言峰「では次の人、悩みをどうぞ」士郎「みんなを幸せにしたいです」(350)

教会

言峰「衛宮士郎。珍しいな」

士郎「ちょっとな」

言峰「ふふふ。いい目だ。迷いを孕んだその双眸は私にとって甘美なるもの」

士郎「悩み、聞いてくれるんだろ?」

言峰「ああ、いいとも。どんなことでも告解したまえ」

士郎「……みんなを幸せにしたいんだ」

言峰「みんな、とは?」

士郎「セイバー、遠坂、桜、イリヤ、ライダー」

言峰「ほぅ」

士郎「俺はみんなを幸せにしたい。誰か一人を選ぶなんて無理なんだ」

言峰「なるほど。つまり、お前はその5人と交際するということか?」

士郎「違う!!そうじゃない!!」

言峰「では、どういうことだ?」

士郎「みんなが笑ってくれればそれでいいんだよ!!」

言峰「ふむ。誰かと結ばれれば他の4人が泣いてしまうと」

士郎「そうだろう?だって、みんなは俺のことが……」

言峰「はははは!!いいぞ、衛宮士郎。お前は中々に悪人だな」

士郎「なに?!俺は正義の味方だ!!」

言峰「幸福とは他人の不幸の上でしか生まれない。全員を幸せにするというのはそれだけの犠牲が必要だ」

士郎「……」

言峰「果たしてお前にそれだけの覚悟があるのか?」

虎「おい」
アチャ「チッ」

士郎「あるさ。俺は本気でみんなを幸せにしたいんだ」

言峰「いいだろう。衛宮士郎。お前の覚悟はよくわかった」

士郎「ほんとか!?」

言峰「では、お前の悩みに答えてやろう」

士郎「頼む」

言峰「カレン」

カレン「はい」

言峰「ホワイトボートを持ってきなさい」

カレン「わかりました」

カレン「犬、ホワイトボードをもってきなさい」

ランサー「なんでだよ!!」

ランサー「ほらよ」ガラガラ

言峰「ご苦労」

士郎「なにをするんだ?」

言峰「まあ、聞きなさい。まずはセイバーから行こうか」

士郎「うん」

言峰「セイバーじゃ基本的に何に幸福を感じている?」

士郎「やっぱり……食べてるときかな?」

言峰「なるほど……」カキカキ

言峰「凛、桜は?」

士郎「遠坂は……宝石を眺めているとき、桜は家事をしているときだと思う」

言峰「ふむ。では、イリヤスフィールとライダーは?」

士郎「イリヤは俺の家にいるときは基本的に上機嫌だし、ライダーは桜と話しているときが一番穏やかな気がする」

言峰「ふむ……」カキカキ

言峰「よし、ここから全員を幸せにするプランを導き出そうか」

士郎「よろしく頼む」

言峰「まずはセイバーだ。セイバーは何か美味しいものを食べさせていればいい」

士郎「でも、それだけでいいのか?」

言峰「不安か?」

士郎「まぁな」

言峰「確かにこれだけでは確固たるものは得られないかもしれな。そこでだ」

士郎「なんだ?」

言峰「セイバーの矜持、あるいは自尊心をボロボロにしてしまえばいい」

士郎「なんでさ!?それだと幸せになれないだろ!?」

言峰「いいから聞け。―――セイバーに家事をさせてみろ」

士郎「セイバーに?」

言峰「恐らくお前のいうことなら従ってくれるだろう」

士郎「それで……?」

言峰「なにも出来ないということを自覚させ、そして瓦解したプライドをお前が優しく包んでやれ」

言峰「そうすることでセイバーは『衛宮士郎なくして生きていけない』と錯覚する」

士郎「……」

言峰「ふふ、その状態になればセイバーは衛宮士郎が誰と結ばれようとも『傍にいるだけで幸福』だと思う」

士郎「だけど、セイバーを辛い目には……」

言峰「幸福は不幸からしか生まれないのだよ」

士郎「……じゃあ、遠坂は?」

言峰「凛もまた遠坂としてプライドをもち、常に高嶺の花であろうとしている」

言峰「宝石を眺めるのはその心情の表れだ。宝石ほど人を高貴にさせる道具はない」

士郎「つまり、どうしろっていうんだよ」

言峰「セイバーと同じだ。そのプライドを完膚なきまでに破壊しろ」

士郎「な……でも、そんなの俺じゃ……」

言峰「心配はない。カレン」

カレン「はい。ここに」

言峰「これを飲み物に混ぜて、飲ませろ。飲ませるタイミングは就寝直前がいい」

士郎「なんだよ……これ?」

言峰「強烈な利尿剤だ。確実にオネショをする」

士郎「!?」

言峰「翌朝、お前は凛の部屋へいき、寝小便をしてしまった彼女に優しい言葉をかけてやれ」

士郎「う、うまくいくのか?」

言峰「凛はそういう弱みを握られると脆い。お前がその事実を伏しているだけで凛は背中を追いかけてくる」

士郎「だけど……それは脅迫じゃあ……」

言峰「違うな。黙っているだけでいい。凛の性格上、そういう貸しを作った相手にはとことん尽くす」

言峰「時が過ぎれば、そんな衛宮士郎からは離れられなくなる」

士郎「……」

言峰「次は桜か」

士郎「一番、難しいと思うんだけど」

言峰「よかろう。では、飛ばしてイリヤスフィールからだな」

士郎「な……」

言峰「こちらは比較的御しやすいだろう。お前のことを殺したいほどに愛でているのだからな」

士郎「ど、どうしたらいいんだ?」

言峰「これを飲ませればいい」

士郎「イリヤにも利尿剤をか!?」

言峰「そうだ。だが、就寝前でなくていい。昼食や複数人が居間にいるときが望ましい」

士郎「そ、それで?」

言峰「イリヤスフィールのことだから数分もしたら催すだろう。そのとき徹底的に邪魔をする」

士郎「邪魔って……」

言峰「理由はなんでもいい。イリヤスフィールをとにかくトイレに行かせないようにしろ」

士郎「そんなことできるか!!」

言峰「では、イリヤスフィールは幸せになれない」

士郎「ぐっ……」

言峰「限界そうだと思ったところでトイレに行くように促せ。まぁ、途中で漏らしてしまうのは確実だろう」

士郎「また優しくするのか?」

言峰「いいや。何も言わずに事後処理をしろ。言葉は不要だ」

士郎「どういうことだよ?」

言峰「彼女はあれでも年上として振舞っている。慰めも罵りもなく淡々と年下に事後処理をされるとどうなると思う?」

言峰「羞恥心は限界をこえ、衛宮士郎の前ではなにも言えなくなる」

士郎「……」

言峰「また、その事実を誰にも話す素振りを見せないお前を見て、更に彼女の心は抉られる」

言峰「自身の恥部になんとも思わない衛宮士郎。そのときイリヤスフィールは心を束縛される」

士郎「え?」

言峰「あの人の前なら隠すことはなにもない、という歪んだ信頼感だ」

言峰「それが根付くまで何度か繰り返してもいいだろう」

士郎「何度もしたらばれるだろ?」

言峰「ふっ。二回目はオネショでもいい。下剤も渡しておこう。どう使うかはお前次第だ」

士郎「下剤って……」

