暦「忍野忍の声優が元々は平野綾であった事は、もはや彼女自身さえ」 (25)

阿良々木「坂本真綾という忍の声優は、僕たちの間では既に十分に馴染んでいて、何の違和感もないものである」

阿良々木「忍野忍の声優が元々は平野綾であった事は、もはや彼女自身さえすでに過去のものになっているだろう」

阿良々木「忍が鉄血にして冷血にして熱血のマルチタレント・平野綾を捨て、今のCV坂本真綾であるという事は」

阿良々木「僕にとって何よりの救いであると思っていた」

阿良々木「坂本真綾がキャラソンを断固として歌わない、という。どうしようもない現実を目の当たりにするまでは」

忍「儂がキャラソンなどを歌うとでも思ったか?カカッ(笑)このボケが!」


阿良々木「そう、僕に言い放った幼女、忍野忍も。なる程、確かに彼女らしいもっともな言い分である」

阿良々木「彼女には彼女の考えがあり、このような結末にいたったのであろう」

阿良々木「誰よりも最初に声優であり歌手という存在となり、活動してきた彼女ならではの立場や矜恃があるのだろう」

阿良々木「だがしかし。もしも彼女の声優が坂本真綾ではなく、平野綾のままであったのならばと、僕は考えずにはいられない」

阿良々木「あの、最初に忍野忍の声優として選ばれ、後にシリーズのファンからさえも坂本真綾に対しての平野“偽綾”とまで罵られた彼女」

阿良々木「そんな彼女が忍の声優を継続していたのならば、と。そんなどうしようもない事に、思いを巡らせるのであった」

阿良々木「僕が何故、そのような思いを抱くに至ったのかというと」

阿良々木「アニメ〈物語〉シリーズセカンドシーズンも終盤に差し掛かった、とある10月末のこと」

阿良々木「忍の声優であるところの、坂本真綾さんが忍役を演じるにあたって、
数年間議論されていた内容に一応の終止符が付けられたからである」

阿良々木「曰く、『坂本真綾はキャラソンを歌うのか?』という議論である」

阿良々木「彼女はキャラソンを歌わない。なぜなら、彼女は声優であり歌手でもあるからだ」

阿良々木「声を当てるのであれば、そのキャラクターを演じる坂本真綾として。歌を歌うのであれば、歌手としての坂本真綾が歌う」

阿良々木「そんな、当人たちにとっては当たり前の事を、今さらながらも僕たちは数年がかりで議論し、
結果としてはごく当たり前の結論を突きつけられた事に、僕たちは理不尽に考えてしまっているからである」

阿良々木「事の発端は数年前、元々の忍の声優だった平野綾さんのスキャンダルが遠因になっていると言えば、そうなのだろう」

阿良々木「いや、今になって考えてみれば、あんなものはスキャンダルとすら言わないのではないだろうか?」

阿良々木「未婚の女性である平野綾さんが、たまたま知り合った男性と同衾するなど、
世間一般にごく当たり前に行なわれる自然な事であろう」

阿良々木「そう。ごく、当たり前に」

阿良々木「それを僕たちは、なんとも滑稽な事に。まるで鬼の首を取ったかのように祭り上げ、結果として彼女を追いやる事となったのだ」

阿良々木「まだアニメ本編で忍がしゃべっていないのをいいことに、すでに発売されたドラマCDを無かった事にするかのように」

阿良々木「僕たちは彼女を追いやったのである」

阿良々木「その後忍役に抜擢されたにが、何を隠そう。あの坂本真綾さんなのである」

阿良々木「平野綾さんの降板に納得していなかったファンさえも、思わぬ大物声優の登場には首を縦に振らざるを得なかった」

阿良々木「それほど坂本真綾という声優は、僕たちを惹きつける何かがあったのだ」

阿良々木「だが、坂本真綾さんの就任と同時に巻き起こったのが、そう。『坂本真綾はキャラソンを歌うのか?』である」

阿良々木「当時、物語シリーズは一作目の『化物語』がかなりの好評を受け、売り上げも絶頂であった事は今さら僕から言うまでもないであろう」

阿良々木「そして、その円盤の売り上げに一役買っていたのが、登場ヒロインが歌うオープニングテーマソングでもあったのだ」

阿良々木「そのオープニングテーマのCDは、アニメのBD、もしくはDVDを購入しなくては入手出来なかったのだ」

阿良々木「その戦略が功を奏し、『化物語』は当時のアニメ界のトップに躍り出たのである」

阿良々木「それほど好評を得た『ヒロインによるオープニングテーマ』を、忍の声優・坂本真綾は歌うのかは、
ファンのみならず、アニメオタクであるならば誰しもが気になっていた事である」

阿良々木「おりしも当時は、忍野忍が全面的に活躍する、化物語の前日譚であるところの『傷物語』の映画化が決定した矢先でもあったからだ」

阿良々木「だが結果を言うならば、その傷物語の製作は、後に大ヒットした『まどかマギカ』の映画に全力で取り組むために
数年を経た現在になっても、公開日の目処すら立っておらず仕舞である」

阿良々木「それは、余計にファンの気持ちをやきもきさせる事となったのだ」

阿良々木「『坂本真綾はキャラソンを歌うのか?』という議論も、一旦はそこで終息するもにであったのだから」

阿良々木「だが、その議論は後に再燃する事になるのだ」

阿良々木「そう、〈物語〉セカンドシーズンのアニメ化である」

阿良々木「既に原作が発売されていたセカンドシーズンでは、なんと『忍野忍がメインとなるストーリーが存在しているではないか』」

阿良々木「『ならば、そのストーリーのオープニングテーマは、忍野忍が歌うものになるのがシーズンのお約束であろう』」

阿良々木「と、言うのがファンからの見方であった」

阿良々木「だが、元々坂本真綾さんのファンからの見方は違っていたのだ」

阿良々木「『坂本真綾はキャラソンを歌わない』それが彼女にとっては当たり前のルールなのだ」

阿良々木「放送前には、『セカンドシーズンはヒロインがオープニングを歌う事自体が無くなるのではないか?』
との見解もあったのだという」

阿良々木「だが、セカンドシーズン1話では堀江由衣さんがオープニングを歌ったため、
『ああ、ついに真綾もキャラソン歌うのか!』などという淡い期待をファンに与える事となった」

阿良々木「そして、結果はご存知の通りである」

阿良々木「まったく、僕たちは本当に愚かなのだと痛感させられる」

阿良々木「『声優さんが、キャラの名前で歌を歌ってくれる』」

阿良々木「そんな事をしてくれるのは、声優さんの気まぐれに他ならないのである」

阿良々木「ただそれだけで、僕たちにとっては何とも嬉しい気まぐれだろう」

阿良々木「なのに、なのに僕たちは、いつの間にか声優さんがキャラソンを歌う事を、当然の事かのように享受していたのだ」

阿良々木「これを愚かと言わずして、何であろうか?」

阿良々木「僕たちはただ、声優さんの気まぐれに甘んじていただけの身であるというのに、
いざ声優本人が歌わないというだけでこの始末である」

阿良々木「まったくもって、愚かさここに極まれりだ」

阿良々木「そんな愚かな僕たちは、不意に彼女の事を思い起こして見るのであった」

阿良々木「かつての忍野忍の声優にして、声優界きっての歌の名手であった彼女を思い出す」

阿良々木「平野綾の事を思い起こし、思い偲ぶのだ」

阿良々木「『彼女であれば、歌ってくれていたのではなかろうか?』などと、都合のいい事を考えるのであった」

阿良々木「そんな事は、もう二度とあるわけがないのに」

阿良々木「平野綾。現在ではソーシャルゲームのCMくらいでしか見かけない彼女の時間を遡れたのならば」

阿良々木「忍の時間を巻き戻す。そんな事が可能であるのならば」

阿良々木「そんなどうしようもない事を、僕、阿良々木暦は思うのであった」

阿良々木「もしも忍野忍の声優が、交代していなかったならば、と」

阿良々木「もしもまどかマギカがまったく流行らず、傷物語がもう公開していたみならば、と」

阿良々木「もしも坂本真綾さんが、キャラソンでも歌う声優であったのならば、と」

阿良々木「そんな風に、彼女を偲ぶ時間を設けるのも決して悪くはない事だと、自分に言い聞かせてみるのである」


偽鬼物語・しのぶタイム-終-

このSSまとめへのコメント

1 :  名無しさん   2014年04月03日 (木) 23:22:19   ID: T3HtXb5Q

お久しぶりです。

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