橘純一「うわぁあああああああ!!!」(334)

梅原「な、なんだなんだ大将ぉっ!? どうしたっていうんだっ!?」

純一「うわぁああああああ!! うめ、梅原ぁっ!!!」ぐいぐいぐい!!

梅原「おぉう!? なんだよ橘なぁっ!? 」がくがくがく!!

純一「やばいんだって!!これやばいってこれ!!!」

梅原「だからなにがやばいっていうんだよっ!!」

純一「あ、あのなっ…!!あのなあのな!!」

純一「薫がかわいすぎるんだよぉー!!!」

梅原「お、おうっ!……へ? それだけ?」

純一「それだけって何だよお前っ!! あ、まさか梅原……お前、薫を狙ってるんじゃ……っ」

梅原「は、はぁっ!? 何言ってるんだよ、俺があんなじゃじゃ馬を狙うわけねえじゃねえか…っ!」

純一「ふんっ!」どす

梅原「ご、ごはぁッ!?」がくっ

純一「……確かに、あんな暴れん坊な薫を狙うやつなんてそうそう居ないよな。梅原の言うとおりだよ」

梅原「あ、ああっ……わかってくれたのは嬉しいが、なぜ攻撃を加えた……ッ…」

純一「梅原が言うと、なぜかむかついたからである!」

梅原「そ、そうかっ……だが、ちゃんと効果音を口で言ってただけってのは、大将らしいぜっ…」

純一「……お前こそ、そんなに痛くないはずなのにオーバーリアクション。流石は寿司屋の次男坊だよ…」

梅原「大将……」

純一「梅原……」

がしっ

昼休み テラス

梅原「もぐもぐ……いや、しかしながら大将。いきなりびっくりしたぜ? 発狂して俺のところに来るんだもんよー」

純一「すまなかった……いや、こればっかりは抑えきれなかったんだよ…うん」じゅるる…

梅原「へ~……つか棚町を可愛いっていうんなら、それって好きってことなのか?」

純一「………」

梅原「いやー大将もやっとこさ、ひとりの女に突っ走っていく時がきたとはっ!
   この親友たる梅原正吉、全身誠意真心込めて応援させてもらう──……って、大将?」

純一「……梅原、ちょっといいかな」

梅原「あん? どうかしたのか?」

純一「いや、その薫のことなんだけどさ……可愛いってことは、認めるよ?」

梅原「あれだけ発狂しながら言ってきたもんな。なんだよ、妙に引っかかる言い方だな」

純一「………好きとか、じゃないかもしれない」

梅原「……はい? なんて?」

純一「か、薫を…っ…好き、なのかはちょっと分かんないって言ってるんだ……うん」

梅原「………どういうことだよ、オイ? 好きじゃねえのか棚町のこと…?」

純一「う、うーん……」

梅原「いやいや、なやむところじゃないって大将! だって可愛いって思ってんだろっ?」

純一「うん……」

梅原「……はぁ、じゃあ言い方を変えるぞ? 棚町はどの女の子よりも可愛いのか?」

純一「かわいい!」

梅原「憧れの森島先輩よりも?」

純一「かわいい!!」

梅原「麻耶ちゃんよりもか」

純一「かわいい!!!」

梅原「じゃあ、棚町のこと好きなんだな?」

純一「うーん……」

梅原「なんでだよ…」

純一「いや、梅原が言いたいことはわかってるんだよ。どうして可愛いって思ってるのに、世界で一番可愛いって思ってるのに」

梅原「お、おう。改めて面と向かって言われるとこっちも恥ずかしくなってくるな…」

純一「梅原の純情さはどうだっていいんだよ!! とにかく、この薫が可愛いっていう気持ちはだな……っ!!」がった!

梅原「わーたわーた! わかったって! じゅーぶんわかった棚町の可愛さは!! もうすげーよな! 可愛いよな!」

純一「わかればよろしい……」ごにょごにょ… がた…

梅原「はぁ……じゃあなによ? お前さんはぁー棚町を可愛いって思ってても、」

純一「世界一かわいい」

梅原「っ……」ぴく

梅原「……お前さんが棚町を世界一かわいいって思ってても、だ」

純一「うむ」

梅原「だけどその可愛さと、好きだっていう気持ちには別だっていいたいわけなんだな?」

純一「……そう、なんだよ。わからないんだ、今の僕の気持ちが」

梅原「まぁ、大将にとってそれが物凄く大事な事ってこったろ。そりゃーさ」

純一「……そうなのか?」

梅原「だってそうじゃねえか。可愛いから好きだって認める、それができない訳なんだろ大将は。
   あんだけ棚町とお前さんは近い距離でいながら、そうそう付き合うってことには今まで成らなかった」

純一「うん……」

梅原「そりゃ男なら、一端のモンがついてる男子高校生ならよ?
   悪友って級友ってもんで片付けらんねえこともたくさんあっただろうよ、お前さんたちだと」

純一「……確かに、薫と僕はいっつも一緒にいたし。だからちょっとドキドキすることも時にあったり……」

梅原「んでも付き合うって事にはならなかった。なんでかわかるか橘さんよ」

梅原「それはだな、お前さんが今まで棚町のことを……女として見てなかったからだよ。根本的にな」

純一「根本的に…?」

梅原「いや、付き合いって言ったほうが簡単でいいかも知れねえな。
   つまりはお前さんは、棚町と今いる関係がとてつもなぁーーく居心地がいいって思ってんじゃないのか?」

純一「………」

梅原「だけども、お前さんは今まさに棚町の可愛さに気づいちまった。世界一かわいいんだろ? 誰よりも可愛いんだろ?
   ……そういうのをな大将、一般的には好きって言ってると同じようなもんなんだぜ?」

純一「じゃあ僕はやっぱり……薫のことを」

梅原「好きなんじゃねえかって思うな、俺には」

梅原「しかしお前さんは今の関係が良いって思っちまっている。だけど、可愛いって認めちまったら」

梅原「その先に、何が待っているんか分からなくて。やっぱり好きだと認めたくない!……ってなるわけだ」

純一「すごいな、梅原……どうしてそんなにも僕の事…やっぱり誰にでもわかりやすいのかな、こういうのってさ」

梅原「いやいや、大将。これは俺だからこそ分かるってもんだ」

純一「え、どうして梅原だったら分かるんだ…?」

梅原「なーに言ってんだよ、お前さんの大親友……この梅原さんが対象のことを分からずしてなにが友か!!」

梅原「お前さんが悩み、苦悩し、頑張る姿……実際に見なくとも、心と頭で既にお見通しよお!」がたっ!

純一「うめ、はら……」

梅原「フッ、なんだ橘……俺に惚れたら怪我するぜ?」

純一「ごはんつぶ頬についてる……」

梅原「お、おう……さんきゅっ」がた……

梅原「ハズイ……」もぐもぐ…

純一「───でも、ありがとう。梅原、その言葉しかと僕の心に響き渡ったよ……!」

梅原「ほ、本当か……っ?」

純一「うんっ! ……どうやら僕は、なにかと怖がっていただけなのかも知れないな」

梅原「大将……」

純一「薫のこと、好きだって認めたくなくて……認めてしまったら、今みたいな関係が壊れてしまうんじゃないかってさ。
   一人勝手に悩んでただけだったんだ」

梅原「おう、そうだぜ。男はみな、思いっきり馬鹿でいいけどよ」

梅原「───弱虫になっちまったら、駄目なんだぜ? 大将?」

純一「……うん、そうだね。確かにそうだ」がた…

梅原「行くのか……棚町のところに」

純一「…………」キリッ

梅原「そうか、そうか……そうかっ」

梅原「頑張れよ大将…! 俺は、いつだってお前さんの三鷹で在り続けるからな!!」

純一「ありがとう、梅原。お前こそ頑張ってくれよ」

梅原「よ、よせやいっ! 俺のことは一向に構わずにいけってっ!
   他人を心配している暇なんてこれっぽっちもないだろうがよっ!」

純一「うん……それじゃあ、梅原」すっ…

梅原「おう、頑張ってこい」

純一「…………すぅ…」

純一「──はぁ~~………」

純一「よしっ!」ぱんぱん!

梅原「…気合、はいったか?」

純一「おう! 梅原も、どうか入れてくれ僕に!」

梅原「おうよ! キツイの一発、入れてやるぜっ!」ばしん!

純一「っ……あ、ありがとう梅原…っ!」

梅原「ああ、いいってことよ、俺はここでお前さんの帰りを……いや、」

梅原「お前さんが弱腰になって逃げて帰ってこないこないように、見張っててやんよ」

純一「ありがとう、梅原。お前こそ頑張ってくれよ」

梅原「よ、よせやいっ! 俺のことは一向に構わずにいけってっ!
   他人を心配している暇なんてこれっぽっちもないだろうがよっ!」

純一「うん……それじゃあ、梅原」すっ…

梅原「おう、頑張ってこい」

純一「…………すぅ…」

純一「──はぁ~~………」

純一「よしっ!」ぱんぱん!

梅原「…気合、はいったか?」

純一「おう! 梅原も、どうか入れてくれ僕に!」

梅原「おうよ! キツイの一発、入れてやるぜっ!」ばしん!

純一「っ……あ、ありがとう梅原…っ!」

梅原「ああ、いいってことよ、俺はここでお前さんの帰りを……いや、」

梅原「お前さんが逃げて帰ってこないよう見張っててやんよ!」

純一「梅原…」

梅原「……だから、頑張ってこい」

純一「うん……じゃあ、行ってくる」

梅原「おう」

純一「逃げて帰ってきたら、思いっきり殴ってくれよな」

梅原「ああ、殴ってやるよ」

純一「うん……うん。よし!」すたすた…

梅原「………」

梅原「……あいつも、ようやくここまで立ち直れたんだな。あの時の冬の出来事、
   お前さんにとっては凄く辛かったのによ…」

純一「………」フンスッ すたすた…

梅原「そうやって、前をちゃんと向いて歩いていけてるんだ……もう、お前さんは昔のお前じゃねえ。
   胸張って立ち向かえ、橘。お前なら……できるはずだ」

梅原「───頑張れよ、大将……」

純一「行くぞ、行くんだ僕は……放送室にっ!!!それっ!!!」だっ

梅原「………」

梅原「ん? 放送室?」

梅原「…………」

梅原「……棚町のやつ、放送室にでもいんのかな。そうか、それだったら何ら問題はないよな」

梅原「……」もぐもぐ…

梅原「……」もぐ…

梅原「…………………………」

梅原「ま、まさかっ」がたっ!

梅原「アイツ、とんでもねえコトやろうって思ってんじゃッ───……大将ぉおおおおおお!!」だっ!!

廊下

純一「はっはっ……放送室は、四階にあるっ…!」たったった

純一「……ふぅ、ちょっとゆっくり行ってもいいか。別に走らなくても昼休みはまだ…」

「──ぉおおおおお!!」だだだだ!!

純一「ん?」

純一「誰だろう、後ろから大きな声を出してる奴が……梅原!?」

梅原「あ、いたっ! 大将まてぇええええー!!」だだだだ

純一「なっ……なんだよ、えっ!? 逃げよう!」だっ

梅原「なっ!? 逃げやがっただと…ッ!? ちょ、こら待て橘ぁっ!!」だだだだ

純一(どうして梅原追っかけてくるんだ!? いや、ちょっと待てよ……)


梅原『お前さんが逃げて帰ってこないよう見張っててやんよ!』

純一(…って言っていた、よな? これってもしかして、僕を最後まで激励してくれるってことなのか…っ!)

純一(──ほら、顔がそう言ってるもん。俺に捕まるなよ? 
   決して最期まであきらめずに走りきれって……梅原…お前ってやつは…)

梅原「たいしょおおおおお!!」

純一「っ……わかったよ!!梅原!!」

梅原「はぁっ……はぁっ……え、なにか言ってるけど遠くて聞こえない───」

純一「僕は絶対に!!お前に捕まることなく、放送室で………」

純一「この想いを、この……可愛いって想いを!!!学校中に伝えてやる!!」

純一「お前の気持ち……ありがたく受け取るよ!!!」だっ

梅原「はぁっ……はぁっ……はぁ…」だっだっだ…だ…

梅原「はぁ…はぁ…はぁ…」だ… ぴた…

梅原「はぁー………うん、まったくもって大将の声は聞こえなかったけれどな」

梅原「──アイツはなんら俺が追いかけてきた意味を理解してないことはわかった……ッ!」

梅原(しかもアイツ絶対に俺が予想していることをしようとしてやがる…っ!
   多分だが、アイツは放送室で……棚町の可愛さを公言しようとしてやがるな!!)

