棚町「純一が恵子と浮気してる?」(128)

誰かオナシャス!

棚町の魅力を3行で教えてくれ

>>3
かわいい
明るい
デブじゃない

>>4
ノリが男友達なんだよなどうしても

>>6
そういうのもいいじゃん
一番好きなのは恵子だけど

――駅前、pm.1:00

棚町(せっかくバイトも休みだし、有意義に買いもの!と思ったけど……)

棚町(やっぱり一人だと暇ねー)

棚町(今日は純一も家の用って言ってたし――)ハア

棚町(ん、あれは……。恵子じゃない! ラッキーね!)

棚町「おーい、け……」

橘「ごめん恵子! 待った?」

田中「あ、純一くん! えへへ、大丈夫だよ」

棚町(……え?)

棚町(うそ、純一は今日は家の用で……。どういうこと、なの?)

違うな

>>8
最高だ
続けてくれ

まだー?


橘「美也が行先をしつこく聞いてきて、大変だったよ」

田中「美也ちゃんって、妹さんだよね? 仲いいんだー」

橘「いつもと格好が違う!とかで食い下がってきて……」ハハハ

田中「でも、確かに今日の純一くんはかっこいいかも」

橘「きょ、『今日は』ってどういうことさ、恵子」

田中「ふふ、嘘だよ。純一くんはいつもかっこいいから」クスクス

橘「もう、からかわないでくれよ」

キャッキャウフフ

棚町(なんなの、あの空気! それにあのふたり、あんな呼び方じゃなかったわよね……)

棚町(ていうか、なんであたし隠れて様子を伺ってるのよ!)コソコソ

いいよー

恵子の騙されやすそうなアホっぽいところが可愛いよな

棚町(……用事があるって、あたしの誘いは断ったじゃない!)

棚町(なのに、どうして恵子と――)コソコソ

橘「今日は、どうしようか。どこか行きたいところってある?」

田中「んー、私は……。純一くんと一緒なら、どこでもいいよ」

橘「それは僕もおなじだけど、そうだなあ……」

田中「あ! そういえば私、観たい映画があるんだけど」

橘「うん。それじゃあ、映画館にしようか」

田中「よかった。ふふ、一緒に観たいなーって思ってたんだ」

キャッキャスタスタ

棚町(ふ、ふたりで映画?! そ、そんなの……、まるっきり……)

棚町(まるっきり……デートじゃない……)

嫉妬する薫可愛い

――映画館内、pm.1:45

橘「ちょうどいい時間にあって、助かったね」

田中「うん、ラッキーだったね」

橘「それにしても、恵子がこんなホラー系の映画好きとは思わなかったよ」

田中「え? そ、そうかな?」

橘「もっとこう、恋愛ものとかが好きなのかなって……」

田中「そういうのも、好きだよ。だけど、ちょっと冷やーっとするのも好きなの」

橘「そうなんだ。恵子の意外な一面、かな?」

棚町(あたしってば……なんで映画館まで着いてきてるのかしら)

棚町(べ、別に……、その、気にしてるわけじゃないんだから……)コソコソ

――上映中

棚町(――それにしても、恵子がホラー映画なんて)

棚町(そんなの好きだなんて、あたしだって聞いたことないわよ)

デロローン

棚町(それに、こんなの子どもだましじゃない――)

田中「ひ、ひゃうう……っ!」ギュッ

橘「け、恵子?」

田中「ご、ごめん純一くん。手、握っちゃった……」ウルウル

橘「う、うん。僕は、構わないというか、歓迎というか――」

田中「えへへ……」

棚町(あのくっつき方――。ただの友達同士にしては、ちょっとやりすぎじゃない?)

