琴葉「小鳥さんから本を借りたんです」 (107)

グリマスssです。初めてなのでミスとかあったら指摘してくれるとありがたいです

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琴葉「と言っても、古い少女漫画なんですけどね。『BANANAFISH(バナナフィッシュ)』って知ってます?」


グリP「聞いたことはあるけど、あまり知らないなぁ。どんな話なんだ?」

琴葉「アメリカが舞台のハードボイルドアクションです。ボリュームがあるから少しずつ読み進めているんですけど、どの巻も先が気になるような展開なので楽しく読んでます」


グリP「ハードボイルド?どうしてそんなジャンルを?」


琴葉「そこなんですけど、私、アイドルになってから、歌やダンス以外に今まで考えてもなかった経験が出来たと思っているんです。格闘ゲームのキャラクターになったり、カジノのディーラーになったり、花嫁衣装を着せてもらったり……」


グリP「確かにそうだな。人数が多いのもあるけど、うちの事務所は色々なコンセプトで宣材を撮ってるしな」


琴葉「そういう新しい経験が出来るのは楽しいんですけど、やっぱり知らない世界を直に感じるのは結構緊張しちゃって……。だから、今あの時の写真を見ていると、もっといい表情が出来たんじゃないかなって思ったりするんです。宣材での私の表情って笑顔ばかりで幅がないですし……」


グリP「それは琴葉の笑顔がそれだけ魅力的って事なんじゃないか?確かに、笑顔で写ってる宣材が多いのは見ている人にはワンパターンととられるかもしれない。でも、逆にいえばそれが琴葉の個性というか、アイドルとしての持ち味なんじゃないかな?俺はそう思うんだが……」


琴葉「……そう言ってくださるのは凄く嬉しいです。でも、笑顔だけでももっと突き詰める余地がありますよね?例えば、ディーラーを演じた時は胸元の開いた衣装を着てたわけですし、莉緒さんみたいに、もっと挑発的でセクシーな笑顔をした方が良かったと思いませんか?」


グリP「そうかなあ……。俺はあの表情も充分良かったと思うんだけど、琴葉はそれに満足してないんだよな」


琴葉「そうなんです。だから私、とにかくもっともっと色々な事を知って、今までよりもずっと幅のある表情や演技が出来るようになりたいんです。それで、漫画や本でもいいから、今まで知らなかった分野を少しでも知られたらなって……」


グリP「なるほど。そういう心がけは立派でいいと思うぞ。でも何で小鳥さんなんだ?本や漫画は百合子もいっぱい持ってるし、少女漫画なら真も結構持ってるんじゃなかったっけ?」


琴葉「以前本を貸してもらったのもあるんですけど、小鳥さんは社長の次に年上で、経験豊富そうだから良い本を薦めてくれると思ったんです」


グリP「経験豊富……?まあ……うん」


琴葉「どうかしました?」


グリP「いや、なんでも。とりあえず、何が題材であれ作品によって作者それぞれの描き方があるわけだし、借りた本にハマりすぎて変な先入観を持ったりしないようにな。今のままでも琴葉はちゃんと仕事が出来てるんだから、考えすぎて調子を崩さないように気を付けないとダメだぞ」


琴葉「はい!お話聞いてくれて、ありがとうございました!」

数日後



琴葉「また小鳥さんから漫画を貸してもらいました。手塚治虫ならプロデューサーも知ってますよね?」


グリP「『MW‐ムウ‐』……ってこれ、少し前に実写化してなかったっけ?そっちの方はチェックしたりしないのか?」


琴葉「それなんですけど、映画の方は原作から重要な描写を削ってしまったそうです。登場人物達の心情を理解するなら原作を読んだ方がいいって小鳥さんは言っていました」


グリP「へえ。ところで、前に借りてたバナナなんとかって漫画はどんな話だったんだ?」


琴葉「あらすじだけ言うと……写真家になるための勉強でNYに来た、奥村って言う日本人の学生と、彼の写真の先生がNYのマフィアや不良達、それから軍人達の争いに巻き込まれていくっていう話でした。アッシュっていう不良達のリーダーが何度も逆境に遭うんですけど、それを今言った日本人の学生とか、最初は争っていた華僑のグループとかと協力して乗り越えていくのが凄く面白いんです!最後のシーンがとても悲しいんですけど凄く綺麗でもあって……読んだ時、少し涙ぐんじゃいました」


グリP「お、おう」


琴葉「……それで争いの中心にあるのが「バナナフィッシュ」っていう……」


グリP(琴葉の奴、意外と喋るなぁ。百合子に少し似てるかも)


琴葉「……というわけで、『ムウ』も『バナナフィッシュ』に通じる点があるから、って小鳥さんが薦めてくれたんです」


グリP「そうか。漫画に夢中になるのもいいけど、程々にな」


琴葉「分かってます。漫画を読むのは楽しいですけど、あくまで「参考」ですから」

グリP(うーん……。自分から進んで色々学ぼうとするのはいいんだが、真面目な分だけ物語にのめりこんだりしないか心配だな)



百合子「ふふふ……流石にマスターを殺した際の凶器を処分する時間はなかったようね。さぁ、ここから一体どう釈明するつもりなのかしら?どうやら『檻に囚われたネズミ』とは貴方の……どうかしましたプロデューサーさん?後で読みます?」



グリP(…………心配だな)

~三日後~




グリP「で、今度は何を借りたんだ?」


琴葉「これです(表紙を見せる)。小鳥さんだけから薦めてもらうのも悪いですし、このみさんに貸してもらいました」


グリP「『咲‐Saki‐』って、結構前にアニメ化されてなかったっけ。てか、このみさんこういう漫画持ってたんだ」


琴葉「「美少女系」の画やキャラクターとは裏腹の心理戦やドラマ性、それに専門誌顔負けの麻雀描写がファンにも受けているらしいですよ」


グリP「なんだそりゃ?誰かの受け売り?」

琴葉「小鳥さんが言ってたんです。小鳥さんもこの作品を知ってたそうで、さっき応接室で読んでたら色々と教えてくれたました」


グリP「へー。にしても意外だなぁ。どうしてこの漫画借りたんだ?」


琴葉「えぇと、以前ディーラーになりきったこともあって、漫画でもいいから真剣勝負の場での心理戦を読んでみたかったんです。この漫画なら、勝負事にあまり詳しくない私にも分かりやすく描かれているからってこのみさんが」


グリP「へぇー……(パラパラパラパラ)。確かに、表紙のイメージに反して麻雀シーンは結構多めなんだな。でも、琴葉って麻雀のルールとか分かるのか?」


琴葉「大まかなルールと役だけ教えてもらいました。このみさんは『キャラクターの台詞と得点だけ追っててもついていけるわ』って言ってましたし、よく分からないシーンもたまにあるけど楽しく読めてますよ」


グリP(なるほど。色々な意味でギリギリな絵が多いのが気になるが、『美少女』という要素を利用して麻雀をクリーンなイメージで描いてるのは高ポイントだな。ウチもこの手を使って……)


グリP「ハカバ……ゾンビ……ドウクツ……」ブツブツ


琴葉「プロデューサー?」

グリP「いや、新しい企画について考えてただけだから。そういえば、前読んでたのはどんな話だったんだ?手塚は結構読んだことあるけど『ムウ』は知らなかったし、あらすじとか少し気になるんだが……」


琴葉「「ムウ」という名前の兵器をめぐるサスペンス、という感じでした。漫画は面白かったですし、昨日はオフだったので映画の方も見てみたんですが、そっちの方はちょっと……」


グリP「……どうした?参考になるほどではなかったとか?」


琴葉「いえ、主役の男優さんは二人共有名な人ですし、演技や表情は参考になりそうな点も多かったんですが、演出がピンとこなかったというか、リアリティが欠けているというか……。正直、私には合わなかったです」


グリP(むむ。やはり原作付き作品の映像化は難しいってことか。そういう企画が来た時には気を付けないといけないかも)


琴葉「それに、主人公二人の出会いから続く重要なエピソードを省いてたのはダメでした。あの描写がないと主人公の一方に感情移入しづらいですし、彼の動機に納得がいかないんです」

グリP「それって前にも言ってたよな。どういうエピソードなのか教えてくれないか?」


琴葉「少し長くなりますけどいいんですか?それに、人前で言うのはちょっと、恥ずかしいというか……」


グリP(琴葉の萎れた表情ってやっぱり可愛いな。なんとかしてこっち路線でも……じゃなくて)


グリP(よく考えたら、手塚治虫の漫画って結構アレな話も多いんだよな……。『恥ずかしい』ってことはつまり、下手したら触手妊○や近親相○に匹敵しかねないような物語を琴葉に語らせてしまうという事かもしれないんだよな……。正直めちゃくちゃ興奮する構図だが、そんなことをさせるわけにはいかん!!)


