【破】ゲンドウ「久しぶりだな、シンジ」【3スレ目】 (773)

このスレは

ゲンドウ「久しぶりだな、シンジ」
ゲンドウ「久しぶりだな、シンジ」【2スレ目】

からの続きです

原作では『破』の最初からとなります


新劇をベースにしてますが、テレビ版設定やオリジナル設定、オリジナル解釈も多少入ってます


『序』までのあらすじ

ネルフが酷いところで
レイが頑張って
シンジが成長して
第六使徒まで殲滅

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1382967188

ー 北米支部 ベタニアベース ー

ー EVA仮設五号機、エントリープラグ内 ー


マリ「」カタカタ
ノート型外部端末「」


マリ「エントリー、スタート……」カタカタ

マリ「LCL電荷を開始」カタカタ

マリ「シンクロ率、規定値をクリア」カタカタ

マリ「思考言語は……初めてだから日本語かな……」カタカタ


ブンッ……

加持『どうだ、マリ。初めてのエヴァは?』

マリ「」ビクッ!!


マリ「は、はい! 最高です! 快適です! 乗せていただいてありがとうございます!!」

加持『そうか、それは良かった。お前はどうしようもない問題児だからな。こんな状況じゃなきゃ、俺も乗せるつもりはなかったんだが』

マリ「す、すみません! 加持さんにはとても感謝してます!」

加持『当たり前だろ?』

マリ「すみません! すみません!」

加持『まあいいさ……。それよりさっさと出撃した方がいいんじゃないのか? 使徒は待ってくれないぞ』

マリ「は、はい! エヴァンゲリオン仮設五号機、発進します!!」カタカタ
ノート型外部端末「」



ー 格納庫 ー


EVA仮設五号機「」キュピーン!!

ー ベタニアベース、発令所 ー


オペレーター「EVA仮設五号機発進しました」

支部司令「では、こちらからの通信を切れ。後は全て五号機に任せる」

オペレーター「はい」カタカタ


支部司令「さて、用意は整ったか……」フゥ……

加持「ええ、それでは行きましょうか。後始末はマリがしてくれます」

支部司令「それにしても、まさか封印システムが無効化されるとは……」ハァ……

加持「あり得る話ですよ。人類の力だけで使徒を止める事は出来ない」

加持「それが永久凍土から発掘された第三の使徒を細かく切り刻んで改めて得た結論です」

支部司令「そのようだな……」

加持「では、我々は行きましょうか。この基地はもう用済みですし」クルッ

支部司令「仕方あるまいか……。しかし…………」

加持「あの問題児では、使徒は倒せないでしょうからね。我々まで巻き込まれる必要はありませんよ」

加持「人類の命運に対して、役立たずのパイロット一人、基地一つ。どちらが重いかという話ですよ」

加持「比べるまでもないでしょう?」


支部司令「わかった……。君の言う通りにしよう」

支部司令「」クルッ

支部司令「総員に通達! この基地は撤退準備が整い次第、自爆させる!」

オペレーター「全職員は避難! 基地の全データを消去後退避する! 繰り返す! 全職員は避難!」


加持「それでは僕はお先に」クルッ、スタスタ……

ー 仮設五号機、エントリープラグ内 ー


ガッシャ、ガッシャ……!!


マリ「死にたいくらい辛い気持ちー……♪」

マリ「耐えるだけの毎日ー……♪」

マリ「我慢して我慢してー……♪」

マリ「今日をー迎えたよー……♪」


マリ「……来た!」


第三使徒の姿がマリの目に入る


マリ「私の天使……! 神様からの贈り物!!」

マリ「この機会! 絶対に逃さない!!」

マリ「ATフィールド、全開っ!!!」


キュイーン……!!

ー ベタニアベース、基地内 ー


第三使徒「」テケテケ




EVA仮設五号機「」ガッシャ、ガッシャ




第三使徒と会敵!!

ー 仮設五号機、エントリープラグ内 ー


マリ「うおりゃあああっ!!!」


攻撃をする仮設五号機!!


ギュイン!!

バキッ!!


マリ「うぐっ!!」


弾き返され、そのまま逃げられる!!

マリ「くっそぉーっ!!」


ギュルッ!!

ギュキキキッ!!


一回転して急ブレーキをかける仮設五号機!


マリ「動きが重い!!」

マリ「こりゃあ力押ししかないじゃん!!」


バシュッ!!


ジェット噴射をしてそのまま全速力で後を追いかける!

ー ベタニアベース、基地上空 ー

ー 仮設五号機、エントリープラグ内 ー


マリ「逃げんなあ!!」

マリ「おりゃあああっ!!!」

ドスッ!!


基地の外へ飛び出した第三使徒を、突き刺す仮設五号機!!


第三使徒「!!」クエェェ!!


ピカッ

ドウンッ!!


第三使徒の目が光り、光線が走る!!


マリ「ぐぅっ!! 痛いっ!!」

マリ「すっげー痛いけど、わかるよ……!!」


第三使徒に突き刺す様な視線を向けるマリ


マリ「あんただって……そうなんだよね……!」

マリ「私と一緒で……ここから逃げ出したいんだよね……!」

マリ「こんな外と孤立した場所に閉じ込められてさあ……!!」

マリ「それで散々ひどい事をされてきたんだよね……!!」

マリ「辛かっただろうね……! 痛かっただろうね……!!」

マリ「あんたは私とよく似てる!! でも、逃げれるのはどっちか一人だけなんだ!!」

マリ「だったらあんたを殺して私が出ていく!!」

マリ「その邪魔を……するなぁ!!!」


ドスッ!!

第三使徒「!!」クエェェ!!!!


もう一本の腕でコアを突き刺す仮設五号機!!

マリ「時間がない!」

マリ「機体も持たない!」

マリ「異種パーツは無理矢理シンクロさせてる分、パワーも足りない!」


ピカッ!!

マリ「ぐあっ!!!」


再び光線! 仮設五号機の腕が一本落ちる!


マリ「腕の一本ぐらいくれてやるっ!!」

マリ「……こんなのどうって事ない!!」

マリ「私は毎日、心をえぐられてるんだっ!!」

マリ「こんなものが効くかーっっ!!!」


グイッ……

ドスッ!!


第三使徒「」ピエェェ!!!!


首に突き刺していた腕を抜いて、再びコアに突き刺す!


マリ「さっさと、くたばれぇーっっ!!!」


第三使徒「」パリンッ……


コアが砕け散る!!


マリ「今だ!!」カチッ!!


エントリープラグ「」ヒュイン……!!


エントリープラグを射出して、脱出するマリ!


…………

ドオオオオンッ!!


その直後、大爆発を起こす第三使徒、仮設五号機、そしてベタニアベース…………

ー ベタニアベースから離れた海上 ー

ー 戦闘機の中 ー


無線『目標消失』

無線『五号機、ベタニアベースも全て蒸発』

無線『確認は取れてないが、現場の状況から、パイロットの生存はまず不可能と思われる』

無線『これより、現場の確認へと向かう』


加持「五号機とベタニアベースの自爆プログラムは上手く作動してくれたか……」

加持「それにしても……」

加持「子供を犠牲にして大人だけが助かるというのは心が痛むな……」フゥ……


加持「ネルフ本部へ着いたら墓は立てるぞ、マリ……」

加持「だから安らかに眠ってくれ……」

加持「お前の犠牲は決して無駄にはしないからな…………」


そう言ってアタッシュケースを眺める加持


加持「マリの為にも、これを確実に司令に届けないとな……」

加持「それが俺に出来るあいつへの供養だ……」

加持「最後の最後になっちまったが、ありがとうな、マリ」

加持「生きてる間にこの言葉を伝えられなかったのは残念だがな……」


淋しそうな表情で遥か彼方のベタニアベース跡を眺める加持……


加持「待たせてすまない。出してくれ……」


沈痛な面持ちでそうパイロットに告げる加持……

ー 数時間後 ー

ー ベタニアベースから遥か離れた海上(加持の場所とは逆方向) ー

ー 海に漂うエントリープラグ ー


ガシュッ!!

パカッ……


マリ「」ソッ……

マリ「」キョロキョロ……


エントリープラグが開いてマリが顔を出す……

周りを見ると、あるのは真っ赤な海とベタニアベース跡から立ち上る十字架の光りだけ……


マリ「ふっ、ふふふふふっ、あははははははははっ!!!」

マリ「やった! やったじゃん!! 私はあの地獄から抜け出せたんだ!!!」

マリ「ふははははははっ!! あはははははははっ!!! ざまーみやがれっ!!!」スクッ


立ち上がり、両手を大きく広げるマリ


マリ「これで……!」

マリ「私は……!」

マリ「自由だーっ!!!」


マリ「全部、全部、壊してやったよ!!」

マリ「これで私は!!!」

マリ「じ、ゆ、う、だーっ!!!!」


マリ「あはははははははっ!!! あはははははははっ!!!」

マリ「ふふふふっ!!! あはははははははっ!!!」


大声でひたすら笑い続けるマリ……

ー 四日後 ー

ー ネルフ本部、司令室 ー


加持「いやはや……心が傷む旅でしたよ」

加持「ベタニアベースでの不慮の事故……。そのおかげで教え子を一人失いましてね……」

加持「出来の悪い子ほど可愛いといいますけど、その通りですね。いなくなってから初めてその事に気づきました……」フゥ……


冬月「……報告書は先に読ませてもらっているよ。仮設五号機による暴走によってパイロットは脱出できなかったそうだな……。死体が出ないから行方不明扱いになってはいるが、エヴァ自体が蒸発してる事を考えれば……まず生きてはいまい」

ゲンドウ「痛ましい事をしたな……」フゥ……


暗い表情でうつむくゲンドウ……


加持「……我々も手は尽くしたのですがね。基地の自爆装置も使徒のせいで作動してしまいまして……。どうしても止められませんでした……」

冬月「わかってはいる……。残念だが、仕方あるまい。君には責任がないよ」

加持「彼女の墓を立ててやりたいのですが、それは構いませんか……?」

ゲンドウ「ああ、好きにしたまえ。出来たら私も墓参りに赴こう…………」フゥ……

加持「ありがとうございます」

加持「それではこれを……お約束の物です」スッ……

加持「今となっては彼女の形見の様なものですがね……」


ゲンドウ「すまない……」ガチャッ、パカッ……


ケースを開けると、中には小さな胎児のような物が……


加持「特殊ベークライトで固められていますが、間違いなく生きています……」

加持「人類補完計画の要ですね」


ゲンドウ「ああ。最初の使徒……」

ゲンドウ「アダムだ」

加持「ではこれで……」

加持「しばらくは好きにさせてもらいますよ」


ゲンドウ「…………」

冬月「少し、待ってもらえないかね。君に話しておきたい事がある」

加持「……何ですか?」

冬月「……君を味方として迎え入れたい。それだけだよ」

加持「味方ですか……。僕は初めからあなた方の味方ですがね」

冬月「猿芝居はそれぐらいでよかろう。君がゼーレと日本政府の二つと繋がりがあるのはわかっている」

冬月「トリプルスパイをこなすだけのその力量には感服するがね」

加持「……なるほど。全てお見通しという訳ですか……」

ゲンドウ「ああ。その通りだ」

加持「……それで僕にどうしろと? 先程、味方に引き入れたいと仰ってましたが……」

冬月「簡単な事だよ。偽の情報を他に流してくれればそれでいい。スパイ活動をやめたらまずい事になるのだろう、君も?」

加持「お察しの通りで……。特にゼーレの方はまずいのでね。下手したら殺されかねませんから」

冬月「だから、活動は続けてもらって構わない。ただし、偽の情報だけは流してもらう。全てではなくごく一部だけだがな」

加持「……つまり、他に知られるとかなりまずい事がある、と」

冬月「そういう事だ。本当に察しがいいな」

加持「それはどうも。お褒めの言葉、光栄ですが。……それで僕に見返りはあるんでしょうか? それとも、もらえるのは鉛弾だけでしょうかね?」

ゲンドウ「…安心したまえ。銃で脅すような真似はしない。それは我々のやり方ではないからな」

冬月「…………それに、脅したところで、君はどうせ屈しないだろう。そういう男だ。だからこそスパイに選ばれたのだろうからな」

加持「過大評価はありがたいですがね」


肩をすくめる加持


加持「それで、条件は?」

冬月「君への見返りは、人類補完計画の完璧な全容。そして、セカンドインパクトの真実だ。それプラス、ささやかな報酬といったところか」

ゲンドウ「……報酬として君には、三本出そう。それが限度だ」

加持「三億円ですか……。今、財政難に陥っているネルフとしては、まあ、そこら辺が確かに限度でしょう」

加持「それにセカンドインパクトの真実……。悪くない取引に聞こえますが、話が上手すぎる気もしますね」

ゲンドウ「……君を死なせたくない。それだけの事だよ。今のままだといつかは死ぬ事になるだろうからな」

加持「…………確かに。……そうはならないつもりですが、危険は常に伴っていますからね」

ゲンドウ「…私は誰にも死んでほしくないのだ。例えどれだけ遠回りになろうとも、人の命は大切にするべきだ。……それが私が何年も前に得た結論だよ」

加持「……奥さん、の事ですか。不幸な事故だったと聞いていますが……」

ゲンドウ「ユイはその時、私にかけがえのない事を教えてくれた。人の命以上に勝るものはない、というその事をな」


加持「………………なるほど」


そのまま、しばらく深く考え込む加持……

加持「…………わかりました。その話、お受けしましょう」

ゲンドウ「そうか。…では、宜しく頼んだ」

冬月「……詳しい話はまた今度とするかね。長旅で疲れてるだろうからな。今は羽を休めてくれ。君は愛弟子を失っている訳だしな……」

加持「ありがとうございます。それでは……」クルッ、カツカツ……



加持「そうそう、一つ疑問に思ったんですが……」ピタッ、クルッ

加持「僕に監視はつけないんですか?」


ゲンドウ「……君を信用しよう」


加持「それはどうも。こちらとしても監視がない方が気が楽ですからね」クルッ……

加持「」カツカツ…………


プシュン……


退室する加持……

冬月「…………碇。どう思う、あの男の事……」

碇「優秀な人物だな。物腰も柔らかい」

冬月(そういう事ではないのだがな……まあいい)


冬月「ともかく、あの男を味方につける事が出来た訳だ。どこまで信用出来るかはわからないが……」

碇「こちらが信用しなければ向こうも信用しない。我々は全て託すだけだ」

冬月「そうか…………」ハァ……


冬月(やれやれだな…………)

冬月(……やはり、あの男には監視をつけておきたいところだが、ここの諜報部ではすぐに露見してしまうだろう……。諦めざるを得ないか……)

冬月(しかし、あの男……どこまで知っている? ここの現状を知った上で応じたのか、それとも…………)

冬月(警戒だけはしておく必要はあるが…………)

ー ネルフ本部、リツコの研究室 ー


プシュン……

加持「やあ、リッちゃん。お久しぶり」

リツコ「あら、リョウちゃん、どうしたの? いつ日本に?」

加持「丁度、今日さ。二年ぶりに来たらすっかり浦島太郎だな。ここもずいぶんと変わってしまった」

リツコ「そうね。前とは違って色んな施設が増えたからね。かなり快適に変わったわよ」

加持「そうみたいだな、驚いたよ。ああ、そうそう。これ、リッちゃんにお土産。猫型のティーポット」スッ

リツコ「あら、素敵ね。可愛いわ。ありがとう」ニコッ

加持「気に入ってもらえて嬉しいよ。土産話の方も結構あるんだが、その前にまずは葛城に挨拶をしておこうと思ってね。どこにいるか知らないかい?」

リツコ「そうね……。発令所はもう見てきた?」

加持「ああ、そちらにはいなかったよ」

リツコ「それなら休憩室の方ね。新しく出来た施設よ。私も丁度行こうと思ってたから一緒に行く?」

加持「そうかい? それならお願いしようかな」

リツコ「ええ、こっちよ。ついてきて」スクッ、スタスタ

ー 休憩室 ー


ミサト「うーん、このお饅頭、美味しい♪」パクパク

日向「良かった。第二新東京市のお土産です。土産物コーナーで散々悩みましたから」

ミサト「かなりいけるわよ、これ。もう一個ちょうだい」

日向「ああ、好きなだけどうぞ。僕、お茶入れてきますね」

ミサト「ありがとー。日向君、気が利いてるわねー♪ 流石だわー」パクパク

日向「いやあ、そんな//」


加持「やれやれ……。そんなに甘い物ばかり食べてると太るぞ」

ミサト「」ングッ

ミサト「……その声、ひょっとして……!」

加持「久しぶりだな、葛城」

ミサト「加持ー♪ いつ日本に帰ってきたの? 教えてくれたら迎えに行ってたのに。ずっと会いたかったんだからー//」

日向「」


加持「葛城を驚かそうと思ってね。丁度、今日着いたところさ。それと、これはお土産。急な事だったから大した物じゃないが」スッ……

ミサト「ううん! すごい嬉しい! ありがとね♪// 開けていい?」

加持「いいさ。開けてみてくれ」

ミサト「なんだろ……」ゴソゴソ

ミサト「……イヤリング…//」

リツコ「あらあら、流石にそういうところは用意周到ね。大した物じゃないと言いつつ、かなり高価そうなのに」クスッ

加持「本当に大した物じゃないさ。それより、葛城。早速つけてみるか? きっと君に似合うと思うけど」

ミサト「う、うん// ありがとう、加持君……///」テレッ

日向「」


リツコ「ミサト、久しぶりだからって照れすぎよ」クスッ

ミサト「い、いいじゃないの、別に!//」

加持「ずいぶん待たせてすまなかったな、葛城。だけど、特命でしばらくは本部つきだから、また一緒にいられるよ」

ミサト「それ、ホントなの!//」

加持「ああ、だから休みがとれたら二人でまた旅行にでも行こう。そうすれば寝相の悪さが直ってるかどうかもわかるしな」

ミサト「やだ、ちょっとやめてよ、加持君///」アセアセ


日向「」

多分、次の次でアスカ登場です
ついでに今日はここで投下終わり

ー 数週間後 ー

ー ミサト宅 ー


シンジ「綾波のIDカード?」

ミサト「うん、そう。期限がもうすぐ切れるらしいから作って欲しいってリツコに頼んだらしくてね」

ミサト「で、リツコがそれを私に渡して……あ、シャレじゃないわよ?」

シンジ「はい……わかってますけど……。でも、どうして僕にこれを?」

ミサト「最近、シンちゃんとレイ、仲いいみたいだしさ。だから、堂々と会えるきっかけを作ってあげたのよん♪」

シンジ「えと……そういうのじゃないんですけど…………」

ミサト「もう。照れない、照れない。隠したってわかっちゃうんだからさ。もっとオープンにいきなさいよ♪」

シンジ「……本当に違うんですけど」

ミサト「はいはい。まあ、奥手のシンちゃんには言うだけムダか。……でも、シンジ君」ジロッ

シンジ「」ビクッ!!

シンジ「は、はい! 何ですか!!」

ミサト「あんまり奥手なのもどうかなってだけ。男は強引なぐらいが丁度いいのよん♪ でないと、レイ。先に誰かにとられちゃうかもしれないわよ」

シンジ「……はい」ホッ……

ミサト「という事で、そのIDカードはシンジ君に渡すから。しっかり頑張りなさいよ♪」

シンジ「はい。……ありがとうございます」ペコリ

ミサト「うん。素直でよろしい。やっぱ、人間、大切なのは恋愛よねー♪」ニコニコ

シンジ「……?」

ミサト「あ、そうそう、あと一個。シンジ君、はい、これ」スッ

シンジ「……? 何ですか、これ?」

ミサト「本部の広報に届いていたメッセージ。シンジ君宛のよ。渡すのすっかり忘れてたから、今、渡しとくわ」

シンジ「何だろ?」スッ


耳にあてるシンジ


『鈴原です。碇……いや、シンジと呼ばせてもらうで。こんな事言えた義理やないけど……頑張ってくれ! ワシらクラスの皆は応援しとるからな!』

『相田です。碇……信じてるからな。お前ならきっと使徒を倒してくれるって』

シンジ「?」

『洞木です。クラスの皆がメッセージ入れたいって言ってるんだけど、もうすぐ停電しちゃうらしいから時間がなくて……。だから、私が代表して皆の分を伝えるね』

シンジ(……停電?)

『碇君には本当に感謝してる。またエヴァに乗ってくれて本当にありがとう。それだけでも私たちは嬉しい』

『碇君があの宝石みたいな使徒を倒してくれるって信じてるからね!』

シンジ (……ヤシマ作戦の時のなんだ…………)

シンジ(……嬉しいんだけど……今更過ぎて微妙だ…………)


シンジ「………………」

シンジ「……あの……買い物行くついでに、IDカードを綾波のとこ、届けに行ってきます。だから少しだけ帰ってくるのが遅くなるかもしれないんですけど……」チラッ


ミサト「ああ、はいはい。行ってらっしゃい♪ 頑張るのよん。ちょっとどころか結構遅くなってもいいからね。今日は私、用事があって夕方から出掛けるからさー。晩御飯はいらないわよん」ニコッ

シンジ「え。あ、はい…………」

ー 綾波宅、玄関前 ー


ピンポーン……

シンジ「…………」


ピンポーン

シンジ「…………」



シンジ「……留守なのかな……?」

シンジ「」スッ

ガチャッ……

シンジ「鍵、かかってないや……」

ギイッ……

シンジ「綾波……? いる?」


シーン……


シンジ「入るよ……」ソッ……


バタンッ……

ー 綾波宅 ー


ゴチャゴチャ……


所狭しと物で溢れてる部屋……


シンジ「すごいな……これ……」キョロキョロ……

シンジ「足の踏み場もないくらい色んな物が置いてある……」

シンジ「何でこんなに物が……」

パサッ


不意に後ろでバスルームのカーテンが開く音


シンジ「ん?」クルッ

レイ「……碇…君?」


そこには全裸のレイが……


シンジ「あ、綾波!!///」

レイ「」ハッ

レイ「ごめんなさい…シャワー浴びてたから……//」サッ


タオルと手で前を隠すレイ


シンジ「こ、こっちこそごめん!! 勝手に上がり込んで!!///」

シンジ「あああの、僕、後ろ向いてるから!!/// その間に服を着て!!///」クルッ


レイ「うん……少しそうしていて…//」コクン

レイ「……//」モゾモゾ


制服を着こんでいくレイ


シンジ「……///」ドキドキ


じっと待つシンジ……

ー 着替え後 ー


レイ「そう。碇君がIDカードを……」

シンジ「うん。はい、これ」スッ

レイ「……」ソッ


そっと受けとるレイ


レイ「…ありがとう……//」

シンジ「ううん」ニコッ

レイ「…………//」


大事そうにIDカードを見るレイ


シンジ「……それにしても……物で一杯だね、綾波の部屋って…………」キョロキョロ……

レイ「もうすぐ…移動するところだったから」

シンジ「移動?」

レイ「ええ…。物が多くなると新しい部屋に移動するの」

シンジ「新しい部屋って? 他にも部屋借りてるの?」

レイ「…このビル自体、全部、私の物だから」

シンジ「ここ、全部……!?」

レイ「ええ…。買い取ったの」コクン

シンジ「」

シンジ「……そんなお金、どこから……」

シンジ「あ、でも、そういえば綾波って毎月二千万円もらってるって、確かミサトが…………」

レイ「…ええ、そのお金。物がどうしても多くなるから……」

シンジ「でも、何でそんなに物を買ってるの?」

レイ「色々な人に渡すため…。物を贈ると皆から怒られなくなるから…」

シンジ「あ…………」

レイ「こうして、色々と取り揃えておくとすぐに渡せて便利なの…」

レイ「この他にも、特に整備の人たちと医療関係の人たちには、合わせて千五百万円ぐらい毎月支払ってる。…だから皆、仕事もきちんとしてくれるし、私の無理なお願いもよく聞いてくれるの」

レイ「それでもらったお金のほとんどが消えてしまうから、他の人たちには、代わりに仕事を引き受けたりとか、頼み事をきいたりとか、そういう事を…」

レイ「私はそういうやり方でしか人と繋がれなかったから…」


シンジ「……綾波…………」


悲しげな表情を見せるシンジ…………

シンジ(これ、全部……)

キョロキョロ……

シンジ(人への贈り物…………)

シンジ(気持ちなんか一切こもってない贈り物…………)



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


レイ『私にはもう、感情とかほとんど残ってないの……』

レイ『……ここにいて……全部、壊されてしまったから』

レイ『もう、涙を流しても悲しくないの……。何か面白い事があったとしても笑えないの……』

レイ『……悲しい事も面白い事も、もう何一つないの……。私にはもう、これ以上何もないの……』

レイ『私はもう……泣く事も笑う事も出来ないの…………』



レイ『碇君には……私の様になってほしくないから……』



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



シンジ(……何でこんな事になってるんだろう……すごく悔しい……)


思わず泣きそうになるシンジ……


シンジ「…………あのさ、綾波。少し時間ある? 良かったら外に行こう」

レイ「外に…?」

シンジ「うん…。何だか明るい陽射しを浴びたい気分だから……」

シンジ(……本当は、泣きそうになるからここにいたくないだけなんだけど…………)


レイ「……うん。時間なら少しあるから大丈夫」コクン

シンジ「……良かった。それじゃ、行こう」

レイ「ええ」

ー 近くの公園 ー


ミーンミーンミーン……

ツクツクボーシ、ツクツクボーシ、ジジジジジ……


シンジ「……天気がいいね、今日」

レイ「…うん」コクン


ベンチに並んで座る二人


シンジ「……風も気持ちいいや」

レイ「……ええ」コクン


シンジ「…………」

レイ「…………」


そのまましばらく無言の二人……

シンジ「…………ごめん、綾波。……僕、あんまり話す事がなくて……」

レイ「……?」

シンジ「考えてみたら、毎日やる事が多すぎて、面白い話とかあんまりないんだ……。テレビとかもろくに見てないし……」

レイ「……無理に話さなくてもいいから…。それに、私もテレビ見ないし…」

シンジ「でも……綾波は退屈じゃない?」

レイ「…ううん。…こうしてると、落ち着く」

レイ「…何も話さなくても……なんだかポカポカする……//」


少しだけ照れたような顔を見せるレイ


シンジ「そう?」

レイ「//」コクン……

シンジ「…………そっか」


シンジ「………」

レイ「………」


レイ「碇君は……」

シンジ「……何?」

レイ「碇君は……退屈じゃない?」

シンジ「ううん……」

シンジ「綾波といると…何だか安心できる…」

レイ「そう…//」

シンジ「うん……」ニコッ


ミーンミーンミーン……


シンジ「…………」

レイ「…………」


どことなく穏やかな空気の中の二人……

シンジ「……そういえばさ、綾波って何で制服なの? 今日、学校休みなのに」

レイ「……服、これしか持ってないから」

シンジ「そうなの? 他に一着も?」

レイ「うん…。昔はもっと持っていたけど、全部捨てられたみたいだから」

シンジ「…………捨て…られた」

レイ「そう。……私のお母さんは、自分の服とかにあまり興味なかったけど、私には色々と言ってきたから…」

レイ「だから、沢山持ってたの…。ほとんどはお母さんが買ってきたものだったけど、たまに一緒に買いに行く事もあって…」

レイ「それが楽しみで、よくお母さんにおねだりしてた…。だから、服はタンスに入りきらないぐらいあったの…。だけど、今はもう制服以外持ってない…」

レイ「多分、それ以外、着る必要もないだろうからって捨てられたんだと思う…。お母さんが亡くなった時、色々な物が全部処分されたから………」


寂しげな目になるレイ…………


シンジ「…………ごめん……」

レイ「ううん……。平気……。もう、慣れたから……」

シンジ「……でも…………」

シンジ「…………」


言葉を探すが、上手く見つからないシンジ……

シンジ「ねえ、綾波。今度さ……」

レイ「……?」

シンジ「服、買いにいかない?」

レイ「服……」

シンジ「うん。綾波の服。僕がお金出すから。綾波にプレゼントさせて」

レイ「プレゼント…………」

シンジ「この前、誕生日みたいだったしさ」

レイ「……あれは」

シンジ「嘘だったんでしょ? でも、いいんだ。綾波に何か、贈り物をしたいって思っただけだから」

レイ「贈り物を……?」

シンジ「うん。ご機嫌とりとかじゃなくて、普通の贈り物を。……それに、綾波にお礼もしたいし…」

レイ「……お礼をされる様な事なんて、私は何もしてないから…」

レイ「……逆に、碇君を追い出そうと酷い事して」


うつむくレイ……


シンジ「うん。わかってるから……。大丈夫だよ。何で追い出そうとしたか知ってるから……」

レイ「……ごめんなさい、碇君」

シンジ「ううん。それよりもさ、ね、綾波、行こう。今日はまだ家の掃除とお風呂場磨きと買い物が終わってないからダメだけど」

レイ「…………」

シンジ「本当は買ってきて渡すのが一番だと思うんだけど、でも、女の子の着る服なんて、僕、何もわからないし一人で買えないからさ。だから……」

レイ「……うん…//」コクッ

レイ「ありがとう……//」

シンジ「良かった。それじゃ、今度誘うね。最近、ミサト帰ってくるの遅いから、朝の早い内からやる事を片付ければいつでも大丈夫だと思う」ニコッ

レイ「…うん……//」

レイ「私の方は…ネルフでの肩代わりしてる仕事がかなりあるから……。だから、時間が取れたら碇君に連絡する…//」

シンジ「うん。お願い」ニコッ

ピピピピピピピ……

レイ「……電話」

シンジ「あ、うん……。多分、僕だ」スッ……
スマホ「」


シンジ(曽根さんからだ……)

シンジ(出ないとまずいよね……)

シンジ(でも、綾波の前で出る訳にはいかないから……)

シンジ「……ごめん、綾波。ちょっと用が出来たから。悪いけどまた明日ね」

レイ「うん…」コクッ

シンジ「」タタタッ


公園から急いで出るシンジ




レイ「………碇君……」


少し淋しそうなレイ…………

レイ(……碇君といると……なんだかポカポカする…………)

レイ(……お母さんといた時とは別のポカポカする感じ…………)

レイ(……でも、いなくなると……急にズキズキして…………)

レイ(……また会いたくなる…………)


レイ(……そういえば、ありがとうなんて使ったの久しぶりだった…………)

レイ(……ありがとうございます…はよく言ってるけど……でも、それとは全く別の言葉…………)

レイ(……お母さん以外に使った事なかったのに…………)


レイ「…………」スイッ……


シンジの去った方角に目を向ける綾波……


レイ(また明日って言ってたから……)

レイ(戻って来る訳ないのに…………)

レイ(……碇君…………)


そっとうつむき、携帯に目を落とす綾波……


レイ(……電話も…かかって来る訳ないのに…………)

ピピピピピピピ……

レイ(……!)

レイ「」ピッ

レイ「…はい//」

小林『もっしー。久しぶり、レイ♪』

レイ「…………」

小林『ん? もしもし、もしもし? レイー』

レイ「…………はい。お久しぶりです……」

小林『どうしたの、レイ? なんか声に元気ないけど』

レイ「いえ、何でもありません……」

小林『そう? 勘違いかな?』

レイ「……はい」


小さくそう答えるレイ

小林『まあいっか。えっとさ、悪いけど、レイ、一つ頼みをきいてくれない?』

レイ「…何でしょうか……」

小林『うん、実はさ、レイにまた合コン頼みたくて。レイ、顔広いでしょ? どっかとセッティング組んでくれないかなー?』

レイ「……わかりました。日程が整ったらこちらから連絡します」

小林『ん。よろしくねー。それじゃ、また』

レイ「あの……」

小林『?』

レイ「合コンって…男の人と一緒に食事する事ですよね…?」

小林『……ん、まあ、そうね。お酒も飲むけど』

レイ「男の人と食事するのって……楽しいですか…?」

小林『……え、そりゃまあ楽しいわよ。いい男と楽しくおしゃべりしながら、食事出来たら最高でしょ?』

レイ「…………楽しく話しながら食事……」

小林『ん? 何? ひょっとしてレイもついに男に興味がわいちゃったの?』ワクワク

レイ「……いえ、そういう訳ではないです…」

小林『あー、そうなんだー。へー、レイがねー。うんうん、ちょっとだけ大人になったわね』

レイ「……違います…」

小林『相変わらず固い、固いよ、レイ。レイも年頃の女の子なんだからさ、もっと女の子しないとダメだって。でないと、どこかの誰かさんたちみたいに嫁き遅れちゃうわよ』

レイ「…………」

小林『あ、わかってると思うけど、これ、内緒だからね。二人には言っちゃダメよ。怒られるどころか、私、殺されちゃうから』

レイ「…はい。大丈夫です」

小林『おっと、バスが来ちゃった。じゃ、悪いけどまたね。合コンの件、よろしくー』

レイ「はい……」ピッ


電話を切るレイ

しばらくそのまま電話を見つめている……


シンジ「……一緒に食事…………//」


小さくそう呟くレイ

ー 少し時間を遡って ー

ー 路地裏 ー


シンジ「」ピッ
スマホ「」

シンジ「もしもし? 碇シンジです」

曽根『シンジ君か。一応確認するけど、周りに人は?』

シンジ「はい。大丈夫です。誰もいません」

曽根『そうか。それでどうだい、最近は?』

シンジ「あ、はい。前よりはずいぶんマシになりました。この生活にもだいぶ慣れてきましたし……怒られる事もかなり減りました」

曽根『それは何よりだ。君の努力の結果だな。俺たちも嬉しいよ』

シンジ「ありがとうございます」

曽根『で、他には何かあるかい? 何でもいいぞ。少しでも困った事とかあったら遠慮なく言ってもらっていいからな』

シンジ「いえ、本当に何も……。何だかわかりませんけど、最近、ミサト、不気味なくらい機嫌がいいんです……。逆にちょっと怖いくらいで……」

曽根『……そう…なのか……?』

シンジ「はい。本当に理由はわからないですけど……」

曽根『まあ、悪い事ではないだろうが……一応軽く調べてもらうよ。原因がわかった方がすっきりするだろうしな』

シンジ「ありがとうございます」

曽根『うん。任せておいてくれ』

曽根『さて。それはそうと、今日は君に教えておきたい情報が二つあってな』

シンジ「…何ですか?」

曽根『ベタニアベースの件はもう話したな。壊滅したってのは』

シンジ「…………はい、聞きました。MAGIにもそのデータが入っていましたから、全部木田さんに伝えてあります。だから、その件で教えられる事はもうないです…………」

曽根『……いや、すまなかったな……。パイロットが一人行方不明になっていたのに……』

シンジ「……はい。真希波って子が……。脱出できなかったらしくって……。多分、もう亡くなってるって綾波から聞きました」

曽根『そうか…………』

シンジ「原因は色々考えられるそうなんですけど……。制式タイプじゃなくて仮設だったからってのが、一番考えられる理由だそうです……。無理矢理パーツをくっつけて動かしてたからって」

シンジ「それと、実際に実戦投入されたのは、機体もパイロットも初めてだったから、色々と誤作動が生じたんじゃないかって」

曽根『ああ、聞いた…………』

シンジ「……だから、ここにあるエヴァは大丈夫だって綾波は言ってましたけど…………でも…………」

曽根『…………』

シンジ「…………」


重い沈黙に包まれる二人…………

曽根『』フゥ……

曽根『…………実はそれ関連で、ドイツ支部がエヴァを是非ともと言ってパイロットごと本部に差し出したみたいでな……。どうもベタニアベースの二の舞を恐れたんだともっぱらの噂だ』

シンジ「エヴァを……。ドイツ支部っていうと弐号機ですよね? 確かパイロットは式波っていう女の子だったと思いましたけど……」

曽根『そう。よく知ってるな』

シンジ「はい。綾波からMAGIの操作方法とかは一通り教えてもらったので……。その時一緒にネルフの大体の事も叩き込まれましたから」

曽根『…………なんと言えばいいか、困るな……。ただ……君にとってはその方がいいか。もちろん、俺たちにとっても』

シンジ「はい。色々と教えてもらったおかげでかなり助かってます。……それで、弐号機がこっちに?」

曽根『そう。近い内に来るはずなんだ。弐号機とそのパイロットのデータだけはもう別ルートから手にいれてるんだが、実際、会ってみないとわからない事もあるからな』

シンジ(別ルート……?)

シンジ(僕の他にもスパイがいるって事……?)

曽根『だから、シンジ君には、実際会ってみた印象を教えてもらおうと思ってな。弐号機パイロットがそちらに着いたらまた電話してくれ』

シンジ「……わかりました」

曽根『まあ、機体が一つ増えるって事は使徒との戦いが断然有利になる訳だし、パイロットが一人増えるって事は君たちへの負担がその分軽くなるはずだ。悪い事じゃあないさ』

シンジ「…………そうですね」

曽根『ああ。それじゃあこれでな。何かあったらまたこっちからも連絡するよ。体を壊さないよう気をつけてな』

シンジ「はい」ピッ……



シンジ「…………」


しばらくスマホを眺めてるシンジ……


シンジ「式波か……。どんな子なんだろう……。写真を見た限りだと、普通の女の子だったけど……」


シンジ「こっちに来て、酷い事されないといいけど…………」ボソッ


暗い表情で、小さくそう呟くシンジ……

ー 数日後 ー

ー 巨大墓地 ー


ゲンドウ「三年ぶりだな……二人でここに来るのは」

シンジ「僕は……あの時逃げ出して、その後は来てない……」


シンジ「だから、今日は嬉しいんだ……。こうして母さんと会えて……」スッ……


墓の前に花束を置くシンジ


ゲンドウ「そうか……」

シンジ「うん……」



シンジ「母さんの写真とかは……もう残ってないの?」

ゲンドウ「ああ……。この墓もただの飾りだ。遺体はない」

シンジ「そう…なんだ……。先生の言ってた通り、全部捨てちゃったんだね」

ゲンドウ「全ては心の中だ。今はそれでいい」

シンジ「うん……。その父さんの気持ち……何となくわかるよ。僕が覚えてる母さん……笑ってたような気がするし……」

ゲンドウ「……そうか」

失礼、確認




バババババババッ……

近付く大型輸送機



シンジ「時間みたいだね、父さん」

ゲンドウ「……ああ」


シンジ「…………」

ゲンドウ「…………」


シンジ「行かないの、父さん?」

ゲンドウ「……いや、行かねばならないが…………」

シンジ「……?」

ゲンドウ「」フイッ……


ふと輸送機の方に目を向けるゲンドウ

それからまたシンジの方に目を向ける


ゲンドウ「シンジ」

シンジ「…うん」

ゲンドウ「やはり母親がいた方がいいか?」

シンジ「え?」

ゲンドウ「……ずいぶん長い事、葛城君のところにいるからな…………」

シンジ「……?」

ゲンドウ「母親がいなくて淋しいというその気持ちもわかるが……」

シンジ「…………」

ゲンドウ「……いつまでも葛城三佐の家に世話になっているのもどうかと思ってな。そろそろ……」

シンジ「……? ……ミサトさんがそれを?」

ゲンドウ「いや……。そうではない。彼女は子供好きだからな」

シンジ「子供好き、ね…………」フッ……


乾いた息を吐くシンジ…………

ゲンドウ「ああ。お前もよくしてもらってると聞いている」

シンジ「……そうだね。これ以上はないってぐらい、よくしてもらってるよ。いつまでもミサトさんのところにいたいぐらいに……」

ゲンドウ「葛城君もそう言っていた。この前尋ねたら、いつまでもいて欲しいとな。嬉しそうにそう言っていた。だが……」

シンジ「だが?」

ゲンドウ「…………私も最近料理を始めたのでな。……ずいぶんと上手くなった。得意料理は親子丼だ」

シンジ「そっか……。自炊出来る様になったんだね、父さん……。からっきしだったのに……」

ゲンドウ「ああ……。人は変わっていく生き物だ。変わらない事も大事だが、変わっていく事も大事だ」

シンジ「そうだね……」


ゲンドウ「…………」

シンジ「…………」


ゲンドウ「……もしもお前が……」

シンジ「うん……」

ゲンドウ「母親がいなくてどうしても淋しいというのなら……」

シンジ「……再婚するの?」

ゲンドウ「…………一時期はそれも考えたがな。だが…………」


ユイの墓をじっと見つめるゲンドウ……


シンジ「ううん……。大丈夫だよ、父さん。……淋しくはない。何となくだけど、母さんが見守ってくれてるような気がするから……」

ゲンドウ「……そうか…………」

シンジ「うん……」


それからしばしの沈黙…………

シンジ「……父さん、時間だよ。行かないと」

ゲンドウ「」フイッ……


再び輸送機の方に目を向けるゲンドウ……

そして、またシンジの方に顔を向ける


ゲンドウ「…シンジ」

シンジ「……ごめん、父さん。もう少しミサトさんのところにいさせて。その内必ず家に戻るからさ」

ゲンドウ「そうか……」フゥ……


シンジ「それじゃ、僕、もう行くよ。ミサトさんが待ってるし……」クルッ……

シンジ「」スタスタ……


ゲンドウ「シンジ」

シンジ「……何?」クルッ

ゲンドウ「……今日はお前とこうして墓参りに来れて良かった。私もあまり時間が取れないからな……」

シンジ「……そうだね」


小さくうつむくシンジ


ゲンドウ「……それではな」

シンジ「うん。また……」


ゲンドウ「……」クルッ、テクテク……

シンジ「……」


どことなく淋しそうなゲンドウ…………

その後ろ姿を見送るシンジ…………

ー ミサトの車の中 ー


ミサト「で、シンジ君、どうだった? お父さんと会って」

シンジ「……問題ないです。普通に少し会話しただけですから」

ミサト「ボロは出さなかったでしょうね? きちんと優等生を演じられたの?」

シンジ「……大丈夫です」

ミサト「それ、本当でしょうね? もし化けの皮が剥がれてバレてたら、司令ががっかりする上、私に迷惑がかかるのよ。引き取ったおかげでダメ人間になったとか思われるんだからさ」

シンジ「…………」

ミサト「返事は!?」ダンッ!!

シンジ「」ビクッ!!

シンジ「だ、大丈夫です! 本当に大丈夫ですから!! 二言三言話しただけなんで!!」

ミサト「だったらそれを最初に言いなさいよね。イライラさせないでよ。ホント要領が悪い!」ブツブツ

シンジ「すみません! すみません!」


プルルル……


不意に鳴る電話


ミサト「はい、葛城」

ヒューン……!!


それとほぼ同時に上から降ってくる岩石!


ミサト「いいいいいいいっ!!?」
シンジ「うわあああああっ!!?」



ズッカーン!!

道路にぶつかり粉々に砕け散る岩石!


ミサト「何なのよ、これええぇぇ!!!」ギュイン!!

ギュキャキャキャキャ……!!


急ハンドルでそれを間一髪で避けるミサト!

ー 相模湾沖 ー


第七使徒「」キン……キン……キン……


海上を瞬時に凍らせて、その上を歩く第七使徒


戦艦A「!!」ダダダダダ!!
戦艦B「!!」ダダダダダ!!
戦艦C「!!」ダダダダダ!!
戦艦D「!!」ダダダダダ!!
戦艦E「!!」ダダダダダ!!
戦艦F「!!」ダダダダダ!!
戦艦G「!!」ダダダダダ!!


それを取り巻くように砲撃を続ける国連軍



第七使徒「」ジャマー?


第七使徒「」エイッ


ピカッ!!


戦艦A「!?」
戦艦B「!?」
戦艦C「!?」
戦艦D「!?」
戦艦E「!?」
戦艦F「!?」
戦艦G「!?」


ドドドドドドドド!!

バキッ、メキッ!! ボキッ、バキッ!!


ドッカーン!!


戦艦全てが破壊され爆発を起こす!!

ー ミサトの車の中 ー


ギュキャキャキャキャ!!


ミサト「使徒!? そんなの目に見えてるからわかってるわよ! 冗談じゃないわよ!! 死ぬとこだったのよ、こっちは!!」

青葉『…………いえ、気持ちはわかりますが……。ですけど、文句なら僕じゃなくて国連軍にお願いします。向こうから勝手にしゃしゃり出て来たんですから』

日向『足止めにもならないくせにね。ホントいい迷惑だよ』

ミサト「それで状況は!! レイは何してたのよ、もう!!」

青葉『いえ、レイちゃんは悪くはないですよ。もう出撃準備も整って、そっちに向かってるんですから』

日向『今回悪い点があったとしたなら、国連軍だけですね。それと、葛城さんの運ですか……。国連軍には後で抗議をお願いします』

ミサト「わかってるわよ! 今度という今度は、あの税金泥棒どもにたんまり説教してやるから!!」

ミサト「それでレイはいつ来るのよ、こっちに!!」

日向『五分後にはそちらに着いてると思います。ですが、既にTASK02を実行中なので、そちらの方が早いかもしれませんね』

ミサト「は!? タスク02!? 何よ、それ!?」

日向『あれ? ……もしかしてまずかったですか? 葛城さんの帰り道に近かったので、今回は何よりスピードを優先させたんですけど……』

ミサト「そうじゃなくて! タスク02ってのが何なのかわかんないのよ!! 簡単に説明して!!」

日向『ああ……弐号機ですよ。例のドイツから来るっていう』

ミサト「弐号機!? って事はアスカ!?」


車から乗り出して空を見上げるミサト

ー 相模湾上空 ー


EVA専用輸送機「」バシュッ!!

EVA弐号機「」フワッ…………


空から飛び立つ弐号機!


第七使徒「」?

第七使徒「」トリャッ

第七使徒「」ギュイン!! ギュイン!!


ロープ状の触手をくりだす第七使徒!


EVA弐号機「」スッ……クルッ……ヒョイ……

EVA弐号機「」パシッ!!


その触手を全てかわし、輸送機から飛ばされたボーガンを見事にキャッチする弐号機!


EVA弐号機「!!」バシュッ!!


狙いを定め、発射!!


第七使徒「」パンッ!!


見事、第七使徒に命中!!



第七使徒「」ブシュッ……!!


パラパラ…………


ゆっくりと砕け散る第七使徒…………

ー ミサトの車の中 ー


シンジ「すごい! コアを一撃で!!」

ミサト「」ハンッ


鼻で笑うミサト



パラパラ……

ヒュイン!!


第七使徒「」クルッ……チャキ!!


すぐに変形して復活する第七使徒!!


ミサト「やっぱりね……。あのクソガキにそんな芸当が出来る訳ないもの……。相変わらずのダメ女ね、ホント!!」ダンッ!!

シンジ「…………!」ビクッ!!

ー EVA弐号機、エントリープラグ内 ー


アスカ「ウソっ!! まだ倒してないの!?」


アスカ「……いやぁ! 嫌っ、嫌っ、嫌っ、嫌っ!」ガクガク


アスカ「ここで倒さないとまたぶたれるのっ!!」ガクガク

アスカ「お願い、助けて!! アタシを助けて!!」ガクガク

アスカ「お願いだからお願いだからお願いだから、アタシにやられてっ!!! お願いっっ!!!」ガクガク、ブルブル


アスカ「痛いのはもう嫌なの!! 嫌なのっ!! だからっっ!!!」ガシッ、ガシッ!!


必死に操縦桿を動かすアスカ…………

ー 相模湾上空 ー


EVA弐号機「!!」バシュッ!! バシュッ!! バシュッ!! バシュッ!!


ボーガンの矢を全て撃ち込む弐号機!


第七使徒「」キン、キン、キン、キン!!


しかし、ATフィールドに全て阻まれる!




ー 弐号機、エントリープラグ内 ー


アスカ「いやっ!!」ガクガク

アスカ「いやっ!! いやっ!! いやっ!!!」ガクガク

アスカ「やめてっ!!! もうやめてっ!!」ガクガク

アスカ「助けてっ!!!」ガクガク


アスカ「いやああああああああっっ!!!!」ギュー!!


渾身の力で操縦桿を押し込むアスカ…………!

ー 相模湾上空 ー


EVA弐号機「!」クルクルクル

EVA弐号機「!!」ズガッ!!


ドンッ!!


空中で高速回転して、蹴りをくりだす弐号機!

第七使徒のATフィールドが上空に広がる!


ギギギギッ……


先程放ったボーガンの矢と共に、蹴りが段々とATフィールドの中に押し込まれていき……!


ドシュッ!!


貫通する!!



第七使徒「」…………

第七使徒「」ブシュッ……!!!



ドオンッ!!


コアが砕け、十字架の光が立ち上る!



第七使徒、殲滅!!!

ー 弐号機エントリープラグ内 ー


アスカ「……倒し……た……?」

アスカ「倒したの……?」

アスカ「本当に……倒したの?」

アスカ「アタシが……?」

アスカ「やっ……たあ……!」


アスカ「やった!! やったあっ!!」パアッ!!

アスカ「これでぶたれないで済むの!! 私は助かったの!!!」


小さな子供の様にはしゃぐアスカ


アスカ「ママ!! ママ!! 聞いて!! アタシ頑張ったの!!」

アスカ「使徒を倒したの! これできっと皆が優しくしてくれるの!!」

アスカ「誉めて、ママ!! アタシ、頑張ったんだから!!!」


満面の笑みを浮かべ、弐号機に嬉しそうに話しかけるアスカ

ー 相模湾上空、駐車場真上 ー


EVA弐号機「」クルクルクル♪

EVA弐号機「」ドシュッ……!!


ジェット噴射で着地用意を整える弐号機


EVA弐号機「」ヒューン……


そのまま自由落下していき……


ドサッ!!


見事、着地!



ミサト「きゃああああああああっ!!!」
シンジ「うわああああああああっ!!!」

車「」クルクルクルクル!!

車「」ドンガラガッシャーン!!


が、着地の際、ミサトの車に足が当たり、そのまま弾き飛ばす…………




ー EVA弐号機、エントリープラグ内 ー


アスカ「……」サーッ……


後からそれに気がつき、一瞬で全身から血の気が引くアスカ…………


アスカ「あ……あ……あ…………!!!」

アスカ「やああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!」




ー 既にその場に到着していた零号機、そのエントリープラグ内 ー


レイ「死んだわ、あの子……」


ぽつりと溢す綾波…………

ー 数十分後 ー

ー 弐号機、エントリープラグ内 ー


ミサト『アスカ!! さっさとそこから出てきなさい!!』


アスカ「いや……いや……いや……」ガクガク、ブルブル

アスカ「ぶたれのはいや……」ガクガク、ブルブル


うずくまり震えるアスカ…………


ミサト『あんたのせいで大ケガするところだったのよ!! このバカッ!! ドジッ!!』


アスカ「叩かれるのもいや……」ガクガク、ブルブル

アスカ「つねられるのもいや……」ガクガク、ブルブル


ミサト『こっちに来て土下座するぐらいの誠意を見せなさいよ!! ふざけんじゃないわよ!! 死ね!!』


アスカ「蹴られるのもいや……」ガクガク、ブルブル

アスカ「痛いのは、もういや…………」ガクガク、ブルブル

アスカ「死ぬのも、いや…………」ガクガク、ブルブル


アスカ「助けて、ママ…………」ガクガク、ブルブル



《……アスカ…………》


アスカ「ママ……?」


《……アスカ…………》


アスカ「ママ……!」



ミサト『アスカ、あと十秒以内に出てこなかったら、その弐号機、バラしてぶち壊すわよ!! いいの、それでも!!』


アスカ「!!」ビクッ!!

アスカ「ダメ! ママを壊さないで!!」グシュッ、グスッ

アスカ「お願いします!! ママにだけは何もしないで!! お願いします!!」ボロボロ、ボロボロ


ミサト『だったらさっさと出てきなさい!! あと六秒以内!!』


アスカ「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!!」エグッ、エグッ……


泣きながら震える手でハッチを開けるアスカ…………

ー アスカが外に出た後 ー

ー 弐号機、エントリープラグ内 ー


《……アスカ…………》


シーン……



《……アスカ…………》


シーン……



《……アスカはいい子よね…………》


シーン……



《……だから、私と一緒に死んでちょうだい…………》


シーン……



《……ママ、もう死にたいの…………》


シーン…………



《……こんなアスカ、見ていたくないの…………》


シーン…………



《……だからアスカ、一緒に死にましょ…………》


シーン……



《……アスカ。私の可愛いアスカ…………》


シーン……



《……アスカ…………》


シーン…………



《……………………》




そして、静まりかえるエントリープラグ内…………

ー 外 ー


ミサト「アスカ!!」ツカツカ

鬼の様な形相でアスカに詰め寄るミサト


アスカ「ひっ!!」サッ

反射的に手で顔をかばうアスカ…………


ミサト「このバカっ!! ウジ虫!!」グイッ!!

アスカの髮を力任せに掴み、顔を出させると……


ミサト「」ヒュン!!

バシンッ!!!

アスカ「いぐっ!!!」


思いきり平手打ちを食らわす…………

アスカ「嫌っ! 嫌っ!嫌あっ!」ボロボロ……

逃れようと暴れるアスカ


ミサト「動くなっ!!」ヒュン!!

バシンッ!!

アスカ「ひぐっ!!!」


ミサト「痛いでしょう!? でも、あんたはそれよりももっと酷い事を私にしたのよ!! 無傷で済んだのが不思議なくらいよ!!」ヒュン!!

バシンッ!!

アスカ「あぎっ!!!」


ミサト「オマケに車までオシャカにしてくれてっ!!」ヒュン!!

バシンッ!!

ミサト「あれ、こないだ買い換えたばかりの新車なのよ!! ランボルギーニよ!! ウン千万もしたのよ!! どうしてくれんのよ!!」ヒュン!!

バシンッ!!!

ミサト「オマケにそれを謝りもしない!! どうなってんのよ、あんたの頭の中身はっ!!」ヒュン!!

バシンッ!!


アスカ「痛い! 痛いのっ! いや! 助けてっ!!! ママ!! ママ!!」ポタポタ、ボロボロ


泣きながら、懸命に逃げようとするアスカ…………


ミサト「動くなって言ったばかりでしょうが!!」ヒュン!!

バシンッ!!

アスカ「あぐっ!!」


そこへ更に追い討ちするミサト…………

シンジ「あの! ミサトさん、やめて下さい!!」ダダダッ、ガシッ


走り寄って、ミサトの腕を抑えるシンジ


シンジ「もう十分じゃないですかっ!! この子、泣いてるし反省もしてるみたいだから!! だから、もうっ!!」

ミサト「うるさい!!」ブンッ!!

シンジ「ぐっ!!」ドサッ……


腕を振り払って、シンジを突き飛ばすミサト


ミサト「しゃしゃり出てくるんじゃないわよ!! 悪い事をしたら、罰を受けるのは当然でしょうが!! ごめんで済んだら警察なんかいらないのよ!!」

シンジ「だ、だけど……!!」スクッ


すぐに起き上がって再びミサトに近寄ろうとするシンジ


レイ「」スッ……

それを制するように、レイが立ち塞がってミサトに声をかける


レイ「葛城三佐……。私が弐号機の子によく言ってきかせますから……。だからもう…………」

ミサト「ダメよ!」ジロッ

レイ「……お願いします」ペコリ……


深々と頭を下げるレイ……


ミサト「」チッ


あからさまに舌打ちするミサト……

ミサト「レイが優しいってのはよくわかったわ。だけど、今回ばかりはダメだから」

ミサト「下手したら私は死んでたのよ! なのに、反省だけで済む訳ないでしょうが!! そもそも反省すらしてるかどうか怪しいのに!!」ギロリ


アスカ「助けてっ!! もう許して!! 嫌なのっ!! 嫌ああっ!!」エグッ、ヒック、ボロボロ


ミサト「アスカ!! あんたはホント、昔からそればっか! 何かあるとすぐに泣いて、ろくに謝りもせずに自分の事ばっかり!! 私はあんたのそういうところも含めて、クズなあんたが大っ嫌いなのよっ!!」スッ……


大きく振りかぶるミサト……


シンジ「ミサトさんっ!!」ダダッ!!


咄嗟に飛び出すシンジ


ヒュンッ!!


バシンッ!!!


シンジ「うぐあっっ!!!」ドサッ!!

レイ「碇君!!」


代わりに強烈な平手打ちを食らい、再び倒れるシンジ…………

ミサト「シンジ君!! なにしてんのよ、あんたはっ!!!」


更に激怒するミサト

握っていたアスカの髮を放し、代わりに倒れてるシンジの胸ぐらを掴む


ミサト「」グイッ!!

シンジ「あ、ご、ご、ごめんなさい! 許して下さい、ミサトさん!!」

ミサト「しゃしゃり出てくるなってさっきも言ったばかりでしょうが!!」ヒュン!!

バシンッ!!

シンジ「いぐっ!!!」

ミサト「人の邪魔をするんじゃないわよ!! これも前から何回も言っ」

レイ「お願いします、葛城三佐! やめて下さい!」ダッ!!


慌ててミサトに詰め寄るレイ


レイ「碇君は関係ないですから……! だからもう……!」スッ……


手と体を入れて、シンジを庇う


ミサト「ぐっ!!」


上げた腕を振り下ろせないミサト……




そこから少し離れたところでは、頭を手で守りながら地面にうずくまって泣き震えるアスカの姿が……


アスカ「痛いのはいや……。もういや……。助けて、ママ……。助けて…………」グシュッ、エグッ、エグッ……


かばわれた事にも気がついていないアスカ…………

ミサト「……わかったわよ! 貸しにしといてあげるわ、レイ」スッ……


上げた腕を下ろし、シンジの胸ぐらも放すミサト


レイ「」ホッ……

レイ「ありがとうございます、葛城三佐」ペコリ……


ミサト「ただし!」

レイ「はい……」

ミサト「次はないからね。もし次に邪魔したら、例えレイでもひっぱたくから。いいわね?」

レイ「はい……わかりました」


ミサト「全く……」ブツブツ……


そう言って電話をかけるミサト……


ミサト「」プルルル、プルルル……

日向『はい。葛城さんですか?』

ミサト「ええ、そうよ。車が壊れたから、代わりの車をこっちに寄越してくれる」

日向『了解です。すぐに』

ミサト「それと、新車を経費で落としといて。今度はもう一個グレードの高いやつにしておいてよ。右ハンドルに改造するのも忘れないで」

日向『わかりました。書類上は全損にしておけばいいですね?』

ミサト「うん、お願い」

日向『了解です。手配しておきます』

ミサト「ええ、よろしく。近くのパーキングエリアで待ってるから、車はそこに寄越して」

日向『はい』

ミサト「じゃ、また後で」ピッ……

ー 一方、シンジたち ー


レイ「碇君、大丈夫…?」

シンジ「うん……。僕は大丈夫……。それより、あの子の方が……」チラッ……


アスカに目を向けるシンジ


アスカ「怖い……。怖い……。怖い……。嫌だ……。嫌だ……。嫌だ……。嫌だ……」グスッ、ヒック、エグッ、エグッ


泣きながらうずくまって震えるアスカ…………


シンジ「……行かないと」タタッ……

レイ「…………ええ…」タタッ


アスカに駆け寄る二人……

シンジ「…あの……式波」

アスカ「!!」ビクッ!!


アスカ「やめて……! もうやだ……!許して……! アタシに何もしないで……!」グシュッ、ヒック、ポタポタ


更に泣き崩れるアスカ…………


シンジ「大丈夫だよ、式波。何もし」


アスカ「ぶたないで……! 叩かないで……! 蹴らないで……! お願い……!」グスッ、ポタポタ

アスカ「アタシ、いい子にしてるから……! 言いつけ全部守るから……! 口答えしないから……! 辛気くさい顔しないから……! 明るく返事するから……! 文句を言わないから……! だからもう何もしないで……!!」グシュッ、グスッ、ヒック

アスカ「アタシとママを壊さないで……!!!」ポタポタ、ボロボロ……



シンジ「式…波…………」

レイ「…………」


愕然とするシンジ…………

うつむくレイ…………

ミサト「シンジ君!!」

シンジ「」ビクッ!!


シンジ「は、はい! 何ですか、ミサトさん!」

ミサト「何ですかじゃないわよ! 今から帰るのよ! なにボケッと突っ立ってんのよ、あんたはー!」

シンジ「ご、ごめんなさい! 今すぐ行きます!」

ミサト「ホント、使えないやつばっかり! どうなってんのよ、エヴァの適格者って!」クルッ、スタスタ……


先に歩き出すミサト


シンジ「……あ、えと……!」

シンジ「……どうしよう……式波が…………」チラッ


アスカ「もうやめて……やめて……」エグッ、エグッ、エグッ……


アスカの方に目を向け、それからすぐにレイに目を向けるシンジ


シンジ「ごめん、綾波! 式波の事、頼んでいい!? なんとか落ち着かせてあげて!」

レイ「……ええ」コクン

シンジ「ありがとう! 頼んだよ!」ダダダダッ


慌ててミサトの後を追うシンジ…………


アスカ「許して……許して…………」グスッ、ヒック……

レイ「…………」


しばらく、暗い表情をしたまま、アスカに視線を向けるレイ…………


レイ「少しだけ……待ってて」クルッ、タタタッ


やがて、アスカに飲ませる為の水を取りにその場を離れる


アスカ「アタシを助けて……。助けて……ママ…………」グスッ、ヒック、ポタポタ…………


ずっとその場で泣きじゃくるアスカ…………

ー 翌日 ー

ー 学校 ー


シンジ「じゃあ、あの後、式波は……」

レイ「…ええ。水を飲ませたらずいぶん落ち着いた。……多分、私が叩かないってわかったからだと思う…」

シンジ「……そっか…。僕も前に綾波から水をもらったから、その気持ちは何となくわかるよ……。あの時は嬉しかったから…………」

レイ「そう……。良かった……」

シンジ「うん」ニコッ……


シンジ「それで、その後は……?」

レイ「……保安部が連れて行ったから……。多分、ネルフ本部に行ったと思うけど、どうなったかまではわからない…」

シンジ「そう……なんだ……」

レイ「ごめんなさい……。保安部だけは、私の無理も聞いてくれないし、何も教えてくれないから…………」

シンジ「ううん、綾波は悪くないよ…………。でも、何で保安部だけ……?」

レイ「……保安部だけは特別なの。…秘密厳守でネルフ本部内のどこにいるかもわからないし、もしかしたらネルフ本部にさえいないかもしれない。……だから、私とは全くつながりがなくて…」

シンジ(……そういえば、僕が連れ去られた時も保安部だったっけ……。あのミサトでさえ、大人しくしてた覚えがあるや……)

レイ「…ごめんなさい……。碇君に頼まれてたのに……」シュン……

シンジ「ううん……。どうしようもなかったんだから。……仕方がなかったんだと思う」

レイ「…ごめんなさい」

シンジ「…うん……。わかってる………」


しばらくの間、重い沈黙……


シンジ「…………ここだけじゃなかったんだね、酷いところ……」

レイ「…そうみたい…………」


シンジ「……あの子、何もされてないといいんだけど……」

レイ「……そうね…………」


そして、また重い沈黙…………

ー 学校終わり、夕方 ー

ー ミサト宅 ー


ガチャッ……

シンジ「ただ今、帰りました」


シンジ「…………ん?」

シンジ(知らない靴……。お客さんが来てるのかな……?)


