純一「色々みんなと、イチャイチャしよう!」(736)

【中多紗江】

アパート

純一「………」ごと…

純一「──よし、こんな感じでいいかな。だいぶ片付いたと思うけど…」きょろきょろ…

純一「まあ、大丈夫だろ。美也が来るだけだしな」

純一「………」

純一(……綺麗に片付いたら、ちょっと一服してきたくなったなぁ。
   美也が来るのはもうちょっと後だし、少し経てば匂いも取れるだろう)

純一「………」かさかさ… じゅっ

純一「……ふー…」 ガチャ!

美也「にぃにー! 遊びにきったよぉ……ってああ!!」

純一「ぶほっ!?けほっけほっ……美也!?」

紗江「え……美也ちゃん、どうしたの…? あ……」

美也「にぃにまたタバコすってる! こらぁー!」

純一「さ、さえっ……美也!? なんでこんな時間に! 来る時間はもっと先だろ…!」がさがさ…

美也「そうだけど! でもにぃにを驚かせようとして早めに来てみればぁ……にぃに!駄目だよそんなの!」どたどだ!

純一「あ、ちょ……危ない美也…! わかったわかった、捨てる! 捨てるから!」

紗江「み、美也ちゃん…!」

美也「だ、大学生になったからって、すぐオトナっぽいことするんだから!
   そんなことしても女の子にもてないよ!」

純一「べ、べつにモテようってわけですってるわけじゃ…!」

紗江「せ、せんぱい……」

純一「ていうか紗江ちゃん! どうしてここに紗江ちゃんが…っ?」

美也「さっき買い物してる時に、そこでバッタリあったんだよ…!もう、これ捨てるからねにぃに!」ぽいっ

純一「ああっ…! 最後の一箱が…!」

美也「いいの! これで最後の一箱にしてよね! ったく……ごめんね紗江ちゃん?」

紗江「…………」

美也「久しぶりにあってみれば、こんな体たらくなにぃにで……もう!しっかりしてよね!」

純一「しっかりしてるよ…! ほら、ちゃんとアパートで一人暮らしもしてるし…!」

美也「こんなことしてるにぃには、ぜんぜんまったくしっかりしてないよっ!」

純一「え、えぇぇ……」

紗江「──み、美也ちゃんっ……」

美也「うん? 紗江ちゃんどうかしたの? タバコの煙きつかった?」

純一「煙出るほどすってないよ……」

紗江「う、ううん…大丈夫っ…そ、それよりも先輩許してあげて…」

美也「え~! でも許したら、すぐタバコ吸っちゃうよ~?」

純一「そこまで中毒じゃない!」

紗江「せ、先輩もこういってるし…! ね? 美也ちゃん、もういいでしょ…?」

美也「……紗江ちゃんがそこまでいうなら……もうすっちゃ駄目だからねにぃにっ」

純一「わ、わかったよ……」

純一「……と、とりあえず。紗江ちゃん、久し振りだね。元気にしてた?」

紗江「は、はいっ…! おひさしぶりです、せんぱい…!」

純一「うん。僕が輝日東高卒業してからだから……一年ぐらいかな?」

紗江「そ、そうですね……でも、ちょくちょく先輩の姿は町でお見かけしてましたので…
   わ、わたしてきにはっ…一年ぶりではない、です」

純一「そうなの? だったら話しかけてくれればよかったのに」

紗江「あっ……その、先輩が…知らない方と、歩いていたので…ちょっと話しかけにくくてっ…」

純一「知らない人? ──あー、サークルの人かぁ……それだったら仕方ないね。
   でも、僕が一人の時に見かけたらちゃんと話しかけてね? 僕もそのほうが嬉しいからさ」

紗江「う、嬉しいですか…っ?」

純一「当たり前だよ! こんなかわいい後輩に呼びかけられるなんて、大学で有名になっちゃうかもね僕!」

紗江「っ……か、かわいいって……せんぱいっ…」テレテレ

美也「──にぃにー! 冷蔵庫勝手に開けるよー! ……ってろくなものはいってない…」

純一「し、仕方ないだろ…! 今日は美也が夕ごはん作ってくれるって約束だったから、何も買ってないんだよ…!」

美也「だからってネギが一本だけってのはないでしょ……」ごそごそ

純一「はぁ……冷凍庫に、買ってきたアイスが入ってるよ」

美也「本当にっ? あ、みゃーの大好きなまんま肉まんアイスバーだっ。にっししし!」

純一「……ったく、現金な奴…」

紗江「っ……っ……」キョロキョロ…

純一「ん、紗江ちゃん。とりあえずゆっくりしていきなよ、何も無いところだけどさ」

紗江「あっ……はい、わかりましたっ…!」すとん!

純一「そんなに勢い良くすわんなくても……とりあえず、テレビでも見る?」

紗江「あ、ありがとうございます…!」

純一「どういたしまして」ぴっ

美也「みぃひみぃひ~! ほらべってほこにはるほ~?」もぐもぐ

純一「なんでもうアイスを食べてるんだ美也……とりあえず、食べながら喋るなよ」

美也「ごくんっ……ごめんごめん、にししっ。えっとさ、土鍋ってどこにあるのにぃに?」

純一「土鍋? それだったらキッチンの下の段に入ってるよ」

純一「というか土鍋を何に使うんだよ……」すたすた…

美也「えっとね~……今日はなんと、お鍋さんなのだ!にしし!」

純一「ほ~…鍋料理かぁ。いいね、寒い時期だし、ちょうどいいじゃないか」

美也「でしょでしょっ、しかもちょっとお洒落で良い感じのお鍋なんだよ~?」

純一「鍋でおしゃれ……大丈夫なのか、美也…?」

美也「だいじょうぶだよ? だって美也が作るんじゃないし」

純一「え? なにをいってるんだよ…? じゃあ誰が…」

紗江「よいしょ……よいしょ…」ごそごそ…

純一「……えっと、紗江ちゃん。なんでエプロンに着替えてるの…?」

紗江「えっ? えっとその、美也ちゃんがどうしてもっていうから…」

美也「買い物中にばったり紗江ちゃんとあって、それから今日のことを言ったんだけどね。
   そしたら紗江ちゃんが鍋がいいんじゃないかなっていうからさ」

純一「…それで紗江ちゃんにお願いしたのか?」

美也「だってにぃにと会いたいっていってたから、ちょうどいいかなぁ…って。
   に、にぃに……こ、怖い顔しないでよ…!」

純一「……今日は、長者ぬくぬく人生ゲームの罰ゲームでお前が作るって約束じゃないのか…?」

美也「そ、そうだけどっ…! でも、みゃーが作る晩御飯よりも絶対に紗江ちゃんのが美味しいよっ」

純一「それはそうだと思うけど……これは、これだぞ。美也」

美也「う、うぅ~……っ」

紗江「せ、せんぱい……っ」

純一「──ごめんね、紗江ちゃん。こんな我が儘な妹につきあわせちゃってさ…
   今日はお客さんとしてゆっくりして行っていいからさ。全部、美也のやつにまかっせきりでいいよ?」

美也「えー! そ、それはやだよー…!」

紗江「えっと、そのっ……私はだいじょうぶです……よ…っ?」

純一「でも……いきなり連れてこられて、ばんごはんをつくれって……家の人にも迷惑だろうし、
   それに紗江ちゃん自身が迷惑なんじゃ…」

紗江「心配してくださってありがとうございます……でも、今日はもう両親には美也ちゃん家に泊まるっていってあるので…
   それに…きょ、今日はっ……せんぱいに、晩ご飯作ってあげたくて…きたので……その…」

純一「紗江ちゃん……」

美也「ほ、ほら! 紗江ちゃんだってそういってるし…! ねっ! にぃに、いいんでしょ…?」

純一「っ~~~~~~………わかった、わかったよ。じゃあ紗江ちゃん、お願いできるかな…?」

紗江「は、はいっ……! 美味しく作りますのでっ……と、とにかくがんばりますねっ…!」

純一「うん、よろしく頼むよ。……美也、ちゃんと紗江ちゃんにお礼」

美也「ありがとね、紗江ちゃん…?」

紗江「ううん、いいいの。ほら、美也ちゃん一緒につくろっ…?」

美也「おっけー!」

純一「ったく……僕はとりあえず、なにもしなくていいんだな?」

美也「にぃにはいつもみたく、だらーだらしとけばいいよー」

純一「いつもはしてないよ!」

紗江「ふふふっ……美也ちゃん。ほら、エプロンしてね…?」

美也「はいなのだー!」ごそごそ

純一「………はぁ」

純一(美也だけがくるってだけでも、色々と騒がしいのに……紗江ちゃんまで連れてきて。
   というか男住まいの所に、女の子を連れてくるなよ……まったく)

純一「……でも、紗江ちゃんと久しぶりに会えたし。それもまたいっか」

数十分後

純一(煙草が吸いたい……)ちらっ

美也「え、これって切るものなの紗江ちゃん?」

紗江「え、だってそれは……御ダイコンさんだよ? まるごといれちゃだめだよ…」

純一(二人は料理に夢中……今、さり気なくベランダに出てすぐ戻れば…なんとかなる、かな…?)すっ…

純一「………」しゃっ!

美也「……んっ? にぃに、急にカーテン閉めてどうしたの?」

純一「っ……あーいやー! その、そろそろ暗くなってきたし、閉めようかなーって……あはは!」

美也「あ、もうそんな時間か~。はやく作っちゃお紗江ちゃん」

紗江「そうだね、はやくつろっか」

純一「…………」

純一 がらら…… ぴしゃ

純一「……ふぅ、どうにかこれたぞ。よかった、まだベランダに置いてあった煙草が残ってたのを思い出して」かさかさっ

純一「……あの娘の忘れ物かな。たぶん、銘柄違うけど別にいっか」

じりりっ……

純一「ふー……なんというか、僕も煙草をやるって思わなかったなぁ…」

純一「……高校生の頃は、紳士たるもの俗物に染まるべからず! なんて思ってたけど…」

純一「……案外、こうやってすぐに染まっていっちゃうものなのかな」じりり…

純一「……ふぅー…。やっぱ銘柄違うと、ちょっと舌に味が残っちゃうな…
   よくこんな重いの吸えるなぁ、あの娘……」

キッチン

紗江「──それと、これはね……あれ、せんぱい…?」

美也「なるほどなるほど……うん? にぃになら、たぶんベランダだよ」

紗江「え、どうしてベランダに…? 外、寒いのに……」

美也「どーせぷーすかしてるんでしょ、タバコ」

紗江「えっ……えっと、美也ちゃん。とめなくていいの…?」

美也「いいよどうせ、止めたって聞きやしないんだから」

紗江「…………」

美也「──まあね、本当はやめて欲しいけど。にぃにはもう……大学生だしさ。
   妹と兄ってのも……融通が利かないってこともあるって思うんだみゃーも」

紗江「美也ちゃん……」

美也「……にしし、でもね!こうやって家に遊びにこさせてくれるってだけでも、みゃーは嬉しいんだよ?
   にぃにはにぃになんだって、改めてそう思うしさ」

紗江「…………」

美也「だからね、紗江ちゃん……にぃにがどんな風に変わっていっても。幻滅とか、嫌ったりしてあげないでね…?
   みゃーはいつでもにぃにのこと、にぃにだって思ってるし」

美也「頼りにならなくて、ふぬけで、でも……いつまでも優しいにぃにだって保証するからさ。
   妹のいうことなんだから、物凄く信用できる言葉だよ! これ!」

紗江「……うん、美也ちゃんがいうなら絶対そうだって思うよ」

美也「そっか、そっかそっか。にししし、ありがとね紗江ちゃん!」

紗江「うん……それじゃ、先輩が凍えないように…ぱぱっとつくっちゃおう…っ」ぐっ

美也「おっけー! まっかせとけー!」

ベランダ

純一「……なんだか中が騒がしいなぁ。バレちゃったかな…?」

純一「…………」

純一「さむい……どうしよう、戻るタイミングを図ることが難しいことが今わかっちゃったよ…!」

純一「と、とりあえず……もう一本すっておくか……」じゅぽっ

純一「……ふー…」 がらら…

「──せんぱい…?」

純一「っ……あ、あれ…? 紗江ちゃんっ…?」さっ!

紗江「はい、こんばんわ……」すた…

純一「う、うんっ…こんばんわ…! ど、どうかしたのっ…?」

紗江「あ、いえ…そのせんぱいのお姿が見えなかったので…ベランダに入るのかなって思って」

純一「そ、そうなんだ……あれ? もしかしてもう料理できちゃった…?」

紗江「お鍋の方はもうできたんですけど、お箸と御茶碗が足りないことに気づいて……今、美也ちゃんが
   お家に取りに行ってるところです…」

純一「あー……確かに、そこまで考えてなかったなぁ……」もくもく

紗江「っ……せ、せんぱいっ…! う、後ろから煙が……っ」

純一「え? あ、ああっ! 服に火がっ……!」バタバタ!

紗江「だ、だいじょうぶですか……っ?」

純一「あ、うんっ…だ、大丈夫! ほら、消えた!」もく…

紗江「よ、よかったぁ……」

純一「………」

紗江「………」

純一「……えっと、その……ごめんね、なんかその…」

紗江「え、あっ、いえっ……だいじょうぶです、その…」

純一「……………」

紗江「……………」

純一「と、とりあず……となり座る? 寒けど…」

紗江「は、はいっ……ちょっと、お邪魔します…よいしょ」すとん

純一「………………」

紗江「………………」

純一「きょ、今日は本当にありがとうね紗江ちゃん…!」

紗江「えっ!? あ、はいっ……その、私が来たいって美也ちゃんに言ったからで…
   べつにそこまで感謝されることではない、です……」

純一「そ、そっか…そう言ってもらえると嬉しいよ…うん、嬉しいな」

紗江「…………」

純一「うん……」

紗江「……せんぱい…」

純一「あ、うんっ…! どうかした紗江ちゃんっ?」

紗江「……その、先輩って…いつから、あの……」

純一「うん?」

紗江「……タバコを、吸い始められたのですか…?」

純一「………えっと、その……僕もよくはわかってないんだけどさ…」

紗江「…………」

純一「……そうだね、正直に言うよ。
   サークルでさ、ちょっときになる子がいてね……その娘が煙草を吸ってたんだよ」

紗江「気になる娘、ですか……?」

純一「うん…気になるって言っても、その…恋人とか、恋愛の好きっていうのかどうかはわからないけど…
   とにかく気になる人がいて、その人が…とても綺麗に煙草を吸うんだよね」

紗江「きれい、に……」

純一「……それをみてたらさ、僕もあんなふうに吸えたら良いなって思って…もう単純なんだけどさ…。
   それで今、僕はこうやって隠れながらタバコを吸ってるってわけんだ」

紗江「…………」

純一「……えっと、その。幻滅、したかな…あははっ……ごめんね、紗江ちゃん」

純一「高校生の頃の僕とは、なんというかその……変わっちゃったって思うんだけどね…
   梅原にだって言われてるしさ、薫とかにも…」

紗江「……どうしてですか…?」

純一「うん…? どうしてって……その、煙草のこと…?」

紗江「あ、いえ……そうじゃなくてその、どうして、わたしに……」

紗江「……謝るんですか…?」

純一「……だってさ、煙草なんか吸ってても…悪いイメージしか無いじゃない?
   美也だってやめてほしそうにしてるみたいだし、紗江ちゃんだって…知り合いに煙草すってる人がいたら嫌でしょ?」

紗江「っ…………」

純一「だからほら、こうやって辞められないでいる僕は……悪いじゃないか。だから紗江ちゃんに───」

紗江「───べつに、わたしは大丈夫です…っ」ぐいっ

純一「えっ……?」

紗江「わ、わたしはっ……せんぱいがタバコ吸ってらっしゃってもっ……」ぐいぐいっ

純一「う、うん……っ!」

紗江「むかしのせんぱいとくらべたりっ……げ、幻滅したりなんか…したりなんか……しましぇん…っ!」かち

紗江「かんひゃった……」

純一「だ、大丈夫…? 紗江ちゃん…?」

紗江「だ、だいひょうぶれふ……! んんっ~……!」ぎゅう…

純一(恥ずかしそうに頬を包んでる……かわいいなぁ、相変わらず紗江ちゃんは)

紗江「……っっ……だ、だからせんぱいっ…! わたしは、今のせんぱいでも……大丈夫ですからっ…!」

紗江「謝ったりなんか……しないで、ください…お願いします…」ぺこり

純一「ど、どうして紗江ちゃんがお願いするの……むしろ僕がお願いしたいぐらいだよ」

紗江「…え、お願いですか…?」

純一「うん、だってさ…こんな僕でも嫌いにならないでいてくれてる紗江ちゃんに……これからも、
   よければ僕を嫌わないでいてくれたら…いいなって、お願いしたいんだよ」

紗江「そ、そんなことっ……全然かまいません…!」

純一「…そっか、ありがとう紗江ちゃん」

紗江「……えへへ…はいっ!」

純一「…………」

純一(──本当にいい子だなぁ、紗江ちゃんは。人を思いやって、きちんとしてる……美也も、
   いや、僕も見な習わないとね)

紗江「っ……」ぷるるっ…

純一「……うん? 紗江ちゃん、やっぱり寒いの?」

紗江「あっ、いえっ……私に気にせず、美也ちゃんが帰ってくる前に…もう一本すってどうぞ…!」

純一「気にせずって……僕はもういいよ? タバコももう少ないし…」

紗江「………あの、そのっ…じつは、お願いがあって…」

純一「うん…?お願いって…?」

紗江「何度もお願いしてすみません…でも、一回だけでいいんですけど……そのっ…」

紗江「せんぱいが、タバコを吸ってる姿が……みてみたいんです、私…」

純一「え? 僕がタバコを吸ってる姿が……見たいの?」

紗江「よ、よければ…の話しですけど…」

純一「…吸ったら一緒にちゃんと部屋に戻ってくれる?」

紗江「も、もちろんです…!」

純一「……。わかった、それじゃ一本だけ吸ってあげるね」すっ…

紗江「っ……はい、ありがとうございます…!」

純一「ありがとうございますって……あはは。タバコを吸うだけでそんな事言われたの初めてだよ」

紗江「え、えっと……えへへ…」

純一「それじゃあ、吸うよ? 煙がそっち行かないようにするから……でも、苦しくなったらすぐ言ってね?
   即座に火を消すからさ」

紗江「わ、わかりました……っ! どうぞ……!」

純一 かさっ……じゅぽっ

紗江「…………」じぃー

純一(…すっごい見てる、なんか気まずい…)じりり…

紗江「わ、わわっ…火がついた…」じぃー

純一「………」じりり…

紗江「わぁー……まっかになって、ちょっと綺麗ですね……」

純一「………」じりりり……

紗江「……そ、そんなに一気に吸っちゃうものなんですかっ…?」

純一 ぱっ……ぷかー

紗江「──わぁっ!ドーナッツの状のけむり……!」

純一「……あはは、どう? すごいでしょ?」

紗江「はいっ…! すごいです! せんぱい、今のってどうやったんですか…っ?」

純一「どうやったのかって言われると難しんだけど……煙を口いっぱいに貯めてね」

紗江「っ…っ……」こくっこくっ

純一「こうやっておちょこ口にして……ぽってするんだよ?」

紗江「へぇ~っ……たばこでこんなことできるなんて、はじめてしりました…!」

純一「あはは、そっか。それじゃあもっと色んな技を見せてあげたいけど……煙草が凄く早くなくなっちゃうから、
   また今度に見せようかな」

紗江「っ……ま、また今度ですか…?」

純一「うん、また今度。あ、でも美也には秘密だよ…?」

紗江「み、みやちゃんには内緒……わ、わかりましたっ…隊長!」ぴしっ

純一「おっ、それ懐かしいなぁ。あはは、わかったかね中多君!」

紗江「は、はいっ…! 今後またご指導…お願いしますっ…!」

純一「よろしい! また家に遊びに来なさい! ……よし、それじゃあ残りは普通に吸っちゃうね」

紗江「は、はい…わかりました」

純一「……ふー……大丈夫かな? 煙たくない?」

紗江「だ、大丈夫です…! お気になさらずに…!」

純一「そっか、ありがと……」じりり…

紗江「…………っ」ぶるる…

紗江(──ちょっと、寒くなってきちゃった…けっこうベランダにいたし…せんぱいは、さむくないのかなっ…)ちら

純一「……ふー…」

紗江(…タバコを吸ってるせんぱい、って…とっても大人って感じがするなぁ…美也ちゃんは大人ぶってるって言ってたけど…。
   わたしにも、いまのせんぱいは…とっても綺麗にタバコを吸ってるようにみえるけれど…)

紗江「…………」ぶるっ…

紗江(……高校の頃から、先輩はいっつも頼り甲斐があって……ご迷惑をかけぱなしだった…
   でも、こうやってせんぱいと…べらんだで、ぼーっとしていることが出来て…私はとっても嬉しい…)

紗江「っ………」どきどき…

とすっ……

純一「ふー……げほっ!? けほっ、さ、紗江ちゃん……っ? どうしたの急に寄りかかって…!」

純一「よろしい! また家に遊びに来なさい! ……よし、それじゃあ残りは普通に吸っちゃうね」

紗江「は、はい…わかりました」

純一「……ふー……大丈夫かな? 煙たくない?」

紗江「だ、大丈夫です…! お気になさらずに…!」

純一「そっか、ありがと……」じりり…

紗江「…………っ」ぶるる…

紗江(──ちょっと、寒くなってきちゃった…けっこうベランダにいたし…せんぱいは、さむくないのかなっ…)ちら

純一「……ふー…」

紗江(…タバコを吸ってるせんぱい、って…とっても大人って感じがするなぁ…美也ちゃんは大人ぶってるって言ってたけど…。
   わたしにも、いまのせんぱいは…とっても綺麗にタバコを吸ってるようにみえるけれど…)

紗江「…………」ぶるっ…

紗江(……高校の頃から、先輩は頼り甲斐があって……今もこうしてる先輩は、とっても……かっこ良く見える。
   昔と変わらない、わたしの……わたしだけの、王子様……)

紗江「っ………」どきどき…

とすっ……

純一「ふー……げほっ!? けほっ、さ、紗江ちゃん……っ? どうしたの急に寄りかかって…!」

紗江「………ちょっと、そのっ…寒くなってきちゃいました…せんぱい…」

純一「えっ、それじゃあ…! 僕も早く吸っちゃうね…!」

紗江「………い、いんですっ…ゆっくり、ゆっくりすってください…」

純一「で、でも…」

紗江「…こうやって、私はせんぱいから……体温をもらってますから、大丈夫です…あったかいですよ、せんぱいの身体…」

純一「その、あのっ……け、煙とかっ…髪にしみついちゃうよ…!」

紗江「っ……………せ、せんぱいにだったらっ…………その、いいですっ…」

純一「い、いいですって…家の人になんて説明するの…?」

紗江「…後でお風呂にでも入れば、おっけーなんですよっ……隊長っ…」ぎゅっ…

紗江「…それでも、だめ…ですか?」ちらっ

純一「っ……い、いやっ…うん! だめじゃないぞ中多くん…! おっけーだぞ…!」

紗江「は、はいっ……ありがとうございます、隊長…っ」ぎゅう…

純一「すぅー……けほっこほっ!……ふ、ふー……」

紗江「っ………」どきどき…

純一「ふ、ふー………」どきどき…

紗江「………せんぱい、あの…」

純一「う、うん…? ど、どうかした紗江ちゃん…?」

紗江「あのですね……そうやってタバコ吸っている先輩は、とってもかっこいいですよ…」ぎゅっ…

純一「ほ、本当に……? あ、ありがとう…嬉しいよ!」

紗江「はい、前と違ったせんぱいが見れて……わたしはとっても嬉しいです…」

純一「そ、そっか……うん、こんな僕でよかったら何時だって見においでよ…!」

紗江「………本当に、ですか…? 見に来てもいいんですか…?」

純一「うん、紗江ちゃんの都合が良ければ…いつだって見に来てもいいよ…?」

紗江「……会えなかった一年間を、埋め合わせるぐらい…いいんですか…?」

純一「え…?」

紗江「せんぱいと、ずっと会えなかった……一年間。わたしはとっても、悲しかったです…」

純一「紗江ちゃん……?」

紗江「さっきは、冗談みたいにいっちゃいましたけど…先輩、私は……本気にしちゃいますよ…?」

紗江「来ていいって…先輩が住むこのアパートに、せんぱいを見に来てもいいって……
   せんぱいがさっき行った言葉、いまいってくださった言葉……全部、信じてもいいんですか…?」

純一「………」

紗江「……わたしは、その言葉を信じて…これからさき、せんぱいの家に…来たいと思います…
   それでいいのなら、どうかせんぱい……もう一度、もう一度だけでいいですから…」

紗江「…わたしに、このアパートに来ていいと……いってください…お願いします」きゅ…

純一「……紗江ちゃん…」

紗江「………」

純一「……ごめん、紗江ちゃんがこんなにも……僕、気づけなくて…」

紗江「っ……せ、せんぱいは悪くありませんっ…! わ、わたしが正直に言わなかったから…それで…!」

純一「…うん、でも気づけなかった僕も悪かったよ。紗江ちゃん、ごめん」

紗江「せん、ぱい……」

純一「…じゃあ、紗江ちゃん。もう一度言うね?」

紗江「は、はい……お願いします…っ」

純一「──これからさき、また僕のアパートに……」

紗江「…はい、せんぱい…」

純一「……ご飯を、つくりにきてもいいよ?」

紗江「はいっ……わかりま──ええっ…?」

がたん!

