【R-18】舞園「苗木君の鶴が私のナカにッ!」苗木(この舞園さんは嫌だ)【18禁】 (43)

正直、釣りスレだと思ったろ?

けど、違うんだな!

こちらの板では18禁もOKなようなので、投下していきます!

以下、注意書き

・苗木×舞園

・雰囲気は暗め

・18禁要素あり

・ただし大したエロじゃない

・エロはエッセンス

・エロに実用性はない

・しかも途中からエロはログアウトする(物語後半から消滅する)

・けど、電車の中とかでは読むのはやめた方がいい

・約2万文字(つまり、エロなしの部分が1万文字以上あるよ)

・注意事項は「やや退廃的 軽い暴力表現あり 微鬱 少し病んでる」
 注意事項は「やや退廃的 軽い暴力表現あり 微鬱 少し病んでる」
 大事なことだから2回言いました

・枕ネタはなし

・通信簿ネタはあり

・ちょっとキャラ崩壊あり

・負の感情の方がどちらかといえば飛び交ってる気がする



それでよければ……↓に





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「……ぁ。あは……。ん…ふふ……きもちいいです……苗木君」
「……くぅ。……ぅ。……ボクもだよ。……舞園さん」

薄暗い部屋の中でボク達2人は交じり合っていた。
暗くした部屋の中で、ボク達は互いの熱と息遣いを頼りに抱きしめあい、なぶり合い、弄びあった。

相手の体温と汗と匂いをより強く感じられるように、かけ布団をかぶっている。
むせ返る匂いに包まれながら、グッショリと濡れたシーツの中でもがき合うようにして、
ボク達は互いの存在だけを感じている。
暖かいというよりも、もはや暑くて……思考の焦点が定まらない。

夢心地の中、ボク達は感情と欲望に従って動いた。
自分の腿を相手の腿にこすり合わせ、相手の汗を舐め、息遣いや心臓の音を聞きながら、互いの性器をいじり合う。

「うふふ……苗木君の大きくなってまぁ……あぁぅ……苗木君、ソコは……ん……あぁアぁ」
「ぁぅ……舞園さ…ん……っ……の中もすごいよ……」
「あぁ……な、苗木君のいじわる……あ、きゃ、めて、が、まんで……」
「ま、舞園さん……挿れるよ」
「ひゃい、おねがいしましゅ……あぁ、あ……ン…アァ」

いじり合いに飽きたボクは、自分のモノを舞園さんの中に挿れる。
一対の剣と鞘のように、ボクのモノは舞園さんの鞘に収まった。

「なえぎくんがっなかにいますぅ」

舞園さんがボクを必死に抱き寄せようとする。
それに応えるようにボクもまた舞園さんを抱きしめた。

ボク達は先ほど以上に互いを強く抱きしめ合う。
汗で濡れたベッドの中はどんどん冷たくなってしまう。
だから、互いを互いの肉布団のようにして、ボク達は相手の身体で暖を取る。

相手にすがりつくことで安心感を得る。相手に信頼感を与えようとする。
ただそれでも足りなくなったとき、ボク達は互いの身体をぶつけ合うようにして動き出す。

上半身を使って相手にしがみつきながら、下半身で相手を押しのけようとする。
だけど、相手が本当に離れそうになったら、足を絡めて絶対に逃がさないようにした。
蒲団の中で、犬猫が互いにじゃれあうようにして、ボク達は腰を振り合った。

「あ、あ……なえぎくん……なえぎくんっ……だいしゅき……なえぎくぅん……だいしゅき……」
「ボク……ぅ……もだよ……」
「き……こえま…ァ……せん…ン……もういっかい……いってくださぁい……」
「ボクもッ! ……大好きッ! ……だよ…………舞園さん……」
「……ッ。うれしい…ァ……ぅ……。……なえぎくん…………ゆめみたい……」

汗に涙が混ざるときもある。
どちらの涙かは決まっていないけど……。
絶頂が近づくと自然と……どちらかが泣く。
今日は舞園さんだったようだ。

「泣かないで、舞園さん……ずっと一緒にいるから……」

ボクはゆっくりと腰を動かすのを止めないまま、指先を舞園さんの背へと持っていく。
ペニスで絡み付くような襞を捲りあげたり元に戻したりしつつ、指先でツーと舞園さんの背骨をくすぐってあげる。

「あっ、はぁ、……にゃ、にゃえぎく、くすぎゅ……っ……ちゃ、いでしゅ」

さらに、ボクは自分の顎を舞園さんの柔らかい乳房の上に乗せた。
少しだけ顔を押し付けて、その形を変えてみる。
そしてさらに舌先で突っついていく。

「ッ……もっちょ……おにゃがいっ、しましゅ」

ボクはそのまま今度は上乳から乳首まで舌で舐めていく。
そして、含んだりしゃぶったりした。
そして、舐めるだけ舐めたら、一度口を離した。
舞園さんの顔がどう変わっているかを見る為に……。

舞園さんは恍惚とした表情を浮かべていた。

「ぁ、あぁ……あこがれだった、なえぎくんに…うれしい…うれしい……うれしいですっ!」
「うん……ボクも嬉しいよ。舞園さん」
「なっ、なえ、く、ん……も? あ、あ……あぁ!」

舞園さんのとろけるような表情の笑顔を見て、ボクは思わず腰を振る速度を上げてしまった。
ボクの股間のモノはさらに固さを増して、今にも中のモノを飛び出させそうだった
だけど、舞園さんと一緒にイクため……ボクは必死に我慢した。
必死に我慢した甲斐があったのか、幸いなことに舞園さんもまた表情をどんどん溶かしていく。

「あぁ、にゃ……えぎ……くっ……ぅ……ん……わたし、も、ら、めぇ」
「ぅ……ぁ………そろそろっ……出るよっ……」
「ひゃ、い……だいじょぶれす……にゃかで、わらしのにゃかで、らしてェ」
「う……ぅ……クッ」
「あ、あぁ、にゃえぎくん、にゃえぎくんをかんじましゅぅ……」

ドクッドクッと……ボクの射精は止まらない。
毎日、毎日、こんなことばかりしてるのに……。
舞園さんに体中の精気を搾り取られいるかのように……精液は湧き出てくる。

ボクは惚けたように自分の下半身を眺めた。

「にゃ、にゃえぎくん? にゃえぎくんは……キモチよきゅなかったれすか……?」

「……………………」

そんなボクの様子を見て、舞園さんが炉れるの回らない口調で尋ねてきた。
何を言ってるのか一瞬分からなくて、沈黙してしまい、無言のまま舞園さんを見つめてしまう。

「……ァ。ああああ……っ!……ごめ……ごめんなさい。苗木君……私ばかりッ……」

ボクのそんな様子を見て……舞園さんが急に怯え始めてしまった。
先ほどまでの高揚感が嘘のように……青ざめた様子を見せている。
ガタガタと震え出し、表情が消えていく。

