男「俺が奢るよ」女「じゃ、じゃあ……」(268)

友1「やっぱ委員長が一番だろ。優等生だし面倒見もいいし」

友2「しかも巨乳だもんな」

友3「俺はスポーツ少女かな?活発で明るいし付き合ってて楽しそうだし」

友1「でもあいつ、ヤリマンって噂だぜ?」

友3「嘘っ!マジかよ!?」

友2「俺は女ちゃんかな。どっちかつーと目立たない方だけど、おっとりしていて優しそうだし」

友1「ちょっと背が低くって子供っぽいけど、顔も結構可愛いもんな」

友3「お前、巨乳派じゃなかったのか?」

友1「可愛ければ誰でもウェルカムだ」

友2「だよなーw」

友3「そういえば、男は誰がいいと思う?」

男「え?」

友3「うちのクラスの女子」

男「いきなりそんなこと言われても……」

友1「おいおい、皆言っただろ?お前も言えよな」

男「って言われてもいないとしか…」

友3「そんなことないだろ?お前だって気になる女子の一人くらいはいる筈だろ?」

男「いや…そういうのってよくわからないから…」

友3「つまんねー奴」

男「ごめん……」

友1「お前って本当にノリが悪いな」

男「…………」





放課後

男(放課後か、今日も友等と一緒に帰ろう)

男「おーい、よかったら一緒に帰r…」

友1「なあ、男ってやっぱりつまんねえよな」

友3「見た目だってダサいし、暗いもんな」

友2「オマケにノリも悪いしな」

友1「本当、何で俺らあいつなんかと一緒にいるんだろうな?」

友2「そんなこと言うなよ、あいつ俺ら以外に友達がいないんだから」

友3「でも正直、あいつと話してると息が詰まりそうになるわ」

友1「わかるわ~、俺もあいつと二人で話すのって少し苦手だし」

友3「そういえば、休みの日とかに一緒に遊んだこともないもんな」

友1「いつもあいつの方から拒否るから仕方ねーじゃん。多分まともな私服を持ってないんじゃねーの?」

友3「いかにも普段着はジャージかユニクロばかりって感じだもんな」

友1「彼女いない歴=年齢って雰囲気も醸し出してるしな」

友3「あはははw確かにwww」

友2「おいおい、もうそんくらいにしておけよ。まあ俺もちょっとそう思ってたけどさ」

男「…………」

男(やっぱり一人で帰ろう……)

   とぼ… とぼ…

男(俺だって昔はもっと明るくて、人とも上手く付き合えたのに…)

男(まあ昔って言っても、小学生の時だけどさ……)

男(あの時は女子とだってうまく話せたのに……どうしてこうなったんだろうなあ……)

男(今じゃ女子は勿論だけど、男子とすらも上手く会話できないし……)

男(ホント、いつからこうなっちゃったんだろうなあ……はぁ……)

   男宅

男(積んでたクシャでも作るか)

  パチ パチ

男(あ、1800番の紙やすりが切れてる…)

男(まあいっか…)

  パチ パチ

   がらっ!

妹「おい、馬鹿兄!」

男「なんだよ?ノックぐらいしてくれよ」

妹「またシコシコとプラモ作ってたのかよ?お前、本当に根暗なんだな」

男「うっせーよ、何しにきた」

妹「出てけ」

男「は?」

妹「今すぐ家から出ていけ」

男「なんでまた?ってか今プラモ作ってんだけど」

妹「今日友達が泊まりに来るんだよ」

男「あ、そう。勝手に呼べば?」

妹「お前みたいなキモい奴と兄妹だなんて知られたくないんだよ!」

男「知るかよ!ここはお前だけの家じゃないんだぞ!」

妹「彼女も出来たことのない童貞のクセして何言ってるの?」

男「うっ…」

妹「いい歳超えてこんなキモい趣味やってるから、彼女の一人も出来ないんだよ。つーかプラモとか小学生がやることだろ」

男「何言ってるんだよ、これ対象年齢15歳以上なんだぞ?」

妹「知るかよ、大体このフィギュアとポスターとプラモだらけの部屋何ー?チョーキモいんですけどー」

男「うっせーよ!人の趣味をとやかく言うなよ!」

妹「いいからさっさと出てけ童貞!イカ臭いんだよ!」

男「だからって何も追い出さなくてもいいだろ!」

   プルルルル プルルルル

妹「あ、ちょっと待って」

男「おい、まだ話は…」

妹「いいから黙って!」

男「…………」

妹「あ、アイー?大丈夫だよー。今日親居ないから」

妹「えー?兄妹ー?何言ってるのー?私一人っ子だよー?」

妹「え?彼氏連れて行きたい?いいよいいよー。私にも紹介してー。じゃあまた後でねー」プチ

妹「あんたまだいたの?早く出て行きなさいよ」

男(仕方ない……今夜はネカフェ辺りで泊まろう……)

男(畜生…俺だって彼女さえいれば……こんな惨めな生活しなくても済むのに……)

男(両親共に容姿はいい筈なのに、なんで俺は妹のような見た目にはならなかったんだ……)

男(ってか見た目以前に性格が根暗だし……勉強も運動もダメダメだし、なんの取り柄もないし……)

男(こんなんじゃ彼女なんて出来る訳……)

男(ってかよく考えたら、女の子と手を繋いだことすらない……)

男(女の子の手ってどんな感じなんだろう……やっぱり小さくってすべすべで暖かくて柔らかいのかな?)