ダダダダッ


部屋の奥から走る足音が響く


アスカ「お、お帰りなさい! 出迎えが遅くなってすみません!!」ペコリ!!

シンジ「は!? 式波!?」

アスカ「あ、はい! 私、式波・アスカ・ラングレー二等兵です! 碇シンジさんですよね! その素晴らしいお噂はかねがね聞いてます! 初めまして!」ペコリ

シンジ「初めまして?」

アスカ「あ、ご、ごめんなさい! 前にお会いした事がありましたか!? すみません! すみません! 許して下さい!」ペコペコ!!

シンジ「あ、いや、その……! ……だ、大丈夫! 初対面だから! 会った事ないから!」アセアセ

アスカ「そうなんですか! 早とちりしてすみません! アタシ、どうしようもないバカなんです! 許して下さい! 許して下さい!」ペコペコ!!

シンジ「あの、平気だから! 本当に大丈夫だから! だから謝らないで!」アセアセ

アスカ「ごめんなさい! ごめんなさい! 不快な気分にさせてしまって、ごめんなさい! ごめんなさい!」ペコペコ!!

シンジ「大丈夫だから! 本当に大丈夫だから!」アセアセ

シンジ「えと……それで式波がどうしてここに?」

アスカ「はい! 今日からこちらにお世話になる事になりました! ご迷惑をおかけしないよう精一杯努力していきますので、よろしくお願いします!」ペコリ!!


深々と頭を下げるアスカ


シンジ「ここにって……ミサトさんがいるのに!?」

アスカ「」ビクッ!!

アスカ「ご、ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! 許して下さい!」ペコペコ!!

アスカ「本当にご迷惑なのはわかってるんです! でも、ここに住まわさせて下さい! 他に行き場所がないんです! お願いします! お願いします!」ペコペコ!!

シンジ「いや、あの、そうじゃなくて……!」アセアセ

アスカ「あの、何でもしますから! 買い物でも掃除でも片付けでも肩もみでも、本当に何でも!」

アスカ「碇さんからすれば、私なんてゴミクズ同然だってのはわかってます! だから本当に目障りだっていうのもわかるんですけど、でも、お願いします! ここに住まわさせて下さい! お願いします! お願いします!」ペコペコ!!

シンジ「だ、大丈夫だよ! 目障りなんて事ないから! 僕は構わないし! だから、ちょっと落ち着いて!」

アスカ「はい! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!」ペコペコ!!

シンジ「」

アスカ「あ、あの、それじゃ、アタシ邪魔にならないよう向こうの部屋で大人しくしていますので、何か御用があったら呼んで下さい! すぐに飛んできますから!」

アスカ「本当に、こんな気持ち悪い女と住む事になってごめんなさい! 許して下さい!」ペコリ!!

アスカ「」タタタタッ

ガチャッ、バタンッ……


そう言い残し、逃げるようにして部屋に閉じこもるアスカ


シンジ(……どうしよう、こっちの話、全く聞いてくれなかったんだけど…………)


困惑するシンジ…………

ー アスカの部屋 ー


アスカ「」ハァハァ……


ドアに寄りかかって荒い息を吐くアスカ


アスカ「どうにか怒られなかったわ…………。良かった…………」

アスカ「……っ…………」ズルッ……


緊張の糸が切れたのか、そのままドアにもたれかかって倒れる様に床に座る


アスカ「……大丈夫…………」ポツリ……

アスカ「アタシ、まだ頑張れるよ…………大丈夫だから…………」ポツリ……

アスカ「……ママ…………」ポツリ……


持ってきたボストンバッグに目を移すアスカ


荷物はベッドが一つとボストンバッグが一つ……

ボストンバッグの中に入っているのは、制服と着替えが数着、文房具、ノートパソコン、手芸セット……

そして、自分で作った弐号機のぬいぐるみと、ボロボロのサルのぬいぐるみだけ…………

ー リビング ー


シンジ「……式波…………」

シンジ「……何でミサトが、ここに引き取ったのか知らないけど…………」

シンジ「……あれ、絶対に無理してるよね…………」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ー 第五使徒戦 ー


ミサト『あら、動きに元気があっていいわね。好印象よ』

シンジ『ありがとうございます!!』

ミサト『それに返事もハキハキしてて、気持ちいいわねー。それも◎よ』

シンジ『はい!! それもこれも、全部、ミサトさんの親切で丁寧な指導のおかげです!! ミサトさんにはしてもしきれないぐらい感謝してます!!』

ミサト『あ、えっと、シンジ君// 確かに、お礼を言うのは良い事だけどー』

ミサト『でも、それだけストレートに言われると、ちょっち恥ずかしいからさー ……// みんなの手前もあるしー……//』

シンジ『すみません! でも、本当の事ですから!! 僕をこんな風に変えてくれたミサトさんはすごく素晴らしくてステキな女性だと思ってます!! 僕の憧れなんです!!』

ミサト『やだ、もう// シンジ君たらー///』テレッ



ー 昨日 ー


アスカ『アタシ、いい子にしてるから……! 言いつけ全部守るから……! 口答えしないから……! 辛気くさい顔しないから……! 明るく返事するから……! 文句を言わないから……! だからもう何もしないで……!!』グシュッ、グスッ、ヒック



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



シンジ「……多分、式波も僕と同じ事を…………」

シンジ「……何で…………」ギュッ


悔しそうに拳を握るシンジ……


シンジ「……何で僕たちがこんな目に…………」ギューッ!!


シンジ「…………」クルッ……

シンジ「今日の分の薬、飲まなきゃ……」スタスタ……


重い表情で自分の部屋へと向かうシンジ…………

ー アスカの部屋 ー


アスカ「ママ…………ママ…………」ゴソゴソ


バッグの中から、弐号機のぬいぐるみを取り出すアスカ


アスカ「ママ……♪」ギュッ……


それを優しく抱き締める……


アスカ「ママ……。ごめんね……狭かった?」

アスカ「ねえ、ママ、見て。今日からここがママとアタシの部屋よ」

アスカ「前のところよりも少し広いの。……嬉しい、ママ?」

弐号機のぬいぐるみ《嬉しいわ、アスカ》


裏声を出して自分で返事をするアスカ…………


アスカ「良かった。心配してたの。ママが気に入ってくれないんじゃないかって」


弐号機のぬいぐるみ《アスカと一緒ならママはどこでも嬉しいわよ》


アスカ「……ママ…♪」ギュッ……


愛しそうに弐号機のぬいぐるみを抱き締めるアスカ…………

ー シンジの部屋 ー


シンジ「」ガラッ、ゴソゴソ


押し入れを開けて中に入り込むシンジ

押し入れの中にはチェロと、そして大量のクッションが……


シンジ「」スッ


そのクッションの下に、隠すようにして置いてある小さな木箱。それを取り出す


シンジ「」パカッ


開けると中にはカプセルが幾つも……


シンジ「」パキッ、パクッ……

シンジ「」ゴクッ……


その中から数個選んで、口の中に放り込み、飲み込む



シンジ「……そういえば、いつからだろう……」ポツリ……

シンジ「水なしでカプセル飲めるようになったのって……」ポツリ……

シンジ「ミサトに気付かれないよう、飲んでたからな…………」ポツリ……


小さく呟くシンジ…………


シンジ「……式波にも渡しておかないと…………」ゴソゴソ


再び、木箱をクッションで隠す……

ー アスカの部屋 ー


コンコン……


アスカ「」ビクッ!!

アスカ「ママ、ごめん、隠れて!」サッ!!


急いで弐号機のぬいぐるみをバッグに戻すアスカ


『式波、ちょっといい?』


アスカ「は、はい! すぐに開けます!!」タタッ

ガチャッ!!

アスカ「すみません! 遅くなりました! 何の御用でしょうか!」

シンジ「あ、うん……。その……良かったらだけど……式波も薬飲む?」

アスカ「……薬、ですか?」

シンジ「うん……。精神安定剤だとか抗鬱剤だとか……。他だと睡眠導入剤も……。湿布とかもまだ結構残ってるから……」

アスカ「…………?」

シンジ「……式波は、何か勘違いしてるかもしれないけど……僕は式波に何もひどい事をしないから……。むしろ、僕もされてる側だから……」

アスカ「……え…?」

シンジ「その……良かったら、僕の部屋の押し入れ見る? ぺったんこになったクッションが大量にあるから。毎日、ミサトやリツコとかの名前を呼びながら殴ってるから、もう弾力性なんか全くなくなっちゃって……」

アスカ「あ…………」

シンジ「だから……安心して。僕は式波の味方だから」ニコッ……

アスカ「…………」フッ……

ストッ……

糸が切れた操り人形のように、その場に座り込むアスカ…………


アスカ「…………」

シンジ「大丈夫……?」

アスカ「はい…………。気が……少し抜けたので…………」ポツリ……

シンジ「式波…………」


それを見て悲しげな視線を送るシンジ…………

ー キッチン ー


シンジ「はい、式波。水」スッ

アスカ「あの……ありがとうございます」ペコリ……

アスカ「」スッ、パクッ……

アスカ「」ゴク……


もらった精神安定剤を飲むアスカ……


シンジ「……ホントはきちんとお医者さんに見てもらった方がいいと思うから、今度一緒に行こうか。秘密にしてもらえるから、ミサトにバレる心配もないし」

アスカ「あの……すみません。ありがとうございます。今度何かお礼をしますので……」ペコリ……

シンジ「いいよ、お礼なんて別に。大した事じゃないからさ」ニコッ

アスカ「あの……でも……」

シンジ「知り合いの人の言葉を借りるなら、これは親切の押し売りってやつだから。本当に気にする必要なんかないんだ」

アスカ「……」


少し驚きの表情を見せる式波…………

シンジ「あ、それと、敬語は僕に対して使わなくてもいいよ」

アスカ「いえ、あの、そういう訳には……。碇さんはもう使徒を二体も倒してますし、碇司令の子供ですから……」

アスカ「なので、私が碇さんに対してタメ口を使ったら、きっとヒスババアがキレだすに決まってます」

シンジ「ヒスババア?」

アスカ「ミサトの事です」

シンジ「ああ、うん……」


納得するシンジ


アスカ「……それに、本当にタメ口なんてきける人間じゃないんです、アタシ……。救いようのないクズなんで……」

シンジ「クズなんてそんな事はないよ! ミサトとかがよく言うけど、実際にはそんな事はないんだから!」

アスカ「ありがとうございます。嘘でもそう言ってもらえると嬉しいですから……」ニコッ……


少しだけ微笑むアスカ


シンジ「…………式波……。違うよ、それは違うから……」

アスカ「そこまで気を使ってもらわなくても大丈夫ですよ。昔からずっと言われてた事ですし……」ニコッ……

シンジ「式波…………」


それとは逆に、暗い表情になるシンジ…………

アスカ「だから、敬語は使いますけど……。でも、その…………//」モジモジ……

シンジ「何?」

アスカ「あの……図々しいお願いとは思うんですけど……。名前の方で呼んでもいいでしょうか……? 碇さんじゃなくてシンジさんで……//」

シンジ「うん、それはもちろん! 大丈夫だよ」

アスカ「良かった……//」ホッ……

アスカ「名前で呼ぶのって昔から憧れだったんです// アタシ、こんな気持ち悪い女なんで、誰一人友達が出来なかったものですから」ニコッ

シンジ「あ……」

シンジ「………………」


更に暗い表情になるシンジ……


アスカ「……? ……あの、どうかしましたか? ひょっとして、アタシ……何か勘に触る事を言いましたか……?」

シンジ「いや、その……式波っていつからネルフに…………?」

アスカ「小さい時からずっとです」

シンジ「やっぱり…………」ボソッ

アスカ「ママが病気になっちゃって入院して……。すぐに亡くなってしまったので……。それで、パパも親戚の人も誰もいなかったから、アタシ、身寄りが誰一人いなくて……」

アスカ「それで、その時にはもうエヴァのパイロットになるって決められてましたから、ネルフの職員の方に養子として引き取られて……」

シンジ「僕と似てるね……。僕の場合は、母さんは事故で亡くなってて……。父さんは仕事でよく家を何ヵ月も開ける事があるからって、親戚のおばさんのところに引き取られたんだ」

シンジ「ろくなところじゃなかったけど……」

アスカ「アタシもろくなところじゃなかったです……」

シンジ「だから、こっちに来て父さんと暮らす事が出来ると思った時は嬉しかったんだ。…………結局、こんなところに来てそれより更に酷くなったけどさ……」

アスカ「私も……出来ればここに来たくありませんでした。前に一度だけ来た事があるんですけど、ここは酷かったです、本当に……」

シンジ「そっか…………」

アスカ「はい…………」


うつむく二人…………

シンジ「やっぱり、家事とかやらされてたの?」

アスカ「はい、全部。だから、何でも出来ます」

シンジ「それも一緒なんだ……」

アスカ「シンジさんも?」

シンジ「うん。色々させられてた」

アスカ「そうなんですか……」

シンジ「でも、ミサトよりはずいぶんマシだったかな……。作った料理、食べずに目の前で捨てるなんて事はされなかったし……」

アスカ「そんな事されたんですか?」

シンジ「うん。何回か。他だと一回だけ、思いっきりコロッケを顔に投げつけられた事もあったかな。あの時は辛いとかいう前に、熱かったなあ……」

アスカ「……それ……酷いですね。アタシはせいぜいコップの水をかけられたぐらいです。そこまでの事は流石に……」

シンジ「それも結構ひどいと思うけど……。あ、でも僕もミサトにビールを頭から何回もかけられったっけ」

アスカ「」

シンジ「それで床の掃除をさせられて、それからやっとシャワーを浴びさせてもらったけど、その後は髮ベタベタだったし、シャワー浴びてもなかなか臭いとれないしで……」

アスカ「あ!」

シンジ「?」

アスカ「あ、あの、アタシ、LCL臭くないですか? よく臭いって言われるので……。お風呂にはしっかり入ってるんですけど……」クンクン


自分の匂いを嗅ぐ式波


シンジ「ううん。匂わないよ……。どっちかっていうと、いい香りが……。香水使ってる?」

アスカ「はい。少しだけ……。臭いって本当によく言われるので……」クンクン

シンジ「そういや、ミサトもよく言うなあ……。自分じゃよくわからないんだけど……」 クンクン

アスカ「あ、シンジさんは大丈夫ですよ。そんな事ありませんから」

シンジ「そう? それならいいけど……」クンクン……

アスカ「それにしても、アタシ、今、幸せです。こうして普通に話をしてくれる人がいて」ニコッ

シンジ「……そっか…………」

アスカ「アタシ、今まで誰も普通に話をしてくれる人がいなかったから……」


少しだけうつむくアスカ…………


シンジ「誰もって……学校でも?」

アスカ「学校はアタシ行ってないんです。エヴァのパイロットって事で特例で……。その代わり家庭教師がついてました」

シンジ「…………」

アスカ「だからこっちに来て初めて学校に行く事になったんです……。本当は行きたくないんですけど、どうしても行かなきゃダメみたいなので…………」

シンジ「何で? 学校に行ってた方が、ミサトと顔会わせずに済む時間が増えるのに……」

アスカ「アタシは……どうせ、行ってもいじめられるだけでしょうから……」

シンジ「いじめられる?」

アスカ「はい。その……アタシ、見ての通りこんなブスなので……。オマケに頭も悪いですし……性格も根暗で辛気くさいですから……。だから……」

シンジ「そ、そんな事ないよ! 式波は普通の女の子だよ!」

アスカ「いえ、いいんです。そんなウソとかつかなくても。自分の事は自分が一番よくわかってますから」ニコッ……

シンジ「式波。本当にそうじゃないってば。式波は明るいし、顔も可愛いよ。嘘じゃないから!」

アスカ「ありがとうございます。でも、慰められると余計辛いですし……」

シンジ「式波、違うってば、本当に!」

アスカ「……シンジさん。…………優しいんですね。嬉しいです」ニコッ……

アスカ「でも、いいんです、本当に。昔からずっと言われてる事なので、慣れてます」

シンジ「式波…………違うのに…………」

アスカ「シンジさん。アタシ、出来るだけご迷惑をかけないようにしますので、どうかアタシの事、嫌いにならないで下さい。お願いします……」ペコリ……

シンジ「式波…………本当に違うのに…………」


悲しげな、悔しげな瞳を向けるシンジ…………

アスカ「そういえば、シンジさんって確」


ガチャッ

ミサト「ただいまー」

アスカ「」ビクッ!!

シンジ「ミサトさん!?」


シンジ「」ダダダダダッ
アスカ「」ダダダダダッ


二人して一斉に玄関へと走り出す


シンジ「お、お帰りなさい、ミサトさん! 今日は早かったですね!」
アスカ「お帰りなさい! お待ちしてました!」

ミサト「ああ、うん。今日はちょっちねーって、げっ、アスカ! あんた、もう来てたの! 最悪ね、ホント! 目障りよ!」

アスカ「!!」ビクッ!!

アスカ「す、すみません! ごめんなさい! ごめんなさい! 許して下さい!」


反射的に手で顔をかばって震えるアスカ…………


アスカ「ぶたないで! お願い! お願い! お願い!」ガクガク、ブルブル


ミサト「」チッ

ミサト「あんたのそういうところがムカつくって言ってんのに、何度も何度も同じ事を……!! 絶対、わざとやってんでしょ、あんた! 嫌がらせのつもり!!」ツカツカ

シンジ「ミサトさん!」サッ


アスカに近寄ろうとするミサト

それを立ち塞がって止めようとするシンジ

ミサト「なによ、シンジ君。ひょっとしてまたあんた、そいつをかばう気なの。人の腹立つ事をわざとやってんのよ、こいつは! 叱って当然でしょ!」

アスカ「やめて! 殴らないで! やめて、やめて! 痛いのは嫌! 嫌っ……!」ブルブル、ブルブル


その場にうずくまり、顔をかばいながら震えるアスカ


アスカ「嫌……! ママ……! ママ……! 助けて、ママ……!!」グシュッ、ポタポタ、グスッ


ミサト「ホント、気持ち悪い女! 何がママよ! バッカじゃないの!!」

シンジ「ミサトさん! お願いですから、やめて下さい! でないと、式波が……!」

ミサト「こんなやつどうだっていいのよ! 死んでくれた方がよっぽどかありがたいわ! 何で私がこいつの世話をしなきゃいけないのよ!」

シンジ「世話?」

ミサト「そうよ! 今日からこいつと一緒に暮らす事になったの! 司令からお願いされて仕方なくね!」

シンジ「父さんから……!?」

ミサト「そうよ。私が子供好きだって、この前司令に話したばかりだからね。確かに子供は好きだけど、こいつだけは別よ。ホント、見てるだけで腹が立つ!」

アスカ「許して……! 許して……! ぶたないで……! やだ……! 助けて……!」グスッ、エグッ、グシュッ

ミサト「だから泣くなって言ってるでしょうが!! 何万回同じ事を言わすつもりなのよ!! クソ女!!」

アスカ「ダメ! やだ! ぶたないで! ぶたないで!」グスッ、ヒック、エグッ

ミサト「こっのお……!!」ズイッ

シンジ「ミサトさん! 落ち着いて下さい! お願いします!」サッ

ミサト「シンジ君! 離しなさい!」ググッ

シンジ「お願いですから、ミサトさん! あんまり怒ると美容にも体にも悪いですし!」グググッ

ミサト「っ……!」

ミサト「全く…!!」ダンッ!!


壁を代わりに思いきり叩くミサト…………

ミサト「とにかくそういう事。中学生を一人で暮らさせる訳にもいかないからって、司令に頼まれたのよ」

シンジ「で、でも、綾波は一人で暮らしてるのに……!」

ミサト「私もそう言ったんだけど、レイは特別だからってそれだけよ。何でも昔の約束があって、一人暮らしをさせる事が決まってたからってね」

ミサト「だから、ホントは司令が引き取るつもりだったらしいんだけど、こいつは一応こんなのでも女だから。周りに止められたとかでさ」

ミサト「それで、前に世話した事のある私が適任だからって、私のところに来たのよ。司令に頭まで下げられたらこっちも断れないでしょうが」

ミサト「それに、一応、司令の前では、こいつとは仲良しって事になってるからね。あー、気持ち悪い!」

ミサト「断る理由が何も見つからなかったから、ホント仕方なくよ! でなきゃ、誰がこんなやつ引き取るもんですか!」

シンジ「あ、ぐ……!」

ミサト「そういう事で、シンジ君!」


シンジ「は、はい!」

ミサト「そいつの面倒は全部あなたがみるのよ。私は話しかけるどころか、顔を見るのでさえ嫌なんだから」チッ

シンジ「あ、はい! わかりました!」

シンジ(良かった……! そっちの方が都合がいいや。そらならミサトに酷い事されなくて済む)ホッ……

ミサト「ああ、それとシンジ君。わかってるとは思うけど、アスカが何かやらかしたら、全部シンジ君の責任だからね。しっかり面倒みなさいよ」

シンジ「え…………」

ミサト「返事は!?」ダンッ!!

シンジ「は、はい! 大丈夫です! しっかりやります! ミサトさんに迷惑は絶対かけませんから!!」

ミサト「ならいいわ。それと、そいつの顔見て私、気分悪くなったから、シャワー浴びてくる。その間に、その生ゴミを私の目につかないところに片付けておくのよ。いいわね?」

シンジ「生ゴ……!!」

ミサト「聞こえなかったの!? 返事!!」ダンッ!!

シンジ「あ、ぐっ!!」ギリッ……

シンジ「…………は…い……。わかり……ました……!」グッ!!


奥歯を噛み締め強く拳を握りしめるシンジ……


ミサト「あー、もう、最悪。ホント、事故か何かで死んでくれればいいのに」ブツブツ……


ガチャッ、バタンッ!!


激しく閉められる浴室のドア…………



アスカ「ママ……。ママ……。もうやだ……。助けて……。助けて……」グスッ、エグッ、エグッ……


顔をかばいながら、ずっと泣きじゃくるアスカ…………


シンジ「…………ミサト……!」ボソッ

ダンッ!!

思いきり壁を叩くシンジ…………


ミサト『うるさいわよ!! 何してんのよ、シンジ君!!』

シンジ「ご、ごめんなさい……!! よろけてぶつかっちゃったんで……!!」

ミサト『どんくさ過ぎよ、あんたはー! もうちょっと静かにしなさいよ!! うっとうしい!!』

シンジ「……すみ…ません……!!」グッ!!


ひたすら我慢するシンジ…………

シンジ「…………式波……立てる?」

アスカ「」ビクッ!!

アスカ「やめて……! 来ないで……! やめて……!」グシュッ、グシュ、エグッ

シンジ「大丈夫だよ、式波。叩かないから。怖くないから。ミサトは今お風呂に行ってるから。……大丈夫だよ」


噛んで含めるようにアスカをなだめるシンジ…………


アスカ「…………シンジさん……?」エグッ、グシュッ

シンジ「うん。大丈夫だよ、何もしないから。安心して」

アスカ「ぅっ……ぅっ…………」グシュッ、エグッ、エグッ

シンジ「…………少し……落ち着いた?」

アスカ「はい………大丈夫…………です……」グスッ、ヒック……

シンジ「……立てる?」スッ


手を差し出すシンジ


アスカ「……」コクン……


その手をつかみよろよろと立ち上がる……


シンジ「とりあえず式波の部屋に行くよ。向こうの部屋、式波がこれから住むんでしょ?」

アスカ「」ギュッ……

シンジ「式波?」


シンジの腕に掴まるアスカ…………

そのままぎゅっと目を閉じ、震え続ける……


アスカ「……怖い……。怖い……。怖い……。怖い……。怖い…………」ブルブル……

シンジ「……式波…………」


しばらくその状態が続く…………

ー 数分後 ー

ー アスカの部屋 ー


アスカ「……ご、ごめんなさい、シンジさん…………。もう落ち着きましたから…………」ゴシゴシ……


壁にもたれかかりながら並んで座る二人……


シンジ「本当に大丈夫?」

アスカ「はい……。ご迷惑をおかけしました……」スッ……


シンジからゆっくり離れるアスカ……


アスカ「本当にごめんなさい……。こんなブスな女にひっつかれて、気持ち悪かったと思いますけど、許して下さい……」ペコリ……

シンジ「式波! だから本当にそんな事ないから!」

アスカ「本当にごめんなさい……。ごめんなさい……。ごめんなさい……」ペコリ……

シンジ(ダメだ……! 聞く耳持ってくれないや……!)

シンジ(でも、早くミサトの着替えも持っていかないと……! いつ出るかわからないし……!)

シンジ(あー、もう!!)スクッ

シンジ「ごめん、式波! ミサトさんの着替えを持ってかないと怒られるから!」

シンジ「本当にごめんね!」ダダダッ

ガチャッ、バタンッ……



アスカ「……シンジさん…………」


アスカ「……ぅっ…………!」グシュッ……

アスカ「アタシ、絶対、嫌われた……。あれだけ優しくしてもらったの……初めてだったのに……」グスッ、ヒック…………

アスカ「ママ…………。ママ…………。アタシ、どうすれば良かったの…………?」エグッ、エグッ…………


部屋で声を殺して泣くアスカ…………

ー バスルーム ー


シンジ「えっと、替えの下着と部屋着……。それにドライヤー、タオル、バスタオル、美容液、体重計、これで全部オッケーなはず……」アセアセ

シンジ「後はこれを使う順番に並べて……」アセアセ


ガラッ


ミサト「ふぅ……すっきりしたー」

シンジ「あ……ミ、ミサトさん……!!///」

ミサト「っ!!/// シンジ君!?///」


ミサト「この……エロガキぃっ!!///」ヒュン!!

バキッ!!


シンジ「がっ!!!」


ミサトの蹴りがシンジの顎にクリーンヒット!!


シンジ「あぐっ!!」ドサッ……!!

シンジ「」ピクピク…………


ミサト「全く……!! 何を考えてるのよ、コイツは!!」プンプン


そして、服だけ持ってその場を後にするミサト……


シンジ「」ピクピク…………



ペンペン「」トコトコ……

ペンペン「クエー……」ツンツン
シンジ「」ピクピク…………


風呂上がりのビールを要求するペンペン…………

ー 夜、晩ご飯前 ー

ー アスカの部屋 ー


アスカ「ママ…………。ママ…………」グシュッ、グスッ……


ベッドの上で弐号機のぬいぐるみを抱え、むせび泣くアスカ…………


コンコン……

不意にドアをノックする音……


アスカ「」ビクッ!!


『式波、聞こえる?』ボソボソ……


アスカ(シンジさん……!)

アスカ「」ゴシゴシ、ゴシゴシ

アスカ「は、はい! 今、開けます!」タタタッ


『あ、待って。開けなくていいから。今、ミサト、トイレに行ってるだけだから、式波の姿見たらまた怒り出すと思うし』ボソボソ……


アスカ「あ………………」グシュッ……

アスカ「」グスッ、エグッ……


『泣かないで、式波……。それに、式波はミサトがいる時はそっちにいた方がいいと思うし。そうすればいじめられる事もないから』ボソボソ……


アスカ「は……い……。ごめんなさい……」グシュッ、ヒック……


『大丈夫だよ。安心して。後で晩ご飯も持っていくから。……お風呂だけは、ミサトが寝てからの方がいいと思うけど……』ボソボソ……


アスカ「は……い……。ごめんなさい…………」グシュッ、エグッ……


『式波。本当に大丈夫だから。……泣かないで』


アスカ「でも……でも…………」エグッ、エグッ……


『何も心配しなくていいよ』ボソボソ……

『……式波は、僕が守るから』ボソボソ……


アスカ「…………!?」


『あ、ごめん、ミサトさんが出てきた。また後でね』ボソボソ……


アスカ「……は……い…………」


半ば放心気味のアスカ…………

アスカ「…………」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『大丈夫だよ、安心して』


『式波は何も心配しなくていいよ』


『……式波は、僕が守るから』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



アスカ「……夢……じゃないわよね…………」スッ……


無意識に弐号機のぬいぐるみを抱きかかえるアスカ


アスカ「シンジさん……アタシを守るって…………」

アスカ「ママ……聞いてた?」


弐号機のぬいぐるみ「………………」


アスカ「……アタシを…………こんなアタシを守ってくれるって…………」ツー……ポトッ……


涙が頬を伝ってぬいぐるみの上に落ちる…………


アスカ「こんなアタシを……。すごい優しい声で守るって言ってくれたの…………」ポロポロ…………

アスカ「…………生きてて良かったよ……ママ…………」ボロボロ、ポタポタ……

アスカ「……本当に……今まで生きてて良かったよ……ママ…………」ボロボロ、ポタポタ……


弐号機のぬいぐるみを抱いたまま、涙をこぼし続けるアスカ…………

ー 晩ご飯後 ー


アスカ「……お腹……空いた…………」グー……


コンコン……


『ごめん、式波、こんなに遅くなって。ミサトさん、晩酌してたからなかなか来れなくて』

アスカ「シンジさん!」

『ご飯持ってきたよ、開けてくれる?』

アスカ「はい!」タタタッ

ガチャッ


シンジ「はい、これ。えっと……とりあえず、ベッドの上に置くよ」スッ……

アスカ「ありがとうございます!」ペコリ!!

シンジ「あ、ごめん、式波。少し静かにして。ミサト、相変わらず機嫌悪いから」

アスカ「」ビクッ!!

アスカ「す、すみません…………」ヒソヒソ……

シンジ「そこまで声を落とさなくても大丈夫だよ。普通に話してくれればいいから」クスッ

アスカ「はい……。ごめんなさい……」ペコリ……

シンジ「大丈夫。それより、何か嫌いな物とかない? 何も聞いてなかったからさ。一応洋食にしたけど……」

アスカ「はい。アタシ、嫌いな物なんて一つもないです。全部大好きです」

シンジ「無理しなくていいよ。本当は?」

アスカ「……え、あの…………」

シンジ「僕もそう叩き込まれたからさ。本当はもずく嫌いなんだけど、ミサトさんが食べるから」ヒソヒソ

アスカ「…………」

シンジ「で、本当は? 大丈夫だよ、怒らないから」ニコッ

アスカ「…………あの、グリンピースとカリフラワーが苦手です……」ボソッ

シンジ「うん。式波のにだけは入れないでおくよ。他にも何かあったら遠慮なく言ってね」

アスカ「…………」

アスカ「はい……//」コクン……

シンジ「後は……日本食とか大丈夫? 特に納豆。ミサトさん、朝は和食が好きだから」

アスカ「和食は全部大丈夫です。本当に。前にこっちに来た時食べましたけど、平気でした」

シンジ「そう。それならいいか。逆に好きなものは?」

アスカ「……ハンバーグ……// 子供みたいでごめんなさい……//」

シンジ「そんな事ないよ、大丈夫。煮込みハンバーグとか僕も好きだし」クスッ

アスカ「ごめんなさい……//」

シンジ「別にいいのに。それより、食べて。電子レンジで温めただけだからすぐに冷めちゃうし」

アスカ「はい。……ありがとうございます…//」

カチャッ

アスカ「…いただきます」ペコリ

シンジ「どうぞ」ニコッ

アスカ「」パクッ……モグモグ……


シンジ「……美味しい?」

アスカ「//」コクン……

アスカ「美味しいです……// 今まで食べた中で一番……//」

シンジ「良かった」ホッ……

アスカ「……本当に…美味しいです……//」

アスカ「」パクッ、ムグムグ……

シンジ「……それでちょっと考えたんだけどさ、式波」

アスカ「はい……?」

シンジ「やっぱり料理は全部僕がするよ。式波は、ミサトさんがいない時間帯に掃除とか洗濯を軽くしてくれればいいから」

シンジ「それで、ミサトさんがいる時はこっちでゆっくりしてて。出来るだけ顔を会わさない方がいいと思うから」

アスカ「でも、それだとシンジさんがほとんど家事をする事になりませんか……? 学校終わったら、そのままネルフに行く事が多いって聞きましたけど……」

シンジ「うん……。でも、大丈夫。今まで全部一人でやってたんだから、平気だよ。それに、家事が少し減るだけでも嬉しいから」ニコッ

アスカ「……でも、あの……」

シンジ「大丈夫だよ。それに、式波だって怒られたり叩かれたりするのは嫌でしょ? ミサトも機嫌悪くなるから、やっぱりそれがベストだと思うんだ」

アスカ「……本当にいいんですか……?」

シンジ「うん。式波が怒られたりするよりは断然いいよ」

アスカ「…………」

シンジ「……嫌なんだ。自分の事ならもう慣れたからいいけど、他の人がクズだのゴミだの言われるのって……。最低だよ、ホント……」グッ……

アスカ「……ぅっ…………」グシュッ……

シンジ「あ、ごめん! あの……別に式波の事をそう思ってる訳じゃないから! 本当だよ!」

アスカ「……ち、違うんです、ごめんなさい…………」グシュッ、ヒック……

アスカ「……アタシ……こんなに人に優しくされたの初めてで……。それで嬉しくて…………」グスッ、エグッ……

アスカ「……でも、アタシがクズなせいで、シンジさんにご迷惑ばかりかけて……。それが悔しくて……」エグッ、エグッ……

アスカ「……そう思ったら涙が……。ごめんなさい……。ごめんなさい…………」ボロボロ…………

シンジ「……式波…………。式波はクズじゃないし、僕は大丈夫だよ。……だから、安心して」

アスカ「ごめんなさい……。すみません……。すみません……。すみません…………」ポタポタ、ポタポタ……

シンジ「泣かないで、式波……。僕まで悲しくなるから…………」

アスカ「……すみません……ごめんなさい……ごめんなさい……」ポタポタ、ボロボロ……


泣きながら謝り続けるアスカ…………

ー 深夜 ー

ー シンジの部屋 ー


シンジ(……式波……もう寝たかな……)


布団に寝転んで天井を見上げるシンジ…………


シンジ(……ちょっと前に睡眠導入剤をあげたから、多分もう寝てるか…………)

シンジ(意外と早くミサトが寝てくれたおかげで、お風呂に早目に入れて良かったけど……)

シンジ(…………)ゴロン……


静かに寝返りをうつ…………


シンジ(……お風呂上がりに少し聞いた話だと…………。やっぱりドイツ支部はここよりまだマシみたいだ…………)

シンジ(……式波もここは酷いって言ってたし…………)

シンジ(……きっと、造られたのが後からだからかな…………)

シンジ(…………)ゴロン……


シンジ(…………式波は……綾波ほど酷い事はされてなかったみたいだけども……)

シンジ(……でも、その分、期間がものすごく長い…………)

シンジ(小さい頃から今日までずっと…………)

シンジ(……それに、小さい時によく叩かれてたって…………)

シンジ(そのせいだろうけど……暴力を振るわれる事にものすごく怯えているみたいだ…………)

シンジ(……それに、自分の事をクズだと思い込んでる……)

シンジ(多分、周りに誰も否定する人がいなかったから……)

シンジ(…………)ゴロン……


シンジ(綾波は二年間ずっと一人で…………)

シンジ(誰にも助けられず、ずっと本当に一人で…………)


シンジ(真希波って子は……もう亡くなってる…………)



シンジ(エヴァのパイロットの中で、僕が一番マシなんだ…………)


シンジ(…………だから……式波は僕が守らないと…………)


シンジ(…………綾波に頼る訳にはいかないから……。一人で頑張るしかないんだ、僕は………………)


シンジ(……母さん…………)ゴロン…………

ー 翌日、朝 ー

ー 通学路 ー


アスカ「……あの……シンジさん、本当にアタシ大丈夫ですか……?」ビクビク

アスカ「いじめられたりとか……しませんか……?」ビクビク

シンジ「大丈夫だよ。皆、いい人ばかりだし、それに僕たちの事情も知ってるから」ニコッ

アスカ「事情……?」ビクビク

シンジ「ネルフがろくでもないところだって事。だから、僕たちを応援してくれてるし、色々、協力もしてくれてる」

アスカ「そう……なんですか……? でも、アタシみたいなクズ女には皆もやっぱり…………」ビクビク

シンジ「大丈夫だよ、本当に」ニコッ

シンジ「それに、式波はクズじゃないし、可愛いからさ」

アスカ「……あ、あの……本当に嘘でもやめて下さい……/// 恥ずかしいので……///」

シンジ「本当だよ。だから、きっとすぐに人気者になれると思うんだ。安心して」ニコッ

アスカ「…いえ、あの…///」オロオロ……

シンジ「あっ、ほら。噂をすれば」

アスカ「」ビクッ!!


トウジ「センセ、おはようさん。待っとったでー」

ケンスケ「おはよう、碇」

シンジ「二人とも、おはよう」ニコッ

ケンスケ「ところで、碇。そっちの子は知り合い? 並んで歩いてたみたいだけど……」

アスカ「」ビクッ

シンジ「ああ、うん。式波って言うんだ。僕と同じでエヴァのパイロット」

トウジ「……エヴァ? ちゅう事はもしかして…………」

シンジ「……うん。しかも、僕と同じでミサトの家に住む事になって……」

トウジ「ホンマか! あのクソババアのところにかいな! 災難以外のなにもんでもないがな!」

ケンスケ「マジかよ……。悲惨だなあ…………。よりにもよってあの暴力女のところになんて…………」

アスカ「……え…………」


驚きの表情を見せるアスカ


トウジ「しかも、センセ。式波いう子、頬が少し赤くなっとるがな。また叩かれたんか……?」

ケンスケ「大丈夫なのか、碇ぃ……? こんな可愛い子が頬を腫らしてるとこなんて見たくないよ、俺……」

トウジ「せや、せっかくのべっぴんが台無しになってまうがな……」


アスカ「え……? え…?」


シンジ「ほらね」

アスカ「あ、あの……」オロオロ


ケンスケ「それでどうなんだ、碇? 大丈夫なのか……?」

シンジ「あ、うん……。多分…………としか言えないけど……。でも、ミサトに嫌われてる分、逆に僕よりマシだと思う。顔も会わしたくないって言ってるから、ずっと避けていられるし」

ケンスケ「そっか……。それならまだ…………」

トウジ「あのオバハンの顔を見ずにいられるなら、それが一番やしな…………」

シンジ「うん……。僕もそう思う……」


アスカ「………………」

ー 学校 ー


先生「あー……今日は転校生の紹介があります。入ってきなさい」

ガラッ

クラス男子一同「おおっ!」


アスカ「」ビクッ!!


立ちすくむアスカ……


先生「……どうしました? 入ってきなさい」

アスカ「は、はい! すみません! すみません!」ペコペコ!!

アスカ「」タタタッ


慌てて黒板の前に立つアスカ


アスカ「」ビクビク……

アスカ「し、式波・アスカ・ラングレーです! 皆さん、よろしくお願いします!」ペコリ!!


ザワザワ……


クラス男子A「可愛いな、あの子……」ヒソヒソ
クラス男子B「だよな。ちょっとオドオドした感じがするけど、そこがまた……」ヒソヒソ


ヒソヒソ、ヒソヒソ……


アスカ「」ビクビク……

アスカ(怖い……。怖い……。怖い……。アタシ、絶対変な女だって噂されてる…………。いやだ……。いやだ……)

ー 一時限前 ー


クラス女子A「ねぇ、式波さん、どこから転校して来たの?」

アスカ「あ、あの……! ド、ドイツから来ました……!」ビクビク

クラス女子B「ドイツ!? すごい! 帰国子女なの?」

クラス男子A「じゃあドイツ語喋れる!?」

クラス男子B「ひょっとしてハーフ?」


すっかりクラスメイトに囲まれるアスカ……


アスカ「あ、あの、あの……!」ビクビク……


今にも泣き出しそうになる…………


ヒカリ「」タタッ

ヒカリ「みんな、ダメよ! そんなに一気に質問しちゃ! 怖がってるじゃない!」

クラスメイト一同「?」

ヒカリ「この子はエヴァのパイロットだって碇君が言ってたの! だから、皆、怖がらせちゃダメ!!」


ピタッ

シーン…………


一瞬にして静まりかえる教室…………


クラス男子A「……エヴァの…………」

クラス男子B「…………マジかよ…………」

クラス女子A「……ごめん、アスカさん…………」

クラス女子B「……あの、怖がらせるつもりじゃなかったの……ごめんね」シュン……


アスカ「え……? え…………?」オドオト……


ヒカリ「大丈夫だよ、式波さん。怖がらないで。皆、いい人ばかりだから」ニッコリ

ヒカリ「それに、エヴァのパイロットがどれだけ辛いかっていうのは皆、知ってるから…………」

ヒカリ「あの……ゆっくりでいいから、私たちと仲良くしていってね。私たちが、式波さんの事を嫌いになる事なんか絶対にないから」


そう言った後、声のトーンを落としてアスカにこっそり話しかけるヒカリ


ヒカリ「碇君の時も、最初は凄かったんだよ。机蹴り倒したりとかして、物凄くキレ気味だったんだから」ヒソヒソ

アスカ「え……?」

ヒカリ「……やっぱり信じられない? そうかもね。でも、本当だったんだよ。あの大人しそうな碇君がさ、メチャクチャ当たり散らしてて」ヒソヒソ

ヒカリ「でも、今は笑ってくれる事も多くて嬉しいんだ。だから式波さんも安心して」ニコッ

アスカ「………………」


驚きと安堵の表情を見せるアスカ…………



シンジ「……良かった…………大丈夫みたいだ」ホッ……


それを少し離れた場所から眺めるシンジ

トウジ「やっぱ先に委員長に説明しといて正解やったな」

ケンスケ「だよね。僕らだと、余計怖がらせてたかもしれないからさ」

シンジ「うん。本当に良かったよ。式波もずいぶん落ち着いてくれたみたいだし……。これならきっと友達がすぐに出来ると思う」


肩をなで下ろすシンジ


レイ「」トコトコ……

レイ「……碇君、あの子……」

シンジ「ああ、うん。昨日、僕の家に来たんだ。ミサトが預かる事になったらしくって……。それで、一緒に住む事に……」

レイ「葛城…三佐が……?」

シンジ「うん。僕も最初はびっくりした。でも、そうなっちゃって……」

レイ「…………でも、葛城三佐はあの子の事を嫌ってたと思う。……大丈夫なの?」

シンジ「あ、うん……。多分……。僕よりはずっとマシだと思う」

レイ「……碇君、本当に?」

シンジ「うん。本当に。ミサト、式波とは顔を合わそうとしないぐらい嫌ってるから。だから逆に式波がミサトに何かされたりする事はないと思うよ」

レイ「…………そう」

シンジ「それに、式波が来てくれたおかげで、僕も家事を半分やらなくて済むようになるから助かるんだ。いい事ばっかりだよ」ニコッ

レイ「…………」

シンジ「だから大丈夫。綾波は心配しないで」

レイ「…………わかったわ。でも、無理はしないで」

シンジ「うん。大丈夫」

レイ「何かあったら私に言って。きっと力になれると思うから……」

シンジ「ありがとう、綾波」ニコッ

レイ「」コクン……


レイ「」トコトコ……


自分の席へと戻っていくレイ



シンジ(……良かった。信じてくれたみたいだ……)

シンジ(綾波にはもう、これ以上心配や負担をかける訳にはいかないから……)

シンジ(……僕が頑張らないと…………)

ー 昼休み ー


トウジ「さーて、メシや、メシや♪ 学校最大の楽しみやからなー」

ケンスケ「碇、僕らちょっと購買に行ってるからさ。先に食べててよ」

シンジ「あっ、ごめん。今日はちょっと……」

トウジ「ん? ああ、そうか。式波と一緒に食べる気かいな。ほなしゃーないな」

シンジ「うん。出来ればそうするつもりだけど……でも、今日はちょっと先に済ませておきたい用事があって……」

ケンスケ「…………わかった。何の用事か知らないけど聞かないでおくよ。そっちの方がいいんだろ?」

シンジ「うん……ごめん」

ケンスケ「いいさ。じゃあ僕らはこれで行くから。もし午後の授業に遅れるようなら電話してくれよ。誤魔化しておくからさ」

シンジ「うん。ありがとう」スクッ


弁当を持って席から立ち上がるシンジ

シンジ「」トコトコ……


シンジ「式波」

アスカ「は、はい!」ビクッ!!

シンジ「あ、ごめん……。驚かすつもりはなかったんだけど…………」

アスカ「あ、いえ、大丈夫です。ただ、後ろから急に声をかけられるとびっくりするので…………」

シンジ「うん、ごめん……。気を付けるよ」

アスカ「それで……えっと何のご用ですか……?」

シンジ「ご用って程のものじゃないよ」クスッ

シンジ「はい、お弁当」スッ……

アスカ「え……? ……これ……アタシにですか……?」

シンジ「うん。食べて」ニッコリ

アスカ「あ……」

アスカ「あの……本当にもらってもいいんですか……?」

シンジ「当たり前だよ。もらって」ニコッ

アスカ「……//」

アスカ「あの……ありがとうございます……/// すごく嬉しいです……///」ペコリ……

シンジ「大袈裟だよ、式波。気にしないで」

アスカ「…はい……// ありがとうございます…//」コクン……

ヒカリ「」トコトコ……

ヒカリ「式波さん、お弁当一緒に食べる? 私もお弁当だから」

アスカ「」ビクッ!!

ヒカリ「あ、ごめん。驚かしちゃった?」

アスカ「あ、いえ、大丈夫です! すみません! すみません!」ペコペコ!!

ヒカリ「あの、謝らないで、式波さん。本当に大丈夫だから……。それより、ご飯一緒に食べよ」ニコッ

ヒカリ「あっ、折角だし碇君も今日は一緒に食べる? その……鈴原とかとも一緒に」

シンジ「あ、ううん。ごめん、今日はちょっと用事があるから。また今度」

ヒカリ「そっか……。じゃあしょうがないね、また」

シンジ「うん。ごめん」クルッ……

シンジ「」スタスタ……


ヒカリ「ごめんね、式波さん。ちょっと図々しかった?」

アスカ「あ、いえ、そんな事ないです! 一緒に食べようって言ってもらえて嬉しいです! あの、でも……!」

ヒカリ「どうしたの……?」

アスカ「あの……アタシ、LCL臭いと思うので……だから一緒に食事したら気分を悪くするんじゃないかって心配で…………」

ヒカリ「??」

アスカ「……ご、ごめんなさい…………」ビクビク……

ヒカリ「えっと……何を言ってるのかよくわからないけど……。式波さん、いい匂いするよ? ラベンダーの香り……かな?」

アスカ「はい……。少しだけ香水を……。あの……臭くないですか?」

ヒカリ「ううん、いい匂い」ニコッ

アスカ「…………」

ヒカリ「それと、私には敬語を使わないでほしいな」

アスカ「え、あの……でも…………」

ヒカリ「普通に話して。友達でしょ?」ニコッ

アスカ「……え」

ヒカリ「今日から友達。嫌?」

アスカ「いいえ、そんな事ないです! 嬉しいです! 本当にすごく……!!」

ヒカリ「良かったあ。じゃあ一緒にお弁当食べよう」ニコッ

アスカ「…………//」

アスカ「はい♪」コクン


ヒカリ「あ、はい、じゃなくて、うん、ね」

アスカ「あ…………」


アスカ「……うん♪」ニコッ

ヒカリ「うん♪」ニコッ

アスカ「」パカッ

アスカ「いただきます」……パクッ

アスカ「……//」モグモグ

ヒカリ「美味しい?」

アスカ「はい、じゃなくて……うん。すごく美味しい♪」ニコッ

ヒカリ「良かったね」ニコッ

アスカ「うん♪ 本当になんか……アタシ、今、すごい幸せ♪」ニコニコ

ヒカリ「そう」ニッコリ



『はい、綾波……』


アスカ(……シンジさん?)クルッ


アスカ「……?」

ヒカリ「どうしたの?」


そのまま視線が釘付けになるアスカ……




シンジ「今日の分のお弁当」スッ……

レイ「……いつもありがとう…//」

シンジ「ううん。綾波の為に出来る事なんて、僕、それくらいしかないから……」

レイ「……ううん…//」

レイ「……そんな事……ないから……//」

シンジ「だといいけど……。それじゃ、ごめんね、綾波。少し用事があって急いでるから。また後でね」

レイ「ええ……//」コクン……


シンジ「」タタタッ……


走って教室を出ていくシンジ…………

ヒカリ「式波さん?」

アスカ「………………」

ヒカリ「どうしたの? 式波さん?」

アスカ「あの人って…………」

ヒカリ「ああ、綾波さん? うん。式波さんと一緒でエヴァのパイロットだよ」

アスカ(……確か水をくれた人…………)

ヒカリ「本当は綾波さんも一緒に食事出来たらいいんだけどね。ただ……綾波さんだけは本当に特別だから……。一緒にご飯誘っても、断られちゃうし……」

アスカ「…………」

ヒカリ「話しかけても無視される事が結構多いの。一人でいたいのか、皆と距離を置いてるのかはわからないけど……。あ、でも、優しい子だって碇君は言ってたよ」

アスカ(……それはわかる…………。優しい感じがしたから…………)

ヒカリ「綾波さんと普通に話せるのは碇君だけだから、私たちもあまり綾波さんについては知らないんだ。でも、昼休みはご飯食べた後、二人でいつも屋上に行ってるから、式波さんも後で行ってみたら?」

アスカ(二人だけで……いつも…………)

ヒカリ「エヴァのパイロット同士だからかな。二人ともお互いに特別に思ってるみたいで……」

アスカ(……特別…………)

ヒカリ「だから、私たちだとちょっとあの空気の中に入れないんだけど、でも、式波さんならエヴァのパイロットだしきっと大丈夫だと思……式波さん?」


アスカ「」ツー……ポタッ、ポタッ……

ヒカリ「ど、どうしたの? 急に泣き出して」アセアセ


アスカ(……そうよね、アタシは邪魔者だもの…………)

アスカ(……シンジさん、優しいからアタシの面倒を仕方なく見てるだけで…………)

アスカ(……アタシは特別どころか厄介者でしかなくて…………)

アスカ(……そんな事、わかってたのに…………)グシュッ……


アスカ「……ぅっ…………」ポタポタ……ポロポロ……

ヒカリ「式波さん、大丈夫? どうしたの?」アセアセ

アスカ「……何で…もないです……。…何で……もないです…………」グスッ、ヒック

アスカ「……大丈夫です…。大丈夫ですから……」ゴシゴシ、ゴシゴシ

ヒカリ「……でも…………」

ー 屋上 ー


シンジ「」ピッ、ピッ
スマホ「」トゥルルルル、トゥルルルル……


曽根『はい……』

シンジ「あ、もしもし。碇シンジです」

曽根『シンジ君本人だな。周りに人は?』

シンジ「大丈夫です。いません」

曽根『OKだ。それで、何の用だろう? 弐号機パイロットの件かな?』

シンジ「あ、はい。それもあるんですけど、他に二つお願いしたい事があって」

曽根『了解だ。何でも言ってくれ』

シンジ「発信機を用意できないですか?」

曽根『……それはお安いご用だが、何の為に?』

シンジ「あの、少しややこしいんで、アスカの事から話します」

曽根『……?』

ー 同時刻、教室 ー


ヒカリ「あの……式波さん、落ち着いて……」

アスカ「はい……。ごめんなさい……。ごめんなさい……」グスッ、グシュッ……


レイ(…………?)


アスカの事に気がつくレイ……


レイ(……弐号機の子……泣いてるの……?)


レイ「」スッ……


そっと席を立つ……


レイ「」トコトコ……

レイ「……どうしたの?」


ザワッ…………


一瞬、ざわめく教室…………


クラス女子A「綾波さんが……碇君以外の人に自分から喋ったの初めて見た……」ヒソヒソ

クラス女子B「うん…………やっぱり同じエヴァのパイロット同士だし、式波さんの事は気になるのかな……」ヒソヒソ

レイ「…………」

アスカ「」ヒック、グシュッ……ゴシゴシ

ヒカリ「あ、あの……綾波さん、私にもよくわからなくて……」オロオロ

レイ「……この人に……ひどい事をされたの?」

ヒカリ「!?」

アスカ「ち、違います! 本当に何でもないんです! すみません! ごめんなさい!」ゴシゴシ、ゴシゴシ

レイ「…………」

ヒカリ「あの、綾波さん、本当に私、何もしてないから……!」

レイ「…………」

アスカ「あの、本当です! 洞木さんはすごく良くしてくれて! アタシと友達になろうって言ってくれて……!」グシュッ……

レイ「……友達…?」

ヒカリ「あの、ホントなの! 式波さんと友達になりたくて、一緒にお弁当を!」アセアセ

レイ「…………」


レイ「そう……」

レイ「」クルッ……スタスタ……


そのまま席へと戻るレイ…………


アスカ「…っ……」ゴシゴシ、ゴシゴシ……


涙を懸命に拭くアスカ…………


ヒカリ「」ホッ……

ヒカリ(怖かったあ……)


深く息を吐くヒカリ…………

ー 屋上 ー

ー アスカの事を説明後 ー


曽根『…………』ハァ……

曽根『ホント、イカれた組織だな、あそこは…………。出来る事なら潰してやりたいところだが…………』

シンジ「はい……」

曽根『まあ、それはいい。で、式波アスカと葛城三佐を会わせない為に、葛城三佐の持ち物に発信機をつけたいと、そういう事だな』

シンジ「はい。そうです」

曽根『OKだ。それなら発信機自体はすぐに用意が出来る。ただ、持ち物につけるというのはお勧めしないな。バレやすい上、誰がつけたかが特定しやすいんだ』

シンジ「……そうなんですか」

曽根『だから、車につけた方がいいだろう。これは俺たちがやるよ。特殊工作班にやらせる。取り付けた後で受信機だけ渡すから、それは少しだけ待っててくれ』

シンジ「ありがとうございます!」

曽根『それと……』

シンジ「はい」

曽根『もう一個のお願いの方だが、こっちは……難しいな』

シンジ「あの、どうしてですか? まだマンションは借りたままの状態だって、この前、木田さんが……」

曽根『ああ。借りたままの状態だし、君ならいつでも住む事が出来るようになってある。ただ…………』

曽根『そのマンションに式波アスカを住まわせるとして、例えば、その事を誰かに聞かれたら、何て説明する?』

シンジ「えと……それは…………」

曽根『子供だけでマンションは借りれない。それはわかるだろ? 誰かに聞かれたら、どうやって借りたのかを説明しなきゃいけないんだ』

シンジ「…………でも、僕にはすぐに住めるって……」

曽根『それは君の親戚名義で借りてるからだよ。と言っても、君が昔住んでいたあの家の人ではないけどな』

シンジ「………………」

曽根『政府と繋がりがあると、大概の無茶はきくんだ。金と権力のダブルパンチでな。だから、君がそこに住む時は、親戚の家に厄介になるで済んだんだ。いざとなれば変装した人間を送り込んで、保護者のふりをさせる事も出来るからな

曽根『でも、式波って子は身寄りが誰一人いなかったんだろう? オマケに住んでいたところはドイツだ。誰かに聞かれたら、親戚の家に、ってのじゃ通用しないんだよ』

シンジ「…………そう…なんですか……」

曽根『何度も同じ事を繰り返すが、君と戦自、それに日本政府との繋がりは絶対に秘密にしなきゃいけない。だから、残念だが式波って子をマンションに住まわせる訳にはいかないんだ。わかってくれ』

シンジ「…………わかりました……」

曽根『すまない。こちらでも何かいい方法を考えてはみるが…………。あまり期待はしないでくれ。弐号機とそのパイロットに関してはドイツ政府やユーロも絡んでくるだろうからな。難しいとは思う……』

シンジ「いえ……。すみません……。無理を言って…………」

曽根『いや、こちらこそすまない……』

シンジ「……それじゃあ、また……」

曽根『ああ……。また』

シンジ「」ピッ…………

シンジ「ダメだったか…………」フゥ……

シンジ「何とかなると思ったんだけど…………」スッ……


その場で寝転がるシンジ…………


シンジ「…………何とか……ならないかな…………」ポツリ

シンジ「……式波……あのままだと可哀想だし…………」ポツリ

シンジ「……何かいい方法ないかな………」ポツリ

シンジ「………………」

シンジ「……もういっその事、事故でも起こしたふりして入院とかした方がいいんじゃないかって気が…………」



ヒューン…………


突如、空から落下してくるパラシュート


シンジ「!?」

マリ「どいて、どいてーっ!!」

シンジ「え、わ!」

マリ「バカッ! 早くそこをどけぇーっ!!」

シンジ「い、あ……!!」


ドーンッ!!


シンジ「がっ!!」ドンッ!!
マリ「ぐっ!!」ドサッ!!


折り重なって倒れる二人…………

マリ「ぐぅ……いっつー……」

シンジ「」ングッ……


マリの胸に顔が埋もれるシンジ…………


マリ「は?」ムクッ

シンジ「」プハッ……


起き上がるマリ



マリ「…………」


状況を把握後……


マリ「……っとに! このノロマっ! さっさと避けろっ!!」バキッ!

シンジ「あぐっ!!」


シンジを殴りつけるマリ…………

マリ「はあ、もう……! メガネまでどっかに行くし……!」

マリ「メガネ、メガネー……」


四つん這いになってメガネを探すマリ……


シンジ「ぐぅっ……! 何なの、いきなり……」ムクッ……


何とか体だけ起こすシンジ……


マリ「あった」スチャッ

シンジ「君、一体、何をす……」


マリ「!?」

シンジ「!?」


マリ「碇……シンジ……?」

シンジ「真希……波……マリ……?」


お互いに驚いた顔を見せた後……


マリ「くそっ!!」ギラッ!

シンジ「生きてたんだ!!」パアッ!


全く真逆の表情を見せる二人…………

シンジ「真希波……だよね! 亡くなったって聞いてたから! 良かった! 本当に良かった!」

マリ「誰かと思えばネルフの犬コロじゃん。全く私も本当についてないよね……!」ダッ!

シンジ「え!?」

マリ「やっとあの地獄から逃げ出せたと思ったら速攻で見つかっちゃうなんてさっ!」ゲシッ!

シンジ「がっ!!」


倒れてるシンジに蹴りをくり出すマリ


シンジ「な、何で蹴……げふっ!!」

マリ「何でも何もないよ! あんたが私の事を知ってるって事と、ネルフに尻尾ふってるってだけで蹴る理由なんか十分だっ!!」ゲシッ! ゲシッ!

シンジ「や、やめ……!!」

マリ「うるさい! 黙れっ!!!」バキッ!

シンジ「いぎっ!!」

マリ「」サッ!


そのまま馬乗りになるマリ


マリ「あんた自身に恨みはないけどさっ!! 運が悪かったと思って諦めな!!」バキッ! バキッ!

シンジ「うっ!! ぐあっ!!」


そのまま殴り続けるマリ…………

必死に手で顔をかばうシンジ…………

ー ネルフ本部、ロビー ー


ミサト「ふぅー、お腹満腹♪」

ミサト「ごちそうさまでした」パンッ

コンッ……

ミサト「?」

加持「遅い昼飯だな」

ミサト「あ、ありがと…//」


缶コーヒーをテーブルに置く加持


加持「その弁当。例のサードチルドレン……シンジ君に作ってもらってるんだって?」

ミサト「あ、うん。そうなの。カロリー控え目なのに美味しくてね。ホント、いい腕してるのよ、あの子」ニコッ

加持「そいつは羨ましいな。葛城の料理は常に胃薬が必要で、大変だったからな」

ミサト「言わないでよー、それを// 私、料理、苦手なんだからさー……」

加持「おかげで俺の料理の腕が上がっちまったからな。良かったら今度、何か作って来ようか? 久しぶりだろ、俺の手料理?」

ミサト「それ、本当…?//」

加持「ああ、何せ当分俺は暇だからな」

ミサト「嬉しいけど、少し複雑……。私なんか現場の管理職だからたんまり仕事があってさー」ハァ……

加持「三分の一ぐらいはレイに代わってもらってるんだろ? リッちゃんからそう聞いたぜ」

ミサト「リツコだって似たようなものよ。別に私だけじゃないしー……」

加持「ま、レイはレイで好きでやってるみたいだからそれはいいけどな」

ミサト「そういう事。それに、好意を無駄にしちゃあ悪いしさ」ニコッ

加持「確かにな」フッ……

加持「それで、シンジ君はどうなんだい? 君が預かって教育してるって聞いたけど」

ミサト「ずいぶん立派になったわよ。ホント、最初の頃とは見違えるぐらいにね」ニコッ

加持「そうか。それならいいが。リッちゃんはまだまだだって心配していたからな」

ミサト「ま、ね。リツコはそういうとこ、厳しいからさ。私が甘いだけなのかも知れないけど」

加持「葛城は優しいからな」フッ……

ミサト「よしてよ。そんなんじゃないわよ。……それにシンジ君が立派になってきてるってのはホントなんだから」ニコッ

加持「そうか…」

ミサト「最近はね……。実は私が言う事もほとんどないの。まあ、ドジはまだまだ多いし、トロいところも結構あるから、司令のところに行かせる訳にはいかないんだけど……」

ミサト「でも、本当によく成長してくれたと思う……。それが嬉しくてね……」

ミサト「あいつ、誉めるとすぐに調子に乗るから、こんな事言えないんだけどさ……」ニコッ……

ミサト「シンジ君に対して、今まで厳しくしてきて……心を鬼にしてきて……本当に良かったと思ってる。人が成長していくのって素晴らしい事だなって…………」ニコッ……

加持「そうだな……。生きるという事は成長していく事だ。楽しい事ばかりじゃないが、それでも成長しないよりはいい」

ミサト「本当よね。シンジ君もきっとわかってくれてると思う。よく感謝の言葉を言われるし……」

加持「ああ。きっとわかってくれてるさ」

加持「ところで、弐号機パイロットの方はどうなんだい、葛城。彼女も君が預かってるんだろう?」

ミサト「あー、あれね……」プイッ……

ミサト「悪いけど、あいつの話はしないでもらえる。私、あいつ大嫌いだから」

加持「なるほどね……。OK、わかった。この話は二度としないさ。俺も葛城に嫌われたくはないからな」

ミサト「嫌いになる事なんかないわよ……//」ボソッ

加持「ん?」

ミサト「あ、な、何でもない// それより加持君、今日は何か用事とかある? 良かったら、仕事終わりにまた……さ//」

加持「悪いが、今日はダメでね。用事はないんだが、そういう気分じゃないんだよ。すまない」

ミサト「……何かあったの?」

加持「いや、今日は墓参りに行くからな。昨日、墓が出来上がったって連絡が入ってね」

ミサト「墓? ……ひょっとして例のあの子の……?」

加持「そう。真希波・マリ・イラストリアス。可哀想な事をしたからな……」

ミサト「……脱出……出来なかったんだっけ?」

加持「ああ。エントリープラグごと蒸発してしまったみたいで骨も残ってない。いる時は俺に殴りかかってきたりとかして、とんでもない問題児だと思っていたが、こうしていなくなってみると淋しいもんだな……」

ミサト「それでも可哀想だったわね……。事故だなんて……」

加持「人は簡単に死ぬ。その事はセカンドインパクトの時に思い知ったんだが……。やりきれない思いだけは捨てられないからな……」

ミサト「ええ……そうね…………」

加持「……葛城。君は死ぬなよ。どんな事があっても生き延びてくれ」

ミサト「え……やだ、大袈裟よー。ここにいる限り死ぬ事なんてまずあり得ないんだから」

加持「……いいから約束してくれ。君だけじゃなくリッちゃんもだ。何かあった時にはここからすぐに避難するんだ。……いいな」

ミサト「…………え、あ…うん…………」

加持「頼んだぞ」キリッ……

ミサト「わかったわ…………約束する……」コクッ

加持「ああ…」コクッ……

ー 学校、屋上 ー


マリ「ま、こんなもんか……」スッ……


ようやくシンジから離れるマリ…………


シンジ「いっ……! ぐっ……!」


うめき声をあげながら倒れたままのシンジ…………


マリ「」スッ
ガラケー「」ピッ

マリ「Hello this is Mali!」


不機嫌な声で電話するマリ


以下、和訳


マリ『どうなってんのさ! お金はしっかり払ったのに何でこんなところに連れてきたの!』

マリ『オマケに風で流されて見つかっちゃったじゃない! 風向きぐらいしっかり見とけ! 役立たず!』

マリ『はあ? そりゃ確かに日本の都会まで運んでって頼んだよ。でも、第三新東京市にだけは運ぶなとも言ったはずだ!』

マリ『聞いてない!? ふざけんなっ! 言い訳はいいからもう一度運べ! 四の五の抜かすな!』

マリ『出来ない!? 冗談じゃないよ! 密入国なら任せておけ、どんな場所でも運ぶって言ったのはそっちの方じゃ……もしもし、もしもし!!』

マリ『切りやがった! くそっ!!』

ガンッ!!


