ミカサ「遺書」(353)

※CPアリ。ミカエレになると思います。
※エロは無い予定。

-遺書を、書こうと思った。

-エレンと、アルミンに宛てて。

訓練兵になって二年が過ぎ、三度目の夏を迎えた。

この生活が三年目に突入したからといって特に変化はない。

訓練漬けの毎日。

ただ、入団したばかりの頃と比べて訓練兵の人数は減った。

最初の適性検査で淘汰され開拓地に戻った者、訓練中に死んでしまった者、脱走した者、素行不良で追い出された者。

理由ははっきりしないけれど訓練所を去る者もいた。

そういう者達のうち、何人かは「妊娠したから」という噂を聞いたことがある。

真偽は不明。

でも三年目に入ってからは訓練兵の減少も頭打ちになった。

二年間ふるいにかけられた結果、今残っている訓練兵たちは兵士としての適性を持つ者ばかりなのだと思う。

変化のない毎日、減らない同期、訓練兵としての少しばかりの自信…これらが要因となって、おそらく私は気を緩めてしまった。

立体機動の訓練中に事故を起こしてしまったのだ。

立体機動装置を用いて巨人を模したハリボテに斬撃を与える訓練。

もう100回以上経験した。

この訓練中に右足首付近でベルトが切れた。

ハリボテのうなじを切り取った後、いつものように後ろを振り向きエレンの姿を確認した瞬間、右足にかかっていた体重が消えた。

バランスを崩して左半身と頭を木に打ち付けた。

気がついたら医務室だった。

一時間意識がなかったらしい。

医務官から「後々、体に異変が出る可能性があるから明日一日医務室で安静にしておくように」と言われた。

医務室で教官から装備の点検が杜撰だと注意されていたときに、サシャが私の着替えを持ってきてくれた。

教官が出て行った後「昨日、私と一緒にきちんと点検したのに、あんな言い方って無いですよね」とサシャが小声で言ってくれた。

私を元気付けようとしてくれている。

でも、装備の点検をしたとき、ベルトの消耗に気付かなかった私が悪い。

消灯時間の直前にエレンとアルミンがお見舞いに来てくれた。

エレンは少し怒っていた。

二人とも心配してくれている。

夜は左半身の打ち身が痛くて眠れなかった。

朝になったらだいぶマシになったけれど、打撲がひどい。

昼間睡魔に襲われて寝てしまい、起きたら日が暮れていた。

丸一日様子を見た結果、体に異常はなかったから夕食後は寮に戻る。

明日からはまた訓練。

寮に戻ると異様に静かだった。

どうしたのか聞いてみると、訓練中に死人が出たのだと言われた。

闇討ちで受け身を取り損なったらしい。

久しぶりの重い空気。

きっと今夜も寝付けない。

私たち訓練兵はいつ死んでもおかしくない。

ここを卒業し、調査兵団に志願でもすれば、さらに死ぬ率は上がるだろう。

衣食住が保証された二年間、それに加えて最近訓練兵の死亡が無かったからすっかり忘れていた死を身近に感じる感覚。

立体機動で事故を起こしたときの私は運が良かっただけ。

打ち所が悪ければ死んでいた。

私が明日死ぬ可能性もある。

消灯後の部屋で目を見開いたままそんなことを考えていた。

目が慣れてきて天井の木目を見ながらふいに思い立った。

遺書を書いておこう、と。

