ちなつ「うぅ……私、やってません……ぐすっ……」(210)

結衣「……ねぇ、ちなつちゃん。あかり」

ちなつ「どうしたんですか結衣先輩、京子先輩。珍しく教室に」

結衣「あ……あのさ……」

あかり「何々?」

結衣「えっと……その……」

ちなつ「……?」

京子「結衣のパンツがなくなったんだけど、知らない?」

ちなつ「パ、パンツぅ!?」

結衣「ちょっ、声がでかいよ!」

あかり「ど……どういうこと?」

京子「実は、昨日私ら水泳の授業があったんだけどね。その時に結衣のパンツがなくなったみたいで」

あかり「え、じゃあ昨日はどうしたの?」

京子「しょうがないから、ノーパンで過ごしたらしいよ」

ちなつ「ノ、ノーパン……」ブシャア

結衣「過ごしてない! しょうがないからブルマで我慢した……恥ずかしかったよ、ホント」

あかり「それは大変だったね……でも知らないなぁ」

ちなつ「さ、さすがに私も……知りません……」

京子「そうなんだ。ちなつちゃんなら知ってるかもと思ったんだけど」

ちなつ「なぜですか?」

京子「いや、盗みそうじゃん?」

ちなつ「盗みませんよ!」

京子「いやーごめんね。ちなつちゃんなら『今がチャンス!』とばかりに……」

ちなつ「まったく……京子先輩は失礼すぎます」

京子「ほら、例えば今でもこのカバンの中に……」ゴソゴソ

ちなつ「ちょっと、勝手に……」

京子「……え?」

結衣「京子、どうかしたのか?」

京子「……これ……」

結衣「……! そ、それ……私の……」

あかり「ええっ!」

ちなつ(!? な、何で!?)

「ドウシタノ?」

「ヨシカワサンガ、フナミセンパイノパンツヲヌスンダッテ」

「ホント? デモヨシカワサンナラ、ヤリカネナイネ・・」

「サイテー・・」



結衣「ち、ちなつちゃん……まさか、本当に……」

ちなつ「し、知りません! 何かの間違いです!」

結衣「…………」

ちなつ「信じて下さい! 私、やってません!」

あかり「そ、そうだよ! いくらちなつちゃんでも、そこまではしないよ!」

京子「私も、ちなつちゃんを信じるよ。ちなつちゃんは、こんなことする子じゃない」

結衣「そう……だね。うん、何かの間違いだよね、これは……」

ちなつ「結衣先輩! ありがとうございます!」

京子「きっと誰かのいたずらだよ。最低な奴だな」

あかり「ま、まぁなくしたパンツが戻ってよかったね、結衣ちゃん!」

結衣「うん……そうだな」

京子「それじゃ、教室に戻ろう。結衣」



あかり「大変だったね、ちなつちゃん」

ちなつ「うん……」

ちなつ(間違いない……盗んだ犯人が、私のカバンに入れたんだ……)

ちなつ(でも、何のために……)

京子「それじゃ、今日の部活を始めまーす!」

結衣「で、今日は何をするんだ?」

京子「ツイスターゲーム!」

結衣「おいおい、マジか」

あかり「あかり、こういうのダメそうだなぁ……」

ちなつ(…………)

ちなつ(あれから数日……すっかりいつものみんなだ。よかった……)

結衣「えっと……青」

あかり「うぅ……もう限界だよぉ……」ヘチャア

京子「わ、私も……あいたたた……」

ちなつ「じゃあ次のくじは、えっと、私と……やった! 結衣先輩だ!」

結衣「…………」

あかり「結衣ちゃん、どうしたの?」

結衣「あ、う、うん。それじゃ頑張ろうか、ちなつちゃん」

ちなつ「はい!」

あかり「えっと……赤で」

結衣「赤、赤と……」

ちなつ(あっちの方にいけば、結衣先輩と密着できる……)

ちなつ(よーし!)

