エルヴィン「養女にならないか?」ユミル「……は?」(1000)


※人類対巨人の最終決戦後からの話

※三年後設定

※捏造を含む



ここに登場する人物が、途中退場している可能性も大いにあると思う

それでも許してくれる心広き方を募集中



たくさんの人が死んだ
たくさんの思いが散った

こいつらは
人間らしく生きたいと願っただけ

ただそれだけを求めて、戦ったと言うのに


人間と巨人

いや、人類と世界との最終決戦は
阿鼻叫喚と言う言葉が、最も近い状態になった

私が覚えているのは、そこまでだ



――私が守りたかった奴らは、生き残っただろうか


ゆるゆると意識を覚醒させながら
ユミルは瞳をあけた


853年



ユミル「……ん?」

エルヴィン「気が付いたか」

ユミル「ここは、……どこだ?」

エルヴィン「病院だ」

ユミル「病院?」

エルヴィン「お前はあの戦いの後――全ての力を失い、気を失った。今のお前はただの人だ、よって我々が身柄を保護した」


ユミル「……っ!ヒストリアは!?」

エルヴィン「無事だ、それよりお前は自分の事を心配しろ」

エルヴィン「右足を失い、内臓はまたスクランブルエッグ状態になったんだ――まぁ最後の力で少しだけ再生し、命は取り留めた様だが」

エルヴィン「後遺症が残り、生き残れる程度くらいまで回復だ――無理はいけない」

ユミル「……なぁ」

エルヴィン「なんだ」

ユミル「何故、今お前がここにいるんだ?」

エルヴィン「…………」

ユミル「お前は調査兵団の団長だろ、それに護衛もいないのか?あのチビはどうした」

エルヴィン「やれやれ、君は質問ばかりだな」

ユミル「んな事はどうでもいい他の奴らは?――なぜお偉いさんのお前が、捕虜の病院の付き添いをしているんだ?」

エルヴィン「……私がここにいるのは、多くの者が亡くなり人手が足りないからだ」


エルヴィン「君を含めて数名、重要な人物が入院している――なにかあってはいけないので、私は病室の巡回をしているんだ」

ユミル「つまり、監視か」

エルヴィン「歯に衣着せぬ言い方をすれば、そうだな」

ユミル「戦いの成果は……、状況はどうなった」

エルヴィン「多くの犠牲の者達は、無駄にならずにすんだ」

ユミル「そうか」

エルヴィン「この世界は運命から脱却した、これで君を縛っていた物も……無くなったのだろう」

ユミル「……どこまで、知っている」

エルヴィン「戦いの中の発言だなんて、誰にでも聞かれる可能性があるものさ」

ユミル「大概、知っているのか」

エルヴィン「あぁ」

最後まで書いてほしい。


ユミル「私が、沢山の人を命を奪う展開を作ったのも」

エルヴィン「あぁ」

ユミル「他人を犠牲にしてでも、守りたかった物も」

エルヴィン「それがあるのは、人として普通の事だ」

ユミル「……なんだそれ、慰めているのか?」

エルヴィン「いや、話をしているだけだ――まぁこんな話をする機会は、今後いくらでもある」

ユミル「事情聴取、って奴か」

エルヴィン「どちらかと言うと尋問かもしれん」ガタッ

ユミル「……おい、どこへ行く」

エルヴィン「君が起きた事の報告と、他の者の病室への訪問かな」

ユミル「……っ!待て、まだ話は終わってなっ!」ズキッ

エルヴィン「無理して体を起すな――次に来る時は、もっと人数がいるから賑やかになるから話しもしやすいだろう」


ユミル「それは壁内のお偉いさんか?……はぁ、あ……あとはあのチビと、メガネ女だろ?」ググッ

エルヴィン「……動くな、死ぬぞ」

ユミル「ふっ、こんな傷――私の責任に比べれ、ば……全然軽いんだよ」ググッ

エルヴィン「待て、コードを外すな……死ぬぞ」

ユミル「はっ、お優しい事で」ググッ

エルヴィン(まさか、その状態で立ち上がれるとは)

ユミル(チッ、体がメチャクチャ痛てぇ。こりゃあ……とてもじゃないが、ヒストリアを探し回る事は出来ないな)チッ

エルヴィン(悪いが、これ以上の死者は出したくない)

エルヴィン「無理はするな」スッ

ユミル「は……お優しい事で――ついでにドアの前からどいて、ヒストリアの居場所も教えてくれぇかな」ズルズル

エルヴィン「無理だ……やめろ、本当に死ぬ」


ユミル「じゃあ今、ヒストリアに会わせてくれよ!」ズルズル

ユミル「私は、あいつに沢山悪い事をしたんだ――今すぐ謝らなくちゃいけないんだよ!謝らなくちゃ!」ズルズル

ユミル(ここまでは、壁を伝ってこれたが……これ以上進むには)ズキズキ

ユミル(くそっ……こいつが立ちのいてくれないと、進めねぇ)ズキズキ

エルヴィン「――例え、自分が死んでもか?」

ユミル「あぁ、そうだ」ズキズキ

エルヴィン「例え、君に死ぬ気があったとしても。あの人はもう、君の姿なんて見たくないかもしれない……それでもか?」

ユミル「それでもいい、あいつが自分で決断をしたのなら私はそれに従おう」ズキズキ

ユミル「だが、あいつの口から出た言葉でないと信用しないがな」ズキズキ

エルヴィン「そうか……では」スッ

ユミル「え、ぎゃっ……!」バタッ


エルヴィン「お前にはもう少し、ベットで寝ていて貰おうか」グッ

ユミル「お前はもっと、冷静で真摯な奴だと……っ、思っていたよ」ズキズキ

エルヴィン「私も兵士なのでね」ヒョイ

ユミル「――ぐっ」ドサッ

エルヴィン「すまん、降ろす時に勢いづいたな」

ユミル「無くなった足首の傷口を蹴りあげておいて、そこだけ謝るのか」ズキズキ

エルヴィン「そうか――ではお詫びに、もう少し気のきいた寝巻でも用意させよう」

ユミル「……は?」

エルヴィン「暴れるのはいいが、もう少し気を使いたまえ……前がはだけている」

ユミル「は!!?」


エルヴィン「もうお前は巨人側の主要人物でも、世界の生贄でも無い……せいぜい恥じらい位は持つ事だ」

ユミル「お、お前!!」


ガシャン

ユミル「…………なんだよ、あいつ」

ユミル「――さすがは調査兵団の団長様ってか?のらりくらりとかわしやがって!」クソッ

ユミル「あぁ、本当にはだけてやがる」ナオシナオシ

ユミル「チッ、あんなおっさんじゃなくて……ヒストリアの顔を見たかったなぁ」

ユミル「いや……今は少しでも情報が欲しい、どんな情報でも……だ。そう思うとあのおっさんは情報の宝庫だったな」

ユミル「もう少し話をして、情報を引き出せば良かった」

ユミル(どうもヒストリアの事となるといけないな……あぁ)

ユミル「会いたいなぁ」



コンコン

ユミル(……ノック?誰が)


ガチャ

ユミル「おい、まだ開けていいなんて…」

ハンジ「やぁ!来たよ!」

ユミル「…………」

ハンジ「やっほ」

ユミル「…………」

ハンジ「…………」

ユミル「……なんだ、お前か」


ハンジ「あぁ君、結構胸あるんだね。だからはだけちゃったのかぁ――それにコレ男物じゃん!身長で選んだのか、うーん……それとも」チラッ

ユミル「…………」

ハンジ「あはは!まぁそう言う事ってあるよね!」

ユミル「ねぇよ」

ハンジ「ユミルって名前も意外と男っぽくも感じるし、私も君にドキドキす…」

ユミル「それは元巨人化能力者を目の当たりにしているからだ」

ハンジ「……つれないなぁ」

ユミル「それはありがとよ」フンッ

ハンジ「可愛くないなぁ」

ユミル「性格だ」

ハンジ「それにしても……エレン、ライナー、ベルトルト、アニは本当に残念だったね。もう見てられなかったよ」

ユミル「――え、あいつら……まさか……」ハッ


ハンジ「そう……巨人化の能力、無くなっちゃったんだよね」

ユミル「なんだ、……それだけか」ハァァ

ハンジ「どうしたの!?脱力しちゃって!」ビックリ

ユミル「いや、そうなるだろ。私はてっきり、最悪の想定を……」

ハンジ「へぇ、心配したんだぁ」ニヤニヤ

ユミル「そんな事、言ってないだろ」ムッ

ハンジ「へぇー」ニヤニヤ

ユミル「くっ……」イラッ

ユミル(やっぱりこいつムカつく、まだ団長の方がまだマシだった!団長戻ってこい!)


ガチャ

ユミル(願いでも通じたか!?)

リヴァイ「おい、早くしろクソメガネ。いつまで時間くっているんだ」

ユミル(なんだ、人類最強だったか)ガッカリ

リヴァイ「?」


>>6 書き上げるつもりです


【数日後】


エルヴィン「――入るぞ」ガチャ

ユミル「……やっと来たか」ジロッ

エルヴィン「やぁ、久しぶりだな」

ユミル「おい、何だよこの数日間は……おい、新手の嫌がらせか?」

エルヴィン「何がだ?」

ユミル「毎日毎日、憲兵団や人類最強、人間の奇行種に囲まれているこっちの身になれ!質問攻めやら、好奇の視線やら、軽蔑の視線で気分が悪い」イライラ

エルヴィン「そうか」

ユミル「お前の手配だろ!?なに達観しているんだ」イライラ

エルヴィン「否定はしない」


ユミル「こちとら病人で、ここは病院だってのに。ちっとも休まる気がしない!」イライラ

エルヴィン「そうか……ではこちらも検討しよう。何が嫌だったか、日時や内容などは覚えているか?」メモトリダシ

ユミル「まずハンジ分隊長が」

エルヴィン「悪いがそれは無理だ」キッパリ

ユミル「じゃあ退院をしたい」

エルヴィン「それも無理だな、君に関する書類がまだまだ残っている」

ユミル「書類で他人の意思を捻じ曲げ気か」

エルヴィン「規則だから、仕方がない」

ユミル「――あんたってまともな人種なんだな」

エルヴィン「まとも……か、初めて言われたよ」

ユミル「あ、勘違いするなよ。調査兵団は奇人変人の集まりだからな、あんたはまだマシに見えると言う意味だぞ?」

エルヴィン「ふむ……まぁそう言われると、私は比較的マシな気がするな」

ユミル「そうだろう?――と、言う訳で。あんたもう少し、ここを訪問する時間を増やせないか?」


エルヴィン「何故だ?」

ユミル「お互い情報交換と行こう。他の奴らは情報を無料で強奪して行こうとするが、あんたは交渉に乗ってくれそうだ」

エルヴィン「交渉?」

ユミル「入院生活で退屈していてな、それぞれ持っている情報を交換していかないか」

エルヴィン「私は、またお前の傷口を蹴りあげて情報を吐かせるかも知れんぞ」

ユミル「まぁな、でもお前は乗ってくれるんだろ?」

エルヴィン「ふむ」

ユミル「お前の腹黒さと、話術、それにしたたかさは凄いって聞いている。私も、一時期は狡猾と言われてきたんでね」

ユミル「ちゃんとした会話のやり取りをして、少しはリラックスをしたいのさ」

エルヴィン「いいだろう、では定期的に話し合いをする場を設けられるようにしたいが。……今、症状はどうなっている?」

ユミル「内臓は……もう無くなっている物はしょうがないからな。ひたすらに両手両足を含め、体のリハビリだ」


エルヴィン「そうか、では大丈夫か」

ユミル「ん?」

エルヴィン「丁度、私の執務室の隣部屋が空いている――そこにお前を、移動させるとしよう」

ユミル「はぁ!?」

エルヴィン「調査兵団の内部も慌ただしい、が……それにお前も、ここにいるよりも安全だろう」

ユミル「安全、って」

エルヴィン「いくら理由があったと行動だとしても、それを許す者ばかりではない」

エルヴィン「君を狙う者も、少なからずいるだろう」

ユミル(……あぁ、そう言う事か)

ユミル「だからリヴァイ兵長や、ハンジ分隊長をここに?」

エルヴィン「そう言った意味合いが、無いと言えば嘘になる」


ユミル「もちろん、私も命が狙われる立場に相当する事は承知している」

エルヴィン「そうか」

ユミル「だがそれは、こちらの問題だ――兵団は関係ないだろ」

エルヴィン「まぁ、そうだな」

ユミル「それにむしろ、兵団の中の方が私に恨みを持った者が多いんじゃないのか?――私は同胞を、朋友を屠った原因と言ってもいい存在だぞ」

エルヴィン「あぁ」

ユミル「お前だって、私を怨む権利はある――だったら、行けないだろ」

エルヴィン「それは大丈夫だ、私はお前を怨んでは無いない」

ユミル「どうだか」

エルヴィン「非常な選択をしなければ、鬼にならなければならないと言う場面がある事――私は知っている」

ユミル「…………」

エルヴィン「それに私は、お前に命を救われた事もある」

エルヴィン「恩人である、お前を私は怨んでいない――心臓を、捧げてもいい」


ユミル「こんな奴に心臓を捧げるな、お前は一個団の団長だろ」

エルヴィン「そうだ……私はこれでも一個団の団長でね、執務室はそれなりに広い」

ユミル「あ?」

エルヴィン「仮眠用の部屋にはベット、トイレ、シャワーが付いている――だから外に出る必要もなく、君を保護できる」

ユミル「素晴らしい条件だが、結局は行われる事実は監禁だよな」

エルヴィン「ずっといる必要は無い。それに君も今よりは療養に専念できるし、我々もお前に関する手続きをしやすくなる」

ユミル「はぁ。やはりお前は口が上手いな、若造のくせに」

エルヴィン「この歳になって若造と言われた事は初めてだな」

ユミル「お前、幾つだ?」

エルヴィン「今年で41だ」

ユミル「なんだ……じゃあやっぱり、まだ若造じゃないか」ニシシ

エルヴィン「ではその若造は行動を起こすとしよう。こちらでリハビリが出来る様にして、退院の目安も付けてくる」


ユミル「もう、行くのか?」

エルヴィン「あぁ、今日はお前が心配で立ち寄っただけだ」

ユミル「ふーん……ありがとう、な」

エルヴィン「礼には及ばない。あと、部屋に欲しい物があれば言ってくれ」

ユミル「特には、ないかな。あぁ、本くらいあってもいい」

エルヴィン「それは、私が図書館から借りてくれば問題無いだろう――服は持っているのか?」

ユミル「無い、調査兵団時代の奴はもうだいぶ前だから……もう処分されているだろ」

エルヴィン「一応、探してみるか?」

ユミル「そこまで気を遣わなくていい」

エルヴィン「分かった」


ユミル(――ん?これって監禁する相手への話……か?)

ユミル(こんなに気遣ってくれるとなると、まるで同棲……いやいや)

ユミル「んな訳ないか」

エルヴィン「どうした?」

ユミル「いや別に……なんでもない、やっぱり無いなと思っただけだ」

エルヴィン「私服の事か?」

ユミル「そう言う事に、しておくよ」


そして、その二日後の夜の事だった

私がその部屋へと移動したのは



「エルヴィン団長!お疲れさまでした!」ビシッ!

「でしたぁ!」ビシッ!

エルヴィン「荷物は荷台に乗せたままでいい――かなり繊細な壊れモノだから、私が開けよう」

「はっ!」

「それでは失礼いたします!」

エルヴィン「あぁ、お疲れ様」



ガチャン

エルヴィン「…………。すまない、開けよう」ゴソゴソ

ユミル「ぷはっ!」


エルヴィン「無理をさせたな」

ユミル「はっ、まさか新作の……武器の試作品って事で運び込まれるだなんてな。まぁ私自身、武器と言われても大差ないが」

エルヴィン「すまないと思っている」

ユミル「は?」

ユミル(おいおい、本当に落ち込んだみたいな顔するなよ)

ユミル「こんな手段、戦じゃ良くあることだろ?」

エルヴィン「そう言ってくれると助かる、が」

ユミル「気にするな」

エルヴィン「あぁ、分かった……手を貸そう、立ちにくいだろ」スッ

ユミル「サンキュ」パシッ


エルヴィン「…………」

ユミル「ん?何だよ早く……っ、わっ」ヒョイ

エルヴィン「せっかくだ、このまま部屋に移動するとしよう」スタスタ

ユミル「おい、担ぎあげんな!」ジタバタ

エルヴィン「あぁ、荷物担ぎで悪いと思っている――なにぶん片手が義手なものでな」スタスタ

ユミル「いいよ、いいからお前……降ろせよ!」ジタバタ

エルヴィン「暴れると落ちるぞ――あぁ、ここから先が君の部屋になる仮眠室だ。ドアを開けてくれ」ピタッ

ユミル「……重いだろ、降ろせ」

エルヴィン「軽いとは言えんが、特に重くは無い……手が疲れる、ドアを」

ユミル「……チッ」ガチャ

エルヴィン「どうだ、病院よりはリラックスできそうな部屋だろう」スタスタ

ユミル「………ん、まぁ……私はどんな部屋でも構わんが」チラッ

エルヴィン「そうか、それは良かった」スタスタ


ユミル「…………」

エルヴィン「どうした?」

ユミル「ただ、さ……ちょっと気になるんだが。以前ここはお前の仮眠室だった、で合っているんだよな?」

エルヴィン「そうだが?――よし、ベットに降ろすぞ」

ユミル「あぁ……っと」ストン

エルヴィン「一応、カバーなどは変えてある」

ユミル「……なぁ」

エルヴィン「なんだ」

ユミル「私の目に写っている――ピンクでレースの付いたベットカバーや、その上にあるぬいぐるみ達は気のせいか?」

エルヴィン「…………?何を固まっているんだ?」

ユミル「え、え……だって、以前はお前の仮眠室だったんだろ?」

エルヴィン「女の子の部屋とは……こう言った物ではないのか?」

ユミル「はぁ?」


エルヴィン「そう思って、整えておいたのだが」

ユミル(え、何こいつ……本気で言っているのか?)

ユミル(敵対した事もあって、ブスで。しかも今は片足の無い私を……女の子扱いだぁ?)コンラン

ユミル「なぁ、正気か?」

エルヴィン「何がだ?」

ユミル(こいつ、捕虜と言うかなんと言うか……まぁそう言う奴に、こんな対応していいと思っているのか?)

ユミル(でも、考えてみれば――今、この状況も、ベットの上で抱きしめ…!)カー!

エルヴィン「――どうした、部屋が気に入らなかったか?」

ユミル「そ、それはいいから!そろそろ手を離せよ!」ジタバタ

エルヴィン「わ、わかった……ほら」パッ

ユミル「……っ!」ゼイゼイ


エルヴィン「暴れすぎだ、いきなりどうしたんだ?」

ユミル(顔色一つかえてねぇ!?分かった、こいつのタイプはエレンタイプなんだな!つまり、鈍感なんだ!)

エルヴィン「……もしかして照れているのか?」

ユミル「ふぁ!?」ビクッ

ユミル(違ったぁ!感情を顔に出さないベルトルさんタイプ――いやエレンとの混合型か!?)

ユミル(鈍感な癖に、気がついたとしても顔に出さないタイプか)

エルヴィン「…………」

ユミル(うーん、表情が読めない)

ユミル(こうまで読み切れないと、照れよりも苛立ちと言うか――呆れてしまうな)ハァ

ユミル「あのなぁ、これでも私は外見年齢だけでも20を超えて…」

エルヴィン「部屋の内装が、気に入らなかったか……?」

ユミル(う……っ!)ギクリ

ユミル(なんでそんな、悲しそうな顔をするんだよ!?)

ユミル(罪悪感が――でも言うしかないか)ズキズキ


ユミル「あぁ、気に入らなか…」


ガチャ!!

ハンジ「エルヴィーン!」バンッ!

ユミル「!!?」ドキーン!

ハンジ「ねぇどうだった!?どうだったユミルの反応!」スタスタ

ユミル「……!」シンゾウバクバク

ハンジ「あの時男物着てた時の反応から、きっと女物の方が……ぶしっ!」ガシッ

ユミル「この部屋はてめぇの所為か、クソメガネ……」グググ

ハンジ(しまった、迂闊に近づきすぎた)ギリギリ

ハンジ「……は、ハハハ……ユミルちゃんピンクは嫌いだった……ぐ」ギリギリ

ユミル「私を玩具にしようってのは、100年は早いんだよ!」グググ


ハンジ「ぐぅ……君、怪我しているのに強いな」グググ

ユミル「うるせーよ、ピンクにふりふりのベットカバーにプラス――ぬいぐるみまで用意しやがって!」ギリギリ

ハンジ「ぬ、ぬいぐるみ?」グググ

ユミル「そう、ぬいぐるみだ」ギリギリ

ハンジ「いや――そのぬいぐるみは、私じゃないよ」ググ

ユミル「あ?」ギリギリ

ハンジ「たぶん……」チラッ

エルヴィン「…………」

ユミル(マジかよ!?)パッ

エルヴィン「……すまなかった」シュン

ユミル「い、いや…こちらこそ」


ハンジ「……?エルヴィン、もしかして疲れている?」

ユミル「そうか、やっぱそうだよな!じゃないとぬいぐるみなんて、私に買わない…」

ハンジ「そうじゃなくて」

ユミル「ん?」

ハンジ「エルヴィンってあんまり顔に表情でない方でしょ、ポーカーフェイスって言うか。でも今は少し悲しそうに見える……疲れてる時はそうなるんだ」

ユミル「……ふーん、そうなのか」

ユミル(そんな奴に抱きささえさせた上、暴れてしまったのか)

ユミル「悪かっ…」

ハンジ「でも今は疲れているからじゃなくて――君の「ぬいぐるみなんか」の発言で傷ついているから、悲しそうなんだと思うよ?」

ユミル「あ、……ぅ」ズキッ

ハンジ「ユミル、ほら。こんな時はなんて言うのかな?」

ユミル「……ごめんなさい」

エルヴィン「いや、こちらこそ悪かった。ぬいぐるみは嫌いだったか」

ユミル「いや、嫌いと言う訳じゃなく」


エルヴィン「……ん?」

ユミル「柄じゃなくて、少し照れるんだよ」

エルヴィン「そうか」ナデナデ

ユミル「……なんだよ」

エルヴィン「いや、嫌いじゃないなら良かったと思ってな」ナデナデ

ハンジ「ふふ――じゃあユミル、反省の意味も込めてエルヴィンを癒しちゃいなよ!」

ユミル「……癒す?」

ハンジ「そうそう!ちょっと体を使って、気持ちイイ事でもし…」

エルヴィン「ハンジ!」キッ
ユミル「ちょっと待てコラ」ギロリ

ハンジ「ぶーぶー、冗談だったのにぃ」

ユミル(こいつ)イライラ

エルヴィン「例え冗談でも、言っていい事と悪い事がある」

ハンジ「はいはい、わかりましたぁ」


エルヴィン「君もすまなかったな」キリッ

ユミル「いや」

エルヴィン「その、気に食わない部分もある部屋かもしれないが――少しでも休んでくれたまえ」シュン

ユミル「あ、いえ……どうも」

ユミル(最初はキリッとしていたのに)

ハンジ(途中から顔を逸らしたら台無しだよ、エルヴィン)

エルヴィン(そうか、女性は誰でもぬいぐるみが好き――と言う訳ではないのか)

ユミル(ちょっと悪いことしちゃったかな)

ハンジ(なんか、お土産を盛大に空振ったお父さんみたい)


【その夜】


ユミル「これは……」

寝巻「」キラキラ

ユミル(寝巻まで乙女チック……手触りの良い生地と淡いピンク、そして襟元と裾にはフリルか)

ユミル「……よし」

ユミル(フリルだけでも取ろう)

ユミル(ぬいぐるみでは、悪いこと言って……これ以上言うと申し訳ないしな)チョキチョキ

ユミル「」チョキチョキ

ユミル(フリルって取り難いもんなんだな、だいぶやったのに……まだ十分の一か)チョキチョキ


それからの生活は、酷く単調な物だった

朝起きる、一人分の朝食を作って

リハビリをして、ゆっくりと体を休める

昼ご飯を作って食べて

リハビリをして本を読んで、夕御飯を作って食べる



ユミル(ヤバい、これ太るわ)


そう思うには十分な時間だった


【ある日】


ハンジ「へぇ、でも体力落ちいている様には見えないけど?運動はしているんでしょ?」

ユミル「やる事もないしな……でもリハビリも兼ねて、出来る筋力トレーニングはしてる。自力で動けなくなるのは一番嫌だし」

ハンジ「わかるー、私はなった事ないけど……確かにそうなったら筋トレするわ」

ユミル「そうか、ところで」

ハンジ「ん?」

ユミル「ここまで話しておいて何なんだが」

ハンジ「なになに、気になる」

ユミル「……なんでお前は、さも当然の様に私の部屋にいるんだ?」

ハンジ「お決まりのセリフだね!もちろん暇になったから来たんだよ」

ユミル(……そうは言っているが、たぶん)スズッ

ユミル(心配して、くれているんだろうな)


ユミル「…………」ウーン

ユミル(心配してくれている、だなんて――ようやく私も、人の気持ちを汲む事が出来るような心理状態になったって事か?……いや)

ユミル(こいつらに飼いならされたと思うべきか、四六時中いつも傍にいる……だから脳が少しでも緊張を解そうとして、そう認識しているだけかもしれない)

ハンジ「ユミル!無視するなよぉ」

ユミル「はいはい」

ハンジ「はい、は一回!」

ユミル「私が、そろそろお前ら以外の奴と会いたいと思っていた……って話だったか?」

ハンジ「違うって!なにそれ、不満!?私もリヴァイもエルヴィンも!こぉんなに愛情を持って接しているのに!」

ユミル「あんたの愛情は元・巨人化能力者には受け入れられにくいんだよ、巨人マニアさん」

ハンジ「君はもう巨人じゃないでしょ?」

ユミル「そうだけど、個人的には遠慮したい物件なんだ」



ガチャン

ハンジ「あ、エルヴィーン!お帰り」

ユミル「……お帰りなさい」

ハンジ「今度の遠征の予定、どうなった!?やっぱり猛獣の生息状況や地質の調査限定?」

エルヴィン「あぁ、それなんだが……」ジー

ユミル「あ?どうし……」

エルヴィン「少し太ったか?」

ハンジ「あ」
ユミル「」ブチッ

ユミル「テメェ!!いい度胸しているじゃないかゴラァア!」ケンケン

ハンジ「うわぉ、これが特訓の成果かい?凄いケンケンじゃないか!」

エルヴィン「……いや、少し待て」スッ

ユミル「あ゛?」ムギュ

エルヴィン「気を付けないと、怪我をしたら危ない」ギュウ


ユミル「」ムカムカ

エルヴィン「それに、過度の運動をすると内臓に負担が行ってしまう」

ユミル「」ムカムカ

ハンジ「ははは!やっぱり凄いケンケンでも、現役の調査兵団団長だと正面から優しくキャッチされちゃうよね」

ユミル「」ムカムカムカムカ

ユミル「さっさと肩に置いた手を離せ、よ!」ドゴッ

エルヴィン「ぐっ!」

ハンジ「おぉ!そこからの頭突き!やるねぇ!」」

ユミル「いや、テメェは怒れよ!上司が頭突きされてんだぞ!?」

ハンジ「まぁそう言う日もあるって事で」

ユミル「どんな日だ!」


【ある日】


コンコン

リヴァイ「……失礼するぞ」

ユミル「おやおや、リヴァイ兵長殿ではないですか」

リヴァイ「その微妙に敬語ったらしい言い方、止めろと常日頃からいっているだろ」

ユミル「あ?皆『兵長殿』くらい言っているじゃねぇか」

リヴァイ「お前が言うと、何故か小馬鹿にしたように聞こえるんだよ」

ユミル「そうか……心の声が漏れないよう、気を付ける」

リヴァイ「その減らず口はいつまでたっても健在だな、躾けられたいか」

ユミル「あいにくマゾでは無いのでね――仕方ない、善処するとするよ」

リヴァイ「わかりました、やめます……と言わない所が、お前らしいな」ハァ

ユミル(警告抜きにしても、なんだか兵長殿に対しては抜けにくいんだよなぁ――敬語)


リヴァイ「ところで……何をやっている?」

ユミル「見て分からないですか、掃除」

リヴァイ「ここはエルヴィンの――調査兵団団長の執務室だぞ?」

ユミル「団長からの許可は得てますよ、机と棚を触らなければいいって」

リヴァイ「…………」

ユミル(不機嫌そうだなぁ)

リヴァイ「…………」

ユミル「リハビリの為には必要」

リヴァイ「ふん」スタスタ

ユミル「そんな心配しなくても、機密漏洩なんて出来る立場じゃないって……事実の上軟禁状態だし」

リヴァイ「」ストン

ユミル「兵長殿?」

リヴァイ「なんだ」

ユミル「なんでソファーに腰を下ろしたんです?」


リヴァイ「監視は必要だろう」

ユミル「この現状でも、まだ心配なのかぁ」

リヴァイ「そりゃあな」

ユミル「そうですか、よっ……じゃあこれから、ガラスの上の所拭くんで」

リヴァイ「そうか」

ユミル「柄にもなくスカート穿いてるんで、見るんならお金を請求します」

リヴァイ「そこは、見るなじゃないのか?」

ユミル「ちなみに水色のショーツを着用してます」

リヴァイ「そこまで言うのに、見るなと言うのか」

ユミル「ちなみに、これを揃えたのは団長」

リヴァイ「…………」

ユミル「団長の趣味は、水色に白玉の可能性」

リヴァイ「それは言わなくていい」

新しいパターンだな。おもしろい…


ユミル「兵長殿は団長の事を信頼なさっているので」

リヴァイ「…………」

ユミル「どんな些細な情報でも、欲しがるんじゃないかと思っていましたが?」ニヤニヤ

リヴァイ「…………」

ユミル「無言で睨まないでくれよ、こっちはは事実上の軟禁状態だし。話し相手が欲しいんだよ」キュッキュッ

リヴァイ「己の下着の柄まで口にしてか」

ユミル「兵長殿は見ないだろ、なんせ外に部下の方がいらっしゃってますから」キュッキュッ

リヴァイ「気付いていたのか」

ユミル「そりゃあ、例え人材不足の時期としても……兵長殿は人類最強だし、護衛が必要だろ」キュッキュッ

リヴァイ「…………」

ユミル「めまぐるしく情勢が変わったって事は、政治の勢力図も大きく変わる可能性がある」キュッキュッ

リヴァイ「……お前」

ユミル「そこに団長殿や兵長殿が巻き込まれない、だなんてある訳がない……例え貴方達が本気で興味がないと告げたとしても」キュッキュッ


リヴァイ「資料に書いてでもあったのか?」

ユミル「いいや、元・巨人側の重要人物としての体験談――にしても、ようやく普通の会話が出来た気がする」ウーン

リヴァイ「そうなのか」

ユミル「ハンジ分隊長とは雑談ばかりだし、気が使っての訪問である事はバレバレ」キュッキュッ

リヴァイ「…………」

ユミル「団長とは一番過ごす時間は長いけど、基本執務中は私は自室に籠っているし……夜遅くに話しこむほど迷惑は掛けらくてな」キュッキュッ

リヴァイ「…………」

ユミル「なんかこう、少しは実があるけれど話しやすい――そんな会話をしたくてね」キュッキュッ

リヴァイ「話をしたい、とは」

ユミル「ん?」キュッキュッ

リヴァイ「俺達を信頼していると言う事、か?」

ユミル「結果的にそうなっちゃった……かな」キュッキュッ

ふむ。興味深い。続けたまえよ、君。


ユミル「エルヴィン団長が――色んな資料を読ませてくれたって事が、大きく信頼関係に貢献したのかも」キュッキュッ

リヴァイ「…………」

ユミル「その分こっちも情報提供しているから、その見返りなんだけれどな」キュッキュッ

リヴァイ「…………」

ユミル「それに向こうも節操無く資料を見せている訳ではないし」キュッキュッ

リヴァイ「……おい」

ユミル「何だ?」クルッ

リヴァイ「もう少し上を磨いとけ、こっから見ると少し曇っている」

ユミル「はいはい」キュッキュッ


リヴァイ「他人との信頼関係を築くのはいいが――お前は、気を抜きすぎるなよ」

ユミル「…………」キュッキュッ

リヴァイ「元巨人と、人間の組織との間の溝が埋まるはずが無いしな」

ユミル「でも――兵長殿たちは、信頼してますよ」キュッキュッ

リヴァイ「何故オレに言う」

ユミル「分隊長は騒がしいから却下、結論だけを時間の無い団長に告げるのは――さすがに恥ずかしい」

リヴァイ「……そうか」

ユミル「あとは場の流れ」

リヴァイ「だろうな」

ユミル「なので兵長殿がソファーに座ってくれて、少し長い時間話してくれて。この話の流れになったのは本当にありがたかったです」

リヴァイ「耳、赤いぞ」

ユミル「言っているんじゃねぇぞ!テメー!」ウガー

リヴァイ(なるほど、恥ずかしいと言うのは納得した)


>>44 ほんと、当方の妄想はどうなっているんだ

>>47 はい、続けます


【ある日】


エルヴィン「今戻った」ガチャ

ユミル「あ、お帰りなさい」ヒョコヒョコ

エルヴィン「あぁ、ただいま……そろそろ本を読み終わる頃だろう、本を借りて来た」

ユミル「へぇ、良く解ったな」

エルヴィン「君を見ていれば分かる」

ユミル「それがお前の仕事だからな……にしても、今更ながら申し訳ないと思うよ」

エルヴィン「何がだ?」

ユミル「私がクリスタの様な超絶美少女だったら、まだ面白みのある仕事だっただろう?」

エルヴィン「そんな事は言っても、状況は変わる物ではないさ」

ユミル「そうだな」


エルヴィン「それに気が散る様な容姿だったら、それはそれで困る」

ユミル「そっか、そばかすありな十人前以下な容姿万々歳だな」

エルヴィン「それは違う」

ユミル「あ?」

エルヴィン「お前は卑下する様な容姿を持っていないだろう?」

ユミル(出たな、エレンとベルトルトの性質を併せ持ったようなたらし言葉――略してエレトルト言語)

エルヴィン「……ん、どうかしたか?」

ユミル「いいや、別に」

エルヴィン「そう言えば――ようやく、お前の義足を作る許可が下りた」

ユミル「マジか!ようやく本腰を入れてリハビリ出来んのか!?」

ユミル(そうそう、このさらっとした話題変換も何も思っていない証拠だよな……やっぱりエレン程、物を考えずに褒める奴だ)

エルヴィン「今度の週末、半日だが時間が取れた……義肢店に向かおうと思う」


ユミル「は?こっちに呼ばないのか?」

エルヴィン「君がこの部屋にいる事を知っているのは、私達三人だけだ。下手に人を招くより、周りにばれないよう外に出た方がいいだろう」

ユミル「ま、そもそもこちらに決定権はないからな……従うよ」

エルヴィン「それに君も、そろそろ外出がしたいんじゃないのか?」

ユミル「私の事を考えてって事か?……逃げ出すかもしれないのに」

エルヴィン「君はそう言った事をしない」

ユミル「へぇ信じてくれるのか」

エルヴィン「信頼はまだ完全ではないが、君はそう言う無駄な労力はしない事は知っている」

ユミル「信用はしてくれてるってか、そうなると嬉しいもんだな」

エルヴィン「ただし……後々問題にならないよう、リヴァイも付けて行かねばならないがな」

ユミル「ちょっとだけ感動した、私の心を返せ」


エルヴィン「だが、個室での食事くらいなら行けると思う」

ユミル「個室って言うのがまた、軟禁っぽくて嫌になるな」

エルヴィン「その時はリヴァイには自由時間を出すので、君と私の二人きりになるだろう」

ユミル「……は?」

エルヴィン「だから、私は出来る限り外に出ておく……いない物として、ゆっくりと寛いでくれたまえ」

ユミル「その提案はありがたいけどよ、個室ってだけで軟禁状態と言う事は変わらないから。あんま意味無いな」

エルヴィン「……そうか」

ユミル「だからあんたも一緒に食えよ、どうせ変わりがないんだったら。まだ話し相手がいた方がましだ」

エルヴィン「それはありがたいが、いいのか?」

ユミル「最近あんたも仕事で忙しそうだからな、こっちもゆっくり話せる時間が出来て嬉しいさ。また会話の駆け引きでもしたいんでね」

エルヴィン「まだ欲しい情報があるのか?」

ユミル「あぁ、まだまだたんまりある」ニヤッ


エルヴィン「まぁそれは、こちらも同じだ……君の持つ、外の世界の情報は欲しい」ニッ

ユミル「決まりだな」

エルヴィン「それはそうと、君は好きは食べ物はあるか?」

ユミル「あ?時間に応じて近場で済ませば……」

エルヴィン「個室の店を前もって探しておかなければならない、それにどうせなら君も好きな物を食べたいだろう?」

ユミル「いいのか?」

エルヴィン「君が窮屈な想いをしているのは、私達の事情も含んでのことだ……感謝している」

ユミル「そうだな、魚が結構好きだ――あと甘い物も」

エルヴィン「そうか、では店を探しておこ…」

ユミル「待て!」

エルヴィン「…………?」

ユミル「私も教えたんだ、お前の好きな料理も教えてくれ」


エルヴィン「何故、か――聞いてもいいか」

ユミル「あぁ。私は、私の安全の為に匿って貰っている事を感謝している……だから今度、お前の好きな料理でも用意してやろうと思ってな」

エルヴィン「気にしなくてもいい、私達の事情だ」

ユミル「いいや、気にする。とは言っても。材料はそちら持ちだから、ありがたさはないだろうが」

エルヴィン「いや、しかしそれは……」

ユミル「それが駄目なら、今度裸エプロンで出迎えてやる」

エルヴィン「……!?ごほっ、ごほ」

ユミル「おいおい、さすがに驚きすぎだろう」ニヤニヤ

エルヴィン「そんな言葉を、どこで?」

ユミル「この間の本のネタで入っていた。全く……私はお前達三人にしか話せないから、こう言った冗談にも返せるようになって欲しいってのによ」ニヤニヤ


エルヴィン「冗談を返せるよう、会話力の努力はするが――君はそのような冗談は言わない方がいい」

ユミル「……あぁ、そうかい」

エルヴィン「私はこれから図書館に本の返却をしに行く、くれぐれもドアは開けないように」

ユミル「ははっ、七匹のコヤギかよ――まぁ開けないさ」

エルヴィン「では行ってくる」

ユミル「……あぁ、行ってらっしゃい」ガシャン


ユミル「……あぁ、暇だなぁ」

ユミル(でも、裸エプロンは言ったら駄目だったか)

ユミル(やっぱり、ブスに言われたら破壊力の方が強かったか)

ユミル(帰ってきたら、もう一度謝ろう)



エルヴィン(全く、歳の若い娘があんな事を言うなんて)

エルヴィン(話し相手が少ないと言うのは申し訳ないと思う、あれでは鳥籠の鳥の様なものだ)

エルヴィン「……そのためにも、世間が早く収まらなければな」

エルヴィン(とりあえずは――なるべく早く執務室に戻るような生活を、心掛けるとするか)


【ある日】


エルヴィン「ユミル」

ユミル「…………」

エルヴィン「ユミル、すまん」

ユミル「…………」

エルヴィン「本当に申し訳なかった」

ユミル「…………」

エルヴィン「まさか、仕事が入るとは思わなかったんだ」

ユミル「…………」

エルヴィン「すまない、楽しみにしていて貰ったのに」

ユミル「…………」


エルヴィン「その」

ユミル「…………」

エルヴィン「……行ってきます」

ユミル「」フリフリ


ガシャン

エルヴィン(手だけ振ってくれた、か)

エルヴィン(戻ってくるまでに、機嫌だけでも直っていればいいんだが)

エルヴィン(…………)

エルヴィン(直っていなかった時の為に、何か甘い物でも買って帰ろう)ハァ


【ある日】


ハンジ「あれぇ、エルヴィン!どうしたのさ、そんなに荷物を持って!」

エルヴィン「あぁ、ハンジか……この書類は持って帰れる書類なので、執務室で処理をしようと思ってな」

ハンジ「あー、もしかしてあの子の為?」

エルヴィン「……寂しい思いをさせてしまっている」

ハンジ「エルヴィンったらお父さんみたい、こんなお父さんがいてくれて幸せなんじゃない?」

エルヴィン「そう言う、ものか?」

ハンジ「そうだよ。まぁあの子の場合、家族愛を感じる前に軟禁生活だけどね」

エルヴィン「それを言ってしまうと、元も子もないな」


ハンジ「にしても……エルヴィンって実は、子煩悩になっちゃうタイプなんじゃない?」

ハンジ「でも子煩悩になりすぎると、兵団の若い子に厳しく出来なくなっちゃいそうだと感じたエルヴィンは――奥さんに泣く泣く子守りを一任!そして…べふっ」

リヴァイ「仕事が滞っているのに、お前は随分とのんきな事を言っているな」ゲシゲシ

ハンジ「痛い!痛いよリヴァイ!こっちは女性なんだから優しくしてぇ!!」

リヴァイ「…………」ドカッドカッ

ハンジ「ぎゃああ!強さが増したぁあ!?」

リヴァイ「むしろお前が女と言う事の方が謎だ、本当に産めるのか?巨人との子供が欲しいとか言うなよ?」フンッ

ハンジ「はは、あー…痛かった。そりゃあ、私も女なので子供も欲しいけれどね!」

リヴァイ「初耳だ」

エルヴィン「私もだな」

ハンジ「だろうねぇ、私も平和の世界になってようやく知れたよ」


ハンジ「けれど今は、子供達を安全に育む社会の方が必要だ。この社会の構築を通して、私達は全ての子供達を育てていける」

ハンジ「こんな大仕事、他では味わえないよ。離れたくない!」

エルヴィン「そうだな……酷な事を言うようだが。私も君が、兵士を引退されると少し困る」

リヴァイ「まぁこの奇行種じゃ、結婚自体が無理だろ」

ハンジ「リヴァイうるさい。んー…でもさぁ、やっぱり子育もやってみたいたいよねぇ」

リヴァイ「訓練兵の指導の仕事は余っているぞ」

ハンジ「そんなんじゃなくて、名付け辺りから悩みたいんだ……あ、そうだエルヴィン」

エルヴィン「?」

ハンジ「エルヴィンさぁ、奥さん貰っちゃいなよ!私とリヴァイとエルヴィンで子供育ってて行こう!」

エルヴィン「それも構わないが、それよりも前に――君の先程の言葉を借りると、あの子が私達の娘だろ」

ハンジ「あ、本当だ!でももう成長しちゃっているじゃん」シュン

リヴァイ「あいつか……俺もあんな口の悪い奴は好みじゃねぇ」


ハンジ「まぁまぁそう言わずに……と、ごめんねエルヴィン、呼び止めてしまって」

エルヴィン「いや、大丈夫だ――では悪いが、私は先に失礼するよ」

ハンジ「お疲れ」

リヴァイ「明日も頼む」

エルヴィン「では、また明日」





ハンジ「……あ!」

リヴァイ「ん?」


ハンジ「そう言えばさぁ、あの子がエルヴィンと子供作ってくれれば面白そうじゃない?」

リヴァイ「下世話な話は後にして、さっさと書類を書きあげろ」

ハンジ「えー、面白そうなのにぃ」

リヴァイ「第一それは不可能だろ」

ハンジ「……そうだねー、でもお似合いだと思ったんだよ」

リヴァイ「お前はその話題を出して、あいつの腹の内を探りたかったんだろうが」

ハンジ「!」ギクッ

リヴァイ「お前は会話の誘導術が下手だな、俺でも気付いた」

ハンジ「リヴァイよりは上手いさ」

リヴァイ「…………」ゴスッ

ハンジ「いたたたた!ゴメンって!」



ガチャ

エルヴィン「ただいま」

ユミル「あぁ、おかえり」

エルヴィン「美味しそうな匂いがしているな」

ユミル「今日は団長殿が早く帰られると言う連絡が、分隊長から珍しくあってね――用意していた」

エルヴィン「そうか」

ユミル「私も暇だしな、料理をさせてくれる機会に恵まれると言うのは嬉しい」

エルヴィン「そうか、ではリヴァイやハンジの日程も出来る限り伝えよう――彼等も誘って食事をしようか」

ユミル「いや、兵士長殿は良いや……なんか厳しそうだし」

エルヴィン「そうか」


ユミル「まぁ私も、料理がそれほど得意と言う訳ではないからな」

エルヴィン「そうか?美味しいが」

ユミル「知識としては持っているが、実技が伴っていない部分もあるんだよ」

エルヴィン「なら練習をすればいい、私も出来る限り味を見よう」

ユミル「気持ちは嬉しいが、ガスコンロ一つで出来る物なんて限られているし……やっぱり止めておくよ、お前だけで十分だ」

エルヴィン「そうか……まぁ食べよう、いい匂いだ」

ユミル「それは良かった」

エルヴィン「あぁ、ありがとうユミル」

ユミル「あ」

エルヴィン「ん?」

ユミル「なんだか随分と久しぶりに団長殿の口から私の名前が聞こえた気がするよ」ニヤリ

エルヴィン「そうか、まぁ呼ぶ機会が少なかったからな」


ユミル「はは、今日一日の思い出が団長の口から私の名前が出ました……か、笑えるな」

エルヴィン「料理を作った事も、思い出にすればいい」

ユミル「そうだな、でもやっぱり一人では随分と寂しい――そんな事すら、思いつかなくなるなんて」

エルヴィン「…………」

ユミル「やっぱり、人がいると言うのは良い事だな」

エルヴィン「君が」

ユミル「ん?」

エルヴィン「君が人と話せる環境は、私も考えている」

ユミル「そっか」

エルヴィン「あぁ」

ユミル「ありがとうな」


【ある日】


「と、言う訳で今回のこのお話は」

「だからそれは、内密にしておいても」

「いいや、このお話は侯爵様にとっても重要な」

「如何ですか、スミス殿」


エルヴィン「そうですか、ただ私も年なもので」

「はは、何を言われます――まだお若いですよ」

「お子だって望めるのでしょう?」

「そろそろ身を固められては……だったら我が家の娘は如何ですか?」

「卿はこの前にリヴァイ兵長にもその様な事を言っていたではないですか」

「はは、娘の為なら親は身を粉にして動きますよ」


エルヴィン(娘の為――か。だったら、こんな年の者ではなくもっと近い者に娘を進めるべきだろうに)

エルヴィン(まぁ、私が言うのもなんなんだがな)

エルヴィン(まったく……貴族と言う物は、中々理解しがたい)

エルヴィン(それにしても……そうか、私ももう適齢期を過ぎてしまっているのか。今まで忙しすぎて、そんな事も忘れていたな)

エルヴィン(だがどちらかと言うと、ハンジやリヴァイの子供たちの方が見てみたくなってしまっている。私はもう既に、親心を持っている様な物か)

エルヴィン(あいつらが結婚したら、どちらの結婚式でも泣いてしまいそうだな)



ガチャ

ユミル「おかえり」

エルヴィン「あぁ、ただいま」

エルヴィン(……ん、これは)

エルヴィン「何か、用意してくれていたのか?」

ユミル「食事会とは聞いていたがな、軽く食べられる物だけ用意している――それとも、もう休むか?」

エルヴィン「いや、ちょうど軽い物を食べたいと思っていたんだ」

ユミル「そうか、小さめのまんじゅうだから日持ちもする――無理はしなくていい」

エルヴィン「あぁ、ありがとう。ユミル」


【ある日】


ハンジ「おぉおおお!太陽がめっちゃくちゃ体に当たっている!気持ちイイ」

ユミル「…………」

ハンジ「外だぁ!やったぁああ!!」

エルヴィン「ハンジ、なんだそれは」

ハンジ「ぎゃ!か、帰っていたのかエルヴィン!」アセアセ

エルヴィン「あぁ――ただいま」

ユミル「おかえり……いや、ハンジ分隊長がせっかくだから外に出た際の喜びのポーズを見せてやる、と」

エルヴィン「何故、君は止めなかったんだ?」

ユミル「いや、我ながら馬鹿な事をした事は分かっている……だがいかんせん暇で、な」

エルヴィン「暇とは人をここまで腐らせてしまうものなのか」

ユミル「暇を兵器化したらえらい物ができそうだ、まさにあんな風になってしまう」

エルヴィン「いや――あれはハンジの素質だ、暇は関係ない」

ハンジ「あのー…お二人さん、なんで私をけなしているんですか」


ユミル「煩い暇人」

ハンジ「ユミル酷い!ねぇエルヴィンもそんなに乗らなくても……ん?」ズイッ

エルヴィン「……ハンジ?」

ハンジ「なんだか顔色がいいね、疲れもそんなたまって無さそうだし……へぇ、ふーん」ニヤニヤ

エルヴィン「ハンジ?」

ユミル「分隊長……何ニヤニヤしてんだ?」

ハンジ「いやぁ、別に」ニヤニヤ

ユミル(そうには)

エルヴィン(見えないんだが)

ハンジ(最近慣れない仕事が増えて忙しいのに、疲れもたまって無さそうだし)

ハンジ(なんか表情もリラックス出来ているよね、それは帰ってきたから?それって今の環境が、凄くいいって事じゃないか!)

ハンジ(執務室の隣に理解者が居るって言うのが良かったのかな、それとも理解者以上の存在だったりするの?それもいいね!)

ハンジ(エルヴィンはこう言った事は明らかに疎そうだし、ユミルも細部まではエルヴィンの表情を読みきれてないけど)

ハンジ(それもまた、面白いかも!)ムハー


ハンジ「と、言う訳でぇ!また近いうちに来るね!」

ユミル「ちょっと待て!何が“と言う訳”なんだ!?そして何故か、いきなり立ち去るな!!ホント暇人だな!」

エルヴィン(暇人だな、よし仕事を追加するとしよう)


【ある日】


ユミル「どうした?」

エルヴィン「……いや」

ユミル「?」

エルヴィン「いや、なんでもない」

ユミル「お前が口籠るなんて、珍しい事もあるもんだな」

エルヴィン「…………」

ユミル「で、夕飯は食べるか?」

エルヴィン「着替えてくる、すぐに頂こう」スタスタ

ユミル「分かった、着替えを手伝おう」ヒョコヒョコ

エルヴィン「…………」

ユミル「ほら、ボタンを外すからこっちを向けって」

エルヴィン「あぁ」

エルヴィン(私はこの子の事を、娘の様に感じているのだろうか……それとも)


【ある日】


ユミル「ふーん……」

ユミル「ほぉ、今はこんなんが……へぇ」

エルヴィン「今戻った」

ユミル「おかえりー、今日の夕飯は魚の缶詰のトマト煮だぞ」パタン

エルヴィン「ただいま、何を読んでいたんだ?」

ユミル「分隊長殿がな、服を買うって言ったら持って来てくれた雑誌だ」

エルヴィン「……すまない、そう言えばそう言った物は持ってきてい無かったな」

ユミル「いいって、オジサマにはこう言った物は気が向きにくいって分かっているし」

エルヴィン「……オジサマ」

ユミル「なんだよ、傷つく年でも無いだろ?」


エルヴィン「いや、傷ついては居ないのだが……君から見てもそうなのかと」

ユミル「ぶっとばすぞ」

エルヴィン「あ、いや……そう言う訳では」

ユミル「じゃあどう言う意味だよ」

エルヴィン「……こちらの失言だった」

ユミル「だろうな、一応親子くらいの年は離れているんだし」

エルヴィン「そうだったな」

ユミル「あ?――なに落ち込んでいるんだよ、こっちはもう気にしていないから部屋に行けって」

エルヴィン「…………」

ユミル「着替えてこいよ、夕飯を食おうぜ」

エルヴィン「……分かった」



ぱたん


エルヴィン「そうか、親子ほどの年が」

エルヴィン「…………?何を思っているんだ、私は」



コン、ガシャ

ユミル「団長殿、そう言えばシャツを脱がすの」ヒョコ

エルヴィン「!?」

ユミル「なに驚いた顔してんだよ――義手だといつもやり辛いからって、いつも手伝ってやってるだろ。よっと」ヒョコヒョコ

エルヴィン「ノックからドアが開くまでの時間が、あまりにも短くてな――頼む」

ユミル「おぉ、ボタン外すからこっち向け」

エルヴィン「……そう言えば明日だな、外出は」

ユミル「あぁ、楽しみだ」


エルヴィン「買いたい服は、見つかったか?」

ユミル「着てみない事には、分からないからな。似合っているかどうかは、団長殿に見比べて貰うかもしれない」

エルヴィン「……私しかいなくて、すまないな」

ユミル「なにがだ?」

エルヴィン「私は、君のセンスを知らない」

ユミル「そう言う事か――まぁ大丈夫だろ。私もそんなに、女性的な服を選ぶ訳じゃないしな」

エルヴィン(それはそれで、少しもったいないが)

ユミル「気を使ってくれて、ありがとうな」

エルヴィン「そう思ってくれるとありがたい……さて、夕飯を食べて早めに寝るとするとしよう」

ユミル(明日の事を気に掛けてくれているのか)

ユミル「ふふ、訓練兵時代のあいつらとは味わえなかった事だな」

エルヴィン「?」

すごくおもしろい!!!
しかもこんなに大量投下してくれるなんてありがたい

投下中に挟んですまんね
応援してます!