棚町(ちょっと、やりすぎじゃ……)

あざといがかわいい

――映画館そば、喫茶店

田中「えへへ、面白かったねー」

橘「はは……。だけど恵子、すごく怖がってなかった?」

田中「そ、そんなことないよ! あんなの、平気だもん」

橘「ほんとに? 僕は、映画より恵子が気になっちゃったよ」

田中「もー、純一くんってば!」

橘「ごめんごめん。それにしても、なんで幽霊モノって女の人ばっかりなんだろうな」

田中「うーん、確かにそうかも。どうしてだろうね?」

橘「女性の方が怨みが深い、とか?」

田中「そんなことないよー。男の人だって、妬いたりするでしょ?」

キャッキャッ

棚町(会話が全部聞こえるわけじゃないけど……)

棚町(きっと、今日は恵子があの映画を観たくて、そのために純一を連れてきたんだわ)

棚町(苦手克服のために、みたいな。それだけに決まってる!)

棚町「……苦い」チュルチュル

――喫茶店前、pm.5:00

田中「今日はありがとう、純一くん。とっても楽しかったよ」

橘「僕も楽しかった。また、今度ね」

田中「うん……。それじゃ、またね」バイバイ

棚町(お別れ、ね。やっぱり、今日は友達同士、映画を観に来ただけだったんだわ。見なかったことにしよ!)

橘「あ――」

田中「……」スタスタ

橘「恵子!」

田中「な、なに?!」フリムキ

橘「あ……、えっと。今日、すぐ帰らなきゃだめなの?」

田中「ううん、そんなこと、ないけど。ちょっと買いものしてから、帰ろうかなって」

橘「そ、それじゃあ僕、荷物持ちでもしていいかな?」ハハハ

田中「え……、一緒に来てくれるの?」パアア

橘「恵子がよければ、だけど」

田中「うん、もちろん。お願いします、純一くん」

――棚町家、薫自室、pm.9:00

棚町(結局、あの後ふたりは買いものして、ご飯食べて……)

棚町(純一が恵子を家まで送って……お別れ、か)

棚町(な、なんかこれじゃ、あたしがふたりを着け回したみたいじゃない!)

棚町(違うわよ、そんなんじゃなくて! 声をかけるタイミングが、その、なかっただけ)

棚町(まさかふたりが、その、そういう関係なんて……、ありえない)

棚町(だって、恵子は私の親友で……。純一は私の、その、彼氏なんだし!)

棚町(今日は、友達としてふたりで遊んだだけよ。別に、う――、浮気とか、そんなんじゃ)

棚町「……」

棚町「もう、なんなのよ――。いったい」

ピロリローン

棚町「メール……、純一から?」

棚町「見たいような、見たくないような……」ピッ

From:純一
件名:今日はごめん!
本文:今日は買いもの付きあえなくてごめん!

棚町「」

ぎゃーミスった

ピロリローン

棚町「メール……、純一から?」

棚町「見たいような、見たくないような……」ピッ

From:純一
件名:今日はごめん!
本文:今日は買いもの付きあえなくてごめん!
    親戚の法事で、どうしても出ろって言われ
    ちゃって……。また埋め合わせするから!

棚町「……ふーん」

棚町「ほ、法事には見えなかったけどねー」

棚町「はは、ははは……」

棚町(純一が、あたしに嘘つくなんて――)

着地点が見えない
変なもん先行させてすまんけど誰か書いてくれ

――翌日、輝日東高校

橘「そうそう、それで……」

梅原「まったく、大将は末恐ろしいぜ」

ガラッ

棚町「おっはよー」

梅原「おう、おはよう。棚町さん」

橘「おはよう。また遅刻ギリギリだな、薫」

棚町「うっさいわねー、間に合ってるんだからいいじゃない」

棚町(純一はいつも通り、ね)

田中「おはよう、薫。今日も元気だね」

棚町「お、おはよう、恵子――」

棚町(って、あたしが動揺してどうすんのよ!)

