紅莉栖「今度はどんな薬作ろうか、おかべ♪」 (102)

紅莉栖「ついに完成したわ! この薬が!」
紅莉栖「ついに完成したわ! この薬が!」 - SSまとめ速報
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とかいうのの続き

無意味に長くなったのでゆっくりやるよ

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紅莉栖「いやぁ、かわいいわぁ……」スリスリ

おかべ「はなせぇ……はなさんかぁ……に、においをかぐんじゃない!」

鈴羽「ねぇねぇ代ってよー」グイグイ

おかべ「お、おい鈴羽、ひっぱるな……」

萌郁「かわ、いい……」ピロリンッ ピロリンッ

おかべ「お前はいつまで写真をとっているのだ!」

まゆり「オカリーン、着てみて欲しい衣装があるのです」

おかべ「だから俺は人形ではない!」

フェイリス「……ショタッ子執事店員……ありかニャ……」

おかべ「おい、今なんかへんなたんご聞こえたぞ! おいフェイリス!」

るか「岡部さん……かわいい……」

おかべ「よかった、まだマシなのがいた! おいるか! た、助けてくれ!」

ダル「……先輩、俺帰って良いっすか?」

おかべ「たのむ……お前だけは帰らないでくれ!」

紅莉栖「ほーら倫ちゃんこっち向いて」

おかべ「だれが倫ちゃんだだれが!」

紅莉栖「はぁー……本当に、かわいい……」ギュウッ

おかべ「や、やめろ……ガチで抱きしめるな……」

ダル「牧瀬氏が完全に女の顔になってるお。でも何故だか僕の琴線にピクリとも触れないお」

鈴羽「ねぇーえー牧瀬紅莉栖ー。かーしーてーよー」

おかべ「ほ、ほんとうにやめてくれ……ま、まゆり! みんなを止めてくれ!」

まゆり「う、うーん……み、みんな。オカリンが本当に嫌がってるからやめてあげよ? ね?」

鈴羽「うーん、ホントに嫌がってるならしょうがないか……」

萌郁「ざん、ねん」

まゆり「ほら、クリスちゃんも離してあげて?」

紅莉栖「ふぅ……まぁ、しょうがないっか」

おかべ「や、やっとかいほうされた……」クシャッ

ダル「オカリンはどの歳でも愛される。はっきりわかんだね」

おかべ「愛玩と愛は同じ字を使っているが全くべつものだ!」

紅莉栖「おぉー、難しい言葉知ってるわねー倫ちゃんはー。よしよし」

おかべ「頭をなでようとするんじゃない!」

紅莉栖「ふん……前の薬の症例と比べて、頭が体に引きずられてないわね……」

ダル「オカリンが必死で抵抗してるんじゃね?」

おかべ「あぁそうさ……せいしんまでは子どもにならんぞ! なるものか! ついさっきまでオッサンだったのだぞ!」

紅莉栖「前のは、別に精神が引きずられても問題無いと解釈したから、引きずられたけど、今回は拒否してるのか……面白いわね」

ダル「つまり今のオカリンはバーロー状態って事?」

紅莉栖「まぁ、わかりやすく言うならね」

まゆり「名探偵オカリンかぁ……まゆしぃは感慨深いのです」

おかべ「何を言っているのだまゆり……」

フェイリス「でも、本当にそんな感じだニャ。服もブカブカだし」

おかべ「あぁそうだ……まゆり、今の俺が着れる服はないか!?」

まゆり「名探偵k おかべ「ことわる!」 ……残念なのです」

紅莉栖「生まれたままの岡部……なんか犯罪的……」

ダル「あ、もしもし警察ですか」

おかべ「なぁ、そ、そんなことより本当に服をくれ。それかクリス! あの老け薬をよこせ!」

紅莉栖「あぁあれ? あれ実験前のブツだったから消却しちゃったわよ」

おかべ「クリィイイイイイスッ!」

紅莉栖「いやんそんな情熱的に呼ばなくてもここにいるわよ」

おかべ「今すぐにだ! 今すぐに老け薬を作りなおせ!」

紅莉栖「えぇー……どうしよっかなー……でも時間かかるしなー」

るか「ま、牧瀬さん……」

まゆり「クリスちゃん……オカリン、本当に困ってるみたいだから、治してあげて?」

紅莉栖「……まぁ、まゆりに言われちゃしょうがないっか」

ダル「……はい。若い女性、髪は栗毛、身長はおおよそ160……はいそうです」

おかべ「ったくこの助手はぁ……人をなんだと思っているのだ!」

紅莉栖「はいはい、わかったわかった。でも、材料とか揃えないとだし、遅くて七日はかかるわよ?」

おかべ「おのれっ! また一週間近くべつねんれいで生きねばならんのか!」

フェイリス「でも、今度はどうするニャ? この前はまだ自由にできたかも知れないけど、今度は子どもだニャ」

鈴羽「さすがにちっちゃくなったら誤魔化しきれないよね……」

まゆり「うーん……」

るか「あ、あの……やっぱりこの前みたいに、親戚ということにした方が……」

萌郁「……弟?」

紅莉栖「この前のオジリンの子どもって事にすれば? この前来たのは子どもを預ける為……とかで」

おかべ「えぇいオジリンというでない!」

鈴羽「まぁそれで良いんじゃない? とりあえず誤魔化せるならなんでも」

おかべ「くっ……またその線で行くしかないのか……家に帰れないではないか」

まゆり「ねぇオカリン……」

おかべ「ん、なんだ?」

まゆり「その格好で一人でいられる?」

おかべ「……は?」

まゆり「オカリン今子どもだから……一人でいると危ないのです」

おかべ「どういういみだ?」

まゆり「家に帰っちゃいけないって事は、ラボに泊まるしかないんだよね? だから、誰かが一緒に泊まってあげないと、何かあったら……」

萌郁「……しん、ぱい」

おかべ「……いや、体は子どもでも、頭はさえている。ふつうの小学生のように、ききかんりのうりょくがおちてる、というのはないだろう」

紅莉栖「あら、それはわからないじゃない? だから今日は私と泊まりましょう倫ちゃん!」グワッ

おかべ「ダァル! ダァル!」タタタッ

紅莉栖「アァン! 逃げないで倫ちゃん!」

ダル「はい……はいそうです。学生服のようなものを着て……あれ、僕の後ろに隠れてなにしてんのオカリン」

おかべ「このHENTAIが! あっちいけ!」

紅莉栖「橋田、そこをどきなさい……そして倫ちゃんをこっちによこさないと、あんたのエロゲセーブデータをいつでも遠隔操作でフォーマットできる未来ガジェット作るわよ」

ダル「さぁ持って行くといいお」ヒョイッ

おかべ「ダァルッ! きさまうらぎるのか!」

ダル「僕あんまりショタ属性ないですしおすし。それに僕の嫁との記録の方が百倍大事だお」

紅莉栖「あぁんおかえり倫ちゃん!」ギュウッ

おかべ「は、はなせぇ……」

ダル「警察に電話してたから会話適当に聞いてただけだけど、僕はまゆ氏の意見に賛成だお。いくらオカリンの精神が大人でも、
   子どもを一人にさせるのはやめた方が良いと思うお。この暑い夏、熱中症とかになったら対処できなくなると思うし」

フェイリス「ダルニャンの言う通りだニャ」

まゆり「うん。まゆしぃもそう思うのです」

萌郁「私、も……」

鈴羽「そうだねー……オカリンおじさんの世話かぁ……ふふっ、なんだか面白いね」

るか「え、えっと……これは、ラボメンの皆の交代で、という事なんでしょうか……」

紅莉栖「毎日私でも良いのよ?」

ダル「それより牧瀬氏はこれからここに来る警察官のしのぎ方を考えるべき」

紅莉栖「ふっ、それもそうね。どうせ皆も倫ちゃんの世話がしたいだろうし、ここは公平にくじでもしますか」

おかべ「お、俺の面倒なんて誰も見たくないだろ……」

萌郁「見たい……」

鈴羽「見たいっしょ」

フェイリス「見たいニャ」

るか「み、見たい、です……」

まゆり「見たいでーす」

ダル「僕はパス」

おかべ「ダァル! たのむ! るかとお前で面倒見れば良いだろ? な?」

紅莉栖「何地味に漆原さんカウントしてるのかなぁ倫ちゃん」スリスリ

おかべ「や、やめんかぁ!」

ダル「じゃあ適当にこの割り箸くじで順番決めると良いお。既に番号書き済み」

フェイリス「さすがダルニャン、用意が良いニャ」

おかべ「お、俺のいしは!?」

ダル「すまんオカリン。今反論唱えたらこのラボでの居場所がなくなりそうで怖いお。だから大局には流されるべき」

おかべ「俺のじんけんは、どこへ行ったのだー……」

ダル「さぁさぁ皆さんくじ引いて」

紅莉栖「ちょっと待って……今必勝のまじないやるから……」グイッ

ダル「普段非科学的とか言ってあまり信じないのに、ここぞという時に非科学的なものにすがる牧瀬氏は本当にHENTAIの鑑だお。
   それとその腕クルッてやるやつはジャンケン限定だと思うお」

