八幡「異性に抱きつかれると猫になる体質」 (72)

八幡「異性に抱きつかれると猫になる体質」
VIPにおける同じスレタイの避難所です

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八幡「異性に抱きつかれると猫になる体質」

八幡(という厄介な体に生まれてきたが)

八幡(まあ特に困ることはなかった)

八幡(なぜなら俺はボッチ)

八幡(家の外で異性に抱きつかれることなど、ありえないからだ)

八幡(そのはずだったのだが)

雪ノ下「……猫?」

八幡「……」

雪ノ下「ええと、到底納得できないことなのだけれど、客観的に状況を整理すると、あなたは……比企谷君なのかしら」

八幡「そうだよ。悪いか」

雪ノ下「……姿はとても愛らしいのに、その声と腐ったままの目で台無しね」

八幡「ほっとけ」

八幡「つうか、そろそろ俺から目を背けたほうがいいぞ」

雪ノ下「どうしてかし」

八幡「……」ボンッ

八幡「……そろそろ元に戻って、服が脱げてて全裸だからだ」

雪ノ下「」

雪ノ下「ああいうことは早く言っておいてほしかったわ」

八幡「言う暇がなかったんだ」

雪ノ下「それにしても、あなたがそんなおかしな体質だったなんて知らなかったわ」

八幡「こんなびっくり体質、家族以外に言えるわけないだろ」

八幡「だいたい、言っても信じてもらえるわけないしな」

雪ノ下「それもそうね」

雪ノ下「……あの、比企谷君」

八幡「なんだよ」

雪ノ下「まださっきのことが信じられないわ」

雪ノ下「だからもう一度見てみたいのだけれど」

八幡「それはつまりもう一度抱きつきたいって言ってるのと同義なわけだが」

八幡「しかも今度は事故じゃなくて故意に」

雪ノ下「ダメなのかしら」

八幡「有り体に言えばそうだ」

雪ノ下「なぜ」

八幡「お前、ここ部室だぞ。由比ヶ浜や、依頼人だっていつ来るかわからない」

八幡「この体質のことはできるだけ知られたくないんだ」

雪ノ下「そう……」

雪ノ下「じゃあ後であなたの家にお邪魔してもいいかしら」

雪ノ下「そこならいくら変身しても大丈夫でしょう?」

八幡「そんなに俺を猫にしたいのか」

雪ノ下「あれが現実だったのか、もう一度確かめたいだけよ」

雪ノ下「決して猫のあなたが結構可愛らしかったとか、抱っこやなでなでしてみたいという理由ではないわ」

八幡「欲望駄々漏れしてるぞ」

雪ノ下「比企谷君、どうしてもダメかしら?」

八幡「……うーん」

雪ノ下「じゃあそうね、取引にしましょうか」

八幡「取引?」

雪ノ下「あなたの体質のことは決して他言しない、そして今後外で変身してもフォローするという条件で」

雪ノ下「猫になったあなたに、触れてみたいのだけど」

八幡「……俺脅されてる?」

雪ノ下「脅しだなんて、そんな物騒なものではないわ。あくまでも取引よ」

八幡(そんなこと言っても、俺に選択肢とか無さそうじゃん)

八幡「……わかった。今日部活の後でいいか」

雪ノ下「そうね。とりあえず今日この後に」

八幡「とりあえずって、今日だけじゃないのかよ」

雪ノ下「取引の条件を継続したいのなら、今後も対価を支払ってちょうだい」

八幡「……やっぱり脅しだろ」

雪ノ下「取引よ」


雪ノ下「……」ウズウズ

由比ヶ浜「ゆきのん、今日何かあるの?」

雪ノ下「……どうしてかしら」

由比ヶ浜「なんか時間気にしてるっぽいし、そわそわしてるなーって」

雪ノ下「……ちょっと用事があるのよ」

由比ヶ浜「へー。よっぽど楽しみなんだね」

雪ノ下「その、知り合いに、猫を抱かせてもらえることになって」

八幡(抱っこする気まんまんだよ……)

八幡(その猫の中身は俺だって忘れてんのかね)

由比ヶ浜「いいなー。ねえねえ、その猫写メ撮って見せてよ」

雪ノ下「そうね……頼んでみるけれど」チラッ

八幡(おい、こっち見んな)

由比ヶ浜「じゃねー、ゆきのん、ヒッキー。ゆきのん、猫の写メお願い!」

雪ノ下「ええ、もちろん。さようなら、由比ヶ浜さん」

八幡「……もちろんって勝手に決めないでほしいんだけど」

雪ノ下「猫の姿の写メくらいいいでしょう」

雪ノ下「それを見たところで、あなたとその猫が同一人物?だなんて、誰も思わないでしょうし」

八幡「そりゃそうだがな。まあ、好きにしろよ」


八幡「ただいまー」

雪ノ下「お邪魔します」

小町「おかえりお兄ちゃんって、え、雪乃さん?お兄ちゃん、ついに雪乃さんと!?」

八幡「何がついにだ。実はな……猫のことが雪ノ下にバレたんだ」

小町「うわちゃー、やっちゃったね、お兄ちゃん」

小町「でも、いつかばれるんだろうなーって小町は思ってたけどね」

小町「お兄ちゃん結構ドジだもん」

八幡「笑い事じゃないだろ」

小町「でも、バレてなんでうちに?」

雪ノ下「それは……」チラッ

八幡「猫の俺を抱っこしたいんだと」

小町「そうですかそうですか。お気持ちは小町もよーく、わかります」

八幡「分かっちゃったよ」

小町「猫のお兄ちゃんって目付きそのままでかわいくないんですけど」

小町「そこがまたかわいいんですよね!猫的に!」

八幡「お前、言ってることが矛盾してるんだが」

雪ノ下「その通りなのよ小町さん」

八幡「え、なんでこいつら分かり合えてるの。怖い」

小町「ああついに理解者が!小町は嬉しいです!」

小町「こんなお兄ちゃんで良かったら、好きなだけ愛でていってください!」

八幡「いや、一回抱っこしたら終わりで」

雪ノ下「一回……?その程度であなたは私が満足できると思っているのかしら」

八幡「満足しろよ。お前ら、自分よりでかい生き物に動きを制限される怖さがわからんのか」

小町「もうお兄ちゃんはほんと理屈っぽいんだから。えい」ダキッ

八幡「あ」ボンッ

八幡「お前、そのとりあえず俺を猫にして場をしのぐのやめろ」

小町「うーん、やっぱり猫のお兄ちゃんはかわいい!ぎゅー!」

八幡「おい、離せ」

雪ノ下「……」ジー

小町「あ、雪乃さんも抱っこします?」

雪ノ下「是非お願いするわ」

八幡「お前ら、ちょっとは当の俺の意見も」

雪ノ下「……かわいい」ギュッ

八幡「うぐ」

雪ノ下「なんてかわいいのかしら、これがあの比企谷君だなんて、信じられないわ」スリスリ

八幡(……胸が当たってるんだが)

