澪「冬が私を呼んでる」(144)

律「さむっ」

律「なんでこんなに寒いんだよ全く・・・」

律「あ~雪降ってるじゃん」

律「雪見ると冬が来たって感じだなー」

律「今年も冬が来たかー」

律「・・・」

澪「きゃははきゃははは」

律「うわっまた澪が全裸で外を走り回ってるよ…。
  全くあいつは冬になると毎年毎年…」

私の名前は田井中律

N女子大の4年生で今年22歳になる

就職も決まり大学も休みなので実家に帰省しているところだ

律「せっかく帰ってきたのに誰もいないんだもんなー」

律「お父さんとお母さんは旅行で」

律「聡は部活の合宿」

律「実家でだらだらしようと思ったのに」

律「これじゃ寮に居たほうがましだったな」

律「あー暇だ」

律「誰かからメールとか来てないかなー」

律「・・・」

律「来てるわけないか・・・」

来てるわけない

そう思いながらいつも澪からのメールを待っている

ずっと待ってるけど

あの日から一度も連絡は無い

律「・・・」

秋山澪は

私たちの前から消えた

律「はあ・・・」

こうして冬が来ると胸が痛くなる

春でも夏でも秋でも澪の事を考えない日はない

でも冬が来るとこんなにも苦しくなる

律「今どうしてるのかな」

律「・・・」


冬が私を呼んでるから―――

―――――――――
――――――
―――

律「か、彼氏が出来た!?」

澪「う、うん」

律「おいおい冗談はいいよ」

律「私が何か悪い事したなら謝るから」

澪「違うんだ、本当なんだ」

律「え、ええ~・・・」

律「うっそだ~・・・」

澪「ごめん・・・」

律「いや、いやいやいや・・・え~」

澪に彼氏が出来たのは大学2年の時

なんでも二十歳の誕生日に告白されたとか

律「マジか~・・・いやいや」

律「ええええ・・・」

澪「ご、ごめん」

どうやらバイト先の人と前からいい感じだったらしい

でも『お付き合いは二十歳になってから』とか言ってそれまでは付き合っていなかったそうだ

澪「みんなにはちゃんと報告しておかなきゃって思って」

律「それはいいんだけどさ」

恋人同士になったその日に呼びだされて報告された

それだけは嬉しかったけどやっぱり複雑だった

律「で、付き合ったのに誕生日一緒に過ごさなくていいのかよ」

澪「うん、まだそういうのは早いと思って・・・」

律「ったく真面目なんだかどうなんだか」

澪「なんだよ」

澪「それにこんな雪が降ってる冬の日はなんだかいい歌詞が書けそうなんだ」

澪「冬が私を呼んでる!って感じでさ」

律「ふうん」

澪「なんだよ」

律「彼氏へのラブソングか?」

澪「ち、違うって!」

澪「そんなんじゃ・・・」

律(わかりやすっ)

