


やはり落ち着ける空間というものはいいもんだな。あとバニーとか。


この俺、浜面仕上は四月から労働者である。しがないパートアルバイターではあるが。


アイテムの連中は再び学校に通う余裕を取り戻し、血生臭い生き方とは決別した。


スウィートマイハニーである滝壷理后もその例に漏れない。


彼女たちは能力ゆえの奨学金があるが、学校をドロップアウトした俺にとって、それは雀の涙でしかない。


なんとかアルバイトで食い扶持を繋いでいる、という有様な訳である。……まぁ、それなりに楽しくやってるけどな。


滝壷は何かと世話を焼いてくれるが、流石に男としてこの状況に甘んじ続けるわけには行かない。


資格でも取って何かできないかなとは考えているが、まだまだ模索の段階なのである。残念ながら……




「おっ、打ち止めだ。にゃあ」


公園の前を通りかかるとき、意外な顔と出くわした。


最初は誰だか判別しづらかったが、手をつないでいる少女と、持ち前の白髪と赤い目でようやく認識。その間五秒。


………一方通行?


子供の動きというのは実に素早い。動きと感情が直結しているみてえだ。


公園の遊具に向かって掛けていくフレメアと打ち止めを見守りながら俺たちはベンチに腰掛けた。


それにしても今日の一方通行はお洒落さんだなぁ。一片の隙もないコーディネイトを見事に着こなしている。


いやぁー……お前、普通の格好してると別人な?最初はどこの誰かと思ったわ。


「そォ言うオマエは、どンな格好晒しててもそのアホ面でわかるぜ?クソ面くン。」


浜面だ!!ねぇマジで止めてくんない!?最近お前の影響か、大将まで俺になら何言ってもいいと思ってるっぽいんだぞ!?


「いやいや俺の影響とか関係ないンで。もう毛穴という毛穴からそォ言うオーラ出てるンで」


えっ。マジで?……そんなオーラ出てるかな?


そりゃあしょっちゅう絹旗からは「オーラがもう超ダメ」とか言われてるけど……そんなかな……?


「フレメアも言ってたぞ?『浜面は、毛穴からクソが出てる、にゃあ』ってなァ」


能力使ってモノマネしないでぇええ!?マジでメンタルに来るからっ!!


畜生っ!こいつ俺をからかう時はすげえ生き生きとしてんのな!?






絹旗といい、黒夜といい、こいつと同系統の能力持ってるヤツはみんなこうなんだい!


くそぉっ!全ての元凶!俺のカーストが下がったのもこいつのせいなんだい!


そんなこんなでくだらない話題をぽんぽんと投げかけ合っているうちに、あっという間に時間はやってきた。


何を話しても、俺をからかうという話題に収束し続ける時間だったが、本当にあっという間の一時間だ。


出会いが出会いであった訳だし、超能力者だし、怖いし。非常に気難しい男だと思っていたが、どこか胸に暖かいものを感じた。


「じゃァな浜面。せいぜい汗水流して働け。………イイ暇つぶしくらいにはなった」


一足先に戻ってきた打ち止めの手を握り、歩き出す。


………こいつ、なんか丸くなった?


「じゃァな」だの、「イイ暇潰し」だの、飴と鞭なのかと邪推したくなってしまうほどだ。


これが俺と半蔵だったり、、友人同士という関係なら当たり前の光景なのかもしれない。でも、少なくとも俺たちは少し違った関係だったはずだ。


この街の掃き溜めを渡り歩き、その度食い破ってきた男。麦野以上の闇をくぐり、それを自らの一部としてしまった少年、一方通行。


誰も彼もこいつに無関心でいてくれない。しかし向けられる感情は悪意、または一方通行を利用せんとする者ばかり。





罵倒。嘲笑。暴力。一方通行の人生には、そんなものが山ほど転がっていて、きっとそれに慣れてしまったのだろう。


暴力の渦、血溜りの海、裏切りの坩堝。そんな掃き溜めの中でこそ平静でいられる。こいつはそんな男だったはずだ。


「………ンだよ。アホ面晒して。……もォ行くな」


そんなあいつが、ありふれた“あいさつ”を交わした。


ぶっきらぼうで恥ずかしそうな、下手くそな挨拶を。


確かにそれは普通のことかもしれない。そう、普通のことなのだ。


でも、何かに許しを請うように、ひたすら苦しみの中に身を置いていたこいつが、その“普通”を許すことができた。俺にはそれが嬉しくてたまらかった。


こいつとは浅からぬ仲だと言えるだろう。それでも、友人と呼ぶには物騒な関係だ。


でも、さっき感じた暖かいものはが俺に確信させる。こいつとは友達になれると。新しい関係を始めることができると。


……………


………よし!!


こうなったら拒絶され続けても善意を浴びせ続けてやる!楽勝だぜ超能力者!俺の打たれ強さを舐めるなよ!


今度打ち止め連れて遊びに来いよ!





フレメアも喜ぶし!滝壺も喜んでくれるしな!


絶対だぞ!滝壷の料理美味しいんだからな!


秘蔵のエロ本貸してやるから!オカズ分けてやるからなぁーーーーーーーーっ!!


あいつの背中が見えなくなるまで手を振る。からかいに耐えていた甲斐があった。そんなことまで考えてしまいそうだ。俺たちはきっと、もっと仲良くなれるはずだ。


「にゃあ?浜面。大体、嬉しそうだね」


ああ、いいことがあったからな。嬉しいぜ。


子供に感づかれるとは、顔に出やすいのだろうか?まぁそれでもいいけどよ。


「良かった。滝壷に知らせてあげなくっちゃ」


フレメアのスキップに付き合って軽やかに帰路を行く。


奇異の視線なんて、世紀末帝王HAMADURAの前には痛くも痒くもないのだ。


道行く女学生の舌打ちも気にならない。気にならないったら、気にならない。





▽一方通行




クソガキの買い物に付き合った、って言うのも語弊があるな。


俺もたっぷりと買い物を済ませた。これも、一般社会で言うところの「家族サービス」に入ンのか?


ベンチに腰掛け缶コーヒーを啜る。アホ面晒して意気揚々とブランコ漕いでるクソガキが見える。


あの面眺めてりゃあ誰にだってわかる。あいつにとって初めての学校は、たいそう楽しいものだったらしい。


ま、甘ったれたガキ共にあンなアホガキが好かれねェはずも無ェよな。


ゲームを買ってやるのも黄泉川は反対しやがったが、近頃のゲームソフトはコミュニケーション・ツールの役割も果たしてるらしいからな。必須アイテム。これ絶対。


ついでにパーティー・ゲームも買ってやった。俺がやるとでも言えば黄泉川も黙るだろう。


「いやぁー……お前、普通の格好してると別人な?最初はどこの誰かと思ったわ」


そォ言うオマエは、どンな格好晒しててもそのアホ面でわかるぜ?クソ面くン。


まさかコイツとこ出会うとはな。


CASTに名前も乗らねェような三下面のこいつ。罵倒の言葉も良心を咎めねェ。


それも才能の一つだぜ?本当になァ。


「浜面だ!!ねぇ!マジで止めてくんない!?最近お前の影響か、大将まで俺になら何言ってもいいと思ってるっぽいんだぞ!?」


いやいや俺の影響とか関係ないンで。もう毛穴という毛穴からそォ言うオーラ出てるンで。


「えっ。マジで?」





フレメアも言ってたぞ?「浜面は、毛穴からクソが出てる、にゃあ」ってなァ。


「能力使ってモノマネしないでぇええ!?マジでメンタルに来るからっ!!」


浜面への暴言は全人類に許された権利だ。(原子崩し談)……いや、知らねェけどな。


そろそろ飽きてきたのでこれくらいにしてやるとする。休日にフレメアを連れて歩いているということはこいつも家族サービスなのだろう。


手元の缶コーヒーが温くなっているのに気付く。時計を眺めると随分話し込んでいたようだ。良い子はもう帰る時間だ。


砂場で城を作っていたクソガキは、俺が歩み寄ると手を振ってくる。


金髪のガキも自体を察したようだ。敏いガキじゃねェか。


じゃァな浜面。せいぜい汗水流して働け。………イイ暇つぶしくらいにはなった。


嬉しそうなアホ面を晒すという器用な真似をしでかすコイツは、やっぱり弄られる才能がある。


「ルール」とやらも身に馴染んできたようだ。もう悩まされずに自然に振る舞える。


「おう!今度打ち止め連れて遊びに来いよ!」


一人で行くのは御免だが、クソガキの相手してくれンのなら大助かりだ。


クソガキの冷えた手を左手で握り返す。泥がまだまだ残ってやがる。上着を預かってて正解だったな。


つゥか、……手、洗ったのかよ?


「うん!見て見て!ノイシュヴァレンシュタイン城作ったんだよ!って、ミサカはミサカは努力の結晶をアナタに誇示してみるっ」


……ふゥん。やるじゃねェか。


やわらかい髪越しに頭を撫でる。気分が良くなったのか、クソガキは一層やかましくハシャぎたてた。


「ねぇねぇ!今度フレメアのおうち遊びに行こうよ!って、ミサカはミサカは提案してみる!」


面倒な用事がまた一つ増えやがった。全くもって、社会復帰ってのは厄介だ。


原子崩したちのツラを拝むのは甚だ不快だが、あのアホが哀れなツラして懇願してたからな。義理立てしとくのも悪くは無ェかもな。





〜打ち止めのメモ〜


『ルール』!!


あいさつは人間かんけいの基本!!

怒りに任せた大声は禁止!!

舌打ちはだめ!!

コミュニケーションはていねいに!!

みんなに優しくすること!!

挑発的な態度はだめ!

能力使ってあばれない!



(しゃかいふっき)

学校⇒くりあ!

料理

美容院

カラオケ⇒くりあ!

ボーリング

コンサート

TVゲーム

うんどうかい

映画

お弁当

きっさてん

おようふく⇒くりあ!

旅行

お買い(New!)⇒くりあ!

今日はここまでです!
有難うございました!


次回は一週間後くらい。

超電磁砲組登場!!

投下します。


喫茶店編。




〜きっさてん〜






▽御坂美琴




近頃はいつもの四人で集まることができる機会が増えた。


お世辞にも友人が多いとは言えない私にとっては非常に喜ばしいことで、こんな日を大切にしたいと常々思う。


中学三年生に進級した私の一番の関心事は受験でも学校行事でもない。


普通の女の子なら誰だって経験するであろう、優先順位の曖昧なもの。


私の一方的なものであろうそれの対象であるアイツ、そして一番忘れたいあの野郎の関わる大きなイザコザが終わって一ヶ月とちょっと。


いい加減自分の気持ちにも自覚して、それをさほど恥ずかしいものだと思わないくらいには私は素直になっていた。


なかなか積極的にはなれないでいるけど、佐天さんや初春さん、そして婚后さんに悩みを打ち明けるくらいのことはした。


とても真剣に話を聞いてくれて、とっても嬉しくて、ちょっとだけ泣きそうになった。これはここだけの話。


小言とセクハラの多い黒子と、適当な花言葉を並べ立てる初春さん。そして、セクハラとテンションの高さに定評のある佐天さん。いつもの四人で私は通りを歩く。


目的は、チェーンのファミレスの割にはコーヒーが美味しいと評判のお店。


学園都市第一号店だが、大変盛況しているらしい。値段もリーズナブルなので是非行ってみようということになったのだ。スイーツも美味しいらしいしね。



「お、御坂じゃねえか」


あっ、アンタっ——……げ。


「………よォ」


お店の入口。一番見たい顔と一番見たくない顔に同時に出くわす。


らしくもなく挨拶を交わしてきた。嫌がらせの一環だろうか?





「ぐ、ぬぬぬ……類人猿……っ!ついにお姉様のストーキングにまで手を伸ばすとはっ!信じられない執念ですの!」


「ひっ、人聞きの悪いこと言うなっ!?おい御坂っ!?なんとか言ってやってくれよ!」


……はぁ。正直複雑な心境だ。


アイツだけと出くわしたとしたら、こんな余裕は生まれなかっただろう。


電撃漏れてたかもしれないし、後ろでからかい混じりにニヤニヤしてる佐天さん達にカッコ悪いとこ見せちゃったかも。


ここは感謝するべきなのか否か……と、そんなことを考えているうちに店員がやって来る。席がないのかな?