死ぬ気はない。

でも死なない保証もない。

死ぬ寸前に「ああ言っておけば良かった」と後悔しないように。

エレンと、アルミンに宛てて。

とりあえずここまで

午後からの訓練が無い半休の日、一人で街に出た。

便箋を買おうと思って。

エレンとアルミンに手紙を書くのだから便箋が必要。

どんなのが良いだろう。

思ったよりも種類が多くて悩む。

結局、なんの変哲もない白い便箋と白い封筒を買った。

模様が入った可愛いものもたくさんあったけれど男の子宛てに可愛いものを選んでもしかたがない気がした。

今から、書く。

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アルミンへ

いつ死ぬかわからないので今のうちに遺書を書いておこうと思います。

私はあなたが生きていて嬉しいです。

あなたと友達になれて良かったと思っています。

あなたと肩を並べて生きてこられた私は幸せものです。

シガンシナ区が陥落したとき、ハンネスさんに私とエレンのことを知らせてくれてありがとう。

あなたはいつだって正しい選択ができる力を持っています。

自信を持ってください。

いままでもこれからも私はあなたの全てを信じています。

私と友達になってくれて本当にありがとう。

長生きして、結婚して、家族を大切にして幸せに生きてください。

いつまでも最愛の友の幸福を祈っています。

849年・夏  ミカサより

―――――――――――――――――――

これで良いのだろうか…?

生きているのに死んだつもりで書くのは難しい。

私は、手紙が下手くそ。

遺書を書いているとばれるのが嫌だったので、消灯後ベッドのカーテンを閉めて書いているから暗くて書きにくい。

エレンの分も書きたかったけれど、アルミン宛ての遺書で思ったよりも時間をくってしまった。

また明日書こう。

―――――――――――――――――――

エレンへ

いつ死ぬかわからないので今のうちに遺書を書いておこうと思います。







―――――――――――――――――――

エレン宛ての遺書を書き始めてもう一時間は経っている。

何を書けば良いのかわからない。

最初の一文はアルミンと同じにしたけれど。

続きもアルミンと統一して、あなたが生きていて嬉しい、などと書いたらエレンは怒らないだろうか。

最近のエレンは昔に比べて反抗的。

これは反抗期というやつなのだろうか。

あまり夜更かししては明日の訓練にひびくので、もう寝よう。

続きは明日書く。

「いッ!?」

対人格闘の時間、突然エレンの声が聞こえた。

声がした方を見るとエレンが脛をさすっている。

アニとライナーが傍に立っている。

何事だろうか。

「ミカサ?どうかした?」

はっとして呼ばれた方を振り向いた。

「なんでもない。ごめんなさい。次はクリスタ、あなたが木剣を奪う番…」

今は訓練中。

訓練中に気を抜いてはいけないと、ついこの間身を以って知ったというのに。

訓練に集中しなければ。

「うッ!!」

(また、エレンの声…)

ドサッ

「!?」

(何?何の音?)

振り向くと今度はエレンが妙な格好でひっくり返っている。

(アニが…やったの?)