思いきりフェンスを蹴るマリ………

マリ「あー、もう! ホント、ついてない! なけなしのお金払ったっていうのに!」グイッ、ズルズル……


パラシュートと荷物を回収するマリ……


シンジ「うっ…………! あ…の……真…希波…………」


マリ「へー、まだ喋る余裕があったんだ。もう少し痛めつけときゃ良かったかな」チッ

マリ「」スタスタ


倒れているシンジに近付くマリ


マリ「聞け。ネルフの犬」スッ……


しゃがみこんでシンジを鋭く睨み付ける


マリ「私の事は誰にも喋るな。他言無用にしなよ。もし私が生きてる事がバレたら、例えあんたが話したんじゃなかったとしても、私はあんただと決めつけるから。いいね?」

シンジ「……わかってる……。誰にも言わないから…………」

マリ「聞き分けがいい犬コロで助かるよ。それじゃね」クルッ、スタスタ……


シンジ「あの……待って…………」

マリ「何? まだ何か用でもあるの?」

シンジ「これ……持っていって…………」スッ……


震える手でポケットから財布を取り出すシンジ……


マリ「……?」

マリ「どういうつもり? 別にカツアゲしようなんて思っちゃいないよ。私の事を黙っててくれればそれでいいから」

シンジ「……そうじゃないよ……困るだろうからと思って…………」

マリ「は?」

シンジ「さっき……なけなしのお金はたいたって言ってたから…………」

シンジ「もう結構使っちゃって……百万円ぐらいしか残ってないけど…………。銀行のカードが中に…………暗証番号は3310……」スッ……

マリ「……どういう事?」

シンジ「……逃げてきたんでしょ……? ネルフから…………。でも、真希波は……中学生だから……。きっとお金に困るはず…………。どこも雇ってくれないはずだし…………」

マリ「…………」


シンジ「……つうっ…!」ムクッ……


痛みを堪えながら上半身だけ起こすシンジ……


シンジ「……その……僕も……前に逃げる事を考えた事があるから…………。だから……真希波の気持ちは少しはわかるんだ…………」

マリ「……?」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


シンジ『』ツー…… ボタッ……… ボタッ………

シンジ『…僕はもう、誰にも優しくしない……!!』ポタッ…… ポタッ……

シンジ『…僕はもう、誰かに優しくされた事なんて信じない……!』ポタッ…… ポタッ …… ポタッ……

シンジ『…少し優しくしたばっかりに僕は酷い目に遭ったんだ……!!』ポタポ タ…… ポタポタ……

シンジ『…少し優しくされたばっかりに僕はもっと酷い目に遭ったんだ……!!』ボタボタ… ボタボタ…

シンジ『だからっ!!』ボロボロ……

シンジ『エヴァにはもう……』ギリッ…!!!

シンジ『……全部、綾波が乗ればいいんだっ!!!!』ボタボタ、ボタボタ、ボロボロ

ブンッ…!!!!

携帯電話『』ビュン…!!!!

ジャングルジム『』ガキ、ガキ、ガキーンッ ……!!!!

携帯電話『』バキッ……!!! パリンッ………!!!!

携帯電話『』コロ……コロ…… パラパラ……



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



涙を流しながら、レイを壁に押しつけるシンジ

目をそらさず、シンジを見つめるレイ


シンジ『ぅ……ぅぅ……!!』

レイ『……』

シンジ『…綾波…!! 乗ってよ…!! 今すぐ乗って…!! お願いだから…!!』ボタボタ…

レイ『……』

シンジ『乗ってよ!!! 怒るよ、僕…!! このままだと本気で怒るよ…!!!』ボタボタ、ボロボロ…

レイ『…乗る必要なんか、ないもの』

シンジ『綾波…!!!』ボロボロ…


手を振りかざすシンジ


シンジ『綾波…! 叩くよ…!! 乗ってくれなきゃ叩くよ…!!! 本気だよ…!!』

シンジ『だから、乗ってよ!!!!』ボ ロボロ、ボロボロ…

シンジ『…お願いだから…!!!』ボロボ ロ、ボタボタ……

レイ『……』

レイ『……それで、碇君の気がすむなら、そうすればいいわ』

シンジ『…ぅ…!!』ボロボロ……

シンジ『ぅああぁあ!!!』ボタボタ、ボ ロボロ…


上げたまま、手を下ろせないシンジ


レイ『…………』


それを見つめ続けるレイ



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

シンジ「…………」

シンジ「……綾波がいなかったら…………多分、僕も今の真希波みたいな状態になってたと思うから…………。だから…………」

マリ「…………」

マリ「……言ってる事が全然わかんないね。もっときちんと説明しなよ」

シンジ「……これ、見れば大体の事がわかると思う……」スッ……


代わりにメモ帳も差し出すシンジ……


マリ「…………」パシッ


それをむしりとる様に受けとるマリ


マリ「……」ペラッ……ペラペラ……

マリ「……!? これって…………」

シンジ「うん……。エヴァの起動方法だとか、マギの操作方法だとか、色々メモしたもの…………。全部、自分でやらなきゃいけないって綾波が教えてくれたんだ…………」

シンジ「そうでないと、下手したら死にかねないからって後で聞いて…………。それ聞いた時、笑っちゃったよ…………本当に…………」

マリ「…………」


マリ「…………そうか……君も、なんだ……」

シンジ「うん…………」


重い沈黙…………

マリ「わかった……」

マリ「…………カードはもらっておく。でも、私は君に感謝をしない。さんざん殴っといて、今更ありがとうなんか言えない。言える訳がない……」


苦々しげにシンジを睨み付けるマリ…………


マリ「君はそれでもいいの? 私はこれっぽっちも感謝なんかしないよ」

シンジ「……いいよ。受け取って……。必ず逃げて……。どこか遠いところに…………」

マリ「……くっ!」

マリ「」ダンッ!!


壁を叩くマリ…………


マリ「」パシッ!!

マリ「」タタタタッ……


そして、ひったくるように財布を受けとると、逃げるように走り去る…………


シンジ「正門からは出ちゃダメだよ、真希波! 監視がいるから! 出るなら裏門から出て!」


マリ「…………」タタタタッ…………

ガチャッ、バタンッ!!


扉が激しく閉まる…………




シンジ「…………」

シンジ「……真希波…………。生きてたんだ…………」ポツリ……

シンジ「……良かった…………」ポツリ……

シンジ「……最後の言葉、聞こえてたらいいけど…………」ポツリ……

シンジ「……見つからずに逃げれるといいけど…………」ポツリ……

シンジ「……見つかったら絶対連れ戻されるに決まってるから…………」ポツリ……


シンジ「……ぅっ!」ズキッ……!!

シンジ「…………っ!」

シンジ「……動かすと……体……痛いなあ…………」ハハッ……


悲しげに笑うシンジ…………


シンジ「……綾波が来る前に今日はもう早退しよう……。こんな状態見られたら、また心配かけちゃうだろうし…………」スクッ……

シンジ「……っ!」

シンジ「一応、病院にも行って来た方がいいかな……。折れてはいないと思うけど…………」


シンジ「」ヨロヨロ……


ゆっくりと屋上から去っていくシンジ…………

ー 学校終了後 ー


アスカ「………………」

ヒカリ「式波さん、やっぱり元気ないね……。本当に大丈夫?」

アスカ「え、あ、そんな事ないです! 元気一杯です!」

ヒカリ「でも……また敬語になってるよ」

アスカ「え、あ、ご、ごめんなさい。慣れてないので……」

ヒカリ「うん……。ゆっくりでいいよ。私も急ぎすぎたと思うし……」

アスカ「……ごめんね……。本当に慣れてないの」シュン……

ヒカリ「うん。大丈夫。その内、すぐに慣れると思うし……」

アスカ「そうだと嬉しいけど…………」

ヒカリ「…………」

レイ「……」トコトコ……


アスカに近寄るレイ


アスカ「綾波さん……」

レイ「…今日、シンクロテストがあるから」

アスカ「あ、はい!」

レイ「…ついてきて」トコトコ……

アスカ「はい!」サッ

アスカ「」タタッ


鞄をひっつかんでレイの後を追うアスカ

が、すぐに引き返す


アスカ「ごめんなさい! じゃなくてごめん、洞木さん! アタシ行くね」

ヒカリ「うん。行ってらっしゃい。が……気をつけてね」

アスカ「うん、ありがと!」ニコッ

アスカ「」タタタッ


ガラッ……

タタタッ……



ヒカリ「……頑張って、って言うのは追い込むだけよね……きっと……」

ヒカリ「……つい言いそうになって怖い……」シュン……

ヒカリ「……式波さん、見た感じが明るいから特に……」

ヒカリ「…もうきっと限界まで頑張ってるのに……。式波さんや碇君は……」

ヒカリ「……それに、多分、綾波さんも…………」


ヒカリ「……私に…何が出来るんだろう…………」


悲しげな表情を見せるヒカリ…………

ー 電車 ー


カタンカタン、カタンカタン……


乗客はレイとアスカの二人だけ



レイ「…………」






アスカ「…………」




一車両離れて座る二人…………

ー ネルフ本部、エスカレーター ー


レイ「…………」

アスカ「…………」



無言が続く…………



レイ「…………」

アスカ「…………」


レイ「…………」

アスカ「…………」


レイ「…………」

アスカ「…………」


レイ「…………」

アスカ「…………」


レイ「…………」

アスカ「…………」


レイ「…………」

アスカ「…………」


レイ「…………」

アスカ「…………」


レイ「…………」

アスカ「…………」


レイ「…………」

アスカ「…………」


レイ「…………」

アスカ「…………」


レイ「…………」

アスカ「」ヘクチッ


レイ「…………」

アスカ「…………」


レイ「…………」

アスカ「…………」

レイ「…………」

アスカ「…………」


レイ「…………」

アスカ「…………」


レイ「…………」

アスカ「…………」


レイ「…………」

アスカ「…………」


レイ「…………」

アスカ「…………」

レイ「……あなたは…エヴァに乗らない方がいいと思う」

アスカ「え?」

レイ「私がいる限り…弐号機が壊される事はないから」

レイ「それに、あなたの居場所はきっと別のところにある」

レイ「普通の暮らし方が出来る内に…ここから逃げて」


アスカ「……あの……! アタシは……! だって……!」

レイ「……だって?」

アスカ「だって……弐号機にはママが……! アタシのママが……!!」

レイ「…………」

アスカ「ママが見ててくれるの、あの中しかないから……! だから…………!」

レイ「…………」


レイ「……そう」


アスカ「だから…………アタシは…………!」

レイ「…あなたも、私と同じなのね……」


アスカ「え……?」

レイ「……逃げれるのに、選べれなかった人」

アスカ「…………」

レイ「……ここ以外でも生きられるのに、もう戻れない人…………」

アスカ「…………」


レイ「…………」

アスカ「…………」


そして、また沈黙…………

ー ネルフ本部、実験場 ー

ー シンクロテスト中 ー


リツコ「……シンクロ率、56.37%…………。やっぱりこの子が一番ダメね。低すぎるわ」

マヤ「隣のレイは87.16%ですからね……。シンジ君もつい最近、75%を越えてますから……。アスカのダメさ加減が目立ちますね」

ミサト「それだけシンクロ率があるだけでも充分驚きよ」フンッ

リツコ「そういえば、アスカ、あなたが引き取る事になったのよね。どうなの、そっちの方は?」

ミサト「聞かないで。思い出したくもないから」

リツコ「なるほどね……。相変わらずあの子の事、嫌いなのね」

ミサト「」フンッ

ミサト「それより、今日はシンジ君はどうしたのよ? まさか、遅刻じゃないでしょうね?」

リツコ「シンジ君なら、今日は来ないわよ。学校も早退したそうだし」

ミサト「はあ? 私は聞いてないわよ、そんな話。大体、あいつ、何で学校を早退してるのよ」

リツコ「隣の市まで買い物に行きたいから、だそうよ。リカにそう電話があったらしいわ」

ミサト「なに考えてんのよ、全く。諜報部は連絡係じゃないってのに……」ブツブツ

ミサト「大体、買い物で学校とシンクロテストを休むってどういう事よ? あいつ、なめてんの? 帰ったらまた説教してやらないといけないわね」

リツコ「私も似たような事を言ったのだけどね。でも、話を聞いて許可したわ。ミサトも今日は叱らないでおいてくれる?」

ミサト「そうはいかないわよ。世の中にはけじめってもんがあるんだから。やる事をやってないやつは叱られるのが当然でしょう。それに、ここでしっかり叱っておかないと、あいつ、絶対また同じ事をするんだから」

リツコ「それはないわ。多分、今日だけよ」

ミサト「何であんたにそんな事が言い切れるのよ」

リツコ「……やれやれ……仕方ないわね。これは内密にしておいて欲しいって事だったんだけど……」

ミサト「内密?」

リツコ「あの子、あなたへのプレゼントを買いに行ったそうよ。いつもお世話になってるから、何か飛びきりの物を贈りたいって」

ミサト「へ?」

リツコ「ずいぶんと可愛いとこあるじゃない。感心したわ」クスッ

ミサト「え、いや、その……ね…//」

マヤ「へー、あのシンジ君がそんな事を。本当に最近変わったんですね。ちょっと前まで考えられなかったのに」

リツコ「良かったわね、ミサト。あなたの教育の成果よ」ニコッ

マヤ「どっちかって言うと、教育よりは愛の成果じゃないですか。葛城さんの愛情が伝わったんですよね」クスッ

ミサト「やだ、もう…/// そんなんじゃないわよ、やめてよ///」

ミサト「私はただ、あいつが立派になっていくのが嬉しくって……。本当にそれだけなんだから//」

リツコ「照れる事ではないわよ、ミサト。それに、あなたも嬉しいんでしょ? たまには素直になったら」

ミサト「うん…// そうね、たまにはね……」

マヤ「」クスッ……

リツコ「……そういう訳だから、ミサト。今日はシンジ君の事を叱らないであげてね。それと、私がこの事を言ったって事も内緒よ」

ミサト「わかったわ。そうしておく。私は今日何も見なかったし、何も聞かなかったわよん♪」ニコッ

リツコ「」クスッ

マヤ「嬉しそう」クスクス


リツコ「さてと……。で、どうするの、ミサト? アスカの事は。前のシンジ君みたいに、またエヴァの訓練でもする?」

ミサト「冗談よしてよ、リツコ。あんなのほっとけばいいのよー。どうせ出撃するのはレイだけだし、レイ一人で足りるんだからそれでいいわよ」

リツコ「ま、それもそうね。そもそもエヴァは三機も必要ないのだし」

ミサト「そういう事。全く何を考えてるのかしらね、ドイツ支部は。ここはゴミ捨て置き場じゃないってのに」

リツコ「大人げないわよ、ミサト。もっと寛容な精神を持ちなさい。アスカと一緒に住む事になって苛立つ気持ちもわからないではないけど、でも半分以上はあなたの責任なんでしょ?」

ミサト「だったら、私は子供でいいわよ、もう!」

リツコ「あらあら、そんな風にしてるとリョウちゃんからも愛想尽かされるわよ。最近かなりいい雰囲気なんじゃないの?」

ミサト「う……。まあ、ね……。これまでずっと会えなかったからさあ……」

リツコ「その分の埋め合わせという訳? リョウちゃんもいい加減、プロポーズすればいいのにね」

マヤ「結婚…ですか。幸せになって下さいね、葛城さん」ニコッ

ミサト「ちょっと、気が早いってば、マヤ。それに、あいつはあいつで色々と考える事があるだろうし……」

リツコ「と、いう事はあなたの方の準備は整っているという訳ね? 嫌ね、先を越されてばっかりで」クスッ

ミサト「あ、いや、その、ね……// それよりリツコ、もうシンクロテストはいいでしょ。終わりにしましょ」

リツコ「はいはい」カタカタ……


音声をつなぐリツコ


リツコ「……二人とも、上がっていいわよ。後はお願いね、レイ」


レイ『はい……赤木博士』

リツコ「それじゃ行きましょうか、ミサト」

ミサト「そうね♪」ウキウキ

マヤ「……? どこに行くんですか?」

リツコ「ショッピングよ。服を買いに行くの」

マヤ「……ひょっとして、結婚式用のですか? ちょっと前まで結婚ラッシュが続いてたから」

リツコ「嫌な事、思い出させるわね、マヤ……。あなたはまだわからないかもしれないけど、同期や年下の子がどんどんと結婚していくのは辛いものよ。ねえ、ミサト」

ミサト「ま、ね」

リツコ「……今のミサトに聞いたのが間違いだったわね……」

ミサト「あ、別にそんなんじゃないけどさー。……そういうリツコは誰かいい人いないの? あんたそういう事、全く話してくれないからさー」ブーブー

リツコ「自分の事話しても、面白くないもの」

ミサト「あっそ……。ホントにもう……」ブツブツ

リツコ「だから、出来るだけ話さない様にしているの。悪気があってしてる訳ではないわ」

マヤ「…………」

リツコ「服は、旅行用のよ、マヤ。今度の慰安旅行の行き先がパリに決まったから、少しオシャレな服で行こうかって話になってね」

ミサト「そういう事。年に一回しかないから、折角だしね」

マヤ「そうなんですか。羨ましいです。私はまだ半年も先の話なので。全職員が一斉に行けたらいいんですけど……」

ミサト「ま、そういう訳にもいかないみたいだしね。三分の一ずつが妥当なところよ」

リツコ「今年はリョウちゃんも一緒だから、まるで学生時代に戻ったようね。懐かしいわ」

ミサト「ホントね。あの頃はバカな事ばっかりしてたけど、楽しかったわ」

マヤ「…………いいなあ」

ミサト「あ、大丈夫よ、マヤ。ちゃんとマヤの分まで楽しんできてあげるから♪」ニコッ

マヤ「…………葛城さん。それ、ひどいです」

ー シンクロテスト、終了後 ー

ー 女子更衣室 ー

ー 着替え中 ー


レイ「」パサッ、スルッ……

アスカ「…………」


レイ「」ソッ……パチッ……

アスカ「…………」


レイ「…………」

アスカ「…………」


レイ「……着替えないの?」

アスカ「あ……すみません……。……すぐに着替えますから……」パサッ、スルッ……


レイ「…………」

アスカ「」ソッ……パチッ……モゾモゾ


レイ「…………」

アスカ「……着替え、終わりました……。お先に失礼します……」ペコリ……

レイ「…………私には……謝らなくて、いいから……」

アスカ「……?」

レイ「…………何かあったら、言って……。ネルフでの事なら、大体の無理はきくから……」

アスカ「…………」

レイ「……また明日…」スッ……


プシュン……


去っていくレイ…………



アスカ「………………」

アスカ「……綾波さん……やっぱり…………優しい…………」

アスカ「……優しいから…………」

アスカ「……シンジさんも、きっと…………」


うつむくアスカ…………

そのままずっとそこで立ちつくす…………

ー ネルフ本部、廊下 ー


シンジ(やっぱり病院には行って正解だった……)トコトコ……

シンジ(少なくとも腕はアザにはならなくて済んだし、痛み止めの薬のおかげでずいぶん楽になったから……)トコトコ……

シンジ(ミサトへの嘘は多分、あんなもので大丈夫のはず……)トコトコ……

シンジ(お喋りな小林が、ミサトに黙っておくなんて考えられないし……)トコトコ……

シンジ(もし黙ってたとしても、どうせリツコ辺りには喋るはずだから……結局、同じ事なんだよね……)トコトコ……

シンジ(それに、本当にどちらも黙ってたとしても、最悪僕が怒られるだけで済む…………)トコトコ……


シンジ(……それにしても、念の為、前にプレゼント用の椅子を買っといて良かった……。真希波にカードごと渡しちゃったから、これ以上何か買うお金なかったんだよね……)トコトコ……

シンジ(代わりに、行きだけは綾波に式波の事を頼んじゃったけど…………)トコトコ……

シンジ(でも、それはもうどうしようもないか…………)トコトコ……


シンジ(…………僕……結局、綾波に頼ってばっかりだ……)トコトコ……

シンジ(綾波の苦労の半分は僕が引き受けるとか言いながら…………)トコトコ……

シンジ(現実には、前と大して変わらないじゃないか…………)トコトコ……

シンジ(綾波に背負われてばかりで……)トコトコ……


シンジ(…………)トコトコ……


シンジ(……情けなさ過ぎるよ…………)トコトコ……

ー 同時刻、ネルフ本部、エレベーター内 ー


ガコッ、ウィーン……


レイ(…………)



レイ(……碇君…………)

レイ(……用事があるって早退して行ったけど……)

レイ(……何の用事かは教えてくれなかった……)

レイ(…………)

レイ(……碇君が…時々、私に何か隠してるのはわかる……)

レイ(……でも、何を隠してるのかは、もうわからない……)

レイ(……前みたいに、嘘をつくのがもう下手じゃないから……)

レイ(…………)


レイ(……何を隠してるのか、教えてほしい……)

レイ(……でも、私はそれを聞けない…………)

レイ(……聞くと、碇君は嫌がると思うから…………)シュン……

ー 同時刻、ネルフ本部、女子更衣室 ー


アスカ「………………」





アスカ「………………」





アスカ「………………」





アスカ「………………」






アスカ「」ボソッ……






アスカ「……アタシは…………」ボソッ……






アスカ「……アタシはクズだから…………」ボソッ……

アスカ「……綾波さんとは比べ物にならないぐらいブスだから…………」ボソッ……

アスカ「……邪魔をしちゃいけないのよ…………」ボソッ……


アスカ「……迷惑をかけちゃいけないのよ…………アスカ…………」ボソッ……






アスカ「……でないと、二人ともに嫌われちゃうから…………」ボソッ……


アスカ「……嫌われるよりは、マシだから…………」ボソッ……




暗い瞳で静かに呟くアスカ…………

ー ネルフ本部、廊下 ー

ー エレベーター前 ー


シンジ(……綾波…………)

エレベーターを待つシンジ



ー エレベーター内 ー


チンッ…………


レイ(…碇君…………)

到着するエレベーター



ガコッ……

ゆっくり扉が開く



レイ「?」

シンジ「?」


レイ「…碇…君?」

シンジ「……綾波……?」



はちあう二人

シンジ「どうして、ここに? ひょっとして、シンクロテストってもう終わったの?」

レイ「……ええ。今日は早かったの」

シンジ「そっか。急がないと」トトッ


エレベーターに乗り込むシンジ


レイ「……」トコトコ……

スッ……


外に出て、閉まろうとする扉を手で抑えるレイ


レイ「……碇君は…どうしてここに? 今日は用事があって来れないって…」

シンジ「ああ、うん。そっちの方は片付いたからさ。式波を迎えに来たんだ」

レイ「……弐号機の子を?」

シンジ「うん。式波、昨日こっちに引っ越してきたばかりだから、迷うんじゃないかなって。僕も最初はかなり迷ったし」

レイ「……そう」

シンジ「それに、式波一人だと不安だろうからさ。誰かがついててあげた方がいいと思って……。行きはどうしようもなかったから綾波に電話でお願いしたんだけど……」チラッ……

レイ「……ええ。…ここまで一緒に来た」

シンジ「ありがとう、綾波。助かったよ」ニコッ

レイ「…いいえ……」

シンジ「じゃあ、悪いけどこれで……。早く行かないと式波が心配だから」

レイ「……ええ」ソッ……


扉から手を離すレイ


ガコッ…………


シンジ「また明日ね、綾波」

レイ「……ええ」コクン……


ピシャン…………


そして、完全に閉まる扉




レイ「………………」


閉まった扉をじっと眺めるレイ…………

ー ネルフ本部、女子更衣室 ー


コンコン……


アスカ「」ビクッ!!


『式波、いる?』


アスカ(シンジさん…?)

アスカ(今日は用事があるから早退するって言ってたのに、何で?)

アスカ「あの、います! 今、開けます!」タタタッ


プシュン……


開くドア


アスカ「あの……」オズオズ

シンジ「良かった。式波がまだここにいて」ホッ

アスカ「え…?」

シンジ「迎えに来たんだ。一緒に帰ろう」ニコッ

アスカ「……///」ドキッ

アスカ「え、でも、あの……//」

シンジ「早くしないとミサトが仕事から帰って来ちゃうしさ。その前に先にお風呂に入った方がいいと思うんだ。そうすればゆっくりつかる事が出来ると思うし」

アスカ「あ、はい!///」

アスカ「あ、いえ! その……!」


シンジ「?」


アスカ「あの……アタシ、一人で帰れますから大丈夫です…………。だから…………」

シンジ「えっ、でも…………」

アスカ「その……あの…………本当にアタシ、先に帰って洗濯とかしてますので……シンジさんはゆっくり…………その…………」

シンジ「?」

アスカ「……あ、綾波さんと一緒に帰って下さい…………。あの……アタシ、迷惑とかを……か、かけたくないので…………」


わずかに震える声…………


シンジ「綾波…?」

アスカ「はい……。あ、綾波さん、多分、まだここにいると思うので…………だから…………」

シンジ「綾波はまだやる事があるから……。だいいち、式波は迷惑とかじゃないよ」

アスカ「あ、あの……でも……」

シンジ「それに、式波を放ってはおけないし」

アスカ「……!//」

シンジ「式波、一人で帰るの、不安でしょ? だから遠慮なんかしないでいいよ」ニコッ

アスカ「……あの…本当に……いいんですか…?///」

シンジ「当たり前だよ。一緒に帰ろう」

アスカ「……///」


アスカ「はい//」ニコッ

ー 帰り道 ー


シンジ「」テクテク……

アスカ「……//」テクテク……


シンジ「そういえば」

アスカ「はい//」


シンジ「綾波とはどうだった? 今日、一緒にネルフに行ったんだよね?」

アスカ「あ…………」


シンジ「話とかした? 綾波、あまり自分から喋らないから……」

アスカ「あの……しました……。大丈夫です…………」

シンジ「そう。ならいいけど。綾波も式波の事、気にしてたから……」

アスカ「……綾波さん……優しかったです……」

シンジ「うん、優しい子なんだ……」


少しだけうつむくシンジ


アスカ「……シンジさん……綾波さんと仲いいんですよね…………」

シンジ「……どうだろう。多分……そういうのじゃないと思う…………」

アスカ「……?」

シンジ「綾波は少し特別だから…………。仲がいいとかそういうのじゃなくて……。もっと別な感じだと思う……」

アスカ「………………」

シンジ「それに……僕は綾波に助けられてばかりだから……。僕も助けなきゃいけないって……」

アスカ「…助けられてばかり……?」

シンジ「うん。だから、僕で出来る事なら何でもしたいんだけど……。でも、せいぜいお弁当を作ってくる事と、綾波の仕事を少し手伝う事ぐらいしか出来なくて……」

アスカ(……お弁当…………)

シンジ「綾波、本当に時間がないんだ。式波にもその内詳しく話すけど、昼休みも仕事してるぐらいだから……。だからその手伝いを僕もしてて……」

アスカ(……あ…………それで…………)

シンジ「……綾波が、多分一番犠牲を払ってるから…………」

アスカ「……シンジさん…?」


悔しげな、淋しげな表情を見せるシンジ…………

ー 深夜 ー

ー アスカの部屋 ー


アスカ「…………」


ベッドに横になって天井を見上げるアスカ



アスカ(……シンジさん、ミサトの相手……もう終わったのかしら…………)

アスカ(……ご飯運んでもらった時に……ミサト、今日は機嫌がいいってシンジさん言ってたけど……)

アスカ(……大丈夫だったのかな…………)

アスカ(…………)コロン……


アスカ(……怒鳴り声は聞こえてこなかったから……大丈夫だと思うけど…………)

アスカ(……心配のし過ぎで……お腹が少し痛む…………)

アスカ(……今度、病院連れていってくれるって言ってたから……その時に一緒に診てもらおう…………)

アスカ(…………)コロン……


アスカ(……シンジさん…………)


アスカ(……アタシ……迷惑ばかりかけてる…………)

アスカ(……今日だって……アタシがお風呂に入っている間に、ほとんどシンジさん一人で家事をこなして…………)

アスカ(……アタシがしたのは洗濯だけ…………)

アスカ(……なのにシンジさん……気にしないでって…………。今の生活に慣れてきたら、もう少ししてもらうからって…………)


アスカ(…………)コロン……


アスカ(……こんなんじゃ……その内、アタシ絶対に嫌われる…………)

アスカ(……シンジさんにだけは嫌われたくないのに…………)

アスカ(……アタシが……迷惑をかけなかったら…………)

アスカ(……アタシが……面倒をかけなくなったら…………)

アスカ(……シンジさん……アタシの事を見てくれるかな…………)

アスカ(……バカね……こんな気持ち悪い女が何を考えてるのかしら…………)

アスカ(……でも…………)コロン……



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『迎えに来たんだ。一緒に帰ろう』

『式波を放ってはおけないしさ』

『大丈夫だよ、安心して』

『……式波は、僕が守るから』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



アスカ(……アタシは……多分…………)

アスカ(…………)コロン……


アスカ(……考えるだけなら……いいじゃない…………)

アスカ(……シンジさん……綾波さんとはそういう仲じゃないって言ってたし…………)

アスカ(……だから……考えるだけなら……アタシの勝手じゃない…………)



アスカ(……考えちゃうんだから……仕方ないじゃない…………)



アスカ(……綾波さんは…………)

アスカ(……シンジさんの事をどう思ってるんだろう…………)

アスカ(……何とも思ってない……って事はないわよね…………)

アスカ(……お弁当もらった時……嬉しそうだったし…………)

アスカ(……考えると……胸が…………苦しい………………)



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ヒカリ『大丈夫だよ、式波さん。怖がらないで。皆、いい人ばかりだから』ニッコリ

ヒカリ『ゆっくりでいいから、私たちと仲良くしていってね。私たちが、式波さんの事を嫌いになる事なんか絶対にないから』

ヒカリ『普通に話して。友達でしょ?』ニコッ

レイ『…………私には……謝らなくて、いいから……』

レイ『…………何かあったら、言って……。ネルフでの事なら、大体の無理はきくから……』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



アスカ(……今日は……こんなクズの私に皆が優しくしてくれて…………)

アスカ(……綾波さんや洞木さんやクラスの皆……信じられないくらい優しくしてくれて…………)

アスカ(……こんな幸せが訪れるなんて……今まで考えた事もなかったのに…………)

アスカ(……なのに…………)コロン……





アスカ「…………アタシは今……こんなに切ない…………」ポツリ……

コンコン……


アスカ(!)


『式波、もう寝ちゃった?』


アスカ(シンジさん!)ガバッ!


跳ね起きるアスカ


アスカ「あの……起きてます!」


『あ、ごめん。ちょっと静かにしてくれる。ミサトさん、まだ寝たかどうかわからないから』ボソボソ


アスカ「あ、ごめんなさい……」ボソボソ


シーン…………


『……大丈夫、みたいだね。ミサト、よく寝てると思う。もう部屋から出ても平気だよ。ただしあまり音は立てないでね』


アスカ「はい。あの、今、ドア開けますね!」


『あ、いいよ。無理に出なくても。それに、僕、今日は悪いけどもう寝るから』


アスカ「あ…………はい…………」シュン……


『じゃあお休み、式波』


アスカ「はい……お休みなさい…………」シュン……

『あ、そうそう、危うく忘れるところだった。式波って携帯持ってる?』


アスカ「はい……。連絡用のを渡されてますけど……?」


『良かったら番号とメアド教えてくれないかな? 登録しておきたいんだ』


アスカ「あ、はい!」タタタッ

アスカ「あの、番号言いますね」スッ
ガラケー「」ピッ


『うん。お願い』



ー 番号とメアド交換後 ー


『ありがと。じゃあ今度こそ本当にお休み』


アスカ「はい……お休みなさい…………」


ソッ……

トコトコ…………


去っていく足音…………



アスカ「…………」シュン……

アスカ「……アタシも…もう寝よう…………」ソッ……

モゾモゾ……


アスカ「……ママ…………」ギュッ……

弐号機のぬいぐるみ「…………」

ー 数分後 ー


ピピッ……


アスカ「……?」

アスカ「メール……?」

アスカ「シンジさんから……?」ソッ、ポチッ
ガラケー「」ピッ……


『メールならミサトがいても、いつでも話が出来るから。明日から使って。それと、今日、式波元気がなかったみたいだから、明日の夕飯は好きだって言ってたハンバーグにするよ。楽しみにしてて』


アスカ「あ…///」キュン

アスカ「……嬉しい…///」ドキドキ



アスカ「」ハッ


アスカ「えっと、返信! 返信しないと……!///」アタフタ

アスカ「え、でも、なんて返せばいいの……!///」アタフタ

アスカ「え、や、ちょっと、どうしよう!///」アタフタ

アスカ「早く返さないと、シンジさんの寝る邪魔になるし!///」アタフタ

アスカ「えーと、えーと…!///」

アスカ「…///」ポチポチ


『ありがとうございます。お休みなさい』


アスカ「色気なさすぎ! え、でも、他に思いつかない!」アセアセ
ガラケー「」ピッ


アスカ「しまっ……送っちゃった!?」


ピピッ


『お休み。あと静かにね』


アスカ「うあっ!////」

アスカ「ひょっとして聞こえてたの…!?/// いやぁっ!///」バッ!


シーツの中に潜り込むアスカ


アスカ「やだ、もう、やだ…!/// どこまで聞かれてたの、アタシ…!///」


シーツをぎゅっとかぶる……

ー 一通り悶絶した後 ー


アスカ「うー……///」ソッ……モゾモゾ


ゆっくりシーツから出てきて弐号機のぬいぐるみに目を向ける


アスカ「……ママ……さっきの聞いてた?//」ソッ……

弐号機のぬいぐるみ「………………」


弐号機のぬいぐるみを取り上げ、膝の上に置くアスカ


アスカ「これ見て、ママ……♪ シンジさんからメールもらったの……//」

弐号機のぬいぐるみ「………………」


アスカ「…今日はね、他にも一杯いい事があったの♪」

アスカ「…皆が優しくしてくれたの」

アスカ「…ネルフに行ってもぶたれなかったの」

アスカ「…多分、アタシが使徒、倒したからだよ」


アスカ「……シンジさん……迎えに来てくれたの……//」

アスカ「……今日も優しかったの……//」

弐号機のぬいぐるみ「………………」


アスカ「……ひょっとしたらね、アタシの事、よく見てくれてるかもしれないの……///」

アスカ「それが嬉しいの……/// ママ…///」ギュッ……

弐号機のぬいぐるみ「………………」

ー 同時刻、レイの家 ー



レイ「」ジャバジャバ、ゴシゴシ……


弁当箱を洗うレイ


レイ「…………」カタッ……


洗った弁当箱をシンクの上に載せる


レイ「…………」


レイ「」クルッ、トコトコ……


レイ「」スッ……
外部端末「」


レイ「…………」カタカタ……
外部端末「」


レイ「…………」
外部端末「」


レイ「…………」カタカタ……
外部端末「」

レイ(……この仕事が終わったら、次は伊吹二尉からの頼まれもの)カタカタ……
外部端末「」

レイ(……それが終わったら、第七使徒戦のデータをまとめて報告書にして)カタカタ……
外部端末「」

レイ(……MAGIのデータの一部も改竄しておく)カタカタ……
外部端末「」

レイ(……弐号機のデータと使徒戦のデータも、多少、改竄が必要)カタカタ……
外部端末「」

レイ(……でないと、あの子の待遇が酷くなる…)カタカタ……
外部端末「」

レイ(……今回はあまり時間をかけずに倒してくれたからそこまでの変更は必要ないと思うけど…)カタカタ……
外部端末「」

レイ(…………)カタカタ……
外部端末「」

レイ(……今思うと、お母さんから教えてもらった裏コード、かなり役に立ってる)カタカタ……
外部端末「」


レイ(…………)カタカタ……
外部端末「」


レイ(……その後は葛城三佐からの頼まれものがある……)カタカタ……
外部端末「」

レイ(……でも……それが終わったら、多分、少し時間が出来る…)カタカタ……
外部端末「」

レイ(……そうしたら…)カタカタ……
外部端末「」


レイ(…………//)カタカタ……
外部端末「」


レイ(……碇君に…買い物に連れていってもらえる…//)カタカタ……
外部端末「」

レイ(…碇君に服を買ってもらえる…//)カタカタ……
外部端末「」

レイ(……ずっと待たせてしまったから、覚えてるといいけど……//)カタカタ……
外部端末「」


レイ(……//)
外部端末「」


レイ(……一緒に食事も出来ると…いいけど…//)カタカタ……
外部端末「」

ー 数日後 ー

ー 学校、休み時間、裏庭 ー


アスカ「それでね、ヒカリ。メアド交換してからね、シンジさんと色々メールしてるんだけど……//」

ヒカリ「うん」

アスカ「なんかうまく返せれないっていうか……// その……// 何を話したらいいかよくわからなくて……//」

ヒカリ「ふーん……」

アスカ「どうしても、なんかその……// 返事が可愛くないの//」モジモジ

ヒカリ「……」

アスカ「どんな事を送ってもいいかも、よくわからないし……//」モジモジ

ヒカリ「……」

アスカ「アタシ、こんなブスでしょ。だからせめて、メールだけでも可愛いくなりたいってそう思って……//」モジモジ

ヒカリ「……アスカは碇君の事、好きなの?」ニコッ

アスカ「え、あ、あの! 違うわ/// そういうのじゃなくて///」

アスカ「ほら、アタシ、シンジさんにお世話になりっぱなしだから、その、メールだけでも可愛い方が喜んでもらえると思って!/// そ、それだけよ///」

ヒカリ「そうなんだ」クスッ

アスカ「そうなの!///」

ヒカリ「ふーん」クスクス

アスカ「ヒカリ、笑わないでよ。こっちは真剣なんだから…//」

ヒカリ「あ、ごめん。……あのね、アスカは可愛いから自信を持って。この前、病院に行った時もカウンセリングでそう言われたんでしょ?」

アスカ「で、でも……// アタシ、本当にそんな事はないから……」シュン……

ヒカリ「ううん。大丈夫だよ。だから、自信を持って」

アスカ「けど…………」

ヒカリ「綾波さんにだって負けてないよ、アスカは。それに一緒の家に住んでるんだから、チャンスも一杯あるよ」

ヒカリ「碇君と綾波さん、そういう関係じゃなかったんでしょ。大丈夫だよ」ニコッ

アスカ「本当に…………?」

ヒカリ「本当だよ」


アスカ「」ハッ

アスカ「あの、ヒカリ!// だから、そういうのじゃないんだってば!//」

ヒカリ「わかってる」クスクス

ー 教室 ー


シンジ「…………」


その光景を二階の窓から眺めるシンジ



シンジ(……良かった。式波、本当にずいぶん明るくなって)

シンジ(……なに話してるかは知らないけど、楽しそうだし……。洞木さんのおかげだね)ニコッ


トウジ「……どないしたんや、センセ。なんか嬉しそうにしとるけども」

ケンスケ「なんかいい事でもあったのか?」

シンジ「あ、うん、ちょっとね」クルッ


窓から目を離して二人の方に向き直るシンジ


シンジ「ケンスケ、トウジ、いつもありがとう」ニコッ

トウジ「へ?」

ケンスケ「は?」

シンジ「僕、最近……学校にいると楽しいんだ」ニコッ

トウジ「…………」

ケンスケ「…………」


トウジ「さよか……」ニコッ

ケンスケ「良かったな、碇……」ニコッ

シンジ「うん……」ニコッ

ー 昼休み、屋上 ー


シンジ「」カタカタ……
ノート型外部端末

レイ「」カタカタ……
ノート型外部端末


並んで仕事する二人……



レイ「……そういえば、碇君」カタカタ……
ノート型外部端末「」

シンジ「」カタカ……ピタッ
ノート型外部端末「」

シンジ(……そういえば? ……綾波が?)

レイ「……」カタカ……ピタッ
ノート型外部端末「」


レイ「」ジッ……

シンジ「あ、ごめん。えと……何?」

レイ「この前までやっていた長い仕事が…多分、今日で終わるの」

シンジ「あっ、そうなの?」

レイ「…ええ」コクッ


レイ「…だから、その後は少しだけ暇が出来ると思う」

シンジ「そうなんだ。良かった。綾波も少し休めるね」

レイ「…ええ」コクッ

レイ「だから、碇君」

シンジ「うん」

レイ「前に約束した服……//」

レイ「一緒にいけると思う…//」

シンジ「……そっか…// ようやくプレゼント出来るんだ……//」

レイ「……///」コクッ……

シンジ「えっと……それなら……。確か明日は、ミサトが仕事で遅くなるって言ってたから、明日の学校終わりでもいい? その日はシンクロテストとかも何もないし」

レイ「…ええ//」コクッ

レイ「大丈夫…//」

シンジ「じゃあ、明日で。楽しみだなあ」

レイ「……うん…///」

ー 午後の授業中 ー


シンジ(そっか……。やっと綾波に服を贈れるんだ……)

シンジ(綾波……どんな服が似合うだろう……//)

シンジ(何でも似合いそうな気はするけど……// でも、やっぱり予め調べといた方がいいかな……)

シンジ(服屋なら、マギにデータが入ってたはずだから、今日調べて……。あと、お金もおろしてこな)

シンジ「あっ!」


ザワッ……


先生「……あー、碇君。…どうかしましたか?」


シンジ「あっ、いえ、あの……何でもありません! すみません!」

先生「…………そうですか」クルッ


先生「…あー、これが世に言うセカンドインパクトです。…その頃、私は根府川に住んでいまして、あの当時は……」ボソボソ


シンジ(しまった……。真希波に銀行のカードごとお金渡しちゃってたんだ……)

シンジ(どうしよう……。父さんに借りる? いや、でも貸してくれるかわからないし……)

シンジ(それに、何に使うのか聞かれたら、微妙に返事に困るし……)

シンジ(どうしよう…………)


スマホ「」ブルブル……


シンジ(ん? メール? 式波から、かな……?)ソッ……

シンジ(……木田さんからだ)


『渡したいものがある。後で電話をしてくれ』


シンジ(…………)

シンジ(……戦自から借りるってのは……出来るのかな……?)

シンジ(……困ったら何でも言ってくれって言われてるし…………)

シンジ(……ダメ元で、一応、聞いてみよう)

ー 百貨店 ー

ー トイレ内 ー


木田「やあ、こんなところに呼び出してすまないな」

シンジ「いえ。学校からだと、そんなに遠くなかったですし」

木田「本来ならこちらから迎えに行くべきなんだが、君には監視がついてるからな。そういう訳にもいかなかった」

シンジ「はい、わかってます。ただ、今日は小林の日だったんでまくのは簡単だったんですけどね」

木田「念には念をさ。実はこの周りにも戦自の連中が変装して待機してたりする。直に会うのは危険が大きいからな」

シンジ「そう…なんですね……」

木田「まあ、そこら辺の話はいいか。長い事トイレにいても怪しまれるからな。早速だがこれを。頼まれていた受信機だ」スッ

シンジ「ありがとうございます。助かります」

木田「要望通り、発信機は葛城三佐の車につけてある。監視カメラのない場所になかなかとめてくれなかったので、つけるのが遅くなってしまった。すまない」

シンジ「いえ、本当に助かります」

木田「使い方は、一緒についているマニュアルを読んでくれ。それほど難しいものじゃないから、君ならすぐに覚えられるだろう」

シンジ「わかりました」

木田「あと、メールでの件だが、とりあえず十万円ほど用意しといた。必要ならまた言ってくれ」スッ

シンジ「すみません……何から何まで……」

木田「情報提供料だと考えれば、それぐらい大した金額じゃないさ。君からもらったこれまでの情報の量は、本来なら二千万円ぐらいはするものだ」

シンジ「そんなに……!?」

木田「ああ、警察だって犯人の目撃情報に二百万だとかそれぐらいの賞金をかけてるだろ? 君がマギのデータまで引き出せるようになったおかげで、当初の予定とは大幅に違って、こちらは嬉しい誤算をあげてるんだよ」

シンジ「……なんか金銭感覚がマヒしてきそうなんですけど…………」

木田「かもしれないな。……まあ、そういう訳だから、君は資金の面に関しては心配しなくていい。君の口座に直接振り込む事は出来ないし、あまりお金を持っていても怪しまれるだろうから、こうして少しずつの手渡しになるだろうが」

シンジ「はい。ありがとうございます」ペコリ

木田「ああ、それと、今日はもう一個渡すものがある。こいつは、プレゼントだな」

シンジ「プレゼント……?」

木田「そう。日本政府のお偉方に頼んで許可してもらった。君には息抜きが必要だと思ってな。これだよ」スッ

シンジ「……これ……何です?」

木田「日本海洋生態系保存研究機構への立ち入り許可証だよ」

シンジ「?」

木田「失われた海洋生物の永久保存と赤い海を元に戻す実験をそこで行っている。その見学が出来るように取り計らってもらったんだ」

シンジ「……あ、えと…………」

木田「そんな難しい事は考えなくていいさ。セカンドインパクト前でいう、水族館だと思ってくれ」

シンジ「水族館、ですか……。僕、本でしか見た事ないです……」

木田「俺も子供の時に一度行ったきりだな。まあ、楽しいところさ。他言無用にしてあるから、ネルフにバレる心配もない。そこでゆっくり羽目を外してくれ」

シンジ「ありがとうございます。今度暇が出来たら行ってみます」ニコッ

木田「そうだな。一緒に友達も誘っていくといい。特に、綾波レイと式波アスカの二人も連れて行くといいだろう。彼女たちにとってもいい息抜きになると思う」

シンジ「大丈夫……なんですか?」

木田「何か聞かれたら、クジで当たったと言っといてくれ。実際、既にwebで応募をしていて、その締め切りも迎えている。もちろん、君の他に当たった人間などいないが」

シンジ「それってズルじゃ……」

木田「大人の世界ってのはそういうものだ。建前は取り繕わなきゃいけないからな」

シンジ「…………」

木田「嫌なら行かなくてもいいが……」

シンジ「いえ、行きます。綾波はちょっとわからないですけど、式波はきっと喜ぶと思いますし」

木田「そうか。君らしい返答だな」ニコッ

シンジ「?」

木田「さて、それじゃあ俺はもう行くよ。その二分後ぐらいに君も出てくれ。それじゃあな」

シンジ「あ、はい。ありがとうございます」ペコリ

ー 家までの帰り道 ー

ー 信号待ち ー


シンジ(……水族館か…………)

シンジ(……きっと式波は喜んでくれると思うけど……)

シンジ(……綾波は……どうなんだろう…………?)

シンジ(……喜んでくれるといいけ)

マリ「こっちを向かずに聞いて。喋るな、振り向くな」ボソッ

シンジ「!? その声、ひょ」

マリ「喋るな。監視にバレる」ボソッ

シンジ「…………」

マリ「信号が変わったら真っ直ぐ歩いて。で、突き当たりを右。曲がったらすぐにダッシュして路地裏に飛び込む。いいね? 良かったら右手を少し動かして」ボソッ

シンジ「…………」ソッ……

マリ「突き当たりを右。曲がったら速攻でダッシュだよ」ボソッ


そして、信号が変わる……


シンジ「」テクテク……
マリ「」テクテク……


シンジ「」スッ……
マリ「」スッ……


シンジ「」ダダダダッ、ズサッ
マリ「」ダダダダッ、ズサッ


一緒に路地裏に隠れる二人……



小林「」テクテク……

小林「あれ?」

小林「……え、あれ? いない? どこに消えたの?」キョロキョロ

小林「……ありゃ、参ったなー……。見失っちゃったか……」

小林「…………」キョロキョロ……

小林「ま……いっかあ。報告書は適当に書いとけばいいし」トコトコ……


そのまま去っていく小林



マリ「……行ったか……。やっぱり、ここも適当だね」ソッ


それを確認してから、目深にかぶっていた帽子を取り、サングラスを外すマリ

マリ「さてと……ネルフのワンコ君。いや、ワンコ君じゃなかったか。ま、呼び方なんかどうだっていいけど」

シンジ「あの、真希波、どうしてここに? 逃げたんじゃなかったの!?」

マリ「声が大きいよ。少し静かにしてもらえるかな? 私は警察だとかさ、そっち方面には間違ってもお世話になる訳にはいかないんだから」

シンジ「あ、うん、ごめん……。えと、それでどうしてここに?」

マリ「これを返しに来たんだよ」スッ……


シンジの財布を差し出すマリ


シンジ「これ……。いや、でも……真希波が困るでしょ。使ってよ」

マリ「……使おうと思ったけど、使えなかったんだよ。だから、いらない。それだけだよ」

シンジ「え……もしかして暗証番号、間違ってた? 3310だよ。ミサトが自分の名前を入れたから間違いないと思うけど……」

マリ「そうじゃなくて!」

シンジ「?」

マリ「あー、もう! いいよ、それは。相変わらず話のわからないやつだね」

シンジ「いや、話がわからないのは真」

マリ「いいから! とにかく返す。使えないものはいらない」

シンジ「いや、でも……。それに、ここから逃げるって言ってたのに、何でまだここに? てっきりもう、どっか田舎にでも逃げたと思ってたんだけど……」

マリ「行ってたよ。今日はこれを返しにきただけ。用が済んだらまた帰る」

シンジ「……お金は大丈夫なの? 住む場所は見つかったの? 働くところとかは?」

マリ「お金は……まあ大丈夫だよ。住む場所も見つかった……と言えば見つかった。働き口は……まだだけど」

シンジ「だったら持っててよ。見つかるまでは食費とか光熱費とか色々かかるだろうし」

マリ「それは大丈夫だからいいよ。どっちもタダだし」

シンジ「タダって……居候か何か?」

マリ「うるさいなあ、もう。いちいち詮索するな。大丈夫って言ったら大丈夫なんだから」

シンジ「良くないよ。心配じゃないか。どうしてるの?」

マリ「」チッ

シンジ「真希波。安心できなきゃ受け取れないよ、これは。だから!」

マリ「いちいち腹が立つやつだなあ、本当に……」ボソッ

シンジ「ねえ、真希波。場所までは聞かないからさ、どうしてるかだけでも教えてよ」

マリ「……山に住んでるから平気だよ。私はサバイバル訓練たとか色々な事もさせられてたからね。ナイフ一本あれば、食事には困らないし、それに光熱費もいらない。近くに湖もあるから水も大丈夫。これでいい?」

シンジ「山って……キャンプ?」

マリ「そんな生っちょろいもんじゃないけど、まあ、そこら辺はどうだっていいや。とにかくこれでいいよね? だから返す」スッ

シンジ「良くないってば。やっぱり持っててよ。色々必要な物もあるだろうし。それに山って……もう少し普通のところに……」

マリ「別に……。ネルフに比べたらとこだって天国だからさ」フイッ……

シンジ「でも、きちんとしたところの方が…………あ、そっか……無理、なんだね……」

マリ「ま、ね……。そういう事。年齢の問題もあるけど、そもそも私は死んだ事になってるからね。身分証すら出せないんだよ」

シンジ「そう……なんだよね。でも……」

マリ「別に君が気にする事ないじゃん。それに私は結構楽しくやってるよ。最低限の生活用品ぐらいは持ってるし」

シンジ「でも、服とかそこら辺はお金がないと……真希波、その服ボロボロだし……」

マリ「こういうファッションなんだよ!」

シンジ「そう…なの…? あ、いや、待てよ……。お金…………」

マリ「?」

シンジ「…………もしかして、真希波って外部端末とか、逃げる時に持ち出してない?」

マリ「……? そりゃまあ、そうだけど。エントリープラグに入れっぱなしだったし、何かに使えるかもって一応持ってきたから。でも、それが何?」

シンジ「そのデータってまだ残ってる?」

マリ「……? 残ってるけど」

シンジ「それ、本当?」

マリ「本当だよ。あれから一回確認してるからさ。でも、それがどうかしたの?」

シンジ「…………だったら…………真希波の住む場所と、お金、何とかなるかもしれない」

マリ「へ?」

ー 十分後、シンジ電話中 ー


シンジ「すみません。ありがとうございます!」

木田『なに、そういう事なら構わないさ。遠慮なく使ってくれ。場所はもう知ってるな?』

シンジ「はい! 前にメモした紙があるので」

木田『了解だ。あと、データの件はすぐには返答できないから、また連絡するよ。ただ問題はないと思うから安心しててくれ。これはその子に直接電話した方がいいかな?』

シンジ「あ、そうですね。えっと……まだ真希波に事情とか説明してないんで、とりあえずまた後でもう一度かけます」

木田『わかった。それと、その子の処遇も検討してもらおうかとも思ってる。これは本人に聞くべき事だから、併せてそれも説明しておいてくれ』

シンジ「はい! ありがとうございます!」

木田『ああ。それじゃあ』ピッ


マリ「あの……ワンコ君? どういう事さ?」

シンジ「真希波、喜んで! マンションに住めるようになるよ! それと、お金も大丈夫だと思うって」

マリ「……どういう事?」

シンジ「ああ、えと……ベタニアベースってさ、消滅前に全データを消してるんだよ。その中には、結構重要なデータもあるらしくって。だから、そのデータを買い取ってもらえるんだ」

マリ「データを? そりゃ、ネルフの機密情報なら売れない事はないだろうけど、でも、買い手のツテがないじゃん」

シンジ「ツテはあるんだ、僕」

マリ「どこに?」

シンジ「戦自と日本政府に」

マリ「は?」

シンジ「それに、マンションも真希波ならオーケーだって言ってくれたし。真希波、行方不明って事になってるから、誰かに聞かれる心配もないから。事情が事情なだけに、真希波が喋る事もないし」

マリ「あのさ、ワンコ君、始めから説明してくんないかな? 君、訳がわからないよ?」

シンジ「え、ああ、ごめん。えっと、少し長くなるからとりあえずマンションで話そう。真希波、この辺歩いても大丈夫?」

マリ「大丈夫は大丈夫だよ。芸能人とは違って、私の顔を知ってる人間なんてここでは限られてるからね。一応、変装もしてきてるし」

マリ「とは言っても、私は念の為、人込みに紛れて行くから。場所だけ教えて」

シンジ「あ、うん。その財布の中に住所をメモした紙が入ってるから……」

マリ「だったらそれを早く言いなよ! はい!」スッ

シンジ「あ、ごめん……」ソッ


財布を受けとるシンジ

ー マンション、部屋内 ー


マリ「なるほどにゃー……戦自、というか日本政府がネルフを接収ね……」

マリ「ま、考えられない話じゃあないけどさ……」

シンジ「うん……。あ、えと……わかってるとは思うけど、この事、絶対に誰にも言わないでね。言ったら、僕も真希波も危な」

マリ「モチのローン。わかってるよ。言う訳ないじゃん。そもそも私はネルフに見つかる訳にはいかないからね」

シンジ「うん……。だと思うけど一応……。あ、それで、戦自の人に真希波の事を頼んでもいい? 処遇を考えてくれるって言ってたから……。絶対、悪いようにはしないと思うから、そっちの方がいいと思うんだ」

マリ「オーケー、オーケー。そりゃ、頼んでいいどころか、お願いしますだね。地獄に仏とはこの事だよ。こんな広いマンションに住んでいいとか言われちゃったしさあ」

シンジ「良かった。じゃあ、早速電話するね。あっ、その前に真希波の携帯番号いい? 直接話した方がいいって言ってたから、番号教えようかと思うんだけど……」

マリ「はい」スッ
ガラケー「」ピッ……

マリ「ワンコ君に渡しとくよ。それごと持ってって」

シンジ「へ?」

マリ「電話するなら向こうでしてって事。私はちょいと疲れちゃったからさ。少し寝させてよ。実は昨日からろくに寝てないんだよねー」

シンジ「あ、うん、ごめん……。じゃあ、借りるね」スッ……

マリ「うん。あ、それと寝室のベッド、借りるから」

シンジ「どうぞ。って言うか、もう真希波の部屋だから、わざわざ言わなくてもいいよ」

マリ「ま、一応ね。断っといた方がいいじゃん?」

シンジ「そう? まあ、いいけど。じゃあ僕、向こうの部屋で電話してくるからゆっくり寝てて」

マリ「うん。じゃねー。お休みー」スクッ、スタスタ……

シンジ「うん。お休み、真希波」

ー 寝室 ー


マリ「」ポテン……


ベッドにうつぶせで寝転がるマリ


マリ「………………」

マリ「……何なんだろ、あの子」ボソッ

マリ「……絶対、頭おかしいよ……」ボソッ

マリ「……私、今まで一回もお礼言ってないのにさあ……」ボソッ

マリ「……前に散々殴ってんのにさあ……」ボソッ

マリ「……何で文句言わないんだよ……」ボソッ

マリ「……何で怒らないのさ……」ボソッ

マリ「……不愉快に思って当然でしょ……」ボソッ

マリ「……怒って当然じゃん……」ボソッ







マリ「……キレて殴れよ。私を…………」ボソッ

マリ「……こんだけ親切にしといてさあ……」ボソッ

マリ「……ずるいじゃんか、そんなの……」ボソッ

マリ「……どうすりゃいいのさ、私……」ボソッ

マリ「……もう引っ込みつかないじゃん……」ボソッ

マリ「……殴れよ、バカワンコ……」ボソッ


マリ「…………」


マリ「……なんで怒らないんだよ……」ボソッ

マリ「……普通、怒るでしょ……。殴りかかるもんでしょ……」ボソッ


マリ「…………」


マリ「……どうすりゃいいのさ、私…………」ボソッ

マリ「……もうこれ以上無理だよ…………」ボソッ

マリ「……これ以上、冷たく出来ないよ、私…………」ボソッ


マリ「……一方的に優しくするなんて卑怯じゃん……」ボソッ

マリ「……せめて、文句の一つぐらい言えよ、バカワンコ…………」ボソッ

マリ「……そうしたら、謝れるじゃん…………」ボソッ

マリ「……ごめんなさいって……言えるじゃん…………」ボソッ



マリ「……ありがとうって…………」ボソッ

マリ「……言えるじゃん…………」ボソッ

マリ「…………気づけよ…………バカワンコ………………」ボソッ





マリ「……っ…………」ツー、ポタッ……ポタッ……



マリ「……ぅっ…………」ポロポロ…………






マリ「……バカは私じゃん…………」ポタポタ…………

ー 数分後 ー


コンコン……

『真希波、もう寝てる?』


ガチャッ……


シンジ「…………」

マリ「」スースー……


ドアに背を向けて寝てるマリ……


シンジ「寝てるの……か。よっぽど疲れてたんだろうな…………」

シンジ「……どうしよう。出来る事なら真希波が起きるまでここにいたいけど……でも、もう帰らないとミサトが戻ってくるだろうし……」

シンジ「……メールだけ残して、帰るしかないか…………」

シンジ「……キャッシュカードはやっぱり置いていった方がいいよね。ここなら気づくかな」ソッ……


寝室の机の上に置くシンジ


シンジ「それじゃ、ごめん、真希波。僕、もう行くから」

シンジ「また今度ね」

ソッ……パタン…………


そっとドアを閉めるシンジ


トタトタ

ガチャッ……バタンッ…………


やがて玄関のドアが閉まる音…………


シーン…………










マリ「……ごめん」ボソッ……

マリ「……でも、どうしていいかわかんないんだよ、私…………」ボソッ……





マリ「……ごめん…………」グシュッ……


そっと悲しげに呟くマリ…………

ー 翌日 ー

ー 学校終わり、ミサト宅 ー


アスカ「用事……ですか……」

シンジ「うん。ごめんね、式波。だから、今日は悪いけど、家事をお願いしていい? ミサトが帰ってくる前には戻ってくるから」

アスカ「あ、いえ、大丈夫です! アタシ、一人でも平気です! もう細かい事、だいぶ覚えましたし!」

シンジ「本当にごめんね。代わりに明日は僕が全部やるから」

アスカ「そんな、気をつかってもらわなくてもいいです。普段、シンジさんの負担が大きいんで、逆にアタシ嬉しいです!」

シンジ「……式波、本当に無理しなくていいよ。そんな嘘つかなくても……」

アスカ「いえ、本当にアタシ嬉しいんです! シンジさんに頼ってもらえるようになったんですから!」ニコッ

シンジ「そう……?」

アスカ「はい!」ニコニコ

シンジ「うん……。じゃあ、今日だけお願い。あ、それとコレ渡しとくね。使い方を書いたマニュアルはこっち」スッ

アスカ「?」

アスカ「……なんですか、コレ……?」

シンジ「受信機。ミサトの車に発信機をつけたから、帰ってくる時、すぐにわかると思う」

アスカ「」

シンジ「それじゃ、行ってくるね」

アスカ「はい! 行ってらっしゃい」ニコッ


ガチャッ、バタンッ……


アスカ「……行ってらっしゃい。かあ……//」

アスカ「……なんかさっきのやりとり、夫婦みたいよね……//」ドキドキ

アスカ「それに、シンジさんに頼ってもらえるようにアタシなれたんだ……//」

アスカ「嬉しい……///」ドキドキ


アスカ「ここで頑張ったら、きっとまた頼ってもらえる……//」

アスカ「それに、もしかしたら……シンジさんに誉めてもらえるかも……///」ドキドキ


モワモワ……

『式波、すごいよ。僕が言う事、何もないよ』

『本当によく頑張ったね。偉いよ♪』ナデナデ


アスカ「……////」ドキドキ



アスカ「よーしっ// いっちょやるかー!//」メラメラ

アスカ「完璧なまでにこなして、絶対誉めてもらうんだから!//」

アスカ「まずは掃除からね! 掃除機、掃除機っと♪」

ー ショッピングモール、入口付近 ー


シンジ「」タタタッ

シンジ「ごめん、綾波。待った? 監視まくのがちょっと大変だったから遅れちゃった」

レイ「碇君…//」パタン……


読んでいた本を閉じる綾波


レイ「ううん…。大丈夫…」

レイ「待ってないから…//」

シンジ「そう? 本当に?」

レイ「」コクッ

シンジ「良かった。それなら早速、行こうか」

レイ「ええ…//」コクン……

ー ショッピングモール内 ー


シンジ「綾波はどんな服がいいの?」トコトコ

レイ「……どんな?」トコトコ

シンジ「うん。カジュアルなのとか、ギャル系とか色々あるみたいだけど……」キョロキョロ……

レイ「……あまり…考えた事ない」

シンジ「そうなの? じゃあ、前はどんな服を着てた?」

レイ「…前は、動きやすい服を」

シンジ「…えっと……Tシャツとかそういうの?」

レイ「」コクッ

シンジ「下は?」

レイ「…………」キョロキョロ……

レイ「…ああいうの」スッ

シンジ「ジーンズか……意外とラフだったんだ」

レイ「……前は、色々と動く事が多かったから」

シンジ「あ、そうなの?」

レイ「…ええ。…料理とか…畑に水をまいたりとか…ジオフロントの中を色々と回ったりとか」

シンジ「そうなんだ。じゃあ今日はそういうのにする?」

レイ「…ううん。最近は家にいる事ばかりだから」

シンジ「うん」

レイ「…落ち着いた服がいい」

シンジ「……えと、普段着じゃないものって事かな? それならスカートとかの方がいいかも……。あっちのお店に行ってみようか」

レイ「ええ…//」コクッ

ー ショッピングモール、服屋 ー


レイ「……」キョロキョロ……

レイ「」カチャカチャ……

レイ「」ジッ……


シンジ(……なんか、すごい真剣に選んでるや……)


シンジ「…どう? 何か気に入ったのあった?」

レイ「」フルフル……

レイ「……まだ」

シンジ「そう。じゃあ別のお店に行く?」

レイ「……ううん。もう少し、見てから」

シンジ「うん。わかった」


レイ「……」キョロキョロ……

レイ「」カチャカチャ……

レイ「」ジッ……


シンジ「…………」


シンジ(ああやって服を選んでるところを見ると、綾波も普通の女の子だなって、なんかホッとする……)

シンジ(ひょっとしたら、なんでもいい、とか言われるかもしれないって思ってたけど……)

シンジ(それだと、どうでも良さげな感じがして嫌だったからそれは良かった……)

シンジ(でも、ちょっと待つ時間が退屈……)

ー マリ(シンジ)のマンション ー


マリ「……にゃー…………」

マリ「……本当に何とかなっちゃったよ…………」

マリ「……データ、六百万円で買い取ってくれるって……」

マリ「……しかも、ここのマンション、ワンコ君用だから、家賃も光熱費もタダなんだよね…………」

マリ「……食費だとか電話代だとか消耗品だとかで月四万円使ったとしても…………」

マリ「十六歳までには充分持つにゃ……」

マリ「十六になればバイトがかなり出来るようになるし……」

マリ「就職はまあ無理か…………。健康保険とか税金とかが絡んでくるのはアウトじゃん……」

マリ「そこら辺も考えてくれるって木田言ってたけど、大丈夫なのかな? まあ、当面は何とかなるからいいけどさ……」

マリ「………………」


マリ「……で、私はこれだけの親切を受けながら、ワンコ君に一言もお礼を言ってないんだよね…………」





マリ「………………」

マリ「……最低だね……私って…………」ゴロン…………


床に寝転がるマリ……

マリ「……どうすりゃいいんだろ…………」

マリ「……謝って、お礼言って、それでハイ終わり? 出来ないよ、今更そんな事…………」

マリ「……ワンコ君、もうほとんど私の命の恩人だし…………」

マリ「……なのに、前にさんざん殴ってる…………」

マリ「……そんな事、今更、出来る訳ないよ…………」

マリ「……それに…………」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


マリ『…………カードはもらっておく。でも、私は君に感謝をしない。さんざん殴っといて、今更ありがとうなんか言えない。言える訳がない……』

苦々しげにシンジを睨み付けるマリ…………

マリ『君はそれでもいいの? 私はこれっぽっちも感謝なんかしないよ』

シンジ『……いいよ。受け取って……。必ず逃げて……。どこか遠いところに…………』


シンジ『真希波、喜んで! マンションに住めるようになるよ! それと、お金も大丈夫だと思うって』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



マリ「……優しすぎだよ、ワンコ君…………」

マリ「……参ったなあ…………」

マリ「……ワンコ君の事、考えると胸がズキズキするじゃん………………」

マリ「……これ、絶対アレだよなあ…………」

マリ「………………」


マリ「……厄介な事になっちゃったにゃ…………」


マリ「……うー…………」ゴロゴロ……


床を転がり回るマリ

マリ「………………」


マリ「…………うー…………」ゴロゴロ……


マリ「………………」


マリ「………………」


マリ「……まずは謝らないとダメだよね…………」


マリ「………………」


マリ「…………よし、決めた」

マリ「あれこれ考えるのは私らしくない。とにかく、謝ろう」

マリ「それでお礼をきちんと言おう。まずはそれからだ、にゃっと!」ムクッ

マリ「…………携帯、携帯」ゴソゴソ

マリ「」ピッ、ピッ……


電話番号の登録画面を呼び出すマリ


マリ「…………」


マリ「…………」


マリ「……何て言おう」


マリ「…………」


マリ「…………」


マリ「…………」


マリ「…………」ゴロン……


マリ「…………うー………………」ゴロゴロ……

ー ショッピングモール、店内 ー

ー 服屋、二軒目 ー



シンジ(……そういえば真希波、あれから大丈夫だったのかな……?)

