エレン「審議所で俺を救う?」ゲスミン「ああ、ただし報酬は」(148)

ゲスミン「五千万だ!!!」

エレン「」

ミカサ「」

ゲスミン「どうした、聞こえなかったのかい? このゲスミン・古美門がたっっっっっっったの五千万で受けようと言っているんだよ?」

ミカサ「なんか、とてもおかしい価格な気がする」

ゲスミン「何がおかしいと言うんだい!? あの汚い憲兵どもから命を救うんだよ!? 親友だからこそのお手頃価格!」

ミカサ「そんなはずない! だいたい親友に対してふっかけるような額じゃない!」

ゲスミン「いやいやいや! そんなことはないよぉ? いつもの僕なら二億程度なら平気で要求しているところだ。それが古くからの親友のよしみで破格の五千万まで落とした。これを良心的な値段と言わずになんて言うんだい?」

エレン「確かにな」

ミカサ「エレン!?」

エレン「命を救ってもらうってのに、こんなところで渋っててもしょうがない。死んだら何もかもおしまいなんだ」

ゲスミン「はっはっはっ、まさにその通りだよエレン・イェーガー! 僕はただ純粋に親友である君を救いたいだけなんだ。ただほんのちょぉぉぉっとだけ対価をもらわないと示しがつかないからねぇ」

ミカサ「そもそもエレンは五千万なんていう大金は持ち合わせていない。それぐらいあなたも知っているはず」

ゲスミン「ふっふっふーん、甘いねぇミカサ! シガンシナ時代、僕は君達の家に訪れた時しっかり調べておいたのさ」

ゲスミン「エレン、君のお父さんは医者というだけあってずいぶんお金を貯めこんでいたねぇ。地下室になんと一億分の鋼貨が!!」

エレン「どうやって地下室入ったのお前」

ゲスミン「なんか鋼貨以外にも世界をひっくり返すような衝撃的な何かがあった気がしたが、お金になりそうにないからなんだったか忘れたよ」

ミカサ「それは思い出してくれなきゃ人類が困る」

ゲスミン「とぉぉぉぉにぃぃぃぃかぁぁぁぁくぅぅぅぅ!!! 君の家には一億ぶんの財産があるというわけだ! いずれウォール・マリアを奪還したらその半分を報酬としていただくとしよう」

エレン「で、でも……」

ゲスミン「エレン……君はまさか忘れてしまったのかい?」

ゲスミン「僕らは必ず、故郷を取り戻すと誓っただろう?」キラキラキラ

エレン「!! そ、そうだ! ゲスミンの言うとおりだ」

ミカサ「あの、エレン」

エレン「俺は必ず巨人どもを駆逐し、ウォール・マリアを奪還する!」

ミカサ「それは分かるんだけど、エレン」

エレン「そして俺は父さんの地下室へ行って」

ミカサ「エレン、あの……エレぇン?」

エレン「ゲスミンに五千万を支払うんだ!!!!」

ミカサ「そうじゃないでしょエレン!?」

ゲスミン「ふはははははは!! 契約成立だ、エレン!! 後はこの僕に任せたまえ!!!」

ゲスミン「相手は小汚い脇役面した憲兵団師団長様だ!! あんな小物など、この僕がちぎっては投げちぎっては投げ最後には審議所の片隅に掃き捨てられるチリの塊にしてくれるわ!!」シャラァァァン

ミカサ「その七三分けを指でなぞる癖やめて。イラッとくる」

ゲスミン「君にこの僕の七三の美しさが理解できないだけだよ! 恥を知れ!」ビシッ!m9

ミカサ「その人を指差す癖もほんとやめて」

ゲスミン「では明日の兵法会議を楽しみにしてくれ! それじゃあ僕はこれで失礼するよ!」スタスタスタ

バタン

ミカサ「…………エレン、どうしてあんな男に頼んでしまったの」

エレン「何言ってんだ、ゲスミンの頭の良さはお前だって知ってるだろ? それに何より、あいつは俺の親友だ。お前だって同じ幼馴染みだろ」

ミカサ「確かにゲスミンとはシガンシナ時代からの幼馴染み……」

ミカサ「でも私は昔からあの男がまったく好きになれない! あれは金の亡者! エレンもいい加減縁を切るべき!」

エレン「俺の親友を悪く言うのは許さねぇぞミカサ! 確かにちょっとゲスいところはあるけど、なんだかんだで良い奴なんだよ、ゲスミンは!」

ミカサ「なら聞こう、ゲスミンのどこが”良い奴”なの?」

エレン「…………」

ミカサ「…………」

エレン「あ、頭がいいだろ? いつも着てるスーツが格好良いだろ? 顔も可愛いだろ?」

ミカサ「その顔もあの七三分けでだいぶ損してる気がする。というかそもそも私はどこが”良い奴”なのかを聞いたのだけど」

エレン「こ、こうして俺を助けようとしてくれている」

ミカサ「法外とも言える大金を要求してだけど」

エレン「…………」

ミカサ「…………」

エレン「明日の審議所、俺頑張るよ」

ミカサ「うん」

~翌日・審議所~

ザックレー「えぇ、それでは兵法会議を始める。本件はエレン・イェーガーの生死についてを――」

エレン(い、いよいよ始まった。なんか身動き取れないように縛られたけど、大丈夫だ。ゲスミンがすぐに助けてくれるはず)

ザックレー「では憲兵団より案を聞かせてくれ」

ナイル「我々はエレンの人体を徹底的に調べあげた後、速やかに処分すべきと考えております」

ナイル「彼の存在を肯定することの実害の大きさを考慮した結果、この結論に至りました。中央で実権を握る有力者達は――」

エレン(くそっ、やっぱり憲兵団は俺を殺すつもりなのか……まさに俺の全てが……いや、人類の全てがかかっている会議かもしれない)

ザックレー「ふむ……では次は調査兵団の案を伺おう」

エルヴィン「はい、調査兵団13代団長エルヴィン・スミスより提案させていただきます。我々調査兵団はエレンをm ゲスミン「エレンの無実を主張いたします!!!!!!」

エレン「」

ミカサ「」

エルヴィン「」

ザックレー「」

その他もろもろ「」

ザックレー「あー……すまない、君は確かゲスミン……古美門?と言ったかな。エレン・イェーガーの弁護人として出席していると聞いたが、君は、え?なに?エレンの無実?を主張する?え?」

ゲスミン「ええ、その通りですよザックレー総統。この私ゲスミン・古美門はエレン・イェーガーが巨人であるという濡れ衣をこの場で晴らしたいのです!!」

エルヴィン「あの、ゲスミン君、すまないがちょっと黙っててほs」

バン!

ナイル「何を言っているんだ七三小僧!!! エレンが巨人に変身できることは今更過ぎる事実だ! それを否定することなどできるはずがない!!」

レディースエーンジェントルメーンオブザジュリィィィ!

ナイル「!?」

アイリストゥマイケース!!

リーゴハイ!!!!!

エレン(え、何このBGM)

パッパラ パッパラ パッパラ

ゲスミン「いいいいですかぁぁぁ? まずあなた達が最初に彼を巨人だと思い込んだ時のことを思い出してください」

ゲスミン「例の巨人は多くの他の巨人を倒した後、力尽きた。すると蒸発する巨人のうなじからエレン・イェーガーが姿を現した」

ナイル「そうだ! それを大勢の者が見たんだ!! 間違いなど無い!!!」

ゲスミン「ほ・ん・と・う・に……そう断言できるんですかねぇ?」

ナイル「はぁ?」

ゲスミン「あんた達はどこからその状況を見た? それはそれは遠く離れた安全地帯からだ! あの距離では望遠鏡を使っても、人間の男がうなじから出たぐらいしか把握できやしない!!」

ナイル「バカバカしい! 近くで見た者だっているではないか!」

ゲスミン「ほう、それは?」

ナイル「しらばっくれるな、名前はあがっている。ライナー・ブラウン、ベルトルト・フーバー、アニ・レオンハート、ジャン・キルシュタイン、ミカサ・アッカーマン……そしてお前だゲスミン・古美門!!」

エレン(前から思ってたけど、あいつの名前ちょっとおかしいな)

ゲスミン「…………」

ナイル「どうだ、ぐうの音も出まい! なにせ皮肉なことに、お前自身が親友が巨人であることを証明しているのだからな!!」

ゲスミン「あ、失礼。ちょっと欠伸を我慢していたもので」

ナイル「あぁ!?」イラッ

ゲスミン「つかぬ事をお尋ねしますが……今あげた名前の中で、誰がそれを証言してくれるのですか?」

ナイル「何を言っている、まずお前自身が――」

ゲスミン「え? 私? 私は知りませんよそんなこと?」

ナイル「は?」

ゲスミン「ねぇミカサぁ、君も見てないよね? エレンがうなじから出てくるところなんて」

ミカサ「私見てない、エレンが巨人だなんて知らない全然知らなーい(棒)」バンザーイ

ナイル「おい」

ゲスミン「いやぁぁぁ残念です! どうやら僕も彼女もそんな事実は覚えがないようですね!!」

ナイル「いやおかしいだろ、何平然と言ってるんだ。て言うかそっちの女、完全に棒だったろ」

ミカサ「私、口下手なんで」

ナイル「あれはそういうのじゃない気がする」

エレン(え、まさかそれで通す気なのお前ら?)

ナイル「エルヴィン、お前もそろそろ何か言ったらどうだ。いくらなんでも無理があるぞ」

エルヴィン「…………」

ナイル「エルヴィン?」

ゲスミン「ゲフンゲフン」

エルヴィン「あ、私も……彼が巨人じゃないような気がしてきたかな」

ナイル「アレッ!?」

「おいおいマジかよ」
「調査兵団、凄い無茶してきたぞ」
「いくらなんでもそれはないだろ……」
「血迷ったかエルヴィン団長!?」

ナイル「ふ、ふざけている……ふざけている! ザックレー総統! こんな会議は茶番にほかならない!!」

ザックレー「気持ちはわかるけど、とりあえず聞いてみないと」

ナイル「えー……まぁ総統がそう言うなら…………」

エレン(もう少し粘れよお前も)

ゲスミン「間近で現場を目撃した私とミカサはどちらもあなた方の主張するような事実は目撃していない。もう議論することなど何もない!!」ビシッ!m9

ナイル「いやだいぶあるわ。とりあえず他にも目撃者が四人もいる。あとこっち指差すな」

ザックレー「ふむ、ではその四人にこの場で証言してもらったほうがいいだろうか」

ナイル「お願いします。こんな茶番、さっさと終わらせてしまいましょう」

ゲスミン「」ニヤリ

~しばらく後~

ナイル「…………で」

ライナー「…………」

ナイル「なんで来たのがこいつだけなの?」

ゲスミン「仕方ないでしょう、今すぐ目撃者全員召集するには当然時間が必要です。ライナーはたまたまこの審議所に来ていたのです」

ライナー「はい、たまたま会議を見に来ていました」

ナイル「まぁいい……ではライナー・ブラウン、君に聞こう。君は確かに巨人のうなじから――」

ライナー「ォォォォ俺は巨ォ人じゃァねエエエエエエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァラララララララララララ!!!!!!!!」バン!!!