一旦ここまで

12月号までに完成させてから投下したかったが、無理そうだったので少しだけ見切り発車
なるべく完成させてから投下したいので、少しだけ間が空くかもしれない


>>80 面白いありがとう、投下中に挟む事は無かったみたいで良かった

書き上げている物の半分弱くらい投下したが、まだあるので
次もきっと大量投下すると思う、待っててくれると嬉しい

乙!

ふむ。続けたまえ、君。

読み応えがある。続きを楽しみにしてる。乙。

何これ。めっさ面白い。

乙。
これが例のエルヴィンとの話かー。次も楽しみにしてる。

87を見ると、他にも何か書いてたりする人なのかな?
是非教えて下さい!

すいません
あげてしまった!!
申し訳ない…


>>83 乙をありがとう!

>>84 続ける予定、もう少し待ってね

>>85 長さだけはあるので

>>86 面白いありがとう!

>>87 あぁ、やっぱりバレテル

>>88>>89 下に書きますね

多分ばれたのは「エルヴィンとの話を書きたい」と連載のスレで言っていたからと憶測

そちらは連載がまだ終わっていないので、とりあえず最近載せた短編

ユミル「ミドルなライナー」
エレン「俺はユミルが好き」
ベルトルト「いっただっきまーす」
ライナー「俺はクリスタと結婚したい」

あとここの文章に近いのは

リヴァイ「大人しくしろ」ユミル「嫌だぁ!離せよ!!」

かな?
こう思ってみると、書き散らし具合が半端ない(反省)

あぁぁ、あげてしまった
海より深く反省

そのうち何本か読んだことあるw
他のもさっそく読んでみるわ、ありがとう
団長とユミル、新鮮で素敵だなー
続き楽しみにしてるぞ!

支援

ミドルなライナーの人か!あれ凄い好き

すごい面白い。
期待

保守

支援

舞ってる(*´∀`)


>>92 読んだ事あるとか、嬉しすぎますよ!

>>93 支援ありがとうございます

>>94 ミドルなーを好いて貰って嬉しい!

>>95 面白い、のコメがエネル源です

>>96 保守ありがとうございます

>>97 支援ありがとうございます

>>98 更新しますよー!

ちょっと修正場所を探しながらなので、投下スピードが遅いかもです


【次の日】


ユミル「ようやく、外出の日になった」

エルヴィン「あぁ」

ユミル「過去に一度、休日が延期になった所為で……私は一度、ガッカリさせられている」

エルヴィン「……すまない」

ユミル「なので、もう少しのサービスを要求しようと思っている」

エルヴィン「その要求、とは?」

ユミル「義足ついでに立体機動装置も欲し…」

エルヴィン「却下だ」

ユミル「むむ、仕方が無い。外出着を購入するついでに、普段着も欲しい」

エルヴィン「それなら大丈夫だ」

ユミル(よしよし、無事誘導できたな。シンプルで機能的な服が欲しかったんだ)

ユミル(そして未だに、あのふりふりの部屋着に慣れる事は出来なかった――すまんな団長殿)


エルヴィン「だがその前に。すまないが、外出をする前にこれを着て欲しい」

ユミル「調査兵団の制服、か?」

エルヴィン「お互いにこれを着て歩けば、目立たないだろう」

ユミル「あんたは団長だし目立つだろ、どちらかと言うと二人とも私服の方がいいんじゃね?」

エルヴィン「…………」ハッ

ユミル「お前なら、すぐに思いついていただろうに」

エルヴィン「……それもそうだな、わかった着替えてこよう」

ユミル(仕事のし過ぎで、他の洋服を着ると言う選択肢が無くなっていた……とか)

ユミル(そんな事は、ない……よな?)

エルヴィン(不覚だな、そんな事も思いつかないとは)


ユミル「おいおい、待て待て団長殿。シャツを脱ぐんだったらボタンを外してやるって」ヒョコヒョコ

エルヴィン「あぁ、頼む」

ユミル「じゃあ脱がすぞ、次に着るシャツはどれだ?」

エルヴィン「ではこれを」

ユミル「ん、背中を向けてくれ」

エルヴィン「わかった」

ユミル「ボタンをするから前」

エルヴィン「あぁ」

ユミル「ついでだ、普段着用のジャケットはどれだ?」

エルヴィン「そうだな、……これで」

ユミル「また、緑か」

エルヴィン「休日用の羽織なんて、あまり持っていなくてな」

ユミル「いいのがあったら、お前も買えよ」

エルヴィン「そうしよう」


ユミル「さてと、準備が出来たな。じゃあ私は本部を抜けるまで入っておく予定の、武器用の箱へ……よいしょっと」ヒョコヒョコ

エルヴィン「何のためらいもなく、入ったな」

ユミル「外に出るためさ、今ならエレンの壁の外に出たい気持ちが分かる」

エルヴィン「無理をさせて、すまない」

ユミル「謝るなっての」ニカッ

エルヴィン「…………」ワシャワシャ

ユミル「あ?なんだ?」

エルヴィン「いや」

エルヴィン(嬉しい事を言うな、と思ってな)

ユミル「ん?」

エルヴィン「……あぁ、そう言えば」


ユミル「どうした?」

エルヴィン「箱の中に座り込んで貰っているのにすまないが、少しだけ待っていて欲しい」

ユミル「それは構わないが」

エルヴィン「では頼む」

ユミル「何か忘れ物か?」

エルヴィン「服装が変わったと、リヴァイ達へと伝えに行く」

ユミル(あぁ、そう言う事……か。思い浮かばなかった)

エルヴィン(危うく、忘れかけていた)

ユミル(やばいな。お互いに外出が久しぶりすぎて、事前にやらなければならない事をついうっかり忘れている気がする)

エルヴィン(他にはやるべき事は……ない、だろうか)

ユミル「…………」

エルヴィン「…………」

ユミル「……行ってらっしゃい」

エルヴィン「あぁ――行ってくる」



コンコン

エルヴィン「失礼する」

ハンジ「あ、エルヴィンいらっしゃーい!って――あれ、どうしたの?今日はお宅のお嬢様と、おデートの予定だったんじゃ」

エルヴィン「あぁ、しかし少し変更になった物があってな」

ハンジ「ふーん、その服装の事?」

エルヴィン「そうだ」

ハンジ「ふーん……私服で、プライベートを装って行くのか。だったら余計、護衛なんて遠巻きでいいんじゃない?」

エルヴィン「それもそうだが、もし万が一の事を考えると…」

ハンジ「でも街での、犯罪率も著しく減ったし」

エルヴィン「…………」

ハンジ「もちろん、これは一過性の物だろうけど。今は平和を堪能してもいいんじゃないかな」


コンコン

リヴァイ「おい、クソメガネ」

ハンジ「あ、リヴァイじゃーん」


エルヴィン「リヴァイ」

リヴァイ「エルヴィンか、そろそろ出るのか?だったら俺も準備しよう」

エルヴィン「そうだな、頼む。あと服が変わったので、認識して貰う為に来たんだ」

リヴァイ「そうか」

ハンジ「ねぇリヴァイ、君もそう思うよね」

リヴァイ「何がだ」

ハンジ「犯罪率の低下で、少しくらい護衛をする時間が短くなっても平気じゃないかって事」

リヴァイ「それも一理ある。だが俺たちは壁内での素行によって、不利になる事があるといけない」

ハンジ「…………」

エルヴィン「そうだぞハンジ。気持ちは嬉しいが、我儘はいけな…」

リヴァイ「だがエルヴィン、お前も少しは仕事から離れなければいけない」

エルヴィン「!!」

リヴァイ「休む事も、お前の仕事だ」


リヴァイ「襤褸が出ない程度と言うのはこちらが決める、だからお前も少しは休んでこい」

エルヴィン「……リヴァイ」

リヴァイ「ふん」

エルヴィン「お前が、こんなにも人に優しく出来る様になるなんて」

ハンジ(あ、心の声が漏れてる)

リヴァイ「ふざけているのか、元々俺はこんな性格だ」

ハンジ「いやぁ、それはないない」

リヴァイ「…………」ゴスッ

ハンジ「ぎゃああああ!!」ゴスゴス

エルヴィン(相変わらず、仲がいいな)


ごすっ、どか!どたばた




エルヴィン「…………」

エルヴィン「…………」

エルヴィン「あー、リヴァイ」

エルヴィン「では言葉に甘えて、監視は長距離の移動の際だけでいい」

エルヴィン「……では、行ってくる」

エルヴィン「ありがとう、二人とも」


カチャン



………………


…………


……



エルヴィン「よし、もう兵舎の裏手に来たから……出てもいいぞ」

ユミル「よし……」ガタガタ


ガタガタ

ユミル「はぁ蓋が取れた、って!縁取りが低くて、立ち上がりにくい」

エルヴィン「大丈夫か。ほら、手を」

ユミル「あぁ」ガシッ

エルヴィン「せっかくだから、箱から出してしまうぞ」

ユミル「って、んぁ!?」ヒョイ

エルヴィン「ほら、ゆっくりでいい。松葉杖はここだ、足はゆっくり降ろしていけ」

ユミル「いいから!そんな丁寧にやらなくても、立てる!立てるからぁ!!」ジタバタ

エルヴィン「そ、そうか……?」

ユミル「そうだって……て、うわ!?」

エルヴィン「ほら、言った事ではないか」ガシッ


ユミル「さ、さんきゅ」

エルヴィン「……まったく、目が離せない」

ユミル「あ?」

エルヴィン「なんでもないさ」

ユミル「なんだよ。まぁいい――せっかくの外だ、早く行こうぜ団長殿」

エルヴィン「あぁ……だがな」

ユミル「?」

エルヴィン「いくら私服で市民にまぎれると言っても、君が“団長殿”と言うと人目を引いてしまう」

ユミル「そう言えば、そうだな」

エルヴィン「なので、エルヴィンと」

ユミル「あ?」

エルヴィン「エルヴィン、と呼んでくれ」


ユミル「呼び捨てで呼べ、だと?冗談はきついぜ、団長殿。あんたは知名度があるし、私が呼ばなくても気付かれる可能性が高いだろうが」

エルヴィン「それだ」

ユミル「あ?」

エルヴィン「一般人が、団長である私を“あんた”と呼んでいる方が目立つかもしれない。それにリヴァイやハンジも、私の事は呼び捨てだ」

ユミル「いやいや、兵長殿や分隊長と同列に扱われても」

エルヴィン「堂々と名前を呼べ、気付かれてもプライベートでの事だと周りに思わせろ」

ユミル「…………」

エルヴィン「気分を害させてしまうかもしれないが、他人行儀にしている方が人の目を引いてしまうかもしれない」

ユミル「はぁ……分かったよ、エルヴィン」

エルヴィン「さ、手を」

ユミル「手、だと?」

エルヴィン「長距離の移動を行うんだ、手を繋ごう。プライベートの相手を気遣う事は、普通の事だ」

ユミル「大丈夫だ、松葉杖もある。それこそ長距離なんだし、そこまで迷惑をかけらんねーよ」

エルヴィン「狭い室内の移動では無いんだ。それに長距離で松葉杖を使うのは、初めてだったはずだ――私が心配なんだ、手を取ってくれ」

ユミル「はぁ……任せるよ」パシッ


エルヴィン「ではまず、洋服から見に行くとするか」

ユミル「用事が先じゃなくて、いいのか?」

エルヴィン「せっかく外に出たんだ、まずはリラックスして欲しい」

ユミル「なんだよ、今日はやけに優しいな」

エルヴィン「そうか?」

ユミル「そうだよ」

エルヴィン「ふむ。おそらくだが、普段は外に連れ出してやれていないから……では」

ユミル「その言い方だと、私はペットみたいだ」

エルヴィン「そんなつもりは、なかったんだが」

ユミル「ふぅん……なぁ、ちょっともう一方の手を出してみてくれ」

エルヴィン「ん?」スッ

ユミル「…………」トン

エルヴィン「どうした、握りこぶしを置いて…」

ユミル「わん」

エルヴィン「……?」


エルヴィン「……ユミル」

ユミル「さてと、これでじゃれ合いは完了だ」フゥ

エルヴィン「……これは、どう言う意味だ?」

ユミル「少しはリラックスしようかな、と思ってさ――じゃれ合いを入れてみた」

エルヴィン「それと君がわんと鳴くのは、どう言った関係が」

ユミル「お前も私も、妙に堅い所があるからな。仕事抜きの気軽さを得る為には、なんかきっかけって必要だと思ったんだが」

エルヴィン「そ、そうか」

エルヴィン(正直、よく解らなかった)

ユミル(なんかちょっと、から回った気がする。失敗だったか)

ユミル「ところでさ」

エルヴィン「なんだ」

ユミル「冗談を返す努力、してくれないのか?」

エルヴィン「あぁ……すまん、忘れていた」

ユミル「だろうな」


ユミル「よし、じゃあ店に行こうかぜ」

エルヴィン「そうだな」

ユミル「お前も普段、仕事で忙しいんだ。監視対象である、私が言うのもなんだが――仕事を抜きにして、お前も楽しめよ?」

エルヴィン「そうだな。では行こうか」

ユミル「エルヴィン、今日一日よろしくな」

エルヴィン「あぁ。ユミル、手を」

ユミル「おう」ギュッ

エルヴィン「迷子になった時は、動かずにじっとしているんだぞ」

ユミル「私はそんな、お子様じゃねぇよ!」バシッ



………………


…………


……



ユミル「へぇ、綺麗な通りだな。道路も整備されている」ヒョコヒョコ

エルヴィン「ここ辺りの商店街は、損害も少なかった。だから復旧の速度も、比較的早かったんだ」

ユミル「シーナ寄りの地区だもんな。で――どの店に入ると言うのは、決まっているのか?」ヒョコヒョコ

エルヴィン「逆に、入らない方がいいと言う店の方に目処を付けてきたた――そうだな、そこの先に見える」

ユミル「あの看板、か?」

エルヴィン「あぁ。そこまでの区間の店だったら、全て大丈夫だ」

ユミル「へぇ、じゃあ十店くらいは入れるんだな」

エルヴィン「他にも気になる店がったら言って欲しい、入れる所には入ろう。君の気にいる商品があるといいのだが」

ユミル「ま、何とかなるだろ――じゃあまず、あの店から入っていいか?」

エルヴィン「馬具の店、か?」

ユミル「意外と機能的な服やズボンが多いんだよ、行こうぜ」

エルヴィン「わかった。足元に気をつけてくれ、段差がある」

ユミル「ありがとな」ヒョコヒョコ



からんからん

ユミル「ふーん。小さい店だが、品数が多いな」ヒョコヒョコ

エルヴィン「もうすぐ大規模に、家畜が飼える様になるから――ここ辺りの市場は、急速に大きくなっているんだ」

ユミル「なるほどなぁ、ヒストリアとここに来たら楽しいだろうな」ヒョコヒョコ

エルヴィン「……彼女は馬術が上手かったとか」

ユミル「そうだ、不思議と馬に好かれ易い奴でな――おっ、このシャツとかよさそうだな」

エルヴィン「無地のシャツじゃないか、そんな物でいいのか?」

ユミル「こう言った物は、デザインより質だろ……あれ、意外に大きい」

エルヴィン「男性物だな、女性物は向こうか?」

ユミル「いや待てよ、部屋着にはいいかも――これ一枚でいける」

エルヴィン「君は、同じ部屋に男がいる事を警戒した方がいい」


ユミル「なんだよ、お前は気にしないだろ?」

エルヴィン「まぁ、気にすると言えば嘘になるが」

ユミル「じゃあいいじゃねぇか」

エルヴィン「…………」ハァ

ユミル「?」

エルヴィン「その服を、少し貸してくれないか?」

ユミル「おう」

エルヴィン「ほらほら、女性物は向こうだ」グッ

ユミル「え、ちょっ待てって引っ張るな!あ、あとその服を返せ!」ズルズル

エルヴィン「これは私が後で片付けるから、とにかく向こうへ行くぞ」ズルズル

ユミル「ちょ、離せって!」ズルズル

エルヴィン「女性だと言う事を自覚する、いい機会だ。今回の買い物では、女性らしい服を買うように」ズルズル

ユミル「な、なんで!そんな事を聞かなきゃいけないんだぁ!!」ズルズル



からんからん

ユミル「結局、何も買えなかった」

エルヴィン「まぁいいだろう、次の店に行くか」

ユミル「そうだな、とりあえずは隣の店…」

可愛い女性服専門店「」キラキラ

ユミル「……は、飛ばして。二件隣りの店に」

エルヴィン「待ちなさい」

ユミル「うぐっ」

エルヴィン「私が入り辛いと、遠慮しているのか?私は大丈夫だ、遠慮はいらない」

ユミル「いや――遠慮はしていないんだ」

エルヴィン「……そうか」

おお続きだ!
期待


ユミル(あぁもう、なんでこいつは……なんで私に、可愛い系の服をすすめるんだ)

ユミル(まぁ確かに、20歳近くも年下の奴を見たら――子供に見えるかもしれないが)

ユミル(こちとら可愛いガキじゃねぇっての)



エルヴィン(何故、面白くなさそうなのだろう)

エルヴィン(20歳くらいの子だったら、こういった服を喜ぶ物と思っていたのだが)

エルヴィン(装飾が少ない物が好み、と言うのはなんとなくわかる。だがさすがに男性服を購入しようとするのは、止めて正解だった……よな)



ユミル(あぁ……もう、仕方ないな)


ユミル「ったく、じゃあ遠慮はしない」

エルヴィン「そうか、よかった」

ユミル「だから行くか。二件隣りの、そこの店にな」

カジュアル服専門店「」シンプル

ユミル「お前の意向は無視して、行きたい所に行く。だから付いてきて欲しい」

ユミル(入る店は、お前の意向を無視するが。まぁこいつの気にいる物の中から、わりかしシンプルな物を選べばいいか)

ユミル(ここが妥協点だぞ、団長殿)

エルヴィン「そうか、遠慮せずに好きな所に行くといい。私はあくまで付き添い、だからな」

ユミル「そうさせて貰うよ」

エルヴィン「わかった」

エルヴィン(それに何より、君にリラックスして貰う事が一番の目的だったからな。何も言わないでおこう)

エルヴィン「ではユミル、手を」

ユミル「おう」ギュッ

エルヴィン「あと、名前も……な」

ユミル「あぁ。わかったよ、エルヴィン」



からんからん

ユミル「ふーん、結構いいのあるな」ヒョコヒョコ

エルヴィン「そうか、それは良かった」

ユミル(コイツが気にいる物から選ぶ、と言っても。さすがに金を出させるんだ、値段はきちんと見ておかないとな)ヒョコヒョコ

ユミル(いるのは部屋着が三組……いや、用意して貰った服も着ないといけないから、二組でいいか)ヒョコヒョコ

ユミル(そして外出着が一組くらいか、外出着はここで気に行ったのがあったら着て行こう)ヒョコヒョコ

ユミル「おっ、これいいかもな。安いし、これの色違いを買って二組にして……」

エルヴィン「ユミル」

ユミル(うっ、少し警戒しているな)

ユミル「えと、その。これ気に入ったから、色違いで二枚欲しいと考えているんだが」

エルヴィン「それでもいいが、それは部屋着用か?では――それは、こちらの色とこちらの色で二着買おう」

ユミル「おう」

エルヴィン「だが、他の部屋着も買いなさい」

ユミル「ぇ……」


エルヴィン「今日は君の気晴らしの為に来た、値段は気にしなくていい」

ユミル(ばれてる)

エルヴィン「部屋でも少しは気が晴れるよう。同じ服では無くて、色や柄の違う物を買って欲しい」

エルヴィン「さて。ではその二着も含めて五着くらいはいるかな、これなんかどうだ?」

ユミル「そ、そんなにいらねぇよ!」

エルヴィン「では、これなんかはどうだ?リボンが付いている」

ユミル「わかった、わかったから!ちゃんと選ぶから、リボン付きで選ぶのはやめてくれ!」

エルヴィン「そうか」

ユミル「あんた、性格悪すぎだ。わかってやっているだろ!」

エルヴィン「そんな事は無いさ。あぁ、ユミル――それとな」

ユミル「なんだよ」

エルヴィン「おまえと言う呼び方ではなく、名前を」

ユミル「わかったよ……エルヴィン」

エルヴィン「あぁ、それで大丈夫だ」

エルヴィン(リボン付き、気に入らなかったか)チョットショック


エルヴィン(では、リボンが付いていない物は……ん)

エルヴィン「ユミル」

ユミル「なんだよ」

エルヴィン「そこの上に掛っている服は、言ったら取って貰える物なのか?」

ユミル「あぁ、あれか。じゃあ店員を呼ぶよ、すいませーん」

店員「はーい」

ユミル「あそこの服を見たいんだけれど、持って来て貰えるか?」

店員「はい、わかりました」


スタスタ

店員「こちらで宜しいですか?」

エルヴィン「あぁ、わざわざすまないな。ユミル、これを着てみてくれないか?」

ユミル「ま、話の流れ的にはそうだよな――じゃあついでに、さっきの部屋着もあわせてみるか」


店員「では、ご案内いたします」

エルヴィン「ほらユミル、手を」

ユミル「おう」ギュッ

店員「ふふ、仲が宜しいのですねお父様」

エルヴィン「え、あ」

ユミル「でしょう?――うちの親父、結構過保護で」ヒョコヒョコ

店員「羨ましいです、うちの店はお客様と同じ年の方も多いのですが……主に一人で来られる方や、友人と来られる方ばかりで」

ユミル「まぁ確かに、鬱陶しいけれどな。ん、このズボンもよさそうだな」ヒョコヒョコ

エルヴィン(鬱陶し…!?)

ユミル「でもやっぱり、いてくれると嬉しいから――まぁいいけど」ヒョコヒョコ

店員「素敵なお嬢様ですね」

エルヴィン「……えぇ、自慢の娘です」

店員「ではこちらが試着用のスペースです、足元にお気をつけ下さい」


ユミル「ありがとな……よっと」ヒョイ

エルヴィン「大丈夫か?」

ユミル「あぁ、じゃあ少し待っててくれ」


シャッ

エルヴィン(おかしい、娘と言われて不都合は無いのだが)

エルヴィン(いや、むしろ都合は――)


シャッ

ユミル「おい、着替え終わったぞ」

エルヴィン「!――随分と早いな」

ユミル「着て脱ぐだけだからな、こんなもんだろ」

エルヴィン(そう言うもの、か?)

ユミル「で、どうだ」

エルヴィン「あぁ、とても似合っている」

エルヴィン(なるほど、こう言う服でいいのか)


ユミル(よし、シンプル系でようやくこいつが気に入る物があったな)

ユミル「私も気に行った、これにしよう」

エルヴィン「いいのか?もう少し、他の服を試してみてもいいんだが」

ユミル「いや――気に入ったし、時間を割くのも申し訳ない」

エルヴィン「しかし、だな」

ユミル「鬱陶しい親は嫌われるぞ、親父」

エルヴィン「そう言う、ものか」

ユミル「あぁそうだ。悪いがもう一度、店員を呼んでくれるか?」

エルヴィン「会計だったら…」

ユミル「ちげぇよ。これ、着て行くんだ」

エルヴィン「そうか。わかった、呼んでくる」

ユミル(いい加減、この薄ピンクのシャツを脱ぎたかったと言う事は秘密にしておくか)

ユミル(それに何処となく、エルヴィンも嬉しそうだな。自分の服を選んで貰えて、嬉しかったのか?)

ユミル(なるほど、こいつにはこう甘えればいいのか。外出してよかった、収穫だ)


店員「お呼びですか?」

ユミル「今着ているこの服と、ここにあるシャツとズボンを下さい」

エルヴィン「……待てユミル、まだ部屋着の分は試着をしていないだろう」

ユミル「これくらいだったら、あわせるだけで平気だって」

エルヴィン「駄目だ、ちゃんと試着してから決めなさい。後であわなかったらどうする」

ユミル「その時は、もう一度外出」

エルヴィン「出来るのか?」

ユミル「ですよね」

エルヴィン「ほら、いいからもう一度試着室に入りなさい」

ユミル「……はーい」


シャッ

エルヴィン「すみません、もう少し待って下さい」

店員「いえいえ、大丈夫ですよ」



からんからん

ユミル「ありがとな、エルヴィン」ヒョコヒョコ

エルヴィン「いや、君が気に入る物があって良かった」

ユミル(どちらかと言うと。お前の気に入った物の中から、選んだって感じだけどな)ヒョコヒョコ

ユミル(結局、外出着一組に部屋着を四組。髪紐も買ってしまった)

エルヴィン「君が欲しかった、身の回りの品はこれで全てか?」

ユミル「そうだな」ヒョコヒョコ

エルヴィン「足りない物や、遠慮してる物は無いか?」

ユミル「無いな、思っていた以上になった位だ」ヒョコヒョコ

エルヴィン「ではそろそろ、昼食にしよう」

ユミル「そうだな」ジー

エルヴィン「ん?どうした」


ユミル「外に出てなおさら思うんだが、お前ってモテそうだよな」

エルヴィン「そうだろうか、気にした事は無かったが」

ユミル「勿論、地位のある奴だからって訳じゃない。時に非情になる人物だと言うのもわかる」

エルヴィン「…………」

ユミル「だがそれを差し引いても、お前は人に優しくできる奴だと――私は知れた」

エルヴィン「そうか」

ユミル「今は少し、良かった思う。お前と暮らせて、な」

エルヴィン「光栄だよ、ありがとう」

ユミル「やっと、お前に面と向かって礼が言えた」ポソッ

エルヴィン「なにか言ったか?」

ユミル「……ぁ」

エルヴィン「?」

ユミル「いや、昼食の前だがうまそうな匂いだな――屋台で一つ、買わないか?」

エルヴィン「しかたがないな、一つだけだぞ」



………………


…………


……



ユミル「はむっ……うまいな」

エルヴィン「焼きリンゴのシロップ掛け、か。貴族階級以外でも、甘い物も浸透してきたな」

ユミル「まだ、かなり薄いシロップだけどな」

エルヴィン「そしてリンゴの薄さも、少し物足りないが」

ユミル「ちなみにシロップの流通にも、お前らが関わっているのか?」

エルヴィン「そうだな、ついこの間も商会に物資を運んだよ」

ユミル「ふぅん、どう関わっているんだ?」

エルヴィン「まずは商会が、壁外調査に行く調査兵団の“時間”を購入する。我々は壁外で、依頼された分の時間、兵士、装備で物の収集に当たっている」

ユミル「お前の事だ――依頼が達成したら、成功報酬も貰うんだろ」

エルヴィン「まぁな」

ユミル「あくどい顔をしている」

エルヴィン「なにぶん今のうちに、兵団の財政基盤を作らなくてはならない身の上でね」


エルヴィン「今までは物資そのもの、蜂蜜や蜂の巣その物の収集が主だったが。最近は資材の依頼が増えてきたかな」

ユミル「シロップの、資材?」

エルヴィン「この間は、楓の木を探しに行った」

ユミル「カエデ?」

エルヴィン「種類によっては甘いシロップが取れるらしい、が。さすがに楓の木を一本運ぶのには、大変な労力が掛った」

ユミル「報酬は?」

エルヴィン「そりゃあもう」

ユミル「だよなぁ」

エルヴィン「君も、なかなかの悪人面をしているぞ」

ユミル「生まれつきだ、ほっといて欲しい」

エルヴィン「そうか、失礼したな」


エルヴィン「では、昼食に向かうとしよう。時間も丁度いい」

ユミル「そっか。少しだけを食べたからか、なんかお腹が空いてきたな」

エルヴィン「そうか、それは良かった」

ユミル「店は、ここから遠いのか?」

エルヴィン「歩いて十分、と言ったところか」

ユミル「腹ごなしに丁度いい距離だな」

エルヴィン「時間は気にせず、体に無理が掛らないよう歩いてくれ」

ユミル「気にしすぎだ、歩くだけなら支障は無いって」

エルヴィン「私は臓器の損傷は、経験が無いのでね。つい気になってしまう」

ユミル「もっと気軽に考えてくれ」

エルヴィン「それは無理だ、女の子の体だぞ」

ユミル「何回目だろうな、その言葉は――その言葉に対するツッコミは、こちらが折れた方がいいのだろうか」

エルヴィン「どこにツッコミを入れる必要がある」

ユミル(女の子、なんて。むずがゆいんだよ、このやろー)


ユミル「お前は、理解できないだろうが」

ユミル(外見年齢だけでも、二十を超えているのに“女の子”と言われる恥ずかしさを……な)

ユミル(なんだろう、イライラしてきた)

エルヴィン「ユミル?」

ユミル「……若いころの気持ちを、思い出してくれよ。おっさん」

エルヴィン「おっさ……!?」

ユミル(お前は気にしていなくても、褒め言葉だと思っていても――女性に年齢の事を気にさせるなってぇの)

エルヴィン「おっさ…」

ユミル「そんな一言でショックを受けるなよ。ほら、昼飯に行くぞ?」

エルヴィン「おっさ」

ユミル「おい!」

エルヴィン「……あ、いや。すまん」

ユミル「なんだ、言われ慣れてなかったのか?」

エルヴィン「少し、不意打ちでな」

エルヴィン(なんでこんなに衝撃を受けたんだ、私は)



………………


…………


……




カランカラン

エルヴィン「予約をしていた、スミスだが」

店員「お待ちをしておりました、ご案内致します」

ユミル「……おい、エルヴィン」ヒョコヒョコ

エルヴィン「なんだい、ユミル」

ユミル「私は個室がある所、としか聞いていないんだが」ヒョコヒョコ

エルヴィン「そうだな、ここはいい個室がある」

ユミル「なんだよ、この料亭。えらく高そうだな」ヒョコヒョコ

エルヴィン「いいじゃないか。私もここ辺り忙しくて、給料もろくに使えていないんだ」

ユミル「まぁ戦争があったし、使えなかっただろうな」ヒョコヒョコ

エルヴィン「ちょっとだけ贅沢をしたい、君も付き合ってくれないか」

ユミル「…………」ヒョコヒョコ


エルヴィン「高い分、従業員も部屋もいい――聞かれたくない話しをするのに、もってこいなんだよ」

ユミル「なんだよその、聞かれたくない話し……って、私の存在自体か」ヒョコヒョコ

エルヴィン「気分を悪くしたのなら、すまない」

ユミル「……葡萄酒を付けてくれたら許す」ヒョコヒョコ

エルヴィン「おうせのままに」

ユミル「ならいいさ」ヒョコヒョコ

エルヴィン「君はどんな葡萄酒が好きなんだい」

ユミル「飲めれば文句は言わないが、しいて言うならフレッシュな白かな」ヒョコヒョコ

エルヴィン「ほぅ」

ユミル「ヒストリアに似た、凛々しさが好きなんだ」ヒョコヒョコ

エルヴィン「なるほど――私も、好きな味だ」


店員「ワインをお持ちいたしました、失礼致します」


カチャ

エルヴィン「では飲もうか」

ユミル「あぁ。……美味いな」

エルヴィン「ここは以前、ピクシス司令に教えて頂いた店だ。だからだろうか、酒には外れがない」

ユミル「だな。ピクシス司令は今、トルスト区の軍事力と政治力を噛みあわせようとしているんだっけ?」

エルヴィン「それは以前、話していたな」

ユミル「南の方の情勢が、やっぱり一番悪化していたからな。ユトピア辺りからの援助が、直接受けられればいいのに」

エルヴィン「仕方ないさ、今は王政を通しての援助に頼るしかない」

ユミル「それにしても」

エルヴィン「なんだ」

ユミル「今日歩いた、この中央に近い通りの整備は――整い過ぎている」


エルヴィン「そうだな」

ユミル「これだとどうしても、地方の復興が遅れてしまう。貧困の差が出てしまうと、後が大変だぞ」

エルヴィン「王政はマリア周辺への移住と、酪農に補助金を出す方針ではあるが」

ユミル「もちろん、期限と制限付きなんだろ」

エルヴィン「あぁ、もちろんだ」

ユミル「新しい土地と補助金、それだけで地方の活性化に繋がる物なのか?」

エルヴィン「もちろん難しいだろう。しかし中央は貴族、地方は商人が率先して復興していく事で、なんとかバランスを良くしたい」

ユミル「でも王政は貴族寄り……か」

エルヴィン「兵団は今まで商人からの援助も受けていた、過去には様々な事があったが。返すべき恩がある」

エルヴィン「兵団が地方復興を推進する事で、均衡を保てればいいのだが――いかんせん、まだ力不足でな」

ユミル「そうか。あ、いやすまん――あんたは随分と久しぶりの休みなのに、堅苦しい話をしちまったな」

エルヴィン「なんて事ないさ、もっと堅苦しい話をしてもいい」

ユミル「私は其処まで鬼じゃねぇよ」


エルヴィン「まぁ何にしても」

ユミル「ん」

エルヴィン「戦いが終わったんだ、私達は人々を生かす方へと向かわなければならない」

ユミル「そうだな、天敵がいなくなったんだ。昔の記述通り、人間対人間の時代になるかもしれない」

エルヴィン「生きる為に手を取りあったのに、人と人とでいがみ合うのは避けたい所だ」

ユミル「あぁ」

エルヴィン「今が踏ん張りどころだ」

ユミル「そうだな。私だってもう、目の前で人を死ぬのは見たくない」

エルヴィン「罪で染まりすぎた、私が言うのもなんだがな」

ユミル「お前も気をつけろよ。あんな過度なストレスを、何年間も抱えて来たんだ」

ユミル「私を含め、全ての兵士が安寧の時を受け入れられるとは思えない」

エルヴィン「そうだな」

ユミル「死ぬ事を望んだのに死ねなかった者、罪の重さに苦しむ者、無力さに喘ぐ者も出てくるだろうな」


エルヴィン「罪、と言うと。今年、訓練兵を卒業して入団した面々も気になっている」

ユミル「新兵か」

エルヴィン「彼等はまだ、なにも殺していない。なのに兵団に所属しているからと言う理由で、責任は負わせたくはない」

ユミル「…………」

エルヴィン「時代が変われば、私は大量殺人者になるだろう」

ユミル「お前だけじゃない」

エルヴィン(この片手だけで、どれだけの罪の意識を拭い去ることが出来るのか)

エルヴィン(そう――今が、踏ん張りどころだ)

エルヴィン(その為なら、私はもう一度鬼にでも蛇にもなれる)

ユミル「エルヴィン、お前は」

ユミル(その目は、戦場でたくさん見てきた目だな)

ユミル(戦いを覚悟した目。お前はまだ、戦いの中にいるんだな)

ユミル(こうして、私を気遣っている時ですら)


ユミル「お前は背負いすぎだ、私にだってわかる――それに責任の一端は、こちらにだってあるんだ」

エルヴィン「私が背負っているのは、戦いその物の罪ではないよ。これは団長と呼ばれ、多くの決断を委ねられた者の証しだ。気に病む必要は無い」

ユミル「なんで、そんな事を言うんだよ」

エルヴィン「事実だからだ」

ユミル「確かに、私には戸籍が無い。残すべき記述が不明確なまま――いずれは私の存在は忘れられるだろう」

エルヴィン「ユミル」

ユミル「だが、当事者の癖に、この世界に挑んだ英雄を咎人にさせるのは……嫌だ」

エルヴィン「それは人の手によって、どうこう出来るものではない」

ユミル「でも嫌なんだ、それだけはわかる」

エルヴィン「……今言っても、仕方がない事だ」

ユミル「…………」

エルヴィン「これは、後世の人達の語りと心で決まる事だ。どうしようもない」

ユミル「それは、そうだが」

エルヴィン「ユミル、もうやめにしよう。もうすぐ食事が来る」

ユミル「……わかったよ」



カランカラン

ユミル「ご飯、美味しかったな」ヒョコヒョコ

エルヴィン「そうだな」

ユミル(と、思いつつも。結局、政治経済の話しをたくさんしてしまった)

エルヴィン(ちょっと話し過ぎたかな、せっかくの休日なのに)

ユミル「海の物や山の物、少しづつ増えて行っているのがメニューで分かって楽しかったな」ヒョコヒョコ

エルヴィン「私も調査兵団が持ち帰った物が、少しづつだが民間の市場に出回っている事が分かってよかった」

ユミル「ふーん……やっぱり調査兵団だな、つい見てしまうか」ヒョコヒョコ

エルヴィン「君も似た様なものだろう。あぁ、足元に気をつけてくれよ」

ユミル「あぁ、サンキュ」ヒョイ

エルヴィン「大丈夫か?」

ユミル「大丈夫だって。で、そろそろ人類最強の人と合流するんじゃないのか?」ヒョコヒョコ

エルヴィン「いや」

ユミル「あ?」ヒョコヒョコ


エルヴィン「私服で行く事になったので、どういった服を着て行くか――リヴァイに見せに行っただろ」

ユミル「あぁ。出かける前に、席を外していたもんな」ヒョコヒョコ

エルヴィン「そしたらハンジに、私服だったらもう護衛はいらないんじゃないかと」

ユミル「はぁ?でもあんたは要人だろ、護衛くらいは必要なんじゃないか?」ヒョコヒョコ

エルヴィン「それがリヴァイも、ハンジの意見に同意してしまってね。おそらく、少し距離を置いてこちらを見ていると思う」

ユミル「ストーカー的な監視付きの外出ですかぁ。あぁ、料亭の個室に戻りたい」ヒョコヒョコ

エルヴィン「すまないな、道を歩く間だけにしてくれとは言っているが」

ユミル「仕方ねぇよ、私は外に出られるだけでも御の字だ――さっさと義肢店に行こうぜ」ヒョコヒョコ

エルヴィン「……あぁ、そうだな」

ユミル「っと」

エルヴィン「足元、気をつけなさい」

ユミル「はいはい。わかったよ、おとーさん」

エルヴィン「……はい、は一回だ」

ユミル「はぁい」


エルヴィン「そう言うと、こうするぞ」ユサユサ

ユミル「わっ、ちょ…やめろって、マジこける!」グラグラ

エルヴィン「ふ……大丈夫だ、ちゃんと掴んでいただろ?――ほら」ヒョイ

ユミル「やめろって!荷物担ぎするな!食べたばかりのもんが出ちまう!」

エルヴィン「我慢しなさい、美味しかったんだろ?」

ユミル「はーなーせー」

エルヴィン「はは」

ユミル「このおっさん!セクハラだ!!」

エルヴィン「…………」

ユミル「あ、すまん」

エルヴィン「そう思うなら、もう少しこのまま進むか」

ユミル「だぁ!ちげぇって!」

エルヴィン「お仕置きだ、甘んじて受けなさい」


ユミル「……離してくれ」

エルヴィン「理由を述べてくれれば、考えよう」

ユミル「はぁ、正直に言うぞ」

エルヴィン「うん?」

ユミル「こちとら、少なくとも二度目になってからは。年上の奴にこんな風に接されるの、初めてなんだ」

エルヴィン「そうか」

ユミル「心臓が持たない、頼むから降ろしてくれ」

エルヴィン「慣れる、いい機会だろ」

ユミル「そう言う事じゃない、離して欲しい」

エルヴィン「そうか……ほら」ストン

ユミル「ん、さんきゅ」

エルヴィン「すまない、調子に乗りすぎた」

ユミル「にしても、いきなりこんな事して……どうしたんだ?」


エルヴィン「冗談を」

ユミル「は?」

エルヴィン「冗談を、してみようと思ったんだ」

ユミル「あぁ、それは」

エルヴィン「…………」

ユミル「……拒否してすまなかった」

エルヴィン「いや」

ユミル「嫌だった訳じゃないんだ。お前の体の体温も、臭いも。慣れたせいかもしれないが、少し落ち着く」

エルヴィン「そうか」

ユミル「ビックリしただけだ、本当に嫌じゃなかった。さっきも言ったが、お前くらいの年の奴に甘える機会なんて本当になかったから」

ユミル「だから」


ユミル「だから、その……やるのならせめて、人目に付かないところでやってくれ」

エルヴィン「いや、こちらこそ。お前の心情を考えずに悪かった」

ユミル「でも、お前の冗談も嫌いじゃない」

エルヴィン「そうか」フフッ

ユミル「そうだ」

エルヴィン「では、部屋に戻ったら高い高いでもしてやろうか」

ユミル「お前は片手が無いんだから、荷物担いで降ろしての動きにしかならないだろ」

エルヴィン「そう言えば、そうだな」

ユミル「にしてもお前、本当に心臓強いな。こんな拒否されたら降ろすだろ、普通」

エルヴィン「団長になるとな、こう言った鉄の心も必要なんだ」

ユミル「監視相手との関わり合いに、そんなスキルを持ってくるなよ」

エルヴィン「監視相手ならばこそ、必要さ」

ユミル「そう言われると、ぐうの音もでねぇよ」



………………


…………


……




カランカラン

ユミル「へぇ、ここが義肢売り場か――結構いろんな物があるんだな」ヒョコヒョコ

エルヴィン「君は、懐かしく思うかもしれないな」

ユミル「は?」

???「いらっしゃいませー、あ!おまちしてましたよ」

ユミル「お前……アルミン、か?」

???「お、ユミル来たのか」

???「エルヴィン団長、お久しぶりです」

ユミル「エレン、ミカサ。ここって……お前らの店、なのか?」

エレン「あぁ、そうだ。義肢店の『#104』って言うんだ」


アルミン「エルヴィン団長、義手の調子はどうですか。時間さえよければ、団長もメンテナンスもして行って下さい」

エルヴィン「あぁ、そうだな」

ミカサ「エレン、立ち話よりも……早くお茶、持ってきて」

エレン「あぁ、そうだったな――おい、ユミル。お前が来るからいいお茶菓子を買って来たんだ、食ってけ」

ユミル「…………」

エルヴィン「ユミル?」

ユミル「お、おまえら」

エルヴィン「……ユミル、ほら」トン

ユミル「ほんとうに、い…生きていてくれて……るんだよ、なぁ」ウルウル

エレン「あぁ」

ミカサ「ユミル、私は強い。ので、エレンもアルミンも大丈夫」

アルミン「ふふ、でも初めて見るね――ユミルのそんな顔」

ユミル「ハ、ハンカチで抑えているから……見えない、はずだろうが!」


エレン「でも声が」

ミカサ「手も」

アルミン「ついでに耳も真っ赤だし、泣いている事はすぐわかるよ」

ユミル「……っ、この。こんな店、来たくなかった!」

エルヴィン「そうか、ユミルが喜んでくれて良かったよ」

ユミル「んなこと一言も言ってねぇぞ!このすっとこどっこい!」

アルミン「ふふ」

エレン「あはは」

ミカサ「ふっ……ユミル、あなたは丸くなったみたい」

ユミル「っ!!や、やめろ!これ以上客を虐めるな、この意地悪店員め!」

エルヴィン「まぁまぁ、とりあえず計測をしてもらわなければならないな――さぁユミル、手を」

ユミル「くそっ……」ギュッ

エレン「なんだ、やっぱり泣いていたんじゃないか」

ユミル「この、死に急ぎ野郎……!」

ミカサ「ふふっ――さぁ、こちらへ」


早く完結させたいから会話文のみのはずだったのに、気がついたらメモ帳のスクロールバーが小さくなっている恐怖

あ、エルヴィンとユミルの社会お話は軽く聞き流して下さいね
学生時代、成績が良いとは言い難かった奴の書いているお話なので

次はスレタイ回収、そして登場人物多めでお送りいたします(予定)


>>121 続き来ました!

コメントありがとうございます、コメントが当方のエネル源です


すぐに返信したいコメントがあったので、ひとまず返信します
投下はまだですよ、ごめんなさい

>>157 楽しみだなんて、ありがとうございます!

>>158 美味しいですか?ではおかわりを用意します!

>>159 当方はこの投下の仕方が性に合っているみたい、そしてお気遣いありがとうございます

>>160 乙をありがとうございます!

>>161 スレタイは回収しますが、文章的にはまだあります!と言うか、何故終わらないかと当方は困惑気味

>>162 一気読みだなんて、疲れ目になったのでは?目薬を進呈しましょう!

>>163 ジェネレーションギャップによる擦れ違いは、当方も好物です!

>>164 どちらも好きと言って下さってありがとうございます。そして放置して申し訳ないと言う事、当方も常々感じています

>>165 書き込みありがとうございます!当方が書きあげてしまえば万事解決なので、貴方様のお優しい言葉を糧に頑張ります!

>>166 おぉ、数日前に加筆修正した所を。貴方様は、こんな下手な文章で納得して下さるのだろうか

>>167
ほんと楽しい作品が読めるだけでありがたいよ。
潤いをありがとう


>>168 有り難い言葉をありがとう、涙がちょちょ切れそうだ!

>>167 面白い、ありがとうございます!

>>168 気になりますか、実は当方も気になっています!