シンジ(……木田さんに真希波の電話番号は伝えたから、多分大丈夫だと思うけど…………)

シンジ(……一応メールで伝言残しといたんだけど、少し心配だな…………。あれから連絡ないし…………)

シンジ(……もう一回メールしておこうかな)

シンジ「」スッ
スマホ「」スイッ、スイッ……


シンジ(よし。送信っと……)ピッ……

ー マリ(シンジ)のマンション ー


ガラケー「」ピピッ

マリ「にゃ?」

マリ「……メール? ひょっとしてワンコ君から……?」ドキドキ

マリ「」ピッ


『あれからよく寝れた? それと、木田さんから連絡はあった? もし何かあったら教えてね。僕も出来るだけ協力するから』


マリ「うにゃ…………//」

マリ「うー……// なんか文句ぐらい言ってけよ、ワンコ君//」


マリ「でもこれはチャンスだよ。謝ってお礼が言えるにゃ」ドキドキ

マリ「えっと……返信、返信っと」ピッ、ピッ


『うん♪ 全部、ワンコ君のおかげだよ。本当にありがとう! それと、屋上の時は殴ってごめんなさい。反省してるんだ。だから、お詫びに今度家に来て。何も出来ないけど料理は結構得意だから、ワンコ君の為にご馳走用意して待っ』


マリ「無理!/// こんなん送れない!///」

マリ「なんか別の、別の///」

マリ「えーと……///」ピッ、ピッ

ー ショッピングモール、店内 ー

ー 服屋、三軒目 ー


シンジ「……」
スマホ「」ピピッ……


シンジ(……真希波からかな?)ピッ
スマホ「」


『おかげさまでねー。感謝、感謝。色々報告したい事あるし、今度こっちに遊びに来なよ。私、外にあんまり出歩く訳にはいかないから暇だし、話し相手が欲しいんだー。前に殴ったお詫びもしたいしさ。あの時は本当にごめんよ。許して』


シンジ(そっか……。大丈夫だったんだ)ホッ……

シンジ(気にしないで。わかった、それなら今度行くよっと……)ピッ、ピッ
スマホ「」

ー マリ(シンジ)のマンション ー


マリ「まだかな、まだかな……」ドキドキ……

マリ「あんまりにも返事が軽かったから、ひょっとして今度こそ怒っちゃったかな…………」ドキドキ……

マリ「やっぱ恥ずかしいの我慢してちゃんと送るべきだったかな…………」ドキドキ……

マリ「あー、もう! 今更、すごい後悔してるじゃん、私! 何であんな風に送っちゃったんだよ!」

マリ「もう怒られるのは仕方ないからいいけど、無視だけは嫌だよ……やめてよ…………」ドキドキ……

マリ「まだかな……まだかな……」ドキドキ……


ガラケー「」ピピッ


マリ「来たーっ!!//」

マリ「え、でも、何て返ってきた!?」アセアセ
ガラケー「」ピッ


『気にしないで。わかった、それなら今度行くよ』


マリ「やった!//」

マリ「ワンコ君が来るにゃ! 来たら今度こそちゃんとお礼を言って、謝らないと!」

マリ「それで、料理をご馳走して、それからそれから」

マリ「それから……それから…………」

マリ「…………それから……………………?」

マリ「……………………」


マリ「………………」


マリ「…………そっか……」ポツリ

マリ「……今の私が出来る事なんて、それぐらいしかないんだ…………」ボソッ

マリ「……これだけの事、してもらったのにさ…………」

マリ「……それ以外、何にも出来ないんだ…………」


マリ「……あはははは…………ネルフで言われてた通り、本当に役立たずなんだ、私………………」

マリ「……ワンコ君の為に出来る事……それぐらいしかないんだ、私…………」


マリ「……おかしいな……ワンコ君が家に遊びに来る事になって嬉しいはずなのに、なんか悲しくなっちゃったにゃ…………あはははは…………」ツー、ポタッ……ポタッ……


マリ「……ホント…………やんなってきちゃうなあ…………」ポタポタ……


マリ「……悔しいなあ…………」ポタ……ポタ……


マリ「あは……ははは…………」ゴシゴシ……


乾いた笑いを上げながら、懸命に涙を拭き取るマリ…………

ー 買い物に来てから一時間四十分経過 ー


レイ「…碇君、あの……これ……//」スッ……

シンジ「あ、気に入ったのあった?」

レイ「ええ…//」コクッ


大事そうに服を抱えるレイ


シンジ「じゃあ、試着してみる?」

レイ「…………」

レイ「…//」コクッ

シンジ「えっと、あっちだね。着てみて」

レイ「…ええ//」



ー 試着後 ー


レイ「……」ソッ……

シンジ「あっ、よく似合ってるよ、綾波」

レイ「…本当…?//」

シンジ「うん…。なんかいいところのお嬢様みたい…。綾波、そういう服似合うと思う…//」

レイ「…///」

シンジ「どうする? それにする?」

レイ「うん…///」コクッ……

シンジ「じゃあ、また待ってるね。着替え終わったら買いにいこう」

レイ「…ええ///」コクッ……

ー ネルフ本部、発令所 ー


ミサト「ふんふんふーん♪」クルクル


キャスター付きのリクライニングチェアーに乗り、くるくる回るミサト


マヤ「葛城さん。どうしたんですか、そのイス?」

リツコ「ずいぶんいいイスね、ミサト。専用のイス、買ったの?」

ミサト「うーん、ちょっちねー。シンジ君からもらったのー」

マヤ「ああ、それが例のプレゼントなんですね」

ミサト「うん、そう♪ 私、ここで立ってる事とか多いから、足が疲れるだろうってわざわざねー。その気配りが嬉しくってさー♪」

リツコ「しかも、これ、本当にいいイスね。私の使ってるのよりもいいわ」

ミサト「でしょー。これ、ずっと座ってても全然腰が痛くならないの。そういうのを選んだってあいつ言ってたし」

リツコ「あら。羨ましいわね。私なんか、座り仕事が多いから特に。同じものを私も買ってこようかしら……」

マヤ「私も欲しいですね。いくらぐらいだったかってわかります?」

ミサト「それは流石に、シンジ君、教えてくれなかったけどさあ。でも、後でちょっと調べてみたら、十八万円だったわ♪ やっぱそれだけの事はあるわー」

リツコ「十八万円ね……。ちょっと私には手が届かないわね」

マヤ「私もです……。葛城さんが羨ましい……」

ミサト「やっぱ? でも、値段云々よりも、私はその心遣いが何より嬉しくてねー。ホント、プレゼントってのは値段よりも心だってそう思ったわー♪」

マヤ「いい言葉ですね。私も同意です」ニコッ

リツコ「きっと色々と悩んでそれにしたんでしょうね。それを思うと、可愛らしいじゃない」

ミサト「へへー♪」テレッ

マヤ「本当、最近いい事ばかりですね、葛城さん」

ミサト「ま、ねー♪ さーてと、今日は指圧マッサージ受けてから帰るつもりだったけど、折角だし、寄り道せず早目に帰ってあげようかな。その方があいつ喜ぶだろうし」

リツコ「そうね。喜ぶと思うわ」

マヤ「シンジ君、きっと葛城さんの帰りを待ち遠しく思って待ってますよ」ニコッ

ミサト「ええ。きっとね」ニコッ

ー 買い物終了後 ー

ー 外 ー


レイ「……ありがとう、碇君//」テクテク

シンジ「ううん。綾波が喜んでくれたからいいんだ。僕も嬉しいよ」テクテク

レイ「……碇君も、嬉しい?」テクテク

シンジ「うん…//」コクッ

レイ「そう//」テクテク


シンジ「……//」テクテク……

レイ「……///」テクテク……


そのまま、しばらく歩き続ける二人


シンジ「……そういえばさ、綾波」テクテク

レイ「…何?」テクテク

シンジ「今度さ、水族館行く?」テクテク

レイ「……水族館…?」テクテク

シンジ「うん。抽選が当たって見学出来る事になったから……。セカンドインパクト前の生き物がいるらしいんだ。いい息抜きになると思うんだけど……」テクテク

レイ「…………」テクテク

レイ「……行く…//」コクッ

シンジ「良かった。じゃあ、また、時間がある時に教えて。綾波に出来るだけ合わせるから」テクテク

レイ「ええ…//」テクテク


シンジ「……//」テクテク……

レイ「……///」テクテク……


またそのまま歩き続ける二人…………

レイ「……//」テクテク……

シンジ「……//」テクテク


レイ「…あ……」ピタッ

シンジ「?」


急に立ち止まるレイ

カップルが楽しそうにクレープを食べながら歩いているところで目線が止まる

そのすぐ近くにはクレープ屋の行列……


レイ「……」ソッ……

シンジ「……?」


シンジの服の袖を軽く掴むレイ


レイ「……碇君…」

シンジ「何?」

レイ「…あれ」スッ

シンジ「……?」


グレープ屋の行列を指すレイ


レイ「」ジッ


そして、シンジの瞳をじっと見つめる……


シンジ「あ……// えっと……もしかしてクレープ食べたいの?」

レイ「…//」コクッ

シンジ「……そうだね、少し、お腹すいたし。ちょっと食べてこうか」ニコッ

レイ「…ええ…///」コクッ

ー ミサト宅 ー


アスカ「ふーっ……。やっと家の掃除終わったわ……。疲れたー……」

アスカ「洗濯物はもう洗って干してあるから、あとは買い物に行って……」

アスカ「料理はシンジさんじゃないと多分ミサト怒るから……」

アスカ「あ、でも、買い物って何を買ってくればいいのかしら?」

アスカ「……メールでシンジさんに聞こうかな……」

アスカ「……電話は……用事の邪魔になるかもしれないし……」

アスカ「……それにしても、一体、何の用事なのかしら……? やっぱネルフ絡みの事かな……?」

アスカ「……だとしたら、やっぱり電話はやめといた方がいいわよね。メールじゃないと……」

アスカ「」ゴソゴソ

アスカ「」ピッピッ
ガラケー「」


『買い物に行こうかと思います。何を買ってくればいいでしょうか?』


アスカ「……やっぱ可愛くないのよね……」

アスカ「ヒカリの話だと顔文字とかを使えば可愛くなるって言ってたけど……」

アスカ「」ピッ、ピッ
ガラケー「」


『買い物に行こうかと思いますヽ(´▽`)/ 何を買ってくればいいでしょうか(・ω・)』


アスカ「…………」


アスカ「……却下ね」

アスカ「……そもそも敬語とかで可愛い文章ってやっぱ難しいのよね……どうしても事務的になっちゃうから……」

アスカ「ううん。そういう事じゃなくて、用件だけを言うから可愛くないのかな?」

アスカ「何か別の話とかも一緒に混ぜれば可愛くなるかしら……」

アスカ「……今までこんな事、考えた事なかったからわかんないのよね…………」

アスカ「……どうしようかな……何か他にあ」


受信機「」ピー、ピー、ピー


アスカ「」ビクッ!!


アスカ「……なんだ、さっきもらった受信機か……驚かさないでよ」

アスカ「って、これってミサトが近づいて来てるって事じゃないの!?」

アスカ「え、まずい、ミサトが帰ってくるまでには戻ってくるってシンジさん出ていったのに!」

ミサト「それに、ミサト、アタシ一人だと不機嫌になるのに! 何言い出すのかわからないのに!」

アスカ「とりあえず、すぐにシンジさんに連絡しないと!」ピッ、ピッ
ガラケー「」

ー クレープ屋前 ー


シンジ(……なんかカップルばっかりだ……//)ドキドキ

レイ「……///」ドキドキ


行列に並んで待つ二人



スマホ「」プルルル、プルルル……


シンジ「あ、電話……。ごめん、綾波。ちょっと出るね」

レイ「…ええ」コクッ


シンジ「もしもし。あ、式波。どうしたの?」

レイ「……」

シンジ「え! ミサト、もう帰ってきたの?」

レイ「…………」

シンジ「あ、ううん。式波は謝らなくていいよ。悪いの、僕だし!」

レイ「…………」

シンジ「うん、わかった。すぐに帰るから。式波は部屋でじっとしてて。ごめん!」ピッ
スマホ「」


シンジ「ごめん、綾波! 僕……」

レイ「……聞いてた…。碇君、急いで帰ってあげて。でないと、あの子が心配…」

シンジ「うん……。ごめんね! また今度!」タタタッ


行列から離れて走りだすシンジ


レイ「…………」


それをじっと見送るレイ

バイト女「はい、どうぞー。お待たせしました。ありがとうございますー」


レイ「……」ソッ……


クレープを受けとるレイ



レイ「……」トコトコ……

レイ「」カプッ……

レイ「」モグ……モグ……


レイ(……美味しいけど…………)

レイ(……碇君と食べたかった…………)シュン……


レイ(……また明日からやる事があるから…………)

レイ(……当分、碇君と食事は無理……。出来そうにない…………)シュン……


レイ(…………一人での食事…………)

レイ(……もう慣れているはずなのに…………)

レイ(……)シュン……



レイ(……水族館…………)

レイ(……そこなら碇君と食事……出来るかも…………)

レイ(……私がお弁当…作って行けば…………)

レイ(……今度こそ、きっと…………)




レイ(……お弁当…………)

レイ(……作るの久しぶりだから……上手く作れるかどうか自信がない…………)

レイ(……お母さんの味…………出せるか自信がない…………)

レイ(……練習……少しずつでもしてみよう…………)カプッ……

レイ(……)モグ……モグ……

レイ(……)カプッ……

ー 夕方、ミサト宅 ー


ガチャッ!! バタンッ!!

シンジ「ただ今、帰りました!」ハァハァ、ハァハァ……


ミサト「あら、シンちゃん、お帰りー。ずいぶん遅かったわね」

シンジ「す、すみません! 少し出掛けてたので! すぐに夕飯を作りますね!」

ミサト「うーん……。夕飯ねー……」

シンジ「あ、お風呂が先ですか! だったらすぐに沸かしますから!」

ミサト「そういう訳じゃないけど…………」

シンジ「あ、えと、それなら!」

ミサト「シンジ君、少しうるさい。静かにして」

シンジ「ご、ごめんなさい…………」


ミサト「…………」

シンジ「」ビクビク……


ミサト「…………シンジ君」

シンジ「はい!」ビクビク

ミサト「……まあ、掃除だとか、そこら辺はしっかりやってあるみたいだから、私も帰りが遅くなった事についてはそこまでうるさく言う気はないけどさあ」

シンジ「……はい」ビクビク

ミサト「あいつの面倒をしっかり見ろって、私、確かに言ったはずよね? ほったらかしってどういう事かしら? 誰もいない時に、もし、あいつがなんか悪さやポカしたら誰がその後始末をすると思ってんの?」

シンジ「す、すみません……! すみません!」ペコリ!!

ミサト「シンジ君が遊びたい年頃だっていうのは確かに私もわかるんだけど……」

シンジ「」ビクビク

ミサト「せめて言われた事ぐらいはきちんとやんなさいよ、あんた」ジロッ

シンジ「ごめんなさい! ごめんなさい!」ペコペコ!!

ミサト「…………」

シンジ「これからはしっかり式波の面倒を見ますので! ミサトさんがいない時に、外に出掛ける時は式波と一緒に行きますから! 出来るだけ早く帰るようにもします!」ペコペコ!!

ミサト「…………ま、わかればいいのよ。次からは気を付けなさいよ」

シンジ「はい! すみません!!」ペコリ!!

ミサト「じゃあ、シンジ君、とりあえずビールとつまみ。五分以内に用意して」

シンジ「はい!」タタタッ

ー アスカの部屋 ー


アスカ「……ぅっ…………」グシュッ……

アスカ「……アタシ、またシンジさんに迷惑かけて…………」グシュッ、グスッ

アスカ「……アタシがいなければ、シンジさん、きっと怒られる事なかったのに…………」グスッ、ヒック……

アスカ「……何が、シンジさん、誉めてくれるかもなのよ……」グスッ、エグッ

アスカ「……何が、頼られるのが嬉しいなのよ……」グスッ、ヒック

アスカ「……お荷物がまた迷惑かけただけじゃないの……」グスッ、エグッ

アスカ「……バッカじゃないの、アスカ…………」エグッ、ヒック

アスカ「……何を調子に乗ってんのよ、アタシは……」ボロボロ……

ー 深夜、シンジの部屋 ー


シンジ「式波……また泣いてた…………」ボソッ

シンジ「寝不足だって言い張ってたけど……あれだけ目を赤くしてたらわかるよ……。出掛ける前までは普通だったんだから…………」ボソッ

シンジ「多分、ミサトに怒られたんだろうな…………」ボソッ

シンジ「僕のせいだ…………」ボソッ

シンジ「僕が式波に家事とか頼まなければ…………」ボソッ

シンジ「それに、式波も連れていけばこんな事にはならなかったのに…………」ボソッ


シンジ「式波……ごめん…………」ボソッ


シンジ「………………」


シンジ「何やってるんだろう、僕…………」ボソッ

シンジ「綾波を助ける事も出来なければ、式波を守る事も出来てない…………」ボソッ

シンジ「口ばっかで…………」ボソッ

シンジ「何にも出来ていない…………」ボソッ


シンジ「…………辛いや………………」ボソッ


シンジ「心配かけちゃうから……誰にも弱音を吐く事も出来ないし…………」ボソッ

シンジ「……辛いや………………」ボソッ……

シンジ「………………」


シンジ「」スッ……
スマホ「」


シンジ「……真希波…………」スイッ


昼間もらったメールを確認するシンジ


『おかげさまでねー。感謝、感謝。色々報告したい事あるし、今度こっちに遊びに来なよ。私、外にあんまり出歩く訳にはいかないから暇だし、話し相手が欲しいんだー。前に殴ったお詫びもしたいし。あの時は本当にごめんよ。許して』


シンジ「……真希波……暇だって言ってるから……少し話しをするぐらい大丈夫だよね…………」ボソッ

シンジ「……何でもいいから誰かと話せば……少しは気が紛れるかもしれないし…………真希波もそれぐらいなら許してくれるよね…………」ボソッ

シンジ「………………」

シンジ「」ソッ……


スー、パタンッ…………


こっそり外に出るシンジ……

ー 公園 ー


シンジ「起きてるかな……真希波…………」ピッ、ピッ

スマホ「」トゥルルルル、トゥルルルル


コール音が続く……


シンジ「出ないや……。やっぱり寝てるのかな…………」

シンジ「また明日かけ」

マリ『はいはーい! ワンコ君、どったの?』

シンジ「あ、真希波? 大丈夫、起きてた?」

マリ『起きてたよ、なかなか寝れなくてね。ワンコ君こそ、こんな夜中にどうしたのさ?』

シンジ「……あ、いや、その…………」

マリ『?』

シンジ「どうしたって訳じゃないけど、その…………」

マリ『…………』

シンジ「僕…………」

マリ『うん』

シンジ「…………」


マリ『…………』

シンジ「……その…………」


シンジ「……ご、ごめん、やっぱり何でもない。切るね」

マリ『あ、ちょい待ちなよ!』

シンジ「……?」


マリ『…………』

シンジ「…………」


マリ『その……さ……』

シンジ「うん……」


マリ『…………』

シンジ「…………」


マリ『……いや、ごめん……。何でもないよ。じゃね』

シンジ「あ、うん…………」


マリ『…………』

シンジ「…………」

マリ『…………』

シンジ「…………」


マリ『…………』

シンジ「…………」


マリ『……切らないの?』

シンジ「……真希波こそ……」


マリ『…………』

シンジ「…………」


マリ『…………』

シンジ「…………」


マリ『…………』

シンジ「…………」


マリ『…………』

シンジ「…………」


マリ『…………ワンコ君』

シンジ「……何?」


マリ『…………』

シンジ「……?」


マリ『…………家にはいつ来る予定なの?』

シンジ「……わからない。ミサト……僕が住んでる家の人だけど、その人が遅く帰って来る時じゃないと……」

マリ『……そう』

シンジ「……うん」

マリ『出来るだけ早く来なよ。こっちは暇なんだから』

シンジ「うん。わかってる」

マリ『……わかってないよ』

シンジ「大丈夫だよ。本当に早目に行くから」

マリ『……そんなんじゃないよ。……まあ、いいけど』

シンジ「?」

マリ『……必ず来なよ』

シンジ「うん」

マリ『……待ってるからね』

シンジ「うん」

マリ『…………』

シンジ「…………」

マリ『……ごめん』

シンジ「何が?」

マリ『……別に』

シンジ「?」

マリ『来たら色々と話を聞かせなよ』

シンジ「うん。真希波の方も聞かせてよ」

マリ『私のは面白くないよ。ろくな思い出なんかないし』

シンジ「……僕もないよ」

マリ『ワンコ君のは面白くなくてもいいんだよ。……思い出すと辛いようなら聞かないけどさ』

シンジ「…………」

マリ『……愚痴とか悪口とかも聞くよ。相談にも乗るよ。だから聞かせなよ』

シンジ「…………あ……」

マリ『わかった?』

シンジ「……うん……」コクッ

シンジ「ありがとう、真希波。少しだけ気持ちが楽になったよ」ニコッ……

マリ『……っ…………ごめん、もう切る。眠い』

シンジ「え? あ、うん……」

マリ『じゃね、ワンコ君』ピッ

ツー、ツー、ツー…………


シンジ「………………」

シンジ「…………切られちゃったか……」

シンジ「……でも、真希波と話せて良かった……本当にずいぶん楽になった……」

シンジ「……電話して良かった…………」


少しだけ笑顔を見せるシンジ…………

ー マリ(シンジ)のマンション ー


マリ「……っ…………」ツー、ポタッ……ポタッ……

マリ「はは、やだなあ…………私、また泣いてるや…………」ポロポロ……

マリ「ネルフにいた頃でさえ、滅多に泣かなかったのになあ…………」ポタポタ……

マリ「最近、涙もろいよ……ダメだな、私…………」ゴシゴシ……

マリ「……悲しかったり嬉しかったり辛かったりで、頭ん中、ごっちゃごちゃだよ…………」グスッ……

マリ「……何であんな言い方しか出来ないんだろ、私…………」グシュッ……

マリ「向こうに長く居すぎたせいかなあ…………」グスッ、エグッ……

マリ「だとしたら悲しいよ、辛いよ…………」ポロポロ、ポタポタ……

マリ「……でも、電話かかってきて嬉しいよ…………」ボロボロ、ポタポタ……

マリ「……気持ちが楽になったって言われて嬉しいよ…………」エグッ、ヒック…………


マリ「……私にも役に立てる事……あったのが嬉しいよ…………」ボロボロ、ボタボタ……


ベッドの上で、携帯を握りしめながら泣くマリ…………

ー 数日後 ネルフ本部、実験場 ー

ー エヴァ相互互換実験 ー


零号機

搭乗者 碇シンジ


シンクロ率、54.62%

シンジ『……綾波の……匂いがする』



零号機

搭乗者 式波・アスカ・ラングレー


シュウウ……

シンクロせず

アスカ『……ダメ…なのね……アタシだと…………』



初号機

搭乗者 綾波レイ


シンクロ率、72.14%

レイ『……碇君の匂いがする』



初号機

搭乗者 式波・アスカ・ラングレー


シンクロ率、36.85%

アスカ『……これ……シンジさんの…………匂い…………?』



弐号機

搭乗者 綾波レイ


シンクロ率、10.39%

起動数値ギリギリ

レイ『…………このEVA……少し…………』

リツコ「どうしたの、レイ?」

レイ『…………いえ、何でもありません……』

リツコ「そう」



弐号機

搭乗者 碇シンジ


シンクロ率、42.41%

シンジ『……何か違う……何だろ、これ…………。落ち着かない…………?』

リツコ「なかなか興味深い結果が出たわね」

ミサト「三機とも乗れるのはやっぱりシンジ君とレイかあ……。特にシンジ君はどの機体でもシンクロ率がそこそこ安定してるわね」

リツコ「そうね。レイは零号機、初号機との相性はいいけど、弐号機だと急にシンクロ率が極端に落ちるし……」

ミサト「で、予想通り、あの落ちこぼれは弐号機以外どれも最下位の役立たずだったという訳ね。何でアイツまでこの実験に参加させてるの?」

リツコ「司令からの命令よ。司令の方は国連や各国への報告書が必要なんじゃないかしら? タダでここは運営されている訳ではないのだから、予算絡みで色々とあるんでしょうね」

ミサト「うちはこれだけ万全ですよってアピールする必要があるって事か……。面倒ねー」

リツコ「仕方ないわ。人はエヴァのみで生きている訳ではないのだから。明日を生きる為には、パンも必要という事よ」

ミサト「餓死者がまた増えたその影響かしらね。目先のパンより何日後かの剣が必要だって時もあるっていうのに」ブツブツ

リツコ「追加予算もあれ以降、来てないのよね?」

ミサト「ええ、そうよ。どの国も自国のエゴから出し惜しんでいるんじゃないの。ここが人類の最後の砦だって事、わかってるのかしら、あいつら」

リツコ「嘆かわしい事ね。私たちが一番危険な場所にいるというのに、安全な場所でぬくぬくしている人間の顔色をこうして伺わなければいけないなんて」

ミサト「ホントよー、やってられないわ、全く」ブツブツ

リツコ「自分で選んだ道とはいえ、そう思うのも仕方ないわね。私もよ」

ミサト「一度使徒に首都でも潰されればいいのよ。そうすれば多少はここの重要性がわかるでしょうに」ブツブツ

ミサト「ところで、今日はマヤはどうしたの? 一緒にいないなんて珍しいわね」

リツコ「マヤは休憩室よ。この前借りてきた映画のコピーが上手くいかなかったからってもう一度チャレンジしてるわ」

ミサト「ああ、そういえば、最近、また新しいコピーガードが出てきたんだっけ? って事はまたマギにプロテクト解除させてるんだ」

リツコ「ええ、そうよ。まあ、そんなにはかからないでしょうね。いくら技術が進んできているとはいえ、未だマギの上をいくものは存在しないのだから」

ミサト「ありがたい存在よねー。お店の検索からハッキングまで何でもやってくれるんだから」

リツコ「よく誤作動を起こす事を除けば、ね。ホント、母さんが作ったものらしいわ」

ミサト「あ……うん…………」

ー 休憩室 ー


加持「やあ、どうだい。一緒にお茶でも」

マヤ「……あの、結構です」ササッ……
ノート型外部端末「」


端末を抱えながら、体をずらして避けるマヤ


加持「つれないなあ、一回デートに付き合ってくれてもいいんじゃないのかい」

マヤ「いえ……あの……やめて下さい。葛城さんに言いつけますよ」ササッ

加持「その前にその唇を塞ぐ……」スッ……

マヤ「っ…///」ビクッ


加持「」チュッ……レロ……

マヤ「あ……// や……」


長く濃厚なキス…………

マヤ「や……」


マヤ「ん…………」

ガタン……


手から落ちる外部端末…………


マヤ「……ん…………」スッ……

加持「」ソッ……


どけようとする手を掴み、離さない加持…………


マヤ「や…………」ポタッ……


目から落ちる一滴の涙…………


加持「」スッ……


ようやく離れる加持…………


マヤ「ぃ……!//」

マヤ「!」バシンッ!!

加持「っ……!」


そして、平手打ちを食らう


マヤ「ぅっ……!」タタタッ……


涙を流して走り去っていくマヤ……



加持「……やれやれ。ずいぶんとウブなもんだ」スッ……


赤くなった頬を軽く触る加持


加持「……ま、最初は仕方がないか」

加持「……しかし、この顔じゃ今日の葛城とのデートは無理だな。明日にしてもらうか」クルッ

加持「……他にやる事もあるしな」スタスタ……


そして、休憩室から去っていく

ー 数分後 ー

ー ネルフ本部、実験場 ー


ピピッ

リツコ「あら、メール?」ピッ
スマホ「」


ピピッ

ミサト「あれ? 私も?」ピッ
スマホ「」


リツコ「……あら」

ミサト「あ…………」


リツコ「……どうしたの、ミサト?」

ミサト「……うん。加持君から。特命で仕事が入ったから、これから少し忙しくなりそうだって……。今日のデートも明日にしたいって言ってきてるし……。残念だわ……」

リツコ「そうなの……。まあ、でも仕方がないわね」

ミサト「ん……まあね。今までがちょっとアレ過ぎた訳だし……」

ミサト「でも、その代わり明日はずっと付き合ってくれるっていうから、 まだいいけどね」ハァ……

ミサト「それで、リツコは誰からだったの?」

リツコ「私の方はマヤからよ。ちょっと体調を崩したみたいだから、早退するって」

ミサト「大丈夫なの?」

リツコ「大した事ではないですけど大事をとって、とはあるわね。そういうところはしっかりしているから、大丈夫だとは思うけど……」

ミサト「後で家まで訪ねてみる?」

リツコ「そこまでしたら、逆に気を使われそうで悪いわ。やめておきましょう」

ミサト「ま、それもそうね」

リツコ「きっと明日には普通に出てくると思うし。さ、それじゃ実験を終わりにしましょうか」

ミサト「ええ」スクッ

ー 実験終了後 ー

ー 帰宅途中 ー


シンジ「」テクテク……

アスカ「」テクテク……


並んで歩く二人


シンジ「……今日の実験……意外と長引いたね」

アスカ「はい……」

シンジ「……でも、別のエヴァに乗ったの初めてだから、少し不思議な感じだったな……」

アスカ「そうですね……」

シンジ「……弐号機って……乗っててちょっと変わった感じがしたんだけど……式波はどうだった? 初号機に乗ってみて」

アスカ「アタシは特に……。でも、初号機は少し温かい感じがしました」

シンジ「そういえば、弐号機だけはなんか冷たかった気がする…………。温度、調整されてて全く同じはずなのに……」

アスカ「そうですか……」

シンジ「あ、うん…………」

アスカ「…………」


シンジ「」テクテク……

アスカ「」テクテク……


シンジ(やっぱり……あれからここ最近、式波、ずっと元気がないや…………)

シンジ(……式波からのメールもずいぶん減ってるし…………)

シンジ(……代わりに真希波からのメールが増えてるんだけど…………)

シンジ(……式波……なんとか元気づけてあげたいな…………)

シンジ(……真希波も、早く家に来なよって催促がかかってるし…………)


スマホ「」ピピピッ


シンジ(……メールだ。また真希波かな?)ピッ

シンジ「…………」ピッ、ピッ……



アスカ「…………」


少しだけシンジを見るアスカ……

アスカ(……シンジさん、最近よくメールしてる…………)

アスカ(……誰からなんだろう…………)

アスカ(……聞きたいけど…綾波さんって言われそうで怖い…………)

アスカ(……迷惑ばかりかけてるアタシ……助けてもらったっていう綾波さん…………どっちを取るかなんて決まりきってるわよね…………)

アスカ(……怖くて……聞けない…………)

アスカ(……最近、またお腹が痛む…………)

アスカ(…………胸が……苦しい…………)

シンジ「」ピッ。スッ……
スマホ「」


スマホをしまうシンジ……


シンジ「……ミサトさん、今日の仕事がずれ込んだから、明日、かなり遅くなるって。多分、十二時を越えるって言ってる」テクテク

アスカ「あ、そうなんですか!」パアッ

シンジ「式波、監視」ボソッ

アスカ「あ、えっと…………。すごい残念です」テクテク

シンジ「ホントだね。淋しいよ」テクテク

アスカ「はい♪」テクテク


シンジ「…………」テクテク

アスカ「……♪」テクテク

シンジ(……明日なら多分、真希波のところに遊びに行けるんだけど)

シンジ(……でも、この前の事もあるし、やっぱり僕一人で行かない方がいいよね)

シンジ(……それに、女の子の家に一人で遊びに行くのはちょっと気が引けるし…………)

シンジ(……だけど、式波を連れていくのはどうなんだろう…………)

シンジ(……式波ならまず間違いなく真希波の事を黙っておいてくれると思うから、その点は心配ないんだけど……)

シンジ(……でも、ミサトがこれだけ遅くなるってそうないから、式波もきっと羽目を外したいと思うんだよね……。僕の都合に付き合わすのもあれだし…………)


シンジ(……真希波、結構明るいから式波といい友達になれるとは思うんだけど…………)

シンジ(……真希波にとっても、いい友達が出来ると思うんだけど…………)


シンジ(……でも、また僕の都合で式波を振り回したくはないし…………)

シンジ(……どうしよう…………)

アスカ(……明日、シンジさんと長く一緒にいられる……♪//)

アスカ(……料理はアタシが作って……//)

アスカ(……それで、掃除とかも出来るだけアタシが頑張って……//)

アスカ(……そうすればシンジさん、楽が出来るわよね…………//)

アスカ(……少しだけ、役に立てるわよね、アタシ……//)

アスカ(……嬉しい……///)

アスカ(……それに……シンジさんと二人きりになれるし……///)ドキドキ

シンジ「その……式波、一つ聞いていい?」

アスカ「あ、はい!// 何ですか?」

シンジ「式波は、明日どうするつもり? どこか友達と遊びに行く?」

アスカ「いえ、そんな。家にずっといます! それで家事をやります!」

シンジ「あ、えっと……本当は?」ヒソヒソ

アスカ「あ、いえ……本当にそうです」ヒソヒソ

シンジ「無理しなくていいよ。式波だってこのチャンスに遊びに行きたいでしょ」ヒソヒソ

アスカ「いえ、本当にそんな事ないです。アタシ、普段シンジさんに頼りきりなので、こういう時こそ少しでも役に立ちたいんです」ヒソヒソ

シンジ「でも、それじゃ、式波が……」ヒソヒソ

アスカ「アタシがしたいんです。させて下さい」ヒソヒソ

シンジ「だけど……」ヒソヒソ

アスカ「いえ。させて下さい」ヒソヒソ

シンジ「えと…………」

シンジ(……どうしよう。困ったな…………)


少し悩むシンジ……

シンジ(……やっぱり家で家事をしてるよりは、僕に付き合ってもらった方がまだいいよね……)

シンジ(……そうだね、そうしよう。それに、そうしないと、式波、家事を全部やるとか言い出しかねないし)

シンジ(……折角、羽目を外せるのに家でずっと家事をしてるなんて、いくらなんでもあんまりだよね)

シンジ(……うん。そうしよ)


シンジ「……あのさ、式波。良かったら明日一日、僕に付き合ってくれない? 行きたいところがあるんだけど……」ヒソヒソ

アスカ「い…!///」

シンジ「あ……嫌?」ヒソヒソ

アスカ「いえ、嫌じゃないです!/// 全然、嫌じゃないです!///」

シンジ「式波。監視」ヒソヒソ

アスカ「あ……//」

アスカ「あの、大丈夫です/// どこでも付き合います///」ヒソヒソ

シンジ「じゃあ、明日、学校終わったら」ヒソヒソ

アスカ「はい///」ヒソヒソ

ー マリ(シンジ)のマンション ー


マリ「はぁ…………」

マリ「退屈だにゃ…………」ゴロゴロ

マリ「外出はあまりしない方がいいって木田から言われてるし。かといってテレビ見るぐらいしかする事ないってどうなの」

マリ「このままだと、デブになるにゃ……」

マリ「うー、体、動かしたいよー!」ゴロゴロ

マリ「暇だよー!」ゴロゴロ

マリ「ワンコ君、いつになったら来るのさ! 来るって約束したじゃんかー!」ゴロゴロ

マリ「……うー…………」ゴロゴロ……

マリ「………………」


マリ「…………待ってんのにさあ……」ボソッ


ガラケー「」ピピッ


マリ「!」ガバッ

マリ「ひょっとして、ワンコ君!?」ピッ
ガラケー「」


『遅くなってごめん。明日、ちょっと遅いけど午後六時ぐらいから遊びに行くね』


マリ「わお!//」

マリ「ついにワンコ君が家に来るにゃ♪」

マリ「私、太ってないよね? 大丈夫だよね……?//」

マリ「……///」ドキドキ


マリ「えっと、明日の用意をしなきゃ……//」ドキドキ

マリ「料理は何にしよう?// やっぱ定番の肉じゃがかにゃ?// 男の人はそれが一番喜ぶってどっかで聞いたような気がするし……//」ドキドキ

マリ「それで、食後のデザートも作って……// あ、でも、ケーキやクッキーとかよりスナック菓子の方がワンコ君喜んでくれるかにゃ……?//」ドキドキ

マリ「あと、映画かなんかレンタルしてそれを一緒に……// いや、ダメじゃん。私、身分証がない」

マリ「あ、その前に服、服!」ドタドタ

ー 夕方 ー

ー アスカの部屋 ー


アスカ「//」ボーッ……

アスカ「明日一日、付き合って欲しいって言われちゃった……//」

アスカ「これって…もしかしてデートに誘われたって事……?//」ドキドキ

アスカ「ううん。シンジさん、優しいから私に気を使っただけかもしれないし……」プルプル


首をふるアスカ


アスカ「だから、期待しちゃダメよ、アスカ……//」ドキドキ

アスカ「ドキドキしちゃダメだってば……//」ドキドキ

アスカ「…落ち着いて、落ち着いて…///」ドキドキ


アスカ「//」スーハー、スーハー……


アスカ「……えっと、とにかく明日はおめかしして行かなくちゃ……///」ドキドキ

アスカ「髮……どうしよう……?// ほどいていった方が可愛いかな?//」パサッ……

アスカ「ポニーテールとか……//」シュル……

アスカ「カチューシャとか……//」スッ……

アスカ「どうしよう……?// どれが一番気に入ってくれるかな……//」

アスカ「あ、その前に、服、服!」ドタドタ

ー 夜 ー

ー シンジの部屋 ー


シンジ「明日は真希波の家か……」

シンジ「暇だって行ってたから、何か持ってった方がいいかな?」

シンジ「本とか……DVDとか……」

シンジ「僕、何か持ってったっけ?」ゴソゴソ

シンジ「」ゴソゴソ、ガサガサ

シンジ「……ないよね、そりゃ」

シンジ「……寄る前に何か買ってこう…………」

シンジ「……時間、ちょっと多目に取ってあるし大丈夫だよね、きっと」


シンジ「…………」


シンジ「……式波にも……明日は楽しんでもらいたいなあ……」

シンジ「でも……どうすれば喜んでもらえるかな……」

シンジ「……女の子が喜びそうな事なんて、僕、考えた事ないからわかんないや…………」


シンジ「………………」


シンジ「……結局、プレゼントぐらいしか思いつかないんだよね、僕…………」ボソッ

シンジ「知らず知らずの内に……ミサトとかに影響されてそうで、嫌だな…………」ボソッ……

ー 深夜 レイの家 ー


レイ「」スッ……


台所に立って包丁を取り出すレイ


レイ「」トントントントントン……


ニンジンやピーマンを刻んでいく……


レイ「」トントント……

レイ「っ……!」


失敗して指を切るレイ…………


レイ「……絆創膏……。貼らないと……」

レイ「」ゴソゴソ


レイ「やっぱり…久しぶりだから……」

レイ「もう少し、練習が必要…………」


レイ「」ソッ……ペタッ


絆創膏を指に貼るレイ


レイ「料理、上手くなったら……//」

レイ「碇君と一緒に…水族館に……//」


レイ「…………//」スッ……


再び包丁を握るレイ

ー 翌日 ー

ー 学校 ー


シンジ「あれ? 綾波、どうしたの。その手?」

レイ「……これ…?」

シンジ「うん。絆創膏貼ってるけど……何してたの?」

レイ「……秘密。…もう少し、上手くなったら話す…//」

シンジ「…………」


シンジ「うん……」ニコッ……




ー 一方、アスカ ー


アスカ「…………///」ドキドキ

アスカ(……今日はシンジさんとお出かけ// ……今日はシンジさんとお出かけ//)ドキドキ、ドキドキ

ヒカリ「?」

ヒカリ「どうしたの、アスカ。何だかボーッとしてるけど……。それにちょっと顔赤いし」

アスカ「ヒカリ、ちょっと大事な話があるんだけど、次の休み時間に聞いてくれる//」ドキドキ

ヒカリ「え? あ、うん…………」


何だかよくわからないままうなずくヒカリ

ー 休み時間、裏庭 ー


ヒカリ「え、それじゃ今日、碇君とデートなの?」

アスカ「ち、違うの!/// デートじゃなくて、その……!/// 行きたいところがあるから、今日一日それに付き合って欲しいって言われただけで…………///」

ヒカリ「そういうのをデートって言うんじゃないの?」

アスカ「う、ううん、きっと違うってば!/// アタシなんかデートに誘われる訳ないし!///」

ヒカリ「でも、それ以外考えられないんだけど……。ちなみにどこに行く予定なの?」

アスカ「朝、来る時に聞いたら、まずショッピングモールで買い物って……///」

ヒカリ「ちょっと郊外に行ったところにある、あのモールだよね? 映画館とかと一緒になってる」

アスカ「うん……/// 多分……///」

ヒカリ「それもう、間違いなくデートだよ。買い物して、映画見てって流れに決まってるもん。デートの定番じゃない」ニコッ

アスカ「そう…なの…?/// 本当に…?///」ドキドキ

ヒカリ「うん。良かったね、アスカ」ニコッ

アスカ「う、うん…////」カアッ……

ー 学校終わり、ミサト宅 ー


シンジ「式波ー、お風呂場の掃除は終わったよー」

アスカ「こっちもリビングの掃除は終わりました!」

シンジ「本当に? ずいぶん早かったね。手伝おうと思ってたんだけど……」トコトコ

アスカ「はい! めちゃめちゃ頑張りました!」

シンジ「あ、うん……。えと……じゃあ、あとは乾燥機が終わるのを待ってそれをたためば……」

アスカ「行けます!」

シンジ「うん」

アスカ「あの、シンジさん。アタシ、出掛ける用意してきてもいいですか?」ドキドキ

シンジ「いいよ。僕も出掛ける用意しなきゃいけないし」

アスカ「じゃあ、アタシ部屋に行くので」ドキドキ

シンジ「うん」

ー アスカの部屋 ー


アスカ「服はやっぱこれにしよう//」モゾモゾ

アスカ「キャミとかちょっと恥ずかしいけど……// でも、これが一番可愛いし……//」

アスカ「あと、髪を綺麗に整えて……//」シャッ、シャッ……

アスカ「香水、香水……//」シュッ……

アスカ「リップつけて……//」ヌリヌリ……

アスカ「……これで、前よりはちょっとはマシよね……//」ドキドキ


アスカ「ヒカリの言う通り、ブラシとかリップとか鏡とか買っておいて良かった……//」

アスカ「物とか持ってると……壊される事多かったから出来るだけ持たないようにしてたんだけど……」

アスカ「ここだと、ミサト、絶対に部屋に入って来ないからそれだけは安心出来るし……」


アスカ「えっと……あとは……どうしよう…//」キョロキョロ……

アスカ「イヤリング……は流石にあざといわよね……//」

アスカ「チョーカーとかも服と合わないし……//」

アスカ「これぐらいに抑えといた方がいいかも……//」

アスカ「……シンジさん、気付いてくれるかな……//」ドキドキ

ー 数十分後 ー


ピーッ、ピーッ、ピーッ……


シンジ「乾燥機、終わったね……」トコトコ


ガチャッ

アスカ「乾燥機、終わりました?//」ソッ……

シンジ「あ、うん」クルッ


シンジ「あ…//」ドキッ

アスカ「///」ドキドキ


アスカ「あ、あの…アタシ、変じゃないですか?///」ドキドキ

シンジ「あ、ううん、えっとその……//」

アスカ「……///」ドキドキ

シンジ「可愛い……と思うよ//」ドキドキ

アスカ「////」カアッ……


シンジ「あの、洗濯物、たたむから僕//」

アスカ「あ、アタシもたたみます///」



シンジ「……//」ソッ……パサッ

アスカ「……//」ソッ……パサッ


何となく背を向けて洗濯物をたたむ二人……

ー 外出後 ー

ー ショッピングモール ー


シンジ「尾行。結構、簡単にまけて良かったね」

アスカ「はい♪」

シンジ「それじゃ、ちょっと買い物に付き合ってくれる?」

アスカ「はい♪//」

シンジ「えっと……とりあえず最初は本屋かな……」トコトコ

アスカ「はい♪//」テクテク

ー ショッピングモール、本屋 ー


シンジ「本屋に来るの、本当に久しぶりだ……。えっと……式波は何かお勧めの本とかってある?」

アスカ「あ、あの……アタシ、あまり本は読まないので……」

シンジ「そっか……。じゃあ映画とかはどう? 何かお勧めのものある?」

アスカ「映画もあまり……」

シンジ「そうなの? じゃあミサトがいて、部屋に引き込もってる時って、普段、何してるの?」

アスカ「大概は聞き耳を立ててるか……。たまにネットもしてますけど……」

シンジ「それ……退屈じゃない?」

アスカ「そうでもないです。心配でそれどころじゃないですし……」

シンジ「あ、ごめん……。まだ怖いんだ…………。そうだよね……」

アスカ「いえ、その、そういうのじゃないんです。アタシが心配なのは……その……シンジさんの方なんで…………」

シンジ「僕?」

アスカ「ミサトに怒られるんじゃないかって……だから……」

シンジ「……僕なら大丈夫だよ。怒られたって大した事ないし。平気だよ」

アスカ「…………」

アスカ(……そんな訳ないのに…………)シュン……

アスカ「……ごめんなさい…………。アタシのせいでシンジさんに迷惑ばかりかけて…………」シュン……

シンジ「ううん。そんな事ないよ。式波が来て、僕、すごく楽になったんだから。それに、式波のおかげでずいぶん助かってるんだよ」

アスカ「……本当…ですか…?」

シンジ「うん」

アスカ「……嘘じゃ…ないですか?」

シンジ「うん」

アスカ「……アタシ、迷惑ばかりかけてませんか……?」

シンジ「ううん。本当の本当に助かってるよ。式波が来て迷惑に思った事なんて一度もないし、色々、話とかも出来るから楽しいんだ」

アスカ「…………」

アスカ「……そっかあ……アタシ、少しは役に立ててるんですね……//」

シンジ「うん」ニコッ

ー 買い物終了後 ー

ー ショッピングモール内 ー


シンジ「映画を二本に本が三冊……。これだけ買えばとりあえずはいいかな。暇が結構潰れると思うし」テクテク

アスカ(……暇?)テクテク

アスカ(……シンジさん、暇なんてあるのかしら?)テクテク

シンジ「式波、ありがとう。選ぶの手伝ってもらって」テクテク

アスカ「あ、いえ、アタシも楽しかったですし//」テクテク

シンジ「式波の方は何か買いたい物とかないの? あれば付き合うよ。この後、予定が入ってるから五時半ぐらいまでだけど」テクテク

アスカ「いえ、アタシは特にないですから」テクテク

シンジ「そう? じゃあまだ時間あるし、ちょっと雑貨屋とかそこら辺寄ってみる?」テクテク

アスカ「あ、はい!//」テクテク

ー 雑貨屋 ー


シンジ「すごいね、色々な物が置いてある」キョロキョロ……

アスカ「あっちに自転車まで……。ギターまである。なんか懐かしい……」

シンジ「……懐かしいって……昔、弾いてたの?」

アスカ「はい。家に誰も使ってない古いギターがあったので。おもちゃとかなかったですから、代わりにギターを弾いてました。独学なんで、ヘタクソですけど」

シンジ「そうなんだ……」

アスカ「シンジさんは、何か楽器とかしてました?」

シンジ「僕はチェロを習わされてた。今でも持ってるよ。押し入れの中にずっと入りっぱなしだけど」

アスカ「それ、一度聴いてみたいです」

シンジ「式波のギターもね。今度、一緒に演奏してみる?」

アスカ「え、でも、アタシはヘタなんで……」

シンジ「僕も上手いわけじゃないよ。才能なんてなかったし、好きでやってた訳でもなかったからさ……。でも、誰かと一緒に演奏出来るっていうのはいい事だと思う」

アスカ「……じゃあ、ミサトがいない時に、いつか……//」

シンジ「そうだね」ニコッ

アスカ「はい//」

シンジ「それにしても、本当に色々な物があるなあ……。シルバーアクセサリーまであるし……」キョロキョロ……

アスカ「あ、あっちの方にぬいぐるみとかある。ちょっと見てきていいですか?」

シンジ「いいよ。じゃあ、僕、もうちょっとここらへん見てから行くね」

アスカ「はい」タタタッ



ー 数分後 ー


シンジ「あれ……式波、どこ行ったんだろ?」キョロキョロ……

シンジ「さっきぬいぐるみの方を見てくるってこっちに行ったはずだけど……」キョロキョロ……

シンジ「あ、いた」

シンジ「……?」



アスカ「これ、可愛い……♪」ソッ……


黒色の猫耳帽子を手にとって眺めるアスカ

その姿を発見するシンジ



シンジ「…………」

シンジ(……気に入ったのかな……?)


シンジ「…………」


少し考えるシンジ

店員「ありがとうございましたー」


シンジ「」タタタッ

シンジ「ごめん、式波。お待たせ」

アスカ「あ、いいえ、全然待ってませんから。それより、何を買ってきたんですか?」

シンジ「うん。これ」ガサゴソ……

シンジ「」ジャン

アスカ「あ……// それ……//」

シンジ「その帽子、欲しそうだったからさ。買い物に付き合ってくれたお礼に」

アスカ「////」カアッ……

アスカ「あ、あの……ありがとうございます///」ドキドキ

シンジ「うん。ちょっとかぶってみて」

アスカ「///」スッ……ポフッ……

アスカ「あの……// どうですか?///」ドキドキ

シンジ「あ……えと、その……式波に……似合ってると思うよ//」

アスカ「////」カアッ……

シンジ「でも、キャミにそれは流石に変だね」クスッ

アスカ「あ、や、だって!/// これは今シンジさんがかぶってみてって!///」アセアセ

シンジ「ごめん、ごめん。でも、本当に似合ってるよ」

アスカ「…そうですか…?///」ソッ……


猫耳帽子をそっと外すアスカ


シンジ「うん。よく似合ってたと思う」

アスカ「あの…ありがとうございます///」ギュッ……


大事そうにそれを抱えるアスカ

シンジ「じゃあそろそろ行こうか」

アスカ「あ、はい!//」

シンジ「ええと……多分、こっちの出口からでいいのかな?」テクテク……

アスカ「えっと……次はどこに行くんですか?///」テクテク

シンジ「あ、うん……。ちょっと込み入った話だし、歩きながら話すね」テクテク

アスカ「?」テクテク

ー マリのマンション ー


マリ「んー♪ いい匂い」

マリ「ちょいと味見っと」パクッ……モグモグ

マリ「んにゃ♪ いい出来ー」ニコッ

マリ「ご飯も炊けてるし、食事も食器も二人分用意したし、服も持ってる中で一番可愛いのに着替えたし♪」

マリ「あとはワンコ君を待つだけだにゃ♪」


マリ「♪♪」

マリ「ワンコ君、喜んでくれるかなあ……///」


マリ「……///」ドキドキ


ピンポーン……


マリ「来たっ!」トタタタッ


ガチャッ

マリ「はいはーい♪ 待ってた……よ?」

シンジ「お待たせ、真希波」ニコッ

アスカ「…………初めまして」ペコリ……

マリ「え、あ、初めまして…………」ペコリ


シンジ「真希波。ひょっとして知ってるかもしれないけど、この子、式波・アスカ・ラングレー」

マリ「ああ、うん……。一応、写真で見た事あるから顔は知ってる……」

シンジ「それで、式波。この子がさっき話した真希波・マリ・イラストリアス」

アスカ「はい……。よろしくお願いします……」ペコリ

マリ「うん……。こっちこそ……」

シンジ「一人で来るのは流石に良くないかなと思って。だから」

マリ「あー……うん……そういう事…………」

シンジ「あ、大丈夫だよ。式波にも真希波の事は話してあるし、それに……僕たちと同じような境遇だから……」

マリ「あー…………そうなんだ…………そっか…………」

アスカ「…………」


少しだけ下を向いて、目を合わそうとしないアスカ

アスカ(……この真希波って子……可愛いし、すごくスタイルいい…………)

マリ(……この子……行儀よくてどっかのお姫様みたい……しかも可愛い…………)


アスカ(……アタシとは大違い…………)シュン……

マリ(……モテるだろうな、この子…………。しかもわざわざ一緒に連れてきたって事は…………もしかして、そういう事なの……?)シュン……


アスカ(……今日、デートだと思ってたのに…………)シュン……

マリ(……今日、ワンコ君一人で来ると思ってたのに……)シュン……

シンジ「……? 二人とも……どうしたの?」

アスカ「」ハッ
マリ「」ハッ

アスカ「いえ、何でもないです!」アセアセ

マリ「いやー、あはは。ちょいとびっくりしちゃってね。それだけだよ」

シンジ「……?」

マリ「ま、とりあえずさ、上がってよ。ほら、早く」

シンジ「あ、うん……。それじゃ、お邪魔します」

アスカ「お邪魔します」ペコリ

マリ「はいはい。どーぞどーぞ」


中へ入る三人


シンジ「?」クンクン

シンジ「……なんかいい匂いするね。ひょっとして晩御飯の途中だった?」

マリ「ううん。あ、いや、そう。そんな感じ」アセアセ

シンジ「?」

マリ「あ、そうだ。二人とも、お腹空いてない? 折角だから軽く食べてってよ。ちょいと間違えて多く作っちゃったからさ」

シンジ「え、でも、それは真希波に悪いから……」

マリ「いいから、いいから。私一人だと食べきれない量だったしさ。それとも二人とも、もうご飯は食べちゃった?」

シンジ「まだだけど……でも……」

マリ「じゃあ決定だにゃ。二人とも向こうのテーブルに座って。今、用意するからさ」

アスカ「あ、あの、それじゃ、アタシ、お手伝いしますね」

マリ「いーよいーよ、お客様は座っててちょーだい」トタタタッ


キッチンへと走り去るマリ

ー キッチン ー


マリ「」ハァ…………

マリ「……ワンコ君と二人で食べれるって思ってたのになあ…………」

マリ「……食器も料理も二人分しか用意してないし…………」

マリ「……私は見てるだけ、だよね…………」シュン……

マリ「……しょうがないよね、勝手に用意したの私だし…………」

マリ「……ワンコ君、一人で来るって勝手に思い込んでたの、私だし…………」

マリ「」ハァ…………





マリ「……さっきまでバカみたいに浮かれちゃっててさ……これじゃ本当にバカだよ、私…………」ボソッ……

ー リビング ー


マリ「はいはーい。お待ちどうさま。さ、食べて食べて」スッ、カチャカチャ……

シンジ「あの……ありがとうね、真希波」ニコッ

アスカ「ありがとうございます……」ペコリ

マリ「なんのなんのー。ホント、大したものじゃなくて悪いねー」

シンジ「あれ? 真希波はいいの?」

マリ「あ、うん。私はもう食べちゃったからお腹一杯なんだよね。ささ、それより、冷めない内に食べて食べて」

シンジ「あ、うん……。じゃあ、いただきます」

アスカ「いただきます……」

シンジ&アスカ「」パクッ


マリ「……どう? お二人さん」

シンジ「美味しい、これ」

アスカ「美味しい…………」

マリ「良かった。二人の口にあったみたいだね」ニコッ

シンジ「この煮っころがしも美味しいや。真希波って料理得意なんだ」

マリ「あはははは……得意って程じゃないけど、まあ、一通りはね」

アスカ「本当に……美味しい」モグモグ

マリ「そりゃ嬉しいね。あ、そうそう、お茶も持ってくるよ。ちょっと待ってて」タタタッ

シンジ「ありがとう」ニコッ

マリ「いいって、いいって。ワンコ君にしてもらった事を考えれば、ホント大した事じゃないしさ」

アスカ「ワンコ君?」ピクッ

マリ「ん?」

アスカ「真希波さん。ワンコ君ってひょっとしてシンジさんの事ですか?」ムッ……

マリ「……あー、メンゴメンゴ。癖になっちゃっててね……。ワンコ君は失礼だよね。えっと……シンジ君、ごめんよ」

シンジ「あ、いいよ、別に。ワンコ君で。僕、あだ名で呼ばれた事とかないから、ちょっと新鮮だし。真希波も無理せずそのままでいいよ」

マリ「あー……そう? それならワンコ君のままにしちゃうけどさ……」チラッ

アスカ「」ムッ……

シンジ「うん。そうして」

マリ「うん、まあ……了解」

アスカ「」ムーッ……

マリ「」トコトコ……

マリ「はい、麦茶。冷たい方がいいよね?」トンッ……

シンジ「うん。ありがとう、真希波」

マリ「いえいえ♪」

アスカ「……ありがとうございます」ムスッ……

マリ「いえいえ…」


シンジ&アスカ「」ゴクゴク……


マリ「ところでさ……」

マリ「その……お二人さんは付き合ってたりするの?」


シンジ&アスカ「//」ブハッ!!