澪は冬になるとふらっと何処かにいく癖がある

高校の時もだけど大学に入ってからもそうだった

冬が私を呼んでる、とか言って何も言わずにいなくなる

大学1年の時なんか一人で恐山まで行ったらしい

なんて行動力だと感心したけど同時に呆れてしまった

澪「冬はいいよな、なんか楽しくなる」

律「彼氏と旅行でも行くのか?」

澪「だからそんなんじゃないって」

澪「一人でどこか行きたくなるんだ」

律「ふうん」

律「あーあ、澪も女になっちゃうのか~」

澪「な、何言ってるんだバカ!」ゴツン

律「いてっ、なんだよだってそういう事だろ?」

澪「そ、そういうのは結婚するまで駄目だ」

律「へえ、まあ口だけならなんとでも言えるしな」

澪「りつ~!」

律「わかったわかった」

律「で皆にはいつ話すんだ?」

澪「明日直接話すよ」

律「そうですか」

澪「だから今日は一緒に歌詞考えようよ」

律「何だ急に、いつもみたいに一人で考えろよ」

澪「・・・駄目か?」

律「・・・しょうがないな、今日は特別だぞ」

澪「うん!」

澪が彼氏より私を選んでくれたみたいで嬉しかった

その日はまた例のごとく甘々な歌詞を延々見せられたけど

翌日

唯「え~!澪ちゃん彼氏出来たの!?」

澪「うん・・・」

梓「どんな人なんですか?」

澪「バイト先の人で、優しい人だよ」

紬「澪ちゃんに彼氏・・・」

紬「もうおしまいね・・・」フラフラ

唯(ムギちゃんはなんでこんなに落ち込んでるのかな)

唯(先を越されたから?)

澪「でもちゃんと清く正しいお付き合いをしようと思って」

律(どうだか)

律(でもいい人だといいな、澪の彼氏)

彼氏が出来ると人が変わる、なんてよく聞くけど澪はそんな事なかった

今までと何も変わらず私たちと一緒に過ごした

いや、今まで以上に私達との時間を大切にしてくれた

遊んだりするのも私たちを優先して、何の予定もない時に彼氏と遊んでいたらしい

きっと彼氏が出来て変わった、って言われるのが嫌だったんだろう

だから皆も素直に澪と彼氏の事を応援していた

・・・ムギだけは結構長い事落ち込んでたけど

律「いいのか?彼氏と遊ばなくて」

澪「うん、バイトで会うし」

澪「皆と一緒に居たほうが楽しいしな!」

律「無理してないか?」

澪「全然!」

最初はこんな付き合い方じゃすぐ別れると思ったけど

澪と彼氏は意外と長続きしていた

二十歳の誕生日に付き合い始めてからそろそろ1年が経とうとしていた頃だった

律「澪、そろそろ彼氏紹介してくれよ」

澪「は、恥ずかしいよ」

律「恥ずかしい事してんのか~?」

澪「ば、バカ!何言ってるんだ!」

律(恥ずかしい事してんのかな~・・・)

律(やっぱ複雑だな)

澪「ちゃんと紹介するからもうちょっとだけ待ってくれ」

律「へいへい」

澪「それにしても今日はいいな!」

律「え~雪降ってんじゃん」

澪「だからだよ、こんな日は何処かに出かけたくなる」

律「ほんとに澪はいつまで経っても澪だな」

澪「だって冬が私を呼んでるから」

律「そーかそーか、そりゃ良かった」

澪「ちゃんと聞け!」

律「はいはい」

彼氏がいようがいまいがいつもと変わらない毎日

私もいつのまにか澪達の事を祝福するようになっていた

そんなことを考えていた大学3年の時

1月15日、澪の誕生日であり彼氏と付き合ったその日

澪は私たちの前から姿を消した

理由は一切分からない

私たちも澪の両親も何も聞いていない

当然メールも電話も通じない

律「どうなってんだよ・・・くそっ」

唯「りっちゃん・・・」

律「今警察にも捜索願を出したらしいけどどうなるか・・・」

梓「澪先輩無事だといいんですけど」

紬「琴吹グループも総力を挙げて捜索するわ」

律「ああ、ありがとう」

気がかりなのは澪の彼氏

私たちは結局澪の彼氏に一度も会っていなかったのだ

バイト先に問い合わせても少し前に辞めて連絡が取れないらしい

この人ならきっと澪の事を何か知ってるんじゃないかと思って必死に探した

けど見つけることはできなかった

律「彼氏と駆け落ちしたとか・・・」

梓「そんな!」

唯「駆け落ち?」

紬「二人でどこかに行っちゃって戻ってこないかも知れないの」

唯「ええ!?そんな!」

紬「・・・」ギリッ

律(なんでだよ)

律(なんで何も言わないんだよ!)

律(彼氏と付き合う事になった時も)

律(あの時もあの時も)

律(いつも一番に相談してくれたじゃねーか!)