田中「どうしたの、薫? 私の顔、何かおかしいかな」

棚町「え?! う、ううん。いつも通り、可愛い顔してるわよっ☆」

田中「も、もう! 薫はいっつもそうやってー」

棚町「ホントのことなんだし、いいじゃないのー」

キャッキャ

梅原「まったく、ふたりの仲には入れないな」

橘「ああ、ホントだな」ハハハ

梅原「――そういえば大将。昨日は、なんか用事あったのか?」

橘「……え?」

梅原「いや、昨日電話したんだが、電源落としてただろ?」

橘「あ、ああ。親戚の法事があってさ、切ってたんだ」

梅原「なーんだよ、大勝負の最中かと思ったぜ」

橘「そんなんじゃないよ、電話返せなくてごめんな」

梅原「うんにゃ、いいってことよ。何の用だったか、もう覚えてないくらいだしな」ハッハッハ

棚町(……あくまでも、法事ってことにするのね)

棚町(別にあたしは、純一と恵子の間になにかあることを疑ってるわけじゃないのよ)

棚町(そう、あくまでも! ……嘘をつかれてたのが、気に入らないだけ)

棚町(そのことだけ認めてくれれば、それでいいのよ。あたしは)

ガラッ

高橋「はい、HRはじめるわよー。すみやかに席に着きなさーい」

梅原「おっと、麻耶ちゃんだ。また次の休みにな、大将」

橘「ああ、続きが気になるよ。……薫も、早く席戻った方がいいぞ」

棚町「え、そ、そうね。そうするわ!」

橘「……? 田中さんを巻き込んでるんだからな」ハハハ

田中「わ、私はもう戻るよ。じゃあ薫、またね」

棚町(なによ、あたしより恵子のことが気になるってわけ?)

棚町(……って、いけないいけない。そんなの、カッコ悪い!)

田中「薫?」

棚町「え? あ、うん! また次ねー」

田中「……う、うん。それじゃ、またね。橘くんも」バイバイ

――昼休み、学食

棚町「はー、お腹へったー。今日の定食は……っと!」タタッ

橘「おいおい薫、そんなにはしゃぐなよ」

棚町「ふっふっふ、あたしはこのときのために午前の授業を受けていたようなものよ!」

橘「――って言っても、ほとんど寝てたじゃないか」

棚町「うっさいわねー、細かいこと気にする男は好かれないわよ」

梅原「毎度、大将と棚町さんの掛け合いには和まされるねえ」

田中「ふふ……、そうだね」

―――
――


美也「美也はみそラーメンにする! 逢ちゃんと紗江ちゃんはどうする?」

七咲「うーん……、私はA定食かな」

中多「どうしよう……。お、オススメって、あるかな?」

美也「ふっふっふ、そういうことなら美也に任せなさい!」

美也「えーっと、紗江ちゃんへのオススメはねえ――」

――学食、テーブル

七咲「……あれ、あそこにいるのって、美也ちゃんのお兄さんじゃない?」

美也「へ? あー、ほんとだ!」

七咲「なんだか、すごく賑やかそう」クスクス

美也「もー、恥ずかしいなあにぃ……お兄ちゃんは! ちょっと言ってくるね!」ダッ

中多「み、美也ちゃん?」

―――
――


橘「薫もわかってないな、B定食の至高は焼きサンマに決まっているじゃないか!」

棚町「なに言ってんのよ、焼き魚はちょっと食べにくかったりするし――」

田中「ま、まあまあ。ふたりとも、落ち着いて……」

美也「ちょっとお兄ちゃん!」

橘「み、美也?!」

美也「こっちまで声が聞こえてくるよ! 恥ずかしいからあんまり騒がないで!」

橘「……ご、ごめん」

美也「もう、お兄ちゃんはちょっと目を離したらこれなんだから――」

橘「だ、だからごめんって……」

美也「逢ちゃんにも笑われちゃったんだからね!」

橘「な、七咲に? またからかわれるな……」

棚町(……美也ちゃん。そうだ、ひらめいたわ!)