シンジ「ち、違うよ!//」
アスカ「ち、違います!///」


マリ「あっ、そうなの……。わざわざ連れてきたぐらいだから、てっきりそうかなーって思ったんだけど……」

シンジ「その……!/// 式波とは一緒に暮らしてるから、だから……!///」

マリ「一緒に…………」

アスカ「……あ…………」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


シンジ『これからはしっかり式波の面倒を見ますので! 外に出掛ける時は一緒に行きますから!』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


アスカ(……そうよね…………)

アスカ(……そうでなければ、わざわざ連れて行かないわよね…………)シュン……


マリ(……一緒にって何…………?)

マリ(……何でワンコ君とこの子、一緒に暮らしてるの…………?)ズキッ……

マリ(……一緒にって何………………?)ズキズキ……

ー 簡単にこれまでの事を説明後 ー


マリ「ああ、そうなんだ……。無理矢理、同居させられてるんだ」(ホッ……)

シンジ「うん……」

アスカ「……はい」ズキッ……


シンジ「式波も、出来ればこっちに住めればいいんだけど……。そうもいかないみたいで……」

アスカ「……」ズキッ……


マリ「そうなんだ。残念だね」

シンジ「うん……」

アスカ「……」ズキッ……


マリ「ワンコ君もこっちには住めれないんだよね」

シンジ「うん。それに今は、式波の事が心配だからそれはしたくないし」

アスカ「……」(パアッ)

マリ「そっか…」ズキッ……

ー 食事後 ー


マリ「わお♪ 本当にこれ借りていいの?」

シンジ「うん。退屈だって言ってたから、家から持ってきたんだ。暇潰しに見て」

アスカ「…………」

マリ「サンキュー、サンキュー。ありがたいねー。これでだいぶ暇は潰れるよ。家から出れないって退屈だからさー」ニコッ

シンジ「喜んでくれて嬉しいよ。持ってきた甲斐があった」ニコッ

アスカ「…………」

マリ「ありがとう、ワンコ君♪」

アスカ「」プイッ……


シンジ「あ、それで真希波、ちょっといい?」

マリ「うん。何?」

シンジ「あ、ここじゃなくて、その……向こうで」

マリ「ああ……そういう事ね。了解」

アスカ「………………」

シンジ「ごめん、式波。ちょっとだけ待ってて」

アスカ「はい………………」ボソッ

ー 隣の部屋 ー


マリ「で、何? ワンコ君」ヒソヒソ

シンジ「あ、うん。式波にはさ、このマンションが僕の……戦自のだってのを話してないから、それは秘密にしておいてって事。それだけ」ヒソヒソ

マリ「ふうん……。って事は、このマンションは私のって事にしておいた方がいいかな?」ヒソヒソ

シンジ「うん。真希波の貯金で借りたって事にして、戦自と日本政府の事は出さないで欲しいんだ」ヒソヒソ

マリ「それは大丈夫だけど、私とワンコ君の繋がりはどうするの? それだと接点ないじゃん?」ヒソヒソ

シンジ「このマンションは元は父さんが借りたものだって式波には言ってある。真希波をたまたま僕が見つけて、父さんが匿ってるみたいな風に」ヒソヒソ

マリ「ゲンドウ君がね……」ボソッ

シンジ「?」

マリ「いや、何でもない。でも、それだと式波ちゃんが司令と話した時、まずくなんない?」ヒソヒソ

シンジ「父さんには内緒で式波を連れてきたって事にしてあるから大丈夫だよ。だから、式波が父さんに話す事はないと思う。父さん自体、僕らとは滅多に話さないし」ヒソヒソ

マリ「ん。わかった。それならそういう事にしとくよ」ヒソヒソ

シンジ「よろしくね」ヒソヒソ

ー リビング ー


アスカ(……二人で内緒の話…………)

アスカ(……そりゃあの子は特別だから、アタシに言えない事とか色々あるだろうけど…………)

アスカ(……別に今、しなくてもいいじゃない…………)シュン……


アスカ(…………あの子……アタシとシンジさんが付き合ってるのかどうか聞いてきた……)

アスカ(……だから、二人が付き合ってないっていうのはわかる…………)

アスカ(……シンジさんの話だと、会ったの、ついこの間だって言ってたから、そりゃそうだろうけど…………)

アスカ(……でも、付き合ってるかどうかが気になるっていうのは…………)

アスカ(……多少はシンジさんの事が気になってるって事よね…………)

アスカ(………………)


アスカ(……あの子はアタシたちと違って、暇ばかりだから色んな事が出来るだろうし…………)

アスカ(……明るいし可愛いし人懐っこいしスタイルいいから、そりゃシンジさんも気になるわよね……)

アスカ(あー、もう、やだ! 何でアタシこんな事ばかり考えてるのよ!)

アスカ(それにずっと仏頂面ばかり! こんなんじゃ二人とも不愉快になるに決まってるじゃない!)

アスカ(笑わなきゃダメよ! 楽しいフリをしなきゃダメよ!)

アスカ(でないと…………)

アスカ(……シンジさん、もう二度とアタシの事、誘ってくれないかもしれないじゃない…………。一緒にどこかに連れて行ってもらえないかもしれないじゃない…………)

アスカ(笑わなきゃ…………。楽しいふりをしなきゃ…………)


アスカ(…………)チラッ……

猫耳帽子「」…………


アスカ(…………アタシの為に、買ってくれたんだから…………)

アスカ(……本とかDVDより……可愛いんだから…………)

アスカ(……気持ち、絶対こっちの方がこもってるんだから…………)

アスカ(……あんなの、ただ見て終わりじゃない…………)

アスカ(……暇潰しの為にあげただけじゃない…………)

ガチャッ……


マリ「やーやー、お待たせー」

アスカ「あ、いえ、大丈夫ですよ。別にそんなに待ってないですから」ニコッ

マリ「そう? それじゃ、お二人さん。次はこちらへどうぞ。そこらに寝そべって」

シンジ&アスカ「?」

マリ「ポテチ買ってあるしさ、みんなでゴロゴロしながら食べよーよ。普段、絶対出来ないでしょ? クセになるよー、これ♪」

シンジ&アスカ「…………」


顔を見合わせる二人…………

ー 洋室 ー


シンジ「」パリッ……パクッ

アスカ「」パクッ、モグモグ……

マリ「コンソメ味にのり塩味もあるよー。あと、コーラ♪」トポトポ


うつ伏せになって寝転がりながら食べる三人


シンジ「意外と…………」パクッ……

アスカ「解放感がある……。不思議ね……」ゴクッ……

マリ「ま、普段なら絶対に出来ない事だからねー♪ この行儀の悪さがハマるんだー」パリッ……パクッ


シンジ「それ、ちょっとわかる……。僕も前はミサトがいない時、リビングで大の字になって寝転がってたし」

アスカ「あ、そんな事してたんです?」

シンジ「うん。クッション殴るよりストレス解消になる時もあったから」

アスカ「ふーん……」

マリ「式ちゃんは何かストレス解消みたいな事してた?」パリッ……モグ

アスカ「アタシは……サルのぬいぐるみにハサミを突き刺したりとか……」

シンジ「」
マリ「」

アスカ「あっ、でも、最近は全然してないですよ! 昔の話です!」アセアセ

マリ「ああ……うん……。そういう時もあるよね……。あはははは…………。ね、ワンコ君? そうだよね?」アセアセ

シンジ「あ、え、うん。クッション殴るのとおんなじ様なものだよね、普通だよ、普通」アセアセ

アスカ「あ、あの、それより真希波さんは?」アセアセ

マリ「あ、うーんと…………私は射撃かにゃ? 訓練場に行ってひたすら撃ってたよ。私、軍事訓練までさせられてたからねー」

アスカ「あ、それはアタシもです。アタシ、ユーロ空軍にも入ってましたから」

マリ「あ、そうなの? じゃあ戦闘機の操縦とかはどうだった? あれ、結構ストレス解消にならなかったかにゃ?」

アスカ「あ、いえ、流石にそこまでは…………」ドンビキ
シンジ「」

マリ「え? え? それぐらい普通じゃないの?」アセアセ

アスカ「あ、いえ、でも、アタシ二等兵でしたし。だから、銃の分解とかそれぐらいまでしか」アセアセ

シンジ「その……真希波……そんな事までしてたの?」

マリ「え、あ、うん……。ま、ね……。何でも覚え込まされたよ。ひょっとしてエヴァが仮設機しかなかったから、その分なのかな……? 少し間違うとさんざん言われたし、叩かれもしたりさあ。ホント、ろくでもないとこだったけど」

アスカ「…………」


複雑な表情を見せるアスカ…………

マリ「ま、ベタニアベースはそんな感じだったかな。ネルフ本部はどんな感じなの?」

シンジ「覚え込まされる事はないけど、でも覚えなきゃこっちが危険って感じかな……。誰も教えてくれないし、教えようともしない分、ベタニアベースよりタチが悪いかもしれない……」

マリ「そっか……そう考えるとネルフ本部の方が腐ってるんだね」

シンジ「多分ね……。個人差がかなりあるみたいだけど、でも、上に行けば行くほど酷くなるって、綾波がそう言ってた」

マリ「綾波って……ファーストチルドレンの子だよね?」

シンジ「ああ、うん。綾波も……僕らと同じだから。もしかしたら一番酷いかもしれないけど……」

マリ「それ、どういう事?」

アスカ「それ……アタシも知りたいです。前に少し聞きましたけど、詳しく教えてもらってないので」

シンジ「そう……だね。……式波も、こっちの生活に慣れてきたみたいだし、もう話してもいいと思う」

ー レイの境遇説明後 ー


マリ「…………そっか」ポツリ……

アスカ「………………」

シンジ「うん…………。綾波は今、無口だけど……。多分、元は明るく元気なよく喋る子だったと思う……。時々、昔の話を聞く時があるんだけど、その中だとそんな印象だから……」

マリ「そっか…………。ちょっと前までは、こんなひどい目に遭っているのは私だけだと思ってたんだけどね……。悲しいなあ…………」

アスカ「……私たち、皆だなんて…………」

シンジ「……僕も……少し前まではそう思ってた……。僕だけなんでこんな酷い目にって…………。綾波ばかり優遇されてって…………。でも、結局、僕が一番マシな方だったんだ…………」


マリ「…………」

アスカ「…………」

シンジ「…………」


重い沈黙が流れる…………

マリ「……ワンコ君、今度さ…………レイちゃんも連れてきなよ。少しは気が楽になるかもしんないし」

シンジ「うん……。綾波は色々と忙しいから、あまり暇がないかもしれないけど……」

アスカ「…………」

シンジ「あ、そういえば、今度みんなで水族館に行かない? 抽選で当たったから見学が出来るんだ。色々、楽しいと思う」

アスカ&マリ「水族館?」

シンジ「うん。セカンドインパクト前の生き物がいるって。赤い海じゃなくて青い海も見れ」

アスカ&マリ「行くっ!//」

シンジ「あ、えと、うん……。じゃあ、綾波の都合がついたら皆で行こうか。本当はクラスの子も誘いたいんだけど、大人数になっちゃいそうだし……」

マリ「うん♪」
アスカ「はい!」

シンジ「楽しみだなあ」

マリ「だねー♪」

アスカ「ホント♪」


マリ「…………」

アスカ「…………」


アスカ「」チラッ……
マリ「」チラッ……


アスカ「……」

マリ「……」


何となく互いの顔を覗き見る二人…………

マリ「ところでさ……。さっきからずっと気になってたんだけど、何で式ちゃん、敬語使ってるの?」

アスカ「……。まあ……癖みたいなものです」

マリ「ふーん。でも、式ちゃん。少なくとも私に対して敬語はやめなよ。ワンコ君と違って、私は敬語使われるような人間じゃないよー」

アスカ「え、でも……」

マリ「それに、嫌なんだよね、敬語。昔を思い出すからさあ」

アスカ「あ……ごめんなさい……」

マリ「んにゃー……。かったいなー、式ちゃんは。もっとフレンドリーに行こー。楽にしてよ。でないと、私が淋しいよ」

アスカ「…………うん……そうよね……」

アスカ「わかったわ。これから普通に話す」

マリ「そうそう。ついでにワンコ君にも敬語話すのやめればいいのに。敬語は心の壁だよー。そんなんじゃいつまで経っても仲良くなれないよ?」

アスカ「え、あ、だけど……」チラッ……

シンジ「僕も式波には普通に話してほしいかな」

アスカ「う…………。だけど…………アタシ、お世話になりっぱなしだから…………」シュン……

マリ「私もお世話になりっぱなしだけど、敬語使ってないんだよね……。使った方がいいかい、ワンコ君?」

シンジ「ううん。普通に話して。そっちの方がいいよ」

マリ「だよね。ま、そんなわけだから、式ちゃんもそうしなよ」

アスカ「えっと……でも…………」モジモジ……

マリ「……ま、急には無理かな。その内にね」

アスカ「……うん」

シンジ「そうだね。その内」

アスカ「……はい…//」コクッ


マリ「……ふうん…………」ポツリ

ー 帰り際 ー


マリ「残念だね。もう帰っちゃうなんて」

シンジ「ごめん。でも、あんまり遅くなる訳にもいかないし。ミサト、急に帰ってくる時もあるから」

マリ「ま、しょうがないか。じゃね、ワンコ君、式ちゃん。二人とも、また来なよ」

シンジ「うん、そうする。今日はありがとう、真希波。久々にすごいゆっくり出来たよ」ニコッ

アスカ「……アタシもね。楽しかったわ」

マリ「そう言ってもらえると嬉しいね。ま、いつでも来なよ。今度はレイちゃんも誘ってさ」

シンジ「うん。そうする。多分、綾波も喜ぶと思うし」

アスカ「…………」

シンジ「それじゃあね、真希波。また今度」

マリ「うん。二人とも、バイバイ」

シンジ「うん。バイバイ」

アスカ「じゃあね」


シンジ&アスカ「」スタスタ……


並んで帰る二人




マリ「…………行っちゃった……」ポツリ


小さく呟くマリ…………

ー 二人が去った後 ー

ー リビング ー


マリ「」ゴロン…………

マリ「…………」ゴロゴロ…………


マリ「」ハァ…………


マリ「……式ちゃん、可愛い子だったなあ…………」

マリ「……付き合ってないって言ってたけどさ……。絶対、あの子、ワンコ君の事好きだよね…………」

マリ「……オマケにあの二人、一緒に暮らしてるって…………」

マリ「……ワンコ君に色々と気遣ってもらってさ…………」

マリ「……並んで二人帰ってさ…………」


マリ「………………」


マリ「……そりゃ、嫉妬しちゃうよ…………」ボソッ


マリ「………………」


マリ「……しちゃいけないんだろうけどさあ…………」


マリ「……私、一人だけ逃げ出して……こんな楽な生活送ってるんだから…………」


マリ「……全部、ワンコ君のおかげだから……ワンコ君困らす訳にはいかないし…………」


マリ「……それに、あの子はまだ逃げ出せないままネルフにいて……ひどい目に遭ってるのに…………」


マリ「……わかってるんだけどさあ…………」


マリ「……うー…………」ゴロゴロ……


マリ「………………」


マリ「……うー………………」ゴロゴロ……


マリ「………………」




マリ「……折角、ワンコ君、喜んでくれたのになあ…………泣きたいなあ、今…………」ポツリ……

ー 帰り道 ー


シンジ「……今日は楽しかった、式波?」

アスカ「あ、はい! すごく楽しかったです!」ニコッ

シンジ「そっか。それなら良かったけど」ニコッ

アスカ「はい!」

シンジ「真希波のおかげでご飯も作らなくて済んだし、助かったね。それに美味しかったなあ」

アスカ「はい。美味しかったですね」

シンジ「うん。真希波、謙遜してたけど料理上手だよ。今度レシピとか教えてもらおうかな」

アスカ「……そうですね」

シンジ「持ってった本とかも喜んでくれたし、良かった」

アスカ「……はい」

シンジ「それに、真希波も楽しそうだったし、また今度行きたいね」

アスカ「はい……」ツー、ポタッ……

アスカ「」ゴシゴシ

シンジ「……? どうしたの、式波?」

アスカ「あ、いえ、ちょっと目にゴミが入っちゃって。何でもないです」ニコッ

シンジ「……本当に?」

アスカ「はい。本当です」ソッ


無意識的に、猫耳帽子を胸に抱くアスカ


アスカ「本当に今日は楽しかったですから」ギュッ……

シンジ「そう? それならいいけど…………」

アスカ「はい。シンジさん、ありがとうございます」

シンジ「ううん。こっちこそ今日は付き合ってくれてありがとう」

アスカ「いえ……」

シンジ「また今度、どこか行きたいね。水族館は皆の都合が合わないと無理だから、少し遅くなりそうだし」

アスカ「あ、はい!」パアッ

シンジ「式波はどこか行きた……式波?」

アスカ「」ツー、ポタッ……ポタッ……

シンジ「本当にどうしたの、式波?」アセアセ

アスカ「あ、いえ……何だか嬉しくて……ちょっと気が緩んで……だから…………」グスッ……ヒック…………


シンジ「………………」


何も言えず、その場に立ち尽くすシンジ…………

ー 深夜 ー

ー 加持宅 ー


加持「それじゃあな。気をつけて帰れよ」

ミサト「ええ、わかってる。今日はご馳走さま、加持♪」

加持「あんな物で良ければいつでも作ってやるさ。お安いご用だ」

ミサト「うん、ありがとう…//」コクッ……

加持「それじゃあな」

ミサト「ええ」


ガチャッ……


ミサト「またね//」

加持「ああ」ニコッ


パタンッ…………














加持「葛城……すまないな…………」

加持「君からの愛情を受けれる様な男じゃないんだ、俺は……」

加持「だから、今だけはせめて幸せであってほしい……」



加持「……あと二体の使徒が来た時、俺はきっと君の前から姿を消すよ。その時は許してくれ」

加持「そして、あの子を利用しようとしている俺も許して欲しい……」

加持「葛城……。真実は君には必要ない。だから、必ず生き延びてくれ」

加持「俺の願いはそれだけだ……」クルッ

スタスタ……


部屋の奥へと消える加持…………

ー 同時刻、ミサト宅 ー

ー アスカの部屋 ー


アスカ「」ゴロン……
弐号機のぬいぐるみ「」


弐号機のぬいぐるみを抱きながらベッドに寝転がるアスカ…………


アスカ「……ママ……アタシ、どうすればいいんだろう…………」

弐号機のぬいぐるみ「…………」


アスカ「……こっちに来て……一杯楽しい事があったのに…………」

アスカ「……一杯……辛い事も多くなった…………」

弐号機のぬいぐるみ「…………」


アスカ「………………」


アスカ「……真希波……マリ…………」

アスカ「……綾波……レイ…………」


アスカ「………………」


アスカ「……好きに…なれないのに…………」

アスカ「……嫌いにもなれない…………」


アスカ「………………」


アスカ「……なれる訳ないわよね…………」

アスカ「……アタシと同じ様な目に遭ってるんだもの…………」


アスカ「………………」


アスカ「……嫌いになれたら…………」ボソッ……

アスカ「……楽だったのにな…………」ボソッ……


アスカ「………………」


アスカ「……アタシ、どうしたら…いいんだろう…………」

アスカ「……教えてよ……ママ…………」

弐号機のぬいぐるみ「………………」



アスカ「」グシュッ……

弐号機のぬいぐるみ「………………」

ー 同時刻、月 ー

ー スペースシャトル内 ー


冬月「月面のタブハベースを目前にしながら、上陸許可を出さんとは……ゼーレもえげつない事をする」

ゲンドウ「mark6の建造方式が他とは違う。その確認で充分だ」


窓の外を眺める二人


冬月「ゼーレの切り札か……。やはり老人たちは建造作業を急がせているようだな……。予算の大半はあちらに流れているとも聞く」

ゲンドウ「例え完成したところで、今は向こうも何も出来まい。予算が流れているのは、我々の妨害に過ぎんよ。何かをしてくるとすれば第十使徒以降だろう」

冬月「それに備えてこちらもダミーシステムの完成を急がせているが……。こちらも一度試作機を破棄してしまったからな。予定が大幅に遅れている。本来ならばもう完成していたはずのものだ」

ゲンドウ「……仕方あるまい。あの時はそれ以外の手段がなかった。シンジたちには悪い事をしたが……」

冬月「…………仕方ない事が多すぎるな……。赤木レポートにしても……レイの事にしても……」ハァ……

ゲンドウ「全ては最後の計画を持って償えるだろう。いや、それより他に償う方法がない…………」

冬月「我々もまた……『仕方ない事』の内の一つという事か……やりきれんな」

ゲンドウ「ゼーレの計画が遂行されるよりはマシだ。今はそれ以外の手段がない」スッ……


窓から上を眺めるゲンドウ


カシウスの槍『』………………


そこには宙に浮かぶカシウスの槍


カヲル「……」


そして、mark6の指の上に座るカヲルの姿が……



冬月「変わらないな、あの少年も」

ゲンドウ「ああ、それでいい」



ー 月面 ー


カヲル「…………」


ゲンドウらの乗るスペースシャトルを冷たい眼差しで眺めるカヲル


カヲル「久しぶりだね、ゲンドウ君。……僕は、君の事も君の計画も認めるつもりはないよ」


静かにはっきりと語りかけるカヲル…………

ー 翌日、学校 ー


シンジ「…………」


窓の外をぼんやりと眺めるシンジ


シンジ「」ハァ……



トウジ「……ケンスケ。センセ、今日やけに元気ないけど、その理由知らへんか?」ヒソヒソ

ケンスケ「ううん……。知らない。また何か面倒事を抱えてるんじゃないかって事ぐらいしかわかんないよ……」ヒソヒソ

トウジ「んなもん、ワシでもわかるわ。それが何なのかを聞いとるんや。ワシが聞いても、何でもない言うて、教えてくれへんのや」ヒソヒソ

ケンスケ「だったら、僕が聞いても一緒だよ。大体、碇、そういう事はほとんど喋らないからさ。内向的っていうか、じっと溜めるタイプだし……」ヒソヒソ

トウジ「……ケンスケ……ワシら、まだそない信用ないんかな……」ヒソヒソ

ケンスケ「そうじゃないって信じたいな……。多分、そういう性格なんだと思う……。初めて会った時からずっとそこら辺は変わってないから、碇……」ヒソヒソ

トウジ「せやかてなあ…………。なんかワシらに出来る事あらへんやろか……?」ヒソヒソ

ケンスケ「聞いても教えてくれない場合は無理だよ。碇が話してくれない限りわからないんだから……。とにかく、僕らは普通にしてるのが一番だと思うよ。碇に変に気を使わせない方がいいと思う」ヒソヒソ

トウジ「歯がゆいこっちゃなあ……」ヒソヒソ

アスカ「…………」


ぼんやりと教室の隅を見つめるアスカ


アスカ「」ハァ……


ヒカリ「アスカ」

アスカ「………………」

ヒカリ「アスカ!」

アスカ「え? あ、何、ヒカリ?」アセアセ

ヒカリ「……何って訳じゃないけど……。どうしたの? アスカ、何か今日変だよ?」

アスカ「そう……?」

ヒカリ「うん……」


ヒカリ「ねぇ、アスカ。昨日の碇君とのデート……ダメだったの?」ヒソヒソ

アスカ「……別に……そういう訳じゃないけど……ちょっと色々とあったの…………。ヒカリ、悪いけど、少し一人にしてくれないかな? お願い」

ヒカリ「…………」

ヒカリ「……うん……わかった。でも、アスカ。何かあったら何でも言ってね。溜め込んじゃダメだよ……」

アスカ「うん……。ありがとう、ヒカリ」

ー 授業中 ー


先生「えー……ですから……」ボソボソ……



アスカ「…………」


ぼんやりと端末の画面を眺めるアスカ…………



アスカ(……アタシは…………)


アスカ(………………)


アスカ(……最初は…………)


アスカ(………………)


アスカ(……でも…………)


アスカ(……)ハァ……


アスカ(………………)


アスカ(……昨日、気付いちゃったのよね…………)


アスカ(………………)


アスカ(………………)


アスカ(……マシな訳ないって…………)


アスカ(………………)


アスカ(………………)


アスカ(……アタシは…………どうしても…………)


アスカ(………………)


アスカ(………………)


アスカ(……それなら…………)


アスカ(………………)


アスカ(……そうよね…………)


アスカ(……このままじゃ……ダメよね…………)

ー ネルフ本部、エレベーター前 ー


マヤ「……」ハァ……


チンッ、ガコッ…………


エレベーターに乗り込むマヤ


マヤ「」スッ……


階数ボタンを押そうとする


加持「おーい、そのエレベーター、ちょっと待ってくれ」ダダダッ

マヤ「!?」

マヤ「」サッ、ポチッ、ポチッ!!


すぐに階数ボタンを押し、閉まるボタンを押すマヤ


ガコッ……

加持「」ダダダッ、サッ!!

ガシッ……


加持「ふぅ……ギリギリだな」


扉を手で押さえて、肩で息をする加持


マヤ「……近寄らないで下さい……」

加持「ま、そんな固い事は言うなよ。途中まで御一緒させてくれ」スッ……

ポチッ


エレベーターに乗り込み、階数ボタンを押す加持



マヤ「……」スッ……


加持から出来るだけ離れるマヤ

ガコッ……ウィーン…………


加持「…………」





マヤ「…………」



加持「やれやれ、嫌われたものだな。そこまで離れなくても」

マヤ「…当たり前です」ボソッ

加持「そこまで警戒しなくとも、今日は何もしないさ。それと、この前の事は謝るよ。すまなかった」

マヤ「謝ってもらって…済む問題じゃありません……」

加持「ごもっともだな……。悪かったよ」


マヤ「…………」

加持「…………」


マヤ「どうして…………」ポツリ……

加持「?」

マヤ「どうして、あんな事したんですか。加持さんには葛城さんがいるのに」

加持「葛城、ね……」

マヤ「…………」

加持「……あいつとはただの腐れ縁さ。付き合ってると言えば付き合ってるが、それにも少し理由や事情があってね」

マヤ「……?」

加持「俺はあいつの事は好きじゃないって事さ」ツカツカ、スッ……

マヤ「!?」


マヤの側に寄り、壁に手を付いて、顔を近付ける加持

ウィーン…………


マヤ「……今日は……何もしないんじゃなかったんですか……」フイッ……


顔を逸らすマヤ


加持「何もしないさ。こうして見てるだけだよ」

マヤ「迷惑です……。やめて下さい……」

加持「迷惑だと思うのなら、突き飛ばすなり逃げるなり出来るはずだろ?」

マヤ「……出来ないです、私、そんなの……。どれだけ迷惑でも…………」


加持「……そうかい? そうとは思えないけどな」

マヤ「…………」


目を伏せて、顔を逸らしたままのマヤ…………


マヤ「葛城さんと……好きでもないのに付き合ってるって最低です…………不潔です…………」

加持「言っただろ。事情があるのさ。俺だって好きでそんな事をしてる訳じゃないさ」

マヤ「……どんな事情なんですか」

加持「それは俺とのデートに付き合ってもらってからでないと教えられないな。今はまだ言えない」

マヤ「…………」

ウィーン……ガコッ……


加持「おっと、着いちまったか」スッ……

マヤ「…………」


マヤから離れる加持……。そのままじっと動かないマヤ……


加持「そこら辺の事情が聞きたければ、今晩、駅前の居酒屋で待っててくれ。九時頃にそっちに行くよ」

マヤ「…………」


加持「それじゃあ、俺はこれで」スッ……


エレベーターから降りる加持


マヤ「……葛城さんの事。口止め、しないんですか」

加持「……必要とあればするさ。もっとも、君は誰にも喋らないと思うけどな」

マヤ「…………」

加持「それじゃあ…今晩また」クルッ、スタスタ……


ガコッ…………


そして、閉まる扉



マヤ「………………」ソッ……


そのまま、壁にもたれかかるマヤ…………


マヤ「……どうしよう…………。こんな事、先輩にも言えない…………」

マヤ「………………」



マヤ「……私、どうしよう…………」ボソッ……

マヤ「………………」


意味もなく階数表示を見つめるマヤ…………

ー 学校 ー

ー 昼休み ー


シンジ「綾波、それじゃ先に屋上行ってるね」

レイ「…ええ」

シンジ「」トコトコ……


教室から去るシンジ…………




アスカ「」トコトコ……

レイ「……?」

アスカ「……綾波さん、少しいい?」

レイ「……何?」

アスカ「真希波・マリ・イラストリアスの事について、話したい事があるの」

レイ「……」

アスカ「ちょっとだけ時間をもらえるかしら?」

レイ「……ええ…。わかったわ」

レイ「」スッ……
スマホ「」スイッ、スイッ……


『少しだけ、そちらに行くのが遅くなると思う』


レイ「」ピッ……

アスカ「…………」


送信するレイ

それを複雑な表情で眺めるアスカ……

ー 屋上 ー


シンジ「」カタカタ……
ノート型外部端末「」


スマホ「」ピピッ


シンジ「」スッ……

シンジ「……今度は式波からメールか。何だろ?」ピッ


『今日、家に帰るの少し遅くなってもいいですか? レイと一緒にマリの家に寄りたいので。もちろん、家事は帰ってからやります。残しておいて下さい。お願いします』


シンジ「……綾波と?」


驚きの表情を見せるシンジ……


シンジ「それに式波が綾波の事をレイって……」

シンジ「………………」


しばらくそのまま考え込むシンジ……


シンジ「……でも、会わせない訳にはいかないよね…………」ボソッ……


シンジ「………………」


シンジ「……今日はミサト……何にも言ってなかったからいつ帰ってくるかわからないけど…………」

シンジ「………………」


シンジ「………………」


シンジ「……式波一人なら誤魔化せるかな…………。もしも、先にミサトが帰ってきたらいるフリをして……」

シンジ「……買い物とか行くついでに合流すれば多分…………」

シンジ「……きっと大丈夫なはず…………」


シンジ「…………」スイッ、スイッ……
スマホ「」


返信するシンジ

>>368
順番間違い
失礼。無視して下さい

ー 裏庭 ー


レイ「……そう。生きてたのね……あの子」

アスカ「ええ。うまい事逃げられたそうよ。でも、おおっぴらには動けないって。死んだ事になってるから見つかるとまずい事になるって」

レイ「……そう」

アスカ「……それで……昨日、真希波に綾波さんの事を話したら、会いたいって言ってたから。……会ってみますか?」

レイ「ええ」コクッ……

アスカ「じゃあ、都合がついたら教えて下さい。それと……」

レイ「……それと?」

アスカ「……これからは、あなたに敬語を使わなくてもいい?」

レイ「」コクッ

レイ「…使ってほしいなんて、思ってない」

アスカ「……それならそうするわ、ありがと。呼び方もレイで構わない?」

レイ「…いいわ」

アスカ「わかった。じゃあ、レイ。これでアタシの話はおしまい。……手間とらせてごめん」

レイ「いいえ…」

アスカ「…………」フイッ……

レイ「……今日」

アスカ「?」

レイ「……今日でもいい? …少しなら、時間あるから」

アスカ「?」

レイ「…真希波・マリに会う日」

アスカ「ああ……。えっと……メールで聞いてみる。シンジさんにも聞かなきゃいけないし……」スッ……
ガラケー「」ピッ、ピッ、ピッ……



レイ「…………」


メールを打つアスカを眺めるレイ

ー 屋上 ー


シンジ「」カタカタ……
ノート型外部端末「」


スマホ「」ピピッ


シンジ「」スッ……

シンジ「……今度は式波からメールか。何だろ?」ピッ


『今日、家に帰るの少し遅くなってもいいですか? レイと一緒にマリの家に寄りたいので。もちろん、家事は帰ってからやります。残しておいて下さい。お願いします』


シンジ「……綾波と?」


驚きの表情を見せるシンジ……


シンジ「それに式波が綾波の事をレイって……」

シンジ「………………」


しばらくそのまま考え込むシンジ……


シンジ「……でも、会わせない訳にはいかないよね…………」ボソッ……


シンジ「………………」


シンジ「……今日はミサト……何にも言ってなかったからいつ帰ってくるかわからないけど…………」

シンジ「………………」


シンジ「………………」


シンジ「……式波一人なら誤魔化せるかな…………。もしも、先にミサトが帰ってきたらいるフリをして……」

シンジ「……買い物とか行くついでに合流すれば多分…………」

シンジ「……きっと大丈夫なはず…………」


シンジ「…………」スイッ、スイッ……
スマホ「」


返信するシンジ

ー 裏庭 ー


ガラケー「」ピピッ……

アスカ「」スッ……


『うん、わかった。家に帰ってくる時はその前に一応メールで連絡して。家事は洗濯を残しておくよ。それ以外は明日してもらうから。だからゆっくりしてきて』


アスカ「…………そう」

レイ「……」

アスカ「……じゃ、レイ、今日で。 真希波もいいって言ってたし」

レイ「…ええ」

アスカ「……」


レイ「それなら、もう行くから……」トタタタ……


走り去っていくレイ



アスカ「…………」


その後ろ姿をじっと眺めるアスカ

ー 学校終わり ー

ー マリ宅、前 ー


アスカ「……ここよ」

レイ「ええ…」


ピンポーン……


マリ「はーい」

ガチャッ


マリ「や、式ちゃん。昨日ぶり。で、レイちゃんは初めましてだね」

綾波「」コクッ……

アスカ「悪いけど、学校帰りだから今日はお土産はないわよ」

マリ「いいよ、いいよ、そんなの。昨日、充分もらったし、それに来てくれただけでも嬉しいからね。私、暇だからさ」

アスカ「……こっちは毎日大忙しなんだけどね」

マリ「あはははは…………。ごめんよ、悪気はなかったんだ。もう言わないから、さ……」

アスカ「…………」

マリ「とりあえず、二人とも上がって。お茶ぐらい出すよ」

レイ「…ええ」コクッ

アスカ「お邪魔するわ」スッ……

ー リビング ー


マリ「はい、お茶」トンッ

アスカ「ありがと」

レイ「……」コクッ……



マリ「…………」

アスカ「」ゴクゴク……

レイ「」ゴクゴク……



マリ「…………」

アスカ「…………」

レイ「…………」



マリ「…………」

アスカ「…………」

レイ「…………」



マリ「…………」

アスカ「…………」

レイ「…………」



マリ(……会話がなくて…………)

アスカ(…………気まずいわね…………)

レイ(………………)

アスカ「…………そういえば、昨日、あれから映画とか見たの?」

マリ「ああ、ううん、昨日はあの後すぐに寝ちゃってね。今日の昼頃から見て、今、一本目を見終わったとこかな」

アスカ「ふーん……。面白かった?」

マリ「うん。面白かったよ。最近の映画ってCGがすごいねー」

アスカ「ああ、そう……」

レイ「…………」

マリ「レイちゃんは映画とか、昔、見てた?」

レイ「」コクッ……

マリ「どんなの?」

レイ「…あまり、覚えてない」

マリ「ああ、うん……そっか…………」



アスカ「…………」

レイ「…………」

マリ「…………」

マリ「……ところで、その手のケガはどうしたの?」

レイ「……これ…?」

マリ「うん。ナイフで切っちゃった?」

アスカ「ナイフって、アンタ…………。普通は包丁とかカッターでしょ」

マリ「ああ、まあ、そっか。そうだよね。で、どうしたの?」

レイ「……秘密」

マリ「あ、うん…………」



アスカ「…………」

マリ「…………」

レイ「…………」

アスカ「……レイからは何かないの? 質問とか……」

レイ「……特に」

アスカ「……ああ、そう」

マリ「……? 式ちゃん、レイちゃんには普通に喋るんだね」

アスカ「……って言っても今日からだけどね」

マリ「ふーん……。ワンコ君は?」

レイ「?」

アスカ「ううん、シンジさんはまだよ。シンジさんだけは……本当に特別だから」

マリ「そっか…………」

レイ「…ワンコ君?」

マリ「ん? ああ、碇シンジ君の事だよ。ちょっとした事があってそう呼ぶようになってね」

レイ「……どんな?」

マリ「え、ああ、まあ……それはね。うん、まあ、内緒って事でー」

レイ「…………そう」

アスカ「…………」ムッ……



マリ「…………」

レイ「…………」

アスカ「…………」

アスカ「……そういえば、今度シンジさんと一緒に演奏でもしようって話になったわ」

マリ「演奏?」

レイ「…………」

アスカ「ええ、そう。アタシがギターを弾けるって聞いたら、シンジさんもチェロを弾けるって言うから、流れでそんな話になったの」

マリ「ああ……そうなの」

アスカ「真希波は何か弾けたりするの?」

マリ「私は何にもかな。そんな暇なかったし。それと、私の事はマリでいいよ。名前で呼んで」

アスカ「ん……わかった。今度からそうする」

マリ「ちなみにレイちゃんは何か弾けるの?」

レイ「……昔、お母さんにフルートを教えてもらってた」

アスカ「フルート?」

レイ「…ええ」コクッ

マリ「じゃあ、私だけか、弾けないのは。……そっか。ちょいと残念だな……」

アスカ「…………」

アスカ「…………ごめん。今、言う事じゃなかったわね……」

マリ「別に式ちゃんが謝る事じゃないよ?」

アスカ「わかってるわよ。…………でも、ごめん。もう言わない……」

マリ「……うん。……別にいいよ」

レイ「…………?」

マリ「…………」

アスカ「…………」

レイ「…………」


マリ「……ああ、そうだ。そういや、レイちゃんも今度水族館行くんだよね?」

レイ「……?」

レイ「……私…も?」

マリ「あ、うん……。……あれ、ひょっとしてワンコ君から何も聞いてない?」

レイ「…………」

レイ「」フルフル……

レイ「……聞いてる」

マリ「あ、そう…? それならいいんだけどさ…………?」

アスカ「それ……いつになりそうかってわかる? レイの都合に合わすって、シンジさん言ってたから」

レイ「…もう少し、かかると思う」

アスカ「そっか……」

マリ「…………あのさ、レイちゃん。昨日と今日、ちょっと考えたんだけどさ。良かったら、私、レイちゃんの仕事手伝おうか? 外部端末さえ用意してくれりゃ大体の事は出来ると思うよ」

アスカ「あ、それならアタシも! そんなに全部って訳じゃないけど、ある程度の事は教え込まれたから! ミサトがいる間はアタシ部屋から出れないし、丁度いいわ」

レイ「…………」

レイ「……いいの…?」

アスカ「あったり前じゃない」

マリ「モチのローン。当然、当然」


レイ「……………………」



レイ「ありがとう……//」コクン……


微かに嬉しそうな表情を見せるレイ


アスカ「…………」
マリ「…………」


それを見て一瞬顔を見合わせる二人……


アスカ「別に……お礼言われるような事じゃないわよ」

マリ「して当たり前の事だよ……。気にしない、気にしない」


レイ「……//」コクッ……

ー 夜 ー

ー アスカの部屋 ー


アスカ「」カタカタ……
ノート型外部端末「」


アスカ「……ふう……。……疲れた…………」

アスカ「早速、今夜から引き受けたはいいけど、わからない事とかが多いから、ちょくちょく中断しちゃうし…………」

アスカ「レイにメールで聞きながらやってるから、全然進まない……」

アスカ「…………」

アスカ「……これ……アタシ、逆に足手まといになってるんじゃ…………」


アスカ「……」ハァ……


アスカ「……違うわよね」ボソッ

アスカ「……違うって信じるしかないわよね」ボソッ……

アスカ「アタシはクズじゃないって信じるしか……」ボソッ……

アスカ「でなきゃアタシは一生……」

アスカ「シンジさんの側に素直にいられない……。負い目ばかり感じちゃう……」

アスカ「このままだと、レイやマリに負けちゃう…………」ボソッ……

アスカ「負けないって決めたんだから……。張り合うって決めたんだから……」

アスカ「それに……」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


レイ『ありがとう……//』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



アスカ「……レイは悪い子じゃないんだから…………」

アスカ「……アタシより酷い事をされてたんだから…………」

アスカ「……なのにほったらかしなんて出来る訳ないじゃない…………」

アスカ「……アタシだけ親切にされっぱなしなんて出来ないわよ…………」

アスカ「……出来る訳ないじゃない…………」

ー 同時刻 ー

ー マリのマンション ー


マリ「」カタカタ……
ノート型外部端末「」


マリ「……ふう…………。久々なんで疲れるなあ…………」

マリ「にしても、何だろね、このバカみたいな量はさ」

マリ「こんなんやってもやってもキリがないじゃん」

マリ「早速、今夜から引き受けたはいいけど、ちょいと安請け合いだったかなー。大変だよ、こりゃ」

マリ「………………」

マリ「こんなんさー……。一人でやる量じゃないよ、絶対…………」

マリ「……今まで一人でよくやってたよね。考えられないよ…………」

マリ「……違うか…………」

マリ「……一人でやらざるを得なかったんだよね…………。ホント、どうかしてるよ……ここ…………」

マリ「……やだなあ、やだなあ、やだなあ……」

マリ「私、また泣きそうになってるじゃん。ホント、やだなあ…………」

マリ「いっつもニコニコ、楽しく明るく…………。ワンコ君を元気づける為にそうなろうって決めたのにさ…………」

マリ「……やだなあ…………。こんな気持ちやだよ…………」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


レイ『ありがとう……//』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



マリ「……レイちゃんだってさ……笑えるはずなんだよ……」

マリ「……笑おうよ…………。ワンコ君、一回も笑ってるとこ見た事ないって言ってたよ……」

マリ「……それってさ……悲しい事だよ…………」


マリ「……見てて……辛い…事だよ…………」


マリ「」グシュッ……

マリ「」ゴシゴシ……


マリ「あー、もう、やだ! さ、気にせずもう一頑張りするぞー!」

ー 同時刻 ー

ー レイの家 ー


レイ「」カタカタ……
ノート型外部端末「」


レイ「」カタカタ……
ノート型外部端末「」


レイ「」カタカタ……
ノート型外部端末「」


レイ「」ピタッ……
ノート型外部端末「」


レイ「…………」



レイ「…………」



レイ「…………」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


アスカ『あったり前じゃない!』

マリ『モチのローン。当然、当然』


アスカ『別に……お礼言われるような事じゃないわよ』

マリ『して当たり前の事。気にしない、気にしない』


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



レイ「…………」



レイ「……今度、お母さんに言おう……」



レイ「…………//」

ー 深夜 ー

ー シンジの部屋 ー


シンジ「…………」


布団に寝転がって天井を見上げるシンジ



シンジ「…………」



シンジ「…………」



シンジ「…………」



シンジ「…………」



シンジ「……式波…………」ボソッ……



シンジ「……それに、真希波…………」ボソッ……



シンジ「…………」



シンジ「…………」



シンジ「…………」



シンジ「…………」



シンジ「……寝よう…………」ボソッ……



シンジ「」ゴロン…………



シンジ「…………」



シンジ「…………」



シンジ「」ゴロン……



シンジ「…………」



シンジ「……今日も……眠れないや…………」ボソッ……

ー 同時刻、宇宙 ー

ー スペースシャトル内 ー


冬月「これが母なる大地とはな……。痛ましくて見ておれんよ」


赤く染まった地球を眺める冬月


ゲンドウ「だが、しかし、こうならなければ世界は滅んでいた」

冬月「わかっている……やりきれんだけだ」

ゲンドウ「…………」

冬月「人は夢だけでは生きていけない。現実を見なければ何も始まらない。……セカンドインパクト前までは教え子によく言ったものだよ。今は到底言える言葉ではないがな……」

ゲンドウ「この惨状は我々には重すぎる。無理はない」

冬月「……結局、我々の中で唯一現実を見ていたのはユイ君だけかもしれんな」

ゲンドウ「そうだな。……ユイはいつも未来だけを見ていた」

冬月「私はもう過去しか見れんよ。未来を見るのは……お前に任せる」

ゲンドウ「……ええ。……必ず。ユイの代わりに……」

ー 後日 ー

ー ネルフ本部、発令所 ー


日向「わかりました。了解です。後はこちらでやっておきますので。くれぐれも余計な事はしないで下さいよ」ガチャッ

青葉「どうした? ひょっとして使徒か?」

日向「みたいだな。観測所から連絡だよ。相当、泡食ってたから他に余計な事はするなって一応言っといたけど」

青葉「ま、それが妥当だな。前みたいに勝手にしゃしゃり出て来られたら迷惑以外のなにものでもないからな」

日向「そういう事。とりあえず葛城さんに連絡しておくよ。あと赤木博士とマヤちゃんにも」

青葉「じゃあ俺は、久しぶりに警報でも鳴らすか。たまにやっておかないと忘れるし」カタカタ


ビーッ、ビーッ、ビーッ!!

ー 20分後 ー


ウィーン……

ミサト「お待たせー。ちょっち取り込み中だったからねー、ごみんごみん」

青葉「ああ、いえ、大して待ってはいな……いので」ゴホン……

ミサト「ん? どったの、青葉君?」

青葉「服と髪、乱れてますよ」ボソッ

ミサト「え? あ、やだ、私ったら……//」ソソクサ

日向「」

ミサト「えっと……それで状況は?//」

日向「」

青葉「……第三監視衛星から捉えた映像があります。最大望遠で出します。どうぞ」カタカタ

ブンッ……


ミサト「ふーん……。真っ黒ね。どれぐらいデカイの、これ?」

青葉「さあ……。マヤちゃん、これどれぐらいの大きさ?」

マヤ「ええと……結構大きいですよ。詳しい数値必要ですか?」

ミサト「あ、ううん、いいわ。大した事じゃないし。で、これ、どこにいるの?」

青葉「大気圏外ですね。MAGIに計算させたところ、落下予測地点はここ、ネルフ本部です」

ミサト「ふーん……。まあ、それは予想通りだからいいんだけど」

リツコ「で、どうするの、ミサト。EVAで狙撃でもする? この前の陽電子砲、まだ残ってるけど」

ミサト「ううん、あれ、めんどいからパス。落ちてくるなら、手で受け止めてその後に殲滅すればいいわよ。レイは?」

青葉「上で待機中です。シンジ君とアスカも、出撃はしてませんがスタンバってはいますよ」

ミサト「じゃあ、そのまま待機させといて。落ちてきたら指示を出しに来るからまた呼んで」クルッ

青葉「了解です」

ミサト「じゃ、よろしくー」スタスタ……

マヤ「…………」カタカタ……

ー ネルフ本部、廊下 ー


ミサト「お待たせ、加持君」

加持「いや、いいさ。それより使徒の方はどうだったんだい? 来てたんだろ?」

ミサト「ああ、うん。その内ここに落ちてくるみたいね」

加持「そうか。まだ来てなかったのか。……落ちてくるっていうのは?」

ミサト「あ、うん。大気圏外からここに降って来るみたいよ。結構デカイ使徒らしいけど」

加持「……で、どうするんだ?」

ミサト「受け止めればいいかなって。そのままよ」

加持「…………そうか」

ミサト「?」


加持「………………」


真剣な顔つきで考え込む加持


ミサト「……?」

加持「なあ、葛城」

ミサト「何?」

加持「この前の避難の話、覚えているか?」

ミサト「そりゃ覚えているわよ。あれだけ真剣に言っていたんだもの」

加持「それなら、今回は避難してくれないか、葛城。今は司令も副司令も月に行っていていないから問題ないだろう。使徒は子供たちに任せておけばいいさ」

ミサト「でも……少し大袈裟じゃない?」


苦笑するミサト


加持「わかっているさ。だが、頼む。万が一の事を考えての事だ。俺は葛城が心配だからな」

ミサト「……そう……?//」

加持「ああ」キリッ

ミサト「…………うーん……そうね。……わかったわ。加持君の頼みだし、今回はレイやシンジ君に任せてみる事にする。少し心配だけど、レイがいるなら大丈夫でしょうし」

加持「すまないな」

ミサト「ううん、いいの。シンジ君たちも一人立ちするいい機会だし。それに……」

加持「…………」

ミサト「……加持君の心配が嬉しいからね」ニコッ……

加持「葛城」スッ……

ミサト「ダメよ、ここ廊下なんだから……//」

加持「そうだな……。残念だが、またの機会にするか」

ミサト「ええ……//」コクッ……

ー ネルフ本部、司令室 ー


シンジ「いいっ……!? 使徒を手で受け止めるんですか!?」

ミサト「そうよー。今回はすごく楽でしょ? 銃とかそんな面倒なもの使わなくていいし」

シンジ「……っ!!」

レイ「…………」

ミサト「ね、レイ? 楽勝よね?」

レイ「…………はい」

ミサト「うんうん。流石レイね、頼もしいわー。じゃ、そういう訳だから後はよろしくね」

シンジ「……え?」

ミサト「私たちは今回、全員、松代に避難するから。後は全部あなた達に任せるって事」

シンジ「…………」

レイ「…………」

ミサト「じゃ、シンジ君、しっかりね。レイの言う事をよく聞いて、二人で仲良くやるのよ」

シンジ「………………」

ミサト「返事は?」

シンジ「はい…………頑張ります……」

ミサト「シンジ君の成長ぶり、私に見せてちょうだいね。期待してるわよ」ニコッ

シンジ「…………はい」


うつむきながら、か細い声で返事をするシンジ…………


ミサト「…………」


それを見て少し考えるミサト

ミサト「……シンジ君」


急に低い声になるミサト


シンジ「」ビクッ

シンジ「は、はい!」

ミサト「……ひょっとして、私達がいなくて不安になってるの?」

シンジ「い、いえ、あの……!」アタフタ

ミサト「やっぱりね……。ま、仕方がないか……」

シンジ「違います! 大丈夫です!」

ミサト「隠さなくてもいいわよ。あなたが不安になるのはよくわかるから。それに責めてる訳じゃないの。まあ、態度はちょっち誉められたものじゃないけど、不安になる事自体はいい事だと思ってるし」

シンジ「…………?」

ミサト「不安になるっていうのはね、シンジ君。昔みたいにあなたがふざけている訳じゃないからよ。やり遂げなければいけないっていう責任感が芽生え始めてる証拠ね。決して悪い事じゃないわ」

シンジ「…………」

ミサト「特にシンジ君は前に失敗してるだけに、尚更そうだと思う。だって、私の出す指示に従ってる方がシンジ君としては遥かに楽だもの。そうでしょ?」

シンジ「………………はい」

ミサト「うん……。でもね、シンジ君。私達に頼りっぱなしでは、あなたはいつまで経っても自立出来ないの。それはわかるわよね? 大人になるってそういう事よ」

シンジ「…………」

ミサト「人はそれぞれ、頼るべきものを何個も心に持っている。でも、成長するにしたがって、それを一つずつ外していかなきゃいけない。やがて、自分が誰かから頼られる存在になるためにね」

シンジ「…………」

ミサト「それが出来ない内は、どれだけ体が大きくなってもシンジ君は子供よ。成長するってそういう事だと私は思う」

シンジ「…………」

ミサト「だから、今回みたいな、自分たちだけの力で何かを成し遂げるっていう機会は、今のシンジ君にとって良いきっかけになると思うの。例えそれがどんな些細な事であれ、それは自信へと繋がっていくはずなんだから」

シンジ「…………」

ミサト「……頑張りなさい、シンジ君。あなたは大人になれるわ。途中、辛い事や苦しい事もあるかもしれないけど、それをきっと乗り越えていけると思う。私はそう信じている」

シンジ「…………」

ミサト「あなたがここに来て以来、これまでずっと見てきた私が言うんだから間違いないわ。自信を持ちなさい」ニコッ

シンジ「…………はい。……激励、ありがとうございます、ミサトさん。すごい励みになりました。……僕、一生懸命、頑張ります」ペコリ……

ミサト「うん。きちんと無傷で倒してきたら、今度こそステーキ奢ってあげるわよ。しっかりね」ニコッ

シンジ「あ、はい。とても嬉しいです。やったあ」

ミサト「うんうん♪ 頑張りなさい」

ミサト「さてと、それじゃ私達はもう行くわ。後はしっかりね」クルッ

レイ「……あの、葛城三佐」

ミサト「ん? 何?」


首だけ振りかえるミサト


レイ「……後はこちらの判断だけで動かしても大丈夫でしょうか? …許可をとる必要はありますか?」

ミサト「ううん。なし。好きにやっていいわよ。私達は完全にノータッチにするつもりだから」

レイ「……念の為に、周囲一帯に避難命令を出したいのですが…それもいいですか?」

ミサト「OKよん。好きにして。予算を使わない限りは何をしてもいいわ」

レイ「……ありがとうございます」ペコリ

ミサト「うん。じゃねー」トコトコ……


プシュン……


司令室から出ていくミサト…………

シンジ「………………」

レイ「………………」


シンジ「……僕たち……今度こそ死ぬかもしれないね…………」

レイ「……そうね」


シンジ「……もし、使徒が落下して直撃した場合って、第三新東京市もネルフ本部もほとんど壊滅するんだよね……?」

レイ「……ええ。MAGIの計算ではそう出てる。…EVA全機の正しいデータと使徒のデータ補正を消して出したから…間違いないわ」

シンジ「……僕ら、逃げる事も出来ないのにね…………」

レイ「……そうね」


シンジ「………………」

レイ「………………」


シンジ「……とりあえず、避難命令だけは出しとこうか。……僕じゃ出来ないから、綾波お願いしていい?」

レイ「……ええ」

シンジ「……あと、式波にも伝えて来るよ。どうすればいいか、三人で話し合おう」

レイ「……ええ」コクッ

シンジ(それと……戦自にも連絡しておかないと……)

ー ネルフ本部、トイレ ー


曽根『……そうか。無茶ぶりもいいとこだな……。遂にそこまで酷くなったか…………』

シンジ「……あの……何かいい方法ってありませんか?」

曽根『……この前みたいに陽電子砲を使えれば……いや、今回は時間がないな。あと三時間程なんだろう?』

シンジ「はい……」

曽根『……残念だが、使徒のATフィールドを突き破れる程の大出力を出せるのは、戦自ではあれぐらいしかないからな…………』

シンジ「……じゃあもう、エヴァでしか……」

曽根『必然的にそうなるな……。そして、落下の軌道ももう変えられないというなら、本当に手がない。向こうはトマホークミサイルと一緒で上から落ちてくるだけだ。こちらは受け止めるか、途中で破壊するしかないからな』

シンジ「……そうですか……。打つ手、ないんですね……」

曽根『だから、今回は何を言われようと君達も避難した方がいい。EVAとMAGI、それに地下のリリスを運び出して逃げてくれ。避難命令は出ているが、今ならまだ、ネルフから協力要請があれば、戦自は動ける』

曽根『今回は前と違って、君達にフリーハンドが与えられてるんだから、それが出来るはずだ。だから、そうしてくれ』

シンジ「…………」

ー 関係各省に避難命令通達、全ネルフ職員避難後 ー

ー ネルフ本部、無人の発令所 ー


アスカ「……もういっその事、このまま逃げ出したいわね……」ポツリ……

シンジ「……そうだね……式波は逃げた方がいいと思う。逃げるあてもあるにはあるし……」

アスカ「……?」

シンジ「……どうする、式波? 弐号機持って逃げる?」

アスカ「アタシは…………」

レイ「……あなたは、そうした方がいいと思う」

アスカ「…………」


少し考えるアスカ……


アスカ「……シンジさんとレイは……?」

シンジ「……僕は無理だよ……。ここで逃げたらもうエヴァには間違いなく乗らせてもらえなくなるから……。二回目だし……ミサトが許すはずないもの……」

シンジ「……そうしたら、僕は親戚の家か父さんのところに行かなきゃいけなくなる。エヴァに乗れなくなったら……綾波も、式波も、真希波も、クラスのみんなも……僕はもう守る事が出来なくなるんだ」

シンジ「みんなが死ぬかもしれないのに、僕にはそんな事は出来ないよ……」

アスカ「…………」

レイ「…………」

レイ「…………私も……逃げない」

アスカ「…………」

レイ「ここにはお母さんのお墓があるし……それに……」

レイ「碇君を一人にはさせない……」

シンジ「……そっか…………。ありがとう、綾波……」

レイ「…いいえ。お礼を言わなきゃいけないのは、私の方だから……」

シンジ「…………僕の方だよ」

アスカ「………………」


シンジ「……それで、式波は?」

アスカ「……残ります。シンジさんやレイを置いて、アタシ一人だけ逃げられないですし」

シンジ「…………本当に……いいの?」

アスカ「はい」

レイ「…………ごめんなさい……」

アスカ「……別にいいわ……。大事なものを失くすぐらないなら死んだ方がマシって気持ち、アタシもわかるもの……」

アスカ「……それに……レイやシンジさんを死なせるぐらいなら、みんなで死んだ方がいい……。そっちの方が百倍マシよ……」ボソッ……

シンジ「……ごめん、式波…………」

アスカ「……いいんです。謝らなくても……」ボソッ……

シンジ「………………」

レイ「………………」

アスカ「………………」




シンジ「……それで、二人ともどうしたらいいと思う? もう時間もあまりないから、陽電子砲の準備も出来ないけど……」

レイ「…………三人で……受け止めるしかないわ」

アスカ「……やっぱりそうなるのね……。あんまり聞きたくないけど、それ、勝算はあるの……?」

レイ「…シミュレーションでは、99%強、失敗すると出てる。成功してもEVA三機を失うか大破。…MAGIは全会一致で撤退を推奨してる」

シンジ「……でも、それしかないんだよね…………」

レイ「……ええ」コクッ…

アスカ「成功確率1%以下なんて……これで成功したら正に奇跡じゃない……」ボソッ……

シンジ「……そうだね…………」ボソッ……

レイ「…………」

レイ「……それと、他にも問題が……」

アスカ「……まだあるの?」

レイ「…ええ。使徒の落下軌道を追うために、外部端末を使わないといけないけど、EVAの操縦をしながらだと、それが出来ないから」

シンジ「つまり、一人はそっちに専念しないといけないって事?」

レイ「そう」コクッ……

アスカ「でも、それだと二機で受け止める事になるわよね? 大丈夫なの、それ?」

レイ「……いいえ。落下予測範囲のカバーが出来なくなるから、成功確率は更に落ちるわ。その半分以下に」

アスカ「1%以下が0.5%以下に変わったって、今更、大した事ないわね……」

シンジ「そうだね……僕もそう思う」

レイ「…………ええ。そうかもしれない」


シンジ「……」ハァ……

アスカ「……」ハァ……

レイ「…………」


シンジ「…………それじゃ、僕、準備にかかるよ」

アスカ「……そうですね。ちゃっちゃっと終わらせたいですし」

レイ「…私は……EVAの配置をMAGIにシミュレートさせておくわ」

シンジ「じゃあ僕はケーブルとかの用意をしてるよ……。エヴァ使っていいよね、綾波?」

レイ「ええ」コクン

アスカ「あ、アタシも手伝います」

シンジ「ううん、いいよ、僕一人で出来るし。式波は綾波の手伝いをお願い」

アスカ「あ、はい…………」

シンジ「それじゃ先行ってるね」

スマホ「」ピピピッ

シンジ「電話?」

シンジ「」スッ……

シンジ(真希波からだ……。どうしたんだろ?)

