雪歩「春になったら」(218)

【765プロ】

P「おい、新P君。今度のファンクラブイベントの構成なんだがな…」

新P「あ、はい。その件ならすでに先方に伝えてあります。それで…」

P「おう。ご苦労さん…」




小鳥「お二人ともお疲れ様です。はい、どうぞ。」

P「おう、ありがとな。ピヨスケ。」

新P「ありがとうございます。音無さん。」

P「ふう…しかし新P君が来てからもうすぐ一年になるのか。」

新P「そうですね。あっという間でした。」

P「最初はこんな色男にこの仕事が務まるかと思ってたがなあ。
  先月のニューイヤーズライブの時の手際といい、
  今じゃなかなかの敏腕プロデューサーじゃないか」

新P「よしてくださいよ…僕なんてまだまだ…」

P「いや、今じゃガキンチョどもはみんなお前に夢中だよ。やっぱイケメン様にはかなわなねえなあ…」

小鳥「あら?ひょっとして妬いてるんですか?プロデューサーさん?」

P「そんなんじゃねえよ。お前こそ売れ残る前に新P君を捕まえといたほうがいいんじゃないか?あ、もう手遅れか!?

小鳥「な!?私はまだまだ大丈夫です!プロデューサーさんこそご自分の心配なさったらいかがですか?」

P「俺はいいんだよ。その気になったらいつでも結婚できるからな。」

小鳥「あら、初耳ですね。詳しく聞かせてもらいましょうか。」

ガチャ

美希「ハニーっ!おっはようなのー!」

P「おう!おはようさん!」

美希「オジサンじゃないの!ハニーに言ったの!」

P「美希…お父さんは悲しいぞ…」

美希「オジサンはミキのパパじゃないの!」

新P「ハハハ…おはよう、美希。」

雪歩「おはようございますぅ。プロデューサー、新P。小鳥さん。」

P「おう、おはよう。」

新P「おはよう。」

小鳥「おはよう。美希ちゃん。雪歩ちゃん。」

美希「ねえねえハニー!今日はグラビア撮影だよね!ハニーにミキのすっごい写真いっぱい見せてあげるね☆」

新P「え?いや今日は…」

P「残念だったな。今日は俺と一緒だ。」

美希「えーっ!?そんなのミキ聞いてないの!」

P「しょうがないだろう。新P君は雪歩の収録に付き合うんだ。」

美希「ぶぅ…あ、ねえねえ雪歩!雪歩はオジサンのこと好きだよね!ミキが代わってあげるの!」

雪歩「え、ええっ?す、好きって!ち、違うよ美希ちゃん!そういうんじゃないよ!」

美希「照れなくてもいいの!じゃあそういうことでよろしくね☆」

P「よろしくね☆じゃねーっつの。」ポカッ

美希「あう!?ひどいの!暴力なの!これはもう裁判所に訴えてハニーとの結婚に踏み切るしかないの!」

P「何言ってるんだお前は…先方との打ち合わせも兼ねてるんだ。いまさら変えられん。」

雪歩「あ、そうなんですかぁ…私はかわった方がよかったんですけどぉ…」

P「ん?」

雪歩「な、何でもありません!」

P「ほら行くぞ。」


美希「ハニー!助けて!拉致なの!きっと悪徳事務所に売り飛ばされるの!」ズルズル

雪歩「いいなあ…」ボソッ

車中

美希「ぶぅ…ハニーと一緒がよかったの。」

P「まだ言ってんのか…贅沢言うんじゃねえよ。ハニーハニーって急に色気づきやがって。」

美希「オジサンは独身でモテないからひがんでるの。ミキだってハニーと一緒のほうが頑張れるって思うな。」



P「…今日の仕事だけどな、そのハニー君が美希にぜひ、って言ってとってきたんだぞ。」

美希「え?そうなの?」

P「あーそうだそうだ。しかも『この仕事は美希ならできる!いや、美希にしかできない!』って意気込んでたぞ。」

美希「本当?ハニーったらそんなにミキのこと…」デレデレ

P「そうだな。これがうまくいったらハニー君もますますお前に惚れ直すかもな。」

美希「えへへ…そういうことならしょうがないの!ミキ、オジサンとでも一生懸命頑張るの!」

P「悪いな新P君」ボソッ

美希「?オジサンなにか言った?」

P「いや?がんばれよ!」

美希「ハーーーーーーーーーーーニーーーーーーーーッ!!」ドドドドド

新P「ぐふぅっ!」

美希「ミキね!ハニーのお仕事すっごく頑張ったよ!ねえねえ、ハニーは嬉しい?」

新P「お…おお…嬉しいぞ…だから、一回離れてくれ…」
ヤ! ハニーハニーハニーハニー! クルシイ…



ガチャ
P「やれやれ…すまんな新P君。…雪歩は?」

小鳥「おかえりなさい。プロデューサーさん。雪歩ちゃんならさっきまでプロデューサーさんを待っていたんですけど…」

P「ああ、もう次の仕事が入ってたか。あいつも一々帰ってくることないんだがなあ。」

小鳥(…プロデューサーさんに会いたいんですよ)

千早「お帰りなさいプロデューサー。」

P「おう、千早。来てたのか。今日はオフだったろ?どうしたんだ?」

千早「先日渡された新曲のことでちょっと気になるところがありまして…こことここなんですが…」

P「どれどれ…んー…そうだな…おい、新P君。新P君はどう思う?」

新P「あ、はい。悪い美希。ちょっとどいてくれ。」

美希「や!ミキと千早さんとどっちが大事なの?」

P「はいはい、そんくらいにしてやれ。  おいピヨ。お茶くれ。」

小鳥「はーい。」

美希「ちょっと!オジサン離して!これはセクハラなの!責任とってハニーはミキと同棲するべきなの!」
P「あいかわらず訳わからんなお前… おうピヨ、サンキュ。」ズズズ
小鳥「いえいえ。美希ちゃん。冷蔵庫にいちごババロアあるわよ。」

美希「えっ!?本当!?…しょうがないから千早さんにちょ~っとだけハニーを貸してあげるの。」タッタッタ

千早「ふふ。ありがとうね美希。新P、ここなんですが…」

新P「ああ、そうだな…もっとこうした方が…」

千早「あ、はい!それじゃここは…」





千早「すごくよくわかりました。ありがとうございます。」

新P「いやいや、お安い御用だよ。」

P(千早とも大分信頼関係が築けてきたみたいだな…)ズズズ

あずさ「プロデューサ~、来週の予定の事なんですけど~。」

P「竜宮のことは律子に聞いてくれ。」ズズズ



春香「プロデューサーさん!クッキーどうぞ!」

P「おうサンキュ…」ズズズ

春香「新Pさん!手作りですよ!手作り!このハートのやつがおすすめですよ!」
チョットハルカ!ハニーニテヲダサナイデ!