棚町(こんなところで変な空気にさせるのもなんだけど……、これしかないわね)

棚町「それにしても、美也ちゃんも大変ねー。純一、昨日は静かにしてたの?」

美也「……? 昨日?」

橘「え! ……、え――、えっと」

棚町(思った通りだわ! このまま畳みかけて……)

棚町「法事なんて、純一が静かにいられるはずがないもの。ねえ?」

橘「そ、そんなことないぞ! 僕だって、やるときはやるんだ」

美也→薫の二人称ってなんだっけ?
そして携帯完全に普通に出しちゃったわ

棚町「ふふーん、そうかしら? ねえ、どうだったの、美也ちゃん?」

美也「え、えーっと。ほ、法事って何のこと――」



田中「――きゃっ!」ガシャン、ドバッ


梅原「おわっ! ……あっち!」

橘「ど、どうしたの田中さん、大丈夫か梅原!」

田中「ご、ごめんなさい! 腕がひっかかって……」

棚町「け、恵子! いま、何か拭くものを――」

ドタバタ

美也「あ゙……。と、とにかく、学校であんまり変なことしないでよね、兄ちゃん!」スタスタ

棚町「ちょ、ちょっと待って美也ちゃん、まだ聞きたい事が……!」

棚町(ああもう、せっかくのチャンスだったのにっ!)

棚町(それにしても、なんてタイミングでやってくれちゃったのよ恵子は!)

棚町(――まさか、わ、わざとなんて……ね)

棚町(恵子は、そんなことするような子じゃない)

>>74
×兄ちゃん→○お兄ちゃん

――放課後、教室

カエロー、ドコカヨッテイカナイ?、イイネーイコイコー

橘「薫、今日はバイトか?」

棚町「うん。9時まで、稼ぐわよー」

橘「いつも大変だな、僕もまた今度遊びに行くよ」

棚町「冷やかしに、の間違いじゃなくって?」クスクス

橘「この前も、きちんと注文はしたじゃないか!」

棚町「こんな美人ウェイトレスに接客してもらって、一品二品じゃあねえ?」

橘「からかうなよ、薫――」

棚町「……まあ、また来たいって言うなら、いつでも来なさい」フフン

橘「――ああ、そうするよ」

棚町「それじゃ、また明日ね!」

――街の通り、pm.4:45

棚町(お昼は、しくじっちゃったわね)

棚町(だけど、これでよかったのかもしれない。あんな搦め手、あたし向きじゃないわよ!)

棚町(こうなったら、正攻法で純一に問いただすしかないわ)

棚町(あんなメールまでして、あたしを騙せると思ったら大間違いなんだから!)

棚町(あんなメール……)

棚町(あんな……)

棚町(あれ? あたしの携帯――、机に入れっぱなし?!)

棚町(取りに戻らなきゃ、でも時間が……、ちょっと間に合わないかも)

棚町「ああ、もう!」

棚町(ちょっと走れば、大丈夫よね!)

