静「日本料理を食べに行こう」 (313)

※初めに

・このSSは「静・ジョースターの奇妙な日常」の続き・第八話です。
一応途中からでも読めるかもしれませんが、最初から読んだほうが楽しめるかと思います。

・オリジナルしかないです。キャラ改変注意。あと今回の初っパナ、地の文注意で。

・まだまだ修行中の身ですが、料理について書かせてもらいます。細かいツッコミは無しでお願いします。
間違っててもあまり言わないで……。

・長くなりましたが、書かせていただいます。

一話
静・ジョースターの奇妙な日常
静・ジョースターの奇妙な日常 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1363790589/)

二話
仗助「静のやばい物を拾ったっス」
仗助「静のやばい物を拾ったっス」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1365094145/)

三話
静「ジャンケン教師がやって来た」
静「ジャンケン教師がやって来た」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1367669400/)

四話
静「引きこもりのうちへ遊びに行こう」
静「引きこもりのうちへ遊びに行こう」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1368951927/)

五話
静「泥棒をしよう」
静「泥棒をしよう」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1370177583/)

六話
静「ペーパー・バック・ライターは父親に憧れる」
静「ペーパー・バック・ライターは父親に憧れる」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1373404472/)

七話
静「お見舞いへ行こう」
静「お見舞いへ行こう」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1379932767/)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1383137249

…………

僕の精神の奥底にあるのは、ゆがんだ『嫉妬心』だけだ。
全てのものがうらやましい。……僕は何も持ってない。

僕は勉強が出来ない。人の10倍努力をして、やっと人並みくらいの頭を保ってる。
僕は運動が出来ない。何度練習しても、僕はキャッチボールすら満足に出来ない。

羨ましい。妬ましい。憎い。悔しい。
僕は欲しい。

普通の人が普通に生活している、その能力が僕は欲しい。

学校から帰ると真っ直ぐ塾へ行き、
しっかりと勉強をしてやっと人並みだ。
その後家でもっと勉強をして、寝る間を惜しんで、やっと人並み以上だ。

運動なんてする暇がない。部活動なんか出来やしない。
どうして他の普通の人は、それらを両立出来るんだろう?
どうして僕は、普通の人のような生活が出来ないんだろう?

羨ましい。うらやましい。ウラヤマシイ。羨ましい!

僕は……どうして、こんなにも『弱い』のだろう。

「兄ちゃんよォー……ちょいと俺らに『小遣い』……カンパしてくんねェかなァ~~?」

クソ、畜生。どうして僕はこんなにも『弱い』んだ。
ちょいと塾からの帰り道、近道しようとひと気の無い『小道』を通った自分が許せない。
数分前の自分を殴ってやりたいと思った。
そして、『どうして僕は目の前にいる4人の男を殴ろうと思わないのか』という言葉が湧いて出た。
簡単な事だ……僕には不良に立ち向かって、殴れるような力も度胸も無い。

僕は……持っていないんだ。何も持っていないんだ。

「おい!何黙りしてんだよォッ。これから死人になる訓練か?」

「それとも早くも出ちゃったのかもよォオ~~」

「さっそく日本語わからない作戦んンン~~」

ナメられている。
確かに僕は力も無い。顔や服装だって、優等生風で地味な感じだ。
だけど……こうして男たちに囲まれて、ニヤニヤ笑いされるのはどうにも許せない。
こいつらもそうだが……立ち向かえない僕と、ナメられるような雰囲気を持っている僕と……
こいつらに立ち向かえるようなガッツを持っている世の人々と、こいつらに絡まれない風貌の人々と……
とりあえず、自分と、こいつらと、世界中の人々が許せなかった。

妬ましかった。羨ましかった。

「お金……なんて……もってません」

なけなしの勇気を放った。
この一言を言うだけで精一杯だった。足が震える。心拍数が上がり呼吸も荒くなる。
そんな自分が許せない。勇気を持っている人々がうらやましい。

「…………」

「ほお~っ、持ってないといったの?」

「今……目~~そらしたね?」

「それってさあ~~っ『俺らに払うのは持ってない』って意味?それとも……」

「本当ォ――に一円も持ってないってことなの?」

「……」

ぱん、と軽い音がした。
男の一人が、黙っている僕を殴った音だ。
ほおに鋭い痛みがはしる。ぱたた、と地面に血が飛び散った。
天使の装飾を施された趣味の悪い指輪が、僕のほおを切り裂いたらしい。

何処でこんなの売ってるんだろう。

冷静にそんな事を考えられる自分に驚いた。

「テメェマジにふざけるなよ」

「ふざけるだなんて、そんな……」

「ナメた目つきしやがってよォー……優等生のおボッチャンには、俺らのことが社会のゴミムシに見えて仕方ないっつゥーことか?あァ?」

「……」

僕はそんな目つきをしていないし、僕は優等生じゃあない。それに……
僕は君たちに一種の『憧れ』すら抱いている。弱者を暴力で持って屈服させる、そんな『力』を持ってる君たちに……

……そんな、数々の言葉が脳内に浮かんだが、一つも口にすることなく腕をねじられた。
上に捻り上げられ、痛みで僕はうめき声をあげた。

「こういう野郎、俺マジに許せねェんだよ。人を見下しやがってよォー」

「やっちまうか?」

「とりあえず、脱がせ。財布とケータイ取り上げろ」

「や、やめろ……」

小さい声で反抗すると、腹を殴られた。
鈍痛がして、息がつまる。

「何か言ったか?」

「いやァ?聞こえねェエーなァ~~」

「わかってねえなコイツ。自分の立場ってヤツがよォ~~……挨拶変わりに、ちょいと『切っちまう』か?」

「いいなそれ。超~~ウケるぜ。この妖刀が早えーとこ三百四十人目の血をすすりてえって、慟哭しているぜ」

ぱちんとナイフの刃が出る音がした。月明かりの下、銀色の光が見えた。
動くことも、喋ることも出来なかった。
ただただ、自分が許せなかった。
うらやましかった。ねたましかった。

「そっち押さえつけろ。そっち持て」

「え?うあああっ」

「暴れるんじゃあねーぜ、間違って目ン玉えぐっちまったよォー、お互い嫌だよな?俺らもそこまでやりたくねェ。ただちょっぴりわからせてやりたいだけだ」

「十字に切っちまおうか?メチャかっこいいかもよ?」

「明日っからお前!アダ名は『人斬り抜刀斎』だなァー!」

「切られてるのは自分だっつゥーの!ぎゃはははは!!」

許せない。許せない。許せない。妬ましい。
どうして僕には力が無いんだ。どうして僕は弱いんだ。
僕に……僕に、『力』があれば……こいつらを倒すことだって出来るのに。
力を持つ人が羨ましい。僕にも、僕だって、力が欲しい。

力があれば――

「――お前ら――」

僕は、こいつらを――

「――みんな――」

一瞬のためらいも無く――

「――死んじゃえ」

――『殺す』ことだって出来るのに。

ドスッ

「……えッ?」

バシュウウウウウ!!!

「ああああああああああぁぁぁぁあァァァァァァァッッ……」

ボコボコボコボコ……

「!?……!!……はッ……!?」

……何が起こった?

僕の顔に、ナイフが刺さる前に……
『何か』が、『僕の背中を刺した』……?
そしたら……何だ?不良の一人が……

「……え?」

「何だ?おい……どうした?」

……『沸騰』した……。
グツグツと煮えたぎって、シチューみたいにボコボコと音をたてて……
そして、『塵』になった。
跡形もなく、消え去った……。

「ひッ!?ひいィィィ――ッ!?」

「何だッ!?お前ッ!!何をしたァ――ッ!?」

そんなの僕にもわからない。さっぱり何もわからない。
ただ、目の前にいた人間が『死んだ』……それだけはしっかりと理解出来る。

「てッ!テメエ!妙な事しやがってェェェエ――ッ!!!」

男の一人が、ナイフを持って突進してきた。
そのナイフは、僕の身体に当たると……
刺さることなく塵になった。

「えっ……?」

そのまま、男は僕にぶち当たり……
ナイフと同様に、『塵』になった。

「う……うわああああああああああ!!!」

残った二人の男が逃げた。

「ま……待ってくれ!」

僕を一人にしないでくれ。僕にも全く……理解出来てはいないんだ。
どうしてこんな事になったのか。どうして簡単に……人が二人も死んだのか。
全く理解出来てない。誰でもいい。僕のそばにいてくれよ……。

男の一人がこけた。足がもつれて、前のめりにつんのめったようだ。

「待って……話を、聞いてくれ……!」

その男の肩を、僕はつかんだ。
男の腕が、肩からもげた。
恐怖に青ざめる顔を僕は見た。目が合った。泣き出しそうな顔をしていた。
その顔は一瞬で、真っ赤なマグマへと変わった。

「ああああああああ!!!」

最後の一人は……追いかける気にもならなかった。
その叫び声は、まるでテレビの中から聞こえるようで……
僕とは遠い世界にあるように聞こえた。

何が起こったんだろう。僕は……僕は、何をした?
これは……

「……僕が、やったことなのか……?」

「そうよ。貴方がやったことなの」

声がした。

路地の奥の、暗闇からだ。男が逃げた方向からだ。
こつ、こつという足音と、ズルズルと何かを引きずる音がした。
誰かが、何かを持って近づいてくるのだ。
僕は目を凝らした。すぐに、誰なのかがわかった。
そして、『何』を引きずっているのかも……

……引きずっているのは、さっき逃げた男だ。
死んでいる。血を大量に失って死んでいる。まるで枯れ果てたサルの干物のようだ。
そして、それを持っているのは……

……僕の『友達』の、『有栖川メイ』だった。

「め……メイ……?どうして、ここに……?」

彼女は病弱で、たまに出かけることはあっても、こんな暑い夜には出歩かないはずだ。
それが……どうしたのだろう。彼女は……
前に見た時よりも遥かに健康そうでいて(肌は相変わらず青白かったが)
やせ細った身体には、わずかに肉が付いており……しなやかで美しい身体をしていた。

「良い月の夜だったから。少し散歩をしていたのだけれど……良い拾い物をしたかしらね?チェスタ」

「ああ、メイ……彼はかなりの、精神的なハングリーさを持っている。そんな者には強い『スタンド』が発現するからな」

メイはそばにいる男と、楽しそうに話を始めた。
まるで、今起こった事と、手に持っている死体が、いつもの『日常』であるように……
彼女は、楽しそうに笑っていた。

「彼なら……丁度いいかもしれないわね。静と同じ学校の子だし、近づくのも容易でしょう」

「ああ。しかし、彼女……静・ジョースターが、まさか生きていたとはな……」

「少し驚いたけど、そうね。彼女なら納得だわ。私は彼女のそういう所を、すごく尊敬している。彼女はコンプレックス等、弱いところが沢山ある。それが……彼女の強さなのよ。彼女の強さになっているのよ。弱さを強さに変える、そういう所が尊敬出来るのよ……」

「メイ……待ってくれ。僕を見てくれ。そんな……そんな男と話をせずに、僕を見てくれよ……」

泣きそうな声で言った。自分でも情けないと思った。
しかし、メイは優しい顔で、僕を見てくれた。
嬉しかった。

「どうしたの?何か困ったことでもある?」

「メイ……教えてくれ。僕に何が起こった?そして……これは……何なんだ?」

僕の周りにはドス黒い塵しかなかった。
その塵を見て、僕を見て……メイは、ニッコリと笑った。

「ぜぇーんぶ、貴方がやったことなのよ」

「ぼ、僕が……?」

「そう。貴方は『矢』に選ばれたの。『矢』の力によって、貴方は……こんな力を手に入れたのよ」

僕は改めて、周りの塵を見渡した。
元々は人だったというのに……それを信じるヤツなんて、絶対いないに違いない。
それほどまでに、周囲の光景は凄まじいものだった。

「僕が、彼らを……こんな、黒ずんだ塵に変えたのか……?」

僕が、彼らを……殺したのか?
こんな……こんなにもむごい方法で?