ちなつ「よい、しょっと……」

結衣「……っ!」



ドンッ!!



ちなつ「きゃっ!」

あかり「えっ」

京子「な、何してんだ結衣!」

結衣「……あ」

あかり「ち、ちなつちゃん、大丈夫!?」

ちなつ「あ……う、うん……」

結衣「そ、その……」

京子「結衣!」

結衣「ご、ごめん、ちなつちゃん!」ダッ

あかり「あ、結衣ちゃん!」



京子「…………」

京子「ごめん、ちなつちゃん……私の、せいだよ」

ちなつ「京子先輩……」

京子「結衣も、やっぱり女の子だからさ……あのことにかなり、ショック受けてたんだろうね」

京子「頭ではわかっていても、やっぱりちなつちゃんが少し怖かったんだと思う」

ちなつ「…………」

京子「本当にごめん! 私がツイスターゲームなんて提案したから!」

ちなつ「い、いえ! 悪いのは、つい密着しようとした私です!」

京子「いや、私が……」

あかり「だ、大丈夫だよ。結衣ちゃんも話せばわかってくれるよ」

京子「うん……そうだね。結衣には私から言っておくから、明日みんなでごめんなさいしようか」

ちなつ「……はい」

京子「今日は、もう帰ろう。また明日、ね……」

あかり「あ、ちなつちゃん。おはよー」

向日葵「おはようございます、吉川さん」

櫻子「どうしたの? 元気ないじゃん」

ちなつ「うん……ちょっとね」

ちなつ(はぁ……やっぱり昨日のアレは、まずかったよね……)

ちなつ(結衣先輩も、繊細なところがあるんだもんね。反省しないと)

ちなつ「ふぅ、疲れた……」

あかり「うぅ……やっぱりあかり、体育嫌い……へとへとだよ……」

ちなつ「さ、着替えよ……あれ? 何かな、これ」

あかり「どうしたの?」

ちなつ「カバンの中に……体操服?」

あかり「ちなつちゃんのじゃないの?」

ちなつ「私、予備なんて持って……名札があるね」



『船見 結衣』



ちなつ「!!!!!!!」

あかり(ち、ちなつちゃん、これって……!)

ちなつ(し、知らない! 私、何も知らない!)

あかり(とにかく、結衣ちゃんに返しにいこう!)

ちなつ(そ、そうだね……)

ちなつ(でも……)


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

結衣『……っ!』

ドンッ!!

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ちなつ(…………)

ちなつ(今の結衣先輩には……ちょっと、返しに行きづらいな……)

あかり(……ちなつちゃん……)

あかり(そうだ、確か京子ちゃんが2年は合同体育だって言ってた)

ちなつ(そうなの?)

あかり(授業が終わって2年のみんなが戻ってくる前に、カバンに返そう)

ちなつ(そうだね……でも、間に合うかな……)

あかり(急がないとダメだけど……結衣ちゃんと、会いづらいんでしょ?)

ちなつ(うん……わかった、そうするね)



キーンコーンカーンコーン

ちなつ(よし……!)

ガラガラ

ちなつ(誰もいないね……)

ちなつ(確か結衣先輩の机は……ここだ)

ちなつ(このカバンに……これでよし)

ちなつ(結衣先輩たちが帰ってくる前に、急いで戻ろう)



あかり(おかえり。ちなつちゃん、どうだった?)

ちなつ(大丈夫。誰にも見られてないよ)

あかり(そう、よかったぁ……)

結衣「それで……昨日は本当にごめんね、ちなつちゃん……」

京子「私もごめん……ちょっと、調子乗ってたよ」

ちなつ「ううん、私こそごめんなさい」

ちなつ(一時はどうなることかと思ったけど……)

ちなつ(これで、一安心かな。ね、あかりちゃん)

あかり(うん、そうだね!)