ナイル「!?」

ゲスミン「すみません、彼は巨人の事になるとなぜかちょっと情緒不安定になるので」

ザックレー「なにそれ怖い」

エルヴィン「ヤバいな」

エレン(超大型が現れる数時間前にも、なぜか発狂してベルトルトに怪我させてたな)

ナイル「お願いだから質問をさせてくれ。別に君を巨人だと言っているわけじゃないんだ」

ライナー「本当ですか」

ナイル「本当だとも」

ライナー「俺を人間として認めてくれるんですか?」

ナイル「君いじめられてるの?」

ゲスミン「いじめなど我々訓練兵団には存在しません! アンケートを取っても全員ものの見事に否定しました!!」

ナイル「黙殺してる感が半端無いんだが」

エレン(いじめはないけど、たまに周りをドン引きさせるからなライナー。ベルトルト早く来てくれ)

ナイル「改めて聞くぞ。君は確かに巨人のうなじからエレンが出てくるのを目撃したね?」

ライナー「…………」

ナイル「……ライナーくん、まさか君は仲間のためとはいえこの審議所で嘘をつくのか?」

ライナー「それは……」

ナイル「君はそれでも……兵士なのか?」

ライナー「!!」

エレン(なんだ? ライナーが”兵士”という言葉に反応を示したぞ?)

ライナー「そうだ……俺は兵士としてあるまじき行為をするところだった」

ゲスミン「えっ、ちょっとライナー」

ライナー「答えます、俺は確かにあの時、あの場所で、巨人のうなじからエレンが――」

バタン!

ベルトルト「ライナああああああああああああああああああああああああ!!!!」

エレン(うおっ、保護者が来た)

ベルトルト「ライナー!! 君はなんだ? 兵士だと? 違う、君は戦士だろ!!」

ライナー「!?」

ベルトルト「僕達の使命を思い出せ! どう答えるのがベストか……ちょっと考えれば分かるはずだ!!」

ライナー「そ、そうだ、そうだとも!!」

ナイル「なんだ、どうしたんだ」

ライナー「俺は巨人のエレンなんて知りません!」キッパリ

ナイル「ええええええええええええええ」

ナイル「待て、絶対嘘ついたろ今。バレバレだぞ」

ライナー「そんなことはありません、俺は兵士ですから」キリッ

ナイル「今のやりとり見てたら説得力ねぇよ! おいそこのデクの棒! 何を吹き込んだ!!」

ベルトルト「ぼ、僕は彼に喝を入れただけです。本当です」

ベルトルト「あ、それと、僕もエレンが巨人だなんて知りませんから。全然見てませんから」

ゲスミン「あーっはっはっはっ!! さすがはライナーの保護者様だ!!」ケラケラケラ

ナイル「くっ、ろくでもない真似を!!」

エレン(本当にろくでもないな)

ナイル「だがまだ二人いる……例えばアニ・レオンハートなら」

ベルトルト「あ、彼女なら来ませんよ」

ナイル「え?」

ベルトルト「『あの男の顔を見たくない』って言って部屋にこもりました。ここに来ることはありません」

ナイル「あの男って誰だよ……」

ライナー「おい、まさか俺じゃないだろうな!?」

ベルトルト「十中八九君だよ」

ライナー「」

エレン(あぁ、やっぱアニに嫌われてるのかライナー)

ゲスミン「…………」

そろそろ寝る

ザックレー「あー……うん、元気だしてね」

ライナー「はい……」

ベルトルト「一応、アニもエレンのことは知らないと証言してくれました。召集しに来た兵士さんがそれを保証してくれます」

ナイル「くそっ、どいつもこいつも見え見えな嘘をつきやがって。なら最後はジャン・キルシュタインだ! 奴はまだ来ないのか!?」

レディースエーンジェントルメーンオブザジュリィィィ!

ナイル「!?」

アイリストゥマイケース!!

エレン(だから誰が歌ってんだよこのBGM)

ライナー「リーゴハイ!!!!!」

エレン「お前かよ」

ゲスミン「ジャンを待つ必要性などありません! なぜなら私をはじめ、あなた方が目撃した巨人の正体は…………彼なんですから」

ナイル「はぁ!?」

ライナー「パッパラ パッパラ パッパラ」

ゲスミン「皆さんは遠くから目撃したから見分けがつかなかったでしょう……しかぁし!!」

ライナー「パッパラ パッパラ パッパラ」

ゲスミン「あのうなじから出てきたのはエレン・イェーガーではなく、ほかならぬジャン・キルシュタインだったのですッ!!!」

ライナー「パッパラ パッパラ パッパラ」

ナイル「とりあえずそいつ黙らせろ」

ベルトルト「いいかいライナー、君は戦士だ」

ライナー「ああ、俺は戦士だ」

ベルトルト「戦士はリーゴハイ!!!!!とか言わない」

ライナー「リーゴ」

ベルトルト「ライナー!!!」

ライナー「…………ハイ」

ザックレー「終わった?」

ライナー「ハイ」

エレン(そのハイは絶対終わってないだろ)

ナイル「とにかく……君の主張は支離滅裂だ。巨人の正体はジャン・キルシュタインだっただと? 嘘を嘘で塗り固めるのもいい加減にしろ!!」

ゲスミン「実に心外ですねぇ、私は嘘などミジンコの鼻クソほどもついてはおりません!!」

ナイル「貴様がそう証言しようと、他の連中はどうだろうな……おい、ミカサ・アッカーマン! お前はどうなんだ?」

ミカサ「…………」

ナイル「まさかだと思うが、家族を助けるためになんの罪もない仲間に濡れ衣を着せるつもりじゃないだろうな?」

ミカサ「私は……」

バタン!

ジャン「今来たぜ」

ジャン「ミカサが俺の助けを必要としているのなら」

ジャン「俺はたとえ地の果てまでも」

ジャン「お前を助けに駆けつける!!!」キリッ

ミカサ「巨人のうなじからジャンが出てくるのを見ました」

ジャン「」

ジャン「」

ジャン「」

ジャン「」

ベルトルト「……気を確かに、ジャン」

ジャン「」

ザックレー「すごいな、瞬殺じゃないか」

ジャン「」

ミカサ「……ジャン」

ジャン「パッパラ パッパラ パッパラ」

ナイル「おい、また一人発症したぞ」

~しばらく後~

ミカサ「ジャン、落ち着いた?」

ジャン「ああ、すまねぇ。みっともないとこ見せちまったな」

ミカサ「そんなことない。ありがとう、ジャン」

ジャン「い、いや良いって別に///」

ナイル「おい、そんなことはどうでもいい! このままじゃお前は巨人の濡れ衣を着せられるんだぞ!? いいのか、否定しなくても!?」

ジャン「うっ……それは…………」

ミカサ「巨人のジャン……とても格好良かった」

ジャン「巨人だった気がします」

ナイル「待て、今完全に誘導されただろ。なんかお前の目、焦点がおかしいぞ」

ゲスミン「いいえ! 確かに彼は巨人です!! あの場にいた全員がそれを見ているのです!! だよねぇ、みんな?」ニヤニヤ

ミカサ「もちろん。巨人から出てきたジャンはやたらイケメンだった」

ジャン「断然巨人です」

ライナー「そうだな、確かにあれはジャンだったな」

ベルトルト「僕も同じです。あとアニもそう言ってました」

エルヴィン「決まりのようだな……」

ナイル「なんでだよッ!!」

ゲスミン「間近で見た人間が全員そう言っているのです。往生際が悪いですよナイル師団長」

ナイル「こんなのは茶番だ!! ザックレー総統、こんなのはもはや会議ではない!! 即刻終わらせるべきだ!!!」

ザックレー「もうちょっと頑張ろうよ」

ナイル「もうちょっと頑張ります」

エレン(お前は総統に対してもうちょっと頑張れよ)

ザックレー「まぁそういうわけでね、もう少し会議を続けようか」

エルヴィン「了解した」

ナイル「だがエルヴィン……お前は本当にこれでいいのか?」

エルヴィン「!」

ナイル「こんな方法で勝ち取ることが、本当に人類のためだと言うのか?」

エルヴィン「それは……」

ゲスミン「ゲフンゲフン」

エルヴィン「ジャン・キルシュタインが巨人で間違いないと思います」

ナイル「お前なんか弱み握られてるの?」

ザックレー「ふむ、まさかこれで決定なのかね」

ナイル「そんなことはありません! 我々憲兵団は、駐屯兵団のキッツ・ヴェールマンを召集したいと思います!!」

エレン(……やっぱりな。俺が巨人化したのを駐屯兵団はしっかりと目撃している。憲兵団がそれを見落とすはずがない)

エレン(いくらゲスミンでも、これはピンチなんじゃ……)

ゲスミン「フンフンフーン♪」シュッシュッ

エレン(七三の手入れをしていらっしゃる)

~しばらく後~

キッツ「はっ! 駐屯兵団隊長キッツ・ヴェールマン! ただ今参りまし――」

ゲスミン「おおおおおおおおおおおおおおう!! キッツくんじゃぁないかああああ!!!」

キッツ「ひっ」ビクッ

ゲスミン「いや~わざわざ審議所に来てくれるなんて! また会えて嬉しいよ子鹿くん!」

キッツ「」ブルブル

ザックレー「ええと、二人はどういうご関係なのかな?」

ゲスミン「なぁに、ちょっと以前彼の浮気現場を発見して……おっと危ない危ない! いやぁ、友達みたいなものですよ、僕と彼は!」ゲスミンスマイル

ザックレー「ほう、隊長とお友達とは実に凄い。言われてみれば、キッツくんも子鹿のような顔でリラックスしているように見える」

エレン(節穴なのこの人?)

ナイル「えっと……とりあえず、当時のことを証言してくれるだろうか」

キッツ「ハハハハ、ハイィィィ↑↑↑」ビクビク

エレン(駄目だ、声が既に上ずっている)

キッツ「わ、私達駐屯兵団は壁上から目撃したのです、巨人のうなじから現れたエレン・イェーガーを!!」

ゲスミン「だがしかーし! あの距離ではエレンであるとは断言できないはず!!」

キッツ「そ、それは……」

ナイル「ひるむなぁ!!」

キッツ「ハイィィィ↑↑↑」

エレン(やばい、見ていてスゲー可哀想)

キッツ「た、確かにあの距離ではエレン・イェーガーだと断定はできない……が、その後我々が彼を取り囲んだ時、目の前でエレン・イェーガーは巨人に変身してみせたのです!!」

エレン(あれは……榴弾から守るために仕方なく…………)

キッツ「私だけではない、大勢の人間が見たんだ! あれは見間違えのしようがない!!」

ナイル「では断言できるんだな? エレン・イェーガーが巨人であると」

キッツ「ええ、もちろんです! エレン・イェーガーの正体は――」

ゲスミン「あ~る~晴れた~昼下がり~♪」

キッツ「!?」

ゲスミン「市場へ続~く道~♪」

エレン(え、なんだ、どうしたんだゲスミン)

ゲスミン「ドナドナド~ナ~ド~ナ~♪」

ゲスミン「”子鹿”を乗~せ~て~♪」

キッツ「」ビクゥ!!