やよい「プロデューサー、今日はもう帰りますね。お疲れ様でした!」

P「おう…ハイ、ターッチ。」ズズズ

やよい「ハイ、ターッチ!」パシ

ジーッ…
P「ん?なんか視線を感じる…」

亜美「…なーんか最近おっちゃんって仕事してないよねー」

真美「うんうん。全部兄ちゃんや律ちゃんにふってばっか。」

P「お前らなあ、人聞きの悪いこと言うなよ。」

亜美「だってそうじゃーん。さっきからお茶ばっか飲んでるしさー」

真美「そうだそうだー。給料泥棒だよ!」

P「おいおい…お前らだってそうやってゲームしてダベってるじゃないか。」

亜美「だってしょうがないじゃん!あとちょっとでレア装備が手に入るんだよ!」

真美「そうだよ!なかなかクリアできなくて大変なんだよー。」

P「お前ら…しょうがないな。手助けしてやるよ。」

亜美「えっ、まさかおっちゃん…」

P「ほれ、見てみろ。これが大人の力だ。」

真美「うわっ全ステータスマックス…」

亜美「ダメな大人だ…」

P「よし、いくぞ。ついてこい!」

カチャカチャ…
亜美「ねー、おっちゃん…」

P「んー?」

亜美「真美にこないだドラマの仕事くれたじゃん?」

P「ああ」

亜美「亜美もドラマやりたいよー。おっちゃんとってきてよー」

P「あー…お前は竜宮の仕事のほうを頑張れ。」

亜美「えー確かに竜宮小町の仕事は楽しいけどさ…」

P「竜宮は今が一番大事な時だ。ここでの頑張りで今後が変わってくる。」

亜美「…うーん。まあおっちゃんがそういうならそうなんだろうけどさ…」

P「そしたらドラマだってなんだってできるさ。」

真美「そうだよ、それに亜美も新曲どんどん出しててうらやましいよ。」

P「心配すんな。真美にも新曲用意してあるぞ」

真美「えっ?本当?」

P「おう、新曲の方はは新P君と一緒にすすめてくれ。あとで詳しい話があるからな。」

真美「あ、兄ちゃんと…ふーん…」

P「おっ?嬉しそうだなー。お年頃だねー。」

真美「もーおっちゃん!そういうのじゃないよ!」




新P「…よし!お待たせしました!」

P「おう、終わったか。じゃあ行くぞ。」

小鳥「喉がカラカラですよ~。早く、早く行きましょう!」

律子「私、社長に声かけてきますね。」


【たるき亭にて】

ガヤガヤ…
社長「それじゃあ諸君!ニューイヤーズライブの大成功を祝って…」
            「「カンパーイ!」」

小鳥「ングング…プハー! 染み渡るわ~。」

律子「小鳥さん。今日は私送りませんからね。」

小鳥「え~?冷たいですよ~。律子さんも一杯どうですか?」

律子「…未成年なので遠慮します。」

P「相変わらずお前は固いなあ。そんなんじゃ新P君に振り向いてもらえないぞ?」

律子「なに言ってるんですか。そんなことばかり言ってるからオジサンなんて呼ばれるんですよ。」

P「おーおー。律ちゃんは厳しいですなあ。」
ワイワイ

社長「ウオッホン!諸君!年末年始と本当によく頑張ってくれた!ありがとう!」

社長「雪歩くんは相変わらずプロデューサー君のおかげで今年も不動のトップアイドルだ。律子くんの竜宮小町も好調である。」

社長「そして新P君!君は本当によく頑張ってくれた!星井くんの人気急上昇は目を見張るものがある!」

新P「そんな…僕は何も…」

P「いやいや、アイツは才能の塊みたいな奴だったのに、俺じゃアイツのやる気を引き出せなかった。それをやったのはお前の手柄だよ。」

小鳥「新Pさ~ん。一体美希ちゃんに何をしたんですか~?」

律子「警察沙汰だけはやめてくださいね?」

新P「え、い、いや!」

社長「おいおい、まさか君。本当に何かあるんじゃないだろうね?まあ、春になったら、星井くんもトップアイドルの仲間入りだよ。」

小鳥「春になったら…ですか。」

律子「…」



新P「…プロデューサーさん!…この一年。ありがとうございました。」

P「おいおい、何だよかしこまって…」

新P「僕はあなたが居なかったらきっとここまでこれなかった。今日こうしていられるのは全てあなたのお陰です。」

P「さっきも言ったかもしれんが、別に俺は…」

新P「いつだって俺に手柄を譲ってくれて…俺のフォローをしてくれて…」

P「そうじゃねえって…」

新P「今日だって!千早と俺が少しでも仲良くなるように話をふってくれて!…」

P「…」

新P「僕はまだまだプロデューサーさんに教えてもらいたいこと一杯あるんです…だから…だから…」

P「…俺が居なくてももうお前は大丈夫だよ。春になったらお前がうちのエースだ。がんばれよ。」

新P「プロデューサーさん…春になったら、なんて…」

社長「…さ、さあさあ君達!まだまだ夜は長いよ!今夜はプロデューサー君のためにも盛大に飲もうじゃないか!」

小鳥「そ、そうですよ!今日は楽しいライブの打ち上げですよ!さささ、ジョッキを持って!カンパーイ!」




・・・・・・・・・・・・・・

すまんちょっと抜ける

【 雪歩 】

うう、寒い…