純一「え、どうしたの声をあげ──…誰だそこにいるの!」がらら!

美也「いたた……おでこぶつけちゃったよ…っ」

純一「み、美也……!お、おまっ…!」

紗江「み、みやちゃ…っ!」

美也「あかくなってないかなぁ~…大丈夫、紗江ちゃん?」ずいっ

紗江「う、うんっ…だいじょうぶ、だよ…?」

美也「そっか~! よかったよかったぁ……じゃないよにぃに!ばかにぃに!」ぐわっ

純一「い、いきなり現れて、いきなり怒りはじめて…! なんだよ美也!」

美也「…………」じぃー

純一「…な、なんだよ…そんなに睨みつけて…!」

美也「……ほんっと、にぃにったら朴念仁の唐変木なんだからっ…!」ぷいっ

純一「ど、どういう意味だよ…!」

美也「なんでもない! ……ほら、紗江ちゃんいこ! 手がこんなに冷たくなってるよ?」

紗江「あ、うんっ……」

美也「…あとにぃに! タバコ吸うならもうちょっと、あたま使ってよね! バレバレだよ!」

純一「ば、ばれてたか…美也なら騙せると思ったのに」

美也「む~! それみゃーのことばかにしてるでしょ!」

純一「してないしてない」

美也「う~…そんなにぃにはベランダで一人、反省しておきなさい!」ぴしゃ!

純一『え、こら! 美也! 外はすっごく寒いんだぞー!』

美也「べぇ~っだ!」しゃっ

紗江「み、美也ちゃんっ…だ、だいじょうぶかな…っ?」

美也「いーんだよ、これぐらいが丁度いいんだからっ」

純一『美也ー! ごめんってば! 本当にごめんー!』がたがた

紗江「っ……っ……」おろおろ…

美也「それじゃー紗江ちゃん! お鍋も煮てきた頃だろうし、食べよう食べようっ」

紗江「え、あ、うんっ……!」ちらっ

純一『ごめんよぉー…! もう、馬鹿だなんていわないからさぁー…!みやぁー!』

数分後

「「「いただきまーす」」」 ぐつぐつ…

美也「じゃあ、開けるよ~? それ~!」ぱかっ

純一「おぉ~……!白いなぁ!」

紗江「はいっ…今日のお鍋は、牛乳を使ったミルク鍋です…!」

美也「おいしそぉ~! すごいすごい! オシャンティーだね!」

純一「すごいなぁ…これ、紗江ちゃんが作ったんでしょ?」

紗江「は、はいっ…こ、心を込めて……つくりましたっ…!」

美也「紗江ちゃん特性ミルク鍋だね!にししっ」

純一「ほう……紗江ちゃんミルク鍋、か」

美也「それじゃーたっべよー!」

紗江「うんっ…それじゃあ、私がよそってあげるね、美也ちゃん」すっ

美也「うんうん! みゃーね、このお肉とお肉がいい!」

純一「野菜も食べろよ…」

美也「たべるよ~。でもまずはお肉って決まってるでしょ!」

紗江「──はい、どうぞ美也ちゃん」

美也「わはぁー! ありがとう紗江ちゃん!」

紗江「……それじゃあ、せんぱいも。小皿を渡してください」

純一「あ、うん。ありがとう」すっ

紗江「い、いえっ……なににしますか…?」

純一「紗江ちゃんが好きな奴取っていいよ、僕はそれでいい」

紗江「そ、そうですか……わかりましたっ…!」いそいそ…

純一「……うん、ありがと。そんな感じでいいよ」

紗江「は、はいっ…じゃあ、熱いうちに…食べてください、せんぱい」すっ…

純一「そうだね、そしたら紗江ちゃんの分は僕がとってあげるよ…」すっ…

紗江「えっ、そんなわたしは…」

純一「いいからいいから……よし、こんなもんでいいかな?」す…

紗江「……あ、ありがとうございます…」

純一「うん、どういたしまして──それじゃあみなさん、ご一緒に!」

いただきまーす

美也「おっいしぃいー! なにこれ、とっても美味しいねにぃに!」

純一「ああ、びっくりだよ…流石は紗江ちゃんミルク鍋……!」

紗江「そ、そんなっ…おおげさですっ…」テレテレ

美也「もぐもぐっ…ごくん。にぃに! そのお肉食べないならみゃーがぱくん!」

純一「あ、こら! もっとちゃんと味わって食べろよ、それと確認は最後まで取ってくれ!」

紗江「み、美也ちゃん…そんなに慌てて食べなくても、いっぱいあるから…っ」

純一「あ、紗江ちゃん。お茶のおかわりいる?」

紗江「あ。ありがとうございます…せんぱいは?」

純一「うん? 僕はちょっとね……」

美也「!……にぃに、冷凍庫に入ってたアレ飲むんでしょ!」

純一「そうだよ! こんな美味しい鍋なんだから、飲まずにはいられないさ!」すたすた…

純一「……ふふっ。予め冷凍庫から取り出し、すでに解凍済みだ……このチューハイだ!」

紗江「わ、わぁ~……お酒…!」

美也「すぐ酔っちゃうくせにね~」

純一「う、うるさい! 美也にはあげないぞ!」

美也「みゃーは飲まないよ!ばかにぃに!」

紗江「っ………」ぴしっ

純一「…うん? どうしたの、紗江ちゃん。綺麗に手を上げて…」

紗江「っ……わ、わたしっ……飲んでみたいのであります、たいちょー……っ」

美也「えぇぇー! 美味しくないよあんなの~! やめときなって紗江ちゃん!」

純一「…まぁ、待て。美也」

美也「に、にぃに…?」

純一「……中多くん。その度胸、真のものか?」

紗江「っ……は、はいっ…たいちょう……私の覚悟は、ほんものですッ…!」

純一「───そうか、わかった…わかったぞ、中多くん……」かしゅっ こぽぽ…

紗江「………っ」どきどき

純一「コップ半分だ、一応未成年だからね。これぐらいで許してほしい」

美也「半分でもアウトだけどね……にぃに」

紗江「ご、ごくり……そ、それじゃ…その、いただきますっ……」ぐいっ

純一「え、イッキなの!? 紗江ちゃんそれは……!」

紗江「──ぷは………」

美也&純一「紗江、ちゃん……?」

紗江「…………」

純一「だ、大丈夫……?」

紗江「………せんぱい?」ちら

純一「う、うん…僕だよ? わかる?」

美也「紗江ちゃん、顔真っ赤だけど…」

紗江「美也ちゃん…うん、大丈夫、大丈夫だよ…」

純一「本当に大丈夫かな……まさか一気飲みするなんて…」

美也「み、美也もまさか紗江ちゃんが一気に飲むなんて思わなかったよ…」

紗江「……心配しすぎです、二人共……ひっくっ」

純一「そ、そっか……ん?」

紗江「……よいしょ、よいしょ…」ぬぎぬぎ

純一「え、あっ、ちょ紗江ちゃん!?」

純一「な、なにやってるの…!? ちょ、やめなって…!」ぐいっ

紗江「…ふぇ…?どうしてとめるんですか、せんぱい…?」

純一「どうしてって…! そりゃー服を脱ぎ始めたら、止めるに決まってるよ…!」

紗江「……。あはは! あは! せんぱいったら~…おもしろいこというんですねぇ~…えへへ」ぬぎぬぎ

純一「あははー…僕、面白い事言ったかなって脱がいない脱がない!」ぐいぐいっ

紗江「……ぷぅ」

純一「ほ、ほほを膨らませてもだめなものはだめなんだよ…!」

紗江「……せんぱい、えっちです」

純一「僕は逃がそうとしてないよ!?」

紗江「じゃあ、脱いでもいいですよね…あつくてあつくて……よいしょ、っと」ぬぎっ!

純一「どうして!? どうしてそうなるの……美也! 助けてくれ! 紗江ちゃんは僕だけじゃ──」

美也「にぃひにぃひ~!」のしっ べたぁ~

純一「……え?」

美也「これ、ふっごいね~! あたひゃまがぽや~…ってして……して……にっししししし!」ぎゅうぅ…

純一「ちょ、あ、こらっ…! 僕の上で暴れるな…! なんでこんなことに───」カラン…

純一(……チューハイの缶が、空っぽだと…!)

純一「ま、まさか美也…お前残りの半分をぜんぶ……いつのまに飲んだんだよ!」

美也「え~……それはねえっとぉ…わかんにゃい!にしし!」

純一「なんだよそれ! あーもうちょっとまて、これじゃあどうしろって…」

紗江「……ふぅ」

純一「どうして紗江ちゃんもう下着姿なの!? だめだよ、ほらっ…ちゃんと着なきゃ…!」

紗江「さむいです…」がたがた…

純一「だろうね! ほら、とりあえずこたつの中に…!」

美也「にぃには♪こたつの中で♪まーるくなる♪」

純一「あー耳元で歌うな…! とりあえずは紗江ちゃんはこたつの中、美也は水でも飲んどけ!」

美也「みゃーはもっとぽやぽや飲みたい~!」

純一「それはだめだ! 後は僕が飲むの!」

美也「え~……でも、紗江ちゃん飲んでるよ~?」

純一「え……?」

紗江 ごきゅ ごきゅ

純一「さ、紗江ちゃん!? なんで男らしく立ちながら一気飲みを…!
   だめだよ、ほら、離して紗江ちゃん…!」ぐいぐい

紗江「ぷはっ……あふぇ~? しぇんぱいが、五十人もいる……しぇんぱぁい!」ぎゅう

純一「おぶっ! ぷはぁ! ちょ、さえっ……おむっ!?」ぽにゅ

美也 ごきゅ…ごきゅ…

純一「…ぷはぁ! み、美也…!? なんでお前も飲んでんだ…!」

美也「…ぷは……にぃに……にぃにはどこ…?」

純一「め、目の前でお前の同級生に捕まってるよ…!」

美也「ほんとだ……にぃには、にぃにはみゃーのだよ! 紗江ちゃん!」

紗江「……だめ」

美也「っ……!」

紗江「──せんぱいは、隊長は……わたしのだよ、美也ちゃん…」

美也「……なにいってるのかな、紗江ちゃん…付き合いはみゃーのほうが長いんだよ…?」フシャー

紗江「……そんなの、同じ時を一緒に過ごしたことが大切なんだよ。だから、美也ちゃんは私に……負けてるの」

美也「っ……そんなことないよ! みゃーは…みゃーはっ……にゃあああああああ!!」がりがり

純一「え、どうしてそこで僕を攻撃す──ぐわぁあー!」ばたん

紗江「せ、せんぱいっ……だいじょうぶですかっ…?」

純一「あ、うん…大丈夫だけど…ってこの状況は駄目だよ! 紗江ちゃん、流石に下着姿で膝枕は…!」

紗江「せんぱい…!」

純一(下からみる揺れぐらいも素晴らしいな……)

美也「みゃーもひざまくら!」ずさー! ごちん!

純一「あたっ!? あたまから突っ込んでくるなよ美也!」

美也「えっへへ~…紗江ちゃんの膝枕、きもちいねにぃに~」

純一「そ、そうだな……」

四時間後

純一「───……う、う~んっ……」ごそっ

純一「………」ごしごし…

純一「……今、何時だ…?……夜中の三時、か……ふわぁ~」

純一(…思い出したくないけど、鮮明に思い出せてしまう数時間前…
   僕もやけっぱちになって、チューハイ飲んで阿鼻叫喚だったな…うん)

純一「……次の日が休みでよかった。美也たちも休みだろうし…」ぽりぽり…

純一「…みんなこたつで寝ちゃってるのかな。風邪引かないといいけど」

純一(僕も…もうすこしだけ、寝るか……)ごそっ…

「……せんぱい…」コソッ…

純一「………ん?」

紗江「………」くいくいっ

純一「あ、紗江ちゃん……ごめん、起こしちゃった…?」コソコソ…

紗江「あ、いえ……元から起きてたんです。色々とさっきまでの出来事が思い出せなくて…考え事してました」

純一「そ、そうなんだ……た、たいしたことはしてなかったから。安心していいよ? うん」

紗江「……そうなんですか…記憶が曖昧で…せんぱいに、ものすごいことやってしまったような…きがして…」

純一「だ、大丈夫だよ…! ね、ほら今日はもう遅いからさ、ゆっくりと眠ろうよ」

紗江「……はい、せんぱいがいうなら…」

純一「うん……それじゃあ、おやすみ。紗江ちゃん」

紗江「はい、せんぱい……」

純一「…………」

紗江「…………」

純一「……あはは、寝れないね。なんだか」

紗江「そう、ですね……なんだか寝れないです」

純一「……今日は楽しかった?」

紗江「…もちろんです、とっても楽しかったです…本当に」

純一「そっか、それはよかったよ」

紗江「…………せんぱい」コソッ

純一「うん?」

紗江「……そっちに…近寄っても、いいですか…?」

純一「えっ? えっと、紗江ちゃんがいいって言うなら…」

紗江「──はい、わたしは先輩の方にいきたいです……では…」ごそっ… ぴと

純一「っ……ち、近いね…」

紗江「そ、そうですね……」

純一「あはは…こうやって暗い部屋の中、こたつでぴったりくっつきあうなんて…まるで恋人みたいだよ」

紗江「……みたい、ですか…?」

純一「うん、だってさ…お鍋食べて飲んで騒いで、そのまま泊まるって…なかなか無いことだと思うし…」

紗江「………」

純一「……紗江ちゃん? 寝ちゃったかな…?」

紗江「……せんぱい…」

純一「あ、うん…どうかしたかな?」

紗江「……キス、したことありますか…?」

純一「……どうしたの紗江ちゃん?」

紗江「っ…あ、いえっ! す、すみませんっ……わたしったら、なんてことをっ…!」

純一「あ、うんっ……いいよいいよ。落ち着いて、美也が起きちゃうからさ」

美也 ぐーすかぴー

紗江「っ……ご、ごめんなさいっ…へんなこといってしまって…!」

純一「大丈夫、気にしてないからさ」

紗江「は、はい……」

純一「…うーんと、キスだっけ? 僕はしたことないよ」

紗江「っ……ほ、本当にですか…っ?だ、だってサークルで…気になる人がいるって…」

純一「…んーとね、その人はたまに僕の家に泊まりに来るけど。キス、なんてことはならないよ」

紗江「…その人は、女の人ですよね…?」

純一「そうだよ、僕の先輩なんだけどね。でも、そんなことはならないよ……たぶん、これからさきずっとね」

紗江「……振られちゃったんですか…?」

純一「…ううん、恋をする暇もなかった。感じかな? 僕にはとうてい追いつけない…そんな領域にいる人だったんだ」

紗江「そんなに、すごい人だったんですね……」

純一「うん、僕がタバコを吸い始めた原因の人だからね……そういうと、いっつも怒るんだけどさ。あはは」

紗江「………」

純一「まぁ、そうやって…馬鹿みたいに話して、家に気軽に泊まりに来る関係……ってもの悪く無いかなって思っててさ」

純一「そうやって、どんどん距離が近づくかなって思ったりしてたけど…もっと距離が明白になってきて、結局はものすごく逆効果だったんだけどね」

紗江「……もう、諦めちゃたんですか…?」

純一「……うん、そういうことだよ。さっきは誤魔化した感じで言ってたけど、やっぱりあの人のことが…
   その、好きだったんだなって」

紗江「…………」

純一「あはは…こんなこ、紗江ちゃんに話してもつまんないよね」

紗江「………」ぎゅっ…

純一「……ん、紗江ちゃん…?」

紗江「せんぱい、どうして……」

純一「うん?」

紗江「どうして、そんな弱気なんですか……?」

純一「……うーん、と。なんでだろうね、というか僕っていつも強気だったかな?」

紗江「わたしがしってる……せんぱいは、いつだって強い人でしたよ…?」

純一「そっか…そしたら、ごめん。僕ってばこんなに弱いやつだったみたいだよ…」

紗江「っ……そん、なことないですっ…ぜったいに…っ!」ぎゅっ…

純一「…紗江ちゃん…?」

紗江「例え、今の先輩が…弱くなってたとしても……
   ──強かった、昔の先輩もしっています……!」

純一「………」

紗江「…強かった先輩は、なんだってがんばってました…いいことだったら全力でやって、
   悪いことだったら無理矢理でもして……」

紗江「…たとえ報われなくても。それにまっすぐ突き進む度胸と心をもった人で……っ」ごそっ…

純一「っ…さ、紗江ちゃん…顔が…」

紗江「っ…き、気にしないでください……だから、どうか、元気になってください…わたしは…わたしは、せんぱいが本気になれば…
   誰とだって付き合えだだって思ってます、から」

純一「…僕が、本気になれば…?」

紗江「……はい、それがせんぱい……橘先輩のすごいところって思ってますから…ね?」テレテレ

純一「そっか……ありがと、紗江ちゃん」

紗江「いいんです……せんぱいの、お役に立てれれば…それで」

純一「うん、でも…紗江ちゃんに行ってもらえたお陰でちょっと元気が出てきたよ」

紗江「それは、よかったです……はい」

純一「……でも、こうやってこたつの中に入るってのは予想できないけど…まぁ、頑張ってみるよ」

紗江「………じゃあ、せんぱい…その…」ごそっ…

純一「……うん? あれ、紗江ちゃん…?」

紗江「練習……してみませんか、わたしと…」

純一「れんしゅう…?」

紗江「せんぱいが、高校時代にやってくださったように……今度は、私が教官となって…」

紗江「……せんぱいに、すこしだけ…ほんのちょっとだけ…おしえてあげます」

ごそっ…

純一「え……なにを、する───」

ちゅ

紗江「…ほら、どうでしょうか……練習、です…」

純一「……さ、紗江ちゃん…これ、もしかして…」

紗江「こ、こら! 教官にためぐちはだめ、ですよ…?」

純一「え、えぇー…! だって、でもこれは…!」

紗江「……つぎ、いきますよ…!」ぐぐっ

純一「ちょ、さえ──んむっ」

紗江「……えへへ、せんぱいのたばこの味がしますね…」

純一「……っ…」どきっ…

紗江「──せんぱいは、ずっと大きくいてください…」

純一「えっ…?」

紗江「せんぱいが…どんな風になっても、どんな方をすきでいても…
   わたしの…あの時の頃の……王子様だということは、いつまでも変わりはありません…」

紗江「…だから、そんなわたしが……せんぱいの強いところを…知っている私は。
   ずっとずっと…せんぱいを支え続けて見せます、から」

純一「さえ、ちゃん……」

紗江「…ふふっ…わたしも、いつまでも弱い私じゃいなんですよ…?
   こうやって、せんぱいに……イタズラだってしちゃうんですから…」ちゅ

純一「……す、すごいね…紗江ちゃん、見ないうちに…すっごく大人だ」

紗江「いいえ、大人なんかじゃないです。ただ、ただ……せんぱいに鍛えられた一人で…」

紗江「…せんぱいがいないと、なんにもできない…ただの弱い子です」

純一「………」

紗江「さぁ、まだ練習はつづきますよ…! せんぱい?」

純一「……うん、紗江教官…!」

紗江「よろしいっ……えへへ、それじゃあせんぱい……」

紗江「キス、つづけましょうか……?」

ふかふかおわり
長かったな、うん

次は裏表ないさん
ちょっと一時間だけ寝させてくださったらすんまそん

今回も ながらクオリティなのであしからず

いまおきた
保守どうもかくよ

【絢辻詞】

純一「………」ぼぉー…

絢辻「………」じぃー

純一「………」ぼぉー…

絢辻「………」すっ… 

ぱちんっ

純一「───…あいたっ。え、なに…っ」

絢辻「なにをぼーっとしてるの、橘くん?」

純一「……。えっ! 僕ってばまたボーってしてた…!?」

絢辻「してたわ。ものすっごくしてた」じっ…

純一「う、ううっ…! ご、ごめん…! さっきも同じ事言われたのに……僕ってば…」

絢辻「もうっ! しっかりしてよ! そうよこれ言うの何度目なのかしら……本当に、橘くん。しゃきっとしなさい」

純一「ご、ごめん……そうだよね、移動中だからってぼーっとするのはいけないよね!」

絢辻「当たり前よ、今だってちゃんとした授業……そう───」

絢辻「───修学旅行なんだから」

純一「いやー……でもさ、こうやってバスの外の景色を眺めてると、ずっと時間を潰せそうだよね」

絢辻「普段、見慣れない光景だものね。その気持ちはわかるわ」

純一「うんうん、ほら。あそことか、僕らが住んでる街にはないだろうし」

絢辻「…そうかしら? あたしは街で同じようなもの見たことあるわよ」

純一「え? そうなの? そしたら今度、一緒に二人で見に行こっか」

絢辻「そうね、修学旅行が終わったら──……って。どうしてもう終わった時のことを話ししているのよ」

純一「それもそうだね、あはは」

絢辻「ったく……貴方と会話していると、馬鹿が伝染してくるわ…こわいこわい」

純一「こわいってなにさ、これもれっきとした僕の……ふふっ、魅力だよ?」キリッ

絢辻「窓に映る自分にでも言っておきなさい」

純一「えぇー……」

絢辻「とにかく、ぼーってする暇があるのなら……持っている修学旅行のしおりを読んでおきなさい。
   これから向かう先の予定とかを、もう一度おさらいしておくのはいいと思うわよ?」

純一「そうだね、でも…それは昨日までに絢辻さんと夜中まで一緒に考えてたから。
   もうなにもおさらいすることないけどね」

絢辻「…ちょっと、そういうことをさらって言わないの。誰が聞いてるかわからないんだから…っ」

純一「……あ、そっか。ここは僕の部屋じゃなかった…あぶないあぶない…!」きょろきょろ

純一「…誰も聞いてなかったかな?」

絢辻「大丈夫よ、さっきまでやってたカラオケ大会のお陰で…みんなちょっとお休み中だから。
   目的地につくまで、ずっとぐっすりしていると思うわ」

純一「移動に四時間かかってるもんね……何人かは起きてるみたいだけど、すこし声のトーン落とすかな…」こそこそ…

絢辻「まあ、そこまで気にしなくていいわよ? 仮に聞こえていたとしても、あたしならどうにか誤魔化せる自信あるし」

純一「そ、それを言われると尚更…小さく声をだそうって思っちゃうよ…」

絢辻「あら? ふふっ…どうしてかしら? 手荒いことはしないわよ?」

純一「しようという欠片も思っちゃ駄目だよ…! よ、よしっ……小さく喋ります、はい」

絢辻「ふむ、よろしい。じゃあ橘くん……いや、純一くん」こそっ…

純一「…うん? どうかしたの?──お、それは…」

絢辻「ん、たべる?」すいっ

純一「ポッキーか、いいねっ。たべるたべる」

絢辻「そお?じゃあ……はい、どうぞ」くいっ

純一「うん、ありがと……ってあれ? どうしてしまっちゃうの?」すっ

絢辻「あら、何を……手で受け取ろうってしているの? そこはく・ち…でしょ?」

純一「う、うん……そっか。それじゃあいただきまーす……あれ?」すいっ

絢辻「まあ、ごめんなさい。ちょっと標準がずれちゃった、もういっかいお願い純一くん」

純一「わ、わかったよ……あーん」すいっ

絢辻「またズレちゃったわね、くすくす……ごめんなさい」

純一「……わざとやってるでしょ、絢辻さん…っ」

絢辻「べっつに~……いらないっていうのなら、これはもうあたしが食べちゃうわよ?」ぱくっ

純一「あぁっ…!」

絢辻「ぽりぽりっ…うーん、甘くて美味しい」

純一「っ…あ、絢辻さん……僕にも…っ」

絢辻「…食べたいのかしら? うん? だったら──……おねだり、してみなさいよ。ほら」すいっ

純一「っ……た、たべたいですっ…絢辻さん、それをっ…!」

絢辻「くすくす……ほら、もっとしっかりおねだりして」

純一「あ、絢辻さんが持ってる……その甘いポッキーをっ…僕は食べたいですっ…!」

絢辻「うん? ちょっと小さくて聞こえないわよ? なんていったのかしら…くすくす」

純一「っ……声を小さくっていったのは絢辻さんじゃないか…!」

絢辻「…あら、口答えするのね。じゃあこれはもうあーげない」ぽりぽり…

純一「あぁっ……そんなぁ…」

絢辻「…はやくおねだりしないと、全部たべちゃうわよ? ほらほら、はやくはやく」

純一(くそ~……えらく楽しそうな絢辻さんだから、べつに僕はいいけど…ちょっとやりかえしたくなったぞ…!)