純一「はっ!…はっ!…」にこやか

梅原(あの嬉しそうな背中……見覚えがある。俺が中学生の頃、大将とエロ本探しに土手に行った時……)

純一『え? 落ちている本、全部持って行くよ?』

梅原(と、真顔で言った時と同じような気配を感じるぜっ……実際にあの時、一日潰して四十冊ぐらい持って行きやがったしな!)

梅原「……ふぅ」

梅原「……棚町、どうやら無理だったようだ。お前さん、明日から全校生徒から注目の的だぜ…」

梅原「……死ぬなよ、棚町…」

梅原「………」

純一『お前の気持ち……ありがたく受け取るよ!!!』

梅原「──待て、このセリフ。どこかで前に聞いたことがあるような…」

梅原(…そうだ、それこそ中学の時のエロ本探しだ。アイツはたくさんのエロ本を探し当て、
   俺はひとつも見つけられなかった時にいったセリフと同じ…)

純一『お前のエロ本にたいする気持ち、しかと受け取ったよ! だからこれを、梅原にあげるよ』

梅原「そうだ、そうだった……アイツは俺がアイツのために頑張ったら…それに見合ったものをくれたんだよな…」

梅原「いや待て待て、どうしてそのセリフとかぶるんだ……別に似通ったところは特に感じずには……」

純一『ありがとう、梅原。お前こそ頑張ってくれよ』

梅原『よ、よせやいっ! 俺のことは一向に構わずにいけってっ!
   他人を心配している暇なんてこれっぽっちもないだろうがよっ!』


梅原「感じずには…………」

梅原「……そういえば、俺が追いかけてきたって気づいた大将。笑ってたか…?」

梅原「…………もし、大将がなんらかの勘違いをしてて。俺が追いかけてきたのがアイツのためだと思ってたとしたら…」

梅原「うそ、だろ……?」

梅原「いや、まさか…あはは!…いくらなんでも、大将ぉー……それは流石に、なぁー……」

梅原「っ……俺の、告白も代弁しようって……思ってないよなぁ……!」ひくひく…

梅原「それもっ…放送ジャックして、全校生徒に聞かせて……ッ……」

梅原「…………」

梅原「───……」ぐっ…ぐっ…

梅原「梅原正吉、男人生夢一路。この身にかけて誓おう」こきっ…

梅原「棚町、俺はアイツを全力で止める!!!!」だっっ!!!

一階

純一「はぁっ…はぁっ…流石に階段はきついなぁ…あれ? 梅原追いかけてこないなぁ。
   ──まさか、途中で転んで怪我をしたんじゃ……」

純一「……でも、僕は助けに行かないぞ。お前の気持ち、受け取ったんだ」

純一「ちゃんと、きちんとお前の気持ちも……伝えてやるからさ」

ちょっとだけうんこ

純一「…………」キリッ

純一「──さて、さっそく先を急ごう……」だっ

「きゃっ」

純一「ん、ああ!?」どしーん

純一「あたた……あ! す、すみませんっ! 前をちゃんと向いてなくて…っ」

七咲「いたた……あ、あれ? 先輩…?」

純一「な、七咲…!」

純一(今日もなかに水着を着てるのか……)ちら

七咲「はい……いたた、なにしているんですか。先輩は…」

純一「え? あ、うん。ちょっと放送室まで行こうかなってさ……」そわそわ

七咲「はぁ、なるほど……というかどうしてそんなに落ち着きがないんですか。トイレですか?」

純一「いや、違うんだ! トイレじゃなくて、ちょっと後ろから……」

七咲「後ろから?」

「───たいしょおおおおおおおお!!!」

純一「き、きたっ……!? な、七咲そこどいて……!!」

七咲「えっ? あ、ちょ、先輩……っ! 制服を、掴まないで……!」

純一「え、あちょ七咲…っ! 暴れちゃだめだって───」

梅原「はぁっ…はぁっ…いた! 大将って水泳部の七咲!そいつを止めてくれぇ!」

七咲「え、ええ!?と、止めるってどうして……せ、せんぱいっ!? ちょ、そこ掴んだら脱げちゃう…っ」

純一「う、うわわっ! ごめん七咲! ちょ、ちょっと触っちゃった……!」

七咲「っっ~~~!! せんぱいのえっち!!」がつん

純一「ごはぁ!」ぐらぁ…

梅原「ナイス! 七咲、そこから二撃目をくらわるんだ……っ!!」

七咲「え、で、でも先輩大丈夫ですか…っ? 思わず殴ってしまって…!」

梅原「ち、ちがう! 心配すんな! ああ、くそ…そこをどいてくれ…近寄れやしねえっ……そいつはあの棚町と付き合ってきた猛者だぞ…!」

純一「………」

梅原「んなか弱い一撃で、弱る玉じゃねえんだそいつはっ!!!」

七咲「え……?」

純一「───七咲、この僕をぐらつかせるなんて見なおしたよ。流石は水泳部のエースだ」

七咲「は、はい……」

純一「例えばそう……この僕の腹筋みたいにさ、七咲は素晴らしいんだよ」ばっ!

七咲「えっ!? ど、どうして急にお腹を見せっ……あ、え、すごい腹筋…!」

純一「どうだい、僕のことも見直したかい七咲?」

七咲「せ、せんぱい……ちょ、ちょっと…触ってみても、いいですか…?」

純一「いいよ、ほら……」

七咲「す、すごい……ポコポコしてる…!」

純一「ふふふ」

梅原「くそっ…何で急に人集りがっ……やっと抜けれた!ってなにやってんだお前ら…?」

七咲「これ、どうやったらこんな風になれるんですか……?」

純一「…知りたいかい? それはね、ごにょごにょ…」

七咲「んっ…ちょ、せんぱい、息が……」

梅原(おい、なんでイチャコラしてるんだ大将…)

梅原「……って! あっけに取られてる暇はねえ! 大将! お前───」

七咲「……わかりました。では、やってみます」

純一「うん、健闘を祈ってるよ。七咲……」だっ

梅原「あ、ちょ、大将まて───」

ばっ

梅原「───どういうつもりだ、七咲」

七咲「………」

梅原「おいおい……まるでその姿、仕草。俺を先に行かせまいとしてるみてえじゃねえか」

七咲「その通りですよ、梅原先輩」

梅原「っ……どういうことだ、七咲。アイツになにを唆された…っ!」

七咲「………」

梅原「……なるほどな、言えないってわけか」

七咲「……ただ1つだけ言えることは、あります」

梅原「なんだ、言ってみろよ」

七咲「───私はあの腹筋がほしいんです」

梅原「ッ……俺を止めれば、筋トレ方法を教えてもらうって約束をしたな……アイツ、なんて巧妙なッ…!」

梅原(七咲が根っからの脳筋キャラだと知ってての交渉ッ……やるじゃねえか、大将!)

七咲「………」

梅原「何を言っても、どかねえんだな。七咲よお」

七咲「………」

梅原「へっ……なるほどな。語らずとも拳で語れ、か」

梅原「───なあ、七咲。だったら最後に言わせてもらうけどよ、大将の腹筋すごかっただろう?」

七咲「……はい。まさか先輩が、あのように鍛えられていたとは思いもしませんでした」

梅原「そうだよなぁ! でもよ! あれって単純に筋トレでああなったわけじゃないんだぜ?」

七咲「っ……なにか、しってるんですか。あの腹筋の秘密を」

梅原「ああ、知ってるとも。なんせ親友だからよ」

七咲「……。それを教える代わりに、ここを退けと?」

梅原「いや、んな野暮なことは言わねえさ。七咲、ただひとつだけ言いたいことがあるんだよ」

七咲「……それは?」

梅原「ふんっ───あのな、七咲。男はいずれ、生きてるうちに必ず引っかかるものが三つあるんだ」

七咲「………」

梅原「一つは寝ションベン。誰もが経験する過ちだろう?」

梅原「2つ目は女。ひっぱられ付き合わされて、男はつよくなるんだぜ」

梅原「そして最後の3つめ」

七咲「……それは?」

梅原「───腹筋id釣りスレだ!!!!!」がばっ

七咲「なっ……その、腹筋は───」

梅原「しかと見届けろ、七咲。これが合計数四万を超える……成果だ」

七咲「っ……四万…?」

梅原「アイツはそれを二回り、いや……この俺ですらすでに把握できないのかも知れないな」

七咲「未知、数……」

梅原「これは男の勲章だ。馬鹿やってマヌケで、それでいて健気に規則を守り、続けた成果」

七咲「………」

梅原「……それはだな、七咲。女のお前には無理なんだよ」

七咲「っ……わ、私だって頑張れば…!」

梅原「いいや無理だ!」

七咲「っ……ど、どうして…?」

梅原「…お前は極寒の寒さの中、暗い部屋に隣部屋の音に恐怖しながら…全裸で画像待機をしたことがあるか?」

七咲「っ…」

梅原「たとえ釣りだとわかっていても、それを期待しkskさせつづけ、指の痛みに悲しんだことはあんのか?」

七咲「………」

梅原「あえて言うぜ、俺にはある!
   馬鹿でいい、正直者でいい! だが数%でもあるその女神に、俺は心からしがみ付く! それが!」

梅原「この腹筋であり!!!男だ!!!」

七咲「……」がくん…

梅原「───七咲、確かにお前は強い。だけどな、馬鹿じゃないんだぜ」

七咲「馬鹿、じゃない……」

梅原「ああ、そうだ。こんな腹筋後先考えずにつけちまって……何も考えねえ馬鹿がやるこった」すたすた…

七咲「……梅原、先輩は」

梅原「おう」すた…

七咲「…どうして、筋トレを続けるんですか…?」

梅原「……当たり前だろ、七咲」

「───男ってもんは、夢に生きねえでどうすんだよ……」

七咲「………」

たったった…

七咲「……完敗、です。何も出来ずに通してしまいました…せんぱい」

七咲「………」

七咲「……というか、釣りスレってなんですかいったい…」

梅原「……くそう! なんで女子に、しかも後輩に腹を見せなくちゃいけねえんだよ…!」だっだっだ

梅原(どれもこれも橘! おまえのせいだからなっ! 後でどれだけの秘蔵コレクションを…!)

梅原「…いや、それはいい。とにかく距離が空いちまったはずだから、急いで追いかけねえと…!」

「ちょ、ちょっとやめてくださいって…!」
「いいからいいから~! ほら! きなってば!」
「他言無用」

梅原「…ん? あの声は───」

~~~

純一「どうして急に茶道部なんかに…!」

夕月「急にって何さ。これでもアタシら的には、けっこうまともに誘ってるんだぜ?」

愛歌「常識……常備」

純一「すごく強引ですよこれ…! 僕は急がいないといけなくて…!」

夕月「そうやって急いで生きても、なんら特はしないぞ橘?
   ここはゆっくり、茶でも飲みながら話そうやー」

愛歌「特大お菓子……プレゼント」

純一「お、お菓子……っ?」

夕月「おっ。食いついたね? ほらほら、これが特大お菓子だ!」ぐいっ

梨穂子「きゃっ…!」

愛歌「中まで美味しい」

梨穂子「ちょ、せんぱい~っ!? ど、どうして私がお菓子扱いなんですかぁ~!」

夕月「え? だってりほっちってお菓子じゃなかったのかい?」

愛歌「中までクリーミー」

梨穂子「ち、違いますよ~~! もぉう! なにかずんいちも言ってあげてよぉ……ってあれ?ずんいち?」

夕月「あ、逃げやがったなアイツ!」

愛歌「逃げ足立派……流石は橘純一」

梨穂子「いっつも先輩たちが追っかけるから、逃げるタイミングが凄くうまくなってるんですよ~~~っ」

夕月「なるほどなぁ……って感心してる場合じゃないよ! ほら探しに行くよ!」だっだだ!

愛歌「ふふふ」しゅしゅしゅ…

梨穂子「ま、まってください~~」としとしっ


「──ふぅ、危なかったぜ」

梅原「大将は無事に見計らって逃げ出したようだが…
   …俺が見つかってもあの先輩たち、強引に向かってくるからな…うん」

梅原(だがしかし、これで協働関係を行える者が増えた!
   ようは奴を昼休みまで放送室に近づけなければいいって話だからな! 誰がアイツをとめたったいいんだ!)

梅原「……よし、これで大将のルートもだいぶ狭まったはずだ。探しに行くぞ!」