木枯らしが吹く通りを事務所へと急ぐ。

今年の冬はいつまで続くんだろう。首をすくめて歩いていた私だったが、ふと顔をあげる。

ショーウインドウに映る自分の姿。まだ新しい純白のコート。

思わず頬がゆるみそうになる。いけない。こんなところでニヤニヤしていたらただの危ない人だ。

それでもこみ上げてくる気持ちを抑えられない。

撮影で着た、真っ白で血行が良くなりそうなこのコート。とても気に入ってしまい、撮影終了後返すのが惜しかった。

自分でも探してみたが見つからず、あきらめかけていたのだけど…

P「雪歩、誕生日おめでとう。」

そういって渡してきた大きな箱。その中身がこのコートだった。

P「お前撮影の時ずーっと物欲しそうに見てたろ。スタイリストさんに聞いて探してきたよ。」

プロデューサー。私のことをなんでもわかってくれる人。

いつも見ていてくれる人。

いつでも私のそばにいてくれる人。

そして私がとっても大好きな人。

春香ちゃんや美希ちゃん、それに伊織ちゃんなんかは去年から来た新しいプロデューサーに夢中だけど、

私はデビューからずっと一緒にやってきたプロデューサーのほうがいい。

もういい年だし、オジサン、なんて言われたりもするけれど。私はとってもかっこいいと思う。

今日はそのプロデューサーと一緒のお仕事だ。765プロでも最初の方からいた私はいつもプロデューサーと一緒だった。

でも他のアイドルが増えてからは段々プロデューサーと二人だけの時間も少なくなって…

だから今日はすごく嬉しい。

あの人と一緒ならどんなにつらい仕事も頑張れるし、どこまでも行ける気がする。

事務所が見えてきたら自然に足が早まる。プロデューサー。

えへへ。早く会いたいな。

   「「 プロデューサーがやめる!? 」」

伊織「ちょっと!どういうことよ!突然すぎるじゃない!」

真「プロデューサー!どういうことですか!」

社長「あー、諸君。気持ちはわかるが。今、話したとおり、彼の家庭の事情でね…」

P「…そういうことだ。今までお前たちに黙っていたのは悪いかった。
  だが、ニューイヤーズライブが終わるまで余計な心配はかけたくなかったんだ…すまない。」

春香「どうしても行くんですか!?せめて、来年いっぱいだけでも…」

千早「そうです!こんな急に…!あと一ヶ月もないなんて…!」

P「実家のおふくろがとうとう倒れてな…俺もこの年まで好き勝手やらせてもらった。そろそろ帰って家業を継がないとな。」

あずさ「でも…でも…」

響「自分も沖縄から出てきてるから気持ちはわかるけど…急すぎるぞ…グスッ…」

P「悪いな…だがお前たちには俺が教えられることは全て教えたつもりだ。新P君もいる。彼と一緒に頑張ってくれ。」

美希「オジサン…」




みんながお葬式みたいにうつむいている中。私は、ただ、何が起こったか理解出来ないでいた。

やめる?プロデューサーが? いなくなるの? 嘘だよ。そんなの。

プロデューサーはずっと私と一緒なんだよ。

一緒にトップアイドルになろうって言ってくれたもの。

春になったらもうプロデューサーがいないなんて…

嘘ですよね。

きっと冗談ですよね。

早く嘘って言ってください…

でないと私…私…






P「…お前には最初に伝えるべきだったな…すまない。」

雪歩「…うっ…ぐすっ…ぇぐっ…」

お仕事に行く車の中、私はずっと泣いていた。


P「なあ雪歩……そろそろ泣きやんでくれないか…?」

雪歩「…ぅえっ…いやです…ぷろでゅうさあ……ぷろでゅぅさぁ……ひっく…うう……」

その日のお仕事は散々だった。プロデューサーは何度もスタッフさんに謝っていた。

ただ、プロデューサーがやめるという話を聞いたからか、みんな私に怒るよりも寂しがっている人のほうが多かった。


プロデューサー…みんなあなたのことを好きなんです。行かないでください…

それから私はプロデューサーが行かないように

私のところに居てくれるように考えた。

そして

雪歩「あの、私、あなたのことが…!

雪歩「あなたの…ことが…      













    すいません。セリフ抜けちゃいましたぁ…」

スタッフ「もー!雪歩ちゃん!何回目よー!」

P「おい雪歩。どうしたんだ一体?もう一度落ち着いて台本に目を通せ。」

雪歩「あ、はい。実は…スタッフさん男の人ばかりで緊張しちゃって…」

P「おいおい…いつもと同じ顔ぶれだぞ?」

雪歩「そ、そうですか?…あ、い、言われてみたらそうでした!プロデューサーに言われなかったら気づかなかったですぅ。」

P「何言ってるんだ…台本はどこだ?」

雪歩「あ…楽屋ですぅ…」

P「…いつでも見られるように常に手元に持っておけって言ってるだろう。ちょっと待ってろ。」

雪歩「あ、はい…やっぱりプロデューサーは頼りになりますね…私、プロデューサーがいないとダメダメですぅ…」

P「…」

ごめん一回ぬけます。落ちてたらまたスレ立てるし。フヒヒ

なに笑ってんだよ!
支援するよ!バカ野郎!