「そ……そんな!なんて……非道いッ……!」

「ひどくなんかないわ」

りん、とメイの声が響いた。
天使のベルのように、僕には聞こえた。

「彼らは、貴方に危害を加えようとした。きっともっといっぱい、社会の弱い人達を食い物にしてきたのでしょうね。彼らが死んで、喜びこそすれ、悲しむ人なんているかしら?」

「しかし……しかし、僕は……!」

「貴方の能力は素晴らしいわ。……社会のゴミを、本当のゴミに変えることが出来るのだもの……確かに、貴方が彼らを殺したのは事実。それは恐ろしいことかもしれない。……だけど、貴方は社会のゴミ掃除をしたのよ?人々から喜ばれることをしたのよ?どうしてそんなに、怖がっているのかしら?ねぇ……?」

メイが、僕のほおを撫でた。
細く、なめらかな指に撫でられるだけで、僕のほおの傷の痛みはおさまった。
メイの声が、僕の心にじんわりと広がる。
先の見えない真っ暗な道に、光が見えた……そんな気がした。

「それでも恐ろしいと思うなら、それでも怖いというのなら……私が、この有栖川メイが、貴方を導いてあげてもいいわ」

メイの指が僕のあごをなぞる。
背筋がぞくぞくした。恐怖で、ではなく、興奮で、だ。

「貴方……まだ、恐ろしいと思う?」

「……ああ。恐ろしい……」

「怖いの?」

「怖い。……僕は、また、この力で……人を殺してしまうかもしれない。今度は無関係で、善良な一般人を、殺してしまうかもしれない。……それが、すごく恐ろしい」

本心だ。
そして、僕は軽やかに、先ほどの男達を切り捨てた。
『奴らは善良な一般人ではない』という理由で切り捨てた。

僕の『何か』が変わっていった。

「それなら……『忠誠』を」

するり、とメイが靴を脱いだ。
素足だ。すべすべで、贅肉とか出っ張った筋肉とかいう無駄が全くない。
洗練された、細くて長い足だ。
月の光を浴びて青白く輝いている。僕はいけない物を見ている気になった。

『こんなにも美しいものがあるのか』

そう思った。目が吸い付けられて離れなかった。

「『友達』という関係に……少し、『忠誠』が加われば……それはとても、すごく素晴らしい関係になる」

「……『忠誠』……だって?」

ごくり、と生唾を飲み込む。
今僕は、奈落の底へと落ちていっている……
そんな気がしたが、僕は目も耳も塞がなかった。
塞げなかった。ただ、メイの言葉の続きを待っていた。

「私に従ってくれればいいの。ただそれだけ……私の声を聞いて、私に撫でられて、私と共に同じ道を歩いて……私と生きてくれればいい。それだけよ。何も難しいことじゃあない。きっと、それが貴方にとって……すごく幸せなことになるわ」

メイが、足を左右に揺れ動かした。
僕の目はそれを自然に追っていた。

「貴方が『忠誠』を誓ってくれれば……私は貴方に、その能力の使い方を教えてあげる。道を示してあげるわ。貴方はその能力を、私のために使ってくれればそれでいい」

「メイの……ために……」

「『36名以上の魂』……それを集めるのに、貴方の能力は調度いいわ。それに、貴方なら……静を殺すことも、簡単かもしれないわね」

「……静……?」

「ええ。いつかは、貴方に、きっと……けど今は時期じゃあない。それよりも前に、貴方にはやってもらいたい事がある。それを私は示してあげる。『忠誠』を誓ってくれるなら……」

メイが足を僕に突き出した。
綺麗だった。
ただただ、綺麗だった。

「……教えてあげるわ。自分が何のために、誰のために産まれてきたのかを……ね?」

メイの笑顔には逆らえなかった。
いや……逆らうつもりもなかった。
僕は自然に、跪いた。メイの足を、まるで壊れ物でも扱うかのように、優しく、やさしく、手にとった。

「……誓おう。僕は、君に……『忠誠』を」

「そう。フフ、ありがとう。……これからよろしくね?『ウォーケン』」

産まれて初めて、名前を呼ばれたような気がした。
本当の名前じゃあなかったけれど、本当の名前以上に、僕の心に染み渡った。

月明かりの下、
彼女のつま先に口付けをした。
地獄を舐めたような味がした。

…………

本日はこのあたりで。
次回から本格的にお話が始まります。

あ、ありのまま今起こったことを話すぜ……。
俺はトニオさんみたいな日本料理屋のとこにいってよくわかんないテンションになる双馬とか筋肉痛が取れる羊羹とかを期待して新スレを開いたらDQNが灰になっていた……。
何を言ってるのか(ry

昨日集計をしたものです。
昨日から今日にかけて「双葉双馬は静かに暮らしたい」に一票入ったのでまた集計しようとも思ったのですが、
投票はあくまでも参考程度で、主がその時々で書きたいものを選ぶのが一番だろうと思い、やめました。

今回の「日本料理」、果たして料理を作るのはトニオさんなのか、新キャラ「ウォーケン」の能力の全貌とはいかに!というわけで今後も楽しく見させていただこうと思います。是非とも主が無理をなさらない程度にがんばってください。

お待たせしています。申し訳ありません。
日曜投下予定です。もうしばらくお待ちを……静ジョ書く時はジョジョ読みながら書きたいんで、ケータイで気軽に~とか出来ないんです……

正直、毎回書くのは投下前の1、2時間くらいなんですけど(残りは投下しながら書いてる)
投下するのに時間がかかるんで、休みかつ用事無い日しか投下出来ないんです。すみません。
投下遅いのは、頑張って書いてるんじゃあなく、単純にヒマないからなんですよねー。

…………

朝、東方家――

『それでは、次のニュースです。S市杜王町で起こる連続行方不明事件ですが――』

ガサッ

静「『路地裏の塵から人のDNAを検出』……『犯人は大型の火炎放射器を所持している可能性あり』……か。フーン」

ガサガサッ

静「怖い事件もあるもんねェ……これ、メイのやつがやったんじゃあないでしょうね?血を吸った死体の証拠隠滅とか、そんなんで……」

仗助「う~~んッ!」グルン!グルン!

ビシッ!!

仗助「東方仗助!完全復活ッ!っスよ~~ッ!!」

バーン!

静「……兄さんはノンキねぇ」ハァーッ

仗助「いや、実際結構怖かったんだけどよ~~ッ、傷を部品でうめるとか、ヘンな菌とか入んねーか心配で心配で……終わっちまえば、スゲェー便利な能力だぜッ!マジにグレート、おれの遠い親戚さんよ~~ッ!あ、静新聞貸してくれ」

静「ハァ~~ッ……お見舞いに行く途中、命狙われたりして散々だったのに……必死こいて来ればもう退院なんて、なんかやるせないわねーッ」

仗助「何だあ?仗助兄さんがゲンキに退院したんだからよーッ、もうちょい喜んでもいいんじゃあねーのかぁ?」ガサッ

静「喜んでるわよ、マジに。……まぁ、病室で兄さんがガイジンのおねーさんに触られて悶えてたのを見た時は、『兄さん、ついに一線超えちまったか~~ッ!?』って悲しくなったけどね」

仗助「誤解だっつーの!あれは治療であって、別にヤラシー意味はねーよ!」

静「どうだか……兄さん女っ気ないからねー。なんか結構飢えてそう。気高く無いゲスい感じでさ。……あ!あたしを『そーいう目』で見るの禁止だからねッ!?いくら静ちゃんがカワイイっつってもさーッ!それとも『禁断の愛』とか燃えるタイプ?あたしそーいうのナシだかね、ナシッ!」

仗助「見ねーよ。オメーみてーな『チンチクリン』の、どこに魅力があるんだァ~~?」アアン?