~~~~

純一「はぁっ…はぁっ……はぁー……」すた…

純一「これで、なんとか逃げれたかなっ……ふぅ。本当に茶道部のメンバーはいつも強引だよ…」

純一「だいぶ決めていたルートから外れてしまったようだ……どうしよう、下手に動けが茶道部に見つかる可能性もある。
   だけど立ち止まってれば梅原に見つかる可能性も……」

純一(七咲は頑張ってくれると思うけど、流石に梅原には勝てないだろうしな……)

純一「……仕方ない、ここはあれでいくか」きりっ

二階 教室

「ふんふーん…♪」

純一「ただいま!」がらり

田中「わ、わわっ…! びっくりしたぁ~…ど、どうしたの橘くん…?」

純一「……梅原の影は、なし。と」きょろきょろ

田中「…?」

純一「じゃあさっそく、田中さん!」

田中「ひゃ、ひゃぁい! な、なにかなっ?」

純一「前の約束、憶えているかな!」

田中「や、約束……? え、もしかして、『あれ』のことかな……?」

純一「うん! あれだよ! どうか僕にまたあれをしてくれないかな!?」

田中「え、ええーっ……で、でもあれは色々と準備とか、用意とかしなくちゃいけなくて───」

「ちぃーす、田中さんいるー?」

純一「え、あ、香苗さん……!」

香苗「ん? お、橘くんじゃん。なんかさっき桜井があんたのこと探してたよー?」

純一「そ、そうなんだ……というかその持ってる奴! なにかな?」

香苗「え? これ? これはね、文化祭ように使う───」

香苗「───化粧道具と、女物のかつらだよ」がさり

純一「…………」

香苗「…橘くん? どうかした?」

純一「田中さん……」

田中「っ……えっと、本気なのかな…?」ちらっ

香苗「???」

純一「うん、本気なんだ。あの時田中さんと、薫が冗談だやったとき……言ってくれたよね?」

田中「う、うんっ…確かに、あのときはびっくりしすぎて……あの、その、勢い余って……」

純一「いや、いいんだ。僕は気にしてないかなら、だからさ。あの時の願いを叶えてあげるよ」

田中「………あの、願いを?」

純一「うん、そうだよ───」

純一「───もう一度、僕を綺麗に女装してくれないかな」

数分後

田中「───出来たよ、橘くん」

「……本当に? 前よりもはやいけれど」

田中「色々と以前からどう化粧してあげようとかって、考えてたから。
   …ハッ!? わ、わたしったら夢中になって……! ごめんね、大丈夫だった橘くん…っ!」

「うん。大丈夫だったよ、ありがとう田中さん」

田中「う、うん……とりあえず伊藤さん、どう思うかな…?」

香苗「……本当に橘くんなの?」

「そうだよ、僕は橘純一───……いや、ここはもうすでに」

純子「橘純子と名乗って方がいいのかも知れないね。香苗さん」キリ

香苗(あ。女の子っぽく凛々しい……)

田中「わわっ…やっぱり橘くんって、化粧の伸びがすごいよね~!
   どんなお肌の手入れをしているのっ?」

純子「え? いや、特には……あ、でも妹と同じボディソープ使ってるけど。そのせいかな?」

田中「そうなんだ~! じゃあさじゃあさ、今度そのボディソープどんなのか教えてくれないかな…!」

純子「うん、いいよ。それじゃあ今度にでも、一緒に買いにでも行く?」

うんこ

田中「いいよ~! それじゃあ薫も呼ばないとね!」

純子「当たり前だよ! 田中さんと二人っきりじゃ、薫に変な誤解を与えちゃうしね」

田中「あはは。ほんっとに橘くんって、薫のこと大事に思ってるよね~」

純子「…ま、まあね」てれてれ…

田中&香苗(照れてる顔が可愛い…)

香苗「……あの~、そんでもって田中さん。アタシの要件だけどさ、いいかな?」

田中「あ、ごめんなさい…! いいよ、なにかな…?」

純子(……よし、そろそろ僕も行くかな。どうして急に女装して欲しいって言って、
   なにも理由を聞かずにやってくれたかは分からないけれど…ま、結果オーライってことだよね!)

田中(また、色々と面白いことやってるんだろうなぁ…)
香苗(ま、桜井の幼馴染だしなぁ……)

純子「じゃあ、梅原がここに来ないうちに……」そそくさ…がらり

梨穂子「──くんくん…やっぱりここにずんいちが居る気がする~~~……ってあれ?」

純子「………」ダラダラダラ…

梨穂子「あ、ごめんなさい~…私ったら前を向いてなくて~」

純子「あ、いえっ……」そわそわ

梨穂子「……うん?」くんくん…

純子「え……あ、ちょ、やめて…! 首の匂いを嗅がないでっ…!」

梨穂子「むぅ~? あれれ、どうして貴方から……純一の匂いがするの?」

純子「っ! 」

純子(ぼ、僕の匂いだって…!? いやいや、何を言ってるんだ梨穂子は…そんなの匂いだけで分かるもんじゃあ…っ)

梨穂子「……今日あった時、純一がお昼に食べてたものはオニギリとパックのジュース。そんな匂いがしてた……
    ……それが今、貴方からもおんなじような匂いがしてる」

純子(あ、あたってる!ぼ、僕が昼ごはんで食べてたものだよ!)

梨穂子「それに、この純一の匂いがする貴方は……」じっ…

純子「え、えっと……その、ね? あはは…」

梨穂子「……ずんいちなの?」

純子「………っ!?」

梨穂子「…………」

「──おっ。りほっちー! 教室に居たかいー?」

また寝ちまった…
今から書く

梨穂子「あ、せんんぱいたち……」

愛歌「世界はひろい……見つからずにはや十数分とたつ」

夕月「いや~…アイツも褒めてやりたくなるぐらいに、姿を消すのがうまいよなぁ最近よお」

愛歌「脱兎の如し」

夕月「だよなぁ。逃げ足も早いしさ……ん? あれ? この人は?」

梨穂子「……えっと、その…」ちら…

純子「っ………」

純子(も、もうだめだぁ~……見つかってしまった! しかも僕が女装しているところを!
   これは後にこの先輩二人から、脅されまくるぞ……まいったなぁ…)どきどき…

夕月「なんだか気に食わない感じがするね、愛歌よ」

愛歌「致し方なし……それもまた人生」

夕月「おっ。いいこと言うねぇ~」

夕月「しかしながらそこの見知らぬ婦女子、いやー…ん? どこかでみたことあるか?」

純子「…っ」

梨穂子「……あの~」

愛歌「どうしたりほっち……知人?」

梨穂子「…………」

純子「っ…っ…っ…」どきどき…

梨穂子「───いえ、違います~…初めてあった人なんです」

純子(り、梨穂子っ……!)パァアア…!

夕月「ふーん、そうかい…そりゃ失礼したね」

純子「……」ぶんぶん!

愛歌「……」じっ

純子(っ……なぜかすっごく見られてる!)

愛歌「……」

夕月「どうした愛歌?」

愛歌「いや……それもまた人生」フッ…

夕月「?」

梨穂子「あ! そういえばですねせんぱいたち! あっちにずんいちの匂いがしました~!」

夕月「それは本当かい!? りほっちの橘を探す嗅覚は、警察犬を勝るからね! 行くよ二人共!」ばっ

愛歌「合点承知」しゅば!

梨穂子「は、はいっ……」

純子「……り、梨穂子…!」

梨穂子「っ……どうして、そんな格好してるのか私はわからないけれど…」

純子「……。これは、大切なことなんだ、梨穂子。僕にとってとても」

梨穂子「そう、なんだ…。ずんいちにとって、ううん違うね」

梨穂子「ずんこちゃんにとって……とってもとっても、大切なことなんだよね?」

純子「…」こく…

梨穂子「……私、お馬鹿さんだから。頭のいいずんこちゃんが何を考えてるかわからないけれど」

梨穂子「私は、いつだって貴方の味方……だからねっ」したっ どすどすどす!

純子「梨穂子……」

純子「……ありがとう」ぐっ

純子「………」ひゅううー…… ざわぁー……

純子「……もう、後戻りはできない。ここまでやってしまったのだから、僕は突き進むしか無い」

純子(七咲、梨穂子……二人の手助けを借りて今の僕がいる。
   これはとてもとても大切なことなんだ)

純子「………行くよ、僕!」すたっ

すたすた…

純子(この姿になれば、堂々と道の真ん中を歩いていける……そして、走ってしまえば梅原に疑われる可能性がある)

純子(ここは急ぐよりも歩いて遠回りしたほうがいい……)すたすた…

純子「っ………」

「──はぁっ…はぁっ……!」だっだっだ!

純子(あちら側から走ってくる姿は……梅原!)

梅原「はぁっ…はぁっ…くそ! アイツ何処に行ったんだ……まさか、教室に戻ってるとかか?」だっだっだ

純子(っ……流石は親友。僕の行動パターンを読んでいる……だが、ここは無視して通らせてもらうよ!)すたすた…

すっ…

純子(よし、すれ違った……!)

梅原「………」ぴた

純子「……ん? 足音がとまった…?」

梅原「………」すたすた…

純子(え、あっ、あれっ…? なんだか足音が僕の方に向かって───)

梅原「……あの、そこの女子生徒さん」

純子「っ……な、なんでしょうかっ…?」

梅原「ちょっと、こっちを振り向いてもらっても構わねえかい」

純子「………」どきどき…

純子「…なにか御用ですか…?」くるっ…

梅原「………」じっ

純子(う、ううっ…すっごく見られてる、見られてるよ…! あわわ…!)

梅原「少し、お聞きしたいことがあるんだが。いいか?」

純子「は、はいっ…」あたふたっ

梅原「───今日の放課後、なにかご予定とかありますか?」キリ

純子「……へ?」

梅原「………」

純子「えっ、あっ、いやっ………なにをいってるんですか…?」

梅原「デートのお誘いです」

純子「で、デート……ッ?」

梅原「はい。今は少し、ちょっとばかし忙しい身でありますが……それが終わり次第にて、どうか放課後にあなたと
   放課後でーとをしたく思っているんです」

純子「…」ぽかーん

梅原「ご用事があるのなら、いくらでもそちらのタイミングでよろしいです。
   俺の教室はそこの二年の場所です」

純子「は、はぁ……」

梅原「……どうですか? 俺と放課後にて甘い一時でも」

純子(……な、何を言ってるんだコイツは…!? 僕をからかっているのか…!?
   いや、でも、まさか……こいつ、本当に僕だって気づいてなくて普通にナンパしてるのか…っ?)

純子(な、なんてやつだ…! これだけ僕がお前のために思いを伝えようと! 
   お前から頑張って逃げて、放送室まで向かおうとしているのに……!!)

純子「っ………」

純子(見損なったよ梅原! お前ってやつは……お前ってやつはっ……あ、あれ?)どきどき…

梅原「………」じっ…

純子(な、なんだろう…この感じ。え、いや…どうしてだか………ちょっと嬉しい、のか?)どきどき…

純子(こ、こいつが好きな人のことを放っておいてでも、僕をナンパしていることが……
   ……僕にとって、嬉しいことなのか……っ?)じっ…

梅原「っ……そんなに、見つめるなよ。照れちまうから…」ぽりぽり…

純子「あ、すみませんっ……」

梅原「あ、いやっ…! こっちこそすまん! 雑な返しをしちまって…!」

純子「あ、いえっ……そのほうが、貴方らしい喋り方だって思います…」

梅原「え…?」

純子「はい…ですから、無理せず普通の会話をしてください……」

純子(な、何を言ってるんだ僕はぁー! 違うだろう! そこは断って、すぐさまここから立ち去るのが先決じゃないか!?)

梅原「……お名前を、お聞きしてもよろしいですか───いや、違うな」

梅原「名前を、聞いてもいいか?」

純子「っ………」ドキン

純子「っ~~~~~……!!!」ばっ

梅原「……どうしたんだ? 急に俯いて……大丈夫か?」

純子「な、なんでもない! なんでもないなんでもない!」

梅原「お、おうっ…」

純子(な、なんだよ…! 本当になんだっていうんだ!
   僕ってばとうとうおかしくなってしまったのかっ!? いやだ! 僕は紳士なんだよ!)

梅原「……あ、そういえば橘探さないといけなかったんだ」

純子(っ……そうだよ、僕は梅原から追われてる身なんだっ…こんなところでその本人と油を売っている暇はないよ…!)

純子(……僕を追って、梅原は来てくれた…僕のために、僕のために……)

純子「──ちょっと照れるんじゃない!!ぼく!!!」

梅原「!?」

純子(くそっ……追ってきているのは、僕の激励のためだろっ。なんかロマンチックなことでもなんでもないんだから…!)

