光彦「トリック・オア・トリート!」 (91)

コナン「何だあ? お前ら、その格好」

光彦「コナン君……トリック・オア・トリート!」

歩美「トリート!」

元太「だぜ!」

コナン「ああ……今日はハロウィンか……」

元太「おう!だから、さっさとお菓子をくれよ、コナン!」

コナン「お菓子をあげる役目は普通、大人がやるんだけどな……ちょっと待ってろ」クルッ

コナン「……家ん中にお菓子なんかあったっけな……」

コナン「蘭なら何かしら持ってるだろうけど、今夜は用事があっていねえし」

コナン「おっちゃんは……言っても、出てくるのはスルメとかだろうな」

コナン「おっ、リビングのテーブルの上にポッキーがのってる」ヒョイッ

コナン「『コナン君へ トリック・オア・トリート!』……蘭か」

コナン「貰いものを更に誰かに渡すのは気が引けるけど、まあ、良いだろ」

コナン「ほらよ」

元太「ポッキー一箱だけかよー、ケチ臭えなーコナン」

光彦「人からもらったものにそんなこと言うのは失礼ですよ、元太くん」

元太「でもよー」

コナン「これしかなかったんだよ。ごめんな。皆で分け合って食べろよ」

歩美「はーい、ありがとう、コナン君!」

コナン「どういたしまして……これから、まだ、どっか行くのか?」

光彦「はい! 博士の家にこれから行きます!」

コナン「そうか。収穫があれば良いな。じゃ、明日また学校で」

~翌日~

トゥルルルル……

コナン「朝っぱらから誰だよ……はい、江戸川です」

コナン「ん? 灰原? 何だよ……え」

コナン「光彦が……死んだ?」

コナン「ちょ、おま、バーロー! そんな! 何で!」

灰原『……毒殺らしいわ』

コナン「ど、毒殺?」

灰原『昨夜、あの子たち、仮装して辺りを周っていたでしょ?』

コナン「あ、ああ……」

灰原『それでもらったお菓子に毒が入っていたらしいのよ』

コナン「……どのお菓子に?」

灰原『ポッキー、らしいわ……』

コナン「!?」

灰原『集めたお菓子を三人で綺麗に三分割して持ち帰ったらしいけど、円谷くんの取り分にそのポッキーがあったとか……』

灰原『家に帰って、自室でそれを食べて……』

灰原『円谷くんのお母さんが見つけた時はもう手遅れだったらしいわ』

灰原『って、ちょっと、工藤くん? 聞いてる?』

灰原『もしもーし』

コナン「…………あ、ああ、き、聞いて、聞いてててて」

灰原『……そうね。混乱する気持ちは、分かるわ』

灰原『でも、あなたが落ち着かなきゃ、どうしようもないから……』

灰原『ごめんなさいね。とりあえず、電話切るわ。学校で会いましょう』プツッ

コナン「…………マジかよ」

ガチャッ

コナン「あ、ら、蘭ねえちゃん、お、おはよー!」

蘭「!?」

蘭「こ、コナン君?」

コナン「どうしたの? 蘭ねえちゃん」

蘭「な、な、何でもないわ」

コナン「……」

コナン「ポッキー、ありがとうね」

蘭「あ、え、ええ……まだ食べてない?」

コナン「う、うん。もうすぐ食べるよ」

蘭「そ、そう。じゃ、私、学校行くから、ごめん!」ダッ

コナン「…………マジかよ」

コナン(あの様子から考えて、光彦が食った毒入りポッキーはほぼ間違いなく、蘭が置いていったやつなのだろう…)

コナン(つまり、蘭は俺を殺そうとしたということになる……)

コナン(何でだ? 新一だってことがバレた?)

コナン(いや、バレたとしても、殺す理由なんて……)

コナン(待て、落ち着け、俺。それよりも、もっと現状やべーことがあるんじゃねえか?)

コナン(光彦にポッキーを渡したのは俺って、その内バレるんじゃ……)

コナン(そうなると、俺が容疑者ってことに……)