シンジ「」ピッ

シンジ「もしもし、真希波?」


アスカ「」ピクッ……

レイ「……?」


マリ『やあやあ、ワンコ君、元気ー?』

シンジ「うん。元気……じゃないかもしれないけど……。どうしたの?」

マリ『どうしたもこうしたもないじゃん。曽根から聞いたよー。なんかそっちで面白そうな事やってるんだって?』

シンジ「……別に面白くはないと思うけど……。それより真希波、ちゃんと避難出来た?」

マリ『出来てるよー。もうすぐ着くとこかな』

シンジ「良かった。じゃあ、見つからないように気をつけてね」

マリ『うん。その点は抜かりないって。もう監視カメラの映像切り替えといたからね。ダミー映像流れてるはずだし』

シンジ「?」

マリ『あ、着いた。やっほー、みんなー』

プシュン……

< ヤッホー、ミンナー


アスカ「は!?」
シンジ「え!?」
レイ「……!」

アスカ「マリ! どうしてアンタがここに!?」

マリ「私も仲間に入れてもらおうと思ってさ。ちょいとヤバイ事になってるって聞いたもんでね。それにしても、ここ、忍び込むの簡単だねー。いくら人が誰もいないからって、ちょっとチョロすぎだよ」

シンジ「そんな事はどうだっていいよ! どうして避難しなかったの!」

マリ「だって、私一人だけ仲間外れなんて淋しいじゃん?」

アスカ「アンタ、バカァ! 見つかったらヤバイんでしょ!?」

マリ「監視カメラに細工してあるから問題ないよ。諜報活動まで教え込まれてたからね、私は。これぐらいお茶の子さいさいだって」

シンジ「いや、でも、それより……!」

レイ「…あと三時間程で使徒が来るわ。まだ間に合うから避難して」

シンジ「そうだよ、真希波! 早く逃げて!」

マリ「冗談やめてよ、ワンコ君。みんなをほったらかしにしてさ、私一人だけ逃げれる訳ないじゃん? 逃げるのは一回だけで十分だって。二回も出来ないよ」

アスカ「バカッ! 一回でも二回でも、逃げられるならいくらでも逃げればいいのよ! さっさと逃げなさいよ!」

マリ「お断りだね。折角、ここまで来たんだから、何もせず帰る訳にはいかないしさ。だいたい、みんなが死ぬかもしれないっていうなら尚更だよ。そうなんでしょ?」

シンジ「だけど……! 真希波はもう逃げれたんだから!」

マリ「だからだって。私、一人だけ安全なのは嫌なんだよ。……死ぬ時はさ、みんなで死ねばいいじゃん。ここにいなきゃ、私、この使徒を倒し終わった後、みんなに会わせる顔ないよ。良かったね、助かったね、次も頑張ろうね、なんて言えないよ。みんなと一緒に笑えないよ。心配ぐらいさせなよ。手伝いぐらいさせなよ。それぐらいいいでしょ? 良くないの? ダメなの? 私はそれさえもしちゃいけないの!?」


アスカ「う…………」

シンジ「…………」

レイ「…………」


その言葉と剣幕に押され、何も言えなくなる三人…………

マリ「……それでさ、何か私にも手伝える事ない? どうせ、人手、足りないんでしょ?」

レイ「…………あるわ」

シンジ「……綾波…………」

アスカ「…………」

マリ「サンキュー、レイちゃん。で、何?」

レイ「…ここでのオペレート。今、誰もいないからしてくれると助かる」

マリ「了解、了解。一応やり方軽く教えてくれる? ベタニアベースとは勝手が違うだろうからさ」

レイ「……ええ」コクッ

アスカ「待って」

マリ「?」

アスカ「……マリ、アンタ本当にそれでいいの? アタシ達が失敗したら、アンタ確実に死ぬわよ? オマケに成功する確率は1%以下よ。それでもいいの?」

シンジ「……僕たちは……エヴァの中にいるから、失敗してもまだ生きていられるかもしれない。だけど、真希波は確実に…………」

マリ「どうせ、どっちも似たようなもんだよ、きっと。それにさ……」

マリ「今の私の気持ち、みんなならわかってくれると思うんだけどね……。みんな、同じ様な境遇にいたんだからさ……。みんなをどうしても死なせたくないって気持ち……みんなしか、わからないと思うんだけどね……」


一人ずつ顔を見渡すマリ……


シンジ「…………」

アスカ「…………」

レイ「…………」


その言葉に、それぞれ想いを馳せる三人…………

アスカ(……そうね…………)

アスカ(……アタシが逆の立場でもきっと…………)

アスカ(……元々、アタシはママを守るために乗ってきたようなものだし…………)

アスカ(……それに今は…………)



レイ(……お母さんのお墓…………)

レイ(……私に残った最後の大切なもの…………)

レイ(……これだけを守る為に……お母さんの為に…………)

レイ(……他の事なんかどうでもよかった…………)

レイ(……でも、今は…………)



シンジ(……僕も…そうなんだよね…………)

シンジ(……綾波を助けようと思って、無理にエヴァに乗って…………)

シンジ(……その為に、色々我慢して…………)

シンジ(……辛い事や苦しい事……どれだけあったっけ…………)

シンジ(……でも、その度に他の誰かに救われて…………)

シンジ(……木田さんや曽根さん……綾波……トウジにケンスケ……クラスの皆…………)

シンジ(……母さんにも……助けられたような気がした…………)

シンジ(……それに、式波……真希波…………)

シンジ(……大切にしたい人が何人もいて…………)

シンジ(……でも、僕一人じゃどうしようもなくって…………)

シンジ(……みんなも、きっと一人じゃどうしようもなくって…………)

シンジ(……助けて……助けられて…………)

シンジ(……そうやって助け合っていかなきゃ…………僕らはもうダメなのかもしれない…………)

マリ「……私たちさ」

マリ「ずっと一緒にいよ?」



マリ「一人じゃどうしようもない事もさ」

マリ「みんなでやればどうにかなるよ」



マリ「一人じゃ耐えられない痛みだってさ」

マリ「みんなで分けあえばきっと耐えれるよ」



マリ「だからさ」

マリ「ずっと一緒にいよう」



マリ「それでさ」

マリ「ここから逃げれる様になったら」

マリ「みんなで逃げ出そう」



マリ「その時はさ、きっと私、役に立てると思うよ」

マリ「だから、私にも手助けさせなよ」



マリ「でなきゃ、やだよ……」



マリ「みんな、いなくなっちゃいそうで嫌だよ…………」






アスカ「……やめてよ……マリ…………そんな事……言うのやめてよ…………」



レイ「………………」



シンジ「…………大丈夫だから…………」

シンジ「……きっと…………僕がどうにかするから………………」



レイ「……ええ…………」

レイ「……私も………………必ず………………」










   




EVANGELION

It a small world


You can not redo , but you can advance


副題の邦訳


エヴァンゲリオン

この小さな世界


あなたはやり直す事が出来ない。しかし、進む事は出来る










    

ー 作戦開始前 ー

ー 初号機エントリープラグ内 ー


シンジ(……ケーブルとかのセッティング、ちょっと時間かかっちゃったな)

シンジ(……なんとか間に合ったからいいけど)

シンジ(……きっと、全部自分一人でやる事が段々当たり前になっていくってこういう事なんだろうな……)

シンジ(……どうにか間に合わせなきゃいけないから、無理矢理なんとか間に合わせて……)

シンジ(……それで、前に出来たから今回もやれるだろうって更に押し付けられて……)

シンジ(……積み重なってくばっかりで、減る事がないや)

シンジ(………………)

シンジ(……どうやったらこの生活から解放されるんだろう)

シンジ(……どこかで……早く終わらせないと…………)

シンジ(……でないと………………)

シンジ(………………)

ー 松代 ー


加持「…………」


空を見上げながら、一人タバコをふかす加持……


加持(……さて、舞台はきっちりと整えたが…………)

加持(……どうなる事やら…………)

加持(……ここで全てが終わる可能性もあるが、それではまだ早い……)

加持(……特に碇シンジ……彼の役割はまだ終わってはいない……)

加持(……これが無事に終わったら、彼とも接触してみるか……)

加持(……無事に終わったらの話だが…………)

ミサト「」トコトコ……

ミサト「……どうしたの、加持君?」


風で揺れる髪を軽く手で押さえながら近づくミサト


加持「……使徒を見ていた」

ミサト「そう」


ミサトも空を見上げる


加持「……もうすぐ落ちてくるな」

ミサト「ええ」


加持「…………」

ミサト「…………」


加持「自分の手で倒せないのが不満か、葛城?」

ミサト「そんな事はないわ……。復讐なんて愚かな行為だって、もう気がついたから」

加持「……そうか」

ミサト「私怨で使徒と戦うなんてバカらしい事よ……。負の螺旋的なパトスに飲まれるのはもう嫌なの」

加持「そうかもな……」

ミサト「あの子達を、私は信じて待つだけ……。それが今の私にとっては全てね」

加持「そうだな。子供達を信じよう。未来を作っていくのは彼らなんだから……」

ミサト「ええ……」ニコッ……

ー ネルフ本部、発令所 ー


ビーッ、ビーッ、ビーッ!!


マリ「来たよ、みんな! 用意はいい?」


シンジ『うん。大丈夫』

アスカ『いけるわよ!』

レイ『ええ』


マリ「二次的データは当てになんないから、後はみんなからこちらに指示を出して。出来る限りの事はするから」

マリ「……頼んだよ、ワンコ君、式ちゃん、レイちゃん」


シンジ『わかってる』

アスカ『アンタは…絶対死なせないから』

レイ『……任せて』



マリ「…………任せたよ」


使徒との距離、およそ二万キロメートルに到達!


マリ「みんな! 作戦開始!!」

マリ「発進!!」

ー 第三新東京市 ー


初号機「!」ダダッ!!

零号機「!」ダダッ!!

弐号機「!」ダダッ!!



アンビリカルケーブルを外して、一斉にスタートするエヴァ全機!!



初号機「」ダダダダダダッ!!

初号機「」ダンッ!!


道路の上を走り送電線を飛び越え、


零号機「」ダダダダダダッ!!

零号機「」ダンッ!!


山から飛び降り、


弐号機「」ズダッ!!

弐号機「」ダダダダダダッ!!


落ちてくる第八使徒めがけてひた走る!

第八使徒「」バリンッ!!


途中、ATフィールドを変質させ、姿を現す第八使徒!


マリ『軌道が変わった!?』

マリ『みんな、落下予測地点が変わる!!』

マリ『修正データを送るよ!!』



アスカ『くっ……! ダメ! アタシじゃ間に合わない!』


レイ『私が間に合わせる……! マリ…!』


マリ『何!? レイちゃん!!』


レイ『緊急コース形成…! 521から597…!』


マリ『了解!』カタカタ!!


ズーン、ズーン、ズーン……!!


地面から壁がせりあがり、新たなルートが出来上がる!


零号機「」ダダダッ!!


その上を走ってコースを変える零号機!



レイ『次…! 821から834…!』


マリ『はいよっ!』カタカタ!!


ウィーン、ウィーン、ウィーン……!!


地面から昇ってくる足場!


零号機「」ピョンッ、ピョンッ、ピョーンッ!!


その上を飛び上がってショートカットする零号機!!

零号機「」ダダダダッ!!


レイ『まだ……! もっと早く……!』


零号機「」ダダダダダダダダッ!!

キュイーン……!!



スピードアップによってもうもうと舞い上がる土煙!


車「」グラッ……ドンガラガッシャーン!!

車「」グラッ……ドンガラガッシャーン!!
車「」グラッ……ドンガラガッシャーン!!
車「」グラッ……ドンガラガッシャーン!!


衝撃波で吹き飛ばされる車の山…………

第八使徒「」ヒュイーン……

第八使徒「!」バサッ……!!


地面が近付き、姿を変形する第八使徒!



零号機「」ダダダダッ!!

零号機「」キキィッ!!



その真下に到達する零号機!


レイ『ATフィールド、全開…!!』


キュイーン……

ドシュッ……!!



家「」グラッ……ドンガラガッシャーン!!
家「」グラッ……ドンガラガッシャーン!!
家「」グラッ……ドンガラガッシャーン!!
家「」グラッ……ドンガラガッシャーン!!


吹き飛ばされる民家やビルや学校……!!

第八使徒「!」ズーン……!!

零号機「!!!」ガシッ!!


ドシュッ!!


落ちてきた第八使徒を手で受け止める零号機!!


第八使徒「」ズズッ……

第八使徒「」ガシッ!!


本体が顔を出し、零号機の腕を掴むと……


第八使徒「!」ドシュッ!!


レイ『きゃあああああああああっ!!!』


槍状に手が変化し、零号機の腕を突き刺す!!


アスカ『レイッ!!』

弐号機「」ダダダダッ!!


レイ『っっ……!!! ……ま…だっ……!!!』


零号機「!」メキョッ……ブシュッ……!!


しかし、機体がもたず潰されそうになる零号機!!

弐号機「」ダダダダッ!!


そこへ間一髪、飛び込む弐号機!


アスカ『お願い、ママ! レイを守って!!』

アスカ『ATフィールド、全開っ!!』


ドシュンッ!!!


広がるATフィールド!!


第八使徒「!?」ググッ……


押し戻される第八使徒!!


レイ『…碇君、早くっ!!』



シンジ『わかってる!! 綾波、あと少しだけ耐えてっ!!』


初号機「」ダダダダッ!!

初号機「」チャキッ!!


走りながらプログレッシブナイフを取り出すと……


初号機「」ダンッ!!

シンジ『うわぁああっっ!!!』


ズバッ!!
バシュッ!!


飛び上がって第八使徒のATフィールドを切り裂く!!


シンジ『やぁっ!!』

初号機「」ズガッ!!

キンッ!!


シンジ『そんな……!! 外した……!?』


コアが素早く動き、攻撃を外す初号機……!!

アスカ『シンジさん! 急いで! もうレイがっ!!』

レイ『平気っ……!! まだ…大丈夫……だからっ!!』


シンジ『わかってる……! でもっ……!!』


活動限界まであと30秒……!!


アスカ『早くっ! 早くしないとレイがっ!!』

シンジ『くっ……!!』


動き回るコアに狙いが定まらないシンジ……!


弐号機「」ググッ……!!

弐号機「!」ガシッ!!


シンジ『アスカ!?』


ATフィールドを突き破って、コアを掴みとる弐号機!!


アスカ『シンジっ! コアをっ!! 今の内にっ!!』

シンジ『わかったっ!!!』

シンジ『うおあああああっ!!!』


初号機「」ズガッ!!

第八使徒「!!!」


プログレッシブナイフを使徒のコアに突き刺すシンジ!!


シンジ『これで……!! 終わってっ……!!!』

初号機「!」バキッ!!


ナイフを押し込む様に膝蹴りをくりだす初号機!!


コア「」バリンッ!!

第八使徒「」ドサッ…………


ドシュンッ!!!


破裂する使徒! 光る十字架!

使徒の体から赤い体液が一斉に溢れ、それが津波の様に街へと押し寄せる!





第八使徒、殲滅!!

ー ネルフ本部、発令所 ー


マリ「……!!」

マリ「やったあっ……!! 倒したよ!! みんな、無事っ!?」


シンジ『……うん…………』ハァ……ハァ……

レイ『………………ええ…………』ハァ……ハァ……

アスカ『……っ…………マリ、急いで救急キットか何か持ってきて! エヴァの回収は後回しでいい! レイ、絶対怪我してるから!』

マリ『あ、ごめん! すぐ行く!』

レイ『……待って……! 来ちゃダメ……! あなた一人だと、きっと来れない……! 使徒の体液でこっちは高温の海になってるから……!』

マリ『だったら、ヘリでも何でも用意して行くよ! みんなもう内蔵電源切れて動けないんだから! 私が行かなきゃダ』

シンジ『あ……待って!』

マリ『?』

シンジ『真希波…………。僕……なんでか知らないけど動ける…………。内蔵電源もう切れてるのに…………』

マリ『へ……? 何で?』

シンジ『ううん……僕にもよくわからないけど…………? でも、何だか知らないけど動けるよ……??』

アスカ『……??』

レイ『…………』

シンジ『えっと……。とにかく……僕が弐号機と零号機を回収してそっちに向かうから、真希波は手当ての用意だけしといてくれる?』

マリ『え、うん……。わかった……けどさ…………??』

念のため


パトス

アリストテレス倫理学で、欲情・怒り・恐怖・喜び・憎しみ・哀しみなどの快楽や苦痛を伴う一時的な感情状態。情念。



ついでに、今日はここまで

ー 六時間後(マリ帰宅済み) ー

ー ネルフ本部司令室 ー


ミサト「…………」


シンジ「……」
レイ「……」
アスカ「」ビクビク……


ミサト「……零号機、中破。弐号機、小破。街は使徒の血だらけ。壊れた道路や家屋がたんまり。……どういう事かしらね、これ?」


シンジ「……すみません……」ペコリ……

レイ「……申し訳ありません」ペコリ……

アスカ「許して下さい! お願いします!」ペコリ!!


ミサト「謝りゃ済むってもんじゃないわよ、バカッ! 被害総額、億じゃ済まないでしょうが、これ!」


シンジ「……すみませんでした……」ペコリ……

レイ「……反省しています」ペコリ……

アスカ「ごめんなさい! ごめんなさい!」ペコペコ


ミサト「あんた達に期待した私が情けないわ、ホント! つくづく人に迷惑しかかけないわね!」フンッ


シンジ「……次は絶対ミサトさんに迷惑をかけないので、許して下さい」ペコリ……

レイ「……申し訳ありません。力量不足でした」ペコリ……

アスカ「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!」グシュッ……


ミサト「ああ、もう!」ガンッ!!


机を思いきり蹴るミサト

ミサト「大体、何でレイの零号機が一番壊れてるのよ! アスカの弐号機が壊れてるのはわかるにしても、おかしいでしょ、これ!」

シンジ「それは……!」

レイ「……すみません。私が途中、ミスをしました。……申し訳ありません。弐号機はそれに巻き込まれただけです」ペコリ……

アスカ「!?」

ミサト「……は? ……レイがミス?」

シンジ「あの、違います! 僕が二人の足を引っ張ったんです! そのせいで綾波と式波に迷惑をかけて!」

ミサト「…………」

アスカ「あ……いえ、あの……!」

ミサト「アスカ、あんたは黙ってて。喋らないで」ジロッ

アスカ「……!」

レイ「…葛城三佐。碇君は悪くありません。私がミスをしたからです」ペコリ……

シンジ「違います! 綾波は上手くやってました! 僕がモタモタしてたせいで零号機と弐号機が壊れたんです! すみません!」ペコリ!!

ミサト「…………ふーん」

ミサト「……ま、シンジ君の初号機が無傷な事を考えると、大方、そこの生ゴミのせいでしょうね。レイ、本当はそうなんでしょ? アスカが遊んでて迷惑をかけたのよね?」

レイ「…違います。式波は悪くありません」

ミサト「」チッ

ミサト「……な訳ないでしょうが」ボソッ

シンジ「あの、ミサトさん! 僕が悪」

ミサト「うるさい、シンジ君。喋らないで」ジロッ

シンジ「……!!」

ミサト「で、どうなの。レイ? あなた前にもアスカをかばったわよね? その優しさはレイのいいところだと思うけど、嘘をつかれるのは嫌いなのよ、私。怒らないから、正直に答えなさい」

レイ「…いえ。私のせ」

アスカ「ごめんなさい! アタシのせいです! レイさんはアタシをかばってくれてるんです! ごめんなさい!」ペコリ!!

ミサト「あ、そ。……やっぱりね。ホント、クズ過ぎて言葉もないわ、あんたには。さっさと死ねば?」

アスカ「あ…………!」グシュッ……

レイ「……葛城三佐。式波は」
シンジ「違います、ミサトさん! 式波は」

ミサト「」ダンッ!!

レイ「…………」
シンジ「」ビクッ!!


ミサト「もういいわよ。……三人とも、しばらく反省の為にそこに立ってなさい」クルッ

ミサト「」カツカツ……


そう言い残して、足音荒く去っていくミサト……

アスカ「」グシュッ、エグッ……

アスカ「ごめんなさい……アタシのせいで……」グスッ、ヒック……

アスカ「ごめん……レイ……」ポタポタ……

レイ「…いいえ。あなたは悪くない。……だから、泣かないで」

シンジ「……ごめん、綾波…………」

レイ「……いいえ」

アスカ「」グシュッ、ヒック……


泣き続けるアスカ…………


シンジ「式波。泣かないで。……多分、僕らは誰も悪くないから……」

アスカ「でも、でも……」エグッ、グシュッ……

シンジ「ミサト…………さんは機嫌が結構変わりやすいから……。僕が何とか後でなだめてみるから……。だから……」

アスカ「」グシュッ、エグッ……



レイ「…………」


二人をじっと眺めるレイ……

ー およそ30分後 ー


プシュン……

ミサト「」カツカツ……


冷たい表情のまま、再度、現れるミサト


シンジ「…………」

レイ「…………」

アスカ「」ゴシゴシ……



ミサト「…………」


三人の前に立ち、アスカ以外の顔を眺める


シンジ「…………」
レイ「…………」
アスカ「」ゴシゴシ……


ミサト「……碇司令と通信が繋がってるから。今から呼ぶわ」

ブンッ……


SOUNDONLY『……話は先に聞いた。使徒は殲滅したそうだな。ご苦労だった、葛城三佐』

ミサト「申し訳ありません。私の指示ミスで零号機と弐号機を破損、レイとアスカにも怪我を負わせてしまいました。責任は全て私にあります」

シンジ「!?」
レイ「…………!?」
アスカ「!??」

SOUNDONLY『構わん。人間である以上、ミスする時もあるだろう。二人には私からも謝っておく。君はよくやってくれた。責任を追求するつもりはない』

ミサト「ありがとうございます」

SOUNDONLY『ところで、パイロットは全員そこに揃っているか』

ミサト「はい」

SOUNDONLY『一人一人、話がしたい』

ミサト「わかりました」


シンジ「…………」
レイ「…………」
アスカ「…………」

SOUNDONLY『レイ』

レイ「…はい」

SOUNDONLY『怪我したそうだが、大丈夫か?』

レイ「…はい。軽傷です。問題ありません」

SOUNDONLY『そうか……。だが、無理はするな』

レイ「…………はい」

SOUNDONLY『……葛城三佐の責任は私の責任だ。許して欲しい。すまなかった』

レイ「…………はい」



SOUNDONLY『アスカ』

アスカ「は、はい!」

SOUNDONLY『この通り謝罪する。怪我をさせてすまなかった』

アスカ「…………いえ」

SOUNDONLY『これからも、その力を貸してくれ。宜しく頼む』

アスカ「…………はい」



SOUNDONLY『シンジ』

シンジ「……はい」


SOUNDONLY『…………』

シンジ「…………」


SOUNDONLY『…………』

シンジ「…………」


SOUNDONLY『……よくやったな』

シンジ「…………」


SOUNDONLY『…………』

シンジ「…………」


SOUNDONLY『…………』

シンジ「…………」


ミサト「シンジ君」ボソッ……


シンジ「…………はい。ありがとうございます……」ボソッ

SOUNDONLY『…………そうか』

シンジ「……はい」

SOUNDONLY『……それでは後の事は宜しく頼む』

ミサト「はい。お任せ下さい」


ブンッ……


消える画面…………


ミサト「…………」

ミサト「……レイ、シンジ君」


三人に背中を向けたままミサト


シンジ「…はい」

レイ「…はい」


ミサト「二度とこんな嘘の報告をさせないでちょうだいね」

シンジ「……はい。すみませんでした」

レイ「…はい。申し訳ありません」


ミサト「それと、そこの生ゴミは罰としてニ週間、夕食抜きで過ごす事。いいわね」

アスカ「……はい」

ミサト「シンジ君に言ってるのよ。耳が腐るから喋らないで」

アスカ「……」グスッ……

ミサト「シンジ君、いいわね?」

シンジ「はい……」

ミサト「もちろん、シンジ君もよ」

シンジ「……はい」

アスカ「!!」

ミサト「レイ。悪いけどそこの赤いやつについてはこれぐらいの罰で勘弁してやって。シンジ君も連帯責任になってるから、あんまり無茶な罰を与える訳にもいかないから」

レイ「……はい」

ミサト「じゃあ私はもう行くわ。後はレイに任せるから」

レイ「…はい。わかりました」

ミサト「シンジ君、それにレイ」

シンジ「はい……」

レイ「はい……」

ミサト「今回の件、一番辛いのは、期待を裏切られた私だっていう事をよく覚えておきなさい」

シンジ「…………はい。……すみませんでした」

レイ「…申し訳ありません」


ミサト「」カツカツ…………


無言で去っていくミサト…………

ー その夜 ー

ー ミサト宅、アスカの部屋 ー


アスカ「…………」


ベッドの上で月明かりを眺めるアスカ…………



アスカ「…………」



アスカ「…………」



アスカ「…………」



アスカ「…………」



アスカ「…………ごめん、ママ………………」ボソッ……



ゴミ箱に捨てられた弐号機のぬいぐるみ「…………」


ズタズタに切り裂かれたサルのぬいぐるみ「…………」



アスカ「……アタシ……現実を見るって決めたから…………」ボソッ……


アスカ「……過去より……未来を大事にするって決めたから…………」ボソッ……


アスカ「……ママより……大切な人が出来たから…………」ボソッ……

コンコン……


アスカ「」ビクッ……


『式波、僕』ボソボソ


アスカ「……はい」ボソボソ

『夕飯なくてお腹空いたでしょ? ミサト、さっき寝たから何か買ってくるよ。何がいい?』ボソボソ

アスカ「……それならアタシが行きます。シンジさんは家にいて下さい」ボソボソ

『式波はダメだよ。もし、ミサトに見つかったら間違いなく叩かれるよ。だから、僕が行くよ』ボソボソ

アスカ「シンジさんだって、ミサトに見つかったら怒られるに決まってます。だから、アタシが行きます」ボソボソ

『僕は大丈夫だよ。慣れてるから。それに式波の方が間違いなくミサトは怒るから僕が行くよ』ボソボソ

アスカ「……じゃあ要りません。シンジさんの分だけ買ってきて下さい。それならもし見つかっても、アタシが頼んだ事にすれば、多分、シンジさんはそんなに怒られないですから」ボソボソ

『そんな事出来る訳ないよ』ボソボソ

アスカ「だったら、アタシがシンジさんの分だけ買いに行きます。待ってて下さい」ボソボソ

『……ダメだよ』ボソボソ

アスカ「いいえ、行きます。アタシの責任ですから」ボソボソ

『………………じゃあ、もう行かないから……。式波もそこにいて。それでいい?』ボソボソ

アスカ「…………」

アスカ「はい……」

ー 深夜 ー

ー シンジの部屋 ー


シンジ「」zzZ……


布団に寝転がって眠るシンジ



ソッ……パタン……


アスカ「…………」


買い物袋を引っ提げたアスカがそっと部屋に訪れる

アスカ「……」ソッ……


買い物袋からお菓子や缶詰を取り出し、シンジの枕元に置いていく


アスカ「」カキカキ……

『遅くなってごめんなさい。沢山買ってきたので、ミサトに見つからない場所に隠しておいて下さい』


アスカ「……お休みなさい」ボソボソ

アスカ「」クルッ……


置き手紙を置いて帰ろうとするアスカ


アスカ「」ソッ……


襖に手をかける。



\ ガチャッ /


不意に、ミサトの部屋のドアが開く音


アスカ「!?」ビクッ!!

アスカ(……ヤバイ!!)

アスカ(……気づかないで!)アセアセ


その場で固まるアスカ


シンジ「んっ…………」


ふと起きるシンジ……


シンジ「…………」


シンジ「……!?」

アスカ「!?」


目が合う二人……

\ ガチャッ /


冷蔵庫を空ける音……


『……何よ、オレンジジュース切らしてるじゃないの、アイツ…………』

『……なに考えてるんだか…………』


微かに聞こえる不機嫌そうなミサトの声……


シンジ(まずい!!)
アスカ(まずい!!)

シンジ(こっちに来る!!)
アスカ(絶対こっちに来る!!)

シンジ(ここにアスカがいるのがわかったらミサト間違いなくキレる!!)
アスカ(ここにアタシがいるってわかったらシンジさんまで怒られる!!)


シンジ(アスカ!)


咄嗟に布団をめくるシンジ


アスカ(……!!)タタッ


慌ててそこに潜り込むアスカ

『…………』


シンジ「」ドキドキ……
アスカ「」ビクビク……


布団の中で震える二人……


『……ああ、そういえば美容の為にゴーヤ茶に変えたんだっけ…………』


\ コンッ、トポトポ…… /


\ カタン…… /


コップを流しに置く音……


\ ガチャッ、バタン…… /


やがて、ドアが閉まる音が聞こえる……



シンジ「」ハァ……
アスカ「」ハァ……


布団の中で息をつく二人……

シンジ「助かったね……」ヒソヒソ

アスカ「はい……」ヒソヒソ


小声で会話する二人…………


シンジ「でも、何で式波が僕の部屋に?」

アスカ「あ、その……」

シンジ「……その…?」

アスカ「……シンジさんの食べる物、買ってきたので……」ボソッ……

シンジ「え?」

アスカ「…………ごめんなさい……」シュン……

シンジ「…………」

アスカ「…………」

シンジ「…………」


布団の中で向き合ったまま、しばらく無言の二人…………



アスカ「……あの……アタシ、戻ります…………」シュン……

シンジ「待って」

アスカ「?」

シンジ「まだ……ミサト、寝てないと思うから。……もうしばらくしてからの方がいいと思う」

アスカ「…………」

アスカ「…はい。そうします」

アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「あの……シンジさん」

シンジ「…何?」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「……今日、アタシの事……名前で呼んでくれましたよね…?」

シンジ「…………ごめん」

アスカ「……ううん。……これから、名前で呼んで下さい」

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「……うん」




アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「…良かった」ニコッ……

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「…………」

アスカ「……あの、アタシも……名前で呼んでいいですか?」

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「……うん」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「……敬語……使わなくても嫌いになりませんか……?」

シンジ「……うん。使わないで……」

アスカ「…はい」ニコッ



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「…………」


シンジ「……式波は……アスカは…どうしてエヴァに乗ってるの……?」

アスカ「…………」



シンジ「…………」

アスカ「その……言わなきゃ…ダメですか?」

シンジ「……ううん」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「その内……必ず言いますね」

シンジ「…………うん」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



シンジ「……敬語、なおらないね」

アスカ「…その内、なおします」

シンジ「……うん。ゆっくりでいいと思う……」

アスカ「」コクッ……



シンジ「…………」

アスカ「…………」



シンジ「…………」

アスカ「…………」



アスカ「……シンジ…//」

シンジ「……何?」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「ううん…// ……もう、アタシ行きますね」

シンジ「……うん」




アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「…行きますね//」

シンジ「……うん」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「…………」

シンジ「…………」



アスカ「……」スクッ……


シンジ「アスカ……」

アスカ「?」

シンジ「ありがとう…」

アスカ「…………」


アスカ「いいえ…//」ニコッ……

シンジ「うん……」



アスカ「……」ソッ……


襖に手をかけるアスカ……


アスカ「…お休みなさい…//」

シンジ「お休み……」


スッ……ソーッ……

パタン……


そっと部屋から出ていくアスカ…………

ー アスカが出ていった後 ー


シンジ「…………」



シンジ「…………」



シンジ「…………」



シンジ「…………」



シンジ「…………」



シンジ「…………」



シンジ「…………」



シンジ「……どうしよう…………」ボソッ……



シンジ「……どうすればいいんだろう……僕…………」ボソッ……



一人呟くシンジ…………

冬月「止まったな…」

ゲンドウ「あぁ…」

保守と生存報告
もう少し待って下さい

ついでに同じ酉を使ってる人がいたので酉を変えます

あぁ…それ俺ですわ
途中から使いだしたの俺の方なのに
すみませんでした…

面白いので楽しみにしていますね

ー 三日後 ー

ー 学校、教室、昼休み ー


シンジ「え? 今日はやる事、何もないの?」

レイ「…ええ」

アスカ「マリとアタシとレイの三人で、昨日、頼まれてた仕事を一気に終わらせたの」

レイ「……」コクッ……

シンジ「そうなんだ……。いつの間に……」

アスカ「やっぱ三人だと早いわ。ね、レイ?」

レイ「ええ」コクッ……

シンジ「そっか……。ありがとう、式波」

アスカ「ううん♪」

レイ「…それで、碇君」

シンジ「うん」

レイ「明後日の日曜日……みんなで水族館に…//」

シンジ「あ、そっか。うん。わかったよ。じゃあ、10時ぐらいから行く? 午前中から行けば、家事も充分間に合うし」

レイ「ええ…//」コクッ

アスカ「じゃあ、アタシ、マリにもそう伝えときます。今日、ネルフからの帰りにちょっと寄る事になってるし」

シンジ「真希波のとこに?」

アスカ「ええ。ちょっと頼まれてる事があるんで」

シンジ「そう……」

レイ「……?」

ー 学校終了後 ー

ー ネルフ本部、廊下 ー


シンジ「シンクロテスト。今日も早く終わって良かったね」

アスカ「はい。それじゃ、シンジさん。アタシは先に行きますね」

シンジ「……うん」

アスカ「」タタタッ……


軽快に走り去るアスカ


シンジ「…………」


それを見送るシンジ



加持「よっ」


不意に後ろから声がかかる


シンジ「?」クルッ

加持「君が碇シンジ君かい? 葛城のところに住んでるサードチルドレンだろ?」

シンジ「はい……そうですけど…………?」

加持「俺の名前は加持リョウジ。特殊監査部に所属している。よろしくな。君の事は葛城からよく聞いているよ」

シンジ「ミサト……さんから?」

加持「そうさ。彼女の寝相の悪さを知ってるのは、君だけじゃあないぞ」

シンジ「……寝相の…………」

加持「まあ、そう警戒するなよ。ほら」スッ……


缶コーヒーを差し出す加持


加持「お互いの親睦を深める為に、これからデートでもどうだい?」

シンジ「……僕、男ですよ」

加持「ノープロブレム。……愛に性別は関係ないさ」スッ……

シンジ「やめて下さい」スッ……


近付いてきた顔を手でどけるシンジ


加持「おっと……。こりゃまた参ったね。からかいがない」

シンジ「……僕、その気はありませんから」

加持「怒るなよ。冗談さ。ま、軽く付き合ってくれ。それぐらい構わないだろ?」

シンジ「……いいですけど」

ー 第三新東京市、郊外 ー

ー マリの墓 ー


シンジ「ここって……」

加持「俺の教え子の墓だよ。君も名前ぐらいは聞いた事があるだろう? 真希波・マリ・イラストリアス……フォースチルドレンだ」

シンジ「…………はい」

加持「司令に頼んで、墓を建てさせてもらった。時々、ここに来るんだ。……彼女を助けられなかったからな」

シンジ「…………そうですか」

加持「すまないが、先に挨拶させてもらうよ。花も取り替えないといけないしな」

シンジ「……どうぞ」

加持「……ああ」


墓の前まで行き、かがみこんで神妙な顔で手を合わせる加持……


シンジ「………………」


それを眉を寄せて眺めるシンジ

加持「……すまなかったな、マリ…………」

シンジ「…………」


しばらくそのまま無言の二人……



加持「…………」

シンジ「…………」



加持「…………」

シンジ「……加持さん。どうして僕をここに?」


加持「特に意味はないさ。……一人で来るのが気まずかったからな。それだけだよ」

シンジ「…………そうですか」


加持「……シンジ君」

シンジ「……はい」


加持「……マリがどうして亡くなったかを君は知ってるかい?」

シンジ「…………」

加持「……ベタニアベースには使徒がいたんだ。南極の永久凍土から発見された使徒がな」

加持「その使徒が封印システムを破って、外に飛び出してしまった。マリはその迎撃に向かったんだ」

加持「だが、マリの乗った仮設五号機は暴走。使徒のせいで基地の自爆装置まで作動してしまった」

シンジ「…………」

加持「俺達は必死でどうにか止めようとしたさ。暴走も、自爆装置も」

加持「だが、止められなかった」

シンジ「…………」

加持「カウントが残り200秒を切ったところで、俺は基地についてはもう諦めたよ。だが、せめてマリだけでも助けたかった。あいつは俺の教え子だったからな」

シンジ「…………」

加持「他の職員が次々と避難していく中、俺は最後まで残ってどうにかエントリープラグを緊急脱出させようとあがいたよ。そんな時、奇跡的にマリとの通信が繋がったんだ」

加持「あいつは、はっきりと俺にこう言ったよ」

加持「逃げて下さい、加持さん。そして、私の分まで生きて……ってな」

シンジ「………………」

加持「その後の事は、ろくに覚えていない……」

加持「気がついたら、俺は救助用のヘリに乗せられていたよ。気を失っていたらしい。そして、不思議な事に体には傷一つなかった……」

加持「今でも俺は思うんだ。爆発の時にマリが俺の事をかばってくれたんじゃないか……。そんな風にな」

シンジ「………………」

加持「もちろん、真実がどうだったのかはもう誰にもわからない。基地はおろかエヴァまで蒸発しちまったからな……。確かめる術がないんだ」

シンジ「………………」グッ……


知らず知らずの内に拳を強く握り締めるシンジ……


加持「ただ、俺だけじゃなく、ベタニアベースの全職員はマリに命を助けられた。それだけは事実だ。だから俺を含めた全職員がこうして今も生きている……」

加持「俺なんかには本当にもったいない、よく出来た教え子だったよ。マリには感謝してもしきれないな……」

シンジ「………………」ググッ……

加持「…………」

シンジ「…………」


またしばらく無言の二人……


加持「……シンジ君。君は今……幸せかい? 話を聞くと葛城にずいぶん厳しくされてるようだが……」

シンジ「…………」

シンジ「いえ……とても良くしてもらっていて幸せです」

加持「そうか……。それならいいさ。葛城はあれで本心を隠す事が結構多いからな」

シンジ「…………」

加持「ここだけの話だが、葛城は君の事をべた褒めしていたぜ。褒めると調子に乗りそうだから、面と向かっては褒めないとは言っていたけどな」

シンジ「……そうですか」

加持「君に厳しくするのも愛情の裏返しさ。結果的にそれが君の為になると思っての事だ」

シンジ「…………」

加持「もちろん、君にとっては少しぐらい辛い事もあるかもしれない。だけどな、シンジ君。辛い事を知っている方が、その分、人に優しく出来る。それは弱さとは違うからな」

シンジ「……そうですか」

加持「人は強くなければ生きていけない。優しくなければ誰もついてこない。それは今の君にとって必要なものだ」

シンジ「…………」

加持「いつかその意味が君にもわかるさ……」

シンジ「…………」

加持「……葛城は好きかい?」

シンジ「…………好きです」

加持「そうか……。それならいいさ」

シンジ「…………」

加持「いざという時は……あいつを守ってくれ。それは俺には出来ない、君にしか出来ない事だからな。……頼んだぞ」

シンジ「…………」

シンジ「……わかりました」

加持「……すまないな」

シンジ「いえ……」

加持「…………」

シンジ「…………」


シンジ「……もう、話は終わりですか?」

加持「ああ……。だけど、俺はもう少しここにいるよ。マリが淋しがるだろうからな……。君はどうする?」

シンジ「……帰ります」クルッ

加持「一人で帰れるのか?」

シンジ「はい。一人で帰れます」

加持「……そうか」

シンジ「さようなら、加持さん」テクテク……

加持「気をつけて帰るんだぞ」

シンジ「…………」テクテク……


加持「…………」

ー シンジがいなくなった後 ー


加持「」カチッ、シュボッ

加持「」フーッ……


タバコを吸う加持


加持「まあ、今はこんなものか……」

加持「あの年齢であそこまで我慢出来るのは立派だが、立派すぎるのも困りものだからな。あれぐらいは言っておいた方がいいだろう」

加持「……君はさ、我慢をし過ぎなんだよ、碇シンジ君。そこは少しだけマリを見習ってほしいところだな」


加持「」フーッ……

加持「…………」


そして、墓を眺める


加持「思わぬ誤算も出ちまったが、マリの存在は意外と役に立ってくれてるようだな……」

加持「アスカの保険としては充分使える、か…………」


墓にもたれかかり、シンジの消えた方角へと語りかける加持


加持「シンジ君、マリをよろしくな。あいつはいいやつだぞ」

加持「そして、これまで以上にレイやアスカと一緒に仲良くやってくれ」

加持「そうでないと、この世界は終わらない」

加持「……そして、始まらないんだ」

ー 同時刻、マリのマンション ー


ピンポーン

ガチャッ


マリ「やあやあ、式ちゃん。わざわざ悪いねえ」

アスカ「いいわよ、別に。そんな大した事じゃないし。はい、これ」


受取書を渡すアスカ


マリ「ん。ありがと♪ 嬉しいにゃ」

アスカ「明日には届くって。……それにしても、よくこんな高い物を買う気になったわね」

マリ「んー……ま、ね。ちょっと羨ましくなっちゃったからさ」

アスカ「そう」

マリ「うん」

アスカ「…………」

マリ「ダメかにゃ……?」

アスカ「ダメって事はないわよ。……ただまあ……そういう事。アンタだってわかってるでしょ?」

マリ「ん……ごめん。でもね……」

アスカ「別にいいわよ……。アンタの事、嫌いじゃないし……。嫌いになんかなれないし……」

マリ「私は式ちゃんの事が好きだよ。ま、そうは言っても色々あるんだけどさ……」

アスカ「わかってる。……じゃないわね……わかってるつもり。わかってないかも知れないけど、わかってるつもり」

マリ「うん……。何となく言いたい事はわかるよ」

アスカ「そう……」

マリ「…………」

アスカ「…………」

マリ「式ちゃん。よかったら上がってく?」

アスカ「ううん。悪いけど、もう帰るわ。家事をシンジさんだけに任せる訳にはいかないし。シンジさん、そのままにしとくとアタシの分まで全部やっちゃうから」

マリ「そっか……。そうだよね、ワンコ君そんな感じだもんね」

アスカ「ああ、それと、伝言。みんなから」

マリ「何?」

アスカ「明後日の日曜日、水族館行く事になったから。マリ、アンタは予定、大丈夫よね?」

マリ「おっと♪ ついに行けるんだね。もち大丈夫だよー」

アスカ「じゃあ十時に現地集合だから。場所はわかる?」

マリ「うん。地図にも載ってるし平気だよ」

アスカ「変装してきなさいよ、ちゃんと」

マリ「わかってる、わかってる」

アスカ「あと、アタシ達は尾行をまかなきゃいけないから、少し遅くなるかもしれないわ。もし遅くなっても電話はかけないでよ」

マリ「了解」

アスカ「ん……まあ、それぐらいかな。じゃあね。もう行くから」

マリ「あ、うん……。バイバイ」

アスカ「……。バイバイ」

マリ「また来てねー」

アスカ「ああ、もう! また今度来るわよ! だからそんな顔しないでよ!」

マリ「え? 私、どんな顔してたの?」アセアセ

アスカ「もういい! とにかくまたね!」

マリ「…………」



マリ「……うん。またね、式ちゃん」ニコッ

アスカ「ふんっ!」スタスタ

ー 夜 ー

ー レイの家 ー



鍋「」コトコト……

レイ「……」


鍋の中の味噌汁をじっと眺めるレイ


レイ「……」スッ……


お玉で軽くお碗にすくう


レイ「」ゴクッ……

レイ「……」


レイ「……美味しい」






レイ「……お母さんの味…………」


レイ「……まごころの味…………//」


途中、名前欄誤爆しました
orz

まだ生きてます

ー 日曜日、朝 ー

ー レイのマンション ー


レイ「……お弁当、全員分」

レイ「……それにレジャーシート」

レイ「あと……お味噌汁//」


レイ「なんだか……ドキドキする……//」


レイ「……お母さんとキャンプに行った時みたい……//」


レイ「みんな……食べてくれるといいけど……//」


レイ「服も……」

レイ「碇君に買ってもらった服……///」

レイ「碇君……覚えてくれているといいけど……///」

ー マリのマンション ー


マリ「……んー。まあ、こんなもんかにゃ」クルッ

マリ「変装のために帽子被らなきゃいけないから、髪をいじれないのが残念だけど、ま、それはしょーがないよね」

マリ「この日の為にと買っておいた、背中の露出多目なタンクトップとミニスカート。ワンコ君、覚悟しなよ♪ 色気じゃ私は誰にも負けないんだから」

マリ「っと、もうそろそろ行かないと。えーと、お弁当、お弁当っと」ゴソゴソ

マリ「みんなの分も合わせて一杯作ったから、ワンコ君、きっと喜んでくれるにゃ♪」


時計をちらりと見るマリ


マリ「んー……ちょいと早いけどもう行こうかな。なんかもう待ちきれない感じだしさ。向こうで待ってればいいよね。うん、行こう」

マリ「水族館。水族館ー♪」ガチャッ


マリ「楽しみだなあ♪」タタッ

ー 水族館近く ー


アスカ「ふーっ……ようやくまいたわね」

アスカ「時間はっと……うん、まだ10分近くある。これなら余裕ね」

アスカ「にしても、今日はなんかしつこかったわね、諜報部のやつ……。おかげでシンジさんと二手に別れてまく事になっちゃったし……」

アスカ「おまけに結構走っちゃったから、お弁当の中身が心配ね。今日はアタシが腕によりをかけてみんなの分を作ったっていうのに……」

アスカ「……アタシの初手料理……// シンジさん、気に入ってくれるといいけど……//」

アスカ「って、シンジさん、もう先に来てるかな? 急がないと」タタタッ

ー 水族館前 ー


マリ「あっ、おっはよー、式ちゃん!」

アスカ「おはよ。朝から元気ね、アンタ」

レイ「…おはよう」

アスカ「おはよ。アンタも今日は何だか少しだけ元気ね。いい事よ」

レイ「そう……?」

アスカ「ええ、そうよ」

マリ「そういう式ちゃんも何だか少しハイテンションじゃない?」

アスカ「そりゃそうよ。こんな風に皆でどこか遊びに行くのってアタシ初めてなんだから// 仕方ないでしょ」

マリ「にゃ、私もだよー!」

レイ「……私も」

アスカ「……そっか…// アタシだけじゃないんだ」ニコッ

マリ「うん。楽しみだよねえ」ニコッ

レイ「……ええ」コクッ

マリ「で、式ちゃん、ワンコ君は?」

アスカ「え? ああ、まだ来てないんだ……。途中で尾行まく為に二手に別れたから、多分、すぐ来ると思うわよ」

マリ「そっか。じゃ、もう少し待ちだね」

レイ「そうね」

アスカ「……ところでさ、マリ」

マリ「ん? 何?」

アスカ「アンタ、その格好、ちょっと派手すぎじゃない? 目立たないようにしてこないとまずいんじゃないの?」

マリ「んー……そうかにゃ? サングラスかけてきたし、帽子もかぶってきたから平気だと思うんだけど」

アスカ「じゃなくて、服よ服。その……胸とか背中とか脚とか……それ強調しすぎでしょ。嫌でも目立つわよ」

マリ「そんな事あるかなー? どう思う、レイちゃん?」ポヨン

レイ「……大きい」

アスカ「……むう」


マリ「そういう式ちゃんは、相変わらず今日も可愛い服だよね。ホント、お姫様みたいで羨ましい」

アスカ「な// そ、そんな事ないわよ!」

レイ「お姫様…?」

アスカ「ち、違うわよ// 別にアタシは、その……。ああ、もう、やめてよ、マリ! 変な事言わないで!//」

マリ「はいはい。照れ屋、照れ屋♪」

アスカ「違うのに……もう……//」


マリ「で、レイちゃんはお嬢様って感じかな? よく似合ってるよね、その服」

レイ「……ありがとう…//」

アスカ「スカートとお揃い? 一緒に買ったの?」

レイ「……//」コクッ

レイ「……碇君に、買ってもらったの///」

アスカ「は!?」
マリ「にゃ!?」


アスカ「あのさ……ちょっとレイ」ズイッ

マリ「……その話、かなり詳しく話してもらおうかにゃ」ズイッ

レイ「……?」

アスカ「で、どういう経緯を辿ってそういう事になったの?」ズズイッ

マリ「どこをどうしたらその服を買ってもらうなんて事になるのかにゃ?」ズズイッ

レイ「……??」


レイ「これは……前に碇君がプレゼントをしたいって言ってくれたから……//」

アスカ「!!」
マリ「!!」


レイ「だから……二人で一緒に買い物に……//」

アスカ「…………そう……なの……」シュン……
マリ「…………そう……なんだ……」シュン……


レイ「きっと、私の持っている服が制服しかなかったから、だから……」

アスカ「ん?」
マリ「へ?」


レイ「その事を言ったら、前のお返しもしたいからって碇君が……」

アスカ「…………」
マリ「…………」


アスカ「……レイ、一つ聞いていい? アンタ、何で制服一着しか持ってなかったの?」

レイ「前に持っていたのは…全部捨てられてしまったの。服だけじゃなくて、他の物もほとんど」

マリ「あ…………」
アスカ「ごめん……辛い事聞いたわね……」

レイ「」フルフル……

レイ「今は、私にはみんながいるから…。だから、もういいの。平気…//」

マリ「…………」
アスカ「…………」

マリ「……うん。私にもレイちゃんと式ちゃんがいるし」ニコッ

アスカ「アタシにもよ」ニコッ

レイ「…//」コクッ……

ー 数分後 ー


シンジ「ごめん、みんな、お待たせ」タタタッ

アスカ「シンジさん!」

マリ「ワンコ君!」

レイ「碇君……」

シンジ「ごめんね。少し尾行まくの手間取っちゃって。みんな、待った?」

マリ「ううん。それより早く行こ、ワンコ君♪」グイッ

シンジ「えっ/// あ、ちょっと、真希波。手……///」

アスカ「!?」

レイ「……?」

マリ「えー、いいじゃん、手ぐらい。ね?//」

シンジ「いや、でも、あの……///」

アスカ「」ムーッ!

レイ「…………」

アスカ「マリ。『シンジ』が嫌がってるじゃないの。離しなさいよ」グイッ

マリ「にゃっと……。ん? え? シンジ?」ピクッ

シンジ「別に嫌がってる訳じゃないよ。けど……ただその……少し恥ずかしかったから……//」

アスカ「だって、マリ。ほら、行くわよ」グイッグイッ

マリ「いや、式ちゃん、ちょっと待って。今、シンジって名前で呼ば」

アスカ「いいから、行くわよ。もう!//」スタスタ


レイ「…………」

シンジ「行っちゃったね……」

レイ「ええ」

シンジ「ところで、綾波……その服……」

レイ「……///」コクン……

シンジ「そっか……//」

レイ「うん…///」

シンジ「じゃあ、僕たちも行こうか」

レイ「ええ…//」コクッ……

職員「それではまずはこちらへ……」

アスカ「はーい♪」

マリ「ワクワクするなあ♪」

シンジ「そうだね」ニコッ

レイ「……ええ」コクッ


ー 長波放射線射式滅菌処理室 ー

バシュッ
バシュッ
バシュッ
バシュッ

「…………」

「…………」


ー シャワー室 ー

「熱っ!!」

「にゃっ!! 熱ーっ!」


ー 有機物電離分解型浄化浴槽式滅菌処理室 ー

ブクブク……
ブクブク……
ブクブク……
ブクブク……


ー シャワー室 ー

「やあっ! 冷たいっ!!」ピョンピョン

「…………」


ー 有機物電離分解型再浄化浴槽式滅菌処理室 ー

ゴボゴボ……
ゴボゴボ……
ゴボゴボ……
ゴボゴボ……


ー エアーダクト室 ー

「いやああっー!!」

「うにゃあー!!」


ー 有機物電離分解型再々浄化浴槽式滅菌処理室 ー

ゴポゴポ……
ゴポゴポ……
ゴポゴポ……
ゴポゴポ……


ー 全滅菌処理工程完了 ー



アスカ「予想してたのと全然違ったわ……」ハァ……

シンジ「これ、本当に息抜きになるのかな……」ハァ……

マリ「久しぶりに、とんだ目にあったにゃ……」ハァ……

レイ「……?」

ー 水族館、エレベーター内 ー

チーン……

ガコッ……


ドアが開くと……

目の前には巨大な水槽が……


シンジ「うわあっ……!」

アスカ「へえ……♪」

レイ「魚……」

マリ「すっごいじゃん♪」

シンジ「これがセカンドインパクト前の生き物なんだ……」

マリ「見て見て、ワンコ君。向こうにでっかい魚がいるよー。あれ、クジラってやつじゃない!」

シンジ「すごい、本当に大きいや」

アスカ「ねえ、シンジ、シンジー。こっちこっちー。ペンペンっぽいのが沢山いるー!」

シンジ「ペンペン? 本当に、アスカ?」タタッ

マリ「アスカ? え、ちょっ、ワンコ君! なに、アスカって。どういう事ー!」タタッ


レイ「…………」


アスカ「なにしてんのよ、レイー。アンタもこっち来なさいよ。はぐれるわよー」

レイ「私…も……?」

アスカ「当ったり前じゃないの、早く来なさいよ。置いてっちゃうわよー」

シンジ「綾波も来なよー。こっちいにいるの、ペンギンっていう鳥だよ。可愛いからきっと気に入ると思うー」

マリ「レイちゃん、早く早くー」


レイ「……」


レイ「ええ…//」コクン……

レイ「」タタッ

ー 一通り皆で楽しく見学した後 ー

ー 休憩所 ー


マリ「さあて、ご飯にしよーか♪ お弁当たっぷり作ってきたから遠慮なく食べてねー」ジャーン

アスカ「久しぶりだったけど、腕によりをかけて作ったわよ。皆、お腹空いたでしょ。食事にしましょ」ジャーン

レイ「……全員分、お弁当作ってきたから。……食べて」ソッ……


シンジ「」


マリ「え?」

アスカ「え?」

レイ「え……?」


マリ「みんな、作ってきちゃったの!?」

アスカ「だ、だって、お弁当持ってくるなんて誰も言ってなかったじゃない!」

レイ「だから……。誰も持ってくるって…言ってなかったから……」


シンジ「」


アスカ「どうすんのよ、こんなに一杯のお弁当ー!!」

ー 10分後 ー


マリ「どう、ワンコ君、美味しい?」ニコニコ

シンジ「うん。真希波ってやっぱり料理上手だよね。味付けとか焼き加減とか見習いたいな」

マリ「にゃは♪ そう言ってもらえると嬉しいなあ。もし良かったら、今度、ワンコ君の作った料理も食べてみたいな、私」

シンジ「ああ……それなら今度何か持っていくよ。そんな大した物は作れないけど……」

マリ「ホント!? ありがとー、ワンコ君!// 嬉しいよー!」

アスカ「」ムーッ……

レイ「…………」



アスカ「シンジ、アタシのも食べてよ。美味しく出来たんだから。頑張って作ったのよ」

シンジ「うん。知ってる。朝早くから起きて作ってたの、見てるから。ありがとう、アスカ」

アスカ「ううん。いいの// それより、このロールキャベツ、自信作なの。食べてみて」

シンジ「じゃあ、もらうね。……あ、そういえばアスカが作った料理って、僕、初めて食べるんだよね」

アスカ「うん……。そう…//」コクッ……

シンジ「いただきます」パクッ

アスカ「……美味しい?」ドキドキ

シンジ「……うん。美味しいよ。アスカ、料理上手だね。僕が作るのより美味しい」ニコッ

アスカ「そ、そんな事ないわよ…/// その……シンジの料理の方が、絶対に美味しいから…///」ゴニョゴニョ

マリ「」ムーッ……

レイ「…………」



レイ「」トポトポ……

レイ「碇君。これ……お味噌汁……」スッ……

シンジ「ありがとう。飲んでもいい?」

レイ「ええ……//」コクッ

シンジ「」ゴクッ……

レイ「……」ジッ

シンジ「美味しい……。それに、なんだろう……懐かしい味がする……」

レイ「懐かしい……?」

シンジ「うん……。なんか……お母さんの味、って感じがする」

レイ「お母さんの……//」

シンジ「綾波って……きっと結婚したらいいお母さんになりそうだよね。家庭的な感じがするし……」ニコッ

レイ「////」カアッ

レイ「……バカな事、言わないで…////」フイッ……

シンジ「あ、ごめん……」

レイ「…////」ドキドキ……

マリ「」ムーッ

アスカ「」ムーッ

ー 一時間後 ー


シンジ「」ウップ……

シンジ「もうダメ……。これ以上は食べられない……。無理……」


アスカ「ほら見なさい! アンタが無理して食べさせるからよ!」

マリ「式ちゃんだって、食べて食べてって散々ワンコ君に言ってたじゃない!」

レイ「…………」シュン……


シンジ「あ……えと……大丈夫だから……。ただ、ちょっと休ませて……。しばらく動きたくない……」ウップ……

マリ「あ……ごめん、ワンコ君……」

アスカ「ごめん、シンジ……」シュン

レイ「……ごめんなさい」シュン


マリ「んー……じゃあワンコ君、おわびにしばらく私が一緒にいるよ! だから、式ちゃんとレイちゃんは二人でもう少し見学していきなよ」

アスカ「マリ。アンタはダメ。なにどさくさ紛れに言ってるのよ、もう」グイッ

マリ「ちょっと式ちゃん、今日引っ張りすぎ」

アスカ「アンタが妙な事ばかりするからでしょうが。全くもう……」

レイ「…………」

シンジ「えっと、アスカ……それに真希波も綾波も。僕の事は大丈夫だからさ、みんなでまた見学していて。動けるようになったら合流するから」

アスカ「でも……」

レイ「……碇君は、そうしててほしいの?」

シンジ「…うん」

レイ「わかったわ……行きましょ」スクッ

マリ「……えー」

アスカ「……シンジは、それでいいの?」

シンジ「うん。頼むよ、アスカ」

アスカ「……わかった。ごめんね、シンジ……」

シンジ「謝らないでよ。みんなの料理、本当に美味しかったんだから」

マリ「……んー……ごめんよ、ワンコ君」

シンジ「大丈夫」ニコッ

レイ「それじゃ、二人とも、行きましょ。……碇君、また」

シンジ「うん。また……」


アスカ「…………」

ー アスカ、マリ、レイがいなくなった後 ー


シンジ「…………」


シンジ「…………」


シンジ「…………」


シンジ「どうしよう……」ボソッ


シンジ「…………」


シンジ「それに……」


シンジ「一昨日の、あの人……」ボソッ……


シンジ「特殊監査部、加持リョウジだっけ……」


シンジ「真希波を見殺しにしようとした張本人だよね……」


シンジ「なのに、あれだけの嘘を平気でよくつけるよ……」


シンジ「……ミサトよりタチが悪いや、あの人……」


シンジ「……ここで、一番気をつけなきゃいけない人かも……」


シンジ「流石に今日は聞くわけにはいかないけど……。後で、真希波に詳しく聞いておいた方がいいかな……」

ー 一方、アスカ、マリ、レイ ー


マリ「ところでさあ、式ちゃん」ズイッ

アスカ「な、何よ、急に」

レイ「……?」

マリ「なーんで、ワンコ君の事をいつのまにか名前で呼び捨てにしてるのかな? ワンコ君まで式ちゃんの事、名前で呼んでたしさ」

アスカ「べ、別に……。ただ、敬語を使うのをやめただけよ。前からそんな事、言ってたでしょ?」

マリ「だからってさあ、急に名前はおかしくないかにゃ? 式ちゃんは前からシンジさんって言ってたから、まだわかるとしてもさ。ワンコ君、前は式波って言ってたじゃん? それが何で急に『アスカ』になるのさ?」ズイッ

アスカ「し、知らないわよ、そんな事……// そんなに気になるならシンジに直接聞けばいいじゃない」

マリ「むー……」

アスカ「」フン

レイ「……理由を、聞いてくればいいの?」

アスカ「え?」

レイ「私も……気になるから」クルッ、スタスタ……

アスカ「ちょ、ちょっと待ってよ、レイ! お願いだからそれはやめてっ!!///」ダダッ


マリ「んー……レイちゃん、強いなあ……。流石というかなんというか……」

ー 数時間後 ー

ー 帰り道 ー


マリ「いやー♪ 楽しかったあ!」

アスカ「本当ね♪ アタシ、こんなに楽しかったの生まれて初めて!」

シンジ「帰りはあの消毒もなかったしね。本当に楽しかったよね、今日は」

レイ「ええ…」コクッ


マリ「あー、でも、これからみんな帰らなきゃいけないんだよねえ……。折角だから、私の家でゆっくりしてってもらいたかったんだけどなあ……」

シンジ「ごめん、真希波。ミサトの事があるから今日は……。でも、また今度遊びに行くよ」

アスカ「悪いわね、マリ。また今度ね」

レイ「……ごめんなさい。私もこの後、ネルフに寄る必要があるから」

マリ「うん。しょうがないね。ただ、今度はみんなで来てよ。それで、ひたすらゴロゴロしていってね」

シンジ「うん。きっと」

アスカ「そうね。お菓子でも買って遊びに行くわ」

レイ「……私も、行くから」

マリ「うん♪ 特にレイちゃん。まだ家に来てゴロゴロしてないんだから、必ずだよー」

レイ「…ええ」コクッ


シンジ「それじゃ、真希波。僕らはもうここで。一緒にいるところを見つかると良くないだろうし」

アスカ「じゃあね、マリ」

レイ「また…」

マリ「うん。バイバーイ」


笑顔で手を振って見送るマリ

マリ「…………」



マリ「みんな、行っちゃった……」

マリ「やっぱりこういう時、少し淋しいんだよね……」

マリ「私のわがままなんだけどさ……」

マリ「そんな事言える立場じゃないし……」


マリ「…………」


マリ「でも、今日は楽しかったなあ……」


ふっと夕焼けの空を見上げるマリ……




マリ「ずっとこんな日が続けばいいんだけど……」


マリ「みんなと一緒に逃げ出す日まで、ずっと…………」




  

ー 数日後 ー

ー 衛星軌道上からの映像 ー


キラッ……

ズズズズズズ……


地球の地表からゆっくりと浮かび上がる光の十字架……


ゴゴゴゴゴゴ……


それを中心にして、ゆっくりと広がっていく赤黒い光の輪……

ー ミサト宅、風呂場 ー


Prrrrrr、Prrrrrr


ミサト「何よ、もう……」ピッ

ミサト「はい。葛城……」


ミサト「…………」


ミサト「消滅!?」

ミサト「エヴァ四号機と第二支部が消滅したの?」

ー ネルフ本部、作戦会議室 ー


ミサト「これは……凄まじいわね……」

日向「ATフィールドの崩壊が衛星から確認出来ますが、詳細は不明です」

ミサト「きちんと調べたんでしょうね?」

青葉「もちろんです。EVAだけならともかく、支部まで消滅となれば、対岸の火事とは言ってられませんから」

ミサト「やはり四号機が爆心なのね……」

リツコ「…………」

ミサト「うちのエヴァ、大丈夫なんでしょうね?」

マヤ「四号機は……!」

リツコ「……EVA四号機は稼働時間問題を解決する新型内蔵式のテストベッドだった……らしいわ」

マヤ「北米ネルフの開発情報は、赤木先輩にも十分に開示されていないんです」

リツコ「元々、こちらで開発する予定だったものを向こうに押し付けたのよ。それを根に持ったんでしょうね」

ミサト「押し付けた?」

リツコ「ええ。そんな危ないものをこちらで開発したくはなかったからね。結果的に、その判断は正しかった訳だけど……」

ミサト「それならうちのエヴァは……」

リツコ「何も問題ないわ。これまで十分に運用されてきたものばかりだから」

ミサト「それ、嘘じゃないわよね? あんな危なっかしいものごめんよ」

リツコ「ええ。私だってそうよ」

ミサト「……わかったわ。信用する」

ー ネルフ本部、隔壁裏 ー


加持「エヴァ四号機……次世代型開発データ取得の為の実験機……」

加持「何が起こったとしても不思議ではない……か」

加持「しかし、ゼーレも無茶をする……。まさかこんな荒業に出るとはね……」

加持「そこまでして、現ネルフを潰すつもりですか……あなた方は……」

加持「問題はこの後……。米国政府と日本政府がどう出るかだな……」

加持「穏やかに済むはずはないが……」

ー ネルフ本部、??? ー


モノリスA『先に、エヴァンゲリオン五号機が失われ、今、同四号機も失われた』

ゲンドウ「……両機の喪失は、計画遂行に支障をきたしますが」

モノリスD『修正の範囲内だ。問題はなかろう』

ゲンドウ「しかし、弐号機及び零号機の追加修復予算は未だ承認されていません。初号機一機では不安が残ります」

モノリスE『それならば問題ない。直にエヴァ参号機が君のところへと向かうはずだ。米国政府が好意的に君のところへと差し出してくれた』

モノリスB『もっとも、日本政府か渋っているお陰で今一つ遅れてはいるがね。しかし、それも時間の問題だ』

モノリスF『あれは最新兵器だ。主戦力に足りるだろう』

ゲンドウ「試験前の機体は信用に足りません。両機の追加修復予算の承認をお願いします」

モノリスE『それだけの予算など、どこの国にもありはしないのだよ』

モノリスD『そもそも君達がこれまでどれだけ予算を無駄に消費してきたと思っているのかね。そのせいで、国が幾つも傾いてしまっているのだ』

モノリスC『左様。これ以上の予算を捻出するのは不可能なのだよ』

ゲンドウ「しかし、南米や中国では新しいエヴァシリーズを開発していると聞きましたが」

モノリスD『それは君が口を出すべき事ではない。我々には我々の計画がある。君は君の仕事だけをしたまえ』

モノリスA『我らの望む真のエヴァンゲリオン、その誕生とリリスの復活をもって契約の時となる。それまでに必要な儀式は執り行わねばならん。全てはその為だ』



ゲンドウ「…………」

ー モノリスが消えた後 ー


冬月「……やはり、ゼーレはここを本格的に潰す気のようだな。この様子だと、今後、追加予算を一切認める気はあるまい」

ゲンドウ「ゼーレはここの本部を半ば形骸化しようとしているのだろう。その為に、露払いする戦力すら与えないつもりだ」

冬月「むしろ、ここの自爆を望んでいる、か……。しかし、ある意味これはゼーレに我々の計画が漏れていないという証拠でもある。もし、漏れていたとしたらそんな事を望むはずがない」