純子(だめだ、もう頭がおかしくなりそうだっ…ここはもう、無理矢理にでも走って逃げるしか無い…!)

純子「っ……ごめんなさい、誘ってくれたのはう、嬉しかったけれど。今日は開いてないんです放課後は」

梅原「っ……そう、か。いや、無理に誘ってるわけじゃねえから、きにはしないでくれよな」

純子「はい…じゃあ、それでは…」すた…

梅原「───でもよ!! また誘ってもいいか!!」

純子「えっ……?」くるっ…

梅原「また、お前さんを見かけた時……またデートに誘ってもいいかって言ってんだ!
   それをゆるしてくれたら、俺は嬉しい!」

純子「………」

梅原「だめ、か…?」

純子「…………」

梅原「…………」

純子「………────い、」

「───なにしているの、貴方達…」

梅原&純一「えっ…」

「廊下の真ん中で、小芝居。見てるこっちが恥ずかしくなってくるんだけど…」

絢辻「ねえ、二人共?」どん!!!

梅原「あ、絢辻さん……」

純子「」

絢辻「こんにちわ、梅原君。いきなりだけど、高橋先生が貴方のこと探してたわよ?」

梅原「え、俺のことを?」

絢辻「うん。なにやらとっても怒っていたわ…少し聞いたところ、梅原君。
   いま校舎内を爆走してるんだって?」

梅原「も、もしかして……」

絢辻「その予想通りだと思うわー……多分、誰かが高橋先生に報告したのでしょうね。だからすぐさま私のところにきて」

高橋『梅原くんを見かけ次第、生徒指導室に呼ぶこと!』

梅原「あ、あわわ…!」あたふた…

絢辻「…どうして校舎中を走りまわっているのかは分からないけれど、梅原君。
   ここはもうちょっと静かに行動してみたらいかがかしら?」

梅原「わ、わかった……それと、絢辻さん…!」

絢辻「うん、わかってるわ。ここでだれとも出会わなかった、梅原君という人物に会った記憶はこれっぽちもない
   ……これでいいかな?」

梅原「絢辻さんっ…!」

純一「」

絢辻「ふふっ、いいのよ。別に……だって、別にそれよりも気になることがるんだもの」ちら

純子「っ」

絢辻(───だんだんと読めてきたわ。コレ、芝居じゃなくて本気ね?)

純子(し、視線だけで語ってきてくよ絢辻さん…!凄い! それがわかる僕も大概だけど…!)

絢辻(なにをやっているの、貴方は。本当に、ほんっとぉーに貴方って人は……変態ねッ!)

純子(ご、ごめんなさいっ……)

絢辻(しかも───……デートに誘われて、なんなのその表情は? え、もしかして…嬉しかったりしているの?ん?)

純子(っ………)

絢辻(相当な変態だって知っていたけれど、まさかそれほどまでだったとはね……気持ち悪い)

純子「………」びくん!

絢辻(あら、泣きそうなの? クスクス…変態で気持ち悪いのに純情なのね、貴方って)

純子「………」しくしく…

梅原「ってうお!? どうして急に泣き出してるんだ……っ?」

うんこすんまそん

いまからかく

純子「ひっく……ぐすっ…じゅるるっ…」

梅原「お、おいっ…?大丈夫か…?」

絢辻「───あ、梅原君! あそこの角から高橋先生が…!」

梅原「えっ!? 本当か…! くそ、そしたら絢辻さん後は頼んだぜ!」

絢辻「わかったわ、任せてちょうだい」

純子「えっ、あっ……うめ…!」

梅原「……すまん、色々と聞きたいことはあるんだが。俺は先を急ぐんだ」だっ

純子「っ……うめ、はら……!」

梅原「………」たったった…

純子「………置いていかない、で…」

絢辻「────まるで別れを惜しむ彼女のようね、橘くん」

純子「っ……絢辻、さん」

絢辻「ふふっ、なによ。あたしになにか文句でもあるのかしら?」

純子「ぐすっ……いや、ないよ。これは僕のせいだからね…」

絢辻「なによ、えらく聞き分けがいいじゃない。諦めたのかしら?」

絢辻「言い訳をしないの? どうしてそんなことをしなくちゃいけなかったのか言わないの?
   それと、梅原くんとイチャイチャしていたことに弁解は?」

純子「……ないよ、絢辻さんが見た通りが事実だから。なにも僕が言うことはないんだ」

絢辻「……ふぅん。えらくつまらない人間になったわね、橘くん。見損なったわ、いや違うわね」

絢辻「とてもいじり甲斐がなくなった人に成り下がったわね、本当に」

純子「………」

絢辻「貴方はどれだけあたしに見破られるってわかってても、誤魔化してあたふたと慌てる。
   そんな人間だった、でも……今の貴方はなんら魅力もない、ただの馬鹿」

純子「……ただの馬鹿、か。あはは」

絢辻「なにがおかしいのよ」

純子「ねえ、絢辻さん。あのさ」

絢辻「………」

純子「男っていうのは、いつだって馬鹿なんだよ?
   なにがあっても、こうしなきゃいけないってわかってても……それが、」

純子「例え裏切りでもあって、自分を追い込むことになったとしても」

純子「それが正しく、自分が突き進む道だとわかっていたのなら……」

純子「男は黙って、道を進んでいくんだ」

絢辻「意味がわからないわ。もうちょっと頭よく喋ってちょうだい」

純子「ふふっ……それは無理な相談だよ、絢辻さん」すっ…

絢辻「っ! ……どこ行く気? ここから一歩も生かせないわよ、貴方は今からあたしの管理下に置くんだから」

純子「どうして?」

絢辻「こんな変態をほうっておくわけにも行かないでしょう、ちょっとは考えなさい」

純子「いいや、僕は先に進む。やることがあるんだ」

絢辻「だめ。いかせない、貴方はこれからあたしと一緒に事務室で文化祭の手伝いをしてもらうわ」

絢辻「……その格好のままで、ね」

純子「恐いね、やっぱり絢辻さんはかっこよくて恐い人だ」

絢辻「……」

純子「──……絢辻さんは、本当に全てをわかっててそんなことを言ってるんじゃないかな?」

絢辻「っ……」

純子「──聞いてたね、僕と梅原のテラスでの会話を」

絢辻「……なんのこと、かしら」

純子「ただ妄言だよ。気にしなくていいから、だけど……」

純子「文化祭の実行室って、一階のテラス側にあったよね」

絢辻「…………」

純子「そして、絢辻さんが持っているその弁当の袋……どこで食べてたのかな?」

絢辻「………何が言いたいのかしら」

純子「僕は放送室へと向かう。邪魔はさせない」

絢辻「っ………退学になる可能性もあるわよ?」

純子「いいさ、この思いはたったそれだけの弊害なら、滞り無く突き進むよ」

絢辻「……本当に、馬鹿ね。もっと単純にできることがあるでしょう」

純子「今の僕には、これしかできない」

絢辻「………」

純子「……ありがとう、わざと厳しいこと言ってくれて。
   ちょっと泣いちゃったけど、ちゃんとわかってたよ絢辻さんの気持ち」

絢辻「………」

純子「ちゃんと僕の事を考えて、言ってくれた言葉だって。
   この僕を止めるために、さり気なくやってくれた……絢辻さんらしい優しさだ」

絢辻「変に勘ぐらないでちょうだい。あたしは、別にそんなことは考えてない」

純子「……そうだね、絢辻さんはそんなことを言う人だ」

絢辻「………」

純子「僕は先に行くよ。絢辻さんが止めようとしても、先に進んでいく」

絢辻「…行かせないわよ、あたしはクラスメイトを退学させようとする事実を見逃す訳にはいかないの」

絢辻「学級委員長という名に、かけて」

純子「………」

絢辻「………」

純子「──そっか、絢辻さんは本当にかっこいいや。頭が良くて、僕みたいな馬鹿とは本当に違うね」

絢辻「褒めても駄目よ。橘くん」

純子「うん? そうだね、でもさ……だからって、頭がよくてもいいってことにはならないよ」

絢辻「……どういう意味、かしら?」

純子「強いってことにはならないってことさ、ここぞという時に」

絢辻「……馬鹿な貴方は、強いとでも言うのかしら?」

純子「うん、僕は強いよ。絢辻さんでも敵わないだろうね」

絢辻「へぇー……大した自信だこと。じゃあどうするのかしら?
   走って逃げるの? 追いつく自信はあたしにはあるのだけれど」

純子「それは無理だよ。いくらなんでも絢辻さんに足の速さでは敵わないから」

絢辻「じゃあ、どうするのかしら。このままただ、時間が消耗していくだけよこれって?」

純子「うん、だね……だからもう、行かせてもらうよ」

純子「……すうううううううう──」

絢辻「っ……なに、を」

純子「───うめはら僕はここにいるぞぉおおおおおおおおおおお!!!!」びりびり…

絢辻「なっ……」

純子「ふぅ……よし、これでいいかな」

絢辻「あ、貴方は……なに、を…!」

純子「うん? どうかしたのかな、絢辻さん」

絢辻「なにをしているの…っ! それじゃあ、その姿である貴方の正体が…!」

純子「バレるだろうね、そして梅原に追いかけられるはずだ」

絢辻「……何を、考えているの? おかしくなってしまったのかしら?」

純子「おや、絢辻さん。絢辻さんにもわからないことがあったんだね、びっくりだよ」

絢辻「っ……バカにするのもいいかげんにしてちょうだい。貴方、本当に……!」

純子「───馬鹿にはしてないよ。ただ、馬鹿な僕が君を巻き込んだ」

絢辻「え…?」

純子「絢辻さんはとっても頭が良くて、スタイルがよくて、髪がきれいだけど……それでも、馬鹿な僕に巻き込まれた瞬間」

純子「絢辻さんもまた、馬鹿の一員になるんだよ?」

絢辻「どういうこと───」

「ここかぁあああああああああ!!大将、お前っ……ってうぇええええええええ!?」

純子「ん、やっときたか。梅原……よっ!」ばさり

梅原「お、おまっ……カツラ!? いや、違う! 違う違う! よく見れば確かに目元とか大将そっくりだとか、
   そんな風に思っちまうけどッ……うわぁあああああああ!!!?」

純一「いきなり大声出すなよ……びっくりするじゃないか」

梅原「お前こそなにやって……いや! そんなことを当然とやってのけるのが大将だったな……」

純一「あはは。流石はうめはらだ、僕の事をよくわかってる……でも、ナンパだけはしないでくれ…」

梅原「それをいうなぁああああああああ!!!」

絢辻「……橘くん、一体それでなにがしたかったのかしら?」

純一「うん、梅原を呼んだんだよ」

絢辻「見れば分かる。それがなんの解決策になるの?」

純一「…えっと、そうだね。もうすぐ来ると思うよ?」

絢辻「くる…?誰が?」

純一「誰って、当たり前じゃないか。──梅原って言葉に反応するのは、この学校で一人だけじゃないじゃないか」

絢辻「…………っ、まさか───!」

純一「うん、そのまさか」

「うめはらぁあ…んくぅうん……?」

梅原「え、あ、この声は………」

高橋「見つけましたよぉ……なに、やってるのかしらぁ? 先生、いろんな人から言われてずっと探してたのよぉ……」

梅原「ひぃいいいっ!?」だっ

絢辻「っ……橘くん! 貴方って人は……梅原くんをなんだって思ってるのよ!!」

純一「トモダチだよ、そして親友だ。裏切ることもあるし、期待させて楽しませることもある。
   だから頼るんだ。馬鹿な僕らは馬鹿やって先へと進んでく、それが男だよ」

絢辻「くっ……」

純一「そして絢辻さんならわかってるんでしょう?」

高橋「──橘くぅん…君のことも聞いてるわよ…! 貴方も校舎中を走りまわってるそうね…!」

純一「……僕も高橋先生に狙われていることを。そして…」だっ

絢辻「あっ……」

純一「──頭のいい絢辻さんは、世間体を気にする絢辻さんは……」

純一「……僕らの馬鹿な行動に、高橋先生の前ではついてくることはできないだろう……っ!!」

絢辻「ぐっ……くぅうっ…!」

純一「絢辻さんは馬鹿の一員になれる度胸がない!強くはない!
   だから、馬鹿な僕は先へと進めるんだ!!」

絢辻「たち、ばなくんっ……貴方!!絶対に後悔することになるわよ……っ!!」

純一「知らないよ! だって馬鹿だもの!! そんなあたり前のことは僕にはわからないからね!!」

絢辻「っ……本当に、貴方って人は…!」

純一「あはは! それじゃあ絢辻さん、どうか僕の放送を楽しみにしててね!じゃあ!」だだだ…!