ゲスミン「ドナドナド~ナ~ド~ナ~♪」

ゲスミン「荷馬車が揺~れ~る~♪」

ザックレー「はて、確か”子鹿”ではなく”子牛”だったような」

ゲスミン「いえ、彼女は子鹿を飼っているので」

ザックレー「彼女?」

キッツ「ま、待ってくれ! 妻には……妻にだけは!!」

ナイル「おい、いい加減にしろ! 早く証言を――」

キッツ「私が見たのは確かにジャン・キルシュタインだった!!!」

ナイル「」

ザックレー「おや、驚いたね。証言がコロッと変わったようだが」

キッツ「今になって思い返すと、あれはエレン・イェーガーではなかったです、ええ!! あの悪人面は間違いなくジャン・キルシュタインです!!!」

エレン(俺、あんな馬面じゃねぇよ)

ナイル「話が違うじゃねぇか! なんでそうなるんだよ!! 他の駐屯兵はどう言っているんだ!?」

キッツ「私はあの場にいた駐屯兵団の代表です! 私がジャン・キルシュタインだと言ったらジャン・キルシュタインなんだ!! ええい、口答えは許さん!!!」

ナイル「なぜだ……」

ジャン「順調に俺の容疑が固められてる気がする」

ミカサ「素敵よジャン」

ジャン「おう」

ナイル「くっ……馬鹿な。多少距離があったとはいえ、少なくとも髪の色はぜんぜん違うはずだ。見間違えるはずがない!」

ゲスミン「そのことですが……実はジャン・キルシュタインはあの時カツラをかぶっていたのですよ。ほら、これがそのカツラです」ヒョイ

エルヴィン「」ガタッ

ザックレー「エルヴィン団長、座りなさい」

エルヴィン「」ガタン

ゲスミン「この黒髪のカツラがあれば、エレンと見間違えられても無理はありません。なにせ彼らは体型が近く、目つきも同じように凶悪……似たような悪人面です」

ゲスミン「実際、本編でもまんまと誰かさんは騙されてくれました」

ナイル「いったい何の話……おい、なぜこっちを見る、やめろ」

ザックレー「ふむ、しかしそうなると、あの後巨人に変身してウォール・ローゼの穴を塞いだのはエレンではなく彼のほうだということになるね」

ゲスミン「そうなんです! なんと我らが人類の救世主はジャン・キルシュタインだったのです!!」

ジャン「!?」

エレン「えっ」

ゲスミン「そこで柱に括りつけられている男は何かの間違いで捕まってしまっただけに過ぎません! いわば彼は通りすがりの一般人だったのです!!」

エレン「ちょっと待って」

ゲスミン「さぁ、どうか無実の一般人エレン・イェーガーの解放を!」

エレン「ちょっと待ってええええええええええええ!!!」

ゲスミン「どうしたエレン!? なんか榴弾撃たれる直前より追い詰められた顔してるぞ!!」

エレン「おかしいって! 俺の努力を否定する気か!! どんな思いで必死に岩運んだと思ってんだ!!」

ゲスミン「……ん?」

エレン「違うんですみなさん! ジャンは濡れ衣なんです! あの大岩を運び、見事人類を初勝利へと導いたのは……」

エレン「この俺、救・世・主・エレン・イェーガーなんです!!!」ドヤァ

ゲスミン「そんなキャラだっけ君」

ナイル「あ、あぁ、そのとおりだ! 君が巨人なんだよエレン・イェーガー!!」

エレン「はい、そうです! 俺が……俺こそが、巨人なんです……!!」

ゲスミン「自殺願望者なのかい、君」

ジャン「ふざけるなぁ!!」ガタッ

エレン「!」

ジャン「もうお前の時代は終わったんだよ! ……ザックレー総統、違うんです。巨人は……俺のほうなんです!」

エレン「おまっ、待てよ! 巨人は俺だっつってんだろ! この嘘つきホースが!!」

ジャン「俺は水なんて出さねぇよ!!」

エレン「馬のほうに決まってんだろバーカ! この低学歴!!」

ジャン「学歴俺と同じじゃねぇかお前!!!」

ゲスミン「」

ミカサ「」

ミカサ「どうするの、ゲスミン。まさか審議所まで来ていつも通りの喧嘩に発展するとは思わなかった」

ゲスミン「僕もちょっと予想外だった」

エレン(くそっ、こうなったら思ってること全部言ってやる!)

エレン「大体あなた方は、巨人を見たことも無いクセに何がそんなに怖いんですか?」

ゲスミン「ちょっ」

エレン「力を持ってる人が戦わなくてどうするんですか。生きる為に戦うのが怖いって言うなら力を貸して下さいよ」

ゲスミン「待て、待つんだ」

エレン「この……腰抜け共め……」

ゲスミン「よすんだエレン!!」

エレン「いいから黙って全部俺に投資しrrrrrrrr」バキィッ!

ゲスミン「だから言ったのに」

ナイル「歯ぁ飛んだぞ」

エレン(え、なに? 今俺蹴られたの?)

エレン「だ、誰だ……誰だよ俺を蹴ったのは!?」ヒリヒリ

ザックレー「誰だね、神聖な審議所で暴力を振るうのは?」

ザワザワザワザワ

エレン「おい、どこにいる!? 姿を現せ、この卑怯者!!」

\ 俺だ /

エレン「!?」

ミカサ「い、いったいどこに?」

エルヴィン「姿が見えないぞ」

\ (눈_눈) /

エレン「リヴァイ兵長!!」

\ (눈_눈)ブラウザによっては文字化けするぜ /

エルヴィン「いたのか、リヴァイ」

↓この辺に兵長
\ ああ、ずっとな /

ジャン「全然気が付かなかった……」

\ 悪かったな背が低くて /

ミカサ「リヴァイ兵長……どうしてエレンを蹴ったんですか」

\ あいつが好き放題言い放ったタイミングで蹴り飛ばす予定だったんだ /

\ でもちょっとフライングした /

エレン「せめて最後まで言わせて欲しかったです」

ナイル「というかお前だけ吹き出しの表現おかしくないか」

\ 俺より低いキャラは他にもいるのにこの仕打ち /

ゲスミン「キャラ付けの問題ですねぇ。この僕より背の低いオッサンというのはなんというか……ハハッ」

\ 笑うな /

ゲスミン「まぁとにかく、これで落ち着いただろエレン?」

エレン「あ、あぁ、なんとかな」

ゲスミン「それじゃあ聞こう。君は巨人?」

エレン「いいえ」

ゲスミン「以上です。もうこれで議論の余地はありません。巨人の正体はカツラをかぶったジャンだったのです」

ジャン「なぁミカサ、もし俺が巨人ということになったら俺はいったいどうなるんだ」

ミカサ「考えてはダメよ、ジャン」

ジャン「わかった」

ザックレー「ふむ、信じられないことに、そういうことになるらしい……異論はないな、ナイル師団長」

ナイル「…………」

ザックレー「ナイル?」

ナイル「どうやら手段を選べなくなってきたようですね」

エレン(な、なんだ? 師団長の様子がおかしいぞ)

ナイル「本当なら内密にしておきたかったが仕方ない……ある人物を証人喚問します」

ゲスミン「はっはっはぁ!! 今更誰を呼ぼうともう遅い! エレンが巨人であることなど誰であろうと証明できないのだよナイルくん!!」ビシッ!m9

ナイル「エレン・イェーガーの父親……グリシャ・イェーガーをお呼びしました」

ゲスミン「」m9

エレン「」

ミカサ「」

~しばらく後~

グリシャ「お待たせ」

エレン「お待たせじゃねーよ」

ミカサ「今までどこ行ってたの」

グリシャ「内地へ向かう途中でぶっ倒れてな。憲兵に拾ってもらった後、国王のもとでぬくぬくと暮らしてた」

エレン「ちょっと殴らせろ」

グリシャ「いや、ちゃんとした事情もあるんだよ。お前に打った注射が人類を救う鍵になるかもしれないって――」

ミカサ「ちょっと待って。今……注射を打ったって言った?」

グリシャ「あぁ。巨人に変身できるようになる注射だ」

エレン「」

ミカサ「」

ナイル「くくく……ふーっはっはっはっ! その注射の効果はこちらでも実証済みだ! もはや言い逃れはできないぞエレン!!」

ミカサ「おじさん……どうしてとどめを刺したの」

グリシャ「えっ、私なにかマズイこと言ったのか?」

エレン「さてはこの状況について何も聞かされてねぇな」

ゲスミン「…………」

ナイル「どうしたぁ、ゲスミン・古美門? さすがのお前もぐぅの音も出まい!」

ゲスミン「…………」

ゲスミン「ふっ……」

ナイル「!?」

ゲスミン「ぐぅの音も出まい? 愚問だね! この私ならぐぅどころかちょきでもぱーでも出してご覧にいれましょう!」

ライナー「レディースエーンジェントルメーンオブザジュリィィィ!」

ベルトルト「ライナー?」

ライナー「アイリストゥマイケース!!」

ライナー「リーゴハイ!!!!!」

ライナー「パッパラ パッパラ パッパラ」

ゲスミン「さて、もう嘘を通すことはできなさそうですねぇ。その通り、巨人の正体はエレンだったのです!」

エレン「あれ!? ゲスミン!?」

ゲスミン「……ところで私、実は昨日独自の調査で104期生の上位十人のアリバイを全員洗い出しました」

ナイル「はぁ? 突然何の話だ?」

ゲスミン「その結果……なんと一人だけアリバイが曖昧な人間が見つかったのです」

ゲスミン「その人物の名前は……ベルトルト・フーバー!」

ベルトルト「えっ」

ゲスミン「実に奇妙な話です。ウォール・ローゼの外壁が破られたあの日、超大型巨人が現れる直前までにアリバイがぽっかり抜けているのはベルトルトだけなのです」

ベルトルト「えっ……えっ……?」

ライナー「それはベルトルトの影が薄いからだ! 仕方ないだろ!」

ベルトルト「ライナー、それは庇ってるの?」

ザックレー「しかしそれがどうしたというのかね? 本件とは関係無さそうだが……」

ゲスミン「甘ァァァァァァい!! 超大型巨人には知性がありました! そして大岩を運んだエレン・イェーガーの巨人にもきちんと知性がありました!」

ゲスミン「つまりですよ、超大型巨人は人間が変身したものであると言えるのです!」

エルヴィン「あ、そうだったのか!」

\ 今気づいたのかお前 /

ナイル「ははははは! 驚いたな、まさか超大型巨人の正体はそのベルトルトくんだと言いたいのか?」

ベルトルト「ち、血迷ったのかいゲスミン!? 僕がそんな……人類の敵なはずないじゃないか!」

ゲスミン「ほうほう、へー? いったいなぜそんなこと断言できる?」

ベルトルト「無茶苦茶だ! 僕が超大型巨人だと示す痕跡なんて何一つ無い! 完全に言いがかりだ!!」

ゲスミン「痕跡がない……くっくっくっ、そうです……それこそが君が巨人だということを示す痕跡なのです!!!!」

ベルトルト「ど、どういう意味だ!?」

ゲスミン「超大型巨人が現れる数時間前、君は発狂したライナーに怪我をさせられた。ところで……その怪我、いったいいつの間に治ってしまったんだい?」

ベルトルト「!?」

ジャン「そう言えば……そのとおりだ! ベルトルトのことだからすっかり忘れてたが、超大型巨人が出現した後に会った時、怪我がすっかり消えていた!」

ゲスミン「エレン・イェーガーは巨人に手足を食いちぎられたにもかかわらず、巨人化することによって見事その手足を回復させました! つまり、巨人に変身すれば怪我は綺麗に消えてしまうのです!」