>>34
ごめんね。こんなオッサンのオナニーに付き合ってくれてごめんね。
小一時間ほどで戻れると思うからね

保守してくれた方々ありがとうございました。おっさん嬉しくてちんぽビンビン物語です


雪歩「今日はプロデューサーのおかげでなんとかなりましたぁ。私一人じゃきっと無理ですぅ…」



雪歩「プロデューサー。やっぱり私なんか穴掘って埋まってますぅ…」



雪歩「今度の舞台。プロデューサーが一緒なら最後まで頑張れますぅ…」



私はとにかくダメな自分をアピールした。プロデューサーが私のそばに居てくれるように。

この子は自分がいないとダメなんだって思ってもらえるように

それでも、何も変わらなくて。とうとうバレンタインのライブが近づいてきた。

P「雪歩、すごいぞ。チケットは即完売だ!さすがはAランクアイドルだな!」

そう、私単独では今年初めての大きなイベント。同時に、プロデューサーとする最後のお仕事。



その大切なライブの日に―私はある決心をしていた。


P「雪歩、ステージの方は準備万端だ。いつでもいけるぞ。」

雪歩「あ、はい。ありがとうございます。プロデューサー。」

P「今日のライブ。絶対成功させような!」

雪歩「はっ…はいい…」



ごめんなさいプロデューサー。今日のライブは成功しません。


だって、私はこの後。ステージの上で、引退を発表するんですから。

エロはないんだ。すまん

そうしたら私は普通の女の子。プロデューサーについていくことができる。

そう、プロデューサーがとどまってくれないなら。私がついていけばいい。

それが私が出した答えだ。

きっと大変な騒ぎになるだろう。

事務所にもすごく迷惑がかかるに違いない。

お父さんにもきっとすごく怒られる。

それでも、私は決めたんだ。

プロデューサーがいなかったら今の私はいなかった。

プロデューサーがいなかったらアイドル萩原雪歩は存在しない。

だから、こうするしかないのだ。

たとえお父さんに反対されても、なにがなんでもプロデューサーのところに転がり込むつもりだ。

特に仲の良かった真ちゃん、春香ちゃん、千早ちゃんには伝えてある。

春香ちゃんや真ちゃんは最初驚いていたが応援してくれた。真ちゃんのところにはすでに荷物を預けてある。

千早ちゃんは最後まで考え込んでいたが「雪歩がそうしたいならそうするのが一番いいのよね」と言ってくれた。

私がいなくなった後のことも頼んである。


ごめんね、みんな。自分勝手だとは思うけど、許してください。

時計を見る。



あと少しだ―あと少しで私の最後のステージが始まる―










P「…しかし。こんな事になるとは思わなかったなあ。」

雪歩「え?」

P「いや、お前がデビューした頃、こんなに立派なアイドルになるなんて想像も出来なかったよ」

雪歩「ふふふ…そうですね…」

P「なあ、最初のステージ覚えてるか?デパートの屋上で…」

もちろん、覚えてる。

P「お前、あの時工事現場かってぐらいガタガタ震えちまって。歌だって1番を2回も歌ってたよな。」

雪歩「うう…そんな昔の話…恥ずかしいですよぅ…」



P「今だから言うけどな。最初ステージに出てった時のお前を見て、『あ、これはダメかもな』って思ったんだ。」

雪歩「え?」

P「とてもアイドルなんてできないだろうな。これは帰り道に『無理です!やめます!』って言われるなって。そう思ったよ。」

雪歩「…」

P「でもなあ…ガタガタ震えながら必死で自己紹介して、
 物凄く真剣な顔で歌ってるのを見てるお前を見たら 『ああ、本当にアイドルをやりたいんだな』 ってわかったんだよ。」


                  ・・・プロデューサー、なんで、今、そんな話するんですか?