紅莉栖「天啓キタわ。一番引くから待っててねぇ、倫ちゃん」

おかべ「ひ、ひぃっ……」

ダル「順番については恨みっこ無しで頼むお。じゃあ引いてー」




——

ダル「で、一番がるか氏、二番が桐生氏、三番が阿万音氏で四番が牧瀬氏、五番がまゆ氏で六番がフェイリスたん。
   まぁ、あるかどうかはわかんないけど、七日目は僕って感じ。一応オジリンの時の恩もあるし」

るか「ぼ、僕が最初……」

おかべ「よ、よかった……まだ初日はまともだ……」

萌郁「……がん、ばる」

鈴羽「よぉーし! 今から子供用の外で遊べるおもちゃでも買ってこよー!」

まゆり「まゆしぃも行っていい?」

鈴羽「勿論だよ!」

まゆり「わーい。ありがとうスズさん」

紅莉栖「くっ……天啓浅かった……」

ダル「天啓に浅いもクソも無いお」

フェイリス「ニャウ〜……最後の方だニャ……クーニャン、七日以降に薬を完成させてほしいニャ」

紅莉栖「オッケー」

フェイリス「ありがとニャンニャン♪」

鈴羽「じゃあ薬は七日目にできるの?」

紅莉栖「まぁ、早くてね。何? もっと延ばす?」

鈴羽「い、いや……七日だね、うん」

おかべ「もういい……わかった。俺にじんけんなんてないんだ……」

ダル「あ、牧瀬氏サイレン聞こえてきたお」

紅莉栖「あら、結構早かったわね……じゃあ早速、お世話スタートよ。漆原さん、倫ちゃんお願いね」

るか「あ、は、はい! 頑張ります!」

おかべ「お前におねがいされるすじあいはない!」

紅莉栖「当番係の人からのヘルプが無い限り、当番係以外の人は倫ちゃんとの接触を最低限に抑える。基本はこんな感じで良いかしら?」

まゆり「うん。良いと思う」

鈴羽「異議なーし」

フェイリス「異議無しニャ」

萌郁「さん、せい……」

るか「な、なにかあったらまゆりちゃん……電話して良い?」

まゆり「うん、いいよー」

ダル「皆賛成みたいだお」

紅莉栖「わかった。じゃあ皆邪魔にならないように外に出ましょ。私はちょっと数日地下に潜るけど、皆、ルールは守るように」

まゆり「はーい」

鈴羽「了解。あぁーなんか楽しみ!」

萌郁「わかった……」

フェイリス「ニャフフ、さっそく凶真の衣装を揃えないといけないニャ」

ダル「まぁ、適当にやるお」

るか「お、岡部さん。僕、頑張りますからね!」

おかべ「お、おう……」

紅莉栖「それでは解散!」



——



【一日目 るか】




おかべ「……」

漆原「……」

おかべ「あぁ、なんだ……その、みんな行ってしまったな……」

漆原「あ……そ、そうです、ね……」

おかべ「……あぁ、なんだ……俺の着るふく、ないのか?」

漆原「あ、そ、そういえば岡部さん、今着る服、無いですもんね……え、えっと……」ガサガサ

おかべ「……おい。何をまゆりがおいていったいしょうふくろをあさっているのだ」

漆原「や、やっぱり、今はこれしか、無いと思います……」

おかべ「……それか? そのおまんがなって感じのふくをきなければいけないのか? この俺が?」

漆原「で、でも……今着れる服と言えば、これくらいしかありませんし……今はこれを着て我慢して下さい。そしたら、服を一緒に買いに行きましょう」

おかべ「……はぁ……しょうがない、今はそれをきよう……」

漆原「はい……ごめんなさい岡部さん」

おかべ「いや、お前があやまることではない。気にしないでくれ」

漆原「……はい」

おかべ「さてと、きがえるか」

漆原「……」

おかべ「……あぁ、その、なんだ……あまり見られるときがえづらいな……」

漆原「あ、す、すみません! 僕、あっちに行ってますね! か、カーテン閉めておきます!」サァッ

おかべ「……さすがに上はきなくていいよな……サスペンダーも……い、いらないよな……」カチャカチャ

漆原「あの、岡部さん! もう大丈夫、でしょうか……」

おかべ「あ、あぁ……もういいぞ」

漆原「はい、じゃあ、開けますね……」シャアッ

おかべ「……」

漆原「……」

おかべ「……」

漆原「え、えっと……」

おかべ「あぁ……まぁ、なんだ……半ズボンというのは、ひさしぶりにはいたもので、な……」

漆原「い、いえ! に、似合ってますよ!」

おかべ「に、にあって、良いものなのだろうか」

漆原「あ、そ、その……すみません。でも、かわいくって……」

おかべ「……そうか……まぁ、れいは言おう……」

漆原「えっと……じゃあ、服を買いに行きましょうか」

おかべ「あ、あぁそうだな……そこに俺のサイフがあるから、とってくれ」

漆原「あ、はい……」

おかべ「よし、じゃあ行くか」

漆原「あの……岡部さんが払うんですか?」

おかべ「とうぜんだろう。体は年下でも、数時間前まではお前らの親近くのとしになっていたのだ。俺がはらうにきまっているし、それくらいのかいしょうはある」

漆原「そ、そう、ですか……」

おかべ「……わるい、なんかしまらないよな」

漆原「いえ、岡部さんはいくつになっても、カッコいいです」

おかべ「……そうか」

漆原「それに……」

おかべ「それに?」

漆原「し、師匠のお世話をするのが、弟子の、務めですから……その、少しそういうのに憧れてて……」

おかべ「……そ、そうか」

漆原「こ、これからの事も、ありますし……」

おかべ「これから?」

漆原「あ、いえ! ……ご、ご迷惑、だったでしょうか?」

おかべ「いや、そんなことはない。うれしいよ」

漆原「そ、そうですか……良かった……」

おかべ「よし、ではぶなんなふくをかいに行くぞ!」

漆原「はいっ!」



……

おかべ「で、ドンキに来たわけだが……」

漆原「お、岡部さん。これなんかどうでしょうか……」

おかべ「……なんだそのかわいいふくは。アップリケなんてついて……」

漆原「だ、だめでしょうか……」

おかべ「……えぇいそんな顔をするな。どれ、タグを見せてみろ……えぇと、安いな。それでも別に良いだろう」

漆原「ほ、本当ですか?」

おかべ「あぁ、それでいいから、ほかのも決めてくれ。早くここから出たい……(ちゃっかりるかのしゅみが出ている気がするが……まぁいいかこのさい)」

漆原「えっと、下着とシャツとズボンはカゴに入れたから……はい、これで大丈夫だと思います」

おかべ「そ、そうか。ならば早くかいけいをすませるぞ。なんだかみょうにたにんのしせんが気になる」

漆原「は、はい」

店員「お会計1万2千円になります」

おかべ「ぐぬぬ……なんといういたいしゅっぴか……」

漆原「こ、これでお願いします」

おかべ「……こら、るかよ。何を自分のサイフからお金を出しているのだ」

漆原「や、やっぱりここは僕が払います……いつも岡部さんにはお世話になってるんですから、これくらいの恩返しをしないと……」

おかべ「だからと言って高校生にそんなだいきんをはらわせられるか!」

漆原「で、でも……」

店員「ふふっ、大人の真似をしたがるお年頃なんですね。姉弟ですか?」

漆原「い、いえ……」

おかべ「ほらるか。俺のサイフだ」

漆原「でも岡部さん……」

店員「こういう時は、お金を渡してあげるとちゃんとお会計のお手伝いをしてくれますよ」

おかべ「おいそこのてんいん! なにをふきこんでいる!」

漆原「じゃ、じゃあ岡部さん……はい」

おかべ「お前もわたそうとするんじゃない……」

漆原「でも、お客さんが列になってますし……」