自分で書いている癖に
「何故この>>1は更新をしない!?」と葛藤してしまった

リアルが忙しいんだよぉ、短期間の引っ越し準備に追われているんだ
と自分に向けて言い訳

言い訳をしつつも、投下


※注意!!※

下腿義足について、当方はにわか知識でございます
不明確な部分、事実と違う部分で気分を悪くされる事もあるかもしれません

創作と言う事を考慮して、見守って頂けると幸いです


………………


…………


……



ユミル「疲れた」

アルミン「そうでしょ?足の高さは勿論、運動の数値、断面の状態。あとはカルテも確認して、いっぱい計算して義肢は作られているんだ」

ユミル「大変だな、心底お前たちを尊敬するよ」

アルミン「それにしても、ユミルは足が長いから作りがいがあるなぁ」

ユミル「作り方なんて、足の長さで変わるのか?」

アルミン「そう言う訳じゃないけれど……洋服を着た時のシェルエットをね、綺麗に見せるカバーも作りたいから」

ユミル「そんな事を気に掛けていたのか」

アルミン「もちろん、機能性を第一にしているから安心して。義肢だって気付かれたくないって言う人も多いし、僕は気を配っているだけだから」

ユミル「お前らしいな」

アルミン「うん、動きの癖も確認し終わった。完成までの間に、一度か二度くらい試装着して貰うけど――随分細かく計測したから、なんとかなりそうだ」

ユミル「試装着か。その時はまた、私がここに来るのか?」

アルミン「エルヴィン団長のメンテナンスをする時にするつもりだから、僕がそっちに行くよ」

ユミル「……そうか」


アルミン「その時に断端袋も持っていくよ、色の指定とかあったりする?」

ユミル「なに、お前。裁縫もできんの?」

アルミン「まさか、そこあたりはミカサに助けて貰っている」

ユミル「へぇ」

アルミン「ミカサは義肢を取り換えやすくする、ズボンの加工とか修正もやっているから。気になったら、後で話し掛けて」

ユミル「当然だが、助け合っているんだな」

アルミン「エレンもね、さすが医者の息子だよ。傷口も見慣れていたし、根気よく接してくれるから。リハビリや、運動量の計測には一番活躍してる」

ユミル「で、お前は計算と義肢の作成の担当か。お前らバランスが良すぎ」

アルミン「義肢は多目的に患者を見て、それから作成するのも大切だから」

ユミル「そう言うもんなのか?」

アルミン「僕達はそう、思っている。外の世界に、誰もが行ける時代が来きたんだ――この仕事で、その手助けが出来れば幸いだよ」

エレン「アルミーン、そっちの計測おわったか?団長の義手のメンテナンス、最終チェックを頼む」

アルミン「わかった!……じゃあユミル、ちょっと席を外すね」

ユミル「おう」

アルミン「ミカサ、ユミルにお茶持ってきてあげて」


ミカサ「ユミル、温かいお茶でよかった?」

ユミル「大丈夫だ」

ミカサ「どうぞ」

ユミル「ん、さんきゅ。――美味しいな」

ミカサ「調査兵団の壁外調査のお陰で、様々な物が流通し始めているから」

ユミル「変なところで遠慮するなよ、淹れてくれたのはお前だろ」

ミカサ「そう、だけど」

ユミル「どうした」

ミカサ「淹れたお茶を、同期に褒められると言う経験が無くて」

ユミル「エレンとアルミンには褒められているんだろ?」

ミカサ「それは、ある」

ユミル「じゃあそれの、ついでとでも思っておけ」

ミカサ「わかった、そうしよう」


ユミル「それにしても……ずっと兵士だと思っていたお前らが、こんな仕事をしているなんてな」

ミカサ「私も、ビックリしている」

ユミル「しかもしっくりくるとは、な――お前は針仕事も頑張っているんだろ?アルミンが言っていた」

ミカサ「子供の頃に、母が教えてくれた初歩の初歩。けど、その技術を生かせている事はとても嬉しい」

ユミル「いい母さんだったんだな」

ミカサ「私もそう思う。そしてそれが、どこか暖かい……けど」

ユミル「どうした」

ミカサ「その一方で、悲しくもある」

ユミル「悲しい?」

ミカサ「二人の事を考えると、胸が苦しくなる」

ユミル「二人っつーのは両親じゃなくて」

ミカサ「エレンとアルミンのこと」

ユミル「だよな」


ミカサ「今の生活は楽しい」

ユミル「そうか」

ミカサ「とても楽しい、でも」

ユミル「…………」

ミカサ「兵士を辞めて、壁外調査に行けなくなったのは私の所為。あの戦いで、私の体に支障が出てしまったから――だから二人とも」

ユミル「おいおい、客の前でそんな顔をするなって。それにあいつらが決めた事だ、お前の責任じゃない」

ミカサ「ユミルは随分と、軽く言う」

ユミル「他人が考え抜いた後に決めた事は、お前の責任じゃないだろ。どーんと構えてろよ」

ミカサ「…………」

ユミル「それに流石の私でも、お前たちにとっては部外者なんだ。お前の不安を取ってやる事なんて、出来るはずもない」

ミカサ「意外」

ユミル「あ?」

ミカサ「不安を、取ってくれるつもりだったの?」

ユミル「お互いによくわからない運命の中で出会ったんだ、心配もするさ」


ミカサ「ユミル、あなたは大丈夫だった?」

ユミル「それは今までの事を、全部ひっくるめての質問か?」

ミカサ「そう」

ユミル「まぁ保護された所が調査兵団の上層部で良かった、と思っている……一応、軟禁はされているがな」

ミカサ「心配していた」

ユミル「は?お前が、私を?」

ミカサ「私だって友人や同期の心配はする。それは貴女の言う、よくわからない運命の中での出会いだったとしても――そうでしょ?」

ユミル「そうか、そうだよな。ん……あれ、なんでこんなに私は驚いているんだ?」

ミカサ「ふふ、ユミルは意地悪だから」

ユミル「そうか」

ミカサ「他人の好意に不慣れだから」

ユミル「……そうか」

ミカサ「そう。だから、しかたがない。存分に驚くといい」

ユミル「お前、微妙に喋るの上手くなってねぇか。そこにも驚くぞ」


ユミル「意地悪、か……うん、そうだったな。そう言えば私は、意地悪で自己中な奴だったな」

ミカサ「珍しい、ユミルがそんな事を忘れてしまうなんて――丸くなった?」

ユミル「丸くなったと言うよりは、行動と人間関係が限られていてな。運動不足によって、体型ついでに性格まで少し丸くなっちまった」

ミカサ「そう、でも今の方が似合っている」

ユミル「あぁ、そうかい。にしてもお前らに会ったら、サシャやコニーにも会いたくなってきたな」

ミカサ「そう」

ユミル「私の、あんな我儘を……お前の言う、私らしさの意地悪や自己中さを笑って許してくれる奴ら、そうそういないからな」

ミカサ「……ユミル」

ユミル「あ?」

ミカサ「ヒストリアは?」

ユミル「え」

ミカサ「ヒストリアは、元気?」

ユミル「お前――ヒストリアの事を、知っているのか!?」


ミカサ「知っているも何も――あなた、新聞とか見ていないの?」

ユミル「新聞、そんなものに。いや、そんなのはどうでもいい――あいつは生きているんだな?」

ミカサ「えぇ」

ユミル「そっか」

ミカサ「…………」

ユミル「そうか」

ミカサ「…………」

ユミル「…………」

ミカサ「…………」

ユミル「……よかった」

ミカサ「……、ユミル?」

ユミル「ははっ――あいつら、なんも教えてくれないから」ポロポロ

ミカサ「ユミル」

ユミル「さいあくの事態、も、かんがえ…っ」ポロポロ

ミカサ「……ちょっと、待っていてねユミル」ポンポン



ガチャ

ミカサ「ユミル、エルヴィン団長を連れて来た」

ユミル「……ぇっる」

エルヴィン「ミカサから、話しは聞いている――近づいてもいいか?」

ユミル「ぁぁ」

ミカサ「団長、入って」

エルヴィン「失礼する」

ユミル「…………」

エルヴィン「…………」

ミカサ「団長、ユミルにはヒストリアが必要。だから話してあげて欲しい、あの報道の事」

ユミル「える、ヴぃん。おまえ、何か知っているっのか?」

エルヴィン「…………」

ミカサ「団長」


エルヴィン「私はヒストリア嬢と――ここ数日だけでも、何回か会っている」

ユミル「な……!?」

ミカサ「…………」

ユミル「な、なんで、お前……それを私に言わない!そんなにお前は、私を信用して無いの…か!?」

エルヴィン「違う」

ユミル「違うなら、なんで!」

エルヴィン「君には、酷かもしれない」

ユミル「……は?」

エルヴィン「そして、反対されるかもしれない。そう思って、口に出来なかった……それは一重に、私の弱さだ」

ユミル「お前」

エルヴィン「すまない」

ユミル「なんで、だ」


ユミル「お前は、分かっていたはずだろ!」

エルヴィン「…………」

ユミル「お前、私がどれだけヒストリアに会いたかったか」

エルヴィン「あぁ、知っている」

ユミル「だったら、なんで!」

エルヴィン「本当は、今日の終わりにでも話そうと思っていた。少しでも気分転換をした後に……と」

エルヴィン「なのに、ミカサ。君が台無しにしてくれたらしい」

ミカサ「それはあなたの都合。私は確かに沈黙するよう言われたが、それでもユミルが可哀想だと思った」

エルヴィン「あぁ。私には、其処まで察してやる事が出来なかった」

エルヴィン「私よりお前達の方が付き合いは長い、ミカサがそう思うなら――これが最善だったのだろう」

ミカサ「では、ユミルに話してあげてほしい。この部屋は好きに使っていい、誰も立ち入れはさせない」

エルヴィン「あぁ」


ミカサ「では、何かあったら呼ぶといい。ユミル、また後で」

エルヴィン「あぁ」

ユミル「……ミカサ」

ミカサ「なに?」

ユミル「ありがとう、な」

ミカサ「礼はまだ、必要ない。本当にこれが最善だったのか、私には分からないのだから」



ぱたん

ユミル「…………」

エルヴィン「…………」

ユミル「話して貰うぞ、エルヴィン」

エルヴィン「分かった、話そう。そうだな、話は、少し逸れた辺りから始めるが――大丈夫か?」

ユミル「あぁ」


エルヴィン「今回の戦争で私達、調査兵団は要の存在となった」

エルヴィン「エレン、ミカサ、リヴァイと言う戦力――それに情報量もかなりの物だったのも、その原因だ」

エルヴィン「そして、我々は勝利した」

エルヴィン「だが……戦争で、戦果をあげた者の宿命と言う物がある」

エルヴィン「死者の命を背負う責任と、生きた人間の命を守る責任だ」

エルヴィン「先程も話したが。私は調査兵団の団長で、それを背負う責任がある」

エルヴィン「お前達を、戦争の象徴にしたくは無かった……だから」



エルヴィン「私は――政界へ、王政の深くに行く決意をした」

ユミル「エレンやヒストリア以上に、戦争を勝利に導いた象徴としてか」

エルヴィン「あぁ」

ユミル「頭のいいお前なら、分かっているんだろうが……お前は、それがどういう意味か分かって言っているのか」


エルヴィン「私の利用価値を、見出す奴らも多いだろう。利用し、少しでも権力を持とうと絡んでくるかもしれない」

エルヴィン「もしくは蹴落としに掛ってくるかもしれないな、本当に様々な角度から」

ユミル「それは地獄、だぞ」

エルヴィン「分かっている、だが逆に言うと好機でもある」

ユミル「好機?」

エルヴィン「死者の魂と、生き抜いた人間達を守り抜く――良い機会だ」

ユミル「それは、そうだが」

エルヴィン「勝者の責任。それを果たせていける良い機会だと、私は思っている」

ユミル「そんなに、上手くいくとは思えない」

エルヴィン「行かせてみせる。私もこんな体だ、闘う事は出来ない――出来るのは内から変えてゆく事だと思う」

ユミル「もう決めているんだな、じゃあ私にもう口出しする権利は無い……で、何処にヒストリアの話が入ってくるんだ」

エルヴィン「私は政界に入る、その地盤固めとして」



エルヴィン「私とヒストリア嬢との、縁談が進んでいるんだ」


ユミル「――は?」

エルヴィン「私とヒストリア嬢との縁談が、進んでいる」

ユミル「……何故繰り返した」

エルヴィン「君が理解出来て、いないようだったからな」

ユミル「理解、出来る訳無いだろ」

エルヴィン「だろうな、君とヒストリア嬢の仲は理解している」

ユミル「ヒストリアは、まだ18歳だ」

エルヴィン「それは同意だ。だが彼女も、政界への干渉を望んでいる。私との婚姻は、彼女にとっても有益だ」

ユミル「お前」

エルヴィン「関係性のみの婚姻なんて、君は認めてくれないかもしれない。だが必ず――彼女を傷つけ無い事を、誓う」

ユミル「…………」

エルヴィン「大丈夫だ、必ず傷つけさせはしない」


ユミル「でも」

エルヴィン「なんだい」

ユミル「お前と一緒になる事で、あいつが危険な目にあうかもしれない」

エルヴィン「そうだな。だから私から君へ、ひとつ提案がある」

ユミル「なんだ」

エルヴィン「これを認めてくれると、君も人と一緒に暮らせる様になるんだが」

ユミル「だから、なんだ」



エルヴィン「私達の、養女にならないか?」

ユミル「……は?」


エルヴィン「婚姻関係を結んだ者の間には、養子を迎える事が出来る」

ユミル「え……と、その」

エルヴィン「君は名字が無い、言わば籍無しの扱いになっているが」

エルヴィン「私達なら君を、正式に家族の一員として迎え入れる事が出来るんだ」

ユミル「ヒストリアが、私の母親になるってことか?」

エルヴィン「戸籍上で言えば、不可能ではない」

ユミル「…………」

ユミル「…………」

ユミル「……すまん、頭が追いつかない」

エルヴィン「ふむ、だから休日を堪能した後に話すつもりだったんだが」

ユミル「そうすれば。よかった、のか……?」

エルヴィン「まぁ一時しのぎだがな」

ユミル「そうだよな、あぁ……頭が痛い」

エルヴィン「そうか、どうせ痛いんだ。ついでに頭の痛くなる話を進めるとしよう」

ユミル「わかった」


エルヴィン「もちろん、これはヒストリア嬢にとっても良い話でもある」

ユミル「…………」

エルヴィン「貴族の出でありながら勇猛果敢に戦い、人類に貢献した少女――そんな彼女の引く手もあまただ」

ユミル「そう、だな」

エルヴィン「このままだと彼女は、私以上の年上のお偉い様に嫁ぐかもしれない。いや、もしかしたら最愛の人と巡り合い結ばれるかもしれない」

ユミル「…………」

エルヴィン「悪い事、良い事の両方の可能性を摘んでしまう事にはなるが――ヒストリア嬢の身柄は、調査兵団が保証出来る」

ユミル「あぁ、それも分かる」

エルヴィン「それだけでも、彼女の都合はいい物だろう」

ユミル「でも、それは」

エルヴィン「そうだ。確かにこの方法は最善ではない、だがお互い利点がある――それだけの、策だ」


ユミル「…………」

エルヴィン「…………」

ユミル「なぁ、エルヴィン。お前は」

エルヴィン「ん?」

ユミル「ヒストリアの事が、好きか?」

エルヴィン「立派な人格者だと思い、尊敬している」

ユミル「そうか」

エルヴィン「…………」

ユミル「では、ヒストリアの事を愛せると思うか?」

エルヴィン「君の大切な人なんだ。私は、それだけで保障されていると思っている」

ユミル「信用してくれているのは嬉しいが。その言い分だと、まだ愛せてはいないんだな」

エルヴィン「そうだな、だが……必ずしも愛する必要がある訳ではないんだ、この婚姻は」

ユミル(もう決定事項の様な物なんだろうな、この言い方は)


ユミル「お前は、こんな善策に留まっている奴じゃないと思っていたよ」

エルヴィン「もう命のやり取りは終わったんだ。必要な物ではないのなら、人を傷つけない策に私は留まりたい」

ユミル「そうか――確かに、兵士の英雄と貴族の英雄。それが結ばれると思うと、人類が団結をしたっぽいもんな」

エルヴィン「認める、のか」

ユミル「反対する理由が、あまりにも無さ過ぎる」

エルヴィン「……君は」

ユミル「ん?」

エルヴィン「君は、反対すると思っていた」

ユミル「何言ってんだ、私は感情論で物を話す方では無いだろ。今まで散々、色んな言葉のやり取りをしてきたお前なら知っているだろうが」

エルヴィン「そうか、そうだったな」

ユミル「ん、……なぁ」

エルヴィン「なんだ」

ユミル「帰ろうぜ、外出を楽しむ気分はもう無くなっちまった」

エルヴィン「そうか――ユミル、手を」

ユミル「……あぁ、頼む」



ガチャ

ミカサ「ユミル、大丈夫だった?」

ユミル「あぁ――エルヴィン、もういい。ミカサの方に支えてもらう」

エルヴィン「すまないな。ミカサ、頼む」

ミカサ「ユミル、あなた…」

ユミル「大丈夫、少し頭が混乱しているだけだ」

ミカサ「私は、また喋り方を間違えた?」

ユミル「心配するなミカサ、確かにタイミングとしては最良では無かったが――どうせ結果は同じだ」

ミカサ「すまなかったと思っている、私は感情的になりすぎた」

ユミル「じゃあ……すまないが、今此処にあるヒストリア関連の新聞や雑誌をくれないか?――なるべく、たくさん」

ミカサ「!」

ユミル「それでチャラだ」

ミカサ「分かった、すぐに用意しよう。ユミル、其処の椅子に座ったらいい」

ユミル「あぁ、悪いな」


アルミン「あ、ユミル。丁度良かった」

ユミル「アルミン」

アルミン「団長もお疲れ様です」

エルヴィン「あぁ」

アルミン「義肢は一週間程で出来上がる様に、部品の調達がすんだよ」

ユミル「そうか」

アルミン「あとうちは義肢を調整中の人に、これを渡しているんだ――はい」

ユミル「おぉ、松葉杖か」

アルミン「これもちゃんと、ユミルの身長に合わせているからね」

ユミル「あぁ、ありがとう……よっと」ヒョコ

アルミン「どうかな」

ユミル「……へぇ確かに、手持ちの奴より大分使い勝手がいいな」

アルミン「ちゃんと持ち手の所にも、いい木と布を使っているからね」

ユミル「サンキュなアルミン、これだけでも来て良かったと思うぜ」


アルミン「……ねぇ、ユミル」

ユミル「なんだ」

アルミン「あの事、聞いたんだ」

ユミル「あぁ、つい今しがたな――なぁ、アルミン」

アルミン「なに?」

ユミル「ヒストリアは、今幸せだと思うか?」

アルミン「それは、僕は分からない。でも一つだけ、知っている事がある」

ユミル「?」

アルミン「彼女は、強い人だって事」

ユミル「…………」

アルミン「ユミル、君が彼女を強くしたんじゃないか。ヒストリアはもう、不幸に甘んじている女性では無いよ」

ユミル「そう、だろうか」

アルミン「あぁ、僕が保証する」


ユミル「私は……強くなったあいつを見る時間が、あまりにも少なかったように思う。もっと一緒にいて、成長させてやりたかった」

アルミン「そっか」

ユミル「私はもっと、あいつの姿を見たい」

アルミン「うん」

ユミル「……今も、見たい」

アルミン「ユミル……」

エルヴィン「ユミル」

アルミン「団長」

エルヴィン「ヒストリアに、会うか?」

ユミル「え……」

エルヴィン「会いたいか」

ユミル「そんなの――会いたいに、決まっているだろ」


エルヴィン「では行こう、今すぐに」

ユミル「……!!」

エルヴィン「君が外出できる機会なんて、そう沢山は無いのだから」

ユミル「……っ」

エルヴィン「行こう、ユミル――今すぐ」

ユミル「いい、のか」

エルヴィン「あぁ」

ユミル「会えるのか?」

エルヴィン「今日は君の為の一日だ」

ユミル「会いたい――ヒストリアに、会いたい」ポロポロ

エルヴィン「分かった、すぐに手配しよう」


エルヴィン「アルミン――すまないが、馬車の手配をしてくれないか」

アルミン「分かりました」

ミカサ「ユミル、出来る限りの新聞と雑誌を持ってきた。持っていくといい」

エレン「あれ。ユミル、お前何泣いて……ぶ」

ミカサ「エレン、さすがにデリカシーが無い」

エレン「す、すまねぇミカサ」

ユミル「ふはっ、お前ら……」



ユミル(あぁ、今日はなんて素敵な日なんだ)

ユミル(お前らに会えて、ヒストリアにも会える)

ユミル(そして……団長殿と、外にも出れた)


アルミン「馬車が、来ましたよ」

エルヴィン「あぁ、すまないねアルミン……さぁ、ユミル」

ユミル「あぁ」

エルヴィン「手を」

ユミル「エルヴィン、頼む」ギュッ





ユミル「私をヒストリアの所に、連れて行ってくれ」


ごめんなさい、まだ今回の更新文あるのですが
眠すぎるので寝落ちます、残りは今日中に投下する予定

予想外の展開!面白い!

乙!
面白い!めっちゃ期待して待ってます!
ていうかエルヴィン、両手に花じゃないか……羨ましい!

ここでタイトル回収か……よく練られている。面白い。

スレ回収、こう来たかぁ!次も待ってる!

純粋に面白いです。
更新待ってます。


>>201 予想外でしたか、良かった!

>>202 夫婦と親子の関係になったら正に両手に花ですね!

>>203 ここで回収させました、面白いありがとうございます!

>>204 こう来ました、更新しますよ!

>>205 純粋に面白いだなんて、照れちゃいます!

さてさて、明日は引っ越し
なのに更新

その心は、今日更新すると言ったからだよ!
あと、明日からネット離れしなければならないからさ!

引っ越し作業で大わらわの最中に更新ありがとう!


馬車はゆっくりと街の情景を移わせながら進んだ

景色を楽しむ余裕なんて、もう無い

早く、ヒストリアの元へ

早く、早く

心は急くのに、馬車はゆっくりと進む

あぁ今、巨人になれたなら

屋根を伝って、すぐに走り出すのに!



急く心をおさめたのは、こちらの手を握る大きな手のぬくもりだった

エルヴィンはユミルの手を片手でぎゅっと握り、困った様な笑みでこちらに笑い掛けている


エルヴィン「落ち着きなさい。そう急いてしまうと、話す内容がいっぱいいっぱいになってしまう」

ユミル「あ……あぁ、そうだな」

エルヴィン「この時間は、話す内容を整理するといい。あの争いの中で感じた事、今まで彼女が頑張ってきた事」

ユミル「そして、お前との縁談もな」

エルヴィン「あぁ、聞いてくれ」

ユミル「何を聞いても、いいのか?もしかしたら縁談を破棄させんが為に、お前の悪口を吹き込むかもしれないぞ?」

エルヴィン「君の望むとおりに」

ユミル「…………」



ユミル(――話す事、か)

ユミル(確かに聞きたい事が、あまりにも多すぎる)

ユミル(助言には従ってみよう)


助言に沿って、新聞を広げてみる

話題には事欠かないらしく、様々な見出し文字が視界に飛び込んできた



『人類の平和へ貢献した悲運の少女、民衆の声を王政へ』

『熱愛発覚か?救世主「ヒストリア・レイス」と先導者「エルヴィン・スミス」』

『レイス家の闇か、一部親族が爵位を返還』

『ウォール教、ヒストリア・レイスへ全面的な支持を表明』



エルヴィンに、整理しておいた方がいいと言って貰っていて助かった

だって私は、本当に

柄にもなく緊張をして、通された部屋で待つ事になったのだから

まぁその後の展開により、私の思考はぶっ飛ばされてしまったけれど


馬車に乗ってから約三十分後

勝手知ったると言った様子で、エルヴィンはユミルを邸内へとエスコートした

時折通りすがる女中達が、こちらの服装を訝しげに見る時もあったが

おそらくは「ヒストリアの許嫁」であるエルヴィンの連れと言う事もあってか、何も言ってこない


ユミル(あぁ、やっぱりあの話は本当なんだな)

そんな事を様々な状況で味わった



洋館の離れにある別の棟、そこの応接室に案内される

応接室に置いてあったポットと茶葉をエルヴィンは躊躇いなく手に取り、紅茶を入れてユミルに差し出した


エルヴィン「飲みなさい、落ち着く」

ユミル「ありがと、な」

エルヴィン「今入れた茶葉も、調査兵団が壁外遠征の際に取ってきたハーブだ」

ユミル「へぇ」

エルヴィン「たわいもない話しでもして、君の緊張を取りたいところだが……少し、待っていてくれ」

ユミル「トイレにでも行くのか?」

エルヴィン「少しだけ、伝言をな」

ユミル「そっか、わかった」

エルヴィン「では、行ってくる」


カチャン

ユミル(緊張、しているの様に見えるのか。気遣わせてしまった)

ユミル(まぁヒストリアに会えるんだ、緊張もするよな)



カチャン

エルヴィン「戻った」

ユミル「お帰り。お前の紅茶が冷めちゃいそうだ、早く飲んだらどうだ」

エルヴィン「そうだな」

ユミル「それにしても、こんなハーブもあるんだな。新種のハーブって、やはり貴族優先に出回る物なのか?」

エルヴィン「このハーブは違う。こちらの邸宅の庭に、試験的に繁殖させて貰っているハーブだ」

ユミル「へぇ」

エルヴィン「ヒストリア嬢は庭地の提供もしてくれている、たまにハンジもここに来て収穫させて貰っているらしい」

ユミル「……あいつも、ヒストリアに会っていたのか」

エルヴィン「ハンジがここに立ち寄るのは――植物によって、強すぎる繁殖力や毒を持っているモノもあるからだろう」

ユミル「ヒストリアも、それらに触れるのか?」

エルヴィン「僅かでも毒のある物は触らせていない、其処は大丈夫だ。ちなみに彼女には調査兵団から護衛を出し、安全性には気を使っている」

ユミル「団長殿の、許嫁であるが故の特権だな」

エルヴィン「そうだな」


ユミル「ちなみに、ヒストリアにはどんな護衛が付いているんだよ」

エルヴィン「あぁ、調査兵団からはジャンを派遣した」

ユミル「……っ!ご、ごほっ」

エルヴィン「大丈夫か?」

ユミル「ごほ……じゃ、ジャン!?」

エルヴィン「あぁ、そして」


コンコン

???「失礼いたします」

エルヴィン「来てくれたようだな……入ってくれたまえ」



ガチャ

???「失礼しま…」

ユミル「あ」

???「あれ、どうしたのアニ」

???「急に立ち止ま……て」

ユミル「お前ら」

アニ「……あんた」

ベルトルト「え、ユミル!?」

ライナー「本当にユミルか!?」

エルヴィン「久しぶりだな、諸君――入ってきたまえ」

アニ「失礼、致します……えと、紅茶を」

エルヴィン「他人行儀にする必要は無い。よければ一緒に、お茶を飲んで行ってくれないか」


ライナー「失礼致します」

ベルトルト「…………」

ライナー「あぁ、そうか。なんで俺等が急に呼ばれたのかと思った」

アニ「団長が来て、私等が呼ばれる事なんて滅多にないから」

エルヴィン「いいから来なさい、ユミルをわざわざ立たせるのは少々忍びなくてね」

ベルトルト「ユミル……君、足」

ユミル「命が助かっただけで御の字だったがな、お前等は五体満足か?」

ライナー「俺も一時期は、危なかったがな……なんとか回復出来た」

アニ「私は、戦いに参加するのが遅れて」

ベルトルト「僕は、足の指の辺りだけ回復が間に合わなかったけれど……なんとか」

ライナー「おいおい――お前はそこだけじゃないだろ、背中周辺もかなり抉られていたしな」

ベルトルト「でも今は、脊髄の軽い損傷だけで済んでるから」


アニ「こちらの一番の重症はベルトルトさ、右足先の欠損と日々の行動制限が必要――で、あんたは足だけ?」

ユミル「ベルトルさんと似た様なもんだな、左膝下の欠損と臓器の一部損傷による行動制限」

アニ「今だけは、巨人の能力が欲しいと思わないかい?」

ユミル「平和になったんだ、そんなの野暮ってもんだろ」

ライナー「だな。雨の日に傷が痛む事以外、俺は不便が無いし」

ベルトルト「僕もここの庭師の仕事が楽しいよ、何より三人一緒にいられるのが嬉しい」

ユミル「庭師って事は、ハーブの管理はお前等がやってんのか……なら安心だな。それにしてもアニ、メイド服似合うなぁ」

アニ「そのおちょくりも、もう慣れた」

ユミル「いやいや、本当だぞ?――あぁ、ちょっと待て紅茶を飲む」

エルヴィン「では私がつごう、全員同じ物でいいかな?」

ライナー「あ、すいませ…」

ユミル「あぁ、頼むよ」

アニ「え」

ユミル「?」


エルヴィン「久しぶりに会う、同期との会話は嬉しいかい?」

ユミル「たしかに嬉しいが、こんなに口を動かすのは久しぶりで喉が渇く」

エルヴィン「それは良かった、ほらこっちは君達のカップだ」

アニ「あ、ありがとうございます」

ライナー「改めて――エルヴィン団長にも、お世話になりました」

エルヴィン「礼はヒストリア嬢に言えばいい、私は君たちの環境に同情しただけだ」

ライナー「しかし、俺達を戦死処分にしてくれたのは貴方です――俺達はもう、貴方に頭が上がらない」

ベルトルト「本当、感謝しています」

エルヴィン「だからと言って、会う度に言う必要は無い――ヒストリア嬢が広大な敷地を持ち、君たちを雇える余裕が出来た事こそが幸運だ」

ユミル「お前達も、外に出れないのか?」

アニ「あぁ。この二人は指名手配の際に、市民に顔を知られてしまったからね。今はヒストリアの私邸の中の仕事をしている」

ライナー「文句は言えないさ、人間らしい生活を与えてくれたヒストリアには感謝しかない」

ベルトルト「ユミルは、どんな生活をしているの?」


ユミル「ん、こいつの執務室の隣に住んでる」

アニ「え!?」

ライナー「……ごふっ」ゴホゴホ

ベルトルト「…………」ポカーン

ユミル「新しい地域や動物や植物のレポート読ませて貰って、情報を提供したりするだけだが……簡単に言うと暇な生活さ」

アニ「それ、本当に?」

ユミル「嘘をついてどうすんだよ」

ライナー「ほ、本当なんですか?」

エルヴィン「あぁ、本当だが」

ベルトルト(本当なんだ、あれちょっと複雑)

アニ「へ、へぇ……すまないね、私達はヒストリアと一緒に生活をさせて貰っていると言うのに」

ユミル「それは全くもってそう思う、なんで私だけエルヴィンと一緒なんだ」

アニ「え」

ライナー「ん?」

ベルトルト「あれ?」


ユミル「……なんだ?」

ライナー「お前――団長を、呼び捨てにしているのか」

ユミル「あぁ、そう言えば今日だけは名前呼びだったんだ。なぁ、団長殿」

エルヴィン「そうだな、だが団長殿と言うのも少し他人行儀な気がするし。君さえ良ければ、そのままでいい」

ユミル「そうか……わかったよ、エルヴィン」

ライナー(ユミル、お前それがどんなに凄い事が分かってんのか?)


コンコン ガチャ

???「失礼します、団長」

エルヴィン「ジャン、か」

ユミル「おっ!ジャンじゃないか、お前も来てくれたか」

ジャン「あぁ、そして……」

???「ユミル!」

ユミル「!!」


ヒストリア

やっぱりお前、天使だろ

可愛さだけでは無くて、綺麗さが加わったな

あと凛々しくも見えるぞ、髪も伸びたな

ゆらゆら揺れる、その金髪がとても眩しい



ユミル「ヒ、ス……」

言葉が出ない、そんな私の元へ

天使が腕を広げて飛び込んできた

ぎゅうぎゅうと抱きしめられる

その小さな体の、全力の力で


ヒストリア「ユミル!!」

ユミル「ヒストリア」

ユミル(なんだよ、なんでこんなに嬉しいのに……声が出ないんだ)

ユミル(こんなに、こんなに嬉しいのに)

ユミル(そうだ腕……腕をまわして抱きしめて)

ユミル(駄目だ、何故だか体が動けない)



エルヴィン(嬉しそうだな、ユミル)

アニ(泣いて喜んでいるヒストリアに、硬直してしまる)

ライナー(ヒストリア天使)

ベルトルト(僕達の時は、あんなに喜んでくれなかったのに)

ジャン(あれ、なんか俺出遅れた)



エルヴィン「……よし、では」


エルヴィン「では、ヒストリア嬢とユミルはゆっくりと話をしなさい」スタスタ

アニ「さ、行くよあんた達」スタスタ

ベルトルト「行くよ、ライナー」スタスタ

ライナー「…………」スタスタ

エルヴィン「ジャン、敷地警護の報告をしてくれ」スタスタ

ジャン「はい!」スタスタ



ヒストリア「ふふ、みんなありがとう!」

ユミル「ぇ」



ガチャン


ユミル「ヒストリア、私……」

ヒストリア「ううん、いいよユミル。私って意外とユミルの考えている事、分かるんだから」

ユミル「……ありがとう、なんだろうな。もういっぱいいっぱいになってしまって」

ヒストリア「私も、ねぇユミル」

ユミル「ん?」

ヒストリア「もう一度、ギュッと抱きしめてもいい?」

ユミル「あぁ、おいで」

ヒストリア「…………」ギュッ

ユミル「……?」

ヒストリア「ユミル、私あなたに会えて……今、すごく幸せ」ギュウ

ユミル「私もだ――だから、泣くな」

ヒストリア「うん」ポロポロ


それから、色んな話をした

普段の生活の事、やろうとしている事

ジャンが兵団との架け橋になってくれている事

アニが生活を整えてくれる事で、取り組む事に集中できている事

ライナーとベルトルトが庭の管理をして、外で取れる植物などの繁殖がとてもいい事

そして、エルヴィンとの婚約の事



ヒストリアは、反対する理由が無いと言った

むしろ知らない相手と政略結婚に利用されるより断然いいと、前向きだ

養女にならないかと言われた事も話した

ヒストリアは驚いていたが、じゃあ皆で暮らせるねと言う

皆……か

ヒストリアと、アニと、ライナーと、ベルトルトと、ジャン

そして、エルヴィンと


ユミル「ヒストリアは」

ヒストリア「なに?」

ユミル「エルヴィンの事が好きなのか?」

ヒストリア「そうね、とても尊敬しているわ」

ユミル(エルヴィンも、そう言っていたな)

ヒストリア「ユミルは、エルヴィン団長の事をどう思っているの?」

ユミル「私か?……そうだな、とても感謝している」

ヒストリア「私の夫となるのに、ふさわしい人?」

ユミル「……ヒストリア」

ヒストリア「私、知っているの。兵団に居た時、ユミルが世間知らずの私を守ってくれていた事」

ユミル「ごめん」

ヒストリア「ううん、責めている訳じゃない。私だって、ユミルの認めてくれた人と結婚したいもの」

ユミル「…………」


ヒストリア「だからね。ユミル教えて――エルヴィン・スミスは、私の夫になっていい人なのかを」

ユミル「……っ」

ヒストリア「貴女がもし反対をしたら、私は結婚しない」

ユミル「ヒストリア」

ヒストリア「ユミル、お願い」

ユミル「…………」

ユミル(お前の――絶対的な、その信頼しきった瞳が怖いと思う日が来るんて。思ってもみなかった)

ヒストリア「ユミル……?」

ユミル「ヒストリア、私は」

ヒストリア「うん」

ユミル「お前の結婚を……」


………………


…………


……




カチャ

エルヴィン「あぁ、話は終わったのか?」

ヒストリア「えぇ……お気遣いありがとうございます、エルヴィン様」

エルヴィン「ですから、様は付けなくてもいいですよ。私はそんな身分ある者では無いので」

ヒストリア「でも王族や貴族の方達の前だけでも、この呼び方は必要です。だから普段から慣れておかないと」

エルヴィン「そうですか、あぁユミル」

ユミル「……なんだ?」

エルヴィン「ヒストリア嬢との話はどうだった、気が晴れたか」

ユミル「そうだな……そうだエルヴィン、お前にも聞いて欲しいんだ」

エルヴィン「なんだ」



ユミル「私を、調査兵団に入れて欲しい」


エルヴィン「なっ……!」

ユミル「私は元々、あちらの生まれの様な物だ――ヒストリアとも、話した」

エルヴィン「しかし、君は」

ユミル「そうだ、私は足を無くした……それに内臓も一部欠損している事で、運動能力は大幅に下がってしまった」

エルヴィン「だったら、何故」

ヒストリア「私も、止めたんですが」

ユミル「今日、外に出て思ったんだよ。私は外に行きたい、北へ南へと思うがままに足を進めたい」

エルヴィン「調査兵団は、そんな気楽なものじゃない」

ユミル「わかっている、ただここに居るよりかは自由だ」

エルヴィン「駄目だ、自由を得る代わりに――君の命を危険にさらす訳にはかない」

ユミル「ヒストリアにも、ライナー達も、エレン達も出来ない。私だからこそ出来るんだよ、エルヴィン」

ユミル「私は明確な敵ではなかったし、兵団に属する事は不可能じゃない」

エルヴィン「しかし、兵団には君を怨んでいる者も多い」

ユミル「あぁ。入団に時間が掛るのもわかる、説得が必要なのもわかる、命が狙われる可能性がある事もわかる」

ユミル「だが、不可能じゃないんだ――やってみたい」


エルヴィン「これは、まるで調査兵団の教訓その物の様な言葉だな」

ヒストリア「自由の翼、ですね」

ユミル「そして、我儘にはなるんだが。ヒストリア、エルヴィン――お前達には、私の帰る場所であって欲しい」

ユミル「娘、の初めての我儘だ――聞いてくれるか?」

エルヴィン「ユミル、それは」

ユミル「ヒストリアとも話をした、エルヴィン。お前、いや……貴方にヒストリアを託して良いだろうか」

エルヴィン「…………」

ヒストリア「エルヴィン様」

エルヴィン「あぁ……必ず、守る」

ユミル「あぁ、そうだ――愛するなんて二の次で良い」

ユミル「だってこいつは愛される為に生れて来た様な存在なんだ、すぐに愛しい存在になる――私が保証する」

ユミル「だから守ってくれれば、それだけで十分だ」

ユミル「ヒストリアは、強い女なんだから」


………………


…………


……



ユミル「だぁー…疲れた」ポスッ

エルヴィン「ほらほら、疲れたからと言ってソファーに飛び込んではいけない」

ユミル「こんなに歩いたの、久しぶりなんだよ」

エルヴィン「それはそうだが、まずは着替えてからのんびりしなさい」

ユミル「だな、分かったよ」ムクリ

エルヴィン「しかし――色々と予期せぬ事が多くあったが、時間通りに戻れて良かったよ」

ユミル「悪いな、焦らせてしまったか?」

エルヴィン「大丈夫だったから、そんな顔をするな」

ユミル「そうか」

エルヴィン「……実はこのタイミングで、君に言うつもりだった」

ユミル「あ?」


エルヴィン「ヒストリア嬢と、私との関係を」

ユミル「そうか」

エルヴィン「君に、不愉快な思いをさせてしまったのなら詫びよう。今まで黙っていた事を」

ユミル「…………」

エルヴィン「すまなかった」

ユミル「ちょ、やめてくれよ!頭を上げてくれ、エルヴィン」

エルヴィン「しかし」

ユミル「私だって分かっているさ、言いにくい話題だったって事は」

ユミル「お前が一生懸命、今日私を楽しませてくれていた理由も理解できる」

ユミル「少しでも、私を傷つけないように……だろ」

エルヴィン「それは、そうだが」

ユミル「お前は自分が言いだしづらかっただけだと言っていた、もちろんそれもあるかもしれない」

ユミル「けれどお前の善意を、感じない私ではない。私はお前と、一緒の部屋で何日も過ごしてきたんだから」


エルヴィン「ユミル」

ユミル「まったく……本当にどうしようもない親父だな、あんたは」

エルヴィン「…………」

ユミル「頼むから顔を上げてくれ、さぁ」



差し出した手で、エルヴィンの顔を軽く挟む

そしてそのまま、軽く力を入れて持ち上げた

その顔が、自分の顔の高さまで上がる――綺麗な目だと思った

色ではなく、たくさんの野望や責任を内に秘めて

それでも、なお輝く

意思の強さが、綺麗だと思えた


エルヴィン「ユミル、君は」

ユミル「なに親父なんて単語に驚いているんだよ、お前は私の父親になるんだろ?」

エルヴィン「だが呼ばれるとは、思ってもいなかった」

ユミル「嫌、だったか」

エルヴィン「嫌ではないが、違和感を感じてしまった」

ユミル「ふはっ、そりゃあこんなでかい女に言われたらなぁ」

エルヴィン「笑いすぎだ」

ユミル「くく、すまんすまん」

エルヴィン「何がそんなに、おかしかったんだ?」

ユミル「いや、あんたがあんまりにも可愛くてな」

エルヴィン「かわい……とは」

ユミル「細かい事は気にするなよ?私だってあんたみたいな年齢の奴を可愛いと思った事に、心底戸惑っているからな」


エルヴィン「その割には笑顔だが」

ユミル「だってしょうがないだろ、ふふっ」

エルヴィン「…………」

ユミル「またその困惑した顔が、はは」

エルヴィン「箸が転げても楽しいお年頃、と言う奴か?」

ユミル「そうかも、しれないな」

エルヴィン「そうか」

ユミル「はは、笑った笑った。ではもう、着替えて寝るとするか」

エルヴィン「そうだな。今日は私も帰宅せず、この部屋に泊まるとしよう」

ユミル「そうか。悪いが疲れているし、着替えの手伝いはしなくても大丈夫か?」

エルヴィン「あぁ、大丈夫だ。では」


ユミル「お休み、エルヴィン」

エルヴィン「お休み、ユミル――いい夢を」

ユミル「明日からは、徐々に親父の呼び名に慣れて行こうな」

エルヴィン「無理には呼ばなくていい」

ユミル「わかったよ。――じゃあ、お休み」

エルヴィン「お休み」


一旦ここまで!
次はほのぼの、そしてその次からの更新がラストにむけての内容

の予定
次の号が出るまでには完結させたい!


>>207 現実逃避、と言う奴ですかね

待ってるよー

無駄に埋めるの止めてほしい

保守

支援

エルヴィン「幼女にならないか?」ユミル「……は?」

エルヴィンがどこに泊まるのかわからないのは俺がバカだからか?
執務室付きの仮眠室が何部屋もあるとは思えん。

まさか同じ部屋で……

ほしゅ

支援

支援


遅くなりました
スランプ、リアル、意外に長くなった……と言ういつもの三重苦に悩まされてました

今回は「お出かけその後の一日」と「時期物の山なし落ちなし文」です
普段よりも少な目の更新となります


………………


…………


……


待ってたよ。楽しみにしてる。



――ごそごそ



――かたん、ぱたぱた





「…………」ハァ





のそのそ

ガチャ



ユミル「……おはよう」


エルヴィン「起きていてたのか」

ユミル「物音で、起きた」

エルヴィン「それはすまなかった」

ユミル「…………」ゴシゴシ

エルヴィン「あまり眠れなかったのか?」

ユミル「眠りが、浅かった……だけ、だ」ゴシゴシ

エルヴィン「そうか」

ユミル「…………」ゴシゴシ

エルヴィン「そんなに目をこするな」

ユミル「目がシバシバする」ゴシゴシ

エルヴィン「睫毛でも入ってしまったかな?」

ユミル「かもな」ゴシゴシ

エルヴィン「どれ、見せてごらん」


ユミル「ん」

エルヴィン「どれ」ヒョイ

ユミル「…………」

エルヴィン「…………」

ユミル「……ぉぃ」

エルヴィン「なんだ?」

ユミル「まだか」

エルヴィン「見えにくくてな」

ユミル「まさか」

エルヴィン「ん?」

ユミル「近い所が見えにくいって事は、老眼…」

エルヴィン「失礼な奴だ」ムギュッ

ユミル「むぐっぅ!?ちょ、おい!こらっ!!顔を固定していた手ひぇ、ほっぺを鷲掴みするひゃ!!」ジタバタ

エルヴィン「君の失言が原因だからな、このくらいは致し方ない」


ユミル「離せって、この老眼!」

エルヴィン「老眼ではない!!」ググッ

ユミル「知ってんだからな!最近書類が見難いの……わ!?」ジタバタ

エルヴィン「こ、この――!!」ムギュギュ!

ユミル「ひゃひゃへってぇ!!」ジタバタ



エルヴィン「…………」ハッ

ユミル「…………」ハッ



エルヴィン「何をやっているんだろうな」パッ

ユミル「だな」

エルヴィン「やりすぎてしまった、すまん」

ユミル「いや、こちらこそ大人気が無かった」


エルヴィン(馬鹿やってしまった。まぁお蔭で、多少は目が覚めたが)

エルヴィン(私も大して寝ていなかった所為か、考えなしに行動をしてたみたいだな――完全に素だった)



ユミル(馬鹿、やってしまった――寝ていなかったし)

ユミル(なんで眠りにくかったか、なんて。分かり切ってはいるんだけれどな)

ユミル(どうしても、こいつとヒストリアとの事を思い出してしまって)

ユミル(ヒストリア、との……)

ユミル(うーん、頭がもやもやしてしまう)ゴシゴシ



エルヴィン「ユミル」

ユミル「ん?」


エルヴィン「どうしても目を擦ってしまうのなら、手を握っておこう」

ユミル「――あぁ、頼んでいいか?」

エルヴィン「では失礼して」

ユミル「…………」ギュッ

エルヴィン「お前の手は、小さいな」ギュッ

ユミル「標準よりはでかいくらいなんだが」

エルヴィン「そうか。もしかしたら、小さいと言うよりは細いのかもしれない」

ユミル「まぁ、男に比べたらな」

エルヴィン「それはそうだ」

ユミル「お前の手も大きいんだな、片手なのに両手をしっかり束ねられるなんて」

エルヴィン「握っているのは指の辺りだからな、握りやすい」

ユミル「そうか」


エルヴィン「そう言えば、君の身長はいくつなんだ?」

ユミル「唐突だな」

エルヴィン「手の大きさを考えていたら、つい」

ユミル「170と少しくらいだ」

エルヴィン「ほぉ」

ユミル「お前は?」

エルヴィン「私は180の後半だな」

ユミル「…………」

エルヴィン「どうした」

ユミル「お前って体の造りもいいよな、私も男だったらこのくらいになりたい」

エルヴィン「君が男なら……か。褒められているのかもしれないが、少し微妙な心境になるセリフだ」

ユミル「褒められているならいいじゃないか」

エルヴィン「なんだかむず痒くてな」


ユミル「エルヴィン、もうい…」

エルヴィン「ん?」

ユミル「もう、大丈夫だ――親父」

エルヴィン「……あぁ、わかった」パッ

ユミル「ありがとな」

エルヴィン「大した事ではないさ」

ユミル「だが」

エルヴィン「ん」

ユミル「私が言うのもなんだが――こう言う事をするのは、ヒストリアのみにしておけよ」

エルヴィン「?」

ユミル「勘違いをする奴が居たら、困る」

エルヴィン「…………」


ユミル「本気の奴だけにしろ。目をこするのを収める為に、手を握るのはやりすぎだ」

エルヴィン「それは大丈夫さ……私だってわかっている」

ユミル「そうか」

エルヴィン「こう言う事をするのは、家族である君たちだけだ」

ユミル「――わかった」

エルヴィン「……君のそうそう言った顔は、初めて見るな」

ユミル「ぇ」

エルヴィン「嬉しそうな、悲しそうな」

ユミル「…………」

エルヴィン「複雑そうな、顔をしている」

ユミル「複雑になるのは、当然だろ」


ユミル「戦いが終わって、お前に会って――何の縁か、お前の仕事場の隣に住みついて」

エルヴィン「あぁ」

ユミル「兵長殿とも頻繁に顔を合わせる様になって、分隊長の話を聞きやすいテンポを理解し始めて」

エルヴィン「そうだな」

ユミル「そして。お前ともいろんな話をして、手料理までも振る舞う様になった――そんなお前が」

エルヴィン「…………」

ユミル「政界に行くと言って、私の親友を妻に娶ると言って。私の父親になると言ったんだ」

エルヴィン「あぁ」

ユミル「家族になれるのは嬉しいと思える、だが立場が変わってしまうと思うと戸惑う」

エルヴィン「そう思うと、昨日は詰め込みすぎてしまったな」

ユミル「だろ?」

エルヴィン「すまなかった」


ユミル「なんだろうな」

エルヴィン「…………」

ユミル「会いたかった奴らの、八割方と再会出来て。良い一日であったと思うのに」

ユミル「昨日の出来事を、喜んでいいのか解らない」

エルヴィン「…………」

ユミル「一晩経っても、まだ解らないんだ」

ユミル「お前を責めればいいのか、応援すればいいのか――それすらも」

エルヴィン「そうか」

ユミル「……悪い。まだ心の中がまだ、整理しきれていない」

エルヴィン「大丈夫だ」ナデ

ユミル「……っ」


エルヴィン「それは正常な感情だ。言わば……信頼していた者に、裏切られたとも言える状況なのだから」

ユミル「違う」

エルヴィン「ん」

ユミル「お前は、裏切ってなんて――いない」

エルヴィン「今は、そう思っておくべきだ」

ユミル「…………」

エルヴィン「相手を庇う心情があると、見える物も見えにくくなってしまう」

エルヴィン「まずは私の事を、存分に罵ると良い」

ユミル「それは、お前の過去の教訓か何かか?」

エルヴィン「そうかもしれないな」


エルヴィン「気遣う必要はない。私は君を裏切った、君の優しさに付け入っている」

エルヴィン「ヒストリア嬢の安全を保障すると言う条件を提示しながら、君の大切な人を奪おうとしているんだ」

ユミル「エルヴィン」

エルヴィン「君はまず、心の中を整理しなさい」ナデナデ

ユミル「……なんで」

エルヴィン「ん?」

ユミル「なんでお前は、自分を嫌な役にしてでも。相手に尽くせるんだろう」

エルヴィン「そんな人の良い事なんてしていない。自分を悪い方に持っていくのは、まぁ性分――と言う物だろうな」

ユミル「性分?」

エルヴィン「恨まれるのには慣れているのでな、もはや生活の一部だ」

ユミル「ふはっ。随分、損な性分だな」

エルヴィン「……やっと、私の顔を見ながら笑ってくれた」


エルヴィン「ユミル」

ユミル「ん」

エルヴィン「おいで」

ユミル「なんでだよ」

エルヴィン「いいからおいで、抱き着いてごらん」

ユミル「…………」

エルヴィン「私を恨むか恨まないか。その腕の中だったら、簡単に理解できるとは思えないか?」

ユミル「……ま、いいけど」ギュッ

エルヴィン「…………」ギュッ


ユミル「全く」

エルヴィン「何を呆れているんだい?」

ユミル「こう言った事は他人にはするなって、言ったばかりなのに――って呆れているんだ」

エルヴィン「君は他人ではないよ」

ユミル「そうか」

エルヴィン「私の娘、なんだから」

ユミル「……そうか」

エルヴィン「だろう?」

ユミル「そうだったな」


エルヴィン「君の気持ちは、理解しているつもりだ」

ユミル「そうか」

エルヴィン「これから先、二人の時間は――父と娘の関係を目指して欲しいんだろう?」

ユミル「あぁ」

エルヴィン「昨日の君の言葉から、わかっていた」

ユミル「…………」

エルヴィン「君は『娘としての、最初の願い』と言っていたから」

ユミル「あぁ」

エルヴィン「その時から、君の心は決まっていたんだろう」

ユミル「はっ……随分と、はっきり言う」

エルヴィン「君は私を理解してくれているだろう。それと同じく、私も君を理解しているつもりだ」

ユミル「そうか」


ユミル「理解してくれているんだな」

エルヴィン「あぁ、理解した。私が出来るのは――その気持ちに応えて、父親に徹する事だと」

ユミル「そうか……でも。あまり、理解されたくなかった部分もある」

エルヴィン「それはすまなかった」

ユミル「まったくだ」

エルヴィン「では、謝罪の代わりに。君には時間をプレゼントしよう」

ユミル「……?エルヴィ…」

エルヴィン「…………」ジー

ユミル「至近距離から娘の顔を見すぎだ」

エルヴィン「目の下に隈があるな。さっき寝ているとは言っていたが、それは嘘だろ?」

ユミル「なんでわかるんだよ」

エルヴィン「さぁ――娘、だからかもな」


ユミル「…………」

エルヴィン「不機嫌そうな顔をしてくれるな」

ユミル「そんな顔、してない」

エルヴィン「君が、親子関係を望んだんだろ」

ユミル「それは、そうだが」

エルヴィン「だから娘扱いをしようと、私は決めた」

ユミル「切り替えが早いな」

エルヴィン「寝なさい、ユミル。考えさせてしまった張本人が言うのもなんだが、君には睡眠が必要だ」

ユミル「これはまた、随分と父親が似合う対応で」

エルヴィン「褒め言葉として、受け取っておこう」

ユミル「なら、さ」

エルヴィン「ん?」

ユミル「ベットまで連れて行ってくれよ、お父さん」

エルヴィン「…………」


ユミル「駄目、か」

エルヴィン「構わないが、君は」

ユミル「ん?」

エルヴィン「親父呼びか、お父さん呼びかを統一してほしい」

ユミル「ふふ、それもまた……考え中って事で」スリスリ

エルヴィン「随分と、眠そうだな」

ユミル「お前の腕の中は、温かいんだよ」

エルヴィン「そうか」

ユミル「落ち着くんだ」

エルヴィン「ほら……こちらに凭れ掛かったままでもいいから、歩きなさい」

ユミル「ん、わかった」


エルヴィン「君が眠るまで、手を繋いでいようか」

ユミル「そんなに迷惑は…いや」

エルヴィン「?」

ユミル「頼んでいいか?」

エルヴィン「それが君の望みなら、な」

ユミル「ありがとな、パパ」

エルヴィン「また増えたな」

ユミル「いろいろ試して、みたいんだよ」

エルヴィン「そうか、だがパパは止めて欲しい」

ユミル「なんでだ?」

エルヴィン「なんだか君くらいの年齢の人に呼ばれると、パトロンの様で……」

ユミル「はは。わかったよ、お父さん」


とさっ

エルヴィン「ほら」

ユミル「ん……ありがとな、エルヴィン」

エルヴィン「呼び名が不安定すぎるな」

ユミル「あぁ、そうだな――なぁ」

エルヴィン「ん?」

ユミル「お休みのキス、してくれよ」

エルヴィン「あぁ――これでいいか」

ユミル「手の先、か」

エルヴィン「詳しくは、爪の上だな」

ユミル「ありがと、な」

エルヴィン「なんだ、随分と甘えたで愁傷な娘だな」

ユミル「親子関係ってのが、どう言う物なのかわからなくて」


エルヴィン「無理はする必要はない。ヒストリア嬢の前でも、君と私の親子関係は構成されるんだ」

ユミル「そう言えばそうだな」

エルヴィン「どんなに不恰好でも、私たちは私たちなりの親子関係を築けばいい」

ユミル「……ありがとな。よし、もう仕事に行っていいぞ」

エルヴィン「寝るまで手を握るのでは?」

ユミル「キスを貰ったから、もういいさ――それに、少し甘えすぎていた気がして気恥ずかしい」

エルヴィン「やはり、少し無理をしていたのか」

ユミル「まぁな。でも眠いから、少しだけ素直に接していた」

エルヴィン「たまにはこう言う風に甘えても構わない」

ユミル「考えておく――なぁ。お前だって、昨日は仕事をしていないんだ。色々と大変だろ?もう行けよ」


エルヴィン「君が言うなら、それでもいいが…」

ユミル「わかっているよ、寝ていればいいんだろ?」

エルヴィン「あぁ、そうだ」

ユミル「ちゃんと寝ておく、だから」

エルヴィン「……わかった」

ユミル「ん、わかったならいい」

エルヴィン「では、行ってくるな」

ユミル「あぁ、いってらっしゃい」

エルヴィン「――行ってくる」


ぱたん

ユミル「……あふっ眠い」

ユミル「…………」


………………


…………


……




かちゃ

エルヴィン「ユミル、昼休みだから様子を見に…」

ユミル「…………」

エルヴィン「寝ているのか」

ユミル「…………」

エルヴィン「…………」ナデナデ

ユミル「……んぅ」

エルヴィン「!」ピタッ

ユミル「……ん」

エルヴィン「…………」ホッ

ユミル「…………」


エルヴィン(眠っていると目元のきつさと言うか、視線の厳しさが無くなっている)

エルヴィン(病院では、いつも見ていたと言うのに……何故だろうか、新鮮に見えるのは)

エルヴィン(――この娘は、何歳だっただろう)

エルヴィン(丁度20歳の差があったから、21か)



エルヴィン(出会った時から、この娘は私の養子になるのではと思っていたから)

エルヴィン(接し方が分からずに、ぬいぐるみやピンクのベットカバーを用意して)

エルヴィン(呆れさせてしまったのが、もう随分と前の様だな)

おお…この二人の雰囲気良いね。


エルヴィン(様々な情報交換をして、とても聡い子だと思う様になり)

エルヴィン(徐々に話をするのが楽しくなって、用意してくれる食事が私の好みに合ってきて)

エルヴィン(勤務終了後に、家に帰るよりも執務室に居る時間が伸びたのは)

エルヴィン(この娘を監視すると言う気持からではなく、少しでも過ごしやすくしてあげようと言う気持ちの方が大きくなったから)



エルヴィン(そして今度は、この娘は正真正銘――私の娘になる)



エルヴィン「…………」ナデ

ユミル「……ん」

エルヴィン「…………」ピタッ

ユミル「ひす、…と……ぁ」

エルヴィン「…………」スッ


――ぱたん


………………


…………


……



ユミル「……っ」

ユミル「ん~~っ」ノビー

ユミル「ふぁ――よく、寝たぁ」ゴシゴシ

ユミル「今、何時だ?」ボー

ユミル「って!外暗っ!!」

ユミル「どどど、どうしよう!夕飯の準備なんにもしてねぇぞ!?」ヒョコヒョコ


――ガチャ

エルヴィン「あぁ、起きたかユミル」

ユミル「エルヴィン!すまない、寝過ごしてしまっ…」

エルヴィン「それだけ疲れていたんだろう、別に構わないさ」

ユミル「!」

エルヴィン「それよりも、ちゃんと休めた様で良かった」


ユミル「お前、それ」

エルヴィン「出来合いの物ですまないがな、買ってきた」

ユミル「お前……なんて出来た男なんだ」

エルヴィン「パンとおかずを買ってきただけなのに、そんなに感動してくれるとは。買ってきた甲斐があったよ」

ユミル「……いい旦那さんに、なってくれよ?」

エルヴィン「精進するとしよう。ユミル、顔を洗って来なさい」

ユミル「わかったよ、親父」


ユミル「……っふぅ、さっぱりした」



ユミル(いい傾向、だろうな。この状況は)

ユミル(エルヴィンも父親として対処してくれているし、私も比較的素直にあいつと話せている)

ユミル(このまま、本当の家族のようになれればヒストリアも喜んでくれ――っ)



ユミル(……なんで、今胸が痛んだんだ?)