言峰「次はライダーか。ライダーは間桐桜と一緒にいるときが幸福なのだった」

士郎「ああ」

言峰「では、簡単だ。桜の幸せが彼女の幸せ。幸も不運も共有するというということは何もしないでいい」

士郎「そ、そうなるのか」

言峰「ああ」

士郎「じゃあ……桜は?」

言峰「そこが問題だな。間桐桜は様々なものを抱えている。あやつを幸せにするのは骨だろう」

士郎「無理か?」

言峰「いいや。他の4人に仕掛けたことを思い出せ」

士郎「なに?」

言峰「まず、セイバーに家事をさせる。これは桜にとっては不幸の種でしかない」

言峰「何もできない者に自身のアイデンティティを奪われるようなものだ」

士郎「そうだな……」

言峰「次に凛がオネショ、イリヤスフィールが小便を漏らした事実を桜に伝えろ」

士郎「え?!」

言峰「きちんとこう添えたあとでな。『桜にだけ話す』と」

士郎「それは……」

言峰「自身の立場が危ぶまれている最中に、愛するものから秘密を、それも劣等感を感じている相手の弱みを共有する」

言峰「間桐桜にとってそれ以上の快楽はないだろう。家事という武器を失って尚、戦える兵器を手にするのだからな」

士郎「それで桜は幸せなのか……」

言峰「大事なのは衛宮士郎と間桐桜だけが知っている事柄であるということだ。親密な間柄ならそういう秘密は嬉しいものだよ」

言峰「更にそれを墓場までもっていこうとなれば……。間桐桜はお前と結ばれたと勘違いを起こしても不思議ではない」

士郎「そうか……そうなのか……」

言峰「桜はそれで大満足だろう。そして共に喜ぶライダーもいる」

言峰「これで全員が幸せだ。どうだ、衛宮士郎?」

士郎「そうしないと……駄目なんだな?」

言峰「ああ。誰かを蹴落とさなくては幸福など手にはできない」

言峰「だから、全員が一度不幸になる必要がある」

士郎「……」

言峰「カレン。数日分の利尿剤と下剤を」

カレン「犬。もってきなさい」

ランサー「なんでだよ!!!」

士郎「それで……みんなが……」

言峰「ああ。幸せになる」

士郎「……」

ランサー「ほらよ、坊主。もっていきな」

士郎「ああ……」

士郎「じゃあな」

言峰「いい結果を期待している」

ランサー「―――いっちまったか」

カレン「ふふ……」

ランサー「あのよぉ。あんなこと言って大丈夫なのかよ」

言峰「何も問題はない。私は彼の問いに答えただけだ」

カレン「……」

ランサー「そうかよ。どうなってもしらないぜ?」

言峰「真実とは人の思い通りにはいかない。それが世の常」

言峰「私は文字通り……全員を幸せにする方法を開示した」

言峰「そう……全員が……」

カレン「ふふふ……」

言峰「ふふふふ……」

ランサー「……」

衛宮邸

セイバー「私が……家事ですか?」

士郎「ああ」

桜「な!?」ガタッ

セイバー「しかし……却ってシロウやサクラにご迷惑をかけるだけでは?」

士郎「いいから。セイバーだって何もしないで家にいるのは退屈だろ?」

セイバー「ですが……」

桜「……」ゴゴゴ

セイバー「や、やはり遠慮します。私には向いていないでしょうし」

士郎「いいからいいから。とりあえず掃除からやってみようか」

セイバー「は、はぁ……そこまで言うのでしたら」

桜「先輩……どうして……セイバーさんに……」

桜「私のほうがうまくできるのに……!!」

ライダー「……」

廊下

士郎「廊下からやってみるか」

セイバー「わかりました」

士郎「はい、雑巾」

セイバー「あの……掃除機でいいのでは?」

士郎「掃除機は朝にしたからな」

セイバー「そうですか」

士郎「じゃあ、隅々までお願いできるか?」

セイバー「分かりました。やってみます」

セイバー「……」ゴシゴシ

士郎「……」

士郎(でも、セイバーでも掃除ぐらいできるよな)

セイバー「……」ゴシゴシ

士郎「セイバー、電話機は雑巾で拭くな。汚いだろ?」

セイバー「あ、申し訳ありません。隅々までといわれたので……」

セイバー「あ―――」

ガシャーン!!

士郎「あ……」

セイバー「申し訳ありません!!!壷を割ってしまいました!!!」

士郎「あ、ああ。いいよ。こっちで片付けとくから」

セイバー「本当に申し訳ありません」

士郎「いいって。じゃあ、次は和室のほうにいこうか」

セイバー「はい……」

ライダー「士郎」

士郎「ライダー?」

ライダー「セイバーに家事をさせるのはどういう了見でしょうか?」

士郎「え?」

セイバー「な……」

ライダー「士郎と桜がいれば十分です。セイバーにさせることはないはず」

士郎「……」

ライダー「そもそも、廊下も今朝桜が丹念に掃除をしていました。もう一度行う理由がありません」

士郎「それは……」

ライダー「なにかあるのですか?」

士郎「う……」

セイバー「ライダー。指弾されるのは私であってシロウではないはずだ」

ライダー「しかしですね」

セイバー「それに私も家事程度のことはできます」

ライダー「壷を割ったのにですか?」

セイバー「慣れていないからだ」

ライダー「和室にいっても障子を猫のように裂いてしまうだけではないですか?」

セイバー「なんだと……!!」

ライダー「不器用なあなたには家事は向いていません」

セイバー「言いましたね?―――シロウ!!」

士郎「は、はい?」

セイバー「家事を徹底的に叩き込んでください。お願いします」

士郎「わ、わかった」

ライダー「おやめなさい」

セイバー「見ていろ、ライダー。貴女の予想を大きく裏切ってみせます」

ライダー「……」

セイバー「……」

士郎「セイバー、いこうか」

セイバー「わかりました」

ライダー「ちっ……」

セイバー「ふん……!!」ズンズン

士郎「セイバー、やる気になってくれるのは嬉しいんだけど……ほどほどにな」

セイバー「程ほどでは意味がない。シロウ、この際です。炊事洗濯もお願いします」

士郎「いきなりは無理だって」

セイバー「無理なことはない」

士郎「お、おい……」

セイバー「私は最良のサーヴァント。マスターの求めたことを達成できないわけがない」

士郎の部屋

凛「あら、随分と士郎の部屋の風通しがよくなったのね」

セイバー「……」

凛「障子って張り替えるの手間なのよねー」

士郎「セイバー、この反省を活かせばいいだろ?」

セイバー「……」ウルウル

凛「畳みも痛んでるわね。どうやって掃除したの?」

士郎「遠坂!!」

セイバー「うぅ……」ブワッ

士郎「セイバー……」

セイバー「くそ……どうして……こんなことも満足に……できないのですか……私は……」ポロポロ

凛(ないてる……可愛い……)