おかべ「ぐんぬぬ……わかったわかった。かせ」

漆原「あ、はい……」

おかべ「……ほら、ちょうどだ」

店員「はい、ちょうど頂きました。はい、レシートです」

おかべ「くっ……なんというくつじょく……さぁ帰るぞルカ子!」

漆原「あ、走っちゃダメですよ! ま、待って下さい!」

店員「またお越しくださいねー」



……

おかべ「くっ、はぁ……もともとない体力がさらにへっているではないか……」ゼェゼェ

漆原「岡部さん、あまり遠くに行かないようにしてください……危ないですから……」

おかべ「くっ、ルカ子にすぐおいつかれるようになるとは……」ゼェゼェ

漆原「……」

おかべ「はぁ、はぁ……ん、どうした?」

漆原「あ、いえ……その……」

おかべ「なんだ、何かあるなら言ってみろ」

漆原「その……名前……」

おかべ「名前?」

漆原「えっと……最近は、ちゃんと名前で呼んでくれて……でも、さっきは、また……」

おかべ「……あぁ」

漆原「あ、す、すいません……」

おかべ「……」

漆原「で、出過ぎた事を言って、すみませんでした……」

おかべ「はぁ……で、俺のサイフは? まだあずけたまんまだろう、るか」

漆原「あっ……岡部、さん……」

おかべ「……どうしたのだ?」

漆原「いえっ、ありがとう、ございます……はい、お財布です」

おかべ「ん……どれどれ……えぇと、いちまんにせん……ほら」

漆原「だ、ダメですよ! あれは、僕から岡部さんへの、プレゼントなんですから……」

おかべ「プレゼント?」

漆原「さっきも言ったように、僕は岡部さんにお世話になりっぱなしですし……ラボでも、お役に立てることが無いですから……。
   だから、これくらいの事でしか、お礼はできませんけど……受け取って、貰えませんか?」

おかべ「……」

漆原「……」

おかべ「はぁ……子どもあいてにそんななみだめにならないでくれ……俺がだだっ子のようではないか」

漆原「あ……」

おかべ「わかった、これはありがたく、お前からのプレゼントとしてうけとっておく」

漆原「ほ、本当ですか!?」

おかべ「あぁ、大事に使わせてもらう。ありがとう、るか」ニコッ

漆原「っ……あっ、その……今……」

おかべ「うん? どうした」

漆原「今の笑顔で、その……きゅんって……」

おかべ「はぁ?」

漆原「い、いえ……ただ、岡部さんが、かわいくて……」

おかべ「なっ……なにを言っているのだ!」

漆原「す、すみませんっ! つ、つい……」

おかべ「お、俺がかわいいわけないだろう! 俺はきょうきのマッドサイエンティスト、ほうおういんきょうまなのだぞ!」

漆原「ごめんなさいっ!」

おかべ「……はぁ、まぁいい。出るぞ、るか」

漆原「……はいっ」

おかべ「しかし、こばらが空いたな……」

漆原「あ、もうこんな時間になってたんですね……」

おかべ「ふん……そうだ、一階のクレープ屋に行こう。たまにはこういうのも良いだろう」

漆原「良いですね」

おかべ「……よし、ついたぞ。お前は何が食べたい?」

漆原「僕は……あ、このイチゴのにします」

おかべ「そうか。すみません、このイチゴのとバナナのを下さい」

店員「はーい。ちょっと待っててねー僕ー」

おかべ「ぬぐっ……」

漆原「えっと、お金……」

おかべ「いや、それはいい」

漆原「で、でも……」

おかべ「あぁ、なんだ……さっきのプレゼントのおかえしの一つだ。これくらいではぜんぜん足りないだろうが……」

漆原「え……」

おかべ「お前も、俺の弟子ならすなおにうけとっておけ。な?」

漆原「……はいっ」

店員「はーい、こちらになりまーす。落とさないようにねー」

おかべ「えぇい、どいつもこいつも子どもあつかいしおって……」

漆原「しょうがないですよ。今の岡部さんは、かわいいですから」

おかべ「そ、その言い方はやめんか……このクレープわたさんぞ!」

漆原「ふふっ、ごめんなさい。本当の事だったので、つい」

おかべ「……まったく、るかにじょうだんであしらわれるようになるとは……ほら、お前のクレープだ」

漆原「はい、ありがとうございます」

おかべ「ふぅ、ガードにこしをおちつけるか」

漆原「はい」

おかべ「ん……なんだ、カキ氷もあったのか……そっちをたのめばよかったか……」モグモグ

漆原「あんまり冷たいものを食べると、お腹下しちゃいますよ?」

おかべ「……しばらくげりにはなりたくないからな……クレープでがまんしよう」

漆原「あ、岡部さん。クリームがついちゃってますよ」

おかべ「ん、どこだ。口周り……じゃないな、こっちか?」

漆原「え、えっと……ほっぺに……」

おかべ「そうか。わるいが取ってくれ、ふくものがなくてな」

漆原「……と、取るん、ですね……」

おかべ「あぁ」

漆原「ぼ、僕と、岡部さんは……その、ずっと、師匠と弟子ですよね……」

おかべ「まぁ、そりゃそうだろ。いや、今はそれどころじゃなく……」

漆原「つ、つまり……そ、そういう事、ですよね……」

おかべ「? まぁそりゃ、取ってくれるならそういう事だろ」

漆原「そ、そうですか……」

おかべ「あぁ、すまんが、みょうなところについてたらおちついて食べれんから、早くしてくれ」

漆原「……はいっ、わかり、ましたっ……」

おかべ「……よし……っておい、何をきゅうせっきんしているのだ?」

漆原「う、動かないで下さいね……」

おかべ「お、おい……なにをかたをつかんでいるのだ? お、おい——」


チュッ


漆原「……」

おかべ「……」

漆原「と、とれ、ました……」

おかべ「……」

漆原「……ど、どうだったで、しょうか……」

おかべ「……」ポロッ

漆原「あっ! 岡部さん、ク、クレープ!」

おかべ「ん……お、おわっ! 俺のクレープが……いや、そうではないっ! い、いったい、おおお前今何をした!」

漆原「す、すみません! そ、その、恋人同士で食べかすを取ると言ったら……その、こういう事だと……」

おかべ「こ、こいびと!? 俺が!? だれと?」

漆原「えっ……だ、だって……この前……岡部、さん、が……」

おかべ「な、何を……言っているのだ……?」

漆原「え……でも……あっ……」

おかべ「……るか?」

漆原「そっか……そうだったんですね……」

おかべ「お、おい」

漆原「っ……ごめんなさい!」


タタタッ


おかべ「あ、おい! るか! どこへ行くんだ! おい!」

おかべ「……なんなのだ……一体……」



……

おかべ「……ここにいたのか、るか」

漆原「……岡部、さん……」

おかべ「走っていってしまったから神社に帰ったのかと思ったぞ。ラボにいるなら、電話くらいには出てくれ。
    この体は、体力がひくくてな……」

漆原「その……ごめん、なさい……岡部さん」

おかべ「……どうしたのだ、一体」

漆原「……」

おかべ「……俺のせいか」

漆原「……違い、ます……岡部さんのせいじゃないんです……」

おかべ「いや、お前のはんのうを見るに、十中八九俺のせいだろう……」

漆原「っ……」

おかべ「すまない……俺は……どうやら、にぶいらしいのだ。その、そういうかんじょうに……としをとってから何回も言われた。
    だから、そういうことが理由なら、はっきりと言ってほしい……むいしきであっても、人を傷つけるのは、俺はいやだからな……」