律(私にだけは何でも言ってくれたじゃねーかよ!)

律(何してんだよ!澪!)

律(さっさと帰ってこい!!)

―――
――――――
―――――――――

律(あれから1年・・・)

律(今も捜索は続いてるけど一向に見つかる気配はない)

律(澪・・・)

律「って久々に長い事考えてたらもう夜になってるよ」

律「いつのまにか雪も止んでるし」

律「お腹すいた・・・」

律「何か食べるものでも探すか」

ピンポーン

律「ん?誰だよこんな時間に」

律「ったくめんどくさいな」

律「はいはいどなたですかー」ガチャ

律「両親は今居ませんよー」

澪「久しぶり」

律「・・・」

澪「律」

律「澪・・・?」

律「澪なのか・・・?」

澪「どっからどう見ても私だろ」

律「ほんとに」

律「澪?」

澪「ああ」

律「・・・」

上手く言葉が出てこない

言いたい事は山ほどあった

なんでいなくなったのか

なんで急に帰って来たのか

いままでどこにいたのか

何があったのか

律「あ・・・」

でも何を言っていいのか分からない

この状況を理解できていない自分がいた

澪「お邪魔してもいい?」

律「あ、うん」

澪の方からそう言ってくれて少しだけ気が楽になった

今は澪と再び会えた事に感謝しよう

澪「久しぶりだな、律の家に来るの」

律「そう、だな・・・」

どうしよう

混乱して何も言えない

澪「律は変わってないみたいだな」

律「・・・」

律「澪は・・・」

律「変わったよ」

澪「・・・」

律「なにしてたんだよ・・・」

澪「・・・」

律「何があったんだよ!」

律「全然分かんないよ!何から話していいのかも分かんない!」

律「澪のバカ!!」

澪「・・・ごめんな」

律「私たちがどれだけ心配したか知らないだろ・・・!」

律「私が・・・!」

律「私がどれだけ・・・!」

澪「ごめん」

自分でも何を言っているのか分からなかった

感情にまかせて何も考えずに出てきた言葉

そんな言葉をただひたすら澪に浴びせた

澪「ごめんな」

律「澪なんて・・・!」

律「・・・」

ほんとは会えて嬉しい癖に

照れ隠し?意地っ張り?

私は澪に一番言いたかった言葉を言えずにいた

澪「律」

澪「・・・会いたかった」

律「!」

律「私だって」

律「・・・」

律「会いたかった」

律「会えて良かった・・・!」

会えて良かった

そう

それが一番言いたかった

澪に先を越されちゃったけど

その言葉が言えて少し落ち着いた

律「澪・・・!」

律「・・・」

律(何を話したら・・・)

澪「なあ律、最近調子はどうだ?」

律「え?えっと」

律「まあぼちぼちだよ」

澪「そっか、学校とかはどうなんだ?」

律「まあ順調だよ」

澪「じゃあ就職とかは?」

律「一応決まったけど」

澪「そっか、良かったな」

ほんとは他にもっと話すべき事がある

でもそんな事はもういいんだ

いや、良くはないんだけど

そんな事を今聞かなくてもいい

こんな取りとめのない会話がなんだか嬉しかった

澪「放課後ティータイムはどんな感じ?」

律「ベースがいないからな、いまいちさ」

澪「そっか」

澪「新しいベースとかはいないんだ」

律「当たり前だ」

律「放課後ティータイムのベースは澪しかいないだろ」

澪「・・・ありがとう」

律「だから当たり前の事だって言ってるだろ」

澪「・・・うん」

律「今日は泊まっていくんだろ?」

澪「えっ」

律「もう遅いし泊まっていけよ」

澪「そんな、悪いよ」

律「悪いと思うなら泊まっていけ」

律「嫌ならいいけど」

澪「そんな、嫌なわけないよ」

律「じゃあ決まりだな」

澪「う、うん」

律「澪が家に泊まるのなんていつ以来だろ」

澪「昔はよくお泊りしてたな」

律「そうだなー・・・」

ふと澪の彼氏の事が頭をよぎる

彼氏とはお泊りしてたんだろうか?