――輝日東高校、教室、pm.4:45

梅原「おわ、もう教室俺たちだけか」

橘「ああ、ちょっと話しこんじゃったな」

梅原「大将といると、時間を忘れるぜ。そんじゃま、ぼちぼち帰りますか」

橘「ああ、悪い梅原。今日はちょっと図書館に寄っていく用があって……」

梅原「大将が図書館……?! 参ったな、俺、今日は傘持ってないぜ」

橘「ど、どういう意味だよ!」

梅原「はっは、冗談冗談。そんじゃ、俺は先帰るわ!」ガラガラ、スタスタ

橘「まったく、梅原のやつ――」

橘「……さて、僕も早く本返して、帰らなきゃ」

ガラッ

田中「――、純一くん」

橘「あ、田中さん。どうしたの?」

田中「えへへ、その……今日は薫もバイトだって言うから」

田中「一緒に、帰らない? 寄り道も、付き合うよ」

橘「――うん、ありがとう。それじゃ、お願いしようかな」

田中「よかった」パアア


田中「それと、……ちゃんと、呼び直して欲しいな」

橘「え――、ああ。ごめん、恵子」

田中「うん、大丈夫だよ。純一くん」

橘「それじゃあ、ちょっと支度するから――」

田中「ねえ、昨日のこと……なんだけどね?」

橘「ああ、すごく楽しかったよ。また、一緒にどこか出かけよう?」ゴソゴソ

田中「うん。それも楽しみ、……なんだけど」

田中「薫に、嘘ついたの?」

橘「……え」

橘「ど、どうして?」

田中「今日のお昼、なんだかそんな空気だったから」

田中「『ついてないよ』って、私にも嘘つく?」

橘「――、薫から、出かけないかって誘われたからさ」

橘「家の用がある、って言ったんだ。それだけだよ」

田中「そっか。ううん、別にいいんだ」

田中「薫に正直に言って、なんて言えないし、そのつもりもないよ」

橘「恵子、僕は――」

田中「これからもね、こういうことって起こるんじゃないかなって思うんだ」

田中「私と薫は友達だし、純一くんとも、それぞれ……、親密だし」

橘「――、うん」

田中「純一くん最近、キスしてくれなくなった」

橘「……え」

田中「昨日も、一回もしてくれなかったし」

橘「あ、ああ……。そういえば、そうだったかも」

田中「薫と付き合い始めてからだよね、してくれなくなったの」

橘「そ、そんなこと――」

田中「あるよ。ちょうど、去年のクリスマス前くらいから」

田中「純一くんには、薫が一番になっちゃったから?」

橘「恵子? な……、なに言って……」

田中「私、そろそろじゃないかなって思ってるの」

田中「この関係が、終わっちゃうのって」

橘「そんな急に――」

田中「だって純一くん、薫に嘘ついた」

田中「これまでは、『本当のことを話さない』だけでよかったのに」

田中「もう、『本当じゃないことを話す』のが必要になっちゃったんだよ」

田中「私は、純一くんが今まで通り付き合ってくれればいいと思ってた」

田中「薫と付き合い始めても、今まで通りならいいやって……」

田中「だけど、純一くんはそうしてくれなくなった。それに、薫もじきに感付いちゃうよ」

田中「薫は、そういう関係じゃ嫌だって思うんじゃないかな」

橘「僕は……、今でも恵子のことが好きだし……」

橘「薫には……、その、嘘をつき通せれば、大丈夫だと思う」

田中「そっか。でも、薫、もう気付いてるみたいじゃなかった?」

田中「なんだか、今朝から様子も変だったし」

橘「そ、そうかな? 僕はそんな風には感じなかったけど……」


ガラッ

棚町「――気付いてたわよ。間違いだって思ってた、そう願ってたけど」

――教室、pm.5:00

橘「か、薫?!」

棚町「はー、あたしもダメね。一番近くにいたふたりのこと、気付けなかったなんて」

棚町「盗み聞きなんて趣味悪いかなって思ったけど、今回は許してね」

棚町「全部聞いちゃった。本当の、ことなのね?」

橘「薫、これはお前が思ってるようなことじゃ――」

田中「黙っててごめんね、薫。騙そうと思ってたわけじゃ、ないんだけど」

田中「薫に、私の相談にのってもらってたことがあったじゃない?」

田中「そのとき、橘くん――、純一くんにも話を聞いてもらってたの」

田中「それで、好きになっちゃって、告白したんだけど……」

棚町「ああ、そう。恵子、あたしはあんたのこと、ずっと応援したいと思ってた」

棚町「だけど、それもあたしの一方通行だったみたいね」

棚町「あたしは……、あんたにコイツの話をしたこともあったわ」

棚町「そのときも、あんたは全部知りながら、あたしの背中を押そうとしたってわけ?!」

田中「薫も純一くんのこと好きだって、ずっと知ってたから」

田中「だから……、その障害に私がなっちゃうよりは、って思ったんだけど」

田中「だって薫、純一くんにもう相手がいるって知ったら、自分の気持ち諦めちゃうでしょ?」

田中「そんなのって、悲しいじゃない」

田中「だから、何も知らない方が薫の幸せになるかなって思ったの」

橘「な、なあ、ちょっと落ち着かないか? ふたりとも、混乱してるだけだって――」

田中「私、薫のこと好きだし、親友だと思ってるよ」

田中「だから、幸せになってほしかった。こんな結果になっちゃったのは、残念だけど」

棚町「……ふ」

田中「だ、だって私だって我慢したんだよ?」

田中「クリスマスだって……、薫に純一くんとられちゃったの、本当は嫌だったんだから」

田中「だけど、みんなが幸せになるためだって思って――」

棚町「――ふざけんじゃないわよ! あたしが欲しかったのは……!