悪い事しちゃったな……。

「ううん……気持ち良すぎて……ちょっとボーっとしちゃってたんだ」

「本当ですか?」

「本当だよ」

「ウソじゃないですよね?」

「ウソじゃないよ」

「わ、私……苗木君と一緒にいると安心して、気持ち良くて、嬉しくなります……」

「うん……ボクもだよ。舞園さん……」

ボクは舞園さんを抱きしめる。
舞園さんが安心できるように……。

「よかったぁ……」

舞園さんは泣きながら笑っていた。

「幼い頃から憧れてた苗木君の助手になれて本当に良かったぁ……」

「……………………うん、そうだね」

「苗木君と一緒なら、ずっとこの中にいられます」

「………………………………………」

舞園さんは右手を自分の口元へと寄せて笑った。
それはアイドルだった頃の舞園さんが時折やっていた仕草。
ただ今違うのは……。

舞園さんの右手はもう何も握れないってことだけだ。
折れ曲がった右手の指は変な形で固着してしまったからだ。
彼女の右指の関節はもう曲がらない。

◇◇◇

だいぶ前のこと……。
舞園さんは桑田君を殺そうとした。

彼女の右手はそのときに折られたものだ。
超高校級の野球選手である桑田君の全力のスイングを“二度”受けて、彼女の右手は粉々に砕けた。

本当だったら、舞園さんの命すらも危うかったのかもしれない。
だけど右手を押さえて絶叫し、もだえ苦しむ舞園さんの姿が、桑田君の動揺を生んだらしい。

そのため、舞園さんはからくも桑田君の隙を付いて廊下へと逃げ出せたんだ。

そして、一晩中、舞園さんは寄宿舎の中を彷徨いながら、包丁をもった桑田君から逃げ回ったようだ。

ちなみに、桑田君は、舞園さんをそのままにしておくと自分の身が危ないと思って……、
捕まえてロープか何かで拘束しようとしていたらしい。

互いの主張がどこまで本当だったのか今となっては分からない。

ただ、少なくとも、その時の舞園さんは桑田君に殺されると思い込んでいた。
もちろん……だからといって、桑田君が悪い訳ではなくて……だからこそ、よりやるせない気持ちになる。

舞園さんは必死になって生きようとした。
トイレに隠れたり、物陰にかくれたり、廊下を走ったりしながら……必死に桑田君から逃げた。

後になって聞いた話だと……、舞園さんはボクがいた部屋のドアを何度も叩いたらしい。
だけど、ボクは開けなかった。
舞園さんとの約束で、誰が来てもドアを開けないと決めていたからだ。
防音のドアが声を遮っていたため、ドアを叩いている相手が舞園さんだとは気付かなかった。

舞園さんは泣きながらボクの名前を叫んでいたようだ。
何度も言うように……一晩中ね。

次の日の朝、様子がおかしい桑田君といくら経っても来ない舞園さんに疑問を抱いて、ボクは舞園さんの姿を探した。
舞園さんはいつの間にかボクが使っていた部屋、つまり舞園さんの部屋にいた。

ボクと入れ替わりで部屋の中に入ったらしい。
鍵を閉め忘れたのは、偶然だった。

舞園さんはやっとの思いでボクがいるはずの部屋に入れたのに、ボクの姿が見当たらないことに気づき、
半狂乱になっていた。

「苗木君苗木君苗木君苗木君……苗木君はどこ?」

「舞園さん……」

「――――――――苗木君」

それから彼女はずっとボクの近くにいる。
そして、それを遮るものはなかった。
だって、舞園さんが人殺しを企てたことはあっという間にばれて……、彼女は孤立したんだから。

そして、それをかばい続けるボクも孤立した。

◇◇◇
「……苗木君?」

どうしてこうなったんだろう? という疑問を感じつつ、ボクは舞園さんの声で現実に引き戻された。

「……今度はボクの部屋に行こうか?」
「はい!」

互いの部屋は交互に行き来している。
片方の部屋を一晩かけて汚すだけ汚したら……、もうひとつの部屋に移る。

他の人とは違う生活リズム。
他の人と会わないための生活リズム。

夜時間が始まる少し前に起きて、食料を取ってきて……。
夜時間が開始してから朝ごはんを食べて……。

みんなが寝ている間に……ひたすら溶け合うようにして交じり合う。
交じり合うのに飽きたら、もうひとつの部屋に行き、昼食を取って2人だけで談笑する。

そして、昼少し前に夕ご飯を食べて……、昼過ぎに一緒に眠る。

「昨晩もお楽しみでしたか?」

「えぇ、おかげさまで」

「……セクハラ的な質問にもあっさりと答えるようになったらつまらないね」

「うふふ……いつもありがとうございます。モノクマさん」

部屋の外に出ると……モノクマがまるで清掃員のような恰好をして立っている。

初めの頃、ボク達に不自由をさせないと行ったのは本当のようで……部屋を空けておくと、
ホテルの従業員みたいに清掃をしておいてくれる。

ただ、「教師として、不登校児の世話もやらないといけないよね。うぷぷ……」と言っていたから、
もしかしたら、本当はやるつもりもなかったのかも……。

単なる気まぐれか、ボク達の様子を面白がっているのか、明確な意図があるのか、そのあたりはよく分からない。

「ごゆっくり~」

「はい!」

「………………」

ただ、まぁどれでもいい……。
ルールや約束自体は守るようなので、邪魔をしなければボク達に危害を加えることはないだろう。
だから、今はモノクマの考えなんて気にしてられない。