エレンが何かライナーに話しかけている。

次はライナーとアニが組むみたい。

「…カサ、ミカサ。ねえミカサ、あっちが気にn」

「あ、ごめんなさいクリスタ…」

またエレンに気を取られてしまった。

訓練中に気を抜いてはいけない。

組んでくれているクリスタにも失礼。

クリスタに向き直る。

「ううん。良いよミカサ。アニの技私も気になる。ちょっと見学させてもらおうよ」

「!……ええ」

クリスタは向上心が強い。

アニの技ではなくエレンを気にしていた自分が申し訳ない。

クリスタを見習って真剣に見学しよう。

アニとライナーを観察して何か得られるかもしれないのだから。

―――――――――――――――――――

エレンへ

いつ死ぬかわからないので今のうちに遺書を書いておこうと思います。







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今日もまた、書き始めて一時間は経っている。

続きが書けない。

夕食の時間、またエレンがジャンと喧嘩していた。

もう寝る。

「何?」

朝の光を浴びて着替えをしながらアニが言った。

無意識にアニを凝視してしまっていたらしい。

「何でもない」

「そう。あんたもさっさと着替えないと朝食に間に合わないよ」

「うん」

朝日に眩しい金色の髪が溶けてしまいそう。

昨日、ジャンとの喧嘩の際、エレンはアニにかけられた足技を使っていた。

私も何かエレンに教えられるような技術が欲しい。

アニの足技が使えればエレンは私と組んでくれるのだろうか。

ここまで

―――――――――――――――――――

エレンへ

いつ死ぬかわからないので今のうちに遺書を書いておこうと思います。

5年前、私を助けてくれてありがとう。

あなたがいたから私は今まで生きてくることができました。

あなたの家族になれて幸せでした。

熱くなって争いの火種になることは出来るだけ避けてください。

喧嘩もしてはいけない。

今までもこれからもあなたの無事を祈っています。

あたたかいマフラーをありがとう。

長生きして、結婚して、家族を大切にして幸せに生きてください。

良い人生でした。

いつまでも最愛の家族の幸福を祈っています。

849年・夏  ミカサより

―――――――――――――――――――

とりあえず書いた。

これで良いだろうか。

手紙を上手に書ける人が羨ましい。

寝る。

対人格闘の時間、今日もエレンはアニと一緒にいる。

周囲が組み合っているのに二人で話している。

エレンが左足を上げながら嬉しそうな顔をしてアニに何か言っている。

ずっと前の訓練中に私に投げ飛ばされた後はあんなに機嫌が悪かったのに。

立体機動の訓練中も私と一緒にいるときはエレンは機嫌が悪い。

離れていて聞こえないけれど、絶対に舌打ちをしている。

表情でわかる。

エレンが、またひっくり返った。

何度ひっくり返されてもエレンはアニと組むのだろうか。

「エレン、脛は大丈夫?」

夜、食堂に向かいながらエレンに話し掛けてみた。

「は?何のことだよ」

「対人格闘のとき、アニに蹴られていたから」

そう言うとエレンはあからさまに苛立った表情を見せた。

「お前、見てたのかよ」

「うん。エレン、打撲になってない?ひどいようなら湿布をしt」

「うるせえな!お前はオレの姉かよ!?母親かよ!?」

「?どうして怒るの」

「は?怒ってねえよ。お前が、うるs」

「ミカサは心配して言ってくれてるんだから、そんな言い方しちゃ駄目だよ」

アルミンが仲裁に入ってくれた。

エレンがはっとした表情を浮かべたあと、怒ってはいないけれど不満げな表情になって言った。

「…オレ、怒ってねえからな」

怒ってないなんて、嘘。

怒ってた。

怒らないでほしかった。

エレン宛ての遺書を、書き直そうと思う。

口煩く注意するとエレンは機嫌が悪くなるから。

私は、悪くない。

エレンはきっと反抗期なのだろう。

便箋は六枚あるから大丈夫。

―――――――――――――――――――

エレンへ

いつ死ぬかわからないので今のうちに遺書を書いておこうと思います。

5年前、私を助けてくれてありがとう。

あなたがいたから私は今まで生きてくることができました。

あなたの家族になれて幸せでした。

あなたが私のことを姉とも母親とも思っていなくても私はあなたの家族です。

いつも口煩くしてしまったのはあなたが大切な家族だから。

今までもこれからもあなたの無事を祈っています。

あたたかいマフラーをありがとう。

長生きして、結婚して、家族を大切にして幸せに生きてください。

良い人生でした。

いつまでも最愛の家族の幸福を祈っています。

849年・夏  ミカサより

―――――――――――――――――――

一応、エレンが怒りそうな部分を書き変えてみた。

手紙を書くと疲れる。

寝よう。

ダラダラ投下して申し訳ない
今日はもう投下しないです

某スレでどんな訓練があるかとか聞いてた人?