結衣「ところで……二人とも。疑ってるわけじゃないんだけど……」

ちなつ「何ですか?」

結衣「私の体操服、知らないか?」

京子「ちゃんと持ってきたのに、なくなったみたいなんだ」

あかり「えぇっ!」

ちなつ(嘘……なんで!?)

ちなつ「し、知らないです! 私、何も知らないです!」

結衣「そ、そうだよね……すまない、変なこと聞いて」

京子「昨日の今日で大変だな、結衣は」

結衣「確かに持ってきたはずなんだが……何かの勘違いかなぁ」

京子「そんなとこだろ。さ、部活しよっか」

あかり(ち、ちなつちゃん、どういうこと!?)

ちなつ(わからない! わからないよ、全然!)

あかり(カバンを間違えたとか……?)

ちなつ(いや、そんなはずは……何で、何でなの……)

ちなつ(はぁ……昨日は結局、結衣先輩とはまだぎこちないままだったな……)

ちなつ(でも、何でまた体操服が消えたんだろう……)

京子「おっはよー、ちなつちゃん」

結衣「おはよう」

ちなつ「あ、皆さん。おはようございます」

あかり「……? 教室の方が騒がしいね」

京子「何かあったのかな? ちょっと行ってみよう」

「ナニコレ・・」

「ヒドスギルワ・・」

「マタナノ・・」



向日葵「あ……吉川さん……」

櫻子「どういうことなんだ、これ」

ちなつ「どうしたの、みんな?」

京子「何か、雰囲気悪いな……」

あかり「あ、黒板に何か貼られて……写真?」

結衣「……なっ!」

ちなつ(こ、この写真……結衣先輩のカバンに、体操服を返した時の!?)

京子「ち、ちなつちゃん!」

結衣「ちなつちゃんが、盗んだのか!」

ちなつ「ち、違うんです! これは返してるんであって、盗んでるわけじゃ!」

結衣「返した!? 返したって、どういうことなんだ!」

ちなつ「そ、そうじゃなくて!」

あかり「ゆ、結衣ちゃん! 落ち着いて!」

ちなつ(何、何がどうなってるの!? 誰かに撮られたの!?)