絢辻「………」

高橋「あ、ちょっと…! ああ、もう! 絶対に指導してあげるんだから…!」だっ

絢辻「………はぁ」

絢辻「……なんていうことかしら、本当に。このあたしが橘くんに負けるなんて」

絢辻「………」

絢辻「…まあ、頑張りなさいよ。応援はしないけど、願っておいてあげるから」

絢辻「……幸せものね、棚町さんも」すたすた…

三階

純一「はぁっ…はぁっ…なんとか三階までこれたよ…」

純一「どうしようっかな……僕が思うに、一番の難所はここだと思うんだよね」

純一(──三年教室ゾーン……)

純一「……でも、ここで怖がっててもしかたないよ。僕の敵はいっぱいいるんだから」

純一(梅原に、茶道部に、高橋先生……あとは絢辻さん。なんとかここまで凌げたけど、
   みんなそれぞれ考えて行動したら、必ず僕のところにこれるもんな…)

純一「……よし、頑張っていくぞ!」

「…あら、橘──くんじゃないわね、ごめんなさい」

純一「え……あ! 塚原先輩!」

塚原「………」

純一「こんにちわ!」

塚原「こ、こんにちわ……あのその、いいかなちょっと聞いても」

純一「は、はい…? どうかしましたか?」

塚原「えっと、どうして……女物の制服を着ているのかしら?」

純一「えっ? あ、ああ! しまった! カツラを落としちゃったのか……!!」

塚原「どうやらちょっと化粧をしてるみたいだし……なるほど、文化祭か何かの出し物なのかしら」

純一「え、あ、は、はいっ…! そうなんですよ! ちょっとそれで準備してましてですね…!」

塚原「ふーん。あ、でもそれもいいけれど。安易にあまりここの階に近づいちゃ駄目よ?
   なんてたって、あの子がいるんだから」

純一「あのこって……あの人ですか?」

塚原「そう、あのこ。名前を言わなくたって、君ならわかるでしょう」

純一「は、はい……」

純一(森島、先輩……!)

塚原「今はちょうどどっかに行ってるみたいだし、今のうちに教室に戻りなさい。ややこしいことになる前にね」

純一「………」

塚原「……ん? どうかしたのかしら、橘くん」

純一「ありがたいお言葉なんですが…それは出来ません」

塚原「…どうして? あ、もしかしてあの子にイジられたくてここにきてるのかしら。それだったらごめんなさい」

純一「ち、違います…! そうじゃなくて、僕は先へと進まなくちゃいけないんです!」

塚原「先へと?」

純一「はいっ! この上の階にある……放送室まで、僕は急いでいかなくちゃいけないんです」

塚原「……その格好で?」

純一「こ、この格好のままで…!」

塚原「……」

純一「……」どきどき…

塚原「──全くもってわからないけれど、わかったことにしてあげるわ橘くん」

純一「ほ、本当にですか…っ? 止めたりとか、駄目だとか行ったりしないんですか…!?」

塚原「しないわ、これでも君のことは大きく評価してるもの」

純一「塚原せんぱい…っ」

塚原「そ、その格好でウレシそうにするのやめてくれるかしら……」

純一「わ、わかりました! とりあえずは僕は先へと急ぐので…!」だっ

塚原「あ。ちょっと待ちなさい、橘くん」

純一「えっ…?」

塚原「その格好。どうにか着替えてる時間はやっぱり……ないのかしら?」

純一「ええ、ちょっと急いでて……」

塚原「そう、ならちょっと頭をかしてちょうだい」すっ…

純一「え、あ、その……こうですか?」

塚原「ええ、ありがと」すっすっ…ぎゅっ

塚原「──うん、これでよし。一応、君の髪の毛を結んであげたわ」

純一「は、はぁ……」

塚原「それで幾分ましになるんじゃないかしら。まぁ応急処置だけどね」

純一「とりあえず……あ、ありがとうございます!」

塚原「いいのよ。気にしないで」

純一「あ、でも…これって塚原先輩の髪留めなんじゃあ…?」

塚原「ええ、そう。だめだったかしら?」

純一「だ、だめなんかじゃないです! 家宝にします!」

塚原「ふふ、面白いこと言うわね。でも、それはちゃんと後で返してちょうだい」

純一「あはは…! か、返すのか……」ごにょごにょ

塚原「…うん、それじゃあ私もちょっと用事があるからこれで。気をつけてね、橘くん」

純一「あ、はい…! 先輩こそ、お気をつけて!」

塚原「何に気をつけるのかしらね、ふふ。またね」

純一「また…!」ぶんぶん!

純一「……いやー、やっぱい塚原先輩は良い人だなぁ。見た目によらず、すっごく優しい人だよ」

純一「よし、じゃあ張り切って行くか…!」すたすた…

純一「……ん? あの二人組は……」

夕月「───」
愛歌「───」

純一「!」ばっ

純一(やっぱりっ……どうしよう、こっちに向かって歩いてくるよ…!)

純一「ど、どこか隠れる場所は…!」きょろきょろ…

純一(だめだ、三年の教室しかない…! 入り込むべきか!?)

純一「っ………」

純一(──だめだ、このクオリティの女装だとただの変態扱いされそうだ…ッ!
   致し方ない、ここは全力で走って、なんとか二人の視界からにげだし───)

「──ひびきちゃんの、におい…」

純一「──え…?」

「近くでひびきちゃんのにおいがする……」がらり

純一(三年の教室のドアが空いて────)

扉|^o^) ヒョコ

純一「う、うわぁあああああ!?」

ちょとタバコ買ってくる
よじまえには戻ります

扉|^o^)「……」

三(^o^) スッ

純一「……も、森島先輩…?」どきどき…っ

(^o^)「…むむむ? その声質は、橘くんかしら?」

純一「え、あっ、はい…! よ、よくわかりましたね!」

(^o^)「わお! そうね、私よく分かったわねっ。うんうん、やっぱりそうよね~」

ξ^o^ξ バサァ…

純一(あ、ポニーテールにしてたんだ……)

ξ^o^ξ「こんなところでなにをしているのかしら? しかもよく見てみると……女の子の制服じゃない!」

純一「えっとですね、ちょっと色々とわけがありまして…!」

(^o^)キュッ

純一(あ、また結び直した…)

(^o^)「ワケってなにかしらっ?とっても大切なことなの?」

純一「ええ、まぁ……」

(^o^)「へ~。橘くんって、本当にいっつも楽しそうよね~! 羨ましい限りだわっ!」

純一「あ、ありがとうございます」

(^o^)「うんうん!」

純一(……って、こんな風に談笑している暇なんて無いよ! 今にでも茶道部先輩たちが近くにいるっていうのに!)

(^o^)?

純一「せ、先輩…! とりあえず、僕はこれで…!」

(^o^)「あれっ? もういっちゃうの?」

純一「はいっ! ちょっと急いでここからいなくならなきゃ…!」

(^o^)「わお! なんだか追われてる感じかな、もしかして?」

純一「え…わかり、ますか?

(^o^)b

純一「お、おおう……そ、そうなんですか」

(^o^)「ん~~~そうね、正直私も今ひまだしさ。ちょっと橘くんを手助けしてあげてもいいよ?」

純一「ほ、本当にですか…っ!?」

三(^o^)三「そのかわり、だけどね」ずいっ

純一「は、はいっ…? な、なんでしょうか…?」

(^o^)「私を心底楽しませる行事を後に控えさせること、これを誓ってくれないかなっ?」

純一「楽しませる……行事…?」

(^o^)「そうよ! 私を楽しませること……それを誓ってくれるのなら、君が抱える不安を取っ払ってあげるわぁっ!」

純一「………っ…」

三"(^o^) ドウスルノー

(^o^)"三 カシラネー

ξ^o^ξ バサァ…!

純一(こ、ここはいっちょ森島先輩に頼ってみるべきか…?)

ヾ(^o^ξ

純一(楽しませるって、ことは中々難しいけれどっ…でも! ここはわらにも縋る気持ちで頼るべきだよね!)

ξ^o^)ゞ

純一「───も、森島先輩……っ!!」

ξ^o^ξ「あら、決まったのかしらっ? どうするの橘くん?」

純一「は、はい! 決めました! どうか僕を、この不安でしょうがない僕を……」

純一「……助けて、ください!!お願いします!」

ξ^o^ξ「……」

純一「…………」

(^o^ξ「オーキードーキー……たしかに受け取ったわ、橘くん…君の願い、聞き入れた」

純一「ほ、本当にですかっ…? そ、それじゃあ早速、どのように困ってるかを───」

(o^ξ「ううん、それは言わなくてもいい。大丈夫よ、まかせなさい」

純一「え、でもっ…!」

(^ξ三)「時間が……時間がないのでしょう? だったらもう言葉はいらないわ」

純一「せん、ぱい…?」

(ξ三ξ「………」

純一「ま、まさかっ……あの、技を使うつもりなんじゃ…!!」

(ξ三ξ「ばかね、そんなことしないわ」

純一「で、でも…! どうしてこっちをむいてくれないんですか…!」

(ξ三ξ「……あのね、橘くん。最後にひとつだけ言っておきたかったことがあるんだけど…いいかな?」

純一「えっ…?」

(ξ三ξ「………いいかな?」

純一「は、はいッ……どうぞ…!」

(ξ三ξ「うん、ありがと。あのね、私ってほら……あんまり人の気持ちがわかる性格じゃないから、
     いっつも橘くんを困らせてばっかりだったと思う」

純一「そ、そんなことないですよ…!」

(^ξ川)「時間が……時間がないのでしょう? だったらもう言葉はいらないわ」

純一「せん、ぱい…?」

(ξ川ξ「………」

純一「ま、まさかっ……あの、技を使うつもりなんじゃ…!!」

(ξ川ξ「ばかね、そんなことしないわ」

純一「で、でも…! どうしてこっちをむいてくれないんですか…!」

(ξ川ξ「……あのね、橘くん。最後にひとつだけ言っておきたかったことがあるんだけど…いいかな?」

純一「えっ…?」

(ξ川ξ「………いいかな?」

純一「は、はいッ……どうぞ…!」

(ξ川ξ「うん、ありがと。あのね、私ってほら……あんまり人の気持ちがわかる性格じゃないから、
     いっつも橘くんを困らせてばっかりだったと思う」

純一「そ、そんなことないですよ…!」

(ξ川ξ「ううん、嘘はいいの。わかってることだから」

純一「……先輩…」

(ξ川ξ「だからね? 私は私で橘くんにいっつも感謝してた。こんな私と一緒にいてくれた、それだけでもとっても嬉しいの」

純一「僕も、先輩と一緒に遊んだりして……楽しかったですよ!」

"(ξ川ξ

(ξ川ξ「……そう、ありがとう。そう言ってもらえると、本当に嬉しい」

純一「………」

(^ξ川「ねぇ……橘くん、君は今とても幸せなのかな?」チラッ

純一「……幸せです、とても」

(^ξ川「…」

(ξ川ξ「そっかぁ…羨ましいなぁ…その娘」ぼそっ

純一「え……先輩、今なんて…?」

ヾ(^o^ξゞミ「なんでもないわよ!」

純一「え、あ、は、はいっ…!」

ξ^o^ξ「それじゃあ橘くんっ! 行くわよっ!」

純一「は、はいっ…!」

ξ^o^ξ「敵はすぐそこ……たおしにいくわぁ! それぇー!」ぎゅるるるる

純一(は、はやい…! いやしかし、でも…こんなに話し込んでいて先輩たちはどうして通りかからなかったのだろうか──あ…)

夕月「……」
愛歌「……」

ξ^o^ξ「むむむ。なにかしら、まるで私達が出てることを待ってたみたいね! 二人共っ!」

夕月「…よぉ、森島ぁ。久しぶりだな、元気してたか?」
愛歌「……」

ξ^o^ξ「ええ、元気してたわ。そちらのお二人さんも、中々…茶道部のお話を聞いてるわよ~」

夕月「そうかいそうかい。あんたみたいな有名人に知ってもらえてるってだけでも、あたしらは万々歳だよ」

ξ^o^ξ「そうなのっ? ふふっ……そうね、でも──そこの娘は」

愛歌「……」

ξ^o^ξ「……私のこと歓迎してくれてないみたいだけどね」

夕月「…愛歌、戦意丸出しだぜ? らしくねえなオイ」

愛歌「………」

夕月「切り返しもないとか……はぁ。まぁ、なんつーかこれも奇妙なめぐり合わせってことでさ、森島よ!
   ちょっくらまたコイツと戦ってくれないかい?」

ξ^o^ξ「戦う、意味は?」

愛歌「必要か」

ξ^o^ξ「ふふっ」

夕月「……よくわかんねえけど、愛歌が急に立ち止まってここで待ってればいいことがあるって言ったから待ってれば…」

純一(ま、まさか…先輩。こういう状況になりつつあるってわかってたから、僕に何も聞かなかったのか…!?)

愛歌「久しぶり……森島はるか」

ξ^o^ξ「ごめんなさい、私はちょっと覚えてないわねぇ」

愛歌「っ……そう、だったら思い出させる」

ξ^o^ξ「………」

愛歌「その開いた口……驚きで塞がっても遅い」

夕月「変な感じの言い回しになっちまってるが……いや、あってんのかそれで」

純一「せ、せんぱい……!」

ξ^o^ξ「行きなさい」

純一「っ……だ、大丈夫ですよね…! ちゃんと、勝てますよね…?」

ξ^o^ξ「当たり前じゃないの! 私はちゃーんと勝ってあげちゃうんだから!」

純一「っ……で、では……任せました森島先輩っっ…!」だっ

夕月「ん? あ、オイ! まてよたちばなぁー!……いっちまった…」

ξ^o^ξ「ふふっ。追いかけたかったら、この私を倒してからねっ?」

夕月「え? ああ、いやそれはもういいんだよ……つぅかこれも、頼まれてやってただけだったしさ」

ξ^o^ξ「へぇ~……頼みごとされたの?」

夕月「おうよ、一人の女の子にな。あの橘を、何としても放送室につれていくなって」

ξ^o^ξ「……それって、どういう女の子だったの?」

夕月「え? どうだったかなぁ~………たしか、胸が───」

───ごぱぁあああ!!ざわぁああああ!!!

ξ;^o^)ミ「ッ───……」ばっ

愛歌「───戦いに、おしゃべりは禁物……死に急ぐ」

ξ;^o^ξ(大量のトンボが、窓から一斉に校舎内へと……っ!)

愛歌「進化したチカラ……特とご覧あれ」

愛歌「くーるくる。くーるくる……」ぐるぐる…

ξ;^o^ξ「なっ…指先に合わせて、大量のトンボが彼女の周りを……っ!」

愛歌「そして、更に昇華……みよ、これが最終奥義───」

愛歌「───『猛トンボ煉獄』……散ってその命、我が身に捧げよ」

ξ;^o^ξミ「くっ…」ばっ

愛歌「無駄無駄……トンボに速さで叶うわけがない」くるっ

ξ; o ξ「きゃぁあああー!!」ぶぶぶぶうぶぶぶ!!!

夕月(……おわったな。こりゃ)

夕月(本来持っていた愛歌のトンボを魅了するチカラ。それを倍増させ、数を増やし。
   ……そして昇華させた『猛トンボ煉獄』。巻き込まれちまったらなんら抵抗できやしねえ)

ξ; o ξ「くっ……」ぶぶぶっぶぶっぶぶぶぶう!!!

夕月「……おい!!森島!! もう降参したらどうだぁっ!!」

ξ; o ξ「っ………」

夕月「この愛歌のチカラは一時で済ませられるような、簡単なもんじゃねえんだよ!
   お前さん、いずれ外れたトンボの頭が体中に……いや、それは言わないでおこう」

ξ o ξ「…………」ぶぶうっぶうぶぶぶぶうぶうぶぶうぶ!!!

夕月「……お前は侮っていたんだ、相手の強さを。そして過信しすぎた、己の強さを。
   お前はここで──負けちまうんだよ、森島はるか!!」

ξ o ξ「…………」

夕月「ほら、どうだ? 今からでも遅くないぞ? 先に行った橘でも呼びつけろ!
   そうすればなんとかまだ、勝利へと近づくための要因は増えるんじゃないのか!!」

ξ o ξ「………」

夕月「っ……意固地になるなよ森島! 自分の強さを思い違いしている!
   人に頼って、人と同じ位置に成り下がれよ!!」

ξ o ξ「…………」

ξ o ξ「──ふふっ……なにを、言っているのかしら」

夕月「っ……なに、笑ってやがるんだお前は…!」

ξ o ξ「面白いから笑うのよ。だってそうじゃなあい……だってだって、」

ξ o ξ「まさか、そっくりそのままの言葉をお返しできるなんて───…………なんて楽しいのかしらって、ね?」

がしゃぁああああん!!!

夕月「なっ……窓が急に割れて───」

愛歌「……!?」

ξ^o ξ「『──お前は侮っていた』」

夕月「っ…!」ばっ

ξ^o ξ「『──そして過信しすぎた、己の強さを』」

愛歌「これは…っ」

ξ o ξ「『お前は──ここで、負けちまうんだよ』……だったかな?」

わんわんわんわんわんわんわん!!!

ξ^o^ξ「じゃあ、もう一度行ってみてちょうだい。御ふたりとも?」

ξ^o^ξ「───この光景を目にして、なにを思ったのかしら?」

夕月「なん、だと……大量の野良犬が、こんなにも……!!」

愛歌「森島……はるかっ!!」

ξ^o^ξ「わお! なんてこわい顔かしら……ねぇ~」なでなで わんわん!

夕月「お、お前にいわれたくねえよ!」

愛歌「……その力、どうして…」

ξ^o^ξ「んっ? そもそも本気なんてだしたことないし」

愛歌「ま、まさか───……あの時も、これっぽっちも…?」

ξ^o^ξ「だから~……あの時って何時?」

愛歌「ッ………」ぎりっ…

ξ^o^ξ「覚えてないもの、しょうがないじゃない? ふふふっ」

夕月「くっ……」

ξ^o^ξ「───そもそもね、このチカラは…人前でしないようにしているの……特に橘くんの前とか」

ξ^o^ξ「だって、あのこ。一番このチカラに感知しちゃうんだもの、びっくりするわ!」

夕月「ああ、アイツ犬っぽいもんなぁ…!」

ξ^o^ξ「だから先に行かせたの。ふふっ……じゃあさっそくながら、行くけどいいかな?」

愛歌「っ……猛トンボれん───」

ξ o ξ「──ふぅ………うん! じゃあ、コホン!」

森島「───踊り狂え、お犬さんたち…」ゴゴゴ…

ぐぐぐぐっぐうわあんwなんwなんwなんわんwなんわんwwww

夕月「えっ、あ、はいっ?! ど、どうしてあたしの膝の裏を……ぎゃあああああああ!!」
愛歌「っ……や、やめ……っ~~~~~~~!!!」

森島「…………」

森島「うんうんっ! あーすっきりしたぁ…えーい☆」ばっ

森島「ふっかふかぁ~! すごいすごい! お犬さんのサーフィンね!」

夕月「ちょ、ちょっと止めろもりしまぁー! おい、マジそこはだめっ……っ~~~~~!?」
愛歌「っ……っ……っ」ぴくぴく…

森島「あっははは! たのしいわぁー! そっれに、後は橘くんがしてくれることも楽しみでしょうがないわ!」

森島「がぁんばってね!橘くん!!」

「はぁっ…はぁっ……!」たったった…

「はぁっ…く、は、んっ……はぁはぁ…!」たったった…

たったった…… たっ

四階

純一「はぁ……はぁ……やっと、たどり着いた……」

純一「この、階に……放送室があるんだ、よな……」

純一(くそ、えらく時間がかかってしまった……まだ時間は、残り五分か……うん、急ごう)

純一「はぁっ……はぁっ…あれ…?」ふらふら…

純一「なん、だか……頭が。くらくらする、よ……」ふらっ…がく!

ぽにょ

純一「……ん? んむ?」

「ひゃああああいっ…!?」

純一「え、なんだこの低反発過ぎるものは……やわらかい! 気持ちがいいなぁ!」もぞもぞ…

「や、やめてくださぁいっ……本当に、そんなところつま、きゃん!」

純一「え? あのー……」すっ…

紗江「ぐしっ……せ、せんぱい…っ」

純一「紗江ちゃん!」

紗江「……はい、そうです…私です…!」

純一「じゃ、じゃあこの柔らかい2つのものは……やっぱりさえちゃんの!」

紗江「だ、だめです!」

純一「おぱぐはぁ!」ずさぁー…

紗江「っ……っ……はっ! あ、あああっ…せ、せんぱい! ご、ごめんなさい…!」あたふた

純一「うん……最近、やけに色々な女の子がいいパンチを持っていて、びっくりしているよ……よかったよ、紗江ちゃん」

紗江「あ、ありがとうございます…!た、立てますか…?」

純一「う、うん。ごめん……ありがとう」

紗江「い、いえっ……あの、その…先輩…っ」

純一「ん? どうかしたの紗江ちゃん」ぱっぱっぱ…

紗江「っっ~~~……そ、そのですね…! あのそのあの……きょ、今日はちょっと私と一緒に御飯食べませんかっ…!」

純一「ごはんって……もう、お昼終わっちゃうよ?」

紗江「えっと、そうですよね……」しゅん…

純一「…? どうしたの、なんだか煮え切れない感じだね……悩み事でもあるのかな?」

紗江「ふぇっ!? あ、そんなことっ……ない、です!」

純一「…………」じ…

紗江「……な、なんでしょうか…?」

純一「いや、嘘言っても僕には分かるよ! 紗江ちゃん!」

紗江「え……?」

純一「絶対に僕に何か隠し事があるとみた! ううん、なんだろうか……」

紗江「あっ、いえっ、本当に…! 本当に悩み事なんかなくて…!」

純一「……そうだ! 実はダイエット中だとか!?」

紗江「ち、違います!」

純一「でも、紗江ちゃんはまずはこの二つの素晴らしいのをだね……」

紗江「だ、だから違います!」

純一「え、そうなの? びっくりしたぁ~」

紗江「…先輩こそ、なんですかその格好は…」

純一「うん? ああ、そういえばまだ女物制服のまんまだったね。まあいいや!」

紗江(え、ええー……)