コナン(やばいぞ、これはやばいぞ)肩ポン

コナン「うおう!?」

服部「な、何でそんな驚くんや工藤……」

コナン「服部!?」

服部「おう、登校中か。ほんまに小学生してはるんやな工藤」

コナン「あ、当たり前だろバーロー」

コナン「何しに来たんだよ、こんな朝っぱらから」

服部「い、い、いや、何でもあらへんやけどな工藤」

コナン「そうか……じゃあ、はよ帰れ」

服部「え、偉う冷たいな工藤」

コナン「大変なんだよこっちはよ」

服部「何がや工藤」

コナン「ダチが殺されたんだよ」

服部「!?」

服部「そ、そりゃあ、偉いこっちゃ工藤」

コナン「ああ、そういうわけで、お前と話してる暇はねえんだよ」

服部「そ、そうか工藤」

コナン「街頭で工藤工藤言うんじゃねえよ、バーロー」

服部「すまんな工藤。ほな、またな工藤」

~学校~

元太「あ、コナン!」

コナン「おはよ……」

歩美「こ、コナン君、聞いた……?」

コナン「あ、ああ、光彦が死んだんだってな……」ビクビク

歩美「……」コクリ

元太「たくっ、何で死んだんだよ光彦……」ウルッ

歩美「ほんとにね……どうして……」

コナン(どうやら、こいつらには情報は届いてない様だな。不幸中の幸いってやつか……)

コナン「ん、灰原!」

灰原「おはよう……」

コナン(灰原から事件の詳細を語らせるわけにはいかねえな……だけど、俺も詳細は知りたいし……)

コナン「灰原、ちょっと来てくれ」

灰原「何?」

コナン「光彦の件、詳しく教えてくれ」

灰原「それだけ? なら、わざわざあの子らから離れなくて良かったんじゃない?」

コナン「バーロー、ダチの死に方についてなんて、小一に聞かせられるかよ」

コナン「本当に、毒殺だったのか?」

灰原「ええ」

コナン「ポッキーに毒が?」

灰原「ええ。死体の第一発見者である円谷くんのお母さんが彼の部屋へ入った時、勉強机の上にポッキーの空き袋がのってたらしいわ」

コナン「そうか……その情報は、どこから?」

灰原「博士からよ。早朝に刑事から聞き込みがあったらしいわ」

コナン「なら、情報は信頼できるってことか……」

コナン(まずいな……真黒じゃねえか、俺)

灰原「しかし、誰なんでしょうね……円谷くんを殺したのは……」

コナン「そ、そうだな……ゆ、許せねえな」

灰原「ええ。本当。いたいけな子供を毒殺だなんて……」

コナン(ごめんなさいごめんなさいごめんなさい)

コナン(しかし、マジでどうしようか……)

コナン(蘭がどうして俺に殺意を持ったのか探るか?)

コナン(いや、でも、それを探っても、光彦の件はどうにもならないだろうし……)

コナン(じゃあ、蘭のことは放っておいて、光彦のことを調べる?)

コナン(でも、蘭がマジに俺を殺したがっているなら晩飯に毒が入る可能性だって……)

コナン(糞! どうすりゃ良いんだ!)