グリP「い、いや、無理に話さなくてもいいんだ!昔の漫画に刺激的な描写が多かったのは俺も知ってるし、もしそうならこんなところ(事務所)で話させるのはよくないしな」


琴葉「刺激的……でした、はい」


グリP(うーん……。琴葉も17なんだから耐性がないわけじゃないだろうけど、ちょっと心配かも。そういえば……)


グリP「なあ琴葉。漫画だけじゃなくて、本とかも読んでみたらどうだ?文字だけの方が却って想像力を発揮できて演技とかのプラスになるかもしれないぞ?」


琴葉「……そうですね。今度は、学校にある図書室にも寄ってみようかと思います。それでは、また!」

グリP(うんうん。やっぱり、何をするにもバランスが大事だよな。10代の性格や考え方なんてこれから幾らでも変わり得るんだし、あんまりこだわりすぎるようなのは良くないよな)



翼「わあ~。静香って今日の昼御飯もうどんなんだね!炭水化物ばっかりで太んない!?」


静香「大丈夫よ。薬味の量や種類は毎日ちゃんとこだわってるし、出汁だって塩分が濃すぎないようなこだわりの一品を使ってるわ。具に使う野菜も季節に応じてこだわったものを使っているし、麺だって太さや硬さに留まらず原材料の麦にまでこだわったものを使って……」




グリP(…………良くないよな!)

~数日後~



百合子「プロデューサーさん、あれを見てください!琴葉さんが柳田國男の『遠野物語』を読んでますよ!」ヒソヒソ


グリP「なんでお前は琴葉から隠れて報告してくるんだ?本の話がしたいなら、今すぐ語り合ってくればいいだろ」


百合子「何言ってるんですかプロデューサーさん!女の子と素敵な本との巡り合いを邪魔するだなんて、デリカシーに欠けてますよ!!」


グリP「そうか。今まで読書の最中に話しかけたりしてて悪かったな。これからは百合子の邪魔をしないように気を付けるから、許してくれよ?」


百合子「えっ……!?いや、私はほら、そういうの慣れてますし、むしろ私としては、プロデューサーさんと話したりしながら読んだ方が、その……」





グリP(しかし『遠野物語』といえば、日本史にも出てくるくらい古い本じゃないか。演技の参考にすると言っていたのに何故あれを……」


小鳥「その疑問、お答えしましょう!」


グリP「わっ!いつからいたんですか!?ていうかどうやって俺の思考を!!?」


小鳥「そんなことより、これを見てください。これはこの間まで琴葉ちゃんがこのみさんから借りていたという……」


グリP「『咲‐Saki‐』って麻雀漫画ですよね。これがあの本とどう関係するんです?」


小鳥「それはですね……」


グリP(小鳥さんの話によると、『咲‐Saki‐』には『遠野物語』をヒントにしたキャラが出てくるらしい。完璧主義な琴葉のことだから、その事が気になって『遠野物語』を読み始めたらしいというのは容易に想像できた)


グリP(ついでに、本の中に出てくる民間伝承をどう麻雀に絡めてるのかが気になったので小鳥さんに聞いてみたのだが……)

小鳥「……というわけで、普段やる気を見せないクールな彼女が、実は非常に仲間思いだということがこれらのシーンから分かるんです!そういった部分がうかがえるシーンは他にもあってですね!」


グリP「小鳥さん。俺はキャラクターじゃなくて麻雀の方の解説を頼んだんですが」


小鳥「えぇ!?ここからが大事なところなのに……」


百合子「いいじゃないですかプロデューサーさん。現実でも創作でも、人柄を知るのって大事なことですよ?」


グリP「んー。まあそうなんだが……」


グリP(というか、百合子はいつから話を聞いていたんだ?実は麻雀に興味があったとか?」


百合子「いえいえ。プロデューサーさんと同じで、『遠野物語』の伝承が漫画にどう生かされてるのか気になっただけですよ。勿論、面白そうな作品はジャンル関係なく興味ありますけどね!」


グリP「いや今のおかしいだろ!なんでお前まで思考読めるの!?」


百合子「さあ音無さん、早く続きを教えてください!」


小鳥「ありがとうね百合子ちゃん。それじゃ、豊音ちゃんが宮守にやってくるシーンから……」

~翌日~



グリP(結局、単行本一巻分くらいの講義を百合子と一緒に聞いてしまった。ああなるなら、自分で読むかネットで調べた方が早かったかもなぁ)


琴葉「おはようございます、プロデューサー」


グリP「ああ、おはよう。昨日読んでた『遠野物語』には、ヒントになるような話はあったか?」


琴葉「そうですね。想像力を広げるのには役立ったかも……ってもしかして、読んでるところ見てました?」


グリP「ああ。集中してるみたいだったから声はかけなかったけどな。百合子が気にしてたから、後で感想でも話し合ってみたらどうだ?」


琴葉「ふふっ、そうですね。同じ本を読んだ人と話したりするのも立派な勉強ですよね。小鳥さんやこのみさんともそうしてみよっかな……」


グリP(うんうん。漫画ばかりに偏ってるわけでもなさそうだし、年の離れた仲間とのコミュニケーションのきっかけも出来てるしいい傾向だな。このまま順調に……)

美希「ふぁ……。ハニー、おはようなの~」


グリP「あぁ、おはよう美希。……おい、近くにいるんだから琴葉にもちゃんと挨拶しろよ?」


美希「あっ。ごめんね琴葉、ボーッとしてて気がつかなかったの。改めて、おはようなの」


琴葉「おはよ、美希ちゃん」


美希「うん。挨拶もすんだし、美希は今から仮眠するの。用があったら起こしてね」


グリP「おい、美希。出社したばかりでそういうのはよくないっていつも……って説教の途中なのに、ソファーに寝転がるな!」


美希「む~。お説教されたって、朝は眠くなるから仕方がないの。ふぁ……。お休みなさ~い」


琴葉「美希ちゃん、ちょっと待って!仮眠するならソファーに寝る前に……(ポスッ)……ほら、おいで?」


美希「んー?よく分かんないけど、よろしくなのー」ポフッ


琴葉「ふふ、やっぱり美希ちゃんて可愛いなあ。どう?頭痛かったりしない?」


美希「全然そんなことないよ。温かくて、ただソファーで寝るよりもすっごく気持ちいいの!」


琴葉「そう、よかったぁ」


美希「んん……それじゃお休みなさい、琴葉……」


琴葉「うん。少しの間だけ、お休みなさい美希ちゃん……」

グリP「あ、ありのまま今起こった事を話すぜ!『おれは美希を説教していたと思ったらいつの間にか琴葉が美希を膝枕していた』。何を言ってるのか分からねーと思うが……」


琴葉「しっ、プロデューサー!まだ時間ありますし、このまま寝かせてあげましょうよ」ナデナデ


グリP「あっ、はい」


琴葉「それに美希ちゃん、こうして寝てはいますけど、私たちが765プロに来た時と比べて早く出社するようになったんじゃないですか?だから、少しぐらいの休憩なら好きにさせてあげても……」ナデナデ


グリP「んー、まあ、それは認めるけどな。それより、どうして膝枕なんてしてるんだ?今まで琴葉がそうしてるのなんて一度も見たことないんだけど」


琴葉「ふふ。実は、『咲‐Saki‐』のスピンオフ作品で友達にこういうのしてあげてる女の子が出てたので、私も何か真似したくなっちゃいまして……」ナデナデナデ


グリP「漫画に影響されたってことか……。別にいいんだが、寝てる奴を撫で回しすぎるのはよくないと思うぞ」


琴葉「だって、こうして近くで見ると美希ちゃんがますます綺麗に見えて……。肌はすべすべしてて触ると気持ちいいですし、髪だって、見た目はクセがありますけど触ってみると意外とサラサラしてて病みつきになりますし……」ナデナデナデナデ