純一「よし! まあ、色々と悩んでて仕方ないよ紗江ちゃん!
   最後まであきらめずに、ちゃんと考え続ければ悩みなんて解決するからさ!」

紗江「………」

純一「では、僕は先に行くよ。じゃあね紗江ちゃ───」

がつん

純一「──あ、あれ……?目の前がくらっ───」

紗江「…………しぇんぱい…」

純一「さえ、ちゃ───」がくん

紗江「……………」

「ごめんなさい、先輩…」

~~~~~

純一「う、ううん……あ、あれ…ここは……?」きょろきょろ

純一「……一度だけ見たことがある、所…やっぱり、放送室だ!」

純一「僕って気絶しながらここにたどり着いたのか…?
   全然記憶がないんだけど…?」

「──違いますよ、先輩…」

純一「え…この声は、紗江ちゃ──紗江ちゃん!?」

紗江「……な、なんでしょうかっ」

純一「い、いや…何でしょうかっていわれても……どうして、その」

純一「えっちぃコスチューム着ているの……?」

紗江「に、似あってませんか……っ?」ひらひら…

純一「いや、似合いすぎてちょっとあれっていうか……あはは!」

紗江「……本当ですか?似あってますか?」

純一「う、うん! とってもえ、可愛いよ!」

紗江「……えへへ~」

純一「………あ、あれ? ちょっとまって、紗江ちゃん…どうして僕両手塞がれてるの…?」

紗江「え、今頃気づかれたんですか…? そ、そうです…! 私が縛らせてもらいました…!」

純一「ど、どうして…! ほどいてよ紗江ちゃん!」

紗江「だ、だめです…!」

紗江「だって、だって……それをほどいてしまったら先輩……!」

純一「………っ! ま、まさか紗江ちゃん、君は……」

紗江「………」

紗江「……きづいてしまったようです、ね…そうです、だから私はそれを解きません…」

純一「ど、どうして…! どうして僕の邪魔をするの……だって、そんなことしても紗江ちゃんは──」

紗江「いえ、いいんです……私のことは、どうだって」

純一「っ………」

紗江「先輩が今からしたいことはわかっています……だから、私はそれを止めたい。
   だって、わたしは……そんなことを先輩に言ってほしくないからっ……!」

純一「……だから、僕を止めるために」

紗江「……はい、だから高橋先生に告げ口したのも。絢辻さんっていう先輩にひとつ助言したのも、
   茶道部の方々にお願いしたのも……全部、私がやったんです…!」

純一「………」

紗江「せんぱいをっ……放送室に向かわせないために…! 私一人じゃ何もできないから、
   みんなをたよって…それで、それで……」

純一「ただ、僕をここにこさせなくするために───」

紗江「……はい、そしてそれがもう。あと二分で成功します…!」

純一「…あと、二分」

紗江「もう無駄ですっ……せんぱいは、せんぱいはこの放送を使うことなくっ…また日常を歩んでもらいます…!
   私はまだ、ちゃんと諦めがついていないんです…!」

純一「……紗江、ちゃん」

紗江「だからっ……だから! せんぱい、もし……もしこの二分がとてもつらいんでしたら…その……」

純一「えっ……?」

紗江「~~~っ……えいっ!」ぴょん

純一「お、おっはぁ!? なんてやわらかい……じゃなくて! どうしたの紗江ちゃん!?」

紗江「わ、わわわわわたしをっ……二分間だけ、だき、だだだだきしめてもいいでぴょ!」

純一「噛んでるほどに緊張しているよ紗江ちゃん…!」

紗江「う、うううっ……だ、大丈夫です…!」

純一「い、あ、そのっ! 紗江ちゃんそんな風に動かないで…!」

紗江「ひぁああー! こ、これなんですか……?」

純一「紗江ちゃん!」

紗江「あ、なるほど……ってきゃああああー! すみませんすみません!」

純一「っ………」

純一(ああ、くそ!なんて幸せだこれ!
   もう僕、どうしてここを目指していたんだっけ……わからなくなってきた!)

紗江「っ……っ……」ぷるぷる…

純一(僕……僕、どうしてこんなにも頑張ったんだっけ…もう、なんだかだいぶ前のような気がするよ…
   ……ああ、思い出せない。どうして僕は……僕は、ここまで走ってきたのか───)

純一「──わからなく、なって………」

「────とるぅううううやぁああああああああああああああ!!!」がったん!

純一「なっ…!?」
紗江「えっ…!?」

ばたん! すた…すた…

「───ひとつ、男は前を向いて歩き出せ」 すた…

純一「この、声は……!」

「───ふたぁつ、男は嫉妬し強くなれ」 すたすた…

紗江「っ……」

「───みぃっつ、男は馬鹿で正直に」

「……例えば見えぬ壁に突っ込んで。あそこに壁がるのだと全身全霊で周りに告げてみた!
 だがそんなの嘘だと女子供に馬鹿にされ! 蔑まれ罵倒され辱めにあったとしてもだ!」

「だけど!!男はみなバカで正直だ、誰も信じずに居たものすら全力で挑む!!
 お前が苦しんでも、後に続く奴らはみな同じく苦しいんだ!!!」

「……だから、突っ走れよ橘」

純一「ッ……」

梅原「お前は、そういう漢だろうがっ……ああっ!?」

梅原「眼に見えないって怯えているお前は……もう居ない! ちゃーんと男らしく馬鹿やって、
   確かに見えてねえのにそれを追いかけて! 曖昧なままにつかもうとしてる!」

梅原「だからぁ!!大将お前は忘れるんじゃねええよお!!!」

梅原「はぁっ…はぁっ……」

純一「う、梅原っ……あの、さ…!」

梅原「な、なんだ大将ぉ!?」

純一「お、お前……なんか酒臭くないか…?」

梅原「なにいってやひっくがんだお前は……!?ええ!?」

純一「ひっくっていってるから…!」

梅原「ばーろーぅ! この寿司屋の次男坊、梅原まさよしさんがッ……ひっく…酔う訳っ…」

紗江「えいっ」

梅原「おぼ…っ」ばたん

純一「う、うめはらァ!」

紗江「……ふぅ。本当にひっかかるなんて…」ひょい

純一「さ、紗江ちゃん…? そ、それは…?」

紗江「…お酒です。生徒指導室おいておきました」

純一「なっ、ど、どうして…!」

紗江「……」からん

紗江「───ラベルを変えて、『元気水』って書いておいたんですけど。
   まぁ、あれですよね……高橋先生がお酒弱いの知ってましたので…」

純一「っ……ま、まさか…先生が梅原に進めることも予想、していたの…?」

紗江「………」

純一「う、うそだろ……まるで紗江ちゃんじゃないみたいだ……」

紗江「いいえ、わたしですよ」

純一「え…?」

紗江「ちゃーんと、私です。せんぱい……貴方が強くしてくれた、ひとりの後輩です……」

純一「それは…あの、訓練のことを言っているの…?」

紗江「………残り一分。もう、逃げられませんよ、せんぱい」

純一「っ……紗江、ちゃん僕は…!」

紗江「……だめです、私は決めたんですから。もう、だめです」

純一「くっ…こんなことしても僕はっ……紗江ちゃんのこと…!」

紗江「……残り三十秒」

純一(だ、だめだ……ひるの放送が終わってしまう! これじゃあ、これじゃあ……)

がさごそ…

純一「え……」

「………」ちら

純一「………うめ、はら…?」

梅原「 しぃー! 今は黙っとけ! ばれるだろ…!」ひそひそ

純一「お、まえ…よって倒れたんじゃ…!」

梅原「ばーか野郎! こんなちっぽけな一本で、ここまで酔えるか寿司屋の次男坊が!」

純一「そ、そうなのかっ…!」

梅原「……とにかく、お前さん。ここまできちまったんだな」

純一「う、うん……でも、僕は駄目みたいだ……」

梅原「……どうしてだよ、諦めんのか?」

純一「それを梅原が言うの? あはは、やっぱお前はすごいよ」

梅原「……。やっぱりな、お前……俺が追いかけてきた意味本当はわかってただろ」

純一「うん、調子に乗ってごめん」

梅原「ったく……お前さんはさー…正直、分かり難い所がいっぱいあるんだよ」

梅原「……一人で行くのが恐いんだったら、こんなふうに自分を炊きつける形にすんなよ」

純一「……そうだね、やっぱりお前と騒ぎながらだったら。あっという間にここにこれたよ」

梅原「相変わらずだな、大将。ほんっと、いみわかんねーよ。いっひひ!」

純一「ははは」

梅原「──んじゃちょっとばかし、最後にお前をまた炊きつけてやるよ」

純一「え…?」

梅原「まだ時間はあるんだぜ? だったら最後まで、あがいてみせろよ」

純一「梅原……」

梅原「そしてその足掻き、俺にも参加させろよ。ここまでやったんだ……特等席で聞きてーじゃねえか!」

梅原「───世界一強い、馬鹿なお前の告白をよ!」

純一「………」

梅原「……あがけよ、強がれよ。応援してやっから」

純一「……二秒後だ、それに合わせてやってくれ」

梅原「あいよ、大将」

紗江「……十五秒、十四秒、十三───」

純一「───いまだ!!!」

梅原「おらぁあああああああ!!!!」ばたばた!

紗江「きゃああ!? え、なに!?」

梅原「おら、おらぁあああああ!!」

紗江「な、なんですかそれっ…! 腹筋だけで地面を蠢いている…!」

純一「おらぁああああ!!」がたがたがた!

紗江「きゃっ…! せ、せんぱいっ……!?」びく!

梅原「チャンス───とやっ!」ずさぁー!

梅原「マイクゲット! 大将、うけとれぇええええええええ!!」ばっ

紗江「っ……さ、させるもんですか…!」ばっ

梅原「こなくそっ!」ばっ

純一「え、ちょ、待って二人共…! 着地点がどうみても僕……!!」

ごしゃああああ かちっ

純一『───ぴーががっ……ぴーいたた……ががっ……どう、なっ……』

~~~~~~

教室

「……ん?」

「…あれ? 放送ってそろそろ終わりじゃなかったのかな…?」

「さあ? どうしたんだろ」

薫「ちょっとトラブルでもあったのかしら? 恵子、なにかしってる」

薫キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!

田中「んー……わかんないや。あ、でも!」

薫「なんか知ってんの?」

田中「……いや、違うよね。違うって思いたなぁ……うん」ちら

薫「? なになに、アタシに隠し事っ? なによー生意気ねぇ~」

田中「えっと……あはは! ちょっとね、嫌な予感て言うかぁ…そのね」

薫「なによ?」

田中「さっき聞こえた声……なんだか橘くんに───」

『ガガっ……ガピー……ガガ! え、なに…?……スイッチ、とめてくださ、やっちまえ大将!……ががっ』

薫「…あれ、今のって梅原くんの声じゃあ……」

『わかった、わかったよもうっ! ジジッ……ガピュン!』

田中「あ、放送きれちゃった…」

薫「な、なんだったのかしら……今の…」

『───かち』

田中「あ、また付いた────」


『───薫ぅううううううかわいいいよぉおおおおおおおおお!!!』

薫「………」

田中「……え、これってやっぱ橘く──」

『ホント可愛い! すっごく可愛くてやばいんだ!!もう、何から語ろうかなっ……いや、もう全部話そう!!』

薫「」

田中「……こ、これって…あはは…」

『薫!!棚町薫ぅうー! 僕はだな、お前のことが可愛くて可愛くてたまらないんだ!!
 すっごく可愛くて、その髪の毛をだなっ……えーと、シャンプーしてあげたいぐらいにね!
 それはもちろん優しくしてあげるよ! 意外と薫の髪の毛がデリケートだって知ってるし!
 それにそれに! そのかみがたがちょっと駄目なのかなって悩んでることも知ってる!!
 かわぇえええー! いや、こほん…違う違う。髪型だけじゃないからな!!違うよ!ちがうからね!?』

『もっともっとお前の可愛い所知ってる! ちょっと恥ずかしかった時、お前ってよく僕に肩をぶつけてくるよな!!
 いやー実は凄く痛いんだけど、やっぱ嬉しいよな!!可愛くてやばいもん!!もっとぶつかってこい!!かわりにもっと恥ずかしがらせやるから!!
 それにだな、えっとその……そうだあれあれ! 前にファミレス出さ、男の人に迫られてこまってたことあったろ!?
 あの時のお前の奇が落ち込んでた表情……実はちょっとこう、え? それはだめだって? あ、そうだな!ごめん梅原!』

『とにかく! お前が落ち込んでる表情もみんなみんあ全部全部可愛くてしょうがない!!抱きしめて介抱してあげたい1!
 たまんなよ、本当にお前っててんしなの?! あ、天使だったよ! いま気がついた!すごいな薫!天使かわいい!天使かわいい!』

田中「あ、先生たちがはしっていく……」

薫「」

『天使薫ぅ!? 聞いてるか!? 聞いてるよなだってここまで僕はやったんだ!聞いてなかったら困るよ!!
 もっともっとお前に聞かせてやりたい!!たくさんお前への気持ちを、僕はいっぱいいっぱい伝えたい!!』

薫「───はっ!?」

田中「あ、意識戻った…」

『お前はなんだって出来る、強い女だよな! すっごくすっごく強くて、何者も寄せ付けないぐらいにかっこいい女だ!
 僕はそれを知ってるし、それを友としてすっごく誇りに思っている!!かわいいよ薫! 関係ないかこれ!!あはは!!』

田中「なんだかもう、やけくそになってるね橘くん……」

『もうさ!!たまんないんだよ!!薫、お前のこと……可愛くて、可愛くて……しょうがないんだ』

薫「………」

『───だからさ!! どこにもいくな薫!!!』

薫「っ………」

『お前が生きたい道を、僕は知っている!!ああ、知ってるとも!!ぼくだからな!!
 だからそれを応援するのが友の役目だ!! そうだろう梅原ぁ!?』ソウダゾータナマチー

田中「やっぱり近くにいるんだ梅原君…」

『お前は強い女だ!!だけど、僕にとってはとてつもなく可愛くて、小さくて、か弱い女の子だ!!
 お前がどれだけ強がっても、僕はその思いに!!強がりに!!ちゃんと気づけるんだ!!』

『だから何処にも……どこにもいかせやしない!!たとえ、それがお前が望んだところでも!!』

七咲「せんぱい……」

『いきたいと願った場所で会っても、僕は駄々をこねて!!その道を塞いでやる!!』

梨穂子「……ずんいち…」

『それが出来るって、僕にはその権利があるって!!心からそう思っているんだ!!』

絢辻「馬鹿ね…」

『だから!!だから!!薫、どうか僕を───』

ξ^o^ξ「うふふ…」

『──僕を、どうか僕を……置いて行かないでくれ!!!』

薫「…………」

『だって僕は……お前のことが……………え? あ、やめて…!』

『ちょ、最期まで言わせてください! え、酒臭いっ! 高橋先生それはちょ、ごはぁ!?』

『………放送終わり、ヒック』

ぴっ

……………
………
……


生徒指導室 

純一「……」がらり

梅原「……」

紗江「……」

純一「……帰ろっか」

梅原「……おう」

紗江「……はい」

すたすたすた…

純一「……なんだったんだろうね、さっきまでの僕らの激闘は」

梅原「言うな。惨めになる」

紗江「……」

純一「……でもさ、やってよかったよね。これはさ」

梅原「……ま、そうだけどな。うん」

純一「いやー……でもさ、紗江ちゃんもすごかったね。あれ、全部一人で考えたの?」

紗江「……はい。一人で頑張って考えました」

純一「へー! すごいね!」

紗江「……前から、こんな風になるんじゃないかって予想してたんです、実は」

梅原「は、はいっ? ぜ、全部か!?」

紗江「……」こく…

純一「この終わりまで、全部?」

紗江「はい…」

純一「そ、それはすごい……凄いのはむねだけじゃなかったむぐぅっ!?」

梅原「あ、あははっ……それでよ! どうしてこんなことを予想できたんだ?」

紗江「……漫画を書いてるんです、私」

梅原「漫画? へー、凄いじゃねえか。どんなジャンルだ?」

紗江「……」ちらっ

梅原「ん? どうした?」

紗江「えっと、その……今みたいに先輩たちが絡まってる感じの……えへへ」

梅原「か、絡まってる感じの…っ?」

純一「ぷはぁ! ……ふむ、なるほど。紗江ちゃんも見かけによらず、バトル物が好きなんだね!」

梅原「なにぃ!? そ、そうかぁー……びっくりしたぜー」

紗江「だかですねぇ~……えっとぉ、今日の出来事も色々とお話として考えてたのが色々とかぶってまして…」

紗江「うふふっ……えへへっ……くすくすくす……」

純一「おーい? 紗江ちゃーん…?」

梅原「…よくわかんないけどよ、疲れてんだろ。そっとしておいてやれって」

純一「え、でも……」

梅原「おいおい、そもそもお前はこんな所で油売ってる暇あんのか?
   ……そもそも帰るってなんだよ、まずは言って頑張ってこい!」ばしん

純一「あいた! ……い、いいのか? 僕だけ…」

梅原「いーんだよ、掴みとってこい。それだけのことはもう、やってのけただろうが」

純一「………わかった。じゃあ行ってくるよ、梅原…」たったった…

梅原「………はぁ、疲れた」

紗江「────」(トリップ中)

梅原「帰るか、俺も………へっくし!」すたすた…

廊下

純一「はぁっ…はぁっ……」たったった…

純一「はぁっ……んくっ…はぁっ…」たったった…

純一「はぁはぁ……ついた、教室…まだ、いるかな……」がらり

「っ………」

純一「はぁっ……はぁっ……───ふぅ…」

純一「…ありがとう、まだ残ってくれてたんだな」

薫「………」

純一「もう帰ったと思ってたよ、というか帰ざるおえなかったと思ったんだけど……あはは」

薫「………純一、いいかしら」

純一「え…うん、なにかな?」

薫「………」

純一「……薫?」

薫「………」すたすた…

純一「え、あ、薫……?」

薫「………」ぴた

純一「ち、近くないか……?」

薫「よく聞いて、ちゃんと聞くのよ!───アタシ、もう学校にはこない」

純一「え、えええー!!」

薫「………」

純一「えっ、あっ、ええっ……だめだよ! ちゃんとこなくちゃ!」

薫「来ない」

純一「……恥ずかしいから?」

薫「っっ~~~~!!」

純一「あ、そうなんだ……よかったぁ~」

薫「っ……っ……っ~~~~~」ぐぐっ

純一(あ、マジギレするなこれ)

薫「───ほんっっっっっっっっっとあんた何考えてんの!!? 今までいっぱいいっぱぁあああいアンタが変なやつだって、
  思ってたけどさっ!! 今回ばっかりはもう、なんていうの!!ああ、もう!!頭がぐちゃぐちゃよッ!!!」

純一「あ、あはは……それはお気の毒様…」

薫「ハァッッ!!? なに人事なのアンタはァ!? アンタが、アンタのせいでっ……こっちは放課後までッ!!
  いろんな人から好奇な目で見られまくりよっ!!? どう責任とってくれんのよあんた!!」

純一「え、えっと……そのぉ……」

薫「………」ぎりりっ…

純一「あははっ……そのさ、薫…改めて聞くけど…」

薫「なによ!」

純一「……可愛いって言われて、嬉しかったか?」

薫「っ……」

純一「僕にそのー……可愛いっていわれて、嬉しかったか聞きたいんだけど…嫌だった?」

薫「………まず聞きたいことが、それなのアンタは?」

純一「う、うん……どう、だったかな?」

薫「っっ~~~……べ、べつにっ……なんとも、思わなかったわよ……」ぷいっ

純一「……なんとも思わなかったのか?」

薫「そ、そうだって言ってるでしょ! なによ、嬉しかったとでも言うと思ったワケ!?」

純一「い、いや…そうじゃないけどさ……」

薫 フー フーッ!

純一「……」

薫「……っ…なによ、もう…! そんな悲しそうな顔してもいいじゃない…!」

純一「だってさ、結構頑張ったんだよ……あそこまで、放送室まで行くのにさ」

薫「…ただ歩いてすぐじゃない。なにを頑張ったのよ」

純一「あはは、そうだよね。確かに……ただ歩いて、走って、向かっただけだった」

純一「……でもさ、僕にはこれがとてつもなく辛くて怖かったんだ」

純一「歩くだけだったのに、そこになにか待ってるだけで……僕は逃げ出したくなるぐらいに怖かった。
   自分の心を騙し込んで、友人を都合のように使って自分をけしかけたりしたんだ」

純一「それからたくさんの人であって……みんなみんな、いつも通りな人たちで。
   強くて、頑張ってて、強引で……みんな本当にいつも通りだったんだ」

薫「……何が言いたいのよ、あんたは」

純一「結局はさ、僕は…お前に想いを伝えるのが怖かったんだ。すっごくね、
   だってお前はいつも僕の隣にいてくれて、こんな僕なのに……薫はいつも通りそばに居てくれた」

純一「僕は思ったんだ。だから、僕はその……いつも通りを変えようと。
   あの放送室までに向かうまでに、いろんな人達と出会って……それで決心した」

純一「もう、僕はいつも通りに戻りたくはない。緩くて、面白くて、そんな日常を、僕は終わらせたいんだ」

薫「…………」

純一「だってさ、いきなり腹筋を見せたら嫌われない? それにさ、女装してた幼馴染を見かけたら普通引かないかな?
   それにそれに、騙すようなことをしたら本当は怒るよね? しかもバトルなんか始まったら驚いて、昼休みどころじゃなくなるはずだよ」

純一「……でもさ、僕はそれらを全部無視して。これから続く彼女らとの日常を壊してでも、
   僕は先へと進みたかった。お前へと……この気持を、伝えたかった」

薫「……いみわかんないわよ。それじゃあどうして、全校生徒に聴かせる意味があるのよ…」

純一「……だって、そうしないとお前。絶対にうん、って言ってくれないだろ」

薫「………」

純一「僕は怖がっていた。でも、怖がっていたのは……僕だけじゃない」

薫「っ………」

純一「───薫、お前だってこの関係が壊れることが怖かったはずだ」

薫「そ、それは……っ」

純一「いいや、言い訳は言わせない。だって、僕とお前だろ? そもそも嘘を言っても通じないよ」

薫「っ……なによ、それ…!」

純一「怒ればいいさ、なんでこんなことをしたんだって。僕を怒ればいい。
   もう喋るな帰れって、僕を突き放せばいいよ」

純一「でも、これだけは譲れないんだ」

純一「───薫、どうか言わせて欲しい。この言葉を、お前に」

純一「やっとここまでこれたんだ、もう──離しはしないよ、僕は」

薫「……っ…」

純一「薫、僕は好きだ」

薫「っ……」

純一「お前のことが、世界で一番……好きだ」

純一「可愛いとかじゃない、そんなごまかしはもう……捨てた。
   僕はもうお前のことが好きで好きで、たまらない」

薫「………」

純一「お前は、僕の事好きか?」

薫「っ……」

純一「僕はもう、壊れる覚悟はしたんだ。だったら、お前も……覚悟してくれ」

薫「壊れる、かくご……?」

純一「ああ、そうだ! 壊れる覚悟だよ薫…!」

純一「お前のいう一言で、僕らは壊れる」

純一「…………薫、どうか答えてくれ」

薫「アタシが……それを言ったら、壊れちゃうの?」

純一「ああ、もういつも通りにはならないよ」

薫「……なによ、それ。最後はアタシだよりってことじゃない…」

純一「そうだよ、僕はいっつもお前に頼ってばっかしだ」

薫「………」

純一「……でも、これからは違うかも知れない、だろ?」

薫「………」

純一「お前が頼る時が来るかも知れない。いや、僕がこさせてやる。
   だから、薫……覚悟してくれ」

薫「……ほんっと、アンタって勝手よね」

純一「………」

薫「ほんっとにほんっとに、アンタって勝手で馬鹿で……もう信じられないぐらいに…」

薫「変態でアホで……それで、それが………」すっ

薫「……アタシが好きな、あんたよっ…! ばかっ!」どしっ

純一「いたっ……いま、なんて…?」

薫「っ……だ、だから! アタシは……あんたのこと、好きだって言ってんの…!」

純一「………」ぷるぷる…

薫「な、なによっ……」

純一「あ、あんな風に告白しようとした奴なのに…? 薫は、そんな僕を……すきでいてくれるのか…?」

薫「……好きよ、なんか文句でもあるの」

純一「な、ないよ…! ないない!」

薫「……」ジトー

純一「え、あ、薫…?」

薫「…じゃあもう一回、あんたから言いなさいよ」

純一「え…? あ、うん……」

純一「好きだよ、薫…大好きだ」

薫「………もっとたくさん」

純一「す、好き! 大好き! 可愛い薫大好き!」

俺「かおるたんちゅっちゅ」

薫「………」もじもじ…

薫「……ほんと、に? 好き?」

純一「大好き!」

薫「そ、そうなのっ……へ、へー…ふーん…」てれてれ

純一「か、薫は僕の事……好き?」

薫「へっ!? さ、さっき言ったじゃない…!」

純一「もう一度聞きたいなぁー……」

薫「っ………ああ、もう! 好きよ! 大好き純一のことぉっ!」

純一「本当に!? うわぁあああああああ!!幸せすぎるよ僕!!」

薫「喜びすぎでしょあんた……」

純一「ぼ、僕も好きだよ! だからもう一回!薫も好きって言って!」

薫「す、好き…!」

純一「うわぁああああああああ!!」

薫「う、うるさいわよいちいち…! どんだけ嬉しいのよ…!」

純一「ねぇねぇ、ちょっとお願いがあるんだけどさ……いいかなっ!」

薫「お、お願い…? こんなタイミングで…?」

純一「だめかな?」

薫「ま、まあいいけど……えっちなことはだめだからね!」

純一「えっ……」

薫「ちょ、ちょっとぉ!? 本気でそう思ってたのあんたっ?」

純一「冗談だよ、あはは」

薫「冗談に聞こえないのよあんたのはっ……それでなに? 何をお願いしたいのよ」

純一「うん、それはね──……」

純一「……今後、薫の髪を僕が洗ってもいい?」

薫「………」

純一「………」

薫「………」ぷるぷる…

純一「……薫?」

薫「──もう好きにしなさいよばかっっ!!!」ぼすっ

という感じで終わりです。
いやはや、なんか面白くかけて良かったうんこいってくる

支援等保守等ありがとう
嬉しかったです、もう一度ありがとう

ではではノシ

次回予告

純一「………思うんだよね、僕。イチャコラしてるだけって、なんかモノたりなくないかなってさ」

ファラオ「……」

純一「だってさ、イチャコラの続きがあってもいいって思わないかい?
   その先にあるエンド……結婚、離婚、死別に……子作り」

ファラオ「御意」

純一「うん、だからさ……君にお願いをしたいんだ。ファラオさん」

ファラオ「……」コーホー…

純一「あの続きを──あの終わりを、またさらり伸ばしてくれないかなって」

ファラオ「……」

純一「だめ、かな?」

ファラオ「……」

ファラオ「御意」コクリ


橘純一「もっと色々みんなと、イチャイチャしようよ!」

今月か来月に始まります

ではではノシ

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom