穏乃「いじめるんだ、みんなを!」 (65)

立つかな

穏乃「どうにもむしゃくしゃむずむずして我慢できない!」

穏乃「誰かをいじめてすかっとしてやるんだ!」

穏乃「まず手始めに、玄さんからだ!」

ずだだだだだ!

穏乃「玄さーん!」

玄「ほえ? 穏乃ちゃん?」

穏乃「玄さーーーーーん!」

ずだだだだだどしーん!

玄「きゃああああぁぁぁ! んもー穏乃ちゃん勢いが良すぎるよ! 転んじゃったじゃない」

穏乃「まだまだぁ! フライング穏乃アターっく!」ドーン

玄「はわわわ! んもー、やったな! とりゃー!」ゴロン

穏乃「うわーひっくりかえされたー!」

玄「今度は私がのっかる番なのです!」キャッキャッ

穏乃「ぬわー! 押し戻せないー!」ジタバタ

20分後

穏乃「わー!」ズダダダ…

玄「あ、穏乃ちゃ……って行っちゃった」

玄「結局何だったんだろう?」



穏乃「くそー玄さんには逆襲された! こうなったら、次は宥さんだ!」

穏乃「今度はさっきみたいにはいかないぞ!」

穏乃「うおー!」

穏乃「だりゃー!」

宥「あ、穏乃ちゃん……」

穏乃「ふん!」ムギュギュー

宥「あわわ、急にどうしたの?」アタフタ

宥「あ……でもあったかーい」ホワワ

穏乃「まだまだー! もっともっとー!」

宥「ほかほか♪」

数分後

穏乃「いよっしゃー!」

宥「またいつでも来てねー」

穏乃「今度は大成功だね! さすがの宥さんでもあれにはまいったはず」

穏乃「宥さんを灼熱地獄に落としてやったよ!」

穏乃「正直私も熱かったけど、それは細かいことだ!」

穏乃「次は赤土さんだ! いくぞー!」


晴絵「ああ穏乃、ちょうどよかった。今牌譜整理してたんだが、ちょっと灼に……」

穏乃「どりゃあ!」バシーン

晴絵「ああっ! なんで牌譜取るんだ!」

穏乃「ごーほー!」バターン

晴絵「ちょ、穏乃!? ……ダメだ、鍵かけられた」

晴絵「ごーほーって何だ? ゴーホームって言いたかったのかな?」

晴絵「まいったなあ。化粧で隈を隠してるつもりだったけど、やっぱり分かっちゃったか」

晴絵「ここはおとなしく、穏乃の好意に甘えるか……」

穏乃「ふふふ、赤土さんの仕事を奪ってやったぞ」

穏乃「我ながらなんてワルなんだ……」

穏乃「ちなみに仕事はちゃんと終わらせました。放置は趣旨じゃないからね」

穏乃「次は灼さんだー!」



灼「あ、いらっしゃいませー」

男「うん、4人ね」

灼「はい。シューズとボールはどうなさいますか?」

男「レンタルで」

灼「シューズとボールはあちらで選んでいただいて……第7レーンでお願いします」

男「はいよ。よっしゃ、久しぶりにやるぞー!」スタスタ

灼「……ふう、なんで今日はこんなに人が多いんだろ。いつもはこんなにこないのに……」

おじさん「おお、灼ちゃん。大変そうだねえ」

灼「あ、おじさ……どうもこんにちわ。うん、今日はなぜか繁盛してて……」

おじさん「あれ、じゃあ外の子は何なんだろう?」

おじさん「外で客引きしてる子がいるんだよ。ジャージに髪を後ろでくくった」

灼(えっと……多分穏乃だよね? なんで客引きしてるんだろ? よく分かんないけど、今度お礼を言お……)