八幡(小町に抱っこされるのは慣れてるんだが、考えてみれば、この年で同年代の異性に抱っこされるのは初めてか)

小町「雪乃さん、こっちでお茶でもいかがですか?」

小町「お兄ちゃんは抱っこしたままでいいですから」

八幡「いや、良くないが」

雪ノ下「そうね。お言葉に甘えるわ」

八幡「甘えんな。もっと自分に厳しくしろ」

雪ノ下「……比企谷君。あなた、猫のときくらい、かわいらしく鳴けないのかしら。にゃーとか」

八幡「雪ノ下が、にゃー……?」

小町「……ないわー。お兄ちゃんが普通ににゃーって言ってるだけで、猫の鳴き声じゃないじゃん」

雪ノ下「ええ、私も背筋が凍ったわ」

八幡「やらせといてなにその酷評。死にたくなってきた」

雪ノ下「もっと演技力を磨いておいてね、比企谷君」

八幡「またやらす気かよ」

小町「小町ももっとかわいいお兄ちゃんが見たいなー」

八幡「かわいい兄が見たいって、兄妹関係として間違ってるだろ」

八幡「とりあえず雪ノ下、そろそろ一回離して欲しいんだが」

八幡「お前が抱っこしてると戻れないんだよ」

雪ノ下「戻らなくてもいいのではないかしら?むしろ一生その姿の方が、あなたは幸せな人生を送れると思うのだけれど」

小町「小町もそれは同意しちゃうなー」

八幡「それでも俺は人間の俺がいいんだ」

雪ノ下「とにかく、取引の条件として、猫になったあなたを好きに抱っこしていいと了承したのだから」

八幡「ちょっと待て、好きにしていいとまでは言ってない」

雪ノ下「そうだったかしら?じゃあ条件に追加よ。いいわね」

八幡「今の俺には覆せないと思ってひでえことしやがる……」

雪ノ下「どうやら納得もしてもらえたみたいだし、少なくとも今日私が帰るまでは、抱っこし続けるからそのつもりで」



雪ノ下「……」ナデナデ

八幡「……」ムスッ

小町「どうですか雪乃さん、お兄ちゃんの撫で心地は」

雪ノ下「そうね……まあ、良いと言っても構わないかしら」

八幡「さんざん撫でておいてその言いぐさか……」

雪ノ下「むすっとしながらも、されるがままに撫でられているのは得点が高いわね」

雪ノ下「普通の猫のように途中で嫌がって引っ掛かれもしないし、撫ですぎることによって猫にストレスを与えてしまう心配もないし」

八幡「今ストレスマッハだよ俺は」

雪ノ下「これならもう一度撫でてあげてもいいわね」

八幡「頼んでないし、別に撫でてもらわなくても俺はいいんだけどな」

雪ノ下「……このたまに耳に入ってくる比企谷君の音声だけはマイナスかしら」

雪ノ下「気分が削がれてしまうわ」

八幡「はいはい。黙ってればいいんだろ」

八幡「……」ムスッ

雪ノ下「……ふぅ」

八幡「……どうした、震えてるけど」

雪ノ下「いえ、なんでもないのだけれど」

小町「雪乃さん、小町には分かりますよ……」

小町「むすっとしながらも撫でられてるお兄ちゃんを見てるときゅんきゅんしますよね!!」

雪ノ下「そう、かもしれないわね」プルプル

八幡「俺には分からんわ……」

雪ノ下「そういえば小町さん、お願いがあるのだけれど」

小町「なんですか?」

雪ノ下「私の携帯で写真を撮ってほしいのだけれど」

小町「わっかりましたー!ばちばちいきますね!あ、小町も自分のでとろー!」

小町「じゃ、いきますよー」

雪ノ下「ええ」

八幡「……」ムスッ

小町「ああ、いいよお兄ちゃん!そのむすっとした表情すごくいい!」パシャッパシャッ

雪ノ下「……」スッ

八幡「うお、いきなり抱き上げるな、びっくりするだろ」

雪ノ下「どうかしら、小町さん」

小町「ああ、素晴らしいです雪乃さんその体勢!!」パシャッパシャッ

雪ノ下「次は、こういうのとか」

八幡「高い、高い」

小町「それもいただきましたー!」パシャッパシャッ

八幡(……雪ノ下の髪、いい匂いするな)クンクン

雪ノ下「こういうのもどうかしら」

小町「うひょー!こりゃあ熱くなってきたぜ!」パシャッパシャッ

八幡「……」グダー

小町「さ、さすがにやりすぎましたね」

雪ノ下「そのようね……」

小町「でもおかげで小町の猫お兄ちゃんアルバムがまた厚くなりましたーご協力、感謝です」

雪ノ下「なにそれは……是非拝見したいのだけど……!!」

小町「じゃあ、今持ってきますねー」

八幡「こんなにしといても俺を離さないんだな、お前……」

雪ノ下「その言い方は聞きようによっては誤解を招くからやめてほしいのだけど」

八幡「事実そのままだろうが……」

雪ノ下「……ねえ比企谷君」

八幡「なんだ……」

雪ノ下「今度うちに泊まりにきてほしいのだけど。もちろんずっと猫の姿で」

八幡「これが一晩って……胃に穴が開くわ」

雪ノ下「もちろん、今みたいなのはできるだけ慎むけれど」

八幡「できるだけかよ」

雪ノ下「まあ、とりあえず常時抱っこするのは仕方ないわよね。あなたが全裸の不審者に戻ってしまうもの」

八幡「その時点で遠慮被る」

雪ノ下「だって、いきなり全裸の男が女性の独り暮らしの部屋に現れたら、警察に通報しなければならないでしょう?市民の義務として」

八幡「絶対いかない……」

雪ノ下「そう、仕方ないわね……」

雪ノ下「今日このまま抱っこして連れていくしかないかしら」

八幡「おい」

雪ノ下「あなたを抱っこしたままになるから、ご飯の準備とかしておきたかったのだけれど」

八幡「決定事項なのか?おい」

小町「お待たせしましたー」

雪ノ下「あ、小町さん、ちょうどいいわ。お願いがあるのだけれど」

小町「なんですか?」

雪ノ下「比企谷君を、今日はこのまま連れて帰りたいのだけれど」

小町「え、うーん、そうですか……」

八幡「頼む、断ってくれ小町。お兄ちゃんの健康のために」

小町「じゃあ、ビデオ持ってきますから、様子を撮ってきてください」

八幡「ストレスで禿げるぞ俺」