P「そう思ったらな。なんだか何が何でもこいつを、萩原雪歩をアイドルにしてやりたいと思ってなあ。」


                     プロデューサー…やめてください。


P「この気弱な女の子がここまで覚悟を決めてるんだ。だから俺も全力でそれに答えようって思ってな。」


                     ああ…そっか…


P「だから、お前には全身全霊でぶつかったよ。」



                   わかってるんだ…私の気持ち。
                      私がこれからしようとしていること。全部わかってるんだ…

P「デビューしてから色々あったよなあ…最初はお前しかいなかった765プロもすぐに春香が来て、千早が来て…」


                           …それなのに。ひどいです。プロデューサー。


P「いまや12人もの大所帯だ。でも、お前とが一番長かったな。」


                              残酷ですよ。ずるいですよ。プロデューサー…


P「お前が事務所を飛び出して公園まで探しに行ったこともあったなあ。」


                           いやです。やめてください。プロデューサー。


P「助けてくださいって電話が来たから行ってみたら犬だったとか…」


                           お願いします…もう…もう…

P「それでもさ、あの、30人にも満たない観客しかいなかったデパートの屋上から」


                       大好きなあなたにそんな話をされたら…


P「とうとう今日はお前のために何千人ものファンが集まってくれた。」


                        あなたと歩いた日々を思い出してしまったら―


P「すごいよなあ…今日、ここに来る人はみんなお前一人に会いにきたんだ。」









                            私、もう―

P「俺も色んなアイドルを見てきたけど…お前はまだまだ上にいけるよ。」


                           …ううん。諦めちゃダメ。


P「雪歩…今までありがとう。」


                           今、私の想いを伝えるんだ。


P「俺はお前に出会えて、お前をプロデュースできて本当に幸せだった。」


                          あなたが好きだって。一緒に連れて行ってくださいって


P「お前の成長をそばで見られないのは、残念だが」


                          さあ、立ち上がって


P「俺の故郷でも…お前の歌が、声が聞きたいよ。」


                          ほら、早く。

P「お前のこれからが…楽しみでしょうがないんだ。」


いくよ…1、2、3


P「雪歩。お前は俺の夢だよ。」








雪歩「…プロデューサー!私っ…私…」

雪歩「私…」








雪歩「…私も…プロデューサーと出会えて、一緒にやってこれて…幸せでした。ありがとう、ございましたぁっ…」

ライブのあと、私はプロデューサーに抱きついて泣いた。


プロデューサーは「ごめんな」と「ありがとう」を繰り返しながら。


ずっと私を抱きしめてくれた。








私の、想いを、伝えることは、できなかった。

【小鳥】

今夜もよく冷える。寒いのが苦手な私にとっては早く春が来てほしい。

ひざ掛けを肩からかけて、肘を擦りながら時計を見る。みんなが帰った事務所に残っているのは私一人。

経費削減のために暖房はつけない。体を張って事務所に貢献する…正に事務員の鑑だろう。

小鳥「遅いなあ…」

もう何杯目かわからないショウガ入りのお茶をすすりながらひとりごちる。

やはり、心配していた通りのことになってしまったのだろうか。

時計の針が進むごとに不安が募る―




早く、早く帰ってきてほしい―


ガチャ

P「ただいま。」

小鳥「!プロデューサーさん!」ガタッ

ようやく現れた待ち人のもとに私は駆け寄る。

小鳥「おかえり…なさい…あの…あの…」



P「バーカ。」ポコッ

小鳥「あうっ?」

手にした書類袋で叩かれた。

P「なんて顔してんだよ。」

小鳥「でも…でも…今日のライブ…」



P「…心配すんな。お前が思っていたようなことにはなってないよ。」

小鳥「プロデューサーさん、知ってたんですか!?」

少し驚いた。同時にやっぱり。という気もする。

彼のことだ、アイドルのことは全て把握しているのだろう。

P「なんとなく、な…お前もやっぱりよく見てるもんだな」

小鳥「女の勘を甘く見ないでください。このところ春香ちゃん達の様子が変でしたからね…」

P「そうか…」

プロデューサーさん、かなり辛そうな顔をしている。

当然かもしれないが、かなり珍しいことだ。

P「雪歩にはひどいことをしちまったな…」

小鳥「…プロデューサーさん…」

P「だが、これでよかったんだ。あいつはまだまだ先にいける。こんなオッサンと心中させるわけにはいかんだろう。」

小鳥「…」


そうですよ。なんて言えない。私だって恋する彼女の気持ちは十分にわかるから。


―――――なんて言えばいいんだろう。

私が所在無さげにしていたら、プロデューサーさんは窓のそばに立って外を眺めている。

なんとなく、私も隣に立って外を眺める。

P「変わったなあ。ここから見える景色も。」

小鳥「ええ。再開発の波が来てますからね」

P「お前がいた頃はまだ昔ながらの街並みも残っていたけどなあ…」

小鳥「…そうですね。覚えてますか?あのカフェのところにあった中華屋さんでよく一緒にご飯食べたこと」

P「ああ。汚かったけどうまかったよな。…今考えたら、若い女の子を連れて行く店じゃなかったけどな。」

小鳥「ふふ。そうかもしれませんね。でも、私は大好きでしたよ。」

他愛ない話だったけど、少し空気が軽くなった気がする。

それから、また少し沈黙があって


P「…あとは新P君がうまくやってくれるといいな。」

彼がつぶやく。


小鳥「大丈夫ですよ。絶対大丈夫です。」

P「やけにあいつの事を買うじゃないか。さては…」

小鳥「違いますよ。…新Pさん。あの頃のあなたにそっくりですから。」

P「…」

小鳥「一生懸命で、真面目で、アイドルのことを一番に考えていて…ちょっと抜けてて、不器用で…」

P「ピヨ…小鳥。」



小鳥「私は17歳の頃、あなたに出会えて、プロデュースしてもらえて、とても幸せでした。雪歩ちゃんだってきっとそう思ってます。」

P「…そうか…あいつもそう言っていたよ。」

小鳥「はい。きっと、心の底からそう思ってますよ。」

P「…そうだと…いいな…」

小鳥「はい」



P「…もう、何年前になる?」

小鳥「やだ、プロデューサーさん。そんな話をしたら悲しくなるじゃないですか。」

P「確か…今お前は2×歳だから…」

小鳥「はいはいはい!わかりました!やめやめ!この話はやめです!」

P「小鳥。」

小鳥「はい?」

どうしたんですか?プロデューサーさん。そんなに改まって。

P「ありがとう。」

小鳥「え?」

突然、何ですか?