静「……うう、痛むわ。なんか色んな所が痛む……」グスン

仗助「?オメーの怪我ならよー、病室で完ペキに治してやっただろ?おれがよ~~ッ。まだどっか痛む所でもあんのか?」

静「……うーん、兄さんってさ~~ッ、なんかそーいう、鈍感で遠回しな言い方に気付かない所、スッゲェーマイナスポイントよね」

仗助「?」

静「いい?今シクシク痛んでいるのはね……あたしの無垢な可愛い『女の子の気持ち』って、やつなのよ……」フッ

仗助「静、そこの醤油取ってくれ」

静「聞いてよッ!あたしの乙女心をもうちょい理解しようとしてよッ!」

仗助「あー、はいはい。静は可愛い、カワイイ」

静「クッソー……今日から牛乳飲む量、1リットルから2リットルに増やしてやるからね。はい醤油」

仗助「牛乳飲んでもチチはでかくならねーらしいぞ?ん、ありがとう」

静「……身長の話だし。あたしすでにグラマーだし」

仗助「あー、はいはい身長な。身長だようん」モグモグ

仗助「それにしてもよ~~」

静「何?もうすぐ星座占い始まるんだから、話は後にしてよねーッ」パクパク

仗助「いや、大したことじゃあねーんだ。……オメー昨日大怪我して病室来たワリには、『血』があんま出てなかったな、と思ってよ……」

静「?……今さら何言ってんのォ?」

仗助「うん?」

静「『波紋』で傷口の血を止めて、ついでに痛みも抑えてたってだけよ。兄さんも『ジョースター家』の人なんだから、そんくらいラクショーでしょ?」

仗助「……ああ、『波紋』か……」

静「そーいや昨日承太郎さんにも聞かれたなぁ。『静、お前は波紋が使えるのか?』って真剣な顔で……何よ、あたしもジョースター家のモンだってのッ。ジョースターじゃあないヤツは、波紋使ったらイケナイっていう法でもあるっての?フンッ」

仗助「……うーん……」

静「あーッ、牡牛座最下位じゃん……ラッキーアイテムは『フランス料理』ィ?そこはせめてイタリア料理にしてよね~~ッ」

静「いいなー、双子座は3位じゃん。きっと良い事あるよ、兄さんは……」

仗助(静のやつ……ジョースター家の者は全員『波紋』が使えると、思い込んでいるんだな。……実は静しか波紋が使えないと知ると……なんつーか、厄介な事になりそうだよなァ……)

静「兄さん、今日晩ご飯フランス料理にしよう。ちょっとでも運勢良くしないと……」

仗助(承太郎さんには、頭が痛い事だろうなあ……ま、その勘違いがありがたい事でもあるんだが……)

静「……兄さん?ちょっと、何ボケーっとしてんのよ?」

仗助「あんッ?ああ、何か言ったか?」

静「……大丈夫?まだ傷痛むの?病院付き添おうか?」

仗助「いや!大丈夫ダイジョーブ!傷はもう何ともねーぜ!ちょっと考え事しててよ~~ッ!」

静「……ならいいんだけど……」

仗助「で、何の話だったか?」

静「別に……今日晩ご飯何食べる?って話」

仗助「ああ、晩ご飯なァ……すまねえ静」

静「はい?」

仗助「今日おれよォ~~、ちょっと昼から出かける予定でよーッ……晩まで長引くかもしんねーから、メシは勝手に作ってくれよ」

静「……あのさ、兄さん。……その予定が『デート』とか『お見合い』とか……『女の子と遊びに行く』っていうんなら、あたし妹として祝福するよ?赤飯炊いてあげる。けど……」

仗助「けど?」

静「……どーせアレでしょう?康一さんとか億泰とかの家行って、メシ食って喋って酒呑むってだけでしょッ?」

仗助「……お前……よくわかってるなぁ」シミジミ

静「……いい加減彼女作ろうよ、兄さん。あたし嫌だからね?老後の兄さんのメンドー見るの」

仗助「余計なお世話だっつーの!」

仗助「ホラ!さっさと学校行けッ!遅刻するぞ。おれ今日は送ってやんねーからな!」

静「はいはい……って、アレ?兄さん?」

仗助「あん?まだ何かあんのかよ?」

静「……あたしの『お弁当』は?」

仗助「はあッ?」

静「……」

仗助「……オメー、ほら……病み上がりの兄にそんなのよー、押し付けたりするか?普通ゥ……そこはオメーが作るもんだと、てっきりよォ~~」

静「別に『病み』じゃあないじゃんかさ。どっちかっつーと『怪我』だし、もう治ってるんでしょ?」

仗助「……静」

静「ん?」

仗助「『サンジェルマン』のサンドイッチはよ~~ッ、スッゲー美味しいぜ」ニコリ

静「あーもー!信じらんないッ!ぼさっとしてて弁当作るの忘れてただけじゃん!」

仗助「ぼさっとしててじゃあねーぜ。ただ単純に面倒だと思ってよー……」

静「それなら『明日は弁当作らねーぜ』って昨日言っといてよ!昼に『サンジェルマン』行っても売り切れに決まってるじゃんかーッ!!」

仗助「ホラッ!遅刻すんぞッ静ァ~~ッ」

静「もー!もー!!いってきまァァ~~すッ!!」

バタバタッ!

…………

…………

昼休憩――

キィ~ン コォ~ン カァ~ン コォ~~ンッ……

静「……」スタスタスタ……

広瀬川「アレッ!?静さん、珍しいね。お昼休憩にどこか行こうとするの」

静「ええ……サンジェルマンか購買か……どっちかに行こうと思ってね」

委員長「サンジェルマン?今から行っても売り切れなんじゃあないか?どうしてまた……というか、君はいつも弁当を持ってきてなかったか?どうしたんだい今日は」

静「……ウチの兄さんがさ……」

広瀬川「あッ!……えっと、入院したんだっけ?」

委員長「えっ?そりゃあ知らなかった、ゴメン。君も色々と大変なんだな……」

静「いや……退院したけど、お弁当作ってくれなかったの」

広瀬川「?……入院したの、つい最近じゃあなかったっけ?」

静「色々あんのよ、あたしにも……」ハァ

広瀬川「?……まあいいや。静さんがお弁当持ってきてないっていうのは、ある意味好都合かもしれないよ」

静「どういう事?康司」

委員長「実は、虻村君がさ……あ、来た来た」

虻村「おう!待たせたなァ~~二人共ッ!スッゲーでけーウンコでよ……って、アアン?静も来んのかァ?」テクテク

静「何?どっか行くの?」

広瀬川「うん。ボクも委員長も購買でパン買おうとしてたんだけど……虻村君が外で食べようってさ」

委員長「何でも、『日本料理』のお店らしいよ」

静「『日本料理』ィィ~~ッ?」

静「あたしパス」

虻村「何でだよッ!スッゲー美味い店なんだぜッ?おれも行ったことねーけどよ~~ッ」

静「今日のラッキーアイテムは『フランス料理』なのよ。それなのにお昼が『日本料理』って……なんかイヤーな事起きそうじゃあない?」

委員長「朝の占いか……君そういうの信じるタチなんだ」

虻村「ンな事俺らが知るかよーッ!なんか、俺の好きな『日本料理』をバカにされたみてーで、スッゲーむかつくぜーッ!!」

静「別にバカにはしてないわよ……ただ、今は和食な気分じゃあないの。朝はご飯だったし、パンが食べたい気分ン~~」

広瀬川「だからって、サンジェルマンはきっと無理だよ……大人気だもん」

静「あたしだってそんなのわかってるっての……もしかしたら余ってるかも、っていう淡い希望があんのよ」

委員長「うーん、それでもなぁ……静さん一人で外出っていうのは、ほら……」

静「?……何が言いたいのよ、委員長」

委員長「君も朝のニュースを見たんだろ?占いの前にやってるヤツさ。……今この町では連続行方不明事件とかが起こってる。犯人は火炎放射器を持ってるとかも言われてるし、女の子一人で外出するっていうのは……」

静「真っ昼間にそんな事件なんて起こらないっての。それにあたし、結構腕っ節っつーか、ケンカには自信あるし」

委員長「そういう問題じゃあなくってさ……」

広瀬川「静さん、委員長は心配してるんだよ。君の事をさーッ。だから、ちょっとくらいは聞いてくれても……」

静「……って、言われてもねェ~~」ウーン……

虻村「もういいじゃあねーか。行こうぜ二人共ォォ~~。こーんな外人かぶれのチビ女に、すンばらしィー日本料理の味なんか、わかるワケねーんだよッ!」

静「ム!……言ってくれるじゃあないの、虻村……」

虻村「あ~~ン?プッツン来てんのかよ、静ァ?」

静「誰が……『チビ女』ですってェ?」アアン?

広瀬川「プッツン来る所そこなんだ?」

静「わかったわよ……!付き合うわよ!美味しいんでしょうねそこ?」

虻村「最近知った店だけどよ、美味しいって評判なんだぜ。行こ行こしゅっぱぁ~~つ!」ウヒョルン

委員長「虻村君の店選びのセンス……ううん、ちょっぴり心配だな」

広瀬川「委員長もそういう事言うのやめようよッ!きっと美味しいって~~ッ!」

テクテクテク……

テクテクテク……

静「結構歩くのね……あたしん家に近いじゃあないの。こんな所においしい日本料理の店なんかあるのォ?」

虻村「夜は結構高い料理出してるけどよー、昼は学生なんかが手軽に食えるようなメニューも置いてんだとよッ!」

委員長「それにしても、虻村君……君日本料理が好きなんだ?」

虻村「おう!日本料理っつーか、日本文化っつーか……和菓子とかお茶とかも好きだし、着物とか浮世絵とかいう日本のモンは大好きだぜーッ!日本文学は頭が痛くなるけどよーッ」

広瀬川「そういえば、夏にあったかい日本茶飲もうとしてたよね……」

委員長「本当、人は見かけによらないというか……ま、そういう若者がいるっていうのは、この日本社会にとっては素晴らしい事なんだろうね」

静「あたし海外文化好きだけど」

虻村「オメーはもうちょい日本人らしさを出しやがれッ!」

委員長「僕、こんな所まで来るのは初めてだな……虻村君も、よくこんな所にある店を知ったね?」

虻村「クラスメイトが話してるのを聞いてよォ~~。是非ともいかねーとなッ!って思ってよー。なんつーか、そいつらが言うには……店主が俺に似てるらしくって、スッゲー親しみやすい感じなんだってよ!」

静「虻村に似てる店主とか……なんかやる気無くすわねーッ」

虻村「どういう意味だよッ!」

広瀬川「楽しみだね、どういう人なのか……。あッ、あの店がそうなんじゃあないかなッ?」

静「へーッ、どれどれ?」ヒョコッ

『日本料亭 にじむら』

静「あたし帰るわ」シタッ!

虻村「何でだよッコラァーッ!」

静「やめよう!あの店は絶対やめよう!完全完璧100パーセントマズいからッ!きっと素手でちぎり取ったクマ肉の破片とか出てくるわよッ!?」

委員長「それはそれで逆に見てみたい気もするよ……」

静「あたしは絶対イヤだからあの店ッ!あそこ入るくらいならあたし、お昼ごはんいらないしッ!」

虻村「ここまで来てそれはねーだろーがよッ!ホレッ!入るぞ静ァ~~ッ」ガシッ!