「モノクマさん、仕事が丁寧ですよね」
「そうだね……」

ボクの部屋に入って、舞園さんはそう言った。
この部屋も昨日散々ぐちゃぐちゃにしたのに……今ではすっかり綺麗になっている。

テーブルの上にはラップで包まれた食事が用意されている。
まぁ、用意って言っても……こちらに関しては、あらかじめボクが食堂から持って来ておいたものなんだけど……。

ボクはモノクマから貰った電子レンジでそれらを温めながら、舞園さんを席に座らせた。
そして、温め終わった食事をテーブルの上に並べなおした。

「ひとまずご飯たべようか……?」
「はい! 任せてください」
「あはは……」

ボク達は隣り合ってイスに座った。
すると、舞園さんは左手でスプーンを持ちスープを掬う。

「フゥフゥ……」

そして冷ましながら、ボクの口元へスプーンを持ってくる。

「……………おいしいよ」
「よかったぁ」

日常生活で何かとボクに頼りがちになってしまった舞園さんが気に病まないように、
苦し紛れにボクがお願いしたことを、彼女は律儀に毎日守っている。

舞園さんは甲斐甲斐しくボクに食事をさせてくれた。

はじめは自分で食事すること自体、左手だけだと難しそうだったのに……。
今では、器用に左手で色々なことができる。

「よく噛んでくださいね」
「うん……」

自分の分とボクの分……舞園さんは交互に料理を掬っては口元へと持っていく。

時間を気にせず、ボク達はゆっくりと食事を楽しむ。

そして、ゆっくり食べれば食べるほど……食事は冷めていく。

「冷めてきちゃいましたね」

その様子を見ながら、舞園さんは顔を赤らめていく。
ここからがある意味、本番なんだ。

「では……」

舞園さんは“ボク”の分のご飯を自分の口元へと持っていく。

「あむ……」

そして、何度か咀嚼する。
クチュクチュという音が聞こえてくる。
冷ますのではなく、今度は温めている。
自分の口の中でほんのりと温めたものを……。

「……ん」
「……ぁむ」

舞園さんが溶かしてくれたご飯は流形食のように、ボクの喉の奥へと吸い込まれていく。
とっても暖かくて甘かった。
もしかしたら、舞園さん自体が甘いのかもしれない。
ボクは残りかすひとつ残さないように、ボクは舌を突出し、舞園さんの咥内を蹂躙する。

「……ぁ」
「………………」

チュパチュパという音を聞きながら、ボク達はご飯と一緒に唾液を交換し合う。
相手の舌の先や根元を舐めあい、互いの舌をからめ合わせた。

「……はぁ。……ぁは。苗木君……次は何がいいですか」
「……飲み物がいいかな」
「はい、じゃあ……」

舞園さんは先ほど着たばかりの制服のボタンを再び外していく。
そして、胸元をはだけさせると……2つの胸をしっかりと寄せ合わせて谷間を作った。
舞園さんは、その谷間に牛乳を注ぎ込んだ。

「はぁ~い、誠ちゃん。ミルクの時間ですよ~」
「ははははは……」
「ノリ悪いですね」
「ご、ごめんね……」
「むぅ……」

機嫌を損ねてしまったみたいだ。

ボクは慌てて、舞園さんの胸の谷間に顔を近づけ、
ぺちゃぺちゃとまるで犬か猫のように……ボクはミルクを舐める。
ミルクの染みを布巾で拭うように、舞園さんの胸の輪郭自体も舌で舐めていく。
舐めれば舐めるほど、舞園さんの胸がボクの唾液で汚れていく。

あるとき、食欲がなくなったボクを心配して舞園さんが思いついた食事方法。
食欲と性欲を同時に満たすような不思議な感覚。
ボクは母親の乳房を吸う赤ん坊のように一心不乱に舞園さんの胸を舐めたり吸ったりした。

「ちゅぅ…ぺちゃ……じゅぅ、んちゅぅ」
「……ぁ。……くすぐったいです。うふふ……」

そんなボクの頭を舞園さんは撫でている。
嬉しそうに撫でまわす。

そんな舞園さんの姿を見て、ボクは思う。
扱われ方に少しだけ不満はあるけど……。舞園さんが幸せそうならそれでいいやって……。


◇◇◇

一応念のために言っておくと……。

これでも舞園さんも最初のうちは立ち直ろうとしたんだ。
罪を償おうとしていた。
冷静になった次の日、震えながらも桑田クンに詫びていた。
だけど、そんなことは許されなかった。

最初の事件が起きた。
被害者は桑田クン…………。

あの一件以来、誰かに殺される不安や舞園さんに報復されるかもしれないという疑惑に苛まれ続け、
ある時ついに彼は錯乱してしまった。

気が付いたとき、桑田クンが不二咲さんの首を締めていた。
不安で夜眠れないという桑田君に不二咲さんが優しく声をかけたんだ。

すると、桑田君は舞園さんが自分を騙して殺そうとしたときのように、
不二咲さんが自分を殺そうと勘違いしてしまった。

そのままだったら、不二咲さんが死んでいただろう。
だけど、たまたま大和田クンが通りかかった。
そして、不二咲さんを助けようとして……大和田クンは桑田クンの頭蓋骨を……。

……事件が終わった後、全員の目が舞園さんに向けられた。
別に皆が皆、舞園さんを責めようとしていたわけではない。
ただ、皆、舞園さんをもてあましていた。

だから、舞園さんは自分で部屋から出ないようにした……。
ボクが食事を届けるのを待つだけ……。
そんな日々を過ごすようになったんだ。


◇◇◇

「おいしかったですね」
「そうだね、舞園さん」
「何が一番美味しかったですか?」
「恥ずかしいから、言えないよ……」
「…………そ、そうですか。照れちゃいますね」
「あ、舞園さん……」
「え?」
「まだ付いてるよ」
「……ぁ」

ボクは舞園さんの唇に残っていたデザートの残りかすをぺろりと舐めた。
舞園さんが恥ずかしそうにする姿を見つつ……ボクは言った。

「今日は何して過ごそうか……?」

今、時刻は朝4時。夕飯まで、あと6時間くらい。
時間はまだまだあった。

「久しぶりにオセロやりたいです」
「分かった。じゃあ取ってくるよ」


ちなみに、校舎は5階まで開いている。

――この意味は言わなくても分かるよね?