棚町「あたしが欲しかったのは!」

棚町「そんな歪んだ関係じゃない!」

田中「……薫」

棚町「あたしは、恵子なら信頼できると思ってた。純一なら、頼ってもいいと思ってたわ」

棚町「一番の親友と、中学からずっと一緒だった悪友」

棚町「あたしにとって、すごく大切な人だったのに……」

棚町「こんな……、こんなことって――」ポロポロ

田中「私の気持ちは、いま話したことで全部だよ」

田中「それで、薫が耐えられないって感じるなら、もう――仕方ないって思う」

橘「お、おい……。ちょっと落ち着けって、け……、あ――。田中、さん」

田中「……そっか。純一くんの気持ちも、伝わったでしょ」

田中「私は、今まで通りが続くならそれが一番だけど」

田中「そうじゃなくて、純一くんが薫を選ぶなら……、それでもいいよ」

田中「私にとっても、薫と純一くんは大切だもの――。幸せになってほしいし」

田中「あとは、ふたりで話して決めて」

田中「いつかこうなると思ってたけど、こんなに早いなんて……えへへ」

ガラッ、スタスタ

――教室、pm.5:15

橘「か、薫……?」

棚町「――、もう、あんたと話すことなんてない」

橘「ちょっと待てよ、薫は誤解してるって」

棚町「どこが……! どう、誤解だって――、いうのよ!」

棚町「短い間だったけど……、夢見させてくれて、ありがとうとでも言えばいい?!」

棚町「やっぱり……、あたしには――」

橘「薫、ちょっと落ち着いて話そう? な?」

橘「僕は、その、薫を騙してたわけじゃなくて――」

薫「……っ!」

パシン!

棚町「……今ので、もうあたしの気は済んだから」

棚町「バイバイ、純一」

ガラッ、スタスタ

――翌週、昼休み。輝日東高校、テラス

橘(あれから、薫は学校を休み続けてる)

橘(連絡も取れないし、他のみんなにもメールを返したりはしていないようだ)

橘(僕も、当事者、ということになるのかもしれない)

橘(けれど、薫と付き合っていたことは恵子以外に話していないし)

橘(その恵子も、しばらく顔を見ない日が続いている)

橘(梅原は、完全に僕を疑っているけれど……)

橘(けれど……、僕にはどうしようもなかったじゃないか)

橘(僕は、恵子も薫も、どっちも平等に好きだったんだから)

橘(平等に好きな相手が複数いる、というだけで、どうして責められるいわれがあるだろう)

橘(僕は薫も一番好きだったのに、その思いは薫に伝わらないままになっている)

橘(せめて、その誤解を解ければいいのに――)

七咲「先輩、お疲れさまです。お待たせしてしまって、すみません」

橘「……、七咲」

七咲「なんだか暗い顔してますね、先輩」

橘「いや、そんなことないよ。ちょっと、考え事してただけ」

七咲「もう、約束通り……お弁当、作ってきたんですから。元気出して下さい」

橘「――ほ、ほんとに?!」

七咲「ええ。約束したことですから」

橘「わあ、ありがとう七咲! 元気、出たよ」

七咲「それならよかったです。……ふふ」

橘(みんな好きで、何がいけないだろうか)

橘(僕も彼女が好き、彼女も僕が好き。それだけでは、いけないのだろうか)

橘(いまは、このクールな後輩にも惹かれている)

橘(そしてもし彼女が僕を好いてくれるなら、もう恋人同士でいいじゃないか)

橘(恋に、お互いにスキであること以上の要件なんて、存在しないんだから)


おわり

俺には無理だった
あと携帯の件は完全に失念していて申し訳ない
もう一個の田中さんSSがほわほわすぎて眩しかったよ

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