穏乃「ふふふ、灼さんは逆に忙しくしてやったぞ。なんという鬼畜……」

穏乃「これで灼さんはカウンターでゆっくりしてる暇なんてなくなった」

穏乃「出だしに失敗したけど、なんだか調子いいなー」

穏乃「この調子で、次は憧だ!」

穏乃「あーこー!」

憧「あ、穏乃」

穏乃「憧ーあこーアコーあこあこあこー!」

憧「うるさーい!」アシバライッ

穏乃「うわー!」ズテーン

憧「なんなのよあんたまったく……まあいいや。どうせ暇なんでしょ? ウチくる?」

穏乃「よしっ、ゲーム三昧だ!」

数時間後

穏乃「ふー、やったやった」

憧「そういえば、こうして穏乃とゲームするのも久しぶりね。インハイまでは二人でもずっと牌を触ってたし」

穏乃「こんなにやったのは、私がゲーム100勝の札を引いて以来だね」咲日和参照

憧「あはは、あんなのはもう、さすがにごめんよ」

穏乃「しゃ! じゃあそろそろ」

憧「あ、ついでだからうちでご飯食べて行きなよ……ってもう行っちゃった。相変わらずせわしない奴ねー」

憧「まあ仕方ないか。じゃ、ご飯まで勉強しとこうかしら」

穏乃「ふふふ、優等生憧の勉強タイムを邪魔してやったぞ。なんという鬼。なんという悪魔」

穏乃「うおおおお! テンションがとまらない! この調子で次もいくぞー!」

翌日・部室

晴絵「ちょっとあんたたち、穏乃知らない?」

憧「え? 今日はみてないけど、どうかしたの?」

晴絵「いや、今日は学校に来てないらしくて」

玄「そういえば穏乃ちゃん、昨日やけに元気だったような……」

宥「あれ、玄ちゃんの所にも来たの? 私の所にも来たよ。そういえば、いつもと違ったような?」

灼「うちでは客引きをしてった」

晴絵「私の部活の仕事も肩代わりしてたしなあ? 何かあったのか?」

憧「気にすることないわよ。昔からこういうこと、ちょくちょくあったし。たまーにテンションが上がりすぎて、暴走し始めるの」

憧「ほっといても、1、2週間もすれば勝手に帰ってくるわよ」

玄「それなら安心だね!」

宥「大変な事じゃなくてよかったー」ホクホク

灼「けど、放置が普通とかすごい野生児っぷり……」

晴絵「いやいや大丈夫じゃないぞ。あいつ学校サボってるんだからな」



鹿児島県

小蒔「ふーん、ふふーん♪」サッサッ

小蒔「よし、おしまい!」

穏乃「コンニチワー!!」

小蒔「きゃあああぁぁ! え? え? えっと……」

穏乃「奈良県、阿知賀女子学院麻雀部の高鴨穏乃です! コンニチワ!」

小蒔「ああ、大将だった方ですね? こんにちわ。それで、どういうご用件で……」

穏乃「今時間ありますか?」

小蒔「ええと、はい。ちょうどお掃除が終わったところなので」

穏乃「ほりゃ、シート」バサァ

小蒔「え?」

穏乃「おかし食べましょう!」ドサドサドサ

小蒔「あの……なんで?」

穏乃「いりませんか……? いろんなおかし持ってきたんですけど」ショボン

小蒔「いいえいただきます」キリッ

小蒔「わぁ……! 本当にいろんな種類がありますね!」キラキラ

穏乃「せっかくなんで関西限定のおかしをたくさんもってきました! あ、これなんかおいしいですよ!」

小蒔「本当だ、ちょっと不思議な味だけどおいしいです」

初美「姫様ー」

春「……」

小蒔「あ、こっちですよー」

初美「ここにいたですか……って、何してるんですか?」

穏乃「こんにちわ! 阿知賀の高鴨穏乃です! 一緒におかし食べませんか?」

初美「あ、こんにちわ。えっと、事情はよくわかりませんが、ご相伴にあずかりますよー」

春「おいしい……」ポリポリ

穏乃「春さんって黒糖が好きなんですよね! じゃあこれもいけると思いますよ」ズイ

春「……うん。なかなか」

初美「あんまり食べないおかしだけど、おいしいですー」

春「わるくない……」

穏乃「そろそろ私はお暇しますね! おかしはみんなで食べてください! サラバッ!」

小蒔「あ……行っちゃった」

初美「嵐のような人でしたねー」

春「おかしたべに来ただけだった」

巴「あれ、みんなこんな所で何してるの?」

小蒔「あ、巴ちゃん。さっきまで阿知賀の高鴨さんがいてね」

初美「こんなにたくさんのおかしをおいていったです」

巴「なにそれ? このシートも高鴨さん?」

小蒔「そうですよ」

春「私たちも、よく分からない……」

巴「まあいいか。お礼は今度するとして、貰ったものはありがたく食べましょう」

巴「これだけたくさんあれば、数日は食べられるでしょうしね」

小蒔「わーい!」

初美「わーい!」

春「わーい……」





穏乃「ふふふ、今度も大成功」

穏乃「あんなにたくさんのおかしを食べれば、怖くて体重計にのれなくなる……」

穏乃「お……恐ろしい! 穏乃さんマジ鬼畜すぎる!」

穏乃「よーしっ、まだまだ行くぞー!」

岩手県

豊音「うぅ、学校までの道のりは結構つらいよー……。今日は誰かいるかなー?」

豊音「んん? あれってもしかして」

豊音「おおーい! こっち、こっちだよー!」

穏乃「をを! 姉帯豊音さんだ! ちょうどいい所に」

豊音「あのあの、もしかして高鴨穏乃さん? 阿知賀女子学院の?」

穏乃「はいそうです。こんにちわ!」

豊音「うわー、こんな所で会えるなんて感激だよ! サインもらえますか?」

穏乃「お断りします!」

豊音「え、えー……そんなぁ……」

穏乃「でも麻雀なら打ちます!」

豊音「ホント!? そっちの方がいいよー! じゃあじゃあ、えっと……そうだ! 部室に行けば雀卓があるよー!」

穏乃「よっしゃー行きましょう! あ、私の事はシズでいいですよ!」

豊音「じゃあ私も豊音って呼んでほしいよー! わーい! みんなに電話しなきゃ!」

しばらくして

塞「わ、本当にいる」

胡桃「ちょっと豊音がおかしくなっちゃったかと思ってた」

白望「うぅ、自摸が重い……ダルい……」

エイスリン「シズノ、ツヨイ! クルミモヤル? カワルヨ!」

豊音「わぁー、また防がれちゃった。ちょーすごいよ!」キラキラ

穏乃「むふー!」

塞「うん、勉強になるし参加させて貰おうかな」

胡桃「今年ベスト4の大将と打つ機会なんて、そうないしね」

穏乃「よっし! じゃあもう一勝負!」

豊音「今度は負けないよー!」

……

穏乃「うわー! また2位だったー!」

塞「ふふふ、シズと同卓すると面白いほど勝てるわね!」

胡桃「終盤どうしても能力が抑えられちゃうからね」

豊音「対応型の塞は相性がいいよね」

……

白望「うぐぐ……ダルい……と言うか眠い……」

塞「もう何時間打ってるんだろ……すっかり夜中だよ」

豊音「リーチだよー!」

穏乃「なんの、株を奪う追っかけリーチ!」

エイスリン「ワタシモ、リーチ!」

胡桃「あっちはまだまだ元気だね」

……

塞「ああ……空が黄色い……」

白望「目がチカチカする。眠い……」

胡桃「シロがダルいと言う余裕もなくなってるわ」

エイスリン「ケド、オモシロカッタヨ」

豊音「うん、記念写真も撮ったし、すごく面白かったよー。徹夜で付き合わせちゃった穏乃ちゃんには悪いことしたかな?」

胡桃「しかし、あの子は元気だったね。走って帰っていったよ」

白望「体力のレベルが違うのを感じた……」

エイスリン「シロ、ウンドウ、スル?」

白望「それは嫌だ」

豊音「あはは、シロらしいよ……は……はは、ははは……。うえ、えええええ、うええええぇぇぇぇぇ……」

塞「ちょ、豊音!? いきなり泣き出してどうしたの!?」

エイスリン「オナカ、イタイ? ダイジョウブ?」

豊音「えええぇぇぇ……ううん、違うの……また、みんな集まって麻雀できて……うれしくて……」

胡桃「……え?」

豊音「だって……インターハイ終わって……少しずつ、全員が部活に来ることが少なくなって……」

豊音「もしかしたら……このまま誰も来なくなっちゃうかもって思って……悲しくて……寂しくて……」

豊音「また、ひとりぼっちになっちゃうよ……ぼっちは……さびしいよ……」

エイスリン「ウゥ……トヨネ、ナカナイデ?」

白望「……」トン

豊音「う……ひっく……シロ?」

白望「みんな、インターハイの負けとか進路とかで、ちょっと忙しいだけ。麻雀やめる訳でも、豊音と友達じゃなくなる訳でもない」

白望「それに……この先の道でばらばらになっても、また雀卓で集まる。今までみたいに、今日みたいに、笑いあって麻雀をするよ」

白望「麻雀も豊音も、大好きだからね。これだけは、ダルくない」

豊音「う、うわぁーんシロー!」ギュギュギュー

白望「苦しい……ダルい」

胡桃「シロもたまには良いこと言うね!」

エイスリン「ナカヨシ、イチバン!」

塞「でもまあ、ちょっと部活がいい加減だったのは確かよね」

塞「寂しがり屋の豊音もいる事だし、今日からはちゃんと部活に出ること! いいね!」

豊音「うん、うん! ちょーうれしいよー!」




穏乃「ふっふっふ。テツマに付き合わせてやったぞー」フラ

穏乃「今頃みんなふらふらしてるに違いない」

穏乃「私のワルも堂に入ってきたね!」フラ

穏乃「う……でもやっぱり長距離移動の後の徹夜はキツいなあ」フラ

穏乃「けどまだまだー!」

兵庫県

莉子「……」

莉子「……はぁ」

莉子(また……部活サボっちゃった)

莉子(先輩達も引退して、ちゃんとしなきゃいけないのに……)

莉子(でも、私のせいで負けて、みんなの夢を壊して……麻雀が怖くなって、ちゃんと打てなくなって)

莉子(いまさら私なんかが部活に参加しても、迷惑なだけだよね……)

莉子(いっそ……このままやめちゃえば……)

穏乃「コンチワー!」

莉子「きゃあああぁぁぁ! あ……え? 高鴨さん?」

穏乃「コンチワっす!」

莉子「あ、はい。こんにちわ」

穏乃「早速だけど、一緒に遊ぼう!」

莉子(え? なんだろ? からかいに来たって感じでもないし……?)

穏乃「よっし、じゃあとりあえずゲーセンで!」ハシッ

莉子「あ、ちょっとま……ああああぁぁぁ……」ズルズル

……

穏乃「はい、2Pのガンコン持って。私は1Pね」

莉子「私こんなのやったこなくて……」

穏乃「狙って引き金を引くだけだから、こんなのにやり方とかないよ! ほら、敵が来た!」

莉子「うわ、ってきゃあ! ゾンビぃ!」ヒィ

穏乃「倒さないとどんどん来るよ!」

莉子「きゃーきゃーきゃー!」バンバンバン

……

穏乃「ダンスゲームは得意だよ!」

莉子「うわぁ、本当だ。すっごい上手いなあ」

莉子(なんで麻雀してるんだろうってくらい)

穏乃「とりゃ! フィニッシュ!」

ワーワー!