P「あの頃…俺はお前が初めてのプロデュースで右も左もわからない若造だった。」

P「それでもお前は最後まで俺についてきてくれた。」

P「あの時、俺に、今の力があれば…雪歩のようにお前のことを…」



小鳥「プロデューサーさん…」

P「ずっと気になっていたんだ。」

P「俺がトップアイドルにしてあげられなかった女の子。 俺の力が足りないばかりに夢を途中で諦めてしまった女の子。」

P「あの子はあれからどうしたんだろうって。」

P「お前が引退してから。ずっと、ずっとだ。」

――――私だって。あなたのことを思わない日はありませんでしたよ。

P「そうして何年か過ぎた頃。俺がそれなりにアイドル達を売り出せるようになった頃。お前がまた来てくれた」

P「驚いたよ。何年かぶりに見るお前はすっかり大人びてたから…でも、すぐにわかった。あの子だ。また会えてよかったって。」

P「だから…ありがとう。小鳥。ふがいない俺に最後までついて来てくれて。そして、765プロに戻ってきてくれて。」

小鳥「プロデューサーさん…やだ…顔、あげてください…」

そんな話されたら…泣いちゃいそうですよ。

私は泣かないって決めてるんですから。笑ってあなたを送り出すって。

後に心配ごとがないように、大丈夫ですよ、って笑うんですから。




だから…頭をあげてください…

そしてあっという間に月日は流れ。

プロデューサーさんが出発する前の日。事務所でささやかな送別会があった。

プロデューサーさんはああいう人だから湿っぽくならないようにしようと振舞ってたけど、最後には結局みんな泣いていた。



私は…なんとかこらえることができた。

女子最年長の私まで泣いたら収集がつかなくなってしまう。

社長も新Pさんもアイドル達を送っていき、私は一人で後片付け。

祭りの後の寂しさがのこる事務所で机を拭いていると突然扉が開いた。


小鳥「プロデューサーさん!?」

P「ただいま。」

小鳥「雪歩ちゃんを送っていったんじゃないんですか?」

P「ああ、そうなんだがな。階段を降りたところで『ここでお別れしましょう』って言われちまった。」

小鳥「そうですか…雪歩ちゃん。きっとプロデューサーさんと別れがたくなりそうだったから…」



P「ピヨスケ…小鳥。お茶を煎れてくれるか。」

小鳥「あ、はい…」

P「うん、お前のお茶を飲むと765プロに帰ってきたって気がするよ。」

小鳥「ふふ。そうですか?ありがとうございます。」


P「…」

小鳥「…」

それきり、会話は途絶えた。


もう言うことはない。明日の朝。プロデューサーさんは去っていく。


…正直、こうして最後に二人で会えたことに少し嬉しさを感じる。




何も会話はなかったけれど。とても温かくて満ち足りていた。

P「よし、そろそろ帰る。ごちそうさま。小鳥。」

小鳥「あ、はい。お疲れ様でした。」

P「お前は?」

小鳥「あと少し片付けをしていきます。」

P「…そうか。じゃあな。また明日の朝。」






小鳥「はい。さようなら。プロデューサーさん。」

さようなら

その言葉を口に出した瞬間。

急に感情がせり上がってきて。










小鳥「プロデューサーさん!!」
気がついたら叫んでいた。

事務所のドアを開けようとした彼はこちらを振り向いて。


小鳥「プロデューサーさん…」

                         ……だめ、やめなさい

小鳥「プロデューサーさん…プロデューサーさん…」


                         笑って送り出してあげないと…笑って…




小鳥「こういう時…」








小鳥「『行かないで』と『連れてって』と…どっちを言えばいいんですか…」

その後はもう言葉にならなかった。私は泣いた。子どもみたいにわんわん声をあげて泣いた。

うちで一番幼い亜美ちゃんや真美ちゃんだってこんな風には泣かないだろう。

涙を流していたら立っていられなくなって、事務所の床にぺたんと座ってわめきつづけた。








いつの間にかプロデューサーさんが抱きしめてくれていた。


プロデューサーさんの腕の中で、私は17の子どものままだった。




P「…落ち着いたか?」


小鳥「…ごめんなさい」


P「…一緒に帰るか?」


小鳥「こんな顔で帰れるわけないじゃないですか…」


少し名残惜しかったが彼の腕の中から抜けだしてトイレに入る。

鏡で自分の顔を確認する。

我ながら、ひどい顔だ。

でも、卑怯者の顔にはふさわしい。

雪歩ちゃんがいないからって、プロデューサーさんの優しさにつけこんで。



そう、思ったら、また涙が出てきた。

事務所の鍵を閉め、階段を降りる――――

もう他の階の人達は帰ってしまったのだろう。

階段は暗く。私とプロデューサーさんの足音だけが響く。



事務所の入り口を出る時、プロデューサーさんと私は手をつないだ。

とても自然で、当然のような行為だった。

もう人通りも少ない街を歩く。ずっと好きだった人と手をつないで。

凍ってしまったかのような冬の空気がしん、と染み渡ってきても、私の心臓は鳴りやまなかった。

P「…今年は、寒さが続くなあ…」

小鳥「…本当ですね」










それきり何も話さずに。手をつないだまま。ゆっくりと歩いた。

きっとその夜、求めれば、彼は私を抱きしめてくれただろう。

口づけだってしてくれただろう。そして、その先のことだって―――



だけど、私は何も求めなかった。


この静かで、きれいで、幸せな時間を壊したくなかったから。

これ以上何かを望んだら、雪歩ちゃんに顔向けできないから。




何より―彼と結ばれてしまったら。

私はもう、離れられなくなるだろうから。

お互い何も言わないまま駅について、改札を抜ける。

つないでいた手が離れる。





小鳥「…お疲れ様でした」


P「…お疲れさん」









改札の向こう側で。

いつもよりも深いお辞儀を交わして、私たちは別れた。

ええ話しや…

【それから】

長く続いた寒さも過ぎ去り、桜の花もいつの間にか青々とした葉を茂らせた頃。

私、音無小鳥は今日も765プロにいた。

小鳥「はいどうぞ。今日のは雪歩ちゃんがくれたお茶ですよ。」

新P「ありがとうございます。音無さん。」

美希「あふぅ。こう暖かいとなんだか眠くなるの…」

春香「そうだね~。このくらいが一番気持ちいいよね。」

雪歩「お茶がおいしいですぅ…」

今日も事務所にはみんなが集まっている。この陽気のせいでみんなぽわぽわムードだ。

彼がいなくなった765プロは少し広くなったけれど、雰囲気は変わらない。

ここに彼がいたらなんて言うんだろう。しっかりしろ!と激を飛ばすかな?

そんな事を考えていたら―――


小鳥「プロデューサーさん…今頃どうしてるのかしらね…」


つい、口に出してしまった。
  

「「・・・・・」」

私がつぶやいた言葉にさっきまで賑やかだった事務所が静まり返る。

やってしまった…気をつけていたはずなのに…






















亜美「…そんなに気になるなら電話でもすれば?」

え?