セイバー「シロウ!!」

士郎「な、なんだ?」

セイバー「これからもがんばります!!だから、見捨てないでください!!」ポロポロ

士郎「見捨てるわけないだろ?」

セイバー「ほんとう……ですか?」

士郎「ああ」

セイバー「ぐすっ……ありがとうございます……」

士郎「これからがんばろうな」

セイバー「はい!」

凛「どうかしたの?セイバーに家事をさせるなんて、士郎らしくもない」

士郎「セイバーに自宅警備と家事をさせてば最強だろ

>>49

投下ミス

士郎「見捨てるわけないだろ?」

セイバー「ほんとう……ですか?」

士郎「ああ」

セイバー「ぐすっ……ありがとうございます……」

士郎「これからがんばろうな」

セイバー「はい!」

凛「どうかしたの?セイバーに家事をさせるなんて、士郎らしくもない」

士郎「セイバーに自宅警備と家事をさせてば最強だろ?」

凛「まぁ、そうかもね」

士郎「セイバー?」

セイバー「はい」

士郎「セイバーならきっとなんでもこなせるようになるって」

セイバー「わかりました。マスターの信頼に応えられるよう努力します」

士郎「ああ」


桜「……」ギリギリギリ

夕方 居間

士郎「セイバー、それ切ってくれ」

セイバー「こうですか?」

士郎「違う違う。こうやって……こう握って」ギュッ

セイバー「あ……」

士郎「こうして切るんだ」

セイバー「ど、どうも……」ドキドキ


桜「……」ギリギリギリ

凛「なんかあったのかしら?」

ライダー「……」

凛(なんか空気が悪いわね……)

ライダー「桜、あまり気にすることはないかと」

桜「気にしてなんか……いないけど……?」ゴゴゴゴ

ライダー「ひぃ!?」

凛(士郎、死ぬ気……?)



凛「はぁー、さっぱりしたぁ」

士郎「遠坂、もう寝るのか?」

凛「そうね」

士郎「じゃあ、はい」

凛「え?」

士郎「ホットミルク。ぐっすり眠れるぞ?」

凛「あ、ありがとう……もらうわ」

士郎「じゃあ、おやすみ」

凛「ええ」

士郎(ごめん、遠坂……。みんなで幸せになるためなんだ……)

凛「……」

セイバー「ふんふーん。ここの異常なーし」

凛「セイバー、見回り?お疲れ様。―――これでも飲んで」

セイバー「ホットミルクですか。ありがとうございます」ゴクゴク

凛「……なんともない?」

セイバー「ええ」

凛「そう。それじゃあ、おやすみ」

セイバー「おやすみなさい」

凛(考えすぎか……)

セイバー「さてと、私ももう休みましょう」

セイバー「今日は慣れないことをして疲れましたし」

桜「……セイバーさん」

セイバー「桜?」

桜「少し、お時間ありますか?」

セイバー「え、ええ。構いませんが」

桜「では、私の部屋にどうぞ」

セイバー「わかりました」

桜の部屋

桜「―――なので、私は先輩と出会ってからですね、ずっとここで家事手伝いをしてきたんです」

セイバー「はい……」

セイバー(かれこれ1時間……サクラはシロウとの馴れ初めを聞かせて……どうするつもりですか……)

桜「―――で、私は先輩に腕を引かれて台所までいったんです」

セイバー「……っ!?」ビクッ

桜「聞いてますか?」

セイバー「は、はい……」モジモジ

セイバー(急に猛烈な尿意が……!?)

桜「そこで私が初めてつくったのがおにぎりなんですけど、出来は正直よくなくて……」

セイバー「あの……サクラ……?」

桜「話の途中です」

セイバー「は、はい……」モジモジ

セイバー(くっ……今すぐ席を立たないと……間に合わない……!!)

桜「塩もつけてなくておにぎりがおいしくないって思ったのはあれが最初でしたね。でも先輩は優しく―――」

桜「―――中学にあがったときにはもう私は先輩にお弁当を作れるまでに成長しました」

セイバー「あ……にょ……」モジモジ

桜「話の途中です」

セイバー「だ、から……あ……だめ……」

桜「え?」

セイバー「うぅ……あぁ……」ジワァ

桜「セイバー……さん……?」

セイバー「み、ないで……くださ、い……」ウルウル

桜「!?」

セイバー「……っ」ギュッ!

セイバー「とまって……とまって……!!」

桜「……」

セイバー「くっ……そ……」

桜「あぁ……雑巾、とってきます……」

セイバー「うぅ……ぅ……」ポロポロ

桜「……」ゴシゴシ

セイバー「……申し訳ありません……」

桜「ごめんなさい。私も熱がはいちゃって……」

セイバー「恥を通り越して、自分を恨んでしまいそうです」

桜「あの……私も悪いですから……気にしないでください」

セイバー「……」

桜「誰にも言いませんし」

セイバー「お願いします」

桜「……でも、どうして?何かいっぱい飲みました?」

セイバー「いえ……牛乳をリンから貰っただけで」

桜「姉さんから?」

セイバー「はい」

桜「……そのとき、姉さんはなにか言ってませんでした?」

セイバー「え……?あ、そういえば『なんともないか』と体調を気にするようなことを」

桜「姉さんのところに行きましょう」

凛の部屋

凛「牛乳?」

桜「はい」

凛「ああ、あれは士郎が私にくれたの。それをセイバーに渡したんだけど」

桜「そうですか」

凛「なにかあったの?」

桜「セイバーさん、今はお風呂に入りなおしています」

凛「オッケー。状況はつかめたわ」

桜「その牛乳になにか入っていたんでしょうか?」

凛「さぁ。とはいえ、士郎がなにをしたいのか……」

桜「もし、姉さんを狙ってだとしたら……」

凛「んー。ま、士郎がなにするか興味はあるわね」

桜「姉さん?」

凛「とりあえず、ひっかかってやりますか。桜、何かに水をいれてきてくれない?」

桜「水……。まさか……」

翌朝

士郎「……」スタスタ

士郎(遠坂がオネショなんて……)