エレンはもう、あの後輩から手紙を受け取っただろうか。

後輩と話したあの日から何日経ったっけ。

彼女の目も宝石みたいに綺麗だった。

緑に見えたかと思うと光の加減で青になる瞳。

きっと、エレンはもう手紙を受け取っていると思う。

どんな風に渡されたのだろう。

どんな字で書かれているのだろう。

何と書いてあったのだろう。

今日は明かりを点けてないし遺書を読み返してもいないのに、眠れない。

すっかり目が暗闇に慣れてしまった。

エレンは手紙に返事をしただろうか。

何と、返事をしただろうか。

もし、エレンとあの子が恋人同士になっても、私は気付かないかもしれない。

ハンナとフランツのことも気付かなかったから。

エレンに恋人が出来るなんて嫌だと思った。

たった一人の家族が私から離れていくのは辛すぎる。

私には、エレンしかいないのに。

涙で、耳が冷えてしまった。

朝、起きたら目が腫れていた。

同室の女子にどうしたのか聞かれた。

起きたら顔がむくんでいたと答えた。

嘘ではない。

朝食を終えたので今から訓練に向かう。

「おい」

エレンが私の袖を掴んだ。

立ち止まってエレンを見る

「何?急がないと遅刻s」

「ミカサ、お前なんか今日、目腫れてないか?」

「………気のせい」

エレンは「そうか」と言って手を離した。

先を行っていたアルミンが振り返り私たちを呼んでいる。

急がなければ本当に遅刻する。

私も、エレンも、走った。

エレンは私が髪を切っても気付かない。

それなのに私の目がいつもより細くなったことに気付くのはやめてほしい。

本日最後の訓練である、器械体操を終えて、部屋に戻るとき、後輩たちも訓練を終えて戻ってきた。

後輩の集団の中に、砂にまみれた訓練兵の姿が確認できる。

彼等は対人格闘が今日最後の訓練だったのだろう。

恋文の後輩を探す。

すぐに見つかった。

彼女がもしかしたらエレンの恋人になるかもしれない、私が知らないだけでもうすでになっているかもしれない。

そう思うと寂しくて苦しい。

遠目にしか見ることが出来ないけれど、彼女は砂にまみれていないようだ。

砂のついていない服に身を包む彼女の姿を見て「やはりそうか」と思った。

恋をすれば綺麗な姿でありたいと思うのは当然のこと。

その気持ちは、わかる。

でも、綺麗になろうとすればするほど、訓練から遠ざかって弱くなる。

私は、綺麗になれなくても良い。

たくさん守り抜けるよう強くなりたい。

最近、女子の間で花言葉が流行りはじめた。

おそらくこの間の、クリスタの手紙がきっかけになったのだと思う。

誰かが、花言葉の一覧表を作成したらしく女子の間で出回っている。

その写しが私達の部屋にも回ってきた。

今、みんなで一覧表をノートに写しとっている。

結構、知らない名前が多い。

いつか絵のうまい訓練兵が絵入りで一覧表を作ってくれないだろうか。

シガンシナにいた頃、三人でよく蜜を吸っていた花の名前をみて懐かしくなった。

スイカズラの花言葉に「友愛」、サルビアの花言葉に「家族愛」があって、嬉しかった。

最近、座学の講義中、大急ぎでノートをとって時間を作っては教科書の文字の中に「コイビト」を探していた。

でも、この前の講義の時間に最後のページまでめくり終わってしまった。

つまらないと思いながら、板書をノートに書き写していたら、ひらめいた。

ノートに書き取るとき、うまく改行して自分で縦読みの文字列を作れば良い。

手始めに「エレン」と並べてみた。

かなり妙な改行をしたけれど意外にも簡単に出来た。

続きはどうしよう。

“エレンげんきですか”とか?

それとも“エレンけさはきのうよりさむかったですね”がいいだろうか。

“エレンさいきんたいちょうはどうですか”

“エレンさいきんかわりないですか”

“エレンてがみをもらいましたか”

“エレンすきなひとはいますか”

“エレンわたしのこt…

(!?)

続きを考えていると隣に座っていたエレンが私の足を蹴ってきた。

横を見ると声は出さずに口だけ動かして「何だよ」と伝えてきた。

何のことかよくわからずエレンを見ていたら、私のノートを指差した。

エ、レ、ン、と縦に文字をなぞられた。

びっくりした。

何でもないと首を横にふる。

もう一度私の足を、さっきよりも強く蹴ってから、エレンは前を向いた。

私も前を向いた。



“エレンわたしのことすきですか”



きっと、好きに、決まっている。

たった一人の、家族なのだから。

また、エレンとキスをする夢を見た。

前よりもひどい嫌悪感。

抱きしめあって、顔を互いに傾けるキスは家族のキスと言えるのか。

最近の私は、ハンナのキスやら後輩の恋文やら、他人の恋路を気にしすぎ。

エレンは家族。

心からそう思っている。

本当に。

でも最近は、それだけでは足りないようにも感じている。

私たちは正式に血のつながった家族ではない。

「家族」という言葉が、この複雑な関係を表すものとして相応しいのか、最近わからなくなった。

今日、対人格闘の時間にアニと喧嘩になった。

必要以上にエレンを締め上げるアニを見て頭に血がのぼってしまった。

あのときエレンは明らかに手で待ったをかける動作をしていたのに、それを無視してアニはエレンを転がしていた。

その後エレンの顔が真っ赤になっても絞め技をかけ続けていた。

それでついカッとなった。

木銃も持たずに取っ組み合ってしまった。

訓練中だというのに。

普段からエレンに衝動的にならないように注意していたのに。

私自身が衝動的になるなんて。

あれは喧嘩以外の何物でもない。

アニに蹴られた足が痛い。

以前エレンに蹴られたときよりも痛い。

入浴時間にアニに蹴られたところを見ると打撲になっていた。

アニも負傷してないだろうか。

私がアニの攻撃をかわしたときに、バランスを崩していたけれど、ひねったりしてないだろうか。

私が浴場に行ったときアニは洗い終わって部屋に帰るところだった。

私も部屋に戻ろう。

「ミカサ?」

声がした方を振り向くと、エレンが立っていた。

「何してんだよ。一人か?」

と言いながら私の方に走ってきた。

「今、お風呂の帰り」

「へえ。なんか遅くないか」

なんとなく一緒に歩き始める。

エレンは何をしていたのだろう。

あっち側は倉庫しかないはず。

何を、していたのだろう。

「お前、足は大丈夫かよ」

「え?」

「足。蹴られただろ。アニに」

「ああ。打撲になってた」

なんだか、ばつが悪い。

いつもエレンに注意ばかりしているのに、自分が衝動的になってしまったから。

「大丈夫かよ。医務室行けよ」

「この間エレンがくれた湿布がまだある。だから…」

「そっか。なら良いな」

エレンの態度は、いたって普通。

私がアニと喧嘩したことを攻める様子もなかった。

それはそれで気持ちがモヤモヤする。

特に会話もなく歩いていると、ふと思った。

(手紙は、どうなった…?)

「エレン」

「え?」

気がつくとエレンの名前を呼んでいた。

「最近、手紙を貰わなかった……?」

後悔している。

聞かなければ良かったと心から思っている。

手紙を貰ったかどうかなんて聞くんじゃなかった。

ついさっき、エレンと口論になった。

今、私はトイレにいる。

―――――――――――――
―――――――――――
―――――――――
―――――――

「手紙、貰ったでしょう?」

「は?…何だよ急に」

「貰ったでしょう?」

「だからっ!何だよ急に。何でそんなこと言い出すんだよ」

(やっぱり貰ったんだ)

貰ってなければ否定するはず。

エレンは嘘が苦手。

語気を強めるのはごまかそうとしている証拠。

「青緑の目の後輩に言われた。エレンに手紙を書くって」

エレンの大きな目がさらに大きく見開かれた。

「は?何だよそれ。何でお前に」

「知らない。どうして私に言ってきたかなんてわからない」

「何だよ。それ」

「返事は、もうした?何て返した?」

エレンの袖を掴んだ。

「…何でお前に言わなきゃなんねえんだよ」

「OKした?エレン、付き合うの?あの子と」

「は?お前、なに、何なんだよ」

「付き合う?」

「うるせえなっ…!!!」

手を振り払われた。

明らかに怒っている。

「あ、エレン、あの…」

「何なんだよ。何で、お前、お前は…っ」

「あ、ご、ごめn」

「お前、本当に何なんだよ。オレは、オレはお前の弟じゃねえんだよ!!ほっとけよ。お前、オレの姉かよ!?母親かよ!?」

「ち、ちがu」

エレンが私に背を向けた。

そのまま走っていく。

気がつくと女子寮の前まで来ていた。

「待って…!エレン」

エレンは、振り向いてくれなかった。

涙が止まらないから、トイレから出られない。

とりあえずここまで
次から投下のペースが落ちるかも
スレが落ちる前には投下すると思いますが、もし落ちそうになったら自分であげに来ます


>>115
心当たりがないので違うと思います

今朝からずっとエレンの顔を見ることが出来ない。

エレンは怒っている。

私の事を無視している。

エレンと私は、一生このままなのだろうか。

アルミンが「また喧嘩したの?」とあきれ顔で言う。

喧嘩なら良かった。

これはいつもの喧嘩じゃない。

いつもみたいにエレンが意地をはってるわけじゃない。

私に非がある。

きっとエレンは一生怒ってる。

周りに人がいるのに泣きそうになる。

今日は午後から座学。

服を着替えて講義室に来たけれどエレンもアルミンもまだ来ていない。

前の方の席に座って待っている。

以前書いた縦書きの「エレン」を見ながら待っている。

「ミカサ」

「!?」

すぐ横から声がして驚いてそちらに顔を向ける。

「今日、隣良い?」

「…うん」

アルミンだった。

アルミンの隣にエレンの姿が見える。

エレンは頬杖をついて向こう側を見ている。

(もう、駄目なんだ)

エレンは私のことが嫌いになった。

一生嫌いになった。

泣きたい。

縦書きの「エレン」の横に文字を書き足した。

“エレンごめんなさい”

今日は兵站行進で一日中走っていた。

石に躓いて転んだ。

口を切った。

私は使い物にならない。

辛い。

夕食の時間をずらして一人で食べた。

腫れた唇をエレンに見られたくなかった。

エレンは私を見てないのに。

馬鹿みたい。

エレンのことを考えると怖いものが増えていく。

考えることをやめてしまいたい。

そうすれば、きっと強くなれる。

夜、遺書を読み返している。

遺書ではない手紙を、本当は私も書きたい。

エレンに宛てて、私も書きたい。

―「お前本当に何なんだよ」

わからない。

―「ほっとけよ」

放っておけない。

―「お前、オレの姉かよ!?母親かよ!?」

ちがう、私は、家族。

でも、それでも私は。



(……エレンの恋人になりたかった)



エレンが私の言葉にどれだけ反発しても、訓練中に舌打ちされても、ヘソを曲げられても、恋人に、なりたかった。

私を見てほしい。

―エレンは他の子を見てる。

私に笑いかけてほしい。

―エレンは苛立った顔ばかり見せる。

綺麗な恋人になりたい。

―そんなことでは強くなれない。

シガンシナに引き取られたばかりの頃は優しかった。

開拓地でも、まだうまくやれていた。

訓練兵になったばかりの頃も私と離れずにすんで安心した顔を見せていた。

でもいつの間にか対人格闘ではあからさまに避けられるようになった。

今は、とうとう私のことが嫌いになった

エレンは変わった。

きっと私と離れたがっている。

でも私はあなたがいなければ何もできない。

エレン、私があなたの家族でごめんなさい。

あなたに嫌われているのに、家族だからとあなたの傍に居座っている。

あなたを守らなければいけないのに、くだらない恋にうつつをぬかしている。

二番目に書いた遺書のインクが涙で滲んだ。

ところどころ読めなくなった。

一番よく書けていたのに。

遺書を、書き直さなければならない。

同室の子達を起こさないようにそっと便箋とペンを取り出した。

涙が止まらない。

―――――――――――――――――――

エレンへ

いつ死ぬかわからないので今のうちに遺書を書いておこうと思います。

5年前、私を助けてくれてありがとう。

あなたがいたから私は今まで生きてくることができました。

あなたの家族になれて幸せでした。

あなたの家族であることは本当に私の心の支えでした。

でも、家族でも、本当は私はあなたの恋人になりたかった。

あなたを姉や母親のような目で見ることなんてできなかったし、生きているうちにあなたのためにお洒落をしたかったです。

今までもこれからもあなたのことを思っています。

あたたかいマフラーをありがとう。

幸せに生きてください。

いつまでもあなたのことが大好きです。

849年・秋  ミカサより

―――――――――――――――――――

朝起きて、遺書を見直して、気分が悪くなった。

こんなの遺書じゃない。

死んだ相手に「恋人になりたい」と伝えられて気分が良いはずがない。

後味が悪いだけ。

自分の欲望のままに遺書を書いてしまった私に、エレンの恋人になる資格は、ない。

近いうちに、書き直す。

次が最後の便箋。

失敗しないようにしなければならない。

残りの遺書は、掃除当番のときに、焼却炉に捨てに行こうと思う。

エレンは、今日も私と話してくれなかった。

もっとも、私も話しかけてはいないのだけれど。

全て私が悪かった。

私宛てでもない手紙なのに詮索が過ぎた。

プライベートな問題に、首をつっこむのは良くなかった。

アルミンはこの件について何も言わない。

でもいつも通り一緒にいてくれる。

ありがとう、と思ってる。

でも、伝えられない。

きっとアルミンと話したら止まらなくなるだろうから。

アルミンに逃げる前にエレンに謝らなければならない。

せめてエレンの良い家族でありたい。

―――――――――――――――――――

エレンへ

いつ死ぬかわからないので今のうちに遺書を書いておこうと思います。

5年前、私を助けてくれてありがとう。

あなたがいたから私は今まで生きてくることができました。

あなたの家族になれて幸せでした。

そばにいてくれてありがとう。

あなたに出会えて良かったです。

良い人生でした。

素敵な人と結婚して、家族を大切にして、長生きして、幸せになってください。

今までもこれからもあなたのことを思っています。

あたたかいマフラーをありがとう。

いつまでもあなたは大切な私の家族です。

849年・秋  ミカサより

―――――――――――――――――――

遺書を書き直した。

これが、最後の便箋。

エレンが幸せなら、それでいい。

私は家族として出来る限りのことをことをしたい。

明日、エレンに謝ろうと思う。

とりあえずここまで

>>1ですが、気になるフレーズがあれば、他のssの作品名を出さずに指摘していただけたら出来るだけ直します
あと、花言葉は今後使おうと思って出しましたが不快に思われる意見が多ければやめます

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2013年11月13日 (水) 15:20:09   ID: c3mK8y6t

支援

2 :  SS好きの774さん   2013年11月20日 (水) 01:28:51   ID: G0inMxsJ

支援&期待

3 :  SS好きの774さん   2013年11月22日 (金) 23:32:50   ID: B3saw3vz

早く〜(>_<)

4 :  SS好きの774さん   2013年12月01日 (日) 18:26:45   ID: 71Bl52xW

放置かよ

5 :  SS好きの774さん   2014年01月29日 (水) 14:56:52   ID: kR50A3lm

続き期待します
早く早く早く早く!!!

6 :  SS好きの774さん   2014年06月16日 (月) 21:13:49   ID: E_VMkjDD

私からもです!めっちゃいいSSなんで、続きが見たいです泣

7 :  SS好きの774さん   2021年12月10日 (金) 10:49:52   ID: S:HCfMZ7

https://jbbs.shitaraba.net/bbs/read_archive.cgi/internet/14562/1383215779/
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