でも私はもう何も聞かない事にした

私が聞くんじゃなくて、澪が話してくれるのを待とうと思った

いつか自分から話してくれる日を待とうと

それがほんとの優しさってもんじゃないかと思ったから

律「晩御飯は食べたのか?」

澪「まだ」

律「じゃあ作ってやるよ」

澪「ありがと」

律「ハンバーグでいいかな、ちょうど材料もあったし」

澪「うん」

律「高校の時みんなで家にご飯食べに来た事あったよなー」

澪「そうだったな、懐かしい」

律「聡ももう高校生になったんだぜ」

澪「へえ、あの聡が」

律「生意気でさー、反抗期ってやつかな」

律「私と目合わせないんだぜ?」

澪「照れてるんじゃないのか?」

澪「律ももう大人の女性だから」

律「ぶっ」

律「何言ってんだ気持ち悪い」

澪「あはは」

律「出来たぞ」

澪「いただきまーす」

律「おいしい?」

澪「うん、おいしい」

澪「律は意外と女の子してるからな」

澪「可愛らしいとこあるよ」

律「だからさっきから変な事いうな!」

律「ったく、久々に会ったのにいつもとおんなじかよ」

澪「ふふ、いいもんだな」

澪「こういうのって」

律「・・・そうだな」

澪「ごちそうさま」

律「おそまつさま」

澪「お腹いっぱいだ」

律「じゃあ洗い物してるから風呂でも入ってこいよ」

澪「いいの?」

律「いいよ、着替えも出しとくから」

澪「それじゃお言葉に甘えて」

律「・・・」

律(やっと)

律(やっと戻ってくるんだ)

律(澪が)

律(私たちの日常が)

澪「お風呂あがったよ」

律「ああ、じゃあ次は私が」

澪「一緒に入っても良かったのに」

律「家の風呂に二人は狭いって」

澪「狭いからいいのに」

律「ほんと何言ってんだお前は」

律「そういうの一番恥ずかしがってたくせに」

澪「ま、ちょっとだけ大人になったのかもな」

律「へいへい」

律「じゃあ入ってくるから部屋で待っててくれ」

澪「分かった」

律「ふう、いい湯だった」

律「全く澪の奴下ネタみたいな事いいやがって」

律「なんか調子狂うなー」

律「澪ー」ガチャ

律「あれ?」

律「澪・・・?」

律(嘘だろ、いない!?)

律(なんで?なんでいないんだ?)

律(まさかまた居なくなって)

律(そんな!せっかく会えたのに)

律(嫌だ!もう会えなくなるのは嫌だ!)

律「澪!澪どこだ!」

澪「な、なんだよ」

律「へっ?」

澪「別に部屋荒らしたりしてないぞ」

律「じゃなくて、えっとどこにいたの?」

澪「お手洗いだよ、どうしたんだよ大声出して」

律「は、ははは・・・」

律(良かった・・・)

律(そうだよ、澪は帰って来たんだ)

律(もうどこにも行かないんだ)

