咲「息の根が止まってしまいそうな程に」 (32)

久「息の根を止めてしまいたくなる程に」
のアナザーver 短いです

京ちゃんのことが好き

そう告げると、京太郎は照れたような笑みを浮かべた

京太郎「なんだよ突然」

咲「べつに。ちょっと言ってみたくなっただけ」

京太郎「…俺も好きだぜ。咲」

咲「ふふっ、ありがと京ちゃん」

京太郎「…///」

咲「あ、京ちゃん照れてる。かわいー!」

京太郎「う、うっせえ!///さっさと学校行くぞ咲!」

咲「あ、待ってよ京ちゃん!」

京太郎「…ほら。お前は危なっかしいからな」スッ

咲「…うん、京ちゃん」

照れ屋で優しい恋人に手を差し出されて

咲は微笑みながら、京太郎の手をぎゅっと握りしめた

今日はいつもより少し早くHRが終わって

部室へ入った咲は眩しさに目を細めた

ちらちらと光るペンライトの光

咲「何やってるんですか?部長…」

久「え?咲を驚かせてみよう企画第一弾よ」

意味が分からない。しかも第一弾って何

気の抜けた息をついて咲は久から距離をとった

久がペンライトの光を消す

部屋には2人きりで、少しめまいがする

久「咲は須賀君と一緒に来ると思ってたわ」

咲「いつもより早めに終わっちゃって…それに京ちゃんは今日日直だから」

咲「どっちにしても先に来ることになってたんです」

久「へえ、そうなの」

咲「はい」

久「………なんてね」

咲「え?」

久「私、知ってたのよ」

久「咲が今日一人だってこと。須賀君が日直で来れないこと。そして他のメンバーも遅れてくるってこと」

どくんと、心臓がはねた

久「ここには私と咲しかいないってこと」

待ってたのよ、と笑いながら咲を目の前のロッカーに押し付けて

瞳を覗きこんでくる

咲「あの部長、どいてください」

久「いいじゃない。時間あるんだから、遊びましょうよ」

咲「遠慮します」

久の視線が痛い

まるで細胞全てを、犯されているみたいな

久「ねえ…咲」

久の指が優しく咲の頬を撫でた

子供でもあやすような、そんな触れ方

このうえなく甘くて

身を任せてしまいそうになる

久「いいでしょ」

明かりのついてない部屋の暗がりで

呆れるほど冷静な心とは裏腹に、激しく鼓動する心臓

ひどく愛おしげな久の微笑

久「咲が、好きなの」

久は咲を囲い込み、その耳元に囁いた

咲「嘘」

心の音が聞こえてしまいそうなくらい側に、久のぬくもりがあって

咲の声は少しだけかすれてしまった

久「本当よ」

咲「…部長なら、沢山の人に好かれてるじゃないですか」

久「本命に好かれてなければ意味がないわ。迷惑なだけよ」

咲「部長を好きな人が可哀想」

久「仕方ないわ。だって私は咲が好きなんだもの」

咲「…でも」

久「そう。でも、咲には須賀君がいるのよね」

その言葉に一瞬咲の全身が震える

咲「私、京ちゃんのこと、本当に好きですから」

久「ねえ。こんな状況でそんなこと言っても煽るだけだって、分かってる?」

肩を撫でる久の指から伝わってくる熱に意識が朦朧としてくる

言葉は冷たいのに、怖いくらいに本気なのに

触れた場所が暖かい

久は咲の喉をするりと撫で上げてゆっくりと上向かせた

咲「あ、駄目…」

久「分かってるわ。ただ抱きしめるくらいは良いでしょ」

咲の背に手を這わせ、その全身を腕の中に収めきる

爽やかなコロンの香りに酔ってしまいそうな感覚

ひどく居心地が良い

そんな風に感じる自分が怖くなり、咲はぶるりと身を震わせた

咲「…もう、離してください」

久「名残惜しいけど、仕方ないわね」

また今度ね、と囁きながら久が咲から離れる

咲がほう、と息をつく

そんな咲の様子に妖しい笑みを浮かべる久

咲「え?あ…」

気を抜いたところを、急に腕を強く引かれた

重なる2人の唇

それは一瞬だった

咲「…っ!」

突然の事態に声が出ない咲

久「忘れちゃ、駄目よ?」

密かな笑いと共に落とされた熱い囁きが

鼓膜から入ってきて脳内のバリケードを浸透してくる

今度こそ久がふわりと離れて部室の外へ出て行った

私は京ちゃんが好き

京ちゃんのことが好き

京ちゃんだけが好き

なのに

いつから

いつから…

そっと一度だけ呟いてみる

咲「私は部長のことが好き…」

心の奥底にある自分の本当の思い

でも知られてはいけない

知られてしまったら、久に身も心も全て奪われてしまうから

だから絶対に拒まなくてはいけない


たとえ一瞬だけ触れ合った唇に

息の根が止まってしまいそうな程歓喜したとしても


久「息の根を止めてしまいたくなる程に」
で、小細工せずに部長が真っ向から咲さんに迫るverでした
この後咲が頑なに部長を拒み続けるか、京太郎を裏切って部長に走るかはご想像にお任せします
支援ありがとうございました

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