ゲンドウ「ああ、まだ我々にも時間は残されている。残された戦力で全ての使徒を倒す事が出来ればの話だが」

冬月「こうなってくると参号機が本当にこちらに来るかどうかも怪しいものだな……。米国政府がこちらへ押し付けたがっているというのは確かな様だが……」

ゲンドウ「しかし、来ない可能性も頭に入れておかねばなるまい。……冬月」

冬月「何だ?」

ゲンドウ「残りの予算全ては、弐号機の修復に回すよう手配させろ。先の使徒戦で大破してしまった零号機は事実上凍結させる」

冬月「直す金がない以上、そうするしかあるまいが……。しかし、パイロットはどうする?」

ゲンドウ「その件については葛城三佐に一任する。何にしろダミーシステムが完成するまでのわずかな期間だ。大した影響はあるまい」

冬月「ふむ……」

ゲンドウ「それと、レイを初号機に乗せて最後の仕事を行わせる」

冬月「それもまた、いざという時の保険か……。良かろう。手配しておく」

ー 数時間後 ー

ー ネルフ本部、リツコの研究室 ー


リツコ「そう……。零号機を凍結させるの」

ミサト「ええ、そういう命令。ホント、予算予算ってしみったれた話よね。前も言ったけど、一度首都でも使徒に潰されればいいのよ、あいつら」

リツコ「そうね。でもまあ、いいんじゃないの。どうせ、一機あれば事足りるものですし」

ミサト「ずいぶんと冷静ね、リツコ。あんたは腹立たないの?」

リツコ「別に……。これで母さんが造ったポンコツともさよなら出来るかと思えば、何も腹立たしい事なんかありはしないわ」

ミサト「ああ、そっか……。メンテとか、あんたの苦労も減る訳だしね」

リツコ「そういう事ね。所詮は試作品なのだから、もう使う価値もないわ」

ミサト「……まあ、私もそうポジティブに捉えようかな。イライラはお肌の天敵だしー……」

リツコ「そうした方がいいわ。それで、ミサト。パイロットはどうするつもり?」

ミサト「決まってるでしょ、そんなの。聞く必要もない事よ」

ー ネルフ本部、格納庫 ー


ガコッ……ウィーン…………

包帯に巻かれた状態のまま、凍結される零号機……


アスカ「ええっ!! アタシがパイロット登録抹消!?」

リツコ「正確には、抹消ではなく予備扱いね。登録自体は残しておくけど、ただ、シンクロテストだとか訓練だとか、そういった事には、あなたはもう参加しなくていいわ」

アスカ「……。じゃあ……弐号機は……」

マヤ「弐号機はこれからシンジ君が使うわ。レイには初号機に乗ってもらうから。前にやったEVAの相互互換テストの結果、そう決まったの」

リツコ「あなたはEVAの操縦者の中では一番シンクロ率が低い……つまり落ちこぼれなのだから、外されるのは当然の結果でしょ?」

マヤ「残念だろうけど、諦めてね。あなたの能力のなさが悪いんだから」

アスカ「っ…………」プルプル……


うつむき、震えるアスカ……


リツコ「アスカ、返事をしなさい。ふてくされるなんて、子供のやる事よ」

アスカ「……すみません……でした……」

リツコ「謝って済むなら警察はいらないわね……。とはいえ、今回だけは見逃してあげるけど。用済みを叱る気にもなれないし」

マヤ「ええ……それなら先輩」

リツコ「そうね。あなたはもう帰っていいわ。以後、こちらから呼び出しがあるまでは、本部の立ち入りを禁止します。いいわね?」

アスカ「はい……。わかり…ました……。失礼します……」ペコリ……


アスカ「」クルッ

アスカ「」タタタッ……


走ってその場から去っていくアスカ


リツコ「やれやれ……。本当に子供ね。自分の能力のなさが悪いというのに」フゥ……

マヤ「全部、自分の責任ですからね……。とはいえ少し可哀想な気もしますけど。多分、あの子、もうEVAには乗れないでしょうから」

リツコ「……そうね。実質、クビにしたのと同じ事だから。ミサトも嫌ってるし、恐らくもう二度と乗る事はないでしょうね」

マヤ「その内、ドイツに帰らせるとか言ってましたからね、葛城さん。でも、あの子にとってはその方がいいかもしれませんけど」

リツコ「……こちらにとってもね。使えない予備はいらないのよ。むしろ、迷惑でしかないわ」

マヤ「ですね」

ー ネルフ本部、エレベーター前 ー


アスカ「…………」


うつむいたまま、エレベーターを待つアスカ


チーン……

ガコッ……


アスカ「……!」

レイ「……?」


扉が開くと、そこにはレイが


アスカ「」タタッ、ポチッ


急いで中に入り、扉を閉めるアスカ

ー エレベーター内 ー


アスカ「ねえねえ、聞いて、レイ!」

レイ「……どうしたの?」

アスカ「アタシ、もうエヴァには乗らなくて済むようになったの! もうここには来なくていいって言われたの!! もう嬉しくて嬉しくて!!」ピョンピョン♪

レイ「……本当に?」

アスカ「本当よ! まだパイロット登録抹消まではされないみたいなんだけど、でも、きっとその内抹消されると思うの! ミサト、アタシの事を嫌ってるし!」

レイ「……そう。良かったわね」

アスカ「うん、もう最高♪ おかげで顔がさっきから緩みっぱなしで!」

レイ「…………」

アスカ「でも、あいつらの前で喜んだらまずいかなって思って、ここに来るまでずっと我慢してて! でね、でね、ママも壊される事はないの! 弐号機にはシンジが乗るって言うから、きっと大事に乗ってくれると思うし! あ、それで、レイは初号機に乗る事になっ……」

レイ「そう。私は初号機に乗るのね」

アスカ「あ…………」

レイ「? ……どうしたの?」

アスカ「あ、あの……ご、ごめん…………アタシ、自分の事ばっかりでつい浮かれちゃって……」

レイ「?」

アスカ「……レイやシンジはまだエヴァに乗らなきゃいけないのに…………。なのに、アタシ一人だけこんな事になって……。一人減るって事はその分、二人に負担が回ってくるって事なのに…………」

レイ「……それはあなたが気にする事じゃないから」

アスカ「だけど……!」

レイ「それに、あなたがエヴァに乗らなくて済むようになって、私はきっと喜んでいると思う」

アスカ「えっ…………」

レイ「ごめんなさい、自分でも自分の感情がまだよくわからないの。でも、なんだか胸の奥がポカポカしてる」

レイ「多分、あなたがエヴァに乗らなくて済むようになって、ほっとしているんだと思う」

アスカ「でも、シンジも……」

レイ「碇君も」

アスカ「?」

レイ「きっとポカポカすると思う。あなたがエヴァに乗らなくて済むようになって」


微かに笑顔を見せるレイ


アスカ「レイ……」

ー ほぼ同時刻、マリのマンション ー


ピンポーン

マリ「はーい!」ガチャッ

シンジ「こんにちは、真希波」

マリ「待ってたよー、ワンコ君♪ さ、上がって、上がって」

シンジ「うん…。それじゃお邪魔します」

マリ「今、お茶いれるからさ♪ ワンコ君、紅茶でいい?」

シンジ「何でもいいよ、ありがとう。あ、あと、これ」ゴソゴソ

マリ「なになに?」

シンジ「オムレツとポークソテー。前に僕の料理を食べてみたいって言ってたから。今日の夕飯にでもどうかなって」

マリ「にゃは♪ ありがとー!」

シンジ「ううん。真希波の口に合うかどうかはわからないけど」

マリ「ワンコ君の作ったものなら合うに決まってるじゃん。わーい、楽しみだなあ♪」クルクル

シンジ「大袈裟だよ、真希波」クスッ

マリ「じゃ、ワンコ君。そっちのテーブルにでも座ってて。今、お茶用意するからねー」トタタッ

シンジ「うん。ありがとう」トコトコ


椅子に座るシンジ


シンジ「……ん?」

マリ「♪」

シンジ「真希波、あれ、どうしたの? ピアノが置いてあるけど……。前はなかったよね?」

マリ「あー……うん。ちょっとねー……。にゃはは……//」

マリ「ついつい買っちゃったんだあ……// 欲しくなっちゃったからさ……」

シンジ「ピアノを?」

マリ「うん……。前に式ちゃんレイちゃんと一緒に話してた時、ギターとかチェロとかそんな話になってね……。ワンコ君チェロ弾けるんでしょ?」

シンジ「あ、うん……」

マリ「だからさ、私だけ何も演奏出来ないのって、なんかつまんなくてさあ。ピアノをね……買っちゃったんだよ…// 式ちゃんもちょっとだけなら弾けるって言ってたしさあ…」


少し照れくさそうに話すマリ

シンジ「そうなんだ……。えっと……それでどう? 弾けるようになったの?」

マリ「流石にまだかなー。この前買ったばかりだしね。でも、暇な時はいっつも練習してるよ。楽しいね、音を出すのって」ニコッ

シンジ「うん……そうだね。今、弾いたらそうかもしれない」

マリ「その内、みんなでさ。演奏会しよ。レイちゃんもフルート出来るって言ってたからさ」

シンジ「へえ……。綾波、フルート出来るんだ……」

マリ「うん。なんか似合ってるよね。レイちゃんぽい」

シンジ「そうだね……なんか似合ってると思う」

マリ「さてさてっと。お待たせー。はい、ワンコ君、紅茶だよ。砂糖とミルクは入れる?」

シンジ「あ、うん。お願い」

マリ「はーい♪」

マリ「で、ワンコ君。メールで言ってた、私に聞きたい事って何かな? ひょっとしてスリーサイズとか?」ニヤニヤ

シンジ「ち、違うよ//」

マリ「あれ? そうなの? ワンコ君だったら、直で計らせてあげても良かったんだけどなあ。……どうする? 計ってみる?」ニヤニヤ

マリ「こーんな感じでさあ。計ってみたくない?」ポヨン

シンジ「あ、あの……/// やめてよ、真希波。からかうのは……///」フイッ……

マリ「んー……結構、本気だったんだけどねえ……。ま、今回はやめとこっかな。ワンコ君に嫌われたくはないしさ」

シンジ「いや、その……/// 嫌いにはならないけど、でも……///」

マリ「わかってる、わかってる。オッケーオッケー。真面目に聞くよん。で、何?」

シンジ「あ、うん……。その……気分を悪くさせるかもしれないけど……」

マリ「?」

シンジ「加持って人の事について聞きたいんだ……」

マリ「……」

マリ「」チッ……

マリ「なるほどね……。そりゃ、気分悪くならない方が無理って話だね……。二度と思い出したくないやつなんだからさ」

シンジ「その……ごめん、真希波…………」

マリ「でもまあ……ワンコ君が聞きたいって言うなら話すよ。だけど、その前に何であいつの事を聞きたいのか教えてくれる。何かあったの?」

シンジ「うん……実は……」



ー 墓での事を軽く説明後 ー


マリ「へえ……。ホント、相変わらずクズだね、あいつ。……どさくさに紛れて殺しとけば良かったな」チッ

シンジ(……真希波。出会った時ぐらいの顔に戻ってる……)

マリ「いい、ワンコ君。加持には注意しなよ。頭が回るからタチが悪いよ、あいつは。裏でこそこそやるのが得意だしね。情報操作と諜報活動は特に優れてるから」

シンジ「……そう、なんだ」

マリ「あいつが何の目的でワンコ君に近づいたかはわからないけど、とにかく、金輪際、加持には関わらない方がいいよ。どうせ、ここでも何かやってるに決まってるからさ。あいつは死んだ方がいい人間なんだよ。正直、機会さえあれば、殺してやりたい」

シンジ「…………」

マリ「特にワンコ君は戦自との繋がりを隠してるから、それだけはバレないようにしなよ。バレると、きっと利用されて、ろくでもない目に遇うに決まってるから。……本当に注意してよ。絶対だよ」

シンジ「……………うん。……わかった」

ー ネルフ本部 休憩室 ー


ミサト「んっ///」チュッ……

加持「……葛城」

ミサト「ダメよ……もう少しだけ……ん///」チュッ、レロレロ……

加持「だけど……流石にもうそろそろ人が来るぞ……」

ミサト「でも、最近加持君、ずっと仕事ばっかりだったから……///」

加持「すまないな……。今度の休みは必ず開けておくから」

ミサト「……わかった。でも、もう少しだけ///」チュッ……


プシュン……


リツコ「あら……」

マヤ「!?」

加持「おっと……参ったね」

ミサト「や……!?」サッ!!


慌てて加持の体からどくミサト


リツコ「……あのね、ミサト。仲がいいのは結構な事だけど、少しは場所を考えてもらえないかしら? 中学生や高校生でもあるまいし、あなた、そんな歳じゃないでしょ」フゥ……

マヤ「……っ」クルッ

マヤ「」タタタッ

リツコ「……マヤったら……行っちゃったわね」

リツコ「……見た、ミサト? あの子の目。去り際、あなたの事をまるで汚物でも見るような目で見てたわよ。マヤは潔癖症だというのに……」ハァ……

ミサト「ち、違うの、あの、これはね!」オロオロ

加持「いやあ、すまないなあ、リッちゃん。あの子には、後で俺の方から謝っておくよ。ちょいと羽目を外しすぎたようだからな」

リツコ「そうしておいてちょうだい。もちろん、ミサトもね。これに懲りたら、少しは自重しなさいよ」

ミサト「う……わかったわよ……」シュン……

ー 夜 ー

ー 高級レストラン、個室 ー


加持「今日はすまなかったな。これはそのお詫びさ」スッ……


ラッピングされた小箱を差し出す加持


マヤ「……別に、加持さんが謝る事じゃないですから」フイッ……

加持「ま、そう言わず受け取ってくれないか。心ばかりのプレゼントさ」

マヤ「……いりません」

加持「欲しいのはプレゼントじゃなく、キスの方かい?」

マヤ「……加持さん!」

加持「じゃあ、受け取ってくれ。わざわざ君の為に、第二東京まで行って買ってきたんだ。もらってくれないと、指輪が泣いちまう」スッ……

マヤ「…………」




マヤ「…………」ソッ


しばらくの間の後、無言で受けとるマヤ……

マヤ「いつまで……」

加持「?」

マヤ「いつまであんな事を続ける気なんですか、加持さん。葛城さんが可哀想です……」

加持「前にも言っただろう? ……時期が来るまでさ。それまでは、俺は自分も彼女もだまし続けるよ。そうした方が彼女の為でもあるしな」

マヤ「……私には理解できません。そんな事……」

加持「彼女や俺、そして君が生き残る為さ。リッちゃんや他のみんなも含めてな」

マヤ「先輩も……ですか」

加持「そうさ。ネルフはもう後がないんだ。そして、残された時間も少ない。今までは、使徒を全部倒し終わるまでは大丈夫なはずだった。だが、今はそうも言ってられない状況になっちまってる」

マヤ「…………」

加持「君だって、もう調べてみたんだろう? 裏コードの1382を」

マヤ「……ええ。加持さんの言う通り、使徒とEVAの裏のデータ、その断片が幾つもありました……。それに、そのコードを使った改竄の痕跡も……」

加持「だろうな。なんせ、リッちゃんでさえ気づかないんだから誰も気づきはしないさ。恐らく開発者だけが知ってる専用の裏コードだ。それに、元々リッちゃんは……MAGIにはほとんど興味を持ってないからな」

マヤ「はい……。多分ですけど、先輩はお母さんとの事で……」

加持「そういう事だな……。それに、MAGIを使った仕事の半分以上はレイに任せているみたいだしな」

マヤ「でも、それは……!」

加持「レイが自主的に、だろ? 知ってるさ」

マヤ「…………」

加持「なんにしろ、このままだとネルフは使徒によって壊滅するだろうな。そこは信じてもらえたかい?」

マヤ「……はい。少しは……」

加持「少しは、ね……。その危機感のなさが問題だな。真相を知ってなお、この有り様だ。ネルフ職員の中にだって、何人かはきっと気付いている人間がいるはずなんだが……」

マヤ「でも……これまで全部、問題なく片付いてましたし……。それに、使徒戦で手間取ったのはシンジ君が適当に動かしていたせいで……」

加持「やれやれ……この調子だからな……。根本的なところからして、認識が違うんだが……。ま、それはともかくとして」

加持「……今、ネルフが財政難だってのは君も知っているだろ?」

マヤ「それは……。はい……」

加持「が、その一方で南米や中国や中近東では、新しいエヴァシリーズが建造されている。完成は何年も先の話らしいがな。不自然だと思わないかい?」

マヤ「…………」

加持「結論から言えば、ここのネルフ本部は見捨てられてるんだよ。月面のタブハベースを新しいネルフ本部にしようと動いてる。だが、その為にはここが邪魔でね」

加持「出来る事ならここはなかったものにしようと向こうは思ってるのさ。大きな声じゃ言えないが、その為に戦略自衛隊がここを制圧しようと計画しているしな」

マヤ「……!」

加持「いや、あれは制圧なんてもんじゃないか……。どちらかと言えば、虐殺だな。今は毒ガスまで検討に入れているのだから」

マヤ「そんな……!」

加持「事実さ……。なんだったら証拠を見せてもいい。エンジェルゲームと呼ばれてる制圧作戦、これがその概要だ」スッ……バサッ……


分厚い資料の山をテーブルに広げる加持


マヤ「…………」ソッ、ペラ……ペラ……

マヤ「うそ…………」


それを見て、みるみる顔が青ざめていくマヤ…………

加持「少しは信じてもらえたかい?」

マヤ「…………」

加持「そこまで心配しなくとも、今のところこれはまだ作戦段階さ。決定という訳じゃない。とはいえ、いずれはネルフは人によって制圧されるか、使徒によって破壊されるかのどちらかになるだろうな。それを見過ごす訳にはいかない。そうだろう?」

マヤ「……はい…………」

加持「その為に、俺は葛城を利用するしかないのさ。彼女に動いてもらう必要があるからな……」

マヤ「でも……それならこれを直接、葛城さんや先輩に打ち明けた方が……」

加持「打ち明ける、ね……。今更、打ち明けてそれからどうする? 君との付き合いはそういう事だったと、俺は君の事を愛してなんかいないんだと、そう言えると思うのかい?」

マヤ「…………」

加持「最終的には、打ち明けようと打ち明けまいと彼女を裏切る事になる。……それなら、このまま何も知らない方が彼女にとっても幸せだろう」

加持「幸いな事に俺には結構貯金があるからな。ここを離れて、どこか外国に行って、そこで慎ましやかに一生暮らせるぐらいの金はある。全てが終わったら、俺は消えるつもりだ」

マヤ「…………」

加持「それに、時間が経てば、葛城も俺の事は忘れるさ。新しい恋人だってすぐに見つかるだろう。消えた男を一生想うような、そんな一途な女じゃないからな、あいつは……」

マヤ「……やっぱり……加持さんって冷たいですね」

加持「全部、君の為さ……。男も女も、好きな人間の為なら鬼でも悪魔にでもなれる。俺が本当に想ってるのは君だけだよ」

マヤ「信じられません……」

加持「信じて欲しい。全部終わったら、君に来てほしいんだ。俺と一緒に海外に」

マヤ「え……」

加持「一生、君を困らせない。死ぬまで守り通すよ」

マヤ「あ、あの……。それって……///」

加持「プロポーズさ……」

マヤ「え、でも、あの……/// 急にそんな事言われても、こ、困ります……///」

加持「返事はまたでいいさ。焦る事はない。じっくり考えてくれ」

マヤ「あの……でも……///」

加持「俺は本気だよ。君にだけは嘘をつかない。誓うよ」

マヤ「だけど……その……///」

加持「……嫌かい?」

マヤ「あ、いえ、あの……/// でも……///」フイッ……

加持「……ま、今日はお互い少しだが酒を飲んでるしな。また後日、改めて言うさ。君が望むなら、さっきの話はなかった事にしてもいい。その時にまた考えてくれればいいさ」

マヤ「……はい…/// その……そうしてもらえると……///」

加持「しかし、その指輪、実は婚約指輪のつもりで買ったんだけどな……。また買い直しか……」

マヤ「あ、いえ、あの……/// べ、別に、買い直さなくても……/// ……私は大丈夫ですから…///」

加持「ふうん……。それは脈ありと受け取っても構わないのかい?」

マヤ「そういう事じゃ……ないです…///」フイッ……

加持「それは残念」

マヤ「……そういう言い方……卑怯ですよ、加持さん…///」

加持「男はさ、ずるいぐらいが丁度いいのさ」

マヤ「……本当に……ずるいです……///」

加持「さてと……」


資料を自分の鞄にしまう加持


加持「残念ながらもう時間だ。今日はこれで俺は帰らなきゃいけない。仕事がまだ残っていてね。会計は済ませておくから、君はゆっくり食事をしていってくれ」スッ

マヤ「……はい」

加持「それで、出来ればその間に色々と考えてほしい。ネルフの事、将来の事、そして……」

加持「俺の事をね」

マヤ「…………」


加持「それじゃあ、また……」クルッ

加持「」スタスタ……

ソッ、パタン……


去っていく加持……



マヤ「…………」

テーブルの上の小箱を見つめるマヤ……



マヤ「私……どこまで……あの人を信じればいいんだろう……」

マヤ「…………」

マヤ「でも……こんな大事な事を……口止めもせずに……」

マヤ「それに……この指輪……」スッ……パカッ……

マヤ「…………」

マヤ「本気だって……思ってもいいの……?//」

ー 同時刻、ターミナルドグマ ー


リリス「…………」


槍が刺さり、磔にされているリリス……




初号機「」ズシン、ズシン


初号機「」スッ……


初号機「」ガシッ……


槍を掴む初号機


初号機「」グッ……


初号機「」ググッ


初号機「」ズボッ!!


槍を引き抜く!



リリス「……」

リリス「」グニュッ、グニュグニュグニュ……!!


リリス「…………」


体の再生がされ、足が生えた状態に…………




レイ「…………」


それを初号機の中からじっと眺めるレイ……

ー 後日、朝 ー

ー ミサト宅、玄関 ー


シンジ「えっ! 慰安旅行!?」

ミサト「そうよー。明後日から2泊3日でパリ、ローマに。年に一回しかないんですもの。この機会に疲れた体をきっちり癒さないとね♪」

シンジ「えと……それって……ひょっとして僕や綾波も……」

ミサト「ざーんねん。シンジ君たちはエヴァのパイロットなんだから。私たちの代わりはいても、シンジ君たちの代わりはいないんだもの。旅行なんてダーメ」

シンジ「あ……そうですよね……。そっかあ……」

ミサト「悪いわねー、シンジ君」ニッコリ

シンジ「いえ……。でも、残念だなあ」

ミサト「ま、そうよねー。代わりにお土産を買ってきてあげるから我慢して。特別大サービスよん♪」

シンジ「あ、はい。嬉しいなあ。ありがとうございます。でも、本音を言えば、行きたかったです……。ミサトさんが羨ましいです」

ミサト「でしょー? ま、普段のきつーいお仕事をこなしてこそのもんだからねー。これぐらいの特典がなきゃ割に合わないしー」

シンジ「……そうですね。いつも、お仕事お疲れ様です。……あ、そういえば、他には誰か行くんですか? その……リツコさんとか……」

ミサト「あー、うん。リツコも一緒よ。あとは、シンちゃんがよく知っているところだと、青葉君に諜報部のリカ、森川あたりかな? 日向君とマヤは、今回は留守番だけど」

シンジ「……そうなんですか。へー……」

ミサト「ま、そういう事だからその間は留守番よろしくね。特に、シンジ君はアスカの面倒をしっかり見ときなさいよ。何も問題起こさないようにね」

シンジ「はい! 大丈夫です。任せて下さい!」

ミサト「うん。元気があっていいわー。さあてと、それじゃ私はもう仕事に行くわね。じゃね」ガチャッ

シンジ「気をつけて下さいねー」

ミサト「わかってるー♪」


バタンッ……

シンジ「…………」

シンジ「」トタトタ

シンジ「…………」ゴソゴソ


発信機の受信装置を取り出すシンジ


シンジ「…………」

シンジ「…………」

シンジ「よし……。行った……」


シンジ「っ……!!」

シンジ「やったああぁーーー!!!」

シンジ「ミサトがいなくなる!! 四日間だけど、その間は完全にミサトがいなくなるんだ!!」

シンジ「少しの間だけ、自由だーっ!!!」


ガチャッ!!

アスカ「シンジ!!」

シンジ「アスカ、ひょっとして聞いてた!!」

アスカ「もちろん!! アタシ達は自由よっ!!!」

シンジ「やったね、アスカ!!」

アスカ「うん!! もう最高!!」

シンジ「ホントだよ!! すごい嬉しい!!」


アスカ「シンジ!!」サッ

シンジ「アスカ!!」サッ


手を出し合う二人


シンジ&アスカ「よっしゃあ!!!」パシンッ!!

シンジ&アスカ「イエーイ!!」パンパン、パシンッ!!

ー 学校 ー


ヒカリ「えっ!? 本当に!?」

アスカ「うん! もうだから嬉しくて嬉しくて!」ニコニコ

ヒカリ「良かったね、アスカ」ニコッ

アスカ「ありがとう、ヒカリ」ニコッ

ヒカリ「じゃあ……」キョロキョロ

アスカ「?」

ヒカリ「……明日から三日間は碇君と二人きりなんだ」ヒソヒソ

アスカ「え……」


アスカ「////」ボンッ

ヒカリ「…………」


ヒカリ「……アスカ。……ひょっとして気づいてなかったの?」ヒソヒソ

アスカ「え/// だって、そんな///」カアッ

アスカ「……その……それどころじゃなかったし……///」ゴニョゴニョ

ヒカリ「……えっと。気持ちはわかるけど……」

アスカ「ヒ……ヒカリ、アタシどうすればいい?/// なんか意識しちゃったら、すんごい心配になってきたんだけど……///」ゴニョゴニョ

ヒカリ「どうすればって……。こんな機会そうないんだから……。思いきって、アタックしちゃえば?」

アスカ「ムリ、ムリ、ムリ、ムリ、ムリ/// 出来ないわよ、そんな事///」

ヒカリ「そうだよね……。アスカだしね……」

アスカ「ヒカリ! アタシは真剣に困ってるのよ」

ヒカリ「わかってる。でも……無理なんでしょ?」

アスカ「う……。そうなんだけど……」

ヒカリ「とにかく、アスカ。こんな機会まずないんだから、少しは勇気出さなきゃ。告白まではいかなくても、いい雰囲気ぐらいまでは作っておこうよ」ヒソヒソ

アスカ「でも、やっぱり恥ずかしいし……///」

ヒカリ「いいの、そんなんで? ずっとそんな事してたら、先に綾波さんに取られちゃうかもしれないよ」チラッ


レイの方に目を向けるヒカリ……

レイ「……そう。今回は葛城三佐と赤木博士が……」

シンジ「うん。あと、諜報部の森川さんと小林も。だから、ひょっとしたら僕たちへの監視も外れるかもしれない」

レイ「そう。良かったわね」

シンジ「うん」ニコッ

レイ「……//」


シンジ「あ、それで綾波。その三日の間はさ、僕も仕事手伝えるから、真希波の家に遊びに行かない? アスカのパイロット予備扱いのお祝いをまだしてないからしようかと思って。真希波もきっと喜ぶと思うし」

レイ「ええ、そうね。行くわ」コクッ

シンジ「良かった。じゃあ、後で真希波に伝えておくね。あと、アスカにも」

レイ「ええ」

シンジ「あ、あと綾波。一応言っておくけどお弁当は今回はいらないからね。美味しかったけど、この前みたいな事にはもうなりたくないからさ」

レイ「わかったわ」

シンジ「本当、この前は歩くのも苦しかったからなあ。楽しかったけど、大変だったよ」

レイ「そうね…」クスッ

シンジ「え……//」

レイ「……?」

レイ「どうしたの、碇君?」

シンジ「あ……ううん、何でもない」ニコッ

レイ「……?」

ヒカリ「……ね? なんかいい雰囲気っぽいでしょ? このままだとまずいよ、アスカ、頑張らなきゃ」

アスカ「んー……/// わ、わかったわよ。頑張ってみる……///」コクッ……

ヒカリ「うん。この三日の内がチャンスだよ。頑張って!」

アスカ「わかった……///」

ヒカリ「」ニコッ




ヒカリ(……それにしても…………)

ヒカリ(……アスカ、ずいぶん明るくなったなあ。もうエヴァのパイロットでもなくなったみたいだし)

ヒカリ(……なんか最初の頃が嘘みたい。あんなにびくびくしてたのに……)

ヒカリ(私も……いつのまにか、普通に頑張ってって言えるようになってるし)

ヒカリ(……アスカも碇君も、もう病院にはほとんど行ってないって言ってたし)

ヒカリ(……これからは、色んな事が良くなってくんだよね。だから、もう大丈夫だよね……アスカ)

ヒカリ(…………私が転校していなくなっても……きっと大丈夫だよね…………?)グスッ……


アスカ「ヒカリ?」

ヒカリ「え? 何?」

アスカ「何って……何で泣いてるの?」

ヒカリ「え? ああ、うん、ごめん。目にほこりが入っちゃって……」ゴシゴシ

アスカ「おどかさないでよ、ヒカリ。びっくりしちゃったじゃないの」

ヒカリ「ごめんね、アスカ……ふふ」ニコッ

ー 学校終了後 ー

ー ネルフ本部までの行き道 ー


シンジ「……そういえば、綾波と一緒にネルフへ行くのって初めてだよね?」テクテク

レイ「そうね……。これまでは私が仕事で先に行く事が多かったから」テクテク

シンジ「最近は、そうでもないの?」

レイ「ええ。やる事が減ってきてるの。多分、ネルフ本部全体で」

シンジ「そうなんだ……。それって……いい事、なのかな?」

レイ「……わからない。迎撃都市の復興も手付かずのままだし」

シンジ「今更だけど……あれってあっても実はそんなに役に立たないよね……」

レイ「元々、足止めを目的としているものだから……。でも今は、新しい装備品もろくに開発されていないみたいなの。使徒による被害を受けたところもかなり放置されているし」

シンジ「……クラスでも、田舎に転校してった人も結構多いしね。……学校なんて行ってる場合じゃないのかな、もう」

レイ「…………」

ー 夕方、学校の屋上 ー


トウジ「さよか……やっぱりケンスケも……」

ケンスケ「うん……。もうすぐ田舎に引っ越すって……。ここはもう危ないからって……パパも今の仕事、辞めたがってたし……」

トウジ「せやな……。うちのおとんもそう言っとった。サクラが退院次第、田舎の家に引っ越す言うてな……」

ケンスケ「そっか……トウジも…………」

トウジ「まだ……シンジたちには言うてへんけどな……」

ケンスケ「僕もだよ……。言いづらくって……」

トウジ「もう、ここはあかんって色々噂になっとるみたいや……。ワシらの親、ネルフの詳しい事情、知ってもーてるしな……」

ケンスケ「……もう引っ越してったやつも結構いるからね。それに、街がいつまで経っても復興しないんじゃ、不安になるのも仕方がないよ……」


ところどころ瓦礫だらけの街を見下ろす二人……


トウジ「今は直す気配すらありゃせんからなあ……」

ケンスケ「少し前までは、復興作業してたからまだマシだったんだけどね……。今はブルドーザーやクレーン車まで、完全に放置状態だから……」

トウジ「直さんいう事は、ここを捨てる気や思うのもしゃーないわ……。まるで夜逃げ前の状態みたいやもんなあ……」


トウジ「…………」フゥ……

ケンスケ「…………」ハァ……

トウジ「シンジや、綾波、式波は……」

ケンスケ「無理だよ……パイロットなんだから……。この街から引っ越すなんて……」

トウジ「わかっとる……。わかっとるけどな……」

ケンスケ「どうしようもないよ。僕らはまだ子供なんだ……。残りたいって言っても……残らせてくれないんだから……」

トウジ「ケンスケ……」

ケンスケ「…………」

トウジ「ワシな、言うたんや……。妹やおとんは引っ越してほしい。逃げてほしい。せやけど、ワシだけはここに残らせてくれんかってな……」

ケンスケ「…………」

トウジ「あかんかったわ……。当たり前の事かもしれへんけどな……」

ケンスケ「碇……悲しむよな……。もう僕らに出来る事が何もないって知ったら……」

トウジ「……それより、あいつの事がワシは心配やわ……。最近ようやく明るくなってきたいうのに……。これから大丈夫なんかいな……」

ケンスケ「わかんないよ……。大丈夫だって思うしか……僕らには出来ないんだから……」

トウジ「…………」

ケンスケ「なあ、トウジ……。どうして……僕らは子供なんだろうな……。今すぐ大人になりたいよ、僕……」グスッ……

トウジ「…………せやな……」

ー ネルフ本部、隔壁裏 ー


加持「」カチッ、シュボッ

加持「」フーッ……


ピピピピ……


加持「……はい」ピッ

加持「……そうです。ええ、今しがたこちらでも確認しました。はい」

加持「そうですね。間違いなく」

加持「……はい」

加持「ええ。この本部ごと吹き飛ばせる程のものが設置されてます。ですが、その解除は不可能かと。下手をすると作動してしまいますから。そういうタイプの自爆装置です」

加持「わかっています。今は出過ぎた真似をしませんよ。今日はこれで撤収します」

加持「それではまた……」ピッ


加持「」フーッ……

加持「やれやれ……。ゼーレだけでなく、戦自までこんなこけおどしに右往左往とはね……」

加持「しかし、これもいつかは露見する日が来るだろうな……。その時までに、初号機をどうにかしなければならないが……」

加持「その為には、今の状況は良くないか……。やはり鍵を握るのはシンジ君と……」

加持「ダミーシステムだな……」フーッ……

ー ネルフ本部、司令室 ー


冬月「そうか。わかった……。では、宜しく頼む」ガチャッ


冬月「碇、吉報だ。ダミーシステムが完成したそうだ」

ゲンドウ「……そうか」

冬月「近日中にはこちらに届くそうだ。これでパイロット全員をエヴァから解放出来るな」

ゲンドウ「ああ。……しかし」

冬月「……エヴァの呪縛は残る、か。しかし、そちらは今はどうにもならん。後で片付けるべき問題だ。時間はある。今はそれで良かろう」

ゲンドウ「そうだな……」

冬月「後はゼーレがどう出るか、だが……」

ー ??? ー


モノリスA『ダミーシステム、その完成。これは我らが待ち望んだ事でもある』

モノリスC『左様。魂のない人形は、人よりも信用に足るよ』

モノリスD『だが、新たなエヴァシリーズの完成にはまだ時間がかかる。その前にあの男が何か小細工をする可能性はある』

モノリスF『小細工をしたところで、こちらの優位性は一向に変わらない。問題はあるまい』

モノリスB『それよりも今は猫の鈴をどうにかすべきだろう。鳴らない鈴では意味がない』

モノリスE『むしろ、害悪の種だ。そろそろ消えてもらうべき時期ではないのかね』

モノリスC『すでに全ての用意は整いつつある。いても今後役に立つ事はまずないだろう』


モノリスA『よかろう……。加持リョウジ。彼には最後の仕事を終えた後で、舞台から退場願うとしよう』

ー 後日 ー

ー マリのマンション ー


マリ「さーて、それじゃあ……」

シンジ「アスカのパイロット登録抹消を祝って……」

レイ「乾杯」

マリ&シンジ「かんぱーい!!」

カチンッ、カチンッ、カチンッ


アスカ「その……ありがとう。みんな」


マリ「良かったねー、式ちゃん。これでやっと地獄から解放されたよ!」ニコニコ

シンジ「本当だよ! おめでとう、アスカ」ニコニコ

レイ「……おめでとう」

アスカ「うん」ニコッ

マリ「にしても、式ちゃん、まだミサトのところにいなきゃいけないのだけは残念だね」

アスカ「うん……。正式な登録抹消じゃないからね。予備扱いだから、そこら辺はそのまま。ミサトも不満たらたら言ってたみたいだけど」

レイ「…………」

マリ「出ていけるようなら私のところに来てほしかったんだけどなあ……。あ、でも、それはちょいとまずいか……」

アスカ「ん……そうね。パイロットをやめても監視はつくみたいだから、アンタと一緒に住むのはちょっとね。それに……」チラッ

シンジ「?」

マリ「あ、そっかー。お姫様としては、ワンコ君と一緒にいたいよねー」ニヤニヤ

アスカ「なっ!/// ち、違うの! シンジをほっとけないからよ。アタシ一人だけ楽なんて出来ないもん!///」

マリ「はは……。そう……だよね。ごめんよ……」シュン……

アスカ「あ……ち、違うのよ。マリを責めてる訳じゃないの。マリは逃げられたんだから、もう……」

シンジ「そうだよ、真希波。それに真希波だって……楽なんてしてないし……」

レイ「マリ、気にしないで。いい事は喜ばないとダメ……。昔、お母さんがそう言ってたから……」

マリ「お母さん、かあ……。……うん……そうだね。今日はいい事があった日だし、辛気くさい顔してちゃダメだよね」

アスカ「そうよ。ってアタシが言うのもあれだけど……」

シンジ「アスカ。これからはアスカの弐号機、僕が乗る事になったから。大事に乗らせてもらうね」

レイ「碇君の初号機も……」

アスカ「うん……。ママもシンジならきっと大丈夫だと思う。見守ってくれると思う……」

シンジ「?」

アスカ「あ、ううん。こっちの話。今はママよりも大事な人たちがいるからいいの」ニコッ

レイ「お母さんより……」


マリ「じゃ、改めてもう一回乾杯しよ! ね?」

シンジ「そうだね」

レイ「」スッ……

マリ「姫。おめでとー!」

一同「かんぱーい!!」

カチンッ、カチンッ、カチンッ

マリ「あっ、そういえばさあ……」ゴソゴソ

アスカ「ん? 何?」

マリ「じゃーん♪」ドサッ

シンジ「あれ、これって……」

レイ「ビール……」

マリ「知り合いの人にパーティーやるって話したら、景気付けにって、ちょいともらってね。折角だから、今日は羽目を外しちゃおうかなと♪」

シンジ(……知り合いって……木田さん? じゃないよね。こんな事するのは、きっと曽根さんの方だ……)

アスカ「アンタねえ……未成年の飲酒は法律違反よ」

マリ「まあまあ、固い事は言いっこなしだってば。二人とも、今日はミサトが泊まりで仕事なんでしょ? 飲んじゃおーよ」

シンジ(多分、デートなんだろうけど……。あんなにウキウキ仕事に行くわけないから……)

アスカ(男よねえ、絶対……。気持ち悪い……)

マリ「レイちゃんも今日はもうネルフに行かなくていいんでしょ? 仕事は明日まとめてやればいいよ。私も式ちゃんも手伝えるからすぐに終わるって。だから飲も」

レイ「お酒……」ジッ……

シンジ(……あれ? なんか綾波は興味ありそう)

マリ「ささ、蓋を開けてぐいっと♪」

レイ「」プシュッ……

レイ「」ゴクッ……

アスカ「あーあ、飲んじゃった……」

レイ「……? ダメ……なの?」

アスカ「ダメって……あー、もう、わかった。こうなったらアタシも飲む!」プシュッ

アスカ「」ゴクッ、ゴクッ

マリ「ほんじゃま、私もっと」プシュッ

マリ「」ゴキュゴキュ

マリ「はい。これ、ワンコ君の分。もうみんな飲んじゃってるし、飲んじゃいなよ」

シンジ「……だね。……じゃあ僕も」プシュッ

シンジ「」ゴクッ……


シンジ「……苦いや。美味しくない……」

アスカ「同感……。何が美味しいのかしら、これ……」

マリ「私は別にそうでもないけどなあ……レイちゃんは?」ゴクゴク

レイ「……昔、お母さんが飲んでたから、時々もらってた。……なんだか懐かしい味」ゴクッ……

アスカ「ふーん……。懐かしいね……」

シンジ「僕たちには、まだ味がよくわからないみたい……」

アスカ「そうね」ゴクッ……

ー 一時間後 ー


マリ「うっ……ううっ……」グシュッ、ヒック……

アスカ「あー……眠いー……」トロン……

シンジ「あははははっ。はははっ」ケタケタ


レイ「…………」


マリ「お母さん……どうしていなくなっちゃったのさあ……」グシュッ、ポロポロ……

アスカ「あれ……? シンジ、どこー……? 見えないー……」トロン……

シンジ「あははははははははっ! 僕、目の前にいるのに。あはははははっ! や、やめてよ、アスカ! 笑い死ぬよ、もう! あはははははっ!」


レイ「……こんな時、どういう顔をすればいいのかわからないの…………」

アスカ「シンジー……眠いー……。だっこー……。膝枕ー……」フラフラ

マリ「お母さん……行っちゃダメだよお……やめてよ……」ギュッ……

アスカ「え? ……進まないー……何でー……??」ヨロヨロ

シンジ「あははっ! 笑いすぎて苦しい! あはははははっ! あはははははっ!」


レイ「もう、そのままにしておいた方がいいのかもしれない……」

ー 更に一時間後 ー


マリ「」スースー……スースー……

アスカ「」スースー……スースー……

シンジ「」スースー……スースー……


レイ「碇君……起きて……」ユサユサ

レイ「私一人だと……何故か心がズキズキするの……」ユサユサ

レイ「お母さんが亡くなってから……ずっと一人だった……。でも今は……」ユサユサ

レイ「碇君……起きて……」ユサユサ

レイ「碇君がいないと……淋しいの……」ユサユサ

レイ「碇君……」グシュッ……


レイ「碇……君…………」ギュッ……


シンジに抱きついて目を閉じるレイ






レイ「」スースー……スースー……

ー 更にニ時間後 ー


シンジ「ん……」ムクッ……

シンジ「……いつのまにか寝ちゃったんだ……」

シンジ「みんなは……」コシコシ……


レイ「」スースー……スースー

マリ「」スースー……スースー……

アスカ「」スースー……スースー……


シンジ「……みんな寝てるや……。綾波、僕の服を掴んで寝てるし……」クイッ


引っ張って手を離させようとするシンジ


レイ「…ダメ……」ボソッ

シンジ「……?」

シンジ「綾波、起きてるの?」

レイ「」スースー……スースー……

シンジ「……寝言……?」


レイ「行か……ないで……」ボソッ……

レイ「もう……一人は…嫌な…の……」ボソッ……



シンジ「……綾波…………」

レイ「」スースー……スースー……

シンジ「…………」


シンジ「大丈夫だよ……いるよ」

シンジ「僕はずっといるから……」

シンジ「だから、安心して……」

レイ「」スースー……スースー……


シンジ「綾波を……絶対に一人にしないから……」


シンジ「だから……」


シンジ「普通に……笑ったり泣いたりして。綾波……」


シンジ「」ソッ……

シンジ「」ナデナデ……

レイ「」スースー……スースー……


ふっとシンジの服から手を離すレイ…………



シンジ「……大丈夫だよ、綾波…………」


悲しげな表情を見せるシンジ…………

ー ネルフ本部、格納庫 ー


冬月「……遂に来たか」

ゲンドウ「ああ……間に合って良かった」


ガコッ……

ウィーン……


初号機に登載されるダミーシステム


冬月「直に、参号機もこちらに来るそうだ。結局、日本政府が折れたようだな」

ゲンドウ「こちらとしても助かる。起動実験が終わり次第、参号機にもダミーシステムを取り付ける予定だ」

冬月「弐号機はその後か……。まだ一機分しか完成していないのが悔やまれるな」

ゲンドウ「時間の問題だ。それに初号機さえ稼働出来れば問題ない」

冬月「……そうだな」

ー 夜 ー

ー マリのマンション ー


シンジ「もうずいぶん遅くなっちゃったね」

マリ「みんな寝てたからねえ。おかげで夕食もこんな遅い時間になっちゃったし」

アスカ「全部、アンタのせいでしょうが」

レイ「あなたも飲んでたし、酔っぱらってたわ」

アスカ「うぐっ……」

マリ「まあまあ。いいじゃん、いいじゃん。どうせならさ、今日はみんな泊まってきなよ。このまま帰るのも面倒でしょ」

アスカ「泊まるって……用意も何にもしてきてないわよ」

マリ「パジャマぐらいなら貸すよー。ベッド広いから三人でも寝れるし。どう? 泊まってかない?」

レイ「いいわ。そうする」

アスカ「うーん……じゃあアタシも……」

シンジ「あ、じゃあ僕だけ帰るね。流石に一緒に泊まる訳にはいかないし」

アスカ「え……!?」

マリ「あー、うん。そうだね。でも、また明日遊びに来てね」

シンジ「うん。そうするよ」ニコッ

アスカ「え……ちょっ……」アタフタ

レイ「碇君、また明日……」

シンジ「うん。じゃあまた」

アスカ「あ、あの……シン……もがっ!?」

マリ「おっとと……」


アスカの口を塞ぐマリ


アスカ「ひょっと……マリ……アンハ何す……」

マリ「姫ー。余計な事は喋らない方がいいよー」ヒソヒソ

マリ「でないと、姫がワンコ君の事、好きだってバラすから」ヒソヒソ

アスカ「っ……!?」


レイ「……?」

シンジ「?」

シンジ「二人とも、どうしたの?」

マリ「あー……うん。なんでもない。気にしない、気にしない」

シンジ「??」

マリ「悪いけどワンコ君、ちょーっと向こうで待っててくれないかな? 大事な話があるから」

シンジ「え……? あ……うん……」


レイ「……?」

ー シンジだけ玄関前に移動した後 ー


アスカ「マリ、アンタ卑怯じゃないの、それ……!」ヒソヒソ

マリ「それはこっちのセリフだよ。姫、ワンコ君と二人きりで一夜を共にする気だったでしょ……!」ヒソヒソ

アスカ「なっ……/// そんな事ないわよ……!//」ヒソヒソ

マリ「しゃらーっぷ。ひょっとしたら、寝込みを襲う気だったかもしんないじゃん? いくら何でもそれは許さないよ」ヒソヒソ

アスカ「する訳ないじゃないの……!/// アンタ、バカァ!//」ヒソヒソ

マリ「とにかくダメったらダメだよ……! ミサトが留守の間は姫はここで泊まるの……! 抜け駆けはなし……!」ヒソヒソ

アスカ「抜け駆けって……別にアタシはそんな……//」ヒソヒソ

マリ「顔赤くして言っても説得力ないよ。とにかくこれは決定……!」ヒソヒソ

アスカ「横暴よ、そんなのっ……!」ヒソヒソ

マリ「別に式ちゃんがワンコ君の事を好きじゃないなら、嫌がる理由なんかないでしょ。好きなら止めるからどっちにしろ一緒だけどさ」ヒソヒソ

アスカ「うっ……!」


レイ「……??」

マリ「レイちゃんだってそうでしょ? ワンコ君と式ちゃんが二人で一緒に寝るの嫌じゃない?」ヒソヒソ

アスカ「一緒には寝ないわよ……!// なに紛らわしい言い方してるのよっ……!」ヒソヒソ

レイ「よくわからない……」

マリ「嫌かそうでないかだけだよ。ワンコ君が式ちゃんと抱き合って二人でキスしてるの想像してみてよ。それでも平気?」ヒソヒソ

レイ「…………」

レイ「……やっぱりわからない。けど……」

マリ「けど?」

レイ「何だかズキズキする……。今まで感じた事のない痛み……」

レイ「こんな痛みは初めて……」

レイ「どうしたらいいのか……自分でもよくわからない……」

マリ「……だよね」チラッ

アスカ「う…………」フイッ……

マリ「という事で式ちゃん。ワンコ君と一緒にお泊まりは禁止」

アスカ「だけどっ…………」


悔しそうな、悲しそうな表情を見せるアスカ……


マリ「……そんな顔しないでよ、式ちゃん。私だってさ…………」

アスカ「……私だって……何よ……?」

マリ「…………ごめん。何でもない……」

アスカ「何でもないって……そんな訳ないでしょ。最後まで言いなさいよ」

マリ「ごめん……」フイッ……

アスカ「…………」


マリ(色々……我慢してるんだよ…………なんて言える訳ないじゃん……?)

アスカ(……もうっ! そっちこそそんな顔しないでよ! ……やめてよ、もうっ!!)フイッ……

レイ「…………」

「……真希波ー? そろそろ話、終わったー?」


マリ「あ……うん……まあ……」チラッ……

アスカ「……終わったわよ。……もう大丈夫だから」

マリ「……ごめん、姫」ボソリ

アスカ「いいわよ……別に。アタシが逆の立場なら同じ事してたかもしれないから……」ボソリ

レイ「…………」

「じゃあ僕もうそろそろ行くけどー……」


マリ「あ、うん。見送りに行くからちょっと待ってて」トタトタ

アスカ「…………」

マリ「あれ?」

マリ「式ちゃん、行かないの?」

アスカ「行くわよ。……でも、先にパジャマを貸して。どこにあるの?」

マリ「……? パジャマなんて今着ないじゃん」

アスカ「アタシは今確認したいのよ。……だから、アンタは先に行きなさいよ。なんか……キリのいいところで呼んで」

マリ「…………」

アスカ「レイ。悪いけど、アンタも探すの手伝ってくれない?」

レイ「でも、もうすぐ碇君が帰るから」

アスカ「わかってるわよ。だから、その後はアンタの番……。アンタならアタシが言ってる事わかるでしょ、マリ……?」ボソッ

マリ「……やっぱり式ちゃん、優しいね」

アスカ「んな事ないわよっ……! だから、早くして!」フイッ

マリ「りょーかい」トタトタ

ー 玄関 ー


マリ「やあやあ、お待たせ。ワンコ君。ごめんよ」

シンジ「ううん、別にそれはいいけど……」チラッ

マリ「ああ、式ちゃんとレイちゃんなら今パジャマ探してるから」

シンジ「パジャマ?」

マリ「そう、パジャマ」

シンジ「あ、うん……?」

マリ「それよりさ、ワンコ君。ちょっとこっち来て」

シンジ「?」

マリ「んー……。やっぱ前向きだと流石に照れるかにゃ……」

シンジ「何の話?」

マリ「こっちの事。そうだねえ、やっぱ後ろ向いてもらえるかにゃ?」

シンジ「よくわからないけど……こう?」クルッ

マリ「ん。そう」

マリ「」スッ……


シンジの肩あたりに手を伸ばすマリ


マリ「//」ギュッ……

シンジ「!?///」


そっと抱きつく……

シンジ「あの…/// 真希波……///」アセアセ

マリ「いいからじっとしてなよ、ワンコ君//」

シンジ「え、でも……///」

マリ「だってさあ、式ちゃんの事アスカって呼んだり、レイちゃんの事いいお母さんになるとか言ったりさあ。 私だけ、なんかおいてけぼりな感じじゃん?//」

シンジ「あの、でも、それは…///」アセアセ

マリ「わかってるってば。ワンコ君はそんな事を意識してないんだよね。でも、なんか悔しいじゃん? だからさ…//」ギュッ……

シンジ「いや、でも、その……///」アセアセ

マリ「いいから少しじっとしてて、ワンコ君// ちょっとの間だけだから//」

シンジ「…///」ドキドキ

マリ「……///」ギュッ……

シンジ「……///」



マリ「……ねえ、ワンコ君」

シンジ「あ、な、何?///」ドキドキ

マリ「……流石にさ、ワンコ君も気づいてるよね?」

シンジ「あ……えと……何に?///」

マリ「私やさ、姫……あと多分、レイちゃんも」

シンジ「……?//」

マリ「ワンコ君の事……好きだって事にさ……//」

シンジ「……!」

マリ「その様子だと、図星かな……?」

シンジ「………………」

マリ「どうなの、ワンコ君……?」

シンジ「…………」

マリ「姫なんか、あれだけあからさまだもんね……。隠してるつもりなのは、多分本人だけだと思うんだけどなあ……」

マリ「いくら鈍くても気づくよね、あれは……。私の事はどんな感じだったか流石にわからないけどさ……」

シンジ「…………」

マリ「それで……どうなの、ワンコ君?」


シンジ「…………」

シンジ「……綾波は……多分違うと思うけど」

シンジ「アスカはひょっとしたらって思ってた……」

マリ「だよね……」

シンジ「……うん」

マリ「でさ、ワンコ君……」

シンジ「……うん」

マリ「ワンコ君はさ、どう思ってるの?」

シンジ「…………」



マリ「…………」ギュッ……

シンジ「……よく、わからない」

マリ「……ずるいよね、ワンコ君は」

シンジ「…………」


マリ「……違うか。ずるいのは私だね……。勝手に人の気持ちバラしてさ、こんな質問してさ、最低だよね……」

シンジ「…………」

マリ「……でもさ、ワンコ君。さっきみんなと話しててさ、これだけはどうしても言っておかなきゃって思っちゃったんだよ……」


マリ「こんな状態……長く続く訳ないよってさ……」

シンジ「…………」

マリ「……今は余裕がないもんね、ワンコ君」

マリ「自分の事で手一杯だもんね……」

マリ「だからさ……仕方ないとも思うんだ……」

シンジ「…………」


マリ「姫もさ……今は余裕があるように見えるけど、もしもワンコ君にフラれたらどうなるかわかんないし……」

マリ「レイちゃんだって……最近少し楽になってきたってだけで辛い事には変わりないから……。心配だよね……」

シンジ「…………」

マリ「私だってさ……わかってるんだよ。ワンコ君はきっと今は答えを出さないだろうなって……」

マリ「出したら今の関係が跡形もなく壊れそうだもんね……。今、みんなの関係が壊れたら、この先やっていけないんじゃないかって、私でも思うよ……」

シンジ「…………」

マリ「みんな散り散りになってさ……。助け合ってどうにか上手くやれそうになってきたところだっていうのに……。またバラバラになりそうだもんね……」


シンジ「………………」

シンジ「……ごめん。でも、僕も本当にどうしていいかわからなくて……」

マリ「…………」

シンジ「……だから、あまり考えないようにしてるんだ。真希波もアスカも綾波も……それにトウジやケンスケ……クラスのみんなも……。僕にとって、全員大切な人だから……」

マリ「…………そっか」


マリ「仕方ないにゃあ……今はもう、その言葉だけで許してあげるよ、ワンコ君」ギュッ……

シンジ「……ごめん……真希波」

マリ「でもさ……」

シンジ「…………うん」

マリ「色々と片付いたら、その時は必ず答えを出すんだよ、ワンコ君」

マリ「全員と、虫良く付き合おうなんて考えてたら殴るよ」

シンジ「……うん」

マリ「ワンコ君がさ、そんな事を考えてたら全員が悲しい思いをする事になるんだから……」

マリ「今だって……みんなやりきれない想いをどこかに抱えてるんだよ……」

シンジ「…………ごめん」

マリ「だけど、ワンコ君が誰か一人に絞れば……」

マリ「その二人は幸せになれるんだから……」

マリ「もしも、選んだ答えが三人の内の誰でもなかったとしても……」

マリ「少なくともワンコ君、君だけは幸せになれるんだよ」

シンジ「…………」

マリ「……そういうのはワンコ君は嫌かもしれないけどさ。でも……全員が不幸になるよりは、他の三人が不幸になった方がいいんだよ。私も姫もレイちゃんもきっとそれを望むよ」

マリ「だから、ワンコ君……。ネルフから解放されるような事があれば、その時には必ず答えを出しなよ……」

マリ「……絶対だからね」ギュッ……

シンジ「うん……。約束する……」コクッ……

ー 数分後 ー

ー 寝室 ー


ガチャッ……

マリ「」トコトコ……


アスカ「……遅かったわね」ムッ

マリ「ちょっとね。少し話し込んじゃってさ……」ハァ……

アスカ「?」

アスカ「……なんか元気ないわね?」

マリ「そっかな? あ、それよりレイちゃん、ワンコ君今一人だからさ。少し話をしてきたら。誰かの前だと言いにくい事とか話すチャンスかもしれないよー」

レイ「…………」

マリ「ま、レイちゃんにはそういうのないかもだけど。ま、とにかく話をしてきたら」

レイ「……そうね。そうする」トコトコ


アスカ「…………んー……」ムスッ

マリ「姫ー。自分から言い出した事じゃないの?」

アスカ「わかってる! わかってるわよ、でもっ!」

マリ「無理するぐらいなら言わなきゃいいのに……。でも、ありがとう、姫。話したい事全部話す事が出来てすっきりしたよ」

アスカ「……そうは見えないけどね」

マリ「ま、色々あるんだよ。こっちにもさ」

アスカ「あっそう。ふんっ」プイッ

マリ「……ホント、素直なのか素直じゃないのかよくわからないよね、姫って」

アスカ「うるさい。アタシの勝手よ!」

マリ「はいはい。わかってるから、お姫様」

アスカ「その言い方もやめてよ、もう!」

ー 玄関 ー


レイ「」トコトコ

シンジ「綾波……。一人?」

レイ「ええ」コクッ……

レイ「マリから、少し話をしてきたらって言われたの」

シンジ「そっか……」


レイ「…………」

シンジ「…………」


シンジ「……なんか、綾波とこうして二人で話すのって服買いに行った時以来だね」

レイ「そうね」

シンジ「その時は、僕、クレープ食べられなかったっけ……」

レイ「……ええ」

シンジ「……今度は一緒に食べられるといいなって思ってるけど……」

レイ「……//」ドキッ……


シンジ「……また誘ってもいいかな、綾波?」

レイ「ええ…///」コクッ……

シンジ「良かった……」

レイ「…///」コクッ……

シンジ「…………//」

レイ「…………//」


レイ「……碇君」

シンジ「……何?」


レイ「私、お母さんのお墓……。もう守らなくてもいいのかもしれない……」

シンジ「え……」

レイ「お母さんもきっとわかってくれると思うから」

シンジ「…………」

レイ「アスカが言っていたわ。……お母さんよりも大事な人がいるって」

シンジ「…………」

レイ「私もきっとそう。……お母さんのお墓を守るより、大事な事があるんだと思う」

レイ「今の私を見ても、お母さんはきっと笑ってくれないと思うから……」

レイ「だから……もういいの。私がネルフを守る必要はもうないの」

レイ「私は、今は碇君やみんなを守る為にここにいるんだと思う……」

レイ「だから……碇君がもうEVAに乗らなくていいようにしたい」

レイ「その事を、碇君には知っておいてほしい」

レイ「……それだけ」


シンジ「………………」

ー また数分後 ー


アスカ「最後はアタシね……」

シンジ「うん……」

アスカ「……みんなから、何か言われたの? シンジも元気ないけど……」

シンジ「ちょっとね……。色々と」

アスカ「マリみたいな事言うのね……。でも、しょうがないか……。みんなそれぞれ人に言いにくい事を抱えてるんだから……」

シンジ「そうだね……。仕方がないんだと思う」

アスカ「……シンジも、よ」

シンジ「え?」

アスカ「アタシだって、わかるから……。シンジが人に言えない様な事とか……何か色々と難しい事を沢山抱えてるのはわかるから……」

シンジ「……そうでもないよ。僕なんか、そんな……」

アスカ「そうやって……心配かけさせないように気遣ってるってのもわかってるから……」

シンジ「…………」

アスカ「アタシは……ずっとシンジに迷惑かけっぱなしで……」

アスカ「会った時から今までずっと……シンジがかばったり守ってくれたりしていて……」

アスカ「なのにお返しなんて、アタシ、何一つ出来なくて……」

アスカ「自分の事だけで精一杯で、どうしようもなくて……」グスッ……

シンジ「アスカ……」

アスカ「だから……だから……」ヒック……

アスカ「エヴァのパイロットじゃなくなった今……これからずっとお返ししていこうって……」グシュッ……

アスカ「何か困った事とかあったら……悩み事とかあったら言って欲しいのに…………。アタシで力になれる事は何でもするのに…………」グスッ……

アスカ「一人で色々抱え込まないでよ、シンジ……。今度はアタシが助ける番なんだから…………」グシュッ……

シンジ「うん……。ありがとう……アスカ」

アスカ「ううん……。お礼はアタシが言わなきゃいけないから……」コシコシ……

シンジ「何かあったら……アスカに頼るよ。きっと」

アスカ「うん……。いつでも何でも言って……。絶対、力になってみせるからね、アタシ……」ニコッ……

シンジ「……うん」ニコッ……

ー 慰安旅行が終わった翌日 ー

ー ネルフ本部、格納庫 ー


ミサト「ふーん……あれがダミーシステム」

リツコ「ええ……。私も初めて見るわ」

マヤ「今のところ、取り付けは初号機だけですが、その内、弐号機と参号機にも取り付ける予定だそうです」

日向「元々はパイロット補助の名目で開発されてたものですが、単独での自律制御だけでなく、無人状態でのATフィールド発生も可能らしいですからね。司令は今のパイロットに代わってダミーシステムで運用していくつもりみたいですよ」