男「……」ジー…

妹「なんだよ?早く出て行けよな」

男「なあ妹。手、触ってもいいか…?」

妹「は?何言ってるの?キモいからさっさと死ねば?」

男「…………」

数日後

妹「いい?私が出てから最低15分は空けてから家を出なさいよ?兄妹だと思われたくないから」

男「そんなこと言うならもっと早起きしてくれよ。お前のせいでいつも遅刻寸前なんだぞ?」

妹「童貞の癖に何言ってんの?きも……」

男「童貞は関係ないだろ!」

妹「とにかく!私が出てから15分以内は家を出ない事!わかった?」

男「はいはい…」

妹「じゃあ行ってくるから」ガラッ

男「いってらっしゃい」

男「…………」

男「はぁ…」

…………

   下駄箱

男(妹のせいでまた遅刻寸前だ……)

男(早く教室に向かわないと……)ガラッ

    ピラッ…

男(ん?便箋……?)

男(これって…まさか……)

ちょっと飯食ってきます

お待たせしました
それでは再開します

    キーンコーン

『放課後大切な話があります。体育館裏に来てください』

男(可愛らしい字……きっと女子が書いたんだろうな……)

男(でも名前が書いていない)

男(果たし状……じゃないよな?)

男(喝上げとかなら態々手紙なんて面倒な事をしなくても、口頭で人気の無いところに呼び出せばいいだけだろうし)

男(となるとやはりラブレターか?)

男(もしかして、誰かの下駄箱と間違えたのかな?)

男(にしても今時プラトニックだなあ……とにかく後で返してこよう)

放課後

   体育館裏

女「あ…男くん……」

男(手紙の主は同じクラスの女さんだったのか)

男「これ、俺の下駄箱に入ってたよ。女さんが書いたんだよね?」

女「来てくれたんだね…嬉しい……」

男「嬉しいって…間違えたんじゃないの?」

女「間違えたってなんのこと?」

男「いや…じゃあ呼び出されたのは俺なの?」

女「そうだよ」

男「じゃあ大事な話があるのっても俺?」

女「うん…」

男(落ち着けよ俺……まだあれがラブレターだと決まった訳じゃない……)

女「あ、あのね!」

男(多分友等のうちの誰かが好きで、どんなことが好きか聞きに来たとかそんなんだ)

女「好きなの…」

男(ほらやっぱり)

女「ずっと前から好きだったの」

男「誰が?」

女「お、男くんのことがずっと前から好きなの!」

男「は?」

女「こんなあたしでよかったら……付き合ってください!」

男「え、え?ちょっと待ってよ?」

女「…………」

男「俺のことが好きなの?」

女「うん…」コクリ

男「いやいや、だって俺顔も全然良くないしさ。性格だって成績だって悪いし、それに何の取り柄もないよ?」

女「そんなことないよ…」

男「ってか殆ど話したこともないよね?」

女「そうだよね…やっぱりそんな相手とじゃ付き合いたくないよね……」

男「そういう事じゃなくてさ!だって俺、全然モテないし…」

女「それでもいいの…男くんじゃないと嫌なの……」

男「あ!そういうことね!これって罰ゲームか何かなんだろ?」

女「違う…」

男「じゃああれか?そこら辺に誰か隠れていて、ドッキリ成功って写真でも撮るの?」

女「違う」

男「いやぁ、女さんも人が悪いなあ!俺、まんまと引っかかっちゃったよ!」

女「違うもん!」

男「…?」

女「あたし……そんな酷いことしないもん…」うるうる

男「じゃあやっぱり…」

女「男くんのことが…大好きなの……」

男「えっとその…ごめん……」

女「やっぱり…あたしなんかじゃ嫌だよね……ぐすっ…」ぽろぽろ

女「うっ、うっ…ひっく……うぅ、えぐっ……うぇえ……うえええーん!」

男「いやいや!そういうことじゃないの!俺が謝ったのは罰ゲームだなんて言った事に対してで…!」

女「え…?」

男「別に女さんと付き合うのが嫌とか、そういうのじゃなくて……」

女「じゃ、じゃあ…あたしと付き合ってくれるの…?」

男「う、うん…」

女「ホント…?」

男「本当だよ」

女「男くぅん……」ぎゅっ

男「え…?ちょっと女さん?」

女「好き…大好きぃ…」ぽろぽろ

男「あの…もう泣かないでよ…?」

女「でも…でもぉ…嬉しくって……うう…ぐっす……」

男「えっと…その……こういう時、どうすれば……」

女「ごめんね…ごめんねぇ……」ぽろぽろ

男(女さんっていい匂いがするなあ……)

‥‥‥‥‥‥

男(結局、泣いてる女さんをなだめるのにかなり時間がかかってしまった)

男(俺の事が好きか…どう考えても罰ゲームとかって感じじゃなかったよなあ…)

男(あんなに可愛い子なのに……)