みんなの顔を見ると、うんざりしたような目でこちらを見ている。

真美「てゆーかさ。むしろもう会いに行っちゃっていいよ?バイバイ、ピヨちゃん。」

伊織「一日に何回もノロケを聞かされる身にもなりなさいよ…」

あずさ「あらあら、うらやましいわ~。」






小鳥「…は、はは…」


頭をかく薬指にはあの人からもらった指輪が光っている。

――――――あの日、駅にプロデューサーを見送りに行った日。

みんなと一人ずつ挨拶を交わしていく中、雪歩ちゃんは

雪歩「プロデューサー。私、きっとトップアイドルになってみせます。だから、遠くで見守っててくださいね。プロデューサー。」

そう、強い表情で言ってのけた。この子は本当に強くなったんだ。

私もちゃんと見送らないと。

最後に彼の前に立つ。

小鳥「プロデューサーさん。向こうに行っても元気でいてくださいね。」

P「ああ…」

小鳥「あんまりお酒ばっかり飲んじゃダメですよ。」

P「ばか、お前に言われたくないよ。お前こそいい旦那を見つけろよ…小鳥。」

小鳥「えっ…」

彼が他の子達がいる前で「小鳥」と呼ぶのは初めてのことだ。


何もこんな時に…バカ…





ほら…何も言えなくなってしまう。

prrrrrrrrrrrrrrr
「発車いたします。白線の内側までお下がりください。」

P「おう、それじゃ、みんな元気でな。行ってくるわ。」

「プロデューサー!」「元気でね!」「今までありがとうございました!」
「おっちゃん、忘れないでね!」 「いつかまたお会いしましょう!」


みんな口々に別れの言葉を叫ぶ。











そして、ドアが閉まる瞬間。

小鳥「キャッ!?」

誰かに押されたと思ったら、私はプロデューサーさんの胸の中にいて。

振り返ったら笑顔の雪歩ちゃんがドアの向こうから手を振っていた―――

それから、そのまま二人で気まずい沈黙が続いて。

小鳥「え、えーと…」

P「あ、ああ…」

小鳥「なんか、乗っちゃいましたね…」

P「お、おう…」

小鳥「と、とりあえず次の駅で降りますね!」

とにかくプロデューサーさんから離れなくちゃ―

雪歩スレかと思ったら小鳥スレだった

P「いやだ。」

小鳥「えっ?」

P「このまま連れて行く。」

小鳥「は?」

P「一緒に来い。小鳥。」










小鳥「え?えっ?えええええええええええええええええええ!?」

二人で自由席に座って。彼の実家に行って。結婚の約束をして。

…あまりのことに正直よく覚えてない。






それから二人はそのまま幸せに暮らしました…となればまるで映画なのだが、現実はそうは行かない。

アパートの部屋や、仕事、レンタルビデオの返却…

そういったロマンティックとは程遠いしがらみを諸々精算するために一度戻ってきたのである。

特に仕事はすぐに辞めるという訳にはいかない。まだしばらくはこっちで後輩を育てないと…


小鳥「…ど~も~。音無小鳥で~す…恥ずかしながら戻って参りましたぁ~…」

事務所に戻ってきた日。おそるおそる扉をひらくと


「「おめでとー!!」」


盛大なクラッカーの音が鳴り響いた。

事務所の壁には『プロデューサー・小鳥さん結婚おめでとう!』の垂れ幕がかかっている。

春香「おめでとうございます!小鳥さん!」

伊織「あんたもなかなかやるじゃない!」

律子「やりましたね!小鳥さん!」

あずさ「また先をこされちゃいましたね~」

みんなが口々にお祝いの言葉を投げかける中。







事務所の奥のほうには

満面の笑顔の

雪歩ちゃんがいた。

――――――


雪歩「どうしたんですか?わざわざ屋上で話したいことがあるなんて?」

小鳥「あ、あの…そのね…雪歩ちゃん?な、なんというか…あの…その…」

雪歩「?」




小鳥「ごめんなさいっ!!」ガバッ

雪歩「えっ?えええええええっ?」

小鳥「なんというか、プロデューサーさんがあんなに強引だったとは思わなかったっていうか、
   いや、そういう人なのは知ってたけどまさか思いもしなかったっていうか、
   あれよあれよという間にこうなってしまったというか、とにかく!色々とごめんなさい!」

雪歩「こ、小鳥さぁん…土下座なんてやめてくださいぃ…」

小鳥「私、雪歩ちゃんに悪いなあ、なんて思っておいていざとなったら自分の気持に正直になってしまって。
   ごめんなさい。ずるいよね。あなたはアイドルで、私は事務員で。立場だって違うのに。
   あなたの気持ちを知っててプロデューサーさんとこんなことになってしまって。本当にごめんなさい。
   でも、私もずっとプロデューサーさんのことが好きだったの!だから私きっと彼と…」

雪歩「知ってましたよ?」

小鳥「え?」



雪歩「前々から二人が特別な関係だっていうのは気づいてました…

   でも、もしかしたら、って思ってたんですぅ……結局、ダメでしたけどね。」


雪歩「…見送りの時のプロデューサー…とっても寂しい顔してました…私、あんな顔見たことなかったです…」


雪歩「その時、ああ、この人を一人で行かせたらダメだ。ってとっさに思って。それで、気づいたらあんな事をしてしまったんです。」


雪歩「すっごく怒られました…社長だけは『よくやったぞ!』って褒めてくれましたけどね。ふふ。」

雪歩「だから、小鳥さん。私のことは何も気にしないで、プロデューサーと幸せになってください。」

小鳥「雪歩ちゃん…」


ああ、だめだなあ私。17歳の子にこんな心配させて。

どっちが年上だかわからない。



小鳥「…うん、任せて雪歩ちゃん。私がプロデューサーさんを世界一幸せな旦那さんにしてあげるから!」






そうして、私たちは屋上で握手を交わした。

事務所に降りようとする時にたくさんの足音がしたけど…

みんな気づいていた。ということだろうか。

・・・・・・・・・そんなことがあって、今日に至るのだ。

美希「ていうか、来週の連休には小鳥、オジサンのとこに行くんでしょ?」

春香「うらやましいなぁ~。プロデューサーさん!私もどこか連れてってくださいよ~。」

美希「…春香。さりげな~くハニーに手を出さないでほしいの。」








ガチャ
「音無先輩!ただいま戻りました!」

小鳥「あっ、お帰りちひろちゃん。どうだった?」

ちひろ「はい!こちらとこちら…あとこの作家さんの新刊でよかったんですよね?」

小鳥「そうそう♪これよこれ~♪ちひろちゃん。私が引退しても新刊チェックの方を続けてね。」

ちひろ「はい!」

律子「…なにやってんですか。」

小鳥「律子さん!こ、これはちひろちゃんに買い出しの指導を…」

律子「勤務中に漫画買いに行かせるのの何が指導なんですか!没収!」

小鳥「あ~、律子さ~ん…新刊はすぐに読みたいのよ~…」

律子「千川さんも何でも言うことを聞いたらダメだからね。全く気をぬくとすぐに…」



雪歩「律子さん。それ、私が頼んだんですぅ。」

律子「あら?そうなの?アンタがこういうの読むのは珍しいけど…」

雪歩「真ちゃんがすっごく面白いって言うからつい…ごめんなさい…」

律子「…まあいいわ。はい。今度からは自分で買いに行きなさいよ。」

雪歩「ありがとうございます。…あ、そろそろ時間ですね。小鳥さん、預かっておいてもらえますか?」

小鳥「え?」

雪歩ちゃんが私にウインクをする。

小鳥「あ、はいはい。任せてちょーだい!」

雪歩「漫画ばっかりじゃなくてプロデューサーも大事にしてくださいね」ボソッ



うわ…いやな汗が出てきた…

雪歩「それじゃ、行きましょう。プロデューサー。」

雪歩ちゃんが新…今はもう区別する必要もない。プロデューサーさんと歩いて行く。

小鳥「いってらっしゃい、雪歩ちゃん。」



季節はめぐり、人も街も変わっていく。私も彼も過去になっていくけれど。

きっと765プロは変わらずここにあって、あの人の残したものを伝えていくだろう。

待っててくださいねプロデューサーさん。

来年の春になったら、私もそっちに行きますから―――





おわり

終わりです。みんなオッサンのオナニーに付き合ってくれてありがとう。
保守してくれた人。レスしてくれた人。読んでくれた人みんなありがとう。
シリアスものは終わらせるの難しいね。

