男「……誰?」??「……こたつ」(115)

男「いやそれはわかったけど……君誰よ」

??「こたつ」

男「あとで入らせてあげるから、その前に君が誰かを教えてくれ」

??「こたつ」

男「……はぁ。わかったよ。こたつに入ってゆっくり話そう」

男「ってこたつがない!?」

??「だから……」

??「私が……こたつ」

男「いやいやご冗談を」

こたつ「だってこたつないじゃん。それが一番の証拠」

男「君が仲間と盗み出してる途中に見つかったってことも考えられる」

こたつ「……ふぅ」トコトコ

男「なんだよ。言いたいことがあるならちゃんと言え」

こたつ「……」トコトコ

男「つーか近づいてくる――」

こたつ「……」ダキ

男「…………」

男「あったけえ」

こたつ「これが証拠」

男「そういやあ、服もこたつ布団の柄と同じだ」

こたつ「それも証拠」

男「……」

こたつ「……」

男「あの、一応話はわかったから、一回離してくれないかな」

こたつ「これが私の仕事」

男「いや、こたつって話とはいえ女の子に抱きしめられるのは恥ずかしい」

こたつ「……」

男「擬人化したということでしょうか」

こたつ「そうなる」

男「というかこたつに戻れるんだな」

こたつ「できないと、あなたが困る」

男「まあそうだけど、こたつから声が聞こえてくるのが、なんか気持ち悪い」

こたつ「ひどい」

男「これってどこから聞こえてるんだ」

こたつ「中覗くな変態」

男「こたつって中覗かれるのイヤなんだ」

男「というかなんで擬人化したの?」

こたつ「……?」

男「いや、俺他の擬人化のストーリーみたいに大切にこたつを使ってたわけじゃないし」

こたつ「……」

男「むしろうまくいかないときに結構叩いたりしてしまったし」

こたつ「……それについて抗議しにきた」

男「ああ、普通とは逆なのか」

こたつ「もっと大切に扱ってほしい」

男「肝に命じる」

こたつ「信じられないからしばらく起きとく」

男「起きるって感覚なのか擬人化って」

こたつ「あなたは物をぞんざいに扱いすぎる」

男「自覚しております」

こたつ「特に布団の扱いがひどい」

男「……」

こたつ「柔らかいから音が響かないという理由で、よく叩いてる」

男「……ほんと、申し訳ない気持ちです」

こたつ「……まああとは」

こたつ「本人と話し合って」

男「?」

布団「どもー」

男「!?」

男「あの、もしかしてこの部屋にあるもの全部擬人化するって物語っすか?」

こたつ「特に被害が大きい物には人になってもらう」

男「つまり、やっぱり理由は抗議ってことか」

こたつ「……」

男「で、なんで君はニコニコしてるの」

布団「いやー、意外と君って、かっこよくないなってー」

男「長年の恨みがあるとはいえ、その悪口はひどい」

布団「長年の恨みがあるとわかってるんなら、ちょっとお願いを聞いてもらってもいいですかね~」

男「どんとこい」

布団「……!」ダキ

男「……」

こたつ「……」

男「なに、うちの部屋のもの、みんな人肌恋しいの?」

布団「うーん、いつもの匂いだー」

こたつ「……」

男「まああの、すまんかったな。叩いたりして」

布団「だいじょうーですよー。私はMですからー」

男「衝撃の事実だけど、どうすりゃあいいのかよくわからん」

こたつ「……私の場合離れろと言ったのに、なんで布団には言わない」ボソボソ

男「え、なんか言った」

こたつ「なにも言ってない」

男「……?」

布団「……」ニヤニヤ

妹「おーい男。飯できたったよー」

男「まずいから元に戻ってくれ布団」

布団「うーん、どうしましょうかねー」

男「頼むから、今度一度願いを聞いてやるから」

布団「おー、それはありがたい。じゃあそれで妥協しましょう」

妹「飯できたって――なんで布団持ってるの」

男「いや、なんとなく」

妹「?とりあえず飯」

男「わかった」

男(って布団がなぜか離れねえ!)

布団「三個ぐらい願い聞いてくださいよー」ボソボソ

男「わかったよちくしょう!」

妹「……」

男「はぁ」

男「今日は意味不明な出来事が起きて疲れたなー」

こたつ「……」

布団「そうですねー」

男「ひとりごとは頼むから放っておいてくれ」

こたつ「紛らわしいからひとりごとつぶやくな」

男「ここ俺の部屋なんだけど、それさえ許されないのか」

こたつ「どうせ友達もいないのだから、話し相手ができて嬉しいでしょう」

男「いるわい」

布団(ニヤニヤ)