男宅

男「なあ妹?」

妹「あ?なんだよ童貞?」

男「今日告白された」

妹「あっそ。……は?」

男「手紙で呼び出されて好きだって言われた」

妹「罰ゲームとかなんじゃねーの?」

男「どう見てもそんな感じじゃなかったんだよなあ…」

妹「物好きがいたもんだね。どうせブスでしょ?」

男「いや…結構可愛い子だった」

妹「騙されてるんじゃないの?」

男「多分…それはないかと……」

妹「あっそ。だから何?私に自慢したかったの?」

男「今度一緒に、その子と映画を見ることになったんだよ。服、何着ればいい?流石にユニクロって訳にもいかないし」

妹「は?自分で考えれば?」

男「だって俺、服の事なんて全然わかんないしさ」

男「せっかく出来た彼女だし…その……嫌われたくないから……」

妹「はぁ…」

男「お願いだよ、あの子に嫌われたらもう他に相手がいないんだよ」

妹「とりあえずその鬱陶しい髪切ったら?キモいよ?」

男「そ、そうだよな!じゃあ今すぐ床屋行ってくる」

妹「いや、普通こういう時は美容院でしょ」

男「え?そうなの?でもどこ行けばいいんだ?」

妹「知るかよ! とりあえず私が良よく行く店にでも行けば?」

男「そ、そうか…!」

妹「つーか服も何買えばいいかわかるの?」

男「わ、わからない……」

妹「そんな調子じゃ間違いなく彼女に嫌われるだろうね」

男「マジかよ…女さんに嫌われたら、もう二度と彼女なんて出来る訳ないじゃん…」

妹「そういえば、私そろそろ服でも買おうと思ってたんだよねー」

男「だからなんだよ?」

妹「服代奢ってくれるなら、あんたの服買うの手伝ってもいいよ?」

男「え?いいの?」

妹「別に服買うついでだし」

男「ありがとう妹!」

数日後

男「なあ髪型はこれで大丈夫か?服もこれでいいんだよな?」

妹「私のセンスを疑ってるの?童貞の癖に」

男「でも俺なんかがオシャレしても…無駄なんじゃ…」

妹「馬子にも衣装っていうけどさ、まあ大分マシになったんじゃねーの?」

男「ほ、本当か!?」

妹「あ、でもやっぱちょっとキモい」

男「そんなぁ……」

妹「まああんた程度の奴が好きって物好きな女には、これで十分なんじゃねーの?」

男「そうか?変じゃないよな?」

妹「いいからさっさと行って来いよ。童貞だからっていきなり変なことするなよ?」

男「そ、そんなことする訳ないだろ!?」

妹「はいはい、さっさと行ってくる」

男「うん、じゃあ行ってくる」ガラッ

妹「…………」

妹「柄にもなくはしゃいじゃって馬鹿みたい……童貞の癖に……」

妹「はぁ…」

…………

女「ごめんね、待った?」

男「ううん、今来たところ」

男(このセリフ、一度でいいから使ってみたかった)

女(今日の男くん…なんかいつもよりカッコいい…)

女「着ていく服選んでたら、すっかり遅くなっちゃったんだ。ごめんね」

男(女さんの私服可愛いなあ…)

男「いいよ別に、じゃあ行こっか」

女「うん」

数時間後

   マクド

女「映画、面白かったね」

男「そうだね」

女「主演の俳優が今の月9にも出てるんだよね」

男「そうなんだ」

女「確かヒロインの女優の方はこの前にやってたドラマに出演してたよね?何のドラマだったっけ?」

男「俺、あんま芸能人とか詳しくないから…」

女「あ、ごめんね…」

男「いいよ、別に」

女「そういえば、男くんって休みの日とかって何してるの?」

男(アニメとかゲームだなんて言ったら間違いなく引かれるだろうな……)

男「その…寝てる……」

女「そっか…」

女「あ、あたしはね…!最近料理をよくするの。おいしいって家族からも結構評判なんだよ?」

男「へぇ…」

女「今度男くんにも食べさせてあげるね」

男「いいよ、別に。悪いし」

女「そ、そんなことないよ…!」

男「店、そろそろ混んできたからもう行こっか?」

女「うん…」

男「誘ってくれたお礼に奢るよ」

女「え…でも…」

男「いいよ別に」

女「全部は悪いよ。あたしも半分出すね」

男「でも俺の方が沢山頼んでたしさ」

マクドは先に払うんやでw


女「あたしの方から誘ったんだから、男くんは気にしなくていいよ?」

男「そっか、じゃあ遠慮なく」

‥‥‥‥‥‥

男「次、どこ行く?」

女「うーん、カラオケとかどう?」

男(アニソンしか歌えない俺が女子とカラオケだと…?)

男「カラオケは…ちょっと……」

女「そっか…じゃあ一緒に服とか見ない?」

男(それならボロが出ないか…)

男「いいよ」

‥‥‥‥‥‥

女「あ、この服可愛い」

男「そうだね」

女「どう?似合うかな?」

男「似合うんじゃないの?買う?」

女「でも結構高いなあ…やっぱりやめとく」

男「そっか」

女「ねぇ?男くんは何も買わないの?」

男(無理して高い美容院に行って、デート用の服を買い揃えたら、小遣いが全部なくなったとは言えない…)

男「その…気分じゃないんで……」

‥‥‥‥‥‥


>>48
すまん、うっかりしていたわ
やっぱりサイゼにしといてくれ

男「とまあこんな感じだ」

妹「まさかそれで帰ってきたの?」

男「そうだよ」

妹「は?なにそれ?」

男「いや、なにって言われても…」

妹「あんたもしかして、別れたくてわざとやってるの?」

男「そんな訳ないだろ」

妹「大体何?相手と楽しく会話しようって少しは思わなかったの?」

男「いやだって、女の子と何を話せばいいのかわからないし…」

妹「やっぱり格好だけマシにしても童貞は童貞ね。その調子じゃすぐに振られるね。間違いなく」

男「そ、そんなあ……」

妹「てかなんでカラオケ行きたいって言われたのに断ったの?」

男「それは…俺、アニソンしか知らないから……」

妹「は?流行りの歌くらいチェックしておきなさいよ」

男「う…」

妹「てかなんでご飯奢らなかったの?」

男「それは…相手が自分が誘ったから半分払うって……」

妹「普通それでも奢るのが男でしょ?彼女にも払わせるとかあんた何様のつもり?」

男「うっ…」

妹「てかなんで欲しいって言ってた服も買ってあげなかったの?」

男「そ、それは…美容院やら服代やらで小遣いがなくなって……」

妹「バイトでもして稼いで買ってやれよ!男だろ!?」

男「た、確かに…!」

妹「大体あんた、女の子の気持ちを何もわかってないでしょ」

男「おっしゃるとおりです……」

妹「少しは勉強しなさいよ」

男「で、でも…どうやって……」

妹「雑誌見るとか色々あるだろ!」

男「どんな雑誌と……」

妹「もう!ちょっと待ってて」

   どさっ

妹「はいこれ」

男「ん?『小悪魔系で彼氏のハートをがっぽり』『彼女を失望させる男の特徴』」

男「『草食系男子を射止める為の肉食系女子の心得』なにこれ?役に立つの?」

妹「当たり前でしょ?これでも読んで少しは女の子の気持ちを勉強しなさいよ」

男「はい……」

1ヶ月と数日後

女「なんかこうやって一緒に遊んだりするのって久しぶりだね」

男「最近バイトとかが忙しくって、なかなか予定が空かなかったからね」

女「でも男くんの方から誘ってくれたのは嬉しいよ」

男「そっか、よかった…」

男「そういや女さんはK-POPって好き?俺最近ハマってるんだよねぇ」

女「あたし韓流ってあまり詳しくないんだ」

男(どういうことだよ…本には確か殆どの女性は韓流に夢中って書いてあったぞ…)

男「じゃ、じゃあAKBは?今大人気だよね?俺も好きでさ」

女「ごめんね…あたしAKBは前田敦子くらいしか知らないの…」

男(男女共に大人気の国民的アイドルじゃなかったのかよ!? テレビとか見ていっぱい勉強してメンバー全員覚えたのに…)

男「そ、それじゃあさ!ジャニーズは好き?いやぁ妹が好きでさ、そんで俺も結構好きなんだよね」

女「ジャニーズもあんまりわからないかなあ……ごめん」

男(おいおい、女子高生は皆ジャニーズが好きって本には書いてあったぞ…)

男「そ、そっか……えっと…じゃあ……」

女「…………」

男(いかん…!女さんの表情が険しい…俺のせいできっと退屈してるんだ……)

女「ねえ男くん、もしかして…あたしといるとつまらない…?」

男「え、ええ?そんな訳ないじゃん!」

女「でも…なんか無理して一緒にいるみたいだし…」

男「そ、そんなことないよ!」

男「あ、そうだ!今日は俺が奢るね」

女「え…でも……」

男「今月バイトで結構稼いだからさ、俺が全部出すよ」

女「だって男くんが頑張って働いて稼いだお金でしょ?」

男「別にいいんだよ、女さんが喜んでくれればそれだけで満足だから」

女「そんな…悪いよ……」

男「いいのいいの、奢るのは男の役目なんだから」

女「だけど…」

男「彼氏なんだからこのくらい当然だろ?だから俺が奢るよ」

女「じゃ、じゃあ……」

…………

女「あ、この服いいかも」

男「買うの?」

女「うん、値段も手頃だし」

男「じゃあ俺が奢るよ」

女「自分で買うから大丈夫だよ」

男「彼氏が彼女の買いたい物を奢るのは当たり前だろ?」

女「でも…悪いよ…」

男「いいから遠慮しないで」

女「でも…男くん、さっきも奢ってくれたし…」

男「気にしないでいいから」

女「うん…」

男(なんだかあまり嬉しくなさそうだなあ…)

男(さっき奢った時もそんなに喜んでなかったし…やっぱりもっと高い店の方がよかったかなあ…?)

男(このままではまずい…いつかきっと愛想を尽かされる……)

男(そういえば、女性は幸せって物を目に見える形でしか認知できない生き物で)

男(だからプレゼントとか旅行みたいな、目に見える形の幸せを絶えずあげ続けて常に満足させなければ)

男(女性は彼氏に不信感を抱くものだとかって本に書いてあったっけ……)

男「ねえ女さん?何か欲しい物ってない?」

女「え…?どうしたの急に?」

男「なんかあるでしょ?」

女「いきなりそんな事言われても…」

男「別に物じゃなくてもいいんだよ。行きたい所とかでも」

女「あたしは男くんと一緒にいられるだけで満足だよ?」

男「いや、そういうことじゃなくて……何かあるでしょ?前から欲しいと思ってる物とかそんな感じの」

女「うーん…そうだなぁ…」

男「何でもいいからさ」

女「そうだねぇ…スマフォ…かな…?」

男「スマフォねぇ…」

女「別にそこまで欲しいって訳じゃないんだけど、流行ってるみたいだし便利そうだからね」

男「あれ結構高いよな」

女「そうだよね。だから買おうって思ってるんだけど中々買えないんだ」

女「お小遣いだけで買える金額でもないし。まあ無くてもそんなに困ってないんだけどね」

男(今の俺のバイト代だけじゃちょっと厳しいよなあ…デート代とかで結構減ってきてるし…)

男(デートの度に俺が着てく服も買わないといけないし、交際費だって結構馬鹿にならないし…)

男(今のバイト代だと、買えるまで一体どのくらいかかるか…)

男(バイト増やすか…)

数日後

男(眠い…)

男(バイト増やしすぎたかな…?流石に年齢誤魔化して深夜バイトするはキツいなあ…)

男(お陰で前みたいに自由にアニメを見ることもできないし…彼女のいる奴って大変だったんだな…)

女「ねえ、男くん…」

男「ん…?なに…?」

女「最近いつも様子が変だけど大丈夫?」

男「うん…大丈夫だよ…ちょっと寝不足なだけ…」

女「本当に大丈夫?具合悪そうだよ?」

男「うん…ちょっとバイトが忙しくって……」

女「あんまり無理したらダメだよ?」

男(これも女さんの為だもんな……頑張ろう)

1ヶ月後

男「女さん、はいこれ」

女「なに?これ…?」

男「スマフォだよ。欲しかったんでしょ?」

女「え…?」

男「とりあえず何がいいのかわからなかったから、一応一番新しい機種にしたんだけど」

男「色は女の子っぽいのにしたんだけど、嫌だった?」

女「でもこれ…高いんでしょ…?」

男「ああ大丈夫だよ。使用料は俺が払うことにしといたから」

女「え?」

男「だから料金は気にしないで使っていいから」

女「ちょっと待ってよ!」

男「ん?」

女「そんなのダメだよ!」

男「なんで?」

女「だって…男くんにお金を払わせて…あたしがこれを使うだなんて……」

男「俺は別にいいんだよ。女さんが喜んでくれればそれで…」

女「でもやっぱりこんなのダメだよ!とにかくこんな物は受け取れないよ!」

男(喜んでくれると思ったんだけどなあ…)