ユミル「…………」

ユミル「気のせい、だな」


そして、外出後の一日は終わった

そこからは、また平凡な毎日が始まる


………………


…………


……



とある一日の、終わりのにあった【閑話】


――ガタン

ばたばた


――ガチャ!!



エルヴィン「い、今戻った……!」ゼイゼイ

ユミル「あぁ、おかえり」

エルヴィン「!」ゼイゼイ

ユミル「どうしたんだよ、そんな急いで」

エルヴィン「ぇ、いや……その」ゼイゼイ

ユミル「とりあえず、水飲むか?」

エルヴィン「た、頼む」

ユミル「ん」


エルヴィン「助かった」

ユミル「なんでそんな急いで帰ってきたんだよ、何かあったか?」

エルヴィン「……その」

ユミル「?」

エルヴィン「今日はクリスマス、だったので」

ユミル「あぁ、なるほど」

エルヴィン「ここ数日、全員が立て込んでしまっていたので――君が一人で寂しがってはいないかと」

ユミル「仕方ないだろ、ヒストリアも兵長殿も分隊長も……そしてお前も、社交性が必要な奴は忙しい時期だ」

エルヴィン「――君は仕事に理解がありすぎる」

ユミル「欠点みたいに言うな、長所だろ」

エルヴィン「長所と言えば長所だが、言われる方は少しは寂しい」


ユミル「で、その手の中にある箱はなんだ?」

エルヴィン「あぁ、これは――小さいながらケーキを」

ユミル「ふーん……ちょっと貸してみ」

エルヴィン「あぁ」

ユミル「…………」パカッ

エルヴィン「どうした、何も言わずに凝視して」

ユミル「エルヴィン、お前急ぎすぎだ」

エルヴィン「……?」

ユミル「あまり持ち運びをしない物だからな、こうなるのもわかるが」

エルヴィン「!」

ユミル「気付いたようだな、そうだ――ケーキが寄って、崩れている。ほら」ヒョイ

エルヴィン「確かに、箱の側面に生クリームが張り付いて――肝心のケーキも」


ユミル「いい具合にぐちゃぐちゃだな」

エルヴィン「……すまなかった」

ユミル「こんくらい気にしてねぇよ。ま、次から気を付けてな」

エルヴィン「しかし」

ユミル「私はプレゼントのあるなしなんて、気にしてねぇし。これだけでも儲けもんだし」

エルヴィン「……だが」

ユミル「大丈夫だって、ユミル様に任せておけよ」


………………


…………


……



ユミル「ほら、これでいいだろ?」

エルヴィン「……ケーキになっている」

ユミル「スポンジは無事だったからな、壊れやすい飾りも無かったし」

ユミル「生クリームを箱の側面から掬って、塗って飾りを整えてみた」

ユミル「まっすぐ塗るのは流石に無理だから、フォークの先端で線を書くようになぞって模様にしてみたんだが……上手くいったな」

ユミル「満足してくれたか?」

エルヴィン「これでは、どちらが祝って貰っているかわからないな」

ユミル「ふふ、じゃあついでに――ほらよ」

エルヴィン「これは」

ユミル「大したもんじゃなくて悪いがな、分隊長が暇つぶしにって裁縫道具を持ってきてくれたから」

エルヴィン「そうか」

ユミル「心を込めて作ったから、受け取ってくれると嬉しい」


エルヴィン「開けてもいいか?」

ユミル「もちろんだ」

エルヴィン「こ、これは」

ユミル「気に入ってくれたか?」

エルヴィン「……気に入る、と言うか」

ユミル「男性用トランクス五枚セットだ、刺繍で名前も入っているぞ」

エルヴィン「“ヒストリア・レイスの許嫁エルヴィン・スミス”……か。そしてえらく、達筆な刺繍だな」

ユミル「五枚もあれば毎日履けるだろ、ヒストリアが居るんだから浮気はするなって意味も込めてな」

エルヴィン「私は、プレゼントを用意していない」

ユミル「じゃあそれを履くことがプレゼントって事で」

エルヴィン「…………」

ユミル「返事は?」

エルヴィン「……はは」


ユミル「乾いてはいるが、笑い声を漏らすくらいに喜んで貰えて嬉しいよ。じゃ、ケーキを食べようぜ」

エルヴィン「そうだ、な」

ユミル「ダメージ受けすぎだろ、変な所でメンタル弱いな。――ほら、取り分けたぞ」

エルヴィン「いただきます」

ユミル「いただきます……ん、うまいな」

エルヴィン「それはよかった」

ユミル「目の前に、一緒に過ごしてくれる人が居てさ」

エルヴィン「ん」

ユミル「うまいケーキがあって、ちょっと笑い話に出来そうな事が一つ二つあって」

エルヴィン「…………」

ユミル「幸せな、クリスマスだと思う」


エルヴィン「帰ってきた時間が遅かった所為で、クリスマスは少し過ぎてしまったがな」

ユミル「まぁ、それくらいはいいさ。なぁエルヴィン」

エルヴィン「なんだい」

ユミル「ありがとな」

エルヴィン「こちらこそ、ありがとう。そして、これからも宜しく」

ユミル「あぁ」





エルヴィンとユミルの【平凡で、とても良かったクリスマス】


とある一日の、少し前にあった【閑話】


――ガチャ

リヴァイ「呼んだか」

ユミル「おっ、兵長殿。急に呼び出してすまなかったな」

リヴァイ「気が向いたら来いと言っていたからな、気が向いたから来てやった」

ユミル(分隊長……時間が合ったら来てくださいって伝えて欲しかったのに)



リヴァイ「で、要件はなんだ。お前から声をかけるなんて珍しいからな、さぞ重大な…」

ユミル「誕生日プレゼントを」

リヴァイ「話を――」


ユミル「その」

リヴァイ「……もう一度、言ってみろ」

ユミル「誕生日プレゼントを、お渡ししようと」

リヴァイ「――あの、クソメガネ!」ギリッ

ユミル(分隊長、あんたどんな風に伝言を伝えたんだよ)



リヴァイ「くそっ、で……プレゼントは何処だ」

ユミル「え」

リヴァイ「さっさと受け取って終わりにする、俺はたった今――用事が出来たからな」

ユミル「は、はい!これです!!」

リヴァイ「確かに受け取った、じゃあな」


――ガチャ


ユミル(しまった……勢いに押されて渡したけれど、渡さなけりゃよかったかも)

ユミル(ま、分隊長からの助言を得て作成をしたって手紙に書いているし――こっちに余波は来ないだろうけど)

ユミル(分隊長、逃げろよ)




リヴァイとユミルと【嫁募集と書かれたトランクス】


>>244 待っててくれてありがとう

>>257 気を使ってくれて、ありがとうです!

>>258 保守ありがとう!

>>259 支援ありがとう!

>>260 そのネタ、頂いていいですか?

>>261 次からの更新で、明らかになります

>>262 保守ありがとう!

>>263 支援ありがとう!

>>264 支援ありがとう!

>>267 本当にお待たせしました

>>294 この感想、本当に嬉しい!!

一文字の皆様も、思いの他文字が長くてビックリしましたが
支援する気持ちで伸ばしてくれた方も居たと思います、本当にありがとうございました!


一旦ここまで!
外出後の一日が思いの他長くなってしまったので、ほのぼのは次回へ持ち越しで

おまけはクリスマスに駆け込みで帰ってくるエルヴィンが書きたかったので書いた、満足!


感想が本当に活力になってます、皆様本当にありがとう!

待ってたぞ

乙~めっちゃ良い!
パンツ作っちゃうユミル可愛いよユミル。

乙!!待ってたよ
エルヴィンとユミル、やっぱりいいね♪

追いついた!
面白いです!

この二人のやりとりって想像つかなかったけどこれは・・・なんと良いものだ
なんかすごく幸せなんだけどもどかしいようなもやもやするようなもう枕ゴロバタしながら>>1乙!

つくづく絶妙な距離の取り方がうまい人だよね、>>1は。
文章でこういう空気が出せる人って尊敬する。

>>1乙!俺もジタバタゴロゴロしながら待ってる!

まってます

>260も夢が膨らむな
針仕事or料理、ケガ、小人化、察しのいいエルヴィン。とか

エルヴィン「養女にならないか?」

ユミル「団長さんは赤ちゃんプレイがお望みってか」

エルヴィン「ん?」

ユミル「?」

>>334
続きを任せた

>>333
じゃあ>>334なら安価上という事で
>>1よろしく

おぉ!待ってる!
この作品大好きです

進撃の保守されてるスレ増えてる現状で
これだけの期間放置してたら仕方ないな
早く投下した方が良い

どうせまた偽物扱いされるし


>>315 お待たせしました

>>316 どうやら暇だったらしいですよ

>>317 気に入ってくれてありがとう!

>>318 また更新します

>>319 枕ゴロバタお疲れ様です!

>>320 絶妙なんてありがとうございます!

>>321 バタゴロお疲れ様です!

>>329 エルヴィンメインのSS増えて欲しいです

>>330 完結した後に是非読みたいです

>>334>>337>>338参考にさせて頂きました

保守、支援していただいた方ありがとうございます
放置の言い訳としては不幸事です……でも海より深く反省


【ある日】


アルミン「はい、これで今回のメンテナンスはおしまいです」

エルヴィン「ありがとうな、アルミン」

アルミン「御代は大丈夫です。いつも通り、鉱石を優先的に回して貰えれば結構ですから」

エルヴィン「あぁ、わかったよ」

ユミル「見て下さい皆さま、これが癒着の現場です」

エルヴィン「ユミル、どこに向かって言っているんだ?」

ユミル「別に」

アルミン「じゃ、次はユミルの番だね。一回目の試着だから、少しでも違和感がある所は遠慮なく言って」

ユミル「おう、頼むわ」



カッ……

ユミル「なんか、足音で金属音するのに違和感があるな」カタッカタッ

アルミン「最初はね、なんだったら金属部分にはめる靴下を作ってもいいよ。室内だったら汚れにくいだろうし」

ユミル「……ちょっと欲しいな」

アルミン「ただ滑り止めをつけるから、ゴムを加工しなくちゃいけなくて――まだゴムって少し高いんだ」

ユミル「お金に関する事は、私はどうとも言えねぇな。私自身は無一文だ」

アルミン「えぇっと、じゃあエルヴィン団長」

エルヴィン「あぁ、値段はどのくらいだい」

アルミン「えぇっと、このくらい」

エルヴィン「いいだろう、作ってくれ」

ユミル「ちょ、アルミン。金額を示したその指見えなかった、どのくらいだ?」

アルミン「このくらい」

ユミル「……エルヴィン」

エルヴィン「別にいいじゃないか」


ユミル「いやいやいやいやおかしい、即決するにはおかしい値段だろ」

エルヴィン「アルミンに投資するんだ、別に構わない」

ユミル「私は構うって!」

エルヴィン「大丈夫だ。アルミン、作ってくれ」

アルミン「エルヴィン団長、ありがとうございます」

ユミル「アルミン、お前ってそんなに商人的な面構えをする奴だっけ」

アルミン「帰ったら、さっそくミカサに言っておくね。ミカサもきっと喜ぶよ」

ユミル「なんかお前、たくましくなったな……悪い意味で」

アルミン「いやぁ、褒めないでよ」

ユミル「褒めてねぇよ、悪い意味って言ってんだろ」

アルミン「あはは、意味の受け取り方くらいは自分で決めさせて」

ユミル「――あぁ、そうだ。金を出し渋った後にこう言うのもなんだが」

アルミン「なに?」

ユミル「以前さ、義足のカバーも作れるって言っていたよな」

アルミン「うん、作れるよ」


ユミル「じゃあさ、乗馬をする時に使える様な義足カバーってあったりするか?」

アルミン「乗馬?」

ユミル「あぁ――私の今の目標、調査兵団に復帰する事なんだ」

アルミン「えぇ、なんで!?」

ユミル「うーん……なんかヒストリアやエルヴィンが頑張っているの見たらな。私も何か出来ないかと」

アルミン「なんで調査兵団」

ユミル「私にある強みなんて、外の世界の情報を大目に持っている事だけだし」

アルミン「だから乗馬――ね。いや、確かに必要だけど」

エルヴィン「私はまだ完全に賛成はしていないぞ、ユミル」

ユミル「心配性すぎるんだよ、お前は」

エルヴィン「しかし」

ユミル「私が調査兵団に入団出来たら、お前も色々いい部分があるはずだ――違うか?」

エルヴィン「…………」

ユミル「もう一度言うが、お前は心配性すぎ」


アルミン「……意外」

ユミル「なにがだ?」

アルミン「ユミルが調査兵団に戻りたいって思う事自体が」

ユミル「そんなに意外かなぁ、元々私はあちらの生まれの様なもんなのに」

アルミン「うん、かなり意外だよ」

ユミル「そうか」

アルミン「ヒストリアと離れてまで、行きたいって言う事が特に――ね」

エルヴィン「…………」

ユミル「別にいいじゃねぇか、ヒストリアも手が掛からなくなってきたんだから小旅行くらい」

アルミン「ユミル、それ母親の立場の人のセリフ――そして実際は逆」



エルヴィン(そう、なのか)

エルヴィン(そう言えば、私はこの娘と深く関わり始めて……まだそう時間が経っていなかったな)

エルヴィン(何故だか、よく知っている気になってしまっていた)


ユミル「ま、いいじゃねぇか。とにかく……作れるかどうか、そこが知りたいんだ」

アルミン「出来ない事は無いと思うよ、僕も作ったことはないからゼロからの作成になると思うけど」

ユミル「高くなるな」

アルミン「うん、普通はそうだね――でも」

ユミル「でも?」

アルミン「経験豊富な兵士の戦線復帰をさせる。僕はその為に技術部に呼ばれて、義肢作りを学んだんだ」

アルミン「だからこう言った新しい要求には、意欲が湧く」

アルミン「うん、是非とも取り組んでみたい!……僕がやりたいから、御代は製作費だけでいいよ」

ユミル「いいのか?」



アルミン「でもそうだよね」

アルミン「外の世界に出る人の手伝いを始めようと義肢づくりを始めたのに、馬に乗る事を考えていなかった」

アルミン「そりゃあ馬車で行く人も多いけど、一人で出歩くとなると――乗馬が出来ないと意味がない」

アルミン「其処を見落としてしまっていた、そう思うと俄然新しい義足の制作意欲が…」


ユミル「ストップ!アルミンわかった、わかったから止まれ!」

アルミン「はっ!……ご、ごめん」

ユミル「そう言った所、変わってないんだな」

アルミン「めんぼくない」

ユミル「まぁいい、安値でやってくれるんならこっちもありがたいし――是非作ってくれ」

アルミン「!!」

ユミル「アルミン?」

アルミン「こ」

ユミル「こ?」



アルミン「こうしちゃいられない!」

アルミン「ユミルごめん!今、零れ落ちそうになっているアイディアをまとめる為に……僕は一旦帰る!」

ユミル「落ち着けアルミン!まだ試着した義肢の測定すらしていないし、義肢を外してもいない!」

アルミン「!!」


【ある日】


ハンジ「久しぶりだね、ユミル!」

ユミル「なんだ、ハンジ分隊長……っておい」

ハンジ「ん?」

ユミル「ドアを開ける前には一言と何度言ったら」

ハンジ「別にいいじゃん、仮眠室なんて開ける人居ないんだし」

ユミル「だがなぁ、ここは仮にも私のプライベート空間…」

ハンジ「あはは、まぁ許してよ!」

ユミル「反省しろ」

ハンジ「それはさておき」

ユミル「さておかれるのか」


ハンジ「今日はユミルにお願いがあってきたんだ!」

ユミル「……お願い、ねぇ」

ハンジ「え、ちょっと待ってよ!なんで距離をおくの?」

ユミル「元巨人化能力者として、身の危険を感じた」

ハンジ「あぁ、なるほどね!納得納得」

ユミル「納得しちゃうのか」

ハンジ「まぁね!――でも大丈夫、別件だから」

ユミル「別件?」

ハンジ「うん、エルヴィンについてなんだけど」

ユミル「エルヴィンについて、ね。そう聞くと私も放ってはおけないな」

ハンジ「へぇ、放っておけないんだ」

ユミル「そりゃそうだろ、恩人だし――それに」

ハンジ「それに?」

ユミル「私の、父親になる奴だからな」


ハンジ「…………」

ユミル「?」

ハンジ「…………」

ユミル「分隊長、どうかし…」

ハンジ「――ない」

ユミル「ん?」

ハンジ「面白くない、その理由」

ユミル(少しでも心配して、損した)



ハンジ「まぁ、それはいいか……それより用件なんだけれど」

ユミル「さっさと話しやがれ、この人間奇行種」


………………


…………


……



ユミル「なるほど。つまり話を総合すると、あまりにもエルヴィンが仕事詰め込みすぎていると」

ハンジ「そうそう、そうなんだよ!政界に行くって言う目標があるし、頑張りが必要なのも判ってはいるけど」

ハンジ「あまりにも酷いんだ。以前からの団長の仕事にプラス、社交界へのパイプ作りに勉強三昧」

ハンジ「いつ姿を確認しても、何かしら作業をしているし」

ユミル「加えて私の世話までさせてしまっているからな」

ハンジ「いや」

ユミル「?」

ハンジ「それはあってくれてありがたい」

ユミル「なんでだよ、エルヴィンの休みが必要だって話だっただろ」

ハンジ「あぁ、いや……その。エルヴィンもさ、理解者と話せたらリラックス出来ているだろうし」

ユミル「そう言って貰えるのは嬉しいが――体は休まっていないんだし、意味ないだろ」

ハンジ(いや、多分心は休まっているから十分だと思うよ)

ハンジ(まぁこれは、あくまで私の憶測の域から出ないけれどね)


ユミル「事情は分かった」

ハンジ「わかってくれて良かったよ」

ユミル「でも……流石にそれは、私から仕事を減らせと言っても聞かないだろうな。完全に部外者だし」

ハンジ「部下の立場で言ってもそうなるんだよね」

ユミル「いっそ睡眠薬でも盛り込むか」

ハンジ「あ、それ無理」

ユミル「無理?」

ハンジ「昔からそうやって、無理矢理に休息を取らせていたら効かなくなったって――リヴァイが」

ユミル「兵長殿の愛情表現も屈折しているよな」

ハンジ「完全に同意」

ユミル「ま……とりあえず、休むようには言っておく」

ハンジ「悪いね、頼むよ」


………………


…………


……



【その夜】


ユミル「お前さ、たまには家に帰れよ」

エルヴィン「……娘は反抗期だろうか、つれない物言いだな」

ユミル「いや、そうじゃなくてだな」

エルヴィン「わかっているよ」

ユミル「わかっていないだろ」



ユミル「仕事が忙しいから、執務室に寝泊まりする必要があると言うのは理解できる。仕事を妨げる気はない」

ユミル「私の事を気に掛けてくれていると言うのも――まぁ、わかる。そして感謝してる」

エルヴィン「珍しいな、素直じゃない君が誉めてくれるなんて」

ユミル「感謝はしている、しているんだが」

エルヴィン「…………」

ユミル「だが流石に――連日、執務室のソファーに寝泊まりするのは体を壊しちまう」


エルヴィン「そこは大丈夫だ、寝ているのはソファーだけではない。椅子に座ったまま寝ている事もある」

ユミル「より体に悪い」

エルヴィン「壁外遠征の時は、いつだってこんな物だ」

ユミル「……お前は仕事人間すぎる」

エルヴィン「悪いがそれは、私に呼吸を止めろと言う様な物だ。それに自己管理も、きちんとしている」

ユミル「体を壊したら、元も子もないだろ」

エルヴィン「だが」

ユミル「休暇を取れと言う訳じゃないんだ。せめて家に帰って、ベットで寝てくれ」

エルヴィン「それもしているさ。現に君が部屋に戻った後、帰宅した事も何回か…」

ユミル「思い返して何回か数えてみろよ。なんとなくだが、片手で足りるくらいの回数な気がするぞ」

エルヴィン「――そうだな」

ユミル「だろ」


エルヴィン「だが、実際に仕事が…」

ユミル「あ、先に言っておくが。持ち帰ってくる仕事量を増やすのは却下な」

エルヴィン「…………」

ユミル「おい、まさか本気で抱え込む仕事を増やす気だったのか!?」

エルヴィン「――すまない」

ユミル「あぁ、もう。兵長殿と分隊長が言っていた通りじゃねぇか、いい加減自分の体を考えろよ」

エルヴィン「しかし、私はまだ平気なんだが」

ユミル「もう四十過ぎているんだろ、体に負荷が掛かりすぎるのは却下だ」

エルヴィン「…………」

ユミル「たまには家にも帰るように」

エルヴィン「……はい」


………………


…………


……



ユミル「と、言って釘を刺したはいいが。流石に仕事の内容までは見張れなくてな」

ハンジ「相も変わらずここのソファーで寝て、ここでシャワーを浴びると言う生活が続いているんだね」

ユミル「ソファーで寝ると背骨が曲がるってよく言うのに。このままだとあいつ、腰のまがった爺さんになっちまう」

ハンジ「老後も心配だけど。私達は部下として、ちゃんと休息をとって貰いたいんだ」

ユミル「それは私も思っている。ヒストリアの将来に必要な奴なんだから、健康には気を付けて貰わないと」

ハンジ「――それだけ?」

ユミル「あ?」

ハンジ「いや別に」

ユミル「なんだよ」

ハンジ「なんでもないって」

ユミル「……まぁ、なにはともあれ。あいつは団長だから仕事はいくらでも背負い込めるってのが問題だよな」

ハンジ「本当、そこが問題だよね」


ユミル「この間、先にソファーで寝たふり決め込んでみたら――担ぎ上げられてベットに寝かしつけられた」

ハンジ「先にソファーを占領する作戦も駄目だったかぁ」

ユミル「そうなんだよ」

ハンジ「じゃあさ」

ユミル「なんだよ」

ハンジ「エルヴィンをベットに寝かしつけるのが最終目的だったら、ユミルと同じベットで寝ればいいんじゃ…」

ユミル「さぁて、包丁でも取ってくるとするか」

ハンジ「ちっ、違う違う!そう言う意味じゃなくて!」

ユミル「じゃあどんな意味だよ」

ハンジ「これ以上文句を言うなら同じベットに寝かしつけるぞ!ってユミルが言えばって事」

ユミル「……なるほど」


ハンジ「流石にエルヴィンも、若い娘と一緒に寝る事には抵抗があるだろうし」

ユミル「しかもピンクかつ、ふりふりのベットカバーだもんな」

ハンジ「それが嫌ならちゃんと帰って寝ろ!と」

ユミル「一つ問題がある」

ハンジ「ん?」

ユミル「私は片足だし、エルヴィンの方が背も体重もあって……断られたらお終いなんだ」

ハンジ「あー、それは致命的だ」

ユミル「しかもだ。仮にも万が一、万が一にでも襲われたりしたら」

ハンジ「それはそれで面白い」

ユミル「この下世話女」

ハンジ「発想は個人の自由だよ!」

ユミル「まぁいい」

ハンジ「いいんだ」

ユミル「あんたの言葉にいちいち付き合っていたら、日が暮れちまう」

ハンジ「納得」


ユミル「まぁ、もし万が一。そんな展開になったら……だ」

ハンジ「うんうん」

ユミル「私は身体能力の優劣によって「あーれー」「よいではないか、よいではないか」の展開に陥ってしまう」

ハンジ「一単語で言い表せばいいのに」

ユミル「いくら私でも、恥じらいは捨て去っていない」

ハンジ「ま、相手はエルヴィンだし。その可能性は低いと思うよ?」

ユミル「うん、まぁ私も言っておいてなんだが。親父殿はそう言う事をする奴じゃないとは思ってる」

ハンジ「信用しているんだ」

ユミル「もちろん、ヒストリアを任せられる奴だってな」

ハンジ「あぁそうですか」

ユミル「――以前言っていた、簡易ベットの搬入。やっぱり無理か」

ハンジ「ベットの搬入だなんて人に見られたら、ここにもう一人いますって言っている様なもんだしね」

ユミル「……とりあえず、お誘い作戦を試してみるか」

ハンジ「一緒に寝ちゃおう作戦だね」

ユミル「あぁ」


………………


…………


……



【その夜】


ユミル「と、言う訳でエルヴィン。一緒に寝よう」

エルヴィン「ユミル」

ユミル「ベットはふりふりピンクかつ小さめだが、致し方ない。お前が帰らないのなら一緒に寝て貰う」

エルヴィン「君は慎みを持った方がいい」

ユミル「大丈夫だ、多少の恥じらいは見せてきた……分隊長に」

エルヴィン「だが同じベットに入ると言うのは」

ユミル「ハンジ分隊長のお墨付きなんだ、そんなお前が手を出す事は無いだろ」

エルヴィン「いや、しかしだな」

ユミル「寝るまで手を握ってくれるのは良くて、なんで一緒に布団の中に入ったらダメなんだよ」

エルヴィン「それはだな――ん、なんでだ?」

ユミル「三十文字以内で説明してくれないのなら、却下する」

エルヴィン「原稿用紙百五十枚分は欲しい所だ」

ユミル「まさかの超大作」


ユミル「手を握るついでに、ちょっと布団の中に入って目を閉じるだけじゃないか」

エルヴィン「なるほど、そう言うと多少は納得できる」

ユミル「じゃあ、お前は説明できなかったし私の勝ちだな。寝室に行くぞ」

エルヴィン「まだ私には仕事があるんだが」

ユミル「私が用意した夕食を食べながらアルコールを摂取していた奴に、仕事が残っているだと?」

エルヴィン「……よく見ているな」

ユミル「お前を休ませるためだ、その為にアルコールに向く食事を作った」

エルヴィン「いい手際だ」

ユミル「褒めて貰えて光栄だよ」

エルヴィン「しかし――君は年頃の娘だ」

ユミル「娘が父親と寝たいと言うくらい、別に構わないだろう?」

エルヴィン「……はっきり言うと」

ユミル「なんだ」

エルヴィン「流石に気になって眠れないと思う」

ユミル「…………」


エルヴィン「私が眠れなくては本末転倒だろう?」

ユミル「それでもいい、試してみたい」

エルヴィン「しかしそれは」

ユミル「エルヴィン」

エルヴィン「…………」

ユミル「お前の体が心配なんだ」

エルヴィン「そうか」

ユミル「なぁ、駄目か?」

エルヴィン「では少し、布団に入るだけだからな」

ユミル「あぁ」


………………


…………


……



ユミル「おはよう」

エルヴィン「おはよう」



ユミル「…………」

エルヴィン「…………」



ユミル「何故、朝になったら。お前はまたソファーで寝ているんだよ」

エルヴィン「やはり眠れなかったので、こちらに移動して仮眠を取った」

ユミル「…………」

エルヴィン「心遣いはありがたいが、やはりこちらの方が落ち着くのでな」

ユミル「私の隣では寝られないってか、むかつくな」


………………


…………


……



ユミル「…………」

ハンジ「失敗かぁ」

ユミル「なんで手を握るのは良くて、一緒に布団に入るのはダメなんだ」

ハンジ「いくら父親でも、男の人って事だよ」

ユミル「でもこのままだと、あいつが体を壊すのも時間の問題だな」

ハンジ「だね。今日は壁外まで行って、実務指導に当たるんだと――日帰りで」

ユミル「なんで壁外まで行って日帰りなんだよ、死ぬぞ」

ハンジ「同感」

リヴァイ「……おい、お前ら」

ハンジ「ん」

ユミル「なんですか、兵長殿」

リヴァイ「世の中には、ソファーベットと言う物があってだな」

ハンジ「あ」



翌日、ソファーの入れ替えと言う名目でソファーベットが運び込まれたそうな


※今更ながらの部屋についての内容
(読み飛ばし可)



エルヴィンの執務室は結構大きい
(18帖くらいを想定)

重要な書類がある執務室なので、入り口であるドアの外にはもう一つドアがある二重扉

ソファーと応接台が入り口側に置いてあり
執務用の大きな机と、資料を入れる大きな本棚が奥にある



休息室は本棚に近い所にドアがある、普段はエルヴィン以外は触らない
現在はユミルのプライベート空間(シャワー室も含めて8帖くらい)

休息室にはベットが置いてあり、備え付けの小さなシャワー室がある
簡易コンロと流し台もあるが、元はお茶を入れる程度しか想定していないので不便



執務室は一定の時間を超えると人が少なくなるので施錠される

施錠した後と、エルヴィンが一日外に出ている時間は誰も来ない
のでユミルも執務室に出てリハビリとかしている



余談
暇を持て余しすぎてユミルは、ちょこちょこどうでもいい特技を身につけてきている

・ハーブをぎゅうぎゅうに繁殖させられる
・果物ナイフ一本で野菜の飾り切り
・もの凄く細かいパッチワークで枕カバーを作成……など

そろそろ写経にまで手を出しそうな勢い


【ある日】


――コンコン

エルヴィン「ユミル、君への客人だが入れてもいいか?」

ユミル「客人?……ちょっと待て、今開ける」


ガチャ

ユミル「!」

アニ「久しぶりだね」

ユミル「アニ、お前……出歩いていいのか?」

アニ「私は指名手配はされていなかったから」

ユミル「そう言えば、そうだよな」

アニ「私だけ出歩くのは他の二人に悪いけど、多少のお使いくらいはするんだ」

ユミル「へぇ」

エルヴィン「今日はヒストリア嬢の使いとして来てくれた、どうやら彼女も君の現状が気になるとみえる」

エルヴィン(私も会う度に報告はしているのだが、どうもそれでは足りないみたいだな)


エルヴィン「ユミル、入ってもらうと良い。私も執務室にいるから、帰る際には言う様に」

ユミル「あぁ、わかったよエルヴィン」

アニ「…………」



ぱたん

アニ「ベットに腰かけてもいい?」

ユミル「あぁ。すまないな、テーブルも無くて」

アニ「別に構わないさ」


アニ「あぁそうだ、これを最初に渡しておくよ」

ユミル「なんだ?」

アニ「採集して来た新種のハーブと、あと卵。ハーブは単品で茶葉にしてもいいし、魚と一緒に煮てもいい」

ユミル「お、助かるな」

アニ「卵も自家製、ベルトルトが最近養鶏に嵌っている」

ユミル「養鶏?」

アニ「敷地の都合上で鶏を数羽のみだけどね。本当はもっと色々と家畜を飼いたいらしい」

ユミル「色々……は、さすがに無理だろ」

アニ「あぁ無理だね。まぁ、少ない故に細やかに面倒を見れているからか――卵がとても美味しくなった」

ユミル「ベルトルさんと鶏か、案外似合うな」



――コココ、コケーッコココ

ベルトルト「……くしゅっ!」


アニ「それにしても。本当に、こんな所に住んでいるんだね」

ユミル「まぁな、狭いが生きては行ける場所だ」

アニ「そう言う意味じゃなくて」

ユミル「ん?」

アニ「…………」

ユミル「どうした、考え込んで」

アニ「……あのさ」

ユミル「あぁ」

アニ「考えたけれど――言い方がわからなかったから、直接的に言うよ」

ユミル「おう」


アニ「こんな所で……てのはさ。成人男性の仕事部屋に住み着いているって事に重点を置いて、言ったんだ」

ユミル「そうか」

アニ「そうだな、あとは――よくもまぁ、あんなお偉いさんと暮らしているなって言う理由も含む」

ユミル「暮らしているって言うか、あいつには別に家があるぞ」

アニ「へぇ、そうなの」

ユミル「あぁ、そうだ」

アニ「でもなんか団長って家に住んでいるイメージが無いね、執務室に寝泊まりしているイメージだ」

ユミル「……困った事にそうなんだよな」

アニ「は?」

ユミル「…………」

アニ「何かあったの」

ユミル「あ、お茶でも煎れるか?」

アニ「わかりやすく誤魔化すんじゃないよ――まぁ貰うけど」


ユミル「ほい、お茶」

アニ「ありがと」

ユミル「なんの話をしていたんだっけか。あぁそうだ、成人男性の仕事部屋の隣って言ってたな」

アニ「そう言えばそうだったね」

ユミル「成人男性って言っても、あいつはヒストリアの婚約者だしな――そうだ、そう言えば」

アニ「ん?」

ユミル「エルヴィンとヒストリアの婚約って言えばさ」

アニ「あぁ」

ユミル「聞いて、ライナーは発狂しなかったのか?」

アニ「希望に添えなっくて申し訳ないけれど、落ち着いて受け止めたよ」

ユミル「それは本当に意外だ」

アニ「あいつは、ヒストリアに助けられた時にすべて報われたかの様な顔をしていたから」

ユミル「私も報われたい」

アニ「きっともうすぐ報われるよ」


ユミル「あいつが私の母親になるだなんて、思いっきり想定外の報われ方だ」

アニ「確かに驚くね」

ユミル「にしてもライナーは落ち着いているのか、てっきりヒストリアに婚約は止めるよう言うかと」

アニ「……ライナーは、今以上は求められないんじゃないかな」

ユミル「は?」

アニ「もう感謝とか恩とか、とにかく色々な感情を抱きすぎて」

アニ「きっと、それ以上を求められないんだ」



アニ「こんなにもたくさん、与えて貰ったんだ。新しい人生も、人間らしい生活も――私達と言う仲間の安全も」

アニ「これ以上を望むと、相手の負担になる。もしくは恩を仇で返してしまう、とか考えているんだろうね」

ユミル「お前らは三人揃って助けられたからこそ、そう言う感情が強いだけだろ」

アニ「じゃああんたは、自分の一存でヒストリアとエルヴィン団長を裂けるのかい」

ユミル「……!」

アニ「そう、普通はそうだ。二の足を踏む」


アニ「加えて私たちは、団長にも大きな恩がある。二人の関係性を裂くなんて、二人を裏切る行為は出来ない」

アニ「きっとライナーは、想いを抱く事すら自分の中で禁じているんじゃないかな」

ユミル「変な所で謙虚な奴だ。好意くらい、その人の自由じゃないか」

アニ「全く、そうだよね。けれどその愚かさも、私はわかる気がする」

ユミル「…………」



アニ「罪の意識に苛まれ続けた私たちは、幸運に慣れていない。そしてこれからも、慣れる事は無いだろうね」

アニ「だからきっとこれは。ライナーにとって必要な、幸運になりすぎない為の枷なんだと思う」

ユミル「幸運になれたのに、自分の周りに有刺鉄線を張り巡らしていたら――意味ないな」

アニ「あぁ」

ユミル「なんの為の自由だよ」

アニ「しかもそれに傷ついているんだから、本当に馬鹿だよ。ライナーは」


ユミル「お前とベルトルさんは、うまく立ち回っているのか?」

アニ「一番馬鹿なのはライナーで、私は二番三番ってところかな。枷はある、けど触れていない」

アニ「そもそも私達はそんなに、危ない枷にしていないからね」

ユミル「それを聞いて安心したよ」

アニ「なのにライナーは、ガッツリと危ない枷を嵌めちまって……人格がぶれたりもするはずだよ」

ユミル「お前等も幸せになって欲しいのに」

アニ「でもさ」

ユミル「ん?」

アニ「私は、自分の感情で傷つく余裕がある事自体が幸せな事だと思っている」

ユミル「――お前の前向きさが羨ましいな」

アニ「三人一緒なんだ、愛とか恋とか抜きにしても……とても心地いい」

ユミル「その言葉を二人に言った事は?」

アニ「ある訳ないだろ」

ユミル「だよな、お前はそう言う奴だ」


【ある日】


ユミル「ふ…ぇっ」

エルヴィン「…………」

ユミル「ふぇっくしゅ!」

エルヴィン「――大丈夫か」

ユミル「あ゛ぁーもう、くしゃみとか出るなよな。めんどくせぇ」

エルヴィン「親父の様な行動をするな、年頃の娘がはしたない」

ユミル「んな事を言われてもな、出るもんは出ちまうし」

エルヴィン「くしゃみを出すなとは言っていない」

ユミル「じゃあどれだよ」

エルヴィン「するなと言ったのは、くしゃみをした後の君の行動だ」

ユミル「あ゛ぁーって声か」

エルヴィン「そうだ」


ユミル「なぁんか気持ちいいんだよな、何故か」

エルヴィン「そうは言ってもやるべきではない」

ユミル「――わかった、気を付けるよ」

エルヴィン「それはそうと」

ユミル「ん?」

エルヴィン「今日は風邪薬を飲んで寝る様に」

ユミル(過保護)

エルヴィン「返事は」

ユミル「はぁい」

エルヴィン「本当に飲むんだぞ」

ユミル「わぁかってるよ」


………………


…………


……



エルヴィン「ユミル」

ユミル「…………」

エルヴィン「君は私の言った事を聞いていなかったのか」

ユミル「ぅ」

エルヴィン「風邪薬を飲んで寝る様にと、言ったではないか」

ユミル「――のんだもん」

エルヴィン「ほら、顔を出しなさい」

ユミル「布団の中に手を突っ込むな!エルヴィンのえっち!」

エルヴィン「君が布団を頭からかぶって出てこないからだ、静かにしないさい。氷嚢を作ってきただけだ」

ユミル「…………」

エルヴィン「ほら、顔を出しなさい」

ユミル「――怒らない、か?」

エルヴィン「あぁ、怒らない」


ユミル「…………」モソモソ

エルヴィン「少し顔が赤いな」

ユミル「そんな気にする程のもんじゃない」

エルヴィン「氷嚢を乗せる、冷たいからな」

ユミル「ん」

エルヴィン「少し失礼する」ナデ

ユミル「なんだよ」

エルヴィン「少しだけ熱い気がするが、布団の中に入っていた所為もあるかもな」

ユミル「あぁ、きっとそうだ」

エルヴィン「吐き気があった時の為のバケツを、ここに置いておく」

ユミル「あぁ」

エルヴィン「あと体温計はこれだ、すぐに体温を計って欲しいのだが…」

ユミル「エルヴィン」

エルヴィン「なんだ」

ユミル「あんま気にすんなよ、たかだか微熱なんだ――お前はもう仕事に行け」


エルヴィン「しかし、君を診てくれる人がいない」

ユミル「大丈夫だって」

エルヴィン「体温だけでも確認…」

ユミル「いや時間がねぇから、それに寝てたら治る」

エルヴィン「…………」

ユミル「だろ」

エルヴィン「安静にしておくように」

ユミル「おう」

エルヴィン「お昼時にまた…」

ユミル「来るな」

エルヴィン「…………」

ユミル「忙しい時期、だろ?」


エルヴィン「ちゃんと、寝ておくように」

ユミル「わかったって」


ぱたん

ユミル(まったく、本当に心配性だな)

ユミル(ん……なんか、こめかみのあたりが痛い)

ユミル(ここ最近の疲れでも出てきたのか、まるで動く気がしねぇな)

ユミル(眠い――もう、この気怠さに身を任せて寝てしまおう)

ユミル(あ、眠れそ…)



ユミル「…………」クー


………………


…………


……



エルヴィン「…………」

ハンジ「エルヴィン」

エルヴィン「ん――何か用か、ハンジ」

ハンジ「そっちこそ、何かあったの。たまに思い出したかの様に手がピタリと止まるの、何回目?」

エルヴィン「気になる事などは無いが」

ハンジ「じゃあ気に掛かる事」

エルヴィン「ハンジ」

ハンジ「似たような事だって言いたいんだろ?ふーん、いいよ別に」

エルヴィン「いや、君は人を見る目があるなと思ってな」

ハンジ「え、いやいやそんな」

エルヴィン「そうだ」

ハンジ「?」

エルヴィン「そんな君に、頼みがある」

ハンジ「へ?」



こんこん、かちゃ

ハンジ「失礼しまーす」

ユミル「…………」

ハンジ「お、やっぱりお嬢様寝てる」

ユミル「…………」

ハンジ「氷嚢、やっぱり溶けてるな――ぬるくて気持ち悪いだろう、すぐに取り換えるからね」

ユミル「……ぅ」

ハンジ「ユミル?」

ユミル「…………」

ハンジ「起きて、る?」


ユミル(熱……ぃ)


ツキッ

ユミル「ん……」


ツキッ

ユミル(なんだ、この感じ)


ズキッ

ユミル「ぐっ」

ハンジ「――ユミル!」



ユミル「う…なんだ、ハンジ分隊長か」

ハンジ「なんだ、じゃないよ――こんな酷い寝汗をかいて」


ユミル「平気平気」

ハンジ「平気じゃないだろ……あぁ、まったく」

ユミル「本当に平気だ」

ハンジ「お腹、やっぱり痛いの」

ユミル「――はぁ」

ハンジ「ユミル」

ユミル「…………」

ハンジ「君は内臓が損傷したまま、巨人の力を失ってしまった――心配なんだ」

ユミル「…………」

ハンジ「だから、教えて欲しい」



ユミル「あぁ、体力が落ちたりした時はどうしてもな。ついでに夢見まで悪くなるから――最悪なんだ」

ハンジ「そう、やっぱり」

ユミル「特にウドガルドと、最後の戦いの夢をよく見る。内臓をやられているからだとは思うが」


ハンジ「エルヴィンはこの事知ってるの」

ユミル「知らないと思う、私が寝た後は部屋に立ち入った事はないだろうし」

ハンジ「私の部下にもいるよ。ストレスに晒され続けた所為か、体調の悪くなる人はね」

ユミル「そう、か」



ハンジ「でもさ、あれだよね!」

ユミル「?」

ハンジ「憲兵団の人でさ、大砲をずーっと打ち続けていたから爆音と爆風で精神病になって退役って人もいるし」

ユミル「そんな奴がいるのか」

ハンジ「うん、耳が聞こえずらくなったからってたっぷりと治療費貰っていったってさぁ」

ユミル「だったらエルヴィンや兵長殿――それに遺族達への補償に充ててくれればいいのに」

ハンジ「そうそう、それに君も貰うべきだ」

ユミル「私、は」

ハンジ「軽い症状とか言わないで、敵だったとかも言わないでくれよ?」

ユミル「…………」


ハンジ「私は新しい社会を作る事が、償いになると信じているけれど」

ユミル「…………」

ハンジ「ユミル。君はどうしたら、その罪悪感から解き放たれてくれるんだろう」

ユミル「まさか」

ハンジ「ん」

ユミル「まさかハンジ分隊長から、心配される日が来るなんてな」

ハンジ「酷い言い様だ、私は結構心配性だよ?――うん、でもそっちの方が君らしい」

ユミル「なぁ」

ハンジ「ん」

ユミル「私はどうすれば、戦争への責任を断ち切れるのかな」

ハンジ「さぁ、そればっかりは自分で探さないと」

ユミル「あぁ」


ユミル「――って、ハンジ分隊長」

ハンジ「なんだい」

ユミル「もしかして、エルヴィンに言われてここに来た……とか」

ハンジ「…………」

ユミル「マジかよ」

ハンジ「…………」

ユミル「あぁ、もう!あの心配性め」

ハンジ「はは、エルヴィンも心配だったんだよ」

ユミル「私の事はいいから、さっさと仕事に戻れよ――分隊長だって暇じゃないんだろ?」

ハンジ「うん、じゃあそうさせてもらうよ」

ユミル「さっきの症状、言うなよ。気分が悪くなるだけなんだから」

ハンジ「言わないよ。その代わり、私には正直に話してよね」

ユミル「くそっ――さっさと出て行け!」

ハンジ「ふふ、また来るよ」

ユミル「もう来るな!」



――ぱたん

ユミル「戦争への責任を断ち切る方法、私がやるべき事……ね」

ユミル「こうして庇護されるだけの毎日じゃない事だけは、確かだな」



ユミル(だが、今私に出来る事なんて何もない)

ユミル(早く新しい義足を得て、兵団に復帰しない事には……何も)



ユミル「いや」

ユミル「そもそも兵団に入って、私は何が出来るんだ……?」


【ある日】


アルミン「ん、よさそうだね」

ユミル「あぁ、違和感も無くなっている。これでこの機軸の所は完成なのか?」

アルミン「うん。でも重みや体重の掛け方で歪んでいく事もあるから、メンテナンスは必要かな」

ユミル「ありがとうな、先生」

アルミン「先生なんて照れるよ」

ユミル「いいじゃねぇか、先生みたいなもんだろ」

アルミン「じゃあ訂正しよう、同期にそう言われると特に照れちゃう――だから駄目」

ユミル「はは、じゃあもっと言ってやる」

アルミン「性格悪いなぁユミルは……っと、じゃあ機材を片付けるね」


ユミル「今日はこれで終わりか?」

アルミン「うん、これで今日はお終い。エルヴィン団長を呼んでから退室した方がいいのかな?」

ユミル「退室する時は、そのまま出て行ってくれて構わないとよ」

アルミン「そうなんだ」

ユミル「ま、一応私が仮眠室に入ってから出てくれるとありがたいが」

アルミン「わかった、そうする」

ユミル「じゃあ次にお前と会う時は……カバーが完成した時か?」

アルミン「実はもう、ほとんどできているんだ」

ユミル「マジか!」

アルミン「うん、デザインや構造は出来てる」

ユミル「じゃあ後は組立だけだな」

アルミン「でも材料が問題でね。クッション性があって、人の肌の感じに近い材料を今探しているところ」

ユミル「人体に近い材料、ねぇ。確かに難しい」


アルミン「一つだけ、候補があるんだよね」

ユミル「――なんだよ」

アルミン「豚」

ユミル「ぶたぁ?」

アルミン「豚の皮」

ユミル「…………」

アルミン「取り換えるのが面倒だけれど、非常食になる長所がある材料」

ユミル「なんか――うん。豚が可哀想すぎるから、やめておけ」

アルミン「だよね」

ユミル「ま、気長に待って……そうだ」

アルミン「?」

ユミル「材料とかの話じゃないけれどな、非常食で思いついた」

ユミル「私とか特に運動がしづらい体だろ?もし万が一、人とはぐれた時の為に」

ユミル「信炎弾の代わりになる様な物とかが、カバーに付いていたらいいなと思うんだが」


アルミン「信炎弾の代わり……ねぇ。小さく収めるとなると、打ち上げ花火とか?」

ユミル「煙とかもいいんじゃないか?獣除けにもなるし、昼間だったら煙でも十分だ」

アルミン「でもそれだと夜が――あ。やばい、熱中しちゃいそう」

ユミル「それは危なかった」

アルミン「うん。議論はこのくらいにしておくよ、ここから先は自分で考えてみる」

ユミル「そうか、頑張れ」

アルミン「ユミルもお疲れ様、義肢カバーが出来たらまた来るね」

ユミル「あぁ頼む」


一旦ここまで!
次の展開になるまでを纏めようと思っていたけれど二分割

話の流れで出来あがっていた分を少しだけでも……と思っていたら
まさか60レス分もあるとは

無事完結してほしい。乙。

まさかの組合せなのに、違和感なく楽しませてもらってるよ

兵長殿の嫁募集トランクスのその後が地味に気になる

続きを待つ。


>>409 完結を目指します

>>410 違和感ないだなんて、最高の褒め言葉です

>>411 続き投下しますよ



さっさと転と結を書きたいのに、このままでいいと思ってしまう感がいなめない
(訳:また日常パートのみで終わってしまった)


【ある日】


――コンコン

ユミル「……?」


――コンコン

ユミル(誰だ?今は仕事の時間のはず)

ユミル(エルヴィンも執務室にいないし、この時間に仮眠室を訪れる奴なんて)



――ガチャ!

ユミル「!」ビクッ



――ガチャ、ガチャ!

ユミル(だ、誰だよ)



???「ユミル」

待ってた。


ユミル「!」

???「ユミル、いますか?」

ユミル(え、ま――まさか!?)タタッ…


――ガチャ!