ゲスミン「わずか数時間で怪我を回復させるなど人間には不可能! となると、ベルトルト・フーバーが巨人に変身したとしか考えられない! そしてあの後出現した知性のある巨人は超大型巨人のみ! よって彼こそが超大型巨人だと断定できるのです!!」

ライナー「やばいな、一瞬で証明されちまったな」ハハハ

ベルトルト「なんで他人事みたいに笑ってるのライナー!?」

ゲスミン「そしてベルトルトが巨人となると、当然その同郷だったと主張するライナーにも巨人疑惑がかかってくる」

ゲスミン「っていうかお前は鎧の巨人と似すぎなんだよ!!!」

ライナー「あ」

ベルトルト「ほら見ろ」

ザワザワザワザワ

ジャン「す、すごいことになってきたな……」

ミカサ「まさかあの二人が巨人だったなんて……」

エレン「だがもし本当なら、人類最大の敵を一気に潰すことができるな」

ミカサ「その通り」

ジャン「…………」

エレン「ん、どうしたジャン?」

ジャン「いや……」

ジャン「…………」

ジャン(なんでナチュラルに隣に立ってるのこいつ)

ベルトルト「くそっ、おのれゲスミン・古美門!」

ゲスミン「これで終わると思うなよ裏切り者め。他にも仲間がいるんだろ?」

ベルトルト「!?」

ライナー「ヤバい」

ゲスミン「トロスト区奪還作戦にて、実は104期生上位陣の一人が尊い犠牲になっています……」

ゲスミン「彼の名前はマルコ・ボット……まわりから慕われるリーダー的存在でした」

ゲスミン「ですが彼も実は……人間に化けた巨人によって命を奪われた犠牲者だったのです!!」

ベルトルト「っ……!」

エレン「くそっ、許せねぇ!」

エレン「よくもあのマルコを……!!」

エレン「て言うかマルコ死んでたの?」

ミカサ「うん」

ジャン「まぁな」

ゲスミン「調べさせてもらいましたよぉ、104期生全員の立体機動装置を」

ゲスミン「するとなんてことでしょう! なぜかある人物がマルコの装置を持ち込んでいたことが発覚したのです!」

ゲスミン「その人物の名前はアニ・レオンハート! なぜかマルコは不自然な死を遂げ、なぜか彼女はその彼の装置を持っていたのです!」

ゲスミン「いったいこれはどういうことでしょうねぇ?」ゲスミンスマイル

ベルトルト「そ、それだけで彼女が巨人だとは断言できない! たまたま自分の装置が壊れてしまったから代わりに回収したという可能性もあるじゃないか!」

ゲスミン「いいや違うね、マルコはアニに殺されたんだ」

ベルトルト「よくも!」

ゲスミン「じゃあ本人をお呼びしようじゃないか? ねぇ?」ニヤニヤ

ベルトルト「!」

ナイル「なんだ……なんだこの会議は…………いったいどこへ向かっているんだ」

ザックレー「あー……とりあえずアニ・レオンハート呼ぼっか」

~しばらく後~

アニ「…………」

ザックレー「いらっしゃい、お嬢ちゃん」

アニ「どうも」

ザックレー「さっき呼んだときは来てくれなかったみたいだが、理由があるのか?」

アニ「あの男の顔を見たくなかっただけだよ」

ライナー「俺か、やはり俺なのか」

アニ「あんたじゃないから安心して」

ライナー「マジで?」

ベルトルト「えっ、そうだったの?」

ライナー「ヤッター!」

ジャン「じゃあ誰のことを言ってるんだ」

アニ「私が見たくなかったのはね……」

アニ「あの顔だよ!」ビシッ!m9

ゲスミン「…………」

エレン「え、ゲスミン? なんで?」

ジャン「あー……なるほどな、うん」

ミカサ「エレン、もしかして知らないの?」

エレン「何を?」

ミカサ「アニはゲスミンの元恋人」

エレン「…………」

エレン「パードゥン?」

アニ「あぁ、忘れもしないよ……ゲスミン」

ゲスミン「アニ、あれは仕方がなかったんだ」

ゲスミン「何かを捨てなければ、何も変えることはできない」

アニ「…………」

ゲスミン「僕はただ、変えたかったんだ……鳥籠に囚われていた彼らの未来を」

アニ「そんなの……理由にならない!」バッ!

ライナー「アニ、よせ!」ガシッ

アニ「離してライナー! 私はこいつを……こいつを許すことができない!!」ジタバタ

アニ「こいつは大勢の命を奪った!! よくも……よくもぉ!!」

アニ「よくも私のアリさん観察キットをぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」ウワーン

ゲスミン「アリの巣にセメントを流し込んだのは本当に申し訳ないと思ってるんだ!!」

アニ「嘘つくなああああ!! あの後あんた、『すげーいい標本作れたよ、見て見てー♪』とか言いながらセメントで標本化したアリの巣を笑顔で見せびらかしてたじゃないかああああああ!!!」

ゲスミン「前々から興味があったんで、つい」

アニ「どぼぢでえええええええええええええええ!!!!」ナミダー

エレン(ゲスミン、お前はとんでもないゲス野郎だよ)

ライナー「お、落ち着くんだアニ! ほらベルトルト、お前も何か言ってやれ!」

ベルトルト「アニガ……ゲスミンノ……モトコイビト? エ、ボクキイテナイヨ? エ?」

ライナー「ベルトルト!?」

ベルトルト「パッパラ パッパラ パッパラ」

ライナー「カムバック! ベルトルトぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

エレン(保護者が逆転している)

ナイル「と、とにかく証言してもらうぞ! アニ・レオンハート、お前はなぜマルコの立体機動装置を持っていた?」

アニ「ヒック……ヒック……グスン……」

ナイル「お、落ち着いてから答えてくれればいいんだぞ?」

ザックレー「おじさん達、ちゃんと待ってるからね、ゆっくりで良いからね」

エルヴィン「いつまでも待っているぞ!」

エレン(優しいなお前ら)

アニ「あ……はい…………ゴホン」

アニ「私がマルコの装置を回収したのは、仲間の遺品だったからです。同じ104期生として、せめて彼の装置だけでも回収してあげたかったんです」

ザックレー「ええ娘や」

ゲスミン「お・や・お・や? それは少々無理がありませんかね? そもそもあの戦いで亡くなったのは彼だけじゃない、ミーナ、トーマス……その他にも何人も犠牲になっている。それなのにわざわざ彼の装置だけを遺品として回収したと?」

アニ「あの状況ですぐ回収できたのはマルコのだけだったんだよ……」

ゲスミン「好きだったんだね、マルコのこと」

アニ「……は?」

ゲスミン「えーっ、だってそれ以外に考えられないなぁ、君が犯人じゃないのなら」ゲスミンスマイル

アニ「ちょっと待ちなよ、どうしてそうなるの」

ゲスミン「まぁ僕に振られた直後だもんね、僕ほどではないけど同じく頭が良くて、でも性格は僕と真逆な彼なら君が気になっちゃうのも仕方ないかもしれない!」

アニ「なんで私があんたに振られたことになってるの!? 振ったのは私のほうでしょ!」

ゲスミン「そんなことはどうだっていい! 君は彼に好意を抱いていた、だから思わず彼の遺品である立体機動装置を回収し、ついさっきまでずっと自分のところに隠し持っていた……そんな恋するシャイガール、それが君なんだよアニ・レオンハート!!」

アニ「いやだから違――」

ベルトルト「違うに決まってるだろこの七三がぁ!!!」バン!

エレン(いつの間に復活したんだベルトルト)

ゲスミン「なんだとぉ!」

ベルトルト「アニがマルコに好意を抱いていただなんてそんなことがあっていいはずががががgggggggg」

ライナー「落ち着けよ」

ベルトルト「アニはなぁ……そういう色恋沙汰に関してはめっぽう疎い純真無垢な天使なんだよ!!!」

ジャン「でもゲスミンとは付き合ってたんだろ」

ベルトルト「(白目)」

アニ「あれは私の黒歴史だよ。そんな事実は無かったことにして」

ベルトルト「そうだ! そんな事実は無いんだぁ!!」

エレン(忙しいなこの人)

ゲスミン「はぁ……これだから童貞は困るよ」

ベルトルト「ま、まるで自分は違うかのように言いやがって……!」

ゲスミン「…………」

ベルトルト「え……違うよね? まさかだと思うけど……アニとそういう……ち、違うよね?」

アニ「…………」

ベルトルト「どうして黙るのアニ!?」

アニ「これだけは保証する……私はマルコに特別な感情は抱いていない」

ベルトルト「そっちを保証するの!? ねぇアニ、君は今でも綺麗な体なんだよね? それも保証してくれるんだよね??」

アニ「話を進めよう、ゲスミン」

ゲスミン「それがいい」

ベルトルト「」

アニ「とにかく私はマルコを殺してなんかいない。だいたい根拠が何もない」

ゲスミン「……ところでアニ、一つ聞きたいことがあるんだけどね」

アニ「?」

ゲスミン「君……どうしてクリスタを監視なんてしてたんだい?」

アニ「!?」

ライナー「アカン」

ベルトルト「」

エレン(え、どうしてそこでクリスタが出てくるんだ?)

ゲスミン「言っておくけど誤魔化しても無駄だよ。ずっと前からミカサが気づいてたんだ……君がやたら彼女のまわりをこそこそしてたのをね」

アニ「それは……」

ゲスミン「まぁいい、僕が代わりに答えてあげよう」

ゲスミン「そう君は……嫉妬していたんだ! マルコに近づく女狐であるクリスタを!!」

アニ「はぁ!?」

ベルトルト「ナンダッテー!?」

エレン(信じるなよ)

ライナー(お前は事情知ってるだろ)

ナイル(この会議はいったいどこへ向かっているのか誰か教えてくれ……)

アニ「この男……呆れるほど適当なこと言ってくれるじゃないの!」

ゲスミン「お? お? 図星だった? おっおっおっ??」オシリフリフリ

アニ「違うって言ってるでしょ!! 私はそんな理由で監視してたわけじゃない!!」イラッ

ゲスミン「じゃあ何さ? 他にどんな理由があるっていうのさ!? ほら恥ずかしがらずに言ってごらん? 私はあの女に嫉妬していましたーって!!」

アニ「違う!!」

ゲスミン「じゃあなんなのさ!?」

アニ「私はただ、ウォール教の連中が重要人物であるクリスタを嗅ぎまわってるのを知って――」

ライナー「あっ」

ベルトルト「あっ」

アニ「あっ」

ニック「あっ」

エレン(誰だよ)

ザワザワザワザワ

ゲスミン「お聞きしましたかみなさん! そう、訓練兵クリスタ・レンズはウォール教の重要関係者だったのです! そしてアニはその彼女を嗅ぎまわるウォール教を監視していたのです!!」

ニック「」

ザックレー「……どういうことかお聞かせ願えますかな、ニック司祭」

ニック「……えっ、あの」

ゲスミン「せっかくです、実際に彼女をお呼びしましょう。ねぇニック司祭?」

ニック「ハイ」

ジャン「なぁ、どんどん話がズレてってる気がするんだが、気のせいか?」

ミカサ「ゲスミンは性格は最悪なゲス野郎だけど、頭は切れる。何か考えがあるのかもしれない」

エレン「ナイルさん、さっきから呆然としてるな」

~しばらく後~

クリスタ「ど、どうも」

ユミル「…………」

ライナー「うおおおおおおおおおおおクリスタああああああああああああああああ!!!!」ケッコンシヨ!!

ザックレー「あの、隣の女性は?」

ゲスミン「まぁちょっとした保護者みたいなものです見逃してください。それではクリスタさん、あなたがウォール教の関係者であるというのは間違いありませんね?」

クリスタ「はい……と言っても、厳密には関係者の妾の子ですが……」

ゲスミン「ほっほーう! ME・KA・KE・NO・KO!? もしそれが理由で訓練兵団に入れさせられたのなら、親はえらぁぁい幹部さんか何かですかねぇ? いずれにせよあなたにとってはさぞ知られたくない事実でしょうねぇ、ニック司祭?」

ニック「ぐぬぬ……」

ライナー「クリスタああああああああ俺だあああああああああああ!!!!」

ゲスミン「ちなみに、クリスタとユミルの二人ですが……私の独自の調査でもう一つ重要な事実が判明しました」

ライナー「愛してるぞおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

ゲスミン「なんと彼女たちは」

ライナー「結婚してくれえええええええええええええええええ!!!!」

ゲスミン「レズビアンカップルだったのです」

ライナー「えええええええええええええん!!??(白目)」

ベルトルト「ライナー!? しっかり……しっかりするんだライナー!」

ゲスミン「しかも二人は毎晩SMプレイを楽しんでいたそうです」

ライナー「」

ベルトルト「ライナー! ライナー!!」

ライナー「」

ライナー「パッパラ パッパラ パッパラ」

ベルトルト「良かった、いつものライナーだ」

ザックレー「とてもそんな風には見えないんだが……本当かね?」

クリスタ「……えぇ、そうです。私達は、禁断の恋の関係……」

ユミル「ちっ、まさかこんな形でカミングアウトするハメになるとはな。最悪な弁護人だ」ジーッ

ゲスミン「あれれぇ、熱い視線を感じちゃうぞぉ? モテ期かなぁ?」

ユミル「お前本当に覚えてろよ」

ゲスミン「別にレズビアンであることを恥じる必要はないじゃないか! 恋には色んな形がある!! それがたまたま同性だったと――」

ナイル「いい加減にしろやあああああああああああああああああ!!!!」バン!

ナイル「さっきから黙って聞いていれば、レズビアン? SMプレイ!? 貴様ら……これがいったい何の会議か忘れたのかぁ!!!」

ミカサ「言われてみれば」

エレン「なんだっけ」

ナイル「お前を殺すかどうかの会議だよ!?」バン!!

ナイル「て言うかいつの間に傍聴席にいるんだよ! 柱で縛られてたろ!?」

エレン「いや隙を見てミカサが」

ミカサ「いけると思ったので」

ナイル「思うなよ」

ナイル「ゲスミン……やっと分かったぞ、貴様のやり方がな。貴様はこうやって話をずらすことでエレンの処遇をうやむやにする気だな?」

ゲスミン「…………」

ナイル「当初の会議の内容は、エレンを処刑にするか、調査兵団に引き渡すかのどちらかを決めるものだった」

ナイル「しかし貴様が、エレンが巨人ではないなどと戯言を言い出し、我々がグリシャを証人喚問することでそれを否定した……かと思えば、いつの間にかベルトルトとライナーが巨人ではないかという話に移っていた」

ナイル「そして次にはアニがマルコを殺したのではという話に変わり……そして気がつけば」

ナイル「どうしてクリスタがレズビアンだなんだという話に行き着いてしまったのか!?」

エレン(まったくだよ)

ナイル「ザックレー総統、これはもはや法廷侮辱罪に当たります! ゲスミンの退廷を命じましょう!」

ザックレー「ふむ、確かにな……ではゲスミン、申し訳ないが君は――」

ゲスミン「いいえ、これらの話はこの国の根幹に関わる非常に重要な事柄です」

ナイル「なに?」

ゲスミン「もしも本当にこれらの話が重要でなかったら……私は法廷侮辱罪として、退廷どころか牢獄にぶち込まれても構いません」

エレン(巨人を四人も追い詰めたのは充分重要な気がするんだけど)

ゲスミン「いえ、それどころかあのザックレー総統の御前でそのような事をいたした以上、牢獄どころか処刑にされても文句は言いません!」

ゲスミン「ですからどうか、どうかこのまま話を続けさせてはくださいませんでしょうか、ザックレー総統?」

ザックレー「ふむ……そこまで言うのなら続けさせてみよう」

ナイル「な、何をおっしゃいますか総統、こんな話は無駄です!」

ザックレー「まぁまぁ」

ナイル「まぁまぁではありませんよ!? レズビアンだのSMプレイだの、実にくだらない話ではありませんか!」

ザックレー「そう言わずに、少しぐらい付き合ってあげてもいいじゃないか」

ナイル「いけません、総統!! いったいこの訳の分からん会議のせいでどれだけの時間が浪費されたか――」

ザックレー「だいたい君」

ザックレー「いつも暇だろ?」

ナイル「そっすね」

エレン(さすが憲兵)

ゲスミン「ありがとうございます、ザックレー総統。あなたには心から感謝します」

ゲスミン「さて、それでは次の証人をお呼びしたいと思います……同じく訓練兵団104期生、ダズを証人喚問いたします!!」

~しばらく後~

ダズ「」オロオロ

エレン(ど、どうしてあいつが呼ばれたんだ? 本当に関係あるのか?)

ゲスミン「早速だけどダズ、証言してくれるよね」

ゲスミン「以前の雪山訓練の夜、君があの山荘で見たものを」

ダズ「う、うぅ……分かった」

エレン(雪山訓練……あぁ、確かダズが死にかけたって聞いたな)

ダズ「お、俺はあの夜、山荘で寝てたんだ。そしたら、隣の部屋から激しい音が聞こえて目が覚めた」

ダズ「だから俺、こっそりとドアを開けて、その部屋の様子を見たんだ。そしたら――」

ダズ「見ちまったんだ……女王様姿のクリスタが、ボンテージ着たユミルにムチ振るってる光景を」

ライナー「」

ベルトルト「ライナー、耳をふさぐんだ。そして昔良く歌ったドナドナを口ずさもう」

クリスタ「う、うぅ、見られていただなんて……///」

ユミル「ちょっと、いい加減にしてくれよ///」

ゲスミン「重要なのはここからです。ダズ、続けてくれ」

ダズ「あ、あぁ、ムチを振るわれていたユミルはそれはもう全身が傷だらけで見ていて痛々しかったんだけどさ……」

ダズ「不思議なことに、翌朝にはその傷が全て綺麗に消えていたんだ」

ユミル「げっ」

クリスタ「へ?」キョトン

エレン(傷が消えていた……それって、まさか)

ナイル「おい、それはどういうことだ」

ゲスミン「ところで、先ほどリヴァイ兵長がエレンを蹴ったのは覚えていますね?」

ナイル「忘れるわけ無いだろ、今もそこにエレンの歯が落ちている。っていうかまた話がずれたぞ」

ゲスミン「いえいえ。ところでナイル師団長、エレンの口の中を確認してもらえますか?」

ナイル「ちっ、面倒くさい」スタスタ

エレン(素直だな)

ナイル「ほら、口開けろ」

エレン「」アーン

ナイル「ったく、どこも異常はない……ん、異常がないだと? どういうことだ?」

ナイル「歯が……生えているじゃないか!?」

エレン「!?」

ゲスミン「巨人は高い回復力を持っています。そして巨人化能力を持っていれば、巨人に変身しなくてもその回復力を発揮する……それを証明しているのです」

ナイル「ちょっと待て、それじゃああのユミルという女は……!」

ゲスミン「はい、エレン・イェーガーと同じ……巨人なのです!」

ユミル「くっ……!!」

クリスタ「そ、そうだったの、ユミル!?」

ユミル「これはもう隠し通せそうもないね。そうだ、私があの時雪山でダズを助けられたのも、巨人に変身したからなんだ」

クリスタ「気が付かなかった……あ、言われてみれば、ユミルの傷っていつも翌朝には消えてる気がする」

エレン「なぁ、クリスタってもしかして、アホの子なのか?」

ミカサ「一説には、コニーやエレンよりかは頭が良く、サシャよりは悪いというデータがあるとかないとか」

エレン「そうなのか、意外だな」

エレン「…………ん?」

ゲスミン「さて、ニック司祭に質問です」

ニック「な、なんだ」

ゲスミン「あんた……彼女が巨人であることを知ってたな?」

ニック「!?」

ゲスミン「アニ・レオンハートの証言により、あんたの手先がクリスタを監視していたのが判明した。そして無論、あんな危険な雪山訓練で見張りを付けないはずがない。最悪な状況を想定し、万全な体制で監視していたことだろう」

ゲスミン「さて、そうなると……今ユミルが言ったとおり、巨人に変身してダズを助けたのなら、あんたの手先がそれを見ている可能性が高い……いや、むしろ巨人なんかが現れて見逃すはずがない!」

ニック「」

ゲスミン「認めろ、あんたは知ったんだ、ユミルという女が巨人であることを」

ゲスミン「そしてそうなると、あんた達としてはなんとしてでもユミルを抹殺したいはずだ。事実今も巨人であるエレンを処刑にするためにこの審議所に足を運んでいる。ましてや重要人物であるクリスタのそばにいるとなっちゃ排除するのは至極当然だろう」

ニック「……我々が彼女を殺そうとした根拠でもあるのか?」

ゲスミン「……さて、それでは次なる証人をお呼びしましょう」

ゲスミン「コニーとサシャです」

~しばらく後~

コニー「おう、来たぜ!」

サシャ「」モグモグモグモグ

ザックレー「そこのお嬢さん、審議所で芋を食べるのはやめてくれないだろうか」

サシャ「嫌です、食事中に無理矢理ここに連れて来られたんですよ!?」モグモグーッ!

ザックレー「えっ……ごめん」

ナイル「なに謝ってるんですか、ちゃんと止めてください」

ザックレー「そ、そうだね。こらっ、食べるのをやめなさい!」

サシャ「ちっ……」ヒョイ

ザックレー「ん、これは?」

サシャ「半分あげます」

ザックレー「どう見ても四分の一だけどありがとう」

ザックレー「さぁ、会議を続けよう」モグモグ

ナイル「」

エレン(買収されたぞ……)

ゲスミン「二人にはそう……超大型巨人が現れる直前の壁上での出来事を証言して欲しい」

ゲスミン「その証言で……この会議の行く末が大きく変わるんだ」

コニー「うーん……そんな前のこと覚えてねぇなぁ」

ゲスミン「えっ」

サシャ「その後色々ありすぎましたからねぇ」

ゲスミン「お願いです、思い出してください。思い出してくれなきゃ僕が困るんです」ヒクッ

エレン「なんで今にも土下座しそうな体勢なんだよ」

ミカサ「法廷侮辱罪がかかってるから……」

コニー「あ、でも段々思い出してきたな」

ゲスミン「ほら早くしろよ」スタッ

エレン(一瞬で棒立ちに戻りやがった)

コニー「あ、やっぱ忘れてきたな……」

ゲスミン「そこをなんとか」ヒクッ

エレン(また低腰になった)

コニー「うーん、思い出してきたかも」

ゲスミン「いい加減にしろよお前、こっちだって暇じゃ――」スタッ

コニー「あー……やっぱ忘れて」

ゲスミン「お願いです、病気の妹のために――」ヒクッ

エレン「もう土下座しろよお前」

コニー「おし、じゃあ証言するぜ!」

ゲスミン「」←土下座した

エレン「なかなか迫力ある土下座だったな」

ミカサ「咆哮をあげながらシューシューと地に膝を付けていった」

ジャン「完全に大和田常務だったな」

エレン(誰だそれ)

コニー「んー、つっても大したことは無かったんだよなぁ」

サシャ「固定砲を整備してただけでしたからね」

ゲスミン「おいふざけんな俺の土下座返せテメェら」

コニー「あ、そういやお前、肉盗んでたよな」

サシャ「げっ、そうでした! くっそー、なんでそんなこと思い出しちゃうんですか!!」

コニー「そんで確か……調査兵団に入る奴はその肉を食う決意をしてたな」

サシャ「あー……私達の班は全員決意していましたよね。今はもういませんが、トーマスとミーナと、それからサムエルも」

ライナー「レディースエーンジェントルメーンオブザジュリィィィ!」

ベルトルト「またかライナー」

コニー「アイリストゥマイケース!!」

エレン「!?」

サシャ「リーゴハイ!!!!!」

エレン「どうしたお前ら」

ゲスミン「ふふふ……はっはっはっ! 証言ありがとう、二人とも!」

ライナー「パッパラ パッパラ パッパラ」

ゲスミン「さぁぁぁぁて、みなさん! 冷静になって考えてみてください! よっぽどの理由もないのに、まともな頭の人間が自ら調査兵団なんて入ろうと思うでしょうか!?」

コニー「パッパラ パッパラ パッパラ」

ゲスミン「否!! この馬鹿二人ならいざしらず、今名前のあがったトーマス、ミーナ、サムエルの三人が調査兵団に入ろうなど実に不自然な話なのです!」

サシャ「パッパラ パッパラ パッパラ」

ゲスミン「そう、この馬鹿共を除けばです!」

エレン(確かに馬鹿だな)

ゲスミン「エレンの演説に影響された? それこそ馬鹿に馬鹿を塗りたくった馬鹿だと言わざるを得ません! あんな小学生レベルの演説(笑)で影響されるのはコニサシャだけで充分です!」

エレン「もしかして俺、今バカにされた?」

ミカサ「エレンの演説は独特でとても良かったと思う」スーッ

エレン「なんで目をそらすの?」

ゲスミン「いやぁ、実に怪しいですよねぇ、あの三人は。どうも何かあるとしか思えない……そもそも彼らはいったい何者なのでしょうか?」

ナイル「す、ストップだ! もうこんな会議はお終いだ!! 総統、やはりこの男には法廷侮辱罪を適用すべきです!!」

エレン(なんだ? ナイル師団長、急に焦りはじめたぞ?)

ザックレー「悪いが彼が納得するまで続けさせてやれ。なにせ彼自身も自分の命をかける所存なんだ。多少の長話ぐらい良いだろう」

ナイル「ぐっ、そんな……え、エルヴィン! 貴様はこれでいいのか!?」

エルヴィン「えっ、なんで急にこっち振るの」

ナイル「お前団長だろ!?」

ナイル「いいのか? このまま話を続けてあまり重要じゃなかった場合……ゲスミンには法廷侮辱罪が言い渡される」

エルヴィン「そうみたいだ」

ナイル「まさかお前、自分は責任を被らないとでも思っているのか?」

エルヴィン「えっ」

ナイル「もう一回言うけどさ」

ナイル「お前、団長だよ?」

エルヴィン「…………」

ナイル「…………」

エルヴィン「マジかよ」

ナイル「マジだよ」

エルヴィン「げ、ゲスミンくん、君はもういい。下がりたまえ」

ナイル「よし、いいぞエルヴィン」

エルヴィン「このままでは私まで団長辞めろとか、そういう話になりかねない。今すぐ審議所から出て、あとは我々に任せるんだ」

ナイル「それでこそ団長だ」

ゲスミン「ゲフンゲフン」

エルヴィン「駄目だって」

ナイル「諦めるの早いなー」

ザックレー「なんだ、やはり続けるのか」

エルヴィン「はい、私はゲスミンに全てをかけています」

ナイル「だからお前はあいつに何を握られてるの?」

\ ……なぁ、気になることがあるんだが /

エルヴィン「ん?」

\ エルヴィン、どうして今日はずっとベレー帽なんだ? /

エルヴィン「」

エレン(うん、正直ずっと気になってた)

エルヴィン「な、何を言っているんだ、リヴァイ? ベレー帽ぐらい被ってもいいだろ、好きなんだから」

\ いやでも、今まで被ってるの見たことなかったし /

ナイル「ぶっちゃけ違和感が半端ない」

エルヴィン「うるさい黙れ、私のチャームポイントを侮辱するな」

エレン「昨日まで無かったじゃないですか」

エルヴィン「口を閉じろ、巨人。今決めた、これが私のチャームポイントだ」

ザックレー「エルヴィン団長、審議所で帽子を被るのはマナー違反です」

エルヴィン「え”っ、ちょっ……ちょっと待って下さいよ! 帽子に罪はないでしょう!? あなたには分からないんですか!? 分からないんだな、私の気持ちが!!!!」

ザックレー(え、なんでこんな必死なんこいつ……)

ナイル「まぁまぁ、エルヴィン団長。ここは一つどうでしょう、ゲスミンの退廷を命じれば、帽子の件は忘れる……それならどうです?」ニヤッ

エルヴィン「!? ほ、本当か!!」

ナイル「ええ、もちろん。ですから、さぁ早く、あの七三小僧に退廷を!」

エルヴィン「よ、よぉし、退廷させちゃうぞ!!」

ゲスミン「おおおおおおおおおおおおっとぉ! こんなところにこんなものが!!!」ヒョイ

エルヴィン「くぁwせdrftgyふじこlp」

エレン「ん、なんだあの金色の物体は」

ミカサ「どこかで見覚えがある気が……」

\ あれは……エルヴィンの髪の毛じゃねぇか /

エルヴィン「うおおおおおおおおおおおおおおキャサリぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃン!!!!」

ゲスミン「おっとこの物体はなんでしょうねぇ? おや、こっちにはマッチがある! このままでは手が滑ってこの物体を燃・や・し・て・しまいそうですねぇ?」

エルヴィン「やめろ、やめるんだ!! 約束は守る!! 会議では絶対に君の邪魔はしない!! だからキャサリンだけは……キャサリンだけは!!」

エレン(まさかあのカツラがキャサリンなのか)

ナイル「おい、お前が握られてる弱みってまさかそれじゃないだろうな」

ザックレー「エルヴィン団長、いいから早くその帽子を脱いでください、いい加減目障りです」

エルヴィン「えっ、それは……」

ナイル「ゲスミンを退廷させれば帽子の件は見逃すぞ」

エルヴィン「げ、ゲスミン! 悪いが今すぐ退廷を……!」

ゲスミン「」ボッ

メラメラ

エルヴィン「おおおおおおおおおおおおおおおおおエルヴィンアタック!」ブンッ!

エレン(ベレー帽投げやがった)

ゲスミン「うおっ、あっつ! ベレー帽が飛んできたせいでマッチの火が消えちゃったじゃないですか」

ピカーン!

エレン「まぶしっ!」

ミカサ「こ、この光は」

ジャン「なんだ、光源は……エルヴィン団長?」

コニー「目がっ」

サシャ「髪様!?」

エルヴィン「今わざと誤変換しただろ貴様」ピカーン!

クリスタ「うぅ、まぶしすぎて目が開けれないよ」

ユミル「女神クリスタをもたじろぐ輝きか……」

ベルトルト「その娘は女神というより女王様なんだろ?」

ライナー「今そういう話はいいだろ!?」

アニ「もうやだ帰りたい」

ゲスミン「くっくっくっ、さぁ愛するキャサリンを無事に返してほしくば僕の邪魔はしないことだ。もうその頭を晒してしまったんだ、ナイルに従う理由もないだろう?」

ゲスミン「それとも、ここでキャサリンを火計に処してもいいんだよ?」ゲスミンスマイル

エルヴィン「わかった……従う! 君の邪魔は絶対しない!! ほんと!!!」

エレン(ゲスミン、今日ほどお前をゲス野郎だと思った日は無かったよ)

キッツ「ちょっと待ったああああああああああ!!!」バタン!

ザックレー「誰ですか、突然審議所に入ってきて」

ゲスミン「あれぇ? 小鹿くん、戻ってきたの? まさか僕の邪魔をしようとか思ってるんじゃないだろうねぇ?」

キッツ「ふん、貴様の脅しにはもう屈しない」

キッツ「傍聴席に妻がいたらしく、お前の脅しのネタは全部バレた」

キッツ「そして私は市場へ出荷されることが決定した」

エレン(決定するなよ)

キッツ「もう私には、失うものは何もない」

キッツ「だからエルヴィン、お前にも伝える……脅しに屈してはいけないと!」

エルヴィン「キッツ……」

キッツ「負けるなエルヴィン! ハゲだからなんだってんだ! 今のお前……最高に輝いてるぜ!!」グッ!

エルヴィン「キッツぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」ナミダー

ゲスミン「えっ、何この流れ」

エルヴィン「あぁ、やっと目が覚めたよ。私はこれまで、キャサリンに頼り、本当の自分を隠し続けていた」

エルヴィン「でも……そんな日々はもうお終いだ。私は、キャサリンに別れを告げる」

ゲスミン「えっ……えっ?」

エルヴィン「ゲスミン、キャサリンを燃やしたければ燃やせばいい。私はこれから、本当の自分を晒して生きていく!」ピカーン!!!

ゲスミン「なんだとおおおおおお!!」

エレン(まぶしいから勘弁してほしい)

ゲスミン「くそっ、後もう少しで全ての真相を世間に晒せるところだってのに、晒されたのは団長のハゲ頭でしたとかそんなオチあってたまるか!」

そろそろ寝る

ナイル「ところでゲスミンよ、貴様はエレンからいくら貰って弁護を引き受けたんだ?」

ゲスミン「なんだ突然? たったの五千万ぽっちだよ」

ナイル「そ、そうか。もし貴様がこの会議から手を引くというのなら」

ナイル「我々はその四倍……二億を貴様にお詫び金として支払おう」

ゲスミン「マジで?」パァ!

エレン「おい、なんで嬉しそうなんだよ」

ミカサ「あのゲス野郎」

グリシャ「なぁ、ところで弁護費の五千万って何の話だ?」

エレン「…………」

ミカサ「…………」

グリシャ「ねぇ」

エレン「とにかく……そんな取り引き、応じられるわけ無いだろ! どう考えても違法な司法取引だ!」

ナイル「違う、ただお詫び金を払いたいと言っているだけだ。この会議から手を引くという条件付きで」

エレン「だからそれがいかんつってんだよ!! ザックレー総統、あなたからも何か言ってやってください!」

ザックレー「え、これって違法なの?」

エレン「お前もう辞めちまえよ」

エレン「なぁゲスミン、俺達親友だよな? だからこそ、この弁護を引き受けてくれたんだよな?」

ゲスミン「……エレン」

エレン「俺は……俺はお前のこと、信じてるから!」

エレン「お前は確かにちょっとゲスいところがあるけど、それでもいつだって俺と一緒にいてくれた! 俺を助けてくれた!」

エレン「だから今回も、俺のことを最後まで弁護してくれるって信じてるんだ、だから――」

ゲスミン「じゃあ二億はとりあえず手形で」

ナイル「了解」

エレン「このゲス野郎が」

ゲスミン「ふははははは!! すまない、エレン! 親友である君を救えないのは本当に残念で仕方がない……が、所詮この世は金で動くんだよ!! 僕は言わば、人権派弁護士ならぬ金権派弁護士なのさ!!!」

ミカサ「ゲスミン」

ゲスミン「そもそも五千万程度で命を救って欲しいっていうのが都合のいい話だよ! 命とはその人間の全て! 本来なら全財産を投じてでも僕に救いを求めるべきだったのさ!!」

ミカサ「ねぇゲスミン」

ゲスミン「まぁ君の場合? 全財産は一億だっけ? はぁん、安い命だったねー! せめて三億あればなぁぁ!!」

ミカサ「二億と自分の命、どっちが大切?」ギラッ

ゲスミン「僕は全力で親友であるエレンを弁護します」

ナイル「おい、話が違うぞ。断るつもりか」

ゲスミン「申し訳ないナイル師団長。やはり親友を見捨てるなんて僕にはできそうにありません」

ゲスミン「なにせ僕らには熱い友情の血が通っているのですから」キリッ

ミカサ「さすがはゲスミン。友情に熱い男」

エレン(本当かよ……)

ザックレー「アッカーマン訓練兵、傍聴席での帯刀は禁止されて……あ、いや何でもないです。ごめんなさい」

エルヴィン「おい、私は納得してないぞ。ゲスミン、君はもう退廷だ」ピカーン

ザックレー「いいから君はなにか被ってくれ、でないと君が退廷だ。そろそろこっちの目が焼ける」

エルヴィン「」

ゲスミン「エルヴィン団長、おとなしくすると約束するならとりあえずぶん投げたベレー帽はこの場でお返ししますよ」

エルヴィン「分かった」

ゲスミン「会議が終わったらキャサリンも解放しますから」

エルヴィン「ありがとう」

キッツ「私はいったいなんだったんだろうな」

ゲスミン「さぁて、すっかり会議からそれてしまいましたが、話を戻しましょう!」

ゲスミン「トーマス、ミーナ、サムエル……固定砲整備4班で亡くなったのはこの三人です」

ゲスミン「間違いありませんね、コニー、サシャ?」

コニー「……あぁ」

サシャ「ていうかゲスミン、あなたがその光景を直で見た唯一の人間ではありませんか」

ゲスミン「あぁ、そうとも……僕は見た。彼らが為す術無く巨人に食われていく様を……」

ゲスミン「でもね」

ゲスミン「本当に彼らは死んだのかな?」

コニー「え?」

サシャ「ど、どういうことですか?」

ナイル「…………」

エレン(ゲスミン……お前はいったい何を見据えているんだ?)

ゲスミン「あの場で、同じくエレン・イェーガーも巨人の餌食となりました……この僕を庇ってね」

ゲスミン「そして彼は……その後見事に巨人に変身することで復活を遂げた」

ゲスミン「しかし……それは果たしてエレンだけだったのでしょうか?」

ザックレー「いったいどういう意味かね、ゲスミン」

グリシャ「馬鹿な、そんなこと……あるはずが」

ゲスミン「トロスト区奪還作戦が終わった後、火葬される前に私は全ての遺体をしらみつぶしに調べました」

ゲスミン「その結果……トーマス、ミーナ、サムエル…………」

ゲスミン「三人の遺体は作り物の人形でした」

エレン「……は?」

ザワザワザワザワ

「おい、どういうことだ」
「遺体が……人形?」
「なんだってそんなことが!?」

ゲスミン「本人そっくりの人形を作るのはさぞかし大変だったでしょうが、多少雑でも『巨人のせい』で一蹴できます。それに、ただでさえ遺体の数は尋常ではありませんでしたから、普通なら誰も気が付かないでしょう」

ゲスミン「この私を除けばね」ニヤッ

ザックレー「しかし、いったいなぜそんなことが……」

ゲスミン「無論、ついに動き出した”人間の姿をした巨人達”を抹殺するためですよ。それが誰だったか覚えていますか?」

エルヴィン「確かベルトルトとユミルは確定。ライナーとアニは嫌疑がかかっているところだったな」

ゲスミン「そうです、彼ら四人を抹殺するために……トーマス達はすぐさま偽装死を装い、彼らを抹殺する機会を虎視眈々と伺っていたのです」

ザックレー「ではトーマス達は誰が巨人なのか把握していたと?」

ゲスミン「そうです、ユミルについては先ほど説明したとおり、ウォール教は把握していた。そして……他の三人は、出身を調べればボロが出ます」

ゲスミン「おそらく、その段階ではあくまで”容疑者”という位置づけだったが、超大型巨人の出現によって、彼らはベルトルトとその同郷を巨人であると断定したのでしょう。なにせその後のベルトルトにはライナーに負わされた怪我がすっかり消えていました。巨人以外にありえません」

ザックレー「だがそれはつまり、トーマス達は”巨人化すれば傷が回復する”という情報を知っていたということになる」

エルヴィン「それだけじゃない、そもそもなぜ彼らがウォール教の掴んだ情報や、ベルトルト達の出身地について把握しているんだ?」

ゲスミン「ええ、そうです。それこそがある大きな真実へとつながっているのです」

ゲスミン「そうですよねぇ、ナイル師団長???」

ナイル「…………」

ゲスミン「ウォール教はクリスタを監視するために、訓練兵に装ったスパイを数名送り込んだ。それがトーマス達なのです」

ゲスミン「そして彼らは雪山での監視で、ユミルの正体を知った。ウォール教は当然、彼女の抹殺を目論んだが、あまりにも彼女がクリスタについてはなれないせいで、なかなかその機会がなかった」

ゲスミン「そして彼らはベルトルト、ライナー、アニの三人も巨人である可能性があったため、彼らの監視もする必要があった」

ゲスミン「まぁ幸い、ユミルを含めてもなんとか分担して監視ができますが」

エルヴィン「ちょっと待て、巨人である嫌疑がかかっているのはベルトルト、ライナー、アニ……それにユミルを加えて四人だ。トーマス、ミーナ、サムエルでは一人監視者が足りないのでは?」

ゲスミン「ええ、そうです」

ゲスミン「だからスパイは四人いたのです」

エルヴィン「なんだと……」

ゲスミン「はい、その四人目のスパイは……」

ゲスミン「マルコ・ボットです」

ジャン「マルコ……マルコだと?」

ゲスミン「そうだよ。君が見たというあの無残な死体……」

ゲスミン「あれは死体ではなかったんだ。あまりにも無残な姿だったから気が付かないのも無理はない……あれはただの作り物だ」

ジャン「そんな……そんなことが!」

ゲスミン「彼の死体もこの僕がしっかり調べたからね。間違いない」

ジャン「なら……マルコは生きてるんだな、そうなんだな!!」

ゲスミン「あぁ……その通りだ」

ジャン「マルコ……!」

ゲスミン「とは言えユミルについては他の三人と関係無かったみたいだからね、彼女は後回しにして、三人を抹殺することにしたんだろう」

ゲスミン「しかしそこで不測の事態が起きた。それがエレンの巨人化だ」

ゲスミン「あまりにもイレギュラーだったため、リスク排除すべく、後になってマルコも偽装死をし、エレンの抹殺に送られた……そんなところかな」

ゲスミン「そして更に重要なのはここからだ……トーマス達は偽装死のためとはいえ、実際に巨人に食べられた。にもかかわらず、なぜ生きているのかというと――」

ライナー「パッパラ パッパラ パッパラ」

ゲスミン「今シリアスなんだよさすがに空気読めよおおおおお!!!」

ライナー「」

ベルトルト「ライナー、もう一回ドナドナを口ずさんでよう。さすがに今のはないわ」

ゲスミン「トーマス達はエレンと同じ巨人化できる注射を受けていた。だから巨人に食われた後も平気で復活できる。はい、以上!」

エルヴィン「急になげやりになったな」

エレン「ライナーのせいだな」

ミカサ「ライナーの罪は重い」

クリスタ「ライナー最低」

ライナー「」

アニ「ごめん、ちょっと擁護できそうにない」

ジャン「だいたい何番煎じなんだよ、そのBGMネタ」

グリシャ「待ってくれ、あの注射はエレンにしか打ってないぞ?」

ゲスミン「ええ、ですがあなたが開発した注射を憲兵団やウォール教は利用していたのです」

ナイル「根拠のない言いがかりはやめたらどうだ!!」

ゲスミン「くくく……はーっはっはっはっ!!! 根拠のない? ワッツ!? まさかあなたは自分の言葉をすっかり忘れてしまったのですかねぇ??」

ナイル「なんだと!?」

ゲスミン「ほら、あなたは自ら言ったんですよ? 注射での実験は済んでいると!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ナイル「くくく……ふーっはっはっはっ! その注射の効果はこちらでも実証済みだ! もはや言い逃れはできないぞエレン!!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ナイル「」

ザックレー「うん、確かに言ってたね」

ゲスミン「さぁお答えください、ナイル師団長! いったい誰の体を使って実証したのですか? 嘘をついても無駄ですよ、ここまできたら徹底的に捜査されることでしょうから」

ナイル「くそっ……貴様、まさか今までの道にそれた議論はこれが目的だったのか!」

ジャン「あぁ、そういうことか!」

エレン「え、どういうことだ?」

ジャン「ゲスミンが会議の冒頭で、エレンは巨人ではないと主張しただろ? あれは完全にブラフだったんだ!」

ジャン「目撃者が口を揃えてエレンが巨人であること否定すれば、憲兵団はグリシャ・イェーガーを証人喚問せざるを得ない!」

ジャン「そして、グリシャの注射が本物で、エレンが巨人であると証明するには、既に他の人間で実験済みであることも明かさなければならない!」

ジャン「そのためにゲスミンは、お前は巨人じゃないなんていう無茶な主張をしたんだ!!」

エレン「天才か」

ゲスミン「ははははは! これでもう私は法廷侮辱罪に問われる心配はないですね!! さぁて今度はあなたの罪を問う番ですよぉ、ナイル師団長?」

ナイル「ぐ……ぐぐぐぐぐぐ………!!」

ゲスミン「もう勝負は決まったんだよ。あんたは負けた、薄暗ぁい牢獄ライフが待ってるよおおおおおおおおう!!!」ハハハハハハ!!

ナイル「ぐっ……くっそがあああああああああああああああああああああ!!!!!!!」

ゲスミン「さて仕上げです……傍聴席の皆さん、絶対に動かないでくださいね」

ゲスミン「今から僕ら104期生が、あなた達全員の顔を確認します!」

エレン(? いったい何を考えてるんだゲスミンは?)