士郎「すこし現実的じゃないけど……」トントン

士郎「遠坂ー、おきてるかー?」

士郎「……はいるぞー?」ガチャ

凛「きゃぁ!!!」

士郎「と、遠坂……」

凛「士郎……いやぁ!!みないで!!」

士郎「あ……えと……」

凛「うぅ……さいてー……よ……このとしで……おも、らし……なんて……」

士郎「あ、えと……」

凛「士郎……これ、こっそり洗ってきてくれない……?」

士郎「お、おう……」

凛「あと誰にも……言わないで……お願い……だから……」ウルウル

士郎「大丈夫だ。誰にも言うわけないだろ?」

凛「うん……信じてるから……」

士郎「じゃあ、えっと、とりあえず風呂に入れ。俺はシーツを洗うから」

凛「うん……お願い……」

士郎「ああ、任せろ」

凛「……」

ガチャ

桜「おはようございます、姉さん」

凛「おはよう、桜」

桜「先輩は?」

凛「予想通り朝一できたわ。どうやら、私に寝小便をさせたかったみたいね」

桜「でも……どうして……」

凛「大方、私の弱みでも作りたかったんじゃない?」

桜「先輩がそんなこと……」

凛「あいつがこんなこと思いつくわけないわ。誰かの入れ知恵に決まってるじゃないの」

桜「一体誰が……」

凛「まぁ、容疑者は二人ぐらいしかいないけどね」

ライダー「おはようございます」

桜「おはよう、ライダー」

セイバー「おはようございます」

凛「みんな集まったわね。よし、丁度士郎は洗濯しにいったし、秘密会議でもしちゃいますか」

セイバー「秘密会議ですか?」

桜「えっと……どういう?」

凛「とりあえず、このまま士郎の企みに乗っかってやりましょう。そのほうがボロを出しやすいでしょうし」

セイバー「何の話ですか?」

凛「そっか。セイバーは被害者なのよね」

セイバー「は?」

ライダー「話が見えませんが」

凛「ま、いいから。私の話をきいて」

桜「……」

居間

士郎「と、遠坂。はい」

凛「ちょっと」

士郎「な、なに?」

凛「(あんまり意識しないで……)」

士郎「(わ、わるい……)」

凛「バカ……」

セイバー「シロウ、卵焼きが焦げました」

士郎「え!?あぁ、わかった!!」

セイバー「これはどうしたことでしょうか?」

士郎「えっとだな……」

桜「……」

ライダー「……」

士郎「な、なんだ。二人とも顔が怖いけど……」

桜「なんでもありませんよ、先輩?」



イリヤ「シロウ!!遊びにきたわよ!!」

士郎「よう。イリヤ。さ、あがってくれ」

イリヤ「うん!」

士郎「今日はなにする?」

イリヤ「なんでもいいわ。シロウと一緒にいれるならね」

士郎「イリヤ……」

イリヤ「ふふっ。さ、行きましょう」

士郎「ああ」

士郎(ごめん……イリヤ……俺は……お前を幸せにするために……)

士郎「くっ……」

イリヤ「どうしたの?」

士郎「なんでもない」

イリヤ「へんなシロウ」

士郎(でも、必ず幸せにしてやるからな……イリヤ……!)

居間

セイバー「……」

凛「ふんふーん」

イリヤ「あれ?サクラは?」

凛「家に帰ったわ。慎二のお世話だって」

イリヤ「ふーん」

士郎「……イリヤ。これ飲むか?」

イリヤ「ありがとう、シロウ」

セイバー「……」

凛「……」

イリヤ「いただき―――」

凛「ストップ」

士郎「え?」

イリヤ「なによ!」

凛「それ、私にもくれない?」

士郎「あ、ああ。わかった。じゃあ―――」

凛「少しだけでいいの」

イリヤ「別にいいけど」

凛「ありがとう、イリヤ」

士郎「な……」

凛「ふぅ。うん。美味しい」

イリヤ「じゃあ、私も……」ゴクゴク

士郎(イリヤも飲んだし……大丈夫だな)

凛「……」

セイバー「……」

イリヤ「ふんふーん、シロウ♪」ギュゥゥ

士郎「おいおい、イリヤ」

イリヤ「しばらく抱きついててもいいよねー?」

士郎「あ、いや……」

セイバー「構いません。イリヤスフィールの好きにしていればいいでしょう」

士郎「そ、そうか?」

セイバー「はい」

イリヤ「今日は随分と殊勝ね」

セイバー「貴女に何を言っても無駄でしょうから」

イリヤ「ふーん」

イリヤ「……?」

士郎「どうした?」

イリヤ「ううん」

イリヤ(あれ……出てくるときに済ませたのに……もうしたくなってきた……)

イリヤ(まぁ、まだいいか)

イリヤ「シロウー」ギュゥゥ

凛「イリヤは本当に士郎のことが好きなのね」

イリヤ「リンも抱きつきたいの?」

凛「誰が」

士郎「なんかそういわれると傷つくぞ」

数分後

イリヤ「んっ……」モジモジ

イリヤ「シロウ……あの」

士郎「なんだー?」ギュゥゥ

イリヤ「シロウ……ちょっと……」

士郎「こうしていると幸せな気分になれるんだ」

イリヤ「そ、そんなこと今、言われたら……」

士郎「イリヤ……」ギュゥゥ

イリヤ「離れられないじゃない……」モジモジ

イリヤ(おしっこいきたい……)

士郎(イリヤ……ごめん……もう少しの辛抱だ)

凛「……」

セイバー「……」

イリヤ「うぅ……ぁぅ……」モジモジ

イリヤ(もれ、そう……!!)

20分休憩

士郎(そろそろかな……)

士郎「イリ―――」

セイバー「シロウ」

士郎「え?」

セイバー「私も……シロウに抱きついても……いいでしょうか?」

士郎「なんでさ?!」

セイバー「いえ……イリヤスフィールばかりなのは少々……その……」

凛(今の飲み物にもやっぱりなんか盛ってたわね……トイレに行きたい……)モジモジ

士郎「いや……えっと」

イリヤ「うぅ……!!うー!!」モジモジ

セイバー「イリヤ?」

イリヤ「シロウ!!おしっこ!!」

士郎「あ、ああ、いこう」

イリヤ「だめ……たて、ない……たったら……も、れる……」

士郎「な……?!」

凛「私、トイレー」スタスタ

士郎「あ……」

イリヤ「し、ろう……もう……ぁ……」ジワァ

士郎「……」

イリヤ「ごめん……ごめんね……ごめん……」ウルウル

イリヤ「とまら、ない……とまらないの……シロウ……」ポロポロ

士郎「……」

セイバー「雑巾を持ってきます」

士郎「あ、ああ……」

イリヤ「うぅ……もう……やだぁ……」ポロポロ


セイバー「リン」

凛「ふぅ。すっきりした。―――なんのつもりかしらないけど、イリヤにも盛ったみたいね」

セイバー「では、やはり昨夜のミルクにも」

凛「確定ね。あとはどうしてそんなことをしようと思ったのか……だけど」

セイバー「シロウは一体どうして……?」

セイバー「シロウ、雑巾です」

士郎「ありがとう」

イリヤ「ごめんね……シロウ?あの……私……すぐに言えばよかったのに……」

士郎「……」ゴシゴシ

イリヤ「シロウと離れたくなくて……できるだけくっついていたくて……」

士郎「……」ゴシゴシ

イリヤ「ごめんね……」

士郎「……」ゴシゴシ

イリヤ「きらいに……ならないで……シロウ……シロウ……」ギュゥゥ

士郎「……セイバー」

セイバー「分かっています。他言はしません」

士郎「悪いな」

セイバー「では」

イリヤ「シロウ……シロウ……ごめんね……私、おもらしして……きもちわるいよね……」ギュゥ

士郎(そんなことない……イリヤ……イリヤは……すごく可愛い)