ユミル「あ」

サシャ「やっぱりいたんですねユミル!酷いですよぉ、居留守なんて!」



ユミル「サ…っ。あ、違う違う」

サシャ「……?」

ユミル「芋女」

サシャ「ひ、酷くないですか第一声!」


ユミル「酷いはお前だ、私はここに隠れて住んでいるんだぞ。その癖に声が大きい」

サシャ「そ、それは悪かったと……でも」

ユミル「でももだってもない」

サシャ「ぶー」

ユミル「ほら早く入れ、閉めるから…」

???「大丈夫だぜ、ユミル」

ユミル「!」



コニー「一応俺、周りはぐるっと見てきたし執務室の前にも立っていた。誰も居ねぇよ」

ユミル「おっ、馬鹿もいる」

コニー「相変わらず酷いなてめぇ」

ユミル「お前こそ、相変わらず口が悪いな」

コニー「まぁいい。お前等さっさと仮眠室の方へ入れよ、俺もすぐ行くから」


………………


…………


……



コニー「ふぅ……なんとか誰にも見られず、部屋に入れたな」

サシャ「森の中だったら簡単に隠れられますが、部屋の中だと無理ですもんね」

コニー「だな」

ユミル「森の中での例えはやめろ」

サシャ「それは無理は話ですよ。ね、コニー」

コニー「そうだよ。な、サシャ」

ユミル「あぁそうだよな、お前等根っからの狩猟民族だったもんな」



ユミル「にしても、随分と久しぶりだな。お前らは今何をやってんだ?」

サシャ「私たち二人は憲兵団に入っているんです」

ユミル「憲兵団に?」

コニー「一部の憲兵団の汚職が公になって、結構な人数がクビになったのは知っているだろ」

ユミル「あぁ」

サシャ「そこで駐屯兵団と調査兵団から、一部の有能な人材を憲兵団に移動する事になったんです」

ユミル「へぇ、有能な人材を」


コニー「いわゆるペットハンティングって奴だな」

サシャ「違いますよコニー、ぺったんこハンティングです」

コニー「おぉ、それだそれ!すげぇなサシャ」



ユミル「有能な人材……ねぇ」

コニー「あ、疑っているな」

サシャ「失礼しちゃいます。私達、結構評価の方は上だったんですよ」

ユミル「評価は上、か――まぁ確かにそうだろうな」

サシャ「そうそう」

コニー「うんうん」

ユミル「そしてジャンは、調査兵団なんだよな」

コニー「ふふん、俺らの方がジャンより有能だったって事さ」


ユミル「お前等はいい意味で裏表もなく人に接せるし――人間としての芯も強い、そして利益で動く奴じゃない」

コニー「ふぅー…」

サシャ「ユミルは面白味がありませんね、すぐ裏を読もうとして」

ユミル「賢いって言えよ――つまりお前ら、憲兵団内部から調査兵団に協力しているクチか」

コニー「あぁそうだよ。大正解だよ、こんにゃろー」

サシャ「面白くなーい」

ユミル「訓練兵時代のノリでしゃべるのはやめろって、結構真面目な話題していただろ」

サシャ「ふーんだ、じゃあ真面目に話しますよーだ」

ユミル「その言い方、既にアウトだろ」

サシャ「……わかりましたよ、真面目に話します」

コニー「俺達なりに、だがな」

ユミル「あぁ、勿論それでいい」



ユミル(正直、それ以上は期待出来ないし)


サシャ「私たちはエルヴィン団長の指揮で憲兵団内部の報告をしたり、新兵の育成をしているんです」

コニー「まぁ直接指示を出すのは、ほとんどジャンなんだけどな」

サシャ「とは言っても大したことはしていませんよ、憲兵内の良い人柄の人を探して」

コニー「友達になって、内部の話とかをたくさんするだけだもんな」

サシャ「あと噂話を流したりする事もありますけれど、いつの間にか話が広がって行って貰えるし」

コニー「命のやり取りをしていた時の事を考えると楽だよな」

ユミル「そりゃあそうだろ」

サシャ「これで調査兵団の時よりお給料上っているんですから、本当に不思議です」

ユミル「……お前等の働きに見合っていると思うぞ」

サシャ「え」

コニー「そうなのか?」

ユミル「かなり凄い事やってのけているよ、しかもお前等はごく自然体だ。恐ろしい程に適材適所だな」

サシャ「?」

コニー「すまん、よくわからん」


ユミル「まぁつまり。頭は団長とジャンで、手足がお前等で……いい役割をしているって事だ」

サシャ「もしかして馬鹿にしています?」

ユミル「いいや、いい関係だなと思ってな」

サシャ「ふふん。人間、手足が無いときちんと動けないんですよ?」

コニー「ばっ、サシャ!」

サシャ「――ぁ」

ユミル「バーカ、人間は欠損を知識と助け合いで埋めてなんぼだ。つまり」カツン

ユミル「今、足を埋めている私の方が……お前よりずっと上なんだよ、きっとな」ニヤリ



コニー「……この、馬鹿」

サシャ「すみません」

ユミル「気にしてねぇから、気にすんな」


コニー「その義足、アルミンが作ったやつか?」

ユミル「あぁ、いかすだろ。結構いい鉱物使ってくれたらしいんだ」

ユミル「そっか」

サシャ「そう言えば……再会したその日、結構大変だったみたいですね」

ユミル「サシャ何をにやつい――ぁ」

サシャ「三人と対面した際にはとても感動をして、涙を流していたとか」

ユミル「くそっ、ミカサの奴。しゃべりやがったのか」

サシャ「ふふん。第一声が芋女だった事への、些細なお返しです。芋女と聞いた瞬間からこのネタで復讐する事は決めていました」

ユミル「さっきの手足発言があったから遠慮する、って言う選択は無かったのか」

サシャ「ユミルが気にしないって言ったんじゃないですか」

ユミル「はぁ……一本取られた、お前成長したな」

サシャ「相手が油断している時こそ一歩踏み出す勇気を、ですよ。褒めて貰えて嬉しい限りです」

コニー「お前、心臓強すぎる」

サシャ「そんなに褒めないで下さい」

人たらしの才能だな。


コニー「にしても、悪かったな」

ユミル「何がだ?」

コニー「所属の兵団が違うからってのは言い訳だと思うんだが……会いに来るの、遅くなっちまった」

サシャ「ですね、私もそこは反省です」

コニー「本当はもう少し早く来る予定だったのに」

ユミル「それこそ気にすんなよ、来てくれたんだからそれでいい」

コニー「そうか?」

ユミル「それより次に来る約束の方が嬉しい、私も話し相手は欲しいから」

コニー「そんなのお安い御用…」

サシャ「コニー」

コニー「あ、そっか……悪いユミル、また次に来るのは時間が空くかもしんねぇ」

ユミル「それは別にいいが――どうした、何か用事でもあったか」


サシャ「いいえ、違うんです――ただ」

コニー「ジャンもこっちに来たがっていたから、次の休暇はレイス邸の方に俺が行くつもりなんだ」

ユミル「!」

コニー「んで、代わりにジャンとサシャがこっちに来ると」

サシャ「ちょっと待ってくださいよコニー!私がヒストリアの所に行くから、コニーが来て下さ…」

コニー「んだよ!お前ずーっとユミルの事心配していたんだから、さっさと頷いておけって」

サシャ「わあぁ、言わないでください!」

ユミル「…………」

サシャ「って、あれ。ユミル?」

ユミル「――ふっ、あは。お前ら本当に変わんねぇな」

サシャ「それは、いい意味で?」

ユミル「もちろん、そうに決まっているだろ」

サシャ「それは」

コニー「よかったな」

ユミル「あぁ、本当に良かったよ」


【ある日】


エルヴィン「ただいま」

ユミル「おかえり、なんか疲れた顔をしているな」

エルヴィン「そうだな、今日は疲れた」

ユミル「はは、先にシャワーを浴びるか?そうしたら少しはすっきりするんじゃねぇかな」

エルヴィン「そうしようか」

ユミル「こっち向けよ、シャツのボタン外してやる」

エルヴィン「あぁ」

ユミル「ん」


ごそごそ……

ピンッ!

ユミル「痛っ!」


エルヴィン「どうした」

ユミル「これ……あぁ、やっぱり」

エルヴィン「なんだ、どうかしたのか?」

ユミル「ボタンに髪の毛、絡まった」

エルヴィン「あぁ、たしかに……外れたボタンに髪の毛が」

ユミル「動くなよエルヴィン、引っ張られると痛いし――自分でほどく」

エルヴィン「あぁ」

ユミル「…………」モソモソ

エルヴィン「……ふ」

ユミル「なんだよ」

エルヴィン「君の手があまりにも手探りで――あぁ、そっちじゃない。ほら、ここだ」

ユミル「ん、さんきゅ…」


――ピンッ!

ユミル「……いっ」


エルヴィン「大丈夫か――すまんな、私が隻腕でなければほどいてやるんだが」

ユミル「ま、大丈夫だ。軽く引っかかっただけだろうし、手探りでもほどけ…」モソモソ



ユミル「ほどけ…」モソモソ



ユミル「ほど」モソモソ



ユミル「ほどけ、ない」



エルヴィン「私も君の頭のてっぺんが長時間当たって――微妙に痛いな」

ユミル「あぁ、もう!めんどくせぇな」


エルヴィン「私がやってみようか?」

ユミル「いや……仕方がないな。エルヴィン、ハサミあるか」

エルヴィン「あぁ、少し移動したところにある」

ユミル「じゃあ移動するぞ、もう切っちまおう」

エルヴィン「一応聞いておくが。切るのはもちろん、ボタンの事だろうね」

ユミル「あぁ?隻腕のお前にボタンの付け根切ってもらう訳にもいかねぇだろ」

ユミル「かと言って私もボタンの付け根は探れないだろうし、私が自分の髪の毛を切る」


エルヴィン「切らなくてもいい」

ユミル「あ?」

エルヴィン「残りのボタンを外しなさい、私がシャツを脱げば君もほどきやすいだろう」

ユミル「……そう言えばそうだった」

エルヴィン「君もその体制はつらいだろ、少し屈もうか」

ユミル「もう少しだと思えば大丈夫さ――と、よし。残りのボタン、取ったぞ」

エルヴィン「そうか、ほら」パサッ

ユミル「ありが…」

エルヴィン「?」

ユミル「いや、ありがとうなエルヴィン。後は自分でやるから、先に風呂に入って来てくれ」

エルヴィン「そうか、ではそうさせて…」

ユミル「私はこれ外してから夕飯の準備をするから、気にせずに早く入れよな」

エルヴィン「あ、あぁ」



ぱたん

ユミル「…………」

ユミル「なんだろ、このほのかな」

ユミル「…………」クン

ユミル「これ――加齢臭、って奴かな」

ユミル「…………」

ユミル「んー…、あいつも年相応だったって事か」

ユミル「でもその癖に――なんだろ、これ」



ユミル「…………」



ユミル「いい匂い、なんて一瞬思っちまったの」


【ある日】


エルヴィン「と、言う状態に今はなっているらしい」

ヒストリア「そうなんですか……やはり少し、難しいですね」

エルヴィン「難しい、か」

エルヴィン(方法は、あるにはある。だがこれは)



ヒストリア「エルヴィン様?」

エルヴィン「――すみません。少し、考え込んでしまったようで」

ヒストリア「…………」

エルヴィン「どうかしましたか」

ヒストリア「エルヴィン様、他人行儀すぎです。まるで他人みたい」

エルヴィン「…………」

ヒストリア「なんだか、こう――許嫁だと言う実感が湧かなくて」


エルヴィン「すまない、精進していこう」

ヒストリア「ごめんなさい、私も上手く言葉が言えなくて」

エルヴィン「いいや、こちらこそ。君にそんな顔をさせてしまって申し訳ない」

ヒストリア「ユミルとも、普段はこんな感じで話しているんですか?」

エルヴィン「いや、もう少し砕けた様に話していますよ。やはりいる時間が長いからでしょうか」



ヒストリア「――ずるい」

エルヴィン「はは、ユミルの保護を調査兵団で独占してしまって申し訳ないと思っています」

ヒストリア「それもあるけれど」

エルヴィン「?」

ヒストリア「ユミルと一緒に居るエルヴィン様もずるいし、エルヴィン様と砕けて話せるユミルもずるい」

エルヴィン「…………」

ヒストリア「なんて心が狭いのだろう、とは思うのですけれど」


エルヴィン「……ヒストリア」

ヒストリア「エルヴィン様、私達は家族になるのですよね」

エルヴィン「あぁ」

ヒストリア「どんな不純な動機で結ばれるとしても、心の壁くらいは取り払いたい」

ヒストリア「私はそれが、家族と言う物だと思うから」

エルヴィン「君は強いな」

ヒストリア「いいえ、強さではありません。ただ我儘なだけです」

エルヴィン「いや、素晴らしい強さだ」



エルヴィン「君とならいい社会を目指して行けそうだと、改めて思えたよ」

エルヴィン「君をパートナーに選んで、本当に良かった」


【ある日】


アニ「あんた、養子縁組されるんだって?」

ユミル「その話も伝わったのか……そうだ、戸籍も改めて作って貰えるんだと」

アニ「良かったね」

ユミル「なぁ、いっそお前らも養子縁組されたらどうだ?」

アニ「それってライナーとユミルが私の兄姉になって、ベルトルトが弟になるって事?」

ユミル「なんでだよ、お前はベルトルさんより年下だろ」

アニ「精神面では私が上、だから私が姉」

ユミル「納得……はしないからな、年齢はそう都合よく変えられないだろ」

アニ「そう?結構いけると思うけれど」

ユミル「あー…でも。年上の子供が四人も出来たら、ヒストリアも流石に戸惑うだろうな」

アニ「逆に見てみたいけどね、私達にママと呼ばれて慌てふためくヒストリア」


アニ「まぁ、いきなり大人数の養子縁組は無理だろうけれど」

ユミル「やっぱりそうだよな」

アニ「注目を集めすぎると、私達の素性だってばれちまう」

ユミル「…………」

アニ「それにどうせあの二人は顔が市民に割れているんだ、養子になったところで意味がない」

ユミル「――すまないな」

アニ「えらく愁傷だね」

ユミル「愁傷にだってなるさ。私だけ新しい人生を得ようだなんて、考えてみたら心苦しい」

アニ「これ以上遠慮する物言いしたら、蹴り飛ばすよ」

ユミル「お前ってこうして話すとかなり面白い奴だな」

アニ「私ももう、背負う物が無くなってね。口が軽くなっちまった」

ユミル「いい事なんじゃねぇの?」

アニ「私もそう思う」


【ある日】


エルヴィン「……はぁ」

ユミル「どうした、溜息なんてついて」

エルヴィン「君は気にしなくていい、リハビリを続けていなさい」

ユミル「同じ部屋でずーっと同じポーズをし、紙面を凝視して溜息をついている奴が居たら気になるだろ」

エルヴィン「――私はそんなに挙動不審だったか」

ユミル「しかも自覚症状なしと来たもんだ」

エルヴィン「心配をかけてすまなかったな」

ユミル「心配とかそんなんじゃねぇし」

エルヴィン「はは、そう言う事にしておこう」


ユミル「……で、お前は何を悩んでいたんだよ」

エルヴィン「貴族社会の事は、まだ完全にはわかり切っていなくてな。対応が後手に回ってしまうんだ」

ユミル「へぇ――って駄目だろ、お前にヒストリア託す予定なのに」

エルヴィン「面目ないとは思っているよ」

ユミル「旦那のお前がしっかりしていないと、こっちが困るんだ」

エルヴィン「精進しよう」

ユミル「ちなみにどう言った事があったんだよ」

エルヴィン「そこまで言わなければ駄目かい」

ユミル「当事者じゃわかりにくい事もあるだろうし、聞かせて欲しい。もちろん話せる範囲で構わないが」

ユミル「それに、本心を言うとたまには私もお前の力にはなりたいんだ。世話になりっぱなしだからな」

エルヴィン「……まぁ、いいだろう。話自体は大したものではない」

ユミル「ありがとな」

エルヴィン「実は…」


………………


…………


……



エルヴィン「…と言う訳なんだが」

ユミル「…………」

エルヴィン「ユミル?」

ユミル「エルヴィン、お前――さ」

エルヴィン「なんだい」

ユミル「解決案、わかっているだろ」

エルヴィン「…………」

ユミル「いや、解決案ではないか。その状況を、手っ取り早く自分の物に出来る手段だな」

エルヴィン「しかし、それは」

ユミル「やっぱりわかっているんだ」

エルヴィン「――あぁ」


ユミル「なぁエルヴィン、お前が平和を望む気持ちもわかる」

エルヴィン「…………」

ユミル「せっかく、いい世の中になりつつあるんだもんな」



ユミル「けれど最近のお前さ、潔癖すぎる。作戦が綺麗すぎるんだ」

ユミル「最善案は予想しやすい、対峙する相手から見たらなおさら」

エルヴィン「――君の助言は助かった」

ユミル「そうか」

エルヴィン「ありがとう」

ユミル「きつい物言いになって、すまない」

エルヴィン「大丈夫だ」


ユミル「私、もう自分の部屋に行くわ――お前は後でじっくり考えていいから」

エルヴィン「あぁ」

ユミル「おやすみ」

エルヴィン「おやすみユミル、いい夢を」


ぱたん


エルヴィン「私がその場を、掌握する方法――か」

エルヴィン「…………」

エルヴィン「わかっている、吐き気がするくらいに上手くいくだろう」



エルヴィン(一人二人の、死傷者を出す方法だったならば)


【ある日】


ユミル「あれ」

エルヴィン「……どうかしたか」

ユミル「団長殿、ここ」

エルヴィン「ん」

ユミル「髭、剃り損ねてる」

エルヴィン「あぁ、どうしても右側はね――気を付けてはいるんだが」



ユミル「ふーん、気を付けろよ」

エルヴィン「あぁ」


ユミル「そうだ」

エルヴィン「なんだい」

ユミル「明日の朝、私がお前の髭を剃ってやろうか」

エルヴィン「そこまでやって貰う程の事ではない」

ユミル「構わないだろ。貴族とかだと、椅子に座ったまま――召使が髭を剃ってくれるって言うし」

エルヴィン「しかし」

ユミル「多少は恩返ししたいんだ、させてくれ」

エルヴィン「……君はずるいな」

ユミル「?」

エルヴィン「そう言われると断り切れない」

ユミル「まぁそこに漬け込む、それが私って事だろ」

エルヴィン「そうだな」


………………


…………


……



【次の日の朝】


ユミル「エルヴィン、机の方の椅子に座れよ――ソファーより体を後ろにやれるし、私もやりやすそうだ」

エルヴィン「わかった」

ユミル「おう、頼む」

エルヴィン「ちなみに聞くが、ユミル――髭を剃った経験は」

ユミル「ある訳ないだろ、私は女だぜ」

エルヴィン「だろうな」

ユミル「悪いけれど指示は頼む、勘でお湯とタオルは持ってきた」

エルヴィン「良いチョイスだ、では最初はお湯を絞ったタオルで皮膚を温めてくれ」

ユミル「あぁ」

エルヴィン「ありがとう、一時そのままで」


ユミル「…………」

エルヴィン「…………」



ユミル「ついでに目の上も温めるか」

エルヴィン「そうだな、頼めるかい」

ユミル「ん」

エルヴィン「…………」

ユミル「手持ち沙汰なんで少し肩を揉むぞ」

エルヴィン「あぁ」


ユミル「――硬い」

エルヴィン「肩はどうしても、な」

ユミル「じゃあ首も凝っているよな……よっ」

エルヴィン「無理はしなくていい」

ユミル「んな事よりも感想の方が聞きたい」

エルヴィン「――気持ちがいい」

ユミル「それは良かった」



エルヴィン「…………」

ユミル「…………」



ユミル「――あ、蒸しタオルの方はもういいかな」

エルヴィン「あぁ」


ユミル「泡をつければいいのか?」

エルヴィン「泡をつけて、次に剃刀だ」

ユミル「ん、最初にやる場所とか方向とかあるのか」

エルヴィン「どこからでもいいが、まずは上から下へ向けて剃刀を動かしてくれ」

ユミル「ん」

エルヴィン「言っておくが横にスライドだけはしてくれるなよ」

ユミル「それくらいは知っているさ」

エルヴィン「なら良かった」

ユミル「……これでどうだ?」

エルヴィン「あぁ、その動きで大丈夫だ。残りも頼む」

ユミル「頭を抱えてからやってもいいか」

エルヴィン「あぁ」

ユミル「…………」


エルヴィン「ちょっと待てユミル」

ユミル「なんだ」

エルヴィン「当たってる」

ユミル「あぁ――我慢しろ」

エルヴィン「我慢なのか」

ユミル「少しの間だから」

エルヴィン「いや、私の方が我慢するのはおかしいだろう。君が改善しなさい」

ユミル「あ、責任転嫁ばれた」

エルヴィン「君が少しだけ体を離して剃ればいいだけだ」

ユミル「だな」


【ある日】


ユミル「…………」


ユミル「…………」


ユミル「…………」



ユミル「今日は誰もこない、か」

ユミル「これが普通なんだよな」

ユミル「――はぁ」

ユミル「…………」

ユミル「…………」

ユミル「誰もこないの、よくあった事なのに」

ユミル「なんか、億劫だ」

ユミル「――夕飯くらいは作っておくか」


………………


…………


……



エルヴィン「ただいま、ユミル」

ユミル「……ぁ」

エルヴィン「?」

ユミル「ご飯出来ているぞ、それとも先に洋服を着替えるか?」

エルヴィン「そうだな」

ユミル「ほら、シャツを脱がしてやるからソファーに座れよ」

ユミル「何だったらついでに、肩でも揉んでや…」

エルヴィン「…………」ナデナデ

ユミル「?――どうした?」

エルヴィン「なんでもないさ」

ユミル「おう」


エルヴィン「……そう言えば少し、外に置いておいた物があったな。取ってくる」

ユミル「あぁ」


ぱたん

エルヴィン(誰も訪問していなかった日は、少し饒舌になるな)

エルヴィン(寂しかった、のだろか)



エルヴィン「さて、ジャンの予定は……と」


【ある日】


――コンコン

ユミル(誰だ、何かの書類か?

ユミル(そう言えばエルヴィンが、受け取っていいって言っていたな)

ユミル(私が開けていい――のか?)


――コンコン

ユミル「ちょ、ちょっと待て」カッカッ

ユミル(とりあえず、僅かにドアを開けてみるか)


ガチャ

ユミル「!」

ジャン「よぉ」


ユミル「ジャンじゃないか――、あ。出来れば早く入ってくれ」

ジャン「あぁ」

サシャ「私も居まーす!」

ユミル「お前も来たのか」



――パタン

ユミル「お前が来るとは思わなかった。ジャン、お前は忙しいんだろ?」

ジャン「まぁな、目玉が飛び出るくらいに忙しいぜ」

ユミル「随分自信ありげに言うな」

ジャン「なんせ本当の事だし――まぁ。お前の所には来ようと思っていたから、別にいいんだけれどな」

ユミル「なんでだよ」

ジャン「お前の立場って、俺からしたら結構重要」

サシャ「ですよね」

ユミル「?」


ジャン「俺の敬愛するエルヴィン団長の理解者で、俺の護衛するヒストリアの大切な人――それがお前だからな」



サシャ「へぇ、ユミルと団長さんってそんなに仲良しなんですか」

ジャン「なんだ、俺の見解にケチつける気か」

サシャ「いえ、ヒストリアに関してはそうだと思いますよ」

ユミル「それは同意する……だが、エルヴィンに理解者と言う程は無いと思うんだが」

ジャン「んだよユミル、お前当事者だろうが」

ユミル「いや、確かにそうだけれど」


サシャ「嫌だったのですか?」

ユミル「そうじゃない、確かに団長殿は恩人だし……理解者になっていると言われたら嬉しい部分もあるが」

ジャン「自信を持て、俺の観察眼は兵団一だ」

ユミル「随分と大きく出たな」

ジャン「それくらい自信過剰じゃないと、やっていけなくてな」

ジャン「俺が訓練兵団に入団して学んだのは「間違いかもしれない」と思っても、思いっきりはったりをかます度胸だよ」

ユミル「無理に奮い立たせているのか、大変だな」

ジャン「三割程な」

ユミル「前言撤回。三割だったら四捨五入して、自分の自信過剰さを自覚しろ」


ユミル「にしても、ヒストリアの護衛は必ずお前らが交代でやんなきゃいけないのか」

サシャ「そうなんですよ、ジャンが毎日詰めているんですけど。私たちが休みの日に稀に交代します」

ジャン「俺、働きすぎだよな」

ユミル「ヒストリアの護衛は、そんなに大変なのか?まさか貴族や王族に狙われていたりするんじゃ…」

ジャン「あぁ、それは違う。ほら、一応あいつら敵だったからな――そっちの監視の意味合いも兼ねてるんだ」

ユミル「まぁ確かに、すぐすぐ自由に出来ない理由はわかるけど」

ジャン「俺だってあいつらが何かするとは思ってねぇよ」

サシャ「もう皆、仲良しですもんね」

ジャン「仲良し言うな」

サシャ「ジャンだって仲良しじゃないですか」

ジャン「サシャ、俺はたまにお前の脳味噌の中の快適さが羨ましくなる」

サシャ「褒めているんですか?」

ジャン「褒めてるさ」



ジャン「でも、ここで怠けて足元を掬われるんじゃお終いだ。だからきちんとやっておかないとな」


ユミル「お、なんかかっこいい事を言ったな」

ジャン「かっこいい事ってなんだよ、茶化すんじゃねぇ」

サシャ「もしかして、ジャン照れています?」

ジャン「芋女は目が悪いのか?」

サシャ「えー、私目は良い方ですよ」

ユミル「サシャ、ジャンなりの照れ隠しだ。触れてやるな」

サシャ「あ、やっぱり照れていたんですか」

ジャン「あー…なんにしてもな、あいつらも馴染んできているから心配はするな。何か向こうの事で聞きたい事はあるか」

サシャ「話題転換しましたね」

ユミル「じゃあ……悪いけれど、お前が担当しているヒストリアの警備状況なんだが」

サシャ「難しい話来た」


【ある日】


ハンジ「ふぁっ……眠いなぁ、けれどもこの書類。早く届けちゃわないと」

ハンジ「朝早くだけれど、エルヴィン執務室に居るよね」

ハンジ「ホントこう言う時だけは、執務室に寝泊まりしてくれいて感謝――ん?」



ユミル「手持ち沙汰だからな……あた少し揉むぞ」

エルヴィン「あぁ」



ハンジ「ん?」


ユミル「ん、相変わらず硬いな」

エルヴィン「自覚はしている」

ユミル「少し力入れてみるぞ」

エルヴィン「無理はするなよ」

ユミル「んな事よりも感想の方、教えてくれって前言っただろ」

エルヴィン「――気持ちがいい」

ユミル「それは良かった」



ハンジ「え、え……?」



ユミル「タオルの方はもういいよな」

エルヴィン「あぁ」



ハンジ「え、あの二人いつの間に――え?」


ユミル「泡、つけるぞ」

エルヴィン「ん」

ユミル「最初にやる場所は、ここで良かったよな」

エルヴィン「そんなに緊張しなくても大丈夫なのだが」

ユミル「まだ二回目だからな、緊張するに決まっているだろ」

エルヴィン「どこからでも大丈夫だよ、君のやりやすい所からでいい」

ユミル「そうか」

エルヴィン「だがまず、上から下へ向けて動かしてくれ」

ユミル「ん」



ハンジ「あれ、え、うそ」


ユミル「どうだ」

エルヴィン「その動きで大丈夫、残りも頼む」

ユミル「また頭を抱えてやってもいいか」

エルヴィン「あぁ」

エルヴィン「ちょっと待てユミル」

ユミル「なんだ」

エルヴィン「また当たってる」

ユミル「二回目だし、了承して言っていると思ったんだが」

エルヴィン「離しなさい」

ユミル「我慢しろって」

エルヴィン「だから……なんで私が我慢しなければならない」

ユミル「少しの間だから」

エルヴィン「私の方が我慢する必要は無い、改善しなさい」

ユミル「せっかく私が奉仕活動してやっているのに」


エルヴィン「何を言っているんだ、君の方が恩着せがましく言ってきたんだろ」

ユミル「まぁ、もちろんそこは狙って言っていたけれど」



ハンジ「え、ユミルの方から……?え」



エルヴィン「だったらもう君はやらなくてもいい、私は元々一人で出来るのだし」

ユミル「――わかったよ、体離す」

エルヴィン「わかればいい」

ユミル「ほら、再開するから口を動かすな」

エルヴィン「頼む」



――バタン!

ハンジ「ふ、二人とも一体何を……っ!?」



ユミル「は」

エルヴィン「ハンジ……?」



ハンジ「あれ」

ユミル「何って……髭剃りだけれど」



ハンジ「…………」



ハンジ「失礼しましたぁ」



――パタン

エルヴィン「何だったんだ?」

ユミル「さぁ?」





リヴァイ「おいハンジ、テメェ何しているんだ」

ハンジ「こ、殺し……殺してくれぇ!」ゴロゴロ

リヴァイ「おいモブリット、なんだこれは」

モブリット「さぁ、さっき来た途端いきなり座布団をほっかむりみたいにした状態のまま転げまわっています」

リヴァイ「…………」

モブリット「上司にはあれかもしれませんが、この状況って」

リヴァイ「まさに奇行種、だな」

ハンジ「うわぁああ!!は、恥ずかしぃい!!」ゴロゴロ


一旦ここまで

誰か、エルヴィンのシャツを頭からパサッと被っているユミルと
エルヴィンのぼさぼさ頭を両手で抱え込みつつ、真剣な顔をしながら髭を剃っているユミルを下さい

(そして無いから自分で自給自足)


>>414>>424 コニサシャは人たらしの才能あると信じてます


日常回ほのぼのいいな

こんばんは。いつも楽しみにしています。

続きを楽しみに待ってる。

読んで損した

読んで幸せになれた。


投下します

>>470 日常は当方も大好きです

>>471 ありがとうございます

>>473 投下します

>>474 時間取らせて申し訳ありません

>>475 そう言って貰えて幸せです


【ある日】


ユミル「シャツ、脱がすぞ」

エルヴィン「あぁ」

ユミル「――ん、出来た」

エルヴィン「ありがとうな」

ユミル「じゃあ飯にするか」

エルヴィン「…………」

ユミル「エルヴィン」

エルヴィン「あぁ、すまない」

ユミル「どうかしたのか?」

エルヴィン「シャツの脱がし方が」

ユミル「?」

エルヴィン「とてもスムーズだった、他所ではよくつっかえられていたのに」

ユミル「他所って、何処だよ」


エルヴィン「あぁ、壁外調査に行った先や――あとはヒストリア嬢の所に話をしに行った時などにな」

ユミル「…………」

エルヴィン「どうした」

ユミル「え」

エルヴィン「君の事だから、ヒストリア嬢との懇親会の話を根掘り葉掘り聞きたがるものと思っていたんだが」

ユミル「何を言っているんだよ親父、聞きたいに決まっているだろ」

エルヴィン「…………」

ユミル「あんたなら、何も言わずとも話してくれると思ったんだ」

エルヴィン「それは――気が利かなくてすまなかったな」

ユミル「ふふ、まぁ許してやるよ」

エルヴィン「ありがたいな」





――ツキッ

ユミル「…………」


【ある日】


ユミル「ほら」

アニ「どうも」

ユミル「ヒストリアも心配性だよなぁ、こんなにアニを寄越さなくても大丈夫だっての」

アニ「そうかい、じゃあ次はライナーかベルトルトでも寄越そうか」

ユミル「市民に顔が割れてんだろ」

アニ「あんたの移動方法と同じく、荷物として出荷したら大丈夫ださ」

ユミル「まぁ確かにそれなら大丈夫だろうが、かなり大きい荷物になるぞ」

アニ「ヒストリアの権力ならできると思う」

ユミル「…………」

アニ「どうかした?」

ユミル「いや、ふと思ったんだが」



ユミル「もしそれが出来るとすると……ヒストリア自身が荷物の箱の中から飛び出してきそうな気がしてな」


アニ「…………」



ユミル『あれ、荷物が来ている?』

ぱかっ

ヒストリア『ユミル!えへへ、きちゃった』ニコニコ



アニ「――大いにあり得ると思うよ」

ユミル「だろ」

アニ「きっと無邪気に笑いかけてくるんだろうね」

ユミル「あぁ、容易に想像できる」

アニ「ヒストリアっていくつになるんだっけ」

ユミル「今年で18歳」

アニ「あんな顔をさせるあんたが凄いのか、ヒストリアが凄いのか」

ユミル「まだ荷物が届いていないんだから、勝手に呆れるなよ」

アニ「“まだ”って、あんたも荷物が届く前提の話になっちゃっているよ」

続ききた。


ユミル「そう言えば、お前がこちらの方に来ているのは大丈夫なのか?」

アニ「?」

ユミル「流石に一人のメイドがこうもよく執務室に用事があるって言うのは、おかしく思われるかもしれない」

アニ「そこは大丈夫だと思う」

ユミル「大丈夫なのか?」

アニ「団長さんも、最近足繁くレイス邸に来ていてるからね」





アニ「多分もうすぐ、婚約が公になるんじゃないかな」



ユミル「……そうか、いよいよか」

アニ「私も一応、ある程度お忍びで来ているけれど。例えバレたとしても、その準備と言えばなんとでもなる」

ユミル「そうか。その、ヒストリアは…」

アニ「あぁ、喜んで準備をしているよ」


ユミル「……え?」

アニ「あんたが家に住むようになる準備をね、だからあんたは何も心配する必要は無い」

ユミル「そ、そうか」



アニ「なんか宛が外れたとでも言う様な顔しているけれど」

ユミル「いや――てっきりヒストリアは、喜んで式の準備をしているのかと思ってな」

アニ「なるほど」

ユミル「実際はどうなんだ?」

アニ「式そのものには力を入れていると言う訳じゃなさそうだ、ある程度の準備は必要らしいけれど」

ユミル「他の貴族や王族に、ある程度は見せつけなきゃいけないからな」

アニ「けれど、やっぱりウエディングドレスだけは凝っているみたいだね。やっぱり乙女の憧れって奴だから」

ユミル「…………」


アニ「どうかした?」

ユミル「やっぱりさ。愛する人と大切な人が結婚するとなると、なんか微妙な心境になるもんだな」

アニ「当事者じゃないけれど、そこはわかるよ」

ユミル「――っ」

アニ「ユミル?」

ユミル「あ、あぁ……すまない」





ユミル(わかるわけない――なんて、何故思ったんだろう)

ユミル(自分から話を振ったくせに)



ユミル(愛する人と、大切な人……か)

――ツキン…ツキッ


【ある日】


ユミル「!」

ユミル「あぁ……しまった」



ユミル「エルヴィン」

エルヴィン「ん、どうした」

ユミル「温めるだけと思ったんだが――すまん、焦がした」

エルヴィン「珍しいな」

ユミル「すまない、今日の夕飯は美味しくないかも」

エルヴィン「別に構いやしないさ」

ユミル「ん、ありがとう」



ユミル(なんだか、最近ぼんやりする事が多いな)

ユミル(それにしてもらしくない、こんな失敗なんて)


………………


…………


……



ツキン…ツキッ

―― …ズキッ!



ユミル「……!」


ユミル「…………」モソモソ

ユミル「はぁ――寝ていた、所だったのに」

ユミル「なんだよ、この痛いの……はぁ、寝苦しいなぁ」ゴソゴソ

ユミル(水でも飲もう)


――かちゃっ

ユミル「!」

エルヴィン「あぁ、ユミルか」

ユミル「お前……今何時だと思ってるんだよ」

エルヴィン「この書類で最後だから」


ユミル「…………」

エルヴィン「ユミル?」



ユミル(目の前に、エルヴィンがいる)

ユミル(私が、素直に甘えても大丈夫だと認識できている大人。父親になる人で、私を守ってくれていた人)

ユミル(なんだろう、寝起きの所為か?……甘えたい、とても)



ユミル「――親父」ギュッ

エルヴィン「どうした」

ユミル「怖い夢を見たんだ、こうさせてくれ」

エルヴィン「珍しい事もある」

ユミル「…………」ギュウッ

ユミル(そう、珍しく眠いんだ。きっと寝ぼけているだけ、寝起きで人恋しいだけ)

ユミル(あぁこの匂いだ。そして、この体温だ)

ユミル(甘えても大丈夫だよな、だって私はこの大人の子供になるんだから)


エルヴィン「……ユミル」

ユミル「このまま眠ってしまいたい」

エルヴィン「そうか」

ユミル「そしたら夢も見ないだろうに」

エルヴィン「よほど怖い夢を見たのか」

ユミル「あぁ、でもどんな夢かも覚えていないんだ」

エルヴィン「そうか」

ユミル「ただ怖いくらいに幸せで、そう」



ユミル「幸せすぎて、怖い――そんな夢だった気がする」



エルヴィン「そうか」

ユミル「とても、怖かった」

エルヴィン「もう大丈夫だ、私がここに居る。安心しなさい」

ユミル「あぁ」


………………


…………


……



エルヴィン「落ち着いたか」

ユミル「まだ、少ししか落ち着いていない」

エルヴィン「そうか」

ユミル「だから、もう少し甘えさせてくれ」

エルヴィン「はぁ――仕方がないな、少しペンだけ机に置かせてくれ」

ユミル「ん」

エルヴィン「…………」カタッ…

ユミル(あ、あの書類)



ユミル「エルヴィン、それ…」


エルヴィン「あぁ、そうだユミル」

ユミル「!」

エルヴィン「明日、ヒストリア嬢との会食が決まった。内々な物でな、君も来るかい」

ユミル「いいのか?」

エルヴィン「あぁ」

ユミル「行く」

エルヴィン「そうか――ほら、ユミル。おいで」

ユミル「ん」ギュウッ



ユミル(あの書類、結婚式の……ヒストリア、ドレスを楽しみにしているって言っていたっけ)

ユミル(エルヴィンは何を着るんだろう、白いヒストリアのドレスに合わせてタキシードなのかな)

ユミル(ヒストリアのドレス姿、やっぱり綺麗で可憐で神聖なんだろうな)

ユミル(エルヴィンのタキシード姿も……きっと、様になっていて恰好よさそうだ)

ユミル(願わくばその隣にいるのが…)ウトウト


エルヴィン「……ユミル?」

ユミル「…………」

エルヴィン「寝てるのかい」

ユミル「…………」

エルヴィン「…………」ナデ…

ユミル「んぅ」

エルヴィン「…………」ピタッ

ユミル「んー……」

エルヴィン「…………」

ユミル「…………」パサッ

エルヴィン「あぁ、もう。ストールを落として」

ユミル「…………」

エルヴィン「まったく」

ユミル「…………」


エルヴィン「君は男の体に凭れ掛かっているのに、なんでそう」



エルヴィン「…………」フイッ



エルヴィン「胸元のボタンを、微妙に外しているんだ」






エルヴィン「直視、できないじゃないか」


エルヴィン(だが起こすのは抵抗があるし、ストールは下に落ちてしまって取る事は出来ない)

エルヴィン(直視するのも申し訳ないし、まったく……どうすれば)

エルヴィン「――仕方がない」



エルヴィン(起きてくれるなよ)ソッ



ユミル「…………」

エルヴィン「ユミル、ベットへ連れていくから」

ユミル「……んぅ」

エルヴィン「ほら、こっちに凭れ掛かりなさい」

ユミル「んー…」モソモソ


――カチャ、ぱたん


ユミル「…………」トサッ…



エルヴィン「――ふぅ」

エルヴィン「片腕で君の体を抱えるのは、けっこうな重労働だな」

エルヴィン「これは明日、腰に来そうだ」



エルヴィン「君は気持ちよく寝ていて、それでいいかもしれないが」

エルヴィン「年頃の娘が父親になるとはいえ、そんなに無防備に男性に触れる物じゃない」

ユミル「…………」

エルヴィン「信用されていると言うのは嬉しいのだが」

エルヴィン「私に与えられた役割は父親なのだから、そう言う役割は将来の伴侶の為に取っておくべきだと思う」

エルヴィン「――君が嫁ぐ時も、私は泣くのだろうな」


ユミル「…………」

エルヴィン「…………」ナデッ…

ユミル「…………」

エルヴィン「…………」サラサラ

ユミル「…………」

エルヴィン「…………」ソゥ…

ユミル「…………」

エルヴィン「…………」…チュッ





エルヴィン「おやすみユミル、いい夢を」


――ぱたん


【次の朝】


ユミル「……ん」

ユミル「んー…っ、朝」ゴシゴシ



ユミル(頭の中、ぼんやりとする)

ユミル(昨日は――そうだ。エルヴィンと話をして、寄りかかって…)



ユミル「なんだっけ。親父って呼んで、眠くなって」

ユミル「…………」

ユミル「多分そのまま、寝ちまったんだろうな」

ユミル「あふっ……、なんか。気持ちよく眠れたなぁ」



ユミル「起きるか」モソモソ



――かちゃっ

ユミル「…………」ヒョコッ

エルヴィン「…………」

ユミル(寝ているな、珍しい)

ユミル(執務室には結構光が入ってくるから、こんな時間までめったに寝ないのに)



ユミル「…………」

ユミル(金色の睫毛が、意外に長い)

ユミル(目の上に小さなほくろがある、しかも星座みたいな形してる)

ユミル(意外と骨格がいいよな、頬骨の辺りとか……ってか首結構太い、ずっしりしてる)

ユミル(おぉ、喉仏も存在感あるなぁ。このくらいの年くらいになるとそれが普通なのか?)

ユミル(そう言えば、こんなに近くでエルヴィンの顔を見るの初めてじゃないか)


ユミル「…………」ナデナデ

エルヴィン「…………」

ユミル「こんな所で寝ていたら、背骨が曲がった爺さんになっちまうぞ」ボソッ

エルヴィン「…………」

ユミル「それに今日は、ヒストリアの所に行くんだろ」



エルヴィン「では」

ユミル「わひゃ!?」ビクッ!

エルヴィン「そろそろ起きるとするか」パチッ


ユミル「お、お――起きていたのかよ!?」

エルヴィン「少しうとうとしていただけでな」

ユミル「だったら最初のうちに起きれば」

エルヴィン「君がどういう行動を起こすのか、少々興味があった」

ユミル「く…そぅ」

エルヴィン「さてと、それでは準備をするとしようか」

ユミル「え、準備――て」

エルヴィン「さっき君も言っていただろう、今日はレイス邸に行くんだ」

ユミル「そ、そうだったな」

エルヴィン「ほら、着替えておいで」

ユミル「あぁ、わかったよパパ」

エルヴィン「だからパパとは」

ユミル「はいはい、わかったわかった」


――ぱたん


ユミル「くそっ、エルヴィンめ――してやられたな」

ユミル「…………」

ユミル「さて、億劫だけれどさっさと着替えちまうか」

ユミル「ん――?あれ」



ユミル(なんでだろ、ヒストリアに会う事は楽しみなはずなのに)





――ズキッズキッ…



ユミル(なんだろ、この痛いの)


………………


…………


……



エルヴィン「準備は出来たかい」

ユミル「あぁ」

エルヴィン「では行くか」

ユミル「……?」

エルヴィン「どうした」

ユミル「えっと――私が隠れる箱は」

エルヴィン「箱に入る必要は無い、これを着ていきなさい」

ユミル「調査兵団の」

エルヴィン「君もだいぶ義足に慣れてきて歩行がスムーズになってきた、それにカバーもつけてわかりにくい」

エルヴィン「それに、普段からこのドアを多く出入りをしている訳ではないんだし」

エルヴィン「極稀の外出くらいだったら、もう平気だろう」

ユミル「……でも」


エルヴィン「不安だったら私の傍に居ればいい、君の一人くらいだったら守ってあげられる」

エルヴィン「いざとなったら、私を盾にしてくれても構わない」

ユミル「もしそうしたら、私は兵長や分隊長に殺されちまう」

エルヴィン「君に何かがあっても、私はヒストリア嬢に目の敵にされるんだが」

ユミル「ははっ、目に浮かぶな」

エルヴィン「もしも」

ユミル「?」

エルヴィン「何かあったら、出来る限りその場に居てくれ……私が出来る限り助けるから」

ユミル「あぁ」



エルヴィン「ほら、ユミル」スッ

ユミル「!」

エルヴィン「手を」

ユミル「――あぁ、頼む」ギュッ


【レイス邸】


アニ「お待ちしていました」

ユミル「アニ」

エルヴィン「あぁ、今回も宜しく頼むよ。部屋はいつも通りの部屋でいいのかい」

アニ「はい、荷物をお持ちします」

エルヴィン「大丈夫さ、内輪だけでの話なんだから気楽にしてくれていい」

アニ「そう言う訳には」

ユミル「アニ、エルヴィンがそう言っているんだからいいじゃねぇか。それよりも早く中に入ろうぜ」

アニ「……わかったよ」

エルヴィン「ありがとうな、ユミル」

ユミル「なんてことないさ」


――ツキッ……ツキッ


ヒストリア「ユミル!」タタッ…

ユミル「ヒストリア」

ヒストリア「本当に久しぶり、会いたかったわ!」ギュウッ

ユミル「私もだ」ギュウ

ヒストリア「ちゃんとご飯食べてる?栄養とか偏っているとか、運動不足で体調が悪かったりとか」

ユミル「大丈夫だよヒストリア、私の心配なんかでその綺麗な顔を曇らせさせないでくれ」

ヒストリア「心配もするわよ、だって一時会えていなかったもの。それとも、ユミルは会えなくても平気なの?」

ユミル「そんな事は言っていないだろ、私だって会いたかった」

ヒストリア「ふふ、嬉しい」

ユミル「私もだ」



エルヴィン「――水を差すようで悪いが」

ヒストリア「あら、エルヴィン様」


エルヴィン「ユミル、挨拶だけでもさせてくれないか」

ユミル「あ、あぁ」

エルヴィン「久しぶりだね、ヒストリア嬢」

ヒストリア「えぇ、お久しぶりです。あぁ、そう言えば」

エルヴィン「なんだい」

ヒストリア「ドレスのデザイン画が出来たので、よければ後で一緒にみてください」

エルヴィン「あぁ、わかりました」

ユミル「……っ」

――ツキッ



エルヴィン「ユミル、どうかしたかい?」

ユミル「いや、なんでもない」


エルヴィン「そうか」

ユミル「あぁ」

エルヴィン「ではヒストリア嬢、エスコートさせて貰ってもよろしいですか?」

ヒストリア「えぇ」

エルヴィン「では失礼する」ギュッ


――ツキッ……ズキッ

ズキンッ


ヒストリア「あ、ユミルは私の隣ね。ユミルにもデザイン画を見て欲しいから」

ユミル「あ――あぁ」

ヒストリア「……ユミル?」


――ズキッズキッ

ユミル(胸が痛い、引き千切られそうなくらいに)


ユミル「なぁヒストリア、トイレは何処だ?」

ヒストリア「それだったらアニが案内して…」

ユミル「それくらい一人でも大丈夫さ」

ヒストリア「だったらそこのドアを出て左手、行ったらわかると思うわ」

ユミル「そっか」チラッ

エルヴィン「?」

ユミル「ありがとな、行ってくるわ」スッ


――ガチャ、ばたん

ユミル「…………」



ユミル(ヒストリアとエルヴィンの並ぶ姿を見た時、何故か心が引きちぎられそうだった)

ユミル(そして心臓が、まだ……針で刺した様な痛みを)


――ズキンッ……ズキィ

こんばんは。
投下に遭遇できてうれしいです。支援。


ユミル(この煩わしい痛みを、胸を掻きむしって取り去ってしまいたい)

ユミル(あばらの骨と骨の間に綺麗に指を添えて、思い切り左右に切り開けたらどんなに気持ちいい事だろう)



それはきっと、痒い所に手が届いた時の心地よさの様で

体を切り開いた時の爽快感は、まるで厚着を取り払った時の様であって欲しいと――切望してしまう



ユミル(そして引き裂いた胸の中から、つっかえていたモノが零れ落ちて)

ユミル(私はようやく何で心を痛めていたのかを知れるのだろう)



ユミル(そう、知りたくない。今はまだ)


ヒストリア嬢、と呼ぶエルヴィン

エルヴィン様、と婚約者を立てるヒストリア



わからない、わからない

ただ、一つだけ理解できた事は

あいつら二人の姿を、見る機会を減らしたいと言う事

そしておそらく



――調査兵団に入りたい

そう言っていた、過去の願いも……おそらくは二人の姿を見たくなかったからだ



ただその為に、命を危険にさらす事にするとは

なんて自分は愚かなのだろう



そして、何故



――ユミル、手を



あの、大きな掌で私を支えた

私の名前を呼んだ、あいつの顔の方が

ヒストリアよりも先に、浮かんでくるのか



ユミル(何故、なんて。それは嘘だ、ここまで考えればなんで傷ついたかなんて馬鹿でもわかる)



例え気付いていたとしても、ここから先は見ないようにしよう

自覚した途端に、失恋だなんて

こちらの我儘で、ヒストリアを危険にさらすなんて……出来るはずがない


あぁ、そうか

愛する人は、エルヴィンで

大切な人は、ヒストリアなんだ



だから私は二人とは離れたくて、でも帰るべき場所でいて欲しくて



なんて、我儘な願い

なんて、自己中心的な想い

相も変わらず、私はなんて心が醜いんだ



嫌だ、見たくない

私はヒストリアの目標を邪魔したくもないし、足手纏いになんてなりたくはない




――ズキンッ、ズキッ!



相も変わらずに心臓は痛みを伴い続けている

どうしよう

このままでは、エルヴィンの執務室に戻って生活をする事すら出来ない

どうしよう

自覚なんてしたくなかったのに



この場から私の存在が煙の様に消えてなくなればいいのに、そうしたら…




「ユミル」


体に浸透する音程が、鼓膜へと届いた



この約半年間で聞き慣れた声

年相応に擦れて低い、落ち着いた

本来ならばとても安心できるであろう声、けれども体はびくりと震える



その震えを隠すように、咄嗟に後ろを振り向いた

きっちりと整えられた髪が、まるで性格の誠実さを表しているようで

アイスブルーの瞳が、一見冷たく見えるのに奥には温かい火が灯っている



己の気持ちに気付いてみると、その姿はあまりにも魅力的だった

おかしい

なんで私はこんなにも好きだと言うのに、彼の部屋で暮らせていたんだろう


ユミル「――エルヴィン」

エルヴィン「ヒストリア嬢が遅いと心配していた……何があった」

ユミル「何がだよ」

エルヴィン「泣き出しそうになっているのではないか」

ユミル「はっ――んな訳ねぇだろ」

エルヴィン「さぁ、それはどうかな。君は案外懐深く、優しくて寂しがり屋だ」

ユミル「……っ!」

エルヴィン「君の支えになりたいんだ。さぁユミル、手を」



ユミル(やめてくれ、もう……そんなに穏やかに手を差し伸べるのは)

ユミル(エルヴィン、お前は政界に行くんだろ!ヒストリアも王政に深くかかわりたいと言っていた)

ユミル(そんなお前達二人の間に、私の想いは邪魔なんだ――邪魔なんだよ!)

ユミル(だからそんなに簡単に手を差し伸べないでくれ、私はこの、私の邪魔な想いを……!)

ユミル(消し去ってしまいたいのに!!)



――ばしっ!


エルヴィン「!」

ユミル「ぁ」



ユミル(私は今、何をした)

ユミル(善意で差し伸べられた手を、叩き落とし…)



エルヴィン「ゆ、みる」



ユミル(そんな驚いた顔をしないでくれ、私が悪かった)

ユミル(でも、こんな行動を起こしたら理由を聞かれてしまうよな……いや、それは駄目だ。絶対に駄目だ)

ユミル(いらないのは私の気持ちの方だから、この気持ちを消してしまわないと)

ユミル(だから――ごめん、エルヴィン。今は素直に謝る事が出来ない)






エルヴィン「ユミル、いったいどうし…」





ユミル「……っ!五月蠅い、私だってたまには一人になりたい事もある!邪魔するな!どこかに行ってくれ!」





ユミル「ぁ……っ!」

エルヴィン「…………」


ユミル「こ、これは違う。その」

エルヴィン「そうか。わかった、君もたまに外に出れたんだものな」



エルヴィン「ヒストリア嬢に個室があるか聞いてくるから、ここで待っていなさい」



ユミル(違う!違う違う、そんなんじゃない)

ユミル(謝れ、すぐに謝れ!理由が言えなくても、きっとエルヴィンは許してくれる)

ユミル(ほら、足音が遠ざかってしまっているじゃないか!まだ声を出せば届く。ほら、早く!)



