魔王「ついに来たな…」勇者「好きだ!」魔王「え?」(143)

勇者「やっと会えた…!」タタタタッ ギュウウッ

魔王「離せ!」

勇者「おっと、君程度の力じゃ俺を引き離すことはできないよ」ギュウウ

魔王「く…!?」

魔王「何のつもりだ!」

勇者「ずっと前から、君をお嫁さんにすると決めてたんだ」

魔王「ふざけたことを!」

勇者「俺は本気…」ギュウウ

魔王「くっ!」ボォォッ

勇者「―――っと、さすがに魔力はすごいな」サッ

魔王「ふっ、こんなことで私が動揺するとでも思ったか」

勇者「本気だって言ってんのに」

魔王「貴様の仲間はどこに隠れてる!」

勇者「仲間?いないけど。俺一人で来た」

魔王「何…勇者は四人パーティーのはずでは!?」

勇者「仲間は敢えて収集しなかったんだ。何故だかわかるかい?」

魔王「…!?」

勇者「君と二人っきりになるためだよ…」ニヤリ

魔王「ヒッ…!」

魔王は炎の魔法を唱えた!

勇者「ウッ」

勇者に100のダメージ!

魔王「気色悪い奴め…」

勇者「フ…フフフ…」

魔王「うっ…?」

勇者「お前の魔法…痛気持ちいいぜ…」

魔王「う…うわあああ!」

勇者に110のダメージ!

勇者に200のダメージ!

魔王「ああああ」

勇者に250のダメージ!

勇者「……」

魔王(く…こいつ、ビクともしない…!)

勇者「無駄だよ。君に俺は倒せない」

魔王「な…!」

勇者「俺は誰よりも強くなったんだ。君に見合う男になるために」

魔王「ほざけ…!」

勇者「おっと、いけないな」

勇者は素早く魔王の傍に移動した

魔王「っ!?」

勇者「それ以上魔力を無駄遣いするな」

魔王(こいつ、一瞬で…!)

勇者「君は聡明だからわかるだろ?」

勇者「俺は君の何倍も強い。刃向かうだけ無駄だ」

魔王「………」

勇者「わかったら大人しく…」

魔王「黙れ!」

勇者「……」

魔王「それでも私は、お前を倒すことをあきらめたりはしない」

魔王「この命が果てるまでお前を攻撃し続ける!」

勇者「やれやれ、しょうがないな」クンッ

魔王「――――!」

魔王は気絶した!

勇者「しょうがないな、まったく」

勇者「ま、こういう所も嫌いじゃないけどな」

魔王「…………」

勇者「とりあえず連れて帰るか」

勇者は魔王を連れて去った!

世界は救われた!

勇者「とりあえず王様の所行かないとな」

王様「勇者よ、よくぞ無事で帰ってきた」

勇者「はい」

王様「ところで、そなたが脇に抱えているその者は?」

勇者「魔王につかまっている所を助けたんです」

王様「そうか。我が城で充分に休養させよう」

勇者「あ、いいです。俺が面倒見ますんで」

王様「そうか?」

勇者「じゃあ実家に帰ります」


町人「勇者のお帰りだ――――!!」

  「よくぞご無事で!!」

  「ありがとうございます!!ありがとうございます!!」

町人「その子は一体…?」

勇者「俺の婚約者だ」

町人「えっ、またまた、勇者さま…」

町人「可愛い子ですね!どこにいたんですか?」

勇者「魔王の城の近くで倒れてたんだ」

町人「それはそれは!私の家で休ませましょうか?」

勇者「問題ない。俺一人で面倒見る」

町人「そうですか…」

町人「勇者様って割とお茶目なのね」

町人「婚約者だって!」

町人「だって勇者さまの婚約者って言ったら…ねぇ?」

町人「お姫様よね!」


魔王「う…?」

勇者「目が覚めたか」ニコ

魔王「こ、ここはどこだ!」

勇者「俺の実家」

魔王「な、なんだと!」

勇者「今日から俺と一緒に暮らそうな?」

魔王「な、な…ふざけ…」

ヘロヘロペタン

魔王「あれ…力が…」

勇者「世界が平和になったからお前の魔力もなくなったみたいだな」

魔王「そんな…」

魔王「歩くことさえ…ままならないなんて…」

勇者「お前、普段から魔力使いすぎだったからな。一気に疲れが出たんだろ」

魔王「………」

勇者「大丈夫、これからは俺が面倒見てやるから」

魔王「…っぐ…く…」

勇者「ん?」

魔王「くぅ…」ポタポタポタ…

勇者「どうした?悔し涙か?」

魔王「く……く……」ポタポタ

勇者「…」ポフポフ

魔王「触るなッ!」

勇者「……」モフモフ

魔王「だから触るなと…」

勇者「大丈夫。心配すんな。これからは俺が幸せにしてやっから」

魔王「………貴様に何がわかるっ!」

勇者「今までつらかったんだろ?」

勇者「お前が魔王になった理由…話してくれないか?」

魔王「………」ポロポロ

勇者「俺、お前のこと知りたいんだよ…」

魔王「…………」

勇者「まぁ、いいや。いつか話してくれれば」

魔王「………」

勇者「いきなりはキツいよな。ごめんな」ポフポフ

魔王「……」

女戦士「勇…者…?」

ガシャン!(剣が落ちる音)

勇者「すまない、僕はホモなんだ」

勇者「はい、魔王、ごはんだぞ」

魔王「………」

勇者「どうした?ほら。食えよ。うまいぞー」

魔王「……」

勇者「特別製だぞー」

魔王「……」

勇者「…」ガバッ

魔王「!?」

勇者「そーれ」コチョコチョコチョコチョ

魔王「あ…あはははは」

勇者「食わないと止めないぞー」

魔王「わ…わかったからやめ…!はははは!」

勇者「はい、じゃあ食え」パッ

魔王「ハァ…ハァ…」プルプルプル…

勇者「ほら、うまそうだろ?」

魔王「ふん、缶詰じゃないか。こんな手抜きのもの食えるか」

勇者「お前意外と贅沢だな!ほらあーん!」

魔王「…っ」パクッ…モグモグ…

魔王「…うまい…」パァァ

勇者「はは、そうだろそうだろ!初めて食べたろ?」

魔王(くっ…思わず…!)

魔王(地上のものはこんなに美味いのか…)

魔王「……」パクパクモグモグ

勇者「食べだしたら止まらないな―」

勇者「おなかペコペコだったろ!」

魔王「………」パクパクモグモグ

勇者「照れてるからって無視すんなよなー」モフモフ

魔王「だからそれやめろ!」

勇者「ちょっときもちよさそうだけど?」

魔王「そんなわけないだろ!」

勇者「じゃ、次は風呂だな。一緒に入ろうぜ!」

魔王「……!?」

勇者「何驚いてる?」

魔王「風呂…?なんだそれは?」

勇者「お前入ったことないのか?きったないなー!」

魔王「な…!?」カァァ

勇者「今までどうやって体洗ってたんだよ?」

魔王「水浴びにきまってるだろ?」

勇者「そっかー魔界には風呂という概念がないか」

勇者「ま、とにかく一緒に入るぞ!」

魔王「ちょ、ちょ、なに…」

勇者「ん?」ヌギヌギ

魔王「な、何してる!」カァァァ

勇者「何って服脱いでんだけど」

魔王「バカかお前は!」

勇者「風呂なんだから当たり前だろ!お前もそのマント脱げ」

魔王「な、な、やめ…!」

スポッ

勇者「中は裸か。まあ、無駄な装飾はつけないよな」

魔王「ひ…いやぁ…!」

勇者「安心しろ、手出したりしないから」

魔王「嘘つけ!絶対嘘だ!」

勇者「お前の嫌がることはしないよ」

魔王「……」

勇者「本当だ」

魔王(………)

シャアアア

勇者「気持ちいいか?」

魔王「……///」

勇者「ん?」

魔王「あ、あんまりこっち見るな…」

勇者「何をいまさら。俺に服脱がされた癖に」

魔王「く…」

ブオオオオオ

魔王「……」

勇者「きれいに乾かしてやるからな」

魔王(本当に手出されなかった…)