凛「……」

セイバー「どう見ますか、リン?」

凛「セイバーに家事をさせ始めたところから変だとは思ってのよね、実は」

セイバー「え?」

凛「セイバーが不器用なのは士郎だって知ってるし、そもそも今までセイバーが手伝うって言っても士郎自身がそれを断ってたでしょ?」

セイバー「ええ」

凛「あいつはセイバーにトコトン甘いから、家事はさせないって感じだった」

凛「だけど、急に家にいるだけじゃ暇だろうからって理由で家事をさせようとするのは不自然よ」

セイバー「そうですか?」

凛「もっと前にそういった提案があってもよかったでしょ?セイバーが日がな一日家にいるのが当たり前になっている今現在にいうことじゃない」

セイバー「では……どうして?」

凛「まあ、飽く迄仮説だけど、セイバーと私、あとイリヤの心に付け入ろうとしたのよ」

凛「セイバーは家事に失敗したとき、私はオネショ、イリヤはお漏らし。各自の失敗に優しい言葉で抱擁しようとしてたんですもの」

セイバー「シロウがそのような策略をめぐらすとは考えにくいのですが……」

凛「ふん。あの朴念仁がこんな回りくどいことするもんですか。こんな陰湿なことを考えるのは……あいつしかいないわよ……」

イリヤ「シロウ……着替えてきた……」

士郎「イリヤ、こっちにこい」

イリヤ「うん……」トコトコ

士郎「……」ギュゥゥ

イリヤ「シロウ……シロウ……」ギュゥゥ

士郎「なんだ?」

イリヤ「私のこと……嫌いになった?」

士郎「なんでさ?」

イリヤ「だって……」

士郎「イリヤは可愛いぞ」ナデナデ

イリヤ「シロウ……」

士郎「今日はなにする?」

イリヤ「このままでいい……」ギュゥ

士郎「イリヤ……」

士郎(すげえ……言峰の言ったとおりだ……よし、あとは桜に遠坂とイリヤのことを話せば……)