ユミル「そんなの無理だ、だって」



――ぱたん




ユミル「私は可愛げのある女じゃ……ねぇんだもんな」ポロポロ


ユミル(駄目だ、これじゃ――泣いてしまっている所を見られたら、余計に心配させてしまう)

ユミル(どこか、どこか一人になれるところ……)タタッ…



――どんっ

ユミル「わ」ズキッ

「あ」

ユミル(――っ、しまった。流石に急な衝突に耐えられるくらいに義足には慣れていない)

「ご、ごめんなさい」

ユミル「す、すまねぇな……悪かった」

「いえ、こちらこそ」

ユミル「あんた、女中さんか?良ければ少し風に当たりたくて……静かな所を教えて欲しいんだ」

「それならご案内します」

ユミル「いや、案内はいらないさ――少し体を動かしたい気分なんだ」


………………


…………


……



ヒストリア「ユミル、ユミルどこにいるの!返事をして!」

ライナー「おい、何処にいるんだ!」

アニ「返事をしろって!」

ベルトルト「ユミル!」

ジャン「おい!仕事を増やすなよ、出て来いって!」

エルヴィン「ユミル、返事をしなさい。何処にいる!」










何ヶ月も続いた、安全な生活で失念していたのかもしれない

私は

不覚にも、あっさりと――誘拐されたのだ


>>481 来ました

>>511 こちらこそ大変嬉しいです





以下、私信
某スレッドの>>1様、閲覧されていた皆様へ


ごめんなさいごめんなさいごめんなさい
もう百回書いても二百回書いても足りないかもしれないくらいに謝罪いたします

ただ一回目の誤爆後にすぐウィンドウを閉じたのに、何故二回目があったのかが心底不明ですがそう言う物なでしょうか

何はともあれ当方の駄文の所為でにぎやかな空気を壊してしまい大変申し訳ありませんでした
そちらの方へ謝罪を書き込むと迷惑と思い、こちらの方にて書かせて頂きます

完結後に改めて謝罪致します、申し訳ありませんでした


更新します

レスの返信を一時止め、返信は必要と判断したところのみに致します
終盤になるにつれて遅筆になり、大変申し訳ありませんでした


………………


…………


……



目を覚ます、目を開いても閉じても視界は暗闇のまま

何かがおかしいと思いつつも、状況を確認しないまま軽く身じろぎしたら両脇に硬い物が触れる

これはなんだろうか、壁のような――いや、壁の様な頑丈さは無い

ただ、それにグルリと囲まれている事だけは理解できた

身じろぎした際に音でも漏れたのだろう、私の動きに反応して“外”から声が聞こえてくる



???「あ、目が覚めたみたいだな」

???「開けようよ、こっちも向こうの状態も見えないしぃ」



その声の後

私の収まっている空間がガタガタと揺れ、仰向けに寝転んでいた私の目の前が急に開けた

開くと同時に光が目に飛び込んでくる


そのあまりの眩しさに、反射的に瞳を閉じた

だがいつまでも視界を閉じている訳にはいかない、瞳を二、三度瞬かせなんとか目を開けようと努力してみる

その甲斐あってか、なんとか目の前の光景が読み取れるようになった



どうやら私は、大きめの木箱の中に収められていたらしい

なんだかここ最近この様な箱に納められる縁が増えた気がする、増えたところでどうしようもない縁だが



混乱しそうな頭を軽く手で支えつつ、薄く開けた瞳で周りの状況を確認すると

自分の方に向けられている、見慣れた刃物を確認することが出来た



立体起動装置の超硬質ブレードだ

それが自分に向けられている物も含め、目につく限り4本確認できる



だが、刃を向けている当事者達は

至って飄々とした面持ちのまま“私”の方への状況を観察している様に見えた


???「あっ眩しかったか」

???「謝る必要はないんじゃない、どうせ殺すかもだしぃ」

???「まだ殺す、とは決まっていないっしょ」



ユミル「お前等……誰、だ?」



???「あぁ俺等を知っている訳ないよねぇ、俺たちは調査兵団の――まぁ、下っ端だもんな」

???「入団したての新兵だもんなぁ」

ユミル「私は……誘拐、されたのか」

兵士1「だな」

兵士2「一応は、そうだなぁ」

ユミル「私の素性を、知っての犯行……か?」

兵士1「あぁ」

兵士2「そうだよぉ」


そうか、と頷きつつ

早々に危害を加えられる事はないと思える雰囲気を察してから、ユミルは思案を巡らせる



こいつ等は私の素性を知っていると言っていた

だが全てを知っていると勘違いをして襤褸を出さないよう、次の言葉を放つ前に自分の心を戒める


こいつ等の言う素性とは、どの素性だろうか

不本意ながらも先の大戦でのキーマンになっていた事か、それとも元巨人化能力者と言う事か

それとも……



緊張から、軽めの深呼吸を行い

ここ最近あった物の中で、比較的簡単な秘密を口に乗せてみる


ユミル「それは――私がエルヴィン・スミスの世話になっている者と言うを、知っていると言う事か?」

兵士1「うん、まぁそう」

兵士2「当たりぃ」



ユミル(一つ目から幸先よく当たったらしい、だが――これ以降の情報はあまり口にしない方がいいかもな)

ユミル(変に言葉を紡いで、犯罪者側に情報を流す事もない)



ユミル(こいつ等が知っている私の素性と言う物が、これだけとは限らないのだし)

ユミル(知られると不味い物は、私とヒストリアの仲についてと言う事)

ユミル(そして……先の大戦で市民には公開される事の無かった細かい情報と言う所か)

ユミル(ここだけは悟られていないと信じて、口にしないよう努めるしかない)



ユミル(一番最善の行動は、ここから先一切口を開かない事かもしれないな)


ユミル(……と。思いたいところだが、そうもいかないか)



ユミル(気にかかるのは――私が連れさらわれたのが、レイス邸の敷地内だと言う事)

ユミル(もしもこいつ等が、私とヒストリア。そしてエルヴィンとヒストリアとの関係を知っているとなると)

ユミル(少し分が悪いかもしれない、相手の目的や情報量くらいは確認したいところだ)



ユミル(だが私の状態も分が悪い)

ユミル(大きめの木箱に、義手に慣れていない状態のまま座り込んでいるからすぐに立ち上がれないし)

ユミル(蓋はあけて貰えたのは幸いだが。こちらが上半身を置きあげた直後から、ブレードを突き付けられていて)

ユミル(とてもじゃないが、すぐに何かしら行動を起こせる様な体制じゃない)



ユミル(取り敢えず)

ユミル(平和ボケした脳味噌がすぐに動くよう、周りは常に見張っていくつもりでいなくては)


兵士1「でもあんた。あんまり、驚いている様な顔はしていないよな」

兵士2「だよなぁ、お前凄い奴なんだなぁ」

ユミル「……一応、山あり谷あり訳ありな人生を送ってきたもんでね」

兵士1「聞いてみたい気もする」

兵士2「うんうん、ちょっと暇だから聞いてみたいなぁ」

ユミル「別に雑談として話を聞かせるのは構わない。だがその前に、お前らがこの状況を教えてくれたらな」



兵士1「別にいいよ。今あんたが入っている木箱は兵団内でよく使う重火器を入れる木箱で…」

ユミル「そこは知っているし見ればわかる。聞きたいのは、私の今の現状じゃなく――私を取り巻く状況だ」



兵士2「えぇっとあんたは戦争が終わった直後から、エルヴィン・スミスに囲われている愛人さんで…」

ユミル「だから、違う!私の知っている情報ではなくて、私の知らない情報を言え」



兵士1「へぇ、そんな情報が欲しかったのか」

兵士2「ならそう言えばよかったのにぃ」


ユミル「……なんだろうな、こいつ等の殴りたくなる感じ。あぁ、あと私は囲われてはいないから」

兵士1「えぇ、そうなの」

兵士2「面白くなぁい」

ユミル「何を期待していたんだ」

兵士1「だって俺達は新兵になりたてだから」

兵士2「猥談には興味津津のお年頃だしぃ」

ユミル「ついでに語尾を伸ばしても可愛げのないお年頃だと言う事も自覚しろ――まぁいい、さっさと話せ」

兵士1「あぁ、うん……ちょっと待ってね」

兵士2「何処から話せるか、ちょっと考えてみるからぁ」

ユミル「そこの犯罪者の片割れ、いい加減イライラするから語尾伸ばすの止めろ」

兵士2「別にぃ、いいじゃん。こんな事で怒るなんてカルシウムが足りてないんじゃなぁい?」



ユミル(本っ当にイライラする喋り方してるなこいつ)


ユミル「――っ。まぁいい、私を攫ってどうするつもりだ」

兵士1「へぇ、誘拐されたってのに随分と冷静」

ユミル「誘拐なんてされても、一応は驚きもしない身の上なの物でね」

兵士2「喋り方でイラッときたのに、感傷的にもならないのかぁ」

兵士1「つまらないよな」

兵士2「なぁ」

ユミル「こう言う状況じゃなければ、しばき倒してはいるだろうよ」

兵士1「まぁ別にいいけどね、今暴れたりしないんだったらおっけおっけ。とりあえず大人しくしておいてくれ」

兵士2「俺達は見張る事が仕事だからぁ」

ユミル「誘拐犯の癖に随分と気の抜けた対応だな」

兵士1「対応も何も」

兵士2「俺たちは言われた通りにしているだけぇ」

ユミル「言われた通り?」

兵士1「そう」


兵士2「俺達、貴族様に雇われている人間だもの」

兵士1「俺達が調査兵団に入ったこと事態が」

兵士2「貴族様の要望だったしぃ」

ユミル「……つまり、貴族に買収された兵士?」

兵士1「違うよ」

兵士2「そうそう、違うよぉ」

ユミル「じゃあ、代々の使用人とか」

兵士1「ううん、俺ら孤児」

兵士2「俺らは何十人いるうちの、指の一つぅ」

ユミル「――ゆび?」

兵士1「貴族様が頭、貴族様の家系が体」

兵士2「そこに使用人の手足が付いていてぇ、僕達はその末端。物を実際に触れたり掴んだり、体を支える指」

兵士1「ちなみに爪でも可」

兵士2「でも指の方がなんか響きが良くて好きぃ」

ユミル「…………」


兵士1「訓練兵団に入団する直前に引き取られたんだ、兵団に居たレイス家の人が活躍し始めたからって」

兵士2「今の時代は兵団内部から、自分達の家に協力する人物が必要な時代だって悟ったんだってぇ」

ユミル(ヒストリアの事、か)



兵士1「だから貴族様、成績のいい兵士が欲しいって」

兵士2「下町でかっぱらいやっていた俺らの力が欲しいってぇ」

兵士1「必要だよって言いながら、そう言いながらもぐちょぐちょに」

兵士2「びちゃびちゃにぃ」

兵士1「自尊心砕いて」

兵士2「言う事聞かせる様にしてぇ」

兵士1「あっと言う間に……自分の言う事を聞いてくれる兵士の一丁あがりぃ」

兵士2「ねぇねぇ、同情してくれた?もししてくれたらぁ、言う事聞いてねぇ」



ユミル「――勝手にお前等がほざいた事だろ、私はそんな事情をそう素直に聞かない様にしているんだ」


兵士1「おぅ」

兵士2「まいがーっとぅ」

ユミル「別にそれは分けて言わなくていいだろ」

兵士1「んー…だって僕達の中では、散々練習してきた会話だし」

兵士2「同期には使い古した奴だけれどねぇ」

ユミル「そんなネタ繰り返し使われたら、三回で飽きるわ」

兵士1「あぁ、確かに顔面にパンチぶち込まれていたっけ」

兵士2「いい思い出ぇ」

ユミル「……なんかお前等の会話聞いていると頭が痛くなってきた、こんなのが貴族お抱えの兵士って」

兵士1「あはは」

兵士2「貴族様と似たような事言っているぅ」



ユミル(まさかと思うが、調査兵団の上司に対してもこんな物言いで過ごしているんじゃないだろうな)


ユミル「なぁ、所でさ」



兵士1「ん」

兵士2「なぁにぃ?」

ユミル「まさかと思うが――今の訓練兵って、全員がそんな感じじゃないだろうな」

兵士1「そんな感じ」

兵士2「ってぇ?」

ユミル「お前等みたいに危機感もなく、背負っている責任もなく。そんな風にふわふわしている感じって事だ」

兵士1「ううん」

兵士2「俺達が特殊でぇ、けっこう浮いていたぁ」

ユミル「……なんか安心した」


兵士1「でも俺が、第三席で」

兵士2「俺が第四席ぃ」



ユミル「急に居た堪れなくなった、こんな間抜けな口調の奴らがかよ――この国の未来が心底心配だ」

兵士1「心配しなくても大丈夫大丈夫」

兵士2「戦争が終わったんだから、きっといい未来があるさぁ」

ユミル「畜生……こんなにも呑気な奴らにこそ、絶望を味あわせてみたかったぜ」



ユミル(とは言っても、こいつ等個性はあるんだよな。自分の事を指と言いながらも――まぁイラッとくる個性だが)

ユミル(昔、ベルトルさんもよく言っていたよな“自分の意思がない”って)

ユミル(意思がないってのは、性格や長所が無個性と言う意味じゃない)

ユミル(ベルトルさんなんて、でかいし、ヘタレだし、空気だし、潜在性だけはある……そんな個性の塊だ)

ユミル(そんな奴を無個性だと言うのなら、この世のほとんどは無個性になっちまう)


ユミル(意思がない……か。これはあくまで独自の解釈だが)

ユミル(重要な場面での決断力、それこそが人の“意思”であると定義づけてもいいと思う)



ユミル(人の意思を奪われると言う事は、決断をする場面で多方面からの拘束力で干渉される事)

ユミル(執拗に自分の意思を潰され、行動させられる事が“意思を奪われる”と言う事だ)



ユミル(完全に意思を持たない人なんて、この世界にはいない)

ユミル(誰だって生きていく上で必要な程度の選択は出来る)



ユミル(だが、もしもそんな人が居るとしたら。それは、何か弱みを握られ)

ユミル(生きていく事や、生活をしていく事すらも義務と思ってしまう程に)

ユミル(悲しいくらいに重要な場面では決定権が奪われ尽くされる――そんな習性が付いた者の事だろうな)



ユミル(あの……三人の戦士の様に)


ユミル「……なぁ、ところで。ちなみにこれは個人的な質問なんだが」

兵士1「ん?」

兵士2「なんだ?」

ユミル「お前等、双子かなんかか」

兵士1「いいや」

兵士2「違うよぉ」

ユミル「あぁ、そうなんだ」

兵士1「そうそう、俺達は三つ子」

兵士2「なのさぁ」

ユミル「――増えるのか」

兵士1「そうなの、増えちゃうの」

兵士2「さぁ」

ユミル「いやいや、最後の一文字くらいは分けて言う必要はねぇだろ」

兵士1「つい癖で」

兵士2「癖って不思議だよなぁ」


ユミル「あぁ、もう……心底どうでもいい話題だ」

兵士1「そっちから話題を振ってきたんだろ」

兵士2「ねぇ」

ユミル「どうでもいい話題ついでに、興味本位で聞いてみるが――ちなみに、三つ子が揃ったら口調はどうなるんだ」

兵士1「あいつは無口だから」

兵士2「現状維持ぃ」

ユミル「……まぁ、別にどうでもいい話題だからどうでもいいんだけれど」

兵士1「だな」

兵士2「だよなぁ」



ユミル「なんだかお前等との会話の仕方がわからなくなってきちまった」

兵士1「えぇ」

兵士2「それは心外だなぁ」


ユミル「状況を整理しよう、私は誘拐された」

兵士1「そうそう」

ユミル「ブレードも突きつけられて、身の危険も感じている」

兵士2「あってるあってる」

ユミル「私は情報が欲しい」

兵士1「まぁ、そうだろうね」

ユミル「だからお前等を抱え込んでいる黒幕について話せやこら」

兵士2「えぇ?そうなっちゃう?」

ユミル「なるなる……って微妙に移りそうだな、この変な口調」

兵士達「…………」



兵士1「ねぇ、どうするぅ」

兵士2「何処から話すぅ」

兵士1「えー、でも話す必要があぁるのぉ?」

兵士2「そっかそっかぁ、話さなくてもいいんだぁ」


ユミル「…………」



兵士1「でもさぁ、暇だしぃ」

兵士2「ちょぉっとくらい、話してもいいのかなぁ」

兵士1「えぇー…じゃあ、お前が話す所決めてよぉ」

兵士2「もぉ、そんな事言ってぇ」



ユミル「移りそうだと言った途端に、語尾を伸ばしまくって生き生きと会話してるんじゃねぇよ」

兵士1「あ、うふふ・・・バレちゃったぁ」

ユミル「しかも伸ばすだけじゃ飽き足らず、変なオネエみたいな話し方になっているぞ」

兵士1「だって、暇だったんだなぁ」

兵士2「なぁ」

兵士1「なぁ」

兵士2「なぁ」

ユミル「だから、その変な暇つぶしはやめろっての」


兵士1「でもさぁ、本当にどうする?」

兵士2「話しちゃう?」

兵士1「まっいっか、口止めはされていないしな」

兵士2「なぁ」

ユミル「ちなみにこの現在位置とかも教えてくれるとありがたいんだが」

兵士1「それは駄目」

兵士2「俺達の一番の目標は仕事の完遂だしぃ、逃走されたら面倒だしねぇ」

ユミル「じゃあ何を教えてくれるんだよ」

兵士1「……ぁ」

兵士2「……ごめんねぇ、ちょっと考えさせて」

ユミル「お前等ゆとり過ぎるだろ」


すみません、仕事に行くギリギリの時間になったのでここまで
明日か明後日当たりに残りの更新分を投下します


更新します
何故こうも決意した時に限って……の法則が発動する不思議


ユミル「仕方がねぇな。じゃあ、それ居場所以外の質問をこちらから聞こう。答えるかはそちらの自由でいい」

兵士1「おぉ」

兵士2「やったやった、そっちの方がいい」

ユミル「じゃあまず――これから私はどうなるんだ?」

兵士1「引き渡し」

兵士2「…………」

ユミル「おい、そっちのお前は何も言わないのか。そしてえらく簡潔だな」

兵士1「だってそれだけだしな」

兵士2「続ける言葉が無いもんなぁ」



ユミル「会話が途切れたので質問を続けるぞ?」

兵士1「いいよ」

兵士2「おっけおっけぇ」


ユミル「じゃあ、引き渡された後の展開を――お前達は知っているか?」

兵士1「知らないな」

兵士2「なぁ」

ユミル「……おい、また質問が途切れちまったぞ」

兵士1「しょうがないもんね」

兵士2「本当に知らないんだもんねぇ」

兵士1「質問の仕方が悪いんだもんな」

兵士2「センスが悪いだもんなぁ、仕方ない仕方ない」

ユミル「おい」

兵士1「わぁ怒ったぁ」

兵士2「怒らないでぇ、知らないのはホントホントぉ」



ユミル「本当に、何も知らないでこんな事を?」


兵士1「だって俺達はただの指だもん」

兵士2「もしくは爪だもん」

兵士1「考えるだけ無駄だしな」

兵士2「なぁ」

ユミル「えらく達観しているが、何だよそれ。そんな人生、虚しくはないのかよ」

兵士1「人生、どうしようもない物はつきものだしな」

兵士2「そうそう、俺達知っているもんなぁ」

兵士1「それに、どうせ俺達の上で物事は動いて行くものだし」

兵士2「なぁ」



ユミル「――その、上ってのはなんだ」

兵士1「そりゃあ、俺達の上全部の事だよ」

兵士2「そうそう、俺達を支配している全てのモノだよなぁ」


ユミル「貴族、もしくはそれを取り巻く周辺って事か」

兵士1「そうそう」

ユミル「えらく簡単にそこの辺りは口にしたな」

兵士1「まぁこればっかりは、引き取りに来る人をみたら分かる事だしぃ」

兵士2「言っても構わない事だもんねぇ」

ユミル「…………」

兵士1「なに、急に黙っちゃって」

兵士2「面白味に欠けたぁ?ごめんね、もっと面白くするから…」



ユミル「何の目的で、そいつは私に目を付けたんだ?」



兵士2「わぉ、言葉を被せられちゃったなぁ」

ユミル「んな事どうでもいいから、さっさと答えろ」

兵士1「うーん、目を付けたって言うか」

兵士2「目的の近くに、お姉さんが現れたっていうかぁ」


ユミル「目的の近くに、現れた――て事は」



兵士1「うんうん、その通り」

兵士2「僕達は、エルヴィン団長の近くに居るのが役目でぇ」

兵士1「実は執務室の前の警備も俺達の担当だったりするのでしたぁ」

兵士2「まぁ其処も、貴族様の根回しだったりするんだけれどねぇ」

ユミル「つまり、私は巻き込まれたんだな」

兵士1「じゃないの?」

兵士2「貴族様の考えている事なんて、俺ら分かんないしぃ」

兵士1「こんな人見つけたぁって言ったら」

兵士2「じゃあ捕まえてみって言われただけだしぃ」

ユミル「…………」

兵士1「あはは、ちょっと理不尽すぎて黙っちゃった?」

兵士2「ごめんねぇ、でもそこは笑い飛ばすポイント…」


ユミル「私には、貴族の友人がいる」



兵士1「なに、権力を盾にしての命乞いとか?」

兵士2「俺達そう言うの嫌いなんだけどぉ」

ユミル「違う、命乞いとかじゃない」

兵士1「だったら」

兵士2「いいけどぉ」

ユミル「私の友人は、貴族だけれど気がいい奴だ。身分などではなくて一人一人の人間性を見て接してくれる」

兵士1「…………」

兵士2「だからぁ、なんだって言うのぉ?」

ユミル「もし、お前等が今の状況を抜け出したいと思うのなら。私と一緒に、レイス邸に来ないか?」

兵士1「へぇ」

兵士2「…………」


兵士1「どうしよ。逃げるんじゃなくて、引き抜きに掛かってきたよ」ヒソヒソ

兵士2「予想外ぃ」ヒソヒソ



ユミル「おい、声が漏れているからワザとらしくひそひそ話をするな」

兵士1「!」

兵士2「…………」

ユミル「あ、すまん。今のは本気でひそひそ話していたのか」

兵士1「謝ってくれるんだったら」

兵士2「許すけど」



兵士1「けれどさぁ。実際問題、俺達があんたに連れられて戻ったところで逮捕されるだけでしょ」

兵士2「それは嫌だなぁ」


ユミル「そんな事はしない、約束する」

兵士1「んな事言って、どうせ辛い目に…」

ユミル「確かに辛い目には合うかもな」

兵士2「あぁ、やっぱり?何をするの、拷問、人質?それとも…」

ユミル「二重スパイ」

兵士1「はぁ」

兵士2「えぇ?」

ユミル「それをやってくれるんだったら、お前等が解放されるよう私も頼み込んでやる」

兵士1「つまりそれって」

兵士2「貴族様の部下の振りして、あんた達に情報を流すって事かぁ」

ユミル「……どうだ?」



兵士1「…………」

兵士2「…………」


兵士1「わぁ」

兵士2「びっくらこいたぁ」



ユミル「そこは“おーまいがっとぅ”じゃないのかよ」

兵士1「飽きるって言われたので」

兵士2「サービスしてみたよぉ」

ユミル「そうか」

兵士1「うん、そう」

兵士2「サービスサービスぅ」

ユミル「サービスなのかよ」

兵士1「うん、サービス」

兵士2「サービスしちゃうくらいには、嬉しい提案だったからぁ」



兵士1「でも」

兵士2「ごめんねぇ」


ユミル「…………」

兵士1「いきなりそんな話提示されても」

兵士2「俺達、今以外の生活なんて知らないし実感もわかないんだぁ」

ユミル「そうか」



ユミル(エルヴィンがいつか言っていたよな)


――『罪、と言うと。今年、訓練兵を卒業して入団した面々も気になっている』

――『彼等はまだ、なにも殺していない。なのに兵団に所属しているからと言う理由で、責任は負わせたくはない』


ユミル(責任、か。こいつ等が貴族に利用された責任も、私達にあるのかな)

ユミル(だからだろうか。傷つけたくない、なんて同情をしてしまうのは)


ユミル(ヒストリアと同じ様に貴族に利用され、ライナー達と同じように未来を決められたこいつ等を)

ユミル(こいつ等の運命を歪めた一端が、こちらにもあるのなら正したいとは思う)



ユミル(だが)

ユミル(同情はここまでだ。私は帰る、そして足手纏いにはならない。こいつ等を欺いて、傷つけてでも必ず)

ユミル(あいつ等の元に、戻る努力をする)

ユミル(待っていてくれよエルヴィン、ヒストリア)



………………


…………


……



中途半端な場所からの開始でしたが、前回の更新分はここまででした
でももう少し出来ているので、今日中に確認が終わり次第投下します


更新します
修正しながらなので投下スピードは遅そうです


エルヴィン「本当にすまない、ヒストリア」

ヒストリア「そんな、顔を上げて下さいエルヴィン様」オロオロ

エルヴィン「いや、私が悪い。敷地内だからと油断して目を離して、申し開きをする余地もない」

ヒストリア「で、でも」

アニ「いい加減にしな団長さん」

エルヴィン「!」

アニ「ヒストリアだってユミルがいなくなって不安なんだ、なのにあんたが自責の念を押し付けてどうする」

エルヴィン「…………」

アニ「一人だけ楽になりたいのなら、結婚なんてやめちまいな」

エルヴィン「――そうだな、すまなかったね二人とも」

ヒストリア「そ、そんな」

アニ「ふんっ」


エルヴィン(だが、本当にユミルは何処に――彼女が自主的に、一人で外を出歩く可能性は殆ど無い)



エルヴィン(ユミルは聡い女性だ、直前の様子を見るに虫の居所は悪そうではあったが)

エルヴィン(だからと言って周りの事も考えず、何も言わず街に出る様な人物ではないし)

エルヴィン(ましてやこの場には、彼女が寵愛するヒストリア嬢がいる)

エルヴィン(理由もなく彼女に対し、不安を煽る行動を行う可能性は無いに等しいだろう)

エルヴィン(となると、考えたくはないが……)



――コンコン

ライナー「失礼します」

エルヴィン「あぁ、どうだった。この屋敷内に立ち寄れた人物の確認は」

ライナー「ビンゴでした、屋敷内に居ると確認出来ているのは短時間だったので確認がしやすかったです」

エルヴィン「苦労を掛けるな」

ライナー「礼ならジャンに言ってください」

ライナー「この屋敷内の関係者のタイムスケジュールを、常に把握してくれているのはあいつですから」


エルヴィン「それで、ビンゴとは」

ライナー「ユミルと団長殿がいた場所に立ち寄れる人物は一人だけ、更に彼女はその後外部の者と接触してます」

ヒストリア「一人だけ、なのね」

ライナー「あぁ、身柄は既に確保をしていて質問を開始している」

アニ「ならそいつが白状する様に追いつめるのが一番か」

ライナー「だが、一人だけアリバイが無いからと言っても。もし万が一、こちらが間違えていたら…」

アニ「あんた、まさかそのセリフをあの二人の前で言った?」

ライナー「うっ」

アニ「だから一人で戻ってきたのか、まぁ連絡ってのもあっただろうけれど」ハァ

ヒストリア「え、それって――どう言う」

アニ「つまりこいつは、時間が無いのに迷って。被疑者に情けを掛けるような事を言ったって事さ」

アニ「被疑者は一人しかいないし、踏ん切りをつけるべき場面だってのに」

ライナー「アニ、その言い方は流石に…」

アニ「間違いでも?」

ライナー「――っ」


アニ「ま、こんな優柔不断男だから。ベルトルトかジャンにでも席を外せって言われたんだろ」

エルヴィン「その二人は?」

ライナー「ジャンが交渉と言うか、尋問をしている。ベルトルトは……何か、思う所があったらしくてな」



ヒストリア「…………」ハァ

エルヴィン「ヒストリア嬢、どうかしたか」

ヒストリア「もどかしい」

エルヴィン「何がだい」

ヒストリア「今、この時間に何もできない自分が」

アニ「ヒストリア、何もできない事なんてないさ。あんたはユミルが戻ってくるのを待っておけばいい」



エルヴィン「――私が乗ってきた馬車に、万が一の時の為に用意していた立体起動装置がある」


ヒストリア「え?」

エルヴィン「君に使って貰おうかヒストリア、立体起動装置の感覚は覚えているだろう?」

ヒストリア「はい」

エルヴィン「アニ、すまないがヒストリアの準備を手伝ってくれ」

アニ「構わないよ、だが」

エルヴィン「?」

アニ「いいのかい、私とライナーがいる空間に立体起動装置なんて持ち込んで」

ライナー「…………」

アニ「もし、私達が逃げ出そうとしたら」

エルヴィン「そうだな。確かに、ブレードは付けて渡す事は出来ない」

アニ「だろうね」

エルヴィン「だが装置分くらいは、私は君達の事を信頼している」

アニ「!」

ライナー「団長――あ、ありがとうございます!」


エルヴィン「ただし、置いていける立体起動装置は一つだけだ」

ライナー「はい」

アニ(私とライナー、ベルトルトの三人で立体起動装置一つ分か。信頼の大きさも妥当って感じだね)

アニ(もっとも、ライナーは信頼して貰えたことに喜んで気付いてないようだけれど)



エルヴィン「そして」

エルヴィン「万が一の時には兵団は動かしにくい、立体起動装置はヒストリア嬢に使って貰うが」

エルヴィン「君達も、馬を連れて外に出て貰うかもしれない」

アニ「!」

エルヴィン「だから馬の準備だけは、しておいてくれ」



アニ(馬鹿だな、私は。こんな時に立体起動装置一つ分の信頼しかないだなんて、捻くれて)

アニ(少し考えてみればわかるじゃないか、そんなに立体起動装置を持ち歩いている訳じゃないって)

アニ(――状況判断のできる、懐の深い男だねエルヴィン・スミス)

アニ(あんたにならヒストリアを任せられるって、ユミルが結婚を許したのもわかる気がするよ)


ライナー「ありがとうございます!」

エルヴィン「いや……こちらこそ、迷惑を掛けてすまない」

ライナー「は?」

エルヴィン「所用があるので、少し席を外す。失礼する」



――ぱたん

ライナー「おい、アニ。今のはどう言う意味だ、何故団長が謝る」

アニ「さぁね」

ライナー「どちらかと言えば、こちらの敷地内での不祥事だぞ」

アニ「はぁ……別にいいじゃないか、さっさと準備しな」

ライナー「お、おい!」



アニ(ついさっき自責の念を押し付けるなって咎めたばかりだってのに。団長、あんた何を気を病んでいるんだい)

アニ(一緒に暮らしているから、ユミルの事は全て自分の責任――とでも思っているのか?)


………………


…………


……



女中「……っ、ぅ」

ジャン「吐かないな」

ベルトルト「そうだね」



ジャン「ライナーは誤認で犯人扱いするのはどうかと言っていたが――実際、これだけ何も喋らないってのはおかしい」

ベルトルト「自分が拷問される様な状況になったら、誰でも知っている情報でも喋りそうなもんだけれどね」

ジャン「あぁ、そうだ。怪しい、だが」

ベルトルト「…………」

ジャン「嫌疑が掛かっている状況ってだけで、一応は調査兵団の役職についている俺が手を出すと」

ジャン「もし万が一の際には不利になっちまう」

ベルトルト「だよね、ここ辺りが許容範囲のギリギリアウトくらいかな」

ジャン「だから、その」


ベルトルト「仕方ないよ。それに、僕だったら死人だし罪に問われる事もない」

ベルトルト「万が一存在がばれたとしても、公開処刑でお終いだろうし」

ジャン「――すまないが、その時は見捨てさせて貰う」

ベルトルト「いいよ別に、無くして当然だった命だ」

ベルトルト「それに僕だって必要とされるかもと思って自主的に残っていたんだし」

ジャン「…………」

ベルトルト「少々手を汚す事くらいで恩が返せるんだったら、喜んで返させてもらうよ」

ジャン「お前は芯が強いな」

ベルトルト「どうだろ。強いとか弱いとかって言われたら、どちらかと言うと弱いと思うよ」

ジャン「でも、ライナーは…」

ベルトルト「ライナーの事は悪く言わないでくれる」

ジャン「悪かった」

ベルトルト「ううん、まぁ本人に言わないのなら別にいいか。ごめんね彼ってば繊細で」

ジャン「いや、俺も軽薄だった」


ジャン「じゃあ、俺はもうこの部屋に入れないから。少し出ておく」

ベルトルト「何か解ったらすぐに伝えるよ」

ジャン「すまない」



――がしゃっ

ベルトルト「……さて」

女中「!!」

ベルトルト「拷問を始めようか、誘拐魔さん」

女中「ぎ、ぎ――やあああ!!」

ベルトルト「僕ね、結構怖がりなんだ。だからさ」

ベルトルト「されたら嫌な事、そして拷問される状況を自覚しちゃうと嫌なタイミング……わかっちゃうんだよね」

女中「!!」


………………


…………


……



ジャン「…………」

アニ「ジャンじゃないか」

ジャン「ヒストリア、アニ」

ヒストリア「お疲れ様」

ジャン「どうしたんだよ、そんなところで」

ヒストリア「エルヴィン様をお見送りした帰り」

ジャン「帰られたのか」

ヒストリア「一応、すぐに戻ってこられる予定だけれど。そっちは?」

ジャン「今ベルトルトが本格的な尋問を開始した」

ヒストリア「――そう、上手くいくといいね」



ジャン「…………」


アニ「どうした」

ジャン「!」

アニ「何か言いたげだね」

ジャン「いや、別に」

アニ「大方あんたのことだ。ライナーやベルトルト、そして私の事でも考えていたんじゃない?」

ジャン「!」

アニ「当たりだね」

ジャン「俺、そんなに顔に出やすいか?」

ヒストリア「読めなくても、ジャンは優しいから考えている事くらいは推測できるよ」

ジャン「ヒストリアまで」

アニ「まったく、己を責めたてる様な物言いまで上司に似る必要は無いってのに」

ジャン「それ、どう言う…」



アニ「取り敢えず言っておくけれど。あんたが自分を責めたてる必要なんてないよ」

ジャン「!」


アニ「ベルトルトにはライナーがいるし、ライナーにはベルトルトがいる」

アニ「ついでに私もいるし、辛い時はお互いを支えて行ける。更には周りの環境にも恵まれているんだ、気を病む必要が何処にある」

ジャン「でも」

アニ「隠密で行う拷問の一つで何をそんなに気負われても困るんだよ。普段からもっと汚い事で私達を使えばいい、適所適材だ」

ジャン「流石に、悪いだろ」

アニ「確かに辛い部分はあるだろうね」

ジャン「…………」

アニ「けれど、頼りにされない方が辛い」

ジャン「!」



アニ「二人とも同じくらいに優しい。拷問を行うなんて、おそらくどっちもきついだろうけど」

アニ「でも、優しさの方向性が少し違ってね」

ヒストリア「?」


アニ「ライナーは優しすぎるが故に、己の体にブレーキを掛けて心を責めたててしまうけれど」

アニ「ベルトルトは優しすぎるが故に、己の心を殺して体を動かすんだよ」

ヒストリア「なんか、わかるかも」

アニ「そして、どちらも意思を尊重し合っているからかな」

アニ「ライナーが辛い時はベルトルトが、そしてベルトルトが辛い時はライナーがその行動を行っている」

アニ「ほら、訓練兵団の時はライナーが矢面に立っていたし。故郷に向かう時はベルトルトが率先して動いていただろ?」

ジャン「確かに」

アニ「ホントの意味でお互いを支え合っているんだろうね、お互いの分担を何も言わずともきちんと担っているんだ」

ジャン「…………」



アニ「だから、今回はライナーも適役じゃなかったけれど」

アニ「ベルトルトだって完全に適役と言う訳じゃない事、ジャン理解してくれていると思う」

ジャン「あぁ」

アニ「それだけで十分さ、あとは私達がきちんとやっていくから」


アニ「まぁ本当に適役なのは私の様に、自分の心を他人事のように見れる奴なんだろうけれど」

アニ「あいつ等は私を置いて、さっさと汚い仕事をやろうとするからね。まったく、傷つくよ」

ヒストリア「ふふ、アニってば愛されているんだね」

アニ「――うっさい」



アニ「あぁ、もう。話がまた脱線しちゃったじゃないか……まぁつまり、何が言いたいかって言うと」

アニ「私達を上手く使いなって事だ。ジャン、あんたにはそれが出来ると信じている」

ジャン「!」

アニ「そしてこれは、ジャンだけじゃなくヒストリアにも言える事だからね」

ヒストリア「えっわ、私も?」

アニ「あぁそうだ、お願い事ばっかりで悪けれど言うよ」

アニ「私達には遠慮しないで欲しい、気を遣うな、頼って欲しい、信頼して欲しい、仲間だって認めて欲しい」

アニ「でも私達だって人間だからな、確かに心の中にはある程度の限界がある。それでも」

アニ「限界を少し超えるくらい、なんとも思わないくらいの大きな恩があるんだ」

アニ「――頼むから、お願いだから。私達を頼って欲しい」


ヒストリア「言われなくても、頼っているよ」

アニ「!」

ジャン「だな、もうお前がいないとこの別邸は回って行かないし」

ヒストリア「ごめんねアニ、言葉が足りていなかったかもしれないけれど……改めて言わせてくれる?」

アニ「なに」



ヒストリア「お願いアニ、ユミルを助ける為に力を貸して欲しい」



アニ「…………」

ヒストリア「アニ?」

アニ「はぁ、しょうがないね――頼まれたよ」

ジャン「照れてんのか……って、ぶっ!?」



アニ「あんたはついでに、デリカシーって奴も学んできな」

ジャン「ちょっアニ、待った!冗談――痛ってぇえ!!」


………………


…………


……



ベルトルト(僕には返さなければならない恩がある。ヒストリアの、ユミルの……そして団長への恩)

ベルトルト(それを思うと、他人に対して非常に徹する事くらいは特に大きい事でもない)

ベルトルト(僕達を見つけて、そして居場所を与えてくれて。人間らしい生活を与えてくれた)

ベルトルト(だから僕は兵士でも戦士でもなく、一人の人間として。返せる恩は返して行きたい――だから)



ベルトルト「…………」

女中「――うぅ」

ベルトルト(表情を見るに、そろそろかな)



ベルトルト「さてと、そろそろ休憩は終わった?」

女中「!」

ベルトルト「じゃあ続きを始めようか、さぁ元の位置に戻って」

女中「……っ」

ベルトルト「なに、まだ大した拷問はしていないはずだよ。まだまだこれから酷くなる」


女中「も、もう許して」

ベルトルト「さて、君も温かい場所で思いっきり体を休められただろうし。今度はさっきより長く行こうか」

女中「い、嫌」

ベルトルト「じゃあ全部を話して、そうすればさっきと同じ場所でゆっくりと体を休められる」

ベルトルト「さっきの様に温かいお茶と、少しばかりの食べ物じゃない。今度は体も拭けるし温かい食事も出る」

女中「――ぅ」

ベルトルト「思い出してみて。まだ逆さ吊りで蝋燭を灯されたり、爪先に針を刺されたりしたいなら話は別だけれど」

女中「……で…す」

ベルトルト「話してくれたら、また毛布にくるまって足をお湯につけられる。そしてまた拷問されると怯える事も…」

女中「休みたいです!お願い、もう拷問には戻りたくない!」

ベルトルト「喋るのは別に構わないけれど、休みながら話すのは無理だよ?」

女中「!?」

ベルトルト「全部必要な事をしゃべり切るまでが拷問なんだから、話すにしても拷問には戻らないと」

女中「い、嫌!話す、話すから――とにかく全部話すから、針を打つのはやめ…」


ベルトルト(僕が行った尋問は、簡単に言えば随分と稚拙な物だろう)

ベルトルト(まずは尋問を「拷問」と言う単語に変えて恐怖心を煽る、そして実際に体を痛めつける)

ベルトルト(逆さ吊りにしたり、足の上に蝋燭立てを置いたり、手足の詰めの間に針を突き立てたりしてだ)

ベルトルト(ただ、僕達が兵士になる際の訓練もそうだけれど。痛みと言う物は覚悟しやすい……それでも辛いけれど)

ベルトルト(けれども。僕はこの女中の彼女が、少々の痛みでは吐かないので仮説を立ててみた)

ベルトルト(彼女は、スパイとして訓練された存在で痛みには耐性があるのではと)



ベルトルト(僕は、尋問の間に休憩を挟んでみる事にした)

ベルトルト(時間が惜しい状況だったけれど、きちんとした休憩の時間を用意する)

ベルトルト(テープや包帯も揃えたけれど。一番手間を欠けたのは温かいお茶と食べ物、そして温かいお湯だ)

ベルトルト(いくら痛みには耐性があると言っても、進んで痛い目にあいたいと思う人はいない)

ベルトルト(心を落ち着かせる時間を確保する事で、心の中に明確な落差が出来て)

ベルトルト(そしてより「拷問」を怖がるようになる、僕の拷問のメカニズムはそう言った感じだ)

ベルトルト(体を痛めつけすぎて、記憶が飛んだり喋れなくなる方が厄介な状況だったしね)


女中「あああああああ!!ぎゃあああ!!め、命令は貴族の、ぎゃああ!!」

ベルトルト「ほら、ちゃんと喋って。さっき君が感じた、気の休まる瞬間が欲しいんでしょ」



ベルトルト(体はあんまり痛めつけていないのに、すっごく痛がっている)

ベルトルト(やっぱり気の緩みって怖いな、僕も気を付けないと)



女中「しゅ、主犯はレイス家の…ぁああ!!」

ベルトルト「!」

女中「わ、私にされた命令は――!」


………………


…………


……



今日はここまで

にしても「しぼりこみ」の漢字変換ってNGワードだったのですね、意外
皆様の温かい感想がエネル源になっています、ありがとうございました


――がたっがたっ

エルヴィン(今、こうして馬車に揺られているだけの時間すら惜しく感じてしまうとは)

エルヴィン(焦りは禁物だ。大丈夫、出来る事は全て手配した)

エルヴィン(私的に動かせられる兵士、情報を手に入れるためのルート、現段階で手に入れられる情報)

エルヴィン(そう、現段階での全ての事をやった……それなのに)

エルヴィン(今の段階では、目的の人物を探し出すだけの情報が無かった。まだ、足りない)



エルヴィン「ユミル、無事でいてくれ」

エルヴィン(声に出したところで、何も解決はしないと言うのに)

エルヴィン(いつからだ。いつから私は、こんなに弱くなった?戦場ではもっと、戦えていたはずだ)





――エルヴィン、お前さ。解決案、わかってるだろ




エルヴィン「…………」



――いや、解決案ではないか。その状況を、手っ取り早く自分の物に出来る手段だな



エルヴィン(そう、わかっているさ。私が優位に立つ方法、私が最も得意だと思える戦術)

エルヴィン(だがしかし。それはこの平和となった世界には必要のない手段であり、禁じ手だ)



――なぁエルヴィン、お前が平和を望む気持ちもわかる

――せっかく、いい世の中になりつつあるんだもんな

――けれど最近のお前さ、潔癖すぎる。作戦が綺麗すぎるんだ



エルヴィン(君は私に、また罪を重ねろと?)


――そうか、お前はもう罪を重ねたくはないんだな

――残念だよエルヴィン
















――その所為で、私は死ぬ事になっちまったじゃねぇか








.


エルヴィン「!」ハッ



エルヴィン(――っ。少し、意識が飛んでいたか)

エルヴィン(なんだ、今の夢は……私の所為で、彼女が死にそうに?)

エルヴィン(妙にリアリティのある夢だったが、まさか)



エルヴィン「いや、大丈夫だ。ただの夢なのだから」



「団長、到着しましたよ」

エルヴィン「あ……あぁ、そこで馬車を止めてくれ」

「はい」



がちゃ!

エルヴィン「すぐに戻るから待っていてくれ」


――こんこん

「はい、今開けます」



がちゃ

「!」

エルヴィン「突然にすまない、人手が足りなくてね……手を貸して欲しいんだ」

「俺達が、ですか」

エルヴィン「あぁ」

「でも、俺達は…」

エルヴィン「兵士ではない、君達の力が欲しいんだ」

「でも」

エルヴィン「頼む、力を貸して欲しい」

「緊急、みたいですね」

エルヴィン「あぁ、そうだ」

「わかりました――すぐに用意します」


………………


…………


……



ベルトルト「で?」

女中「――っ」

ベルトルト「…………」



ベルトルト(さっきからこの調子だ)

ベルトルト(貴族が関与していた事、その背景は話したと言うのに。当事者の話になると口を噤んでしまう)

ベルトルト(誰かを庇ってる様に見えるけれど)

ベルトルト(どうする、拷問に見切りをつけるか?いや、もう少しだけ続ければ吐くかな)



――コンコン



ベルトルト「はい」

アニ「失礼するよ」


ベルトルト「アニ、どうかしたの」

アニ「どこまで聞き出せたかの確認、あんたは手が離せないだろうから聞きに来た」

ベルトルト「ありがと」ナデッ

アニ「……なんで頭を撫でたんだい」

ベルトルト「なんでだろ、やっぱりこんな事やっていると気疲れするからかな」

アニ「そう言われると蹴り飛ばせないじゃないか」

ベルトルト「アニは優しいね」

アニ「で、どこまで聞き出せた…」

ベルトルト「…………」

アニ「ベルトルト?」

ベルトルト「ねぇ」



ベルトルト「――何を見ているんだい」

女中「!」


ベルトルト「何か、羨ましい事でもあった?」

女中「…………」

ベルトルト「もしかして。誰かを僕達に投影した、とか」

女中「――っ」

ベルトルト「そっか。僕は、誘拐犯は無理だけど。大切な人を守りたいと思う気持ちなら理解できるよ」

アニ「私もだ、誰かを守りたいと言う気持ちがあるのなら是非とも教えて欲しい」

女中「で、でも…」

ベルトルト「話す気になれない?」

女中「…………」

ベルトルト「なら、こう考えればいい」

女中「?」



ベルトルト「君が庇いたい――おそらく実行犯である仲間の名前や特徴を僕達に教えてくれたら」

ベルトルト「その人達は酌量の余地を与えるよう、僕達が願い出てあげよう」

女中「!!」


ベルトルト「でも、話してくれないのなら」

ベルトルト「僕にも守りたくて恩を返したい人が居るからね、拷問は続けさせて貰うよ」

アニ「あんた、脅しすぎじゃない?」

ベルトルト「そうかな」

アニ「そんな長々と言葉を喋る事自体が拷問だよ、私だったらもっと短的な質問と解答を要求する」

ベルトルト「アニ、断っておくけれど直接的な痛みの拷問は駄目だよ」

アニ「手足の先にびっしり針を刺しておいて何を言うんだか」

ベルトルト「……まぁいいや、とにかく僕達には時間が無い」

ベルトルト「だから申し訳ないけれど、今から十秒以内に答えなかったら拷問を再開と言う事にするね」

女中「!」

ベルトルト「でも時間内に話してくれれば、君と君が庇っている実行犯は罪を軽くできる様に努力するよ」

アニ「そんなチャンスを与えられるだなんて運がいいね、まぁ多少の罰はあるけれど」

ベルトルト「さぁ」

アニ「どうする?」


………………


…………


……



かなり短くて申し訳ありません
次の更新は一週間以内に必ず行います

そろそろ来るかな、wktk

同じ作者様と聞いたのでこの場を借りてお尋ねしますが、「ミドルなライナー」の続編投下の予定はありますか?
短編でしたがとても印象に残っている大好きなお話なので、続きが読めたら狂喜乱舞です


すみません
また一覧から消えている様なので更新は明日にします


>>644 嬉しいコメントありがとうございます

ミドルなーの続編の構想はありますが
構想が出来ている小説の数が進撃だけでも半端ないので更新するかは明言出来ません


某スレにて、あなたさまかを下さった方へ

見つけて嬉しくて速攻書き込みをしたのでIDそのままだった事に気付いていませんでした
コメに嬉しいやら恥ずかしいやらで悶え苦しんでおります(80%程が嬉しさ故にです)


……と、思ったらあれ?

えぇっと――更新します


ユミル(よし、状況を整理しよう)



ユミル(私がエルヴィンの手を振り払い一人で立ち尽くしているところに、女中さんと思われる人物が現れた)

ユミル(一人きりになれる場所は無いかと聞いて、その場所へは一人で行くとは言ったものの)

ユミル(やはりレイス家の中を外部の人間が一人で歩くのは都合が悪いからか、案内される事になったんだよな)

ユミル(そして目的の場所についた途端、衝撃が…)



ユミル(…………)



ユミル(あの時に気を失い、運び出されたとしたら――あの女中がこいつ等の言う三つ子のうちの一人か?)