ズリズリ……

静「ヤダー!ヤダー!!あたしお家帰るーッ!!」ズリズリ……

広瀬川「アレッ?見てこれ……お店の扉に『張り紙』が貼ってあるよ?」

委員長「何?お休みのお知らせかな……?どれどれ……」スッ

『このおみせは
 少々マナーにきびしい所がございます。
 マナーにじしんのない方は、
 入店をごえんりょ下さい
                       てんしゅ』

委員長「?……何だろう、これは?」

広瀬川「えーッ……ボク、あまり自信ないよ。虻村君は?」

虻村「あ~~ん?マナーだぁ?んなもん俺が知るかよーッ!」

静「ゲッ、本当品がないわねーッ。あたしなんか上流家庭の生まれだから、こーいうの完璧だってのーッ」

委員長「そりゃあ心強い。じゃあ入店して大丈夫って事だね?」

静「グッ……まあ、そうだけど……あ、そうか。もしかしたら同じ名前の別人の店の可能性だってあるわよね……うん、きっとそうよ。そうに違いないわ……」

虻村「何ブツクサ言ってんだァ?」

静「……何でもないわよ。ホラ!さっさと入りましょッ!」

ガラガラーッ……

億泰「っらっしゃいやせェェ~~ッ!!」

仗助「ん、うめェな億泰ッ!また腕上げたんじゃあねーかァ?」モグモグ

億泰「だっろォ~~ッ?やっぱし?そう思うッ?」

仗助「しかし…・・・オメーその板前の格好、いつ見ても似合わねーなァ!」

億泰「うっせーよ仗助ッ!」

ギャハハハ……

静「…………」ガックリ

広瀬川「し、静さん……大丈夫?」

委員長「すごい落ち込みようだね……」

本日はここまでです。次回お料理開始。
あ、某料理SSは大好きです。アクアパッツァとかシチューとかよく作ります。超うまい。

ペッシのそっくりさんって、コリヤー兄弟の泥棒しか思いつかないけど、他にいるっけ?
あと背景適当の回って、7日で一週間のこと?あれ描きおろしだから逆に手こんでると思うけどなァ……。

えー似てないだろ……

ジョジョにわけわからん難癖つけるのはメチャゆるせんけど、荒木先生を無駄に神格化すんのもどーかと思いますよ。
荒木先生はかなり適当で物忘れが激しいのは認めないといけないと思う……リサリサに星のアザあるの見たときに絶望を感じたもの……。

                  
                          _
                        __   /::ヽ\
                         f ハ_/::::::∧│   __
                        しノ ̄ヘ.`ヽl├=≠リ
                      ,.ィニ、^V| :| ト、 し           
                         /^ヽ. l|│| :| | l!            …わかった この話はやめよう
           __      /  l || |│ :| | l|

             / ヽV^V^!  /__   ||│| :| | l|            
             ,′  リ、 l| l|__∧ l  l〔||〔| | 〔| |::!|            ハイ!! やめやめ
.           l   /´:::/ リ一' } | l ||│| :! | l.|、x‐v-、
             ト.-.∧__/_/  し /   l|│| .::| | l.|/::l |:::l |    
           ̄      |       l| l│:::| | !リ:ノ ノ:::リ        それとも
                  |       リ l│::; /:/ `┴一'           ………
            n/7./7 ∧  ヽ- // /:/::///.    iヽiヽn
              |! |///7/:::ゝ  ∨/ /:/::///      | ! | |/~7    ………
             i~| | | ,' '/:::::::::::││| ̄l::///    nl l .||/     「 ┼∠ヽ   -‐ァ
             | | | | l {':j`i:::::::::::〕_| |_ //| l      ||ー---{       イ 囗 つ  (_ 」 帰るか ……?
              | '" ̄ ̄iノ .l::::::::::::::::::::::∧       | ゝ    ',
      , 一 r‐‐l   γ /、::::::::::::::::::::::::〉ー= ___  ヘ  ヽ   }
    / o  |!:::::}     / o` ー 、::::::::::::i o ,':::::::{`ヽ ヘ     ノ


次回投下は日曜日予定です。

仗助「あん?静……と、そのお友達じゃあねーか。どうしたんだ?億泰の店によォ~~」

億泰「静ァ?おー!オメー久しぶりじゃあねーか!春先に仗助の家引っ越してきた時に会ったっきりか?」

静「……6月に一回会ってるわよ。あたしが、その……泥棒した時に」

億泰「ああ、そういやそうだったなァァ~~。あの時は悪かったぜ。暗がりで顔わかんなかったからよ~~怖がらせちまったな?」

静「別に怖がってなんかないっての!億泰のくせにナマイキね~~ッ!」

委員長「何だ、静さんのお知り合いかい?」

静「あたしの知り合いじゃあなくって、兄さんといっつもバカやってるオッサンよ!」

億泰「仗助……オメーどういう教育してやがんだァ?」ションボリ

仗助「よくおれの話に出てくるからなァ、オメー……それで何か、ナメられてんだろーな」

静「クッソォ~~……億泰の店って知ってたら完ペキ来なかったのにさァーッ。やっぱ今日あたし運勢ワルいのかな」

億泰「ウダウダ言ってんじゃあねえよッ!オメーらおれの店に来たっつーことはよ~~、昼飯食いに来たんだろ?」

委員長「はい。お願いできますか?一応、昼食はお手頃な価格だと聞いて来たんですけど」

億泰「おうっ!昼時にやってるメニューは、『にじむら定食700円そして幸せが訪れる』だぜぇ~」

静「普通こーいうのはワンコイン500円なんじゃあないのーッ?200円まけろっ」

広瀬川「横暴だよォ~静さん……700円でも充分だと思うよ?」

虻村「オメーッけっこうケチくせえ野郎なんだなァ~~ケーベツするぜーッ」

静「あたしはそこの兄さんのせいで無駄にお金払うことなってんのよ?ホントだったらビタ一文払いたくないもんねーッ!」

仗助「わかったわかった。静ァ、オメーのメシ代はおれが払っといてやるよ」

静「マジィ?兄さんやるゥ!今日もチョーイケてるねーッ!ウフッ♪」

仗助「ついでにお友達の分もおれが持つぜ。億泰、後で払うからよーッ」

広瀬川「えっ!?いや、それはさすがに悪いですよッ!」

虻村「そうだぜェ~!俺達はこいつみてーにみみっちくねーっスよォ~!」

仗助「いいっていいって!いつも静と仲良くしてくれて嬉しいんだからよォ~こっちは。このくらい払わさせてくれ」

静「金欠のくせに格好つけるんじゃあないっての」

仗助「うっせェーよッ静ッ!……それにしても億泰」

億泰「あ~ん?」

仗助「『そして幸せが訪れる』って……ウププ!スッゲェーセンスだよな……ププ!」

億泰「おれだってよォォ~、格好良く『にじむら定食』の一言にしたかったんだぜッ?けどよォ~~うちのカミさんが、どーしても入れろ!ってうるさくてよォォ~……」

仗助「どうせならもっと能書きをやたらに長くしてみねーか?山形県天童市の菅原さんが愛情たっぷりの放し飼いニワトリの卵を使った添加物無添加のだし巻き卵をふんだんに使った青空の下での料亭の味にじむら定食700円そして幸せが訪れる……とかァ~~」

億泰「覚えきれっかよーッそんなの!」

仗助「『そして幸せが訪れる』アハハハハハハ」

億泰「『そして幸せが訪れる』アハハハハハハハハ」

静「……さっさとごはん作ってよ」シラケーッ

億泰「おうッ!悪かったなァ~これでも腕は動かしてるんだぜっ?」ジャッジャ!

虻村「……やっぱオメー、メシ楽しみなんじゃあねーか」

静「ぱっと食ってチャッと出たいだけよ、こんな店ェーッ」

ガチャッ……

静「……ん?」

幼女「…………」チラリ

静「……?」

億泰「おうっ、那由他(ナユタ)ァァ~。ねこドラ君はもういいのかよ?キチッとDVDケースにしまっとけよォ~。天国の兄貴に怒られるぜっ」

那由他「……」

億泰「今お客さん来てっからよ~、もうちょい待ってくれよ。なっ?」

那由他「パパ……じいじがおなかすいたって言ってる。あと猫草のキャットフードどこ?」

億泰「キャットフードはスーパーの袋に入れっぱなしになってるはずだぜ。親父のメシもすぐ作るからよーッ」

那由他「……あとあたしもおなかすいた」

億泰「すぐ作るぜ!おんなじ定食でいいよなァ~?ギョーギ良くイスに座って待っててくれ。猫草のメシもおれが後で準備すっから!」

那由他「……うん」テクテク……

ドサッ

那由他「……」

仗助「ほへー、那由他ちゃんおっきくなったなァ~~」

那由他「……3日まえにあったとおもいますけど」

仗助「男子3日会わずば活目して見よ!だぜ~ッ。那由他ちゃんは女の子だけどなーッ。で、今いくつになったんだ?」

那由他「……5さいです。じょーすけさん」ペコリ

仗助「来年小学校かァ?5歳にしてはホント礼儀正しい良い子だな~~ッ。静も見習ったほうがいいぜ」

静「あたしを引き合いに出すなッ!ていうか兄さん、この子は……?」

仗助「億泰の娘だよ。那由他ちゃん」

那由他「……はじめまして」ペコリ

億泰「ちょっとブアイソーなとこあっけどよォ~~、自慢の娘だぜッ!」ムフン!

仗助「いや本当、億泰に1ミリも似なくて良かったゼ」

億泰「どーいう意味だコラッ!」

仗助「しかし、億泰が結婚して子供まで産まれるとはなぁ……」シミジミ

億泰「自分でも結構驚きだけどよォ~。やっぱ男たるもの、家庭を持つっつーのはいい事だぜェー。日々の仕事にも張り合いが出るっつーか!」

仗助「猫草や親父の世話もあんのに、その上子供までとは……オメーやっぱかなりタフなんだな」

億泰「親父も最近は調子いいみてェだし、猫草も親父や那由他がキチンと世話してっから大丈夫だぜ。まァ~~猫草は、最近『ちょっぴり』大きくなっちまったのと、おれには全くなついてねーのが問題点だがなぁぁ~~。オメーも結婚して子供つくったらどうだ?自分の子供っつーのはカワイイもんだぜェーッ」

仗助「いや、おれにはもうすでにデケー子供がいるからよォォ~~」チラリ

静「頭消すわよ兄さん」

広瀬川「な、なんだかいい匂いがしてきたね……ボクもうお腹ペコペコだよォ~」グーッ

虻村「きっとスッゲェーうまいんだろーなァ~~。俺もハラの虫が鳴りっぱなしだぜ」ギュルルー

静「あんま期待しないほうがいいわよ……億泰の作るご飯だもん」

億泰「そりゃあどーいう意味だっコラッ」

仗助「いや静、おれもよォ~~最初億泰がメシ屋になるっつった時は『億泰、オメー気でもくるったのか!?』って心配になったけどよーッ、こう見えて昔っから自炊してっから、実は料理上手いんだぜ」

静「そう言われても、あたし信じないわよ。どーせ包丁もロクに使えなくて『ザ・ハンド』で削って切ってるんでしょ?」

億泰「んな事おれがするかよっ!」

委員長「静さん、実際見てもいないのに想像だけで人をけなすの、僕はあまり好きじゃあないなーっ。食べてからでも遅くはないだろう?」

静「フンッ!もしちょっとでもマズかったら、カネなんて払わないからねあたし」

仗助「カネ払うのおれだろうがよォ~~……」

静「それで?ご飯はまだなの?あたし達午後からも授業あるんだから、早くしてよねーッ」

億泰「慌てるんじゃあねーぜ!おれ一人で切り盛りしてっからよぉー流石にこの人数のメシ作るのは時間かかるんだよっ」

広瀬川「ええっ?一人でやってるんですか?結構大きな店ですけど……?」

委員長「そうだね。広いカウンター席にテーブル席が4つ……奥には宴会用の座敷もあるみたいだし、こんな店をバイトも無しに一人でなんて……」

億泰「まあそこは、おれの手際の良さがなせる技だよなァァ~~」エヘンッ!