絢辻「ほれ、ほれほれ~」くるくる

純一「っ……わかったよ、絢辻さ──いや、詞…」ずいっ…

絢辻「え……?」

純一「……詞、僕は君が持ってるポッキー…どうしても食べたいんだ、いいかな…?」ボソボソ…

絢辻「っ~~~~!……こ、こらっ…耳元に近づいてしゃべらないのっ…くすぐったいでしょっ…!」

純一「どうして? だっておねだりしろっていったのは、絢辻さんじゃないか……」ボソボソ…

おい壁がなくなったんだが

絢辻「も、もうっ……だからって、こんな耳元でっ…くすぐったいからっ…!」

純一「…大丈夫だよ、ほら。昨日みたいに…もっとイチャイチャしようよ、ね?」ぼそ…

絢辻「んっ……こ、こら! そんなことすると、もうポッキーあげないわよ…っ」ぐいっ

純一「…あ、くれるんだ? そしたら…ぱくっ」ぽきっ

絢辻「あ……」

純一「う~んっ…美味しいね、やっぱり~」ぽりぽり…

絢辻「っ……じゅ、純一くんのくせに中々策士じゃない…ふんっ。今の負けを認めてあげるわ…!」

純一「ごくん……負けって、絢辻さん。まぁ仕返しできたから僕はいいけど……ハッ!」

絢辻「……ふ~ん、そうなの。仕返しだったのね、へ~……わかってたけど」

純一「い、いや……そのね? でも、こうやってイチャイチャしたいなって思ってたのは事実で…あはは…」

絢辻「目的がべつになってるわよ、それ……わかったわ、そしたらあたしも仕返ししてあげる」すっ

純一「え…? あ、絢辻さんっ…それって…!」

絢辻「…ひゃい、ひゅうひきくん…ふぁーん」すっ…

純一「う、噂でしか聞いたことのないっ……ポッキーゲーム……!?」

純一(な、なんということだっ……僕が持っているお宝ビデオで、前戯としてよく見るけどっ…!
   こうやって生で見るのは初めてだよ…! しかも、相手は絢辻さん!)

絢辻「……ひゃべないの?」くいっ

純一「た、たべます…! すっごくたべたいです…!」びしっ

絢辻「ほう? ひゃ……ふぁい、ふぉうふぉ」すいっ

純一「っ……ご、ごくり…」ぷるぷる…こり

絢辻「っ……ふっふりと、ね…?」

純一「う、うんっ……!」こくこく

絢辻「………」ポリポリ…

純一「………」ポリポリ…

絢辻「………」じぃー… ポリポリ…

純一(う、うわー…すっごく僕のこと見てるよ、絢辻さんっ……普段とは違った近づき方で、どうしよう赤くなってないかなっ…)ポリポリ…

絢辻「…………」ポリポリ… すっ…

純一(あ、目をつぶった……こ、これって…あの、そうだよね…っ!)ぽりぽり…

純一「っ……」すっ… ポリポリ…

絢辻「………」ポリポリ…ポリ…

純一「………」ポリ…

ちゅ…

絢辻「──ふっ、ん……はい、オシマイよ純一くん。ふふ、楽しかった?」

純一「もぐもぐ…うん、なんだかすごく……すごかったよ」

絢辻「そ、そお? ならあたしも、仕返し成功ね」

純一「うん、そうだね……そうだね…」

絢辻「っ……な、なによっ…もうポッキーはあげないわよ?」

純一「………もっかい、しないかな? 今のさ」

絢辻「え…? 今の、もう一回したいの…?」

純一「あ、うん……なんだかあっというまでさ、もう一回やって記憶に残しておきたいなぁっておもって」

絢辻「っ……も、もう一回…」

純一「だめ、かな…?」

絢辻「っ……だ、だめじゃないわよ。うんっ、どんどんきてらっしゃい…!」

純一「本当にっ? ありがとう、絢辻さん!」

絢辻「……もうっ…貴方って人は…」

純一「うーんと、でもさ……またポッキーでやるのはちょっとあれだし…」ごそごそ…

絢辻「え、他になにかあるの?」

純一「うん、僕もお菓子持ってきてたんだ……ほら、こういうのとかはどうかな?」

絢辻「……そ、それって…」

純一「うん、ジャガリコだよ。ざくざくって美味しいやつ」

絢辻「し、しってるわよっ……でも、それ…ちょ、ちょっと短くないかしら…?」

純一「そうかな? そんなにポッキーと変わんないよ、じゃあ…はい。今度は僕からだからね」すっ…

絢辻「わ、わかったわ……それじゃ」すっ…

純一「………」ぽりぽり…

絢辻「っ……」ぽりぽり…

純一(…あれ、さっきより何だか恥ずかしそうだな絢辻さん…やられる側だと、慣れてないのかな…?)ぽり…

絢辻「………」ちらっ

純一(あ、ちらってこっちみた……眼があって恥ずかしそうだな、あはは)

純一「……」ぽり…ぱり…

絢辻「……っ」ぽり… ちゅっ

純一「……うん、ありがと。絢辻さん、ちゃんと味わえたかな?」

絢辻「う、うんっ……美味しかったわ、ちゃんと…っ」

純一(…ちょっと悔しそうに上目づかいしてくる絢辻さん、かわいい…!)

絢辻「……ふ、ふぅ~…塩辛いの食べちゃって、ちょっと喉が渇いたわね…うん…っ」ごそごそ…

純一「あ、お茶だったら僕のがあるよ?」

絢辻「じ、自分のがちゃんとあるわよ!」

純一「そっか、それは残念」

絢辻「も、もうっ……ごくごく…」

純一「………」じー…

絢辻「ごくっ……ぷは、なにかしら純一くん? 貴方も飲みたいの?」

純一「え、ああ、うん……そうじゃなくてね。お茶ってさ……こう、できないかな?」

絢辻「え…? どういうこと…?」

純一「えっとそのさ、ポッキーゲームみたいに……こう、口に含んでやるみたいな」

絢辻「お互いにってこと? ……そ、それじゃあっ…ただの、き、きすじゃないの…!
   そ、それもちょっとマニアックなっ…!」

純一「でも、楽しそうじゃないかな? なんて思ったりして、あはは」

絢辻「楽しくなんかないわよ…っ! もう、何を見てるかと思えばっ…!」

純一「あはは…ごめんごめん」

絢辻「ごくごく……ぷはっ──……そ、それで…もうオシマイなのかしらっ…?」

純一「え、なにが?」

絢辻「…なにやら勝ち誇った表情してるみたいだけど、あたしはまだ負けを認めたわけじゃないわよ…?」

純一「まけって……これって勝負だったの?」

絢辻「いま、そうなったの。だから、かかってきなさい……その余裕綽々の顔。へしおってやるわよっ」

純一「お、おおう……わかったよ、それじゃあ次ぎで勝敗を決めるために、実はこれぞってものがあるんだ」

絢辻「な、なにかしら…? いいわよ、なんだって受けてみせてあげるわ」

純一「…後悔しいても遅いからね? いいんだよね?」

絢辻「っ……そ、そんなにすごいものなの…?」

純一「うん、それはね──……これなんだよ、絢辻さん」ごそっ

絢辻「……こ、これって…あの…!」

純一「……そう、あのお菓子。僕はこっち派なんだけど、美也は…たけのこ派なんだよね。
   だから今日の修学旅行にはこっちをもってきたんだ」

純一「──……きのこの山。これをつかって、今からポッキーゲームをしようじゃないか、絢辻さん…!」

絢辻「で、でもっ……それじゃ小さすぎてすぐに…」

純一「だからね、このおかしの先端……傘の部分を絢辻さんに咥えてもらってさ」

絢辻「う、うん…っ」

純一「そして…クッキーの部分を、僕がざくざく食べていくんだ。それは僕だけが食べ進めることになるから、
   絢辻さんはそのまま待っててくれるだけでいいんだよ」

絢辻「な、なるほどね……それだと、すぐにはなくならないわね…うん…」

純一「でしょ? それじゃあ、さっそくだけどはい……絢辻さん、これ咥えてね」すいっ

絢辻「っ……わ、わかったわ───……こ、こうかな…っ?」

純一「おっけーだよ。そしたら、行くよ…?」

絢辻「っ……」こくっ…

純一「よし、そしたら……」ずい…

純一「…………」かりっ…

絢辻「っ………っ……」ぷるぷる…

純一(ものすごく震えてる……恐いのかな…? いや、これは緊張してるんだ…
   生徒会長になった時だって、あんなにも堂々としてたのに…僕とこんなゲームをするだけで、緊張してる…)かり…

絢辻「っっ………」ぷるぷる…

純一(なんだか必死だなぁ…かわいそうだけど、その表情…とってもとってもかわいいよ絢辻さん……)かり…かり

絢辻「………っ…」ぷる…

純一「………」かりかり……かりっ…

ちゅ

絢辻「んっ──……」

純一「…………」

絢辻「……んん…? んっ! んん!」

純一「…ぺろり」

絢辻「…!?」ぴくんっ

絢辻「ちゅ、ぱ……純一くんっ…今、チョコレートを…舌で……!」

純一「もぐ……うん、やっぱチョコレートは食べないとなって思って」

絢辻「思って、じゃないわよ…! い、いま…し、舌が……口の中に…!」

純一「え、だってそれは昨日の夜にもやったから別に大丈夫じゃ──ごふっ…!?」どすっ

絢辻「い、言わないの…っ! な、なにを急に口走って…!」

梅原「──う、うーん……あれ、たいしょー…?」ごしごし…

純一「っ…う、梅原…!」

梅原「…ふわぁ~…どうやら寝ちまったようだな、って大将…!? どうしたんだよ、悶絶して…!」

絢辻「あっ、えっとこれはね梅原くん…! ちょっとバス酔いしちゃったみたいで…!」

梅原「おいおい…大丈夫か大将…?吐きそうなのか?」

純一「だ、大丈夫だ……気にしなくて、うんっ……」

梅原「お、おう……そうか、ならいいんだが…ん?」

絢辻「? ど、どうかしたのかしら…? 梅原くん…?」

梅原「……あっ、いやー…その、俺の勘違いだったらいいんだけどさ、絢辻さん」

絢辻「う、うん…?」

梅原「…くちびるによ、チョコレートがついてるって言いたいんだが………大将と同じ位置に」

絢辻「っ……う、うそ…!」ささっ

梅原「………。一緒にお菓子を食べてたみたいだが、
   一緒の位置につくってのいささか…出来過ぎだと思うわけだよなぁ、うん」

絢辻「っ…ご、ごめんなさい……見苦しい所御見せちゃって…っ…」ごしごし

梅原「い、いいってことよー! なぁ大将! お前も幸せもんだな…? おい?」

純一「あ、ああっ……なんてたって、僕の彼女だからなっ…!」

梅原「おおう、否定もしないでやんの……ったく、お菓子で何やってたんだが……まぁ想像できるけどよ」

絢辻「っ…………」ぷしゅー…

純一「……ふぅ…なんとか痛みもおさまった…絢辻さん、あのさ」

絢辻「な、なにかしらっ…? じゅ、橘くん…?」

純一「…チョコレート、僕の唇にもついてるかな?」

絢辻「つ、ついてるわよ…?そ、それがどうかしたのかしら?」

純一「そっか……なるほどね」

絢辻「……なにが、なるほどなの橘くん…?」

純一「あ、えっとさ。ちょっと考えたんだけど……こうお互いにチョコレートを唇に塗ってさ。
   舐めあうっていうのもいいんじゃないかなって思って…」

絢辻「っ~~~~……!! な、なんてこと口走るの…!」

梅原(おおう、あんな絢辻さんの顔は初めてみたぜ…大将やるなぁ…!)

純一「じゃあ、今日の夜さ。部屋に遊びに行った時にでも……」

絢辻「ば、ばかっ…! 本当に貴方って人は…!」ぽかぽかっ…!

純一「い、いたいってば…! 全然痛くないけど、あはは…いたいよ絢辻さん……っ」

絢辻「もう、知らないんだからっ……今日の自由時間、もう一緒に行動してあげないからっ」

純一「え、えぇぇー…! それは嫌だよ! ごめん絢辻さんっ…!」

梅原「……ふぅ、犬も喰わないってか。かぁー…やけるねぇ。さて、もう一回寝るか」ぱたり

絢辻「……そしたらそうねぇ…今から行く目的地の動物園だけど…
   そこでゴリラの飼育小屋にはいって、ゴリラちゃんと戯れてきなさい。それで許してあげるわ」

純一「え、ええぇー! 僕、ぜったいに死んじゃうよ…!」

絢辻「そうかしら? あ、そしたらメスのゴリラとポッキゲームしてきなさいよ……案外、盛り上がるかもよ?」

純一「い、いやだっ…想像するだけでもいやだ…!」

絢辻「拒否権はナシよ」

純一「本気なの…!?」

絢辻「当たり前よ、こんなばかな高校生は……動物園で見世物になるのが十分だわ。
   ほら、もうすぐつくみたいだから、服をぬいで準備しておきなさい」

純一「い、いやだよ…! ごめんなさい、絢辻さん…! 僕調子にのってました…!」

絢辻「遅い、もう遅いんだから」ぷいっ

純一(ど、どうしようっ……ゴリラは冗談だろうって思うけど、機嫌が悪くなったのは事実だし…
   調子に乗って変なこと言わなきゃよかった…)

純一(と、とりあえずっ……どうにか絢辻さんの機嫌を直す方法をっ…!)

純一「──あっ、絢辻さんっ……!」ばっ

絢辻「……なによ、どうしたの」

純一「えっとその、出てるよ…! あれが…!」

絢辻「でてる? なにがでてるの?」

純一「……は」

絢辻「は?」

純一「………鼻血、がでてるんだ…」

絢辻「……え?」

純一「絢辻さんの…その、小さいお鼻から…!」

絢辻「………」たら…

絢辻「っ……!」ばっ…

純一「あ、ちょ、触っちゃ駄目だよ…! 手が汚れちゃうから…ねっ?」

絢辻「み、みないで…! とにかく、みないで…!」

純一「み、みないでって……でもそれじゃあ制服垂れちゃうよ…?ほら、僕がハンカチ持ってるからさ…」

絢辻「あ、あたしも持ってるわよ…! それ、とり出すからちょっと待ちなさい…!」ごそごそ…

純一「ま、間に合わないよ…! ほら、僕によくみせて……」

絢辻「いいってば…!」ぱしっ

純一「あっ…ハンカチが座席の下にっ…!」

絢辻「後であたしが拾ってあげるから、とにかくハンカチかティッシュ…!
   あれ、ない…まさかキャリーのほうに…!」たらり…

純一「あ、ああっ…もう、垂れてきそう…! どうにかしないと……!」

絢辻「こっちもないっ…こっちのほうにもない、どうしようここは…周りに人に借りるしかっ…」

純一(だめだ、それじゃ間に合わない…! 座席の下のやつを取るのも惜しい時間なのに……)

純一(……だから──だからこれは、彼氏として僕がどうにかきゃいけないことなんだ…ッ!)がたっ

絢辻「で、でもみんな眠ってて…起きてくれるかしら──……」

純一「…あ、絢辻さん…っ! こっちのほう向いて!」

絢辻「え、なにか拭くものでもあったのかし───」

純一「…えいっ」ちゅ… ちゅるるっ…

絢辻「ふむぐっ……んんっ!?」

純一「じゅぶ…ぺろ……ふぅ、これで大丈夫だと思うよ。絢辻さん…!」

絢辻「っ……っ……!?」

純一(きょとんってしてるな……うん、まぁ、普通はこんな表情はするよね…)

絢辻「……た、橘くん…いまあたしになにか…?」

純一「う、うん……ちょっと啜った、かな…?」

絢辻「…す、啜った…? え、どういうことなのかしら……よく状況がわからなく…ちゃんと教えてくれる?」

純一「え、えっとその……鼻血が制服に垂れそうだったから、もうここは僕がすするしか無いって思って…」

絢辻「…思って…?」

純一「……吸っちゃいました」

絢辻「………」

純一(ふたたびきょとん……あ、これは来る。主に打撃が)

バスガイド(2×歳未婚)「……クソが」

麻耶ちゃん「……クソが」

絢辻「───たち、ばなくん…」

純一「は、はい…っ」

絢辻「正座」

純一「えっ…?」

絢辻「目的地まで、ずっと正座」

純一「え、だって…目的地まであと一時間ぐらいあるよ…?」

絢辻「だからなんなのかしら? いいから、はやくしなさい」

純一「はいっ…!」ささっ…

絢辻「よろしい、じゃあ次は」

純一(ま、まだあるのか…っ! どうしよう、次はなにがくるんだろう…!)どきどき…!

絢辻「………」ごそごそ…

純一「っ……なにを、とりだそうとしているの絢辻さん…?」

絢辻「黙ってなさい」

純一「はい……」

絢辻「……橘くん、はい」

純一「──え、それってさっきのポッキーじゃ…」

絢辻「食べなさい、早く」

純一「あ、うんっ……わかった。ぽりぽり……」

絢辻「……美味しい?」

純一「う、うん……普通に美味しいよ…?」

絢辻「…そう、ならよかった」

純一(…どうして急にポッキーを渡してきたんだろ…?
   ……あ、もしかしてまたゲームをしたかったとか…?)

絢辻「…違うわよ、ばかね」

純一「っ!…けほっこほっ……どうして心の声が…!?」

絢辻「貴方が考えてることぐらい、すぐにわかるわよ。はぁっ……ほんっと貴方って思考が足りてないわよね」

純一「ご、ごめんなさい……でも、どうしてポッキーを…?」

絢辻「っ……く、口直しよっ……口直し!」

純一「……口直し?」

絢辻「っ~~~……だ、だってあたしの、鼻血を……飲んじゃったんでしょ…っ?」

純一「う、うんっ…そうだけど…?」

絢辻「だからその、あれじゃないっ…そんなの、橘くんに悪いからっ……だからその、あれよ!」

純一「あ、あれ…?」

絢辻「と、とにかく! 口の中が血の味がしてたらっ……貴方も気持ち悪いでしょ…っ」

純一「…………」

絢辻「はぁっ…はぁっ……なんで、そこできょとんとした表情になるの…っ?」

純一「……あ、いや、だってさ。べつに絢辻さんの血ぐらい、どうってことないよ?」

絢辻「なっ……そ、そんなわけ…!」

純一「むしろ嬉しいくらいだよ。うん、ありがとう飲ませてくれて絢辻さん」

絢辻「ちょ、ちょっとやめてよ…! そんな感謝の仕方なんて全然うれしくないわ…っ!」

純一「あはは、じゃあどうしたらいいかな…?」

絢辻「っ……もう黙ってなさい…!」

純一「…………」

絢辻「っ………」ぷいっ

純一(あはは…なんだかちょっと怒ってるなぁ。すこしまた調子に乗りすぎたかな、まぁそれはいいかなって思ってるんだけどさ)

絢辻「……ねぇ、橘くん」

純一「…うん? どうかしたの絢辻さん?」

絢辻「…………」

純一「………?」

絢辻「……そのね、ありがと…」

純一「!……いいよ、どういたしまして。あはは」

絢辻「っ…わ、笑わないの!……とにかく正座は続行なんだから…!」

純一「うん、わかってるよ……」

絢辻「…………」ぷいっ

純一(……バスの中でもこんなに楽しいことが出来るだなんて、
   これから先の三日間、もしかしたらこれ以上なことがおこるんじゃないかな…?)