コナン「……とりあえず、博士のところへ行くか」

~博士の家~

阿笠「むっ、新一か……」

コナン「よう、博士……」

阿笠「流石の新一も元気ないのう。当たり前か。なにせ、親友の一人を失ったわけじゃし……」

コナン「……その件なんだが、博士」カクカクシカジカ

阿笠「……な、なんじゃとお!」

阿笠「蘭くんが新一を殺そうとして置いたお菓子を新一が光彦くんにあげて光彦くんが死んだじゃとお!!!」

コナン「バーロー! 声がでけえよ!」

阿笠「し、しかし新一……本当なんじゃろ?」

コナン「ああ……なあ、博士、俺、一体どうすりゃ良いんだ?」

阿笠「自首……」

コナン「……光彦には悪いんだが、それはできねえんだ。博士」

阿笠「な、なんじゃと新一。素直に罪を償わんか!」

コナン「バーロー。俺には戸籍も何もないんだぜ? 逮捕されたら、そこらへんから調べが入るだろ」

コナン「そうなると、博士、あんたの身も危ねえし、下手したら黒の組織に……」

阿笠「じゃあ、どうするんじゃ新一!」

コナン「……一つ、方法がある」

阿笠「それは?」

コナン「光彦殺しの罪を、他の誰かに押しつける」

阿笠「!?」

阿笠「な、何を言っておる、新一!」

阿笠「そんなこと、許されるわけが……!」

コナン「俺だって嫌だよ……」

コナン「けど、それしかないんだよ……」

阿笠「新一……」

コナン「確かに、濡れ衣着せられた方はたまったもんじゃないかもしれねえ」

コナン「けど、一人の犠牲でその他大勢が助かるならば…」

阿笠「新一……」ウルッ

コナン「というわけで、誰に罪を着せれば良いと思う?」

阿笠「ふむ……」

コナン「光彦の周りで、毒薬を仕込める程科学に造詣が近い人物が的確だろうな……」チラッ

阿笠「し、新一!」

コナン「分かってる。博士を犯人に仕立て上げたりはしないさ」

コナン「昨夜一度、博士の家に光彦が寄っていて、お菓子をあげているから毒を入れるチャンスがあるという状況証拠が残っているからといって」

コナン「博士を犯人にしたりはしないさ」ニッコリ

阿笠「あ、安心したわい……」

コナン「その他、元太、歩美に関してもまあ、微妙だろうな」

コナン「ただの小学生が毒薬なんて用意できるとは思えない」

コナン「機会があるとはいえ、そんな証明は説得力がないからな」

阿笠「ふむ。しかし、そうなると押しつけられそうな人がいなくなるんじゃないのか、新一」

コナン「いや、いる」

阿笠「誰じゃ?」

コナン「……光彦自身だ」

阿笠「ど、どういうことじゃ?」

コナン「自殺ってことにすれば良いのさ」

コナン「そうすれば、生きている人全員が幸せになれる」

阿笠「流石じゃな新一!」

コナン「だろう?」

阿笠「しかし……それなら、さっき言った問題があげられるんじゃないのか?」

阿笠「小学生が毒薬なんて用意できるわけがないという……」

コナン「その点については大丈夫だ。博士の研究室から盗んできたと説明すれば良い」

阿笠「成程! 流石じゃな新一!」

コナン(そうすると、博士の管理責任能力が問われると思うけど……まあ、これは言わない方が良いだろう)

コナン「よし、なら、早速、光彦の家に行って、証拠を捏造するぞ博士!」

阿笠「そうじゃな、新一!」

~光彦宅~

コナン「なんなら、ここで推理も済ませちまうか、博士」

阿笠「そうじゃな、新一」ピンポーン

光彦母「はーい……」

阿笠「あ、光彦くんのお母さんですか? 阿笠です」

光彦母「あら……」

阿笠「大変なところだと思いますが、申し訳ございません。こちらの江戸川くんが光彦くんに貸していたノートを返してほしいとのことで……」

阿笠「部屋に入れさせてはいただけないでしょうか? 無理は承知ですが……」

光彦母「……いえ、大丈夫です。では、どうぞ……」

~光彦の部屋~

コナン(よし、じゃあ、ここの棚のところにこの薬の袋を置いて……)

コナン「あれれ~?」

光彦母「!?」

コナン「こんなところに、薬の袋があるよー?」

光彦母「く、薬の……?」

阿笠「むむ、これは毒薬じゃな……」

コナン「ええ~? もしかして、光彦くんの~?」

阿笠「ああ、そうじゃ。ということは……」

光彦母「ご、ごめんなさい……!」

コナン「え?」

阿笠「え?」

光彦母「まさか、そんな証拠を残していたなんて……」

光彦母「そうです……そうです……」

光彦母「わたしが、やったんです……あの子を!」

阿笠「え? ちょ、奥さん……」

光彦母「こっちは仕事でストレスがたまっているのに、やけに大人びた態度をとるものだから……ついっ」

光彦母「ゴミ箱にポッキーの袋が落ちてたから、それに毒が入っていたように偽装したのですが……」

光彦母「やはり、そんな即興の計画、簡単に崩れてしまうんですね……」

光彦母「ううう……」

コナン「……」

阿笠「……」

コナン(そのまま、光彦の母親は警察へ自首をした……)

コナン(司法解剖で丁度、ポッキーに毒は入っていなかったらしいというところが分かったところらしく)

コナン(警察は、素直に彼女の自首を受け入れた)

コナン(勿論、俺らには色々と言いたいことがあったが……)

コナン(何がなんだか分からなかったので、ただ黙っているしかなかった)

コナン(正直なことを言えば、今もよく分からない)

コナン(はっきりしたことを言えるとすれば……)

コナン(とりあえず俺は助かっていて、まだ生きているってこと。それだけだ……)

~後日~

蘭「ごめん! 服部くん!」

服部「ええって、ええって。俺も今着いたところや」

蘭「そ、そっか。良かった……」

服部「それより、誰にも気づかれてへんやろうな?」

蘭「え、ええ。多分……」

服部「そうか。ほんなら、ええわ」

蘭「うん……ハロウィンの次の日は焦っちゃったけど、もう慣れたから大丈夫よ」

蘭「リビングにいたコナン君見ただけで動揺しちゃって……」

蘭「でも、気づかれなかったみたいね。結局」

服部「そうやろうな。あの日、あの坊主は友達が死んだことに夢中だったようだったから」

服部「じゃ、行こうか」

蘭「うん」ギュッ

服部(すまんな。工藤……)

~完~

これで終わりです。
お付き合いいただいた方、ありがとうございました

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