漆原「岡部、さん……」

おかべ「こんな、ガキ相手じゃしまらないだろうが……話してほしい……ダメか?」

漆原「……わかり、ました」

おかべ「……すまない」

漆原「……岡部さんが、お歳をとった時に言ってくれました……僕は強くなれてるって、素敵だって……」

おかべ「あぁ、言ったな」

漆原「でもそれは……岡部さんが一緒にいてくれたから、僕は強くなれたんです……」

おかべ「あぁ……それも聞いた」

漆原「だから……強くなれた僕なら、岡部さんの隣にいても良いのかなって思って……告白したんです……ずっと、師匠と弟子でいて下さいって……」

おかべ「……あれ、だったのか……」

漆原「はい、ごめんなさい……そのまま言うのが恥ずかしくて、遠まわしに……わかり、にくかったですよね……」

おかべ「……すまない」

漆原「いえ、岡部さんは悪くないです……それに、悪いのは僕なんですから」

おかべ「……なぜ、お前がわるいのだ」

漆原「岡部さんも知ってるように、僕は男です。見た目が、女っぽい……」

おかべ「あぁ」

漆原「僕は、男です……男なんですよ……」

おかべ「……あぁ」

漆原「でも、それなのに……それなのに、僕は……岡部さんを好きになっちゃったんです……」

おかべ「……」

漆原「困ってる僕を助けてくれて、自信の無い僕をいつも引っ張ってくれて、こんな僕の事を素敵だなんて言ってくれる……。
   自分は女じゃないってわかってるのに、わかってるのに……そんな岡部さんが……」

おかべ「るか……」

漆原「ずっと、この見た目が恨めしかった……こんな見た目なら、最初から女で生まれてくれば良かったって、何度も、何度も、何度もっ……。
   それに心も、この見た目に引きずられてくみたいに……自信も力も無く、ただ女々しいだけの、男になって……」

おかべ「そんなことは……」

漆原「その癖に、気分だけは女で……好きになったのは、岡部さんで……どれもこれもっ、ちぐはぐで……。
   何もかもが中途半端の癖に、岡部さんと一緒にいれれば、強くなれるだなんて……甘い、考えをして……」

おかべ「……」

漆原「ごめんなさい……勝手に勘違いして、岡部さんを置いていったりして……もう、僕が岡部さんと一緒にいちゃいけないですよね……。
   萌郁さんに連絡して、代って貰います……」

おかべ「……はぁ」

漆原「っ……」

おかべ「……まったく、こまったものだ」

漆原「……え?」

おかべ「手のかかる弟子をもつと、こうもくろうするものだとはな……」

漆原「お、岡部さん……」

おかべ「前にも言ったはずなんだがなぁ……わすれてしまったのか、るかよ」

漆原「な、何をですか?」

おかべ「お前が男だろうと女だろうと、そんなことはどうでもいいし、お前がのぞむのなら……ともにりそうの自分をおいもとめると」

漆原「……」

おかべ「そもそも、自分に自信をもてている人間なんて、このよにたったのひきにぎりしかいない。
    しかもその人間だって、さいしょからそうだったわけじゃないんだ。みんなお前みたいになやむし、きずつきもする。
    コンプレックスだってある」

漆原「でも……」

おかべ「でもな、そういう人たちだって一人で立ててるわけじゃない。だれかにみとめられたり、ささえてもらったり……。
    そういう風にして、生きているんだ」

漆原「……」

おかべ「まぁ、何が言いたいかと言うとだな……お前はまわりの人間となんらかわらないということだ。
    なやむし、コンプレックスだってある……それは、お前にこう言っては何かもしれんが、ふつうのことなんだよ」

漆原「普通……」

おかべ「俺だってなやむ。お前が俺のためになやんでくれるように、俺も、お前のことを考えたりする……」

漆原「……」

おかべ「それに、お前はちゃんとたにんにみとめられてるだろ? 俺みたいなヤツにさ、るか」

漆原「っ……」

おかべ「お前は俺の弟子であり、ラボメンだ。かけがえのない仲間であり、心をゆるせる人なんだよ」

漆原「……ぼ、僕が……」

おかべ「それに、俺だけじゃなくまゆりだってダルだって、はてはあのHENTAIだってお前をみとめているんだ。
    それでもみとめられていない、自分はおかしいと思うなんて、お前はちょっとぜいたくだぞ?」

漆原「……そう、か……」

おかべ「わかったか?」

漆原「僕は……馬鹿でした」

おかべ「あぁ、バカだ。ししょうにまいどせっきょうされて、すぐへこんで……すぐ笑顔になって……」

漆原「僕は……無意味な事で、悩んでたんですね……」

おかべ「まぁ、なやむということ自体はむいみではない。人間というのは、つねに考える生きものなのだからなぁ……。
    さて、せっきょうはこのへんでいいかな、るかよ」

漆原「……はいっ。また岡部さんから、大事な事を教わりました」

おかべ「では、わが弟子るかよ。だいじだと思うぶぶんをふくしょうせよ」

漆原「えっと……そんな事はどうでもいい、です」

おかべ「よろしい。まったく、きょうきのマッドサイエンティストがじんどうてきなせっきょうをするとは……。
    もうしてやらんからな」

漆原「はい、ありがとうございました」

おかべ「……まぁ、なんだ。いちおうこういうことがなぐさめになるかはしらんが……。
    むかしの日本では、男色というものがふつうにあった。ほかの国でもな」

漆原「そ、そうなんですか」

おかべ「あぁ。ただ、時代がすすみ、今はうけいれられなくなったが、それは時代のせいだ。世間というたいきょくがながしたふうせつだ。
    だが時代、世間、そんなものにしばられるような人間では、俺の弟子はつとまらん。わかったら、気にしないことだ。いいな?」

漆原「……はい!」

おかべ「よし、いいへんじだぁ……あぁ、るかよ。えらそうなこと言った直後でなんだが……走ってはらがへってしまってな……」

漆原「あ、じゃあご飯を作りますね。弟子のお勤め、させていただきます」

おかべ「うんむ。よいへんじだ。それで、なにを作るのだ?」

漆原「じゃあ……生姜焼きにしましょうか。夏バテ防止の豚肉です」

おかべ「そうか……なら、白いごはんも欲しいな」

漆原「勿論、ご用意します」

おかべ「そうか。俺はシャワーをあびていいか?」

漆原「はい。その間にご用意できると思うので、入って来てください」

おかべ「……すまんな、何から何まで」

漆原「いえ、それじゃあ作りますね」

おかべ「……」

漆原「えっと、玉ねぎは……あったあった」


トントントントンッ


おかべ「……じゃあ、入る、か」



……

おかべ「ふぅ……なんであのシャワーはたまに水が出るか……あの肉ダルマ店長め」

漆原「あ、岡部さん……服……」

おかべ「ん? あぁ、サイズは合ってるからだいじょうぶだぞ」

漆原「いえ、普通の子ども服でも、かわいくて……その……」

おかべ「や、やめてくれ。かわいいだけはやめてくれるかよ」

漆原「す、すみません……」

おかべ「はぁ……ん……おぉ、うまそうだな」

漆原「そ、そうですか? 食材、少ししか持ってきてなかったので、あまり品目は多くないですが……」

おかべ「いや、俺にはとうていマネできん。すごいと思うよ」

漆原「あ、ありがとうございます。はい、お箸です。割り箸だったら、滑りにくいですよね」

おかべ「ん、すまんな……では……」


「「いただきます」」

おかべ「うん……」カツカツッ

漆原「……」ドキドキ

おかべ「……」モグモグ

漆原「ど、どうでしょうか……」

おかべ「うん、うまいな。さんみもあって、しょくよくがわくよ」

漆原「そ、そうですか。お酢も少し混ぜたので、夏バテ防止効果倍増です」

おかべ「本当、お前はよくできてるな……いい親、パートナーになりそうだ」モグモグ

漆原「あっ……」

おかべ「……」

漆原「……その」

おかべ「なぁ、るか」

漆原「は、はい。なんでしょうか」

おかべ「あのこくはくのへんじ、ちゃんとしてなかったな」

漆原「……そう、ですね」

おかべ「俺は……どうなのだろうな……あんな風に高らかにせっきょうしたが、正直……俺はいせいあいしゃだ」

漆原「っ……」

おかべ「だが、なんだ……その、こう言うとげんきんかもしれんが……」

漆原「?」

おかべ「その……何と言うか……」

漆原「……」

おかべ「お前だったら……いいかな、と思ってしまうのだ……」

漆原「岡部、さん……」

おかべ「きだてもいい、料理ふくむ家庭スキルもいい……だが本当は……見た目で、決めているのかもしれん……」

漆原「み、見た目……」

おかべ「お前は、女よりも女らしい美少女だ……今までも、お前の仕草だけでいくどとなくときめいたことがある」

漆原「そっ、そう、ですか……///」

おかべ「このように、お前が思っている程、俺はすうこうな人間ではない……」

漆原「そ、そんなこと……」

おかべ「だが……こんな体のいい決め方をする俺でいいなら、好きになってくれてもかまわない……俺も、それはとてもうれしいと思う」

漆原「そ、それって……」

おかべ「だが、へんじは待ってほしい」

漆原「……」

おかべ「その、何と言うか……せんきゃくが、いるのだ……」

漆原「せ、先客……まゆりちゃんか、牧瀬さんですか?」

おかべ「いや、そうではない……だが、お前どうよう、俺を好きと言ってくれた人がいてな……その人にもへんじをキチンとかえせていないのだ。
    だから……その……」