ユミル(いや、可能性は低いが。彼女も同時に巻き込まれていた可能性がある、加害者と断定するのは早い)

ユミル(私を誘拐する様に指示した貴族の目的がエルヴィンだとすると)

ユミル(レイス家にいる女中が内通者と言うのは、少し不可解な部分が出てきてしまうからな)


ユミル(いや……エルヴィンすら、目的の人物を狙う一因でしかないとすれば)

ユミル(例えば、そう)



ユミル(狙われている人物が、ヒストリア・レイスだとすれば)



ユミル(ヒストリアと手を組み政界に進む、エルヴィンの弱みを探すために部下を執務室の近くに配置し)

ユミル(更に女中としてスパイを用意し、周囲を嗅ぎまわっていたって事だとすれば辻褄が合う)



ユミル(とは言え。これはまだ、仮定の話だ)

ユミル(けれど)

ユミル(もしも、本当にこいつ等の真の目的がヒストリアだとしたら――足手纏いなんて、なりたくはない)

ユミル(私の所為で、ヒストリアとエルヴィンの幸せを壊す訳にはいかない)



ユミル(逃げるしかない。探り合いは止めて、隙を見て逃走を図る事だけを今後は考えろ)

ユミル(そして、もしもそれが出来ない場合は…)


ユミル「…………」

兵士1「お姉さん静かだね」

兵士2「どうしたんだろうねぇ」

兵士1「元気ないね、心配だ」

兵士2「心配だなぁ」

ユミル「…………」

兵士1「突っ込みもしてくれないよ」

兵士2「短時間でもわかったけれど、お姉さんどちらかと言うと突っ込み属性だよねぇ」

兵士1「静かだと物足りないよ」

兵士2「ホントホント」

ユミル「――じゃあお望み通り話をしてやろうか」

兵士1「おぉ」

兵士2「待ってましたぁ」



ユミル「お前等は兵士の癖に、団長に楯突く行動を行った事を一体どう思っているんだ」


兵士1「あれ、今度は買収じゃなくて脅し?」

兵士2「それ嫌いって言ったのにぃ」

ユミル「安心しろ、興味本位で聞いているだけだ……それに」

兵士1「それに?」

ユミル「お前等の不平不満を聞いて、私がそちら側に寝返る展開もあり得るとは思わないか?」

兵士2「!」

ユミル「そうすればお前等の負担はぐんと減るぞ」




兵士1「確かに」

兵士2「それは魅力的かもぉ」

兵士1「でも」

兵士2「別に大したことないよぉ?」

ユミル「大した事じゃなくてもいいさ」


ユミル「貴族の命令があるにせよ、奴は反旗を翻してもいいと思える程度の上司でしかなかったんだろ」

兵士1「…………」

ユミル「その部分が、聞きたいだけさ」

兵士2「まぁ、これは僕達の意見じゃなくて。新兵全体に言えると言う物だけれどぉ」



兵士1「僕達の団長のイメージは冷血、そして犠牲を元に貴族に取り入ろうとしているって事」

兵士2「レイス家の女当主の人との縁談が噂された時もさぁ、ばりばり反感あったよねぇ」

兵士1「僕等、例の大戦の時には訓練兵として後ろで後方支援をしていたんだけれどさぁ」

兵士2「酷い物だったよ、色々と自我を壊されている僕達から見てもねぇ」

兵士1「親戚の人とかを何人も介抱した同期もいたし」

兵士2「うんうんあれは可哀想だったぁ、体の殆どを亡くした兄弟の亡骸に縋っていた子もいたっけ」

兵士1「まぁ思い切りの良さが必要だったとはおもうけれどさ」

兵士2「もう少しやり方ってもんがあったんじゃないの?とは思ったぁ」



ユミル「…………」


兵士1「しかもさ、英雄としての声を欲しい儘にして一人だけ政界に進出して行っちゃうんだもんね」

兵士2「後ろの安全な場所で指示をしていただけの人が昇進するなんておかしいって、皆言ってるしぃ」

兵士1「そしてこれは貴族様情報だけれどさ、そんなに上手く立ち回れていないみたい」

兵士2「結局あの人って戦争でしか発揮できない才能の持ち主だったんじゃないのかなって。皆が言ってるしねぇ」

兵士1「自分の息が掛かった兵団にはお金が入るよう、商売人達には色々と吹っかけているらしいし」

兵士2「本当にお金と権力が好きな人なんだなぁって感じぃ」



ユミル「…………」



ユミル(これが、時の流れと言う奴か)

ユミル(戦いを全て経験していない者からしてみれば、エルヴィンの行動はこう見えてしまうんだな)

ユミル(いつだか自分は罪に染まりすぎていると言っていたエルヴィンに、私はこう言った)



――お前は背負いすぎだ、私にだってわかる。それに責任の一端は、こちらにだってあるんだ……と


ユミル(なのにあいつは)



――私が背負っているのは、戦いその物の罪ではないよ

――これは多くの決断を委ねられた者の証しだ。気に病む必要は無い



ユミル(なんて言いやがって)

ユミル(そして……その結果がこれだ)

ユミル(エルヴィン、お前の事だから新兵達にこう思われているのは承知の上だろう――けれど)

ユミル(これは私が何も行動を起こせなかった、その結果でもあるんだ)

ユミル(胸が張り裂けそうなくらいに痛い)



ユミル(違うんだと叫びたい、エルヴィンは兵団に所属する人の為を想い経済基盤を作ろうとしているんだと)

ユミル(戦争で亡くなった人、そして生き残った人の為に身を粉にして働く決意があると言う事を)



ユミル(でも)


――当事者の癖に、この世界に挑んだ英雄を咎人にさせるのは……嫌だ

ユミル(そう言った私に)

――それは人の手によって、どうこう出来るものではない

ユミル(と、お前は返した)



ユミル(あぁ、その言葉通りだよエルヴィン)

ユミル(今私が否定したところで、たった二人にお前の気持ちを説いた所でどうにかなると言う訳じゃない)

ユミル(エルヴィンは大量殺人者の印象を持たされて歴史に名を刻んでしまう、これはもはや決定事項の様な物だ)



――でも嫌なんだ、それだけはわかる



ユミル(私は戸籍が無いから。残すべき記述が不明確なまま、私の存在は忘れられていくのに)

ユミル(エルヴィンだけは後世の人の認識に、魂が囚われたままでいいはずがない)


ツキッ …ツキン

 ズキッ――ズキッ



ユミル(でも、悲しい事に……彼等の言葉の中で、一つだけ賛同できる物があった)













――結局あの人って戦争でしか発揮できない才能の持ち主だったんじゃないのかな





まるで矛盾した考えだ

清く正しい人だったと他人には理解して欲しい癖に、汚れた戦場でこそあいつの価値がはっきりすると考えているなんて


短いですがここまで

難産過ぎる反動か、完結後のおまけ話の方はわりかしスムーズ
筆が進んで欲しいのはこちらだと言うのに……orz

>>1 乙
がんばれ 続き待ってる

了解した。忙しいのに乙です
気長に待ってるよ

報告あるからか安心して待てるわ


8日、時間がとれない
9日、更新しようか、けどやっぱり本誌見てから
10日、読めたので投下、と思ったら別SSの妄想が
11日、今日は疲れたよパトラッシュ

12日、←今ここ

更新が遅くて本当にごめんなさい
今日も元気に自分が駄目人間だと再確認しながら生きてます

二週間以内の約束が守れず、本当に申し訳ありませんでした



私信

>>657-659、>>662-663、>>665-667
皆様コメをありがとうございました、本当に活力になっております


………………


…………


……



どさっ

女中「ぅ」



ベルトルト「この屋敷の中の使用人だったよ、ユミルの情報を流していたのは」

ヒストリア「この人が?」

ジャン「貴族の息が掛っている奴でな。ヒストリア周辺の情報をとにかく流せ、と命令われていたそうだ」

ライナー「貴族、か」

アニ「いったい何処の奴が」



ヒストリア「うん、そこも気になるけれど……それよりも」

ジャン「?」

ヒストリア「二人とも本当にありがとう、こんなに早く情報を引き出してくれて」

ジャン「礼はベルトルトに言ってくれ、汚い仕事を引き受けてくれたんだ」

ベルトルト「お、お礼なんて――仕事だしいらないよ」

ライナー「本当に謙虚な奴だな、お前」


※すみません、一レス前を少し訂正します

どさっ

女中「ぅ」



ベルトルト「この屋敷の中の使用人だったよ、ユミルの情報を流していたのは」

ヒストリア「この人が?」

ジャン「貴族の息が掛っている奴でな。ヒストリア周辺の情報をとにかく流せ、と命令われていたそうだ」

ライナー「貴族、か。いったい何処の奴が」



ヒストリア「うん、そこも気になるけれど……それよりも」

ジャン「?」

ヒストリア「二人とも本当にありがとう、こんなに早く情報を引き出してくれて」

ジャン「礼はベルトルトに言ってくれ、汚い仕事を引き受けてくれたんだ」

ベルトルト「お、お礼なんて――仕事だしいらないよ」

ライナー「本当に謙虚な奴だな、お前」


ベルトルト「そ、そう言えばエルヴィン団長はどうしたの?ここには居ないみたいだけれど」

ヒストリア「少し席を外していられたけれど戻ってこられたみたい、アニが迎えに行ってるからもう来られると…」



コンコン

ヒストリア「噂をすれば、ね。どうぞ」

アニ「失礼します、団長さんが戻られて――ついでに客人を連れてこられたようです」

ジャン「客人?」



エレン「よぉ、お前等久しぶりだな!」

アルミン「えっエレン、口の利き方!団長の目の前でしょ」

エレン「あ、そうだった」

ミカサ「失礼します」


ライナー「なんで、お前達が」

エレン「ふふふ」

アルミン「それは」



エレン「お前達に復讐をするためさ!」

ライナー「そ、そんな!」

ミカサ「覚悟するといい」



アニ「……はいはい、そんないつものじゃれ合いは必要ないから」

ベルトルト「それにアルミン、ついさっき君自身が指摘していたけれど――エルヴィン団長の前でしょ?」

ライナー「あっ。しまった、条件反射でつい乗っかってしまったか」

エレン「皆が落ち込んでいるのなら、こう言うじゃれ合いが必要かと思ったんだけど」

アルミン「結構落ち着いているみたいだね」

ジャン「場合が場合だけにな、落ち着いていなくちゃならねぇだろ。にしても、なんで一般人のお前等が?」


エルヴィン「彼等にも手伝って貰えればと思ってな、私が協力をお願いしたんだ」

エレン「団長に頼まれちゃ、断れないからな」

ジャン「助かる。正直、人手は足りていなかったからな」

ミカサ「兵士を引退して時間が空いているけれど、出来る事があれば是非言ってほしい」

アニ「わかった」

ヒストリア「三人とも来てくれて本当にありがとう、頑張ってユミルを取り戻そうね」



エルヴィン「それについてだが――状況次第では、解決が早く出来る可能性が浮上した」

ジャン「え」

エルヴィン「移動中の馬車の中で聞いたのだが…」

アルミン「団長、それについては僕が」

エルヴィン「わかった」

アルミン「ユミルに付けた義足なんだけど」



アルミン「実は――義足の内側の部分に、信炎弾を仕込んでるんだ」


………………


…………


……



ユミル(って、アルミンが義手を取り付けてくれる時に言っていたよな)

ユミル(アルミンは義足かつ内臓も欠損していてるから付けたって言っていたが)

ユミル(まさか、こんな事で使うとは事になるとは)



ユミル(にしても。まずは外に出るか窓に近寄るかしないと、煙弾を外に打ち上げる事すら出来やしない)

ユミル(火元は部品の一部が火種を作れる石で出来ているって事だったが)

ユミル(なにぶん一度も試した事が無いからな、手間取るだろうし――なんとかして信号を送る状況を整えねぇと)



ユミル(この状況下では、信煙は飛ばそうとしている仕草も)

ユミル(そしてかつ飛んでいる所も見られないってのが、一番いいんだろうが)

ユミル(流石にそれは無理だ。いくらなんでも、こんな監視されている状況ではそんな事は不可能)

ユミル(だが時間が経つと状況が悪くなるばかりだろうし)

ユミル(……めんどくせぇな、本当に。なんで誘拐なんてされちまったんだか)


ユミル(つまり私がやるべき事は、なんとか“一人になる状況”を作り出す事)

ユミル(そして一人きりになる事が出来なくても、少しでも機会があれば“どんなに危険でも信号を送る”事)



ユミル(と、なると。まぁ手っ取り早い所は)



ユミル「おい、お前等」

兵士1「うん」

兵士2「なぁに?」

ユミル「便所に行かせろ」

兵士1「あぁ、生理現象ね」

兵士2「避けては通れない問題かぁ、ねぇ我慢できない?」

ユミル「漏れそうだ、早急に頼む」



兵士1「…………」

兵士2「…………」


兵士1「いきなりだね」

兵士2「だねぇ」

ユミル(今の状況では、義足の中から信煙弾を取り出す事すら出来ない)

ユミル(状況を少しでも変えるよう、働きかけねぇと)



兵士1「でもしょうがない事だよね」

兵士2「よねぇ」

兵士1「でも、目隠しはさせて貰うよ」

兵士2「んでもって、そのままの状態でトイレの前までご案内する事にするよぉ」

ユミル「……仕方ねぇな」

兵士1「じゃ、動かないでね」ギュッ

ユミル「ん」

兵士2「目隠し入りましたぁ」

兵士1「じゃ、足元気をつけてね手を引くから」

兵士2「気を付けて進んでねぇ」


ユミル(用足しとなると、流石に密室にはしてくれる――よな?)

ユミル(それに手と視界も解放される――はず)

ユミル(くそっ不確定な部分が多いな、希望的観測が多すぎだ。そんなにスムーズに進む訳ないってのに)



兵士1「足元、気をつけて」

兵士2「カーブに差し掛かるからぁ」

ユミル「わかった……なぁ、ちなみになんだが」

兵士1「ん?」

兵士2「なにぃ」

ユミル「私の引き渡しはいつになるんだ」

兵士1「それを聞いてどうするの」

ユミル「別に、またトイレに行く必要があるくらい時間が空くのか?」

兵士1「あぁそう言う事」

兵士2「貴族様はぁ、意外とすぐに来られるみたい」

ユミル「そう、か」


ユミル(監視の目が増えるのなら――なおさら、今しかないよな)

ユミル(こちらの武器は炎弾一発だけ。義足も慣れていないし現役の兵士二人もいる、巨人化も出来ない)

ユミル(けれど、なんとかしないと)



ユミル「……っ」



ユミル(呼吸を乱すな、緊張するな。落ち着いて呼吸を戻せ、怪しまれていると感潜る緊張すら今は惜しいんだ)

ユミル(頭をフル回転させて、少しでも出し抜く方法を考えろ。冷静になれ)

ユミル(でなけりゃこちらの命が危ない)



ユミル(出来れば――合図を送る瞬間を見られず、相手が合図を気付かない方法を考えるんだ)


兵士1「ここがトイレ」

ユミル「そっか、じゃあ悪いが入り口で待っていてくれ」



兵士2「その前にぃ」

兵士1「義肢を外して欲しい」

ユミル「義足を……か?」

兵士1「自力で逃げられないようにする為にもね」

兵士2「だねぇ、小さいとはいえ窓もあるしぃ」

ユミル「なるほど。でもな、止め具を外す為にはズボンを脱がなきゃいけないんだが」

兵士1「ズボンを捲るだけで外せないのか」

兵士2「でも流石にこれは譲れないから、なんならここで強引に脱がしてもいいよ?」

ユミル「――わかったよ、仕方がないな。義肢は外そう」



ユミル「だがその為にはズボンを脱がなくちゃならないから、少し外で待っていてくれないか」


兵士1「それは駄目だ、あんたから目を離すのは義肢を外してからだよ」

ユミル「…………」

兵士1「大丈夫大丈夫、トイレの中みたいに下着まで脱ぐ訳じゃないんだし」

兵士2「ここでズボンを脱いで、留め具を外してくれても全然平気ぃ」



ユミル(小さな窓もらしいし、義足をつけたままトイレに入れれば信煙弾をスムーズに撃てる)

ユミル(だが流石に、こいつ等も少し渋っているな)

ユミル(誘拐犯としては正解の行動だな、私が奴らの立場でも渋る)



ユミル「いや、普通は下着を見せるってだけで抵抗すると思うぞ。乙女としてはな」

兵士1「乙女心を持ち出されても困るけれど」

兵士2「立場わかってるのぉ?もうお願いだから早くやってよ、そろそろ貴族様来ちゃうからぁ」

ユミル「っ」

兵士2「なんだったら、そのズボンの一部を切り取ってもいいよぉ。丁度ブレードもあるんだしぃ」


ユミル(さてどうする、もう少し粘るか。それとも信煙弾は諦めて他の方法を考えるか)

ユミル(これ以上粘って、警戒されても困る。なんとかしないと)

ユミル(いや……その警戒される危険性と言うのは、信煙弾一発に相当する不安なのか?)

ユミル(いざって時に行動を起こせなくなると言うのは致命的なミスになる可能性だってある)



ユミル(くそっ、決断力が鈍っている。エルヴィンの事、もう偉そうに説教できねぇ)

ユミル(戦場を離れて選択肢がある生活を送っていると、こうなっちまうのかよ)



ユミル(時間が無い。脱ぐのを戸惑っている振りももう限界だ、これ以上は怪しまれちまう)

ユミル(信煙弾は諦めるしかない)



兵士1「もう仕方が無いなぁ、ほらっ」バサッ

ユミル「!!」


兵士1「それ、腰に巻いて。少し短めの外套でも、腰に巻いていたら下着見えにくいだろうし」

兵士2「わぁ、お兄ちゃんったら紳士的ぃ」パチパチ

兵士1「これが俺に出来る譲歩だよ」

ユミル「……さんきゅ。じゃあ義肢を外す為にズボンを脱ぐから、外すから少しだけ後ろを向くぞ」

兵士2「わかったぁ」



ユミル(助かった――なんとか、死角は作れたか)

ユミル(首の皮一枚で繋がった)

――カチャ カチャ…

ユミル(せっかく死角が出来たんだ、利用しないとな)

ユミル(あいつ等は義肢の取り外し方なんて知らないだろうし、多少の不自然な動きくらいは見逃してくれるだろ)

ユミル(なんとか信煙弾の火薬や火種を抜き取って、それから義肢を渡せれば)



――カチャッ カチッ

ユミル(……手先は器用な方なんだが。流石に死角を作りつつ片足な体制はきつい、!!)


ユミル「あ」グラッ

兵士1「危なっ」ガシッ

ユミル「あぁ、サンキュ」

兵士2「義足を取り外すの、慣れてないんだねぇ」

ユミル「過保護な奴が身近にいてね、義肢を外す時は手伝ってくれていたんだ」

兵士1「へぇ」

ユミル「だが……丁度いい、悪いがそのまま支えていてくれないか?」

兵士1「わかった」

ユミル(良かった、これで両手が使える)



ユミル(無くしそうになってわかった、信煙弾は私の唯一の武器だ。絶対に回収されてはならない)

ユミル(全神経を集中しろ。体の向きや傾き、全部を使って気付かれないように)



ユミル(あぁ、それでも)


ユミル(支えてくれているこの腕が、エルヴィンの腕だったらなんて)

ユミル(こんな時にそんな事を考える自分に、本当に驚かされちまう)



“ユミル、手を”



ユミル(あの声を、もう一度聞きたい。もう一度聞いて、手を差し延ばして貰いたい)



ユミル(本当に、なんで人ってのは無くしそうになって気付いてしまうんだろう)

ユミル(娘でも、結ばれなくても。気持ちを伝えても、伝えなくても。ヒストリアがエルヴィンと結ばれても)

ユミル(あいつの傍に居られたら、それだけで私は幸せになれたはずだ)

ユミル(つまらない嫉妬なんてするもんじゃないな)



ユミル(よし、あと少しだ。あと少しで火薬を回収できる)

ユミル(しくじるなよ。これさえきちんと使えたら、エルヴィンにもヒストリアにもきっと会える)


カチャカチャ…

 カチッ、…スッ



ユミル(怪しまれないように、堂々としていろ)

ユミル(でも指先だけはしっかりと動かして、火薬と火種になる部分だけを何とか袖の中に収めるんだ)

ユミル(よしっ、なんとか袖の中に納められたな――あとは)

ユミル(要領は掴んだし、何かあった時の為に螺子も回収できないかやってみるか)

ユミル(武器になるかも怪しいが、一応は鋭利な金属なんだしな……おっ、掴めたぞ。いいぞ、いける…)



――ひひーん

ユミル「!!」ビクッ!! カチッ

兵士1「あ、貴族様が来たみたいだな」

兵士2「だねぇ」

兵士1「お前行ってくれる?」

兵士2「わかったぁ」スタスタ


ユミル「……っ!や、やっと貴族様のおいでか」

兵士1「みたいだね」



ユミル(驚きから手が震えて、音を立ててしまったけれど。良かった、聞かれていないみたいだな)



ユミル「ほら、義足を外しから受け取れ」

兵士1「ありがと、これは預かっておくよ。悪いけれど、手早く用足しに行って欲しい」

ユミル「わかったよ。けど少しは離れていてくれ、音が聞こえるかと思うと恥ずかしいんだ」

兵士1「ははっ、まぁそれくらいはいいか。義足は預かっているから逃げられないだろうし」



ユミル(笑った?なんだ、前と同じように軽口だけど、少し親密さを感じられるような話し方)

ユミル(話し方が変わったように感じる、前と変わった事と言うと――弟の方が今は近くにいないって事か?)



ユミル(……あぁ、なるほど)


ユミル(こいつ等はさっきまで2対1の多数だったからな)

ユミル(どんなに軽口を叩いている風でも、一定以上に有利だと言う“状況”に守られていた訳だ)



ユミル(2対1から1対1と言う状況の変化だと、どうしても心の中では不安を覚えてしまう)

ユミル(その不安を消し去る手段は様々だ)

ユミル(“相手を屈服させる”だったり“敵意は無いと表現”して衝突を避ける方法もあるが)

ユミル(こいつは“親密に見せる事”で争う事を回避する心算と言う事なんだろう――おそらく、だが)



ユミル(もしそうだとすれば)

ユミル(無意識の内に比較的軽い口調になって、こっちの緊張と自分の不安をほぐそうとしてるのか?)

ユミル(だから少し距離が欲しいと言う、こちらの要望をすぐに聞き入れてくれた――とすれば)



ユミル(つまり、今はこちらの我儘が通りやすい状況って事か)


ユミル「じゃあ離れておいてくれよ。いいか、絶対にだぞ?」

兵士1「あぁ」

ユミル「……にしてもここは随分と薄暗いな、灯りはあの蝋燭だけか」

兵士1「廃屋だからな、光源が少ないのは我慢してほしい」



ユミル「なぁ、すまないが」

兵士1「なんだ」

ユミル「あの蝋燭をもう少し近くに置いてくれないか、衝立の所為で灯りがなかなか入らないんだ」

兵士1「は?」

ユミル「捕虜の分際で文句を言うのも何だが、動きづらい状態になったのに灯りも少ないと心許ないんだよ」

兵士1「…………」

ユミル「初めての場所で片方の足が地面についていないと言うのは、結構不安なんだ――義足、外しているし」



ユミル(どうだ、義足を外した事への罪悪感を少しは感じてくれるか?)


兵士1「ま、そのくらいならいいか……ほら、手に持っておけ」

ユミル「ありがとな」

兵士1「ただし、放火に使おうなんて考えるな。後できちんと蝋燭は確認させて貰うからな」

ユミル「あぁ、わかった」



――ぱたん

ギシッ…



ユミル(さて、まずは外から見える風景の確認だ)



ユミル(建物の側面には小さな川があるな、この現在位置の高さは――3階くらいってところか)

ユミル(この小さい窓からは飛び降りる事は出来ないが、さっきの部屋の窓からだったら外に飛び出せる)

ユミル(内臓の損害があるから少し危ないだろうが、何とか軽症で収まる可能性の方が高いだろ。割のいい賭けと思っておくか)


ごめんなさい
本当はもっと投下できる予定でしたが、中途半端な所で切り上げます

最新話に触発されて書いた短編も投下したいので
次の更新は一週間以内に行いたいです(希望的観測含む)


ようやく纏まった時間が取れました
即興で書く部分もあるかもしれませんが、とにかく書けるところまで書いて投下します


ユミル(問題は飛び降りたその後だ)

ユミル(動けなくなるだろうし、相手に余裕があればすぐに身柄を抑えられるだろう)



ユミル(信煙弾を打ち上げた後に飛び降りる、そして騒ぎを察知して駆けつけた誰かに奴等より早く接触する)

ユミル(手順としてはそれが一番オーソドックスだろうな)



ユミル(さて、問題の信煙弾だが。信煙弾を“打ち上げる為の部品”は流石に大きすぎて回収できていない)

ユミル(それが手元にあれば、すぐにでもそこの窓の隙間から打ち上げるんだが……なかなか上手くいかないな)

ユミル(代わりに手元にあるのは蝋燭、火薬、火種を作るための道具、やや小さめの螺子が一本のみ)

ユミル(蝋燭は分解すると蝋、芯、蝋燭立てになるが)



ユミル(――今、この場で火薬を点火したらどうなるのだろう)


ユミル(信煙弾内部にある火薬だし、爆発はしないで煙だけ上がる可能性もあるのだろうか)

ユミル(それとも、勢い良く飛び散るタイプか)



ユミル(火傷覚悟で今この蝋燭の中に火薬を放り込んでみてもいいが)

ユミル(逃げ切れない状況になる事も覚悟しなければならないし、下手したら失明の可能性だってある)

ユミル(それにただ助けを待つだけって状況も癪に障るから、率先して行いたい行動ではない)

ユミル(……今咄嗟に出来る行動となると、それくらいか)



ユミル(では、今ここで火薬を放り込むより良い手段や状況と言うのはどんな物だ?)



ユミル(リスクになっているのは火傷の危険性があると言う事だから)

ユミル(私が離れている所でこの火薬に点火する事が出来れば、少しは好転すると言う事――だよな)

ユミル(そう、もしもそれが出来れば)



ユミル(信煙弾を上げようとしている場面を見咎められて、制止させられるリスクも回避できる)


ユミル(そうだな、理想とすれば私があの部屋の窓の近くに立っている時に)

ユミル(離れた所に居ても気付く様な大きな合図、もしくは静かに煙を発生させられると言う展開が出来れば)

ユミル(少しは優位な展開になって、逃げきれる事が出来る……か?)



ユミル「…………」



ユミル(これ、上手くいくか?さっきまで思い切り迷って、思い切り思い悩んでいた癖に)

ユミル(いや、他に案が浮かんでこないし。こんな短い時間で他の案が浮かぶとは思えない)

ユミル(わからない事だらけだし、運に縋っているだけの愚策かもしれないが)

ユミル(もう“貴族様”来てしまっている)

ユミル(自分がこの建物から連れ出されるまで、どれくらい時間が残っているかもわからない)



ユミル(早すぎても駄目だし、遅すぎても駄目って事かよ――くそっ)




ゴソゴソ モソモソ

 ――ジャー…



ユミル「待たせたな」

兵士1「思いの外長かったけれど。まさか何かしてた?」

ユミル「そうじゃない、仕方ないだろ。義足無しで、しかも初めて使用する場所だ。手摺りも無かったしな」

兵士1「そう」

ユミル「ほら蝋燭、ちゃんと返したぞ」

兵士1「あぁ、じゃあ元の場所に戻すよ」

ユミル「じゃあついでに窓を少し開けてくれ、換気したい」

兵士1「すぐ出るのに?」

ユミル「乙女としては気になるんだよ、それに窓が空くにしてもほんの僅かだろ」

兵士1「流石にそれは却下させて貰うよ、騒がれて声が漏れたりしても困るし」

ユミル「……そうか」


兵士1「嫌そうだね」

ユミル「そりゃあな」

兵士1「仕方ない、じゃあ代わりこの廊下に続くドアを開けておくよ」

ユミル「はぁ、まぁそれでいいさ」

兵士1「まだ不満そうだよ」

ユミル「現状全てが不満だらけだから仕方ないだろ」

兵士1「…………」



兵士1「じゃあ肩に掴まって、部屋に戻るから」

ユミル「義足はまだ返してくれないのか」

兵士1「うん、悪いとは思うけど」

ユミル「まぁどうせ従うしかないけれどな」

兵士1「その代わりと言っては何だけれど」

ユミル「?」

兵士1「思い切り寄りかかってもいい」


ユミル「…………」

兵士1「…………」



ユミル「いや、取り敢えず遠慮させて貰うわ」

兵士1「そう」

ユミル「でもなんで、急にそんな事を言ってくれたんだ?」

兵士1「不便にさせて悪いなとは思っているから」



ユミル「お前は」

兵士1「ん?」

ユミル「お前らは、もしもこの事件が明るみに出たら――とか思わないのか?」

兵士1「思うよ」

ユミル「だよな」

兵士1「貴族と言う身分が偉いと言うのはわかる、けれど世間にはもっと偉い人が存在するんだし」

ユミル「じゃあ、何故私の誘いを断った」


兵士1「…………」

ユミル「こんな手段を取っている限り、いつかは都合の悪くなる時も来る」

ユミル「その時には必ず、貴族様とやらは実行犯のお前等を切り捨てに来るんだぞ」

兵士1「そうだね」

ユミル「わかっているなら何故、こちらに手を貸さないかと言う私の要求をのまなかった。貴族様とやらに恩があるのか」

兵士1「確かに一飯の恩はあるよ、兵士にさせてくれた恩もね。でも」

ユミル「でも?」



兵士1「俺達は妹がいてさ、そいつは今シーナの病院に入院しているんだよ」

ユミル「!」

兵士1「学の無い俺にはよくわからいけれど、結構難しい病気らしい。ずっと会えていないし」

ユミル「そうか」

兵士1「うん、それさえなければそっち側についても別にいいんだけれどね」


ユミル「この計画が破綻したら、その妹とやらを探してやろうか」

兵士1「え」

ユミル「貴族様とはいえ、そんな飼い殺しみたいな雇用条件結ぶの嫌いな奴知っているからな」

ユミル「きっとそいつがお前等の事を知ったら、お前等を解放してくれる――かも」

兵士1「仮定形かぁ」

ユミル「あぁ仮定形だ。まぁもしそうなったその場合、お前等も誘拐罪が問われちまうんだろうが」



兵士1「今回の件では、もし俺達が完全に負けても」

ユミル「負けても?」

兵士1「少なくとも団長は、あんたの事は伏せるだろうから。全体的には内々な処理になると思うよ」

ユミル「!」

兵士1「誘拐された被害者の事を伏せるだろうし、自分の懐だけで処理できる事件だったらそうするんじゃないかな」

ユミル「そうだな」

兵士1「だから、まぁ大げさな事にはならないと思うよ。処分も大きいだろうけど、何とかなるんじゃない?」

ユミル「…………」


兵士1「まぁそう言いつつも、今は貴族様側だから逃がすつもりはないけどね」

ユミル「だよな」



兵士1「つい話し込んじゃったな、歩ける?」

ユミル「あぁ、肩に手だけは置かせて貰うが」

兵士1「どうぞどうぞ」



ユミル「…………」ヒョコヒョコ

兵士1「…………」

ユミル「お前達の事は、可哀想だと思っている」ヒョコヒョコ

兵士1「そう?」

ユミル「自覚無いのか」ヒョコヒョコ

兵士1「考えたことも無かったなぁ」


ユミル「訓練兵を卒業したばかりで、こんな事をさせられて。しかも、自我を潰され分不相応な状況におかれるのは」ヒョコヒョコ

兵士1「…………」

ユミル「その、可哀想な事だと思うんだが」ヒョコヒョコ

兵士1「まぁ、考えてみるとそうかも?」

ユミル「上の決定に従うしか無くて罪に手を染める、ってのはさ」ヒョコヒョコ

兵士1「うん」

ユミル「知人にも似た様な境遇の奴等がいたんで、どれだけ苦しいかは大なり小なり理解出来ているつもりだ」ヒョコヒョコ

兵士1「…………」

ユミル「だが、責任は――実行したその人にも、等しく降り注ぐもんだ」ヒョコヒョコ

兵士1「そんな事くらい分かっているけど」

ユミル「私はもう、お前達の事なんて庇う余裕が無いから」ヒョコヒョコ

兵士1「庇ってくれるつもりでいたのか、優しいねぇ」


ユミル「小馬鹿にしたように言うな」ヒョコヒョコ

兵士1「はいはい」

ユミル「最後にもう一度聞くが」ヒョコヒョコ

兵士1「ん?」



ユミル「お前等はこちらに来ないんだよな」

兵士1「うん、そうだよ」

ユミル「そうか」

兵士1「じゃあ部屋に着いた事だし、入ろうか」

ユミル「そうだな」



こんこん

兵士1「失礼します」

「入れ」


兵士1「くれぐれも、失礼の無い様にしておいた方がいいよ」コソコソ

ユミル「あぁ」



ガチャ

兵士1「連れてきました」

ユミル「…………」

「やぁ、初めまして君がエルヴィン・スミスの愛人か」

ユミル(愛人じゃねぇ)

貴族「私の名前はジャック・レイス」

ユミル「!」

貴族「この間爵位を返還してしまったがね、元レイス家の子爵で――ヒストリアの叔父にあたる人物だ」

ユミル「レイス家で爵位を返還した、……っ!」

ユミル(そう言えば、いつだかミカサに貰った新聞で)



――『レイス家の闇か、一部親族が爵位を返還』


ユミル「!!」



ユミル(そして前回ヒストリアに会った時。今取り組んでいる事ややりたい事をを話してくれた、その最中に)

ユミル(貴族を人民を率いるのにふさわしい姿にしたいと、そう言っていた)

ユミル(その為に、レイス家の貴族の一部も正しい姿にしたと)



貴族「その表情から見るに、何か思い当たる所があるようだね」

ユミル(つまり、こいつは――まさか)

貴族「そうだな、私は言わばレイス家内部の反乱分子とでも言う所か」

ユミル「つまり、現当主であるヒストリア・レイスに反感を持っている……と?」

貴族「そうだ」



ユミル「何に対してだ、爵位を剥奪された事か」

貴族「何にとは言い表せられないな、全てがいけ好かないんでね」


………………


…………


……



【回想】



ユミル「で、ヒストリア」

ヒストリア「?」

ユミル「お前の親父さん――いや、ロッド・レイス王とは上手くやれているのか?」

ヒストリア「そうね。王様としてはよくしてくれていると思う、けれど父親としてはどうかと問われると」

ユミル「そうか」

ヒストリア「うん、まだ数回しかあった事が無いし」

ユミル「まぁ王様ってのも大変なもんだろうからな、しかもお前はレイス家の当主でお互いが多忙だろうからな」

ヒストリア「でもね」



ヒストリア「よく手紙をくれるの」

ユミル「へぇ」


ヒストリア「凄く素っ気ない文章なの。元気かって言う一言だけだったり、会議で法案が通ったって言う報告だったり」

ユミル「…………」

ヒストリア「そして私も返事を書こうとするんだけれど」

ユミル「けれど?」

ヒストリア「返事がなかなか書けなくて」

ユミル「そうか」



ヒストリア「父親に、王様にどんな手紙を書けばいいのかって凄く悩んで悩んで」

ヒストリア「もう返事を書くのは止めようかとも思った後にね」

ヒストリア「あぁ、あの人は私に歩み寄ってくれているんだなぁって事にようやく思い当たるの」

ヒストリア「きっとあの人も私と同じくらい、どう声を掛けていいかわからないと思う」



ヒストリア「そう思うと、不思議と瞼の裏に浮かぶのが」

ヒストリア「私達よりずっと年上で、私以上に忙しい王様が」

ヒストリア「うんうん唸りながら、一生懸命手紙に一言書こうとしてくれている姿で」


ヒストリア「そして、革命の時に言ってくれた言葉を思い出すの」



――『私には王としての責任がある、お前はレイス家に生まれた責任がある』

――『私には父親として先に王として道を慣らし、子供に少しでも平和になった世界を継承させる責任があるし』

――『お前には私の子供として、私の築いた世界を更に良い物にする責任がある』

――『その責任を、私達の身勝手で傷つけてしまったお前は背負う覚悟があるのか?』



ヒストリア「エルヴィン様が私を父親と面会させてくれなければ聞けなかった言葉」

ヒストリア「私が女王になると宣言した時、父親として出来る事をしようと思ってくれたあの人の言葉」

ヒストリア「だから私は頑張れるの」



ヒストリア「あの人がロッド・レイス王として」

ヒストリア「ずっと逃げていた王としての責務を、子供である私の為に果たそうとしてくれているその時に」

ヒストリア「私は貴族の代表として、王位継承者として戦い続けていこうと」

ヒストリア「議会の腐敗を取り除いて行こうって、人々の代表である貴族をあるべき姿にしようって思えるのよ」


………………


…………


……



貴族「義兄さんも義兄さんだ。あの男が王になり、あの妾腹の娘がレイス家の当主だと……!」

貴族「俺が、この俺の方がレイス家の当主に相応しい!義兄さんは直系だから仕方ないが、当主の方は俺が!」

貴族「そのはずだったのに、なのになんで!何故この俺が爵位を剥奪されなきゃならない!?」

貴族「あんな貧しい身の上の小娘なんかに、俺が……!」

兵士1「お、落ち着いて下さい!」

兵士2「落ち着いて下さいぃ!」



貴族「っ、だから俺は、復讐をしてやるのさ」

貴族「義兄さんはおそらく、ある程度の法の整備を整えたら小娘に王の座を渡すつもりだろう」

貴族「変革と言う大舞台に、娘をいきなり放り込むのはどうかと思ったに違いない」

貴族「だが」



貴族「そんな事を、させてたまるか」


貴族「あの小娘は貴族を整備すると言う名目で、次の王になった時の立場を着々と固め」

貴族「更に兵団の幹部との政略結婚をして地盤固めをしようとしているが」

貴族「……そうはさせない」ジロッ

ユミル「!!」ビクッ



貴族「女、お前は一緒に来てもらうぞ」

貴族「おいお前等、連れて行」










――どっかーん!!


貴族「!?」

兵士1「な、なんだ」

兵士2「ゆれ、え?地震、それともか……火事ぃ!?」

ユミル(よし、上手くいった!運よくタイミングも良い!)



ユミル「!!」ヒョコッ!!

兵士1「あ!」



ユミル(蝋燭の芯の辺りに、義足のネジを利用して穴をあけ火薬を仕込んだ)

ユミル(そして完全に固まり切っていない蝋で穴を塞いで固定すると、簡易型時限爆弾が完成する)

ユミル(どんな火薬の種類かもわかんなかったし、蝋の解けるスピードもわからなかったから不安だったが)

ユミル(音も、おそらく煙も出て。そして兵士二人の気も少しだが逸らせた、十分な成果だ)

ユミル(後は窓から脱出できれば、よしあと少し……!)


兵士2「片足の癖に意外と早い、ねぇ!」グッ

ユミル「!!」ズッ

兵士2「!!脱げたぁ!?」

ユミル「アウターくらいならくれてやる!」



ユミル(よし、窓に着いた)

ユミル(トイレの窓で確認したがここは3階。内臓の損傷は気になるが、死ななかったら平気っ――!)

ユミル(なんだ、この部屋の高さは……!!下は、坂道になっている所為か5階くらいの高さはあるぞ)

ユミル(しかも川までの距離が、結構開いているし。この高さじゃ、飛び降りると地面に…)タジッ



ぐっ!

ユミル「!」

貴族「手間、掛けさせるな」

ユミル(腕で、首を締められ……バックチョークみてぇにしやがって)


貴族「ほら、こちらに戻るんだ」

ユミル(苦し、でも――窓、外を手放すのは)



貴族「抵抗するのか!?」

ユミル「が、げほっ……うぐっ」

ユミル(窓の淵に、手が触れているのに――!もう、こらえきれな…)



キュィィ…… ガシャァァン!!



貴族「!」

兵士「!!」

「――よぉ」



ジャン「待たせちまったな、ユミル」

ユミル「おせぇ、よ……この馬鹿」


すみません、一旦ここまで
明日の午前中に時間が取れれば更新します

お疲れ様です!期待です(おやすみなさい


>>725-726 ありがとうございます!
またもや終わりが中途半端な所になるかもですが、少し更新します


………………


…………


……



【数十分前】



エルヴィン「煙弾が出るとなると、外の様子を見渡せる所に居た方がいいだろうな」

ジャン「広い場所もそうですが、ある程度隠れやすそうな建物の場所の当たりをつけておかないと」

アルミン「そうだね、風のある所だと煙がすぐに消えちゃうし」

ミカサ「連れ去る手段が馬車だと吐かせてあるのだったら、やはり30キロ以上離れている可能性は低いのでは」

エルヴィン「まぁ妥当な範囲だろうな、そこから更に目撃がされやすそうな場所を削って行こう」

ジャン「貴族が噛んでいるとなると、可能性の高い地域は赤で塗りつぶしていきますね」

アルミン「じゃあ僕は廃屋や犯罪多発地域を緑で塗りつぶしていきます」

エルヴィン「犯罪多発地域は最近憲兵団の巡回が増えていて、確かこの地域は今日巡回される。除外してもいいだろう」

ジャン「なるほど、だったらこっちは商店が推進している復興地域だし。連絡を入れれば絞り込んで貰えそうです」

アルミン「成程、これ以上ここの人では割けないから助かるよ。そう言えばジャン、君は直属の部下とかいるの?」

ジャン「直属の部下って、俺はまだそこまで偉くねぇぞ」

ミカサ「ジャン、頼んでもいいだろうか」

アルミン「頑張れ、未来の分隊長候補」


エレン「よし、じゃあ随分と久しぶりだから体をほぐしておかないとな」

ベルトルト「そうだね」

ライナー「立体起動装置はジャンとエルヴィン団長の二つしかねぇからな――誰が付けるか」

ベルトルト「僕は無理だと思う、いけない事は無いかもだけど」

ライナー「だな。運動で脊髄に負荷が掛かると動けなくなる可能性があるし、お前は馬に乗ってくれ」

アニ「私は行けると思う。ライナーも大丈夫だろうけれど、あんたより私の方が体を動かしやすいだろうし」

ライナー「俺は古傷の場所をつい庇う様な動きをする可能性があるからな、俺よりもアニの方が適任だろ」

ベルトルト「エレンはどうする?」

エレン「は?」

アニ「そう言えばそうだね、あんたも五体満足なんだ。私じゃなくあんたでもいい」

ベルトルト「エレンは、また立体起動装置で空を飛びたいとか思っているんじゃない?もしやりたいのなら…」

エレン「いや、俺よりもアニ方が良いと思う」

アニ「!」

エレン「悔しいが、立体起動は俺よりお前の方が成績が良かったしな」


ベルトルト「えぇっと、じゃあ残りの一つの立体起動装置は…」

ライナー「ジャン」

アニ「ジャンだね」

エレン「ジャンだな。これまた悔しいが、あいつの立体起動装置の技術はすげぇよ」

ベルトルト「うん、じゃあ僕とライナーとエレンは馬での移動で決定」

ライナー「他にやる事ってあったか?」

アニ「無いね、まぁ体をほぐして頭脳担当組の指示にスムーズに従える様にしておくくらいじゃない?」

ベルトルト「じゃあ現場担当組の作戦会議はこれで終わりだね。あ、頭脳担当組のお話も終わったみたい」

ライナー「はは、頭脳明晰かつ優秀な奴らがあれだけ揃っているんだ。地図上の話だけでも大分絞れたんじゃないか?」



エレン「にしても本当に命知らずだよなぁ」

アニ「なにが?」

エレン「この誘拐犯、このメンバーを敵に回そうとするなんて」

ライナー「――確かにな」

アニ「私達はこのメンバーに大なり小なり苦汁を飲まされているからね、尚更そう思っちゃうよ」


ベルトルト「ライナー、アニ。トラウマを思い出させないで、僕結構いろんな事言われたし切り付けられたし」

アニ「ごめん」

ベルトルト「ふふ、まぁ今日から三日三晩くらいトラウマが蘇って眠れなくなるくらいだから別にいいけど」

アニ「だからごめんって!」



ミカサ「エレン、大体の配置と場所が決まっ…」

エレン「おぅ、ミカサ」

ミカサ「なんでベルトルトは遠い目をして、アニにガクガク揺さぶられているの?」

エレン「三日三晩くらいで治るんだったら大丈夫だろ」

ミカサ「そう」

ライナー「俺の親友の扱いが少しドライすぎねぇか」

ミカサ「私達の立場からしてみれば、多少はドライでもいいのでは?」

ライナー「まぁ、確かにそう言われるとその通りなのかもしれないが」

エレン「だろ?」

ライナー「ここで頷いたら自分の首も絞めると言うのに、頷かざるを得ない俺の立場って一体」


ミカサ「貴方はそう言う立ち位置だから」

ライナー「悲しい、でも頷いちゃう」

エレン「どう言う口調なんだよそれは」

ライナー「そう言えばミカサ、お前は前線には出ないのか?」

ミカサ「…………」

ライナー「お前が兵役を引退したのは何が原因だ?見た感じ、体の欠損は見当たらないんだが」

エレン「あのよライナー、それは」

ミカサ「エレン、構わない。私が言おう」



ミカサ「ライナー、私は鼓膜をやられている」

ライナー「!」

ミカサ「ほら」

ライナー「本当だ。髪に隠れていて見えにくかったが、耳に結構な傷の跡が」

ミカサ「それは爆風で飛んできた部品で切った傷だから大した事は無い、けど耳の奥までの治療は今の医学ではなかなか治す事は出来ない」

ライナー「そうか」


ミカサ「だから日常生活は支障が無くても急激な運動は出来ない、立体起動装置等は以ての外」

ライナー「確かにな、平衡感覚に僅かでも欠損があったのなら立体起動装置はやめておいた方がいい」

ミカサ「なので現場では力にあまりなれそうに無い、ので微力ながら頭脳班の方で話をしていた」

エレン「まぁ、その傷は俺を庇って爆風をもろに浴びちまったのが原因なんだ。ミカサには本当に悪い事を…」

ミカサ「エレン、気にしなくてもいい」

エレン「そう言う訳には」



アルミン「あのぉ、お二人さん。もうその話は何百回としてきたからもういいじゃないか」

ミカサ「!」

エレン「!」

アルミン「それよりもほら、今はやるべきことがあるだろ?」

ミカサ「確かにそう、ありがとうアルミン」

エレン「あぁ、修正してくれてありがとな」


――ぱたぱた

ばたんっ



ヒストリア「馬の準備が出来ました、あと簡単な護身具も」

エルヴィン「助かりますヒストリア嬢、しかしこの短い時間でよくぞ」

ヒストリア「皆が頑張ってくれているのに、私だけ何もできないなんて嫌ですから」

アニ「にしてもヒストリア、その恰好」

ヒストリア「一応動きやすく、私だってばれない様にと思って。家にあった服で男装してみたんだけど……変?」

アニ(変と言うか、王子様みたい)

ベルトルト(あれでユミルを救出したら、まんま舞台のお話みたいだよな)

ライナー(ヒストリア凛々し可愛い)

エルヴィン「ふむ。よく似合ってはいるが、その恰好では見目麗しすぎて人目に付きかねないな――ほら」パサッ

ヒストリア「エルヴィン様?」

エルヴィン「兵団の緑の外套を羽織って、上着だけでももう少し質素な物にすればいい。それだけならばすぐに着替え終われるだろう」

ヒストリア「分かりました、すぐに着替えてきます!」


エルヴィン「アニ」

アニ「はい」

エルヴィン「ベルトルト、ライナー」

ライナー「はい」

ベルトルト「……はい」

エルヴィン「アニは場所が地図上での特定が出来次第、円滑に動ける様に周りを見渡せる所で待機して貰うが」

エルヴィン「基本は君達三人でヒストリアを護衛しつつ、動ける様な形を組みなさい」

ベルトルト「!」

エルヴィン「ヒストリア嬢は今後の未来の希望だ、失う訳にはいかない。それは人類にとって大きな損害なのだから」

ライナー「それは、万が一の際にはユミルよりもヒストリアを優先しろと言う事ですか?」

エルヴィン「今はそんな事にはならないでほしいと、願う事しかできない」

ベルトルト「あの」

エルヴィン「なんだい」

ベルトルト「もしも煙弾が上がらなかった場合の対処方はどうなっているんですか?」


エルヴィン「それはジャンにも聞かれたよ」

ベルトルト「はぁ」

エルヴィン「その場合は先程の地図を見て、怪しい所を潰していくしかないのだが。でも」

ライナー「でも?」

エルヴィン「私は煙弾が上がると思う」

ベルトルト「それは――何故?」

エルヴィン「あの子は、やるべき時はやってくれる子だからだ」

エルヴィン「ヒストリア嬢に不利益な事が起こるかもしれないと危惧している時は、特に大きな行動力を発揮してくれる」

ライナー「…………」

エルヴィン「それは先の大戦で理解できている」

ベルトルト「自分の命を削る展開になってでも、ですよね」

エルヴィン「あぁ、だから」

エルヴィン「私達がするべき事とは、彼女が命を掛けているであろうその時に」

エルヴィン「いかに迅速に彼女の傍に駆けつけ、助けられるかと言う部分に掛かってくると思う」

エルヴィン「だからこそ、数少ない立体起動装置は――ジャンとアニ、その二名に託すんだ」


………………


…………


……



ジャン「はは――ったくよ、予想としてはいい線いってたな」

ジャン「まぁ飛び込む窓が違った所為で、少し保護対象からは離れている事だけが惜しいが」



貴族「だ、誰だ貴様は!」

兵士1「ま、まさか」

貴族「知っているのか!?」

兵士2「調査兵団で立体起動の名手と名高い、ジャン・キルシュタイン隊長!?」

ジャン「こんなタイミングで返答に時間を掛けると思っているのか……よ!」ダッ キュイィッ!!

兵士1「くっ――う、うわっ!」ギィィン

ジャン「咄嗟に俺と目標の間に入り込んで防御か、なかなか優秀じゃねぇか」



貴族「ほぉ部屋の中で立体起動とはな……その技術、気に入った!おいキルシュタインとやら、こちらにつかないか?」

ジャン「は?」


貴族「今ならお前の望むままに報酬を…」

がぶっ

貴族「ぎ…」

ユミル「離しやがれ!このボケがぁああ!!」

貴族「この、女ぁああ!!」ガシッ

ジャン「ユミル!」

兵士1「すみませんね、隊長」

兵士2「俺等こっち側の人間なんでぇ、邪魔しまぁす」

ジャン「ちっ!」



ジャン(くそっ、広範囲を見張る為にアニとは離れている。他の奴らは馬だし――俺もこいつ等を早く倒さねぇと)

ジャン(ユミルは内臓をやられているから、長時間の運動は出来ねぇ)

ジャン(ブレードは一応あるが、対人用じゃねぇからな。切り結んで余計な時間を掛けるよりは)


ズキズキ――

ユミル(体が言う事を聞かねぇ、あんなにリハビリしたってのに)

ユミル(訓練兵時代だってあんなに訓練したのに、全然動きがなっていないじゃねぇか)

ユミル(出来る限りなまらないようにしていたはずだったんだがな)

ユミル(くそっ腹の中が痛たくて、まるで力が入らねぇなんて――こんな、一般人に後れを取るなんて)

ユミル「か……ひゅ」

ユミル(呼吸がおかしい――くそっ、意識が飛びそうだ)



ズルッ… ドサッ



貴族「手こずらせやがって」

兵士1「わ!」

兵士2「うそっ」

貴族「?」




ギュィィッッ!!

  ガシャッ!



貴族「なっ!!」



キュィィ… ガシャッ



兵士1「凄い、室内なのにガス全開だった」

兵士2「しかも方向転換とか無理なはずなのに、腕と足の力でワイヤーを手繰り寄せて強引にいっていたよねぇ」

兵士1「手馴れていると言うか、体を鍛えていると言うか」

兵士2「兵士の鏡って感じぃ」


兵士1「しかも一瞬でお姉さん抱えて、窓の外まで出ちゃったし」

兵士2「流石に優秀な兵士の僕達でも、ガスを全開で吹かす立体起動装置には反応しきれなかったね」

兵士1「凄いねジャン・キルシュタイン隊長」

兵士2「マジ惚れそぅ」

兵士1「凄いな」

兵士2「本当にぃ」



貴族「お前等呆けていないでさっさと追え!お前等も兵士なんだから起動装置を持っているはずだろうが!」



兵士1「あ」

兵士2「そうだったぁ」

兵士1「でもまぁ、音はすぐ近くで途切れたから」

兵士2「うん、全力で窓にぶつかったり、腕や足の筋肉を使いすぎたからかなぁ」

兵士1「取り敢えずお姉さんを奪取して、別の部屋に飛び込んで隠れたみたいだよね」

兵士2「うんうん、すぐに追えそぅ」


貴族「あとこれを持っていけ」

兵士1「あ」

兵士2「拳銃だぁ」

貴族「この場は追っ手にもう知られたようだからな、人質を回収したらすぐに撤収する」





………………


…………


……



モブばっかり出ている所で長く停滞していてごめんなさい
次回こそは一週間以内に時間が取れる……はず

そしてエネル源のコメントを書いて下さった方々、本当にありがとうございました
本当に糧になっています


急かさないお言葉ありがとうございます、更新します

少し前に書いたと言っていたSSを、最新号を見てどうしようか心底悩む展開に
……お蔵入りかな、投下したいと言っていたのにすみません


ユミル「かはっ――はぁ、はっ」

ジャン「……ぅ、ぐ」



ユミル「っ。おい、ジャン――無事か?」

ジャン「なんとか、な。くそっ……覚悟していたとは言え、えらく痛てぇ」

ユミル「だよな、っ!」

ジャン「お前こそ、腹は――無事なのか…よ」

ユミル「くっそ痛ぇよ、内臓だぞ……なんとか、喋れるだけ…マシ、だ」

ジャン「立てるか」

ユミル「無茶言う、な。ぐぅっ」



ジャン「そうかよ――仕方、ねぇ」グッ

ユミル「おい、足……血が」

ジャン「部屋の施錠しなくちゃ、なんねぇだろが」ググッ


ユミル「無茶、する――な」

ジャン「お前こそ。無駄な声を出して体力使うんじゃ、ねぇ」

ユミル「あぁ……も、仕方ねぇなぁっ」グッ

ジャン「おい、起き上がるな」

ユミル「助けられてばかりは、性に合わねぇんだよ。くそっ」



ジャン(ユミルの奴、脂汗がひでぇな。本当に腹の中大丈夫なのか?お前、無茶しすぎると本当に死ぬんだぞ)

ジャン(だが、こっちも余裕がねぇ。休んでいろって言ってやりてぇが、無理か)



ユミル(ジャンの奴無理しやがって。私を抱き込んでガラスにぶつかったから、色んな所から血が滲んでいるじゃねぇか)

ユミル(だがあと少しだ、ジャンが気付いたと言う事は他の奴らも気付いているって事)

ユミル(だからきっと応援が――待てよ、増援って)


ユミル「なぁ、ジャン」

ジャン「んだよ」

ユミル「私達は何分くらい隠れていたら、いいんだ」

ジャン「あぁ?それ、今答えなくちゃなんねぇのか?」

ユミル「そして、ここに来るのは……誰だ」

ジャン「残りの連中はレイス邸周辺の奴等と、エルヴィン団長――そしてミカサ達だ」

ユミル(ライナー、ベルトルさん、アニ。それにミカサ、エレン、アルミン……そして、エルヴィン)

ジャン「アニが立体起動装置を付けてはいるが、あいつはヒストリアの護衛が主だからな」

ユミル(ヒストリア、お前も来るのか)

ジャン「連中は馬での移動だし……5分、いや10分って所か」

ユミル「ヒストリアもくんのかよ」

ジャン「愛されてんな」

ユミル「……いや、それは駄目だ」

ジャン「は?」


ユミル「ジャン、お前は一旦立体起動装置で戻れ」

ジャン「おい、それって」

ユミル「んでもってヒストリアにはここに来ないよう伝えろ」

ジャン「つまり――お前を置いていけって、そう言う事か?」

ユミル「あぁ」

ジャン「なんで」

ユミル「あいつらの目的が、ヒストリアの失脚だからだ」

ジャン「…………」

ユミル「ヒストリアだけは、何かあってはいけない。あいつは壁内の治安をもたらせる確かな、唯一の存在だ」

ユミル「だからお前は一人でも戻れ、そしてヒストリアにここには来ないよう伝えろ」

ジャン「その代わりお前が危険を負うってか」

ユミル「悪魔で危険性だけだ、心配には及ばねぇよ」



ユミル「場所はもうわかっているんだ、私も呼吸が戻った。後は反乱分子どもを取り押さえるだけ」

ユミル「それにお前やアルミンも居るんだ、なら何とかなるだろう?」


ジャン「…………」

ユミル「私の事は気にするな、臨機応変に何とかやるさ」

ジャン「お前の言いたい事はわかった、だがな」

ユミル「なんだよ」

ジャン「ヒストリアは、今回の指示が自分の叔父である事は既に知っている」

ユミル「…………」

ジャン「自分の危険は承知で、それでもお前を助けに行きたいと言っている。お前はその気持ちを…」

ユミル「だからなんだってんだ」

ジャン「!!」

ユミル「ヒストリアの気持ちはわかった、嬉しいし感謝するし抱きしめて結婚を申し込みたいくらいに嬉しい」

ジャン「…………」

ユミル「気持ちは嬉しい、でもそれだけなんだ」

ユミル「この現状での感情の強さってのは自分の中の優先順位を上げて、目的意識を高める。それだけでしかない」

ユミル「現状は何も変わらない、お前だってそれは知っているだろ」

ジャン「…………」


ユミル「ヒストリアの気持ちはわかった、だがここで何よりも優先しなければならないのはあいつの気持ちじゃない」

ユミル「優先すべきはヒストリアの命と安全だ」

ユミル「ジャン、私も鬼じゃない。あいつの気持ちを聞くくらいなら何も言わないさ」

ユミル「だが一切、あいつがあいつ自身を蔑ろにする提案は受け付けないでくれ」



ジャン「…………」

ユミル「…………」



ジャン「はぁ。お前ほどヒストリアの気持ちを蔑ろにする奴、見たことがねぇ」

ユミル「相思相愛ゆえの特権って奴さ」

ジャン「どこが相思相愛なんだよ」

ユミル「えぇっと?ほら、根本で繋がっている所……みたいな」

ジャン「言い切る割には随分とあやふやな根拠だな」

ユミル「愛情ってのはそんなもんだろ?あ、すまないお前はまだ独り身だったか」

ジャン「こんな時に茶化すなよ馬鹿」


ユミル「頼めるか?」

ジャン「――わかった、お前の提案が最善だな。俺はこれから立体起動装置であいつ等と合流する」

ユミル「あぁ、そうしてくれ。私は隠れておくよ、見つかる可能性は高いだろうが」

ジャン「すまないな、こんなに腕が痛んでいなきゃお前を抱えて飛べるのに」

ユミル「別にいいさ、こっちこそ助かった」

ジャン「じゃあ、そろそろ行…」



ユミル「ジャン」



ジャン「なんだよ」

ユミル「ついでだエルヴィンに伝言を頼めないか」

ジャン「構わねぇが手短にな」

ユミル「そうだな」



ユミル「“もしも私が人質にされてヒストリアの今後に危うい影を落とすのなら、私ごと奴等を仕留めろ”」


ジャン「ユミル」

ユミル「隊長さんよ、お前も洞察力はある方だしわかっているんだろ?」

ジャン「…………」

ユミル「今のエルヴィンだったら、必ず迷う」

ジャン「そうだな。新兵の命、お前の命」

ユミル「それだけじゃない」

ジャン「え?」

ユミル「今のエルヴィンは――きっと、ヒストリアの叔父を殺す事すら躊躇してしまうだろうさ」

ジャン「流石にそこまでは…」

ユミル「そこまでの事、あると思うぞ。私は」

ジャン「まさか」

ユミル「それくらい深刻なんだよ、あいつの心」



ユミル「あれだけ泥にまみれた作戦ばかり考えてきたんだ、綺麗で誰も傷つかない方針に移行したい気持ちもわかる」

ジャン「…………」


ユミル(自分の指示で、部下の半数以上を失うなんて私だったら耐えられない)

ユミル(だがエルヴィン、お前は耐えて来た。そしてこの平和を掴むための一翼になれた、だから)



ユミル「だが私はお前を責めない、失望しない。人を導くのに資格が無いとは思わない」

ユミル「私の命を、兵士として蔑ろに扱ってくれ。頼む、エルヴィン・スミス団長――と」

ユミル「いいか。絶対に、伝えろよ」



ジャン「あぁ、わかった」

ユミル「頼む」

ジャン「ユミル……死ぬなよ」

ユミル「あぁ」



パシュッ… ギュィィッッ

ガシャッ!


ユミル(私だって死にたくはない。けれど、お前が泥にまみれながらも権力者になり平和な世界の礎になるのなら)

ユミル(私は喜んで、世間を汚す泥の一部にだってなれる)

ユミル(エルヴィン、私の提案をお前は受け入れるか?それとも拒否するか?)



ユミル(傷つきながら、避難を浴びながら。薄暗い陰謀を背負いながら人類に身を捧げる展開と)

ユミル(真っ当な人間に戻り、王政の内部に干渉せずに後悔を背負って生きる展開)

ユミル(どちらの選択の方が、お前は傷つかなくて済むのだろう)



がちゃっ

兵士2「あっ、お姉さんみっけぇ」



ユミル(なぁ、エルヴィン。私がお前に惹かれた理由、なんとなくわかったよ――お前は私に似ているんだ)

ユミル(人を喰らい、人の人生を踏みにじりながらでしか生きていく道は無くて、でも人間として生きたいと願い続ける)



ユミル(そんな哀れな巨人に、お前はとてもよく似ている)


一旦ここまで
途中寝落ちして本当に申し訳ありませんでした

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      .|il,  __  j .j゙ .l  ト,゙',/ j.゙ r;| .レ'゙''‐ニ'''゙r''゙´ .゙l,ヽ,. ,ノ ゙ r''1.jノ
      .|.l,゙l, ゙ー゙.ノノ  / / ゙l ゙l,ヽr',r'l ゙;| .ト、,. /./´゙ヽ;.、 ノ ,゙rッ  .,Y';V
      | l,.゙ヽ--'゙ ,ノ  /  l, ゙'゙,,.l, ,j ゙| l,ヾ,、--、,,,、'_, r''゙ l   / li,;)
      l,. ゙'i,  /  ,rシ-、,ィ) l,゙i,V/゙j゙ /゙,,、、、,_  ゙\!.レ゙  .| Y゙
       ゙l゙i,・ヾi, ,/ィl、・_ノ ,;:: ゙シ'i.l,ノ ./゙    \  ゙Y:   .l /
       | `ラ´゙'''´ ''"'´  .|  |:.r'`V'''" ̄`゙ヽ、 ゙'i,  |.   ' /
       ゙'i,         .j  |./ ∧、, ゙̄ヽ、. \ ゙l. |\ ./
        ゙i,. r、,,,.、,_   / ノメ、 .j |ヾヽ,゙'ー---‐'''''ヾ-、,‐'

         .゙i,ヾ'-'ニワ.  / ./ノ .V j゙ |'i,. ヽ;-‐-、,_::::__ ::..>
        /:::l,〈`   //‐'´ ./.ヽ/ .j.ノ  .:ヾ、;:) ゙'i    `ヽ、
       /::::::::|ヾ‐;<;/__,、r'´ ./ .)='゙  ..::  ,ソ  .(:: _,,r‐''゙⌒`゙ヽ、,
      / l;::::::::::Y゙人゙l;:.    .,/,r'ニ゙   _,、r''´  ..:: ゙ヾ、     ::  ヽ,
     l  /,r:| j‐゙''l; ゙ニー‐'゙ (`l.(_,r‐'''゙´__,, ....:::::   .`ヽ、,....:::::..  ゙l,

     .!. .l゙l゙レ'>‐゙ | ト;゙i,l、ノ,r;;'ニ゙/´゙Y .,r'゙ ̄    .....::::::::::::::::::::::::.゙ヽ、:::    l,
     | 'ー;l.'i,.l゙  ,j 'シ'‐-ヘ;'V゙./  ゙l, ヽ, ......:::            ::::..ヽ,   ゙l
     .|._,rラl,.|  / ,i l,   .ノ , ゙i,   .゙ィ,.レ'                :.゙l,  .|
     / / ゙l l,゙l,/./ .l, l, ././ .゙l,゙l、  /.,ィ´ ,.r''ニ'' ヾ,            .:l, j゙
   .,rl´.'-‐ニ, .,、 L,,,,,゙l, V /   ヽ,゙'´/.|  .l゙/;=iミ;゙'i,. [        .:::::::::::::::Y゙
  .,r',、 「゙´  | .| jヾ、--、ヾl,    /,、 ゙l,.゙l、-';j;ノ::::::゙レ゙lj゙   ........::::::::::::::::::::::::::|

 / ./.| .レ-‐' 'ソ::l,゙l, ./.∧、ヽ、,,/,/,,゙'i,,゙L、‐'゙::/::://     :::::::::::::::::::::::::::::j゙
 レ:'二i .i''゙゙´| .|:::::::)、V.l゙  ゙l,.゙'V /   ゙'i, ゙V゙ /ノ゙ /゙L,___,,,_   : : :: :::::l
..゙T´ .| |  ,.| .|::::::/ ゙'i,゙l,  `i , l,    〉,,.〈/  .ヽ、,,,,,、、-―‐-、ヽ、  ..:: .:/

  ┌─────────────────────────┐
  │        スタンド名―「キング・クリムゾン」          │
  │           本体―?(組織のボス)             . │
  ├───────┬────────┬────────┤
  │  破壊力―A  │.   スピード―A   .│.  射程距離―E .│
  ├───────┼────────┼────────┤
  │.  持続力―E .│ 精密動作性―? │.   成長性―?   .│
  └───────┴────────┴────────┘
  A―超スゴイ B―スゴイ C―人間と同じ D―ニガテ E―超ニガテ

         ,x─‐==、--,-,─‐,-、
       /   `ヽ ∨/\/\i
        {o  o │|│\/\/|
       l  ___   ノ i ト、/\/ヽ!
.        ∧ ー' / / / ∨/\/|
.       {\ー' / /__ j∨/\j
       Yoヽ/ /fo ソ  V〈_,ノ
.       i  ̄  ̄ ´ ̄ |  |/}
        ',        ノ  l  ハ--、
       ∧ }王lヨ   / / ∧ ‘,__

.         ∧     /  / / ∧ i\ }\
.       /  iー一<___/ /  /   / 人
       /   ∨O \_____// ̄   _/ /   \
      ,'  /`し'⌒ヽO__OV´ ̄      __ 丶、
.     i  ∨  |/^\/   乂{ ̄ , '"´    `゙ヽ \
      j__/|  ∧  / \   / .) '"_             ヽ
     /「\ハ /  \/   \/ i ,〃⌒ヽ.           ∧
.    /-|─|ーV__/\   /\廴lj \./}   ,  -‐ "´  }
   /___」___|___ヽ ̄/ヽ__\./   \ //,ノ     ___ /
.   /│ |  |   \{  \ >ー----< ( 、_        i
    │ |__.」 --/  ヽ  /\    /  \` ┬─==ミ     |

   ̄ l ̄l │/    ∨   ヽ /   / /\ / \\___/

  -=ニニニニニ==-
  |XX,-(゚д゚)-、XX|
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    |三三三三ミl

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  \  ──  /X/
   |三三三三ミl
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          |XX,-(゚д゚)-、XX|
          |Xl .⌒  ⌒ lXx|
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    ____/⌒``ヽ ,,ー‐,,   "⌒ヽ____
   |____し'⌒/ⅩⅩⅩⅩⅩ/"⌒し′__|::|

   |____(ⅩⅩⅩⅩⅩ./_______|::|
    |____/⌒ ヽ、ⅩⅩⅩ/______|::|
    |____しイ"i  ゙`   ,,/._______|::|
l二二二二二二 l |二二二二二二二二l__:|
 | |::|   | |::|  し′        | |::|  | |::|
 |_|;;|   |_|;;|            |_|;;|  |_|;;|

        ____
.         /|。 。|×x|
       | l д l |X|
       |φ ̄φ|X|
       ヽ rェュ /三|へ、_
      /^〉ー‐'三//  \
     (_,C>l<><`っ__(
     |X|>l<><>|><|

      |X|,>l<><>|><|
     lXl/二二ヽ>く/|><|
.     |xx〉――`O>/  |><|

      | く\_/ ̄>  |>‐'7
       |/ ヽ   /ヽ  | >く|
      />くヽ__/><> |>く|
.     |く><| l<><l l×|
     |く><| |<><lくヮ |
      |く><|  |<><|└'′

     |<><|   l><>|
     ∧>くl   l>∧<l
    〈__〉>く|   |>〈__〉<|

     |><|    |<><|
.      |><|    .l.<><|
      l>く.|      l><l
     |><|      |>く.|
.     |XX|       |×X|
     匚|イ)      ├'匚|l
    /  |      |ノ  |
   / _,.-''~       |     l
    ̄          \___|

        __
      / ゝ-''``ヽ--、___              ,,r、ィヽ、___

     /   _    ,  .}:::>、        , <....;;;;;;;;;;,,,,,,  `ヽ
    /゚ノ=>  イソ   /  ノ::/ミ)\     /;;: : : : ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::... ゝ、
  . {ミ"__,, -、´__,   {  /´ , ィ=》、 \  /;;;: : : : : :;;;;;;;;;;;;;;;: :,;,;,;,;;;;;;;  ヽ
   /i    :::::::   ノ .{{ Yfミミi .}ヽ、::::ヽ/:::: :==ニニミヾ: : : ::《<. Q >  Y
  /! ヽ、_,,,彡三ニ='"   |::::〉、ニィ  ヽ ヘ: :.ィ、___◎ィ}}ノ: : : :ヾミ ̄::::::::.  .}

 ,'::|、    ::::__;;;;;;,ニ=、__ノヾ彡'''"   ヽ Y、: : : : : :"": : : : : : : : ::::::::::::  {
 i:::| `ヽ-'彡--<ミ ;;;》          } }lヘ: : : : : : : : : : : : : : : : :::::::::  {__
 { .{ヾ、_ハYfミミァ ノ''>'    ._rヽ、      ' .}l {: : : : : : : : : : : : : : : : ::::::::: / |
 {, ヽ ゝ--ヾ=イ,/     /::::_ツ       .}.l ヘ、: : : : : : : : : : : : : ::::::::::::   f |
 .ヘ ヽ :::::::ミ ´´      ゞ''       :::}.|::、{ ヘ: : : : : : : : : :::::::::::::::.ハ リ |

  ヘ ヽ ``ヽ、               ::{:l:::::::}  .|: : : : : : : : :::::::::::::::/ {  /
   ヽヽ    ヽ              |:|  | .ハ: : : : : : : :::::::::::::::ノ .|ハ/

    ',.、ヽ    ヽ   ..........        |:|... , .{::{: : : : : : ::::::::::::::/ .ノ::::|
     ヽヽ`ヽ、____ミ、_;;;;;;;;;;;___      リ:|:::. ,  .{{ Y: : : : :::::::::Y´/:: ::/|
      \Y`ヽ==::::=ニニ==-:、::::ミ、_;;;;;;;彡'ノ::::/.  . .|:::>、<::::::'"´::::::::: { .|
       ヽ、  ::::::::  ``ヾミ、`ヽ、__ イ  イ    ノ:::/r、 ヽ:::::::::::::::::〈ヘ、
        〈`─-:::::__ミミミ、_____,,, -''´,,;;;;;  /ノ:::::::ノ  /:::::::::::::::::::、 \
         `<ヽ、::::   ``ヾ=、、""-==彡;;;;;ノ /./::::::::{  {、:::::/`Y:::::、  `

        ノ l  人r'  ハ ⌒ー‐───vヘ、     )
       ノ ノ ノ _li_r‐' ト、   l__L/   \   / よくも!!
      / _ノ ( /  \ ヘ、ハ、 |/      j/  こんなーッ!
.      / /    ./、 \/  \/|\─く      /    ………
     /ノ / ,./ / \/ \ /`l、 ハ. \    \
    \\/\ /j∨\/ >‐<\l / |\  '.      )   とるにたらない…

    ハ l. /ヽヽ\/./    `V\ /|  }  }   /    小娘のために
.   / i├く  │∨八 。  ゚  !  Ⅵ  j l_/ ̄ ̄ヽ  …………!!
.   / | l  \ l  V \ rェァ リ.f。フ l V_,ノ      /__
  /   ! {__,.  \  V ,ノr。ト-'    ', 〉            / \  _//

      l (     }\\ヽ.´ l  _,.クフ /            ノ\/∨ /
    /\ \ i__L >ー‐> └‐'_ノ             /  ヽ/l /
   /   ヽ ヽ!      | l           ト.、_ / ̄ ̄`ヽ. /
  /7 ̄/ ̄/∧  |      l│             }   \/ / レ'

  /  /_/ヽ__i  {\__ハ、 l l         ノ  レ'´ |ヽ/ヽ/

  // \/j   \ \! l         ‘ー'⌒ヽ l/ ∨/
 / / ̄ ̄/\i l    ',  \\         r‐f^j- | //
   i/  //^ヽ\!    i    ヽ }         >‐' //
 ハ. l/\l〈   |  \_/      \ノ!       ‘ー一'´/\____,._ノ
  /| /ヽ.\ノ  | ノ   ヽ       i         /
    ∨  |    l/ \  /\f   |      __/  この

   /|\j!   __l_/` ̄   ヽ   l       `ヽ ノ ‐┬  ロ ロ      __.  l           l
.   ヽ|  \/  \           `ー'          ) │lヨヨ  _大_ l -‐ァ |__|‐┼‐  ニ|ニ l__|__l  -‐t‐ ‐lァ 、. _∟
     l   |\   \_                    /  .| ,乂__  口 口 レ(__   _|_  (二 |_|_| (二  /|  し / こ
    |/  ヽ. \ __ノ `ヽ            /    ノニ7 ‐-  ┼┐ ─ァ  レl l ニ|ニ ┼、ヾ //
    \   \ 丶、___ノ             ̄ ̄\ /  __/ ,ノ 、l  /\ (_   {__ノ ノ、ノ ・・
      \  ノ ̄ヽ                    j  このわたしに対して………!!
       `ー‐一く ∠二二ニフ´Τ Τ下ト、_  /

        ` ̄ ̄´    \/i__  | r l (f┴‐、   ̄ ̄¨゙フ7\
            __ __⊂\l ノー‐し'´二二::::::::::::;.  ' /

                                 z‐ ,、―,、ァ‐-  、
                               /〈 〉〈 〉〈 〉〈 〉 ∧
                          ∧/V_V∧V∧V∧ノ}─- 、
                          │/ '⌒ヽ`マ¨¨「 〉〈 〉 {\  i\
                          | |    } }  {V∧∨/|  }  |  ー─── 、
                         r─‐ ┤{Θ ,Θ、/   }〈 〉〈,人_,ノ /\        ヽ
               _  -ァ─ 、_,ノ'⌒   }人 rっ ノ _,ノ}/V∧/、_/  ′ }         }―‐ 、
        _r< ̄ ̄>、∧ ∧  } i     t式__ノ,ィ弐ラ |,〉〈 / / /  /         ',  (‐z― zー-x、
       /-──<___ノヽ∨ ∨∧\_,ノi人ノ ヽ   jハ V 「 i   ′           )  }〈 〉〈 〉〈 〉 、
      /> -‐ァ7Τ ̄\ ∧ ∧ ∧ 、    ', rェュ   { イ } |     ∧          /   //V∧V∧V∧ \

    {/|/  |/ |/{    ∨ ∨ ∨  ̄\___Λ 芒う / jノ‐ }  \ / `'ー '゙⌒   (___   /V〉〈 〉〈 〉〈 〉 〈 \
     i /|  /| /|f⌒ヽー‐}¨¨  ̄ ̄ ̄ ̄   `ヽ ̄ ̄∨∧∨ 廴___                / > 7フ  ̄/ ̄/ ̄ /¨¨> 、
     |/ | / |/⌒ヽ__ノ_,ノ               ∨∧ 〉  〉〉 〈〈  〉〉\         __厶 ´∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧__
     | /|  /乂__ノ   }               ∨ ̄ ̄ ̄ ̄{\___r────/ ̄∨  ∨ ∨ ∨ ∨ ∨ ∨ 〉  {  \
     ∨  f⌒ヽ――一'                  / ヽ-――一∧ ∧ \   ∨ ∧  ∧  ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ \_,ノ
     ∨∧乂_ノ___ノ                 _(__/〈 ∨ ∨ ∨ ∨ ∧  ∨ ∨  ∨  ∨ ∨ ∨ ∨ ∨ ∨ 〉   }
       \(  )___ノ                   / /⌒ヽ V∧ ∧ ∧ ∧ ∧   V ∧ ∧  ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧ ∧_,ノ
          ̄                     { 乂_,ノ 〈 ∨ ∨ ∨ ∨ /}  │/{ ∨ ∨  ∨ ∨ ∨ ∨ 〉〈 > ´
                             `ト-f⌒ヽハ ∧ ∧ ∧ ∧/│  }∧ ∧ ∧  ∧ ∧ ∧ ∧> ´
                            乂乂_,ノ ∨ ∨ ∨ ∨ ∨}  j  ∨ ∨ ∨  ∨ ∨__レ'´
                              \f⌒ヽハ  ∧ ∧ ∧ /ノ‐一'―┴ ┴ ┴┬┴=≦
                                乂_ノ ∧/ ∨ ∨_>f〔 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄{
                                 (_}V /_∧> ´     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|

      |   .i 、_       ,  i  |
      |   .| !(・)    (・) l  |
      {   .!  | “    ”  ノ  |
      ヽ、 \ ''  皿   /  /
    lヽ_,, - ,, _ \     / _ ,, - ,,_/i
    l/ 、;iiiiii ヽ  \_/  / 、;iiii ヽノ
    i{ 'lllllllllll  }.   ∥   {  llllllllll }!
    'ヽ_ '''''' ノヽ\ ∥ /人 ''''''' _ノ

      ''ー'' ”ー‘  ''-'',;;;;‘一“''一''i!

               |;;;;;;;;;;;;;;;;     i!
               |;;;;;;;;;;;;      i!
                  , 、|;;、;;;;;;;;;     i!

            /;;;;;;;;;;;;;\;;;;   ノ
           ム'Y“Y”Y'y::}
          (;;t''T''T''T''t:ノ

           ''““”””““''

         _____
         /ヽヽヽ Pi`> 、
      / aァ} } } }d/⌒ヽ,   そいつもわたしを「裏切った」というわけか?
      /{== /イ /_ V{\__,ノ∧  いや……

    /:.:.:.ト、__/ /(タ) } }/⌒ヽノ}  むしろその「新入り」……
   ,':.:.:.:(タ)、/     P{\__ノヽ}  最初から「裏切る」つもりで
   {:frラ: }         }l| l|く_>/  我が組織に入団して来たと考える方が自然かな?
   ∨:.:.∧ jTミァ   |l}く}⌒∨{   「亀」に閉じ込めてわたしとの距離をとれば
    ∨.:.:.∧ ⌒   ノリノ_ イ /{    逃げられると考えたらしいが…
     \:.:.:.ヘ    /_. イノ/⌒i_
      >--≧一'======x<´    `ヽ
  ___/{r====イ 斗</

                 / ■ /: : . jlli ヽ、
                /. : : : : ,.>_: : :_.." ,,.ヽ.
               .l ■:: . /' /  `i::. lli' l`'ー、_

               l:: ::, i-∨  ,.ッ l_/'; ill | ー、_/

               | ill | ト、  /-、, .`l:  /:.  >
               l_::  ヽ/'`l ヽ” ' /::ノ::. ヽノ
                >-‐;' └  ヽ フー'x-、イ

               /XXX\ 〓' /xXX/`l.

     ___,.----┬‐┴-、,ヘ=xX゙ーx‐'XXⅩ,/ゝ  }
    /十+十、ヽ   l+i-'-'l_/-|┴-+、X」_"/ヽ<- ノ
   /十十l十十xヽ  l+l,.-ヘ ヽ、´" o   l`ー-'
   l十十,--< ̄ヽxl_,ノx/ l-‐'コ    ̄`>--、ノ
   l十十l .,’l"'qヽ/XXl lニニコ    (__ノ
  「XⅩl´`ー゙'`‐'  lⅩXl `ー-'
  l,.―-、l b_,"';;"- lヽヽ/

 「    lヽ-、_=彡/XXノ
 l,.--、__」/XⅩヽ`Ⅹ/
 |XXコヽー-、XXX/
 .〉'Xヽ`ー、   ̄
  |XX、ー--'1
  l/ __」
  ヽ.__ノ

            -‐  '´ ̄ ̄`ヽ、
          /・・/:・,へヾヽ・:\ クックック
         //,::'/ /レ'/   ヽハ 、・.ヽ
         〃 {_{ル'三三三リ|l.│・:i|     お前のスレを吹き飛ばしてやった
         レ!小ノ三三三`ヽ フ|l:i・ i|
          ヽ|l ●三三●  |: ・|ノ!
            |ヘ⊃ 、_,、_,⊂⊃j  |・, |
           |: /⌒l,、 __, イァト |/.|
           | /==イ,┃, ,_┃XXヽ:|
           | || |il !トー癶-イXX/━||

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   ___
  / (゚Д゚)
  f×( ´∀`)
 ⊂××××つ
  |××××|
  | ××× ノ
  |×| ̄|×|
  (__) (__)

      __
    /(゚Д゚)\
    |( ´∀` )|
   ⊂.×××.⊃
     | ××× |
    \××/
     |×||×|
  .   (__||__)

       ・ ⅩⅡ ・
    ◇   __   ◇

   ・    /(゚Д゚)\    ・
  ◇   . |( ´∀` )|    ◇
  ・    ⊂.×××.⊃    ・

 Ⅸ       | ××× |    Ⅲ
  ・     .\××/    ・

  ◇      |×||×|     ◇
   ・   ...(__||__)   ・
    ◇         ◇
        ・ Ⅵ ・

      __
   ∩/(゚Д゚)\∩
  ∩∩( ´∀` )∩∩   ディフェンスに定評のある

.⊂ミ\ ××× /彡⊃  キンクリさん
     | ××× |
    \××/
     |×||×|
  .   (__||__)

     ___|
    (゚д゚|
   (´∀`|
   .ヽxxx⊃

  ∩∩   必殺!キンクリウォール!   V∩
  (7ヌ)  __     __     __    (/ /
. / / /(゚Д゚)\  /(゚Д゚)\  /(゚Д゚)\ ||
. \ \|( ´∀` )└ |( ´∀` )| ┘( ´∀` )|//
   \. ××× /⌒×××.⌒ヽ.×××. /
    (ミ ××× |ー┐××× / ̄| ×××ミ)
    \××/ . \××/  \××/
     |×||×|. . .|×||×|     |×||×|
  .   (__||__) . (__||__)  .(__||__)

       ___
     /×( ゚Д゚)
     |×( ´∀`)
     |××××|
     |×∪×∪|
     | ××× ノ ∫
     と__)_) 旦

           ___
         /×( ゚Д゚)
         |×( ´∀`)
         |××××|
         |×∪×∪|
         | ××× ノ ∫
         と__)_) 旦

.         /壱 //万:/|
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  / ̄//.|≡≡|__|≡≡|/壱//万:/|

 |≡≡|__|≡|≡≡|__|≡≡|≡≡|__|≡≡|彡|
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       ○
      _|_
   /(゚Д゚)\
   |( ´∀` )|
  ⊂.×××.⊃
    | ××× |
   \××/
    |×||×|
 .   (__||__)

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          /(゚Д゚)\
          |( ´∀` )|
  パンパン /×××_ノ⌒⌒⌒`~、_

   ε( ̄⊂人××//⌒   ノ  ヽ)
   ⊂ニニニニニニニニニニニニニ⊃

              _____________
             /  (゚Д゚ )×\     )
            / ( ̄(´∀`)××| ̄0/
         /~ ̄ ̄ ̄⌒⌒⌒⌒ ̄ ̄ ̄)

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    (____________ノ

      __
     (゚Д゚ )\
    (´∀` )×|
    ⊂.××U×|
     | ×××ノ
    (_(__つ

      __
     ( ゚Д゚ )\
    ( ´∀` )×|
    ⊂.××U×|
     | ×××ノ
    (_(__つ

     (ヽ_   ___    /)
   ((⊂ iつ _/( ゚Д゚ )\⊂ i つ))
   /∠__| X(´∀`)X |_ゝ\
  ( ___、 × × × ,___ )

         |× × × /´
         |× × ×/

          ___
            (゚Д゚ )×\__

.          (´∀` )×|/   |
.        /××××/    |
     (⌒/××(⌒)/    |
     | ̄/×××| ̄     .|
     | ( (  ( ̄|       .|
     |(_(__) |       .|

  ( 、,  ,丿.∬                  ││││
   (  ノ   ∫      ___     ││││
    ソ          __ (゚Д゚ )×\_  └┴┴┘
  ∬∬        /    (´∀` )×|
  ∬∬     ┌───|××××|─

   ■●▲ ̄フ |      |∪×∪×|
  ▲◆■◆// ̄ ̄ ̄ ノ ××× ノ

   ̄| ̄| ̄|  |  ̄ ̄ ̄ ( (  ( ̄ ̄ ̄
   ̄| ̄| ̄|  |      (_(__)

                               ┌┬┬┐
(       ∬    ∫   ∬       ││││

(    ))   ∫   __          υ   └┴┴┘
 (  .ノ        (゚Д゚ )\
  ソ        (´∀` )×|
∬∬ □━━━━⊂.××U×|

∬∬ 川 ジュワー/ .ノ ××× ノ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ■●▲ ̄フ | ̄( (  ( ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
▲◆■◆// ̄(_(__) ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄| ̄| ̄|  | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ̄| ̄| ̄|  |

        ___
      /×( ゚Д゚)           ___
      |×( ´∀`)  ピッ         | i \ \
___|××××つ□           | i  l =l
|  ||. |×∪××|  |          | |__ノ  ノ
|  ||_(_×┐×┐___|        | ̄ ̄| ̄ ̄|
|  ||  ( __ )__ ) |        |__|__|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

          ___
          (゚Д゚ )×\
         (´∀` )×|   長男でーす 趣味はクソスレを飛ばす事
         γ××××|
         /l Tigers r×l

          ___
          (゚Д゚ )×\
         (´∀` )×|   次男でーす 趣味は放置スレを飛ばす事
         γ××××|
         /l Tigers r×l

          ___
          (゚Д゚ )×\
         (´∀` )×|   三男でーす 趣味は進撃スレ飛ばす事
         γ××××|
         /l Tigers r×l

      __           __ .∩     __
     /(゚Д゚)\        /(゚Д゚)\l|  ♪ (゚Д゚) \
 ♪  |( ´∀` )|三三)   |( ´∀` )|.|     ( ´∀` )と_) ))
     | ××× |        | ××× /       | ××× /
.    ∪ ×× <        ∪ ×× <      .∪ ×× <
  ♪   /×/^i×|    ♪   /×/^i×|       /×/^i×|  ♪

    (_ノ. (_)      (_ノ. (_)  ♪. (_ノ. (_)

          キンクリワッショイ!!
       \\  キンクリワッショイ!! //
   +   + \\ キンクリワッショイ!!/+

          __    __     __   +
  .   +  / (゚Д゚)   (゚Д゚) \  /(゚Д゚)  +
        |×( ´∀`∩(´∀` )∩ |×(´∀`)

   +  (( (つ×× ノ (つ××丿 (つ××つ ))  +

         | ×××|  | ×× |  (×××|
         ヽ×(×ノ  .(×ヽ ノ    )×)×)
         (_)し'   し(_)   (_)_)

               ___
 パーン          ゚Д゚ )×\
, ;´ : : ._, __())ニ=0ニ)∀` )×|

゙ : 、 , ; ゚ー─'----==O==c、_,ノ冫×⌒~つ
      ゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙`゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙

                                                     __
                 )`ー´ ̄ ̄丶´ ̄ ̄`´                     /×( ゚Д゚)
                 |                                (´` |× ( `∀´) ´`)
                ノ  キングクリムゾンッ!!                `\×××× /´
                ヽ、                                 |× × へ<|

                  )                                    | ××|×|ノ
                 ⌒ヽ/⌒⌒∨⌒ヽ,r'´\(                        |×| ̄(__)
                                                     (__)

                       ___  三==---
                    /( ゚Д゚ )\ 三==---       |
                     | .( `∀´ ) | 三==---      ノ  キングクリムゾンッ!!
                   〔 \× × × \ ==---     ヽ            __
                     \` ) × ×|\`,)==---     )    _   ___r┘
                    ζ `<. × ×ヽ ` ==---    /'⌒⌒   `Y´
                    (.× 〔 ̄ ̄\×\三==---
                     (__)    (__)三==---

       ,、
      ゞ \_
     / >  )゚)\       )\∧_        /(
      |/ /∀´)|       )     `´ ̄ ̄ ̄`´   ̄
     〔_ /×,/ .〕      ノ
     |××(、/|       ヽ   キ ン グ ク リ ム ゾ ン ――― ッ ! !
     | × × ×|         )
     /×/(.×〔         ⌒ヽ          r' ̄\(
    (__) (__)           )'⌒⌒r' ̄⌒\(

       ___
     /×( ゚Д゚)
     |×( ´∀`)=○
     |××××| .||| ノ ザバー
     |××⊃ヽニニフ

     | ××× ノ   / ̄ ̄ ̄ ̄/l
      と__)_)   || ̄ ̄ ̄ ̄| |

       ___
     /×( ゚Д゚)
     |×( ´∀` )=○ あげ荒らしは黙ろうなww
     |××××| .||| ノ
     |××⊃ヽニニフ

     | ××× ノ   / ̄ ̄ ̄ ̄/l
      と__)_)   || ̄ ̄ ̄ ̄| |

  ┼ .(´\             /`/`)    +
 *   (ヽ、\           // ,/)  *

+  *  (ヽ、   \  ___  /   /)   +
   ⊂ニ      )/×( ゚Д゚) ∩     ニ⊃
  +   ⊂、    ( |×( ´∀`)彡     ⊃

     (/(/(/  ⊂×× ⊂彡     、)ヽ)   +
           |××××|    、)ヽ)  *
           ノ ××× /
          (__)ヽ ×ノ
             /×/

             (_ノ

     /×( ゚Д゚)
     |×( ´∀`)
    ⊂××××つ
     |××××|

      ヽ_ ⌒ヽ  ソロリ
        ) ノ `J   ソロリ


                       §   ━┓〃      ━

                       §     ┃  ━━     ┃
                       ,fニニヽ   ━┛         ━┛
                     /:::::ヽ     《

                     i|l' ̄ ̄ ̄'l|!     》
                     {{-- (;;;;;;;;;;) }} __《___
                    l |:ニ:(,):二:二|l ,,__))___)

                    {{______________}}   》      __
                               〃     (゚Д゚ )\
                                    (´∀` )/゙)

                                    ⊂.×××<
                                     〉×iヽ_⌒)
                                       (__)

                          __
                       /(゚Д゚)\
                       |( ´∀` )|  キングクリムゾン☆
                       ∩×××∩
                     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

                          __
                       /(゚Д゚)\
                       |( ´∀` )|  ふふ、いってみただけ♪
                       ∩×××∩
                     ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

           __
         /(゚Д゚)\
         |( ´∀` )|
       >、×/⌒ヽ

 ───ッ'- y'×/×i_
.       `⌒ー ′×| |::|
            \××| |::|
              \ ノ| |::|

              \=:::|
                \

       。*'``・* 。
        |  __`*。

       ,。∩ (゚Д゚ ) \ *
      + ゝ(´∀` )×|*。+゚ 結果だけだー
      `*。 ヽ、× `つ *゚*
       `・+。*・'゚×⊃ +゚

       ☆   ∪~ 。*゚
        `・+。*・ ゚

        __
      /(゚Д゚)\
      |( ´∀` )|
    (( ( ×つ ×ヽ
      ヽ×とノ.×〉 ))
       .〉 × ×./
      /×/^i×|
     (_ノ. (_)

             /\⌒ヽペタン
          _ /  /⌒)ノ ペタン__
        /×( ゚Д゚)\ ((  (゚Д゚ )×\
        |×(; ´∀`))' ))(´∀` ;)×|
.        /×××⌒ノ  ((⊂ .⊂二⌒ヽ|
       | ××× ノ ( ⌒ヽ .|××××|
       ヽ×××ノ. )---(ヽ×××ノ
        )×)×). |       |(×(×(
       (__(__).(;;;;;;;;;;;;;;;;;;;)__(__)

              __     __
  ((;;;;゜;;:::(;;::  /(゚Д゚)\  /(゚Д゚)\ '';:;;;):;:::))゜))  ::)))
餅ついてる ⊂|( ´∀` )|  |( ´∀` )|⊃ 場合じゃねぇ!

   ((;;;:;;;:,,,."  ヽ×⊂×)  (×⊃×/ ;:;;))):.,),)):;:::))))
    ("((;:;;;   (⌒) ×|   |× (⌒) ;;;:;))")
             三  `J    し´ 三

  . . .... ..: : ::___ :::::: :::::::::::: : ::::::::::::::::::::::::::::::::

        (゚Д゚ )×\ . . . .: : ::::::::::::::::::::::::::::::::::::
       /:彡ミ゛ヽ;) ー、 . . .: : : :::::: ::::::::::::::::::::::
        / :::/:: ヽ、ヽ、×i . .:: :.: ::: . ::::::::::::::::::::::::::

     / :::/××ヽ ヽ×l . :. :. .:: : :: :: :::::::: : ::::::
 ̄ ̄ ̄(_,ノ  ̄ ̄ ̄ヽ、._ ノ

  |  ||;;|||;;|        ||;;|||;;||___ |(  )
  |  ||;;|||;;|        ||;;|||;;||___ | ) (
  |  ||;;|||;;|  __  ||;;|||;;|| [][][]|(  )
_|三三三/.(゚Д゚).\三三三三三三三三||
 /| .     |.( ´∀` ).|
./ :| .     | ×.∨.× |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                ┴
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   (⊆⊇)    (⊆⊇)     (⊆⊇)
___.||. ____ ||. ____ || ___
    /|\      /|\     /|\

                 ∧
       /i     iヽ  | .|
.         ((/l ̄l\)) |_.|
       ソ_∠ニ二スノ  ||
        ∠シ ( ゚Д゚)ゝ ||
       |×( ´∀`) ||

       |××××二つ
       |×∪××| ..||
       | ××× ノ  .||
       |×| ̄|×|  .||
        (__).(__)  .||

      ___
    /×( ゚Д゚)    本当にすまないという気持ちで…
    |×( ´∀`)    胸がいっぱいなら…!
    ハ××××\
   /  〉××× 〉 |    どこであれ土下座ができる…!
   \ \ ××| |
    ┌―)))――)))‐―┐      たとえそれが…
     ヽ ̄工二二丁 ̄
      〉 ヽ工工/ ;′∬     肉焦がし… 骨焼く…
     lヽ三三三∫三三\;'
     h.ヽ三∬三三';.三三\';∫   鉄板の上でもっ………!
     └ヽ ヽ三,;'三三∬三;'三\'"
       ヽ |__|烝烝烝烝烝烝|__|
         lj_」ー――――‐U_」

             __
      , - .   /{   `>i
  __ ,( ゚Д゚) ンく.  ヽ/_../
<-<, (´∀`)   ヽ !./´ン、
  ト ン、l、-‐───-K'ノ´_ヽ
 ├- 、ヘY@゙(0¨0 ̄_、/lヽ,__`l
  |二i ト'=┐ー,==ー''γ⌒|___'l
 !ーl  ン‐┐7ヽヽ   i   [ ヽ

.<-.,l .i_   >'ン、.人i‐ヽ  .f
|__7iJイ  X´      〉イ]ヘヘiイ
丶ル├ーイ  ヽ    .i !´jハイ:〈

 ミ`ン---i--ーi   l‐+----+‐ヽ
 |_i__,i___|   |__i____i_l

       _
      /( ゚Д゚)
    / (( *´∀`))ヽ
  ∠⌒`)`ー‐--─'!⌒ヽ、
   {三}ニo0ニ0o}彡「´
  / ̄`ゝ、___員_ノ)`く \
  ト爪ヘ}_旦__}、_旦〉 `V》〉

                                                     __
                                                   /×( ゚Д゚)
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                                         __
                                       /×( ゚Д゚)
                                        |× ( `∀´) ´`)
                                     ,/ ×××× /´
                                    (、/|××××|
                                       | × × ×ヽ
                                       |×| ̄ 〕 ×,)
                                        (__) (__)

                       ___  三==---
                    /( ゚Д゚ )\ 三==---
                     | .( `∀´ ) | 三==---
                   〔 \× × × \ ==---

                     \` ) × ×|\`,)==---
                    ζ `<. × ×ヽ ` ==---
                    (.× 〔 ̄ ̄\×\三==---
                     (__)    (__)三==---

       ,、
      ゞ \_
     / >  )゚)\
      |/ /∀´)|
     〔_ /×,/ .〕
     |××(、/|

     | × × ×|
     /×/(.×〔
    (__) (__)

 \人_从人__从_从人_从_从人__
 >    糞スレゲットだぜ!<
 /⌒Y⌒YW⌒Y⌒WW⌒WW⌒
      /( ゚Д゚)
   ,-、:.,-、(*´∀`)n
  <,し^し^、Y ××E]_)
  (_,=◎==と) ―-J
   ゝ;;;;;;;;ノ

  初 妄    /                       ,) ス え
  心 想    L_   .______         _ヽ  レ  |
  者 で    /  /      \ ×\    /   i の マ
  ま 補   /.  | ○┌┐ ○  | ××\  | ○┌ く 続 ジ
  で え    i   |   └┘    | × × | |   └ ム,.き
  だ な   l   >       < × ×|  >    ) !?
  よ い    _ゝ /          \ ×  |/     レ、⌒Y⌒ヽ
  ね の  「  |             | ×  |
   l は   ヽ   l  /    \    .! ×  | /      \
⌒レ'⌒ヽ厂 ̄  |   〈     _人__人ノ_  i  く

人_,、ノL_,iノ!  /!ヽ   r─‐-  「  ダ   L_ヽ   r─‐- 、  u
ハ キ  /  / lト、 \ ヽ, -‐ ノ  サ    了\  ヽ, -‐┤
ハ ャ  {  /   ヽ,ト、ヽ/!`h)    |     |/! 「ヽ, `ー /)
ハ ハ   ヽ/   r-、‐' // / |く   イ    > / / `'//

                              .  -―‐- .
                           //\\//ヽヽ
                             / 、ヽ//\\/∧
                              ///\\//\ヽ}     >―‐-
                          i{\\//\\//ハミメ二.´      \
                          |ハノ/\\//ヽ:し':|:::::ヽ\\         :.
                       __|ミ`¨//⌒丶ヽ¨::イト、/八:::::} }ヽ  、       |
                         //:::八:} {.:/⌒ヽ|.:}   }:レ':/ハ::::/ :/  . \........:__人
                          | {::::{..i :{ 八o  o}j:ノ  //V 乂:  /   \_彡'⌒> \
                          l  \_j : ミ(OX__ノx(Oフ{:Ⅵ  :|:./  _  : : ::/― ' ∠:>ヘ
                        乂  \\∧ミ`゙  ´ ̄  }〈/:  乂彡く厶ミ. : .:| ̄//⌒>:/\
                    .  ⌒\ヽ.  \\:.. 、__,.、  /.: :...xく/┘| __丿 :{: : {{_/: :{'⌒\__
                    /   '⌒ミ::ヽ}  :} }:::\:ニ´ イ: :/: /:/:厂ヽ〈____|//⌒Y } : : //::.>-  .

                  ′     } ∨彡'_丿:::::::`爪ミメ/rく:xく/ /  } } \//ミ\{   .ノ \///\\ \
               {        /  /´  乂二二エエ彡/:/ \ \_.厶イ彡'  .::::\く/⌒>/二二   二ミ}
                                /|
                          \_WW/ |WWWWWWWWWWWWW/

                          ≫                   ≪
                          ≫  キングクリムゾンッ!!   ≪
                          ≫                   ≪
                          /MMMMMMMMMMMMMMMMM、\

      人__人__人__人__人__人__人__人__人__人__人
    Σ                           て
    Σ  キンクリ出るほどユートピア!        て人__人_
    Σ         キンクリ出るほどユートピア!      て

     ⌒Y⌒Y⌒Y)                          て
             Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒
 _______                                     |
 |__       ヽ(゜∀゜)ノ                          ___|
 |\_〃´ ̄ ̄ ヽ..ヘ(   )ミ                       /(゚Д|
 | |\,.-~´ ̄ ̄   ω > (∀゜ )ノ                   |( ´∀.|
 \|∫\   _,. - 、_,. - 、 \ (  ヘ)                         |××⊃
   \   \______ _\<                       |.×× |
    \  || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |                     \.×..|

      \||_______ |.                               |×||

まず全裸になり

        __  (ノ~)~┬┬~
      /(゚Д゚)\ .|×|  ││
      |( ´∀` )|/×/  ││
     / ××××_/  .└┘
   /×,、×××/   彡

   \×リ×××|    バッ
     <_/×□■ \
   _/×/■□|×|
.  (__/      |__)

自分の尻を両手でバンバン叩きながら白目をむき
           ___
         /×( ゚Д゚)

         |×(  ゚∀゚)   ヘイヘイ
        /×××⌒\
        / ∧××× | |
      / ノ )××/ ノ
     l∪ノ /×,× l  ノ
     UJ'  ヽ_,ヽ_UJ'
    Σ     ヽ \×ヽ
 バン   Y⌒Y ノ×ノ×,ノ
    バン   (_(__ヽ

(片手バージョン)
          ___(( /) ))
        /×( ゚Д゚) ( ⊂)  ヘイヘイ

        |×(  ゚∀゚)_ゝ \
       / ××× ⌒ ×× )
       / ∧××××| ̄ ̄
     / ノ ) ××× |
    l∪ノ /×, ×× /

    UJ'  ヽ_,ヽ_,×|
   Σ     ヽ \×ヽ
バン   Y⌒Y ノ×ノ×,ノ
   バン   (_(__ヽ

      人__人__人__人__人__人__人__人__人__人__人
    Σ                           て
    Σ  びっくりするほどユートピア!        て人__人_
    Σ         びっくりするほどユートピア!      て

     ⌒Y⌒Y⌒Y)                          て
             Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒
                 ∩∩
                (7ヌ) ___  V∩
_________|×| (゚Д゚ )×\(/ /)

|               \ (゚∀゚  )× |×|
| _________ |\×××/ /

|\               \|××××|
|  \__〃´ ̄ ̄ ̄ ヽ.. ノ ××× /     (⌒) ___
\  |\            (__) ヽ ×ノ  ミ  .|×| (゚Д゚ )×\(⌒)
  \|  \,.─~´ ̄ ̄ ̄     /×/      \ (゚∀゚  )× |×|

    \ ∫\              /×/ \      \×××/ /
      \   \           (_ノ   \        |××××|
        \   \                 \     ノ ××× /
          \   \_________ _\ / /´ ̄(__)

          \  || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |\ \
            \||__________ | (__)

これを10分程続けると妙な脱力感に襲われ、大抵のご都合展開も笑って流せるようになります。。。
是非お試しを。。。

      人__人__人__人__人__人__人__人__人__人__人
    Σ                           て
    Σ  びっくりするほどユートピア!        て人__人_
    Σ         びっくりするほどユートピア!      て

     ⌒Y⌒Y⌒Y)                          て
             Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒
                 ∩∩
                (7ヌ) ___  V∩
_________|×| (゚Д゚ )×\(/ /)

|               \ (゚∀゚  )× |×|
| _________ |\×××/ /

|\               \|××××|
|  \__〃´ ̄ ̄ ̄ ヽ.. ノ ××× /     (⌒) ___
\  |\            (__) ヽ ×ノ  ミ  .|×| (゚Д゚ )×\(⌒)
  \|  \,.─~´ ̄ ̄ ̄     /×/      \ (゚∀゚  )× |×|

    \ ∫\              /×/ \      \×××/ /
      \   \           (_ノ   \        |××××|
        \   \                 \     ノ ××× /
          \   \_________ _\ / /´ ̄(__)

          \  || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |\ \
            \||__________ | (__)

           ___
         /×( ゚Д゚)

         |×(  ゚∀゚)   やーいww
        /×××⌒\
        / ∧××× | |
      / ノ )××/ ノ
     l∪ノ /×,× l  ノ
     UJ'  ヽ_,ヽ_UJ'
    Σ     ヽ \×ヽ
 バン   Y⌒Y ノ×ノ×,ノ
    バン   (_(__ヽ

          ___(( /) ))
        /×( ゚Д゚) ( ⊂)  ほれほれほれww

        |×(  ゚∀゚)_ゝ \
       / ××× ⌒ ×× )
       / ∧××××| ̄ ̄
     / ノ ) ××× |
    l∪ノ /×, ×× /

    UJ'  ヽ_,ヽ_,×|
   Σ     ヽ \×ヽ
バン   Y⌒Y ノ×ノ×,ノ
   バン   (_(__ヽ

        __  (ノ~)~┬┬~
      /(゚Д゚)\ .|×|  ││
      |(*´∀` )|/×/  ││  しばらくお待ちください
     / ××××_/  .└┘
   /×,、×××/   彡

   \×リ×××|    バッ
     <_/×□■ \
   _/×/■□|×|
.  (__/      |__)

          ____
         \. 金 ./

           \/  ビシッ
. ワッショイ  __ (ノ~)
     /(゚Д゚)\\ \

     |( ´∀` )|/ /

.     /××××./ /|
.     \.\×× / /.  |
.      \二二二⌒)栗 |
     /×|美|×\\.  |
   /×/|_|`|×| . \|
. (__/      |__)

          ___(( /) ))
        /×( ゚Д゚) ( ⊂)  フォォォー!?
        |×( ´∀`)_ゝ \

       / ××× ⌒ ×× )
       / ∧××××| ̄ ̄
     / ノ ) ××× |
    l∪ノ /×, ×× /

  ┌ J┐  ヽ_,ヽ_,×|
  .ノ:l..|    ヽ \×ヽ
 .く:/ ・/Y⌒Yノ×ノ×,ノ

    ̄    (_(__ヽ