純一「絢辻さん、修学旅行楽しみだね……?」

絢辻「──……ふふっ、そうね…本当に、楽しみだわ」

裏表怪人ちゃんおわりっすっす

予想は心のなかで!これはファミ通からのおねがいだよ!
ここで昼ごはんタイム

&安価です
麻耶ちゃんは次の次で書く

この安価は『いままで一度イチャイチャしたヒロインも可』です
>>205をかきます

絢辻さんのお姉さん

はあく
姉さんか

イチャ済みキャラだったらハーレムもう一人安価して
ハーレムかくつもりだった

お話は地続きじゃないのでご了解を
四十分に戻る

あとこれには前回と前々回があります
純一「みんなと、イチャイチャしよう!」
純一「もっとみんなと、イチャイチャしよう!」

気になる方はぐぐっていただけたら うんこ

【絢辻緑】

河原

純一「………」 ひゅう~ ざわわぁぁ~…

純一「───よし、行くか……」ざりっ

純一「…………」ぐっぐっ…

純一(天気も晴れ、河原の土具合も良好。
   僕の体調も今日という訓練のために……万全の態勢に整えてきた)

純一「今日こそは、あの領域にいけるはず…!」

純一(自分を信じろ……橘純一…ッ!
   なにごとも信じることから得られるんだ! もとより諦めてかかったら出来たはずのことも出来やしない!)

純一(──全ては、全てはここにある……体の奥にある、ひとつの可能性。それを引き出して、
   呼び覚まして、覚醒させる……───)

純一「──野性的、本能…!」

純一(人が本来持つその本能……それを、僕は今日出しきるのだ……そう、この瞬間に全てを)

純一「っ……行くぞ、僕…!」ぱん!ぱん!

純一(今日という日が……僕の人生で最良の日となることを願って──……よし!いくぞ!)

純一「わんわんわん!!!わぉーん!!」ばたばたっ…!

だっだっだ…!

純一「ハッハッハ…ッ!」ざりりっ!

純一(──そう、このコーナリング! 野生の犬は身体を少し斜めにし、一度足りとも速さを緩めることなく!
   維持したままコーナーを曲がり切るんだ…!)

純一「ハッハッ…ヘッヘッヘ…!」ぎゅん!

純一(そしてこのダッシュ力! 四足歩行が可能にした、人間の領域を脱したスピード…ッ!
   それは初速にして最速! 常に両手足によって最速を維持し、目的地まで駆け抜ける…ッ!)

純一「ヘッヘッヘ!……ぱく!」ぴょん!

純一(最後のこの運動性能…ッ!投げたボールを自らキャッチ!
   そのためには驚異的な瞬発力と共に、何処に落ちるのか予測観測も長けてなければならない…ッ!)

純一「………」ずさぁー…

純一「──……完璧、だ。流石は、僕……なんという犬だ…!」

純一(今日の日のために、色々と筋トレしておいてよかったなぁ…)ごろごろ…

純一「…とりあえず、喉乾いたし水でも飲むか。よいしょ」ごろり! よちよち…

純一 ぺちゃぺちゃ……ごくん…

純一(お皿でいただくアクエリも中々どうして……ふむ、これもメモっておくかな)めもめも…

純一「……ふぅ。だいぶ落ち着いたかな、僕の野性的本能も…」

純一「………」

純一(……元々、森島先輩の気持ちに答えるために。全力で犬になろうとした計画だったけれど…
   なんだか僕自身がいぬになることに、ハマりつつあるようなきがするよ…あはは、どうしてかな?)

純一「僕はちゃんとした人間なのにね、おかしいはなしだよ」

純一(……さて、休憩もそこら辺にして…次は二段階目の本能に目覚めるため、さらなる過酷な訓練に…)

わんわん! きゃいーん!

純一「…ん?あれは───」

「…こらぁ~!だめでしょ? 小さい子をいじめちゃ!」

グゥーグルルルル…!

「もぉ~う! そんな風に涎を垂らしても、この晩御飯はあげませんよー?」

前にやってたSS思い出した
ロミオに紳士が本気見せるやつ

グルルルルルルルッ…ガルルッガウガウッ!
「あらまぁ~……そんなに騒いで、なにがそんなに楽しいのかな~?」クゥーん…キュンキュン…

「ん~だいじょうぶよ~? このおっきな御いぬさんはね~ ちょっとお腹が減ってるだけだから~」

グルルルッ……

「あら、どうしたの~? こっちににじり寄ってきて……──」

ルル……がうっ!! ばっ

「あっ…─────」

だっだっだっだ…!!

純一「わぉおおおおおおおおん!!」だだだ だん! 

キャイン!? ずさー…

純一「はっはっはっ……わんっ!わんわん!」じりじり…

ウ、ウ~ ワ、ワン!

純一「…………」じぃー

ワ、ワン…!

純一「………わん」じぃー

ワ、ワッフ……キャインキャイン! だっだっだ!

>>228
ありがとう、読んでくれて

ちょっと仕事の電話はいったので十五分おくれ

純一「わん……」キリッ

純一「…へっへっへ…」くるっ

純一(……うわぁー! なんだこの人…! すっごい美人だ…!
   びっくりしたよ、ものすごくびっくりした!)

「………───」

純一(あ…でもしまった、こんな野生的な僕をみても…一般の人ならドン引きしちゃうって知ってるから…
   ここはともかく、この人の胸元だけを記憶に残して去ろう───)

「──……なんて、お利口さんなお犬さんなのかしら~!」

純一(え……?)

「ご飯が食べたくて我慢出来なかったお犬さんをおっぱらってくれるなんて~すごいすごい~」ぱちぱちぱち

純一「わ、わんっ……」

「うんうん! いいこね~ よしよし~」なでなで

純一「く、くぅん……へっへっへ…!」

「あらあら、甘えてきちゃって…うふふ、かわいいわぁ…」

どういうことなの…

純一(……ハッ!? な、なにをやっているんだ僕は…!
   思わず犬のままで接しちゃったよ…!)ちらっ…

「んん~…かわいいでちゅね~」こしょこしょ

純一(おっ…おっふ…! じゃなくて! どうしよう、この人まさか…僕があまりにも
   野性的すぎて、人だって気づいてない…?)

純一「…………」くるっ…

「…あら? どうしておなか見せるのやめちゃったの~?」

純一(だめだ、この人を騙しているようで申し訳ない……僕は人を騙すために、犬になったわけじゃないんだ…
   ここでさよならをしとこう───白色だったなぁ…)

純一「わふっ!……わんわんっ」よちよち…

「……いってましまったわ…残念、おうちに上がらせてご飯でも食べさせてあげようかなって思ってたのに…」

純一「………」よち…

「そしたら、貴方が一緒に来る~?子犬ちゃん?」

くぅーん…わんわんっ

「あらそぉ~? ふふっ、それじゃあ行きましょうね~」

純一「…………」だっ

数十分後

ジョン「わんわん! わぉ~ん!」くるくる

緑「こらこら、わたしのまわりをうろうろしちゃだめよ~?」すたすた…

ジョン「わん…っ!へっへっへ……」ぴた…

緑「いいこね~ ふふっ、それじゃーつきましたよ~!」ぎぃ…

ジョン(──この人の名前は、緑さん。家に来る途中で教えてもらったけれど…
    なんてお美しいひとなんだ……まるで聖女だよ!)

緑「まずは足をふきふきしましょね~」ふきふき

ジョン(こんな野生的な僕を家に上がらしてくれるなんて……すごい人だなぁ!尊敬しちゃうよ!)ふきふき…

緑「じゃー二人共、居間の方にごーごー!」だっ!

ジョン「わんわん!」だっだっだ!

わんわん! だっだっだ!

ジョン「わんわ──……」だっだっだ

詞「………」ぺら…

ジョン「…………」だっ!

緑「──う~ん? どうしたの? 急いで玄関に戻ってきて~?」

ジョン「わ、わふっ……ゲホコオッ…わんっ…!」ガクブル…

ジョン(えっ…!? なんで!? どうしてあ、絢辻さんがっ…この家で…
    居間で雑誌を読んでるの……!?)

ジョン「………っ!」ぴきーん

緑「?」

ジョン(よくよく思い返してみると……玄関のあった名前…絢辻、だった…っ?
    うそだろ……ということを僕は…!)

緑「ジョン~? どうしたの~?」

ジョン(あの、絢辻さんのおうちに……あがってしまったとでもいうのか…っ!)ぴしゃーごろごろ!

ジョン「………」

緑「ジョンくーん…? 大丈夫かな~…急に元気なくなっちゃったけど…よしよーし」

ジョン「わふっ……わん…」

ジョン(ど、どうにかっ…まだバレてないうちにこの家から出るしか無い…!
    絢辻さんにバレてしまったら…なんというか、僕はクラスで終わっちゃう気がする…!)

緑「う~ん……あ、そうだ!」ぴこーん

ジョン(と、とりあえずっ…玄関のドアをかりかりやっとけば、外に出してくれるかな…)かりかり…

緑「ふんふふーん…♪ あ~! あったあったぁ~ うふふっ」

ジョン(うん…? どうしたんだろう、緑さん嬉しそうだけど──)かちゃん

ジョン(えっ…?)

緑「前に使ってた首輪だよ~? なんとなんと、お犬さんの肌にも優しい特別な皮で作られたやつなんだから~」

ジョン(えっ……なんだってー! と、とれない!)かちゃかちゃ

緑「あ~だめだよ? そんな風にイタズラしちゃ~…めっ」

ジョン「わ、わふぅっ……」

緑「いいこいいこ~…ちょっとの間だけだからね? 詞ちゃんが、暴れるわるい子は嫌いだから~……ね?」

ジョン(そんなわるい子はもう帰りますから! 外してください! お願いします…!)ずりずり…

緑「それじゃあ居間にれっつご~」すたすた

居間

かちゃ

緑「ただいま~」

詞「──っ……お姉さん。おかえりなさい」

縁「うん~! 詞ちゃんもさっき帰ってきたところ~?」

詞「チ……今朝に言ったでしょ、今日は学校は休みだからって」

縁「そっかぁ~…そういえばわたしも大学やすみだったよ~」

詞「はぁ…そう───それで、その抱えている子犬は……どうしたの?」

縁「あ、この子~? この子はね、河原でおっきなお犬さんに虐められたところをみかけて~」くぅーん

詞「…やめて、そういうの。また…お父さんに怒られてもしらないから」

縁「あ、うん~…ごめんねぇ?」

詞「どうして私に謝るの、それと…もうひとつ。その握ってる手綱はなに…?」

「っ……」びく!

緑「あ、この子はね~…そんな虐められてた子を助けてくれた~ とってもとっても勇敢なお犬さんなんだよ~!
  ちょっと恥ずかしがり屋さんで、今はソファーの後ろに隠れちゃってるけれどね~」

ジョン「っ……っ……っ……!」ガクブルガクブル…!

詞「──……それ、大型犬用の首輪なのに。ちゃんとサイズ合ってるの?」

緑「ぴったりだったよ~? だって、おっきなお犬さんだったし~」

詞「……ふーん、そう…大型犬にしてはやけに静ね。荒い息を吐くものだって思ってたけど」

ジョン「っ……はっはっはっはっ…!!」

詞「……あら、聞こえたね」

緑「心配しなくても大丈夫だよ~? ちゃーんと大人しくしてるし、それにこうやってリードもつけてるから~
  ……だからその、ね? ちょっとの間だけでいいから…おうちに上がらしてもいいでしょ?」

詞「……いいけど、私に近づけさせないでねお姉さん」

緑「わかった~ それじゃあいこっか? ふたりとも~」ぐいっ

ジョン(え、ああぁ…! ひっぱらないで…! 姿がっ! ソファーからはみ出て絢辻さんに…!)

詞「………」ぺら…

ジョン(……あ、あれ…? 絢辻さんもうお姉さんのこと見てない…まるで、はなしが終わればそれまでって…
    ひどく無関心みたいな雰囲気をかんにじるよ)

ジョン「………絢辻さん…」ずりずり…

緑「私の部屋まで、いくよー?」たんたん…

ジョン(ごふっ!……ちゃ、ちゃんと登らなきゃ…!)たんたん…

緑べや

ジョン(お、おおっ…なんだか女女の子してる部屋だなぁー…くんくん、あ。良い匂い…)

緑「ちょっと着替えるから、まっててね~」すすっ…

ジョン(もちろんです!)くるっ

ジョン(……さて、着替えを見ないようにまずは…この部屋にあるものとか眺めておこうっと)

ジョン「…………」きょろきょろ…

ジョン(……ぬいぐるみが多いけど、これって全部買ってるのかなぁ…すごい量だ…あ、これは…)すたすた…

ジョン(家族全員が写ってる写真だ…絢辻さんも写ってるし、もちろん緑さんも写ってる)

ジョン(──でもなんでだろう、なんだか家族写真……って感じがしないなぁ。どうしてだろう?)

緑「おまたせー じょぉんっ」ぎゅう…

ジョン「お、おふぅっ…!?」

縁「うふふっ…せなかおっきぃねー。ごろごろー」

ジョン(ふ、ふわわ! ふわふわ!)

縁「ふふっ…あーやっぱりおっきなお犬さんはいいなぁー…抱き心地がとっても素敵~」ぎゅう~

ジョン(ぬ、ぬわーっ……これはすごいよ!たまらないよ!)

縁「くんくん…あ、ちょっと土の匂いが残ってるねー…あとで一緒にお風呂はいる?」

ジョン「……わん」キリッ

縁「ん~? それはだめだ! って顔をしてるね……そっか、お風呂は苦手なのかな?」

ジョン(さすがにそれは……欲を言えば男として、一緒に入りたいですけどね!)

縁「う~~~んっ……はぁ~! 堪能した~! よいしょっと」

縁「うふふっ……こらこら、子犬ちゃん? そんなに引っ付かなくても大丈夫よ~?」きゃんきゃん!

ジョン(素敵な方だ……僕の飼い主になってほしい…ってだめだ! ぼ、僕にはちゃんと森島先輩っていう
    火憐な飼い主が……でも、こっちも…)

縁「こっちにわんわんっ。こっちにわんわんっ」 わんわん!

ジョン(……というか、この人が絢辻さんのお姉さんなんだよな…なんだか全然似てないや…
    …主に性格面とか…あ、でも目元とか少し似てるかな…?)

ジョン「…………」

縁「うふふっ~…楽しいわね~───むかしは、こうやってよく詞ちゃんと遊んでたっけ~」

ジョン「!………わふっ…」

縁「うん? ジョン君も気になるかな? 詞ちゃんのこと」

ジョン(気になる気になります!)

縁「お~! 興味津々な目だね~……じゃあ、特別だよ? じゃあベットの上においでー」ぽんぽん

ジョン「わふっ…!」いそいそ… すっ…

縁「うふふー……よしよし…あのね、昔はね詞ちゃんは~…とっても泣き虫さんだったの」

ジョン(な、なんだってー…!?)

縁「今はあんなにすっごくかっこいい娘だけど、昔は本当にすぐ泣いちゃって…
  わたしが夜、同じ布団の中でいつも慰めててあげてたの」

縁「そしたら寝ちゃう前に、小さくそっとわたしに…ありがとう、お姉ちゃんって言ってくれて…
  当時のわたしは、その詞ちゃんの言葉がもうほんっとに大好きでね……」

ジョン「…………」

縁「……今は、そんなこと言ってくれることもなくなっちゃったけど。
  でも、いつまでも詞ちゃんは…わたしのかわいい妹で、素敵な妹なの……うふふ、なかなか言えないけれどね」

ジョン(…お姉さん、絢辻さんのこと……大好きなんだな。こうやって犬な僕にぼやくぐらいなんだろうし…うん。
    やっぱり素敵な方だ…)

縁「昔の詞ちゃんも大好きだけどー……今のかっこいい詞ちゃんも大好きなんだよ。
  でも、最近の詞ちゃんは…ほんのちょっとだけ、冷たい感じがする…かな?」うんうん

ジョン(……そ、そうかな…? 
    居間で見た時、パッと見ただけの僕でも…すごくなんだか絢辻さん、お姉さんのこと苦手ぽかったけど…?)

縁「だからいつか……前みたいに、一緒にオフロに入って。一緒に髪を乾かしっこしてー……それから同じベットで眠るってことを
  したいんだけど……ふふ、いつになったらできるのかな~? ねぇ~ジョン~? うりうり~」

ジョン「お、おっふっ…!」

縁「はぁー……」ぱたん…ころん

ジョン「………?」

縁「もっともっと……詞ちゃんとおしゃべり、したいなぁー……」

ジョン(縁さん……)

縁「──すぅ……すやすや…」

ジョン(ってあれ……もしかして、寝ちゃった…?)ゆさゆさ…

ジョン「わおわおん?」ゆさ…

縁「くぅー……くぅー……むにゃ…」

ジョン(ね、寝ちゃったよ…寝るタイミングが掴めないぐらいに、素早かった…!
    まるでのび太くんだよ…!すごい!)

ジョン「………このうちに、この家から出とくかな…ともかく、綾辻さんにバレずに帰れれば
    それでいいんだ、居間をどうにかすれば……」すたすた…

縁「むにゃむにゃ……ジョン…君……すぅー…」

ジョン「…………」すた…

ジョン「──今日は、家に上がらしてもらってありがとうございます。
    この御礼はまた今度、僕が人間の時に……渡したいと思いますね」

ジョン(──では、縁さん…これで)

たん…たん…

ジョン(……か、階段を上がってくる音…! 僕の野性的感が告げている…!急いで隠れないと!)ばばっ

こんこん…

「…姉さん、入るわよ」がちゃ

詞「──姉さん、そろそろ晩御飯の……あら?」

ジョン「っ……」どきどき…

詞「……またそうやって寝て…風邪を引いたらどうするの」すたすた… ぐいっ

ジョン「…………」どきどき…

詞「──これでよし…晩ご飯は後もう少し、伸ばしてもらうから。一時間後にくるからね」

縁「つかさちゃーん……えへへ、まって~……」

詞「っ……」ぴくんっ…

詞「──……ったく、貴女って人はどうして……ぎりっ」ぐ…

ジョン(……絢辻、さん…?)

詞「……っはぁー…!……もういいんだから、もう大丈夫。もう……」くる

詞「……私は……あたしは、貴女には負けてないんだから……」すた…

ジョン(……どういうことだろう、負けてない。って……絢辻さんが裏の顔を持ってることと何か…
    関係があるのかな…?)

詞「……あら、そういえば…」すた

ジョン(……ん?)

詞「姉さんが連れてきた……もう一匹の大型犬はどうかしたのかしら。子犬の方はベットの上だし…」

ジョン(し、しまった……ここは、どうにかくぐり抜けるしか無い…!)

ジョン「わ、わぉーん……!」

詞「……ベットの下? そこにいるの?」すたすた…

ジョン(馬鹿だ僕! なんでいるってことにしたんだ! 帰らせたってことにしとけばよかっただろ!
    あ、あわわ…! どうしよう、絢辻さんがリードに繋がれてベットの下に隠れた僕を見つけてしまう…!これはおわった!)ごそごそ…

詞「──よいしょっと……」すっ…

ジョン「っっ………!!」

詞「……………」

ジョン「っ………」どきどき…

詞「──……あれ、なにもいない…?」

ジョン「……っ……」どきどき

詞「確かに、声がここから──……あら、ベットにもう一つの膨らみが」

ジョン(──た、助かったァー! なんだこの奇跡! 絢辻さんが屈んだ瞬間に、急いでベットに潜り込んでみたけど…
    成功するなんて……もう僕ってば明日には死んじゃうんじゃないかな…!)どきどき…

詞「いつの間に…まぁ犬ならやってのけるか。ふぅ…あんまり毛とか付けないでよね、掃除が大変なんだから」

ジョン「わ、わふっ…!」

詞「あら、返事をしてくれるなんて……お利口さんな犬なこと」

ジョン「……わ、わふっ…」どきどき…

詞「……さて、晩御飯の手伝いでもしてきますかぁー」すたすた…ばたん…

ジョン「──た、たすかったぁー……もうダメだって思った…!本当に…!」

ジョン(この家に来てから、なんど奇跡を行っただろう……もう、僕へにゃへにゃだよっ…!
    色々と面倒な事にならないうちに、この家から出よう…!)

ジョン「とりあえず、この首輪をどうにか外して……あれ、案外軽く取れた…落ち着いてやれば出来るもんなんだ…」かちゃ

純一「──よし、それじゃあさっそく……」ぐいっ

純一「えっ…?」ばさぁ…!

純一(ベットの中に引き込まれっ…!?むぐっ!)ぽにょ!

純一「むぐぐっ……ぷはぁ! なにこれ、やわらかむふっ!?」

「う、う~ん……はれぇ? ジョン君…?」ぎゅう…

純一「ゆ、縁さん…!?って…あっ!」ぱしっ

縁「うーん……パチパチ……うん?」

純一(やばいっ! ものすごく凝視されてる…! 目の前で、胸に抱かれながら…!)

縁「……あれ? ジョン君だったと思ったのに……あはは、いつも詞ちゃんといる子だぁ~」

純一「え…? あ、はい…どうも…?」

縁「どうもー……ふわぁ~…何だか不思議な夢~…ジョン君が、あのこに変わっちゃうなんて~…」

純一(も、もしかして…これ夢だって思ってるっ…?まさかそこまで都合がいいこと…!)

縁「えへへ~…最近、どうも夢見が悪いって気がしてたから。
  こんな夢を見られるなんて……ちょっと神様に感謝しないとね~」

純一(どうやら本気で思ってるっぽい!)

縁「……ん~~……こうやってお話するのは初めてだよね?君とは」

純一「あ、はいっ……そうですね、確かに…」

縁「あははー! そこまでかしこまらなくてもいいんだよ?取って食べるわけでもないからね」

純一「そ、そうですか……」

純一(というか、いつまで僕は抱かれたまんま何だろう…!
   たとえ夢だと思ってたとしても、この人にとってはそれでいいのか…っ?)

縁「……うーんとね、君ともし会ったら色入とお話ししたいことがあったんだけど…夢の中だし、いいかなー?」

純一「えっとその、ちゃんと話しをきいたらっ…手を離してくれますか…?」

縁「うん、いいよー」

純一「……わ、わかりました。それじゃあ聞きます…」

縁「えっとね……聞きたいことって入ってもね、ただ1つだけなんだけどね」

純一「はい、1つだけ…?」

縁「うん、それはね……つかさちゃんのこと」

純一「…絢辻さんこと、ですか?」

縁「そうなの、つかさちゃん…私の妹なんだけどね。
  あのこ、最近ずっとずぅーっと……笑った所、見たことないの」

純一「ずっと、ですか?」

縁「……どれぐらいたつかなぁ~…もう、忘れちゃうぐらいにだと思うよ。
  それぐらい見てないつかさちゃんの笑顔をね……実は、最近になってみたんだよね」

純一「え、本当ですか…っ?」

縁「うん! わたしもびっくりしてー…そこで一時間ぐらい立ちっぱなしでいてね。
  今でも足がちょっと凝っちゃってるんだ~」

純一「は、はぁー…そ、それでいつ絢辻さんが笑ったんですか…?」

縁「うん? 君と一緒にいるときだよ?」

純一「え……?」

縁「とってもいい笑顔だったなぁ…あの時のつかさちゃん。なんだかこう…女の子!って笑い方してて…」

純一「は、はい……」

縁「…そしてそんな笑顔の先にね、君がいたんだよ? わたしそこでもっとびっくりしちゃってね」

純一「なるほど……」

縁「……家ではよく笑ってはいるんだけど、あれは少し…違うんだって思わせるぐらい、綺麗な笑顔を…
  君だけに、君のためにしていて……ものすごく、びっくりしたんだー…うん」

純一「…………」

縁「……だから、聞きたいんです。君に…どうやったら、つかさちゃんに…」

縁「あの笑顔を、してくれるようになるのか……私は知りたいの」

純一「……知りたいっていわれましても、僕は…」

縁「う~~~~んっと……たしかに、これは私の夢であって~~~…君本人じゃないから、
  本当の答えじゃないけど~~~…でも、君に聞いてるわけだから、それは答えで~~~うーっん…まぁいいや!」

純一「え、えぇー…いいんですか…?」

縁「いいのいいの! わたしがすっきり出来ればそれでいいんだから」

縁「……だから、教えて? 夢の君に、どうか答えを教えて欲しい」

縁「わたしも、あの笑顔を…つかさちゃんから向けて欲しいの。ものすごく、いっぱいに」

純一「……っ……あの、その…正直にいいますと、ですね…」

縁「うん?なになに?」

純一「……わ、わからないです……はい…」

縁「え~~! それは嘘!」

純一「う、うそじゃないですよ…! 本当です! ……本当に、僕は…」

純一「…絢辻さんが、その、綺麗に笑ったってことは……よくわからないです」

縁「…そうなの?」

純一「……まぁ、たしかに。最近はよく笑ってくれるようになって来ましたけど…
   それは以前までも、変わらずに笑っていたと思います…確かに、種類が違いますけどね…」

縁「でしょでしょ! わたしもずっと悩んで悩んでわかったことだから…すっごく自信があるの!」

純一「そうですか……でも、僕は絢辻さんは…いつだって笑顔が可愛い人だって思ってます」

縁「……うんうん、それでそれで?」

純一「だからその……貴女がいった、綺麗な笑顔っていうのは…ただ、貴女が久しぶりに見た笑顔が…
   とても印象深かっただけなんじゃないかって思いますけど…?」

縁「ほーうほう、なるほどっ」ぽんっ

純一「……貴女が見た久しぶりに絢辻さんの笑顔が眩しくて、そこにちょうど僕がいただけの話なんですよ…」

縁「ふむふむ……わかった、わかったよ君ー!」

純一「ほ、本当にですか…? よかったぁー…!」

縁「うんうん、やっと君があほのこだってわかったよ~」

純一「……え?」

縁「つかさちゃんも大変だなぁ~…なるほどね、だから好きになったのかなぁ~…」

純一「えっと、お姉さん…?」

縁「──……ふぅ、そしたら。最後にひとつだけいおっかな」

純一(……あれ、なんだか雰囲気が…どこかで見たことのある感じの…?)

縁「……君が、どれだけの子をね? 元気にしてあげても。強くさせてもだよ?」

純一「は、はいっ…?」

縁「数あるこの中で──……幸せにできるのは、必ず一人だけだからね?
  それだけを覚えておいて……橘純一くん?」

あほの子…

この紳士レベルなら3人くらいはいけるんじゃなかろうか
だから絢辻姉妹+ラブリーのハーレムルートはよ

>>310
自分で書け

純一「えっ、あっ、はいっ…!……というか、どうして僕の名前を…?」

縁「うん~? ひ・み・つ。だよー?」

純一「え、ええぇ~…! すごく気になりますけど…! 秘密なら、しかたないですね…」

縁「……ふふふ、やっぱりつかさちゃんが気に入ったのもわかるわぁ。いいこね君は」なでなで…

純一「そ、そうですか…?」

縁「うん、とってもいい子よ。こんな子なら…ちゃーんとつかさちゃんを悲しませずにしてくれそうで、
  お姉さんとっても安心したよー?」ぐりぐり

純一「わ、わっぷ……ちょ、苦しいですって…!」

縁「うふふっ……ありがと、今日は私の話しをきいてくれて…感謝してる。
  貴方も頑張ってね…お姉さんも応援してるから、ね?」

純一「は、はい…?」

縁「いろんな事があっても、大変な目にあっても……くじけずに頑張らなくちゃだめだよ?
  でも、もし……だめになりそうになったときは、またここにおいで」

縁「……もう一度、こうやって抱きしめてあげるから」ぎゅう…

純一「っ……ゆ、ゆかり…さん…」

縁「───大丈夫、君はただひたすらに……わんわんって走っていけば。それだけでいい」ぎゅう…

純一「…………」ぎゅっ…

縁「君はとってもすごい子。なんだって出来る子。そんな自分に自信を持ってね…?
  その自信が高ければ高いほど、君もっと凄くいい子にしていくはずだから…」

純一「……はい、縁さん…」

縁「……つかさちゃんを、どうかよろしくお願いします。橘くん……」

純一「……─────」

数分後

純一「──………ハッ!」がばっ

純一「こ、ここどこ…!? え、あ、か、河原だ……」

純一「ど、どうしてここで僕は寝てるんだ…? えっ!?恐い!?」

純一「というか寒い……ってあれ、そんなに寒くない…冬なのに…?」

純一(なんだか、さっきまで誰かに抱かれていたような…そんな暖かさが残ってる…)

純一「う~~~んっと………」

純一「…………だめだ、思い出せない…!どうしてだろう、こんなにも…」

純一「…こんなにも、すっきりした気分で要られてるのに…どうして、なにも覚えてないんだろう…」

純一「──……帰るか、うん」すっ……

純一「……絢辻さん、かぁ…」すたすた…

ちゃりり…ちゃり…

絢辻家

縁「きょーのごはんはなんだろうなー!」

詞「今日はカレーライス」

縁「え~? ほんとにー! 大好きよカレーライス~」

詞「そう、じゃあいただきます」

縁「いっただきまーす……もぐもぐ、おいひぃ~!」

詞「あ、ほら。そんなにこぼして食べないで!」

縁「えっへへ~……やっぱり、いいことした後っておなかがすくよね~つかさちゃん!」

詞「はいはい、そうねそうね」ふきふき…

みど…縁さん終わりです
次は麻耶ちゃんいくよ頑張る

ちょっと三十分ぐらいうんこ

変更
四十五分に来る すんまそんうんこ

きた
いまからかく

【高橋麻耶】

純一「──おじゃましまーす…」がちゃ…

純一「……えっと、高橋せんせーい…いらっしゃいますか~?」

純一「…………」

純一(──あれ、いないのかな…鍵はあいてるし。
   それにチャイムが壊れてるみたいだから、確認も取れないしなぁ…)

純一「うーん……どうしよう、勝手に上がってもいいものなのか…だめだよなぁ」

純一「……。とりあえず、要件のものだけ玄関においておくか……それだけで、いいよね」こと…

純一「……」しーん…

純一「本当にいないのかな…? 鍵も閉めないで外出なんて、とっても無用心だよ……」

がたんごとん!

純一「ん……? なんだ、今…物音が…」

がしゃんぱりーん!

純一「っ…!? 先生!? 高橋先生っ!」だっ

がらら!

純一「高橋先生っ…! いるんですか!? いるんですよ───……ねって…」

高橋「……きゅー」

純一「……たかはし、せんせっ…! な、ちょ、どうしてバスタオル一枚で大の字にっ…!?」

高橋「……ふぇ…?」むく…

純一「ちょ、ちょっと……先生! しっかりしてください、本当に…!
   あ、やっぱだめですしっかりしないで!僕が後で怒られそう…!」

高橋「…た、たちばな……くん…?」

純一「は、はいっ…! そうです、僕は橘純一です…!」

高橋「…………」

純一「せ、先生っ……?」

高橋「……たちばなくん、遅刻はだめですよっ…」ばたん

純一「せ、せんせぇー! ど、どうして最後まで…僕の心配をっ……」

純一(ってちがうちがう!…のってる場合じゃないよ…!どうやらのぼせてるのかな…?
   冷やしてあげないとっ…でも、その前にこの格好をどうにかしないと…!)

純一「っ……っ………」おろおろ…

純一(ど、どうしようっ…先生の家だし、勝手にあさくるのも……!)

高橋「はぁっ…はぁっ……くっ……」

純一「……くそ、もう怒られるのは慣れてるよ! ここはもう紳士魂すべて込めて、
   全力でやってやる…!」

高橋「っ……はぁっ……あ、あれ……たち、ばなくん…?どうしてここに───」

純一「──行きますよ、先生。あとでたくさん怒ってもいいですから……」

高橋「え……?」

純一「今だけは、ほんの今だけは……全部、許してくださいっ!」がばっ

高橋「きゃっ…!た、たちばなくんっ…? 急になにをっ…!」

純一「いきなり抱き抱えてすみません!とりあえず!先生はまたお風呂場に戻って下着を履いてください!
   僕はその間に、氷とか水とか用意しておきますので……お願いします!」だっだっだ!

純一「…よいしょっと、じゃあ後は自分で出来ますね!」

高橋「あ、はいっ…できます…!」

純一「わかりました! じゃあ僕はちょっと台所を借りますよ!」だっだだだ!

高橋「…………」

高橋「あっ…わたしったらぼーっとして…………下着、下着…」

高橋「…………」いそいそ…

高橋「ってなにこれ…!? えっ!? たちばなくんっ! なんで貴方がここにいるのっ!」だっ

純一「え、なんでってそれはっ……」

高橋「わ、わたしのアパートですよ…! というか、わたしっ…なんでこんなかっこうっ…!
   たちばなくん! ちゃんとせつめいをしなさ──きゃっ…!」ずりっ

純一「え、あ、ちょ、なんで自分の下着を踏んづけて……先生ッ!」だっ

ばたーん

高橋「──いたた……どうして急に、なにか足元にあったのかしら……」ひょい

高橋「……っ!?」ばっ

純一「いたた……せ、先生大丈夫ですか…っ?」

高橋「だ、大丈夫ですっ……それよりも! あまりこっちを見ないでっ…!
   ちょ、ちょっと先生の……し、下着が落ちてますから…!」ささっ…

純一「…えっと、そうなんですかって言いたいんですが……あの、その」かぁぁー…

高橋「な、なによ…! どうかしたんですかっ…!」

純一「……すみません、とりあえず謝っておきます…その…」すっ…

高橋「えっ……────」

純一「………まる、みえぐはぁあああ!?」ごすん!

高橋「っ…!…っ…!…っ…!」ばっばっ(バスタオル回収中)

高橋「っっっ~~~~~~~~~~!!!!!」ぎゅうう…

高橋「た、たちばなくんのっ───…ば、ばかっ……!!」だっ

がらら ばたん がちゃ!

純一「………」

純一「……大丈夫ですよ、先生。大事なところはふとももで見えませんでした」

『ちょ、ちょっと黙ってなさい! もうっ!』

数分後

高橋「───っはぁ~~~~~…………」

純一「あはは、はは……なんというか、災難でしたね先生」

高橋「っ……災難、ってどころの話じゃないでしょう…!もう、またなんてことを私は…あぁ~…」

純一「まぁまぁ、先生。別に減るもんじゃなしに……すみません、減りますよね色々と」

高橋「ぐぐっ……わ、わかればいいんですっ…! っはぁ~……もう、本当にわたしは…教師失格です…」

純一「…………」とく…とくとく…

高橋「教師生活を始めて五年目……今までいろんな事があったけど…貴方の担任を持った以来、
   全ての失敗を覆すほどのことばっかりやってるわ……はぁ~…」

純一「へー……高橋先生も、僕以外の前で色々と失敗してたんですか。はい、どうぞ」

高橋「あ。ありがとう橘くん……橘くんっ!それってどういう意味かしら…っ?」

純一「え、だって…先生が失敗する姿なんて、僕と一緒にいる時ぐらいしか見ませんし……」

純一(絢辻さんとかの色々は秘密として)

純一「だから、僕の時のことをはぶいたら…先生って結構、完璧な女性じゃないですか?」

高橋「……わたしが、完璧な女性……?」

純一「はい、そうですよ! だから先生のファンとか…男子にも多いし!」

高橋「そ、そうかしらっ……? わたしって、ちょっといけてるかしら…っ?」

純一「いけてますよ! すっごいいけてます!」

純一(…ふぅ、機嫌治ってきたかなちょっとは)

高橋「……ま、まぁ…おだてても、何も出ませんからね。橘くん!」

純一「え? いやー僕はなにもいりませんよ、高橋先生」

高橋「そ、そうなの…? なにも、いらないの…?」

純一「ええ、僕は何も要りません。だって僕は……」

ちゅ

純一「……ほら、もう先生を手に入れてますから。ね?」

高橋「お、おでこにっ……こら! なんてことを…!」

純一「あはは、ちょっと大人ぶってみました。どうです?具合の方は?」

高橋「っ~~~……す、すこしだけよくなりましたよ…たぶん…!」

純一「そうですか、だったあれですね……えーと、とりあえずは。
   先生…具合がわるいんですか?」

高橋「……そ、そうなのよ…今日はちょっと朝から風邪気味で…」

純一「なるほど、だから学校に来てなかったんですね」

高橋「…え? 何で知らないの? 一応、学校には連絡しておいたのに…」

純一(……多分、絢辻さんが裏で何かしたな。有益なことをするために)

純一「え、えっとぉ~…なんでですかねっ?たぶんだけど、代わりの先生がきたとき……
   梅原が色々と騒いでたから、その時に連絡が聞こえづらかったのかも~…しれないです」

高橋「……梅原君っ…覚えておきなさい、みっちり指導してあげるんだから…!」

純一(すまん、梅原っ……後生だ…!)

高橋「……それで、橘くんは今日はなにしにここにきたの?」

純一「あ、それなんですけどね…」ごそごそ

純一「──これです、進路希望調査紙を持ってきたんですよ」

高橋「ああ、確か今日が締切の……」ぱらぱら…

純一「はい、それでその…とりあえず先生の様子も見たくて……着ちゃいました。あはは」

高橋「ふーん……そう、なのね…」ぱらぱら…

純一(スルーされた……)

高橋「……あら、橘くん。大学希望なのね、大丈夫?」

純一「どういうことですか!? せ、先生から言われると……あれなんですけど…!」

高橋「うふふっ。冗談よ、じょーだん…いやね、てっきり専門とかに行くと思ってたから」

純一「…そうですね、一年の時はそう書いてましたね」

高橋「じゃあどういった心変わりなの? なにか君に、変化を与えてくれたことでもあったのかしら?」

純一「…………」

高橋「……うん? 先生の顔に、なにかついてる?」

純一「……いえっ、その……先生が居たからです…はい…」

高橋「…えっと、なにがどういうこと?」

純一「せ、先生を…知ってから。僕はやってみたい職業ができたんです…」

高橋「──えっ…それって、もしかして……教師、に?」

純一「……っ……」こく…

高橋「…わたしの姿を見て、君が……教師になりたいって、思ったの…?」

純一「っ~~~~っっ! そ、そうです! 僕は先生を見て…教師になりたいって思いました…!」

高橋「橘くん…」

純一「へ、変なことを言ってるってわかってます…けど! 先生みたいに…いろんな人に慕われて、
   生徒たちに勉学を教える立場ってのが…どれほど素晴らしいものなのか…知ってみたいって思ったんです…!」

高橋「……………」

純一「…だ、だからっ……その、いつかは輝日東高校で教鞭をとって、先生と…高橋先生と一緒に……先生?」

高橋「…………」ボロボロ…

純一「え、ちょ……なんで泣いてるんですかっ? えぇー…!」

高橋「たち、ばなくんっ……わたし、わたしっ……ぐすっ…」

純一「え、はい…っ? どうしたんですか…? 具合が悪くなったんですか…?」

高橋「ううん、違うの……そうじゃなくてね…?…ぐしゅっ…」

高橋「とっても、とっても……すっごく、嬉しいのっ…!…ぐすっ…君が、私を見て…
   …きょ、教師になりたいって言ってくれて……本当に、わたしは…っ…」

純一「先生……」

高橋「っ……せ、先生ねっ…? ぐすっ…教師になって、ひとつだけ願いがあったの…!」

純一「…願い、ですか?」

高橋「そう、そうなの……これから先、生徒たちを教えていく立場になっていくけれど…
   でも、もしかしたらいずれ…私と同じように、教師という立場を目指してくれる子がいればいいって…」

純一「…………」

高橋「…そん、な子がっ…ひっく……一人だけ、一人だけでいいから先生……っ…」

純一「…わかりました、わかりましたよ。先生の気持ち…」

高橋「ひっく……ほ、ほんとうに…っ?」

純一「ええ、本当にです。先生は、ちゃんと願いは叶えられましたよ…ここで、いま」

高橋「ひっくえっぐ……でも、橘くんっ……むっ…ぐすっ…無理じゃない…?」

純一「無理じゃないですよ! 頑張ります!」

高橋「…ぐすっ……」

純一「実はちょっと自信が持てなかったんですけど……今の、高橋先生の……いや」

純一「麻耶ちゃんの願いを聞いて、僕は完全に決意しましたよ」

高橋「た、たちばなくん……っ」

純一「待っててください、先生。僕は必ず先生に……なります」

高橋「ひっく……でも、その頃だとわたしっ…もうおばさんだよ…っ?」

純一「それがなんだっていうんですか! 麻耶ちゃんは麻耶ちゃん年ですよ!いつまでも!」

高橋「なに、それ……ふふっ…麻耶ちゃん年って…あははっ」

純一「あはは。だから先生、僕は絶対に…貴方と一緒に教鞭を取ります。必ずです」

高橋「ぐすっ……そう、なのねっ…! 決意は、決まってるのかしら…っ?」

純一「ばっちしです!」ぐっ

高橋「ぐしゅっ……ふぅ。うん、ごめんね。先生急に泣き出して」

純一「あ、いえ……可愛かったですよ、泣き顔も」

高橋「こ、こらっ…! 年上に向かってなにをいうの…っ!」

純一「あはは…」

高橋「もうっ……そしたら、橘くん。今まで以上に貴方をちゃんと指導しなきゃ駄目ね、こうなったら」

純一「ん……?え?」

高橋「だってそうでしょう? 貴方が教師という……神聖な立場になりたいというのなら、まずは…
   その垂れ流し状態の煩悩をどうにかしないとだめね」

純一「垂れ流しって……そこまでひどくはないですよ…!」

高橋「だめよ、一度言ったことはもうとりやめません!」

純一「え、ええー…そんなぁ~!」

高橋「とりあえず! 先生はこれまで以上に、きつく指導していきますからね?
   はい、返事!橘くん!」

純一「は、はいっ…! 麻耶ちゃん!」

高橋「麻耶ちゃんじゃありません…! た・か・は・し先生です!」

純一「はい! 高橋先生!」

高橋「はい、おりこうさんです」なでなで

純一「ふへへ~……」

高橋「…だらしない顔をしないの!それは駄目ですよ!」

純一「えっ!? これも駄目なんですか…?」

高橋「そうですよ! だって先生になでられただけで…そうだらしない顔になっては駄目です!」

純一「えー……先生以外の人になでられても、僕は嬉しくないですよ?」

高橋「……そ、そうなの…? そうなんだ……えへへ、って違います!」

純一「いま、ちょっと嬉しそうに……」

高橋「な、なってません! なってませんから…っ!」

純一「そ、そうですか……と、とりあえず落ち着きましょう、先生。熱が上がっちゃいますよ…?」

高橋「えっ? あ、そういえば私…風邪ひいてたんだっけ……」

高橋(でも、今朝よりもすごく身体が軽い……)

純一「……あ、それと氷枕ありますから。これで寝てくださいね」そっ…

高橋「あ、うん……ありがとう…」

高橋(…あれだけ怠くて、お風呂にも頑張って入ったのに…今は全然普通…)

純一「…まだ何か飲まれますか?」

高橋「ううん、大丈夫……大丈夫よ───」

高橋(…これも全て、君のおかげなのかな…感謝、しなくちゃね……君に)

高橋「───ありがとう、純一くん…」

純一「っ………はい!」

おわり

うそです、うんこいってくる十一時前には戻る

★う○こ代行始めました★
お腹がいたけどトイレが無い、トイレがあっても拭く紙が無い、そんなときに!
鋼鉄の胃腸を持つスタッフたちが一生懸命あなたの代わりに壁を殴ってくれます!
モチロントイレを用意する必要もありません!スタッフがあなたの家の近くのトイレで無差別にいたします!
10分\1200~ 24時間営業 年中無休!
              r、       (`ヽ

            ,.-ーュ ヽ     (フ''ー-' 、
           ,l、_  _,ノ、   rー、二lニ=、 \
          r',、 . ̄   ヽ  ヽ(≧┬-、ヽヽ

         ,.l ヽゝ =ニフ  .〉、  .〉 V⊂ニ、ヽ|
        r' `''ー凸 ‐---‐'  l  |  ,.-  ' /
        l,   r苙、      ,l  |  l    /     う○こ代行では同時にスタッフも募集しています
       ,.ェヨ''t- ニニ、,,_,,..-=く  /r、   ィ'、      胃腸に自身のあるそこのアナタ!一緒にお仕事してみませんか?
      _/   n ヾ、V,.r'´ヽ   Y l、ー―‐クヽ     う○こをするだけの簡単なお仕事です!
  _,,. -'''_ ヽ //  `i´ r、,、ヽ '´ l、   ̄`刀  ,>
 /__ ̄ `v-「三ミっ | .×メ ヽ   |   // ,r'
 l、―-ニニェ.l l 个ソ  .| ⌒  .|  |  . l,l /

  .`ヽ-、,,_>┴-'rョ  ,l  ,、   ト、    l,l,/
         r'´  r'"  .`ミ> ヽヽ、,,__,,,ノ

>>383
クソワロタ

id代わりましたが、今から書きます

数分後

高橋「──……た、橘くん…? 本当に大丈夫?」

純一「大丈夫ですって! これぐらいのことだったら僕にだって出来ますから~」

高橋「…………」おろ…

高橋「やっぱり、先生も台所にたったほうが…っ」

純一「…いや、高校生ですからそれぐらい信用してくださいよ…というか、出来ましたよ」すたすた…

高橋「っ……そ、そう…?」

純一「はい、じゃあ開ますよ? それ~」ぱかー!

高橋「わぁぁ…! 案外、美味しそうにできてるわねぇ…」

純一(案外…?)

高橋「ふふっ…そんな顔しないの。冗談よ」

純一「本当にですか…? せっかく麻耶ちゃんのために作ってあげたのに……」

高橋「ほ、本当よっ…! 本当に、嬉しいんだから…!」

純一「…………」

純一「………」

高橋「……ほ、本当よ…?」

純一「……じゃあ、あーんさせてください」

高橋「えっ!? そ、それはぁー……だめ、じゃないかしら…?」

純一「じゃあ嬉しくなかったんですね」

高橋「そ、そうじゃなくてっ…! ど、どうしてそうなるのよ…っ…」

純一「───あーんっ」ずいっ

高橋「っ……え、ちょ、た、橘くん…っ?」あたふた…

純一「ほら、麻耶ちゃん。あーんしてください」

高橋「っ……っ……」きょろきょろ…

純一「…………あーん」

高橋「っ…………あ、あーん…っ…!」ぷるぷる…

純一「……ぱくっ」

高橋「っ……」ぷるぷる…

高橋「……あれ…?」

純一「もぐもぐ……おっ、なかかな美味しくできてるなぁ…」

高橋「……………」

純一「…ってあれ、先生。どうかしましたか? うん?」

高橋「……………………」もぞもぞ…

純一「あ、ちょ、先生っ…どうして無言で布団の中に…!」

高橋『しらない』

純一「え、ええぇー…しらないって、先生…!」

高橋『意地悪な橘くんは、わたし知らない』

純一「ご、ごめんなさいっ…! ちょ、ちょっと先生をからかってみたくて…!」

高橋『…………』

純一「そ、その……ごめんなさい、高橋先生…」

高橋『…………』

高橋『麻耶ちゃん』

純一「えっ…?」

高橋『…………』

純一「なにか、いま言いましたか…?」

高橋『いってない』

純一「ぜ、絶対にいま言いましたって…!先生!お願いします!もう一度だけ…!」ぱんっ

高橋『……………』

純一「………っ…」ぐぐぐ…

高橋『麻耶ちゃんごめんなさい』

高橋『…って言ってくれたら許してあげなくもない』

純一「っ……言ったら許して、くれるんですか…?」

高橋『うん』もぞっ…

純一「……ま、麻耶ちゃんっ…」

高橋『…………』

純一「ごめんなさい……でしたっ!」

高橋『………』

純一「っ~~~……」

高橋『……エヘヘ』

純一(わ、笑った…?)

高橋『……コホン』もぞもぞ…

高橋「──う、うんっ…反省しているようなら、それでいいわっ…!
   もうこんなことはしないこと!いいっ?」

純一「わ、わかりました…っ!」

高橋「よ、よろしい……じゃあ、そのっ…」ちらっ

純一「…?」

高橋「……さ、さっきの……つ、つづきは…っ?」

純一「!……はい、そしたら──…あーん」すっ…

高橋「っ……ごくり…」

高橋「……あ、あーん…」

ぱくっ

高橋「……もぐもぐ…」

純一「……どうですか?美味しいですか…?」

高橋「こくん───……」

純一「…………」どきどき…

高橋「……美味しいわ、純一くん…すごいじゃない!」

純一「ほ、本当ですか…!」

高橋「うんっ! もっと食べたいわ……純一くん、はやくはやく」

純一「え、あっ、はいっ…どうぞ!」

高橋「あーん……もくもく…うん、美味しいっ」

純一「ありがとう、ございます…! たくさんありますから、ゆっくり…!」

高橋「実は朝から何も食べてないの……だから、もっとちょうだい…純一くん…?」

純一「っ…はい!…あーん…!」

高橋「あーん……ぱく!」

十数分後

純一「──よし、洗い物も終わったし……」ぱっぱ…

純一「……まやちゃーん、僕もうそろそろ家に──」

高橋「くー…くー……」

純一「───寝ちゃいましたか…先生…」すっ

高橋「くー……純一、くん……」

純一「はい、なんですか…? はは、寝言で僕名前を言うなんて…先生もかわいいなぁ」

純一「……先生、高橋先生」

純一「僕はいつだって、いつまでも……先生と一緒に居ます。これだけは、信じてください」

高橋「くー……くー……ううん、わたしもよ……むにゃ…」

純一「……あはは。ありがとうございます、麻耶ちゃん…」すっ…

ちゅ

純一「……さて、帰ろうかな。うん!」

麻耶ちゃんおわりだよにぃに!


はい、これにて一応
仮定していた目標人数に達しました

みなさん、本当にありがとう!
これを読んでくれた方で、より多くのアマガミストが増えることを願って

これにてイチャイチャスレに
終わりを告げたいと思います

ご保守ご支援本当にありがとう
なんというか、期待に答えれたものだったら嬉しいですノシ

じつは もうちっとだけ つづくんじゃ

安価>>435

はあく

だが+ヒロイン安価>>445

もzyうわなにをするやめr

再安価>>455

ha-remu

七咲

saigo
+ヒロイン>>468

るつこ

はあく

るっこ
もじゃ
逢ちゃん!

三人でハーレム行くよ。
四十分には戻る

【ハーレム】

純一「…………」

純一「──……なんだ、これは…」ぱさっ…

純一「………」ひょい

純一「………」じっ…

純一「…………閉じてるシールが、ハートだって……!?」

純一「ッ…!ッ…!」ばっ!ばっ!

純一(──怪しい影は……無い! 梅原的気配もなし!もしやこれは……!!)

純一「マジものラブッ───」ばさ…

純一「……ん?靴の裏からなにか…」ひょい

純一「ん? 靴の中になにか……」ひょい

純一「……………」

純一「ん?」

自宅

美也「にぃにー? ご飯はー?」

純一「いや、うん……今日はいいや美也…」

美也「えー! にぃにの好きなすき焼きだよ~?」

純一「……僕のぶんも、食べていいからさ…うん…」すたすた…

美也「ほんとー! やったぁー! にっしし!」

自部屋

純一「………」ぱたん…

純一「………────」

純一「───うわぁああああああー!!」ごろごろー!

純一「ど、どどどどっどうしてらぶ、らぶらぶるぇたーがっ……!!」ぐるぐる!

純一「…………」ぴた

純一「三枚、入ってるんだろう……」

純一「…………………」

純一(──落ち着け、橘純一……ッ! ここは紳士的にはまず落ち着き払い、
   今置かれてる現状の把握だ…ッ!)

純一「よしっ!まずはラブッ…て、手紙の確認だ…!」がばぁ!

純一「──し、慎重にとりだして……机の上に、並べる…ふぅ…緊張した」すすすっ…

純一「……よし。ひとつひとつ、吟味しながら開いて行こう…!」

純一「まずは、一枚目……靴の上にあった普通の封筒に入った手紙…」すっ…

純一「…可愛らしいスタンダードなものだね。ハートのシールだし」

純一「し、慎重にはがしてっ……よし、取れた!」

純一「っ……よし、大丈夫…僕は紳士。大丈夫だから…ふぅ」ぱさ…

『純一へ
 明日の放課後、いいたいことがあります。校舎裏の花壇の前でまってます。
                                  薫』

純一「……薫、だったのか…」

純一「えらい可愛らしい封筒に入れやがったなアイツ……いや、感想はそこじゃないよ」

純一「薫……アイツ、こんな手紙を入れて…何を言いたいんだ…?」

純一(いや、なにがってのはわかってるけど…そういうことだって、思うけど…!)

純一(でも、だってアイツは…こんなまどろっこしいことせず…
   直接言いに来るはずだろ…?なんだか、ブラフな気がしてきたぞ…)

純一「なんだか文面も薫らしくないし……うそっぽいなぁ…」ぱさ…

純一「──じゃあ、次だ。この靴の中に入ってた…折りたたんでる小さな手紙だね」すっ…

純一「……女の子って、こんな風な複雑な折り方ってよくするよね。なんかの御呪いかな…?」ぱさ…

純一「…よし、読むぞ…!」

『大好きな橘先輩へ
 明日の昼休み、どうか水泳部の方にきてください。ずっと伝えたかった事があります。
                                   七咲 逢』

純一「…お、おうっ……な、七咲…か…!」

純一(……お、思いたることが多すぎて…むしろ今まで告白してなかったことがおかしい気がしてきた…!
   …と、というか大好きって書いてある!もう書いてある!)

純一「……僕は、なんて最低なやつなんだろう…」

純一「…僕は、少なくとも……三人の子に好かれてて…それを、こうやって手紙で言われるまで…」

純一「……人っ子一人、頭に予想だてることできなかった……!」

純一「くっ……なにが紳士だよ! 僕は、僕は……ただのもはや変態だけじゃないか…!」

純一「ぐすっ……なんてことだ、本当にっ……ひっく…」

純一「ひっく…………ぐす………………────」

純一「───でも、待てよ。僕…」

純一(紳士たるもの……ここは皆の幸せを、優先的に考えるべきじゃないのか…?)

純一「たとえ、それが僕が悪者になったとしても……」

純一(皆が抱える、全ての感情は……全部正しいんだ…)

純一「……………」

純一「………僕は今、悪になると決めた」ぐっ

純一「橘純一……否、悪邪……紳士……」

純一「橘・ゴス・純一……ここに、来たれ…!」

純一「───……そうと決まれば、最後の手紙…」すっ…

純一「…和紙? なんだかすごく綺麗な紙だなぁ…」すすっ…

純一「……よし、綺麗に取れた。読むぞ…!」

『拝啓 橘純一殿
 寒さが深まる師走の中旬、如何お過ごしですか。
 この頃、めっぽう寒くなるなか。学び舎へと登校している際、
 霜柱が走る地の上に、ひとつのふきのとうの芽を見つけることができました───』

純一「──長い…! 前半まで季節の話しかしてない…!え、これラブレターじゃないのかな…!」

純一「ちゃんと読むけど……大切なものだからね、なになに…」

『──ということをお伝えいたします。
 余談でありますが、明日の早朝茶道部にて待ち合わせを願いたい所存です。
 お暇があればで結構ですので、お待ちしております 夕月琉璃子』

純一「…………」

純一「へ……? る、るっこ先輩……っ!」がたっ!

純一(ま、ままままさかっ…あのるっこ先輩がっ…こんな綺麗な封筒でっ…しかもよくわかんない長い文面をっ…!)

純一「………」へたり…

純一「な、何だか一番ショックがでかいよ…これ…」

純一(というか…最期まで呼んでも、ラブレターなのかわからなかった…!)

純一「っ……」ぐ…ぐぐっ…がたっ

純一「───三枚の、ラブレター……僕はこれをもらってしまった」

純一「これは……僕が、きちんとやらなきゃいけないことなんだ…!」

純一「彼女たちの……思いは、ぜんぶ僕が引き受けなければいけない…!」

純一(今の僕を見る人間は……絶対に、僕が気が狂っただろうって思うだろう…!)

純一「だが、これは……これは、僕の思いなんだ…!」

純一「……失恋というトラウマを抱えた、傷を追った僕だけがもつ──…思い、なんだよ…!」

純一「………」キリッ

純一「───さて、明日ははやい。今日は早めに寝て、明日に備えよう…」すた!

純一「…頑張るぞ!」ぐっ…!

翌日 ちゅんちゅん…

純一(死にたい…昨日の自分、殴りたい…)

純一(……ううぅ…うわぁああああああー! だめだ!どうしよう…!
   なんで僕、こんなにも、モテてるんだっ…!)すたすた…

純一(……今からでも輝日東の撃墜王になりたいよっ…!)すたすた…

純一「……あ、茶道部に行かなくちゃ…だったんだ…」すた…

純一「…………っ」ぎりっ…

純一「───行かなくちゃ、だめだよ僕…!
   昨日の僕は頭おかしくなってたけど、でも…!」

純一「彼女たちの思いは……無下にしちゃ駄目なのは本当なんだ…!」

純一「仮に…それからの関係が、だめになったとしても」

純一「………行くぞ、純一!」だっだっだ…!

茶道部

純一「はぁっ……はぁっ……るっこ、せんぱい…?」

「っ……お、おうっ…!」

純一「お、おはようっ…ございますっ…はぁー…」

夕月「お、おはようっ! 橘純一っ…!」

夕月「きょ、今日も朝はさむいなぁー! あはは!」

純一「そ、そうですね……はぁっ…はぁっ…!」

夕月「お…おいおい…大丈夫か橘…? ずいぶんと息が荒いようだけど…?」

純一「え、ええ……その、けほっ!せ、せんぱいが…るっこ先輩が待ってるって、
   思ったら居ても立っても居られなくて…!」

純一(だって、走って行かないと逃げちゃいそうだったから…!)

夕月「ほ、ほー……そうなのか。
   ふーん…アンタにしちゃー…あれだね、気が効いてるじゃないか、うん」

純一「え? あ、はい…そうですか?…はぁ、ふぅー……よし、落ち着いた」

夕月「っ…そ、そのなっ…橘! 今日は朝から早く呼びつけて、すまん…
   …手紙……読んだんだろ…?」

純一「はい、先輩の…るっこ先輩からの手紙を見て。ここにきてます」

夕月「そ、そっか……ははっ、つまりはそのぉー…あれだ…どういった意味合いで送ったのかは…」

純一「もちろん、わかってます」

夕月「っ! ……っ…だ、だよなー! いやーちょっとらしくないことしちまったなぁって思ったりしてよ~…!」

夕月「こーなんつうかさ、ちょっと乙女らしく!
   みたいなことをやってみたくてよぉ…いや、なに似合ってないって承知のうえだぜ…っ?」

純一「…そんなことないです、すごく乙女らしかったですよ。先輩の手紙」

夕月「そ、そうか…? い、いやー…照れるなぁ…う、うん…!」がしがしっ…

純一「………」

夕月「……その、な。橘、お前もわかってるって思うけどよっ……」

純一「はい……」

夕月「……っ…あ、あたしはさ。こんなガサツで男っ気がなくて、魅力の欠片もないやつだってわかってる…んだよ…っ」

純一「………」

夕月「…で、でもよ! やっぱりあたしもやっぱ……女だったみたいでさっ。こうなんつぅーか……お前を、さ…」

夕月「…好きに、なっちまったみたい……なんだよ…!」

純一「っ……るっこ先輩が、僕をですか…?」

夕月「お、おうよっ…! なんでかあたしも今だにわかんないだけどさっ…! 
   ……でも…りほっちも、愛歌だって…あたしの気持ちは理解しているらしいんだよ…あたしよりも、ずっと」


夕月「自分のことなのにさ……なんらわかってないでやんの。
   ──でも、そんな気持ちだけが…ずっとずっと…大きくなっていくばかりなんだぜ…橘純一?」

純一「…るっこ、先輩……僕は───」すっ…

夕月「…あっ…──で、でもよ! こ、これだけでいいんだ!」ばばっ…

純一「えっ…?」

夕月「あ、あのなっ…! あ、あたしゃ…お前さんに思いを……思いだけを伝えるだけで、よかったんだよ!」

純一「思いを、伝えるだけ……で…?」

夕月「お、おーよおーよ! あたしにはあんたには重いだろうし……いや、これは違うね」

夕月「……あたしはもう、卒業だし。あんたとは離れ離れになっちまう、今までみたいに茶道部に来てもあたしはいないし…
   ……あんたにも、会えない」

純一「………先輩…」

夕月「変に勘ぐるなって! アタシは、そう決めてるんだ……そうだってな。橘純一」

純一「はい…」

夕月「あたしはね、アンタの人生にちょっとだけ……関われたことが、とても嬉しいんだよ」

純一「っ………」

夕月「こうやって…告白を経験することも出来た、あはは…まあ成功はしてないけどさ」

純一「……………」

夕月「だからよ、後はアンタはアンタの……自分の人生を歩みな! あたしのことを気に悩まず、自分で歩くんだ!」

純一「っ………」

夕月「……話は、そんだけだからよ。んじゃまたな、橘!」くるっ すたすた…

純一「……………先輩、僕は…!」すっ…

夕月「っ……───くるんじゃねぇ!」ばっ

純一「っ……せんぱい、どうして…!」

夕月「…お願いだから、くるんじゃないよ。こっちにくるな…橘…」

純一「………先輩…」すた…

夕月「くるなって…いってるだろ…!」

純一「っ……」すた…

夕月「っ………お願い、だからくる───」

ぎゅっ…

夕月「っ……!」ぶるっ…

純一「……先輩、るっこ先輩…」ぎゅっ…

夕月「なにしてるんだよ…ど、どうしてだよ……くるなっていったじゃないか…っ!」

純一「…だめです、僕は……そんな表情をした先輩を、黙って見るだけなんて…できません」

夕月「なに、いってるんだよ…あたしは、あたしは……アンタのためを思って…!」

純一「…僕のためを思って、貴女の思いをナシにするんですか?」

夕月「っ……あたりまえ、だよ…! それが大事なことってことぐらい、アンタにもわかってるはずだろ…」

純一「…ええ、わかってます。ちゃんと」

夕月「…じゃあ、アタシをさっさと離すんだよ。それが最良…なんだから」

純一「………でも、僕の気持ちはまだいってませんよ。先輩」

夕月「!……馬鹿、それこそ言っちゃ駄目だろ…」

純一「………」

夕月「……言う、つもりなのか? 今、ここで…?」

純一「先輩、僕は……」

夕月「や、やめろっ…言うな、はなせって…!」ぐいぐい…

純一「……先輩のこと、好きですよ」

夕月「───……ばか、やめろ」

純一「どうしてですか……もう一度言ってあげますから、ほら」

純一「すきです、先輩」

夕月「なに、いってるんだよ…あはは、冗談キツイぜあんた……!」

純一「冗談なんかじゃないです、本当にです」

夕月「本当…?はっ、このスケコマシ野郎が……そうやってすぐ女を懐柔するんだろっ…?」

純一「………先輩、もういいです…いいですから」ぎゅっ

夕月「なにがだよっ! この変態ポルノ野郎!」

純一「……いいんです、どうかやめてください…」

純一「泣きながら暴言はかれても、僕は……困るだけですから」

夕月「っ…うっ…な、ないてなんかいない、よ…!」ごしごし

純一「……先輩の心遣い、本当に感謝しています。
   僕の事を思って、自分の気持を…なかったことにしたこと。本当にすみません」

夕月「ば、ばかっ……あやまるなっ…!」

純一「すみません、でも…僕はそんなふうに考えてしまった…先輩の気持ちのほうが、
   僕はなによりも悲しいです…」

夕月「だってそれは、一番タイセツなことだろ……っ?」

純一「ええ、確かに。悲しくっても、それが最良なら……そうしなきゃいけない」

純一「でも、最良だからって……僕は先輩の気持ちは、無き物にしたくなんか無いです」

夕月「っ………あんたも、はなしが通じないやつだねホントっ…りほっちも愛歌だって、おんなじ事言ってさ…」

純一「え…梨穂子と、愛歌先輩が…?」

夕月「そうだよ……辛いのなら、全て飲み込んで一緒にすればいい。これはりほっちが言った言葉」

純一「おおっ…流石はアイドル、なかなか深く感じる…」

夕月「全夜喝采、酒池肉林。これが愛歌の言葉」

純一「あの人は……」

夕月「……アイツらが言いたいことは、確かにわかってる。それが駄目なことだってことも、アイツらもわかってるはずさ。
   でも、アイツらは……とにかくアタシのことを思って行ってくれてるってことは…わかってるんだ」

純一「……すごいですね、茶道部メンパーは」

夕月「だろ? あのこたちはすごいんだよ……現実的じゃないことをさらっていっちまう。
   ホント何考えてんだか分かんないくせに、意外と的を得てたりするんだよ」

純一「……それで、先輩は茶道部メンバーの二人の言葉は…どう、受け止めたんですか?」

夕月「…ばかどもが! だよ、当たり前だろ?」

純一「ですよね…あはは」

夕月「そんなこと、あたしが受け止めるわけ無いだろ……ちっとは考えろ」

純一「そうですね、先輩はそういうかたでしたよ」

夕月「……だからさ、あたしは駄目なんだよ。橘」すっ…

純一「あ……」

夕月「……確かにあんたのことは、好きだよ。でも、この気持はいつまでも…アタシの中にしまって置くんだ」

純一「先輩………」

夕月「あんたのこと、好きだって思えた心は……あたしは、すっげー素敵なことだって思ってんだ」

夕月「……だからこの思いは、いつまでも綺麗なままで取っておきたい。それがあたしの願いだよ」

純一「…………」

夕月「……泣いちまってすまないね。変に引き止めるようなことになっちまってさ」

純一「…………」

夕月「あんたが……その、好きだって言ってくれたことは…嘘でも嬉しいって思ってるよ」

純一「……嘘なんかじゃないですよ、本当です」

夕月「くはは、信用しねーよ。もう、手遅れだぜ」

純一「………です、よね…」

夕月「──ふぅ……だいぶ、時間がたっちまったな。すまん、橘…もうhrはじまっぞ」

純一「…いや、僕はちょっと遅れて行きますよ」

夕月「なんだサボりかぁ~? って言いたいところだけど、まぁ、あれだよな……」

純一「はい、すみません……」

夕月「──それじゃあ、な。橘……また、卒業する前に遊びに来いよ!」だっだっだ!

純一「はい……!」ふりふり…

純一「……………」ふり…

純一「……せん、ぱい。すみませんでした」


茶道部内部

「ありゃりゃ~…ずんいちってば泣いちゃってるよ~!」

「予定調和」

「わかってたことだけどー…やっぱりつらいよねぇ~ がんばだよ!ずんいち!」

「……なにごとも、失敗はつきもの」

梨穂子「ですよね~! わたしもアイドルの仕事、失敗だらけで~えへへ~」

愛歌「ご気楽でやるが良し」

梨穂子「そうですよ! ぷろでゅ~さ~さんに怒られても! いっちょがんばるんだよー!」

愛歌「元気が……一番」

梨穂子「さてさて、今回はるっこ先輩の告白チェックでしたがぁ~……」

愛歌「見事玉砕」

梨穂子「で、ですね…なんというか、るっこ先輩も本当に頑固なんだから~」

愛歌「それが……るっこの魅力」

梨穂子「わかってますとも! それで、今回はどのような経緯が見られたんですか?」

愛歌「ぴっ」すすっ…

梨穂子「もうすでに紙に書いてある~! すごいですね愛歌せんぱいはぁ~!」

愛歌(本当はしゃべるのめんどくさいだけ……)

梨穂子「なになにぃ~…えーと、えーっと──」

『今回わかったことは3つある。
 一つは好き合っているという互いの認知。今回の告白にはこれがキーポイント。
 いずれこの楔が、大きく関わってくることをまだ二人は知らない。
 
 二つはるっこの自意識。彼女自身が橘に思う恋心をしまいこみ、無き物とした。
 それはつまり好きという感情の臨界を超えたという証拠。

 三つは橘の覚悟。るっこという女性を好きだと認めることに成功した。
 朴念仁の彼に恋の思い出は、人生の重みとなるだろう』

梨穂子「…かまずによめた~!」

愛歌「えらいえらい」なでなで…

梨穂子「えへへ~…でも、書いてることがまったくわからないんですけど…?」


愛歌「大丈夫……私も意味不明」

梨穂子「またまた~!そうやってすぐにとぼけるんですから~!」

愛歌「では……ザ・答え合わせ」くるっ

梨穂子「あ。裏側にまだ書いてある……あれ? でも、三文だけですよぉ?」

愛歌「今度は……私が読もう」

愛歌「一つ。伝わった互いの思いは、時間の流れと共に加速する」

梨穂子「おおっ…! なんだかかっこいい~!」

愛歌「二つ。るっこはもはやLikeではなく……love」

梨穂子「ら…らびゅっ……うまく言えないよ~」

愛歌「三つ。いつでもるっこの気持ちに応える準備がととのってる」

梨穂子「ほほぉ~……その心は?」

愛歌「──愛は、勝たなくてもいい」

梨穂子「………な、なるほど~…かっこいい言葉ですね!」

愛歌「…………」

梨穂子「…愛歌先輩…?」

愛歌「大丈夫……りほっちは大丈夫」

梨穂子「えっ…なに、がですか…?」

愛歌「貴女も強い……だって愛だから」

梨穂子「っ…いやだなぁ~もう! せんぱいったら!
    ほらほら、とにかく分析が終わったらhrいきますよ~!」たったった…

愛歌「……」

愛歌「──そう、時は流れ。思いは加速する」

愛歌「流れは早く……いつの間にやら取り残される」

愛歌「覚悟した者は、いつまでもその流れに乗っていかなければならない…」

愛歌「ふ・ふ・ふ」

愛歌「……ん、あれは…」ちらっ

がさ…がさがさ…!

愛歌(一年の水泳部……なるほど、ほほぉ~…)

愛歌「まだまだ……続きそうだな、橘純一」

愛歌「粉骨砕身……だ」

昼休み

純一 ぼぉ~……

梅原「…大将、大丈夫か?今朝からずっとそんなんだけどよ…」

純一「……あ、うん…大丈夫だ梅原…大丈夫、大丈夫…」

梅原「どぉー見たって大丈夫には見えないんだけどよ…
   つぅーか棚町は今日、学校きてないみたいだな大将」

純一「っ……!」ぴくん

梅原「──おっ! なんだなんだ~その反応は!
   もしや棚町となんかあったなぁ~このこの~!」

純一「……なんもないよ、本当に…」

梅原「……。おっと、そうか…そりゃ変に疑って済まなかったぜ」

調子にのってすみませんでした
仕事の次官となってしまったんだ…

たぶんだけど、今日の三時ぐらいに戻ってこれる…と思う
残ってたら書きます。ない場合はいつか機会があったら


ごめんなさい
ではではノシ 

なんと残ってたか

仕事から帰ってきた>>1です。
一時半に戻ってくるよ、保守ありがとう

純一「………いいや、すまん。僕の方こそ、変な態度とってさ…うん」がた…

梅原「お、どっか行くのか大将?」

純一「……大事なことを済ませに、行ってくるよ」

梅原「…えらくもったいぶった言い方だなオイ……うむ!そうだな!」ぱしんっ!

純一「いたっ!? い、いきなり何するんだよ梅原ッ…!」

梅原「おいおい、大事なことを済ませに行くんだろ?そしたらな、んなしけた顔して行くんじゃねえよ」

純一「……気合、入れてくれたのか?」

梅原「皆まで言うなって……俺はいつまでも、大将に付いて行くぜ。つまんねーことがあったら、一緒に笑ってやるし。
   落ち込んじまった時があんなら、一緒に騒いでやる」

梅原「色々と大将のことにあーだこーだ言うつもりもねえ。だからよ、つまりは……あれだよあれ!」

純一「…なんだよ、あれってさ」

梅原「ははっ! んなこと言わねえでもわかるだろ?───大将、とりあえず頑張ってこい」

純一「……梅原…」

梅原「なんにも知らねえけど、お前さんの顔をみりゃー大体わかっちまうんだ。なんてったって親友だからよ!」

じゃあ一時半にくる 
待っててくれ

橘「薫がソープ嬢になってただって!?」

だれか代理オナシャス!

>>588
駄目か・・・仕方ない。素直に十レベになるまで待つよ

代理ワロタ
ごめんちょっと四十五分まで伸ばしてくれ

必ず書ききる

よし、ご飯食いながら今から書く

純一「……そう、だよな。梅原、僕らは親友だ」

梅原「おう」

純一「だから、何も言わなくたって……僕らはいつだって知っている」

梅原「それこそ言わなくたってわかってることだぜ? 大将?」

純一「…だな、ありがとう。ちょっと…いやだいぶ元気がでてきたよ」

梅原「いいってことよ~!……まぁ一丁、きばってこいや大将ぅ!」

純一「おう! 待っとけ梅原!」だっだっだ…

梅原「うまく言ったら何か後で奢れよぉー!」

「いやだー!」だっだっだ…

梅原「───……行ったか…」

梅原「…毎度毎度、アイツも大変だよなホントによ」

梅原「応援してるぜ、大将……親友としてな」

梅原「……さーて、昼飯は何を食うかなぁ~──お、伊藤さんちぃーす!」すたすた…

体育館裏

純一「はぁっ……はぁっ…ちょ、ちょっと遅れちゃったけど、まだいるかな…っ…」

純一(詳細な時間は書いてなかったし、まだ昼休みも中盤……大丈夫だとは思うけど…)

純一「はぁっ……ふぅー……多分、七咲のことだから既に待ってるんだろうな…」

純一「………」

純一「うんっ!」ぱんぱん!

純一「──……いくぞっ!」すたすた… がらり…

「──あ、先輩……やっときてくれましたね」

純一「ごめん、ちょっと遅れちゃって…本当は早く来るつもりだったんだけどさ」

七咲「いいんです、先輩のことですから。それぐらいのことはわかってましたよ?」

純一「そ、そうだったの? あはは、やっぱり七咲には敵わないなぁ…」

七咲「ふふっ…先輩の事なら、私はなんだってお見通しですよ。嘘なんかすぐにバレちゃいますから」

純一「おお…それは恐いや」

七咲「ええ、もうそれほどまで……わたしは先輩のことを知り尽くしてます。これでもかってぐらいに」

純一「…うん、そっか。そうだね、それぐらい七咲とは…色々とあったしね」

七咲「当たり前じゃないですか、だって先輩とわたしですよ?──そうじゃなかったら困っちゃいますから」

純一「……今日は、どんな要件でここに呼んだのかな、七咲」

七咲「それは……言わなくちゃ、だめですか?」

純一「ううん、違うよ。聞いてみただけさ」

七咲「…なら、ありがとうございます。ちゃんとここに来てくれて」

純一「何があったってくるよ。七咲のお呼びだもん」

七咲「そうですか……ふふ、嬉しいです先輩」

七咲「──先輩、今日呼んだのは他でもありません……あのこと、についてお話があってきました」

純一「……あのこと…」

七咲「ええ、まぁ…こういっても先輩じゃわからないとわかってますので、ハッキリ言いますと…」

七咲「……私の気持ちを先輩に、そろそろ言おうと思ってるんです。今、ここで」

純一「七咲の、気持ちを……今?」

七咲「はい、先輩にたいするこの気持……どうか、橘先輩に聞いて欲しくて。ああやって手紙で呼び出しました」

純一「……うん、わかった。七咲は僕に言いたいことがあるんだね」

七咲「そうですよ、私は貴方に伝えたい事があるんです。でも、それはとっても言い難くて、とっても伝えづらいんですけど……」

七咲「……先輩は、最後まで聞いててくれますか?」

純一「…いいよ、僕で良かったらさいごまで聞くよ」

七咲「……はい、でも…もしかしたらこの言葉は先輩を…大変な目に合わせちゃうかもしれないですけど。
   それでも聞いてくれる勇気はありますか…?」

純一「………覚悟は、もう出来ているんだ七咲。そうやって確認を取らなくて、覚悟をした上で僕は…ここに立ってる。
   だから気にせずに言ってくれ」

七咲「……そう、ですか…はい、わかりました」

七咲「じゃあ、言いますね……わたしは先輩のことを──…好きです」

純一「……うん…」

七咲「一緒にいるだけで…胸が張り裂けそうになるほどに、先輩のことが好きなんです」

純一「………」

七咲「私は、もし先輩と付き合えたのなら…一生懸命、先輩のしたいことに応えるつもりでいます。
   なんだって、どんなことだって…聞いちゃう自信があるですよ?」

七咲「それほどまで…人を好きになったことは初めてで。初恋なんてものも経験したことはなかったですけど、それでも…」

七咲「……この胸に溢れる想いは、先輩にだけなんだなって思うんです…」

純一「……七咲…」

七咲「とめられない……もう、とめることはできないんです。
   …今だって、先輩の言葉を待たずに…抱きついたいぐらいに凄く…本当に…あふれてるんです」

七咲「……先輩、どうか。こんな私ですけど…どうか」

七咲「──つきあって、ください…お願いします」ぺこ…

純一「…………」

七咲「…………」

純一「七咲……顔をあげて、くれないかな」

七咲「っ……はい。なんでしょうか」すっ…

純一「うん、ありがと。……あのさ七咲」

七咲「…はい」

純一「七咲の気持ち……僕はとっても嬉しい。こんなにも君に好かれているんだって思うと、
   気持ちが物凄く高鳴ってしまってるよ」

七咲「……本当に、ですか?」

純一「うん、本当に。七咲みたいに僕もすぐさま抱きつきたいぐらいに、凄く嬉しがってる」

七咲「そ、それじゃあっ……先輩、わたしとっ───」

純一「───…でも」

七咲「っ………でも、ですか…?」

純一「……でも、僕は七咲とは付き合えないよ」

七咲「………」

純一「…ごめん、僕は付き合えない」

七咲「…理由を聞いても、いいですか…?」

純一「…言ってもいいの、かな…?」

七咲「…わたしは聞きたいです。どうして駄目なのか、その理由を聞きたいです」

純一「………」

七咲「………」

純一「…わかった、それじゃあ言うよ」

七咲「ありとうございます…先輩」

純一「ふぅ……あのね、僕は…どうやら好きな人がいたみたいなんだよ、さっきまでさ」

七咲「いたみたい……それは、過去形なんですか」

純一「うん、そうなんだ……僕が不甲斐ないばかりに、その人を……不安にさせちゃってさ」

純一「その人は言うんだ…あたしがいたら重荷だろって。誤魔化した風に言ってたけど、それでも…」

純一「それが、本音だってすぐに分かった……重荷だから、コレから先の僕の高校生活を脅かしたくなくて…」

純一「その子は、僕を好きだっていって……僕の元からいなくなった」

七咲「………」

純一「たぶん、あのこは知っていたんだろうね……こうやって七咲、みたいにさ。
   他に仲良くしていた女の子がいるってことを…」

純一「…でもその中で、僕がその人のことを選ぶことは駄目だって……思ってしまっていて」

純一「……僕はそれでも、好きだって言ってくれた時のその子の顔を見たら…
   ……その人と付き合って、周りの関係と障害を持ったとしても…いいって思ったんだ」

純一「…だけど、それももう遅かった。もう遅かったんだよ、七咲」

七咲「…その人はもう、既に心を固めていたという…意味ですか?」

純一「うん、もう僕では駄目だった…どんな言葉をかけたって、信用してもらえる以前の問題だったんだ」

七咲「…すごいですね、その先輩。ものすごく大人な方です」

純一「実際、本当にすごい人だったんだよ。高校生じゃないぐらいにしっかりしてた人なんだ…
   …だからこそ、僕もその人のことを好きだって思ったんだよ」

七咲「…………」

純一「これが、七咲と付き合えない理由だよ……僕はまだ、その人のことが…好きみたいなんだ」

純一「振られたとしても、駄目だったとしても……胸の奥に残ったあの人の表情は、取れないでいるんだ」

七咲「…………」

純一「こんな気持ちで…七咲の告白には、答えられないよ僕は」

七咲「…………」すた…

純一「だから、僕は……七咲とは───」

七咲「…先輩、顔をあげてください」すたすた…

純一「え……?」

七咲「…………」じぃー

純一「ど、どうしたの…? 七咲っ…近づいてきて…っ」

七咲「──先輩、あのですね……」

純一「う、うんっ……?」

七咲「…やっぱり、大好きです。先輩のこと」

純一「え、ええっ…! 僕も七咲のこと、好きだけどっ…でも…!」

七咲「ええ……そうだって思ってます。だってそうだって先輩が思ってるって思ったからこそ、先輩に告白しましたから」

純一「そ、そうなの…? だけど、やっぱりそれは……」

橘「あっ・・・うう・・・」

薫「それじゃ・・・動くわよ・・・」

ギンギンッ

薫「んっ、あはぁっ!あんっ」

橘「・・・うっ、あぁ・・・」

薫「あ、あん、んん・・・っ!」

橘「あぁ・・・か、かおるぅ!」

薫「はぁ・・・どう・・・?絢辻さんとらあたし、どっちの方がいい?」

橘「そ、それは・・・」」

誤爆した。すまん

七咲「でも、先輩は私のこと好きだって思ってくれてます……よね?」

純一「……う、うん…」

七咲「……あのですね、先輩。いくらなんでも…あんなこといっぱいしておいて、付き合えませんでしたって言われても。
   正直困るんです、本当に」

純一「……それは、重々承知だよ…」

七咲「でも先輩は、そんな承知の上で……他に好きな人がいるから。わたしぐらいに好きな方がいるから。
   …そっちの人がタイセツだから、私の告白を断ったんですよね」

純一「っ…………」こく…

七咲「──……先輩、そんないじめたくなるような顔をしないでください…ふふ」

純一「……えっ…?」

七咲「すみません、先にあやまっておきますね。先輩」

純一「え、あ、うん…? なにを謝るの七咲…?」

七咲「えっとですね……謝ることは二つぐらいあるんですけど、1つずつ言っていきますね」

七咲「一つ、ラブレターの件。あれ、三つはいってませんでした?」

純一「な、なんでそのことをっ…!?」

七咲「なんでって…当たり前じゃないですか、入れるときに気づくに決まってますよ」

七咲「……というのは嘘で、実は一番最初に手紙を入れようとしたのは私なんです」

純一「な、七咲が一番に…?」

七咲「ええ、そうなんです。移動教室の時に二年の下駄箱近くを通りますからね、その時に。
   ……そしたら、一人。先輩の下駄箱周辺でうろうろしている三年の方を見かけました」

純一(る、るっこ先輩なのかなっ…?)

七咲「そしたらその先輩が……勢い良く先輩の下駄箱のドアを開けて、手紙を思いっきり突っ込んでました。
   パッと見でしたけど…すごく綺麗な紙を使ってたのに、あんな乱暴に入れたらもったいなって思いましたね…」

純一「そ、そうなんだ…」

七咲「はい、ですから…私は先輩の下駄箱に近づいて、そっと…その手紙を革靴の裏に隠しました」

純一「え、ええっ!? どうして七咲…っ?」

七咲「ふふっ…まだ話は続きますよ?」

七咲「それから少しして、二年の方がまた橘先輩の下駄箱に向かったんです。頭が特徴的な方でしたけど…」

純一「薫か…」

こっち荒れまくっているから避難してきていいかな?

どう?>>1さん

>>629
いい加減にしろクズ
このスレは関係ねーだろ

>>630
お前が荒らしてるから仕方ないじゃない

七咲「たぶん、先輩の同クラスの方だなって思って…隠れて様子を見てたんですけど」

純一「なに、やってるの七咲…?」

七咲「その人が、ちょっと頬を赤くしながら……下駄箱を見ないようにして、そっと手紙を入れてました」

純一(…あれ? でも、文面はあれだったし…僕をからかうものだって思ってたけど…あれ?)

七咲「その後に、わたしはまた先輩の下駄箱に近づいて……みっつの手紙を確認した後に。 
   …綺麗に整えて、何事もなかったようにそこから立ち去りました」

純一「………そ、そうなんだ……というか、本当になにをしているんだ七咲は…」

七咲「──なので、これが謝りたいこと一つ目です。先輩」

七咲「勝手ながら私が…先輩をちょっと困らせたくなって、色々とやっちゃったんです。
   まさか三人目の方が来るとは思わなかったですけど…まぁ結果オーライですね」

純一「結果オーライって……それで色々とややこしいことに…!」

七咲「……ならずにすんだんですよ? 先輩だって、告白される前に…相手の気持に障害を入れるのは嫌でしょう?」

純一「っ……確かに、そうだけど…」

明らかにこのスレから荒らしにきてるし、仕方ないよ

>>1さんが駄目っていうのなら避難しないけど

>>629
ファンの反感をかうようなネタで、しかもつまらない
荒れるのもしゃーないわ
かまってちゃんだし

七咲「たしかに私がやったことは……色々とあれでしたけど、でもいいチャンスだって思ったんです」

純一「…どういうこと、七咲…?」

七咲「私だって知ってました。先輩が…色んな人と仲良くされてたことを」

純一「っ……そ、そうなの…?」

七咲「はい、わかってました──……だって、先輩ですからね。信用がしようがないです」

純一「……ご、ごめん…」

七咲「あっちにワンワン、こっちにワンワンする先輩が常に目につきますから……
   もうちょっと周りに気を使ったほうがいいですよ、本当に」

純一「う、うん……ごめん…」

七咲「でも、そうだとわかってて…今日は先輩に告白をしました。
   ……さっき先輩に言った言葉は全部、先輩をすべて知った上での……事実だけの告白です」

純一「こんな僕でも七咲は……好きなの?」

七咲「……ええ、好きですよ先輩…?」すっ…

>>639
つまらないのなら無視して落ちるもんだと思うけどね。わざわざ荒らすして勢いあげるとか意味分からん

うんこいってきま 数分で戻る

>>642
荒らしはお前だks
さっさと帰れ

>>646
NGで見えない。やっぱりここから来てるのかよめんどくさいなあ

純一「な、七咲…?」

七咲「……そんな先輩でも、私は好きなんです。
   どうしようもなくて、だめな先輩……そんな先輩が私は大好きです」

純一「っ…だ、ダメな僕ってのは認めるけどっ…でも、今回ばかりは…そのっ……」

七咲「いいえ、違います。先輩はすごい人です」

純一「…どうしてそんなこといえるんだ、七咲…」

七咲「…2つ目です。先輩、謝りたいこと……聞いてたんです、告白を」

純一「…聞いてた…?」

七咲「…先輩と、三年の方の告白。聞いてました、私」

純一「……全部…?」

七咲「はい、全部……先輩がその人のことを好きだって言って。それから別れて…」

七咲「…一人、泣いていたところも」

純一「っ……最後まで、みてたのか」

七咲「……怒りましたか?」

純一「……いや、そうじゃないよ…大丈夫」

七咲「……とっても悲しそうな顔をされてましたね、先輩」

純一「…悲しかったよ、すっごく」

七咲「大泣き、されてましたね……先輩」

純一「うん…涙が止まらなかったよ」

七咲「……そうやって、傷ついた先輩は私も見てて悲しかったです」

純一「…………」

七咲「……もう一度、いいますね。先輩……あなたはすごいんです」

七咲「──先輩はとても傷ついて……恋というものが怖くなったはずです」

七咲「そんな臆病になった先輩が…頑張って私の約束の場所まで来てくれて。
   しかも……ちゃんと、真面目に、きちんと」

七咲「…私が知らないはずの事を話して、振ってくださったんですよね」


純一「……だって、それがタイセツだと思ったからだよ」

七咲「………」

純一「たとえ、今朝のことを黙ってて…七咲の告白を受け取ったとしても。
   僕は必ずあとで後悔するはずだから…」

七咲「…目の前に、貴方のためならなんだってする……って言ってる女の子がいてもですか?」

純一「…当たり前だよ。その子のことを好きだって思うのなら、尚更だ」

七咲「………」

純一「…るっこ先輩もタイセツに思って、七咲もタイセツに思うのなら。
   僕はどの告白にも……応えるつもりはないよ」

七咲「……ハーレムですよ? たとえ、三年の方に振られていたとしても…それは今だけかもしれませんし」

純一「そうだとしても、僕は嫌だ。
   これはもう…僕だけの問題じゃないんだ……僕だけが抱えきれる問題じゃない」

七咲「……偉いですね、先輩は」

純一「……思ってることを、言ってるだけだよ。僕は」

七咲「……でも、先輩はおばかさんです」ぴしっ

純一「いたっ……え、どういうこと…?」

七咲「あのですね、先輩……どうして自分だけで全部、抱えようとするんですか」

純一「だ、だって…これは僕の問題であって…」

七咲「さっき自分でおっしゃったじゃないですか、もう自分だけの問題じゃないと」

純一「言ったけど…それは、やっぱり…」

七咲「はぁ…しかたない先輩ですね。よいしょっと…」

純一「…七咲? カバン下ろしてどうしたの…?」

七咲「本当は私の泳ぎを見て貰う予定だったんですが…まぁそれはいいとして──」

純一「う、うん…?」

七咲「──先輩……」ぎゅう…

純一「え、あ、ちょっと…七咲…!」

純一「急に抱きついて…なにをっ…!」

七咲「……どうして、私にもっと負担をかけてくださらないんですか…先輩」

純一「っ………」

七咲「わたしじゃ…不足ですか…?」ぎゅ…

純一「そ、そうじゃないよ……僕は、七咲たちに迷惑かけたくなくて…っ」

七咲「三年の方にもですか…?」

純一「…そう、だよ…だから僕は……」

七咲「でも、それだと先輩が……かわいそうじゃないですか」

純一「…………」

七咲「わたしは…駄目な先輩は好きですけど…かわいそうな先輩は、みたくありません…
   だめだめでばかばっかりな先輩が、一番大好きです…」

純一「だめだめって……」

七咲「ふふっ…でもですよ?先輩がかわいそうなら……私がそばに居てあげればいいんです」

純一「…七咲が…?」

七咲「…わたしが、先輩の傍にいればいい…たとえ、先輩がこれから先、好きな人ができたとしても…
   …わたしという存在はいなくなりませんし、それに……わたしも居なくなるつもりもありません…」

七咲「……私はそれぐらい、先輩のこと……大好きなんです。
   こうやって悲しんでる先輩をみると…どうしても先輩のためになにかしたくなってきちゃうんです」

純一「七咲……」

七咲「どーしようもないせんぱい……かわいそうなせんぱい…見たくないんですよ、わたしは…」ぎゅう…

純一「……どうして、そこまで僕の事…」

七咲「……気になりますか?」

純一「……気になるよ、七咲」

七咲「ふふっ…簡単なことですよ、先輩。だって貴方はいつも人のために頑張る人だから……
   ……そんな人のために私も頑張れば、絶対に幸せにしてもらえる…って思うからです」

純一「ど、どうして断言できるのさ…」

七咲「そんなの。一緒に居続けた私なら、考えることなく答えちゃいますよ…」

七咲「…私が好きになった。これ以外になにか理由はありますか…?」

純一「僕が好きだから……七咲は、僕がなんであろうと…側に居続けるってこと…?」

七咲「はいっ! 大好きですから、なんだっていいんです……なんだあってしてあげたいんですっ」

七咲「……そんな風に思える覚悟を…させるための、今回の告白でしたから。
   ……ありがとうございます、先輩。正直に話してくださって…本当に、ありがとうございます…」ぎゅっ…

純一「……七咲…」

七咲「先輩……私は、本当に幸せです…こうやって好きな人と正直に話せる関係って…すごく素敵だと思うんです」

純一「………」

七咲「大好きです…先輩……たとえ、今は思いを受け取ってくれなくても…いつまでも、好きで居ますから…」

純一「……ありがとう、なんて言ったらいいのか僕…」

七咲「いいんですよ…こうやって、抱きしめさせてくれるだけで。わたしは…幸せです」

純一「っ………七咲…」 ぎゅう…

七咲「っ……せ、先輩…?」

純一「……なんというか、ここまで七咲に言わせておいて…僕がなにもしないってもの…あれかなって…」

七咲「そ、そうですかっ…? で、でもっ……その、ちょっと恥ずかしかったり…」

純一「……えっとその、七咲恥ずかしがり過ぎじゃない…?
   さっきの七咲からやってたほうが、もっと今の僕よりしっかり抱きついてたよ?」

七咲「じ、自分でするのとされるのじゃ…違うんです…っ」

純一「そ、そうなの…?」

七咲「……そうなんですっ」ぷい

純一「あはは……ありがとう、七咲。僕…どうやら勘違いしてたみたいだよ」

七咲「………」

純一「…今回のラブレター件。全部僕のせいだって思ってたけど…それは確かにそうだけど。
   でも、まるごと全てを見てしまいのは……ただの、現実逃避だったのかもしれない」

純一「……結局は全部どうにか出来ることなんて出来やしないのに。また、中学の頃みたいに…
   一人でトラウマを作ってしまうだけなのかもしれないのに…」

純一「できない前提で動こうとしている自分は…なんて間抜けな姿だったろうね。
   ……今ある想いは一人だけのものじゃないのにさ」

七咲「……そうですよ、先輩だって傷つくんです」

純一「自分のことも考えず、そのくせして全部どうにかしようとしていた自分…
   七咲が教えてくれなかったら、ずっとわからなかったよ」

七咲「…感謝してください、先輩」

純一「うん、ありがと…もう、これだけしか言えないよ」

七咲「……ちゃんとこれから先、私にも負担をかけてくださいね」

純一「うん、僕が出来なかったことは…七咲に任せるよ」

七咲「挫けたり、だめだったときは…全力で慰めてあげますからね」

純一「僕も全力で七咲に…甘えにいくよ」

七咲「そうしてください、本当に…本当に」ぎゅう…

純一「うん…うん…」ぎゅう…

七咲「……先輩、そしたら最後に…元気をつけてあげます」

純一「元気を…?」

七咲「はい、だってまだ…先輩にはがんばることが残っているですから」

七咲「これから先、ずっと色々と頑張ることがあると思いますけど…その前に。
   大きな峠を超えることがあるじゃないですか」

純一「……」かさっ…

七咲「……私はどんな結果になろうとも、先輩の側に居ますから。
   頑張って…先輩が一番と思える答えを見つけてください…」

純一「七咲……」

七咲「…先輩が…今、わたしに改めて気持ちを言ってくれなくて…感謝してます。
   ちょっと言われたら…もう少し、いたずらしたくなっちゃいそうですから」

純一「あはは…それは困るかな」

七咲「ふふっ…こうやって、互いに内緒にしておくことも。私は先輩とだったら好きですよ?」

純一「なんだか、オトナの恋愛みたいだね」

七咲「……先輩がいうと、ちょっとばかっぽいですね。それ」

純一「わ、わかってるよ…!」

七咲「ふふふ。それじゃあ先輩……瞳を、閉じてください」

純一「っ……ま、まさか七咲…?」

七咲「…恥ずかしがらずに先輩。閉じてください」ぐいっ

純一「え、あ、七咲っ…」

七咲「──はじめてですから、うまくできないかもしれませんけど……どうか、受け取ってください…」

ちゅっ…ちゅ

純一「っ……ん…!」

七咲「──ふ、む……んっ……どうでしたか、せんぱい。私のキスの味は…?」

純一「……七咲、お昼ごはんでチョココロネ食べた?」

七咲「っ~~…ちょ、ちょっとなんで冷静に分析してるんですか…っ!」

純一「え、だって味はって聞くから……」

七咲「だ、だからって……~~~っ…た、たべましたよ…!」

純一「そっか、そしたら七咲のキスの味は…チョココロネの味だったよ」

七咲「っ……」かぁぁー…

純一「──……うん、ありがと。七咲…元気が出てきたよ」

七咲「ほ、本当にですか…?」

純一「うんっ! これから…自分だけの思いを信じて、いけると思うんだ」

七咲「ちゃんと先輩の思いをタイセツにして……行くんですよ?」

純一「……うん、ちゃんと。僕思いだけを持っていくよ」

七咲「……なにがあっても、また戻ってきてください。私はまってますから」

純一「…わかった、ちゃんと戻ってくるよ。その時は、よろしく七咲…」ぎゅう…

七咲「………」ぎゅう…

数分後

純一「じゃあ七咲、またね」

七咲「はい! また会いましょう先輩っ」

たったった…

七咲「………」ふりふり…

七咲「………」

七咲「…………」

七咲「…はぁ、そろそろ出てきたらどうですか。先輩」

「…あっれ~! バレてたよひびきちゃん!」
「これは誤算……七咲を舐めすぎてたわ」

七咲「……いいから、早く出てきてください」

森島「や、やっほ~! 逢ちゃん!」

響「……いつから、バレてたのかしら七咲」

七咲「最初からです。塚原先輩、森島先輩」

森島「……あちゃ~…流石は逢ちゃんね~」

響「ふーん、そう……それで、それなのに…あんな会話を彼としてたの?」

七咲「…………」

響「覗き見してたことは謝るわ。本当にごめんね、七咲。
  ……でもね、こうやって貴方のことを知れて正直良かったと思ってる」

七咲「……いくら塚原先輩でも、私はやめませんよ」

響「…………」

七咲「わたしは…頑張ることを見つけたんです。水泳にしたって、この恋にしたって。
   全力で出来るものを見つけたんです」

響「…いつまでも全力だと、いつかはバテてしまうわよ。はたまたそれは壊れてしまうかもしれない」

七咲「………」

響「貴方が頑張ることは…否定はしないわ、ちゃんと心から応援する。
  でも七咲が……橘くんのためにがんばることは、私は応援しない」

七咲「塚原先輩…」

響「だって、目に見えてるじゃない。貴方が不幸になる姿が、ありありと。
  私は可愛い後輩がそうなる姿は……見たくないわ」

森島「………」

響「七咲、これは部長命令よ───あのこから、橘くんから離れなさい」

七咲「っ…どうして部長が関係があるんですか…!」

響「言ってるでしょう、これは貴方の問題なの。橘くんの側に続けるだけで不幸になる貴女が…
  水泳にきちんと熱を入れることが出来るとは思えないわ」

七咲「それとこれは……」

響「関係はある。だからこうやってツツキたくもない他人の恋路に足を踏み入れてるの」

響「やめないさい七咲……貴女はもっと、ふさわしい場所がある。
  こんな所で終わってしまってはだめなんだから」

七咲「ッ……塚原先輩に、塚原先輩に言われたくっ…!」

森島「──はーい!おっしまーい!二人共おっしまーい!!」ばっ!

響「っ……は、はるか…!」

七咲「森島先輩…どいてください、そこ」

森島「だめよ~! 二人共落ち着いて!
   いっつも仲がいいくせして、話がこじれるとすぐ熱くなるんだから~もう!」

響「……ごめん、はるか。わたしも少し、どうかしてたわ…ふぅ…」

森島「そうよ~! もっと言い方があるじゃないの、ひびきちゃん!
   ……あと逢ちゃんも!売り言葉買い言葉で行かないの!」

七咲「す、すみません……」

森島「……ふぅ。も~う、楽しい覗き見タイムだったのに…こんなオチじゃもともこもないわ~」

響「はるか、それは七咲に失礼だから」

森島「え? そうかな?」

七咲「…………」

七咲「…じゃあ、私もう行きますから」すた…

響「あ、七咲…! 話はまだ…!」

七咲「話をすることなんて、ないですよ……塚原先輩には」

響「っ……それは、どういう意味かしら七咲…?」

七咲「……私は先輩みたいに耐えることは出来ません。言いたいことは言いますし、
   それが後でどんなふうになるのか…後になって気付ことも多々あります」

七咲「それでもいいのでしたら、いいますよ。先輩」

響「……っ…なにを、知ってるとでも言うの七咲…」

七咲「…いいえ、ただ。橘先輩のために頑張ろうと思ったら──」

七咲「──その繋がりの糸がいっぱい見えただけの話ですよ」じっ…

響「…っ……!」

七咲「私はべつにじゃまをするつもりはありません。それもまた、橘先輩の為ですから。
   ……ですが、先輩と私の仲をさこうとするのは……塚原先輩にはされたくない」

七咲「たとえ部長として言ってくれてたとしても…それは、私には悪意にしか見えないんです」

七咲「……塚原先輩には本当に感謝してます。色々と教えて頂いて、返し切れないことばかりしてもらいました」

響「………」

七咲「でも、わたしは……橘先輩がタイセツです。塚原先輩とも仲は悪くなりたくありませんし、
   先輩が求める水泳の結果も出しきるつもりで居ます」

響「七咲…わたしは…」

七咲「……決めたんです。もう、誰にもこの想いは邪魔させない」

七咲「橘先輩の幸せを崩そうとする人のことは……わたしは嫌──」

森島「えいっ」ぽんっ

七咲「あたっ」

響「! ……は、はるか…?」

森島「響ちゃんは黙ってて。ねえ、逢ちゃん」すっ…

七咲「も、森島先輩っ…?」

森島「わたしの話、聞いてくれるかな?」

七咲「え、あ、はい……?」

森島「逢ちゃん…」

七咲「な、なんでしょうか…?」

森島「──くぁああいいねぇええ~~~~!!」なでなでなでなで

七咲「…ええっ、あっ、ちょっせ、先輩…!? や、やめて…!!」

森島「うりゃりゃ~!むっふふ~!ぎゅぅうー!」ぎゅうぎゅうぎゅう

七咲「っ…!?…!?」ぎゅううう…

響「は、はるか……ちょっと、はるか! 七咲窒息しちゃうから…!」

森島「……え? あ、ごめんね逢ちゃん…! わたしったらなんてこと…っ!」

七咲「っ……っ……」くらくら…

響「だ、大丈夫七咲…! 意識はちゃんとあるっ?」

七咲「は、はいっ……大丈夫です塚原先輩…」

森島「うーんっと…ちょっと可愛がり過ぎた、かな?」

響「ちょっとじゃないわよ…! もう、はるかったら…!」

森島「ごめんね! 苦しかったかな?」

七咲「あ、いえ…橘先輩がやられたらすごく喜びそうな柔らかさでした…」

森島「わぁお! こって褒めてくれてるのかしらね?ねねね? ひびきちゃん?」

響「とりあえず、褒めてると思うわよ…」

森島「そうよね~。だって橘くんで評価した所が素晴らしいわ! うんうん!」

響「……はぁ~…」

七咲「…森島先輩、どうしてさっき…」

森島「…うん? チョップしたかって? それはねぇ~…うーん、なんとなく!」

七咲「な、なんとなく…」

森島「こうしなきゃなぁ~っておもって、こうぽん!ってやってたの。
   でもでも~その後に逢ちゃんの可愛さにびっくりして抱きついた?みたいな?」

七咲「よ、よくわからないんですけど…」

森島「あたしにだってわからないわよ?でもね」

森島「人を簡単に嫌いって、言っちゃ駄目よ。これはタイセツなこと」

七咲「っ……」

森島「…実はこれね、橘くんが教えてくれたことなんだよ?」

七咲「えっ…? 先輩が…?」

森島「前にねぇ~…また告白されちゃって、その時のわたしちょっと機嫌が悪くって。
   すこしばかり荒くふっちゃったの」

森島「その時の様子をどうやら橘くん…見てたみたいでね。
   告白した子が居なくなってすぐに、わたしのところにすっとんできて…こう言ってきたの」

『好きって想いは、なにより重いんです…だから! 簡単にその相手に嫌いって言葉はいわないでください』

森島「……だったかな? うん、そんな感じだったと思うよ」

七咲「橘先輩…そんなことを…」

森島「今の逢ちゃんなら、橘くんのことはすごく響くと思うんだけど…どうかな?」

七咲「………」

森島「だからね逢ちゃん……頑張ることもタイセツだけど、でもね?
   ずっと昔から好きなもの…タイセツだったものを。簡単に壊しちゃ駄目よ、絶対に」

七咲「森島、先輩……」

森島「…わかったかな?それじゃあひびきちゃんにあやまりましょう!」

七咲「………」

響「な、七咲…」

七咲「……先輩、その……ひどいこといってしまって、すみませんでした…!」ばっ

響「…いいのよ、わたしがあんなふうにいってしまったから…!」

七咲「ですが、わたし…ちょっとどうかしてて……先輩にひどいこといってしまって…!」

七咲「先輩だって…色々と考えて、今の位置にいるってわかるのに…それを、浸け込むようなことを言ってしまって…っ」

響「大丈夫、七咲。わたしは大丈夫だから……」

七咲「塚原先輩…」

響「貴女も……頑張ってるってことは知ってる。
  彼のためになりたいって気持ちは……とても良くわかる」

七咲「……先輩…」

響「そうやって…ちゃんと告白できた…七咲は本当にすごいって思うわ。
  頑張ったわね…いや、頑張ってるのね七咲は…」

七咲「…はい、頑張ってます……とても」

響「……そうよね、私に出来なかったことをやってのけた七咲に。
  変な心配をかけるのは…野暮ってものだわ」

七咲「…ありがとう、ございます…絶対に、塚原先輩のご期待に添える成績を…だしますからっ」

響「うん、よろしく頼むわね…七咲」

七咲「ですから、先輩も……頑張ってください」

響「えっ……?」

七咲「私から言うのも何ですけど……塚原先輩も、気持ちを伝えるのを諦めないでください」

響「え、いや、あの…七咲…! それとこれは…!」

森島「むむむ! ひびきちゃんが恥ずかしがってるレーダー受信!」

響「ちょ、やめないさいはるか…!」

七咲「……今の先輩なら、ちゃんと塚原先輩の言葉も聞き入れてくれると思います」

響「だ、だからっ…ちょっと! はるか私のまわりでウロウロしないの!」

森島「うっふふ~! ひびきちゃ~ん! かわいい~!」

響「いい加減にしないとッ……あのこと、七咲にいうわよ…!」

森島「あのこと? ……っ~~~~!!それは卑怯よひびきちゃん!だめだからね!」

響「ねえ、七咲…実はね。その橘くんに怒られた時の夜、この子……」

森島「いやぁあああ~~1!!いっちゃだめだから!!ね? ねっ?」

七咲「ふふっ…あはは…」

七咲(先輩、貴方はいろんな人にこんなにも思われてますよ……だから)

七咲(棚町 薫先輩……この人と仲良くなってください)

七咲(……頑張ってください、先輩)

ちょい休憩
十五分ぐらい ちゃんと書ききる

放課後

純一「…………」キリッ

梅原「お、おう…どうした大将? 今朝から昼にかけての顔と全く違ってるけどよ…?」

純一「ああ、どうやら僕は……本気モードらしいんだ。これが」

梅原「……本気モード?」

梅原(なにいってんだ大将…頭がおかしく、いつものことか…)

純一「この状態の僕に……もはや敵は居ない。
   たとえ相手が振る前提でも、騙す前提でも……

純一「長ったらしくお互いの意見を交換することなく、素早く!
   ぐだぐだ喋らずパーフェクトでこなせる真っ白な僕…そう、これが───」

純一「───橘・クリア・純一なんだよ…!」

梅原「そ、そうか……よ、よかったな大将ぉ…!」

純一「……ああっ!」キリッ

梅原「と、とりあえず…俺は帰るんだが…大将はこれから用事なのか?」

純一「おう、いかなくちゃいけない所があるんだ……僕はね」

梅原「そ、そうなのか…今日は大忙しだな…!」

純一「だね! ……じゃあ、行ってくるぞ梅原…!骨は後で拾ってくれ…!」

梅原「お、おうよっ! ……何で最後は弱気なんだ大将…?」

校舎裏 

純一(──ふぅ……なんだか、梅原の前で強がってみたけど。全然、落ち着いてないんだよな……)
 
純一「……」すっ…

純一(校舎の物陰から…ずっと見てるけど、まだ薫の姿は見えてない。
   これも詳細な時間も決まってなかったし、そもそも薫は学校に来てないしな…)

純一「くるのかなぁ…アイツ…やっぱり嘘だったんじゃないのか?」

純一(でも、七咲の話もあるし…花壇の前で待っとくか……)

純一「…ったく、呼びつけたなら待ってるぐらいしろよなアイツも──」

「──いるわよ、後ろに」

純一「う、うわぁああああ!?」ぐるっ

薫「…………」ムッスー

純一「び、びっくしたぁー……いきなり毛玉があっふぐぉ!?」ぼぐっ

薫「ッ……あら。あたしもびっくりして手がでちゃったわ~ ごめんね、純一ぃ」ふりふり

純一「カ、カハッ…あ、相変わらず…良い左を持ってるなっ……かおるっ…!」

薫「ほほほ。褒めてもなにもでませんってことよ~」

純一「遠まわしに、ゴリラみたいだなって貶してるんだけどな…!おっと!」びゅん!

薫「おっ。ヒュ~♪ やるわね純一、いまの回し蹴りをさけるなんてさ!」

純一「いや、勢いなしであそこまで完璧な回し蹴りをするお前は…ナニモンだよ…」

薫「え? ふふン、教えてあげよっか~? ん~?」

純一「…やっぱいいや、なんかめんどくさいし」

薫「え~! どうしてよ、聞いてよ純一ぃ~」

純一「べたべたするなよ……ほら、やめろってば」

薫「……じゃあ、聞いてくれるのっ?」ちらっ

純一「聞く聞く、聞いてやるから」

薫「……ふふーん! それはね純一!」

純一「うん、なんだよ薫」

薫「輝日東1健気で有名な……このあたし!棚町薫さんってぇいうものよぉ!」

純一「わー」ぱちぱち

薫「……もう、なによそれっ。あんたノリ悪いわねー」

純一「これが精一杯のノリだ」

薫「なんとっ!…ううっ、見損なったわ~…あれほどまでも時間を共に過ごしてきたのにぃ~…
  ここまで落ちぶれてしまったなんてぇ~…おいおい…」

純一「…薫」

薫「なにかしらぁ…おいおい…」

純一「帰っていいか」

薫「だめにぃきまってるでしょぉ!」ぐいいっ

純一「え、あ、ちょ…いきなりなんだよ…!頭に腕を回すなって…!」

薫「あんたが絶対にそういうと思ったから、こうやって逃げられなくしてやるのよっ」

純一「に、逃げないって…! ほんとほんと!僕逃げない!嘘つかない!」

薫「嘘だったら承知しないわよ~!」ぐいぐい

純一(お、おふっ……あ、でもまだ頭掴まれたまでもいいかな…!)

薫「……」ぴた

純一「…ん? なんだよ薫、急に止まって…?」

薫「あんた今、いやらしいこと考えたでしょ?」

純一「えっ!? そ、そんなことないよ!」

薫「だって一瞬黙ったじゃない。そのときってあんた、いっつもスケベなこと考えてるじゃない…」

純一「ち、違うよ…僕はそんな疚しいやつなんかじゃないからさ…!」

薫「ほんとにぃ~? ま、どっちにしたってもう離すけどね」ぱっ

純一「おっとと……」

薫「……それで、あんた。来てくれたんだ」

純一「ああ、来たよ。下駄箱に入ってた、手紙を読んでさ」

薫「……そう、読んだのね。あの手紙」

純一「まあな。でも、どうしたんだよ……あの手紙、なんだか嘘っぽかったぞあれ。
   薫って名前を見るまでずっと誰だかわかんなかったよ」

薫「……ちょっと、普通にやってみたかったのよ。手紙でってどういうのかってさ…」もじもじ…

純一「あ、じゃあブラフじゃなかったのか…てっきり僕はついさっきまで…」

薫「ぶ、ブラフってなによ…! まさか、あんたずっとアレ偽物だって思ってたのっ…?」

純一「だ、だってしょうがないだろっ…? あんなの薫が書くとは思えないし、それに…
   …薫だったら手紙なんてかかずに、直接行ってくるって思ってたしさ…!」

薫「っ………わ、わかってるじゃないの…! あたしのことっ……やるわね純一!」

純一「あ、ありがとう!」

薫「っ……そ、そうよ…確かにあたしらしくない。それはわかってる…っ」

純一(封筒もあんなに可愛かったしな…言ったら殴られそうだけど)

薫「で、でもっ……恵子が、ああいうのがギャップがあっていいっていうから…その、使ってみたのよ…」そわそわ…

純一「……ふーん」

薫「な、何よその反応……! あ、あたしがせっかく恥を偲んで書いたのにぃ…っ」

純一「そうなのか、いやだってさ? けっこう短文だったじゃないか、えっと確か…」ぱさ…

薫「っ! ちょ、ちょっとあんたっ…! なにここで読み返そうとしてんのよーっ!」

純一「えーと、純一へ。明日の放課後、いいたいことがあります」ひょい ひょい

薫「ぎゃー! やめてってばぁー! 本気で本気で!」ぶんぶん!

純一「校舎裏の花壇の前で待ってます…ってほら! ぜんぜん普通だろ?」ひょい

薫「はぁーっ…はぁーっ…! あ、あんた…本当にサイテー…っ!」

純一「ははは。何度でも言うがいい」

薫「っ~~~……と、とりあえずそれ!返しなさいよ!」

純一「え? やだよ、返すわけ無いだろ」

薫「ど、どうしてよっ!?」

純一「……えーっと、弱み?」

薫「こ、こいつぅ~……人の大切な想いをっ…弱みって…弱みって言ったわね!?」

純一「う、嘘だよ…! うそうそ! それは嘘だってば薫…!」

薫「じゃあ返しなさいよ! それがっ…それがあんたの手元にあるってだけで、もう夜も眠れないわ…!」


純一「そ、そうなのか? あー…でも、これはやっぱ渡せないよ」すっ…

薫「ま、また今度あった時…からかう気なのっ…?」

純一「いいや、そうじゃないってば。だってこれはお前からもらった大切な、想いだからさ」

薫「な、なによ…いきなり良いこと言って…!」

純一「本当のことだよ? お前からもらった初めての手紙、それもあるしさ。
   こうやって薫が気にするほどに気持ちを込めたものを……僕に一回渡したっていう今」

純一「それはとっても僕にとって、すごく嬉しいことなんだよ」

薫「っ………」

純一「だからさ、この手紙は返すことはできない。その時のお前の気持ちも、僕の気持ちも……タイセツにしたからさ」

薫「なによっ……自分だけ、いい子ぶっちゃって。取り返そうとしたあたしが悪いみたいじゃない…っ」

純一「あはは、別に薫は悪く無いって。ただこれも僕の我が儘なだけだからさ」

薫「……じゃ、じゃーあ。タイセツに保管しておきなさいよね…! アンタすぐ無くしそうだし…っ」

純一「なーに言ってんだよ。なくさないよ、絶対に」

薫「………」

純一「──よし、制服のポケットにちゃんとしまったぞ。胸の内ポケットに入れたから、
   そうそう取り返すのは難しいぞ!」

薫「も、もう取り返さないわよ…!」

純一「そっか。それはよかったよ、あはは」

薫「っ……そ…それで、さ…」

純一「うん? どうした薫?」

薫「~~~~っ……あ、あんたはどうおもったのっ!その手紙を読んで!」

純一「…待ち合わせ日時の報告?」

薫「じゃなーくて! わかるでしょ…っ? あたしが言いたいこと…あんたなら…!」

純一「…………」

薫「だから、ここにきたんでしょ! わかってるから、あたしが…ここで言いたいことが何かわかってるから…!」

純一「うん、わかってて…ここにきたよ。薫」

薫「っ……~~~っ……じゃ、じゃあどう思ったのよ…!あんたは…!」

純一「そうだね……とりあえず、薫。落ち着こう、な?」ぎゅっ

薫「え、あ、な、なんで手を握るの…っ!」

純一「ほら、落ち着いてこないか? けっこう他人の体温ってさ、人の緊張や動悸とかを直してくれるんだよ」

薫「や、やけに詳しいわね……誰かにしてもらったことある感じ? それ?」

純一「……。ああ!梅原にな!」

薫「……ぶっ! な、なにそれっ…ちょ、あんた本当…っ?」ひくひく…

純一(半分は本当。半分は七咲の抱きしめで気づいた)

純一「ま、まぁな……あの時はとっても暖かくてさ…なんかこう、すっごく安らぐっていうか~…」

薫「っ…っ…ぶ、ぶはぁ! ひっひひぃ~!や、やめてっ…想像しただけ、だけっ…でっ…あはははは!」けたけた

純一「そこまで笑わなくてもいいだろ……感想のところは本当に梅原なのに…!」

薫「げほっこほっ! ひゃひゃっ……あぁー!わらったー! マジ最高だわあんた…バケモノなのっ?」

純一「う、うるさいよ!」

薫「いや~……まさか、こんなタイミングで笑わせてもらうとは思わなかったわ。てんきゅ純一!」

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