グリP(そういや美希を褒める時とかに撫でたことあるけど、確かに美希の髪は触り心地よかったなぁ」


琴葉「プロデューサー、声に出てますよ?でもプロデューサーの言う通り、美希ちゃんの髪って本当に魅力的……」ナデナデナデ


グリP「声に出てた!?ってことは、あの二人がテレパシーを使ってるわけじゃなかったのか……ホッとしたよ」


琴葉「気付いてなかったんですか……」ナデナデ

真「おっはようございまーす!ってあれ?二人共、なにしてるの?」


琴葉「真ちゃん、しっ。今、プロデューサーと一緒に美希ちゃんの髪の毛について話してるの」ナデナデ


真「えっ!?それってどういう」


グリP「琴葉、怪しまれるような言い方するな。まあ事実ではあるが、単に美希の髪の毛を撫でた時の感触を話してただけだ。何なら、真も触ってみたらどうだ?」


真「えっ?なんか美希に悪い気がするんですけど、本当にいいんですかね?」


琴葉「大丈夫。今なら気持ちよく寝てるから。ほら、こんな感じで撫でてみて?」ナデナデ


真「うーん、やっぱり何か悪いような気がするけど……気になるし…………ごめん美希、触るね」


美希「んっ……?……んぅ……すぅー……」

真「そういえば、琴葉って最近本や漫画とか色々借りてるんでしょ?ボク『ベルサイユのばら』とか持ってるけど、琴葉も読むよね!?」


グリP「真、美希が起きるって」


真「あはは……ごめんなさい。美希の髪を見てたらオスカルを思い出しちゃいまして……。それで琴葉、読む?」


琴葉「ごめんね真ちゃん。実は、お母さんもそれ持ってるから私もう……」ナデナデ


グリP「ああ。なら琴葉がフェンシングやってるのってもしかして「ベルばら」の……」


琴葉「そうですね。オスカルはフェンシングはやってませんでしたけど、剣を振るうということに興味を持ったのはあの漫画がきっかけかもしれません」ナデナデ


グリP「(もしかして、昔から見たものの影響を受けやすい性格だったのかな?)じゃあ俺は営業行ってくるから。お前らも時間確認してちゃんと動けよ」


琴葉「はい、分かりました」ナデナデ


真「分かりました!……っと、いけないいけない。ところで琴葉、「ベルばら」がダメなら他の……」

~数日後~




百合子「ふーふふーん♪ふんふふーん♪ふーふふっふっふーん♪」


グリP「……これで終わりっと!よし、一旦休憩でもするか」


百合子「ふふふふふーん♪ふふふん♪ふふふん♪ふふふーふーん♪」


グリP「………………あ、結構うまい。今日からお茶よりコーヒーにしよっかな」


百合子「ふふふふふふふーん♪」


グリP「……………………痛てて。二時間も座ってなかったのに結構キテるな。俺もトシか……?」

百合子「……どうして話しかけてくれないんですか、プロデューサーさん!!?いじめですか!?」


グリP「女の子が素敵なメロディーと巡り合っている時に口出しするなんてデリカシーがないからな。……さて!休憩も終わったし、ササッと片付けよう!」


百合子「そ、そんなに邪険にしないで『百合子、何かいいことでもあったのか?』くらい言ってくださいよ!あからさまな無視は傷つきます!」


グリP「百合子、お前こんなにウザ、鬱陶しかったっけ何かいいことでもあったのか?」


百合子「…………うぅっ、ぐすっ」


グリP「ご、ごめんごめん、言い過ぎた。百合子、何かいいことでもあったのか?」

百合子「さっき、琴葉さんにオススメの本をリクエストされまして……」


グリP「そ、そうか。それだけで嬉しかったのか?」


百合子「はい……。私、図書委員やっている時以外でそういうの訊かれるのって久しぶりでしたから。私、友達とか仲間同士でオススメの本を教え合ったり感想を話したりするのが凄い好きで、でも、学校でもそういう事が出来る相手って中々いなくて、だから私、私……ぐすっ」


グリP「それで、琴葉からはどんなリクエストがあったんだ!?百合子がオススメする本って俺もちょっと気になるし、よければ俺にも紹介してくれないか?なんて……」


百合子「…………!!」パアア


グリP(めちゃくちゃ良い笑顔だな……)


百合子「はい!!明日琴葉さんに貸すために持ってくるので、その時に紹介してあげますね!!」


グリP「あ、ああ。なるべく簡潔に頼むぞ」


百合子「おまかせあれ!それではお仕事頑張ってくださいね、プロデューサーさん♪」


グリP「あっ、ちょっと待った百合子!……行っちゃったか。琴葉はどんなリクエストしたんだろう?」

~翌日~





百合子「見てくださいプロデューサーさん!これこそ、私が作者の文章力や知識、歴史考証の緻密度に加えて読みやすさや大衆性を意識した上で琴葉さんに薦めようと思っている一作です!」


グリP「なんだこれ!?こんな厚い本を薦めるなんて本気で言ってるのか?この本が新聞やら何やらで絶賛されてたのは知ってるけど、学校行ってる上にアイドル活動やってる琴葉が読み切るのには一ヶ月はかかるだろ!?」


百合子「見くびらないでください!私なら三日とかけずに読了してみせます!」


グリP「お前に聞いてないよ!そりゃ琴葉の集中力ならなんとかならなくもないだろうけど、読書家でもないのにこの分量は厳しくないか?」


百合子「うっ……。でも文字は大きめですし、読みやすいから時間はかかっても苦痛に感じることはないかと……」


グリP「……はあ。まあ、厚い分だけ「肥やし」にはなるだろうな。琴葉なら案外短期間で読み終わるかもしれないし、実際に本人が何と言うかが問題だな」


百合子「そこは「図書館のオリエント急行」と言われた私の腕の見せどころですね!」


グリP「そんなヤバそうなあだ名だったっけ?お前のいる図書館には近寄りたくないな」


百合子「細かいことは気にしない、です!あぁ、琴葉さん気に入ってくれるかなあ。『同性間の深い絆を描いた作品が知りたい』って言ってたし、父や兄、学問のライバルや自分を慕う部下とのつながりを描いたこの本ならきっと……」






グリP「……………………は?なんだって?」


百合子「だから、同性間の結びつきを描いた作品をリクエストしてきた琴葉さんに、色々な関係にある登場人物との強い「つながり」を感じさせる……」


グリP「え?ちょっと待ってそれもしかしてほm……男色とかを描いた本じゃないよな?」


百合子「まさか。史実だとそういう話もありますけど、この本ではほんの少し、しかも本筋には関係ない箇所で触れられてるだけですよ」


グリP「そ、そうか。そうだよな。ちょっと深読みしすぎたかな?あはは……」


百合子「そうですよ、深読みのしすぎです。……ってもうこんな時間!?プロデューサーさん、この本についてはまた後で!今はお仕事行ってきまーす!」


グリP「待った百合子!その本、何てタイトルだったっけ!?」


百合子「『光圀伝』です!時代劇に出てくる「水戸黄門」の話でーす!」





グリP「水戸黄門……黄門様……こうも……いや、これ以上はよそう。それより、俺も仕事しないとな!」


~三週間後~




琴葉「百合子ちゃん、これ面白かったわ。オススメしてくれてありがとう」


百合子「ど、どういたしまして!琴葉さん、今日の予定が終わったら一緒に語り合いましょうね!」


琴葉「うん!」





昴「なあプロデューサー。琴葉さんって受験あるんだろ?本とか漫画ばっか読んでて平気なのかなあ」


グリP「そういうのはちゃんと琴葉から聴いてるよ。読書以外の息抜きの時間を削ったり、スキマ時間とかを使ったりして頑張って読んでるって言ってたぞ。それに、何度も読み返すうちに時間を奪われたりしないように、基本は一周読んだらすぐ返すようにしてるとも言ってたな」

昴「でも一回読むだけでも時間はかかるしさあ。オレが言うのもヘンかもしんないけど、そういうのって良くないんじゃない?」


グリP「どうしたんだ昴?何だかやけにつっかかるな」


昴「つっかかるってわけじゃないけど……」


志保「あれ、昴さん?後ろ手に何を持ってるんですか?『ダイヤのA』……なにコレ、野球漫画?」


昴「わっ!?後ろからいきなり話しかけるなよ、志保!」


志保「すいません、目に入ったもので」


グリP(明らかにわざとだな。志保にしては珍しい)

志保「プロデューサーさん、今昴さんが野球漫画持ちながら話をしてた状況についてどう思います?」


グリP「えっ?……そうだなあ、「琴葉が人からよく本を借りていると聞いて、自分の好きな野球漫画を薦めてみたいと思ったけど勇気が出ない」とか?」


昴「ち、違うよ!そうじゃない!絶対そうじゃないって!」


グリP(確かに、琴葉の件でつっかかる原因としては弱いもんなぁ)


志保「昴さん、今何冊手に持ってるんですか?一冊じゃないですよね?」


昴「に、二冊だよ、二冊。この漫画の中でも一番盛り上がってるトコだよ」


グリP「へえ。何巻と何巻?」


昴「に、20巻と21巻……」


志保「結構進んだ巻数ですね。ひょっとして、「前は琴葉さんに貸していたけどやっぱりつまらなかったから途中で『貸さなくていい』って言われた」とか?」


昴「だから違うって!あと、つまらなくなんてないから!」


グリP「だよなあ。途中で読むのやめるにしても、20巻まで読んだやつを一番盛り上がってるところでやめるだなんて少し変だよなあ」


志保「そうですよね。それなのにどうして……」




グリP、志保「「うーん…………」」


昴「あ、あのさ。もうこの話やめにしない?ほら、オレこの後レッスンあるし、プロデューサーだってまだ仕事あるんだろ?だからさ、一旦やめにし……」


グリP「……あっ!もしかして、「夏のイベントで野球大会に参加した以外では野球に接点のない琴葉に野球漫画を読んでもらうために、話の中で一番盛り上がってる部分を先に読んでもらってからオススメしようとしたけど琴葉に断られた」とか!?」


昴「……は、はぁ?そんなわけないじゃん!そんなピンポイントな答えなんて、か、カスリもしてねーし!」


志保(これは十中八九当たりですよ、プロデューサーさん。もう少し問い詰めてみましょう)ヒソヒソ


グリP(よし、任せろ)ヒソヒソ


昴「な、何二人で話してるんだよ……。だからこの話はもう」


グリP「あれだろ?多分琴葉に『少年漫画はあまり参考にならなそうだから』とか『今は他の子から借りてるものがあるから』とか言って断られたんだろ?いやこの場合、『話が長い漫画は勉強に支障が出る』って感じか?『ダイヤのA』って40巻近く出てる漫画だし、これならお前が琴葉の受験のことを言ってたのにも説明がつくな。どうなんだ、昴?」


昴「や、やめてくれよ…………。オレ正直に言うから……」


グリP「確かに、剛速球も滅茶苦茶な変化球も持たないサウスポーの主人公が頑張る『ダイヤのA』は、同じサウスポーの昴にとって共感しやすい漫画だよな。自分の持ってるちょっとした才能を磨き上げて地区の強豪と戦う主人公に琴葉も共感してくれると思ったから薦めたんだろ?それなのに断られたら、そりゃ傷つくよなあ。だからといって琴葉の姿勢にちょっと意地悪くなるのはいただけないな。気持ちは分からなくもないがそういう時は……」




昴「も、もうやめてよぉ……オレが、悪かった、からぁ……」グスッ


グリP(やべっ、言い過ぎた)


志保(ま、まずいですよプロデューサーさん!何かフォローしないと!)ヒソヒソ


グリP(わ、分かった。やってみる!)ヒソヒソ

昴「オレ琴葉さんにも謝るよ……。だからさ、もぅ……」


グリP「あー!まあなんだ!ちょっとアプローチが上手くいかなかったからって相手の事を悪く言うのは良くないが、あのくらいなら悪口にもなんないし、むしろ可愛いくらいだったから安心しろ、昴!」


昴「え?今プロデューサー、何て言った?可愛いとか……」


グリP「だからな?そういうネガティブな言動って普通ならよく思われないけど、普段快活な昴がそういうこと言うのは、ギャップもあって可愛いというか、庇護欲をそそられるというか、とにかく構ってやりたくなるような可愛さが出てくるからあのくらいなら遠慮しないでどんどん言ってくれ!」


昴「ほ、ほんと?可愛いって、お世辞とかじゃなくてほんとに言ってるの?」


グリP「あ、当たり前だろ!さっきも言ったけど、普段は元気な女の子がちょっと弱々しい一面を見せてるのって、男の目には結構可愛く映るんだぞ」


昴「そ、そうなんだ……。じゃあオレ、これからもっともっとプロデューサーに色んなこと相談してもいいんだね!?迷惑じゃないよな!?」


グリP「ああ。遠慮しないで何度も愚痴を言ってくれて構わないぞ!あ、流石に仕事の真っ最中とかはやめてくれよな?」


昴「うん!ありがとプロデューサー!オレ、レッスン行ってくるから戻ったらまた色々話そうね!」


グリP「おう!また後でな!」

グリP「ふぅ、危なかった。煙にまいたような形になっちゃったけど、なんとか立ち直ってくれて助かった」


志保「…………」


グリP「あ。昴のやつ漫画を置き去りにしてったな。志保。悪いけどその二冊、昴に届けるか荷物と同じ場所に置いてあげるかして……どうした?」


志保「ああいう風にご機嫌取りで『可愛い』って連呼しない方がいいと思いますよ?今回はともかく、これから他の子には気軽に言ったりしないでくださいね」


グリP「……そ、そうだよな。男子と仲の良さそうな昴だから良かった、のかな?そういう子って逆に言われ慣れてなさそうだしな」


志保「さあ?じゃあ私もレッスン行ってきますね。漫画は昴さんに返しておきますから」


グリP「…………」

志保「何ですか?何か言い足りないことでも?」


グリP「いや、志保が仕事のこと以外で自分から他人に話しかけるのってあまり見たことなかったからさ。変わったなあ、って思って。あ!もしかして『ダイヤのA』に興味あったとか?それなら後で俺か昴に……」


志保「違います!……そういうのじゃないですから」


グリP「えっ!?あ、ああ、漫画の方に興味があったわけではっていう……」


志保「そうですけど……もういいです。レッスン行ってきます」


グリP「あ、ああ。また後でな」






グリP(うーん……。前よりはとっつきやすくなったけど、やっぱ志保って難しい性格してるなあ。いい感じに変わってはきてるみたいだし、もっと打ち解けたいもんだがなぁ……)

ここで一旦切ります。書き溜めながらなので途中からペースが落ちると思いますが、完結に近い所まではできてるので途中でエタることはない……と思います。では、また後日に

≫11
グリマスのssなのでグリP表記しましたが、深くは考えてないです。でも個人的にはどちらでもいいと思います

1です。投下始めます

≫37
画像ありがとうございます!いざ貼ってもらう側になると思いの外嬉しいものですね

~翌日~



真「琴葉、これ例の漫画!母さんとも相談して、演技とか表情の参考になりそうなやつから選んどいたから!ボクにはちょっと難しかったけど、琴葉なら大丈夫かなって!」


琴葉「ありがとう、真ちゃん!……わあ、これ凄い。カラーページまで載ってるの?」


真「そりゃそうだよ!なんたって「完全版」だし!だからってわけじゃないけど、出来れば傷がつかないように気を付けてくれると嬉しいかな」


琴葉「うん、気を付ける。読んだらその日の内に返してくから、続きはその時に渡してね」


真「へへっ、了解!」


小鳥「ああもう琴葉ちゃんったら。その漫画なら私も持ってるのに……!」


グリP「『咲‐Saki‐』に続いて被りが出るなんて、小鳥さんの漫画レパートリーって結構豊富なんですね」


小鳥「いえいえ、単にどっちもキャラクターの関係性が萌え……なんでもないです」


グリP「なんでもない?」


小鳥「なんでもないものはなんでもないんです。お言葉ですが、あまり他人に聞かずに自分で読んで確かめた方がプロデューサーさんにとってもいいと思いますよ?」


グリP「えぇ?気になるなあ~。まあそれはともかく、小鳥さん。その漫画、雪歩にも貸してやったらどうですか?ほら、雪歩って真と仲が良いですし、あまりイベントでも一緒になった事のない琴葉との接点にもなりますし」


小鳥「ダメですね。あの漫画は雪歩ちゃんにはショックが大きすぎると思います」

グリP「それどういう意味ですか?そりゃ少女漫画なら年齢層に関係なく過激なシーンもあるでしょうけど、創作物なら雪歩だってそこそこ平気だと思いますよ?」


小鳥「いえ、そういう方向じゃないんですよ。ただ、主人公の美少年が少女漫画特有の迫真の表情で女嫌いを声高に主張するシーンがあって、しかもそのキャラに同情したくなるようなエピソードを幾つも挟んだ後でそういうシーンが来るので、雪歩ちゃんには少しキツイかなーと」


グリP「少女漫画特有の迫真の表情ってあれですか。こう、表情に影のついたキャラクターが白目になって怖いこと言ってて、背景は雷でも落ちたみたいに衝撃的な感じでっていう」


小鳥「それで合ってます。あの漫画は特にキャラクターの迫力が凄いので下手をしたら雪歩ちゃんにトラウマを与えてしまうかもしれませんよ」


グリP「その漫画凄すぎません?ええと……何て読むんだ?あれ?」


小鳥「『日出処天子(ひいずるところのてんし)』です。ある評論家が『漫画史に残る名作』とまで言ったくらいですから、プロデューサーさんの言う通り凄い漫画ですよ」


グリP「へえ、それは凄い。道理で小鳥さんがそこまで……」


小鳥「でも真ちゃんも早すぎるわ。あれは琴葉ちゃんの総仕上げに貸そうと思ってたのに……」ブツブツ


グリP「『早すぎ』って、何がです?」


小鳥「ピヨッ!?聞こえてましたか……」


グリP「よく分かりませんけど、同年代の真から勧められた漫画が琴葉に『早すぎ』ってことはないでしょう。難しい漫画だとしても、むしろいい勉強になるんじゃないですかね?」


小鳥「……そうですね。役柄に入り込める琴葉ちゃんならきっと…………ウフフフフ」


グリP(…………何なんだこのオーラは。小鳥さんちょっと怖いかも……)


~一週間後~




琴葉「真ちゃん、これ……最終巻……」


真「あっ、うん……。琴葉、どうかしたの?どこか具合が―」


琴葉「そうじゃないの。王子が、王子が……」


真「(貸してた漫画の話かな?)あ、うん。あの最終回は悲しい感じだったよね。ボクも初めはよく分からなかったけど後から読み返して……」


琴葉「『感じ』なんてものじゃないわ!自分を生んだ母にずっと避けられて、最愛の親友とも袂を分かった……分かたざるを得なかった王子が最後に求めたものがあんな、あんな…………グスッ。ごめんね真ちゃん。漫画のことなのに、私、夢中になっちゃって……」


真「そ、そんなことないって!むしろ、ボクが薦めた漫画にそんなに夢中になってくれたなんてすっごく嬉しいよ!ほら琴葉。ボクのでよければこれで涙を拭いて、ね?琴葉には笑顔の方がずっと似合うからさ」


琴葉「ありがとう、真ちゃん……グスッ。ありがとう……」


真「何言ってるのさ。こんなの当たり前だよ。ほら、肩貸すから、スタジオまで一緒に行こ?」


琴葉「ううん、大丈夫……。真ちゃん、本当にごめんね?」


真「だからもういいって。ほら、顔も上げて……」


小鳥(「真ちゃんって、やっぱりかっこよくて頼りになるね」「『かっこいい』ってどういうこと!?はぁ。女の子らしくなれるのはまだまだかなぁ……」「大丈夫。真ちゃんの女の子らしいところは私がよく知ってるから。ほら、例えばこんな所とか……」「ひゃっ!?ちょ、琴葉、事務所でそんなこと……」)


グリP「小鳥さん、何見てるんですか?」


小鳥「ピヨーッ!?なんでもないですよなんでも。けっしてやましいことはしてませんから。ましてや、妄想なんてもってのほかです」


グリP「(怪しい……)それより小鳥さん。突然ですけど、エミリーに貸せるような良い映画やドラマ持ってませんか?琴葉に影響されたのか知りませんけど、日本の歴史や文化について描かれた作品が観たくなったらしくて」


小鳥「エミリーちゃんが?映像じゃなきゃダメなんでしょうか?」


グリP「いつだったか、日本の映像作品には詳しくないみたいなこと言ってたんですよねー。せめて、雰囲気だけでも伝わるようなヤツがいいんですが」


小鳥「そうですか……。そうだ、去年映画になっていた『大奥』なんてどうです?あれなら雰囲気も結構出てますし、原作も女性向けなので楽しめると思いますよ?」


グリP「おっ、流石小鳥さん。頼りになりますね」


小鳥「いえいえ、単に好きな作家がたまたま原作をしていたというだけで……。こんなことならいつでも大丈夫ですよ」

グリP「そう言ってくれると助かります。……そういえば、俺たちがこういうやりとりしている切っ掛けを作ってくれたのも小鳥さんなんですよね」


小鳥「!……どういう意味ですか?」


グリP「いや、小鳥さんが琴葉に本を貸してあげて、それが切っ掛けで琴葉はどんどん本や漫画を読むようになって、またそれが切っ掛けになって、琴葉が他の子と今まで以上に絆を深めたり、エミリーみたいに触発される子が出てきたり……という流れの切っ掛けにあるのが小鳥さんだったんだなぁって思いまして」


小鳥「そ、そんな大したことはしてませんよ。何と言うか、過大評価なんじゃ?」


グリP「そうですね。確かに、小鳥さんにとっては大したことじゃないかもしれません。でも、本や漫画を通じてお互いのフィーリングを確認し合えるようになるのは本当に良い事だと思うんですよ。俺は皆がそういうことを通じて仲間の良い所を見つけたり、認められるようになって欲しいですし、そんな流れが出来たらアイツらのパフォーマンスも今よりもっともっと良くなりますよ。だから、小鳥さんがそういう切っ掛けを作ってくれたことや、今みたいにオススメの漫画を教えてくれたことに俺は感謝してるんです」


小鳥「プロデューサーさん…………」


真琴葉「「プロデューサー…………」」


グリP「……なんて。もしかして、熱入れすぎて引いちゃいましたかね?」


真「そんなことないです、プロデューサー!!ボク達、プロデューサーの思いに胸を打たれているんです!!」


グリP「ま、真!?お前聞いてたのか?」


真「はい!プロデューサー、ボクは今、猛烈に感動しています!!」


琴葉「……小鳥さん、今まで以上に頼りにされそうですけど、大丈夫ですよね?」


小鳥「だ、大丈夫よ琴葉ちゃん。皆が楽しみながら色々学んでくれるならそれが一番だから……はぁ」


小鳥(何てことなの……。琴葉ちゃんが暇そうにしてた時に本を貸して趣味を布教、もとい共有しようとしただけだったのに、こんなことになるなんて……でも)


真「プロデューサー、ボク頑張りますよ!!」ギュウウウ


グリP「そうか分かっただから一旦手を離してくれさっきからすごく痛いんだお願い!」


小鳥(それが事務所のためになるなら、こんなに嬉しいことはありません!プロデューサーさん……音無小鳥、微力ながらお手伝いさせていただきます!)


<モウヤメテマコトチャン!プロデューサーノテハモウトックニゲンカイヨ!

<ヤメロ、ハ、ナ、セ!

<プロデュウサアアアア!

<ウワアアア!



~~~



あずさ「あれは……なんだか、盛り上がっていて入りにくいわね~」


麗花「青春ですね~。真ちゃん、羨ましいな~」


紗代子「そ、そんなこと言ってないで早く助けましょうよ!プロデューサーの手がもうあんな色に!!」


あずさ麗花「「あらあら~~」」


~翌日~




琴葉「………………」


エミリー「琴葉さん、よろしいですか?」


琴葉「エミリーちゃん?何か用?」


エミリー「はい。音無さんに映画を薦めていただいて、早速今日借りてきたのですが、今度の週末に一緒に観ませんか?勿論、琴葉さんにお暇があればですけど……」


琴葉「えーっと、どうして私なの?」


エミリー「出演者の方々がいずれも多くの作品に出ているような演技派で、琴葉さんの参考にもなるでしょうから誘ってみて欲しいと音無さんが……やはり難しいですか?」


琴葉「ううん、そんなことないよ。それなら、私今日は夕方で終わりだし事務所に残って一緒に見ない?確か、エミリーちゃんも今日はそんなに遅くならないでしょ?」


エミリー「わあ!そう言っていただけるとありがたいです。それでは、今日はよろしくお願い致します」


琴葉「うん。よろしくね」

琴葉(エミリーちゃんと映画……楽しめればいいなあ……)


美希「琴葉ー!お仕事で疲れたからまた膝枕して欲しいの!ね?いいでしょ?」


琴葉「もう、美希ちゃんったら。まだお昼なのにそんなに疲れちゃったの?」


美希「そうだよ。琴葉の膝枕で寝ないと疲れがとれないくらい大変だったの。……それっ」ポフッ


琴葉「ひゃっ!?……仕方ないなあ、もう」ナデナデ


美希「ふふっ。相変わらず温かくてキモチいいの~」

エレナ「琴葉、最近美希に構いすぎだヨ……歩もそう思わなイ?」


歩「や、あたしは別に……。何?美希にヤキモチ妬いてんの?」


エレナ「そんなことな……ううん、そうなのかナ……」





小鳥(ああ!エレナちゃんの貴重な嫉妬シーンが見られるだなんて……ごめんねエレナちゃん。歩ちゃんの熱いフォローに期待してあなたを慰められない私は事務員失格だわ……!!)


環「ねーおやぶん。小鳥がやけにニヤニヤしてるけどなんかあったのー?」


グリP「よく分かんないけど邪魔しちゃだめだぞー。小鳥さんも疲れてるんだからなー」


環「はーい」


小鳥(ピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨ…)

~同日 事務所内の一室~





エミリー「……というわけで、これが音無さんに薦めてもらった映画です!」


琴葉「あ、これCMで見たことあるわ。あの人気アイドルが主演の……」


エミリー「はい。性別こそ違いますが、彼のようなアイドルが出演しているという意味でも参考になるかもしれませんね」


琴葉「へ~。……さ、早く観ましょ?何かあって夜遅くになるわけにもいかないしね」


エミリー「そうですね。それでは……」

エミリー「た、『種付け』?琴葉さん、私の年齢でこれを観て大丈夫なんでしょうか……?」


琴葉「う、うーん……。でも実際にこうなったら、ってことを考えたらそこまで違和感がないと私は思うわ。確かにエミリーちゃんにはちょっと早いとは思うけど……」


エミリー「う……精進します……」

エミリー「……『武士は食わねど高楊枝』と言いますが、実際に江戸時代のお侍さんって貧しい方が多かったのでしょうか?」


琴葉(設定が奇抜なだけの作品じゃなさそうでよかった……)

エミリー「実際の大奥も、こんなふうに仲の悪い方々がいたのでしょうか?」


琴葉「うん……。集団で同じところに閉じ込められると、どうしてもそうなっちゃうんじゃないかな。自由に外出も出来ないし……」

エミリー「!?い、今のって、その……」


琴葉「そう、だね。嫌がらせってだけでああいうことをする人って、創作の中じゃよく見るけど……」


エミリー「あの……琴葉さんも、女性ばかりの空間で暮らしたりしたら……」


琴葉「え?」


エミリー「な、なんでもないです!」


琴葉「………………そう」

エミリー(この突然の昇進。何か思惑がありそうです!)


琴葉(エミリーちゃん、すっかり映画に夢中になってる。私も負けずにじっくり観ないと……)

エミリー「Beautiful……はっ!」


琴葉「うん。あの着物、派手じゃないのに凛とした感じが出てて凄く綺麗だね。女物じゃないけど、私もいつかああいう衣装着てみたいなあ」


エミリー「はい!私も同感です!って…………?!?!」


琴葉(わ、ここでそうくるんだ。……もっとしっかり観ておきたかったな)


エミリー「お、男の方同士、男同士…………ふにゅ」


琴葉(エミリーちゃん、大丈夫なのかな……?)

エミリー「…………」ゴクリ


琴葉(やっぱりこの女優さんの演技は凄みがあるわね。いつか私もこのくらい……)

エミリー「……あの、「破瓜」って何ですか?今まで聞いたことがないのですが、この時代特有の言葉なのでしょうか?」


琴葉「!?わ、私はまだだけど、凄い痛みを伴う経験らしい、よ?エ、エミリーちゃんもいつかは経験する……かもしれないわね」


エミリー「なるほど。日本語とは誠に奥が深いものですね。私も一生懸命勉強してきましたが……」


琴葉「そ、それより映画の方をちゃんと観よ!?もうそろそろクライマックスも近いみたいだし!」


エミリー「はいっ!そうですね!」

琴葉(…………凄い。演技とはいっても、こんなに激しく、貪るみたいに……)


エミリー「………………」モジモジ


琴葉「……エミリーちゃん、飛ばす?」


エミリー「いっ、いえ!これぞ佳境における大事な場面ですから。も、もう終わりますし……」


琴葉「そう?ならいいんだけれど……あ、終わったね……」

琴葉「……うん、面白かった。誘ってくれてありがとね、エミリーちゃん」


エミリー「ありがとうございます。演技の参考になりましたか?」


琴葉「うん。どの人も台詞に力があったし、演技も「外してなかった」よね。台本をちゃんと読み込んでスタッフの意図も理解してるのが伝わってきたけど、やっぱり演技慣れしてるのが大きいのかな。他の作品で何度も見た俳優さん達だし……」


エミリー「その通りです!俳優の方々だけでなく、衣装や舞台も凝っていて引き込まれてしまいました。どの場面も演じる方々の熱が……ぁ」


琴葉「……どうしたの?」


エミリー「あ、いえ、あの……アイドルでも、こうした本格的な作劇ではああいった演技を要求されることも……その…………」


琴葉(エミリーちゃん、もしかして……)


エミリー「ですからその、何と言いますか」琴葉「エミリーちゃん」




エミリー「……はい?」

琴葉「ねえエミリーちゃん。……あのシーン、ドキドキしたでしょ?」


エミリー「へ!?あ、『あの場面』とはどういう」


琴葉「誤魔化さなくてもいいよ。私も最後のキスシーン観たとき、本当はドキドキしてたもの。自分の顔が赤くなって、凄く熱いのに汗も出ないでもっと熱くなっていくあの感覚、エミリーちゃんも分かるでしょ?」スッ


エミリー「あっ…………琴葉さん、何を……?」


琴葉「ほら、私の「ここ」、凄く熱いでしょ?私もエミリーちゃんと同じ。あのシーンを思い出して、今凄くドキドキしてるの。……エミリーちゃんはどう、かな?」


エミリー「あの……私、恥ずかしい、じゃなくて…………ドキドキして、います。凄く、凄く、胸が熱いです」


琴葉「エミリーちゃん……このドキドキ、分け合ってみない?私、エミリーちゃんのドキドキを感じてみたいの……!おかしい、かな?」


エミリー「琴葉さん……私も、琴葉さんのドキドキを…………ぁ。い、いけません琴葉さん。私たち女の子同士なのに、そのような……」


琴葉「そんなこと気にしないで。こういう感情に性別なんて関係ないって、エミリーちゃんもあの映画で分かったでしょ?」


エミリー「で、ですが…………」


琴葉「イヤだったらよけていいから、ね……?」


エミリー「…………」


エミリー(琴葉さん、顔が段々近くに、来て……なんでしょうこの感覚。とにかく、熱……)

琴葉「んっ……んん……はぁ」


エミリー「んむ……ん…………はぁ、ん……」

琴葉「……エミリー。ドキドキ、伝わった?」


エミリー「琴葉、さん……。私……初めてなのに、女の子同士なのに、琴葉さんと……して、凄く……」


琴葉「うん。私も初めてだったけど、これってこんなに…………んっ?」


エミリー「……んっ。えへへ。二回目でも、初めてと同じくらい気持ち良い、です」


琴葉「……ふぅ。エミリー……一回、外、出よっか」


エミリー「は、はい……」

小鳥「あ。琴葉ちゃん達、観終わったのね。どうだった?」


琴葉「参考になった演技も多かったですし、映画自体も面白かったです。ね、エミリー?」


エミリー「はい!音無さん、お薦めしてくださってありがとうございました!」


小鳥「いや~そんな……。それじゃ二人共。もう遅くなるし、気を付けて帰るのよ」


琴葉エミリー「「はい!お疲れ様でした」」





小鳥「……あら?そういえば琴葉ちゃんってエミリーちゃんのこと呼び捨てだったかしら?……記憶違いかしらね、それとも……ウフフフフ。捗るわぁ~」







琴葉「じゃあね、エミリー!」


エミリー「はい……また、明日……」


ここで切ります。時間が取れ次第投下しますが、次回か次々回の投下で最後までいくと思います
百合描写苦手な方はすいませんでした。書きたいので書きましたが、改めて見るとなんだか物足りない気もして実力不足を感じます

では、また後日に

長台詞とかは適当なところで改行してくれたらありがたい

こんばんは。遅くなりましたが投下初めます。今回で最後までいきたいと思います


>>72
ご指摘ありがとうございます!早速ためしてみますね

~しばらくして~



エレナ「こっとは~!やっとレッスン終わったヨ~!一緒に帰ロ!……ん?まだ琴葉帰ってないノ?」


グリP「おうエレナ。琴葉に用事でもあるのか?」


エレナ「うん、今日琴葉の家に泊まるんダ!最近事務所で本の貸し借りが流行ってるし、ワタシもオススメのマンガを教えてもらいに
行くんだヨ~」