士郎の部屋

セイバー「では、サクラの弱みは?」

凛「そうねえ……状況から考えて……」ゴソゴソ

凛「桜の場合は秘密を共有させるんじゃないかしら?」

セイバー「どういうことですか?」

凛「ほら、桜って独占欲が強いじゃない?ああいうタイプって、意中の相手と色んなものを揃えたがるのよ」ゴソゴソ

凛「マグカップとか歯ブラシとか……あと、プライベートもね」

セイバー「つまり、リンとイリヤのことをシロウは喋ると?」

凛「そうかもね。一応、桜にはそういうことを言われたら報告してって言ってあるけど」ゴソゴソ

セイバー「ふむ……」

凛「あった」

セイバー「え?」

凛「みて。利尿剤と下剤よ」

セイバー「な……」

凛「士郎のやつ、下剤まで用意してるなんて……面白いじゃない……ふふ……」

夜 桜の部屋

桜「あの……先輩?お話って……」

士郎「ああ。えっと……桜だから言うんだけど」

桜「はい」

士郎「実は今朝、遠坂がオネショしたんだ」

桜「え?!」

士郎「あのシーツ、気になってただろ?」

桜「ええ。どうして姉さんのだけ洗ってるんだろうって……」

士郎「そういうわけなんだ」

桜「では、居間のシミは?」

士郎「あれはイリヤがおもらししちゃって」

桜「そうだったんですか……」

士郎「ああ。あ、これは桜だから言ったんだからな。ばらすなよ?」

桜「はい。先輩と私だけの秘密、ですね?」

士郎「ああ、そういうことだ」

深夜

桜「―――というお話をしました」

凛「……」

セイバー「シロウ……」

ライダー「……」

桜「あのイリヤさんには?」

凛「イリヤには教えない方向で考えてるわ」

セイバー「それがいいかもしれません。―――シロウの身が危ない」

凛「とりあえず士郎のしたいことは大体把握できたわ」

ライダー「どうされるおつもりですか?」

凛「明日、黒幕であろう奴の顔を拝みにいってくるわ」

セイバー「お供します」

凛「あおろがとう、セイバー」

凛「……そのあとで士郎にはたっぷりおしおきしてあげるけどね」

桜「姉さん……ふふ……頼もしい……」

>>127
凛「あおろがとう、セイバー」

凛「ありがとう、セイバー」

訂正

翌日 教会

言峰「……きたか」

凛「綺礼、おはよう?」

言峰「おはよう、凛。なにかな?」

凛「これ、見覚えある?」バンッ

言峰「あるとも」

凛「利尿剤と下剤よね?」

言峰「ああ。カレン愛用のだ」

凛「そんなこと聞いてないわよ。これ、どうして士郎に渡したの?」

言峰「奴が幸せを得たいを言ったからだ」

凛「どういうこと?」

言峰「ふふ……しかし、早いな。凛がくるのはもうすこし後だと思っていた」

凛「答えて!!」

言峰「いいだろう」

凛「……」

言峰「―――以上だ」

凛「つまり私たちを不幸にさせて幸せを得ろっていったのね?」

言峰「ああ、その通りだ」

凛「ふざけないで!!」

言峰「私は大真面目だが?」

凛「こいつ……!!」

セイバー「リン、この神父に口では勝てません」

凛「ふっ……ふふ……それもそうね……」

言峰「しかし、そのまま素直に謀略の沼に足を浸からせていればいいものを。凛にとっても幸せだろうに」

凛「うっさいわね!!なにが悲しくておもらししなきゃいけないのよ!!」

言峰「ふふふ……」

凛「……そーだ。はいこれ、差し入れ」

言峰「ほう。珍しいな。君が差し入れとは」

凛「ケーキだから早く食べてね?」

言峰「ははは。冗談を。食べられたものではないだろうに」

凛「あら?どうしてそう思うの?」

言峰「君が利尿剤と下剤を持っている時点で察しはつく」

凛「……」

言峰「もってかえるがいい」

凛「受け取ってくれないの?」

言峰「ああ。生憎と甘いものは苦手でね」

凛「ふん……まぁ、捨てるなりなんなりすればいいわ。セイバー、帰るわよ」

セイバー「いいのですか?」

凛「ええ」

言峰「凛、セイバー、幸おおからんことを」

凛「ふんだ」

言峰「―――カレン」

カレン「はい」

言峰「ケーキだ。いるか?」

カレン「まぁ、美味しそうなケーキ。頂きましょう」

カレン「犬」

ランサー「犬っていうな!!」

カレン「キャンキャンとやかましい。とりあえずケーキをどうぞ」

ランサー「なんでだよ?」

カレン「いいから」

ランサー「いらねえよ」

カレン「……そうですか」

ランサー「なんだよ……」

カレン「では……ふんっ!!」

ランサー「もごっ?!!?」

カレン「ふふ……美味しいですか?」

ランサー「てふぇ……!!」モグモグ

ランサー「―――無理やりくわせんじゃねえ!!」

カレン「なんともありませんか?」

ランサー「え?いや、ないけど?」

カレン「おや……変ですね……」

ランサー「……ったく」

カレン「……」

言峰「本当に差し入れだったのか……?」

カレン「そんなことがありえる―――」

ランサー「な、なんだ……!?!!?腹が光り始めたぞ、おい!!」

言峰「まさか……!?」

カレン「遠坂凛……利尿剤でも下剤でもなく……魔術を……」

言峰「退避だ。おそらくケーキを口にした者を爆弾に変える魔術を仕込んでおいたな」

カレン「なるほど。言峰綺礼なら実験として誰かに食べさせる可能性がある」

カレン「誰かが食べれば一緒に吹き飛ぶ……そういうことですか」

言峰「いっぱい食わされたな」

カレン「にげましょう」

ランサー「まてよ!!!これやばいって!!!おい!!!」

ランサー「あぁぁぁぁ―――!!!!!!!」

ドォォォォォン!!!!

凛「お、花火が上がったみたいね」

セイバー「……あの、これからシロウに?」

凛「当然でしょ?」

セイバー「ですが、シロウは唆されただけで」

凛「別にぃ。私は士郎にお茶を飲ませるだけだもの」

セイバー「リン……」

凛「そして全力で士郎が席を離れないようにするだけ」

セイバー「あぁ……シロウ……」

凛「ま、因果応報よね」

セイバー「はぁ……」


ギル「らんらーん」

ギル「早く帰らないと、マスターに怒られますね」

ギル「それにしてもまた利尿剤と下剤を発注するなんて……」

ギル「いい趣味してますね、ホント」

教会跡地

ギル「……」

ギル「え……これは……」

ランサー「ぐ……ぁ……っぉ……」

ギル「な、なにがあったんですか!?」

ランサー「ケーキが……ばくはつ……した……」

ギル「はぁ!?」

言峰「どこに行っていた、ギルガメッシュ」

ギル「どこって……」

カレン「貴方がいないせいでめちゃくちゃです」

ギル「関係ないですよね……」

カレン「まあいいでしょう。利尿剤と下剤は?」

ギル「は、はい。ありますよ?」

言峰「では、頼みごとがある。―――流石にこのままでは我々の沽券にかかわる」

ギル「え?」

衛宮邸

凛「士郎?これ、飲んで」

士郎「え?いいのか?」

凛「うん」

セイバー「……」

ライダー「……」

桜「……」

士郎「じゃあ、いただきます」ゴクゴク

凛「どうかしら?おいしいでしょ?」

士郎「ああ」

凛「ふふ……」

士郎「なんだよ?」

凛「(桜にしゃべったな)」

士郎「!?」

凛「(気づかないと思ったの?バカね……本当に)」

商店街

リズ「……」トテトテ

ギル「あのぉ」

リズ「なに?」

ギル「ケーキ、いりませんか?」

リズ「いいの?」

ギル「ええ。実は売れ残りなんですけど、ちょっと量が多くて」

リズ「うれしい」

ギル「いっぱいあるんで好きなだけもって帰ってください」

リズ「ありがとう。セラもイリヤもバーサーカーも喜ぶ」

ギル「いえいえ」

リズ「じゃあ」

ギル「はい」

ギル(これでいいのかな……?)

ギル(まぁ、僕はマスターの指示に従っただけだし……悪くないよね)

衛宮邸

士郎「と、おさか……」

凛「ふん……おしおきよ、士郎?」

士郎「ち、ちがうんだ……!!」

凛「何も言わなくていいわ。全部、知ってるから」

士郎「な……」

凛「さて。今、飲んだなかにあるものを盛りました。それはなんでしょう?」

士郎「遠坂……やめてくれ……」

凛「一番、自白剤。二番、惚れ薬。三番、下剤。さぁ、どーれだ?」

士郎「あぁ……桜!!」

桜「……」

士郎「ライダー!!」

ライダー「……」

士郎「セイ―――ふぐぅ!?」ゴロゴロ

セイバー「シロウ!?」

アインツベルン城

イリヤ「ええ、分かったわ」

セラ「お嬢様、教会からはなんと?」

イリヤ「シロウの家に行けばわかるって」

セラ「なんですか、それは……?」

イリヤ「まぁ、とにかく行ってみるわ」

セラ「お気をつけて」

イリヤ「バーサーカー、送って」

バーサーカー「……」コクッ

リズ「ただいま。あれ、イリヤおでかけ?」

イリヤ「ええ。ちょっとシロウのところに言ってくるわ」

リズ「じゃあ、はい」

イリヤ「なにこれ?」

リズ「ケーキ。シロウによろしく」

イリヤ「うん。ありがとう」

士郎「あぁ……ぁが……!!!」

凛「苦しい?我慢しなくていいのよ?」

士郎「と、さ……か……ご、めん……」

凛「自分だけいい思いしちゃだめでしょ?」

士郎「だ、って……おれ……は……みんなを……」

凛「士郎、そんなことで得る幸せなんていらないって」

士郎「え……」

凛「私たちは……こうしているだけで十分に幸せなんだから」

士郎「遠坂……」

凛「ほんとにバカなんだから」

士郎「ごめん……遠坂……」

凛「……」

士郎「といれ……!!」

凛「セイバーとイリヤがどれだけ恥ずかしい思いをしたか、思い知ったらいいわ」

士郎「そ、そんぁ……!?ごぉ……くがぁ……!!!」

イリヤ「しろー!!またきちゃった!!」ガラッ

士郎「もぅ……だめ……だぁ……」

凛「ふん」

イリヤ「シロウ……?」

セイバー「イリヤ!?」

桜「……」

ライダー「終わりですね」

士郎「ぁ……がぁ……!!」

士郎(もう……おわ―――)

イリヤ「まってて!!」

凛「ちょ……!?」

イリヤ「……」パァァ

士郎「え……」

イリヤ「どう?痛み、和らいだ?早くトイレに行ったほうがいいよ?」

士郎「イリヤ……ありがとう……!!」ダダダッ

凛「イリヤ……」

イリヤ「リン……シロウになにしたの?」

凛(しまった……イリヤには何も話してないんだった……)