リツコ「ミサト、これであなたの肩の荷も降りたんじゃないの? アスカは名目共々パイロットとしての意味がなくなった訳だから、もうあなたが引き取っておく必要もないでしょうし」

青葉「面倒な子供のお守りもついになくなったって訳ですね。葛城さんとしては、そっちの方が楽でしょう」

日向「元々、EVAは兵器ですからね。子供の玩具としての期間もここでお仕舞いですね」

マヤ「…………」


ミサト「まーねー……。私としては確かにそっちの方が楽だし嬉しいんだけど……」

ミサト「ちょっちね……。思う事もあって……」

ミサト「…………」

ー 夜、居酒屋 ー


ミサト「あの新型のダミーシステムってやつ、どうにかなんないかしらねえ……」

加持「ゴルゴナベースからの厳封直送品のか? 確かに得体の知れないものだけどな……」

ミサト「別にそんなのはいいのよ。リツコがどうせ調整やらテストやらするから、そこら辺は信用してるわ」

加持「……なら、どうしてだ?」

ミサト「問題は、これでシンジ君やレイがエヴァに乗れなくなったって事。レイは聞き分けがいいから我慢してくれるでしょうけど、シンジ君はねえ……」

加持「あのシンジ君が文句を言うとは思えないけどな」

ミサト「そりゃあ文句はきっと言わないわよ。でも、露骨に悲しそうな顔をしそうでさあ……。伝え辛くてねえ……。まだ誰にも言ってないのよ……」

加持「ダミーシステムの事をか?」

ミサト「違うわ。今日、司令から言われたの。パイロット全員はこれからみんな予備扱い、余程の事態が起きない限り招集する事もエバーに乗せる事もさせないってね……」

加持「……へえ。そいつはちょいと……面倒だな」

ミサト「でしょー? シンジ君やレイになんて言えばいいかわかならくてねえ……。あーあ、弱ったなあ……」


加持「…………」

ミサト「でも、もう決まっちゃった事だから伝えなきゃいけないし……辛いわー……」

加持「…………」

ミサト「まあ、もうどうしようもないんだけどね……。単なる愚痴よ、愚痴」

加持「…………」

ミサト「どうしたの、加持君? 急に黙っちゃって」

加持「ああ……いや、何でもないさ。少し考え事をな」

ミサト「ふーん……。まあいいわ。それよりさ、加持君……。私達、結構長い付き合いよね……。それなのに、こうも仕事仕事ばかりで最近ろくすっぽ会えてないんだけど……」

加持「すまないとは思ってるよ。ただ、今はどうしても休みがとれなくてな」

ミサト「いっつもそればっかり……。私だって、いつまでも放っておかれたら、誰か別の人に目移りしちゃうかもしれないわよ」

加持「そいつは怖いな……。肝に命じておくさ」

ミサト「わかってないわよ、バカ……。そういう事を言ってるんじゃないのに」

加持「……結婚したい、って事か?」

ミサト「//」ドキッ

加持「俺だって何も考えてない訳じゃないからな。お互い、もういい歳だし……」

ミサト「それは余計よ!//」

加持「ただ、もう少し待ってくれないか、葛城。こっちにも心の準備ってものがあるし、不安だってあるからな」

ミサト「……私はないのに」ボソリ

加持「わかっているさ。選ぶとしたら俺も葛城だけだ。だから、それを信じてもう少しだけ待っていてくれないか」

ミサト「…………本当に?」

加持「ああ、俺は葛城に対して嘘なんかつかない。本当にだよ」

ミサト「…………それ……約束したわよ、加持君」

加持「ああ……信用してくれ」

ミサト「……わかったわ。もう少しだけ…待つから……//」

Prrrrrr Prrrrrr


ミサト「あ、電話……ちょっとだけごめんね、加持君」

加持「…………」


ミサト「」ピッ

ミサト「もしもし」

ミサト「あー、リツコ……」

ミサト「うん……。うん……」

ミサト「わかってる……明日中には結論出すわよ」

ミサト「うん……。じゃあね……」ピッ……

加持「電話……リッちゃんからか?」

ミサト「ええ、そう。参号機のテストパイロットの件で催促よ。まだ決めてないから……」

加持「参号機か……」

ミサト「そう。参るのよねえ……。なにせこれがあの子たちにとっては、エバーに乗る最後の機会でしょ。レイを乗せるべきか、シンジ君を乗せるべきかで悩んでてね……」

加持「……アスカはないのか?」

ミサト「あいつを乗せる訳ないじゃない」キッ

加持「ま、そりゃそうだな……」

ミサト「で、二人の内、どっちを乗せるかで悩んでるのよ。順当に行けばレイなんだけど……」

加持「そうだろうな」

ミサト「レイはこれまで私達に色々よくしてくれてたからさあ……。物分かりのいい子だったし、私達とは付き合いが一番長いからね……。だから迷わずあの子を乗せるべきなんだけど……」

加持「出来る事なら、シンジ君を乗せたいって事か……」

ミサト「うん……そう。贔屓になっちゃうんだけど、シンジ君とはこれまでずっと一緒に暮らしていたからさあ……。やっぱりあの子の喜ぶところを見たいのよね……。これが最後かと思うと尚更……」

加持「そうか…………」

ミサト「加持君はどう思う? どっちを乗せた方がいいかな?」

加持「…………」

ミサト「加持君?」

加持「……そうだな。やっぱりレイじゃないか? 普通に考えればそうだし、シンジ君もきちんと説明すればわかってくれるだろうからな」

ミサト「そうよね……。だけど……なかなか踏ん切りがつかなくてね……」

加持「それが駄目なら、いっその事二人とも乗せないって事でアスカでもいいが、それは葛城が嫌なんだろう? だったらレイしかないと俺は思うけどな」

ミサト「うん……。そうなのよね……」

ミサト「頭ではわかってるんだけどね……」

加持「…………」


ミサト「やっぱりレイを乗せるべきなのかしら……」

加持「俺はそう思うけどな」

ミサト「うん……」

加持「……ま、何にしろ最後に決めるのは葛城だ。後悔の残らないようにすればいいさ……」

ミサト「そうね……そうするわ」

ー 翌日 ー

ー ネルフ本部、作戦会議室 ー


シンジ「えっ!?」

レイ「……!」


ミサト「」ハァ……

ミサト「やっぱそうよね……。エバーに乗れるのが今日で終わりだなんて、驚くわよね……」


シンジ「あ、あのっ! それ……本当なんですか!?」

ミサト「ええ……。残念ながらね。でもこれは碇司令の決定なの。悪く思わないでね」

シンジ「父さんが……」

レイ「…………」


ミサト「ただまあ、一応は予備って事になってるからひょっとしたら呼び出される事もあるかもしれないわ。可能性はかなり低そうだけど……」

シンジ「そ……そうなんですか……」ウズウズ

レイ「残念です……」ウズウズ

ミサト「」フゥ……

ミサト「……いいのよ、二人とも無理しないで。私に気を遣わなくてもいいわ。内心では落ち込んでるってのはよくわかってるから」

シンジ「あ……えと……」

レイ「申し訳ありません……」

ミサト「ま、使徒を全部片付けたら、こっそり一回ぐらいは乗せてあげられると思う。悪いけど、気長に待っていて」

シンジ「はい!」

レイ「はい」

ミサト「で、まあ、その代わりって訳じゃないけど、もうすぐ新しいエヴァ……参号機がこちらに来る事になってるわ」

ミサト「そのテストパイロットをあなたたちのどちらかにさせてあげる事になってるから」

ミサト「って言っても、単なる起動実験だから大した事は出来ないんだけどね。一日乗って、少し動かして、それでおしまい」

ミサト「でも、これが多分エバーに乗るラストチャンスだから、二人ともやっぱり乗りたいでしょ?」

シンジ「…………そうですね」

レイ「…………ええ」

ミサト「でも、残念な事に乗せられるのは一人だけなのよね。だから……」


シンジ(これが最後なんだから、綾波にはもう辛い思いをさせたくない)

レイ(これで最後だから、せめて碇君には休んでてほしい)


シンジ「……じゃあ僕が乗ります! 僕を乗せて下さい!」

レイ「……私が乗ります。葛城三佐、お願いします」


ミサト「やっぱりこうなるのよねー……」ハァ……

ミサト「まあ……多分そうなるだろうと思って、予めこんな物を用意しておいたから」スッ

シンジ「これって……」

レイ「くじ引き……」

ミサト「そ。色々考えたんだけど、やっぱりここは公平にかつ平等にいかないとって思ってね。これならケンカにならないし、外れても仕方なかったってお互い諦めがつくでしょ?」

シンジ「……そうですけど、でも……」

レイ「……葛城三佐、お願いします」

ミサト「ダーメ。わがままはなし。恨みっこなしの一発勝負で決めるわよ。後から文句はなし。いいわね?」

シンジ「…………わかりました」

レイ「…………はい」

ミサト「それじゃ、二人とも、くじを引いて。引く時、ケンカしちゃあダメよ」

シンジ「えと……じゃあ僕はこっちで……」スッ

シンジ「いい? 綾波」

レイ「ええ……。私はこっちを引くわ」スッ

ミサト「じゃあ、いっせーので引いて。赤い印がついている方がアタリ。参号機のテストパイロットよ」

シンジ「はい」

レイ「わかりました」

ミサト「いくわよー。いっせーのでっ……!」

シンジ「」スッ
レイ「」スッ


シンジ「僕だ……!」

レイ「…………」


ミサト「じゃあもう参号機のテストパイロットはシンジ君に決定。レイ、公平に決めた結果だから、残念だとは思うけど諦めるのよ、いい?」

レイ「…………はい」

ミサト「それじゃ、シンジ君だけこっちに来て。起動実験は松代でするから軽くその事について説明するわ」

シンジ「はい」

ミサト「レイはもう今日は帰っていいわよ。お疲れ様」

レイ「……はい」

ミサト「じゃ、シンジ君、行きましょ」

シンジ「はい」


ミサト「」トコトコ……
シンジ「」トコトコ……

プシュン……


部屋から出ていく二人



レイ「碇君……」

レイ「私が代われなかった……」シュン……


レイ「だけど……これでもう二人ともEVAに乗らなくてすむようになる」

レイ「碇君も、私も、パイロット登録が予備扱いになる……」


レイ「……伝えないと。二人に」

レイ「これで全員、ネルフから解放されたって……」タタッ


少しだけ嬉しそうな表情を見せて、急いで部屋から出ていくレイ

ー マリのマンション ー


マリ「やったじゃん!! おめでとう、レイちゃん!!」

アスカ「ホンとよねっ!! おめでとう、レイ!!」

レイ「ありがとう……//」


レイ「でも……碇君だけもう一回乗る事になって……」シュン

マリ「そんなの、あと一回だけじゃん! それさえ我慢すればもうみんな自由だよ! ネルフから離れられるんだよっ!」

アスカ「そうよ、レイ! シンジの事は残念だったけど、でも、どうせあと一回だけなんだから! おめでたい事には変わりはないわよ!」

マリ「ワンコ君だって絶対気にしてないって! それよりさ、またお祝いしようよ! ワンコ君が帰ってきたらさ!」

レイ「……そうね」コクッ……

アスカ「そうだ! 三人で料理を作らない? それでシンジにご馳走するの! クラッカーとか買ってきてさ!」

マリ「いいね、いいね! 本当のパーティーみたい! やろうよ! それやろうよ!」

アスカ「レイ。アンタはどう? やったら楽しそうじゃない?」

レイ「ええ……。してみたい」

マリ「じゃ、決定! ワンコ君が松代から帰ってきたらみんなでパーティーだよー♪」

アスカ「何作る? あ、マリ、アンタはケーキ担当でいい? お菓子作れるのってマリだけでしょ?」

マリ「だねー。とびっきり豪華なのを作っちゃうよー♪」

アスカ「今からすっごい楽しみ。早く時間が経てばいいのに♪」



レイ(何だろう……。ドキドキする……)

レイ(きっとこれが……楽しみ)

レイ(今までずっと……忘れていたのに)


レイ(碇君……)

レイ(今なら私……ひょっとしたら笑えるかもしれない)


レイ(碇君が帰ってきたら……。きっと私……笑って出迎えられると思う……//)

レイ(みんなと一緒に……嬉しそうに……//)


微かに笑みを見せるレイ

ー 翌日、参号機起動実験の日 ー

ー 学校 ー


ヒカリ「ホントに!?」

アスカ「ホント、ホント♪シンジもレイも、アタシと同じでパイロット予備扱い。もうネルフに行かなくてもよくなったの♪」ニコニコ

ヒカリ「……そうなんだ」

ヒカリ「良かった……。本当に良かったね、アスカ」グスッ

アスカ「うん……ありがとう、ヒカリ」ニコッ……

ヒカリ「」グスッ、ゴシゴシ……



ヒカリ「じゃあ……。もうみんな酷い事されないんだね」

アスカ「あ、うん……。多分……」

ヒカリ「?」

アスカ「ミサトの家に……いつまで居るかまだわからないから」

ヒカリ「あ…………」

アスカ「でも、大丈夫よ。今までよりずいぶん楽になるんだから」

アスカ「アタシはひょっとしたら家から追い出されるかもしれないけど、その時は私と一緒に住めばいいってレイが言ってくれてるし……」

アスカ「とにかく、いい事なの。だから、大丈夫」ニコッ

ヒカリ「そっか……うん」ニコッ……

ガラッ……


ケンスケ「おはよー、委員長。それに式波」

ヒカリ「あ、おはよう、相田君」

アスカ「おはよ」

ケンスケ「うん……」

ヒカリ「? なんか元気ないね……。それに鈴原は? いつも一緒なのに」

ケンスケ「ああ、トウジは今日は小田原の病院。妹さんが退院するとかでさ。……それより、碇は?」キョロキョロ

アスカ「シンジは、三号機のテストで今日は松代まで行っててお休みよ。何か用でもあったの?」

ケンスケ「ああ、うん……まあ、そんなところかな。……いつ頃戻ってくるかわかる?」

アスカ「明日か遅くても明後日には戻ってくるはずよ。起動実験をするだけだから」

ケンスケ「そっか……。ありがとう」

アスカ「?」

ケンスケ「式波にもその時伝えるから」

アスカ「何の話よ?」

ケンスケ「いや、何でもないよ。邪魔したね。じゃあ……」

ケンスケ「」クルッ、スタスタ……


どことなく淋しそうに自分の席へと着くケンスケ


アスカ「何だったのかしら、一体……。ね、ヒカリ」

ヒカリ「ん? あ、ああ、そうね……。うん……」シュン……

アスカ「……?」

ヒカリ(……ケンスケ君も引っ越すって言ってたから、多分、その事なんだろうな……)

ヒカリ(淋しいけど仕方ないもんね……)

ヒカリ(私もまだアスカにその事を伝えてないし……)

ヒカリ(碇君が戻ってきたら、私も伝えないといけないから……)

ヒカリ(折角、みんなネルフから解放されたっていうのに……。もうお別れだなんて淋しいな……)

ヒカリ(辛いなあ……)

ヒカリ「」ハァ……


アスカ「……ヒカリ、どうしたの? 大丈夫?」

ヒカリ「あ、うん。大丈夫。今、ちょっと感傷的になっちゃってるから……」

アスカ「そうなの?」

ヒカリ「うん、そう。それだけ……」シュン

アスカ「…………」


怪訝な顔を見せるアスカ……

ー 松代 ー


ババババババ


ヘリから降りるリツコとミサト

それを出迎えるネルフ職員


リツコ「……まさかここに二回も来る事になるとは思わなかったわね」

ミサト「まあ、お仕事ですもの。しょうがないわね」

リツコ「で、作業はもう終わってるんでしょうね?」

ネルフ職員A「ええ、滞りなく」

ネルフ職員B「後はパイロットを乗せるだけです」

リツコ「そう。ご苦労様」

ミサト「…………」

リツコ「どうしたの、ミサト? 急に難しい顔をして」

ミサト「ん……ちょっちね。悪いけどリツコ、先に行っててくれる。私は後から行くから」

リツコ「……そう。わかったわ。でも、あまり遅くならないようにね」

ミサト「わかってる」

リツコ「それじゃあ先に行くわ。あなたたち、案内してちょうだい」

ネルフ職員AB「はい」


去っていくリツコ達……


ミサト「…………」

ミサト「」スッ


鞄から携帯を取り出すミサト……

ー リフト内 ー


シンジ「」ゴソゴソ


テスト用プラグスーツに着替えるシンジ


シンジ「……なんかこのプラグスーツって」

シンジ「ちょっと見えすぎだよね//」

シンジ「何でこんなデザインにしたんだろ……//」


Prrrrrr Prrrrrr


シンジ「電話?」

シンジ「」スッ

シンジ「しかも、守秘回線だ……。誰からだろ?」

シンジ「もしもし」ピッ

ミサト『もしもし、シンジ君?』

シンジ「あ、ミサトさん……。えと……どうしました、本番前に。また僕、何かミスしました?」ドキドキ……

ミサト『そうじゃないわ。ただ、シンジ君と少し話をしたくなってね』

シンジ「そうですか……」

ミサト『ねえ、シンジ君……。最初に私と会った時の事、覚えてる?』

シンジ「あ、はい! あの時から僕、ずっとミサトさんに迷惑ばっかりかけて……。本当にすみません……」

ミサト『いいのよ、もう、そんな事。確かにあの頃のシンジ君は酷い問題児だったけど、今ではそんな事はないんだから』

シンジ「…………」

ミサト『あれからよく頑張ったと思うわ。ひょっとしたら調子に乗るかもと思って今までずっと言わなかったけど、今ならはっきりと言えるから』

ミサト『本当に、前とは見違えるぐらい立派になったわよ、シンジ君。よく努力したと思う。頑張ったわね』

シンジ「…………ありがとうございます」

ミサト『本当はね、シンジ君。私はもう少し早く、この事をあなたに伝えても良かったんじゃないかと思う』

シンジ「…………」

ミサト『でも、それを躊躇ったのは、シンジ君がまだ心配だったから……』

ミサト『ううん、違うわね。立派に成長していくシンジ君を、もう少し側で見ていたかったから……』

シンジ「…………」

ミサト『ひょっとしたらそれさえも言い訳で、ただ単にシンジ君と離れたくなかっただけなのかもしれない。一緒にあれだけの時間を過ごしたのだから……。やっぱり淋しいわ……』

シンジ「……?」

ミサト『シンジ君、最初の頃にあなたに言ったわね。今のままではエバーのパイロットとしてダメダメだから私が教育するって……。もうその意味もなくなっちゃったのよ』

シンジ「え…………」

ミサト『あなたはこれからエバーの正式パイロットではなくなるし、もう十分成長して立派になっているのだから、私が引き取る理由は全部なくなってしまったの』

ミサト『だから、最初の予定通り、これからはお父さんの家に行ってそこで一緒に住みなさい。いつまでも司令に淋しい思いをさせる訳にもいかないしね』

シンジ「あの……でも」

ミサト『わかってる……。正直、あなたと離れるのは私も辛いわ。シンジ君の事をいつのまにか家族の様に思っていたからね……。まるで出来の悪い弟を持ったようなそんな感覚ね……』

シンジ「…………」

ミサト『でも、これで永遠にお別れって訳でもないし、会おうと思えば私達はいつでもまた会えるわ。シンジ君がいなくなったら、きっと私の今の生活は火が消えた様に淋しくなるけど……でも我慢しなくちゃいけない事なのよね、それも……』

シンジ「…………」

ミサト『』グスッ、コシコシ……

ミサト『ごめん。少し湿っぽい話になっちゃったわね。でも、これがシンジ君にとって一番だろうから、私のわがままな希望に付き合わせちゃダメなのよね……』

シンジ「…………」

ミサト『シンジ君。この起動実験が終わって第三新東京市に帰ったら、引っ越しの準備をするのよ。それで二人で最後に食事でもしてお別れ』

シンジ「あの……。でも……アスカがいるから、僕はまだミサトさんの家に……」

ミサト『ダメよ、シンジ君。辛いのはお互い様なんだから。そう言ってくれる気持ちは嬉しいけど、やっぱり子供は家族と一緒に過ごすのが一番なの。私は小さい頃にお父さんを亡くしたから、それがよくわかるわ。お父さんの所に行きなさい』

シンジ「でも……!」

ミサト『それに、あいつの事なら平気よ。この前、私が本部で不満を溢していたら、レイが司令に内緒で引き取ってもいいって言ってくれたから』

シンジ「え……? でも、アスカにも監視がついてるからすぐに父さんにバレるんじゃ……。そうなったら……えと、その……ミサトさんの立場が……」

ミサト『そこら辺はぬかりないわー。私とレイの二人で諜報部にこっそりお願いしとけば、向こうも言う事を聞いてくれるに決まってるんだから』

ミサト『これまではそうもいかなかったけど、でもアスカはもうパイロット予備扱いになっているんだし、監視して報告する意味も機会もあまりないんだから、それぐらいどって事ないわよ』

シンジ「そうなんですか。良かった……!」

ミサト『ありがとね、シンジ君。私の心配をしてくれて。でも、とにかくそういう事だからシンジ君は何も気にしなくていいわ。堂々と胸を張ってお父さんの所に戻りなさい』

シンジ「はい!」

ミサト『うん……。でも、たまには私の家にも遊びに来なさいよ。私の家はね、シンジ君。いつだってあなたの家でもあるんだから』

シンジ「…………わかりました。……たまには行きます」

ミサト『そうね……そうして』ニコッ

ミサト『それじゃあ、シンジ君。もうそろそろ電話を切るわね。早くしないとリツコに怒られちゃうから』

シンジ「はい」

ミサト『全部終わったら、お父さんの所に行って、色々と甘えてきなさい。ただし迷惑はかけないようにね』

シンジ「はい。大丈夫です」

ミサト『うん……。これからも頑張っていくのよ、シンジ君。こうして生きていると色々と辛い事もあるけど、楽しい事や面白い事もそれ以上に一杯あるんだから。……この世界にはまだまだあなたの知らない事で満ち溢れているわ』

シンジ「はい!」

ミサト『』クスッ

ミサト『それじゃあね。この実験が終わったら一緒にご飯を食べに行きましょ。美味しいもの、いーっぱい御馳走してあげるから』

シンジ「ありがとうございます、ミサトさん」

ミサト『ええ。じゃあね』ピッ……


ツー、ツー、ツー……

シンジ「……良かった」

シンジ「本当に良かった……」グスッ……

シンジ「これでみんな助かるんだ……」ポロポロ……

シンジ「綾波も、アスカも、それに真希波も……もう酷い事されずに済むよ……」グシュッ……

シンジ「良かった……。本当に良かった……」ヒック、グシュッ……


涙が零れるシンジ……

ー 数分後、松代実験場 ー


ミサト「」トコトコ……

ミサト「お待たせ、リツコ。悪いわね、結構待たせちゃったみたいで」


リツコ「いいわよ、別に。丁度今、コーヒーを飲み終えたところだったから」

ミサト「ん。ありがと、リツコ。愛してるわよー」

リツコ「馬鹿な事を言ってないで、早く席について。さっきパイロットもエントリーしたところだし、もう起動実験を開始するわよ」

ミサト「了解。ごみんねー」

ー 起動実験開始 ー

ー エントリープラグ内 ー


『エントリースタート』

『圧力正常、プラグセンサー問題なし』

『数値は誤差範囲内』

『了解。作業をフェイズ2へ移行。第二次接続開始』




シンジ(早くこれを終わらせて、みんなにこの事を伝えなきゃ)

シンジ(きっとみんな喜ぶだろうなあ)

シンジ(今から楽しみで仕方がないよ)ニコニコ

バシュッ!!


シンジ「え?」


急に外の景色が消えるエントリープラグ内


バシュッ!!

バシュッ!!

バシュッ!!


一転して次々と変わり、奇妙な空間に移り変わる


シンジ「何これ、一体、何が……!」


???『』アハハハッ、アハハッ、アハハハッ……


シンジ「え……? え!!」

ー 実験場 ー


オペレーターA「プラグ深度、100をオーバー!」

オペレーターB「精神汚染濃度も危険域に突入!」


ミサト「はあ? 何で急に?」

リツコ「さあ……。何が原因かしら……」


オペレーターC「パイロット、安全深度を越えます!」


リツコ「仕方ないわね」ハァ……

ミサト「実験は中止。回路を切断して。いいわよね、リツ」

オペレーターC「駄目です! 体内に高エネルギー反応!!」

リツコ「高エネルギー反応……ひょっとして」

ミサト「使徒?」

ー 外 ー

EVA参号機『グオオォォッ!!!』



咆哮と共に、派手な音と光を立てて爆発する松代支部……

ー 授業後、マリのマンション ー


マリ「で、隠し味に醤油を少しだけ入れると……」チョイチョイ

マリ「ほら、姫。特製シチュー、食べてみて♪」

アスカ「」パクッ……

アスカ「美味しい♪」

マリ「でしょー。お肉の代わりにマッシュルームとか色々入れてるし、コクが出てて美味しいんだよねー。レイちゃんも一口食べてみてよ」

レイ「」パクッ……

レイ「……美味しい//」

マリ「よしっ。これならワンコ君にも自信を持って出せるね。このまま煮込んだ後、一日寝かせれば味が出るし丁度いいや」

アスカ「後は当日に作ればいいわよね♪ で、何作る? やっぱお肉もないと寂しいし」


ピピピピッ


マリ「ん? 電話? レイちゃんじゃない?」

レイ「ええ……そうみたい」スッ

レイ「」ピッ

レイ「はい。レイです」

アスカ「やっぱ、唐揚げとかフライドポテトとか、その辺かしら? ハンバーグ……はなんかパーティーって感じがしないし……」

マリ「メインはあるから、軽くつまめるものがいいよね。サラダも作っておか」


レイ「!!」

レイ「それで状況は……!」

レイ「はい……! はい……!」

レイ「………………」


呆然とした表情を見せるレイ


アスカ「……レイ?」

マリ「……レイちゃん?」


異変に気付く二人……

レイ「……わか…りました。……情報…ありがとうご…ざいます……」


上ずる声……


レイ「」ピッ……


震えながら電話を切るレイ……


アスカ「ちょっとレイ……。どうしたの、何があったの」

マリ「顔色悪いよ、レイちゃん……。どうしちゃったの」

レイ「…………松代で……爆発事故が………………」

アスカ「!」
マリ「!」

レイ「…………」

アスカ「ちょっと!!」

マリ「それでワンコ君は!!」


レイ「わからない……。全員の安否が…確認されてないから……」

アスカ「……なに…よ……それ…………」

マリ「……嘘……だよね……………」


レイ「嘘じゃ……ないの…………」


アスカ「………………」

マリ「………………」



グツグツ……

シチューの鍋から焦げ付いた匂いが広がる…………

ー ネルフ本部、発令所 ー


ゲンドウ「被害状況を報告しろ。シンジや葛城君、赤木博士の無事は確認出来たのか」

青葉「依然、不明のままです! 松代の仮設ケージが爆心地の模様。地上管理施設の倒壊を確認してます」

ゲンドウ「救助部隊を直ちに派遣しろ。急げ!」

青葉「了解! くそっ、何でこんな事に!」ガチャッ

冬月「碇。第三部隊もだ。戦自が介入する前に手を打つ必要がある」

ゲンドウ「そちらは全て冬月に一任する。頼んだ」

冬月「…………」

ゲンドウ「シンジ……。無事でいてくれ……」

冬月「碇……少し落ち着け」

マヤ「司令! 事故現場南西に未確認移動物体を発見しました。パターンはオレンジです。使徒とは確認されてません! ですが」

ゲンドウ「…………」

冬月「」フゥ……

冬月「総員、第一種戦闘配置だ。修復中の零号機はどうせ使えん。初号機をダミープラグに換装して出撃の準備を。……構わんな、碇?」

ゲンドウ「ああ……」

マヤ「了解です!」

冬月「…………」


マヤ「……先輩……どうか無事でいて下さい……!」


冬月「」フゥ……


冬月「……そういえば、日向君の姿が見かけんが……」

青葉「あいつは事故が起こったって聞いたら、加持さんと一緒に松代にすっ飛んでいきました」

冬月「そうか……」フゥ……


冬月「……君やマヤ君は行かんのかね?」

青葉「マヤちゃんは理由はわかりませんが、ここに残ると言い張ったので……。僕はこっちの方が状況が入ると思いましたから……。それに、また爆発するかもしれませんし」

冬月「…………そうかね」ハァ……

ー 三十分後 ー

ー マリのマンション ー


Prrrrrr Prrrrrr

レイ「もしもし。綾波です。度々で申し訳ありませんが、松代の今の詳しい状況を教えて下さい」

レイ「……ええ。はい」

レイ「……はい。……はい」



Prrrrrr Prrrrrr Prrrrrr Prrrrrr Prrrrrr

マリ「あー、もう! こんな肝心な時に、曽根のやつ何で出ないんだよ! ふざけんなっ!!」ガンッ!!

アスカ「ちょっとマリ、落ち着きなさいよ!」

マリ「落ち着く!? 落ち着いてられる訳ないでしょうが!! ワンコ君が無事かどうかわかんないんだよっ!! 姫はそれでも平気なの!?」

アスカ「平気な訳ないでしょうが! いい加減にしなさいよ! アタシだって心配で心配でどうしようもないわよっ!!」

マリ「だったら!!」


レイ「やめて! 聞こえないから黙って!」ガンッ!!


マリ「!?」

アスカ「レイ……」

ー 電話終了後 ー


マリ「それで、レイちゃん。ワンコ君は!?」

アスカ「シンジは無事かわかった!?」


レイ「……まだ、わからない。救助部隊が向かった事ぐらいしか……。それ以外の情報が入ってこないから……」


マリ「っ……。こうなったら私もう松代に行く!」

レイ「……駄目、マリ。今、向こうは封鎖されてる。行っても入れないし、無理矢理入れば、救助の邪魔になるだけ」

マリ「だけど……!」

アスカ「……それにアンタ、ネルフのそんな所に飛び込んだらまずいでしょうが。電車だって松代行きは今は動いてないはずよ……。車でもない限り、無理よ……」

マリ「っ……!」

レイ「我慢……して」

アスカ「……気持ちはわかるけど、ここで待つしかないわ……」

マリ「……悔しいよ……くそっ……!」ガンッ!!


レイ「……」シュン……

アスカ「……」シュン……

Prrrrrr Prrrrrr


マリ「え……!?」

マリ「曽根から!?」サッ!

マリ「」ピッ!


マリ「もしもし、曽根! 松代の状況を教えて! 早くっ!! そっちだってもう何か掴んでるんでしょっ!?」


アスカ(さっきからマリが電話してる曽根って誰よ……?)

レイ(…………)

曽根『落ち着け。と言いたいところだが、そうもいかないか……』

マリ「当ったり前じゃん! グダグタ抜かすな!! 早く教えなよ!!」

曽根『』ハァ

マリ「早くっ!!」

曽根『……こちらもさっきまで情報収集で手一杯だったんだ。だから、大した事はわかっていない。それよりこの電話、大丈夫なんだろうな? 周りに人は?』

マリ「人? いないよ! 私のマンションから電話してるんだから! いる訳ないでしょ!」

レイ「…………」

アスカ「…………」

曽根『そうか……。それなら話すが……どうも起動実験中に参号機が暴走したようだ……』

マリ「暴走!?」

レイ「!?」

アスカ「!?」

曽根『それ以上の詳しい事はこちらもよくわかっていない。事態に介入しようとしたが、先にネルフに牽制されてしまった。どうにか戦自も関われる様に上層部で交渉しているが、使徒やエヴァに関する権限はネルフの方が上だ。まず無理だろうな……』

マリ「……そんな…………」

曽根『ただ、参号機と思われる機体が移動しているというのは長野の戦自から連絡が入っている。ヘリから望遠で撮った映像も確認したが、まず参号機で間違いない。恐らく、シンジ君もその中に……』

マリ「……じゃあワンコ君は……とにかく無事は無事……なんだよね……?」

曽根『…………わからない』

マリ「…………は?」

マリ「どういう事。わからないっておかしいでしょ、そんな! 参号機が動いてるって事はワンコ君がそこにいるって事でしょ。何でわかんないの、ふざけんなっ!!」

曽根『…………』


曽根『……アンビリカルケーブルが繋がってないんだ』

マリ「え…………」


曽根『参号機にS2機関は搭載されていないという情報はこちらにも入っている。そして、内蔵電源は本来ならもう切れてる時間だ』

曽根『なのに今も参号機が動いているというのは有り得ない。エヴァは電力がなければ暴走状態だろうとなんだろうと、止まるはずなんだ』

マリ「…………だ、だけど、前にワンコ君は動かしてたよ。内蔵電源が切れてたけど、動かしてたから今回も……!」

曽根『それは恐らく初号機だろう? 初号機は以前に使徒を捕食してS2機関を取り込んでるんだ。これは君達からではなく別口からの情報だがな』

マリ「S2機関を取り込んでるって……何……?」

曽根『電源がなくても自由に動けるって事だ』

マリ「…………」

曽根『だからこそ、初号機パイロットのシンジ君が一番危険視されていたんだ。そのシンジ君がこちら側につくメリットが大きかった』

曽根『そうでなければ、そこのマンション含め、あれほどの優遇はされなかっただろう。シンジ君がパイロットでなくなった今でも、待遇が全く変わっていないのがその証拠だ』

マリ「…………どういう事、それ……」

曽根『それはまた別の話なんだが……とにかくだ』

マリ「…………」

曽根『松代で何があったのかはわからないが、参号機が今、普通の暴走状態でないのだけは確かだ。……だから、これは推測でしかないが、恐らく……』

マリ「…………まさか……」

曽根「多分……だがな」

マリ「……使徒……なの…………?」

アスカ「!?」

レイ「!?」

曽根『……そう。エヴァごと使徒に乗っ取られた可能性が高い。恐らく、ネルフもそうと見て迎撃の準備にあたっているはず……』

マリ「…………じゃあ…………ワンコ……君は……? 中に乗ってるワンコ君は……どうなるの……? もちろん助けるん……だよね……?」

曽根『………………』


マリ「曽根……?」

曽根『…………普通なら……そうするはずだ。……全うな組織なら人命を優先させるだろう。……全うな組織ならな……』


マリ「や……だ…………やめて……よ…………」カタカタ……


震え出すマリ……

ー 電話終了後 ー


アスカ「じゃあ、何……。参号機にはシンジが乗っていて……それで使徒に乗っ取られているって事……? それで……ネルフがその殲滅に向かってるってアンタ言うの……?」

レイ「マリ、答えて……」

マリ「………………」ポツリ

アスカ「聞こえないわよ!! どうなのよ、マリ!!」

マリ「…………多分……そう……」ポツリ

アスカ「多分って何よ!! いい加減な事言うんじゃないわよ!! ふざけないでっ!!」グイッ!!

レイ「マリ、きちんと答えて」ズイッ

マリ「…………わかんない、ごめん……」ポツリ

アスカ「謝って済む事じゃないわよ!! はっきりしなさいよ!! シンジは今どうなってるのよっ!! これからどうなるのよっ!!」

マリ「……だって……わかんないから…………。私だって……わかんないよ……。わかんないんだもん…………」ウッ、グシュッ、ポロポロ……

アスカ「っ…………!」

レイ「…………」


アスカ「……何……でよっ……」ウッ、グシュッ……

アスカ「……何でシンジがこんな事にならなきゃいけないのよ……」グスッ、ポロポロ……

アスカ「何で……」ポタポタ……


レイ「…………」ツー……

レイ「……涙…………」ポトッ……ポトッ……

ー 同時刻 ー

ー ネルフ本部、司令室 ー


冬月「そうか、やはりか……。ああ、了解した。また何かわかり次第報告を頼む……。では……」ガチャリ……

ゲンドウ「…………」

冬月「碇……。やはり、例の未確認移動物体は参号機のようだな。現場へと向かわせた偵察機も、松代の職員からも同様の報告が上がっている。まず間違いあるまい」

ゲンドウ「……そうか」

冬月「それと……参号機は使徒に乗っ取られている可能性が高いとも言っていた。現場にいたオペレーターの一人からの報告だ。状況を考えるに、暴走よりは真実味がある」

ゲンドウ「…………」

冬月「監視対象物は依然進行中だ。方向からすると、こちらへと向かっている様だな。移動速度から計算して、東御付近で待ち受ける事が出来るだろう。そこに初号機を配置して迎撃させるつもりだが……」

冬月「しかし……」

ゲンドウ「…………」

冬月「……パイロットは、恐らく参号機に乗ったままだ」

ゲンドウ「…………」

冬月「もしも参号機が活動停止信号とエントリープラグの排出コードを受け付けなかった場合は、使徒を参号機と共に殲滅せねばならん事になる。そして、乗っ取られている以上、その可能性はかなり高い」

冬月「まだダミーシステムがどれ程のものかは未知数だが、しかし、これまでの実験データからすれば、恐らくは……」


ゲンドウ「冬月……初号機の出撃は一時取り止めさせろ。少し……時間をくれ」

冬月「わかった……。仕方あるまいな。幸い時間はまだあるが……」フゥ……

ゲンドウ「…………」


机に座り、俯いたままのゲンドウ……


冬月「……だが、碇。酷な事を言うようだが、相手が最新鋭のエヴァである以上、無傷でのパイロット救出は難しいと見るべきだぞ」

冬月「下手な決断をして、パイロット救出どころか、このネルフ全てを失う様な決断だけはしてくれるなよ……」


ゲンドウ「………………」

(アメリカ製だから参号機じゃなくて3号機だった気がする)

ー 松代での爆発事故より二時間後 ー

ー マリのマンション ー




アスカ「…………」

マリ「…………」

レイ「…………」


暗い表情でずっと俯いたままの二人……

アスカ「…………ねえ、マリ」ポツリ

マリ「…………何……?」ポツリ

レイ「…………」


アスカ「……もし……参号機が使徒に乗っ取られた状態で……シンジがそこにまだ乗っていたとしたら……」ポツリ

マリ「…………」

アスカ「…………シンジは……どうなるの……?」ポツリ

マリ「…………」

アスカ「…………助けないなんて事……ないわよね……?」ポツリ

マリ「…………」

アスカ「……ねえ、マリ…………」ポツリ

レイ「…………」


マリ「…………私にそれを言わせるの、式ちゃん……」ポツリ

アスカ「…………」

マリ「…………あいつら……自分の為なら、人の命なんかどうとも思ってないじゃん……」ポツリ

アスカ「…………」ウッ、グシュッ……

レイ「…………」


うつむき顔を背けるレイ…………

Prrrrrr Prrrrrr Prrrrrr


レイ「!!」
アスカ「!!」
マリ「!!」

レイ「ネルフの人から……!」

レイ「」ピッ

レイ「……はい、綾波です」

レイ「はい……。はい。ええ……」

レイ「……!?」

レイ「本当ですか? ……はい。……わかりました。ありがとうございます」

レイ「」ピッ



マリ「どうしたの、レイちゃん!?」

アスカ「何かいい知らせ!?」

レイ「……まだ、初号機は出撃していないわ。格納庫にある。作業員の人が教えてくれたから」

マリ「って、事は……」

アスカ「シンジはまだ無事……」

レイ「ええ、そう」コクッ

アスカ「良かった……!」ホッ……!

マリ「…………」


黙ったまま、何かを考える様なマリ


レイ「……?」

アスカ「マリ……?」

マリ「……ねえ、レイちゃん。それに、姫。よく聞いて」

レイ「…………」

アスカ「どうしたの、マリ……。急に」

マリ「初号機、まだネルフにあるんだよね……。でさ、レイちゃんは知ってるだろうけど、姫はダミーシステムの事については聞いてる?」

アスカ「ええ……一応は聞いてる……」

マリ「あれ使われたら、多分ワンコ君助けらんないよね……。前にベタニアベースにいた頃、ちょろっとだけできかけのデータ見たけど、アレ、見事に戦闘プログラムしかなかったもん……」

レイ「……そうね…………」

アスカ「…………」

マリ「だったらさ……アレ、使わせない様にするしかないじゃん? 私達でどうにかするしかないよね?」

アスカ「…………ああ、そういう事ね……」

レイ「……そう。理解したわ」

マリ「オーケー。じゃあやる事は決まったけど、それでみんないい? 構わない?」

アスカ「当ったり前じゃない! どうなろうと、シンジは絶対に助けるわよ!」

レイ「私も、それでいい」コクッ


マリ「じゃあ……やろっか。だよね?」

アスカ「そうね……」

レイ「ええ……」


うなずきあう三人……

ー 夕方近く ー

ー ネルフ本部、司令室 ー


青葉「……松代は……どうなったんだろうな」

マヤ「……救助部隊からの情報もこちらにはあまり来ないし……私、心配で……」グスッ……

青葉「……大丈夫さ。きっと赤木博士も葛城さんも無事だよ」

マヤ「……そうだといいんだけど…………」


プシュン……


アスカ「」トコトコ……


青葉「ん?」

マヤ「アスカ……? 何でここに……?」

青葉「あいつ……何やってんだよ、こんなとこに来て。命令があるまで、こっちに来るなって言われてたはずなのに」

マヤ「……私、ちょっと注意してきますね」スクッ

青葉「ああ、うん。頼んだ。命令違反の上、こんな時に来るなんて不謹慎にも程があるからな」

マヤ「そうですよね。先輩だってまだ無事かどうかわからないのに……」

マヤ「」タタタッ


青葉「ったく。どんな教育を受けたらあんな風に育つんだか。ホン」


\ きゃあっ!!  /


青葉「!?」


アスカ「ヘロー、マヤ。動くとどうなるか、言わなくてもわかるわよね?」チャキッ


拳銃をマヤに突きつけるアスカ


マヤ「な、何……するの!? やめて! アスカ!」

アスカ「うるさい、黙れ」グッ


拳銃を押し付けるアスカ


マヤ「や、やめて!! 落ち着いて!!」

アスカ「喋るなって言ってるでしょ! 妙な真似したら容赦なく撃つから、覚えときなさい。少なからずアンタらには恨みがあるし、脅しだと思わない事ね」グイッ

マヤ「!!」ビクッ!!

青葉「おい、ちょっとお前!! 何してるんだよ!!」


アスカ「…………」スッ


バンッ!!


青葉「っ!!」ビクッ!!


アスカ「今のは脅しだけど、次は間違いなく狙うから。喋らないで、耳障りだし」


青葉「…………」


アスカ「……何かしようとしたら撃つわよ。アタシの命令に従わなかった場合は、こいつを撃つから。いいわね?」

マヤ「や、やめて……。みんな従って……」ガタガタ……


青葉「……っ。わかった……」


アスカ「オーケー。お喋りもそこまでだから。これからは口を開くのも禁止よ。もしも、許可なく開いたら撃つから。本当なら、むしろ開いて欲しいぐらいだけどね」グイッ

マヤ「」ガタガタ……



青葉「…………」

ウィーン……


昇降機に乗って、発令所に姿を現す冬月とゲンドウ


冬月「……何の騒ぎだ、これは」

ゲンドウ「……どういう事だ」


アスカ「やっとおいでなすったわね。二人とも、妙な真似はしないでアタシの命令に従ってもらうわ。副司令はそこの壁に背中をつけて立っていて。司令はそっちに座っていなさい。もしも従わない場合は、こいつの命は保証しないから」

マヤ「し、司令……!」ガタガタ……


アスカ「喋るな」バンッ!!


マヤ「ひっ!!」


床に向けて発砲するアスカ


アスカ「見ての通りよ。従いなさい」


冬月「」トッ……

ゲンドウ「」ストッ……


冬月「…………何が目的だね」

ゲンドウ「…………」

アスカ「特に何も。アンタ達がしばらく何もしないでくれたらそれでいいわ」


冬月(…………?)

ゲンドウ「…………」

ー 格納庫 ー


レイ「」カタカタ
ノート型外部端末「」


レイ「ダミーシステム、解除。ハッチのロック、解除」カタカタ
ノート型外部端末「」


レイ「パーソナルデータまで書き換えられてなくて良かった……。これならすぐに発進出来る……」カタカタ……
ノート型外部端末「」


ガコッ……

初号機のエントリープラグが開く


レイ「……碇君、今、助けに行くから」

ー 地上、発着場 ー


ネルフ職員A「おい、どうなってる! あの輸送機の発進許可は出てないぞ!?」

ネルフ職員B「本部からの命令も連絡もこちらには来てない! すぐに本部に確認をとれ!」

ネルフ職員C「駄目です! 繋がりません! さっきから何度もコールしてるんですが!」

ネルフ職員D「繋がらないなんて事があるか! 連絡を取り続けろ!」

ネルフ職員E「 誰か直接本部に確認に迎え! 急げ!」




ー エヴァ専用輸送機内 ー


マリ「ちょろいもんだね。ネルフの警備のザルさは、ホントどこも筋金入りだよ」クルクルッ


拳銃を指で回すマリ


マリ「にしても、まさかベタニアベースの時させられていた事と、脱出する時に持ってきた拳銃がこんな所で役に立つとは思ってもなかったけどさ……」


Prrrrrr Prrrrrr


マリ「ん? レイちゃんからか」ピッ

マリ「もしもーし」

レイ『マリ。初号機は確保したわ。こちらはいつでも発進出来るから』

マリ「オッケー。こっちも足は確保したよ。んじゃ、これ以上めんどくさい事になる前にさっさと行きますか」

レイ『ええ……。初号機を地上へと射出させるわ』

マリ「ん、すぐ拾いに行くよ。もしも妨害とかあったらそっちで排除しといてね。よろぴくー」ピッ

ー ネルフ本部、発令所 ー


Prrrrrr Prrrrrr


アスカ「」ピッ

アスカ「もしもし」

マリ『姫。こっちの準備は終わったよ。パーソナルデータはそのままだったから、書き換えの必要はなかったみたい。そっちはどう?』

アスカ「オーケーよ。予定通り。発令所は押さえたから」

マリ『ん。さっすが、姫。じゃあ、こっちはもう行くね。そっちの事、頼んだよ。ワンコ君を助けるまで、あいつらに何もさせないでね』

アスカ「ええ。わかってる。……頼んだわよ、マリ」

マリ『……うん』

アスカ「……二人とも。シンジの事、必ず助けてね。信用してるから」

マリ『……わかってる。絶対助けるから』

アスカ「頼んだわよ」

マリ『……姫も無事でね。必ず後で迎えに行くから、それまで耐えててよ。四人揃ってなきゃ……意味ないんだからね。逃げる時、誰か一人欠けてても意味ないんだからね』

アスカ「大丈夫……。任せておいて。ヘマはしないわよ」

マリ『うん……。じゃあ本当にもう行くよ』

アスカ「ええ。……お願いよ、マリ、レイ」ピッ……

>>660
後から気付いたんで、もうこのまま進めます
ついでに今日はここで投下終わり

ー 夕方遅く ー

ー ネルフ本部、発令所 ー


アスカ「……参号機の今の移動方向は?」チャキッ

マヤ「」ブルブル……



青葉「…………」カチャカチャ……

青葉「……今は少し方向を変えて、南へと進んでる。……野辺山辺りだ」



アスカ「そう」ピッ

アスカ「もしもし、レイ。マリに伝えて。野辺山付近に方向を変えるようにって」

レイ『ええ……わかったわ。そう伝えておく』

アスカ「また十五分後に連絡するわ。それじゃ」

レイ『気をつけて……』

アスカ「大丈夫よ。心配ないわ」ピッ……

冬月「…………」

ゲンドウ「…………」



アスカ「…………」

マヤ「」ガタガタ……



青葉「…………」



その他の職員は、全員、外に強制退去

発令所へと通じるドアにはロックがかけられ、その周辺の通路も完全封鎖された状態

冬月「……一つ聞かせてもらえんかね」


アスカ「お断りよ」チャキッ


冬月「…………」


アスカ「あと、勝手に喋らないで。黙ってなさい」


冬月「わかった……」フゥ……


ゲンドウ「…………」

ー 野辺山付近 ー




参号機「」ズシンッ……ズシンッ……



夕暮れの中、移動する参号機……

ー エヴァ専用輸送機内 ー


マリ「いた! ドンピシャ!」

レイ『見つけたの?』

マリ「うん。ようやく! 一旦旋回して、参号機の後ろ、そこから少し離れた場所に降下させるよ! 準備しといて!」

レイ『了解……』

マリ「レイちゃん、初号機はコードレスらしいから、時間は気にしないで。焦らず、確実にワンコ君を助けてよ!」

レイ『大丈夫、わかっているわ』

マリ「参号機の背中さえ取れれば、そこからナイフで無理矢理こじ開けてエントリープラグを出せるはず。私はその間に、どこか着地出来そうな場所を探しておくよ。だから、後は頼んだ、レイちゃん!」

レイ『ええ』コクッ

マリ「よしっ! 旋回終了! 降下までカウントダウン開始するよ! 切り離しまで、5、4、3、2、1……」

マリ「0!!」カチッ!!

ー ネルフ本部、発令所 ー


アスカ「青葉、映像がないんだから、アンタが逐一エヴァの状況を報告しなさい! 早く!」カチャッ

マヤ「あ、青葉君……お願い……」ガタガタ


青葉「了解……」

青葉「……さっき、初号機が内蔵電源に切り替わった。だから、恐らく輸送機から切り離されたと思われる」


アスカ「音声は?」チャキッ


青葉「今……繋ぐ」カチャカチャ

ー 野辺山付近 ー


初号機「」ズシャッ!!


地上へと降り立つエヴァ初号機


レイ『……!』


初号機「」ダダダダダッ!!


そして、参号機に向かって急速ダッシュ!

参号機「」ズシン、ズシン……

参号機「」ピクッ……

参号機「」クルッ……


それに気付き振り向く参号機


参号機「」ググッ……


体を屈めて戦闘態勢をとり……


参号機「」ダンッ!!


上空へと飛び上がる!!

レイ「……上!」


初号機「」チャキッ!!


ナイフを装備して待ち構えるレイ


飛び降りてくる参号機!


参号機「」ズシンッ!!

初号機「」ガキンッ!!


参号機の蹴りを受け止めるも……


レイ「……っ!!」


初号機「」ズシャッ……!!


衝撃に耐えきれず、後ろへと大きく態勢を崩す!

参号機「」ブンッ!!


その隙に、初号機めがけて腕を伸ばす参号機!


初号機「」メキョッ……!!

レイ「ぐっ……!!」


喉元を掴まれ……


参号機「」グイッ……

参号機「」ブンッ!!

初号機「」ズガッ……!!

レイ「あっ……!!!」


山へと押し付けられる……!

ー ネルフ本部、発令所 ー


アスカ「レイっ!? ちょっとレイ!! どうしたの!? 大丈夫!?」


レイ『大…丈夫……! まだ……やれ……きゃあっ!!』


アスカ「レイっ!? レイっ!!」


青葉「装甲部、頸椎付近に侵食発生……!」

青葉「神経接続が次々と断線していく……!」

青葉「……汚染も広がって……! まずい! 生命維持に支障発生! このままだとレイちゃんが!!」


アスカ「そんなっ!?」


冬月「いかん! 神経接続を28%までカットしろ! パイロットが死ぬぞ!」


アスカ「急いでっ!! 早くっ!!」チャキッ!!


青葉「わかっている! 今それをやってい!」カチャカチャ!!


ドンッ!!


レイ『っ……!! きゃあああっ!!』


アスカ「レイっ!? 何があったの!?」


青葉「」

青葉「……シ、シンクログラフ反転! パルス逆流! モニター反応なし!」ダラダラ


ゲンドウ「回路を遮断しろ! !」


青葉「はいっ!」カチャカチャ!!

青葉「!?」

青葉「信号拒絶! 受信しませんっ!」


ゲンドウ「レイの様子は!」


青葉「パイロットの生死不明! 依然として反応なし!!」


アスカ「ダメ! エントリープラグを強制射出して! このままだとレイが!!」


青葉「了解!」カチャカチャ!!


ビーッ!! ビーッ!! ビーッ!!


青葉「!?」

青葉「ダメだっ! 受け付けないっ!…… 完全に制御不能!!」


アスカ「そんな! レイっ!! レイっ!!」

ー 野辺山 ー


参号機「」グググググッ……!!


初号機の首を締め続ける参号機……!!


初号機「」


沈黙したまま、何も反応がない初号機…………





























『……シンジを……返して!!!』


初号機「!」キラーンッ!!


初号機、再起動!!

ー ネルフ本部、発令所 ー


『……シンジを……返して!!!』



アスカ「……レイ……!?」


ゲンドウ「」ガタッ!!

ゲンドウ「ユイっっ!!!!」


思わず立ち上がるゲンドウ


アスカ「……ユイ…………?」


ぽつりと呟くアスカ

ー 野辺山 ー


初号機「グオオオオォォッ!!」


咆哮する初号機!


初号機「」グググッ……!!


参号機の腕を掴み……


バキッ!!


へし折る……!!


参号機「!?」


初号機「」ガシッ……!!

初号機「」ダンッ!!!


更に、参号機の胴体を掴み上げ、地面へと叩きつける!



初号機「」スッ……


腕を上げ……


初号機「」ズガッ!!!

初号機「」グググッ……バリッ、バキッ!!


エントリープラグを無理矢理引きずり出す! !

ー 数分後 ー

ー 野辺山付近 ー


マリ「」タタタタッ!!


輸送機を近くに着陸させ、走って現場へと辿り着いたマリ


マリ「ワンコ君はどうなったの!? レイちゃんは!?」タタタタッ

マリ「!?」

マリ「……うっ!!」


思わずその場で足を止めるマリ……




ズズーン!!!


飛び散るエヴァの装甲……

辺り周辺に撒き散らされるLCL……

無惨に破壊されていく参号機……

マリ「なに……これ…………」

マリ「レイ……ちゃん…………?」


マリ「……ワンコ君は…………?」


怯えながらも、辺りを見回すマリ……


マリ「……!?」

マリ「あれ、エントリープラグ!?」


少し離れた場所に転がっているエントリープラグを発見


マリ「……あれ、ワンコ君のだよね!? ワンコ君の…だよね!!」

マリ「」ダダダダダッ!!


急いで駆け出すマリ

ー エントリープラグ近く ー


マリ「ワンコ君!! ワンコ君っ!!」ガンッ、ガンッ

マリ「今、助けるから!!」ガシッ!! バキッ!!


持っていたナイフで使徒の残骸と思われるものを切り離し、急いでハッチに手をかけるマリ


マリ「っ!!!」


ある程度冷えてはいたものの、熱さに顔を歪めるマリ


マリ「ぐっ!! ぎっっ!ぐぐっ!」グググッ


マリ「こんなの、平気だよ! 全然熱くなんか……ないっ!!」ガコッ!!


無理矢理ねじ開けるマリ


マリ「無事っ!! ワンコ君!!」ダッ!!


慌ててエントリープラグの中に飛び込む


シンジ「…………」


そこには気を失っているシンジの姿が



マリ「良かった! 無事だね、ワンコ君! 傷一つな……」

マリ「!!!」

マリ「……ワンコ君! ……その左目っ…………!!」


思わずその場で立ちすくむマリ…………

ー 数十分後 ー

ー ネルフ本部、発令所 ー


アスカ「レイ! 返事をして、レイ!! そっちの状況は!! アンタは無事なの!!」


『…………』


アスカ「レイ!! レイ!!」


Prrrrrr Prrrrrr Prrrrrr


アスカ「!?」

アスカ「マリ……!?」

アスカ「」ピッ!

アスカ「もしもし、マリ! アンタ、今どこにいるの!? レイは!? シンジは!?」

マリ『……レイちゃんは無事……。エントリープラグの中で気を失ってたから、今、背負って輸送機まで運んでるところ……』

アスカ「良かった……! それで、シンジは!? シンジは無事なの!?」

マリ『無事……と言えば、無事……。先に輸送機の中まで運んだからそこにいる……』

アスカ「無事と言えばって……。怪我でも……していたの……?」

マリ『………………』

アスカ「マリ……?」

マリ『もうすぐ輸送機に私も着くから……。また連絡する……。ちょっと……予定変わるかもしんない……』

アスカ「なにそれ、どうい」ブツッ


ツー、ツー、ツー……


アスカ「マリ…………?」

ー 輸送機内 ー


レイ「ん…………」

マリ「あっ、気が付いた、レイちゃん? ちょっと待って。はい、お水」サッ

レイ「ここ……は……?」

マリ「輸送機の中だよ。もうすぐ飛ぼうかと思ってたから、先に気がついてくれて良かった」

レイ「碇…君は……? あれから……どうなったの……?」

マリ「ワンコ君も中に乗ってる……。体に傷はない…………」

レイ「良かっ……た」ホッ……

マリ「でも……」

レイ「……?」

マリ「使徒に……侵食された痕が……」

レイ「!?」

マリ「左目が……。レイちゃんは見ない方がいい。かなり………………な状態になってるから……。まさかと思って、悪いと思ったけど、水もかけてみた。でも、意識を取り戻す気配がさっきから全くない……。精神汚染……されてる可能性が高いと思う……」

レイ「……そん……な……」

マリ「本当はこのまま四人で逃げるつもりだったけど、少し考えを変えなきゃいけない……。ワンコ君の今の状態は普通の病院じゃ治せないだろうから……悔しいけどネルフの医療班に頼るしかない……」

レイ「……だけど…………それじゃ碇君が…………」

マリ「うん……。どうされるか……わかんない…………。下手したら……処理……される可能性も…………」

レイ「!!」

ー ネルフ本部、発令所 ー


アスカ「…………」チャキッ……

マヤ「」ブルブル……


青葉「…………」


冬月「…………」

ゲンドウ「…………」

Prrrrrr Prrrrrr

ゲンドウ「…………」


アスカ「…………」

アスカ「わかってるでしょうけど、出ないでよ。切りなさい」チャキッ


ゲンドウ「」スッ……

ゲンドウ「」ピッ


アスカ「……どこからの電話?」


ゲンドウ「……内務省からだ」


アスカ「……そう」


ゲンドウ「…………」

ゲンドウ「式波・アスカ・ラングレー」


アスカ「勝手に口を開くんじゃないわよ!」チャキッ

ゲンドウ「……もうここらでやめておけ」

アスカ「はあ? アンタ、バカァ? 状況がわかってんの? 私に命令しないで!」

ゲンドウ「……内務省から直に私に電話が来るという事は、既に今の状況が外部にも漏れているという事だ。私からの返答がない今、ネルフの力だけでは問題解決がされないと見て、直接、事態に乗り込んでくる可能性が高い」

アスカ「……だから何なのよ?」チャキッ

ゲンドウ「……内務省を通じて戦略自衛隊に命令が行き、ここの制圧が決定されるという事だ。命令次第では、恐らく私や他の職員も含め、人質の安全など優先しない事も十分に有り得る。内務省やゼーレにとってはその方が都合がいいからな。この場にいる全員がどさくさに紛れて殺される可能性が高い」

アスカ「……!?」

ゲンドウ「……今ならまだ間に合うだろう。投降するか
、この場を放棄して逃げ出せ。無論、投降する場合は、そちらの命の保証はする」

アスカ「アタシを脅そうってえの、アンタは! 撃つわよ!」チャキッ!

ゲンドウ「……事実を述べたまでだ。下手に逃げれば、職員によって射殺される可能性もある。だが、投降すればその心配はない。それだけの事だ」

アスカ「っ……」

ー 輸送機内 ー


マリ「レイちゃん、よく聞いて。時間もあまりないから、今、この場で決断しなきゃいけない。姫も心配だけど、ワンコ君はもっと心配だよ。こうしている間にも精神汚染が進んで、人として戻れなくなる可能性だってあるんだから!」

レイ「……!」

マリ「ネルフの医療班はお金で動いてくれるって言ってたよね? 私の全財産を使ってもいいから、とにかくワンコ君の命の保証だけはしてもらって、それで向こうに託すか、それとも戦自にお願いして治療してくれるのを祈るかのどっちかだよ!」

マリ「レイちゃんには言ってなかったけど、私やワンコ君には戦自との繋がりがある。だから、頼めば何とかしてくれるかもしれない。でも、それで治せる保証は何もない。使徒に関しては、治せる可能性が一番高いのはやっぱりネルフしかないんだから」

マリ「レイちゃん、意見を聞かせて。私はワンコ君をネルフに預けるべきだと思ってる。他の病院に預けたってきっと無駄だし、そうこうしている間に取り返しのつかない事になるかもしんない! だから!」


レイ「…………私……は……」

ー ネルフ本部、発令所 ー


Prrrrrr Prrrrrr

アスカ「」サッ!

アスカ「もしもし、マリ! もしもし!!」

マリ『式ちゃん、そっちはまだ大丈夫!?』

アスカ「…………平気。あと何時間でも持ちこたえられるわよ。それより、シンジは!?」

マリ『……式ちゃん、悪いけど今から言う事をよく聞いて。私が何を言っても落ち着いて聞いてよ』

アスカ「…………え」

マリ『時間もないから手短に話すよ。そして、すぐに決断して。いいね』

アスカ「…………わかったわ。……何?」

ー 状況説明後 ー


アスカ「……使徒に」

マリ『そう。だから、さっき話したどっちかを選ばなきゃいけない。私とレイちゃんは、ネルフに預ける事で一致した。ワンコ君の事を考えたら、それしかないと思ったから。だから、式ちゃん!』

アスカ「…………」


アスカ「わかった……。それでいい。……あと、こっちにはもう来なくていいから。……アンタ達はそのまま逃げて」

マリ『ちょっと式ちゃん、何で!?』

アスカ「……実はもうこっちも手詰まりだったの。ここに来たらアンタ達まできっと捕まる。下手したら殺される。そうなる前にアタシは投降するから……。だから、もういいの……」

マリ『式ちゃん!!』

アスカ「シンジが助かったんなら、もうそれでいい。アンタ達まで捕まる事なんてない。……わかるでしょ、マリ……?」

マリ『良くないよ、式ちゃん!! 行く前に言ったじゃんか!! 全員揃ってなきゃ意味ないって!!』

アスカ「いいの。これでもういいの……。前にシンジに言った通り、シンジの事、アタシが守る事が出来た……。それだけで嬉しいから……」

マリ『良くないっ!! 諦めんなっ!!』

アスカ「マリ……。それに、レイ。アタシね……。今、笑えるんだ。辛かった事、これまで一杯あったけど……。これまでずっと泣いてばっかりだったけど……。それでも今、笑える