雪ノ下「それはいけないわ!ええと、獣医に連れていけばいいのかしら」

八幡「人間の病院に決まってるだろ」

雪ノ下「あと小町さん、相談なのだけれど」

小町「なんでしょう」

雪ノ下「比企谷君を抱っこしていなくてもしばらく戻さない方法ってあるのかしら」

八幡「さらっと恐ろしい相談してるんじゃない」

小町「ありますよ」

八幡「それだけは黙ってて欲しかった」

雪ノ下「本当に?是非教えてほしいのだけれど」

小町「いいですか、じゃあ兄を一度離してください」

雪ノ下「ええ。でもそれじゃあ」

小町「少し待ってくださいね」

八幡「くそ」

小町「あ、お兄ちゃん逃げそうなのでディフェンスを!」

雪ノ下「逃がさないわよ!」ササッ

八幡「ちっ」

雪ノ下「絶対に逃がさない」ハァハァ

八幡「目が怖い目が怖い」

小町「今!」ダキッ

八幡「ぎゃ」

小町「はい、離してー」

八幡「……」ドッドッド

小町「と、このように、兄は小心者なので、今みたいに猫から戻りそうな時に突然抱き上げられると」

小町「それがトラウマになってしばらく戻れなくなるんです」

雪ノ下「なるほど」

八幡「ナチュラルに人にトラウマを作ろうとするんじゃな」

小町「はい、今!」ダキッ

八幡「ぐえ」

小町「はい、下ろしてー」

小町「まあこれをあと三セットもやれば、一晩は余裕ですよ」

雪ノ下「なるほど」

小町「どうぞー、お兄ちゃん用のキャリーバッグです」

雪ノ下「ありがとう、貸していただくわね」

小町「あと一応人間時の着替えです」

雪ノ下「必要になるかどうかはわからないけれど」

八幡「むしろ必要になってくれ」

小町「トイレは人間用のトイレに入れてあげれば、猫の姿でもできますし、流すのだけしてあげてください」

八幡(なるべく我慢しよう……)

小町「ご飯はネギとかは一応避けてください。あとは食べやすいように柔らかくすれば、人間のでも食べられるので」

小町「えーと、これくらいかな?」

小町「あ、お風呂は別に入れなくてもいいですよ。毛を乾かすのが大変ですし」

雪ノ下「そうね」チラッ

八幡「……」

小町「じゃあ注意点はだいたいこんなものです」

小町「お兄ちゃんで楽しんできてください」

八幡「俺でかよ、おい」

八幡「……おい」

雪ノ下「なにかしら」

八幡「ずっと抱っこしてたらキャリーバックの意味がないだろ」

雪ノ下「必要な時には入れるわ」

八幡「今が必要な時だと思うが。俺に束の間の安息をもたらすという意味で」 

雪ノ下「私に抱っこされるよりも、そんな狭いところにいるほうが良いと言うのかしら」

八幡「狭いところって安心するんだぞ」

八幡「それに少なくとも、お前に抱っこされるほど体勢を制限されないしな」

雪ノ下「私はあなたがこのほうが安心するのではないかと思って、親切で抱っこしながら連れて行っているのだけれど」

八幡「そういうのを自分本意な親切の押し売りっていうんだ」

八幡「特にお前らみたいのが小動物にすることのだいたいの行動がそうだ」

雪ノ下「有難いご教授痛み入るわね」

雪ノ下「でも訂正させていただくのなら、あなたは本当の猫じゃないでしょう」

雪ノ下「それに、あなたは本当の猫と意思疏通ができるのかしら」

八幡「ある程度はできないこともないが、そこまで器用ではないな」

雪ノ下「ふぅん、じゃああの塀の上にいる猫を呼ぶくらいのことはできるのかしら」

八幡「その程度か。まあ見てろ」ジッ

猫「……」ジー

八幡「……」ジー

猫「フシャー!」

八幡「と、このように俺は猫界でもぼっちだ」

雪ノ下「さっきの自信はなんだったのかしら」

八幡「少しなら意思疏通はできるんだよ。相手が応じてくれないだけで」

雪ノ下「それでは意味がないと思うのだけれど」

八幡「ところで、そろそろ人通りも増えてきたし、猫に話しかけるやばい女だと思われたくなかったら、俺をキャリーバックに入れたほうがいいぞ」

雪ノ下「ご心配どうも。でも、話しかけなければいいだけのことでしょう」


八幡「結局そのまま、移動の大半を俺は雪ノ下の腕の中で過ごし」

八幡「気づけばうとうとと、頭は船を漕いでいた」

八幡「……んん」

八幡「ここは」ムクッ

雪ノ下「あら、起きてしまったのね」

八幡「……近いんだが」

雪ノ下「私の願望のひとつに、猫と昼寝をするというものがあったのだけれど」

雪ノ下「おかげで叶ったわ。ありがとう」

八幡「どういたしまして」

八幡「……他になんかしてないだろうな」

雪ノ下「ええ、特には。写真と、あなたの妹に頼まれたビデオを回してたくらいかしら」

八幡「盗撮じゃね?それ」

雪ノ下「撮影の許可は小町さんから頂いているもの」

雪ノ下「それに、寝ている今のあなたはまるで天使のようだったわ。撮らないという選択肢を選べるはずがないほど」

八幡「……お前、そのうち某猫狂いみたいになりそうで怖いんだけど」

雪ノ下「でも、起きるとやはり、目付きと声で人間のあなたを連想してしまってダメね」

雪ノ下「どうせ猫になるなら、頭の中まで猫にならないものかしら」

八幡「俺の人格全否定か」

八幡「俺じゃなく普通の猫だったら、こんな言うこと聞かないぞ」

雪ノ下「それはそうなのだけれど」

雪ノ下「ならもっとそのメリットを生かしてもらえないかしら」

八幡「例えば?」

雪ノ下「そうね」ムクッ

雪ノ下「私の膝の上に自分から飛び乗って、丸くなってほしいのだけれど」

八幡「なんで俺がそこまでサービスしなきゃならないんだ」

雪ノ下「あなた、この機会を逃したら、女子高生の膝の上でくつろぐなんてことはできないわよ」

八幡「この姿でならいくらでもあるんだけどな」

雪ノ下「私の膝の上を拒否するくせに、他人のを所望する気?あなたのその体質を言いふらして、そんなことをできなくする、という手も私にはあると忘れないで欲しいのだけれど」