◇◇◇

少しずつ周囲の人間が減っていくことに耐えながらも、ボク達は一緒に学級裁判に出た。
誰もボク達に期待していない。

ボクは時々思ったことを言ったが、それでも貢献度という意味ではとても低かった。
舞園さんは最初から発言権が認められていなかったし、彼女自身も喋ろうとしなかった。

霧切さん、十神クン、セレスさんといった頭の良い人たちが取り仕切り、クロを特定してくれた。

だから、今もボク達は生き残り続けている。
そして、そんなお荷物とかなりつつボクらを誰も責めなかった。

特に……誰も舞園さんを責めようとする人はいなかった。

皆、舞園さんに関しては見て見ぬふりをする。

 ――だって、舞園さんはおかしかったから。

「うふふ……」

2回目の学級裁判の最中、舞園さんはずっと笑っていた。
1回目の裁判が終わり、2回目の裁判に至るまで、2度の動機提供があった。
その一度目の動機提供で舞園さんの心は完全に狂ってしまった。

人に知られたくないヒミツの暴露。

今の舞園さんにとって、それは――人を殺そうとしたこと。
監視カメラの映像は舞園さんのアイドル人生を粉々にするには十分だった。

幸い、誰も殺人を犯さなかった。
だからこそ……、舞園さんの秘密は世間にばらされた。

しかも、追い打ちのような出来事があった。
それはこのコロシアイ学園生活では珍しい善意から生まれた……悲しい出来事だった。

その動機が提示されたとき、みんなは――ボクでさえ――舞園さんが再び誰かを殺すのではないかと疑った。

実際、舞園さん自身も葛藤していた。
それは自分のためというのもあるし、グループの仲間のためというのもあった。

仲間のDVDを見て、一度目の犯行を企てたように……舞園さんの心に焦りが生じていたのが自他ともに分かった。

誰か他の人を殺さなくても、自殺するのではないか……? そんな風に周囲は考えた。

だから、その様子を見かねた霧切さんが舞園さんに告げた。

それは霧切さん自身も後で失敗だったと漏らしていたけれど……

「DVD見せてもらったわ……」

それはアイドルとしての舞園さんへの死刑宣告だったのかもしれない。
霧切さんは映像の些細な点と死体に対する豊富な知識から、こう断言した。

「あなたの仲間はみんな死んでいる……」

だから……他人を殺しても自殺しても意味がない、そう霧切さんは言いたかったんだ。

それは正解だったけど、ベストではなかったのかもしれない。

……結局、舞園さんは秘密の暴露を受け入れた。
人を殺すことも、他の人を殺すこともしなかった。

体育館で、秘密が世間に暴露されたことを黙って聞いていた。
そこまでは良かった。

だけど、その日の夜、舞園さんは折れた自分の右手を見ながら、こう言った。
こう言って、そのまま眠りについた。


「私……もうマイク持てないんですね」


……次の日、舞園さんは壊れていた。

自分がアイドルを目指していたことを忘れていた。

自分は≪超高校級の助手≫としてこの学園に来たのだと思い込んでいた。

そうして、舞園さんは過剰なくらいベタベタとボクに接してくるようになった。

◇◇◇

「オセロ楽しかったですね」
「そうだね……意外と色々な打ち方があって面白いよね」
「苗木君もだいぶ上手くなりましたよね」
「まだまだ舞園さんには叶わないよ」
「うふふ……私はお父さんと子どもの頃、一緒によく遊びましたからね」

舞園さんは無邪気に笑っていた。
ボクは一日の間でこの時間が一番楽しい。
舞園さんが初めて会った頃の舞園さんに見えるから……。

「そろそろ時間だね」

3時間くらい、ボク達はオセロで遊んだ。
時刻は朝7時前、もう少しで夜時間が終わる。

「オセロを娯楽室に返してくるね」
「はい、いってらっしゃい。私は洗濯物を回収してきますね」
「うん……お願い……」

夜時間が終わると誰かに会ってしまうかもしれないから、ボク達はこの時間帯で主に行動する。

そのため、だいぶ前にわざわざ石丸君にお願いして、朝食会を30分程度遅らせて開催してもらっていた。

その30分の間に、誰にも会わないように食料を運んだりしているんだ。

朝4時くらいから朝7時半くらいまでの時間。
ボク達の生活リズムに照らし合わせるなら、昼食後からおやつの時間くらいまでが、
ボク達にほんのわずかに残された健全な時間だった。

ボクはその健全な時間が永遠に続けばいいのに……と思いながら、学校や寄宿舎の廊下を走った。

だけど……、部屋に戻ればそれも終わってしまう。


「お帰りなさい、苗木君」
「ただいま……舞園さん」

帰ってきたら、舞園さんが見惚れるくらい綺麗なお辞儀をしてくれた。
出会った時と同じように、良い匂いがする。

「…………………………」

だけど、仕事用にしか見えないそのお辞儀がすごい気に入らない。

「はい、苗木君……こちらに座ってください」
「うん……」

ボクはイスに座った。
舞園さんはボクの肩をもみ始める。

「気持ちいいですか……」
「うん」
「良かったぁ。苗木君はいつもお仕事で疲れてますもんね」

……いつもボクはキミと一緒じゃないか。

ふと喉元までその言葉が出かかる。
なぜか、舞園さんは勘違いしている。
ボクが大そうな一仕事こなしてきたって勘違いしている。
だから、ボクの疲れを取ろうと……いつもボクを癒そうとしてくれる。

最初は下手だったマッサージも今ではすっかり上達した。
普通のマッサージも下世話なマッサージもね……。

「下の方はいいですか……?」
「夕飯のあとでね」
「うふふ……分かりました」

淫靡な表情を舞園さんはボクに向ける。
先ほどまで、純粋にオセロを楽しんでいた舞園さんと同じ人だと思えない。

「なんでもしてほしいことがあったら、言ってくださいね。
 だって、私は苗木君の助手ですから……苗木君がしてほしいことは何でもしますよ」

舞園さんにとってボクの助手であるとは……そういうことなんだ。
アイドルである自分を失ってから、舞園さんはただひたすらボクに尽くした。

「いいよ……別に……」
「そう……ですか……?」

だけど、その舞園さんをこういう方向に導いてしまったのはボクだ。
はじめて舞園さんを抱いたのは、ボクの言葉が原因だった。


 ――舞園さん、好きだっ“た”よ

舞園さんがおかしくなってから、しばらく経った頃のことだ。

舞園さんが明るく元気な態度を取れば取るほど、その裏側に空虚感を覚えていた。

アイドルのアの字も言わない舞園さん。
幼い頃の夢を忘れてしまっている舞園さん。

そんな舞園さんが明るく振る舞っている姿が痛々しくて……ボクは一度だけ舞園さんに冷たくしてしまった。

好きだっ“た”と過去形で言って……ベタベタしてくる舞園さんを突き放してしまったんだ。

もしかしたら、元の舞園さんに戻ってくれるんじゃないかなって期待して……。

しかし、舞園さんは涙を流しながらボクにすがってくるだけだった。
親に捨てられそうな子どものように、舞園さんはボクの服を掴み、必死にボクを繋ぎ留めようとした。

 ――どうして? どうして……? じゃ……じゃあ、今、苗木君は私の事嫌いなんですか?