律「なあ澪、みんなにはまだ会ってないのか?」

澪「うん、律にだけ」

律「そっか」

嬉しかった

澪が私の事を一番に想ってくれてるような気がして

律「みんなにはいつ会うんだ?」

澪「まあぼちぼち」

律「せっかくだしみんな呼ぶか?」

律「驚くぞ、澪がいるなんて言ったら」

澪「・・・みんなには私からちゃんと言うから」

澪「今日は律と一緒にいたいんだ」

律「真顔で言うな、照れるだろ」

澪「照れろ照れろ」

律「このヤロー」

澪「まあ今日は律と一緒でいいじゃないか」

律「ちゃんと皆にも謝っとけよ」

澪「・・・うん」

律「さて、何する?」

律「ゲームでもやるか?」

律「ちょうど聡がPSP置いて行ったし」

律「軽音部!授業中ライブでも・・・」

澪「なあ律」

律「ん?」

澪「放課後ティータイムの曲って増えたのか?」

律「・・・いや、増えてないよ」

律「澪がいなくなってから新曲は一つも作ってない」

律「甘々な歌詞を書く作詞家もいないからな」

澪「えー私は可愛い歌詞だと思うけどなー」

律「そのセンスは未だ健在か・・・」

澪「なんだよ」

律「なんでもない」

澪「あ、外見て」

律「ん?」

澪「雪だ」

律「・・・」

澪「高校2年の時にさ、私一人で海に行ったんだ」

澪「冬が私を呼んでたんだよ」

律「・・・確か歌詞考えに行ったんだよな」

澪「ちょうどその頃に出来たのが『冬の日』なんだけど」

律「知ってる」

澪「あれって半分律の事書いたんだ」

律「あ~・・・」

律「いやまあそうだろうな」

律「いろいろと思い当たる歌詞あったもん」

澪「でも途中でなんか照れ臭くなって、結局自分でも誰にあてて書いたのか分かんなくなった」

律「まあラブソングだもんな」

澪「それでメインボーカルも唯に頼んだんだけどさ」

澪「あの歌は私が歌うべきだったのかも、って後からちょっとだけ後悔した」

律「ふうん」

澪「一応私から律への歌って事もあったし」

澪「なんか照れちゃってほんと良く分かんないまま完成した曲だけど」

澪「それでも私が歌うべきだったのかなって」

律「それで?」

澪「今歌ってもいいかな」

律「え?」

澪「冬の日」

澪「アカペラだけど」

律「あ、うん」

律「じゃあお願い」

澪「良かった」

澪「じゃあ聞いてください」

律「はい」

澪「冬の日、秋山澪バージョン」

律「おお~」パチパチ

澪「ゴホン」

澪「どんなに寒くても僕は幸せ」

澪「白い吐息弾ませて駆けてく君を見てると」

律「・・・」

律(澪・・・)

律(綺麗になったな)

律(大人っぽくなった)

律(外見だけじゃない、歌もそうだ)

律(高校生の可愛らしい声じゃない)

律(透き通るような大人の声)

律(こんなにこいつの事をまじまじと見るのは初めてかも知れない)

律(私のために)

律(歌ってくれるなんてな)

律(澪・・・)