漆原「……わかりました」

おかべ「……」

漆原「岡部さんは今、本当はそんな場合じゃないんですよね……小さくなって大変なのに、今返事を聞かせて下さい、なんて少し横暴ですから」

おかべ「……るか」

漆原「だから、体が元に戻った後で構いません。だけど例え、僕を振る事になっても良いですから……お返事は、お願いします」

おかべ「……わかった。約束しよう」

漆原「……なら、僕は良いです」

おかべ「……そうか」

漆原「ふふっ、なんだか今の岡部さん。またおじさんに戻ったみたいな気迫でした」

おかべ「……自分では、ずっとあのままでいようと思っているのだがな……あれくらいをイメージしないと、じがが保てるかどうか……」

漆原「そうなんですか……」

おかべ「……いや、やめよう、しんきくさい話は。せっかくのうまい飯がマズくなる」

漆原「そうですね。あ、ご飯足りなかったら言って下さいね。一応、あと一杯くらいはおかわりあるので」

おかべ「ははっ、そこまで行くかどうか……食事スピードがいじょうにひくくなってな……」

漆原「無理はしないで下さいね」

おかべ「わかっている……ゆっくりとあじわわせてもらうさ」

漆原「はい」

おかべ「そう言えば、寝る時はどうするのだ?」

漆原「あ、それは大丈夫ですよ。ちゃんと下に敷く寝袋と掛ける用のタオルケットを持ってきたので」

おかべ「そうか。本当によく気がきくな」

漆原「これくらいしか、取り柄ないですから」

おかべ「ダルのクラッキングに、クリスのずのう、そういうのと同じだな。一つの才能だよ」

漆原「い、いえ……そんな大層なものじゃないですよ」

おかべ「ふっ、俺にとってはにたようなものさ……さて、じゃあおかわりをたのむ」スッ

漆原「はいっ、ではお茶碗お預かりしますね」

おかべ「あぁ、ありがとう」

漆原「よいしょ、はいどうぞ」

おかべ「うむ」

漆原「……」

おかべ「……」カツカツッ

漆原「……」

おかべ「……ん、どうした。食べないのか?」

漆原「い、いえ……子どもが将来できたら、こんな風に幸せなのかなって……」

おかべ「……」

漆原「あ、す、すみませんっ! い、今のは聞かなかったことに……」

おかべ「……早く食べないと、冷めてしまうぞ?」

漆原「そ、そうですね。僕も食べないと」

おかべ「……」

漆原「……」モグモグ

おかべ「……どうだ?」

漆原「……おいしい、ですね……」

おかべ「……あぁ」

漆原「……」

おかべ「……」

おかべ(子ども、か……)



……

おかべ「……」スースー

漆原「ふふっ、岡部さん寝ちゃった……」

漆原(寝顔、かわいいなぁ。ご飯食べて、すぐ眠くなっちゃったんですね)

漆原「……」ナデナデ

おかべ「ん……」

漆原(ふふっ、岡部さんの頬……あったかい……)

漆原(スベスベしてる……いつまでもこうしてたいなぁ……)

おかべ「んん……るか……」

漆原(あ、起こしちゃったかな……)

おかべ「うぅ……」スースー

漆原「……」ホッ

漆原(……岡部さんの子ども……)

漆原(子ども……)

漆原(子ども、かぁ……)

漆原「岡部さんだったら、どうでもいいって言ってくれるのかな……」ナデナデ

おかべ「……」スースー

漆原「……」


漆原「おやすみなさい、岡部さん……」







——

今日はここまで




【二日目 萌郁】



漆原「おはようございます桐生さん」

萌郁「おは、よう……」

漆原「お早いですね。あ、朝ご飯作っておいたので、良ければ食べて下さいね」

萌郁「……あり、がとう」

おかべ「……」スースー

萌郁「岡部君……まだ、寝てる」

漆原「えぇ、やっぱり小さくなって、体力は落ちちゃったみたいです」

おかべ「んん……」ゴロン

萌郁「かわいい……」ピロリンッ

漆原「僕も写真撮ったら、岡部さんまた怒るかな……」

萌郁「大丈夫、後で、私が送る……」

漆原「ほ、本当ですか? じゃ、じゃあお願いします……」

萌郁「任せて……」グッ

漆原「は、はい……じゃあ僕は帰りますね。岡部さんが寝ているうちに……」

萌郁「朝ご飯、ありがとう……」

漆原「いえ、良いんですよ。それじゃあ僕はこれで……」


ガチャンッ


萌郁「……」

おかべ「……」スースー

萌郁「……」スッ

おかべ「……」

萌郁「……岡部君」



……

おかべ「んん……」

おかべ(朝か……けっこう長い間寝てたみたいだな……)

おかべ(ん、動けんな……だきしめられているのか。るかか?)ムニュッ

おかべ(あぁ? なんかやわいぶったいに顔がこていされているが……ダルの腹じゃないよな……)

萌郁「……」スースー

おかべ「……」ムニュムニュッ

萌郁「ん……」

おかべ(目の前には、俺をやさしくだきしめている萌郁がいる)

おかべ(そして、俺が今手でさわっているやわらかいもの)

おかべ(この二つがいみするものは……つ、つまり……む、むむむ……)

おかべ「い、いかんっ!」

萌郁「ん……あっ……岡部君、起きた?」

おかべ「お、おおおお前! い、いつから来ていたのだっ!?」

萌郁「大体、一時間前……」

おかべ「な、なぜ俺をおこさないのだ!」

萌郁「よく、眠ってたから……」

おかべ「ね、ねむってても、その……こ、こんな……」

萌郁「岡部君を見てたら……早起きしたから……私も、眠くなってきて……それで……」

おかべ「だ、だからってべつに俺をだきまくらにしなくてもいいだろう……このあついのに……」

萌郁「……嫌、だった?」

おかべ「いや……べつにそこまでは言っていないが……」

萌郁「……そう」ギュウッ

おかべ「いやだからあんまりひっつくな! お、お前は前にも言ったとおりシャレに……むぐっ」

萌郁「……小さい岡部君、かわいい」

おかべ(あ、頭をかた手でこていされている……ガ、ガチではないか……いやそりゃ萌郁はそうする理由はわかるが……。
    たしかにここちいいし、においもいいが、これにくっしたらあともどりできんぞ!)

おかべ「ぶはっ……も、萌郁! はは、は、はらがへったなぁ! あ、朝ご飯はないのか!?」

萌郁「……」

おかべ「あ、あさごはん! ブレックファスト! ドゥユーアンダスタン?」

萌郁「……朝ご飯は、ある」

おかべ「そ、そうか……お前が作ったのか?」

萌郁「違う……るか君が、作った」

おかべ「あぁ……作るだけ作って帰ってしまったか……なんだかわるいことしたな」

萌郁「……食べる?」

おかべ「そ、そうだな。たのむ」

萌郁「……わかった」スッ

おかべ(ふぅ……やっとかいほうされたか……や、やはり萌郁はおそろしいな)

萌郁「……レンジ……」

おかべ「今は使えん。さめたままでもだいじょうぶだから、食べよう」

萌郁「……そう」

おかべ「萌郁は食べてきたのか」

萌郁「ううん……」

おかべ「では、いっしょに食べるか」

萌郁「……ダジャレ?」

おかべ「はぁ?」

萌郁「……なんでも、ない」

おかべ「……」

萌郁「……私も」

おかべ「ん?」

萌郁「私も、岡部君と、食べる」

おかべ「そ、そうか……」

萌郁「少し、待ってて……」

おかべ「わかった。じゃあ俺はこのふとんをかたづけておく」

萌郁「うん……」



……

萌郁「できた……」

おかべ「ありがとう。と言っても、皿にならべるだけか」

萌郁「……お箸」

おかべ「うむ。それでは食べようか」

萌郁「……おいし、そう」

おかべ「あぁ、るかの作った飯は、うまいものだぞ。食べてみるといい」

萌郁「……」

おかべ「……」モグモグ

萌郁「ん……」モグモグ

おかべ「どうだ?」

萌郁「……おいしい」

おかべ「そうか、それはよかった」

萌郁「……」モグモグ

おかべ「……」モグモグ

萌郁「……」モグモグ

おかべ「すまん、そこのしょうゆをとってくれ。と、とどかなくてな」

萌郁「……はい」スッ

おかべ「すまんな……よぉし……」

萌郁「……」

おかべ「……」モグモグ

萌郁「……昨日、るか君と何かあった?」

おかべ「っ!? げほっ、げほっ」

萌郁「だ、大丈夫?」

おかべ「いや、すまん……げほっ……だいじょう……げほっ」

萌郁「お、お水……」

おかべ「す、すまん……」ゴクゴクッ

萌郁「……」

おかべ「はぁ……なんとか……」

萌郁「お、岡部君?」

おかべ「いや、もうだいじょうぶだ……すまんなしんぱいかけて」

萌郁「……ごめん、なさい」

おかべ「いや、お前のせいではないさ」

萌郁「でも、私が、昨日の事、聞こうとしたら……岡部君が……」

おかべ「あぁ〜……」

萌郁「……やっぱり、何かあった……」

おかべ「……まぁ、な」

萌郁「……そう」

おかべ「……」

萌郁「……」

おかべ「あぁと……何て言えばいいか……」

萌郁「告白、された?」

おかべ「んぐっ……す、するどいな……」

萌郁「……やっぱり」

おかべ「……あぁ、その、なんでわかった?」

萌郁「……私が、るか君の料理を、褒めたら……岡部君、とても、嬉しそう……だったから……」

おかべ「……そうか」

萌郁「……」

おかべ「……へんじは、まだしていない」

萌郁「……まだ」

おかべ「あぁ……その、なんだ……お前の方が、先だったからな……お前をさしおいてへんじをするのは、どうかと思ってな……」

萌郁「……そう」

おかべ「……」

萌郁「……」

おかべ「えっと……」

萌郁「私も……」

おかべ「えっ?」

萌郁「私も、まだ返事は、いい……私の返事は、元の岡部君に、聞く……そういう、約束だから……」

おかべ「……そうだったな」

萌郁「だから、今じゃなくて、いい」

おかべ「そうか……」

萌郁「……」

おかべ「……」

萌郁「そ、その……」

おかべ「なんだ?」

萌郁「その、代わりに……」

おかべ「な、なんだ。こうかんじょうけんか?」

萌郁「今日は……」

おかべ「今日は?」

萌郁「今日、は……」モジモジ

おかべ「な、何をほおをそめてモジモジしているのだ。俺は、その……まってもらっている身なのだから、あるていどのようぼうは聞くぞ」

萌郁「そ、その……」

おかべ「なんだ? なんでも言ってみろ」

萌郁「今日だけは……お、おねえちゃんって、呼んで、ほ、ほしい……」

おかべ「……」

萌郁「……」

おかべ「……」

萌郁「……」

おかべ「ファッ!?」

萌郁「だ、だめ?」

おかべ「だ、だめかいいかときかれたら、そりゃ僕にはよくわかりませんとしか……」

萌郁「だ、だめ……かな……」

おかべ「だぁ〜……そのくちょうと目はやめろぉ……なにかいけないことをしてる気分になるではないかぁ……」

萌郁「……岡部君が、お姉さんが好きだって、言ったから……その……」

おかべ「わ、わかった……わかったわかった……おちつけ、おかべりんたろう、いや、ほうおういんきょうま……。
    こ、こういう時にあのペルソナがあるのだ、そうだ……わがなはほうおういんきょうま……」

萌郁「……呼んで、くれるの?」

おかべ「ぬぐっ……」

萌郁「……」

おかべ「……お前あれだな。あんがい目で気分がわかるな……」

萌郁「……?」

萌郁「……ありがとうっ」ギュウッ

おかべ「むぐっ」

萌郁「ありがとう、岡部君」

おかべ「ぶはっ……ま、まぁこれくらいでこれほどよろこんでくれるなら、お安いごようだ」

萌郁「うん……」

おかべ「あぁ、その……そろそろ……」

萌郁「……何?」

おかべ「そ、それは……その、何と言うか……その、はなしていただけると……」

萌郁「……」

おかべ「ご、ご飯を食べよう! なっ!?」

萌郁「……」

おかべ「う、うまい飯が目の前にあるのだ、食わないとぶれいだろう?(ぐっ、そうすぐシュンとするんじゃない……)」

萌郁「……わかった」

おかべ「そ、そうか……(あ、あぶないあぶない……こいつこんなせっきょくてきだったのか?)」

萌郁「……」

おかべ「ほ、ほら箸が止まっているぞ萌郁」

萌郁「……」ジーッ

おかべ「……ご飯をぎょうしして、どうしたのだ?」

萌郁「……お昼は」

おかべ「昼は?」

萌郁「私が、作る」

おかべ「……」モグモグ

萌郁「……」

おかべ「……」モグモグ

萌郁「私が——」

おかべ「よせ」

萌郁「……どうして?」

おかべ「俺の中にあるおくびょうなせいかくが、お前のせいかつかんに見られる料理のうりょくを信じるなとささやいている」

萌郁「……」

おかべ「いや、その、しつれいなことを言ったな……だ、だが、いちおう聞く……料理けいけんは?」

萌郁「……ラーメンくらいなら」

おかべ「……」

萌郁「……」

おかべ「……なる、ほど……」

萌郁「でも、頑張る……」

おかべ「……」

萌郁「るか君には、負けてられない……」

おかべ「はぁ……わかったよ……買いものには俺もつきあう……」

萌郁「ほ、本当?」

おかべ「あぁ。ただし、料理は俺も手伝うぞ。心配だからな……それでもいいか?」

萌郁「……うんっ」

おかべ「と言いつつ、俺もさして料理はできないが……」

萌郁「大丈夫……ちゃんと、本を持ってきた……」

おかべ「そ、そうか。ならだいじょう、かな?」

萌郁「大丈夫……」

おかべ「そ、そうか」

萌郁「頑張る」グッ

おかべ「お、おう……」

萌郁「……それと……」

おかべ「それと?」

萌郁「お前じゃ、なくって……お、おねえちゃんって……」

おかべ「ぬぐっ……」

萌郁「言ってくれるって、言った……」

おかべ「ぐんぬぬ……」

萌郁「……」

おかべ「……」

萌郁「……」

おかべ「も……萌郁……」

萌郁「……」

おかべ「萌郁……おねえ、ちゃん……」

萌郁「……」

おかべ「……」

萌郁「り……」

おかべ「……」

萌郁「倫……君……」

おかべ「やめろぉ! あやまるからもうゆるしてくれぇ!」

萌郁「倫、君……倫君……ふふっ」

おかべ「ま、満足そうにわらうなぁ……」

萌郁「……倫君」

おかべ「や、やめろぉ……お前の、そ、そんなあやめかしい声でそれは、なんだかいけないことをしている気分になるぅ……」

萌郁「倫君……」ギュウッ

おかべ「う、うおっ」

萌郁「ふふっ……倫君、あったかい……」

おかべ「い、いやそれは、あついからであって……お、おい……(む、むねをおしつけるんじゃあないぞっ!)」

萌郁「倫……君……」

おかべ「はっ……はは、はなせぇっ!」


バッ


萌郁「っ!」

おかべ「ぬうお、っとと……」



ゴツンッ


おかべ「ぬはっ!」

萌郁「お、岡部君!」

おかべ「ぬ、おぉおおおおおっ……ぶ、ぶつけた……」ジンジン

萌郁「ご、ごめんなさい……今、私……」

おかべ「い、いや……だいじょうぶだ……ちょっと頭をうっただけだ」ジンジン

萌郁「ごめん、なさい……岡部君……」

おかべ「いや、気にするな……今のは俺がつきはなしのがわるいんだ」

萌郁「え、えっと……こういう時は……」アワアワ

おかべ(か、かどにぶつけたか……いたみがハミングしている……)

萌郁「い、痛いの、痛いの……とん、でけ……」ナデナデ

おかべ「……」

萌郁「痛いの……痛いの……」ナデナデ

おかべ「あぁ……萌郁?」

萌郁「とん……でけ……」ナデナデ

おかべ「……」

萌郁「い、痛い、の……」ナデナデ

おかべ「い、いやーっ! ふしぎだなー! もういたくなくなってきたぞー!」

萌郁「ほ、本当?」ナデナデ

おかべ「あ、あぁそうともー! も、もえ、萌郁おねえちゃんのおかげだなー!」

萌郁「良かった……」ナデナデ

おかべ「……」

萌郁「……」ナデナデ

おかべ「その……わるかったな、いきなりつきはなして……」

萌郁「き、嫌いに……なった……?」ナデナデ

おかべ「い、いや……そ、そんなことはない……ただ、さっきのははずかしかっただけだ」

萌郁「……そう」ナデナデ

おかべ(それはげんざいしんこうけいなのだが……)

萌郁「ごめんね……」ナデナデ

おかべ「あぁと……もうだいじょうぶだから、ご飯を食べよう。まだのこってるし」

萌郁「……うん」

おかべ「ほら、お前も自分のがわへもどれ。な?」

萌郁「……うん」

おかべ(上の空、か……べつにお前のせいではないのに……)

萌郁「……」

おかべ「ほ、ほら。早く食べないと、買いものに行けないだろう?」

萌郁「……うん」

おかべ「……お前と作る昼は、その……これでも楽しみにしているのだ……だから、早く行こう」

萌郁「……本当?」

おかべ「……あぁ。俺一人で行くのはあぶないから……だから……」

萌郁「……」

おかべ「……萌郁……おねえちゃんと、いっしょに、だな……」

萌郁「……岡部、君……」

おかべ「はぁ……もう倫君とでも何でもよんでいいから、おちこんだ顔をしないでくれ。この前言っただろ?
    お前の笑顔は、きれいだって」

萌郁「あ……」

おかべ「俺がはじをしのぶだけで、お前の笑顔が見れるなら……それでいいから……笑っていてくれ」

萌郁「……」

おかべ「……萌郁?」

萌郁「……おねえちゃん」

おかべ「ぐっ……萌郁、おねえちゃん……」

萌郁「……うんっ」ニコッ

おかべ「……そうだ。それでいい」

萌郁「……食べる」

おかべ「そうだ、早くたべて、買いものに行こうではないか」

萌郁「うん」

おかべ「はぁ、本当に手のかかる姉のようだよ……」

萌郁「倫君は、そういうのが好きって、前に、言ってたから……」

おかべ「うぐっ……は、早く食べるんだ!」

萌郁「……うん」

おかべ(こ、ここまでストレートにこういをしめすヤツとは思わなかった……)

萌郁「……ふふっ」



……

おかべ「さて、飯も食べて皿も洗ったし、服も着替えたし……行くか」

萌郁「うん……」

おかべ「しかしな、皿はぜんぶあらってからふいた方が、早いと思うぞ?」

萌郁「つい、ふきたくなっちゃって……」

おかべ「まぁ、そういう時もあるか……さて、じゃあ行くぞ。ほらカギだ、お前がかんりしておくのだぞ?」

萌郁「がん、ばる……」

おかべ「……ふあんだ、やはり俺が」

萌郁「頑張る」

おかべ「……はいはいわかった。ほらしめるぞ」ガチャンッ

萌郁「……行こう」

おかべ「あぁ」

萌郁「……その……」

おかべ「何だ」

萌郁「……手」

おかべ「?」

萌郁「手を、繋ぎ、たい……」

おかべ「なっ……」

萌郁「……だめ?」

おかべ「だめでは、ないが……」

萌郁「……」

おかべ「えぇい無言のうったえはやめろ……ほら……」

萌郁「……うん」ギュッ

おかべ「……そこまで強くにぎらなくてもだいじょうぶだぞ?」

萌郁「あ……ごめん、なさい」

おかべ「……よし、それくらいでいい。では行くぞ」

萌郁「うんっ」

おかべ(しゃべらないが……あんがい顔と声にすぐかんじょうが出るようになったから、わかりやすいな)

萌郁「……♪」

おかべ(まぁ、萌郁が笑ってるなら、いいか。これくらいは……)



……

おかべ「で、Yさん所有のスーパーに来たわけだが……」

萌郁「……」

おかべ「何を作るのだ?」

萌郁「……ケバブ」

おかべ「つ、作れるのか?」

萌郁「……冗談」

おかべ「だろうな……」

萌郁「ハンバーグを、作る……」

おかべ「いや、それもふあんだっ」

萌郁「本の通りにすれば、大丈夫」

おかべ「だ、だいじょうぶなのか?」

萌郁「それに、これなら……倫君と一緒に作れる、から……」

おかべ「あぁー……そういうことか……」

萌郁「……」

おかべ「わかった、それにしよう。さいわい、材料は少ないしな。火のかげんだけミスしなければなんとかなるだろう」

萌郁「うん」

おかべ「ようし、ではカゴを持て! 閃光の指圧師よ!」

萌郁「……倫君」

おかべ「んぐっ……な、なんだ」

萌郁「……めっ」

おかべ「め、めっ……はぁ、わかった……萌郁、おねえちゃん……カゴ、たのむ」

萌郁「……うん」ニコッ

おかべ(はぁ……オッサンからきゅうげきに小学生になったが……どうふるまっていいのか正直わからん……。
    キャラをもどすタイミングを今のでつぶされてしまったぞ……)

萌郁「まずは、挽肉……」

おかべ「まぁ、だろうな……えぇと、肉はっと……あったぞ」

萌郁「……沢山、ある」

おかべ「ふつうは牛かぶたか、もしくは合わせたやつかってかんじなはずだが」

萌郁「鶏じゃ、ない……」

おかべ「そのはずだ。ほら、安いし、あいびき肉でいいだろう」

萌郁「うん……」

おかべ「さてと、今のとりじゃないはつげんで俺はまたふあんになってきたぞ……次は、玉ねぎか?」

萌郁「玉ねぎは……コッチ……」

おかべ「ふむ……バラのでいいだろう。1、2コで」

萌郁「うん」ポイッ

おかべ「えぇと……次は……つなぎ? だったか」

萌郁「えっと……卵、パン粉、牛乳……」

おかべ「ふむ、どれも一番小さいのでいいだろう。ほら」ポイポイッ

萌郁「これで、良い」

おかべ「……ところで、夕飯はどうするのだ?」

萌郁「……この前みたいに……屋上で、ケバブを、食べたい……」

おかべ「……そうか、だが酒はやめろ。今の俺ではかいほうできんからな」

萌郁「わかった」

おかべ「……たのむぞ? 本当に」

萌郁「……ごめん、なさい」

おかべ「まぁ、すぎたことはいいさ。さて、と……ほかには……」

萌郁「……飲み物」

おかべ「それなら勿論、このちてき飲料、ドクタァープゥエッパーどわぁ……」

萌郁「……今の声で言うと、面白い」

おかべ「お、面白い……」

おかべ「……ところで、夕飯はどうするのだ?」

萌郁「……この前みたいに……屋上で、ケバブを、食べたい……」

おかべ「……そうか、だが酒はやめろ。今の俺ではかいほうできんからな」

萌郁「わかった」

おかべ「……たのむぞ? 本当に」

萌郁「……ごめん、なさい」

おかべ「まぁ、すぎたことはいいさ。さて、と……ほかには……」

萌郁「……飲み物」

おかべ「それなら勿論、このちてき飲料、ドクタァープゥエッパーどわぁ……」

萌郁「……今の声で言うと、面白い」

おかべ「お、面白い……」

萌郁「……私は……」

おかべ「お前は、ドクペはにがてか?」

萌郁「……うん……合わな、かった」

おかべ「ふん……まぁ、人をえらぶらしいからな。では……これなんかどうだ?」

萌郁「……これ」

おかべ「マウンテンデューだ。レモンライム味だし、ドクペよりは飲みやすいだろう」

萌郁「……緑」

おかべ「……言っとくが、ちゃくしょくりょうタップリだぞ」

萌郁「……そう」

おかべ「どうだ?」

萌郁「……試して、みる」

おかべ「そうか。さてと、じゃあ会計、会計」

萌郁「……うん」

おかべ「ほら、俺も少しははらうから」

萌郁「……大丈夫……バイト代、入ったから……」

おかべ「いやしかし……」

萌郁「……」

おかべ「はぁ……わかった。なんだかおごられ上手になったよ、俺は……」

萌郁「……レジ、行こう」

おかべ「あぁ……」



……

萌郁「ラボに、着いた……」

おかべ「ようし、ではカギをたのむ」

萌郁「うん……」ガサガサ

おかべ「ふぅ、早くソファにすわってドクペをあおりたいな……」

萌郁「……」ガサゴソ

おかべ「……」

萌郁「……」ゴソゴソ

おかべ「……カギは?」

萌郁「……」アワアワ

おかべ「何をアワアワしているのだ」

萌郁「……な、無い」アワアワ

おかべ「無い?」

萌郁「……無い、どこにも……」オロオロ

おかべ「おとしたのか?」

萌郁「……多分」

おかべ「どこで落としたのだ?」

萌郁「わから、ない……」

おかべ「わからない?」

萌郁「……どうし、よう」

おかべ「……あぁほら、なみだ目になるな……ある、あるから。俺がちゃんとひろっておいたから」

萌郁「……」

おかべ「商品をふくろづめしてる時に、お前がおとしたのを……ひろったのだ……」

萌郁「し、知ってた、の?」

おかべ「あぁ……まぁ、そうだな……」

萌郁「……」

おかべ「……」

萌郁「……倫、君?」

おかべ「な、なんだ」

萌郁「……めっ」

おかべ「めっ、ではない! 第一お前がおとしたのがわるいのではないか」

萌郁「そ、それは……」

おかべ「はぁ……よかったぞ、カギにちゅうししておいて……」

萌郁「……」

おかべ「だから言ったではないか、さいしょに。だいじょうぶかと」

萌郁「……うん」

おかべ「いちおう俺がいてよかったものの、一人だったら、中に入れなくなってるんだぞ?」

萌郁「……ごめん、なさい」

おかべ「はぁ……お前は、やはりどこかぬけてるな……」

萌郁「……」

おかべ「……す、すまん、言いすぎた。言わなかった俺もわるかったから、ほら、中に入ろう」

萌郁「……倫君……」

おかべ「な、なんだ今度は」

萌郁「いじ、わる……」

おかべ「……なんだろうなぁ、お前に言われると本当に自分がいけないことをしてる気分になる……」

萌郁「……?」

おかべ「な、なんでもない……さぁ、入ろう。早くしない食材がといたんでしまう」

萌郁「……うん」





……

萌郁「……」ペッタンペッタン

おかべ「こ、こら。まだつなぎをまぜていないのにせいけいするんじゃない」


萌郁「……」カチャカチャ

おかべ「ほら、肉を見るんだ。つけあわせは俺のたんとうだろう?」


萌郁「……」ジュワー

おかべ「あぁ、いつまでも強火にしていたらコゲてしまうぞ……」



……

萌郁「……できた」


コゲッ……


おかべ(おかしい……俺たちは本を見ながら作ったはずだ……)

萌郁「……」

おかべ「……あぁ、あれだな」

萌郁「ちょっと……失敗した」

おかべ「……もうそれでいい」

萌郁「でも、一応できた」

おかべ「まぁ……そうだな……」

萌郁「……食べる」

おかべ「お、おう」

萌郁「……お箸」

おかべ「うむ……それでは、い、いただきます」

萌郁「いただき、ます……」

おかべ(うーん、このコゲ具合……)

萌郁「……食べない、の?」

おかべ「い、いや、食べるぞ……」

おかべ(……どうだろうか……外見はコゲているようだが……)

萌郁「……倫君?」

おかべ(あ、あじはちがうさ……か、かくごを決めろ岡部倫太郎……)

おかべ「い、いくぞっ!」パクッ

萌郁「……」

おかべ「……」モグモグ

萌郁「……どう?」

おかべ「……あれ?」モグモグ

萌郁「……ど、どうしたの? お、おいしく、なかった?」

おかべ「いや……うまいじゃないか」

萌郁「ほ、本当?」

おかべ「あぁ。コゲてしまって少々かたくかんじるが、あじはいいぞ」モグモグ

萌郁「……良かっ、た……」

おかべ「萌郁……おねえ、ちゃんも、食べてみろ」

萌郁「うんっ」

おかべ(はぁ……いっきいちゆう、こどものごとし……)

萌郁「うん……おいしい……」

おかべ「あぁ。こういう少しジャンキーなあじの方が、このたんさんにあうというものだ」

萌郁「……そう」

おかべ「まぁ、ふだん料理をしないのにこれだけおいしければ、大成功だと思うぞ?」

萌郁「……うんっ」

おかべ(いつも、これだけ笑っていればいいものをなぁ……)

萌郁「……」

おかべ「どうした。はしで取ったのに止まって。食べないのか?」

萌郁「……」ジーッ

おかべ「……なんだ、俺と肉とをこうごに見つめて……」

萌郁「……」

おかべ「……あぁ、萌郁?」

萌郁「あーん……」

おかべ「あぁん?」

萌郁「あーん……」

おかべ「……」

萌郁「あ、あーん……」

おかべ(なんだコイツは……今のこれは、あれか……はい、あーんしてこいつぅてきな流れなのだろうか……)

萌郁「く、口……開けて……」

おかべ(そ、そんなふあんそうな目をするんじゃない! 俺に何をもとめているんだ!)

萌郁「……」

おかべ「わ、わかったわかった、やるから……あ、あー……」

萌郁「……はい」



パクッ


おかべ「……」モグモグ

萌郁「……」

おかべ「……」モグモグ

萌郁「……ど、どう?」

おかべ「……お、おいしゅう……ございます」

萌郁「……そう」

おかべ(なんだよこれ……俺はこんなスイーツ(笑)のするようなことをするために小さくなったのか……ちがうだろちがうさちがうちがう)

萌郁「……」ニコニコ

おかべ「くそ……じぼしんのような笑みをうかべて、人の気も知らんで……」

萌郁「……何?」

おかべ「あいえ何でもないですはい」

萌郁「……」

おかべ「……なんだ……今度はお前が口を開けて……」

萌郁「……倫君からも……して、ほしい」

おかべ「やめてくれぇっ……もうさとうをはきそうだぁ……」

萌郁「……ダメ?」

おかべ「だめではない……だめではないがぁ……俺の、俺のキャラを考えてくれよぉ……」

萌郁「……」

おかべ「わかったやるっ! やるから気をおとすな!」

萌郁「……あー……」

おかべ「くんぬっ……えぇい、ほら」ヒョイッ

萌郁「……」モグモグ

おかべ「はぁ……どうだ」

萌郁「……おいしい」モグモグ

おかべ「食べながらしゃべるんじゃない……」

萌郁「でも、おいしい……」

おかべ「……そうか」

萌郁「……今度は、私がする番……」

おかべ「なっ、まだやるのかっ?」

萌郁「……うん」

おかべ「食べ終わるまでか?」

萌郁「……うん」

おかべ「……」

萌郁「……」

おかべ「……」

萌郁「……」シュン

おかべ「……はぁ、わかったよ……」

萌郁「……いいの?」

おかべ「あぁ、いいから……ほら、今度はそっちからだろ……」

萌郁「……あー……」

おかべ「あ、あー……(四日目見てろよ、あのアマ……)」



……

飯行く
まだ萌郁さん続くよ

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