それはアイドルの夢を失うか否かという話をしたときと同じだ。
表情を失っていき、ボクの服を離すと、今度は両手で体を抱きしめる。
抱きしめたまま震えだす。

 ――なんで、そんな? やめて……お願いします。好きにならなくてもいいです。だから……

舞園さんは膝をついてボクの足元にすがった。
プライドも何もない。
震えながらも、気丈であろうとして、アイドル活動に全てを捧げていた舞園さんからは想像つかない。
元の舞園さんを知っていればいるほど苛立たしくなる態度。

 ――だからお願いします。嫌いにだけはならないで! なんでもしますから

だけど、そんな舞園さんの姿を見ていて……ボクは…………。

 ――苗木君? ……泣いているんですか?

何故か涙が出てきて……。
結局、こう言ったんだ。

 ――ごめんね。舞園さん。言い間違ったよ……。ボクは舞園さんが好き“だ”よ。

ボクはしゃがんで舞園さんを抱きしめて、流れる涙を指で拭った。

拭って慰めの言葉をかけながら……借りてきた猫みたいになっていた舞園さんをボクはベッドへと連れて行き、
そのまま……半ば無理やり襲ってしまった。

舞園さんがはっきりと拒否しないのを良いことに、内心の苛立ちを叩きつけるようにして、彼女を抱いた。

舞園さんが泣こうが喚こうが、血が出ようが関係なく、
まるで今の舞園さんを否定するように、ボクは舞園さんの身体を蹂躙した。


 ――痛いッ! 痛いですッ! 苗木君! ああああああああああああああああああああ!?
 暴れる舞園さんを無理やり押さえ付けて、ボクは前戯もなしにに突き立てた。

 ――苦しい。やめ……あ……ああ……息が……出来なくなっちゃ……ぅ、ぁ……
 ベッドの中から出そうになる舞園さんの身体を何度も引きずり戻した。

 ――ん゙ん゙んんんん──っ!! ひゃ……あああああ……だめ、もうダメです苗木君ッ!
 何度射精しても、舞園さんの身体を弄んでいると蹂躙したいという気持ちが湧き出てくる。

 ――ダメ。もうやめて……苗木君……もうダメ。それ以上やると……私、おかしくなっちゃうぅぅぅ
 嫌がる舞園さんを攻め立てると、今の舞園さんを否定できる気分がした。

 ――あは……ははは……はは……。イタイイタイ…イタイ……けど、苗木君だと気持ちいいいいいいいいいいい
 昔の舞園さんに戻ってほしいのに……ボクの方が今の舞園さんに溺れていく。

 ――苗木君、苗木君、苗木君、私の身体をいくらでも使ってください。どんなにしてもかまいませんかああああ!
 舞園さんもそんなボクの様子に気づいたのか、途中から恍惚とした表情でボクを誘導し始めた。

 ――あぁ、苗木君の鶴が私のナカにッ!
 この舞園さんはイヤだ……

 ――どうですかっ!? 苗木君っ、私のナカ、私のナカ気持ちいいですか!?
 だけど、足元にすがっていたときが嘘のように……舞園さんは嬉しそうな表情をボクに向けてくるから……。

 ――苗木君、苗木君を中で感じます。あはははは。あの鶴を助けてくれた苗木君が私の中にッ!
 ボクは舞園さんの中に出した。すると、舞園さんはまるで子どものように純粋な笑顔をボクに向けた。

 ――小さい頃からの夢が叶った。嘘みたい……。嬉しい。
 それはアイドルだった舞園さんの表情に似ていた。

 ――苗木君? 知ってますか? あのとき苗木君が助けた鶴って……私なんですよ……
 だけど、どこか決定的に違う。

 ――私、きっとあのときの恩返しに来たんです。
 舞園さんはボクみたいな高校生では背負えないくらい純粋な理想と夢を持っていたんだ。

 だから、この舞園さんは偽物だ。

ちなみに、↑でエロは終了

エロ目的で見てくれていた方はバックスペースを押して帰って大丈夫です!

◇◇◇

「苗木君……苗木君……起きてください。そろそろ夕食の時間ですよ」
「…………ぁ」

いつの間にかボクは居眠りをしていたようだ。
舞園さんが座っているボクの膝に頭を乗せていた。
小首を傾げながら、ボクのことを上目づかいで見ている。
それは、清純派アイドルがやる仕草ではない。
媚態としか表現のできない視線だった。

「……どうかしました?」

……いや、寝起きで少し気が立ってるのもしれない。

ボクはそう思い直すことにした。

「起こしてくれて……ありがとう。舞園さん」
「いえいえ」
「じゃあ、食べようか……?」
「はい!」

夕食は自分の手で食べた。
マッサージのときにいかがわしい行為にまで発展したら、夕食は昼食と同じようになる。
しかし、マッサージのときにそこまで発展しなかったら、夕食は談笑しながら普通に食べる。
ボクが以前そう決めたんだ。

今の舞園さんはボクの恋人であり、助手でもある。
だけど、ボクは助手としての舞園さんが嫌いだ。
もちろんその線引きは難しい。

ただ、ボクの中では一定の基準がある。

起きてからしばらくの間――食料を調達するために部屋を出るまで――は、舞園さんは恋人としてボクに接してくる。
普通の恋人というには語弊があるかもしれないけど、ボクを苛立たせるような媚はない。
だから、どんなにベタベタしてきても嬉しさの方がわずかに勝る。
まれに、助手としての舞園さんが見え隠れするけど苛々するほどではない。
多くの場合、ボクが不安にさせてしまったことが原因だから……。

だけど、あの綺麗なお辞儀――アイドルのときに見せたような仕事用の綺麗なお辞儀――をした後に、
ボクを癒そうとしてくる舞園さんは違う。
ベタベタしてくると気持ち悪い。偽物にしか思えない。

だから、最近はマッサージの最中に寝てしまう。

助手である舞園さんから目を背けたくて……ボクは動かないようにしていた。
そして、夕食もそのままのテンションで食べる。
夕食さえ乗り切ってしまえば、大体の場合、舞園さんは恋人に戻ってくれるからだ。

オンとオフの切り替えって言うのだろうか?
舞園さんの中で何かが変わっているのが分かるんだ。

そうすれば、あとは寝るまで平和に過ごせる。
舞園さんの嬉しそうな笑顔を見て、ボクも癒される。

だけど、今日に限って……夕食後なのに、舞園さんは助手として発言した。


「あの……苗木君? 私、何かしちゃいました?」
「え……? なんで?」

ボクの怪訝な態度に舞園さんは委縮したように縮こまる。
その態度には見覚えがあった。

「だって……苗木君、その……最近、急に冷たく……なるんで……」

「………………」

「不安なんです。苗木君に嫌われないか……」

「………………」

「私、助手として役に立ってますか? 迷惑かけてませんか?」

「………………」

「私……苗木君のためなら何でもできますよ……」

「………………」

「だって、子どもの頃から苗木君に憧れてましたから……」

「………………」

「なんでも出来ますよ。本当ですよ。だって、私は≪超高校級の助手≫ですから……」

「………………」

「だから、苗木君……」

「……うるさい」

「……え?」

舞園さんが怯えているのは分かった。
だけど、ボクは抑えきれない。
ボクは舞園さんを突き飛ばした。
尻餅をついてこちらを見上げる舞園さんを、ボクは見下ろしながら言った。

「な、苗木君……」
「なんでだよ……!」
「あの……ごめんなさい……何かしたなら謝りますから……」
「それは違うよ!」

舞園さんは震えていた。
だけど関係ない。

「そうじゃないんだよ。舞園さん」
「……え?」
「ボクはね。舞園さんが何かしたから怒ってるわけじゃないんだ」
「そうなんですか……だったらなんで……?」
「舞園さんが助手である限り、ボクは苛々するんだ」

呆然とした表情でボクのことを見る舞園さん。

ボクはその表情の奥にアイドルだった頃の舞園さんの姿を見た。

中学校のときからの憧れ。

テレビでボク達を楽しませてくれて、ここに来てから、
本当の意味でボクを癒してくれた舞園さんの姿を思い出したんだ。

だから、今の舞園さんに対して言ってやった。
以前にもあったことを、ボクは懲りずに繰り返した。

「なんだよ。≪超高校級の助手≫って……」

「あの? 苗木君?」

「キミが憧れていたのはアイドルだったでしょ?」

「あ、アイドル?」

「忘れちゃったんだ」

「何を言ってるんですか? 苗木君……」

ボクは舞園さんに近付いて行ってしゃがみこんだ。
そして息がかかりあうくらい間近でボクは真実を語っていく。

「舞園さん……ボクとキミは幼稚園も小学校も違うところに通ってたよ」

「そんなはずありません……」

「少なくとも、キミの目の前で鶴を助けたなんてことは小さい頃にやってないよ」

「そ、そ……んな…………」

「だってキミと同じくらい幼かったら、鶴なんて抱えられるはずないじゃないか」

「じゃあ、私が見たのは……?」

「キミが小さい頃に見たのはテレビの中のアイドルだよ」

「…………あ……れ?」

「アイドルだよ」

「やめて……お願いします、やめ……それ以上……」

「キミは≪超高校級のアイドル≫だったんだ」

「……ァ」

舞園さんの瞳から光が消えていき、代わりに涙が溢れていく。
その涙の量は段々と増していった。

「……ぁ、…………あああ。いや……いや……………いやああああああああああああ
 あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
 あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
 あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

舞園さんが頭を抱えて泣き叫び始める。

DVDを見た直後のように、桑田君から必死に逃げてきたときのように、
アイドルでなくなったときのように、舞園さんは半狂乱で叫んだ。

子どもがぐずるように髪の毛を振り乱している。
そして目を血走らせて……ボクへと詰め寄った。

「なんでなんでなんでなんでッッ!!……どうして……どうして!? 私に思い出させるの!?
 苗木君が私の味方で、私も苗木君の助手で……他に何もないなら……それで全て丸く収まるのに……!
 私に思い出させて何が楽しいんですか!? アイドルじゃない私にはもう苗木君しかいないのに……!!」

 舞園さんは逆にボクを押し倒し、のしかかるようにして叫び続ける。

「苗木君だって……アイドルになろうと苗木君を騙す私より、苗木君のことだけ見てくれる助手の方がいいでしょう!?」

「それは違うよ……」

「違うって何が違うんですか!?」

「ボクはアイドルだった舞園さんが好きだったんだ」

「アイドルじゃない私に価値がないってことですか!?」

ボクの首筋に舞園さんの手がかかる。
言葉を間違えれば、ボクは死ぬかもしれない。
だけど、ボクも引くわけには行かない。

「そんなことないよ……だけど、ボクは舞園さんの笑顔が好きだったんだ。
 舞園さんの見てるだけで元気になる不思議な笑顔が好きだった。
 色々な努力のを積み上げて、苦労して、それでも誰かに夢を与えたいって……
 そんな前向きさを感じるすごい笑顔をずっと見ていたかった」

「………………」

「夢を語っていた舞園さんを見て、助けなきゃって思った」

「………………」

「その苦労を少しだけでも背負えたらいいなって……そう思ったんだ」

舞園さんはボクの言葉をジッと聞いていてくれた。
そして、舞園さんはその上でこう呟いた。
その声はドロリとした響きを持っていた。

「ねぇ、苗木君…………」

「何……舞園さん……?」

「私、苗木君の前向きなところ好きですよ」

「……ありがとう」

「だけど……すごい羨ましくて、すご……妬ましくなることがあります。知ってますか?」

「……うん」

「恋人としての私はそこがすごい愛しくて、助手としての私はそこを尊敬してて、アイドルの残骸である私は……」

「………………」

「すっごい……憎いんです」

「みたいんだね……前も聞いたよ」

「前はアイドルである私も苗木君の前向きさを真似したいって思ってたんですよ。
 だけど……みんなが死んだって聞かされて、人を殺そうとしたことを暴露されて……
 もうどうしようもない現実を知ってしまったら……前向きでいられるはずないじゃないですか?」

「それでも……ボクは舞園さんを外に出してあげたいんだ。だって……」

「こんな場所で生き続けるなんて、生きてるって言えませんか?」

「………………」

「私、エスパーですから、苗木君の言おうとしていることくらい分かります」

舞園さんは光のない瞳をボクへと近づけた。

「気持ち悪いです、苗木君……。苗木君のその希望に溢れた前向きさが……すごい気持ち悪い」

「………………」

「だけど、好きなんです。
 絶望した私を嫌っているのに、そこから救い出そうとしてくれる苗木君が
 気持ち悪いけど……好きなんです」

「舞園さん…………」

「壊れそうな私を支えてくれた苗木君……、壊れてからも一緒にいてくれる苗木君…………、
 他の人達みんなが死んでいるのに……いつか希望を持って外に出られるって思っている苗木君。
 ……そんな苗木君が好きです」