男(せっかく沢山バイトしたのに……)

男宅

男「妹、これやるよ」

妹「なに?この紙袋?」

男「スマフォ。しかも新型。確かお前まだガラケーだっただろ?」

妹「は?あんたが使えばいいじゃん」

男「いや、俺どうせそんなに使わないし。色も女の子っぽくしちゃったし」

妹「じゃあなんでそんな物買ったのよ?」

男「いやさ、彼女がデートで何を奢っても全然喜んでくれなくって、そこで何かプレゼントしようと思ったんだけどさ」

男「で、彼女がスマフォが欲しいって言ってたからさ、でも結構高かったから沢山バイトしてプレゼントしたんだけど」

妹(てかそいつ、そんな物ねだったのかよ…)

男「結局いらないって返されちゃってさ」

妹「は?なんで?」

男「うーん…もっと別の機種の方がよかったのかなあ…?」

妹(なんつー彼女だよ……)

数日後

男「女さん?選ばないの?」

女(値段が…書いていない…)

女「ごめんね…こういう所で食べるの、慣れてないから…」

男「いつも安いファミレスやファーストフードばかりだったからさ」

男「たまにはこういう所で食事でもって思ったんだけど…もしかして嫌だった…?」

女「べ、別にそういう訳じゃないんだよ! ただ何を頼めばいいのかわからなくって…」

男「じゃあ俺と同じ奴にしとく?」

女「うん、そうするよ」

女(でもここ…どう見ても学生が来るような店じゃないよなぁ…)

女「ねぇ?男くん。お金大丈夫?ここ凄く高かそうだよ?」

男「大丈夫だよ、バイト代はまだ沢山あるし」

女「で、でも……」

男「俺が全部払うからさ、女さんは気にしないでいいんだよ」

女「やっぱり悪いよ…」

男「彼氏が奢るのは常識だろ?それに俺も女さんに奢りたいから」

女「うん…」

男(この前読んだ本には、デートで安い店じゃ相手に嫌われるって書いてあったから)

男(無理してこんな所で食事することにしたけど…なんか女さん、全然嬉しそうじゃないよなあ…)

男(もっと高い店の方がよかったのかな…?)

‥‥‥‥‥‥

男「女さん、次はどこ行く?洋服でも見る?」

女「今日は別にいいよ」

男「そう?」

女(だって男くん…また奢るとか言いそうだし…)

女「あ、そうだ。男くん?」

男「ん?」

女「今度男くんのおうちに行ってもいい?」

男「え?どうして急に?」

女「だって付き合ってから結構経つのに、まだお互いの家に行ったことも無かったんだもん」

男「確かにそうだなあ…」

女「それの男くんのこと、もっとよく知りたいし」

男「わかったよ、じゃあ来週の日曜辺りでいい?」

女「うん、いいよ」

女(家に行くなら奢りようがないもんね)

数日後

男「これも駄目、これも駄目っと…」ポイ

   がらっ!

妹「ちょっと馬鹿兄!今学校から電話が来たんだけど!」

男「あっそ、なんて?」ガサガサ

妹「てかあんた、何やってるの?」

男「いや、彼女が俺の家に行きたいって言ったからさ。で、今度家に来ることになったんで片付けてた」

妹「あっそ」

男「後もてなす為の手料理も用意しないとな。何でも家事が出来る男の方が好感が持てるらしいしさ」ガサッ

妹「知らねーよ」

男「だからさ、その日は悪いけど友達とでも遊んで時間を潰してくれよ」ポイ

妹「別にいいけどさ、ってかそんな事はどうでもいいのよ」

男「じゃあ何?」

妹「最近あんたが毎回授業で寝てるって学校から苦情が来たのよ。案の定テストの成績も落ちてるみたいだし」

男「まあバイトとかで忙しいもんな」バサッ

妹「今親がいないってとりあえず切ったけどさ。流石に平日の深夜までバイトやってるってどうなのよ?」

男「そんなこと言っても、デート代とかプレゼント代ですぐなくなっちゃうからな」ポイ

妹「だからって何も……ってかあんたさっきから何捨ててるの!?」

男「何って…フィギュアだけど?」

妹「は?」

男「いやさ、この本の『男の部屋にあったら嫌な物特集』って記事のダントツの1位が美少女フィギュアって書いてあってな」

男「確かにこんな物見られたら間違い無く嫌われるだろうからさ」

妹「は?」

男「ってよく見たら、ガンダム系のプラモなんかも上位って書いてあるじゃん……これも捨てるか…」ポイ

妹「ちょっと…何もそこまでしなくっても…」

男「そこまでって、お前だってこういうのキモいって思ってるだろ?」

妹「そりゃそうだけどさ…」

男「何でも女性に好かれる男性は、無趣味に近い程いいらしい」

妹「だからって、何も自分の好きな物まで捨てなくっても…」

男「別にいいんだよ、どうせ元々ただの暇つぶしだったし…」

妹「どう考えてもよくないでしょ!」

男「そういえばもうすぐバイトの時間だったわ」

妹「あんたさっきの私の話聞いてなかったの!?」

男「あ、そうだ。大丈夫だとは思うけど、万一PCの中でも見られたらドン引きされるだろうから、一応これも捨てておこうっか」

男「あと汚かったり物が多過ぎる部屋もNGらしいから、最低限の家具以外は全部捨てとくか…」

妹「ちょっと本気なの!? あんたどうかしてるんじゃないの!?」

男「これ、ゴミ袋に詰めておいたから。次のゴミ出しの日に出しといて」

妹「は?」

男「じゃあ俺、バイト行ってくるから」

妹「は?ちょっと待ちなさいよ!」

日曜日

女「お邪魔します…」

男「さあ、入って入って」

女「うん…」

男「元気ないみたいだけどどうしたの?」

女「男の子の家に行くのって…初めてだから…」

男「そうなの?」

男(こんなに可愛いのに…ちょっと意外……)

女「うん…だからちょっと緊張しちゃって……」

男「女さんはさ、自分の家だと思っていればいいから」

女「そう言われても…」

男「じゃあ俺、ご飯作るからさ」

女「あ、あたしも手伝うよ!料理は結構得意だし」

男「いいよ別に。女さんはお客さんなんだし」

女「家事は女の仕事でしょ?」

男「そんなの亭主関白の所だけだよ。今時は男でも家事くらいして女に楽をさせないといけないし」

女「で、でも……」

男「だから女さんはテレビでも見てくつろいでてよ」

女「うん…」

‥‥‥‥‥‥

女(また…高そうな料理…)

男「どう?おいしい?」

女「う、うん!とってもおいしいよ!」

男「そっか、よかった」

女「男くんって料理上手だね」

男「まあ両親共働きでね、よく二人とも家を空けてるからなあ」

女「へぇ、そうなんだ。でも一人でいると料理って適当になりがちじゃないの?」

男「妹がいるからね。手抜くと怒られるんだよ」

女「男くん、妹さんがいるんだ。可愛いの?」

男「性格はかなりキツいけど、見た目は結構可愛い方だと思うよ。俺みたいなブサイクに似なくってよかったと思う」

女「そんなことないよ。男くんだって十分カッコいいよ?」

男「そうかな?」

女「うん。それにしても妹さんがちょっと羨ましいかも」

男「なんで?」

女「だってこんなにカッコいいお兄さんがいるんだもん」

男「そんなにカッコよくもないだろ?」

女「そんなことないよ。あ、でも妹じゃ彼女にはなれないか」

男「そりゃあねぇ…」

女「でも毎日こんなにおいしい手料理を食べられるのは、やっぱりちょっと羨ましいかな?」

男「別にいつもこんな物を食べてる訳じゃないよ」

女「そうなの?」

男「今日は女さんの為に食材もこだわってさ。このステーキなんて最高級の黒毛和牛を使ったからね。そりゃあうまい筈だよ」

女(なんか…おいしいのに……あんまり嬉しくない……)

‥‥‥‥‥‥

女「ごちそうさま」

男「お粗末さま」

女「ご馳走になったお礼に、片付けはあたしがやるね」

男「いいよ別に。お客さんにこんなことさせられないよ」

女「でも…こんなにおいしいご飯をご馳走になって、おまけに片付けまでさせるなんて悪いよ…」

男「彼氏なんだからこのくらいは当然だよ。女さんは気にしなくっていいの」

女「うん…」

女(男くんと付き合ってから結構経つのに、あたしはいつもしてもらってばかりだなぁ…)

女(それなのにあたしからは、男くんに何もしてあげてない…)

女「ねぇ、男くん」

男「ん?なに?」

女「あ、あのね!その…」

男「どうかしたの?」

女「あたしたち、付き合ってるんだよんね?」

男「急にどうしたの?」

女「付き合い始めてから結構経つよね…?」

男「そういえばそうだったなあ」

女「それなのにね……まだ何もしてないよね……」

男(デートやプレゼントだけじゃ不満なのかな?)

女「あ、あのね…!男くんは……恋人らしいこととかしたくならないの…?」

男「恋人らしいこと?今まで結構してきたと思うけど。よく一緒に遊んだりしてきたし」

男「あ、でも最近は忙しくってあんまり遊べなかったか…」

女「そういう意味じゃなくて……えっと…その……」

男「…?」

女「男くんは…そういうことがしたくないのかなって……」

男「そういうこと?」

女「あ、あのね…シャワー…借りても…いいかな…?」

男「え…?いいけど…」

‥‥‥‥‥‥

女「出たよ…」

男(湯上りのせいかな…?やけに女さんが色っぽく見える……)

女「男くんも…入ってきて……」

男「え?でもまだ風呂にはちょっと早いよ…?」

女「その…えっと……」

男「どうしたの?」

女「男くんは…あたしのこと好き…?」

男「うん、好きだよ」

女「あたしもね……男くんのことが好きだよ」

男「どうしたの急に?」

女「じゃ、じゃあね…」

男「ん?」

女「男くんの部屋で……待ってるから……」

男「え…?」

女「…………」

男(これって…もしかして……)



‥‥‥‥‥‥

女(なに…この部屋……)

女(男くんはこんな所に住んでたの…?)

‥‥‥‥‥‥

   ジャー

男(どう考えたって、あれはセクロスがしたいって雰囲気だよなあ…)

男(俺、童貞だけど…上手くできるかなぁ…)

男(下手だって嫌われたらいやだなあ……)

   ジャー

女「男くん…」

男「女さん?遅くなっててごめん。今すぐ出るから…」

女「ごめんね…気分が悪いの……帰ってもいいかな…?」

男「え?何?ここからだとよく聞こえないんだけど!」

女「ごめん……」

   とぼ… とぼ…

‥‥‥‥‥‥

   ガラッ

女(男くんの部屋…何も無かった……)

女(最低限の家具が置いてあるだけで……異常な程に片付けられていて……)

女(まるで独房みたいな部屋で……生活感が全然感じられなかった……)

女(男くんの心の中は、一体どうなっているんだろう……)

