のび太「ぼくは海」 (20)

のび太「ドラえもん、実を言うとぼくは勉強もできるんだよ」

ドラえもん「そうだねのび太くん。じゃあ宿題をしようか」

のび太「ただ、ちょっとタイミングが悪いだけ」

のび太「ちょうど今の時刻、ほら5時15分は、もう日が沈みはじめる」

のび太「起床してからもう9時間以上経つ。昼寝もしていないからそろそろ眠たくなってくる」

のび太「さらに今日はジャイアンに野球の特訓をさせられてヘトヘトに疲れた上に、慣れないバットを何回も振ったから利き手の指にはタコができた」

のび太「つまり、今ぼくは宿題をすることができない」

のび太ママ「いい加減にしなさい!のび太!」

ドラえもん「どうしたのどうしたの」

のび太ママ「のび太が急に今のお小遣いを四倍にしてくれと頼んできたのよ!」

のび太ママ「テストもダメダメなのに4倍だなんて馬鹿げているわ!」

のび太「ママの分からずや!!もう知らん!」

ドラえもん「のび太くん。どうしてそんなに怒っているのさ」

のび太「忙しいからだよ。ぼくはね」

のび太「考えても見てよ!」

のび太「いいか?一日は24時間だろ?その内8時間を睡眠に当て健全に過ごすとして、起きてから学校へ行くまで一時間」

のび太「そこから学校が6時間弱」

のび太「最近は日が沈むのもはやくて、とてもじゃないけど外では遊べないのさ」

のび太「だから、ぼくにはいっぱい漫画が必要なの」

ドラえもん「のび太くんらしくないなぁ」

ドラえもん「漫画が欲しいなら欲しいで素直にそう言えばいいだろ」

ドラえもん「くだくだと説明をしだすなんてどうかしているよ」

のび太「待ってよドラえもん」

のび太「ぼくが読んでいる漫画は少年ヨンデーだけだよ」

ドラえもん「そりゃそうだろうね。その中のオシシ仮面が特に好きなんだろ?」

のび太「ただ、どうしてもぼくには雑誌が4冊必要なのさ」

ドラえもん「どうしてさ。ジャイアンにカツアゲされたとしても必要なのは2冊だろう」

のび太「違うよ!ヨンデーを2冊買うんじゃなく、別の漫画雑誌をそれぞれ買うんだ」

のび太「ぼくが買うのは、ヨンデー、シャンプー、メガシン、グングンの4冊」

ドラえもん「なんて贅沢なんだか!ヨンデーで十分だろ!」

ドッワハハハハハ!!!!!

ヒヒヒ…ヒヒヒヒ

のび太「いいかいドラえもん、ぼくがまずヨンデーを読むだろ」

のび太「ただし、シャンプー、メガシン、グングンも読みたいやつが中にもいるのさ」

ドラえもん「中ってどこだ!」

のび太「ぼくの中だよ」

ドラえもん「なんだと!」

グルグルグル

ドラえもん「じんかくぶんかつ機~!」

ドラえもん「これはねのび太くん。多重人格者の人格をそれぞれ肉体を作りそこに人格をあてはめる装置なんだ」

ドラえもん「もし君がおかしくなったとするなら、いや杞憂に違いない!きっとそうだ!」

のび太「ちょっと待ってよドラえもん!!」

ドラえもん「ナム三~!!!!」

ドガーン

のび太1「乱暴だよドラえもん」

のび太2「本当だよタヌキのくせして」

のび太3「頼むから静かにしてよ!!」

のび太4「ああ、どうして神はこのような試練を与えるのでしょうか~(シミジミ)」

ドラえもん「うわ!思ってた通りだ!」

)のび太1「ええ~!どういうことお!!!ドラえもんどうしてぼくが4人もいるの!!!」

のび太2「それはこっちの言い分だ!!俺がのび太だぞ!」

のび太3「大きな声出さないで!!」

のび太4「私は神に選ばれるべく…」

ドラえもん「ス、ストーップ!!!」

ドラえもん(ど、どうしよう…やっぱりのび太くんは…)

ドラえもん(『四重人格』だったんだ!)

ドラえもん(「じんかくとうごう機」を使ってもさっきの状態に戻るだけ)

ドラえもん(しょうがない!他の3人ののび太くんをころそう!)

ドラえもん「ゴホン」

ドラえもん「えぇ~みなさん。これより」

ドラえもん「のび太試験を開始致します」

ドラえもん「説明をしますと~本来の野比のび太に戻っていただくべく~不要な危険因子を排除すると同時に~本来の間抜けさとのび太らしさを追求すべく~」

のび太2「長え説明だな」

のび太4「おお!友よ!こんな歌ではない!」

不可思議な晴れやかさがぼくの魂をくまなく捉えている。それはあたかも、春の訪れを感じるに似ている。
ぼくは風だ。それでいて、地面の暖かさを感じることができる。この土地へ来てからというものの、ろくに歌を書けなくなってしまった。
いや、歌を書く必要は無い。ぼくには感じるすべてが歌になる。目を閉じても見え、耳を塞いでも聴こえる。肌で感じ取ることもできれば、蝶が運ぶ美しい鱗粉から、ほんのわずさながらでも崇高な匂いを感じ取り、それはやがて味になる。
見よ!この大地を!風で揺れ動く草木の中で、それぞれ羽虫や毛虫が自在にうごめいている。全生命の暖かさと、それを護る神の存在を!

ぼくはどれほどまでに、ぼくの頭上を真っ直ぐに飛んで行くツルの翼を借りて、
あの計り知れぬ海の彼方の岸へ行くことを願ったことだろう。
無限に沸き立つ杯から、溢れる人生を得ることを熱望しただろう。
ただの一瞬でも、あらゆるものを自己によって作り出す、まことの幸福のひとしずくでも味わおうとしたことだろう。

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