舞園さんの目元からいくつもの涙がこぼれてくる。
ポタリ……ポタリ……と、ボクの頬に落ちてくる。
それはとても暖かかった。
だけど悲しかった。

「舞園さん……」

ボクは舞園さんを抱きしめた。
今日だけでも何度、舞園さんを抱きしめたんだろう?
震える舞園さんの荒い息遣いを聞きながら、ボクはそんなことを考えた。

「だけど、すごい壊したくなるんです。苗木君はそのまま真っ直ぐ歩いて行って、
 私のことを置いてってしまいそうで、怖くて怖くて……。
 いっそ苗木君から前向きさを奪ってしまえば、ずっと一緒にいられるんじゃないかなって思っちゃうんです」

舞園さんの瞳の中で何かがぐるぐると渦巻いている。

「それが怖くて怖くて……これ以上、苗木君に迷惑をかけたくないのに。
 だけど、私は苗木君ほど強くなれなくて……アハハハハハハハハハハハハハハ、おかしいですよね?」

「そんなことはないよ。ボクは今の舞園さんが好きだ。
 今、舞園さんは絶望しているのかもしれないけど……、アイドルであったことは覚えてる。
 アイドルだったときに大切に思っていたものがあるから絶望してるんだ。
 今の舞園さんは自分を否定してるけど、なかったことにしてない。
 だから好きだよ……。キミはボクを嫌いかもしれない。
 昔を思い出させて、キミを外に出そうとするボクの態度が気に入らないのかもしれない。
 だけど、ボクは舞園さんとの約束を守るから……」

「約束ですか……?」

「何があっても、ボク達は味方同士だって……言ったでしょ。それに……」

「………………」

「ボクがキミをここから出してみせる! どんな事をしても絶対にだよ!!」

「……もういいんです」

「舞園さんが立ち直ってくれるまでずっと傍で待ってるから……!」

「……そんなことありません」

「それは違うよ」


ボク達は互いの目の奥にあるものを必死に探ろうとした。
そして、相手を自分の側へと引っ張り込もうとしていた。

ボクは舞園さんにもう一度立ち直ってもらって、一緒に外の世界に出たい。
舞園さんはボクに全てを諦めてもらって、一緒にずっとこの世界にいたい。

そんなただの我儘の押し付け合い……。
恋人の舞園さんとも助手の舞園さんとも違う、エゴとエゴだけの関係。

だけど、不思議と安心するんだ。
そして、それは舞園さんも同じみたいだ。
舞園さんは赤くなった目をこすりながら、笑顔で言った。
言いたいことを言ったら、少しすっきりしたみたいだ。

「きっと平行線ですね……」

「そうだね……」

「あの、聞いていいですか?」

「うん……」

「私が苗木君の助手じゃなくて、アイドルなら……苗木君は私の何なんですか?」

「仲間だよ……ただし、単なる仲間を超えた……友達かもしれないけど……」

「あはは……友達ってこんなに抱きしめあうものでしたか?」

「さぁ……どうなんだろ?」

「友達だと、エッチなことはできませんね?」

「いいよ。それに……舞園さんはアイドルだし」

「うふふ……」

 舞園さんは微笑みながら立ち上がった。

「部屋でシャワーを浴びて、そのまま寝ますね」

「うん……」

在りし日と同じように……舞園さんは淡く微笑んだ。

「…おやすみなさい。また、明日……」

アイドルとしての舞園さんは部屋に戻っていく。
ボクはそれを見守りながら、ふらふらとベッドへと歩いていき、そのまま横たわる。

舞園さんと一緒に寝ない日は久しぶりだった。

「……結局、ボクはどうすればいいんだろう」

ボクは時計を見た。
今は13時を少し過ぎたところ。

「今から寝たら、いつもより早く起きれるかな」

ボクは以前あったことを思い出しながら、こう呟いた。

「舞園さんより早く起きないと……」


◇◇◇

 ――アイドルに戻る道も仲間も失った
 ――夢はもう見続けられない

 ――人を殺そうとして、実際に殺しちゃった
 ――普通の人としての幸せもきっと許されない

 ――私にはもう何もない。
 ――なのに、なんでまだ生きろって言うんですか?

 ――苗木君が悲しむ……?
 ――それは……困りますね……

 ――ありがとうございます
 ――大切なものはまだありました

 ――私、苗木君のことが
 ――鶴を助けていた苗木君のことが……

 ――嘘じゃないです
 ――アイドル、仲間、夢……そういった大切なものの中に……
 ――苗木君も加わりつつあったんですよ

 ――もっとはやく苗木君とお話していれば……
 ――中学校のときにでも私が苗木君に話しかけていれば
 ――もしかしたら、あんなことをする前に苗木君に打ち明けたかもしれませんね

以前も同じように、アイドルとしての舞園さんと話したことがある。

ほんのわずかな時間だったけど……舞園さんは正気を取り戻したんた。

だけど、結局、最後にこう告げて……再び姿を消した。

 ――私、もう失いたくない

舞園さんの中の最後の拠り所がボクだってことは、どの舞園さんも主張していた。
だからこそ、こんなことになっているんだろう。

どの舞園さんも人にあって当たり前の嫌な部分を持っているけど……。
その中でもアイドルとしての舞園さんはすごいズルい女の子だった。

 ――私は夢を叶える為に、今までなんでもしてきました…
 ――嫌なことも含めて…本当になんでも…。

以前、舞園さんは何でもしてきたと言った。
嫌なことでもなんでもしてきたって言っていた。

だって、正気に戻っても、次の日になると舞園さんは……


◇◇◇

「苗木君!? 苗木君!? 苗木君はどこですか!?
 どこに行っちゃったんですか!?
 いやああああああああああああああああああああああああああ」

そう……一晩経てば、舞園さんはアイドルとしての自分を失っているんだ。

きっと今頃、舞園さんは部屋の中で家具を倒したり、叫んだりしていると思う。

以前にもあった。

そのときの音がボクの耳に焼き付いている。
だから、今、防音の扉のある音も簡単に想像することができた。

ドンドンとボクは扉を叩く。

「いやっ……誰ですか? 助けて苗木君……助けて助けて。
 苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君
 苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君
 苗木君苗木君苗木君苗木君苗木君。助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助け
 て助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて」

ボクは扉の下からメモを差し込んだ。

『ボクだよ』
「苗木君ですか!? 本当に苗木君ですか!?」
「聞こえる? ボクだよ、苗木だよ……舞園さん、ここを開けて……」
「苗木君ッ!」

舞園さんは扉を開けると、ボクの胸に飛び込んできた。
そして、そのまま泣きじゃくる。
小さい子どもみたいに。

「良かったぁ……。どこに行ってたんですか。苗木君…。私を、置いていかないって言ったじゃないですか」
「ごめんね……」

この舞園さんはどの舞園さんなんだろう?