妹「もしかして、貴方が女さんですか?」

女「そうですけど…あなたは?」

妹「男の妹です」

女「妹…さん…?」

妹「前から貴方に言いたいことがありました」

女「なんですか…?」

妹「単刀直入に言います。兄と別かれてください」

女「え…どうして……?」

妹「兄はあなたのせいでおかしくなりました」

女「!?」

妹「前はあんな風じゃなかったのに……」

女「それってどういうことですか!?」

妹「貴方の為に深夜までバイトをするようになって、そのせいで学校の勉強もろくに出来なくなったんですよ?」

女「え…?」

妹「それなのにデートで何を奢っても、全然喜んでくれないそうじゃないですか」

女「それは…男くんに悪いと思って……」

妹「悪いと思ってる?兄が貴方に渡した高価なプレゼントも、気に入らないからって返した癖に?」

女「そ、それは…」

妹「他にも貴方のせいで、兄は家具も好きだったプラモもフィギュアも皆捨てたんですよ?」

女「え…そんな……」

妹「貴方が捨てろって言ったんですよね?」

女「そ、そんなこと言いません!」

妹「じゃあなんで兄はこんな事をしたんですか?」

女「それは……わかりません……」

妹「わからない?そんな態度で兄の心を惑わしてたんですか?」

女「惑わしてなんかいません!」

妹「兄を財布とでも思ってるんですか?」

女「財布だなんて…そんな……」

妹「じゃあなんですか?貴方みたいな人が、私の兄なんかと付き合う理由が他にあるんですか?」

女「そ、それは……あたしは男くんのことが好きで……」

妹「じゃあ兄の気持ちはどう考えているんですか?」

女「だ、だって……男くんも…あたしのことが好きだって……」

妹「貴方が兄の何を知っているんですか?兄が貴方のせいで、どんな辛い思いをしてるかも知らない癖に…」

女「ごめんなさい……」

妹「兄の心を弄んでるなら、早く兄と別かれてください」

女「え…」

妹「ここまでしておいてなんですか?まだ貢がせたいんですか?」

女「ち、違う……」

妹「何が違うんですか?兄のことを騙して貢がせてるんでしょ?」

女「違います!」

妹「とにかく今すぐ別れてください。貴方みたいな酷い女に振り回されている兄が可哀想です」

女「…………」

数日後

男「ねえ女さん。今度の日曜日暇?よかったら映画でも…」

女「ごめんね…そういう気分じゃないんだ…」

男「そっか…じゃあ今夜何かご馳走しようか?勿論女さんが良ければだけど」

女「今日はおうちで家族と食べるから……ごめん」

男「女さんが謝ることなんてないよ。女さんの予定も知らずに勝手に誘うとした俺が悪いんだし」

女「ごめんね……あたしなんかのせいで……」

男(なにもそんなに謝らなくっても…)

   男宅

男「なんか俺の家に呼んだ時以来、女さんの付き合いが悪いんだよなあ…」

妹「あっそ」

男「遊びに誘っても行きたいって言わないし…何を話しても暗い顔をしてるし……」

男「あの時も結局途中で帰っちゃったし…やっぱり何かまずい事でもしちゃったのかなぁ……どうしよう……」

妹「放っておけばいいじゃん」

男「そういう訳にもいかないだろ。もしも女さんに嫌われていたらどうすれば……」

妹「だからあんな奴放っておけって!」

男「なんでお前がそこまでムキになるんだよ?」

妹「別に……」

男「やっぱりまたプレゼントでもあげた方がいいのかなあ…」

妹「だからってあんな奴に媚びることないって」

男「いやだってさ、俺なんかを好きになる人なんて他にいないだろ?」

妹「いくらあんたがキモくて根暗な童貞だからって、流石にあんな酷い奴と付き合う事はないって」

男「酷い奴とはなんだよ!俺の彼女なんだぞ!」

妹「…………」

男「…………」

妹「なにも怒鳴らなくたっていいじゃん……」

男「ごめん……」

数日後

男「はい、これ。女さんに」

女「なに…これ…?」

男「最近なんかギクシャクしてたからさ。俺、気がつかない間になんか女さんの嫌がる事してたんじゃないかって思って」

男「だからそのお詫び。喜んでくれるといいんだけどなあ…」

女「バッグ…?」

男「俺こういうのよくわからないからさ、選ぶのにすっごく苦労したんだけどさ」

男「なんでも今一番人気のブランドのバックらしいよ。気に入るといいんだけど…」

女「いらないよ…」

男「え?」

女「こんなの貰っても…全然嬉しくないよ……」

男「気に入らなかった?俺なんかが選んだのじゃやっぱ駄目かあ…」

男「やっぱりもっと高いプレゼントの方がよかったかなあ……」

女「違うよ…」

男「じゃあどうして?」

女「だって…だってぇ……ううっ……ぐすん……」うるうる

男「え?なんで泣くの?」

女「ひっく…えぐっ……」ぽろぽろ

男「ごめん!俺が悪いことをしたなら謝るから!だからもう泣かないでよ」

女「ねぇ…男くん…?ひっく…」

男「なに…?」

女「あのね…あのね……ぐすん…」

男「どうしたの?」

女「別れよう…」

男「…………」

男「わかった…」

女「なんですんなり聞くの…?」

男「俺のせいなんでしょ?」

女「理由くらい聞いてよ…」

男「俺と一緒にいてもつまらなかったんでしょ?ごめんね」

女「違う…」

男「わかってるよ。俺のこと、嫌いになったんだろ?」

女「違うもん!」

男「お、女さん…?」

女「男くんのことは…大好きだもん……」

男「それなら…どうして…?」

女「あたしのせいで、男くんに辛い思いをさせているんでしょ…?」

男「そんな訳ないだろ?」

女「じゃあなんで毎日遅くまでバイトしてるの?」

男「それは……お金の為に……」

女「でもそれって全部…あたしの為にやってるんだよね…?こんな高価な物まで買って来るんだもん……」

男「それは…女さんに喜んで貰おうと……」

女「それに…あたしのせいで、家具も好きだったプラモやフィギュアも皆捨てたんでしょ…?」

男「それ…誰から聞いたの…?」

女「妹さん…」

男「あいつか…余計な事を……」

女「なんでそんなことしたの…?好きだったんでしょ…?」

男「そんなのが好きな奴なんて嫌だろ?」

女「別にそんなこと気にしないよ…?」

男「でも…気持ち悪いだろ…?」

女「あたし、そのくらいじゃ男くんのこと嫌いにならないよ…?」

男「どうせただの暇つぶしだったし…」

女「デートする時だっていつもそうだよ…男くんばかりお金を払って、男くんからは何もしたいことを言わないで…」

女「いつもあたしは男くんにしてもらってばかりなんだもん…そんなことしてて男くんは楽しいの?」

男「俺、取り柄もいい所も何もないからさ…そうするしかないんだよ……」

女「違うもん……男くんは素敵な人だもん…」

男「俺なんかちっとも魅力がないよ…だから必死で取り繕うしかないんだよ……」

女「もうそんなことしなくていいんだよ…?」

男「でもさぁ……」

女「あたしは男くんと一緒にいられるだけで満足なんだよ?」

女「だから男くんは、ありのままの自分でいてくれればいいの」

男「ありのままの俺じゃ、きっと嫌いになるよ…?」

女「そんなことないよ」

男「素の自分をさらけ出せば、きっと女さんにも嫌われるよ……」

女「男くんがとっても優しい人だってことは、あたしが一番よく知っているよ」

男「俺なんか…全然優しくなんかないよ…」

女「でもあたしが虐められてた時は、いつも助けてくれたよね?」

男「え…?」

女「やっぱり覚えてないんだ……すぐにまた転校しちゃったから仕方ないよね……」

男「転校…?なんの話…?」

女「あたしと男くんは、小学校の時同じクラスだったんだよ?」

男「…?」

女「あたし、あの頃からずっと気が弱かったから。それに家の事情で転校しがちで、友達も上手くできなかったし」

女「だからよくクラスの皆から虐められたんだ……でも男くんはいつも助けれたよね?それによく話もかけてくれたし」

男「まさかその頃から、ずっと俺のことが好きだったの?」

女「うん……でも一番の嬉しかったことはね…ある日、クラスで一番背が低いのを馬鹿にされ泣いてた時にね」

女「背が低い女の子の方が好きって言ってくれたよね?それ以来ずっと好きだったの……」

男「あの子って女さんだったの?」

女「覚えてくれたんだ…嬉しい…」

男「ちょっとしか一緒にいなかったから、名前までは覚えてなかったけどね……」

女「それでも…とっても嬉しいよ……」

女「あの頃はいつもありがとう……」

男「あの頃の俺は明るかったからね…それに正義感もあったし……」

男(でも今は…)

女「だからね、高校で同じクラスになれた時はとっても嬉しかったの」

女「勇気を出して男くんに告白して、付き合ってくれるって言ってくれた時もとっても嬉しかったんだよ?」

男「でもそれは昔の話だろ…?今の俺なんかこんなだし…全然いい所なんか……」

女「そんなことないよ…今でも男くんはとっても優しいよ。あたしの為にあそこまでしてくれたんだもん…」

男「それは…女さんに嫌われたくなかったから……」

女「あたしのせいだよね…?あたしのせいで、男くんにあんなことばかりさせて……ごめん……」

男「女さんが謝ることなんてないんだよ…!悪いのは全部俺なんだから……」

女「本当にごめんね…男くんをこんなに追い詰めちゃって……あたし、酷い女だよね……」

男「ひ、酷くなんかないよ!あれは俺が女さんに喜んでもらおうと勝手にしたことだし……」

女「でも…あたしの為に男くんが辛い思いをするのは嫌だよ……」

男「だって…ああしないと嫌われると思って……」

女「もう無理しなくていいんだよ…?だってあたしは男くんのことが大好きなんだもん…」

男「でも俺なんかじゃ…きっと女さんとは釣り合わないよ…?それに顔だって良くないし…性格だって……」

女「ねぇ?男くんはあたしのことどう思ってるの…?」

男「どうって…」

女「好き…?それとも嫌い…?」

男「嫌いな訳ないよ……だって俺なんかを、本気で好きだって言ってくれたんだもん…」

女「じゃあ男くんは…今でも背の低い子は好き…?」

男「う、うん…」

女「じゃ、じゃあね…あたしのことは……好き…?」

男「好きだよ…」

女「あたしもね…男くんのことが大好きだよ…」

男「女さん…」

女「男くんにいつもしてもらってばかりで、男くんのしたいことも聞いてあげれなくてごめんね…」

男「それは…俺が……」

女「だからね…お礼に男くんのしたいこと…なんでもしてあげるね…」

男「したいこと…?」

女「うん…なんでもいいの」

男「なんでも…?」

女「キスでもそれ以上のことでも…男くんがしたいことなら全部してあげる…」

男「え…?」

女「あたし…男くんのことが大好きだから…」

女「男くんなら…なにをされても平気だから…」

女「あたしに変なことしても…大丈夫だから……」

男「じゃあ…一ついい…?」

女「うん…」

男「手…繋いでもいい…?」

女「…………」

女「うん!」

終劇

ダメだよ!このまま終わったら妹はウザい子で終わっちゃうよ!

おしまいです。
支援、及び保守をしてくれた方々には心から感謝します。

ちなみに続きはないです
この二人の今後は皆様のご想像にお任せします

>>185
そんなに言うなら貴方が書いてください

以前書いたSSが面白いけど長すぎて飛ばしたって叩かれたから
できるだけ短くまとめようとした結果がこれだよ

完結させたのに伸びてると思って見てみれば
スレが変な流れになっていた

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