イリヤ「答えなさい」

凛「イリヤ、よくきいて。士郎はね―――」

イリヤ「聞こえないの?シロウになにをしたかを聞いたんだけど?」

凛「ひぃ……」ゾクッ

イリヤ「……」

セイバー「イリヤ、これにはわけが」

イリヤ「わけですって?」

セイバー「はい」

イリヤ「……どんな言い訳されても、シロウを苦しめたことには違いないでしょ?」

セイバー「そ、それは……」

凛「……」

桜(ど、どうしよう……)オロオロ

ライダー「イリヤスフィール、あのですね……」

イリヤ「なによ?」

凛「ここで貴女はおもらししたでしょ?」

イリヤ「!?」

凛「あれはね―――」

イリヤ「セイバー?」

セイバー「はい?」

イリヤ「セイバーがリンに喋ったの?」

セイバー「え?」

イリヤ「どうなの?」

セイバー「え、ええ……そうですが……」

イリヤ「ふーん。他言はしないっていったくせに……」

セイバー「あ……」

イリヤ「リンもリンね。まさか私の弱みを持ち出すとは思いもしなかったわ」

凛「ちょっとまって!!違うの!!そうじゃなくて!!」

イリヤ「トオサカも落ちぶれたものね」

凛「違う!!話をきいて!!」

イリヤ「……サクラ」

桜「は、はい!」

イリヤ「ケーキもってきたの。長い話になるようだからお茶をしながら話しましょう?」

桜「わ、わかりました!!今、お皿を用意します!!」

凛「イリヤ、だからね、全部士郎が仕組んだことなのよ」

イリヤ「……」

凛「いい?あんたがお漏らしする前に飲み物を飲んだでしょ?」

セイバー「サクラ、手伝います」

ライダー「私も」

凛「あの中に利尿剤があったのよ」

イリヤ「証拠は?」

凛「ここにあるわ」

イリヤ「は?違うわ。そのときにシロウが盛った証拠よ。そんなの見せられても貴女が持っている証明にしかならないでしょ?」

凛「そ、そうだけど……」

イリヤ「それに。貴女もあのとき飲んだわよね?」

凛「え……」

イリヤ「そして私が粗相をする直前に部屋を出た」

凛「あの……」

イリヤ「更に利尿剤を現在持っているのはリン」

イリヤ「―――あのとき利尿剤を盛ったのリンじゃないの?」

凛「なぁ!?」

イリヤ「……」

桜「ど、どうぞ……ケーキです」

イリヤ「ありがとう」

セイバー「……」ドキドキ

ライダー(凛、がんばってください)

凛「なんでそんな考え方ができるわけ?!」

イリヤ「そうとしか考えられないわ。そもそもシロウは漏らす直前まで私を抱きしめてた。漏らすとわかってる相手にそんなことしないでしょ?」

凛「ぐっ……」

イリヤ「反論は?」

凛「でも、士郎はさっき認めたわ!!」

イリヤ「肉声を録音したものでもあるの?」

凛「な、ないけど……」

イリヤ「じゃあ、シロウが認めたと私は信じることができなわね」

凛「イリヤ……でもね、綺礼だって……」

イリヤ「あいつがどうかしたの?」

凛「士郎に変な入れ知恵をしたことを自白したのよ?」

イリヤ「ふーん」

凛「いや……ふーんじゃなくて……」

イリヤ「言っておくけど、この場にあいつがいない以上、リンの発言は信じるに値しないわ」

凛「なんですって……」

イリヤ「だって疑わしいのはリンのほうですもの」

凛「……」

凛「セイバー!!セイバーからもいってあげてよ!!」

セイバー「あの……」

凛「ほら、いいなさい!!」

セイバー「あの夜のホットミルク……本当にシロウが手渡したものなのですか?」

凛「!?」

セイバー「あのときはリンの言葉を信じましたが……その……」

凛「ちょっと……セイバー?!冗談よね……?ね?」

桜「確かに……発端は姉さんが先輩から受け取ったっていう牛乳からですよね?」

凛「桜!?」

ライダー「まさか……自作自演……ですか?」

凛「桜!!士郎はあんたに全部喋ったんでしょ?!」

桜「でも、あれはもしかしたら先輩が本当に私を信頼して喋ったのかもしれません」

桜「姉さんのシーツだけが干されているのは明らかに不自然ですし、今のシミだって普通に目に付きます」

桜「私が変な勘ぐりをするまえに先輩が話してくれただけかもしれません」

凛「な……なんでこんなことに……!?」

イリヤ「そうよ。リン。シロウが利尿剤を盛ったりするわけないわ」

凛「セイバー!!そうだ!!セイバーは綺礼の話きいたじゃないの!!」

セイバー「ええ」

凛「綺礼は自白したじゃない。そうでしょ?」

セイバー「確かに……ですが……あの……」

凛「なによ……?」

セイバー「えっと……」

イリヤ「あの神父と昔からの付き合いがあるのよね?」

凛「……え?」

イリヤ「シロウを貶めるために口裏を合わせた。セイバーはそれを疑ってるんじゃないの?」

凛「な……!?」

セイバー「申し訳ありません。あの者なら平気でしそうです」

凛「ちがう……わたしじゃない……!!わたしじゃないの……!!!」

イリヤ「リン?シロウをどうするつもりだったの?」

凛「ちがう……しんじてよ……わたし……なにもしてないんだからぁ……」ウルウル

セイバー「……」

桜「姉さん……」

ライダー「……」

凛「やめて……ちがうっていってるでしょ……!!」

イリヤ「でも……」

凛「違う!!私じゃ―――」

士郎「そ、そうだ……遠坂じゃないぞ……」

イリヤ「シロウ?!大丈夫!?」

士郎「全部……俺だ。俺がやった」

セイバー「シロウ……」

桜「先輩……本当ですか?」

士郎「ああ。遠坂はなにもしてないぞ」

イリヤ「……」

凛「し、士郎……」

士郎「悪いな。遠坂、俺のせいで疑われて……。みんな、遠坂はなにもしてない。全部、俺がやったことなんだ」

ライダー「……」

セイバー「シロウ……」

凛「ほ、ほら、みなさい!!私じゃないっていったでしょ!!」

イリヤ「シロウ?リンにどんな脅しを受けたの?」

士郎「え?」

ライダー「まさか……下剤を飲ませたのは……」

凛「は?」

セイバー「そういえば凛は初めから言峰神父が黒幕だといっていましたね。根拠はあったのですか?」

凛「だ、だって……こんなことするの……あいつしか……」

士郎「まて、本当だ!!俺が言峰に唆されて……!!」

イリヤ「リンが書いたシナリオ通りに神父が喋っただけじゃないの?」

凛「なんでよぉ!!なんでそんな深読みするの?!私じゃないっていってるじゃない!!」ウルウル

士郎「みんな!!信じてくれ!!―――うぐぅ!?腹が……!?」

イリヤ「シロウ、無茶しないで。今はトイレいってきたほうがいいよ?」

凛「だめ!!士郎!!いかないで!!!一人にしないで!!」ギュゥゥ

イリヤ「やっぱり。シロウがいないと駄目なんじゃないの」

凛「あ……だって……みんなが……わたしを……」ポロポロ

士郎「も、れる……」

イリヤ「シロウ、いってきていいよ?」

凛「だめ……!!」

イリヤ「てい」ペシッ

士郎「ごめん!!遠坂!!」ダダダッ

凛「しろー!!!」

セイバー「さぁ、リン?」

桜「もっと詳しい話……聞きたいですね」

ライダー「ええ。ゆっくりと……」

イリヤ「ふふ……利尿剤の貯蔵は十分かしら?」

凛「やめて……やめてってら……」ポロポロ

イリヤ「ちょっと辛い拷問になるわよ?」

凛「やめてぇぇ―――!!!」

士郎「はぁ……はぁ……」

士郎「やっと治まった……」

士郎「あれ……?」

士郎「みんながいないな……」

士郎「……ん?」

士郎「ケーキが出しっぱなしじゃないか」

大河「しろー。ヘイ、調子はどうだい?」

士郎「ああ、藤ねえ」

大河「お!美味しそうなケーキねえ」

士郎「食べるか?」

大河「もちろんよ!!」

士郎「どうぞ」

大河「いただきまーす!!」

士郎(俺は食えそうにないな……)

士郎(遠坂……大丈夫かな……?)