              ____    __
       ,ィ二二lフ´: : : : : : : : : : ` .くヽ \

      ,イ/三ミ/: : : : : : : : : : : : : : : : \ヽ,l_
    /j-ヘ´ ̄: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :\ノヽ
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  ∨/: レ-┘: : : : : : l--/|,,/_ !l: : : :|: l: : :l: : : :'.___l/

    |: : : : : : |: : : : :l: |_/,.=ニ l/、::/ノ ̄ ̄`ヽ、―ニ 二
    l: : : : : : |: : : : ::l/ /,fV/':::::/ ´`ヽ _  三,:三ー二
    l: : : : : : l: : : : : l. {  {トi .ノヽ--/ ̄ ,
.    ',: : : : : :∨ : : : ',  ミ }  ...|  /!/
     ! : : : : : ∨: : :ハ'''  」_}`ー‐し'ゝL _
     l: : : : : : : ∨: : : ',  _,:ヘr--‐‐'´}    ;ー------
     |: :,l: :/l: : : :>、l\|_  、,,ノ`ヾ:::-‐'ーr‐'"==-
    厶' l/ |/ ̄`ヽ \_,イハ ̄ : : :/: //

       /     ', / 〉ト、l`ヽ/| : /

      /         レ ,'ノ   ハ //
       /        l ハ |l   l
.     /   l      !/ll|/l   _}
     /    l__>イ/‐'//-‐''"l

別れたまんまでもいいけど。アイマス的にはハッピーエンドがいいよね。
なんか無理矢理感があったがまあいいや

                  /: :///: : : : : : : : : : : : : : : \
                 /r-、//イ: :_:_:__: : : : : : : : : : : : : : ヽ
               /: : {//イ: : : :ヽ/::::::::> 、: : : : : : : : : : : : :.
                 /: ィ/,}/: : : : :_ -       `ヽ、: : : : : : : : : : :.
             /:<///: : : :, -             `ヽ、: : : : : : : ::.
              |: :l//: : :/             _ \: : : : : : :.
              |: :Ⅵ!: : :イ  /  ̄ `     , ´ ` ヽ: : : : : :!
              |: :.Ⅵ: :/イ   , --- 、             ,Ⅵ: : :.j!
              |: : :Ⅵ: : :{  イi ム心       __, /: :|: : :j!
              |: : : :イミ、:i    弋zソ         ´ ̄` /: : j: : j!
              |: : : :i{(`ヽ            '       /}: :/: :./     >>1乙じゃない
    r‐ 、      /: : : : ∨、        ___     {': :/: :./
    `ヽ、 \    ,: : : :l: : : ',: :ー':、    (     ア   人: : : :{
      \ \  ,: : : :,.- 、: : 、: : : :ゝ、   ` ー ´  イ: : : : : :|
        { `ヽ \: :/ ,.ィ: : : :',: : :/、| >   _,. ィ: : : |: : : : : :.|:.
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          ┌〃‐〃‐〃‐〃‐〃‐〃‐〃rク  ̄  L:´: | ヽ\
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        { / ̄ろ  \ \ イ     :|    /    \
        ヽ ,イ´   / / _|_     :!   /      \
         \j    ___       :!', /__ ,,,,, .... イ:!
          }:!   └― ,  ,!      :! Y / /.:.:.:.:.:/:.:.:!
          {:|     // ,イ    ._」(ヽく /.:.:.:.:./.:.:.:.:.:.!
          Y!    (  ー‐ノ   くー一  \:.:.:.:.:!:.:.:.:.:.:.l
              |      ̄ ̄     ヽニニ   ノヽ:.!:.:.:.:.:.:.!
           「 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄不 ̄ ̄ ̄:.:Y.: ̄7ソ  /:!.:.:.:.:.:.i
              ∨.:.:.:.:.:〃:/ !.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.',.:.:.:∧_/.:.:ヽ.:.:.:.:!
            ヽ:.:.:.//   :!.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.',.:.:{/:.:.:.:.:.:.:}ヽ:ノ
             `¨´     !.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.',.:.ヽ.o.:.:.:.:.:.}.:./
                      ノ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.',.:.:.ヽ.:.:.:.:.:.:/
                   /.:.:.:.:.:.:.:.O.:.:.:.:.:.:O',.:.:.:.>-く
                  ,.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ

                  /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
                    /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./ \.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ

ありがとうございます。どこにいたんだってくらい見られてたんですね。

ビクンイクン

よし、誰もおらんな。


小鳥さんはホンマかわええわ。あんなむっちむちの事務員いたら仕事もはかどらんでホンマ。
まずはあの絶対領域にむしゃぶりつくんや。ジュルジュルジュルジュルジュ~ル ジュル~ってな。
いい感じにメス臭が漂ってきたらあのやらしい事務服をバリバリと破ったる。
ほんでまずは事務机にのっけて正常位でガンガンつくんや。ファイルが落ちてもピヨちゃんオイルがたれても許さへん。
ほんであのやっすい765ってガムテープの窓にパイオツ押し付けてバックでフィニッシュや。
通行人から見えてるで~言うてな。ほんで中田氏した後はコピー機に乗せてフルカラー印刷や。
何枚も何枚も撮って事務所中にばら撒いたる。ほんでソファでもう一発や。年増の性欲はたまらんで。

雪歩もめっちゃええわ。普通やったら大声で恫喝して無理矢理奉仕させるとこやけど
おっちゃんは優しいからそんなことせえへんよ。
アイタタタタタ!チンポが!チンポが痛い!言うてな、天使の優しさにつけこむんや。
雪歩は怖い怖い言いながらも大丈夫ですよ~っていって撫でてくれるで。
そんだけでおっちゃんもう…もう…

風呂行くで。また会おうな

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