莉子「ひぅ! いつの間にかギャラリーがこんなに」

……

穏乃「よし、またぬいぐるみ取れたぞ」

莉子「わー、すごーい」

莉子(それにかわいいのたくさんある……)

莉子「わ、私もやってみようかな?」

穏乃「ものは試しだよ。ほらほら」

……

穏乃「うーん、たっくさん遊んだー!」

莉子「そうだね、おもいっきり遊んだねー」

穏乃「あ、そろそろ行かなきゃ。このぬいぐるみはあげるよ。じゃね!」

莉子「ちょっと待って、こんなにもらったら悪いよ……ってもう行っちゃった」

莉子「結局何だったんだろう。普通に遊んでいっただけだったし」

莉子(高鴨さん、普通の子だったな。印象にあった、背後から引きずり下ろされるような感覚はなかったし)

莉子(ううん、違うよね。それは負けた私が勝手に持ってた印象なんだ。本来の高鴨さんとは何も関係がない)

莉子(なんか、怖くなくなった……高鴨さんも、振っちゃった時のことも。今なら、普通に牌を掴める気がする)

莉子(……うん。とりあえずぬいぐるみを家に置いて、その後部室に行けば、この時間なら多分まだ誰か残ってる)

莉子(サボってたことたくさん謝って、それで……)

莉子「麻雀が打ちたいな……」

穏乃「今回もやってたったぞー!」

穏乃「部活いって麻雀しなきゃいけない人を無理矢理連れ回してやった。ふふふ、これはひどい」

穏乃「しかも、ゲーセンは初めてみたいな事言ってたし」

穏乃「これで麻雀に身が入らなくなったりしたら……なんというワル」

穏乃「ま、さすがにそれはないだろうけどねー。麻雀より面白いゲームなんてないし」

穏乃「な……ないよね? 大丈夫……だよね? うん、多分大丈夫」

穏乃「よし、じゃあ次行こうかな」




長野県

透華「衣、お客様が来てますわよ!」

衣「ん? 誰だ?」

透華「それがなんと」

穏乃「こんにちわ天江さん!」

衣「おお、シズノだ!」

穏乃「遊びに来ました!」

衣「本当か!? わーい! とーかとーか!」

透華「ええ、分かってますわ。すでに雀卓の準備はできていますわよ」

衣「よーし、打つぞ打つぞたくさん打つぞー♪」

穏乃「今度こそ負けませんよ!」

衣「堆き霊峰の頂を拝謁して、どれほどの力を納めたか! 衣が見てやろう!」

穏乃「よく分かんないけど分かりました。全力でいきます!」

……

衣「すー……すー……むにゃむにゃ」

一「衣はすっかり眠っちゃったね」

純「他は交代で打ってたのに、衣と阿知賀のちびっこコンビはずっと卓にへばりついてたからな。そりゃ限界も来る」

智紀「元気だったあっちが異常……」

透華「ふふ、相変わらず面白い打ち手でしたわね。私としたことが、思わず熱くなってしまいましたわ」

純「それはいつもだろう」ニヤニヤ

透華「キィー! なんですってー!」

一「あはは……でも、高鴨さんは強くなったね。衣をかなり抑えてたし。ボクも結構トップを取れてたよ」

純「まだ自分がトップを取る力まではないみたいだけどな」

智紀「普段では考えられない勝率……」

透華「清澄もいますし、来年の全国は容易くありませんわね」

智紀「私たちも強くなる必要がある」

純「そうだよなー、智紀は素人に二度もしてやられたからなぁ」ニヤニヤ

智紀「む……」

透華「私だって、来年こそは原村和に勝ちますわ。麻雀でも注目度でも!」

一「後者はいらないでしょ」

一(なんだろう……? ちょっとだけ、衣が怖くなくなったな。勝てるイメージができたからかもしれない)

一(今までは恐れてて、ちょっと避けてたのかな……)

一(でも、全国にいったらボクが衣みたいな力を持つ相手と戦うかもしれない。逃げてばかりじゃダメなんだ)