布団「そういえば、願い事ひとつ、ここで叶えちゃっていいですかね」

男「こんなすぐに使っちゃっていいのか」

布団「だいじょーぶですよー。毎晩って条件をつけてもらいますから」

男「せっこいっすねー」

布団「で、いいですかね」

男「いいですよー」

布団「じゃあ、遠慮なくー」ダキ

男「うお! 背中から抱きつくな」

布団「寝るときはこういう体制で抱きつくこと」

男「いや、これはちょっと、あの、やめてほしいんだが」

布団「なんでですかー。抱き心地はいいでしょー」

男「いいけど……」

布団「じゃあいいじゃないですかー」

こたつ「……」

男「でもこれは、ちと恥ずかしい」

布団「さすが童貞ですねー」

男「うるさい――ってどうしたんだこたつ、擬人化して」

こたつ「……」ダキ

男「うおい、上から抱きつくな!」

こたつ「……寒いから」

男「こたつって寒く感じるから」

こたつ「……電源入ってないから」

男「そりゃあ寝る時まで電源つけるわけにはいかないけど」

布団「あったかいから、寝やすいんじゃないですかね」

男「それ以前に色んな感触が、俺の睡眠の邪魔をしてくる」

男「……zzz」

布団「とか言ってて寝てるんですねー」

こたつ「こいつはどこでも寝れる」

布団「こたつでよく寝られている経験者は違いますねー」

こたつ「……」

布団「物になってるときは、寒さは感じないじゃないですか」

布団「素直になればいいのに。応援してあげますよ」

こたつ「じゃあなんで擬人化した」

布団「……それは、面白そうだったんでつい」

こたつ「……」

布団「まあ、ハーレムを目指すっていう手もありますけど」

男「んー」

こたつ「ひぅ!」

布団「あらら、抱きつかれましたか」

布団「……羨ましい」ボソボソ

妹「あっさだぞー。男起きろー」バタン

妹「…………」

妹「なんで布団の上にこたつが……」

妹「おかしい。絶対昨日からおかしい」

男「んんんー」

男「おお、妹か。どうしたん、朝からそんなおかしい顔して」

妹(あきらかにお前の状況の方がおかしい)

妹「いや、こたつをなんで布団に乗せてるんさ」

男「……なんとなく?」

妹「……」

男「いや、なんか急に深夜に知的好奇心が湧いてな」

妹(おかしい)

妹「今日は何時ぐらいに帰ってくるんだ?」

男「んー、多分夕方くらいじゃないかな」

妹「了解」

男「つかなんで時間? 妹なんか用事あるの?」

妹「いんや。なんとなく」

男「……まあいいや。いってくる」

妹「いってらー」

妹「……」

妹「さて、家宅捜索と行ってみようか」

妹「というかなんでこたつを布団に乗せてるんだろ」

妹「今日のお兄ちゃんおかしかったよな」

妹「ま、いっか」

妹「こたつを下ろして――」

妹「お兄ちゃんのふとんんんんんんん」ガバ

妹「ああ、この匂いたまらん。ほんとたまらん。なんでこんな癖になる匂いなんだろ」

妹「すーはー、すーはー」

妹「しばらくこうしてよう」

布団(女に抱かれる趣味はないんですけどねー)

こたつ(言えない)

こたつ(男の貞操を守ろうとして擬人化できたなんて言えない)

妹「いい天気だなぁ」

妹「お布団とこたつ布団干そ」

男「ただいまー」

妹「おかえりー」

妹「そういえば臭かったから、布団とこたつ布団干しといた」

男「お前そういうことダイレクトに言うなよ」

男「……ってマジか!?」

妹「な、なにさ」

男「お前、今日なんか価値観が変わるような出来事を味わなかったか?」

妹「なんのことよそれ」

妹(お兄ちゃんの部屋にお邪魔してることなら今日だけのことじゃないし)

男「そっか、あいつら耐えてくれたんだな」

妹「あいつら?」

男「いや、なんでもない」

男「ただいま我が部屋」

布団「おかえり我が主人」

こたつ「おかえり」

男「やっぱり夢じゃなかったんだな」

布団「いいじゃないですかー。擬人化なんて味わえる人間、少ないんですから」

男「そりゃ多かったらもっと世の中は物に優しくなってるだろうな」

男「って逆か俺は。厳しくあたってたらなんか擬人化したんだな」

こたつ「これからは優しくしろ」

男「善処します」

男「そういえば干されたらしいけど、我慢できたか」

布団「あんなもん、別のことに比べたら屁のツッパリにもなりませんよー」

男「……?」

こたつ「では新入りを紹介する」

男「ほんとに全部の物が擬人化するのかよ」

こたつ「あなたが全部の物に対してぞんざいに扱ってるなら、そういうことになる」

男「まずいな。マジで全部あるな」

こたつ「では人になってくれ」

男「つくづく珍しい言葉の響きだな」

??「では」

男「おおう。メガネですかそうですか」

男「……」キョロキョロ

男「ないもなくなってない様子なのですが、あなたは誰なのでしょう」

??「私は扇風機」

扇風機「あなたにコントローラーを投げられたものだ」

男「そんなこともあったなー」

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