向日葵「吉川さん……」

櫻子「やっぱり、先輩のパンツを盗んだのもちなつちゃんだったのか?」

あかり「違うんだよ! いつの間にかちなつちゃんのカバンに結衣ちゃんの体操服が入ってて!」

あかり「ちなつちゃんは、それを返しただけなんだよ! ホントだよ!」

京子「あ、あかり……」

結衣「……そうなのか、ちなつちゃん?」

ちなつ「は、はい! そうです!」

あかり「そうだよ結衣ちゃん! ちなつちゃんがそんなことするわけ……」

櫻子「……でもさ、ちなつちゃん」

櫻子「ちなつちゃんが犯人じゃないなら、堂々と返せばよかったじゃん」

京子「!」

ちなつ「……っ!」

結衣「そう、だね……ちなつちゃんが違うって言うなら、堂々と返してほしかったよ」

ちなつ「そ、それは……ちょっと、今の結衣先輩には、返しづらくて……」

結衣「…………」

綾乃「ちょっと、何の騒ぎ!?」

千歳「ん……この写真……」

綾乃「……吉川さん、これは? そういえば船見さん、体操服がなくなったって……」

ちなつ「違います! 私、やってません!」

綾乃「……とにかく、これは没収します! ほら、解散解散!」

千歳「歳納さんと船見さんも、教室に戻ろうな?」

結衣「う……うん……」

綾乃「吉川さん……後で話、聞かせてもらえるかしら?」

京子「ちなつちゃん……」

ちなつ「うぅ……私、やってません……」

京子「……大丈夫。私は、ちなつちゃんを信じてるから」

京子「結衣だって、話せばちゃんとわかってくれるよ。ね?」

ちなつ「……はい……」

綾乃「……そういうことね。なるほど、確かに筋は通ってるわ」

ちなつ「私、本当に何もやってません……」

千歳「うちは吉川さんを信じるで。なぁ、綾乃ちゃん?」

綾乃「そうね……うん、船見さんには私からも話しておくわ」

ちなつ「はい……ありがとう、ございます……」



櫻子「相当まいってるなぁ、ちなつちゃん……」

向日葵「当然でしょう。吉川さん、かわいそうに……」

綾乃「誰かのいたずらにしては、タチが悪すぎるわね」

千歳「……これ以上、何も起こらなければいいんやけどな……」

あかり「ちなつちゃん、おはよう」

ちなつ「あかりちゃん……」

あかり「結衣ちゃん、反省してたよ。ちなつちゃんの話を、もっと聞くべきだったって」

ちなつ「そうなの!?」

あかり「うん。京子ちゃんやみんなが、話してくれたみたい」

あかり「大丈夫だよ。みんなみんな、ちなつちゃんを信じてるから」

ちなつ「……ありがとう、あかりちゃん……」

あかり「あ……」

ちなつ「結衣、先輩……」

結衣「ちなつちゃん……」

京子「……ちょうどよかったじゃん。ほら、結衣」

結衣「うん……昨日はごめんね、ちなつちゃん……」

ちなつ「…………」

結衣「ちょっと、私……冷静じゃなかった……」

結衣「ちなつちゃんは……そんなことする子じゃ、ないのにね」

ちなつ「先輩……」

結衣「本当にごめん。信じるよ、ちなつちゃんを」

ちなつ「ありがとう、ございます……」

あかり「よかったね、ちなつちゃん!」

ちなつ「うん……うん……」

京子「さ、仲直りできたし、これで元のごらく部復活だね!」

ちなつ「はい……これからも、よろしくお願いします……結衣先輩」

結衣「うん、こちらこそ……ちなつちゃん」

京子「そういえば、どこに行くの? 二人とも」

あかり「ちなつちゃんが、次の授業で使う教科書をロッカーから取りに行くんだって」

京子「こらこら、ちゃんと毎日持ち帰って予習復習しないとダメだぞ」

ちなつ「え~、だって重いじゃないですか」

結衣「というか、京子が言えたことじゃないだろ」

あかり「あはは……」

ちなつ「えっと、鍵はと……」

ガチャッ

京子「うわ、ギッシリだな……」

結衣「……!? これって!?」ドサァッ!!

京子「ど、どうしたんだ結衣! いきなりロッカーの教科書をぶち撒けて!」

あかり「ゆ、結衣ちゃん……」

京子「……なっ!?」

結衣「……うっ……ううっ……」

ちなつ「……ど、どうしたんですか!?」

結衣「わ、私……」

結衣「ちなつちゃんのこと……信じてたんだよ……」

あかり「ゆ、結衣ちゃん……?」

結衣「これ……」スッ

あかり「しゃ、写真?」

ちなつ「こ、これ……結衣先輩の……着替え写真!?」

結衣「なんで、こんなものが……ちなつちゃんのロッカーの中から、出てくるんだ?」

結衣「他に誰も触れないはずの、ちなつちゃんのロッカーの中から!」

ちなつ「!!!!!!!」

「マタヨシカワサン?」

「サイテーネ・・」

「シネバイイノニ・・」



結衣「やっぱり……全部、ちなつちゃんの仕業だったんだな……」

ちなつ「ち、違います……私……」

結衣「もう、いいよ。言い訳なんか、聞きたくない」

結衣「二度と……私の前に、顔を見せないでくれ」ダッ

ちなつ「結衣先輩! 違うんです、私じゃありません!」

京子「……ごめん、ちなつちゃん。もう、私も擁護し切れないよ」

あかり「きょ……京子ちゃん……」

京子「ちなつちゃん……信じてたのは、私も一緒だったんだよ……」

京子「……さよなら」

ちなつ「あ……あ……」

ガラッ

ちなつ(…………)

ちなつ(何……このクラスのみんなの、視線……)

ちなつ(机に、何か書かれて……)



『クズ』『変態』『レズ』『消えろ』『さっさと死ね』



あかり「ひ……ひどい……」

ちなつ(どうして……)

ちなつ(どうして……こんなことに……)

ちなつ(あれから、もう三日……)

ちなつ(結衣先輩と京子先輩は、すれ違ってもまるで私がいないかのように無視してくる)

ちなつ(クラスのみんなは……あかりちゃん以外は、誰も私を相手にしようとしない)

ちなつ(櫻子ちゃんも向日葵ちゃんも、腫れ物のように扱ってる)

ちなつ(ごらく部に顔なんて、出せるわけがない)


あかり「ちなつちゃん……帰ろう」

ちなつ「…………」

あかり「……それでね、お姉ちゃんったらおかしくて……」

ちなつ「あかりちゃん……ありがとう」

あかり「え?」

ちなつ「あかりちゃんだけは……ずっと、私の味方でいてくれたね」

あかり「と、当然だよ。あはは、何言ってるの」

ちなつ「でも、もう無理しなくていいんだよ。ごらく部だって、行ってないんでしょ」

ちなつ「このままじゃきっと……あかりちゃんまで、いじめられちゃうから」

あかり「ちなつちゃん!」

ちなつ(ごらく部……楽しかったなぁ……)

ちなつ(結衣先輩はカッコよくて、京子先輩はちょっと面倒だけど、面白くて……)


あかり「……つちゃ……よ!」


ちなつ(私さえ関わらなければ……きっと、みんな仲良くできるよね……)

ちなつ(あかりちゃんとも縁を切って……そうすれば、またみんなは……)


あかり「……なつちゃ……かしん……よ!」


ちなつ(うん、そうするのが一番いいんだよね……)

ちなつ(私は……一人で、生きて……)




あかり「ちなつちゃん、赤信号だよ!」

ちなつ「……え?」



ドンッ


『それでは、一分間の黙祷を……』



千歳「もう、一年経つんやな……」

綾乃「表向きはみんな立ち直ったみたいだけど、やっぱり……」

千歳「うん、心の底ではずっと気にしてるやろな……うちも、綾乃ちゃんも……そうやろ?」

綾乃「……今でも思うわ。私はあの時、よく状況がわからないまま……訃報を聞いた」

綾乃「もっと……吉川さんの話を、よく聞いてあげるべきだったって」

千歳「綾乃ちゃん……」

綾乃「船見さんや歳納さん、赤座さんは……もっとそう思ってるでしょうね」

千歳「みんな、わんわん泣いてたなぁ……」

綾乃「そうね……私と同じように、もっと話を聞いてあげるべきだったって言って……」

綾乃「結局犯人はわからずじまいだったけど……今はもう、船見さんたちは疑ってない」

千歳「それを知ったら、天国の吉川さんも……喜んでくれるかなぁ?」

綾乃「……えぇ、きっとね」

キーンコーンカーンコーン

あかり(ちなつちゃん……ごらく部は三人になっちゃったよ)

あかり(でも、あかり達は……みんな、元気でやってるよ)

あかり(お墓参り……行こう)



あかり「えっと、ちなつちゃんのお墓は……あそこだ」

あかり「……あれ? 誰かいる……」

櫻子「あ……」

向日葵「赤座、さん……?」

あかり「櫻子ちゃん、向日葵ちゃん……」

支援

櫻子「そっか……やっぱり、あかりちゃんも来たんだね」

向日葵「歳納先輩と船見先輩は、一緒じゃないんですの?」

あかり「うん、進路指導でかなり遅くなりそうだから先に行っといてって……」

向日葵「そういえば、そんな時期ですわね……やっぱり三年生は忙しいんですのね」

あかり「それに……京子ちゃんと結衣ちゃんは、二人で来たかったのかもしれない」

あかり「きっと今でも……ちなつちゃんが死んだのは、自分達のせいだって思ってるから」

櫻子「そんな、違う! ちなつちゃんが死んだのは……交通事故だ……」

向日葵「それなら、私達にも責任がありますわ。吉川さんを信じ切れなかった、私達にも……」

あかり「あかりも……結局、ちなつちゃんを助けられなかった……」

向日葵「……そんなことはないですわ」

あかり「向日葵ちゃん?」

向日葵「吉川さんは、最後まで赤座さんだけは味方だと思っていたんでしょう?」

向日葵「だったら……赤座さんは、そのぶんだけ吉川さんは救われたと思いますわ」

あかり「……そう、かな……」

櫻子「……そうだな、きっと。だから、あかりちゃんも笑顔になろう」

櫻子「そんな湿っぽい顔してると、ちなつちゃんが悲しむからさ!」

あかり「……うん! ありがとう、二人とも!」


あかり(ちなつちゃん……あかりは、元気だよ)

あかり(だから、ちなつちゃんも……天国で、元気でいてね!)

一体誰が犯人なんだ・・・

京子「ふぅ……日が暮れる前には終わったな」

結衣「……それじゃ、帰ろうか。京子」



京子「あかりはもう、墓参り終わって家に帰ってるかな」

結衣「多分な」

京子「結衣……一年前のこと、覚えてる?」

結衣「……あぁ」

京子「あの時はちなつちゃんがいて……ごらく部、四人だったんだよな」

結衣「…………」

京子「なぁ、結衣」

結衣「……何だ?」

京子「ちなつちゃんはさ……私らが殺したようなものじゃないか」

結衣「……あぁ、そうだな」

京子「罪悪感……覚えてる?」

結衣「……わかってて、聞いてるだろ」

結衣「罪悪感、か……」






結衣「あるわけないだろ、そんなもの」

京子「ま、そりゃそうだよなー」

京子「それにしても驚いたよ。結衣が『あいつウザいから追い出したいんだけど』って言ってきた時は」

結衣「何言ってるんだ。京子だって同じこと思ってただろう」

京子「そりゃそうだ。いい子ぶりやがって、見てるだけでムカムカしてたし」

結衣「しかもガチレズだし、ホント気持ち悪いったらありゃしない」

京子「しかし、まさか死んじゃうとはねー。そこまでする気はなかったんだけど」

結衣「ま、別にいいんじゃないか。あんなの死んだところで」

京子「うわぁ、ひっど。さすが結衣はあくどいなぁ」

結衣「作戦を立てたのは全部京子だろ。ったく、本当に悪知恵が働くな、お前は」

京子「へへへ。そういえば、作戦は何から始めたんだっけ?」

結衣「えーっと、確か……そうそう、私のパンツだ」

京子「あぁ、そうだった。ちなつちゃんのカバンから、結衣のパンツを見つけるやつか」

結衣「あれって確か、手に私のパンツを隠したままカバンに手を突っ込んだだけだろ?」

京子「そうそう。さも最初からそこにありましたー、って感じにパンツ発見」

結衣「しかしいきなり拒絶するのは不自然すぎるから、一旦は信じる振りをする」

結衣「でも私はやっぱり、ちなつちゃんを警戒している……」

結衣「そこでツイスターゲームでちなつちゃんを突き飛ばし、それが次の作戦に効いてくる」

京子「信じられないくらいうまくいったなぁ、あれは」

京子「ちなつちゃんが体育の間に、カバンに結衣の体操服をしのばせる。そうしたら……」

結衣「私と顔を合わせづらいちなつちゃんは私らの体育の時間にこっそり返しに来る、か」

京子「あとはセットしておいたビデオカメラから取り込んでプリントアウトして翌日黒板に大掲載!」

結衣「堂々と返しに来られるんじゃないかと、最後まで不安だったけどな」

京子「そうされたら困ったけど、ちなつちゃんは絶対こっそり返しに来ると思ってたよ」

結衣「そして翌日、そのことを咎める、と」

京子「『何で堂々と返しに来なかったんだ』って私が言う予定だったんだけど、まさか先に大室さんが言うとはな」

結衣「あぁ、でもより自然な流れになった。大室さんのファインプレーだったな」

京子「そしてトドメに、あのロッカーの写真」

結衣「あれも最初の作戦と同じ、あらかじめ手に持っててその時仕込んだだけだがな」

京子「ちなつちゃんがロッカーに教科書置いてるのを知って思いついたんだ」

結衣「ロッカーはちなつちゃんしか弄れないから、あれが決定打になったってわけか」

京子「誰も被害者である結衣が犯人とは思わなかったみたいだし、作戦大成功ってか?」

結衣「しかし私は一連の作戦で、ずいぶん恥ずかしい目に遭ったんだが……」

京子「成功には犠牲はつきものってね。アレをごらく部から追い出せるなら安いものでしょ」

    /\___/ヽ

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  . |  ,,-‐‐   ‐‐-、 .:::|
  |  、_(o)_,:  _(o)_, :::| うわぁ……
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   \  /( [三] )ヽ ::/
   /`ー‐--‐‐―´\



 _| ̄|_    //ヽ\

 |      '|/ / ノ  "´ ̄ ̄''''‐-...ノヽ
 |__|'' ̄!  !    /            丶 |
   ,‐´ .ノ''   /  ,ィ             \
   ヽ-''"   7_//         _/^ 、 `、
┌───┐  /          / 、_(o)_,;j ヽ|
|┌─,  .|  /.           -   =-{_(o)
└┘ ノ ノ   |/        ,r' / ̄''''‐-..,>
   //   {         i' i    _   `ヽ
          ̄フ       i' l  r' ,..二''ァ ,ノ
   n      / 彡       l  /''"´ 〈/ /
   ll     _ > .  彡    ;: |  !    i {
   l|       \ l 彡l     ;. l |     | !
   |l      トー-.   !.    ; |. | ,. -、,...、| :l
   ll     |彡     l    ; l i   i  | l
   ll     iヾ 彡     l   ;: l |  { j {
   |l     { 彡|.      ゝ  ;:i' `''''ー‐-' }
. n. n. n  l 彡   ::.   \ ヽ、__     ノ
  |!  |!  |!   l彡|    ::.     `ー-`ニ''ブ
  o  o  o   l      :.         |

結衣「後はクラスメイトに苛められて転校でもすれば、もう二度と視界に入らずに済んでより良いと思ったが……」

京子「ショックでボーッとして車に轢かれるなんてな。メンタル弱すぎだっつーの」

結衣「ま、何はともあれこれでごらく部は元通りだな。最初からあんなのいらなかったんだ」

京子「部員が増えるのは別にかまわないけど、もうあんなウザいのは勘弁だな」

結衣「心配ないって、あんなウザいのは二人といないだろうし。あと一応聞いておくが、墓参りはどうする?」

京子「時間の無駄だよ。さっさと帰ろーぜ」

結衣「だな」

京子「さ、部活やろーか!」

あかり「京子ちゃん、結衣ちゃん……ごめんね、一緒にお墓参り、行けなくて」

結衣「何言ってるんだ。行けなかったのはこっちの都合だから、謝るのはこっちだよ」

京子「うん、私らは私らで二人で行ったから。ちなつちゃん、天国で元気にしてるかなぁ……」

あかり「きっと、元気にしてるよ。だから……あかりも、いつまでも泣いていられないよね!」

京子「そうそう、やっぱりあかりは笑顔が似合うよ!」

あかり「そ、そうかな……えへへ……」


あかり(ちなつちゃん……ちなつちゃんとは、離れ離れになっちゃったけど……)

あかり(京子ちゃんと結衣ちゃん、そして、あかりの心の中で……ずっと、ずっと、一緒だよ!)


結衣「京子、今日は何をするんだ?」

京子「そうだな、じゃあ……」



END

もう終わりなのか・・・

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