八幡「やっぱり脅しじゃないか、よっ」ピョーン

八幡「これでいいのか」ムスッ

雪ノ下「ええ、不機嫌そうなのに、私の膝の上から退こうとはしないその憮然とした態度がたまらないわ」

八幡「退いていいなら退くが」

雪ノ下「それはダメよ」ナデナデ

八幡「今日夕方だけでお前、俺をどれだけ撫でたよ。飽きないのか」

雪ノ下「飽きることなんてありえないわ」ナデナデ

雪ノ下「あ、そういえば、小町さんからあなたの手入れ道具一式も実はお借りしてたの」

雪ノ下「ブラッシングしてあげましょうか」

雪ノ下「それとも、猫じゃらし等の玩具もあるのだけれど、遊ぶほうがいいかしら」

八幡「お前……本物の猫を飼うことになったら、そのテンションは止めろよ」

八幡「確実に猫はノイローゼになる」

雪ノ下「そう、なのでしょうね……」

雪ノ下「でも、私にはあなたがいるから大丈夫だわ」ニコッ

八幡「……」

八幡(今の言葉だけ聞けば、世の男は誰もが羨む内容だろうが……)

八幡(体が猫である俺にとっては)

八幡「死刑判決だろそれ」

雪ノ下「失礼ね。私に可愛がられるのだから、あなたにとってはストレスどころか、むしろご褒美だと思うのだけれど」

八幡「俺は体は猫になっても、猫扱いを喜ぶ変態ではない」

雪ノ下「そういうことにしておいてもいいけれど」

雪ノ下「結局こうしてされるがままになっていては、説得力を感じられないわね」

八幡「お前が脅すからだ」

雪ノ下「さあ、とりあえずブラッシングから始めましょうか」

八幡「流すなよ」

八幡「それとブラッシングだが、強く引っ張るなよ。痛いから」

八幡「毛玉があっても無理に取るのもやめろ」

八幡「ちゃんとすいて丹念にほどけよ」

雪ノ下「注文が多いわね」

雪ノ下「ふふふ、でもそのほうが猫と話をしているという感じがするわね」

八幡「俺は根っからの猫じゃないけどな」

雪ノ下「気分が壊れるから、あまりそういうことは言わないで欲しいのだけれど」

八幡「お前って、猫のことには意外とメルヘンなんだな」

雪ノ下「バカにしているのかしら」

八幡「意外というだけだ」

雪ノ下「もう。別にいいじゃない。これくらい」

雪ノ下「楽しいのだから」

八幡「それはなによりだ」

雪ノ下「あなたももっと、無邪気に楽しんで欲しいのだけれど。猫として」

八幡「俺がそんなことできるタイプかよ」

雪ノ下「それはそうだけれど」スッ

雪ノ下「……」ブンブン

八幡「……」

雪ノ下「ちっちっち」ブンブン

八幡「わざわざ顔の前で玩具を振り回すな。邪魔」ペシッ

雪ノ下「……」ブンブン

八幡「邪魔だってっの」ペシッ

雪ノ下「ふぅ……夢中で遊ぶのもいいけれど。気だるげに猫パンチをするのも、それはそれでかわいいものね」

雪ノ下「あとは今のを繰り返すうちに本気になるというパターンなら、完璧なのだけれど」

八幡「……」

雪ノ下「……」ブンブン

八幡「……」ペシッシャッ

雪ノ下「……」サササッ

八幡「……」ピョンッペシペシペシ

八幡(なにこの接待猫プレイ)

雪ノ下「そろそろ夕御飯を作るわね」

雪ノ下「その辺で寛いでいて欲しいのだけれど」

八幡「わかった」

八幡(やっと休憩か。疲れた)

八幡(飯の後はのんびりさせてくれると助かるんだが)グデー

雪ノ下「……」パシャパシャ

八幡「…飯の支度は?」

雪ノ下「ごめんなさい。だらけている、姿があまりにも可愛らしかったものだから」

八幡「だらけてても可愛いと言われるとか、猫は特だな」

雪ノ下「そうね。やっぱり、一生その姿でいたほうがいいのではないかしら、あなたは」

雪ノ下「そうしたら私が、愛玩動物として一生面倒見てあげてもいいけれど」

八幡「じゃあもう少し、飼い猫を無視して好きにさせる時間を作るということを意識してくれ」

八幡「ほんとストレスで禿げそうだ」

雪ノ下「……ごめんなさい」

雪ノ下「今日はつい、興奮してしまったわね」

雪ノ下「夕御飯ができるまで、少しでも休んでちょうだい」

八幡「お、おう」

八幡(急にしおらしくなられるのも違和感あるな)

八幡(なんにしても、のんびりできるのはいいことだ)ゴロン

八幡(しかし、のんびりすると言っても、猫のままでは、ほんとにのんびり以外しようがない)ゴロン

八幡(今特に見たいテレビ番組はないし)シッポパタパタ

八幡(この大きさ、この手ではゲームもできない)シッポパタパタ

八幡(結局寝るくらいしか選択肢がない)クアー

八幡(寝子とはよく言ったものだ)ゴロン

八幡(あー、暇だ)ノビーン

雪ノ下「……ちょっと」

八幡「どうした」

雪ノ下「せっかくあなたをゆっくりさせようと思った矢先に、そんな姿で私を誘惑するなんて、卑怯じゃないかしらっ」

八幡「誘惑?してたか?完全に無意識だったわ」←少し首を傾げる

雪ノ下「ああもうだめっ!」

雪ノ下「なんてかわいいのかしら!」ギュ!