「大変申し訳ございません。只今混み合っておりまして、二人がけのお席がお一つと、四人がけのお席がお一つしか確保出来ないのですが——」


六人でひと組だと思われてたみたい。


むしろ丁度いい組み合わせよね?アイツ、とはまたの機会で良いし……今日はもともと四人で来たんだしね!うん!ちょっと残念だけど!


「はいはーい!私から提案がありまーっす!!」


……………


……え?


ちょ、ちょっと佐天さんっ!?それでいいのっ!?


て、ていうかこ、心の準備がねっ!?ほら!黒子とかスンゴイ顔してるし!もはや女子中学生がやっちゃアウトな顔してるし!!





「頑張ってくださいね?御坂さん!こういうチャンスはモノにしないとダメですよ?」


う、うぅ……


あれやこれやとアイツと二人がけの席に通される私。


一方通行も気まずかったのか抵抗の様子を見せなかった。


……っ!あぁぁあああああっ!!ど、どどどどうしよぉ!?何話せばいいのよ!?この期に及んで意識するなって方が大変よ!


「わ、悪いな御坂?こんなことになっちまってよ?」


……アンタが謝ることじゃないわよ。


佐天さんや初春さんに真正面から相談したのが吉と出た。ここはそう思うことにしよう。


そう自分に言い聞かせながら、私はあいつの話に耳を傾ける。




▽一方通行





目の前のツンツン頭を見てると、本当に科学の街で生きてきたのか疑いたくなる。


「は、ははは……悪いっすねー。一方通行さん……課題、付き合わせちゃって……」


あのくらいの課題なら朝飯前だ。問題はオマエのおつむの中身だろォな。


「う、うぐう!」


土御門や青髪ピアスの悪ふざけに巻き込まれ、当然の帰結として罰則を食らった。


どォやらこいつらは慣れっこのようだったが、罰則が頭脳労働というのは初めての機会だったようだ。


「く、油断してたぜ……草むしり程度なら一方通行の能力で一瞬じゃねえかと思ってたのに……」


もしそうだったとしても能力は使わねェよ。つゥか、イイ機会なンじゃねェの?この調子で罰則くらってりゃあ赤点も免れンだろ。


「あ、あのなあ!?お前は三分で終わってたみたいだけど、俺は一時間かかったんだぞ!?こんなの繰り返してられっかよぉお!!」


はッ、知らねェな。俺が丁寧に教えてやってンのに分からねェお前が悪い。


「超絶スパルタだったじゃねえかよ……」


逃げ出しやがった土御門と青ピの野郎は、明日まとめてやらされンだろうな。俺は絶対手伝わねえけどな。


「お、御坂じゃねえか」


「あっ、アンタ——……げ。」


………よォ。


面倒なのに出くわした。こいつには義理立てする必要もねェが、上条がいるのが死ぬほど面倒臭ェ。


オリジナルの野郎も例に漏れずこいつのツバがかかってやがるからな。俺とコイツが揃うとやりづらいどころの騒ぎじゃねェし。


ほら見ろ。向こうも何とも言えねェ面してやがる。


すまねェな、超電磁砲。「妹達」にもコイツにお熱の個体がいやがるからな。特定の個人に肩入れするわけにはいかねェンだわ。


姫神とかもどォ見てもそうだし。つーか、クラスの女どもは大体そうだろ。


ま、わからねェことも無ェよ。うちのクソガキ誑かしやがったら全力で殺すけどな。





「はいはーい!私から提案がありまーっす!!」


ぎゃあぎゃあとやかましい女共。それと上条の声は聞き流してた。


俺が呆けてる間に話が固まってやがったようだ。………はァ?


…………


………面倒臭ェ。


顔を真っ赤にしたオリジナルと連れ立っていく上条。


必然的に、そこには俺とオリジナルの連れが残される。


………っち。クソッタレが……借りは大きいぜェ?


「あの、済みませんね?勝手に話進めちゃって」


頭に理解しがたいモノを乗っけた女が随分と堂々と話しかけてくる。どうやら俺が怖くないらしい。


どうやらこいつも普通じゃねェみたいだな。まァ、見りゃあわかるが。


構わねェ。超電磁砲のお熱なら俺も知ってるからな。


……これでコーヒー不味かったら、マジでぶっ殺すからな。三下。





▽佐天涙子





御坂さんの思い人にしては随分と地味な上条さん。


でも、彼の友人の男の人?は、とても人目を引く外見をしていた。


男の人には見えない肌理細やかで真っ白な肌。それ以上に真っ白な髪の毛からのぞく、真っ赤な目。薄い唇に細い首元。


ヴィジュアル系?ってのともちょっと違うかな?作為的な雰囲気が一切ないし。


何を着ていても、何を身につけていたとしても雰囲気がある。そんな感じの人。


でも、カッコいいって以前にちょっと怖いかも……


日本人が美人すぎる外人さんに気後れしちゃう感じのアレ。整いすぎってやっぱ近寄りがたいよね?


御坂さんの事情も汲み取って、あれやこれやで相席することとなった私たち。


さてどうしたものかと逡巡する私をよそに、初春は随分と堂々と彼に話しかけていた。


初春………?


………風紀委員の活動の賜物かな?自信ついちゃった?


シャイな初春らしくない。随分と堂々としてるもんだからそれとなく聞いてみた。初春、この人と知り合い?


「知り合いっていうか、命の恩人なんですよっ」


十月の事件のことを話に聞く。どうやら、腕を骨折した時の恩人らしい。


へぇー。これはこれはウチの初春がお世話になりました!私からも感謝します!


「……どォ致しまして。畏まる必要は無ェがな。むしろ、クソガキのお守りを感謝してェくらいだ」


バツが悪そうに吐き捨てる一方通行さん。





肌が白いってこういう時損だよね〜。ほんのり頬が赤い。


平静を装っているつもりなんだろうけど、照れてるのがバレバレ。


たぶん本人も無自覚なんだろうなぁ。テンションあんま変わってないし。


そんな照れなくても〜♪ほらほら!スマイルスマイル!


「照れてるとかワケわかンねェし」


…………


………


……うん。ていうかこの人なんだか可愛いんじゃないか。


見た目はちょっと怖いけど、初春が怖がらないわけだ。


「なァにニヤニヤ笑い浮かべてやがる。おいコラ」


あいた。


頭を優しくチョップされる。愛情表現の一種ですか?


「………オマエ、イイ具合に肝が座ってンのな」


その姿は私に親近感を抱かせるには十分すぎて、それ以降はびっくりするほど話が弾んだ。


年上の男の人と話すことなんて滅多にないから、とっても楽しい時間だった。ホントに。


白井さんの上条さんに対する愚痴すら盛り上がったのにはびっくりだ。普通ならドン引きするレベルなのにねー。


「無自覚だから始末に困るンだよ。いつか後ろから刺されるな」





どうやら御坂さんの想い人は、非常に競争率の高い男性らしい……頑張って御坂さん!!


「ぐ、にゅにゅにゅ……る、類人猿死すべしっ!!」


ちょ、ちょっと白井さん!落ち着いて!?


もうそれアウト!表情筋がおかしくなってるから!


完全に一方通行さんと初春は面白がっていた。二人して大爆笑。


……まあ、気持ちはわかるよ?ぷっ………はははっ!


笑い方怖いですね。って言ったらまたまたチョップされた。……ははは、気にしてたんだ。


何より驚かされたのは、一方通行さんが学園都市の頂点。レベル5の第一位っていう話だった。


御坂さんより上の超能力者。コンプレックスを克服したとは言え、少し複雑な心境だなぁ……


座は暗くなったりしなかっただろうか?幸い白井さんと初春は気に留めなかったみたいだけど……


「…………」


ん?どうかしました?一方通行さん?


「……いいや、何でもねェ」


それとなく御坂さんの方を気にしてみる。


……うん、上手くやってるみたい。良かった良かった。


御坂さんとはなんか複雑な関係みたい。何かあったんですか、って聞いたら、


「愉快な話じゃねェよ」


って一蹴された。


こういう仕草は大人っぽいな、とか思った。





▽一方通行





老け声のツインテと、花飾り女が慌ただしく出て行った。どォやら風紀委員の仕事らしい。


まァ、良い暇つぶしにはなってくれた。コーヒーも悪くはねェしな。


オリジナルのヤツは随分とイイオトモダチに恵まれたみてェだ。ツインテの方は贔屓目に見ても変態だったが。


この俺にここまで馴れ馴れしいンだ。救いようのねェアホだな。そうじゃねェならとンでもねェ大物かのどっちかだ。


半年前の俺にこのザマ見せたらなンて言うかね?想像したくもねェ。


「……あの、一方通行さん?ちょっと良いですか?」


あァ?


やけにハイテンションのガキ。佐天とかいう女がこれまたネガティブなトーンで声を絞り出した。


初対面だからこそ分かることもある。こいつは周りに気を遣いすぎるタイプの女だ。話の想像くらいはついていた。


さっきの続きだろ?大方、能力に関する事だろォが。


「っ!?ど、どうしてわかったんですか?」


そォ言う空気は分かるンだよ。……ちっ、俺も番外個体のことは言えねェな。


自分がどンな人間なのか突きつけられている気分になりやがる。アホみてェな善人共と長いこと連れ添いすぎたせいだな。


淀んだ空気ばっかり読めちまう自分に嫌悪感が募る。これは「社会生活」に行かせる能力なんですかねェ?面接官?


「悪意」に対して耐性が付くってのは、嫌われることを厭わないってことと同義だ。これ自体は悪いことでは無いかもしれねェ。だが、「嫌われたくない」って思うのと思わないのでは全く意味が違ってくる。


この一ヶ月、自慢のおつむで精一杯考えた。きっと間違っちゃいねェとは思ってる。





「…………。」


おい、いつまで黙ってンだ。


「えっ……」


話してみろよ。ご期待に添えるかは分かンねェけどな。


「………ありがとう、ございます」


佐天とかいうガキはこれまたご丁寧に話し始めた。


会って間もない俺にこんなことを話すお人好し加減に呆れつつも、反面羨ましくも思う。


初対面の人間に信用されるってのもむず痒い気分だ。まァ、悪い気はしねェよ。


自分が学園都市に来た時の事。


行為能力者への嫉妬。友人への嫉妬。自分の無力。


学園都市におけるコンプレックス。潜り抜けてきた事件。レベルアッパー。


自嘲的な口ぶりで、自虐的な笑みを浮かべて。


詳細まで理解しなくとも、こいつの言いたいことくらいは何となく察しが付く。


………ふゥン。


流石オリジナルの友人、ってとこか。一般人にしては愉快な経験をしてやがる。


一概に詰まンねェこととは切り捨てられねェな。全くもってこの都市は面倒臭い。


歪んだ環境に居れば心も歪むってもンだ。……身をもって経験した訳じゃ断じてねェがな。


なるほどな、簡単な事じゃねェか。つまりオマエは能力の底上げをしてェンだろ。


「っ!そんな簡単な事じゃありません!」


……どう聞いても簡単な事だろ。


オマエがオリジナルに嫉妬するのも話に聞く分には分かる。正確には気持ちまでは分からねェがな。



俺やアイツみたいなレベル5に、「能力は関係ない」なんて言われても説得力はねェよ。当然の事だ。


「持つもの」の言葉が「持たざるもの」に響くわけわ無ェからな。嫉妬して当然だ。しない方がどォかしてる。


「能力がすべて」って言うのも傲慢だが、確かにこの学園都市じゃ無能力者は生きにくい。


奨学金だって出にくい。無能力者は他所のことでよほど突出してねェと名門校にも行けねェ。


遊びの一つにしても、人生賭けるにしても貧乏くじだ。まったくもって溜まンねェ。


……ま、あのツンツン頭は例外だがな。無能力者ってくくり自体が間違ってる。


「…………」


現状をどうにかする手段なンて二つしか無ェよ。


一つ、諦めて現状に甘んじるか。


二つ、現状を打開するか。……こいつァつまり、何とかしてみせるってとこだ。言うほど簡単じゃねェけど。


「……私に、どうにかする、なんてことが可能なんですか?」


不可能、って言われてオマエは諦められンのか?


「っ!?あ、諦められるはず、無いじゃないですか!」


はっ、諦められンなら、俺に相談なンてしねェよな。


佐天は決死の覚悟で吐き出す。椅子を蹴り倒す勢いで立ち上がる。


……こンなことオトモダチには言えねェンだろうな。


どンな関係をもって「友人」って言うのか俺にはさっぱり分かンねェけど、俺に吐きだしてくれる分には全く構わねェよ。


生憎、悪意に晒されンのは慣れてンだ。




人間、自尊心がなきゃ生きては行けねェ。特に俺たち超能力者は無意識のレベルでそれが飛び抜けて強い。


そんな俺や超電磁砲が無能力者のコンプレックスを理解しようなンておこがましいにも程がある。笑えねェよ。


…………


………


……


で、結局オマエはどォしたいワケ?静かに問う。


クソみてえに真剣な面を晒す。俺も佐天涙子も。


っは、こんな空気になるとは思ってもみなかっただろォな。自分でもビックリだ。


「……………私は」


煮え切らない。踏み切れない。そう簡単には行かない。


あのクソガキみたいに能天気な女かと思ってたが、結構面倒な女らしい。


……思考をシンプルに切り替えてみろってンだ。ったく。簡単なコトだろォが。


現状に満足できてねェから悩ンでンだろ。だったら足掻くしか無ェ。足掻くなら好きなだけ足掻いてみやがれってンだ。


ここまで話聞いちまったンだから途中で放り出したりしねェよ。


「……………え?」


………おい、なンて面してやがる。


「い、今、なんて……言ったんですか?」


数秒前の悩める少女が嘘のようだ。今度は囁くような小さな声。おいおい、いきなり内気な少女を演出してンじゃねェよ。


「だ、だだだってっ!一方通行さんが話をかっ飛ばすからっ!」




「面倒見てやる」って言ってンだよ、クソッタレが。そのくらい察しやがれ。


「……………」


「無駄なあがきは止めろ」って言って欲しかったのか?お生憎様、俺はそンな甘くはねェよ。


「え、えぇぇええええええっ!?そ、そそそそれって————」


オマエの思ってる通りだ。分かったなら口閉じろ。アホ面止めろ。ぶち込まれてェのか。


「ぶっ、ぶちこっ……!?な、何言ってるんですかこの変態!!」


おー、おー、それくらいの啖呵切れンなら上等だ。手とり足取り教えてやる。





この都市には素養格付なンてもンも存在する。この街の学生を片っ端から敵に回す代物だ。


もしかしたら、そこにこの女の名は刻まれてるのかもしれねェ。これ以上の進歩は望めないのかも分からねェ。俺達の足掻きは時間の浪費にしかならないかもな。


だが、そンなもン知るかってンだ。所詮はアレイスターの野郎の計算で導き出されたクソッタレの方程式。破れねェ筈もない。


俺はあのクソ野郎の想像を超えてみせた。そいつをこの女で証明してやる。……それも悪くは無ェだろ。


それに?「みんなに優しくすること」との仰せだし?イイ暇つぶしにもなるし?


………何より、演算能力を取り上げられたくは無ェからな。




▽御坂美琴




アイツとのお茶は楽しかった!


コーヒーの味はあんまりわからなかったけど、ケーキは美味しかったし、何よりアイツの話はとっても新鮮!


会話といってもありふれたもの。TVの話だったり、漫画の話だったり、色気のないもばかり。


それでも、あいつの話はとっても面白くて、年甲斐もなくはしゃいでしまった様な気がした。……私、おかしくなかったわよね?


私の門限もあるし、あいつの事情もある。そんなに長い時間は居られなかったが、こんな時間を重ねて行きたいな、と素直に思う。


今日ばかりはあの憎たらしい白いヤツにも感謝したくなる気分だ。絶対口には出さないけど。


「ふむふむ……なるほど……おっ。御坂さん?もういいんですか?」


え、えぇ……


さ、佐天さん?随分と楽しそうね?


「へっへ〜ん♪そうですかねー?」


四人がけのシートに黒子と初春さんがいない。


聞いた話だとずいぶん前に風紀委員の仕事で空けていたようだ。え……?まさか、それからずっと二人?


「はい!そうです!ねぇ〜♪一方通行さん?」


「あのツインテ風紀委員から伝言だ。『お姉さまのウカレポンチ!!』……だとよ」


……なんか納得いかない。


ニコニコうきうきと心躍ってる佐天さん。一方通行の野郎、どんな魔法を使ったのだろう?あんな怖い顔してんのに……




混雑は一日中のようで、カウンターに群がる学生たちを避けつつ会計に向かう。値段は聞いていた通り非常にリーズナブルだった。


ま、あいつ自ら選んだんだから当然と言えば当然よね。


「よっし帰りますか!上条さん!しっかり御坂さんを送り届けるんですよ?」


………ん?ちょ、ちょっと!佐天さん一緒に帰らないの!?


「ちょっと一方通行さんに用がありましてっ!上条さん!たのんます!」


「お?お、おぉ、わかり、ましたけど……いいんですかね御坂さん?」


い、いちいち聞き返さないでよ……


「そんじゃあ行きますよ一方通行さん!きちんとエスコートしてくださいね!」


「おいコラ!こっちは杖付きなンだぞ!ちったァ気を遣いやがれ!!」


一方通行の手を引き、勢いよく去っていく佐天さん。


さ、佐天さんっ!?いつからそいつとそんなに———………行ってしまった。


いつから、といってもさっきからだろう。………ま、まさか弱みでも握られたんじゃ……!


「ま、一方通行付いてるし平気だろ。さぁて俺らも帰りますか、御坂」


う、うん……ていうか大丈夫なのかな?あいつロリコンって聞くし……すっごい心配なんだけど……


「絶対それアイツに言うなよ!マジで洒落になんねーくらい怒るからな!」


ガタガタと身を震わせてオーバーリアクションを取るアイツ。……そっか、気にしてんのね。一方通行……



日も暮れ始めた帰り道、社会復帰を目指しているという一方通行の話を聞いた。


学校での一方通行は意外も意外、大変快く受け入れられているらしい。……正直、信じられない。


「あいつはあいつなりに、前向きに生きてる。」


そう上条当麻は言い放った。


複雑な気分だが、それでもいいのかもしれない。



一万の「妹達」を殺した一方通行。


一万の「妹達」を救った一方通行。


私は、あいつのことを全くというほど知らない。だから、二つのことをした一方通行が同じ存在だとは思えないし、思いたくもない。


これから認めていくつもりもない。協力することはあっても、馴れ合うことはきっとしないだろう。


人間としてあいつがどれだけ正しくとも、前向きに認められていこうとも、私にはそれは不可能だ。


あいつに刻みつけられた恐怖。味わった絶望。暗い感情は消えないし、癒えてくれない。


水に流す。いつかそんな日が来るかもしれない。あいつの罪の記憶も過去のものとなり、こいつを含めて三人で笑い合える日が来るかもしれない。


それでも、今はその時じゃない。心が狭い、と言われてもしょうがないのかもね?……でも、怖かったんだから仕方がないじゃない。


14の少女にトラウマを与えたのだ。そう言うと聞こえはそんなに悪くないでしょ?まあ、つまりは「個人的に好きになれない」ってことなんだと思う。うん、それだけの話なのだ。


人間なんだから、嫌いな人間の一人や二人いる。私があいつと仲良く出来ない理由なんて、今はそれくらいでも許してもらえるはずだ。


あの実験の過失云々は抜きにしても、命を賭けて殺しあった相手だ。そんな簡単に仲良くするのも難しい……と、思う……




「……御坂?」


ううん。なんでもないわよ。


ま、あの様子だと、本当に社会復帰はうまくいってるみたいね。


佐天さんも初春さんも黒子も、人を見る目は確かだ。


きっと今のあいつは、数ヶ月前とはまた一味違うのだろう。


女子中学生と楽しくお茶するなんて、少なくとも悪魔にはできっこない。





〜打ち止めのメモ〜


『ルール』!!


あいさつは人間かんけいの基本!!

怒りに任せた大声は禁止!!

舌打ちはだめ!!

コミュニケーションはていねいに!!

みんなに優しくすること!!

挑発的な態度はだめ!

能力使ってあばれない!



(しゃかいふっき)

学校⇒くりあ!

料理

美容院

カラオケ⇒くりあ!

ボーリング

コンサート

TVゲーム

読書

映画

お弁当

きっさてん⇒くりあ!

おようふく⇒くりあ!

旅行


美琴と一方通行の関係に関しては、実験の過失云々を抜きにしても、そう簡単には拭いきれない恐怖やトラウマが大きい溝だと思ってます。中二だからね?美琴。このssではまた仲良く絡むかもだけど。


以上は私見。これについては議論が尽きないと思いますけど、その辺りは……

書きためが尽きつつあるので、次回は十日後くらい。

ありがとうございました!

来ました。遅れてごめんなさい。

今回以降少し時系列が前後しますのでご了承を。では投下。ちょっと少ないかも?


〜ボランティア〜






▽結標淡希




五月だっていうのにじっとり暑い。


どちらかというと暑がりの私にはキツい日だった。


ブレザーなんて着てたら汗ばむ気温の高さは、学生の格好にも如実に表れる。校外ボランティア活動の生徒たちなんて全員半袖半ズボンだしね。


あいにく、今現在暑さに対し愚痴をこぼす相手はいないし、溜息でその肩代わりをしてみる。


全部終わって、二ヶ月が経とうとしていた。


仲間たちが解放されて、学園都市が変わって、私も幾分か変わった……んだと思う……


まず一つ、私は学校に通い始めていた。


何も考えずに学校に通うのは久しぶりのことだ。これも悪くない。最近はそう思い始めている。


いろんな人間の匂いが入り混じった教室、中々に要点を得ない教師の話、純粋な好意で接してくるクラスメイト。本当に悪くない。


進路決定を控えているからか、のっけからピリピリしていた教室。それについても特に言いたいことは無かったしね?


でも、第四位が同じクラスだったのには度肝を向かれた。……しかも馴染む気ほとんど無いし。


「……んー?どっかで見たことあると思ったら第一位のとこのテレポーターじゃない」


……oh。


同い年だったのね?との私の発言は彼女の何かに火をつけた。体全体が光りだして教室中が大パニック。阿鼻叫喚。お母さんに会いたくなる人続出。


私も社交的って訳でもないけどさ、もうちょっと何とかならないのかしら?風の噂じゃアイツですら社会復帰に邁進してるらしいのに……


通学路の風景。こんな風に、帰り道をゆく私は数ヶ月前じゃあ考えられないくらいぼんやりとしていた。そう、暗部所属の頃だったらお笑い種の具合に。


だから、ボランティア活動中の学生とぶつかりそうなのにも気付かなかったわけだ。


でも、流石にそれが誰なのかくらいは理解できた。何故なら彼がとても目立った外見をしていたから。


………不思議なものね。噂をすれば影、ってヤツは本当にあるみたい。


「っ、とすまねェな。……………オマエは」


…………一方通行?


話に聞いたとき(小萌経由)にも耳は疑ったが、本当に学校に通ってるのね……


でも、驚かされたのはそこじゃなかったりする。何よりその格好。


膝上丈のショートパンツから覗くほっそりとした大腿。


女性のものかと見紛う肩元と、汗でほんのりと湿った綿毛のような白髪。


我を忘れ、まじまじと見つめてしまう。


おおお、おかしいわ……こんなのが一方通行のはずが——


「………笑えねェ面になってンぞ」


………………


………


……はっ!?


どうやら私はとてつもなく酷い顔をしていたらしい。


アイツをしてドン引きの表情にさせるとは……い、一体どれほど緩んだ表情を晒していたのかしら?


……ていうか失礼じゃない!?久しぶりに会った女性に対する第一声がそれってどうなの?


「オマエこそ久しぶりに会った途端アホ面晒しやがって……それって女としてどォなンですか結標さン?」


ま、そんな簡単に人は変われないわよね。


そんな攻撃的な姿勢でうまくやれてるのかしら?


ていうか髪の毛切ったわよね?………ちょっとだけ、雰囲気変わったし。


「あァ?そうか?クソガキが切れ切れうっせェから切ったってだけだ。特に意味は無ェよ」


こいつはあの子のことを言い訳にすれば何でも通ると思ってるみたいだけど、それが謂れのない?ロリコン呼ばわりを助長してるとは絶対気がつかない。


こんな格好して、そんな風に髪の毛切っちゃって……わ、私のこと意識してるのかしら……そんな考えが頭をよぎる。


そ、そんな可愛くなっても簡単には乗せられてあげないんだからね!!


……………


………


……


…閑話休題。


体操着を着ているということはボランティア活動なのだろう。


スキルアウトのたまり場であったであろう、路地裏の入口をこつこつ清掃していた。手に持つ大型のニッパで、清掃用ロボを妨害せんとする柵を、一つ一つ丁寧に取り除いている。


こういう作業は清掃ロボではどうにもならない。人の手を借りるしかないのである。


随分と真面目ね?言っちゃ悪いけど似合わないわ。


「自覚してる」


……………


……丸くなった、と言うのはあながち嘘ではないみたいね。


私の世間話にも乗ってくれたし、何よりほとんど毒を吐いてこない。以前より言葉の滑りも良いような気がするし。


でも皮肉めいた口調は個性なのね?まあ、それがないと張りあいも無いのだけれど。


私たちが交わしたのは他愛のない話だ。


どこの学校に通ってるだとか、暇になってから何をしているだとか。


適度に皮肉の入り混じった会話は非常に楽しいものだった。お世辞じゃなく。


私もそんなに口のいい方じゃないし、コイツくらいがちょうどいいのかも。丸くなったってのは嘘じゃないのね?


どうやら社会復帰の成果は順調のようだ。たいそう楽しそうで羨ましい。


………ていうか私も暇人ね……何が楽しくて貴方のボランティアに付き合ってるのかしら?


「……俺に聞くンじゃねェよ……」


「一方通行?」


自分の暇人さ加減に嫌気がさしてきた頃、慌ただしい様子でひとりの少女がやってきた。


黒い長髪と意志の強そうな目つき。そして主張の激しい胸部が印象的な子だ。……この子、私よりあるんじゃないの?


「………知り合い、なの?」


私を詰める視線には険しいものが交じっていた。あからさまな警戒の視線。……ふぅん。やるじゃない、一方通行。


いろんな意味でお邪魔みたいだし、私はお暇させてもらうことにする。


別れ際、感謝の言葉をお見舞いしてやった。


善意の言葉にはまだ慣れていないのかその反応は見てて飽きない。正直、ちょっとキュンときた。


……何よその顔。私がそんな薄情だと思った?


あの子達を開放してくれたこと、一応感謝はしてるんだから。


気を抜くと眉間の皺が抜けるのね?その表情ならもっとお得な人生を送れるんじゃない?


「……どォ致しまして」


追い払われるように五月の晴天の下を行く。


自分でもびっくりするほどその足取りは軽かった。


そういえばアイツも料理を始めたらしい。負けていられないわ。


平穏を楽しむってこういうことなのかしらね。楽しかったわよ?また付き合ってくれるかしら?



「……この程度の暇潰しなら、いつだって付き合ってやる」



▽吹寄制理



やはりと言うかなんと言うか、変わり者の白い彼は例の三馬鹿とつるむ事が多くなった。うん、予想はしてた。


事あるごとにヤツらのアホみたいな行動に巻き込まれるも、何だかんだで楽しそうに付き合ってる。


彼の不良じみたオーラは、うちのクラスで発揮されることは無いみたい。


一方通行のことで、最近ひとつ驚く事があった。なんと彼は学園都市で第一位の超能力者らしい。


「言って無かったなァ、そォ言えば」


そういえば、じゃないでしょう!?これじゃあ学力テストで大見得切った私が大馬鹿者じゃない!!


「『お勉強が得意です』って言っただろォがよ」


しれっと言い放ちおった!?


こ、こいつはッ………!


私が大見得切ったとき、こいつが不敵な笑みを浮かべていたのを思い出す。………ああそうよ!今浮かべてる感じの超サディスティックなその顔よ!!


非常にプライドを傷つけられたが、相手は第一位なので仕方がない、と納得することにした。だって諦めもつくでしょう?


一応この場で弁解させてもらうとしよう。


私が折れることにしたのは、こいつが個人的に勉強を教えてくれることになったからでも無いし、それがちょっとだけ楽しみだったからという訳でも無い。


絶対に無い。無いったら無い。


…………無い、と思う………無い、わよ……ね……?


……こほん。


ちなみに、私の点数は学年で十五位、学校全体で六十位だった。


私たちの学校はそこまでレベルの高い学校じゃない。だから、校外での順位を測るようなテストは実施しないらしい。


一方通行は学園都市で最も優秀な学生だ。ここまで言えば彼の順位はわかると思う。本当に嫌味な男だ。


「そろそろ場所の移動なのですよー。吹寄ちゃん?あっちの方で作業してる生徒を呼び戻しに行ってもらえませんか?」


学園都市のトップがすげ変わってから、校外活動の機会が増えた。


愚痴をこぼす学生も多くいるけど、私は気にしていなかった。これはこれで楽しくないこともない。


私たちの今日の活動は清掃、特に清掃ロボではどうにもならない廃棄物の撤去だった。


五月にしては異例の気温の高さに、生徒たちの顔色は十人十色だ。


暑さを楽しむものもいれば、愚痴をこぼす者もいた。この場合、私は前者になるのかもしれないわ。


………先生たちが目を光らせてるから、サボってる生徒は少ないみたいね。


一応、今日の担当範囲は決まっていた。作業中の生徒たちに声をかけつつ、早歩きで進む。


汗をかくのは嫌いじゃないし、汗の匂いも嫌いじゃなかった。


「へぇ、土御門のやつも一緒なの?以前じゃ考えられないわね」


「そいつァ俺が一番わかってる。オマエこそ、普通に制服着てた方がカワイイぜェ……?あわきン?」


「あ、あらそう……?きょ、今日はやけに優しいわね……あとが怖いわっ」


視界に白い影、並び立つのは赤毛の女性。


…………おいコラ。


赤毛の、“女性”。女性、じょせい、女。


………貴様も上条と一緒か一方通行。


そ、そうやって見境なく女の子を……!


………っ!


………何やってるのよ?一方通行?


「あァ?……吹寄か……遅かったじゃねェか」


にやぁ、と赤毛の女性が笑顔を浮かべる。


余裕を感じさせる笑い。腹の中で何を持っているのだろう?見たところ年上のようだ、面白くない。


その余裕はどこから来るものなのだろうか?


見るからに気の置けないだろう空気?年上の余裕?それとも、私の知らない何かなのだろうか?


……ッ!馬鹿にしてぇ!!


「うァっ!?おいコラ!いきなり引っ張るンじゃねェ!!つゥか道具はイイのかよ?」


先生がお呼びなの!ほらっ!さっさと歩く!


背中に視線を感じつつ肩で風を切る。近くに彼の匂いと息遣いを感じる。えええいっ!!まともに顔が見れないじゃないのくそったれぇええええ!!!!!


私より少しだけ低い体温を手のひら越しに感じた。私は彼の名前を呼ぶ。


「……何だよ」


……似合ってるわよ、その髪型。


「……そいつァどうも」



あの赤毛の女も、コイツも、この状況も、女みたいにすべすべなコイツの肌も。


これだけで顔が火照ってしまう自分も、ゆとり教育も、DQNネームも、AKB商法も、何もかもが腹正しい。


いっそ地球が滅べばいいのにとか考えた。



〜打ち止めのメモ〜


『ルール』!!


あいさつは人間かんけいの基本!!

怒りに任せた大声は禁止!!

舌打ちはだめ!!

コミュニケーションはていねいに!!

みんなに優しくすること!!

挑発的な態度はだめ!

能力使ってあばれない!



(しゃかいふっき)

学校⇒くりあ!

料理

美容院

カラオケ⇒くりあ!

ボーリング

コンサート

おさけ

TVゲーム

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きっさてん⇒くりあ!

おようふく⇒くりあ!

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ボランティア⇒くりあ!

以上です。あわきん可愛い。

卒論に追われている為、次は15日以降です。
プロットはあるからね?

有難うございました!

卒論終わったから来ました。
禁書最新刊のレベル5組かっこよすぎだろ!!!一方さんのドヤ顔マジ濡れる!!

今日は短めです。そしてキャラ崩壊、下ネタが御座います。
それがちょっと許しがたいという人は見ないほうがいいかも?
それとセリフを区別するため今回のみ一部台本形式です。ではどうぞ!


             おさけ

〜未成年の飲酒は法律により禁止されています〜



▽一方通行


土御門「はい!ここで海原くんの十八番!ジョン=トラヴォルタの真似ですたい!」


青ピ「ええでええで〜っ!!」


海原「仕方がありませんねぇ〜!!」コホン


一同「「…………………」」ゴクリ


海原「………トラヴォルタです(裏声)」


アホ共「「Foooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」



……説明が必要だろォな、このワケ分かンねェ状況の。


好き勝手に俺の部屋を散らかしに散らかしまくってンのは野郎四匹。……掃除に手間が掛かりそォだ。


中間考査開け祝いとかいうアホみてェな名目で酒をかっ喰らうハメになりやがった……提案者は土御門の野郎。


「このお年頃は背伸びしとくもんだってばっちゃが言ってたにゃー!!」


いつもそんなことやってンのかよ、と言う俺からの疑問に対してこう答えた土御門。どうやら初の試みらしい。



俺と上条と青髪の野郎と土御門。そして訳わかンねェけど浜面と海原の野郎を織り交ぜて飲み会は行われた。


会場は俺が以前使ってたグループの隠れ家。野郎だけでシコシコと、またまたシケた集まりだなクソッタレが。



青ピ「んんん〜?あるぇるぇるぇるぇ〜?アーくんは女の子も誘いたかったん?」


土御門「乗り気じゃないようなこと言っといて、案外前のめりな男だにゃー。素直じゃないんだからっ♪」



良い感じにまわってきてるグラサンアロハのサングラスを浜面の飲みかけハイボールにすっ飛ばす。つゥかイイのかよ……口調、ブッ壊れてンぞ。



土御門「セクハラーーーーっ!!」


浜面「ぶぐっは!!!え、えぇ!?俺ぇーーっ!!」



土御門の張り手が踊る。アホ面の歪んだ面が回りに回ってマシな面構えになる。上条は手羽先にひらすらかじりつく。


正直、酒の味なんてわかンねェ。


ちびちびとしかやってねェからか、酩酊時にやって来ると耳にした全能感も得られてねェしな。


つゥかよ、まだ初めて三十分やそこらしか経って無ェのに、このペースはおかしくねェか?飲んだ事無ェからはっきりとは言えねェがよ……



浜面「わかるわー。大将の言うことわかるわー。まともにオ○ニー出来ねえんだよなぁー」


上条「トイレでやるのも抵抗あるんだよなー?なんか匂いで察知されそうな気がして」


浜面「そうなんだよ!俺なんかこの前決死の覚悟でことに及んだら滝壺が入ってきてさ、ついとっさに、『ぱ、パンツの中にイカ焼きが入り込んじゃった!!』なんて言い訳しちまったよ……」



勇者だな……そして上条は手羽先にかじりつく。



浜面「一方通行はオ○ニーどうしてんだ?なぁ、教えてくれや?ん?いいだろ?ほら、言ってみ?試しに言ってみ?ね?おじさんに言ってみ?ほらほら?」



他人の自家発電事情にやけに興味津々な浜面を携帯電話で録画する。


今度こいつの女に見せてやろうと心中で深く決意しながら、俺は無視を決め込む。しかし、他方からの攻勢が俺を襲う。



海原「一方通行さん一方通行さん」



ゆさゆさと揺さぶられる肩。海原の野郎は酔うと笑顔のいやらしさが増すらしい。この面じゃ絶対モテねェだろうな……ンだようっとォしい。



海原「おっぱいの話しましょう」



おいコラァぁぁぁぁぁあああああ!!??オマエもか!!


つゥか何!?オマエら酔うの早すぎンだろ!?下ネタの話しかしねェしよ!!



海原「おっぱいはむしろ上ネタです!ていうか見たことないのにヴァ○ナの話なんてできるわけないでしょう!?」


土御門「そうですたい!!童貞にヴァギ○の話しろなんてお前はなんて酷なことを!!」



え?あ、あァ……ごめン……………ってコラァあああああああああ!?そォ言う問題じゃねェんだよ!!


つゥかヴ○ギナ連呼してンじゃねェよ!?お隣さンに「ヴ○ギナ連呼する人」って思われたらどうするンだよ!?あァ!?



青ピ「……ちょっとエッちゃん、つっちー、アーくん抑えといてー」


土御門「ラジャーですたい」


海原「エッちゃん任務了解です」



え、エッちゃン!?っておいコラ離せ!!杖付きに二人がかりでかかってくンじゃっ———……オイ、止めろ。イヤ、マジで。



青ピ「はいはい皆さんご一緒にぃー♪君が酔うまでっ?」


アホ共「「飲ますのを止めなぁーーーーーーーーーいっ!!!!」」



おいマジやめろごめンなさい。謝るから。つゥかこれ犯罪だからね?アルハラだからね?


出るとこでちゃうよ?イイの?ほら、アレだよ?つゥか俺覚えてるから。絶対オマエら碌な死に方しねェから。



青ピ「アーくん……虚勢貼っちゃってカワイイなぁ……」


海原「抱きしめたくなっちゃうほど哀れですね……」



俺が正気を保っていられた最後の瞬間。


その時視界の端に捉えたもの、それは、手羽先に齧り付く上条の姿だった。





………この期に及んで手羽先かよ……クソッタレっ……がっ…



▽上条当麻




一方通行の隠れ家についてからはや二時間。


わたくし上条当麻は山○ゃんの手羽先を食いつくし、大変満足していた。


こんな贅沢は何日ぶりだろう……ああ、持つべきものは金持ちのお友達っ!!



「……だりィ……面倒だからこれで好きなツマミ買ってこい」



ツマミ係に抜擢された俺と浜面と青ピは、ポンと渡された諭吉に息を呑むしかなかった。


肉。なんにせよ肉だ。油っぽいものばかりを買ってきても構いやしないだろう。野郎だらけだし。


……そして、蓋を開ければ中々使い切れない諭吉。膨大な量のツマミ。……残りはタッパーに入れて持って帰ってもいいよね?



一方通行「ばっか何言ってンの俺ロリコンじゃねェーし。むしろ巨乳とか大好きだしィー」


海原「そんなこと言って聞きましたよ!最近女子中学生を家に連れ込んでるとか!」


土御門「なぬっ!?ロリ好きの風上にも置けんですたい!!」


海原「そうですよ!それならちっちゃい御坂さんを下さい!お父さん!」


一方通行「オイ固羅海原。ちょっとオモテ出ようか」



皆さんいい感じに盛り上がってらっしゃる。


……一方通行。酔うと眉間のしわが消えるのな……なんつーか、結構かわいいお顔をしてらっしゃる。


青ピ「アーくんにせよカミやんにせよ……女の子とフラグ立てすぎちゃう?誰か女の子紹介してーな!」


一方通行「おい浜面。原子崩し紹介してやれ」


浜面「ちょっ!?いろんな意味でヤバイって!野郎の死体が二つ増えるって!?」


一方通行「安心しろ……オマエは、俺が守る」


青ピ「………アーくんっ////」ポッ


浜面「ちょっと!?俺のことは!?俺のことは守ってくんないの一方通行!?」


一方通行「えェー……だってさっき俺のことロリコンとか言ったしィ……フォロー仕切れないもン」



もン、とか言ってるよコイツ……大丈夫か?一番ブッ壊れてんのこいつじゃね?


てゆーか、一方通行はともかく俺はフラグも糞もないだろ?出会いが欲しいくらいだよ全く……あー、オ○ニーしてえな。


一方通行「……こいつ、こーゆーこと平気で言っちゃうタイプな訳ェ?」


土御門「許せないだろう?(シリアス声)」


一方通行「……超電磁砲や『妹達』が哀れだなァ……ホント、抱きしめたくなっちまうほど」


海原「御坂さんたちを抱きしめるのは自分の役目です」キリッ


青ピ「エッちゃんモテないやろ」


一方通行「分かるわァ」


土御門「ツラはいいのににゃー」


海原「まさかの集中砲火っ!?」


好き放題言ってくれやがってる間にも俺はつまみを食いつぶす。


こうして見ると誰かさんみたいだけど、食べ物はいくらあっても足りないんだよなこれが。


夜が更けていく。次々と杯を乾かす俺達。


法律的には間違ってるんだろうけど、たまにはこんな状況も悪くないだろう。


結局その日は、空が白むまで俺たちは語ることを止めなかった。



ここまでです。
下ネタキャラ崩壊は見逃してけれ。

次は一週間後くらいには来ます。

>>1 明けましてオメデトウ

あけましておめでとう御座います!
>>198 おめでとうございます!

遅くなって申し訳ないです!バイトラッシュで……いや、投げ出すつもりなんて無いですからね?

ちょっと少ないけど投下します。
日常シーンみたいな?



〜美容院&お料理〜




▽一方通行


いい加減クソガキがやかましいから美容院に行ってきた。さほど愉快でも無ェことだがな。


「アナタ髪伸びすぎーっ!ただでさえ女の子みたいなのに——……ややっ!そ、そんな怖い顔しないでー!ご、ごめんなさーい!!」


チョップをかます。欲しくてやってンのか?……行く先が心配だ。ほどほどにしておいたほうがイイのかねェ……


クソガキの髪も伸びてきている。俺の髪の毛はどォだってイイが、ガキは動きやすいのが一番だ。


「アナタは長いほうが好き?ってミサカはミサカは乙女心をひた隠しにしながら囁いてみる」


隠れてねェし。……つゥかよ、俺の好みなんてどォだって良いだろ。


散髪に向かうのも随分と久しぶりだ。もう一年近く言ってない気がする。


自分で切って、上手くいかなかったら能力使っていじってやれば済む話だったが、いつまでもそれじゃ困る。


能力前提で話を進めるのはもう止めだ。こいつがいつでも頼りになるわけじゃ無ェのは身をもって経験したからな。


「ここだよっ!って、ミサカはミサカは指差してみる!涙子から教わったんだー」


相も変わらず落ち着きのないクソガキに手を引かれ、件の美容院にたどり着く。


能力開発指導のお礼だなんだと言って、あの女はやたらめったらウチに押しかけてきやがる。


炊飯器を使わねェ料理を教えてくれンのは感謝してるが、時たまアポ無しで来るから始末に置けねェ。



「今日は打ち止めちゃんとの約束なんです!ねー?」


「ねー♪ってミサカはミサカはその場のノリに同調してみたリーっ」


示し合わせたわけでも無ェのにご苦労なこった……ま、クソガキの相手をしてくれンのには感謝してやる。シャクだがな。


打ち止めの指差すそこは、どこにでもある若者向けの美容室だ。黒を基調とした外装に、モダンでシックな佇まい。


ご丁寧に予約までしてある。これはクソガキの采配だ。


俺を担当するスタイリストはどうやら人気のようで、早めに予約をしないとダブルブッキングは避けられないらしい。


そンなご大層な野郎じゃなくても構わねェンだがな………おいクソガキ。オマエがそいつにカットしてもらえよ。


「まあまあ遠慮しちゃって〜♪ミサカはミサカはちょっと緊張してるアナタを肘で小突いてみるー」


イラつきが笑えねェレベルに達したからチョップしておく。人がたくさんいるところで騒ぐンじゃねェよ。


店内には七十年代のものと思われるジャズが流れていた。


「では一方通行さん、どうぞ」


俺の名が呼ばれる。クソガキに大人しくしているように再度言い聞かせ、俺はシートに腰掛ける。


ガラス張りの店内から、アホ面晒した学生たちと視線が交わった。




▽芳川桔梗



「一方通行さん、バラエティとかあまり見ないんですか?……この人!ほら有名でしょ?知ってますよね?」


「……知らねェな……お笑い芸人か?」


平日のお茶の間。目覚めてみればさほど珍しくもない光景が広がっていた。


「違ぁーう!一一一(ひとついはじめ)ですよ一一一!!俳優でシンガー!めちゃくちゃ有名なんですよ?」


「そうなのか?……でも右のグラサンは知ってるぜ。Mr.マリックだろ」


「ちょっ、違いますよ!タモリですよタモリ!!……ちなみに一方通行さん……好きな番組何ですか?」


「……空から日本を見てみよう」



これまた幸せそうなリアクションを取りつづける少女は佐天涙子という子ね。


最近やたらとウチに入り浸るようになった女の子。彼、どこであんな子を引っ掛けてきたのかしら?


正午を回った時間、休日でもないのに彼らが家にいるのは、どうやらテスト期間だかららしい。


長年愛され続けてきたお昼時の看板番組を、目の前の少年少女はたいそう仲睦まじく眺めている。


おはよう、佐天さん。それに一方通行も。早いわね。


「おはようございます芳川さん!お邪魔してます!」




「今何時だと思ってンですかァ?とっくにおはようの時間は過ぎてンだよ糞ニート」


失礼ね。もうニートは卒業したのよ?今日はたまたま仕事がない日なの。


「その割に、家にいる日が多いのは気のせいか?」


気のせいよ、きっと。


先日散髪に行って随分と一方通行は雰囲気が変わったわ。


以前のパーマスタイルから、ストレートの前下がりボブスタイルに。所々にシャギーが入っており、以前より一層中性的な空気を漂わせている。


「るーーーいこ!!アイシー・ペンギーゴが倒せないよーっ!ミサカはミサカは救援信号を送ってみる!」


「なぬっ!?それは一大事だ!!一方通行さん!ほらっ!ノーダメで行けるでしょ?」


「……めんどくせェ」


彼の仏頂面は相変わらず当てにならない。全然嫌そうに見えないわよ?


佐天さんと打ち止めはさっさと部屋に引っ込んで行く。追いかけなくて良いのかしらね?


「……おい。何か文句でもあるのかよ」


あら、何でもないわよ?


あ、そういえば、今日の晩御飯は期待して良いのかしら?


「……っち……さァな」


今日は愛穂もさほど遅くはならないらしいわよ?腕の見せどころよ一方通行。


「………大したことじゃねェだろ……つゥか、配膳くらい手伝いやがれよな」


背中を丸めて、のらりくらりと打ち止めの部屋に歩みを進める彼は、最後に一つ捨て台詞を残していった。


「……一人分、多く作るからな」


全くもって、可愛らしい子。そうは思わないかしら?


短っ!……許して?

いくつかイベントは考えてるんですが、夏といえばなんでしょうかね?

海、夏祭り……うーむ……


次回は一週間後くらい!有難うございました!!

ごめんなさい>>1です。

卒業旅行やら内定先の集まりやらで忙しく、長いあいだ来れなくてすみません!
今日か明日には必ず投下します!ちょっと待っててね!

ありがとう!ちょっと泣いたwww

軽く投下。前後編に分かれます。今回は前編。ちょっとお堅いです。



▽一方通行




「りんご飴〜!」


……見りゃァわかる。


がやがやがやとクソ騒がしい喧騒の中でもクソガキの声は良く響く。


着慣れねェ浴衣を着て少しは大人しくしてくれると思ったら、あっという間にいつものノリに元通りだ。期待した俺がアホだった。


最初の方はちまちまと大層奥ゆかしい様子で歩いてたのになァ……たこ焼きのソースをこぼして開き直りやがった。


「あなたもりんご飴食べる〜?ってミサカはミサカは上目遣いで愛らしく尋ねてみる!」


損な口癖だよなオマエも……いらねェ。


「あーんして?ってミサカはミサカは大奮発!……一口だけなんだからね?」


いらねェよ。聞いて無ェのか———………甘ェ……


うっすらと記憶に残る懐かしい風景。俺がこんな所に来るのもどれだけ久しいことなのだろうか。


祭り特有の品のない賑やかしに学生たちもアテられている様子だ。その顔ぶれは老若男女、とは行かない。やはりここは学園都市なのだ。若者たちの割合がほどんどであった。


学園都市の夏祭り、的屋のスタッフは教員や研究者のボランティアと聞いてる。


ヤクザもンが表立ってあれこれやるのは、この科学の街では不可能に近い故、名実ともにクローンな催しだ。警備員もトラブルに目を光らせて巡回している。


つゥかオマエ、どれだけ廻る気だよ……どっかのシスターみたいにだけはなってくれるンじゃねェぞ?


あれは見習うべき規範じゃ断じて無ェンだからな。それだけは年を押すぞ。


「ん?まだたこ焼きと綿あめとりんご飴しか食べてないよ?あなたはちょっと小食すぎかも、ってミサカはミサカは呟いてみる」


……食いもンはな。オマエ、両手に抱えてるそれらは何なワケ?


「ゆ、勇者の戦利品だよ!決して恥ずべきものじゃないのだ!って、ミサカはミサカは胸を張ってみる!」


頭にはアニメキャラのお面、右手にヨーヨー、左手に光る剣の形をした玩具。(ドゥークー伯爵)


……コイツ、頼み込めば何でも買ってもらえると思ってンじゃ無ェだろォな……


自然に溜息が溢れる。何度も悪い癖だとご高説を賜ったが、今回ばかりは仕方がないだろう。


大体俺は乗り気じゃ無かったンだよ……社会復帰だ何だであれやこれや浴衣まで着せられて……


知り合いに会ったら良い笑いものだ。……つゥか、社会復帰って言葉遣えば何でも言いなりになると思ってンじゃ無ェだろォな……


黄泉川の野郎も焼きそば売るとか張り切ってやがったことを思い出す。ツラ出して帰るとするか。


……おい、クソガキ。そろそろ———………あァ……?


……………


…………


………ま た こ の パ タ ー ン か。


クソッタレ……!学区の半分近い地域使ってる催しだぞ?だからチョロチョロすンなと……!


………はァ………ツイて無ェ……


……この人ごみのど真ん中じゃ骨が折れるだろォが、無視して帰る、って訳にも行かねェンだよな……




▽結標淡希



「見てください結標ちゃん!りんご飴なのですよ〜っ!」


あら、おいしそうね。


「…………むっ、結標ちゃん!結標ちゃん!わた飴おいしいですよ!一口いりませんかぁ!?」


ほんと、甘くて美味しそうね。でも結構よ。


「む、結標ちゃん!手元の焼きそばは食べないのですか〜?」


まだ、お腹すいてないの……


「………結標ちゃん?」


……う゛……そ、そんな睨まないでよ……悪かったって?ね?御免ね?小萌。


「むぅぅぅ〜っ。さっきからずっとそんな様子ですよ?具合でも悪いのですか〜?」


……ごめん。本当になんでもないのよ?











———……そう、ただ、慣れないだけ。


数年ぶりに浴衣に袖を通して、いつもと違う自分に浸れば、気分も変わると思ってた。


少し奮発して買った浴衣は体に馴染んだ。でも、その後がいけなかったみたい。祭りの雰囲気はどうしてか私を落ち着かせてはくれなかった。


もう堅気の生活を初めて数ヶ月が経った。日々の暮らしからは血と硝煙の匂いは消え、小萌にも、仲間にも、笑顔が柔らかくなったと言われた。


第一位の白いアイツが血のにじむような努力を重ねていると聞いて、少しムキになって自分も日常に溶け込もうとした。


案外、簡単なことだった。難しいことを考える必要なんてなかった。自分が思ってた以上にすんなりと日常に迎合できて、私は有頂天になっていた。








……それで、油断していたのかもしれない。


なるほど、このような『日常的な非日常』の空気というものは馴染まないものだ。改めて思い知った。本当、自分が嫌になる。


私はドライな人間だと思っていた。ううん、自分のそんなところは嫌いじゃなかった。それに、汚れ仕事に対しても抵抗なんてなかった。


「……結標ちゃん?」


暗部にいた頃もそれなりの楽しみ方は出来た。


気持ちの切り替えは早いほうだった。バラエティ番組を見て、その数分あとに殺しをした事だってある。


当時の私は、それを恥じてはいなかった。むしろ、誇っていたのかもしれない。


これにはきっと、後々身をよじりたくなるのだろう。


偽悪的な感傷に浸って、強がって、なんとか私は平静を保ってきたのだ。それを一挙に思い知らされるようだった。


祭りの空気が、賑やかさが、突き抜けて明るい叫びが私を大きく揺さぶる。


自分は、みんなと同じように生きれないんじゃないか?


楽しいと思うことすらできないんじゃないか?


ネガティヴな思考が溢れて止まらない。浮かんでも、浮かんでも消えてくれない。


胸が苦しい、腕に力がこもる。屋台で勝った焼きそばの容器がぎりり、と音を立てる。



「……大丈夫ですか?」


……っ、なんでもないわ。ちょっと、嫌なこと思い出したみたい。……そんな顔しないでよ?


「でも、結標ちゃ————ひゃっ!ででで電話です!……はい!小萌でしゅっ!」


ずいぶんグルービーな着信音が会話に割り込む。……そういえば、小室哲哉が好きだとか言ってたわね、小萌。


……でも小萌……でしゅ、って……ちょっとあなたでも……さすがに今のは——


「………はい。え、えぇえええええ!?人手不足!?……あの、先生も手伝ってあげたいのですが……」


小萌がちらちらとこちらを伺ってくる。そんなに気を遣わなくてもいいのにね?


行ってきていいわよ?私は適当に時間潰して帰るから。付き合ってくれてありがと。それなりに楽しかったわよ?


「……ですが——」


ほらほら!小萌は先生なんだから!私だけ特別扱いしちゃダメ!今の話だと、生徒から呼び出されたんでしょ?しかも運営側の。


「……で、でででも……結標ちゃん、大丈夫なのですか?ちょっと具合悪そうですし……」


……私が祭りではしゃぐタイプじゃないのはわかってたでしょ?ほら、いってらっしゃい。あまり遅くなっちゃダメよ?


「こ、子供扱いしないで下さい!先生が大人だってこと忘れてませんか!?」


プンプンと肩を鳴らしながらも、小萌は行ってくれた。


さあどうしよう?一回りする気分ではないし、もう家に帰ろうか?


私にだって、折角の浴衣をもう少し堪能したいという気分はあったけど、それ以上に気が滅入る。


無理するのは、どんな時だって良い結果を招きはしないのだ。


手元にあった焼きそばは帰ったらゆっくりと食べればいい、そんなことを考えていると……


「………結標か?」


振り向くと、これまた珍しい格好をした、珍しい男がそこにいた。


前編終了。
後編はまた後日!次回はあわきんと一方さんのお祭りデート。

新刊の一方さんいいとこなしだね……でも!映画には出るよ!やったねたえちゃん!

後編いきまーす。


▽結標淡希



「お楽しみ、って様子じゃ無さそうだな。……オマエ、ツレはいねェのかよ」


その言葉、そっくりそのままお返しするわ。


愛しの彼女はどうしたの?まさか一人で来たわけじゃないんでしょ?


「………流石の俺も一人でこんなところは息が詰まって仕方ねェよ。……オマエの方こそどォなんだ?シケた面ァ晒しやがって」


………ホント、どうなのかしらね?私も良く分からないわ。


「…………」


自分でも、自分がよくわからない。こんなところで彼にあたってもどうにもならないのに。


場に合わせたのか、ご丁寧に濃紺の浴衣まで身につけた白い男。この街で最強の獣、学園都市第一位・一方通行。


白く華奢な体をゆったりと包む着物は、憎たらしいほど似合っている。


うつむく私を赤い瞳が見つめているのがわかる。……彼は怒っているのだろうか?


怒るのも当たり前と言えば当たり前、なのだろう。


不躾にこうも刺々しい態度を取られてしまえば、いかに温厚な人間だって気分を害することは請け合いだ。


周囲の騒音が、回りに回って静けさに感じられる。それくらい、私たちの間に時間が過ぎる。


長いようで短く、短いようで長い時間を経て、そっと空いていた右手にひんやりとした感覚をおぼえる。


ふと視線を移せば、白い手が私の手をとっていた。




ちょ、ちょっとっ!い、いきなり何を———




「………腹ァ減ったンだよ……黙って付いて来い」


少し私には大きすぎる歩幅で、強引に私の手を掴み、ぶっきらぼうに一方通行は歩を進める。


あれやこれやと、一分も経たぬうちに彼は歩みを止めた。


私が腰を落ち着けたのは休憩所の役割を兼ねた甘味処だった。和風の装いでまとまったその店は、祭りから少し外れていたためか、閑散とした印象を与える場所であった。


「たまには甘いモノも悪くは無ェか……座ってろ」


突然のことで二の句も告げない私を席に押し込み、彼は店員のいる方へと向かって行った。


……どういうつもり、なのかしら?



機嫌を損ねてしまった、というわけでは無いのだろう。


辺りを見渡せば、客足はまばらであったが、それでも男女二人連れが目立つ。俗に言うカップルというやつだ。


自らの状況を鑑みて顔が熱くなる。初心な自分に腹が立つ。……お、おおお落ち着くのよ。


赤いビロード状の敷物をさすりながらあたふたとしていると、餡団子を手にした彼が目の前に立っていた。


「食え」


………あ、ありがと。


彼は皿からみたらしを手に取ると、そっと私のとなりに腰掛ける。


一口かじると、素朴な甘みが口の中に広がった。


祭りの喧騒を眺めながら、ゆっくりとそれを飲み込む。


名状し難い、心地よい感覚が胸の中に広がっていった。


………美味しい。


「………まァ、悪くは無ェな」


食べている間は互いに口を聞かなかった。気がつくと、暗い気持ちは吹き飛んでいた。


ゴマ団子にまで手を伸ばしひとしきり食べ終わると、少しバツの悪そうな様子で一方通行が口を開いた。


「甘いものが好き、って訳じゃァ無ェ……そこは勘違いするンじゃ無ェぞ」


別に好きでも構わないのよ?……似合ってはないけれどね?


「だから好きじゃねェって———……まァ良い……ただよ」


茶化した笑いを浮かべる私に、神妙そうな様子で彼は呟いた。


「ぐだぐだ考えちまって、どうしようもないときには悪くは無い。自分に酔うには、甘いもンってのはどぎつ過ぎンだよ」


嘲けるような具合だけはどうやっても消えない。それは彼の個性なのだろう。


………ふふっ。


「………おい、笑うンじゃ無ェ」


彼を馬鹿にしている訳じゃ無い。自分が馬鹿馬鹿しくなったのだ。


自分に酔う、か……そう、なのかもね……


彼にも似たような経験があったのだろう。どうやら本当に気を遣わせてしまったみたい。


不器用で、それでいて私を見てくれていた彼を……彼の優しさが愛おしく思える。



彼と似たもの同士だと言われたら不愉快だっただろう。そう、数ヶ月前の自分なら。


でも、今日は素直に嬉しかった。心境の変化というものはいくらでもある、ってことなのかしら?


貴方、思いのほか甘いもの嫌いじゃないんじゃない?


「あァっ!?だ、だから俺は好きじゃねェって———」


彼らしくもなく長々と並べる口上を聞き流しつつ、確かに私は笑みを浮かべていた。


嫌なことを忘れられるんだから、少なくとも嫌いってことはないわよ?


私は好きだし、少なくとも、嫌なことは綺麗さっぱり忘れられたわ。


「そいつァ重畳。まァ嫌いでは無いのかもな………おい、結標」


……ん?どうしたの?


「その焼きそば、食べる気あンのかよ」


……そこまでして甘いものが嫌いと言い張りたいの?無理しなくていいのに……


「腹減ってるって言っただろォが……オマエは俺をスイーツ(笑)系男子にでも仕立てあげてェのか………ほら、寄越せ」


あれやこれやと巾着ごと奪い取られる。……気を遣って、くれたのかしら?



………っ、そ、そういえば、あの子はいいの?その様子じゃはぐれたんでしょ?例に漏れず……


「例に漏れずって……クソガキなら知り合いと合流したとよ。さァて、俺は———」


……余裕そうな様子が面白くない……全くもって。


どうしてこんなことをしてしまったのだろう?詰まらない対抗心だろうか?自分でもよくわからない。


気がつくと私は彼の手を握っていた。


……付き合いなさい。どうせ暇なんでしょ?


「っ!……おい、杖ついてンのが見えねェのかよ……もっとゆっくり———おいっ!」


相変わらず彼の手はひんやりと冷たい。


頬が暑い。顔なんてまともに見れない……のに……


「焼きそば食う時間くらい寄越しやがれよ……ったく……」


余裕綽々のこいつが気に入らない……こ、これじゃ私のほうが社会不適合者みたいじゃない!


「……おい結標」


……何よ。


「手が汗ばンでンぞ……いつもか?」


うるさいわ!!!いつもじゃないわよ!!失礼ね!


人通りの多い大通りに進む。手を離さないのははぐれないようにする為だ。


私もこいつも、喧騒を眺めているだけなんて今日でおしまいになれば良いのに。


それだけは、素直に思うことができた。



今日はここまでです。

次回はまた時間出来たら!怖い話編?かもわからん。

感想頂けるとうれP

書いてますって!イヤマジで!!


おふざけのノリで書きたくなったもんで、スレも一個立てちゃいました。
こっちは比較的真面目にやるよ?


投下します。前回の予告、あれは嘘だ。すまんね。



▽海原光貴



気配を消す、という言葉がありますが、これはさほど大げさなものではありません。


見えないようにするにはどうしたらいいだろう?その答えは、見つからないようにすることです。


見つからないようにするにはどうしたらいいだろう?その答えは、音を立てないようにすることです。


……と、以上のように一つ一つ掘り進んでいけば気配は消せます。少なくとも自分はそうでした。


まぁこんなことを繰り返しているうち、自分はこっそり行動するということに慣れ親しみ過ぎてしまったんですけどね?


「………っ!?え、エツァリ!?いつからそこに!?」


昨日、会いに行った妹弟子の第一声がこれです。こっそり入ったつもりはないんですけどねぇ……正直心が痛みましたよ。


閑話休題。


僕には日課というものがあります。それはひとりの少女を影から見守ることです。


火の中水の中森の中、たとえ槍の雨が降ろうともそれは変わらないでしょう。



「いらっしゃいま——あっ……あ、貴方は」


いつもすいません。そうですね……あの辺りの席って空いてますか?


「えー……少々お待ち頂けますか?一人でお掛けになっているお客様がいらっしゃいますので、ご確認を取ってまいります」


いつもすみませんね?……これはお気持ちです。


お客のことを第一に考える、これは素晴らしいことです。毎度毎度あの店員さんには頭が上がりません。


「いいえ?何でも仰ってください」


自分の純愛を捧げるべき相手は、いつものファミリーレストランにいつものように入店しました。


彼女はルームメイトであるご友人を連れて、お気に入りの席である日当たりの良い窓際の席に陣取ります。


今日は休日、その上昼間の時間帯となると席の混み具合も中々のもの。相席している方には申し訳ないですが、これは必要なことなのです!


「たいへん長らくお待たせいたしました、ご案内します」


誤解の無いように言っておきますが、自分の心に邪なものなど一切ありませんよ?


彼女はコーヒーより紅茶派。彼女と同じ砂糖の分量で、彼女と同じ香りに酔う……


彼女から二、三席ほど離れた席に案内されつつ、これから訪れる至福の時を想像します。


しかし、自分の高貴で澄み渡った思考は、相席を許してくれた人物の顔を見ると同時に、泡沫のごとく消え去ってしまったのです。


「………オマエは」


な、なんで貴方がここに……!?ま、まさか———



▽一方通行



「まさかっ!?あ、貴方も御坂さんのことをっ!?」


一緒にすンなストーカー野郎。……つゥか、まさかってことはオマエはそォなのかよ。


話には聞いていたが、実際目にすると何とも言えないものがある。


きっとこいつは本気でやっているのであろうが、全くもって気持ちは理解できない。……つゥか、理解したくも無ェ。いやマジで。


「御坂さんの護衛じゃないのなら……本日はどういった用事ですか一方通行?」


護衛って名目なのかよ。家のもンに買い物を頼まれただけだよクソッタレ。……ホラ、これ見りゃ分かンだろ。


「なるほど………」


久しぶりに何の予定もない休日、惰眠を貪る俺を現実に引き戻したのは家主のクソやかましい大声だった。


「お使い言ってくるじゃんよ。今日はすき焼きじゃん!!」


素直に従う俺も俺だが、俺以外の面子は珍しく家を空けていた。お鉢が廻ってくるのも仕方がない、と思い込むことにした。


晩飯がすき焼きだから釣られたわけでは断じて無ェ。断じてだ。


……とまァ、帰り道に休憩した場所がここって訳だ。


さて、紅茶を注文して数分、目の前の変態はずっと黙りこくったまま。


俺は沈黙を苦にするタイプでも無ェが……こいつは普通じゃねェ気がする。つゥか普通であるハズが無ェ。


それ故、何をしているのか聞いてみることにした。興味本位、というよりもっと切実な何かが俺にそうしろと訴えかけてきた故だ。


「しっ!静かに!………御坂さん……携帯を機種変したんですね……スバラシイ」


俺の思った通りだよクソッタレ。スバラシイじゃねェよ何やってンだよ。


「はぁ?何って御坂さんの声に耳を傾けているのです」


それを人は盗み聞きって言うンだよ。……オマエ、いつもこンなことしてンの?


「ええ。御坂さんの護衛は私の日課です。……それが何か?」


何か?じゃねェよ……オマエ、ストーキングって言葉知ってる?


「知ってますが……それが何か?」


それが何か?じゃねェよ。さっきからボキャ貧かオマエは。


オマエのそれは、ストーキングに該当してねェか、って聞いてる。


「自分の……どれが?……はて……」


……本気で分かってねェのかよ。


知り合いがどこでどンな変態行為をしようと勝手だが、流石に目の前でやられるのも決まりが悪い。



その上、ストーキング対象は自分と浅からぬ関係(比較的)の人物……止めるべきか、止めぬべきか。


つゥかよ、直接話ししようとは思わない訳?今のオマエに何の恥じることも無ェだろ。暗部も消滅したンだからよ。


「え、えぇ……ですが……しかし……」


目の前のニヤケ面がもじもじと肩を揺らし、内股をこすり合わせる。オェ、何こいつ。気持ち悪ィ……


「しっ、失礼ですね!……い、今更声をかけに行くのも……その……」


守るって誓ったンだろ?それなら知り合いになっといた方が無駄が無ェ。……それで毎日ストーキングしようっていう手段を選ぶほうがどう考えてもおかしいだろォが?


「う゛……で、ですが……その……海原光貴としての顔は、あまりいい印象を与えないというか……その……」


……はは。


ぎゃははははははははははは!!はははは!!!!


おいおいおい!いつもの余裕ぶったニヤケ面は飾りかァ!?ツラのせい?適当な理由でっち上げてンじゃねェ!!


ウジウジする男は気持ち悪いだとか、そンな持論を持ってた訳では一切無ェ。


ただ目の前のコイツの態度に吐き気を催した、それだけの理由で十分だった。


首元のスイッチを起動し、海原の野郎の顔面に手をかざす。


「なっ、何を———!?」


……これだな。一気に引っぺがしてやるよ真性ホーケー。



▽海原光貴



「よォ、オリジナル。奇遇だなァ」


「………アンタ」


「あら一方通行さん。御機嫌よう」


擬態を引っぺがされ、あれやこれやと自分は愛しの彼女の元に連れて行かれてしまいました。(強引に)


つっけんどんな態度で一方通行さんに対応する御坂さん……あぁっ!!その顔も素敵だ!!


お連れの白井黒子さんは穏やかな様子。この具合では彼とは面識があるようですね。


……今更アレですが、なんかこう……素顔を出すというのは緊張しますね。借り物の貌を使っていたときは問題なかったんですが……


「一体何の用よ?生憎私は、アンタと仲良しこよしでお食事なんて気分じゃないんだけど」


「お、お姉さま?」


「ちっ……俺としちゃあ、オマエとは適度に仲良くやっていきたいとは思ってるンだがな……?」


「アンタ……本気で言ってるの?」


「…………」


普段なら「お姉さまと黒子の邪魔をしないで欲しいですの!!」とか叫んできそうな白井さんですが、一触即発の空気に言葉も出ない様子です。


……ていうか自分、気まずいってレベルじゃないんですけど?あのー?お二人ともー?自分もいますよー……?


と、口には出せないのでエツァリはエツァリは視線で自己の存在をアピールしてみる。




「………はぁ、馬鹿らしい」


溜息一つと共に警戒を解く御坂さん。シャツからのぞく気高く華奢な二の腕が美しい!んはぁぁぁあ!!


しかし、一方通行さんも普段の様子と少しだけ違うようですね。何と言うか、最初から我を通す気が一切ないような……以前の彼なら考えられません。


「……で、そちらの彼は?」


「あァ、コイツは……オイ、自己紹介しろ」


えっ!あ、は、はい!じ、自分はエツァリと申します!


や、やべ!!きょ、挙動不審に!!こ、声が裏返ってしまいました!


くっそおおおおおお!!海原光貴の貌なら全く緊張しないのに!!へ、変に思われなかったですかね?


「見たところ、外国の方ですの?」


は、はい。メキシコ出身です。


「私は御坂美琴よ。よろしくね?」


「白井黒子ですの」


「よ、よろしくお願いします。御坂さん、白井さん」


ふひょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!笑顔だよ!!


笑ったよ!!御坂さん笑ったよおおおおおおおおおおおおおおお!!



「一方通行とは……どういう関係?」


「おい、誤解を生みそうな聞き方をするンじゃねェ」


「ご友人ですの?」


「えぇ〜……アンタ、友達いたんだ……」


先ほどから白井さんの無邪気なお言葉が有り難い……


正直、彼と御坂さんだけだったらこの場は成立しないような気しかしません。


「うるせェよ。……っち……コイツはよ、色々と複雑な都合で妹と一緒に学園都市に避難してきてンだよ。」


「複雑な……」


「……事情ですの?」


っておい!!あ、一方通行さん!?そこまで話しては———


「そこは聞かないでほしいンだが……もし良かったら、妹ともども学園都市を案内してやってくンねェか?こいつまだ不慣れでな」


…………………………


………あ、あーくんっ!!


「………エツァリさん」



は、はい。


「今度、妹さん連れてきてくださいよ?歳はいくつなんですか?」


えと……皆さんと同い年くらいかと。


「……分かったわ!」


何かを決断したかのような彼女の表情。自分の好きな貌だ。


腕を組み、少女らしからぬ仕草で自分の目を覗きこむ彼女。視線がぶつかる。


「いいわね黒子!アンタも付き合うのよ!」


「モチのロンですの!佐天さんや初春も誘いますの!」


こ、これは何と言う僥倖っ……!!


て、ていうか一方通行さん!!い、いつの間にこれほどのコミュ力をっ……!!


「…………」


………あ、一方通行さん……?


恩人の白い顔を覗きこむと、そこには吸血鬼の笑みが刻まれていた。


「貸し、一つな」


薄い唇で、耳元でそう囁かれる。


あ、あはは……


じ、自分は、彼にまた一つ借りを作ってしまったようです……



……しかし、自分の馬鹿さ加減に腹が立ちます。彼が自分を引っ張っていくと気に吐いた言葉には、ぐうの音も出ませんでした。


『勝手に納得して勝手に諦めてンじゃねェよ。あの三下に任せる、なンて言うのも自分に酔ってるだけだろォが』


……そう、ですよね……


自分じゃ幸せにできない、なんて考えても仕方がありません。


例え自分と彼女がどうなるわけでも無いとしても、彼女はそこにいて、自分はここにいるんです。


話をすることだって出来るし、こうして一緒に食事だってとれるんです。


何も終わってなんかいない。……むしろ、今日から始まった、と言えるのかもしれません。


「エツァリさん、メキシコ料理とか作れないの?」


今日のこの時間だけでチミチャンガ八個はいけますからね?


いや、変な意味じゃないですよ?













いや、ホントに。ホントですって!!






投下終了。
コミュ力上がった一方さん。
きっとエツァリは意外に女慣れしてないタイプ。
ていうか、女性に気を使いすぎてモテないタイプ、だと理想。イケメンだけどね?

ここの一方さんは魔術のベクトルも操れるってことで。

念のため言っとくけど、あっちはあっちでパレレルだからね?

別もんだからね!!

今日は映画の公開日だぜ!明日見に行くんだぜ!

あ、あと一方さん人気投票一位おめでとう。ちょちょいとと投下。

パレレルの人気に嫉妬。君たちさぁ……



▽一方通行




休日の昼下がり、ラジオからは気怠げなジャズが鳴り響いている。


満たされた腹に追い討ちをかける様なぬるいサウンド、強い日差しを忘れてしまうくらいに冷やされたリビングルーム。


何もない日なら至福の午睡を貪っている時間帯であるし、休日の昼時などどいつもこいつも何も考えてねェことに違いはないだろう。


なんにも考えずテレビ垂れ流して、なんにも考えずテキトーにコーヒー飲んで、そしてなんにも考えず寝る。


俺の今日はそうやって過ごすはずだったし、予定通りにはいかなくとも、それはもう心安らげる時間となってくれるはずではあった。


そう、こんなはずじゃあなかった。



「…………」


「…………」


「…………」



俺としたことが何がなんだか分からねェ。


沈黙の今、沈黙の居間。奥歯にポップコーンでも挟まったみてェな仏頂面引っさげた女が約三名。


本人は余裕ぶってるつもりだろうが笑顔が思いっきり引きつっている結標。


腕を組んで憮然とした表情を保ち、時々チラチラと俺の顔を睨みつける吹寄。


そして表情が完全に消えている佐天。……正直コイツが一番怖い。



▽一方通行




休日の昼下がり、ラジオからは気怠げなジャズが鳴り響いている。


満たされた腹に追い討ちをかける様なぬるいサウンド、強い日差しを忘れてしまうくらいに冷やされたリビングルーム。


何もない日なら至福の午睡を貪っている時間帯であるし、休日の昼時などどいつもこいつも何も考えてねェことに違いはないだろう。


なんにも考えずテレビ垂れ流して、なんにも考えずテキトーにコーヒー飲んで、そしてなんにも考えず寝る。


俺の今日はそうやって過ごすはずだったし、予定通りにはいかなくとも、それはもう心安らげる時間となってくれるはずではあった。


そう、こんなはずじゃあなかった。



「…………」


「…………」


「…………」



俺としたことが何がなんだか分からねェ。


沈黙の今、沈黙の居間。奥歯にポップコーンでも挟まったみてェな仏頂面引っさげた女が約三名。


本人は余裕ぶってるつもりだろうが笑顔が思いっきり引きつっている結標。


腕を組んで憮然とした表情を保ち、時々チラチラと俺の顔を睨みつける吹寄。


そして表情が完全に消えている佐天。……正直コイツが一番怖い。


……コーヒー。


「!!」


「!!」


「!!」


がたたっ、と、フローリングを擦る音が重なった。


———飲もう……と、思っただけなのだが、どうやら口に出してしまったらしい。


……おい。どうしてオマエらが動く必要あるンだよ。大人しくしてろ。


「遠慮しないでくださいよ一方通行さん。いつも『悪くねェ……』って言って飲んでくれてるじゃないですか。今日も私が入れてあげますっ!」


誰かに吹聴するように元気よく声を張り上げる佐天。先程までの無表情が嘘のようだ。……正直、ちょっと怖かった。


「気を使わなくて結構よ佐天さん。一方通行?私においしい入れ方教えてくれるって約束、忘れてないわよね?」


少しは持ち直したのか、お高くとまった余裕の笑みを貼り付ける結標。……おい。忘れてねェけどそこで俺に頼むか普通?


「わ、私栄養ドリンクを持ってきたの!ほらこれ、『骨密ドッキング』って言って——」





「「一方通行(さん)はコーヒーが飲みたいって言ってるの(んです)!!」」


「そっ、そんな怒鳴らなくたってっ……!?」



………………


……何だこれは。



場を沈めるやつがいない……どちらかといえば俺は沈下する側じゃなく放火する側だ。


このまま放っておいても良かったが、吹寄のツラが動揺を通り越して絶望的なモノになりつつある。


ここで誰かに泣かれちゃ面倒だ。……俺がどうにかするしかねェ、ってことだ。。


慣れない仕事だったが、どう転んでも番外固体のアホが面倒を引き受けるとは思えなかった。仕方がないので俺がどうにか仲裁に入ることにしてみる。


……吹寄、一本寄越せ。


「う、うん!……これ、貴様、骨が脆そうだったから……」


……コメントし辛いが、まァ、感謝する。


「そ、そう……」


空気に気圧されたのか、顔を紅潮させていくらか縮こまった様子で吹寄はどうにか呟いた。


手元に視線を落とし、足をぶらぶらさせている。気持ちは分かる。本当にわかる。なンせ、俺も本当にどうしていいか分からねェからな。


ストローを突き刺してすすってみる。……少し甘い飲むヨーグルトみたいな味がした。


「そ、それなら私も頂きます!!」


「わ、私ももらうわ……」




テーブルの上の栄養ドリンクを半ばかっぱらうようにして手に取る二人。


ラジオの止まった昼下がりのリビングルームに、男女四人のストローを啜る音だけが虚しく響き渡った。


「……………」


「……………」


「……………」


「……………」



…………………………


………………


………本当に、何なんだこれは。







▽番外個体



狙ってやったわけじゃないんだけど、久しぶりにホットな展開がミサカの目の前にはあった。


びぇーん、どうしたらいいかわかんないよー。そんな面をどうにか取り繕おうと必死の第一位。時節こっちに助けを求めているのか視線を送ってきている。


ぷっwwwひゃっはははははは!!!!もう笑いが止まんない!!その顔イイ!!超グッド!!超えきさいてぃんっ☆


あ、それと第一位?教えてあげないけど、それ「修羅場」っていうらしいよ?なんか学習装置でインプットされてたみたい。


うんうん確かに相応しい言葉だよね?今にも燃え上がりそうだし……燃料投下してもいいかな?



あの人は笑いをこらえてるミサカを恨みがましい顔して睨んだりするけど、そもそもの始まりにミサカが絡んでる訳じゃ全然無い。


全部あの人のせいだよ?ミサカ悪くないよ?……いやホント。知ってるでしょ?あの人がした事。あ、なんかこの言い方背徳的。


さあさあ面白くなって参りました!ここでミサカによるおアツいオンナノコ達のご紹介と相成りまーっす☆



じゃっじゃじゃ〜ん!!エントリー・ナンバーそっのいち!!


「た、たまには、番外個体の家で遊ぶのも悪くは無いと思っただけなのよ?」


ミサカが誘ったふっきーこと、吹寄制理〜♪


……いやぁ〜、ダメだよふっきー全然駄目。ミサカを言い訳に使ってうちに来るようじゃまだまだだよ?


そりゃあミサカとふっきーは仲良いけど、あのホワイトロリコンを落とすにはもうちょいストレートに行かなきゃ。


「あァそォかい。俺は寝る」


ほら、こうなっちゃうから。あの人は起こしといたげるけど、もっと直球勝負で行きたまへ。






……こほん。そしてっ!エントリー・ナンバーそのにいいいいい!!!


「あらこんにちは。番外個体ちゃん……だったかしら?」


なんか上から目線な顔つきがすっげえイラつく痴女っぽいアマ!あわきんこと結標淡希〜!!!


……てゆーかさ、何?なんなのその目つき?いやさ、いいよ別に。あの人の知り合いってだけだし。うん、ミサカ関係ないし。


でもさ、そーゆー態度よくないんじゃないの?しーゆーのヤな感じだよ?ほら、ミサカを見習いなよ。


ミサカ、そーやって人を見下すような目つきするもんじゃないと思うけどな〜。……え?なに?「人のこと言えンのかよ」?


いやいや、ちょっと心外だにゃーん。……ミサカはせいぜい人を小馬鹿にするくらいだよ?この痴女と一緒にしないで欲しいね。


「ち、痴女って!!今は痴女って言われる筋合いはないわっ!!!!」


あれ?いつもは痴女だったの?ミサカよくわかんない。




……さて、気を取り直してエントリー・ナンバーすっりいいいいいいいいいいいいい!!


「やあやあ一方通行さん!!今日も来ちゃいました!!」


おっとお!?他のメス達よりリードを見せたかこの姿勢!!直球に「来ちゃった☆」をやってのけた最年少の彼女!!


佐天さんこと、佐天涙子おおおおおおおおおおおおおお!!!!!


いやあ何?おチビとかとも仲良くやってるけどさ、もう初っ端から名前読んじゃってるしね?


台所事情とか把握されちゃってるし、黄泉川とか今も寝てるNEETの胃袋とかも握ってるし、中から崩してくつもりなのかな?


「そっ、そんなことないですよ!?……じゅ、純粋な好意でやってるんです!!」


顔真っ赤にして言ってるけど、それあの人の前でやってやればイイんじゃねーっすか?正直ミサカの前でやられても……


ていうか、どいつもこいつも詰めが甘ェな……って、あの人風にミサカは呟いてみちゃう?ぎゃっははははははバッカみてえwwww





……と、笑いをこらえながらアタマの中で色々やってきたけど、そろそろあの人がキャパシティオーバーみたい。


まったく、社会復帰するなら修羅場くらい乗り越えられるようにならないと駄目だよね?


これは貸一つ、ということになるだろうし、ぶっちゃけそろそろ飽きてきた。


ここはミサカが、燃え上がった炎をさらに燃焼させて事態をうやむやにしてしんぜようじゃないか。



「一方通行……?貴方、約束を反故にする気?」


「……いや、そンなつもりは無いンだが——


「一方通行さん!お料理の先生の言うことが聞けないんですか?」


「それ今関係あンのかよ……」


「あ、一方通行……」


「おい、なンで俺の後ろに隠れやがる」


「ちょ、ちょっと一方通行?貴方その子の味方をするの?」


「ちょっと吹寄さん!何どさくさに紛れて問題うやむやにしようとしてるんですか!」






ヒートアップする地獄をひょいとくぐり抜けて、さりげなく第一位の右腕を腕に抱く。そして——


「……?おい番外個体、何を——」


「ミサカ汗かいちゃったっ☆第一位〜、いつもみたいに一緒にお風呂入ろ〜よぉ〜☆」


ぴたっ、と空気が静止する。


うんっ!これはこれで問題がお流れになったはず。ミサカあったま良い〜。


自分で自分を褒めてあげたいなー。これご褒美いるっしょ、自分へのご褒美(笑)とかwww


と、満足そうな顔をしていると、第一位の顔がその険しさを段々と増していってるのがわかる。


ていうか、もう絶望って感じ。そ、そこまですげえ顔されるとはミサカも思ってなかったかにゃー、はははー。



「おい番外個体オマエ——」


「「一方通行」」


「………………」





………………………


…………ぎゃはっ。




「ちょっとその話の続きを……」


「聞かせて……」


「もらいたいのだけれど」


「…………ははっ」




ぎゃっははははははははははははははは!!!ぶひゃひゃひゃひゃひゃっ!!!


そおーーんな上手く行くはずないよねぇぇえええええええええええええ☆




>>305
>>306

二重投下しちゃってすみません!

あと、番外ちゃんは別に一方さんとお風呂入ってません。

あっちもこっちも感想ありがとう御座います!このスレの一方さんはああならないんでご安心を。

あと申し訳ないんですけど明後日から旅行行くんでしばらく来れません!

三月の八日くらいには来ると思いますので!ホントごめんなさい!



では!

あ、君たち抱き枕カバーとフィギュアは買ったかね?

社会復帰に、「修羅場」追加って…

いきなり、トリプルC(D?)って難易度高いすぎないか?

すみません遅くなって!近いうちに投下します!

あと、前述したとおり完結はさせます!自分のネタが尽きない限り書き続けていくつもりですので宜しく!

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