勇者「気持ちよかったろ?なかなか」

魔王「……」

勇者「…あーもう可愛い」ギュ

魔王「ばっ…ちょ…」

勇者「なんか妹みたいだなー」

魔王「…//」

数日後

魔王「勇者…」

勇者「ん?」

魔王「教えてやる…私が魔王になった理由」

勇者「……」

魔王「親を殺されたんだ」

魔王「父は…私が生まれたときからいなかったが」

勇者「…」

魔王「母は、私を生むや否や妙な施設に送られた」

魔王「そして、そのままそこで…汚い人間の手で」

勇者「……」

魔王「私は…それで人が、この世が大嫌いになった」

勇者「つらかったんだな」

魔王「……」

勇者「でも、それは世界中の人々を滅ぼしていい理由にはならない」

魔王「うん…わかってる」

魔王「今は…この世に優しい人間がいっぱいいることもわかった」

魔王「お前の…おかげで」

勇者「……」

魔王「私は…生きていていいのか?勇者」

勇者「……」

魔王「これから、どうすればいいんだ…?」

勇者「…心配しなくていい」

魔王「……」

勇者「言ったろ?俺が一生面倒見るって」

魔王「……」

勇者「俺は、お前が一緒にいてくれたらうれしいんだ」

魔王「勇者…」

勇者「俺のために生きてくれないか?魔王」

魔王「………」

魔王「わかった…」

勇者「俺は、お前が一緒にいてくれたらうれしいんだ」

魔王「勇者…」

勇者「俺のために生きてくれないか?魔王」

魔王「………」

魔王「断る…」

町人「勇者さま、王様からお手紙がきております」

勇者「ありがとう」

魔王「……」


魔王「勇者、またその手紙を捨てるのか?」

勇者「ああ」

魔王「それで何通目だ?」

勇者「さあな」

魔王「……一回、城にいってやったらどうだ」

勇者「なんで?」

魔王「姫と結婚したくないのか?」

勇者「俺にはお前がいる」

魔王「姫は美人だって聞く。姫と結婚すればいじゃないか」

魔王「そのほうがお前も幸せになれる」

勇者「俺には、お前さえいればいい」

勇者「俺は、お前と二人だけでずっと暮らしたいんだ」

魔王「じゃあ…、どうする?」

勇者「ん?」

魔王「私がいなくなったら、お前はどうするんだ?」

勇者「そしたら、一人で暮らす」

魔王「勇者…」

勇者「そんなこと言うなよ!悲しくなるだろ?」

魔王「……」

勇者「ずっとそばにいてくれよ…?」

魔王「わかってるんだろ?勇者」

魔王「そんなのは、無理だ」

勇者「………」

魔王「勇者!」

勇者「好きだよ、魔王」

魔王「……」



数年後

勇者「魔王、おはよう」

魔王「勇…者…」

勇者「今日もいい天気だなー」

魔王「……」

勇者「今日は何が食べたい?」

魔王「勇……者」

勇者「……ん?」

魔王「聞いて……ほしいんだ」

勇者「ん…?」

魔王「私も…お前が…好きだぞ」

勇者「魔王…」

魔王「約束する…これからも」

勇者「……」

魔王「ずっと…お前の傍にいるから」

勇者「魔王…」

魔王「……」

勇者「魔王…あのな…」

勇者「お前の親を昔施設に連れてったのは、俺の父親だったんだ…」

魔王「……」

魔王「うん……知ってた」

魔王「そういうことだろうって…思ってた」

勇者「魔王…」

魔王「だから…ずっと、面倒見てくれてたんだろ?」

魔王「ありがとな…」

勇者「違う!最初はそうだったけど…」

勇者「ずっと一緒にいたのは、お前のことが本当に好きだからだ」

魔王「……ありがとう…勇者」

勇者「魔王…?」

魔王「……」

勇者「魔王―――――!」

魔王「………」

勇者「あ…ああぁぁ…」

魔王「………」

勇者「あああぁぁ…!」



町人「勇者さま、大丈夫かしらね…」

町人「どうなさったの?」

町人「ずっと大事にしてたあの子が、しんじゃったんだって」

町人「あー…そりゃまあ…仕方ないわよねぇ」

町人「あれから何年か経つもんねぇ…」

町人「猫ちゃんの寿命って、そう長くないものねぇ」

町人「世界を救った日から、ずっと一緒に暮らしてきたんですってね」

町人「それは悲しいわよねぇ…」

王様「勇者よ」

勇者「はい…」

王様「まだ姫と結婚する気にはならんか」

勇者「…はい」

王様「そうか…姫がどうしてもお前を婿にというから、今まで待ってきたが」

王様「もう姫もいい歳だ。あきらめねばな」

勇者「すみません…」

王様「ときに勇者」

王様「愛猫が亡くなったと聞いたが」

勇者「……」

王様「やはり随分気落ちしているのはそのせいか」

勇者「……はい」

王様「そなたには、動物の心がわかる能力があったそうだな」

勇者「はい…」

王様「その猫は、そなたにとって余程大切な猫だったのだな」

勇者「ええ…」

王様「そうか…では、こんなものを見ても気休めにもならぬかもしれぬが」

王様「わが城でな、お前の猫が亡くなった日に生まれた子猫がおってな」

王様「そなたの飼っていた猫に瓜二つなのだ」

勇者「え…」

召使い「この子でございます」

勇者「……!」

猫「…ニャ」

猫「ニャァ…」

王様「可愛らしいだろう?そなたに譲ろうかと思っておったのだが」

勇者「………ま、魔王…?」

猫「…言っただろ…?ずっとそばにいるって」

勇者「……!」

猫「私がお前より先に死ぬなど有り得んよ」

勇者「あ…!」ギュウ…

猫「お前の死に顔を見届けてやるから安心しろ」

勇者「魔王…!」ギュウウ…

王様「魔王?とな…?」

勇者「…ええ。こいつの名前です」

THE END

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