30分後

士郎(誰も戻ってこない……流石にまずいな……)

士郎「藤ねえ、俺―――」

大河「すぅ……すぅ……」

士郎「寝てる……」

士郎「まぁいい。遠坂を探そう」

士郎「まさかとは思うけど……」

士郎「……」トコトコ

大河「すやすや……」

大河「ん……」

大河「んん……」ブルッ

ジョワァ……

大河「ふぅ……ふふ……」

大河「すぅ……すぅ……」

10分前 凛の部屋

凛「ねえ、なにするの……!?」

イリヤ「目隠し」

凛「なんでよ!?」

ライダー「口も塞ぎましょう」

凛「ふー!!!ふぅー!!!」

イリヤ「だって口を割る気がないみたいですもの」

凛「むぐぐぐぐー!!!!!(だって!!なに言ってもしんじてくれないじゃない!!!)」

桜「きっとそろそろ先輩が探しに来る頃ですね」

凛「!?」

イリヤ「さ……あとは……」

チクッ

凛「むぐぅ?!!」

イリヤ「おしっこ、もらさないようにね?ま、おしおきにはぴったりかな?」

凛「むー!!!!むー!!!!」ポロポロ

士郎「遠坂ー」トントン

士郎「はいるぞー」ガチャ

士郎「え……?」

凛「むー!!!むぐぅぅ!!!!」ポロポロ

イリヤ「(しーっ)」

士郎「(なにやってんだ?)」

セイバー「(私はやめたほうがいいといったのですが)」

ライダー「(士郎、かっこよく、優しく救ってあげてください)」

士郎「(お前ら……)」

イリヤ「(これでリンはシロウに絶対に逆らえない。リンにとってはこの上ない罰よ)」

士郎「……」

凛「むー!!!!むぐぅぅ!!!!」

士郎「遠坂?」

凛「むぃ!?」

士郎「今、目隠しとるからな」

凛「ぅ……ぅぅ……」

士郎「大丈夫か?」

凛「うぅ……!!しろー!!!」ギュゥゥ

士郎「もう大丈夫だ」

凛「私、悪くないのにぃ!!わるくないのにぃ!!」ポロポロ

士郎「分かってる。全部、俺が悪いんだ」

凛「なんでよぉ!!なんで……私……わるくないのにぃ……」ポロポロ

士郎「うん……俺が悪いんだ……遠坂は悪くない」

凛「うっく……ぐっす……しろぉ……たすけてぇ……」ポロポロ

士郎「ああ。俺が守るよ」

凛「しろぉ……しろぉ……!!」ポロポロ

士郎「……」ナデナデ

イリヤ「ふっ……ま、こんなものね」

セイバー「こうなるなら……私がリンの立場に……」

桜「私もですけど……姉さんばっかり……」

士郎「……」スタスタ

凛「……」スタスタ

士郎「と、遠坂?」

凛「な、なによ?」

士郎「そんなぴったり後ろにくっつかなくても」

凛「ま、まもるっていったの士郎でしょ!!」

士郎「……」

ライダー「効果が強すぎたのでは?」

イリヤ「まぁいいんじゃない?リンはあれぐらいのほうが可愛げがあるわよ」

セイバー「全く……」

セイバー「さて、イリヤがもってきたケーキでも―――」

大河「すやすや……ん……?あれ?みんあ、どうかしたぁ?」

士郎「藤ねえ……そのシミ……!!」

セイバー「大河が……!!!」

イリヤ「うわー!!さいてーーーー!!!!」

教会跡地

言峰「睡眠効果を付加させた利尿剤……味わってくれただろうか」

カレン「きっと堪能していることでしょう」

言峰「そうだな」

カレン「ふふふ……」

言峰「ははは」

リズ「見つけた」

言峰「これはこれ―――!?」

バーサーカー「……」

カレン「なんのようでしょう?」

セラ「見事に全員が粗相をしました……覚悟はいいですね……?」

言峰「ギルガメッシュ!?」

ギル「ずびまぜん……まけばじだ……」

カレン「おや、まぁ……カレンちゃん、ピンチです」

バーサーカー「■■■■■―――!!!!!」

数日後

セイバー「よっと」ジュワ

セイバー「みなさーん!!朝ごはんの用意ができましたー!!」

ライダー「まさか本当に家事をこなすようになるとは……」

セイバー「ふふん。あとのときの言葉、撤回してもらいます」

ライダー「ちっ……」

桜「ふわぁ……おはようございます」

ライダー「おはようございます、桜」

桜「ゆっくり寝られるのもいいものですね」

ライダー「癖にならないようにしないといけませんよ?」

桜「そうね」

士郎「おはよう」

凛「おはよう」ギュゥゥ

桜「姉さん!!くっつきすぎです!!」

凛「い、いいじゃないの!!私の勝手でしょ!!」

セイバー「どうぞ、シロウ」

士郎「ありがとう」

凛「士郎、おしょうゆ」

士郎「はいはい」

桜「先輩、あーん」

士郎「なんでさ!?」

ライダー「ふふ、照れずともいいでしょうに」

セイバー「おかわりもありますからね」

凛「セイバーしかしないわよ」

セイバー「そうですね。サクラは茶碗ではなく丼ですからね」

桜「それ言わないでください!!」

士郎「あはは」

士郎(そうだな。俺がどうかしてた。このままでもみんなは十分に幸せそうだ)

士郎(普通でいよう。それがいいんだ)

セイバー「そういえば、ここ数日大河を見ませんね?」

教会跡地

言峰「では次の人、悩みをどうぞ」

大河「……あの、包帯がすごいですけど……大丈夫ですか?」

言峰「問題ありません。さ、悩みをどうぞ」

大河「えっと……実は……この前……教え子の前でその……」

言峰「恥ずかしいことが起こった、というところでしょう」

大河「は、はい!!」

言峰「それで、どうしたいのですか?」

大河「あの……大人として教師として……みんなの信頼を取り戻したいんです!!」

言峰「分かりました。貴女の悩み……解決してあげましょう」

大河「ありがとうございます!!」

言峰「まずはこのケーキをその教え子に食べさせればいいのですよ」

大河「そんなことでいいんですか!?」

言峰「そう。そしてその後に起こる事象を貴女が見ればいい。ただそれだけだ。ははははは―――」


END

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom