憧「トリックオアトリート……よ!」 (48)

憧の家

憧「……」

憧(そろそろしずがやってくる時間ね)

ピンポーン

憧(噂をすればなんとやら。今行くからねしず)

ガチャッ

憧「はい」

穏乃「あ、憧!トリックオアトリート!」

憧「ふふっ、来ると思ったわ。はいお菓子」

穏乃「えへへ、ありがと憧!んじゃまたね――」

憧「あ、ちょっと待った」

穏乃「?」

憧「ねえ、今時間ある?もしよかったらちょっとゆっくりしてかない?ちょうど話したいことあるしさ」

穏乃「話?気になるね。うん、別にいいよ!」

憧「そう、じゃあ私の部屋に行こっか」

穏乃「おじゃっましまーす!」

穏乃「憧の部屋に入るのもなんか久しぶりだなー」

憧「……」

穏乃「うおっ、なんか難しい本がたくさん並んでる!」

憧「うん」

穏乃「憧は勉強熱心だな!そういうとこ私も見習いたいよ!」

憧「ねえしず」

穏乃「なに?」

憧「ちょっとお菓子作り過ぎちゃったみたいでさ。よかったら食べて行かない?美味しい紅茶も御馳走するわよ」

穏乃「食べたい食べたい!いやー、なんか悪いね!」

憧「いいよいいよ、気にしないで。じゃ、ちょっと紅茶淹れてくる」

穏乃「楽しみだな~、憧の紅茶♪」

キッチン

憧「……」

憧「あはっ」

憧「……」

憧「これでよしっと」

ガチャッ

憧「お待たせしず」

穏乃「大丈夫だよ。早速食べよう?私お腹ペコペコなんだ!」

憧「……うん。紅茶冷めないうちにはやくいただきましょうか」

コトッ

憧「はいどうぞ。召し上がれ」

穏乃「わーい、ありがとう。いっただきまーす!」

憧「……」

穏乃「もぐもぐ……うん、すっごく美味しいよこのクッキー!これも憧の手作り?」

憧「……そうよ」

穏乃「じゃあ次はこの紅茶を――」

憧(きたっ!)

穏乃「くんくん……あれ?」

憧「ど、どどどどうしたの?温かいうちに飲みなしゃいよ」

憧(舌かんだ……)

穏乃「いや、なんかこの紅茶……」

憧「紅茶?」

穏乃「……ううん、なんでもない。じゃあいただくね」

憧「うん。ゆっくり堪能してね」

ピンポーン

憧(!?)

穏乃「あ、誰か来たみたいだよ。はやく出たほうがいいんじゃないかな」

憧「そ、そうね。ちょっと行ってくる……」

憧(もう!いったい誰よこんな時にやってくる非常識なアホは!!)

ガチャッ

憧「はい!どちら様ですか!?」

玄「あ、憧ちゃん、とりっくおあとりー――」

憧「人違いじゃないですか?さようなら!」

ドアバンッ

玄「へ?」

憧(ふんっ、玄ってばほんと空気の読めないやつ!あたしとしずの間に割り込むなんて100年はやいわよ!)

ドンドンドン

憧「……」

<アコチャンヒドイヨ!ワタシダヨ!

憧「……」

ドンドンドン

<ムシシナイデヨ!ワタシタチトモダチダヨネ!

憧「なにもきこえない、なにもきこえない」

ガチャッ

憧「ごめんねしず。なんか間違い訪問だったみたい」

穏乃「間違い訪問?なんかどこかで聞いた声がしたんだけどな……ふーむ」

憧「そ、そんなことよりさ!どんどんクッキー食べちゃって!紅茶のおかわりもいっぱいあるわよ」

穏乃「おっと、そうだったね。じゃあ遠慮なくいただきまーす!」

穏乃「ぱくぱくもぐもぐ……うっめぇ-!」

憧(……よし、その調子で紅茶にも手を伸ばすのよ!)

憧「……」ジトーッ

穏乃「ん?」

憧「……」ジトーッ

穏乃「どうしたの憧?そんなに見つめられると食べづらいよ///」

憧「え、ああ、ごめんごめん!ほら、しずが美味しそうに食べるから自然と……ね?」

穏乃「だってこれほんとに美味しいんだもん!憧も食べなよ!」

憧「あ、あたしはいいわよ!今お腹いっぱいだし。そう紅茶だけでいいわ!」

穏乃「えっ、まだまだいっぱいあるよ?私一人じゃ食べきれないって!」

憧「大丈夫大丈夫、しずならいけるわよ」

あたしはしずにそう声をかけて、手前のティーカップに口をつける。

ごくりと一口飲んだ瞬間――

クラッ

憧「あ、あれ……」

いきなり視界がぐらぐらと揺れ出す

なにこの感じ。まるで天と地がさかさまになったみたい

ま、まさか!間違えて自分の紅茶に薬を盛っちゃったのあたし!?

いや、でも何回も確認したはず……


穏乃「……やっぱり、そうだったんだ」

憧「えっ……?」

途切れゆく意識の中で見たしずの表情は、どこか冷酷で寂しそうな表情をしていた

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