衣「ぅうーん……はりぇ? まーひゃん……シズノは……?」

透華「あら、起きましたの? 高鴨さんならもう帰りましたわよ」

衣「え……? もっと打ちたかったのに……それにバイバイも言ってない……」

透華「それについては、高鴨さんから伝言が。『今度はこっちに来て打とうよ!』ですって」

透華「ちなみに、少し気は早いですが奈良に遠征に行く計画は、もう進めていますわ」

純「おお、さすが透華だ。気の早さで勝る奴はいない」

透華「ちょっと、それは褒めてますの!?」

智紀「透華がそう信じるなら、そうなる。ふふふ……」

透華「智紀まで!」

衣「うん、そうか。少し物足りないけど、少しだけ我慢だな」

一「そうそう。遠征まではボクたちが相手をするからさ、それで堪えてよ」

純「お? 国広君はいったいどんな心がわりだ?」

智紀「自分から打とうって言ったの、初めて」

一「もっと強くならなきゃ、強くなりたいなーって思ったんだ。それなら衣と打つのが一番でしょ?」

透華「……ふふ、そうですわね。私たちも、今まで以上にがんばらなきゃいけませんわね」

衣「えへへー、じゃあ早速打とう!」

透華「ダメですわよ。明日も学校があるのですから、今日はもうおしまい。早く寝ましょう」

衣「しょぼーん」

一(うん、自然と衣と打とうって思えた。高鴨さんに感謝、かな?)

穏乃「はっ!? 気づいたら普通に麻雀打ってるだけだった」

穏乃「うーん、そもそもなんで嫌がらせしようとかおもってたんだっけ?」

穏乃「自分の事ながら、よく分かんないなぁ」

穏乃「けどまあ、なんかすっごいすっきりしたな! 気分爽快!」

穏乃「よっし! そろそろ帰ろうっと!」




そして、奈良県

穏乃「やっほー! ひさしぶりー!」バターン

宥「ひゃう!」

玄「お帰りなのです!」

憧「やっと帰ってきたんだ」

灼「戻ってくるの遅……」

穏乃「おみやげたくさん持ってきたよー!」

玄「わ、九州のおみやげだ」

灼「兵庫土産って、全然意味ないし……」

憧「雪国のーってこれは岩手か」

宥「これは、龍門渕さん? わあ、ひさしぶりだなー」

穏乃「あ、そうだ! 透華さんが今度合同練習しようって言ってたよ」

灼「また随分話が飛んだし……うん、ハルちゃんと一緒に連絡取っとく……」

憧「うへぇ、また衣さんと対戦かー。しんどいのよねぇ」

玄「そんな事言いながら、憧ちゃん口元がにやけてるよ」

憧「そりゃあ今の自分がどれだけ通用するか試したくもありー、ってね」

宥「一さんとかいい人ばかりだし、楽しみだね」

穏乃「それまでに一回り強くならなきゃね! よーし、練習するぞー!」

憧「あ、それはムリ」

穏乃「へ?」ガシ

晴絵「お帰り穏乃」

穏乃「あ。赤土先生ただいまです。何で私の頭つかむんですか?」

晴絵「そりゃお前を逃がさないためさ」

穏乃「……。あの、それを聞くと、私に逃げる理由があるみたいに聞こえるんですけど」

玄「シズちゃん、南無」

宥「がんばってねー……」

灼「ハルちゃんの手を煩わせたんだから、それくらいは当然」

穏乃「なんでいきなりお通夜モード!?」

晴絵「穏乃、自分で何日学校を休んだか分かってるか? 補習、たんまり用意しといたぞ」

穏乃「え……?」サー

穏乃「いや、ちょ、まっ」

晴絵「しかし逃がさない。みんなはいつも通り部活しといてくれ。穏乃のアホはこれからしばらく缶詰だからな」

穏乃「い、い……いやああああぁぁぁぁぁぁ!」

カン!

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