虻村「すッ……すげえっ!ソンケーするぜッおやっさんよォ~~!」

億泰「そいつァ~~どーもよォ~~!オメーらちょっぴりサービスしてやるぜっ!」フフン!

仗助「静、億泰の野郎『ザ・ハンド』使ってメシ作ってるぜ」ヒソッ

静「げ、やっぱり削ってるんじゃあないの」

億泰「言うんじゃあねーよっ仗助ッ!ちょいと火加減見たりナベ揺すったり洗いもんするのに使ってるだけだっ!」

仗助「あとはニンジンの皮とかキャベツの芯とか、生ごみ削ってゴミ減らしたりなぁー」

億泰「おう。時代はエコだぜ、エコ」

静「うげげ、聞きたくなかったわ。そんな家庭的な『スタンド』の使い方」

億泰「平和的に利用して何が悪いんだっつうの!ったく……よし、そろそろ揚がったかな、っとォ」

カチャカチャ

虻村「おおッ、ついに……完成っすかあッ!?」

委員長「ど、どんな料理なんだろうね……」

億泰「待たせたなァ~~おめーらッ!億泰様特製!『にじむら定食』だぜぇ~~!」

ドンッ!!

広瀬川「わあっ!」

静「こ……これはっ!?」

イメージ画像

http://i.imgur.com/yYrkXTj.jpg

バァーン!

虻村「す……すっげェーウマそうだぜェーッ!やっぱ日本料理ってこうじゃあねーとなっ!」

委員長「なかなかのボリュームだね……僕全部食べられるかな?」

億泰「ご飯はおかわり自由だぜェ~~。まッ!さっそく食ってみてくれやっ」

那由他「……パパ」

億泰「おうっ!那由他の分もちゃーんと作ってるぜーッ!ここで食うんだよな?ほらっ」

那由他「ありがとう。……いただきます」ペコリ

静「フーン……見た目は悪くないんじゃあないのーッ?」

広瀬川「もうっ!静さんは素直じゃあないんだからぁっ」

委員長「じゃあさっそく……いただきまーす」

虻村「まず最初はみそ汁からだよなァ~~ッ!どれどれ……」

ヒヤッ!

虻村「――おおうッ!?」ビクウッ!

虻村「……?……なっ?」

静「?……虻村?」

広瀬川「ど……どうしたの?いきなり声を上げちゃって?」

虻村「……おい、おやっさんよォ~~……コイツぁ~どういう事なんだッ?コラッ」

億泰「あーん?何か不満でもあんのかよっ?」

虻村「俺のみそ汁……キンッキンに『冷えて』やがるじゃあねーかッ!この店では冷たいみそ汁出すのかよッあァ~~ンッ!?」

ドーン!

虻村「何かの嫌がらせかっ?俺のみそ汁だけ冷たいなんてよっ!」

静「いや……虻村、そうじゃあないわ」

虻村「あん?」

静「あたしのみそ汁もすっげぇー冷たい。まるで……冷蔵庫で冷やしたみたいにね」

委員長「それに……このみそ汁、具材らしい具材が全く見えないね。なんだかドロドロしてるけど……?」

億泰「それはよォー……億泰様特製『冷たいみそ汁』……格好良く言うなら『冷製ミソスープ』だぜーっ!」

虻村「れ……『冷製ミソスープ』ゥゥーッ!?」

バァーン!

材料

・味噌
・だし汁(かつおだし・濃目)
・山芋(好きなだけ)
・おくら(タネを抜いて茹でて細かくつぶし、ひとつまみ乗せて彩りをよくする。写真ではメンドーだったのでやってない)

(賞味時期 山芋とみそ汁が分離しないうち)

あまりにも暑い日にうんざりした億泰が
てきとーにみそ汁を冷やしてみたら、うまかったというのが
このみそ汁の完成秘話(らしい)。
食べる前によくかき混ぜること。

億泰「暑い日に熱いみそ汁なんか食いたくねーって思ってよォ~、みそ汁を冷やしてみたんだよっ!」

静「うげげげーっ!クレイジージャパンね。冷たいみそ汁なんか気持ち悪いわよっ」

委員長「いや、冷や汁という郷土料理がこの日本にはあるからね……あれはほぐした魚とかが入った冷たいだし汁を、ご飯にかけて食べるんだったか」

虻村「みそ汁はよォ~~、あったかいのがいいんだよっ!日本の伝統にケンカ売ってるぜっこの料理はよーっ!」

億泰「文句は食ってから言いやがれっこのダボどもがーッ!」プンプン!

広瀬川「生まれて初めてだよ……冷たいみそ汁なんて」オソルオソル

委員長「しかもドロドロしてるなんて……どんな味がするんだ?」

虻村「うーん……」

静「……」

ゴクッ!

四人「「「「ゥンまああ~~~~いっ!!」」」」

虻村「こっこれはああ~~~~っ」

静「この味わあぁ~~っ」

億泰「だっろォォ~~ッ?」ニヤニヤ

広瀬川「冷たいみそ汁がっ!ちゅるりとノドを通って胃に流れ込んでいく快感っ!な……なんてのどごしの良さなんだろうッ!?」

委員長「山芋が丁寧に細かくすり下ろされているんだっ!それに味噌もカタマリとか細かいツブとかが全く無いっ!しっかりと味噌をこしとって味だけを残しているっ!」

虻村「それにっ!味噌に負けないくらいにドきつく、『これは下品なんじゃあねーかッ?』っていうくらいしっかり取られたかつお出汁っ!こいつが下品なんかにならず、スッゲェーいい力を出してるぜっ!」

静「決してメインじゃあないけれど、味噌の味ととろろの味を、ギュッ!っと繋いでいるわっ!『縁の下の力持ち』っつーんですかあ~~たとえるなら、ジブリ作品における久石譲!ポルノグラフィティの曲に対する本間昭光!サイバーコネクトツーのグラフィニカ!……つうーっ感じねぇ~~っ」

億泰「喜んでもらってスゲー嬉しいぜーッ」ニコニコ

虻村「こりゃあ他の料理にも期待出来るんじゃあねーかっ!?」

委員長「ああ!他の料理も食べてみようか」カチャッ

広瀬川「ええっと、これは……?」

億泰「そいつは『サバ』だな」

静「……『サバ』ァ?」

億泰「メインの料理ッ!億泰様特製『サバの竜田揚げ』だぜーッ!」

バン!

材料

・サバ(一匹まるごと)
・生姜
・醤油
・料理酒
・ごま油
・片栗粉

(賞味時期 熱いうち)

億泰「さっ!食事を続けるぜ……?」

ズン!!

本日はここまでです。日にち空いてすみませんでした。次回投下は早いと思います。たぶん。
ちなみに今回の写真は、ある日の我が家の晩ご飯。日本料理はだしと醤油と酒とみりんがあればだいたい何とかなる。

あと鎧武って何?ジョジョ以外はあんまし詳しくない……。

・億泰特製みそ汁の詳しい作り方

1.だし汁を作る。鰹節から取ってもいいけど、素人には難しいのでパックのでOK。
個人的にいりこはあまり合わない気がするのでかつお出汁で。こんぶはだしが繊細すぎるのでダメ。
濃目にがっつり取る。

2.味噌を溶かす。細かい目の網杓子を使う等して、味噌の細かいカスなんかを入れないようにすること。
あとで山芋を入れるので、これも「ちょっと味濃いかな?」ってくらい溶かす。

3.山芋は皮を剥いて酢水に付けてぬめりを取り、すりおろしておく。

4.みそ汁を火から下ろし、氷水の入ったボウルにつけてあら熱をとり、そこに少しづつ山芋を溶かす。

5.冷蔵庫にいれて冷やす。よく冷えたら器に移して、茹でてすりつぶしたおくらを乗せると出来上がり。簡単。

結局遅くなって申し訳ないです……
土曜投下予定、調子良ければ日曜も投下します。ダメだったらどっちかで。
あと2、3回の投下で終わると思います。たぶん。

虻村「この竜田揚げ――」

ツンツン

虻村「『サバ』を使ってんのか?」

静「…………」

億泰「おう。『サバ』を使っているぜ……日本は島国だから昔から魚食文化があるよなァ~~。縄文時代の遺跡から魚や貝の『アラ』が見つかったっていう話もあるし!最近魚を食う若いモンが減ってるっつーウワサだけど、おれとしてはそれはかなりサビシィー話だと思うんだよなーッ」

静「……」ブスッ

広瀬川「どうしたの?静さん……なんか、不機嫌な顔してるけど?」

静「億泰……アンタ知ってるでしょうが。あたしが『サカナ嫌い』だっていう話」

億泰「……」

委員長「好き嫌いは良くないよ、君ィー」

静「そんな単純な話じゃあないっての。あたし赤ん坊のころ溺れたことがあってさあ……その時は兄さんとおじいちゃんが助けてくれたんだけど、それから心の奥底にトラウマというか、イヤーな思いが刻みつけられちゃってね。水槽いっぱいにたまった水とかフワフワ泳ぐ魚を見たら、気分が悪くなるのよ」

仗助「オメーあん時0歳じゃあねーか……覚えてるわけねーだろう?」

静「ええ。『溺れた』ということは覚えてないわ。けど、『水関係でイヤな事があった』っていう事だけは理解してる。だから魚とかも嫌いなのよ。……最近サカナ型の『スタンド』絡みでイヤな事もあったし」

仗助「ホンット、強情なヤツっすねェ~~……」ハァー

広瀬川「……うーん、静さんの肩を持つわけじゃあないけど、ボクもあまりサバは好きじゃあないかなァ。なんていうか……独特の臭みがあるよね、サバって」ツンツン

広瀬川「なんだか水っぽくて味も薄いし……身もカスカスしているイメージがあるよォ~~。好んで食べる魚ではないっていうか……」

虻村「それによォ~~おやっさん!今は『夏』だぜェ~~?」

億泰「おう。それがどうかしたかよォ~~?」

虻村「知らねーのかッマヌケッ!サバは『冬』の魚なんだよーッ!夏に食うサバなんざ、脂がノってなくてマズいってもんじゃあねーぞォ~~ッ?俺、そーいう事詳しいもんねーッ!」

億泰「ほー、良く知ってるじゃあねーかッ。けどよォ~~その解答だと『50点』だよなァ~~」フフン

虻村「あ~~ん?」

億泰「いいから食ってみろって!苦情はその後受け付けるぜーッ」

委員長「自信満々なんだね……どれ」ヒョイッ

カリッ!!

委員長「……」モグモグ

広瀬川「ど……どうなの?委員長」

委員長「……な……なんだこれはァ~~っ」モグモグ

虻村「どーせスッカスカでボロボロの身なんだろッ?食っても味なんかしねェーぜー」パクッ!

二人「「うッ……うんまァァァ~~いッ!!」」

広瀬川「ええっ?」

静「ウソでしょォォ~~?」

委員長「脂がぎっしりノッていて、噛むと口の中で旨味が溢れ出るッ!肉厚ですごくジューシーだ!臭みがあるだなんてとんでもないッ!噛めば噛むほどおいしさが口いっぱいに広がるぞッ!!」モグモグ!

虻村「一口食うごとに白いご飯が欲しくなる味だぜッ!!味に引き込まれるっつーか、食べ始めると止まらないっつーか……たとえると、暇つぶしに見ようとしたアニメを気付いたら全話見ちまったっつー『カンジ』かよぉ――~~っ!」
ガツガツ!

広瀬川「ボ、ボクも……」パクッ

三人「「「ンまぁ~~いっ!!」」」ブワッ

静「……」

静「……」

オソルオソル

静「……えいっ」

パクッ!

静「……」

モグモグ……

静「うっ、うま……」

億泰「あ~~ン?静ッ、今なんか言わなかったか?『美味い』って聞こえたよーな気がしたぜ?この億泰様はよォ~~……聞き間違いか?」ニヤニヤ

静「う!『うん、まあまあね』って言ったのよ!美味いわけないじゃん、こんなサカナ料理なんかさーッ!」

億泰「ほーお?んじゃあ~~仕方ねーな!特別に『おかわり』も用意してたんだが……オメーはいらねーっつーことだなァ~~?男三人にはトーゼンごちそうしてやっけどよーッ」

静「うぐぐっ!」

広瀬川「いいんですか!やったあ~~いッ!」

虻村「おやっさんの懐の深さに感動するぜェ~~ッ!くうう~~っ!クッ!クッ!生まれてきてよかった~~」

静「う……うう……ぐぬう……」プルプル

億泰「んじゃあ『三人分』のおかわりを揚げてくるぜー」クルッ

静「う…………う、まい、です。……オクヤスサン」ボソリッ

億泰「ン?ンンン?ゼンッゼン聞こえねェ~~なァ~~?おれもちょいと『トシ』とっちまったかなァ~~?なんか言ったかよ?静ァ?」

静「う……うまい!って、言ってんのよ!このダボ泰ッ!!クソッ!サカナ料理のくせに!サカナのくせに!」ガツガツ!

億泰「ガッハッハ!最初っから素直になりゃあ~~いいのによーッ!全員分おかわりごちそうしてやるぜッ!」

仗助「よかったなー静ッ。『食わず嫌い』が治ってよォ~~」

静「フンッ!今でもフツーに魚は嫌いよッ!これは、まあ……美味しいから食べてやってるだけだしッ!」

億泰「そいつァーありがとよ~~ッ」ニヤニヤ

虻村「しかし……こりゃあどういう事なんだァ?『サバ』っつーのは冬に脂が乗る魚なはずなんだけどよォ~~」モグモグ

仗助「オメーの言ってんのは『マサバ』の話だな。確かにマサバは冬に脂が乗る魚だ。夏のマサバなんざ食えたもんじゃあねー」

委員長「!……そうか。この魚は『マサバ』じゃあなく……」

那由他「……『ゴマサバ』」モグモグ

億泰「おッ!那由他ァ~~よく答えられたなァー。そうッ!こいつァー『マサバ』じゃあなく『ゴマサバ』っつー魚なんだよォ~~ン」ニヒヒ

静「『ゴマサバ』?へー、そっちの方が美味しいんだ?」

委員長「いや、ゴマサバは普通マサバより安くて味の劣る魚だ。こんなに美味しくはないはずだけど……」

那由他「夏は、ゴマサバのほうが美味しい」パクパク

億泰「マサバは冬に脂が乗る魚だけどよォー、ゴマサバは年中通して味がほとんど変わらねー魚なんだよ。夏はマサバよりゴマサバのほうが脂が乗ってってウマイんだぜ。少し大きさは小さいけどな~~」

広瀬川「それにしても……ボクが昔食べたサバは、臭くって水っぽくって味が無かったんですけど」

億泰「それはたぶん、下ごしらえが悪かったんだろうなあ~~。魚っつーのは卸すと味がグングン悪くなる。身が空気に触れて酸化するんだよな。とくにサバは身が弱くって痛みやすいからよォー、卸したらスグに食わねーとダメだぜ」

仗助「それと……そのサバ、もしかして血を綺麗に落とすために、『水』で洗ったんじゃあねーかァ?」

広瀬川「?……はあ。たぶんそうですけど……洗わないと血だらけですよね?」

虻村「まさかッ!?洗わねーほうがウマイっつーのかよォ~~?」

委員長「そんな訳ないよ。……洗わないと、血なまぐさくって食べられたもんじゃあないはずだ」

億泰「ウチはよォ~~、卸した魚は『コイツ』で洗ってんだよなッ!」

ドンッ!

静「?……何これ?『氷水』?」

億泰「まあ、魚屋ではチョ~~基本的な事なんだけどよッ、家庭ではあまり知られていない事っつーか……ちょっぴり舐めてみろよ」

虻村「おおッ!こいつァ~~アレっすかァ~~ッ?スッゲェーうまい水なんじゃあないのォォ~~ッ?」

グビッ!!

仗助「あっバカ」

静「えっ?」

虻村「――オゲェェェ~~ッ!!かっ!!『辛い』ィィィィィウエエエエェェェ――ッ!」オゲーッ!

億泰「こいつァ~~濃度3.5パーセントの『塩水』だよッ。だから言っただろうが、『舐めてみろ』ってよォ~~」

虻村「しッ……『塩水』だァァ~~ッ!?」ペッペッ!

仗助「『浸透圧』って習っただろ?濃い水は薄い方へ流れていくっていうヤツだよ。真水で魚を洗うとよーッ、魚の旨味とかが全部水の方へと流れて、逆に薄い水が魚肉に染みこんじまうんだよ」

億泰「けどよォ~~よく冷えた『塩水』で洗うとよッ!旨味が流れでないばかりか、魚肉がしまって美味しさが閉じ込められるし、魚体表面に発色と光沢が出るんだよ」

静「へェ~~。そんな効果があるのねェ……」

億泰「他にもサバの独特な臭みを消すために、料理酒や生姜に漬け込むとかいう努力してんだぜッ」

広瀬川「それでこんなに美味しいんですねェ~~」モグモグ

委員長「ふう……しかしちょっぴり、口の中がギトギトしてきたかな……」

虻村「そうかァ?俺はまだまだ食えるけどよォ~~」

委員長「僕はあまり脂っこいものが得意じゃあなくってね。……この『大根』の料理でも食べてみるか」

ヒョイッ

委員長「これは……タクワンとはまた違うみたいだね。白いし少しナマっぽい。本当にナマの大根って訳じゃあないみたいだけど……」

カリッ!コリッ!

委員長「なんだこれはぁぁ――ッンマイなあああッ!!大根を『梅干し』と『だし汁』であえているのかっ?酸っぱい梅干しが大根のサッパリした味とピッタリ合うッ。ギトギトした口の中が綺麗にリセットされていくぞッ。うっ……美味すぎる……」

カリコリ

委員長「うぉおおおおッ!口の中がスッキリしたああっ――ッ。まだまだ竜田揚げが食べられるぞォーッ!」

広瀬川「この『おひたし』もスッゴク美味しいよォ~~。素朴なほうれんそうのおひたしだけど、シンプルな中にすさまじい完成度を感じるッ!新鮮でみずみずしい素材本来の味がゼンゼン失われていないッ!なんだか、食べると身体がキレイになっていく気すらするよォ~~」

虻村「日本料理のいい所はよォ~~、小さい小鉢がいっぱいあって、いろんな美味いもんをちょっとずつ食える所だよなァ~~!この『厚揚げの煮物』も『茶碗蒸し』も、スッゲェー美味しいぜッ!」

ガツガツ!

静「本当、どれも悔しいくらいに美味しいわ……ま、まあトニオさんには負けるけどねッ」

億泰「確かにトニオさんは天使のような料理人だよなァ~~。いつかは超えられるようにガンバルぜ……」

パミィーッ!

静「?……何の声?今の?」

那由他「パパ、じいじが呼んでるよ」

億泰「おッ!スマネェ~~オヤジッ!今スグご飯準備すっからよォ~~!猫草にもメシやらねぇーとなァ~~」イソイソ

仗助「んじゃあよォ~~猫草のほうはおれが手伝ってやるぜ」

億泰「ありがとよッ仗助ッ!あとオメーらに食後のデザートを用意してやんねーとなッ!悪いけどよォ~~ちょいと席を外させてもらうぜッ」

広瀬川「あ、ほんとお構いなく」

委員長「もう少しゆっくり食べさせてもらいます。……時間もまだあるし」パカッ

静「……しかし、ホント美味しいわね……なんか負けた気分だわ」モグモグ

委員長「あ……メールが来てる。ちょっとごめんね……こういうのってマナー違反だろうけど」カチカチ

虻村「気にする事ねェ~~だろーがよッ。どうせ俺らしかいねーしなッ」バクバク!

静「虻村、アンタはもう少しマナーに気ィ使いなさいよね」ハァー

虻村「ああん?」

静「ご飯をガツガツ食うのは『かきこみ箸』って言って、ホントはすっげェー行儀悪いのよ?口とおわんは離して食べなさい」

広瀬川「へェーッ、静さん詳しいんだね?」

静「そのくらい常識よ、ジョーシキィ~~ッ」

虻村「って言われてもよォ~~、俺そーいう『マナー』とか得意じゃあなくってよォ~~」

静「見ていて気持ちいい食べ方すりゃあいいだけよ。ホラ!小さい子だって見てるんだから、アンタ手本にならないとダメでしょ~~ッ?」

那由他「……」パクパク

委員長「……こっちを気にせず自分の食事を楽しんでいるようだけどね」

虻村「俺は自分が気持ちいいように食べるぜーッ。その方が美味しいからなッ」

静「ハァ……ったく」

虻村「ああーッ、もう竜田揚げが無くなっちまったぜェ~~ッ」カラッ

広瀬川「もう?おかわりけっこうあったのに……」

虻村「うう、美味すぎるんだよなァ~~この料理ッ。ああ、もう少し食いたかったぜェ……」チュパチュパ

静「だからって箸を舐めるなっての。イジきたないのはどっちなのよ、全く……」

スパァァン!

静「?……」

委員長「……」

広瀬川「……」

虻村「……は?」

シュウウウウ……

静「……何の音?」

虻村「あ……あがが、ガガ……!!」

ボトン!

静「な……何か、床に落ちたわよ?何……その、ピンク色のナメクジみてーな『もの』は?」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

虻村「あひっ、ひ……ヒィィィィ~~」バタバタッ

委員長「?……虻村君、どうかしたのかい?」

広瀬川「ど、どうしたの?……今の音、虻村君のほうから聞こえたみたいだけど……?」

虻村「ヒッ!ヒッ!ヒハ……ひゃあ……」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

静「……『ヒハ』?……何が言いたいのよ、虻村」

虻村「ヒハ……ほへの、ヒハひゃあぁぁぁぁ……!」

静「!!……も、もしかしてッ!!」

ガシッ!!

静「虻村ァァ――ッ!?アンタッ!『舌』が無いじゃあないのォォ――ッッ!?」

広瀬川「なッ……」

委員長「何ィィ――ッッ!!?」

ドォ――z__ン!!

広瀬川「と、という事は……今『落ちた』のって……ヒ、ヒイッ!」

虻村「う、うげげ……げひい」

委員長「どういう事だ……どうして、虻村君の舌がいきなり吹き飛んだんだァァ――ッッ!?」

???『……シュフウーッ……』

静「――はッ!!」

クルリッ!!

???『シュフゥー……』

静の背後にッ!いつの間にやら『スタンド』が、さながら亡霊のようにひっそり立っていたッ!
その見た目はどう見ても『鎧武者』で、右手に日本刀のようなものを持っているッ!!

静(こッ!こいつがッ!虻村の舌を斬ったっていうのッ!?何なのよコイツ……なんでいきなり現れたのッ!?)

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

???『……シュウーッ……ワタシは『中立』ダ。だから、教えヨウ……』

静「……!?」

???『『せせり箸』……『かきこみ箸』……ソシテ、『ねぶり箸』……』

静「……は?」

那由他「『マナー違反』よ。『せせり箸』『かきこみ箸』『ねぶり箸』……」

静「!!」バッ!

那由他「……」

静「……」

委員長「!?……えっ?」

広瀬川「な、那由他ちゃん?……今なんて……?」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

那由他「『公正さがルール』……正直に話すわ。今その人の舌を斬ったのは、このあたし」

広瀬川「えっ……?」

那由他「そこのアッタマ悪そうな人は、あたしのパパが一生懸命作った料理を、『敬意を払わずに』食べた……散々マナー違反をしてね。それってすっごくユルセないでしょう?」

委員長「は……?ゆ、『許せない』……?」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

那由他「ええ。パパの料理を粗末にする人は『許せない』……だから『奪った』のよ。あたしの能力で、『舌』を……もう一生美味しい料理が味わえないように、ね」

静「なッ……ん、だとォォ~~……そういう能力だっていうのッ!?そういう『スタンド能力』ッ!」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

那由他「あたしは『仏さま』のように寛容な心をもっていないわ。だから……ユルせるのは『2つ』まで。『3つ』犯したものには容赦しない」

委員長「なんだって……?」

虻村「あぐぐ……」

那由他「マナーに『寛容』なんてものは無いわ。『正しい』か『正しくない』かのどちらか。パパの作った料理に敬意を払わないやつは……」

虻村「ぐひぃ……」

バタン!

那由他「舌をうしなって……死んでしまえばいいのよ」

広瀬川「虻村く――んッ!」

委員長「ヤバイッ!呼吸をしていないぞォォ――ッ!!」

静「何ィィ~~ッ……!」

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

那由他「さ……食事を続けましょう?」

ニコリ

本日はここまで。
また一週間ほど時間いただきます。ごめんなさい。

魚を卸すときのコツは、よく研いだ出刃包丁で、ヒレにそって滑らせるようにして切ること。
もちろん食べる直前に卸すのが一番だが、素人にはムズかしいのでやめといたほうがいい。
一般家庭の文化包丁はマジで切れない。

丸の状態で魚を売ってるようなスーパーでは、頼むと卸してくれるので、それを活用するのが一番いい。
余談だが、水曜と日曜は魚を買わないほうがいい。市場が休みなので、売ってる魚のほとんどが昨日入荷した魚のため。
(まあ入荷する所はするし、水曜に市場やってることもあるし、そもそもコレ、全国共通なのかはわかんない。少なくとも関西では水曜と日曜に休みが集中してる)

・大根の梅干しあえの作り方
1.大根の皮を剥いていちょう切りにし、塩をふって揉み込む。
2.冷蔵庫に入れて冷やす。塩によって水気と辛味が抜けて食べやすくなります。
3.梅干しのタネを取り除き、裏ごししてだし汁に溶かす。白だしなんかがよく合う。
4.大根の塩を軽く水で洗って、梅干しだし汁であえる。超簡単。

・おひたしの作り方
1.好きな野菜をさっと茹でる。ほうれんそうや菊菜以外にも、普通だったら捨てるような『ブロッコリーの芯』とかでも大丈夫。
2.冷やしてポン酢やしょうゆ、だし汁、ごま油等好きなものをかけて、最後にドバっとかつお節をかける。メチャ簡単。

こんなにも簡単な方法で一品増えるんだから、日本料理ってやめられない。
鼻歌まじりにサッと作って、お母さんの仕事を奪っちゃおう。

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

広瀬川「虻村くんッ!!こ……こんな事って……うわああッ!!」

委員長「気道確保だッ!!まだ時間はたっていない、間に合うはずだッ!!」

那由他「うん……適切な処置が出来ればゼンゼン間に合う。それは本当。……ほけんの授業でしっかり習った?いねむりはダメ……しっかり聞いていないと、キドーカクホなんて出来ないと思うよ?」

静「くっ……」

那由他「それに……もしも、全員『マナー違反』しちゃって、だーれもキドーカクホなんてする人がいなくなっちゃったら……どうなっちゃうのかなァァ~~?ナユタ、よくわかんなァァァ~~いッ♪キャハハハハ♪」

静「――『ワイルド・ハニー』」

ドンッ!!

広瀬川「えッ!?」

委員長「スッ!『スタンド』!」

静「虻村の舌を元に戻しやがれェッ!!うおおおお――」

ワイルド・ハニー『ドォォラァ――!!』

ビュッ……

那由他「親切丁寧に『警告』してあげる。食事の席で暴れまわって他の人を殴るなんて……相手への敬意に欠ける『マナ
ー違反』だと思わない?」

静「!!」

ワイルド・ハニー『ぐッ!!』

ピタアッ!!

ワイルド・ハニー『ぐ……うッ!うッ!!』ブルブル

那由他「あなた達の誰か一人でも、『3つ』マナー違反を犯さずに、料理を完食出来たなら……舌は戻してあげるわ。すぐにね。……だけど、全員舌を斬られちゃったら……パパのおいしいデザートは食べさせないわ。絶対に。……ああ、大丈夫。運が良ければ死ぬことはないわ。たぶんだけどね。フフッ」

静「……このチビッコがァァ~~ッ……」ブルブル

那由他「……いつまで拳を握りしめて、殴りかかろうとしているの?……目障りだし怖いからやめてほしいなあ」

ワイルド・ハニー『……』

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

ガシッ!

静「あァ~~らッ!那由他ちゃんのお茶碗カラッポじゃあないのッ!おねーさんがご飯よそってあげるわねッ!おっきくなるためにはいっぱい食べないとォォ~~♪」

ポンポンッ!

那由他「……あたしの食事時間を長引かせて、『凡ミス』させようとしているの?」

静「えッ?なあに?聞こえないわねェェ~~ッ。大盛りでいい?」

那由他「……あたしはミスなんて絶対しない。精神的動揺によるミスはね。どんな料理だってマナー違反をせずに完食してみせるわよ」

静「あァーはいはい。わかったわよ……まったく、やれやれね」

ドサッ!

静「まだこっちには『三人』もいるんだからね。誰か一人でも完食して、食事が終わったら……覚悟しなさいよ。オトナの女性をナメきった事、後悔させてやるんだからッ」

那由他「……フフフ」

静「さッ!食事を続けましょう。康司、委員長ッ!」スチャッ

康司「う……うん」ガタガタ

委員長「……」

静「……委員長?」

委員長「静さん……やっちまったよ、僕……君も見ただろう?」

静「?……」

委員長「僕、食事中に『携帯電話』をイジったよなァ~~……時間を確認するために開いて、そして……『メール』を見たんだよ。食事中にさ……しっかり携帯を操作した」

静「……」

広瀬川「……」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

委員長「僕、マナーには詳しくないけど……食事中に携帯電話をいじるなんて、見ていて気持ちのいいものじゃあないだろう?スマートフォンの普及によって、社会現象になってるって言うじゃあないか。携帯電話依存症……食事時も携帯を手放せないっていうさ。……僕は依存症じゃあないが、ついうっかり……操作してしまった」

鎧武者『……』

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

委員長「僕はもう『1つ』確実に違反をしている。残り何回なのかはわからないが……『1つ』は確実なんだ。そんな状態で食事なんて……」

広瀬川「いッ……委員長、虻村君を見捨てるつもりなのッ……?」

静「らしくないわよ、委員長ッ」

委員長「……僕は、僕には……」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

委員長「食事を続けることなんて……『出来ない』ッ!」

ガタンッ!!

ダダダダーッ!!

ドシュン!

鎧武者『……フシュウーッ……』

委員長「!?えッ……?」

静「何ッ!?『スタンド』がッ……委員長の前にッ!!?」

那由他「あっあ~~♪」

鎧武者『……』

スウッ……!!

静「委員長ッ!!逃げろォォ――ッッ!!」

スパァァン!

委員長「ぐええェエエエ――ッッ!!」

バタッ!

鎧武者『『渡し箸』……『食事中に携帯電話を操作する』……『完食せずに席を立つ』……『マナー違反』ダナ……』

ボトォン!

広瀬川「委員長ゥゥ――ッッ!!」

静「まずい!……ウソでしょう」

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

那由他「こんなに美味しいご飯を残すなんて……うぬぼれよ。客が世界でいちばん偉いとでも思っているの?……バァカ」パクパク

静「うッ……ううッ!!」

ォオォォオォオオオオォォォオ

那由他「マナーに『寛容』はないわ。『犯す』か?『犯さない』か?」

スッ……

静「……!!」

那由他「この『お寿司』を……どう食されますか?」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

静「……」

那由他「さあ……食事を続けましょう?静お姉さま。それとも、舌を失いますか?」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

静「う……」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

広瀬川「……ハァハァハァハァ……!!」

静「……」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

静「……」タラリ

那由他「…………」

静「……」

カチャンッ

静「この静・ジョースターをなめないでよ……『ナイフ』とか『フォーク』だとか『箸』だとか……ひっかける気が満々のアイテムがプンプン臭うわよ。わざとらしすぎる」

那由他「……」

ガシィッ

静「『手づかみ』よ……少なくとも、日本のマナーではね。海外では『カリフォルニア・ロール』をナイフで食うのかもしんないけどッ」

パクッ

静「ハア、やっぱりナマのサカナは苦手だわ……マグロとかチョー無理。相容れない存在っていうかァ……」モグモグ

那由他「……フゥン……なかなかやるね、静お姉さま。さて……」

カチャン

広瀬川「!……那由他ちゃん、食事が……」

那由他「ええ。『終わった』わ。とぉ~~っても、おいしかった……ごちそうさ――」

静「親切丁寧に『警告』してあげるわ。今度はあたしがね」

那由他「…………」

静「那由他ちゃん、アンタは……『ご馳走様を言わない方がいい』」

那由他「……」

広瀬川「……?」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

静「『何故?』って聞きたそうな顔してるから教えてあげるけど……それってすっごく『マナー違反』なのよ。『ご馳走様』を言うことが、最大級の『マナー違反』なの。あたしはフェアに言っている……」

那由他「……」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

静「もう一度言うわ。……『ご馳走様を言わない方がいい』……これはマジな話よ、那由他ちゃん」

那由他「……聞いたことがないわ。そんなマナー違反なんて。美味しい料理に礼を尽くして、何が悪いっていうのよ。お姉さま……ハッタリで勝てるとでも思っているの?」

パァン!

那由他「『ごちそうさまでした』」

ペコリ

静「『ワイルド・ハニー』」

ス……

スゥゥゥ――z__ッッ!!

那由他「あっ!!」

広瀬川「えッ!?」

那由他「!?え?ああっ」

静「アンタの方が……マナー違反ね。さっき『ご飯をよそった時』……すでに『透明』にさせてもらったわよ。あたしの能力の名前は『ワイルド・ハニー』」

スウウウウ――ッ!!

静「お茶碗についてる『米粒』を何粒も、大量に……『透明』にさせてもらったわ!」

バァ――z__ン!!

那由他「あああっ、えっ??えっ」

静「いっぱい残しているわね……おまわりさんだった兄さんのおじいちゃんが、そういうマナーにすっごく厳しかったのよ。『米粒一粒残らず食えッ!お百姓さんに怒られるぞッ!!』ってね。こっちに引っ越してきてから、あたしも兄さんに毎日言われてる……」

那由他「う……ううっ!」

静「『一粒』どころか……大量に何粒も残しちゃってるわねェ~~。『中立』であるアンタの『スタンド』は……どういう決断を下すのかしら?」

那由他「……」

鎧武者『……』

スッ……

スパァァン!

那由他「うぐッ!!」

鎧武者『シュフー……『マナー違反』ダナ。『3つ』デハ収まらナイほどノ……』

ボトンッ!!

那由他「ふぐうっ……うええええぇぇぇ~~ンッ!!」

ガシッ

那由他「えっ!えっ!……ええ~~ん……」

静「なァ~~るほど。斬られちゃった舌が、奥に引っ込まないように自分でつかめば……窒息しないのね。さすが那由他ちゃん、しっかりわかっているのねェェ~~」

虻村「う、うぐぐ……」ムクッ

委員長「ハアー、ハアー、ハアーッ、ハアー……」ムクッ

静「あたしの『勝ち』ね。『寿司』も手づかみが正解みたいだし。二人が失った舌は、返してもらったわよ」

バーンッ!

ガチャッ!

億泰「おーしッ!待たせたなァ~~おめーらッ!億泰様特製のデザートが出来たぜェェ~~ッ」

仗助「静ァ~~、おれ今晩億泰ん家泊まろうと思うんだけどよーッ、家に洗剤無かったから買って帰ってくんねーかァ?……って……」

億泰「……ああんッ?」

静「げっ」

広瀬川「う、うわあっ……」

那由他「えっ、えっ……ええーン……」ポロポロ

虻村「うぐう……グヘェ」

委員長「ハアーッ、ハアーッ……ゴホッ、ゴホッ」

仗助「……こ、コイツぁーよ~~……一体全体何が起こったっつーんスかァ?」

広瀬川「……よりによって、一番説明するのが面倒な所で戻ってくるなんて……」

静「はぁ……まったくもって、本当に……やれやれね」

…………

………

……



億泰「那由他ァァ――ッ!もう能力は使うな!ってこの前怒ったばっかだろーがよォォ~~ッ!!」グオオッッ!

那由他「うえっ!うえっ!うえええーん」

静「ああ、やっぱり何度か問題起こしていたのね……」

仗助「件数は少ないし、すぐに億泰が気付いて止めてたけどな。今回はちょっと、裏で話が盛り上がっちまってよォォ~~」

静「兄さんのせいかよチクショー、おかげで危うく死ぬトコだったっての」

仗助「うーん……お父さん思いの良い子なんだけどなあ……ちょっぴり、思いつめると『こう』なっちまう子なんだよなあ」スッスッ

静「周りが見えないってヤツ?そのジェスチャー古臭いわよ、兄さん」

億泰「ホンットーに悪かったァァ――ッッ!!おれの娘がッ!失礼な事をォォォ――っ!!」

ババアーッ!

委員長「や、やめてください店主さんッ!土下座なんて……頭を上げてくださいッ!」

億泰「お詫びといっちゃあ何だがッ!これから一生ウチの店でメシ食うときは、『タダ』でいいからよォォ~~ッ!どうかッ!どうかッ!!許してくれェェー悪気は無かったんだよコイツもォォ~~ッ!」

虻村「ウヒョッ!いいんスかァ~~おやっさん!?」

広瀬川「や、やめなよ虻村君。その、ボクたち大丈夫ですので。こんな立派な店でマナー違反をしちゃったのが悪かったんですよ」

静「ハァ、今日は散々だったわ……やっぱりお昼はフランス料理を食べるべきだったわね」

億泰「そんな静のためによォ~~、デザートは『プリン』にしておいたぜ。億泰様特製『和風ぷりん』だ。那由他の分も用意してたんだけどよォォ~~」

那由他「えっ?」

億泰「……那由他はデザート抜きだッ!ついでにその舌、寝る時まで戻すことを許さねーぜッパパはよォ~~ッ!」

那由他「え、えええ……」ガックリ

億泰「そして、もう一つ……」

那由他「うえっ?」

億泰「……『おしり百叩きの刑』だぜ。こいつァー閻魔様に任す事ァ出来ねーなーッ」ポキポキ

那由他「……えっ」

億泰「オラッ!おしりまくってこっち来いッ!パパ怒ってるんだからなーッ!」

那由他「え……うええええええええええええン……」

ズルズル……

パァーン!パァーン!パァーン!

ウエエエエーン!!

静「……じゃ、さっそくデザートいただきましょうか」

委員長「君って結構サッパリしてるよね……」

虻村「それにしてもよォ~~、デザートはプリン~~?」

静「そうね、あたしはオトナのレディよ……『プリン』なんて子供の食う物ちゃんちゃらおかしくて……」

四人「「「「ンまぁ~~~~い」」」」

ドーン

虻村「また来るよ!何回でもかようもんねーっ」

広瀬川「やっぱり天才だよォーッ!鉄人みたいな料理人だよ~億泰さんはあ~ッ」

静「言いたくないけど、アンタみたいな料理人の友達がいる兄さんを誇りに思うよぉ~~っ」

那由他「うう……ぐすん」

ヒリヒリ

仗助「この世で最も恐ろしいのは、『マナー違反』でも『ザ・ハンドの右手』でもなく……父親の『右手(ザ・ハンド)』ってことか」

チャンチャン♪

⇐To be continued=・・・?

スタンド名―まほろば○△
本体―虹村 那由他(5歳)

破壊力―B スピード―C 射程距離―C(お店一つ分くらい)
持続力―A 精密動作性―C 成長性―A

鎧を着た女武者のような姿をしたスタンド。
『ルール』を設け、その『ルール』を『3回』破った者の『身体の一部』を奪う。
『ルール』を理解し、納得した状態で射程距離に入った者にしか効果はない。
今回那由他は『マナー違反』というルールを設けたが、成長することで様々な『ルール』を設ける事が可能となるだろう。

那由他という名前は10の60乗、元は仏教用語で「極めて大きな数量」の意味。
もっと言うと小説ジョージ・ジョースターが元ネタとなる。(不可思議・無量大数に続く単位)

小説ジョージネタは本当に拾われないなあ……。
拾ってほしくないとこは拾われるのに。「中立だからマナー違反犯せばOK」とかいうレス見た時は、展開ネジ曲げたろうかと思った。
(レス面白いからいいけど)

という訳で、静ジョ8話完結です。
4部イタリア料理と見せかけて露伴富豪村という今回の話……
岸辺露伴は動かない発売前に書ききってドヤ顔したかったです……。

次回タイトルは
静「幽霊屋敷に住もう」
で行くつもりです。
投票少なかったけど、話の繋がり的にこれが一番やりやすいんで……それでは。

指が緑色になった……
観賞用と割り切るか。はあ……

次スレです。

静「幽霊屋敷に住もう」
静「幽霊屋敷に住もう」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1386418852/)

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