ミカサ「よく分からないが、ここはゲスミンに従おう」

ジャン「あぁ、何かあるのかもしれねぇ」

~しばらく後~

エレン「おいおい、これはどういうことだよ……」

ゲスミン「四人ともフードを被っていましたが、顔を見ればこの通り」

ゲスミン「いやぁ、実に感動的な再会ではありませんか! ねぇ?」

マルコ「…………」

トーマス「…………」

ミーナ「…………」

サムエル「…………」

コニー「お、お前ら……」

サシャ「本当に生きていたんですね」

ジャン「マルコ、お前……」

ゲスミン「彼らの目的は人間に化けた巨人の抹殺です。当然、その機会を狙ってずぅぅぅぅっと監視していたんでしょう」

ゲスミン「ターゲットである四人が全員集まったこの審議所なら、当然マルコ達四人もやって来るだろうと思いました」

ゲスミン「そしたら見事この通りです」

ゲスミン「さて、もう隠しても無駄ですよ。あなた達は巨人殺しの暗殺者……そうですね?」

マルコ「…………あぁ、そうさ」

トーマス「まさかこんなところでバレるとは思ってなかったよ。ましてやお前なんかに」

ミーナ「私達はただ、ニック司祭様の命令に従っただけなんだけどね」

サムエル「まさかそのために巨人にされるとは思わなかったけどな」

ゲスミン「ニック司祭、あなたもナイル師団長と仲良く牢獄行きですので楽しみにしてください」

ニック「」

ゲスミン「まったく、この国には政教分離という言葉が存在しないんですかねぇ。まぁ絶対王政では無理もありませんが」

ザックレー「しかし……これで全て解決のようですな。この国を覆っていた巨大な闇が駆逐されるその時が来たというわけですか」

ゲスミン「ええ、そうです。巨人とは別の脅威が、この国から消え失せるのです」

ゲスミン「まぁ、本当は国王が一番胡散臭いんですけどね」ボソッ

ザックレー「ん?」

ゲスミン「いえ、なんでもありません! そろそろこの会議もお開きに」

ナイル「ちょっと待ったあああああああああああああ!!!!」

ゲスミン「はぁ……なんですか囚人Nさん、もうあなたは終わったんですよ。ほらおとなしく牢屋に行きましょう」

ナイル「それで勝ったつもりかゲスミン! 馬鹿め、この私が終わってもこの会議はまだ終わっとらんわ!」

ザックレー「どういうことですかな」

ナイル「総統! そもそもこの会議の議題をお忘れですか!?」

ザックレー「それは確か、エレン・イェーガーの処遇……あぁ!」

ナイル「そうです、結局のところエレンは巨人であると判明した! なら、いずれにせよ我々憲兵団が処刑しなければならないことに変わりない!!」

エレン「げっ、そうだった」

ミカサ「わりと本格的に忘れていた」

ナイル「最後までちゃんと覚えてたの俺だけかよおおおおおおおお!!」バン!

エルヴィン「ヤバいな、そうだったな。このままじゃ人類の希望があの世行きだ」

\ それは困る /

ナイル「ふうううううううううううううううううううっはっはっはあああああああああああ!! ざまぁみろ調査兵団!! ざまぁみろエレン・イェーガー!! ざまぁみろゲスミン・古美門ぉぉぉぉ!!!!あはははははははははHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!!!!!」

ゲスミン「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

ナイル「あぁ!?」イラッ

ゲスミン「すみません、つい深ぁい溜息を付いてしまいました。なにせあまりにも見ていて可哀想なので」

ナイル「負け惜しみかゲスミン? こういうのを喧嘩に勝って勝負に負けたというのだ!! お前の負けには変わりないんだよ!! エレン・イェーガーは憲兵団が処刑台に送る!!」

ゲスミン「……そもそも、どうしてエレンを処刑しなくてはいけないんでしたっけ?」

ナイル「はぁ? それはもちろん、奴が英雄のふりをして壁内に潜り込んだ人類の敵である可能性があるからだ!!」

ゲスミン「そうです、問題はそこなんですよ。決して”彼が巨人であるか否か”は問題ではないのです?」

ゲスミン「そしてその結論は、とっくに付いているんですよ」

ゲスミン「というか、あなたが自分で付けてくれました」

ナイル「…………は?」

ゲスミン「あなたは自らグリシャ・イェーガーを証人喚問した。そして彼は、自分がエレンに注射をしたと言った」

ゲスミン「つまり、エレンは人類の敵でもなんでもなく、ただ無理矢理巨人にされただけであることがこの時点で明らかになっているのですよ」

ナイル「」

ゲスミン「だからこの会議はもうお終いです」

ナイル「お、おい……ならどうしてその事をグリシャが証言した時点で言わなかったんだ? そしたらとっくにエレンは解放され、会議は終わっていたじゃないか……」

ゲスミン「言ったでしょう? 全ての真相を明らかにするためですよ」

ゲスミン「私はただ、そのためにエレンを利用したに過ぎません」

ゲスミン「最初からあなた達の悪行を世間に晒すのが目的です。エレンの解放はそのついでですよ」

ナイル「」

ニック「」

ザックレー「ナイル師団長、何かコメントはあるかね」

ナイル「……私はいったい、何の罪で問われるのですか?」

ザックレー「いや、罪は特にないと思うよ」

ゲスミン「あれっ!?」

ナイル「!? 本当ですか!!」

ザックレー「だって冷静に考えてみ。憲兵団やウォール教がやろうとしたのは、結局のところ巨人の抹殺だったのだろう? それって普通に考えたら、むしろ人類のためじゃないか?」

ゲスミン「しまっ……!」

エレン「そうだな、なんかノリで悪役に仕立てちゃったけど、全部人類のためだもんな」

ミカサ「集団心理って怖い。危うく騙されるところだった」

ジャン「ゲスミン、マジでペテンだな」

ゲスミン「あれれっ!?」

ニック「それじゃあ、我々の処遇は……」

ザックレー「うーん、さすがに訓練兵達を巨人にしちゃうのはあれだけど、基本的には無罪釈放じゃないのかね」

ニック「あ、ありがとうございますザックレー総統!!」

ナイル「ありがとうございます!!」

ザックレー「はっはっはっ、いいっていいって」

ゲスミン「…………」

ザックレー「ん、どうかしたかねゲスミン?」

ゲスミン「いや、あなたも食えない人だなと」

ザックレー「ははは、何のことやら分からないな」

ゲスミン「ふん、腐っても総統様か……」

ザックレー「さて、予想以上に長引いたが、そろそろ会議はお終いといったところかな」

ザックレー「マルコ達四人はニック司祭やナイル師団長とともに後から処遇を問おう。そして……」

ベルトルト「…………」

ライナー「…………」

アニ「…………」

ユミル「…………」

ザックレー「問題は君達だな」

ライナー「俺達……やっぱり処刑されるのかな?」

ベルトルト「それは嫌だなぁ、怖いなぁ」

アニ「もういっそ逃げちゃおうか。今なら巨人に変身できるし」

ユミル「私は別に人類の敵じゃないから、エレン同様解放される気がするけどな」

ゲスミン「ふん、それなら心配しなくていいさ」

ベルトルト「え?」

ゲスミン「なんだかんだでずっと共にしていた仲間なんだ。確かに人類への償いはしっかり払ってもらうが」

ゲスミン「とりあえず、この僕に弁護を任せてくれれば……なんとか調査兵団の一員として人類へ貢献できるよう取り計らえるかもしれない」

ライナー「ゲスミン、お前……」

アニ「私、あんたに惚れなおしたかもしれない……」

ベルトルト「え”」

エレン「まぁ金次第だけどな」

ゲスミン「おい、ちょっと黙ってろよ」

こうして、エレン・イェーガーの処遇を決める兵法会議は終わった。

予想を遥かに上回る真実が浮き彫りになったが、それによって人類はまた大きく前進したはずだ。少なくとも会議に参加した彼らはそう考えている。

ゲスミンは未だに根深い闇を王政に感じているようだが、少なくとも現状としては人類は再び安寧を手に入れたのだ。

ゲスミン「ああああそれにしても残念だなぁ! 憲兵団やウォール教の悪行を世に晒し、僕は国家の英雄として富と名誉を手に入れるはずだったのに!!」

エレン「ははは、いいじゃねぇか。俺はお前には感謝してるぞ? それだけでも名誉じゃないか?」

ゲスミン「自惚れるなこの出来損ないの巨人が。なんでこんな奴が親友なんだ」

エレン「こっちのセリフだと言いたいところだが、今はそうでもないな。お前が親友で本当によかったよ」ハハハ

ゲスミン「あー寒い寒い。それより君は早くシガンシナ区を奪還してよ。じゃないと僕に五千万払えないでしょ?」

エレン「何言ってんだ、一緒に奪還するんだろ? お前だって調査兵団に入るんだから」

ゲスミン「ふん…………」

グリシャ「なぁ、ところで五千万って何の話だ?」

ミカサ「エレンがゲスミンへの弁護費として払う金額。確か家の地下室に一億分の財産があるとかなんとか」

グリシャ「よく知ってるな、驚いた。でもあれならもうないぞ?」

ゲスミン「ホワッツ!?」

グリシャ「以前ゲスミンの両親がな、一億貸してほしいと言ったんだ。なんでも”気球”というものを発明したいのだが資金がないということでね。人類にとっては重要な発明になりそうだから、太っ腹な私が全財産を二人に貸してあげたんだ」

エレン「え、ちょっと待てよ。でもゲスミンの両親って……」

グリシャ「あぁ……残念ながらもう亡くなっている」

ミカサ「それじゃあ、今一億分の借金は」

グリシャ「もちろん、息子であるゲスミンくんが受け継いでることになるね」

ゲスミン「」

エレン「よ、良かったじゃねーか! 今回の弁護費で借金の半分を返済できたんだぞ!」

ミカサ「あとはたったの五千万でしょ? ”たったの”ね」ニヤリ

ゲスミン「な、なぁエレン……僕ら親友だよね? 親友に五千万払えとかそんなこと……はは、まさか、ねぇ?」

エレン「ゲスミン、たっっっっっっったの五千万……そう言ってたろ?」

ゲスミン「Nooooooooooooooooooooooooo!!!」

エレン「まぁ大丈夫だ、別にゆっくり返してくれれば」

ゲスミン「なぁエレン」

エレン「なんだ?」

ゲスミン「ちょっと街中で巨人化して、ひと暴れしてくれないかい?」

エレン「え?」

ゲスミン「また君が人類の敵であると疑われれば、僕は再び君を弁護できる! そしてその弁護費として五千万を貰う! それで借金はチャラだ!!」

ミカサ「何いってんのこの人」

エレン「いやぁ、冗談キツイなぁゲスミンは」ハッハッハッ

ゲスミン「憲兵さん、こいつ巨人です!!!」

憲兵「なんだと!?」

エレン「この裏切りもんがああああああああああああああああああああ!!!」

ライナー「リーゴハイ!!!!!」



終わり

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年08月29日 (金) 20:26:56   ID: cWaH4kHj

ゲスミン天才かよ・・・バカだと思ってたのに・・・見直したわ・・・

2 :  SS好きの774さん   2015年05月30日 (土) 19:55:34   ID: UUEBOYfQ

SSの中で一番面白かった

3 :  SS好きの774さん   2015年08月03日 (月) 09:08:37   ID: f8Eltln_

パッパラ パッパラ パッパラ

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