グリP「(漫画だけかよ)はいはい。二人共明日早いし、夜更かししないようにな」


エレナ「う~ん、難しいヨ~。そうダ!プロデューサーも一緒に泊まればいいんだヨ!プロデューサーが注意してくれれば、ワタシも
ちゃんとした時間に眠れるよーな気がするヨ?」


グリP「却下な」


エレナ「エ~。ノリ悪いヨ、プロデューサ~」


グリP(そんなこと言われてもなあ。まあ琴葉に一応言っておけば……っと噂をすれば)

グリP「お疲れ、琴葉。LIVEどうだった?」


琴葉「あっ、プロデューサー。そうですね……LIVEの方は、レッスンで前日まで気になってた課題が結局克服出来なくて……すいませんでした」


グリP「ま、最近まで受験関係で慌ててたのもあるしな。今回は大目に見るけど、明日は一緒にやったメンバーとちゃんと見直しとくんだぞ。
やっとスケジュールが自由に組めるようになったんだし、早く切り替えて次の仕事も……」


エレナ「プロデューサー、長いヨ!反省会は明日に回して、今日はもうワタシと一緒に帰るんだヨ!」


琴葉「ちょっとエレナ。仕事の話なんだからそういうわけには……」


グリP「……いや、エレナの言う通りだな。琴葉、久しぶりのLIVEは疲れただろ?早く家に帰って、スッキリしてまた明日から頑張ってくれ」


琴葉「あ、ありがとうございます、プロデューサー。じゃあエレナ、明日の予定だけ見てくるから先行ってて?」


エレナ「早く早ク!マンガ読む時間が無くなっちゃうヨ~!」

グリP(漫画ばっか読むのも良くはないんだけどなぁ。これをきっかけに活字も読むようになってくれればいいんだけど……って)


グリP「おいおい、誰だよこんなトコに読みかけの『ダイヤのA』置いたの?昴……にしてはカバーも付いて無いし、何か変だが……」


グリP「…………」パラパラ


グリP「は~やれやれ。ったく、稲実戦前のヤマ場まで読んどいて放置なんていい度胸してるなあ。仕方ない。ここで読むのもなんだし、
今日一日預かって家で読み直……と、あれは……志保か?」


志保(あれ?ここに置いてたはずなのに……)


グリP「志保、どうした?何か落としたとか?」


志保「あ、プロデューサーさん。あの、ここに置いてあった漫画知りません?」


グリP「これ?」


志保「あ、それです。ありがとうございま……」


スカッ

グリP「…………」


志保「…………?」


スカッ


志保「………………!」


スカッ


グリP「……………………」

志保「……あの」


スカッ


志保「返……」


スカッ


志保「して………」


スカッ


志保「くださ…………」


スカッ


志保「……………いっ!」


カスッ

志保「はぁ、はぁ……。嫌がらせですか?」


グリP「すまん、ただの冗談だ。はい」


志保「あ……ありがとうございます。……ふぅ」


グリP「ところでさ、志保。お前あの時『興味ない』みたいに言ってたじゃん。どうしたんだ?」


志保「それは……。あの時見たこの漫画の表紙が気になって、少し前から駅前のレンタルショップで借りてるんです」


グリP「ふーん……。気になったってどこが?」


志保「気になったっていうか、21巻でしたっけ?とにかく、その巻の表紙がかっこいいと思っただけで……別にいいじゃないですか」


グリP「まあそうだけどさ。何で昴から借りないんだ?アイツなら喜んで貸してくれるだろうし、わざわざ金払ってレンタルしなくても
いいんじゃないかな?」


志保「それは……。め、迷惑じゃないですか……」


グリP「恥ずかしいとかじゃなくて?それとも、仲間に遠慮してるのか?」


志保「えと、それは…………あの……」

グリP「分かった分かった!『ダイヤのA』なら俺も持ってるし、明日家にある分持ってきてやるよ。どうせ半分ホコリ被ってるやつばっかだし、気が向いた時に返してくれればいいから!」


志保「本当ですか!?……あ、いや、いいですよ別に!そんな構ってもらわなくても、平気ですから」


グリP「いいっていいって。本棚に並べられてるより誰かに読んでもらった方が漫画も報われるよ。18巻からでいいんだな?」


志保「だから私が借りる前提で話さないでください!……プロデューサーさんはお節介が過ぎるんです」


グリP「『お節介』ね……。俺はオススメの漫画を貸そうとしてるだけで、そんなこと考えてなかったんだけどなぁ。なあ志保、
そういう難しいこと考えないで、続きを読みたいか読みたくないかだけで返事してくれよ。18巻からでいいんだな?」


志保「……お願い、します」


グリP「よし、決まり!ならこの巻はさっさと店に返しちゃった方が良いな。俺が返しとくから、志保は遅くなる前にもう帰るんだぞ」


志保「え?そ、それは流石にプロデューサーさんに悪いです!私が自分でちゃんと返しますから……」


グリP「いいよ、どうせ俺が使ってる駅の近くだし。それにお前、普段駅使わないだろ?日が早く落ちる時期なんだし、寄り道しないでちょっとでも早く帰った方が絶対いいって」

志保「……じゃあ私、今日は残ってレッスンの続きをし」


グリP「悪いが、小中学生は11月以降は7時回らないうちに帰ってもらうのがウチの原則だ。あと20分以内に帰り支度しないと家に
連絡するからな」


志保「なっ……!…………じゃあ、帰ってください」


グリP「はぁ!?今から?……あの、俺、これから資料の整理とか事務所でやりたいんだけど……」


志保「仕事は家に持ち帰るか、明日早出してやればいいじゃないですか。とにかく、どうしてもその本を返したいっていうなら
私も同行させてもらいます」


グリP「な……何をそんなにこだわってるんだよ。こんなもん、レンタルショップによくある返却カゴの中にポーンと」


志保「あの店は会員カードを持参しないと返却できませんよ?あと、それ返却期限今日までなので今日のうちに返したいんですが、
どうにかなりません?」


グリP「え~……。仕方ないな、じゃあカードだけ貸し」志保「ません」


グリP「……さっきの仕返しか?」


志保「……とにかく、自分が借りたものは自分で返します。私が遅くなるのが気になるなら、プロデューサーさんが途中まで
ついてきてくれればいいんじゃないですか?」

グリP「…………」


志保「………………」


グリP「……………………」


志保「…………………………」


グリP「…………………………分かったよ。そこまで言うなら、俺も一緒に帰るよ」


志保「本当ですか!?……よしっ」


グリP「何?俺に勝ったのがそんなに嬉しいのか?」


志保「あ、いや、ついです、つい!……ゴホン。それじゃあ、帰り支度してくるのでプロデューサーさんも早くしてくださいね」


グリP「ああ……。さて、とりあえず小鳥さん探して資料だけ取ってくるか」



(ガチャッ)

恵美「……やっほー、プロデューサー」





グリP「恵美!?ドアの前で何……。ああ、そりゃあの空気じゃ、ちょっと入りにくいよな。すまん恵美、いつから待ってたんだ?」


恵美「えーと、志保が『悪いです!』とか言ったトコくらい?……ああ、そんな気にしなくていいよ!2、3分も経ってないしね」


グリP「そうか。……そういえばさ、中学生くらいの女子って、意地の張り合いとかで勝ったりすると喜ぶもんなのかな?」


恵美「ん?何の話?」


グリP「いや志保がさ、最後の方に『よしっ』とか言って嬉しそうにしてたじゃん。聞こえなかった?」


恵美「あ、それか……。何てゆーかさ、志保はプロデューサーに勝てたから嬉しいってわけじゃないと思うよ、うん」


グリP「そうか?じゃ、恵美はなんでだと思う?」


恵美「や、アタシからはそれはちょっと……それよりプロデューサー!志保と途中まで一緒に行くんでしょ?志保待たせないようにさ、
早く小鳥さん探しちゃいなって!」


グリP「む、それもそうだな。ま、本人に聞けばいいか。じゃあな、恵美」


恵美「じゃねー♪」


(バタン)

恵美「……ん―、志保も大変そうだね。一回二人で話とか出来りゃいいんだけどなー……」









志保「プロデューサーさん、早くしてください」


グリP「分かった分かった、今行く……あれ?」





エミリー「…………はぁ」





グリP「エミリーじゃないか。ドアの前で立って……誰か待ってるのか?」


エミリー「仕掛け人さま?……あの、琴葉さん、もうお帰りになりました?」


グリP「ああ。10分くらい前に帰ったよ。今日はエレナが家に泊まるんだって」


エミリー「What!!何ですって!?今から追いつけないでしょうか?」


グリP「あ~、無理じゃないかな?エレナの方が結構急いでたしなぁ」


エミリー「……そうですか。真、人生とはままならないものですね……」

グリP「(えらい落ち込みよう……)それより、エミリーも早く帰れよ。もう7時だぞ」


エミリー「承知しました……ふぅ」


グリP(どうしたんだ?琴葉との間に何かあったのかなぁ?)


志保「プロデューサーさん、まだですか?」


グリP「ああ悪い悪い、今行く!ほらエミリー、駅までなら付いてってやるから元気出して!な?」


エミリー「申し訳ございません……。そういえば、今日の仕掛け人さまはお早いお帰りなんですね」


グリP「まあ、色々あってなっ……と。お待たせ、志保」


志保「遅いですよプロデュー……あれ?エミリーも付いてくるの?」


エミリー「あら?志保さんってこちらの方向でしたっけ?」


グリP「ま、色々話しながら歩こうじゃないか。エミリーに聞きたいこともあるしな。よし志保、エミリー、行くぞ!」


エミリー「は、はい!」


志保「……はい」

グリP「はい、これが昨日話した『ダイヤのA』。最新巻だけ買ってないからまだないけど、そこまで読んだら昴に借りるなりなんなりしてくれ。よし、今日もお仕事、頑張るぞ!志保!」


志保「…………」


グリP「な、なんだよ。昨日のこと根に持ってるのか?でもエミリーに抹茶アイス買ってやった時はお前、そういうの要らないって……」


志保「もうっ、プロデューサーのバカッ!!知りません!!」


グリP「な、何だよいきなり?……じゃあ、これ(『ダイヤのA』)も持って帰るな。……はぁ、結構苦労したのに……重かったんだけどな…………」