八幡「ぐえ」

雪ノ下「本当に憎らしいくらいかわいい!たまらないわ!」スリスリ

雪ノ下「うちの子にしたい!ねえダメかしら比企谷君!?」スリスリ

八幡「とにかく離せ……くるしい」

雪ノ下「ご、ごめんなさい……」

雪ノ下「でも、あまりにも可愛かったんだもの……」

八幡(なんかもう、普段とは違うこの雪ノ下がかわいく思えてきたわ)

八幡「で、なぜこうなった」

雪ノ下「あなたを一人、別の部屋に置いておくと、気になってちらちら見てしまうんだもの」

八幡「だからって、おんぶはないだろ。赤ん坊か俺は」

雪ノ下「私にとっては似たようなものね。目が離せないという意味で」

八幡「この状態で料理って、毛が入りそうだが」

雪ノ下「じゃあ、なるべく毛が飛ばないようにおとなしくしていて欲しいのだけど」

八幡「はぁ」

雪ノ下「……」トントントン

雪ノ下「……」チラッ

雪ノ下「……」グツグツ

雪ノ下「……」チラッ

雪ノ下「ふふふ」

八幡「なんだよ」

雪ノ下「いえ、あなたの顔をこんなに近くで見ていたら、なんだか楽しくなってきただけよ」

雪ノ下「ふんふん」♪~

八幡(よほど機嫌がいいんだな。鼻唄まで歌って)

八幡(それにしても、この適度に揺れる暖かい背中。眠気を誘う……おまけに子守唄つきだ)

八幡(それに、いい匂いもするし……)

八幡「……」クークー

雪ノ下「あら」

雪ノ下「眠ってしまったようね」

雪ノ下「……」

雪ノ下(背中に、小さな肉球があたる感触……)

雪ノ下(それに、押し付けられた鼻先から、小さな寝息も当たって……)

雪ノ下(背中にいる小さな生き物への、愛しさがあふれてくる……)

雪ノ下(中身は比企谷だと分かっているのに……)

雪ノ下(もうダメね。完全に惚れてしまったわ、比企谷君……猫のあなたに)

雪ノ下「比企谷君、比企谷君」ユサユサ

八幡「ん……?」

雪ノ下「夕御飯ができたのだけど」

八幡「ああ、寝てたのか」クアー

八幡「んんー」ノビー

八幡「はっ」

八幡(またこんなことをやると、雪ノ下が暴走を……)チラッ

雪ノ下「……」ニコニコ

八幡(……あれ?)

雪ノ下「目は覚めたかしら。さ、ご飯にしましょう」ダキアゲ

八幡(なんか、さっきと雰囲気が違うな)

※ゆきのんが母性に目覚めました

雪ノ下「はい、これが比企谷君の分よ」

雪ノ下「鶏肉と野菜を入れたおかゆにしてみたのだけれど」

八幡「へえ、うまそうだな」

雪ノ下「ちゃんと熱くないように冷ましてあるわ。今のあなたは、本物の猫舌だもの」

八幡「お気遣いどうも」

八幡「ガツガツ」

雪ノ下「どうかしら」

八幡「ああ、問題ない。うまい」

雪ノ下「そう、良かったわ。じゃあ、私もいただきます」


八幡「ごちそうさん」

雪ノ下「ごちそうさま」

雪ノ下「比企谷君、ちょっとそのままでいて」

八幡「なんで」

雪ノ下「口の周りがよごれているわ」

八幡「ああ、そういうことか」

雪ノ下「……」ゴシゴシ

雪ノ下「これでいいわ」

八幡「悪いな、わざわざ」

雪ノ下「当然のことをしたまでのことよ」

雪ノ下「じゃあ、私は洗い物をするわ」

八幡「食べさせてもらったんだから、人間の姿なら俺も手伝うんだが」

雪ノ下「いいのよ、あなたは。ゆっくりしていてちょうだい」

八幡「……またおんぶしないのか?」

雪ノ下「そうね。あなたがしたいというなら、するけれど」

八幡「じゃあいいわ」

雪ノ下「そう?残念ね」

八幡(やっぱり、なんか雪ノ下が落ち着いたな)

八幡(もちろんその方がありがたいが)

八幡(馴れたのか、猫の俺に)

八幡(……飽きたという可能性もあるか)

八幡(……それがどうしたって感じだろ。俺にとっては)

八幡(だいたい、見た目は猫でも、中身は俺なんだから、今までのスキンシップ過剰状態変だったわけだ)

八幡(雪ノ下も落ち着いてようやくそのことにきd)

雪ノ下「……」スッ,ナデナデ

八幡「洗い物終わったのか」

雪ノ下「ええ」ナデナデ

八幡「……膝の上に乗せないのか?」

雪ノ下「あら、わざわざそんなことを言うなんて、私の膝の上が気に入ったのかしら」

八幡「別に」

雪ノ下「あなたが乗りたいなら乗って。どうぞ」ポンポン

八幡「……」

八幡「じゃあ」ノソノソ

八幡「……」ゴロン

雪ノ下「……」ナデナデ

八幡(……落ち着くな)

八幡(癖になりそうだ……)

八幡「……」ダラー

雪ノ下「あの、比企谷君」

八幡「は、寝てた」

雪ノ下「そう、寝ていたところ悪いのだけれど」

雪ノ下「私はそろそろお風呂に入るから、どいてちょうだい」

八幡「ああそう」

雪ノ下「……あなたは入る?入るなら、洗ってあげるし、毛を乾かすのも構わないけれど」

八幡「え、いいわ。猫の時のシャワーって怖いし」

八幡「濡れると全身の毛が張り付くのも気持ち悪い」

雪ノ下「そう、なら」

グラグラグラグラ

雪ノ下「え、地震……?」

八幡「結構大きいな」

ゴロッ

雪ノ下「比企谷君!あぶない!」

八幡「え」

ゴトンッ

雪ノ下「比企谷君!!」

八幡「……」

雪ノ下「比企谷君、比企谷君!しっかりして、目を開けて!」

雪ノ下「え、この赤いのって……血……?比企谷君……!お願い、目を……」

八幡「……あー、びっくりしたわ」

八幡「今のすげえ近くに落ちてきたし、この体じゃ、直撃してたらやばかっ」

雪ノ下「比企谷君……!」ギュッ

八幡「ゆ、雪ノ下?」

雪ノ下「良かった……本当に良かったわ、無事で……」

八幡「お、おう」

八幡(む、胸が……)

雪ノ下「でも、本当にあぶないところだったわ……それに、あんな真っ赤な血が」

八幡「血?俺別に怪我とかないみたいだけど」

雪ノ下「え、でも確かに真っ赤な血が」

八幡「……俺の毛並みが一部鮮やかな赤に」ベットリ

雪ノ下「どうやら落ちてきたものの中身のようね」

雪ノ下「それに、あなたを抱き締めたせいで、私も真っ赤だわ」ベットリ

雪ノ下「私の服と違ってあなたはその毛を脱ぐというわけにはいかないのだし」

雪ノ下「お風呂に入らなければならなくなったようね」

八幡「えー……」

雪ノ下「さ、行きましょう」ダッコ

八幡「まあ、仕方ないか。頼む、雪ノ下」


雪ノ下「あなたは先に中で待っていてちょうだい」

雪ノ下「私もあなたを洗う準備をして入るから」

八幡「わかった」

八幡「それにしても猫の姿で風呂場は鬼門だ」

八幡「足元がつるつるしておぼつかないし、毛は湿気を吸って重いし」

八幡「湯船は高いから落ちたら一発だろ」

八幡「そもそもこの姿で濡れるのが生理的に嫌だ」

八幡「ネットで見た濡れて毛がべっとりした猫と同じようになるんだからな」

ガラッ

雪ノ下「お待たせしたわね、比企谷君」

八幡「……なんでタオル一枚なのん?」

雪ノ下「私の服は、早く洗わないと赤いのが落ちなくなりそうだったから脱いだの」

雪ノ下「それであなたを洗うのなら、私も少なからず濡れるでしょうし」

雪ノ下「そもそも私はお風呂に入るつもりだったからちょうどいいわ」

八幡「いや、そういうことを聞いたつもりじゃなかったんだが」

八幡「お前はもしかしたら忘れているのかもしれないが」

八幡「今は見た目が猫でも、俺男なんだけど」

雪ノ下「……それがどうかしたのかしら」

八幡「え」

雪ノ下「さ、全身洗ってあげる」

八幡「ちょっと待て、全身って。別に赤いのがついたところだけで」

雪ノ下「小町さんに一応猫用のシャンプーとリンスも借りてきて良かったわ」ヒョイ

八幡「おい、やめ、ちょ……あっ」ゴシゴシゴシ

八幡「なぜあんなところまでしっかり洗った……」

雪ノ下「お腹の方に一番あの赤いのがついていたのだから、仕方ないでしょう」

雪ノ下「だいたい、今は猫の姿なのだから、気にしなくてもいいと思うのだけれど」

八幡「もっと気にしてくれ。頼むから」

雪ノ下「じゃああなたも洗い終わったし」

八幡(この後はドライヤー地獄か……)

雪ノ下「私も自分の体を洗ってしまうから、タオルを取るわ」

八幡「は?」

雪ノ下「……別に見ても構わないけれど、その場合は覚悟をしておくことね」

八幡「……覚悟って」

雪ノ下「見たら一生あなたは私の愛玩動物よ」

八幡「こわっ」

雪ノ下「……」ハラッ

八幡「おっと」プイッ

雪ノ下「……」ゴシゴシ

八幡「……」

八幡(今、あの雪ノ下が俺の後ろで、裸になって体を洗っているのか……)

八幡(正直に言えば見たい。当然気にはなる)

八幡(だが、どうなんだ)

八幡(雪ノ下はどういうつもりなんだ)

八幡(見るのが正解なのか、見ないのが正解なのか)

八幡(……好奇心は猫を[ピーーー]ということわざもある)

八幡(やめとこ)

雪ノ下「終わったわ」

雪ノ下「……結局見なかったのね」

八幡「俺には覚悟とかないんでね」

雪ノ下「そう」ヒョイ

八幡「あ」

フニッ

八幡「……お前、タオルは」

雪ノ下「巻いてないけれど?」

八幡「あたってんだけど」

雪ノ下「毛の感触が素肌に当たると、なんだか気持ちいいわね」

八幡「お前な……」

雪ノ下「なにかしら」

ガチャッ

八幡「さっきも言ったけど、いくら俺が猫の姿だからって、無防備すぎだろ」

雪ノ下「そうかしら」←八幡置く

八幡「覚悟ってのもなんだよ。一生愛玩動物だと?中二漫画の台詞かよ」

雪ノ下「私は本気で言ったのだけれど」ゴソゴソ

八幡「本気のが怖いわ」

雪ノ下「ねえ、前を見て」

八幡「前?」チラッ

八幡「」

雪ノ下「見たわね。下着姿だけれど」

八幡「……鏡の前に置くのは卑怯だろ。不可抗力、いや、これは罠だ」

雪ノ下「比企谷君」

八幡「ビクッな、なんでしょうか」

雪ノ下「一生愛玩動物なんて、嘘に決まってるでしょう?」フフ

八幡「で、ですよねー」

雪ノ下「それとも、なりたかった?」ゴソゴソ

八幡「……」

雪ノ下「してあげましょうか?」ゴソゴソ

八幡「いい加減俺をからかわないでくれ……俺の小さな心臓がもたないだろ」

雪ノ下「ごめんなさい。でも、そうしてもいいと思うくらい、あなたのことを気に入ってるのだけれど」

八幡「猫の俺だろ」

雪ノ下「当たり前でしょう」

雪ノ下「服も着たのだし、あなたの毛を乾かしましょうか」

八幡「頼む」

雪ノ下「いくわよ」

八幡「……」ブォー

雪ノ下「……怒っているのかしら」

八幡「……別に」ブォー

雪ノ下「そう。もし怒っているのだとしたら、その姿では、むしろつんとした態度は可愛さが増してると忠告しようかと思ったのだけれど」

八幡「……」プイッ

雪ノ下「ほら、そんな態度のことよ」

八幡「ほっとけ」ブォー

雪ノ下「じゃあ、私はさっきこぼれたものの後片付け等を済ませてくるから、あなたは先に寝ててもいいわよ」

八幡「お前のベッドで寝ろというのか」

雪ノ下「そうだけれど、それがなにか」

八幡「……もういいわ。おやすみ」

八幡(今日は疲れたな……)

八幡(とりあえず、明日までの辛抱だ)

八幡(今後も猫の俺を構いたそうではあるが)

八幡(できるだけやりすごそう……)

八幡「……」

八幡「……」クークー

ギシッ

雪ノ下「比企谷君?……本当に寝てしまうなんて、薄情な“子”」

雪ノ下「猫の時は、どんな夢を見ているのかしら」ナデナデ

八幡「ん……?」

雪ノ下「あ、ごめんなさい。起こしてしまったわね」

八幡「……ん」

雪ノ下「ねえ」

雪ノ下「こっちに入らない?」布団がばー

八幡「……」

八幡「……」トテトテトテ

雪ノ下「ふふ、寝ぼけてるのかしら。なんにせよ、素直で可愛らしいけれど」

八幡「……」ゴロン

雪ノ下「おやすみなさい、比企谷君」ナデナデ



八幡「あー……朝か」ムクッ

雪ノ下「……」

八幡「雪ノ下……?ああ、一緒に寝たんだった……あれ、なんか起き上がっただけで視線高い……な」

八幡「……」

八幡「……やばい」

八幡「雪ノ下を起こさないように出て、服を着なければ」

八幡「朝起きたら裸の男が寝室にいたとか、こいつはなにをするかわからん」モソモソ

八幡「……」ソーット

雪ノ下「おはよう、比企谷君」

八幡「……おはようございます」

雪ノ下「元に戻ってしまったのね。猫のあなたの顔を見ながら、起きたかったのだけれど」

八幡「なんか、すいません」

雪ノ下「まあ、また猫にしてしまえばいいだけのことなのだけれど」ダキッ

八幡「……」ボンッ

雪ノ下「さ、朝御飯にしましょう」

八幡「順応早すぎだろこいつ……」


雪ノ下「また元に戻ってしまったの」

八幡「仕方ないだろ。変身時間は自分で操作できないんだ」←服は着た

雪ノ下「私も小町さんのように、あなたに変身トラウマを与えるテクニックを覚えたほうが……そのためには、通常の変身時間の把握を……」ブツブツ

八幡「早く飯にしようぜ」

雪ノ下「比企谷君」

八幡「なん」

雪ノ下「……」ギュッ

八幡「ボンッ……せっかく服を着たんだが」

雪ノ下「どうせ用意した朝食は猫用だもの。そっちの姿のほうがいいわよ」

雪ノ下「だいたいこつはつかめたわね」

八幡「こいつ、化け物か……小町でも習得に時間がかかったこれを、あっさりものにするとは」

八幡「やはり天才か……」

八幡「で、おかげで俺は今日学校に遅刻しそうなんだが」

雪ノ下「学校までは私が連れていってあげるわ」

雪ノ下「始業までにあなたが戻れるかどうかは分からないけれど」

八幡「もっと後先考えてくれ」

雪ノ下「これからは気を付けるわ」

雪ノ下「そろそろ人通りも増えてきたことだし、一度鞄の中に入って」

雪ノ下「もちろん、声や物音は立てないように。分かっているとは思うけれど」

八幡「もちろんだ。面倒事はごめんだからな」

雪ノ下「校舎に入った後は、部室に向かうから、そこで元に戻るまで」

「やっはろー、ゆきのん!」

雪ノ下「……」

八幡「……」

由比ヶ浜「あれ、なんで猫連れてるの?」

雪ノ下「おはよう、由比ヶ浜さん」

雪ノ下「この子は……昨日言っていた知り合いの猫なのだけれど、急遽一晩預かることになったの」

由比ヶ浜「え、でもこれから学校だよ?」

雪ノ下「この子は大人しいから、こっそり部室で待たせても大丈夫だと思うの」

由比ヶ浜「へー、大変だねー」

八幡(これで納得するとは、見つかったのが由比ヶ浜で助かった……)

由比ヶ浜「ねえゆきのん、だっこしてもいい?」

雪ノ下「え……だ、大丈夫よ」

由比ヶ浜「えへへ、ありがとう」

由比ヶ浜「こんにちはー」

八幡「……」プイッ

由比ヶ浜「あれー、どうしてそっぽ向くの?」

八幡「……」

由比ヶ浜「この子目付き悪いねえ」ニコニコ

由比ヶ浜「ゆきのん、この子の名前は?」

雪ノ下「名前……ええと……その」

雪ノ下「ひ、いえ、はち、じゃなくて……ま、マンジロウよ!」

八幡(いっそジョンで良かったんじゃね……)

由比ヶ浜「マンジロウちゃん……あ、じゃオスだ」

雪ノ下「ええ、そうよ」

由比ヶ浜「ほんと、おとなしいね。暴れないし」ナデナデ

雪ノ下「内向的な子なの」

八幡(おい)

由比ヶ浜「まんじろうーかわいいにゃー」ギュー

八幡「……」

雪ノ下「……」

雪ノ下「由比ヶ浜さん。私はこの子を部室に連れていかないといけないし、そろそろ時間が押しているのだけれど」

由比ヶ浜「あ、そだね。ごめんねゆきのん」

由比ヶ浜「じゃあマンジロウ、あとで部室に会いにいくから」

八幡「……」

雪ノ下「……」

八幡「……どうすんだよ。由比ヶ浜が部室に来たら、猫の俺がいなきゃならなくなったが」

雪ノ下「……ならずっと由比ヶ浜さんに抱っこしてもらっていればいいでしょう」

八幡「なんでそうなるんだよ」

雪ノ下「とにかく早く部室に行きましょう。鞄の中に入って」

八幡「ああ」


八幡(なんとかぎりぎりで戻れたが……)

由比ヶ浜「あれ、ヒッキーお昼部室に行かないの?」

八幡「行かない」

由比ヶ浜「えー。実は内緒なんだけどね、今部室に猫がいるんだよ」ヒソヒソ

八幡「へぇ」

八幡(知ってる)

由比ヶ浜「目付きがすっごい悪くて、でもおとなしくてね」

由比ヶ浜「ヒッキーそっくりだったかも」

八幡「はは、そうかい」

八幡(同一人物?だからな)

由比ヶ浜「ヒッキーも見に行こうよ」

八幡「行かない」

由比ヶ浜「……ヒッキーって猫ダメだったっけ?」

八幡「いや。ただ気分が乗らない」

由比ヶ浜「えー。もういい、ヒッキーってばほんとけちだし」

八幡(この場合けちは全く関係ないだろ)

八幡「……行ったな」

八幡(間に合え)


由比ヶ浜「やっはろー、ゆきのん、マンジロウ」

雪ノ下「こんにちは、由比ヶ浜さん」

八幡「……」

由比ヶ浜「あ、マンジロウ、ゆきのんの膝の上なんだ。ヒモもつけてないのに、ほんとに逃げないんだね」

雪ノ下「この子は私にべったりだから」

八幡「……」

由比ヶ浜「へー。なついてるんだねー」

由比ヶ浜「マンジロウ、おいでおいでー」

八幡「……」プイッ

由比ヶ浜「えー、無視だし」

雪ノ下「ごめんなさい、この子愛想が悪いの」

由比ヶ浜「あはは、ほんとだね」

八幡「……に、にゃあ」

由比ヶ浜「ぷふ、変な鳴き声。今のって」

八幡「……」

雪ノ下「この子、抱っこして欲しい時とかに、鳴いて催促してくるの」ヨイショ

雪ノ下「よしよし」ポンポン

八幡(耐えろ……耐えるんだ俺……)

由比ヶ浜「うーん、もう一度だっこしたいけど」

八幡「……」ジッ

由比ヶ浜「そんな風に身構えられると、無理そだね」

雪ノ下「ごめんなさい、この子本当に人見知りが激しくて」

由比ヶ浜「ううん、全然大丈夫。でも、それってゆきのんだけって感じでかわいいよね」

雪ノ下「……そうね」ナデナデ

八幡「……」

雪ノ下「由比ヶ浜さん、そろそろ」

由比ヶ浜「え、でもまだお昼休み時間あるよ?」

雪ノ下「知らない人があまり近くにいると、この子はストレスを感じてしまうの。申し訳ないのだけれど」

由比ヶ浜「あ、そうなんだ。ごめんね、それなのにこんなに」

雪ノ下「大丈夫よ。少しくらいなら、他人に慣らす訓練になるもの」

雪ノ下「そうそう、由比ヶ浜さん。この子のことがあるから、放課後の部活は今日休みにしたいのだけれど」

由比ヶ浜「うん、ヒッキーにも伝えとくね」

雪ノ下「ええ、お願いするわ」

八幡「なんとか乗りきったな」

八幡「あとは、昼が終わる前に戻れるかどうかだ」

雪ノ下「……比企谷君。由比ヶ浜さんなら、その体質のことを話しても良かったのではないかしら」

雪ノ下「そうすれば、こんな苦労も」

八幡「言っただろ。できるだけ他人にはばらしたくないんだよ」

八幡「こんな体を見て、お前みたいにすぐ順応できるやつばかりじゃない」

八幡「それに……」

雪ノ下「それに?」

八幡「なんでもない」

八幡「ただいま」

雪ノ下「お邪魔しまs」

小町「お帰りお兄ちゃあああああん」ダキッ

八幡「」ボンッ

小町「んー、一晩ぶりのこの毛ざわりー、すりすりすりすりー」

八幡「おい、やめろ……」

小町「あれ?お兄ちゃんお風呂入ったの?シャンプーの匂いする」

雪ノ下「ちょっと毛が汚れることがあったから、入れざる負えなかったのよ」

小町「あ、雪乃さんこんにちはー、兄が大変お世話になりました」

雪ノ下「いえ、こちらこそ、おかげでとても癒されたもの」

小町「それで……例のブツは」

雪ノ下「はい、これよ」

八幡「ちゃんと撮ってたのかお前」

小町「やぁん、お兄ちゃんかわいいー」

雪ノ下「気に入ってもらえたようで良かったわ」ナデナデ

八幡「俺の妹が猫好きすぎる……」

小町「いやあ、それにしても」

小町「このビデオと写真からは、被写体への愛を感じますねー」

雪ノ下「……そうかしら」

八幡「猫好きだからだろ」

小町「それに、二人とも、膝の上で撫でる撫でられるのが全くの自然!」

雪ノ下「これは……その」

八幡「昨日撫でられ続けたから癖なんだよ」

小町「ふむふむ、雪乃さんのなでなでが癖になってしまったと」

小町「二人とも、まるで本当の飼い主と飼い猫みたいですね!って、あれ」

小町「なにかが間違っている……」

八幡「……もう俺部屋戻るわ。着替えてくる」シュタッ

雪ノ下「あ」

雪ノ下「……」

小町「逃げられちゃいましたね」

雪ノ下「まるで本物の猫のようだわ」

小町「……お兄ちゃんの体質を知ったのが、雪乃さんで良かったです」

雪ノ下「そう、かしら。彼は迷惑しているようだけれど……」

小町「いえいえ、あれは照れ隠しです」

小町「お兄ちゃん、楽しそうでしたよ。本当の自分を見せられて」

小町「お兄ちゃん……この体質のせいで友達作るのもやめちゃったんです」

雪ノ下「彼が孤独でいたがるのって」

小町「もちろん、体質のせいだけではないんですけどね。お兄ちゃん、他のトラウマもいっぱいあるから」

誰かこの続きお願いします

ちょっと書いてみた
気に入らなかったら言ってくれ

小町「何回かこの体質を克服しようとして女子にアタックしてみたんですが…」
雪ノ下「」
小町「だから雪乃さんみたいな人がいることは私も嬉しいんです!」
雪ノ下「…そう」
小町「あんなお兄ちゃんですがよろしくお願いします」
雪ノ下「ええ、まかせなさい」
雪ノ下「ところでまた彼を借りたいのだけれど」
小町「もちろん大歓迎ですよ!」
小町「あ、でも小町もお兄ちゃんと触れ合いたいっていうか、今日はうちに置いといてください。」
雪ノ下「そう…なら私も今日泊まってもいいかしら?」
小町「え、本当ですか?」
小町(これは…)ニヤ

理解不足ですいません
書き溜めできたらまた立てるかもしれません

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年11月08日 (金) 00:55:31   ID: Oc3ct8Q6

ガンバ

2 :  SS好きの774さん   2013年11月12日 (火) 08:31:02   ID: DipORYcO

がんば

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