真田「アイドル共にテニスを教えろだと?」(300)

高木「うむ。実は今度、うちのアイドル達がテニスのドラマに出ることになってね」

真田「……それがどうした」

高木「テニス未経験者ばかりではドラマなどできるわけもないだろう? ここは一つ誰かに教えを」

真田「ふん、くだらん。ならば専門のコーチを雇え、戯言に付き合っている暇は無い」

高木「それが、うちの事務所は万年金欠でね……なるべく経費は減らしたいんだ」

幸村「そういうことらしい。いいじゃないか、やってみれば」

真田「幸村……貴様まで何を言う」

幸村「高木さんは俺の親戚でね。入院中もとてもお世話になったんだ」

真田「なんだと?」

幸村「これは俺の頼みだと思ってもいい。なんとか引き受けてくれないか?」

真田「………………」

【765プロ】


高木「そういうわけで、今日からテニスコーチを務めてくれる真田弦一郎くんだ」

アイドル達「よろしくお願いしまーす!!」

真田「……うむ」

P「忙しいところをすみません、真田さん。短い間ですがよろしくお願いします」

真田「貴様がプロデューサーとやらか。言っておくが、俺は手加減できんぞ」

P「え……あ、ああ。レッスンに対してって意味ですね。それはもちろん、ビシバシやってください!」

真田「………………」

P「じゃあ早速ですけど、テニスレッスンの方お願いします」

真田「コートは準備してあるのか?」

P「はい。週二回、レッスン用に予約しました」

真田「いいだろう。だが、俺も一度に全員を教えるのは不可能だ」

P「それは確かに……では誰かを重点的に鍛える方向にしましょうか」

真田「それが良いだろう」


P「よーし……じゃあ今日は、彼女のレッスンをお願いします」


レッスンするアイドル
>>7

顔面センター

顔面センターはアレだから>>6採用


P「真でお願いします」

真「菊地真です、よろしくお願いします!」

真田「ほう。女にしては鍛えているようだな」

真「あはは……実家で武術とかやらされてたんで」

真田「良い心がけだ。ならば俺も手加減せずに済む」

真「は?」

P「じゃあ早速コートに行きましょう。送っていきますので」

【テニスコート】


P「ではレッスンの邪魔をしては申し訳ないので、私は失礼します。真、しっかりやるんだぞ」

真「へへっ、わかってます!」

P「まあ真は運動神経バツグンだし、どんなレッスンでもついて行けるだろう……」

真「それよりこの服! テニスウェアって可愛いの多いですよね!」

真田「…………」

真「スカート履いたの久しぶりだなぁ。どうです真田コーチ、似合いますか?」

真田「始めるぞ」

真「えっ……あ、はい!」

真田「ルールは理解しているか?」

真「はい、マニュアルは読んできました!」

真田「ならば、まずサーブを打ってみろ。貴様の打球を見る」

真「サーブは……確か、サービスエリアに入れればいいんですよね?」

真田「ああ。だが最初は気にせず打てばいい。テニスの感覚を掴むために俺も打ち返してやる」

真「ありがとうございます! よーし……うりゃっ!」


パコーン


真「おっ、サービスエリアに入っ」

真田「たるんどる!」


ドギャァァァァァァァァァ!!

真「…………」

真田「愚か者が! 貴様も打ち返さんかぁーっ!」

真「……え? い、いや、今のは……」

真田「まだ風林火陰山雷の一端すら見せておらんぞ。次、さっさと打たんか!」

真「ちょっ……あのっ、真田コーチ」

真田「なんだ」

真「打球が速すぎて対応できないので、少し遅くしてもらっていいですか……?」

真田「……ふん。やむをえんか。打てぬようでは指導にもならん」

真(他のアイドルなら打てないどころか見えないと思うけど……)

真「いきますっ!」

パコーン

真田「ぬるいわ!」

ドシュゥ!

真(あ、打ちやすいコースに打ってくれてる)

ドギャッ

真「い、痛ったぁ! う、打ち返すだけで精一杯だ……」

真田「打ち返したがこちらのコートに入っておらん! 貴様テニスを侮辱しておるかぁーっ!!」

真「あの、もうちょっと遅く……」

3時間後―――


真「でりゃあ!」ドシュゥ

真田「フハハハハ、手緩いわ!」ドギャァァ!

真「なにくそっ!」パコーン

真田「その程度でこの真田弦一郎からポイントを取ろうなど……片腹痛いわ!」バシュゥ!

真「なにをー!」パコンッ

真田「打球が弱い、ネットだ。精進が足りんな」

真「くそぉー……テニスって難しいなあ」

真田(しかし、なかなかの順応性だ。もう俺とラリーが続くようになっているとは)


真田「……では、ここらで一つ技を見せておくとしよう」


使う技(風林火陰山雷、無我の境地 etc)
>>39

108式

真田「たった3時間で俺とラリーが成立するまでに成長するとは、大した女よ」

真「あ、ありがとうございます!」

真田「そんな貴様に褒美をくれてやる」

真「えっ? な、何かなぁ。アクセサリーとか?」


ボシュゥゥゥ!!


真田「……これが『無我の境地』だ」

真「うわっ! コーチの体から閃光(オーラ)が!?」

真田「俺は普段、風林火陰山雷を用いるが故に『無我の境地』を使わん。これは滅多に見れん代物というわけだ」

真「へぇ……でも、それがなんなんです?」

真田「衝撃と言う名のプレゼントを受け取るがいい! 『壱式波動球』!!」

ドゴォォォォォ!!

真「ぐはっ……お、お腹に……」

真田「この程度で膝をつくとは、情けない奴め。青学の河村を見習わんか」

真「うう……ま、まだいけます!」

真田「ほう?」

真「このレッスンを乗り越えないと僕はドラマに出られないんです! 諦めたらファンに顔向けできませんよ!」

真田「心構えは立派だな! 『参式波動球』!」

ドギャァァァァァァ!!

真「ごふぁっ……」

真田「ほう、かろうじて耐えたか」

真「まだまだぁー!」

真田「『六十八式波動球』!」

ドゴォォォン!

真「ぐあぁぁぁぁぁ!」

真田「コート外まで吹っ飛んだか。まだやるつもりか?」

真「あ……当たり前、です……で、でも」

真田「なんだ」

真「打ち返せるようにならないと、レッスンにならない。コーチ、強い打球はどうやったら打ち返せるんです……」

真田(此奴、ここまで傷ついてまだそんなことをぬかすとは……)

真「コーチ……」

真田「……良かろう、貴様はなかなか見込みがある。この奥義、身を以て知れ!」

真「!?」

真田「風林火陰山雷の一つ……『林』!」

真「おりゃあ! 『見よう見まね壱式波動球』だ!」ドキュゥゥゥ

真田「たわけが! 貴様の打球は勢いだけか!?」パコーン

真「ど、どういうことなんだ……何を打っても返されてしまう」

真田「『林』は打球の回転を和らげることであらゆる技巧を無効化するのだ! ハーッハッハ!」

真「大人気ないですねっ! ダッシュをつけて『ダッシュ波動球』!」ドギャァァァァ!

真田「俺はまだ中学生だと言っておろうがーっ!」パコンッ

真「ええっ!? ってことは僕より年下……あっ」

真田「今のはドロップショットだ、たわけが」

真「くそぉ~……そんな技教えてもらってないですよ!」

真田「だから見せたのだ。見ねば覚えん」

さらに3時間後―――


真田「よし、今日はこの程度にしておいてやる」

真「ハァ、ハァ……あ、ありがとう、ございましたっ……ハァ、ハァ」

真田「体力の作り方が足りんな。少し待っていろ」

真「あ……コーチ、もしかしてスポーツドリンク買ってきて」

ポパピプペ

真田「柳、アイドルの体力増強メニューを作れるか? それも急ぎだ」

柳『例の特別コーチの件か。いいだろう』

真田「アイドルでも問題無しとはな。達人(マスター)の名は伊達ではない」

柳『そのアイドルの体力が一ヶ月で二倍になる確率、97.8%……』

【一週間後 765プロ】


P「いやぁ、ありがとうございます真田さん」

真田「……何の話だ」

P「ドラマの撮影準備が始まったんですけど、真のスタッフ受けがすごく良いんです。動けるアイドルは珍しいって」

真田「奴の努力の賜物だ。俺は大したことはしておらん」

P「そんなご謙遜を。でも、共演するアマチュアのテニスプレーヤーに6-0で勝っちゃったのはやりすぎでしたけど……」

真田「……『林』と『見よう見まね波動球』を使いおったな。そうではなくてはいかんな!」

P「いや、勝っちゃ困るんですけど……ドラマの脚本的にも」

真田「黙らんかーっ! 立海大は負けてはならんのだ!」

P「は、はい! そうです、仰る通りです!」

真田「フン……」

P「ま、まあそのお礼と言ってはなんですが、これをどうぞ」

真田「……なんだこれは」

P「あるアイドルのソロライブチケットです。最前列ですから、今やほとんど手に入らないレア物ですよ」

真田「何がライブだ、そんな催し事にうつつを抜かしておれん。765プロ、たるんどる!」

P「ライブ全否定って……一応ここ、アイドル事務所なんですけど」

真田「だが、礼と言われた物を受け取らんのは礼を失する。とりあえずは貰っておいてやろう」

P「そうしてもらえると嬉しいです」


P「ところでこのアイドル、知ってます?」


ソロライブを開くアイドル
>>75

跡部様

真田「まさか跡部とはな」

P「あれ、知ってるんですか?」

真田「全国区のテニスプレーヤーだ。氷帝の部長でもあるが、アイドルまでやっておるとは」

P「跡部景吾、最近は飛ぶ鳥を落とす勢いですよ。ジュピターより売れてますから」

真田「だが、こういう時は貴様の事務所のチケットを渡すのが筋だろうが」

P「あっ……お気に召しませんでしたか?」

真田「女ならともかく、男が見たがるわけがなかろうが。たわけが」

P「ライブ否定してたのに……じゃあ、ウチのアイドルのライブチケットでいいですか?」


ライブを開く765プロのアイドル
>>84

あずささん

P「こっちはウチのアイドル、三浦あずさのライブチケットです」

真田「フン。暇ができたら見に行ってやっても良いがな」

P「是非そうしてください。本当にいい歌を歌いますから、彼女は」


――――――――

――――

――


【真田の家】

真田「ううむ、ライブか……」

真田「ああは言ったがやはり貰った手前、行くべきなのだろうが」

真田「だが、立海の副部長としての威厳という物もある……」

真田「……ふ、この真田弦一郎ともあろう者が何を戸惑っておる。知人に見られなければ良いだけの話ではないか」

真田「日程は次の日曜か。待っていろ三浦あずさとやら! ハァーッハッハッハ!」

日曜日、ライブ当日―――


ファン「うぉぉー! あずささーん!」

ファン「早くあずささんを出せぇー!」

真田「ぬぐ……開始30分前だというのに、なんだこの人の多さは!」

ファン「ぐへへへ、あずささん最高ー!」

真田「しかも、どいつもこいつも体型がたるんどる! 暑苦しいわ!」

ファン「あずささーん!」

切原「ババァ! 俺と結婚してくれー!」

真田「……ん? 今の声は」

切原「あれ? 真田副部長じゃないッスかー」

真田「貴様、ここで何をしている。今日は自主練のはずだろうが」

切原「ふ、副部長こそ人のこと言えないじゃないッスか! なんスか、普段仏頂面してるクセにこんなトコ来て!」

真田「む……」

切原「てか副部長がライブに来るなんて意外すぎ。あずささんのファンなんスか?」

真田「……偶然チケットが手に入ったから来ただけだ」

切原「自主練サボって? 真田副部長、たるんどる!」

真田「………………」

切原「ちょ、調子に乗りました、すみません……」

真田「……まあ、今日は同じ穴のむじなだ。大目に見てやろう」

切原「あ、あざーっす! ほら、早く座席に行きましょうよ……ってそれ最前列じゃないッスか!」

真田「そのようだな」

切原「な、なんて羨ましい……どういうコネがあったらそんなのゲットできるんスか!?」

真田「二枚あるが、一枚やっても構わんぞ」

切原「ににに二枚!? ど、どうなってんですか……」

真田(プロデューサーがペアで行けと二枚寄越したからな。無論そんな相手はおらんが)

切原「お願いします副部長! 一枚譲ってください!」

真田「構わんと言っておろうが。だが、交換条件だ」

切原「交換条件?」

真田「俺はライブがどう楽しむ物なのかすら知らん。だが、これではアイドルも満足できまい」

切原「そッスね。ただでさえ副部長はムスッとしてますし、ノってこないファンはウザがられますよ」

真田「……ならばどうすれば良いのだ。貴様なら知っているだろう」

切原「それくらいお安い御用ッスよ! ささ、最前列に行きましょう!」

真田「そろそろ開始時刻だな」

切原「もうじきアイドルが入ってきます。そしたら歓声で迎えてあげてください」

真田「……大声を出せということか」

切原「まあそんなとこッス。あっ、来ましたよ!」


あずさ「みなさーん! 今日は私のライブに来てくれて、ありがとうございまーす!」


ファン「ウオオオオォォォォォォォーーーッッ!!」

切原「うおおぉぉぉぉぉぉぉーーっ!!」

真田「キエェェェーーーーッッ!!」

あずさ「……えっ?」

切原「違う! 副部長それ違いますって!」

あずさ「あ、あらあら~。なんだか今日のファンの人は、とっても過激みたいね~?」

ファン「誰だよ、今奇声上げたヤツ」

ファン「あそこのオッサンじゃね? マジ空気読めよなー」

切原「あ、あわわわ……」

真田「……帰る」

切原「待って、待ってくださいって! こんなの歌が始まったらみんなすぐ忘れますから!」

真田「……本当だろうな」

切原「本当ですって! 何拗ねてんスか!」

真田「拗ねてなどおらんわ……」

切原(覇気が無い……)

あずさ「じゃ、じゃあ歌います~! 曲は『隣に・・・』です!」

ファン「ワァァァァァァーー!!」

切原「副部長。この曲は静かな曲なんで、静かに聞いててオッケーです」

真田「うむ。面倒をかける、切原」

切原「や、やめてくださいよ副部長。副部長にそんなこと言われると気持ち悪いッス」

真田「………………」


あずさ『この~坂道を~登る度に~』

あずさ『あな~たがすぐ~そば~にい~るように~』


切原「ううん、いい曲だなあ。この綺麗な歌声がそれにマッチして……ね、真田副部長」

真田「…………」

切原「……副部長?」

真田「…………いい」

切原「は?」

真田「いいではないか! これ程心に響く物が此岸にあったとは!」

切原「ちょっ、副部長」

真田「歌は確かに美しいが、三浦あずさの柔らかな雰囲気がそれを倍増させている! さては百錬自得の極みか……!」

切原「副部長ってば!」

真田「……ハッ」

ファン「誰かと思ったらまたアイツかよ……」

ファン「警備員、さっさとつまみ出せって」

真田「………………」

切原「副部長、俺は分かってますから。最初は興奮してそうなっちゃいますって。こんなの気にしなくていいッス」

あずさ『恋したり~夢描~いたりす~ると』

あずさ『胸の~奥に~複雑な気持ちが~生まれるの~』


真田「うむ……うむ、いい……」

切原(『隣に・・・』の後は2曲ほど挟んで、最後に『9:02pm』『まっすぐ』で締めだったっけ)

切原(ってことはこれで終わりか。副部長、さっきは落ち込んでたけど元気になって良かった)

真田「切原」

切原「は、はい?」

真田「あと何曲あるのだ。これで5曲目だが、その倍くらいはあるのだろう?」

切原「い、いえ。これで終わりッス。15曲も歌ったらあずささん喉潰しちゃいますって」

真田「なん、だと……この俺に、絶望の闇に抱かれて眠れというのか……」

切原「大げさッスよ。気持ちは分かりますけど、ライブは一期一会ッスから。ほら、最後まで楽しみましょうよ」

真田「う、うむ。そうだな……」

あずさ「それじゃあみんな~! 今日は来てくれて、本当にありがとう~!」

ファン「ワァァァァァァーーーッッ!!」


切原「ほら真田副部長、急いで急いで!」

真田「なんだというのだ……俺はまだ余韻に浸って」

切原「グッズ欲しくないんスか!?」

真田「グッズ?」

切原「ライブが終わったら売店でグッズが販売されるんですよ! ただでさえ最前列なのに出遅れちまいますって!」

真田「それほど品薄でもあるまい」

切原「ドルヲタなめすぎッス! 下手したら一瞬で……ほら、もう周りは移動してるじゃないッスか!」

真田「……『雷』!!」

切原「うおっ、副部長が消えた……俺も負けてられねぇ!」

【売店前】


ファン「俺が先だぁぁ!」

ファン「押すんじゃねーよデブ!」

ファン「うっせー消えろカス!」

真田「どけぇい雑魚共! この真田弦一郎、肉壁如きでは止まらん! 『雷』!!」

ドギャァァァァァ!!

ファン「ぷぎゃああああああ!」

切原「ヒャーハハハハ! テメーも赤く染めてやるよ!」

ズゴォォォォォン!!

ファン「ぬわあああああああ!」

切原「売店前に到着っと! チクショウ、真田副部長に負けちまったか」

真田「フ……まだまだ青いな、赤也」

杏「あれ? あなた達……」

切原「……げっ、不動峰の橘妹じゃねえか! なんでお前がこんなとこにいるんだよ!」

杏「だって私、売り子だし」

切原「チッ……まあこの際だ、兄貴のことは水に流そうぜ」

杏「それあなたが言うことじゃないでしょ?」

真田「そのような話は後にしろ。この店頭にあるグッズ、一式いただこう」

杏「えっ……」

切原「おおっ、さすが副部長、大人買いッスね! 伊達に老け顔じゃねー!」

杏「これ、プリントTシャツとかバスタオルとかありますけど」

真田「全部買うと言っておろうがーっ!」

杏「は、はい……少々お待ちください……」

【その後、帰宅中】


真田「ハァーッハッハッハ! 立海は負けてはならんのだ!」

切原「そッスね! 俺も思わず全部買っちまいましたよ!」

真田「しかし、上手く事が運んだのは貴様の力が大きい。まさか貴様とダブルスで勝利する日が来ようとはな」

切原(え……あれって副部長の中じゃダブルスなのかよ……)

真田「言っておくが、今日の事は他言無用だ」

切原「分かってますって。俺だって誰にも話してないんスから」

真田「たわけが。そういう慢心が漏洩に繋がるのだ」

切原「お、オッス! 副部長もCDが屋外に漏れたりしないように気を付けてくださいよ!」

真田「当然だ。ククク、今日は甘美な歌声に抱かれて眠ることができる……」

切原(うわぁ……)

【翌日 765プロ事務所】


真田「くっ、寝不足だな……CDを聴いていたら日が昇っておるとは、恐るべし三浦あずさ……」

あずさ「真田さん」

真田「ぬおおっ!?」

あずさ「ご、ごめんなさい~。驚かせてしまいましたか?」

真田「い、いや。こちらこそ大声を出して申し訳ない」

あずさ「いえいえ~。昨日はライブに来てくださってありがとうございます~」

真田「……なぜご存知なのです、俺がライブに行ったことを」

あずさ「最前列で大きな声で応援してくださったじゃないですか~」

真田「あ……あれは、その……恥ずかしながら、どう謝罪すれば良いのか」

あずさ「うふふ、いいんですよ~。それだけ私のこと、見ていてくれたんですよね?」

真田「それは勿論です。グッズもCDも買わせていただきましたよ」

あずさ「あら~! それはそれは、本当に嬉しいです~」

P「おはようございます、真田さん」

真田「……なんだ」

P(あずささんとの会話を邪魔されたら露骨に不機嫌になったぞ……)

あずさ「どうしたんです、プロデューサーさん」

P「今日からテニスレッスンのアイドルを変更しようと思いまして。真はもう十分でしょう」

真田「うむ。アマのプレーヤーを倒せる程度ならば撮影には問題あるまい」

P「で、次にレッスンするアイドルは誰がいいと思いますか?」


次の真田の行動 >>165
①テニスレッスン(アイドル指定)
②グッズ集めに行く
③その他

あずさとレッスン

真田「三浦あずさに決まっておろうが!」

P「え? き、決まってましたっけ、それ」

あずさ「でも~、私テニスなんて大学以来やってないですし、大丈夫でしょうか?」

真田「大丈夫です。あずさ……さんは、まずは慣らすところから始めればいいでしょう」

あずさ「……うふふ~。コーチなんですから呼び捨てでもいいんですよ~?」

真田「そ、それは少々抵抗がありますので……」

あずさ「あらあら~」

P「……じゃあ、またコートまで送っていきますよ」

真田「任せる」

P(この人、あずささんと俺で温度差すごいな)

【テニスコート】


あずさ「お待たせしました~」

真田「ほう……昨日の衣装も可憐でしたがウェアもなかなかお似合いです」

あずさ「や、やだ。お上手なんですから」

真田「生憎嘘がつけない性格なもので、事実を述べたまでです」

あずさ「もう、真田さんったら……私本当にヘタですから、手加減してくださいね~」

真田「ええ。簡単なラリーができるようになれば撮影には問題無いでしょう」

あずさ「ではよろしくお願いします~」

あずさ「いきまーす。それっ」パコーン

真田「これは手厳しい。ヘタと言いながら、しっかりサービスエリアに入ってますよ」ポーン

あずさ「あら、ボールが……これって」

真田「ええ。俺が浮かせてしまったのでチャンスボールです。ここは遠慮無くスマッシュしてください」

あずさ「えいっ」

バシィ!

真田「これで15-0です。基本的にはこれを4回繰り返せば勝ちです」

あずさ「もう、さすがにそれくらい知ってます~」

真田「それは申し訳ない。さあ、次のサーブを打ってください」

あずさ「それっ」

バシィ!

あずさ「やりました~、私が1ゲーム先取ですね。これでサーブ交代でしたよね?」

真田「これは練習ですから、サーブは全てあずささんからで結構です」

あずさ「あ、それは困ります~。撮影の練習とはいえ、試合の雰囲気も掴んでおきたいですし」

真田「なに……」

あずさ「この際ですから、本気でやってくださって構いませんよ~」


真田(……これは良くない流れだ。運動神経に恵まれていないあずささんの場合、手加減抜きでやったら生死に関わる)

真田(だが、アイドルとしては試合の雰囲気を掴んでおくことも重要だと言う。どうしたものか……)


真田の行動 >>203
①真の時と同じくガチ
②今みたいにゆるい感じを続ける
③その他

ガチガチ

真田「いいだろう。ボーナスタイムは終わりだ」

あずさ「あ、あら~? 真田さん、話し方が……」

真田「ククク……敗北の闇に落ちるがいい!」

ドゴォォォォォン!

あずさ「え……ぼ、ボールは……?」

真田「貴様の後ろだ、たわけが」

あずさ「後ろ……あ、本当。いつの間に……」

真田「今のは技も未使用の状態。これが打てんようでは話にならんな」

あずさ「……ぜんぜん、見えませんでした」

真田「次は少し速度を落とすが、目で捉える程度はやって欲しいものだ」

あずさ「が、がんばります~……」

真田「散れぇい!」

ドギャァァァァ!

あずさ「えいっ」ブンッ

真田「たわけが、振り遅れておる。これで技も未使用のまま1-5だ」

あずさ「はぁ、はぁ……」

真田「次は貴様のサーブだ。もっとも、リターンエース4本でゲームセットだがな」

あずさ「ご……ごめん、なさい……」

真田「なに?」

あずさ「私が、運動できないから……教える方も、大変だなぁ、って……はぁ、はぁ……」

真田「………………」

真田「身長168cm、体重48kg……」

あずさ「……え」

真田「貴様のファンブックに載っていたデータだ。女性にしてはやや大柄な部類だ」

あずさ「そ、そうかもしれませんね~。それが、何か……」

真田「俺はかつて、沖縄の大柄なプレーヤーの強烈サーブを見たことがある」

あずさ「はぁ……も、もしかしてそれを、私に……?」

真田「それは貴様次第だ。できるできないは俺の知ったことではない」

あずさ「そんなの、見たこともないんですよ~。できるわけ……」

真田「……『無我の境地』」

あずさ「えっ? さ、真田さんの周りにオーラが……?」

30分後―――


あずさ「……すごい。壁があんなにへこんで……」

真田「はぁっ、はぁっ……」

あずさ「真田さん!?」

真田「『無我の境地』で使う技は体への負担が大きいのだ……だから俺は、普段こんなものには頼らん」

あずさ「私のために、そんな危険なことを何十回も……」

真田「……今のは試合外の出来事、カウントはとらん。故に、貴様のサーブだ」

あずさ「でも、真田さんすごく疲れて」

真田「さっさと打たんかーっ!」

あずさ「…………っ!」

あずさ「……では、遠慮なく行きますっ」

あずさ「ん~……ビッグ、バン!!」


ドグシャァァァァァ!

真田「だが俺は安々と入れてやる程甘くないわ! 『林』!!」パコーン

あずさ「ど、ドロップショット……?」

真田「『見よう見まね波動球』も『見よう見まねビッグバン』も本物には程遠いわ!」

あずさ「……誰でも最初は物真似から始めるんです~。歌もダンスも、サーブもそうですよ~」

真田「アイドル活動とテニスを一緒にするでないわーっ!」

あずさ「ごめんなさい~……ん~、ビッグバン!」

ドグシャァァァァ!

真田「『林』! 貴様に完璧な模倣ができるとでもぬかすか!?」パコーン

あずさ「う……まだ私が知らない何かがあるんです、きっと。このサーブで、私が気付いてないこと……」

あずさ「んんんん! ビッグバン!」

ドギャァァァァァァ!!

真田「『林』……ぬっ」バシィ

あずさ「あ、あら~? いま……」

真田「……少し弾いたが、そちらのコートに入った。これで0-40、マッチポイントだな」

あずさ「わかりました~! 掛け声です~!」

真田「む?」

あずさ「そういえば真田さん、ビッグバンを打つ時『ぬおおぉぉぉ』って言ってました~」

真田「掛け声が少し変わったから球威が増したとでも言うつもりか、たわけが」

あずさ「どうでしょう~? 私、肺活量には自信があるんです。案外違うのかもしれませんよ~?」

あずさ「でも私は『ぬおおぉぉぉ』じゃ気合が入りませんから、別の掛け声にしますね~」

真田「勝手にしろ。どの道あと一球で貴様は絶望という名の谷底に落ちるのだからな」

あずさ「はい、勝手にします~。ええと、肺に空気を入れて、お腹から一気に声を出して……」


あずさ「……んあああぁぁぁぁぁっ!! ビッグバン!!」


ドギャァァァァァァァァァァ!!


真田「なに!? 『林』!」ガンッ

あずさ「あっ」

真田(球威に負けて、球が浮いた?)

あずさ「はああぁぁぁぁぁぁ!!」

真田「更に助走ジャンプからのスマッシュだと!? それは青学桃城の……」

ドシュゥゥッ!!

【翌日 765プロ事務所】


真「聞きましたよあずささん。凄いじゃないですか」

あずさ「何のことかしら~?」

真「真田コーチから1ポイント取ったって話ですよ!」

あずさ「あれは……真田さん、すごく疲れていたもの。それにその後は腕が痛くて打てなかったし」

真「いやー、でも凄いと思うなぁ。ね、真田コーチ」

真田「うむ。波動球共々、映画の撮影でも見栄えのあるシーンが撮れるだろう」

あずさ「本当ですか~? じゃあ、試作ができたらお見せします~」

真田(まさか見せてもいないダンクスマッシュまで打たれるとは予想外だったがな……)

P「真田さん、今日はレッスン予定無かったですよね? どうして事務所に……」

真田「む……」チラッ

あずさ「あら、どうかしましたか~?」

真田「いえ、何でもありません」


真田(あずささんと話がしたくて来たとは言えん……何か別の理由を考えねばなるまい)


なぜ事務所に来たのか
>>269

真と話がしたくて来たと言っちゃう

そしてあずささんに誤解フラグ

真田「真と話がしたくてな」

真「えっ……ぼ、僕ですか? あずささんじゃなくて」

真田「最初に教えたアイドルは貴様だ。それを気にかけるのはさして不思議でもあるまい」

真「ま、まいったなー……てへへ」


あずさ(……真田さん、真ちゃんのファンなのかしら?)

あずさ(この間は私のライブに来てくれて、グッズも買ったって言ってたのに……)

あずさ(……そうよね。私、もう21だもの。ファンになるなら歳の近い真ちゃんの方が……)


真「……あずささん、どうしたんです?」

あずさ「え、ええっ!? わ、私どうかしてたかしら~」

真「なんだか悩んでるみたいでしたけど。良かったら相談に乗りますよ!」

あずさ(こればかりは、真ちゃんには相談できないわよ~……)

真田「真の言う通りです。悩みは溜め込むと悪影響が出るんですよ」

あずさ「えっ……で、でも私、真田さんには話したくないです~……」

真田「なっ!?」ガーン

あずさ(だって『真ちゃんじゃなくて私を見てください』なんて言えないわよ~!)

真田「………………」

真「……真田コーチ?」

真田「………………」

真「固まってる。これが噂の『山』なのかなぁ」

律子「いやいや、ただショックで固まってるだけでしょ」

真「あ、律子」

律子「こんなナリしてても中学生だし。それに、あずささんにあんなこと言われたら誰だって泣きたくなるわよ」

律子「それより、テニスレッスンが無いなら丁度良かった。傷心の真田さんにいいお話があるんです」

真田「…………?」

律子「じゃーん。テニスで魅力をアピールするアイドル、題して『テニドルプロジェクト』!」

真田「……なぜ資料に俺の顔写真が掲載されているのだ」

律子「そりゃ、あなたがアイドルとしてデビューするからに決まってるじゃないですか」

真田「…………たわけが。やるわけがなかろう」

律子「幸村さんからのお願いでも?」

真田「幸村の? どういうことだ、貴様」

律子「はい、彼からの手紙」


幸村『テニドル第一号おめでとう。俺を助けると思って、しばらくはテニドルとして765プロに貢献してくれ』


真田「幸村ァァァァァ!!」ビリィ

真田「フン、誰がこんな……」

あずさ「あらあら~、真田さんアイドルになるんですか? 私、とっても見たいです~」

真田「……まあどうしてもと言うなら、やらぬわけでもない」

律子(この人、案外ちょろいわね……)

真田「だが俺には部活もある。それ程の時間は割けん」

律子「いや、だから手紙に書いてあったでしょ。『しばらくは』って」

真田「……まさかしばらく部活に来るなと言っておるのか、幸村は」

律子「そうじゃないですか? テニスレッスンは週2回ですから、日曜除いて週4回はダンスや歌のレッスンができますね」

真田「だが、アイドル活動など考えたこともない。できるわけがないとは思わんのか」

律子「テニス未経験者の真も、運動できないあずささんも、普通にテニスできるようになったって実績がありますから」

真田「おのれ……人の功績を逆手に取りおって」

真「へへっ、よろしくね真田コーチ! いやぁ、弦一郎って呼ぶべきかな?」

律子「年下の後輩になるんだし、呼び捨てにしない理由もないわね」

真田「貴様ら……」

あずさ「じゃあ私は……弦一郎さん?」

真田「うぐっ」ズキューン

律子「あっ、今ハートに来たみたいね」

真「むー……なんで僕が呼び捨てにした時と反応が違うんだよー」

律子「そりゃあね……」

真田「真……あずささんはもしや天然なのだろうか」

真「それ、今頃気付いたの!?」

律子「遅っ。鈍い男は嫌われますよ。ねぇあずささん」

あずさ「うふふ、どうかしら~。これからまた楽しくなりそうね~」


終わり。
お付き合いありがとうございました。

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