志保「そ、それは約束通り借りさせてもらいます。それじゃ……。ううん……!」


グリP「大丈夫か志保?手伝うぞ?」


志保「いえ……結構……ですっ!」ヨイショッ




グリP「あっ……行ってしまった……」

グリP「……あぁ~、何が悪かったんだろう?」


エレナ「プロデューサー、どうしたノッ?元気ないヨ!」


グリP「エレナか。いや、大したことないといえばないんだが……」


エレナ「モー。しっかりしようよ、プロデューサー!今日は天気もいいし、朝から盛り上がって……痛タッ!?」


グリP「!?おいエレナ、どうした?足か?腰か?どこがどのくらい痛いん……」


エレナ「へ、平気だヨ。……昨日、琴葉の家ではしゃぎ過ぎちゃったのかナ?」


グリP「そ、そうか、それなら……まあよくはないが、気を付けろよ。寒い時期は体も固くなりやすいし、ダンスの前は柔軟を入念に……」


エレナ「もー、耳にタコだヨ!行ってくるね、プロデューサー!」


グリP「ああ!怪我に気を付けろよー!……つっても心配だなぁ。念のため、琴葉に事情を聞いてみるか」

グリP「あっ、琴葉。そこにいたのか」


琴葉「プロデューサー?どうかしたんですか?」


美希「…………すぅ」


グリP「美希のヤツ、今日も……いや、それはいいか。琴葉、昨日エレナに何かおかしなところなかったか?ちょっと下半身のあたりを
痛めてるみたいだったんだが……」


琴葉「え!?…………えと……テンションは、いつもより高かった、です」


グリP「なんだ今の間は。……まさか」


琴葉「な、何でしょう……?」


グリP「まさかお前、昨日釘さしといたのに夜更ししたんじゃないだろうな?」


琴葉「ほっ……。いえ、夜更しではないです」


グリP「『では』ってどういう意味だ?知ってることがあるなら素直に……」


美希「むぅ~。ハニー、琴葉、ちょっとウルサイの!ミキ、寝てる時は静かにしてほしいって思うな」

琴葉「あっ、ゴメンね美希ちゃん?」


グリP「わ、悪かったよ。でもな、美希?俺は仕事上、お前らの体調も把握しとかなきゃいけないんだしそこらへんは分かってくれよ」


美希「……単にレッスンで疲れてるだけなんじゃないの?ミキだって、いっぱい動いた次の日とかはカラダの色んな所が痛いって思うし、
昨日LIVEだった琴葉も、なんだかいつもより足がカチカチな気がするの。ハニーの言う事も分かるけど、一緒にお泊まりした琴葉が分からないなら仕方ないんじゃないかな?」


グリP「そっか……。琴葉、疑ってゴメンな」


琴葉「あ、いえ、私もやましいことの一つや二つくらいはありますし……」


グリP「何?それはどういう」美希「ハニー!」


グリP「……分かった。美希、お前の言う通りだ。うん」


琴葉「あはは……ありがとね、美希ちゃん」ナデナデ


美希「ん……。これくらい、お安いご用なの。それじゃ、あと5分……くぅ」

琴葉「ふふ、美希ちゃんってやっぱり凄いな……」


グリP「…………」


琴葉「……プロデューサー?私の顔に何かついてます?」


グリP「……いや、琴葉さ、初めに小鳥さんから漫画借りた時、言ってたよな」


琴葉「え?あの……表情や演技のこと、ですか?」


グリP「ああ。自分のことだから気付いてないのか?お前、あの頃よりずっといい笑顔が出来るようになってるぞ。それこそ他の表情を
撮る必要がないんじゃないかって位にな」


琴葉「そんな……。だとしたらきっと、プロデューサーが……ううん、事務所の皆が私を色々な形で応援してきてくれたから、そういうことも
出来るようになったのではないでしょうか?」

グリP「……そうだな。小鳥さんやこのみさんは琴葉に合う漫画を貸してくれたし」


琴葉「百合子ちゃんは感想だけじゃなくて、本の読み方や内容の考察も教えてくれて、本当に色々なことに気付かせてくれました」


グリP「真も漫画を貸してたんだっけ?」


琴葉「はい。私、以前よりずっと真ちゃんとお話するようになったんですよ?色々な所で何度も助けてくれて、本当に頼りになります」


グリP「エミリーと映画観たんだってな。二人で観た映画は楽しかったか?」


琴葉「はい。あれからエミリーと凄く親密になれましたし……」


グリP「エレナは……いつもうるさいけど、明るくて見てるこっちが元気になるよな」


琴葉「そうですね。私も昨日は二人ではしゃいじゃいました」


グリP「おいおい……ちゃんと休めって言っただろ?」


琴葉「そ、そうでした……すいません」


グリP「あはは、そのことはもういいよ。……なんていうかさ、月並みな言い方だけど、琴葉は成長したよ。女の子としても、
アイドルとしてもここ何ヶ月かで随分立派になった……って思う」


琴葉「……ありがとうございます、プロデューサー」


グリP「お礼言いたいのはこっちさ。琴葉、ウチに来てくれてありがとな!」

琴葉「……あの、プロデューサー?」


グリP「何だ?」


琴葉「私、改めてプロデューサーに伝えたいことがあるんですけどよろしいでしょうか?」


グリP「そんなかしこまらなくても、ちゃんと聞くよ。琴葉、伝えたいことってなんだ?」


琴葉「あ。えぇと、事務所で改まってこう言うのもあれなんですけど……」


グリP「琴葉。そういうの気にしないで、落ち着いて喋ってくれればいいからな。俺は、どんな話でも最後までちゃんと聞くつもりだから」


琴葉「は、はい。……プロデューサー。私、私……!」


グリP「………………」


琴葉「私、プロデュー」美希「あふぅ……。5分経ったの……」





琴葉「!!」ビクッ


グリP「!!!」ガタタッ

美希「ん?二人共どうしたの?ミキ何かヘンなことしたかな?」





グリP琴葉「……………………(互いに顔を見合わせる)」





美希「ほ、本当にどうしたの?何か喋って欲しいの……」


グリP「……ふっ」


琴葉「……くっ」


美希「……?」

グリP「ふ、は、あはははは!ははははは!」


琴葉「くふっ、ふふふふふ……!」





美希「……むー。そういう態度は良くないって思うな。もしかして、ミキが寝てる間に二人で変なコトしようとしてなかった?」


グリP「あはははは……!いやゴメンな美希、忘れてた忘れてた!」


琴葉「ふふ……そうですね。さっきだって、私を助けてくれたもんね。ね、美希ちゃん?」


美希「ん~……?よく分かんないけど、ミキはハニーも琴葉も大好きだよ?二人が困ってたら、いつだって助けてあげるの!
だってミキたち……」


琴葉「仲間だもんね!」


美希「そうなの!」


グリP「……さて、いい加減仕事始めるか!お前たちも準備出来てるな?」


琴葉「はい!」


美希「はいなの!」


グリP「よ~し、今日も気合入れていくぞ!、エイ、エイ、オー!」


琴葉美希「「オーー(なの)!!」」

これが、少し前から俺が見てきた琴葉の成長過程の一部始終だ
理想と現実の違いに悩みながら歩んでいた琴葉が自分なりに考えついた歩き方は、確かに一つの成果を与えてくれたように思う


琴葉のアイディアの良かった点は、仲間の力を借りるのを前提としたことだ
人生には、一人だけの視点からでは見落としてしまうことがあまりにも多い。何かを目指す時に一人だけで進むのは危険なことだと俺は思う
無論仲間に頼りっぱなしなのもいけないが、そうした難しい所を自分で乗り越えてくれたのが、琴葉には何よりの成果なのではないだろうか


俺だって負けてられない!彼女達を導く存在として、少しでも高く、一歩でも遠くへ先に進み、彼女達を引っ張ってやらなければならない
……何故ならそれが、プロデューサーの役目だからだ





『琴葉「小鳥さんから本を借りたんです」』   おわり


恵美「あれ?志保が漫画読んでるなんて珍しいね。どったの?」


志保「プロデューサーさんから借りたんです。結構面白いですよ」


恵美「へ~、そうなんだ……。で、昨日はどこまで行ったのさ?ちゃんと家まで送ってもらえた?」


志保「まさか。駅からちょっと離れた所までで……ってなんで恵美さんがそんなこと知ってるんですか!?」


恵美「まーいいじゃん、いいじゃん。志保は可愛いんだからさ。もっとガンガンアピールしてけばアッチも気付いてくれんじゃないの~?」


志保「はぁ?……そもそも、アイドルがプロデューサーにそういうことを考えるのはおかしいですし……アピールだなんて」


恵美「そう?勿体無いな~。志保ってこんなにいいモン持ってるのにさ!」ガバッ


志保「きゃっ!?い、いきなりどこ触って……(バサッ)。あ……漫画が……」

恵美「う~ん。志保ってこうしてみると本当にスタイルいいよね~。出てるトコ出てるし、お腹周りもスッとして……」


志保「やっ?だ、だからやめてください!そんなオジさんみたいなこと言わないで……んっ」


恵美「やっぱさ、アタシや翼ってよくスタイル褒められるけど、アタシ的には細すぎると思うんだよね。風花はおっきすぎるし、
イヤミとかじゃなくて本気で志保ぐらいのが一番可愛いっていうか理想的っていうか……」


志保「そっ、んなこと……あっ。うぅ……だ、誰か助けてー!」


恵美「あははっ。そうそうそんな感じ!そうやって素直に声出してけば向こうも振り向いてくれるって!頑張れよ~。うりうりうり~」


志保「も……いい加減に……して……」




(ガチャ!)





静香「ちょっと、今の誰!?騒ぐならここじゃなくて外でやりな、さ……い…………………………」





志保恵美「「……………………………………」」





静香「……………………………………」

静香「……ひどいっ!!」




(バタン!!)





志保「え!?ちょ、ちょっと、待って静香!何で逃げるの!?どうして!?」


恵美「ありゃゴカイされたかもね~。どうする志保?いっそアタシ達で付き合っちゃおっか?」


志保「何……バカなこと、言ってるんですか!早く離し……ひゃっ?うぅ……静香~!お願いだから帰ってきてー!どうしたら助けてくれるのか教えてぇ~~……!!」




おまけ おわり

ここまで読んでくれてありがとうございました。以上でこのssは終わりです!



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