……いや、どんな舞園さんでもいいのかな?

……だって、アイドルとしての舞園さんじゃないことだけは確かだし。

「ほら、部屋に入ろう」
「はい……」

舞園さんは嫌なことを嫌なまま行える人。

割り切ったりせず、悩みながら、苦悶しながら、それでもやろうと考えられる人。

そのために自分だって騙せる人。

自分さえなくせる人。

演じる事で自分を塗り替えられる人。

大切なものと大切なものを天秤にかけて、その結果に従って“動けてしまう”人。

今も舞園さんは自分を捨てて、最後に残った大切なものを死守しようとしているんだ。

ボクにボクを取られないように…………。


「苗木君苗木君……苗木君がいると安心します」
「ありがとう、舞園さん。そう言ってくれると嬉しいよ」

舞園さんは淡い笑みを浮かべた。
それはとてもかわいく、守ってあげたくなる笑顔だ。。

「……………………」

だけど、時々ボクは思ってしまう。
今こうして精神的不安定さを見せている舞園さんは……本当は実はまともなんじゃないかって?

いや、まともとは言うと語弊があるけど……記憶が途切れているようで、
本当は途切れてないんじゃないかなって、時々そう思うんだ。

ボクを縛り付ける為に演じ続けているんじゃないかって……そう思ってしまうときがある。

「どうしましたか? 苗木君……あの…………何か不安なことでも?」
「いや、なんでもないよ」

もちろん気のせいだけどね……。

本当にそうだったらどんなにいいか……。

「不安なことなんてないよ……」
「良かったぁ……苗木君に不安な笑顔なんて似合いませんもんね」
「うん……」
「じゃあ、まずは朝ごはんを食べましょう」

舞園さんは嬉しそうにボクの手を引いていく。
ボクはそれに引っ張られるようにしてついていく。

――次に、アイドルとしての舞園さんに会えるのはいつだろう?
――どうすれば分かってくれるんだろう?

そんなことを考えながら、ボクは舞園さんに引っ張られていく。
舞園さんの部屋に吸い込まれていく。

「……………………アハ」
「え、何か言った。舞園さん?」
「いえ、何も言ってませんよ」
「そう……」

ふと、舞園さんの口元が僅かに歪んだ気がしたが、気のせいだったようだ。
ボクもだいぶ疲れているのかもしれない。

「苗木君……癒してあげましょうか?」

舞園さんは助手としての笑顔を浮かべて、そう提案してきた。
守ってあげたくなる笑顔とは違う。
甘えたくなる笑顔。

「そうしてもらおうかな……」

やっぱり昨日の一件で疲れていたんだろう。
ふと、たまには助手としての舞園さんもいいかなぁって思ってしまった。

「うふふ……任せてください……うふふふふふふふふふふふふ……………」

◇◇◇

 薄暗い部屋の中で、モノクマがカメラに向かってCMをしている。
 看板にはモノクマ劇場と書かれていた。

「オマエラ、鶴の恩返しって知ってますか?」

「有名な昔話だよね」

「まぁパターンは色々あるけど……」

「ここでは助けた鶴をお嫁さんに貰う草食系男子の話で話を進めようか」

「ん? なんで草食系男子だって……? だってねぇ……」

「奥さんが鶴ってだけで、追うの諦めちゃった根性なしじゃん」

「そこは普通追いかけるところでしょ?」

「どんだけ根性ないんだよ!!」

「こんな昔話を好きだっていう奴の気がしれないね」

「あ……脱線はやめとこうか」

「じゃあ、本題です」

「知ってる?」

「こういう人間以外のモノをお嫁さんに貰う話ってあっちこっちにあるんだけど……」

「たいがい共通するものがあるんだ」

「正体を知ったらやることだよ」

「言わせんなよぅ、恥ずかしいじゃないか」

「……そう。見るなのタブーって奴ですね」

「有名だよね。ボクのクラスでもセレなんとかさんと山田クンは知ってたよ」

「とりあえず見ちゃいけないものを見られたら関係を終わらせるってやつ」

「見るな見るなってフリのように言っておいて、本当に見たら怒り出すやつ」

「怖いね。本当……いやになっちゃうよ」

「どうせ隠すなら、それを隠していることすら誰にもばれないようにしろってみなさんも思いません?」

「秘密を持つ女の子がはやるなんて何年前の話だよ!」

「テレビの前のみんなは真似しちゃだめですよ」

「以上、人生の先輩、モノクマからのありがたいメッセージでした」

「ぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱち」

ステージの幕が閉じていく。
モノクマは淡々とCMを終わらせ、ステージの中へと消えていった。

テレビの画面は切り替わり、苗木誠と舞園さやかが映った。

苗木誠は変わらない。
そのときによって、元気があったり、なかったりするけど、相変わらず画面映えしない。

だけど、舞園さやかは違った。
いまや彼女はこの番組の花だった。
番組プロデューサーが本当に欲しい笑顔を提供し続ける。
彼女が出るだけで視聴率はうなぎのぼりだ。

そういう意味では、舞園さやかは未だに≪超高校級のアイドル≫なのかもしれない。

舞園さやかは苗木誠に背中から抱きついている。
舞園さやかの表情は苗木誠からは見えない。

画面の向こうで、舞園さやかはこう呟いた。
苗木誠にも聞こえないくらい小さな声で……。










































「……苗木君だけは絶対にもう離しませんから……うふふ……………ふふふ……」
















めでたしめでたし、これでおしまいです

エロシーン追加まだ?

>>34
おしまいです



最初はR-18な板にでも投下しようかと思ったけど、
後半はエロじゃなかったので、こっちに投下させてもらいました。

ちなみに、(苗木視点では)恋人園さん、助手園さん、アイドル園さんなどがいましたが、
みなさんはどの舞園さんがお好み?

1恋人園さん(冒頭~昼食あたりまでがメイン。いちゃラブ担当)

2助手園さん(中盤の回想および絶叫がメイン。ドM・媚担当)

3アイドル園さん(最後の方がメイン。清純派担当)

4その他

私は「4.普通の舞園さん」が好きです。

なお、アイドル園さんが清純派だったせいで、後半にエロシーンが生まれませんでした
残念ですね。

あ、このアンケートに深い意味はありませんので……
あしからず……

一晩経ったらおまけ的なものが思いつくかと思ったがそんなことはなかった

続きやらなんやら思いついたらまたスレ立てるかもしれませんが、
そのときはよろしくお願いします

では、HTML依頼してきます

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