澪「何から話せばいいのかな」

澪「好きから始めていいかな」

澪「舞う雪踊った気持ちみたい」

澪「なんか嬉しいね」

律「・・・」

澪「・・・どうかな?」

律「うん、すごく良かったよ」

澪「そっか、それなら良かった」

律「・・・」

冬の日

こんな歌だったんだ

律「なあ澪」

澪「なに?」

律「もう、どこにも行かないよな?」

澪「えっ?」

律「もうどこにも行くな!」

澪「り、律」

律「もう嫌なんだよ!澪がいない毎日なんて!」

律「もうどこにも行くな!ずっとここにいろ!」

澪「ちょっと落ち着けって」

律「澪!」ガバッ

澪「わっ」

律「もう私たちの前から勝手にいなくなるな」ギュッ

澪「・・・」

律「これからはずっと一緒だ」ギュウ

澪「律・・・」

律「ありがとう、澪」

律「帰ってきてくれて」

澪「・・・」

律「今日は寝かせないぞ」

律「とことん付き合ってもらうからな」

澪「はいはい」

律「じゃーん」

澪「お菓子?」

律「そう!パジャマパーティーだ!」

澪「今でも言うのか?パジャマパーティーって」

律「うっ、うっせー」

澪「あ、お酒まである」

律「まあもう22歳だし付き合いで飲む事もあるのさ」

澪「律も大人になったなー」

律「まあまあ澪もほれ」

澪「しょうがない、付き合ってやるか」

律「いえーい!」

澪「かんぱい」

律「かんぱーい!」

律「それでさ、その時唯がさ・・・」

澪「唯も変わらないなー」

律「ムギはこの前バイトで・・・」

澪「うんうん」

律「梓も心配してるぞー、澪先輩澪先輩ってさ・・・」

澪「梓も梓のまんまかー」

律「あ、そういえば中学の時さ・・・」

澪「あったあった」

律「小学校の作文の時も・・・」

澪「パイナップルの真似~って言ってさ」

律「そうそう・・・」

律「そんでさ・・・」

澪「うん」

律「懐かしいなー・・・」

澪「そうだな」

律「これからはもっともっと楽しい思い出・・・」

澪「・・・」

律「ん・・・」

澪「・・・」

律「・・・」スースー

澪「・・・」

律「澪・・・」スースー

澪「・・・」

澪「律」



冬が私を呼んでるから―――

朝起きると澪の姿は無かった

まるで昨日の事が夢だったみたいに

律「雪・・・」

1月15日、澪の誕生日

またこの日に澪は雪のように消えた

何も言わずに

また

律「・・・朝ご飯でも食べるか」

何故かそれほど動揺は無かった

きっと心のどこかでこうなるような気がしてたから

今度こそずっと一緒にいられるって自分に必死に言い聞かせて

それで考えないようにしてた

澪がいなくなるのが怖くて

ちゃんと澪の事見てなかったんだ

逃げたんだ、悪い予感から

もうずっと離さないって誓ったのに

私は大馬鹿だ

律「あ、メール」

唯『帰省中だよね?みんなでどっか遊びに行こうよ!』

律「・・・」

律「行くか」

何も考えたくない

昨日の事も

唯たちの事も

何も

律「えっとマフラーは」

何も考えず無意識に出かける準備をする

この家にいても仕方ないと思ったから

考えるって事から逃げたかったから

駅前

唯「あ、りっちゃんだ」

紬「りっちゃん遅刻~」

梓「もうほんとに律先輩は」

考えまいとすると余計に考えてしまう

澪の事

唯「こっちに気づいてないね」

紬「こっちよ~」

梓「流石に遠すぎて聞こえないんじゃ」

何も考えないで足を動かす

胸が苦しい

光がまぶしい

何も分からない

澪の事は唯たちには言わない事にした

澪が私だけに会いに来てくれた

その事に何か意味があるんじゃないかと思ったから

それに

言葉にしてしまうともう二度と会えないような気がしたから

だから私は・・・

律(雪か・・・)

雪が降ってる

冬が澪を連れて行ったような気がして

無性に腹が立った

秋山澪

放課後ティータイムのベースボーカルで

大切な仲間

私の親友

「・・・」ハハハ

「・・・」キャハハ

大切だった

小さいころから一緒で

ずっと一緒にいられると思ってた

男「・・・でさー」

女「・・・うん」

一番の友達だった

いや

違う

男「でさ、その女が子供出来たから結婚してくれ!なんて言ってきてさあ」

女「え~こわ~い」

男「だろ?誰の子かも分かんねえからバックレたんだよ」

女「マジ~?キャハハ」

男「ほんと勘弁してくれって感じだよな~」

違うんだ

違うんだよ

大切な一番の親友

でも

唯「おーいりっちゃーん」

律「おー」

紬「おはよ~」

梓「早くしてくださ~い」

そうじゃない

律「今行くって」

そうじゃないんだ

私はただ

澪の事が


好きだったんだ



冬が私を呼んでるから

おしまい

いなくなった理由とか死んでるのかどうかとか色々ありましたけど
その辺の解釈は読んでる人の想像に任せます
特に決めている訳じゃないので

バッドエンドのつもりはないです
律が澪の事を好きだって気付くSSでした

癪に触った人には申し訳ない
来年の冬にまた会いに来てくれるといいと思います

おやすみ

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom